(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】リファブチン処置法、使用および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/438 20060101AFI20221110BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221110BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221110BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221110BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221110BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221110BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221110BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
A61K31/438
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/26
A61P31/04
A61P43/00 111
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516161
(86)(22)【出願日】2020-08-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 IB2020000647
(87)【国際公開番号】W WO2021048611
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519450178
【氏名又は名称】バイオバーシズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダーレ, グレン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロチューロ, セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ケンマー, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】トレボスク, ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ギッツィンガー, マルク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB01
4C076BB13
4C076CC32
4C076DD09F
4C076DD37A
4C076DD38A
4C076DD39A
4C076DD41
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4C076DD59A
4C076DD60A
4C076EE23F
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB25
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、A.baumanniiに対するリファブチンの臨床上の有効性の増大のためのシステムおよび方法を提供する。本発明は、A.baumannii細胞へのリファブチンの取り込みを担う第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターの発見を利用する。好ましくは、方法は、感染を有すると疑われる患者からサンプルを得る工程;上記サンプルに対して試験を行って、上記患者においてA.baumanniiの感染を同定する工程;および上記患者に投与される場合に、得られるAUCおよび/またはCmaxを最大化する、上記患者を処置するためのリファブチンの製剤を提供する工程を包含する。上記方法は、リファブチンの製剤を上記患者に投与する工程を包含し得る。好ましくは、上記製剤は、例えば、静脈内注射によって上記患者に送達され、約2mg/Lより大きく、必要に応じて約50mg/L未満であるCmaxを生じる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.baumannii感染を処置するための方法であって、前記方法は、A.baumannii細胞の第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターの活性化に十分な用量においてリファブチンを含む組成物を患者に投与することによって、上記A.baumannii細胞へのリファブチンの進入を促進する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記組成物は、静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記用量は、FhuEレセプターの活性化と関連するAUCおよびC
maxを提供する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記C
maxは、約2mg/Lより大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記C
maxは、約2mg/Lより大きくかつ約50mg/L未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
C
max>2mg/Lであるが<50mg/Lであり、AUC>10mg*h/Lでありかつ<300mg*h/Lである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
リファブチンは、吸入によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
リファブチンは、放出改変経口薬物送達システムによって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リファブチンを含む組成物は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hであるリファブチン用量において静脈内に送達される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、およびジメチルイソソルビド(DMI)からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、約2:1 溶媒:リファブチンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記製剤を、静脈内注射によって前記患者に送達する工程をさらに包含する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記製剤は、少なくとも約2mg/LのC
maxを生じる用量で送達される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤は、2mg/L<C
max<50mg/L;および10mg*h/L<AUC<300mg*h/Lを生じる用量で送達される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hである用量で送達される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
A.baumannii感染を処置することにおける使用のための組成物であって、前記組成物は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含む、組成物。
【請求項18】
前記溶媒は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、およびジメチルイソソルビド(DMI)からなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は、約2:1 溶媒:リファブチンを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物は、静脈内送達のための水性溶液として提供される、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物は、A.baumanniiに感染したと同定された患者に提供され、前記組成物は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hの投与量でのIV送達のためのリファブチンを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
患者においてA.baumannii感染を処置するための医薬の製造のためのリファブチンの使用。
【請求項23】
前記医薬は、FhuEレセプターの活性化と関連するAUCおよびC
maxを生じる用量を提供する、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記医薬は、前記患者において、少なくとも約2mg/LであるC
maxを生じる投与量レジメンで投与されるように調製される、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記医薬は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含む、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記溶媒は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、およびジメチルイソソルビド(DMI)からなる群より選択される、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記医薬は、IVバッグ内に提供される、請求項25に記載の使用。
【請求項28】
前記医薬は、2mg/L<C
max<50mg/L;および10mg*h/L<AUC<300mg*h/Lを生じる用量を提供する、請求項25に記載の使用。
【請求項29】
前記医薬は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hであるリファブチン投与量を提供する、請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年9月18日出願の米国仮特許出願第62/902,019号、2019年9月12日出願の同第62/899,257号、2019年11月27日出願の同第62/941,160号、および2020年2月17日出願の同第62/977,659号(これらの各々の内容は、その全体において本明細書に参考として援用される)に基づく利益および優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、A.baumannii 第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターの活性化のための組成物および方法、ならびにA.baumannii感染を処置するために有効なリファブチンの高い全身曝露(CmaxおよびAUC)の使用を開示する。
【背景技術】
【0003】
背景
細菌感染はしばしば、多剤耐性(MDR)または広範囲薬剤耐性(XDR)の細菌株の出現に起因して、処置するのが困難である。特に懸念されるのは、世界保健機関の優先リストによれば、頭字語「ESKAPE」によって公知の抗微生物剤耐性グラム陰性病原体に属する、カルバペネムおよび第三世代セファロスポリン耐性のAcinetobacter baumannii、Pseudomonas aeruginosaおよびEnterobacteriaceae spp.である。
【0004】
抗微生物耐性感染症に罹患している患者は、通常、「最終手段」の抗生物質の経口製剤を摂取するには病気がひどいことから、静脈内(IV)投与が、抗生物質処置を提供するために十分な、唯一の送達方法である。不運なことに、大部分の抗生物質は、IV投与のために製剤化されてない。なぜならそれらは、可溶性の形態へと製剤化することが困難または不可能だからである。
【0005】
リファブチン(LM427およびMycobutin(登録商標)としても公知)は、リファマイシン-Sから得られるスピロ-ピペリジル-リファマイシンである。Mycobutin(登録商標)は、1992年に経口製剤としてFDAによって承認された。Mycobutin(登録商標)(150mg カプセル剤)カプセル剤は、進行したHIV感染を有する患者において、播種性Mycobacterium avium complex(MAC)疾患の防止に関して処方される。リファブチンは、グラム陰性病原体に対して低い外膜透過性を有することが広く公知であるので、それらの生命を脅かすESKAPE病原体へのその細胞取り込みを制限する。よって、リファブチンの投与の製剤または代替経路は、十分に探索されておらず、状況は、その不十分な溶解性によってひどくなっている。
【0006】
近縁のリファマイシン分子(例えば、リファンピン(リファンピシンとしても公知))において、Mycobacterium tuberculosisの微生物殺滅は、濃度時間曲線下の面積 対 MIC比(AUC/MIC)に関連付けられるのに対して、耐性の抑制は、遊離ピーク濃度(Cmax)-対-MIC比(Cmax/MIC)と関連し、リファンピン濃度がMICを上回る持続時間には関連しなかった。さらに、抗生物質後効果持続時間はまた、Cmax/MIC比に最も密接に関連した(Gumbo, 2007, Concentration-dependent Mycobacterium tuberculosis killing and prevention of resistance by rifampin, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 51(11):3781-3788(参考として援用される)を参照のこと)。従って、臨床の場で微生物殺滅を達成し、耐性の出現を防止するために、高血漿薬物濃度が必要とされる。
【0007】
健常成人ボランティアでは、300mg リファブチンの名目上の治療的経口用量は、経口投与後およそ3時間で獲得される0.375mg/Lという平均Cmaxを生じる(リファブチン製品モノグラフ)。リファブチンのPKは、健常ボランティアへの300mg、450mgおよび600mg POの単一投与後に、0.4~0.7mg/Lの範囲のCmaxで線形的である(リファブチン製品モノグラフ)。推奨される1日用量のリファブチン(300mg/日)を受容するHIV感染患者における試験では、定常状態での血漿濃度は、Cmaxは0.59±0.33mg/Lであり、AUCは、8.6±8.2mg*h/Lであった(Hafner, 1998, Tolerance and pharmacokinetic interactions of rifabutin and clarithromycin in human immunodeficiency virus-infected volunteers, Antimicrobial Agents and Chemotherapy 42(3):631-639(参考として援用される))。
【0008】
リファブチンは、およそ90% タンパク質結合されることから、経口投与後の遊離薬物濃度は非常に低い。健常成人ボランティアにおいて、経口用量のうちの少なくとも53%は吸収されるのに対して、HIV陽性患者において評価された絶対バイオアベイラビリティーは、複数用量試験において、1日目に20%および28日目に12%であった。経口投与後のリファブチンの低い全身曝露(CmaxおよびAUC)は、ESKAPE病原体であるAcinetobacter baumannii(Acinetobacter calcoaceticus-baumannii complex)によって引きおこされるもののような重篤な感染の処置に関するリファブチンの有用性を制限する。さらに、このような感染を有する患者へのリファブチンの経口投与は、耐性の急速な発生をもたらす可能性が高い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gumbo, 2007, Concentration-dependent Mycobacterium tuberculosis killing and prevention of resistance by rifampin, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 51(11):3781-3788
【非特許文献2】Hafner, 1998, Tolerance and pharmacokinetic interactions of rifabutin and clarithromycin in human immunodeficiency virus-infected volunteers, Antimicrobial Agents and Chemotherapy 42(3):631-639
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
本発明は、A.baumanniiに対するリファブチンの臨床上の有効性の増大のためのシステムおよび方法を提供する。本発明者らによる新規な作用機序の発見は、リファブチンが、他のグラム陰性病原体に対して最小限の活性のみを有すると同時に、A.baumanniiに対して顕著な活性を維持する能力を生じた。本発明は、リファブチン(ただし近縁の薬物、リファンピンではない)のA.baumannii細胞への取り込みを担う第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターの発見を利用する。1つの局面において、本発明は、投与されたリファブチンの高いAUCおよびCmaxを提供し、これは、FhuEレセプターの活性化を介して増大した臨床上の有効性を可能にし、同時に、耐性の可能性 - リファブチンおよび関連薬物の標準経口製剤における顕著な問題を低減する。本発明者らは、高い曝露および特に、Cmaxが、現在利用可能な経口投与経路によって達成できないが、局所的に高いCmaxおよびAUCが必要とされる場合、静脈内注射によって、または改変された経口放出に関して当該分野で公知の方法によって、または吸入によって達成できることを発見した。
【0011】
ある特定の実施形態において、リファブチン液体製剤は、静脈内(IV)投与のために提供され、上記製剤は、Acinetobacter baumanniiに対して有効である。リファブチン液体製剤は、細菌細胞膜における第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターを調節して、細菌細胞膜を横断してリファブチンを輸送するシデロホアを利用し得る。これは、経口リファブチンに関して以前は未知であった予測外の臨床上の利点を提供する。本明細書で開示されるリファブチンの製剤は、抗微生物剤の経口投与が非現実的または不可能である細菌感染を処置するための有用である。本発明の製剤および方法は、医療業界に、生命を脅かす細菌感染によって無能力にされる患者にとって新規な処置を提供する。
【0012】
ある特定の実施形態において、リファブチンは、細菌細胞においてTonB依存性シデロホアレセプターを調節するシデロホアが存在することを使用する。上記TonB依存性シデロホアレセプターは、第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターであり得る。好ましいシデロホアは、細菌TonB依存性シデロホアレセプターを調節するものである。例えば、好ましいシデロホアは、リファブチンのTonB依存性シデロホアレセプターの取り込みを媒介する任意の鉄キレート剤であり得る。例えば、上記シデロホアは、アポトランスフェリンであり得るか、またはトランスフェリンであり得る。上記シデロホアは、鉄錯体で負荷され得る。鉄が負荷された上記シデロホアは、トランスフェリンであり得る。
【0013】
リファブチンは、Acinetobacter baumanniiのTonB依存性シデロホアレセプターを調節するシデロホアが存在することを使用し得る。
【0014】
注記されるように、本発明の方法は、FhuEレセプター活性化が、A.baumanniiにリファブチンが進入することを可能にし、さらに、リファブチンの高いCmaxおよびAUCが、患者において、この病原体によって引きおこされる感染の有効な処置に関して、および耐性発生の可能性の低減に関して達成されるという認識に基づく。好ましいリファブチン製剤は、水中のリファブチン粉末、溶媒、およびリファブチンの溶解を促進するための酸を含む。上記溶媒は、約25%~約75%、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、約45%~約55%、約45%~約65%、約50%~約65%、約50%~約60%、約50%~約55%、または約50%の濃度で存在し得る。好ましくは、上記溶媒および蒸留水は、1:1比にある。好ましい溶媒としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、またはジメチルイソソルビド(DMI)が挙げられる。好ましい実施形態において、上記溶媒は、DMIである。本発明の再構成される溶液は、好ましくは、約250mg/ml(1:1 溶媒/水)または約166.7mg/m(2:1 溶媒/水)を含むが、上記再構成される溶液の濃度は、約300mg/ml程度の高さであり得る。ある特定の実施形態において、より薄い溶液が必要とされ、それは、より多くの水を上記溶媒に添加することによって得られる。例えば、1:4の溶媒/水の比にあるリファブチンは、約50mg/mlの溶液を生じる。このような製剤は、A.baumanniiによって引きおこされる種々の状態(例えば、菌血症、人工呼吸器関連細菌性肺炎(VABP)、院内獲得細菌性肺炎(HABP)および尿路感染症(UTI)が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために有用である。
【0015】
本発明によれば、リファブチンは、A.baumannii 第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターの利用に起因して、A.baumanniiに対して強い活性を有する。さらに、本発明は、リファブチン処置に対するA.baumannii単離物の感受性を決定するための方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、開示される静脈内製剤は、現在入手可能な経口製剤を使用して達成され得ない重要なCmaxおよびAUCを達成する。これは、リファブチンに関して以前は使用可能でない、予測外の臨床上の利点を提供する。リファブチンの静脈内投与は、生命を脅かす細菌感染(例えば、Acinetobacter baumanniiによって引きおこされるもの)を有する患者にとっての新規な処置を提供する。
【0017】
本発明の製剤は、酸を含む。上記溶媒溶液はまた、酸を含み得る。上記酸は、再構成溶媒を形成するために、上記溶媒溶液に添加され得る。上記酸は、リファブチンを上記再構成溶媒に添加する場合に、リファブチンの溶解を引きおこすために十分な濃度にあり得る。上記酸は、約1.0%~約5.0%、約1.1%~約4.9%、約1.2%~約4.8%、約1.3%~約4.7%、約1.4%~約4.6%、約1.5%~約4.5%、約1.6%~約4.4%、約1.7%~約4.3%、約1.8%~約4.2%、約1.9%~約4.1%、約2.0%~約4.0%、約2.1%~約3.9%、約2.2%~約3.8%、約2.3%~約3.7%、約2.4%~約3.6%、約2.5%~約3.5%、約2.5%~約3.4%、約2.5%~約3.3%、約2.5%~約3.2%、約2.5%~約3.1%、約2.5%~約3.0%、約2.5%~約2.9%、約2.5%~約2.8%、約2.5%~約2.7%、または約2.5%~約2.6%の濃度にあり得る。上記酸は、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、l-酒石酸、d-グルクロン酸、l-リンゴ酸、d-グルコン酸、l-乳酸、酢酸、またはl-アスパラギン酸であり得る。好ましくは、上記酸は、酢酸である。
【0018】
上記酸を含む製剤は、約3.0~約10.0、約3.0~約9.0、約3.0~約8.0、約3.0~約7.0、約3.0~約6.0、約4.0~約10.0、約4.0~約9.0、約4.0~約8.0、約4.0~約7.0、約4.0~約6.0、約5.0~約6.0、約5.1~約5.9、約5.2~約5.8、約5.3~約5.7、約5.4~約5.6、約5.5~約5.6、約5.5~約5.7、約5.5~約5.8、約5.5~約5.9のpH、または>4.5のpHを有する。好ましくは、上記pHは、約5.0~約6.0である。
【0019】
静脈内リファブチン製剤は、上記リファブチンの溶解を促進するために適した酸の存在下で、溶媒および蒸留水を1:1比において含む溶液を調製する工程を包含するプロセスによって製造され得る。リファブチンは、固体形態、または液体媒体中で溶解性である粉末形態において存在し得る。リファブチンは、溶媒中に溶解され得る。リファブチンは、酸の存在下で、50% 溶媒(すなわち、1:1 溶媒-蒸留水)の水性溶液中に溶解性であり得る。
【0020】
よって、リファブチンは、蒸留水中の溶媒の水性溶液中に酸を含む再構成溶液の中で溶解され得る。リファブチンは、約150mg/mL~約350mg/mL、約160mg/mL~約325mg/mL、約170mg/mL~約300mg/mL、約180mg/mL~約275mg/mL、約190mg/mL~約265mg/mL、約200mg/mL~約255mg/mL、約210mg/mL~約250,mg/mL、約225mg/mL~約255mg/mL、約235mg/mL~約255mg/mL、約245mg/mL~約255,mg/mL、または約250mg/mL~約255mg/mLの濃度でリファブチンを有する最終溶液を生成するために十分な量において上記再構成溶媒に添加され得る。好ましくは、上記リファブチン溶液またはその塩溶液は、約250mg/mL リファブチンを含む。上記リファブチンを上記再構成溶液に添加すると、リファブチンの再構成される溶液が形成される。上記再構成されるリファブチン溶液またはその塩溶液は、非経口投与の準備が未だできていない濃縮溶液であり得る。上記濃縮溶液は、滅菌溶液であり得る。
【0021】
本発明のリファブチン溶液は、非経口投与のための製剤の形態にあり得る。上記再構成されるリファブチン溶液は、治療上有効な用量のリファブチンの静脈内投与のために、薬学的に受容される希釈剤で希釈され得る。例えば、上記再構成されるリファブチン溶液は、被験体への滅菌注射物のために、それを調製するために薬学的に受容される希釈剤に添加され得る。上記希釈剤は、塩化ナトリウム溶液であり得る。
【0022】
製剤は、溶媒を含み得る。種々の実施形態において、リファブチン 対 溶媒のw/v比は、約4:1~約1:4、約2:1~約1:3、または約1:1~約1:2であり得る。リファブチン 対 溶媒のw/v比は、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4であり得る。
【0023】
ある特定の実施形態において、上記製剤は、約2mg/L~約50.0mg/Lのリファブチンの全身濃度を達成するために提供され得る。
【0024】
本発明の製剤は、任意の非経口投与のためのものであり得る。例えば、上記組成物は、注射または注入または吸入のために製剤化され得る。注射は、皮下または静脈内であり得る。好ましくは、上記組成物は、静脈内投与のために製剤化される。よって、本発明の製剤はまた、薬学的に受容可能な希釈剤を含み得る。上記薬学的に受容可能な希釈剤は、治療上有効な量の、IV製剤中のリファブチンを感染症に罹患している患者に送達するために十分な濃度にあり得る。上記薬学的に受容可能な希釈剤は、生理食塩水であり得る。好ましくは、上記希釈剤は、0.9%生理食塩水である。上記溶液は、感染症に罹患している患者を処置するために、治療上有効な量のリファブチンとともに投与され得る。
【0025】
ある特定の局面において、本開示は、A.baumannii感染を処置する方法を提供する。この方法は、A.baumannii細胞の第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターの活性化に十分な用量でリファブチンを含む組成物を患者に投与することによって、上記A.baumannii細胞への上記リファブチンの進入を促進する工程を包含する。好ましくは、上記組成物は、静脈内投与される。上記用量は、FhuEレセプターの活性化と関連するAUCおよびCmax、例えば、好ましくは約2mg/Lより大きいCmaxを提供し得る。上記Cmaxは、約2mg/Lより大きくかつ約50mg/L未満であり得る。いくつかの実施形態において、Cmaxは、>2mg/Lであるが、<50mg/Lであり、AUCは、>10mg*h/Lかつ<300mg*h/Lである。上記リファブチンは、投与され得る。
【0026】
好ましい実施形態において、上記組成物は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含む。上記組成物は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hであるリファブチン用量で静脈内投与される。上記溶媒は、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、またはジメチルイソソルビド(DMI)であり得る。上記組成物は、約2:1のv/w 溶媒:リファブチンを有し得る。上記方法は、好ましくは、上記製剤を、静脈内注射によって、例えば、少なくとも約2mg/LであるCmaxを生じる用量において上記患者に送達する工程を包含する。上記製剤は、2mg/L<Cmax< 50mg/L;および10mg*h/L<AUC<300mg*h/Lを生じる用量で送達され得る。上記製剤は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hである用量で送達され得る。
【0027】
本開示の局面は、A.baumannii感染を処置することにおける使用のための組成物であって、上記組成物は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含む組成物を提供する。上記組成物は、A.baumannii細胞の第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターを活性化することによって上記A.baumannii細胞へのリファブチンの進入を促進する、高濃度のリファブチン(例えば、2:1 v/wの溶媒:リファブチン)を有する水性溶液である。上記溶媒は、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、またはジメチルイソソルビド(DMI)であり得る。好ましい実施形態において、上記溶媒は、DMIまたはtrascutol HPである。
【0028】
ある特定の実施形態において、上記溶媒 対 水の比 v/vは、1:1または1:2である。上記酸は、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、L-酒石酸、D-グルクロン酸、L-リンゴ酸、D-グルコン酸、L-乳酸、酢酸、またはL-アスパラギン酸であり得る。好ましい実施形態において、上記酸は、酢酸またはD-グルクロン酸である。ある特定の実施形態において、上記リファブチン 対 酸のモル比は、1:1である。
【0029】
好ましくは、上記組成物は、静脈内送達のための水性溶液として提供される。上記組成物は、A.baumanniiに感染したと同定された患者のために提供され得、上記組成物は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hである投与量でのIV送達のためのリファブチンを含み得る。
【0030】
関連の局面において、本開示は、患者においてA.baumannii感染を処置するための医薬の製造のためのリファブチンの使用を提供する。上記医薬は、FhuEレセプターの活性化と関連するAUCおよびCmaxを生じる用量を提供し得る。好ましくは、上記医薬は、上記患者において、少なくとも約2mg/LであるCmaxを生じる投与量レジメンで投与されるように調製される。上記医薬は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含み得る。上記溶媒は、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、またはジメチルイソソルビド(DMI)であり得る。上記医薬は、IVバッグ内に提供され得る。好ましくは、上記医薬は、2mg/L<Cmax<50mg/L;および10mg*h/L<AUC<300mg*h/Lを生じる用量を提供する。ある特定の実施形態において、上記医薬は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hであるリファブチン投与量を提供する。
【0031】
別の局面において、本発明は、リファブチンの静脈内製剤を調製する方法を提供する。上記方法は、溶媒および蒸留水を含む溶液を調製する工程を包含し得る。好ましくは、上記溶液は、1:1の比にある。上記溶媒は、任意の溶媒であり得るが、好ましくはDMIである。酸は、上記溶液に添加され得る。上記酸は、リファブチンの溶解を促進するために適切であり得る。上記酸は、任意の酸であり得るが、好ましくは酢酸であり得る。リファブチンは、上記酸を含む溶液へと導入され得る。従って、上記酸は、リファブチンが上記溶液へと溶解することを引きおこす。
【0032】
上記リファブチン溶液は、薬学的に受容可能な希釈剤に添加され得る。上記希釈剤は、0.9% 生理食塩水であり得る。リファブチンの静脈内製剤は、リファブチン、DMI、および生理食塩水を含み得る。リファブチン 対 溶媒のw/v比は、約4:1~約1:4、約2:1~約1:3、または約1:1~約1:2であり得る。リファブチン 対 溶媒のw/v比は、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、または約1:4であり得る。リファブチン、DMIおよび生理食塩水の量および濃度は、IVバッグのサイズ(静脈内実施形態において)に依存し、このようなバリエーションは、上記の比に基づいて決定されるDMI量とともに、6~9mg/kgの範囲の好ましい用量を達成するために、当業者に明らかである。リファブチンの静脈内製剤は、処置の必要性のある被験体に投与され得る。
【0033】
別の局面において、本発明は、抗生物質の有効性を増大させる方法を提供する。この方法は、細菌細胞におけるTonB依存性シデロホアレセプターを調節して、抗生物質の取り込みを増大出せる工程を包含する。TonB依存性シデロホアレセプターを調節する工程は、抗生物質を、細菌細胞の細胞膜を横断して輸送することを媒介する上記抗生物質のIV製剤を投与する工程を包含し得る。上記TonB依存性シデロホアレセプターは、FhuEレセプターであり得る。上記抗生物質のIV製剤の投与は、上記抗生物質のバイオアベイラビリティーを増大させることによって、細菌細胞膜を通過する抗生物質の取り込みを増大させる。上記抗生物質は、IVによって投与され得るリファブチンの任意の形態であり得る。シデロホアは、鉄錯体へと結合され得る。リファブチンは、鉄が負荷されたシデロホアに結合し得るか、または鉄が負荷されたシデロホアのTonB依存性シデロホアレセプターの媒介を使用して、細胞膜を横断し得る。上記IV製剤は、本明細書で記載されるリファブチンまたはその用量の任意のIV製剤のものであり得る。
【0034】
別の局面において、本発明は、細菌感染を処置する方法を提供する。上記方法は、リファブチンの液体製剤を、細菌感染を有する被験体に投与する工程を包含し得る。上記液体製剤は、リファブチンまたはその塩、溶媒および酸を含み得る。上記液体製剤は、リファブチンの溶液および細菌感染を有する被験体に静脈内投与されるべき希釈剤の溶液であり得る。上記リファブチンは、次いで、感染を引きおこす細菌細胞の外膜を横断して移動し、細菌細胞を根絶し得る。上記細菌感染は、A.baumanniiによって引きおこされる任意の感染症(例えば、菌血症、人工呼吸器関連細菌性肺炎(VABP)、院内獲得細菌性肺炎(HABP)および尿路感染症(UTI)が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。IV投与のための製剤は、薬学的に受容可能な溶媒を含み得る。上記方法は、本明細書で記載されるリファブチンの任意の製剤のうちのIV製剤を、細菌感染に罹患している被験体に投与する工程を包含し得る。
【0035】
理論に拘束されることなく、本発明の任意の製剤は、本発明の方法のうちのいずれかにおいて使用され得る。
【0036】
別の局面において、本発明の方法は、Acinetobacter baumannii抗細菌活性を有する化合物を同定する工程を包含し得る。上記方法は、少なくとも鉄錯体および鉄キレート剤を含む培地を提供する工程、複数のA.baumannii細菌細胞を上記培地へと導入する工程、および上記複数の細菌細胞を含む培地を、化合物に曝す工程を包含し得る。上記方法はまた、上記複数の細菌細胞を、細菌の定量の任意の受容可能な方法を使用して定量する工程を包含し得る。上記複数の細菌細胞の数の減少を特定することは、上記化合物の抗細菌活性を示す。
【0037】
上記複数の細菌細胞の数の減少は、上記化合物が上記細菌細胞の外膜を横断することによって、上記細菌細胞を破壊する場合に起こり得る。上記化合物は、鉄錯体または鉄キレート剤の存在下で外膜を横断し、従って、Ton-Bシデロホアレセプター媒介性の上記化合物の取り込みを可能にし得る。上記レセプターは、FhuEレセプターであり得る。
【0038】
上記培地は、Roswell Park Memorial Institute(RPMI)培地、10% ウシ胎仔血清、またはこれらの組み合わせであり得る。上記培地は、任意の培地であってもよいし、鉄および鉄キレート剤を含むか、または上記培地に添加されて鉄および鉄キレート剤を有し得るかのいずれかである任意の培地であってもよい。上記鉄錯体は、シデロホアに結合し得る任意の鉄錯体であり得る。上記鉄キレート剤は、細菌細胞膜を横断し得る任意の鉄キレート剤であり得る。好ましくは、上記鉄キレート剤は、ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン(PIH)である。上記キレート剤は、約0.05mM~0.25mM、約0.075mM~0.225mM、約0.1mM~0.2mM、約0.125mM~0.15mMの濃度で存在し得る。好ましくは、上記鉄キレート剤は、約0.1mMで存在する。
【0039】
本発明の別の局面において、方法は、被験体において細菌感染を処置する工程を包含する。上記方法は、治療上有効な量の、リファブチンまたはその塩の静脈内製剤を投与する工程を包含し得る。上記製剤は、4:1~約1:4、約2:1~約1:3、または約1:1~約1:2 w/vのリファブチン 対 溶媒の比で存在する薬学的に受容可能な溶媒を有する。
【0040】
上記細菌感染は、A.baumanniiによって引きおこされる任意の感染症(例えば、菌血症、人工呼吸器関連細菌性肺炎(VABP)、院内獲得細菌性肺炎(HABP)および尿路感染症(UTI)が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。好ましくは、上記細菌種は、A.baumanniiである。
【0041】
本発明の局面はまた、リファブチンに対する細菌の種の感受性を決定するインビトロでの方法を包含し得る。上記方法は、複数の細菌細胞を、鉄錯体、鉄キレート剤、およびリファブチンに曝す工程を包含し得る。上記方法はまた、複数の細菌細胞の数を定量する工程および/または上記細菌細胞の数の減少を特定する工程を包含し得る。上記細菌細胞の数の減少は、リファブチンに対する細菌の種の感受性を示す。上記方法はまた、リファブチンを、上記細菌の種の細菌感染に罹患している被験体に投与する工程を包含し得る。
【0042】
本発明の他の局面および利点は、以下のその詳細な説明を考慮すれば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、異なる培地中のA.baumannii HUMC1におけるfhuE発現レベルの定量を図示するグラフである。
【
図2】
図2は、マウス好中球減少性敗血症モデルにおけるリファブチンのIV投与の活性のグラフである。
【
図3】
図3は、A.baumannii UNT091に感染したCD-1マウスでの好中球減少性肺感染症マウスモデルにおけるリファブチンの効果を示す。
【
図4】
図4は、A.baumannii UNT093に感染したCD-1マウスでの好中球減少性肺感染症マウスモデルにおけるリファブチンの効果を示す。
【
図5】
図5は、C
maxおよびAUCがともに、活性にとって重要である明らかな用量応答関係性を示す用量分割実験(dose fractionation experiment)の結果を示す。
【
図6】
図6は、A.baumanniiを接種したマウスにおける肺の対あたりのCFUを示すグラフである。
【
図7】
図7は、TonB依存性輸送の模式図を示す。
【
図8】
図8は、CA-MHBにおけるFhuE-バリアントのプラスミド媒介性発現の際のリファブチンおよびリファンピン抗生物質の活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
本開示の実施形態は、A.baumannii感染を処置する、またはA.baumannii感染を処置するための医薬を作製するための方法、使用、および組成物を提供する。バックグラウンドに関しては、Howard, 2012, Acinetobacter baumannii. An emerging opportunistic pathogen, Virulence 3(3):243-250およびPeleg, 2008, Acinetobacter baumannii. Emergence of a successful pathogen, Clin Microbiol Rev 21(3):538-582(ともに参考として援用される)を参照のこと。本開示の方法および組成物は、上記A.baumannii細胞への上記リファブチンの進入を促進するために、第二鉄-コプロゲン(FhuE)レセプターの活性化を通じて機能する。上記FhuEレセプターは、Sauer, 1987, ferric-coprogen receptor FhuE of Escherichia coir. Processing and sequence common to all TonB- dependent outer membrane receptor proteins, J Bact 169(5):2044-2049(参考として援用される)において考察されている。
【0045】
方法は、好ましくは、感染を有すると疑われる患者からサンプルを得る工程; 上記サンプルに対して試験を行って、上記患者においてA.baumanniiの感染を同定する工程;および上記患者を処置するために、上記患者に投与される場合に、得られるAUCおよびC
maxを最大化するリファブチンの製剤を提供する工程を包含する。上記方法は、上記リファブチンの製剤を上記患者に投与する工程を包含し得る。好ましくは、上記製剤は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含む。好ましい溶媒としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、ジメチルイソソルビド(DMI)、または別の極性溶媒が挙げられる。上記製剤は、約250mg/ml(1:1 v/v 溶媒/水)または約166.7mg/ml(2:1 溶媒/水)であり得るが、上記再構成される溶液の濃度は、約300mg/ml程度の高さであり得る。ある特定の実施形態において、上記製剤は、上記患者に、例えば、静脈内注射によって送達される。好ましくは、上記IV注射は、約2mg/Lより大大きく、必要に応じて約50mg/L未満のC
maxを生じる。いくつかの実施形態において、上記製剤は、C
max>2mg/Lであるが<50mg/L、および>10mg*h/Lでありかつ<300mg*h/LであるAUCを有するリファブチンの用量を含む。上記製剤は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hである用量で送達され得る。
図5を参照すると、上記製剤は、好ましくは、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hである用量においてIVを介して送達される。
【0046】
本開示の方法および組成物は、A.baumannii シデロホアレセプターFhuEが、リファブチン取り込みにおいて重要な役割を果たすという洞察を利用する。
【0047】
図1は、fhuEが、標準試験条件(カチオン調節されたMueller Hintonブロス; CA-MHB)と比較して、A.baumanniiが貧栄養培地(nutrient depleted medium)(Roswell Park Memorial Institute (RPMI)培地 + 10% ウシ胎仔血清(FCS))中で増殖される場合に、少なくとも10倍過剰発現されることを示す。実施例において示されるように、fhuEの欠失は、RPMI + 10% FCS中でのリファブチンに対して上昇したMICを生じたが、驚くべきことに、近縁化合物であるリファンピシンに対して効果を有しなかった。これらの結果から、FhuEはRPMI + 10% FCS中での強力なリファブチン活性に必要とされることが確認され、この培地中のリファブチン活性が、おそらく、A.baumanniiシデロホアレセプターFhuEによって媒介される化合物の活発な取り込みに起因することが示される。
【0048】
図2は、好中球減少性敗血症マウスモデルにおけるリファブチンおよびリファンピンの効果の結果を図示するグラフである。その結果は、リファブチンのIV投与が、1mg/kgでの用量依存性応答を伴って敗血症から防御するのに対して、リファンピンは、10mg/kgでは防御しないことを示し、インビトロで観察されるリファブチンの強力な活性を裏付ける。
【0049】
図3は、A.baumannii UNT091に感染したCD-1マウスで好中球減少性肺感染症マウスモデルにおけるリファブチンの効果を示す。
【0050】
図4は、A.baumannii UNT093に感染したCD-1マウスでの好中球減少性肺感染症マウスモデルにおけるリファブチンの効果を示す。
【0051】
図5は、C
maxおよびAUCがともに活性にとって重要である明確な用量応答関係性を示す用量分割実験の結果を提供する。
【0052】
好ましい実施形態において、本開示は、AUCおよびCmaxを最大化する量においてリファブチンを投与することによって、A.baumannii感染を処置する方法を提供する。上記投与は、局所的に高いCmaxおよびAUCが必要とされる場合、静脈内注射によって、または改変された経口放出に関して当該分野で公知の方法によって、吸入によって達成され得る。
【0053】
ある特定の実施形態において、リファブチンは、AUCおよびCmaxを最大化する量で静脈内製剤として投与される。このような方法によって、リファブチンは、治療的濃度に達し、耐性発生の頻度を低減する。例えば、好ましい実施形態において、Cmaxは、約2mg/Lより大きくかつ約50mg/L未満である。
【0054】
本開示の実施形態は、リファブチンを含む組成物を提供する。ある特定の局面において、本開示は、A.baumannii感染を処置することにおける使用のための組成物であって、上記組成物は、リファブチン、水、溶媒、および酸を含む組成物を提供する。上記溶媒は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、またはジメチルイソソルビド(DMI)であり得る。上記組成物は、約1:1~2:1 v/vの溶媒/水の間を含み得る。最も好ましくは、上記組成物は、IVバッグ内に提供される。好ましい実施形態において、上記組成物は、A.baumanniiに感染したと同定される患者のために提供され、上記組成物は、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hである投与量でIV送達のためのリファブチンを含む。上記組成物は、>2mg/Lであるが、<50mg/LであるCmaxおよび>10mg*h/Lかつ<300mg*h/LのAUCを有するリファブチンの用量を提供する製剤を有し得る。
【0055】
好ましくは、上記製剤は、静脈内送達のために意図される。
【0056】
他の局面において、本開示は、患者においてA.baumannii感染を処置するための医薬の製造のためのリファブチンの使用であって、ここで上記医薬は、上記患者において、少なくとも約2mg/LであるCmaxを生じる投与量レジメンで投与されるように調製される。好ましくは、上記医薬は、リファブチン、水、酸、および溶媒(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、グリセリン、エタノール、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HP)、またはジメチルイソソルビド)を含む。好ましい実施形態において、上記溶媒は、DMIまたはtrascutol HPである。ある特定の実施形態において、溶媒 対 水の比 v/vは、1:1または1:2である。上記酸は、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸、L-酒石酸、D-グルクロン酸、L-リンゴ酸 D-グルコン酸、L-乳酸、酢酸、またはL-アスパラギン酸であり得る。好ましい実施形態において、上記酸は、酢酸またはD-グルクロン酸である。ある特定の実施形態において、上記リファブチン 対 酸のモル比は、1:1である。
【0057】
最も好ましくは、上記医薬は、IVバッグ内に提供される。使用の好ましい実施形態において、上記投与量レジメンは、2mg/L<Cmax<50mg/L;および10mg*h/L<AUC<300mg*h/Lを生じる。上記投与量レジメンは、好ましくは、少なくとも約2mg/kg q24h、1mg/kg q12h、または0.5mg/kg q6hである用量を生じ得る。
【0058】
必要に応じて、上記リファブチンは、局所的AUCおよびCmaxを最大化する量での吸入によって投与され得る。このような方法および組成物は、リファブチンが治療濃度に到達し、耐性発生の頻度を低減することを可能にする。
【0059】
いくつかの実施形態において、リファブチンは、CmaxおよびAUCを増強し、AUCおよびCmaxを最大化するようにtmaxを最小にするために、放出改変経口薬物送達システムによって投与され得る。このようなシステムおよび方法は、リファブチンが治療濃度に到達し、耐性発生の頻度を低減することを可能にする。
【実施例】
【0060】
実施例1
多くの承認薬を、標準的な試験条件(カチオンを調節したMueller Hintonブロス; CA-MHB)および貧栄養培地(Roswell Park Memorial Institute (RPMI)培地+10% ウシ胎仔血清(FCS))の下でA.baumanniiに対して試験した。A.baumanniiに対するリファブチンの抗細菌活性は、非標準的試験条件下で大きく増強した。表1は、標準的(CA-MHB, Mueller Hintonブロス2)および非標準的試験条件下での、カルバペネム耐性A.baumannii株HUMC1およびUNT091の抗微生物感受性の結果をまとめる。上記結果は、2つのカルバペネム耐性A.baumannii株、HUMC1およびUNT091が、10% FCSを補充したRPMI中で試験した場合、リファブチンに対して高感受性であった(MIC=0.002mg/L)が、リファンピン、メロペネム、セフォタキシム、ゲンタマイシンおよびシプロフロキサシンに対して低感受性を示したことを示す。著しく対照的なことに、両方の株は、標準試験条件(CA-MHBブロス)下で試験する場合、その試験した抗生物質(リファブチンを含む)の全てに対して低感受性を有した。
【0061】
【0062】
実施例1、表1における試験の方法。
10%(v/v) ウシ胎仔血清(FCS)を補充したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)培地中でのおよび標準的最小阻害濃度(MIC)アッセイ条件下での2つのカルバペネム耐性臨床A.baumannii単離物に対するリファブチン、リファンピン、メロペネム、セフォタキシム、ゲンタマイシンおよびシプロフロキサシンのインビトロ活性を、分析した。
【0063】
リファブチンストック溶液を、DMSO中2mg/mLにおいて調製し、-20℃で貯蔵した。
【0064】
2種のA.baumannii単離物を、この実施例において使用した: HUMC1(BV374)(Spellberg/Luna Laboratory, University of Southern California, Los Angeles, CA)およびUNT091-1(BV378)(UNT Health Science Center, Fort Worth, TX)。上記HUMC1単離物は、血流感染から単離された高病原性薬物耐性臨床株である。両方の株は、カルバペネム耐性およびコリスチン感受性である。上記単離物を、-80℃において20%(v/v)グリセロール培養物として貯蔵した。
【0065】
MICを、アッセイ培地として、10% (v/v)またはカチオンを調節したMuller Hintonブロス(CA-MHB)を補充したRPMIを使用して、Clinical Laboratory Standards Institute(CLSI)のガイドラインに従って、ブロス微量希釈法によって決定した。細菌接種物を調製するために、ChromAgarオリエンテーションプレート(CHROMagar カタログ番号RT412)上での一晩増殖物からの細菌株の3~5個のコロニーを、5mL 生理食塩水中に懸濁した。その細菌懸濁物の濁度を、0.5 McFarland単位(610nmでの光学密度(OD610)は0.08~0.1に等しい)に調節した。この懸濁物を、10%(v/v) FCSを補充したRPMIにおいて200倍希釈して、およそ106 コロニー形成単位(CFU)/mL の最終濃度に到達させ、マイクロタイタープレートに接種するために使用した。
【0066】
上記抗生物質の段階的2倍希釈物を、別個の96ウェルプレートポリプロピレンU底プレート(Ratiolabカタログ番号6018111)において、10%(v/v) FCSを補充したRPMI中、最終試験濃度の10倍で調製し、10mlの希釈物を、パラフィルムプレートカバー付きの新しい96ウェルポリスチレンU底マイクロタイタープレートへと移した。
【0067】
次いで、上記プレートに、マルチチャネルピペット(Eppendorf)を使用して、第1の列に、4ウェルを含めて(各々増殖コントロール(抗生物質なし))、90μL/ウェルの上記調製された細菌懸濁物を接種した。そのプレートを、パラフィルムで覆って、35℃で20~24時間インキュベートし、その後、MICを目視検査によって決定し、そのプレートをスキャンして、データを記録した。上記MICを、目視検査によって細菌増殖を阻害した化合物の最低濃度として記録した。MICを、少なくとも二連で決定し、変動する場合には、高い方の数値を提供する。
【0068】
実施例2. FhuE過剰発現: ftiuE発現のレベルを、A.baumannii HUMC1株に対するqRT-PCRによって、異なる培地において評価した。
【0069】
図1は、異なる培地中でのfhuE発現レベルの定量を図示するグラフを示す。示されるように、fhuEは、CA-MHBと比較して、A.baumanniiがRPMI+10% FCSまたは0.1mM ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン(PIH)を補充したCA-MHB中で増殖される場合に、およそ10倍過剰発現される。これらの結果は、増大したリファブチン活性が、これらの培地中でのfhuE発現の増大に起因することを示す。
【0070】
fhuE発現レベルを測定するための方法、
図1。
fhuEの発現を、定量的逆転写-PCR(qRT-PCR)によって評価した。単離物を、特定のブロス中、37℃で対数増殖期中期(600nmでの光学密度[OD600]は0.5)まで増殖させ、全RNAを、PureLink RNAミニキット(Ambion)を使用して製造業者の推奨に従って抽出した。残りのDNA夾雑物を、Turbo DNA-freeキット(Ambion)を使用して除去した。qRT-PCRを、GoTaq 1-Step RT-qPCR Systemキット(Promega)を使用して、CFX96 Touch
TM Real-Time PCR Detection System(BioRad)で行った。ハウスキーピング遺伝子として、RNAポリメラーゼシグマ因子D(rpoD)を定量し、fhuE発現を、匹敵するΔΔCT(ここでCTは、閾値サイクルである)法を使用して、rpoDのものに対して正規化した。
【0071】
実施例3. fhuEの欠失
リファブチン活性におけるFhuE活性化の役割を確認するために、fhuEを、A.baumannii株HUMC1およびUNT091において欠失させた。
【0072】
表2は、fhuE欠失株およびそれらの親株に関して、10%(v/v) FCSを補充したRPMI培地中のリファブチンのMICをまとめる。fhuEの欠失は、RPMI + 10% FCS中でリファブチンに対する上昇したMICを生じたが、驚くべきことに、近縁化合物であるリファンピシンに対して効果を有しなかった。これらの結果から、FhuEは、RPMI + 10% FCS中で強力なリファブチン活性のために必要とされることが確認され、この培地におけるリファブチン活性は、おそらく、A.baumanniiシデロホアレセプターFhuEによって媒介される上記化合物の活発な取り込みに起因することが示された。この実験からのデータは、リファブチンが、A.baumanniiにおける新規な進入機構が原因で、A.baumanniiに対して非常に活性であることを示す。
【0073】
【0074】
fhuE欠失変異体を構築するための方法、表2。
FhuEタンパク質をコードする遺伝子AWC45_RS10145 (HUMC1ゲノム)を、2工程組換え法を使用して、A.baumannii株HUMC1およびUNT091において欠失させた。fhuEの700bp上流および下流のゲノム領域に対応するDNAフラグメントを、PCRによって増幅し、Gibsonアセンブリを使用して、pVT77ノックアウトプラスミドへと導入した。その得られたfhuEノックアウトプラスミドを、複合体化によってA.baumannii単離物に移し、トランス-複合体を、テルル酸ナトリウムを含むLBアガープレート上で選択した。37℃での一晩の選択後、クローンを、PCRによってゲノムプラスミド組み込みに関してスクリーニングし、上流および下流のプラスミド組み込みを含むクローンを、ゲノムからのプラスミド除去のために、AZTを含むLBアガープレート上でのカウンターセレクション(counter-selection)に使用した。クローンを、PCRによってfhuE欠失およびプラスミド除去に関してスクリーニングし、そのゲノム遺伝子欠失を、DNAシーケンシング(Microsynth AG, Balgach, Switzerland)によって確認した。
【0075】
実施例4. fhuEのプラスミドベースの発現:
fhuEの過剰発現を、これがリファブチン取り込みを誘発するか否かを決定するために評価した。
表3は、CA-MHB +/- 1mM IPTG中でのfhuE発現A.baumannii株におけるリファブチンのMICをまとめる。IPTGの存在下では、リファブチンMICは、コントロールとしてのからのプラスミドを有する株と比較して、fhuE発現プラスミドを有する株において1000倍低かった。このデータは、A.baumanniiにおけるfhuEの活性化が、この生物に対するリファブチンの強力な活性を生じることを示す。
【0076】
【0077】
A.baumanniiにおけるfhuEの過剰発現のための方法、表3
A.baumannii HUMC1株からのfhuE遺伝子(AWC45 RS10145)を、イソプロピル-β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性プロモーターPtrc-lacOの制御下で、E.coli/A.baumanniiシャトルプラスミドpVT111へとクローニングした。その得られたプラスミドおよび本来のpVT111プラスミド(コントロール)を、複合体化によってA.baumannii株ATCC-17978へと移入し、トランス複合体を、カナマイシンを含むLBアガープレート上で選択した。次いで、受け手のA.baumannii株におけるそのプラスミドの存在を、PCRによって確認した。
【0078】
実施例5: リファブチンに対する変異耐性(FoR)の頻度
表4は、RPMI + 10% FCSアガー培地上でのリファブチンに対するA.baumannii自発的耐性頻度のFoR結果をまとめる。10-5~10-9の範囲に及ぶ用量依存性FoRを、HUMC1株に関して観察した。10-5あたりの高FoRを、0.02mg/Lおよび0.2mg/Lのリファブチン濃度で観察し、続いて、1mg/Lにおいて10-7、ならびに2mg/Lおよび20mg/L リファブチンにおいて10-9への段階的減少を観察した。類似の結果を、株UNT091-1、ACC00445、LAC-4およびUNT238-1に関して観察した。
【0079】
【0080】
5種の臨床A.baumannii株は、>2mg/Lのリファブチン濃度において10-9に達する変異耐性の用量依存性頻度を明らかにする。類似のインビトロFoR(10-9)は、A.baumannii感染を処置するために標準ケアとして使用される他の抗生物質に関しても示された。その結果は、リファブチンがA.aumannii感染を効果的に処置するために使用され得ることを示す。重要なことには、投与経路は、急激な耐性発生を防止するために、>2mg/Lという全身薬物濃度(現在利用可能な経口製剤では達成可能でない濃度)を達成しなければならないということが特定された。
【0081】
リファブチンに対する変異耐性の頻度を決定するための方法、表4。
10%(v/v) ウシ胎仔血清(FCS)を補充したRPMI培地中でのリファブチンに対するA.baumannii変異耐性の頻度(FoR)を調査した。
【0082】
リファブチンのストック溶液を、DMSO中10mg/mLで調製し、-20℃で貯蔵した。A.baumannii臨床単離物を、グリセロールストック培養物中20%(v/v)として、-80℃で貯蔵した。
【0083】
選択用アガープレートを、15g/Lのアガーで10.3g/Lにおいて溶解し、完全にアガーが溶けるまで沸騰させたRPMI粉末(Sigma R7755)を使用して、調製した。上記培地を45℃へと冷却した後、0.3g/L L-グルタミン(Sigma G7513)、25mM HEPES(Gibco 15630-056)および10%(v/v) FCS(Gibco 10500-064)を添加した。0.02mg/L、0.1mg/L、1.0mg/L、2.0mg/Lおよび20.0mg/Lのリファブチンの濃度を補充し、上記培地のうちの25mLを、9cm ペトリ皿へと直接注いだ。
【0084】
上記培養接種物を、約5×105 CFU/mLに達するように、500mLフラスコ中の100mLのRPMI(Sigma R8758) + 10% FCSにおいて200倍希釈した0.5 McFarlandにおいて細菌NaCl懸濁物から調製した。上記フラスコを、24時間、37℃において220rpmでの振盪条件下でインキュベートした。インキュベーション後、上記細胞を、遠心分離(10分間、RTにおいて7000rpm)によってペレット化し、1mL PBS中に再懸濁した。上記細胞懸濁物の10倍段階希釈系列を、PBS中で調製し、その得られる細胞懸濁物のうちの100μLを、リファブチン含有選択プレート、および接種物の細胞密度を決定するために非選択プレート上に接種した。35℃で24時間のインキュベーションの後、コロニーを形成し、耐性の頻度を、抗生物質を有するプレート上で増殖しているコロニー数と、上記接種物の全コロニー計数との間の比として計算した。
【0085】
実施例6: インビトロ試験
図2は、好中球減少性敗血症マウスモデル(n=7)におけるリファブチンおよびリファンピンの効果の結果を図示するグラフである。上記CD-1マウスを、5% ムチンの存在下でA.baumannii ACC00445株にIP感染させた。上記マウスを、感染後1時間および5時間で、IV投与を介してリファブチンおよびリファンピンで処置した。その結果は、リファブチンのIV投与が、1mg/kgにおいて用量依存性様式で敗血症を防御するのに対して、リファンピンは、10mg/kgにおいて防御しないことを示す。これは、インビトロで観察されたリファブチンの強力な活性を裏付ける。
【0086】
図3は、CD-1マウスにA.baumannii UNT091を鼻内感染させた好中球減少性肺感染症マウスモデル(n=5/用量群)におけるリファブチンの効果の結果を図示するグラフである。上記マウスを、感染後2時間で、IV投与を介してリファブチンで処置した。
【0087】
図4は、上記CD-1にA.baumannii UNT093を鼻内感染させた好中球減少性肺感染症マウスモデル(n=5/用量群)におけるリファブチンの効果の結果を図示するグラフである。上記マウスを、感染後2時間で、IV投与を介してリファブチンで処置した。
【0088】
処置の24時間後に、上記マウスを屠殺し、肺におけるコロニー形成単位を測定した。その結果は、リファブチンのIV投与が、<0.5mg/kgの用量で強力な効果を生じることを示す。これは、インビトロで観察されるリファブチンの強力な活性を裏付ける。
【0089】
図5は、感染の好中球減少性マウスモデルにおける用量分割実験の結果をまとめる。リファブチンを、1日に1回(q24h)、1日に2回(q12h)、または24時間以内に4回(q6h)のいずれかで、IV投与した。その結果は、CmaxおよびAUCがともに活性にとって重要である明確な用量応答関係性を示す。
【0090】
表5は、MICに基づいてA.baumannii感染を処置するために必要とされる標的曝露である。概算は、有効性モデルに基づき、用量およびPK/PD指数(PDI)応答に適合するように変数の傾きを有するシグモイドEmaxモデルを使用して、GraphPad Prismバージョン5.03(GraphPad, Inc., San Diego, CA)を使用して肺CFUにおいて1-log低減を生じるリファブチンのPDI値を決定する。このデータから、リファブチンの経口投与は、A.baumannii単離物のうちの>90%を処置するために必要とされる曝露を達成しない(MIC<1mg/L)ことが明らかである。
【0091】
【0092】
上記インビボ試験は、リファブチンのIV投与が、is as インビトロのものと同様にインビボでも強力でありかつ有効であることを示す。従って、リファブチンが、fhuEシデロホア輸送体を介する活性化および細菌細胞への取り込みに起因して、栄養制限条件(特に、鉄制限条件)下でA.baumanniiに対して強力な活性を示すという予測外の知見は、感染のマウスモデルにおいて強力な活性を可能にする。特に、IVリファブチンの製剤は、A.baumannii感染に対して有効である。
【0093】
図6は、A.baumannii株を接種したマウスにおける肺の対あたりのCFUを示すグラフである。好中球減少性の雌性CD-1マウス(5匹/群)に、等力価(6.90および6.93 log
10 CFU)のA.baumannii UNT091-1野生型およびA.baumannii UNT091-1 ΔfhuE変異体を鼻内接種した(t=0時間)。処置(単一IV用量)を、感染後2時間で投与し、細菌負荷を、CFU/肺を決定することによって、26時間で報告した。さらに、RBTの効果は、UNT091-1::ΔfhuE株に感染させたマウスにおいて鈍化した。これは、fhuEの役割を、インビトロおよびインビボの両方でRBT感受性を媒介すると裏付けた。
【0094】
実施例7: リファブチンのインビトロ活性を、鉄キレート剤の存在下で臨床A.baumanniiのパネルに対して決定した。これは、シデロホアレセプター発現の増大をもたらす。
リファブチンは、コリスチン、およびカルバペネムに対して非感受性である単離物を含めて、近年単離され、主にXDR A.baumanniiの大きなパネルに対する強力なインビトロ活性を示す。PIHによる遊離鉄の錯体化は、栄養豊富な標準的MHAにおいて試験する強いリファブチン感受性を可能にする。
【0095】
全ての単離物は、カルバペネムに対して耐性であった。リファブチンは、FCSを補充したRPMIを使用する液体MIC決定(0.004/2mg/LというMIC50/MIC90)に匹敵する、鉄キレート化した栄養豊富なMHA中で0.008/1mg/LというMIC50/MIC90で、A.baumanniiに対する優れた活性を示した。対照的に、標準的なMHAリファブチンは、ごくわずかな活性を有した。
【0096】
インビトロ活性を決定するための方法
2017~2019年の間に、欧州(n=144)、米国(USA)(n=99)およびアジア-西太平洋(n=50)地域から単離された293のCRAB株のパネルを、リファブチンMIC決定のために使用した。上記株のパネルは、10% MDR(n=29)、86% XDR(n=253)および4%(n=11)のPDR表現型を有する単離物を含んだ。単離物を、肺炎(59%)、血流感染(28%)、ならびに皮膚および軟部組織感染症(11%)を有する患者から主に集め、Magiorakosら. 2011によって記載される抗微生物剤クラスの<2に従って非感受性である場合に、XDRとしてCLSIブレイクポイントに従って分類した。リファブチンでのA.baumanniiの感受性試験を、0.1mM ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン(PIH)(強力な非毒性鉄キレート剤)を補充したMuller Hinton Agar(MHA)でのアガー希釈法を使用して行った。比較因子の抗生物質を、CLSI標準条件で試験した。
【0097】
実施例8: リファブチン活性に対するFhuE TonB効果のモデル化
補完アッセイにおいて、FhuE V38P発現は、野生型FhuE発現と比較して、リファブチンの強力な活性を回復させられなかった。これは、FhuE TonBボックスとTonBエネルギー伝達機構(energy transducing machinery)との間の物理的相互作用が、
図8に示されるように、リファブチンの強力な活性にとって必要とされることを示す。これらのデータは、FhuEへのリファブチン結合が、FhuEアロステリックコンホメーション移行(allosteric conformational transition)を活性化するために必要とされ、これは、リファブチン活性輸送およびA.baumanniiに対する強力な活性を可能にすることを示唆する。
図8は、CA-MHBにおけるFhuE-バリアントのプラスミド媒介性発現の際の、リファブチンおよびリファンピシン抗生物質の活性を示す。A.baumannii ATCC-17978を、宿主株として使用した。プラスミドからの遺伝子発現を、1mM IPTGで誘導し、fhuEをコードしないプラスミドを、コントロールとして使用した。
【0098】
リファブチン活性に対するTonBの効果を測定するための方法
A.baumanniiに対する強力なリファブチン活性は、TonB依存性輸送体(TBDT)FhuEの発現に依存する。このことは、リファブチンが、FhuEを経てA.baumannii外膜を横断して活発に移動されることを示唆する。TBDT媒介性の活発な輸送体は、上記輸送体のアロステリックコンホメーション移行を活性化するために特異的基質結合を必要とし、これは、
図7に示されるとおりのTBDTのいわゆるTonBボックスを経るTonBエネルギー伝達機構の補充をもたらす。Noinaj, N., Guillier, M., Barnard, T.J. & Buchanan, S.K. TonB-dependent transporters: regulation, structure, and function. Annu. Rev. Microbiol.64, 43-60(2010)(本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
図7は、Hickman, S.J., Cooper, R.E.M., Bellucci, L., Paci, E. & Brockwell, D.J. Gating of TonB―dependent transporters by substrate-specific forced remodelling. Nat. Commun. 8, 1-12(2017)(本明細書に参考として援用される)から適合されたTonB依存性輸送の模式図を示す。TBDTは、それらの内腔がN末端プラグドメインによって閉塞され、基質が外膜を横断して通過するのを防止する、いわゆるゲート型ポリンである。基質の結合は、上記プラグドメインのアロステリック再配列を誘導し、Tonボックスをペリプラズム空間へと放出し、ここでそれは、TonBのC末端ドメインを、ExbBおよびExbDとの複合体において補充して、エネルギー伝達機構を形成する。この非共有結合的複合体を介するOMとIMとの連結は、上記基質の通過を可能にする、プラグドメインの完全なまたは部分的な展開(unfolding)を誘発するために必要とされる。TBDT:TonB依存性輸送体、OM:外膜、IM:内膜、PG:ペプチドグリカン。
【0099】
リファブチンが活発に輸送されるか否かを調査するために、FhuEとTonBとの間の相互作用を破壊する、TonBボックスにおける変異を有するFhuE V38P変異体を生成した。Cadieux, N., Bradbeer, C. & Kadner, R.J. Sequence changes in the ton box region of BtuB affect its transport activities and interaction with TonB protein. J. Bacteriol. 182, 5954-5961(2000); Funahashi, T.ら. Identification and characterization of an outer membrane receptor gene in Acinetobacter baumannii required for utilization of desferricoprogen, rhodotorulic acid, and desferrioxamine B as xenosiderophores. Biol. Pharm. Bull. 35, 753-760(2012);その各々の内容は、本明細書に参考として援用される。
【0100】
参照による援用
他の文書(例えば、特許、特許出願、特許公報、学術雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ)への言及および引用は、本開示全体を通じて行われている。全てのこのような文書は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。
【0101】
均等物
本発明の種々の改変およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書で示され、記載されるものに加えて、本明細書で引用される科学文献および特許文献への言及を含め、この文書の全内容から当業者に明らかになる。本明細書中の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合され得る重要な情報、例示、およびガイダンスを含む。
【国際調査報告】