(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】フリードライヒ運動失調症の治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221110BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20221110BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221110BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221110BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20221110BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20221110BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221110BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221110BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20221110BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221110BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221110BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N7/01
C12N5/10
C12N5/077
C12N5/074
A61K35/76
A61P25/00
A61P21/00
A61K9/14
A61K31/7088
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516687
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 US2020050551
(87)【国際公開番号】W WO2021050991
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522101689
【氏名又は名称】ラセルタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファルク, ダーリン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス, エドガルド
(72)【発明者】
【氏名】サハ, マドゥリマ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
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4C076AA29
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4C084AA13
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4C084ZA94
4C086AA01
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4C086MA41
4C086NA05
4C086NA14
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4C086ZA94
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA41
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA94
(57)【要約】
本出願は、フリードライヒ運動失調症(FA)の治療のための組成物を提供する。これらには、限定されないが、ヒトフラタキシン5’非翻訳領域(5’UTR FXN)及びヒトフラタキシン(FXN)ヌクレオチド配列を含む核酸構築物及び組換えベクターが本明細書に提供される。また、FAの治療のための方法も提供される。ヒトフラタキシンの発現をインビトロ、エクスビボ、及びインビボで調節するための核酸構築物が、本明細書に提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸構築物であって、
ヒトフラタキシン5’非翻訳領域(5’UTR FXN)を含む核酸配列と、
ヒトフラタキシン(FXN)をコードする核酸配列と、を含み、前記ヒトFXNをコードする核酸配列が、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、前記核酸構築物。
【請求項2】
前記5’UTR FXNが、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記ヒトFXNをコードする核酸配列が、コドン最適化されている、請求項1または2に記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記5’UTR FXNが、配列番号2を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記5’UTR FXNが、前記ヒトFXNをコードする核酸配列の上流に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項6】
イントロンをさらに含み、前記イントロンが、前記5’UTR FXNの下流及び前記ヒトFXNをコードする核酸の上流に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項7】
前記5’UTR FXNが、CCCTC結合因子(CTCF)結合部位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項8】
前記CTCF結合部位が、配列番号3または16~21のうちのいずれか1つを含む、請求項7に記載の核酸構築物。
【請求項9】
RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項10】
核酸構築物であって、以下の順序で、
(a)RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列、
(b)5’UTR FXNを含む核酸配列、及び
(c)ヒトFXNをコードする核酸配列、を含み、
前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、フラタキシンプロモーターではなく、前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、前記5’UTR FXN及び前記ヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結される、前記核酸構築物。
【請求項11】
前記ヒトFXNをコードする核酸配列が、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項10に記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記ヒトFXNが、配列番号60を含む、請求項10または11に記載の核酸構築物。
【請求項13】
前記核酸構築物が、以下の順序で、
(a)RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列、
(b)5’UTR FXNを含む核酸配列、及び
(c)ヒトFXNをコードする核酸配列、を含み、
前記ヒトFXNをコードする核酸配列が、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、前記5’UTR FXN及び前記ヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結される、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項14】
核酸構築物であって、以下の順序で、
(a)RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列、
(b)5’UTR FXNを含む核酸配列、
(c)イントロン、及び
(d)ヒトFXNをコードする核酸配列、を含み、
前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、前記5’UTR FXN及び前記ヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結される、前記核酸構築物。
【請求項15】
前記ヒトFXNをコードする核酸配列が、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、請求項14に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記ヒトFXNが、配列番号60を含む、請求項14または15に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記核酸構築物が、以下の順序で、
(a)RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列、
(b)5’UTR FXNを含む核酸配列、
(c)イントロン、及び
(d)ヒトFXNをコードする核酸配列、を含み、
前記ヒトFXをコードする核酸配列が、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、前記5’UTR FXN及び前記ヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結される、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、デスミンプロモーターまたはCBAプロモーターである、請求項9~17のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、配列番号4または配列番号5を含む、請求項18に記載の核酸構築物。
【請求項20】
前記RNAポリメラーゼIIプロモーターが、空間的に制限されたプロモーターである、請求項9~17のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記空間的に制限されたプロモーターが、ニューロン特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、星状細胞特異的プロモーター、ミクログリア特異的プロモーター、及びオリゴデンドロサイト特異的プロモーターからなる群から選択される、請求項20に記載の核酸構築物。
【請求項22】
一対の逆方向末端反復(ITR)をさらに含み、前記核酸構築物が、前記ITRによって各々に隣接する、請求項1~21のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、組換えウイルスベクター。
【請求項24】
前記ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項23に記載の組換えウイルスベクター。
【請求項25】
前記AAVベクターが、AAV1血清型ベクター、AAV2血清型ベクター、AAV3血清型ベクター、AAV4血清型ベクター、AAV5血清型ベクター、AAV6血清型ベクター、AAV7血清型ベクター、AAV8血清型ベクター、AAV9血清型ベクター、AAV Rh74血清型ベクター、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の組換えAAVベクター。
【請求項26】
前記組換えAAVベクターが、一本鎖または自己相補的AAVベクターである、請求項24または25に記載の組換えAAVベクター。
【請求項27】
前記組換えAAVベクターが、配列番号6~8、13~15、または24~28のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項28】
前記組換えAAVベクターが、配列番号6~8、13~15、または24~28のうちのいずれか1つを含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の組換えAAVベクター。
【請求項29】
請求項24~28のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターを含む、核酸。
【請求項30】
前記核酸が、プラスミドである、請求項29に記載の核酸。
【請求項31】
請求項23~28のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクターを含む、組換えAAV粒子。
【請求項32】
請求項31に記載の粒子を含む、薬学的組成物。
【請求項33】
前記組成物が、複数の粒子を含む、請求項32に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
請求項1~22のいずれか一項に記載の核酸構築物、または請求項23~28のいずれか一項に記載の組換えウイルスベクターを含む、遺伝子改変細胞。
【請求項35】
前記遺伝子改変細胞が、ヒト幹細胞、ヒトニューロン、ヒト心筋細胞、ヒト平滑筋細胞、ヒト骨格筋細胞、及びヒト肝細胞からなる群から選択される、請求項34に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項36】
フリードライヒ運動失調症(FA)を有する患者を治療する方法であって、治療有効量の請求項31に記載の組換えAAV粒子を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
ヒト細胞におけるFXNの発現を調節する方法であって、前記ヒト細胞に、請求項24~28のいずれか一項に記載の組換えAAVベクターを導入することを含む、前記方法。
【請求項38】
ヒト細胞におけるFXNの発現を調節する方法であって、前記ヒト細胞に、請求項29または30に記載の核酸を導入することを含む、前記方法。
【請求項39】
FAを有する対象のヒト細胞におけるアデノシン三リン酸(ATP)濃度を増加させる方法であって、治療有効量の請求項31に記載の組換えAAV粒子を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
FAを有する対象のヒト細胞におけるATP濃度を増加させる方法であって、治療有効量の請求項31に記載の組換えAAV粒子を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記ヒト細胞が、ニューロン、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、及び肝細胞からなる群から選択される、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の関連出願
本出願は、2019年9月13日出願の米国仮出願第62/899,953号の利益及び優先権を主張するものであり、この仮出願は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、フリードライヒ運動失調症(FA)の治療のための組成物及び方法に関する。
【0003】
配列表の参照による組み込み
本出願は、コンピュータ可読形態の配列表(ファイル名:1191563seqlist.txt、2020年9月11日作成)を含み、これは、その全体において参照により本明細書に組み込まれ、本開示の部分を形成する。
【背景技術】
【0004】
フリードライヒ運動失調症(FA)は、常染色体劣性疾患であり、米国で最も一般的な遺伝性運動失調症の形態であり、40,000人に約1人が罹患している。これは、FXN遺伝子の第1のイントロンにおけるGAAトリプレットの伸長によって引き起こされる(
図1B)。健常な個体には存在しないこの変異(
図1A)は、FXN転写を変化させ、鉄硫黄クラスターの組み立てに関与する小さなミトコンドリアタンパク質であるフラタキシン(FXN)の発現を低下させる(Cook et al.Friedreich’s ataxia:clinical features,pathogenesis,and management.Br Med Bull.2017;124(1):19-30)。FXN遺伝子のトリヌクレオチド反復拡張を有する2つの対立遺伝子を遺伝で受け継ぐ個体は、FAを発症する可能性が高い。
FAは、運動失調を引き起こす中枢神経系(CNS)の進行性変性を特徴とし、心疾患(例えば、肥大性心筋症または心筋線維症)に関連する。これらの症状は、5歳から15歳の間に現れ始め、男性と女性の両方で経時的に悪化する。しかしながら、約15%の患者では、それほど深刻ではない遺伝子変異が、25歳以降の疾患発症の原因となる。診断から10~15年以内に、ほとんどの罹患した個体は、十分な運動制御の喪失により車椅子生活を余儀なくされる(Rummey et al.Predictors of Loss of Ambulation in Friedreich’s Ataxia EClinicalMedicine.2020 Jan 8;18:100213)。疾患の後期段階では、患者は、再起不能になり、一般に心臓疾患により成人期初期に死亡する。現在、FAに対する既知の治癒法または有効な治療法は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cook et al.Friedreich’s ataxia:clinical features,pathogenesis,and management.Br Med Bull.2017;124(1):19-30
【非特許文献2】Rummey et al.Predictors of Loss of Ambulation in Friedreich’s Ataxia EClinicalMedicine.2020 Jan 8;18:100213
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ヒトフラタキシンの発現をインビトロ、エクスビボ、及びインビボで調節するための核酸構築物が、本明細書に提供される。核酸構築物は、ヒトフラタキシン5’非翻訳領域(5’UTR FXN)を含む核酸配列と、ヒトフラタキシン(FXN)をコードする核酸配列と、を含む。いくつかの実施形態において、核酸配列は、配列番号60のアミノ酸配列を有するヒトフラタキシンをコードする。いくつかの実施形態において、限定するものではないが、ヒトFXNをコードする核酸配列は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNは、配列番号2に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNは、配列番号2を含む。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNは、CCCTC結合因子(CTCF)結合部位を含む。ある特定の実施形態において、CTCF結合部位は、配列番号3または16~21のうちのいずれか1つを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、ヒトFXNをコードする核酸配列は、コドン最適化される。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNは、ヒトFXNをコードする核酸配列の上流に位置する。
【0008】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、イントロンをさらに含み、イントロンは、5’UTR FXNの下流及びヒトFXNをコードする核酸の上流に配置される。
【0009】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列をさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、以下の順序で、
(a)RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列、(b)5’UTR FXNを含む核酸配列、及び(c)ヒトFXNをコードする核酸配列を含み、ヒトFXNをコードする核酸配列は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、5’UTR FXN及びヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結される。
【0011】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、以下の順序で、(a)RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列、(b)5’UTR FXNを含む核酸配列、(c)イントロン、及び(d)ヒトFXNをコードする核酸配列を含み、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、5’UTR FXN及びヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、核酸配列は、配列番号60を含むアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態において、ヒトFXNをコードする核酸配列は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、デスミンプロモーター、CBAプロモーター、及びヒトフラタキシンプロモーターからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、配列番号4または配列番号5を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、空間的に制限されたプロモーターである。いくつかの実施形態において、空間的に制限されたプロモーターは、ニューロン特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、星状細胞特異的プロモーター、ミクログリア特異的プロモーター、及びオリゴデンドロサイト特異的プロモーターからなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、一対の逆方向末端反復(ITR)をさらに含み、核酸構築物は、当該ITRによって各々に隣接する。
【0015】
本明細書で提供される核酸構築物のうちのいずれかを含む組換えウイルスベクターも提供される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、AAV1血清型ベクター、AAV2血清型ベクター、AAV3血清型ベクター、AAV4血清型ベクター、AAV5血清型ベクター、AAV6血清型ベクター、AAV7血清型ベクター、AAV8血清型ベクター、AAV9血清型ベクター、AAV Rh74血清型ベクター、AAVDJ血清型ベクター、ならびにこれらの組み合わせ及び誘導体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターは、一本鎖または自己相補的AAVベクターである。
【0016】
いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターは、配列番号6、14~15、または24~28のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターは、配列番号6、14~15、または24~28のうちのいずれか1つである。
【0017】
本明細書に記載の組換えAAVベクターのうちのいずれかを含む核酸も提供される。いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターを含む核酸は、プラスミドである。
【0018】
本明細書で提供される組換えAAVベクターのうちのいずれかを含む組換えAAV粒子も提供される。複数の本明細書に記載のAAV粒子のうちのいずれかもまた提供される。
【0019】
複数の本明細書で提供されるAAV粒子のうちのいずれかを含む薬学的組成物が、さらに提供される。
【0020】
本明細書に記載の核酸構築物または組換えウイルスベクターのうちのいずれかを含む遺伝子改変細胞も提供される。遺伝子改変細胞は、インビトロ改変細胞、エキソビボ改変細胞、またはインビボ改変細胞であり得る。いくつかの実施形態において、遺伝子改変細胞は、ヒトニューロン、ヒト心筋細胞、ヒト平滑筋細胞、ヒト骨格筋細胞、及びヒト肝細胞からなる群から選択される。
【0021】
FAを治療するための方法も提供される。本方法は、FAを有する対象に、治療有効量の本明細書で提供される組換えAAV粒子のうちのいずれかを投与することを含む。
【0022】
ヒト細胞におけるFXNの発現を調節する方法も提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、ヒト細胞に、本明細書で提供される組換えAAVベクターのうちのいずれかを導入することを含む。
【0023】
FAを有する対象のヒト細胞におけるアデノシン三リン酸(ATP)濃度を増加させるための方法も提供される。本方法は、対象に、治療有効量の本明細書で提供される組換えAAV粒子のうちのいずれかを投与することを含む。いくつかの方法において、ヒト細胞は、ニューロン、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、及び肝細胞からなる群から選択される。
【0024】
FAを有する対象のヒト細胞におけるATP濃度を増加させるための方法も提供される。本方法は、治療有効量の本明細書で提供される組換えAAV粒子のうちのいずれかを投与することを含む。いくつかの方法において、ヒト細胞は、ニューロン、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、及び肝細胞からなる群から選択される。
【0025】
上記の概要は、例示的なものに過ぎず、決して限定することを意図するものではない。本明細書に記載の例示的な実施例及び特徴に加えて、本開示のさらなる態様、実施例、目的、及び特徴は、図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から完全に明らかになるであろう。
【0026】
本出願は以下の図を含む。これらの図は、組成物及び方法のある特定の実施形態及び/または特色を例証すること、ならびに組成物及び方法の任意の記載(複数可)を補足することが意図される。書面による記載がかかるが事例であることを明示的に示さない限り、これらの図は組成物及び方法の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】健常な個体(例えば、FAを有しない個体)及びFAを有する個体におけるゲノムDNA配列及びその発現を示す。Aは、健常な個体におけるゲノムDNA配列及びその発現を示す。Bは、FAを有する個体におけるゲノムDNA配列及びその発現を示す。
【
図2】FAを有する個体における外因性核酸及びその発現を示す。Aは、FAを有する個体における外因性核酸及びその調節されない発現を示す。Bは、FAを有する個体における外因性核酸及びその調節された発現を示す。
【
図3】5’UTR FXN(配列番号2)に作動可能に連結されたヒトFXN ORF及びRNAポリメラーゼIIプロモーターを含むAAVベクター配列を示す。
【
図4】ヒト胚腎臓(HEK)293細胞の全細胞抽出物で実施されたウエスタンブロットを示す。
【
図5】SK-N-SH細胞の全細胞抽出物で実施されたウエスタンブロットを示す。
【
図6】C2C12マウス筋芽細胞の全細胞抽出物で実施されたウエスタンブロットを示す。
【
図7】C2C12マウス筋芽細胞のATP含有量を示す棒グラフを示す。
【
図8】C2C12マウス筋芽細胞の全細胞抽出物で実施されたウエスタンブロットを示す。
【
図9】C2C12マウス筋芽細胞の全細胞抽出物のqPCR結果を示す棒グラフを示す。
【
図10A】異なるベクター、異なるプロモーター、及び/または5’UTRを有する及び有しないヒトフラタキシンをコードするコドン最適化配列のマップである。デスミンプロモーター、5’UTR、及びヒトフラタキシンをコードするコドン最適化配列を含むLP1001 AAVベクターのマップである。
【
図10B】異なるベクター、異なるプロモーター、及び/または5’UTRを有する及び有しないヒトフラタキシンをコードするコドン最適化配列のマップである。ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター及びヒトフラタキシンをコードするコドン最適化配列を含むLP1002 AAVベクターのマップである。
【
図10C】CBAプロモーター、5’UTR、及びヒトフラタキシンをコードするコドン最適化配列を含むLP1003 AAVベクターのマップである。
【
図10D】デスミン(DES)プロモーター及びヒトフラタキシンをコードするコドン最適化配列を含むLP1004 AAVベクターのマップである。
【
図10E】CBAプロモーター、3’UTR、及びヒトフラタキシンをコードするコドン最適化配列を含むLP1049 AAVベクターのマップである。
【
図10F】AAV8TMベクター(配列番号61)のマップである。
【
図11A】対照及び患者線維芽細胞におけるプラスミド誘導性FXN発現の毒性を示す。線維芽細胞を、CBAまたはDESプロモーターによって制御されるFXNを発現するプラスミドで、5’UTRの有無にかかわらずトランスフェクトした。(A)正常な健常な個体またはフリードライヒ運動失調症患者からの線維芽細胞を、示されているようにプラスミド構築物でトランスフェクトした。(B)線維芽細胞培養における潜在的プラスミド毒性を評価するために、DNA含有量を、CyQUANT増殖アッセイによって測定した。線は、毒性が観察されなかった値を表す。対照線維芽細胞において、5’UTRを含有するプラスミドは、5’UTRを有しない構築物と比較して、約200%低減した毒性を示した。すべてのFXN発現プラスミドは、FA患者線維芽細胞において減衰したレベルの毒性を示した。(C)ATPレベルに対するFXN過剰発現の影響を決定するために、ミトコンドリアを対照から単離し、線維芽細胞をトランスフェクトした。線は、取得した最大ATP値を示す。全体として、5’UTRを含有するプラスミドで処理した線維芽細胞培養物において、5’UTRを有しないプラスミドと比較して、ATP含有量が高かった。(C)平均値を、+/-標準誤差(96ウェルプレート中のn=4つのウェル)によって提示する。統計分析を、二元配置分散分析、続いてテューキーの事後分析により行って、各群を互いに比較した。
【
図11B】対照及び患者線維芽細胞におけるプラスミド誘導性FXN発現の毒性を示す。線維芽細胞を、CBAまたはDESプロモーターによって制御されるFXNを発現するプラスミドで、5’UTRの有無にかかわらずトランスフェクトした。(A)正常な健常な個体またはフリードライヒ運動失調症患者からの線維芽細胞を、示されているようにプラスミド構築物でトランスフェクトした。(B)線維芽細胞培養における潜在的プラスミド毒性を評価するために、DNA含有量を、CyQUANT増殖アッセイによって測定した。線は、毒性が観察されなかった値を表す。対照線維芽細胞において、5’UTRを含有するプラスミドは、5’UTRを有しない構築物と比較して、約200%低減した毒性を示した。すべてのFXN発現プラスミドは、FA患者線維芽細胞において減衰したレベルの毒性を示した。(C)ATPレベルに対するFXN過剰発現の影響を決定するために、ミトコンドリアを対照から単離し、線維芽細胞をトランスフェクトした。線は、取得した最大ATP値を示す。全体として、5’UTRを含有するプラスミドで処理した線維芽細胞培養物において、5’UTRを有しないプラスミドと比較して、ATP含有量が高かった。(C)平均値を、+/-標準誤差(96ウェルプレート中のn=4つのウェル)によって提示する。統計分析を、二元配置分散分析、続いてテューキーの事後分析により行って、各群を互いに比較した。
【
図11C】対照及び患者線維芽細胞におけるプラスミド誘導性FXN発現の毒性を示す。線維芽細胞を、CBAまたはDESプロモーターによって制御されるFXNを発現するプラスミドで、5’UTRの有無にかかわらずトランスフェクトした。(A)正常な健常な個体またはフリードライヒ運動失調症患者からの線維芽細胞を、示されているようにプラスミド構築物でトランスフェクトした。(B)線維芽細胞培養における潜在的プラスミド毒性を評価するために、DNA含有量を、CyQUANT増殖アッセイによって測定した。線は、毒性が観察されなかった値を表す。対照線維芽細胞において、5’UTRを含有するプラスミドは、5’UTRを有しない構築物と比較して、約200%低減した毒性を示した。すべてのFXN発現プラスミドは、FA患者線維芽細胞において減衰したレベルの毒性を示した。(C)ATPレベルに対するFXN過剰発現の影響を決定するために、ミトコンドリアを対照から単離し、線維芽細胞をトランスフェクトした。線は、取得した最大ATP値を示す。全体として、5’UTRを含有するプラスミドで処理した線維芽細胞培養物において、5’UTRを有しないプラスミドと比較して、ATP含有量が高かった。(C)平均値を、+/-標準誤差(96ウェルプレート中のn=4つのウェル)によって提示する。統計分析を、二元配置分散分析、続いてテューキーの事後分析により行って、各群を互いに比較した。
【
図12A】トランスフェクトした線維芽細胞におけるヒトFXNレベルを示す。(A)ウエスタンブロット画像及び(B)トランスフェクトした対照及び疾患線維芽細胞の画像(n=2)の定量化を、Gapdhを内部対照として使用して定量化した。(C)トランスフェクトした対照及び疾患線維芽細胞におけるヒトFXNの検出のためのELISA(n=2)。結果は、FXN発現構築物で処理したすべての細胞における形質導入及び発現を示す。発現レベルは、5’UTRを有するプラスミドと比較して、5’UTRを欠くプラスミドでトランスフェクトした細胞においてより高かった。
【
図12B】トランスフェクトした線維芽細胞におけるヒトFXNレベルを示す。(A)ウエスタンブロット画像及び(B)トランスフェクトした対照及び疾患線維芽細胞の画像(n=2)の定量化を、Gapdhを内部対照として使用して定量化した。(C)トランスフェクトした対照及び疾患線維芽細胞におけるヒトFXNの検出のためのELISA(n=2)。結果は、FXN発現構築物で処理したすべての細胞における形質導入及び発現を示す。発現レベルは、5’UTRを有するプラスミドと比較して、5’UTRを欠くプラスミドでトランスフェクトした細胞においてより高かった。
【
図12C】トランスフェクトした線維芽細胞におけるヒトFXNレベルを示す。(A)ウエスタンブロット画像及び(B)トランスフェクトした対照及び疾患線維芽細胞の画像(n=2)の定量化を、Gapdhを内部対照として使用して定量化した。(C)トランスフェクトした対照及び疾患線維芽細胞におけるヒトFXNの検出のためのELISA(n=2)。結果は、FXN発現構築物で処理したすべての細胞における形質導入及び発現を示す。発現レベルは、5’UTRを有するプラスミドと比較して、5’UTRを欠くプラスミドでトランスフェクトした細胞においてより高かった。
【
図13A】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。細胞を、構築物のトランスフェクション後の細胞蜜集度の視覚化のために24ウェルプレート中で画像化した。
【
図13B】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。CyQUANTアッセイによってトランスフェクション後に、細胞生存率を測定した。
【
図13C】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。毒性分析は、CBA-5’-FXNと比較した場合、対照線維芽細胞におけるCBA-FXNが細胞生存率を低下させたことを示した。しかしながら、FA線維芽細胞は、毒性の同じ分布を示さない。
【
図13D】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。同様に、非トランスフェクト細胞及びトランスフェクト細胞におけるATP含有量を測定した。
【
図13E】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。ELISAによるフラタキシン過剰発現の検出は、CBA-FXNでトランスフェクトした対照線維芽細胞において、内因性フラタキシンレベルを上回って約16倍高かった。CBA-5’-FXN及びCBA-3’-FXNは、内因性フラタキシン発現(CBA-GFP)と比較して、発現において約10倍高かった。フラタキシン及びGAPDHに対するウエスタンブロット後に、密度分析を行った。
【
図13F】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。ELISAによるフラタキシン過剰発現の検出は、CBA-FXNでトランスフェクトした対照線維芽細胞において、内因性フラタキシンレベルを上回って約16倍高かった。CBA-5’-FXN及びCBA-3’-FXNは、内因性フラタキシン発現(CBA-GFP)と比較して、発現において約10倍高かった。フラタキシン及びGAPDHに対するウエスタンブロット後に、密度分析を行った。
【
図13G】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。ELISAによるフラタキシン過剰発現の検出は、CBA-FXNでトランスフェクトした対照線維芽細胞において、内因性フラタキシンレベルを上回って約16倍高かった。CBA-5’-FXN及びCBA-3’-FXNは、内因性フラタキシン発現(CBA-GFP)と比較して、発現において約10倍高かった。フラタキシン及びGAPDHに対するウエスタンブロット後に、密度分析を行った。
【
図13H】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。フラタキシン及びtomm20の免疫細胞化学的検出は、ミトコンドリア内でのフラタキシンの共局在化を確認し(H)、各条件下での対照及び疾患細胞の染色は、タンパク質発現を反映したものであった(I)。
【
図13I】インビトロでのフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較の結果を示す。健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。フラタキシン及びtomm20の免疫細胞化学的検出は、ミトコンドリア内でのフラタキシンの共局在化を確認し(H)、各条件下での対照及び疾患細胞の染色は、タンパク質発現を反映したものであった(I)。
【
図14】インビトロで観察される毒性を低減させるためのプラスミド含有量の滴定を示す。トランスフェクトした線維芽細胞で見られる潜在的な毒性を理解するために、用量反応(ug DNA)曲線を行った。対照及びFA線維芽細胞を、CBAプロモーターによって駆動されるFXNを発現するプラスミド構築物でトランスフェクトした(表2)。1×-1.25μg、2×-2.5μg、及び4×-5μgは、各条件のプラスミド濃度を表す。細胞毒性分析は、CBA-FXNが最も高い毒性をもたらすことを示したが、しかしながら、プラスミドの滴定(すなわち、減少)は、細胞死の程度を減弱させた。
【
図15】野生型マウスにおける内因性フラタキシンレベルを示す。
【
図16】AAV8TM-DES-5’UTR-FXNの静脈内投与後の野生型マウスにおけるヒトフラタキシンのレベルを示す。AAVの静脈内投与は、心臓、骨格筋、及び肝臓におけるフラタキシンの有意な上昇をもたらす。ヒトFXNの発現は、脳内では検出されず、カプシドが使用される投薬量において低い血液脳関門透過性を示すことを示唆した。
【
図17A】大槽内(ICM)及び筋肉内(IM)にAAV8TM-DES-5’UTR-FXNを注射した野生型マウスにおけるヒトフラタキシン発現を示す。(A~C用量)脳、脊髄、及び骨格筋におけるヒトフラタキシンの検出。(D)フラタキシン(DAB検出)に対して指向されるIHCは、ICM送達(用量:3e+11vg/gの脳)後の髄質及び橋全体にわたって発現を示す。
【
図17B】大槽内(ICM)及び筋肉内(IM)にAAV8TM-DES-5’UTR-FXNを注射した野生型マウスにおけるヒトフラタキシン発現を示す。(A~C用量)脳、脊髄、及び骨格筋におけるヒトフラタキシンの検出。(D)フラタキシン(DAB検出)に対して指向されるIHCは、ICM送達(用量:3e+11vg/gの脳)後の髄質及び橋全体にわたって発現を示す。
【
図17C】大槽内(ICM)及び筋肉内(IM)にAAV8TM-DES-5’UTR-FXNを注射した野生型マウスにおけるヒトフラタキシン発現を示す。(A~C用量)脳、脊髄、及び骨格筋におけるヒトフラタキシンの検出。(D)フラタキシン(DAB検出)に対して指向されるIHCは、ICM送達(用量:3e+11vg/gの脳)後の髄質及び橋全体にわたって発現を示す。
【
図17D】大槽内(ICM)及び筋肉内(IM)にAAV8TM-DES-5’UTR-FXNを注射した野生型マウスにおけるヒトフラタキシン発現を示す。(A~C用量)脳、脊髄、及び骨格筋におけるヒトフラタキシンの検出。(D)フラタキシン(DAB検出)に対して指向されるIHCは、ICM送達(用量:3e+11vg/gの脳)後の髄質及び橋全体にわたって発現を示す。
【
図18】フラタキシン発現に対するイントロン配置の影響を示す。5’UTRを含まない構築物は、非常に有意な発現をもたらす(レーン3及び6)。イントロンとFXNとの間に5’UTRを含むと、FNXの発現が低くなる(レーン5)。5’UTR、イントロン、及びFXNをその順序で含めると、所望のFXN発現レベル(レーン2及び4)がもたらされる。
【
図19】調節領域を有する例示的な5’UTR FXN配列(配列番号33)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
配列番号1は、フラタキシンcDNA配列からのコドン最適化ORFであるFXNヌクレオチド配列である。
【0029】
配列番号2は、例示的な5’UTR FXN配列である。
【0030】
配列番号3は、CTCFタンパク質結合部位である。
【0031】
配列番号4は、デスミンプロモーター配列である。
【0032】
配列番号5は、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター配列である。
【0033】
配列番号6は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含む組換えAAVベクター配列であり、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0034】
配列番号7は、組換えAAVベクターをコードするプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)をさらに含む。
【0035】
配列番号8は、組換えAAVベクターをコードするプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0036】
配列番号9は、ヒトFXNヌクレオチド配列を有するC末端V5エピトープタグインフレームをさらに含むことを除いては、配列番号7に類似するプラスミド配列である。
【0037】
配列番号10は、ヒトFXNヌクレオチド配列を有するC末端V5エピトープタグインフレームをさらに含むことを除いては、配列番号8に類似するプラスミド配列である。
【0038】
配列番号11は、組換えAAVベクターを含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、CBAプロモーター配列(配列番号5)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、CBAプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたCBA 5’UTR(配列番号23)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0039】
配列番号12は、組換えAAVベクターを含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、CBAプロモーター配列(配列番号5)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、CBAプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたCBA 5’UTR(配列番号23)をさらに含む。
【0040】
配列番号13は、組換えAAVベクターを含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置された5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0041】
配列番号14は、CBAプロモーター配列(配列番号5)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含む組換えAAVベクター配列であり、CBAプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたCBA 5’UTR(配列番号23)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0042】
配列番号15は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含む組換えAAVベクター配列であり、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置された5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0043】
配列番号16~21は、CTCFタンパク質結合部位である。
【0044】
配列番号22は、デスミン5’UTRである。
【0045】
配列番号23は、CBA 5’UTRである。
【0046】
配列番号24は、組換えAAVベクター(LP1001)を含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、以下の順序で、作動可能な連結において、デスミンプロモーター配列(配列番号4)、5’UTR FXN配列(配列番号2)、イントロン、コドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含む。
【0047】
配列番号25は、組換えAAVベクター(LP1002)を含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、以下の順序で、作動可能な連結において、CMVプロモーター配列(配列番号34)、CBAプロモーター(配列番号5)、イントロン、及びコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含む。
【0048】
配列番号26は、組換えAAVベクター(LP1003)を含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、以下の順序で、作動可能な連結において、CMVプロモーター配列(配列番号34)、CBAプロモーター(配列番号5)、5’UTR FXN配列(配列番号2)、イントロン、及びコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含む。
【0049】
配列番号27は、組換えAAVベクター(LP1004)を含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、以下の順序で、作動可能な連結において、デスミンプロモーター配列(配列番号4)、イントロン、及びコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含む。
【0050】
配列番号28は、組換えAAVベクター(LP1049)を含むプラスミド配列である。組換えAAVベクターは、以下の順序で、作動可能な連結において、CMVプロモーター配列(配列番号34)、CBAプロモーター配列(配列番号5)、イントロン、コドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)、及び3’UTR FXN(配列番号35)を含む。
【0051】
配列番号29は、AAV-CBA-EGFP(GenBank:受託番号MK225672)を含む自己相補プラスミド配列である。
【0052】
配列番号30は、プライマーである。
【0053】
配列番号31は、プライマーである。
【0054】
配列番号32は、プライマーである。
【0055】
配列番号33は、TFAP2(配列番号57)、SRF1(配列番号56)、及びSP1(配列番号58)調節領域を有する例示的な5’UTR FXN配列である。
【0056】
配列番号34は、CMVエンハンサー配列である。
【0057】
配列番号35は、3’UTR FXNである。
【0058】
配列番号36は、配列番号24に含まれるイントロン配列である。
【0059】
配列番号37は、スプライスドナー部位及び受容体部位を有する改変SV40イントロンである。
【0060】
配列番号38は、例示的な変異ITR配列である。
【0061】
配列番号39は、例示的なITR配列である。
【0062】
配列番号40は、ヒト3’UTR FXNである。
【0063】
配列番号41は、切断された3’UTR FXNである。
【0064】
配列番号42は、例示的なフラタキシンプロモーター配列である。
【0065】
配列番号43は、例示的なフラタキシンプロモーター配列である。
【0066】
配列番号44は、アンピシリン耐性遺伝子である。
【0067】
配列番号45は、カナマイシン耐性遺伝子である。
【0068】
配列番号46は、推定される鉄結合ドメインを含まない例示的な3’UTR FXN配列である。
【0069】
配列番号47は、ミトコンドリア局在化シグナルを含まない例示的な3’UTR FXN配列である。
【0070】
配列番号48は、L2レトロ転位因子を含まない例示的な5’UTR FXN配列(配列番号54)である。
【0071】
配列番号49は、代替のRNA輸出シグナルを含まない例示的な5’UTR FXN配列(配列番号55)である。
【0072】
配列番号50は、CTCFドメインを含まない例示的な5’UTR FXN配列である。
【0073】
配列番号51は、例示的な5’UTR FXN配列である。
【0074】
配列番号52は、例示的な5’UTR FXN配列である。
【0075】
配列番号53は、触媒結合ドメインを含まない例示的な5’UTR FXN配列(配列番号59)である。
【0076】
配列番号54は、L2レトロ転位因子である。
【0077】
配列番号55は、代替のRNA輸出シグナルである。
【0078】
配列番号56は、SRF調節配列である。
【0079】
配列番号57は、TFAP2調節配列である。
【0080】
配列番号58は、調節SP1配列である。
【0081】
配列番号59は、アコニターゼ結合ドメインである。
【0082】
配列番号60は、ヒトフラタキシンの例示的なアミノ酸配列である。
【0083】
配列番号61は、AAV8トリプルカプシド変異体ベクター配列である。
【0084】
配列番号62は、例示的な5’UTR FXNである。
【0085】
配列番号63は、ウシ成長ホルモンポリアデン化配列をコードする核酸配列である。
【0086】
フラタキシン発現を復元するための現在のアプローチは、高レベルのフラタキシンを発現するために調節されない高活性プロモーター配列を使用することに焦点を当てている(
図2A)。しかしながら、リスクは、このアプローチに関連している。調節されない上昇した生理学的レベルのフラタキシンは、ミトコンドリア呼吸の低下をもたらし、これは、ミトコンドリア毒性を引き起こし得る。実際、FXNの過剰発現は、インビトロ(Vannocci et al.“Adding a temporal dimension to the study of Friedreich’s ataxia:the effect of frataxin overexpression in a human cell model,” Dis Model Mech.2018;11(6):dmm032706)及びインビボ(Belbellaa et al.“High levels of frataxin overexpression leads to mitochondrial and cardiac toxicity in mouse models,” April 2020.doi.org/10.1101/2020.03.31.015255、Belbella et al.“Correction of half the cardiomyocytes fully rescue Friedreich ataxia mitochondrial cardiomyopathy through cell-autonomous mechanisms,” Hum Mol Genet.2019;28(8):1274-1285)の両方で毒性であることが報告されている。
【0087】
FA患者において調節された生理学的レベルのFXN発現を達成するために、本発明者らは、FXNの5’UTRを、FXN発現を調節し、上昇した生理学的レベルのFXN発現に関連する毒性を回避する調節配列として同定した。対象においてFAを治療する方法で使用するための組成物が、本明細書に提供される。これらの組成物には、ヒトフラタキシン5’UTR(5’UTR FXN)及びFXNをコードする核酸配列を含む、新規の核酸構築物、組換えウイルスベクター及び細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
核酸構築物
ヒトフラタキシン5’非翻訳領域(5’UTR FXN)及びヒトフラタキシン(FXN)をコードする核酸配列を含む核酸構築物が、本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、ヒトFXNをコードする核酸配列は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する(以下に記載されるように)。いくつかの実施形態において、ヒトFXNをコードする核酸配列は、ヒトFXNをコードする天然に存在するヌクレオチド配列ではない。
【0089】
atgtggacat tggggcggag ggcagtggcg ggtcttcttg cgtctcccag cccagcacaggcacaaacat tgactagagt tccccggcca gcggagttgg cccctctctg tggacggcggggactgcgga cggatataga cgccacctgc acacctcgaa gagctagttc aaatcagcggggcctcaatc aaatctggaa cgttaagaag cagagtgtgt accttatgaa cttgagaaaaagcggaaccc tcggccaccc agggtcattg gatgaaacaa cctatgagag gcttgcggaagagacattgg atagcttggc cgaattcttt gaagaccttg ccgacaaacc ctatacatttgaggattacg atgtctcctt cggctctggt gtcctgactg tgaagttggg gggcgacctcggaacgtacg taataaataa gcagactccg aataaacaaa tttggttgtc ctcaccaagtagcggcccca agcggtatga ttggactggg aagaactggg tatactccca cgacggcgttagcctgcacg aactgttggc agccgagctt acaaaagctt tgaagacaaa actggacctc(配列番号1)
【0090】
5’UTR FXN
全体を通して使用されるとき、5’UTR FXNは、ヒトFXNをコードする核酸の開始コドンの上流にある、非翻訳核酸配列である。本明細書に記載されるように、5’UTR FXNは、FXN発現を調節することができる。調節されたFXN発現は、FXN発現及びミトコンドリア呼吸の調節された生理学的レベルを達成し、それによって、調節されない上昇した生理学的レベルのFXN発現及び低減したミトコンドリア呼吸を回避するために所望され得る。理論に拘束されることを望むものではないが、この調節は、5’UTR及びヒトFXNヌクレオチド配列をコードする本開示の核酸から転写されるmRNAの転写及び/または翻訳に対する5’UTR FXNのシス効果を介して達成することができると考えられる。5’UTR FXN内の調節要素を、
図19(配列番号33)に示す。
【0091】
5’UTR FXNは、配列番号2(以下に記載されるように)またはその断片に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むことができる。
CAGTCTCCCTTGGGTCAGGGGTCCTGGTTGCACTCCGTGCTTTGCACAAAGCAGGCTCTCCATTTTTGTTAAATGCACGAATAGTGCTAAGCTGGGAAGTTCTTCCTGAGGTCTAACCTCTAGCTGCTCCCCCACAGAAGAGTGCCTGCGGCCAGTGGCCACCAGGGGTCGCCGCAGCACCCAGCGCTGGAGGGCGGAGCGGGCGGCAGACCCGGAGCAGC(配列番号2)
【0092】
5’UTR FXNは、配列番号2を含むヌクレオチド配列またはその断片を含むことができる。他の例において、5’UTR FXNは、配列番号配列番号33、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、または配列番号62を含むことができる。この断片は、配列番号2のいずれかまたは両方の末端で、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50またはそれ以上短いヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNを含む核酸配列は、完全長FXNプロモーターではない。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNを含むヌクレオチド配列は、配列番号42または配列番号43を含まない。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNを含む核酸配列は、配列番号2、配列番号33、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53を含む核酸配列であり、いずれかの末端で、長さが配列番号43よりも少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、または900塩基対短い。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNを含む核酸配列は、配列番号2を含み、いずれかの末端で、長さが配列番号42よりも少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、または900塩基対短い核酸配列ではない。
【0093】
5’UTR FXNは、ヒトFXNをコードする核酸配列、例えば、配列番号60をコードする核酸配列の上流に位置し得る。5’UTR FXNは、CTCF結合部位を含むことができる。CTCF結合部位は、配列番号3または16~21のうちの少なくとも1つに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むヌクレオチド配列を含むことができる。CTCF結合部位は、配列番号3または16~21のうちの少なくとも1つを含むことができる。5’UTR FXNは、配列番号3及び16~21のうちのいずれか1つを含む少なくとも1つのCTCF結合部位を含むことができる。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNは、機能的CTCF結合部位を含まず、例えば、CTCF結合部位は、変異されるか、または5’UTR FXNから除去される。機能的CTCF結合部位を含まない例示的な5’UTR FXNは、本明細書において配列番号50として記載される。
【0094】
本明細書で使用される場合、「FXN発現の調節された生理学的レベル」は、野生型細胞で観察されるものと同様であるタンパク質レベルでのFXN発現のレベルを指す。例えば、本開示の方法に従って処理されるホモ接合型GAA反復拡張FXN対立遺伝子を含む、筋肉または神経由来細胞における「FXN発現の調節された生理学的レベル」は、同様または同系のバックグラウンドの野生型細胞と同様のFXN発現レベルを示すことができる。このような「FXN発現の調節された生理学的レベル」は、十分なFXNの欠如に起因する、またはFXN遺伝子の調節されない発現に起因する過剰などのFXNの有害な過剰に起因する、疾患細胞における細胞ミトコンドリア機能に対する悪影響を低減することができる。
【0095】
タンパク質レベルでの「FXN発現の調節された生理学的レベル」は、野生型細胞のものと同様であり得る。例えば、タンパク質レベルでのFXN発現の調節された生理学的レベルは、野生型細胞におけるFXNタンパク質レベルの少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも155%、少なくとも160%、少なくとも165%、少なくとも170%、少なくとも175%、少なくとも180%、少なくとも185%、少なくとも190%、少なくとも195%、または少なくとも200%であり得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、核構築物(例えば、プロモーター、5’UTR FXN、及びヒトFXNをコードする核酸を含む構築物)に5’UTR FXNを含むと、5’UTR FXNを含まない核酸構築物(例えば、プロモーター及びヒトFXNをコードする核酸を含む構築物)を有する細胞のFXN発現のレベルよりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、または90%低い細胞のFXN発現のレベルをもたらす。
【0097】
ヒトフラタキシン(FXNヌクレオチド配列
本明細書で使用される場合、「ヒトFXNをコードする核酸配列」または
ヒトFXNヌクレオチド配列」は、ヒトフラタキシンFXN cDNA配列(例えば、配列番号1)であり得る。ヒトFXNをコードする任意の核酸配列は、ヒトFXNをコードする天然及び非天然に存在する核酸を含む、本明細書に記載の5’UTR FXNに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、核酸配列は、配列番号60、または1つ以上の保存的置換を有する配列番号60をコードする。配列番号1は、ヒトフラタキシンタンパク質(配列番号60)をコードする例示的なコドン最適化核酸配列である。ヒトフラタキシンの例示的なアミノ酸配列は、GenBank受託番号NP_000135.2下でも見出され得る。
mwtlgrrava gllaspspaq aqtltrvprp aelaplcgrr glrtdidatc tprrassnqr
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slhellaael tkalktkldl sslaysgkda(配列番号60)
【0098】
いくつかの実施形態において、FXNヌクレオチド配列は、配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有することができる。FXNヌクレオチド配列は、配列番号1を含むことができる。いくつかの実施形態において、FXNヌクレオチド配列は、本明細書に記載の組換えAAVベクターまたは粒子のうちのいずれかによって感染される細胞の発現のためにコドン最適化される。例えば、組換えAAV感染細胞が、ヒト細胞である場合、FXNをコードするヒトコドン最適化ポリヌクレオチド、例えば配列番号1が、FXNポリペプチドを産生するために使用され得ることが企図される。コドン最適化のための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、Inouye et al.“Codon optimization of genes for efficient protein expression in mammalian cells by selection of only preferred human codons,” Protein Expression and Purification 109:47-54(2015)を参照のこと)。GeneOptimizer(登録商標)ソフトウェア(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)も使用することができる。
【0099】
プロモーター
本明細書に記載の核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む核酸構築物も、提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の構築物の構成要素または要素は、非天然に存在する構築物を作製するために動作可能に連結される。換言すると、要素は、天然に存在する細胞のゲノム内で連結され得るため、連結されない。
【0100】
多数のプロモーターを、本明細書に記載の構築物に使用することができる。プロモーターは、転写を開始するために、RNAポリメラーゼ及び他のタンパク質の認識及び結合に関与する転写の開始から上流及び/または下流に位置する領域または配列である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIプロモーター、例えば、限定するものではないが、RNAポリメラーゼIIコアプロモーターである。本明細書で使用される場合、RNAポリメラーゼIIコアプロモーターは、基底転写装置が組み立てられることを可能にする最小配列である。例えば、この配列は、長さが40塩基対であり得、TATAボックス、開始要素(Inr)及び/または下流プロモーター要素(DPE)を含み得る。例えば、Domenger and Grimm,“Next generation AAV vectors-do not judge a virus(only) b yits cover,” Human Mol.Genetics 29(R1):R3-R14(2019)を参照のこと。いくつかの実施形態において、プロモーターは、誘導性プロモーターであり、例えば、プロモーターは、化学的または物理的に調節され得る。化学的に調節されたプロモーター及び/またはエンハンサーは、例えば、アルコール、テトラサイクリン、ステロイド、または金属の存在によって調節され得る。例としては、テトラサイクリン誘導性プロモーターまたはグルココルチコイド誘導性プロモーターが挙げられる。本発明の核酸はまた、特定の細胞、組織、または器官における核酸の発現を促進するために、組織特異的プロモーターの制御下にあり得る。メタロチオネインプロモーター、熱ショックプロモーター、及び他の調節可能なプロモーターなどの任意の調節可能なプロモーター(その多くの例は当該技術分野で周知である)もまた、企図される。さらに、Cre-loxP誘導性系、ならびにFlpリコンビナーゼ誘導性プロモーター系も使用され得、これらはいずれも当該技術分野で既知である。
【0101】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結される」、「作動可能に配置される」などの用語は、第1の核酸配列(例えば、タンパク質または非コードRNA配列のコード配列)が、少なくとも第2の核酸配列に共有結合的に接続されていることを意味し、そのため、2つの配列のうちの少なくとも1つが、他の核酸配列への影響を発揮することができる。例えば、ヒトFXNヌクレオチド配列は、プロモーター配列に作動可能に連結され得、そのため、プロモーター配列がヒトFXNヌクレオチド配列の転写を指示することができ、それによってヒトFXNヌクレオチド配列の発現に寄与する。同様に、5’UTR FXN配列は、プロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置することができ、そのため、5’UTR FXN配列がヒトFXNヌクレオチド配列の発現を調節することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、5’UTR FXNに作動可能に連結されたRNAポリメラーゼIIプロモーターと、ヒトFXNをコードする核酸配列と、を含む核酸配列をさらに含む。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、例えば、デスミンプロモーター配列(配列番号4)、CBAプロモーター配列(配列番号5)、またはフラタキシンプロモーター配列、例えば、配列番号42、配列番号43、またはそれらの断片であり得る。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、配列番号4を含むことができる。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、配列番号5を含むことができる。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、配列番号42または配列番号43を含むことができる。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、配列番号4に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、配列番号5に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。RNAポリメラーゼIIプロモーターは、配列番号42または配列番号43に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を含むことができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、5”UTR FXNに作動可能に連結されたRNAポリメラーゼIIプロモーターは、5’UTR FXNと関連する内因性プロモーターではなく、すなわち、それは、異なるタンパク質、例えば、デスミンまたはCBAプロモーターに由来する。いくつかの実施形態において、5’UTR FXN及びヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結されたRNAポリメラーゼIIプロモーターは、フラタキシンプロモーターではない。いくつかの実施形態において、5’UTR FXNに作動可能に連結されたプロモーターは、配列番号42、配列番号43、またはいずれかの配列の相補鎖を含まない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の構築物のうちのいずれも、ヒトフラタキシンプロモーター(例えば、配列番号42もしくは配列番号43)または3’UTR FXN(例えば、配列番号40もしくは配列番号41)を含まない。
【0104】
デスミン、CBA、またはフラタキシンプロモーターの断片は、この断片が由来したプロモーターの少なくとも1つの活性、例えば、細胞(例えば、神経細胞または筋肉細胞の核酸の転写の促進を少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれ以上保持する限り、本明細書に記載の構築物においても使用することができることが理解される。断片は、野生型プロモーターよりも少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500またはそれ以上短いヌクレオチドで、または野生型プロモーター配列に対して少なくとも85%の同一性を有するプロモーター配列であり得る。例えば、長さが配列番号4、配列番号5、配列番号42、または配列番号43よりも少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、または500塩基対短い断片は、プロモーターとして使用することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、RNAポリメラーゼIIプロモーターの5’UTRは、本開示のプロモーターまたは構築物のうちのいずれかから除去して、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現をさらに調節することができる。配列番号4及び配列番号5は、それぞれ、デスミンプロモーター及びCBAプロモーターの例であり、これらは、5’UTRを含まない。
【0106】
いくつかの実施形態において、エンハンサー配列、例えば、CMVエンハンサー(例えば、配列番号34)は、プロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、CMVエンハンサーがプロモーター、例えばCBAプロモーター、及びイントロンに作動可能に連結されている場合、このプロモーターは、CAGプロモーターと称される。CMVエンハンサー、CBAプロモーター、及びイントロンを含む例示的な構築物は、配列番号25及び配列番号26として提供される。
【0107】
いくつかの実施形態において、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、空間的に制限されたプロモーター、例えば、組織または細胞特異的プロモーターである。空間的に制限されたプロモーターは、ニューロン特異的プロモーター、心筋細胞特異的プロモーター、骨格筋特異的プロモーター、肝臓特異的プロモーター、星状細胞特異的プロモーター、ミクログリア特異的プロモーター、及びオリゴデンドロサイト特異的プロモーターからなる群から選択されるものなど、任意の好適なプロモーターであり得る。本明細書で使用される場合、特定の発現は、発現産物が特定の組織(複数可)または細胞型(複数可)においてのみ発現されることを意味するものではなく、実質的に特定の組織(複数可)または細胞型(複数可)に限定される発現を指す。例えば、Pacak et al.“Tissue specific promoters improve specificity of AAV9 mediated transgene expression following intra-vascular gene delivery in neonatal mice.”Genetic Vaccines and Therapy 6(13) doi:10.1186/1479-0556-6-13 (2008)を参照のこと。
【0108】
いくつかの実施形態において、RNAポリメラーゼIIプロモーターが、RNAポリメラーゼIIプロモーターの5’UTR、5’UTR FXN、及びFXNヌクレオチド配列に、以下の例示的な順序で、RNAポリメラーゼIIプロモーター-RNAポリメラーゼIIプロモーターの5’UTR-5’UTR FXN-ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。例えば、核酸構築物は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み得、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0109】
核酸構築物はまた、CBAプロモーター配列(配列番号5)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み得、CBAプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたCBA 5’UTR(配列番号23)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0110】
他の構築物において、RNAポリメラーゼIIプロモーターが、5’UTR FXN及びFXNヌクレオチド配列に、以下の例示的な順序で、RNAポリメラーゼIIプロモーター-5’UTR FXN -ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。例えば、核酸構築物は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み得、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置された5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。核酸構築物はまた、CBAプロモーター配列(配列番号5)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)も含み得、CBAプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置された5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。
【0111】
イントロン
本明細書に記載の核酸構築物のうちのいずれも、1つ以上のイントロンヌクレオチド配列をさらに含むことができる。イントロンは、発現を調節するために核酸構築物内の任意の好適な位置に位置することができる。イントロン配列は、5’UTR FXNの上流に位置することができる。イントロンは、5’UTR FXNの下流に位置することができる。いくつかの実施形態において、イントロンは、5’UTR FXNとヒトFXNをコードする核酸配列との間に配置される。イントロン及びそのスプライシングは、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現に寄与し得る。配列番号36及び配列番号37(以下に記載)は、本明細書で提供される構築物のうちのいずれかで使用することができる例示的なイントロン配列である。他のイントロン配列は、当該技術分野で既知である。例えば、Domenger and Grimm;and Huang et al.“Intervening sequences increase efficiency of RNA 3’ procesing and accumulation of cytoplasmic RNA,” Nucleic Acids Res.18(4):937-947(1990)を参照のこと。
gtaagtatcaaagtatcaaggttacaagacaggtttaaggagaccaatagaaactgggcttgtcgagacagagaagactcttgcgtttctgataggcacctattggtcttactgacatccactttgcctttctctccacag(配列番号36)。
gtaagtttagtctttttgtcttttatttcaggtcccggatccggtggtggtgcaaatcaaagaactgctcctcagtggatgttgcctttacttctag(配列番号37)。
【0112】
いくつかの実施形態において、イントロンは、ヒトフラタキシンをコードする天然に存在する核酸には見られないイントロンである。
【0113】
例えば、限定するものではないが、以下の例示的な順序で、(a)RNAポリメラーゼIIプロモーターを含む核酸配列、(b)5’UTR FXNを含む核酸配列、(c)イントロン、及び(d)ヒトFXNをコードする核酸配列を含む核酸構築物が、本明細書で提供され、RNAポリメラーゼIIプロモーターは、5’UTR FXN及びヒトFXNをコードする核酸配列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、ヒトFXをコードする核酸配列は、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0114】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、ヒトフラタキシン3’UTR(3’UTR FXN)またはヒトFXNのコード配列の下流に配置される切断された3’UTR FXNをさらに含む。いくつかの実施形態において、核酸構築物は、3’UTR FXNまたは切断された3’UTR FXNがFXNの発現を調節するための調節要素を含まないため、ヒトフラタキシン3’UTR(3’UTR FXN)または切断された3’UTR FXNを含まない。3’UTRの例としては、配列番号40、配列番号41、配列番号46、配列番号47、またはそれらの断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、一対の逆方向末端反復(ITR)をさらに含み、核酸構築物は、当該ITRによって各々に隣接する。例示的なITR配列としては、配列番号38、配列番号39、及びそれらの逆相補体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施形態において、核酸構築物は、ポリアデニル化(ポリA)配列、例えば、ポリAウシ成長ホルモン配列をコードする核酸配列をさらに含む。配列番号63は、ウシ成長ホルモンポリA配列をコードする例示的な配列である。
【0117】
全体を通して使用されるように、「核酸」または「ヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれか形態での、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)及びそのポリマーを指す。本明細書で提供される配列のうちのいずれかに相補的な配列も、提供される。RNAが記載される場合、その対応するcDNAもまた記載され、ウリジンはチミジンとして表されることを理解されたい。cDNAが記載される場合、その対応するmRNAもまた記載される。具体的に限定されない限り、当該用語は、参照核酸と類似する特性を有し、天然に存在するヌクレオチドに類似する様式で代謝される、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を網羅する。核酸配列は、デオキシリボ核酸及びリボ核酸の組み合わせを含むことができる。このようなデオキシリボ核酸及びリボ核酸には、天然に存在する分子及び合成類似体の両方が含まれる。本発明のポリヌクレオチドはまた、一本鎖形態、二本鎖形態、ヘアピン、ステムアンドループ構造などを含むが、これらに限定されない配列のすべての形態を網羅する。
【0118】
別段の指示のない限り、特定の核酸配列は、明示的に指示された配列に加えて。保存的に修飾されたそのバリアント(例えば縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的な配列も黙示的に網羅する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基により置換された配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991)、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985)、及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。
【0119】
配列番号1~63のうちのいずれか1つに対して少なくとも60%の同一性を有する核酸配列を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる核酸配列が、本明細書で提供される。本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の文脈で使用される場合、「同一性」または「実質的同一性」という用語は、参照配列に対して少なくとも60%の配列同一性を有する配列を指す。あるいは、同一性パーセントは、60%~100%の任意の整数であり得る。例示的な実施形態は、本明細書に記載のプログラムを使用する参照配列、好ましくは、以下に記載されるように、標準パラメータを使用するBLASTと比較して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%含む。当業者は、これらの値が、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定する場合に、コドン縮重、アミノ酸類似性、読み取りフレーム配置などを考慮に入れることによって、適切に調整することができることを認識するであろう。
【0120】
配列比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することができ、または代替的なパラメータを指定することができる。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0121】
本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、20~600、通常は約50~約200、さら通常は約100~約150からなる群から選択される隣接位置の数のうちのいずれか1つのセグメントへの言及を含み、この中で、配列が、2つの配列を最適に整列させた後で同じ数の隣接位置の参照配列と比較する。比較のための配列のアラインメントの方法は、当該技術分野で周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman Add.APL.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:2444(1988)の類似性探索法により、これらのアルゴリズム(例えばBLAST)のコンピュータ実装により、または手動アラインメント及び目視検査により、実行され得る。
【0122】
パーセント配列同一性及び配列類似性を判定するのに好適なアルゴリズムは、それぞれ、Altschul et al.(1990) J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1977) Nucleic Acids Res.25:3389-3402に記載されるBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトを介して一般に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列における同じ長さのワードと整列するときに何らかの正値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たす、問い合わせ配列における長さの短いワードWを特定することによって、高スコアの配列対(HSP)を特定することを伴う。Tは、近傍のワードスコア閾値と称される(Altschulら、上記を参照)。これらの最初の近傍のワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシード値として機能する。次いで、ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加することができる限り、各配列に沿って両方向に延びる。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基の対に対するリワードスコア、常に0超)及びN(ミスマッチの残基に対するペナルティスコア、常に0未満)を使用して算出する。アミノ酸配列については、スコア化マトリックスを使用して累積スコアを算出する。各方向のワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ外れる場合、累積スコアが、1つ以上の負とスコア化される残基アラインメントの蓄積に起因してゼロ以下になる場合、またはいずれかの配列の末端に達する場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、整列の感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、28のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、M=1、N=-2、及び両方の鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、3のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコア化マトリックスをデフォルトとして使用する(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)。
【0123】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA90:5873-5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの測定は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こり得る確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸の参照核酸との比較における最小和確率が約0.01未満、より好ましくは約10-5未満、最も好ましくは約10-20未満である場合に、参照配列に類似していると見なされる。
【0124】
本明細書で提供される組換え核酸は、目的となる宿主細胞または生物における発現のために発現カセットに含まれ得る。カセットは、さらに、生物に共形質転換される少なくとも1つの追加の遺伝子または遺伝子要素を含有してもよい。追加の遺伝子または要素が含まれる場合、構成要素は、作動可能に連結される。本発明のプロモーターは、宿主細胞におけるコード配列の発現を指示または駆動することができる。他の調節領域(すなわち、転写調節領域、及び翻訳終結領域)を含むことができる。
【0125】
追加の調節シグナルとしては、転写開始出発部位、オペレーター、活性化剤、エンハンサー、他の調節要素、リボソーム結合部位、開始コドン、終結シグナルなどが挙げられるが、これらに限定されない。Sambrook et al.(1992) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,ed.Maniatis et al.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)(以下、「Sambrook 11」)、Davis et al.,eds.(1980) Advanced Bacterial Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory Press),Cold Spring Harbor,N.Y.、及びそれらに列挙される参考文献を参照のこと。
【0126】
発現カセットはまた、形質転換された細胞の選択のための選択可能なマーカー遺伝子を含むことができる。マーカー遺伝子としては、抗生物質耐性を付与する遺伝子、例えば、いくつか挙げると、ハイグロマイシン耐性、カナマイシン耐性、アンピシリン耐性、ゲンタマイシン耐性、ネオマイシン耐性を付与する遺伝子が挙げられる。追加の選択可能なマーカーが既知であり、任意のマーカーを使用することができる。アンピシリン耐性及びカナマイシン耐性を付与する遺伝子のための例示的な配列は、それぞれ、配列番号44及び配列番号45として本明細書で提供される。本明細書に記載の構築物のうちのいずれか、例えば、pLP1001、pLP1002、pLP1003、pLp1004、またはpLP1049におけるアンピシリン耐性遺伝子は、カナマイシン耐性遺伝子で置き換えることができる。
【0127】
発現カセットの調製において、様々なDNA断片を操作して、適切な方向で、かつ必要に応じて、適切な読み取りフレームにおいてDNA配列を提供することができる。この目的のために、アダプターまたはリンカーを用いて、DNA断片を連結してもよく、または他の操作が関与して、好都合な制限部位、過剰なDNAの除去、制限部位の除去などを提供することができる。この目的のために、インビトロ変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば、移行及び横断が、関与し得る。
【0128】
ベクター
本明細書に記載の核酸構築物のうちのいずれかを含むベクターも、提供される。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミドである。いくつかの実施形態において、ベクターは、組換えウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、DNAベクターまたはRNAベクターである。ウイルスベクターの例としては、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、またはアデノウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載のウイルスベクターのうちのいずれも、対象への投与のためにウイルス粒子またはビリオンに包装することができることを理解されたい。
【0129】
いくつかの実施形態において、組換えウイルスベクターは、AAVベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、5’逆方向末端反復及び3’逆方向末端反復を含むAAVベクターである。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、一本鎖AAVベクターまたは自己相補的AAVベクターであり得る。
【0130】
本明細書で使用される場合、「組換えAAVベクター」は、AAVに通常は存在しない核酸配列(すなわち、AAVとは異種のポリヌクレオチド)、例えば、ヒトフラタキシンを発現する本明細書に記載の核酸構築物のうちのいずれかを含むAAVベクターを指す。概して、異種核酸は、少なくとも1つ、一般的には2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)によって隣接される。組換えAAVベクターという用語は、rAAVベクター粒子及び組換えAAVベクタープラスミドの両方を包含する。組換えAAVベクターは、一本鎖(ssAAV)または自己相補的(scAAV)のいずれかであり得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターは、配列番号6~14及び24~28のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、組換えAAVベクターは、配列番号6~14及び24~28のうちのいずれか1つを含む。
【0132】
組換えAAVベクターは、パッケージングのためのウイルス配列をさらに含むことができる。任意の欠損したウイルス機能は、パッケージング細胞によってトランスで供給され得る。例えば、遺伝子療法で使用される組換えAAVベクターは、組換えAAVゲノム由来の逆方向末端反復(ITR)配列のみを有し得、ベクターのバランスは、目的となる配列(例えば、5’UTR FXN及びFXNヌクレオチド配列)を含むことができる。ITR配列は、AAVキャプシドにパッケージングするために含まれ得る。パッケージング細胞はまた、他のAAV遺伝子(例えば、rep及びcap)をコードするが、ITR配列を欠くプラスミドを含有することができる。rep及びcap遺伝子をコードするプラスミドは、ITR配列の欠如により、かなりの量でパッケージ化されない場合がある。パッケージング細胞はまた、AAVベクターの複製ならびにrep及びcap遺伝子をコードするプラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進することができるヘルパーウイルスとしてアデノウイルスに感染させることができる。パッケージング細胞は、AAVベクターの複製ならびにrep及びcap遺伝子をコードするプラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進するアデノウイルスなどのヘルパーウイルスの遺伝子産物をコードするヘルパープラスミドでトランスフェクトすることができる。
【0133】
パッケージング細胞からのAAV粒子の精製は、ウイルスベクターを産生するパッケージング細胞の成長、続いて細胞上清及び/または粗溶解物からのウイルスベクター粒子の収集を伴うことができる。次いで、AAVを、例えば、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、米国特許第7419817号及びUS6989264)、イオン交換クロマトグラフィー及びCsClまたはイオジキサノール密度遠心分離(例えば、PCT公開WO2011094198A10)、免疫親和性クロマトグラフィー(例えば、WO2016128408)、またはAVBセファロースを使用する精製(例えば、GE Healthcare Life Sciences)によって精製することができる。
【0134】
本明細書で使用される場合、組換えAAV粒子またはビリオンは、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質及びカプシド化された組換えAAVベクターを含むウイルス粒子である。本明細書で使用される場合、組換えAAV粒子は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質及びカプシド化された組換えAAVベクターを含むウイルス粒子である。「AAVウイルス」、「AAVビリオン」、「AAVウイルス粒子」、または「組換えAAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質及びカプシド化されたポリヌクレオチド組換えAAVベクターからなるウイルス粒子を指す。粒子が異種核酸配列(すなわち、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子などの野生型AAVゲノム以外の核酸配列)を含む場合、それは、組換えAAVベクターと称され得る。したがって、組換えAAV粒子またはビリオンの生成は、組換えAAVベクターの生成を必然的に含み、例えば、ベクターは、組換えAAV粒子内に含有される。AAVベクター及びビリオンを生成するための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、Shin et al.“Recombinant Adeno-Associated Viral Vector Production and Purification,” Methods Mol.Biol.798:267-284(2012)を参照のこと)。
【0135】
本明細書に記載のベクターのうちのいずれかを含む細胞も、提供される。宿主細胞は、インビトロ宿主細胞、エキソビボ宿主細胞、またはインビボ宿主細胞であり得る。本明細書に記載の宿主細胞のうちのいずれかの集団も、提供される。本明細書に記載の1つ以上の宿主細胞を含む細胞培養物も、提供される。細菌(例えば、大腸菌及び他の細菌株)、動物(特に哺乳動物)、及びアーキバス菌起源の細胞を含む多くの細胞の培養及び生成のための方法は、当該技術分野で入手可能である。例えば、Sambrook、Ausubel、及びBerger(上記すべて)、ならびにFreshney (1994) Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,3rd Ed.,Wiley-Liss,New York、ならびにそこで引用される参考文献;Doyle and Griffiths(1997) Mammalian Cell Culture:Essential Techniques John Wiley and Sons,NY;Humason(1979) Animal Tissue Techniques,4th Ed.W.H.Freeman and Company、及びRicciardelli,et al.,(1989) In vitro Cell Dev.Biol.25:1016-1024を参照のこと。
【0136】
宿主細胞は、例えば、細菌細胞を含む原核細胞であり得る。あるいは、細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞であり得る。いくつかの実施形態において、細胞は、HEK293T細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS-7細胞、HELA細胞、鳥類細胞、骨髄腫細胞、ピキア細胞、昆虫細胞、または植物細胞であり得る。いくつかの他の好適な宿主細胞株が、開発されており、骨髄腫細胞株、線維芽細胞株、及び黒色腫細胞株などの様々な腫瘍細胞株を含む。目的となる核酸セグメントを含有するベクターは、細胞宿主の種類に応じて変化する周知の方法によって宿主細胞に移行または導入することができる。
【0137】
ベクターを細胞に導入するための方法は、当該技術分野で既知である。本明細書で使用される場合、核酸を細胞に導入する文脈において「導入する」という語句は、核酸配列の細胞の外側から細胞の内側への転位を指す。ある場合によっては、導入とは、細胞の外側から細胞の核の内側への核酸の転位を指す。かかる転位の様々な方法が企図されており、限定されないが、エレクトロポレーション、ナノ粒子送達、ウイルス送達、ナノワイヤーまたはナノチューブとの接触、受容体媒介性内在化、細胞透過性ペプチドを介した転位、リポソーム媒介性転位、DEAEデキストラン、リポフェクタミン、リン酸カルシウム、または原核細胞もしくは真核細胞宿主への核酸の導入するための現在知られているまたは将来特定される任意の方法が挙げられる。標的化ヌクレアーゼ系(例えば、RNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、CRISPR/Cas9系)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはメガタール(MT)(Li et al.Signal Transduction and Targeted Therapy 5, Article No.1(2020))も、核酸を宿主細胞に導入するために使用することができる。
【0138】
AAV血清型
本明細書で提供される組換えAAVベクターを含む組換えAAV粒子は、任意の天然または組換えAAV血清型を含むか、またはそれに由来することができる。AAV粒子は、AAV1、AAV10、AAV106.1/hu.37、AAV11、AAV114.3/hu.40、AAV12、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.1/hu.43、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV16.12/hu.11、AAV16.3、AAV16.8/hu.10、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2、AAV2.5T、AAV2-15/rh.62、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV2-3/rh.61、AAV24.1、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV27.3、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV2G9、AAV-2-pre-miRNA-101、AAV3、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-11/rh.53、AAV3-3、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV3-9/rh.52、AAV3a、AAV3b、AAV4、AAV4-19/rh.55、AAV42.12、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV4-4、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV4-8/r11.64、AAV4-8/rh.64、AAV4-9/rh.54、AAV5、AAV52.1/hu.20、AAV52/hu.19、AAV5-22/rh.58、AAV5-3/rh.57、AAV54.1/hu.21、AAV54.2/hu.22、AAV54.4R/hu.27、AAV54.5/hu.23、AAV54.7/hu.24、AAV58.2/hu.25、AAV6、AAV6.1、AAV6.1.2、AAV6.2、AAV7、AAV7.2、AAV7.3/hu.7、AAV8、AAV-8b、AAV-8h、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAVA3.7、AAV-b、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAV-DJ、AAV-DJ8、AAVF3、AAVF5、AAV-h、AAVH-1/hu.1、AAVH2、AAVH-5/hu.3、AAVH6、AAVhE1.1、AAVhER1.14、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhER1.23、AAVhEr1.35、AAVhEr1.36、AAVhEr1.5、AAVhEr1.7、AAVhEr1.8、AAVhEr2.16、AAVhEr2.29、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhEr2.4、AAVhEr3.1、AAVhu.1、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.11、AAVhu.12、AAVhu.13、AAVhu.14/9、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.19、AAVhu.2、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.3、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.4、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.5、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.53、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.6、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.7、AAVhu.8、AAVhu.9、AAVhu.t 19、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVLG-9/hu.39、AAV-LK01、AAV-LK02、AAVLK03、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAVN721-8/rh.43、AAV-PAEC、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAVpi.1、AAVpi.2、AAVpi.3、AAVrh.10、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.2、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.2R、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.43、AAVrh.44、AAVrh.45、AAVrh.46、AAVrh.47、AAVrh.48、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.50、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.55、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.59、AAVrh.60、AAVrh.61、AAVrh.62、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.65、AAVrh.67、AAVrh.68、AAVrh.69、AAVrh.70、AAVrh.72、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh8R、AAVrh8R A586R変異、AAVrh8R R533A変異、BAAV、BNP61 AAV、BNP62 AAV、BNP63 AAV、ウシAAV、ヤギAAV、Japanese AAV 10、true type AAV(ttAAV)、UPENN AAV 10、AAV-LK16、AAAV、AAV Shuffle 100-1、AAV Shuffle 100-2、AAV Shuffle 100-3、AAV Shuffle 100-7、AAV Shuffle 10-2、AAV Shuffle 10-6、AAV Shuffle 10-8、AAV SM 100-10、AAV SM 100-3、AAV SM 10-1、AAV SM 10-2、及び/またはAAV SM 10-8を含むが、これらに限定されない、血清型のうちのいずれかから選択された血清型及びそれらのバリアントであり得るか、またはそれらに基づき得る。
【0139】
AAV血清型は、AAV9.9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84などであるが、これらに限定されない、N Pulicherla et al.(Molecular Therapy 19(6):1070-1078(2011)によって記載されるように、AAV9配列における変異であり得るか、またはそれを有し得る。
【0140】
AAV血清型は、AAV3B(US6156303の配列番号1及び10)、AAV6(US6156303の配列番号2、7、及び11)、AAV2(US6156303の配列番号3及び8)、AAV3A(US6156303の配列番号4及び9)またはそれらの誘導体などであるが、これらに限定されない、米国特許第US6156303号に記載の配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0141】
血清型は、Grimm et al.(Journal of Virology 82(12):5887-5911(2008))によって記載されるように、AAVDJ8(またはAAV-DJ8)などのAAVDJまたはその誘導体であり得る。AAVDJ8のアミノ酸配列は、ヘパリン結合ドメイン(HBD)を除去するために、2つ以上の変異を含むことができる。米国特許第7588772号の配列番号1として記載されるAAV-DJ配列は、2つの変異:(1)アミノ酸587におけるアルギニン(R;Arg)がグルタミン(Q;Gln)に変化するR587Q、及び(2)アミノ酸590におけるアルギニン(R;Arg)がスレオニン(T;Thr)に変化するR590Tを含むことができる。別の非限定的な例として、AAVDJ8のアミノ酸配列は、3つの変異:(1)アミノ酸406におけるリジン(K;Lys)がアルギニン(R;Arg)に変化するK406R、(2)アミノ酸587におけるアルギニン(R;Arg)がグルタミン(Q;Gln)に変化するR587Q、及び(3)アミノ酸590におけるアルギニン(R;Arg)がスレオニン(T;Thr)に変化するR590Tを含むことができる。
【0142】
AAV血清型は、true type AAV(ttAAV)(WO2015121501の配列番号2)、「UPenn AAV10」(WO2015121501の配列番号8)、「Japanese AAV10」(WO2015121501の配列番号9)、またはそれらのバリアントなどであるが、これらに限定されない、国際公開第WO2015121501号に記載の配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0143】
AAVカプシド血清型の選択または使用は、種々の種に由来し得る。例えば、AAVは、トリAAV(AAAV)であり得る。AAV血清型は、AAAV(US9238800の配列番号1、2、4、6、8、10、12、及び14)またはそのバリアントなどであるが、これに限定されない、米国特許第US9238800号に記載の配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0144】
AAVは、ウシAAV(BAAV)であり得る。BAAV血清型は、限定されないが、BAAV(US9193769の配列番号1及び6)またはそのバリアントなどであるが、これに限定されない、米国特許第US9193769号に記載の配列であり得るか、またはそれを有し得る。BAAV血清型は、BAAV(US7427396の配列番号5及び6)またはそのバリアントなどであるが、これに限定されない、米国特許第US7427396号に記載の配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0145】
AAVは、カプリンAAVであり得る。カプリンAAV血清型は、限定されないが、カプリンAAV(US7427396の配列番号3)またはそのバリアントなどであるが、これらに限定されない、米国特許第US7427396号に記載の配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0146】
AAVは、2つ以上の親血清型からのハイブリッドAAVとして操作され得る。AAVは、AAV2及びAAV9からの配列を含むAAV2G9であり得る。AAV2G9 AAV血清型は、米国特許公開第US20160017005号に記載の配列であり得るか、またはそれを有し得る。
【0147】
AAVは、Pulicherla et al.(Molecular Therapy 19(6):1070-1078(2011)によって記載されるように、アミノ酸390~627(VP1番号付け)の変異を有するAAV9カプシドライブラリーによって生成された血清型であり得る。血清型ならびに対応するヌクレオチド及びアミノ酸置換は、AAV9.1(G1594C;D532H)、AAV6.2(T1418A及びT1436X;V473D及びI479K)、AAV9.3(T1238A;F413Y)、AAV9.4(T1250C及びA1617T;F417S)、AAV9.5(A1235G、A1314T、A1642G、C1760T;Q412R、T548A、A587V)、AAV9.6(T1231A;F411I)、AAV9.9(G1203A、G1785T;W595C)、AAV9.10(A1500G、T1676C;M559T)、AAV9.11(A1425T、A1702C、A1769T;T568P、Q590L)、AAV9.13(A1369C、A1720T;N457H、T574S)、AAV9.14(T1340A、T1362C、T1560C、G1713A;L447H)、AAV9.16(A1775T;Q592L)、AAV9.24(T1507C、T1521G;W503R)、AAV9.26(A1337G、A1769C;Y446C、Q590P)、AAV9.33(A1667C;D556A)、AAV9.34(A1534G、C1794T;N512D)、AAV9.35(A1289T、T1450A、C1494T、A1515T、C1794A、G1816A;Q430L、Y484N、N98K、V606I)、AAV9.40(A1694T、E565V)、AAV9.41(A1348T、T1362C;T450S)、AAV9.44(A1684C、A1701T、A1737G;N562H、K567N)、AAV9.45(A1492T、C1804T;N498Y、L602F)、AAV9.46(G1441C、T1525C、T1549G;G481R、W509R、L517V)、9.47(G1241A、G1358A、A1669G、C1745T;S414N、G453D、K557E、T582I)、AAV9.48(C1445T、A1736T;P482L、Q579L)、AAV9.50(A1638T、C1683T、T1805A;Q546H、L602H)、AAV9.53(G1301A、A1405C、C1664T、G1811T;R134Q、S469R、A555V、G604V)、AAV9.54(C1531A、T1609A;L511I、L537M)、AAV9.55(T1605A;F535L)、AAV9.58(C1475T、C1579A;T492I、H527N)、AAV.59(T1336C;Y446H)、AAV9.61(A1493T;N498I)、AAV9.64(C1531A、A1617T;L511I)、AAV9.65(C1335T、T1530C、C1568A;A523D)、AAV9.68(C1510A;P504T)、AAV9.80(G1441A,;G481R)、AAV9.83(C1402A、A1500T;P468T、E500D)、AAV9.87(T1464C、T1468C;S490P)、AAV9.90(A1196T;Y399F)、AAV9.91(T1316G、A1583T、C1782G、T1806C;L439R、K528I)、AAV9.93(A1273G、A1421G、A1638C、C1712T、G1732A、A1744T、A1832T;S425G、Q474R、Q546H、P571L、G578R、T582S、D611V)、AAV9.94(A1675T;M559L)、及びAAV9.95(T1605A;F535L)であり得るが、これらに限定されない。
【0148】
AAVは、少なくとも1つのAAVカプシドCD8+T細胞エピトープを含む血清型であり得る。非限定的な例として、血清型は、AAV1、AAV2、またはAAV8であり得る。
【0149】
AAVは、Deverman.2016.Nature Biotechnology.34(2):204-209に記載されるように、PHP.AまたはPHP.Bなどのバリアントであり得る。
【0150】
本開示はまた、AAV粒子生成に必要な構成要素のすべてを安定的に発現する細胞株を創出することを含むパッケージング細胞を生成する方法も提供する。例えば、AAV rep及びcap遺伝子が欠如した組換えAAVゲノムを含むプラスミド(または複数のプラスミド)、組換えAAVゲノムとは別のAAV rep及びcap遺伝子、ならびにネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能なマーカーが、細胞のゲノムに統合される。AAVゲノムは、例えば、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65-73)、または直接的な平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661-4666)などの手順によって細菌プラスミドに導入されてきた。次いで、パッケージング細胞株を、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させることができる。この方法のいくつかの利点は、細胞が選択可能であり、かつ組換えAAVの大規模生産に適していることである。好適な方法の他の例は、プラスミドではなくアデノウイルスまたはバキュロウイルスを用いて、組換えAAVゲノム及び/またはrep及びcap遺伝子をパッケージング細胞に導入する。組換えAAV生成の全般的な原理は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539及びMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial. and Immunol.,158:97-129)で概説されている。様々なアプローチが、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988)、及びLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988).Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822-3828);米国特許第US5173414号;WO95/13365及び対応する米国特許第US5658776号;WO95/13392;WO96/17947;PCT/US98/18600;WO97/09441(PCT/US96/14423);WO97/08298(PCT/US96/13872);WO97/21825(PCT/US96/20777);WO97/06243(PCT/FR96/01064);WO99/11764、Perrin et al.(1995) Vaccine 13:1244-1250、Paul et al.(1993) Human Gene Therapy 4:609-615、Clark et al.(1996) Gene Therapy 3:1124-1132;米国特許第US5786211号;米国特許第US5871982号;及び米国特許第US6258595号に記載されている。
【0151】
AABベクター血清型は、標的細胞タイプにマッチさせることができる。例えば、以下の例示的な細胞タイプは、特に示されるAAV血清型によって形質導入することができる。表1を参照のこと。
【表1】
【0152】
薬学的組成物
本明細書に記載の組換えウイルスベクターまたはウイルス粒子のうちのいずれかを含む薬学的組成物が、本明細書に提供される。薬学的組成物は、例えば、送達を増加させる(例えば、標的細胞の感染を増加させる、及び/または感染させることができる細胞の範囲を増加させる)、組換えベクターの安定性を増加させる、または組換えベクター、例えば、AAVベクターの免疫原性を減少させるのに好適な追加の構成要素を含むことができる。例えば、薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤、及び/または塩を含み得る。薬学的に許容される担体は、患者への組換えAAVベクターの送達または活性を実質的に妨げることができる量の緩衝液、化合物、凍結保存剤、保存剤、または他の薬剤を除外することができる。例示的な液体担体は、組換えAAVベクター及び水に加えて材料を含有しない無菌水性溶液、または生理的pH値のリン酸ナトリウムなどの緩衝液、生理食塩水、またはその両方(例えば、リン酸緩衝食塩水)を含有する無菌水性溶液である。またさらに、水性担体は、2つ以上の緩衝塩、さらに塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの塩、ブドウ糖、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質を含有することができる。また液体組成物は、水に加えて及び水以外に、液相も含有することができる。このような追加の液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、及び水-油エマルジョンである。
【0153】
薬学的組成物は、対象の細胞(複数可)における発現産物の産生を可能にするように、対象に送達することができる。薬学的組成物は、レシピエントが、細胞におけるFXN発現を調節する、及び/または対象におけるFAを治療する有効量の発現産物を産生することを可能にする十分な遺伝子材料を含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、薬学的組成物はまた、薬学的に許容される賦形剤も含有する。かかる賦形剤としては、それ自体で、組成物を投与される個体へ有害な免疫応答を誘導せず、過度の毒性なしに投与され得る任意の医薬剤が挙げられる。薬学的に許容される賦形剤としては、水、生理食塩水、グリセロール、糖、及びエタノールなどの液体が挙げられるがこれらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば鉱酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、及び同種のものなど);及び有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、及び同種のものなど)は、その中に含まれ得る。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、及び同種のものなどの補助物質は、かかるビヒクル中に存在し得る。これらの材料を含有する薬学的に許容される担体、賦形剤、及び製剤の調製は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd edition,Loyd V.Allen et al,editors,Pharmaceutical Press(2012)に記載される。
【0155】
非経口投与に好適な薬学的製剤は、水溶液中、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス溶液、リンガー溶液、または生理学的に緩衝された生理食塩水中で製剤化され得る。水性注入懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製してもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。任意に、懸濁液はまた、好適な安定剤または高度に濃縮された溶液の調製を可能にする化合物の溶解度を増加させる薬剤も含有し得る。
【0156】
遺伝子改変細胞
本明細書に記載の核酸構築物または組換えウイルスベクターのうちのいずれかを含む遺伝子改変細胞も、本明細書に提供される。本明細書で使用される場合、「遺伝子改変細胞」は、本明細書に記載の核酸構築物または組換えウイルスベクターのうちのいずれかを細胞に導入した結果として、少なくとも1つのゲノム改変を有する細胞を指す。遺伝子改変細胞は、インビトロ遺伝子改変細胞、エキソビボ遺伝子改変細胞、またはインビボ遺伝子改変細胞であり得る。
【0157】
遺伝子改変細胞は、ヒト幹細胞(例えば、多能性幹細胞、例えば、ニューロン及び心筋細胞に分化し得る間葉系幹細胞)、ヒトニューロン、ヒト心筋細胞、ヒト平滑筋細胞、ヒト骨格筋細胞、及びヒト肝細胞からなる群から選択されるものなどの任意の好適な遺伝子改変細胞であり得る。
【0158】
いくつかの実施形態において、骨髄由来間葉系幹細胞は、FAを有する対象から単離され、5’UTR及びヒトFXをコードする核酸配列を含む核酸構築物を挿入するように遺伝子改変される。次いで、遺伝子改変細胞を、対象に再び自己移植する。いくつかの実施形態において、遺伝子改変細胞を全身に送達して、FA患者の脳及び心臓への移植片の標的送達を可能にすることができる。例えば、Tajiri et al.“Autologous Stem Cell Transplant with Gene Therapy for Friedreich Ataxia,” Med.Hypotheses 83(3):296-298(2014)を参照のこと。細胞の遺伝子改変のための核酸及びベクターの導入のための方法を、上に記載する。
【0159】
「遺伝子改変」という用語は、細胞、生物、ウイルス、ウイルスベクター、または他の生物学的作用物質のDNAゲノム(または場合によってはRNAゲノム)の任意の変化を指す。遺伝子改変の非限定的な例としては、挿入、欠失、置換、外因性核酸が細胞及び/または生物に付加されるトランスフェクションまたは形質転換などの手順、ならびにクローニング技術が挙げられる。
【0160】
「挿入」という用語は、核酸配列における1つ以上のヌクレオチドの付加を指す。挿入は、いくつかのヌクレオチドの小さな挿入から、cDNAまたは遺伝子などの大きなセグメントの挿入までの範囲であり得る。
【0161】
「欠失」という用語は、核酸配列における1つ以上のヌクレオチドの喪失もしくは除去、または遺伝子の機能の喪失もしくは除去を指す。場合によっては、欠失には、例えば、いくつかのヌクレオチド、エクソン、イントロン、遺伝子セグメント、または遺伝子の全配列の喪失が含まれ得る。場合によっては、遺伝子の欠失は、遺伝子の機能もしくは発現またはその遺伝子産物の除去または低減を指す。これは、遺伝子内またはその近傍の配列の欠失からだけでなく、遺伝子の発現を破壊する他の事象(例えば挿入、ナンセンス変異)からも生じ得る。
【0162】
「置換」という用語は、核酸配列中の1つ以上のヌクレオチドを同数のヌクレオチドで置き換えることを指す。
【0163】
核酸配列の遺伝子改変は、「組換え」配列をもたらし得る。例えば、本開示は、本明細書に開示される要素を含むように遺伝子改変された「組換えAAVベクター」を提供する。
【0164】
治療の方法
FAを治療するための方法も、提供される。本方法は、FAを有する対象に、治療有効量の本明細書で提供される組換えAAV粒子のうちのいずれかを投与することを含む。
【0165】
全体を通して使用されるように、対象によって、個体が意味される。対象は、成人の対象または小児の対象であり得る。小児の対象は、生まれた時から18歳の年齢中の範囲の対象を包含する。好ましくは、対象は、動物、例えば哺乳動物(霊長動物など)、及びより好ましくはヒトである。非ヒト霊長動物も同様に対象である。対象という用語は、飼育動物(ネコ、イヌなど)、家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、及び実験用動物(例えばフェレット、チンチラ、マウス、ウサギ、ラット、アレチネズミ、モルモットなど)を包含する。したがって、獣医学的使用及び医学的製剤が、本明細書において企図される。
【0166】
全体を通して使用されるように、「治療する」、「治療すること」、及び「治療」は、FAの1つ以上の影響または症状を低減または遅延させる方法を指す。対象は、FAと診断され得る。治療は、単なる症状ではなく背景病理を低減する方法も指し得る。対象への投与の効果は、疾患の1つ以上の症状の低減、疾患の重症度の低減、疾患の完全な除去、または1つ以上の症状の開始もしくは悪化の遅延であるが、これらに限定されない、効果を有し得る。例えば、開示される方法は、治療の前の対象と比較した場合に、または対照の対象もしくは対照値と比較した場合に、疾患の1つ以上の症状(例えば、対象における腕及び脚の筋力低下、運動失調、糖尿病、心筋症など)に約10%の低減があるならば、治療であると判断される。したがって、低減は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量の低減であり得る。
【0167】
ヒト細胞におけるFXNの発現を調節する方法も提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、ヒト細胞に、本明細書で提供される組換えAAVベクターのうちのいずれかを導入することを含む。いくつかの実施形態において、細胞は、対象に存在する。
【0168】
FAを有する対象のヒト細胞におけるアデノシン三リン酸(ATP)濃度を増加させるための方法も、提供される。本方法は、対象に、治療有効量の本明細書で提供される組換えAAV粒子のうちのいずれかを投与することを含む。いくつかの方法において、ヒト細胞は、ニューロン、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、及び肝細胞からなる群から選択される。
【0169】
FAを有する対象のヒト細胞におけるATP濃度を増加させるための方法も、提供される。本方法は、治療有効量の本明細書で提供される組換えAAV粒子のうちのいずれかを投与することを含む。いくつかの方法において、ヒト細胞は、ニューロン、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、及び肝細胞からなる群から選択される。
【0170】
本明細書で使用される場合、増加は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%またはそれ以上の増加であり得る。FA患者の細胞内で発現されるATPのレベルの増加は、疾患の1つ以上の症状を改善し、長期生存を増加させる、及び/または他の治療に関連する副作用を低減させるのに有益であり得る。本明細書に開示される組換えAAVベクターをヒトFA患者に投与すると、組換えAAVベクターは、増加したが調節されたレベルのFXNを発現することができ、ミトコンドリアによるATP産生は、疾患状態と比較して増加することができる。かかる組換えAAVベクターが投与されるFA患者における100,000~500,000個の細胞、500,000~1,000,000個の細胞、1,000,000~2,500,000個の細胞、2,500,000~5,000,000個の細胞、5,000,000~10,000,000個の細胞、10,000,000~50,000,000個の細胞、50,000,000~100,000,000、100,000,000~250,000,000個の細胞、150,000,000~300,000,000個の細胞、250,000,000~500,000,000個の細胞、500,000,000~1,000,000,000個の細胞、1,000,000,000~5,000,000,000個の細胞、5,000,000,000~10,000,000,000個の細胞、10,000,000,000~20,000,000,000個の細胞、15,000,000,000~30,000,000,000個の細胞、30,000,000,000~50,000,000,000個の細胞、50,000,000,000~75,000,000,000個の細胞、または75,000,000,000~100,000,000,000個の細胞は、増加したが調節されたレベルのFXNを発現することができ、ミトコンドリアによるATP産生は、疾患状態と比較して増加することができる。
【0171】
「有効量」という用語は、全体を通して使用されるように、所望される生理的応答を生じ、例えば、FAの1つ以上の影響または症状を低減または遅延するのに必要な任意の量として定義される。本明細書に記載の組換えAAVビリオンを投与するために有効な量及びスケジュールは、経験的に判断され得、このような判断を行うことは、当該技術分野の範囲内である。投与のための投与量範囲は、疾患または障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、低減または遅延する)所望の効果をもたらすために十分に多いものである。投薬量は、実質的な有害副作用(望まれない交差反応、望まれない細胞死、及び同種のもの等)を引き起こす程多量であるべきでない。概して、投薬量は、対象の種、年齢、体重、全体的な健康、性別、及び食事、投与のモード及び時間、ならびに特定の病態の重症度により変動し、当業者によって決定され得る。投薬量は、任意の禁忌の事象において個々の医師によって調整され得る。投薬量は変動し得、1回分以上の用量を投与され得る。
【0172】
本明細書に記載の組換えAAVビリオンのうちのいずれかの有効量は、変化し、実験及び/または臨床試験を通じて当業者によって決定され得る。例えば、インビボ注射、例えば、対象の内耳への直接注射の場合、有効用量は、約106~約1015個の組換えrAAVビリオン、またはこの範囲内の任意の値、例えば、約106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、または1015個の組換えAAV粒子であり得る。
【0173】
いくつかの実施形態において、対象に投与されるrAAV粒子の数は、約106~1015個のベクターゲノム(vgs)/ml、例えば、約106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、または1015個のvg/mlの範囲のオーダーであり得る。いくつかの実施形態において、対象に投与されるrAAV粒子の数は、約106~1015個のvg/kg、またはこれらの量の間の任意の値、例えば、約106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、または1015個のvg/kgであり得る。他の有効な投薬量は、用量反応曲線を確立する日常的な試験を通じて、当業者によって容易に確立され得る。
【0174】
本明細書で提供される方法のうちのいずれかは、FAを有する対象に、第2の治療剤、例えば、β遮断薬、ACE阻害剤、抗酸化剤、利尿剤、抗糖尿病薬、またはそれらの組み合わせを投与することをさらに含むことができる。
【0175】
本明細書に記載の組成物は、局所的または全身的な治療が所望されるかどうかに応じて、多数の手法で投与される。組成物は、いくつかの投与経路、実質内注射、静脈内、髄腔内、筋肉内、大槽内、冠状動脈内注射、心筋内注射、経皮内、心筋内注射、またはそれらの組み合わせのうちのいずれかを介して投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、対象の後部半規管にカナロストミー(canalostomy)を投与される。本明細書に記載の投与方法の任意のものについての有効用量は、インビトロ試験系または動物モデル試験系に由来する用量-応答曲線から推測され得る。
【0176】
一般用語
本明細書で使用される場合、文法上の冠詞「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」が、場合によっては、明確に使用される場合でさえ、別段に指示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むように意図される。したがって、本明細書において、冠詞は、1つまたは1つを超える(すなわち、「少なくとも1つの」)冠詞の文法上の目的語を指すために使用される。さらに、単数の名詞の使用は、複数を含み、複数の名詞の使用は、使用の文脈が別段に必要としない限り、単数を含む。
【0177】
本明細書における「including(含む)」、「including(含む)」、または「having(有する)」及びこれらの変形の使用は、その後に列挙される要素及びそれらの等価物ならびに追加の要素を包含することを意味する。ある特定の要素を「including(含む)」、「including(含む)」、または「having(有する)」として列挙される実施形態は、「本質的にそれらの特定の要素からなる」及び「それらからなる」としても企図される。本明細書で使用される場合、「及び/または」とは、1つ以上の関連する列挙項目のありとあらゆる可能な組み合わせ、及び代替(「または」)で解釈する場合は組み合わせの欠如を指し、また、それらを包含する。
【0178】
本明細書で使用される場合、「~から本質的になる」という移行句(及び文法的互換表現)には、示されている材料または工程と、特許請求されている発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料または工程が含まれるものと解釈することとする。In re Herz,537 F.2d 549,551-52,190 U.S.P.Q.461,463(CCPA 1976)を参照のこと(原本では強調)。MPEP §2111.03も参照のこと。したがって、本明細書で使用される「から本質的になる」という用語は、「含む」と同等であると解釈されるべきではない。
【0179】
本明細書で挙げられている任意の数値範囲は、挙げられた範囲内に含まれる同じ数値的精度(すなわち、指定の桁の同じ数字)のすべてのサブ範囲を記述しているものとする。例えば、「1.0~10.0」と挙げられた範囲は、挙げられた最小値の1.0から挙げられた最大値の10.0の間(両端の値を含む)のすべてのサブ範囲を記述しているものとし、例えば、「2.4~7.6」という範囲が明細書の本文に明示的に挙げられていない場合であっても「2.4~7.6」を記述しているものとする。また、明示的な記載がないまたは文脈により別段の要求がない限り、本明細書に記載のすべての数値パラメータ(例えば、値、範囲、量、パーセンテージなどを表現するもの)は、「約」という語が明示的に数字の前に出現しない場合であっても、「約」という語が手前に置かれているかのように読み取ってもよい。「約」は、所望の結果に影響を及ぼすことなく、所与の値がエンドポイントを「わずかに上回る」または「わずかに下回る」ことができることを提供することによって、数値範囲エンドポイントに柔軟性を提供するために使用される。
【0180】
開示される方法及び組成物のために使用され得るか、それらと併用して使用され得るか、それらの調製において使用され得るか、またはそれらの産物である、材料、組成物、及び構成要素が開示される。これら及び他の材料は本明細書において開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合に、これらの化合物の各々の様々な個別の及び集合的な組み合わせ及び順列の具体的な参照が明示的に開示されなくてもよいが、各々は本明細書において具体的に企図及び記載されることが理解される。例えば、方法が開示及び検討され、当該方法中に含まれる多数の分子へ行われ得る多数の修飾が検討されるならば、当該方法の各々及びすべての組み合わせ及び順列ならびに可能な修飾は、相反することが具体的に示されない限り、具体的に企図される。同様に、任意のサブセットまたはこれらの組み合わせも具体的に企図及び開示される。この概念は、開示される組成物を使用する方法におけるステップが挙げられるがこれらに限定されない、本開示のすべての態様へ適用される。したがって、遂行され得る様々な追加のステップがあるならば、任意の具体的な方法ステップまたは開示される方法の方法ステップの組み合わせにより、これらの追加のステップのうちの各々が遂行され得ること、及び、各々のかかる組み合わせまたは組み合わせのサブセットは具体的に企図され、開示されたと判断されるべきであることが理解される。
【0181】
本明細書に引用される出版物及びそれらが引用される資料は、参照によりそれらの全体が具体的に本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0182】
本開示は、本発明の例示的かつ非限定的な態様を提供する以下の実施例を参照することによりさらに十分に理解されることになる。
【0183】
上述のように、フリードライヒ運動失調症(FA)は、運動失調、心筋症、及び糖尿病を特徴とする稀なミトコンドリア障害である。現在、この疾患の治療法は存在しない。AAVベースのアプローチを開発する文脈において、カプシドを標的とする脆弱な細胞型の同定とともに、フラタキシン(FXN)をコードする治療カセットを設計することの複雑さは、依然として分かりにくい。
【0184】
以下の実施例は、FAの治療のための組成物及び方法を記載する。FAは、例えば、GAAトリヌクレオチド反復対立遺伝子のホモ接合細胞における増加したが調節されたFXN発現を促進するウイルスベクターを介して、FXN遺伝子の発現を調節することによって治療され得る。FXNヌクレオチド配列は、FXN発現を調節することができる5’UTR FXNに作動可能に連結され得る。調節されたFXN発現は、FXN発現の調節された生理学的レベルを達成し、上昇したレベルのFXN発現を回避するために所望される。調節されない上昇した生理学的レベルのFXNは、ミトコンドリア呼吸の低下をもたらし得、これは、ミトコンドリア毒性を引き起こす。記載される組成物及び方法は、本明細書に記載及び例示されるように、FAの治療のための新規の戦略を表す。
【0185】
実施例1-FXN遺伝子発現に対する5’UTR FXN配列の影響
ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によって影響を受け得るかどうかを決定するために、実験を行った。
【0186】
組換えAAVベクターゲノムをコードするプラスミドベクターの4つのバージョンを構築した。第1のバージョン(配列番号7)は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)をさらに含む。第2のバージョン(配列番号8)は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列を含み、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。第3のバージョン(配列番号9)は、ヒトFXNヌクレオチド配列を有するC末端V5エピトープタグインフレームをさらに含むことを除いては、第1のバージョンに類似する。第4のバージョン(配列番号10)は、ヒトFXNヌクレオチド配列を有するC末端V5エピトープタグインフレームをさらに含むことを除いては、第2のバージョンに類似する。
【0187】
Sanger配列決定を介して4つのプラスミドベクターバージョンの正確な構築を確認した後、4つのバージョンの各々を、製造業者の指示に従って市販のトランスフェクション試薬を使用して、別個のHEK293細胞集団にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、4つの細胞集団を収集し、総タンパク質をRIPA緩衝液中で採取した。総タンパク質(全細胞抽出物)の試料を、SDS-PAGE及び免疫ブロッティングに供した。
図4に示すように、V5エピトープ(α V5)、ヒトフラタキシン(αフラタキシン)に対する市販の一次抗体、ならびに負荷対照として、GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)(α GAPDH)を使用して、ブロットをプローブした。続いて、HRPコンジュゲート二次抗体を用いて、ブロットをプローブした。
【0188】
レーン1は、5’UTR FXNを有しないヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第1のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたHEK293細胞の結果を示す。第1のプラスミドバージョンにはV5エピトープが含まれていないため、抗V5ブロットにシグナルは見られなかった。さらに、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。
【0189】
レーン2は、5’UTR FXNを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第2のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたHEK293細胞の結果を示す。第2のプラスミドバージョンにはV5エピトープが含まれていないため、抗V5ブロットにシグナルは見られなかった。
【0190】
さらに、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。レーン2の抗フラタキシンシグナルは、レーン1のシグナルよりも強度が低かった。
【0191】
レーン3は、5’UTR FXNを有さず、V5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第3のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたHEK293細胞の結果を示す。シグナルが、抗V5ブロットに見られ、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。
【0192】
レーン4は、5’UTR FXNを有し、かつV5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第4のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたHEK293細胞の結果を示す。シグナルが、抗V5ブロットに見られ、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。レーン4の抗フラタキシンシグナル及び抗V5シグナルは、レーン3の対応するシグナルよりも強度が低かった。
【0193】
レーン5は、トランスフェクトされていないHEK293細胞の結果を示す。内因性フラタキシン及びGAPDHからのシグナルは、それぞれ、抗フラタキシン及び抗GAPDHブロットに見られる。
【0194】
これらのデータは、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によって調節され得るという証拠を提供する。驚くべきことに、5’UTR FXN配列は、5’UTR配列を有しない構築物と比較して、プラスミド構築物によってコードされるフラタキシンタンパク質の発現を低下させることが見出された。
【0195】
実施例2-FXN遺伝子発現に対する5’UTR FXN配列の影響
ニューロン由来細胞におけるヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によってどのように影響され得るかをさらに調査するために、実験を行った。
【0196】
実施例1と同様に、別々の細胞集団を、4つのプラスミドバージョンの各々でトランスフェクトした。本実施例において、実施例1のHEK293細胞の代わりに、SK-N-SH細胞(神経芽腫細胞株)を使用した。トランスフェクション及び免疫ブロッティングを、実施例1に記載されるように行った。
【0197】
図5を参照すると、レーン1は、トランスフェクトされていないSK-N-SH細胞の免疫ブロットの結果を示す。内因性フラタキシン及びGAPDHからのシグナルは、それぞれ、抗フラタキシン及び抗GAPDHブロットに見られる。
【0198】
レーン2は、5’UTR FXNを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第2のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたSK-N-SH細胞の結果を示す。第2のプラスミドバージョンにはV5エピトープが含まれていないため、抗V5ブロットにシグナルは見られなかった。さらに、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。
【0199】
レーン3は、5’UTR FXNを有しないヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第1のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたSK-N-SH細胞の結果を示す。第1のプラスミドバージョンにはV5エピトープが含まれていないため、抗V5ブロットにシグナルは見られなかった。さらに、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。レーン2の抗フラタキシンシグナルは、レーン3のシグナルよりも強度が低かった。
【0200】
レーン4は、5’UTR FXNを有し、かつV5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第4のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたSK-N-SH細胞の結果を示す。シグナルが、抗V5ブロットに見られ、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。[000160]レーン5は、5’UTR FXNを有さず、V5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第3のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたSK-N-SH細胞の結果を示す。シグナルが、抗V5ブロットに見られ、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。レーン4の抗フラタキシンシグナル及び抗V5シグナルは、レーン5の対応するシグナルよりも強度が低かった。
【0201】
これらのデータは、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によって調節され得るという証拠を提供する。驚くべきことに、5’UTR FXN配列は、5’UTR配列を有しない構築物と比較して、プラスミド構築物によってコードされるフラタキシンタンパク質の発現を低下させることが見出された。加えて、ニューロン由来細胞における影響は、実施例1において観察された影響と一致した。
【0202】
実施例3-FXN遺伝子発現に対する5’UTR FXN配列の影響
筋由来細胞におけるヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によってどのように影響され得るかをさらに調査するために、実験を行った。
【0203】
実施例1及び2と同様に、別々の細胞集団を、4つのプラスミドバージョンの各々でトランスフェクトした。本実施例において、実施例1のHEK293細胞の代わりに、C2C12細胞(マウス筋芽細胞株)を使用した。トランスフェクション及び免疫ブロッティングを、実施例1に記載されるように行った。
【0204】
図6を参照すると、レーン1は、5’UTR FXNを有しないヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第1のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。第1のプラスミドバージョンにはV5エピトープが含まれていないため、抗V5ブロットにシグナルは見られなかった。さらに、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。
【0205】
レーン2は、5’UTR FXNを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第2のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。第2のプラスミドバージョンにはV5エピトープが含まれていないため、抗V5ブロットにシグナルは見られなかった。さらに、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。レーン2の抗フラタキシンシグナルは、レーン1のシグナルよりも強度が低かった。
【0206】
レーン3は、5’UTR FXNを有さず、V5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第3のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。シグナルが、抗V5ブロットに見られ、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。
【0207】
レーン4は、5’UTR FXNを有し、かつV5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第4のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。シグナルが、抗V5ブロットに見られ、シグナルが、抗フラタキシンブロットに見られた。レーン4の抗フラタキシンシグナル及び抗V5シグナルは、レーン3の対応するシグナルよりも強度が低かった。
【0208】
レーン5は、トランスフェクトされていないC2C12細胞の結果を示す。内因性GAPDHからのシグナルは、抗GAPDHブロットに見られる。
【0209】
これらのデータは、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によって調節され得るという証拠を提供する。驚くべきことに、5’UTR FXN配列は、5’UTR配列を有しない構築物と比較して、プラスミド構築物によってコードされるフラタキシンタンパク質の発現を低下させることが見出された。さらに、筋肉由来細胞における影響は、実施例1及び2において観察された影響と一致した。
【0210】
実施例4-ミトコンドリア機能に対する5’UTR FXN配列の影響
筋由来細胞におけるヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、様々なFXN構築物を発現する細胞におけるミトコンドリア機能にどのように影響され得るかをさらに調査するために、実験を行った。
【0211】
実施例1~3と同様に、別々の細胞集団を、4つのプラスミドバージョンの各々でトランスフェクトした。本実施例において、実施例1のHEK293細胞の代わりに、C2C12細胞を使用した。4つのプラスミドバージョンについてのトランスフェクションを、実施例1に記載されるように行った。トランスフェクションから48時間後、4つの細胞集団を収集し、アデノシン三リン酸(ATP)アッセイに供した。ATPアッセイは、細胞内のATP含有量を測定することができ、細胞のミトコンドリアの相対的な健康状態を示すことができる。ミトコンドリア単離後、ルシフェラーゼアッセイを使用してミトコンドリアをアッセイし、各試料中のATPの量を定量化した。各試料のルシフェラーゼシグナルを、ATP濃度の標準曲線で分析し、各試料中の総タンパク質に対して測定した。
図7を参照すると、これらのプラスミドでトランスフェクトした細胞のデータを、試料1~4として示す。試料5~7は、それぞれ、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするベクター、トランスフェクトされていない細胞、及びオリゴマイシンAで処理したトランスフェクトされていない細胞でトランスフェクトした細胞についての対照データである。オリゴマイシンAは、ATP合成酵素の阻害剤であり、オリゴマイシンAで処理した細胞は、ATP産生の陰性対照として機能する。
【0212】
試料1は、5’UTR FXNを有し、かつV5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第4のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。試料1中のATP濃度は、試料6のトランスフェクトされていない細胞のATP濃度と統計的に異なっていなかった(一元配置分散分析)。
【0213】
試料2は、5’UTR FXNを有さず、V5エピトープタグを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第3のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。試料1中のATP濃度は、試料2中のATP濃度と比較して増加した。
【0214】
試料2中のATP濃度は、試料6のトランスフェクトされていない対照細胞のATP濃度と比較して低下した。*P<0.05(一元配置分散分析)。
【0215】
試料3は、5’UTR FXNを有するヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第2のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。試料3中のATP濃度は、試料6のトランスフェクトされていない細胞のATP濃度と統計的に異なっていなかった(一元配置分散分析)。
【0216】
試料4は、5’UTR FXNを有しないヒトFXNヌクレオチド配列を含む、第1のバージョンのプラスミドでトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。試料3中のATP濃度は、試料4中のATP濃度と比較して増加した。試料4中のATP濃度は、試料6のトランスフェクトされていない対照細胞のATP濃度と比較して低下した。*P<0.05(一元配置分散分析)。
【0217】
試料6(トランスフェクトされていない細胞)のATP濃度は、試料7(オリゴマイシンAで処理した細胞)のATP濃度よりも有意に増加させ、ATPの可用性を測定するアッセイの能力を確認した。**P<0.01(一元配置分散分析)。
【0218】
これらのデータは、5’UTR FXN配列によって修飾されないヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、ミトコンドリア機能に悪影響を及ぼし得るという証拠を提供する。驚くべきことに、5’UTR FXN配列を含むことは、筋肉由来細胞における悪影響を低減または排除することが見出された。
【0219】
実施例5-FXN遺伝子発現に対する5’UTR FXN配列の影響
実施例3及び4のC2C12細胞におけるヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、様々なプロモーターとの関連において5’UTR FXN配列の包含によってどのように影響され得るかをさらに調査するために、実験を行った。
【0220】
組換えAAVベクターゲノムをコードする5つのプラスミドを構築した。第1のプラスミド(配列番号11)は、ニワトリβアクチン(CBA)プロモーター配列(配列番号5)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、CBAプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたCBA 5’UTR(配列番号23)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。第2のプラスミド(配列番号12)は、CBAプロモーター配列(配列番号5)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列を含み、CBAプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたCBA 5’UTR(配列番号23)をさらに含む。第3のプラスミド(配列番号13)は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列を含む。第3のプラスミドは、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置された5’UTR FXN配列をさらに含む。第4のプラスミド(配列番号8)は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列を含み、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)及び5’UTR FXN配列(配列番号2)をさらに含む。第5のプラスミド(配列番号7)は、デスミンプロモーター配列(配列番号4)に作動可能に連結されたコドン最適化ヒトFXNヌクレオチド配列(配列番号1)を含み、デスミンプロモーター配列とヒトFXNヌクレオチド配列との間に作動可能に配置されたデスミン5’UTR(配列番号22)をさらに含む。
【0221】
Sanger配列決定を介して5つのプラスミドの正確な構築を確認した後、5つのバージョンの各々を、製造業者の指示に従って市販のトランスフェクション試薬を使用して、別個のC2C12細胞集団にトランスフェクトした。
【0222】
トランスフェクションから48時間後に、5つの細胞集団を収集し、総タンパク質をRIPA緩衝液中で採取した。総タンパク質(全細胞抽出物)の試料を、SDS-PAGE及び免疫ブロッティングに供した。
図8に示すように、ヒトフラタキシンまたはヒト及びマウスフラタキシン(α FXN)のいずれかに対する市販の一次抗体、ならびに負荷対照として、GAPDH(グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)(α GAPDH)を使用して、ブロットをプローブした。続いて、HRPコンジュゲート二次抗体を用いて、ブロットをプローブした。
【0223】
図8を参照すると、レーン1は、トランスフェクトされていないC2C12細胞の結果を示す。内因性フラタキシン及びGAPDHからのシグナルは、それぞれ、2つの抗フラタキシンブロット及び抗GAPDHブロットに見られる。
【0224】
レーン2は、CBAプロモーター-CBA 5’UTR-5’UTR FXN-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第1のプラスミド(配列番号11)でトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。レーン1と比較して、レーン2のシグナルが増加した。
【0225】
レーン3は、CBAプロモーター-CBA 5’UTR-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第2のプラスミド(配列番号12)でトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。
【0226】
レーン2と比較して、レーン3のシグナルが大いに増加した。
【0227】
レーン4は、デスミンプロモーター-5’UTR FXN-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第3のプラスミド(配列番号13)でトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。レーン1と比較して、レーン4のシグナルが増加した。
【0228】
レーン5は、デスミンプロモーター-デスミン5’UTR-5’UTR FXN-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第4のプラスミド(配列番号8)でトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。レーン4と比較して、レーン5のシグナルが減少した。レーン1と比較して、レーン5のシグナルは、同様のレベルのシグナルであった。
【0229】
レーン6は、デスミンプロモーター-デスミン5’UTR-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第5のプラスミド(配列番号7)でトランスフェクトしたC2C12細胞の結果を示す。レーン6のシグナルは、レーン1、4、または5のうちのいずれか1つと比較して増加した。
【0230】
これらのデータは、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によって調節され得るという証拠を提供する。驚くべきことに、5’UTR FXN配列は、5’UTR配列を有しない構築物と比較して、プラスミド構築物によってコードされるフラタキシンタンパク質の発現を低下させることが見出された。さらに、FXN発現に対する5’UTR FXN配列の影響が、種々のプロモーターで一貫しているという証拠が提供される。
【0231】
実施例6-FXN遺伝子発現に対する5’UTR FXN配列の影響
ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、様々なプロモーターとの関連において5’UTR FXN配列の包含によってどのように影響され得るかをさらに調査するために、実験を行った。本実験では、定量PCR(qPCR)を用いて転写レベルで発現を調べた。
【0232】
実施例5でトランスフェクトして採取した細胞も、RNA試料を抽出するために使用した。次いで、RNA試料を逆転写に供し、得られたcDNA試料をqPCRに供した。実施例5に記載されるように、同じ5つのプラスミドを、本実施例において使用した。
図9を参照すると、ベータアクチン(Actb)及びFXN(Fxn)の両方の相対発現を決定した。
【0233】
トランスフェクトされていない細胞から抽出したRNAに基づいた試料1は、基礎レベルのActb発現及びFXN発現の両方を示した。
【0234】
試料2は、CBAプロモーター-CBA 5’UTR-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第2のプラスミド(配列番号12)でトランスフェクトした細胞から抽出したRNAに基づいていた。試料2は、トランスフェクトされていない細胞と比較して、基礎レベルのActb発現及び増加したレベルのFXN発現を示した。
【0235】
試料3は、CBAプロモーター-CBA 5’UTR-5’UTR FXN-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第1のプラスミド(配列番号11)でトランスフェクトした細胞から抽出したRNAに基づいていた。試料3は、トランスフェクトされていない細胞と比較して、基礎レベルのActb発現及び増加したレベルのFXN発現を示したが、試料2と比較して、低下したレベルのFXN発現を示した。
【0236】
試料4は、デスミンプロモーター-5’UTR FXN-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第3のプラスミド(配列番号13)でトランスフェクトした細胞から抽出したRNAに基づいていた。試料4は、トランスフェクトされていない細胞と比較して、基礎レベルのActb発現及び増加したレベルのFXN発現を示した。
【0237】
試料5は、デスミンプロモーター-デスミン5’UTR - 5’UTR FXN -ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第4のプラスミド(配列番号8)でトランスフェクトした細胞から抽出したRNAに基づいていた。試料5は、基礎レベルのActb発現及び基礎レベルのFXN発現を示した。
【0238】
試料6は、デスミンプロモーター-デスミン5’UTR-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第5のプラスミド(配列番号7)でトランスフェクトした細胞から抽出したRNAに基づいていた。試料6は、トランスフェクトされていない細胞、試料4、及び試料5と比較して、基礎レベルのActb発現及び増加したレベルのFXN発現を示した。
【0239】
これらのデータは、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によって調節され得るという証拠を提供する。驚くべきことに、5’UTR FXN配列は、5’UTR配列を有しない構築物と比較して、プラスミド構築物によってコードされるフラタキシンタンパク質の発現を低下させることが見出された。さらに、FXN発現に対する5’UTR FXN配列の影響が、種々のプロモーターで一貫しているという証拠が提供される。
【0240】
試料6は、デスミンプロモーター-デスミン5’UTR-ヒトFXNヌクレオチド配列構築物を含む、第5のプラスミド(配列番号7)でトランスフェクトした細胞から抽出したRNAに基づいていた。試料6は、トランスフェクトされていない細胞、試料4、及び試料5と比較して、基礎レベルのActb発現及び増加したレベルのFXN発現を示した。
【0241】
これらのデータは、ヒトFXNヌクレオチド配列の発現が、5’UTR FXN配列の包含によって調節され得るという証拠を提供する。驚くべきことに、5’UTR FXN配列は、5’UTR配列を有しない構築物と比較して、プラスミド構築物によってコードされるフラタキシンタンパク質の発現を低下させることが見出された。さらに、FXN発現に対する5’UTR FXN配列の影響が、種々のプロモーターで一貫しているという証拠が提供される。
【0242】
実施例7
実施例1~6において得られた結果と一致して、1)組織制限プロモーターまたはユビキタスプロモーター、及び2)FXNの5’非翻訳領域(UTR)の有無にかかわらずFXNを含有するカセットを設計し、試験した。5’UTR領域は、この領域の固有の構造及び翻訳開始への影響(すなわち、遺伝子発現の転写後制御)に基づいて、調節発現要素として選択された。インビトロ実験は、自己相補的末端反復(TR)プラスミドにおいて、改変されたデスミン(DES)またはニワトリβアクチン(CBA)プロモーターによって駆動されるフラタキシンの5’UTR領域の有無にかかわらず、トランスフェクションを媒介するフラタキシンの過剰発現の影響を実証した。AAV-Des駆動型5’UTR-FXN(AAV-Des5’)過剰発現のインビボ評価を行って、AAVを媒介する5’UTR-FXNの過剰発現が、それぞれ、大槽及び筋肉内(脛骨前筋;TA)を介して投与される、脳脊髄液(CSF)及び骨格筋を標的とする静脈内注射または二重注射経路後の野生型(すなわち、正常)マウスにおいて毒性をもたらすかどうかを決定した。
【0243】
FAに対する遺伝子治療を開発する際には、FXNの過剰発現が毒性につながるかどうかを決定し、発現が毒性を制限し、全体的な治療的利益を増強するように調節され得るかどうかを決定することが重要である。以前の研究では、FXN毒性は、翻訳開始(すなわち、遺伝子発現の転写後制御)に影響を及ぼすための調節発現要素として機能する非翻訳領域(UTR)を含まない遺伝子のコード領域を使用したことが報告されていた。したがって、FXNの5’非翻訳領域(5’UTR)を含むことによって、遺伝子発現を制御することができるかどうかを試験した。
【0244】
加えて、ヒト線維芽細胞株を用いたインビトロでの翻訳効率の評価のために、2つの異なるプロモーター、改変ヒトデスミン(DES)プロモーター(Pacak et al.“Tissue specific promoters improve specificity of AAV9 mediated transgene expression following intra-vascular gene delivery in neonatal mice,” Genet Vaccines Ther 6,13(2008))及びニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター(Shevtsova et al.“Promoters and serotypes:targeting of adeno-associated virus vectors for gene transfer in the rat central nervous system in vitro and in vivo.Experimental Physiology,90:53-59(2005))を試験して、FXNの発現を駆動した。DESは、心筋、骨格筋、及びCNSにおけるその高い形質導入で知られているが、CBAは、すべての細胞型における高い形質導入につながる強力な遍在性プロモーターである。2つの異なるプロモーターを比較することにより、FXN毒性を誘発することなく、FXNレベルの翻訳効率を最適化することを目的とした。インビボでのFXNの過剰発現を評価するために、野生型マウス(AAV8TM-DES-5’UTR-FXN)(プラスミドLP1001)におけるDES駆動型5’UTR-FXNの送達に、AAV8トリプルカプシド変異体、AAV8TM(配列番号61)を使用した(Gilkes et al.“Mucopolysaccharidosis IIIB confers enhanced neonatal intracranial transduction by AAV8 but not by 5, 9 or rh10.Gene Ther.2016;23(3):263-271)。これをインビトロ研究と並行して行い、FXNの過剰発現後の潜在的な毒性を評価した。
【0245】
薬剤
ヒトコドン最適化フラタキシン(630bp)3’UTRまたは5’UTRヒトフラタキシン(それぞれ、1490bp及び221bp)を、自己相補pTRプラスミド中でクローニングした。目的となる遺伝子(GOI)を、改変ヒトデスミン(DES)プロモーターまたはニワトリβアクチン(CBA)プロモーターによって駆動した(表2を参照のこと)。プラスミドマップを、
図10A~Eに示す。各プラスミドの核酸配列についての配列番号も、表2に提供する。
【表2】
【0246】
GOIを、統合DNA技術(IDT;Coralville,IA,USA)によって合成し、制限酵素によってpTR-プラスミドにクローニングした。pLP1001を、制限酵素KpnI及びSacIを使用して、「EnhDesPro-イントロン-5’UTRcoFXNv1」断片をpds AAV-CBA-EGFP(GenBank:受託番号MK225672(配列番号29))をクローニングすることによって生成した。pLP1004を、制限酵素部位KpnI及びSacIを使用して、「EnhDesPro-イントロン-coFXNv1」をpds AAV-CBA-EGFPにクローニングすることによって合成した。pLP1002を、coFXNv1をAge1及びSac1制限酵素部位と合成することによって完了し、次いで、pds-AAV-CBA-EGFPにクローニングした。pLP1003を、5’UTR-イントロンを合成し、SalI及びSpeIを使用して、それをLP1002にクローニングすることによって完了した。(Lacerta Therapeutics, Inc.Intellectual Property,Lab notebooks LBN24 LBN25,LBN08)
【0247】
すべてのプラスミドを、クローニングし、形質転換し、制限酵素消化物Sma IによってLacerta Therapeutics,Inc.(Alachua,FL,USA)で検証した。配列検証(Eurofins)後、プラスミドを、大規模なプラスミド産生のためにAldevron(Fargo,ND,USA)に送った。DES-5’UTR-FXN(AAV8TM-DES-5’UTR-FXN)を発現するAAV8TMウイルスを、フロリダ大学のパウエル遺伝子治療センター(PGTC)、ベクターコアラボラトリー(Gainesville,FL,USA)の接着HEK293細胞におけるトリプルトランスフェクションによって2つの細胞スタック(参照番号7047及び7048)で産生した。2つの細胞スタックをプールし、ウイルスを、イオジキサノール勾配遠心分離、続いてAAVXカラムによって精製し、PGTCでドットブロットによって力価化した(表3)。ベクター力価はまた、LacertaにおけるデジタルドロップPCR(ddPCR)によっても決定された。しかしながら、ドットブロットは、デジタルドロップPCRと比較した場合、力価の上昇及び精度の低下を示すことが報告されている。したがって、インビボ投与を、ddPCR力価によって計算した。
【表3】
【0248】
投与及び曝露
LTX401.3:正常な野生型マウスにおけるFXNの過剰発現からの潜在的毒性を評価するためのAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの静脈内投与
各動物(n=3)は、最終体積100μLの5E+13vg/kgのAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの単回ボーラス注射を、頸静脈を通して受けた。ウイルスを、PBS+0.001%のプルロン酸(賦形剤)中で希釈することによって調製して、最終用量製剤を得た。この研究において、未処置の年齢を適合させた対照動物も使用した。
【0249】
LTX401.4:正常な野生型マウスにおけるFXNの過剰発現からの潜在的な毒性を評価するための、大槽内及び筋肉内注射によるAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの二重投与
大槽内(ICM)注射に関して、雌マウスは、1E+11vg(n=3)の単回注射を受け、雄は、10μlの最終体積で合計1.5E+11vg(n=3)を受けた。ウイルスを、賦形剤中で希釈して、最終用量製剤を得た。加えて、これらのマウスは、3つの異なる用量(3.70E+8、8.2E+8、または1.92E+9vg/mgの前脛骨筋(TA))で筋肉内注射(IM)を受けた。各用量を、1匹の雄及び1匹の雌マウスの右及び左のTAに注入した。投薬量を計算するために、TA筋肉重量は、全体重の10%であると仮定した。すべてのIM注射を、賦形剤中の十分な希釈量により、最終体積5μlまで調製した。1匹の動物に、10μLの賦形剤を処置対照として注入した。さらに、比較のために、未処置の年齢を適合させた対照動物が含まれた。
【0250】
研究目的及び論理的根拠
この一連の実験の全体的な目標は、FXNの過剰発現の潜在毒性を決定することであった。加えて、ヒト線維芽細胞株を用いたインビトロ実験を実施して、FXNの上流に5’非翻訳領域を添加することにより、遺伝子発現が調節され、以前に報告されたように、任意の潜在的な毒性が低減するという仮説を試験した。インビボ実験は、複数の投与経路及び投薬量を使用して、正常な野生型マウスにおける生体内分布及び潜在毒性を評価した。合わせて、このデータは、遺伝子発現、潜在毒性、及びカプシド生体内分布の調節の支援を提供する。
【0251】
研究設計
ヒト線維芽細胞毒性分析
2つの健常な対照及び2つの患者線維芽細胞株(表4)を、表2に列挙したフラタキシンプラスミドでトランスフェクトした。プラスミドトランスフェクション後、細胞毒性(DNA含有量によって測定)、ATP定量(ミトコンドリア状態)、及びヒトFXNのウエスタン免疫ブロット及びELISAについてアッセイを行った。
【表4】
【0252】
LTX401.3:正常な野生型マウスにおけるFXN過剰発現からの潜在的毒性を評価するためのAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの静脈内投与
AAV8TM-DES-5’UTR-FXN(AAV-DES5’)の静脈内投与のための実験的設計を、表5に概説する。野生型C57BL/6Jマウス(JAX、000664)を、注射から28~32日後に採取し、以下の表8に記載するように組織を収集した。組織を組織学またはELISAによるFXN検出のために処理して、生体内分布、ヒトフラタキシンタンパク質発現、またはベクター投与後の明らかな毒性を決定した。
【表5】
【0253】
LTX401.4:正常な野生型マウスにおけるFXNの過剰発現からの潜在的な毒性を評価するための、大槽内及び筋肉内注射によるAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの二重投与
各性別の3匹の動物に、表6に概説される実験的設計に従って、単一のICM用量に加えて、3つのIM用量のAAV8TM-DES-5’UTR-FXN(AAV-DES5’)のうちの1つを注射した。対照組織については、各性別の1匹の動物にのみ賦形剤を注射し、各性別の1匹の動物を未処置(野生型)とした。動物を、AAV投与から28~32日後に採取した。組織を、セクション4.5.1、表9に従って採取した。組織を、組織学及びELISAによってヒトFXNについて分析した。
【表6】
【0254】
ミトコンドリア機能の毒性及び潜在的な破壊に対するそれらの影響を理解するためのヒト線維芽細胞株におけるフラタキシンの過剰発現の分析
ヒト線維芽細胞の細胞培養
フリードライヒ運動失調症患者(識別番号GM04078及びGM03816)及び健常なドナー(識別番号GM00969及びGM03651)からのヒト線維芽細胞株を、Corielle研究所(Camden,NJ,USA;表7)から入手し、20%ウシ胎仔血清(Atlanta Biologicals,S11150H)、50単位/mlのペニシリン、及び50mg/mlのストレプトマイシン(Gibco,15140-122)を含む線維芽細胞増殖培地(Promocell, C-23010)中で培養した。
【表7】
【0255】
ヒト線維芽細胞のトランスフェクション
トランスフェクションの約24時間前、細胞を6ウェルプレートに、ウェル当たり2.5mlの完全増殖培地中、0.8~3.0×105細胞/mlの密度で播種した。細胞を、5% CO2、37℃で一晩維持し、翌日、製造業者のプロトコルに従って、TransIT(登録商標)-LT1トランスフェクション試薬(Mirus Bio、MIR 2300)を使用して、滴定実験のための1.25、2.5、または5μgのプラスミド、及びすべての他のインビトロ実験(表2に列挙される)における5μgのプラスミドでトランスフェクトした。
【0256】
増殖アッセイによるヒト線維芽細胞における細胞毒性の測定
細胞を、細胞リフターでトランスフェクションした24時間後に採取し、次いで計数し、5,000細胞/ウェルの細胞密度で96ウェルプレートに播種した。翌日、CyQUANT(商標)細胞増殖アッセイ(Invitrogen、C7026)を、製造業者のプロトコルに従って実施した。
【0257】
ヒト線維芽細胞のミトコンドリア画分におけるATP含有量の測定
Prebleらに言及されているように、細胞を採取し、ミトコンドリア単離のために処理した(“Rapid isolation and purification of mitochondria for transplantation by tissue dissociation and differential filtration,” J Vis Exp.2014;(91):e51682)。ミトコンドリア画分のタンパク質濃度を、DCアッセイ(Bio-Rad、5000112)によって測定した。ATP含有量を、ATPlite Luminescence Assay System(PerkinElmer、6016943)で測定した。このアッセイでは、発光は、試料中のATP濃度に比例する。簡言すれば、単離されたミトコンドリア(10μl)を、96ウェルプレートに播種し、次いで哺乳動物細胞溶解液(50μl)で溶解し、ミトコンドリアを溶解し、ATPを放出した。発光は、CLARIOstarマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を使用して測定した。標準曲線を、製造業者のプロトコルに従って生成し、各試料のATP濃度を線形回帰分析によって得た。ATP含有量を、ミトコンドリアタンパク質濃度に対して正規化した。Saha et al.“Impact of PYROXD1 deficiency on cellular respiration and correlations with genetic analyses of limb-girdle muscular dystrophy in Saudi Arabia and Sudan,” Physiol Genomics.2018;50(11):929-939を参照のこと。
【0258】
ヒト線維芽細胞のミトコンドリア画分におけるヒトFXNの定量化
タンパク質濃度を、洗剤適合性(DC)タンパク質アッセイ(Bio-Rad)によって決定した。ウエスタン免疫ブロットについては、200μgの総タンパク質量のミトコンドリア抽出物を、4~12%のトリシン-ポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)上で分解し、次いでニトロセルロース膜(20μm)上に移した。膜を5%乳/TBST(0.5% Tween-20、8mM Tris-Base、25mM Tris・HCl、154mM NaCl)でブロックし、次いで、1:1000の希釈で一次マウス抗フラタキシン抗体(上清)、及び1:1000の希釈で抗GAPDH(2118S、Cell Signaling Technologies)でプローブした。膜を西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体とともにインキュベートし、iBright CL1000上で化学発光(Millipore)によって可視化した。培養線維芽細胞におけるヒトフラタキシンレベルを決定するために、ミトコンドリア抽出物を、製造業者の指示に従ってヒトフラタキシンELISAキット(ab176112)を使用してアッセイした。
【0259】
密度分析
ウエスタンブロット画像の定量化は、ImageJ(Gassmann et al.“Quantifying Western blots:Pitfalls of densitometry.ELECTROPHORESIS,30:1845-1855.doi:10.1002/elps.200800720)を使用して実施した。FXNレベルを、GAPDHレベルに対して正規化した。
【0260】
患者の線維芽細胞の間接免疫染色
線維芽細胞を、示されるように、プラスミドでトランスフェクションした後、ダルベッコ改変イーグル培地(Corning番号#3MT10013CV)中の10%マトリゲル(Corning、CB-40234A)で処理したチャンバースライド(Thermo Scientific,12-565-8)に播種した。4日目に、成長培地を除去した。細胞をPBS中で洗浄し、次いでPBS中の2%パラホルムアルデヒドで10分間室温で固定し、PBS中で3回連続して洗浄した。細胞を、PBS中の0.2% Triton X-100で10分間透過させ、PBS中の5%正常ヤギ血清の添加によって60分間ブロックした。1:100の希釈のマウス抗ヒトFXN(Puccio)、及び1:150の希釈のウサギ抗Tomm20(Cell Signaling Tech,42406S)とともに4℃で一晩インキュベートした後、細胞を広範囲に洗浄し、ヤギ抗マウス488及びヤギ抗ウサギ594(各1:1000)の二次抗体と共にさらにインキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、DAPIを有するVECTASHIELD(登録商標)Vibrance包埋剤(Vector Laboratories、H-1200-10)を使用して、カバースリップを顕微鏡スライドに取り付けた。顕微鏡解析は、Keyence BZ-X810蛍光顕微鏡を使用して行った。免疫染色も未処理の対照線維芽細胞で行って、フラタキシンシグナルの特異性を決定し、抗体媒介性FXN検出を最適化した。
【0261】
野生型マウスにおけるFXNの過剰発現のインビボ評価
ウイルス力価
AAV8tm-DES-5’UTR-FXNの力価(vg/mL)を、PGTCでのドットブロット、及びBio-RadからのQX200ドロップレットデジタルPCRシステム(QX200ドロップレットジェネレータ及びQX200ドロップレットリーダーBio-Rad)によって決定した。ddPCRについて、試料をヌクレアーゼフリー水中で1E3~1E2vg/ウェルに連続希釈し、試料が分析の最大範囲(1E4vg/ウェル)を下回っていることを確認した。液滴形成に十分な体積を確保するために、25μLのマスターミックス及び試料の総体積を調製した。反応混合物は、プローブ用の1×ddPCRスーパーミックス(dUTPなし;Bio-Rad、1863024)、900nMのBGH順方向フォワード5’GCC AGC CAT CTG TTG T 3’(IDT)(配列番号30)及び逆5’GGA GTG GCA CCT TCC A 3’(IDT)(配列番号31)プライマー、250nMのBGHプローブ5’FAM/TCC CCC GTG/ZEN/ CCT TCC TTG ACC/ABkFQ 3’(IDT)(配列番号32)、ならびにヌクレアーゼフリー水中で希釈した5μLの試料を含む。液滴調製前に、混合物をボルテックスした。QX200ドロップレットジェネレータ(Bio-Rad)を使用して、20μLの試料混合物をDG8カートリッジ(Bio-Rad、1864008)の中心ウェルに添加し、続いて70μLのプローブ用の液滴生成油(Bio-Rad、1863005)をカートリッジの適切なウェルに添加することによって、液滴を形成した。カートリッジをDG8ガスケット(Bio-Rad、1863009)で覆い、ドロップレットジェネレータに入れた。新たに形成された液滴(40μL)を慎重にピペットし、ddPCR 96ウェルプレート(Bio-Rad、12001925)に移し、貫通可能な箔ヒートシール(Bio-Rad、1814040)で覆い、PX1 PCRプレートシーラー(Bio-Rad)に入れ、180℃で5秒間熱シールした。プレートを直ちに除去し、95℃で10分間、C1000 Thermal Cycler(Bio-Rad)に入れ、次いで95℃で30秒間、57.4℃で1分間、及び72℃で15秒間、42サイクル、続いて98℃で10分間、及び実行が停止するまで12℃の無期限の保持状態にした。PCRが完了した後、プレートをQX200ドロップレットリーダー(Bio-Rad)に移し、絶対定量分析を行った。結果を濃度として報告し、20μLのウェル当たりにコピーした。1mL当たりのベクターゲノム数を決定するために、式{((濃度*総体積初期反応)/μLの試料)*1000*希釈係数}]を使用した。
【0262】
外科手術室の設定
外科的処置前に、動物準備領域、外科領域、及び回復/術後領域の3つの指定されたステーションで手術空間を準備した(Gakuba et al., “General Anesthesia Inhibits the Activity of the “Glymphatic System”,” Theranostics,8(3),710-722(2018))。動物準備領域:滅菌された手術野の微生物汚染の可能性を低減するために、動物準備領域を外科領域から離れた指定されたテーブル上に配置した。2%イソフルラン(1L O2)を使用してマウスを麻酔した(Falk et al.“Comparative impact of AAV and enzyme replacement therapy on respiratory and cardiac function in adult Pompe mice, Molecular Therapy-Methods & Clinical Development,Volume 2,2015,15007,ISSN 2329-0501,https://doi.org/10.1038/mtm.2015.7)を、気化器システムを使用してチャンバーを介して投与し、動物を計量し、その毛髪をクリップした。次いで、動物を、外科領域に移動した。
【0263】
外科領域
外科領域の装置は、ステンレス鋼製のテーブル、移動式気化器麻酔システム、ガラス製のビーズ滅菌器、定位デバイス、及び注入ポンプで構成され、すべての表面は、手術前に70%のアルコールで洗浄した。ステレオタックスの下に滅菌ドレープを配置した。デジタル読み出しを有する加熱パッドを、動物を配置するステレオタックス上に配置し、動物が加熱パッドに直接接触するのを防ぐために、子犬用パッドを加熱パッドに一度巻き付けた。クロルヘキシジン外科用洗浄液を含む検体カップ及び滅菌生理食塩水を検体カップである2つの検体カップは、オートクレーブした外科用器具と同様に滅菌ドレープの上に置かれた。外科用器具を石鹸及び水で洗浄し、乾燥させ、動物の間にあるガラスビーズ滅菌器で滅菌した。オートクレーブした器具を使用し、新しいオートクレーブした器具のセットに切り替える前に最大10回洗浄した。
【0264】
手術後の回復領域
外科的処置が完了すると、動物は、モニタリング及び術後ケアのために清潔なケージに移動した。このケージは、ケージの半分が回復する動物の低体温を最小限に抑えるためにデジタル読み出しを備えた加熱パッド上に置かれるように設置された。ケージと加熱パッドの間には、直接接触を防ぐための子犬用パッドがあった。回復ステーションは、外科医/助手と十分な距離があり、回復状況を監視することができた。動物が単独で正常に動くことができ、苦痛または痛みの兆候を示さず、それ以外は明るく、警戒心が強く、応答性があり、動物は、ケージラックに戻された。術後最初の5日間、毎日動物を観察し、その後、合併症を監視するため、採取まで少なくとも1日おきに動物を確認した。
【0265】
LTX-401.3:野生型マウスへのAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの静脈内注射
術前マウス調製
調製ステーションでは、承認されたIACUCプロトコルに概説されているように気化したイソフルランを使用して、動物を麻酔し、次いで鎮痛剤(リマジル)投与を計算するために体重(g)を測定した。脱毛クリーム(Nair(商標))を使用して、首/喉の領域から慎重に毛髪を除去し、動物を外科領域に移した。
【0266】
外科的設定
手術前に、動物に、1mLの乳酸リンガー(術中の液体損失を置き換えるため)及び10mg/kg用量の鎮痛剤(リマジル)を皮下投与した。外科的処置を開始するために、動物を仰臥位で定位ステージに置き、顔を麻酔フェイスマスクに上向きに配置した。麻酔フェイスマスクを使用して頭部を上向きの位置に保持し、前足を緩やかに下向きに引き、テープで所定の位置に固定して、動物の首を露出させ、汚染された足を外科領域から遠ざけた。気化したイソフルランの流れを術前ステーションの誘導チャンバーから麻酔マスクに移した。麻酔面は、呼吸及び足先ペダル応答を観察することによって手術中に頻繁に評価され、イソフルランレベルは、それに応じて調整された。
【0267】
動物の適切な位置決め後、毛髪を除去した領域の中心から開始し、末梢に向かって外側に働くクロルヘキシジン及び0.9%の滅菌生理食塩水の交互にらせん状の外向きスクラブを使用して、外科的部位を無菌的に調製し、これを少なくとも3回繰り返し、または綿棒にゴミが見られなくなるまで繰り返した。領域を滅菌した後、滅菌した外科用ハサミ及び鉗子を用いて皮膚を2cm切開し、頸静脈を露出させた。頸静脈は、動物の頸部の切開部分から表層結合組織及び脂肪組織をそっと取り除くことによって位置を確認した。次いで、動物に注射する準備が整った。
【0268】
注射
頸静脈を外科医に曝露すると、プライミングされ、予め充填された29ゲージのインスリン注射器100μlの希釈されたウイルスを、針のベベルを上向きにして静脈に挿入した。任意のウイルスを注入する前に注射器を吸引し、血流が注射器に逆流していないことを確認した。注射器に血液が吸い込まれていない場合は、この針を再配置し、再度確認した。それでも返り血がない場合は、針を外し、新たに試みた。過度の出血が生じた場合は、滅菌綿棒を使用して、止血するまで静脈を圧迫した。万が一、注射前に静脈が使用できないようであれば、その部位を縫合し、外科医は反対側の頸部に注射を行ったので、このことを手術記録に記載した。注入が完了したら、注射器をゆっくり戻し、逆流及び出血を防ぐために滅菌綿棒で注入部位を圧迫し、洗浄し、縫合した。
【0269】
イソフルランの送達を停止し、動物を定位固定デバイスから取り外した。手術段階で初期回復を確認した後、回復ケージにマウスを移動させた。
【0270】
LTX-401.4:野生型マウスへのAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの大槽内及び筋肉内注射
術前マウス調製
術前調製後に、頭部をイヤバーで固定し、鼻を一体型の麻酔用マスクに入れることにより、動物を定位固定デバイスに設置した。気化したイソフルランの流れを、誘導チャンバーから定位固定麻酔マスクに移した。麻酔面は、呼吸及び足先ペダル応答を観察することによって手術中に頻繁に評価され、イソフルランレベルは、それに応じて調整された。呼吸困難の可能性を最小限に抑えるために、加熱パッドの下にガーゼを置き、背骨がイヤバーの水平線に対して下向き15°の角度を形成するようにマウスを持ち上げた。次いで、顔面が定位固定アームの垂直線に対して15°の角度を形成するように麻酔マスクを調整し、これにより、背骨に対する頭部の角度が約90°になるようにした。この位置では、大槽は動物の体の最も高いところにあり、硬膜は穿刺を可能にし、ウイルスの逆流を防ぐために張られていた。動物の適切な位置決め後、剃髪した領域の中心から開始し、末梢に向かって外側に働くクロルヘキシジン及び0.9%の滅菌生理食塩水の交互にらせん状の外向きスクラブを使用して、外科的部位を無菌的に調製し、これを少なくとも3回繰り返し、または綿棒にゴミが見られなくなるまで繰り返した。領域を滅菌した後、滅菌した外科用ハサミ及び鉗子を用いて皮膚を2cm切開し、大槽を覆う後頭下筋を露出させた。これらの筋肉は、鉗子を用いて静かに分離し(筋肉の損傷を最小限に抑えるため)、Dieffenbach Serrefine血管クランプで横に固定し、硬膜の表面を露出させた。次いで、動物に1mLの乳酸リンガー(手術中に失われた水分を置き換えるために)と、10mg/kg用量の鎮痛剤(リマジル)を皮下投与した。次いで、動物に注射する準備が整った。
【0271】
外科的設定
33ゲージの45°のベベル針を取り付けた25μlのハミルトン注射器に、12μlの希釈ウイルス(10μlを送達するのに十分な体積を確保する)を予め充填し、定位固定アームに取り付けた注入ポンプに入れた。その後、定位固定アームを90°の垂直角度から外科医に向かって45°の角度まで移動させた。これにより、針は硬膜に対して垂直になるように位置決めした。次いで、注射器針をマイクロマニピュレータのダイヤルを使って硬膜に触れるように(いかなる血管も避けて)位置決めし、定位固定デバイスのデジタル読み出しをゼロにして硬膜の開始点をマークする。背側ダイヤルを素早く小さく回転させると、硬膜を突き刺した。次いで、針をダイヤルを使用して硬膜から引き戻し、脳脊髄液(CSF)を流出させて陰圧にし、ウイルスを入れるスペースを確保した。また、CSFの流出により、外科医が正しい位置にいることも確認した。CSFの流れが外科医によって確認されると、ダイヤルを使用して針を再び挿入し、記録された硬膜の位置から約1mmの深さで、針のベベルがちょうど大槽の内側に位置するようにした。針が正しい位置にきたら、脳へのウイルスの下方流れを促進するために、定位固定フレーム全体がテーブル面と30°の角度を形成するようにゆっくりと上昇させた。少量の滅菌ワセリンを、注入部位の注射針の周囲及び露出した硬膜に塗布し、ウイルス及びCSFの逆流を防ぐのに役立てた。次いで、1000nl/分に設定した注入ポンプを開始し、10μlの希釈ウイルスを正確に送達した。
【0272】
ウイルス負荷が送達されると、タイマーを1分間設定し、ウイルスがCSFとともにくも膜下腔を流れるようにし、大槽から針を取り出すときにウイルスが逆流する可能性を低減した。針は、背腹ダイヤルを使用して慎重に後退させる。針を後退させた後、定位固定デバイスを慎重にテーブルの高さに戻し、外科領域を、洗浄し、縫合した。
【0273】
ICM注入後、麻酔をかけた動物(定位固定したまま)に前脛骨筋注射を左右の脚に行った。Naired領域の中心から開始し、末梢に向かって外側に働くクロルヘキシジン及び0.9%の滅菌生理食塩水の交互にらせん状の外向きスクラブを使用して、注入部位を無菌的に調製し、これを少なくとも3回繰り返し、または綿棒にゴミが見られなくなるまで繰り返した。前脛骨筋の中央部分に、プライミングした0.5mlのツベルクリン注射器及び29ゲージの45°ベベル針を使用して、注入を行った。針は、ベベルを上にして、皮膚の平面とほぼ平行になるように皮膚に刺した。外科医は、筋肉に針を刺す位置が決まったら、ウイルス負荷をゆっくりと注入した。注射器の内容物が完全に注入されると、針をゆっくりと後退させて、ウイルスの逆流を低減させた。針を後退させた直後に注射部位に圧力をかけ、逆流を防止した。
【0274】
注射
調製ステーションでは、承認されたIACUCプロトコルに概説されているように気化したイソフルランを使用して、動物を麻酔し、次いで、必要な鎮痛剤(リマジル)の量を計算するために体重(g)を測定した。その後、電気クリッパーを使用して、目のすぐ後ろから首の付け根に伸びる頭部の後ろから毛髪を除去した。次いで、両下肢の毛髪をNairを使用して慎重に除去し、前脛骨筋を露出させた。次いで、動物を外科領域に移した。
【0275】
組織収集
動物を、気化したイソフルランの過剰摂取を使用して安楽死させた。呼吸が停止したら、動物を採取台の上に置き、発泡スチロールの板にピンで固定した。腹部及び胸腔を開き、臓器を露出させた。直接心臓穿刺によって血液を採取した。採血した後(行った場合)、動物を1X PBSで灌流した。灌流が完了すると、臓器は慎重に採取され、組織学または生物学的アッセイのために切片に分割した(表8及び9)。アッセイに使用した切片は、エッペンドルフチューブに入れ、直ちに液体窒素中に浸漬した。組織学用に保存した切片は、予めラベルを貼ったカセットに入れ、4%パラホルムアルデヒド(PFA)に浸した。24時間後、PFAを1X PBSに交換し、カセットは、処理のために送り返された。
【表8】
【0276】
組織からのミトコンドリア単離
ミトコンドリア単離を、Prebleらに記載されるように行った。要約すると、均質化緩衝液の調製後、gentleMACS(商標)Dissociator(Miltenyi Biotec)を用いて、新鮮な試料を均質化した。ホモジネートを、40μmフィルター、続いて10μmフィルターに通過させた。溶出液を9,000×gで10分間、4℃で遠心分離した。ペレットを回収し、タンパク質推定、免疫ブロット、及びELISAのためのELISA緩衝液中に再懸濁した。
【0277】
組織由来のミトコンドリア画分におけるヒトフラタキシンのELISA定量化
ヒト及びマウスフラタキシンレベルを、製造業者の指示に従ってヒトフラタキシンELISAキット(ab176112)及びマウスフラタキシンELISAキット(ab199078)を使用して、マウス組織から単離したミトコンドリア画分中で分析した。
【0278】
組織学
組織処理及びH&E
採取時に、各組織の一部を直ちに4%パラホルムアルデヒド(PBS 7.4)で固定した後、パラフィン包埋及び切片化を行った。スライドを脱蝋し、キシレン、続いてエタノール勾配を使用して再水和した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を、the University of Florida Molecular Pathology CoreにおいてLeica自動着色剤を使用して行った。
【0279】
フラタキシン免疫蛍光
スライドを再水和したら、クエン酸抗原回復をスチーマー内で行い、続いて、ストレプトアビジン/ビオチンブロックを行った(Vector Laboratories、SP-2002)。1:300で一次マウス抗フラタキシン抗体(精製)を4℃で一晩塗布する前に、抗マウスIgG(Vector Laboratories、MKB-2213-1)及び血清ブロックも、行った。ビオチン化ウマ抗マウス抗体(BA-2000)を、1:300で10分間、室温で組織切片に適用し、次いで、1:200で10分間、室温で適用する前に、蛍光Dylight 488コンジュゲートストレプトアビジン(Vector Laboratories、SA-5488-1)を洗浄した。最後に、スライドをDAPIで対比染色し、製造業者のプロトコル(Vector Laboratories、SP-8400-15)に従って、自己蛍光バックグラウンドについて処理した。最後に、スライドを、Vectashield Vibrance包埋剤(Vector Laboratories、H-1700-10)を使用して取り付けた。
【0280】
顕微鏡検査
画像取得は、Keyenceオールインワン顕微鏡(BZ-X810)を使用して行った。すべてのH&Eスライドを、明視野設定を用いて10倍の倍率でスキャンした。フラタキシンを画像化するために、401.3からの心臓及び大腿四頭筋、及び401.4からの大腿四頭筋及び前脛骨筋を、20倍でスキャンした。すべての心臓及び骨格筋切片を、同じ設定を使用してスキャンし、心臓を高分解能でスキャンし、筋肉を標準分解能でスキャンした。すべての蛍光スキャンは、対比のため、及び陽性染色の決定のためのバックグラウンド補正を決定するために赤色チャネルを含んだ。
【0281】
病理組織学
すべての群において、免疫浸潤について脳または脊髄を慎重に検査した。筋肉における免疫毒性は、壊死線維の存在、鉱物化、空胞化、線維化、及び中心核の存在によって、0から重度の範囲のスケール(0~3)でスコア化した。IV投与動物において、肝臓を、免疫細胞浸潤の数及びサイズによって、フィールドごとに、0から重度の範囲のスケール(0~3)でスコア化した。
【0282】
画像分析
すべての画像は、同じ方法及び設定を使用して編集した。赤色チャネル及び緑色チャネルをマージし、FIJI(ImageJ)を使用してバックグラウンドを削除した。シグナル対ノイズは低かったため、従来の閾値法を使用して定量分析を行うことはできなかった。処置した動物からの染色組織を、偽注射動物または未処置動物からの染色組織と比較した。
【0283】
統計分析
すべてのデータは、示されるように、平均±標準誤差または標準偏差として表された。GraphPad Prism 8(GraphPad Software)を用いて、統計分析を行った。
【0284】
結果
フラタキシン発現プラスミドへの5’非翻訳領域の添加は、インビトロでのフラタキシンタンパク質の形質導入及び発現を増強しつつ、毒性を低減する。
健常な個体(対照)及びフリードライヒ運動失調症患者(FA)からの線維芽細胞を、5’UTRの有無にかかわらずCBAまたはDESプロモーターの制御下で、FXNを発現するプラスミド構築物で処理した(表1)。細胞を、異なる構築物でのトランスフェクション後の細胞蜜集度の視覚化のために24ウェルプレート中で画像化した(
図11A~B)。細胞の生存を定量化するために、DNA含有量を、CyQUANT増殖アッセイによって測定した(
図11C)。未処理細胞及びDESプロモーターの制御下でデュアルレポータープラスミド(ルシフェラーゼフリン2a-tdTomato)でトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性及びトランスフェクション対照として使用した。正常な未処置線維芽細胞におけるDNA含有量によって決定されるように、
図11Cの青色線は、毒性が観察されなかった値を表す。すべてのFXN発現プラスミドは、正常な線維芽細胞及びFA線維芽細胞の両方においてある程度の毒性を示した。患者の線維芽細胞では、このレベルの毒性は、すべてのFXNプラスミドトランスフェクションにわたって相対的に一定のままであった。しかしながら、対照線維芽細胞株において、5’UTRを含有するプラスミドで処理した細胞において、より高いDNA含有量が観察され、この領域がFXN発現を調節し、細胞毒性を低減することが示唆された。
【0285】
ATPレベルに対するプラスミドトランスフェクションの影響を決定するために、ミトコンドリアを、未処理及びプラスミドトランスフェクションした線維芽細胞から、健常及びFAに影響を受けた細胞から単離した(
図11D)。全体として、5’UTRを含有するプラスミドで処理した線維芽細胞培養物において、5’UTRを有しないプラスミドと比較して、ATP含有量が高かった。加えて、5’UTRを含有するプラスミドは、未処理のFA線維芽細胞と比較して、疾患線維芽細胞におけるミトコンドリアATP含有量を有意に増加させ、FXNの過剰発現が、疾患細胞株におけるATP含有量を回復させたことを示した。5’UTR調節FXN発現は、未処理の健常な線維芽細胞と比較して、正常な線維芽細胞におけるATP含有量を減少させた。これは、正常な線維芽細胞におけるFXNの高い過剰発現が毒性につながることを示唆している。このデータは、毒性アッセイからの結果と一致している。
【0286】
ウエスタンブロット(
図12A~B)及びELISA(
図12C)アッセイを、トランスフェクト対照及び疾患線維芽細胞の細胞溶解物上で行い、ヒトFXNを検出した。両方のアッセイにおいて、4つのFXN発現プラスミドがすべて、細胞を首尾よく形質導入した。DES-5’UTR-FXNは、FA線維芽細胞におけるウエスタンブロットによるDES-FXNと比較して、より低いFXN発現を有するようである。これらの結果を確認し、ELISAによって定量化し、DES-FXNと比較して、DES-5’UTR-FXNにおいて60%高い発現を示した。ELISAは、健常な線維芽細胞の対照で同様の結果を示したが、疾患線維芽細胞と比較して、倍率差は無視できるほどであった。全体的に、すべての細胞株にわたって、ELISAで定量化された発現レベルは、5’UTRを有するプラスミド(CBA-5’UTR-FXN及びDES-5’UTR-FXN)と比較して、5’UTRを欠くプラスミド(CBA-FXN及びDES-FXN)でトランスフェクトされた細胞においてより高かった。このデータは、5’UTR要素がFXNの過剰発現を十分に制御し、毒性を低減させることができることを示唆している。
【0287】
インビトロにおけるフラタキシンプラスミドの5’非翻訳領域と3’非翻訳領域との比較
健常な(対照)及びFA患者からの線維芽細胞を、CBAプロモーターの制御下で、UTRの有無にかかわらず5μgのFXNを発現するプラスミドでトランスフェクトした(表2)。トランスフェクトしなかった細胞(プラスミドなし)及びCBA-GFPでトランスフェクトした細胞を、それぞれ、陰性対照及びトランスフェクション対照として使用した。細胞を、構築物のトランスフェクション後の細胞蜜集度の視覚化のために24ウェルプレート中で画像化した(
図13A)。CyQUANTアッセイによってトランスフェクション後に、細胞生存率を測定した(
図13B)。毒性分析は、CBA-5’-FXNと比較した場合、対照線維芽細胞におけるCBA-FXNが細胞生存率を低下させたことを示した。しかしながら、FA線維芽細胞は、毒性の同じ分布を示さない(
図13C)。同様に、非トランスフェクト細胞及びトランスフェクト細胞におけるATP含有量を測定した(
図13D)。ELISAによるフラタキシン過剰発現の検出は、CBA-FXNでトランスフェクトした対照線維芽細胞において、内因性フラタキシンレベルを上回って約16倍高かった。CBA-5’-FXN及びCBA-3’-FXNは、内因性フラタキシン発現(CBA-GFP)と比較して、発現において約10倍高かった。フラタキシン及びGAPDHに対するウエスタンブロット後に、密度分析を行った(
図13E~13G)。フラタキシン及びtomm20の免疫細胞化学的検出は、ミトコンドリア内でのフラタキシンの共局在化を確認し(
図13H)(19)、各条件下での対照及び疾患細胞の染色は、タンパク質発現を反映したものであった(
図13I)。インビトロでの毒性を低減させるために、プラスミド含有量の滴定を行った(
図14A~B)。
【0288】
AAV8TM-DES-5’UTR-FXNのインビボ投与後の生体内分布及び関連しない毒性
フラタキシンレベルは、野生型マウスの心臓、脳、脊髄、骨格筋、肝臓、及び脾臓で測定した。注射されていない動物のELISAアッセイの後に、マウスフラタキシンタンパク質の正常範囲を決定した(
図15)。正常な動物におけるフラタキシンの過剰発現から生じる潜在的な毒性を判定するために、別々のセットの野生型マウスに、9週齢でAAV8TM-DES-5’UTR-FXNの静脈内注射を施した。AAV投与後の正常なマウスの心臓、骨格筋、肝臓、及び脳におけるヒトフラタキシンの定量化(ELISA)は、FXN発現の超生理学的レベルをもたらす(
図16)。炎症または毒性が心臓、骨格筋、肝臓、及び脳に明らかであるかどうかを判定するために、ヘマトキシリン及びエオシン染色を行った。染色は、注射された動物の組織において無毒性からごくわずかな毒性を示した。
【0289】
ICMによるAAV送達後、野生型マウスの脳をヒトフラタキシン(ELISA)について評価した。ヒトフラタキシンの検出は、各用量において脳及び脊髄において観察された。予想外にも、動物のサブセット(2/3)において、フラタキシンの検出が観察されなかった(
図17A~B)。同じ動物はまた、右前脛骨筋及び左前脛骨筋(TA)に、3回の漸増用量で直接筋肉内注入を介して用量を受けた。筋肉内投与後のTA溶解物におけるフラタキシンの評価(ELISA)は、有意な発現を示したが、フラタキシンの検出は、大腿四頭筋においても観察された。これは、筋肉内注射(TA)が循環系への漏出、または大腿四頭筋がフラタキシンを呈する代替の機構をもたらし得ることを示唆している(
図17C)。脳領域の代表的な画像及び組織化学分析は、フラタキシンの陽性検出を示す(
図17D)。
【0290】
インビトロFXN毒性:ヒト線維芽細胞
これらの結果は、フラタキシンを有するフラタキシン5’UTRの包含が、フラタキシンORF単独と比較して、より低い毒性をもたらすことを示唆している。5’UTRの存在は、線維芽細胞内の所望のATP含有量に正の影響を及ぼすか、または維持し、このことは、毒性に対するリスクの低減をさらに支持する。結果は、5’UTR対照なしでのフラタキシンの過剰発現が、正常な線維芽細胞株に対して非常に毒性があることを示す。また、5’UTRの包含は、トランスフェクト細胞株において、より正規化されたミトコンドリアATP含有量ももたらした。5’UTRフラタキシン発現は、非5’UTR含有フラタキシンカセットと比較した場合、DES及びCBAプロモーター駆動カセットの両方において、より低かった。これらの結果は、カセットにおいてフラタキシンを有するフラタキシン5’UTRの包含が、インビトロ(正常線維芽細胞及び患者線維芽細胞)でのFXNの過剰発現に関連する毒性を有意に低減させることを示す。また、5’UTR要素を有するフラタキシンの投与は、原発性疾患に関連する組織のミトコンドリア呼吸も改善する。統計分析は、5μgのプラスミドでトランスフェクトした場合、CBA-FXN(約16倍)またはCBA-5’-FXN(約10倍)でトランスフェクションした後のフラタキシンの有意な上昇を示す。より低いDNAトランスフェクションレベルでは、CBA-5’-FXNは、もはや対照線維芽細胞内に毒性を示さないが、CBA-FXNは、依然として細胞生存率の低下をもたらす。さらに、これらの結果は、トランスフェクション後のフラタキシン及びミトコンドリアの共局在化を介したフラタキシンの適切なトラフィッキングを示す。
【0291】
インビボFXN毒性:正常な野生型マウスにおける静脈内投与
この研究の目的は、野生型マウスにおける静脈内注射(5E+13 vg/kg)後の毒性を理解することであった。組織学的H&E検査では、心臓、肝臓、骨格筋、脳、または脊髄において、明らかな毒性は認められなかった。ELISAによるヒトフラタキシンの検出は、末梢組織における発現の有意な増加を示した。この研究の結果は、5E+13 vg/kgのAAV-Des5’が、ヒトフラタキシンの過剰発現が観察された検査した組織において毒性を誘導しないことを示す。
【0292】
インビボFXN毒性:正常な野生型マウスにおけるICM+IM投与
この研究の目的は、AAV-Des5’の二重投与経路(ICM+IM)に続いて毒性-用量関係が観察されるかどうかを判定することであった。組織学的検査時に、脳または骨格筋において、明らかな毒性は観察されなかった。IM注射(TA)はまた、大腿四頭筋におけるフラタキシン発現の検出ももたらした。3E+11 vg/gの脳におけるICM AAV投与は、最も高いフラタキシン発現をもたらし、より高い用量に起因し得る。この研究の結果は、AAV-Des5’が毒性のない標的組織においてフラタキシンを発現することができるという仮説を支持する。
【0293】
ATP含有量測定には新たに単離された組織が必要であり、同じコホート内でフラタキシン発現の変動が観察されるため、ヒトFXN 65pg/ugが発現され、心臓では正常なマウスフラタキシンが102pg/ug、ヒトFXNが60pg/ug、骨格筋では正常なマウスフラタキシンが109pg/ug、ヒトFXNが36pg/ug、脳では正常なマウスフラタキシンが103pg/ug、及びヒトFXNが9.2pg/ug、脊髄では正常なマウスフラタキシンが26.6pg/ugが発現された。[上記の実験についてはさらに詳しく説明のこと。]
【0294】
FA遺伝子療法との関連でAAVベクターに対する免疫原性応答の限られた可能性を支持するAAV注射動物において、AAV5’Des誘導毒性は、観察されなかった。表10は、Bamboo Therapeutics(国際特許出願公開第WO2017077451号を参照のこと)と比較した、AAV送達後のフリードライヒ運動失調症のMCK-Creマウスモデルにおける心臓、骨格筋、及び肝臓におけるフラタキシン発現を概説する。Bamboo Therapeuticsは、3週齢のMCK Fxn-/-マウスにおいて、1×10
13 vg/kgの用量でAAV2i8-HA-FXNを静脈内に使用した。
【表9】
【0295】
AAV構築物中のイントロン配置の影響
図18に示すように、AAV構築物中の要素の順序は、FXN発現に影響を及ぼす。5’UTRを含まない構築物は、C2C12マウス筋芽細胞において非常に有意な発現(レーン3及び6、
図18)をもたらす。イントロンとFXNとの間の5’UTRの包含は、C2C12マウス筋芽細胞において低いFNX発現(レーン5、
図18)をもたらす。しかしながら、5’UTR、イントロン、及びFXNをその順序で含めると、所望のFXN発現レベルがもたらされる。
【0296】
要約すると、毒性は、正常、対照、またはFA患者線維芽細胞株において、超生理学的FXN発現レベルで用量依存的に観察された。脳、脊髄または骨格筋におけるAAV-5’UTR-FXNの送達後、正常なマウスにおいて、毒性は、観察されなかった。5’UTR-FXNの過剰発現は、インビボで明らかな毒性をもたらさないが、細胞生存率の低下は、FXNの過剰発現の非常に有意なレベルにおいてインビトロで検出される。5’UTR領域の包含によるFXN発現の調節は、過剰発現を誘発する細胞毒性の可能性を低下させる。
【0297】
実施例8
すべてのプラスミド構築物のタンパク質発現及び定量化
ヒトFXNプロモーター-イントロンコドン最適化フラタキシンを、ニワトリβアクチンプロモーター(CBA)及びCMVエンハンサーを含有するpdsAAV-CB-EGFP(MK225672)中でクローニングする。成功したクローニングは、Sanger配列決定を通じて確認される。確認後、プラスミドは、製造業者のプロトコルに従って、Trans-IT(Mirusbio、Madison WI)を用いて過剰発現される。以下の構築物を試験する。
CBA-5UTR-イントロン-FXN:CBAプロモーターを有するsv40イントロンの上流に5UTRフラタキシンを含有する構築物
CBA FXN:CBAプロモーターを有するフラタキシンを含有する構築物
CBA-イントロン-5UTR-FXN:CBAプロモーターを有するsv40イントロンの下流に5UTRフラタキシンを含有する構築物
CBA-hFXNプロモーター-FXN:C2C12マウス筋芽細胞株における一過性トランスフェクションを介した内因性ヒトフラタキシンプロモーター及びコドン最適化フラタキシンを含有する構築物
【0298】
これらの細胞株のトランスフェクション後、細胞ペレットを収集し、RIPA緩衝液によってタンパク質を単離する。タンパク質を分離するために、16%トリシンSDS PAGEゲルを実行する。SDS PAGE後、i-ブロット(Thermofisher Scientific)モジュールを使用して、分離したタンパク質をニトロセルロース膜上に転写する。ニトロセルロース膜を、TBST緩衝液中の5%の乳で2時間ブロックし、次いで、一次抗体及びHRPコンジュゲート二次抗体でそれぞれプローブする。次いで、ウエスタンブロットを、化学発光溶液(Millipore)で5分間インキュベートした後、i-Brightデバイスで視覚化する。
【0299】
過剰発現したヒトフラタキシンタンパク質を、特異的抗体α-フラタキシン抗体(Abcam)でプローブする。Gapdh(Cell Signaling technologies)は、各レーンにおける等量のタンパク質負荷を確認するための負荷制御である。5’UTR FXN、sv40イントロン、及びCBAプロモーターを含む構築物から、その順序で、フラタキシンの首尾よく調節された発現が予想される。
【0300】
すべてのプラスミド構築物のRNA転写産物
ヒトFXNプロモーター-イントロンコドン最適化フラタキシンを、ニワトリβアクチンプロモーター(CBA)及びCMVエンハンサーを含有するpdsAAV-CB-EGFP(MK225672)中でクローニングする。成功したクローニングは、Sanger配列決定を通じて確認される。確認後、プラスミドは、製造業者のプロトコルに従って、Trans-IT(Mirusbio、Madison WI)を用いて過剰発現される。以下の構築物を試験する。
CBA-5UTR-イントロン-FXN:CBAプロモーターを有するsv40イントロンの上流に5UTRフラタキシンを含有する構築物
CBA FXN:CBAプロモーターを有するフラタキシンを含有する構築物
CBA-イントロン-5UTR-FXN:CBAプロモーターを有するsv40イントロンの下流に5UTRフラタキシンを含有する構築物
CBA-hFXNプロモーター-FXN:C2C12マウス筋芽細胞株における一過性トランスフェクションを介した内因性ヒトフラタキシンプロモーター及びコドン最適化フラタキシンを含有する構築物
【0301】
トランスフェクション後、細胞を収集して、RNA単離キット(Thermofisher Scientific)を用いてRNAを単離する。cDNAをこれらのRNAから生成し、qPCRを実施して、各条件におけるヒトフラタキシンコピーを検証する。
【0302】
L2領域をサイレンシングすることによるタンパク質発現の調節
siRNAは、5’UTR(配列番号33)のL2領域を特異的に標的とするように設計される。C2C12細胞を、上記のプラスミド及びsiRNAと共トランスフェクトする。
【0303】
これらの細胞株のトランスフェクション後、細胞ペレットを収集し、RIPA緩衝液によってタンパク質を単離する。タンパク質を分離するために、16%トリシンSDS PAGEゲルを実行する。SDS PAGE後、i-ブロット(Thermofisher Scientific)モジュールを使用して、分離したタンパク質をニトロセルロース膜上に転写する。ニトロセルロース膜を、TBST緩衝液中の5%の乳で2時間ブロックし、次いで、一次抗体及びHRPコンジュゲート二次抗体でそれぞれプローブする。次いで、ウエスタンブロットを、化学発光溶液(Millipore)で5分間インキュベートした後、i-Brightデバイスで視覚化する。
【0304】
過剰発現したヒトフラタキシンタンパク質を、特異的抗体α-フラタキシン抗体(Abcam)でプローブする。Gapdh(Cell Signaling technologies)は、各レーンにおける等量のタンパク質負荷を確認するための負荷制御である。結果は、上述の細胞株におけるsiRNAの処理なしの細胞と比較して、siRNA標的細胞が高レベルのフラタキシンを産生することを示す。また、5’UTRを有しないフラタキシンは、5’UTRを有するフラタキシンよりも相対的に発現する。
【0305】
実施例9
フリードライヒ運動失調症の心臓マウスモデルにおけるAAV8TM-CBA-5’-FXNの治療有効性
以下の実験は、調節されていない(5’UTRなし)FXNと比較した調節された5’UTR-FXNの有効性を試験するために実施される。心臓特異的FXN KO(Fxnflox/ヌル::MCK-Cre(Jax:029720))マウスモデルは、治療的介入なしで約9~10週間の寿命を有する。AAV8TM-CBA-5’-FXN、5e13 vg/kgウイルスは、出生後0日目(PND0)または5週齢で静脈内投与される;それぞれ、前症候性及び中等度の疾患段階である。動物は、9週齢で心臓機能及び形態測定を決定するために、心臓MR(11T)を受ける。目的は、AAV8TM-CBA-5’-FXN送達後の心機能障害の発症を減弱させることである。
【0306】
研究戦略
AAV8TM-CBA-5’-FXNウイルスは、フロリダ大学パウエル遺伝子治療センターベクターコアで作製され、デジタルドロップPCRを介した注入のために滴定される。4週齢のFxnflox/ヌル::MCK-Creマウスに、5×1013 vg/kg用量を注入する。各群の動物の動員に続いて、静脈内(IV)注射を介して被験物質を単回ボーラス投与する。体重は、週単位で記録される。投与から28日後、心臓マウスモデルにおける臨床的に関連する心臓エンドポイントを観察するために、MRIイメージングを実施する。左心室1回拍出量、左心室駆出分画率、左心室短縮率、及び心拍出量を測定する(Segmentソフトウェア;Medviso)。心臓イメージング後、動物は、殺処分され、剖検には、全血、脳、脊髄、背根神経節、脳脊髄液、心臓、左右の大腿四頭筋、左右の前脛骨筋(TA)、肝臓及び脾臓の収集が含まれる。新たに採取した組織を、即座にミトコンドリア単離し、続いてATP分析(ATPlite発光アッセイ、Perkin Elmer)を行う。残りの組織片は、毒性の組織学的分析、線維症、鉄沈着、及び脂質滴分析に供される。ELISAアッセイ(Abcam)及びウエスタンブロットによってヒトフラタキシンの定量化のために、ミトコンドリアを凍結組織から単離する。血清は、潜在的に臨床的に関連する評価のために収集される;GDF-15血清レベル及び心臓トロポニンIは、Fxnヌルマウスにおいて増加することが報告されている。研究の計画は、表11に詳述されている。表12については、E10.5の妊娠中の雌を注文し、P0(出生後0日目)の同腹仔に、側頭静脈注射により5×1013vg/kgの用量を注射する。注射から4週間後、上記のようにそれらの表現型を観察するために、MRIイメージングを行った。注射から8週間後、疾患の進行及びAAV8TM-CBA-5’-FXNの治療効果を理解するために、MRIイメージングを行った。
【表10】
【表11】
【0307】
予備データに基づいて、疾患の進行は、群における心臓モデルで停止されることが予想される。注射された疾患動物の心臓重量は、正常に近い。組織内のATPレベルの増加も予想される。組織学的指標は、AAV8TM-CBA-5’-FXNを受ける動物における線維症、鉄沈着、及び脂質滴の減少を示し得る。AAV8TM-CBA-FXNとAAV8TM-CBA-5’-FXNとの比較は、過剰なフラタキシンの過剰発現が動物において毒性であるかどうかを解明する。
【0308】
フリードライヒ運動失調症のニューロンマウスモデルにおけるAAV8TM-CBA-5’-FXNの治療有効性
CNSにおけるAAV8TM-CBA-5’-FXNの有効性を試験するために、4週齢または12週齢のFxnflox/ヌル::PV-Cre(Jax:029721)動物は、1.5e11vg/gの脳の用量で、大槽内(ICM)注射を介して脳脊髄液中のベクター送達を受ける。動物は、8週齢~20週齢で毎月行動評価を受ける。目的は、AAV8TM-CBA-5’-FXN送達後の神経機能障害及び神経筋機能障害の発達を減衰させることである。
【0309】
研究戦略
4~5週齢のFxnflox/ヌル::PV-Creマウスを、これらの研究のために動員する。Fxnflox(floxedエクソン2)マウスは、実験の対照として使用されるCRISPR/Cas9生成のCre条件付きフラタキシン対立遺伝子を有する。群1~4のマウスは、大槽内(ICM)注射により、単回ボーラスの賦形剤または被験物質(1.5e11vg/g脳)を受ける。体重は、週単位で記録される。Rotarod、神経スコア、ワイヤーハング、及び前肢グリップ強度試験を使用した行動試験は、表3に記載される投与後4、8、10、12、6、18、及び20週間、ならびに(群5~8)に記載される投与後12、14、16、20週間で評価する[14、15]。投与後20週間の剖検には、全血、脳、脊髄、背根神経節、脳脊髄液、心臓、左右の大腿四頭筋、左右の前脛骨筋(TA)、肝臓及び脾臓の収集が含まれる。主要な組織から新たに単離されたミトコンドリアを、ATP分析に供する。組織の残りの部分は、直ちに液体窒素で凍結されるか、または組織学的分析(毒性-GFAP染色、カルビンジン染色-プルキンエニューロン及びコハク酸デヒドロゲナーゼA-ミトコンドリア複合体IIの救援)のために固定される(4% PFA)。凍結した組織を、ミトコンドリア単離し、続いて、ELISA(Abcam)及びウエスタンブロットによるヒトFXNの定量化のための分子解析を行う。研究の計画は、表13に詳述されている。
【表12】
【0310】
これらの実験は、AAV8TM-5’-FXNのCSF送達後の生体内分布及び治療効果を判定する。我々の生物学的分布研究は、この用量範囲がCNSにおける標的細胞集団において堅牢な形質導入を提供することを示唆している。これにより、AAV8TM-Fxnflox/ヌル::PV-Cre動物における運動失調の発生の減衰または予防をもたらす。毒性は、脳、後根神経節、または脊髄には期待されない。AAV8TM-CBA-5’-FXNで処置したFxnflox/ヌル::PV-Cre動物において、ATP含量(生化学的)及びコハク酸デヒドロゲナーゼA(IHC)が、増加する。
【配列表】
【国際調査報告】