IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特表2022-548276負極活物質、負極活物質の製造方法、それを含む負極、及びリチウム二次電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】負極活物質、負極活物質の製造方法、それを含む負極、及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20221110BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516712
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 KR2020013427
(87)【国際公開番号】W WO2021066580
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121071
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ドン-スブ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン-チョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャン-ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】サン-ウク・ウ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB08
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
黒鉛コアと、前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層と、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層と、を含み、前記第2炭素コーティング層が前記第1炭素コーティング層よりも結晶化度が低いか、または、前記第2炭素コーティング層がハードカーボンを含み、前記第1炭素コーティング層がソフトカーボンを含む負極活物質、それを含む負極、及びリチウム二次電池が提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛コアと、
前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層と、
前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層と、を含み、
前記第2炭素コーティング層が前記第1炭素コーティング層よりも結晶化度が低いか、または、
前記第2炭素コーティング層がハードカーボンを含み、前記第1炭素コーティング層がソフトカーボンを含む、負極活物質。
【請求項2】
前記第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量が、それぞれ独立して、前記黒鉛コア100重量部を基準にして3~6重量部である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記負極活物質の平均粒径(D50)が7~25μmである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記黒鉛コアの平均粒径(D50)が5~20μmである、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値が前記第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値の1.3倍以上である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値が前記第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値の1.3~3倍である、請求項1に記載の負極活物質。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の負極活物質の製造方法であって、
黒鉛と第1炭素前駆体とを混合して1,400~1,600℃の温度で第1熱処理することで、前記黒鉛を黒鉛コアにして前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成する段階と、
前記第1炭素コーティング層を形成する段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合し、1,100~1,300℃の温度で第2熱処理することで、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層を形成する段階と、を含む、負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記負極活物質の第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量が、それぞれ独立して、前記黒鉛コア100重量部を基準にして3~6重量部になるように前記第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層を形成する、請求項7に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項9】
集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に位置した負極活物質層を含む負極であって、
前記負極活物質層が請求項1から6のいずれか一項に記載の負極活物質を含む、負極。
【請求項10】
請求項9に記載の負極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、負極活物質の製造方法、これを含む負極、及びリチウム二次電池に関し、より詳しくは、高い初期効率と優れた急速充電性能を有する負極活物質、負極活物質の製造方法、それを含む負極、及びリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2019年9月30日付け出願の韓国特許出願第10-2019-0121071号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれてエネルギー源としての二次電池の需要が急激に伸びている。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度及び電圧を有し、サイクル寿命が長く、放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池は、電極集電体上にそれぞれ活物質が塗布されている正極と負極との間に多孔性の分離膜が介在された電極組立体に、リチウム塩を含む電解質が含浸されている構造からなり、前記電極は活物質、バインダー及び導電材が溶媒に分散しているスラリーを集電体に塗布して乾燥及び圧延(pressing)して製造される。
【0005】
二次電池の負極としては、従来、リチウム金属が使用されたが、デンドライト(dendrite)の形成による電池短絡及びそれによる爆発の危険性が知られ、構造的及び電気的性質を維持しながら可逆的なリチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離が可能な炭素系化合物に代替されている。
【0006】
前記炭素系化合物は、標準水素電極電位に対して約-3Vの非常に低い放電電位を有し、グラフェン層(graphene layer)の一軸配向性による非常に可逆的な充放電挙動のため、優れた電極寿命特性(cycle life)を示す。また、Liイオンの充電時に電極電位が0V Li/Liであって、純粋なリチウム金属と殆ど類似した電位を示し得るため、酸化物系正極と電池を構成する際に、より高いエネルギーが得られるという長所がある。
【0007】
従来、負極として多く使用されている天然黒鉛は、単位重量当りの容量が大きいが、電極圧延時に配向度が高くなってリチウムイオンの挿入/脱離特性が低下し、電池の急速充電特性が低下する短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、上記の問題点を解決するためのものであって、高い初期効率と優れた急速充電性能を有する負極活物質及び負極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記負極活物質を含む負極及びそれを備えたリチウム二次電池を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した本発明の課題を解決するため、本発明の一態様は、下記の具現例による負極活物質を提供する。
【0011】
第1具現例によれば、
黒鉛コアと、
前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層と、
前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層と、を含み、
前記第2炭素コーティング層が前記第1炭素コーティング層よりも結晶化度が低いか、または、
前記第2炭素コーティング層がハードカーボンを含み、前記第1炭素コーティング層がソフトカーボンを含む、負極活物質が提供される。
【0012】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量が、それぞれ独立して、前記黒鉛コア100重量部を基準にして3~6重量部であり得る。
【0013】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、
前記負極活物質の平均粒径(D50)が7~25μmであり得る。
【0014】
第4具現例によれば、第1具現例~第3具現例のうちいずれか一具現例において、
前記黒鉛コアの平均粒径(D50)が5~20μmであり得る。
【0015】
第5具現例によれば、第1具現例~第4具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM(full width at half-maximum、半値幅)値が前記第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値の1.3倍以上であり得る。
【0016】
第6具現例によれば、第1具現例~第5具現例のうちいずれか一具現例において、
前記第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値が前記第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値の1.3~3倍であり得る。
【0017】
本発明の他の一態様は、下記の具現例による負極活物質の製造方法を提供する。
【0018】
第7具現例によれば、
黒鉛と第1炭素前駆体とを混合して1,400~1,600℃の温度で第1熱処理することで、前記黒鉛を黒鉛コアにして前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成する段階と、
前記第1炭素コーティング層を形成する段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合し、1,100~1、300℃の温度で第2熱処理することで、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層を形成する段階と、を含む、第1具現例に記載の負極活物質の製造方法が提供される。
【0019】
第8具現例によれば、第7具現例において、
前記負極活物質の第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量が、それぞれ独立して、前記黒鉛コア100重量部を基準にして3~6重量部になるように前記第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層を形成し得る。
【0020】
第9具現例によれば、
集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に位置した負極活物質層を含む負極であって、
前記負極活物質層が第1具現例~第6具現例のうちいずれか一具現例による負極活物質を含む、負極が提供される。
【0021】
本発明のさらに他の一態様は、下記の具現例によるリチウム二次電池を提供する。
【0022】
第10具現例によれば、
第9具現例による負極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、天然黒鉛への炭素コーティング量を増加させるため、天然黒鉛を二重層(double layer)で炭素コーティングし、前記二重層の炭素コーティング層の結晶化度を制御した負極活物質を提供する。このような負極活物質を二次電池の負極に適用する場合、高い初期効率と優れた急速充電性能を有する二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0025】
本発明の一態様による負極活物質は、
黒鉛コアと、
前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層と、
前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層と、を含み、
前記第2炭素コーティング層が前記第1炭素コーティング層よりも結晶化度が低いか、または、
前記第2炭素コーティング層がハードカーボンを含み、前記第1炭素コーティング層がソフトカーボンを含む。
【0026】
前記黒鉛コアは、人造黒鉛、天然黒鉛、またはこれらの組合せであり得、すなわち前記黒鉛コアは結晶質系黒鉛からなるものであり得る。通常、天然黒鉛が人造黒鉛よりも高い容量を有するため、前記黒鉛コアとして天然黒鉛を使用すれば、容量の面で有利であり得る。
【0027】
前記黒鉛コアの形状は、特に限定されないが、球状であり得る。前記球状は、前記黒鉛コアを原料物質として使用し、当業界に公知された通常の球状化方法によって製造し得る。例えば、前記原料物質に衝撃圧縮、摩擦またはせん断力などの機械的処理を加えることで、黒鉛コアを構成する粒子が折り曲げられるか又は混入されて粒子の角が切り取られて製造され得る。前記機械的処理は、当業界に通常周知された球状化装置を用いて行い得、例えばカウンタジェットミル(ホソカワミクロン社製、日本)、ACMパルベライザ(ホソカワミクロン社製、日本)、カレントジェット(日清エンジニアリング製、日本)などの粉砕機、SARARA(川崎重工業製、日本)、GRANUREX(フロイント産業製、日本)、New-Graマシン(セイシン企業製、日本)、アグロマスター(ホソカワミクロン社製、日本)などの造粒機、加圧ニーダー(dispersion kneader)、2本ロールなどの混練機、メカノマイクロシステム、押出機、ボールミル、遊星ミル、メカノフュージョンシステム、ノビルタ(Nobilta)、ハイブリダイゼーション、回転ボールミルなどの圧縮せん断式加工装置などを用い得る。
【0028】
前記黒鉛コアの平均粒径(D50)は、5~20μmまたは8~12μmであり得る。黒鉛コアが上記の平均粒径の範囲内であれば、前記黒鉛コアの表面に第1炭素コーティング層を十分均一に形成でき、前記黒鉛コアが上記の範囲内の含量で含まれる場合は、それを含む負極活物質を使用したリチウム二次電池の出力特性及びサイクル特性に優れる。
【0029】
本発明の負極活物質は、前記黒鉛コアの外側を囲む第1炭素コーティング層を備え、前記第1炭素コーティング層の外側を囲む第2炭素コーティング層を順次に備える。
【0030】
通常、黒鉛よりも面間隔が大きくて結晶性(結晶化度)が低い非晶質炭素のコーティング量が増加すれば、急速充電性能が高まる。しかし、炭素コーティング量が過剰であると、コーティングされた炭素粉末同士が互いに絡み付いて、負極活物質を製造するとき、負極活物質が十分に解砕できず、負極活物質の平均粒径(D50)が非常に大きくなる。これにより、負極を製造するとき、コーティング工程を行い難く、レート特性の低下及び最適密度における電極の容量低下という問題が生じるおそれがある。
【0031】
一方、本発明の第1炭素コーティング層の含量(コーティング量)と第2炭素コーティング層の含量(コーティング量)との総含量に対応するように単一の炭素コーティング層を一度に形成すれば、炭素コーティング層形成用材料が凝集する問題が発生するおそれがある。
【0032】
このような問題を解決しようとして、本発明では前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層と、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層との二重層の炭素コーティング層を含む。
【0033】
このとき、前記第1炭素コーティング層と第2炭素コーティング層とは、結晶化度または構成する材料によって区別して選択され得る。
【0034】
前記第2炭素コーティング層が第1炭素コーティング層よりも結晶化度が低いか(第1タイプ)、または、前記第1炭素コーティング層はソフトカーボンを含み、第2炭素コーティング層はハードカーボンを含む(第2タイプ)。
【0035】
前記第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層は、それぞれ、炭素前駆体に該当する非晶質炭素系物質をコーティング対象物質と混合して焼成することで形成し得る。具体的には、前記第1炭素コーティング層は、黒鉛と第1炭素前駆体とを混合して熱処理(第1熱処理)することで、前記黒鉛コアの外側を囲むように形成し、前記第2炭素コーティング層は、第1炭素コーティング層が外側を囲んでいる黒鉛コアと第2炭素前駆体とを混合して熱処理(第2熱処理)することで、前記第1炭素コーティング層の外側を囲むように形成し得る。
【0036】
前記非晶質炭素系活物質の例としては、スクロース、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フルフリルアルコール(furfuryl alcohol)樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂または塩化ビニル樹脂のハードカーボン原料;及び石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、メソフェースピッチ、タールまたは重質油のソフトカーボン原料からなる群より選択される1種または2種以上の非晶質炭素前駆体から得られるが、これらに制限されない。
【0037】
前記第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層の結晶化度は、ラマン分光分析法のGバンドのFWHM値とDバンドのFWHM値とを比較して確認できる。
【0038】
前記ラマン分光分析法は、第1炭素コーティング層と第2炭素コーティング層の炭素コーティング層の構造を分析する方法であって、炭素コーティング層のラマンスペクトルのうち波数1580cm-1付近の領域に存在するピークをGバンドと称し、これは炭素コーティング層のsp2結合を示すピークであって、構造欠陥のない炭素結晶を表すものである。一方、ラマンスペクトルのうち波数1360cm-1付近の領域に存在するピークをDバンドと称し、これは炭素コーティング層のsp3結合を示すピークであって、sp2結合からなる原子結合が切れてsp3結合になる場合に増加する。このようなDバンドは、炭素コーティング層内に存在する無秩序(disorder)または欠陥(defect)が生成される場合に増加する。
【0039】
本発明において、炭素コーティング層に対するラマンスペクトルのGバンドは、波数1550cm-1~1620cm-1の領域に存在するピークであり得、Dバンドは、波数1330cm-1~1370cm-1の領域に存在するピークであり得る。前記Gバンド及びDバンドに対する波数範囲は、ラマン分析法で使用したレーザー光源によってシフト可能な範囲に該当する。本発明で使用するラマン値は、特に制限されないが、DXRラマン分光装置(サーモエレクトロンサイエンティフィック社製)を用いてレーザー波長532nmで測定し得る。
【0040】
本発明の一具現例によれば、前記第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値が前記第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値よりも1.3倍以上大きく、詳しくは1.3~3倍大きく、より詳しくは1.3~2.7倍大きく、さらに詳しくは1.3~2倍大きくなり得る。前記第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値と前記第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値との比率がこのような範囲を満足する場合、前記第2炭素コーティング層内に欠陥がより多く生成され、前記第2炭素コーティング層の結晶性(結晶化度)が前記第1炭素コーティング層の結晶性よりも小さくなる。
【0041】
炭素材料において、結晶化度が大きい炭素材料の場合は炭素層の面間隔が小さく、結晶化度が小さい非晶質炭素材料の場合は炭素層の面間隔が大きくなる。このような炭素材料を負極活物質として使用した二次電池は、充電の際、黒鉛のように結晶化度が大きい炭素材料には、炭素層の面間隔が小さいため、リチウムイオンが電解液からグラフェン層の間へと一度に浸透し難いが、黒鉛よりも結晶化度が小さい非晶質炭素材料の場合は、炭素層の面間隔が大きいため、リチウムイオンが浸透し易くて炭素層内へのリチウムイオンの吸蔵(intercalation)速度が一層速くなる。
【0042】
本発明の負極活物質は、最外郭層である第2炭素コーティング層から第1炭素コーティング層を経て中央の黒鉛コアの順に、炭素材料の結晶化度が大きくなるように設計されている。すなわち、電解液が最初に接する第2炭素コーティング層は、結晶化度が最も小さく、その後、第2炭素コーティング層よりも相対的に結晶化度が大きい第1炭素コーティング層、そして結晶化度が最も大きい黒鉛コアを段階的に配置すれば、初期にリチウムイオンが負極活物質に浸透し易く、素早く炭素層内に挿入できるため、急速充電の面で優れた特性を発揮することができる。
【0043】
前記第2タイプにおいては、前記第1炭素コーティング層がソフトカーボンを含み、第2炭素コーティング層がハードカーボンを含む。
【0044】
前記ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)は、原油の精製過程で発生する副産物であるコークス、ニードルコークスまたはコールタールピッチ(coal tar pitch)、石油系ピッチ、またはこれらのうちの2以上の混合物に1000℃程度の熱を加えて得られる。
【0045】
前記ハードカーボン(難黒鉛化炭素)は、スクロース、フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフリルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、セルロース、スチレン、またはこれらのうちの2以上の混合物である炭素質物質が炭化したものを含み得る。
【0046】
前記ハードカーボンでは、炭素層同士が互いに強く絡み付いており、結晶子が非常に小さく、前駆体での構造的な無秩序度が強いため、2,500℃以上の高温焼成によっても黒鉛化のための結晶構造の再配列が困難である。一方、黒鉛化が容易なソフトカーボンの場合、黒鉛層の平面同士が比較的に互いに平行に配列される構造を形成するため、結晶質の黒鉛化が容易である。
【0047】
前記第2タイプの負極活物質は、黒鉛コアに接触して内側に位置する前記第1炭素コーティング層にはソフトカーボンを含み、負極活物質の最外郭層である第2炭素コーティング層にはハードカーボンを含むように設計されている。上述した第1タイプでも説明したように、第2タイプの負極活物質においても、電解液が最初に接する第2炭素コーティング層が、結晶子の大きさが非常に小さくて前駆体での構造的な無秩序度が強いハードカーボンを含むため、このようなハードカーボンでの炭素層の面間隔が相対的に大きいことから、電解液に含まれたリチウムイオンの浸透がかなり容易である。一方、第1炭素コーティング層は、グラフェン層の平面同士が比較的に平行に配列されて炭素層の面間隔が小さいため、第2炭素コーティング層に比べて、液体である電解液がグラフェン層の間に一度に浸透し難い。その結果、電解液が最初に接する第2炭素コーティング層は構造的な無秩序度がより大きいハードカーボンを含み、その後、第2炭素コーティング層よりも相対的にグラフェン層の平面が比較的平行に配列されたソフトカーボンを含む第1炭素コーティング層、そしてグラフェン層同士が非常に近くて規則的に積層された黒鉛コアを段階的に配置すれば、初期に電解液に含まれたリチウムイオンが負極活物質に浸透し易く、リチウムイオンが素早く炭素層内に挿入できるため、急速充電の面で優れた特性を発揮することができる。
【0048】
本発明の一具現例によれば、前記第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量は、それぞれ独立して、前記黒鉛コア100重量部を基準にして3~6重量部または4~5重量部であり得る。
【0049】
前記第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量がこのような範囲を満足する場合、黒鉛コアを十分に被覆して電解液との直接的な接触を効果的に防止でき、活物質の表面に適切な量の結晶化度が低い非晶質系炭素がコーティングされて出力特性及び急速充電特性を改善することができる。また、過度な含量の炭素コーティング層が形成され、これを負極活物質として含むリチウム二次電池を充放電し難いか、又は、リチウムが挿入される負極空間の絶対量が減って前記リチウム二次電池の容量が減少する問題を防止することができる。
【0050】
前記負極活物質の平均粒径(D50)は、7~25μmまたは8~22μmであり得る。前記負極活物質の平均粒径(D50)がこのような範囲を満足する場合、スラリー製造時の混合などの取り扱いが容易であって工程性が改善され、優れた急速充電性能を発揮でき、電極の容量低下を防止することができる。
【0051】
本発明の他の一態様によれば、前記負極活物質の製造方法が提供される。
【0052】
本発明の一具現例による負極活物質の製造方法は、
黒鉛と第1炭素前駆体とを混合して1,400~1,600℃の温度で第1熱処理することで、前記黒鉛を黒鉛コアにして前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成する段階と、
前記第1炭素コーティング層を形成する段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合し、1,100~1,300℃の温度で第2熱処理することで、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層を形成する段階と、を含む。
【0053】
まず、黒鉛と第1炭素前駆体とを混合して1,400~1,600℃の温度で第1熱処理することで、前記黒鉛を黒鉛コアにして前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成する。
【0054】
前記黒鉛は、人造黒鉛、天然黒鉛、またはこれらの組合せであり得る。
【0055】
前記第1炭素前駆体は、非晶質炭素系物質が適用され得、例えばスクロース、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フルフリルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、セルロース樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂または塩化ビニル樹脂のハードカーボン原料;及び石炭系ピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニル、メソフェースピッチ、タールまたは重質油のソフトカーボン原料からなる群より選択される1種または2種以上の非晶質炭素前駆体から得られるが、これらに制限されない。
【0056】
前記黒鉛と第1炭素前駆体とを混合する方法は、特に制限されず、当業界に公知された通常の方法を適用し得る。例えば、2本ロールなどの混練機、ブレード(blade)、メカノマイクロシステム、押出機、ボールミル、遊星ミル、メカノフュージョンシステム、ノビルタ(Nobilta)、ハイブリダイゼーション、回転ボールミルなどの機械化学的方法を使用するか、または、噴霧乾燥法(spray dry)、乳化法などを使用し得る。
【0057】
前記第1熱処理温度は1,400~1,600℃であり、本発明の一具現例によれば、1,450~1,550℃であり得る。前記第1熱処理温度がこのような範囲を満足する場合、黒鉛コアの微細気孔を維持でき、前記非晶質系炭素材前駆体を十分に炭化させることができる。
【0058】
次いで、前記第1炭素コーティング層を形成する段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合し、1,100~1,300℃の温度で第2熱処理することで、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層を形成する。
【0059】
前記第2炭素前駆体としては、前記第1炭素前駆体と同様に非晶質炭素系物質が適用され得、このとき、第1炭素前駆体と第2炭素前駆体とは同一種類の非晶質炭素系物質が使用されてもよく、相異なる種類の非晶質炭素系物質が使用されてもよい。
【0060】
また、前記第1炭素コーティング層を形成する段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合する方法も、上述した前記黒鉛コアと第1炭素前駆体とを混合する方法から選択し得る。
【0061】
前記第2熱処理温度は、1,100~1,300℃であり、本発明の一具現例によれば、1,150~1,250℃であり得る。
【0062】
これら第1炭素コーティング層の含量(コーティング量)と第2炭素コーティング層の含量(コーティング量)との総含量を有する単一の炭素コーティング層を一度に形成すれば、炭素コーティング層形成用材料が凝集する問題が発生するため、本発明の一具現例では第1炭素コーティング層と第2炭素コーティング層とを別途に形成することで、このような問題を防止することができる。
【0063】
また、第1炭素コーティング層と第2炭素コーティング層とを別途に形成する場合も、形成段階の熱処理温度を何れも第2熱処理温度に該当する1,100~1,300℃にすれば、負極活物質の初期効率が低下する問題が発生するおそれがある。また、形成段階の熱処理温度を何れも第1熱処理温度に該当する1,400~1,600℃にすれば、負極活物質の急速充電性能が低くなる問題が発生するおそれがある。
【0064】
本発明の他の一具現例による負極活物質の製造方法は、
黒鉛と第1炭素前駆体とを混合して第1熱処理することで、前記黒鉛を黒鉛コアにして前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成する段階と、
前段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合して第2熱処理し、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層を形成する段階と、を含み、
このとき、前記第1炭素前駆体が熱処理後ソフトカーボンになる物質であり、第2炭素前駆体が熱処理後ハードカーボンになる物質である。
【0065】
まず、黒鉛と第1炭素前駆体とを混合して第1熱処理することで、前記黒鉛を黒鉛コアにして前記黒鉛コアの外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成する。
【0066】
前記第1炭素前駆体は、熱処理の後、ソフトカーボンになる物質であれば制限なく適用可能であって、例えばコークス、ニードルコークスまたはコールタールピッチ、石油系ピッチ、またはこれらのうちの2以上の混合物が適用され得る。
【0067】
前記黒鉛と第1炭素前駆体とを混合する方法は、上述した前記黒鉛と第1炭素前駆体とを混合する方法から選択し得る。
【0068】
前記第1熱処理温度は1,400~1,600℃であり、本発明の一具現例によれば、1,450~1,550℃であり得る。前記第1熱処理温度がこのような範囲を満足する場合、黒鉛コアの微細気孔を維持でき、前記非晶質系炭素材前駆体を十分に炭化させることができる。
【0069】
次いで、前段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合して第2熱処理し、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層を形成する。
【0070】
前記第2炭素前駆体としては、熱処理後ハードカーボンになる物質であれば制限なく適用可能であって、例えばスクロース、フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフリルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、セルロース、スチレン、またはこれらのうちの2以上の混合物が適用され得る。
【0071】
前記前段階の結果物と第2炭素前駆体とを混合する方法は、上述した前記黒鉛と第1炭素前駆体とを混合する方法から選択し得る。
【0072】
このとき、前記第2熱処理温度は1,100~1,300℃であり、本発明の一具現例によれば、1,150~1,250℃であり得る。
【0073】
本発明の一具現例によれば、前記負極活物質の第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量が、それぞれ独立して、前記黒鉛コア100重量部を基準にして3~6重量部または4~5重量部になるように、前記第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層を形成し得る。
【0074】
前記第1炭素コーティング層の含量及び第2炭素コーティング層の含量がこのような範囲を満足する場合、黒鉛コアを十分に被覆して電解液との直接的な接触を効果的に防止でき、活物質の表面に適切な量の結晶化度が低い非晶質系炭素がコーティングされて出力特性及び急速充電特性を改善することができる。また、過度な含量の炭素コーティング層が形成され、これを負極活物質として含むリチウム二次電池を充放電し難いか、または、リチウムが挿入される負極空間の絶対量が減って前記リチウム二次電池の容量が減少する問題を防止することができる。
【0075】
本発明のさらに他の一態様によれば、前記負極活物質を含む負極が提供される。
【0076】
具体的には、本発明の一具現例による負極は、集電体、及び前記集電体の少なくとも一面に本発明による負極活物質を含む負極活物質層を含む。
【0077】
前記負極は、本発明による負極活物質、バインダー及び導電材を溶媒に分散して得た負極活物質層用スラリーを集電体の少なくとも一面にコーティングした後、乾燥及び圧延して製造し得る。
【0078】
前記集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。前記集電体の厚さは特に制限されないが、通常適用される3~500μmの厚さを有し得る。
【0079】
前記負極活物質は、負極スラリー組成物の全体重量を基準にして80重量%~99重量%で含まれ得る。
【0080】
前記バインダーは、導電材と活物質との結合、または集電体への結合を補助する成分であって、通常、負極スラリー組成物の全体重量を基準にして0.1~20重量%で含まれる。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HEP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、スチレンブチレンゴム(SBR)、リチウム-置換されたポリアクリレート(lithium polyacrylate、Li-PAA)などが挙げられる。
【0081】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。前記導電材は、負極スラリー組成物の全体重量を基準にして0.1~20重量%で添加され得る。
【0082】
前記分散媒は、水またはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含み得、前記負極スラリーが負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材などを含むとき好適な粘度になる量で使用すればよい。
【0083】
また、前記負極スラリーのコーティング方法は、当分野で通常使われる方法であれば特に限定されない。例えば、スロットダイを用いたコーティング法が使用され、その他にもマイヤーバーコーティング法、グラビアコーティング法、浸漬コーティング法、噴霧コーティング法などが使用され得る。
【0084】
本発明のさらに他の一態様は、前記負極を含むリチウム二次電池に関する。具体的には、前記リチウム二次電池は、正極、上述した負極、及びその間に介在されたセパレータを含む電極組立体にリチウム塩含有電解質を注入して製造され得る。
【0085】
前記正極は、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒を混合してスラリーを製造した後、これを金属集電体に直接コーティングするか、または、別途の支持体上にキャスティングし、支持体から剥離した正極活物質フィルムを金属集電体にラミネートして製造し得る。
【0086】
正極に使用される活物質は、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiCoPO、LiFePO及びLiNi1-x-y-zCoM1M2(M1及びM2は、互いに独立して、Al、Ni、Co、Fe、Mn、V、Cr、Ti、W、Ta、Mg及びMoからなる群より選択されたいずれか一つであり、x、y及びzは、互いに独立した酸化物組成元素の原子分率であって、0≦x<0.5、0≦y<0.5、0≦z<0.5、0<x+y+z<1)からなる群より選択されたいずれか一つの活物質粒子またはこれらのうち2種以上の混合物を含み得る。
【0087】
一方、導電材、バインダー及び溶媒は、前記負極の製造に使用されるものを同様に使用し得る。
【0088】
前記セパレータは、セパレータとして従来使用される通常の多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを、単独でまたはこれらを積層して使用し得る。また、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜を使用し得る。前記セパレータは、セパレータの表面にセラミック物質が薄くコーティングされた安定性強化セパレータ(SRS、safety reinforced separator)を含み得る。他にも、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用し得るが、これらに制限されることはない。
【0089】
前記電解液は、電解質としてリチウム塩及びそれを溶解させるための有機溶媒を含む。
【0090】
前記リチウム塩は、二次電池用電解液に通常使用されるものであれば制限なく使用可能であって、例えば、前記リチウム塩の陰イオンとしては、F、Cl、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN 及び(CFCFSOからなる群より選択される1種を使用し得る。
【0091】
前記電解液に含まれる有機溶媒としては、通常使用されるものであれば制限なく使用可能であって、代表的にはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、γ-ブチロラクトン、プロピレンサルファイト及びテトラヒドロフランからなる群より選択される1種以上を使用し得る。
【0092】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒であって、誘電率が高くて電解質内のリチウム塩をよく解離させるため望ましく使用可能であり、このような環状カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネートを適当な比率で混合して使えば、高い電気伝導率を有する電解液を製造できてより望ましい。
【0093】
選択的に、本発明によって使用される電解液は、通常の電解液に含まれる過充電防止剤などのような添加剤をさらに含み得る。
【0094】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、正極と負極との間にセパレータを配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体を、例えば、パウチ、円筒型電池ケースまたは角形電池ケースに収納した後、電解質を注入することで完成され得る。または、前記電極組立体を積層した後、これを電解液に含浸させ、得られた結果物を電池ケースに収納して密封することでリチウム二次電池が完成され得る。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、前記リチウム二次電池は、積層型、巻取型、積層/折畳み型、またはケーブル型であり得る。
【0096】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用可能であるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても望ましく使用され得る。前記中大型デバイスの望ましい例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電力貯蔵用システムなどが挙げられ、特に高出力が要求される領域であるハイブリッド電気自動車及び新再生エネルギー貯蔵用バッテリーなどに有用に使用可能である。
【0097】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0098】
実施例1
(1)負極活物質の製造
黒鉛コアとして平均粒径(D50)が11μmである天然黒鉛と、ピッチとを混合し、前記天然黒鉛上にピッチをコーティングした後、1,500℃で第1熱処理して、前記天然黒鉛の外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成した。このとき、第1炭素コーティング層の含量(コーティング量)は、黒鉛コア100重量部を基準にして5重量部であった。その後、第1熱処理して第1炭素コーティング層を形成した結果物とピッチとを混合し、第1炭素コーティング層が形成された天然黒鉛の第1炭素コーティング層上にピッチをコーティングした後、1,200℃で第2熱処理して、前記第1炭素コーティング層の外側を囲んでいる第2炭素コーティング層を形成した。このとき、第2炭素コーティング層の含量(コーティング量)は、黒鉛コアである天然黒鉛100重量部を基準にして5重量部であった。黒鉛コアである天然黒鉛100重量部を基準にして、第1炭素コーティング層の含量と第2炭素コーティング層の含量との和が10重量部である負極活物質を製造した。
【0099】
(2)負極の製造
前記負極活物質粒子、導電材としてSuper C65、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)、及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を96:1:2:1の重量比で混合し、水を添加して負極スラリーを製造した。
【0100】
前記負極スラリーを銅ホイル(集電体)に3.6mAh/cmのローディング量で塗布した。その後、前記負極スラリーが塗布された集電体を圧延した後、約130℃で8時間真空乾燥して負極を製造した。
【0101】
実施例2
下記の表1に示したように第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層を形成するための熱処理温度をそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同じ方法で負極活物質及び負極を製造した。
【0102】
実施例3
下記の表1に示したように第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層を形成するための熱処理温度をそれぞれ変更したことを除き、実施例1と同じ方法で負極活物質及び負極を製造した。
【0103】
比較例1
黒鉛コアとしての天然黒鉛とピッチとを混合して前記天然黒鉛上にピッチをコーティングした後、1,200℃で熱処理して、前記天然黒鉛の外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成した。このとき、第1炭素コーティング層の含量(コーティング量)は黒鉛コア100重量部を基準にして5重量部であって、第2炭素コーティング層を形成しないことを除き、実施例1と同じ方法で負極活物質及び負極を製造した。
【0104】
比較例2
黒鉛コアとしての天然黒鉛とピッチとを混合して前記天然黒鉛上にピッチをコーティングした後、1,200℃で熱処理して、前記天然黒鉛の外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成した。このとき、第1炭素コーティング層の含量(コーティング量)は黒鉛コア100重量部を基準にして10重量部であって、第2炭素コーティング層を形成しないことを除き、実施例1と同じ方法で負極活物質及び負極を製造した。
【0105】
比較例3
黒鉛コアとしての天然黒鉛とピッチとを混合して前記天然黒鉛上にピッチをコーティングした後、1,500℃で熱処理して、前記天然黒鉛の外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成した。このとき、第1炭素コーティング層の含量(コーティング量)は黒鉛コア100重量部を基準にして10重量部であって、第2炭素コーティング層を形成しないことを除き、実施例1と同じ方法で負極活物質及び負極を製造した。
【0106】
比較例4
黒鉛コアとして平均粒径(D50)が11μmである天然黒鉛と、ピッチとを混合し、前記天然黒鉛上にピッチをコーティングした後、1,200℃で第1熱処理して、前記天然黒鉛の外側を囲んでいる第1炭素コーティング層を形成した。このとき、第1炭素コーティング層の含量(コーティング量)は、黒鉛コア100重量部を基準にして5重量部であった。その後、第2炭素コーティング層を形成するため、第1熱処理して第1炭素コーティング層を形成した結果物とピッチとを混合し、第1熱処理の結果物の第1炭素コーティング層上にピッチをコーティングした後、1,500℃で第2熱処理して第2炭素コーティング層を形成した。このとき、第2炭素コーティング層の含量(コーティング量)は、黒鉛コア100重量部を基準にして5重量部であった。このように黒鉛コア上に第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層を形成したことを除き、実施例1と同じ方法で負極活物質及び負極を製造した。
【0107】
比較例5
第1熱処理温度を1,350℃にし、第2熱処理温度を1,450℃にしたことを除き、実施例1と同じ方法で負極活物質及び負極を製造した。
上述した実施例1~3及び比較例1~5で製造された負極の特徴を下記の表1にまとめて示した。
【0108】
【表1】
【0109】
実験例1:電池の容量及び急速充電性能の評価
実施例1~3及び比較例1~5で製造された負極をそれぞれ使用して、下記の方法で電池を製造した。
【0110】
1.7671cmの円形で切断したリチウム(Li)金属薄膜を正極として用いた。前記正極と前記負極との間に多孔性ポリエチレンの分離膜を介在し、エチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)との混合体積比が7:3である混合溶液に、0.5重量%で溶解したビニレンカーボネートを溶解させ、1M濃度のLiPFが溶解された電解液を注入して、コイン型のリチウムハーフセルを製造した。
【0111】
製造されたハーフセルに対し、最初の3サイクルはCC(定電流(Constant Current))/CV(定電圧(Constant Voltage))(0.2Cの電流速度、5mV、0.005C電流カットオフ)で充電し、CCで1.0Vまで放電させた。このとき、確認された負極の容量及び初期効率を表2に示した。その後、1.5Cの電流速度でSOC80%まで充電しながら、リチウムが析出されるSOC(Liメッキ(plating)が生じるSOC)を確認して表2に示した。
【0112】
実験例2:ラマンスペクトルの分析
実施例1~3及び比較例1~5で製造された負極活物質の第1炭素コーティング層及び第2炭素コーティング層の結晶性程度を調べるため、ラマンスペクトル分析を行った。ラマンスペクトル分析は、レニショー(Renishaw)2000ラマン分光装置システム及び532nmレーザー励起を使用して行った。レーザーの熱効果を避けるため、低いレーザー出力密度及び30秒の露出時間で100倍光学レンズを使用して測定した。位置毎の偏差を減らすため、5μm×5μm領域に対して総25個のポイントを測定し、その平均値を表2に示した。
【0113】
【表2】
表2を参照すると、実施例1~3で製造された負極活物質のGバンド(1580cm-1付近ピーク)のFWHM値とDバンド(1350cm-1付近ピーク)のFWHM値とを比較した結果、1,150~1,250℃で熱処理した第2炭素コーティング層が1,450~1,550℃で熱処理した第1炭素コーティング層よりも結晶化度が相対的に小さいことを確認できる。具体的には、実施例1~3で製造された負極活物質の第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値が、前記第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値よりもそれぞれ約1.66倍、1.34倍、及び2.65倍大きいことが分かる。その結果、実施例1~3で製造された負極活物質を採用した二次電池が高い初期効率と優れた急速充電特性を示すことを確認できる。
【0114】
実施例1~3と比べて、比較例1の負極活物質は一つの炭素コーティング層で一度に5重量部をコーティングした結果、全体のカーボンコーティング量が小さく、急速充電性能が低下した。
【0115】
また、比較例2及び3の負極活物質の場合、一つの炭素コーティング層で一度に10重量部をコーティングして製造されたものであり、このような負極活物質を使用した二次電池は急速充電性能が何れも良くなかった。これは一度に10重量部の多量のピッチをコーティングすることで、黒鉛コアに該当する天然黒鉛粒子が固まって平均粒径であるD50が大きくなり、その結果、天然黒鉛粒子内でのリチウムイオンの拡散抵抗が大きくなって急速充電性能が低下する問題が生じた。
【0116】
また、比較例2は、10重量部のピッチをコーティングした後、比較例3と比べて相対的に低い温度(1,200℃)で熱処理することで、結晶性の低い炭素コーティング層が相対的に多く生成され、比較例3に比べて1.1%ポイントほど低い初期効率特性を見せた。
【0117】
比較例3の場合は、比較例2と同様の理由で平均粒径(D50)が大きくなって急速充電性能が低下し、比較例2と比べて熱処理温度が1,500℃と高いため、生成された炭素コーティング層の結晶性が高くなって、急速充電性能が比較例2よりも低下した。
【0118】
比較例4の場合、1,200℃で熱処理を行って5重量部の第1炭素コーティング層を形成した後、1,500℃で熱処理して5重量部の第2炭素コーティング層を形成した。最初にコーティングした第1炭素コーティング層も第2炭素コーティング層の形成のための熱処理によって1,500℃でもう一度熱処理される効果がある。それによって、比較例4の負極活物質の第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値と第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値との比率が約0.61であった。比較例4の負極活物質は、実施例1~3の負極活物質と比べて、最外郭の炭素コーティング層(第2炭素コーティング層)の結晶性がさらに増加し、比較例4の負極活物質を採用した二次電池は、実施例1~3の負極活物質を使用した二次電池よりも急速充電性能が低下した。一方、比較例4の負極活物質は、比較例3と比べて、炭素コーティング層の含量は同一であっても、二つの層で形成される工程を経ることで平均粒径が相対的に小さくなるため、二次電池への適用時に急速充電性能が一部改善されるものの、実施例1~3の負極活物質を使用した二次電池に比べると依然として著しく低い水準であった。
【0119】
比較例5の負極活物質は、第2炭素コーティング層のDバンドのFWHM値と第1炭素コーティング層のDバンドのFWHM値との比率が約0.86であった。比較例5の負極活物質を使用した二次電池は、比較例4と同様の理由で実施例1~3の負極活物質を使用した二次電池よりも急速充電性能が著しく低下した。比較例5の負極活物質は、第2炭素コーティング層形成時の熱処理温度が比較例4より低く、第2炭素コーティング層(最外郭コーティング層)の結晶性が比較例4の負極活物質よりも低くなるため、比較例4の負極活物質を採用した二次電池に比べて、比較例5の負極活物質を採用した二次電池の急速充電特性は多少改善されたが、実施例1~3の負極活物質を使用した二次電池に比べると依然として著しく低い水準であった。
【国際調査報告】