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特表2022-548283ヒト抗PD-L1ペプチドワクチン及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】ヒト抗PD-L1ペプチドワクチン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20221110BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221110BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221110BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20221110BHJP
   A61K 39/20 20060101ALI20221110BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
A61K39/00 H
A61K39/39
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P1/16
A61P7/06
A61P17/02
A61P17/06
A61P17/14
A61P19/02
A61P21/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/04
A61K47/64
A61K39/20
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517184
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020051240
(87)【国際公開番号】W WO2021055583
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/901,727
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】カウマヤ,プラビン ティ ピー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA38
4C085BA63
4C085BB01
4C085BB36
4C085BB50
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF01
4C085FF02
4C085FF03
4C085FF18
4C085FF20
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA31
(57)【要約】
合成PD-L1ペプチド、キメラPD-L1のペプチド、抗PD-L1抗体に関連する組成物、ならびに該ペプチドまたは抗体を使用して、がん、自己免疫疾患、及びアルツハイマー病を治療する方法が開示される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するためのプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)キメラペプチドであって、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ、及び前記Thエピトープに前記PD-L1 B細胞エピトープを連結するリンカーを含み、前記1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5からなる群より選択される配列からなる、前記プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)キメラペプチド。
【請求項2】
前記Thエピトープが、麻疹ウイルス融合タンパク質ペプチドを含む、請求項1に記載のキメラペプチド。
【請求項3】
前記Thエピトープが、配列番号6を含む、請求項1または2に記載のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)キメラペプチド。
【請求項4】
前記リンカーが、配列番号7を含む、請求項1~3のいずれかに記載のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)キメラペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれかに記載のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)キメラペプチド。
【請求項6】
PD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するための合成PD-L1ペプチドであって、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15に記載の配列のうちの1つ以上を含む、前記合成PD-L1ペプチド。
【請求項7】
前記合成PD-L1のペプチドが含む前記アミノ酸が、Dエナンチオマーである、請求項6に記載の合成ペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、アセチル化される、請求項6または7に記載の合成ペプチド。
【請求項9】
さらに、Thエピトープ、及び前記Thエピトープに前記合成PD-L1ペプチドを連結するリンカーを含む、請求項6~8のいずれかに記載の1つ以上の合成ペプチドを含むキメラペプチド。
【請求項10】
前記Thエピトープが、麻疹ウイルス融合タンパク質ペプチドを含む、請求項9に記載のキメラペプチド。
【請求項11】
前記Thエピトープが、配列番号6を含む、請求項9または10に記載のキメラペプチド。
【請求項12】
前記リンカーが、配列番号7を含む、請求項9~11のいずれかに記載のキメラペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドが、配列番号16、配列番号17、配列番号18、または配列番号19に記載のアミノ酸配列を含む、請求項9~12のいずれかに記載のキメラペプチド。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の1つ以上のキメラペプチドまたは合成ペプチド及び薬学的に許容されるビヒクルを含む、医薬組成物。
【請求項15】
さらに、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープを含む、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記HER-2 B細胞エピトープが、配列番号27または29に記載の配列のうちの1つ以上を含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記HER-2 B細胞エピトープが、配列番号28または30に記載の1つ以上のキメラHER-2ペプチドの構成要素である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ビヒクルが、薬学的に許容されるアジュバントである、請求項14~17のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、リン酸カルシウム水酸化物、フロイント完全アジュバント、Montanide(登録商標)、フロイント不完全アジュバント、iscom、iscomマトリックス、ISCOMATRIX(商標)アジュバント、Matrix M(商標)アジュバント、Matrix C(商標)アジュバント、Matrix Q(商標)アジュバント、AbISCO(登録商標)-100アジュバント、AbISCO(登録商標)-300アジュバント、ISCOPREP(商標)、ISCOPREP(商標)誘導体、ISCOPREP(商標)またはISCOPREP(商標)誘導体を含有するアジュバント、QS-21、QS-21誘導体、及びQS-21またはQS21誘導体を含有するアジュバントからなる群より選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記アジュバントが、Montanide(登録商標)である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
HER-2に対する免疫応答を刺激するためのHER-2キメラペプチドであって、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ、及び前記Thエピトープに前記HER-2 B細胞エピトープを連結するリンカーを含み、前記1つ以上のHER-2 B細胞エピトープが、配列番号27及び配列番号29からなる群より選択される配列からなる、前記HER-2キメラペプチド。
【請求項22】
前記Thエピトープが、麻疹ウイルス融合タンパク質ペプチドを含む、請求項21に記載のHER-2キメラペプチド。
【請求項23】
前記Thエピトープが、配列番号6を含む、請求項21または22に記載のHER-2キメラペプチド。
【請求項24】
前記リンカーが、配列番号7を含む、請求項21~23のいずれかに記載のHER-2キメラペプチド。
【請求項25】
前記ペプチドが、配列番号28または配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む、請求項21~24のいずれかに記載のHER-2キメラペプチド。
【請求項26】
請求項1~13または21~25のいずれかに記載のキメラまたは合成ペプチドのいずれかに特異的に結合する、抗体。
【請求項27】
対象のがん、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、請求項1~24のいずれかに記載のペプチドもしくは組成物またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
対象のがん、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、PD-L1キメラペプチドを対象に投与することを含み、前記キメラペプチドが、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ、及び前記Thエピトープに前記PD-1 B細胞エピトープを連結するリンカーを含み、前記1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5からなる群より選択される配列からなる、前記方法。
【請求項29】
対象のがん、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療する方法であって、PD-L1合成ペプチドを対象に投与することを含み、前記PD-L1合成ペプチドが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15に記載の配列のうちの1つ以上を含む、前記方法。
【請求項30】
前記がんが、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳癌、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、メラノーマ、口、喉、喉頭、及び肺の扁平上皮細胞癌腫、結腸癌、子宮頸癌、子宮頸癌腫、乳癌、子宮体癌、上皮癌、腎臓癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、造血癌、精巣癌、前立腺癌、または膵臓癌からなるがんの群より選択される、請求項27~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記がんが、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、または子宮頸癌である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、さらに、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープを前記対象に投与することを含む、請求項29または31に記載の方法。
【請求項33】
前記HER-2 B細胞エピトープが、配列番号27または29に記載の配列のうちの1つ以上を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記HER-2 B細胞エピトープが、配列番号28または30に記載の1つ以上のキメラHER-2ペプチドに含まれる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記HER-2 B細胞エピトープが、前記PD-L1エピトープと同じ組成物で投与される、請求項32~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記自己免疫疾患が、乾癬、円形脱毛症、原発性胆汁性肝硬変、多腺性自己免疫症候群、1型真性糖尿病、自己免疫甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、ギランバレー症候群、グレーブス病、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、乾癬性関節炎、関節リウマチ、再発性多発性軟骨炎、重症筋無力症、急性散在性脳脊髄炎、及び多発血管炎性肉芽腫症からなる群より選択される、請求項27~29のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月17日に出願された米国仮出願第62/901,727号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
II.背景
【0003】
がんは、現在、先進国において及び世界中で主要な死因である。この疾患の経済的負担、またより重要なことに、それが引き起こす苦痛は計り知れない。新しい、より効果的な抗がん療法の開発及び適用を加速する明白で緊急の必要性がある。腫瘍学の分野は巨大であり、いくつかの稀な/稀少な形態を含むいくつかの適応症を含む。腫瘍学は、医薬品開発に関して最も活発な領域の1つであり続けるが、依然として満たされていない重要なニーズがある。
【0004】
がん免疫学の最近の進歩は、ヒトがんに対するT細胞媒介性抗腫瘍免疫の重要性を記録しており、T細胞により発現される抑制性受容体は、がん免疫療法のための重要な標的となっている。免疫チェックポイントのプログラム細胞死タンパク質-1(PD-1)を介したシグナル伝達は、抗腫瘍免疫応答を減衰させることにより腫瘍の進行を可能にする。PD-1及びそのリガンドであるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)間のシグナル伝達軸の、モノクローナル抗体を用いる治療的遮断は、がんの治療において顕著な臨床的成功が示されており、疾患の進行及び転移期であっても、一連の広範ながんサブタイプにわたる著しい活性を示している。この経路を標的とする治療薬は、現在、臨床試験中である。ペンブロリズマブ及びニボルマブは、イピリムマブ不応性メラノーマの治療のためにUS Food and Drug Administration(FDA)から加速承認を得たチェックポイント阻害薬のこの抗PD-1経路ファミリーの最初のものである。
【0005】
免疫チェックポイント、特に、PD-1/PD-L1軸、を標的とするモノクローナル抗体は、近年のがん治療において目覚ましい結果をもたらした。それらの証明された有用性にもかかわらず、抗体は、PD-1:PD-L1シグナル伝達経路を標的とする場合に特に関連し得る不十分な組織/腫瘍浸透度を含む、治療法としての特定の欠点を有する。例えば、PD-1発現エフェクターT細胞は、PD-L1発現腫瘍の固形組織内に浸潤していることが見出される。これは、抗体にとって問題となる。抗体は、サイズが大きいために腫瘍への侵入が抑制される。したがって、抗体は、腫瘍内の意図された治療部位で、PD-1:PD-L1シグナル伝達に完全に拮抗することができず、最適ではない有効性がもたらされ得る。
【0006】
チェックポイント遮断は、がんの免疫療法における新しいパラダイムシフトを引き起こす。しかし、多くのがん患者は、PD-1/PD-L1チェックポイント遮断に応答しなかった。必要とされるのは、がん、ウイルス感染、自己免疫疾患、及びアルツハイマー病の治療のための新しいPD-1/PD-L1チェックポイント阻害薬である。
【発明の概要】
【0007】
III.概要
合成PD-L1ペプチドに関連する方法及び組成物が開示される。
【0008】
一態様では、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ(例えば、配列番号6などの麻疹ウイルス融合タンパク質のペプチド)、及びThエピトープにPD-L1 B細胞エピトープを連結するリンカー(例えば、配列番号7など)を含む、PD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するためのPD-L1キメラペプチドが本明細書で開示され、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5からなる群より選択される配列からなる。例えば、任意の上述の態様のキメラペプチドが本明細書に開示され、ペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号11に記載のアミノ酸配列を含む。
【0009】
開示の配列のDエナンチオマーを含む、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15に記載の配列のうちの1つ以上を含むPD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するための合成PD-L1ペプチドもまた、本明細書で開示される。一態様では、合成ペプチドは、アセチル化することができる。
【0010】
一態様では、任意の上述の態様の合成ペプチドを含み、さらに、Thエピトープ(例えば、配列番号6などの麻疹ウイルス融合タンパク質のペプチド)、及びThエピトープに合成PD-L1ペプチドを連結するリンカー(例えば、配列番号7など)を含む、キメラペプチドが本明細書に開示される。例えば、任意の上述の態様のキメラペプチドが本明細書に開示され、ペプチドは、配列番号16、配列番号17、配列番号18、または配列番号19に記載のアミノ酸配列を含む。
【0011】
任意の上述の1つ以上のキメラまたは合成ペプチド、及び薬学的に許容されるビヒクル(例えば、限定されないが、アジュバントを含む、生分解性のビヒクルなど(例えば、限定されないが、Montanideを含む油性アジュバント中の水など))を含む医薬組成物もまた、本明細書に開示される。
【0012】
一態様では、さらに、1つ以上のHER-2B細胞エピトープ(例えば、配列番号27もしくは配列番号29など)、1つ以上のキメラHER2ペプチド(例えば、配列番号28もしくは配列番号30など)、及び/または1つ以上の抗Her-2抗体を含む、任意の上述の態様の医薬組成物が開示される。
【0013】
1つ以上のHER-2 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ(限定されないが、麻疹ウイルス融合タンパク質のペプチドを含む(例えば、配列番号6など))、及びThエピトープにHER-2 B細胞エピトープを連結するリンカー(例えば、配列番号7など)を含む、HER-2に対する免疫応答を刺激するためのHER-2キメラペプチドもまた、本明細書で開示され、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープは、配列番号27及び配列番号29からなる群より選択される配列からなる。例えば、HER-2キメラペプチドは、配列番号28または配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む。
【0014】
一態様では、任意の上述の態様のキメラペプチドまたは合成ペプチドに特異的に結合する抗体が本明細書に開示される。
【0015】
任意の先行する態様のペプチドまたは組成物のいずれかを対象に投与することを含む、対象のがん及び/または転移(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法もまた、本明細書で開示される。
【0016】
IV.図面の簡単な説明
本明細書に組み込まれ且つその一部を構成する添付の図面は、いくつかの実施形態を示し、説明と共に、開示された組成物及び方法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】hPD-1/hPD-L1の界面の拡大図を示し、hPD-1及びhPD-L1が、それぞれ、青及び緑のリボンで表される。相互作用に重要な全ての残基が、棒で強調される。疎水性コアを形成する残基が黄色に着色される。水分子が赤球として示される。水素結合が黒破線で示される。(A)正面-側面図 Zak et al.,2015,Structure 23,2341-2348。(B)モデル化されたPD-1ペプチド。
図2】ヒトPD-L1で予測されるB細胞エピトープ及びHER-2ペプチドを示す。ヒトPD-L1、ペプチド36~53、50~67、95~112、及び130~147のアミノ酸配列を評価のために選択した。本明細書では、上述のHER2(266~296)及びHER2(597~626)を併用療法に使用した。
図3】MVF-PD-L1エピトープワクチンに対するウサギのPD-L1エピトープの免疫原性を示す。MVF-PD-L1 B細胞エピトープの免疫原性。ニュージーランド白ウサギを、N-アセチルグルコサミン-3イル-アセチル-l-アラニル-d-イソグルタミン333μgを含むMontanide ISA720ビヒクル(Seppic)で乳化した(1:1)、蒸留脱イオンHOに溶解させた各MVF-ペプチド免疫原1mgで免疫した(nor-MDP)。3週間隔で、ウサギを同じ用量で追加免疫した。ウサギの中央耳介の動脈から血液を採取した。血液を週1回採取し(1Y+3、2Y+1、2Y+2、2Y+3、3Y+1、3Y+2)、免疫原MVF-PD-L1ペプチドを使用して、ELISAにより抗体価について血清を試験した。MVF-PD-1ペプチド免疫原で免疫されたウサギ(3Y+3)由来の血清(終点)を、ELISAで免疫原に対して個別に試験した。200ng/ウェルのペプチドを2連で使用して、ELISAプレートをコーティングした。力価は、ブランクを差し引いた後の吸光度値0.2の血清の最も高い希釈度として定義される。
図4】組み換えPD-L1タンパク質に対するPD-L1エピトープの抗原性を示す。MVF-PD-L1ペプチド免疫原で免疫されたウサギ(3Y+3)の血清(終点)を、ELISAにより免疫原rhPD-L1タンパク質に対して個別に試験した。500ng/ウェルのrhPD-L1タンパク質を2連で使用して、ELISAプレートをコーティングした。
図5A】Balb/cマウスにおけるPD-L1による免疫化を試験する実験スキームを示す。実験1を示す:MVF-PD-L1+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26WT腫瘍モデル。
図5B】Balb/cマウスにおけるPD-L1による免疫化を試験する実験スキームを示す。スキーム1Bを示す:Balb/cマウスのワクチン接種及び腫瘍移植のスキーム。6~8週齢のBalb/cマウスを、nor-MDPを含むISA720で乳化したMVF-ペプチド免疫原で、3週間隔で3回免疫した。腫瘍チャレンジ前に、マウスを、MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]で免疫した。血液を週1回収集し、血清をELISAにより抗体価について試験した。3回目の免疫(3Y)の2週間後に、マウスにCT26 WT腫瘍細胞(マウス1匹当たり10)を移植し、腫瘍チャレンジの2日後に開始して、対照マウスを陰性対照としてPBSで週に2回、陽性対照として抗mPD-L1 mAb(10F.9G2)で週に2回処置した。腫瘍の成長を週に2回観察し、ノギスで測定した。
図5C】Balb/cマウスにおけるPD-L1による免疫化を試験する実験スキームを示す。抗体対照スキームであるスキーム1Cを示す。
図5D】Balb/cマウスにおけるPD-L1による免疫化を試験する実験スキームを示す。CT26 WTによる2回目の追加免疫の2週間後に、PD-L1ワクチンチャレンジで免疫されたマウスを示すスキーム1Dを示す。
図6】Balb/cマウスにおけるMVF-PD-L1免疫原に対するPD-L1エピトープの免疫原性を示す。様々なペプチド構築物で免疫化されたBALB/cマウスにおけるMVF-PD-L1ペプチドの免疫原性。週に1回収集された血清を、それぞれ個々のMVF-PD-L1ペプチド免疫原に対して力価測定した。ピンクのバーは、PD-L1 130に対する力価を意味し、赤いバーは、PD-1(92-110)に対する力価を指す。
図7-1】CT26腫瘍モデルにおける組み換えヒトPD-L1タンパク質に対するPD-L1エピトープの抗原性を示す。MVF-PD-L1ペプチド免疫原で免疫されたマウスの血清を、ELISAにより免疫原rhPD-L1タンパク質に対して個別に試験した。500ng/ウェルのrhPD-L1タンパク質を2連で使用して、ELISAプレートをコーティングした。
図7-2】同上
図8】MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]で免疫されたBALB/cマウスにおけるCT26 WT腫瘍成長の個々のプロットを示す。PBSを陰性対照として使用し、抗mPD-L1mAb(10F.9G2)を陽性対照として使用した。
図9】MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]、陰性対照としてのPBS、及び陽性対照としての抗mPD-L1mAb(10F.9G2)で免疫されたBALB/cマウスの腫瘍成長の平均値を示す。二元配置ANOVAを使用して、腫瘍成長の曲線全体を分析し、これは、p<0.01の有意差を示す。
図10】4つの処置群のそれぞれに対する14日目及び16日目の腫瘍体積LWWのプロットを示し、一元配置ANOVAを使用して、複数の群比較を分析し、これは、ともにp<0.01を示した。
図11】MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]、nor-MDP、及びISA720で免疫された後のBalb/cマウスにおける抗体アイソタイプを示す。
図12】PD-1/PD-L1バイオアッセイを示す。アッセイは、PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイ(Promega)の製造元のプロトコールにしたがって実施した。ニボルマブ及びアテゾリズマブと比較して、PD-L1(130-147)エピトープのみがPD-1/PD-L1を阻害することができた。エピトープPD-L1-(50、95、及びPD-L1-92)は、PD-1及びPD-L1を遮断することができなかった。
図13】アポトーシスを示す(カスパーゼ9アッセイ)。in vitroで処理された細胞のカスパーゼ検出のために、カスパーゼ-Glo9アッセイキット(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用した。
図14】ADCC活性を示す。抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、抗がんmAbの重要な作用機序である。
図15A】実験2のスキーム:MVF-PD-L1+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26 HER-2腫瘍モデルを示す。スキーム2A、研究期間中3日毎に100μg/マウス(=各マウスの体重20gに基づいて5mg/kg)を示す。(PMID:29337305)。
図15B】実験2のスキーム:MVF-PD-L1+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26 HER-2腫瘍モデルを示す。Balb/cマウスのワクチン接種及びCT26 HER-2腫瘍移植を示す。6~8週齢のBalb/cマウスを、nor-MDPを含むISA720で乳化したMVF-ペプチド免疫原で、3週間隔で3回免疫した。腫瘍チャレンジ前に、マウスを、MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]で免疫した。血液を週1回収集し、血清をELISAにより抗体価について試験した。3回目の免疫(3Y)の2週間後に、マウスにCT26 WT腫瘍細胞(マウス1匹当たり10)を移植し、腫瘍チャレンジの2日後に開始して、対照マウスを陰性対照としてPBSで週に2回、陽性対照として抗mPD-L1 mAb(10F.9G2)で週に2回処置した。腫瘍の成長を週に2回観察し、ノギスで測定した。
図15C】実験2のスキーム:MVF-PD-L1+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26 HER-2腫瘍モデルを示す。抗体対照のスキーム(スキーム2C)を示す。
図15D】実験2のスキーム:MVF-PD-L1+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26 HER-2腫瘍モデルを示す。CT26/HER-2を用いる2回目の追加免疫の2週間後に、PD-L1ワクチンチャレンジで免疫されたマウスを示す。
図16】様々なペプチド構築物で免疫されたBALB/cマウスにおけるMVF-PD-L1ペプチド及びコンボ(MVF-PD-L1-(95)+MVF-PD-1(92-110))の免疫原性を示す。週に1回収集された血清を、それぞれ個々のMVF-PD-L1またはMVF-PD-1ペプチド免疫原に対して力価測定した。ピンクのバーは、PD-L1-95に対する力価を意味し、赤いバーは、PD-1(92)に対する力価を指す。
図17-1】CT26-HER2腫瘍モデルにおける組み換えヒトPD-L1タンパク質に対するPD-L1エピトープの抗原性を示す。MVF-PD-L1ペプチド免疫原で免疫されたマウスの血清を、ELISAにより免疫原rhPD-L1タンパク質に対して個別に試験した。500ng/ウェルのrhPD-L1タンパク質を2連で使用して、ELISAプレートをコーティングした。
図17-2】同上
図18】MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]、陰性対照としてのPBS、及び陽性対照としての抗mPD-L1mAb(10F.9G2)で免疫されたBALB/cマウスのCT26 HER2腫瘍成長の個々のプロットを示す。
図19】MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]、及びMVF-PD-L1-(95)+MVF-PD-1(92-110)の組み合わせ、陰性対照としてのPBS、及び陽性対照としての抗mPD-L1mAb(10F.9G2)で免疫されたBALB/cマウスのCT26 HER2腫瘍成長の平均値を示す。二元配置ANOVAを使用して、腫瘍成長の曲線全体を分析し、これは、p<0.01の有意差を示す。
図20】4つの処置群のそれぞれに対する14日目及び16日目の腫瘍体積LWWのプロットを示し、一元配置ANOVAを使用して、複数の群比較を分析し、これは、それぞれ、14日目にp<0.05、16日目にp<0.01を示した。
図21】MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]、nor-MDP、及びISA720で免疫された後のBalb/cマウスにおける抗体アイソタイプを示す。
図22】50%マウス生存時間の比較を示す。MVF-PD-1(92)を用いるまたは用いない、MVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]、nor-MDP、及びISA720によるBalb/cマウスの免疫である。1群当たり9~10匹のマウス、マウスがCT26 HER2腫瘍細胞でチャレンジされた後、本明細書では、1群当たり4~5匹のマウスのマウス生存時間を使用して、50%マウス生存時間を分析した。
図23A】実験3のスキーム:コンボまたはトリプル+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26 HER-2腫瘍モデルを示す。スキーム3A、コンボまたはトリプル+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26/HER-2腫瘍モデルを示す。
図23B】実験3のスキーム:コンボまたはトリプル+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26 HER-2腫瘍モデルを示す。Balb/c CT26/HER-2マウスにおけるPD-L1及びHER-2による免疫化を試験する実験のスキーム3Bを示す。
図23C】実験3のスキーム:コンボまたはトリプル+ISA720で免疫されたBalb/cマウスのCT26 HER-2腫瘍モデルを示す。スキーム3C、Balb/cマウスのワクチン接種及びCT26 HER2腫瘍の移植を示す。6~8週齢のBalb/cマウスを、nor-MDPを含むISA720で乳化したMVF-ペプチド免疫原で、3週間隔で3回免疫した。腫瘍チャレンジ前に、マウスを、コンボHER2と組み合わせたMVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(36-53)、PD-L1(50-67)、PD-L1(95-112)、PD-L1(130-147)]で免疫した。血液を週1回収集し、血清をELISAにより抗体価について試験した。3回目の免疫(3Y)の2週間後に、マウスにCT26 WT腫瘍細胞(マウス1匹当たり10)を移植し、腫瘍チャレンジの2日後に開始して、対照マウスを陰性対照としてPBSで週に2回、陽性対照として抗mPD-L1 mAb(10F.9G2)で週に2回処置した。腫瘍の成長を週に2回観察し、ノギスで測定した。
図24】様々なペプチド構築物で免疫されたBALB/cマウスにおけるコンボHER-2によるMVF-PD-L1ペプチドの免疫原性を示す。週に1回収集された血清は、それぞれ個々のMVF-PD-L1、各HER2ペプチド免疫原に対して力価測定した。
図25】様々なペプチド構築物で免疫されたBALB/cマウスにおけるコンボHER-2によるMVF-PD-L1ペプチドの免疫原性を示す。週に1回収集された血清は、それぞれ個々のMVF-PD-L1、各HER2ペプチド免疫原に対して力価測定した。
図26】D2F2がん細胞チャレンジの実験計画を示す。6~8週齢のBalb/cマウスを免疫し、腫瘍チャレンジ前に、G1及びG2マウスを、抗PD-1 mAb(29F.1A12)(G1)または抗PD-L1 mAb(10F.9G2)(G2またはMVF-PD-L1ワクチン構築物[PD-L1(92-110)(G3)PD-L1(130-147)(G4)]で処置した。同様に、G10、G11、及びG12は、対照群であり、腫瘍細胞チャレンジの前に処置されなかった。G13、G14、及びG15マウスを、G13の場合、マウス1匹当たり100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720、G14の場合、マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-1(92-110)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720、G15の場合、マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-L1(130-147)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100ugのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫した。腫瘍チャレンジの前に、マウスを最大4回免疫した。D2F2/E2腫瘍細胞でチャレンジされた後、マウスは、さらなる処置を受けなかった。全てのマウスを、週に少なくとも2回監視しており、データに示されるように、腫瘍をノギスで測定した。
図27図26に記載されるようなD2F2チャレンジのスキームを示す。
図28】マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-1(92-110)+ISA720で免疫されたG3マウスの免疫原性(ELISAで測定)を示す。
図29】マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-L1(130-147)+ISA720で免疫されたG4マウスの免疫原性(ELISAで測定)を示す。
図30】マウス1匹当たり100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫されたG13マウスの免疫原性(ELISAで測定)を示す。
図31】マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-1(92-110)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫されたG14マウスの免疫原性(ELISAで測定)を示す。
図32】マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-L1(130-147)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫されたG15マウスの免疫原性(ELISAで測定)を示す。
図33】示された処置群のマウス群であるBALB/cマウスにおけるD2F2 WT腫瘍細胞の成長を示す。腫瘍体積をノギスで測定し、式:(長さ×幅2)/2で計算した。全体的な二元配置ANOVAを使用して、腫瘍成長の曲線全体を分析し、これは、p<0.01の有意差を示す。同様に、マウスの全てのペプチド免疫化群は、PBS群及びmAb処置群よりも腫瘍負荷が少ないことが示される。
図34】設計された群で処置されたマウスの生存率のログランク(Mantel-Cox)検定を示す。
図35】グラフに示されるマウス群であるBALB/cマウスにおけるD2F2/E2腫瘍細胞の成長を示す線図を示す。腫瘍体積をノギスで測定し、式:(長さ×幅2)/2で計算した。全体的な二元配置ANOVAを使用して、腫瘍成長の曲線全体を分析し、これは、p<0.01の有意差を示す。全てのペプチド免疫化群及びmAbで処置されたマウスは、PBS群よりも腫瘍負荷が少ないことが示される。最も重要なのは、MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626);MVF-PD-1(92-110)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)、及びMVF-PD-L1(130-147)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)として、2×HER2で免疫されたマウスは、著しい腫瘍抑制が示され、マウスのほとんどが、腫瘍チャレンジ後28日目の最後まで腫瘍がない。
図36】設計された各群で治療されたマウスの生存率を示すログランク(Mantel-Cox)検定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
V.詳細な説明
本化合物、組成物、物品、デバイス、及び/または方法が開示及び記載される前に、それらは、別途明記のない限り、特定の合成方法もしくは特定の組み換えバイオテクノロジー方法に、または、別途明記のない限り、特定の試薬に、限定されないことを理解すべきであり、したがって、当然、異なる場合がある。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定することを意図するものではないことも理解すべきである。
【0019】
A.定義
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に別途明示のない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0020】
範囲は、本明細書では、「約」ある特定値から、及び/または「約」別の特定値までとして表すことができる。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定値から及び/または他の特定値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行詞「約」を使用することにより、特定値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。さらに、範囲のそれぞれの端点は、他の端点に関して且つ他の端点とは独立して、有意であることが理解されるであろう。本明細書にいくつかの数値が開示されており、各数値はまた、その数値自体に加えて、「約」その特定値として本明細書で開示されることも理解される。例えば、「10」という数値が開示される場合、「約10」も開示される。数値が開示される場合、当業者により適切に理解されるように、値「以下」、「その数値以上」、及び数値間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、「10」という数値が開示されている場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示される。本出願の全体にわたって、データは、いくつかの異なる形式で提供され、このデータは、終点及び開始点、ならびにデータ点の任意の組み合わせに対する範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点15が開示される場合、10及び15超、以上、未満、以下、及び等しい、ならびに10~15が開示されたとみなされると理解される。2つの特定の単位間の各単位も開示されていることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14も開示される。
【0021】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲では、いくつかの用語への言及がなされ、それらは以下の意味を有するように定義されるものとする。
【0022】
「任意」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、及び、記載が該事象または状況が生じる場合及び生じない場合を含むことを意味する。
【0023】
「投与すること」という用語は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮、経皮、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、経直腸、膣内、吸入による、または埋め込みリザーバーを介する投与を指す。「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内、及び頭蓋内注射または注入手法を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物及び方法が列挙された要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することが意図される。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「本質的に~からなる」は、組み合わせにとって本質的に重要な他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書で定義される要素から本質的になる組成物は、単離及び精製方法からの微量汚染物質、ならびに薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、防腐剤などを除外しない。これらの転換用語のそれぞれにより定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0025】
「有効量」は、有益なまたは望ましい結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1つ以上の投与、適用、または投薬量で投与することができる。
【0026】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」、「治療」という用語、及びそれらの文法的変形は、障害もしくは状態の1つ以上の付随する症状の強度を部分的もしくは完全に遅延、緩和、軽減、もしくは低減すること、及び/または、障害もしくは状態の1つ以上の原因を緩和、軽減、もしくは抑制すること、を含む。本発明による治療は、予防的、予防的、緩和的、または治療的に適用されてもよい。一部の場合では、「治療する」、「治療すること」、「治療」という用語、及びそれらの文法的変形は、対象の治療前と比較して、または一般的もしくは試験集団におけるそのような症状の発生率に比べてと比較して、腫瘍のサイズを部分的または完全に低減させること、腫瘍の数を低減させること、及び腫瘍の重症度/転移能力を低減させることを含む。
【0027】
本明細書及び結びの特許請求の範囲では、組成物中の特定の要素または構成成分の重量部への言及は、要素または構成成分と、重量部が表現される組成物または物品中の他の任意の要素または構成成分との間の重量関係を意味する。したがって、2重量部の構成成分Xならびに5重量部の構成成分Yを含有する化合物中には、X及びYは、重量比2:5で存在し、さらなる構成成分が化合物に含有されるかどうかに関わらず、そのような比で存在する。本明細書で使用される場合、構成成分の「wt.%」または「重量パーセント(weight percent)」または「重量パーセント(percent by weight)」は、特に相反する記載がない限り、パーセンテージとして表される、構成成分の重量の構成成分が含まれる組成物の総重量に対する比を指す。
【0028】
本出願全体を通して、様々な出版物が参照される。それらの刊行物全体の開示は、本出願が属する現況技術をより完全に説明するために、本明細書により、本出願に参照により組み込まれる。開示された参考文献は、また、参考文献が依拠している文で考察される、それらに含有される資料について、本明細書に参照により個別且つ具体的に組み込まれる。
【0029】
B.組成物
開示の組成物及び本明細書に開示の方法で使用される組成物自体を調製するために使用される構成成分が開示される。これら及び他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示される場合、これらの化合物のそれぞれ様々な個別及び集合的組み合わせ及び順列の具体的な言及が明確に開示されないことがあるが、それぞれは、本明細書で具体的に企図及び記載されると理解される。例えば、特定の合成またはキメラPD-L1ペプチドが開示及び考察され、且つ合成またはキメラPD-L1ペプチドを含むいくつかの分子になすことができるいくつかの修飾が開示される場合、合成またはキメラPD-L1ペプチドのありとあらゆる組み合わせ及び順列ならびに特に反対の指示がない限り可能な修正が具体的に考察される。したがって、分子A、B、及びCのクラスならびに分子D、E、及びFのクラスが開示され、且つ組み合わせ分子A~Dの例が開示されるならば、たとえそれぞれが個別に列挙されないとしても、それぞれは、組み合わせを意味するように個別に及び集合的に企図され、A~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E、及びC~Fが開示されているとみなされることを意味する。同様に、これらのサブセットまたは組み合わせも開示される。したがって、例えば、サブグループA~E、B~F、及びC~Eは開示されているとみなされるであろう。本概念は、限定されないが、開示の組成物を作成及び使用する方法のステップを含む本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施することできる様々な追加のステップがある場合、これらの追加のステップのそれぞれは、開示の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせで実施することができると理解される。
【0030】
免疫グロブリンスーパーファミリーに属するPD-1遺伝子は、55kDaのI型膜貫通タンパク質をコードする。マウスPD-1及びヒトPD-1の両方は、288アミノ酸から成り、N末端(20アミノ酸)にシグナルペプチド、及び中央部に疎水性領域を有し、疎水性領域は膜貫通領域である。ヒト及びマウスのPD-1タンパク質は、約60%~80%のアミノ酸同一性を共有し、4つの潜在的なN-グリコシル化部位、及びIg-Vドメインを定義する残基が保存されている。PD-1は、T細胞、B細胞、及びマクロファージ上に発現される。PD-1のリガンドは、B7ファミリーメンバーのPD-L1(B7-H1)及びPD-L2(B7-DC)である。免疫チェックポイントのプログラム細胞死タンパク質-1(PD-1)を介したシグナル伝達は、抗腫瘍免疫応答を減衰させることにより腫瘍の進行を可能にする。PD-1及びそのリガンドであるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)間のシグナル伝達軸の、モノクローナル抗体を用いる治療的遮断は、がんの治療において顕著な臨床的成功が示されており、一連の広範ながんサブタイプにわたる目覚ましい活性を示している。PD-1及びPD-L1の相互作用を直接遮断するか、またはPD-1/PD-L1の相互作用を遮断するPD-L1に対する抗体を生成するために宿主の免疫応答を刺激することができる、より小さな非抗体ペプチド治療薬及びペプチドワクチンを使用した従来のPD-1/PD-L1遮断の改善が本明細書に開示される。
【0031】
PD-L1 B細胞エピトープのコンピューター支援分析を使用して、PD-L1(配列番号1)残基36~53、50~67、95~112、及び130~147に対応する配列を導出した。したがって、一態様では、PD-L1の残基36~53、50~67、95~112、及び/または130~147を含むPD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するための合成PD-L1ペプチドが本明細書に開示される。例えば、LIVYWEMEDKNIIQFVHG(配列番号2)、FVHGEEDLKVQHSSYRQR(配列番号3)、YRCMISYGGADYKRITVK(配列番号4)、及び/またはVTSEHELTCQAEGYPKAE(配列番号5)を含む、PD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するための合成PD-L1ペプチドが本明細書に開示される。一態様では、ペプチドは、アシル化及び/またはアミド化することができる。したがって、(配列番号2)、(配列番号3)、(配列番号4)、及び/または(配列番号5)を含むPD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するための合成PD-L1ペプチドが本明細書で開示され、合成ペプチドは、アシル化及び/またはアミド化される。
【0032】
いくつかの例では、L-アミノ配列のアナログを使用すると、分解に対する耐性、安定性、合成の容易さ、またはより大きな有効性などの、元の配列に対する利点がもたらされ得る。一態様では、開示の合成配列は、アミノ末端からカルボキシ末端への逆の順序でL-アミノ配列を含み得ることが理解され、本明細書で企図される。例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5のレトロ配列は、それぞれ、GHVFQIINKDEMEWYVIL(配列番号12)、RQRYSHSQVKLDEEGHVF(配列番号13)、KVTIRKYDAGGYSIMCRY(配列番号14)、及びEAKPYGEAQCTLEHESTV(配列番号15)である。これらのレトロ配列は、基本配列のミラーコンフォメーションも有し得る。したがって、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び/または配列番号15に記載の配列のうちの1つ以上を含む合成PD-L1ペプチドが本明細書に開示される。配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5と同様に、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び/または配列番号15を含む合成ペプチドは、アセチル化及び/またはアミド化することができる。
【0033】
配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5で記載されるL-アミノ酸配列のレトロアナログ(配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15に記載)に加えて、より良い経口投与、有効性の拡大、及び合成の容易さの増加を可能にする分解及びタンパク質分解に対する耐性の増加を有し得る、フォワードL-アミノ(配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5)ならびにレトロL-アミノ配列(配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15)のDエナンチオマーアナログがある。したがって、一態様では、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び/または配列番号15のうちの1つ以上を含む合成PD-L1ペプチドが本明細書に開示され、配列を構成するアミノ酸はDアミノ酸である。
【0034】
一態様では、開示の合成PD-L1のペプチドは、キメラPD-L1ペプチドを形成するために、MHC制限(すなわち、無差別Th細胞エピトープ)をバイパスすることを支援するサイトカインの放出を促進するヘルパーT(Th)細胞エピトープに合成PD-L1ペプチドを連結することにより、B細胞の刺激を増加させ得ることが理解され、本明細書で企図される。例えば、一態様では、さらに、Tヘルパー(Th)エピトープ(例えば、配列番号6などの麻疹ウイルス融合タンパク質ペプチド)を含む1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープを含む、PD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するためのPD-L1キメラペプチドが本明細書に開示され、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び/または配列番号15からなる群より選択される配列からなる。B細胞エピトープ(すなわち、PD-L1合成ペプチド)がDアミノ酸を含み得ることが理解され、本明細書で企図される。
【0035】
Thエピトープは、約14~約22アミノ酸長、より好ましくは、約15~21アミノ酸長、最も好ましくは、16アミノ酸長であり得る。好ましくは、Th細胞エピトープは、表1に提供される以下のアミノ酸配列のうちの1つを有する。
【表1】
【0036】
合成PD-L1ペプチド及びTh細胞エピトープを連結するために、アミノ酸リンカーを使用することができる。好ましくは、リンカーは、約2~約15アミノ酸長、より好ましくは、約2~約10アミノ酸長、最も好ましくは、約2~約6アミノ酸長のペプチドである。最も好ましいリンカーは、アミノ酸配列Gly-Pro-Ser-Leu(配列番号7)を含む。したがって、一態様では、任意の先行する態様の合成ペプチドを含み、さらに、Thエピトープ(例えば、配列番号6などの麻疹ウイルス融合タンパク質ペプチド)及びThエピトープに合成PD-L1ペプチドを連結するリンカー(例えば、配列番号7など)を含む、キメラペプチドも本明細書で開示される。例えば、一態様では、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ(例えば、配列番号6などの麻疹ウイルス融合タンパク質ペプチド)、及びThエピトープにPD-L1 B細胞エピトープを連結するリンカー(例えば、配列番号7など)を含む、PD-L1タンパク質に対する免疫応答を刺激するためのキメラPD-L1ペプチドが本明細書で開示され、キメラPD-L1ペプチドは、KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLLIVYWEMEDKNIIQFVHG(配列番号8)、KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLFVHGEEDLKVQHSSYRQR(配列番号9)、KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLYRCMISYGGADYKRITVK(配列番号10)、KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLVTSEHELTCQAEGYPKAE(配列番号11)、KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLGHVFQIINKDEMEWYVIL(配列番号16)、KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLRQRYSSHQVKLDEEGHVF(配列番号17)、KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLKVTIRKYDAGGYSIMCRY(配列番号18)、及び/またはKLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLEAKPYGEAQCTLEHESTV(配列番号19)に記載のアミノ酸配列を含む。
【0037】
合成ペプチドと同様に、キメラPD-L1ペプチド内に含まれる合成PD-L1ペプチドのアミノ酸は、配列中のL-アミノ酸のDアミノ酸アナログであり得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、本明細書に開示の合成PD-L1ペプチドのいずれかを含み、さらに、Thエピトープ(例えば、配列番号6などの麻疹ウイルス融合タンパク質ペプチド)、及びThエピトープに合成PD-L1ペプチドを連結するリンカー(例えば、配列番号7など)を含む、キメラペプチドが本明細書に開示される。例えば、一態様では、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び/または配列番号19に記載のアミノ酸配列を含むキメラPD-L1ペプチドが本明細書に開示され、合成PD-L1ペプチド配列(すなわち、B細胞エピトープ)は、Dアミノ酸を含む。
【0038】
本明細書に開示される、開示の合成及びキメラPD-L1ペプチドは、ペプチドベースのB細胞エピトープを使用する標的療法ならびにHER-2などの発がん性シグナル伝達経路を阻害することにより、がんの成長及び拡散を阻止する標ペプチド免疫療法と組み合わせることができる。HER2、HER-2/neu、p185neu、ERBB2、またはCD340ファミリーの受容体としても知られるヒト上皮成長因子受容体2(HER-2)は、乳癌、卵巣癌、腎臓癌、結腸癌、及び肺癌腫癌を含むいくつかのヒトがんの病因において中心的な役割を果たし、より侵襲型のがん、転移リスクの増加、腫瘍浸潤の増加、及び全生存期間の減少と関連する。それ故、HER-2は、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))及びペルツズマブ(PERJECTA(登録商標))の結合部位であるいくつかのがんの重要な治療標的である。トラスツズマブは、化学療法と組み合わせた、転移性HER-2陽性乳癌患者の臨床使用が承認されたHER-2を標的とする最初のヒト化mAbである。未治療HER-2陽性乳癌患者において、他のHERファミリーメンバーとのHER-2の二量体化を阻止するヒト化mAbであるペルツズマブを、ドセタキセル及びトラスツズマブに追加すると、無増悪生存期間が12.4か月から18.5か月に改善され、全生存期間が40.8か月から56.5か月に改善された。転移性患者の約3分の1においてトラスツズマブからの効果が観察されたにもかかわらず、HER-2陽性乳癌は、最初に応答し、応答する患者の大多数は、最終的に、治療の1年以内に後天性耐性を高めた。HER-2に対するヒト化mAb(トラスツズマブ、ペルツズマブ)またはEGFRを特異的に標的とするキメラmAb(セツキシマブ、ERBITUX(登録商標))による標的療法は、アジュバント設定で生存率を著しく改善したが、依然として、毒性、内因性、または後天性耐性を示し、進行癌患者の大多数は、最終的に疾患により死亡する。
【0039】
1つ以上のHER-2 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ(限定されないが、麻疹ウイルス融合タンパク質のペプチドを含む(例えば、配列番号6など))、及びThエピトープにHER-2 B細胞エピトープを連結するリンカー(例えば、配列番号7など)を含む、HER-2に対する免疫応答を刺激するためのHER-2キメラペプチドもまた、本明細書で開示され、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープが、配列番号27及び配列番号29からなる群より選択される配列からなる。例えば、HER-2キメラペプチドが配列番号28または配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む。
【0040】
PD-L1ペプチド、合成PD-L1ペプチド、キメラPD-L1ペプチド(例えば、配列番号2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、及び/もしくは19に記載のペプチドのいずれか)のうちのいずれも、ならびに/またはHER-2ペプチドまたはキメラHER-2ペプチドのうちのいずれも(例えば、配列番号27、28、29、または30に記載のペプチドのいずれも)が、ワクチンまたは医薬組成物として製剤化することができ、これは、がん(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)、自己免疫疾患、ならびに/またはアルツハイマー病を有するか、またはそれを発症するリスクのある対象に治療的または予防的に投与することができることが理解され、本明細書に企図される。一態様では、ワクチンまたは医薬組成物は、任意の上述の1つ以上のキメラまたは合成ペプチド及び薬学的に許容されるビヒクル(例えば、限定されないが、薬学的に許容されるアジュバントを含むエマルションを含む生分解性のビヒクルなど)を含み得る。本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、通常、キメラペプチド単独、またはアジュバントの非存在下の本明細書に記載のキメラペプチドのいずれかから予想されるものを超えて、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)キメラペプチドにより誘発された免疫応答の大きさを増加させ得る物質のクラスを指す。
【0041】
好適なアジュバントは、当業者に既知であろう。好適なアジュバントの非限定例は、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及び硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバンとも呼ばれる))、リポソーム、ビロソーム、油中水型または水中油型エマルション(例えば、フロイントアジュバント、Montanide(登録商標)、MF59(登録商標)、及びAS03)、3-O-デサシル-4’-モノホスホリル脂質A(MPL)、ならびにMPLを含有するアジュバント(例えば、AS01、AS02、及びAS04)、ならびにサポニンベースのアジュバントを含む。サポニンベースのアジュバントは、例えば、Quillaja saponaria、Panax ginseng、Panax notoginseng、Panax quinquefolium、Platycodon grandiflorum、Polygala senega、Polygala tenuifolia、Quillaja brasiliensis、Astragalus membranaceus、及びAchyranthes bidentata由来のサポニンまたはサポニン誘導体を含む。例示的なサポニンベースのアジュバントとしては、iscom、iscomマトリックス、ISCOMATRIX(商標)アジュバント、MatrixM(商標)アジュバント、Matrix C(商標)アジュバント、Matrix Q(商標)アジュバント、AbISCO(登録商標)-100アジュバント、AbISCO(登録商標)-300アジュバント、ISCOPREP(商標)、ISCOPREP(商標)誘導体、ISCOPREP(商標)またはISCOPREP(商標)誘導体を含有するアジュバント、QS-21、QS-21誘導体、及びQS-21またはQS21誘導体を含有するアジュバントが挙げられる。本明細書に記載のワクチン組成物は、例えば、サイトカイン、ケモカイン、及び成長因子を含む免疫調節物質と会合することもできる。同じワクチン組成物内の2つ以上のアジュバントの混合物もまた、本明細書で企図される。一実施形態では、アジュバントは、油中水型アジュバントであるMontanideである。例えば、医薬組成物を含み、さらに、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープ(例えば、配列番号27もしくは配列番号29など)、1つ以上のキメラHER 2ペプチド(例えば、配列番号28もしくは配列番号30など)、及び/または1つ以上の抗Her-2抗体を含む、PD-L1ペプチド、合成PD-L1ペプチド、及び/またはキメラPD-L1ペプチド(例えば、配列番号2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、及び/または19に記載のペプチドのいずれか)が本明細書に開示される。一態様では、HER-2 B細胞エピトープを伴い、または伴わず、PD-L1ペプチド、合成PD-L1ペプチド、及び/またはキメラPD-L1ペプチド(例えば、配列番号2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、及び/または19に記載のペプチドのいずれか)のうちのいずれかを含み、さらに、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、水酸化リン酸カルシウム、フロイントの完全アジュバント、Montanide(登録商標)、フロイント不完全アジュバント、iscom、iscomマトリックス、ISCOMATRIX(商標)アジュバント、Matrix M(商標)アジュバント、Matrix C(商標)アジュバント、Matrix Q(商標)アジュバント、AbISCO(登録商標)-100アジュバント、AbISCO(登録商標)-300アジュバント、ISCOPREP(商標)、ISCOPREP(商標)誘導体、ISCOPREP(商標)またはISCOPREP(商標)誘導体を含有するジュバント、QS-21、QS-21誘導体、及びQS-21またはQS21誘導体を含むアジュバントからなる群より選択されるアジュバントを含む医薬組成物が本明細書に開示される。
【0042】
一態様では、本明細書に開示のPD-L1キメラペプチド、PD-L1合成ペプチド、HER-2キメラペプチド、HER-2合成ペプチドのいずれかに特異的に結合する抗体が本明細書に開示される。
【0043】
1.配列類似性
本明細書で考察されるように、相同性及び同一性という用語の使用は、類似性と同じことを意味することが理解される。したがって、例えば、相同性という単語の使用が2つの非天然配列間で使用される場合、これは、必ずしもこれらの2つの配列間の進化的関係を示すのではなく、むしろ、それらの核酸配列間の類似性または関連性を検討していることが理解される。2つの進化的に関連する分子間の相同性を決定するための方法の多くが、それらが進化的に関連するか否かに関わらず、配列類似性を測定するために、日常的に、任意の2つ以上の核酸またはタンパク質に適用される。
【0044】
一般に、任意の既知のバリアント及び誘導体または本明細書に開示の遺伝子及びタンパク質から生じる得るものを定義する1つの仕方は、特定の既知の配列に対する相同性に関して、バリアント及び誘導体を定義することによるものであると理解される。本明細書に開示の特定の配列のこの同一性は、また、本明細書の他の箇所に論じられる。一般に、本明細書に開示の遺伝子及びタンパク質のバリアントは、通常、所定の配列または天然配列と、少なくとも、約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントの相同性を有する。当業者は、2つのタンパク質または核酸、例えば、遺伝子、の相同性を決定する方法を容易に理解する。例えば、相同性は、相同性が最高レベルになるように、2つの配列をアラインさせた後に、計算することができる。
【0045】
相同性を計算する別の方法は、公開されたアルゴリズムにより実施することができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局地的相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch,J.MoL Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988)の類似性の方法の検索により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実装形態(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、ウィスコンシン州マディソンのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、または検査により、実行されてもよい。
【0046】
方法のうちのいずれも通常使用することができ、ある特定の場合では、これらの様々な方法の結果が異なってもよいことが理解されるが、これらの方法のうちの少なくとも1つにより同一性が判明した場合、配列は、所定の同一性を有すると言われ、本明細書に開示されると、当業者は理解する。
【0047】
例えば、本明細書で使用される場合、別の配列に対して特定のパーセント相同性を有すると記載される配列は、記載の相同性(上記の計算方法のいずれか1つ以上により計算)を有する配列を指す。例えば、第1の配列が、Zuker計算法を使用して、第2の配列にと80パーセントの相同性を有するように計算される場合、第1の配列が第2の配列と、他の計算法のいずれかにより計算して80パーセントの相同性を有さない場合でも、第1の配列は、本明細書で定義されるように、第2の配列と80パーセントの相同性を有する。別の例として、第1の配列が、Zuker計算方法ならびにPearson及びLipman計算方法の両方を使用して、第2の配列と80パーセントの相同性を有するように計算される場合、たとえ、第1の配列が、第2の配列と、Smith及びWaterman計算方法、Needleman及びWunsch計算方法、Jaeger計算方法、または他の計算方法のいずれかにより計算して、80パーセントの相同性を有さないとしても、第1の配列は、本明細書で定義されるように、第2の配列と80パーセントの相同性を有する。さらに別の例として、第1の配列が、計算法のそれぞれを使用して、第2の配列と80パーセントの相同性を有するように計算される場合(但し、実際には、異なる計算法が、多くの場合、異なる計算された相同性パーセンテージをもたらすであろう)、第1の配列は、本明細書で定義されるように、第2の配列と80パーセントの相同性を有する。
【0048】
2.ペプチド
a)タンパク質及びペプチドバリアント
本明細書で考察されるように、既知であり、本明細書で企図される合成PD-L1ペプチド及びキメラPD-L1ペプチドの多数のバリアントがある。さらに、既知の機能的PD-L1株バリアントには、合成PD-L1ペプチド及びキメラPD-L1ペプチドの誘導体があり、これらも、開示の方法及び組成物で機能する。タンパク質バリアント及び誘導体は、当業者に十分に理解され、アミノ酸配列の修飾を伴い得る。例えば、アミノ酸配列修飾は、通常、3つのクラス、すなわち置換バリアント、挿入バリアント、または欠失バリアントのうちの1つ以上に分類される。挿入は、アミノ及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。挿入は、通常、アミノまたはカルボキシル末端融合の挿入よりも小さい挿入であり、例えば、1~4残基程度である。実施例に記載されるような免疫原性融合タンパク質誘導体は、in vitroでの架橋により標的配列に免疫原性を付与するのに十分な大きさのポリペプチドを融合することにより、または融合をコードするDNAで形質転換された組み換え細胞培養により、作成される。欠失は、タンパク質配列からの1つ以上のアミノ酸残基の除去を特徴とする。通常、約2~6つ以下残基が、タンパク質分子内の任意の1つの部位で欠失する。これらのバリアントは、通常、タンパク質をコードするDNAのヌクレオチドの部位特異的変異導入により調製され、それにより、バリアントをコードするDNAを生成し、その後、組み換え細胞培養でDNAを発現する。既知の配列を有するDNAの所定の部位で置換変異を作成するための手法、例えば、M13プライマー変異導入及びPCR変異導入はよく知られている。アミノ酸置換は、通常、単一の残基のものであるが、一度に、いくつかの異なる場所で生じ得、挿入は、通常、約1~10アミノ酸残基程度となり、欠失は、約1~30残基の範囲に及ぶであろう。欠失または挿入は、好ましくは、隣接する対で行われ、すなわち、2残基の欠失または2残基の挿入である。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組み合わせを、最終構築物に到達するように組み合せてもよい。変異は、配列をリーディングフレームの外に配置してはならず、2次mRNA構造を生成し得る相補的領域を生じさせないことが好ましい。置換バリアントは、少なくとも1つの残基が除去されており、異なる残基がその場所に挿入されている。そのような置換は、一般に、以下の表2及び3に従って行われ、保存的置換と呼ばれる。












【表2】
【表3】
【0049】
機能または免疫学的識別の実質的な変更が、表3のものよりも保存的でない置換を選択することにより、すなわち、(a)例えば、シートまたはらせん構造として、置換の領域のポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の大部分、を維持することにおける影響がより大きく異なる残基を選択することにより、行われる。一般にタンパク質特性に最大の変化を生じると予想される置換は、(a)親水性残基、例えば、セリルもしくはスレオニンが、疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、もしくはアラニルと(もしくはそれにより)置換されるもの、(b)システインもしくはプロリンが、他の任意の残基と(もしくはそれにより)置換されるもの、(c)正荷電側鎖を有する残基、例えば、リシル、アルギニル、もしくはヒスチジルが、負荷電残基、例えば、グルタミルもしくはアスパルチルと(もしくはそれにより)置換されるもの、または、(d)嵩高な側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、この場合は、側鎖を有さないもの、例えば、グリシン、と(もしくはそれにより)置換されるもの、(e)硫酸化及び/もしくはグリコシル化の部位数を増加させることによるもの、となる。
【0050】
例えば、あるアミノ酸残基を、生物学的及び/または化学的に類似している別のアミノ酸残基と置換することは、保存的置換として当業者には知られている。例えば、保存的置換は、ある疎水性残基を別の疎水性残基に、またはある極性残基を別の極性残基に置換するであろう。置換は、例えば、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;及びPhe、Tyrなどの組み合わせを含む。明示的に開示された各配列のそのような保存的に置換された変形が、本明細書で提供されるモザイクポリペプチド内に含まれる。
【0051】
N-グリコシル化(Asn-X-Thr/Ser)またはO-グリコシル化(SerまたはThr)の部位を挿入するために、置換または欠失変異導入を用いることができる。システインまたは他の不安定な残基の欠失も望ましいことがある。潜在的なタンパク質分解部位、例えば、Arg、の欠失または置換は、例えば、塩基性残基の1つを欠失するか、または1つをグルタミニルもしくはヒスチジル残基で置換することにより行われる。
【0052】
ある特定の翻訳後誘導体化は、発現されたポリペプチドに対する組み換え宿主細胞の作用の結果である。グルタミニル及びアスパラギニル残基は、多くの場合、翻訳後脱アミド化されて、対応するグルタミル及びアスパリル残基になる。あるいは、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。他の翻訳後修飾としては、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のo-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco pp 79-86[1983])、N末端アミンのアセチル化、及びいくつかの場合では、C末端カルボキシルのアミド化、が挙げられる。
【0053】
本明細書に開示のタンパク質のバリアント及び誘導体を定義する1つの方法は、特定の既知の配列に対する相同性/同一性に関してバリアント及び誘導体を定義することによるものであると理解される。所定の配列と、少なくとも70%または75%または80%または85%または90%または95%の同一性を有する、本明細書に開示のこれらの及び他のタンパク質のバリアントが具体的に開示される。当業者は、2つのタンパク質の相同性を決定する方法を容易に理解する。例えば、相同性は、相同性が最高レベルになるように、2つの配列をアラインさせた後に、計算することができる。
【0054】
相同性を計算する別の方法は、公開されたアルゴリズムにより実施することができる。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch,J.MoL Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444(1988)の類似性の方法の検索により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実装形態(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、ウィスコンシン州マディソンのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)により、または検査により、実行されてもよい。
【0055】
同じタイプの相同性を、例えば、Zuker,M.Science 244:48-52,1989,Jaeger et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706-7710,1989,Jaeger et al.Methods Enzymol.183:281-306,1989に開示されたアルゴリズムにより核酸について得ることができる。
【0056】
保存的変異及び相同性の説明は、例えば、特定の配列と少なくとも70%の相同性を有する実施形態の任意の組み合わせで一緒に組み合わせることができ、バリアントは、保存的変異であると理解される。
【0057】
本明細書が様々なタンパク質及びタンパク質配列を考察する場合、それらのタンパク質配列をコードし得る核酸も開示されると理解される。これは、特定のタンパク質配列に関連する全ての縮重配列、すなわち、1つの特定のタンパク質配列をコードする配列を有する全ての核酸、ならびにタンパク質配列の開示のバリアント及び誘導体をコードする縮重核酸を含む全ての核酸、を含むであろう。各特定の核酸配列は、本明細書に書き出されないこともあるが、ありとあらゆる配列が、実際に、開示のタンパク質配列を通して、本明細書に開示され、記載されると理解される。アミノ酸配列は、特定のDNA配列が生物内のそのタンパク質コードするものを示さず、開示のタンパク質の特定のバリアントが本明細書で開示されるが、そのペプチドまたはタンパク質をコードする既知の核酸配列もまた既知であり、本明細書で開示及び記載されることが理解される。
【0058】
開示の組成物に組み込むことができる多くのアミノ酸及びペプチド類似体があることが理解される。例えば、多数のDアミノ酸、または表2及び表3に示されるアミノ酸とは異なる官能的置換基を有するアミノ酸がある。天然に存在するペプチドの反対の立体異性体、ならびにペプチドアナログの立体異性体が開示される。これらのアミノ酸は、部位に特異的な仕方で、ペプチド鎖にアナログアミノ酸を挿入するために、tRNA分子を選択のアミノ酸で荷電させることにより、及び、例えば、amberコドン、を利用する遺伝子構築物を操作することにより、ポリペプチド鎖に容易に組み込むことができる。
【0059】
ペプチドに似ているが、天然のペプチド結合を介して連結されていない分子を生成することができる。例えば、アミノ酸またはアミノ酸アナログのための結合は、CHNH--、--CHS--、--CH--CH--、--CH=CH--(シス及びトランス)、--COCH--、--CH(OH)CH--、ならびに--CHHSO-を含み得る(これら及び他は、Spatola,A.F.in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins,B.Weinstein,eds.,Marcel Dekker,New York,p.267(1983)、Spatola,A.F.,Vega Data(March 1983),Vol.1,Issue 3,Peptide Backbone Modifications(general review)、Morley,Trends Pharm Sci(1980)pp.463-468、Hudson,D.et al.,Int J Pept Prot Res 14:177-185(1979)(--CHNH--、CHCH--)、Spatola et al.Life Sci 38:1243-1249(1986)(--CHH--S)、Hann J.Chem.Soc Perkin Trans.I 307-314(1982)(--CH--CH--、シス及びトランス);Almquist et al.J.Med.Chem.23:1392-1398(1980)(--COCH--)、Jennings-White et al.Tetrahedron Lett 23:2533(1982)(--COCH--)、Szelke et al.European Appln,EP 45665 CA(1982):97:39405(1982)(--CH(OH)CH--)、Holladay et al.Tetrahedron.Lett 24:4401-4404(1983)(--C(OH)CH--)、ならびにHruby Life Sci 31:189-199(1982)(--CH--S--)に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。特に好ましくは、非ペプチド結合は、-CHNH-である。ペプチドアナログは、bアラニン、gアミノ酪酸などの、結合原子間に複数の原子を有し得ると理解される。
【0060】
アミノ酸アナログ及びアナログ及びペプチドアナログは、多くの場合、強化されたまたは望ましい特性、例えば、より経済的な生産、より高い化学的安定性、強化された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性など)、特異性の変化(例えば、広域スペクトルの生物学的活性)、抗原性の低減などを有する。
【0061】
Dアミノ酸はペプチダーゼなどにより認識されないので、D-アミノ酸を、より安定なペプチドを生成するために使用することができる。コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸を、同じタイプのD-アミノ酸(例えば、Lリジンの代わりにDリジン)で系統的置換することにより、より安定したペプチドを生成するために使用することができる。換言すれば、任意の開示の配列のインベルソ(すなわち、Dアミノ酸置換)が本明細書で企図される。システイン残基を、2つ以上のペプチドを一緒に環化または結合させるために使用することができる。これは、ペプチドを特定の立体配座に拘束するのに有益であり得る。一態様では、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に記載の配列のうちの1つ以上を含む合成PD-L1ペプチドが本明細書に開示され、ペプチドのアミノ酸が、Dエナンチオマーである。
【0062】
一態様では、開示の合成ペプチドは、ペプチドのアミノ末端からカルボキシ末端が逆になるように、逆の順序であり得る(すなわち、レトロ配列)。一態様では、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5のレトロ配列が本明細書に開示され、これは、それぞれ、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15を含む。これらのレトロ配列は、基本配列のミラーコンフォメーションも有し得る。一態様では、レトロ配列は、Dアミノ酸置換(すなわち、レトロインベルソ)配列も含み得る。したがって、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15に記載の配列のうちの1つ以上を含む合成PD-L1ペプチドが本明細書に開示され、ペプチドのアミノ酸が、Dエナンチオマーである。
【0063】
本明細書に開示のDアミノ酸置換合成ペプチドのいずれも、開示のPD-L1キメラペプチドのPD-L1エピトープとして使用することができると理解される。例えば、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ、及びThエピトープにPD-L1 B細胞エピトープを連結するリンカーを含む、キメラPD-L1ペプチドが本明細書に開示され、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群より選択される配列からなり、ペプチドのアミノ酸は、Dエナンチオマーである。一態様では、キメラPD-L1ペプチドが本明細書に開示され、ペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号16、配列番号17、配列番号18、または配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み、合成PD-L1のペプチドのアミノ酸が、Dエナンチオマーである。
【0064】
3.薬学的担体/医薬品の送達
上記のように、本明細書に開示の合成PD-L1ペプチド、キメラPD-L1ペプチド、合成HER-2ペプチド、及び/またはキメラHER-2ペプチドは、薬学的に許容される担体中、in vivoで投与することもできる。したがって、一態様では、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び/または配列番号30に記載のPD-L1ペプチドのうちのいずれか1つ以上を含む医薬組成物が本明細書に開示される。
【0065】
「薬学的に許容される」とは、生物学的または他の点で望ましくないものではない材料を意味し、すなわち、その材料は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こすことなく、またはその材料が含有される医薬組成物の他の構成要素と有害な様式で、いかなる相互作用も生じさせずに、核酸またはベクターと共に対象に投与されてもよい。担体は、当然、当業者に周知のように、活性成分の任意の分解を最小限にし、対象における任意の有害な副作用を最小化するように、選択されるであろう。
【0066】
医薬組成物を含む開示のPD-L1ペプチドは、PD-L1媒介性免疫抑制が生じる疾患または状態の治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防において特に有用であることが理解され、本明細書で企図される。過去20年間で、別のがん治療パラダイムが進化している。発がん性シグナル伝達経路を阻害することにより、がんの成長及び拡大を阻止するペプチドベースのB細胞エピトープ及びペプチド免疫療法を使用した選択的な作用機序に基づいた標的療法である。これらの標的療法は、非特異的化学療法よりも副作用が少ない傾向にある。したがって、ペプチドベースの小分子阻害薬は、薬物開発方策において近年注目を受けている。しかし、モノクローナル抗体と比較して、小分子免疫チェックポイント阻害薬は、大幅な改善が必要である。したがって、一態様では、本明細書に開示のPD-L1ペプチドのうちの1つ以上を含む開示の医薬組成物は、さらに、PD-L1ペプチドの有効性を増加させるために、疾患特異的治療またはワクチンと組み合わせることができる。例えば、PD-L1ペプチドのうちの1つ以上を含む医薬組成物は、がん及び/または転移(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防に使用される抗HER2抗体、HER-2キメラペプチド、及び/またはHER-2 B細胞エピトープと組み合わせることができる。
【0067】
一態様では、本明細書に開示のPD-L1ペプチド、合成ペプチド、またはキメラペプチド(例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び/または配列番号19)のうちの1つ以上を含み、さらに、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープ(例えば、配列番号27もしくは29、またはキメラエピトープ配列番号28もしくは30)及び/あるいは抗Her-2抗体を含む、医薬組成物が本明細書に開示される。一態様では、配列番号8に記載のMVF-PD-L1(36-53)、配列番号9に記載のMVF-PD-L1(50-67)、配列番号10に記載のMVF-PD-L1(95-112)、及び/または配列番号11に記載のMVF-PD-L1(130-147);MVF-HER-2(266-296)ペプチド(例えば、配列番号28に記載)、及びMVF-HER-2(597-626)ペプチド(例えば、配列番号30に記載)を含む医薬組成物が本明細書に具体的に開示される。
【0068】
組成物は、局所鼻腔内投与または吸入剤による投与を含め、経口、非経口(例えば、静脈内)、筋肉内注射による、腹腔内注射による、経皮、体外、局所などで投与されてもよい。本明細書で使用される場合、「局所鼻腔内投与」は、外鼻孔の一方または両方を介して鼻及び鼻腔に組成物を送達することを意味し、噴霧機構もしくは液滴機構による、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化による送達を含み得る。吸入剤による組成物の投与は、噴霧または液滴機構による送達により鼻または口を介するものであり得る。挿管による呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達することもできる。必要な組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重、及び全身状態、治療されるアレルギー性障害の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、投与様式などに応じて、対象間で変動するであろう。このように、全ての組成物について正確な量を特定することは可能ではない。しかし、適切な量は、本明細書の教示される日常的な実験のみを使用して、当業者が決定することができる。
【0069】
組成物の非経口投与は、使用される場合、一般に注射を特徴とする。注射可能薬剤は、液体溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の懸濁液の溶液に適する固体形態、またはエマルションのいずれかとして、従来の形態で調製することができる。非経口投与のためのより最近改訂されたアプローチは、一定の投薬量が維持されるように、持続放出または徐放性システムの使用を含む。例えば、米国特許第3,610,795号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0070】
材料は、溶液、懸濁液であってよい(例えば、微粒子、リポソーム、または細胞に組み込まれる)。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して特定の細胞型を標的とされてもよい。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的とするこの技術の使用の例である(Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991)、Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989)、Bagshawe,et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988)、Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993)、Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992)、Pietersz and McKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992)、及びRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。「ステルス」などのビヒクル及び他の抗体コンジュゲートリポソーム(結腸癌への脂質媒介薬物標的化を含む)、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体媒介標的化、リンパ球指向性腫瘍標的化、及びin vivoでのマウス神経膠腫細胞の高度に特異的な治療レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的とするこの技術の使用の例である(Hughes et al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989)、及びLitzinger and Huang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。一般に、受容体が、構成的またはリガンド誘導のいずれかの、エンドサイトーシスの経路に関与する。クラスリン被覆ピット中のこれらの受容体クラスターは、クラスリン被覆小胞を介して細胞に入り、酸性化エンドソームを通過し、この中で、受容体が選別され、その後、細胞表面に再循環するか、細胞内に保存されるか、またはリソソーム中で分解される。内在化経路は、様々な機能、例えば、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、高分子のクリアランス、ウイルス及び毒素の日和見侵入、リガンドの解離及び分解、ならびに受容体レベルの制御、を果たす。多くの受容体は、細胞の種類、受容体の濃度、リガンドの種類、リガンド価数、及びリガンド濃度に応じて、複数の細胞内経路をたどる。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子及び細胞機序が概説されている(Brown and Greene、DNA and Cell Biology 10:6、399-409(1991))。
【0071】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含む組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療的に使用することができる。
【0072】
好適な担体及びそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載される。通常は、適切な量の薬学的に許容される塩が、製剤を等張にするために製剤に使用される。薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液が含まれるが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは、約5~約8であり、より好ましくは、約7~約7.5である。さらなる担体は、徐放性調製物、例えば、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成形品、例えば、フィルム、リポソーム、または微粒子の形態である。これは、例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に応じて、ある特定の担体が好ましくあり得ることが当業者には明らかであろう。
【0073】
医薬担体は、当業者に既知である。これらは、最も一般には、滅菌水、生理食塩水、及び生理学的pHの緩衝液などの溶液を含む、ヒトに薬物を投与するための標準的な担体である。組成物は、筋肉内投与または皮下投与することができる。他の化合物は、当業者により使用される標準的な手順に従って投与されるであろう。
【0074】
医薬組成物は、選択された分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤などを含んでもよい。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などのような1つ以上の有効成分も含んでもよい。
【0075】
医薬組成物は、局所的または全身的治療が望まれるかどうか、及び治療されるべき領域に応じて、いくつかの方法で投与されてもよい。投与は、局所的(眼科的、経膣的、直腸的、鼻腔内を含む)、経口的、吸入による、または非経口的、例えば、静脈内点滴、皮下、腹腔内、または筋肉内注射であってよい。開示の抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮投与することができる。
【0076】
非経口投与の調製は、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えば、エチルオレアートである。水性担体は、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または生理食塩水及び緩衝培地を含む懸濁液を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または固定油を含む。静脈内ビヒクルは、液体及び栄養素補充剤、電解質補充剤(リンゲルのデキストロースに基づくような)などを含む。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどの防腐剤及び他の添加剤も存在してもよい。
【0077】
局所投与用の製剤は、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、坐剤、スプレー剤、液剤、及び散剤を含んでもよい。従来の薬学的担体、水溶液、粉末、または油性基剤、増粘剤などが、必要または望ましいことがある。
【0078】
経口投与用の組成物は、散剤もしくは顆粒剤、水もしくは非水性媒体中の懸濁剤もしくは液剤、カプセル剤、サシェ、または錠剤を含む。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が望ましいことがある。
【0079】
組成物のいくつかは、場合により、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、及びリン酸、ならびに有機酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、及びフマル酸との反応により、または無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、ならびに有機塩基、例えば、モノ、ジ、トリアルキル及びアリールアミン、ならびに置換エタノールアミンとの反応により形成された、薬学的に許容される酸付加塩または塩基付加塩として投与されてもよい。
【0080】
b)治療的使用
組成物を投与するための有効な投薬量及びスケジュールは、経験的に決定されてもよく、そのような決定を行うことは、当該技術分野の技術の範囲内である。組成物の投与のための投薬量の範囲は、障害の症状がもたらされる所望の効果を生じさせるのに十分なものである。投薬量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほど多くてはならない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、性別、及び疾患の程度、投与経路、または他の薬物が投薬計画に含まれるかどうか、により変動することになり、当業者が決定することができる。投薬量は、反対の兆候が少しでもある場合には、個々の医師が調整することができる。投薬量は、変動し得、1日または数日間、1日に1回以上の用量の投与で投与することができる。所与のクラスの医薬品の適切な投薬量に関するガイダンスは、文献に見出すことができる。例えば、抗体の適切な用量を選択する際のガイダンスは、抗体の治療的使用に関する以下の文献に見出すことができる、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferrone et al.,eds.,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,(1985)ch.22 and pp.303-357、Smith et al.,Antibodies in Human Diagnosis and Therapy,Haber et al.,eds.,Raven Press,New York(1977)pp.365-389。単独で使用される抗体の代表的な1日投薬量は、上記の要因に応じて、1日当たり約1μg/kg体重~最大100mg/kg体重以上の範囲であってよい。
【0081】
PD-1及びPD-L1の相互作用を阻害する本明細書に開示の合成PD-L1ペプチド、キメラ、及び抗体を、がん、自己免疫疾患、アルツハイマー病を進行させるリスクがある患者もしくは対象に予防的に投与するか、またはがん(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)、自己免疫疾患、アルツハイマー病の治療、抑制、低減、改善、及び/または予防のために治療的に(すなわち、疾患の診断後または症状の発症後に)投与することができる。
【0082】
PD-1またはPD-L1と相互作用してPD-1/PD-L1相互作用を阻害する他の分子または抗体(例えば、ペンブロリクスマブ及びニボルマブ)は、対象のがん、自己免疫疾患、またはアルツハイマー病を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防するために、開示の合成PD-L1ペプチド、キメラPD-L1ペプチド、または抗PD-L1抗体と組み合わせて使用することができる。
【0083】
4.抗体
(1)抗体一般
「抗体」という用語は、本明細書では広い意味で使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、PD-1がPD-L1との相互作用を阻害されるか、またはHER-2受容体が阻害されるように、PD-L1と相互作用する能力について選択される限り、それらの免疫グロブリン分子のフラグメントまたはポリマー、及びその免疫グロブリン分子またはフラグメントのヒトまたはヒト化バージョンもまた、「抗体」という用語に含まれる。PD-1及びPD-L1間の相互作用に関与する配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び/または配列番号19と結合する抗体も開示されている。また本明細書では、配列番号27、配列番号28、配列番号29、及び/または配列番号30のHER-2と結合する抗体も開示される。抗体は、本明細書に記載のin vitroアッセイを使用して、または類似の方法により、所望の活性について試験することができ、その後、in vivo治療及び/または予防活性は、既知の臨床試験方法に従って試験される。ヒト免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3、及びIgG-4;IgA-1及びIgA-2に分けられ得る。当業者は、マウスの同等のクラスを認識するであろう。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。
【0084】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団内の個々の抗体は、抗体分子の小さなサブセットに存在し得る可能な天然に存在する変異を除いて同一である。本明細書でのモノクローナル抗体は、所望のアンタゴニスト活性を示す限り、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の種に由来する、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列、及びそのような抗体のフラグメントと同一または相同である、「キメラ」抗体を具体的に含む。
【0085】
開示のモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生する任意の手順を使用して作製することができる。例えば、開示のモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,Nature,256:495(1975)に記載されるようなハイブリドーマ法を使用して調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物は、通常、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することが可能なリンパ球を誘発するために免疫剤で免疫される。あるいは、リンパ球は、in vitroで免疫化されてもよい。
【0086】
モノクローナル抗体はまた、組み換えDNA法により作製されてもよい。開示のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及びシーケンシングすることができる。抗体または活性抗体フラグメントのライブラリーは、例えば、米国特許第5,804,440号(Burton et al.)及び米国特許第6,096,441号(Barbas et al.)に記載されているように、ファージディスプレイ手法を使用して生成及びスクリーニングすることもできる。
【0087】
in vitro法は、一価抗体の調製にも適する。抗体を消化して、そのフラグメント、特に、Fabフラグメントを生成することは、当該技術分野で既知の所定の手法を使用して実施することができる。例えば、消化は、パパインを使用して実施することができる。パパイン消化の例は、1994年12月22日に公開されたWO94/29348、及び米国特許第4,342,566号に記載される。抗体のパパイン消化は、通常、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントを生成し、それぞれは、単一の抗原結合部位及び残存するFcフラグメントを有する。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し且つさらに抗原を架橋結合することが可能であるフラグメントが生成される。
【0088】
本明細書で使用される場合、「抗体またはそのフラグメント」という用語は、二重または複数の抗原またはエピトープ特異性を有するキメラ抗体及びハイブリッド抗体、ならびにハイブリッドフラグメントを含む、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、sFvなどのフラグメントを包含する。したがって、特定の抗原に結合する能力を保持する抗体のフラグメントが提供される。例えば、PD-L1結合活性を維持するか、または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び/または配列番号19と結合する抗体のフラグメントは、「抗体またはそのフラグメント」という用語の意味の中に含まれる。そのような抗体及びフラグメントは、実施例に記載の方法及び抗体を産生するための、及び特異性及び活性について抗体をスクリーニングするための一般的な方法に従って、当該技術分野で既知の手法により作成することができ、特異性及び活性についてスクリーニングすることができる(Harlow and Lane.Antibodies,A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Publications,New York,(1988)を参照)。
【0089】
抗体フラグメント及び抗原結合タンパク質(一本鎖抗体)のコンジュゲートも「抗体またはそのフラグメント」の意味に含まれる。
【0090】
フラグメントは、他の配列に結合しているか否かに関わらず、特定の領域または特定のアミノ酸残基の挿入、欠失、置換、または他の選択された修飾も含み得る。但し、それは、抗体または抗体フラグメントの活性が、未修飾抗体もしくは抗体フラグメントと比較して大幅に改変されないか、または損なわれないことを条件とする。これらの修飾は、ジスルフィド結合が可能なアミノ酸を除去/追加するための、生体寿命を延長するための、分泌特性を変更するためなどの、いくつかの追加の特性を提供し得る。いずれの場合も、抗体または抗体フラグメントは、同族の抗原への特異的結合などの、生物活性特性を有しなければならない。抗体または抗体フラグメントの機能的または活性な領域は、タンパク質の特定の領域の変異導入、それに続く、発現、及び発現されたポリペプチドの試験により同定され得る。そのような方法は、当業者には容易に明らかであり、抗体または抗体フラグメントをコードする核酸の部位特異的変異導入を含み得る。(Zoller,M.J.Curr.Opin.Biotechnol.3:348-354,1992)。
【0091】
本明細書で使用される場合、「抗体」(複数可)という用語は、ヒト抗体及び/またはヒト化抗体も指し得る。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット、またはウサギに由来するもの)は、ヒトにおいて自然に抗原性であり、したがって、ヒトに投与された場合、望ましくない免疫応答を引き起こし得る。それ故、方法におけるヒトまたはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望ましくない免疫応答を引き起こす可能性を減らすのに役立つ。
【0092】
(2)ヒト抗体
開示のヒト抗体は、任意の手法を使用して調製することができる。開示のヒト抗体は、トランスジェニック動物から得ることもできる。例えば、免疫化に応答して、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック変異型マウスが記載されている(例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551-255(1993)、Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993)を参照)。具体的には、これらのキメラ及び生殖細胞系列変異型マウスの領域(J(H))遺伝子を連結する抗体重鎖のホモ接合型欠失は、内因性抗体産生の完全な抑制をもたらし、ヒト生殖細胞系列抗体遺伝子アレイのそのような生殖細胞系列変異型マウスへの良好な導入は、抗原チャレンジ時にヒト抗体の産生をもたらす。所望の活性を有する抗体は、本明細書に記載されるEnv-CD4-共受容体複合体を使用して選択される。
【0093】
(3)ヒト化抗体
抗体ヒト化手法は、一般に、抗体分子の1つ以上のポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作するための組み換えDNA技術の使用を伴う。したがって、非ヒト抗体(またはそのフラグメント)のヒト化形態は、キメラ抗体または抗体鎖(またはそのフラグメント、例えば、sFv、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体の他の抗原結合部分)であり、これは、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワークに組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体由来の抗原結合部位の一部を含有する)。
【0094】
ヒト化抗体を生成するために、レシピエント(ヒト)抗体分子の1つ以上の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対する特定のレベルの特異性及び親和性)を有することが既知のドナー(非ヒト)抗体分子の1つ以上のCDR由来の残基により置換される。いくつかの場合では、ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、取り込まれたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基も含有してもよい。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。実際には、ヒト化抗体は、通常、いくつかのCDR残基、及び場合により、いくつかのFR残基が齧歯動物抗体の類似部位由来の残基により置換されているヒト抗体である。ヒト化抗体は、一般に、抗体定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常は、ヒト抗体のものを含有する。
【0095】
(4)抗体の投与
抗体の投与は、本明細書に開示されるように行うことができる。抗体送達のための核酸アプローチも存在する。広域中和抗PD-L1抗体及び抗体フラグメント(配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び/または配列番号19に結合する任意の抗体を含む)を、抗体または抗体フラグメントをコードする核酸調製物(例えば、DNAまたはRNA)として患者または対象に投与することもでき、その結果、患者または対象自身の細胞が、核酸を取り込み、コードされた抗体または抗体フラグメントを産生及び分泌する。核酸の送達は、例えば、本明細書に開示されるように、任意の手段によるものであり得る。
【0096】
C.疾患の治療方法
開示の組成物、合成PD-L1ペプチド、及びキメラPD-L1ペプチドは、本明細書で企図され、免疫抑制及びプログラム細胞死の予防が、疾患、例えば、アルツハイマー病、自己免疫疾患、または制御不能な細胞増殖が生じる疾患、例えば、がん、に有利である、任意の疾患を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防するために使用することができることが理解される。
【0097】
本明細書に開示のキメラまたは合成ペプチドまたは医薬組成物を使用して、治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防することができる異なるタイプの自己免疫疾患の非限定的なリストとしては、乾癬、円形脱毛症、原発性胆汁性肝硬変、多腺性自己免疫症候群、1型真性糖尿病、自己免疫甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、ギランバレー症候群、グレーブス病、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、乾癬性関節炎、関節リウマチ、再発性多発性軟骨炎、重症筋無力症、急性散在性脳脊髄炎、及び多発血管炎性肉芽腫症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本明細書に開示のキメラもしくは合成ペプチドまたは医薬組成物を使用して、治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防することができる様々な種類のがんの非限定的なリストとしては、リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳癌、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部の扁平上皮癌、腎臓癌、肺癌、例えば、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、子宮体癌、神経芽細胞腫/神経膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、メラノーマ、口、喉、喉頭、及び肺の扁平上皮癌、結腸癌、子宮頸癌、子宮頸癌腫、乳癌、及び上皮癌、腎臓癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、造血癌;精巣腫瘍;結腸及び直腸癌、前立腺癌、イピリムマブ不応性メラノーマ、または膵臓癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
したがって、一態様では、対象のがん、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法が本明細書に開示され、方法は、PD-L1合成ペプチドを対象に投与することを含み、PD-L1合成ペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15に記載の配列のうちの1つ以上を含む。合成ペプチドは、アセチル化、アミド化、及び/またはDエナンチオマーを含み得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、対象のがん(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法が本明細書に開示され、方法は、PD-L1合成ペプチドを対象に投与することを含み、PD-L1合成ペプチドは、それぞれ、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19に記載されるように、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号18、配列番号9、配列番号10、または配列番号11のDエナンチオマー及び/またはDエナンチオマーレトロインバーソを含む。
【0100】
一態様では、開示の組成物は、所与の疾患または状態に対する他の治療と組み合わせることができることが理解される。例えば、一の態様では、がん及び/または転移を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法が本明細書に開示され、方法は、PD-L1のペプチド、PD-L1合成ペプチド、またはPD-L1キメラペプチドを対象に投与することを含む、疾患または状態が、がん(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)であり、方法は、さらに、1つ以上のHER-2 B細胞エピトープ(例えば、配列番号27もしくは29に記載のHER-2ペプチドのうちの1つ以上または配列番号28もしくは30に記載のキメラMVF-HER-2ペプチド)及び/あるいは1つ以上の抗HER-2抗体を対象に投与することを含む。HER-2 B細胞エピトープまたは抗HER-2抗体が対象に投与される場合、投与は、別個の同時投与、HER-2 B細胞エピトープもしくは抗HER-2抗体の先行投与、HER-2 B細胞エピトープもしくは抗HER-2抗体の後続投与、またはPD-L1ペプチド、PD-L1合成ペプチド、もしくはPD-L1キメラペプチドと同じ医薬製剤の構成成分であるHER-2 B細胞エピトープもしくは抗HER-2抗体、となり得ると理解される。例えば、がん及び/または転移(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5に記載のPD-L1ペプチド;配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に記載のキメラPD-L1ペプチド;ならびに/または配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、及び配列番号19に記載のレトロインベルソPD-L1ペプチドのうちの1つ以上を含む医薬組成物を対象に投与することを含み得、方法が、さらに、配列番号27に記載の1つ以上のHER-2 B細胞エピトープHER-2(266-296)及び/または配列番号29に記載のHER-2(597-626)及び/またはキメラエピトープMVF-HER-2(266-296)ペプチド(例えば、配列番号28に記載)、ならびにMVF-HER-2(597-626)ペプチド(例えば、配列番号30に記載)を対象に投与することを含む。したがって、一態様では、がん及び/または転移(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法が本明細書に開示され、方法は、配列番号8に記載のMVF-PD-L1(36-53)、配列番号9に記載のMVF-PD-L1(50-67)、配列番号10に記載のMVF-PD-L1(95-112)、及び/または配列番号11に記載のMVF-PD-L1(130-147);MVF-HER-2(266-296)ペプチド(例えば、配列番号28に記載)、ならびにMVF-HER-2(597-626)ペプチド(例えば、配列番号30に記載)を含む医薬組成物をがん対象に投与することを含む。
【0101】
さらに、がん、自己免疫疾患、またはアルツハイマー病の治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防における使用される合成ペプチドは、キメラペプチドの構成要素であり得ることが理解され、本明細書で企図される。したがって、一態様では、対象のがん、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法が本明細書に開示され、方法は、PD-L1キメラペプチドを対象に投与することを含み、キメラペプチドは、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープ、Tヘルパー(Th)エピトープ、及びThエピトープにPD-L1 B細胞エピトープを連結するリンカーを含み、1つ以上のPD-L1 B細胞エピトープが、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号12、配列番号13、配列番号14、及び配列番号15からなる群より選択される配列からなる。キメラペプチドで使用される合成PD-L1ペプチド(すなわち、PD-L1 B細胞エピトープ)は、アセチル化、アミド化、及び/またはDエナンチオマーを含み得ると理解され、本明細書で企図される。一態様では、例えば、対象のがん(例えば、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、結腸癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、及び子宮頸癌など)、アルツハイマー病、または自己免疫疾患を治療、抑制、低減、減少、改善、及び/または予防する方法が本明細書に開示され、方法は、PD-L1キメラペプチドを対象に投与することを含み、キメラペプチドは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号16、配列番号17、配列番号18、または配列番号19を含む。
【0102】
D.実施例
以下の実施例は、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/または方法の作成及び評価の仕方の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載され、純粋に例示であることが意図され、本開示を制限することが意図されない。数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確保する努力がなされているが、いくつかの誤差及び偏差を考慮すべきである。別途指示のない限り、部は、重量部であり、温度は、℃であるか、または周囲温度であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【0103】
1.実施例1:huPD-L1のペプチドエピトープの同定
PD-L1の表面に発現された候補B細胞エピトープの選択は、以下のように記載される抗原性の6つの相関関係を使用した、社内(Peptide Companion(商標)、5x.com)のコンピューター支援分析で行った。(a)個々の配列の鎖の柔軟性及び可動性のプロファイルを計算した。(b)疎水性プロファイルを7残基スパン設定により生成し、次に、Kyte及びDoolittleのスケールを使用して3残基スパンで平滑化した。(c)Hopp及びWoodsのプログラムを使用して、6残基ウィンドウによる親水性プロファイルを生成した。(d)アミノ酸残基の水への曝露の分析(1.4Aプローブ)を溶媒曝露アルゴリズムで実施した。(e)アクセス可能で溶媒中に突出するタンパク質の部分を予測する突出指数を計算した。(f)5残基配列が抗原性である確率を、Welling et al.の方法で決定した。配列は、それぞれのインデックス値に基づいて、1~6のスコアを与え、ランク付けした。最高ランクの配列は、試験された分析について個々のスコアで最高であり、一連の候補は、次の最高スコアなどを有していた。
【0104】
さらに、最高スコアのエピトープを2次構造属性との相関によりランク付けした。例えば、両親媒性のα-ヘリックス配列またはβターンループ領域は、ランダムコイルフラグメントよりも好ましい。Chou and Fasman及びNovotny et al.によるコンピュータープログラムを使用して、2次構造(αヘリックス、βストランド/シート、βターン/ループ、ランダムコイル)及びαヘリックス両親媒性モーメントを予測した。最後に、個々のアミノ酸配列を考慮した。らせんセグメントにおける静電イオン対及びらせん双極子相互作用も考慮した(例えば、疎水性/親水性バランス)。
【0105】
免疫原性/抗原性のアルゴリズムを使用したペプチドエピトープマッピングを使用して、PD-L1の4つのエピトープを同定し、これらのエピトープの分析を、2015年のZak et al.(PDB ID:4ZQK)により開示されたヒトPD-1/ヒトPD-L1(hPD-1/hPD-L1)の結晶構造複合体と組み合わせて、PD-1の細胞外ドメインに基づいてキメラB細胞ワクチンを設計した。PD-1の3D構造(PDB IDコード:4Z18、4ZQK、3BIK)を試験することにより、選択がさらに強化された。PyMOL 3DモデリングソフトウェアDeLano WL(2002)PyMOLユーザーズマニュアルを使用して、4つのエピトープ全てをモデリングした。最高スコアを得る配列が表4に示される。本方法を用いて、PD-1:PDL1の結晶構造の情報と組み合わせて、ヒトPD-L1、アミノ酸36~53、50~67、95~112、及び130~147の12の最高スコアのB細胞エピトープ配列のうち4つを評価するために選択した。
































【表4】
【0106】
ヒトPD-1(PDB 3RRQ)及びヒトPD-L1(PDB 3BIS、3FN3、4Z18、5C3T)の構造が決定されているが、それらは、そこでは完全ヒトPD-1/PD-L1複合体の構造により、ごく最近に実証された、複合体形成時のヒトPD-1内の有意な可塑性を説明していなかった。上記の構造は相互作用の完全な説明を提供したが、タンパク質-タンパク質界面の平らな表面は、さらに合理的な医薬品開発を導くために、PD-1またはPD-L1のいずれかと複合体を形成した小分子阻害薬に関する構造情報がない状態での薬物設計の取り組みをさらに複雑化する。結晶構造は、受容体-リガンドの相互作用の大部分が、PD-1及びPDL1の両方のC0CFG鎖の残基により媒介されることを示す(図1)。タンパク質とタンパク質の接触は、疎水性相互作用及び極性相互作用の両方が関わり、1,970Åの総表面積を覆う。相互作用は、両方のパートナーが寄与する中央疎水性コアの周りに構築され、Ile134及びLTyr123の側鎖の特徴的なアルキル-p相互作用を含む、PD-1の前部シートにある非極性残基(Val64、Ile126、Leu128、Ala132、Ile134)及びPD-L1の前部シートにあるもの(LIle54、LTyr56、LMet115、LAla121、LTyr123)で構成される。この疎水性領域は、抗原結合となる部位で溶媒に開放され、分子の反対側に混合極性/非極性相互作用の埋没領域に隣接している。これらの領域は両方とも、極性残基の周辺ネットワーク(CDRループ側で安定)に囲まれており、受容体及びリガンド間の水素結合を介した追加の相互作用を提供する。
【0107】
2.実施例2:huPD-L1のペプチドエピトープの合成
次に、Fmoc/t-ブチル化学及びCLEARアミド樹脂上のPyBOP/6Cl-HOBTカップリング試薬(Peptides International、米国ケンタッキー州ルイビル)を用いる9600 Milligen/Biosearch固相ペプチド合成装置(Millipore、米国マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して、ヒトPD-L1を標的とすることが同定された4つの新規ペプチド配列を合成した。切断前に1-アセチルイミダゾール(Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)を使用して、いくつかのペプチド試料をアセチル化した。4残基リンカー(GPSL)を使用して、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF、アミノ酸288-302)に由来する無差別Tヘルパーエピトープを有するキメラ構築物として全てのペプチドを合成した。切断試薬R(TFA)/チオアニソール/EDT/アニソール(90/5/3/2)を使用して、ペプチドを樹脂から切断し、粗製ペプチドをセミ分取(C-4 Vydacカラム)逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC;Waters、米国マサチューセッツ州ベッドフォード)で精製した。同じ保持時間を示すRP-HPLC画分を一緒にプールし、凍結乾燥した。全てのペプチドは、95%を超える純度を示した。次に、試料をMALDI(CCIC(Campus Chemical Instrumentation Center、The Ohio State University、米国オハイオ州コロンバス))でのマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析)で特性評価し、分析RP-HPLCシステム(Waters、米国マサチューセッツ州ベッドフォード)で分析した。全てのペプチドは、適切な分子量を有していた。
【0108】
3.実施例3:huPD-L1のペプチドエピトープによる免疫化
各ペプチドについて、Charles River Laboratories(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)から購入したニュージーランド白ウサギを使用して、ワクチン抗体を作成した。Montanide ISA720(Seppic、仏国パリ)及びnor-MDPアジュバント(N-アセチルグルコサミン-3-イル-アセチル-l-アラニル-d-イソグルタミン)で乳化したMVFキメラペプチド1mgで、ウサギを免疫化し、3週間隔で2回追加免疫した。抗体価を、ペプチド免疫原、ペプチドB細胞エピトープ、及びB細胞エピトープのアセチル化バージョンに対する直接ELISAにより監視した。血清を週1回収集し、動物を9週間で死亡させた。プロテインA/Gカラムを使用したアフィニティークロマトグラフィーによりペプチドワクチン抗体を精製し、濃度をクマシータンパク質アッセイで測定した。全ての実験は、U.S. Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory Animalsにしたがって実施され、Ohio State University Institutional Animals Care and Use Committeeにより承認され、認められたプロトコールに詳述された。
【0109】
4.実施例4:ペプチドワクチンPD-L1エピトープのin vivo試験:マウスのCT-26腫瘍モデル
ペプチドワクチンを水に溶解させ、Montanide ISA 720(1:1)及びnor-MDP(N-アセチルグルコサミン-3イル-アセチル-l-アラニル-d-イソグルタミン)100μg中で乳化した。5~6週齢の雌Balb/cマウス(Charles River Laboratories)をペプチドワクチン100μgで、3週間隔で3回免疫し、3回目の免疫の15日後、マウスをCT-26腫瘍細胞(マウス1匹当たり100,000)で皮下チャレンジした。無関係なMVFペプチドキメラで免疫化されたマウスを、陰性対照として使用した。
【0110】
抗マウスPD-L1MAb(Bio X Cell、ニューハンプシャー州ウェストレバノン)200ug/用量で週に2回処置されたマウスを、陽性対照として使用した。腫瘍の成長をチャレンジの18日後まで監視した。免疫化の間、血液を隔週で採取し、Ab力価を監視するためにELISAで使用した。処置の最後にマウスを安楽死させ、腫瘍を抽出及び計量し、腫瘍の試料を、さらなる試験及び組織学的検査のために保存した。さらなる検査のために、脾臓も収集した。
【0111】
5.実施例5:ペプチドワクチンPD-L1エピトープのin vivo試験:マウスにおけるCT-26-HER2 neu腫瘍モデル。
ワクチンを水に溶解させ、Montanide ISA 720(1:1)及びnor-MDP(N-アセチルグルコサミン-3イル-アセチル-l-アラニル-d-イソグルタミン)50μgで乳化した。5~6週齢の雌Balb/cマウス(Charles River Laboratories)をペプチドワクチン100μgで、3週間隔で3回免疫し、3回目の免疫の2週間後、マウスをCT-26-HER2 neu腫瘍細胞(マウス1匹当たり100,000)で皮下チャレンジした。
【0112】
抗マウスPD-L1 MAb 10F.9G2(Bio X Cell、ニューハンプシャー州ウェストレバノン)200μg/用量で週2回処置されたマウスを陽性対照として使用するか、またはマウス血清(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)から精製したマウスIgGを陰性対照として使用した。腫瘍の成長をチャレンジの21日後まで監視した。免疫化の間、血液を隔週で採取し、Ab力価を監視するためにELISAで使用した。処置の最後にマウスを安楽死させ、腫瘍を抽出及び計量し、腫瘍の試料を、さらなる試験及び組織学的検査のために保存した。
【0113】
組み合わせペプチド(HER-2、PD-1、及びPD-L1)をワクチン接種したBalb/cマウス由来の臓器(脾臓、肝臓、心臓、肺、リンパ節、褐色脂肪組織、腎臓、及び腫瘍)をマウスから収集し、分析のために、Comprehensive cancer center department of Veterinary BiosciencesのComparative Pathology & Mouse Phenotyping Core施設に提出した(病理医:Krista M.D.La Perle、DVM、PhD、Dipl.ACVP)。
【0114】
全ての実験は、U.S. Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory Animalsに従って実施され、Ohio State University Institutional Animals Care and Use Committeeにより承認され、認められたプロトコールに詳述された。
【0115】
6.実施例6:PD-L1抗体依存性細胞傷害:
ヒトの免疫系は、免疫チェックポイント分子の複雑なネットワークからなり、これは、自己抗原に対する耐性を維持しながら、外来抗原を発現する細胞の排除を促進する。免疫チェックポイント受容体は、がん及び自己免疫媒介性障害を含む様々な疾患の治療のための新しい免疫療法の標的として有望である。PD-1(CD279)としても知られるプログラム細胞死タンパク質1は、活性化T細胞及びB細胞上で発現される免疫抑制性受容体であり、腫瘍抗原に対する免疫応答の制御に重要な役割を果たす。隣接する細胞におけるリガンド、PD-L1(B7-H1)、またはPD-L2(B7-DC)のいずれかによるPD-1の結合は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達及びTCRを介した増殖、転写活性化、及びサイトカイン産生を抑制する。PD-1/PD-L1相互作用を遮断するように設計された治療用抗体及びFc融合タンパク質は、様々ながんの治療のための臨床試験で有望な結果を示す。
【0116】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、ウイルス感染細胞または他の疾患細胞が細胞媒介性免疫系の構成要素による破壊の標的となる抗体の作用機序である。ADCCは、抗体ベースの薬剤を使用して、標的がん細胞を殺傷するための望ましい機序である。抗体は、細胞表面の標的抗原に結合する。標的結合抗体のFcエフェクター部分が、エフェクター細胞(主に、ナチュラルキラー細胞)の細胞表面のFcγRIIIa受容体にも結合する場合、2つの細胞型の複数の架橋が生じ、ADCCの経路活性化につながる。標的細胞の殺傷は、この経路の活性化の終点であり、ADCCバイオアッセイに使用される。
【0117】
7.実施例7:結腸癌の同系腫瘍モデルにおけるPD-L1ワクチンの免疫原性及び抗腫瘍有効性
持続的治療の可能性を提供しながら、内因性の薬剤耐性を回避する目的を有する、立体配座的にB細胞エピトープワクチンに基づく体液性応答に焦点を当てる免疫療法の新しいパラダイムが、本明細書で提案される。具体的には、2つの新規B細胞エピトープ特異的ワクチン(B-Vaxx)が開発された。すなわちHER-2-トラスツズマブ及びHER-2-ペルツズマブ結合複合体のX線構造を使用して特定的に設計されたトラスツズマブ結合エピトープ及びペルツズマブ結合エピトープである。ヒト初の、B-Vaxxを用いる第I相試験の用量漸増部分の臨床結果が最近報告された。試験ワクチンは、安全で、忍容性が高く、抗腫瘍活性を示し、ペプチドワクチン接種が治療耐性を回避し、mAb療法の有望な代替法を提供し得る予備的な兆候を示した。
【0118】
本明細書では、ヒトPD-L1を標的とする新しいB細胞ペプチドエピトープの特性評価及び開発が提示され、これは、アテゾリズマブの効果を潜在的に模倣するPD-1/PD-L1相互作用を遮断し得るin vivoでポリクローナル抗体を誘発する。PD-L1の3D構造に基づくペプチドマッピング及び予測抗原性アルゴリズムの洗練された方法を使用して、本発明者らは、PD-L1の細胞外ドメインに基づくキメラB細胞ワクチンを設計するためのPD-L1ワクチンの前臨床開発を示し、本発明者らは、これを、無差別Tヘルパー細胞麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)に連結した。
【0119】
各ペプチドエピトープの免疫原性を、最初にウサギ及びBalb/cマウスで評価し、これは、免疫原性合成ペプチド及び組み換えヒトPD-L1タンパク質を認識する抗体を誘発した。同系大腸CT-26wt Balb/cマウス腫瘍モデルを使用して、CT-26腫瘍細胞の成長抑制薬としての4つのMVF-PD-L1ペプチドによるワクチン接種の有効性を評価した。PD-L1(130-147)、PD-L1(50-67)、及びPD-L1 mAbエピトープは、PBSと比較して腫瘍成長の有意な抑制を示した。次に、本発明者らは、別の同系CT26/HER-2 Balb/c癌腫モデルの実験を拡張した。4つMVF-PD-L1エピトープワクチン接種全ての抗腫瘍効果を、CT26/HER-2細胞株でチャレンジされた同系のBalb/c結腸癌マウスモデルで試験した。興味深いことに、PD-L1(130-147)を用いる処置により、腫瘍成長のより大きい抑制が、PBS及び市販の標準的なマウス抗PD-L1抗体と比較して示された。
【0120】
a)結果
(1)4つの新規ヒトPD-L1(hPD-L1)ペプチドエピトープの設計及び精製
PD-L1の3次構造は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内領域で構成されている。細胞外ドメインが、PD-1の結合、及び抗ペプチド抗体がアクセス可能であることに関与しているので、本発明者らは、免疫原性領域として、このドメインを選択した。B細胞エピトープは、抗原性の6つの相関関係に基づいてランク付けされ、2次構造と相関し、ヒトPD-1/ヒトPD-L1(hPD-1/hPD-L1)の結晶構造複合体を有するこれらのエピトープの複合分析であった。この分析から、さらなる調査のために、ヒトPD-L1の4つのB細胞エピトープ配列を同定した。すなわちアミノ酸36~53、50~67、95~112、及び130~147である(図2)。GPSLからなる4残基リンカーを使用して、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF、アミノ酸288~302;KLLSLIKGVIVHRLEGVE)(配列番号6)に由来する「無差別」Tヘルパーエピトープを有するキメラ構築物として、4つのペプチド配列を合成した。
【0121】
(2)PD-L1エピトープによるin vivo免疫は、ウサギにおいて強力な抗体応答をもたらす。
4つのペプチド全ての免疫原性を非近交系ウサギで評価した(図3)。抗体応答を週1回監視した。最初の追加免疫の力価が増加した後、及び2回目の追加免疫後に、高い力価が、PD-L1 36-53及び50-67の場合、32,000を超過したが、PD-L1 95及び130の場合、64,000であった。さらに、抗体は、ヒト組み換えPD-L1タンパク質を認識することが可能でき(図4)、それにより、ペプチドエピトープの選択が正当化された。
【0122】
(3)CT26結腸癌細胞株でチャレンジした同系Balb/cモデルにおける、腫瘍成長の抑制における、抗マウスPD-L1(B7-H1)mAbクローン10F.9G2に対するPD-L1ワクチンエピトープの有効性。
CT26がん細胞株におけるin vivoでのPD-L1エピトープワクチンの有効性を検証するために、Balb/cマウス(10匹のマウス/群)を、nor-MDP及びMontanide 720(1:1の比)で乳化されたMVF-PD-L1(36-53)、MVF-PD-L1(50-67)、MVF-PD-L1(95-112)、及びMVF-PD-L1(130-147)のそれぞれ100μgで免疫した(図5A、スキーム1A)。スキーム1A~D(図5A、5B、5C、及び5D)に詳述されるように、マウスを3週間隔で3回免疫した。各ワクチン接種の1、2、及び3週間後に、血液を収集した。これは、1Y+3、2Y+1、2Y+2、2Y+3、3Y+1、3Y+2、3Y+3(式中、Yが、表5A、5B、5C、5D、及び5Eに示される免疫化の数を示す)として示される。全てのPD-L1エピトープは、高力価のPD-L1抗ペプチド抗体を誘発した(ELISAによる)。データは、図6に要約され、全ワクチンは、組み換えPD-L1-タンパク質に対する反応性を示した(図7)。本発明者らは、PD-L1-130-147とのPD-1(92-110)の組み合わせも調査した。


























【表5】
【表6】







【表7】
【表8】

【表9】




























【0123】
3回目の免疫(3Y)の2週間後に、マウスをCT26がん細胞(マウス1匹当たり1×10細胞)で皮下(s.c)接種し、その後、腫瘍形成を毎日観察した。PBSで処置されたマウスを陰性対照として用い、抗マウスPD-L1モノクローナル抗体(mAbクローン10F.9G2)の200μg/用量の注射で週2回処置されたマウスを陽性対照として用いた。腫瘍成長を週1回監視し、ノギスで測定した。個々のマウスそれぞれの腫瘍成長(腫瘍体積;LWW mm)パターンを図8に示す。4つのMVF-PD-L1キメラペプチドワクチンでワクチン接種されたマウスは、抗マウスPD-L1(10F.9G2)mAbモノクローナル抗体(+ve対照)による処置と同様に、PBS処置(-ve対照)と比較して大幅な腫瘍抑制を示した。PD-L1 B細胞エピトープワクチン処置は、PBSによる陰性対照処置と比較して、チャレンジ後16日目で腫瘍成長が同様に有意に低減した(図9)。しかし、最も注目すべきは、10F.9G2 PD-L1 mAbと共に、MVF-PD-L1(130-147)MVF-PD-L1(50-67)及びPD-L1(36-53)は、14及び16日目に最高平均腫瘍成長抑制を示したが、MVF-PD-L1(36-53)またはMVF-PD-L1(95-112)またはMVF-(MVF-PD-L1-(95)+MVF-PD-1(92-110)の組み合わせよりも有意に良好ではなかった。これらの結果は、有用な抑制性ワクチンとしてのワクチンの潜在的な治療用途を示す。様々な時点で腫瘍のサイズはまた、図10に示され、複数群のデータまたは群間のデータを比較するために、一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とそれに続くTukeyの多重比較検定を使用した。カプラン・マイヤー法により分析し、陰性対照と比較して、大幅に高いパーセンテージの腫瘍成長抑制ならびに最高の生存率及び最低レベルの病変が、ワクチン接種されたPD-L1(130-147)で観察された。
【0124】
(a)抗体アイソタイプ。
本発明者らは、また、ワクチン接種により生成される抗体の様々なアイソタイプを分析した。マウスで誘発された抗体のアイソタイプは、PD-L1 130-147の場合、主にIgG1クラス(データは図11に示される)であると決定され、IgG2a及びIgG2bが、他のエピトープで優勢であった。
【0125】
(b)抗MVF-PD-L1 130抗体は、PD-1/PD-L1相互作用を遮断することができる。
生体発光細胞ベースのPD-1/PD-L1遮断バイオアッセイは、PD-1シグナル伝達相互作用を妨害するために開発された治療用抗体または他の化合物の迅速なスクリーニングのための優れた選択肢を提供する。PD1/PD-L1遮断アッセイを使用して、3つの抗PD-L1抗体の機能を試験した。ウサギ由来の精製ポリクローナル抗PD-L1抗体は、市販の抗ヒトPD-L1抗体と同様にPD1/PD-L1相互作用を遮断することが可能であったことが観察された(図12)。これらの結果は、機能的な抗PD-L1が、B細胞エピトープペプチドで免疫されたウサギで産生されることを示す。図12では、本発明者らは、ニボルマブ及びアテゾリズマブと比較して、各PD-L1ワクチンがPD-1:PD-L1相互作用を遮断する能力を示す。驚くべきことに、PD-L1 130-147抗体のみが有効であった。
【0126】
(c)カスパーゼ活性アッセイによるアポトーシスの決定。
疾患特異的な標的化及び低毒性プロファイルの可能性により、モノクローナル抗体が魅力的な治療薬候補となっている。抗体媒介性標的細胞の殺傷は、多くの場合、抗体依存性細胞傷害などの免疫エフェクター機序と関連するが、アポトーシスプロセスによりも誘発することもできる。抗原架橋、細胞死受容体の活性化、及びリガンド-受容体の成長または生存経路の遮断を含む抗体指向の機序は、標的細胞におけるアポトーシスの誘導を誘発し得る。作用機序に応じて、モノクローナル抗体が、標的化細胞特異的殺傷のみを誘導し得るか、または抗アポトーシス経路の調節を行うことにより、化学療法もしくは放射療法に対する標的細胞を増強し得る。これをさらに検査するために、本発明者らは、抗PD-L1ペプチドワクチン抗体がカスパーゼ活性化アッセイを介してがん細胞のアポトーシスを誘導することができるかどうかを評価した。MC38(PD-L1発現細胞)及びCT26WTがん細胞を、96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ペプチドワクチン抗体ならびに参照抗体アテゾリズマブ及びアポトーシス誘導因子としてのβラパコンを含有する低血清成長培地をウェルに添加した。次に、プレートを37℃でさらに24時間インキュベートした。次に、カスパーゼGlo試薬を添加し、アポトーシス誘導の尺度として、照度計を使用して、カスパーゼ9放出を決定した。カスパーゼ9は、システインアスパラギン酸特異的プロテアーゼ(カスパーゼ)ファミリーのメンバーであり、これは、哺乳動物細胞の内因性アポトーシス経路において重要な開始因子の役割を果たす。PD-L1抗体は、陰性対照(PBS)と比較して、処理細胞のカスパーゼ活性の量の大幅な増加を引き起こし、mAbアテゾリズマブに匹敵することを、本発明者らは見出した。カスパーゼ放出の増加は、3倍超であり(図13)、アポトーシスの増加を明確に示す。PD-L1抗体は、陰性対照(PBS)と比較して、処理細胞のカスパーゼ活性の量の大幅な増加を引き起こし、mAbアテゾリズマブに匹敵することを、本発明者らは見出した。カスパーゼ放出の増加は、3倍超であり(図13)、アポトーシスの増加を明確に示す。
【0127】
(d)ADCC活性。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、抗がんmAbの重要な作用機序であり、これを通して、抗体は、FcγR保有エフェクター細胞を動員して、ナチュラルキラー細胞などの細胞媒介性免疫系の構成要素による破壊のために「疾患」細胞を標的とする。しかし、臨床開発中のPD-1/PD-L1抗体のほとんどは、ADCC活性を除去するように操作されたFcγR結合欠損IgG1アイソタイプヒト化モノクローナル抗体である、アテゾリズマブ(MPDL3280A)のように、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性を媒介しないことが知られる。ADCC誘導は、アポトーシスを誘導することにより腫瘍死を潜在的に増強し得るが、それは、また、PD-L1発現T細胞の枯渇もたらし、それにより、免疫応答を鈍化させ得る。臨床的に適切な用量でADCC及びCDCを排除するために、アテゾリズマブのFc(フラグメント結晶化可能)ドメインが、FcyRとの相互作用を低減させるように設計される。
【0128】
精製ポリクローナル抗体のADCC活性を評価するために、本発明者らは、25ng/mlのIFN-γで16時間処理されたMC38細胞、及びJurkatエフェクター細胞と一緒にWIL2-S標的細胞を使用した。アッセイの性能を評価するために、図14に示されるように、様々な濃度の抗体で、ADCC応答の直線性試験を実施した。ペプチドワクチンにより誘発された抗体は、mAbアテゾリズマブと同様の効果があり、抗体依存性細胞傷害を媒介することはできなかった(図14)。
【0129】
(4)HER-2を発現するCT26結腸癌細胞株をチャレンジされた同系Balb/cモデルの腫瘍成長の抑制における抗マウスPD-L1(B7-H1)mAbクローン10F.9G2に対するPD-L1ワクチンエピトープの有効性
CT26/HER-2がん細胞株におけるin vivoでのPD-L1エピトープワクチンの有効性を検証するために、Balb/cマウス(10匹のマウス/群)を、nor-MDP及びMontanide 720(1:1の比)で乳化されたMVF-PD-L1(36-53)、MVF-PD-L1(50-67)、MVF-PD-L1(95-112)、及びMVF-PD-L1(130-147)のそれぞれ100μgで免疫した(図15A、スキーム2A)。スキーム2A~D(図15A、15B、15C、及び15D)に詳述されているように、マウスを3週間隔で3回免疫した。各ワクチン接種の1、2、及び3週間後に、血液を収集した。これは、1Y+3、2Y+1、2Y+2、2Y+3、3Y+1、3Y+2、3Y+3(式中、Yが、表6A、26B、6C、6D、及び6Eに示される免疫化の数を示す)として示される。全てのPD-L1エピトープは、高力価のPD-L1抗ペプチド抗体を誘発した(ELISAによる)。データは、図16に要約され、全ワクチンは、組み換えPD-L1-タンパク質に対する反応性を示した(図17)。本発明者らは、PD-L1-95とのPD-1(92-110)の組み合わせも調査した。































【表10】
【表11】







【表12】
【表13】

【表14】




























【0130】
3回目の免疫(3Y)の2週間後に、マウスをCT26がん細胞(マウス1匹当たり1×10細胞)で皮下(s.c)接種し、その後、腫瘍形成を毎日観察した。PBSで処置されたマウスを陰性対照として用い、抗マウスPD-L1モノクローナル抗体(mAbクローン10F.9G2)の200μg/用量の注射で週2回処置されたマウスを陽性対照として用いた。腫瘍成長を週1回監視し、ノギスで測定した。個々のマウスそれぞれの腫瘍成長(腫瘍体積;LWW mm)パターンを図18に示す。4つのMVF-PD-L1キメラペプチドワクチンでワクチン接種されたマウスは全て、対PBS処理(-ve対照)による処置と比較して、抗マウスPD-L1(10F.9G2)mAbモノクローナル抗体(+ve対照)と同様に、大幅な腫瘍抑制を示した。PD-L1 B細胞エピトープワクチン処置は、PBSによる陰性対照処置と比較して、チャレンジ後16日目で腫瘍成長が同様に有意に低減した(図19)。但し、特に、MVF-PD-L1(130-147)、PD-L1(36-53)、PD-L1(95-112)、及びPD-L1(50-67)、ならびにMVF-PD-L1-(95)+MVF-PD-1(92-110)は、16日目に最も強い腫瘍成長抑制を示し、これは、有用な抑制性ワクチンとしての潜在的な治療用途を示す。様々な時点で腫瘍のサイズはまた、図20に示され、複数群のデータまたは群間のデータを比較するために、及び一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とそれに続くTukeyの多重比較検定を使用した。カプラン・マイヤー法により分析し、陰性対照と比較して、大幅に高いパーセンテージの腫瘍成長抑制ならびに最高の生存率及び最低レベルの病変が、ワクチン接種されたPD-L1(130-147)で観察された。
【0131】
本発明者らは、また、ワクチン接種により生成される抗体の様々なアイソタイプを分析した。マウスで誘発された抗体のアイソタイプは、PD-L1 130-147の場合、主にIgG1クラス(データは図21に示される)であると決定され、IgG2a及びIgG2bが、他のエピトープで優勢であった。最後に、本発明者らは、PD-L1エピトープのそれぞれに対する50%のマウスの生存時間を分析し、本発明者らは、PD-L1 130-147は、他のPD-L1エピトープと比較してより良好な生存率を有していたことを示す(図22)。
【0132】
(5)ペプチドワクチンPD-L1及びHER-2エピトープとの併用治療は、強力なHER-2及びPD-L1抗体応答ならびにBalb/c CT26/HER-2モデルにおける腫瘍成長の抑制をもたらす。
次に、Balb/cのCT26/HER-2腫瘍モデルを使用して、抗HER-2免疫療法と組み合わせた抗PD-L1免疫療法の相乗効果について試験し、この組み合わせが免疫原性を増加させ、抗腫瘍の応答を増強させ、腫瘍成長の抑制において相乗効果を提供し得るかどうかを判定した。Balb/cマウス(10匹/群)を、ISA720(1:1の比率)で乳化されたMVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)ペプチドワクチン構築物と組み合わせたMVF-HER-2(36-53、50-67、95-112、130-147)で、3週間隔で3回免疫した。これは、スキーム3A~3C(図23A、23B、及び23C)に要約される。時間(1Y+3、2Y+1、2Y+2、2Y+3、3Y+1、3Y+2、3Y+3、及び終点の採血)にわたって、ワクチン接種されたマウス群全てにおいて、強力なHER-2及びPD-L1抗体応答を誘発した(ELISAで決定)(表7A、7B、7C、7D、及び7E)。これらの免疫原性データを図24及び25に要約する。最終追加免疫の2週間後、CT26/HER-2腫瘍株由来の1×10の腫瘍細胞をマウスに皮下移植した。対照マウスのみを、実験期間中、週に2回、陰性対照として機能するPBS、または陽性対照として200μg/用量の抗マウスPD-L1 mAb(10F.9G2)のいずれかで処置した。
【表15】

【表16】
【表17】
【表18】







【表19】






























【0133】
b)考察
がん免疫療法に関する現在の熱意は、プログラム細胞死1(PD-1)及び細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)などの免疫チェックポイント分子を標的とするいくつかの薬剤の成功が原因である。現在、CTLA-4及びPD-1/PD-L1を標的とする十数個の免疫チェックポイント抗体がFDA規制当局の承認を世界的に受けており、PD-1及びPD-L1を標的とするチェックポイント阻害薬のための多数の進行中の臨床試験がある。これらの治療法は、少数の患者にのみ例外的な成功をもたらしている。先天性及び後天性の耐性を支える機序が、PD-1/PD-L1遮断に対する応答の欠如の部分的な原因となり、適切に設計された併用療法が使用及び臨床的影響を拡大し得る理論的根拠を強調している。例えば、イピリムマブ及びニボルマブの組み合わせは、切除不能メラノーマ及び有望な第I相及び第II相の治験患者に対する肯定的な結果のために、FDAにより承認されたが、組み合わせは、単独療法と比較して増加した毒性も示した。
【0134】
PD-1阻害薬と比較して、PD-L1阻害薬は、免疫障害に起因する副作用の発生率を低減し得る。FDAは、PD-L1を標的とする1つのヒト化mAb(アテゾリズマブ、TECENTRIC(登録商標))及び2つの完全ヒトmAb(アベルマブ、BAVENCIO(登録商標)及びデュルバルマブ、IMFINZI(登録商標))を承認している。最近報告されたアベルマブ/hPD-L1複合体構造は、どのようにして治療用mAbがPD-1/PD-L1の結合を無効にするかついての明確な構造情報を提供している。PD-L1標的抗体であるアベルマブは目下、非小細胞肺癌(NSCLC)(NCT02395172)、進行腎細胞癌(NCT02684006)、及び胃癌(NCT02625610)に対する複数の第III相臨床試験中である。
【0135】
最近、ジフテリア毒素(DTT)の転座ドメインのC末端に融合したPD-L1の細胞外ドメイン(PD-L1E)からなるPD-L1を標的とするワクチンが報告された。DPDL1Eワクチンの治療有効性を、B16-F10担腫瘍C57BL/6マウスで評価した。PD-L1を標的とするDPDL1Eワクチンが、PD-L1特異的免疫応答を誘導し、in vivoで腫瘍成長を遅延させると、著者らは結論付けた。これらの結果は、がんワクチン設計を探求する将来の研究のための有望な手段を示す。
【0136】
全体として、特定のがんを管理するための様々な免疫方策の合理的な開発には、治療環境を変化させ、ヒトの疾患管理を改善するための実質的な見込みがある。この研究は、マルチターゲットアプローチを使用することの利点にも注目を集め、それにより、複数のシグナル伝達モダリティに影響を与える薬物の使用のみが、強力な抗増殖効果をもたらし、薬剤耐性の発症を遅延させることがますます評価される。しかし、この現在の研究では、がん細胞における発がん性駆動因子を調べるための強力なツールとして役立ち得るワクチンの組み合わせを生成することが可能であることが実証された。現在、ヒトPD-1/PD-L1軸を標的とする購入可能なB細胞エピトープワクチンはない。
【0137】
c)材料及び方法
(1)hPD-L1のペプチドエピトープの同定及び合成。
PD-L1の表面に発現された候補B細胞エピトープの選択は、以下のように記載される抗原性の6つの相関関係を使用した、社内のコンピューター支援分析(Peptide Companion(商標)、5z.com)で行った。(a)個々の配列の鎖の柔軟性及び可動性のプロファイルをKarplus及びSchultzにより計算した。(b)疎水性プロファイルを7残基スパン設定により生成し、次に、Kyte及びDoolittleを使用して、3残基スパンで平滑化した。(c)Hopp及びWoodsのプログラムを使用して、6残基ウィンドウによる親水性プロファイルを生成した。(d)アミノ酸残基の水への曝露の分析をRose et al.の溶媒曝露アルゴリズムで実施した。(e)アクセス可能で溶媒中に突出するタンパク質の部分を予測するThornton et al.の方法により突出指数を計算した。(f)5残基配列が抗原性である確率を、Welling et al.の方法で決定した。配列は、それぞれの指標値に基づいて、1~6のスコアを与え、ランク付けした。最高ランクの配列は、実験された分析に対して最高の個々のスコアを有し、それに続く候補は、次に高いスコアを有していた、などである。さらに、最高スコアのエピトープを2次構造属性との相関によりランク付けし、例えば、両親媒性のαヘリックス配列またはβターンループ領域が、ランダムコイルフラグメントよりも好ましい。Chou and Fasman及びNovotny et al.によるコンピュータープログラムを使用して、2次構造(αヘリックス、βストランド/シート、βターン/ループ、ランダムコイル)及びαヘリックス両親媒性モーメントを予測した。最後に、個々のアミノ酸配列を考慮した。らせんセグメントにおける静電イオン対及びらせん双極子相互作用も考慮した(例えば、疎水性/親水性バランス)。本発明者らは、PD-L1の4つのエピトープを同定するために、免疫原性/抗原性のアルゴリズムを使用したペプチドエピトープマッピングを使用した。本発明者らは、PyMOL 3-Dモデリングソフトウェア(DeLano WL 2002、PyMOLユーザーズマニュアル)を使用して、4つのエピトープ全てをモデリングしている。
【0138】
次に、Fmoc/BOP化学及びCLEARアミド試薬(Peptides International、米国ケンタッキー州ルイビル)上のPyBOP/HOBTカップリング試薬(PB Biosystems、米国ケンタッキー州ルイビル)を用いる9600 Milligen/Biosearch固相ペプチド合成装置(Millipore、米国マサチューセッツ州ベッドフォード)を使用して、4つの新規ペプチド配列を合成した。切断前に1-アセチルイミダゾール(Sigma-Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)を使用して、いくつかのペプチド試料をアセチル化した。4残基リンカー(GPSL)を使用して、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF、アミノ酸288~302)に由来する無差別Tヘルパーエピトープを有するキメラ構築物として、全てのペプチドを合成した。切断試薬R(TFA)/チオアニソール/EDT/アニソール(90/5/3/2)を使用して、ペプチドを樹脂から切断し、粗製ペプチドをセミ分取(C-4 Vydacカラム)逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC;Waters、米国マサチューセッツ州ベッドフォード)で精製した。同じ保持時間を示すRPHPLC画分を一緒にプールし、凍結乾燥した。全てのペプチドは、95%を超える純度を示した。次に、試料をMALDI(CCIC(Campus Chemical Instrumentation Center、The Ohio State University、米国オハイオ州コロンバス))でのマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析)で特性評価し、分析RP-HPLCシステム(Waters、米国マサチューセッツ州ベッドフォード)で分析した。全てのペプチドは、適切な分子量を有していた。
【0139】
(2)hPD-L1ペプチドエピトープによる免疫化。
各ペプチドについて、Charles River Laboratories(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)から購入したニュージーランド白ウサギにおいて、ワクチン抗体を作成した。Montanide ISA720(Seppic、仏国パリ)中で乳化したMVFキメラペプチド1mgで、ウサギを免疫化し、3週間隔で3回追加免疫した。マウス実験では、6~8週齢のマウスを、ISA720で乳化した(1:1の比)ペプチド0.1mgで免疫した。3週間隔でそれぞれの用量で、マウスを追加免疫した。次に、血液を収集し、血清を抗体価について試験した。血清を週1回収集し、プロテインA/Gカラムを使用したアフィニティークロマトグラフィーにより、ペプチドワクチンの抗体を精製し、分光光度計を使用して、濃度を測定した。全ての実験は、U.S.Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory animalsに従って実施され、Ohio State University Institutional Animals Care and Use Committeeにより承認され、認められたプロトコールに詳述された。
【0140】
(3)4つのペプチドワクチンhPD-L1エピトープのin vivo試験:マウスにおけるCT26及びCT26/HER-2腫瘍モデル
6~8週齢のBALB/cマウス(Charles River、マサチューセッツ州ウィルミントン)を標準動物モデルとして使用した。マウスCT26結腸癌細胞株をAmerican Type Culture Collection Cellsから購入し、10%のFBSを含有するRPMI1640培地で定期的に培養した。CT26/HER2細胞は、M.Penichetの厚意により提供された。ワクチンを滅菌水に溶解させ、Montanide ISA720で乳化した(1:1)。6~8週齢の雌Balb/cマウス(Charles River Laboratories)を各ペプチドワクチン100μgで、3週間隔で3回免疫し、3回目の免疫化の2週間後に、マウスをCT26及び/またはCT26/HER-2腫瘍細胞でチャレンジした(右脇腹に皮下(s.c)移植した(マウス1匹当たり1×10))。200μgのラットαマウスPD-L1 mAb 10F.9G2(Bio X Cell、ニューハンプシャー州ウェストレバノン)を、対照群の腫瘍接種後に週2回腹腔内(i.p.)投与した。マウスを監視し、日常的に触知可能な腫瘍の形成に対しスコア化され、腫瘍が壊死になったか、または2,000mmの所定のサイズを超えた場合、死亡させた。ノギスを用いて、腫瘍体積を立方ミリメートル単位で測定し、以下の式で計算した:A×B×0.5(式中、Aが、最大直径であり、Bが、長さに垂直で最も幅広い点である)。免疫化の間、血液を週1回採取し、抗体価を監視するためにELISAで使用した。
【0141】
(4)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)レポーターバイオアッセイ。
製造者の指示に従ってADCCレポーターバイオアッセイ(Promega)を使用して、ADCC活性を評価した。要約すると、1日前に、標的WIL2-S及びMC38細胞を96ウェルアッセイプレートの各ウェルに播種した。MC38細胞をIFN-γ(25ng/ml、37℃で16時間)で処理し、PD-L1発現を確実に誘導した。翌日、段階希釈された参照抗体(アテゾリズマブ)またはCD20対照抗体、及び段階希釈された精製PD-L1 130ポリクローナル抗体をアッセイプレートに添加した。次に、4:1のエフェクター細胞対標的細胞の比で、加湿された5%のCOインキュベーター内で、Jurkat細胞(エフェクター細胞としてFcγRIIIa受容体を安定して発現するように設計された不死化Tリンパ球細胞)を抗体処理標的細胞と37℃で6時間共培養した。抗体に結合すると、操作されたJurkat Tリンパ球細胞は、活性化T細胞の核因子(NFAT)経路を介して遺伝子転写を活性化し、ホタルルシフェラーゼの発現を誘導した。最後に、SpectraMax M3プレートリーダー(Molecular Devices)によるルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ルシフェラーゼ活性を定量した。
【0142】
(5)アポトーシス(カスパーゼ9アッセイ)。
in vitroで処理細胞のカスパーゼ検出のために、カスパーゼ-Glo9アッセイキット(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用した。試薬は、ルシフェラーゼ及び細胞溶解剤と組み合わせて、プロルミネセントカスパーゼ-9基質を提供する。細胞を、1ウェル当たり1×10細胞で96ウェルプレートに播種し、完全培地で一晩培養した。次に、細胞を抗PD-L1抗体ならびに参照抗体アテゾリズマブ及びβラパコン(10μM、Sigma Aldrich)で24時間処理した。アッセイウェルに直接CASPASE-GLO(登録商標)9試薬50μlを添加することにより、カスパーゼ活性を測定した。これにより、細胞溶解とそれに続く、基質のカスパーゼ切断、及び発光の生成がもたらされる。マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して、発光を検出した。読み出しに表示された量は、試料中のカスパーゼ活性の量に比例する。
【0143】
(6)PD-1/PD-L1バイオアッセイ。
アッセイをPD-1/PD-L1遮断バイオアッセイ(Promega)の製造元のプロトコールに従って実施した。簡単に言うと、4×10のaAPC/CHO-K1またはPD-L1 aAPC/CHO-K1細胞を、96ウェルプレートの10%のFBSを含むRPMI-1640に播種した。一晩培養後、培地を吸引し、段階希釈された精製PD-L1またはPD-1抗体、ならびにニボルマブ及びアテゾリズマブ抗体(基準抗体として)を添加した。次に、PD-1エフェクター細胞を共培養し、加湿された5%のCOインキュベーター内で、プレートを37℃で5時間維持した。Bio-Glo試薬と混合した後、発光プレートリーダーであるSpectraMax M3プレートリーダー(Molecular Devices)で、発光を測定した。
【0144】
(7)マウスアイソタイピングアッセイ。
Mouse Typerアイソタイピングキット(BIO-RAD、カリフォルニア州ハーキュリーズ)を使用して、抗体アイソタイプ(すなわち、IgA、IgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3)を決定した。要約すると、96ウェルアッセイプレートのウェルを蒸留脱イオンHO中200ngのペプチド抗原でコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%のTween-20及び1%のウマ血清)で洗浄した。次に、プレートを、PBS中の1%のBSAで、室温で1時間ブロッキングした。希釈されたマウス血清100μlを各ウェルに2時間添加し、ウェルを洗浄後、すぐに使えるウサギ抗マウスサブクラス抗体100μlをそれぞれ各ウェルに添加し、室温でさらに2時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、HRP抗体(BIO-RAD、カリフォルニア州ヘラクレス)にコンジュゲートされたヤギ抗ウサギの1/3000希釈の100μlを各ウェルに添加し、暗所、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートを洗浄し、50μlの調製された基質溶液を各ウェルに添加した。反応を、5%のSDS停止緩衝液25μlで停止させた。ELISAプレートリーダーを使用して、415nmでの吸光度を決定した。バックグラウンドを差し引いた後、0.4以上の吸光度で示されたELISA力価により、各血清試料の希釈を決定した。
【0145】
(8)統計分析。
腫瘍サイズを1日1回観察し、ノギスで測定した。腫瘍体積を以下の式で計算した:体積=(長さ*幅*幅)/2。GraphPad Prism 8.1.2(GraphPad Software,Inc.)を使用して、データ統計分析を実施した。一元配置分散分析(一元配置ANOVA)とそれに続くTukeyの多重比較検定を使用して、複数群のデータまたは複数群の群間のデータを比較した。0.05未満のp値または調整済みp値を、統計的有意差として受け入れた。は、p<0.05を示し、**は、p<0.01を示す。
【0146】
8.実施例8:D2F2及びD2F2E2腫瘍チャレンジ
a)実験設計:この実験には2つの部分がある(10匹のマウス/群、6~8週齢):
(1)パート1:G0~G4、これらの4群のマウスは、D2F2 WTがん細胞でチャレンジされる。
G0、G1、及びG2は、対照群であり、これらの群のマウスは、腫瘍細胞チャレンジ前に処置されなかった。D2F2 WT腫瘍細胞でチャレンジした後、G0マウスを、PBS(i.p.)でチャレンジ後2日目から週2回処置し、陰性対照として用いた。G1及びG2マウスを、それぞれ、抗PD-1 mAb(29F.1A12)または抗PD-L1 mAb(10F.9G2)で処置した。G1及びG2マウス群の処置も、腫瘍チャレンジ後2日目から開始し、週2回、100μg/マウスで投与した。G1及びG2は、陽性対照として用いた。対照的に、G3及びG4マウスを、マウス1匹当たり、それぞれ、100μgのMVF-PD-1(92-110)+ISA720または100μgのMVF-PD-L1(130-147)+ISA720で免疫した。腫瘍チャレンジの前に、マウスを最大4回免疫した。D2F2 WT腫瘍細胞でチャレンジされた後、マウスは、さらなる処置を受けなかった。全てのマウスを、週に少なくとも2回監視しており、データに示されるように、腫瘍をノギスで測定した(図26)。
【0147】
(2)Gパート2、10~G15。これらの5群のマウスは、D2F2/E2がん細胞でチャレンジされるように計画される。
G10、G11、及びG12は、対照群であり、腫瘍細胞チャレンジ前に処置を受けていなかった。マウスをD2F2/E2腫瘍細胞でチャレンジした後、G10マウスを、チャレンジ後PBS(i.p.)で2日目から週2回処置し(陰性対照として用いた)、G11及びG12マウスを、それぞれ、抗PD-1 mAb(29F.1A12)または抗PD-L1 mAb(10F.9G2)で処置した。G1及びG12の場合、100μg/マウスでの週2回の処置を、腫瘍チャレンジ後2日目から開始した。G11及びG12は、陽性対照として用いた。G13、G14、及びG15マウスを、G13の場合、マウス1匹当たり100μgのMVF-HER-2(266-296)+100ugのMVF-HER-2(597-626)+ISA720、G14の場合、マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-1(92-110)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720、G15の場合、マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-L1(130-147)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫した。腫瘍チャレンジの前に、マウスを最大4回免疫した。D2F2/E2腫瘍細胞でチャレンジされた後、マウスは、さらなる処置を受けなかった。全てのマウスを、週に少なくとも2回監視しており、データに示されるように、腫瘍をノギスで測定した(図26)。
【0148】
b)実験のスキーム:
図26に記載されるように、マウスを設計されたペプチドワクチンで免疫化し、これは、本明細書で1Y、2Y、3Y、及び4Yとして3週間隔で示した。スキームに示されているように、血液を収集した。数字は、免疫化後の週を意味する。例えば、2Y+2は、2次免疫を示し、この2週間後に、血液を収集していた(図27)。図26に示されるように、マウスは、4Y+5で、D2F2 WTまたはD2F2/E2でチャレンジされている。マウスを少なくとも週2回監視し、データ図に示されるように、腫瘍を測定した。
【0149】
c)結果
(1)マウス1匹当たり100ugのMVF-PD-1(92-110)+ISA720で免疫されたG3マウスの免疫原性。
図28に示されるように、血液を収集した。例えば、2Y+2は、2次免疫を示し、この2週間後に、血液を収集していた。ELISAアッセイを使用して、MVF-PD-1(92-110)に対する抗体価を測定した。
【0150】
マウス血清中のMVF-PD-1(92-110)に対する抗体を検出するために、本発明者らは、96ウェルアッセイプレート(COSTAR)に、MVF-PD-1(92-110)ペプチドを、2μg/mlの蒸留脱イオンHO中の抗原としてのペプチド100μlとともにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%のTween-20及び1%のウマ血清)で洗浄した。その後、PBS中1%のBSA 200μlで、プレートを室温で1時間ブロッキングした。インキュベーション後、2倍段階希釈された血清100μlを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、HRP抗体(0.8mg/ml、Invitrogen)にコンジュゲートされたヤギ抗マウスの1/500希釈液100μlを各ウェルに添加し、暗所、室温で1時間インキュベートした。プレートは最終洗浄され、調製されたABTS基質溶液50μlを各ウェルに添加した。蒸留脱イオン水中の1%のSDS 25μlで、反応を停止させた。ELISAプレートリーダーを使用して、415nmでの吸光度を決定した。0.2を超える吸光度で示される最高の抗体ELISA力価により、各血清試料の希釈を決定した。
【0151】
(2)マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-L1(130-147)+ISA720で免疫されたG4マウスの免疫原性。
図29に示されるように、血液を収集した。2Y+2は、2次免疫を示し、この2週間後に、血液を収集していた。ELISAアッセイを使用して、MVF-PD-L1(130-147)に対する抗体価を測定した。
【0152】
マウス血清中のMVF-PD-L1(130-147)に対する抗体を検出するために、本発明者らは、96ウェルアッセイプレート(COSTAR)に、MVF-PD-L1(130-147)ペプチドを、2μg/mlの蒸留脱イオンHO中の抗原としてのペプチド100μlとともにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%のTween-20及び1%のウマ血清)で洗浄した。その後、PBS中1%のBSA 200μlで、プレートを室温で1時間ブロッキングした。インキュベーション後、2倍段階希釈された血清100μlを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、HRP抗体(0.8mg/ml、Invitrogen)にコンジュゲートされたヤギ抗マウスの1/500希釈液100μlを各ウェルに添加し、暗所、室温で1時間インキュベートした。プレートは最終洗浄され、調製されたABTS基質溶液50μlを各ウェルに添加した。蒸留脱イオン水中の1%のSDS 25μlで、反応を停止させた。ELISAプレートリーダーを使用して、415nmでの吸光度を決定した。0.2を超える吸光度で示される最高の抗体ELISA力価により、各血清試料の希釈を決定した。
【0153】
(3)マウス1匹当たり100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫されたG13マウスの免疫原性。
図30に示されるように、血液を収集した。例えば、2Y+2は、2次免疫を示し、この2週間後に、血液を収集していた。ELISAアッセイを使用して、MVF-HER-2(266-296)またはMVF-HER-2(597-626)に対する抗体価を別々に測定した。
【0154】
マウス血清中のMVF-HER-2(266-296)に対する抗体を検出するために、本発明者らは、96ウェルアッセイプレート(COSTAR)に、MVF-HER-2(266-296)ペプチドを、2μg/mlの蒸留脱イオンHO中の抗原としてのペプチド100μlとともにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%のTween-20及び1%のウマ血清)で洗浄した。その後、PBS中1%のBSA 200μlで、プレートを室温で1時間ブロッキングした。インキュベーション後、2倍段階希釈された血清100μlを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、HRP抗体(0.8mg/ml、Invitrogen)にコンジュゲートされたヤギ抗マウスの1/500希釈液100μlを各ウェルに添加し、暗所、室温で1時間インキュベートした。プレートは最終洗浄され、調製されたABTS基質溶液50μlを各ウェルに添加した。蒸留脱イオン水中の1%のSDS 25μlで、反応を停止させた。ELISAプレートリーダーを使用して、415nmでの吸光度を決定した。0.2を超える吸光度で示される最高の抗体ELISA力価により、各血清試料の希釈を決定した。マウス血清中のMVF-HER-2(597-626)に対する抗体を検出するために、同じ手順を実施した。4Y+13で、結果は、腫瘍のないマウスまたは非常に小さな腫瘍を有するマウスの抗体価は、大きな腫瘍を有するマウスよりも比較的高いCRマウスを示した。
【0155】
(4)マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-1(92-110)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫されたG14マウスの免疫原性。
図31に示されるように、血液を収集した。例えば、2Y+2は、2次免疫を示し、この2週間後に、血液を収集していた。ELISAアッセイを使用して、MVF-PD-1(92-110)、MVF-HER-2(266-296)、またはMVF-HER-2(597-626)に対する抗体価を別々に測定した。
【0156】
マウス血清中のMVF-PD-1(92-110)に対する抗体を検出するために、本発明者らは、96ウェルアッセイプレート(COSTAR)に、MVF-PD-1(92-110)ペプチドを、2μg/mlの蒸留脱イオンHO中の抗原としてのペプチド100μlとともにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%のTween-20及び1%のウマ血清)で洗浄した。その後、PBS中1%のBSA 200μlで、プレートを室温で1時間ブロッキングした。インキュベーション後、2倍段階希釈された血清100μlを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、HRP抗体(0.8mg/ml、Invitrogen)にコンジュゲートされたヤギ抗マウスの1/500希釈液100μlを各ウェルに添加し、暗所、室温で1時間インキュベートした。プレートは最終洗浄され、調製されたABTS基質溶液50μlを各ウェルに添加した。蒸留脱イオン水中の1%のSDS 25μlで、反応を停止させた。ELISAプレートリーダーを使用して、415nmでの吸光度を決定した。0.2を超える吸光度で示される最高の抗体ELISA力価により、各血清試料の希釈を決定した。マウス血清中のMVF-HER-2(266-296)及びMVF-HER-2(597-626)に対する抗体を検出するために、同じ手順を実施した。4Y+13で、結果は、腫瘍のないマウスまたは非常に小さな腫瘍を有するマウスの抗体価は、大きな腫瘍を有するマウスよりも比較的高いCRマウスを示した。
【0157】
(5)マウス1匹当たり100μgのMVF-PD-L1(130-147)+100μgのMVF-HER-2(266-296)+100μgのMVF-HER-2(597-626)+ISA720で免疫したG15マウスの免疫原性。
図32に示されるように、血液を収集した。例えば、2Y+2は、2次免疫を示し、この2週間後に、血液を収集していた。ELISAアッセイを使用して、MVF-PD-L1(130-147)、MVF-HER-2(266-296)、またはMVF-HER-2(597-626)に対する抗体価を別々に測定した。
【0158】
マウス血清中のMVF-PD-L1(130-147)に対する抗体を検出するために、本発明者らは、96ウェルアッセイプレート(COSTAR)に、MVF-PD-L1(130-147)ペプチドを、2μg/mlの蒸留脱イオンHO中の抗原としてのペプチド100μlとともにコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(PBS中の0.05%のTween-20及び1%のウマ血清)で洗浄した。その後、PBS中1%のBSA 200μlで、プレートを室温で1時間ブロッキングした。インキュベーション後、2倍段階希釈された血清100μlを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを再度洗浄し、HRP抗体(0.8mg/ml、Invitrogen)にコンジュゲートされたヤギ抗マウスの1/500希釈液100μlを各ウェルに添加し、暗所、室温で1時間インキュベートした。プレートは最終洗浄され、調製されたABTS基質溶液50μlを各ウェルに添加した。蒸留脱イオン水中の1%のSDS 25μlで、反応を停止させた。ELISAプレートリーダーを使用して、415nmでの吸光度を決定した。0.2を超える吸光度で示される最高の抗体ELISA力価により、各血清試料の希釈を決定した。マウス血清中のMVF-HER-2(266-296)及びMVF-HER-2(597-626)に対する抗体を検出するために、同じ手順を実施した。4Y+13で、結果は、腫瘍のないマウスまたは非常に小さな腫瘍を有するマウスの抗体価は、大きな腫瘍を有するマウスよりも比較的高いCRマウスを示した。
【0159】
(6)腫瘍の成長及び生存
図33は、グラフに示されたマウス群のそれぞれについて、BALB/cマウスで示されたD2F2 WT腫瘍細胞の成長を示す。腫瘍体積をノギスで測定し、式(長さ×幅)/2で計算した。全体的な二元配置ANOVAを使用して、腫瘍成長の曲線全体を分析し、これは、p<0.01の有意差を示す。マウスのペプチド免疫化群全ては、PBS群及びmAbs処置群よりも、少ない腫瘍負荷を有するようにも示される。21及び28日目に、一元配置ANOVAで、5群全てを試験し、p値全ては、0.01未満である。同様に、全てのペプチド治療群MVF-PD-1(92-110)及びMVF-PD-L1(130-147)は、PBS陰性対照群及び両方のmAb陽性対照群よりも小さな腫瘍体積を有した。
【0160】
マウスを設計群で処置した場合、ログランク(Mantel-Cox)検定も使用して、生存率を分析した(図34)。p<0.001は、処置によりマウスの生存率が大幅に改善されたことを示した。特に、MVF-PD-L1(130-147)ペプチド免疫化群では、腫瘍チャレンジの45日後も、依然として、約60%のマウス生存率があり、これは、全ての処置群で最高である。
【0161】
図35は、グラフに示されているように、マウス群のBALB/cマウスにおけるD2F2/E2腫瘍細胞の成長を示す。腫瘍体積をノギスで測定し、式(長さ×幅)/2で計算した。全体的な二元配置ANOVAを使用して、腫瘍成長の曲線全体を分析し、これは、p<0.01の有意差を示す。全てのペプチド免疫化群及びmAbで処置されたマウスは、PBS群よりも少ない腫瘍負荷を有するように示される。最も重要なことに、MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626);MVF-PD-1(92-110)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)、及びMVF-PD-L1(130-147)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)としての2XHER2で免疫されたマウスは大幅な腫瘍抑制を示し、ほとんどのマウスは、腫瘍チャレンジ後28日目の最後までに、腫瘍がなかった。
【0162】
21及び28日目に、一元配置ANOVAで、6群全てを試験し、p値全ては、0.01未満である。全てのペプチド処置群MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626);MVF-PD-1(92-110)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)、及びMVF-PD-L1(130-147)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)は、PBS陰性対照群及び両方のmAb陽性対照群よりもはるかに小さい腫瘍体積を有していた。ペプチド免疫化群の全てのマウスが、21日目及び28日目に、それぞれ、小さな腫瘍を有しており、またはほとんどのマウスは全く腫瘍がなかった。
【0163】
さらに、ログランク(Mantel-Cox)検定を使用して、マウスを設計群で処置した場合の生存率を分析した(図36)。p<0.001は、処置によりマウスの生存率が大幅に改善されたことを示した。特に、MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)及びMVF-PD-L1(130-147)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)ペプチド免疫化群では、腫瘍チャレンジの45日後も、依然として、100%のマウス生存率があり、これは、全ての処置群で最高である。マウスをMVF-PD-1(92-110)+MVF-HER-2(266-296)+MVF-HER-2(597-626)及びmAb(PD-1)(29F.1A12)で処置し、生存率が約60%である。
【0164】
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【0165】
F.配列
配列番号1のヒトPD-L1残基1~273
AFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET
配列番号2のPD-L1(36~53)
LIVYWEMEDKNIIQFVHG
配列番号3のPD-L1(50~67)
FVHGEEDLKVQHSSYRQR
配列番号4のPD-L1(95~112)
YRCMISYGGADYKRITVK
配列番号5のPD-L1(130~147)
VTSEHELTCQAEGYPKAE
配列番号6の麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)
KLLSLIKGVIVHRLEGVE
配列番号7のリンカー
GPSL
配列番号8のMVF-PD-L1(36~53)
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLLIVYWEMEDKNIIQFVHG
配列番号9のMVF-PD-L1(50~67)
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLFVHGEEDLKVQHSSYRQR
配列番号10のMVF-PD-L1(95~112)
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLYRCMISYGGADYKRITVK
配列番号11のMVF-PD-L1(130~147)
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLVTSEHELTCQAEGYPKAE
配列番号12のPD-L1(36~53)Dペプチドレトロインバーソ
GHVFQIINKDEMEWYVIL
配列番号13のPD-L1(50~67)Dペプチドレトロインバーソ
RQRYSSHQVKLDEEGHVF
配列番号14のPD-L1(95~112)Dペプチドレトロインバーソ
KVTIRKYDAGGYSIMCRY
配列番号15のPD-L1(130~147)Dペプチドレトロインバーソ
EAKPYGEAQCTLEHESTV
配列番号16のMVF PD-L1(36~53)Dペプチドレトロインバーソ
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLGHVFQIINKDEMEWYVIL
配列番号17のMVF PD-L1(50~67)Dペプチドレトロインバーソ
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLRQRYSSHQVKLDEEGHVF
配列番号18のMVF PD-L1(95~112)Dペプチドレトロインバーソ
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLKVTIRKYDAGGYSIMCRY
配列番号19のMVF PD-L1(130~147)Dペプチドレトロインバーソ
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLEAKPYGEAQCTLEHESTV
配列番号20のTT
NSVDDALINSTIYSYFPSV
配列番号21のTT1
PGINGKAIHLVNNQSSE
配列番号22のP2
QYIKANSKFIGITEL
配列番号23のP30
FNNFTVSFWLRVPKVSASHLE
配列番号24のMVF(天然)
LSEIKGVIVHRLEGV
配列番号25のHBV
FFLLTRILTIPQSLN
配列番号26のCSP
TCGVGVRVRSRVNAANKKPE
配列番号27のHER-2(266~296)
LHCPALVTYNTDTFESMPNPEGRYTFGASCV
配列番号28のMVF HER-2(266~296)
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLLHCPALVTYNTDTFESMPNPEGRYTFGASCV
配列番号29のHER-2(597~626)
VARCPSGVKPDLSYMPIWKFPDEEGACQPL
配列番号30のMVF HER-2(597~626)
KLLSLIKGVIVHRLEGVEGPSLVARCPSGVKPDLSYMPIWKFPDEEGACQPL
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17-1】
図17-2】
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
【配列表】
2022548283000001.app
【国際調査報告】