(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法
(51)【国際特許分類】
G01W 1/00 20060101AFI20221110BHJP
G01W 1/10 20060101ALI20221110BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20221110BHJP
【FI】
G01W1/00 Z
G01W1/10 P
G06Q50/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517315
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2021088985
(87)【国際公開番号】W WO2022016931
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】202010845453.X
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521110633
【氏名又は名称】三峡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】戴 会超
(72)【発明者】
【氏名】王 浩
(72)【発明者】
【氏名】常 文娟
(72)【発明者】
【氏名】雷 暁輝
(72)【発明者】
【氏名】蒋 定国
(72)【発明者】
【氏名】馬 海波
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ユー▼
(72)【発明者】
【氏名】厳 登華
(72)【発明者】
【氏名】劉 冀
(72)【発明者】
【氏名】趙 汗青
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
本発明は多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法を開示し、その方法は、研究対象となる流域内の主流と大きな支流における水文観測所の位置により研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割することと、モデルパラメータを実行する場合、サブ流域の位置関係と水文観測所のデータに応じて、研究対象となる流域いくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、パラメータ較正ユニットの出口断面における水文観測所の流量プロセスを観測することにより、様々なパラメータ較正ユニットに対して複数の計算機で並列パラメータ補正を行うことと、各パラメータ較正ユニットの水文モデルパラメータを纏めて流域全体の水文モデルパラメータを得ることとを備える。その方法は、研究対象となる流域は、測定データを備えた水文観測所の分布に応じて複数のパラメータ較正ユニットに分割され、その出口断面における水文観測所によって測定された流量プロセスに従って複数の計算機で様々なパラメータ較正ユニットを修正し較正し、較正効率を向上させるという利点を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研究対象となる流域内の雨量観測所及び水文観測所の位置及び対応する観測データを集めて研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得、前記研究対象となる流域のDEMマップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割して各サブ流域内における雨量観測所及び各雨量観測所の重みを得、前記研究対象となる流域の土地利用マップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るステップS1と、
水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、各水文ユニットに対応する計算方法を選択するステップS2と、
洪水降雨ごとの流出プロセス中における各サブ流域の降雨プロセス及び各サブ流域内の各水文観測所断面の流量プロセスを決めるステップS3と、
前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットのために計算ルールを作成するステップS4と、
各パラメータ較正ユニットに対応する目的関数を選定し、最適化算法を適用して各パラメータ較正ユニットの目的関数の最小値を並行取得し、各パラメータ較正ユニットによって得られた目的関数の最小値を纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るステップS5と、
を含むことを特徴とする多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法。
【請求項2】
前記ステップS1は、
前記研究対象となる流域内において観測データを備えた雨量観測所及び水文観測所の位置情報と前記雨量観測所及び前記水文観測所に対応する観測データを集めて、不均等な時間間隔を備えた観測データを時間ごとの観測データに補間方法で変換し、前記研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得るサブステップS11と、
GISソフトウェアで前記DEMマップに対して水文分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得るサブステップS12と、
流域分割方法により、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割し、前記研究対象となる流域内の主流とより大きな支流において測定データを備えた水文観測所及び貯水池を全て各サブ流域の出口位置に分布させることを確かにするサブステップS13と、
前記研究対象となる流域の雨量観測所に基づいてティーセン多角形を描いて前記研究対象となる流域内の各サブ流域における雨量観測所と各雨量観測所の重みを得るサブステップS14と、
GISソフトウェアで土地利用マップを分析し、前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るサブステップS15と、
を具体的に含むことを特徴とする請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
前記研究対象となる流域をサブ流域に分割する場合、前記水文観測所及び/又は前記貯水池をサブ流域の出口断面として用いることを特徴とする請求項2に記載の較正方法。
【請求項4】
前記ステップS2は、前記水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、対応する計算方法を各水文ユニットに配置し、前記水文ユニットは貯水池ユニットや河川ユニットやサブ流域ユニットや合流ユニットを含める具体的な内容を有することを特徴とする請求項3に記載の較正方法。
【請求項5】
前記ステップS3は、
前記研究対象となる流域の出口断面の流出プロセスと各雨量観測所の降雨プロセスに従って、降雨流出模擬のスタートストップ時刻を決めるサブステップS31と、
各サブ流域内の表面雨量で各サブ流域の降雨プロセスを表し、前記サブ流域内の表面雨量は、そのサブ流域中の各雨量観測所の降水量データと各雨量観測所のティーセン多角形重みとの相乗積に基づいて決められるサブステップS32と、
各水文観測所の流量プロセスは1時間ごとの流量プロセスを採用するサブステップS33と、
を具体的に含むことを特徴とする請求項4に記載の較正方法。
【請求項6】
前記ステップS4は、
観測データを備えた水文観測所の位置に応じて前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットは、少なくとも1つのサブ流域を含み、各パラメータ較正ユニットの出口断面が観測データを備えた水文観測所であることを確かにするサブステップS41と、
貯水池の実際流出量を採用することにより、前記出口断面が貯水池ユニットであるサブ流域の流出プロセスを取り替えるサブステップS42と、
他のパラメータ較正ユニットが流入しているパラメータ較正ユニットに対して、前記他のパラメータ較正ユニットの出口断面流量は、観測された流量をその対応する流出データ、即ち流量の入れたパラメータ較正ユニットの流入データとして用いられるサブステップS43と、
を具体的に含むことを特徴とする請求項5に記載の較正方法。
【請求項7】
前記ステップS5は、
各パラメータ較正ユニットは、各自の流域水文予測の要求に応じて適切な水文モデルパラメータを選択して目的関数を較正し、前記目的関数は、ピーク値誤差百分比関数又は平均加重根二乗平均誤差関数であり、ピーク値流量に対して制限計画及び設計を行う必要がある場合、前記ピーク値誤差百分比関数を目的関数として選定し、洪水プロセスの全体的な状況を反映して洪水ピークの流量の模擬に焦点を当てる必要がある場合、前記平均加重根二乗平均誤差関数を目的関数として選定し、前記ピーク値誤差百分比関数と前記平均加重根二乗平均誤差関数を式に示すサブステップS51と、
【数1】
[f
1はピーク値誤差百分比関数であり、q
s(peak)は計算予定のピーク値、q
o(peak)は測定ピーク値、f
2は平均加重根二乗平均誤差関数であり、NQは計算予定のハイドログラフの縦座標の数、q
o(i)はi期間目の期末の測定流量、q
s(i)はi期間目の期末の計算予定の流量、iは時間系列である]
各パラメータ較正ユニットに対して、それぞれ最適化算法を適用していた1つの計算機を用いることにより各目的関数の最小値を並行に見つけて前記研究対象となる流域の水文モデルにパラメータ較正ができ、各目的関数の最小値は、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータであり、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータを纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るサブステップS52と、
を具体的に含むことを特徴とする請求項6に記載の較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水文予測の分野、特に多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、流域水文モデルの構築と水文モデルパラメータの較正は、貯水池調節や水資源管理などの課題を検討するための不可欠なステップの1つになっている。
【0003】
目下広く用いられている水文モデルパラメータの較正方法は、流域出口断面の流量プロセスを変数としてパラメータ較正の目的関数を築き、さまざまな最適化算法又は並行算法で水文モデルパラメータを較正することである。最適化算法を直接採用して流域出口断面の流量プロセスを変数として目的関数を築く方法には、計算機メモリに対してより高い要件且つより長い計算最適化の時間がある。流域面積が大きい場合、通常の計算機がメモリ不足になるので最適化算法を通常中断し、最適化パラメータを提供できなくなる。また、得られたモデルパラメータは、流域出口断面全体の単一点において測定された流量プロセスに従ってのみ較正を行うため、得られたパラメータは、流域内の各サブ流域における流出生成と合流の実際特性を反映できない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先行技術における上記の問題を解決するために、多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段は以下のとおりである。
研究対象となる流域内の雨量観測所及び水文観測所の位置及び対応する観測データを集めて研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得、前記研究対象となる流域のDEMマップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割して各サブ流域内における雨量観測所及び各雨量観測所の重みを得、前記研究対象となる流域の土地利用マップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るステップS1と、
水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、各水文ユニットに対応する計算方法を選択するステップS2と、
洪水降雨ごとの流出プロセス中における各サブ流域の降雨プロセス及び各サブ流域内の各水文観測所断面の流量プロセスを決めるステップS3と、
前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットのために計算ルールを作成するステップS4と、
各パラメータ較正ユニットに対応する目的関数を選定し、最適化算法を適用して各パラメータ較正ユニットの目的関数の最小値を並行取得し、各パラメータ較正ユニットによって得られた目的関数の最小値を纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るステップS5と、
を含む多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法。
【0006】
好ましくは、前記ステップS1は、
前記研究対象となる流域内において観測データを備えた雨量観測所及び水文観測所の位置情報と前記雨量観測所及び前記水文観測所に対応する観測データを集めて、不均等な時間間隔を備えた観測データを時間ごとの観測データに補間方法で変換し、前記研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得るサブステップS11と、
GISソフトウェアで前記DEMマップに対して水文分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得るサブステップS12と、
流域分割方法により、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割し、前記研究対象となる流域内の主流とより大きな支流において測定データを備えた水文観測所及び貯水池を全て各サブ流域の出口位置に分布させることを確かにするサブステップS13と、
前記研究対象となる流域の雨量観測所に基づいてティーセン多角形を描いて前記研究対象となる流域内の各サブ流域における雨量観測所と各雨量観測所の重みを得るサブステップS14と、
GISソフトウェアで土地利用マップを分析し、前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るサブステップS15と、
を具体的に含む。
【0007】
好ましくは、前記研究対象となる流域をサブ流域に分割する場合、前記水文観測所及び/又は前記貯水池をサブ流域の出口断面として用いる。
【0008】
好ましくは、前記ステップS2は、前記水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、対応する計算方法を各水文ユニットに配置し、前記水文ユニットは貯水池ユニットや河川ユニットやサブ流域ユニットや合流ユニットを含める具体的な内容を有する。
【0009】
好ましくは、前記ステップS3は、
前記研究対象となる流域の出口断面の流出プロセスと各雨量観測所の降雨プロセスに従って、降雨流出模擬のスタートストップ時刻を決めるサブステップS31と、
各サブ流域内の表面雨量で各サブ流域の降雨プロセスを表し、前記サブ流域内の表面雨量は、そのサブ流域中の各雨量観測所の降水量データと各雨量観測所のティーセン多角形重みとの相乗積に基づいて決められるサブステップS32と、
各水文観測所の流量プロセスは1時間ごとの流量プロセスを採用するサブステップS33と、
を具体的に含む。
【0010】
好ましくは、前記ステップS4は、
観測データを備えた水文観測所の位置に応じて前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットは、少なくとも1つのサブ流域を含み、各パラメータ較正ユニットの出口断面が観測データを備えた水文観測所であることを確かにするサブステップS41と、
貯水池の実際流出量を採用することにより、前記出口断面が貯水池ユニットであるサブ流域の流出プロセスを取り替えるサブステップS42と、
他のパラメータ較正ユニットが流入しているパラメータ較正ユニットに対して、前記他のパラメータ較正ユニットの出口断面流量は、観測された流量をその対応する流出データ、即ち流量の入れたパラメータ較正ユニットの流入データとして用いられるサブステップS43と、
を具体的に含む。
【0011】
好ましくは、前記ステップS5は、
各パラメータ較正ユニットは、各自の流域水文予測の要求に応じて適切な水文モデルパラメータを選択して目的関数を較正し、前記目的関数は、ピーク値誤差百分比関数又は平均加重根二乗平均誤差関数であり、ピーク値流量に対して制限計画及び設計を行う必要がある場合、前記ピーク値誤差百分比関数を目的関数として選定し、洪水プロセスの全体的な状況を反映して洪水ピークの流量の模擬に焦点を当てる必要がある場合、前記平均加重根二乗平均誤差関数を目的関数として選定し、前記ピーク値誤差百分比関数と前記平均加重根二乗平均誤差関数を式に示すサブステップS51と、
【数1】
[f
1はピーク値誤差百分比関数であり、q
s(peak)は計算予定のピーク値、q
o(peak)は測定ピーク値、f
2は平均加重根二乗平均誤差関数であり、NQは計算予定のハイドログラフの縦座標の数、q
o(i)はi期間目の期末の測定流量、q
s(i)はi期間目の期末の計算予定の流量、iは時間系列である]
各パラメータ較正ユニットに対して、それぞれ最適化算法を適用していた1つの計算機を用いることにより各目的関数の最小値を並行に見つけて前記研究対象となる流域の水文モデルにパラメータ較正ができ、各目的関数の最小値は、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータであり、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータを纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るサブステップS52と、
を具体的に含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有益な効果は次のとおりである。1.研究対象となる流域は、測定データを備えた水文観測所の分布に応じて複数のパラメータ較正ユニットに分割され、その出口断面における水文観測所によって測定された流量プロセスに従って複数の計算機で様々なパラメータ較正ユニットを修正し較正し、 較正効率を向上させる。2.計算機の性能がそれほど高くない場合でも、簡単な操作で流出生成と合流の実際特性を反映できる水文モデルパラメータを得る。3.並行言語MPIに基づく並行算法は、感度分析と多目標較正用プログラムをエンコードするのに用いられ、結合水文モデルのオープンソースコードにより全体的な感度分析方法に基づいて得られた感度パラメータは、多目標較正に用いられて最適解を得るため、並行算法の応用は、パラメータ較正効率を大幅に向上させ、パラメータを最適化するための時間を大いに節約する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による実施例における方法の流れ図である。
【
図2】は、本発明による実施例における臨沂上流流域内の雨量観測所の分布図である。
【
図3】本発明による実施例における臨沂上流流域内の水文観測所の分布図である。
【
図4】本発明による実施例における臨沂上流流域内の貯水池の分布図である。
【
図5】本発明による実施例における臨沂上流流域内のサブ流域の分割図である。
【
図6】本発明による実施例における臨沂上流流域内のティーセン多角形の分割図である。
【
図7】本発明による実施例における臨沂上流流域内の水文モデルの概略図である。
【
図8】本発明による実施例における葛溝上流流域内のパラメータ較正ユニットにおける測定流量と計算流量との間の比較チャートである。
【
図9】本発明による実施例における高里上流流域内のパラメータ較正ユニットにおける測定流量と計算流量との間の比較チャートである。
【
図10】本発明による実施例における角沂上流流域内のパラメータ較正ユニットにおける測定流量と計算流量との間の比較チャートである。
【
図11】本発明による実施例における臨沂上流流域内から他の3つのパラメータ較正ユニットを除いて残っている部分における測定流量と計算流量との間の比較チャートである。
【
図12】本発明による実施例における臨沂上流流域内の全体的な較正効果チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、次に添付の図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。本明細書に記載の具体的な実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではないことを理解されるべきである。
【0015】
(実施例1)
本実施例は、
図1に示されたように、多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法を提供する。
【0016】
研究対象となる流域内の雨量観測所及び水文観測所の位置及び対応する観測データを集めて研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得、前記研究対象となる流域のDEMマップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割して各サブ流域内における雨量観測所及び各雨量観測所の重みを得、前記研究対象となる流域の土地利用マップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るステップS1と、
水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、各水文ユニットに対応する計算方法を選択するステップS2と、
洪水降雨ごとの流出プロセス中における各サブ流域の降雨プロセス及び各サブ流域内の各水文観測所断面の流量プロセスを決めるステップS3と、
前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットのために計算ルールを作成するステップS4と、
各パラメータ較正ユニットに対応する目的関数を選定し、最適化算法を適用して各パラメータ較正ユニットの目的関数の最小値を並行取得し、各パラメータ較正ユニットによって得られた目的関数の最小値を纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るステップS5と、
を含む。
【0017】
本実施例で、その方法は、データを収集し処理する部分と、流域モデルを生成する部分と、洪水降雨ごとの流出プロセス中における各サブ流域の降雨プロセス及び流域内の各水文観測所断面の流量プロセスを決める部分と、研究対象となる流域を並行パラメータ較正ユニットに分割し、計算ルールを作成する部分と、最適化目的関数を選定し、目的関数の最小値を見つける部分とを含める5つの部分を具体的に含む。
【0018】
一、データを収集し処理する部分
本実施例で、ステップS1は第1部分に対応する、
前記研究対象となる流域内において観測データを備えた雨量観測所及び水文観測所の位置情報と前記雨量観測所及び前記水文観測所に対応する観測データを集めて、不均等な時間間隔を備えた観測データを時間ごとの観測データに補間方法で変換し、前記研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得るサブステップS11と、
GISソフトウェアで前記DEMマップに対して水文分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得るサブステップS12と、
流域分割方法により、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割し、前記研究対象となる流域内の主流とより大きな支流において測定データを備えた水文観測所及び貯水池を全て各サブ流域の出口位置に分布させることを確かにするサブステップS13と、
前記研究対象となる流域の雨量観測所に基づいてティーセン多角形を描いて前記研究対象となる流域内の各サブ流域における雨量観測所と各雨量観測所の重みを得るサブステップS14と、
GISソフトウェアで土地利用マップを分析し、前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るサブステップS15と、
を具体的に含む。
【0019】
本実施例では、前記研究対象となる流域をサブ流域に分割する場合、前記水文観測所及び/又は前記貯水池をサブ流域の出口断面として用いる。
【0020】
本実施例では、不浸透率が水文モデル中の物理学意味を有する固定パラメータであるため、ステップS15で水文モデルの最適化パラメータを次に見つけるために、各サブ流域の不浸透率を計算する必要がある。
【0021】
二、流域モデルを生成する部分
本実施例で、ステップS2は、第2部分に対応し、水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、対応する計算方法を各水文ユニットに配置し、前記水文ユニットは貯水池ユニットや河川ユニットやサブ流域ユニットや合流ユニットなどを含める具体的な内容を含む。
【0022】
本実施例で、水文ユニットには様々な計算方法がある。例えば、サブ流域ユニットには、流出計算方法や合流計算方法や基底流計算方法を設ける必要があり、河川ユニットには河川洪水演算方法を設ける必要があり、貯水池ユニットには貯水池流出量計算方法を設ける必要がある。このようにすると、水文ユニットは、それぞれ様々な計算方法で対応する計算を実行してステップS3の計算準備をする。
【0023】
三、洪水降雨ごとの流出プロセス中における各サブ流域の降雨プロセス及び流域内の各水文観測所断面の流量プロセスを決める部分
本実施例で、ステップS3は、第3部分に対応する、
前記研究対象となる流域の出口断面の流出プロセスと各雨量観測所の降雨プロセスに従って、降雨流出模擬のスタートストップ時刻を決めるサブステップS31と、
各サブ流域内の表面雨量で各サブ流域の降雨プロセスを表し、前記サブ流域内の表面雨量は、そのサブ流域中の各雨量観測所の降水量データと各雨量観測所のティーセン多角形重みとの相乗積に基づいて決められるサブステップS32と、
各水文観測所の流量プロセスは1時間ごとの流量プロセスを採用するサブステップS33と、
を具体的に含む。
【0024】
つまり、ステップS3には、具体的に次の3つのステップを備える。最初に、研究対象となる流域の出口断面の流出プロセスと各雨量観測所の降雨プロセスに従って、降雨流出模擬のスタートストップ時刻を決める。次にサブ流域内の表面雨量で各サブ流域の降雨プロセスを表し、表面雨量は、各雨量観測所において以前に得られた1時間ごとの降水量データと各雨量観測所のティーセン多角形重みとの相乗積に基づいて決められる。最後に、各水文観測所の流量プロセスは1時間ごとの流量プロセスを採用する。
【0025】
四、研究対象となる流域を並行パラメータ較正ユニットに分割し、計算ルールを作成する部分
本実施例で、ステップS4は、第4部分に対応する、
観測データを備えた水文観測所の位置に応じて前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットは、少なくとも1つのサブ流域を含み、各パラメータ較正ユニットの出口断面が観測データを備えた水文観測所であることを確かにするサブステップS41と、
貯水池の実際流出量を採用することにより、前記出口断面が貯水池ユニットであるサブ流域の流出プロセスを取り替えるサブステップS42と、
他のパラメータ較正ユニットが流入しているパラメータ較正ユニットに対して、前記他のパラメータ較正ユニットの出口断面流量は、観測された流量をその対応する流出データ、即ち流量の入れたパラメータ較正ユニットの流入データとして用いられるサブステップS43と、
を具体的に含む。
【0026】
本実施例で、研究対象となる流域をパラメータ較正ユニットに分割する部分は、水文観測所の位置に応じて研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、これらのパラメータ較正ユニットは、それぞれ1つ以上のサブ流域を含め、その出口位置に観測データがある水文観測所である必要があるという具体的な内容を有する。
【0027】
本実施例で、パラメータ較正ユニットの計算ルールを作成する部分は、貯水池の実際流出量を採用することにより、出口断面が貯水池ユニットであるサブ流域の流出プロセスを処理し、他のパラメータ較正ユニットが流入しているパラメータ較正ユニットに対して、前記他のパラメータ較正ユニットの出口断面流量は、観測された流量をその対応する流出データ、即ち流量の入れたパラメータ較正ユニットの流入データとして用いられるという内容を含む。
【0028】
五、最適化目的関数を選定し、目的関数の最小値を見つける部分
本実施例で、ステップS5は、第5部分に対応する、
各パラメータ較正ユニットは、各自の流域水文予測の要求に応じて適切な水文モデルパラメータを選択して目的関数を較正し、前記目的関数は、ピーク値誤差百分比関数又は平均加重根二乗平均誤差関数であり、ピーク値流量に対して制限計画及び設計を行う必要がある場合、前記ピーク値誤差百分比関数を目的関数として選定し、洪水プロセスの全体的な状況を反映して洪水ピークの流量の模擬に焦点を当てる必要がある場合、前記平均加重根二乗平均誤差関数を目的関数として選定し、前記ピーク値誤差百分比関数と前記平均加重根二乗平均誤差関数を式に示すサブステップS51と、
【数2】
[f
1はピーク値誤差百分比関数であり、q
s(peak)は計算予定のピーク値、q
o(peak)は測定ピーク値、f
2は平均加重根二乗平均誤差関数であり、NQは計算予定のハイドログラフの縦座標の数、q
o(i)はi期間目の期末の測定流量、q
s(i)はi期間目の期末の計算予定の流量、iは時間系列である]
各パラメータ較正ユニットに対して、それぞれ最適化算法を適用していた1つの計算機を用いることにより各目的関数の最小値を並行に見つけて前記研究対象となる流域の水文モデルにパラメータ較正ができ、各目的関数の最小値は、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータであり、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータを纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るサブステップS52と、
を具体的に含む。
【0029】
本実施例は、各パラメータ較正ユニットに対してステップS4で決められた計算ルールを採用し、最適化算法を適用していた複数の計算機を用いることにより、各目的関数の最小値を並行に見つけて水文モデルに並行パラメータ較正を行い、次に各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータを纏めて研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータ集合を得る内容を含む。
【0030】
本実施例で、本方法は、並行言語MPIに基づいて、感度分析と多目標較正用プログラムをエンコードするのに用いられ、結合水文モデルのオープンソースコードにより全体的な感度分析方法に基づいて得られた感度パラメータは、多目標較正に用いられて最適解を得るため、複数の計算機において並行計算を行ってパラメータ較正効率を大幅に向上させる。
【0031】
(実施例2)
この実施例では、山東沂河の臨沂水文観測所の上流流域の水文モデルのパラメータ較正を例として、本発明のパラメータ較正方法の実施プロセス及び達成された効果を具体的に説明する。
【0032】
臨沂水文観測所は、集水面積が10315km
2であり、川の長さはで227.8kmである。その地形は、西北に高く、東南の平野に向かって傾斜している。 沂河上流の複雑な地形により、多くの支流は形成されている。200km
2を超える集水面積を有する臨沂水文観測所の上流に位置する一級支流は、東ブン河や蒙河やハン河やスウ河や柳青河を含める。流域内において山岳面積は約68%を占め、平野面積は約32%を占めている。沂河流域は、温帯季節風大陸性気候に属し、流域の年間平均降水量は813mmであり、洪水期の降水量は600mmであり、年間降水量の約73.9%を占める。沂河の上流流域には21座の雨量観測所があり、本流とより大きな支流には6座の水文観測所があり、5座の大型貯水池がある。臨沂上流流域には雨量観測所の分布図を
図2に、水文観測所の分布図を
図3に、貯水池の分布図を
図4に、それぞれ示す。本実施例は、2017年7月14日の午前1時から2017年7月20日の午後3時までをスタートストップ時刻とする臨沂上流流域の21座の雨量観測所の降水量データ及び臨沂や葛溝や高里や角沂を含める4座の水文観測所の流量データに基づいて、臨沂上流流域の水文モデルに対してパラメータ較正を行う。多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法は、次のステップを備える。
【0033】
一、データを収集し処理するステップ
臨沂上流流域を研究対象となる流域として2017年7月14日の午前1時から2017年7月20日の午後3時までの臨沂上流流域の21座の雨量観測所の降水量データ及び臨沂や葛溝や高里や角沂を含める4座の水文観測所の流量データを集め、これらのデータを不均等な時間間隔データから1時間ごとのデータに補間する。研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを収集し、GISソフトウェアでDEMマップに対して水文分析を行い、研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得、流域分割方法により研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割し、研究対象となる流域内の主流とより大きな支流において測定データを備えた水文観測所及び貯水池を全て各サブ流域の出口位置に分布させることを確かにする(サブ流域の分割図については、
図5を参照)。GISソフトウェアで土地利用マップを分析し、研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得る。研究対象となる流域の雨量観測所に基づいてティーセン多角形を描いて研究対象となる流域内の各サブ流域における影響を受けた雨量観測所とそれぞれの重みを得る(研究対象となる流域のティーセン多角形については、
図6を参照)。
【0034】
二、流域モデルを生成するステップ
水文ユニットを流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、各水文ユニットに対応する計算方法を選定し、前記水文ユニットは貯水池ユニットや河川ユニットやサブ流域ユニットや合流ユニットなどを含める(築かれた臨沂上流流域の流域モデルについては、
図7を参照)。
【0035】
三、洪水降雨ごとの流出プロセス中における各サブ流域の降雨プロセス及び流域内の各水文観測所断面の流量プロセスを決めるステップ
1、研究対象となる流域の出口断面の流出プロセスと各雨量観測所の降雨プロセスに従って、降雨流出模擬のスタートストップ時刻を2017年7月14日の午前1時から2017年7月20日の午後3時までと決める。
【0036】
2、サブ流域内の表面雨量で各サブ流域の降雨プロセスを表し、表面雨量は、ステップS1に得られた各雨量観測所における1時間ごとの降水量データと各雨量観測所のティーセン多角形重みとの相乗積に基づいて決められる。
【0037】
3、各水文観測所の流量プロセスは1時間ごとの流量プロセスを採用する。
【0038】
四、研究対象となる流域を並行パラメータ較正ユニットに分割し、計算ルールを作成するステップ
1、研究対象となる流域をパラメータ較正ユニットに分割するサブステップ:
観測データを備えた水文観測所の位置に応じて研究対象となる流域を4つのパラメータ較正ユニットに分割し、これは、それぞれ葛溝上流流域、高里上流流域及び角沂上流流域であり、並びに臨沂上流流域から上記の3つのパラメータ較正ユニットを除いて残った流域部分(即ち、W1710サブ流域)である。
【0039】
2、パラメータ較正ユニットの計算ルールを作成するサブステップ:
A、貯水池の実際流出量を採用することにより、出口断面が貯水池ユニットである5つサブ流域(それぞれ、田荘貯水池、跋山貯水池、岸堤貯水池、唐村貯水池及び許家村貯水池)の流出プロセスを処理する。
【0040】
B、W1710サブ流域のパラメータを較正する場合、葛溝、高里及び角沂の流入水は、その3つの水文観測所に観測された流出に応じて処理される。
【0041】
五、最適化目的関数を選定し、目的関数の最小値を見つけるステップ
この実施例では、平均加重根二乗平均誤差関数を選択して4つのパラメータ較正ユニットを較正する。4つのパラメータ較正ユニットに対しては、最適化算法を適用していた4台の計算機で目的関数の最小値を並行取得し、水文モデルを並行較正する。葛溝上流流域内のパラメータ較正ユニットにおける測定流量と計算流量との間の比較チャートを
図8に示す。高里上流流域内のパラメータ較正ユニットにおける測定流量と計算流量との間の比較チャートを
図9に示す。角沂上流流域内のパラメータ較正ユニットにおける測定流量と計算流量との間の比較チャートを
図10に示す。臨沂上流流域内から他の3つのパラメータ較正ユニットを除いて残っている部分における測定流量と計算流量との間の比較チャートを
図11に示す。研究対象となる流域の全体的な較正効果チャートを
図12に示す。各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータを纏めて研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得る。
【0042】
本発明によって開示された上記の解決策を採用することにより、以下の有益な効果が得られる。
【0043】
本発明は、多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法を提供する。本発明は、研究対象となる流域を、測定データを備えた水文観測所の分布に応じて複数のパラメータ較正ユニットに分割し、その出口断面における水文観測所によって測定された流量プロセスに従って複数の計算機で様々なパラメータ較正ユニットを修正し較正し、 較正効率を向上させる。計算機の性能がそれほど高くない場合でも、簡単な操作で流出生成と合流の実際特性を反映できる水文モデルパラメータを得る。並行言語MPIに基づく並行算法は、感度分析と多目標較正用プログラムをエンコードするのに用いられ、結合水文モデルのオープンソースコードにより全体的な感度分析方法に基づいて得られた感度パラメータは、多目標較正に用いられて最適解を得るため、並行算法の応用は、パラメータ較正効率を大幅に向上させ、パラメータを最適化するための時間を大いに節約する。
【0044】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態にすぎないため、当業者が本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改善及び修正を行うことができることを指摘すべきである。これらの改善及び修正は、本発明の保護範囲を考慮すべきである。
【0045】
(付記)
(付記1)
研究対象となる流域内の雨量観測所及び水文観測所の位置及び対応する観測データを集めて研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得、前記研究対象となる流域のDEMマップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割して各サブ流域内における雨量観測所及び各雨量観測所の重みを得、前記研究対象となる流域の土地利用マップに対して分析を行って前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るステップS1と、
水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、各水文ユニットに対応する計算方法を選択するステップS2と、
洪水降雨ごとの流出プロセス中における各サブ流域の降雨プロセス及び各サブ流域内の各水文観測所断面の流量プロセスを決めるステップS3と、
前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットのために計算ルールを作成するステップS4と、
各パラメータ較正ユニットに対応する目的関数を選定し、最適化算法を適用して各パラメータ較正ユニットの目的関数の最小値を並行取得し、各パラメータ較正ユニットによって得られた目的関数の最小値を纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るステップS5と、
を含むことを特徴とする多点並行修正に基づく分布型水文モデルパラメータの較正方法。
【0046】
(付記2)
前記ステップS1は、
前記研究対象となる流域内において観測データを備えた雨量観測所及び水文観測所の位置情報と前記雨量観測所及び前記水文観測所に対応する観測データを集めて、不均等な時間間隔を備えた観測データを時間ごとの観測データに補間方法で変換し、前記研究対象となる流域のDEMマップと土地利用マップを得るサブステップS11と、
GISソフトウェアで前記DEMマップに対して水文分析を行って前記研究対象となる流域内の流域サーフェスファイルを得るサブステップS12と、
流域分割方法により、前記研究対象となる流域をいくつかのサブ流域に分割し、前記研究対象となる流域内の主流とより大きな支流において測定データを備えた水文観測所及び貯水池を全て各サブ流域の出口位置に分布させることを確かにするサブステップS13と、
前記研究対象となる流域の雨量観測所に基づいてティーセン多角形を描いて前記研究対象となる流域内の各サブ流域における雨量観測所と各雨量観測所の重みを得るサブステップS14と、
GISソフトウェアで土地利用マップを分析し、前記研究対象となる流域内の各サブ流域の不浸透率を得るサブステップS15と、
を具体的に含むことを特徴とする付記1に記載の較正方法。
【0047】
(付記3)
前記研究対象となる流域をサブ流域に分割する場合、前記水文観測所及び/又は前記貯水池をサブ流域の出口断面として用いることを特徴とする付記2に記載の較正方法。
【0048】
(付記4)
前記ステップS2は、前記水文ユニットを前記流域サーフェスファイルに加えて流域モデルを生成し、対応する計算方法を各水文ユニットに配置し、前記水文ユニットは貯水池ユニットや河川ユニットやサブ流域ユニットや合流ユニットを含める具体的な内容を有することを特徴とする付記3に記載の較正方法。
【0049】
(付記5)
前記ステップS3は、
前記研究対象となる流域の出口断面の流出プロセスと各雨量観測所の降雨プロセスに従って、降雨流出模擬のスタートストップ時刻を決めるサブステップS31と、
各サブ流域内の表面雨量で各サブ流域の降雨プロセスを表し、前記サブ流域内の表面雨量は、そのサブ流域中の各雨量観測所の降水量データと各雨量観測所のティーセン多角形重みとの相乗積に基づいて決められるサブステップS32と、
各水文観測所の流量プロセスは1時間ごとの流量プロセスを採用するサブステップS33と、
を具体的に含むことを特徴とする付記4に記載の較正方法。
【0050】
(付記6)
前記ステップS4は、
観測データを備えた水文観測所の位置に応じて前記研究対象となる流域をいくつかのパラメータ較正ユニットに分割し、前記パラメータ較正ユニットは、少なくとも1つのサブ流域を含み、各パラメータ較正ユニットの出口断面が観測データを備えた水文観測所であることを確かにするサブステップS41と、
貯水池の実際流出量を採用することにより、前記出口断面が貯水池ユニットであるサブ流域の流出プロセスを取り替えるサブステップS42と、
他のパラメータ較正ユニットが流入しているパラメータ較正ユニットに対して、前記他のパラメータ較正ユニットの出口断面流量は、観測された流量をその対応する流出データ、即ち流量の入れたパラメータ較正ユニットの流入データとして用いられるサブステップS43と、
を具体的に含むことを特徴とする付記5に記載の較正方法。
【0051】
(付記7)
前記ステップS5は、
各パラメータ較正ユニットは、各自の流域水文予測の要求に応じて適切な水文モデルパラメータを選択して目的関数を較正し、前記目的関数は、ピーク値誤差百分比関数又は平均加重根二乗平均誤差関数であり、ピーク値流量に対して制限計画及び設計を行う必要がある場合、前記ピーク値誤差百分比関数を目的関数として選定し、洪水プロセスの全体的な状況を反映して洪水ピークの流量の模擬に焦点を当てる必要がある場合、前記平均加重根二乗平均誤差関数を目的関数として選定し、前記ピーク値誤差百分比関数と前記平均加重根二乗平均誤差関数を式に示すサブステップS51と、
【数3】
[f
1はピーク値誤差百分比関数であり、q
s(peak)は計算予定のピーク値、q
o(peak)は測定ピーク値、f
2は平均加重根二乗平均誤差関数であり、NQは計算予定のハイドログラフの縦座標の数、q
o(i)はi期間目の期末の測定流量、q
s(i)はi期間目の期末の計算予定の流量、iは時間系列である]
各パラメータ較正ユニットに対して、それぞれ最適化算法を適用していた1つの計算機を用いることにより各目的関数の最小値を並行に見つけて前記研究対象となる流域の水文モデルにパラメータ較正ができ、各目的関数の最小値は、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータであり、各パラメータ較正ユニットによって較正された最適化パラメータを纏めて前記研究対象となる流域の水文モデルの最適化パラメータを得るサブステップS52と、
を具体的に含むことを特徴とする付記6に記載の較正方法。
【国際調査報告】