(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】海藻粉末を水に分散させる方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20221110BHJP
A61K 8/9706 20170101ALI20221110BHJP
A61K 8/9711 20170101ALI20221110BHJP
A61K 8/9717 20170101ALI20221110BHJP
A61K 8/9722 20170101ALI20221110BHJP
【FI】
A23L17/60 Z
A61K8/9706
A61K8/9711
A61K8/9717
A61K8/9722
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518178
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 US2020052162
(87)【国際公開番号】W WO2021061734
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】アゴダ‐タンジャワ,ゲバ
(72)【発明者】
【氏名】ル・ガーネック,シンディ
【テーマコード(参考)】
4B019
4C083
【Fターム(参考)】
4B019LE05
4B019LP01
4B019LP04
4B019LP05
4B019LP07
4B019LP13
4B019LP17
4C083AA11
4C083FF01
(57)【要約】
本発明は、(a)海藻粉末及び水性環境を提供する工程、及び(b)海藻粉末を、少なくとも3.5、好ましくは9.0のpHで、水性環境中に分散させる工程を含む、海藻粉末を水性環境に分散させる方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって得られた水性環境における海藻粉末の分散物及び食品、飲料、栄養製品、栄養補助食品、飼料、パーソナルケア用途、医薬用途及び工業用途におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻粉末を水性環境中に分散させる方法であって、以下の:
(a)海藻粉末及び水性環境を提供する工程であって、前記海藻粉末の0.3質量%水性分散液で測定した貯蔵弾性率(G’)が少なくとも10Paである海藻粉末を提供する工程;かつ、
(b)海藻粉末を、少なくとも3.5、好ましくは9.0のpHで、水性環境中に分散させる工程;
を含む、方法。
【請求項2】
海藻粉末は、D50が、少なくとも20μm、好ましくは最大750μmである海藻粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
海藻粉末は、D90が、少なくとも125μm、好ましくは最大800μmである海藻粒子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
海藻は、紅藻類、褐藻類、又は緑藻類の海藻である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
海藻は、Gigartinaceae、Bangiophyceae、Palmariaceae、Hypneaceae、Cystocloniaceae、Soliericae、Phyllophoraceae及びFurcellariaceaeのファミリー又はそれらの組み合わせから選択される紅藻類の海藻である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
海藻粉末の臨界ゲル化濃度(C
0)は、最大0.5質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
海藻粉末の酸性不溶性灰分(AIA)は、前記海藻粉末の質量に対して最大5.0質量%の量で含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
海藻粉末の酸性不溶性灰分(AIA)は、前記海藻粉末の質量に対して最大50質量%の量の酸不溶性材料(AIM)を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
水性環境は、前記水性環境の総質量に対して少なくとも30質量%の水を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水性環境には塩が含まれる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
水性環境のイオン強度は、少なくとも0.01 Mである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
海藻粉末は、水性環境の全乾燥固形分に対して、少なくとも0.1質量%の量で前記水性環境中に分散される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
pHが少なくとも3.5である、水性環境における海藻の分散物。
【請求項14】
イオン強度が少なくとも0.01Mである、請求項13に記載の分散物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻粉末を水性環境に分散させる方法に関する。本発明はさらに、本発明の方法によって得られた水性環境における海藻粉末の分散、及び食品、飲料、栄養製品、栄養補助食品、飼料、パーソナルケア用途、医薬用途及び工業用途におけるその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の海藻生産量は20,000,000トン/年程度と考えられている。近年、海藻の栽培・収穫方法の改良が行われ、生産量の増加のみならず、より効率的な生育制御が可能となった。特許文献1~3は、海草の栽培システムの例を開示する。
【0003】
海藻は、一般的には海洋環境において岩や他の硬い基質に付着して生活する植物様の生物である。海藻は微細藻類のように顕微鏡的であるが、「森」の中に生育する巨大な昆布や、海底にある水中の森林等の塔のように巨大なものもある。ほとんどの海藻種は緑色(6500種以上)、褐色(約2000種)、紅藻類(約7000種)のいずれかである。
【0004】
何百年も前から、海藻はヒトだけでなく動物の健康にも有益であることを認識しており、最近では、さまざまな研究により、海藻が脂肪代替物として有効であることが実証されている。食事と健康との関係に対する人々の意識が高まるにつれ、海藻の消費が益々注目されるようになった。今日では、海藻を原料とする多くの新しい食品が開発され、市販されており、より高い健康効果や病気のリスクを低減させる可能性を提供している。海藻類には、直接摂取した場合や、栄養補助食品としてわずかな前処理を施した後に摂取した場合の高い健康効果に加えて、栄養的、物理化学的、食感的特性等の様々な天然の機能特性があり、様々な製品の製造原料として用いる場合、その有利な機能特性を付与することができる。
【0005】
しかし、乾燥した海藻粉末の機能特性を維持したまま、効率的かつ経済的に分散させることは困難である。通常、最適なレオロジー特性を有する良好な分散を達成するために、より長い分散時間がより長く及び/又は剪断力がより高くなければならない。したがって、得られる分散液が海藻のレオロジー特性から最適に利益を得ることを確実にしつつ、機能性海藻粉末、すなわち機能特性を備える海藻粉末を水性環境中で分散させる効率的かつ経済的な方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2 230 895号明細書
【特許文献2】欧州特許第3 246 292号明細書
【特許文献3】国際公開第2017/131510号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の分散の他の利点は、本明細書の下で与えられた本発明の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、海藻を原料とした粉末試料のC
0測定法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、海藻粉末を水性環境に分散させる方法(以下、本発明の方法という)に関し、以下の以下の:
(a)海藻粉末及び水性環境を提供する工程であって、前記海藻粉末の0.3質量%水性分散液で測定した貯蔵弾性率(G’)が少なくとも10Paである海藻粉末を提供する工程;かつ、
(b)海藻粉末を、少なくとも3.5、好ましくは9.0のpHで、水性環境中に分散させる工程;
を含む。
【0010】
本明細書では、海藻粉末は、海藻粒子の集合体、すなわち、海藻粒子を含有すると理解される。前記粒子は、湿式又は乾式で海藻を粉砕又は粉砕することによって得ることができる。本発明で用いられる最も好ましい海藻粉末は、欧州特許出願第194267号及び同第195710号明細書に記載された方法により得られた粉末であり、優れたレオロジー特性、例えば、弾性率(G’)が高く、かつ、臨界ゲル化濃度(C0)が低いという組み合わせであり、両出願とも参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0011】
好ましくは、海藻粒子のD50は、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも50μm、さらに好ましくは少なくとも75μm、さらにより好ましくは少なくとも85μm、最も好ましくは少なくとも120μmである。当該D50は、最大でも750μm、より好ましくは最大でも500μm、さらにより好ましくは最大でも350μm、最も好ましくは最大でも250μmであることが好ましい。当該D50は、20μm~750μm、より好ましくは50μm~350μm、最も好ましくは75μm~250μmであることが好ましい。
【0012】
好ましくは、海藻粒子のD90は、好ましくは少なくとも125μm、より好ましくは少なくとも100μm、さらに好ましくは少なくとも175μm、最も好ましくは少なくとも220μmである。当該D90は、最大でも800μm、より好ましくは最大でも600μm、最も好ましくは最大でも400μmであることが好ましい。当該D90は、125μm~800μm、より好ましくは175μm~600μm、最も好ましくは220μm~400μmであることが好ましい。
【0013】
好ましくは、海藻粒子のD50は、少なくとも20μm、D90が少なくとも125μm、より好ましくはD50が少なくとも50μm、D90が少なくとも175μm、最も好ましくはD50が少なくとも75μm、D90が少なくとも220μmである。
【0014】
好ましくは、本発明の組成物で用いられる海藻粉末は、少なくとも80%の乾燥基材、より好ましくは少なくとも90%の乾燥基材、さらに好ましくは少なくとも92%の乾燥基材、最も好ましくは少なくとも96%の質量%の乾燥基材を含む。100質量%までの残りの質量%としては、バイオマスの一部を形成する海藻粒子以外の異物、例えば、藻類、他の海藻の系統等があげられる。
【0015】
本発明に適した海藻は、多数のタイプの海藻から選択することができる。本明細書における「海藻」とは、野生で生育することができる、又は養殖することができる、広く多細胞の海藻であると理解される。野生の海藻は、通常、人間が養殖又は処理することなく、海又は海洋の底生地域で生育する。養殖された海藻は、通常、通常、海又は海洋の表面の下に配置されるロープ、布、ネット、チューブネット等の様々な支持体上で栽培される。また、海藻は、海水を含むプール、池、タンク、原子炉で養殖され、海岸や内陸に配置されることもある。用語「海藻」としては、赤、茶及び緑の海藻類があげられる。
【0016】
本明細書では、海藻のある種の分類学である科、属等を用いる。参照される分類学は、海藻の栽培及び収穫の技術分野及び/又は海藻抽出物の技術分野で通常用いられる。紅藻の分類学上の説明は、例えば、C.W.Schneider and M.J.Wynne in Botanica Marina 50(2007):197‐249;G.W.Sauders and M.H.Hommersand in American Journal of Botany91(10):1494‐1507,2004;Athanasiadis,A.in Bocconea16(1):193-198.2003.-ISSN 1120-4060による。緑藻類の分類学の説明は、例えば、Naselli-Flores L and Barone R.(2009)Green Algae.In:Gene E.Likens,(Editor)Encyclopedia of Inland Waters.volume1,pp.166-173 Oxford:Elsevierによる。褐藻類の分類学についての説明は、例えば、John D.Wehr in Freshwater Algae of North America-Ecology and Classification,Edition:1,Chapter:22,Publisher:Academic Press,Editors:John D.Wehr,Robert G.Sheath,pp.757-773による。
【0017】
好ましくは、本発明に関して用いられる海藻は、紅藻類の海藻である紅藻類、すなわち、Rhodophyta門に属する海藻;又は褐色の海藻である褐藻類、すなわち、Phaeophycaee綱の目、科及び属である。紅藻は、フィコビリンという、フィコビリンに含まれる色素によって特徴的な赤色又は紫色を呈する。
【0018】
より好ましくは、海藻は、Gigartinaceae、Bangiophyceae、Palmariaceae、Hypneaceae、Cystocloniaceae、Solieriaceae、Phyllophoraceae及びFurcellariaceae又はそれらの組み合わせのファミリーから選択される紅藻類の海藻である。最も好ましくは、海藻は、Bangiales属、Chondrus属、Iridaea属、Palmaria属、Gigartina属、Gracilaria属、Gelidium属、Rhodoglossum属、Hypnea属、Eucheuma属、Kappaphycus属、Agaryella属、Gymnogrogrus属、Sarcothalia属、Phyllophora属、Ahnfeltia属、Mazzaella属、Mastocarpus属、Chondracanthus属、Furcellaria属及びそれらの混合物から選択される。最良の結果は、Porphyra sp.、Palmaria palmata、Eucheuma spinosum、Eucheuma denticulatum、Eucheuma sp.、Eucheuma cottonii(Kappaphycus alvareziiとしても知られる)、Kappaphycus striatus、Kappaphycus sp.、Chondrus crispus、Irish mos、Fucus crispus、Chondrus sp.、Sarcothalia crispata、Mazzaella laminaroides、Mazzzaella sp.、Chondracanthus acicularis、Chondracanthus chamisoi、Chondracanthus sp.、Gigartina pistilla、Gigartina mammillosa、Gigartina skotsbergii、Gigaritina sp.、Gracilia sp.Mastocarpus stellatus及びその混合物から得られた。
【0019】
紅藻類の一部、例えばKappaphycus alvareziiは、緑色または茶色の株を有することが知られているが、本発明の文脈では、例えば、海藻が紅藻類であると言及する場合、それは本明細書において門を意味し、株の色を意味するのではない。
【0020】
最も好ましい褐藻類は、Acsophyllum、Durvilaea、Ecklonia、Hyperborea、Laminaria、Lessonia、Macrocystis、Fucus及びSargassumの科から選択される。褐藻類の具体例としては、ブルケルプ(Durvilae potorum)、デュルビラ種、D.antarctica及びノットケルプ(Ascophyllum nosodum)があげられる。
【0021】
海藻粉末は、前記粉末の0.3質量%水性分散液で測定した場合、少なくとも貯蔵弾性率が10Paである。好ましくは、前記粉末の臨界ゲル化濃度(C0)は、最大でも0.5質量%、より好ましくは最大でも0.3質量%、最も好ましくは最大でも0.1質量%である。好ましくは、当該粉末のG’は、少なくとも15Pa、より好ましくは少なくとも20Pa、より好ましくは少なくとも30Pa、より好ましくは少なくとも50Pa、より好ましくは少なくとも70Pa、より好ましくは少なくとも90Pa、さらにより好ましくは少なくとも110Pa、最も好ましくは少なくとも120Paである。好ましくは、当該G’は、最大で500Pa、より好ましくは最大で400Pa、さらにより好ましくは最大で300Pa、最も好ましくは最大で200Paである。
【0022】
好ましくは、海藻粉末は、前記粉末の0.3質量%水性分散液で測定した場合、貯蔵弾性率(G’)が少なくとも10Paであり、臨界ゲル化濃度(C0)が最大でも0.5質量%であり、ここで、前記海藻は紅藻類の海藻、すなわちRhodophyta門に属する海藻である。G’及びC0の好ましい範囲は、上記の通りである。好ましくは、当該粉末のCIELAB L*値は、少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも74、より好ましくは少なくとも76、さらに好ましくは少なくとも78、最も好ましくは少なくとも80である。好ましくは、海藻は、Gigartinaceae、Bangiophyceae、Palmariaceae、Hypneaceae、Cystocloniaceae、Solieriaceae、Phyllophoraceae及びFurcellariaceae又はそれらの組み合わせのファミリーから選択される紅藻類の海藻である。最も好ましくは、海藻は、Bangiales属、Chondrus属、Iridaea属、Palmaria属、Gigartina属、Gracilaria属、Gelidium属、Rhodoglossum属、Hypnea属、Eucheuma属、Kappaphycus属、Agaryella属、Gymnogrogrus属、Sarcothalia属、Phyllophora属、Ahnfeltia属、Mazzaella属、Mastocarpus属、Chondracanthus属、Furcellaria属及びそれらの混合物から選択される。
【0023】
最も好ましくは、海藻粉末は、前記粉末の0.3質量%水性分散液で測定した場合の貯蔵弾性率(G’)が少なくとも10Paであり、臨界ゲル化濃度(C0)が最大でも0.5質量%であり、ここで、当該海藻は、Eucheuma spinosum、Eucheuma Cottonii (Kappaphycus alvarezii)、Chondrus crispus及びそれらの組み合わせからなる群から選択される紅藻類の海藻である。G’及びC0の好ましい範囲は、上記の通りである。好ましくは、当該粉末のCIELAB L*値は、少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも74、より好ましくは少なくとも76、さらに好ましくは少なくとも78、最も好ましくは少なくとも80である。
【0024】
好ましくは、海藻粉末の酸不溶性材料は、粉末の質量に対して最大50質量%、より好ましくは最大40質量%、さらに好ましくは最大30質量%、最も好ましくは最大20質量%の量で含まれる。当該AIM含有量は、好ましくは少なくとも1質量%、より好ましくは少なくとも5質量%、最も好ましくは少なくとも10質量%である。海藻粉末が好適な範囲内のAIM含有量を有する場合、それの栄養特性が最適化されることが観察された。
【0025】
好ましくは、海藻粉末に含まれる酸性不溶性灰分(AIA)の量は、粉末の質量に対して最大でも5.0質量%、より好ましくは最大でも3.0質量%、さらに好ましくは最大でも1.0質量%、最も好ましくは最大でも0.80質量%である。当該AIA含有量は、好ましくは少なくとも0.01質量%、より好ましくは少なくとも0.05質量%、最も好ましくは少なくとも0.10質量%である。好ましい範囲内のAIA含有量を有する海藻粉末は、前記製品に異物を導入しないか、または少ない程度に導入し、その結果、前記製品の追加の精製工程が必要な場合があるため、食品、パーソナルケア及び医薬品として用いるのに、より適していることが観察された。
【0026】
好ましくは、海藻粉末は、当該粉末の0.3wt%水性分散液で測定した場合、貯蔵係数(G’)が少なくとも10Pa、臨界ゲル化濃度(C0)が最大でも0.5wt%、カドミウム含有量が最大でも1.1ppmであり、当該海藻は、Porphyra sp.、Palmata、Eucheuma spinosum、Eucheuma denticum、Eucheuma sp.、Eucheuma cottonii(Kappaphycus alvareziiとしても知られる)、Kappaphycus striatus、Kapphycus sp.、Chondrus crispus、Irissmos、Fucus crispus、Chondrus sp.、Sarcothalia crispata、Mazzzaella laminaroides、Mazzzaella sp.、Chondracanthus acicularis、Chondracanthus chamissoi、Chondracanthus sp.、Gigartina pistilla、Gigartina skottsbergii、Gigartina sp.、Gracilaria sp.、Gelidium sp.、Mastocarpus stellatus及びそれらの混合物からなる海藻群から選ばれる紅藻類の海藻である。前記カドミウム含有量は、最大でも0.9ppm、さらに好ましくは最大でも0.7ppm、最も好ましくは最大でも0.5ppmであることが好ましい。好ましくは、当該粉末のG’は、少なくとも30Pa、より好ましくは少なくとも50Pa、より好ましくは少なくとも60Pa、より好ましくは少なくとも70Pa、より好ましくは少なくとも90Pa、さらにより好ましくは少なくとも110Pa、最も好ましくは少なくとも120Paである。好ましくは、当該G’は、最大で500Pa、より好ましくは最大で400Pa、さらにより好ましくは最大で300Pa、最も好ましくは最大で200Paである。前記粉末のC0は、好ましくは0.001~0.100質量%、より好ましくは0.005~0.090質量%、最も好ましくは0.010~0.080質量%である。より好ましくは、C0は、0.001~0.080質量%、より好ましくは0.005~0.060質量%、さらに好ましくは0.010~0.050質量%、最も好ましくは0.010~0.040質量%である。前記粉末は、G’が少なくとも40Pa、及びC0が0.001~0.100質量%、より好ましくは0.005~0.090質量%、最も好ましくは0.010~0.080質量%であることが好ましい。当該粉末は、G’が少なくとも90Pa、及び、C0が0.001~0.100質量%、より好ましくは0.005~0.090質量%、最も好ましくは0.010~0.080質量%であることが好ましい。当該粉末は、G’が少なくとも120Pa、及びC0が0.001~0.100質量%、より好ましくは0.005~0.090質量%、最も好ましくは0.010~0.080質量%であることが好ましい。好ましくは、当該粉末のCIELAB L*値は、少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも74、より好ましくは少なくとも76、さらに好ましくは少なくとも78、最も好ましくは少なくとも80である。好ましくは、海藻は、Eucheuma spinosum、Eucheuma cottonii(Kappaphycus alvareziiとしても知られる)、Chondrus crispus Irish moss及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0027】
本明細書で用いられる用語「水性環境」は、水、純水、水溶液及び水懸濁液を含む液体媒体、並びに乳製品、例えば、再構成された脱脂乳、ミルク、ヨーグルト当を含む水性液体媒体;ローション、クリーム、軟膏等のパーソナルケア製品;及び医薬製品を意味するがこれらに限定されない。本発明の文脈では、好ましい水性環境は、水(精製水又は水道水)、ミルク及び再構成された脱脂である。好ましくは、水性環境は、前記環境の総質量を基準として、少なくとも30質量%の水、より好ましくは少なくとも40質量%の水、さらに好ましくは少なくとも50質量%の水、さらにより好ましくは少なくとも60質量%の水、さらにより好ましくは少なくとも70質量%の水、さらにより好ましくは少なくとも80質量%の水、最も好ましくは少なくとも90質量%の水を含む。100%までの残りの質量%としては、添加剤、保存剤、ビタミン、フィトステロール等のステロール、ポリフェノール等の抗酸化剤、ヒトの栄養にとって有益なミネラル、全野菜抽出物、マイクロフィブリル化セルロース及びセルロースゲル等のセルロース、デキストリン、マルトデキストリン、スクロース等の糖、グルコース、マンニトール、エリスリトール、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等のポリオール、植物又は野菜のタンパク質及び乳製品等のタンパク質又はタンパク質の加水分解物を含み得る。タンパク質;油脂;界面活性剤;レシチン;グルコマンナン及び/又はガラクトマンナン、例えば、グアーガム、キサンタンガム、イナゴマメガム、タラガム、コンジャックガム、アルギン酸塩、寒天、ゲランガム、カラゲナン及びβ1,3グルカン;天然デンプン;変性デンプン;及びそれらの組み合わせがあげられる。
【0028】
好ましくは、水性環境は塩を含有する。水に可溶な塩は、塩化物塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化アンモニウム;硫酸塩、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム;硝酸塩、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム;リン酸塩、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム;有機酸の塩及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない例を利用することができる。好ましくは、塩は塩化ナトリウム又は塩化カリウムである。最も好ましくは、用いられる塩は、食品等級の塩、すなわち、「食品等級の塩に関するコーデックス基準」、CX STAN 150-1985、Rev.1-1997、Amend、1-1999、Amend 2-2001に定義される塩である。
【0029】
良好な結果は、水性環境が少なくとも0.01M、より好ましくは少なくとも0.05M、最も好ましくは少なくとも0.10Mのイオン強度を有する場合に得られることができる。当該イオン強度は、少なくとも10.00M、より好ましくは5.00M、最も好ましくは3.00Mであることが好ましい。当該イオン強度は、好ましくは0.05~1.00M、より好ましくは0.10~0.80M、最も好ましくは0.15~0.60Mである。水性環境のイオン強度は、塩を加えることによって調節することができ、最も好ましい塩は、塩化ナトリウム及び塩化カルシウム並びに水酸化ナトリウムである。得られた分散液を用いて食品を製造する場合、当該塩は食品等級の塩でなければならない。水性環境中の塩の濃度は、所望のイオン強度に達するように常套手段で調節することができる。
【0030】
分散液が所望のpHで確実に行われるため、水性環境のpHは、好ましくは、少なくとも3.5、より好ましくは少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.5、さらに好ましくは少なくとも5.0、さらに好ましくは少なくとも5.5、最も好ましくは少なくとも6.0である。好ましくは、水性環境のpHは、最大9.0、より好ましくは最大8.5、さらに好ましくは最大8.0、最も好ましくは最大7.5である。当該pHは、好ましくは3.5~9.0、より好ましくは4.0~9.0、より好ましくは4.5~8.5、さらに好ましくは5.0~8.5、さらに好ましくは5.5~8.0、最も好ましくは6.0~7.5である。水性環境のpHは、周知の手段、例えば、塩基(又はアルカリ)、好ましくは食品等級の塩基を添加することによって、又はpH緩衝液を用いることによって調節することができる。緩衝液(より正確には、pH緩衝液又は水素イオン緩衝液)は、弱酸とその共役塩基の混合物、又はその逆からなる水溶液である。そのpHは、少量の強酸や強塩基を加えてもほとんど変化しない。緩衝液溶液は、pHをほぼ一定に保つ手段として幅広い用途、例えば、食品、パーソナルケア及び医薬用途で用いられる。好ましくは、食品等級の塩基は、水性環境のpHを調整するために利用され、水酸化アンモニウム又は水性アンモニア、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム及び水酸化カルシウム、生石灰/酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。pHは、校正が必要な場合は実施し、操作説明書の指示に従って使用した後、当該技術分野で公知のいかなるpHメーターで測定することができる。
【0031】
海藻粉末を水性環境中に分散させることは、当該技術分野において公知のいかなる意味によって行うことができる。適当な技術としては、剪断処理及び高剪断処理、圧力均質化、キャビテーション、爆発、圧力上昇及び圧力低下処理、コロイドミリング、ブレンド、押出し、超音波処理、及びそれらの組み合わせがあげられる。有利には、単純な混合装置、例えば、高剪断混合機(例えば、ULTRA TURRAX型)と低剪断混合機、例えば、磁気撹拌機又は機械撹拌機、例えば、R1342の4枚羽根プロペラ撹拌機を備えたIKA(登録商標)Eurostar機械撹拌機、又はEmulsor Screenを備えた(例えば、直径約1mmの丸穴を有する)Silverson L4RTオーバーヘッドバッチ混合機、又は100~1500rpmに設定された4枚羽根プロペラを備えたIKA(RWD 20)を用いる様々な混合機を用いることができる。
【0032】
好ましくは、海藻粉末は、当該環境の全乾燥固形分に基づいて、少なくとも0.1質量%、より好ましくは少なくとも0.3質量%、最も好ましくは少なくとも0.5質量%の量で水性環境中に分散される。好ましくは、当該量は、最大50質量%、より好ましくは最大30質量%、最も好ましくは最大10質量%である。本明細書中で用いられる用語「乾燥固体」は、試料に含まれる固体含有量の質量及び当該試料の総質量の比を意味する。本明細書中では、固体含有量は、真空下(例えば、0.5バール未満)、120℃で4時間、試料5gを乾燥させることにより、当該試料に含まれる水を蒸発させることで得られる試料の含有量と理解される。
【0033】
水性環境における海藻粉末の分散は、少なくとも3.5のpHで行われる。好ましくは、当該pHは、少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.5、さらに好ましくは少なくとも5.0、さらに好ましくは少なくとも5.5、最も好ましくは少なくとも6.0である。好ましくは、水性環境のpHは、最大9.0、より好ましくは最大8.5、さらに好ましくは最大8.0、最も好ましくは最大7.5である。当該pHは、好ましくは3.5~9.0、より好ましくは4.0~9.0、より好ましくは4.5~8.5、さらに好ましくは5.0~8.5、さらに好ましくは5.5~8.0、最も好ましくは6.0~7.5である。分散液が所望のpHで確実に行う最も簡単な方法は、上記のように水性環境のpHを調整することである。したがって、本発明の方法は、以下の工程:
a:pHが3.5以上の海藻粉末及び水性環境を提供すること;
b:本質的にpHを一定に保ちながら、海藻粉末を水性環境に分散させる
を含むのが好ましい。
【0034】
pHは、pH緩衝液を利用することにより、又は分散中にpHをモニターし、例えば上記の塩基で調整することにより、水性環境中の海藻の分散中に本質的に一定に維持することができる。
【0035】
本発明の方法は、水性環境中の海藻の水性分散物を提供する。「水性分散」とは、本明細書では、当該粉末が連続相を形成する水性環境中に分散される組成物を意味する。粉末は、水性環境内(すなわち、バルク内)に分散させることができるが、当該水性環境内に存在するいかなる界面、例えば、水と粉末以外の成分との間の界面、例えば、油中に存在することもできる。分散液の例としては、懸濁液、エマルジョン、溶液などがあげられるが、これらに限定されない。
【0036】
得られた分散液は、懸濁液又はエマルジョンであることが好ましい。エマルジョンを得ることが望ましい場合には、海藻を水性環境に分散させる前、間、又は後に油相を添加し、得られた組成物に剪断処理を施してエマルジョンを作製する。エマルジョンを製造する方法は、当該技術分野において広く知られている。好ましくは、乳化剤がエマルジョンの形成を促進するために利用され、これには、モノ及びジグリセリド;蒸留モノグリセリド;飽和又は不飽和脂肪酸エステルのモノ及びジグリセリド;モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM);修飾レシチン;ポリソルベート20、40、60又は80;ステアリルラクチル酸ナトリウム;プロピレングリコールモノステアレート;スクシニル化モノ及びジグリセリド;アセチル化モノ及びジグリセリド;プロピレングリコールモノ及びジエステル脂肪酸のポリグリセロールエステル;脂肪酸のポリグリセロールエステル;脂肪酸の乳酸エステル;グリセリルモノステレート;プロピレングリコールモノパルミテート;グリセロールラクトパルミテート及びグリセロールラクトステアレート;レシチン;及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。乳化剤は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用でよい。
【0037】
好ましくは、本発明の方法は、エマルジョン、好ましくは水中油型エマルジョンを調製するために工程b)で得られた分散液を使用する乳化工程を含む。水中油型エマルジョンは、好ましくは食用エマルジョンである。食用水中油型エマルジョンは、好ましくは5~80質量%の油を含む。この油は通常食用油である。当業者に理解されるように、当該食用油は、通常、トリグリセリド、通常はこのようなトリグリセリドの混合物を含む。食用油の典型的な例としては、パーム油、菜種油、アマニ油、ヒマワリ油及び動物由来の油を含む植物油があげられる。
【0038】
本発明の方法はまた、包帯又は類似の調味料の形態のエマルジョンを調製するために利用されてよい。好ましくは、食用包帯は、15~72質量%の油を含む。水中油型エマルジョンの形態の組成物は、マヨネーズ又はスプレッドであることが特に好ましい。
【0039】
本発明の方法はまた、タンパク質を含む乳化生成物を調製するために利用されてよい。従って、本発明の方法は、好ましくは乳化工程を含み、ここで、工程b)で得られた分散液は、好ましくは、タンパク質を含む水中油型エマルジョンであって、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~7質量%、さらに好ましくは0.25~4質量%の量のエマルジョンを製造するために用いられる。
【0040】
好ましくは、工程b)の水性環境における海藻の分散は、分散温度10℃から40℃の間、より好ましくは15℃から30℃の間で行われる。
【0041】
好ましくは、水性環境における海藻の分散は、少なくとも5分、より好ましくは少なくとも10分、さらにより好ましくは少なくとも15分、最も好ましくは少なくとも20分の分散時間で行われる。好ましくは、分散時間は、60分以内、より好ましくは55分以内、さらにより好ましくは50分以内、最も好ましくは45分以内である。好ましくは、分散時間は5~55分、より好ましくは10~50分、さらにより好ましくは15~45分、最も好ましくは20~40分である。
【0042】
分散後、工程b)で得られた分散物を、少なくとも20℃の、より好ましくは少なくとも40℃の、さらに好ましくは少なくとも60℃の、最も好ましくは少なくとも80℃の温度に加熱する。当該温度は、好ましくは、最大でも95℃であり、より好ましくは、最大でも93℃、さらに好ましくは、最大でも91℃、最も好ましくは、最大でも90℃である。当該温度は、20℃から95℃の間、より好ましくは40℃から93℃の間、さらに好ましくは60℃から91℃の間、最も好ましくは80℃から90℃の間である。好ましくは、当該分散物は撹拌下で加熱される。好ましくは、当該分散物は、少なくとも5分、より好ましくは少なくとも10分、さらにより好ましくは少なくとも15分、最も好ましくは少なくとも20分の加熱時間、当該温度に維持される。好ましくは、加熱時間は、60分以内、より好ましくは55分以内、さらにより好ましくは50分以内、最も好ましくは45分以内である。好ましくは、加熱時間は5~55分、より好ましくは10~50分、さらに好ましくは15~45分、最も好ましくは20~40分である。
【0043】
本発明は、さらに、水性環境における海藻の分散(以下、本発明の分散)に関し、当該分散に関するのpHは少なくとも3.5である。海藻及び海藻の量、水性環境、及びpHの好ましい実施形態は、上記の通りである。当該分散液は、少なくとも0.01 M、より好ましくは少なくとも0.05 M、最も好ましくは少なくとも0.10Mのイオン強度を有することが好ましい。当該イオン強度は、少なくとも10.00M、より好ましくは5.00M、最も好ましくは3.00Mであることが好ましい。当該イオン強度は、好ましくは0.05~1.00M、より好ましくは0.10~0.80M、最も好ましくは0.15~0.60Mである。
【0044】
好ましくは、本発明の分散物は、pHが少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.5、さらに好ましくは少なくとも5.0、さらに好ましくは少なくとも5.5、最も好ましくは少なくとも6.0、及びイオン強度が少なくとも0.01Mである。好ましくは、本発明の分散物は、pHが少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.5、さらに好ましくは少なくとも5.0、さらに好ましくは少なくとも5.5、最も好ましくは少なくとも6.0、及びイオン強度が少なくとも0.05Mである。好ましくは、本発明の分散物は、pHが少なくとも4.0、より好ましくは少なくとも4.5、さらに好ましくは少なくとも5.0、さらに好ましくは少なくとも5.5、最も好ましくは少なくとも6.0、及びイオン強度が少なくとも0.10Mである。当該pHは、好ましくは3.5~9.0、より好ましくは4.0~9.0、より好ましくは4.5~8.5、さらに好ましくは5.0~8.5、さらに好ましくは5.5~8.0、最も好ましくは6.0~7.5である。当該イオン強度は、少なくとも10.00M、より好ましくは5.00M、最も好ましくは3.00Mであることが好ましい。当該イオン強度は、好ましくは0.05~1.00M、より好ましくは0.10~0.80M、最も好ましくは0.15~0.60Mである。
【0045】
本発明は、さらに、本発明の方法によって得られる分散に関する。
【0046】
本発明はまた、水性環境における海藻の分散物に関し、当該分散物は、pHが少なくとも4.0であり、弾性係数(G’)が少なくとも20Pa、好ましくは少なくとも30Pa、より好ましくは少なくとも40Pa、さらに好ましくは少なくとも50Pa、さらに好ましくは少なくとも60Pa、最も好ましくは少なくとも70Paである。好ましくは、当該分散物の弾性係数(G’)は、少なくとも4.5のpH及び少なくとも20Pa、好ましくは少なくとも30Pa、より好ましくは少なくとも40Pa、さらにより好ましくは少なくとも50Pa、さらにより好ましくは少なくとも60Pa、さらにより好ましくは少なくとも70Pa、最も好ましくは少なくとも80Paである。好ましくは、当該分散物の弾性係数(G’)は、少なくとも6.0のpH及び少なくとも20Pa、好ましくは少なくとも30Pa、さらに好ましくは少なくとも40Pa、さらに好ましくは少なくとも50Pa、さらに好ましくは少なくとも60Pa、さらに好ましくは少なくとも70Pa、最も好ましくは少なくとも80Paである。好ましくは、当該分散物の弾性係数(G’)は、4.0~8.0のpH及び少なくとも20Pa、好ましくは少なくとも30Pa、より好ましくは少なくとも40Pa、さらに好ましくは少なくとも50Pa、さらにより好ましくは少なくとも60Pa、さらに好ましくは少なくとも70Pa、最も好ましくは少なくとも80Paである。好ましくは、当該G’は、最大でも350Pa、より好ましくは最大でも250Pa、最も好ましくは最大でも150Paである。海藻及び海藻量並びに水性環境の好ましい実施態様は上記の通りである。当該分散液のイオン強度は、少なくとも0.01M、より好ましくは少なくとも0.05M、最も好ましくは少なくとも0.10Mであることが好ましい。当該イオン強度は、少なくとも10.00M、より好ましくは5.00M、最も好ましくは3.00Mであることが好ましい。当該イオン強度は、好ましくは0.05~1.00M、より好ましくは0.10~0.80M、最も好ましくは0.15~0.60Mである。
【0047】
本発明はまた、水性環境中の海藻の分散物に関し、当該分散物のpHが少なくとも4.0、tan δが多くても0.050、G’が少なくとも20Paである。好ましくは、当該分散物のG’は、少なくとも4.5のpH、最大でも0.040のtan δ、及び少なくとも20Paである。好ましくは、当該分散物のG’は、少なくとも6.0のpH、最大でも0.035のtan δ、及び少なくとも20Paである。好ましくは、当該G’は、少なくとも30Pa、より好ましくは少なくとも40Pa、さらに好ましくは少なくとも50Pa、さらにより好ましくは少なくとも60Pa、最も好ましくは少なくとも70Paである。当該tan δは、最大でも0.035、最も好ましくは最大でも0.030であることが好ましい。好ましくは、当該G’は、最大でも350Pa、より好ましくは最大でも250Pa、最も好ましくは最大でも150Paである。海藻及び海藻量並びに水性環境の好ましい実施態様は上記の通りである。当該分散液のイオン強度は、少なくとも0.01 M、より好ましくは少なくとも0.05 M、最も好ましくは少なくとも0.10Mであることが好ましい。当該イオン強度は、少なくとも10.00M、より好ましくは5.00M、最も好ましくは3.00Mであることが好ましい。当該イオン強度は、好ましくは0.05~1.00M、より好ましくは0.10~0.80M、最も好ましくは0.15~0.60Mである。
【0048】
本発明はさらに、本発明の分散物及び栄養素を含む食品又は供給製品に関する。いかなる理論にも拘束されることなく、本発明者らは、当該食品又は飼料製品の特性は、本発明の分散の有利な特性によって正の影響を受けると考える。特に、本発明の分散は、食品機能性(栄養、感覚、及び物理化学的)に関連する輸送、拡散、及び溶解現象を最適化することができる。さらに、当該製品は、特定の流れ挙動、テクスチャ及び外観を有するように容易に設計することができる。従って、当該食品機能性を最適化するための本発明の分散能は、食品構造の設計に非常に有益であり得、これは、古典的なニーズ(例えば、テクスチャ及びマウスフィール)と共に、異なる生理学的応答を惹起させる調節された消化を含む、健康及び健康への影響を増強し得る。
【0049】
本発明の分散液は、多種多様な食品組成物の製造における使用に非常に適する。本発明に関する、これを含有する又はこれを用いて製造される食品組成物の例としては、コーヒー、紅茶、粉末緑茶、ココア、小豆スープ、ジュース、大豆ジュース等の嗜好飲料;生乳、加工乳、乳酸飲料等の乳成分含有飲料;カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料及び食物繊維含有飲料等の栄養強化飲料を含む様々な飲料;乳製品。バター、チーズ、ヨーグルト、コーヒーホワイトナー、カスタードクリーム、カスタードプリン等の製品、アイスクリーム、ソフトクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、冷凍ヨーグルト等のアイス製品、マヨネーズ、マーガリン、スプレッド、ショートニング等の加工食品、スープ、ソース、テア(調味料ソース)、ドレッシング等の調味料、練ったマスタードに代表される様々なペースト調味料;ジャムペースト、小麦粉ペーストに代表される各種の充填物、赤豆ジャム、ゼリー、障害者用食材等の各種ゲル・ペースト状の食品、パン、ヌードル、パスタ、ピザパイ、コーンフレーク等の穀物を主成分とする食品、キャンディ、クッキー、ビスケット、ホットケーキ、チョコレート、餅等の日本・米国・欧州のケーキ、煮魚かす、魚かす等の練り製品、ハム・ソーセージ・ハンバーグ等の生きたもの、クリームクロケット、中華料理用ペースト、グレイン・ダンプル等の日常食品、デリケート食品 塩漬けの魚腸等の風味、清酒漬けの野菜、経管栄養等の液体食、サプリメント、ペットフード等があげられる。当該食品は、レトルト食品、冷凍食品、マイクロ波食品などに見られるように、処理時の形態及び加工操作のいかなる違いにもかかわらず、全て本発明に包含される。
【0050】
本発明はまた、本発明の分散液を含んでなる食品組成物にも関し、この組成物は、場合によっては油性成分を含んでよい。当該食品組成物は、好ましくは、組成物の質量に対して、0.001質量%~5質量%の油、より好ましくは0.01質量%~2質量%、さらに好ましくは0.05質量%~1質量%、さらにより好ましくは0.1質量%~0.5質量%の油のフレーバーベース、及び本発明の分散物を含む水相を含む。ここで、「フレーバーベース」とは、製品の識別に関与する食品組成物の基材を意味する。フレーバー基材は、好ましくは、果物又は野菜系製品、又はそれらの混合物である。食品組成物は、好ましくはトマト系製品である。よって、より好ましくは、トマトペースト、トマトピューレー、トマトジュース、トマト濃縮物、又はこれらの組み合わせであり、さらに好ましくはトマトペーストである。
【0051】
本発明は、さらに、海藻粉末及び水性環境中に分散されたタンパク質を含む水相、及び油、好ましくは植物油を含む油相を含む水中油型エマルジョンであって、好ましくはタンパク質の量が0.1~10質量%、より好ましくは0.2~7質量%、さらに好ましくは0.25~4質量%であるエマルジョンに関する。タンパク質は、有利には、乳タンパク質を含むことができ、これは、多くの食品組成物において望ましい成分である。従って、当該タンパク質は、好ましくは少なくとも50質量%の乳タンパク質、より好ましくは少なくとも70質量%、さらに好ましくは少なくとも90質量%、さらにより好ましくは乳タンパク質からなる。好ましくは、エマルジョンは、処理済み飲料であり、より好ましくは、処理済み茶系飲料である。用語「処理済み飲料」は、パッケージされた(茶ベースの)飲料、すなわち、ヒトの飲用に適する実質的に水性の飲料組成物を意味する。好ましくは、飲料は、少なくとも85質量%の飲料水、より好ましくは少なくとも90%の飲料水を含む。RTD(Ready-to-dried)乳茶飲料は、通常、乳タンパク質や乳脂肪等の乳固形物を含み、例えば「クリーミーマウスフィール」等のある種の官能的特性が飲料に付与されている。このようなRTDミルク茶飲料は、好ましくは、飲料の総質量に対して少なくとも0.01質量%の茶固形物を含む。より好ましくは、飲料は、0.04~3質量%の茶固形分を含み、さらに好ましくは、0.06~2質量%、さらに好ましくは、0.08~1質量%、さらにより好ましくは、0.1~0.5質量%を含む。茶固形物は、紅茶固形物、緑茶固形物、又はそれらの組み合わせであってよい。用語「茶固形物」は、植物Camellia sinensisの葉及び/又は茎から抽出可能な乾燥物質を指し、例えばCamellia sinensis var品種を含む。sinensis及び/又はCamellia sinensis var.アサマイカ茶固形物の例としては、ポリフェノール、カフェイン及びアミノ酸があげられる。茶固形物は、紅茶、緑茶及びそれらの組み合わせから選択されることが好ましく、茶固形物は、紅茶固形物であることがより好ましい。
【0052】
本発明はまた、本発明の分散液及び界面活性剤系を含む製品に関する。好ましくは、界面活性剤系は、生成物の質量に対して0.1~50質量%、より好ましくは5~30質量%、さらにより好ましくは10~25質量%の量である。一般に、界面活性剤は、Schwartz&Perry、‘Surface Active Agents’Vol.1,Interscience1949;Schwartz,Perry&Berch,Vol.2、Interscience1958,及び/又は‘McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents‘(Manufacturing Confectioners Company “Tenside Taschenbuch”,H.Stache,2nd Edn.,Carl Hauser Verlag,1981の最近の版、Michael Ash and Irene Ash、“Handbook of Industrial Surfactants”(4th Edn.)等の周知の教科書に記載される。選択される界面活性剤のタイプは、製品が意図される用途のタイプに応じてよい。界面活性剤系は、1つの界面活性剤、又は2つ以上の界面活性剤の混合物を含んでもよい。合成界面活性剤は、好ましくは、界面活性剤系の主要部分を形成する。従って、界面活性剤システムは、好ましくは、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び双性イオン性界面活性剤の1つ以上から選択される1つ以上の界面活性剤を含む。より好ましくは、1つ以上の界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、又は陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の組み合わせである。合成陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の混合物、又は完全陰イオン混合界面活性剤系、又は陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性又は双性イオン性界面活性剤の混合物は、全て、必要とされる洗浄デューティ及び洗浄組成物の必要な投与量に対する配合剤の選択に従って使用することができる。好ましくは、界面活性剤系は、1つ以上の陰イオン性界面活性剤を含む。より好ましくは、界面活性剤系は、ラウリルエーテル硫酸塩及び直鎖アルキルベンゼンスルホネートからなる群から選択される1つ以上の陰イオン性界面活性剤を含む。
【0053】
特定の用途については、界面活性剤系を含む製品は、好ましくは1~8質量%の無機塩、好ましくは硫酸塩及び炭酸塩から選択され、より好ましくはMgSO4及びNa2SO4から選択され、さらにより好ましくはMgSO4から選択される。好ましくは、界面活性剤系を含む製品は、洗浄組成物であり、より好ましくは、手洗い皿洗浄組成物である。生成物は、懸濁粒子及び/又は気泡をさらに含んでよい。
【0054】
本発明はさらに、本発明の分散液を含む化粧品に関する。化粧品は、例えば、ヒト又は動物の体の外観又は臭いを高めるために用いられる製品を本明細書中で理解する。本発明の分散物に加えて、化粧品は、いかなるさらなる化粧品成分、例えば、当該化粧品の処方において一般的に用いられるいかなる成分を含んでよい。化粧品の例には、スキンケアクリームローション、香水、口紅、爪及び足指の爪磨き、フェイシャルメイク、ヘアカラー及びヘアスプレー、保湿剤、ゲル、デオドラント、手指消毒剤、ベビー用品、バスオイル、バブルバス、バターなどが含まれる。本発明の化粧品は、いかなる形態又は形状、例えば、液体又はクリームエマルジョンであってよい。
【0055】
本発明はさらに、本発明の分散物及び薬物又は薬物放出剤を含む医薬品に関する。本明細書では、薬剤は、疾患の診断、治癒、軽減、治療又は予防に使用することを意図した物質であると理解される。薬物は、天然由来、例えば、動物由来、微生物由来又は植物由来;化学由来、すなわち、化学合成由来;又はそれらの組み合わせに由来することができる。
【0056】
本発明の特定の実施形態のいかなる特徴は、本発明のいかなる他の実施形態において利用されてよい。用語「含む(comprising)」は、「あげられる(including)」を意味するが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「構成する(composed of)」を意味するわけでなく、換言すれば、掲載された工程又は選択肢は網羅的であるわけではない。以下の説明に示された実施例は、本発明を明確にすることを意図したものであり、本発明を当該実施例自体に限定することを意図したものではないことに留意されたい。同様に、全ての比率は、特に断らない限り、質量/質量パーセントである。実施例及び比較実験では、又は他の方法で明示的に示されている場合を除き、材料の量又は反応の条件、材料の物理的特性及び/又は使用を示すこの説明の全ての数字は、用語「約」で修飾されたものとして理解されるべきである。特に断らない限り、「x~y(xからyまで)」の形式で表現された数値範囲は、x及びyを含むものと理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が「x~y」の形式で記載される場合、異なるエンドポイントを結合する全ての範囲も考慮されることが理解される。本発明の目的のために、周囲(又は室温)温度は約20℃の温度として定義される。
[測定方法]
イオン強度(I)及びpH調整:支持分散液は、逆浸透(RO)低導電率水(milli‐Q Ultrapure Millipore 18.2MΩ.cm)で調製したイオン強度0.02Mの標準水道水(1.00g/L NaCl及び0.155g/L CaCl
2 2H
20)であった。pHを1M NaOHで調整し、必要質量の塩、NaCl又はCaCl
2 2H
20を添加してイオン強度を調整した。溶液のイオン強度I(モル濃度M)を式に従って決定した:
I=0.5([A]Z
A
2+[B]Z
B 2+ [C]Z
C
2+ ...)
(式中、[A]、[B]、[C]はイオンA、B及びCのモル濃度であり、Z
A、Z
B、Z
Cはそれぞれの電荷である。Skoog,West&Holler(1996).Fundamentals of Analytical Chemistry,7
thedition(Harcourt Brace&Company,Orlando)参照。実際には、[1:1]電解質(NaCl、NaOH)についてはI=c(単位M)、[2:1]電解質(CaCl
2)についてはI=3cである。
AIMは、0.5gの試料(W
試料)を250mLのビーカー中の150mlの浸透水中に分散させて測定した。濃硫酸1.5mLを加えた。ビーカーを、蒸発を防止するためにプラスチック箔で覆い、ベインマリー上沸騰温度で2時間加熱した。この分散液を4000rpm(3250g相当)で10分間遠心分離した。
AP 25フィルターと結晶皿の総質量(W
filter+ディッシュ)を測定した。酸性分散物を濾過し、浸透水で50℃、そのpHが中性のままになるまですすいだ(pH紙で確認)-約500mLの水を用いた。
試料を含むフィルターを室温で一晩乾燥させ、さらに60℃のオーブン中で1日間乾燥させ、試料、フィルター及び皿の総質量を測定した(W
final)。
AIM(%)=[(W
final‐W
filter+ディッシュ)/W
試料]x100
AIAを以下のように測定した:試料2.000グラム(W
試料)をシリカ又は白金るつぼ上に置き、500℃のホットプレート上で約1時間燃焼させ、続いて550℃で16時間炉中に置いた。得られた灰を、濃HCl10ml及び脱塩水20mlを含む溶液に添加した。灰を含む溶液を約30分間80℃に加熱し、その後Whatman N°40(無灰フィルター)を用いて濾過した。灰を含むフィルターを、試料中にClが検出されなくなるまで水ですすいだ。試料のCl
-の存在をAgNO
3でチェックした(AgClの沈殿はClの存在を意味する)。
第二のシリカ又は白金るつぼを550℃のオーブンに10分間入れ、次いで、デシケーター中で室温に冷却した。その後、るつぼを無水環境で質量(W
crucible)した。灰を含むフィルターをるつぼ上に置き、室温で開始し、500℃以下のホットプレート上で少なくとも1時間、順次加熱した。次にるつぼを炉に移し、800℃で16時間加熱した。デシケーター内で、室温で冷却した後、るつぼを無水環境で再度質量(W
crucible+ash)した。
AIA(%)=[(W
crucible+ash‐W
crucible)/W
試料]x100
D50、D90、D10及びD[4,3]:粒子径分布の測定方法はUnited Stated Pharmacopeia(USP40)の方法<429>に準拠し、ISO規格13320-1に準拠する。まず、振動ホッパー内に試料粉末を注入し、Mastersizer 3000(Malvern)を規則正しい流量で供給する。空気分散装置を用いて、粉末粒子を、レーザービームを通して1~15%の間の光の不明瞭さで吹き付け、検出器の十分な信号対雑音比に到達させ、多重散乱を回避した。粒子によって異なる角度で散乱された光は、多素子検出器によって測定される。赤色光と青色光を使用し、Mie理論と組み合わせることで、体積サイズ分布を計算できる。ここでは、粒子を球体とみなし、等価球のサイズを決定した。得られた粒度分布から、10%、50%及び90%の累積体積分率をそれぞれD10、D50及びD90と決定した。中央径D50は粉体の粒子径の目安になり、D10とD90はより細かい粒子径と粗い粒子径を定量化することができる。
CIELAB L*、a*、b*は、国際照明委員会(国際照明委員会)が定める最も完全な色空間を表す。これは、人間の眼に見えるすべての色を記述し、参照として用いられる装置に依存しない独立モデルとして作成された。試料のL*及びb*値は、比色計のガラスセル(約半分を満たした)に試料を置くことによって得られる。使用した比色計は、ミノルタCR400比色計であった。
レオロジー測定
レオロジー測定は、Couette装置を備えたMCR 301制御ストレスレオメータ(Anton Paar Physica)を用いて行った。また、レオメータにはペルチェ温度調節器を装備した。測定前に試料をパラフィン油の薄層で覆い、測定中の蒸発を避けた。動的振動又は粘弾性測定を選択して、各検討した組成物のゲル化動力学及び組織化特性を評価した。これらの測定には、80℃で予熱したMCR 301プレート上に試料を注ぎ、80℃から10℃までの温度掃引試験(2℃/分)を行い、その後0.4Hzの周波数で15分間のタイム掃引実験を行い、システムが平衡状態に達することを確認した(構造的再配列)。その後、100~0.01Hzの周波数掃引を線形粘弾性領域(LVE)の一定せん断歪で行い、0.3%固定した。LVEドメインで粘弾性測定を確実に行うために、0.4Hzで0.01%から100%までの歪掃引実験を行った。これらのレオロジー実験の全てにおいて、各測定は、新しい試料調製物から少なくとも2回実施した。
0.1Hz及び10℃での機械的スペクトルから収集した貯蔵弾性率(G’)値を、調査した全ての試料の比較に用いた。
C
0の測定:レオロジー測定用試料の調製:
溶解した脱脂乳を水性媒体として用いた。粉末状の脱脂乳はIsigny-Ste-Merre (Isigny、フランス)から提供された。脱脂粉乳は、10% w/wの脱脂粉乳を超純水(抵抗率18.2MΩ・cm)に溶解し、室温で4時間攪拌しながら再構成した。特に、1000gの脱脂粉乳を調製するために、108.66gの脱脂粉乳(DS=92.03質量%)を891.34gの超純水に溶解した。様々な海藻ベースの粉末の分散物を、様々な比率(0.1~1 % w/w.乾燥乾物ベース)で、再構成した脱脂乳中に調製した。海藻ベースの粉末を適当な最終比率で秤量した。5wt%ショ糖(再水和を促進するため)と完全に混合し、磁気撹拌(500rpm)下で再構成した脱脂乳にゆっくりと分散させた。撹拌を室温で30分間維持した。その後、500rpmで攪拌しながら、試料を80℃で約30分間加熱し、この温度でさらに3分間保持した。
貯蔵弾性率G’の測定:
レオロジー測定は、上面と下面の両方がクロスハッチされた50mmプレートとプレートの幾何形状を備えたMCR 302制御ストレスレオメータ(Anton Paar Physica)を用いて行った。また、レオメータにはペルチェ温度調節器が装備される。ギャップを1mmに固定した。測定前に試料をパラフィン油の薄層で覆い、測定中の蒸発を避けた。動的振動又は粘弾性測定を、各定式化システムのゲル化動力学及びテクスチャライジング特性を評価するために選択した。これらの測定のために、80℃で予熱したMCR 302プレート上に試料を注ぎ、80℃から10℃までの温度掃引試験(2℃/分)を行い、その後、再組織化(構造再編成)のために10℃でこの時間経過後にシステムが平衡状態に達することを確実にするために、0.4Hzの周波数で15分間のタイム掃引実験を行った。続いて、試料を、0.2%に固定した線形粘弾性領域(LVE)の一定せん断ひずみで100~0.01Hzの周波数掃引にかけた。LVEドメインで粘弾性測定を確実に行うために、0.4Hzで0.01%から100%までの歪掃引実験を行った。
これらすべてのレオロジー実験では、各測定は少なくとも2回実施した。
データ処理:G’
本明細書で考慮したG’値を、10℃で0.4Hzでの機械的スペクトル(周波数掃引試験)から収集した。実際、メカニカルスペクトルは得られたゲルの実際の構造挙動を表すので、このG’値を最も適当なパラメータとして用いるのが適切であると思われた。
様々な濃度で調査した全試料について得られたG’値に基づいて、べき乗則関係(式1参照)を用いてデータを記述した。c*は、それ以下ではゲル状の挙動がない最低濃度、又は暗黙のうちに限界ゲル化濃度を示すことに注意。Cは海藻ベースの粉末濃度(乾物ベース)、nはフィッティングモデルの指数値、kとk’はフィッティングモデルの定数係数
G’=k’*(C-C
0)
n (式1)
試料を比較するために、以下の式2~4を用いた:
G’=p
* k
* C
n (式2)
G’
試料A=k
* C
n (式3)
G’
試料B=p
* k
* C
n (式4)
(式中、pは並進シフト因子である。p=1の場合、試料Aは試料Bと同様のゲル強度を示し、p>1の場合、試料Bは試料Aよりも高いG’を示し、p<1の場合、試料Bは試料Aよりも低いG’を示す)
データ処理: C
0
C
0を決定するために、以下の段階を順守した:
(i) 上記機械的スペクトルから収集した貯蔵弾性率G’値を、対数目盛で、海藻に基づく粉末濃度C(%、DS)の関数としてプロットした(
図1参照)。
図1では、破線と実線は、それぞれべき乗則式3と1の実験データ(生データ)と推定データへのフィッティングを表している。
図1で用いられるデータは、それぞれ実施例1及び比較例1に属する。
(ii) 文献に記載されたアプローチ(例えば、Agoda-Tandjawa,G.,Dieude-Fauvel,E.,Girault,R.&Baudez,J.-C.(2013).Chemical Engineering Journal,228,799-805)に従い、方程式G’=kC
nを、線形回帰を用いてG’=k’(C-C
0)
n形式に数学的に変換した。この2番目の式では、k’はスケーリング係数を表し、C
0はゲル等の挙動が得られない濃度を表す。G’=kC
n=k’(C-C
0)
nの条件に従い、検討したすべての海藻ベースの粉末について線形回帰を行い、両方の指数(n)値が同一で、C>C
0であったことに注目されたい。
上記のフィッティングモデルを用いて決定したC
0の検証は、ゲル様挙動を証明するために、他で以前に記述したような類似の条件下での全ての海藻ベースの粉末のレオロジー挙動を評価することによって検証した。
【0057】
本発明は、以下の実施例及び比較実験により説明されるが、それに限定されるものではない。
【実施例1】
【0058】
実施例1:Kappaphycus alvarezii粉末の製造
【0059】
新鮮な収穫(収穫から6時間未満)Kappaphycus alvarezii(Eucheuma Cottonii)海藻を海水ですすぎ、約10質量%のDSを有するバイオマスを作製するために用いた。採取場所の海水を用いた。バイオマスは、約10Kg/m
2の面積密度を有するバイオマス床を形成するために木製テーブル上に置かれた。テーブルを晴れた場所に置き、透明な防水シートで覆い、テーブルを完全に囲い、空気の流れを防止した。太陽の作用により、ターポリンの下の温度は約60℃に達し、湿度は90%を超えた。海藻は、天候に応じて、24時間から72時間の間、この環境中で自然に滲出させた。滲出後、ターポリンを除去し、バイオマスを太陽の下でさらに24時間外気中に保ち、約78質量%のDSに達するまで乾燥させた。続いて、乾燥したバイオマスを、海藻全体を覆うのに十分な量の水道水に入れ、海藻を撹拌することなく室温で1時間再水和させ、次いで、再水和した海藻を、フィルターを用いて回収し、約40質量%のDSを有するバイオマスを得た。再水和した海藻を含むバイオマスを塩水溶液(100g/LのKCl)中、90℃で30分間加熱した。調製に用いたブライン溶液の質量は海藻の約6倍であった。調製後、ブライン溶液を排出し、回収した海藻を、水道水の一定量に入れて室温で10分間、2回洗浄した。海藻を完全に覆うのに十分な量の水を用いた。次いで、フィルターを用いて海藻を回収し、ベルト乾燥機を用いて60℃で30分間乾燥させ、約94.9%のDSの最終生成物を得た。乾燥生成物を、Retschミル(最終ふるい、0.25mm)を用いて粉砕して粉末にした。得られた海藻粉末の特性を表1に示す。
表1
【表1】
【実施例2】
【0060】
実施例2:Chondrus crispus粉末の製造
【0061】
野生株の新鮮なChondrus crispusが収穫された。実施例1と同様に処理し、ターポリン下で3~72時間維持した。一部の例では、浸出中に海藻をひっくり返して、均一に日光を曝した。次いで、海藻を、天候に応じて1~3.5日の範囲の期間にわたって、約65質量%(約35質量%の水分)のDSに達するまで天日乾燥した。さらに、実施例1と同様に海藻を加工した。
【0062】
その後、乾燥したバイオマスを、海藻を完全に覆うのに十分な量の水道水に入れ、海藻を撹拌せずに室温で1時間再水和させた。次いで、再水和した海藻を、フィルターを用いて回収し、DSが約40質量%であるバイオマスを得た。
【0063】
再水和した海藻を含むバイオマスを塩水溶液(350g/LのKCl)中、90℃で30分間2回加熱した。処理に用いるブライン溶液の質量は、海藻の約16倍であった。処理後、ブライン溶液を排出し、回収した海藻を、水道水の一定量に入れ、室温で10分間洗浄した。海藻を完全に覆うのに十分な量の水を用いた。
【0064】
次いで、フィルターを用いて海藻を回収し、ベルト乾燥機を用いて60℃で30分間乾燥させ、DSが約94.3%である最終生成物を得た。乾燥生成物をRetschミル(最終ふるい、0.25mm)で粉砕して粉末にし、0.25mmでふるいにかけた。得られた海藻粉末の特性を表2に示す:
表2
【表2】
【実施例3】
【0065】
実施例3:Eucheuma spinosum粉末の製造
【0066】
海藻がEucheuma spinosumであり、塩水溶液が250g/LのKClを含み、処理したバイオマスを水中で3回洗浄した以外は実施例1と同様に行った。得られた海藻粉末の性状を表3に示す:
表3
【表3】
【実施例4】
【0067】
例4:海藻粉末の水性環境中での分散
【0068】
室温で撹拌しながら、6.85gのNaCl及び0.15gのCaCl2 2H20を1Lの逆浸透水(17.1mMのNaCl及び1mMのCaCl2)中に分散させて、標準水道水を調製した。
【0069】
実施例1~3の海藻粉末の分散液を、標準水道水中のpH 3.5~pH7.0の0.5% DSで、以下の方法に従って調製した:
(i)海藻が基材である粉末を適当な最終濃度で質量し、磁気撹拌下、500rpmで30分間、標準水道水に完全に分散させた;
(ii)分散させながら、分散液のpHを、NaOH及びHCl溶液(0.001~0.1N)を用いて必要な値(例えば4.0)に調整した;
(iii)その後、500rpmで攪拌しながら、試料を85℃で約30分間加熱し、さらに3分間この温度で保持した。
【0070】
分散物のレオロジー測定は、上面と下面の両方がクロスハッチングされた40mmプレートとプレートの幾何学を装備したDHR3制御ストレスレオメータ(Discovery Hybrid Rheometer 3,TA.Instruments)を用いて行った。また、レオメータにはペルチェ温度調節器を装備した。ギャップを1mmに固定した。測定前に試料をパラフィン油の薄層で覆い、測定中の蒸発を避けた。
【0071】
各分散物のゲル化速度と組織化特性を評価するために、動的振動又は粘弾性測定を選択した。これらの測定のために、試料を85℃で予熱したDHR3プレート上に注ぎ、85℃で保持時間(粘弾性域で0.2%の一定せん断ひずみ下で2℃/分の速度論)85℃から10℃までの二重加熱冷却処理を以下のように行った:
1)85~10℃、0.4Hzでの温度掃引試験
2)0.4Hz、10℃、15分間のタイムスイープ実験
3)100Hz~0.01Hzの10℃での周波数掃引試験
4)10~85℃、0.4Hzでの温度掃引試験
5)0.4Hzで0分から30分までの85℃でのタイムスイープ実験
6)85~10℃、0.4Hzでの温度掃引試験
7)0.4Hz、10℃、15分間のタイムスイープ実験
8)100Hz~0.01Hzの10℃での周波数掃引試験
【0072】
結果
本発明者らにより、水中の海藻粉末のすべての分散物が、G’>10G”の水性環境において真のゲル様挙動を示すことが観察された(表4)。ゲル化温度は、pHが低く、85℃で保持時間が長いほど、ゲル化遅延が大きくなる(世界的に10℃以上)ことを示す。さらに、本発明により分散された海藻粉末の機能は、広範囲のpH(例えば、4~7)で比較的安定していた。
表4
【表4】
【国際調査報告】