(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】血清および組織ライセートからのRANタンパク質に対する抗体の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20221110BHJP
【FI】
G01N33/53 D ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518238
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020051671
(87)【国際公開番号】W WO2021055880
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501453307
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ラヌム,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ラボワソニア,ローレン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】グエン,リアン
(57)【要約】
本開示の側面は、対象(例として、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および/または前頭側頭型認知症(FTD)に対する治療用抗RANタンパク質抗体あるいはワクチンを投与されている対象)における抗反復関連非ATG(RAN)タンパク質抗体を検出するための方法および組成物(例として、キット)に関する。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法は、1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドを使用する、電気化学発光をベースとした免疫アッセイによって、対象から得られた生体試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出することを含む。いくつかの態様において、本開示は、1以上のジアミノ酸反復ペプチド、ならびに電気化学発光をベースとした免疫アッセイのプレートおよび/または試薬を含むキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用して1以上の抗RANタンパク質抗体を検出するための方法であって、ここで方法が、以下:
標的ジアミノ酸ペプチド反復を、対象から得られた生体試料と接触させることで、抗RAN抗体-標的ペプチド複合体を形成すること;
抗RAN抗体-標的ペプチド複合体を電気化学発光の検出剤と接触させることで、標識された複合体を形成すること;および
試料中に存在する1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを、標識された複合体の電気化学発光を検出することによって測定すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
生体試料が、血液試料、血清試料、または組織試料であり、
任意に、組織試料が、CNS組織または脳脊髄液(CSF)試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象が、哺乳動物対象であり、
任意に、対象が、ヒトまたはマウスである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
対象が、治療用抗RANタンパク質抗体を投与されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対象が、RANタンパク質関連の疾患または障害に対するワクチンを投与されている、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
RANタンパク質関連の疾患または障害が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)、フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)、ハンチントン病類縁症候群2型(HDL2)、脆弱X症候群(FXS)、脆弱XE症候群(FRAXE)であるか、または7p11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA7Aもしくは2q11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA2Aである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ワクチンが、対象において1以上のジペプチド反復タンパク質に対する免疫応答を惹起する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
1以上のジペプチド反復タンパク質が、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、もしくはポリ(GK)の反復タンパク質、またはそれらいずれかの組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
対象が、C9-BACマウスである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
電気化学発光の検出剤が、ルテニウム(II)トリス-ビピリジン-(4-メチルスルホン)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気化学発光の検出剤が、SULFO-TAG(商標)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電気化学発光が、Meso Scale Detection(MSD)アッセイによって測定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第2の治療剤を対象へ投与するステップをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第2の生体試料が、第2の治療剤の投与後に対象から得られたものであり、および
1以上の抗RANタンパク質抗体が、電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用し第2の生体試料において検出される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
対象における抗RANタンパク質抗体レベルの薬物動態変化を測定するための方法であって、方法が、以下:
(i)電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用し、対象から得られた第1の生体試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出すること;
(ii)電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用し、対象から得られた第2の生体試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出すること、ここで第2の生体試料が、対象への治療剤の投与後に得られたものである;および
(iii)第1の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量が、第2の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量と異なる場合、対象への治療剤の投与が、対象における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルの変化をもたらすと決定すること
を含む、前記方法。
【請求項16】
第1の生体試料および/または第2の生体試料が、血液試料、血清試料、または組織試料であり、
任意に、組織試料が、CNS組織または脳脊髄液(CSF)試料である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1以上の抗RANタンパク質抗体が、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S)、抗ポリ(C)、抗ポリ(Q)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、もしくは抗ポリ(GK)抗体、またはそれらいずれかの組み合わせである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
(i)1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチド;ならびに
(ii)免疫アッセイのプレートおよび/または試薬
を含む、キット。
【請求項19】
1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドが、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、およびポリ(GK)ペプチドから選択される、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
免疫アッセイのプレートおよび/または試薬が、MSDアッセイプレートおよび/またはMSDアッセイ試薬を含む、請求項18または19に記載のキット。
【請求項21】
標的ジアミノ酸ペプチド反復が、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、またはポリ(GK)のペプチド反復のいずれか1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
標的ジアミノ酸ペプチド反復が、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも10000、または10000より多くのアミノ酸残基を含む、請求項1または21に記載の方法。
【請求項23】
生体試料が、1以上の抗RANタンパク質抗体を検出することに先立ち、希釈される、請求項1、2および21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
生体試料が、希釈剤で希釈され、任意に希釈剤が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBST)である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
生体試料が、生体試料:希釈剤の比率が、1:10、1:50、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:450、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1250、1:1500、1:1750、または1:2000となるように希釈される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
1以上のジペプチド反復タンパク質が、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも10000、または10000より多くのアミノ酸残基を含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項27】
第2の治療剤が、小分子、核酸、干渉RNA、タンパク質、ペプチド、抗体、ワクチン、遺伝子治療用ベクター、または他の免疫原である、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
第2の生体試料が、第1の生体試料と比べて、上昇したレベルの抗RANタンパク質抗体を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
第2の生体試料が、第1の生体試料と比べて、減少したレベルの抗RANタンパク質抗体を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
第1の生体試料が、対照試料である、請求項15に記載の方法。
【請求項31】
対照試料が、健常対象から得られたものである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
対照試料が、同じ対象からより早い時点にて得られた生体試料である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
抗RAN抗体-標的ペプチド複合体が、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、または抗ポリ(GK)の抗体のいずれか1つを含む抗体を含み、および
標的ペプチドが、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、またはポリ(GK)のペプチドのいずれか1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
試料中に存在する1以上の抗RANタンパク質抗体が、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、または抗ポリ(GK)の抗体の1以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
治療用抗RANタンパク質抗体が、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、または抗ポリ(GK)の抗体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項36】
免疫応答が、対象における内生抗体の産生を含み、
任意に、内生抗体が、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、または抗ポリ(GK)の抗体の1以上を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項37】
ワクチンが、1以上のペプチド抗原を含む、請求項5または請求項27に記載の方法。
【請求項38】
1以上のペプチド抗原が、1以上の免疫原を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
1以上のペプチド抗原が、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の免疫原を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
1以上のペプチド抗原が、1以上のRANタンパク質を標的にし、
任意に、1以上のRANタンパク質が、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)の1以上である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
1以上のペプチド抗原が、1以上のジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原を含み、
任意に、1以上のジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原が、(CP)
x(配列番号3)、(A)
x(配列番号9)、(G)
x(配列番号10)、(S)
x(配列番号11)、(C)
x(配列番号12)、(Q)x(配列番号13)、(GD)
x(配列番号14)、(GE)
x(配列番号15)、(GQ)
x(配列番号16)、(GT)
x(配列番号17)、(L)
x(配列番号18)、(LP)
x(配列番号19)、(LPAC)
x(配列番号20)、(LS)
x(配列番号21)、(P)
x(配列番号22)、(QAGR)
x(配列番号23)、(RE)
x(配列番号24)、(SP)
x(配列番号25)、(VP)
x(配列番号26)、(FP)
x(配列番号27)、および/または(GK)
x(配列番号28)のジアミノ酸反復の1以上を含み、ここでxが、抗原の反復単位数を表す、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
xが、5、10、15、20、25、30、35または40である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
1以上のペプチド抗原が、(GA
10(配列番号4)、GA
15(配列番号4)、GR
25(配列番号7)、GP
10(配列番号5)、PR
10(配列番号6)の1以上、またはそれらの組み合わせを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
1以上のペプチド抗原が、[(GA)
15(配列番号4)+(GR)
25(配列番号7)+(PR)
10(配列番号6)]を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
1以上のペプチド抗原が、[(GA)
15(配列番号4)+(GR)
25(配列番号7)+(PR)
10(配列番号6)+(GP)
10(配列番号5)]を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
1以上のペプチド抗原が、B細胞エピトープを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
1以上の免疫原が、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルーキャリア免疫原性タンパク質(CCH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)、ジフテリア毒素、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HB-sAg)、破傷風毒素(TT)、百日咳毒素(PT)、またはT細胞ヘルパーエピトープの1以上を含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援研究
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金第R01 NS098819の下、政府の支援でなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、「DETECTION OF ANTIBODIES AGAINST RAN PROTEINS FROM SERUM AND TISSUE LYSATES」との表題で2019年9月20日に出願された米国仮出願第(Serial Number)62/903,689号、および「VACCINE THERAPY FOR RAN PROTEIN DISEASES」との表題で2019年9月23日に出願された第62/904,612号の出願日の35 U.S.C.119(e)の下での利益を主張するものであって、これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景
マイクロサテライト反復伸長は、40を超える神経変性の疾患および障害を引き起こすことが知られている。より多くの(growing number of)これら疾患および障害において、伸長突然変異は、複数のリーディングフレームを生じかつ標準的なAUG開始コドンを要さない新規タイプのタンパク質翻訳を経ることが示されている。このタイプの翻訳は反復関連非ATG(RAN)翻訳と呼ばれ、産生されるタンパク質はRANタンパク質と呼ばれる。RANタンパク質は毒性があり、かつこれらに限定されないが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病(AD)、および脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)を包含する、より多くの疾患および障害に寄与するとの証拠が増えつつある。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示の側面は、試料において抗RANタンパク質抗体を検出するための方法およびキットに関する。本明細書に記載の方法によって検出される抗体は、外から投与された(exogenously-administered)抗体(例として、治療として(therapeutically)対象へ投与された抗体)、または内生(endogenous)抗体(例として、対象の細胞によって産生される抗体)であり得る。いくつかの態様において、内生抗体は、自己抗体である。いくつかの態様において、内生抗体は、抗体をコードする発現ベクターで感染させられた対象の細胞によって産生される。いくつかの態様において、内生抗体は、ワクチンが投与されたことに応えて対象の細胞によって産生される。いくつかの態様において、内生抗体は、1以上のタイプのRANタンパク質を発現する伸長突然変異を有する対象に応えて、対象の細胞によって産生される(例として、C9Orf72 ALS/FTDを有する対象は、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、またはポリ(PR)のタンパク質に対する自己抗体などの抗体を産生することがある)。
【0005】
いくつかの態様において、本明細書に記載のRANタンパク質抗体を検出する方法は、反復関連非ATG(RAN)タンパク質(例えば、ポリセリン[ポリSer]、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)]、およびポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)]等々を包含する)に関連する神経学的なある疾患および障害の診断ならびに処置に有用である。ある反復伸長の突然変異(例として、CAGG、CCTG、GGGGCC、GGCCCC、GGGGCA、CAG、CTG等々)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS);前頭側頭型認知症(FTD);筋強直症ジストロフィー1型(DM1);筋強直症ジストロフィー2型(DM2);脊髄小脳失調症(SCA)1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);およびアルツハイマー病(AD)などの、数多の異なる神経学的な疾患および障害に関連する。
【0006】
いくつかの態様において、ある疾患(例として、ALS、FTD、FXTAS、HD、AD、SCA8、DM1、およびDM2)に関連する伸長突然変異は、反復関連非ATG(RAN)翻訳を経ることが観察されている。このタイプの翻訳は、RANタンパク質と呼ばれるたんぱく質を産生する。RANタンパク質は毒性があり、かつより多くの疾患および障害に寄与するとの証拠が増えつつある。したがって、試料において抗RANタンパク質抗体(例として、潜在的に防御する抗RANタンパク質抗体)を検出するための、局部化させるための、および同定するための方法ならびにキットを治療的使用と診断的使用との両方について開発することが重要である。
【0007】
いくつかの態様において、免疫アッセイ(例として、電気化学発光をベースとした免疫アッセイ)は、対象から得られた生体試料(例として、血液、血清、または脳脊髄液(CSF)の試料)において1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを検出または測定するために使用される。
【0008】
本開示は、対象の細胞または組織から1以上の抗RANタンパク質抗体のレベル(また抗RAN抗体とも称される)を測定することが可能である、これまでに使用された検出方法と比較して感度がより高い免疫アッセイに、一部基づく。いくつかの態様において、対象は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するか、またはこれを有すると疑われる。いくつかの態様において、対象は、RANタンパク質関連の疾患または障害の処置のための治療剤が投与されている。いくつかの側面において、本開示によって記載される方法は、RANタンパク質発現に関連する疾患もしくは障害(ALSもしくはFTDなど)の処置のための1以上の治療剤が投与されたかまたはこれが投与されている対象において、1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを監視する(例として、縦断的に測定する)のに有用である。
【0009】
いくつかの側面において、本開示は、電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用して、1以上の抗RANタンパク質抗体を検出するための方法に関するが、ここで方法は、(1)標的ジアミノ酸ペプチド反復を、対象から得られた生体試料と接触させることで、抗RAN抗体-標的ペプチド複合体を形成すること;(2)抗RAN抗体-標的ペプチド複合体を、電気化学発光の検出剤と接触させることで、標識された複合体を形成すること;および(3)標識された複合体の電気化学発光を検出することによって、試料中に存在する1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを測定すること、を含む。
【0010】
いくつかの態様において、生体試料は、血液試料、血清試料、または組織試料である。いくつかの態様において、組織試料は、CNS組織試料または脳脊髄液(CSF)試料である。いくつかの態様において、生体試料は、希釈されている。いくつかの態様において、生体試料は、1以上の抗RANタンパク質抗体の検出に先立ち、希釈される。いくつかの態様において、生体試料は、希釈剤で希釈されている。いくつかの態様において、希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBST)である。いくつかの態様において、生体試料は、生体試料:希釈剤の比率が、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:450、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1250、1:1500、1:1750、もしくは1:2000、またはここに含有されるいずれの比率となるように希釈されている。いくつかの態様において、生体試料は、希釈された試料中に存在する生体試料のパーセンテージが、0.0001、0.0002、0.0003、0.0004、0.0005、0.0006、0.0007、0.0008、0.0009、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.107、0.018、0.019、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは99%超、またはここに含有されるいずれの値となるように希釈されている。
【0011】
いくつかの態様において、対象は、哺乳動物対象である。いくつかの態様において、対象は、ヒトまたはマウスである。いくつかの態様において、対象は、C9-BACマウスである。
【0012】
いくつかの態様において、抗RAN抗体-標的ペプチド複合体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、または抗ポリ(GK)の抗体のいずれか1つを含む抗体を含み、標的ペプチドは、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、またはポリ(GK)のペプチドのいずれか1つを含む。いくつかの態様において、試料中に存在する1以上の抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、または抗ポリ(GK)の抗体の1以上を含む。
【0013】
いくつかの態様において、対象は、治療用抗RAN抗体を投与されている。いくつかの態様において、治療用抗RAN抗体は、抗ポリ(システイン-プロリン)[抗ポリ(CP)];抗ポリ(グリシン-プロリン)[抗ポリ(GP)];抗ポリ(グリシン-アルギニン)[抗ポリ(GR)];抗ポリ(グリシン)[抗ポリ(G)];抗ポリ(アラニン)[抗ポリ(A)];抗ポリ(セリン)[抗ポリ(S)];抗ポリ(システイン)[抗ポリ(C)];抗ポリ(グルタミン)[抗ポリ(Q)];抗ポリ(グリシン-アラニン)[抗ポリ(GA)];抗ポリ(グリシン-アスパルタート)[抗ポリ(GD)];抗ポリ(グリシン-グルタマート)[抗ポリ(GE)];抗ポリ(グリシン-グルタミン)[抗ポリ(GQ)];抗ポリ(グリシン-トレオニン)[抗ポリ(GT)];抗ポリ(ロイシン)[抗ポリLeu];抗ポリ(ロイシン-プロリン)[抗ポリ(LP)];抗ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン(配列番号1))[抗ポリ(LPAC(配列番号1))];抗ポリ(ロイシン-セリン)[抗ポリ(LS)];抗ポリ(プロリン)[抗ポリ(P)];抗ポリ(プロリン-アラニン)[抗ポリ(PA)];抗ポリ(プロリン-アルギニン)[抗ポリ(PR)];抗ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン(配列番号2))[抗ポリ(QAGR(配列番号2))];抗ポリ(アルギニン-グルタマート)[抗ポリ(RE)];抗ポリ(セリン-プロリン)[抗ポリ(SP)];抗ポリ(バリン-プロリン)[抗ポリ(VP)];抗ポリ(フェニルアラニン-プロリン)[抗ポリ(FP)];もしくは抗ポリ(グリシン-リシン)[抗ポリ(GK)]抗体、またはそれらいずれかの組み合わせである。
【0014】
いくつかの態様において、対象は、RANタンパク質関連の疾患または障害に対するワクチンが投与されている(例として、試料を得るのに先立ち、ワクチンが投与されている)。いくつかの態様において、ワクチンは、1以上のジペプチド反復タンパク質に対する免疫応答を惹起する。いくつかの態様において、免疫応答は、抗RANタンパク質抗体の体内産生(endogenous production)を含む。いくつかの態様において、内生抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、もしくは抗ポリ(GK)の抗体の1以上、またはそれらいずれかの組み合わせを含む。
【0015】
いくつかの態様において、ワクチンは、1以上のペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1以上の免疫原を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の免疫原を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1以上のRANタンパク質を標的にするが、任意にここで、1以上のRANタンパク質は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質の1以上である。
【0016】
いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、1以上のジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原を含むが、任意にここで、1以上のジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原は、(CP)x(配列番号3)、(A)x(配列番号9)、(G)x(配列番号10)、(S)x(配列番号11)、(C)x(配列番号12)、(Q)x(配列番号13)、(GD)x(配列番号14)、(GE)x(配列番号15)、(GQ)x(配列番号16)、(GT)x(配列番号17)、(L)x(配列番号18)、(LP)x(配列番号19)、(LPAC)x(配列番号20)、(LS)x(配列番号21)、(P)x(配列番号22)、(QAGR)x(配列番号23)、(RE)x(配列番号24)、(SP)x(配列番号25)、(VP)x(配列番号26)、(FP)x(配列番号27)、および/または(GK)x(配列番号28)のジアミノ酸反復の1以上を含み、ここでxは、抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、xは、5、10、15、20、25、30、35または40である。
【0017】
いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、(GA10(配列番号4)、GA15(配列番号4)、GR25(配列番号7)、GP10(配列番号5)、PR10(配列番号6)、またはそれらの組み合わせの1以上を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)]を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)+(GP)10(配列番号5)]を含む。いくつかの態様において、1以上のペプチド抗原は、B細胞エピトープを含む。
【0018】
いくつかの態様において、1以上の免疫原は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルーキャリア免疫原性(Blue Carrier Immunogenic)タンパク質(CCH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)、ジフテリア毒素、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HB-sAg)、破傷風毒素(TT)、百日咳毒素(PT)、またはT細胞ヘルパーエピトープの1以上を含む。
【0019】
いくつかの態様において、RANタンパク質関連の疾患は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)、アルツハイマー病(AD)、またはハンチントン病(HD)である。
【0020】
いくつかの態様において、標的ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、またはホモポリマーの反復タンパク質の1以上を含む。いくつかの態様において、1以上のジペプチド反復タンパク質は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、またはそれらいずれかの組み合わせである。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも10000、または10000より多くのアミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、200より多くのアミノ酸残基(例として、500、1000、5000、10000、または10000より多い、等々)を含む。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが10アミノ酸と15,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが50アミノ酸と12,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが100アミノ酸と10,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが150アミノ酸と8,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが200アミノ酸と5,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが300アミノ酸と2,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが400アミノ酸と1,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが500アミノ酸と750アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが10アミノ酸残基と500アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが20アミノ酸残基と300アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが30アミノ酸残基と200アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが40アミノ酸残基と100アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが50アミノ酸残基と90アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが60アミノ酸残基と80アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。
【0021】
いくつかの態様において、電気化学発光の検出剤は、ルテニウム(II)トリス-ビピリジン-(4-メチルスルホン)を含む。いくつかの態様において、電気化学発光の検出剤は、SULFO-TAG(商標)である。
いくつかの態様において、標識された複合体の電気化学発光は、Meso Scale Detection(MSD)アッセイによって測定される。
【0022】
いくつかの態様において、本明細書に記載の方法は、RANタンパク質関連の神経学的な疾患または障害の処置のため第2の治療剤(例として、1以上のアンチセンスオリゴヌクレオチド、ワクチン、外から投与された抗RAN抗体、他の治療剤、またはそれら2以上の組み合わせ)を対象へ投与するステップをさらに含む。いくつかの態様において、第2の治療剤は、小分子、核酸、干渉RNA、タンパク質、ペプチド、抗体、ワクチン、遺伝子治療用ベクター、または他の免疫原である。いくつかの態様において、第2の生体試料は、第2の治療剤の投与後に対象から得られたものであって、1以上の抗RANタンパク質抗体は、電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用し第2の生体試料において検出される。
【0023】
いくつかの態様において、1以上の抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S);抗ポリ(C);抗ポリ(Q);抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、もしくは抗ポリ(GK)の抗体、またはそれらいずれかの組み合わせである。
【0024】
いくつかの側面において、本開示は、対象における抗RANタンパク質抗体レベルの薬物動態変化を測定するための方法に関するが、方法は、以下:(1)電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用し、対象から得られた第1の生体試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出すること;(2)電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用し、対象から得られた第2の生体試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出すること、ここで第2の生体試料は、対象への治療剤の投与後に得られたものである;および(3)第1の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量が、第2の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量と異なる場合、対象への治療剤の投与が、対象における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルの変化をもたらすと決定すること、を含む。いくつかの態様において、第2の生体試料は、第1の生体試料と比べて上昇したレベルの抗RANタンパク質抗体を含有する。いくつかの態様において、第2の生体試料は、第1の生体試料と比べて減少したレベルの抗RANタンパク質抗体を含有する。
【0025】
いくつかの態様において、第1の生体試料は、対照試料である。いくつかの態様において、対照試料は、健常対象から得られた生体試料である。いくつかの態様において、対照試料は、同じ対象からより早い時点にて得られた生体試料である。
【0026】
いくつかの態様において、第1の生体試料および/または第2の生体試料は、血液試料、血清試料、または組織試料である。いくつかの態様において、組織試料は、CNS組織または脳脊髄液(CSF)の試料である。
【0027】
いくつかの態様において、1以上の抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S)、抗ポリ(C)、抗ポリ(Q)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、もしくは抗ポリ(GK)の抗体、またはそれらいずれかの組み合わせである。
【0028】
いくつかの態様において、本開示は、1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチド;ならびに免疫アッセイのプレートおよび/または免疫アッセイ試薬を含むキットに関する。いくつかの態様において、1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドは、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、およびポリ(GK)のペプチドから選択される。いくつかの態様において、免疫アッセイプレートおよび/または免疫アッセイ試薬は、MSDアッセイプレートおよび/またはMSDアッセイ試薬である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な記載
【
図1】
図1は、生体試料におけるRANタンパク質の検出のためのアッセイの一態様を描く概略図を示す。
【0030】
【
図2】
図2は、抗RANタンパク質ワクチンで処置されたC9 Bacマウスから得られた血清における抗ポリ(GP)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GP)
8ペプチドでコーティングし、マウスが以下:GP
10(配列番号5)、GA
15(配列番号4)、GA
10(配列番号4)、GR
25(配列番号7)、PR
10(配列番号6)、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6))、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6)+GP
10(配列番号4))と指し示されたジペプチド反復(DPR)を標的にする2~3回のワクチンへ曝露された後の血清へ曝露した。またアジュバント対照マウスからのデータも示す。
【0031】
【
図3】
図3は、抗RANタンパク質ワクチンで処置されたC9 Bacマウスから得られた血清における抗ポリ(GA)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GA)
8(配列番号4)ペプチドでコーティングし、マウスが以下:GP
10(配列番号5)、GA
15(配列番号4)、GA
10(配列番号4)、GR
25(配列番号7)、PR
10(配列番号6)、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6))、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6)+GP
10(配列番号4))と指し示されたジペプチド反復(DPR)を標的にする2~3回のワクチンへ曝露された後の血清へ曝露した。またアジュバント対照マウスからのデータも示す。
【0032】
【
図4】
図4は、抗RANタンパク質ワクチンで処置されたC9 Bacマウスから得られた脳組織からのライセートにおける抗ポリ(GA)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GA)
8(配列番号4)ペプチドでコーティングし、マウスが以下:GA
15、GA
10、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6))と指し示されたジペプチド反復(DPR)を標的にする2~3回のワクチンへ曝露された後の血清へ曝露した。またアジュバント対照マウスからのデータも示す。
【0033】
【
図5】
図5は、ヒトC9+ALS患者から得られた血清試料における抗ポリ(GA)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GA)
8(配列番号4)ペプチドでコーティングし、血清へ曝露した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な記載
本開示の側面は、対象から得られた生体試料において反復関連非ATGタンパク質(RANタンパク質)へ結合する抗体を検出するのに有用な方法および組成物に関する。本明細書に記載の方法によって検出される抗体は、外から投与された抗体(例として、治療として対象へ投与された抗体)、または内生抗体(例として、対象の細胞によって産生される抗体)であり得る。いくつかの態様において、内生抗体は、自己抗体である。いくつかの態様において、内生抗体は、抗体をコードする発現ベクターで感染させられた対象の細胞によって産生される。いくつかの態様において、内生抗体は、ワクチンが投与されたことに応えて対象の細胞によって産生される。いくつかの態様において、内生抗体は、1以上のタイプのRANタンパク質を発現する伸長突然変異を有する対象に応えて対象の細胞によって産生される(例として、C9Orf72 ALS/FTDを有する対象は、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、またはポリ(PR)のタンパク質に対する自己抗体などの抗体を産生することもある)。
【0035】
いくつかの態様において、本明細書に記載のRANタンパク質抗体を検出する方法は、反復関連非ATG(RAN)タンパク質(例えば、ポリセリン[ポリSer]、ポリ(プロリン-アルギニン)[ポリ(PR)]、およびポリ(グリシン-アルギニン)[ポリ(GR)]のRANタンパク質等々を包含する)に関連するある神経学的な疾患および障害の診断ならびに処置に有用である。ある反復伸長(例として、CAGG、CCTG、GGGGCC、GGCCCC、GGGGCA、CAG、およびCTG)の突然変異は、数多の異なる神経学的な疾患および障害(例として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭型認知症;筋強直症ジストロフィー1型(DM1)および筋強直症ジストロフィー2型(DM2);脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);ならびにアルツハイマー病(AD))に関連する。
【0036】
本開示は、電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用する、生体試料における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルの縦断的な検出(例として、所定時間の経過にわたる検出)に、一部基づく。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法は、例えば、1以上の治療剤の対象への投与後の抗RANタンパク質抗体レベルの濃度または産生の増大を指し示すことによって、RANタンパク質の発現、蓄積、および/または翻訳を阻害する治療剤の有効性を指し示すのに有用である。
【0037】
RANタンパク質
「RANタンパク質(反復関連非ATG翻訳タンパク質)」は、AUG開始コドンの不在下にヌクレオチド伸長を持つmRNA配列から翻訳されたポリペプチドである。一般に、RANタンパク質は、単一アミノ酸、ジアミノ酸、トリアミノ酸、またはポリアミノ酸反復と称されるクアッド(quad-)アミノ酸(例として、テトラ(tetra-)アミノ酸)の伸長反復を含む。RANタンパク質は、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも10000、または10000より多くのアミノ酸残基のポリアミノ酸反復を有し得る。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが200より多いアミノ酸残基(例として、500、1000、5000、10,000、または10,000より多い、等々)のポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが10アミノ酸と15,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが50アミノ酸と12,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが100アミノ酸と10,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが150アミノ酸と8,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが200アミノ酸と5,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが300アミノ酸と2,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが400アミノ酸と1,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが500アミノ酸と750アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが10アミノ酸残基と500アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが20アミノ酸残基と300アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが30アミノ酸残基と200アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが40アミノ酸残基と100アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが50アミノ酸残基と90アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが60アミノ酸残基と80アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。
【0038】
RANタンパク質をコードする配列は、対象のゲノム(例として、ヒト対象のゲノム)中、これらに限定されないが、第九染色体のオープンリーディングフレーム72(C9orf72)、第二染色体のオープンリーディングフレーム80(C2orf80)、LRP8、CASP8、CRNDE、EXOC6B、SV2B、PPML1、ADARB2、GREB1、およびMSMO1を包含する複数の遺伝子座にて見出され得る。C9orf72に関連するタンパク質は目下、特徴付けが不十分であるが、ニューロンにおいて、とくに大脳皮質および運動ニューロンにおいて豊富にあることが知られている。C9orf72タンパク質は、シナプス前終末(presynaptic termini)において局部化されていると考えられる。C9orf72タンパク質はおそらく、RNAの転写、翻訳、および細胞内局在化に影響を与える。C9orf72遺伝子は、可変の反復数で生じるGGGGCC反復(ヘキサヌクレオチド反復)を含有する。
【0039】
C9Orf72遺伝子におけるヘキサヌクレオチド配列GGGGCCの反復伸長の結果起こるALS/FTDの文脈において、以下のジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質が同定されている:ポリ(Gly-Ala)、ポリ(Gly-Pro)、ポリ(Gly-Arg)、ポリ(Pro-Ala)、またはポリ(Pro-Arg)、これら夫々はまた、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、およびポリ(PR)とも称される。ALS/FTD RANタンパク質は一般に、例えば、2014年3月10日に出願されWO2014/159247として公開された国際PCT出願第PCT/US2014/022670号、および2015年9月11日に出願されUS2016/0025747として公開された米国出願第14/775,278号に記載されており、これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
SCA36遺伝子におけるヘキサヌクレオチド配列TGGGCCの反復伸長の結果起こるSCA36の文脈において、以下のジアミノ酸反復を含有するRANタンパク質が同定されている:ポリ(GP)およびポリ(PR)。
【0041】
ハンチントン病(HD)の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、Htt遺伝子におけるCAG・CTG伸長によって引き起こされるが、これによって、RANタンパク質であるポリアラニン、ポリセリン、ポリロイシン、およびポリシステイン(ポリAla、ポリSer、ポリLeu、およびポリCys)の翻訳が、ポリグルタミン(ポリGlnまたはポリQ)に加えてもたらされる。
【0042】
SCA8およびDM1の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、CTG・CAG反復伸長によって引き起こされる。SCA8伸長突然変異は双方向で転写されて、CUG(ATXN8OS)とCAG(ATXN8)との両方の伸長RNAを産生するが、前記伸長RNAは伸長突然変異にわたり反対方向に発現される。CUG伸長転写産物はRNA凝集塊(RNA foci)を形成し、反対方向に発現された伸長CAG ATXN8転写産物は、CAG反復の直接上流にAUG開始コドンを含有する異常に短いORFから、ほぼ純粋なポリGlnタンパク質を産生する。これは、RANタンパク質であるポリアラニン、ポリセリン、ポリロイシン、およびポリシステイン(ポリAla、ポリSer、ポリLeu、およびポリCys)の翻訳を、ポリ-グルタミン(ポリGlnまたはポリQ)に加えてもたらす。
【0043】
脆弱X症候群(FXS)および脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、CGG・CCG伸長によって引き起こされる。FMR1遺伝子の5'非翻訳領域(UTR)におけるCGG反復配列(repeat tract)の伸長は、反復の長さに依存して2つの別個の疾患を引き起こす。より長い伸長(>200反復)は、FXSをもたらすFMR1遺伝子の転写サイレンシングを引き起こす。対照的に、前突然変異の範囲内のより短いアレル(55~200反復)は、遅発性神経変性障害のFXTASを引き起こす。これは、RANタンパク質であるポリGly、ポリPro、ポリArg、およびポリAlaの翻訳をもたらす。
【0044】
DM2の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、細胞核酸結合タンパク質(CNBP)遺伝子に位置付けられるイントロンのCCTG・CAGG伸長突然変異によって引き起こされ、これによってセンス(ポリ(ロイシン-プロリン-アラニン-システイン[LPAC]))とアンチセンス(ポリ(グルタミン-アラニン-グリシン-アルギニン[QAGR]))との両方向にテトラペプチド伸長タンパク質が産生される。
【0045】
SCA31の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、UGGAA伸長がコードされるTrp-Asn-Gly-Met-Glu(配列番号30)ペンタペプチド反復タンパク質(PPR)の蓄積によって引き起こされる。
SCA31の文脈において、RANタンパク質の翻訳は、UGGAA伸長がコードされるTrp-Asn-Gly-Met-Glu(配列番号30)ペンタペプチド反復タンパク質(PPR)の蓄積によって引き起こされる。
【0046】
RANタンパク質の他の例は、ポリ(CP)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、またはそれらいずれかの組み合わせを包含してもよい。追加のRANタンパク質の例およびRANタンパク質を同定する方法は、例えば、2020年7月2日に出願された国際PCT出願第PCT/US2020/040725号に記載されており、この内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
いくつかの態様において、RANタンパク質は、ハンチントン病(HD、HDL2)、アルツハイマー病(AD)、脆弱X症候群(FRAXA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、脊髄小脳失調症1型(SCA1)、脊髄小脳失調症2型(SCA2)、脊髄小脳失調症3型(SCA3)、脊髄小脳失調症6型(SCA6)、脊髄小脳失調症7型(SCA7)、脊髄小脳失調症8型(SCA8)、脊髄小脳失調症12型(SCA12)、もしくは脊髄小脳失調症17型(SCA17)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳失調症36型(SCA36)、脊髄小脳失調症29型(SCA29)、脊髄小脳失調症10型(SCA10)、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)、筋強直症ジストロフィー2型(DM2)、またはフックス角膜ジストロフィー(例として、CTG181)に関連する遺伝子によってコードされる。
【0048】
対象および生体試料
いくつかの側面において、本開示は、対象から得られた生体試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出する(例として、1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを検出する)方法に関する。対象は、哺乳動物(例として、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、またはブタ)であり得る。いくつかの態様において、対象は、哺乳動物対象である。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。いくつかの態様において、対象は、マウスである。いくつかの態様において、対象は、C9-BACマウスである。ALSのC9-BACマウスモデルは、例えば、2014年3月10日に出願されWO2014/159247として公開された国際PCT出願第PCT/US2014/022670号、およびLiu et al.,(2016)Neuron 90(3):521-34に記載されており、これら各々の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
いくつかの態様において、対象は、C9orf72遺伝子(例として、ヒトC9orf72遺伝子、またはヒトC9orf72遺伝子に対応するマウス遺伝子などの遺伝子)におけるGGGGCC(例として、G4C2)ヘキサヌクレオチド配列反復伸長によって特徴付けられる。いくつかの態様において、ヒトC9orf72遺伝子は、NCBI参照配列番号NM_145005.6、NM_018325.4、およびNM_001256054.2のいずれか1つで表される配列を含むか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、対象は、SCA36遺伝子(例として、ヒトSCA36遺伝子、またはヒトSCA36遺伝子に対応するマウス遺伝子などの遺伝子)おけるTGGGCCヘキサヌクレオチド配列反復伸長によって特徴付けられる。いくつかの態様において、ヒトSCA36遺伝子は、NCBI参照配列番号NM_006392.3、NR_027700.2、およびNR_145428.1のいずれか1つで表される配列を含むか、またはこれらからなる。いくつかの態様において、対象は、遺伝学的アッセイ(例として、DNAをベースとしたアッセイ、例えば、配列決定アッセイ)によってヘキサヌクレオチド配列反復伸長(例として、C9Orf72におけるGGGGCC(例として、G4C2)反復伸長またはSCA36におけるTGGGCC反復伸長)を有すると決定されている。
【0050】
いくつかの態様において、対象は、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、または少なくとも5000のGGGGCC反復伸長(例として、C9Orf72の反復伸長)を含む。いくつかの態様において、対象は、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、または少なくとも5000のTGGGCC反復伸長(例として、SCA36の反復伸長)を含む。
【0051】
いくつかの態様において、対象は、RANタンパク質の翻訳またはジアミノ酸反復(DPR)をコードする転写産物を含有するRNA凝集体(RNA aggregates)の存在によって特徴付けられる。いくつかの態様において、対象において翻訳されるRANタンパク質は、以下:ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、またはポリ(PR)の1以上を含む。いくつかの態様において、対象において翻訳されるRANタンパク質は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)、またはそれらいずれかの組み合わせの1以上を含む。いくつかの態様において、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(PR)のRANタンパク質は、対象のC9Orf72、Htt、SCA36、LRP8、CASP8、および/またはGREB1の伸長反復から発現される。いくつかの態様において、ポリ(CP)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、ポリ(GK)のタンパク質は、対象のC9Orf72、Htt、SCA36、LRP8、CASP8、および/またはGREB1の伸長反復から発現される。
【0052】
一般に、生体試料は、血液、血清(例として、凝固タンパク質が除去された血漿)、または脳脊髄液(CSF)を含む。しかしながら、当業者は、CNS組織(例として、脳組織、脊椎組織等々)および/または細胞(例として、脳細胞、神経細胞、皮膚細胞等々)を含む生体試料などの、他の好適な生体試料も認識しているであろう。いくつかの態様において、生体試料は、血液試料または組織試料を含む。いくつかの態様において、血液試料は、全血、血漿、または血清の試料を含む。いくつかの態様において、組織試料は、CNS組織または脳脊髄液(CSF)試料を含む。いくつかの態様において、血液試料は処置されて、試料のバフィーコートなどの白血球細胞(white blood cells)(例として、白血球(leukocytes))が除去されている。
【0053】
いくつかの態様において、生体試料は、希釈されている。いくつかの態様において、生体試料は、1以上の抗RANタンパク質抗体の検出に先立ち希釈される。いくつかの態様において、生体試料は、希釈剤で希釈されている。いくつかの態様において、希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはトリス緩衝生理食塩水(TBST)である。いくつかの態様において、生体試料は、生体試料:希釈剤の比率が、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:60、1:70、1:80、1:90、1:100、1:150、1:200、1:250、1:300、1:350、1:400、1:450、1:500、1:600、1:700、1:800、1:900、1:1000、1:1250、1:1500、1:1750、もしくは1:2000、またはここに含有されるいずれの比率になるように希釈されている。いくつかの態様において、生体試料は、希釈された試料中に存在する生体試料のパーセンテージが、0.0001、0.0002、0.0003、0.0004、0.0005、0.0006、0.0007、0.0008、0.0009、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.011、0.012、0.013、0.014、0.015、0.016、0.107、0.018、0.019、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、もしくは99%超、またはここに含有されるいずれの値となるように希釈されている。
【0054】
いくつかの態様において、対象から得られた生体試料は、1以上の抗RANタンパク質抗体の検出に先立ち(例として、実施されるアッセイに先立ち)保管される。いくつかの態様において、対象から得られた生体試料は、-80℃と約23℃(例として、室温)との間にある温度にて保管される。いくつかの態様において、対象から得られた生体試料は、0℃と約23℃(例として、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23℃)との間にある温度にて保管される。いくつかの態様において、対象から得られた生体試料は、20℃と約25℃(例として、約20、21、22、23、24、または25℃)との間にある温度にて保管される。
【0055】
いくつかの態様において、生体試料は、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害を有するか、あるいはこれを有すると疑われる対象から得られたものである。いくつかの態様において、対象は、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害の、1以上の兆候あるいは症状を呈している。「RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患(例として、神経学的疾患)または障害を有するか、あるいはこれを有すると疑われる対象」は一般に、神経変性の(neurodegenerative)疾患または障害(これらに限定されないが、記憶欠損(例として、短期記憶喪失)、錯乱状態、遂行機能(例として、注意力、計画、適応性、抽象的思考等々)の欠陥、失語症、運動技能の衰退(degeneration)もしくは喪失等々を包含する)の1以上の兆候および症状を呈する対象、あるいはRANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する1以上の遺伝子突然変異を有するかまたはこれを有すると同定されている対象を指す。
【0056】
いくつかの態様において、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または前頭側頭型認知症;筋強直症ジストロフィー1型(DM1)および筋強直症ジストロフィー2型(DM2);脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);アルツハイマー病(AD);脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS);フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD);ならびにハンチントン病類縁症候群2型(Huntington's disease-like 2 syndrome)(HDL2)のいずれか1つである。
【0057】
「ALSおよび/またはFTDを有するか、あるいはこれを有すると疑われる対象」は、C9Orf72遺伝子において30より多くのGGGGCC反復を有することが知られているかまたは決定されている対象、あるいはALS/FTDの兆候(signs)および症状(symptoms)(これらに限定されないが、以下:運動機能障害(例として、痙縮)、筋萎縮、および/または神経精神医学的な徴候(manifestations)(例として、強迫行動、無気力、不安)を包含する)を呈する対象であり得る。いくつかの態様において、ALSを有する対象は、C9Orf72遺伝子において1以上の突然変異を有することによって特徴付けられる。
【0058】
「アルツハイマー病を有するか、またはこれを有すると疑われる対象」はADの1以上の兆候および症状(これらに限定されないが、以下:記憶欠損(例として、短期記憶喪失)、錯乱状態、遂行機能(例として、注意力、計画、適応性、抽象的思考等々)の欠陥、失語症、運動技能の衰退もしくは喪失等々を包含する)を呈する対象、あるいはADに関連する1以上の遺伝子突然変異(例えば、アポリポタンパク質(APP)、プレセニリン遺伝子(PSEN1およびPSEN2)、またはタウタンパク質を包含する特定の遺伝子中の突然変異)を有するかまたはこれを有すると同定されている対象であり得る。いくつかの態様において、ADを有するかまたはこれを有すると疑われる対象は、対象の脳組織全体のβ-アミロイド(Aβ)ペプチドおよび高リン酸化タウタンパク質の蓄積によって特徴付けられる。いくつかの態様において、対象は、McKhann et al.,(1984)“Clinical diagnosis of Alzheimer's disease:report of the NINCDS-ADRDA Work Group under the auspices of Department of Health and Human Services Task Force on Alzheimer's Disease”.Neurology,34(7):939-44によって記載されるとおりのNINCDS-ADRDA Alzheimer's Criteriaに従い、医療従事者によってADを有すると診断されている。
【0059】
「筋強直症ジストロフィーを有するか、またはこれを有すると疑われる対象」(例として、筋強直症ジストロフィー1型(DM1)または筋強直症ジストロフィー2型(DM2))は、DM1および/またはDM2の1以上の兆候あるいは症状(これらに限定されないが、以下:筋肉の遅延した弛緩(relaxation)、筋力低下(muscle weakness)、長期の不随意筋収縮、もしくは筋肉の喪失;および/または正常でない心リズム、白内障、もしくは嚥下困難(difficulty swallowing)を包含する)を呈する対象であり得る。
【0060】
「脊髄小脳失調症を有するか、またはこれを有すると疑われる対象」(例として、脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31または36型)は、脊髄小脳失調症の1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:言語障害および嚥下障害(speech and swallowing difficulties)、筋硬直(例として、痙縮)、眼球運動を制御する筋肉の衰弱(例として、眼筋麻痺)、急速な不随意眼球運動(例として、眼振)、非協調運動およびバランスの不均衡(例として、運動失調症)、筋肉の消耗、緩徐眼球運動、認知症、制御されない筋肉の緊張(例として、ジストニア)、こわばり、振戦、眼球突出、複視、腕の協調喪失、進行性の視力低下(vision loss)、失明、感覚もしくは反射神経の変化、体幹の不安定性、機能亢進の腱反射、長引く訥弁(drawn-out slowness of speech)によって特徴付けられる断綴性の(scanning)構音障害、小脳性運動失調、不安定歩行、上肢の運動失調、嚥下障害(dysphagia)、歩行機能障害、錐体外路の機構(functions)、錐体の衰弱、認知障害および行動障害(cognitive and behavioral disturbances)、舞踏病、精神障害(psychiatric disturbances)、感音性聴覚障害(sensorineural hearing impairment)、低下した(impaired)振動感覚、急速眼球運動(例として、サッケード)、目を左右交互に動かすのに支障があること(trouble moving the eyes side-to-side)(例として、眼球運動失効)、および/または眼瞼下垂(droopy eyelids)(例として、眼瞼下垂症(ptosis))を包含する)を呈する対象であり得る。
【0061】
「球脊髄性筋萎縮症を有するか、またはこれを有すると疑われる対象」は、球脊髄性筋萎縮症の1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:発語障害(speech impairment)、咀嚼困難および嚥下困難、障害のある(impaired)睡眠、呼吸困難、顔面筋力低下、感情を伝えるのが困難であること、腕および脚の筋肉の衰弱ならびに萎縮、筋肉の単収縮および痙攣(cramping)、拡大した乳房(男性(オス)対象における)、低減した生殖能力および睾丸の萎縮(例として、収縮)、男性(雄性)ホルモンの正常でないプロセシング、筋肉の消耗、および/または歩行困難を包含する)を呈する対象であり得る。
【0062】
「歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、DRPLAの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:運動失調、制御不能な肢の運動(例として、舞踏病アテトーゼ)、精神科的症状(例として、妄想)、および/または知的機能の劣化(例として、認知症)を包含する)を呈する対象であり得る。
【0063】
「ハンチントン病(HD)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、HDの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:正常でない歩行、増大した筋活動、不随意運動、協調に関する問題、筋肉の喪失、筋痙攣(muscle spasms)、健忘、妄想、集中力の欠如、精神錯乱、活動の緩慢さ、思考および理解の困難、強迫行動、そわそわすること、怒りっぽいこと、慎みがないこと、せん妄、うつ病、幻覚、偏執病、不安、無気力、気分変動、発話(speaking)困難、記憶喪失、振戦、および/または重量減少を包含する)を呈する対象であり得る。
【0064】
「脆弱X障害(例として、脆弱X症候群(FXS)、脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS)、または脆弱XE症候群(FRAXE))を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、FXS、FXTAS、および/またはFRAXEの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:攻撃性、多動、衝動性、無意味語の繰り返し、反復運動、自傷、発言(words)もしくは動作を持続的に繰り返すこと、学習障害(learning disability)もしくは言語(speech)遅滞(例として、子どもにおける)、協調に関する筋弛緩(flaccid muscles)もしくは問題、大きな耳、発語障害、不安、二重関節のある肢、拡大した頭部、拡大した睾丸、扁平足、弱視、長く細い(long thin)顔、突出した顎、脊柱側湾症、掌上の単一線(single line on palm)、睡眠障害、窪んだ胸部、振戦、神経障害、四肢の無感覚/刺痛、情緒不安定、怒りっぽいこと、爆発的な感情の噴出(explosive outbursts)、人格変化、認知低下(計算、読書などの技能の喪失等々を包含する)、自律神経機能の問題(膀胱または腸機能の虚弱および喪失など)、言語遅滞、不十分な作文技能、多動、および/または移り気を包含する)を呈する対象であり得る。
【0065】
「ハンチントン病類縁症候群2型(HDL2)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、HDL2の1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:進行性の運動障害(例として、パーキンソニズム、舞踏病)、認識衰退および感情の薄らぎ(cognitive and emotional decline)(例として、認知症、精神障害(psychiatric disturbances))、てんかん発作(単数もしくは複数)、および/またはHDに関連するいずれの他の兆候もしくは症状も包含する)を呈する対象であり得る。
【0066】
「フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD)を有するか、またはこれを有すると疑われる」対象は、FECDの1以上の兆候または症状(これらに限定されないが、以下:ぼやけた曇った視界(例として、はっきりとした視界の全般的な欠如)、視界の揺らぎ(例として、朝起床後に症状が悪化し、日中徐々に改善する)、視力が永続的に損なわれること、眩しいこと、光の周囲にハローが見えること、および/または角膜表面上の小水疱による疼痛もしくはザラザラ感(grittiness)を包含する)を呈する対象であり得る。
【0067】
治療剤
本開示の方法は、いくつかの態様において、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害の動物モデルにおける治療剤(例として、治療剤の候補)の効き目を調査するのに有用である。「治療剤の候補」は一般に、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積の低減能または阻害能について、あるいは細胞または対象における防御免疫応答の誘導能について試験される剤(例として、小分子、核酸、干渉RNA、タンパク質、ペプチド、抗体、ワクチン、遺伝子治療用ベクター等々)を指す。RANタンパク質に関連する疾患または障害を処置するの有用な治療剤は、RANタンパク質もしくはRANタンパク質をコードする核酸を標的にする(例として、発現、活性、蓄積、凝集等々を低減する)こともあり、および/または1以上のRANタンパク質と相互作用する別の遺伝子または遺伝子産物(例として、タンパク質)の活性を調整することもある。
【0068】
いくつかの態様において、治療剤は、抗RANタンパク質抗体である。抗RANタンパク質抗体は、外から投与された抗体(例として、治療として対象へ投与された抗体)、または内生抗体(例として、対象の細胞によって産生された抗体)であり得る。いくつかの態様において、内生抗体は、自己抗体である。いくつかの態様において、内生抗体は、抗体をコードする発現ベクターで感染させられた対象の細胞によって産生される。いくつかの態様において、内生抗体は、ワクチンが投与されたことに応えて対象の細胞によって産生される。いくつかの態様において、内生抗体は、1以上のタイプのRANタンパク質を発現する伸長突然変異を有する対象に応えて対象の細胞によって産生される(例として、C9Orf72 ALS/FTDを有する対象は、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、またはポリ(PR)のタンパク質に対する自己抗体などの抗体を産生してもよい)。本明細書に使用されるとき、「抗RANタンパク質抗体」は、外から提供されるものと内生のものとの両抗RANタンパク質抗体を指す。当業者は、外から提供されるものと内生のものとの両抗RANタンパク質抗体が治療剤と見なされてもよいことを認識しているであろう。
【0069】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体の発現は、抗RANタンパク質抗体の発現に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を低減させる。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体の発現は、抗RANタンパク質抗体の発現に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多く低減させる。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体の発現は、抗RANタンパク質抗体の発現に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、またはここに含有されるいずれのパーセンテージまで低減させる。
【0070】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体の発現は、抗RANタンパク質抗体の発現に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を低減させる。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体の発現は、抗RANタンパク質抗体の発現に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多く低減させる。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体の発現は、抗RANタンパク質抗体の発現に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、またはここに含有されるいずれのパーセンテージまで低減させる。
【0071】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S)、抗ポリ(C)、抗ポリ(Q)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、もしくは抗ポリ(GK)の抗体、またはそれらいずれかの組み合わせである。抗RANタンパク質抗体は、細胞外RANタンパク質、細胞内RANタンパク質、または細胞外と細胞内との両RANタンパク質へ結合してもよい。
【0072】
いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体は、標的〈にする〉s 以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)から選択される1以上のRANタンパク質のアミノ酸反復領域を標的にする(例として、これらへ特異的に結合する)。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも10000、または10000より多いアミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、200より多いアミノ酸残基(例として、500、1000、5000、10,000、または10,000より多い等々)を含む。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが10アミノ酸と15,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが50アミノ酸と12,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが100アミノ酸と10,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが150アミノ酸と8,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが200アミノ酸と5,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが300アミノ酸と2,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが400アミノ酸と1,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが500アミノ酸と750アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが10アミノ酸残基と500アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが20アミノ酸残基と300アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが30アミノ酸残基と200アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが40アミノ酸残基と100アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが50アミノ酸残基と90アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが60アミノ酸残基と80アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。
【0073】
いくつかの態様において、抗RAN抗体は、ポリアミノ酸反復を含まないRANタンパク質のいずれの部分、例えば、RANタンパク質のC末端(例として、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のC末端)も標的にする(例として、これらへ特異的に結合する)。RANタンパク質のC末端を標的にする抗RAN抗体の例は、例えば、米国刊行物第2013/0115603号に開示されており、この全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
いくつかの態様において、抗RAN抗体の一組(または組み合わせ)(例として、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、およびポリ(GK)の抗体から選択される2以上の抗RAN抗体の組み合わせ等々)は、RANタンパク質に関連する疾患または障害を処置することを目的として、対象へ投与される。
【0075】
RANタンパク質の「C末部分」または「C末端」は、センス転写産物につき遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のイントロン内のポリアミノ酸反復領域下流のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、またはアンチセンス転写産物につき遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のイントロン内のポリアミノ酸反復領域下流のヌクレオチド配列を含む。
【0076】
いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列であって、遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のセンス転写産物によってコードされる配列において1以上の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列であって、遺伝子(例として、C9Orf72、HTT、DM1、SCA36、LRP8、CASP8、GREB1等々)のアンチセンス転写産物によってコードされる配列において1以上の連続したアミノ酸を含む。
【0077】
いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、または75より多くの連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、RANタンパク質のC末部分は、RANタンパク質のポリアミノ酸反復部分の直後のアミノ酸にて始まる配列において1~5、3~10、5~15、8~20、10~25、13~30、15~35、18~40、20~45、23~50、25~55、28~60、30~65、33~70、35~75、または75より多くの連続したアミノ酸を含む。
【0078】
抗RAN抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。典型的には、ポリクローナル抗体は、マウス、ウサギ、またはヤギなどの好適な哺乳動物の接種によって産生される。より大型の哺乳動物は、収集され得る血清の量がより多くなることから、しばしば好ましい。抗原は、哺乳動物中へ注射される。これは、抗原に特異的なIgG免疫グロブリンを産生するBリンパ球を誘導する。このポリクローナルIgGは、哺乳動物の血清から精製される。モノクローナル抗体は一般に、単一の細胞株(例として、ハイブリドーマ細胞株)によって産生される。いくつかの態様において、抗RAN抗体は、精製される(例として、血清から単離される)。
【0079】
いくつかの態様において、治療剤は、RANタンパク質ワクチンである。RANタンパク質ワクチンは一般に、RANタンパク質に対する免疫応答(例として、対象における特定の抗体の産生)を惹起する1以上のペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、治療剤の候補は、対象における伸長反復から発現された1以上のRANタンパク質(例として、ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質等々)に対する免疫応答を惹起するように構成されているワクチンである。いくつかの態様において、治療剤は、1以上のRANタンパク質を標的にするペプチド抗原を含む(例として、1以上のRANタンパク質を標的にするRANタンパク質ワクチンである)。いくつかの態様において、ペプチド抗原は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のRANタンパク質から選択されるRANタンパク質の1以上を標的にする(例として、それらをコードするアミノ酸配列を含む)。
【0080】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多く低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の発現レベルと比べて、RANタンパク質の発現を1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、またはここに含有されるいずれのパーセンテージまで低減させる。
【0081】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍まで、または100倍より多く低減させる。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンの投与は、RANタンパク質ワクチンの投与に先立ち対象に存在するRANタンパク質の凝集レベルと比べて、RANタンパク質の凝集を1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%、またはここに含有されるいずれのパーセンテージまで低減させる。
【0082】
いくつかの態様において、ペプチド抗原の1以上は、B細胞エピトープである。いくつかの態様において、ペプチド抗原は、ジペプチド反復(DPR)ペプチド抗原である。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、(GA)x(配列番号4)、(GP)x(配列番号5)、(GR)x(配列番号7)、(PA)x(配列番号8)のジアミノ酸反復を含み、ここでxは抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、1以上のDPRペプチド抗原の各々は、(CP)x(配列番号3)、(A)x(配列番号9)、(G)x(配列番号10)、(S)x(配列番号11)、(C)x(配列番号12)、(Q)x(配列番号13)、(GD)x(配列番号14)、(GE)x(配列番号15)、(GQ)x(配列番号16)、(GT)x(配列番号17)、(L)x(配列番号18)、(LP)x(配列番号19)、(LPAC)x(配列番号20)、(LS)x(配列番号21)、(P)x(配列番号22)、(QAGR)x(配列番号23)、(RE)x(配列番号24)、(SP)x(配列番号25)、(VP)x(配列番号26)、(FP)x(配列番号27)、および/または(GK)x(配列番号28)のジアミノ酸反復を含み、ここでxは抗原の反復単位数を表す。いくつかの態様において、「x」は、5、10、15、20、25、30、35、40、または40より多い(例として、5、10、15、20、25、30、35、40、または40より多くの反復単位)。いくつかの態様において、ペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)は、2と150との間にある(例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、または150の)アミノ酸反復(例として、種々のホモ重合アミノ酸反復、ジアミノ酸反復、トリアミノ酸反復、テトラアミノ酸反復、ペンタアミノ酸反復、または上記いずれかの組み合わせ)を含む。いくつかの態様において、ペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)は、50より多くのアミノ酸反復(例として、種々のホモ重合アミノ酸反復、ジアミノ酸反復、トリアミノ酸反復、テトラアミノ酸反復、ペンタアミノ酸反復、または上記いずれかの組み合わせ)を含む。いくつかの態様において、各DPRペプチド抗原は、10ジアミノ酸反復と25ジアミノ酸反復との間を含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、以下のペプチド抗原:(GA10(配列番号4)、GA15(配列番号4)、GR25(配列番号7)、GP10(配列番号5)、PR10(配列番号6)、またはそれらの組み合わせのうち1つを含む。
【0083】
RANタンパク質ワクチンのペプチド抗原数は変動してもよい(例として、RANタンパク質ワクチンは多価であってもよい)。いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはこれより多くの種々のアミノ酸反復(例として、種々のホモ重合アミノ酸反復、ジアミノ酸反復、トリアミノ酸反復、テトラアミノ酸反復、ペンタアミノ酸反復、または上記いずれかの組み合わせ)に対するペプチド抗原を含む。いくつかの態様において、DPRペプチド抗原は、[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)]、または[(GA)15(配列番号4)+(GR)25(配列番号7)+(PR)10(配列番号6)+(GP)10(配列番号5)]を含む。
【0084】
本開示の側面は、1以上の(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの)追加の免疫原を含む組成物(例として、RANタンパク質ワクチン等々)に関する。「免疫原」は、免疫学的寛容性よりむしろ、体液性および/または細胞性の免疫応答を誘導することが可能ないずれの抗原も指す。免疫原の例は、これらに限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ブルーキャリア免疫原性タンパク質(CCH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、オボアルブミン(OVA)、ジフテリア毒素、麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎ウイルス表面抗原(HB-sAg)、破傷風毒素(TT)、百日咳毒素(PT)、または上記いずれかの部分を包含する。
【0085】
免疫原は、Tヘルパー細胞エピトープを含んでいてもよい。「Tヘルパー細胞エピトープ」または「Thエピトープ」は、抗原提示細胞の表面上に提示されているT細胞エピトープを指し、前記表面上でそれらは、Tヘルパー細胞によって特異的に認識される長さが13~17個のアミノ酸のMHCクラスII分子へ結合される。いくつかの態様において、Thエピトープをワクチンに包含させることは、ワクチン接種された対象において、Th1炎症促進性T細胞応答に優先し、偏ったTh2タイプの制御性T細胞応答をもたらす。Thエピトープをペプチドワクチンに包含させること、およびUBIThエピトープは、例えば、Wang et al.(2007)Vaccine 25(16):3041-52、およびUS 2019/0194280に記載されており、これらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
ペプチド抗原および追加の免疫原(例として、B細胞エピトープおよびT細胞エピトープ)は、いずれの好適なモダリティによって連結されていてもよい。いくつかの態様において、ペプチド抗原および追加の免疫原は、共有結合的または非共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、ペプチド抗原および追加の免疫原は、相互に直接接続されている。いくつかの態様において、ペプチド抗原および追加の免疫原は、1以上の(例として、1、2、3、4、またはそれより多くの)連結分子を介して連結されている。いくつかの態様において、1以上の連結分子によって提供される立体配座的な分離は、提示されたペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)と適切なTh細胞およびB細胞との間のより効率的な相互作用を可能にし、よってペプチド抗原(例として、DPRペプチド抗原)またはそれらの交差反応性機能的免疫学的類似体の免疫原性が増強される。
【0087】
連結分子は、化学的な繋がり(例として、1以上の小分子間の繋がり)、もしくはアミノ酸の繋がり(例として、アミノ酸間、アミノ酸の反応基間の繋がり、ハイブリダイゼーション等々)、またはそれらの組み合わせを提供してもよい。いくつかの態様において、連結分子は、アミノ酸リンカーを含む。いくつかの態様において、連結分子は、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α、ε-N)Lys、およびε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号29)からなる群から選択される。
【0088】
いくつかの態様において、RANタンパク質ワクチンは、1以上の追加の構成要素、例えば、N末のアミドもしくはシグナルペプチド、またはC末のα-COOHもしくはα-CONH2を含む。
【0089】
RANタンパク質ワクチンまたはRANタンパク質の免疫原は、医薬組成物において製剤化されていてもよい。いくつかの態様において、医薬組成物は、1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を含む。薬学的な賦形剤は知られており、例えば、Remington,J.P.(1965).Remington's Pharmaceutical Sciences,Easton,Pa:Mack Pub.Co.,19th ed.,1995によって記載されている。いくつかの態様において、ワクチンを含む医薬組成物は、1以上のアジュバントを包含する。アジュバントは、他の剤の効果を修飾する薬理学的なまたは免疫学的な剤である。アジュバントは、免疫応答をブーストするためにワクチンへ加えられることで、より多くの抗体およびより長く続く免疫が産生されることもあり、よって必要とされる抗原の用量が最小化される。いくつかの態様において、アジュバントは、アルミニウムの無機塩である。いくつかの態様において、アジュバントは、アルハイドロゲル(Al(OH)3)またはadjuphos(AlPO4)である。アルミニウムをベースとしたアジュバントは知られており、例えば、Shardlow et al.(2018)Allergy,Asthma & Clinical Immunology,14:80に記載されるとおりである。いくつかの態様において、医薬組成物は、CpGをさらに含む。いくつかの態様において、CpGは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)であり、例えば、Weiner,et al.,(1997)PNAS 94(20):10833-7によって記載されるとおりである。
【0090】
いくつかの態様において、1以上の治療用分子は、核酸反復の伸長によって特徴付けられるRANタンパク質に関連する(例として、反復関連非ATG翻訳に関連する)疾患または障害を処置するために対象へ投与される。例えば、いくつかの態様において、対象は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の治療剤(例として、タンパク質、核酸、小分子等々、もしくはそれらいずれかの組み合わせ)が投与される。
【0091】
抗RANタンパク質抗体検出アッセイ
本開示は、ある免疫アッセイ(例として、電気化学発光をベースとした免疫アッセイ)が、対象から得られた生体試料(例として、血液、血清、CSF等々)において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出するのに使用され得るという驚くべき発見に、一部基づく。いくつかの態様において、試料を処理する時間および条件(例として、インキュベーション時間およびインキュベーション温度)は、所定の血液試料において観察されるバックグラウンドシグナルの量に影響を及ぼす。例えば、血清試料が、対象から得られた後、24時間より長く室温にてインキュベートされた(例として、保持または保管された)場合、試料中のRANタンパク質レベルは、いくつかの態様において、高バックグラウンドシグナルに起因し対照試料と区別不能である。
【0092】
いくつかの態様において、免疫アッセイ(例として、電気化学発光をベースとした免疫アッセイ)は、対象から得られてから2日以内に生体試料(例として、血液試料)に対して実施される。いくつかの態様において、免疫アッセイ(例として、電気化学発光をベースとした免疫アッセイ)は、対象から得られてから約1分後と約48時間後との間に生体試料(例として、血液試料)に対して実施される。いくつかの態様において、免疫アッセイ(例として、電気化学発光をベースとした免疫アッセイ)は、対象から得られてから約60分後と約24時間後との間に生体試料(例として、血液試料)に対して実施される。
【0093】
いくつかの側面において、本開示は、1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチド、および電気化学発光をベースとした免疫アッセイを含むキットを提供する。
【0094】
「標的ジアミノ酸反復ペプチド」は、ジアミノ酸反復配列を含むか、またはこれからなるペプチドを指す。いくつかの態様において、標的ジアミノ酸反復ペプチドは、以下:ポリ(GP)、ポリ(GA)、ポリ(GR)、およびポリ(PR)から選択される反復を含む。いくつかの態様において、標的ジアミノ酸反復ペプチドは、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、およびポリ(GK)から選択される反復を含む
【0095】
いくつかの態様において、標的ジアミノ酸反復ペプチドの長さは、約4アミノ酸残基(例として、「GPGP」(配列番号31)などの2ジアミノ酸反復)から約100アミノ酸残基(例として、「GPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGPGP」(配列番号32)などの50ジアミノ酸反復)まで及ぶ。いくつかの態様において、標的ジアミノ酸反復ペプチドは、3と25との間のアミノ酸反復(例として、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ジアミノ酸反復)を含む。いくつかの態様において、標的ジアミノ酸反復ペプチドは、8ジアミノ酸反復(例として、(GA)8(配列番号4)、(GP)8(配列番号5)、(GR)8(配列番号7)、(PR)8(配列番号6)等々)を含む。いくつかの態様において、標的ジアミノ酸反復ペプチドは、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも10000、または10000より多くのアミノ酸残基を含む。いくつかの態様において、標的ジアミノ酸反復ペプチドは、長さが200より多くのアミノ酸残基(例として、500、1000、5000、10,000、または10,000より多い等々)のポリアミノ酸反復を含む。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが10アミノ酸と15,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが50アミノ酸と12,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが100アミノ酸と10,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが150アミノ酸と8,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが200アミノ酸と5,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが300アミノ酸と2,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが400アミノ酸と1,000アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、1以上のRANタンパク質の標的アミノ酸反復領域は、長さが500アミノ酸と750アミノ酸との間にある。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが10アミノ酸残基と500アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが20アミノ酸残基と300アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが30アミノ酸残基と200アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが40アミノ酸残基と100アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが50アミノ酸残基と90アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。いくつかの態様において、RANタンパク質は、長さが60アミノ酸残基と80アミノ酸残基との間にあるポリアミノ酸反復を有する。
【0096】
一般に、「電気化学発光をベースとした免疫アッセイ」は、生体試料中に存在する1以上の抗RANタンパク質抗体の、基質(マイクロプレートなど)へ結合した1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドへの結合が、適切な化学的環境下(例として、トリプロピルアミン(TPrA)の存在下)電気によって刺激されたときに光を放射する電気化学発光標識(例として、検出可能な部分)を使用して検出される生物学的アッセイを指す。電気化学発光標識は、例えば、Muzyka(2014)Biosens Bioelectron 15(54):393-407によって記載されている。
【0097】
いくつかの態様において、電気化学発光をベースとした免疫アッセイは、Meso Scale Detection(MSD)アッセイである。本明細書に使用されるとき、用語「Meso Scale Detection(MSD)アッセイ」は、例えば、Moxness et al.(2005)Clin.Chem.51(10):1983-5および米国特許第7,008,796号(これらはMSDアッセイステップの記載に関する参照によって組み込まれる)によって記載されるとおり、電気化学的な刺激があると光を放射するSULFO-TAG(商標)標識(例として、1以上のルテニウム複合体を含む標識)などの電気化学発光(例として、1以上の検出可能な試薬を使用する)によってアナライト検出のために使用される免疫アッセイを指す。
【0098】
一般に、MSDアッセイは、生体試料中に存在する抗RANタンパク質抗体が1以上の標的ペプチドへ結合して複合体を形成し、続いて複合体を、検出可能な試薬へ抱合された1以上の二次抗体(例として、抗ヒト抗体、抗マウス抗体、抗ウサギ抗体などの、複合体の抗RANタンパク質抗体部分へ結合する抗体、または標的ペプチドへ結合する抗体等々)と接触させるという条件下、固体基質(例えば、基質へ付着された1以上の標的ペプチド(例として、1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチド)を含むマルチウェルアッセイプレート)を、生体試料(例として、1以上の抗RANタンパク質抗体を含有する対象から得られた血液試料)と接触させることを含む。いくつかの態様において、検出可能な試薬は、例えば、米国特許第5,310,687号(これは、かかる電気化学発光部分に係る開示に関する参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるとおりの電気化学発光部分を含む。いくつかの態様において、検出可能な試薬は、ルテニウム複合体、例えば、ルテニウム(II)トリス-ビピリジン-(4-メチルスルホン)(また[Ru(Bpy)3]+2とも称される)、またはその塩を含む。
【0099】
検出可能な試薬(例として、検出可能な部分、例えば、SULFO-TAG(商標)などのルテニウム複合体)は一般に、二次抗体(例として、抗ヒト抗体、抗マウス抗体、抗ラット抗体、抗モルモット抗体などの、抗RANタンパク質抗体へ結合する抗体、または試料が得られた種に存在する抗原へ結合する抗体などの、検出抗体等々)へ抱合されている。
【0100】
いくつかの側面において、本開示は、試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を(例として、本明細書に記載のとおりのキットを使用して)測定するための方法を提供するが、方法は以下を含む:(1)標的ジアミノ酸反復ペプチドを、対象から得られた生体試料と接触させることで、抗RAN抗体-標的ペプチド複合体を形成すること;(2)抗RAN抗体-標的ペプチド複合体を、電気化学発光の検出剤と接触させることで、標識された複合体を形成すること;および(3)標識された複合体の電気化学発光を検出することによって、試料中に存在する1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを測定すること。
【0101】
いくつかの態様において、対象はこれまでに、本明細書に記載のとおりの治療剤(もしくは治療剤の候補)(例えば、治療用抗RANタンパク質抗体(例として、RANタンパク質へ特異的に結合するモノクローナル抗体))を投与されているか、または対象は、対象においてRANタンパク質に対する免疫応答を惹起する(例として、対象において抗RANタンパク質抗体の産生を誘導する)ように構成されているワクチンへ曝露されている。
【0102】
いくつかの態様において、電気化学発光をベースとした免疫アッセイは、試料を1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドと接触させることで複合体を形成するステップを含む。いくつかの態様において、試料において検出される1以上の抗RANタンパク質抗体は、以下:抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(GR)、および抗ポリ(PR)から選択される。いくつかの態様において、試料において検出される1以上の抗RANタンパク質抗体は、抗ポリ(CP)、抗ポリ(GA)、抗ポリ(GP)、抗ポリ(PR)、抗ポリ(GR)、抗ポリ(PA)、抗ポリ(A)、抗ポリ(G)、抗ポリ(S)、抗ポリ(C)、抗ポリ(Q)、抗ポリ(GD)、抗ポリ(GE)、抗ポリ(GQ)、抗ポリ(GT)、抗ポリ(L)、抗ポリ(LP)、抗ポリ(LPAC(配列番号1))、抗ポリ(LS)、抗ポリ(P)、抗ポリ(QAGR(配列番号2))、抗ポリ(RE)、抗ポリ(SP)、抗ポリ(VP)、抗ポリ(FP)、および/または抗ポリ(GK)の抗体から選択される。いくつかの態様において、2種、3種、または4種の抗RANタンパク質抗体が、試料において検出される(例として、ポリ(GP)、ポリ(GR)、ポリ(PR)、およびポリ(GA)、またはそれらいずれかの組み合わせ)。
【0103】
抗RANタンパク質抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。いくつかの態様において、例えば、RANタンパク質関連の疾患または障害に対するワクチン投与のケースにおいて、ポリクローナル抗体は、動物の血清中、自由に循環してもよい。いくつかの態様において、治療用抗RANタンパク質抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、抗原は、12~20のアミノ酸である。反復モチーフに対する抗体にとっての抗原は、反復配列である。RANタンパク質のC末配列に対する抗体にとっての抗原は、C末特異的な配列である。いくつかの態様において、抗原は、C末配列の一部、例えば、長さが3~5または5~10、またはこれより多いアミノ酸、例えば、長さが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、または50アミノ酸であるC末配列のフラグメントである。
【0104】
結果的に、いくつかの態様において、本開示によって記載される方法およびキットは、特定された期間にわたり(例として、縦断的な処置の経過にわたり)対象における抗RANタンパク質抗体のレベルを測定することが可能であり、それによって、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患ならびに障害のためのある処置(例として、ALS/FTDを処置するための治療剤)の治療的な効き目の査定が提供される。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患または障害は、以下:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭型認知症;筋強直症ジストロフィー1型(DM1)および筋強直症ジストロフィー2型(DM2);脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);アルツハイマー病(AD);脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS);フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類縁症候群2型(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7p11.2の葉酸感受性(folate-sensitive)脆弱部位に関する障害FRA7A;2q11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA2A;ならびに脆弱XE症候群(FRAXE)からなる群から選択される。
【0105】
いずれの理論によっても拘束されることは望まないが、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)の処置のための治療剤の投与後(例として、投与に先立ち対象において測定された抗RANタンパク質抗体のレベルと比べて)対象において増大した1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを測定することは、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)のための治療剤が、対象を有効に処置することを示唆する。RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)の処置のための治療剤の投与後(例として、投与に先立ち対象において測定された抗RANタンパク質抗体のレベルと比べて)対象において減少した1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを測定することは、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)のための治療剤が、対象を有効に処置しないことを示唆する。
【0106】
例えば、いくつかの態様において、生体試料は、対象から、治療レジメン開始に先立ち得られたもの、および治療レジメンの開始後(例として、1週後、2週後、1カ月後、6カ月後、または1年後)に得られたものであり、試料において検出される抗RANタンパク質抗体の量が比較される。いくつかの態様において、処置後の試料における抗RANタンパク質抗体のレベル(例として、量)が、抗RANタンパク質抗体の処置前レベル(例として、量)と比較して増大した場合、治療レジメンは成功している。いくつかの態様において、処置後の試料における抗RANタンパク質抗体のレベル(例として、量)が、抗RANタンパク質抗体の処置前レベル(例として、量)と比較して減少した場合、治療レジメンは成功していない。いくつかの態様において、対象の生体試料(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの試料)における抗RANタンパク質抗体のレベルは、治療レジメン(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの別々の時に測定される)の最中、絶えず監視される。
【0107】
いくつかの側面において、本開示は、対象における抗RANタンパク質抗体レベルの薬物動態変化を測定するための方法を提供するが、方法は以下を含む:(1)電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用して、対象から得られた第1の生体試料において、1以上の抗RANタンパク質抗体を検出すること;(2)電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用して、対象から得られた第2の生体試料において、1以上の抗RANタンパク質抗体を検出すること、ここで第2の生体試料は、対象への治療剤の投与後に得られたものである;および(3)第1の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量が、第2の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量と異なる場合、対象への治療剤の投与が、対象における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルの変化をもたらすと決定すること。いくつかの態様において、第2の生体試料は、第1の生体試料と比べて、上昇したレベルの抗RANタンパク質抗体を含有する。いくつかの態様において、第2の生体試料は、第1の生体試料と比べて、減少したレベルの抗RANタンパク質抗体を含有する。
【0108】
本明細書に使用されるとき、「上昇した」は、生体試料(例として、血清試料)中に存在する1以上の抗RAN抗体のレベルが、既定の閾値または対照試料における1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルなどの対照レベルを上回ることを意味する。対照および対照レベルは、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害(例として、ALS/FTD)を有さないかあるいはこれを有するとは疑われていない対象(および/または30以下のGGGGCC伸長反復を有する対象)から得られた(例として、検出された)抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。いくつかの態様において、対照または対照レベルは、治療剤(例として、治療剤の候補)の投与に先立つ抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。上昇したレベルは、例えば、対照レベルを1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、またはそれを超えて上回るレベルを包含する。上昇したレベルはまた、ゼロ状態(例として、まったくないかもしくは検出不能な抗RANタンパク質抗体の発現またはレベル)から、非ゼロ状態(例として、あるレベルもしくは検出可能なレベルの抗RANタンパク質抗体の発現または存在)まで増大しつつある現象も包含する。いくつかの態様において、増大(例として、対照または事前の試料と比べた、試料における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルのレベル増大)は、治療剤の治療の効き目(例として、試料が得られた対象における治療の効き目)を示唆し得る。
【0109】
本明細書に使用されるとき、「変化しないか、または減少した」は、1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルが、既定の閾値もしくは対照試料中の1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルなどの対照レベルにあるか、またはそれを下回ることを意味する。対照および対照レベルは、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害(例として、ALS/FTD)を有さないかあるいはこれを有するとは疑われていない対象(および/または30以下のGGGGCC伸長反復を有する対象)から得られた(例として、検出された)抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。いくつかの態様において、対照または対照レベルは、治療剤(例として、抗RAN抗体またはRANタンパク質ワクチン)の投与に先立つ抗RANタンパク質抗体レベルを包含する。変化しないレベルは、対照レベルと同じレベルである。減少したレベルは、例えば、対照レベルを1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%、400%、500%、または500%を超えて下回るレベルを包含する。減少したレベルはまた、非ゼロ状態(例として、あるレベルもしくは検出可能なレベルの抗RANタンパク質抗体の発現または存在)から、ゼロ状態(例として、まったくないかもしくは検出不能な抗RANタンパク質抗体の発現またはレベル)まで、減少しつつある現象も包含する。いくつかの態様において、変化または減少の欠如(例として、対照または事前の試料と比べた、試料における1以上の抗RANタンパク質抗体レベルのレベル変化または減少の欠如)は、治療剤の治療の効き目の欠如(例として、試料が得られた対象における治療の効き目の欠如)を示唆し得る。いくつかの態様において、対象において、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)の処置のための治療剤の投与後に、1以上の抗RANタンパク質抗体レベルの変化の欠如またはその減少したレベルを測定すること(例として、対象において投与に先立ち測定された抗RANタンパク質抗体のレベルと比べて)は、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS/FTD)のための治療剤が、対象を有効には処置しないことを示唆する。
【0110】
本明細書に使用されるとき、第1の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量が、第2の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量とは異なる場合、対象において1以上の抗RANタンパク質抗体レベルに「変化」が生じている。1以上の抗RANタンパク質抗体の上昇したレベルまたは減少したレベルのいずれかが第2の生体試料において観察されたとき、第1の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量は、第2の生体試料において検出された抗RANタンパク質抗体の量とは「異なる」と見なされる。
【0111】
いくつかの態様において、第1の生体試料は、対照試料(例として、対照の血液、血清、またはCSFの試料)である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる同じ対象においてスクリーニングされた、事前の(prior)試料(例として、同じ対象から、第2の試料より1時間早く、1日早く、2日早く、3日早く、4日早く、5日早く、6日早く、1週早く、2週早く、3週早く、1カ月早く、2カ月早く、3カ月早く、6カ月早く、1年早く、2年早く、3年早く、4年早く、5年早く、10年早く、20年早く採取された試料等々)である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる同じ対象においてスクリーニングされた、事後の(later)試料(例として、同じ対象から、第1の試料より1時間後に、1日後に、2日後に、3日後に、4日後に、5日後に、6日後に、1週後に、2週後に、3週後に、1カ月後に、2カ月後に、3カ月後に、6月カ後に、1年後に、2年後に、3年後に、4年後に、5年後に、10年後に、20年後に採取された試料等々)である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害があると診断されておらず、かつ明らかな症状も、目に見える症状も、またはそうでなければ表現型の症状も有さない対象(例として、健常対照の対象)から採取されたものである。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患または障害を有する異なる対象から採取された試料である。いくつかの態様において、対照試料は、RANタンパク質関連の疾患もしくは障害を有するかまたはこれを有すると疑われる対象と合致した(例として、齢(age)が合致した、性が合致した、等々)対照対象から採取された試料である。
【0112】
第1の生体試料と第2の生体試料とが得られる時間間隔は変動してもよい。いくつかの態様において、第1の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の第1の投与)に先立ち、1週間と1分間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第1の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の第1の投与)に先立ち、1日(例として、24時間)と1分間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の第1の投与)後、1分間と6カ月間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の第1の投与)後、1日と1週間との間に得られたものである。いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与(例として、治療剤の直近の投与または最後の投与)後、1日と1週間との間に得られたものである。
【0113】
いくつかの態様において、第2の生体試料は、治療剤の投与から約1時間後、5時間後、10時間後、24時間(例として、1日)後、48時間(例として、2日)後、120時間(例として、5日)後、30日後、45日後、または6カ月後に収集されてもよい。いくつかの態様において、幾つかの生体試料(例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの生体試料)は、例えば、特定された時間枠にわたり(例として、治療経過の最中)、対象から得られたものであって、1以上の抗RANタンパク質抗体が検出される。
【0114】
いくつかの態様において、処置後試料において検出された抗RANタンパク質抗体のレベル(例として、量)が、抗RANタンパク質抗体の処置前レベル(例として、量)と比較して増大していた場合、治療レジメンは成功している。いくつかの態様において、処置後試料において検出された抗RANタンパク質抗体のレベル(例として、量)が、抗RANタンパク質抗体の処置前レベル(例として、量)と比較して減少していた場合、治療レジメンは成功していない。いくつかの態様において、対象から得られた生体試料(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの試料)における抗RANタンパク質抗体のレベルは、治療レジメンの最中、絶えず監視されている(例として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多くの別々の時に測定される)。
【0115】
RANタンパク質の翻訳に関連する疾患および障害を診断ならびに処置する方法
本開示の側面は、対象(例として、ヒト対象)を、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する神経変性のある疾患ならびに障害(例として、ALSおよび/またはFTD)を有するかあるいはこれを発症するリスクにあるとして同定するための方法に関する。いくつかの態様において、本開示は、対象を、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALSおよび/またはFTD)を有するとして同定するための方法を提供するが、方法は、電気化学発光をベースとした免疫アッセイを使用して、対象から得られた生体試料において1以上の抗RANタンパク質抗体を検出すること;ならびに生体試料における抗RANタンパク質抗体の存在に基づき、対象が、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、ALS)を有すると決定すること、を含む。
【0116】
本開示は、いくつかの側面において、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例えば、ALS/FTD等々)について治療処置経過を監視する方法に関する。いくつかの側面において、本開示は、(例として、RANタンパク質の翻訳に関連する疾患または障害を有さない対象と比べて)RANタンパク質の増大した発現、翻訳、および/または蓄積を呈することが決定された対象へ有効量の治療剤を投与すること、ならびに電気化学発光免疫アッセイによって測定されるとおりの1以上の抗RANタンパク質抗体のレベルを決定すること(例として、検出すること)を含む、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害を処置する方法を提供する。いくつかの態様において、対象は、これまでに治療剤を(例として、決定することに先立ち)投与されている。いくつかの態様において、対象へ投与された治療剤は、これまでに投与された治療剤とは異なる。いくつかの態様において、対象は、電気化学発光免疫アッセイによって測定されるとおりの、生体試料における上昇または低減したレベルの抗RANタンパク質抗体の検出に基づき、増大または減少した用量の治療剤を投与される。
【0117】
RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害を処置する方法、あるいはその現行の処置を修飾する方法もまた、本開示によって企図される。いくつかの態様において、RANタンパク質に関連する疾患または障害は、以下:筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または前頭側頭型認知症;筋強直症ジストロフィー1型(DM1)および筋強直症ジストロフィー2型(DM2);脊髄小脳失調症1、2、3、6、7、8、10、12、17、31および36型;球脊髄性筋萎縮症;歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA);ハンチントン病(HD);アルツハイマー病(AD);脆弱X関連振戦失調症候群(FXTAS);フックス角膜内皮ジストロフィー(FECD);ハンチントン病類縁症候群2型(HDL2);脆弱X症候群(FXS);7p11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA7A;2q11.2の葉酸感受性脆弱部位に関する障害FRA2A;および脆弱XE症候群(FRAXE)からなる群から選択される。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法によって、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する、ある神経変性の疾患または障害を有するか、あるいはこれを発症するリスクがあるとして同定された対象(例として、ヒト対象)は、RANタンパク質に関連する疾患または障害を処置するのに有用な治療薬を投与される。
【0118】
いくつかの態様において、本開示によって記載される方法は、生体試料(例として、第2の生体試料)において検出された抗RANタンパク質抗体のレベルが、対照試料(例として、第1の生体試料)において検出されたRANタンパク質のレベルと比較して上昇していた場合に、治療剤(例として、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患(ALS/FTDなど)の処置のための剤、例えば、抗RAN抗体またはRANタンパク質ワクチン)を対象へ投与する(または投与するのを継続する)ステップを含む。いくつかの態様において、本開示によって記載される方法は、生体試料(例として、第2の生体試料)において検出された抗RANタンパク質抗体のレベルが、対照試料(例として、第1の生体試料)において検出されたRANタンパク質のレベルと比較して減少していた場合に、治療剤(例として、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(ALS/FTDなど)の処置のための剤)の対象への投与を停止するステップを含む。
【0119】
本明細書に使用されるとき、「処置する」または「処置」は、(a)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害の発病を予防あるいは遅延させること;(b)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害の重症度を低減させること;(c)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害に特徴的な症状の発症を低減あるいは予防すること;(d)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害に特徴的な症状の悪化を予防すること;および/または(e)RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患または障害の症状をこれまでに示した対象において、症状の再発を低減あるいは予防すること、を指す。
【0120】
例えば、ALS/FTDの文脈において、「処置する」または「処置」は、(a)ALSおよび/またはFTDの発病を予防または遅延させること;(b)ALSおよび/またはFTDの重症度を低減させること;(c)ALSおよび/またはFTDに特徴的な症状の発症を低減あるいは予防すること;(d)ALSおよび/またはFTDに特徴的な症状の悪化を予防すること;および/または(e)ALSおよび/またはFTDの症状をこれまでに示した対象において、ALSおよび/またはFTDの症状の再発を低減あるいは予防すること、を指す。ALS/FTDの処置のための治療剤の例は、これらに限定されないが、リルゾール(Rilutek、Sanofi-Aventis)、トラゾドン(Desyrel、Oleptro)、選択的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)、バクロフェン、ジアゼパム、フェニトイン、トリヘキシフェニジル、アミトリプチリン、抗RAN抗体等々を包含する。本明細書に記載のとおりの他の治療剤はまた、ALS/FTDおよびいずれの他のRANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害を処置するのにも使用されてよい。
【0121】
対象は、治療的に有効な量の1以上の治療剤を投与されていてもよい。本明細書に使用されるとき、「有効量」は、RANタンパク質の発現、翻訳、および/または蓄積に関連する疾患あるいは障害(例として、神経変性の疾患または障害)によって引き起こされる、1以上の兆候もしくは症状の処置または回復などの、医学的に所望される結果を提供するのに充分な、治療剤の投薬量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、対象において抗RANタンパク質抗体の産生を惹起するのに充分なRANタンパク質ワクチンの量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、処置を受けている対象から得られた試料中に存在する抗RAN抗体の量を(例として、処置を受けていない対象と比べて)増加させるのに有効な量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、対象において反復伸長を低減させるのに有効な量である。いくつかの態様において、治療的に有効な量は、対象においてRANタンパク質を産生するRNAの転写を低減させるのに有効な量である。ある態様において、治療的に有効な量は、対象においてRANタンパク質の翻訳を低減させるのに有効な量である。反復配列の発現またはRANタンパク質の翻訳を「低減すること」は、治療剤の投与後の対象における反復配列の発現またはRANタンパク質の翻訳の量またはレベルの(および投与に先立ち、対象における量またはレベルと比べた)減少を指す。
【0122】
ある態様において、有効量は、処置を受けている対象から得られた試料中に存在する抗RAN抗体の量(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象における抗RAN抗体のレベルと比べた抗RAN抗体のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで増加させるのに有効な量である。ある態様において、有効量は、RANタンパク質のレベル(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象におけるRANタンパク質のレベルと比べたRANタンパク質のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで低減させるのに有効な量である。ある態様において、有効量は、RANタンパク質の翻訳(例として、治療剤を投与されていない細胞または対象にけるRANタンパク質のレベルと比べたRANタンパク質のレベル)を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%まで低減させるのに有効な量である。
【0123】
有効量は、処置されている対象の齢および体調、対象における疾患または障害(例として、RANタンパク質の蓄積量、もしくはかかる蓄積によって引き起こされる細胞毒性)の重症度、処置の期間、いずれの併用治療の性質、特定の投与ルート、ならびに医療関係者の知識および見解の範囲内の他の因子で変動するであろう。有効量は、単回用量(例として、単一の経口用量)または複数回用量(例として、複数の経口用量)において包含されていてもよい。
【0124】
一般に、および本明細書の他のどこかに記載されるとおり、治療剤は、小分子(例として、メトホルミンまたはメトホルミン誘導体)、干渉RNA(例として、dsRNA、siRNA、miRNA、amiRNA、ASO、アプタマー等々)、タンパク質またはそのフラグメント、ペプチド、抗RANタンパク質抗体などの抗体等々であり得る。いくつかの態様において、治療剤は、例えば、タンパク質キナーゼR(PKR)経路、EIF2経路、またはEIF3経路などの、RANタンパク質の発現を制御する経路を調整することによって、RANタンパク質の発現を調整する。いくつかの態様において、治療剤は、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによって送達される。いくつかの態様において、抗RANタンパク質ペプチドワクチンは、ウイルスベクターによって送達される。いくつかの態様において、抗RANタンパク質抗体またはそのフラグメントをコードする1以上のウイルスベクターは、ウイルスベクターによって送達される。いくつかの態様において、治療剤は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子において、対象へ送達される。
【0125】
適切な追加の治療剤の同定および選択は、当業者の能力の範囲内にあり、対象が患う疾患または障害に依存するであろう。いくつかの態様において、ALS/FTDの処置のための1以上の追加の治療剤(例として、リルゾール(Rilutek、Sanofi-Aventis)、トラゾドン(Desyrel、Oleptro)、選択的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)、バクロフェン、ジアゼパム、フェニトイン、トリヘキシフェニジル、アミトリプチリン、メトホルミン、抗RAN抗体等々)は、対象へ投与される。いくつかの態様において、HDのための(例として、テトラベナジン(Xenazine)、バクロフェン、およびデューテトラベナジン(Austedo)等々)、ADのための(例として、コリンエステラーゼインヒビター(Aricept(登録商標)、Exelon(登録商標)、Razadyne(登録商標))、およびメマンチン(Namenda(登録商標))等々)、脆弱X症候群のための(例として、選択的セロトニン再取り込みインヒビター、カルバマゼピン、メチルフェニデート、トラゾドン等々)、脊髄小脳失調症のための(例として、バクロフェン、リルゾール、アマンタジン、バレニクリン等々)、脆弱X症候群のための(例として、セルトラリン、メトホルミン、カンナビジオール(CBD)、アカンプロサート、ロバスタチン、ミノサイクリン等々)、筋強直症ジストロフィー1型のための(例として、チデグルシブ、メキシレチン等々)、または筋強直症ジストロフィー2型のための(例として、Mexilitene、ガバペンチン、非ステロイド系の抗炎症薬(NSAIDS)、低用量の甲状腺補充、低用量のステロイド、三環式抗うつ薬等々)、1以上の追加の治療剤が対象へ投与される。
【0126】
処置薬の投与は、当該技術分野において知られているいずれの方法によっても達成されてよい(例として、Harrison's Principle of Internal Medicine,McGraw Hill,Inc.を見よ)。投与は、局部性または全身性であってもよい。治療剤は、腸内(例として、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、気管内、皮下、脳室内、経皮的、皮内、眼、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、および/または点滴薬によるとおり)、粘膜、経鼻、口腔内、舌下、気管内注入、気管支への注入(bronchial instillation)、吸入、経口スプレーとしての、鼻腔用スプレーとしての、および/またはエアロゾルとしての、を包含する、いずれのルートによっても投与され得る。全身性のルートは、経口および非経口を包含する。具体的に企図されるルートは、経口投与、静脈内投与(例として、全身性の静脈内注射)、血液および/またはリンパ供給を介する局部投与、および/または患部への直接投与である。いくつかの態様において、本開示によって記載されるとおりの処置薬は、筋肉内注射によって対象へ投与される。一般に、最も適切な投与ルートは、剤の性質(例として、胃腸管の環境におけるその安定性)、および/または対象の状態(例として、対象が、経口投与に耐えることができるかどうか)を包含する様々な因子に依存するであろう。ある態様において、本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、対象の目への局所投与に好適である。種々の投与ルートのための組成物は、当該技術分野において周知である(例として、Remington's Pharmaceutical Sciences by E.W.Martinを見よ)。
【0127】
いくつかの態様において、RANタンパク質の発現に関連する疾患または障害のための処置は、これを必要とする対象の中枢神経系(CNS)へ投与される。本明細書に使用されるとき、「中枢神経系(CNS)」は、これらに限定されないが、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液等々を包含する、対象の脳および脊髄のすべての細胞および組織を指す。治療剤を対象のCNSへ投与するモダリティ(Modalities)は、脳中への直接注射(例として、脳内注射、脳室内注射、実質内注射等々)、対象の脊髄中への直接注射(例として、髄腔内注射、腰部への注射等々)、またはそれらいずれかの組み合わせを包含する。
【0128】
いくつかの態様において、本開示によって記載されるとおりの処置は、対象へ、例えば、静脈内注射によって、全身的に投与される。全身的に投与される治療用分子は、いくつかの態様において、対象のCNSへの分子送達を改善するために修飾され得る。治療用分子のCNS送達を改善する修飾の例は、これらに限定されないが、血液脳関門を標的にする剤(例として、Georgieva et al.Pharmaceuticals 6(4):557-583(2014)によって開示されるとおり、トランスフェリン、メラノトランスフェリン、低密度リポタンパク質(LDL)、アンジオペップ(angiopeps)、RVGペプチド等々)との共投与またはこれとの抱合、BBB破壊剤(例として、ブラジキニン)との共投与、および投与に先立つBBBの物理的な崩壊(例として、MRIガイド下集束超音波による)等々を包含する。
【0129】
投薬量は、対象および投与ルートに依存するであろう。投薬量は、当業者によって決定され得る。
いずれの具体的な理論によっても拘束されることは望まないが、生体試料における検出(例として、抗RANタンパク質抗体の定量化)は、試料が得られた対象において治療剤または養生法(regime)の有効性を決定するために使用され得る。
【0130】
キット
いくつかの側面において、本開示は、1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドを含有する第1の容器と、1以上の検出可能な試薬を含有する第2の容器とを含むキットを提供する。いくつかの態様において、1以上の抗RAN抗体は、以下:ポリ(GP)ペプチド、ポリ(GR)ペプチド、ポリ(PR)ペプチド、およびポリ(PA)ペプチドから選択される1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドへ結合する。いくつかの態様において、1以上の抗RAN抗体は、以下:ポリ(CP)、ポリ(GA)、ポリ(GP)、ポリ(PR)、ポリ(GR)、ポリ(PA)、ポリ(A)、ポリ(G)、ポリ(S)、ポリ(C)、ポリ(Q)、ポリ(GD)、ポリ(GE)、ポリ(GQ)、ポリ(GT)、ポリ(L)、ポリ(LP)、ポリ(LPAC(配列番号1))、ポリ(LS)、ポリ(P)、ポリ(QAGR(配列番号2))、ポリ(RE)、ポリ(SP)、ポリ(VP)、ポリ(FP)、および/またはポリ(GK)のペプチドから選択される1以上の標的ジアミノ酸反復ペプチドへ結合する。いくつかの態様において、1以上の検出可能な試薬は、ルテニウム複合体、例えば、ルテニウム(II)トリス-ビピリジン-(4-メチルスルホン)(また[Ru(Bpy)3]+2とも称される)、またはその塩を含む。いくつかの態様において、キットは、対照試料を含有する第3容器を含む。対照試料は、陰性対照試料(例として、1以上の抗RANタンパク質抗体を含有しないか、もしくはこれを欠如している対照試料)、または陽性対照試料(例として、1以上の抗RANタンパク質抗体を含む対照試料、任意にここで、試料中の1以上の抗RANタンパク質抗体の量は知られている)であってもよい。
【0131】
例
この例は、対象から得られた生体試料において抗RANタンパク質抗体を検出する方法を記載する。本明細書に記載の方法によって検出される抗体は、外から投与された抗体(例として、治療として対象へ投与された抗体)、または内生抗体(例として、対象の細胞によって産生される抗体)であり得る。
【0132】
アッセイ方法
生体試料におけるRANタンパク質の検出のためのアッセイの一態様を描く概略図を
図1に示す。手短に言えば、疎水性プレートを標的ペプチド(例として、RANペプチドなどの標的ジアミノ酸反復ペプチド)でコーティングして、ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングする。生体試料(例として、対象から得られたライセートまたは血清)を、試料中の抗体が標的ペプチドへ結合する条件下でプレートへ加える。抗体-ペプチド複合体を二次検出剤(例として、検出可能な二次抗体)で標識する。次いで、標識された複合体を、(例として、Meso Scale Discovery(MSD)プレートリーダーなどのプレートリーダーを使用して)検出する。
【0133】
生体試料においてRANタンパク質を検出するための方法の一態様は、以下のステップを含む。マルチウェルアッセイプレート(例として、Meso Scale Discovery(MSD)アッセイプレート)を、1×PBSに希釈された標的ペプチド(1μg/ml)を含む、1ウェル当り40μlの溶液でコーティングする。この例において、標的ペプチドは、ジアミノ酸反復ペプチドGP8およびGtapA8であった。溶液の添加後、プレートを軽く叩き、溶液が各ウェルの底面にわたって均等に分布できるようにする。次いでプレートを接着シールで密封し、振盪させずに4℃にて終夜インキュベートする。翌日、プレートを振盪して溶液を除去する。プレートを(例として、1×TBSTで)洗浄し、軽く叩いて乾燥させる。次いで、約150μlブロッキング溶液(例として、1×TBSTに希釈された3% w/v BSA)をプレートの各ウェルへ加える。プレートを密封し、振盪させながら(例として、約600rpmにて)室温にて1時間インキュベートする。次いでプレートを振盪して1×TBSTで洗浄し、軽く叩いて乾燥させる。約25μlの生体試料(例として、組織ライセートまたは血清)をプレートの各ウェルへ加え、次いでこれを密封し、振盪させながら(例として、約600rpmにて)室温にて2時間インキュベートする。次いでプレートを振盪して1×TBSTで3回洗浄し、軽く叩いて乾燥させる。TBST中1%BSAに1μg/mlまで希釈された約25μlのSULFO-TAG検出抗体をプレートの各ウェルへ加え、室温にて2時間インキュベートする。次いでプレートを振盪して1×TBSTで3回洗浄し、軽く叩いて乾燥させる。1ウェル当り約150μlの、水に希釈されたTrisベースの緩衝剤(例として、1×MSD Read Buffer T)をウェルへ加える。緩衝剤を加えたときに、リバースピペッティング(reverse pipetting)の使用によって泡の創出を回避する。次いでプレートを、マイクロプレートリーダーを使用して即時に読取る。
【0134】
生体試料における治療用抗RANタンパク質抗体の検出
対象(例として、ヒト、霊長目の非ヒト動物、イヌ、モルモット、ラット、マウス、等々)に、治療用抗RANタンパク質抗体、例えば、ポリ(GP)、ポリ(GA)、ポリ(GR)、もしくはポリ(PR)のRANタンパク質、またはそれらの組み合わせを標的にする抗体を投与する。血清試料などの生体試料を投与後に収集する。対照対象に、送達ビヒクルのみを投与する。生体試料を、上の例に記載の方法を使用しアッセイする。
【0135】
生体試料における内生の抗RANタンパク質抗体の検出
対象(例として、ヒト、霊長目の非ヒト動物、イヌ、モルモット、ラット、マウス、等々)に、治療用抗RANタンパク質抗体(またはそのフラグメント)をコードするウイルスベクター、例えば、ポリ(GP)、ポリ(GA)、ポリ(GR)、もしくはポリ(PR)のRANタンパク質、またはそれらの組み合わせを標的にする抗体を発現するrAAVを投与する。血清試料などの生体試料を投与後に収集する。対照対象に、送達ビヒクルのみを投与する。生体試料を、上の例に記載の方法を使用しアッセイする。
【0136】
ワクチン接種された対象から得られた生体試料における抗RANタンパク質抗体の検出
対象(例として、ヒト、霊長目の非ヒト動物、イヌ、モルモット、ラット、マウス、等々)に、1以上のジアミノ酸反復ペプチド(例として、ポリ(GP)、ポリ(GA)、ポリ(GR)、ポリ(PR)、およびそれらの組み合わせ)を有する抗原を含む1以上のペプチドワクチンを投与する。血清試料などの生体試料を投与後に収集する。対照対象に、送達ビヒクルのみを投与する。生体試料を、上の例に記載の方法を使用しアッセイする。
【0137】
マウスから得られた生体試料における抗RANタンパク質抗体の検出
C9Orf72 ALSのマウスモデル(C9 Bacマウス)に、1以上のジアミノ酸反復ペプチド(例として、ポリ(GP)、ポリ(GA)、ポリ(GR)、ポリ(PR)、およびそれらの組み合わせ)を標的にするワクチンを投与した。動物に、生体試料の収集前に2~3回ワクチン接種した。対照マウスにはアジュバントのみを投与した。生体試料を、上の例に記載の方法を使用しアッセイした。
【0138】
図2は、抗RANタンパク質ワクチンで処置されたC9 Bacマウスから得られた血清における抗ポリ(GP)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GP)
8ペプチドでコーティングし、マウスが以下:GP
10(配列番号5)、GA
15(配列番号4)、GA
10(配列番号4)、GR
25(配列番号7)、PR
10(配列番号6)、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6))、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6)+GP
10(配列番号4))と指し示されたジペプチド反復(DPR)を標的にする2~3回のワクチンへ曝露された後の血清へ曝露した。またアジュバント対照マウスからのデータも示す。
【0139】
図3は、抗RANタンパク質ワクチンで処置されたC9 Bacマウスから得られた血清における抗ポリ(GA)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GA)
8(配列番号4)ペプチドでコーティングし、マウスが以下:GP
10(配列番号5)、GA
15(配列番号4)、GA
10(配列番号4)、GR
25(配列番号7)、PR
10(配列番号6)、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6))、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6)+GP
10(配列番号4))と指し示されたジペプチド反復(DPR)を標的にする2~3回のワクチンへ曝露された後の血清へ曝露した。またアジュバント対照マウスからのデータも示す。
【0140】
図4は、抗RANタンパク質ワクチンで処置されたC9 Bacマウスから得られた脳組織からのライセートにおける抗ポリ(GA)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GA)
8(配列番号4)ペプチドでコーティングし、マウスが以下:GA
15、GA
10、(GA
15(配列番号4)+GR
25(配列番号7)+PR
10(配列番号6))と指し示されたジペプチド反復(DPR)を標的にする2~3回のワクチンへ曝露された後の血清へ曝露した。またアジュバント対照マウスからのデータも示す。
【0141】
ALS患者から得られた生体試料における抗RANタンパク質抗体の検出
血清試料を、C9Orf72の突然変異によって特徴付けられるALSを有する患者から得た。生体試料を、上の例に記載の方法を使用しアッセイした。データは、対照試料と比べて、患者試料において増大したレベルの抗RANタンパク質抗体の存在を指し示す。
図5は、ヒトC9+ALS患者から得られた血清試料における抗ポリ(GA)抗体の検出のための代表的なデータを示す。アッセイプレートを(GA)
8(配列番号4)ペプチドでコーティングし、血清へ曝露した。
【配列表】
【国際調査報告】