(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用電解質配合物
(51)【国際特許分類】
H01G 11/62 20130101AFI20221110BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20221110BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20221110BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20221110BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20221110BHJP
H01G 11/32 20130101ALI20221110BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20221110BHJP
【FI】
H01G11/62
H01G11/56
H01G11/60
H01G11/78
H01G11/36
H01G11/32
H01G11/84
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520347
(86)(22)【出願日】2020-08-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 US2020048661
(87)【国際公開番号】W WO2021066976
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522128619
【氏名又は名称】サウス エイト テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】SOUTH 8 TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100123124
【氏名又は名称】角田 昌大
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】ルストムジ, サイラス,エス
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤー, ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA04
5E078AA09
5E078AB01
5E078BA15
5E078BA44
5E078BA47
5E078DA04
5E078DA06
5E078FA04
5E078FA05
5E078FA12
5E078FA13
5E078ZA02
5E078ZA03
(57)【要約】
液化ガス電解質を用いた電気化学キャパシタの性能を向上させるために、塩と溶媒の組み合わせが開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学キャパシタであって、
圧縮ガス溶媒と、1つ以上の固体または液体の塩との混合物を含むイオン伝導性電解質であって、前記圧縮ガス溶媒が、293.15Kの室温で100kPa超の蒸気圧を有する少なくとも第1の成分を含み、前記第1の成分が、フルオロメタン、ジフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、フルオロエチレン、ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロメタン、クロロエタン、クロロエテン、飽和ハロゲン化炭化水素、及び、不飽和ハロゲン化炭化水素、ならびにそれらの異性体からなる群から選択され、
1つ以上の塩がスピロ-(1,1´)-ビピロリジニウムテトラフルオロボレート、ジメチルピロリジニウムテトラフルオロボレートからなる群から選択される。エチルメチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、ジエチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、ジプロピルピロリジニウムテトラフルオロボレート、およびジブチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、ならびにこれらの異性体および組み合わせであり、
293.15Kの室温で100kPaより高い圧力に圧縮ガス溶媒を維持する加圧条件下でイオン伝導性電解質を封入するハウジングと、
前記イオン伝導性電解質と接触する少なくとも2つの伝導性電極と、
を含むことを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
一方または両方の電極が、活性炭、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される炭素材料から構成される、請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、2019年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/908515号、2019年10月7日に出願された米国仮特許出願第62/911505号、および2019年10月7日に出願された米国仮特許出願第62/911508号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本出願はまた、2019年10月28日に出願された米国特許出願第16/666155号、2019年5月15日に出願されたPCT/US2019/032413号、2018年5月18日に出願された米国仮出願第62/673792号、2019年10月28日に出願された米国特許出願第16/666131号、2019年5月15日に出願されたPCT/US2019/032414号、2019年5月18日に出願された米国仮出願第62/673752号、2018年10月22日に出願された米国仮出願第62/749046号、2014年3月28日に出願された米国仮出願第61/972101号、2013年11月15日に出願された米国仮出願第61/905057号、2014年11月17日に出願されたPCT/US14/066015号、2020年2月18日に出願された米国仮出願第15/036,763号、2017年4月27日に出願されたPCT/US17/29821号、2018年11月28日に出願された米国仮出願第62/342838号、2016年5月27日に出願されたPCT/US2020/026086号、2019年2月4日に出願された米国特許出願第62/800955号の優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明の実施形態は、電池および電気化学キャパシタなどの電気化学エネルギーデバイスにおいて使用するための電解質の組成物および化学配合物に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池及び二重層キャパシタなどの電気化学的エネルギー貯蔵装置は、正極と負極との間で電荷を運ぶためにイオン伝導性電解液を利用する。典型的には、これらの電解質は、+20℃の標準室温および標準圧力(約1.01325バール)で液体である。電解質溶液は、ある量の溶媒および塩ならびに追加の成分の混合物を使用する。
【0005】
電気化学キャパシタなどの電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、高電圧および高温で性能劣化を受ける。望ましくない分解は、不安定な電解液溶媒または塩で生じ、これは、高電圧または高温下にあるときにデバイス性能を劣化させる。典型的には、アセトニトリル溶媒中の1.0M TEABF4等の一般的な電解質は、-40~+65℃および2.7Vに限定されるであろう。-60℃および+85℃程度の高温または3.0Vより高い電圧で劣化しないことが非常に望ましい。そうするためには、電解質溶媒および塩配合物の進歩が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、化学製剤、電解質組成物、その使用の電気化学キャパシタ、及びその使用方法に関する。いくつかの開示される実施形態は、液化ガス溶媒を含む電解質のための新規な製剤に関する。本明細書では、セルの低温、高温、および高電圧性能を改善する電気化学キャパシタ用の電解質製剤が開示される。
【0007】
一実施形態は、1つ以上の液化ガス溶媒および1つ以上の塩を含むイオン伝導性電解質と、イオン伝導性電解質を封入し、液化ガス溶媒に加圧状態を提供するように構造化される筐体と、イオン伝導性電解質と接触する少なくとも2つの伝導性電極とを含む、電気化学キャパシタに関する。
【0008】
いくつかの実施形態では、液化ガス溶媒は、圧縮圧力が加えられたときの温度で、液化ガス溶媒の蒸気圧に等しいか、またはそれ以上の圧縮圧力下に置かれることができ、それによって液化ガス溶媒を液相に維持する。いくつかの実施形態では、液化ガス溶媒は、293.15Kの室温で100kPaの大気圧を超える蒸気圧を有する。本開示の実施形態は、化学製剤、電解質組成物、それらを使用する電気化学デバイス、およびそれらの使用方法に関する。開示されるいくつかの実施形態は、液化ガス溶媒を含む電解質のための新規な製剤に関する。
【0009】
当業者には明らかであるように、追加の態様、代替形態、および変形形態もまた、本明細書に開示され、本発明の一部として含まれるものとして具体的に企図される。本発明は、本出願または関連出願において特許庁によって許可された特許請求の範囲にのみ記載されており、以下の特定の実施例の概要説明は、法的保護の範囲を限定、定義、または別様に確立するものでは決してない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は、本発明において使用され得るいくつかの塩の構造を示す。
図2は、ジフルオロメタン中の1.0M SBPBF
4から構成される電気化学デバイスについての様々な温度での放電曲線を示す。
図3は、種々の温度におけるジフルオロメタン中の1.0M SBPBF
4から構成される電気化学デバイスについてのキャパシタンス対放電速度を示す。
図4は、ジフルオロメタン中の1.0M SBPBF
4から構成され、+85℃で1500時間2.7Vに保持された電気化学デバイスの静電容量対時間を示す。
図5は、+85℃で1500時間、2.7Vに保持された、ジフルオロメタン中の1.0M SBPBF
4から構成される電気化学デバイスのDCR抵抗対時間を示す。
図6は、種々の温度におけるジフルオロメタン中の1.0M TBABF
4から構成される電気化学デバイスについての静電容量対放電速度を示す。
図7は、種々の温度におけるジフルオロメタン中の0.3M TEABF
4および0.7M TBABF
4から構成される電気化学デバイスについての静電容量対放電速度を示す。
図8は、+20℃でジフルオロメタン中0.3M TEABF
4から構成された電気化学デバイスの静電容量対放電速度を示す。
【発明の詳細な説明】
【0011】
本明細書では、本発明を実施するために発明者によって企図された任意の最良の形態を含む、本発明のいくつかの特定の実施例が参照される。これらの特定の実施形態の例は、添付の図面に示されている。本発明は、これらの特定の実施形態に関連して記載されているが、それらは、記載または図示された実施形態に本発明を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。逆に、それらは、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内に含まれ得る代替形態、修正形態、および均等物を包含することが意図される。
【0012】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。本発明の特定の例示的な実施形態は、これらの具体的な詳細の一部または全部を伴わずに実装され得る。他の例では、当業者に周知のプロセス動作は、本発明を不必要に不明瞭にしないように、詳細に説明されていない。本発明の様々な技法および機構は、明確にするために、時として、単一の形態で説明されるであろう。同様に、本明細書で示され説明される方法の様々なステップは、示された順序で実行される必要はなく、または特定の実施形態では実行される必要もないことに留意されたい。さらに、本明細書で説明される方法のいくつかの実装形態は、示されたまたは説明されたものよりも多いまたは少ないステップを含む場合がある。エンティティ間の接続または関係は、2つ以上のエンティティ間の接続、関係または通信を必ずしも意味しないことに留意されたい。したがって、様々な他のエンティティまたはプロセスが、任意の2つのエンティティ間に存在または発生し得るので、示された接続は、必ずしも直接的な妨げられない接続を意味しない。
【0013】
デバイスに蓄積されるエネルギーを最大にするために、電気化学キャパシタの電圧および容量を増加させることが好ましい。さらに、デバイスは、広範囲の温度にわたって動作し、良好な高出力(高速充電または高速放電)特性を有しなければならない。TEABF4(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート)塩と混合された有機液体であるアセトニトリルは、電気化学キャパシタ用の電解液として最も一般的に使用されるが、デバイスは、一般的に、2.7Vおよび-40~+65℃の温度動作に限定される。以前に開示されたのは、種々の塩と混合され、-60℃までの広い温度範囲にわたって動作することが示された新規の液化ガス溶媒、ジフルオロメタンであったが、高温は+65℃に限定され、溶媒内での不十分な塩溶解度および拡散に起因して良好な高出力性能を有さなかった。
【0014】
液化ガス電解質と組み合わせて使用される、これまで開示されていない塩が本明細書に開示される。スピロ-(1,1´)-ビピロリジニウムまたはジメチルピロリジニウムテトラフルオロボレートなどの塩は、種々の実験で測定した場合に、液化ガス電解質、特にジフルオロメタン中で少なくとも2.0Mの優れた溶解性を示す。そうでなければ、液化ガス電解質中でのこれらの塩の溶解性が、慎重な実験なしでは一般的な塩よりもかなり高いことを決定することは不可能であったと考えられる。この予想外の溶解度の高さは、エチル基が2つ結合して溶解度の高いカチオンになっているという独特の構造によるものと考えられる。カチオンにこのような構造を持たせることで、ジフルオロメタンや他の液化ガス系溶媒への溶解性を大きく向上させることができることがわかる。従来の液体溶媒中でのこれらの塩の溶解性の増加は、以前に開示されているが、本明細書に開示されるように、液化ガス溶媒中での溶解性をチェックすることを誰も試みなかったことが分かる。さらに、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートおよびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの一般的な塩より高い伝導率およびより高いセルキャパシタンスを可能にし、これは、炭素電極内部のさらにより小さいナノ細孔へのアクセスを可能にする。これらの塩を電気化学キャパシタデバイスに使用したところ、-60~+85℃の広い温度範囲で、優れた充放電速度と容量保持率を示し、予想外に高い性能を示した。テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートおよびテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの一般的な塩を用いた場合、低温での性能が不十分であった。これは、これらの低温での塩の沈殿によるものであった。これとは対照的に、スピロ-(1,1´)-ビピロリジニウムテトラフルオロボレートまたはジメチルピロリジニウムテトラフルオロボレートは、予想外に溶解度が高く、低温でなお非常に優れた性能を発揮する。この性能は、注意深い実験なしに決定できないものであった。さらに、スピロ-(1,1′)-ビピロリジニウムテトラフルオロボレートまたはジメチルピロリジニウムテトラフルオロボレートを用いたセルは、従来の電気化学キャパシタでは達成できなかった2.7V、+85℃での加速寿命試験で予想外に優れた寿命を示した。従来の液体ベースの電解質(例えば、アセトニトリル)では、これらの塩は、+65℃で改善された電圧3.0Vを示したが、+85℃の高温で2.7Vの電圧で動作し、-60℃の低温で高出力を維持する能力を同時に示したものはなかった。これは、塩および溶媒系の両方の安定性について驚くほど好ましい結果を示した。
【0015】
一実施形態では、電気化学的エネルギー貯蔵装置は、電気化学キャパシタに関する。いくつかの実施形態では、電気化学キャパシタはまた、2つの導電性電極およびイオン伝導性電解液を封入する筐体を含んでもよい。いくつかの実施形態では、液化ガス溶媒は、293.15Kの室温で100kPaの大気圧を上回る蒸気圧を有する。いくつかのそのような実施形態では、液化ガス溶媒は、圧縮圧力が印加されるときの温度における液化ガス溶媒の蒸気圧以上の圧縮圧力下に置かれ、それによって、液化ガス溶媒を液相に保つことが可能であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、導電性電極の一方または両方は、活性炭素、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料から構成することができる。加えて、電極は、PVDF、SBR、CMC、PTFEなどのバインダー材料を含有してもよい。電極は、アルミニウム、銅、ニッケル、チタンなどの電流コレクタ材料上にコーティングされてもよい。電流コレクタは、箔、メッシュ、または発泡体タイプの材料であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、電気化学デバイスは、PCT/US2014/066015、PCT/US2017/29821、PCT/US2019/032414、およびPCT/US2019/032413に記載されるような電気化学キャパシタなどの電気化学エネルギー貯蔵デバイスである。
【0018】
別の実施形態において、液化ガス溶媒は、ジフルオロメタンを含む。別の実施形態において、液化ガス溶媒は、フルオロメタンを含む。別の実施形態では、液化ガス溶媒は、1,1-ジフルオロエタンからなる。別の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタンとジフルオロメタンとの混合物からなる。別の実施形態では、液化ガス溶媒は、1,1-ジフルオロエタンとジフルオロメタンとの混合物からなる。別の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタンと1,1-ジフルオロエタンとの混合物からなる。別の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、及び1,1-ジフルオロエタンの混合物からなる。二成分混合溶媒系の比率は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、及び1,1-ジフルオロエタンのいずれか2つの液化ガス溶媒の重量で約99:1、98:2、95:5、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90、5:95、2:98、1:99でありうる。三成分混合溶媒系の比率は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、および1,1-ジフルオロエタンの3つの液化ガス溶媒について1:1:1、1:2:2、1:3:3、2:1:2、1:2:3、1:3:3程度とすることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、1つ以上の塩は、正に荷電したカチオン(例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウムアンモニウム、スピロ-(1,1´)-ビピロリジニウム、1,1-ジメチルピロリジニウム、および1,1-ジエチルピロリジニウム)と、負に荷電したアニオン(例えば、アセテート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサラート)ボラート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、臭化物、塩化物、ジシアンアミド、リン酸ジエチル、ヘキサフルオロリン酸、硫酸水素塩、ヨウ化物、メタンスルホン酸、メチル-ホスホネート、テトラクロロアルミン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、およびトリフルオロメタンスルホン酸)との対で構成され得る。
【0020】
一実施形態では、該塩は、構造(1)を有するスピロ-(1,1´)-ビピロリジニウムテトラフルオロボレート(SBPBF
4)からなり、別の実施形態では、塩は、構造(2)を有するジメチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(DMPBF
4)で構成されている。別の実施形態では、該塩は、構造(3)を有するジメチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(DMPBF
4)からなり、別の実施形態では、該塩は、構造(4)を有するジエチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(DEPBF
4)からなり、別の実施形態では、塩は、構造(5)を有するジプロピルピロリジニウムテトラフルオロボレート(DPPBF
4)から構成され、別の実施形態では、該塩は、構造(6)を有するジエチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(DPPBF
4)からなる。別の実施形態では、該塩は、構造(7)を有するテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TBABF
4)からなる。別の実施形態では、該塩は、構造(8)を有するテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TBABF
4)からなり、別の実施形態では、該塩は、構造(9)を有するテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF
6)からなる。これらの9つの構造を
図1に示す。
【0021】
別の実施形態において、塩(1)~(9)において使用される正に荷電したカチオンのいずれかは、複数の負に荷電したアニオン、例えば、アセテート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサラート)ボラート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、臭化物、塩化物、ジシアンアミド、リン酸ジエチル、ヘキサフルオロリン酸、硫酸水素、ヨウ化物、メタンスルホネート、メチルホスホネート、テトラクロロアルミネート、テトラフルオロボレート、およびトリフルオロメタンスルホネートとともに使用され得る。
【0022】
液化ガス溶媒中の塩は、約0.001、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、または3モル濃度であり得る。別の実施形態では、1つ以上の塩は、塩の混合物で電解質を形成するために、任意のそのような濃度で使用することができる。これは、ジフルオロメタン中の0.7M SBPBF4および0.3M TEABF4であり得、別の実施形態では、これは、ジフルオロメタン中の0.5M SBPBF4および0.5M TBABF4であり得る。別の実施形態では、これは、ジフルオロメタン中の0.3M SBPBF4および0.7M TBAPF6であり得る。別の実施形態では、これは、ジフルオロメタン中の1.0MのSBPBF4であり得る。別の実施形態において、これは、ジフルオロメタン中の1.0M TBAPF6であり得る。別の実施形態において、これは、ジフルオロメタン中の0.3MのTEABF4であり得る。別の実施形態において、これは、ジフルオロメタン中の1.0MのDMPBF4であり得る。
【0023】
本明細書に記載される代替または追加の実施形態は、前述の説明または本明細書の他の箇所のいずれかの説明の特徴のうちの1つ以上を含む電解質組成物を提供する。
【0024】
本明細書で説明される代替または追加の実施形態は、前述の説明または本明細書の他の場所の任意の説明の特徴のうちの1つ以上を備える、デバイスを提供する。
【0025】
本明細書に記載される代替または追加の実施形態は、前述の説明または本明細書の他の箇所のいずれかの説明の特徴のうちの1つ以上を含む電解質組成物またはデバイスを使用する方法を提供する。
【0026】
当業者は、「イオン伝導性電解質」に関連して本明細書で使用される「1つ以上の塩」、「1つ以上の溶媒」(「液化ガス溶媒」および「液体溶媒」を含む)、および「1つ以上の添加剤」という用語が、1つまたは複数の電解質成分を指し得ることを理解するであろう。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
電気化学キャパシタデバイスを、ジフルオロメタン(DFM)中の1.0M SBPBF
4からなる液化ガス電解液を用いて試験した。デバイスを3.0Vに60分間充電し、様々な温度で5Aの速度で放電した。+85℃から-55℃まで良好に機能し、その温度範囲にわたってキャパシタンスまたはインピーダンスの変化はほとんどなかった。78℃の低温では、若干の容量低下を示したが、それでも、最新の電気化学キャパシタと比較すると、低温で優れた性能を示した。最も驚くべきことは、キャパシタが3.0Vおよび+85℃で短時間良好に機能する能力であり、この予想外の性能は、3.0Vおよび+85℃で数分または数時間保持した場合でさえ急速な劣化を示す最新技術のキャパシタの性能よりも優れている。これは、短期間の高温が予想される領域に適用される。性能測定基準を以下の表1に記載し、放電曲線を
図2に示す。
【0028】
【0029】
(実施例2)
電気化学キャパシタデバイスを、ジフルオロメタン(DFM)中の1.0M SBPBF
4からなる液化ガス電解液を用いて試験した。デバイスを、-60℃、+20℃、および+85℃において40Ampまでの様々な放電速度で試験した。各温度で試験した電流に対しての感知できる変化はなく、各温度での高性能を示すことがわかった。各温度でのキャパシタンス対温度データを
図3にプロットする。
【0030】
(実施例3)
電気化学キャパシタデバイスを、ジフルオロメタン(DFM)中の1.0M SBPBF
4からなる液化ガス電解液を用いて試験した。デバイスを2.7V及び+85℃で加速寿命試験した。デバイスを試験期間中この温度で保持し、100時間間隔で放電させてキャパシタンスをチェックし、その直後に2.7Vに充電し戻した。キャパシタンス及びDCR対時間データをそれぞれ
図4及び5に示す。一般に、セルは、この「直流寿命」試験に合格し、1500時間の試験で静電容量が7%低下し、DCR(抵抗値)が26%上昇した。一般に、この「直流寿命」試験では、静電容量が20%未満、DCRが50%未満の低下で合格となる。この驚くべき結果は、SBPBF
4塩及びジフルオロメタン液化ガス溶媒系の優れた安定性を示す。以前には、別の電解液が、1500時間にわたって+85℃で2.7Vの性能のこの組み合わせを示したことは決してない。他の溶媒(例えば、アセトニトリル)中で使用される同じ塩が、ジフルオロメタンなどの新しい液化ガス溶媒中で非常に良好に機能することは、当業者には明らかではない。この性能を示すためには実験試験が必要であり、本明細書で初めて開示され、塩と溶媒とのこの独特の組み合わせがデバイスの性能を著しく向上させることが示される。
【0031】
(実施例4)
比較試験として、ジフルオロメタン(DFM)中の1.0M TBABF
4からなる液化ガス電解液を用いて電気化学キャパシタデバイスを試験した。デバイスは、-60及び+20℃で40Aまでの様々な放電速度で試験した。20℃では5Aから40Aへの放電で容量が6%低下するが、低温では容量が大幅に低下する。各温度での容量対放電電流を
図6に示す。セルは、-60℃の温度で高いDCRで非常に不十分に機能した。これは、良好な低温性能に必要とされるのは液化ガス溶媒ジフルオロメタンでも塩の良好な溶解性でもなく、開示されたSBPBF
4塩及びジフルオロメタン溶媒の場合のように、塩及び溶媒の正しい組み合わせでもあることを示す。さらに、
図3に示した性能と比較すると、SBPBF
4塩の静電容量とTBABF
4塩の静電容量とでは、SBPBF
4塩の方が高くなっている。これは、小さいサイズのカチオンが、炭素電極上のより多くのナノ細孔にアクセスすることができ、デバイスキャパシタンスを増加させるためである。これらの異なる測定基準は、実際の電池性能を決定するために実験が行われない限り、明白ではないであろう。
【0032】
(実施例5)
比較試験として、ジフルオロメタン(DFM)中の0.3TEABF
4および0.7M TBABF
4からなる液化ガス電解質を用いて電気化学キャパシタデバイスを試験した。このデバイスは、-60℃と+20℃において、最大40Aまでのさまざまな放電速度でテストされた。+20℃での5Aから40Aへの放電では容量の低下はほとんどないか全くないが、より低い温度では容量の大幅な低下がある。各温度での容量対放電電流を
図7に示す。+85℃の温度で高いDCRを有する電池の性能は非常に悪かった。
【0033】
(実施例6)
比較試験として、液化ガスを用いて電気化学キャパシタ装置を試験した。電解質ジフルオロメタン(DFM)中に0.3TEABF
4を含む。デバイスを、+20℃で40Aまでの様々な放電速度で試験した。放電電流のレベルが増加すると、キャパシタンスが著しく低下する。キャパシタンス対放電電流を
図8に示す。電池は、-60℃及び+85℃の極端な温度で高いDCRで非常に不十分に機能した。
【0034】
(実施例7)
比較試験として、DFM中の1.0M SBPBF4、DFM中の1.0M TBABF4、DFM中の0.3TEABF4+0.7M TBABF4、及びジフルオロメタン(DFM)中の0.3M TEABF4から構成される液化ガス電解液を用いて、いくつかの電気化学キャパシタデバイスを試験した。各セルについて、DCR抵抗を測定し、その結果を下記表2に示す。明らかに、DFM中にSBPBF4塩を有するセルは、+20℃および-60℃の両方で試験したセルの最も低い耐性を有した。
【0035】
【0036】
本発明の例示的な実施形態および適用例が、上述され、含まれる例示的な図に示されるものを含めて本明細書で説明されたが、本発明がこれらの例示的な実施形態および適用例に、または例示的な実施形態および適用例が本明細書で動作または説明される方法に限定されることは意図されていない。実際、当業者には明らかなように、例示的な実施形態に対する多くの変形および修正が可能である。本発明は、結果として得られるデバイス、システム、または方法が、本特許出願または任意の関連特許出願に基づいて特許庁によって許可される請求項のうちの1つの範囲内に含まれる限り、任意のデバイス、構造、方法、または機能性を含んでもよい。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学キャパシタであって、
圧縮ガス溶媒と、
固体の塩との混合物を含むイオン伝導性電解質であって、
前記圧縮ガス溶媒が、293.15Kの室温で100kPaを超える蒸気圧を有する
ジフルオロメタンであり
前記塩がスピロ(1,1′)-ビピロリジニウムテトラフルオロボレートであり、
293.15Kの室温で100kPaより高い圧力に圧縮ガス溶媒を維持する加圧条件下でイオン伝導性電解質を封入するハウジングと、
前記イオン伝導性電解質と接触する少なくとも2つの伝導性電極と、
を含
み、
前記塩は、+85℃の温度で、圧縮ガス溶媒への溶解度が1M以上であることを特徴とする電気化学キャパシタ。
【請求項2】
一方または両方の電極が、活性炭、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される炭素材料から構成される、請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
【国際調査報告】