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特表2022-548342デバイスとしての単電極セルおよび二つ以上のセルの直列物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-18
(54)【発明の名称】デバイスとしての単電極セルおよび二つ以上のセルの直列物
(51)【国際特許分類】
   H01L 39/12 20060101AFI20221111BHJP
【FI】
H01L39/12 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569879
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 IB2020054973
(87)【国際公開番号】W WO2020240412
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】115542
(32)【優先日】2019-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513303795
【氏名又は名称】ウニベルシダージ ド ポルト
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDADE DO PORTO
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソウザ ソアレス ジ オリベイラ ブラガ,マリア ヘレーナ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AB11
4M113AC44
4M113CA31
4M113CA44
(57)【要約】
本発明は、誘電率が非常に高い強誘電体を含む、室温未満から室温超の温度でのデバイスとしての単電極セル(10)および二つ以上のセルの直列物に関する。一つ以上のセルによって構成されるデバイスにおいて、セルは、互いに物理的に接触する必要はなく、三つのセルのいずれの間にも物理的接触なしで、一方の端子(300)が第一セルに接続され、他方の端子(310)が第三セルに接続されうる。強誘電体の双極子の自発的かつ動的な整列により、セル、複数のセルまたはデバイスの表面の様々な点で電位差が誘起され、導体端子によって電流が採取されうる。本発明は、エネルギー貯蔵デバイスの非接触充電のために、およびいくつかの部品または製品の一部として使用されうる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電性絶縁体と、
セルの様々な点で端子が接続された、電極、強誘電体、強誘電性誘起超伝導体、半導体、絶縁体、超伝導体、強誘電体ベースのデバイスまたはそれらの一部と
を含む単電極セルであって、
前記強誘電性絶縁体は、界面で-40℃~170℃の温度で10より高い誘電率εを有する、
単電極セル。
【請求項2】
前記強誘電性絶縁体は、0≦y≦1および0≦z≦3であるLi3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、Li3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、Na3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、Na3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、K3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、K3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)もしくはLi3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、Li3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、Na3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、Na3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、K3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、K3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)のような結晶性材料、それらの混合物、またはそれらとCaCuTi12、BaTiO、YBaCu7‐x、SrTiOもしくは他の強誘電体もしくは超伝導体材料との混合物、またはそれらとCuO、SiO、LiS、LiO、LiI、NaS、NaO、NaI、KS、KO、KI、Al、MgB、HO、HS、ポリマー、イオン性液体もしくは他の溶媒もしくはイオン性材料との混合物である、請求項1に記載の単電極セル。
【請求項3】
前記強誘電性絶縁体は、ポリマー、樹脂、可塑剤、接着剤、または別の結合剤と混合される、請求項1または請求項2に記載の単電極セル。
【請求項4】
前記強誘電性絶縁体は、セルロース、繊維ガラス、または布などのマトリックスに埋め込まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項5】
前記電極導体は、Al、Zn、Mg、K、Li、Na、合金、化合物、複合体、混合物または発泡体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項6】
前記電極導体は、C、Cu、Fe、Ni、Sn、Ti、真ちゅう、青銅、合金、化合物、複合体または発泡体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項7】
前記電極導体は、C発泡体、Cナノチューブ、Cフェルト、C紙、グラファイト、またはグラフェンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項8】
前記電極半導体は、Si、Ga、GaAs pもしくはnドープSiまたはpもしくはnドープGaまたはBaTiOなどの他の半導体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項9】
前記電極および強誘電性絶縁体は、長方形、円盤、リング、トロイダル、または任意の規則的または不規則な形状を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項10】
前記電極および強誘電性絶縁体は、鋸形状のエッジまたは電荷蓄積を促進する任意の他の形状を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項11】
前記セルは、絶縁体保護層によって保護される、請求項1~10のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項12】
前記セルは、パッケージに封入される、請求項1~11のいずれか一項に記載の単電極セル。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項にしたがって定義される二つ以上の単電極セルの直列物であって、
前記二つ以上のセルは、互いに整列し、前記セルは物理的接触なしでmmまたはcmの距離によって分離され、
または
前記二つ以上のセルは、一つのセルの負極が次のセルの正極と接続してセル電位を加えるように接触する、
直列物。
【請求項14】
前記セルは、導体、半導体、または超伝導体である、請求項13に記載の直列物。
【請求項15】
前記二つの電極は、間に強誘電性絶縁体を有する、請求項13または請求項14に記載の直列物。
【請求項16】
フルセルが、電極が類似するかまたは異なる二つの単電極セルの直列物である、請求項13~15のいずれか一項に記載の直列物。
【請求項17】
前記電極はZnおよびCである、請求項16に記載の直列物。
【請求項18】
セルの負極および異なるセルの正極に負荷が接続される、請求項13~17のいずれか一項に記載の直列物。
【請求項19】
前記負荷はLEDである、請求項18に記載の直列物。
【請求項20】
前記二つの導体電極は、一つ以上の交互の強誘電体および/または絶縁体材料の層対によって分離される、請求項13~19のいずれか一項に記載の直列物。
【請求項21】
エネルギーハーベスタのためのデバイスとして、エネルギー貯蔵デバイスとして、トランジスタ、コンピュータ、量子コンピュータ、センサ、充電器、アクチュエータ、熱電子デバイス、温度コントローラ、Internet of Things、光起電力セル、パネル、風力タービン、スマートグリッド、送電、変圧器、電力貯蔵デバイス、電気モータ、飛行機、車、ボート、潜水艦、衛星、ドローン、ロケット、および/または宇宙船の一部としての、請求項1~12のいずれか一項に記載のセル、または請求項13~20のいずれか一項に記載の二つ以上の単電極セルの直列物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電率が非常に高い強誘電体と、電極、強誘電体、強誘電性誘起超伝導体、半導体、絶縁体、超伝導体、強誘電体ベースのデバイスまたはその一部とを含む全温度静電効果デバイスである。本発明は、単電極強誘電性誘起超伝導体と一つ以上の電極、単電極セルまたはフルセルとの結合物も含みうる。ホール効果のような現象の観察および応用と生成された電位差の後の採取のために、セル、セル結合物、またはデバイスの様々な点で導体端子が接続される。一つ以上の強誘電性誘起超伝導体または強誘電性絶縁体セルによって構成されるデバイスにおいて、セルは互いに物理的に接触する必要はなく、三つのセルのいずれの間にも物理的接触なしで、一方の端子が第一セルに接続され、他方の端子が第三セルに接続されうる。強誘電体の双極子の自発的かつ動的な整列により、セル、複数のセルまたはデバイスの表面の様々な点で電位差が誘起され、導体端子によって電流が採取されうる。二つまたはいくつかの単電極セルの間、単電極セルと一つの電極、フルセル、またはデバイスとの間で、第一のものによって界面で産出される電場は、第二のものに対称的な分極を誘起してホール効果の産物のように表面の一方の側に電荷キャリアの蓄積を、他方の側に鏡像電荷の蓄積を生じるのに十分である。
【背景技術】
【0002】
強誘電体材料は、外部電場の印加によって反転されうる自発電気分極を有する材料である。全ての強誘電体は焦電体であり、その自然の電気分極は反転可能であり温度に関係する。
【0003】
ホール効果は、電導体を横断した電位差の生成である。元のホール効果では、印加磁場に垂直な印加電流による鏡像電荷の蓄積から電位差が蓄積される。本発明においては、効果は電気絶縁体または導体を横断した電位差および電荷蓄積による電気力に基づいて生じる静電効果であり、横方向印加電流または印加磁場を用いる必要はない。
【0004】
エネルギーを採取し、その後貯蔵する新規な構造物の開発は、人類に重要な利益をもたらす。
【0005】
超伝導体は、ゼロ抵抗を示すことができる材料であり、したがってこれは電子に関係する特性である。超伝導体は、印加電位なしで電流を維持することもでき、これはMRIマシンに見られるような超伝導電磁石で利用される特性である。実験により、超伝導コイルの電流が劣化せずに何年も持続しうることが実証されている。低温のBe、Ti、Zr、Zn、SnおよびHgBaCaCuなどの銅酸化物高温超伝導体または鉄系FeSeのようないくつかの材料が超伝導を示すことが報告されている。既知の最も高温の超伝導体はHSであるが、これは高圧力も要する。
【0006】
したがって超伝導体は、損失のない電力の伝達を可能にし、放熱を示さない(ジュール効果がない)。
【0007】
強誘電体と別の材料など誘電率が大きく異なる二つの材料間の界面で二次元超伝導が生成されうる。これは、対称性を自発的に破り、2D超伝導を誘起する材料/強誘電性絶縁体界面で起こる急激な相転移(誘電率が急激に変化する)に起因する。
【0008】
金属と誘電率が非常に高い強誘電体との界面に沿って超伝導が生じうる。
【0009】
本明細書に提示されるデバイスなどのように、空気/強誘電体、イオン性液体/強誘電体、半導体/強誘電体の界面に沿っても2D超伝導が生じうる。
【0010】
強誘電超伝導体の表面上で、双極子の整列および分極はそのままで一つの界面から別の界面に表面を通して電流が伝導されうる。この現象は、デバイスセルを放電する間にも何年もの充電をもたらしうる。
【0011】
0≦y≦1および0≦z≦3であるLi3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、Li3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、Na3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、Na3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、K3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、K3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)などの誘電率が極めて高い強誘電体ガラスもしくはLi3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、Li3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、Na3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、Na3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、K3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、K3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)のような結晶性材料、それらの混合物、またはそれらとCaCuTi12、BaTiO、YBaCu7‐x、SrTiOもしくは他の強誘電体もしくは超伝導体材料との混合物、またはそれらとCuO、SiO、LiS、LiO、LiI、NaS、NaO、NaI、KS、KO、KI、Al、MgB、HO、HS、ポリマー、イオン性液体もしくは他の溶媒もしくはイオン性材料との混合物は、誘電率が実質的に異なる材料との界面で超伝導体となることができ、その材料は、「セル」または「デバイス」の非存在下で強誘電体材料を2D超伝導体にする空気であることもできる。
【0012】
単電極セルは、以下では、高誘電率材料と接触する一つの電極によって構成されるセルである。セルは、高誘電率材料の上に保護層を有しうる。電極は、導体もしくは半導体またはそれらの混合物でありうる。セルの端子は、電極の場合によっては両側に位置する様々な点に取り付けられることができ、高誘電率材料の表面と接触しうる。
【0013】
フルセルは、強誘電体材料を間に備える二電極以上のセルである。電極は類似することも異なることもできる。
【0014】
単電極セル、フルセルまたはそれらの混合物の結合物は、以下では、セルが準平行側面を最も近い単数/複数のセルと整列させて(場合によっては直列に)互いに接続されるかのように配置された結合物である。セルは、同じタイプの電極を通して、または異なる電極を通して接続されうる。第二セルが第一セルおよび第三セルに接続されずに、一番目のセルが第三セルに接続されうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、室温未満から室温超で機能しうる、誘電率が非常に高い強誘電体に接触するかもしくは単にその近くにある導体の二つの異なる点の間、または強誘電体の表面とそれに接触する導体コレクタとの間、または二つの単電極セルの間、またはフルセルもしくはセルの結合物の間の強誘電誘起電位差を対象とする。
【0016】
本発明は、強誘電分極および導体、半導体、単電極セル、フルセルまたはセル結合物における静電的に誘起される電位差、ならびに強誘電性誘起超伝導体表面電流を対象とする。
【0017】
本発明の特徴は、強誘電体との物理的接触のない(物理的に分離された)導体、半導体、絶縁体、セル、またはセル結合物における強誘電性誘起電荷蓄積を提供することである。
【0018】
本発明の特徴は、電極、フルセル、セル結合物における強誘電性誘起電荷蓄積を提供し、したがって磁束の変化を含むファラデーの電磁誘導の法則に回帰せずに、元のホール効果のような磁場および横方向電流に回帰せずに、摩擦または材料のいずれかとのいかなる機械的相互作用にも回帰せずに電位差を誘起することである。したがって、本発明は、物理的接触なしでセルまたはセル結合物を連続的に充電または自己充電する方法を提供する。
【0019】
本発明は、強誘電性絶縁体と、セルの様々な点で端子が接続された、電極、強誘電体、強誘電性誘起超伝導体、半導体、絶縁体、超伝導体、強誘電体ベースのデバイスまたはその一部とを含む単電極セルであって、強誘電性絶縁体は、界面で-40℃~170℃の温度で10より高い誘電率εを有する、単電極セルを開示する。
【0020】
さらに、本発明は、強誘電性絶縁体が0≦y≦1および0≦z≦3であるLi3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、Li3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、Na3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、Na3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、K3‐2yXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、Ba;X=Cl、Br、I)、K3‐3yXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)もしくはLi3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、Li3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、Na3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、Na3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)、K3‐2y‐zXO(M=Be、Ca、Mg、Sr、およびBa;X=Cl、Br、I)、K3‐3y‐zXO(M=B、Al;X=Cl、Br、I)のような結晶性材料、それらの混合物、またはそれらとCaCuTi12、BaTiO、YBaCu7‐x、SrTiOもしくは他の強誘電体もしくは超伝導体材料との混合物、またはそれらとCuO、SiO、LiS、LiO、LiI、NaS、NaO、NaI、KS、KO、KI、Al、MgB、HO、HS、ポリマー、イオン性液体もしくは他の溶媒もしくはイオン性材料との混合物である単電極セルを明らかにする。
【0021】
加えて、単電極セルは、ポリマー、樹脂、可塑剤、接着剤、または別の結合剤と混合された強誘電性絶縁体を提示しうる。
【0022】
さらに、本発明の単電極セルは、強誘電性絶縁体が、セルロース、繊維ガラス、または布などのマトリックスに埋め込まれる可能性をもつ。
【0023】
本発明は、電極導体がAl、Zn、Mg、K、Li、Na、合金、化合物、複合体、混合物または発泡体である単電極セルも開示する。
【0024】
単電極セルは、電極導体がC、Cu、Fe、Ni、Sn、Ti、真ちゅう、青銅、合金、化合物、複合体または発泡体である構成を提示しうる。
【0025】
単電極セルは、電極導体がC発泡体、Cナノチューブ、Cフェルト、C紙、グラファイト、またはグラフェンであるさらなる構成を提示しうる。
【0026】
単電極セルは、電極半導体がSi、Ga、GaAs pもしくはnドープSiまたはpもしくはnドープGaまたはBaTiOなどの他の半導体であるさらなる構成を提示しうる。
【0027】
単電極セルは、電極および強誘電性絶縁体が長方形、円盤、リング、トロイダル、または任意の規則的または不規則な形状を有するさらなる構成を提示しうる。
【0028】
単電極セルは、電極および強誘電性絶縁体が鋸形状のエッジまたは電荷蓄積を促進する任意の他の形状を有するさらなる構成を提示しうる。
【0029】
単電極セルは、セルが絶縁体保護層によって保護されるさらなる構成を提示しうる。
【0030】
単電極セルは、セルがパッケージに封入されるさらなる構成を提示しうる。
【0031】
本発明は、上に定義された二つ以上の単電極セルの直列物であって、二つ以上のセルは互いに整列し、セルは物理的接触なしでmmまたはcmの距離によって分離され、または二つ以上のセルは、一つのセルの負極が次のセルの正極と接続してセル電位を加えるように接触する、直列物も開示する。
【0032】
さらに、本発明は、セルが導体、半導体、または超伝導体である直列物を明らかにする。
【0033】
加えて、直列物は、強誘電性絶縁体を間に有する二つの電極を提示しうる。
【0034】
直列物は、フルセルが電極が類似するかまたは異なる二つの単電極セルの直列物であるさらなる構成を提示しうる。
【0035】
直列物は、電極がZnおよびCであるさらなる構成を提示しうる。
【0036】
直列物は、セルの負極および異なるセルの正極に負荷が接続されるさらなる構成を提示しうる。
【0037】
直列物は、負荷がLEDであるさらなる構成を提示しうる。
【0038】
直列物は、二つの導体電極が一つ以上の交互の強誘電体および/または絶縁体材料の層対によって分離されるさらなる構成を提示しうる。
【0039】
定義されたセルまたは二つ以上の単電極セルの直列物の使用は、いくつかの用途、例えば、エネルギーハーベスタのためのデバイスとして、エネルギー貯蔵デバイスとして、トランジスタ、コンピュータ、量子コンピュータ、センサ、充電器、アクチュエータ、熱電子デバイス、温度コントローラ、Internet of Things、光起電力セル、パネル、風力タービン、スマートグリッド、送電、変圧器、電力貯蔵デバイス、電気モータ、飛行機、車、ボート、潜水艦、衛星、ドローン、ロケット、および/または宇宙船の一部としての用途を提示する。
【0040】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様ならびに利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲、ならびに添付の図面を参照することでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】側面から見た単電極セルの実施形態である。
図2】上面または底面から見た単電極セルの実施形態である。
図3】直列に接続するかのようであるが間に物理的接触なしで設定された二つの単電極セルの実施形態である。
図4】セルと電極とが直列に接続するかのようであるが間に物理的接触なしで設定された単電極セルおよび一つの導体電極の実施形態である。
図5】セルと電極とが直列に接続するかのようであるが間に物理的接触なしで設定された単電極セルおよび一つの半導体電極の実施形態である。
図6】直列に接続するかのように第一セルと第二セルとの間および第二セルと第三セルとの間に物理的接触なしで設定された三つの単電極セルの実施形態である。
図7】直列に接続するかのようであるが第一セルと電極導体との間および電極と第三セルとの間に物理的接触なしで設定された二つの単電極セルおよび電極導体の実施形態である。
図8】直列に接続するかのようであるが第一セルと電極半導体との間およびこの同じ電極と第三セルとの間に物理的接触なしで設定された二つの単電極セルおよび電極半導体の実施形態である。
図9】絶縁体が強誘電超伝導表面電子を絶縁体との界面に保持し、電子と絶縁体上の正の鏡像電荷との間にコンデンサを形成する、強誘電体材料および絶縁体の交互の層を備えた多層セルの実施形態である。
図10】絶縁体が強誘電超伝導表面電子を界面に保持し、電子と絶縁体上の正の鏡像電荷との間にコンデンサを形成する、強誘電体/絶縁体セルの実施形態である。
図11】絶縁体が強誘電超伝導表面電子を界面に保持し、電子と絶縁体上の正の鏡像電荷との間にコンデンサを形成し、界面絶縁体/半導体に別のコンデンサが自発的に形成される、強誘電体/絶縁体セルの実施形態である。
図12】直列であるかのようであるが第一セルと第二セルとの間および第二セルと第三セルとの間に物理的接触なしで設定された三つのフルセルの実施形態であり、図12(写真)は図12の実施形態の例である。
図12-a】図12の実施形態の例である。
図12-b】図12の実施形態の例である。
図12-c】図12の実施形態の例である。
図12-d】図12の実施形態の例である。
図13】直列に接続するかのようであるが第一セルと第二セルとの間および第二セルと第三セルとの間を物理的に接触させずに設定された三つのフルセルの任意の二つの電極間の測定された電気化学的電位差に対応する「ステップ」グラフの実施形態である。
図14】強誘電体材料で一部が満たされるかまたは満たされる伝導リング、コイルまたはトロイダルの実施形態である。
図15】電子信号を増幅または切り替えしうる強誘電体/絶縁体/半導体セルの実施形態である。
図16】電子信号を増幅または切り替えしうる強誘電体/半導体セルの実施形態である。
図17】単電極セルと開回路電圧OCV(open circuit voltage)=1.38Vのフルセルとの間の直列の結合物、この直列の結合物によって点灯される1.48Vの最小電位および23μAの最小入力電流で点灯する赤色LEDの実施形態である。
図18】単電極セルで電位差Vが観察され、電極導体で電位差Vが観察される、単電極セルと電極導体との間の直列の結合物の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の例および図1~18で、本発明の好ましい実施形態が示される。後者は例にすぎず、簡略化のために大半のセルが正方形として描かれたが、長方形、円盤状、リング、トロイダル、不規則であることができ、または定められた点に電荷を蓄積するために鋸のような多数のエッジを有することができる。
【0043】
図1は、単電極セル10の側面図を示し、導体基板100が、誘電率が非常に高い強誘電性絶縁体200と接触させられる。セルは、図1には示されない保護層またはパッケージによって湿気から保護されうる。セルに電位差が誘起された後に、端子300および310が電流を収集する。
【0044】
図2は、図1のセル10の上面図20を示す。
【0045】
図3は、直列に接続されるかのようであるが間に物理的接触がない設定30の二つのセル20を示す。強誘電性絶縁体200の自発分極により、二つのセル20の間に「コンデンサ」が形成される。セル間の絶縁体は、空気、エポキシ、テフロン(登録商標)、ポリマー、接着剤、イオン性液体または他の誘電体材料でありうる。
【0046】
図4は、セルが電極導体400と直列に接続されるかのようであるが間に物理的接触がない設定40の一つのセル20を示す。導体400にホール効果を誘起する強誘電性絶縁体200の自発分極により、セル20と電極400との間に「コンデンサ」が形成される。
【0047】
図5は、セルが電極半導体500と直列に接続されるかのようであるが間に物理的接触がない設定50の一つのセル20を示す。強誘電性絶縁体200の自発分極により、セル20と電極500との間に「コンデンサ」が形成される。半導体がnまたはpドープされる場合、負または正電荷のドリフトが起こり、半導体における電荷の蓄積、したがって表面の様々な点での電位差を引き起こす。
【0048】
図6は、セルが直列に接続されるかのようであるが第一セルと第二セルとの間および第二セルと第三セルとの間に物理的接触がない設定60の三つのセル20を示す。強誘電性絶縁体200の自発分極により、第一セルと第二セルとの間および第二セルと第三セルとの間に二つの「コンデンサ」が形成される。
【0049】
図7は、セルが間の電極導体400と間に物理的接触なしで直列に接続されるかのような設定70の両端に位置する二つのセル20を示す。強誘電性絶縁体200の自発分極により、第一セルと電極400との間および電極400と第二単電極セルとの間に二つの「コンデンサ」が形成される。
【0050】
図8は、セルが間の電極半導体500と間に物理的接触なしで直列に接続されるかのような設定80の両端に位置する二つのセル20を示す。強誘電性絶縁体200の自発分極により、第一セルと電極500との間および電極500と第二セルとの間に二つの「コンデンサ」が形成される。
【0051】
図9は、一つまたはいくつかの強誘電性絶縁体200および絶縁体600~620の層によって形成された多層セル90を示す。絶縁体は、空気、エポキシ、テフロン(登録商標)、ポリマー、接着剤、イオン性液体、アクリル系または他の誘電体材料でありうる。強誘電性絶縁体の非常に高い誘電率は、誘電体を分極する電場を生成する。さらに、絶縁体600~620は表面超伝導体電子のほとんどを通さず、代わりに強誘電体によって自発的に生成される電場により強誘電体との表面で分極する。したがって、絶縁体は強誘電体の表面に平行な二つの表面間に電位差を示す。
【0052】
図10は、強誘電体/絶縁体セル100を示す。絶縁体600は、任意の誘電体材料とすることができ、表面超伝導を生じる強誘電体200の電気化学的電位の自発整列および自発分極によりセルの界面にコンデンサが形成される。
【0053】
図11は、強誘電体/絶縁体/半導体セル110を示す。絶縁体は、任意の誘電体材料とすることができ、表面超伝導を生じる強誘電体200の電気化学的電位の自発整列および自発分極によりセルの界面にコンデンサが形成される。絶縁体600および半導体500の界面に、別のコンデンサが形成される。半導体は、Si、Ge、GaAs、GaN、GaP、CuO、またはバンドギャップエネルギーが通常約0.2≦E≦3eV以上の任意の他の材料とすることができる。
【0054】
図12は、直列に接続されるかのようであるがセル700と710との間およびセル710と720との間に物理的接触がない、端子800、810、900、910、1000、および1010を備えた設定120の三つのフルセルを示す。第一コンデンサがセル700と710との間に、第二コンデンサがセル710と720との間に、二つの「コンデンサ」が形成される。図12a、b、cおよびd(写真)は、設定120の例の写真を示す。
【0055】
図13は、CuおよびAlの異なる電極によってそれぞれ構成される700、710、および720のタイプのセルによって構成されるデバイス120の電気化学的電位の「ステップ」グラフ130の例を示す。類似の電極Cu(1)、Cu(2)およびCu(3)ならびに類似の電極Al(1)、Al(2)およびAl(3)の電気化学的電位の間の差の測定、ならびに異なるセル電極の組み合わせの電気化学的電位差の測定が得られた。異なるセルの異なる電極(2)および(3)の間で最大電位差μCu(3)-μAl(2)=1.361Vが得られ、これは以前に報告された他のいかなるデバイスとも明らかな差を際立たせる。セルが直列に接続された場合には、電位差はV=1.177+1.313+1.000=3.490Vとなり、セルが並列に接続された場合には、電位差を測定するためにいずれの二つの異なる電極が選択されても電位差は同じになる。
【0056】
図14は、自発的に分極し最終的に表面超伝導を示す強誘電体でリングが満たされるかまたは一部満たされる浅いリング、コイル、またはトロイダルセル140を示す。リングまたはトロイド内の電子は、その後リング内を自由に伝導される。
【0057】
図15は、増幅または切り替えしうる強誘電体/絶縁体/半導体セル150を示し、このセルでは、強誘電性絶縁体200は、絶縁体600ならびに半導体510および520(nドープ半導体など)との界面で負に分極されうる。負の分極は表面超伝導に起因し、電子が伝導されるチャネルを生じうる。
【0058】
図16は、増幅および切り替えしうる強誘電体/半導体セル160を示し、このセルでは、強誘電性絶縁体200は、半導体500、510、および520との界面で正に分極されうる。鏡像負電荷が導体400との界面に整列する。
【0059】
図17は、開回路電圧OCV1.38Vのフルセル2000、単電極セル20、および赤色LEDの間に物理的接触がある直列の結合物170によって構成される閉回路の例を示す。赤色LEDが点灯される。フルセルのOCVは赤色LEDを点灯するのに十分でないため、単電極セル20の寄与が証明され、これにより単電極セルがエネルギーを採取および貯蔵できることが明確に示される。
【0060】
図18は、直列に結合されるかのようであるが単電極セル20と電極導体400との間に物理的接触がない設定180の二つのセルにより構成される閉回路の例を示す。実験として、V電位の測定は、セルが液体窒素温度から加熱時に約T≧-70℃でV≧1.0Vおよび電流I≧200μAを示しうる。同じ実験において、T≧20℃でV≧0.8Vである。
【0061】
半導体であるBaTiOのような材料では、キュリー温度未満で高抵抗結晶がその境界において高い誘電率の強誘電特性および電子が容易に透過しうる低い電位障壁を生じる結果、低い抵抗率が生じることがよく知られている(ベインおよびチャンド(Bain and Chand)著、「強誘電体の原理および応用(Ferroelectrics principles and applications)」、ワイリーVCH(Wiley‐VCH)、2017年、第4章、p.93)。
【0062】
従来の金属‐絶縁体‐半導体電界放出トランジスタ(FET:field emission transistor)において達成可能な典型的なシートキャリア濃度n2Dは、わずかn2D≒1×1013cm-2であり、超伝導を誘起するのに不十分である。本発明のセルでは、低温から高温で超伝導が観察され、界面電極/強誘電体に蓄積される電荷キャリアの数は、n2D≧1015cm-2と計算される。
【0063】
強誘電性絶縁体200はアモルファスまたはガラスでありうるため、強誘電誘起超伝導の実施可能性は強誘電体構造に関係しないが、超伝導を可能にする双極子の動的会合および整列と大きく関係する。本デバイスでは、空気、金属、または誘電率が大きく異なる任意の他の材料と接触する誘電率が非常に高い強誘電体材料の表面で超伝導が生じる。
【0064】
実施形態30~120においては、電極、セル、またはデバイスの間の物理的絶縁体障壁を横断して電子が伝導されうることが可能である。
【0065】
誘電体材料のローレンツ空洞(電場の存在下で分極する分子を含む球形の空洞)の表面上の分極電荷は、連続分布を形成すると考えられうる。さらに、材料が等方性である場合、全ての原子が互いに平行な点双極子で置き換えられることができ、双極子による電場はゼロに減少する。このとき総電場は、
【0066】
【数1】
【0067】
であり、式中Eは総電場、Eappl.は印加外部電場、Pは分極ベクトル、そしてεは真空の誘電率である。Li2.99Ba0.005ClOのように強誘電性絶縁体200を過度に単純化すると、ミリメートル単位以上の距離の他の材料を分極してホール効果を誘起できる非常に高い電場に反映する印加電場の非存在下で、分極は25℃でP=1.5C.cm-2に達しうる(ブラガら(Braga et al.)米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)2018、140、17968‐17976)。分極して電気化学的電位またはフェルミ準位が整列した二つの材料の界面での電場は、E≧10MVm-1である。この後者の電場は通常、分極表面が距離d≦1nmだけ離れているときに観察される。
【0068】
一方、静電容量Cを有する絶縁材料の誘電損失P(電力)は、
=V2πfCtanδ (2)
から得られ、式中Vは電位差、fは周波数、そしてtanδは誘電正接である。
【0069】
強誘電性絶縁体の自発分極は、強誘電体材料からmmまたはcm距離の他の材料を分極しうる非常に高い電場をもたらし、鏡像電荷を誘起し、したがって強誘電性絶縁体に近接した材料の異なる側面間の電場および電位差を誘起する。
【0070】
実施形態10および20の単電極セルでは、電極が強誘電体よりも高いフェルミ準位を有する場合、電極は陽イオンを蓄積する強誘電体との界面で電子を蓄積する一方で、(空気または保護層と接触する)強誘電体材料の自由表面で電子が自由に伝導される。この電極の実施形態は、Al、Zn、Mg、K、Li、Na、Srまたは強誘電体のフェルミ準位よりも高いフェルミ準位の任意の合金、化合物、混合物もしくは複合体である。
【0071】
強誘電体表面超伝導は、負に分極される単セル電極の連続充電を促進する。強誘電体材料の双極子の負極の蓄積によってもこの分極が達成されうる。
【0072】
本発明のセルまたはデバイス10~180は、エネルギー貯蔵デバイスの非接触充電に使用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図12-a】
図12-b】
図12-c】
図12-d】
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】