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特表2022-548353膜用途におけるシリカスケール防止剤組成物およびシリカスケール抑制方法
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  • 特表-膜用途におけるシリカスケール防止剤組成物およびシリカスケール抑制方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-18
(54)【発明の名称】膜用途におけるシリカスケール防止剤組成物およびシリカスケール抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/00 20060101AFI20221111BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20221111BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20221111BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20221111BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20221111BHJP
   C02F 5/14 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C02F5/00 620C
B01D61/02 500
C02F1/44 C
B01D65/06
C02F5/10 620A
C02F5/10 620B
C02F5/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514696
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 US2020046750
(87)【国際公開番号】W WO2021045897
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/896,939
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430716
【氏名又は名称】ビーエル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】シンペン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ドンジン イェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー メルツァー
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン スイ
(72)【発明者】
【氏名】チャンタオ カイ
(72)【発明者】
【氏名】モニカ シャルマ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006KA03
4D006KC16
4D006KD30
4D006KE12R
4D006KE15R
4D006PA01
4D006PB02
(57)【要約】
スケール防止剤組成物を提供する。本組成物は、シリカ抑制剤組成物と分散剤組成物とを有する。膜システムにおけるスケール形成を抑制する方法を提供する。本方法は、スケール防止剤組成物を準備し、前記スケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤および分散剤を有し、ならびに水系の水性流にスケール防止剤組成物を添加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール防止剤組成物であって、前記組成物は、
シリカ抑制剤組成物と、
分散剤組成物と、
を含む、スケール防止剤組成物。
【請求項2】
前記シリカ抑制剤組成物は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機リン酸は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シリカ抑制剤は、約5~40%の活性物質の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記分散剤組成物は、スルホン化アクリル酸ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記スルホン化アクリル酸ポリマーは、化学式
【化1】
によって特徴付けられる繰り返し単位を含み、
ここで、nは、約1~100の範囲であり、Zは、H、Na、K、CaまたはNHである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
nは、約1~20である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Zは、c、dおよびeにおいて同じであり得、あるいは異なり得る、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
c:d:eのモル比は、約20:10:1~1:1:20の範囲である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記スルホン化アクリル酸ポリマーの分子量は、約10,000~約30,000の範囲である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記シリカ抑制剤組成物と前記分散剤組成物との濃度比は、約1:2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記シリカ抑制剤組成物と前記分散剤組成物との濃度比は、約1:1.6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記シリカ抑制剤と分散剤組成物とが共に混合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
スケール防止剤組成物であって、前記組成物は、
(i)シリカ抑制剤組成物であって、ここで、前記シリカ抑制剤組成物は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含む、シリカ抑制剤組成物と、(ii)スルホン化/硫酸化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーと、の混合物を含む、スケール防止剤組成物。
【請求項15】
前記スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーは、化学式
【化2】
によって特徴付けられる繰り返し単位を含み、
ここで、nは約1~100の範囲であり、ZはH、Na、K、CaまたはNHである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記シリカ抑制剤と前記分散剤組成物とは、約25℃で共に混合される、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
膜システムにおけるスケール形成を抑制するための方法であって、前記方法は、
スケール防止剤組成物を準備することであって、前記スケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤と分散剤とを含む、スケール防止剤組成物を準備することと、
前記スケール防止剤組成物を水系の水性流に添加することと、
を含む、膜システムにおけるスケール形成を抑制するための方法。
【請求項18】
前記シリカ抑制剤は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分散剤は、スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記スケール防止剤組成物は、前記シリカ抑制剤と前記分散剤との混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記シリカ抑制剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含み、前記分散剤は、スルホン化/硫酸化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーは、化学式
【化3】
によって特徴付けられる繰り返し単位を含み、
ここで、nは、約1~100の範囲であり、Zは、H、Na、K、CaまたはNHである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記水性流は、少なくとも300ppmのシリカ含有量を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記水性流は、約300ppm~約350ppmのシリカ含有量を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記水性流は、少なくとも7のpHを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記水性流は、約7.5のpHを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記水性流は、約7.5のpHおよび少なくとも300ppmのシリカ含有量を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記水系は、逆浸透膜またはナノ濾過膜を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記スケール防止剤組成物は、約1ppm~約100ppmの量で水性流に添加される、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記スケール防止剤組成物は、約3ppm~約30ppmの量で水性流に添加される、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年9月6日に出願された米国仮特許出願番号62/896,939号明細書の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本開示の技術は、概して、膜用途におけるシリカスケール抑制のための組成物および方法、より具体的には、高シリカ水膜用途におけるシリカスケール抑制のための膜シリカスケール防止剤および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
膜淡水化産業では、従事者は、一般に、運用コストを節約するためにより高い回収率で膜システムを実行し濃縮物処分を減らす。しかしながら、この目標は、シリカの濃度が上昇した水では非常に困難である。高濃度のシリカを使用すると、シリカスケールまたはシリカ堆積物の蓄積によって、生産性の低下、製品品質の低下、予定外のダウンタイムおよび頻繁な膜定置洗浄(CIP)操作が発生する。加えて、シリカスケールが膜表面に形成されると、除去することはほぼ不可能である。
【0004】
膜システムにおけるシリカスケールは非常に複雑で、多くの要因(例えば、シリカレベル、pH値、温度、その他の金属イオン、システムの作動条件など)の影響を受ける。その中で、シリカレベルおよびpH値は最も重要な2つの要素である。概して、システムの回収率を改善し、膜用途における高シリカ水処理のための濃縮物処分を減らすための2つのアプローチがある。第1のアプローチは、酸の添加によって供給のpHを調整することである。しかしながら、酸の追加は、追加の供給/計量ポンプ、濃酸の体/皮膚の接触の取り扱い(潜在的な安全性の問題)、蒸気の吸引などが必要である。第2のアプローチは、非常に効果的なシリカスケール防止剤を投与することである。
【0005】
したがって、当技術分野で必要とされるのは、高シリカ水膜用途におけるシリカスケール抑制のための組成物および方法である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の技術は、概して、膜用途におけるシリカスケール抑制のための組成物および方法、より具体的には、高シリカ水膜用途におけるシリカスケール抑制のための膜シリカスケール防止剤および方法を提供する。
【0007】
本開示の技術の一態様では、スケール防止剤組成物が提供される。スケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤組成物と分散剤組成物とを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤組成物は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含む。いくつかの実施形態では、有機リン酸は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸である。いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤は、約5~40%の活性物質の濃度で存在する。
【0009】
いくつかの実施形態では、分散剤組成物は、スルホン化アクリル酸ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸ポリマーは、次の化学式によって特徴付けられる繰り返し単位を含む。
【0010】
【化1】
(化学式A)
【0011】
ここで、nは約1~100の範囲であり、ZはH、Na、K、CaまたはNHである。
【0012】
いくつかの実施形態では、nは約1~20である。いくつかの実施形態では、Zは、c、dおよびeにおいて同じであり得、あるいは異なり得る。いくつかの実施形態では、c:d:eのモル比は、約20:10:1~1:1:20の範囲である。
【0013】
いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸ポリマーの分子量は、約10,000~約30,000の範囲である。いくつかの実施形態では、分散剤組成物に対するシリカ抑制剤組成物の濃度比は、約1:2である。いくつかの実施形態では、分散剤組成物に対するシリカ抑制剤組成物の濃度比は、約1:1.6である。いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤および分散剤組成物は、共に混合される。
【0014】
本開示の技術のさらに別の態様では、スケール防止剤組成物が提供される。スケール防止剤組成物は、(i)シリカ抑制剤組成物であって、シリカ抑制剤組成物は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含む、シリカ抑制剤組成物と、(ii)スルホン化/硫酸化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーと、の混合物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーは、次の化学式によって特徴付けられる繰り返し単位を含む。
【0016】
【化2】
(化学式A)
【0017】
ここで、nは約1~100の範囲であり、ZはH、Na、K、CaまたはNHである。
【0018】
いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤および分散剤組成物は、約25℃で共に混合される。
【0019】
本開示の技術のさらに別の態様では、膜システムにおけるスケール形成を抑制するための方法が提供される。この方法は、スケール防止剤組成物を準備することであって、スケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤および分散剤を含む、スケール防止剤組成物を準備することと、スケール防止剤組成物を水系の水性流に添加することと、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含む。いくつかの実施形態では、分散剤は、スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーである。いくつかの実施形態では、スケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤と分散剤との混合物である。
【0021】
いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含み、分散剤は、スルホン化/硫酸化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーである。いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーは、次の化学式によって特徴付けられる繰り返し単位を含む。
【0022】
【化3】
(化学式A)
【0023】
ここで、nは約1~100の範囲であり、Zは、H、Na、K、CaまたはNHである。
【0024】
いくつかの実施形態では、水性流は、少なくとも300ppmのシリカ含有量を含む。いくつかの実施形態では、水性流は、約300ppm~約350ppmのシリカ含有量を含む。いくつかの実施形態では、水性流は、少なくとも7のpHを含む。いくつかの実施形態では、水性流は、約7.5のpHを含む。いくつかの実施形態では、水性流は、約7.5のpHおよび少なくとも300ppmのシリカ含有量を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、水系は、逆浸透膜またはナノ濾過膜を含む。いくつかの実施形態では、スケール防止剤組成物は、約1ppm~約100ppmの量で水性流に添加される。いくつかの実施形態では、スケール防止剤組成物は、約3ppm~約30ppmの量で水性流に添加される。
【0026】
本開示の技術のこれらおよび他の特徴、ならびに利点は、例示として、以下を含む添付の概略図を参照して、これから説明する実施形態において具体的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供するグラフである。
図2】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供するグラフである。
図3】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供するグラフである。
図4】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供するグラフである。
図5A】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供する図である。
図5B】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供する図である。
図5C】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供する図である。
図5D】本開示の技術の例示的な実施形態の結果を提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の技術は、概して、膜用途におけるシリカスケール抑制のための組成物および方法、より具体的には、高シリカ水膜用途におけるシリカスケール抑制のための膜シリカスケール防止剤および方法を提供する。
【0029】
本明細書で使用される「スケール防止剤」という用語は、シリカスケールの形成および/または固体シリカ粒子のサイズおよび/または形状を抑制(低減)する組成物/配合物を指す。
【0030】
驚くべきことに、シリカ抑制剤と分散剤組成物との混合物が、シリカスケール制御において相乗効果を示すことが発見された。本明細書に記載の膜シリカスケール防止剤組成物は、所与のプロセス条件下での逆浸透(RO)またはナノ濾過(NF)システムなどの膜用途において、高シリカを含む供給流を処理するのに効果的であることが示された。膜シリカスケール防止剤組成物は、300ppmを超える濃縮シリカレベルでのプラント操作を可能にする。これは、閾値シリカスケール抑制と粒子分散との相乗効果を示し、膜システムの回収率を増大させ、運用コストを削減する。
【0031】
本開示の技術の一態様では、スケール防止剤組成物が提供される。スケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤組成物と分散剤組成物とを含む。本明細書に開示されるようなシリカ抑制剤組成物と分散剤組成物との混合物は、膜用途における高シリカ水処理を取り扱うための効果的な処理を提供することが明らかとなった。
【0032】
概して、給水に溶解したシリカは、ROまたはNFシステムで数倍に濃縮される。これによって、シリカの重合が起こり、これは、大きな分子に成長するか、コロイド状のシリカおよび/または粒子を形成する。この場合、そのようなシリカの重合は、シリカレベルおよびpH値の増加とともに加速される。驚くべきことに、シリカ抑制剤と分散剤組成物との混合物は、本明細書に記載のシリカスケール防止剤組成物がシリカ重合を先延ばしにし、流中に懸濁したシリカ粒子が膜表面に沈殿するのを防ぐことを可能にすることが発見された。
【0033】
加えて、開示されたシリカスケール防止剤組成物は、環境に対して無毒であり(すなわち、「環境に優しい」)、酸を添加せずに高シリカ水を処理できるため、酸処理の必要性を排除する。本明細書に記載のシリカスケール防止剤組成物は、余剰の酸の添加に起因する水の全溶解固形物(またはTDS)の増加を回避し、これによって、水の淡水化におけるエネルギー消費が減少し、運用コストが低下する。
【0034】
いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤組成物は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含む。シリカ抑制剤組成物の特定のアニオン基は、供給溶液中のカチオンと相互作用して結晶性無機塩の沈殿を抑制し得、シリカコロイドまたは粒子との共沈殿の機会を減らし得、こうしてシリカスケール形成を減らすのに役立ち得、膜の性能への有害な影響を最小限に抑え得ると考えられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、有機リン酸は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)である。いくつかの実施形態では、本技術のシリカ抑制剤は、シリカ重合を抑制するだけでなく、炭酸カルシウムの沈殿を効果的に防止する。いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤は、約5~40%の活性物質の濃度で存在する。
【0036】
いくつかの実施形態では、分散剤組成物は、スルホン化アクリル酸ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸ポリマーは、次の化学式によって特徴付けられる繰り返し単位を含む。
【0037】
【化4】
(化学式A)
【0038】
ここで、nは、約1~100の範囲であり、ZはH、Na、K、CaまたはNHである。
【0039】
いくつかの実施形態では、nは、約1~20である。他の実施形態では、nは、約10~20である。いくつかの実施形態では、Zは、c、dおよびeにおいて同じであり得、あるいは異なり得る。いくつかの実施形態では、c:d:eのモル比は、約20:10:1~1:1:20の範囲である。
【0040】
いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸コポリマー、ターポリマーまたは本明細書に記載の化学式Aによって特徴付けられる繰り返し単位を含むスルホン化アクリル酸ポリマーは、供給流中に存在する懸濁シリカ粒子に負電荷を与え、これは、増強された静電反発による凝集および立体障害を回避する。
【0041】
いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸ポリマーの分子量は、約10,000~約30,000の範囲である。他の実施形態では、スルホン化アクリル酸ポリマーは、約12,000~約25,000の範囲である。
【0042】
いくつかの実施形態では、分散剤組成物に対するシリカ抑制剤組成物の濃度比は、約1:2である。いくつかの実施形態では、分散剤組成物に対するシリカ抑制剤組成物の濃度比は、約1:1.6である。
【0043】
いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤組成物は、約5~25重量%であり、分散剤組成物は、全スケール防止剤組成物の約10~40重量%である。
【0044】
いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤および分散剤組成物は、共に混合される。いくつかの実施形態では、シリカ抑制剤および分散剤組成物は、室温で共に混合される。他の実施形態では、シリカ抑制剤および分散剤組成物は、約25℃で共に混合される。混合物は、本明細書に記載の目的に対して十分な任意の従来の混合技術によって提供され得ることを理解されたい。例えば、これらに限定されないが、従来の混合技術は、平板バッフル、傾斜翼インペラおよび/またはラシュトンタービンを含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、開示されたシリカスケール防止剤組成物は、ホスホン酸ベース抑制剤をさらに含み得る。例えば、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、ヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)などであるが、これらに限定されない。給水または水性流がCaCO沈殿の高い可能性を含む場合またはそのとき、ホスホン酸ベース抑制剤の存在が必要であり得る。そのような場合、開示されたスケール防止剤組成物は、CaCO抑制剤の添加を含み得る。
【0046】
特定の実施形態では、スケール防止剤組成物は、(i)シリカ抑制剤組成物であって、ここで、シリカ抑制剤組成物は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)を含む、シリカ抑制剤組成物と、(ii)スルホン化/硫酸化アクリル酸コポリマー、ターポリマーまたは化学式Aによって特徴付けられる繰り返し単位を含むスルホン化アクリル酸ポリマーと、の混合物を含む。
【0047】
本開示の技術のさらに別の態様では、膜システムにおけるスケール形成を抑制するための方法が提供される。本明細書に記載の方法は、酸添加を含まない(すなわち、従来使用されているような酸添加を必要とせずに高シリカ水の処理を可能にする)。この方法は、膜用途で高シリカを含む流を処理する際に相乗効果をもたらすことが示された。さらに、本明細書に記載の方法は、特に、膜表面でのシリカスケールの抑制を可能にし、ROまたはNFシステムがpH7.5で最大350ppmのシリカレベルで作動することを可能にする。
【0048】
この方法は、シリカ抑制剤および分散剤を含むスケール防止剤組成物を準備することと、スケール防止剤組成物を水系の水性流に添加することと、を含む。いくつかの実施形態では、開示された方法のスケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤と分散剤との混合物である。前述のように、混合物は、本明細書に記載される任意の従来の混合技術によって提供され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、開示された方法のシリカ抑制剤は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物、またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、開示された方法の分散剤は、スルホン化アクリル酸コポリマーまたはターポリマーである。いくつかの実施形態では、スルホン化アクリル酸コポリマーまたはターポリマーは、次の化学式によって特徴付けられる繰り返し単位を含む。
【0051】
【化5】
(化学式A)
【0052】
ここで、nは、約1~100の範囲であり、Zは、H、Na、K、CaまたはNHである。
【0053】
いくつかの実施形態では、本方法に記載されるシリカ抑制剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含み、分散剤は、スルホン化/硫酸化アクリル酸コポリマー、ターポリマーまたは化学式Aによって特徴付けられる繰り返し単位を含むスルホン化アクリル酸ポリマーである。
【0054】
本明細書に開示される水系は、膜淡水化プラント、工業プラントへの流入水、飲料プラントへの流入水などに存在し得るが、これらに限定されないことを理解されたい。いくつかの実施形態では、水系は、逆浸透膜(RO)またはナノ濾過(NF)膜を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、水性流は、少なくとも300ppmのシリカ含有量を含む。他の実施形態では、水性流は、約300ppm~約350ppmのシリカ含有量を含む。いくつかの実施形態では、水性流は、少なくとも7のpHを含む。いくつかの実施形態では、水性流は、約7.5のpHを含む。他の実施形態では、水性流は、約7.5のpHおよび少なくとも300ppmのシリカ含有量を有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、スケール防止剤組成物は、約1ppm~約100ppmの量で水性流に添加される。いくつかの実施形態では、スケール防止剤組成物は、約3ppm~約30ppmの量で水性流に添加される。
【実施例
【0057】
本技術は、以下の実施例でさらに説明され、これは、例示的であると見なされるべきであり、本開示の技術の範囲を狭めるまたは範囲を特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではない。
【0058】
本明細書に開示されるスケール防止剤の組成物および方法は、共に混合されたときに相乗効果を示し、他の標的シリカ水処理と比較して増強された性能を示した。このような相乗効果は、シリカ抑制剤の閾値シリカスケール抑制および高シリカ濃縮物給水中に粒子分散液を懸濁する分散剤の能力によって提供されると考えられる。
【0059】
図1~4は、水-A処理(300ppmのシリカ、161ppmのCCPPおよび7.5のpHを含有する)でのシリカスケール防止剤組成物の性能の相対データを提供する。製品Aはホスホン酸であり、製品Bはポリマーを有するホスホン酸である。図1~4に示されるように、HEDPは、シリカ抑制剤であり、「化学式I」は、スルホン化/硫酸化アクリル酸コポリマー、ターポリマーまたは化学式Aによって特徴付けられる繰り返し単位を含むスルホン化アクリル酸ポリマーである。
【0060】
図1~4に示されるような結果は、現在開示されるスケール防止剤の組成物および方法が、膜表面上にそのようなスケールの蓄積が示される前に(すなわち、透過率の低下をもたらす)少なくとも2時間シリカ抑制を提供することを説明する。したがって、開示されたスケール防止剤の組成物および方法は、フィールドRO/NFシステムにおいて、300ppmのシリカで、酸を添加せずに、改善された性能を提供すると考えられる。これは、最初の1時間以内に透過率の低下を示し、および/または2時間以内により多くの透過率の低下を示した、他の市販製品(製品Aおよび製品Bなど)による処理とは対照的である。
【0061】
図1を参照すると、HEDPと化学式Iとの混合物は、水-A処理で他の2つの市販製品よりも優れていることが示された。HEDPと化学式Iとの混合物は、6時間の再循環中にはるかに低い膜透過率の低下を示した。(注:図1で観察されたHEDP+化学式Iの透過率は、加速試験モード条件で実行されるため、10%低下する。)
【0062】
図2は、現在開示される組成物の相乗効果を示す。具体的には、シリカスケール防止剤組成物(例えば、HEDPと化学式Iとの混合物)は、個々の成分単独によって実現されるより最も少ない膜透過率低下を達成したため、水-A処理で相乗効果を示した。
【0063】
図3は、開示されたシリカスケール防止剤組成物の再現性試験を提供する。
【0064】
図4は、水-H処理(350ppmのシリカ、369ppmのCCPPおよび7.5のpHを含有する)に対する現在開示される組成物の相乗効果を示す。具体的には、開示されたスケール防止剤組成物の同様の相乗効果が水-H処理で観察され、そのシリカスケール処理効果が信頼でき、概して様々な水化学に適用され得ることを示す。
【0065】
図5A~Dは、水-H処理のSEMおよびEDS画像の結果を提供する。図5A~Dに示されるように、開示されたスケール防止剤組成物が提供されたとき(HEDPおよび化学式I)、表面堆積物の有意な減少が観察され、これは、膜抵抗のわずかな増加を引き起こし、6時間の再循環試験において膜透過率の低下を緩和した。
【0066】
図5Aは、処理がない場合の効果を示し、膜表面上に4.9%のSiおよび8%のCaが存在した。図5Bは、HEDP処理のみの効果を示し、その結果、膜表面上に8%のSiおよび0%のCaが存在した。図5Cは、化学式I処理のみの効果を示し、その結果、膜表面上に12.3%のSiおよび0.3%のCaが存在した。図5Dは、HEDP+化学式I処理組成物の効果を示し、その結果、膜表面上に2.3%のSiおよび0%のCaが存在した。
【0067】
本開示の技術の実施形態を説明したが、本開示はそれに限定されず、本開示の技術から逸脱することなく修正が行われ得ることを理解されたい。本開示の技術の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義され、字義どおりにまたは均等物のいずれかによって、特許請求の範囲の意味の範囲内にあるすべてのデバイス、プロセスおよび方法は、そこに含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
【手続補正書】
【提出日】2022-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケール防止剤組成物であって、前記組成物は、
シリカ抑制剤組成物であって、前記シリカ抑制剤組成物は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含む、シリカ抑制剤組成物と、
分散剤組成物と、
を含む、スケール防止剤組成物。
【請求項2】
前記シリカ抑制剤組成物は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含む有機リン酸である、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記シリカ抑制剤組成物は、約5~40%の活性物質の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分散剤組成物は、スルホン化アクリル酸ポリマーを含み、前記スルホン化アクリル酸ポリマーは、化学式
【化1】
によって特徴付けられる繰り返し単位を含み、
ここで、nは、約1~100の範囲であり、Zは、H、Na、K、CaまたはNH である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
nは、約1~20である、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
Zは、c、dおよびeにおいて同じであり得、あるいは異なり得、c:d:eのモル比は、約20:10:1~1:1:20の範囲である、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記スルホン化アクリル酸ポリマーの分子量は、約10,000~約30,000の範囲である、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記シリカ抑制剤組成物と前記分散剤組成物との濃度比は、約1:2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記シリカ抑制剤と分散剤組成物とが共に混合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
スケール防止剤組成物であって、前記組成物は、
(i)シリカ抑制剤組成物であって、ここで、前記シリカ抑制剤組成物は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含む、シリカ抑制剤組成物と、(ii)スルホン化/硫酸化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーと、の混合物を含み、前記スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーは、化学式
【化2】
によって特徴付けられる繰り返し単位を含み、
ここで、nは約1~100の範囲であり、ZはH、Na、K、CaまたはNH である
スケール防止剤組成物。
【請求項11】
膜システムにおけるスケール形成を抑制するための方法であって、前記方法は、
スケール防止剤組成物を準備することであって、前記スケール防止剤組成物は、シリカ抑制剤と分散剤とを含む、スケール防止剤組成物を準備することと、
前記スケール防止剤組成物を水系の水性流に添加することと、
を含む、膜システムにおけるスケール形成を抑制するための方法。
【請求項12】
前記シリカ抑制剤は、有機リン酸、ホスホン酸ベース化合物またはカルボン酸スルホン化コポリマーを含み、前記分散剤は、スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スケール防止剤組成物は、前記シリカ抑制剤と前記分散剤との混合物であり、前記シリカ抑制剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を含み、前記分散剤は、スルホン化/硫酸化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記スルホン化アクリル酸ポリマーまたはターポリマーは、化学式
【化3】
によって特徴付けられる繰り返し単位を含み、
ここで、nは、約1~100の範囲であり、Zは、H、Na、K、CaまたはNHである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記水性流は、少なくとも300ppmのシリカ含有量を含み、前記水性流は、少なくとも7のpHを含む、請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】