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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-18
(54)【発明の名称】抗生物質化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/14 20060101AFI20221111BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221111BHJP
   C07K 7/54 20060101ALI20221111BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
A61K38/14
A61P31/04
C07K7/54
C07K7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516110
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 NL2020050587
(87)【国際公開番号】W WO2021060980
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】2023883
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522096097
【氏名又は名称】ウニフェルシテイト・ライデン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT LEIDEN
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,ナタニエル イー
(72)【発明者】
【氏名】ファン グルーセン,エマ
(72)【発明者】
【氏名】テフラニ,カマレディン ハー エム エー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイド,ニコラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA25
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA31
4H045BA53
4H045EA29
4H045FA20
(57)【要約】
ここに提供されるのは、式I
の脂質付加糖ペプチド化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。Rは脂質であり、Rは-Hまたは脂質であり、RおよびRはここに定義するとおりである。これらの化合物は、抗生物質活性を有する。また提供されるのは、このような化合物を含む製剤;ならびに医薬として使用するためのこのような化合物または製剤である。化合物および製剤は、細菌感染の処置にも使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
〔式中、
は脂質であり;
は-Hまたは脂質から選択され;
は-OH、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され;
は-H、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され;そして
はリンカーである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
が-C-C20アルキル、-C-C20アルケニル、-C-C20シクロアルキル、C-Cアルキル-C-C20シクロアルキル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択される、請求項1の化合物。
【請求項3】
が-C-C20アルキル、-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)、-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択される、請求項1の化合物。
【請求項4】
が-C-C14アルキル、-C-C16アルケニルおよび置換または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択される、請求項1~3の何れかの化合物。
【請求項5】
が-C-C14アルキル、-C-Cアダマンチル、-アダマンチル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され;
所望によりRが-C-C12アルキル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択される、請求項1~4の何れかの化合物。
【請求項6】

【化2】
から選択される、請求項1または請求項2の化合物。
【請求項7】
が-H、-C-C20アルキル、-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3であり、qは0~20から選択される)および-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択される、請求項1~6の何れかの化合物。
【請求項8】
が-H、-C-C12アルキル、-C-C12アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3であり、qは0~20から選択される)から選択され、所望によりRが-H、-C-C12アルキル、-C-C12アルケニルから選択される、請求項1~7の何れかの化合物。
【請求項9】
が-Hである、請求項1~8の何れかの化合物。
【請求項10】
およびRの各々が独立してC-C10アルキル、-C-C10アルケニルおよび-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)から選択される、請求項1の化合物。
【請求項11】
およびRの各々が独立して-C-C10アルキルおよび-C-C10アルケニルから選択される、請求項1または請求項10の化合物。
【請求項12】
が-OH、置換または非置換-C-C10アルキル、置換または非置換-C-C10アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択される、請求項1~11の何れかの化合物。
【請求項13】
が-OH、-NHCHCHCHN(CH)
【化3】
、-(NHCHCH)-Glc、-(NHCHCH)-Gal、-(NHCHCH)-Man、-(NHCHCH)-GlcNAc、-(NHCHCH)-MurNAc、-(NHCHCH)-ManNAc、-(NHCHCH)-GalNAc、-(NHCHCH)-セロビオースおよび-(NHCHCH)-マルトース(ここで、xは0または1である)から選択される、請求項1~12の何れかの化合物。
【請求項14】
が-OHである、請求項1~13の何れかの化合物。
【請求項15】
が-H、置換または非置換-C-C10アルキル、置換または非置換-C-C10アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択される、請求項1~14の何れかの化合物。
【請求項16】
が-H、-CHNHCHP(O)(OH)、-CHN(CHPO)、-CHNHCHCHCHN(CH)、-CHNHCHCHCOOH、-CHN(CH)CH(CH(OH))CHOH、-CHNHCH(COOH)CHCOOH、-CHNH(CHCHOH)、-(NHCHCH)-Glc、-(NHCHCH)-Gal、-(NHCHCH)-Man、-(NHCHCH)-GlcNAc、-(NHCHCH)-MurNAc、-(NHCHCH)-ManNAc、-(NHCHCH)-GalNAc、-(NHCHCH)-セロビオースおよび-(NHCHCH)-マルトース(ここで、yは0または1である)から選択される、請求項1~15の何れかの化合物。
【請求項17】
が-Hである、請求項1~16の何れかの化合物。
【請求項18】
が-C-C20アルキレン-、-C-C20アルケニレン-、-(C-Cアルキル)アリーレン-、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキル-、-C(O)C-C20アルキレン-、-C(O)C-C20アルケニレン-、-C(O)(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(O)NHC-C20アルキレン-、-C(O)NHC-C20アルケニレン-、-C(O)NH(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(S)NHC-C20アルキレン-、-C(S)NHC-C20アルケニレン-、-C(S)NH(C-Cアルキル)アリーレン-および-C(S)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-(ここで、rは2および3から選択され、sは0~20から選択される)から選択される、請求項1~17の何れかの化合物。
【請求項19】
が-C-C10アルキレン-および-(C-Cアルキル)アリーレン-から選択される、請求項1~18の何れかの化合物。
【請求項20】
が-CHPh-である、請求項1~19の何れかの化合物。
【請求項21】
下式で表されるものから選択される、請求項1~20の何れかの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物またはもしくはプロドラッグ。
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項22】
請求項1~22の何れかの化合物および所望により薬学的に許容される担体を含む、製剤。
【請求項23】
製剤が非経腸製剤または経口製剤である、請求項22の製剤。
【請求項24】
製剤が非経腸製剤であり、所望により製剤が静脈内注射用製剤である、請求項22または23の製剤。
【請求項25】
医薬として使用する、請求項1~21の何れかの化合物または請求項22~24の何れかの製剤。
【請求項26】
細菌感染の処置に使用する、請求項1~21の何れかの化合物または請求項22~24の何れかの製剤。
【請求項27】
細菌感染がグラム陽性細菌の感染である、請求項26の化合物または製剤。
【請求項28】
患者における細菌感染を処置する方法であって、患者に有効量の請求項1~21の何れかの化合物または請求項22~24の何れかの製剤を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規クラスの糖ペプチド抗生物質の脂質付加グアニジノ誘導体に関する。本発明はまた、このような化合物を含む製剤および組成物も提供する。本化合物、製剤および組成物は、細菌感染の処置におけるなどの医薬として使用され得る。また提供されるのは、細菌感染の処置にこのような化合物を使用する方法である。
【背景技術】
【0002】
背景
グラム陽性細菌に対する活性を有する抗生物質の探索において、しばしばペプチドグリカン層とも称される細菌細胞壁は、魅力的な標的を提供する。ペプチドグリカン生合成に重要なのは、最後から2番目の細菌細胞壁構成ブロックである脂質IIである。多数の天然物抗生物質が、脂質IIに特異的に結合することにより作動する(Grein, F., et al. (2019) Docking on Lipid II-A Widespread Mechanism for Potent Bactericidal Activities of Antibiotic Peptides, J Mol Biol.; Oppedijk, S. F., et al. (2016) Hit 'em where it hurts: The growing and structurally diverse family of peptides that target lipid-II, Biochim Biophys Acta 1858, 947-957)。これらの中で卓越しているのは、脂質IIペンタペプチドの末端d-Ala-d-Alaモチーフに密接に結合する臨床で使用される糖ペプチドバンコマイシンである。
【0003】
d-Ala-d-Lac終結ペンタペプチドを含む脂質IIバリアントを使用できる多くの細菌株が発生しているため、バンコマイシンに対する耐性の遭遇が増えている。このd-Alaのd-Lac変異は、脂質IIに対するバンコマイシンの親和性を低減させ、それにより、抗細菌効果を大きく低減させる(Healy, V. L., et al. (2000) Vancomycin resistance in enterococci: reprogramming of the D-ala-D-Ala ligases in bacterial peptidoglycan biosynthesis, Chem Biol 7, R109-119; Blaskovich, M. A. T., et al. (2018) Developments in Glycopeptide Antibiotics, ACS Infect Dis 4, 715-735; Willyard, C. (2017) The drug-resistant bacteria that pose the greatest health threats, Nature 543, 15)。故に、抗細菌活性が増強された新規糖ペプチド抗生物質の開発が、非常に重要であり続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、細菌感染の処置、特にバンコマイシンなどの既存の抗生物質に耐性である感染の処置に有用である化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、細菌感染の処置に有用な化合物を提供する。例えば、化合物は、グラム陽性細菌の感染の処置に有用であり得る。本発明の化合物は脂質化糖ペプチドであり、ここで、脂質部分がリンカーおよびグアニジノ部分を介してグリカン部分に結合している。
【0006】
本発明は、第一の態様において、式I
【化1】
〔式中、
は脂質であり;
は-Hまたは脂質から選択され;
は-OH、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され;
は-H、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され;そして
はリンカーである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0007】
本発明の第二の態様は、本発明の化合物および所望により薬学的に許容される担体を含む、本発明の製剤を提供する。製剤は非経腸製剤または経口製剤であり得る。製剤は、静脈内注射用製剤など非経腸製剤であり得る。
【0008】
第三の態様は、医薬として使用するための本発明の化合物または製剤を提供する。
【0009】
第四の態様は、細菌感染の処置に使用するための本発明の化合物または製剤を提供する。細菌感染はグラム陽性細菌の感染であり得る。グラム陽性細菌は、ブドウ球菌(Staphylococcus(例えば黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、腐性ブドウ球菌(S. saprophyticus))、レンサ球菌(Streptococcus)(例えば化膿性連鎖球菌(Strep. pyogenes)、B群溶血性連鎖球菌(Strep. agalactiae)、緑色連鎖球菌(Strep. viridans)、肺炎球菌(Strep. pneumonia))、腸球菌(Enterococus)(例えばフェカリス菌(E. faecalis))、バシラス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridia)、リステリア(Listeri)aおよびコリネバクテリウムCorynebacterium)の科の少なくとも1個からであり得る。細菌(例えばグラム陽性細菌)は、少なくとも1種の他の抗生物質(例えばメチシリン、バンコマイシン)での処置に耐性であり得る。細菌感染は、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)またはバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)による感染であり得る。細菌感染は、皮膚および組織感染、下部呼吸器感染、菌血症、セプシス、敗血症、感染性心内膜炎、腹膜炎、腸炎、乳腺炎、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染関連下痢および大腸炎から選択され得る。
【0010】
第五の態様は、患者における細菌感染を処置する方法であって、患者に有効量の本発明の化合物または本発明の製剤を投与することを含む、方法提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施態様を、添付する図面を引用して以下に説明する。各図面の概略は次のとおりである。
図1】選択化合物を溶血アッセイで評価した結果を示す。
図2】選択化合物のUDP-MurNAc-ペンタペプチド蓄積アッセイで得た結果を示す。すべての化合物がUDP-MurNAc-ペンタペプチドの蓄積をもたらし、グラム陽性細菌におけるペプチドグリカン細胞壁生合成を阻害することを示した。
図3】選択化合物を耐性獲得連続継代アッセイで評価したときに得た結果を示す。A)30日間にわたり亜致死濃度のダプトマイシン、化合物5または化合物16中で増殖させたMRSA USA 300に対する初期MICと比較した、MICの経時的増加倍率。B)30日間にわたり亜致死濃度のダプトマイシン、化合物5または化合物16中で増殖させたVRE E155に対する初期MICと比較したMICの連日の増加倍率。
図4】選択化合物をタイム・キル・アッセイで評価したときに得た結果を示す。A)経時的にサンプルの寒天プレート希釈コロニー数の計数により得た、バンコマイシン、テラバンシン、ダプトマイシン(左)、化合物5および化合物16(右)のVRE E155に対する殺菌活性。B)経時的にサンプルの寒天プレート希釈コロニー数の計数により得た、バンコマイシン、テラバンシン、ダプトマイシン(左)および化合物5(右)のMRSA USA300に対する殺菌活性。
図5】8時間にわたる選択化合物の血中濃度の薬物動態プロファイルを示す。
図6】MRSA USA300株NRS384に対する選択化合物の有効性試験で得た結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な記載
本明細書および特許請求の範囲をとおして、用語「含む」および「包含する」およびそれらの変化形は、「含むが、限定されない」ことを意味し、他の部分、添加物、成分、整数または工程を除外することを意図しない(そして除外しない)。本明細書および特許請求の範囲をとおして、単数表現は、文脈から異なる解釈が必要でない限り、複数を含む。特に、不定冠詞が使用されるとき、本明細書は、文脈から異なる解釈が必要でない限り、複数および単数を含むと理解されるべきである。
【0013】
本発明の特定の態様、実施態様または例と関連して記載される特性、整数、特徴、化合物、化学構造部分または基は、矛盾がない限り、あらゆる他の態様、実施態様または例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(あらゆる添付する特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示する特性全ておよび/または何らかの方法または過程の開示される工程全てを、このような特性および/または工程の少なくとも一部の組み合わせが相互排他的でない限り、任意の組み合わせで組み合わせられ得る。本発明は、如何なる前記実施態様の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(あらゆる添付する特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示する特性のあらゆる新規の1つまたはあらゆる新規組み合わせまたは開示されたあらゆる方法または過程の工程のあらゆる新規の1つまたはあらゆる新規組み合わせに拡大される。
【0014】
本出願に関連して、本明細書と同時または先に出願されたおよび本明細書と共に公開された全ての論文および文献にについては、そのような論文および文献の内容は、引用によりここに包含される。
【0015】
ここに記載する全ての刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、引用によりその全体をここに包含させる。矛盾があるならば、定義を含む本明細書が優勢である。
【0016】
定義
次の用語および方法の説明は、本発明をよりよく記載し、当業者に本発明の実施に際して指針となるよう提供する。
【0017】
本発明は、とりわけ、疾患の処置に関する。本発明により帆愚案される用語「処置」および治療は、次のおよびそれらの組み合わせを含む:(1)事象、状況、障害または状態の妨げ、例えば開始および/または進行遅延、例えば事象、状況、障害または状態または維持処置または二次予防の場合その再発またはその臨床症状または亜臨床症状の少なくとも一つの進展停止、低減または遅延;(2)状況、障害または状態に罹患している可能性があるかまたは素因があるが、まだ状況、障害または状態の臨床症状または亜臨床症状を経験または示していない動物(例えばヒト)において進展している事象、状況、障害または状態の臨床症状出現の予防または遅延;および/または(3)事象、状況、障害または状態の寛解および/または治癒(例えば、事象、状況、障害または状態またはその臨床症状または亜臨床症状少なくとも一つの退行の誘導)。処置する患者の利益は、統計的に有意であるかまたは患者または意思が少なくとも認知できるものであり得る。医薬は、必ずしも、投与された各患者で臨床効果をもたらすものではないことは理解される;故に、あらゆる個々の患者または特定の患者集団において、処置は失敗するかまたは一部しか成功しないこともあり得るので、用語「処置」および「予防」および同族用語は、それに応じて理解されるべきである。ここに記載する組成物および方法は、記載する状態の治療および/または予防に有用である。
【0018】
用語「予防」は、健康を保持するまたは事象、状況、障害または状態の開始および/または進行阻止もしくは遅延する目的、例えば事象、状況、障害または状態発症の機会を減らす目的の処置治療をいう。予防の結果は、例えば、健康の保持または事象、状況、障害または状態の開始および/または進行の遅延であり得る。ある個々の患者または特定の患者集団において、処置は失敗するかもしれず、この段落はそれに応じて理解されるべきであることは留意すべきである。
【0019】
用語「抗生物質」は、細菌(例えばグラム陽性細菌またはグラム陰性細菌)などの微生物の増殖を阻止するまたは破壊する化合物をいう。「抗細菌物質」は、細菌に対して活性である抗生物質である。本発明の化合物は、特にグラム陽性細菌に対して活性の抗細菌物質である。グラム陽性細菌は、ブドウ球菌(例えば黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌)、レンサ球菌(例えば化膿性連鎖球菌、B群溶血性連鎖球菌、緑色連鎖球菌、肺炎球菌)、腸球菌、バシラス、クロストリジウム、リステリアおよびコリネバクテリウムを含む。
【0020】
ここで使用する用語「アルキル」は、最大20(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20)炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル部分を含む。本用語は、例えば、メチル、エチル、プロピル(n-プロピルまたはイソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチル)、ペンチル、ヘキシルなどを含む。特に、アルキルは、「C-C10アルキル」、すなわち1、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するアルキル;「C-Cアルキル」、すなわち1、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキル;「C-Cアルキル」、すなわち1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル;「C-Cアルキル」、すなわち1、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキル;または「C-Cアルキル」、すなわち1、2または3炭素原子を有するアルキルであり得る。用語「低級アルキル」は、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル基の言及を含む。
【0021】
ここで使用する用語「アルケニル」は、最大20個(例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個)の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルケニル部分を含む。本用語は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどの参照を含む。特に、アルケニルは、「C-C10アルケニル」、すなわち2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するアルケニル;「C-Cアルケニル」、すなわち2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルケニル;「C-Cアルキル」、すなわち1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルケニルを含む;用語「低級アルケニル」は、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルケニル基であり得る。アルケニルは、単不飽和(すなわち一個の炭素炭素二重結合を含む)または多不飽和(すなわち2以上の炭素-炭素二重結合、例えば2個、3個または4個の炭素-炭素二重結合を含む)。例えば、アルケニルは、アルカジエニル、アルカトリエニルなどであり得る。
【0022】
用語「アルキレン」は、それ自体または他の置換基の一部として、-CHCHCHCH-が例であるが、これに限定されない、アルキル由来の二価ラジカルを意味する。一般に、アルキル(またはアルキレン)基は1~24炭素原子を有し、10以下の炭素原子を有するこれらの基が本発明で好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8以下の炭素原子を有する短鎖アルキルまたはアルキレン基である。
【0023】
ここで使用する用語「シクロアルキル」は、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する脂環式部分を含む。本基は架橋または多環式環系であり得る。より頻繁にはシクロアルキル基は単環式である。この用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの基を含む。
【0024】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体または他の用語と組み合わせて、特に断らない限り、少なくとも1個の炭素原子およびO、N、P、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなる安定な直鎖または分岐鎖または環状炭化水素ラジカルまたはそれらの組み合わせを意味し、ここで、窒素および硫黄原子は所望により酸化されていてよく、窒素ヘテロ原子は所望により4級化されていてよい。ヘテロ原子O、N、P、SおよびSiは、ヘテロアルキル基のどこかの内部位置またはアルキル基が分子の残りに結合する位置であり得る。例は、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH)、-CH-CH=N-OCH、-CH=CH-N(CH)-CH、O-CH、-O-CH-CHおよび-CNを含むが、これらに限定されない。例えば、-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CH)など、最大2個のヘテロ原子が連続し得る。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体または他の置換基の一部として、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-が例であるが、これらに限定されない、ヘテロアルキル由来の二価ラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基について、ヘテロ原子は、鎖末端の何れかまたは両方も占拠し得る(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおさらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基について、連結基の式が記載される方向によって、連結基の方向は暗示されない。例えば、式-C(O)R’-は-C(O)R’-および-R’C(O)-両方を表す。上記のとおり、ここで使用するヘテロアルキル基は、-C(O)R’、-C(O)NR’、-NR’R’’、-OR’、-SRおよび/または-SOR’などのヘテロ原子を介して分子の残りに結合する基を含む。「ヘテロアルキル」が記載され、続いて-NR’R’’など、特定のヘテロアルキル基が記載されるとき、用語ヘテロアルキルおよび-NR’R’’は冗長ではないまたは相互排他的ではないことは理解される。むしろ、特定のヘテロアルキル基が明確に加えるために引用される。故に、用語「ヘテロアルキル」は、ここでは、-NR’R’’などの特定のヘテロアルキル基を除外すると解釈してはならない。
【0025】
ここで使用する用語「ヘテロシクロアルキル」は、3、4、5、6または7環炭素原子ならびに窒素、酸素、リンおよび硫黄から選択される1、2、3、4または5環ヘテロ原子を有する飽和ヘテロ環式部分を含む。例えば、ヘテロシクロアルキルは、3、4または5環炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1または2環ヘテロ原子を含み得る。本基は、多環式環系であり得るが、より頻繁には単環式である。この用語は、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキシラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、インドリジニニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、キノリジジニルなどの基を含む。
【0026】
ここで使用する用語「ハロ」または「ハロゲン」は、F、Cl、BrまたはI、例えばF、ClまたはBrを含む。特定のクラスの実施態様において、ハロゲンはFまたはClであり、その中で、Fはより一般的である。
【0027】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、それ自体または他の置換基の一部として、特に断らない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含む。例えば、用語「ハロアルキル」は、1以上の水素原子が対応する数のハロゲンで置換されるアルキル基をいう。例えば、用語「ハロ(C-C)アルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むことを意味するが、これらに限定されない。
【0028】
ここで使用する用語「アルコキシ」は、-O-アルキル(ここで、アルキルは直鎖または分岐鎖であり、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子含む)を含む。あるクラスの実施態様において、アルコキシは、1個、2個、3個または4個の炭素原子、例えば1、2または3炭素原子有する。この用語は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどを含む。用語「低級アルコキシ」は、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルコキシ基を含む。
【0029】
ここで使用する用語「ハロアルコキシ」は、1以上の水素原子が対応する数のハロゲンで置換されたアルコキシ基をいう。
【0030】
用語「アリール」は、特に断らない限り、単環または互いに縮合したもしくは共有結合した複数環(好ましくは1~3環)であり得る、多不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味する。用語「ヘテロアリール」は、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)をいい、ここで、窒素および硫黄原子は所望により酸化され、窒素原子は所望により4級化される。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りに結合し得る。アリールおよびヘテロアリール基の非限定的例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリルおよび6-キノリルを含む。上記アリールおよびヘテロアリール環系の各々の置換基は、下記許容される置換基の群から選択される。「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」は、それぞれアリールおよびヘテロアリールに由来する二価ラジカルをいう。
【0031】
ここで使用する置換基を参照する用語「脂質」は、一般に疎水性である部分をいう。脂質は、置換または非置換アルキル、アルケニル、シクロアルキル、架橋シクロアルキル、(アルキル)シクロアルキル、(アルキル)架橋シクロアルキル、(アルキル)シクロアルケニルおよび/またはアルキルアリール基を含み得る。例えば、脂質は、置換または非置換アルキル、アルケニル、(アルキル)シクロアルキル、(アルキル)シクロアルケニルおよび/またはアルキルアリール基を含み得る。置換基の例は、-OH、=O、-CN、-ハロ、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、-フェニル、-フェニル-ハロ;例えば-OH、=O、-CN、-ハロ、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)を含む。置換または非置換脂質の主鎖は、ジスルフィド結合(-S-S-)、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合-O-またはエステル(-C(O)O-)で中断されていてよい。
【0032】
上記用語(例えば、「アルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)の各々は、特に断らない限り、当該ラジカルの置換および非置換両形態を含むことを意図する。置換基がR置換(例えばR置換アルキルであり、「x」は整数である)であるとき、置換基は、化学原子価測により可能である1以上のR基で置換されていてよく、R基は所望により異なる(例えばR置換アルキルは、複数R基を含み、ここで、R基は所望により異なる)。各タイプのラジカルについての置換基の特定の例を下に提供する。
【0033】
ここで使用する部分を参照する用語「置換」は、該部分における水素原子の1以上、特に最大5、より特に1、2または3が、互いに独立して対応する数の記載された置換基で置換されることを意味する。特に断らない限り、置換基の例は、-OH、-CN、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、=O、-ハロ、-C-Cアルキル、-C-Cアルケニル、-C-Cハロアルキル、-C-Cハロアルコキシおよび-C-Cハロアルケニル、-C-Cアルキルカルボン酸(例えば-CHCOOHまたは-COOH)を含む。置換基が-C-Cアルキルまたは-C-Cハロアルキルであるとき、C-C鎖は、所望によりエーテル結合(-O-)またはエステル結合(-C(O)O-)で中断されていてよい。置換アルキルの置換基の例は、-OH、-CN、-NH、=O、-ハロ、-COH、-C-Cハロアルキル、-C-Cハロアルコキシおよび-C-Cハロアルケニル、-C-Cアルキルカルボン酸(例えば-CHCOOHまたは-COOH)を含み得る。例えば、アルキルの置換基の例は、-OH、-CN、-NH、=O、-ハロを含み得る。
【0034】
当然、置換基は化学的に可能である位置にのみ存在することは理解され、当業者は、特定の置換が可能であるか否か、過度の労力なく決定できる(実験にまたは理論的)。例えば、遊離水素があるアミノまたはヒドロキシ基は、不飽和(例えばオレフィン)結合がある炭素原子に結合するならば、不安定であり得る。さらに、当然、ここに記載する置換基は、それ自体、何らかの置換基で置換され得ることは理解され、当業者により認識されるとおり、適切な置換についての上記の制限に付される。
【0035】
立体化学問題によりある基の置換基の配置が決定されるとき、最低の配座エネルギーを有する異性体が好ましいことがある。
【0036】
化合物、部分、過程または生成物が、「所望により」ある特性を有すると記載されるとき、本発明はその特性を有するそのような化合物、部分、過程または生成物およびまたその特性を有しないそのような化合物、部分、過程または生成物を含む。故に、ある部分が「所望により置換されている」と記載されるとき、本発明は非置換部分および置換部分を含む。
【0037】
2以上の部分が「独立して」または「各々独立して」一覧の原子または基から選択されると記載されるとき、kろえは、該部分が同一でも異なってもよいことを意味する。各部分の存在は、それ故に、1以上の他の部分の存在と無関係である。
【0038】
ここで使用する用語「薬学的に許容される」は、合理的医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答または他の問題または合併症なくヒトまたは動物の組織との接触に使用するのに適し、合理的利益/リスク比に見合う、化合物、物質、組成物および/または投与形態を含む。この用語は、ヒトおよび獣医学両方の目的での許容性を含む。
【0039】
用語「薬学的に許容される塩」は、ここに記載する化合物に見られる特定の置換基に依存する、比較的非毒性の酸または塩基と調製される、活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的酸性官能基を含むとき、塩基付加塩が、中性形態のこのような化合物と十分量の所望の塩基を、ニートでまたは適当な不活性溶媒中で接触させることにより、得られ得る。薬学的に許容される塩基付加塩の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノまたはマグネシウム塩または類似塩を含む。本発明の化合物が比較的塩基性官能基を含むとき、酸付加塩が、中性形態のこのような化合物と十分量の所望の酸を、ニートでまたは適当な不活性溶媒中で接触させることにより、得られ得る。薬学的に許容される酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素、リン酸、リン酸一水素、リン酸二水素、硫酸、硫酸一水素、ヨウ化水素酸またはリン酸などの無機酸から得られるものならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸など比較的非毒性有機酸由来の塩を含む。また含まれるのは、アルギン酸塩などのアミノ酸の塩およびグルクロン酸もしくはガラクツロン酸などの有機酸の塩である(例えば、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19参照)。ある特定の本発明の化合物は、塩基性および酸性両方の官能基を含み、化合物が塩基または酸付加塩いずれかに変換され得る。
【0040】
中性形態の化合物は、好ましくは慣用法での塩と塩基または酸の接触および親化合物の単離により再生される。親形態の化合物は、種々の塩形態と、極性溶媒中の溶解度などのある物理的性質が異なる。
【0041】
ある本発明の化合物は、溶媒和されていない形態ならびに水和形態を含む溶媒和された形態で存在できる。一般に、溶媒和された形態は溶媒和されていない形態と等価であり、本発明の範囲内に包含される。ある本発明の化合物は、複数結晶形態または非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての物理形態は本発明で意図する用途について等価であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0042】
ある本発明の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有する;ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。本発明の化合物は、合成および/または単離に不安定すぎることが当分野で知られるものは含まない。
【0043】
記号
【化2】
は、ある部分の、化合物の残りの部分への結合点を示す。
【0044】
ここで使用する用語「プロドラッグ」は、インビボで、例えば、血中での加水分解により、親化合物または他の活性化合物に変換される化合物をいう。そのようなプロドラッグの例は、カルボン酸の薬学的に許容されるエステルである。T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series, Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987; H Bundgaard, ed, Design of Prodrugs, Elsevier, 1985; and Judkins, et al. Synthetic Communications, 26(23), 4351-4367 (1996);およびThe organic chemistry of drug design and drug action by Richard B Silverman、特に497~546頁に詳細に記載され、各々引用によりここに包含させる。本発明の化合物はプロドラッグ(例えば潜在的MBL阻害剤)を表し得て、ここで、β-ラクタムの加水分解が潜在的MBL阻害剤の遊離および活性化をもたらす。
【0045】
ここで使用する用語「医薬製剤」は、少なくとも1個の活性化合物および所望により1以上のさらなるに許容される成分、例えば薬学的に許容される担体を含む製剤を含む。医薬製剤が2以上の活性化合物を含むかまたは少なくとも1個の活性化合物および1以上のさらなるに許容される成分を含むとき、医薬製剤は医薬組成物でもある。文脈から他の解釈が示されない限り、ここでの「製剤」についての全ての記載は、医薬製剤についての記載である。
【0046】
ここで使用する用語「製品」または「本発明の製品」は、本発明の化合物を含むあらゆる製品の言及を含む。特に、用語製品は、例えば、医薬組成物などの本発明の化合物を含む組成物および製剤に関する。
【0047】
ここで使用する用語「治療有効量」は、合理的薬理学的判断の範囲内で、哺乳動物(動物またはヒト)で所望の治療応答を提供する(またはするであろう)と計算された薬物または薬剤の量をいう。治療応答は、例えば疾患、障害または状態の治癒、進行遅延または予防に役立つ。
次の略語をここで使用する:
Alloc アリルオキシカルボニル
ATCC American Type Culture Collection
BBO Broadband Observe
CFU コロニー形成単位
CLSI Clinical & Laboratory Standards Institute
d 二重項
dd 二重項の二重項
dt 三重項の二重項
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジ-イソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDC 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
eq 当量
FBS ウシ胎児血清
Gal ガラクトース
GalNAc N-アセチルガラクトサミン
Glc グルコース
GlcNAc N-アセチルグルコサミン
h 六重項
HEPA 高効率粒子空気
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HR-MS 高解像度マススペクトロメトリー
LC 液体クロマトグラフィー
m 複数項
Man マンノース
ManNAc N-アセチルマンノースアミン
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MIC 最小阻止濃度
MRSA メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
MSSA メチシリン感受性黄色ブドウ球菌
MTT 3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド
MurNAc N-アセチルムラミン酸
m/z 質量電荷比
NEtトリエチルアミン
NLD オランダ
NMR 核磁気共鳴
p80 ポリソルベート80
PBS リン酸緩衝化食塩水
PE 石油エーテル
PFGE パルスフィールドゲル電気泳動
PK 薬物動態
pp ペンタペプチド
ppm 百万分率
rpm 毎分の回転数
RT 室温
RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
s 一重項
SD 標準偏差
t 三重項
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMS トリメチルシリル
TSB トリプティックソイブロス
UDP 二リン酸ウリジン
UV 紫外線
VISA バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌
VRE バンコマイシン耐性腸球菌
VRSA バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌
VSE バンコマイシン感受性腸球菌
【0048】
化合物
ある態様において、本発明は、上記式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。式Iの化合物は、脂質付加糖ペプチドであり、ここで、脂質部分/部分(Rおよび所望によりR)は、リンカー(-L-)およびグアニジノ部分によりグリカン部分に結合する。化合物の糖ペプチド部分は置換バンコマイシンであり、任意のさらなる置換RおよびRがある。
【0049】
は脂質であり得る。Rは、置換または非置換-C-C20シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-Cアルキル-C-C20シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択され得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択され得る。Rは、置換または非置換-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-Cアルキル-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-C16アルキル、置換または非置換-C-C16アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~14から選択される)、-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルから選択され得る。Rは、置換または非置換-C-C16アルキル、置換または非置換-C-C16アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~14から選択される)、-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルから選択され得る。Rは、-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-Cアルキル-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-C16アルキル、-C-C18アルケニルおよび置換(例えばハロ置換)または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C16アルキル、-C-C18アルケニルおよび置換(例えばハロ置換)または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-Cアルキル-C-C14シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-C14アルキル、-C-C16アルケニルおよび置換または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14アルキル、-C-C16アルケニルおよび置換または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-CH-C-C14シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-C14アルキル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14アルキル、-C-Cアダマンチル、-アダマンチル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14アルキル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され得る。
【0050】
は、置換または非置換-C-C20アルキル、例えば置換または非置換-C-C16アルキルであり得る。Rは、非置換-C-C20アルキル、例えば非置換-C-C16アルキルであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルケニル、例えば置換または非置換-C-C18アルケニルであり得る。Rは、非置換-C-C20アルケニル、例えば非置換-C-C18アルケニルであり得る。Rは、置換または非置換-C-Cアルキルアリールであり得る。Rは、非置換-C-Cアルキルアリールであり得て、ここで、アリール置換基は、ビアリールである。Rは置換-C-Cアルキルアリールであり得て、ここで、アリール置換基は、ハロ置換ビアリール、例えばクロロビスフェニルであり得る。Rは置換CH-アルキルアリールであり得て、ここで、アリール置換基は、ハロ置換ビアリール、例えばクロロビスフェニルであり得る。Rは、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)であり得る。mは、2であり得る。mは、3であり得る。nは、2~16から選択され得て、例えばnは、4~12から選択され得る。mは2であり得て、nは、2~16から選択され得る。mは3であり得て、nは、2~16から選択され得る。Rは、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキル、例えば-C-C10アルキル-S-S-C-C10アルキル;例えば-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20シクロアルキル、例えば置換または非置換-C-C16シクロアルキルまたは置換または非置換-C-C14シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)であり得る。Rは、非置換-C-C20シクロアルキル、例えば非置換-C-C16アルキルまたは非置換-C-C14シクロアルキルであり得る。Rは、非置換架橋-C-C14シクロアルキルであり得る。Rは、非置換架橋C10シクロアルキル、例えばアダマンチルであり得る。Rは、置換または非置換-C-Cアルキル-C-C20シクロアルキル、例えば置換または非置換-C-Cアルキル-C-C16シクロアルキルまたは置換または非置換-C-Cアルキル-C-C14シクロアルキルであり得る。Rは、非置換-C-Cアルキル-C-C20シクロアルキル、例えば非置換-C-Cアルキル-C-C16シクロアルキルまたは非置換-C-Cアルキル-C-C14シクロアルキルであり得る。Rは、非置換-C-Cアルキル-C-C14シクロアルキルであり得て、ここで、シクロアルキルは架橋されている。Rは非置換-C-Cアルキル-C10シクロアルキルであり得て、ここで、シクロアルキルは架橋され、例えば-C-Cアルキル-アダマンチルである。Rは、非置換-CH-C10シクロアルキルであり得て、ここで、シクロアルキルは架橋され、例えば-CH-アダマンチルである。
【0051】
が置換部分であるとき、少なくとも1個の-OH、=O、-CN、-ハロ、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)で置換され得る;例えば少なくとも1個の-OH、=O、-CN、-ハロで置換され得る。Rが置換または非置換アルキルであるとき、アルキルの炭素主鎖は、少なくとも1個のジスルフィド結合(-S-S-)、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合-O-またはエステル結合(-C(O)O-)により中断されていてよい。
【0052】
は、-Hまたは脂質から選択され得る。Rは-Hであり得る。Rは脂質であり得る。Rは、-H、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~20から選択される)、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択され得る。Rは、-H、置換または非置換-C-C16アルキル、置換または非置換-C-C16アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~14から選択される)、-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルから選択され得る。Rは、-H、-C-C12アルキル、-C-C12アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~20から選択される)から選択され得る。Rは、-H、-C-C12アルキルおよび-C-C12アルケニルから選択され得る。Rは、-H、-C-C16アルキル、-C-C18アルケニルおよび置換(例えばハロ置換)または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-H、-C-C14アルキル、-C-C16アルケニルおよび置換または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14アルキル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され得る。
【0053】
が脂質であるとき、Rは、置換または非置換-C-C20シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-Cアルキル-C-C20シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~20から選択される)、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択され得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~20から選択される)、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから選択され得る。Rは、置換または非置換-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-Cアルキル-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、置換または非置換-C-C16アルキル、置換または非置換-C-C16アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリール-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~14から選択される)、-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルから選択され得る。Rは、置換または非置換-C-C16アルキル、置換または非置換-C-C16アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~14から選択される)、-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルから選択され得る。Rは、-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-Cアルキル-C-C16シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-C16アルキル、-C-C18アルケニルおよび置換(例えばハロ置換)または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C16アルキル、-C-C18アルケニルおよび置換(例えばハロ置換)または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-Cアルキル-C-C14シクロアルキル(例えば架橋シクロアルキル)、-C-C14アルキル、-C-C16アルケニルおよび置換または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14アルキル、-C-C16アルケニルおよび置換または非置換-C-Cアルキルビスフェニルから選択され得る。Rは、-C-C14シクロアルキル(例えばアダマンチルなどの架橋シクロアルキル)、-CH-C-C14シクロアルキル(例えばアダマンチルなどの架橋シクロアルキル)、-C-C14アルキル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され得る。
【0054】
は、-H、-C-C14アルキル、-C-Cアダマンチル、-アダマンチル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され得る。Rは、-H、-C-C14アルキル、-ゲラニル、-ファルネシルおよび-クロロビスフェニルから選択され得る。
【0055】
は-Hであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルキル、例えば置換または非置換-C-C16アルキルであり得る。Rは、置換または非置換-C-C14アルキル、例えば置換または非置換-C-C12アルキル、例えば-C-C10アルキルであり得る。Rは、非置換-C-C20アルキル、例えば非置換-C-C16アルキルであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルケニル、例えば置換または非置換-C-C18アルケニルであり得る。Rは、非置換-C-C20アルケニル、例えば非置換-C-C18アルケニルであり得る。Rは、置換または非置換-C-Cアルキルアリールであり得る。Rは、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)p-1CH(ここで、pは2および3から選択され、qは0~20から選択される)であり得る。pは、2であり得る。pは、3であり得る。qは、2~16から選択され得て、例えばqは、4~12から選択され得る。pは2であり得て、qは、2~16から選択され得る。pは3であり得て、qは、2~16から選択され得る。Rは、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキル、例えば-C-C10アルキル-S-S-C-C10アルキル;例えば-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルであり得る。
【0056】
が置換部分であるとき、少なくとも1個の-OH、=O、-CN、-ハロ、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)で置換され得る;例えば少なくとも1個の-OH、=O、-CN、-ハロで置換され得る。Rが置換または非置換アルキルであるとき、アルキルの炭素主鎖は、少なくとも1個のジスルフィド結合(-S-S-)、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合-O-またはエステル結合(-C(O)O-)により中断されていてよい。
【0057】
およびRの各々は、独立して置換または非置換-C-C12アルキル、置換または非置換-C-C12アルケニル、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)および-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルであり得る。RおよびRの各々は、-C-C12アルキル、-C-C12アルケニル、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)および-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルキル、-C-C10アルケニル、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは2~16から選択される)および-C-C10アルキル-S-S-C-C10アルキルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルキル、-C-C10アルケニルおよび-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは2~16から選択される)から独立して選択され得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C12アルキルおよび置換または非置換-C-C12アルケニルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、-C-C12アルキルおよび-C-C12アルケニルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C10アルキルおよび置換または非置換-C-C10アルケニルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルキルおよび-C-C10アルケニルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C10アルキルおよび置換または非置換-C-C10アルケニルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルキルおよび-C-C10アルケニルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-Cアルキルおよび置換または非置換-C-Cアルケニルから独立して選択され得る。RおよびRの各々は、-C-Cアルキルおよび-C-Cアルケニルから独立して選択され得る。
【0058】
およびRの各々は、置換または非置換-C-C12アルキルであり得る。RおよびRの各々は、-C-C12アルキルであり得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C10アルキルであり得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルキルであり得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C10アルキルであり得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルキルであり得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-Cアルキルであり得る。RおよびRの各々は、-C-Cアルキルであり得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C12アルケニルであり得る。RおよびRの各々は、-C-C12アルケニルであり得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C10アルケニルであり得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルケニルであり得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-C10アルケニルであり得る。RおよびRの各々は、-C-C10アルケニルであり得る。RおよびRの各々は、置換または非置換-C-Cアルケニルであり得る。RおよびRの各々は、-C-Cアルケニルであり得る。RおよびRの各々は、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)m-1CH(ここで、mは2および3から選択され、nは0~20から選択される)であり得る。mは、2であり得る。mは、3であり得る。nは、2~16から選択され得て、例えばnは、4~12から選択され得る。mは2であり得て、nは、2~16から選択され得る。mは3であり得て、nは、2~16から選択され得る。RおよびRの各々は、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキル、例えば-C-C10アルキル-S-S-C-C10アルキル;例えば-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキルであり得る。
【0059】
およびRは同一であってよく、例えばRおよびRは、各々同一の置換または非置換-C-C12アルキルであり得る。RおよびRは異なり得て、例えばRは-Hであり得て、Rは、本明細書の他の箇所に特定される他の置換基であり得る。
【0060】
は、
【化3】
から選択され得る。
【0061】
は、
【化4】
から選択され得る。
【0062】

【化5】
から選択され得て、RはHであり得る。R
【化6】
であり得て、R
【化7】
であり得る。R
【化8】
であり得て、R
【化9】
であり得る。R
【化10】
であり得て、R
【化11】
であり得る。
【0063】
は、-OH、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され得る。置換-C-C20アルキルは、例えば、-NHCHCHCHN(CH)または
【化12】
であり得る。炭水化物は、例えば、-(NHCHCH)-Glc、-(NHCHCH)-Gal、-(NHCHCH)-Man、-(NHCHCH)-GlcNAc、-(NHCHCH)-MurNAc、-(NHCHCH)-ManNAc、-(NHCHCH)-GalNAc、-(NHCHCH)-セロビオースおよび-(NHCHCH)-マルトース(ここで、xは0または1である)であり得る。Rは、-OH、-C-C20アルキル、-C-C20アルケニル、-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され得る。Rは、-OH、置換または非置換-C-C10アルキル、置換または非置換-C-C10アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され得る。Rは、-OH、-C-C10アルキル、-C-C10アルケニル、-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され得る。Rは、-OH、-NHCHCHCHN(CH)
【化13】
、-(NHCHCH)-Glc、-(NHCHCH)-Gal、-(NHCHCH)-Man、-(NHCHCH)-GlcNAc、-(NHCHCH)-MurNAc、-(NHCHCH)-ManNAc、-(NHCHCH)-GalNAc、-(NHCHCH)-セロビオースおよび-(NHCHCH)-マルトース(ここで、xは0または1である)から選択され得る。xは、0であり得る。xは、1であり得る。
【0064】
は、-OHであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルキル;例えば置換または非置換C-C10アルキル、例えば置換または非置換C-Cアルキルであり得る。Rは-C-C20アルキル;例えばC-C10アルキル、例えばC-Cアルキルであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルケニル;例えば置換または非置換C-C10アルケニル、例えば置換または非置換C-Cアルケニルであり得るであり得る。Rは-C-C20アルケニル;例えばC-C10アルケニル、例えばC-Cアルケニルであり得る。Rは、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、例えば-C-Cアルキルアリールであり得る。Rは、所望により-NHCHCH-などのリンカーを含む、炭水化物(例えばGlc、Gal、Man、GlcNAc、MurNAc、ManNAc、GalNAc、セロビオースおよびマルトースから選択されるグリカンを含む)。Rは、-NHCHCHCHN(CH)であり得る。Rは、
【化14】
であり得る。Rは、-(NHCHCH)-Glcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-Galであり得る。Rは、-(NHCHCH)-Manであり得る。Rは、-(NHCHCH)-GlcNAcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-MurNAcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-ManNAcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-GalNAcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-セロビオースであり得る。Rは、-(NHCHCH)-マルトースであり得る。xは、0であり得る。xは、1であり得る。
【0065】
は、-H、置換または非置換-C-C20アルキル、置換または非置換-C-C20アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され得る。置換-C-C20アルキルは1以上の窒素、リンまたは酸素で置換され得る;例えば、置換-C-C20アルキルは、-CHNHCHP(O)(OH)、-CHN(CHPO)、-CHNHCHCHCHN(CH)、-CHNHCHCHCOOH、-CHN(CH)CH(CH(OH))CHOH、-CHNHCH(COOH)CHCOOH、-CHNH(CHCHOH)であり得る。炭水化物は、例えば、-(NHCHCH)-Glc、-(NHCHCH)-Gal、-(NHCHCH)-Man、-(NHCHCH)-GlcNAc、-(NHCHCH)-MurNAc、-(NHCHCH)-ManNac、-(NHCHCH)-GalNAc、-(NHCHCH)-セロビオースおよび-(NHCHCH)-マルトース(ここで、yは0または1である)であり得る。Rは、-H、-C-C20アルキル、-C-C20アルケニル、-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され得る。Rは、-H、置換または非置換-C-C10アルキル、置換または非置換-C-C10アルケニル、置換または非置換-C-Cアルキルアリールおよび炭水化物から選択され得る。Rは、-H、-CHNHCHP(O)(OH)、-CHN(CHPO)、-CHNHCHCHCHN(CH)、-CHNHCHCHCOOH、-CHN(CH)CH(CH(OH))CHOH、-CHNHCH(COOH)CHCOOH、-CHNH(CHCHOH)、-(NHCHCH)-Glc、-(NHCHCH)-Gal、-(NHCHCH)-Man、-(NHCHCH)-GlcNAc、-(NHCHCH)-MurNAc、-(NHCHCH)-ManNac、-(NHCHCH)-GalNAc、-(NHCHCH)-セロビオースおよび-(NHCHCH)-マルトース(ここで、yは0または1である)から選択される。yは、0であり得る。yは、1であり得る。
【0066】
は-Hであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルキル;例えば置換または非置換C-C10アルキル、例えば置換または非置換C-Cアルキルであり得るであり得る。Rは、-C-C20アルキル;例えばC-C10アルキル、例えばC-Cアルキルであり得る。Rは、置換または非置換-C-C20アルケニル;例えば置換または非置換C-C10アルケニル、例えば置換または非置換C-Cアルケニルであり得るであり得る。Rは、-C-C20アルケニル;例えばC-C10アルケニル、例えばC-Cアルケニルであり得る。Rは、置換または非置換-C-Cアルキルアリール、例えば-C-Cアルキルアリールであり得るであり得る。Rは、所望により-NHCHCH-などのリンカーを含む、炭水化物(例えばGlc、Gal、Man、GlcNAc、MurNAc、ManNAc、GalNAc、セロビオースおよびマルトースから選択されるグリカンを含む)であり得る。Rは、-CHNHCHP(O)(OH)であり得る。Rは、-CHN(CHPO)であり得る。Rは、-CHNHCHCHCHN(CH)であり得る。Rは、-CHNHCHCHCOOHであり得る。Rは、-CHN(CH)CH(CH(OH))CHOHであり得る。Rは、-CHNHCH(COOH)CHCOOHであり得るであり得る。Rは、-CHNH(CHCHOH)であり得る。Rは、-(NHCHCH)-Glcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-Galであり得る。Rは、-(NHCHCH)-Manであり得る。Rは、-(NHCHCH)-GlcNAcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-MurNAcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-ManNacであり得る。Rは、-(NHCHCH)-GalNAcであり得る。Rは、-(NHCHCH)-セロビオースであり得る。Rは、-(NHCHCH)-マルトースであり得る。yは、0であり得る。yは、1であり得る。
【0067】
は、-C-C20アルキレン-、-C-C20アルケニレン-、-(C-Cアルキル)アリーレン-、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキル-、-C(O)C-C20アルキレン-、-C(O)C-C20アルケニレン-、-C(O)(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(O)NHC-C20アルキレン-、-C(O)NHC-C20アルケニレン-、-C(O)NH(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(S)NHC-C20アルキレン-、-C(S)NHC-C20アルケニレン-、-C(S)NH(C-Cアルキル)アリーレン-および-C(S)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-(ここで、rは2および3から選択され、sは0~20から選択される)から選択され得る。Lは、-C-C12アルキレン-、-C-C12アルケニレン-、-(C-Cアルキル)アリーレン-、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C-C10アルキル-S-S-C-C10アルキル-、-C(O)C-C12アルキレン-、-C(O)C-C12アルケニレン-、-C(O)(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(O)NHC-C12アルキレン-、-C(O)NHC-C12アルケニレン-、--C(O)NH(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(S)NHC-C12アルキレン-、-C(S)NHC-C12アルケニレン-、-C(S)NH(C-Cアルキル)アリーレン-および-C(S)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-(ここで、rは2および3から選択され、sは0~20から選択される)から選択され得る。Lは、-C-C10アルキレン-、-C-C10アルケニレン-、-(C-Cアルキル)アリーレン-、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキル-、-C(O)C-C10アルキレン-、-C(O)C-C10アルケニレン-、-C(O)(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(O)NHC-C10アルキレン-、-C(O)NHC-C10アルケニレン-、--C(O)NH(C-Cアルキル)アリーレン-、-C(O)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-、-C(S)NHC-C10アルキレン-、-C(S)NHC-C10アルケニレン-、-C(S)NH(C-Cアルキル)アリーレン-および-C(S)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-(ここで、rは2および3から選択され例えば2)、sは0~20(例えば2~16)から選択される)から選択され得る。
【0068】
は、-C-C20アルキレン-、-C-C20アルケニレン-および-(C-Cアルキル)アリーレン-から選択され得る。Lは、-C-C12アルキレン-、-C-C12アルケニレン-および-(C-Cアルキル)アリーレン-から選択され得る。Lは、-C-C10アルキレン-、-C-C12アルケニレン-および-(C-Cアルキル)アリーレン-から選択され得る。Lは、-C-C20アルキレン-および-(C-Cアルキル)アリーレン-から選択され得る。Lは、-C-C12アルキレン-および-(C-Cアルキル)アリーレン-から選択され得る。Lは、-C-C10アルキレン-(例えば-C-Cアルキレン-)および-(C-Cアルキル)アリーレン-から選択され得る。
【0069】
は、-(C-Cアルキル)アリーレン-;例えば-CHPh-であり得る。Lは、-C-C20アルキレン-;例えば-C-C12アルキレン-、例えば-C-C10アルキレン-(例えば-C-Cアルキレン-)であり得る。Lは、-C-C20アルケニレン-;例えば-C-C12アルケニレン-、例えば-C-C10アルケニレン-であり得る。Lは、-C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-であり得る。Lは、-C-C12アルキル-S-S-C-C12アルキル-、例えば-C-C10アルキル-S-S-C-C10アルキル-;例えば-C-Cアルキル-S-S-C-Cアルキル-であり得る。Lは、-C(O)C-C20アルケニレン-;例えば-C(O)C-C12アルキレン-、例えば-C(O)C-C10アルキレン-であり得る。Lは、-C(O)(C-Cアルキル)アリーレン-であり得る。Lは、-C(O)C-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-であり得る。Lは、-C(O)NHC-C20アルキレン-;例えば-C(O)NHC-C12アルキレン-、例えば-C(O)NHC-C10アルキレン-であり得る。Lは、-C(O)NHC-C20アルケニレン-;例えば-C(O)NHC-C12アルケニレン-、例えば-C(O)NHC-C10アルケニレン-であり得る。Lは、-C(O)NH(C-Cアルキル)アリーレン-であり得る。Lは、-C(O)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-であり得る。Lは、-C(S)NHC-C20アルキレン-;例えば-C(S)NHC-C12アルキレン-、例えば-C(S)NHC-C10アルキレン-であり得る。Lは、-C(S)NHC-C20アルケニレン-;例えば-C(S)NHC-C12アルケニレン-、例えば-C(S)NHC-C10アルケニレン-であり得る。Lは、-C(S)NH(C-Cアルキル)アリーレン-であり得る。Lは、-C(S)NHC-Cアルキル-[O(CH)]-O(CH)-であり得る。
【0070】
rは、2であり得る。rは、3であり得る。sは、2~16から選択されて、例えば、sは4~12から選択され得る。rは2であり得て、sは、2~16から選択され得る。rは3であり得て、sは、2~16から選択され得る。
【0071】
化合物は、次のものまたはその薬学的に許容される塩、溶媒和物またはもしくはプロドラッグから選択され得る。
【化15】
【化16】
【化17】
【0072】
化合物の例は、実施例に説明する合成方法に従いおよび反応スキームAおよびBに従い、製造され得る。さらに、当業者には認識されるとおり、これらの方法および反応スキームAおよびBに説明する方法(下記参照)を、他の本発明の化合物および開示を提供するために、容易に適合させ得る。
【0073】
製剤および投与
本発明のさらなる態様により、所望により少なくとも1個の薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合された、本発明の化合物を含む医薬製剤または組成物が提供される。
【0074】
製剤または組成物は非経腸製剤または経口製剤であり得る。製剤は非経腸製剤、例えば静脈内注射用製剤であり得る。製剤は、経口製剤であり得る。
【0075】
本発明の化合物、製剤または組成物は、経口、局所、静脈内、皮下、頬側、直腸、皮膚、経鼻、気管、気管支、何れかの他の非経腸経路、経口または経鼻噴霧または吸入により投与され得る。化合物は、遊離化合物または、例えば、薬学的に許容される非毒性有機または無機酸または塩基付加塩として、本化合物を含む、医薬製剤の形態で、薬学的に許容される剤形で投与され得る。処置する障害および患者および投与経路によって、組成物を種々の用量で投与し得る。
【0076】
それ故に、一般に、本発明の医薬化合物を、抗細菌効果を得るために、非経腸(ここで使用する「非経腸」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および点滴を含む投与方法をいう)または経口で、宿主に投与し得る。例えば、本発明の医薬化合物を、静脈内注射または点滴により投与し得る。ヒトなどの大型動物の場合、化合物を単独でまたは薬学的に許容される希釈剤、添加物または担体と組み合わせた組成物として、投与し得る。
【0077】
本発明の医薬製剤および医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物および投与方法に対して所望の治療応答を達成するのに有効である活性化合物の量を得るために、変わり得る。選択投与量レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、処置する状態の重症度および処置する患者の状態および病歴に依存する。しかしながら、所望の治療効果を達成するのに必要であるより低いレベルで化合物の投与を開始し、投与量を所望の効果が達成されるまで徐々に増加させるのは、当分野の技術範囲内である。適当な用量は、一般に0.01~100mg/kg/日の範囲、例えば0.1~50mg/kg/日の範囲である。
【0078】
非経腸(例えば静脈内)注射のための本発明の医薬製剤または組成物は、薬学的に許容される無菌水性または非水溶液、分散体、懸濁液またはエマルジョンならびに使用直前に無菌注射用溶液または分散体に再構成するための無菌粉末であり得る。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または媒体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および適当なそれらの混合物、植物油(例えばオリーブ油)およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング物質により、分散体の場合必要な粒子径の維持によりおよび界面活性剤の使用により維持され得る。非経腸注射用製剤または組成物は、本発明の好ましい製剤または組成物である。
【0079】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含み得る。微生物の活動の阻止を、種々の抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノールまたはフェノールソルビン酸の包含により確実にし得る。例えば、糖または塩化ナトリウムなどの等張化剤を含むことも望ましいことがある。注射用医薬形態の長期吸収は吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の包含によりもたらされ得る。
【0080】
経口投与用固体投与形態は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤を含む。このような固体投与形態において、活性化合物は、一般に少なくとも1個の不活性、薬学的に許容される添加物または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カリウムおよび/または1以上の:a)充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸;b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア;c)湿潤剤、例えばグリセロール;d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、あるケイ酸および炭酸ナトリウム;e)溶液遅延剤、例えばパラフィン;f)吸収加速剤、例えば4級アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレイおよびi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。類似タイプの固体組成物を、例えば、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの添加物を使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いることもできる。
【0081】
経口製剤は、溶解助剤を含み得る。溶解助剤の例は、非イオン性界面活性剤、例えば、スクロース脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えばソルビタントリオレエート)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、メトキシポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコール一脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール一脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルキルオラミドおよびアルキアミンオキシド;胆汁酸およびその塩(例えばケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸およびその塩およびそのグリシンまたはタウリンコンジュゲート);イオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸石鹸、アルキルスルホネート、アルキルホスフェート、エーテルホスフェート、塩基性アミノ酸の脂肪酸塩;トリエタノールアミン石鹸およびアルキル4級アンモニウム塩;および両性界面活性剤、例えばベタインおよびアミノカルボン酸塩を含む。
【0082】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投与形態を、腸溶性コーティングおよび製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよび殻を施し得る。所望により不透明剤を含み得て、活性成分を腸管のある部分のみまたは優勢におよび/または遅延方式で遊離するような組成物でもあり得る。包埋組成物の例は、ポリマー物質および蝋を含む。
【0083】
活性化合物は、適当であれば、上記添加物の1以上と共にマイクロカプセル化形態であり得る。
【0084】
活性化合物は、微粉化形態であってよく、例えば、微粒子化され得る。
【0085】
経口投与用液体投与形態は、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。活性化合物に加えて、液体投与形態は、当分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルおよびそれらの混合物を含み得る。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味、風味および芳香剤も含み得る。懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカントおよびそれらの混合物を含み得る。
【0086】
直腸または膣投与用組成物は、本発明の化合物と、室温で固体であるが、体温で液体であり、それ故に直腸または膣腔で融解して活性化合物を遊離する、適当な非刺激性添加物または担体、例えばカカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐薬蝋の混合により調製され得る坐薬の形であり得る。
【0087】
本発明の化合物の局所投与用投与形態は、散剤、スプレー剤、クリーム剤、フォーム剤、ゲル剤、軟膏剤および吸入剤を含む。活性化合物を、無菌条件下、薬学的に許容される担体および何れかの必要な防腐剤、緩衝液または噴射剤と混合する。眼用製剤、眼軟膏、粉末および溶液も、本発明の範囲内であるとして意図される。
【0088】
液体(例えば水性)製剤および組成物は、非経腸使用または経口使用のいずれを意図するものであれ、活性化合物の沈殿の阻止を助けるさらなる化合物を含み得る。本発明の化合物は、糖ペプチド誘導体である。水溶液中のこのような化合物の沈殿は、溶液に単糖を包含することにより、回避または最小化し得る。例えば、水性製剤または組成物は、グルコースを含み得る。特に、非経腸(例えば静脈内注射)製剤または組成物は、本発明の化合物、注射用水およびグルコースを含み得る。
【0089】
化合物の活性を妨害しない限り、本主題の製剤または組成物は、特に、細菌感染の処置における使用が意図される、他の活性剤を含み得る。
【0090】
本主題の製剤は、不活性成分も含み得る。適当な不活性成分は当分野で周知であり、Goodman and Gillman's: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 13thEd., Brunton et al., Eds. McGraw-Hill Education (2017)およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1990)などの標準的教科書に記載され、この両者は全体として引用により本明細書に包含させる。
【0091】
製剤は、ここに記載する障害の何れかの処置における有効性を増強するために、さらなる医薬剤形と組み合わせて使用し得る。これに関し、本製剤を、これら障害の何れかの処置に有効であるとして当分野で知られる何れかの他の医薬および/または医薬剤形をさらに含むレジメンの一部として投与し得る。
【0092】
使用
本発明の化合物は、糖ペプチドバンコマイシンの新規グアニジノ含有誘導体である。
【0093】
バンコマイシンは、次の機序によりグラム陽性細菌のペプチドグリカン層の合成を妨害するため、グラム陽性細菌に対して活性である抗生物質である。ペプチドグリカン生合成に重要なのは、最後から2番目の細菌細胞壁構成ブロックである脂質IIである。バンコマイシンは、脂質IIペンタペプチドの末端d-Ala-d-Alaモチーフに密接に結合する。
【0094】
d-Ala-d-Lac終結ペンタペプチドを含む脂質IIバリアントを使用できる多くの細菌株が発生しているため、バンコマイシンに対する耐性の遭遇が増えている。このd-Lacのd-Ala変異は、脂質IIに対するバンコマイシンの親和性を低減させ、それにより、抗細菌効果を大きく低減させる(Healy, V. L., et al. (2000) Vancomycin resistance in enterococci: reprogramming of the D-ala-D-Ala ligases in bacterial peptidoglycan biosynthesis, Chem Biol 7, R109-119; Blaskovich, M. A. T., et al. (2018) Developments in Glycopeptide Antibiotics, ACS Infect Dis 4, 715-735; Willyard, C. (2017) The drug-resistant bacteria that pose the greatest health threats, Nature 543, 15;この全部を引用により全体として本明細書に包含させる)。我々は、この耐性の様式が、バンコサミンユニットへの疎水性基の結合が活性を増強するある関連糖脂質ペプチドで、部分的に克服されることを見出した。これは、臨床で使用されている薬物テラバンシンで象徴される(Blaskovich, M. A. T., et al. (2018) Developments in Glycopeptide Antibiotics, ACS Infect Dis 4, 715-735; Willyard, C. (2017) The drug-resistant bacteria that pose the greatest health threats, Nature 543, 15; Corey, G. R., et al. (2009) Telavancin, Nat Rev Drug Discov 8, 929-930;この全部を引用により全体として本明細書に包含させる)。テラバンシンはバンコマイシンより強力であるが、この欠点を逃れていない。バンコマイシンと比較して、テラバンシンは水性媒体への可溶性が顕著に低く、重度の健康リスクを有している。FDAは、最近、心拍(QT間隔の延長)への影響の疑いおよび腎機能障害を有する患者におけるバンコマイシンと比較した死亡率の増加により、テラバンシンに黒色囲み警告を適用した(引用により全体としてここに包含させるBarriere, S. L. (2014) The ATTAIN trials: efficacy and safety of telavancin compared with vancomycin for the treatment of hospital-acquired and ventilator-associated bacterial pneumonia, Future Microbiol 9, 281-289)。テラバンシンは、それ故に最後の手段の薬物と考えられ、他の処置が有効ではない症例にのみ使用される。
【0095】
ここに提供する化合物は、抗生物質、特にグラム陽性細菌による感染に関連する状態の処置に有用な抗生物質である。本発明の化合物は、バンコマイシン、テラバンシン、テイコプラニン、オリタバンシンおよび/またはダルババンシンなどの既知抗生物質と比較して、例えば、MICにより測定して、類似するまたは良好な抗生物質活性を提供し得る。本発明の化合物はまた良好な安全性プロファイルも提供し得る。
【0096】
化合物を細菌感染の処置に使用するとき、細菌感染は、グラム陰性またはグラム陽性細菌により起因し得る。例えば、細菌感染は、次の科の1以上(例えば少なくとも1つ)からの細菌により引き起こされ得る:クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、エロモナス(Aeromonas)、モルガネラ(Morganella)、エルシニア(Yersinia)、サルモネラ(Salmonella)、プロテウス(Proteus)、パスツレラ(Pasteurella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、シトロバクター(Citrobacter)、バークホルデリア(Burkholderia)、ブルセラ(Brucella)、モラクセラ(Moraxella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)。特定の例は、クロストリジウム、シュードモナス、エシェリキア、クレブシエラ、エンテロコッカス、エンテロバクター、ストレプトコッカスおよびスタフィロコッカスを含む。細菌感染は、例えば、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、セパシア菌(Burkholderia cepacia)、シトロバクター属(Citrobacter species)、大腸菌(Escherichia coli)、ヘモフィルス肺炎(Haemophilus Pneumonia)、クレブシエラ肺炎(Klebsiella Pneumonia)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、クロストリジウム・ディフィシル、エンテロコリチカ菌(Yersinia enterocolitica)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、黄色ブドウ球菌、B群溶血性連鎖球菌(group B streptococci)、肺炎球菌および化膿性連鎖球菌から選択される1以上の細菌により引き起こされ得る。
【0097】
本発明の化合物は、特にグラム陽性細菌により引き起こされる細菌感染の処置に有用である。例えば、細菌感染は、次の科の1以上(例えば少なくとも1つ)からの細菌により引き起こされ得る:ブドウ球菌(例えば黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌)、レンサ球菌(例えば化膿性連鎖球菌、B群溶血性連鎖球菌、緑色連鎖球菌、肺炎球菌)、腸球菌(例えばフェカリス菌)、バシラス、クロストリジウム、リステリアおよびコリネバクテリウム。細菌感染は、次の科の1以上(例えば少なくとも1つ)からの細菌により引き起こされ得る:ブドウ球菌(例えば黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌)、レンサ球菌(例えば化膿性連鎖球菌、B群溶血性連鎖球菌、緑色連鎖球菌、肺炎球菌)、腸球菌。細菌はメチシリンおよび/またはバンコマイシンでの処置に耐性であり得て、例えば細菌はメチシリンおよび/またはバンコマイシン耐性ブドウ球菌(例えば黄色ブドウ球菌)、ストレプトコッカスまたは腸球菌(例えばフェシウム菌(E. faecium)、フェカリス菌)の株を含み得る。細菌感染は、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)またはバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)による感染を含み得る。細菌感染は、黄色ブドウ球菌またはフェシウム菌による感染を含み得る。細菌感染は、黄色ブドウ球菌ATCC29213、黄色ブドウ球菌USA300、フェシウム菌E155、フェシウム菌E7314、フェシウム菌E980、フェカリス菌E1246またはフェカリス菌E7406の1以上による感染を含み得る。
【0098】
本発明の化合物により処置され得る細菌(例えばグラム陽性)感染の例は、膚および構造感染、下部呼吸器感染、菌血症、セプシス、敗血症、感染性心内膜炎、腹膜炎(例えば持続性自己管理腹膜透析に関連する)、腸炎(例えばブドウ球菌性)、乳腺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染関連下痢および大腸炎を含む。処置され得る感染は、皮膚および構造感染および菌血症から選択され得る。皮膚および構造感染の例は、蜂巣炎/丹毒、皮膚の大膿瘍および創傷感染を含む。このような皮膚および構造感染は、黄色ブドウ球菌(メチシリン感受性およびメチシリン耐性株を含む)、化膿性連鎖球菌、B群溶血性連鎖球菌、ストレプトコッカス・ディスガラクティアエ(Strep. dysgalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Strep. anginosus)(ストレプトコッカス・アンギノサス(S. anginosus)、ストレプトコッカス・インターメディウス(S. intermedius)、ストレプトコッカス・コンステラータス(S. constellatus)を含む)またはフェカリス菌による感染によるものであり得る。下部呼吸器感染の例は、肺炎、市中肺炎(CAP)、院内肺炎および膿胸を含む。
【0099】
化合物の合成
本発明の化合物は、反応スキームAおよびBに従い製造され得る。スキームAは、使用し得る一般的スキームを記載し、一方、スキームBは、例示化合物で使用できる方法を概説する。当業者には認識されるとおり、スキームBを、置換基RおよびRが本発明の化合物および本開示に定義するとおりであるさらなる化合物の提供のために、容易に応用できる。
【化18】
、R、R、RおよびLは本発明の化合物および本発明において定義するとおりである。
【化19】
【0100】
アッセイ
本発明の化合物を、当業者に知られる何らかの適当なアッセイを使用して、生物学的活性について評価し得る。本発明の化合物の評価に有用であるアッセイ例を、次の段落に提供する。
【0101】
最小阻止濃度
化合物の抗細菌活性を、グラム陽性細菌(黄色ブドウ球菌ATCC29213、黄色ブドウ球菌USA300、黄色ブドウ球菌LIM-2、NR-45881、黄色ブドウ球菌HIP13419、NR-46413、フェシウム菌E155、フェシウム菌E7314、フェシウム菌E980、フェカリス菌E1246、フェカリス菌E7406および肺炎レンサ球菌(S. pneumonia)153)を含む、一団の細菌に対して試験した。化合物の抗細菌活性を、さらに黄色ブドウ球菌NY-155、NR-46236、黄色ブドウ球菌HIP12864、NR-46074、黄色ブドウ球菌880(BR-VRSA)、NR-49120、フェカリス菌E1246、フェカリス菌E7604、ならびにあるグラム陰性細菌(大腸菌および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae))に対しても試験した。最小阻害濃度(MIC)(μg/mL)を、CLSIガイドラインに従って検定した。グリセロールストックから、細菌株を血液寒天プレートで培養し、37℃で18時間、インキュベートした。単一コロニーを、0.002%ポリソルベート80(p80)含有トリプティックソイブロス(TSB)に移した。エンテロコッカス、VISAおよびVRSA株について、培養物を37℃で懸濁液の光学密度が0.5マクファーランド標準に相当するレベルに達するまでインキュベートした。細菌懸濁液を、10CFU/mLの細菌細胞濃度に達するまで0.002%p80含有TSBで増殖させた。その他(バンコマイシン感受性)黄色ブドウ球菌株について、直接コロニー懸濁法を使用した。これらの株について、コロニーを0.002%p80含有TSBに移した後、10CFU/mLにすぐに希釈し、この希釈前にインキュベートしなかった。肺炎レンサ球菌の場合、直接コロニー懸濁液を新鮮血液寒天プレートからの複数コロニーを0.5のOD600までTSB+0.002%p80にすぐに懸濁し、続いてTSB+0.002%p80+5%ウマ溶血液で10CFU mL-1まで希釈することにより使用した。この株のための抗生物質希釈も、TSB+0.002%p80+5%ウマ溶血液で行った。肺炎レンサ球菌を含む寒天およびマイクロプレート両方を、37℃で5%COで、24時間、一定撹拌(600rpm)しながらインキュベートした。VRSA株の場合、6μg mL-1 バンコマイシンをこの培地に添加した。培養物を対数期(OD600=0.5)まで37℃で増殖させた。細菌懸濁液を0.002%p80含有TSB(VRSAについて、これ以降、バンコマイシンをこの培地に添加しないで希釈して、10CFU mL-1の細菌細胞濃度に到達させた。ポリプロピレン96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、試験化合物を生物学的トリプリケートで加え、あるウェルから隣に移し、混合することにより2倍連続希釈して、ウェルあたり50μLの最終体積を達成した。等量の細菌懸濁液(10CFU mL-1)をウェルに加えた。プレートを通気性膜で密封し、37℃で24時間、一定撹拌(600rpm)でインキュベートした。ポリプロピレンマイクロタイタープレートにおいて、100μLの試験化合物を生物学的トリプリケートで第一行に加え、50μLの培地を他のウェルに加えた。化合物を、50μLをあるウェルから隣に移し、混合することにより連続希釈した。続いて、50μLの細菌懸濁液(10CFU/mL)をウェルに加えた。プレートを通気性膜で密封し、37℃で24時間、一定撹拌(600rpm)でインキュベートした。陽性増殖対照は、細菌懸濁液を含み、抗生物質を含まないウェルからなった。陰性増殖対照は、細菌懸濁液または抗生物質を含まない培地のみからなった。MICを、トリプリケートの最小の中央値から決定した。血清存在下のMICは、同じプロトコールに従うが、増殖培地としてTSB+0.002%p80+50%血清を使用した。
【0102】
溶血
全脱フィブリンヒツジ血液(4mL)を、15分間、4℃で400gで遠心分離した。上部層を廃棄し、下部層をリン酸緩衝化食塩水(PBS)で洗浄し、15分間、4℃で400gで遠心分離した。洗浄サイクルを3回繰り返した。ポリプロピレンマイクロタイタープレートを、150μLの化合物の0.002%p80含有PBS(256μg/mL、≦1%DMSO含有)を、生物学的トリプリケートで第一行に加えることにより調製した。0.002%p80含有PBS(75μL)を、他のウェル全てに加えた。化合物を、75μLをあるウェルから隣のウェルに移し、混合することにより連続希釈した。濃縮血液細胞を0.002%p80含有PBSで25倍希釈し、75μLのこの溶液を、全ウェルに加えた。プレート中の試験化合物の最終濃度は、2~128μg/mLの範囲であった。プレートを、18時間、37℃で連続振盪(500rpm)しながらインキュベートした。インキュベーション後、プレートを5分間、800gで遠心分離し、25μLの上清をUV-star平底ポリスチレンプレートに加えた。100μLのMQ-HOをUV-starプレートの全ウェルに加え、415nmで吸収を測定した。陽性対照ウェル(100%溶血)は、血液細胞を含む0.1%Triton X-100からなった。陰性対照ウェル(溶血なし)は、血液細胞を含む1%DMSOからなった。別の実験で、溶血アッセイの最適波長を、完全走査の実施により決定した。他の別の実験で、直線的検出範囲を、主実験で選択した25倍血液細胞希釈に基づき、決定した。
【0103】
UDP-MurNAc-ペンタペプチド蓄積
細菌懸濁液(黄色ブドウ球菌ATCC29213、フェシウム菌E155、フェシウム菌E7314およびフェシウム菌E980)の一夜培養物を0.002%p80添加TSBで100倍希釈し、懸濁液の光学密度が0.5マクファーランド標準に相当するレベルに達するまで37℃で培養した。クロラムフェニコールを最終濃度130μg/mLで加え、培養物をさらに15分間、37℃でインキュベートした。次に、培養物を5mL培養物に分け、試験抗生物質(バンコマイシン、5、6、7、14、16)を、最終濃度5μMで加えた。バンコマイシン(5μM)を陽性対照として使用し、未処理サンプルを陰性対照として使用した。培養物を37℃で1時間インキュベートし、その後細菌をペレット化するために遠心分離した。上清を除去し、ペレットを1mL MQ-HOに再懸濁した。サンプルを100℃で15分間沸騰させ、続いて12000rpmで30分間遠心分離した。サンプルの上清を凍結乾燥し、250μL 緩衝液A(50mM 重炭酸アンモニウム、5mM NEt3、pH8.3)に再懸濁した。サンプルを、25分間にわたる0~25%緩衝液B(MeOH)勾配を使用する分析的RP-HPLCにより分析した。
【0104】
脂質II拮抗アッセイ
クロロホルム中の脂質IIを、適切な量(試験抗生物質に比して5倍モル過剰)で96ウェルプレートに加え、クロロホルムを蒸発させた。試験抗生物質(バンコマイシン、テラバンシン、5、6、7、14、16)を、DMSO中12.8mg/mLの高貯蔵濃度で溶解し、その後0.002%p80添加TSBで16×MICの濃度に希釈した(最大で含まれるDMSOは1%を超えない)。これら希釈物で、50μLを5倍モル過剰の純粋脂質IIと、トリプリケートでプレート中混合し、プレートにトリプリケートで脂質II非存在下でも加えた。黄色ブドウ球菌ATCC29123コロニーを、光学密度が0.5マクファーランド標準に相当するレベルに達するまで直接コロニー懸濁液により0.002%p80含有TSBに懸濁した。細菌懸濁液を0.002%p80含有TSBで希釈して10CFU/mLを得て、50μLを、マイクロプレート中試験化合物に加えて、試験化合物について8×MICの最終濃度とした。サンプルを、37℃で24時間、一定撹拌(600rpm)でインキュベートし、細菌増殖について目視した。陽性増殖対照は、細菌懸濁液を含み、抗生物質または脂質IIを含まないウェルからなった。陰性増殖対照は、細菌懸濁液、抗生物質または脂質IIを含まない培地のみからなった。
【0105】
耐性獲得連続継代アッセイ
グリセロールストックから、細菌株を血液寒天プレートで培養し、一夜、37℃でインキュベートした。単一コロニーをTSB+0.002%p80中対数期(OD600=0.5)まで増殖させ、新鮮培地で1:100希釈した。ポリプロピレン96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、抗生物質を生物学的トリプリケートで加え、あるウェルから隣に移し、混合することにより2倍連続希釈して、ウェルあたり50μLの最終体積を達成した。等量の細菌懸濁液をウェルに加え、プレートを、一夜、37℃でインキュベートした。0.25×MICに対応する細菌培養物を新鮮培地で100倍希釈し、新たに調製した抗生物質希釈シリーズ(50μL/ウェル)に加え(50μL/ウェル)、続いて、37℃で一夜インキュベーションした。この工程を30日間繰り返し、MICを毎日記録した。ダプトマイシン含有培養物に50mg L-1 CaClおよび10mg L-1 MgSOを添加した。実験を生物学的反復で実施し、各反復について、MICをトリプリケートの最小の中央値から決定した。
【0106】
タイム・キル・アッセイ
グリセロールストックから、細菌株を血液寒天プレートで培養し、一夜、37℃でインキュベートした。続いて、単一コロニーを、TSB+0.002%p80中、一夜、37℃で培養した。培養物を新鮮培地で100倍希釈し、早期対数期(OD600=0.2-0.4)に達するまで増殖させ、続いて、培地でOD600=0.0025まで希釈した。培養物を、2mLを含む別の培養チューブに分けた。抗生物質を培養物に加え(実験結果において示す濃度で)、37℃で計24時間インキュベートした。示す時点で(t=0、t=1、t=2、t=4、t=8およびt=24時間)、100μLの各培養物をエッペンドルフに移し、5分間遠心分離した(10,000rpm)。上清を除去し、細胞ペレットを、等量の0.9%NaCl水溶液(濾過滅菌)に再懸濁した。サンプルを、濾過滅菌0.9%NaCl水溶液で10倍係数で連続希釈した。これら一連の希釈で、100倍、1,000倍、10,000倍および100,000倍希釈を、デュプリケートで血液寒天プレート(20μL)に播種し、続いて蒸発させ、37℃で24時間インキュベートした。コロニーを計数し、希釈係数を考慮して、元の培地に残ったCFU mL-1を計算するために使用した。実験を生物学的デュプリケートで実施した。
【0107】
HepG2の細胞毒性アッセイ
哺乳動物細胞毒性アッセイを、Cyprotexにより実施した。細胞毒性を、MTTアッセイを使用して評価した。簡潔には、HepG2ヒト肝細胞癌細胞(100μL/ウェル)を、細胞の投与前に24時間処理した黒壁透明底ポリスチレン96ウェル組織培養に播種した。細胞に試験化合物(10%FBS含有増殖培地中0.5%DMSOに溶解)を、一定範囲の濃度で加えた(0.04μM、0.1μM、0.4μM、1μM、4μM、10μM、40μM、100μM)。23時間後、細胞にMTT色素(黄色;3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロマイド)を負荷し、続いて、さらに1時間インキュベーションした(抗生物質とのインキュベーション時間が合計24時間となる)。続いて、プレートを乾燥させ、DMSOに溶解し、続いて、マイクロプレート吸光度リーダーを使用して、570nmで走査する。細胞生存能を、生存細胞におけるミトコンドリアヒドロゲナーゼによる可溶性MTTから不溶性ホルマザン(紫色)への変換により、決定する。ホルマザンは産生ミトコンドリア機能の喪失および細胞の喪失を示す。カルボニルシアニド3-クロロフェニルヒドラゾンを、応答対照無しとして使用し、クロルプロマジンを細胞毒性であることが知られる対照として使用する。次いで、溶媒対照ウェル(10%FBS含有増殖培地中0.5%DMSO)を使用して、低または高レスポンダーの予測を超えるフラクションを有するウェルについて有意限界を決定する。最小有効濃度を、明確な用量-応答相関が観察されるまたは少なくとも2連続濃度点が有意レベルを超える限り、平均値が有意レベルを超える最低濃度から決定する。明確な用量-応答相関が観察される限り、AC50値を決定する。実験をトリプリケートで実施した。
【0108】
インビボ試験
マウス試験を、十分に特徴づけされた非近交マウス系統である病原体フリーCD1マウス(ICR)を使用して、実施した(Charles River, Margate UKから提供)。マウスは全て雄であり、到着時11~15グラム体重であり、試験開始前少なくとも7日間順応させた。マウスを、HEPA濾過無菌空気およびアスペンチップ床(最低でも週1回交換)の、滅菌換気ケージで個々に飼育した。餌および水は、自由に摂取させた。室温は22℃±1℃であり、60%相対湿度および最大バックグラウンドノイズ56dBであった。マウスを12時間明/暗サイクルに曝した。
【0109】
忍容性
化合物5の忍容性を、免疫抑制または感染していないナイーブマウス(n=2)で100mg kg-1皮下注射(注射用水中10%DMSO)で評価した。
【0110】
PK
試験品5を、免疫抑制または感染していないナイーブマウス(n=3)に3mg kg-1皮下投与した。全血を5分、15分、30分、1時間、2時間、4時間および8時間に微静脈から採取した。最後のサンプルを最終心臓穿刺により採取した。
【0111】
有効性
マウスを、それぞれ感染4日および1日前に150mg kg-1および100mg kg-1シクロホスファミドを皮下注射することにより、好中球減少させた。マウスに、両大腿に一時的麻酔下、MRSA USA300株NRS384(1.47×10CFU mL-1、7.33×10CFU/大腿)を筋肉内感染させた。マウスを、感染1時間後から開始して、媒体(注射用水中10%DMSO)で6時間毎、25mg kg-1 バンコマイシン(注射用水中)で12時間毎、3mg kg-1または10mg kg-1 化合物5(注射用水中10%DMSO中)で6時間毎処置した。処置前群を、感染1時間後屠殺し、他の処置群を感染23時間後屠殺した。重量測定した大腿を均質化し、MSA寒天で37℃で18~24培養し、続いて、コロニー計数した。各群はn=6マウスからなり、両大腿を感染させ(n=12大腿/処置群)、各大腿を別のサンプルとして処置した。データ解析を、ノンパラメトリック統計モデルを使用するStatsDirect software v. 3.2.8で行った(群間の全対比較を行うため、Conover-Inmanを使用するクラスカル・ウォリス)。
【実施例
【0112】
薄層クロマトグラフィー(TLC)を、SiliaPlate TLCプレート(SiliCycle、ガラス裏面、シリカ、250μm)で実施した。UV光、ニンヒドリン染色、過マンガン酸染色またはセリウムアンモニウムモリブデン酸染色で可視化した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを、SiliaFlash(登録商標)P60シリカゲル(SiliCycle)で実施した。最終化合物を分取逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で、Reprosil Gold 120 C18 10μmカラム(長さ:250mm、ID:25mm。Lot No: 8768. part No:r10.9g.s2525. Serial No:18020211570. Dr Maisch GmbH)とBESTAポンプ、FLASH 10 DAD UVディテクターおよびSCPA PrepCon 5ソフトウェアを使用して、実施した。化合物純度を評価するための分析的HPLCを、Phemomenex Jupiter su C18 300Aカラム(250×4、60mm、5ミクロン)を、Shimadzu LC-2030 Plus装置で使用して、実施した。純度を示すために表した全スペクトルを、214nmで記録した。分取および分析的HPLCで使用した緩衝液は、二リン酸ウリジンN-アセチルムラミン酸ペンタペプチド(UDP-MurNAc-pp)蓄積アッセイ以外、全例で緩衝液Aとして50mM 酢酸アンモニウムおよび緩衝液Bとして95%MeCN+5%HOであった。そのアッセイで、分析を、Phemomenex Jupiter su C18 300Aカラム(250×4、60mm、5ミクロン)をShimadzu LC-2030 Plus装置で使用して、実施した。緩衝液は、緩衝液Aとして50mM 重炭酸アンモニウム、5mM NEt、pH8.3および緩衝液BとしてMeOHであり、示されたデータを254nmで記録した。サンプルを、OmnitronicsのVirTis BenchTop Proで凍結乾燥した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、5mm BBO、Broadband Observeプローブヘッド、Z-勾配で高解像度および5mm 19F/Hデュアル高解像度プローブを備えた、7.0テスラの場強度の超伝導電磁石であるBruker DPX-300から得た。高解像度質量分析(HR-MS)分析を、35℃でPhenomenex Kinetex C18カラム(2.1×150mm、2.6μm)を用いるおよびダイオードアレイディテクターを備えるThermo Scientific Dionex UltiMate 3000 HPLCシステムで実施した。次の溶媒系を、0.3mL/分の流速で使用した:溶媒A、0.1%ギ酸水溶液;溶媒B、0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液。勾配溶出は次のとおりであった:95:5(A/B)を1分、95:5~5:95(A/B)を9分で、5:95~2:98(A/B)を1分で、2:98(A/B)を1分、次いで、95:5(A/B)に2分で戻り、95:5(A/B)を1分。この系を、ギ酸ナトリウムで内部校正したBruker micrOTOF-Q IIますスペクトロメーター(エレクトロスプレーイオン化)に接続した。Tecan Sparkを吸光度測定に使用した。
【0113】
使用した細菌株は、黄色ブドウ球菌ATCC 29213(MSSA、Rosenbach株)、黄色ブドウ球菌USA300(MRSA、入院患者、Texas, USA。PFGEタイプ:USA300。SCCmecタイプ Iva)、フェシウム菌E155(VRE、入院患者、Chicago, USA, VanAgene、MICバンコマイシン1024、1995年)、フェシウム菌E980(VSE、ヒトで一般に単離(市販)、VanBgeneのVanAなした。1998年)、フェシウム菌E7314(VRE、入院患者、NLD, VanBgene)、フェカリス菌E1246(VRE、VanAgene、臨床単離)およびフェカリス菌E7406(VRE、VanBgene、臨床単離)であった。
【0114】
実施例1:化合物1の合成:O-アリル炭素イソチオシアナチデート
【化20】
化合物1を、公表されている文献法により合成した(Martin, N. I., Woodward, J. J. & Marletta, M. A. NG-Hydroxyguanidines from Primary Amines. Org. Lett. 8, 4035-4038 (2006))。簡潔には、チオシアン酸カリウム(9g、92mmol、1.3当量)のCCl(200mL)溶液に18-crown-6(924mg、3.5mmol、0.05当量)およびクロロギ酸アリル(7.4mL、70mmol、1当量)を加え、反応混合物を90℃で18時間、還流した。インキュベーション後、反応混合物をPE(200mL)で希釈し、氷上で1時間撹拌を続けた。続いて、混合物をセライトで濾過し、DCMで洗浄した。濾液を減圧下濃縮し、0.5Mの推定濃度までDCMに再溶解し、さらに使用するまで4℃で保管した。1を粗製のまま次反応で使用した。
【0115】
実施例2:化合物2の合成:4-(1,3-ジオキソラン-2-イル)アニリン
【化21】
化合物2を、文献法を改変して合成した(Hughes, A. et al. Diamide compounds having muscarinic receptor antagonist and β2 andrenergic receptor agonist activity (2010))。2-(4-ニトロフェニル)-1,3-ジオキソラン(9.8g、50mmol、1当量)およびNaHCO(4.3g、50mmol、1当量)のEtOH(350mL)溶液に、窒素雰囲気下、酸化白金(iv)一水和物(1.2g、5mmol、0.1当量)を加えた。反応混合物を水素で15分間被覆し、次いで、水素雰囲気下、18時間、RTで撹拌した。次に、溶液をセライトで濾過し、MeOHで洗浄した。濾液を減圧下濃縮して、2を得て、これを粗製のまま、すぐに次工程で使用した。
【0116】
実施例3:化合物3の合成
【化22】
粗製の2(50mmol、1当量)およびDIPEA(8.7mL、50mmol、1当量)のDCM(50mL)溶液に、1をRTでTLC(5%EtOAc含有DCM中)が2から3への完全な変換を示すまで加えた。粗製生成物を減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCMと5%まで勾配増加のEtOAc)で精製した。2段階工程の収率;77%。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ/ppm: 11.47 (s, 1H), 8.42 (s, 1H), 7.67 (d, J=8.5 Hz, 2H), 7.51 (d, J=8.5, 2H), 6.00 - 5.85 (m, 1H), 5.83 (s, 1H), 5.39 (dd, J=17.2, 1.4 Hz, 1H), 5.33 (dd, J=10.4, 1.2 Hz, 1H), 4.70 (dt, J=5.8, 1.3 Hz, 2H), 4.18 - 3.98 (m, 4H). 13C-NMR (75 MHz, CDCl3) δ/ppm: 177.75, 152.65, 138.30, 136.59, 130.84, 127.15, 124.10, 119.86, 103.25, 67.37, 65.40. HR-MS: m/z 309.0913(実測値), 309.0909([M+H+]について計算)。
【0117】
実施例4:trans,trans-ファルネシルブロマイドの合成:(E)-1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン
【化23】
(E)-1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン文献法を改変して合成した(Zahn, T. J. et al. Evaluation of Isoprenoid Conformation in Solution and in the Active Site of Protein-Farnesyl Transferase Using Carbon-13 Labeling in Conjunction with Solution- and Solid-State NMR. J. Am. Chem. Soc. 122, 7153-7164 (2000); Xie, H., Shao, Y., Becker, J. M., Naider, F. & Gibbs, R. A. Synthesis and Biological Evaluation of the Geometric Farnesylated Analogues of the a-Factor Mating Peptide of Saccharomyces cerevisiae. J. Org. Chem. 65, 8552-8563 (2000))。簡潔には、trans,trans-ファルネソール(4.5mL、18mmol、1当量)のDCM溶液に、アルゴン雰囲気下、トリフェニルホスフィン(4mL,18mmol、1当量)およびテトラブロモメタン(7.4g、22.5mmol、1.25当量)を加えた。反応物を、RTで4時間撹拌した。減圧下溶媒除去後、ヘキサン(15mL)を残留物に加えて、生成物を沈殿させた。混合物を遠心分離し(4500rpm、5分)、上清を減圧下濃縮した。3回のさらなる沈殿-遠心分離-蒸発サイクルを実施し、その後粗製trans,trans-ファルネシルブロマイドを得て、次工程で直接使用した。
【0118】
実施例5:trans-ゲラニルアミンおよびtrans,trans-ファルネシルアミンの合成:(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-アミンおよび(2E,6E)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-アミン
【化24】
(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-アミンおよび(2E,6E)-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン-1-アミンを、文献法を改変して合成した(Koopmans, T. et al. Semisynthetic Lipopeptides Derived from Nisin Display Antibacterial Activity and Lipid II Binding on Par with That of the Parent Compound. J. Am. Chem. Soc. 137, 9382-9389 (2015); Coppola, G. M. & Prashad, M. A Convenient Preparation of Farnesylamine. Synth. Commun. 23, 535-541 (1993))。簡潔には、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(10mL、THF中1M)に、アルゴン雰囲気下、純粋trans-ゲラニルブロマイドまたは粗製trans,trans-ファルネシルブロマイド(1当量)をそれぞれ加えた。反応物をRTで18時間撹拌し、続いて飽和塩化アンモニウム溶液で反応停止させた。混合物をメチルt-ブチルエーテルで2回抽出し、有機相を併合し、NaSOで乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧下除去して、2×TMSアミンを得た。この生成物を40mLのMeOHおよび5mLのDCMに溶解し、RTで18時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去して、粗製trans-ゲラニルアミンまたはtrans,trans-ファルネシルアミンを得て、これを次工程で直接使用した。
【0119】
実施例6:クロロビスフェニルアミンの合成:4’-クロロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メタンアミン
【化25】
4’-クロロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メタンアミンを、公開された文献法に従い、行った(Lee, H. et al. (Biphenyl-4-yl)methylammonium Chlorides: Potent Anticonvulsants That Modulate Na+ Currents. J. Med. Chem. 56, 5931-5939 (2013))。4-ブロモベンジルアミン(4.32g、23mmol、1当量)のMeCN(250mL)溶液に、アルゴン下、4-クロロフェニルボロン酸(4g、26mmol、1.1当量)、Pd(PPh)(1.36g、1.16mmol、0.05mmol)および2M 水性KCO(58mL)を加えた。溶液にアルゴンを30分間散布後、反応物を、還流下、90℃で16時間撹拌した。溶媒を減圧下除去した。得られた残留物をEtOAc(100mL)に溶解し、水(2×100mL)および塩水(2×100mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮した。残留物をEtOAcに再溶解し、濃水性HCl(2mL)を加えて、沈殿させた。EtOAcに、HOを加え、層を分離した。水層のpHを4N NaOHで調節し、DCM(2×)で抽出した。DCM層を併合し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧下濃縮した。DCMに再溶解した得られた残留物に、ジオキサン中4N HClを加えて、沈殿させた。沈殿を濾過し、ヘキサンで洗浄して、4’-クロロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メタンアミンを最終生成物として得て、これを次反応工程に粗製で使用した。
【0120】
実施例7:4aの合成
【化26】
3(1.80g、5.8mmol、1当量)のDCM溶液に、ヘキシルアミン(1.5mL、11.7mmol、2当量)およびNEt(1.6mL、11.7mmol、2当量)を加えた。続いてEDC HCl(2.2g、11.7mmol、2当量)を加え、反応混合物をRTで撹拌した。2時間後、反応が完了し、溶液を減圧下濃縮した。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM+5%EtOAc)で精製した。収率;100%。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ/ppm: 10.70 (s, 1H), 7.53 (d, J=8.0 Hz, 2H), 7.22 (d, J=6.8 Hz, 2H), 6.13 - 5.91 (m, 1H), 5.78 (s, 1H), 5.34 (d, J=17.3 Hz, 1H), 5.21 (d, J=10.4 Hz, 1H), 4.62 (d, J=5.6 Hz, 2H), 4.21 - 3.99 (m, 4H), 3.43 - 3.29 (m, 2H), 1.57-1.38 (m, 2H), 1.36-1.16 (m, 6H), 0.94 - 0.78 (m, 3H). 13C-NMR (75 MHz, CDCl3) δ/ppm: 164.21, 158.64, 137.02, 136.61, 133.67, 128.33, 117.42, 103.14, 66.02, 65.48, 41.37, 31.45, 29.40, 26.51, 22.54, 14.02. HR-MS: m/z 376.2242(実測値), 376.2236([M+H+]について計算)
【0121】
実施例8:5a~16aの合成
化合物5a~16aを、反応後、16aおよび16bの生成物混合物をもたらした16a以外、対応する脂質アミンを使用して4aの上記プロトコールに従い、合成および精製した。16aおよび16bを合わせ、次工程で粗製で使用した。これら化合物の結果を、表1に要約する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0122】
実施例9:17aおよび18aの合成
化合物17aおよび18aを、対応する脂質アミンを使用して、4aの上記プロトコールに従い合成および精製した。これら化合物の結果を、表2に要約する。
【表2】
【0123】
実施例10:4bの合成
【化27】
4a(2.19g、5.8mmol、1当量)のTHF溶液に、1M 水性HCl(11.7mmol、2当量)を加え、反応混合物をRTで1時間撹拌した。飽和NaHCOで反応停止させ、生成物をDCMで2回抽出した。有機層を併合し、NaSOで乾燥させ、濾過した。粗製生成物を減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(2/1 PE/EtOAc)で精製した。収率;100%。1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ/ppm: 9.86 (s, 1H), 7.82 (d, J=7.9 Hz, 2H), 7.28 (d, J=7.9 Hz, 2H), 6.07 - 5.86 (m, 1H), 5.33 (dd, J=17.2, 1.4 Hz, 1H), 5.23 (dd, J=10.4, 1.3 Hz, 1H), 4.61 (d, J=5.7 Hz, 2H), 3.47 - 3.30 (m, 2H), 1.67 - 1.52 (m, 2H), 1.43 - 1.22 (m, 6H), 0.94 - 0.82 (m, 3H). 13C-NMR (75 MHz, CDCl3) δ/ppm: 190.84, 132.51, 131.41, 123.21, 118.14, 66.27, 41.51, 31.35, 29.08, 26.50, 22.45, 13.94. HR-MS: m/z 332.1980(実測値), 332.1974([M+H+]について計算)。
【0124】
実施例11:5b~16bの合成
化合物5b~16bを、その対応する前駆体(5a~16a)を使用して、4bの上記プロトコールに従い合成および精製した。これら化合物の結果を、表3に要約する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【0125】
実施例12:17bおよび18bの合成
化合物17bおよびを、その対応する前駆体(17aおよび18a)を使用して、4bの上記プロトコールに従い合成および精製した。これら化合物の結果を、表4に要約する。
【表4】
【0126】
実施例13:4cの合成
【化28】
4b(178mg、538μmol、2当量)のDMF/MeOH(4mL)溶液に、塩酸バンコマイシン(400mg、269μmol、1当量)およびDIPEA(0.23mL、1.35mmol、5当量)を加えた。反応物を還流条件下、70℃で2時間撹拌後、NaBHCN(169mg、2.69mmol、10当量)を加え、反応温度を50℃に下げた。5時間後、さらに10当量のNaBHCN(169mg、2.69mmol)を加え、18時間後、10当量NaBHCN(169mg、2.69mmol)および1当量の4b(89mg、269μmol)を加えた。さらに18時間後、反応混合物を水の添加により反応停止させた。溶媒を減圧下蒸発させ、残留物をDMFに再溶解し、冷ジエチルエーテルで2回沈殿させた。沈殿を乾燥させ、次工程で粗製で使用した。
【0127】
実施例14:5c~16cの合成
化合物5c~16cを、その対応するアルデヒド前駆体(5b~16b)を使用して、4cの上記プロトコールに従い、合成した。化合物5c~16cを、全て、次反応工程で粗製で使用した。
【0128】
実施例15:17cおよび18cの合成
化合物17cおよび18cを、その対応するアルデヒド前駆体(17bおよび18b)を使用して、4cの上記プロトコールに従い、合成した。化合物17cおよび18cを、全て、次反応工程で粗製で使用した。
【0129】
実施例16:4の合成
【化29】
粗製4c(269μmol、1当量)の乾燥DMF(5mL)溶液に、アルゴン下雰囲気、Pd(PPh)(78mg、67μmol、0.25当量)およびフェニルシラン(0.83mL、6.7mmol、25当量)を加えた。反応混合物を1時間、RTでアルゴン下雰囲気撹拌した。脱保護完了後、水で反応停止させ、溶媒を減圧下蒸発させた。残留物を、緩衝液A(50mM 酢酸アンモニウム)と20%緩衝液B(95%MeCN、5%水)の混合物に再溶解し、遠心分離して、全固体残留物を除去した。上清を、分取RP-HPLCに付し、生成物を50分にわたる20~55%緩衝液B勾配で精製した。フラクションの純度を、30分にわたる0~100%緩衝液B勾配を使用する分析的RP-HPLCで評価した。純粋フラクションを貯留し、凍結乾燥して、白色粉末を得た。貯留最終化合物の純度を、60分にわたる0~100%緩衝液B勾配を使用する分析的RP-HPLCで評価した。2工程にわたる収率;54.4%。HR-MS:m/z 840.3100(実測値)、840.3097([M+2H]/2について計算)。保持時間RP-HPLC分析;20.37分。
【0130】
実施例17:5~16の合成
化合物5~16を、その対応する前駆体(5c~16c)を使用して、4の上記プロトコールに従い、合成した。分取RP-HPLC精製緩衝液勾配を、存在するR基の疎水性に基づき、各化合物で調整した。さらに、分取RP-HPLCで初期溶媒系に存在する緩衝液Bのパーセンテージ(20%から50%まで)を、同様にR基の疎水性に基づき調節した。これらの化合物の結果を、表5に示す。
【表5】

【0131】
実施例18:17および18の合成
化合物17および18を、その対応する前駆体(17cおよび18c)を使用して、4の上記プロトコールに従い合成した。分取RP-HPLC精製緩衝液勾配を、存在するR基の疎水性に基づき、各化合物で調整した。さらに、分取RP-HPLCで初期溶媒系に存在する緩衝液Bのパーセンテージ(20%から50%まで)を、同様にR基の疎水性に基づき調節した。これらの化合物の結果を、表6に示す。
【表6】

【0132】
実施例19:最小阻止濃度アッセイ
化合物の活性を、MICアッセイで一団のグラム陽性細菌に対して評価した。このアッセイにおいて、細菌の可視増殖が阻止される最低試験濃度を意味する最小阻止濃度を、決定し、臨床で使用される抗生物質と比較する。臨床で使用される糖ペプチドと比較して、ほとんど全ての化合物は、試験したMRSA、MSSA、VRE、VSE、VISA、VRSAおよび肺炎レンサ球菌株の大部分に対して、同等または優れた活性を有する。ある場合(試験する化合物および細菌による)、バンコマイシンに比して、活性の1000倍増加がある(得られたデータを表7に要約し、MIC値をμg/mLの単位で示す)。さらなるMICデータを表8~12に提供する。
【表7】


【表8】


【表9】


【表10-1】


【表10-2】


【表11】


【表12】

【0133】
化合物の活性を、ヒツジ血清存在下、MRSA USA300株に対して、他のMICアッセイでさらに評価した。増殖培地としてTSB+0.002%P80+50%ヒツジ血清を使用する血清存在下増殖させた培養物を、TSB+0.002%P80のみで実施する通常のMICと異なり使用した。
【表13】

【0134】
実施例20:溶血アッセイにおける化合物の試験
溶血アッセイにおいて、ヒツジ血液を試験化合物で18時間処理して、化合物がこれら血液細胞を溶解するか否か決定した。全体として、脂質長が伸びたら、溶血パーセンテージは同様に増加するように見えた。しかしながら、1000倍MICでも(ある株について)、多くの化合物は溶血性を有さず、これら化合物が、関連濃度で非溶血性であることを意味する(得られたデータを図1に要約する)。
【0135】
実施例21:UDP-MurNAc-ペンタペプチド蓄積アッセイにおける化合物の試験
UDP-MurNAc-ペンタペプチド蓄積アッセイを、化合物の作用機序の一部を明らかにするため、実施した。UDP-MurNAc-ペンタペプチドは、ペプチドグリカン細胞壁生合成の最後の可溶性前駆体である。このアッセイにおいて、生存細胞は、ペプチドグリカン生合成の膜結合段階を妨害する化合物で処理したとき、この最後の可溶性前駆体を蓄積する(Sass, V. et al. Human beta-defensin 3 inhibits cell wall biosynthesis in Staphylococci. Infect. Immun. 78, 2793-2800 (2010))。5つの化合物(5、6、7、14、16)をこの試験でアッセイし、全て、臨床で使用される糖ペプチド(データを示していない)に類似する、UDP-MurNAc-ペンタペプチド(得られたデータを図2に要約する)の蓄積を示した。これは、分子の作用機序の一部が、グラム陽性細菌における細胞壁生合成の妨害を含むことを示す。アッセイを、黄色ブドウ球菌ATCC29213(図2に示す)、フェシウム菌E155、フェシウム菌E7314およびフェシウム菌E980で実施し、UDP-MurNAc-ペンタペプチドの蓄積は、これら試験株全てで、全試験化合物について可視であった(データを示していない)。
【0136】
実施例22:脂質II拮抗アッセイにおける化合物の試験
脂質IIは、バンコマイシンおよび他の糖ペプチドの既知標的である(Ling, L. L. et al. A new antibiotic kills pathogens without detectable resistance. Nature 517, 455 (2015); Breukink, E. & de Kruijff, B. Lipid II as a target for antibiotics. Nat. Rev. Drug Discov. 5, 321-323 (2006))。拮抗アッセイにおいて、脂質IIを細菌培養存在下、試験抗生物質と共インキュベートする。脂質IIが糖ペプチドに結合するとき、増殖細菌培養におけるこれら抗生物質の標的への結合が拮抗される。この最終の結果は、抗生物質の活性が減少し、通常みられない(8×MICで)細菌増殖が可視化されることである。それ故に、このアッセイは、本化合物の作用機序の一部が、脂質IIへの結合を含むか否かの決定に使用される。細菌増殖は5つの試験化合物(5、6、7、14、16)全てで脂質IIとの共インキュベーション後見られ、他の臨床で使用される糖ペプチド抗生物質の場合と同様、化合物の脂質IIへの結合が作用機序の一部であることが示される(得られたデータを表11に要約する)。
【表14】

【0137】
実施例23:耐性獲得連続継代アッセイにおける化合物の試験
耐性獲得連続継代アッセイを、「アッセイ」セクションにおいてここに記載したとおり実施した。このアッセイで得られた結果を、図3に示す。結果から明らかなとおり、MRSAを亜致死抗生物質濃度存在下、30日にわたり連続継代したとき、化合物5および16は耐性を誘導せず、一方で臨床で使用されるダプトマイシンは、MICの16倍の有意なレベルの耐性を誘導した。VanA型VRE株において、この差異はより顕著であった:低レベルの耐性誘導が化合物5および16で見られたが、これに対して、ダプトマイシンではMICの128倍の高度の耐性誘導が見られた。
【0138】
実施例24:タイム・キル・アッセイにおける化合物の試験
タイム・キル・アッセイを、「アッセイ」セクションにおいてここに記載したとおり実施した。このアッセイで得られた結果を、図4に示す。
【0139】
実施例25:哺乳動物細胞毒性アッセイ
哺乳動物細胞毒性アッセイを、「アッセイ」セクションにおいてここに記載したとおり実施した。このアッセイの結果を、表12に示す。
【表15】

【0140】
実施例26:インビボ試験
いくつかのインビボ試験を、「アッセイ」セクションにおいてここに記載したとおり実施した。特に、化合物の忍容性、PKおよび有効性を評価した。
【0141】
忍容性
2匹のマウスへの化合物5の100mg/kg(SC)投与で、忍容性が良好であった。有害作用なく、正常な肉眼形態が観察された。
【0142】
PK
化合物5をマウスに3mg kg-1で皮下投与し、続いて、連続サンプリングした。データは平均±SDである(n=3)。得られたPKデータを図5および表13に示す。
【表16】

【0143】
有効性
各大腿にMRSAを感染させ、1時間後、抗生物質を示す濃度で最初に皮下投与し、続いて同じ用量で示す間隔で投与した好中球減少マウスにおけるコロニー形成単位であり、処置23時間後(感染24時間後)屠殺し、ホモジナイズした大腿で細菌負荷を決定した。媒体および25mg kg-1のバンコマイシン(q12h)ならびに媒体および3mg kg-1および10mg kg-1両者の化合物5(q6h)で有意差が見られた(全p<0.0001)。25mg kg-1のバンコマイシンおよび10mg kg-1の化合物5でも同様に有意さが見られ(p<0.0001)、一方で25mg kg-1のバンコマイシンおよび3mg kg-1の化合物5で有意差は見られなかった。2個の異なる化合物5用量で有意差が見られた(p=0.0001)。バンコマイシン(25mg kg-1)および化合物5(3mg kg-1および10mg kg-1)は、処置前と比較して、大腿負荷の有意な減少も示した(それぞれp=0.0042、p=0.0001およびp<0.0001)。データは、平均±SEMである(n=12、6マウス/群、2大腿/マウス)。この有効性試験で得られたデータを図6に示す。
【表17】

【0144】
コロニー
【表18】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】