(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-18
(54)【発明の名称】電気化学装置及びそれを含む電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20221111BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20221111BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221111BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221111BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221111BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20221111BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20221111BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221111BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20221111BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20221111BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20221111BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20221111BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20221111BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20221111BHJP
H01G 11/64 20130101ALI20221111BHJP
H01M 4/86 20060101ALN20221111BHJP
H01M 4/96 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0567
H01M10/058
H01G11/06
H01G11/24
H01G11/42
H01G11/30
H01G11/38
H01G11/60
H01G11/64
H01M4/86 B
H01M4/96 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516386
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2019128449
(87)【国際公開番号】W WO2021128095
(87)【国際公開日】2021-07-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】王 可飛
(72)【発明者】
【氏名】戴 振
(72)【発明者】
【氏名】王 瑩瑩
(72)【発明者】
【氏名】周 豊
【テーマコード(参考)】
5E078
5H018
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AA05
5E078AB06
5E078BA09
5E078BA12
5E078BA18
5E078BA30
5E078BA42
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5E078BA67
5E078BA69
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5H018AA01
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5H018HH04
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5H050CB08
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5H050GA28
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA03
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA09
5H050HA12
5H050HA18
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、電気化学装置及びそれを含む電子装置に関するものである。具体的には、本発明は、正極、負極及び電解液を含み、前記負極は、負極活物質層を含み、接触角測定法により測定される、非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角は、60°以下である、電気化学装置を提供する。本発明の電気化学装置は、改良されたサイクル特性を持つ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極及び電解液を含み、
前記負極は、負極活物質層を含み、
接触角測定法により測定される、非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角は、60°以下である、電気化学装置。
【請求項2】
接触角測定法により測定される、前記負極活物質層上にある前記非水溶媒の液滴直径は、30mm以下である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記接触角測定法とは、前記負極活物質層の表面に3マイクロリットルのジエチルカーボネートの液滴を滴下した後、100秒内に前記負極活物質層の表面での前記液滴の接触角を測定することを指す、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
前記負極活物質層の孔隙率は、10%~60%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記負極活物質層は、炭素材料を含み、前記炭素材料は、
(a)比表面積が5m
2/g未満であることと、
(b)メディアン径が5μm~30μmであることと、
のうちの少なくとも一つの特徴を備える、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記負極活物質層は、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、アモルファスカーボン、シリコン含有材料、スズ含有材料、及び合金材料のうちの少なくとも一種を含む、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記負極活物質層は、モリブデン、鉄及び銅のうちの少なくとも一種の金属をさらに含み、且つ前記負極活物質層の全重量に対して、前記少なくとも一種の金属の含有量は、0.05wt%以下である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記負極活物質層は、助剤をさらに含み、前記助剤は、
(a)酸化電位が4.5V以上であり、且つ還元電位が0.5V以下であることと、
(b)表面張力が30mN/m以下であることと、
(c)非イオン界面活性剤を含むことと、
(d)前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量が3000ppm以下であることと、
のうちの少なくとも一つの特徴を備える、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記助剤は、非イオン界面活性剤を含み、前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオールエステル、アミド及びブロックポリエーテルのうちの少なくとも一種を含み、好ましくは、前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルカノールアミド、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアミン、アルカノールアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン炭素数12~14の第一級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数12~14の第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数13の分岐型ゲルベアルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数10の分岐型ゲルベアルコール、ポリオキシエチレン炭素数10の直鎖型アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数8の直鎖型オクチルアルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数8のイソオクチルアルコールエーテル、脂肪酸モノグリセリド、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸、シリコン-ポリエーテル複合体、ポリソルベート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエーテル変性トリシロキサン及びポリエーテル変性シリコンポリエーテルシロキサンのうちの少なくとも一種を含む、請求項8に記載の電気化学装置。
【請求項10】
前記電解液は、エチレンカーボネートを含有し、前記電解液における前記エチレンカーボネートの含有量Xmgと前記負極活物質層の反応面積Ym
2とは、関係式10≦(X/Y)≦100を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項11】
前記電解液は、式1で示される化合物をさらに含有し、
【化1】
式1
ここで、Rは、1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基或いは-SiR
2R
3R
4であり、ここで、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、且つ、
R
1は、2~3個の炭素原子を有し、且つ以下の置換基で置換されたアルキレン基であり、前記置換基は、少なくとも1つのフッ素原子、または、少なくとも1つのフッ素原子を含み且つ1~3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項12】
式1において、Rは、-SiR
2R
3R
4であり、また、R
1は、2個の炭素原子を有し、且つ以下の置換基で置換されたアルキレン基であり、前記置換基は、少なくとも1つのフッ素原子、または、少なくとも1つのフッ素原子を含み且つ1~3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである、請求項11に記載の電気化学装置。
【請求項13】
前記式1で示される化合物は、式1a~式1hで示される化合物のうちの少なくとも一種を含む、請求項11に記載の電気化学装置。
【化2】
【請求項14】
前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.001wt%~10wt%である、請求項11に記載の電気化学装置。
【請求項15】
前記電解液は、ジフルオロリン酸塩及び鉄族元素をさらに含有し、前記鉄族元素は、コバルト元素、ニッケル元素またはそれらの組み合わせを含み、且つ、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.05wt%以下である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的には、電気化学装置及びそれを含む電子装置、特にリチウムイオン電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
技術の発展及びモバイル機器に対するニーズの増加に伴い、電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)に対するニーズが大幅に増加する。高いエネルギー密度及び優れた寿命とサイクル特性を同時に備えるリチウムイオン電池は、研究課題の一つである。
【0003】
リチウムイオン電池の理論容量は、負極活物質の種類により変化し得る。サイクルが進むにつれて、リチウムイオン電池は、通常、充電/放電容量の低下が生じ、その性能を劣化させる。近年、リチウムイオン電池の製造において、環境負荷などを低減するために、分散媒として水性媒体を用いた水性スラリー組成物がますます注目されているが、水性スラリーは、スラリー組成物に気泡が存在することにより活物質層に多くのピンホールやピットなどの欠陥が生じて、電気化学装置のサイクル特性に影響を与える。
【0004】
これに鑑みて、優れたサイクル特性を備える改良された電気化学装置及びそれを含む電子装置を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施例は、電気化学装置及びそれを含む電子装置を提供することにより、少なくともある程度で、関連分野における少なくとも一つの問題を解決しようとする。
【0006】
本発明の一態様において、正極、負極及び電解液を含み、前記負極は負極活物質層を含み、接触角測定法により測定される、非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角は、60°以下である、電気化学装置を提供する。
【0007】
本発明のいくつかの実施例によれば、接触角測定法により測定される、前記負極活物質層上にある前記非水溶媒の液滴直径は、30mm以下である。
【0008】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記接触角測定法とは、前記負極活物質層の表面に3マイクロリットルのジエチルカーボネートの液滴を滴下した後、100秒内に前記負極活物質層の表面での前記液滴の接触角を測定することを指す。
【0009】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層の孔隙率は、10%~60%である。
【0010】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、炭素材料を含み、前記炭素材料は、
(a)比表面積が5m2/g未満であることと、
(b)メディアン径が5μm~30μmであることと、
のうちの少なくとも一つの特徴を備える。
【0011】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、アモルファスカーボン、シリコン含有材料、スズ含有材料、及び合金材料のうちの少なくとも一種を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、モリブデン、鉄及び銅のうちの少なくとも一種の金属をさらに含み、且つ前記負極活物質層の全重量に対して、前記少なくとも一種の金属の含有量は、0.05wt%以下である。
【0013】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、助剤をさらに含み、前記助剤は、
(a)酸化電位が4.5V以上であり、且つ還元電位が0.5V以下であることと、
(b)表面張力が30mN/m以下であることと、
(c)非イオン界面活性剤を含むことと、
(d)前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量が3000ppm以下であることと、
のうちの少なくとも一つの特徴を備える。
【0014】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記助剤は、非イオン界面活性剤を含み、前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオールエステル、アミド及びブロックポリエーテルのうちの少なくとも一種を含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルカノールアミド(polyoxyethylene alkanolamide)、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアミン、アルカノールアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン炭素数12~14の第一級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数12~14の第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数13の分岐型ゲルベアルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数10の分岐型ゲルベアルコール、ポリオキシエチレン炭素数10の直鎖型アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数8の直鎖型オクチルアルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数8のイソオクチルアルコールエーテル、脂肪酸モノグリセリド、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸、シリコン-ポリエーテル複合体、ポリソルベート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエーテル変性トリシロキサン及びポリエーテル変性シリコンポリエーテルシロキサンのうちの少なくとも一種を含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液は、エチレンカーボネートを含有し、前記電解液における前記エチレンカーボネートの含有量Xmgと前記負極活物質層の反応面積Ym2とは、関係式10≦(X/Y)≦100を満たす。
【0017】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液は、式1で示される化合物をさらに含有し、
【化1】
式1
ここで、Rは、1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基或いは-SiR
2R
3R
4であり、ここで、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、且つ、
R
1は、2~3個の炭素原子を有し、且つ以下の置換基で置換されたアルキレン基であり、前記置換基は、少なくとも1つのフッ素原子、または、少なくとも1つのフッ素原子を含み且つ1~3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである。
【0018】
本発明のいくつかの実施例によれば、式1において、Rは、-SiR2R3R4であり、また、R1は、2個の炭素原子を有し、且つ以下の置換基で置換されたアルキレン基であり、前記置換基は、少なくとも1つのフッ素原子、または、少なくとも1つのフッ素原子を含み且つ1~3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである。
【0019】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記式1で示される化合物は、式1a~式1hで示される化合物のうちの少なくとも一種を含む。
【化2】
【0020】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.001wt%~10wt%である。
【0021】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液は、ジフルオロリン酸塩及び鉄族元素をさらに含有し、前記鉄族元素は、コバルト元素、ニッケル元素またはそれらの組み合わせを含み、且つ、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.05wt%以下である。
【0022】
本発明の更なる一態様によれば、本発明による電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0023】
本発明の実施例の他の態様及び利点について、部分的に以下で説明され、示され、または本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0025】
本明細書で使用されている下記の用語は、別に断らない限り、以下に示される意味を持つ。
【0026】
発明を実施するための形態及び請求の範囲において、「うちの少なくとも一方」、「うちの少なくとも一つ」、「うちの少なくとも一種」という用語又はその他の類似な用語によって接続された項のリストは、リストされた項の任意の組み合わせを意味することができる。例えば、項A及びBがリストされている場合、「A及びBのうちの少なくとも一つ」という記載は、Aのみ、Bのみ、またはA及びBを意味する。他の実例では、項A、B、及びCがリストされている場合、「A、B、及びCのうちの少なくとも一つ」という短句は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB(Cを除く)、A及びC(Bを除く)、B及びC(Aを除く)、またはA、B、及びCのすべてを意味する。項Aは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項Bは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。項Cは、単一の要素または複数の要素を含んでいてもよい。
【0027】
「アルキル基」という用語は、1~20個の炭素原子を有する直鎖の飽和炭化水素構造と予期される。「アルキル基」は、3~20個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状の炭化水素構造とも予期される。具体的な炭素数を有するアルキル基が指定された場合、このような炭素数を有する全ての幾何異性体を含むことと予期される。従って、例えば、「ブチル基」は、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基及びシクロブチル基を含むことを意味する。「プロピル基」は、n-プロピル基、イソプロピル基、およびシクロプロピル基を含む。アルキル基の実例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、ノルボルニル基などを含むが、これらに限定されない。
【0028】
「アルキレン基」という用語は、直鎖または分岐鎖を有する二価の飽和炭化水素基を意味する。前記アルキレン基は、別に定義されない限り、通常2~10個の炭素原子を含有し、且つ(例えば)-C2-3アルキレン基和-C2-6アルキレン基-を含む。代表的なアルキレン基は、(例えば)メチレン、エタン-1,2-ジイル(「エチレン」)、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ペンタン-1,5-ジイルなどを含む。
【0029】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の理論容量は、負極活物質の種類により変化し得る。サイクルの進行に伴い、リチウムイオン電池は、通常、充電/放電容量の低下が生じる。これは、電気化学装置が充電および/または放電中に電極界面が変化することにより、電極活物質が機能しないからである。
【0030】
本発明は、特定の負極材料を用いることにより電気化学装置のサイクル中の界面安定性を確保して、電気化学装置のサイクル特性を向上させる。本発明の特定の負極材料は、負極活物質層の表面の接触角を制御することにより実現する。接触角の制御方法として、負極スラリーに助剤を添加する方法、または負極活物質層の表面に助剤コート層を設ける方法が挙げられる。
【0031】
1つの実施例において、本発明は、下記のような、正極と、負極と、電解液とを含む電気化学装置を提供する。
【0032】
I、負極
負極は、負極集電体と前記負極集電体の一つまたは二つの表面に設けられている負極活物質層とを含む。
【0033】
1、負極活物質層
負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質層は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層負極活物質層における各層は、同一又は異なる負極活物質を含んでもよい。負極活物質は、リチウムイオンなどの金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出可能な任意の物質である。いくつかの実施例において、充電中に負極へのリチウム金属の意図しない析出を防止するために、負極活物質の充電可能容量は、正極活物質の放電容量より大きい。
【0034】
(1)接触角
本発明の電気化学装置は、接触角測定法により測定される、非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角が60°以下であることを一つの特徴とする。いくつかの実施例において、接触角測定法により測定される、非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角は、50°以下である。いくつかの実施例において、接触角測定法により測定される、非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角は、30°以下である。負極活物質層が非水溶媒に対して上記のような接触角を有すると、負極活物質層界面の欠陥が比較的に少なく、電気化学装置の充放電サイクルに負極活物質層界面の安定性が良好で、電気化学装置のサイクル特性を確保することができる。
【0035】
非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角は、負極活物質層の表面特性を示し、負極活物質層を特徴づける物理化学的パラメータの一つである。接触角が小さいほど、負極活物質層の表面が平らかになり、ピンホールやピット欠陥が少なくなり、電気化学装置のサイクル特性を著しく改善させることができる。非水溶媒に対する前記負極活物質層の接触角は、主に助剤及び負極活物質層の孔隙率などを含む様々な要因の影響を受けることができる。
【0036】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記接触角測定法とは、前記負極活物質層の表面に3マイクロリットルのジエチルカーボネートの液滴を滴下した後、100秒内に前記負極活物質層の表面での前記液滴の接触角を測定することを指す。
【0037】
本発明のいくつかの実施例によれば、接触角測定法により測定される、前記負極活物質層上にある前記非水溶媒の液滴直径は、30mm以下である。いくつかの実施例において、接触角測定法により測定される、前記負極活物質層上にある前記非水溶媒の液滴直径は、20mm以下である。いくつかの実施例において、接触角測定法により測定される、前記負極活物質層上にある前記非水溶媒の液滴直径は、15mm以下である。いくつかの実施例において、接触角測定法により測定される、前記負極活物質層上にある前記非水溶媒の液滴直径は、10mm以下である。負極活物質層が非水溶媒に対して上記のような接触角を有するとともに、前記非水溶媒が上記の液滴直径を有すると、電気化学装置のサイクル特性をさらに向上させる。
【0038】
非水溶媒に対する負極活物質層の接触角及び非水溶媒の液滴径は、以下の方法により測定することができる。負極活物質層の表面に3マイクロリットルのジエチルカーボネートを滴下し、100秒内にJC2000D3E型接触角測定計を用いて液滴直径を測定し、5点フィッティング法(即ち、まず、液滴の左右の2つの端点を求め、液固界面を決定し、その後、液滴の輪郭で3点を選択する)でフィッティングして、非水溶媒に対する負極活物質層の接触角が得られる。各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つの差が5°未満であるデータを選択して平均値を求め、非水溶媒に対する負極活物質層の接触角が得られる。
【0039】
接触角測定に用いられる非水溶媒は、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネートまたはメチルイソプロピルカーボネートなどの一般的に使用される電解質溶媒から選択して使用することができる。
【0040】
(2)孔隙率
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層の孔隙率は、10%~60%である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の孔隙率は、15%~50%である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の孔隙率は、20%~40%である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の孔隙率は、25%~30%である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の孔隙率は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%であり、或いは上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0041】
前記負極活物質層の孔隙率は、以下の方法により測定することができる。真密度測定計AccuPyc II 1340を用いて測定し、各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つのデータを選択して、平均値を求める。負極活物質層の孔隙率は、次式により算出する。孔隙率=(V1-V2)/V1×100%、ここで、V1が見かけ体積であり、V1=サンプルの表面積×サンプルの厚さ×サンプルの数、V2が真体積である。
【0042】
(3)炭素材料
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、炭素材料を含む。
【0043】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、及びアモルファスカーボンのうちの少なくとも一種を含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記炭素材料の表面にアモルファスカーボンを有する。
【0045】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状および鱗状を含むが、これらに限定されない。
【0046】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記炭素材料は、
(a)比表面積(BET)が5m2/g未満であることと、
(b)メディアン径(D50)が5μm~30μmであることと、
のうちの少なくとも一つの特徴を備える。
【0047】
比表面積(BET)
いくつかの実施例において、前記炭素材料は、5m2/g未満の比表面積を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、3m2/g未満の比表面積を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、1m2/g未満の比表面積を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、0.1m2/g超の比表面積を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、0.7m2/g未満の比表面積を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、0.5m2/g未満の比表面積を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料の比表面積は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記炭素材料の比表面積が上記した範囲内にあると、電極の表面へのリチウムの析出を抑制することができ、且つ負極と電解液との反応による気体発生を抑制することができる。
【0048】
前記負極活物質層の孔隙率は、以下の方法により測定することができる。真密度測定計AccuPyc II 1340を用いて測定し、各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つのデータを選択して平均値を求める。負極活物質層の孔隙率は次式により算出する。孔隙率=(V1-V2)/V1×100%、ここで、V1が見かけ体積であり、V1=サンプルの表面積×サンプルの厚さ×サンプルの数、V2が真体積である。
【0049】
メディアン径(D50)
前記炭素材料のメディアン径(D50)とは、レーザ回折/散乱法で得られた体積基準の平均粒子径を指す。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、5μm~30μmのメディアン径(D50)を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、10μm~25μmのメディアン径(D50)を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、15μm~20μmのメディアン径(D50)を備える。いくつかの実施例において、前記炭素材料は、1μm、3μm、5μm、7μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、或いは上記した任意の二つの値で構成される範囲内にあるメディアン径(D50)を備える。前記炭素材料のメディアン径が上記した範囲内にあると、電気化学装置の不可逆容量が比較的に小さく、且つ負極を均一に塗布しやすい。
【0050】
前記炭素材料のメディアン径(D50)は、以下の方法により測定することができる。ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2wt%水溶液(10mL)に炭素材料を分散させて、レーザ回折/散乱式粒度分布計(株式会社堀場製作所製LA-700)によって測定する。
【0051】
X線回折パターンのパラメータ
本発明のいくつかの実施例によれば、学振法によるX線回折パターンにおいて、前記炭素材料の格子面(002面)の層間距離は、0.335nm~0.360nmの範囲内、0.335nm~0.350nmの範囲内、または0.335nm~0.345nmの範囲内にある。
【0052】
本発明のいくつかの実施例によれば、学振法によるX線回折パターンにおいて、前記炭素材料の微結晶サイズ(Lc)は、1.0nm超または1.5nm超である。
【0053】
ラマンスペクトルのパラメータ
いくつかの実施例において、前記炭素材料のラマンR値は、0.01超、0.03超または0.1超である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のラマンR値は、1.5未満、1.2未満、1.0未満または0.5未満である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のラマンR値は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0054】
前記炭素材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は、特に限定されない。いくつかの実施例において、前記炭素材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は、10cm-1超または15cm-1超である。いくつかの実施例において、前記炭素材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は、100cm-1未満、80cm-1未満、60cm-1未満または40cm-1未満である。いくつかの実施例において、前記炭素材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0055】
ラマンR値及びラマン半値幅、炭素材料の表面の結晶性を示す指標である。炭素材料の表面が適度な結晶性を有すると、充放電中に炭素材料におけるリチウムを収容する層間のサイトを維持することができ、消失させなく、炭素材料の化学的安定性に有利である。
【0056】
ラマンR値及び/またはラマン半値幅が上記のような範囲内にあると、炭素材料が負極の表面に適当な被膜を形成することができ、電気化学装置の保存特性、サイクル特性及び負荷特性などの改善に有利であると共に、炭素材料と電解液との反応による効率低下及び気体発生を抑制することができる。
【0057】
ラマンR値またはラマン半値幅は、アルゴンイオンレーザラマン分光法により測定することができる。測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用い、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザ光を照射しながら、セルをレーザ光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られたラマンスペクトルについて、1580cm-1付近のピークPAの強度IA及び1360cm-1付近のピークPBの強度IBを測定して、それらの強度比R(R=IB/IA)を算出する。
【0058】
上記したラマン分光法の測定条件は、以下の通りである。
・アルゴンイオンレーザの波長:514.5nm
・試料上のレーザパワー:15~25mW
・解像度:10~20cm-1
・測定範囲:1100cm-1~1730cm-1
・ラマンR値、ラマン半値幅の解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理:単純平均、コンボリューシヨン5ポイント
【0059】
円形度
「円形度」は以下の式で定義される。円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)。円形度が1.0であると、理論的な真球となる。
【0060】
いくつかの実施例において、前記炭素材料の粒子径は、3μm~40μmであり、且つ円形度は、0.1超、0.5超、0.8超、0.85超、0.9超または1.0である。
【0061】
高電流密度充放電特性については、炭素材料の円形度が大きいほど、充填性が高くなり、粒子同士の抵抗の抑制に有利であるため、電気化学装置の高電流密度の充放電特性を改善させる。
【0062】
炭素材料の円形度は、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製FPIA)で測定することができる。具体的に、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2wt%水溶液(50mL)に試料0.2gを分散させて、出力60Wで28kHzの超音波を1分間照射した後、検出範囲を0.6μm~400μmに指定し、粒子径が3μm~40μmの範囲にある粒子を測定する。
【0063】
円形度を向上させる方法は、特に制限されない。球状化処理は、電極にしたときの炭素材料粒子間の空隙形状を均一にするために行うことができる。球状化処理は、せん断力または圧縮力を与えるなどの機械的方法によって実施してもよく、複数の微粒子をバインダーまたは粒子自身の有する付着力によって造粒するなどの機械的/物理的方法によって実施してもよい。球状化処理を実施することで、炭素材料粒子をほぼ真球状にする。
【0064】
タップ密度
いくつかの実施例において、前記炭素材料のタップ密度は、0.1g/cm3超、0.5g/cm3超、0.7g/cm3超または1g/cm3超である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のタップ密度は、2g/cm3未満、1.8g/cm3未満または1.6g/cm3未満である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のタップ密度は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。炭素材料のタップ密度が上記した範囲内にあると、電気化学装置の容量を確保すると共に、炭素材料粒子同士の抵抗増大を抑制することができる。
【0065】
炭素材料のタップ密度は、以下の方法により測定することができる。具体的には、試料を目開き300μmの篩に通過させて、20cm3のタッピングセルに落下させて、セルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、Seishin社製Tap densor)を用いてストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、この時の体積及び試料の質量によりタップ密度を算出する。
【0066】
配向比
いくつかの実施例において、前記炭素材料の配向比は、0.005超、0.01超または0.015超である。いくつかの実施例において、前記炭素材料の配向比は、0.67未満である。いくつかの実施例において、前記炭素材料の配向比は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。炭素材料の配向比が上記した範囲内にあると、電気化学装置に優れた高密度充放電特性を持たせることができる。
【0067】
炭素材料の配向比は、試料を加圧成型した後、X線回折により測定することができる。具体的には、試料0.47gを直径17mmの成形機に充填し、58.8MN・m-2で圧縮して得られた成形体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットして、X線回折測定を行う。得られた炭素の(110)回折及び(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。
【0068】
X線回折の測定条件は以下の通りである。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット:発散スリット=0.5度、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=0.5度
・測定範囲とステップ角度/測定時間(「2θ」は、回折角を表する):
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0069】
アスペクト比
いくつかの実施例において、前記炭素材料のアスペクト比は、1超、2超または3超である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のアスペクト比は、10未満、8未満または5未満である。いくつかの実施例において、前記炭素材料のアスペクト比は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0070】
炭素材料のアスペクト比が上記した範囲内にあると、更なる均一な塗布を行うことができるため、電気化学装置に優れた高電流密度充放電特性を持たせることができる。
【0071】
(4)微量元素
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、モリブデン、鉄及び銅のうちの少なくとも一種の金属をさらに含む。これらの金属元素は、負極活物質中の導電性の乏しい有機物の一部と反応して、負極活物質の表面における被膜形成を促進する。
【0072】
本発明のいくつかの実施例によれば、上記した金属元素は、微量で前記負極活物質層に存在し、過量の金属元素は、導電しない副産物を形成して負極の表面に付着しやすい。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の全重量に対して、前記少なくとも一種の金属の含有量は、0.05wt%以下である。いくつかの実施例において、前記少なくとも一種の金属の含有量は、0.03wt%以下である。いくつかの実施例において、前記少なくとも一種の金属の含有量は、0.01wt%以下である。
【0073】
(5)助剤
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、助剤をさらに含む。
【0074】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記助剤は、
(a)酸化電位が4.5V以上、且つ還元電位が0.5V以下であることと、
(b)表面張力が30mN/m以下であることと、
(c)非イオン界面活性剤を含むことと、
(d)前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量が3000ppm以下であることと、
のうちの少なくとも一つの特徴を備える。
【0075】
酸化/還元電位
いくつかの実施例において、前記助剤の酸化電位は、4.5V以上であり、且つ還元電位は、0.5V以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の酸化電位は、5V以上であり、且つ還元電位は、0.3V以下である。上記した酸化/還元電位を備える助剤は、電気化学性能が安定であり、電気化学装置のサイクル特性の改善に有利である。
【0076】
表面張力
いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、30mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、25mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、20mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、15mN/m以下である。いくつかの実施例において、前記助剤の表面張力は、10mN/m以下である。前記助剤の表面張力は、固形分1%の助剤水溶液条件で測定する。上記のような表面張力を備える助剤は、負極活物質層に良好な界面を有させ、電気化学装置のサイクル特性の改善に有利である。
【0077】
前記助剤の表面張力は、以下の方法により測定することができる。具体的には、JC2000D3E型接触角測定計を用いて固形分1%の助剤水溶液を測定し、各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つのデータを選択して、平均値を求め、助剤の表面張力が得られる。
【0078】
非イオン界面活性剤
いくつかの実施例において、前記助剤は、非イオン界面活性剤を含み、且つ前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオールエステル、アミドまたはブロックポリエーテルのうちの少なくとも一種を含む。
【0079】
いくつかの実施例において、前記非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルカノールアミド、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアミン、アルカノールアミド、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン炭素数12~14の第一級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数12~14の第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数13の分岐型ゲルベアルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数10の分岐型ゲルベアルコール、ポリオキシエチレン炭素数10の直鎖型アルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数8の直鎖型オクチルアルコールエーテル、ポリオキシエチレン炭素数8のイソオクチルアルコールエーテル、脂肪酸モノグリセリド、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸、シリコン-ポリエーテル複合体、ポリソルベート、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエーテル変性トリシロキサン及びポリエーテル変性シリコンポリエーテルシロキサンのうちの少なくとも一種を含む。
【0080】
助剤含有量
いくつかの実施例において、前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、2500ppm以下である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、2000ppm以下である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、1500ppm以下である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、1000ppm以下である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、500ppm以下である。いくつかの実施例において、前記負極活物質層の全重量に対して、前記助剤の含有量は、200ppm以下である。上記した含有量で助剤を含有すると、電気化学装置の出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性および高温保存特性などの改善に有利である。
【0081】
(6)その他の成分
シリコン及び/またはスズ元素含有材料
本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、シリコン含有材料、スズ含有材料、合金材料のうちの少なくとも一種をさらに含む。本発明のいくつかの実施例によれば、前記負極活物質層は、シリコン含有材料及びスズ含有材料のうちの少なくとも一種をさらに含む。いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、シリコン含有材料、シリコン-炭素複合材料、シリコン-酸素材料、合金材料及びリチウム含有金属複合酸化物材料のうちの一種または多種をさらに含む。いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、例えば、リチウムと合金を形成し得る金属元素及び半金属元素を含有する一種または多種の他の種類の負極活物質をさらに含む。いくつかの実施例において、前記金属元素及び半金属元素の実例は、Mg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Cd、Ag、Zn、Hf、Zr、Y、Pd及びPtを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記金属元素及び半金属元素の実例は、Si、Snまたはそれらの組み合わせを含む。Si及びSnは、優れたリチウムイオンを放出する能力を持ち、リチウムイオン電池に高いエネルギー密度を付与することができる。いくつかの実施例において、他の種類の負極活物質は、金属酸化物及び高分子化合物のうちの一種または多種を含んでもよい。いくつかの実施例において、前記金属酸化物は、酸化鉄、酸化ルテニウム及び酸化モリブデンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記高分子化合物は、ポリアセチレン、ポリアニリン及びポリピロールを含むが、これらに限定されない。
【0082】
負極導電材
いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、負極導電材を更に含む。当該導電材は、化学変化を引き起こしない限り、任意の導電材を含んでもよい。導電材の非制限的な例示は、炭素による材料(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバーなど)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)及びそれらの混合物を含む。
【0083】
負極バインダー
いくつかの実施例において、前記負極活物質層は、負極バインダーをさらに含む。負極バインダーは、負極活物質の粒子同士の結合及び負極活物質と集電体との結合を向上させることができる。負極バインダーの種類は、特に限定されず、電解液または電極製造中に用いる溶媒に対して安定な材料であればよい。
【0084】
負極バインダーの実例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ニトロセルロースなどの樹脂系高分子;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エチレン-プロピレンゴムなどのゴム状高分子;スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体又はその水素化物;エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体又はその水素化物などの熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体などの軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などのフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などを含むが、これらに限定されない。上記した負極バインダーは、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0085】
いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、0.1wt%超、0.5wt%超または0.6wt%超である。いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、20wt%未満、15wt%未満、10wt%未満または8wt%未満である。いくつかの実施例において、前記負極バインダーの含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。負極バインダーの含有量が上記した範囲内にあると、電気化学装置の容量及び負極の強度を十分に確保することができる。
【0086】
負極活物質層がゴム状高分子(例えば、SBR)を含有する場合、いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、0.1wt%超、0.5wt%超または0.6wt%超である。いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、5wt%未満、3wt%未満または2wt%未満である。いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0087】
負極活物質層がフッ素系高分子(例えば、ポリフッ化ビニリデン)を含有する場合、いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、1wt%超、2wt%超または3wt%超である。いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、15wt%未満、10wt%未満または8wt%未満である。負極活物質層の全重量に対して、前記負極バインダーの含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0088】
溶媒
負極スラリーを形成するための溶媒の種類は、特に限定されず、負極活物質、負極バインダー、必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散可能な溶媒であればよい。いくつかの実施例において、負極スラリーを形成するための溶媒は、水系溶媒及び有機系溶媒の何れか一種を用いてもよい。水系溶媒の実例は、水、アルコールなどを含むが、これらに限定されない。有機系溶媒の実例は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサンなどを含むが、これらに限定されない。上記した溶媒は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0089】
増粘剤
増粘剤は、通常、負極スラリーの粘度を調節するために使用される。増粘剤の種類は、特に限定されず、その実例は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化デンプン、リン酸化デンプン、カゼイン及びこれらの塩などを含むが、これらに限定されない。上記した増粘剤は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0090】
いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記増粘剤の含有量は、0.1wt%超、0.5wt%超または0.6wt%超である。いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、前記増粘剤の含有量は、5wt%未満、3wt%未満または2wt%未満である。増粘剤の含有量が上記した範囲内にあると、電気化学装置の容量の低下及び抵抗の増大を抑制すると共に、負極スラリーの良好な塗布性を確保することができる。
【0091】
表面被覆
いくつかの実施例において、負極活物質層の表面に、負極活物質層組成と異なる物質を付着していてもよい。負極活物質層の表面に付着される物質の実例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどの酸化物;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩などを含むが、これらに限定されない。
【0092】
(7)負極活物質の含有量
いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、負極活物質の含有量は、80wt%超、82wt%超または84wt%超である。いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、負極活物質の含有量は、99wt%未満または98wt%未満である。いくつかの実施例において、負極活物質層の全重量に対して、負極活物質の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0093】
(8)負極活物質層の厚さ
負極活物質層の厚さとは、負極集電体の任意の片側にある負極活物質層の厚さを指す。いくつかの実施例において、負極活物質層の厚さは、15μm超、20μm超または30μm超である。いくつかの実施例において、負極活物質層の厚さは、300μm未満、280μm未満または250μm未満である。いくつかの実施例において、負極活物質層の厚さは、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0094】
(9)負極活物質の密度
いくつかの実施例において、負極活物質層における負極活物質の密度は、1g/cm3超、1.2g/cm3超または1.3g/cm3超である。いくつかの実施例において、負極活物質層における負極活物質の密度は、2.2g/cm3未満、2.1g/cm3未満、2.0g/cm3未満または1.9g/cm3未満である。いくつかの実施例において、負極活物質層における負極活物質の密度は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0095】
負極活物質の密度が上記した範囲内にあると、負極活物質粒子の破損を防止することができ、電気化学装置の初期の不可逆容量の増加または負極集電体/負極活物質界面の付近における電解液の浸透性の低下による高電流密度充放電特性の劣化を抑制することができ、さらに電気化学装置の容量の低下及び抵抗の増大を抑制することができる。
【0096】
2、負極集電体
負極活物質を保つ集電体として、公知の集電体を任意に使用してもよい。負極集電体の実例は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などの金属材料を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は銅である。
【0097】
負極集電体が金属材料である場合、負極集電体の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタルなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体は、金属薄膜である。いくつかの実施例において、負極集電体は、銅箔である。いくつかの実施例において、負極集電体は、圧延法による圧延銅箔または電解法による電解銅箔である。
【0098】
いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、1μm超または5μm超である。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、100μm未満または50μm未満である。いくつかの実施例において、負極集電体の厚さは、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0099】
負極集電体と負極活物質層との厚さ比とは、電解液注入前の片面の負極活物質層の厚さと負極集電体の厚さとの比率を指し、その値は、特に限定されない。いくつかの実施例において、負極集電体と負極活物質層との厚さ比は、150未満、20未満または10未満である。いくつかの実施例において、負極集電体と負極活物質層との厚さ比は、0.1超、0.4超または1超である。いくつかの実施例において、負極集電体と負極活物質層との厚さ比は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。負極集電体と負極活物質層との厚さ比が上記した範囲内にあると、電気化学装置の容量を確保すると共に、高電流密度充放電時の負極集電体の発熱を抑制することができる。
【0100】
II、電解液
本発明の電気化学装置に用いられる電解液は、電解質とこの電解質を溶解する溶媒とを含む。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置に用いられる電解液は、添加剤をさらに含む。
【0101】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液は、エチレンカーボネートを含有し、前記電解液における前記エチレンカーボネートの含有量Xmgと前記負極活物質層の反応面積Ym2とは、関係式10≦(X/Y)≦100を満たす。いくつかの実施例において、XとYとは、関係式10≦(X/Y)<100を満たす。いくつかの実施例において、XとYとは、関係式20≦(X/Y)<70を満たす。
【0102】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液は、式1で示される化合物をさらに含み、
【化3】
式1
ここで、Rは、1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基或いは-SiR
2R
3R
4であり、ここで、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、且つ、
R
1は、2~3個の炭素原子を有し、且つ以下の置換基で置換されたアルキレン基であり、前記置換基は、少なくとも1つのフッ素原子、または、少なくとも1つのフッ素原子を含み且つ1~3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである。
【0103】
本発明のいくつかの実施例によれば、式1において、Rは、-SiR2R3R4であり、また、R1は、2個の炭素原子を有し、且つ以下の置換基で置換されたアルキレン基であり、前記置換基は、少なくとも1つのフッ素原子、または、少なくとも1つのフッ素原子を含み且つ1~3個の炭素原子を有するアルキル基から選択されるものである。
【0104】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記式1で示される化合物は、式1a~式1hで示される化合物の少なくとも一種を含む。
【化4】
【0105】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.001wt%~10wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.005wt%~9wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.01wt%~8wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.05wt%~7wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.1wt%~6wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、0.5wt%~5wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、1wt%~4wt%である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記式1で示される化合物の含有量は、2wt%~3wt%である。
【0106】
本発明のいくつかの実施例によれば、前記電解液は、ジフルオロリン酸塩及び鉄族元素をさらに含み、前記鉄族元素は、コバルト元素、ニッケル元素またはそれらの組み合わせを含み、且つ、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.05wt%以下である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.03wt%以下である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.02wt%以下である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.01wt%以下である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.005wt%以下である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.004wt%以下である。いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記鉄族元素の含有量は、0.002wt%以下である。
【0107】
いくつかの実施例において、前記電解液は、先行技術で既知の任意の、電解液の溶媒として使用される非水溶媒をさらに含む。
【0108】
いくつかの実施例において、前記非水溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、リン含有有機溶媒、硫黄含有有機溶媒、及び芳香族フッ素含有溶媒のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0109】
いくつかの実施例において、前記環状カーボネートの実例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)及びブチレンカーボネートのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記環状カーボネートは、3~6個の炭素原子を有する。
【0110】
いくつかの実施例において、前記鎖状カーボネートの実例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。フッ素で置換された鎖状カーボネートの実例は、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2-フルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート及び2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施例において、前記環状カルボン酸エステルの実例は、γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトンのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、環状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素で置換されてもよい。
【0112】
いくつかの実施例において、前記鎖状カルボン酸エステルの実例は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、ピバリン酸メチル及びピバリン酸エチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、鎖状カルボン酸エステルの水素原子の一部は、フッ素で置換されてもよい。いくつかの実施例において、フッ素で置換された鎖状カルボン酸エステルの実例は、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル及びトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施例において、前記環状エーテルの実例は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン及びジメトキシプロパンのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0114】
いくつかの実施例において、前記鎖状エーテルの実例は、ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシメタン、1,1-エトキシメトキシエタン及び1,2-エトキシメトキシエタンなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0115】
いくつかの実施例において、前記リン含有有機溶媒の実例は、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチル、リン酸エチレンエチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)及びリン酸トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル)などのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施例において、前記硫黄含有有機溶媒の実例は、スルホラン、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホン、メチルプロピルスルホン、ジメチルスルホキシド、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル及び硫酸ジブチルのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、硫黄含有有機溶媒の水素原子の一部は、フッ素で置換されてもよい。
【0117】
いくつかの実施例において、前記芳香族フッ素含有溶媒は、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼンのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0118】
いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状カルボン酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酢酸n-プロピル、及び酢酸エチルのうちの少なくとも一種を含む。いくつかの実施例において、本発明の電解液に用いられる溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0119】
電解液に鎖状カルボン酸エステル及び/または環状カルボン酸エステルを加えた後、鎖状カルボン酸エステル及び/または環状カルボン酸エステルが電極の表面にパッシベーション膜を形成するため、電気化学装置の断続的な充電サイクル後の容量維持率を向上させる。いくつかの実施例において、前記電解液には、1wt%~60wt%で鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル及びそれらの組み合わせを含有する。いくつかの実施例において、前記電解液には、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、及びそれらの組み合わせを含有し、電解液の全重量に対して、この組み合わせの含有量は、1wt%~60wt%、10wt%~60wt%、10wt%~50wt%、20wt%~50wt%である。いくつかの実施例において、電解液の全重量に対して、前記電解液には、1wt%~60wt%、10wt%~60wt%、20wt%~50wt%、20wt%~40wt%または30wt%のプロピオン酸プロピルを含有する。
【0120】
いくつかの実施例において、前記添加剤の実例は、フッ素化炭酸エステル、炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネート、硫黄-酸素二重結合を含有する化合物及び酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0121】
いくつかの実施例において、前記電解液の全重量に対して、前記添加剤の含有量は、0.01%~15%、0.1%~10%または1%~5%である。
【0122】
本発明の実施例によれば、前記電解液の全重量に対して、前記プロピオネートの含有量は、前記添加剤の1.5~30倍、1.5~20倍、2~20倍または5~20倍である。
【0123】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、一種または多種のフッ素化炭酸エステルを含む。リチウムイオン電池の充電/放電中に、フッ素化炭酸エステルがプロピオネートと一緒に協働して負極の表面に安定な保護膜を形成することができるため、電解液の分解反応を抑制する。
【0124】
いくつかの実施例において、前記フッ素化炭酸エステルは、式C=O(OR1)(OR2)で示される構造を備え、ここで、R1及びR2は、それぞれ独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基またはハロゲン化アルキル基から選択され、ここで、R1及びR2のうちの少なくとも一つは、1~6個の炭素原子を有するフルオロアルキル基から選択され、且つR1及びR2は、任意に、それらが連結する原子とともに5~7員環を形成する。
【0125】
いくつかの実施例において、前記フッ素化炭酸エステルの実例は、フルオロエチレンカーボネート、シス-4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、トランス-4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート及びトリフルオロエチルエチルカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0126】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、一種または多種の炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートを含む。前記炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートの実例は、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、1,2-ジメチルビニレンカーボネート、1,2-ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート;ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-エチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-n-プロピル-2-ビニルエチレンカーボネート、1-メチル-2-ビニルエチレンカーボネート、1,1-ジビニルエチレンカーボネート、1,2-ジビニルエチレンカーボネート、1,1-ジメチル-2-メチレンエチレンカーボネート及び1,1-ジエチル-2-メチレンエチレンカーボネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートは、入手しやすく更なる優れた効果を実現できるビニレンカーボネートを含む。
【0127】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、一種または多種の硫黄-酸素二重結合を含有する化合物を含む。前記硫黄-酸素二重結合を含有する化合物の実例は、環状硫酸エステル、鎖状硫酸エステル、鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0128】
前記環状硫酸エステルの実例は、1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート、1,3-プロピレンスルフェート、1,2-ブチレンスルフェート、1,3-ブチレンスルフェート、1,4-ブチレンスルフェート、1,2-ペンチレンスルフェート、1,3-ペンチレンスルフェート、1,4-ペンチレンスルフェート及び1,5-ペンチレンスルフェートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0129】
前記鎖状硫酸エステルの実例は、ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート及びジエチルスルフェートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0130】
前記鎖状スルホン酸エステルの実例は、フルオロスルホン酸メチル及びフルオロスルホン酸エチルなどのフルオロスルホン酸エステル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ジメタンスルホン酸ブチル、2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチル及び2-(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸エチルなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0131】
前記環状スルホン酸エステルの実例は、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロピレン-1,3-スルトン、2-プロピレン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロピレン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロピレン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロピレン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロピレン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロピレン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロピレン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロピレン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロピレン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロピレン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロピレン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロピレン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロピレン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート及びエチレンメタンジスルホネートなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0132】
前記鎖状亜硫酸エステルの実例は、ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト及びジエチルスルファイトなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0133】
前記環状亜硫酸エステルの実例は、1,2-エチレンスルファイト、1,2-プロピレンスルファイト、1,3-プロピレンスルファイト、1,2-ブチレンスルファイト、1,3-ブチレンスルファイト、1,4-ブチレンスルファイト、1,2-ペンチレンスルファイト、1,3-ペンチレンスルファイト、1,4-ペンチレンスルファイト及び1,5-ペンチレンスルファイトなどのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0134】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、一種または多種の酸無水物を含む。前記酸無水物の実例は、ホスホン酸環状無水物、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物及びカルボン酸スルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記ホスホン酸環状無水物の実例は、トリメチルホスホン酸環状無水物、トリエチルホスホン酸環状無水物及びトリプロピルホスホン酸環状無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記カルボン酸無水物の実例は、無水コハク酸、無水グルタル酸及び無水マレイン酸のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記ジスルホン酸無水物の実例は、エタンジスルホン酸無水物及びプロパンジスルホン酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。前記カルボン酸スルホン酸無水物の実例は、スルホ安息香酸無水物、スルホプロピオン酸無水物及びスルホ酪酸無水物のうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。
【0135】
いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルと、炭素-炭素二重結合を含有するエチレンカーボネートとの組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルと硫黄-酸素二重結合を含有する化合物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルと2~4個のシアノ基を有する化合物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルと環状カルボン酸エステルとの組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルとホスホン酸環状無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルとカルボン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルとスルホン酸無水物との組み合わせである。いくつかの実施例において、前記添加剤は、フッ素化炭酸エステルとカルボン酸スルホン酸無水物との組み合わせである。
【0136】
電解質は、特に限定されず、電解質として公知の物質を任意に使用してもよい。リチウム二次電池の場合、通常、リチウム塩が用いられる。電解質の実例は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7などの無機リチウム塩;LiWOF5などのタングステン酸リチウム類;HCO2Li、CH3CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、CF3CF2CF2CF2CO2Liなどのカルボン酸リチウム塩類;FSO3Li、CH3SO3Li、CH2FSO3Li、CHF2SO3Li、CF3SO3Li、CF3CF2SO3Li、CF3CF2CF2SO3Li、CF3CF2CF2CF2SO3Liなどのスルホン酸リチウム塩類;LiN(FCO)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)などのリチウムイミド塩類;LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3などのリチウムメチラート塩類;リチウムビス(マロナト)ボレート、リチウムジフルオロ(マロナト)ボレートなどのリチウム(マロナト)ボレート塩類;リチウムトリス(マロナト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(マロナト)ホスフェート、リチウムテトラフルオロ(マロナト)ホスフェートなどのリチウム(マロナト)ホスフェート塩類;及びLiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2などのフッ素含有有機リチウム塩類;リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレートなどのリチウムオキサラトボレート塩類;リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェートなどのリチウム(オキサラト)ホスフェート塩類などを含むが、これらに限定されない。
【0137】
いくつかの実施例において、電解質は、LiPF6、LiSbF6、LiTaF6、FSO3Li、CF3SO3Li、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレートまたはリチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェートから選択される。それらは、電気化学装置の出力特性、高レートでの充放電特性、高温保存特性及びサイクル特性などを改善させることに寄与する。
【0138】
電解質の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、0.3mol/L以上超、0.4mol/L超、または0.5mol/L超である。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、3mol/L未満、2.5mol/L未満、または2.0mol/L以下未満である。いくつかの実施例において、電解液におけるリチウムの総モル濃度は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電解質の濃度が上記した範囲内にあると、荷電粒子であるリチウムが十分となり、また、粘度を適切の範囲内にさせることができるため、良好な電気伝導率を確保しやすい。
【0139】
二種以上の電解質を併用する場合、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の少なくとも一種を含む。いくつかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩を含む。いくつかの実施例において、電解質は、リチウム塩を含む。いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、0.01wt%超または0.1wt%超である。いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、20wt%未満または10wt%未満である。いくつかの実施例において、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる塩の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0140】
いくつかの実施例において、電解質は、モノフルオロリン酸塩、ホウ酸塩、シュウ酸塩及びフルオロスルホン酸塩からなる群より選ばれる物質の一種以上と、その他の塩の一種以上とを含む。その他の塩として、以上に例示されたリチウム塩が挙げられ、いくつかの実施例において、その他の塩はLiPF6、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3である。いくつかの実施例において、その他の塩は、LiPF6である。
【0141】
いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、その他の塩の含有量は、0.01wt%超または0.1wt%超である。いくつかの実施例において、電解質の全重量に対して、その他の塩の含有量は、20wt%未満、15wt%未満または10wt%未満である。いくつかの実施例において、その他の塩の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。上記した含有量を有するその他の塩は、電解液の電気伝導率と粘度とをバランスさせることに寄与する。
【0142】
電解液には、上記した溶媒、添加剤及び電解質塩に加えて、必要に応じて負極被膜形成剤、正極保護剤、過充電防止剤などの別の添加剤を含んでもよい。添加剤として、通常、非水電解質二次電池に使用される添加剤を用いることができ、その実例は、ビニレンカーボネート、無水コハク酸、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、2,4-ジフルオロアニソール、プロパンスルトン、プロペンスルトンなどを含むが、これらに限定されない。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。なお、電解液におけるこれらの添加剤の含有量は、特に限定されず、この添加剤の種類によって適宜設定すればよい。いくつかの実施例において、電解液の全重量に対して、添加剤の含有量は、5wt%未満であり、0.01wt%~5wt%の範囲内にあり、または0.2wt%~5wt%の範囲内にある。
【0143】
III、正極
正極は、正極集電体と、前記正極集電体の一つまたは二つの表面に設置された正極活物質層とを備える。
【0144】
1、正極活物質層
正極活物質層は、正極活物質を含む。前記正極活物質層は、単層であってもよく、複層であってもよい。複層正極活物質における各層は、同一または異なる正極活物質を含んでもよい。正極活物質は、任意のリチウムイオンなどの金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出可能な物質である。
【0145】
正極活物質の種類は、特に限定されず、電気化学方式で金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵及び放出可能なものであればよい。いくつかの実施例において、正極活物質は、リチウムと少なくとも一種の遷移金属とを含有する物質である。正極活物質の実例は、リチウム遷移金属複合酸化物及びリチウム含有遷移金属リン酸化合物を含むが、これらに限定されない。
【0146】
いくつかの実施例において、リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属は、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどを含む。いくつかの実施例において、リチウム遷移金属複合酸化物は、LiCoO2などのリチウム・コバルト複合酸化物;LiNiO2などのリチウム・ニッケル複合酸化物;LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO4などのリチウム・マンガン複合酸化物;LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2などのリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト複合酸化物を含み、ここで、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主な部分である遷移金属原子の一部がNa、K、B、F、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si、Nb、Mo、Sn、Wなどの他の元素で置換される。リチウム遷移金属複合酸化物の実例は、LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.45Co0.10Al0.45O2、LiMn1.8Al0.2O4及びLiMn1.5Ni0.5O4などを含むが、これらに限定されない。リチウム遷移金属複合酸化物の組み合わせの実例は、LiCoO2とLiMn2O4との組み合わせを含むが、これらに限定されなく、ここで、LiMn2O4におけるMnの一部が遷移金属で置換されてもよく(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2)、LiCoO2におけるCoの一部が遷移金属で置換されてもよい。
【0147】
いくつかの実施例において、リチウム含有遷移金属リン酸化合物における遷移金属は、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuなどを含む。いくつかの実施例において、リチウム含有遷移金属リン酸化合物は、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7などのリン酸鉄類;LiCoPO4などのリン酸コバルト類を含み、ここで、これらのリチウム含有遷移金属リン酸化合物の主な部分である遷移金属原子の一部がAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Siなどの他の元素で置換される。
【0148】
いくつかの実施例において、正極活物質には、電気化学装置の連続充電特性を向上させることができるリン酸リチウムを含む。リン酸リチウムの使用については、制限されない。いくつかの実施例において、正極活物質とリン酸リチウムとは、混合して使用する。いくつかの実施例において、上記した正極活物質とリン酸リチウムの全重量に対して、リン酸リチウムの含有量は、0.1wt%超、0.3wt%超または0.5wt%超である。いくつかの実施例において、上記した正極活物質とリン酸リチウムの全重量に対して、リン酸リチウムの含有量は、10wt%未満、8wt%未満または5wt%未満である。いくつかの実施例において、リン酸リチウムの含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0149】
表面被覆
上記した正極活物質の表面に、正極活物質とは異なる組成の物質が付着していてもよい。表面附着物質の実例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどの酸化物;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;炭素などを含むが、これらに限定されない。
【0150】
これらの表面付着物質は、表面付着物質を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加し、乾燥する方法;表面付着物質の前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加した後、加熱等により反応させる方法;及び正極活物質の前駆体に添加して同時に焼成する方法などにより、正極活物質の表面に付着させることができる。炭素を付着させる場合、炭素材料(例えば、活性炭など)を機械的に付着させる方法も用いることができる。
【0151】
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、表面付着物質の含有量は、0.1ppm超、1ppm超または10ppm超である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、表面付着物質の含有量は、20%未満、10%未満または10%未満である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、表面付着物質の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0152】
正極活物質の表面付着物質により、正極活物質の表面での電解液の酸化反応を抑制することができ、電気化学装置の寿命を向上させることができる。表面付着物質の量が少なすぎると、その効果が十分に発現せず、表面付着物質の量が多すぎると、リチウムイオンの出入りを阻害するため、抵抗が増加する場合がある。
【0153】
本発明において、正極活物質の表面に正極活物質とは異なる組成の物質が付着しているものも、「正極活物質」という。
【0154】
形状
いくつかの実施例において、正極活物質の粒子の形状は、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、正極活物質の粒子は、一次粒子、二次粒子またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、一次粒子は、凝集して二次粒子を形成してもよい。
【0155】
タップ密度
いくつかの実施例において、正極活物質のタップ密度は、0.5g/cm3超、0.8g/cm3超または1.0g/cm3超である。正極活物質のタップ密度が上記した範囲内にあると、正極活物質層形成時に分散媒量、導電材量及び正極バインダーの必要量を抑制することができるため、正極活物質の充填率及び電気化学装置の容量を確保することができる。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は、一般に大きいほど好ましく、特に上限がない。いくつかの実施例において、正極活物質のタップ密度は、4.0g/cm3未満、3.7g/cm3未満または3.5g/cm3未満である。正極活物質のタップ密度が上記のような上限を有すると、負荷特性の低下を抑制することができる。
【0156】
正極活物質のタップ密度は、正極活物質粉体5g~10gを10mLのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)として求める。
【0157】
メディアン径(D50)
正極活物質の粒子が一次粒子である場合、正極活物質の粒子のメディアン径(D50)とは、正極活物質の粒子の一次粒子径を指す。正極活物質の粒子の一次粒子が凝集して二次粒子を形成する場合、正極活物質の粒子のメディアン径(D50)とは、正極活物質の粒子の二次粒子径を指す。
【0158】
いくつかの実施例において、正極活物質の粒子のメディアン径(D50)は、0.3μm超、0.5μm超、0.8μm超または1.0μm超である。いくつかの実施例において、正極活物質の粒子のメディアン径(D50)は、30μm未満、27μm未満、25μm未満または22μm未満である。いくつかの実施例において、正極活物質の粒子のメディアン径(D50)は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極活物質の粒子のメディアン径(D50)が上記した範囲内にあると、タップ密度が高い正極活物質を得ることができ、電気化学装置の特性の低下を抑制することができる。一方、電気化学装置の正極の調製過程時(即ち、正極活物質、導電材及びバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する時)に、スジの発生などの問題を防止することができる。ここで、異なるメディアン径を持つ正極活物質を二種以上混合することにより、正極作成時の充填性を更に向上させることができる。
【0159】
正極活物質の粒子メディアン径(D50)は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。具体的には、粒度分布計としてHORIBA社製LA-920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
【0160】
平均一次粒子径
正極活物質の粒子の一次粒子が凝集して二次粒子を形成する場合、いくつかの実施例において、正極活物質の平均一次粒子径は、0.05μm超、0.1μm超または0.5μm超である。いくつかの実施例において、正極活物質の平均一次粒子径は、5μm未満、4μm未満、3μm未満または2μm未満である。いくつかの実施例において、正極活物質の平均一次粒子径は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極活物質の平均一次粒子径が上記した範囲内にあると、粉体填充性及び比表面積を確保でき、電池特性の低下を抑制でき、且つ適切な結晶性を得るため、電気化学装置の充放電の可逆性を確保することができる。
【0161】
正極活物質の平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)による画像に対する観察により得られる。具体的には、倍率が10000倍であるSEM画像において、任意の50個の一次粒子について、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長値を求め、平均値をとることにより、平均一次粒子径が得られる。
【0162】
比表面積(BET)
いくつかの実施例において、正極活物質の比表面積(BET)は、0.1m2/g超、0.2m2/g超または0.3m2/g超である。いくつかの実施例において、正極活物質の比表面積(BET)は、50m2/g未満、40m2/g未満または30m2/g未満である。いくつかの実施例において、正極活物質の比表面積(BET)は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極活物質の比表面積(BET)が上記した範囲内にあると、電気化学装置の特性を確保しつつ正極活物質に良好な塗布性を持たせることができる。
【0163】
正極活物質の比表面積(BET)は、以下の方法により測定することができる。表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、窒素ガスを流し、150℃で試料に対して30分間予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素ガスの相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定する。
【0164】
正極導電材
正極導電材の種類は、限定されず、任意の既知の導電材を用いることができる。正極導電材の実例は、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラックなどのカーボンブラック;ニードルコークス等のアモルファスカーボンなどの炭素材料;カーボンナノチューブ;グラフェンなどを含む。上記した正極導電材は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0165】
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、正極導電材の含有量は、0.01wt%超、0.1wt%超または1wt%超である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、正極導電材の含有量は、50wt%未満、30wt%未満または15wt%未満である。正極導電材の含有量が上記した範囲内にあると、十分な導電性及び電気化学装置の容量を確保することができる。
【0166】
正極バインダー
正極活物質層の製造に用いる正極バインダーの種類は、特に限定されず、塗布法の場合、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散可能な材料であればよい。正極バインダーの実例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロースなどの樹脂系高分子;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴムなどのゴム状高分子;スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体又はその水素化物、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)、スチレン-エチレン-ブタジエン-エチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体又はその水素化物などの熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体などの軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体などのフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物などのうちの一種または多種を含むが、これらに限定されない。上記した正極バインダーは、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0167】
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、正極バインダーの含有量は、0.1wt%超、1wt%超または1.5wt%超である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、正極バインダーの含有量は、80wt%未満、60wt%未満、40wt%未満または10wt%未満である。正極バインダーの含有量が上記した範囲内にあると、正極に良好な導電性及び十分な機械的強度を持たせつつ電気化学装置の容量を確保することができる。
【0168】
溶媒
正極スラリーを形成するための溶媒の種類は、限定されず、正極活物質、導電材、正極バインダー、及び必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散可能な溶媒であればよい。正極スラリーを形成するための溶媒の実例は、水系溶媒及び有機系溶媒の何れか一種を含んでもよい。水系溶媒の実例は、水、及びアルコールと水との混合媒体などを含むが、これらに限定されない。有機系溶媒の実例は、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジンなどの複素環化合物;アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチルなどのエステル類;ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミンなどのアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などを含むが、これらに限定されない。
【0169】
増粘剤
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調節するために使用される。水系溶媒を用いる場合、増粘剤及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)ラテックスを用いてスラリー化してもよい。増粘剤の種類は、特に限定されず、その実例は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化デンプン、リン酸化デンプン、カゼイン及びこれらの塩などを含むが、これらに限定されない。上記した増粘剤は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0170】
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、増粘剤の含有量は、0.1wt%超、0.2wt%超または0.3wt%超である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、増粘剤の含有量は、5wt%未満、3wt%未満または2wt%未満である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、増粘剤の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。増粘剤の含有量が上記した範囲内にあると、正極スラリーに良好な塗布性を持たせつつ電気化学装置の容量の低下及び抵抗の増加を抑制することができる。
【0171】
正極活物質の含有量
いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、正極活物質の含有量は、80wt%超、82wt%超または84wt%超である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、正極活物質の含有量は、99wt%未満または98wt%未満である。いくつかの実施例において、正極活物質層の全重量に対して、正極活物質の含有量は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極活物質の含有量が上記した範囲内にあると、正極活物質層における正極活物質の電気容量を確保しつつ正極の強度を維持することができる。
【0172】
正極活物質の密度
塗布と乾燥によって得られた正極活物質層については、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレスなどにより圧密処理を行ってもよい。いくつかの実施例において、正極活物質層の密度は、1.5g/cm3超、2g/cm3超または2.2g/cm3超である。いくつかの実施例において、正極活物質層の密度は、5g/cm3未満、4.5g/cm3未満または4g/cm3未満である。いくつかの実施例において、正極活物質層の密度は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極活物質層の密度が上記した範囲内にあると、電気化学装置に良好な充放電特性を持たせつつ抵抗の増加を抑制することができる。
【0173】
正極活物質層の厚さ
正極活物質層の厚さとは、正極集電体の任意の片側にある正極活物質層の厚さを指す。いくつかの実施例において、正極活物質層の厚さは、10μm超または20μm超である。いくつかの実施例において、正極活物質層の厚さは、500μm未満または450μm未満である。
【0174】
正極活物質の製造方法
正極活物質は、無機化合物を製造する一般的な方法によって製造してもよい。球状または楕円球状の正極活物質を作成するために、以下の製造方法を採用してもよい。具体的には、遷移金属の原料物質を水などの溶媒に溶解または粉砕分散して、撹拌しながらpHを調節して、球状の前駆体を作成し、回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3などのLi源を加えて、高温で焼成して正極活物質を得る。
【0175】
2、正極集電体
正極集電体の種類は、特に限定されず、任意の既知の正極集電体に適用する材質であってもよい。正極集電体の実例は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、正極集電体は、金属材料である。いくつかの実施例において、正極集電体は、アルミニウムである。
【0176】
正極集電体の形態は、特に限定されない。正極集電体が金属材料である場合、正極集電体の形態は、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタルなどを含むが、これらに限定されない。正極集電体が炭素材料である場合、正極集電体の形態は、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、正極集電体は、金属薄膜である。いくつかの実施例において、前記金属薄膜は、メッシュ状である。前記金属薄膜の厚さは、特に限定されない。いくつかの実施例において、前記金属薄膜の厚さは、1μm超、3μm超または5μm超である。いくつかの実施例において、前記金属薄膜の厚さは、1mm未満、100μm未満または50μm未満である。いくつかの実施例において、前記金属薄膜の厚さは、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。
【0177】
正極集電体と正極活物質層との電子接触抵抗を低減させるために、正極集電体の表面に、導電助剤を含んでもよい。導電助剤の実例は、炭素、及び金、プラチナ、銀などの貴金属類を含むが、これらに限定されない。
【0178】
正極集電体と正極活物質層との厚さ比とは、電解液注入前の片面の正極活物質層の厚さと正極集電体の厚さとの比率を指し、その値は、特に限定されない。いくつかの実施例において、正極集電体と正極活物質層との厚さ比は、20未満、15未満または10未満である。いくつかの実施例において、正極集電体と正極活物質層との厚さ比は、0.5超、0.8超または1超である。いくつかの実施例において、正極集電体と正極活物質層との厚さ比は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。正極集電体と正極活物質層との厚さ比が上記した範囲内にあると、高電流密度充放電中の正極集電体の放熱を抑制することができ、電気化学装置の容量を確保することができる。
【0179】
3、正極の構成及び作製方法
正極は、正極活物質とバインダーとを含有する正極活物質層を集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質とバインダー、並びに必要に応じて用いられる導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着すること;或いはこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することで、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
【0180】
IV、セパレータ
正極と負極との間に、短絡を防止するために、通常、セパレータが配設されている。この場合、本発明の電解液は、通常、このセパレータに含浸させて用いる。
【0181】
セパレータの材料及び形状は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定ない。前記セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料からなる樹脂、ガラス繊維、無機物などであってもよい。いくつかの実施例において、前記セパレータは、保液性に優れた多孔性シートまたは不織布状の形態の物質などを含む。樹脂またはガラス繊維セパレータの材料の実例は、ポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルターなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、前記セパレータの材料はガラスフィルターである。いくつかの実施例において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレンまたはポリプロピレンである。いくつかの実施例において、前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンである。上記したセパレータの材料は、単独で用いてもよく、任意に組み合わせて用いてもよい。
【0182】
前記セパレータは、上記した材料を積層してなる材料であってもよく、その実例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンの順で積層されてなる三層セパレータなどを含むが、これらに限定されない。
【0183】
無機物の材料の実例は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物;硫酸塩(例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなど)を含むが、これらに限定されない。無機物の形態は、粒子状または繊維状を含むが、これらに限定されない。
【0184】
前記セパレータの形態は、薄膜形態であり、その実例は、不織布、織布、微多孔性フィルムなどを含むが、これらに限定されない。薄膜形態では、前記セパレータの孔径は、0.01μm~1μmであり、厚さは5μm~50μmである。上記した独立の薄膜状セパレータ以外に、樹脂類のバインダーを用いて上記した無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/または負極の表面上に形成させてなるセパレータ、例えば、バインダーとしてフッ素樹脂を使用して正極の両面に90%粒径が1μm未満の酸化アルミニウムを多孔層を形成させるセパレータを用いることもできる。
【0185】
前記セパレータの厚さは、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの厚さは、1μm超、5μm超または8μm超である。いくつかの実施例において、前記セパレータの厚さは、50μm未満、40μm未満または30μm未満である。いくつかの実施例において、前記セパレータの厚さは、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記セパレータの厚さが上記した範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を確保しつつ電気化学装置のレート特性及びエネルギー密度を確保することができる。
【0186】
セパレータとして多孔性シートまたは不織布などの多孔質材料を用いる場合、セパレータの孔隙率は、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの孔隙率は、20%超、35%超または45%超である。いくつかの実施例において、前記セパレータの孔隙率は、90%未満、85%未満または75%未満である。いくつかの実施例において、前記セパレータの孔隙率は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記セパレータの孔隙率が上記した範囲内にあると、絶縁性及び機械的強度を確保しつつ膜の抵抗を抑制することができ、電気化学装置に良好なレート特性を持たせる。
【0187】
前記セパレータの平均孔径も、任意である。いくつかの実施例において、前記セパレータの平均孔径は、0.5μm未満または0.2μm未満である。いくつかの実施例において、前記セパレータの平均孔径は、0.05μm超である。いくつかの実施例において、前記セパレータの平均孔径は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。前記セパレータの平均孔径が上記した範囲を上回ると、短絡が発生しやすい。セパレータの平均孔径が上記した範囲内にあると、膜抵抗を抑制しつつ短絡を防止することができ、電気化学装置に良好なレート特性を持たせる。
【0188】
V、電気化学装置の構成要素
電気化学装置の構成要素は、電極群、集電構造、外装ケース、及び保護素子を含む。
【0189】
電極群
電極群は、上記した正極と負極とを上記したセパレータを介して積層して形成された積層構造、及び上記した正極と負極とを上記したセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のうちの何れか一種を備えても良い。いくつかの実施例において、電極群の体積が電池内容積に占める割合(電極群占有率)は、40%超または50%超である。いくつかの実施例において、電極群占有率は、90%未満または80%未満である。いくつかの実施例において、電極群占有率は、上記した任意の二つの値で構成される範囲内にある。電極群占有率が上記した範囲内にあると、電気化学装置の容量を確保しつつ内部圧力の上昇に伴う充放電繰り返し特性及び高温保存などの特性の低下を抑制することができるため、ガス放出弁の作動を妨げることができる。
【0190】
集電構造
集電構造は、特に限定されない。いくつかの実施例において、集電構造は、配線部分及び接合部分の抵抗を低減させる構造である。電極群が上記した積層構造である場合、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。電極面積が大きくなると、内部抵抗が大きくなるので、電極内に2つ以上の端子を設けて抵抗を低減させることも好適に用いられる。電極群が上記した捲回構造である場合、正極及び負極にそれぞれ2つ以上のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0191】
外装ケース
外装ケースの材質は、用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に限定されない。外装ケースは、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金、マグネシウム合金などの金属類、または樹脂とアルミ箔との積層フィルムを用いるが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、外装ケースは、アルミニウムまたはアルミニウム合金の金属、またはラミネートフィルムである。
【0192】
金属類の外装ケースは、レーザ溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着してなる封止密閉構造;或いは樹脂製ガスケットを介して上記した金属類を用いてなるかしめ構造を含むが、これらに限定されない。上記したラミネートフィルムを用いる外装ケースは、樹脂層同士を熱融着してなる封止密閉構造などを含むが、これらに限定されない。シール性を上げるために、上記した樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂とが接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂または極性基を導入した変性樹脂が用いられる。また、外装ケースの形状も、任意であり、例えば、円筒形、角形、ラミネート型、ボタン型、大型などのうちの何れか一種であってもよい。
【0193】
保護素子
保護素子として、異常発熱または過大電流が流れた時に抵抗が増大する正温度係数(PTC)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力または内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)などが用いられる。上記した保護素子は、高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択してもよく、保護素子がなくても異常発熱または熱暴走に至らない設計してもよい。
【0194】
VI、応用
本発明の電気化学装置は、電気化学反応が生じる任意の装置を含み、その具体的な実例は、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはキャパシタを含む。特に、この電気化学装置は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池を含むリチウム二次電池である。
【0195】
本発明は、本発明による電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0196】
本発明の電気化学装置の用途は、特に限定されず、既存技術で既知の任意の電子装置に用いることが可能である。いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、自動二輪車、アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ、家庭用大型蓄電池及びリチウムイオンキャパシタなどに利用されるが、これらに限定されない。
【0197】
以下では、例としてリチウムイオン電池を挙げ、具体的な実施例を参照してリチウムイオン電池の調製について説明し、当業者は、本発明に記載されている調製方法が単なる例示であり、他のいかなる好適な調製方法が本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0198】
実施例
以下、本発明によるリチウムイオン電池の実施例及び比較例を説明して性能評価を行う。
【0199】
一、リチウムイオン電池の調製
1、負極の調製
人造黒鉛、スチレン-ブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを質量比96%:2%:2%で脱イオン水、助剤と混合し、均一に撹拌して、負極スラリーを得た。当該負極スラリーを12μmの銅箔の上に塗布した。乾燥し、コールドプレスして、打ち抜き、タブを溶接して、負極を得た。以下の実施例及び比較例の条件に応じて負極を設置して、対応するパラメータを持たせる。
【0200】
2、正極の調製
コバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電材(Super-P)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比95%:2%:3%でN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、均一に撹拌して、正極スラリーを得た。この正極スラリーを12μmのアルミニウム箔の上に塗布し、乾燥し、コールドプレスして、打ち抜き、タブを溶接して、正極を得た。
【0201】
3、電解液の調製
乾燥アルゴンガス雰囲気で、EC、PC及びDEC(重量比1:1:1)を混合し、LiPF6の濃度が1.15mol/Lになるように、LiPF6を加えて均一に撹拌して、基本電解液を形成した。基本電解液に異なる含有量の添加剤を加えて異なる実施例及び比較例の電解液を得た。
【0202】
4、セパレータの調製
ポリエチレン(PE)多孔質重合体薄膜をセパレータとした。
【0203】
5、リチウムイオン電池の調製
得られた正極、セパレータ及び負極を順番に巻いて外装箔に入れ、注液口を残した。注液口から電解液を注入し、封止して、フォーメーション、容量測定などのプロセスを経て、リチウムイオン電池を得た。
【0204】
二、測定方法
1、非水溶媒に対する負極活物質層の接触角の測定方法
負極活物質層の表面に3マイクロリットルのジエチルカーボネートを滴下し、100秒内にJC2000D3E型接触角測定計を用いて測定し、5点フィッティング法(即ち、まず、液滴の左右の端点を求め、液固界面を決定し、その後、液滴の輪郭で3点を選択する)でフィッティングして、非水溶媒に対する負極活物質層の接触角が得られた。各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つの差が5°未満であるデータを選択して平均値を求め、非水溶媒に対する負極活物質層の接触角が得られた。
【0205】
2、非水溶媒の液滴直径の測定方法
負極活物質層の表面に3マイクロリットルのジエチルカーボネートを滴下し、100秒内にJC2000D3E型接触角測定計を用いて液滴直径を測定した。
【0206】
3、負極活物質層の孔隙率の測定方法
真密度測定計AccuPyc II 1340を用いて測定し、各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つのデータを選択して平均値を求めた。下式により負極活物質層の孔隙率を算出した。
孔隙率=(V1-V2)/V1×100%
ここで、V1が見かけ体積であり、V1=サンプルの表面積×サンプルの厚さ×サンプルの数;V2が真体積である。
【0207】
4、比表面積(BET)の測定方法
表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用い、窒素ガスを流し、350℃で試料に対して15分間予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した。
【0208】
5、メディアン径(D50)の測定方法
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2wt%水溶液(10mL)に炭素材料を分散させて、レーザ回折/散乱式粒度分布計(堀場製造所社製LA-700)によって測定した。
【0209】
6、助剤の表面張力の測定方法
JC2000D3E型接触角測定計を用いて固形分1%の助剤水溶液を測定し、各サンプルを少なくとも3回測定し、少なくとも3つのデータを選択して、平均値を求め、助剤の表面張力が得られた。
【0210】
7、負極活物質層の反応面積の測定方法
上記した「比表面積(BET)の測定方法」により負極活物質層の比表面積を測定し、負極活物質層の比表面積とは、負極活物質と添加剤(バインダー、導電剤、増粘剤及びフィラーなど)とを含有する負極活物質層全体の比表面積と指す。負極活物質層の重量、即ち負極活物質と添加剤(バインダー、導電剤、増粘剤及びフィラーなど)とを含有する負極活物質層全体の全重量を測定した。以下の式から負極活物質層の反応面積を算出した。
反応面積=負極活物質層の比表面積×負極活物質層の重量
【0211】
8、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率の測定方法
45℃で、リチウムイオン電池を1Cで定電流法にて4.45Vまで充電した後、4.45Vで定電圧法にて電流が0.05Cになるまで充電してから、1Cで定電流法にて3.0Vまで放電し、初回サイクルとした。上記した条件でリチウムイオン電池に対して200回サイクルを行った。「1C」とは、1時間以内にリチウムイオン電池容量を完全に放電した電流値を指す。
以下の式からリチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率を算出した。
サイクル後の容量維持率=(対応するサイクル回数の放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%
【0212】
9、リチウムイオン電池のサイクル膨張率の測定方法
25℃で、リチウムイオン電池を30分静置した後、0.5Cのレートで定電流法にて4.45Vまで充電してから、4.45Vで定電圧法にて0.05Cまで充電し、5分静置して、厚さを測定した。サイクル試験を再び行い、100サイクル後、電池の厚さを測定した。以下の式からリチウムイオン電池の100サイクル後の厚さ膨張率を算出した。
サイクル厚さ膨張率=[(サイクル後の厚さ-サイクル前の厚さ)/サイクル前の厚さ]×100%
【0213】
三、測定結果
表1には、各実施例及び比較例において非水溶媒に対する負極活物質層の接触角、孔隙率及び使用される助剤、並びにリチウムイオン電池のサイクル特性を示す。実施例に用いる助剤1:1000ppmトリシロキサン界面活性剤(CAS No.3390-61-2;28855-11-0)。
【0214】
【0215】
結果から、非水溶媒に対する負極活物質層の接触角が60°以下である場合、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率を顕著に改善させることが分かる。非水溶媒に対する負極活物質層の接触角が60°以下である場合、負極活物質層に10%~60%の孔隙率を持たせることにより、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率をさらに改善させることができる。
【0216】
表2には、炭素材料の比表面積(BET)及びメディアン径(D50)がリチウムイオン電池のサイクル特性に対する影響を示す。表2における実施例が実施例4に基づく改進されるものであり、それらの相違点は、表2にリストされているパラメータのみである。
【0217】
【0218】
結果から、炭素材料の比表面積(BET)が5m2/g未満であり、及び/またはメディアン径(D50)が5μm~30μmの範囲内にある場合、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率をさらに改善させることが分かる。
【0219】
表3には、負極活物質層における微量金属がリチウムイオン電池のサイクル特性に対する影響を示す。表3における実施例が実施例4に基づく改進されるものであり、それらの相違点は、表3にリストされているパラメータのみとする。
【0220】
【0221】
結果から、負極活物質層に微量金属元素(例えば、鉄、モリブデンまたは銅)がある場合、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率をさらに改善させることが分かる。
【0222】
表4には、助剤がリチウムイオン電池のサイクル特性に対する影響を示す。表4における実施例21~25と実施例4との相違点は、助剤種類の違いのみとする。
【0223】
【0224】
比較例1に示すように、助剤を添加しない場合、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率が劣る。実施例4及び21~25に示すように、助剤を添加することにより、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率を顕著に改善させることができる。助剤の酸化電位が4.5V以上であり且つ還元電位が0.5V以下である場合、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率をさらに改善させる。エタノール及びアセトンに対して(実施例24及び25に示すように)、非イオン界面活性剤(実施例21~23に示すように)は、より低い表面張力(30mN/m以下)を備えるため、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率をさらに改善させることができる。
【0225】
表5には、電解液におけるECの含有量(Xmg)及び負極活物質層の反応面積(Ym2)がリチウムイオン電池のサイクル特性に対する影響を示す。表5における実施例が実施例4に基づく改進されるものであり、それらの相違点は、表5にリストされているパラメータのみとする。
【0226】
【0227】
結果から、電解液におけるECの含有量(Xmg)と負極活物質層の反応面積(Ym2)とが10≦(X/Y)≦100を満たす場合、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率をさらに改善させることが分かる。
【0228】
表6には、電解液成分がリチウムイオン電池のサイクル特性に対する影響を示す。表6における実施例が実施例4に基づく改進されるものであり、それらの相違点は、表6にリストされている化合物及びその含有量のみとする。
【0229】
【0230】
結果から、本発明の実施例の負極を用いる場合、電解液に式1で示される化合物を添加することにより、電極の表面のSEI膜の形成に有利であり、界面安定性を向上させ、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率の改善に有利である。式1で示される化合物の含有量が0.001wt%~10wt%である場合、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率を顕著に改善させる。
【0231】
表7には、電解液における鉄族金属がリチウムイオン電池のサイクル特性に対する影響を示す。表における実施例が実施例4に基づく改進されるものであり、それらの相違点は、表7にリストされている鉄族金属種類及びその含有量とする。
【0232】
【0233】
結果から、本発明の実施例の負極を用いる場合、電解液に微量の鉄族金属(例えば、コバルト及びニッケル)を含有することにより、リチウムイオン電池のサイクル後の容量維持率及びサイクル厚さ膨張率の改善に有利である。
【0234】
明細書全体において、「実施例」、「いくつかの実施例」、「一つの実施例」、「別の一例」、「例」、「具体例」または「いくつかの例」による引用は、本発明の少なくとも一つの実施例または例は、当該実施例または例に記載した特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各場所に記載された、例えば「いくつかの実施態様において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「別の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明での同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書の特定の特徴、構造、材料、または特性は、一つまたは複数の実施例または例において、いかなる好適な方法で組み合わせることができる。
【0235】
例示的な実施例が記載及び説明されたが、当業者は、上記した実施例が本発明を限定するものとして解釈されないこと、かつ、本発明の技術思想、原理、及び範囲から逸脱しない場合に実施例への改変、置換及び変更が可能であること、を理解すべきである。
【国際調査報告】