(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-18
(54)【発明の名称】高炭素鋼トラックブッシング
(51)【国際特許分類】
C21D 9/00 20060101AFI20221111BHJP
F16C 33/12 20060101ALI20221111BHJP
F16C 33/14 20060101ALI20221111BHJP
C21D 1/32 20060101ALI20221111BHJP
C21D 1/10 20060101ALI20221111BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20221111BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20221111BHJP
B62D 55/21 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C21D9/00 E
F16C33/12 A
F16C33/14 Z
C21D1/32
C21D1/10 B
C22C38/00 301Z
C22C38/60
B62D55/21 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518186
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020047292
(87)【国際公開番号】W WO2021061313
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラソッド、チャンドラセーン ラメシュラール
(72)【発明者】
【氏名】レッカー、ロジャー リー
(72)【発明者】
【氏名】ピカリル、ロバート ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】キール、スコット イー.
(72)【発明者】
【氏名】カイザー、マシュー トーマス
【テーマコード(参考)】
3J011
4K042
【Fターム(参考)】
3J011DA01
3J011DA02
3J011KA02
3J011MA02
3J011SB02
3J011SB12
4K042AA23
4K042AA25
4K042BA03
4K042CA04
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA12
4K042CA13
4K042CA15
4K042DA01
4K042DA02
4K042DB01
4K042DB07
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC05
4K042DD02
4K042DD05
4K042DE02
(57)【要約】
例示的なブッシング(204)は、ブッシング(204)の中央穴に最も近位の内側部分(410)、中央穴から最も遠位の外側部分(404)、および内側部分(410)と外側部分(404)との間にコア部分(406)を含む、半径方向に沿った三つの部分を有する。コア部分(406)は、ブッシング(204)の内側部分(410)または外側部分(404)の硬度よりも低い硬度を有する。ブッシング(204)は、高炭素鋼を使用して形成されてもよく、一部の事例では、球状セメンタイト結晶構造であってもよい。粗いブッシングは、高炭素鋼を使用して形成されてもよく、その後、直接硬化プロセス、およびブッシング(204)の中央穴の最も近位の内面(412)上の誘導硬化プロセスが続く。内面(412)上の誘導硬化は、ブッシング(204)のコア部分(406)を焼き戻しながら、外側部分(404)を硬化しうる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブッシング(204)を製造する方法であって、
粗いブッシングの直接硬化を実施することであって、前記粗いブッシングが0.8重量%超の炭素含有量を有する高炭素鋼から形成され、前記高炭素鋼がセメンタイト結晶構造を含む、実施することと、
前記粗いブッシングの内面(302)上に誘導硬化を実施して、前記ブッシング(204)の硬化された内側部分(410)および前記ブッシング(204)の軟質コア部分(406)を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記高炭素鋼が52100鋼を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内側部分が少なくとも55HRCの硬度を有し、前記外側部分が少なくとも55HRCの硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記直接硬化を実施することが、
前記粗いブッシングを、所定の時間の間少なくとも800°Cに加熱することと、
前記粗いブッシングを急冷することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記内側部分(410)の厚さと前記ブッシング(204)の厚さとの比が、1:20~1:2の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ブッシング(204)であって、
外面(402)および前記外面(402)に対向する内面(412)であって、前記内面(412)が実質的に一定の直径を有するチャネルを画定し、前記チャネルが、前記ブッシングの第一の端部(208)から、前記第一の端部(208)に対向する前記ブッシング(204)の第二の端部(206)まで、前記ブッシング(204)を実質的に中央で貫通する、外面および内面と、
前記内面(412)を含む内側部分(410)と、
前記外面(402)を含む外側部分(404)と、
前記内側部分(410)と前記外側部分(404)との間に配置されるコア部分(406)と、を備え、
前記コア部分(406)は、前記内側部分(410)のHRC値および前記外側部分(404)のHRC値よりも低いHRC値を有する、ブッシング(204)。
【請求項7】
前記内側部分が、少なくとも55HRCの硬度を有し、
前記外側部分が、少なくとも55HRCの硬度を有し、
前記コア部分が、52HRC未満の硬度を有する、請求項6に記載のブッシング。
【請求項8】
前記内側部分(410)および前記外側部分(404)が、実質的にマルテンサイト結晶構造を有する、請求項6に記載のブッシング。
【請求項9】
前記ブッシングが、0.8重量%を超える炭素含有量を有する高炭素鋼を含む、請求項6に記載のブッシング。
【請求項10】
前記外側部分が少なくとも5mmの厚さを有する、請求項6に記載のブッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高炭素鋼トラックブッシングに関する。より詳細には、本開示は、摩耗寿命の改善を達成するよう硬化された、高炭素鋼製で作られたトラックブッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック型機械は、建設、鉱業、林業、その他の類似の産業で幅広く使用されている。こうしたトラック型機械の足回りは、車輪ではなくトラックアセンブリを利用して、接地係合推進を提供する。こうしたトラックアセンブリは、上述の業界で頻繁に見られるものなど、十分な牽引力の生成が問題となる環境で好ましい場合がある。具体的には、車輪で作業面を転がるのではなく、トラック型機械は、例えば、駆動スプロケット、アイドラ、テンショナ、およびローラなどの一つ以上の回転可能なトラック係合要素の周りを移動する、接地係合トラックシュー、および内面を支持する、外面を画定する結合トラックリンクの無限ループを含む、一つ以上のトラックアセンブリを利用する。
【0003】
典型的なトラックチェーンアセンブリ設計には、一対のチェーンリンクに固定または回転可能に結合されたトラックピン、ならびにリンクの間およびトラックピンの周りに回転可能に位置付けられたブッシングが含まれる。こうしたトラックチェーンアセンブリは、トラックジョイントが、水、埃、砂、岩、またはその他の鉱物もしくは化学元素の様々な研磨混合物に曝されうる、非常に劣悪な環境で動作することができる。トラックピンとブッシングとの間のベアリング境界面は、高い接触応力に遭遇し、ゴーリングによる破損につながる可能性がある。ゴーリングは、トラックチェーンアセンブリの主要な故障モードであり、多くの用途においてトラックチェーンアセンブリの寿命を限定する恐れがある。さらに、トラックチェーンアセンブリの動作は、ブッシングなどのトラックチェーンの構成要素を摩耗させる可能性がある。
【0004】
動作中、トラックブッシングに過度な負荷がかかる可能性がある。トラックブッシングの異なる表面、例えば、内径、エンドリング表面などは、トラックブッシングに課されうる荷重に耐えるために、増加した強度および靭性を有する耐摩耗性を必要とする場合がある。トラックブッシングは通常、低炭素鋼または中炭素鋼でできている。さらに、トラックブッシングは、所望の硬度のトラックブッシングを作成するように焼き戻しされてもよい。しかし、トラックブッシングの生産は、時間、労力、および費用のかかるプロセスでありうる。さらに、最終ブッシングは、従来の方法で作成されるとき、十分な耐摩耗性および靭性を提供しない場合がある。
【0005】
ブッシングを製造する一例は、米国特許第9,616,951号(以下、‘951参照という)において、硬質金属合金スラリーが、表面上またはアンダーカットまたはチャネルに配置され、その後融合されて、鉄系合金と金属結合を形成する。しかし、これは、アンダーカットおよび金属合金スラリーの付加などの追加の処理ステップを必要とする。さらに、スラリーの付加および融合の本プロセスでは、‘951参照に記載されるように、約1mm~2mmなど、硬質外層の厚さを制限する場合がある。
【0006】
本開示の例示的実施形態は、上述の欠陥を克服することに向けられる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の例示的な実施形態では、ブッシングを製造する方法は、粗いブッシングの直接硬化を実施することを含む。粗いブッシングは、0.8重量%を超える炭素含有量を有する高炭素鋼から形成される。さらに、高炭素鋼は、セメンタイト結晶構造を含む。方法はさらに、粗いブッシングの内面上に誘導硬化を実施して、ブッシングの硬化された内側部分およびブッシングの軟質コア部分を形成することを含む。
【0008】
本開示の別の例示的な実施形態では、ブッシングは、外面と外面と対向する内面を含み、内面は、実質的に一定の直径を有するチャネルを画定し、チャネルは、ブッシングの第一の端部から第一の端部の反対側のブッシングの第二の端部まで、実質的にブッシングの中央を貫通する。ブッシングはさらに、内面を含む内側部分、外面を含む外側部分、および内側部分と外側部分との間に配置されるコア部分を有する。このブッシングでは、コア部分は内側部分よりも軟質であり、コア部分は外側部分よりも軟質である。
【0009】
本開示のさらに別の例示的な実施形態では、トラックチェーンアセンブリは、複数のトラックシュー、複数のリンク、および複数のブッシングを含む複数の構成要素を備える。少なくとも一つのブッシングは、内側部分、外側部分、および内側部分と外側部分との間のコア部分を含む。コア部分は、内側部分よりも軟質であり、コア部分は、外側部分よりも軟質である。さらに、外側部分は、少なくとも5mmの厚さであり、55HRCを超える硬度を有し、コア部分は、52HRC未満の硬度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の例示的な実施形態に従って形成された一つ以上の構成要素を有するトラック型機械を含む例示的なシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、本開示の例示的な実施形態による、
図1に図示したような例示的なトラック型機械の足回り用のトラックチェーンアセンブリの例示的な部分の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、
図2に図示したトラックチェーンの一部分の例示的なブッシングの概略図である。
【
図4】
図4は、本開示の例示的な実施形態による、例示的なブッシングの断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の例示的な実施形態による特定のブッシングの別の断面図である。
【
図6】
図6は、本開示の例示的な実施形態による、
図4の例示的なブッシングを形成するための例示的な方法を示す流れ図である。
【
図7】
図7は、本開示の例示的な実施形態による、
図4の例示的なブッシングを形成するための別の例示的な方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
可能な限り、同一または類似部品に言及するのに、図面全体を通して同一の参照番号を使用するであろう。
【0012】
図1は、本開示の例示的な実施形態に従って形成された一つ以上の構成要素を有するトラック型機械100を含む例示的なシステムの概略図である。機械100の例示的な実施形態は、トラック型足回り120を含む。機械100はまた、本明細書で互換的に、トラック型機械100および/または機械100として参照されてもよい。他の実施形態では、機械100は、ドーザ、ローダ、ショベル、タンク、バックホウ、ドリル加工機、トレンチ、または任意の他の公道用または不斉地車両などの、トラック型足回り120を有する任意の適切な機械であってもよい。
【0013】
機械100は、その第一の側面110上に配置された第一のトラックチェーンアセンブリ160と、その第二の側面(図示せず)上に配置された第二のトラックチェーンアセンブリ(図示せず)とを有するフレーム140を含む。第二の側面は、第一の側面110と対向する関係にある。一緒に、トラックアセンブリは、地面または他の表面と係合して、機械100を後方および/または前方方向に推進するように適合される。
【0014】
当然のことながら、機械100のトラックアセンブリは類似していてもよく、さらに、互いのミラー画像を表してもよい。そのため、第一のトラックチェーンアセンブリ160のみが本明細書に記述される。当然のことながら、第一のトラックチェーンアセンブリ160の説明は、第二のトラックチェーンアセンブリにも適用されうる。他の実施形態は、本開示によれば、二つ以上のトラックチェーンアセンブリを含みうる。したがって、本明細書に開示される装置、システム、および方法は、任意の適切なトラック型機械またはその変形に適用される。さらに、本明細書に開示される、開示されたトラック型機械100の構成要素、およびその形成機構は、非トラック型機械および/または他の機械的システムなどの他のシステムにも適用されうる。
【0015】
図1を引き続き参照すると、第一のトラックチェーンアセンブリ160は、駆動スプロケット162、フロントアイドラ164、バックアイドラ166、および複数のトラックローラ168などの複数の転動要素の周りに延在する。トラックチェーンアセンブリ160は、地面または他の表面と係合し、機械100を推進させるための複数の接地係合トラックシュー170を含む。
【0016】
足回り120の典型的な動作中、駆動スプロケット162は、エンジンなどによって、トラックチェーンアセンブリ160を駆動するために、前方回転方向FRで駆動され、それゆえ、機械100は、前方方向Fで、逆回転方向RRで、トラックチェーンアセンブリ160を駆動し、それゆえ、機械100は、逆方向Rで駆動される。足回り120の駆動スプロケット162は、独立して機械100を回転するように動作されてもよい。
【0017】
足回り120およびトラックチェーンアセンブリ160は、本明細書に記載されるように、様々な他の構成要素を含みうる。厳しい動作環境およびトラックチェーンアセンブリの様々な構成要素にかかる負荷のため、それらの構成要素の使用可能寿命を改善するために、トラックチェーンアセンブリの様々な構成要素の材料特性を改善することが望ましい。
【0018】
機械100は、トラック型機械の文脈で図示されているが、当然のことながら、本開示はそれによって限定されるものではなく、また、トラックを有する多種多様な他の機械も、本文脈内で意図されていることが理解されるべきである。例えば、他の実施形態では、トラックチェーンアセンブリ160は、回転要素間のトルクを伝達するためのトラックとして、または当業者に既知の任意の他の用途で、コンベアシステムに含まれうる。さらに、トラックのない機械は、本明細書に開示される構成要素を含みうる。
【0019】
本開示の例示的な実施形態によれば、機械100およびそのトラックチェーンアセンブリ160の様々な構成要素は、それらの全体的な靭性を維持および/または改善しながら、それらの摩耗抵抗を改善する方法で形成されうる。本明細書に開示される機構は、本明細書に開示される任意の様々なトラックチェーンアセンブリ構成要素に適用されて、これらの構成要素の表面硬度を増加させ、一方で、これらの構成要素のより柔らかいコア部分を維持し、表面摩耗抵抗の改善、部品間のゴーリングの低減、および高靭性を提供しうる。
【0020】
図2は、本開示の例示的な実施形態による、
図1に図示したような、例示的なトラック型機械100の足回り用のトラックチェーンアセンブリ160の例示的な部分200の概略図である。上述のように、動作されたときに、トラック型機械100の駆動スプロケット162は、トラックアセンブリ160を、一つ以上のアイドラ、またはフロントアイドラ164、バックアイドラ166、および複数のトラックローラ168などの他の誘導構成要素の周りで回転させて、機械100の移動を容易にしうる。
【0021】
トラックアセンブリ160は、横方向に配置されるトラックブッシング204によって互いに結合されうる一連のリンク202をさらに含みうる。示されるように、リンク202はオフセットされたリンクであってもよい。すなわち、リンク202の各々は、内向きにオフセットされた端部206および外向きにオフセットされた端部208を有してもよい。それぞれのリンク202の内向きにオフセットされた端部206は、隣接するリンクのそれぞれのそれぞれ外向きにオフセットされた端部208に結合される。さらに、リンク202のそれぞれの内向きにオフセットされた端部206は、対向するリンクの内向きにオフセットされた端部206に結合されてもよく、リンク202のそれぞれの外向きにオフセットされた端部208は、トラックブッシング204によって対向するリンクの外向きにオフセットされた端部208に結合されてもよい。しかしながら、リンク202はオフセットされたリンクである必要はないことが理解されるべきである。むしろ、いくつかの実施形態では、リンク202は、内側リンクおよび外側リンクを含みうる。こうした実施形態では、それぞれの対向する対の内側リンクの両端は、当技術分野で知られているように、対向する外側リンクの端部の間に位置付けられる。
【0022】
一部の態様では、本開示の少なくとも一部は、トラックブッシング204、その構成要素ならびにトラックチェーンアセンブリ160および/または機械100などのトラックブッシングが使用されるシステムの形成、作成、および/または製造に関する。さらに、トラックブッシング204の形成機構は、トラックチェーンアセンブリ160および/または機械100の他の構成要素など、他の構成要素に適用されてもよい。
【0023】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、例示的なブッシング204の概略図である。トラックブッシング204は、内面302と、その間にトラックブッシング204の厚さ「T
T」を画成する外面304とを含む、略中空の円筒形状を有してもよい。示されるように、内面302および外面304は、トラックブッシング204の丸い形状を画定する曲率を有してもよい。トラックブッシング204はまた、トラックブッシング204の長さ「L」を画定する第一のエンドリング306および第二のエンドリング308を有する。
【0024】
トラックブッシング204の形状および寸法は、用途に基づいて変化しうる。例えば、より大きなトラックチェーンアセンブリ160は、より小さいサイズのトラックチェーンアセンブリ160よりも大きなサイズのトラックブッシング204を含んでもよい。トラックブッシング204の様々な部分(例えば、硬化した表面層、より軟質のコア部分など)の厚さもまた、トラックブッシング204の用途に応じて変化しうる。
【0025】
本開示の例示的な実施形態によるトラックブッシング204は、本明細書に開示される追加の処理を伴う高炭素鋼で作製されてもよい。高炭素鋼は、本明細書で使用される場合、高炭素含有量を有する合金鋼を含む。トラックブッシング204の炭素含有量は、形成され、かつ任意の硬化および/または焼き戻し処理の前に、およそ0.8重量%の炭素含有量より大きくてもよい。他の例示的な実施形態では、トラックブッシング204は、形成され、かつ任意の硬化および/または焼き戻し処理の前に、およそ0.9重量%の炭素含有量より大きくてもよい。例えば、トラックブッシングは、およそ0.95重量%~1.1重量%の炭素含有量など、0.9重量%超の炭素含有量を有する52100鋼から形成されてもよい。一部の例示的な実施形態では、トラックブッシング204の炭素含有量は、形成され、かつ任意の硬化および/または焼き戻し処理の前に、およそ1.1重量%超の炭素含有量、および場合により、最大2重量%の炭素含有量とすることができる。鋼中に存在する他の要素としては、以下に限定されないが、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0026】
代替的な実施形態では、トラックブッシング204は、本明細書に開示される追加の処理を用いて、高炭素合金鋼などの高炭素鋼で作製されてもよい。これらの実施形態では、トラックブッシング204の炭素含有量には、およそ0.4~0.8重量%の炭素が存在しうる。一部の事例では、トラックブッシング204は、形成され、かつ任意の硬化および/または焼き戻し処理の前に、およそ0.6重量%~0.8重量%の炭素含有量でありうる。
【0027】
トラックブッシング204鋼は、その中に、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)、シリコン(Si)、クロム、および/または他の材料などの他の要素をさらに含みうる。例えば、鋼は、任意の硬化および/または焼き戻し処理の前に、およそ0.1重量%~0.6重量%のマンガン、およそ0重量%~0.1重量%のリン、およそ0重量%~0.1重量%の硫黄、およそ0.1重量%~0.5重量%のシリコン、および/またはおよそ0.6重量%~3重量%のクロムを含みうる。
【0028】
粗いブッシング形成の間、トラックブッシング204鋼は、球状化セメンタイト結晶構造であってもよい。球状化セメンタイト構造は、軟質かつ延性であってもよく、トラックブッシング204のより容易な形成を可能にする。例示的な実施形態では、出発高炭素鋼が球状化セメンタイト構造にない場合、球状化プロセスを実施することができる。例示的な実施形態では、球状化プロセスは、炭素鋼共晶温度下で、複数時間のアニールの間行われてもよい。例えば、鋼は、700°Cで30時間保持されて、トラックブッシング204を粗面形成する前に鋼を球状化することができる。本明細書および/または本開示全体における温度および/または時間範囲は例であり、温度およびより短いまたはより長い期間が、本開示の例示的な実施形態に従って使用されうる。
【0029】
本開示の例示的な実施形態によれば、形成後のトラックブッシング204は、直接硬化プロセスなどの様々な熱処理を受け、その後、トラックブッシング204の内面302または内径(ID)上に誘導硬化プロセスを受けてもよい。この直接硬化プロセスに続く誘導硬化プロセスにより、トラックブッシング204の外面304および内面302の両方の近傍の領域で硬化した鋼が形成され、一方、コア部分はより軟質でより延性があり、摩耗抵抗および靭性の改善をもたらしうる。したがって、本明細書に記載のように、トラックブッシング204の内面302近くのブッシング204への特定の奥行きおよび外面304近くのブッシングへの特定の奥行きなどの外側部分は、主にマルテンサイト系および/またはオーステナイト系構造を有してもよく、一方、トラックブッシング204の内側部分は、内面302および外面304から離れて、主にフェライト系および/またはセメンタイト系結晶構造を有してもよい。
【0030】
図4は、本開示の例示的な実施形態による、例示的なブッシング400の断面図である。この例示的なブッシング400の断面は、曲がった内面302を示さずに、断面の露出した面部が示される、トラックブッシング204の直径を通る例示的断面であってもよい。
【0031】
図示したように、ブッシング400は、穿孔径THを有する全厚TTを有してもよい。穿孔は、実質的に中央でブッシング400を貫通する実質的に一定の直径を有するチャネルであってもよい。ブッシングは、外面304と類似した外面402、およびブッシング204の内面302と類似した内面412を有してもよい。ブッシング400は、境界面408から外面402までの厚さTOを有する外側部分404、および、境界面414から内面412までの厚さTIを有する内側部分410を有してもよい。内側部分410と外側部分404との間に、厚さTCを有するコア部分406を配置してもよい。コア部分406と外側部分404とは、境界面408で交わってもよく、コア部分406と内側部分410とは、境界面414で交わってもよい。境界面408、414は、例示の目的で鮮明な境界面として示されているが、外側部分404とコア部分406との間の遷移、および/または内側部分410とコア部分との間の遷移は、漸進的および/または段階的でありうることが理解されるべきである。本明細書で論じるように、厚さ寸法は、実質的に中央でブッシング400を貫通するチャネルから半径方向にある。
【0032】
一部の例示的な実施形態では、T
Tは、約7mm~約20mmの範囲であってもよく、T
Oは約2mm~約11mmの範囲であってもよく、T
Cは約1mm~約10mmの範囲であってもよく、T
Iは約1mm~約6mmの範囲であってもよく、T
Hは約30mm~約80mmの範囲であってもよい。他の例示的な実施形態では、T
Tは、約10mm~約15mmの範囲内であってもよく、T
Oは、約5mm~約9mmの範囲内であってもよく、T
Cは約2mm~約5mmの範囲内であってもよく、T
Iは約2mm~約4mmの範囲内であってもよく、T
Hは約40mm~約60mmの範囲内であってもよい。ブッシングの総厚さT
T、穿孔径T
H、外側部分の厚さT
O、内側部分の厚さT
I、およびコア部分の厚さT
Cの寸法の一例が、本明細書の
図5に示されている。
【0033】
一部の例示的な実施形態では、外側部分の厚さと総厚さとの比(TO:TT)は、約1:10~約2:3の範囲内であってもよい。内側部分の厚さと総厚さの比(TI:TT)は、約1:20~約1:2の範囲内であってもよい。コア部分の厚さと総厚さとの比(TC:TT)は、約1:20~約2:3の範囲内であってもよい。
【0034】
例示的な実施形態によれば、ブッシング400の内側部分410および外側部分404は、結晶構造において実質的にマルテンサイト系および/またはオーステナイト系であってもよい。一方、コア部分406は、結晶構造においてセメンタイト系、フェライト系、および/またはパーライト系であってもよい。コア部分406はまた、マルテンサイト結晶構造を含んでもよい。本明細書に開示するように、ブッシング400の内側部分410および外側部分404は、ブッシング400のコア部分406よりも硬くてもよい。
【0035】
一部の例示的な実施形態では、内側部分410および外側部分404は、約55ロックウェル硬さCスケール(HRC)~約64HRCの範囲内の硬度を有してもよく、コア部分406は、約39HRC~約52HRCの範囲内の硬度を有してもよい。他の例示的な実施形態では、内側部分410および外側部分404は、約58HRC~約62HRCの範囲内の硬度を有してもよく、コア部分406は、約40HRC~約45HRCの範囲内の硬度を有してもよい。
【0036】
ブッシング400は、52100鋼などの球状化セメンタイト鋼を使用して粗いブッシングを形成することによって製造されうる。粗いブッシングは、本明細書で使用される場合、任意の後続する熱処理、硬化、焼き戻し、または類似のものの前に、高炭素合金鋼などの高炭素鋼出発材料を用いてブッシングを形成することを指す。セメンタイト構造を有する高炭素合金鋼を含む高炭素鋼は、硬化炭素鋼よりも機械加工が容易でありうる。粗いブッシングは、直接硬化などの硬化プロセスを受けうる。この直接硬化は、誘導炉またはガス炉などの任意の適切な炉で行われてもよい。一部の事例では、この直接硬化プロセスは、複数の粗いブッシングおよび/または機械100のその他の構成要素が同時に硬化されうるバッチプロセスであってもよい。粗いブッシングは、オイルの中でなど、急冷されてもよい。任意の焼き戻しプロセスは、硬化プロセスの後などに、実施されうる。粗いブッシングの全体は、硬化したマルテンサイト構造、オーステナイト構造、および/またはベイナイト構造を有しうる。言い換えれば、粗いブッシングは、硬化プロセスの後、実質的に均一に硬化されうる。
【0037】
誘導硬化プロセスは、硬化されたブッシングの内面412(例えば、内径(ID))上で行われてもよい。表面加熱は、ブッシング400の内面412の近位の交流磁気および/または電界から電流を誘導することによって行われてもよい。誘導硬化プロセスは、表面加熱によって内面412の近くの領域を硬化しうる。表面硬化は、ブッシング400の内側部分410を形成しうる。同時に、誘導加熱は、ブッシング400のコア部分406の焼き戻しを引き起こしうる。したがって、表面硬化によって、内側部分410が再加熱され、急冷されて、硬質マルテンサイトおよび/またはオーステナイト構造を引き起こしうる一方で、同時に、コア部分406は、硬質マルテンサイトおよび/またはオーステナイト構造からより軟質のセメンタイト構造へと移行するように焼き戻しされうる。このように、軟質コア部分406は、硬質内側部分410および外側部分404が達成される間に、達成される。
【0038】
図5は、本開示の例示的な実施形態による特定のブッシング500の別の断面図である。このブッシング500の断面は、曲がった内面302を示さずに、断面の露出した面部が示される、トラックブッシング204の直径を通る例示的断面であってもよい。本明細書で論じる寸法およびパラメータ範囲は、例であり、いかなる方法でも制限することを意図するものではない。
【0039】
ブッシング500は、49mmの穿孔径を有する12.8mmの合計厚さを有してもよい。ブッシング500は、厚さ7mmの外側部分502、および厚さ3mmの内側部分508を有してもよい。内側部分508と外側部分502との間には、ブッシング500の縁に2.8mmおよびブッシング500の中央の近くに5.3mmの厚さを有するコア部分506が配置されてもよい。例示的な実施形態では、内側部分508および外側部分502は、約58HRC~約62HRCの範囲内の硬度を有してもよく、コア部分506は、約40HRC~約45HRCの範囲内の硬度を有してもよい。ブッシング500の様々な領域502、506、508の厚さ、ならびにそれらの相対比は、
図4のブッシング400を参照して開示された範囲内にある。
【0040】
図6は、本開示の例示的な実施形態による、
図4の例示的なブッシング400を形成するための例示的な方法600を示す流れ図である。方法600は、本明細書で論じるように、スペロイド化セメンタイト構造(例えば、球状化セメンタイトおよびフェライト)で高炭素鋼を使用して実施されうる。例示的な実施形態では、出発鋼は、52100鋼、または他の類似の高炭素鋼であってもよい。あるいは、中炭素鋼を使用してもよい。
【0041】
高炭素鋼は、本明細書で使用される場合、高炭素含有量を有する合金鋼を含む。高炭素鋼の炭素含有量は、およそ0.8重量%の炭素含有量より大きくてもよい。他の例示的な実施形態では、トラックブッシングは、形成され、かつ任意の硬化および/または焼き戻し処理の前に、およそ0.9重量%超の炭素を含んでもよい。例えば、トラックブッシングは、およそ0.95重量%~1.1重量%の炭素含有量など、0.9重量%超の炭素含有量を有する52100鋼から形成されてもよい。一部の例示的な実施形態では、トラックブッシング204の炭素含有量は、形成され、かつ任意の硬化および/または焼き戻し処理の前に、およそ1.1重量%超の炭素含有量、および場合により、最大2重量%の炭素含有量とすることができる。鋼中に存在する他の要素としては、以下に限定されないが、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、それらの組み合わせなどが挙げられる。
【0042】
本明細書で論じるように、粗いブッシングが形成される高炭素合金鋼などの高炭素鋼は、球状化セメンタイト結晶構造の中にあってもよい。球状化セメンタイト構造は、軟質かつ延性であってもよく、トラックブッシング204のより容易な形成を可能にする。例示的な実施形態では、出発高炭素鋼が球状化セメンタイト構造にない場合、任意選択で、方法600を開始する前に球状化プロセスを実施することができる。例示的な実施形態では、球状化プロセスは、炭素鋼共晶温度(例えば、725°C)下で、複数時間のアニールの間、行われてもよい。例えば、鋼材は、650°C~720°Cの温度範囲で20~40時間保持されて、トラックブッシング204を粗面形成する前に鋼材を球状化することができる。
【0043】
ブロック602では、ブッシングは高炭素鋼から形成されうる。上で論じたように、鋼は、ブッシングを形成する際に、球状化セメンタイト構造中にあってもよい。例えば、鋼は、主に球状化セメンタイト、フェライト、および/またはパーライトを含んでもよい。鋼が前に硬化されていた場合、鋼はまた、マルテンサイトおよび/またはオーステナイト結晶構造を含んでもよい。高炭素鋼のこの形態は、比較的軟質かつ延性であり、したがって、機械加工に適している。ブッシングの形成は、この場合、粗いブッシングで、ブッシングを形成するのに適した任意の様々な機械加工技術を含みうる。例えば、任意のタイプの成形、旋削、フライス加工、ドリル加工、研削、および/または他の機械加工技術を使用して、粗いブッシングを形成してもよい。
【0044】
ブロック604で、ブッシングの直接硬化を実施することができる。直接硬化処理は、ブッシングを共晶温度よりも高い温度に加熱することによって行われてもよい。この直接硬化は、誘導炉またはガス炉などの任意の適切な炉で行われてもよい。一部の事例では、この直接硬化プロセスは、複数の粗いブッシングおよび/または機械100のその他の構成要素が同時に硬化されうるバッチプロセスであってもよい。
【0045】
炉プロセスは、任意の適切な温度および時間で行われてもよい。例えば、炉プロセスは、所定時間の間800°C超で実施されうる。一部の例示的な実施形態では、炉プロセスは、約800°C~約950°Cの温度範囲で、約30分~約3時間の時間範囲の間行われてもよい。例えば、直接硬化の炉加熱プロセスは、850°Cで60分間行われてもよい。炉プロセスを実施した後、粗いブッシングは、例えばオイル中で急冷されてもよい。代替の方法として、急冷プロセスは、塩浴、空気、および/または水などの任意の適切な媒体中であってもよい。任意の焼き戻しプロセスは、硬化プロセスの後に実施されてもよい。
【0046】
直接硬化プロセスの後、粗いブッシングの全体が硬化したマルテンサイト、オーステナイト、および/またはベイナイト構造を有しうる。言い換えれば、この時点で粗いブッシングは、その厚さTT全体にわたって実質的に均一に硬化されてもよい。直接硬化プロセスの結果として、ブッシング全体の硬度は、約55HRC~約62HRCの範囲内でありうる。例えば、ブッシングは、直接硬化プロセスの後、およそ60HRCでありうる。
【0047】
硬化したマルテンサイト炭素鋼は、高耐摩耗性およびゴーリングレベルの低減を提供する一方で、概して脆く延性に欠ける。したがって、この処理段階でのブッシングの均一な硬化は、所望のブッシングの靭性よりも低い結果をもたらしうる。
【0048】
ブロック606で、ブッシングの内面上の誘導硬化を実施することができる。内面412における誘導硬化は、内面412の近くに磁界および/または交番電界を提供して、ファラデーの法則に従って、内面412の近くに電流を誘導することによって行われてもよい。磁界および/または交番電界は、内面412によって実質的に中央で画定され、内面412に近接して延在するチャネル内に所望の交互周波数および電力レベルで電気的に電力供給されるコイルを挿入することによって、内面412の近傍で生成されうる。一部の事例では、誘導硬化を実施するために使用されるコイルは、ブッシングの長さLの全体を同時に加熱しうるように形状設定されうる。あるいは、コイルは、内面412のすべてが誘導電流によって加熱されるように、ブッシング(例えば、ラスタ化)の長さLに沿って移動されてもよい。
【0049】
この誘導加熱プロセスによる加熱は、誘導電流が生成される内面412の近くに局在してもよい。したがって、誘導加熱を使用するときに、ブッシング内に延在する温度勾配があってもよい。この場合、内面412は、内面412から離れてブッシング内に半径方向に延在する温度の減少を伴う最高温度であってもよい。結果として、内面412に最も近い領域は、炭素鋼Ac1温度より上に加熱されてもよく、内面412から遠く離れた領域は、炭素鋼Ac1温度より下に加熱されてもよい。Ac1温度は、炭素鋼を加熱するときにオーステナイトが形成され始める温度でありうる。このようにして、内面412に近い領域は硬化されてもよく、内面412から遠く離れた領域は、誘導硬化プロセスの間に焼き戻しされてもよい。
【0050】
例示的な実施形態によれば、誘導硬化のための電力および周波数は、ブッシング400の内側部分404の奥行きTIを制御するように選択されうる。内側部分404の奥行きTIでは、誘導硬化中の温度は約800°C~約1000°Cに上昇しうる。一部の例示的な実施形態では、温度は、内側部分404の奥行きTI内で、約850°C~約950°Cに上昇してもよい。例えば、誘導加熱は、内面412付近の温度が約900°Cであるように行われてもよい。
【0051】
上述のように、内側部分404の奥行きTI内の温度が約800°C~約1000°Cの範囲内にあるとき、コア部分406の温度は内側部分404の温度よりも低い。例示的な実施形態では、コア部分406内の温度は、誘導硬化プロセス中に約500°C~約800°Cの範囲内であってもよい。一部の例示的な実施形態では、誘導硬化中のコア部分406内の温度は、約650°C~約750°Cの範囲内であってもよい。結果として、内側部分404が硬化された時に、コア部分406は同時に焼き戻しされてもよい。
【0052】
例示的な実施形態では、誘導硬化の時間範囲は、約3秒~約3時間の範囲内であってもよい。例えば、誘導加熱プロセスは、925°Cで30秒間行われてもよい。誘導加熱プロセスを行った後、ブッシングは空気中で急冷されてもよい。代替の方法として、急冷プロセスは、塩浴、オイル、および/または水などの任意の適切な媒体中であってもよい。
【0053】
誘導加熱プロセスの後、ブッシング400は、内側部分404で硬化され、コア部分406で軟化されうる。外側部分404は、その部分がブロック604の直接硬化プロセスの一部として硬化されたときから実質的に変化しなくてもよい。したがって、誘導硬化プロセスの後、内側部分410および外側部分404は、約55HRC~約64HRCの範囲の硬度を有してもよく、コア部分406は、約39HRC~約52HRCの範囲の硬度を有してもよい。他の例示的な実施形態では、内側部分410および外側部分404は、約58HRC~約62HRCの範囲内の硬度を有してもよく、コア部分406は、約40HRC~約45HRCの範囲内の硬度を有してもよい。
【0054】
方法600の動作の一部は、提示された順序から外れて、追加の要素と共に、および/またはいくつかの要素なしで行われてもよいことに留意されたい。方法600の動作の一部はさらに、実質的に同時に行われてもよく、したがって、上に示される動作の順序とは異なる順序で終了してもよい。
【0055】
図7は、本開示の例示的な実施形態による、
図4の例示的なブッシングを形成するための別の例示的な方法700を示す流れ図である。方法700は、本明細書で論じる高炭素鋼を使用して、スペロイド化セメンタイト構造で実施されうる。例示的な実施形態では、出発鋼は、52100鋼、または他の類似の高炭素鋼であってもよい。あるいは、中炭素鋼を使用してもよい。
【0056】
本明細書で論じるように、任意の処理の前に、高炭素合金鋼などの高炭素鋼は、フェライト結晶構造と共に、球状化セメンタイト結晶構造の中にあってもよい。スフェロドイド化セメンタイト構造は、軟質かつ延性であってもよく、トラックブッシング204のより容易な形成を可能にする。例示的な実施形態では、出発高炭素鋼が球状化セメンタイト構造にない場合、任意選択で、方法700を開始する前に球状化プロセスを実施することができる。例示的な実施形態では、球状化プロセスは、炭素鋼共晶温度(例えば、725°C)下で、複数時間のアニールの間、行われてもよい。例えば、鋼材は、650°C~720°Cの温度範囲で20~40時間保持されて、トラックブッシング204を粗面形成する前に鋼材を球状化することができる。
【0057】
ブロック702では、ブッシングは高炭素鋼から形成されうる。上で論じたように、鋼は、ブッシングを形成する際に、球状化セメンタイト構造中にあってもよい。高炭素鋼のこの形態は、比較的軟質かつ延性であり、したがって、機械加工に適している。ブッシングの形成は、この場合、粗いブッシングで、ブッシングを形成するのに適した任意の様々な機械加工技術を含みうる。例えば、任意のタイプの成形、旋削、フライス加工、ドリル加工、研削、および/または他の機械加工技術を使用して、粗いブッシングを形成してもよい。
【0058】
ブロック704で、ブッシングは第一の硬度レベルに均一に硬化されてもよい。本明細書で論じるように、これは、直接硬化プロセスまたは他の類似のプロセスによって達成されうる。直接硬化処理は、ブッシングをAc1温度よりも高い温度に加熱することによって行われてもよい。この直接硬化は、誘導炉またはガス炉などの任意の適切な炉で行われてもよい。一部の事例では、この直接硬化プロセスは、複数の粗いブッシングおよび/または機械100のその他の構成要素が同時に硬化されうるバッチプロセスであってもよい。
【0059】
炉プロセスは、任意の適切な温度および時間で行われてもよい。例えば、炉プロセスは、所定時間の間800°C超で実施されうる。一部の例示的な実施形態では、炉プロセスは、約800°C~約950°Cの温度範囲で、約30分~約3時間の時間範囲の間行われてもよい。例えば、直接硬化の炉加熱プロセスは、850°Cで60分間行われてもよい。炉プロセスを実施した後、粗いブッシングは、例えばオイル中で急冷されてもよい。代替の方法として、急冷プロセスは、塩浴、空気、および/または水などの任意の適切な媒体中であってもよい。任意の焼き戻しプロセスは、硬化プロセスの後に実施されてもよい。
【0060】
直接硬化プロセスの後、粗いブッシングの全体が硬化したマルテンサイト、オーステナイト、および/またはベイナイト構造を有しうる。言い換えれば、この時点で粗いブッシングは、その厚さTT全体にわたって実質的に均一に硬化されてもよい。直接硬化プロセスの結果として、ブッシング全体の硬度は、約55HRC~約62HRCの範囲内でありうる。例えば、ブッシングは、直接硬化プロセスの後、およそ60HRCでありうる。
【0061】
硬化したマルテンサイト炭素鋼は、高耐摩耗性およびゴーリングレベルの低減を提供する一方で、概して脆く延性に欠ける。したがって、この処理段階でのブッシングの均一な硬化は、所望のブッシングの靭性よりも低い結果をもたらしうる。
【0062】
ブロック706では、ブッシングは任意選択で焼き戻しされてもよい。この焼き戻しプロセスは、特に、応力を軽減し、オイル急冷プロセスから生じた可能性があるマイクロクラッキングを低減することであってもよい。例示的な実施形態では、焼き戻しプロセスは、約100°C~約200°Cの範囲の温度で、約30分~約3時間であってもよい。一実施例では、焼き戻しプロセスは、150°Cで60分間であってもよい。一部の事例では、この焼き戻しプロセスは、例えば他のブッシング204などの機械100の他の構成要素と共に、一括で行われてもよい。焼き戻しプロセスは、誘導炉および/またはガス炉などの任意の適切な炉または加熱チャンバで行われてもよい。
【0063】
ブロック708では、ブッシングの内面は表面硬化されてもよく、一方、ブッシングのコアは、コアが外面および内面よりも低い硬度を有するように、焼き戻しされてもよい。本明細書で論じるように、これは、誘導硬化プロセスを使用して行われてもよい。本明細書で論じるように、内面412における誘導硬化は、内面412の近傍に磁界および/または交番電界を提供して、ファラデーの法則に従って、内面412の近くに電流を誘導することによって行われてもよい。磁界および/または交番電界は、内面412によって画定されるベアリングの穴内に、内面412に近接して、所望の交互周波数および電力レベルで電気的に電力供給されるコイルを挿入することによって、内面412の近傍で生成されうる。一部の事例では、誘導硬化を実施するために使用されるコイルは、ブッシングの長さLの全体を同時に加熱しうるように形状設定されうる。あるいは、コイルは、内面412のすべてが誘導電流によって加熱されるように、ブッシング(例えば、ラスタ化)の長さLに沿って移動されてもよい。
【0064】
この誘導加熱プロセスによる加熱は、誘導電流が生成される内面412の近くに局在してもよい。したがって、誘導加熱を使用するときに、ブッシング内に延在する温度勾配があってもよい。この場合、内面412は、内面412から離れてブッシング内に半径方向に延在する温度の減少を伴う最高温度であってもよい。結果として、内面412に最も近い領域は、炭素鋼共晶温度より上に加熱されてもよく、内面412から遠く離れた領域は、炭素鋼共晶温度より下に加熱されてもよい。このようにして、内面412に近い領域は硬化されてもよく、内面412から遠く離れた領域は、誘導硬化プロセスの間に焼き戻しされてもよい。
【0065】
例示的な実施形態によれば、誘導硬化のための電力および周波数は、ブッシング400の内側部分404の奥行きTIを制御するように選択されうる。内側部分404の奥行きTIでは、誘導硬化中の温度は約800°C~約1000°Cに上昇しうる。一部の例示的な実施形態では、温度は、内側部分404の奥行きTI内で、約850°C~約950°Cに上昇してもよい。例えば、誘導加熱は、内面412付近の温度が約900°Cであるように行われてもよい。
【0066】
上述のように、内側部分404の奥行きTI内の温度が約800°C~約1000°Cの範囲内にあるとき、コア部分406の温度は内側部分404の温度よりも低い。例示的な実施形態では、コア部分406内の温度は、誘導硬化プロセス中に約500°C~約800°Cの範囲内であってもよい。一部の例示的な実施形態では、誘導硬化中のコア部分406内の温度は、約650°C~約750°Cの範囲内であってもよい。結果として、内側部分404が硬化された時に、コア部分406は同時に焼き戻しされてもよい。
【0067】
例示的な実施形態では、誘導硬化の時間範囲は、約3秒~約3時間の範囲内であってもよい。例えば、誘導加熱プロセスは、925°Cで15秒間行われてもよい。誘導加熱プロセスを行った後、ブッシングは空気中で急冷されてもよい。代替の方法として、急冷プロセスは、塩浴、オイル、および/または水などの任意の適切な媒体中であってもよい。
【0068】
誘導加熱プロセスの後、ブッシング400は、内側部分404で硬化され、コア部分406で軟化されうる。外側部分404は、その部分がブロック704の直接硬化プロセスの一部として硬化されたときから実質的に変化しなくてもよい。したがって、誘導硬化プロセスの後、内側部分410および外側部分404は、約55HRC~約64HRCの範囲の硬度を有してもよく、コア部分406は、約39HRC~約52HRCの範囲の硬度を有してもよい。他の例示的な実施形態では、内側部分410および外側部分404は、約58HRC~約62HRCの範囲内の硬度を有してもよく、コア部分406は、約40HRC~約45HRCの範囲内の硬度を有してもよい。
【0069】
方法700の動作の一部は、提示された順序から外れて、追加の要素と共に、および/またはいくつかの要素なしで行われてもよいことに留意されたい。方法700の動作の一部はさらに、実質的に同時に行われてもよく、したがって、上に示される動作の順序とは異なる順序で終了してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示は、トラック型機械100の構成要素などの構成要素の摩耗耐性および靭性を改善するためのシステム、構造、および方法を記載する。これらの改善された構成要素は、機械100のトラックチェーンアセンブリ160で使用されるブッシング204を含みうる。本明細書で開示されるブッシング204は、硬質の耐摩耗性の外側部分および内側部分、ならびに軟質コア部分を有しうる。軟質コア部分は、ブッシング204の高レベルの靭性を提供し、一方で、硬質の外側部分および内側部分は、高レベルの耐摩耗性を提供し、動作中のゴーリングを低減する。ブッシング204およびブッシング204からの手順は、トラック型機械およびそれらのトラック型機械の足回りの文脈で論じられるが、当然のことながら、ブッシング204およびそれを形成する機構は、ブッシングおよび/または他の部品の改善された摩耗抵抗から利益をうることができる任意の機械システムなどの幅広い機械システムにわたって適用可能である。
【0071】
本明細書に記載されるシステム、装置、および方法の結果として、ブッシングなどの機械の消耗部品は、より長い寿命を有しうる。例えば、本明細書に記載のトラックブッシング204は、本明細書に記載の機構によって形成されない従来のブッシング204よりも寿命が長い可能性がある。一部の事例では、ブッシング204および/または他の構成要素は、トラック型機械100の消耗部品の摩耗寿命の25%~400%の改善を可能にしうる。これにより、フィールドダウンタイムが低減され、サービスおよび保守の頻度が低減され、トラック型機械100などの重機のコストが全体的に低減される。改善された信頼性および低減されたフィールドレベルのダウンタイムはまた、機械100が、より長い時間および全体的な寿命のより大きな割合のために、その意図された目的に専念することができるように、ユーザ体験を改善する。機械100の稼働時間の改善および定期メンテナンスの低減は、資源のより効率的な配置(例えば、建設現場におけるより少ないがより信頼性の高い機械100)を可能にしうる。したがって、本明細書に開示される技術は、プロジェクト資源(例えば、建設資源、鉱業資源など)の効率を改善し、プロジェクト資源のより高い稼働時間を提供し、プロジェクト資源の財務パフォーマンスを改善する。
【0072】
本開示の態様は、上記の実施形態を参照して特に示され、記述されてきたが、開示された内容の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な追加の実施形態が、開示された機械、システムおよび方法の改変によって意図されていることが理解されるであろう。かかる実施形態は、特許請求の範囲およびその任意の均等物に基づき決定される本開示の範囲内に収まることが理解されるべきである。
【0073】
本明細書の値の範囲の列記は、本明細書中で特に示さない限り、該範囲内の個々の値を個別に参照する簡略な方法として機能することが単に意図されるものであり、個々の値はそれぞれあたかも本明細書に個別に記載されるかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書中に特に明記されない限り、本明細書に記載されるすべての方法は、任意の適切な順序で実施することができる。
【国際調査報告】