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特表2022-548408膜-電極アセンブリを製造する方法及びそのための機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-18
(54)【発明の名称】膜-電極アセンブリを製造する方法及びそのための機械
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20221111BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20221111BHJP
   H01M 8/103 20160101ALI20221111BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/10 101
H01M8/103
B32B37/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524254
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 DK2020050294
(87)【国際公開番号】W WO2021089093
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】PA201970682
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522052277
【氏名又は名称】ブルー ワールド テクノロジーズ ホールディング エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バン,マッド
(72)【発明者】
【氏名】ボーク,ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】フレンシュ,ステッフェン ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】グロマッドスキー,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ヒロマッドスカ,ライサ
【テーマコード(参考)】
4F100
5H126
【Fターム(参考)】
4F100AA04A
4F100AK01A
4F100AK18A
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EJ19
4F100EJ42
4F100JA05A
5H126BB06
5H126FF05
5H126JJ00
5H126JJ08
(57)【要約】
膜-電極アセンブリを製造する方法及びそのための機械。膜-電極アセンブリ(MEA)を製造する方法では、液体電解質でドープされた膜材料の準エンドレスストリップが電極でラミネートされ、ストリップの縁部領域および電極間の間隔が押圧されて、余分な電解質が排出される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜-電極アセンブリ(MEA)を製造する方法であって、液体電解質でドープされた膜材料の準エンドレスストリップを提供すること;前記膜ストリップとともに組み立てるための電極を提供して、前記電極を前記液体ドープ膜ストリップに取り付けること;カレンダー処理ラミネートステーションにおいて前記ストリップを2つの対向配置されたラミネートローラ(9)の間に誘導して2つのラミネートローラ(9)によるラミネートのために前記電極と前記ストリップを圧縮することによって前記電極を前記ストリップにラミネートすることを含む方法。
【請求項2】
前記ストリップが第1の幅を有し、前記電極が前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し;前記電極と前記液体ドープ膜ストリップとの結合が、前記電極を前記ストリップの2つの反対側の側縁領域の間に位置付けることを意味し、前記側縁領域は前記電極によって覆われず;前記方法は、前記ラミネートステーションの後に、前記ストリップをさらなるカレンダー処理ステーションを通して移動させることをさらに含み、前記さらなるカレンダー処理ステーションの対向配置されたカレンダー処理ローラ(10)が、前記電極を有する前記ストリップが前記さらなるカレンダー処理領域を通して誘導されるときに、前記ストリップ上の前記電極の位置に一致する中央領域と、前記ストリップの前記側縁領域に一致する側方領域(25)とを有し;前記カレンダー処理ローラ(10)の少なくとも1つの前記中央領域が、前記カレンダー処理ローラ(10)が前記ストリップの前記側縁領域を側縁領域に沿って押圧するが前記電極を押圧しないようにキャビティ(26)として提供され、前記カレンダー処理ローラ(10)を前記ストリップの前記縁部領域に押し付けることによって前記ストリップの前記縁部領域から余分な電解質を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、前記電極をエンドレスストリップとしてではなく断片として提供することを含み、前記電極を前記ストリップ上に位置付けることが、前記ストリップの長手方向において前記電極間に間隔を提供することを意味し、前記カレンダー処理ローラ(10)の少なくとも1つが、前記側方領域(25)および前記キャビティ(26)に加えて、一方の側方領域(25)から反対側の側方領域(25)に延びるクロスバー(24)を有し、前記キャビティ(26)を有する前記少なくとも1つのカレンダー処理ローラ(10)の周長が、前記ストリップへの前記クロスバー(24)の押し付けが前記間隔と同期するように、1つの電極から次の電極までの周期的長さに等しく、前記方法が、前記電極間の間隔から余分な電解質を除去するために前記カレンダー処理ローラ(10)を通る前記ストリップの搬送中に前記ストリップ上の電極間の間隔に前記クロスバー(24)を押し付けることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が前記ストリップの両側に電極を取り付けることを含み、前記カレンダー処理ローラ(10)の両方が、前記キャビティ(26)および上昇した側方領域(25)を備えている、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記ラミネート工程で前記電極を前記膜ストリップ上に結合するためにバインダーを使用することを含み、前記バインダーはポリマーであり、ガラス転移温度を有し、前記方法は、前記ラミネート工程の温度を、前記ガラス転移温度より高いが前記電解質中に気泡が生じる温度より低い温度に調整することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電解質がオルトリン酸であり、前記ラミネート温度が150℃未満である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記バインダーがPTFEであり、前記ラミネート温度が110℃超である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記電極がロール材料として提供され、前記電極を前記膜材料のストリップ上に位置決めする際に、前記電極をエンドレスストリップとしてではなく、断片として提供するために連続プロセスで断片に切断され、前記電極断片が真空ローラ(6)上に真空で保持されて前記膜ストリップに搬送され、前記真空ローラ(6)から前記ストリップ上に位置決めされる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記電極が取り付けられた前記膜ストリップが、別個のMEA断片を提供するために切断され、そのようなMEA断片の複数が、スタック用のエンドプレートを含む燃料電池スタックの自動製造のためにバイポーラプレート間に自動的に挿入される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記燃料電池スタック内の前記燃料電池を高温プロトン交換膜(HT-PEM)燃料電池として提供することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ドープされた膜をHPOドープPBI膜として提供することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
膜-電極アセンブリ(MEA)を製造するための製造機械であって、
- 液体電解質でドープされた膜材料のエンドレスストリップを供給するための第1のローラ(1)を備えた膜供給ステーション、
- 一対の対向する電極供給ローラ(4)を有する電極供給ステーションを備え、前記製造機械は、前記膜供給ステーションから前記電極供給ステーションを通して前記電極供給ローラ(4)間に前記ストリップを搬送するための第1のコンベアを備え、前記電極供給ステーションが、前記ストリップ上の連続する電極間に所定の長手方向間隔をおいて前記膜ストリップ上に電極を配置するように構成され、前記製造機械はさらに、
- ラミネート工程において前記電極を前記ストリップに押し付けるためのラミネートローラ(9)を備えるラミネートステーション、
- 前記電極供給ステーションから前記ラミネートステーションへ前記ストリップを搬送するための第2のコンベア、
- 対向するカレンダー処理ローラ(10)を有するカレンダー処理ステーションであって、前記カレンダー処理ローラは、前記ストリップに取り付けられたときの前記電極の位置に一致する中央領域と、前記電極を有する前記ストリップが前記カレンダー処理領域を通して誘導されるときに前記ストリップの側縁領域に一致する側方領域(25)とを有し、前記カレンダー処理ローラ(10)の少なくとも1つの前記中央領域が、前記カレンダー処理ローラ(10)の少なくとも1つが前記ストリップの側縁領域に沿って押圧するが前記電極を押圧しないように、前記電極付きストリップの厚さの少なくとも半分の深さを有するキャビティ(26)として提供される、カレンダー処理ステーション、
を備える製造機械。
【請求項13】
前記ラミネートローラ(9)を100℃を超える温度に加熱するように構成されている、請求項12に記載の機械。
【請求項14】
前記カレンダー処理ローラ(10)の少なくとも1つが、前記側方領域(25)及び前記キャビティ(26)に加えて、一方の側方領域から反対側のサイト領域へ延びるクロスバー(24)を有し、前記クロスバー(24)の厚さは前記ストリップに取り付けられたときの前記電極間の間隔に等しく、前記キャビティ(26)を有する前記少なくとも1つのカレンダー処理ローラ(10)の周長が、前記機械の動作中に前記ストリップが前記カレンダー処理ステーションを通して搬送されるときに、前記ストリップ上の連続する電極間の所定の長手方向の間隔に同期して前記クロスバー(24)を前記ストリップに押し付けるために、1つの電極から次の電極までの周期的長さに等しい、請求項12または13に記載の機械。
【請求項15】
前記機械が、前記ストリップを別個のMEAに切断するためのMEA切断ステーションを備え、前記機械がさらに、バイポーラプレート(BPP)を自動的に供給するためのBPP供給ステーションを備え、前記機械が、スタック用のエンドプレートを提供することによって燃料電池スタックを自動的に組み立てるように、および、前記別個のMEAを複数のその後スタックされるバイポーラプレートの間に自動的に挿入するように構成されている、請求項14に記載の機械。
【請求項16】
前記電極供給ステーションの前記電極供給ローラ(4)が、前記電極を前記ストリップ上に堆積させるまで、前記電極供給ローラ(4)に対して前記電極を固定するための真空ローラである、請求項12~15のいずれか一項に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜-電極アセンブリを製造する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の重要な部は、2つの電極とその間のプロトン交換膜(PEM)とを含む膜-電極アセンブリ(MEA)である。一般に、電極は、ガス拡散層、マイクロポーラス層および触媒層(それぞれ、GDL、MPLおよびCL)の3つの層を有する。低温PEM燃料電池では、高分子膜(一般的にはナフィオン)は水で飽和している。一般に、膜の表面に直接電極の触媒層を塗布する場合には、このことは問題にならない。MPLを含むまたは含まないGDLのシートは、触媒コーティングされた膜のロールにラミネートされる。MEAを製造するための先行技術のプロセスは、US6074692、(参考文献[1])に開示されており、これは他の先行技術についても考察している。
【0003】
低温PEM燃料電池とは異なり、高温PEM燃料電池は、強い電解質、例えばオルトリン酸ドープポリベンズイミダゾール(HPO-PBI)で濡れた高分子膜を使用する。この酸ドープ膜は、ナフィオン(商標)ベースの膜の使用が不可能な高温、例えば120~180℃でも高い電気伝導性を発揮する(参考文献[2])。膜のドーピングのための電解質液体としてのリン酸の使用は、EP1230705 B1およびUS2010/0279197(参考文献[26]-[27])にも開示されている。
【0004】
水飽和ナフィオン膜とは異なり、膜内部にオルトリン酸が存在するため、PBI膜の表面に触媒をコーティングすることは難しく、コーティングされたCLは、溶媒、例えばイソ-プロパノールやN-メチル-2-ピロリドンを取り除くために厳格な乾燥を要する(参考文献[3]も参照)。一方、CLを乾燥したドープされていないPBI膜にコーティングすると、酸を含浸させる必要があるため、別の困難が生じる(参考文献[4]を参照)。いくつかの研究グループは、すでにドープされた膜の上に乾燥したCLを転写し、その後、膜を基板から剥がし、CLで覆われた膜だけを残すデカール法を適用している(参考文献[5-10]を参照)。しかしながら、このような方法は、高速で大規模な生産には有用ではない。
【0005】
先行技術の方法は、様々な改善を提供するが、大規模生産のための方法およびシステムに対するニーズが存在する。電極とHPO-PBI膜の分離ロール・ツー・ロール生産を実施する試みがあったことは言及されるべきである(参考文献[11、12]を参照)。しかしながら、これらの参考文献で議論されているように、不均一性などの欠点を克服するために、方法はまだ改良される必要がある。
【0006】
他の試みは、US8399145、US2006/0014065、US6998149(参考文献[13-15])に開示されており、側縁で保護締め付けとガスケットが使用されている。高分子電解質膜の連続ラミネートプロセスもUS2018/0290441およびUS2007/0116999(参考文献[24]-[25])で開示されている。しかしながら、そのようなアプローチも、ロール・ツー・ロール製造プロセスにおいて方法が比較的複雑になることによる欠点を有する。
【0007】
US2007/0289707 A1、(参考文献[23])には、アイオノマー膜の連続ストリップを提供するステップと、膜ストリップとの組立てのために電極を提供し、電極を液体ドープ膜ストリップに取り付けるステップと、カレンダー処理ラミネートステーションにおいて、対向して配置された2つのラミネートローラ間でストリップをガイドしてストリップに電極をラミネートし、2つのラミネートローラによってラミネートのために電極及びストリップを圧縮するステップとを含む膜-電極アセンブリの製造方法について記載している。US2007/0289707 A1のラミネートローラは、電極とストリップの全表面積を押さえる連続した同一高さ表面を有する。したがって、圧縮中にストリップの縁部領域から余分な電解質が除去されることはない。
【0008】
したがって、さらなる改良の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、当該技術の改良を提供することである。特に、MEAの製造のための改良された方法およびシステムを提供することが目的である。特に、製造が単純で、容易に自動化され、高速で連続的なプロセスである、MEAの大規模製造のための方法およびシステムを提供することが目的である。
【0010】
膜-電極アセンブリ(MEA)を製造する方法が本明細書に記載されており、その方法では液体電解質でドープされた膜材料の準エンドレスストリップが提供され、その上に電極が取り付けられる。ドープされた膜ストリップと電極との組み合わせは、ストリップを2つの対向配置されたラミネートローラの間に案内し、2つのラミネートローラによるラミネートのために電極をストリップとともに圧縮することによって、電極がカレンダー処理ラミネートステーションにおいてストリップ上に後でラミネートされる。
【0011】
本明細書において、「準エンドレス」という用語は、ロールからの長いストリップに対して使用され、具体的なプロセスの間、それは終了しないように見えるが、最終的にロールはプロセスで使い切られる。本技術分野では、「準エンドレス」の代わりに「エンドレス」という用語が使われることもある。
【0012】
製造を行うために、膜-電極アセンブリ(MEA)を製造するための機械が提供される。具体的な実施形態では、機械は、液体電解質でドープされた膜材料のエンドレスストリップを供給するための第1のローラを備えた膜供給ステーションを備える。
【0013】
さらに、機械は一対の対向する電極供給ローラを備えた電極供給ステーションを備え、供給ローラは、電極を膜ストリップの片側(通常は両側)に配置する。例えば、電極供給ステーションは、電極を膜ストリップ上に、典型的には一度に1つまたは2つ、ストリップ上の連続する電極間に所定の長手方向間隔を空けて配置するように構成されている。
【0014】
膜供給ステーションから電極供給ステーションを介して電極供給ローラ間にストリップを搬送するために、第1のコンベアが使用される。
【0015】
いくつかの具体的な実施形態では、電極供給ステーションの電極供給ローラは、電極が膜ストリップ上に堆積されるまで、吸引によって電極供給ローラに対して電極を固定するための真空ローラである。このようなローラは、電極がエンドレスストリップとして提供されるのではなく、例えば、エンドレスストリップから燃料電池のMEAの最終サイズに一致する断片に切断した後にシートとして提供される場合に有用である。
【0016】
電極を膜ストリップに配置した後、膜と電極を備えたストリップは、コンベア上でラミネートステーションに搬送され、ラミネートステーションには、任意選択的に室温より高い温度、例えば100℃より高い温度で、電極をラミネート工程でストリップに押し付けるためのラミネートローラが備わっている。
【0017】
任意選択的に、ラミネート工程で電極を膜ストリップに結合するためにバインダーが使用される。実用的な実施形態では、バインダーはポリマーであり、ガラス転移温度を有し、ラミネート工程の温度は、ガラス転移温度より高い温度に調整される。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の場合、ラミネート工程での温度は110℃超であるべきである。
【0018】
しかしながら、製造時の温度は、ドーパントにとって不利な温度を超えるべきでない。例えば、ドーパントがHPOの場合、電解質中の気泡を避けるために、温度は150℃未満であるべきである。このようなドーパントは、任意選択的に高温PEM燃料電池に使用するためのポリベンズイミダゾール(PBI)膜に使用される。
【0019】
製造方法に関するいくつかの具体的な実施形態では、ストリップは第1の幅を有し、電極は、第1の幅よりも小さい第2の幅を有する。電極が液体ドープ膜ストリップと組み合わされ、それに取り付けられるとき、電極は、ストリップの2つの反対側の側縁領域の間に配置される。これらの縁部領域は、電極によって覆われていない。
【0020】
ラミネートステーションの後、ストリップの縁部から離れた電極を有する膜ストリップは、さらにカレンダー処理ステーションを介して搬送され、そこでは対向配置されたカレンダー処理ローラがストリップの縁部領域を押すが電極を押さない、または少なくとも縁部領域よりも弱く電極を押す。そうすることで、ドーピング液は縁部領域から押し出されるが、電極の下の領域からは押し出されない。これは、電極の下で電解質の正しいドーピングを提供する一方で、電解質が必要とされない場所、すなわちストリップの縁部領域で電解質の存在を防止する点で重要である。このことは、電解質が必要な場所にのみ提供され、燃料電池の早期誤動作につながらないという利点を有する。
【0021】
具体的な実施形態では、さらなるカレンダー処理ステーションは、互いに対向して位置し、平行な回転軸で互いに向かい合う2つのカレンダー処理ローラを備え、ここでカレンダー処理ローラは、ストリップに取り付けられたときの電極の位置に一致する中央領域と、電極付きのストリップがカレンダー処理領域を通して案内されるときのストリップの側縁領域に一致する側方領域とを有する。カレンダー処理ローラの少なくとも1つの中央領域は、カレンダー処理ローラがストリップの側縁領域に沿って押すが電極を押さない、又は少なくとも側方領域よりも電極をはるかに弱く押すように、任意選択に電極付きストリップの厚さの少なくとも半分の深さを有するキャビティとして提供される。典型的には、ストリップの両側に1つのローラを有する両方のカレンダー処理ローラは、そのようなキャビティを備えている。
【0022】
電極がシートとして提供される場合、ストリップ上への断片としての電極の位置決めは、ストリップの長手方向における電極間の空間の提供を意味し、以下の実施形態は有用である。例えば、カレンダー処理ローラの少なくとも一方は、側方領域及びキャビティに加えて、一方の側方領域から反対側のサイト領域へ延びるクロスバーからを備える。キャビティを有する少なくとも1つのカレンダー処理ローラの周長が、1つの電極から次の電極までの周期的長さに等しいとき、クロスバーは、カレンダー処理ステーションを通るストリップの搬送中に電極間の空間の位置でストリップを押圧する。カレンダー処理ステーションを通るストリップの動きとカレンダー処理ローラの寸法及び速度は、ローラの回転がバーを実際に電極間に押し込むことにつながるように、ストリップの動きと同期するように寸法決めされていることが理解される。
【0023】
本発明のいくつかの態様では、燃料電池スタックの組立ても自動化される。例えば、ラミネートステーションとさらなるカレンダー処理ステーションの後、MEAストリップは、ストリップを別個のMEAに切断するための切断ステーションに搬送される。任意選択的に、機械は、バイポーラプレート(BPP)を自動的に供給するためのバイポーラプレート供給ステーションをさらに備える。機械は、燃料電池スタックのためのエンドプレートを提供することによって、燃料電池スタックを自動的に組み立てるように、および別個のMEAを、複数のその後スタックされるバイポーラプレートの間に自動的に挿入するように、さらに構成される。
【0024】
上記のように、本発明は、液体電解質でドープされた膜材料の準エンドレスストリップが電極でラミネートされ、ストリップの縁部領域および電極間の間隔が押圧されて、余分な電解質が排出される、膜-電極アセンブリ(MEA)を製造する方法を提供する。
【0025】
この製造技術は、発電またはエネルギー貯蔵のための他の装置の膜構成要素にも、また、バイポーラ設計の変換装置、例えば電池、電気二重層コンデンサ、電解槽、および一般に燃料電池にも適用できることに留意されたい。しかしながら、高温PEM燃料電池のMEAに使用した場合、特に興味深く、利点がある。
【0026】
本発明を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ロール・ツー・ロールMEA製造による燃料電池スタック組立プロセスのスキームである。
図2】異なる温度でカレンダー処理によって製造されたMEAの(a)分極及び(b)電力の曲線を示す図である。
図3】膜の酸ドーピングのための(a)遅いおよび(b)速いプロセスを説明する、HPO-PBI系の吸着等温線についての図である。
図4】異なる温度および回転速度でカレンダー処理ラミネートステーションを通してカレンダー処理した後のMEAにおけるオルトリン酸の再分布に関する測定値を示す図面である。
図5】(a)膜のみが存在し電極が存在しない領域を圧縮するための第2のカレンダー処理ステーションにおけるローラの設計、および(b)ラミネートステーション後のMEAロールの一部の図、を示す図面である。
図6】ラミネートステーションおよび第2のカレンダー処理ステーションを介したカレンダー処理後のMEAにおけるオルトリン酸の再分布の測定値を示す図面である。
図7】(a)PIガスケットを使用しないMEA及び(b)PIガスケットを使用したMEAについての可視電極面積及び活性面積の違いを示す図面である。
図8】電流が(a)可視電極面積によって、(b)活性面積によって正規化される、PIガスケットを使用したおよび使用しないMEAの分極曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、縁部領域に沿って保護ガスケットを持たない3層MEAの高速ロール・ツー・ロール製造を実現するための例を示す。これは、参考文献[13-15]に開示されている手順とは異なる。また、このMEAに基づく燃料電池および燃料電池スタックの可能性についても記載する。
【0029】
図1は、ロール・ツー・ロール・MEA製造を含む燃料電池スタック組み立てプロセスのスキームを示す。オルトリン酸ドープポリベンズイミダゾール(HPO-PBI)準エンドレス膜フィルムストリップが、膜フィルムロール1上に設けられ、その支持フィルムから巻き戻され、この支持フィルムは今度は支持フィルムローラ3上に巻かれる。支持フィルムは、潜在的にポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。残りのドープPBI膜フィルムストリップは、ガイドローラ2上に案内され、2つの真空ローラ6の間に移動される。
【0030】
連続プロセスの一部として、電極が電極ロール4から巻き戻され、場合により存在する保護フィルム、例えばセルロースフィルムはローラ5上に除去される。巻き戻された電極はナイフ7で正しいサイズに切断され、真空ローラ6上の正しい位置に真空で保持される。PBIフィルムが真空ローラ6の間に移動されるため、真空ローラ6によって保持され膜ストリップに搬送される切断された電極は、PBI膜ストリップ表面の両側に所定の位置で配置される。
【0031】
これらのステップの後、ストリップは、ストリップの両側に連続した電極のシートを備え、電極を載せたストリップは、さらに、ラミネートステーションである第1のカレンダー処理ステーションのラミネートローラ9を通過するまでガイドローラ8によって案内され、ラミネートステーションで電極は膜フィルムストリップの表面に圧力下にラミネートされる。ラミネートローラ9をオルトリン酸から洗浄するためにクリーニングローラ11が使用される。ラミネートローラ9は、室温に保つことができる、または、CLとPEMとの間の接着を強化するために、任意選択的に高い温度まで、例えば100℃超まで加熱することができる。
【0032】
例えば、電極バインダーとしてPTFEを使用する場合、110~130℃でカレンダー処理ラミネート工程を実施することが有利である。PTFEはこれらの温度で結晶形態から硬い非晶質状態に変化するからである。参考文献[16]を参照されたい。一方、150℃より高い温度は、オルトリン酸の蒸発やその中の水泡の形成のリスクが高まるため、望ましくない(参考文献[17]参照)。したがって、表1のような温度範囲は、MEA製造プロセスにとって特に有用である。表1の温度は、上記のデータおよび他の一般的に使用されるポリマーバインダーの上限ガラス転移温度のデータに基づいている(参考文献[18、19]を参照)。
【表1】
【0033】
例えば、PTFEバインダーを用いてHPO-PBI膜と電極から作られたMEAでは、125±5℃の温度範囲が、室温、すなわち25±5℃で製造したMEAよりも優れた電気化学的性能をもたらす。
【0034】
特に、MEAのラミネート工程に高温を使用することで、最大25%の出力密度の増加が得られる。これは図2に示されており、図は異なる温度でラミネートカレンダー処理を介して製造されたMEAの(a)分極および(b)出力の図解曲線である。温度が高いほど性能が向上することがはっきりとわかる。
【0035】
MEAの製造において、ラミネート時の温度以外に重要なパラメータは、カレンダー処理機械の回転速度である。それというのも、この速度はMEAが圧力を受ける時間を決定するからである。MEAを加圧する時間は、MEA内のオルトリン酸の再分布に影響を及ぼす。このような再分布は、酸の不均質な分布につながる場合望ましくない。この影響により速度に下限が設定される。相当の再分布が生じるほど低速であってはならないからである。
【0036】
一方、次のような効果のため、速度は高すぎてもいけない。図3は、HPO-PBI系の吸着等温線図であり、膜の(a)遅い酸ドーピングプロセスと(b)速い酸ドーピングプロセスを記載している。ドーピングプロセスが比較的低温で遅い場合、結果として大部分が単分子吸着機構であるのに対し、高温での速いドーピングプロセスは、単分子吸着から多分子吸着に変化し、ポリマー鎖間の距離が長くなるPBI膜の酸過剰ドーピングにつながることにより特徴付けられる。これは膜構造がフィルム状からゲル状に変化し、この際PBIはHPOに部分的に溶解していることを意味する。ゲル化は、膜の強度と弾性を失わせ、燃料電池スタック全体の寿命に悪影響を及ぼす可能性があるため、非常に好ましくない。したがって、この影響により処理速度に上限が設定される。
【0037】
ゲル化につながるため、速度と温度は高すぎてはいけないし、再分布や不均一につながるため、速度と温度は低すぎてもいけない。したがって、このプロセスにとって適切な速度の領域を実験的に見出す必要がある。しかしながら、速度を正しく調整するだけでなく、ラミネート工程に関連する温度も正しく選択しなければならない。これは複雑な作業である。
【0038】
再分布に対する速度の依存性を説明するために、厚さ80μmのPBI膜フィルム上のオルトリン酸の含有量をmg/cm単位で測定した図4を参照する。PBI膜の4つの片が示されており、それぞれPBIフィルム膜上の電極を示す灰色の中央領域を有し、これは白色の縁領域で囲まれている。測定は、角および角の中間を含むPBI膜の示される片上の異なる位置と、電極上の3カ所、すなわち電極の両端およびそれらの中間で行われた。
【0039】
図4に示した電極付き膜の4片のデータは、4つの異なる製造方法に関連する、すなわち:
25℃、20rpm、
125℃、20rpm、
25℃、2rpm、および
125℃、2rpm。
【0040】
図示のように、4片の膜のうち一番上の膜は、温度25℃、カレンダー処理ローラの相対速度20rpmでラミネートした。この片の角は、下縁領域の9.7から左下角の17.5、右縁の16.3までの酸含量を有することがわかる。これは、高速であるにもかかわらず温度が低いため、激しい酸の再分配に起因して、ほぼ2倍の望ましくない変動である。
【0041】
ここで、PBI膜のオルソリン酸の有用な最大レベルの一例は、80μm厚あたり14.5mg/cmであることに留意すべきである。しかしながら、このレベルは、膜に使用されるPBIのタイプ、例えば、ポリ[2,5-ベンズイミダゾール](ABPBI)、ポリ[2,2’-m-(フェニレン)-5,5’-ビベンズイミダゾール](m-PBI)またはポリ[2,2’-p-(フェニレン)-5,5’-ビベンズイミダゾール](p-PBI)、ポリマーのモル質量、およびその中の添加物の存在、並びに、それら膜の異なる吸着能力に起因して他の要因に強く依存する。文献[20-22]も参照されたい。
【0042】
低温で作製された片と高温で作製された片を比較すると、図4から、低温で作製された片はそれぞれ、最大目標値14.5よりも高い酸レベルの産出に関係する箇所が2箇所あるのに対し、高温で作製された片はそのような箇所のうちの1箇所だけが最大設定レベルを超えていることが確認された。したがって、図4のデータから、縁部領域でより少ない臨界点が観察されるので、より高い温度がMEAのラミネートに関して好ましいと結論付けることができる。特に、2rpmおよび20rpmの両速度について、25℃で2箇所の臨界点が存在し、125℃では1箇所のみの臨界点が存在する。
【0043】
カレンダー処理機械の回転数を下げると、酸の再分布が起こり得ることが予想された。これは25℃でも観察された。しかしながら、125℃でプロセスを行った場合、再分布が実質的により少ない程度で観察されたのは意外だった。しかしながら、このような挙動は、吸着等温線によって説明することができる(図3参照)。ドーピングプロセスは125℃で急速に行われ、すなわち酸がPBI膜の内部に分布するのに十分な時間があり、膜をより均一に再ドープするのに対し、室温では酸は主に欠陥のある場所、例えば亀裂や孔を満たすと結論づけることができる。圧縮時間の増加により、25℃で再ドーププロセスを開始することができるが、より高温でのラミネートが望ましい。
【0044】
これらの実験から、125℃でのプロセスは室温よりも確固たるものであると結論付けることができる。
【0045】
活性領域内のMEAの酸含量は、異なるカレンダー処理パラメータに関係なく、比較的安定している、すなわち10~11mg/cmであることに注目すべきである。しかしながら、縁部領域では大きなばらつきが見られるため、さらなる改良が必要である。
【0046】
特に、膜ストリップの縁部における危険なまでに高い酸含有量を排除することは、それらが長寿命を有するべきである場合、内部ガスケットフリーMEAの作製において重要な仕事である。この問題は、図1を参照すると、カレンダー処理ローラ10を有する第2のカレンダー処理ステーションによって解決された。これらのカレンダー処理ローラ10は、MEAの縁部領域のみを圧縮し、膜から余分なオルトリン酸を絞り出すという点で特別なものである。最適な結果を得るために、図5に示すようなカレンダー処理ロールがこの目的のために特別に設計された。
【0047】
図5aは、膜のみが存在し電極が存在しない縁部領域のエリアを圧縮するための、そのような第2のカレンダー処理ステーションのローラ10の設計を示す。図5bは、上下に灰色のエリアとして示されている電極を有する対応するPBI膜を示す。図5aのローラ10は、カレンダー処理工程中に電極を収容するキャビティ/くぼみ26を有し、ローラ10の縁部領域25は、PBIフィルムの対応する縁部領域を押圧するために、キャビティ26に対して相対的に上昇している。さらに、ローラ10は、電極エリアの間でのみ膜フィルムを押圧するが、電極エリアを押圧しない横方向バー24を有する。
【0048】
その設計で最も重要な要素は、すでに膜にラミネートされた電極のためのキャビティ/くぼみである。このようなキャビティ/くぼみは、電極を過圧縮から保護する。有利には、その深さ23Tは、MEAがラミネートステーション9を通過した後のMEAの全厚さの半分以上である。
【0049】
図1のクリーニングローラ12は、カレンダー処理ローラ10の表面をクリーニングするために使用されることに注目されたい。
【0050】
それぞれのローラ9及び10が125℃及び20rpmであるこれらの2つのカレンダー処理ステーションを通過した後の最終的な酸分布は、図4の測定点と同様に図6に提示される。図6は、ラミネートローラ9を有するラミネートステーション及びカレンダー処理ローラ10を有する第2のカレンダー処理ステーションの両方を介したそのカレンダー処理後のMEA中のオルトリン酸の再分布の測定値を示している。図6から分かるように、オルトリン酸はMEAの活性領域に均一に分布されている-その平均含有量は9.3mg/cmであり、偏差は0.1mg/cm以下である。MEAの周囲にはオーバードープ箇所はなく、HPOの量も臨界値からは程遠い。
【0051】
図1を参照すると、MEAのロールはナイフ13によって切断され、単一のMEA14を有するシートが形成され、これらはコンベアベルト15上で組立テーブル16に移動される。組立テーブル16は、高さが調整可能である。燃料電池スタック用のエンドプレートは、マガジン17から、ガスケット付きバイポーラプレートはマガジン18から供給される。さらに、ボルト19が対応するコンベアによって届けられる。
【0052】
燃料電池スタックの組み立ては、バイポーラプレート(BPP)に挟まれたMEAを使用して、以下のステップバイステップ手順に従って行われる。例えば、次のような順序:
(I)エンドプレート
(II)バイポーラプレート(BPP)
(III)フレームによって切断されたMEA14
(IV)BPP
に従い、必要な量のMEAとBPPに達するまでステップIIIとIVを繰り返し、その後、スタックを仕上げるために別のエンドプレートが提供される。
【0053】
プレート20は、ボルトとナットが締め付けられると、スタックに正しい圧縮を生じさせる。このように組み立てられた燃料電池スタック21は、さらにコンベアベルト15によって、カーゴロボット22に設置されたキャリアに搬送され、さらに保管される。
【0054】
結論として、MEAおよびMEAに基づく燃料電池スタックを製造する提案された自動化プロセスは、高い生産性および低いコストを達成する連続性および速い速度などの複数の利点を有する。MEA中のオルトリン酸の均一な分布は、臨界レベルを回避するために適切に制御可能である。2つのカレンダー処理ステーションが使用され、一方はラミネート用であり、もう一方はMEAの所定の部分を局所的に圧縮することによる縁部および電極間の酸レベルの制御用である。これにより、MEAの周囲に保護ガスケットを使用しなくても、PBI膜は高温の濃縮HPOによる溶解から安全な状態に維持される。図示されたMEAは、2つの電極の間に膜がある3層サンドイッチ構造であり、これは、参考文献[14]に記載された先行技術の5層構造と比較して有利である。
【0055】
さらに、保護ポリイミド(PI)ガスケットを使用したMEAと使用していないMEAの分極曲線を比較すると、実際の活性領域について値を補正すると、それらの間にほとんど差がないことが見出された。このことを調べるために、比較検討を行った。以下、図7図8を参照して、PIガスケットを使用した膜と使用していない膜を比較しながら結果を示し、説明する。
【0056】
実際の電極面積は、図7の両MEAで同じ、すなわちA×Bcmである。しかしながら、PIガスケットを使用しない3層MEAは、活性面積に等しい可視電極面積、すなわちA×Bを有するのに対し、PIガスケットを使用した5層MEAはそうではない。後者の場合、まず、外周の電極の2mmがPIガスケットで覆われているため、PIガスケットを使用した5層MEAは可視電極面積がより小さいことが観察される。PIガスケットの下の各側の電極の約1mmは不活性ではないが、それでも5層MEAの活性面積は(A-0.2)×(B-0.2)cmということになる。これは、ガスケットを使用した先行技術の5層MEAは、膜と電極の全体寸法がそれ以外の点で同じ場合、より小さい活性面積を有することを意味する。
【0057】
観察されたのは以下の通りである。PIガスケットを使用した5層構造は、面積当たりわずかにより高い性能を有するが、これは、3層MEAにおいて、わずかにより大きい総活性領域によって平衡化された。より詳細には、図8aを参照されたい。これは、PIガスケットを使用したMEAおよびPIガスケットを使用しないMEAの分極曲線を示し、測定電流は可視電極領域(a)に対して正規化される。PIガスケットを使用したMEAは、実験的にわずかにより高い性能を有することが観察される。しかしながら、図7に関連して説明したように、結果を実際の活性面積に正規化すると、既に上述したように、差は見られなかった。したがって、本発明の方法は、先行技術と同様に良好な結果を提供するが、ガスケットが回避されるはるかに簡単な手順で提供することが証明される。
【0058】
要約すると、本発明は、特に高温PEM燃料電池のための、既にドープされた膜を用いたMEA製造の連続ロール・ツー・ロール・プロセスを提供する。縁部領域沿いおよび電極間の局所的な圧縮のみを行う3層MEAロールの特定の二重カレンダー処理は、電極を不利な圧力から保護し、酸含有量の不要な再分布とオーバーシュートを回避する。概して、これによりMEA内のドーパント含有量とその分布の制御を改善することができる。
【0059】
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[27] US 2010/0279197 by Kim et al (2019)
【図
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜-電極アセンブリ(MEA)を製造する方法であって、前記方法は、液体電解質でドープされた膜材料の準エンドレスストリップを提供することと、膜ストリップと組み立てための電極を提供して、前記電極を液体ドープ膜ストリップに取り付けること、および、前記ストリップを2つの対向配置されたラミネートローラ(9)の間に誘導して前記2つのラミネートローラ(9)によるラミネートのために前記電極と前記ストリップを圧縮することによって、カレンダー処理ラミネートステーションにおいて前記電極を前記ストリップにラミネートすることを備え、前記ストリップは第1の幅を有し、前記電極は、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し、前記電極の前記液体ドープ膜ストリップとの結合は、前記電極を前記ストリップの2つの反対側の側縁領域の間に位置付けることを意味し、前記側縁領域は前記電極によって覆われず、前記方法は、前記ラミネートステーションの後に、前記ストリップをさらなるカレンダー処理ステーションを通して移動させることをさらに備え、前記さらなるカレンダー処理ステーションの対向配置されたカレンダー処理ローラ(10)は、前記電極を有するストリップがさらなるカレンダー処理領域を通して誘導されるときに、前記ストリップ上の前記電極の位置に一致する中央領域、および、前記ストリップの側縁領域に一致する側方領域(25)を有し、前記カレンダー処理ローラ(10)のうち少なくとも1つの中央領域は、前記カレンダー処理ローラ(10)が前記ストリップの側縁領域を前記側縁領域に沿って押圧するが前記電極を押圧しないようにキャビティ(26)として提供され、前記カレンダー処理ローラ(10)を前記ストリップの縁部領域に押し付けることによって前記ストリップの縁部領域から余分な電解質を除去する、方法。
【請求項2】
前記方法、前記電極をエンドレスストリップとしてではなく断片として提供することを備え、前記電極前記ストリップ上への位置付けは、前記ストリップの長手方向において前記電極間での間隔供を意味し、前記カレンダー処理ローラ(10)の少なくとも1つ、前記側方領域(25)および前記キャビティ(26)に加えて、一方の側方領域(25)から反対側の側方領域(25)に延びるクロスバー(24)を有し、前記キャビティ(26)との少なくとも1つのカレンダー処理ローラ(10)の周長、前記ストリップへの前記クロスバー(24)の押し付けが前記間隔と同期されるように、1つの電極から次の電極までの周期的長さに等しく、前記方法、前記電極間の間隔から余分な電解質を除去するために前記カレンダー処理ローラ(10)を通るストリップの搬送中に前記ストリップ上の電極間の間隔に前記クロスバー(24)を押し付けることを備える、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記ストリップの両側に電極を取り付けることを備え、前記カレンダー処理ローラ(10)の両方、前記キャビティ(26)および上昇した側方領域(25)を提供される、請求項またはに記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、ラミネート工程で前記電極を前記膜ストリップ上に結合するためにバインダーを使用することを備え、前記バインダーはポリマーでありかつガラス転移温度を有し、前記方法は、前記ラミネート工程のための温度を、前記ガラス転移温度より高いが前記電解質中に気泡生じさせる温度より低い温度に調整することを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記電解質オルトリン酸であり、前記ラミネート温度150℃未満である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記バインダーPTFEであり、前記ラミネート温度110℃超である、請求項またはに記載の方法。
【請求項7】
前記電極は、ロール材料として提供され、かつ、前記電極を前記膜材料のストリップ上に位置決めするときに、前記電極をエンドレスストリップとしてではなく、断片として提供するために連続プロセスで断片に切断され、その電極断片は、真空ローラ(6)上に真空によって保持されて前記膜ストリップに搬送され、前記真空ローラ(6)から前記ストリップ上に位置決めされる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
り付けられた電極を有する膜ストリップ、別個のMEA断片を提供するために切断され、複数のそのようなMEA断片、スタック用のエンドプレートを含む燃料電池スタックの自動製造のためにバイポーラプレート間に自動的に挿入される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記燃料電池スタック内の燃料電池を高温プロトン交換膜(HT-PEM)燃料電池として提供することを備える、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、ドープされた膜をHPOドープPBI膜として提供することを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
膜-電極アセンブリ(MEA)を製造するための製造機械であって、前記機械は、
- 液体電解質でドープされた膜材料のエンドレスストリップを供給するための第1のローラ(1)を有する膜供給ステーション、
- 一対の対向する電極供給ローラ(4)を有する電極供給ステーションであって、前記機械は、前記膜供給ステーションから前記電極供給ステーションを通して前記電極供給ローラ(4)間に前記ストリップを搬送するための第1のコンベアを備え、前記電極供給ステーション、前記ストリップ上の連続する電極間に所定の長手方向間隔をおいて膜ストリップ上に電極を配置するために構成され電極供給ステーション
- ラミネート工程において前記電極を前記ストリップに押し付けるためのラミネートローラ(9)を備えるラミネートステーション、
- 前記電極供給ステーションから前記ラミネートステーションへ前記ストリップを搬送するための第2のコンベア、および、
- 対向するカレンダー処理ローラ(10)を有するカレンダー処理ステーションであって、前記カレンダー処理ローラは、前記ストリップに取り付けられときの前記電極の位置に一致する中央領域、および、前記電極を有するストリップがカレンダー処理領域を通して誘導されるときに前記ストリップの側縁領域に一致する側方領域(25)を有し、前記カレンダー処理ローラ(10)のうち少なくとも1つの中央領域、前記カレンダー処理ローラ(10)のうち少なくとも1つが前記ストリップの側縁領域に沿って押圧するが前記電極を押圧しないように、前記電極を有するストリップの厚さの少なくとも半分の深さを有するキャビティ(26)として提供される、カレンダー処理ステーション、
を備える機械。
【請求項12】
前記機械は、前記ラミネートローラ(9)を100℃を超える温度に加熱するために構成されている、請求項11に記載の機械。
【請求項13】
前記カレンダー処理ローラ(10)のうち少なくとも1つ、前記側方領域(25)及び前記キャビティ(26)に加えて、一方の側方領域から反対側の側方領域へ延びるクロスバー(24)を有し、前記クロスバー(24)の厚さは前記ストリップに取り付けられときの前記電極間の間隔に等しく、前記キャビティ(26)を有する少なくとも1つのカレンダー処理ローラ(10)の周長、前記機械の動作中に前記ストリップが前記カレンダー処理ステーションを通して搬送されるときに、前記ストリップ上の連続する電極間の所定の長手方向の間隔に同期される、前記クロスバー(24)前記ストリップへの押し付けために、1つの電極から次の電極までの周期的長さに等しい、請求項11または12に記載の機械。
【請求項14】
前記機械、前記ストリップを別個のMEAに切断するためのMEA切断ステーションを備え、前記機械、バイポーラプレート(BPP)を自動的に供給するためのBPP供給ステーションをさらに備え、前記機械、スタック用のエンドプレートを提供することによって燃料電池スタックを自動的に組み立てるために、かつ、前記別個のMEAを複数のその後スタックされるバイポーラプレートの間に自動的に挿入するために構成されている、請求項13に記載の機械。
【請求項15】
前記電極供給ステーションの電極供給ローラ(4)、前記電極を前記ストリップ上に堆積させるまで、前記電極供給ローラ(4)に対して前記電極を固定するための真空ローラである、請求項1114のいずれか一項に記載の機械。
【国際調査報告】