(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】CAR-CD123ベクター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221114BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221114BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221114BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221114BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20221114BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221114BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20221114BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221114BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221114BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C07K16/30
C07K14/705
A61K31/7088
A61K35/15 Z
A61K35/17 Z
A61K35/76
A61P35/02
A61P35/00
A61K48/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022505250
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020071053
(87)【国際公開番号】W WO2021014022
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521035716
【氏名又は名称】オスペダーレ ペディアトリコ バンビーノ ジェズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コンチェッタ・クインタレッリ
(72)【発明者】
【氏名】ビアージョ・デ・アンジェリス
(72)【発明者】
【氏名】フランコ・ロカテッリ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085DD62
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C087BB37
4C087BB44
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、N末端からC末端へ、a)ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、b)抗原結合性ドメイン、c)スペーサードメイン、d)膜貫通ドメイン、及びe)細胞質ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)分子に関し、好ましくは、CARはCD123特異的CAR(CD123 CAR)であり、且つ抗原結合性ドメインはモノクローナル抗CD123抗体からのVL及び/又はVHを含み、より好ましくは、抗原結合性ドメインは、CD123に特異的に結合する単鎖可変断片(scFv)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端へ、
a)ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン(ΔCD19)、
f)抗原結合性ドメイン、
g)スペーサードメイン、
h)膜貫通ドメイン、
i)細胞質ドメイン
を含むキメラ抗原受容体(CAR)分子。
【請求項2】
前記CAR分子がCD123特異的CAR(CD123 CAR)分子であり、且つ前記抗原結合性ドメインがモノクローナル抗CD123抗体からのVL(若しくはVK)及び/又はVHを含み、より好ましくは、前記抗原結合性ドメインが、CD123に特異的に結合する単鎖可変断片(scFv)を含む、請求項1に記載のCAR分子。
【請求項3】
前記抗原結合性ドメインが、7G3 VK配列:DFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKR(配列番号4)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、及び/又は7G3 VH配列:EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTV(配列番号5)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、前記VL及び/又はVK及び/又はVHが任意選択的にヒト化されており、前記VL(又はVK)及びVHが好ましくは第1のリンカーにより分離されており、より好ましくは、前記scFvが、配列番号4を含む又はからなるVK及び配列番号5を含む又はからなるVHを含み又はからなり、より好ましくは前記scFvが配列番号30を含む又はからなる、請求項2に記載のCAR分子。
【請求項4】
追跡可能なマーカーを更に含む、請求項1又は2又は3に記載のCAR分子。
【請求項5】
前記追跡可能なマーカーが前記抗原結合性ドメイン及び前記スペーサードメインの間に含まれ、好ましくは前記抗原結合性ドメイン及び前記追跡可能なマーカーが第2のリンカーにより分離されている、請求項4に記載のCAR分子。
【請求項6】
前記追跡可能なマーカーがCD34由来エピトープ(ΔCD34)を含み又はからなり、前記追跡可能なマーカーが、好ましくは、配列番号6(ELPTQGTFSNVSTNVS)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、又はマウスIg CH2CH3領域スペーサー(UNIPROTKB:P01861):ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号33)、若しくは神経成長因子受容体(NGFR):KEACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEANHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWADAECEEIPGRWITRSTPPEGSDSTAPSTQEPEAPPEQDLIASTVAGVVTTVMGSSQPVVTRGTTDN(配列番号34)に由来するペプチドを含む又はからなる、請求項4又は5に記載のCAR分子。
【請求項7】
前記追跡可能なマーカーが配列番号6を含む又はからなる、請求項4、5又は6に記載のCAR分子。
【請求項8】
ヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメインが、配列番号1(MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRF)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、又はその機能性断片、誘導体及びバリアントを含む又はからなる、請求項1から7のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項9】
ヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメインが配列番号1を含む又はからなる、請求項1から8のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項10】
前記スペーサードメインがCD8アルファ鎖若しくはCD28の細胞外領域又はヒンジCH2-CH3若しくはヒンジCH3を含み又はからなり、好ましくは、それが、配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、又は配列番号7のaa.12~42(IASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、及び/又は配列番号32(PAPRPPTPAPT)に対応する配列番号7のaa.1~11に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、又は配列番号7、又はIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号35)、又はESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK、(配列番号33);又はESKYGPPCPSCPGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号36)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、より好ましくは前記スペーサードメインが配列番号7を含む又はからなる、請求項1から9のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項11】
前記膜貫通ドメインが、CD8、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137及びCD15からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含み又はからなり、好ましくはそれがCD8又はCD28の膜貫通ドメインを含み、より好ましくは、前記膜貫通ドメインが、配列番号8(IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT)、又はFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号37)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号8を含む又はからなる、請求項1から10のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項12】
前記細胞質ドメインが、
a)CD8a細胞質部分の領域及び
b)4-1BB共刺激ドメイン(共刺激シグナル伝達ドメインCD137)又はOX40配列又はCD28細胞質配列及び
c)CD3-ゼータ鎖
を含み又はからなり、
好ましくは前記細胞質ドメインが前記CD8a細胞質及び前記4-1BB共刺激ドメインの間のリンカーを含み、
より好ましくは、
- 前記CD8a細胞質部分が、配列番号9(LYCNHRNRRRVCKCPR)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号9を含み、且つ/又は
- 前記共刺激シグナル伝達ドメインCD137(4-1BB)が、配列番号10(KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号10を含み、且つ/又は
- 前記CD28細胞質配列が、RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号38)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、且つ/又は
- 前記OX40配列が、RDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI(配列番号39)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、且つ/又は
- 前記CD3-ゼータ鎖が、配列番号11(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号11を含み、且つ/又は
- 前記CD8a細胞質及び前記共刺激シグナル伝達ドメインCD137(4-1BB)の間の前記リンカーをコードする配列が6ヌクレオチドからなり、好ましくは前記リンカーがVDである、
請求項1から11のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項13】
ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン並びに前記抗原結合性ドメインの間に、
- 切断可能なリンカー、好ましくは2Aペプチド若しくはIRES、及び/又は
- シグナルペプチド
を更に含み、且つ/又は
好ましくは、
- 前記切断可能なリンカーが、配列番号2(RGRGRGSLLTCGDVEENPGP)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはからなる2Aペプチドであり、より好ましくはそれが配列番号2を含み若しくはからなり、若しくはDxExNPGP(配列番号40)のコア配列モチーフを含む2A自己切断性ペプチド、好ましくはAEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号41)、ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号42)、QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号43)若しくはVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号44)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはからなるペプチドであり、且つ/又は
- 前記シグナルペプチドが、配列番号3(MEFGLSWLFLVAILKGVQCSR)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、より好ましくはそれが配列番号3を含み若しくはからなり、若しくはそれが、MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号45)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはからなる、
請求項1から12のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項14】
ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、前記追跡可能なマーカー、前記スペーサードメイン、前記膜貫通ドメイン並びに前記共刺激ドメインのうちの少なくとも1つをコードする配列がコドン最適化されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項15】
N末端からC末端へ、
i)ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、
j)切断可能なリンカー、
k)シグナルペプチド、
l)抗原結合性ドメイン、
m)追跡可能なマーカー、
n)スペーサードメイン、
o)膜貫通ドメイン、
p)細胞質ドメイン
を含む又はからなる、請求項1から14のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項16】
N末端からC末端へ、
a)請求項1及び8~9及び14のいずれか一項に規定のヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、
b)請求項13に規定の切断可能なリンカー、
c)請求項13に規定のシグナルペプチド、
d)請求項2又は3に規定の抗原結合性ドメイン、
e)請求項4~7又は14に規定の追跡可能なマーカー、
f)請求項10又は14に規定のスペーサードメイン、
g)請求項11又は14に規定の膜貫通ドメイン、
h)請求項12又は14に規定の細胞質ドメイン
を含む又はからなる、請求項1から15のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項17】
配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、より好ましくは配列番号12の配列を含む又はからなる、請求項1から16のいずれか一項に記載のCAR分子。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体分子をコードする単離された核酸分子であって、前記単離された核酸分子が好ましくは発現制御配列に作動可能に連結されており、より好ましくは、前記分子が、以下の配列:配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含み、
よりいっそう好ましくは、前記分子が、配列番号29に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、より好ましくは前記分子が配列番号29を含む又はからなる、
単離された核酸分子。
【請求項19】
請求項18に記載の単離された核酸分子を含むベクター、好ましくは発現ベクターであって、より好ましくは前記ベクターが前記CARの発現を制御する外因性プロモーターを含み、好ましくは、前記ベクターが、DNA、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター又は非ウイルスベクターである、ベクター。
【請求項20】
請求項19に記載のベクター若しくは請求項18に記載の単離された核酸分子を含む、又は請求項1から17のいずれか一項に記載のCARを細胞表面に発現する、操作された免疫細胞、好ましくはT細胞、より好ましくはアルファ/ベータ若しくはガンマ/デルタT細胞、若しくはNK細胞若しくはNK-T細胞又はこれらの組合せ、よりいっそう好ましくはヒト起源のこれらの細胞。
【請求項21】
請求項18に記載の単離された核酸分子又は請求項19に記載のベクター又は請求項20に記載の細胞を少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントと共に含む医薬組成物。
【請求項22】
医学的使用のための、好ましくはCD123+がん、より好ましくは急性骨髄性若しくはBリンパ性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)、骨髄異形成症候群若しくは有毛細胞白血病の治療における使用のための、又は造血幹細胞移植の前、後若しくは間の使用のための、請求項1から17のいずれか一項に記載のCAR分子、請求項18に記載の単離された核酸分子、請求項19に記載のベクター、請求項20に記載の細胞又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
医学的使用のための、好ましくはヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインで遺伝子改変された細胞における、好ましくは前記形質導入された細胞上のヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメインに結合する少なくとも1つの剤への前記細胞の曝露後の、死の誘導剤としての使用のための、好ましくは請求項1及び8~9及び14のいずれか一項に規定の、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインであって、前記剤が、好ましくは、抗体、小分子、ポリペプチド、核酸、又はこれらの組合せ、より好ましくはモノクローナル抗体、より好ましくはbite抗体、例えばブリナツモマブを含む抗CD19抗体である、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン。
【請求項24】
遺伝子改変された前記細胞が、ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする核酸並びに1つ又は複数の治療用遺伝子産物をコードする核酸を含む形質導入された細胞、例えば免疫細胞又は幹細胞であり、好ましくは前記治療用遺伝子産物が、操作された受容体であり、より好ましくは、それが、T細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカイン受容体、ホーミング受容体、又はケモカイン受容体であり、好ましくは、前記操作された受容体ががん抗原を標的化する、請求項23に記載の使用のためのヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン。
【請求項25】
ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする前記核酸並びに前記治療用遺伝子産物をコードする前記核酸が同じ核酸分子であり、好ましくは前記核酸分子がベクターであり、より好ましくは、それが、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターであり、好ましくは、ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする前記核酸が前記核酸分子のN末端にある、請求項23に記載の使用のためのヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン。
【請求項26】
前記CARが請求項1から17のいずれか一項に記載のCARである、請求項23又は24に記載の使用のためのヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン。
【請求項27】
ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする核酸並びに1つ又は複数の治療用遺伝子産物をコードする核酸を含む、形質導入された細胞、例えば免疫細胞又は幹細胞を含む組成物であって、好ましくは前記治療用遺伝子産物が、操作された受容体であり、より好ましくは、それが、T細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカイン受容体、ホーミング受容体、又はケモカイン受容体であり、好ましくは、前記操作された受容体ががん抗原を標的化する、組成物。
【請求項28】
ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする前記核酸並びに前記治療用遺伝子産物をコードする前記核酸が同じ核酸分子であり、好ましくは前記核酸分子がベクターであり、より好ましくは、それが、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインを発現する形質導入された細胞の死を誘導する方法であって、有効量の、前記形質導入された細胞上のヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメインに結合する少なくとも1つの剤を提供する工程であって、前記剤が、好ましくは、抗体、小分子、ポリペプチド、核酸、又はこれらの組合せ、より好ましくはモノクローナル抗体、より好ましくは、bite抗体、例えばブリナツモマブを含む抗CD19抗体である、前記工程を含む方法。
【請求項30】
前記細胞が、操作された受容体、好ましくはT細胞受容体又はCARを更に発現し、より好ましくは前記操作された受容体ががん抗原を標的化する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする配列並びに操作された受容体をコードする配列を含むベクター。
【請求項32】
ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする前記ベクターの配列並びに前記操作された受容体をコードする前記ベクターの配列が、切断可能なリンカーにより前記ベクター上で分離されている、請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
前記操作された受容体がCARである、請求項31又は32に記載のベクター。
【請求項34】
ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインが、配列番号1(MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRF)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、又はその機能性断片、誘導体及びバリアントを含み又はからなり、好ましくはヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメインが配列番号1を含む又はからなる、請求項23若しくは24若しくは25若しくは26に記載の使用のためのヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン又は請求項27若しくは28に記載の組成物、又は請求項29若しくは30に記載の方法、又は請求項31~33のいずれか一項に記載のベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD123+腫瘍、例えば急性骨髄性白血病(AML)[1]、Bリンパ性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)[2]、骨髄異形成症候群[3]及び有毛細胞白血病[4]の治療のための新規のキメラ抗原受容体(CAR)-CD123ベクターの生成に関する。
【背景技術】
【0002】
急性骨髄性白血病(AML)は、異常な未熟な芽球の蓄積により特徴付けられる不均質クローン性障害である。白血病生物学の理解における進歩にもかかわらず、標準的な先端的化学療法AML治療は変化がないままである。寛解導入療法とも呼ばれる現行の導入治療は、未熟な芽球の血液及び骨髄をクリアランスし、完全な寛解をもたらすという目標を有する。この治療は通常1週かけて施され、若年成人患者のほぼ70%において初期完全寛解を生じさせることができる。しかしながら、患者の43%は最終的に再発し、18%は最前線導入治療において完全な寛解を達成しない[5]。CARを発現するように遺伝子改変されたT細胞を用いる免疫療法はAMLに対する革新的なアプローチとなる。
【0003】
これまでに、造血幹/前駆細胞(HSPC)の正常な対応物に影響することを回避しながら腫瘍集団を選択的に標的化するために、大きな関心が、AML細胞及び白血病幹細胞(LSC)により優先的に発現される表面分子の同定へと集中してきた[6]。
【0004】
CD123は、インターロイキン-3受容体の膜貫通アルファサブユニット(IL-3Rα)としても公知の360アミノ酸の糖タンパク質である。CD131と共に、CD123は、高親和性のIL-3Rを形成する。IL-3の結合で、IL-3Rは細胞増殖及び生存を促進する[7]。
【0005】
CD123の基礎的な発現は、HSPC、単球、形質細胞様樹状細胞(pDC)と命名される樹状細胞(DC)のサブセット[8]及び内皮細胞[7][9]において低い乃至ごく僅かである。HSPC上の低い発現とは対照的に、AML芽球はCD123を広く過剰発現する[10][11]。更に、AML細胞上のCD123過剰発現は、アポトーシスに対する抵抗性、より高い増殖潜在能力及び予後不良と関連付けられる[11][12][13]。
【0006】
顕著なことに、CD123は、AML芽球によってだけでなく、化学療法薬物耐性における主要なプレーヤーの1つであることが示されているAML LSCの静止集団によっても選択的に過剰発現される[14]。正常HSC及びLSC上のCD123の差次的発現はCD123をAML治療のための魅力的な標的とする。
【0007】
更に、CD123は、MDSについて高リスクの患者においてMDS幹細胞を特定するために使用することができ、CD123陽性集団は正常な造血幹細胞とは生物学的に別個である[3]。
【0008】
CD123を標的化するいくつかの抗体ベースの療法が開発されてきた[15][16][14]。現在までに、CD123標的化療法は安全であることが示されており、造血に対する大きな有害効果は報告されていない。ヒトにおけるそれらの抗白血病活性は依然として研究中である。
【0009】
代替的なAML治療アプローチは、MHC非依存的な方式でT細胞の特異性をCD123へと再方向付けするCARを発現するT細胞を利用する[16]。CAR T細胞は増殖する潜在能力を有し、ヒトにおいて長年持続して長期腫瘍免疫を確立する。第1世代のCARは、scFv-スペーサー-CD3zという典型的な構造の、CD3ζのシグナル伝達ドメインに融合したモノクローナル抗体(例えば抗CD123)からの単鎖可変断片(scFv)からなる。この記載された構造に加えて、第2世代CARは、IL2分泌を促進することによりa)T活性化の完了及びb)アポトーシスの回避を助ける1つの共刺激エンドドメイン(例えばCD28、又は41BB)を有する。
【0010】
抗CD123-CD28ζ CAR及び抗CD123-41BBζ CAR T細胞を用いる第2世代のCAR-T細胞を使用した前臨床研究はin vitro及びin vivoで強力な白血病殺傷能力を実証したが、健常CD123+細胞に対するそれらの骨髄破壊効果に関して不適当な結果を生じさせた[17][18]。CD123へと方向付けされたCAR T細胞療法のための複数のフェーズI試験(ClinicalTrials.gov番号NCT03796390、NCT02937103、NCT03114670、NCT03672851)が、効果及び安全性プロファイルを検証するために現在進行中である。
【0011】
明らかに、抗CD123 CAR T技術は、AML及び他のCD123+腫瘍の治療において大きな潜在能力を有する。少なくとも1つの共刺激ドメインをCAR構築物に組み込むことの利益はよく確立されているが、scFv、並びに細胞外スペーサードメイン、T細胞サブセット、及び製造方法の選択は、依然として重点的な研究の領域である。
【0012】
CD123+腫瘍の治療のためのCAR Tベクターを同定する必要性が依然として存在する。
【0013】
更に、正常ヒト造血細胞を移植されたマウスのCD123再方向付けT細胞治療は深刻な骨髄破壊を結果としてもたらし、そのような療法を用いて治療されうるAMLを有する患者における血液学的毒性の懸念を生じさせた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,786,464号明細書
【特許文献2】米国特許第6,114,148号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/138475号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Shi, M.ら、「CD123 a novel biomaker for diagnosis and treatment of leukemia.」、Cardiovasc Hematol Disord Drug Targets、2019.
【非特許文献2】Sapienza, M.R.ら、「Blastic Plasmacytoid Dendritic Cell Neoplasm: State of the Art and Prospects.」、Cancers (Basel)、2019. 11(5).
【非特許文献3】Stevens, B.M.ら、「CD123 CAR T cells for the treatment of myelodysplastic syndrome.」、Exp Hematol、2019. 74: 52~63 e3.
【非特許文献4】Salem, D.A.ら、「Differential Expression of CD43, CD81, and CD200 in Classic Versus Variant Hairy Cell Leukemia.」、Cytometry B Clin Cytom、2019.
【非特許文献5】Forman, S.J.及びJ.M. Rowe、「The myth of the second remission of acute leukemia in the adult.」、Blood、2013. 121(7): 1077~82頁
【非特許文献6】Majeti, R.、「Monoclonal antibody therapy directed against human acute myeloid leukemia stem cells.」、Oncogene、2011. 30(9): 1009~19頁
【非特許文献7】Korpelainen, E.I.ら、「Interferon-gamma upregulates interleukin-3 (IL-3) receptor expression in human endothelial cells and synergizes with IL-3 in stimulating major histocompatibility complex class II expression and cytokine production.」、Blood、1995. 86(1): 176~82頁
【非特許文献8】Li, K.ら、「Expression of complement components, receptors and regulators by human dendritic cells.」、Mol Immunol、2011. 48(9-10): 1121~7頁
【非特許文献9】Taussig, D.C.ら、「Hematopoietic stem cells express multiple myeloid markers: implications for the origin and targeted therapy of acute myeloid leukemia.」、Blood、2005. 106(13): 4086~92頁
【非特許文献10】Munoz, L.ら、「Interleukin-3 receptor alpha chain (CD123) is widely expressed in hematologic malignancies.」、Haematologica、2001. 86(12): 1261~9頁
【非特許文献11】Testa, U.ら、「Elevated expression of IL-3Ralpha in acute myelogenous leukemia is associated with enhanced blast proliferation, increased cellularity, and poor prognosis.」、Blood、2002. 100(8): 2980~8頁
【非特許文献12】Graf, M.ら、「Expression and prognostic value of hemopoietic cytokine receptors in acute myeloid leukemia (AML): implications for future therapeutical strategies.」、Eur J Haematol、2004. 72(2): 89~106頁
【非特許文献13】Vergez, F.ら、「High levels of CD34+CD38low/-CD123+ blasts are predictive of an adverse outcome in acute myeloid leukemia: a Groupe Ouest-Est des Leucemies Aigues et Maladies du Sang (GOELAMS) study.」、Haematologica、2011. 96(12): 1792~8頁
【非特許文献14】Tettamanti, S.ら、「Targeting of acute myeloid leukaemia by cytokine-induced killer cells redirected with a novel CD123-specific chimeric antigen receptor.」、Br J Haematol、2013. 161(3): 389~401頁
【非特許文献15】Smith, B.D.ら、「First-in Man, Phase 1 Study of CSL362 (Anti-IL3Rα/ Anti-CD123 Monoclonal Antibody) in Patients with CD123+ Acute Myeloid Leukemia (AML) in CR at High Risk for Early Relapse.」、Blood、2014. 124(21): 120~120頁
【非特許文献16】Testa, U.、E. Pelosi、及びA. Frankel、「CD 123 is a membrane biomarker and a therapeutic target in hematologic malignancies.」、Biomark Res、2014. 2(1): 4頁
【非特許文献17】Mardiros, A.ら、「T cells expressing CD123-specific chimeric antigen receptors exhibit specific cytolytic effector functions and antitumor effects against human acute myeloid leukemia.」、Blood、2013. 122(18): 3138~48頁
【非特許文献18】Gill, S.ら、「Preclinical targeting of human acute myeloid leukemia and myeloablation using chimeric antigen receptor-modified T cells.」、Blood、2014. 123(15): 2343~54頁
【非特許文献19】Thokala, R.ら、「Redirecting Specificity of T cells Using the Sleeping Beauty System to Express Chimeric Antigen Receptors by Mix-and-Matching of VL and VH Domains Targeting CD123+ Tumors.」、PLoS One、2016. 11(8): e0159477頁
【非特許文献20】Schroeder, H.W., Jr.及びL. Cavacini、「Structure and function of immunoglobulins.」、J Allergy Clin Immunol、2010. 125(2 Suppl 2): S41~52頁
【非特許文献21】Harlowら、1999、「Using Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY
【非特許文献22】Harlowら、1989、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor、New York
【非特許文献23】Huston, J.S.ら、「Protein engineering of antibody binding sites: recovery of specific activity in an anti-digoxin single-chain Fv analogue produced in Escherichia coli.」、Proc Natl Acad Sci U S A、1988. 85(16): 5879~83頁
【非特許文献24】Bird, R.E.ら、「Single-chain antigen-binding proteins.」、Science、1988. 242(4877): 423~6頁
【非特許文献25】Milone, M.C.ら、「Chimeric receptors containing CD137 signal transduction domains mediate enhanced survival of T cells and increased antileukemic efficacy in vivo.」、Mol Ther、2009. 17(8): 1453~64頁
【非特許文献26】Batzer, M.A.、J.E. Carlton、及びP.L. Deininger、「Enhanced evolutionary PCR using oligonucleotides with inosine at the 3'-terminus.」、Nucleic Acids Res、1991. 19(18): 5081頁
【非特許文献27】Ohtsuka, E.ら、「An alternative approach to deoxyoligonucleotides as hybridization probes by insertion of deoxyinosine at ambiguous codon positions.」、J Biol Chem、1985. 260(5): 2605~8頁
【非特許文献28】Rossolini, G.M.ら、「Use of deoxyinosine-containing primers vs degenerate primers for polymerase chain reaction based on ambiguous sequence information.」、Mol Cell Probes、1994. 8(2): 91~8頁
【非特許文献29】Remington's Pharmaceutical Sciences (1980)
【非特許文献30】Pule, M.A.ら、「A chimeric T cell antigen receptor that augments cytokine release and supports clonal expansion of primary human T cells.」、Mol Ther、2005. 12(5): 933~41頁
【非特許文献31】Perna, S.K.ら、「Interleukin-7 mediates selective expansion of tumor-redirected cytotoxic T lymphocytes (CTLs) without enhancement of regulatory T-cell inhibition.」、Clin Cancer Res、2014. 20(1): 131~9頁
【非特許文献32】Perna, S.K.ら、「Interleukin 15 provides relief to CTLs from regulatory T cell-mediated inhibition: implications for adoptive T cell-based therapies for lymphoma.」、Clin Cancer Res、2013. 19(1): 106~17頁
【非特許文献33】Cieri, N.ら、「IL-7 and IL-15 instruct the generation of human memory stem T cells from naive precursors.」、Blood、2013. 121(4): 573~84頁
【非特許文献34】Zheng, Z.、N. Chinnasamy、及びR.A. Morgan、「Protein L: a novel reagent for the detection of chimeric antigen receptor (CAR) expression by flow cytometry.」、J Transl Med、2012. 10: 29頁
【非特許文献35】Klement, M.ら、「Effect of linker flexibility and length on the functionality of a cytotoxic engineered antibody fragment.」、J Biotechnol、2015. 199: 90~7頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、患者に対して毒性効果を示さない有効なCAR療法の必要性が依然として存在すると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明者らは、CAR.CD123アプローチにおける新規の自殺遺伝子の組込みは、白血病制御を損なうことなくこのバイスタンダー毒性を最小化し、それにより抗白血病CAR T細胞又はCAR先天細胞免疫療法の治療ウインドウを増加させることができるという仮説を立てた。上記に照らして、本発明は新規の第2世代CAR-CD123を提供する。
【0018】
より具体的には、本発明者らは、CAR-CD123構造物(
図1):ΔCD19-2A-CAR-CD123-ΔCD34.CD8.41BB.CD3ζ(Table 1(表1):OPBG-242ベクター)レトロウイルスベクターを構築した。
【0019】
本発明者らは、2つの導入遺伝子、即ちΔCD19及びCARCD123の同時の発現を可能とする2シストロン性ベクター(ΔCD19-2A-CAR-CD123-ΔCD34.CD8.41BB.CD3ζ)を設計した。クローン性レトロウイルスプロデューサー細胞系は、(上清中のベクターの存在についてのPCR分析を使用して)高い力価により特徴付けられるレトロウイルス上清を生成する。
【0020】
ΔCD19は、膜貫通部分に連結されたヒトCD19の細胞外ドメインを表す。それは、
1)臨床グレードマイクロビーズによる遺伝子改変された細胞の選択、
2)遺伝子改変された細胞の表現型の特徴付け、
3)誘導性自殺遺伝子として、それがFDA/EMA承認済み抗CD19 bite抗体(例えばブリナツモマブ)により標的化されうること
を助けるための三重の機能を有する。
【0021】
CAR分子は、抗原エンゲージメント後のアクチベーターシグナルの導入のためのCD8膜貫通ドメイン及びそのエンドドメイン、4.1BB共刺激ドメイン並びにCD3ζ細胞質ドメインとインフレームの、ヒト抗原CD123に特異的なモノクローナル抗体7G3の融合されたVK-VL領域の単鎖に基づく。CAR構築物は、2A配列の使用を通じてΔCD19の配列を含む遺伝子カセットの後にレトロウイルスベクター中にクローニングされた。
【0022】
そのため、ΔCD19-2A-CAR-CD123-ΔCD34.CD8.41BB.CD3ゼータ(以後、ΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ)の発現及び活性のために重要な機能的及び構造的成分がTable 1(表1)に要約され、以下に列記される:
・5' LTR - ベクターの5'末端におけるレトロウイルス長鎖末端反復(プロモーター配列として機能する)
・ψ - レトロウイルスカプシド形成シグナル(プサイ;ビリオン粒子中へのRNAのパッケージングのために必要)
・SA - スプライスアクセプター部位
・ΔCD19は、CD19マーカーの最適化されたヒト(細胞外及び膜貫通)ドメインからなる
・2A - ΔCD19タンパク質及びCARタンパク質の間の切断可能なリンカーとして機能する、Thosea Asigna昆虫ウイルスからの合成の20アミノ酸ペプチドをコードする
・シグナルペプチド - 分泌タンパク質の小胞体から細胞膜への正確な移行を可能とする短いアミノ酸配列。
・ΔCD34は、ヒトCD34に由来する短いペプチドからなり、形質導入後のCAR+細胞の検出を助ける
・CAR- それらの位置の順序で指し示される以下のエレメントに基づくCAR分子:ヒト抗原CD123に特異的なモノクローナル抗体7G3の融合されたVL(k)-VH領域の、ΔCD34ドメイン、CD8ドメイン(スペーサー、TM、CD8Cyt)、4.1BB共刺激ドメイン及びCD3ζ細胞質ドメインとインフレームの、単鎖。
・3' LTR - ベクターの3'末端におけるレトロウイルス長鎖末端反復(ターミネーター/ポリアデニル化配列として機能する)。
【0023】
【0024】
ベクターΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζの素性:
ベクター構築物の各成分のためのDNA配列ファイルを組み合わせることにより参照電子的ベクター配列をアセンブルした。レトロウイルスゲノムはRNAベースであるので、293VEC細胞系へのトランスフェクション(レトロウイルス製造物調製における初期工程)のために使用されたプラスミドDNAに対する配列解析を行った。OPBG-242ベクター全体に対する2方向性シークエンシングが本発明者らにより行われた。SnapGeneソフトウェアを使用してシークエンシングランをアセンブルした。理論的な参照電子的配列と比較してミスマッチの塩基は同定されなかった。
【0025】
本発明によれば、第2世代の新規のCD123特異的キメラ抗原受容体(ΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ)が提供される。特には、以下の臨床グレード第2世代CAR CD123 SFGレトロウイルスベクターが提供される:
以下:
・ΔCD19は、CD19マーカーの最適化されたヒト(細胞外及び膜貫通)ドメインからなる、
・2Aペプチド - ΔCD19タンパク質及びCARタンパク質の間の切断可能なリンカーとして機能する、Thosea Asigna昆虫ウイルスからの合成の20アミノ酸ペプチドをコードする、
・7G3ハイブリドーマからの単鎖可変断片(scFv)、
・FACS(蛍光活性化細胞選別)システムによる迅速な同定及び/又は遺伝子改変された細胞の細胞選別システムによる選択のための(追跡可能なマーカーとして)16アミノ酸(aa)のみの追跡可能なマーカーCD34由来エピトープ(ΔCD34)
・免疫原性IgG4 Fc領域を回避するためのCD8領域により表されるスペーサー。
・分子安定化を向上させるためのCD8の膜貫通ドメインからの膜貫通ドメイン
・単鎖から4.1BB-CD3ゼータ鎖(4.1BB-ζ)へのシグナルを促すためのCD8細胞質部分の小部分
により構成されるΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ(ΔCD19-2A-CAR-CD123-ΔCD34.CD8.41BB.CD3ζ)。
【0026】
共刺激ドメインをΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζベクターに加えた:CD3-ζ鎖に融合された4-1BB。
【0027】
ΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζにおいて、追跡可能なマーカー、共刺激ドメイン及びCD3-ζ鎖のネイティブなヌクレオチド配列を改変してコドン最適化を得、それにより効率的なタンパク質発現を向上させた。
【0028】
【0029】
本発明者らは、異なる亜集団:T細胞(
図2)、NK細胞(
図4)及びγδ T細胞(
図6)への形質導入を行うためのレトロウイルス機能抗CD123 CARに関する強い証拠を本明細書において報告する。
【0030】
本発明者らは、白血病細胞系(THP-1)に対する(
図14に詳細に記載される)in vitroモデル及びin vivoモデルの両方における遺伝子改変CAR.CD123 T細胞(
図8)、CAR.CD123 NK細胞(
図9) CAR.CD123 γδ T細胞(
図11)の強力な殺傷活性を明確に示す。
【0031】
更に、本発明者らは、抗hCD19-CD3+bite抗体を用いるΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ(CD123.CAR) T細胞(
図15)又はCAR.CD123 NK細胞(
図16)の処理後に、ΔCD19は誘導性自殺遺伝子として働くことを本明細書において示す。留意すべきこととして、CD123.CAR T(
図15C~D)及びCD123.CAR NK細胞(
図16B及び
図16E)は、陰性対照、即ちbite抗CD19B-Gal+抗体に対して非感受性であった。
【0032】
従って、CD123 CAR NK細胞における自殺遺伝子ΔCD19の特異性は、抗hCD19-CD3+ biteはin vitroモデルにおいてCD3(T細胞)の存在下でのみ活性であるという事実により証明される(
図16C及び
図16F)。
【0033】
本発明のCARにおける2つの共発現されるマーカー(ΔCD34及びΔCD19)の導入(
図1)によって、本発明者らは、二重のアプローチ、即ち、CD34及び/又はCD19に対するモノクローナル抗体の使用に基づく細胞蛍光分析を考慮することにより遺伝子改変された細胞を研究することが可能となる。これは、特には、自殺遺伝子アプローチに関して妥当である。実際に、抗CD19抗体を使用して抗hCD19-CD3+ bite曝露後にCAR.CD123細胞を検出する場合、CAR.CD123改変細胞上のCD19へのbiteのエンゲージメントに関するマスキング効果に遭遇しうる。それにもかかわらず、ΔCD34により表される、二重マーカーの包含は、抗hCD19-CD3+ biteを用いる処理後の残留する遺伝子改変された細胞の分析に対する大きな利点となる。
【0034】
自殺遺伝子の活性のデータはまた、in vivoで、ΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ T細胞を与えられたNSGマウスにおいて証明された(
図17)。
図17Aに示されるように、IL2投与(1000U/マウス、週2回)も存在する中で多くの数のΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ T細胞(10×10
6/topoの3回の連続注入)をマウスに与えて、遺伝子改変された細胞の高拡大増殖の最悪のケースを模倣した。30日後に、マウスが罹患の臨床徴候を示し始めた時に、本発明者らは出血を行ってΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ T細胞の拡大増殖のレベルを評価した(
図17B)。次に、bite抗hCD19-CD3を用いて連続する5日間(1ug/日)マウスを処置した。40日目に、本発明者らは、出血を行って、処置後に残留するΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ T細胞のレベルを評価した。
図17Cに示されるように、bite抗hCD19-CD3処置後に残留したΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ Tの量はごく僅かであった。
【0035】
従って、N末端からC末端へ、以下を含む又はからなるCD123キメラ抗原受容体分子は本発明の目的である:
a)ΔCD19細胞外及び膜貫通ドメイン、例えば、MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRF(配列番号1)(ホモサピエンスCD19分子(CD19)、転写物バリアント1、mRNAは、以下のアクセッション番号:ヌクレオチドNM_001178098.2及びProtein ID NO: NP_001171569.1と共にNCBIにおいて開示されている)、
b)2Aペプチド - Thosea Asigna昆虫ウイルスに由来する合成の20アミノ酸ペプチド、例えばRGRGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号2)、
c)シグナルペプチド、例えばMEFGLSWLFLVAILKGVQCSR(配列番号3)(IgG H鎖のホモサピエンスmRNAは、以下のアクセッション番号:ヌクレオチドID NO: AB776838.1及びProtein ID NO: BAN63131.1と共にNCBIにおいて開示されている);これは以下とインフレームである:
d)7G3 VL(K)配列:DFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKR(配列番号4)を含み又はからなり、且つ第2のリンカー(GGGSGGGG(配列番号27))により7G3 VH配列:EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTV(配列番号5)に連結された7G3ハイブリドーマからの抗CD123単鎖抗体ドメインであって、前記7G3 VL(K)及びVH配列が第3のリンカー(SAGS(配列番号28))により以下に対して連結されたもの、
e)ΔCD34: ELPTQGTFSNVSTNVS(配列番号6)からなる追跡可能なマーカー(CD34抗原のホモサピエンスCD34遺伝子は、以下のアクセッション番号:ヌクレオチドID NO AB238231.1及びProtein ID NO: BAE46748.1と共にNCBIにおいて開示されている)、
f)CD8αの細胞外部分(ヒンジ):PAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号7)からなるスペーサー(ホモサピエンスT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖は、以下のアクセッション番号:ヌクレオチドID NO: NM_001145873.1、及びNM_001768.6及びProtein ID NO: NP_001139345、及びNP_001759.3と共にNCBIにおいて開示されている)、
g)CD8TM: IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT(配列番号8)からなる膜貫通ドメイン(ホモサピエンスCD8a分子(CD8A)転写物バリアント1、mRNAは、以下のアクセッション番号:ヌクレオチドNM_001145873.1、及びNM_001768.6及びProtein ID NO: NP_001139345、及びNP_001759.3と共にNCBIにおいて開示されている)、
h)CD8a cyt:LYCNHRNRRRVCKCPR(配列番号9)からなる細胞質ドメイン(ホモサピエンスCD8a分子(CD8A)転写物バリアント1、mRNAは、以下のアクセッション番号:ヌクレオチドID NO NM_001768.6及びProtein ID NO: NP_001759.3と共にNCBIにおいて開示されている)であって、これは短いリンカーVDにより以下に対して連結されている、
i)共刺激シグナル伝達ドメインCD137(4-1BB)配列:KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号10)(ヒト受容体タンパク質4-1BB mRNA:ヌクレオチドID NO: U03397.1及びProtein NO: AAA53133.1)、並びに
j)CD3-ゼータ鎖:RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*(配列番号11)(ヒトT細胞受容体ゼータ-鎖mRNA、完全cdsは、以下のアクセッション番号:ヌクレオチドID NO: J04132.1及びProtein ID: AAA60394.1と共にNCBIにおいて開示されている)。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、ΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζキメラ抗原受容体分子は、MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRFRGRGRGSLLTCGDVEENPGPMEFGLSWLFLVAILKGVQCSRDFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKRGGGSGGGGEVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTVSAGSELPTQGTFSNVSTNVSPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPRVDKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*(配列番号12)である。
【0037】
即ち、この配列は、本明細書においてΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζとしても命名される。
【0038】
本発明はまた、上記のCD123キメラ抗原受容体をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0039】
本発明の実施形態によれば、ヌクレオチド配列は、ATGCCACCACCTCGCCTGCTGTTCTTTCTGCTGTTCCTGACACCTATGGAGGTGCGACCTGAGGAACCACTGGTCGTGAAGGTCGAGGAAGGCGACAATGCCGTGCTGCAGTGCCTGAAAGGCACTTCTGATGGGCCAACTCAGCAGCTGACCTGGTCCAGGGAGTCTCCCCTGAAGCCTTTTCTGAAACTGAGCCTGGGACTGCCAGGACTGGGAATCCACATGCGCCCTCTGGCTATCTGGCTGTTCATCTTCAACGTGAGCCAGCAGATGGGAGGATTCTACCTGTGCCAGCCAGGACCACCATCCGAGAAGGCCTGGCAGCCTGGATGGACCGTCAACGTGGAGGGGTCTGGAGAACTGTTTAGGTGGAATGTGAGTGACCTGGGAGGACTGGGATGTGGGCTGAAGAACCGCTCCTCTGAAGGCCCAAGTTCACCCTCAGGGAAGCTGATGAGCCCAAAACTGTACGTGTGGGCCAAAGATCGGCCCGAGATCTGGGAGGGAGAACCTCCATGCCTGCCACCTAGAGACAGCCTGAATCAGAGTCTGTCACAGGATCTGACAATGGCCCCCGGGTCCACTCTGTGGCTGTCTTGTGGAGTCCCACCCGACAGCGTGTCCAGAGGCCCTCTGTCCTGGACCCACGTGCATCCTAAGGGGCCAAAAAGTCTGCTGTCACTGGAACTGAAGGACGATCGGCCTGCCAGAGACATGTGGGTCATGGAGACTGGACTGCTGCTGCCACGAGCAACCGCACAGGATGCTGGAAAATACTATTGCCACCGGGGCAATCTGACAATGTCCTTCCATCTGGAGATCACTGCAAGGCCCGTGCTGTGGCACTGGCTGCTGCGAACCGGAGGATGGAAGGTCAGTGCTGTGACACTGGCATATCTGATCTTTTGCCTGTGCTCCCTGGTGGGCATTCTGCATCTGCAGAGAGCCCTGGTGCTGCGGAGAAAGAGAAAGAGAATGACTGACCCAACAAGAAGGTTTCGCGGCCGCGGCCGAGGGAGCCTGCTGACATGTGGCGATGTGGAGGAAAACCCAGGACCAATGGAGTTTGGACTTTCTTGGTTGTTTTTGGTGGCAATTCTGAAGGGTGTCCAGTGTAGCAGGGACTTTGTAATGACCCAATCTCCAAGCTCTCTTACGGTAACGGCAGGAGAGAAAGTCACCATGTCATGTAAATCCAGTCAATCCCTCTTGAACTCAGGCAACCAGAAAAATTATCTTACGTGGTATCTTCAAAAGCCGGGGCAACCCCCAAAACTCCTGATCTACTGGGCATCAACCAGGGAGTCCGGCGTCCCCGACCGCTTTACGGGTAGTGGAAGTGGAACCGATTTTACCCTTACTATCAGCAGCGTACAAGCGGAAGACTTGGCTGTGTATTATTGTCAAAATGATTATTCATATCCCTATACTTTCGGTGGAGGGACTAAACTTGAAATTAAACGAGGCGGAGGAAGCGGAGGTGGGGGCGAAGTCCAGTTGCAACAATCTGGCCCTGAGTTGGTAAAGCCCGGAGCCTCTGTGAAGATGAGTTGTAAGGCTTCAGGGTATACATTTACAGACTATTATATGAAATGGGTCAAACAATCTCACGGTAAATCCTTGGAGTGGATTGGCGATATTATCCCGAGTAACGGTGCCACGTTCTACAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCAACACTGACGGTAGACCGCAGCAGCAGCACGGCGTATATGCACCTGAACTCATTGACTTCAGAGGATAGTGCAGTTTACTACTGTACTCGGAGTCATTTGCTGAGAGCGAGTTGGTTCGCCTATTGGGGTCAGGGCACACTCGTTACCGTATCTGCAGGATCCGAACTTCCTACTCAGGGGACTTTCTCAAACGTTAGCACAAACGTAAGTCCCGCCCCAAGACCCCCCACACCTGCGCCGACCATTGCTTCTCAACCCCTGAGTTTGAGACCCGAGGCCTGCCGGCCAGCTGCCGGCGGGGCCGTGCATACAAGAGGACTCGATTTCGCTTGCGACATCTATATCTGGGCACCTCTCGCTGGCACCTGTGGAGTCCTTCTGCTCAGCCTGGTTATTACTCTGTACTGTAATCACCGGAATCGCCGCCGCGTTTGTAAGTGTCCCAGGGTCGACAAACGGGGCAGAAAGAAaCTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTGAGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAG(配列番号29)である。
【0040】
即ち、ΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζとしても命名される配列をコードするこのヌクレオチド配列は、以下の配列:
ΔCD19
ATGCCACCACCTCGCCTGCTGTTCTTTCTGCTGTTCCTGACACCTATGGAGGTGCGACCTGAGGAACCACTGGTCGTGAAGGTCGAGGAAGGCGACAATGCCGTGCTGCAGTGCCTGAAAGGCACTTCTGATGGGCCAACTCAGCAGCTGACCTGGTCCAGGGAGTCTCCCCTGAAGCCTTTTCTGAAACTGAGCCTGGGACTGCCAGGACTGGGAATCCACATGCGCCCTCTGGCTATCTGGCTGTTCATCTTCAACGTGAGCCAGCAGATGGGAGGATTCTACCTGTGCCAGCCAGGACCACCATCCGAGAAGGCCTGGCAGCCTGGATGGACCGTCAACGTGGAGGGGTCTGGAGAACTGTTTAGGTGGAATGTGAGTGACCTGGGAGGACTGGGATGTGGGCTGAAGAACCGCTCCTCTGAAGGCCCAAGTTCACCCTCAGGGAAGCTGATGAGCCCAAAACTGTACGTGTGGGCCAAAGATCGGCCCGAGATCTGGGAGGGAGAACCTCCATGCCTGCCACCTAGAGACAGCCTGAATCAGAGTCTGTCACAGGATCTGACAATGGCCCCCGGGTCCACTCTGTGGCTGTCTTGTGGAGTCCCACCCGACAGCGTGTCCAGAGGCCCTCTGTCCTGGACCCACGTGCATCCTAAGGGGCCAAAAAGTCTGCTGTCACTGGAACTGAAGGACGATCGGCCTGCCAGAGACATGTGGGTCATGGAGACTGGACTGCTGCTGCCACGAGCAACCGCACAGGATGCTGGAAAATACTATTGCCACCGGGGCAATCTGACAATGTCCTTCCATCTGGAGATCACTGCAAGGCCCGTGCTGTGGCACTGGCTGCTGCGAACCGGAGGATGGAAGGTCAGTGCTGTGACACTGGCATATCTGATCTTTTGCCTGTGCTCCCTGGTGGGCATTCTGCATCTGCAGAGAGCCCTGGTGCTGCGGAGAAAGAGAAAGAGAATGACTGACCCAACAAGAAGGTTT(配列番号13)
2Aペプチド
CGCGGCCGCGGCCGAGGGAGCCTGCTGACATGTGGCGATGTGGAGGAAAACCCAGGACCA(配列番号14)
シグナルペプチド
ATGGAGTTTGGACTTTCTTGGTTGTTTTTGGTGGCAATTCTGAAGGGTGTCCAGTGTAGCAGG(配列番号15)
VL(7G3)
GACTTTGTAATGACCCAATCTCCAAGCTCTCTTACGGTAACGGCAGGAGAGAAAGTCACCATGTCATGTAAATCCAGTCAATCCCTCTTGAACTCAGGCAACCAGAAAAATTATCTTACGTGGTATCTTCAAAAGCCGGGGCAACCCCCAAAACTCCTGATCTACTGGGCATCAACCAGGGAGTCCGGCGTCCCCGACCGCTTTACGGGTAGTGGAAGTGGAACCGATTTTACCCTTACTATCAGCAGCGTACAAGCGGAAGACTTGGCTGTGTATTATTGTCAAAATGATTATTCATATCCCTATACTTTCGGTGGAGGGACTAAACTTGAAATTAAACGA(配列番号16)
Flex
GGCGGAGGAAGCGGAGGTGGGGGC(配列番号17)
VH(7G3)
GAAGTCCAGTTGCAACAATCTGGCCCTGAGTTGGTAAAGCCCGGAGCCTCTGTGAAGATGAGTTGTAAGGCTTCAGGGTATACATTTACAGACTATTATATGAAATGGGTCAAACAATCTCACGGTAAATCCTTGGAGTGGATTGGCGATATTATCCCGAGTAACGGTGCCACGTTCTACAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCAACACTGACGGTAGACCGCAGCAGCAGCACGGCGTATATGCACCTGAACTCATTGACTTCAGAGGATAGTGCAGTTTACTACTGTACTCGGAGTCATTTGCTGAGAGCGAGTTGGTTCGCCTATTGGGGTCAGGGCACACTCGTTACCGTA(配列番号18)
リンク(BamH1制限部位及び接続配列)
TCTGCAGGATCC(配列番号19)
ΔCD34
GAACTTCCTACTCAGGGGACTTTCTCAAACGTTAGCACAAACGTAAGT(配列番号20)
スペーサー(抗CD34 Abを使用することにより認識を改善するため)
CCCGCCCCAAGACCCCCCACA(配列番号21)
スペーサー(CD8a)細胞外
CCCGCCCCAAGACCCCCCACACCTGCGCCGACCATTGCTTCTCAACCCCTGAGTTTGAGACCCGAGGCCTGCCGGCCAGCTGCCGGCGGGGCCGTGCATACAAGAGGACTCGATTTCGCTTGCGAC(配列番号22)(ID NO: M12828.1)
CD8a(TM)膜貫通
ATCTATATCTGGGCACCTCTCGCTGGCACCTGTGGAGTCCTTCTGCTCAGCCTGGTTATTACT(配列番号23)(ID NO: M12828.1)
CD8a細胞質(CD8a cyt)
CTGTACTGTAATCACCGGAATCGCCGCCGCGTTTGTAAGTGTCCCAGG(配列番号24)
接続のリンク
GTCGAC
4-1BB配列(共刺激シグナル伝達ドメイン)
AAACGGGGCAGAAAGAAaCTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTG(配列番号25)
CD3ゼータ鎖
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAG(配列番号26)(ヌクレオチドID NO: J04132.1)
を含む。
【0041】
従って、N末端からC末端へ、
a)ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン(ΔCD19)、
b)抗原結合性ドメイン、
c)スペーサードメイン、
d)膜貫通ドメイン、
e)細胞質ドメイン、
を含むキメラ抗原受容体(CAR)分子は本発明の目的である。
【0042】
上記のエレメントa)~e)のうちの少なくとも1つを含むCAR分子もまた本発明に含まれる。前記エレメントが任意の順序で存在するCAR分子もまた本発明に含まれる。
【0043】
好ましくは、CAR分子はCD123特異的CAR(CD123 CAR)分子であり、且つ抗原結合性ドメインは、モノクローナル抗CD123抗体からのVL(若しくはVK)及び/又はVHを含み、より好ましくは、抗原結合性ドメインは、CD123に特異的に結合する単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0044】
好ましくは、抗原結合性ドメインは、7G3 VK配列:DFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKR(配列番号4)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列及び/又は7G3 VH配列:EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTV(配列番号5)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、前記VL及び/又はVK及び/又はVHは任意選択的にヒト化されており、前記VL(又はVK)及びVHは好ましくは第1のリンカーにより分離されており、より好ましくは、前記scFvは、配列番号4を含む又はからなるVK及び配列番号5を含む又はからなるVHを含み又はからなり、より好ましくはscFvは配列番号30を含む又はからなる。
【0045】
好ましくは、上記の抗原結合性ドメインは、上記に開示される配列の抗原結合性断片、例えば、VH及びVL配列中に含まれるCDRのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0046】
前記第1のリンカーは好ましくは配列GGGSGGGG(配列番号27)を含む又はからなる。
【0047】
好ましくは、本発明のCAR分子は追跡可能なマーカーを更に含む。
【0048】
前記追跡可能なマーカーは好ましくは抗原結合性ドメイン及びスペーサードメインの間に含まれ、好ましくは抗原結合性ドメイン及び追跡可能なマーカーは第2のリンカーにより分離されている。
【0049】
好ましくは、前記追跡可能なマーカーは、CD34由来エピトープ(ΔCD34)又はマウスIg CH2CH3領域スペーサー(UNIPROTKB:P01861):ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号33)若しくは神経成長因子受容体(NGFR):KEACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEANHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWADAECEEIPGRWITRSTPPEGSDSTAPSTQEPEAPPEQDLIASTVAGVVTTVMGSSQPVVTRGTTDN(配列番号34)に由来するペプチドを含む又はからなる。
【0050】
好ましくは、前記追跡可能なマーカーは、配列番号6(ELPTQGTFSNVSTNVS)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、より好ましくはそれは配列番号6を含む又はからなる。
【0051】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインは、配列番号1(MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRF)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列又はその機能性断片、誘導体及びバリアントを含む又はからなる。
【0052】
好ましくはヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインは配列番号1を含む又はからなる。
【0053】
好ましくは、スペーサードメインは、CD8アルファ鎖若しくはCD28の細胞外領域又はヒンジCH2-CH3若しくはヒンジCH3を含み又はからなり、好ましくは、それは、配列番号7に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、又は配列番号31(IASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD)に対応する配列番号7のaa.12~42に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、及び/又は配列番号32(PAPRPPTPAPT)に対応する配列番号7のaa.1~11に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、又は配列番号7、若しくはIEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号35)若しくはESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK、(配列番号33);若しくはESKYGPPCPSCPGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号36)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はからなる。より好ましくはスペーサードメインは配列番号7を含む又はからなる。
【0054】
好ましくは、膜貫通ドメインは、CD8、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137及びCD15からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含み又はからなり、好ましくはそれはCD8又はCD28の膜貫通ドメインを含み、より好ましくは膜貫通ドメインは、配列番号8(IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT)、又はFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号37)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はからなる。より好ましくは膜貫通ドメインは配列番号8を含む又はからなる。
【0055】
好ましくは、細胞質ドメインは、
a)CD8a細胞質部分の領域及び
b)4-1BB共刺激ドメイン(共刺激シグナル伝達ドメインCD137)又はOX40配列又はCD28細胞質配列及び
c)CD3-ゼータ鎖
を含む又はからなる。
【0056】
好ましくは、前記細胞質ドメインはCD8a細胞質部分の領域及び/又は4-1BB共刺激ドメイン及び/又はCD3-ゼータ鎖を含む。より好ましくは細胞質ドメインはCD8a細胞質部分の領域及び4-1BB共刺激ドメイン及びCD3-ゼータ鎖を含む。
【0057】
好ましくは前記細胞質ドメインはCD8a細胞質及び4-1BB共刺激ドメインの間のリンカーを含む。
【0058】
好ましくは、CD8a細胞質部分は、配列番号9(LYCNHRNRRRVCKCPR)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、よりいっそう好ましくはそれは配列番号9を含む。
【0059】
好ましくは、共刺激シグナル伝達ドメインCD137(4-1BB)は、配列番号10(KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、よりいっそう好ましくはそれは配列番号10を含む。
【0060】
好ましくは、CD28細胞質配列は、RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号38)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はからなる。
【0061】
好ましくは、OX40配列は、RDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI(配列番号39)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はからなる。
【0062】
好ましくは、CD3-ゼータ鎖は、配列番号11(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、よりいっそう好ましくはそれは配列番号11を含む。
【0063】
好ましくは、CD8a細胞質及び共刺激シグナル伝達ドメインCD137(4-1BB)の間のリンカーをコードする配列は6ヌクレオチドからなる。より好ましくはそれは2アミノ酸のリンカー、好ましくはVDを含む又はからなる。
【0064】
ここで、
- 切断可能なリンカー、好ましくは2Aペプチド若しくはIRES、及び/又は
- シグナルペプチド及び/又は
- 第2のリンカー、及び/又は
- 追跡可能なマーカー
を任意の順序で更に含むCAR分子は本発明に含まれる。
【0065】
好ましくは、先行する請求項のいずれか一項に記載のCAR分子は、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン並びに抗原結合性ドメインの間に、
- 切断可能なリンカー、好ましくは2Aペプチド若しくはIRES、及び/又は
- シグナルペプチド
を更に含む。
【0066】
好ましくは、切断可能なリンカーは、配列番号2(RGRGRGSLLTCGDVEENPGP)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はからなる2Aペプチドであり、より好ましくはそれは配列番号2を含み若しくはからなり;又はDxExNPGP(配列番号40)のコア配列モチーフを含む2A自己切断性ペプチド、好ましくはAEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号41)、ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号42)、QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号43)若しくはVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号44)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはからなるペプチドである。
【0067】
好ましくは、シグナルペプチドは、配列番号3(MEFGLSWLFLVAILKGVQCSR)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、より好ましくはそれは配列番号3を含み若しくはからなり;又はそれは、MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号45)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはからなる。
【0068】
好ましくは、抗原結合性ドメイン及びスペーサードメインの間に、
- 第2のリンカー及び/又は
- 追跡可能なマーカー
が存在する。
【0069】
好ましくは、上記の切断可能なリンカー、シグナルペプチド及び第1のリンカー、並びに第2のリンカー及び追跡可能なマーカーはCAR分子中にN末端からC末端へと存在する。
【0070】
好ましくは抗原結合性ドメイン及び追跡可能なマーカーの間の第2のリンカーは配列SAGS(配列番号28)を含む又はからなる。
【0071】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、追跡可能なマーカー、スペーサードメイン、膜貫通ドメイン並びに共刺激ドメインのうちの少なくとも1つをコードする配列はコドン最適化されている。
【0072】
好ましくは、本発明によるCAR分子は、N末端からC末端へ、
a)ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、
b)切断可能なリンカー、
c)シグナルペプチド、
d)抗原結合性ドメイン、
e)追跡可能なマーカー、
f)スペーサードメイン、
g)膜貫通ドメイン、
h)細胞質ドメイン
を含む又はからなる。
【0073】
好ましい実施形態において、上記に規定されるCAR分子は、N末端からC末端へ、
a)上記に規定されるヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、
b)上記に規定される切断可能なリンカー、
c)上記に規定されるシグナルペプチド、
d)上記に規定される抗原結合性ドメイン、
e)上記に規定される追跡可能なマーカー、
f)上記に規定されるスペーサードメイン、
g)上記に規定される膜貫通ドメイン、
h)上記に規定される細胞質ドメイン
を含む又はからなる。
【0074】
好ましくは、CAR分子は、配列番号12(MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRFRGRGRGSLLTCGDVEENPGPMEFGLSWLFLVAILKGVQCSRDFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKRGGGSGGGGEVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTVSAGSELPTQGTFSNVSTNVSPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPRVDKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、より好ましくはそれは配列番号12を含む又はからなる。
【0075】
本発明の別の目的は、先行する請求項のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体分子をコードする単離された核酸分子であって、好ましくは発現制御配列に作動可能に連結されている、単離された核酸分子である。好ましくは、前記分子は、以下の配列:配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含み、よりいっそう好ましくは、前記分子は、配列番号29に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、より好ましくは前記分子は配列番号29を含む又はからなる。
【0076】
本発明の更なる目的は、上記に規定される単離された核酸分子を含むベクター、好ましくは発現ベクターであり、より好ましくは、ベクターは、CARの発現を制御する外因性プロモーターを含み、好ましくは、前記ベクターは、DNA、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター又は非ウイルスベクターである。
【0077】
本発明の別の目的は、上記に規定されるベクター若しくは上記に規定される単離された核酸分子を含む、又は好ましくは細胞表面に、上記に規定される少なくとも1つのCAR分子を発現する、操作された免疫細胞、好ましくはT細胞、より好ましくはアルファ/ベータ及び/若しくはガンマ/デルタT細胞、若しくはNK細胞若しくはNK-T細胞又はこれらの組合せ、よりいっそう好ましくはヒト起源のこれらの細胞である。本発明の更なる目的は、上記に規定される単離された核酸分子又は上記に規定されるベクター又は上記に規定される細胞を少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントと共に含む医薬組成物である。
【0078】
本発明の別の目的は、医学的使用のための、好ましくはCD123+がん、より好ましくは急性骨髄性若しくはBリンパ性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)、骨髄異形成症候群若しくは有毛細胞白血病の治療における使用のための、又は造血幹細胞移植の前、後若しくは間の使用のための、上記に規定されるCAR分子、上記に規定される単離された核酸分子、上記に規定されるベクター、上記に規定される細胞又は上記に規定される医薬組成物である。
【0079】
本発明の他の目的は、医学的使用のための、好ましくはヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインで遺伝子改変された細胞における死の誘導剤としての使用のための、好ましくは形質導入された細胞上のヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインに結合する少なくとも1つの剤への前記細胞の曝露後の前記使用のための、好ましくは上記に規定される、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインである。
【0080】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインに結合する剤は、抗体、小分子、ポリペプチド、核酸、又はこれらの組合せ、より好ましくはモノクローナル抗体である。より好ましくは、ヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインに結合する剤は、(二重特異性T細胞エンゲージャー)bite抗体、例えばブリナツモマブを含む抗CD19抗体である。
【0081】
好ましくは、抗体の活性はADCCの作用機序に依拠しない。本発明の文脈において、遺伝子改変された細胞のアブレーションは、好ましくは、ADCCに基づかない機序により実行される。
【0082】
好ましくは、抗体は、ΔCD19及びCD3にエンゲージメントしてΔCD19+細胞において細胞傷害性を活性化させる二重特異性抗体である。
【0083】
好ましくは、遺伝子改変された細胞は、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする核酸及び1つ又は複数の治療用遺伝子産物をコードする核酸を含む、形質導入された細胞、例えば免疫細胞又は幹細胞である。
【0084】
好ましくは、治療用遺伝子産物は操作された受容体であり、より好ましくは、それは、T細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカイン受容体、ホーミング受容体、又はケモカイン受容体であり、好ましくは、前記操作された受容体はがん抗原を標的化する。
【0085】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする核酸並びに治療用遺伝子産物をコードする核酸は同じ核酸分子であり、好ましくは前記核酸分子はベクターであり、より好ましくは、それは、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0086】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする核酸は核酸分子のN末端にあり、好ましくはそれはCAR分子のN末端にある。
【0087】
好ましくはCARは本発明によるCARである。
【0088】
本発明の別の目的は、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする核酸並びに1つ又は複数の治療用遺伝子産物をコードする核酸を含む、形質導入された細胞、例えば免疫細胞又は幹細胞を含む組成物であり、好ましくは前記治療用遺伝子産物は、操作された受容体であり、より好ましくは、それは、T細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、サイトカイン受容体、ホーミング受容体、又はケモカイン受容体であり、好ましくは、前記操作された受容体はがん抗原を標的化する。
【0089】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする核酸並びに治療用遺伝子産物をコードする核酸は同じ核酸分子であり、好ましくは前記核酸分子はベクターであり、より好ましくは、それは、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0090】
本発明の別の目的は、ヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインを発現する形質導入された細胞の死を誘導する方法であって、有効量の、形質導入された細胞上のヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインに結合する少なくとも1つの剤を提供する工程であって、前記剤が、好ましくは、抗体、小分子、ポリペプチド、核酸、又はこれらの組合せ、より好ましくはモノクローナル抗体、より好ましくは、bite抗体、例えばブリナツモマブを含む抗CD19抗体である、前記工程を含む方法である。
【0091】
好ましくは、細胞は、操作された受容体、好ましくはT細胞受容体又はCARを更に発現し、より好ましくは操作された受容体はがん抗原を標的化する。
【0092】
好ましくはCARは本発明によるCARである。
【0093】
本発明の更なる目的は、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードする配列並びに操作された受容体をコードする配列を含むベクターである。
【0094】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードするベクターの配列並びに操作された受容体をコードするベクターの配列は、好ましくは上記に規定される、切断可能なリンカーにより、ベクター上で分離されている。好ましくは、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインをコードするベクターの配列は、操作された受容体をコードするベクターの配列に対して上流にある。
【0095】
好ましくは、操作された受容体は、CAR、より好ましくは本発明によるCARである。
【0096】
本発明の文脈において、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインは、配列番号1(MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRF)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列又はその機能性断片、誘導体及びバリアントを含み又はからなり、より好ましくはヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインは配列番号1を含む又はからなる。
【0097】
好ましくは、本発明の方法は医学的状態を有する個体においてin vivoで行われ、且つ個体は、複数の形質導入された細胞を含む医学的状態に対する療法を提供されており、好ましくは医学的状態はがんである。好ましくは、剤は、療法からの1つ又は複数の有害事象の開始で個体に提供される。
【0098】
個体のための細胞療法の毒性のリスクを低減させる方法であって、ヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインを発現するように細胞療法の細胞を改変する工程を含む方法は本発明の別の目的である。
【0099】
好ましくは療法はがんに対するものである。
【0100】
好ましくは、細胞療法は、抗原を標的化する操作された受容体を含む。
【0101】
本発明の別の目的は、医学的使用のための、好ましくはヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインで遺伝子改変された細胞における、好ましくはbite抗体、例えばブリナツモマブを含む抗CD19抗体への前記細胞の曝露後の、死の誘導剤としての使用のための、特に上記に規定される、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインである。
【0102】
本発明の文脈において、好ましくは、抗体の活性はADCCの作用機序に依拠せず、且つ/又は遺伝子改変された細胞のアブレーションは、好ましくは、ADCCに基づかない機序により実行される。
【0103】
好ましくは、抗体は、ΔCD19及びCD3にエンゲージメントしてΔCD19+細胞において細胞傷害性を活性化させる二重特異性抗体である。
【0104】
ヒトCD19の前記細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインで遺伝子改変された細胞は、本発明のCAR分子を含む且つ/又は形質転換された且つ/又は形質導入された且つ/又は発現する細胞、例えば、CAR-T細胞又はCAR-NK細胞又は上記に規定される細胞であってもよい。
【0105】
リンカーの選択はクローニング戦略(制限酵素の挿入)に依存する。
【0106】
好ましくは、上記の核酸は細胞のゲノムに組み込まれる。
【0107】
CAR細胞は、同種異系細胞若しくは自己細胞であってもよく、且つ/又は対象にマッチしたHLAであってもよい。
【0108】
本発明の文脈において、がん又は腫瘍は好ましくはCD123を発現する。
【0109】
好ましくはポリヌクレオチドは内因性プロモーターの制御下にある。
【0110】
好ましくは、ヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインは、配列番号13と少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はからなる配列により、好ましくは配列番号13を含む又はからなる配列によりコードされる。
【0111】
上記に規定される単離された核酸分子又は上記に規定されるベクターを含む、ウイルス粒子は本発明の別の目的である。
【0112】
抗原結合性ドメインは好ましくはキメラ抗原結合性ドメインである。
【0113】
本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、CD123タンパク質又はその断片への特異的結合のために操作された抗体又は抗体断片を含んでもよい。1つの態様において、CARの抗原結合性ドメインはヒト若しくはヒト化CD123抗体又はその抗体断片を含む。好ましくは、CARの抗原結合性ドメインは、scFvを含むヒトCD123抗体断片、好ましくはヒトCD123 scFvを含む。
【0114】
好ましくは、CARの抗原結合性ドメインは、好ましくはリンカーにより連結された、好ましくは7G3 VL(又はVK)配列及び7G3 VH配列を含む又はからなる、7G3ハイブリドーマからの抗CD123単鎖抗体ドメインを含む。
【0115】
1つの態様において、CAR123結合性ドメインは、配列番号30(DFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKRGGGSGGGGEVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTV)において提供されるscFv部分を含む。
【0116】
本発明の文脈において、ヒトCD19のエレメント「細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン」は上記に規定される通りであってもよく、又はそれは、ホモサピエンスCD19分子(CD19)の他の転写物バリアントからのΔCD19細胞外及び膜貫通ドメイン(例えば、以下のアクセッション番号NM_001770及びNP_001761.3(アイソフォーム2)、XM_017023893.1及びXP_016879382.1(アイソフォームX2)、XM_011545981.2及びXP_011544283.1(アイソフォームX3)と共にNCBIにおいて開示されるバリアントからのもの)であってもよい。
【0117】
本発明の文脈において、切断可能なリンカーは上記に規定される2Aペプチドであってもよく、又はそれは、DxExNPGP(配列番号40)のコア配列モチーフを有する2A自己切断性ペプチド、好ましくは、T2A(thosea asignaウイルス2由来):AEGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号41)(ヌクレオチドID NO: AF062037.1及びProtein ID NO: YP_009665206.1);P2A(豚テシオウイルス-1 2A由来):ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号42)(ヌクレオチドID NO: AB038528.1及びProtein ID NO: BAB32828.1);E2A(ウマ鼻炎Aウイルス由来):QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号43)(ヌクレオチドID NO: NC_039209.1及びProtein ID NO: YP_009513027.1)並びにF2A(口蹄疫ウイルス由来):VKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号44)(ヌクレオチドID NO: AY593825.1及びProtein ID NO: AAT01768.1)からなる群から選択されるペプチドであってもよい。好ましくは、改変されたポリヌクレオチドT2A RGRGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号2)(ヌクレオチドID NO: AF062037.1及びProtein ID NO: YP_009665206.1)が使用される。
【0118】
CAR構築物のための他の標準的なシグナルペプチドが上記のシグナルペプチドの代わりに使用されてもよく、これには、高い発現により特徴付けられるタンパク質に由来する異なるシグナルペプチド、例えば、CD8aシグナルペプチドMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号45)(ヌクレオチドID NO: NM_001768;及びProtein ID NO: NP_001759.3)が含まれる。
【0119】
他の追跡可能なマーカーが上記に開示される追跡可能なマーカーの代わりに使用されてもよく、これは例えば、マウスIg CH2CH3領域スペーサー(UNIPROTKB:P01861):ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号33)に由来するペプチド、又はNGFR:KEACPTGLYTHSGECCKACNLGEGVAQPCGANQTVCEPCLDSVTFSDVVSATEPCKPCTECVGLQSMSAPCVEADDAVCRCAYGYYQDETTGRCEACRVCEAGSGLVFSCQDKQNTVCEECPDGTYSDEANHVDPCLPCTVCEDTERQLRECTRWADAECEEIPGRWITRSTPPEGSDSTAPSTQEPEAPPEQDLIASTVAGVVTTVMGSSQPVVTRGTTDN(配列番号34)(ヌクレオチドID NO: AK313654.1及びProtein ID NO: BAG36408.1)に由来するペプチドである。
【0120】
他のスペーサードメイン(又は配列)が上記に開示されるスペーサー配列の代わりに使用されてもよく、これは例えば、膜結合型タンパク質からのストーク配列からなる群から選択されるスペーサードメインであり、CD28ストーク: CD28: IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号35)(ヌクレオチドID NO: AJ517504.1及びProtein ID NO: CAD57003.1);ヒンジCH2-CH3(UNIPROTKB: P01861):ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK、(配列番号33);ヒンジCH3(UNIPROTKB: P01861):ESKYGPPCPSCPGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号36)、好ましくはCD8ストーク:PAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号7)(ヌクレオチドID NO: M12828.1及びProtein ID NO: AAB04637.1)の例を含む。
【0121】
他の膜貫通ドメインが上記に開示されるものの代わりに使用されてもよく、これは例えば、CD28TM: FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号37)(ヌクレオチドID NO: J02988.1及びProtein ID AAA60581.1)である。
【0122】
上記の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28細胞質配列:RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号38)(ヌクレオチドID NO: AF222341.1及びProtein ID NO: AAF33792.1)又はCD137(4-1BB)配列:KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号10)(ヌクレオチドID NO: U03397.1及びProtein NO: AAA53133.1)又はOX40配列RDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI(配列番号39)(ヌクレオチドID NO: NM_003327.3及びProtein NO: NP_003318.1)を含む又はからなるペプチドであってもよい。
【0123】
CARの本明細書において開示されるドメインは、連続し且つ同じリーディングフレームであり、単一の融合タンパク質を形成する。
【0124】
本発明の文脈において、免疫細胞は、T細胞、NK細胞、NKT細胞、iNKT細胞、B細胞、制御性T細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、又は間葉間質細胞であってもよい。
【0125】
本発明の細胞(例えば、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞又はNK細胞)は、CARを発現するように操作されていてもよく、CAR発現細胞(例えば、「CAR-T」又はCAR発現NK細胞)は抗腫瘍特性を呈する。1つの態様において、細胞はCARで形質転換されており、且つCARの少なくとも部分は細胞表面上に発現される。一部の実施形態において、細胞(例えば、免疫細胞、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞若しくはNK細胞、操作された免疫細胞、例えばT細胞、より好ましくはアルファ/ベータ若しくはガンマ/デルタT細胞、若しくはNK細胞若しくはNK-T細胞又はこれらの組合せ)は、CARをコードするウイルスベクターを用いて形質導入される。一部の実施形態において、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。一部の実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。一部のそのような実施形態において、細胞はCARを安定的に発現してもよい。別の実施形態において、細胞(例えば、免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞又はNK細胞)は、CARをコードする核酸、例えば、mRNA、cDNA、DNAをトランスフェクトされる。一部のそのような実施形態において、細胞はCARを一過的に発現してもよい。好ましくは、CARのCD123結合性ドメイン、例えば、ヒト又はヒト化CD123結合性ドメインはscFv抗体断片である。1つの態様において、そのような抗体断片は、同じ重鎖及び軽鎖可変領域を有するIgG抗体と同等の結合親和性を保持している、例えば、同等の有効性で同じ抗原に結合するという点で、機能的である。1つの態様において、そのような抗体断片は、当業者に理解されるように、免疫応答の活性化、その標的抗原からのシグナル伝達創生の阻害、及びキナーゼ活性の阻害等を含みうるがこれらに限定されない生物学的応答を提供するという点で、機能的である。本発明の抗体はキメラ抗原受容体(CAR)に組み込まれていてもよい。1つの態様において、本発明のCARの部分であるCD123結合性ドメイン、例えば、ヒト化又はヒトCD123結合性ドメインは、その配列が哺乳動物細胞中での発現のためにコドン最適化されている導入遺伝子によりコードされる。コドン最適化は、コーディングDNA中の同義コドン(即ち、同じアミノ酸をコードするコドン)の出現の頻
度は異なる種においてバイアスされているという発見を指す。そのようなコドン縮重は、同一のポリペプチドが様々なヌクレオチド配列によりコードされることを可能とする。様々なコドン最適化方法が当該技術分野において公知であり、例えば、少なくとも米国特許第5,786,464号明細書及び米国特許第6,114,148号明細書において開示される方法を含む。
【0126】
「CD123」は、白血病前駆細胞上に検出可能であることが公知の抗原決定基を指す。ヒト及びマウスアミノ酸及び核酸配列は、公的データベース、例えばGenBank、UniProt及びSwiss-Prot中に見出されうる。例えば、ヒトCD123のアミノ酸配列はアクセッション番号NP_002174.1に見出すことができ、ヒトCD123をコードするヌクレオチド配列はアクセッション番号NM_002183.4に見出すことができる。1つの態様において、CARの抗原結合性部分は、CD 123タンパク質の細胞外ドメイン内の抗原を認識して結合する。1つの態様において、CD 123タンパク質はがん細胞上に発現される。本明細書において使用される場合、「キメラ抗原受容体」又は代替的に「CAR」という用語は、抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメイン、及び本明細書に規定される刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む細胞質ドメイン(本明細書において「細胞内シグナル伝達ドメイン」と称されることもある)を少なくとも含む、組換えポリペプチド構築物を指す。1つの態様において、刺激分子は、T細胞受容体複合体と会合したゼータ鎖である。1つの態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、以下に規定される少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つ又は複数の機能性シグナル伝達ドメインを更に含む。1つの態様において、共刺激分子は、4-1BB(即ち、CD137)、CD27、及び/又はCD28から選択される。1つの態様において、CARは、抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、及び刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、並びに共刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、並びに1つ又は複数の共刺激分子に由来する2つの機能性シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、並びに1つ又は複数の共刺激分子に由来する少なくとも2つの機能性シグナル伝達ドメイン及び刺激分子に由来する機能性シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様において、CARは、CAR融合タンパク質のアミノ末端(N-ter)に任意選択的なリーダー配列を含む。1つの態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメインのN末端にリーダー配列を更に含み、リーダー配列は、細胞内プロセシング及び細胞膜へのCARの局在化の間に抗原認識ドメイン、例えば、scFvから任意選択的に切断される。本明細書において使用される場合、細胞内、細胞質(cytoplasmic)及び細胞質(cytoplasmatic)という用語は交換可能に使用される。「シグナル伝達ドメイン」という用語は、第2のメッセンジャーを生成することにより定義されたシグナル伝達経路を介して細胞活性を調節するように細胞内に情報を伝達することにより、又はそのようなメッセンジャーに応答することによりエフェクターとして機能することにより、作用するタンパク質の機能性部分を指す。「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば、非共有的に、可逆的に、及び特異的な方式で、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質、又はポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナル若しくはモノクローナル、複数鎖若しくは単鎖、又はインタクトな免疫グロブリンであり得、天然の供給源又は組換え供給源に由来してもよい。抗体は免疫グロブリン分子の四量体でありうる。例えば、天然に存在するIgG抗体は、ジスルフィド結合により相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖(L鎖はκ鎖又はλ鎖のいずれかからなることができる)を含む四量体である[20]。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CHI、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLを含む。本発明の文脈において、VLという用語はまたVKを含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域を差し挟まれた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の
領域に更に分割することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で編成された3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、宿主組織、又は免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体システムの第1成分(Clq)を含む因子への免疫グロブリンの結合を媒介しうる。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科動物抗体、及びキメラ抗体を含むがこれらに限定されない。抗体は、任意のアイソタイプ/クラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、又はサブクラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl及びIgA2)のものでありうる。「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体、又はその組換えバリアントの少なくとも1つの部分を指し、抗原結合性ドメイン、例えば、標的、例えば抗原への抗体断片の認識及び特異的結合を付与するために十分なインタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片、単鎖又は「scFv」抗体断片、直鎖状抗体、単一ドメイン抗体、例えばsdAb(VL又はVHのいずれか)、ラクダ科動物VHHドメイン、並びに抗体断片から形成される多特異性抗体を含むがこれらに限定されない。「scFv」という用語は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片及び重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片を含む融合タンパク質であって、軽鎖及び重鎖可変領域が短い柔軟性ポリペプチドリンカーを介して近接的に連結されており、且つ単鎖ポリペプチドとして発現することができ、且つscFvが、その由来となるインタクトな抗体の特異性を保持する、融合タンパク質を指す。記載しなければ、本明細書において使用される場合、scFvは、VK又はVL及びVH可変領域をいずれかの順序で有してもよく、例えば、ポリペプチドのN末端及びC末端に関して、scFvはVL(若しくはVK)-リンカー-VHを含んでもよく、又はVH-リンカー-VL(若しくはVK)を含んでもよい。抗体又はその抗体断片を含む本発明のCAR組成物の部分は、例えば、単一ドメイン抗体断片(sdAb)、単鎖抗体(scFv)及びヒト化抗体を含む抗原結合性ドメインが連続するポリペプチド鎖の部分として発現される様々な形態で存在してもよい(Harlowら、1999、「Using Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY; Harlowら、1989、「Antibodies: A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor、New York)[21、22]。1つの態様において、本発明のCAR組成物の抗原結合性ドメインは抗体断片を含む。更なる態様において、CARは、scFvを含む抗体断片を含む。「組換え抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、組換えDNA技術を使用して生成される抗体、例えば、バクテリオファージ又は酵母発現系により発現される抗体等を意味する。該用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成により生成された抗体であって、該DNA分子が抗体タンパク質、又は抗体を指定するアミノ酸配列を発現し、DNA又はアミノ酸配列が、当該技術分野において利用可能及び周知の組換え又は合成DNA又はアミノ酸シークエンス技術を使用して得られたものである、抗体を意味すると解釈されるべきである。「抗原」又は「Ag」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫応答を惹起する分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、若しくは特異的免疫学的コンピテント細胞の活性化のいずれか、又は両方を伴いうる。実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む、任意の高分子は抗原として役立ちうることを当業者は理解する。
【0127】
「CD 123の発現と関連付けられる疾患」という語句は、本明細書において使用される場合、CD 123の発現と関連付けられる疾患又は、例えば、増殖性疾患、例えばがん若しくは悪性腫瘍若しくは前がん性状態、例えば脊髄形成異常、脊髄形成異常症候群若しくは前白血病;若しくはCD123を発現する細胞と関連付けられる非がん関連症状を含む、CD123を発現する細胞と関連付けられる状態を含むがこれらに限定されない。1つの態様において、CD 123の発現と関連付けられるがんは血液がんである。1つの態様において、血液がんは、AML、脊髄形成異常症候群、ALL、有毛細胞白血病、前リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、及び芽球性形質細胞性樹状細胞新生物等を含むがこれらに限定されない。CD 123の発現と関連付けられる更なる疾患は、例えば、CD123の発現と関連付けられる非定型及び/又は非古典的がん、悪性腫瘍、前がん性状態又は増殖性疾患を含むがこれらに限定されない。CD 123の発現と関連付けられる非がん関連症状もまた含まれうる。
【0128】
本発明において、本発明のCAR内の1つ又は複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、変更されたCARは、当業者に公知の機能アッセイを使用してCD 123に結合する能力について試験することができる。
【0129】
「刺激分子」は、該用語が本明細書において使用される場合、T細胞シグナル伝達経路の少なくとも一部の局面のために刺激性のやり方でTCR複合体の一次活性化を調節する一次細胞質シグナル伝達配列を提供するT細胞により発現される分子を意味する。1つの態様において、一次シグナルは、例えば、ペプチドを搭載したMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合により開始され、増殖、活性化、及び分化等を含むがこれらに限定されないT細胞応答の媒介に繋がる。刺激性の方式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン」とも称される)は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はIT AMとして公知のシグナル伝達モチーフを含有してもよい。本発明において特定の用途を有する一次細胞質シグナル伝達配列を含有するIT AMの例は、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」としても公知)及びCD66dに由来するものを含むがこれらに限定されない。本発明の特有のCAR分子において、本発明の任意の1つ又は複数のCAR分子中の細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内シグナル伝達配列、例えば、CD3-ゼータの一次シグナル伝達配列を含む。本発明の特有のCARにおいて、CD3-ゼータの一次シグナル伝達配列はヒト配列(配列番号11)、又は非ヒト種、例えば、マウス、齧歯動物、サル、及び類人猿等からの同等の残基である。実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは一次細胞内シグナル伝達ドメインを含みうる。例示的な一次細胞内シグナル伝達ドメインは、一次刺激、又は抗原依存性刺激に関与する分子に由来するものを含む。実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激細胞内ドメインを含みうる。例示的な共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル、又は抗原非依存性刺激に関与する分子に由来するものを含む。例えば、CARTの場合、一次細胞内シグナル伝達ドメインはT細胞受容体の細胞質配列を含むことができ、共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは補助受容体又は共刺激分子からの細胞質配列を含みうる。一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はIT AMとして公知のシグナル伝達モチーフを含みうる。
一次細胞質シグナル伝達配列を含有するIT AMの例は、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、DAP10及びDAP12に由来するものを含むがこれらに限定されない。
【0130】
本明細書において使用される場合、「ゼータ」又は代替的に「ゼータ鎖」、「CD3-ゼータ」若しくは「TCR-ゼータ」は、例えば、NCBI Acc. No. J04132.1として提供されるタンパク質、又は非ヒト種、例えば、マウス、齧歯動物、サル、及び類人猿等からの同等の残基として定義され、「ゼータ刺激ドメイン」又は代替的に「CD3-ゼータ刺激ドメイン」若しくは「TCR-ゼータ刺激ドメイン」は、T細胞活性化のために必要な初期シグナルを機能的に伝達するために十分なゼータ鎖の細胞質ドメインからのアミノ酸残基として定義される。「共刺激分子」は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それによりT細胞による共刺激応答、以下に限定されないが例えば増殖を媒介する、T細胞上のコグネイト結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫応答のために要求される抗原受容体又はそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子は、MHCクラスI分子、BTLA及びTollリガンド受容体の他に、OX40、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CDl la/CD18)及び4-1BB(CD137)を含むがこれらに限定されない。共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激分子の細胞内部分に由来しうる。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリー:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、及び活性化性NK細胞受容体において代表されうる。そのような分子の例は、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、及びCD83に特異的に結合するリガンド等を含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、その由来となる分子、又はその機能性断片の、細胞内部分全体、又はネイティブな細胞内シグナル伝達ドメイン全体を含みうる。本明細書において使用される場合、「4-1BB」は、例えば、NCBI No. AAA53133.1として提供されるアミノ酸配列、又は非ヒト種、例えば、マウス、齧歯動物、サル、及び類人猿等からの同等の残基を有するTNFRスーパーファミリーのメンバーを指す。1つの態様において、「4-1BB共刺激ドメイン」は、ヒト配列、又は非ヒト種、例えば、マウス、齧歯動物、サル、及び類人猿等からの同等の残基である。1つの態様において、「4-1BB共刺激ドメイン」は、配列番号10として提供される配列、又は非ヒト種、例えば、マウス、齧歯動物、サル、及び類人猿等からの同等の残基である。「コードする」は、定義されるヌクレオチドの配列(例えばrRNA、tRNA及びmRNA)又は定義されるアミノ酸の配列のいずれか及びそれらの結果としてもたらされる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマー及び高分子の合成のための鋳型として役立つための、ポリヌクレオチド、例えば遺伝子、cDNA、又はmRNA中のヌクレオチドの特有の配列の生来的な特性を指す。そのため、遺伝子、cDNA、又はRNAは、その遺伝子、cDNA、又はRNAに対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合にタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であるコーディング鎖、及び遺伝子又はcDNAの転写のための鋳型として使用される非コーディング鎖の両方は、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードすると称されうる。他に指定されなければ、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重バージョンであり、且つ同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部のバージョンにおいてイントロンを含有しうる程度までイントロンを含んでもよい。「ベクター」又は「移入ベクター」という用語は、単離された核酸を含み、且つ細胞の内部に単離された核酸を送達するために使用されうるポリヌクレオチドを指す。多数のベクターが当該技術分野において公知であり、これは、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むがこれらに限定されない。そのため、「ベクター」という用語は自律複製プラスミド又はウイルスを含む。該用語はまた、細胞への核酸の移入を促す非プラスミド及び非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物、及びリポソーム等を更に含むと解釈され
るべきである。ウイルスベクターの例は、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びレンチウイルスベクター等を含むがこれらに限定されない。「発現ベクター」は、発現されるべきヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含み、発現のための他のエレメントは宿主細胞により又はin vitro発現系において供給されうる。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えばネイキッド又はリポソーム中に含有されるもの)並びにウイルス(例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野において公知の全てのものを含む。「相同的」又は「同一性」という用語は、本明細書において使用される場合、2つのポリマー分子の間、例えば、2つの核酸分子、例えば2つのDNA分子若しくは2つのRNA分子の間、又は2つのポリペプチド分子の間の、サブユニット配列同一性を指す。2分子の両方におけるサブユニット位置が同じ単量体サブユニットにより占有される場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおける位置がアデニンにより占有される場合、それらはその位置において相同又は同一である。2つの配列の間の相同性は、マッチする又は相同的な位置の数の直接的な関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、ポリマー10サブユニットの長さ中の5つの位置)が相同的である場合、2つの配列は50%相同的であり、90%の位置(例えば、10個のうちの9個)がマッチする又は相同的である場合、2つの配列は90%相同的である。
【0131】
「レンチウイルス」は、本明細書において使用される場合、レトロウイルス科(Retroviridae family)の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染できるという点でレトロウイルスの中で独特であり、有意な量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達できるため、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、及びFIVの全てはレンチウイルスの例である。
【0132】
「レンチウイルスベクター」は、特にMilone et al[23]において提供されるような自己不活性化レンチウイルスベクターを含む、レンチウイルスゲノムの少なくとも部分に由来するベクターである。他の例又は臨床において使用されうるレンチウイルスベクターは、例えば、Oxford BioMedica社のLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達技術、及びLentigen社のLENTIMAX(商標)ベクターシステム等を含むがこれらに限定されない。非臨床的な種類のレンチウイルスベクターもまた利用可能であり、当業者に公知である。
【0133】
「作動可能に連結された」又は代替的に「転写制御」という用語は、調節配列及び異種核酸配列の間の機能的な連結であって、後者の発現を結果としてもたらすものを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係性に置かれている場合に、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコーディング配列の転写又は発現に影響する場合に、プロモーターはコーディング配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は互いと連続することができ、例えば、2つのタンパク質コーディング領域を接合するために必要な場合、同じリーディングフレームにある。「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)及びそのポリマーを指す。特に限定されなければ、該用語は、参照核酸と類似した結合特性を有し、且つ天然に存在するヌクレオチドに類似した方式で代謝される天然ヌクレオチドの公知のアナログを含有する核酸を包含する。他に指し示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に指し示される配列の他に、その保存的に改変されたバリアント(例えば、縮重コドン置換)、アレル、オルソログ、SNP、及び相補的配列を暗黙的に包含する。特に、縮重コドン置換は、1つ又は複数の選択された(又は全ての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することにより達成されうる[24][25][26]。本明細書において使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は交換可能に使用され、ペプチド結合により共有的に連結されたアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質又はペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質又はペプチドの配列を構成しうるアミノ酸の最大数は限定されない。ポリペプチドは、ペプチド結合により互いに接合された2つ又はそれより多くのアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書において使用される場合、該用語は、当該技術分野において例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとしても一般的に言及される短い鎖、並びに当該技術分野において一般にタンパク質として言及され、多くの種類があるより長い鎖の両方を指す。(上記のドメイン、マーカー、ペプチド、リンカー、・・・としての)「ポリペプチド」は、数ある中でも例えば、生物学的に活性又は機能性の断片、実質的に相同のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変されたポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はこれらの組合せを含む。「プロモーター」という用語は、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチド配列の特異的な転写を開始させるために要求される、細胞の合成機構、又は導入された合成機構により認識されるDNA配列として定義される。本明細書において使用される場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現のために要求される核酸配列を意味する。一部の事例において、この配列はコアプロモーター配列であってもよく、他の事例において、この配列はまた、エンハンサー配列及び遺伝子産物の発現のために要求される他の調節エレメントを含んでもよい。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的な方式で遺伝子産物を発現させるものであってもよい。「リンカー」は、scFvの文脈において使用される場合、可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を連結するための、単独で又は組合せで使用されるアミノ酸、例えばグリシン及び/又はセリン残基からなるペプチドリンカーを指す。1つの実施形態において、柔軟性ポリペプチドリンカーはGly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)n(配列番号27)を含み、nは1に等しい又は1より大きい正の整数である。例えば、n=l、n=2、n=3、n=4、n=5及びn=6、n=7、n=8、n=9及びn=10。参照により全体が本明細書に組み込まれるWO2012/138475に記載のリンカーもまた本発明の範囲内に含まれる。
【0134】
VL(又はVK)及びVH配列を連結するリンカーは、好ましくは、剛性リンカープロリンリッチ、例えばマウスIgG3アッパーヒンジ(mlgG3UFI): PKPSTPPGSS(配列番号46)、(mlgG3UH)2: PKPSTPPGSSPKPSTPPGSS(配列番号47)、又は柔軟性リンカーグリシンリッチ、例えば(G4S)2リンカー:GGGGSGGGG(配列番号48)、(G4S)4リンカー:GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号49)、G4SG2リンカー GGGGSGG(配列番号50)若しくはG3SG4リンカー:GGGSGGGG(配列番号27)、好ましくはGGGSGGGG(配列番号27)からなる群から選択される。「トランスフェクトされる」又は「形質転換される」又は「形質導入される」という用語は、本明細書において使用される場合、外因性核酸が宿主細胞に移入又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性核酸をトランスフェクト、形質転換又は形質導入された細胞である。細胞は初代対象細胞及びその子孫を含む。細胞は、操作された免疫細胞、好ましくはT細胞、より好ましくはアルファ/ベータ若しくはガンマ/デルタT細胞、若しくはNK細胞若しくはNK-T細胞又はこれらの組合せを含む。本明細書において使用される場合、「一過性」は、時間(hours)、日又は週の期間の間の組み込まれていない導入遺伝子の発現を指し、発現の時間的期間は、ゲノムに組み込まれる場合又は宿主細胞中で安定なプラスミドレプリコン内に含有される場合の遺伝子の発現のための時間的期間よりも短い。「転写制御下にある」又は「作動可能に連結された」という語句は、本明細書において使用される場合、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するためのポリヌクレオチドに対する正確な位置及び方向性にあることを意味する。
【0135】
「特異的に結合する」という用語は、本明細書において使用される場合、試料中に存在するコグネイト結合パートナー(例えばT細胞上に存在する刺激及び/又は共刺激分子)タンパク質を認識して結合する抗体若しくはその抗原結合性断片、又はリガンドであって、抗体、その抗原結合性断片又はリガンドが試料中の他の分子を実質的に認識も結合もしないものを意味する。範囲の形式での記載は単に簡便性及び簡潔性のためのものであり、本発明の範囲に対する確固とした限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。よって、範囲の記載は、特に開示される全ての可能な部分的範囲の他に、その範囲内の個々の数値を有すると考えられるべきである。例えば、範囲、例えば1~6の記載は、特に開示される部分的範囲、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の他に、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を有すると考えられるべきである。別の例として、範囲、例えば95~99%の同一性は、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するものを含み、部分的範囲、例えば96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%及び98~99%の同一性を含む。これは範囲の広さにかかわらず適用される。少なくとも80%の同一性という用語は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するものを含む。
【0136】
上記に示される配列に由来する核酸及びアミノ酸配列、例えば、機能性断片、突然変異体、誘導体、アナログ、及び上記の配列と少なくとも70%の同一性の%を有する配列もまた本発明に含まれる。
【0137】
本明細書に開示されるドメイン、ペプチド、分子、マーカー、領域、部分、配列及び鎖は、その機能性誘導体、断片、バリアント、対応するオルソロガス又は相同遺伝子からコードされる対応するタンパク質、機能性突然変異体、機能性断片又はアナログ、アイソフォームを含む。
【0138】
ポリヌクレオチド及びポリペプチドという用語はまたその誘導体及び機能性断片を含む。ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドアナログ又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成されてもよい。
【0139】
本発明の文脈において、上記に規定される遺伝子/タンパク質は、好ましくは、それらのNCBI Gene ID及びGen Bank Accession番号により同定される配列により特徴付けられる。本明細書における遺伝子という用語はまた、その対応するオルソロガス又は相同遺伝子、アイソフォーム、バリアント、アレルバリアント、機能性誘導体、機能性断片を含む。「タンパク質」という表現は、その対応するオルソロガス若しくは相同遺伝子からコードされる対応するタンパク質、機能性突然変異体、機能性誘導体、機能性断片又はアナログ、アイソフォームも含むことが意図される。
【0140】
本発明の文脈において、「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、
i.タンパク質全体、そのアレルバリアント及びオルソログ、
ii.任意の合成、組換え又はタンパク質分解による機能性断片、
iii.任意の機能性同等物、例えば、合成又は組換え機能性アナログ等
を含む。
【0141】
「機能性」(functional)は、それがその活性を維持することを意図する。例えば、ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインの機能性断片、誘導体又はバリアントは、自殺遺伝子としての、又はヒトCD19の細胞外及び膜貫通ドメインを発現する形質導入された細胞において死を誘導するその活性を維持するべきである。
【0142】
本明細書において使用される場合、「機能性誘導体」又は「機能性バリアント」という記載は、核酸配列又はアミノ酸配列のいずれであれ配列の機能性誘導体の文脈において、元々の配列に実質的に類似した(機能的又は構造的のいずれかの)生物学的活性を保持する分子を表す。この機能性誘導体又は同等物は天然の誘導体であってもよく、又は合成的に調製されてもよい。そのような誘導体は、タンパク質の生物学的活性が保存される限り、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有するアミノ酸配列を含む。配列の生物学的活性が一般に維持される限り、同じことが、1つ又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、又は付加を有しうる核酸配列の誘導体に適用される。タンパク質配列に関する場合、置換するアミノ酸は、一般に、置換されるアミノ酸に類似した化学物理的特性を有する。類似した化学物理的特性は、電荷、大きさ、疎水性、及び親水性等における類似性を含む。「機能性誘導体」という用語は、本発明の主題の「断片」、「セグメント」、「バリアント」、「アナログ」又は「化学的誘導体」を含むことが意図される。実施形態において、上記の誘導体、バリアント又は断片は、(例えば、親抗原に対する免疫応答を誘導/誘発する能力を有する)「抗原性誘導体、バリアント又は断片」である。
【0143】
そのため、「バリアント」という用語は本明細書において、本発明のタンパク質又は核酸に対して構造及び生物学的活性において実質的に類似したタンパク質又は核酸分子を指すが、例えば親タンパク質の生物学的活性の全てを保持するバリアントに限定されない。
【0144】
本発明の機能性誘導体は、化学的に合成することができ、又は組換えDNA技術を通じて製造することができる。全てのこれらの方法は当該技術分野において周知である。
【0145】
本明細書において使用される場合、「化学的誘導体」は、通常は本発明の主題の部分ではない追加の化学的部分をカバーすることが意味される。そのような部分は、誘導体の物理化学的特徴(例えば溶解性、吸収、半減期、及び毒性の減少等)に影響しうる。そのような部分は、Remington's Pharmaceutical Sciences (1980)において例示される。これらの化学物理的部分をポリペプチド又は核酸配列にカップリングさせる方法は当該技術分野において周知である。本明細書において使用される場合、「断片」は、好ましくは少なくとも10アミノ酸、より好ましくは少なくとも15、少なくとも17アミノ酸又は少なくとも20アミノ酸、よりいっそう好ましくは少なくとも25アミノ酸又は少なくとも37又は40アミノ酸、より好ましくは少なくとも50、又は100、又は150又は200又は250又は300又は350又は400又は450又は500アミノ酸の長さを有するポリペプチドを指す。
【0146】
以下の図を参照して非限定的な実施例により本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【
図1】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ(CAR.CD123-T)レトロウイルスベクターの設計。CAR.CD123の発現カセットを模式図に示す。2シストロン性ベクターは2つの導入遺伝子、即ちΔCD19及びCARCD123により構成される。ΔCD19はCD19マーカーの(細胞外及び膜貫通)ドメインからなる。それは2AペプチドによりCARCD123に接続される。CD123のscFvを、CD8aスペーサー-膜貫通ドメイン及び4-1BBにより表される共刺激ドメインの他に、シグナル伝達ドメインCD3-ゼータ鎖(ζ)とインフレームでクローニングした。追跡可能なマーカーとして、ΔCD34を加えた。
【
図2】T細胞上のΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ安定発現。(A~B)T細胞上のCAR.CD123の安定発現が、長い拡大増殖in vitro培養(25日まで)後に、CAR.CD123で遺伝子改変されたT細胞上のΔCD34(A)又はΔCD19発現(B)のフローサイトメトリー分析により観察された。ヒストグラム(A~B)は、CAR発現を経時的にモニターした8人のHDからの平均±標準偏差(SD)を表す(+3日目及び+25日目)。(C)CAR.CD123はT細胞へのレトロウイルス形質導入後に効率的に発現される。代表的なドナーの非形質導入(NT)T細胞(C、上パネル)及び形質導入後のT細胞(C、下パネル)のプロットを示す。抗CD3(BV421)と組み合わせた抗CD34(PE)及びCD19(FITC)mAbの使用によりCAR発現を評価した。
【
図3】経時的なT細胞倍数拡大増殖。非形質導入のT細胞(NT-T)又はΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変されたT細胞(CAR.CD123-T)を週毎を基準にしてカウントして細胞拡大増殖をモニターした。各ドットは3ドナーからのT細胞の平均数±SDである。
【
図4】NK細胞上のΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ安定発現。(A~B)長い拡大増殖in vitro培養(25日まで)後のCAR.CD123で遺伝子改変されたNK細胞上のΔCD34(A)又はΔCD19(B)発現のフローサイトメトリー分析。ヒストグラムは、CAR発現をモニターした8人のHDからの平均+SDを表す。(C)CAR.CD123は、NK細胞へのレトロウイルス形質導入後に効率的に発現される。代表的なドナーの非形質導入(NT)NK細胞(C、上パネル)及び形質導入後のNK細胞(C、下パネル)のプロットを示す。抗CD56(BUV395)と組み合わせた抗CD34(PE)及びCD19(FITC)mAbの使用によりCAR発現を評価した。
【
図5】経時的な先天細胞倍数拡大増殖。非形質導入の先天細胞(NT-先天細胞)又はΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変された先天細胞(CAR.CD123-先天細胞)を週毎を基準にしてカウントして細胞拡大増殖をモニターした。各ドットは3ドナーからの先天細胞の平均数±SDである。
【
図6】γδ T細胞上のΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ安定発現。CAR.CD123で遺伝子改変されたγδ T細胞上のΔCD34又はΔCD19発現のフローサイトメトリー分析。第1のパネルは、代表的な試料はαβ T細胞の非存在下のγδ T細胞の純粋な集団により表されることを示す。抗TCR αβ(FITC)及び抗 TCR-γδ PEの使用により免疫表現型分析を実行した。CAR.CD123は、γδ T細胞へのレトロウイルス形質導入後に効率的に発現される。代表的なドナーの非形質導入(NT)γδ T細胞(上パネル)及び形質導入後のγδ T細胞(下パネル)のプロットを示す。抗CD3(APC)と組み合わせた抗CD34(PE)及びCD19(FITC)mAbの使用によりCAR発現を評価した。
【
図7】CAR.CD123-T細胞の長期抗腫瘍活性。3つのCD123+細胞系(THP1、MOLM13、OCI AML3)及びCD123-細胞(KARPAS 299)を非形質導入T細胞(NT-T)又はΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変されたT細胞(CAR.CD123-T)と共培養した。ヒストグラムは、NT-T(薄灰色)又はCAR.CD123-T細胞(黒色バー)のいずれかと1:1の比で5日共培養した後の残留腫瘍細胞の%を示す。3ドナーからのT細胞を用いて実験を3連で行った。結果を生物学的複製物の平均±SDとして表す。** p値≦0.01;*** p値≦0.001;ns=有意でない。
【
図8】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞の長期抗腫瘍活性。3つのCD123+細胞系(THP1、MOLM13、OCI AML3)及びCD123-細胞(KARPAS 299)を同じドナー(n=8)からの非形質導入T細胞(NT-T)又はΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変されたT細胞(CAR.CD123-T)と共培養した。6日の長期共培養アッセイを使用して抗腫瘍活性を評価した。NT-T(薄灰色バー)及びCAR.CD123-T(黒色バー)を1:1のエフェクター:標的(E:T)比で共インキュベートした。ヒストグラムは、NT-T又はCAR.CD123-T細胞のいずれかとの1:1の比での6日の共培養後の残留腫瘍細胞の%を示す。8ドナーからのデータを平均±SDとして表す。** p値≦0.01;*** p値≦0.001;ns=有意でない。
【
図9】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞の長期抗腫瘍活性。3つのCD123+細胞系(THP1、MOLM3、OCI AML3)及びCD123-細胞(KARPAS 299)を非形質導入NK細胞(NT-NK)又は遺伝子改変されたNK(CAR.CD123-NK)と共培養した。ヒストグラムは、NT-NK(薄灰色)又はCAR.CD123-NK(黒色バー)のいずれかとの1:1の比での6日の共培養後の残留腫瘍細胞の%を示す。8ドナーからのデータを平均±SDとして表す。** p値≦0.01;*** p値≦0.001;ns=有意でない。
【
図10】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ γδ細胞の長期抗腫瘍活性。3つのCD123+腫瘍細胞系(THP1、MOLM3、OCI AML3)及びCD123-細胞(KARPAS 299)を非改変(NT-γδ)又はΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変されたγδ T細胞(CAR.CD123-γδ)と1:1のE:T比で6日間共培養した。単一のドナーのヒストグラムは、NT-γδ(薄灰色)又はCAR.CD123-γδ(黒色バー)のいずれかとの6日の共培養後の残留腫瘍細胞(CD123+又はCD123-のいずれか)の%を示す。
【
図11】急性骨髄性白血病患者の骨髄細胞上のCD123発現のフローサイトメトリー分析。プロットは、診断時の初代ヒト骨髄(BM)急性骨髄性白血病(AML)患者(AML#1、AML#2)におけるCD123の表面発現を示す。CD123発現のフローサイトメトリー分析を行うために、抗CD123(BV421)、CD34(BB770)及びCD38(PeCy7)を使用した。
【
図12】健常ドナーの骨髄細胞上のCD123発現のフローサイトメトリー分析。プロットは、初代ヒト骨髄(BM)健常ドナー(HD)試料におけるCD123の低い/ごく僅かな表面発現を示す。CD123発現のフローサイトメトリー分析を行うために、抗CD123(BV421)、CD34(BB770)及びCD38(PeCy7)を使用した。
【
図13】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ細胞のごく僅かなオフ腫瘍でのオンターゲット効果。ヒストグラムは、異なる実験群におけるコロニー形成単位(CFU)の数の比較を示す。健常ドナー(HD)のBMからの精製されたCD34+細胞を非改変T及びNK(NT-T、NT-NK)細胞並びに改変されたT及びNK細胞(CAR.CD123-T、CAR.CD123-NK)と1:1のエフェクター:標的比で4時間共培養した。共培養されたアッセイを生物学的3連でプレーティングし、造血コロニーを14日後にスコア付けした。(A)BFU-Eの絶対カウントのスコア;(B)GM-CFUの絶対カウントのスコア。2ドナーからのデータを平均±SDとして表す。
【
図14】T細胞及びNK細胞の両方において活性を示すΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ細胞のin vivoモデル。(A)模式図は、THP-1-FF-Luc.GFP細胞(0.01×10
6細胞/マウス)を全身的に注入された異種移植免疫不全マウスモデルを示す。腫瘍確立の時点(3日目)において、マウスにi.v.での注入を行った。(+3日目及び+7日目)。(B)3日目から61日目までの処置されたNSGマウスのin vivo生物発光イメージングの時間経過。(C)NT-T(赤線;4マウス)、CAR.CD123-T(黒線;4マウス)、NT-NK(緑線;4マウス)及びCAR.CD123-NK(青線;4マウス)細胞の2回の連続する養子導入を用いて処置された白血病保有マウスの80日での全生存(OS)の確率。(D)NT-T、CAR.CD123-T、NT-NK及びCAR.CD123-NK細胞の2回の連続する養子導入を用いて処置された白血病保有マウスの80日の全生存の統計分析。
【
図15】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞におけるCD19自殺遺伝子活性のin vitroモデル。抗hCD19-CD3 bite抗体とのCD19選択的エンゲージメントにおけるΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞のフローサイトメトリー分析。例証的なドナーからのT細胞をΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変した。(A~B)ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞をAb CD34-PE(A)及びAb CD19-FITC(B)によりCAR発現について特徴付けた。ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞を1用量の10ng/mlの陰性対照、即ちAb CD19-β Gal bite又は1用量の10ng/mlの抗hCD19-CD3 biteに24時間曝露した。(C~D)CD34(C)及びCD19(D)のフローサイトメトリー分析により実証されるように、ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞は、陰性対照、即ちAb CD19-β Gal biteエンゲージメントにより影響されなかった。(E~F)CD34(E)及びCD19(F)のフローサイトメトリー分析により実証されるように、ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞は、24時間の第1の評価された時点において抗hCD19-CD3 biteエンゲージメントにより選択的に排除された。
【
図16】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞におけるCD19自殺遺伝子活性のin vitroモデル。CD3+ T細胞の存在下での抗hCD19-CD3 bite抗体とのCD19選択的エンゲージメントにおけるΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞のフローサイトメトリー分析。(A~C)例証的なドナーからのNK細胞をΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変した。ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞をAb CD56 PE-Cy7及びAb CD19-FITCによりCAR発現について特徴付けた(A)。ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞を1用量の10ng/mlの陰性対照、即ちAb CD19-β Gal bite(B)又は1用量の10ng/mlの抗hCD19-CD3 bite(C)にCD3+ T細胞の非存在下で24時間曝露した(対照陰性実験条件)。(D~F)例証的なドナーからのNK細胞をΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変した。ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞をAb CD56 PE-Cy7及びAb CD19-FITCによりCAR発現について特徴付けた(D)。ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞を1用量の10ng/mlの陰性対照、即ちAb CD19-β Gal bite(E)又は1用量の10ng/mlの抗hCD19-CD3 bite(F)にCD3+ T細胞の存在下で24時間曝露した。ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ NK細胞は、CD3+ T細胞の存在下で抗hCD19-CD3 biteエンゲージメントにより選択的に排除された。
【
図17】ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞におけるCD19自殺遺伝子活性のin vivoモデル。(A)模式図は、ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞(CAR.CD123-T細胞;用量:10×10
6/マウス)を全身的に注入された異種移植免疫不全マウスモデルを示す。IL2の皮下投与(週2回;1000U/マウス)に付随してエフェクター細胞を0日目(用量I)、4日目(用量II)及び8日目(用量III)にi.v.で注入した。T細胞が有意なin vivo拡大増殖を示す第1の用量の30日後に、NSGマウスを抗hCD19-CD3 bite(5μg/マウス)を用いて連続する5日間処置した。(B~C)NSGマウスの1回の例証的な出血における抗hCD19-CD3 biteの投与前(B)及び後(C)のΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ T細胞のFACS分析。CD19発現分析は、抗hCD19-CD3 biteの投与の前(B)及び後(C)のCAR+細胞(CD3+CD19+)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0148】
材料及び方法
CAR-CD123プラスミド(構築物)の設計
臨床グレード「第2」世代レトロウイルス2シストロン性ベクターSFGを設計し、これは、コドン最適化されたシグナル伝達共刺激ドメイン4-1BB(CD137)及びCD3-ζに対して、コドン最適化されたヒトCD8スペーサー-膜貫通ドメインを介して連結された、IgG(7G3)クラスのマウス抗体に由来する2つの導入遺伝子、即ちΔCD19及びカセット抗CD123単鎖可変断片(scFv)の同時の発現を可能とするものであった(
図1)。
【0149】
特に、ΔCD19は、膜貫通部分に連結されたヒトCD19の細胞外ドメインを表す。CD123に特異的な単鎖可変断片(scFv)は、8アミノ酸のflex(短いリンカーペプチド)により免疫グロブリンの重鎖(VH)の118aaに接続された免疫グロブリンの軽鎖(VL)の可変領域の114アミノ酸(aa)の融合タンパク質である。
【0150】
特に、scFv 7G3は、21aaのコドン最適化されたヒトCD8-膜貫通ドメイン(CD8aTM)に結合するように42aaのスペーサー(11aaのスペーサー及び31aaのコドン最適化されたCD8細胞外ドメイン)により連結された(追跡可能なマーカーとしての)16aaのコドン最適化されたCD34由来エピトープとインフレームでクローニングされる。シグナルは、CD123 scFv 7G3の細胞外部分からCD3-ζ鎖の細胞内部分(113aa)へとSFG:ΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζ(CAR.CD123-T)レトロウイルスベクターのための共刺激分子:4-1BBエンドドメイン(42aa)を通じて流れる。
【0151】
eGFP-ホタルルシフェラーゼ細胞系の生成
eGFP-ホタルルシフェラーゼ(eGFP-FFLuc)をコードするレトロウイルスベクターを選択された実験において使用してCD123陽性(CD123+)又はCD123陰性(CD123-)腫瘍細胞を標識した:
CD123+:
- 急性単球性白血病細胞系THP-1
- 急性骨髄性白血病細胞系MOLM-13
- 急性骨髄性白血病細胞系OCI-AML-3
CD123-:
- 非ホジキンリンパ腫(NHL)Karpas 299
【0152】
細胞系
急性単球性白血病細胞系THP-1細胞はLGC Standards-ATCCから得た。急性骨髄性白血病細胞系MOLM-13及びOCI-AML-3はDSMZから得た。非ホジキンリンパ腫(NHL)Karpas 299はSigma-Aldrich社から得た。
【0153】
RPMI 1640培地を用いる培養においてTHP-1、MOLM-13及びKarpas 299細胞系を維持した。IMDMを用いる培養においてOCI-AML-3を維持した。細胞系に10%のウシ胎仔血清(FBS、Hyclone、Thermo Scientific社、Pittsburgh、PA)及び2mMのGlutaMax(Invitrogen社、California、USA)を補充した。5%のCO2を含有する加湿された37℃の雰囲気で細胞を維持した。全ての細胞系をマイコプラズマ及び標的抗原CD123の表面発現についてルーチン的に試験した。全ての細胞系は、承認された実験室「BMR Genomics s.r.l.」においてSTR分析により認証された。
【0154】
レトロウイルス上清
計10μgのDNAを用いて、2:3:3の比のそれぞれMoMLV gag/pol発現プラスミドPeqPam3(-env)、RD114 env発現プラスミドRDF、及びSFGベクターとの293Tの共トランスフェクションにより一過性レトロウイルス上清を製造した。GeneJuice試薬(Calbiochem社)を用いてトランスフェクションを促した。上清をトランスフェクションの2及び3日後に採取し、(0.45mmフィルターを使用して)濾過し、スナップ凍結し、5mlアリコート中-80℃で貯蔵した[27]。
【0155】
エフェクター細胞の単離、生成及び形質導入
リンパ球分離培地(Eurobio社;France)を使用して、Institutional Review Board (IRB) of OPBG (Approval of Ethical Committee N°969/2015 prot. N°669LB)により設定された規則に従って、署名されたインフォームドコンセントを得た後に健常ドナー(OPBG Hospital、Rome、Italy)から得られた末梢血(PB)又はバフィコートから末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。組換えヒトインターロイキン-7(IL7、10ng/ml;R&D社;USA)[28]及び組換えヒトインターロイキン-15(IL15、5ng/ml;R&D社)[29][30]の組合せの存在下で固定化されたOKT3(1μg/ml、e-Bioscience Inc.社;San Diego,CA、USA)及び抗CD28(1μg/ml、BD Biosciences社、Europe)抗体を用いてTリンパ球を活性化させた。特有のレトロウイルス上清及び特有の上記のサイトカインを使用して組換えヒトRetroNectin(Takara-Bio. Inc社;Japan)を予めコーティングした24ウェルプレート中で活性化されたT細胞への形質導入を3日目に行った。形質導入から5日目に、10%のFBS及び2mMのGlutamaxを補充し、特有の上記のサイトカインを週2回与えた45%のRPMI1640及び45%のClick培地(Sigma-Aldrich, Co.社;USA)を含有する「CTL完全培地」中でT細胞を拡大増殖させる[31]。
【0156】
NK又はγδ-T細胞の単離、生成及び形質導入
密度勾配技術(Ficool-Histopaque(Eurobio社;France))により健常ドナーのバフィコート又は白血球アフェレーシスから末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、健常ドナーは、Institutional Review Board of OPBG (Approval of Ethical Committee N_969/2015 prot. N_669LB)により設定された規則に従って、書面のインフォームドコンセントに署名していた。CD56+ CD3- NK細胞をNK isolation Kit(Miltenyi Biotec, Inc.社、San Diego、CA、USA)を用いて単離し、NK Cell Activation/Expansion Kit(Miltenyi Biotec, Inc.社、San Diego、CA、USA)及び組換えヒトインターロイキン2(IL2、500 U/ml;R&D社;USA)又は組換えインターロイキン15(IL15 10U/ml;R&D社;USA)を用いて拡大増殖させた。レトロウイルス上清を使用して組換えヒトRetroNectin(Takara-Bio. Inc社;Japan)を予めコーティングした24ウェルプレート中で活性化されたNK細胞への形質導入を行った。富化されたNK細胞をGMP準拠の培地(NK MACS Miltenyi Biotec, Inc.社、San Diego、CA、USA)中で培養した。
【0157】
CryoStor(登録商標)細胞凍結保存培地(Sigma-Aldrich社)中での凍結保存後にαβ及びCD19枯渇ドナーからγδ-T細胞を得、上記のようにActivation/Expansion Kit(Miltenyi Biotec, Inc.社、San Diego、CA、USA)を用いて活性化後にNK MACS培地中で拡大増殖させた。
【0158】
患者の詳細
in vitro研究のために、急性骨髄性白血病(AML)を有する2人の小児患者から診断時に一次BM試料を収集した。更に、BM試料を1人のHDドナー(OPBG Hospital、Rome、Italy)から収集した。Institutional Review Board (IRB) of OPBG (Approval of Ethical Committee N°969/2015 prot. N°669LB)により設定された規則に従って、署名されたインフォームドコンセントを得た。
【0159】
表現型分析
以下のmAbを使用した:CD3、CD123、CD45、CD56、CD34、CD19、(全てBD Pharmigen社、USA)。抗CD34 Ab(R&D社、USA)又はPierce Recombinant Biotinylated Protein L[32](Thermo Fisher Scientific社、USA)を使用してT細胞上のCAR.CD123の発現を評価した。BD LSRFortessa X-20及びDiva software(BD Biosciences社)を用いて試料を分析した。各試料について、最小で20,000の事象を分析した。
【0160】
倍数拡大増殖
トリパンブルー法を使用してCounting Chambersにより細胞を週に1回カウントした。
【0161】
in vitro抗白血病活性
共培養実験のために、エフェクターTリンパ球及び白血病細胞系を24ウェルプレートにプレーティングした。37℃での5日のインキュベーション後に、腫瘍細胞及びT細胞を収集し、FACSにより分析した。
【0162】
骨髄CD34+細胞の陽性選択
CD34+細胞を健常ドナーの骨髄試料から単離した。最初に、CD34 MicroBeads(Miltenyi Biotec, Inc.社、San Diego、CA、USA)を用いてCD34+細胞を磁気的に標識した。抗CD34(PE)を用いてフローサイトメトリー分析を実行してCD34陽性画分(CD34+)の純度を評価した。
【0163】
コロニー形成単位(CFU)アッセイ
非改変T及びNK細胞並びにΔCD19-2A-CAR.CD123-ΔCD34-CD8.4.1BB-ζで遺伝子改変されたT又はNK細胞とCD34+を1:1のE:T比で共培養した。4時間のインキュベーション後にCD34+をMethoCult GF H4434培地に播種した。CFUアッセイのために製造者の指示に従って細胞を500細胞/ディッシュの密度で播種した。各細胞共培養群を3つの複製ウェルにプレーティングし、5%のCO2及び20%のO2の加湿された雰囲気中37℃で培養物を維持した。14日の培養後に、CFUの数及び種類を決定した。
【0164】
CAR-123細胞のアポトーシスの誘導
NT又はCAR.CD123 T細胞に対する指し示される濃度で並びに非改変T細胞及びCAR.CD123-NK細胞との共培養条件においてヒトCD19及びヒトCD3に対する二重特異性抗体(抗hCD19-CD3[Aurogene社、カタログ番号:BIMAB-HCD19CD3)を加えた。遺伝子改変されたCAR+細胞の排除を生存細胞のFACS分析により72時間時に評価した。
【0165】
異種in vivo白血病モデル
NOD/SCID IL-2Rγnull(NSG)異種移植マウスにTHP-1細胞を注入して、CAR形質導入NK又はT細胞のin vivo抗腫瘍効果を評価した。倫理上の国際的、EU及び国家の要件に準拠してマウス実験を実行し、実験はItalian Health Ministry(N°88/2016-PR)により承認された。NGSマウス(5週齢;The Jackson Laboratory社、USA)にホタルルシフェラーゼ標識THP-1細胞(THP-1 FF-Luc)(0.01×106)を接種した。-3日目及び7日目にマウスに2用量の10×106個のNT-NK又はCAR.CD123-NK及び5×106個のNT-T又はCAR.CD123 T細胞をi.v.注射を通じて注射し、週毎に生物発光イメージング(IVIS System、Perkin Elmer社、USA)に供した。フォトン/秒のシグナル定量を以前に記載されたように行った。
【0166】
CAR.CD123-T細胞におけるヒトCD19及びヒトCD3に対する二重特異性抗体によるin vivoアポトーシス誘導
ヒトCD19及びヒトCD3(抗hCD19-CD3)に対する二重特異性抗体の活性をCAR.CD123 T細胞に関してin vivoモデルにおいて評価した。NGSマウスにIL-2(1000U)と組み合わせて3用量の20×106個のNT又はCAR.CD123 T細胞を全身的に注入(i.v.)した。T細胞の拡大増殖後に、抗hCD19-CD3の1日毎の注入を用いて連続的な5日間マウスを処置した。処置の前及び後にFACS分析のためにマウスに定期的な血液収集を行い、CAR.CD123 T細胞の拡大増殖を抗ヒトCD19(FITC)によりモニターした。
【0167】
統計分析
GraphPad Prism(GraphPad Software社)を使用して統計的評価を行った。p値<0.05を生成する群間の差異を有意と考えた。カプラン-マイヤー生存曲線を使用してマウス生存データを分析し、ログランク(マンテル-コックス)検定を使用して統計的に有意な差異を測定した。価値のある試料は分析から除外しなかった。T又はNK細胞注入前の、腫瘍移植後の死亡の事象においてのみ動物を除外した。in vivo研究の間に無作為化も盲検化も行わなかった。しかしながら、対照又は遺伝子改変T(NK)細胞の注入の前に対照及び処置群について腫瘍シグナルに基づいてマウスをマッチさせた。経時的に腫瘍の成長を比較するために、盲検の様式で生物発光シグナル強度を収集した。生物発光シグナル強度を対数変換し、次に2サンプルt検定を使用して比較した。
【0168】
結果
本発明による上記のCAR.CD123-4.1BB-ζ配列は、公知のCAR-CD123(Table 2(表2))との比較において予想外の利点、例えば:
選択マーカー及び誘導性自殺遺伝子としてのΔCD19の導入(
図1)
を提供し、更には、本発明者らは、T細胞並びに先天細胞(NK細胞又は/及びガンマ/デルタT細胞)の両方における安定なCAR-CD123発現の高いレベルを示す(
図2、
図4及び
図6)。
【0169】
ΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζレトロウイルスベクターは、対照非形質導入(NT)T細胞(
図3)又はNK細胞(
図5)と比較して遺伝子改変された細胞においていかなる有意な増殖変化も誘導せず、abT、NK及びgdT細胞の細胞プラットフォームにおける構築物の無毒性又は無同胞殺傷活性の証明を提供した。
【0170】
本明細書に記載されるin vitroの結果は、本発明による改変されたポリクローナルΔCD19-2A-CAR.CD123-4.1BB-ζ T細胞/NK細胞又は/及びガンマ/デルタT細胞は、CAR-CD123 T細胞(
図8)、NK細胞(
図9)及びガンマ/デルタT細胞(
図10)についての長期共培養においてCD123+腫瘍を非常に効率的に排除することができた(
図7)ことを示す。
【0171】
より詳細には、SFGレトロウイルスベクターにより得られる上清は、形質導入の非常に高いレベルで、活性化されたT細胞(
図2)、NK細胞(
図4)又はガンマ/デルタT細胞(
図6)に対して効率的に形質導入を行うことができた。更には、レトロウイルスベクター発現は、細胞拡大増殖に干渉することなく(
図3及び
図5)T細胞(
図2A~B)又はNK細胞(
図4A~B)の両方において経時的に安定である。追跡可能なマーカーとしてのCD34由来エピトープの構築物への導入により、in vitroモデルにおいて、遺伝子改変されたT細胞(アルファ/ベータCD3+CD34+)、NK細胞(CD56+CD34+)、ガンマ/デルタT細胞(ガンマ/デルタCD3+CD34+)は容易に追跡される(
図2C、
図4C及び
図6)。AML異種移植マウスのin vivoモデルはCAR-CD123効力のin vitroの結果を裏付けた(
図14)。FACS分析は、AML患者からの白血病幹細胞のみが、健常ドナーの骨髄に由来する前駆細胞と比べて高いレベルのCD123(
図11)を発現することを裏付けた(
図12)。更に、コロニー形成単位の絶対カウントを行うことにより、本発明は、健常ドナーの骨髄に由来する造血幹細胞に対するCAR-CD123細胞のごく僅かなオフ腫瘍でのオンターゲット効果を伴って白血病細胞を標的化する高い程度の特異性により特徴付けられることを本発明者らは裏付けている(
図13)。
【0172】
更に、in vitroモデルにおいて、CAR-CD123 T細胞(
図15)及びCAR-CD123 NK細胞(
図16)の両方についてのCD19 自殺遺伝子活性の誘導の有効性を本発明者らは実証した。留意すべきこととして、CAR-CD123 NK細胞は、T細胞の存在下でのみ抗hCD19-CD3 bite処理により排除することができ(
図16D~F)、アプローチの高い特異性及び選択性を証明する。自殺遺伝子活性はまた、FACS分析により示されるように、抗hCD19-CD3 bite投与を用いたマウスの処置の前及び後に循環性CAR.CD123 T細胞(CD3+CD19)を分析することによりin vivoモデル(
図17A)において裏付けられた(
図17B~C)。
【0173】
本開示はまた、以下の項目を開示する:
1. N末端からC末端へ、
a)ヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、
b)抗原結合性ドメイン、
c)スペーサードメイン、
d)膜貫通ドメイン、
e)細胞質ドメイン
を含むキメラ抗原受容体(CAR)分子であって、
好ましくは、前記CARがCD123特異的CAR(CD123 CAR)であり、且つ前記抗原結合性ドメインがモノクローナル抗CD123抗体からのVH及び/又はVLを含み、より好ましくは、前記抗原結合性ドメインが、CD123に特異的に結合する単鎖可変断片(scFv)を含む、
CAR分子。
【0174】
2.ヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメインが、配列番号1(MPPPRLLFFLLFLTPMEVRPEEPLVVKVEEGDNAVLQCLKGTSDGPTQQLTWSRESPLKPFLKLSLGLPGLGIHMRPLAIWLFIFNVSQQMGGFYLCQPGPPSEKAWQPGWTVNVEGSGELFRWNVSDLGGLGCGLKNRSSEGPSSPSGKLMSPKLYVWAKDRPEIWEGEPPCLPPRDSLNQSLSQDLTMAPGSTLWLSCGVPPDSVSRGPLSWTHVHPKGPKSLLSLELKDDRPARDMWVMETGLLLPRATAQDAGKYYCHRGNLTMSFHLEITARPVLWHWLLRTGGWKVSAVTLAYLIFCLCSLVGILHLQRALVLRRKRKRMTDPTRRF)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、好ましくはそれが配列番号1を含む又はからなる、項目1に記載のCAR分子。
【0175】
3.前記抗原結合性ドメインが、7G3 VL配列:DFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKR(配列番号4)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列、及び/又は7G3:EVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTV(配列番号5)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、前記VH及び/又はVLが任意選択的にヒト化されており、前記VH及びVLが好ましくは第1のリンカーにより分離されており、より好ましくは、前記scFvが、配列番号4を含むVL及び配列番号5を含むVHを含む、項目1又は2に記載のCAR分子。
【0176】
4.前記スペーサーがCD8アルファ鎖の細胞外領域を含み、好ましくは、それが、配列番号7のaa.12~42(IASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、且つ/又は前記スペーサーが、配列番号7のaa.1~11(PAPRPPTPAPT)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、より好ましくは前記スペーサーが配列番号7を含む、先行する項目のいずれか1つに記載のCAR分子。
【0177】
5.前記膜貫通ドメインが、CD8、T細胞受容体のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137及びCD15からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含み、好ましくはそれがCD8の膜貫通ドメインを含み、より好ましくは、それが、配列番号8(IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号8を含む、先行する項目のいずれか1つに記載のCAR分子。
【0178】
6.前記細胞質ドメインが、CD8a細胞質部分の領域、4-1BB共刺激ドメイン及びCD3-ゼータ鎖を含み、好ましくは前記細胞質ドメインが前記CD8a細胞質及び前記4-1BB共刺激ドメインの間のリンカーを含み、より好ましくは、
- 前記CD8a細胞質が、配列番号9(LYCNHRNRRRVCKCPR)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号9を含み、且つ/又は
- 前記共刺激シグナル伝達ドメインCD137(4-1BB)が、配列番号10(KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号10を含み、且つ/又は
- 前記CD3-ゼータ鎖が、配列番号11(RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR*)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、よりいっそう好ましくはそれが配列番号11を含み、且つ/又は
- 前記CD8a細胞質及び前記共刺激シグナル伝達ドメインCD137(4-1BB)の間の前記リンカーをコードする配列が6ヌクレオチドからなる、
先行する項目のいずれか1つに記載のCAR分子。
【0179】
7. i.ヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメイン並びに前記抗原結合性ドメインの間に、
- 切断可能なリンカー、好ましくは2Aペプチド若しくはIRES、及び/若しくは
- シグナルペプチド及び/若しくは
- リンカー、並びに/又は
ii.前記抗原結合性ドメイン及び前記スペーサードメインの間に、
- リンカー及び/若しくは
- 追跡可能なマーカー
を更に含み、
好ましくは、
- 前記2Aペプチドが、配列番号2(RGRGRGSLLTCGDVEENPGP)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、より好ましくはそれが配列番号2を含み、且つ/又は
- 前記シグナルペプチドが、配列番号51(MEFGLSWLFLVAILKGVQC)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、より好ましくはそれが配列番号3を含み、且つ/又は
- 前記追跡可能なマーカーが、配列番号6(ELPTQGTFSNVSTNVS)に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み若しくはからなり、より好ましくはそれが配列番号6を含む、
先行する項目のいずれか1つに記載のCAR分子。
【0180】
8.ヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメイン、前記追跡可能なマーカー、前記スペーサードメイン、前記膜貫通ドメイン並びに前記共刺激ドメインのうちの少なくとも1つをコードする配列がコドン最適化されている、先行する項目のいずれか1つに記載のCAR分子。
【0181】
9. N末端からC末端へ、
a)項目1~2及び8のいずれか1つに規定のヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン、
b)項目7に規定の切断可能なリンカー、
c)項目7に規定のシグナルペプチド、
d)項目1又は3に規定の抗原結合性ドメイン、
e)項目7又は8に規定の追跡可能なマーカー、
f)項目1及び4及び8のいずれか1つに規定のスペーサードメイン、
g)項目1及び5及び8のいずれか1つに規定の膜貫通ドメイン、
h)項目1及び6及び8のいずれか1つに規定の細胞質ドメイン
を含み、
好ましくは前記CAR分子が、配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含み又はからなり、より好ましくはそれが配列番号12の配列を含む、
先行する項目のいずれか1つに記載のCAR分子。
【0182】
10.先行する項目のいずれか1つに記載のキメラ抗原受容体分子をコードする単離された核酸分子であって、前記単離された核酸分子が好ましくは発現制御配列に作動可能に連結されており、より好ましくは、前記分子が、以下の配列:配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を有する少なくとも1つの配列を含み、
よりいっそう好ましくは、前記分子が、配列番号29に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はからなる、
単離された核酸分子。
【0183】
11.項目10に記載の単離された核酸分子を含むベクター、好ましくは発現ベクターであって、より好ましくは、前記ベクターが、前記CARの発現を制御する外因性プロモーターを含み、好ましくは、前記ベクターが、DNA、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター又は非ウイルスベクターである、ベクター。
【0184】
12.項目11に記載のベクター若しくは項目10に記載の単離された核酸分子を含む、又は項目1~9のいずれか1つに記載のCARを細胞表面に発現する、操作された免疫細胞、好ましくはT細胞、より好ましくはアルファ/ベータ及びガンマ/デルタT細胞、若しくはNK細胞若しくはNK-T細胞又はこれらの組合せ、よりいっそう好ましくはヒト起源のこれらの細胞。
【0185】
13.項目10に記載の単離された核酸分子又は項目11に記載のベクター又は項目12に記載の細胞を少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤及び/又はアジュバントと共に含む医薬組成物。
【0186】
14.医学的使用のための、好ましくはCD123+がん、より好ましくは急性骨髄性若しくはBリンパ性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物(BPDCN)、骨髄異形成症候群若しくは有毛細胞白血病の治療における使用のための、又は造血幹細胞移植の前、後若しくは間の使用のための、項目1~9のいずれか1つに記載のCAR分子、項目10に記載の単離された核酸分子、項目11に記載のベクター、項目12に記載の細胞又は項目13に記載の医薬組成物。
【0187】
15.ヒトCD19の前記細胞外及び膜貫通ドメインで遺伝子改変された細胞における、bite抗体、例えばブリナツモマブを含む抗CD19抗体への前記細胞の曝露後の、死の誘導剤としての使用のための、項目1~2及び8のいずれか1つに規定のヒトCD19の細胞外ドメイン及び膜貫通ドメイン。
【0188】
【配列表】
【国際調査報告】