(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】複数参照ラインイントラ予測を用いた最確モードのシグナリング
(51)【国際特許分類】
H04N 19/70 20140101AFI20221114BHJP
H04N 19/593 20140101ALI20221114BHJP
【FI】
H04N19/70
H04N19/593
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511268
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020076212
(87)【国際公開番号】W WO2021058408
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521547600
【氏名又は名称】インターデジタル ブイシー ホールディングス フランス,エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】ラス,ガガン
(72)【発明者】
【氏名】ギャルピン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ルリアネック,ファブリス
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159MA04
5C159MA05
5C159MC11
5C159ME11
5C159PP04
5C159RC11
5C159RC40
5C159SS26
5C159UA02
5C159UA05
5C159UA16
(57)【要約】
複数参照ラインを使用するエンコーダにおいて最確モードフラグがコンテキスト符号化される。対応するデコーダでは、複数参照ラインインデックスフラグの値に関係なく、最確モードフラグが常に復号化される。複数参照ラインインデックスが0でないとき、最確モードフラグの解析にコンテキストが使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオビットストリームを解析して、複数参照ラインイントラ符号化が使用されているかどうかを判定することと、
CABACコンテキストを使用して前記判定に基づいて最確モードフラグを復号化してイントラ符号化モードを決定することと、
前記イントラ符号化モードに基づいて前記ビデオビットストリームを復号化することと、を含む、方法。
【請求項2】
ビデオビットストリームを解析し、複数参照ラインイントラ符号化が使用されているかどうかを判定することと、
CABACコンテキストを使用して前記判定に基づいて最確モードフラグを復号化してイントラ符号化モードを決定することと、
前記イントラ符号化モードに基づいて前記ビデオビットストリームを復号化することと、を行うように構成されているプロセッサ、を備える、装置。
【請求項3】
複数参照ラインイントラビデオ符号化を示すフラグをCABACコンテキストを用いて符号化することと、
使用されるイントラ符号化モードを表すイントラ符号化モードインデックスを符号化することと、
前記符号化されたフラグ及び前記イントラ符号化モードインデックスを有するビデオビットストリームを前記イントラ符号化モードを使用して符号化することと、を含む、方法。
【請求項4】
複数参照ラインイントラビデオ符号化を示すフラグをCABACコンテキストを用いて符号化することと、
使用されるイントラ符号化モードを表すイントラ符号化モードインデックスを符号化することと、
前記符号化されたフラグ及び前記イントラ符号化モードインデックスを有するビデオビットストリームを前記イントラ符号化モードを使用して符号化することと、を行うように構成されたプロセッサ、を備える、装置。
【請求項5】
複数参照ラインイントラビデオ符号化を示す前記フラグが値1を有する、請求項3に記載の方法又は請求項4に記載の装置。
【請求項6】
使用されるイントラ符号化モードを表す前記インデックスがバイナリ符号化される、請求項3に記載の方法又は請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記インデックスのビンが、CABACを使用してバイパス符号化される、請求項6に記載の方法、又は装置。
【請求項8】
前記インデックスのビンが、CABACを使用してバイパス復号化される、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の装置。
【請求項9】
CABAC確率パラメータが高確率モデルで初期化される、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記最確モードフラグが値1に設定される、請求項9に記載の方法又は装置。
【請求項11】
前記最確モードフラグが、複数参照ラインイントラ符号化インデックスの値に関係なく復号化される、請求項1に記載の方法又は請求項2に記載の装置。
【請求項12】
請求項2に記載の装置と、
(i)信号を受信するように構成されたアンテナであって、前記信号がビデオブロックを含む、アンテナ、(ii)受信信号をビデオブロックを含む周波数帯域に制限するように構成されたバンドリミッタ、及び(iii)ビデオブロックを表す出力を表示するように構成されたディスプレイ、のうちの少なくとも1つと、を備える、デバイス。
【請求項13】
請求項3、5、又は6のいずれか一項に記載の方法に従って生成された、又は請求項4、5、又は6のいずれか一項に記載の装置によって生成された、プロセッサを使用して再生するためのデータコンテンツ、を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
請求項3、5、又は6のいずれか一項に記載の方法に従って、又は請求項4、5、又は6のいずれか一項に記載の装置によって生成されたビデオデータを含む信号であって、プロセッサを使用して再生するための信号。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータによって実行されるとき、請求項1、3、又は5~11に記載の方法を前記コンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態のうちの少なくとも1つは、一般に、ビデオの符号化又は復号化、圧縮又は伸長のための方法又は装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高い圧縮効率を実現するために、画像及びビデオの符号化方式は、通常、動きベクトル予測を含む予測や、ビデオコンテンツの空間的冗長性及び時間的冗長性を活用した変換を採用している。一般に、フレーム内又はフレーム間の相関を利用するために、イントラ予測又はインター予測が使用され、次いで、しばしば予測誤差又は予測残差と呼ばれる原画像と予測画像の間の差分が、変換、量子化、及びエントロピ符号化される。ビデオを再構成するには、エントロピ符号化、量子化、変換、及び予測に対応する逆の処理によって、圧縮データを復号化する。
【発明の概要】
【0003】
本実施形態のうちの少なくとも1つは、一般に、ビデオの符号化又は復号化のための方法又は装置に関し、より詳細には、複数参照ライン(Multiple Reference Line、MRL)イントラ予測を用いた最確モード(Most Probable Mode、MPM)フラグのシグナリングの方法又は装置に関する。MPM及びMRLのいずれも、VVC(多用途ビデオコーディング:Versatile Video Coding又はH.266)規格におけるビデオ符号化ツールであるが、説明した実施形態は、他のビデオ符号化規格にも適用することができる。
【0004】
第1の態様によれば、方法が提供される。この方法は、ビデオビットストリームを解析して(parse)、複数参照ラインイントラ符号化が使用されているかどうかを判定することと、CABACコンテキストを使用して判定に基づいて最確モードフラグを復号化してイントラ符号化モードを決定することと、イントラ符号化モードに基づいてビデオビットストリームを復号化することと、を含む。
【0005】
第2の態様によれば、方法が提供される。この方法は、複数参照ラインイントラビデオ符号化を示すフラグをCABACコンテキストを用いて符号化することと、使用されるイントラ符号化モードを表すイントラ符号化モードインデックスを符号化することと、符号化されたフラグ及びイントラ符号化モードインデックスを有するビデオビットストリームをイントラ符号化モードを使用して符号化することと、を含む。
【0006】
別の態様によれば、装置が提供される。この装置は、プロセッサを備える。プロセッサは、前述した方法のいずれかを実行することによって、ビデオのブロックを符号化する、又はビットストリームを復号化するように構成することができる。
【0007】
少なくとも一実施形態の別の一般的な態様によれば、復号化実施形態のいずれかに係る装置と、(i)信号を受信するように構成されたアンテナであって、信号がビデオブロックを含む、アンテナ、(ii)受信信号をビデオブロックを含む周波数帯域に制限するように構成されたバンドリミッタ、又は(iii)ビデオブロックを表す出力を表示するように構成されたディスプレイ、のうちの少なくとも1つと、を備える装置、が提供される。
【0008】
少なくとも一実施形態の別の一般的な態様によれば、説明した符号化実施形態又は変形形態のいずれかに従って生成されたデータコンテンツを含む非一時的なコンピュータ可読媒体、が提供される。
【0009】
少なくとも一実施形態の別の一般的な態様によれば、説明した符号化実施形態又は変形形態のいずれかに従って生成されたビデオデータを含む信号、が提供される。
【0010】
少なくとも一実施形態の別の一般的な態様によれば、ビットストリームは、説明した符号化実施形態又は変形形態のいずれかに従って生成されたデータコンテンツを含むようにフォーマットされる。
【0011】
少なくとも一実施形態の別の一般的な態様によれば、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行されるとき、説明した復号化実施形態又は変形形態のいずれかをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品、が提供される。
【0012】
一般的な態様の上記及び他の態様、特徴、及び利点は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読み進めることによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】異なるターゲットブロック形状に対して別の方法でMPMリストを導出するための符号化ユニットの位置を示している。
【
図2】VVCにおけるイントラモード復号化のフローチャートを示している。
【
図3】説明した態様を使用するイントラモード復号化のフローチャートの一実施形態を示している。
【
図4】標準の一般的なビデオ圧縮方式(エンコーダ)を示している。
【
図5】標準の一般的なビデオ伸長方式(デコーダ)を示している。
【
図6】説明した一般的な態様の下で符号化/復号化するためのプロセッサベースのシステムを示している。
【
図7】説明した態様を使用して復号化する方法を示している。
【
図8】説明した態様を使用して符号化する方法を示している。
【
図9】説明した態様を使用して符号化又は復号化する装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
説明した一般的な態様は、多用途ビデオコーディング(VVC)VTM6.0におけるイントラ予測モード符号化に対処する。特に、複数参照ライン(MRL)イントラ予測の存在下でのmpmFlagの符号化について検討する。VTM6.0では、任意のCUのmultiRefIdxが0でないとき、その予測モードは最確モード(MPM)リストのメンバーであるように制約される。結果として、予測モードがMPMリストに属するか否かをシグナリングするmpmFlagが符号化されない。したがってデコーダは、multiRefIdxが0でない場合、mpmFlagの復号化をスキップする。本明細書で説明する態様は、multiRefIdxが0でない場合にも、値1で、ただし別のコンテキストでmpmFlagを符号化することを提案する。
【0015】
説明した実施形態は、VTM6.0におけるMRLの存在下でのmpmFlagの符号化に対処する。multiRefIdxが0である場合、mpmFlagを、イントラ予測モードの値に応じて、VTM6.0のように符号化する。予測モードがMPMリストに属する場合、フラグがコンテキスト符号化される前に、mpmFlagを1に設定し、そうでない場合は0に設定する。multiRefIdxが0でない場合、別のコンテキストで符号化する前に、mpmFlagを1に設定する。この変更により、CUのmpmFflagが常に符号化される。これは、デコーダ側におけるより良好な解析及び実装につながる。更に、CUに利用可能なすべての参照ラインを使用して、すべてのイントラ予測モードを考慮することができる。
【0016】
多用途ビデオコーディングテストモデル6.0(Versatile Video Coding Test Model 6.0、VTM)は、CUのイントラ予測に3本の参照ラインが考慮される複数参照ライン(MRL)を用いたイントラ予測をサポートしている。すぐ上及び左の参照サンプルで構成されるすぐ隣の参照ライン(0番目の参照ラインとも呼ばれる)の他に、1ピクセル及び3ピクセルオフセットした参照ラインも考慮される。ただし、これらの参照ラインでは、PLANARモードを除く最確モード(MPM)リスト内のイントラ予測モードのみが考慮される。したがって、CUの予測モードを符号化するとき、そのMRLインデックスフラグ(multiRefIdxと表される)が0でない場合、mpmFlagは符号化されない。MPMリスト中の候補MPMのインデックスのみがVLC方式で符号化される。これに対応して、デコーダは、候補MPMインデックスを復号化する前に、MRLインデックスの復号値が0でない場合、mpmFlagの復号化をスキップする。説明した実施形態の目的は、mpmFlagシグナリングにおけるこの不均一性を排除し、デコーダの解析及び実装を視野に入れたより良好なシグナリング方法を提案することである。
VTM6.0におけるMPMリスト構築
【0017】
VTM6.0では、ターゲットブロックのイントラ予測モードを符号化するために6つの予測モードのMPMリストを構築する。MPMリストは、現在のCUの上と左にあるイントラ符号化CUの予測モードと、PLANARモード、DCモード、垂直モード、水平モードなどのいくつかのデフォルトモードから構成される。
図1に示したように、上CU及び左CUは、それぞれターゲットブロックの右端と下端にある。6つのMPMのリストは、表1に示したように構築される。
【0018】
【表1】
VTM6.0におけるイントラモード符号化
【0019】
通常のイントラ予測、又はサブパーティションを用いたイントラ予測(intra prediction with sub-partitions、ISP)では、現在のブロックの予測モードが6つのMPMモードのいずれかに等しい場合、このことは、mpmFlagを値1に設定し、表2に示した可変長符号化方式を使用してMPMリストからの候補モードインデックスを符号化することによって、示される。そうでない場合、mpmFlagが0に設定され、残りの61モードのセットの候補インデックスが5ビット又は6ビットで切捨てバイナリ符号化される(truncated-binary encoded)。mpmFlagの単一ビンは、CABACによってコンテキスト符号化される。同様に、表2に示したようにMPM候補インデックスの二値化の最初のビンはコンテキスト符号化されるが、残りのビンはCABACによってバイパス符号化される。
【0020】
【0021】
MRLを用いたイントラ予測の場合、予測に使用される参照ラインは、multiRefIdxと呼ばれるフラグによって符号化される。multiRefIdxの有効な値は0、1、3であり、これらは1番目、2番目、又は4番目の参照ラインをシグナリングする。これらはそれぞれ0、10、11として二値化され、2つのビンはCABACによって2つの個別のコンテキストを用いてコンテキスト符号化される。multiRefIdxが0でないとき(2番目又は4番目の参照ラインが使用されることを意味する)、予測モードは常にMPMリストに属する。したがってmpmFlagは符号化されない。更に、PLANARモードがリストから除外され、なぜなら2つの参照ラインがターゲットブロックからオフセットされているためである。PLANARモードは常にMPMリストの最初の候補であるため、multiRefIdxが0でないときには、5つの予測モードのみが候補として利用可能であることを意味する。したがって、multiRefIdxが0でないとき、予測モードは表3に示したように符号化される。二値化の4つのビンすべてがCABACによってバイパス符号化される。
【0022】
【0023】
通常のイントラ予測及びサブパーティションを用いたイントラ予測(ISP)では、VTM6.0のイントラモード符号化は変更されないままである。どちらの場合も、最初の参照ラインが予測に使用されるため、multiRefIdxは0に等しい。VTM6.0におけるmpmFlagの符号化は変更されない。MRLを用いたイントラ予測では、multiRefIdxが0でない場合、mpmFlagが1に設定され、CABACによって別のコンテキストで符号化される。この場合、候補MPMのインデックスが表3に示したようにバイナリ符号化され、すべてのビンがCABACによってバイパス符号化される。
【0024】
デコーダ側では、mpmFlagはmultiRefIdxフラグの値に関係なく常に復号化される。しかしながら、フラグの解析に使用されるコンテキストは、multiRefIdxフラグの値に基づいて決定される。通常のイントラ予測又はサブパーティションを用いたイントラ予測のように、multiRefIdxフラグが0に復号化された場合、mpmFlagは、VTM6.0で指定されるCABACコンテキストを用いて解析される。multiRefIdxが非0値に復号化された場合、第2のCABACコンテキストがmpmFlagの解析に使用される。次いで、候補MPMのビンがCABACによってバイパス復号化される。どちらの場合も、CUの予測モードは、復号化されたインデックス値を有するMPM候補として復号化される。
【0025】
multiRefIdxが0でないとき(第2のコンテキスト)のCABAC初期確率パラメータは、この場合にはmpmFlagが強制的に1であるので、高い確率(1に近い)を生成するように設定されることが有利である。
【0026】
図2はVTM6.0におけるイントラモード復号化のフローチャートを示しており、
図3は本提案におけるイントラモード復号化のフローチャートを示している。
図3におけるハイライトされたブロックは、VTM6.0の実装に対する本提案の変更点を示している。
CABACコンテキストの選択
【0027】
以下では、CABAC初期化プロセスの変更点の根拠を説明する。別の提案では、CABACモデルの初期確率値は、QP(量子化パラメータ:quantization parameter)に依存する線形モデルによって与えられる。
【0028】
proba(QP)=(a/2)*(QP-16)+b
式中、「a」は傾き、「b」はオフセットを表す。「a」及び「b」のいずれも、シンタックス要素に対応する所定のビンの仕様にハードコードされている。CABACでは各読み出しビンにおいて確率が更新されるため、シンボル確率を更新するために2つの「ウィンドウサイズ」も使用される。ウィンドウサイズに応じて、確率の更新は速くなったり遅くなったりする。例えば、元のMPMフラグの初期CABACパラメータでは、インターフレームにおいてQPが32の場合、確率は近似的に0.57(VTM-6.0におけるパラメータ36に対応する)(QPに依存しない、すなわち傾きがヌルである)、イントラフレームの場合は確率が0.77(VTM-6.0における初期パラメータ45に対応する)である。
【0029】
multiRefIdx>0のときにmpmFlagの符号化を行う複雑度の低いエンコーダが不利にならないように、bを大きくして高確率モデルでCABAC確率を初期化することを提案する。例えば、a=0(傾きがヌル、すなわちQPに依存しない)、b=0.99(初期CABACパラメータ39に対応する)である。高い初期確率を与える他の値も使用することができる。例えば、QPの初期確率関数を維持し、a=0、b=0.99(初期CABACパラメータ47に対応する)である。
【0030】
これらの初期確率モデルを使用することによって、別の提案で説明するような、multiRefIdx>0のときにもmpmFlagの符号化を行う複雑度の低いエンコーダは性能的に不利ではなく(性能はほぼ同じままである)、より複雑なエンコーダは、必要に応じて新たに利用可能な機能を活用することができる。
実験結果
【0031】
VTM6.0コーデックを用いた提案するmpmFlagシグナリングを、共通のテスト条件でAll Intra(AI)設定において実施した。表4は、VTM6.0アンカーに対する提案する変更のBDレート性能を示している。このように、BDレートの性能及び複雑さはVTM6.0の場合とほぼ同じであることがわかる。
【0032】
【0033】
提案する方法の1つの利点は、デコーダにおけるシンタックス及び解析においてかなり均一であることである。更に、MRLイントラ予測を用いてmpmFlagをシグナリングできるため、CUに利用可能なすべての参照ラインを使用して、すべてのイントラ予測モードを考慮することができる。
【0034】
本文書では、ツール、機能、実施形態、モデル、方法などを含めて、様々な態様について説明する。これらの態様の多くは、具体的に説明されており、少なくとも個々の特徴を示すために、しばしば本発明を制限するように読み取れることがある。しかしながら、これは説明を明確にすることを目的としており、それらの態様の適用又は範囲を限定するものではない。実際に、すべての異なる態様は、組み合わせる、又は入れ替えて、更なる態様を提供することができる。更に、これらの態様は、以前の出願に記載されている態様とも組み合わせたり入れ替えたりすることができる。
【0035】
本文書に説明され、企図されている態様は、多くの異なる形態において実施することができる。以下の
図4、
図5、及び
図6は、いくつかの実施形態を提供するが、他の実施形態も企図されており、
図4、
図5、及び
図6の説明は、実装形態の範囲を制限しない。態様のうちの少なくとも1つは、一般に、ビデオの符号化及び復号化に関するものであり、少なくとも1つの別の態様は、一般に、生成又は符号化されたビットストリームを送信することに関する。これら及び別の態様は、方法、装置、説明した方法のいずれかに従ってビデオデータを符号化又は復号化するための命令を自身に格納したコンピュータ可読記憶媒体、及び/又は、説明した方法のいずれかに従って生成されたビットストリームを自身に格納したコンピュータ可読記憶媒体、として実施することができる。
【0036】
本出願では、「再構成された」及び「復号化された」という用語は互換的に使用することができ、「ピクセル」及び「サンプル」という用語は互換的に使用することができ、「画像」、「ピクチャ」、及び「フレーム」という用語は互換的に使用することができる。通常では、必ずしもそうではないが、「再構成された」という用語はエンコーダ側で使用され、「復号化された」という用語はデコーダ側で使用される。
【0037】
本明細書には様々な方法が説明されており、各方法は、説明した方法を実現するための1つ以上のステップ又はアクションを含む。方法を正しく動作させるためにステップ又はアクションの特定の順序が要求されない限りは、特定のステップ及び/又はアクションの順序及び/又は使用を、変更又は組み合わせることができる。
【0038】
本文書に記載されている様々な方法及び他の態様を使用して、
図4及び
図5に示したようなビデオエンコーダ100及びビデオデコーダ200のモジュール、例えばイントラ予測モジュール、エントロピ符号化モジュール、及び/又は復号化モジュール(160、360、145、330)を変更することができる。更に、本開示の態様は、VVC又はHEVCに限定されず、例えば、既存のものであれ将来開発されるものであれ、他の規格及び勧告、並びに任意のそのような規格及び勧告(VVC及びHEVCを含む)の拡張に適用することができる。特に明記されていない限り、又は技術的に不可能でない限り、本文書に記載されている態様は、個別に又は組み合わせて使用することができる。
【0039】
本文書では、例えば{{1,0}、{3,1}、{1,1}}のように様々な数値が使用されている。具体的な値は例示を目的としており、記載されている態様はこれらの具体的な値に限定されるものではない。
【0040】
図4は、エンコーダ100を示している。このエンコーダ100の変形形態が考えられるが、明確さを目的として、以下では予想されるすべての変形形態を記載することなくエンコーダ100について説明する。
【0041】
ビデオシーケンスは、符号化される前に、符号化前処理(101)を受けてもよく、例えば、入力カラーピクチャに色変換を適用する(例えばRGB 4:4:4からYCbCr 4:2:0への変換)、圧縮に対してより耐性のある信号分布を得るために入力ピクチャ成分の再マッピングを実行する(例えば色成分の1つのヒストグラム等化を使用する)。メタデータを前処理に関連付けて、ビットストリームに付加することができる。
【0042】
エンコーダ100では、以下に説明するエンコーダ要素によってピクチャが符号化される。符号化されるピクチャは、例えばCUというユニットに分割され(102)、処理される。各ユニットは、例えばイントラモード又はインターモードのいずれかを使用して符号化される。ユニットがイントラモードで符号化される場合、イントラ予測(160)を実行する。インターモードでは、動き推定(175)及び動き補償(170)が実行される。エンコーダは、ユニットの符号化にイントラモードとインターモードのどちらを使用するかを決定し(105)、イントラ/インターの決定を、例えば予測モードフラグによって示す。予測残差は、例えば元の画像ブロックから予測ブロックを減算する(110)ことによって計算される。
【0043】
次に、予測残差が変換され(125)、量子化される(130)。量子化された変換係数と、動きベクトル及び他のシンタックス要素がエントロピ符号化され(145)、ビットストリームを出力する。エンコーダは、変換をスキップして、変換されていない残差信号に量子化を直接適用することができる。エンコーダは、変換及び量子化の両方をバイパスすることができ、すなわち残差は、変換処理又は量子化処理を適用することなく直接符号化される。
【0044】
エンコーダは、更なる予測のための参照データを提供するため、符号化されたブロックを復号化する。予測残差を復号化するため、量子化された変換係数が逆量子化され(140)、逆変換される(150)。復号化された予測残差と予測されたブロックを合成して(155)、画像ブロックが再構成される。再構成されたピクチャにインループフィルタ(165)が適用され、例えばデブロッキング/SAO(サンプル適応オフセット:Sample Adaptive Offset)フィルタリングを行い、符号化アーチファクトを低減する。フィルタリングされた画像が、参照ピクチャバッファ(180)に格納される。
【0045】
図5は、ビデオデコーダ200のブロック図を示している。デコーダ200では、以下に説明するデコーダ要素によってビットストリームが復号化される。ビデオデコーダ200は、一般に、
図4に説明したような符号化パスとは逆向きの復号化パスを実行する。エンコーダ100は、一般に、ビデオデータの符号化の一部としてビデオの復号化も実行する。
【0046】
デコーダの入力はビデオビットストリームを含み、このビットストリームはビデオエンコーダ100によって生成することができる。ビットストリームは、最初にエントロピ復号化され(230)、変換係数、動きベクトル、及び他の符号化された情報を得る。ピクチャ分割情報は、ピクチャがどのように分割されているかを示す。したがってデコーダは、復号化されたピクチャ分割情報に従ってピクチャを分割することができる(235)。予測残差を復号化するために、変換係数が逆量子化(240)及び逆変換(250)される。復号化された予測残差と予測されたブロックを合成し(255)、画像ブロックを再構成する。予測されたブロックは、イントラ予測(260)又は動き補償された予測(すなわちインター予測)(275)から得ることができる(270)。再構成された画像にインループフィルタ(265)が適用される。フィルタリングされた画像が、参照ピクチャバッファ(280)に格納される。
【0047】
復号化されたピクチャは、復号化後処理(285)を更に受けることができ、例えば逆色変換(例えばYCbCr 4:2:0からRGB 4:4:4への変換)や、符号化前処理(101)で行われた再マッピング処理の逆を行う逆再マッピングである。復号化後処理では、符号化前処理で導出されてビットストリームでシグナリングされたメタデータを使用することができる。
【0048】
図6は、様々な態様及び実施形態が実装されているシステムの一例のブロック図を示している。システム1000は、以下に説明する様々な構成要素を含む装置として具現化することができ、本文書に説明する態様のうちの1つ以上を実行するように構成されている。このような装置の例としては、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、デジタルマルチメディアセットトップボックス、デジタルテレビ受信機、パーソナルビデオ録画システム、接続型家電、及びサーバなどの様々な電子デバイスが挙げられ、ただしこれらに限定されない。システム1000の要素は、単独で又は組み合わせて、単一の集積回路、複数のIC、及び/又はディスクリート部品において具現化することができる。例えば、少なくとも一実施形態において、システム1000の処理要素及びエンコーダ/デコーダ要素は、複数のIC及び/又はディスクリート部品に分散される。様々な実施形態において、システム1000は、例えば通信バスを介して、又は専用の入力ポート及び/又は出力ポートを通じて、他の同様のシステム、又は他の電子デバイスに通信可能に結合される。様々な実施形態において、システム1000は、本文書に記載されている態様のうちの1つ以上を実施するように構成されている。
【0049】
システム1000は、例えば本文書に記載された様々な態様を実施するために、自身にロードされた命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサ1010を含む。プロセッサ1010は、組み込みメモリ、入力出力インターフェース、及びこの技術分野で公知である他の様々な回路を含むことができる。システム1000は、少なくとも1つのメモリ1020(例えば揮発性メモリデバイス及び/又は不揮発性メモリデバイス)を含む。システム1000は、記憶装置1040を含み、この記憶装置は、EEPROM、ROM、PROM、RAM、DRAM、SRAM、フラッシュ、磁気ディスクドライブ、及び/又は光ディスクドライブを含む(ただしこれらに限定されない)、不揮発性メモリ及び/又は揮発性メモリを含むことができる。記憶装置1040は、非限定的な例として、内部記憶装置、外付け記憶装置、及び/又はネットワークアクセス可能な記憶装置を含むことができる。
【0050】
システム1000は、例えば、データを処理して符号化ビデオ又は復号化ビデオを提供するように構成されたエンコーダ/デコーダモジュール1030を含み、エンコーダ/デコーダモジュール1030は、それ自身のプロセッサ及びメモリを含むことができる。エンコーダ/デコーダモジュール1030は、符号化機能及び/又は復号化機能を実行するためにデバイスに含めることのできる(1つ以上の)モジュールを表す。公知であるように、デバイスは、符号化モジュール及び復号化モジュールの一方又は両方を含むことができる。更に、エンコーダ/デコーダモジュール1030は、システム1000の別個の要素として実施することができる、又は当業者に公知であるように、ハードウェア及びソフトウェアの組合せとしてプロセッサ1010内に組み込むことができる。
【0051】
本文書に記載された様々な態様を実行するためにプロセッサ1010又はエンコーダ/デコーダ1030にロードされるプログラムコードは、記憶装置1040に格納することができ、その後、プロセッサ1010による実行のためにメモリ1020にロードすることができる。様々な実施形態に従って、プロセッサ1010、メモリ1020、記憶装置1040、及びエンコーダ/デコーダモジュール1030のうちの1つ以上は、本文書に記載された処理の実行中に様々な項目のうちの1つ以上を格納することができる。そのような格納される項目としては、入力ビデオ、復号化されたビデオ又は復号化されたビデオの一部、ビットストリーム、行列、変数、更には方程式、数式、演算、及び演算論理の処理からの中間結果又は最終結果が挙げられ、ただしこれらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、プロセッサ1010及び/又はエンコーダ/デコーダモジュール1030の内部のメモリは、命令を格納するためと、符号化又は復号化中に必要とされる処理のためのワーキングメモリを提供するために使用される。しかしながら、別の実施形態では、処理デバイス(処理デバイスは例えばプロセッサ1010又はエンコーダ/デコーダモジュール1030のいずれかとすることができる)の外部のメモリが、これらの機能のうちの1つ以上のために使用される。外部のメモリは、メモリ1020及び/又は記憶装置1040、例えばダイナミック揮発性メモリ及び/又は不揮発性フラッシュメモリとすることができる。いくつかの実施形態では、外部不揮発性フラッシュメモリが、テレビのオペレーティングシステムを格納するために使用される。少なくとも一実施形態では、RAMなどの高速な外部ダイナミック揮発性メモリが、MPEG-2、HEVC、又はVVC(多用途ビデオコーディング)などのビデオ符号化動作及び復号化動作のためのワーキングメモリとして使用される。
【0053】
システム1000の要素への入力は、ブロック1130に示されるように、様々な入力デバイスを通じて提供することができる。このような入力デバイスとしては、(i)例えば放送局によって無線で送信されるRF信号を受信するRF部、(ii)コンポジット入力端子、(iii)USB入力端子、及び/又は(iv)HDMI入力端子が挙げられ、ただしこれらに限定されない。
【0054】
様々な実施形態において、ブロック1130の入力デバイスは、この技術分野で公知であるように、関連するそれぞれの入力処理要素を有する。例えば、RF部は、(i)所望の周波数を選択する(信号を選択する、又は信号を特定の周波数帯域に帯域制限するとも称される)、(ii)選択された信号をダウンコンバートする、(iii)(例えば)特定の実施形態においてチャネルと呼ばれ得る信号周波数帯域を選択するために、より狭い周波数帯域に再び帯域制限する、(iv)ダウンコンバートされて帯域制限された信号を復調する、(v)誤り訂正を行う、(vi)逆多重化してデータパケットの望ましいストリームを選択する、ために必要な要素を関連付けることができる。様々な実施形態のRF部は、これらの機能を実行する1つ以上の要素、例えば、周波数セレクタ、信号セレクタ、バンドリミッタ、チャネルセレクタ、フィルタ、ダウンコンバータ、復調器、エラー訂正器、及びデマルチプレクサを含む。RF部は、例えば、受信信号をより低い周波数(例えば中間周波数又はベースバンドに近い周波数)又はベースバンドにダウンコンバートすることを含む、これらの機能のうちの様々な機能を実行するチューナを含むことができる。セットトップボックスの一実施形態では、RF部及びその関連する入力処理要素は、有線(例えばケーブル)媒体を介して伝送されるRF信号を受信し、所望の周波数帯域にフィルタリング、ダウンコンバート、及び再フィルタリングすることによって周波数選択を実行する。様々な実施形態では、上述した(及び他の)要素の順序を並べ替える、これらの要素の一部を削除する、及び/又は、類似若しくは異なる機能を実行する他の要素を追加する。要素を追加することは、既存の要素の間に要素を挿入すること、例えば、増幅器及びアナログ-デジタル変換器を挿入することを含むことができる。様々な実施形態において、RF部はアンテナを含む。
【0055】
更に、USB端子及び/又はHDMI端子は、システム1000をUSB接続及び/又はHDMI接続を介して他の電子デバイスに接続するためのそれぞれのインターフェースプロセッサを含むことができる。入力処理の様々な側面、例えばリード-ソロモンエラー訂正は、例えば必要に応じて、別個の入力処理IC内で実施する、又はプロセッサ1010内で実施することができることを理解されたい。同様に、USB又はHDMIインターフェース処理の側面は、必要に応じて、別個のインターフェースIC内で、又はプロセッサ1010内で実施することができる。復調されてエラー訂正され、更に逆多重化されたストリームは、出力デバイス上に提示するための必要に応じてデータストリームを処理するため、例えば、プロセッサ1010、並びにメモリ及びストレージ要素と組み合わせて動作するエンコーダ/デコーダ1030を含む様々な処理要素に提供される。
【0056】
システム1000の様々な要素は、統合されたハウジング内に設けることができ、統合されたハウジング内では、様々な要素は、適切な接続構成1140、例えば、I2Cバス、配線、及びプリント回路基板を含むこの技術分野で公知の内部バスを使用して相互に接続され、互いの間でデータを伝送することができる。
【0057】
システム1000は、通信チャネル1060を介して他のデバイスとの通信を可能にする通信インターフェース1050を含む。通信インターフェース1050は、通信チャネル1060を介してデータを送信及び受信するように構成された送受信機を含むことができ、ただしこれに限定されない。通信インターフェース1050は、モデム又はネットワークカードを含むことができ、ただしこれに限定されず、通信チャネル1060は、例えば有線媒体及び/又は無線媒体内に実施することができる。
【0058】
データは、様々な実施形態において、IEEE802.11などの無線ネットワークを使用して、システム1000にストリーミングされる。これらの実施形態の無線信号は、例えば、Wi-Fi通信用に適合された通信チャネル1060及び通信インターフェース1050を介して受信される。これらの実施形態の通信チャネル1060は、一般には、ストリーミングアプリケーション及び他のオーバーザトップ通信を可能にするためにインターネットを含む外部ネットワークへのアクセスを提供するアクセスポイント又はルータに接続される。別の実施形態では、入力ブロック1130のHDMI接続を介してデータを配信するセットトップボックスを使用して、システム1000にストリーミングデータを提供する。更に別の実施形態では、入力ブロック1130のRF接続を使用してシステム1000にストリーミングデータを提供する。
【0059】
システム1000は、ディスプレイ1100、スピーカ1110、及び他の周辺機器1120を含む様々な出力デバイスに出力信号を提供することができる。他の周辺機器1120は、実施形態の様々な例において、スタンドアロンDVR、ディスクプレーヤー、ステレオシステム、照明システム、及びシステム1000の出力に基づいて機能を提供する他のデバイス、のうちの1つ以上を含む。様々な実施形態において、制御信号は、AV.Link、CEC、又はユーザ介入あり又はなしでデバイス間制御を可能にする他の通信プロトコルなどのシグナリングを使用して、システム1000とディスプレイ1100、スピーカ1110、又は他の周辺機器1120との間で伝えられる。出力デバイスは、それぞれのインターフェース1070、1080、及び1090を通じた専用接続を介してシステム1000に通信可能に結合することができる。あるいは、出力デバイスは、通信インターフェース1050を介して通信チャネル1060を使用してシステム1000に接続することができる。ディスプレイ1100及びスピーカ1110は、例えばテレビなどの電子デバイスにおいて、システム1000の他の構成要素と共に単一ユニットに統合することができる。様々な実施形態において、ディスプレイインターフェース1070は、ディスプレイドライバ、例えばタイミングコントローラ(timing controller、T Con)チップを含む。
【0060】
これに代えて、例えば、入力1130のRF部が個別のセットトップボックスの一部である場合、ディスプレイ1100及びスピーカ1110を他の構成要素のうちの1つ以上から分離することができる。ディスプレイ1100及びスピーカ1110が外部構成要素である様々な実施形態では、出力信号は、例えばHDMIポート、USBポート、又はCOMP出力を含む専用の出力接続を介して提供することができる。
【0061】
実施形態は、プロセッサ1010によって実施されるコンピュータソフトウェアによって、又はハードウェアによって、又はハードウェアとソフトウェアの組合せによって、実行することができる。非限定的な例として、実施形態は、1つ以上の集積回路によって実施することができる。メモリ1020は、技術環境に適した任意のタイプとすることができ、非限定的な例として、光学メモリデバイス、磁気メモリデバイス、半導体ベースのメモリデバイス、固定メモリ、及び取り外し可能なメモリなどの任意の適切なデータ記憶技術を使用して実施することができる。プロセッサ1010は、技術環境に適した任意のタイプとすることができ、非限定的な例として、マイクロプロセッサ、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、及びマルチコアアーキテクチャに基づくプロセッサ、のうちの1つ以上を包含することができる。
【0062】
様々な実装形態は、復号化することを含む。本出願で使用される「復号化」は、例えば、表示するのに適した最終出力を生成するために、受信した符号化シーケンスに対して実行される処理のすべて又は一部を包含することができる。様々な実施形態において、このような処理は、例えば、エントロピ復号化、逆量子化、逆変換、及び差動復号化など、デコーダによって一般的に実行される処理のうちの1つ以上を含む。様々な実施形態において、このような処理は、これらに加えて、またこれらに代えて、例えば様々なイントラ予測参照配列(intra prediction reference arrays)に使用される重みのインデックスを抽出するなど、本出願に説明される様々な実装形態のデコーダによって実行される処理を含む。
【0063】
更なる例として、一実施形態では「復号化」はエントロピ復号化のみを指し、別の実施形態では「復号化」は差動復号化のみを指し、別の実施形態では「復号化」はエントロピ復号化及び差動復号化の組合せを指す。「復号化処理」という語句が、操作のサブセットを具体的に指すことを意図しているか、又はより広範な復号化処理を一般的に指すことを意図しているかは、特定の説明の文脈に基づいて明らかになり、当業者にはよく理解されると考えられる。
【0064】
様々な実装形態は、符号化することを含む。本出願で使用される「符号化」は、「復号化」に関する上記の説明と同様に、例えば、符号化されたビットストリームを生成するために入力ビデオシーケンスに対して実行される処理のすべて又は一部を包含することができる。様々な実施形態において、このような処理は、例えば、分割、差動符号化、変換、量子化、及びエントロピ符号化など、エンコーダによって一般的に実行される処理のうちの1つ以上を含む。様々な実施形態において、このような処理は、これらに加えて、又はこれらに代えて、例えば、イントラ予測参照配列の重み付けなど、本出願に説明される様々な実装形態のエンコーダによって実行される処理を含む。
【0065】
更なる例として、一実施形態では「符号化」はエントロピ符号化のみを指し、別の実施形態では「符号化」は差動符号化のみを指し、別の実施形態では「符号化」は差動符号化とエントロピ符号化の組合せを指す。「符号化処理」という語句が、操作のサブセットを具体的に指すことを意図しているか、又はより広範な符号化処理を一般的に指すことを意図しているかは、特定の説明の文脈に基づいて明らかになり、当業者にはよく理解されると考えられる。
【0066】
本明細書で使用されるシンタックス要素は、説明上の用語であることに留意されたい。したがって、これらは他のシンタックス要素名の使用を排除するものではない。
【0067】
図がフローチャートとして提示されている場合、その図は対応する装置のブロック図も提供するものと理解されたい。同様に、図がブロック図として提示されている場合、その図は対応する方法/処理のフローチャートも提供するものと理解されたい。
【0068】
様々な実施形態では、レート歪み計算又はレート歪み最適化に言及している。符号化処理時、通常では、しばしば計算の複雑性の制約が与えられて、レートと歪みの間のバランス又はトレードオフが考慮される。レート歪み最適化は、通常、レートと歪みの加重和であるレート歪み関数を最小化するように定式化される。レート歪み最適化問題を解くには、様々なアプローチがある。例えば、これらのアプローチは、すべての考慮されるモード又は符号化パラメータ値を含むすべての符号化オプションの広範なテストに基づいてもよく、それらの符号化コストと、符号化及び復号化後の再構成された信号の関連する歪みを完全に評価してもよい。また、符号化の複雑さを軽減するために、より高速なアプローチ、特に、再構成された信号ではなく、予測又は予測残差信号に基づく近似歪みの計算を使用することもできる。これらの2つのアプローチを組み合わせて使用することもでき、例えば、可能な符号化オプションの一部のみに対して近似歪みを使用し、他の符号化オプションに対しては完全な歪みを使用することができる。別のアプローチでは、可能な符号化オプションのサブセットのみを評価する。より一般的には、多くのアプローチは、最適化を実行するために様々な技術のいずれかを採用するが、最適化は、必ずしも符号化コスト及び関連する歪みの両方の完全な評価ではない。
【0069】
本明細書に記載された実装形態及び態様は、例えば、方法又はプロセス、装置、ソフトウェアプログラム、データストリーム、又は信号において実施することができる。たとえ単一の形式の実装形態の文脈でのみ説明されている場合でも(例えば方法としてのみ説明されている)、説明された特徴の実装形態は、他の形式(例えば装置又はプログラム)でも実施することができる。装置は、例えば、適切なハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアにおいて実施することができる。方法は、例えばプロセッサにおいて実施することができ、プロセッサは、例えば、コンピュータ、マイクロプロセッサ、集積回路、又はプログラマブルロジックデバイスを含む一般的な処理装置を指す。更にプロセッサは、例えば、コンピュータ、携帯電話、ポータブル/パーソナルデジタルアシスタント(「PDA」)、及びエンドユーザ間の情報の通信を容易にする他のデバイスなどの通信デバイスを含む。
【0070】
「一実施形態」又は「実施形態」又は「一実装形態」又は「実装形態」、及びそれらの他の変形形態の言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、特性などが、少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本文書を通じて様々な場所に現れる「一実施形態において」又は「実施形態において」又は「一実装形態において」又は「実装形態において」という表現、及びその他のバリエーションは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。
【0071】
更に本文書では、様々な情報を「決定する」と表現することがある。情報を決定することは、例えば、情報を推定する、情報を計算する、情報を予測する、又はメモリから情報を取得することのうちの1つ以上を含むことができる。
【0072】
更に本文書では、様々な情報に「アクセスする」と表現することがある。情報にアクセスすることは、例えば、情報を受信する、(例えばメモリから)情報を取得する、情報を格納する、情報を移動する、情報をコピーする、情報を計算する、情報を決定する、情報を予測する、又は情報を推定することのうちの1つ以上を含むことができる。
【0073】
更に本文書では、様々な情報を「受信する」と表現することがある。受信することは、「アクセスする」と同様に、広義の用語であることを意図している。情報を受信することは、例えば、情報にアクセスする、又は(例えばメモリから)情報を取得することのうちの1つ以上を含むことができる。更に、「受信する」は、一般には、例えば、情報を格納する、情報を処理する、情報を送信する、情報を移動する、情報をコピーする、情報を消去する、情報を計算する、情報を決定する、情報を予測する、又は情報を推定するなどの操作時に、何らかの形で関与する。
【0074】
「/」、「及び/又は」、「のうちの少なくとも1つ」のいずれかの使用、例えば、「A/B」、「A及び/又はB」、「A及びBのうちの少なくとも1つ」の場合、最初にリストされた選択肢(A)のみの選択、又は2番目にリストされた選択肢(B)のみの選択、又は両方の選択肢(A及びB)の選択を包含することを意図しているものと理解されたい。更なる例として、「A、B、及び/又はC」及び「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」の場合、このような表現は、最初にリストされた選択肢(A)のみの選択、又は2番目にリストされた選択肢(B)のみの選択、又は3番目にリストされた選択肢(C)のみの選択、又は、最初及び2番目にリストされた選択肢(A及びB)のみの選択、又は、最初及び3番目にリストされた選択肢(A及びC)のみの選択、又は、2番目及び3番目にリストされた選択肢(B及びC)のみの選択、又は3つの選択肢(A及びB及びC)すべての選択、を包含するように意図されている。このことは、この技術分野及び関連技術分野の通常の技術を有する者に明らかであるように、リストされた項目の数だけ拡張することができる。
【0075】
また、本明細書で使用される「シグナリングする」という語は、特に、対応するデコーダに対して何かを示すことを意味する。例えば、特定の実施形態では、エンコーダは、イントラ予測参照配列に使用される複数の重みのうちの特定の1つをシグナリングする。このように、ある実施形態では、同じパラメータがエンコーダ側とデコーダ側の両方で使用される。したがって、例えばエンコーダは、デコーダが同じ特定のパラメータを使用できるように、特定のパラメータをデコーダに送信する(明示的なシグナリング)ことができる。逆に、デコーダがすでにその特定のパラメータ及び他のパラメータを有する場合は、送信を行わないシグナリングを使用して(暗黙的なシグナリング)、デコーダがその特定のパラメータを認識して選択できるようにするだけでよい。実際の機能の伝送を回避することにより、様々な実施形態において、ビットの節約が実現される。シグナリングは、様々な方法で達成できることを理解されたい。例えば、1つ以上のシンタックス要素、フラグなどが、様々な実施形態において、対応するデコーダに情報をシグナリングするために使用される。上の説明は、語「信号(signal)」の動詞形に関するものであるが、語「信号」は、本明細書では名詞としても使用され得る。
【0076】
この技術分野における通常の技術を有する者には明らかなように、実装形態では、例えば、格納又は送信することのできる情報を伝えるようにフォーマットされた様々な信号を生成することができる。これらの情報は、例えば、方法を実行するための命令、又は説明されている実装形態の1つによって生成されるデータを含むことができる。例えば、説明されている実施形態のビットストリームを伝えるように信号をフォーマットすることができる。このような信号は、例えば、電磁波として(例えばスペクトルの無線周波数部分を使用する)、又はベースバンド信号としてフォーマットすることができる。フォーマットすることは、例えば、データストリームを符号化すること、及び符号化されたデータストリームで搬送波を変調することを含むことができる。信号が伝える情報は、例えば、アナログ情報又はデジタル情報とすることができる。信号は、公知であるように、様々な異なる有線リンク又は無線リンクを介して伝送することができる。信号は、プロセッサ可読媒体に格納することができる。
【0077】
実施形態は、様々な異なる請求項のカテゴリ及びタイプにわたり、以下の特徴又はエンティティの1つ以上を単独又は組合せにおいて含むことができる。
・複数参照ラインを示すようにフラグを設定し、別のCABACコンテキストで符号化する。
・複数参照ラインインデックスフラグの値に基づいて、フラグの解析に使用するコンテキストを決定する。
・CABACを使用して最確モード候補のビンをバイパス復号化する。
・説明したシンタックス要素又はそのバリエーションのうちの1つ以上を含むビットストリーム又は信号。
・説明したシンタックス要素又はそのバリエーションのうちの1つ以上を含むビットストリーム又は信号を作成及び/又は送信及び/又は受信及び/又は復号化すること。
・説明した実施形態のいずれかに従ってインループフィルタリングを実行するテレビ、セットトップボックス、携帯電話、タブレット、又は他の電子デバイス。
・説明した実施形態のいずれかに従ってインループフィルタリングを実行し、得られた画像を(例えばモニタ、スクリーン、又は他のタイプのディスプレイを使用して)表示するテレビ、セットトップボックス、携帯電話、タブレット、又は他の電子デバイス。
・符号化された画像を含む信号を受信するために(例えばチューナを使用して)チャネルをチューニングし、説明した実施形態のいずれかに従ってインループフィルタリングを実行する、テレビ、セットトップボックス、携帯電話、タブレット、又は他の電子デバイス。
・符号化された画像を含む信号を(例えばアンテナを使用して)無線で受信し、説明した実施形態のいずれかに従ってインループフィルタリングを実行するテレビ、セットトップボックス、携帯電話、タブレット、又は他の電子デバイス。
【0078】
本明細書において説明した一般的な態様の下での方法700の一実施形態を、
図7に示してある。この方法は、開始ブロック701から開始され、制御はブロック710に進み、ビデオビットストリームを解析して、複数参照ラインイントラ符号化が使用されているかどうかを判定する。制御はブロック710からブロック720に進み、CABACコンテキストを使用して判定に基づいて最確モードフラグを復号化してイントラ符号化モードを決定する。制御はブロック720からブロック730に進み、イントラ符号化モードに基づいてビデオビットストリームを復号化する。
【0079】
本明細書において説明した一般的な態様の下での方法800の一実施形態を、
図8に示してある。この方法は、開始ブロック801から開始され、制御はブロック810に進み、複数参照ラインイントラビデオ符号化を示すフラグをCABACコンテキストを用いて符号化する。制御はブロック810からブロック820に進み、使用されるイントラ符号化モードを表すイントラ符号化モードインデックスを符号化する。制御はブロック820からブロック830に進み、符号化されたフラグ及びイントラ符号化モードインデックスを有するビデオビットストリームを、そのイントラ符号化モードを使用して符号化する。
【0080】
図9は、近傍のサンプルに依存するパラメトリックモデルに基づく符号化モードの簡略化を使用して、ビデオデータを符号化、復号化、圧縮、又は伸張する装置900の一実施形態を示している。この装置は、プロセッサ910を備えており、少なくとも1つのポートを通じてメモリ920に相互接続することができる。プロセッサ910及びメモリ920の両方は、外部接続への1つ以上の追加の相互接続を有することもできる。
【0081】
更にプロセッサ910は、ビットストリームにおいて情報を挿入又は受信し、説明した態様のいずれかを使用して圧縮、符号化、又は復号化するように構成されている。
【0082】
様々な他の一般化された、並びに特定化された発明及び請求項も、本説明全体を通じてサポート及び企図されている。
【国際調査報告】