(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】電力変圧器組立体を密封する熱伝導性化合物と電力変圧器組立体
(51)【国際特許分類】
H01F 27/22 20060101AFI20221114BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20221114BHJP
H01F 30/12 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H01F27/22
H01F30/10 J
H01F30/10 S
H01F30/10 G
H01F30/12 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514582
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2020073290
(87)【国際公開番号】W WO2021052703
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161894
【氏名又は名称】プレモ,エスアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】ナバッロ ペレス,フランシスコ エツェクイエル
【テーマコード(参考)】
5E050
【Fターム(参考)】
5E050JA03
(57)【要約】
【課題】 熱放散を増加させ構成要素を封止する熱伝導性化合物を提供する。
【解決手段】 本発明の熱伝導性化合物は充填材を含む。前記充填材は第1と第2と第3の充填材を含む。前記第1充填材は石英、珪岩、大理石、砂、又は炭酸カルシウムの微細粉砕粒子を含む天然鉱物充填材である。前記第2充填材は所定量の水酸化アルミニウムを含む。前記熱伝導性化合物は更にシリコン樹脂を含み、前記第3充填材は所定量の熱伝導性かつ導電性粒子を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変圧器を封止する熱伝導性化合物において、
前記熱伝導性化合物(10)は充填材を含み、前記充填材は少なくとも第1充填材と第2充填材とを含み、
前記第1充填材は石英、珪岩、大理石、砂、又は炭酸カルシウムの微細粉砕粒子を含む天然鉱物充填材であり、
前記第2充填材は所定量の水酸化アルミニウムを含み、
前記熱伝導性化合物(10)は更にシリコン樹脂を含み、
前記充填材は所定量の熱伝導性又は導電性の粒子を含む第3充填材を含み、前記第3充填材の含有量は、前記熱伝導性化合物(10)に電気抵抗を与え、10kV以上の電圧で前記熱伝導性化合物(10)の絶縁性能を維持する程度である
ことを特徴とする熱伝導性化合物。
【請求項2】
前記熱伝導性又は導電性の粒子は、金属製粒子、金属製酸化物又はグラファイトを含む、
ことを特徴とする請求項1記載の熱伝導性化合物。
【請求項3】
充填材を含む熱伝導性化合物(10)により密封され第1巻線と第2巻線を備えた磁気コア(12A,12B)を含む電力変圧器組立体(1)において、
前記充填材は、少なくとも第1充填材と第2充填材とを含み、前記第1充填材は石英、珪岩、大理石、砂、又は炭酸カルシウムの微細粉砕粒子を含む天然鉱物充填材であり、前記第2充填材は所定量の水酸化アルミニウムを含み、
前記熱伝導性化合物(10)はシリコン樹脂を含み、
前記充填材は所定量の熱伝導性又は導電性の粒子を含む第3充填材を含み、前記第3充填材の含有量は、前記熱伝導性化合物(10)に電気抵抗を与え、10kV以上の電圧で前記熱伝導性化合物(10)の絶縁性能を維持する程度である
ことを特徴とする電力変圧器組立体。
【請求項4】
前記熱伝導性化合物(10)における第1充填材の含有割合が60-90w%である
ことを特徴とする請求項3記載の電力変圧器組立体。
【請求項5】
前記天然鉱物充填材は、異なる粒径の複数の充填材を含む
ことを特徴とする請求項3記載の電力変圧器組立体。
【請求項6】
前記水酸化アルミニウムは前記熱伝導性化合物(10)の全重量の15w%含まれる
ことを特徴とする請求項3-5のいずれかに記載の電力変圧器組立体。
【請求項7】
磁気コア(12A,12B)と巻線を備えた磁気ユニットを複数個有し、前記磁気ユニットは、金属製熱伝導壁(16A、16B)とカバー(15A)で区切られた金属製ボックス(15B)の空洞内に配置される
ことを特徴とする請求項3-5のいずれかに記載の電力変圧器組立体。
【請求項8】
前記磁気ユニットの磁気コア(12A,12B)は、その中心部分が同一レベルになるよう配置され、前記電力変圧器組立体(1)の動作中に、前記磁気ユニットの温度が等温勾配となる
ことを特徴とする請求項7記載の電力変圧器組立体。
【請求項9】
前記金属製ボックス (15B) が、70W/mKを超える熱伝導率を有するアルミニウム、アルミニウム合金又はマグネシウム合金で形成されている
ことを特徴とする請求項7記載の電力変圧器組立体。
【請求項10】
前記金属製ボックス(15B)はその底部に開口部(18)を備え、前記開口部(18)を介して隣接する位置に配置された放熱要素に向かって最適な熱伝達を可能にする
ことを特徴とする請求項7又は9記載の電力変圧器組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変圧器組立体を密封しカプセル化する熱伝導性化合物に関する。本発明はまた前記熱伝導性化合物を含む電力変圧器組立体にも関する。
熱伝導性化合物は、柔軟なシリコンベースの樹脂と複数の充填材を含むが、電力変圧器や電力磁気コンポーネントで使用するために特別に開発された。これらの機器は、その動作サイクル(1.4~2.6W/mKの熱伝導率)により高い熱状態に曝される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は射出成形品を提供できる難燃性樹脂組成物を開示する。この射出成形品には、ハロゲンフリーの難燃剤を使用することで難燃性が付与され、同時に湿分耐性と前面抵抗と居住安定性に優れている。樹脂組成物は、耐熱・耐湿性、保持安定性に優れ、電線被覆材と電気・電子部品等の成形品に使用されている。電気・電子部品の一例は、コネクタ、リレー、スイッチ、 ケース部材、変圧器、コイル・ボビン等である。
【0003】
特許文献2は、高包装密度および高集積に適した長寿命と高耐久性を有する電気・電子部品(点火コイル等)を開示する。この電子部品はエポキシ樹脂又はシリコン樹脂で密封されている。線膨張係数を下げて熱伝導率を上げるために、一般的には無機充填材(シリカや水酸化アルミニウム等)を添加することもある。
【0004】
特許文献3は、樹脂がコイルの周りにコーティングされた樹脂モールドコイルの製造方法を開示する。
【特許文献1】日本特許4172113号明細書
【特許文献2】日本特許3807139号明細書
【特許文献3】特許出願2003-163131号公報
【特許文献4】US5021494
【特許文献5】US7566500B1
【特許文献6】US6025435A1
【特許文献7】US2008/011111A1
【特許文献8】US2015/376488A1
【特許文献9】US2003/050419A1
【特許文献10】US9074108
【0005】
特許文献4-8は様々な熱伝導性シリコン組成物を開示する。その有用な適用例は、電子機器パッケージの熱界面材料などの用途、熱放散の改善が必要な変圧器、電源、コイル、その他の電子機器用の熱伝導性複合材料としての使用である。
【0006】
特許文献9は、熱伝導性シリコン・ゲルを含む回路をカプセル化するために使用される高熱伝導性回転鋳造可能な化合物を開示する。
【0007】
特許文献10は、電子部品をこの固定するのに適した固定用化合物を開示する。電子部品の一例は、特にグラディエント・コイルなどの大容量コイルであり、ポリマーナノ粒子で作られた第1充填材が分散された支持マトリックスからなる。支持マトリックスは、難燃剤として使用される第2の充填材と無機粒子を含む第3の充填材も含む。無機粒子の一例は、二酸化シリコン(SiO2)、二酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、二酸化カルシウムマグネシウム(CaMg(CO3)2)、二酸化チタン(TiO2)、合成セラミック、ゼオライト、チョーク、タルク(Mg3Si4O10(OH)2)、ウォラストナイト(CaSiO3)又は純粋な炭素ベースの粒子である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した公知の解決策にもかかわらず、 熱放散を増加させ構成要素の完全性を維持する密封された変圧器組立体の新規な構成が依然として必要とされている。このような電源変圧器組立体又は他の電子部品を密封しカプセル化する新規な熱伝導性化合物も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する為に、本発明は、第1の態様によれば、電力変圧器組立体を密封する熱伝導性化合物を提供する。この熱伝導性化合物は、この分野では従来公知のように、第1充填材(即ち主充填材)と第2充填材とを含む充填材からなる。第2充填材は所定量の水酸化アルミニウム(aluminium hydroxide)を含む。
【0010】
従来公知のものとは異なり、第1充填材は天然鉱物充填材(natural mineral filter)である。天然鉱物充填材の一例は、石英、珪岩(quartzite)、大理石(marble)、砂、又は炭酸カルシウム(calcium carbonite)等の微細粉砕粒子、あるいはそれらの混合物である。更に熱伝導性化合物はシリコン樹脂(silicon resin)を含む。
【0011】
水酸化アルミニウムは、シリコン樹脂の線膨張率を下げ、シリコン樹脂の熱伝導率を上げる。
【0012】
一実施例においては、熱伝導性化合物は所定量の導電性粒子を含む第3充填材を含む。これにより、10kV以上の加電圧時の熱伝導性化合物の絶縁機能(electrical isolation)を維持する。
【0013】
第2の態様によれば、電力変圧器組立体は、従来公知のように、(少なくとも)第1巻線と第2巻線を備えた(少なくとも1つの)磁気コアを含む。これらの要素は充填材に含まれる機械的固定機能を有する熱伝導性化合物により封止(密封)される。
【0014】
充填材は第1充填材(即ち主充填材)と第2充填材とを含む。第2充填材は所定量の水酸化アルミニウムを含む。
【0015】
公知技術とは異なり、本発明においては、熱伝導性化合物はシリコン樹脂も含む。第1充填材は天然鉱物充填材であり、例えば、石英、珪岩、大理石、砂、又は炭酸カルシウム等の微細粉砕粒子又はそれらの混合物からなる。
【0016】
同じ熱伝導性化合物中に、異なる粒径の複数の天然鉱物充填材を、微細粉砕し組み合わせ詰め込んでもよい。
【0017】
一実施例においては、前記熱伝導性化合物における第1充填材の充填割合は60-90w%である。前記所定量の水酸化アルミニウムは、シリコン樹脂を含む熱伝導性化合物の全重量の15w%含まれる。
【0018】
一実施例においては、充填材は、所定量の熱伝導性かつ導電性の粒子を含む第3充填材を含む。熱伝導性かつ導電性の粒子の一例は、金属製粒子、金属酸化物、グラファイト等である。これは、電気抵抗を熱伝導性化合物に与えるが、その粒子の量は、10kV以下の電圧における熱伝導性化合物の絶縁機能を保障する程度である。第3充填材中の熱伝導性又は導電性粒子は、熱伝導性化合物の熱伝導性の大幅な上昇と、その結果としてのその放熱容量(heat evacuation capacity)の上昇を決定づける。
【0019】
本発明の電力変圧器組立体は複数の部品即ち磁気ユニットを有する。各磁気ユニットは磁気コアと巻線を有する。これらの磁気ユニットは、その中心部分が同一レベルになるよう配置され、その結果、磁気ユニットを含む電力変圧器組立体の動作中に、前記磁気ユニットの温度が等温勾配(isothermal gradient)が達成される。
【0020】
更に一実施例の磁気コアと巻線は、金属製の熱伝導性の壁で区切られたハウジング(カバーの付いた金属製ボックス)内に配置される。金属製ボックスは様々な材料から形成される。その一例は、熱伝導率が70W/mK以上のアルミ、アルミ合金、マグネシウム合金である。
【0021】
一実施例においては、金属製ボックスは、巻線に対応しその大きさに合ったサイズの開口部を備える。この開口部により、開口部を通って隣接する位置に配置された放熱要素(液体冷却装置)に向けて最適な熱伝達を可能にする、
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】複数の磁気ユニットを有する本発明の電力変圧器組立体の展開斜視図。
【
図2】
図1の電力変圧器組立体の磁気ユニットの断面図。
【
図3】電力変圧器組立体の磁気ユニットを搭載する金属製ボックスの展開斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、電力変圧器組立体1とそれを密封する熱伝導性化合物10を提案する。熱伝導性化合物10は電力変圧器組立体1に熱伝導性機能と機械的封止機能を与える。
【0024】
図1、2に示されるように、本発明の第1の実施例による電力変圧器組立体1は磁気コア12A,12Bを含む。各コア12A,12Bはそれらの周りに巻かれた第1コイルと第2コイルを含む。電力変圧器組立体1は、単一の磁気コア12A,12Bとそれ以上のコイルを有することができる。電力変圧器組立体1は、シリコン樹脂、第1充填剤および第2充填剤からなる熱伝導性化合物10によって密封されている。
【0025】
熱伝導性化合物10は電力変圧器組立体 1に注入される。これは、制御された過圧力により、熱伝導性化合物で空気を除去し置換し次に硬化させることにより行われる。これにより、電力変圧器組立体1の材料間の全ての熱インターフェースを、実質的な0W/mK(空気)から最小の1.4W/mKに増加させ、変圧器組立体1の熱放散容量を大幅に増加させる。
【0026】
第1充填材は、細かく分割された、石英、珪岩、大理石、砂、炭酸カルシウム、又はそれらの組み合わせなどの天然鉱物充填材である。従って、電力変圧器組立体 1の製造コストは大幅に削減され、かつ変圧器の熱放散能力も改善される。
【0027】
第2充填材は所定量の水酸化アルミニウム又はその誘導体でできている。かくして シリコン樹脂の線膨張係数を低下させ熱伝導率を上げる。この化合物は大電力にさらされた時に磁気コア12A,12Bのキュリー点(Curie Point)に対する熱保護を提供する。これは、相変化エンタルピーによって熱を吸収する金属製水酸化物を添加し、固体をガスに変換する(昇華相)ことにより行われる。これは、水に変換されたOH基を放出するプロセス全体を通して、温度を安定的にキュリー温度以下に保ちながら、行われる。
【0028】
熱伝導性化合物10中の第1充填剤の割合は、60-90%の間で変化し得る。熱伝導性化合物10の残余部分(即ちシリコン樹脂および第2充填剤)に応じて、異なる熱伝導率の結果を達成することができる。例えば、40%のシリコンと60%の水酸化アルミニウムで、105W/mKが達成される。35%のシリコンと65%の水酸化アルミニウムで、1.2W/mKが達成される。
【0029】
一実施例では、熱伝導性化合物10は、限られた量の導電性粒子を含む第3充填剤をさらに含むことができる。それ故、電気抵抗が熱伝導性化合物に与えられ、10kV以上の電圧下での電気的絶縁が保証される。
【0030】
図1,2に示されるように、本発明の電力変圧器組立体1は、この例では、複数の磁気ユニットを含み、これらは金属製ボックス15Bの複数の空洞内に配列/配置される。金属製ボックス15Bの拡大図である
図3を参照されたい。金属製ボックス15Bは、アルミニウム、アルミニウム合金又はマグネシウム合金のいずれかで作ることができるが、金属製熱伝導壁16A、16Bとカバー15とを備える。金属製熱伝導壁16A、16Bは、各磁気コア12A,12Bと対応する第1コイルおよび第2コイルを囲む。金属製ボックス15Bの材料は、70W/mK以上の熱伝導率を有する。
図1に示されるように、組立体は特にストッパー11を含む。ストッパー11は、この実施例では、 カプセル化された電気端子である。この電気端子は、沿面距離/空間距離による電気的絶縁の範囲内で磁気ユニットの第1コイルと第2コイルの接続を可能にする。これは、 沿面距離/空間距離が短い領域のギャップを充填する熱伝導性化合物10の電気絶縁への依存を回避する上で重要である。さらに、ストッパー11はまた、磁気コア12A,12Bを金属製ボックス15Bの各空洞内に確実に保持するのに寄与する。
【0031】
金属製ボックス15Bは、巻線領域の公差に調整された1つ又は複数の開口部18を含むベースを用いてカスタム設計されている。開口部18により、磁気コア12A,12Bが液体冷却放熱板(例えばAlプレート)に設置されている場合、 巻線から冷却アルミニウムまでの距離が最小になり、最適な熱伝導が可能になる。これは、材料の最小厚さ部分への熱伝達回路が小さくなるからである。従って、銅(巻線)で発生する損失は、短時間で可能な限り最も効率的な方法で削除される。同様に、金属製ボックスは、特別に調整された内側で隆起した支持体17を備えるよう設計され、これで磁気コア12A,12Bの均質な表面を収納する。内部支持体17は磁気コア12A,12Bと直接接触している。これにより、コア12A,12Bの電力損失によって発生する最大の熱放散が可能になる。 この熱は磁性材料から金属製ボックス15Bに直接伝達され、次に金属製ボックス15Bから液体冷却プレートに伝達される。金属製ボックス15Bはまた、金属製ボックス15Bを設置点に取り付ける取り付け穴20を含む。
【0032】
特に、磁気コア12A,12Bは、金属製ボックス15Bの異なる空洞に配置され、その中央部分は同じレベル即ち水平位置にあり、その結果、電力変圧器組立体の動作中の温度の等温勾配が達成される。
【0033】
上記の本発明は、熱伝達能力および機械的封止能力を備えた電力変圧器組立体を密封するための特定の熱伝導性化合物10にも関する。この熱伝導性化合物10は、磁力ユニットでの用途のために特別に開発され、1.4-2.6W/mKの熱伝導性を提供する。
【0034】
熱伝導性化合物10は、シリコン樹脂と、少なくとも第1充填剤および第2充填剤とを含む充填剤とからなる。第2充填材には所定量の水酸化アルミニウムが含まれ、水酸化アルミニウムは、シリコン樹脂の線膨張係数を下げ、熱伝導率を上げる。第1充填剤は天然鉱物充填剤である。天然鉱物充填剤の一例は、細かく粉砕された、石英、珪岩、大理石、砂、炭酸カルシウム、又はそれらの組み合わせなどである。
【0035】
一実施例では、熱伝導性化合物10は導電性粒子を含む第3充填剤をさらに含むが、その含有量は、10KVを超える電圧下でも熱伝導性化合物の絶縁を確実にする程度の限定された量である。
【0036】
熱伝導性化合物は、シリコン樹脂、即ち磁力成分を密封しカプセル化する 「ソフト」タイプの化合物に基づいている。これは、この磁気成分が、カプセル化されることに加えて、機械的に保護されることを決定的する。これにより、例えば、電力変圧器の場合、フェライト・コアおよびそれらの磁気制限効果による透磁率の変動に対する機械的ストレスを回避できる。
【0037】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変圧器を封止する熱伝導性化合物において、
前記熱伝導性化合物(10)は充填材を含み、前記充填材は少なくとも第1充填材と第2充填材とを含み、
前記第1充填材は石英、珪岩、大理石、砂、又は炭酸カルシウムの微細粉砕粒子を含む天然鉱物充填材であり、
前記第2充填材は所定量の水酸化アルミニウムを含み、
前記熱伝導性化合物(10)は更にシリコン樹脂を含み、
前記充填材は所定量の熱伝導性又は導電性の粒子を含む第3充填材を含み、前記第3充填材の含有量は、前記熱伝導性化合物(10)に電気抵抗を与え、
10kV/mm以上の電圧で前記熱伝導性化合物(10)の絶縁性能を維持する程度である
ことを特徴とする熱伝導性化合物。
【請求項2】
前記熱伝導性又は導電性の粒子は、金属製粒子、金属製酸化物又はグラファイトを含む、
ことを特徴とする請求項1記載の熱伝導性化合物。
【請求項3】
充填材を含む熱伝導性化合物(10)により密封され第1巻線と第2巻線を備えた磁気コア(12A,12B)を含む電力変圧器組立体(1)において、
前記充填材は、少なくとも第1充填材と第2充填材とを含み、前記第1充填材は石英、珪岩、大理石、砂、又は炭酸カルシウムの微細粉砕粒子を含む天然鉱物充填材であり、前記第2充填材は所定量の水酸化アルミニウムを含み、
前記熱伝導性化合物(10)はシリコン樹脂を含み、
前記充填材は所定量の熱伝導性又は導電性の粒子を含む第3充填材を含み、前記第3充填材の含有量は、前記熱伝導性化合物(10)に電気抵抗を与え、
10kV/mm以上の電圧で前記熱伝導性化合物(10)の絶縁性能を維持する程度である
ことを特徴とする電力変圧器組立体。
【請求項4】
前記熱伝導性化合物(10)における第1充填材の含有割合が60-90w%である
ことを特徴とする請求項3記載の電力変圧器組立体。
【請求項5】
前記天然鉱物充填材は、異なる粒径の複数の充填材を含む
ことを特徴とする請求項3記載の電力変圧器組立体。
【請求項6】
前記水酸化アルミニウムは前記熱伝導性化合物(10)の全重量の15w%含まれる
ことを特徴とする請求項3-5のいずれかに記載の電力変圧器組立体。
【請求項7】
磁気コア(12A,12B)と巻線を備えた磁気ユニットを複数個有し、前記磁気ユニットは、金属製熱伝導壁(16A、16B)とカバー(15A)で区切られた金属製ボックス(15B)の空洞内に配置される
ことを特徴とする請求項3-5のいずれかに記載の電力変圧器組立体。
【請求項8】
前記磁気ユニットの磁気コア(12A,12B)は、その中心部分が同一レベルになるよう配置され、前記電力変圧器組立体(1)の動作中に、前記磁気ユニットの温度が等温勾配となる
ことを特徴とする請求項7記載の電力変圧器組立体。
【請求項9】
前記金属製ボックス (15B) が、70W/mKを超える熱伝導率を有するアルミニウム、アルミニウム合金又はマグネシウム合金で形成されている
ことを特徴とする請求項7記載の電力変圧器組立体。
【請求項10】
前記金属製ボックス(15B)はその底部に開口部(18)を備え、前記開口部(18)を介して隣接する位置に配置された放熱要素に向かって最適な熱伝達を可能にする
ことを特徴とする請求項7又は9記載の電力変圧器組立体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
一実施例においては、熱伝導性化合物は所定量の導電性粒子を含む第3充填材を含む。これにより、10kV/mm以上の加電圧時の熱伝導性化合物の絶縁機能(electrical isolation)を維持する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
一実施例においては、充填材は、所定量の熱伝導性かつ導電性の粒子を含む第3充填材を含む。熱伝導性かつ導電性の粒子の一例は、金属製粒子、金属酸化物、グラファイト等である。これは、電気抵抗を熱伝導性化合物に与えるが、その粒子の量は、10kV/mm以下の電圧における熱伝導性化合物の絶縁機能を保障する程度である。第3充填材中の熱伝導性又は導電性粒子は、熱伝導性化合物の熱伝導性の大幅な上昇と、その結果としてのその放熱容量(heat evacuation capacity)の上昇を決定づける。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
一実施例では、熱伝導性化合物10は、限られた量の導電性粒子を含む第3充填剤をさらに含むことができる。それ故、電気抵抗が熱伝導性化合物に与えられ、10kV/mm以上の電圧下での電気的絶縁が保証される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
一実施例では、熱伝導性化合物10は導電性粒子を含む第3充填剤をさらに含むが、その含有量は、10kV/mmを超える電圧下でも熱伝導性化合物の絶縁を確実にする程度の限定された量である。
【国際調査報告】