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特表2022-548532矩形断面を持つコイル要素を備えた分数スロット電気モータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】矩形断面を持つコイル要素を備えた分数スロット電気モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
H02K3/50 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514974
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 US2020052249
(87)【国際公開番号】W WO2021061795
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/904,502
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321004507
【氏名又は名称】カヌー テクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治
(74)【代理人】
【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二
(74)【代理人】
【識別番号】110000763
【氏名又は名称】特許業務法人大同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダメロン、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】フィルター、エバン
(72)【発明者】
【氏名】ワイカー、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】カーメル、チャールズ
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604QB14
(57)【要約】
コンパクトなクラウンを備えた分数スロット電気モータがここに開示される。モータは、固定子コアを通って突き出ており、相互におよび/またはリードアセンブリと電気的接続を形成する複数のコイル要素を有する。リードアセンブリは、選択されたコイル要素に接続され、かつ、外部電源に接続するための端子を有する相バスバーを有する。リードアセンブリは、外部接続がなく、他のコイル要素に内部接続された中立バスバーも有する。各コイル要素は、モータのスロット充填率を最大化するために矩形断面プロファイルを具備する。各コイル要素は、他の2つの要素に電気的に結合されている。 たとえば、各ループコイル要素は、リードアセンブリの反対側の固定子側で他の2つのコイル要素に結合されている。各延長コイル要素は、同じ側部において別のコイル要素に結合され、リードアセンブリ側で別のコイル要素またはバスバーに結合される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分数スロット電気モータにおいて、
第1側部と、第2側部と、上記第1側部および上記第2側部の間を延びる複数の固定子スロットとを有する固定子コアと、
複数のコイル要素によって形成されるコイルと、
3つの相バスバーを有するリードアセンブリとを有し、
上記コイル要素の各々は、上記固定子コアの上記第1側部および上記第2側部の間を通り抜け、上記コイル要素の各々は、上記固定子コアの上記第1側部において上記コイル要素のうちの少なくとも1つの他のコイル要素と電気的に結合され、上記コイル要素の各々は矩形の断面を具備し、
上記相バスバーの各々は上記固定子コアの上記第2側部において上記コイル要素のうちの少なくとも1つのコイル要素と電気的に結合され、
上記相バスバーの各々は、上記分数スロット電気モータを外部電源に接続するための外部端子を有することを特徴とする分数スロット電気モータ。
【請求項2】
上記リードアセンブリがさらに2つの中立バスバーを有し、当該2つの中立バスバーの各々が上記固定子コアの上記第2側部において上記コイル要素のうちの少なくとも1つのコイル要素に電気的に結合される請求項1に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項3】
上記中立バスバーおよび上記相バスバーが上記リードアセンブリ内に積み重ねられ、互いに電気的に絶縁されている請求項2に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項4】
上記リードアセンブリが、上記中立バスバーおよび上記相バスバーの各々の上に成形され、上記中立バスバーおよび上記相バスバーを互いに機械的に支持するバスバー絶縁体を有する請求項3に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項5】
上記各相バスバーの各々は、1または複数の相端子を有し、当該相端子は、上記バスバー絶縁体から突出し、上記コイル要素のうちの1つまたは複数のコイル要素に電気的に結合される請求項4に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項6】
上記中立バスバーの各々は、1または複数の中立端子を有し、上記中立端子は、上記バスバー絶縁体から突出し、上記コイル要素のうちの1つまたは複数のコイル要素に電気的に結合される請求項4に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項7】
上記リードアセンブリが、バスバー熱電対をさらに有し、上記バスバー熱電対は、上記バスバー絶縁体上に支持され、上記相バスバーの1つに熱結合され、上記バスバー絶縁体を通って部分的に突出する請求項4に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項8】
上記3つの相バスバーの各々がフープを有し、上記外部端子が上記フープに柔軟に接続されるようになされる請求項1に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項9】
上記3つの相バスバーの各々は、ネックを有し、上記ネックは、上記外部端子へのフープに柔軟に接続され、上記ネックは複数の金属ストリップで形成される請求項8に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項10】
上記3つの相バスバーがリードアセンブリに積み重ねられる請求項8に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項11】
上記コイル要素は、上記ループコイル要素および上記延長コイル要素を有し、上記ループコイル要素が上記固定子コアの上記第1側部でのみ接続され、上記延長コイル要素が上記固定子コアの上記第1側部および上記第2側部の双方で接続されるようになっている請求項1に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項12】
上記ループコイル要素の各々は、1つのエンドループと2つのループ延長部を有し、上記エンドループによって相互接続され、各々がループ延長端で終端し、
上記2つのループ延長部の各々の上記延長端は、上記第1側部において上記固定子コアから延長し、上記コイル要素の1つに接続され、
上記エンドループは、上記固定子スロットの2つの異なる固定子スロットの間で上記第2側部において上記固定子コアから延びる請求項11に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項13】
上記ループコイル要素の各々の上記端部ループは、上記固定子コアの上記第2側部と上記リードアセンブリとの間に配置される請求項12に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項14】
上記ループコイル要素のうちの1つのループコイル要素の上記2つのループ延長部が、同じ位置にある上記固定子スロットのうちの上記2つの異なる固定子スロットを通って延びる請求項12に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項15】
上記ループコイル要素のうちの1つのループコイル要素の上記2つのループ延長部が、異なる位置にある上記固定子スロットのうちの上記2つの異なる固定子スロットを通って延びる請求項12に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項16】
上記延長コイル要素の各々は、第1の端部、延長部、および第2の端部を有し、
上記延長部は、上記第1側部と上記第2側部との間で上記固定子コアを通って突出し、上記第1の端部と上記第2の端部とを相互接続し、
上記第1の端部は、上記第1側部において上記固定子コアから延在し、上記コイル要素のうちの1つに接続され、
上記第2の端部は、上記第2側部において上記固定子コアから延在し、上記コイル要素の1つまたは上記リードアセンブリに接続される請求項11に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項17】
上記伸長コイル要素の各々の上記第2の端部が、上記リードアセンブリを越えて少なくとも部分的に突出している請求項16に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項18】
上記第2の端部は、上記延長部に対して半径方向にオフセットされている請求項16に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項19】
上記コイル要素が三相、二並列構成に配置されている請求項1に記載の分数スロット電気モータ。
【請求項20】
上記コイル要素の各々の矩形断面が、3.0ミリメートルから4.0ミリメートルの間の厚さ、および2.5ミリメートルから3.5ミリメートルの間の幅を有する請求項1に記載の分数スロット電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、2019年9月23日に出願された「電気自動車モータ」と題された米国仮特許出願第62/904,502号の35USC§119(e)に基づく利益を主張し、これは参照によりあらゆる目的のためにその全体をここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する装置である。典型的な電気モータは、モータの磁場と巻線の電流との相互作用によって動作し、回転力を生成する。電気モータは、直流(DC)ソース(バッテリー、整流器など)または交流(AC)ソース(電力網、インバーター、発電機など)から電力を供給できる。一般的には、電気モータは、電源の種類、内部構造、用途、およびモータ出力に基づいて分類できる。たとえば、モータはブラシ付きまたはブラシレスの場合がある。さらに、モータは、様々な相、例えば、単相モータ、二相モータ、または三相モータであって良い。
【0003】
典型的な電気モータは、固定子アセンブリ内で回転する回転子アセンブリを含む。両方のアセンブリは、互いに相互作用するそれぞれの磁場を生成し、ローターアセンブリをステーターアセンブリに対して回転させ、それによって電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する。固定子アセンブリは、固定子コアを含み、これは、コイル要素がこれらのスロットを通って突出し、当該固定子コアの周りに巻かれた複数のスロットを具備する。これらの要素は、まとめて固定子巻線と呼ばれることがある。具体的には、各固定子スロットは、半径方向に配置され、固定子コアの中心軸から離れて配置された複数のコイル要素を収容することができる。最後に、分数スロットモータでのコイル要素のルーティング、相互接続、および組み立ては、通常、整数スロットモータよりも困難である。
【発明の概要】
【0004】
コンパクトなクラウンを備えた分数スロット電気モータがここに開示される。モータは、固定子コアを通って突き出ており、相互におよび/またはリードアセンブリと電気的接続を形成する複数のコイル要素を有する。リードアセンブリは、選択されたコイル要素に接続され、かつ、外部電源に接続するための端子を有する相バスバーを有する。リードアセンブリは、外部接続がなく、他のコイル要素に内部接続された中立バスバーも有する。各コイル要素は、モータのスロット充填率を最大化するために矩形断面プロファイルを具備する。各コイル要素は、他の2つの要素に電気的に結合されている。たとえば、各ループコイル要素は、リードアセンブリの反対側の固定子側で他の2つのコイル要素に結合されている。各延長コイル要素は、同じ側部において別のコイル要素に結合され、リードアセンブリ側で別のコイル要素またはバスバーに結合される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
この説明は、以下の図を参照することにより、より完全に理解されるであろう。この説明は、本発明の例示的な例として提示され、本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない。
図1A図1Aは、いくつかの例に従う、同じ固定子スロットを通って突き出ている、それぞれが円形の断面を有する従来のコイル要素の模式図である。
図1B図1Bは、いくつかの例に従う、それぞれが矩形断面を有し、同じ固定子スロットを通って突き出ている4つのコイル要素の模式図である。
図1C図1Cは、48スロット整数スロットモータおよび60スロット分数スロットモータの2つの異なる設計を含む、異なる設計の電気モータのコギングトルクプロットを示す。
図2A図2Aは、いくつかの例に従う、ローターなしで示された分数スロット電気モータの斜視図である。
図2B-C】図2Bは、いくつかの例に従う、図2Aの分数スロット電気モータの固定子コアの上面図である。図2Cは、いくつかの例に従う、固定子スロット内のコイル要素の異なる位置を示す、固定子スロットの拡大図である。
図2D-F】図2Dは、いくつかの例に従う、図2Aの分数スロット電気モータの別の斜視図であり、リードアセンブリの反対側の固定子コアの第1の側でのコイル要素の電気的接続を示す。図2Eは、いくつかの例に従う、固定子コアの第1の側に接続された2つのコイル要素の拡大図である。図2Fは、いくつかの例に従う、コイル要素の断面プロファイルである。
図3A図3Aは、いくつかの例に従う、第1側の固定子コアから延びる2対のコイル要素の斜視図であり、各対の電気的接続を示す。
図3B図3Bは、いくつかの例に従う、図3Aの2対のコイル要素の上面図であり、他のコイル要素は示されていない。
図3C図3Cは、いくつかの例に従う、図3Aおよび図3Bの2対のコイル要素の上面図であり、他のすべてのコイル要素が示されている。
図4A図4Aは、いくつかの例に従う、固定子コアの第2側でコイル要素に接続し、分数スロット電気モータへの外部電気接続を形成するためのリードアセンブリの斜視図である。
図4B-D】図4Bは、いくつかの例に従う、図4Aのリードアセンブリの斜視図であり、バスバー絶縁体を示していない。図4Cは、いくつかの例に従う、図4Aおよび図4Bのリードアセンブリの2つの中立バスバーの斜視図である。図4Dは、いくつかの例に従う、図4Aおよび図4Bのリードアセンブリの3つの積み重ねられた相バスバーの斜視図である。
図4E図4Eは、いくつかの例に従う、図4Aの3つの相バスバーのそれぞれの個別の斜視図である。
図4F図4Fは、いくつかの例に従う、図4Aの3つの相バスバーのそれぞれの個別の斜視図である。
図4G図4Gは、いくつかの例に従う、図4Aの3つの相バスバーのそれぞれの個別の斜視図である。
図4H図4Hは、いくつかの例に従う、図4Aの相バスバーのいずれか1つの模式的な側面図であり、一次接続端子とフープとの間の柔軟な接続を示す。
図5A-B】図5Aは、いくつかの例に従う、バスバー絶縁体のない分数スロット電気モータの斜視図であり、コイル要素、相バスバー、および中立バスバーの間の電気的接続を示している。図5Bは、いくつかの例に従う、図5Aの分数スロット電気モータの一部の拡大斜視図であり、1つのグループにおける電気的接続を示している。
図6A-E】図6Aは、いくつかの例に従う、リードアセンブリのない分数スロット電気モータ斜視図であり、固定子コアの第2側でのコイル要素の配向を示している。図6Bは、いくつかの例に従う、図6Aの選択された個々のコイル要素の斜視図である。図6Cは、いくつかの例に従う、図6Aの選択された個々のコイル要素の斜視図である。図6Dは、いくつかの例に従う、図6Aの選択された個々のコイル要素の斜視図である。図6Eは、いくつかの例に従う、図6Aの選択された個々のコイル要素の斜視図である。
図7A図7Aは、いくつかの例に従う、コイル要素の1つが固定子コアに挿入された当該固定子コアの斜視図である。
図7B図7Bは、いくつかの例に従う、図7Aの固定子コアの一部の上面図であり、コイル要素の形状を示している。
図7C図7Cは、いくつかの例に従う、互いに隣接する2つのコイル要素の形状を示す、固定子コアの一部の斜視図である。
図7D図7Dは、いくつかの例に従う、コイル要素の別の1つがコアに挿入された固定子コアの斜視図である。
図7E図7Eは、いくつかの例に従う、図7Aの固定子コアの一部の上面図であり、コイル要素の形状を示す。
図7F図7Fは、いくつかの例に従う、コイル要素のさらに他の1つがコアに挿入された固定子コアの斜視図である。
図7G図7Gは、いくつかの例に従う、図7Fの固定子コアの一部の上面図であり、コイル要素の形状を示す。
図7H図7Hは、いくつかの例に従う、コイル要素の他の1つが固定子コアに挿入された当該固定子コアの斜視図である。
図7I図7Iは、いくつかの例に従う、図7Hの固定子コアの一部の上面図であり、コイル要素の形状を示している。
図8A図8Aは、いくつかの例に従う、固定子配線模式図を示している。
図8B図8Bは、いくつかの例に従う、図8Aの固定子配線概略の異なる部分を示している。
図8C図8Cは、いくつかの例に従う、図8Aの固定子配線概略の異なる部分を示している。
図8D図8Dは、いくつかの例に従う、図8Aの固定子配線概略の異なる部分を示している。
図8E図8Eは、いくつかの例に従う、図8Aの固定子配線概略の異なる部分を示している。
図8F図8Fは、いくつかの例に従う、図8Aの固定子配線概略の異なる部分を示している。
図9図9は、いくつかの例に従う、固定子配線表を示している。
図10図10は、いくつかの例に従う、分数スロットモータを有する電気自動車の模式図である。
【詳細な説明】
【0006】
以下の説明において、提示された概念の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が示されている。いくつかの例において、提示された概念は、これらの特定の詳細の一部を伴うことなく、またはすべてを伴うことなく実施することができる。他の例においては、説明された概念を不必要に曖昧にしないために、よく知られているプロセス操作が詳細に説明されていない。いくつかの概念は特定の例と併せて説明されるけれども、これらの例は限定することを意図していないことを理解されたい。
【0007】
[はじめに]
電気モータは、電気自動車の駆動システムなどの様々な電力システムのコアコンポーネントである。電気モータに使用できるスペースは通常限られているけれども、電力要件はかなりのものになる可能性がある。全体として、高効率と小型サイズは、電気モータの多くのアプリケーションにとって重要な考慮事項である。電気モータのサイズを縮小し、効率を高めるための1つのアプローチは、モータの固定子コアを通過するコイルの体積を増やすことである。この体積は、典型的には、スロット充填率(Slot Fill Ratio:SFR)で表される。これは、ステータコアを通過するすべてのコイルの総断面積の、当該コイルに使用可能なすべてのスロットの総断面積に対する比率として定義される。SFR値を大きくすると、巻線の抵抗が減少するの支援し、それによって電力損失が減少し、効率が向上する。
【0008】
従来の電気モータは、コイル巻線を形成するために、しばしば断面が丸いワイヤを使用する。丸線は配線や曲げが簡単で、さまざまなタイプの電気モータに広く採用されている。しかしながら、丸線は、例えば、図1Aに示されるように、固定子スロットが丸線で密に詰まっている場合でさえ、ワイヤ間の固定子スロットに未充填の空間(例えば、未充填のコーナ)を残す。具体的には、図1Aは、それぞれが円形断面を有し、固定子コア110の同じスロット114を通って突出する従来のコイル要素141の模式図である。スロット114内の満たされていないスペースの多くを容易に見ることができる。コイル要素141の絶縁は、わかりやすくするために表示されていない。その結果、丸線のSFR値は通常50%未満である。矩形(長方形)の導体は、例えば、図1Bに示されるように、はるかに高いSFR値(例えば、50%を超える、60%を超える、またはさらに70%を超える)をもたらす。具体的には、図1は、図1Bは、それぞれが矩形断面を有し、固定子コア110の同じスロット114を通って突出するコイル要素140の模式図である。矩形のコイル要素は、はるかに高いSFRを提供するけれども、これらのコイル要素は、少なくともいくつかの方向で、制限された曲げ性のために、当該コイル要素のために経路指定がより困難である。
【0009】
ルーティングの難しさは、しばしば、固定子の各側部でより大きな巻線延長をもたらし、モータの全体的なサイズを増大させる。例えば、コイルは、固定子スロットに挿入された個々のコイル要素によって形成されて良い。これらのコイル要素は、固定子コアの各側部で曲げられて、相互に、および/またはバスバーと相互接続する。固定子コアの両側部に1つずつある、固定子巻線のこれら2つの部分は、コイルクラウンと呼ばれることがある。コイル要素のすべての屈曲部およびコイル要素間の接続には、これらのコイルクラウンが備わっている。これらのクラウンの高さ、および、いくつかの例においては、これらのクラウンの外径は、矩形導体の曲げ性が制限されているため、通常、丸線よりも矩形導体の方が大きい。さらに、連続ワイヤとは対照的に、個々のコイル要素を使用すると、コイル要素間に多数の接続が必要になり、クラウンの複雑さとその側部が増す。
【0010】
コイル要素間の経路指定および接続は、モータタイプに依存することに留意されたい。経路指定と接続は、通常、たとえば整数スロットの電気モータよりも、分数スロットの電気モータの方がはるかに複雑である。ただし、分数スロット電気モータは、コギングトルクの低減など、整数スロット電気モータに比べてさまざまな利点がある。
【0011】
コギングトルクは、回転子の磁極が固定子の磁気的特徴と整列する現象である。動作中、磁極と磁気的特徴の位置合わせにより、コギングトルクとしても知られる振動トルクが発生する可能性がある。場合によっては、コギングトルクが十分に大きいため、モータを支持する構造を介して伝達され、エンドユーザー(電気自動車の運転手や乗客など)が感じることがある。極巻線ごとに分数スロットを使用すると、例えば、図1Cに概略的に示されているように、コギングトルクが減少する。具体的には、図1Cは、48スロット整数スロットモータ(ライン200)および60スロット分数スロットモータの2つの異なる設計(ライン210およびライン220)を含む3つの異なる電気モータのコギングトルクプロットを示している。具体的には、ライン220は、以下に説明する分数スロットモータの例に対応する。トルク値は有限要素解析を使用して取得され、簡単にするために正規化されている。48スロット整数スロットモータのコギングトルクは、両方の60スロット分数スロットモータで約2分の1以上減少する。さらに、60スロット分数スロットモータの巻線構成が異なると、コギングトルク性能も異なる。このコギングトルクの減少により、騒音、振動、ハーシュネス(NVH)が減少する。ただし、上述のように、分数スロット電気モータのコイル経路指定は非常に複雑である。巻線の複雑さは、特に矩形のコイル要素を使用して、ワイヤ接続のコンパクトな機械的パッケージングを維持する上でさまざまな課題を残す。
【0012】
ここに記載されているのは、矩形断面プロファイルを有するコイル要素を使用する分数スロット電気モータである。これらのコイル要素は、ループコイル要素と延長コイル要素を含む。各ループコイル要素は、固定子コアから突き出ており、コアの第1端部でコアから延びる2つの延長部を具備する。各ループコイル要素はループ端も具備し、コアの第1端部の反対側にある第2端部で2つの延長部分を相互接続する。各延長コイル要素は、第1端部で固定子コアから突き出ている一端と、第1端部の反対側の第2端部で突き出ている多端とを具備する。コイル要素は、固定子コアの第1端部で互いに直接相互接続されている。たとえば、コイル要素は相互接続されたペアの2つの行を形成する。各ペアは、時計回りに曲げられた1つのコイル要素と、反時計回りに曲げられた別のコイル要素によって形成される。隣接するペアは、相互に放射状にオフセットされている。より具体的には、各ループコイル要素は、第1端部で他の2つのコイル要素に接続されている。各延長コイル要素は、第1端部で他の1つのコイル要素に接続されている。
【0013】
さらに、各延長コイル要素は、固定子コアの第2端部でリードアセンブリ、または別のコイル要素に接続されている。リードアセンブリは、3つの位相相バスバーと2つの中立バスバーの組み合わせで構成されている。ループコイル要素は、第2端部でどのコンポーネントにも接続されていない。代わりに、ループコイル要素のエンドループは、第2端部およびリードアセンブリの間に配置される。コイル要素およびリードアセンブリのこの構成により、分数スロットモータに必要とされる、コイル要素間の複雑な接続が可能になり、他方、固定子コアの各端部でコンパクトなパッケージを維持する。例えば、第1端部のクラウンの高さは、50ミリメートル未満、または45ミリメートル未満、例えば、約40ミリメートルであって良い。リードアセンブリを考慮しない場合、第2端部のクラウンの高さは、45ミリメートル未満、または40ミリメートル未満、例えば、約36ミリメートルであっても良い。リードアセンブリを考慮した第2端部のクラウンの高さは、80ミリメートル未満、または70ミリメートル未満、例えば、約61ミリメートルであっても良い。
【0014】
[分数スロット電気モータ例]
図2Aは、いくつかの例に従う、分数スロット電気モータ100の斜視模式図を示している。分数スロット電気モータ100は、モータの他の構成要素をよりよく説明するために、回転子なしで示されている。図2Aに示すように、分数スロット電気モータ100は、固定子コア110、コイル130、およびリードアセンブリ150を有する。コイル130は、コイル要素140によって形成され、それぞれが固定子コア110を通って突出し、ワニスコーティング(例えば、ポリエステルワニス、エポキシワニス)によって相互に絶縁されている。この絶縁材の厚さは、300マイクロメートル未満、より具体的には、250マイクロメートル未満、例えば、約200マイクロメートルであって良い。絶縁ワニスを用いても、コイル130は、例えば、冷却のために、またはより具体的には、コイル要素140間で冷却流体を循環させるために、コイル要素140の間にいくらかの空間を提供する。いくつかの例において、隣接するコイル要素間の平均空間は、0.5ミリメートルから2ミリメートルの間、またはより具体的には、0.75ミリメートルから1.25ミリメートルの間、例えば、約1ミリメートルである。いくつかの例において、固定子コア110は、スタックとして配置された複数の強磁性環状プレートから形成されている。
【0015】
コイル要素140は、主に、固定子コア110の第1側部111で互いに直接に相互接続される(例えば、溶接によって)。ただし、選択されたいくつかのコイルは、また、固定子コア110の第2側部において互いに直接に相互接続される(例えば、溶接によって)。さらに、コイル要素140のいくつかは、また、リードアセンブリ150に接続されている(例えば、溶接によって)。
【0016】
いくつかの例において、コイル130は、3相-2並列巻線構成を具備する。並列レッグは、並列1および並列2と呼ばれ、これらを横切って電圧をバランスさせるために、コイル要素140の様々な例を使用して、平衡インピーダンスを有する2つの並列巻線を形成する。いくつかの例において、この平衡インピーダンスは、各並列レッグが巻線の両方の層にコイルを含む特定のコイル構成によって実現される。より具体的には、各巻線は、図8A~8Fおよび図9を参照して以下に示され、さらに説明されるように、それぞれの位相グループに対して可能なすべてのスロットにコイルを有する。このバランスの取れた巻線がないと、並列レッグ間の電流分布が不均一になる可能性があり、並列巻線ごとに異なる加熱速度が発生する。コギングトルクの減少は、図1Cを参照して上に提示された電磁有限要素分析を通して観察された。
【0017】
図2Bを参照すると、固定子コア110は、第1側部112と第2側部112との間に延びる固定子スロット114を有する。いくつかの例において、固定子コア110は、60個の固定子スロットを有する。固定子スロット114は、コイル要素140を固定子コア110を通して突き出すために使用される。いくつかの例において、各固定子スロットは、4つのコイル要素140を受け入れるように構成される。固定子スロット内の各コイル要素の位置は、固定子コア110の中心軸113からの距離で識別されて良い。例えば、図2Bは、直径D1、D2、D3、およびD4を有し、それぞれが各スロット内の異なるコイル位置に対応する4つの同心円を示している。図2Cは、各位置を識別する1つの固定子スロット114の拡大図である。最も外側(中心軸113から)の位置は、第1の位置115aとして識別され、「A」位置と呼ばれて良い。この位置は最大の円(D1)に対応する。「B」位置と呼ばれて良い第2の位置115bは、わずかに小さい円(D2)に対応する。「C」位置と呼ばれ得る第3の位置115cは、さらに小さい円(D3)に対応する。最後に、「D」位置とも呼ばれる最も内側の位置または第4の位置115dは、最小の円(D4)に対応する。そのため、240個の異なる位置(60個の固定子スロット×各スロットの4個の位置)のそれぞれは、スロット番号と各スロットの特定の位置によって識別できる。この識別は、例えば、以下に説明する図9で使用される。全体として、各コイル要素は、240の位置の1つから突き出る可能性がある。一部のタイプのコイル要素(たとえば、ループコイル要素)は、240の位置のうちの2つから突き出ている。これについては、以下でさらに説明する。
【0018】
図2Aに戻って参照すると、コイル要素140のそれぞれは、固定子コア110の第1側部111と第2側部112との間の固定子スロット114の1つまたは2つを通って突出する。いくつかの例において、コイル要素140は銅または銅合金から作られる。これらのコイル要素140を通過する電流は、磁束を生成し、これを変調して、分数スロット電気モータ100の速度を制御することができる。
【0019】
先に触れたように、各コイル要素は、固定子スロット114内の1つまたは2つの位置を占める。240の異なる位置で、コイル要素140の数は少なくとも120である。いくつかの例において、この数は144である。換言すると、コイル130は、144個の個別のコイル要素140によって形成され、これらは、図8A~8Fおよび図9を参照して以下に説明する分数スロット電気モータ100の特定の設計に従って相互接続されている。
【0020】
図2Dを参照すると、コイル要素140は、固定子コア110の第1側部111で相互接続される。より具体的には、コイル要素140の各々は固定子コア110の第1側部111に隣接する少なくとも1つの他のコイル要素140と電気的に結合され、これは、たとえば、図2Eに示すとおりである。コイル要素140(例えば、ループコイル要素)のいくつかの例は、図6A図6Cを参照して以下でさらに説明するように、それぞれ、他の2つのコイル要素に結合されている。これらの接続は、例えば、溶接によって、またはより具体的には、レーザー溶接によって形成される。
【0021】
図2Fを参照すると、コイル要素140のそれぞれは、矩形断面プロファイルを有する。矩形断面プロファイルは、図1Aおよび図1Bを参照して先に説明したように、SFRを増加させることを可能にする。いくつかの例において、各コイル要素140は、3.0ミリメートルから4.0ミリメートル(約3.4ミリメートルなど)の厚さ(CET)と、2.5ミリメートルから3.5ミリメートル(約3.0ミリメートルなど)の幅(CEW)とを有する。ただし、他の例も当該範囲内である。
【0022】
分数スロット電気モータ100の組み立て中、コイル要素140は、固定子コア110の第2側部112から固定子スロット114に挿入される。この段階で、コイル要素140の一部は、固定子スロット114を通って突出し、固定子コア110の第1側部111から延び、まっすぐである。その後、コイル要素140のこれらの端部(第1側部111から延びるe)の間に、これらの端部を曲げることによって、接続が形成され、これは、図3A図3B図3B、および、図3Cを参照して、ここで説明される。具体的には、図3Aは、2つの固定子スロット114から延在し、固定子コア110の第1側部111で電気的接続を形成する4つのコイル要素140を示している。他のコイル要素は、明確にするために、図3Aには示されていない。これらの固定子スロット114は、他の6つの固定子スロットによって分離され、第1および第8の固定子スロット114を効果的に表す。コイル要素140のそれぞれは、対応するコイル要素との電気的接続を形成するように曲げられる。
【0023】
図3Bは、図3Aに対応する上面図であり、各コイル要素の円周方向および半径方向の曲がりの程度を示す。図3Bは、また、各スロット内の異なる位置に対応する4つの円弧(D1、D2、D3、およびD4)を示しており、これらは、図2Bおよび図2Cを参照して先に説明されている。固定子の円周の周りで、各コイル要素は3.5スロットスペースに対応する距離で曲げられ、1スロットスペースは2つの隣接するスロットの中心間の弧長に対応する。なお、D4に対応する弧長は、D1に対応する弧長よりも長いことに留意されたい。ただし、曲げ方向は、2つの相互接続されたコイル要素に対して異なるか、より具体的には反対である。例えば、第1のコイル要素140aは時計回りに曲げられ、第2のコイル要素140bは反時計回りに曲げられる。第1のコイル要素140aおよび第2のコイル要素140bは、第3の固定子スロットと第4の固定子スロットとの間に位置する固定子コア110の部分の上で相互接続されている。同様に、第3のコイル要素140cは時計回りに曲げられ、第4のコイル要素140dは反時計回りに曲げられる。第3のコイル要素140cおよび第4のコイル要素140dも、また、固定子コア110の同じ部分の上で相互接続されている。
【0024】
ただし、第1のコイル要素140aおよび第2のコイル要素140bも、また、第3のコイル要素140cからいくらかの空間を提供するために、固定子コア中心軸から半径方向に離れて曲げられる。例えば、第2のコイル要素140bは、第2の位置115b(「B」位置、D2に対応する)で固定子スロット114から延びる。しかしながら、第1のコイル要素140aと電気的接続を形成する第2のコイル要素140bの端部は、第1の位置(「A」位置)に対応し、直径D1を有する円弧上に配置される。同様に、第1のコイル要素140aは、第1の位置115a(「A」位置、D1に対応する)で固定子スロット114から延びる。第2のコイル要素140bと電気的接続を形成する第1のコイル要素140aの端部は、指定された位置の外側に放射状に延びる。他方、第3のコイル要素140cは、第3の位置115c(「C」位置、D3に対応する)で固定子スロット114から延在し、その位置で第4のコイル要素140dと電気的接続を形成する。同様に、第4のコイル要素140dは、第4の位置115d(「D」位置、D4に対応する)で固定子スロット114から延在し、その位置で第3のコイル要素140cと電気的接続を形成する。換言すれば、第1のコイル要素140aおよび第2のコイル要素140bは両方とも、固定子軸から半径方向に1つの位置だけ離れて曲げられている。これと対照的に、第3のコイル要素140cおよび第4のコイル要素140dは、半径方向に曲げられていない。
【0025】
図3Cは、第1のコイル要素140a、第2のコイル要素140b、第3のコイル要素140c、および第4のコイル要素140dを取り囲む残りのすべてのコイル要素を示している。第1のコイル要素140a、第2のコイル要素140b、第3のコイル要素140c、および第4のコイル要素140dに関して先に説明した接続および屈曲の特徴は、固定子コア110の円周の周りで60回繰り返されることに留意されたい。この構成の一貫性により、固定子コア110の第1側部111において、相互接続されたコイル要素140によって形成されるクラウンの高さを大幅に低減することができる。図2Dを参照して簡単に説明すると、コイル要素140は、固定子コア110の第1側部111において50ミリメートル未満または45ミリメートル未満だけ伸びる(L1)。いくつかの例において、このコイル延長/クラウン高さ(L1)は38ミリメートルから42ミリメートルの間、例えば、約40ミリメートルである。
【0026】
図4Aを参照すると、リードアセンブリ150は、それぞれが分数スロット電気モータ100の異なる位相に対応する3つの相バスバー152を有する。3つの相バスバー152は、分数スロット電気モータ100への外部接続を提供し、コイル要素140のいくつかにも接続される。いくつかの例において、リードアセンブリ150は、他のコイル要素140を相互接続するために使用される2つの中立バスバー160を有する。相バスバー152とは異なり、2つの中立バスバー160は外部接続を形成しない。
【0027】
相バスバー152および中立バスバー160は、バスバー絶縁体158によって、互いに絶縁されており、また、互いに対して支持されている。いくつかの例において、バスバー絶縁体158は、相バスバー152および中立バスバー160の上にモールドされる。換言すれば、相バスバー152および中立バスバー160は、バスバー絶縁体158に統合される。ただし、様々な接続端子がバスバー絶縁体158から延在して、相バスバー152および中立バスバー160への接続を形成する。
【0028】
図4Aは、また、リードアセンブリ150のオプションの構成要素であるバスバー熱電対159を示している。これがある場合、バスバー熱電対159は、バスバー絶縁体158から延びる1つのバスバー152に接続され、このバスバー152の温度を測定するように構成される。温度測定値は、例えば、温度が特定の閾値を超えると、分数スロット電気モータ100を流れる電流を低減するために、モータコントローラに伝達される。
【0029】
図4Bは、リードアセンブリ150内の相バスバー152および中立バスバー160の配置を示すために、バスバー絶縁体158のないリードアセンブリ150を示す。相バスバー152は、リードアセンブリ150の最上層を形成する。これらの層は、固定子コア110からさらに離れている。中立バスバー160は、固定子コア110に最も近い最下層を形成する。
【0030】
図4Cは、中立バスバー160を示し、明確にするためにリードアセンブリ150の他の構成要素を示していない。この例において、各中立バスバー160は、3つの中立端子163および中立フープ165を含み、中立端子163を相互接続する。中立端子163は、中立バスバー160によって相互接続される3つの異なるコイル要素140を接続するために使用される。図4Cに示されるように、中立端子163は、リードアセンブリ150およびコイル要素140の他の構成要素との干渉を回避するために、中立フープ165から半径方向にオフセットされている。さらに、図4Aを参照すると、中立端子163は、バスバー絶縁体158を通って、そしてバスバー絶縁体158から離れて延び、これによって、コイル要素140への電気的接続の生成を可能にする。中立フープ165は、バスバー絶縁体158によって封止され絶縁されているままである。
【0031】
図4Dは、リードアセンブリ150の他の構成要素が示されていない相バスバー152を示している。図4E~4Gは、これらの3つの相バスバー152のそれぞれの別個の図を提供する。各バスバー152は、2つのコイル要素140への接続を形成するための2つの相端子153を備える。各相バスバー152の2つの相端子153は、平面の半円形を有することができるフープ155によって結合または接続されている。さらに、中立バスバー160とは異なり、各相バスバー152は、分数スロット電気モータ100を外部電源(例えば、インバータ)に接続するための外部端子154を有する。外部端子154は、ネック156によってフープ155に接続されている。いくつかの例において、ネック156は、一次接続端子154が少なくともフープ面に垂直な方向に移動できるように、外部端子154とフープ155との間の柔軟な接続を提供し、これは、例えば、図4Hに模式的に示されている。例えば、ネック156、および、いくつかの例では、外部端子154は、薄い金属ストリップのスタックから形成されている。この柔軟性は、内部接続(例えば、相端子153とコイル要素140の間)および/または外部接続(例えば、外部端子154と外部電源との間)を維持する。
【0032】
次に、図5Aおよび図5Bを参照して、リードアセンブリ150とコイル要素140との間の様々な接続について説明する。具体的には、図5Aは、バスバー絶縁体158なしで、分数スロット電気モータ100を示し、固定子コア110の第2側部112での様々な接続を示す。これらの接続は、図5Aにおいてグループ1~グループ6として識別される6つのグループに概念的に分割されて良い。同じタイプの接続が各グループに存在し、これらは図5Bにおいてグループ3についてさらに示されている。具体的には、図5Bは、リードアセンブリ150とコイル要素140との間、またはコイル要素140同士の間の5つの異なる接続501~502を示している。接続501は、相バスバー152とコイル要素140との間にあり、接続502は、中立バスバー160と別のコイル要素140との間にある。接続503、接続504、および接続505のそれぞれは、一対の異なるコイル要素140の間にある。
【0033】
この例では、30個の接続のみが、固定子コア110の第2側部112のコイル要素140によって形成されることに留意されたい。30個の接続のうち18個はコイル要素140の間にあり、6個の接続が、コイル要素140と相バスバー152の間にあり(各相バスバー152への2個の接続)、また、6個の接続が、コイル要素140と中立バスバー160の間にある(各中立バスバー160への3個の接続)。これらの接続は、延長コイル要素と呼ばれる特定のタイプのコイル要素140である。全体として、48個の延長コイル要素がこれらの接続に使用される。すなわち、18個の要素要素接続(または合計36個のコイル要素)ごとに2個のコイル要素、要素中立バスバー接続用に6個のコイル要素、および要素-相バスバー接続要素に6個のコイル要素である。残りのコイル要素140は、固定子コア110の第2側部112で接続を形成しない。代わりに、これらのコイル要素140は、1つの固定子スロット114から突出し、別の固定子スロット114に向かって、そして別の固定子スロット114内に延びる。これらのコイル要素140は、ループコイル要素と呼ばれる。この例において、96個のループコイル要素がある。次に、両方のタイプのコイル要素を、図6A図6Eを参照して説明する。
【0034】
図6Aは、リードアセンブリ150なしに、分数スロット電気モータ100を示し、固定子コア110の第2側部112におけるコイル要素140の配置を示している。図6B~6Eは、個々のコイル要素140を示している。より具体的には、図6B~6Dは、ループコイル要素141の3つの例を示している。図6Eは、延長コイル要素142の例を示している。
【0035】
図6B~6Dを参照すると、各ループコイル要素141は、2つのループ延長部143を有し、それぞれがループ延長端145で終端する。ループ延長部143は、端部ループ144によって相互接続される。ループ延長端145は、第1側部111で固定子コア110から延在し、図2Dを参照して上記で説明したように、他のコイル要素140の端部に接続されている。端部ループ144は、第2側部112の固定子コア110から、異なる固定子スロット114との間に延びる。先に説明したように、ループコイル要素141は、第2側部112で他の要素に接続されていない。
【0036】
図6Eを参照すると、各延長コイル要素142は、1つの延長部146を有し、第1の延長端147および第2の延長端148で終端する。延長部146は、固定子コア110を通って突出する。第1の延長端147は、第1側部側111で固定子コア110から延長し、別の延長コイル要素142の第1の延長端147またはループコイル要素141のループ延長部143に接続されている。第2の延長端148は、第2側部112で固定子コア110から延在し、別の延長コイル要素142の第2の延長端148に接続されるか、バスバー152に接続されるか、または中立バスバー160に接続される。
【0037】
図7Aは、第1のタイプのコイル要素171の模式図であり、これはループコイル要素141の一例である。図7Bは、図7Aに対応する上面図である。具体的には、図7Bは、第1の固定子スロット114a(D4に対応する「D」位置)および第2の固定子スロット114b(これもD4に対応する「D」位置)に突出する第1のタイプのコイル要素171を示す。第2の固定子スロット114bは、第1の固定子スロット114aから他の5つのスロットによって分離されている。さらに、第1のタイプのコイル要素171は、「D」位置にわたって延在し、それにより、少なくとも固定子コア110の第2側部112において、実質的な半径方向のオフセットを有さない。最後に、第1のタイプのコイル要素171は、第2の固定子スロット114bを通過する終点149まで円周方向に延在し、次いで、第2の固定子スロット114bへの戻りループを形成する。この特徴は、他のコイル要素からの干渉を回避するために使用され、例えば、第1の固定子スロット114aと第2の固定子スロット114bとの間の他のスロットから延びる。第1のタイプのコイル要素171は、「スロットD-大スパン」コイル要素と呼ばれることがある。いくつかの例において、コイル要素140は、第1のタイプのコイル要素171の6つの異なるインスタンスを有する。
【0038】
図7Cは、第1のタイプのコイル要素171と第2のタイプのコイル要素172との模式図である。第2のタイプのコイル要素172は、延長コイル要素142の例である。第2のタイプのコイル要素172は、第1の固定子スロット114aに隣接する第3の固定子スロット114cから延び、第1タイプのコイル要素171の形状に追従し、そののち、固定子コア110の第2側部112から伸びて遠ざかる。この延長は、第2タイプのコイル要素172への電気接続を形成するのに用いられる。
【0039】
図7Dは、第3のタイプのコイル要素173の模式図であり、これはループコイル要素141の別の例である。図7Eは、図7Dに対応する上面図である。具体的には、図7Eは、第1の固定子スロット114a(D4に対応する「D」位置)および第2の固定子スロット114b(これもD3に対応する「C」位置)に突出する第3のタイプのコイル要素173を示す。図7Eの第1の固定子スロット114aおよび第2の固定子スロット114bは、他の図(例えば、図7Bおよび図7C)で識別されるものとは異なって良く、これは特定のコイル要素の例を説明するために使用されることに留意されたい。図7Eにおいて、第2の固定子スロット114bは、第1の固定子スロット114aから7つの他のスロットによって分離されている。さらに、第3のタイプのコイル要素173は、「C」位置に戻る前に、すべてのコイル位置(「D」位置から「A」位置まで)にわたって半径方向に延びる。この特徴は、他のコイル要素からの干渉を回避するために使用される。第3のタイプのコイル要素173は、「スロットC-D-クラウンスパン8スロット」コイル要素と呼ばれることがある。いくつかの例において、コイル要素140は、第3のタイプのコイル要素173の30の異なるインスタンスを有する。
【0040】
図7Fは、第4のタイプのコイル要素174の模式図であり、これはループコイル要素141の別の例である。図7Gは、図7Fに対応する上面図である。具体的には、図7Gは、第1の固定子スロット114a(D2に対応する「B」位置)および第2の固定子スロット114b(これもD3に対応する「C」位置)に突出する第4のタイプのコイル要素174を示す。前と同じように、図7において第1の固定子スロット114aおよび第2の固定子スロット114bは、他の図で識別されているものとは異なって良い。図7Gにおいて、第2の固定子スロット114bは、第1の固定子スロット114aから他の6つのスロットによって分離されている。さらに、第4のタイプのコイル要素174は、「C」位置に戻る前に、すべてのコイル位置を横切って(「B」位置から「A」位置を越えて)半径方向に延びる。この機能は、他のコイル要素からの干渉を回避するために使用される。第4のタイプのコイル要素174は、「スロットB-C-クラウンスパン7スロット」コイル要素と呼ばれることがある。いくつかの例において、コイル要素140は、第4のタイプのコイル要素174の30の異なるインスタンスを有する。
【0041】
図7Hは、第5のタイプのコイル要素175の模式図であり、これは延長コイル要素142の例である。図7Iは、図7Hに対応する上面図である。具体的には、図7Iは、第1の固定子スロット114a(D1に対応する「A」位置)に突出する延長部146を含む第5のタイプのコイル要素175を示している。第5のタイプのコイル要素175の第1の端部147は、別のコイル要素またはリードアセンブリ150を接続するために固定子コア110から延びる。より具体的には、第1の端部147は、第1の固定子スロット114aから他の3つのスロットによって分離されて、第2の固定子スロット114b上に延びる。さらに、第1の端部147は、第2の固定子スロット114bの「C」位置を超えて延びる。いくつかの例にいて、第1の端部147は、第2の固定子スロット114bの「D」位置を超えて延びる。この特徴は、他のコイル要素からの干渉を回避するために使用される。第5のタイプのコイル要素175は、「IピンスロットD-A」、「IピンスロットD-A」と呼ばれることがある。いくつかの例において、コイル要素140は、第5のタイプのコイル要素174の18の異なるインスタンスを有する。
【0042】
全体として、いくつかの例において、分数スロット電気モータ100は、144個の別個のコイル要素140を有する。これらのコイル要素140は、7つの異なるタイプ、または、構成によって表すことができ、そのうちの5つは、図7A~7Iを参照して上で説明した。いくつかの例において、コイル要素140は、96個のループコイル要素141および48個の延長コイル要素142を有する。
【0043】
図8Aは、いくつかの例に従う、固定子配線模式図図を示している。図8B図8C図8D図8E、および図8Fは、図8Aの固定子配線概略の異なる部分を示している。図8Aの概略は、巻線の4つの層のそれぞれを示している。コイル間の接続、およびバスバーと中立バスバーへの接続を確認できる。
【0044】
図9は、いくつかの例に従う、固定子配線表を示している。より具体的には、図9は、各固定子スロットの内容を示し、各コイルの位相、各コイルが属する並列回路、および接続の順序を示している。
【0045】
[電気自動車の例]
分数スロット電気モータ100の1つの用途は、電気自動車、またはより具体的には、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、および全電気自動車である。例えば、図10は、バッテリーパック1010、インバータ1020、および分数スロット電気モータ100を含む電気自動車1000の模式図である。電気自動車1000の他の構成要素は、簡単にするために示されていない。バッテリーパック1010は、インバータ1020から(例えば、充電器などの外部ソースから、または電気自動車1000の回生ブレーキから)受け取ったエネルギーを受け取り、この電気エネルギーを将来の使用のために貯蔵するように構成される。さらに、バッテリーパック1010は、蓄積された電気エネルギーをインバータ1020に放出するように、例えば、分数スロット電気モータ100を駆動し、電気自動車1000の他のシステム(例えば、暖房換気、照明など)を操作するように構成される。
【0046】
[他の例]
さらに、この説明は、以下の項目による例を含む。
【0047】
[項目1]
分数スロット電気モータにおいて、
第1側部と、第2側部と、上記第1側部および上記第2側部の間を延びる複数の固定子スロットとを有する固定子コアと、
複数のコイル要素によって形成されるコイルと、
3つの相バスバーを有するリードアセンブリとを有し、
上記コイル要素の各々は、上記固定子コアの上記第1側部および上記第2側部の間を通り抜け、上記コイル要素の各々は、上記固定子コアの上記第1側部において上記コイル要素のうちの少なくとも1つの他のコイル要素と電気的に結合され、上記コイル要素の各々は矩形の断面を具備し、
上記相バスバーの各々は上記固定子コアの上記第2側部において上記コイル要素のうちの少なくとも1つのコイル要素と電気的に結合され、
上記相バスバーの各々は、上記分数スロット電気モータを外部電源に接続するための外部端子を有することを特徴とする分数スロット電気モータ。
【0048】
[項目2]
上記リードアセンブリがさらに2つの中立バスバーを有し、当該2つの中立バスバーの各々が上記固定子コアの上記第2側部において上記コイル要素のうちの少なくとも1つのコイル要素に電気的に結合される項目1に記載の分数スロット電気モータ。
【0049】
[項目3]
上記中立バスバーおよび上記相バスバーが上記リードアセンブリ内に積み重ねられ、互いに電気的に絶縁されている項目2に記載の分数スロット電気モータ。
【0050】
[項目4]
上記リードアセンブリが、上記中立バスバーおよび上記相バスバーの各々の上に成形され、上記中立バスバーおよび上記相バスバーを互いに機械的に支持するバスバー絶縁体を有する項目3に記載の分数スロット電気モータ。
【0051】
[項目5]
上記各相バスバーの各々は、1または複数の相端子を有し、当該相端子は、上記バスバー絶縁体から突出し、上記コイル要素のうちの1つまたは複数のコイル要素に電気的に結合される項目4に記載の分数スロット電気モータ。
【0052】
[項目6]
上記中立バスバーの各々は、1または複数の中立端子を有し、上記中立端子は、上記バスバー絶縁体から突出し、上記コイル要素のうちの1つまたは複数のコイル要素に電気的に結合される項目4に記載の分数スロット電気モータ。
【0053】
[項目7]
上記リードアセンブリが、バスバー熱電対をさらに有し、上記バスバー熱電対は、上記バスバー絶縁体上に支持され、上記相バスバーの1つに熱結合され、上記バスバー絶縁体を通って部分的に突出する項目4に記載の分数スロット電気モータ。
【0054】
[項目8]
上記3つの相バスバーの各々がフープを有し、上記外部端子が上記フープに柔軟に接続されるようになされる項目1に記載の分数スロット電気モータ。
【0055】
[項目9]
上記3つの相バスバーの各々は、ネックを有し、上記ネックは、上記外部端子へのフープに柔軟に接続され、上記ネックは複数の金属ストリップで形成される項目8に記載の分数スロット電気モータ。
【0056】
[項目10]
上記3つの相バスバーがリードアセンブリに積み重ねられる項目8に記載の分数スロット電気モータ。
【0057】
[項目11]
上記コイル要素は、上記ループコイル要素および上記延長コイル要素を有し、上記ループコイル要素が上記固定子コアの上記第1側部でのみ接続され、上記延長コイル要素が上記固定子コアの上記第1側部および上記第2側部の双方で接続されるようになっている項目1に記載の分数スロット電気モータ。
【0058】
[項目12]
上記ループコイル要素の各々は、1つのエンドループと2つのループ延長部を有し、上記エンドループによって相互接続され、各々がループ延長端で終端し、
上記2つのループ延長部の各々の上記延長端は、上記第1側部において上記固定子コアから延長し、上記コイル要素の1つに接続され、
上記エンドループは、上記固定子スロットの2つの異なる固定子スロットの間で上記第2側部において上記固定子コアから延びる項目11に記載の分数スロット電気モータ。
【0059】
[項目13]
上記ループコイル要素の各々の上記端部ループは、上記固定子コアの上記第2側部と上記リードアセンブリとの間に配置される項目12に記載の分数スロット電気モータ。
【0060】
[項目14]
上記ループコイル要素のうちの1つのループコイル要素の上記2つのループ延長部が、同じ位置にある上記固定子スロットのうちの上記2つの異なる固定子スロットを通って延びる項目12に記載の分数スロット電気モータ。
【0061】
[項目15]
上記ループコイル要素のうちの1つのループコイル要素の上記2つのループ延長部が、異なる位置にある上記固定子スロットのうちの上記2つの異なる固定子スロットを通って延びる項目12に記載の分数スロット電気モータ。
【0062】
[項目16]
上記延長コイル要素の各々は、第1の端部、延長部、および第2の端部を有し、
上記延長部は、上記第1側部と上記第2側部との間で上記固定子コアを通って突出し、上記第1の端部と上記第2の端部とを相互接続し、
上記第1の端部は、上記第1側部において上記固定子コアから延在し、上記コイル要素のうちの1つに接続され、
上記第2の端部は、上記第2側部において上記固定子コアから延在し、上記コイル要素の1つまたは上記リードアセンブリに接続される項目11に記載の分数スロット電気モータ。
【0063】
[項目17]
上記伸長コイル要素の各々の上記第2の端部が、上記リードアセンブリを越えて少なくとも部分的に突出している項目16に記載の分数スロット電気モータ。
【0064】
[項目18]
上記第2の端部は、上記延長部に対して半径方向にオフセットされている項目16に記載の分数スロット電気モータ。
【0065】
[項目19]
上記コイル要素が三相、二並列構成に配置されている項目1に記載の分数スロット電気モータ。
【0066】
[項目20]
上記コイル要素の各々の矩形断面が、3.0ミリメートルから4.0ミリメートルの間の厚さ、および2.5ミリメートルから3.5ミリメートルの間の幅を有する項目1に記載の分数スロット電気モータ。
【0067】
[結論]
上述の概念は、理解を明確にするためにいくらか詳細に説明されてきたけれども、所定の変更および修正が、添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。プロセス、システム、および装置を実装するための多くの代替的な態様があることに留意されたい。したがって、本例は、例示的であり、限定的ではないと理解されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B-C】
図2D-F】
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B-D】
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A-B】
図6A-E】
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
【国際調査報告】