(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】溶鉱炉のスキップホイスト
(51)【国際特許分類】
B66D 1/14 20060101AFI20221114BHJP
B66D 1/12 20060101ALI20221114BHJP
F27D 3/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B66D1/14 A
B66D1/12
F27D3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515531
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020074976
(87)【国際公開番号】W WO2021048068
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513200003
【氏名又は名称】ポール ワース エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハットマッチャー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ステイチェン,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ムンホヴェン,ジョー
【テーマコード(参考)】
4K055
【Fターム(参考)】
4K055AA01
4K055BA01
4K055BA03
(57)【要約】
本発明は、ウインチシステム(1)を有する溶鉱炉のスキップホイストに関する。溶鉱炉のスキップホイストのために改良した駆動システムを提供するために、本発明は、ウインチシステムを提供し、ウインチシステムは、ドラム軸(A)周りに回転可能に取り付けられたウインチドラム(2)と、少なくとも3つの駆動モータ(8)と、各駆動モータ(8)からウインチドラム(2)に駆動力を伝達する変速機(3)と、を備える。本発明は更に溶鉱炉に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチシステム(1)を有する溶鉱炉のスキップホイストであって、
前記ウインチシステム(1)が、
ドラム軸(A)周りに回転可能に取り付けられるウインチドラム(2)と、
少なくとも3つの駆動モータ(8)と、
前記駆動モータ(8)のそれぞれから前記ウインチドラム(2)に駆動力を伝達する変速機(3)と、
を備える、スキップホイスト。
【請求項2】
前記ウインチシステム(1)が、前記スキップホイストの最適な動作に必要な公称電力を有し、
1つの駆動モータ(8)が故障した場合に、他の前記駆動モータ(8)の合成電力出力が、前記公称電力の少なくとも100%になるように選択された個々の電力出力を、前記駆動モータ(8)が有する、請求項1に記載のスキップホイスト。
【請求項3】
少なくとも4つの駆動モータ(8)、好ましくは少なくとも5つの駆動モータ(8)、より好ましくは少なくとも6つの駆動モータ(8)を備える、請求項1から2のいずれか一項に記載のスキップホイスト。
【請求項4】
1つの駆動モータ(8)が故障した場合、他の前記駆動モータ(8)の前記合成電力出力が、前記公称電力の最大110%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のスキップホイスト。
【請求項5】
前記変速機(3)が、
前記ウインチドラム(2)に接続され、前記ドラム軸(A)周りに回転可能な主歯車(4)と、
前記主歯車(4)周りに円周方向に配置され、前記主歯車(4)とインターフェースするように適合される複数の駆動歯車(6)と、を備え、
各駆動歯車(6)が、駆動モータ(8)に結合される、請求項1から4のいずれか一項に記載のスキップホイスト。
【請求項6】
前記主歯車(4)が、外歯を有する円筒形歯車である、請求項5に記載のスキップホイスト。
【請求項7】
少なくとも1つの駆動歯車(6)が、前記ドラム軸(A)に平行な歯車軸(B)周りに回転可能である、請求項5又は6に記載のスキップホイスト。
【請求項8】
少なくとも1つの駆動歯車(6)が、外歯を有する円筒形歯車である、請求項5から7のいずれか一項に記載のスキップホイスト。
【請求項9】
少なくとも1つの駆動モータ(8)が、駆動変速機(7)によって駆動歯車(6)に接続される、請求項1から8のいずれか一項に記載のスキップホイスト。
【請求項10】
前記主歯車(4)及び前記駆動歯車(6)が、主筐体(12)内に少なくとも部分的に配置され、各駆動変速機(7)が、駆動筐体(9)内に配置される、請求項9に記載のスキップホイスト。
【請求項11】
前記駆動モータ(8)が、前記駆動筐体(9)によって少なくとも部分的に支持されるように前記駆動筐体(9)に取り付けられることを特徴とする、請求項10に記載のスキップホイスト。
【請求項12】
前記駆動歯車(6)が、前記駆動筐体(9)に接続され、前記駆動筐体(9)と共に前記主歯車(4)から取り外されるように適合される、請求項10又は11に記載のスキップホイスト。
【請求項13】
前記駆動筐体(9)が、前記主筐体(12)に接続され、前記主筐体(12)によって少なくとも部分的に支持される、請求項10から12のいずれか一項に記載のスキップホイスト。
【請求項14】
前記駆動筐体(9)が、前記主筐体(12)のアクセス開口部(13)周りに円周方向に取り付けられた接続フランジ(10)によって、前記主筐体(12)に接続され、アクセス開口部(13)が、前記駆動歯車(6)の断面よりも大きい断面を有する、請求項10から13のいずれか一項に記載のスキップホイスト。
【請求項15】
溶鉱炉であって、
炉シャフトと、
原料を前記炉シャフトに装入するための前記溶鉱炉の上部の上部装入装置と、
請求項1から14のいずれか一項に記載され、スキップ車両用の少なくとも1つの傾斜軌道を備えるスキップホイストであって、前記少なくとも1つの軌道が、地面レベルから前記炉の上部に通じ、前記少なくとも1つのスキップ車両が、前記ウインチシステム(1)によって動作されるケーブルに接続され、原料を地面レベルから前記溶鉱炉の上部に搬送し、前記原料を前記上部装入装置に装入するように適合される、スキップホイストと、
を有する溶鉱炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鉱炉のスキップホイスト、及び溶鉱炉に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鉱炉プラントは、鉄鉱石及びコークスなどの材料を溶鉱炉の上部に装入するスキップ・ホイスト・システムを一般的に使用する。一般に、これらのシステムは、地面レベルから炉の上部に通じる隣接する傾斜軌道上を走行する一対のスキップ車両を備える。これらのスキップ車両は、スキップウインチによって移動可能なケーブルによって相互接続される。一方の装入された車両が軌道を上昇すると、他方の空の車両が下降し、それによって装入された車両の重さと部分的に釣り合う。
【0003】
一般的な設計によれば、現在のスキップ・ウインチ・システムは、カップリング及び追加のブレークを介して特注のギアボックスに接続されたウインチドラム(通常、直径2~3mである)を備える。ギアボックスは、通常、750kWの出力を有し、690V(750rpm、6極)で動作する2つの電気モータによって動力が供給される。各モータについて、システムはVVVF(可変電圧可変周波数駆動)を備える。一般的に入手可能な400V電源とは対照的に、690V電源は、スキップ・ホイスト・システムのモータ用の専用変圧器を必要とする。また、ウインチドラムを確実に停止及び保持し得るようにするために、各モータに追加のブレーキが必要である。ギアボックスの設計及び構造は高価である。ギアボックスが故障した場合、交換又は修理が終了するまで、もはや動作が困難であるため、スキップホイストを停止する必要がある。すべての構成要素は、1つの支持構造体上に別々に独立して取り付けられるため、構成要素を手動で位置合わせする必要がある。この現場作業は、正確な実行が適切な動作にとって重要であるため、多くの時間がかかる。
【0004】
100%で動作させるために必要なこのような現在のシステムの公称動作電力は、約1000kWである。設置した2つの750kWの電気モータが、1500kWの総電力を供給するため、システムは、500kW又は50%の未使用のバックアップを有し、これは資源の浪費と考えられ得る。一方、モータが故障した場合、2つの750kWモータのうちの一方は動作せず、システムは、750kWの電力しか自由に利用できない。言い換えれば、スキップ・ホイスト・システムは、75%でのみ動作可能である。これは、溶鉱炉への材料供給に影響を及ぼし、生産性の深刻な損失をもたらす。安全上の理由から、「バックアップ」VVVFが設置されることが多く(合計3つのVVVFになる)、生産損失を最小限に抑えるために、予備の750kWモータが現場に保管される。この予備のモータは、大型であり、多くの保管スペースを消費する。一般に、750kWモータは極めて重く、高価であり、交換が高価で、難しい。予備のモータ及びVVVFのリードタイムは、標準化されたシステムと比較して極めて長い。
【0005】
特許文献1は、支持及びブレーキ組立を備えた掘削リグ用の油圧ワイヤラインウインチを開示している。支持は、ボックス組立と、ボックス組立の両端部に配置された2つのギアボックス筐体及び2つの端部キャップ組立と、を含む。ブレーキ組立の2つのグループは、筐体の2つの端部に対称に設けられる。各ブレーキ組立は、駆動機構と、減速歯車と、ブレーキ機構と、を備える。駆動機構が、端部キャップ組立上に配置される一方で、減速歯車は、ギアボックス筐体内に配置される。駆動機構は、ウインチケーブル用のシリンダの軸周りに円周方向に配置され、減速歯車を介してシリンダを駆動する。
【0006】
特許文献2は、リング歯車を駆動する駆動ユニットを開示している。駆動ユニットは、モータと、ギアボックスと、リング歯車を駆動するピニオンが配置された出力シャフトと、を備える。駆動ユニットはまた、ギアボックスとピニオンとの間に配置された機械式過負荷保護を有する。複数の駆動ユニットは、リング歯車を一括して駆動するように配置され得る。
【0007】
特許文献3は、コークスポット用のクレーンの吊上げ機構を開示している。それは4つのリールグループを備え、その各々は遊星減速歯車及びカプラを介して電気モータによって駆動される。各リールグループにはケーブルが巻かれており、空回りプーリと固定プーリに架け渡されている。コークスポットを、4つの空回りプーリに懸架することができる。電気モータ及びその出力シャフトは、減速歯車に対して対称に配置される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、溶鉱炉のスキップホイストのために改良した駆動システムを提供することである。本目的は、請求項1に記載のスキップホイスト、及び請求項15に記載の溶鉱炉によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ウインチシステムを有する溶鉱炉のスキップホイストを提供する。スキップホイストは、鉄鉱石及びコークスなどの材料を溶鉱炉の上部に搬送するために使用されることが理解される。それは、ケーブルに接続されたスキップ車両用の少なくとも1つの傾斜軌道を備え、ケーブルはウインチシステムによって動作される。一般に、スキップホイストは、隣接する軌道上を走行し、ケーブルによって相互接続される一対のスキップ車両を備え、これにより、ウインチシステムの動作によって、一方のスキップ車両が上方に移動しつつ、他方が下方に移動する。スキップホイストの典型的な吊上げ能力は、20t~60t又は30t~50tであり得る。典型的な吊上げ高さは、60m~100m又は80m~100mであり得る。一回の吊上げ動作の典型的な持続時間は、30秒~80秒又は40秒~60秒であり得る。言い換えれば、スキップホイストは、通常、高負荷を短時間で極めて高く吊り上げることが必要である。
【0010】
ウインチシステムは、ドラム軸周りに回転可能に取り付けられるウインチドラムを備える。ウインチドラムは、上述のケーブルを受け入れるように適合され、すなわち、動作状態において、ケーブルは、ウインチドラム周りに少なくとも部分的に巻き付けられる。ウインチドラムは、通常はウインチドラムの対称軸であるドラム軸周りに回転可能であるように取り付けられる。ウインチドラム自体のサイズ及び設計は、当技術分野で知られるウインチシステムと同一又は同様であり得る。例えば、それは、2~3mの直径、及び2~5mの軸方向長さ(ドラム軸に沿って測定)を有し得る。
【0011】
ウインチシステムは、少なくとも3つの駆動モータを更に備える。駆動モータは燃焼原動機であってもよいことが考えられるが、通常は電気モータである。一般に、駆動モータは、ステータに対して回転するように適合したロータを有する回転モータである。好ましくは、これらは、容易に入手可能な標準的なモータであり、例えば、4極で、回転速度1500rpm及び動作電圧400Vを有する。個々のモータの公称駆動モーメントは、1000Nm~1500Nm又は1100Nm~1400Nmであってもよく、最大駆動モーメントは、2500Nm~3200Nm又は2700Nm~3000Nmであってもよい。好ましくは、すべての駆動モータは同一である。これは本発明にとって必須ではないが、駆動モータの修理及び交換を容易にする。
【0012】
更に、ウインチシステムは、各駆動モータからウインチドラムに駆動力を伝達する変速機を備える。変速機は、一般に、駆動力を伝達するように適合した任意の要素、例えばシャフト、歯車などを備えることができる。一般に、変速機は、駆動力を伝達するだけでなく、駆動モータの回転速度に対してウインチドラムの回転速度を低下させながら駆動力を増加させるような歯車比を有する。以下に説明するように、変速機(又は変速機の少なくとも一部)は、通常、可動部品を汚れ及び機械的損傷から保護する少なくとも1つの筐体又はハウジング内に配置される。
【0013】
本発明の概念によれば、少なくとも3つの駆動モータが、変速機によってウインチドラムに結合される。したがって、個々の駆動モータが必要とする電力は比較的小さい。これは、更に小型で「更に標準化された」モータを使用し得ることを意味する。このようなモータは、通常、専用の変圧器が不要であるように、低い電圧(例えば400V)で動作する。また、各個々の駆動モータから変速機によって伝達される必要がある駆動力は、例えば2つの強力なモータよりもかなり小さい。したがって、変速機、例えば、インターフェースする歯車の噛合い歯に対する負荷が低減される。更に、本発明のウインチシステムの慣性は、通常、2つの大型モータ及び大型ギアボックスを有するシステムの慣性と比較して小さく、したがって、加速中の電力消費は通常少ない。また、多くの場合、追加のブレーキを使用する必要はなく、すなわち、それぞれの駆動モータの標準ブレーキで十分である。
【0014】
別の利点は、単一の駆動モータの電力寄与が、すべてのモータの総電力出力に対して少ないことである。したがって、単一のモータの故障がウインチシステムの運用性に与える影響は少ない。2つのモータの場合に完全な運用性を保証するために、両方のモータの合成電力は公称電力の200%である必要があり、これは極めて不経済である。一方、合成電力が、公称電力と等しい又は直上である場合、単一のモータの故障はスキップホイストを動作不能にする。多数の駆動モータを用いることで、単一の駆動モータが故障した場合に、依然として公称電力の十分な割合を維持しつつ、公称電力を大きく超えないように、合成電力を選択することができる。
【0015】
説明したように、ウインチシステムは、スキップホイストの最適動作に必要な公称電力を有する。言い換えれば、公称電力は、スキップホイストの最適で、障害のない動作を十分に維持する電力を表す。公称電力は、溶鉱炉の要件に依存するが、通常、600kW~1500kW又は800kW~1200kWである。例えば、公称電力は1000kWとすることができる。好ましい実施形態によれば、1つの駆動モータが故障した場合に、他の駆動モータの合成電力出力が公称電力の少なくとも100%になるように選択された個々の電力出力を、駆動モータは有する。個々の電力出力は、単一の駆動モータで設計される(最大)電力出力である。この個々の電力出力は、100kW~400kW、又は150kW~250kWであってもよい。合成電力出力は、1つの駆動モータが故障したときに、残りの駆動モータの個々の電力出力の合計である。この文脈における故障とは、それぞれの駆動モータが駆動力を提供することができなくなることを指す。これは、モータ自体の故障、このモータに割り当てられたVVVFの故障、又はこの特定のモータからウインチドラムに駆動力を伝達するように設計された変速機の一部の故障に起因する場合がある。そのような故障の場合、残りの駆動モータの個々の電力出力は、公称電力の少なくとも100%を十分に提供する。言い換えれば、1つの駆動モータが故障した場合、新規の駆動モータに交換するために、非動作駆動モータが取り外されている間も、スキップホイスト及び溶鉱炉の動作を継続し得るように、公称電力を完全に維持することができる。交換プロセスのいくつかの段階で、ウインチシステムの一時的な停止が必要であるが、これらを比較的短くすることができ、溶鉱炉の動作を著しく損なうことはない。これに関連して、駆動モータの数が比較的増加すると、未使用のバックアップも減少する。例えば、システムがN個の同一の駆動モータを備え、N-1個の駆動モータが公称電力の100%を十分に提供する場合、N番目の駆動モータが提供する未使用のバックアップは、公称電力の 100%/(N-1) である。
【0016】
ウインチシステムを、公称電力の小さい又は大きい要件に恒久的に適合させることも考えられる。例えば、小さい公称電力で足る溶鉱炉設備では、駆動モータの数を減らし、任意選択で、変速機を適合させることによって、ウインチシステムを適合させることができる。場合によっては、変速機の適合は、最小限であっても、又は不要であってもよく、1つ又はいくつかの駆動モータを単に省略するだけで十分である。
【0017】
上記の有益な効果を更に改善するために、ウインチシステムは、少なくとも4つの駆動モータ、好ましくは少なくとも5つの駆動モータ、より好ましくは少なくとも6つの駆動モータを備えることが好ましい。一例として、ウインチシステムは、1000kWの公称電力を有するスキップホイスト用の6つの200kW駆動モータを備えることができる。合成電力出力は、1200kW(公称電力の120%)になる。駆動モータの1つが故障した場合、スキップホイストは依然として100%の効率で動作することができ、したがって溶鉱炉は100%の生産率で動作することができる。
【0018】
1つの駆動モータが故障した場合でも、公称電力の少なくとも100%を維持することが望ましいが、不使用のバックアップ電力が必然的に増加するため、この割合を大幅に超えると不経済である。したがって、1つの駆動モータが故障した場合、他の駆動モータの合成電力出力が公称電力の最大110%になるように、個々の電力出力を選択することが好ましい。好ましくは、これは最大105%又は100%であってもよい。
【0019】
好ましくは、変速機は、ウインチドラムに接続され、ドラム軸周りに回転可能な主歯車と、主歯車周りに円周方向に配置され、主歯車とインターフェースするように適合された複数の駆動歯車と、を備え、各駆動歯車は駆動モータに結合される。言い換えれば、駆動力は、この駆動モータに直接的又は間接的に結合され得る駆動歯車に、各駆動モータから伝達される。そして、駆動力は、ウインチドラムに接続された主歯車に、駆動歯車から伝達される。駆動歯車(その数は駆動モータの数に対応する)は、主歯車周りに円周方向に配置される。これらは、主歯車の外周に沿って配置されると言うこともできる。主歯車を中央歯車と見なすこともできる。ドラム軸が軸方向を表す場合、駆動歯車は、ドラム軸から径方向にすべてオフセットされる。また、それらは互いに対して接線方向にオフセットされる。いくつかの実施形態では、それらは接線方向に沿って均等に間隔を空けてもよいが、他の実施形態では、異なるオフセット又は間隔が可能である。一般に、1つの(中央の)主歯車と、主歯車の周りに円周方向に配置された複数の駆動歯車と、を有する概念は、変速機全体を小型に設計し、したがってコスト削減につなげることができる。本実施形態では、ウインチシステムは、様々な数の駆動モータに容易に適合させることができる。各追加の駆動モータについて、変速機の全体設計に大きな変更を加えることなく、追加の駆動歯車を追加することができる。
【0020】
主歯車は、例えば円錐形などとすることができる。それは、内歯、すなわちドラム軸に対して径方向内側に面する歯、又はドラム軸の方向に面する歯(クラウン歯車のように)を有することができる。しかしながら、そのような構成は、駆動モータの更に複雑な配置を必要とする場合がある。したがって、主歯車は、外歯を有する円筒形歯車であることが好ましい。言い換えれば、主歯車は、例えば円錐形状とは対照的に、円筒形状を有する。特に、主歯車の中央が中空である環状形状を有してもよい。更に、それは、外歯、すなわちドラム軸に対して径方向外側に面する歯又はセレーションを有する。特に、主歯車は平歯車であってもよい。
【0021】
本発明の範囲内で、駆動歯車が主歯車にインターフェースし得る方法は、様々な可能性がある。例えば、駆動歯車を円錐形として、ドラム軸に対して傾斜した軸周りに回転させてもよい。駆動歯車は、ウォームホイールとして設計された主歯車と相互作用するウォームであってもよく、この場合、ウォームの回転軸はドラム軸に垂直であってもよい。しかしながら、少なくとも1つの駆動歯車は、ドラム軸に平行な歯車軸周りに回転可能であることが好ましい。すべての駆動歯車が、ドラム軸に平行な歯車軸周りに回転可能であることが更に好ましい。各駆動歯車は、それ自体に歯車軸を有し、すなわち、本実施形態は、ドラム軸に平行な複数の歯車軸に対応することが理解される。
【0022】
駆動モータがその駆動歯車に直接接続されること、すなわち、駆動歯車がそれぞれの駆動モータのロータに直接結合されることが可能である。しかしながら、通常、少なくとも1つの駆動モータは、駆動変速機によって駆動歯車に接続される。特に、すべての駆動モータは、駆動変速機によってその駆動歯車に接続され得る。駆動変速機の1つの機能は、駆動モータに対する駆動歯車の回転速度を低下させることである。しかしながら、駆動モータの回転軸と駆動歯車の歯車軸の軸が平行でない場合、駆動変速機は、駆動モータの回転軸と駆動歯車の歯車軸との間の遷移を可能にするような他の機能を有することもできる。ほとんどの場合、駆動変速機は、かなり単純であり、ギアボックスと呼ぶことができる。本実施形態によれば、変速機全体は、主歯車、駆動歯車、及び対応する駆動変速機からなる。これらの駆動変速機は、従来技術に従ってカスタマイズされた大型のギアボックスとは対照的に、標準的なギアボックスであり得る。これは、追加のコスト削減につながる。駆動モータ、駆動変速機及び駆動歯車は、駆動組立の一部と呼ぶことができる。
【0023】
通常、少なくとも1つの駆動モータ(又はすべての駆動モータ)がドラム軸に平行に配置される。言い換えれば、各モータのロータの回転軸は、ドラム軸と平行である。これは、特に、歯車軸がドラム軸に平行である上述の実施形態と組み合わせることができる。
【0024】
通常、変速機の大部分又はすべての部分は、ある種のハウジング又は筐体に配置される必要がある。好ましい実施形態によれば、主歯車及び駆動歯車は、主筐体内に少なくとも部分的に配置され、各駆動変速機は、駆動筐体内に配置される。言い換えれば、主歯車及び駆動歯車は、主筐体(又はハウジング)内に配置されているが、各駆動変速機に対して単一の専用の駆動筐体(又はハウジング)がある。各駆動筐体は、主筐体とは別個に製造される。各駆動変速機が標準的なギアボックスであってもよいのと同様に、駆動筐体も標準的な構成要素であってもよい。
【0025】
上述したように、駆動モータ及び駆動変速機は、駆動組立の一部であってもよい。したがって、駆動モータは、駆動筐体によって少なくとも部分的に支持されるように、駆動筐体に取り付けられてもよい。接続は、例えばボルトによる非恒久的な接続であってもよい。駆動モータの支持構造体はまた、駆動筐体に接続されてもよい。駆動モータ又は駆動変速機を交換する必要がある場合、それらがウインチシステムに設置される前に、両方の要素を駆動組立の一部として共に組み立てることができる。したがって、これら2つの構成要素を別々に位置合わせする必要はない。本実施形態はまた、ウインチシステムを様々な公称電力に、容易に適合にさせる。駆動組立は、様々なウインチシステムに容易に統合し得るモジュールであり、モジュールの数は、必要な公称電力に応じて選択される。
【0026】
好ましくは、駆動歯車は、駆動筐体に接続され、駆動筐体と共に主歯車から取り外されるように適合される。これは、駆動組立の一部である駆動歯車及び駆動変速機の上述の概念に対応する。駆動歯車は、駆動変速機に接続され、駆動変速機は、駆動筐体の内側に配置され、駆動筐体に移動可能に接続されることが理解される。駆動歯車が駆動筐体と共に主歯車から取り外されるように適合されている場合、これらの構成要素の設置及び交換は極めて容易である。それらをウインチシステムに設置する前に、駆動組立の一部として共に組み立てることができる。したがって、駆動歯車及び駆動筐体(又は駆動変速機のそれぞれ)を別個に位置合わせする必要はない。
【0027】
駆動筐体は、主筐体に接続され、主筐体によって少なくとも部分的に支持されることが極めて好ましい。接続は、通常、例えばボルトによる非恒久的な接続である。したがって、駆動筐体が主筐体に直接接続されているので、主歯車に対する駆動変速機(及び場合によっては駆動歯車)の適切な位置合わせを容易にすることができる。上記のように、駆動歯車及び駆動モータが駆動筐体に接続されている場合、駆動筐体を主筐体に接続することによって、すべての構成要素を適切に位置合わせすることができる。主筐体を、ウインチシステム全体のベース又は支持構造体に接続してもよい。本実施形態は、公称電力の様々な要件への適合を更に容易にすることが理解されよう。必要な唯一の適合は、主筐体、及び場合によっては主歯車に関係し得る。それぞれのスキップホイスト及び溶鉱炉の電力要件に応じて、適切な数の「標準化された」駆動筐体を、それぞれの主筐体に接続することができる。
【0028】
特に、主筐体のアクセス開口部周りに円周方向に取り付けられた接続フランジによって、駆動筐体を主筐体に接続することができ、アクセス開口部は、駆動歯車の断面よりも大きい断面を有する。接続フランジは、駆動筐体の一部であってもよく、又は駆動筐体に固定して接続されてもよい。接続フランジは、主筐体のアクセス開口部周りに円周方向に取り付けられる。アクセス開口部は、主筐体を更に分解する必要なしに、駆動歯車を、主筐体に挿入し(又は主筐体から取り外し)得るように設計されている。したがって、アクセス開口部の断面は、駆動歯車の断面よりも大きい。例えば、駆動歯車が円筒形歯車である場合、アクセス開口部は、駆動歯車の直径よりも大きい直径を有する円形であってもよい。
【0029】
本発明は更に溶鉱炉を提供する。溶鉱炉は炉シャフト(又は炉本体)を備え、鉄鉱石及びコークスなどの原料は、高温にさらされ、通常は鉄鉱石から銑鉄を生成する化学反応を受ける。溶鉱炉は、原料を炉シャフトに装入するために、溶鉱炉の上部に上部装入装置を更に備える。この装入装置は、好ましくはベルレス式装入装置であってもよい。これは通常、原料を重力によって炉シャフトに装入し得るように、炉シャフトの上方に配置される。更に、溶鉱炉は、ドラム軸周りに回転可能に取り付けられたウインチドラムと、少なくとも3つの駆動モータと、駆動モータの各々からウインチドラムに駆動力を伝達する変速機と、を備えるウインチシステムを有する本発明のスキップホイストを備える。これらの用語はすべて、本発明のスキップホイストに関して上記で説明しており、したがって再び説明しない。スキップホイストはまた、スキップ車両用の少なくとも1つの傾斜軌道を備え、少なくとも1つの軌道は、地面レベルから炉の上部(上部装入装置のレベル)に通じ、少なくとも1つのスキップ車両は、ウインチシステムによって動作されるケーブル(上部装入装置のレベルに配置される)に接続され、原料を地面レベルから溶鉱炉の上部に搬送し、原料を上部装入装置に装入するように適合される。上述したように、スキップホイストは、通常、ケーブルによって相互接続された2つのスキップ車両用の2つの隣接する軌道を備え、これにより、ウインチシステムの動作によって、一方のスキップ車両が上方に移動しつつ、他方が下方に移動する。本発明の溶鉱炉の好ましい実施形態は、本発明のスキップホイストの実施形態に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を例として説明する。
【
図1】本発明のスキップホイストのためのウインチシステムの斜視図である。
【
図2】いくつかの要素が取り除かれた
図1のウインチシステムの斜視図である。
【
図3】
図1のウインチシステムの駆動組立の斜視図である。
【
図4】
図1のウインチシステムの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1~
図4を通して、類似又は同一の要素は、同一の参照符号によって識別される。
【0032】
図1~
図4は、本発明の溶鉱炉の本発明のスキップホイスト用のウインチシステム1を示す。この例では、スキップホイストの吊上げ能力は39~45,5tであり、吊上げ高さは96mであり、一回の吊上げ動作の持続時間は40~60秒である。
【0033】
ウインチシステム1は、固定ベース20に対してドラム軸A周りに回転可能に取り付けられたウインチドラム2を備える。動作状態において、ウインチドラム2は、スキップホイストの1つ又は通常2つのスキップ車両を移動させるためのケーブル(図示せず)を受け入れる。ウインチドラム2は、ドラム軸Aに平行に位置合わせされた6つの駆動モータ8によって駆動される。例えば、各駆動モータ8は、1500rpm及び400Vで動作し、公称駆動モーメント1282Nm及び最大駆動モーメント2820Nmを有する4極の200kWモータとすることができる。各駆動モータ8からの駆動力は、変速機3を介してウインチドラムに伝達される。変速機は、主歯車4を備え、主歯車4は、ウインチドラム2に固定的に接続され、したがってドラム軸A周りに回転可能である。主歯車4は、中空の中央を有する平歯車として設計される。6つの駆動歯車6は、主歯車4の周囲に配置される。各駆動歯車6は、主歯車4の歯と噛み合う外歯を有する平歯車であり、歯車軸B周りに回転可能である。すべての歯車軸Bは、ドラム軸Aと平行である。ウインチドラム2の動作に必要な総駆動力は、合計6つの駆動モータ6に分割されているため、駆動歯車6及び主歯車4の歯にかかる負荷は、低から中程度であり、したがって、ウインチシステム1の寿命を長くする。
【0034】
主歯車4及び駆動歯車6は、ウインチシステム1の他の構成要素と共に、
図2では取り外されている主筐体12内に配置される。各駆動歯車6は、
図3に示す駆動組立5の一部である。駆動歯車6とは別に、駆動組立5は、駆動変速機7を収容する駆動筐体9と、1つの駆動モータ8と、を備える。駆動モータ8は、駆動筐体9に接続され、駆動筐体9によって少なくとも部分的に支持される。この接続は、歯車軸Bに平行に延びる2つの支持梁11によって部分的に確立される。駆動組立5は、全体としてウインチシステム1に設置され、又はウインチシステム1から除去されるように設計される。言い換えれば、駆動組立5全体が、現場でウインチシステム1に、より具体的には主筐体12に接続される前に、駆動モータ8は、駆動筐体9に接続され、駆動筐体9に位置合わせされる。同様に、駆動組立5全体が、ウインチシステム1に設置される前に、駆動歯車6は、駆動変速機7及び駆動筐体9に接続される。したがって、駆動組立5のすべての構成要素を現場外で位置合わせすることができ、設置及び交換を極めて容易にする。駆動筐体9は、主筐体12内の円形のアクセス開口部13周りに円周方向に配置された接続フランジ10によって、主筐体12に接続される。接続フランジ10は、複数のボルト14によって主筐体12に接続される。主筐体12から駆動組立5を取り外すために、ボルト14が緩められ、駆動歯車6を含む駆動組立5を、歯車軸Bの方向に取り外すことができる。このプロセスを容易にするために、アクセス開口部13の断面は、駆動歯車6の断面よりも大きく、したがって駆動歯車6は、アクセス開口部13を通って主筐体12から移動することができる。
【0035】
ウインチシステム1のそれ以上の停止なしに、又は溶鉱炉の運用性の低下なしに、駆動組立5の修理又は交換を行い得るように、個々の電力出力及び駆動モータ8の数は選択される。一例として、ウインチシステム1は、1000kWの公称電力を有する。この電力は、スキップホイストの通常の最適な動作に必要である。6つの駆動モータ8がすべて動作している場合、総電力出力は1200kWである。したがって、200kWの未使用のバックアップがあり、これは中程度であり、したがって不経済ではない。しかしながら、駆動モータ8のうちの1つが故障し、この駆動モータ8の駆動組立5がウインチシステム1から取り外された場合、残りの5つの駆動モータ8は依然として、公称電力の100%に相当する1000kWの合成電力出力を有する。したがって、駆動組立5を取り外し、その後、駆動組立5(又は交換駆動組立5)を再設置するために、スキップホイストの動作は、ごく短く中断されるだけである。駆動組立5のすべての構成要素が、現場外で互いに接続され、位置合わせされるので、設置に必要な時間も短縮される。
【0036】
ウインチシステム1を様々な公称電力に容易に適合させることができる。例えば、800kWの公称電力を有するスキップホイストの場合、1つの駆動モータ8及びその駆動組立5を省略し得るが、ウインチシステム1の残りは、ほとんど変化しないままであり得る。最も単純な場合では、必要な適合は、対応するアクセス開口部13を閉じることである。公称電力1400kWのスキップホイストの場合、2つの追加の駆動組立5を追加することができ、これは、8つの駆動組立5の設置を可能にする8つのアクセス開口部13を有するように主筐体12を再設計することのみ必要とする。しかしながら、駆動組立の再設計は必要ではない。
【符号の説明】
【0037】
1 ウインチシステム
2 ウインチドラム
3 変速機
4 主歯車
5 駆動組立
6 駆動歯車
7 駆動変速機
8 駆動モータ
9 駆動筐体
10 接続フランジ
11 支持梁
12 主筐体
13 アクセス開口部
14 ボルト
20 ベース
A ドラム軸
B 歯車軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】中国特許出願公開第106517012号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2280191号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101343024号明細書
【国際調査報告】