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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】二方向配電網
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20221114BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20221114BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221114BHJP
【FI】
H02J3/12
H02J3/16
H02M7/48 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515534
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 AU2020050954
(87)【国際公開番号】W WO2021046600
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】2019903323
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020902874
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521355865
【氏名又は名称】イレクシス アイピー ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELEXSYS IP PTY LTD
【住所又は居所原語表記】160 Samford Road, Enoggera, Queensland 4051, AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルコム,ビーヴァン
【テーマコード(参考)】
5G066
5H770
【Fターム(参考)】
5G066DA02
5G066DA04
5G066DA08
5H770BA11
5H770CA05
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA02W
5H770JA17Y
5H770KA01Y
(57)【要約】
本発明は、二方向配電網に関する。この二方向配電網は、高電圧配電バスと、中電圧電力フィードラインと、負荷(単数または複数)および/または電源(単数または複数)に接続された低電圧配電ラインと、中電圧電力調整装置と、を含む。中電圧電力調整装置は、複数のDC端子を有するDC接触器と、中電圧電力フィードラインに接続された送電網コネクタであって、中電圧電力フィードラインのライブ接続(単数または複数)に接続されたライブ端子(単数または複数)およびニュートラルに接続されたニュートラル端子と、DC接触器に接続された複数のスイッチと、複数のスイッチに結合された複数の電子制御デバイスであって、中電圧電力フィードラインのライブ接続各々およびニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、ひいてはさまざまな負荷および電源条件下で配電バスにおける電圧を維持するために、複数のスイッチを制御する複数の電子制御デバイスと、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電網における電力を調整するための装置であって、前記装置は、
a)DCデバイスに接続されるように構成されたDC端子を複数有するDC接触器と、
b)前記送電網に接続されるように構成された送電網コネクタであって、
i)前記送電網の少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、
ii)前記送電網のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、
を含む送電網コネクタと、
c)前記DC接触器に接続された複数のスイッチと、
d)前記複数のスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、前記複数のDC端子を前記少なくとも1つのライブ端子および前記ニュートラル端子に選択的に接続するために、ひいては前記少なくとも1つのライブ接続の各々および前記ニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、前記複数のスイッチを制御するように構成された1つ以上の電子制御デバイスであって、
i)前記少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信し、
ii)前記少なくとも1つのライブ接続について前記電圧読み取り値の平均値を計算し、
iii)前記平均値が所定の上限値より大きい場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、前記複数のスイッチを制御し、
iv)前記平均値が所定の下限値より低い場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記ライブ接続に供給される電圧を上げるために、前記複数のスイッチを制御する、
ように構成された1つ以上の電子制御デバイスと、
を含む装置。
【請求項2】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)無効電力の吐き出し、
b)無効電力の増加、
c)有効電力の吸い込み、および
d)有効電力の減少、
のうちの少なくとも1つによって前記電圧を上げるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)有効電力の吐き出し、
b)有効電力の増加、
c)無効電力の吸い込み、および
d)無効電力の減少、
のうちの少なくとも1つによって前記電圧を下げるように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)少なくともマイクロ秒毎、
b)少なくとも秒毎、および
c)マイクロ秒毎と秒毎との間、
のうちの少なくとも1つで前記電圧読み取り値を受信するように構成される、請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)10分の窓内、および
b)1マイクロ秒の窓内、
の少なくとも一方の移動平均値を計算し、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、ように構成される、請求項1~4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記送電網は多相送電網であり、前記1つ以上の電子制御デバイスは複数のライブ接続の前記電圧を互いに独立に変化させるように構成される、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、回路上の最適位置で接続されるように構成される、請求項1~6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
グリッド接続から前記最適位置までの累積電圧差分は、前記回路に沿った総累積電圧差分の約40%~60%である、請求項1~7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
グリッド接続から前記最適位置までの累積電圧差分は、前記回路に沿った総累積電圧差分の約50%である、請求項1~7の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記総累積差分電圧は、
a)最大フィードイン時の総累積電圧差分、
b)最小負荷時の総累積電圧差分、および
c)最大負荷時の総累積電圧差分、
のうちの少なくとも1つの平均値である、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードまたは電圧モードで動作するために、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項1~10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項1~11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記電流モードのとき、前記1つ以上の電子制御デバイスは、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記電圧モードのとき、前記1つ以上の電子制御デバイスは、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項11または12に記載の装置。
【請求項15】
前記装置は、前記少なくとも1つの接続上のノイズを抑制するための1つ以上のフィルタを更に含む、請求項1~14の何れか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記装置は、前記1つ以上のフィルタと前記DC接触器との間に接続された、ノイズを抑制するためのスナバ回路を更に含む、請求項1~15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記ニュートラル接続はアースから切り離される、請求項1~16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記複数のスイッチは、複数の炭化珪素MOSFETスイッチを含む、請求項1~17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記複数のスイッチは、前記少なくとも1つのライブ接続および前記ニュートラル接続に接続される複数の対称ハーフブリッジトポロジーアームを含む、請求項1~18の何れか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記1つ以上のフィルタは、
a)EMIチョーク、
b)前記少なくとも1つのライブ接続および前記ニュートラル接続に接続された、ノイズを除去するためのディファレンシャルモードチョーク、
c)前記複数のスイッチに接続された、干渉を抑制するためのコモンモードチョーク、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~19の何れか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記複数のスイッチは、
a)DC電力の変動の平滑化、および
b)各切り換えサイクルを全相オフセット範囲で完了するために十分なエネルギーの蓄積、
の少なくとも一方を行うように構成されたコンデンサを複数有する、請求項1~20の何れか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記複数のコンデンサは、障害時に前記複数のコンデンサを放電させるために、フェールセーフ機構に接続される、請求項1~21の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記複数のコンデンサは、インターリーブ構造を介して、多層PCBに接続される、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記インターリーブ構造は、前記複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの正接点を前記PCBの1つ以上の正極層に、および前記複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの負接点を前記PCBの1つ以上の負極層に、接続するスルーホールを1つ以上含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記多層PCBは、発生した磁場を打ち消すために、交番極性層を画成する、請求項23~24の何れか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記多層PCBは、導電層を8層含む、請求項23~25の何れか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記多層PCBは、外側の導電性負極層を少なくとも2層有する、請求項23~26の何れか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記フェールセーフ機構は、
a)障害時に前記DC接触器または前記送電網コネクタを切り離すように構成されたハードウェアフェールセーフ機構、および
b)ソフトウェアフェールセーフ機構であって、障害時に、
i)前記アースへの前記複数のコンデンサの迅速な接続および切り離し、および
ii)前記DC接触器または前記送電網コネクタの電源断、
の少なくとも一方を行うように構成されたソフトウェアフェールセーフ機構、
の少なくとも一方含む、請求項22~27の何れか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、マスターコントローラとスレーブコントローラとを含む、請求項1~28の何れか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記DCデバイスは、
a)電池、
b)ソーラー発電機、
c)水力発電機、および
d)風力発電機、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~29の何れか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記送電網コネクタは、
a)AC接触器、
b)ACリレー、および
c)前記少なくとも1つのライブ端子の各々のためのAC回路ブレーカ、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~30の何れか一項に記載の装置。
【請求項32】
前記装置は、負荷に接続されるように構成された負荷コネクタを更に含み、前記負荷コネクタは、
i)前記負荷に接続されるように構成された少なくとも1つの負荷端子と、
ii)前記負荷のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成された負荷ニュートラル端子と、
を含む、請求項1~31の何れか一項に記載の装置。
【請求項33】
前記負荷コネクタは、前記少なくとも1つの負荷端子のためのDC回路ブレーカを含む、請求項1~32の何れか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記装置は、前記1つ以上の電子制御デバイスに接続された、外部デバイスとの通信用の通信インタフェースを更に含む、請求項1~33の何れか一項に記載の装置。
【請求項35】
送電網における電力を調整する方法であって、前記方法は、
a)DCデバイスに接続されるように構成されたDC端子を複数有するDC接触器と、
b)前記送電網に接続されるように構成された送電網コネクタであって、
i)前記送電網の少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、
ii)前記送電網のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、
を含む送電網コネクタと、
c)前記DC接触器に接続された複数のスイッチと、
d)前記複数のスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、前記複数のDC端子を前記少なくとも1つのライブ端子および前記ニュートラル端子に選択的に接続するために、ひいては前記少なくとも1つのライブ接続の各々および前記ニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、前記複数のスイッチを制御するように構成された1つ以上の電子制御デバイスと、
を含む電力調整装置を使用することを含み、前記方法は、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて、
i)前記少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信することと、
ii)前記少なくとも1つのライブ接続について前記電圧読み取り値の平均値を計算することと、
iii)前記平均値が所定の上限値より大きい場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、前記複数のスイッチを制御することと、
iv)前記平均値が所定の下限値より低い場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記ライブ接続に供給される電圧を上げるために、前記複数のスイッチを制御することと、
を含む方法。
【請求項36】
前記電圧を上げる前記方法は、
a)無効電力の吐き出し、
b)無効電力の増加、
c)有効電力の吸い込み、および
d)有効電力の減少、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記電圧を下げる前記方法は、
a)有効電力の吐き出し、
b)有効電力の増加、
c)無効電力の吸い込み、および
d)無効電力の減少、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記電圧読み取り値を受信する前記方法は、
a)少なくともマイクロ秒毎、
b)少なくとも秒毎、および
c)マイクロ秒毎と秒毎との間、
のうちの少なくとも1つで前記電圧読み取り値を受信することを含む、請求項35~37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記平均値を計算する前記方法は、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて、
a)10分の窓内、および
b)1マイクロ秒の窓内、
の少なくとも一方の移動平均値を計算することを含み、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、請求項35~38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記送電網は多相送電網であり、前記方法は、複数のライブ接続の前記電圧を互いに独立に変化させることを含む、請求項35~39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記方法は、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて、電流モードまたは電圧モードで動作するために、前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項35~40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記方法は、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項35~41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記電流モードのとき、前記方法は、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記電圧モードのとき、前記方法は、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
電力調整装置を接続するための回路上の最適位置を決定する方法であって、前記方法は、
a)前記回路に沿った総累積電圧差分を求めることと、
b)前記総累積電圧差分に基づき、前記最適位置を計算することと、
を含む方法。
【請求項46】
前記最適位置計算することは、グリッド接続から前記最適位置までの累積電圧差分が前記総累積電圧差分の約40%~60%であるように計算することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記最適位置を計算することは、グリッド接続から前記最適位置までの累積電圧差分が前記総累積電圧差分の約50%であるように計算することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記総累積差分電圧は、
a)最大フィードイン時の総累積電圧差分、
b)最小負荷時の総累積電圧差分、および
c)最大負荷時の総累積電圧差分、
のうちの少なくとも1つの平均値である、請求項45~47の何れか一項に記載の方法。
【請求項49】
二方向配電網であって、
a)高電圧変圧器に接続された配電バスと、
b)前記配電バスに接続された複数の中電圧電力フィードラインと、
c)各フィードラインに接続された複数の低電圧配電ラインであって、
i)1つ以上の負荷、および
ii)1つ以上の電源、
の少なくとも一方に接続された複数の低電圧配電ラインと、
d)前記複数の前記フィードラインのうちの少なくとも1つに接続された少なくとも1つの中電圧電力調整装置であって、
i)DCデバイスに接続されるように構成されたDC端子を複数有するDC接触器と、
ii)前記中電圧電力フィードラインに接続されるように構成された送電網コネクタであって、
(1)前記中電圧電力フィードラインの少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、
(2)前記中電圧電力フィードラインのニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、
を含む送電網コネクタと、
iii)前記DC接触器に接続された複数のスイッチと、
iv)前記複数のスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、前記複数のDC端子を前記ライブ端子および前記ニュートラル端子に選択的に接続するために、ひいては前記中電圧電力フィードラインの前記少なくとも1つのライブ接続の各々および前記ニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、ひいては、さまざまな負荷および電源条件下で前記配電バスにおける電圧を維持するために、前記複数のスイッチを制御するように構成された1つ以上の電子制御デバイスと、
を含む中電圧電力調整装置と、
を含む二方向配電網。
【請求項50】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
(1)前記少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信し、
(2)前記少なくとも1つのライブ接続について前記電圧読み取り値の平均値を計算し、
(3)前記平均値が所定の上限値より大きい場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、前記複数のスイッチを制御し、
(4)前記平均値が所定の下限値より低い場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記ライブ接続に供給される電圧を上げるために、前記複数のスイッチを制御する、
ように構成される、請求項49に記載の二方向配電網。
【請求項51】
前記配電バスおよび前記中電圧電力フィードライン上の電圧が、
a)約5kV、
b)約7.2kV、
c)約10kV、
d)約11kV、
e)約12.47kV、
f)約15kV、
g)約20kV、
h)約22kV、
i)約25kV、
j)約33kV、
k)約34.5kV、および
l)約35kV、
のうちの少なくとも1つである、請求項49に記載の二方向配電網。
【請求項52】
前記低電圧配電ライン上の電圧が、
a)約220V~240V、
b)約100V~120V、
c)約400V、および
d)約240V、
のうちの少なくとも1つである、請求項49~51の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項53】
前記低電圧配電ラインは、低電圧電力調整装置に接続される、請求項49~52の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項54】
前記所定の上限値は公称値より5%高い、請求項49~53の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項55】
前記所定の下限値は公称値より5%低い、請求項49~54の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項56】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)無効電力の吐き出し、
b)無効電力の増加、
c)有効電力の吸い込み、
d)有効電力の減少、
のうちの少なくとも1つによって前記電圧を上げるように構成される、請求項49~55の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項57】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)有効電力の吐き出し、
b)有効電力の増加、
c)無効電力の吸い込み、
d)無効電力の減少、
のうちの少なくとも1つによって前記電圧を下げるように構成される、請求項49~56の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項58】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)少なくともマイクロ秒毎、
b)15~25ミリ秒毎、
c)35~65ミリ秒毎、
d)100~200ミリ秒毎、
e)500~700ミリ秒毎、
f)少なくとも秒毎、
g)マイクロ秒毎と秒毎との間、
h)2~5秒毎、
のうちの少なくとも1つで前記電圧読み取り値を受信するように構成される、請求項49~57の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項59】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)2分の窓内、
b)6分の窓内、
c)10分の窓内、
d)15分の窓内、
e)20分の窓内、
f)1マイクロ秒の窓内、
のうちの少なくとも1つの移動平均値を計算し、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、ように構成される、請求項49~58の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項60】
前記中電圧電力フィードラインは多相送電網であり、前記1つ以上の電子制御デバイスは、複数のライブ接続の前記電圧を互いに独立に変化させるように構成される、請求項49~59の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項61】
前記中電圧電力調整装置は、最適位置で前記中電圧電力フィードラインに接続されるように構成される、請求項49~60の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項62】
高電圧接続から前記最適位置までの累積電圧差分は、前記中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約40%~60%である、請求項49~61の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項63】
高電圧接続から前記最適位置までの累積電圧差分は、前記中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約50%である、請求項49~62の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項64】
前記総累積差分電圧は、
a)最大フィードイン時の総累積電圧差分、
b)最小フィードイン時の総累積電圧差分、
c)最小負荷時の総累積電圧差分、
d)最大負荷時の総累積電圧差分、
e)最大フィードインおよび最小負荷時の総累積電圧差分、
f)最小フィードインおよび最大負荷時の総累積電圧差分、
のうちの少なくとも1つの平均値である、請求項62または63に記載の二方向配電網。
【請求項65】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードまたは電圧モードで動作するために、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項49~64の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項66】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項49~65の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項67】
前記電流モードのとき、前記1つ以上の電子制御デバイスは、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項65または66に記載の二方向配電網。
【請求項68】
前記電圧モードのとき、前記1つ以上の電子制御デバイスは、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、前記複数のスイッチを制御するように構成される、請求項65または66に記載の二方向配電網。
【請求項69】
前記中電圧電力調整装置は、前記少なくとも1つの接続上のノイズを抑制するための1つ以上のフィルタを更に含む、請求項49~68の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項70】
前記中電圧電力調整装置は、前記1つ以上のフィルタと前記DC接触器との間に接続された、ノイズを抑制するためのスナバ回路を更に含む、請求項49~69の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項71】
前記ニュートラル接続は、アースから切り離される、請求項49~70の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項72】
前記複数のスイッチは、複数の炭化珪素MOSFETスイッチを含む請求項49~71の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項73】
前記複数のスイッチは、前記少なくとも1つのライブ接続および前記ニュートラル接続に接続される複数の対称ハーフブリッジトポロジーアームを含む、請求項49~72の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項74】
前記1つ以上のフィルタは、
a)EMIチョーク、
b)前記少なくとも1つのライブ接続および前記ニュートラル接続に接続された、ノイズを除去するためのディファレンシャルモードチョーク、
c)前記スイッチに接続された、干渉を抑制するためのコモンモードチョーク、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項49~73の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項75】
前記複数のスイッチは、DC電力の変動を平滑化するように構成された複数のコンデンサを有する、請求項49~74の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項76】
前記複数のコンデンサは、障害時に前記複数のコンデンサを放電させるために、フェールセーフ機構に接続される、請求項49~75の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項77】
前記複数のコンデンサは、インターリーブ構造を介して、多層PCBに接続される、請求項75または76に記載の二方向配電網。
【請求項78】
前記インターリーブ構造は前記複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの正接点を前記PCBの1つ以上の正極層に接続する、および前記複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの負接点を前記PCBの1つ以上の負極層に接続する、スルーホールを1つ以上含む、請求項77に記載の二方向配電網。
【請求項79】
前記多層PCBは、発生した磁場を打ち消すために、交番極性層を画成する、請求項77~78の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項80】
前記多層PCBは、導電層を8層含む、請求項77~79の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項81】
前記多層PCBは、外側の導電性負極層を少なくとも2層有する、請求項77~80の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項82】
前記フェールセーフ機構は、
a)障害時に前記DC接触器または前記送電網コネクタを切り離すように構成されたハードウェアフェールセーフ機構、および
b)ソフトウェアフェールセーフ機構であって、障害時に、
i)前記アースへの前記複数のコンデンサの迅速な接続および切り離し、
ii)前記DC接触器または前記送電網コネクタの電源断、
の少なくとも一方を行うように構成されたソフトウェアフェールセーフ機構、
の少なくとも一方を含む、請求項76~81の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項83】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、マスターコントローラとスレーブコントローラとを含む、請求項49~82の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項84】
前記DCデバイスは、
a)電池、
b)ソーラー発電機、
c)水力発電機、
d)風力発電機、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項49~83の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項85】
前記送電網コネクタは、
a)AC接触器、
b)ACリレー、
c)前記少なくとも1つのライブ端子の各々のためのAC回路ブレーカ、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項49~84の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項86】
前記中電圧電力調整装置は、負荷に接続されるように構成された負荷コネクタを更に含み、前記負荷コネクタは、
a)少なくとも1つの負荷端子に接続されるように構成された前記負荷と、
b)前記負荷のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成された負荷ニュートラル端子と、
を含む、請求項49~85の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項87】
前記負荷コネクタは、前記少なくとも1つの負荷端子の各々のためのDC回路ブレーカを含む、請求項49~86の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項88】
前記中電圧電力調整装置は、前記1つ以上の電子制御デバイスに接続された、外部デバイスとの通信用の通信インタフェースを更に含む、請求項49~87の何れか一項に記載の二方向配電網。
【請求項89】
二方向配電網を提供する方法であって、前記方法は、配電バスに接続された中電圧電力フィードラインに電力調整装置を接続することを含み、前記電力調整装置は、
i)DCデバイスに接続されるように構成されたDC端子を複数有するDC接触器と、
ii)前記中電圧電力フィードラインに接続されるように構成された送電網コネクタであって、
(1)前記中電圧電力フィードラインの少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、
(2)前記中電圧電力フィードラインのニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、
を含む送電網コネクタと、
iii)前記DC接触器に接続された複数のスイッチと、
iv)前記複数のスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、前記複数のDC端子を前記少なくとも1つのライブ端子および前記ニュートラル端子に選択的に接続するために、ひいては前記中電圧電力フィードラインの前記少なくとも1つのライブ接続の各々および前記ニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、ひいては、さまざまな負荷および電源条件下で前記配電バスにおける電圧を維持するために、前記複数のスイッチを制御するように構成された1つ以上の電子制御デバイスと、
を含む、方法。
【請求項90】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
(1)前記少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信し、
(2)前記少なくとも1つのライブ接続について前記電圧読み取り値の平均値を計算し、
(3)前記平均値が所定の上限値より大きい場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、前記複数のスイッチを制御し、
(4)前記平均値が所定の下限値より低い場合は、前記少なくとも1つのライブ接続を前記DCデバイスに選択的に接続するために、ひいては前記ライブ接続に供給される電圧を上げるために、前記複数のスイッチを制御する、
ように構成される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記配電バスおよび前記中電圧電力フィードライン上の電圧は、
a)約5kV、
b)約7.2kV、
c)約10kV、
d)約11kV、
e)約12.47kV、
f)約15kV、
g)約20kV、
h)約22kV、
i)約25kV、
j)約33kV、
k)約34.5kV、
l)約35kV、
のうちの少なくとも1つである、請求項89または90に記載の方法。
【請求項92】
前記所定の上限値は、公称値より5%高い、請求項89~91の何れか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記所定の下限値は、公称値より5%低い、請求項89~92の何れか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記電圧を上げる方法は、
a)無効電力の吐き出し、
b)無効電力の増加、
c)有効電力の吸い込み、
d)有効電力の減少、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項89~93の何れか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記電圧を下げる方法は、
a)有効電力の吐き出し、
b)有効電力の増加、
c)無効電力の吸い込み、
d)無効電力の減少、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項89~94の何れか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記1つ以上の電子制御デバイスは、
a)少なくともマイクロ秒毎、
b)15~25ミリ秒毎、
c)35~65ミリ秒毎、
d)100~200ミリ秒毎、
e)500~700ミリ秒毎、
f)少なくとも秒毎、
g)マイクロ秒毎と秒毎との間、
h)2~5秒毎、
のうちの少なくとも1つで前記電圧読み取り値を受信するように構成される、請求項89~95の何れか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記平均を計算する方法は、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて、
a)2分の窓内、
b)6分の窓内、
c)10分の窓内、
d)15分の窓内、
e)20分の窓内、
f)1マイクロ秒の窓内、
のうちの少なくとも1つの移動平均値を計算し、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、ように構成される、請求項89~96の何れか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記送電網は多相送電網であり、前記方法は、複数のライブ接続の前記電圧を互いに独立に変化させることを含む、請求項89~97の何れか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記中電圧電力調整装置は、最適位置で前記中電圧電力フィードラインに接続されるように構成される、請求項89~98の何れか一項に記載の方法。
【請求項100】
高電圧接続から前記最適位置までの累積電圧差分は、前記中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約40%~60%である、請求項89~99の何れか一項に記載の方法。
【請求項101】
高電圧接続から前記最適位置までの累積電圧差分は、前記中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約50%である、請求項89~100の何れか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記総累積差分電圧は、
a)最大フィードイン時の総累積電圧差分、
b)最小フィードイン時の総累積電圧差分、
c)最小負荷時の総累積電圧差分、
d)最大負荷時の総累積電圧差分、
e)最大フィードインおよび最小負荷時の総累積電圧差分、
f)最小フィードインおよび最大負荷時の総累積電圧差分、
のうちの少なくとも1つの平均値である、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
前記方法は、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて、電流モードまたは電圧モードで動作するために前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項89~102の何れか一項に記載の方法。
【請求項104】
前記方法は、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項89~103の何れか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記電流モードのとき、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項103または104に記載の方法。
【請求項106】
前記電圧モードのとき、前記少なくとも1つのライブ端子または前記複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、前記1つ以上の電子制御デバイスにおいて前記複数のスイッチを制御することを含む、請求項103または104に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電網に関し、1つの特定の例においては、二方向送電または配電網を提供するための電力調整装置を有する配電網に関する。
【背景技術】
【0002】
送電または配電システムには、広範囲の負荷条件にわたって給電を調整するために、電力調整デバイスが実装されている。電圧調整は困難である。したがって配電フィーダは、需要家負荷の変動を考慮しながら、許容包絡線内の電圧を供給するように注意深く設計される。需要家が所有する再生可能エネルギー発電はその人気が成長し続けているので、近い将来にはルーフトップソーラー発電および商業規模のソーラーファームが総電力供給の主要寄与者になると予測されている。これは電圧調整を一層困難にする。その理由は、需要家負荷の変動に関する既存の問題に加え、フィードイン電力を考慮に入れる必要があるからである。
【0003】
網事業者は、電圧エクスカーションを制御し、法定限度を維持するために、変圧器タップ切換器(負荷時および無負荷時)と、電圧調整器と、導体サイズ選別とを組み合わせて使用していた。ただし、これらの設計は、一方向網における電圧管理に限定されている。更に、これらシステムは、多くの場合、動的に調整されるように構成されていない。例えば、タップ変圧器は、一般に、調整のために切り離される必要がある。すなわち、このような機構は電圧変化にリアルタイムで対応できず、数週間、数か月間、または数年間、にわたって発生する如何なる負荷/フィードイン変動にも対応するように構成される必要がある。その結果、これらの構成は、再生可能電力源からのフィードインの可能性が存在する場合は、網上の電圧を管理できないことが多く、またはよくてもフィードイン電力に制限を課すことができるだけであろう。その結果、多くの場合、網への再生可能エネルギーのエクスポートが制限され、再生可能エネルギー源の十分な利用が妨げられている。
【0004】
以前の刊行物(または、それから導き出された情報)への、または公知の何れかの事項への、本願明細書における言及は、以前の刊行物(または、それから導き出された情報)または公知の事項が本願明細書に関連する研究分野における共通の一般知識の一部を形成するとの確認、または承認、または何れかの示唆形態、としては取られないものとし、且つ取られるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、広範な1つの形態において、送電網における電力を調整するための装置を提供しようとするものである。本装置は、DCデバイスに接続されるように構成された複数のDC端子を有するDC接触器と、送電網に接続されるように構成された送電網コネクタであって、送電網の少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、送電網のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、を含む送電網コネクタと、DC接触器に接続された複数のスイッチと、これらスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、複数のDC端子を少なくとも1つのライブ端子およびニュートラル端子に選択的に接続し、ひいては少なくとも1つのライブ接続の各々の電力、およびニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、これらスイッチを制御するように構成された電子制御デバイスと、を含み、この1つ以上の電子制御デバイスは、少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信し、少なくとも1つのライブ接続について電圧読み取り値の平均値を計算し、この平均値が所定の上限値より大きい場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続するために、ひいては少なくとも1つのライブ接続の電圧を下げるために、複数のスイッチを制御し、平均値が所定の下限値より低い場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続するために、ひいてはライブ接続に供給される電圧を上げるために、これらスイッチを制御する、ように構成される。
【0006】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、無効電力の吐き出し、無効電力の増加、有効電力の吸い込み、および有効電力の減少、のうちの少なくとも1つによって電圧を上げるように構成される。
【0007】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、有効電力の吐き出し、有効電力の増加、無効電力の吸い込み、および無効電力の減少、のうちの少なくとも1つによって電圧を下げるように構成される。
【0008】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくともマイクロ秒毎、少なくとも秒毎、マイクロ秒毎と秒毎との間、のうちの少なくとも1つで電圧読み取り値を受信するように構成される。
【0009】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、10分の窓内、および1マイクロ秒の窓内、のうちの少なくとも1つの移動平均値を計算し、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、ように構成される。
【0010】
1つの実施形態において、送電網は多相送電網であり、1つ以上の電子制御デバイスは、複数のライブ接続の電圧を互いに独立に変化させるように構成される。
【0011】
1つの実施形態において、本装置は、回路上の最適位置で接続されるように構成される。
【0012】
1つの実施形態において、グリッド接続から最適位置までの累積電圧差分は、回路に沿った総累積電圧差分の約40%~60%である。
【0013】
1つの実施形態において、グリッド接続から最適位置までの累積電圧差分は、回路に沿った総累積電圧差分の約50%である。
【0014】
1つの実施形態において、総蓄積差分電圧は、最大フィードイン時の総累積電圧差分、最小負荷時の総累積電圧差分、および最大負荷時の総累積電圧差分、のうちの少なくとも1つの平均値である。
【0015】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードまたは電圧モードで動作するために、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0016】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0017】
1つの実施形態において、電流モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、1つ以上の電子制御デバイスは複数のスイッチを制御するように構成される。
【0018】
1つの実施形態において、電圧モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、1つ以上の電子制御デバイスは複数のスイッチを制御するように構成される。
【0019】
1つの実施形態において、本装置は、少なくとも1つの接続上のノイズを抑制するための1つ以上のフィルタを更に含む。
【0020】
1つの実施形態において、本装置は、1つ以上のフィルタとDC接触器との間に接続された、ノイズを抑制するためのスナバ回路を更に含む。
【0021】
1つの実施形態において、ニュートラル接続は、アースから切り離される。
【0022】
1つの実施形態において、複数のスイッチは、複数の炭化珪素MOSFETスイッチを含む。
【0023】
1つの実施形態において、複数のスイッチは、少なくとも1つのライブ接続およびニュートラル接続に接続する対称ハーフブリッジトポロジーアームを複数含む。
【0024】
1つの実施形態において、1つ以上のフィルタは、EMI(electromagnetic interference)チョーク、少なくとも1つのライブ接続およびニュートラル接続に接続された、ノイズを除去するためのディファレンシャルモードチョーク、および複数のスイッチに接続された、干渉を抑制するためのコモンモードチョーク、のうちの少なくとも1つを含む。
【0025】
1つの実施形態において、複数のスイッチは、DC電力の変動の平滑化、および各切り換えサイクルを全相オフセット範囲で完了するために十分なエネルギーの貯蔵、のうちの少なくとも1つを行うように構成されたコンデンサを複数有する。
【0026】
1つの実施形態において、複数のコンデンサは、障害時にこれらコンデンサを放電させるために、フェールセーフ機構に接続される。
【0027】
1つの実施形態において、コンデンサは、インターリーブ構造を介して多層PCB(printed circuit board)に接続される。
【0028】
1つの実施形態において、インターリーブ構造は、複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの正接点をPCBの1つ以上の正極層に接続し、複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの負接点をPCBの1つ以上の負極層に接続するスルーホールを1つ以上含む。
【0029】
1つの実施形態において、多層PCBは、発生した磁場を打ち消すために交番極性層を画成する。
【0030】
1つの実施形態において、多層PCBは、導電層を8層含む。
【0031】
1つの実施形態において、多層PCBは、外側の導電性負極層を少なくとも2層有する。
【0032】
1つの実施形態において、フェールセーフ機構は、障害時にDC接触器または送電網コネクタを切り離すように構成されたハードウェアフェールセーフ機構、およびソフトウェアフェールセーフ機構のどちらか一方を含む。ソフトウェアフェールセーフ機構は、障害時に、アースへの複数のコンデンサの迅速な接続および切り離し、およびDC接触器または送電網コネクタの電源断、の少なくとも一方を行うように構成される。
【0033】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、マスターコントローラとスレーブコントローラとを含む。
【0034】
1つの実施形態において、DCデバイスは、電池、ソーラー発電機、水力発電機、および風力発電機、のうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
1つの実施形態において、送電網コネクタは、AC接触器、ACリレー、および少なくとも1つのライブ端子の各々のためのAC回路ブレーカ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
1つの実施形態において、本装置は、負荷に接続されるように構成された負荷コネクタを更に含む。この負荷コネクタは、負荷に接続されるように構成された少なくとも1つの負荷端子と、負荷のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成された負荷ニュートラル端子と、を含む。
【0037】
1つの実施形態において、負荷コネクタは、少なくとも1つの負荷端子の各々のためのDC回路ブレーカを含む。
【0038】
1つの実施形態において、本装置は、1つ以上の電子制御デバイスに接続された、外部デバイスとの通信用の通信インタフェースを更に含む。
【0039】
本発明の一態様は、広範な1つの形態において、送電網における電力を調整する方法を提供しようとするものである。本方法は、電力調整装置を使用することを含む。この電力調整装置は、DCデバイスに接続されるように構成された複数のDC端子を有するDC接触器と、送電網に接続されるように構成された送電網コネクタであって、送電網の少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、送電網のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、を含む送電網コネクタと、DC接触器に接続された複数のスイッチと、これらスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、複数のDC端子を少なくとも1つのライブ端子およびニュートラル端子に選択的に接続するために、ひいては少なくとも1つのライブ接続の各々の、およびニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、これらスイッチを制御するように構成された1つ以上の電子制御デバイスと、を含む。本方法は、1つ以上の電子制御デバイスにおいて、少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信することと、少なくとも1つのライブ接続について電圧読み取り値の平均値を計算することと、平均値が所定の上限値より大きい場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続し、ひいては少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、これらスイッチを制御することと、平均値が所定の下限値より低い場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続し、ひいてはライブ接続に供給される電圧を上げるために、これらスイッチを制御することと、を含む。
【0040】
1つの実施形態において、電圧を上げる方法は、無効電力の吐き出し、無効電力の増加、有効電力の吸い込み、有効電力の減少、のうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
1つの実施形態において、電圧を下げる方法は、有効電力の吐き出し、有効電力の増加、無効電力の吸い込み、および無効電力の減少、のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
1つの実施形態において、電圧読み取り値を受信する方法は、少なくともマイクロ秒毎、少なくとも秒毎、マイクロ秒毎と秒毎との間、のうちの少なくとも1つで電圧読み取り値を受信することを含む。
【0043】
1つの実施形態において、平均値を計算する方法は、1つ以上の電子制御デバイスにおいて、10分の窓内、1マイクロ秒の窓内、の少なくとも一方の移動平均値を計算し、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、ことを含む。
【0044】
1つの実施形態において、送電網は多相送電網であり、本方法は、複数のライブ接続の電圧を互いに独立に変化させることを含む。
【0045】
1つの実施形態において、本方法は、1つ以上の電子制御デバイスにおいて、電流モードまたは電圧モードで動作するために、複数のスイッチを制御することを含む。
【0046】
1つの実施形態において、本方法は、1つ以上の電子制御デバイスにおいて、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、複数のスイッチを制御することを含む。
【0047】
1つの実施形態において、本方法は、電流モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、1つ以上の電子制御デバイスにおいて複数のスイッチを制御することを含む。
【0048】
1つの実施形態において、本方法は、電圧モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、1つ以上の電子制御デバイスにおいて複数のスイッチを制御することを含む。
【0049】
本発明の一態様は、広範な1つの形態において、電力調整装置を接続するための回路上の最適位置を決定する方法を提供しようとするものである。本方法は、回路に沿った総累積電圧差分を求めることと、この総累積電圧差分に基づき最適位置を計算することと、を含む。
【0050】
1つの実施形態において、最適位置を計算することは、グリッド接続から最適位置までの累積電圧差分が総累積電圧差分の約40%~60%になるように計算することを含む。
【0051】
1つの実施形態において、最適位置を計算することは、グリッド接続から最適位置までの累積電圧差分が総累積電圧差分の約50%になるように計算することを含む。
【0052】
1つの実施形態において、総累積差分電圧は、最大フィードイン時の総累積電圧差分、最小負荷時の総累積電圧差分、および最大負荷時の総累積電圧差分、のうちの少なくとも1つの平均値である。
【0053】
本発明の一態様は、広範な1つの形態において、二方向配電網を提供しようとするものである。この二方向配電網は、高電圧変圧器に接続された配電バスと、配電バスに接続された複数の中電圧電力フィードラインと、各フィードラインに接続された複数の低電圧配電ラインであって、1つ以上の負荷および1つ以上の電源の少なくとも一方に接続された低電圧配電ラインと、複数のフィードラインのうちの少なくとも1つに接続された少なくとも1つの中電圧電力調整装置であって、中電圧電力調整装置は、DCデバイスに接続されるように構成されたDC端子を複数有するDC接触器と、中電圧電力フィードラインに接続されるように構成された送電網コネクタであって、中電圧電力フィードラインの少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、中電圧電力フィードラインのニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、を含む送電網コネクタと、DC接触器に接続された複数のスイッチと、これらスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、複数のDC端子を少なくとも1つのライブ端子およびニュートラル端子に選択的に接続し、ひいては中電圧電力フィードラインの少なくとも1つのライブ接続の各々の、およびニュートラル接続上の電力を独立に調整し、ひいてはさまざまな負荷および電源条件下で配電バスの電圧を維持するために、これらスイッチを制御するように構成された1つ以上の電子制御デバイスと、を含む。
【0054】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信し、少なくとも1つのライブ接続について電圧読み取り値の平均値を計算し、この平均値が所定の上限値より大きい場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続し、ひいては少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、複数のスイッチを制御し、平均値が所定の下限値より低い場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続し、ひいてはライブ接続に供給される電圧を上げるために、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0055】
1つの実施形態において、配電バスおよび中電圧電力フィードライン上の電圧は、約5kV、約7.2kV、約10kV、約11kV、約12.47kV、約15kV、約20kV、約22kV、約25kV、約33kV、約34.5kV、および約35kV、のうちの少なくとも1つである。
【0056】
1つの実施形態において、低電圧配電ライン上の電圧は、約220V~240V、約100V~120V、約400V、および約240V、のうちの少なくとも1つである。
【0057】
1つの実施形態において、低電圧配電ラインは、低電圧電力調整装置に接続される。
【0058】
1つの実施形態において、所定の上限値は公称値より5%高い。
【0059】
1つの実施形態において、所定の下限値は公称値より5%低い。
【0060】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、無効電力の吐き出し、無効電力の増加、有効電力の吸い込み、および有効電力の減少、のうちの少なくとも1つによって電圧を上げるように構成される。
【0061】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、有効電力の吐き出し、有効電力の増加、無効電力の吸い込み、および無効電力の減少、のうちの少なくとも1つによって電圧を下げるように構成される。
【0062】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくともマイクロ秒毎、15~25ミリ秒毎、35~65ミリ秒毎、100~200ミリ秒毎、500~700ミリ秒毎、少なくとも秒毎、マイクロ秒毎と秒毎との間、および2~5秒毎、のうちの少なくとも1つで電圧読み取り値を受信するように構成される。
【0063】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、2分の窓内、6分の窓内、10分の窓内、15分の窓内、20分の窓内、および1マイクロ秒の窓内、のうちの少なくとも1つの移動平均値を計算し、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、ように構成される。
【0064】
1つの実施形態において、中電圧電力フィードラインは多相送電網であり、1つ以上の電子制御デバイスは、複数のライブ接続の電圧を互いに独立に変化させるように構成される。
【0065】
1つの実施形態において、中電圧電力調整装置は、最適位置で中電圧電力フィードラインに接続されるように構成される。
【0066】
1つの実施形態において、高電圧接続から最適位置までの累積電圧差分は、中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約40%~60%である。
【0067】
1つの実施形態において、高電圧接続から最適位置までの累積電圧差分は、中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約50%である。
【0068】
1つの実施形態において、総累積差分電圧は、最大フィードイン時の総累積電圧差分、最小フィードイン時の総累積電圧差分、最小負荷時の総累積電圧差分、最大負荷時の総累積電圧差分、最大フィードインおよび最小負荷時の総累積電圧差分、および最小フィードインおよび最大負荷時の総累積電圧差分、のうちの少なくとも1つの平均値である。
【0069】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードまたは電圧モードで動作するために、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0070】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0071】
1つの実施形態において、電流モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、1つ以上の電子制御デバイスは、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0072】
1つの実施形態において、電圧モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、1つ以上の電子制御デバイスは、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0073】
1つの実施形態において、中電圧電力調整装置は、少なくとも1つの接続上のノイズを抑制するためのフィルタを1つ以上更に含む。
【0074】
1つの実施形態において、中電圧電力調整装置は、1つ以上のフィルタとDC接触器との間に接続された、ノイズを抑制するためのスナバ回路を更に含む。
【0075】
1つの実施形態において、ニュートラル接続は、アースから切り離される。
【0076】
1つの実施形態において、複数のスイッチは、複数の炭化珪素MOSFETスイッチを含む。
【0077】
1つの実施形態において、複数のスイッチは、少なくとも1つのライブ接続およびニュートラル接続に接続される対称ハーフブリッジトポロジーアームを複数含む。
【0078】
1つの実施形態において、1つ以上のフィルタは、EMIチョーク、少なくとも1つのライブ接続およびニュートラル接続に接続された、ノイズを除去するためのディファレンシャルモードチョーク、および複数のスイッチに接続された、干渉を抑制するためのコモンモードチョーク、のうちの少なくとも1つを含む。
【0079】
1つの実施形態において、複数のスイッチは、DC電力の変動を平滑化するように構成されたコンデンサを複数有する。
【0080】
1つの実施形態において、複数のコンデンサは、障害時にこれらコンデンサを放電させるために、フェールセーフ機構に接続される。
【0081】
1つの実施形態において、複数のコンデンサは、インターリーブ構造を介して多層PCBに接続される。
【0082】
1つの実施形態において、インターリーブ構造は、複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの正接点をPCBの1つ以上の正極層に、および複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの負接点をPCBの1つ以上の負極層に、接続するスルーホールを1つ以上含む。
【0083】
1つの実施形態において、多層PCBは、発生した磁場を打ち消すために交番極性層を画成する。
【0084】
1つの実施形態において、多層PCBは、導電層を8層含む。
【0085】
1つの実施形態において、多層PCBは、外側の導電性負極層を少なくとも2層有する。
【0086】
1つの実施形態において、フェールセーフ機構は、障害時にDC接触器または送電網コネクタを切り離すように構成されたハードウェアフェールセーフ機構、およびソフトウェアフェールセーフ機構の少なくとも一方を含む。ソフトウェアフェールセーフ機構は、障害時に、アースへの複数のコンデンサの迅速な接続および切り離し、およびDC接触器または送電網コネクタの電源断、の少なくとも一方を行うように構成される。
【0087】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、マスターコントローラとスレーブコントローラとを含む。
【0088】
1つの実施形態において、DCデバイスは、電池、ソーラー発電機、水力発電機、および風力発電機、のうちの少なくとも1つを含む。
【0089】
1つの実施形態において、送電網コネクタは、AC接触器、ACリレー、および少なくとも1つのライブ端子の各々のためのAC回路ブレーカ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0090】
1つの実施形態において、中電圧電力調整装置は、負荷に接続されるように構成された負荷コネクタを更に含む。この負荷コネクタは、負荷に接続されるように構成された少なくとも1つの負荷端子と、負荷のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成された負荷ニュートラル端子と、を含む。
【0091】
1つの実施形態において、負荷コネクタは、少なくとも1つの負荷端子の各々のためのDC回路ブレーカを含む。
【0092】
1つの実施形態において、中電圧電力調整装置は、1つ以上の電子制御デバイスに接続された、外部デバイスとの通信用の通信インタフェースを更に含む。
【0093】
本発明の一態様は、広範な1つの形態において、二方向配電網を提供する方法を提供しようとするものである。本方法は、配電バスに接続された中電圧電力フィードラインに電力調整装置を接続することを含む。電力調整装置は、DCデバイスに接続されるように構成されたDC端子を複数有するDC接触器と、中電圧電力フィードラインに接続されるように構成された送電網コネクタであって、中電圧電力フィードラインの少なくとも1つのライブ接続に接続されるように構成された少なくとも1つのライブ端子と、中電圧電力フィードラインのニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子と、を含む送電網コネクタと、DC接触器に接続された複数のスイッチと、これらスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスであって、複数のDC端子を少なくとも1つのライブ端子およびニュートラル端子に選択的に接続し、ひいては中電圧電力フィードラインの少なくとも1つのライブ接続の各々の、およびニュートラル接続上の電力を独立に調整し、ひいてはさまざまな負荷および電源条件下で配電バスにおける電圧を維持するために、これらスイッチを制御するように構成された1つ以上の電子制御デバイスと、を含む。
【0094】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信し、少なくとも1つのライブ接続について電圧読み取り値の平均値を計算し、この平均値が所定の上限値より大きい場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続し、ひいては少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、複数のスイッチを制御し、平均値が所定の下限値より低い場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続し、ひいてはライブ接続に供給される電圧を上げるために、複数のスイッチを制御するように構成される。
【0095】
1つの実施形態において、配電バスおよび中電圧電力フィードライン上の電圧は、約5kV、約7.2kV、約10kV、約11kV、約12.47kV、約15kV、約20kV、約22kV、約25kV、約33kV、約34.5kV、約35kV、のうちの少なくとも1つである。
【0096】
1つの実施形態において、所定の上限値は、公称値より5%高い。
【0097】
1つの実施形態において、所定の下限値は、公称値より5%低い。
【0098】
1つの実施形態において、電圧を上げる方法は、無効電力の吐き出し、無効電力の増加、有効電力の吸い込み、有効電力の減少、のうちの少なくとも1つを含む。
【0099】
1つの実施形態において、電圧を下げる方法は、有効電力の吐き出し、有効電力の増加、無効電力の吸い込み、無効電力の減少、のうちの少なくとも1つを含む。
【0100】
1つの実施形態において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくともマイクロ秒毎、15~25ミリ秒毎、35~65ミリ秒毎、100~200ミリ秒毎、500~700ミリ秒毎、少なくとも秒毎、マイクロ秒毎と秒毎との間、2~5秒毎、のうちの少なくとも1つで電圧読み取り値を受信するように構成される。
【0101】
1つの実施形態において、平均値を計算する方法は、1つ以上の電子制御デバイスにおいて、2分の窓内、6分の窓内、10分の窓内、15分の窓内、20分の窓内、1マイクロ秒の窓内、のうちの少なくとも1つの移動平均値を計算し、以降の安定性平均化は少なくとも10分毎に行われる、ように構成される。
【0102】
1つの実施形態において、送電網は多相送電網であり、本方法は、複数のライブ接続の電圧を互いに独立に変化させることを含む。
【0103】
1つの実施形態において、中電圧電力調整装置は、最適位置で中電圧電力フィードラインに接続されるように構成される。
【0104】
1つの実施形態において、高電圧接続から最適位置までの累積電圧差分は、中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約40%~60%である。
【0105】
1つの実施形態において、高電圧接続から最適位置までの累積電圧差分は、中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約50%である。
【0106】
1つの実施形態において、総累積差分電圧は、最大フィードイン時の総累積電圧差分、最小フィードイン時の総累積電圧差分、最小負荷時の総累積電圧差分、最大負荷時の総累積電圧差分、最大フィードインおよび最小負荷時の総累積電圧差分、および最小フィードインおよび最大負荷時の総累積電圧差分、のうちの少なくとも1つの平均値である。
【0107】
1つの実施形態において、本方法は、電流モードまたは電圧モードで動作するために、1つ以上の電子制御デバイスにおいて複数のスイッチを制御することを含む。
【0108】
1つの実施形態において、本方法は、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、1つ以上の電子制御デバイスにおいて複数のスイッチを制御することを含む。
【0109】
1つの実施形態において、電流モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、本方法は、1つ以上の電子制御デバイスにおいて、複数のスイッチを制御することを含む。
【0110】
1つの実施形態において、電圧モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、本方法は、1つ以上の電子制御デバイスにおいて、複数のスイッチを制御することを含む。
【0111】
本発明の広範な諸形態およびそれぞれの諸特徴は、組み合わせて、および/または独立に、使用可能であり、別々の広範な形態への言及は、限定を意図するものではないことを理解されるであろう。更に、本方法の諸特徴は、本システムまたは装置を使用して実施可能であり、本システムまたは装置の諸特徴は、本方法を使用して実現可能であることを理解されるであろう。
【0112】
次に、添付の図面を参照して、本発明のさまざまな例および実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】電力調整装置の一例の概略図である。
図2】電力調整装置の動作の一例のフローチャートである。
図3】処理システムの一例の概略図である。
図4】電力調整装置の一例の概略図である。
図5A】電力調整装置の印刷回路基板上の複数のコンデンサの概略図である。
図5B】電力調整装置の印刷回路基板上の複数のコンデンサの概略図である。
図6】電力調整装置の複数のスイッチの一例の概略図である。
図7】電力調整方法の一例のフローチャートである。
図8】(a)~(d)は電圧差分を負荷力率で示すベクトル図である。
図9】二方向配電網の概略図である。
図10A】低電圧架空配電網に対するソーラー電力のインパクトを示す図である。
図10B】中電圧架空配電網に対するソーラー電力のインパクトを示す図である。
図10C】電圧プロファイルに対するソーラー電力の影響を示す図である。
図11】低電圧送電網の概略図である。
図12A】架空回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図12B】架空回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図13A】電圧調整付き架空回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図13B】電圧調整付き架空回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図14A】地下回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図14B】地下回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図15A】電圧調整付き地下回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図15B】電圧調整付き地下回路に沿った電圧プロファイルの図である。
図16】放射状架空回路の下方への電圧プロファイルの図である。
図17】中電圧変電所の概略図である。
図18】中電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図19】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図20】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図21】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図22】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図23】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図24】中電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図25】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図26】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図27】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図28】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図29】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図30】低電圧配電フィードラインに沿った電圧プロファイルの図である。
図31】5次高調波の14Vrmsと7次高調波の6Vrmsとを有する電圧波形を示す。
図32】電流モードにおける端子電圧を示す。
【発明を実施するための形態】
【0114】
次に、図1を参照して、電力調整装置の一例を説明する。
【0115】
電力調整装置100は、送電網における電力を調整するように構成されている。電力調整装置100は、DC接触器110と、送電網コネクタ120と、複数のスイッチ130と、1つ以上のフィルタ140と、1つ以上の電子制御デバイス150と、少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cと、ニュートラル接続160Nとを含む。
【0116】
DC端子110A、110Bを有するDC接触器110は、DCデバイス(図示せず)に接続されるように構成されている。DCデバイスは、電池、ソーラー発電機、水力発電機、風力発電機、またはこれらに類するもの、のうちの少なくとも1つなどのDC電源であり得る。
【0117】
送電網コネクタ120は、この例においては、送電バス170を介して、送電網に接続されるように構成されている。送電網コネクタ120は、少なくとも1つのライブ端子120A、120B、120Cを含む。ライブ端子120A、120B、120Cは、送電網に接続されるように構成されている。送電網コネクタ120は、送電網のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子120Nを更に含む。
【0118】
少なくとも1つの接続160A、160B、160C上のノイズを抑制するように構成されたフィルタ140が1つ以上設けられている。この例において、送電網コネクタ120は、少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nによって、1つ以上のフィルタ140に結合されている。ライブ接続160A、160B、160Cは、それぞれのライブ端子120A、120B、120Cに接続されており、ニュートラル接続160Nは、ニュートラル端子120Nに接続されている。ただし、他の適した構成の使用も可能であることを理解されたい。
【0119】
複数のスイッチ130は、DC接触器に接続されている。複数のスイッチ130は、この例では1つ以上のフィルタ140に接続されることによって、特に少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nに接続されることによって、送電網コネクタへの前方接続性をもたらす。
【0120】
複数のスイッチ140は、1つ以上の電子制御デバイス150にも結合されている。1つ以上の電子制御デバイス150は、DC端子110A、110Bを少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nに選択的に接続し、ひいては少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cの各々およびニュートラル接続160N上の電力を独立に調整するために、これらスイッチ140を制御するように構成されている。
【0121】
したがって、1つ以上の制御デバイス150は、これらスイッチ130を制御できる何れか適した制御デバイスから形成され得る。適した制御デバイスとして、マイクロプロセッサ、マイクロチッププロセッサ、論理ゲート構成、場合によってはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの実装ロジックに対応付けられた、ファームウェア、あるいは何れか他の電子デバイス、システム、または構成が挙げられ得る。更に、説明を簡単にするために、残りの説明では、1つの電子制御デバイスに言及するが、必要に応じて複数の制御デバイス間で制御が分散される複数の制御デバイスが使用され得ることを、および単数形への言及は複数の構成を包含する、およびこの逆もあることを理解されるであろう。
【0122】
次に、図2を参照して、電力調整装置100の動作の一例を説明する。
【0123】
この例において、電力調整装置100は、送電網に接続されている。ステップ200において、電力調整装置100の1つ以上のライブ端子120A、120B、120Cは、送電網から電力を受電する。ニュートラル端子120Nは、送電網のニュートラルまたはアースに接続されている。1つの例において、1つ以上のライブ端子120A、120B、120Cの各々は、送電網から電力のそれぞれの相を受け取る。
【0124】
ライブ接続160A、160B、160Cは、AC電力のそれぞれの相を運ぶために、それぞれのライブ端子120A、120B、120Cに接続されている。ステップ210において、ライブ接続160A、160B、160およびニュートラル接続160Nによって運ばれたAC電力は、AC電力のノイズおよび/または干渉を除去するために1つ以上のフィルタ140に通される。
【0125】
フィルタに通されたAC電力は、1つ以上のライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nによって、複数のスイッチ130に送られる。ステップ220において、電子制御デバイス150は、1つ以上のライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nの複数のスイッチ130を制御する。DC端子110A、110Bを少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nに選択的に接続するために、複数のスイッチ130が制御されるので、1つ以上のライブ接続160A、160B、160Cの各々およびニュートラル接続160N上の電力が独立に調整される。これにより、DC電力は、例えば電池を充電するために、ステップ230において、DC端子110A、110Bに出力される。
【0126】
あるいは、これにより、ステップ240においてライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160N上の電力を変調するために、DCデバイスから複数のDC端子に供給されるDC電力を使用できる。例えば、電力調整装置100は、例えば、1つ以上のライブ接続160A、160B、160Cの各々およびニュートラル接続160N上の電力を、例えば、これら接続上の電圧または電流の相、大きさ、または状態を調整することによって、独立に調整できる。これは、ライブ接続の各々に入力された不平衡電圧または不平衡電流に対応するために使用可能であり、ライブ接続の各々上の電圧および/または電流の調整を可能にし、ひいては電力のコンディショニングおよび/または調整を可能にする。電力調整装置100は、1つ以上のライブ接続160A、160B、160Cの各々およびニュートラル接続160N上の電力を独立に調整できるので、電力調整装置100は、不平衡負荷で、または不平衡電源として、動作可能である。これにより、電力調整装置100は、3相、2相、および単相システムの何れにも実装可能であり、システムの電圧および/または電流を調整するために動作する。
【0127】
本願明細書に記載の電力調整装置100は、AC-DC電力システムのための調整を行うが、これは単なる例であることを理解されたい。電気調整装置100は、DC-AC電力システム、AC-AC電力システム、またはDC-DC電力システムの調整が可能である。
【0128】
次に、更なる特徴のいくつかを説明する。
【0129】
電子制御デバイスは、電流モードまたは電圧モードで動作するために、複数のスイッチを制御するように構成されている。また、電子制御デバイスは、電流モードでの動作と電圧モードでの動作とを切り換えるために、複数のスイッチを制御するように構成されている。これにより、電力調整装置は、出力要件を満たす適切な電圧または電流を供給でき、要件が変化したときは、モード間の移行を行うことができる。
【0130】
したがって、電流モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電流波形を有するように、電子制御デバイスは複数のスイッチを制御するように構成される。同様に、電圧モードのとき、少なくとも1つのライブ端子または複数のDC端子の各々が所定の電圧波形を有するように、電子制御デバイスは複数のスイッチを制御するように構成される。これにより、電力調整装置は、DCデバイスまたは送電網の要件を満たす電圧波形または電流波形を提供できる。
【0131】
電力調整装置は、1つ以上のフィルタとDC接触器との間に接続された、ノイズを抑制するためのスナバ回路を更に含み得る。
【0132】
1つの例において、ニュートラル接続は、送電網のアースなどのアースから切り離される。これは、1つ以上のコンデンサ、またはこれらに類するもの、を使用して実現可能である。これにより、ニュートラル接続の調整または変調が可能になるので、システムの総合的制御の点でより大きな柔軟性を提供する。
【0133】
複数のスイッチは、少なくとも1つのライブ接続およびニュートラル接続に接続される複数の対称ハーフブリッジトポロジーアームでもよい。これは、ライブ接続およびニュートラル接続の選択可能な切り換えを可能にする。また、複数のスイッチは炭化珪素MOSFETスイッチでもよい。これは、これらスイッチを物理的に小型化できるので都合がよい。
【0134】
1つの例において、1つ以上のフィルタは、EMIチョーク、少なくとも1つのライブ接続およびニュートラル接続に接続された、ノイズを除去するためのディファレンシャルモードチョーク、および、複数のスイッチに接続された、干渉を抑制するためのコモンモードチョーク、のうちの少なくとも1つにし得る。1つ以上のフィルタは、ノイズまたは干渉を送電網またはスイッチから好都合に排除する。
【0135】
複数のスイッチは、各切り換えサイクルを全相オフセット範囲で完了するために、ひいてはDC電力の変動を平滑化するために、十分なエネルギーを貯蔵するように構成された複数のコンデンサを有し得るので、変動が最小のDC電力を供給することによってDCデバイスの保護を容易にする。複数のコンデンサは、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、および電解コンデンサ、の何れか1つにし得る。他の種類のコンデンサも適し得ることを理解されたい。
【0136】
複数のコンデンサは、PCBトラックによって引き起こされるノイズを更に抑えるために、インターリーブ構造を介して多層PCBに接続され得る。1つの例において、インターリーブ構造は、複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの正接点をPCBの1つ以上の正極層に、および複数のコンデンサのうちの1つのコンデンサの負接点をPCBの1つ以上の負極層に、接続するスルーホールを1つ以上含む。また、多層PCBは、PCBの各層が発生させた磁場を打ち消すように、複数の交番極性層を画成し得る。1つの例において、多層PCBは、導電性負極層を複数有する8層の導電層を含む。これら負極層のうちの2層は外層であり、層間に交番極性を有する。
【0137】
1つの例において、複数のコンデンサは、障害時にコンデンサを放電させるために、フェールセーフ機構に接続され得る。障害は、過電流、電圧オーバシュート、電力損失、制御デバイスの障害、および/または通信障害であり得る。
【0138】
フェールセーフ機構は、ハードウェアフェールセーフ機構および/またはソフトウェアフェールセーフ機構にし得る。この例において、ハードウェアフェールセーフ機構は、障害時にDC接触器または送電網コネクタを切り離すように構成される。ソフトウェアフェールセーフ機構は、アースへの複数のコンデンサの迅速な接続および切り離し、および/またはDC接触器または送電網コネクタの電源断、を行うように構成される。フェールセーフ機構は、装置のMOSFETスイッチ、マイクロコントローラなどの電子素子に対して、過電流または電圧オーバシュートによる損傷からの保護を提供する。
【0139】
電子制御デバイスは、マスターコントローラとスレーブコントローラとを含み得る。
【0140】
送電網コネクタは、AC接触器、ACリレー、および少なくとも1つのライブ端子の各々のためのAC回路ブレーカ、のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0141】
また、電力調整装置は、負荷への接続のための負荷コネクタを含み得る。負荷コネクタは、負荷に接続された少なくとも1つの負荷端子と、負荷のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続された負荷ニュートラル端子とを含み得る。同様に、負荷コネクタは、少なくとも1つの負荷端子の各々のためのDC回路ブレーカを含み得る。
【0142】
電力調整装置は、電子制御デバイスに接続された、外部デバイスとの通信用の通信インタフェースを更に含み得る。通信インタフェースは、WAN、ブルートゥース(登録商標)、WLAN、および/または、外部コンピュータによる電力調整装置の制御または構成を可能にするために適したシリアルポート、にし得る。
【0143】
次に、図3を参照して、電子制御デバイスの一例を説明する。
【0144】
この例において、電子制御デバイス160は、少なくとも1つのマイクロプロセッサ300と、メモリ301と、キーボードおよび/またはディスプレイなど、任意使用の入力/出力デバイス302と、インタフェース303とを含む。これらは、図示のように、バス304を介して相互接続されている。この例において、インタフェース303は、電子制御デバイス160を通信網などの周辺デバイスまたはこれに類するものに接続するために使用可能である。
【0145】
使用中、マイクロプロセッサ300は、電子制御デバイス160の制御を含む必要なプロセスの実施を可能にするために、メモリ301に記憶されているアプリケーションソフトウェアの形態の命令を実行する。アプリケーションソフトウェアは、1つ以上のソフトウェアモジュールを含み得る。アプリケーションソフトウェアは、オペレーティングシステム環境などの適した実行環境、またはこれに類するもの、において実行され得る。
【0146】
したがって、電子制御デバイス160は、何れか適した制御システムから形成され得ること、およびマイクロプロセッサ、マイクロチッププロセッサ、論理ゲート構成、場合によってはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの実装ロジックに対応付けられた、ファームウェア、あるいは何れか他の電子デバイス、システム、または構成など、任意の電子処理デバイスを含み得ること、を理解されるであろう。
【0147】
ただし、以下の諸例のために想定された上記構成は、必須ではなく、他の多数の構成が使用され得ることを理解されるであろう。複数の異なる処理システム間での機能の分割は、具体的な実装に応じて、変化し得ることも理解されるであろう。
【0148】
次に、図4を参照して、電力調整装置の一例をより詳細に説明する。
【0149】
電力調整装置400は、送電網における電力を調整するように構成されている。電力調整装置400は、DC接触器410と、複数のコンデンサ431と、複数のスイッチ430と、CM(common-mode)チョーク441と、DM(differential-mode)チョーク442と、EMIチョーク443と、グリッドコネクタと、負荷コネクタとを含む。グリッドコネクタは、ACコネクタ421と、ACリレー422と、複数のAC回路ブレーカ423と、3つのAC端子420A、420B、420Cと、ACニュートラルコネクタ420Nとを含む。負荷コネクタは、複数の負荷回路ブレーカ471と、3つの負荷端子470A、470B、470Cと、負荷ニュートラルコネクタ470Nとを含む。電力調整装置400は、3つの接続460A、460B、460Cとニュートラル接続460Nとを更に含む。3つの接続460A、460B、460Cは、AC端子420A、420B、420Cを有するそれぞれのライブ接続に接続される。ニュートラル接続。
【0150】
DC接触器410は、DC端子410A、410Bを有する。DC端子410A、410Bは、電池とLV(low voltage)ソーラー発電機とに接続されるように構成されている。この例において、DC接触器410は、両端子410A、410Bを切り換えるための機械式スイッチを少なくとも1つ含む。機械式スイッチは、堅牢且つ確実であり、電気安全性を向上させるために、電圧および電流を遮断する高い能力を有するように構成され得る。
【0151】
1つの実施形態において、安全インターロック機構が実装される。安全インターロック機構は、複数のAC接触器のインターロック、および/またはACおよびDCの両接触器のインターロック、を含み得る。安全インターロック機構は、制御デバイス451、452の一方などのオンボードプロセッサと、給電をオンに切り換えるための補助的な外部プロセッサとを利用し得る。オンボードプロセッサは、電力調整装置400のステータスを監視し、外部プロセッサは、電池電圧および/または電池極性などの安全性を監視する。両プロセッサは、接触器の作動前、相互にクロスチェックする。
【0152】
DC端子410A、410Bにおける電流を監視するために、DCバスセンサ410Cが実装されている。DCバスセンサ410Cは、制御デバイス451に結合され、漏洩電流または残留電流の検出を可能にする。一例において、DCバスセンサ410Cのためにシグマ・デルタ構成が使用される。この構成は、高電圧の絶縁および感知の正確さをもたらす。
【0153】
DCコンデンサ
DC接触器410は、複数のコンデンサ431を介して、複数のスイッチ430に接続されている。この例において、コンデンサ431は、ポリプロピレンコンデンサである。ポリプロピレンコンデンサは、相対的に高いリップル電流で動作可能である。これにより、ユーザは、コンデンサ寿命を縮めることなく、より高次の高調波を制御できる。ポリプロピレンコンデンサは、自己回復能力も有する。これにより、必要な静電容量をもたらすために、且つ過渡電圧に対応するために、これらコンデンサを小型化できる。
【0154】
この例においては、12のコンデンサが電力調整装置400に存在する。これらコンデンサは、多層PCBに3×4配列構成で搭載されている。これらコンデンサを接続するトラックは、寄生インダクタンスを極力抑えるために、インターリーブ構造で多層PCB上に存在する。次に、図5Aおよび図5Bを参照して、インターリーブ構造をより詳細に説明する。図5Aに示されているように、12のコンデンサは、交番極性式に基板520上に載置されている。したがって、コンデンサ511の正接点は、コンデンサ512の負接点に隣接させて位置付けられている。更に、基板520は8層を有し、各層は銅で鍍金されている。銅は層を導電性にし、これにより「トレース」インダクタンス現象を最小化する。複数の層は、コンデンサの正接点または負接点のどちらかに接続されている。これにより、層の交番極性パターンが形成されている。
【0155】
図5Bを参照すると、コンデンサ510は、正接点510aと負接点510bとを有する。正接点510bは、基板520のスルーホール(「ビア」とも呼称)構造520aによって第2層522、第5層525、および第7層527に接触している。負接点510bは、第1層521上に溶接されており、スルーホール構造520bによって他の層523、524、526、および528に接触している。同様に、コンデンサ511、512は、図5Bに示されているように、スルーホール構造520c、520d、および520e、520fによって、基板520に接続されている。1つの例において、インターリーブ構造は、層当たり約2オンスの銅を有する層を8層使用し、これらの層は、約0.4mm厚のFR4 PCB材料によって隔てられている。さまざまなシステム要件に応じて、他の適した材料および/または厚さが使用され得ることを理解されたい。
【0156】
インターリーブ構造は、電流が複数の層にわたって分散されるので、寄生インダクタンスを低減させる。インダクタンスを誘導する層には「トラック」も存在しない。交番極性を有する平行な複数の層は、コンデンサを補完するために、寄生静電容量を増加させ得る。上記のように、正と負の間に交番パターンが存在するので、寄生インダクタンスを最小化し、総静電容量を増加させる。これにより、渦電流の循環(磁場からの誘導電流がトレース/線と相互作用する現象)が減るので、ESR(equivalent series resistance)および温度も改善される。温度がより安定することによって、動作中の温度故の静電容量の変化が減る。
【0157】
この例において、最上層521および最下層528は負であるので、基板520は最小の電磁干渉(EMI)を有し、したがって、電磁環境適合性(EMC:electromagnetic compatibility)が向上する。インターリーブ構造は、基板520内に誘導されるEMI電流も減らすので、基板520内のノイズの全体的な大きさも減る。
【0158】
電力調整装置400は、複数のコンデンサ432をアースに結合するフェールセーフシステム433を更に含み、障害時にコンデンサからの放電を制御する。フェールセーフシステム433は、ソフトウェアフェールセーフ機構とハードウェアフェールセーフ機構とを含む。電圧異常が検出されると、ソフトウェアフェールセーフ機構は、複数のコンデンサの放電を安全に行うために、これらコンデンサのオン/オフ切り換えを迅速に行う。更に、電力損失時、ハードウェアフェールセーフ機構は、DCおよびAC接触器を開く。ハードウェアフェールセーフ機構は、外部DC電池ヒューズと外部ACグリッドヒューズとを更に含む。
【0159】
スイッチ
複数のコンデンサ431は、3つの接続460A、460B、460Cの各々およびニュートラル接続460Nを変調するために、複数のスイッチ430に接続されている。図6は、複数のスイッチ430の一例を示す。この例は、3つの接続460A、460B、460Cの各々およびニュートラル接続460Nに接続される4つの対称ハーフブリッジトポロジーアーム430A、430B、430C、430Nを含む。各対称ハーフブリッジトポロジーアームは、2つのMOSFETスイッチを含む。この例において、MOSFETスイッチは、炭化珪素スイッチ、特に、ROHM規格に準拠した1200V 55A SCT3040 MOSFET、である。
【0160】
スイッチ430の立ち上がり時間、立ち下り時間、および不動時間などの切り換え特性は、性能を最適化するために、ハードウェア設計および/または制御デバイス451、452によって構成可能である。専用の切り分けデバイスが使用されているので、一次側から二次側への静電容量の低減の故に、スイッチ430は、より高いスイッチング周波数(約100kHz)で動作できる。これにより、高電圧絶縁バリアによって、ノイズ耐力を向上させ、一次側および二次側の間に高電圧保護をもたらすことができる。EMI/EMC要件を満たすために、スイッチ430は、経時的な電圧変化(dv/dt)を減らすためのスナバ回路433を更に含み得る。
【0161】
CMチョーク
高周波コモンモード電流を抑制および/または阻止するために、CMチョーク441が複数のスイッチ430に結合されている。ライブ接続460A、460B、460Cおよびニュートラル接続460Nは、CMチョーク441に接続され、コアに通されている。CMチョーク441のコアは、粉末コアでもよく、高周波において低損失で動作するように構成可能である。CMチョーク441は、エネルギー損失を低く維持しながら、より広い温度範囲条件で動作するように更に構成されている。更に、1つの例において、CMチョーク441は、周囲設備への高周波磁気結合が最小化されるように、電力調整装置400の外側シャシーから絶縁され得る。CMチョーク441の巻線は、非インターリーブ構造でもよい。これにより、隣接導体に伝播するカップリングノイズを減らし得る。また、巻線は、銅製の平型バー巻線でもよい。これは、低および高周波における銅損失を最小化する。平型バー巻線は、丸型巻線に比べ、表皮効果も減らし得る。平型バー巻線の広い表面積は、CMチョーク441の熱放散を助け得る。
【0162】
DMチョーク
CMチョーク441は、DMチョーク442に結合されている。DMチョーク442は、バンドパスフィルタのように作用し、スイッチ430が発生させたPWMからの高周波を平滑化させる。DMチョーク442は、EEコアで構築された個々のディフェレンシャルモードインダクタを含み得る。EEコアは、コンパクトであり、トロイダルコアに比べ、製造し易い。EEコアは、高周波ノイズおよび浮遊磁場からも遮蔽し得る。また、DMチョーク442が高周波において低損失で動作するように構成可能であるように、DMチョーク442のコアは、飽和点が高い粉末コア材料製にし得る。これにより、DMチョークは、一貫したフィルタ性能を有し得る。インダクタは、過大定格容量を短期間有し得る。DMチョーク441は、エネルギー損失を低く維持しながら、より広い温度範囲条件下で動作するように構成可能である。更に、DMチョーク442は、周囲設備への高周波磁気結合が最小化されるように、電力調整装置400の外側シャシーから絶縁され得る。
【0163】
DMチョーク442の巻線は、低周波および高周波における銅損失を最小化するために、銅フィルム巻線を含む。これは、平坦な肉薄の銅フィルムでもよい。銅フィルム巻線は、丸型巻線に比べ、表皮効果も減らし得る。フィルム巻線の広い表面積は、DMチョーク442の熱放散を助け得る。フィルム巻線を使用すると、サイズおよび/または表皮効果損失を損なわずに、巻き数の増加も可能にする。
【0164】
EMIフィルタ
DMチョーク442は、高周波電磁干渉を除去するEMIフィルタ443に結合されている。これにより、グリッドへの浮遊コモンモード電流のエクスポート、および制御回路に影響するグリッドからのコモンモード電流、を防止し易くなり得る。EMIフィルタ443は、ナノ結晶材料のリングコアを含む。特に50Hzにおける、銅損失を最小化するために、コア材料の周囲にエナメル引き銅無垢線が使用され得る。漏洩インダクタンスを最小化するために、EMIフィルタ443は対称巻線を含む。EMIフィルタ443は、そのPCB設計に複数のYコンデンサ(Y2定格)も含み得る。
【0165】
電流および/または電圧の測定は、電力調整装置400内の何れの点においても実現され得ることを理解されたい。1つの例において、AC電流および電圧の測定は、DMチョーク442とEMIチョーク443との間で実現される。AC電流は、LEM(100-p)100A高精度ホール効果センサで測定され得る。
【0166】
電力調整装置400は、DMチョーク442とEMIチョーク443との間に複数のクラスXコンデンサ(X2定格)を含む。Xコンデンサは、過渡高電圧を最小化するために、高電圧用途のために有用であり得る。これにより、PCB上の電力トレースから信号トレースを遮蔽でき、一次側から二次側への保護の提供も可能になる。図4に示されているように、デカップリングコンデンサを介したニュートラル接続460Nのために、この点にアースリンクが設けられている。
【0167】
負荷接触子
この例において、電力調整装置400は負荷コネクタを含んでいるので、電力調整装置400は、グリッドに接続されているときに、UPS機能を提供できる。負荷コネクタは、63A回路ブレーカ471をライブ接続460A、460B、460C毎に有する。これらのコネクタは、アンフェノール(Amphenol)コネクタでもよい。電力調整装置400は、負荷成分に合わせて高調波成分を打ち消すことができるので、高調波成分を管理でき、グリッドまで通過させない。これにより、「クリーンな」AC電源が負荷に提供される。ニュートラル接続460Nの変調が可能であるので、電力調整装置400は、不平衡負荷状態で動作できる。
【0168】
これにより、負荷が3相、2相、または単相負荷であるかどうかに拘らず、電力調整装置400は、負荷への電源となることができる。これが特に有用であるのは、農業用設備、コンベアベルト、冷蔵庫、等々などの大型誘導機械を含むオフグリッド負荷の場合である。
【0169】
AC接触器
AC接触器421は、グリッドへの接続のためにEMIフィルタ443に結合されている。AC接触器421は、4W未満などの低消費電力を有する、38kW遮断能力付きSemmens 3相(AC-3定格)接触器でもよい。AC接触器421は、堅牢且つ信頼性が高く、高い障害電流を遮断できる一方で、短いオン/オフ切り換え応答時間を提供する。AC接触器の動作ステータスが監視および制御されるように、AC接触器421は、制御デバイス451、452の少なくとも一方と通信可能状態にある内部センサを複数含み得る。
【0170】
ACリレー
更なる切り分けをもたらすために、AC接点421とグリッドとの間にACリレー422、422a、422bが結合されている。図4に示されているように、ニュートラル接続460Nは、2つのACリレー422a、422bに別々に結合されている。ACリレー422、422a、422bは、制御デバイス451、452の少なくとも一方と通信可能状態にある。また、AC接触器421およびACリレー422は、それぞれ異なる制御デバイス451、452によって制御される。これにより、AC接触器421およびACリレー422は、更なる安全性をもたらすインターロックを実施できる。同様に、2つのACリレー422a、422bも、更なる安全性をニュートラル接続460Nにもたらすために、それぞれ異なる制御デバイス451、452によって制御される。
【0171】
回路ブレーカ
AC端子420A、420B、420CとAC接触器421との間に絶縁バリアを形成するために、負荷接続回路ブレーカ471と同様に、回路ブレーカ423がライブ接続の各々に結合されている。これにより、更なる過電流保護が電力調整装置400にもたらされる。回路ブレーカ423は定格63Aであるので、さまざまな温度での動作を可能にし、温度故の時期尚早な遮断が起こらない。
【0172】
MCU
制御デバイス451、452は、2つのオンボードマイクロプロセッサにし得る。第1のマイクロプロセッサ451は、装置400の動作を制御するための実行可能プログラムを含む。第2のマイクロプロセッサ452は、安全インターロックコントローラとして機能する。アナログ測定451aおよび温度測定452aがマイクロプロセッサ451、452にそれぞれ結合され得る。更に、通信インタフェース453もマイクロプロセッサ451、452に接続されている。通信インタフェース453は、モドバス(Modbus)(TCP/IP)、USB、RS232/485、イーサネット、DRM(demand response mode)通信用のインタフェースを1つ以上含み得る。これにより、外部プロセッサは、装置400を監視、制御、および/または構成するために、装置400と通信できる。
【0173】
電力調整装置は、少なくとも以下の利点を提供する。
・多くの場合20ミリ秒未満の、高速応答
・電圧の連続制御
・フリッカ問題への対応
・電圧不平衡問題への対応
・低い電力損失
・415V 3相出力の生成の可能性および1つの電池への3相システムのインタフェース。これは、装置当たりに必要な電池および電池管理システムが1つで済むので、コスト面の優位性を提供する。これにより、MOSFETSの使用によってより高い変調周波数が可能になるので、より小型のユニットになる。より小さなサイズが意味するのは、より小さなキャビネットであり、空間および材料の両方が節約される。
・四象限デバイスであるので、有効電力および無効電力の両方の管理を柔軟に行える。これにより、電池エネルギー貯蔵システム、ソーラーPV(photovoltaic)設備、および配電システム電圧、の管理に有利である。
・電解コンデンサを使用していないので、コンデンサおよび他の構成要素が全て高品質の構成要素であり、信頼性が高い。
・組み込まれたプログラムに基づき動作が自動化され得るので、保守および整備の必要性が殆どない。
【0174】
VAR(Volt-Amp Reactance)管理
次に、図7を参照して、電力調整方法の一例を説明する。
【0175】
この例において、送電網における電力を調整する方法は、上記と実質的に同様の電力調整装置100を使用することを含む。電力調整装置100は、DC接触器110と、送電網コネクタ120と、複数のスイッチ130と、1つ以上の電子制御デバイス150と、少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cと、ニュートラル接続160Nとを含む。DC端子110A、110Bを有するDC接触器110は、DCデバイス(図示せず)に接続されるように構成されている。この例において、送電網コネクタ120は、送電バス170を介して、送電網に接続されるように構成されている。送電網コネクタ120は、少なくとも1つのライブ端子120A、120B、120Cを含む。ライブ端子120A、120B、120Cは、送電網に接続されるように構成されている。送電網コネクタ120は、送電網のニュートラルまたはアースの少なくとも一方に接続されるように構成されたニュートラル端子120Nを更に含む。
【0176】
複数のスイッチ130はDC接触器に接続され、この例においては、少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nに接続されることによって、送電網コネクタへの前方接続性を提供する。場合によっては、少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160C上のノイズおよび/または干渉を除去するための1つ以上のフィルタ140が複数のスイッチ130と少なくとも1つのライブ端子120A、120B、120Cとの間に実装され得ることを理解されたい。
【0177】
複数のスイッチ140は、1つ以上の電子制御デバイス150にも結合されている。1つ以上の電子制御デバイス150は、DC端子110A、110Bを少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cおよびニュートラル接続160Nに選択的に接続するために、ひいては少なくとも1つのライブ接続160A、160B、160Cの各々およびニュートラル接続160N上の電力を独立に調整するために、これらスイッチ140を制御するように構成されている。
【0178】
したがって、1つ以上の電子制御デバイス150は、複数のスイッチ130を制御可能な何れか適した制御デバイスから形成され得る。制御デバイスとして、マイクロプロセッサ、マイクロチッププロセッサ、論理ゲート構成、場合によってはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの実装ロジックに対応付けられた、ファームウェア、あるいは何れか他の電子デバイス、システムまたは構成が挙げられ得る。更に、説明を簡単にするために、残りの説明では、1つの電子制御デバイスに言及するが、必要に応じて制御デバイス間で制御が分散される複数の制御デバイスも使用できること、および単数形への言及は複数の構成を包含すること、およびこの逆もあること、を理解されるであろう
【0179】
使用中、電圧を規定限度内に維持するために、本装置は、網内の電圧を調整するように構成されている。これを実現するために、本装置は、ステップ700において、1つ以上の電子制御デバイス150が少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信するように、構成されている。これは、多相網における複数の相に対応する複数のライブ接続の各々のための、または単相網における単一のライブ接続のための、電圧を含み得る。
【0180】
その後、ステップ710において、1つ以上の制御デバイス150は、少なくとも1つのライブ接続について電圧読み取り値の平均値を計算する。この平均値は、一般に、数秒から数分などの設定時間にわたるローリング平均値であるが、これは必須ではなく、他の平均値の使用も可能である。
【0181】
ステップ720において、1つ以上の制御デバイスは、この平均値が所定の上限値より大きいかどうかを判定する。大きい場合は、ステップ730において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続するために、ひいては少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、複数のスイッチを制御する。
【0182】
それ以外の場合は、ステップ740において、1つ以上の電子制御デバイスは、平均値が所定の下限値より低いかどうかを判定する。低い場合、ステップ750において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続するために、ひいてはライブ接続に供給される電圧を上げるために、複数のスイッチを制御する。
【0183】
したがって、上記方法および装置は、送電網上の1つ以上のライブ接続上で、1つの具体例においては送電網のフィードライン上で、供給される電力を調整するために、電力調整装置を使用する。具体的には、本装置は、DC負荷または電源などのDCデバイスへのライブおよび/またはニュートラル接続を選択的に接続することによって、動作するので、網の電圧レベルを制御し、網上の電力フィードインまたは電力ドレーンに拘らず、電圧レベルを所望の動作限界内に維持できる。好都合なことに、本装置は、電圧の管理をほぼリアルタイムで送電網に行わせる。これにより、網は、変動するフィードイン電力ならびに需要家負荷の変動により容易に対応でき、再生可能エネルギー源のより十分な利用を可能にする。
【0184】
本方法は、単相または多相網において使用され得る。後者の場合、ライブ接続上の各相を独立に制御できるように、ニュートラル接続を制御できる。これにより、本装置は、3相の平衡化および相毎の電圧の独立供給の必要なしに、動作できる。
【0185】
好都合なことに、本方法では、電力調整装置は、不平衡送電網における電力を調整できる。したがって、電力調整装置は、ライブ接続(単数または複数)に供給される電圧を上昇または低下させるために、ひいては電圧を調整するために、送電網上の何処にでも設置され得る。更に、これは、電力調整装置を網に接続するだけで簡単に実現可能であり、網の別様の再構成を必要としないので、既存の網インフラストラクチャに容易に後付け可能である。
【0186】
上記説明に加え、更なる特徴のいくつかを次に説明する。
【0187】
1つの例において、電圧を上昇させることは、無効電力の増加または吐き出し、および/または有効電力の減少または吸い込み、を含み得る。また、電圧を低下させることは、有効電力の増加および/または無効電力の減少を含み得る。これにより、無効電力を送電網の調整された無効電力および有効電力にでき、ひいては進みまたは遅れ無効電力を生じさせることができる。これは、コンデンサまたはインダクタとして働くように本装置を動作させることによって、インダクタンスまたは静電容量を網に効果的に導入することによって実現される。
【0188】
1つの例において、電圧読み取り値を受信することは、秒毎に、または数マイクロ秒から数秒の範囲内で、電圧読み取り値を受信することを含む。これにより、電圧の監視および調整が高い応答性で、且つ相対的に高い頻度で、可能になる。ただし、これは必須ではなく、網に対応付けられた好適な実装および制御要件に応じて、より高または低頻度で電圧を求めることもできる。
【0189】
1つの例において、移動平均値を計算することは、10分の窓内の移動平均値を計算することを含む。これにより、一定時間にわたる平均値を計算できるので、短期的な電圧変動または不安定性に対応し得る。したがって、例えば、これは、短期的スパイクまたは電圧低下に対する装置の反応を防止する。ただし、平均値は、数ミリ秒から数分など、他の窓にわたって計算され得ることも理解されるであろう。
【0190】
1つの例において、送電網は多相送電網であり、複数のライブ接続の出力電力を互いに独立に変化させる。これにより、ライブ接続の各々を独立に調整できる。
【0191】
1つの例において、本装置は、回路上の最適位置で接続されるように構成される。電力調整装置は、需要家メータの背後に、またはメータの手前の配電網上に、実装され得る。最適位置は、さまざまな負荷に供給する回路上でもよい。
【0192】
1つの例において、回路上の最適位置は、累積電圧差分が回路上の総累積電圧差分の約40%~60%、より好ましくは総累積電圧差分の約50%、である位置である。これにより、本装置は、グリッドと装置との間の電圧差分を補償することによって、フィード電圧を回路に沿って効果的に調整できる。その後、本装置の後ろの負荷への電圧供給は、許容包絡線内に維持される。1つの例において、送電網の回路は、等しい負荷を有する10の負荷位置(L1~L10)を含む。各負荷位置の間の電圧差分(ΔV)は同じであるので、グリッド接続からL1の間の電圧差分はΔVであり、グリッド接続からL2の間は2ΔVであり、グリッド接続からL3の間は3ΔVであり、以降も同様である。L3における累積電圧差分は、ΔV、2ΔV、および3ΔVの和、すなわち6ΔV、である。したがって、総累積電圧差分は55ΔVである。この例において、最適位置は、累積電圧差分が55ΔVの約50%(?27.5ΔV)である位置である。これらの負荷配置によると、最適位置はL7である。この位置では、累積電圧差分が28ΔVであり、総累積電圧差分の50%に最も近い。
【0193】
送電網の回路は、さまざまな負荷および/または発電機を各位置に含み得ることを理解されたい。負荷および/または発電が経時的に変化するに伴い、総累積電圧差分が変化し得るので、最適位置の決定のために、累積電圧差分の統計学的計算が取られ得る。1つの例において、総累積電圧差分は、最大フィードイン時の総累積電圧差分および最大負荷時の総累積電圧差分の少なくとも一方の平均値である。最大フィードイン時の総累積電圧差分は、最大フィードインが発生したときの電圧差分であり、一般に負荷需要が最小であるときに一致する。1つの例において、負荷需要は昼間最小である。昼間は、負荷への給電がそれ自身のソーラー発電機によって部分的に行われ得るからである。同様に、最大負荷時の電圧差分は、負荷需要が最大のときの給電電圧である。1つの例において、負荷需要は夜間に最大である。夜間は、住宅での使用が高く、ソーラー発電機からの供給が最小であることによる。
【0194】
別の例において、負荷力率に基づく電圧差分の計算は、図8に示されているように、オーストリア規格AS3008のセクション4.5に説明されている。送電ラインまたは変圧器の直列インピーダンスにわたる電圧差分のための完全な式は、
【0195】
【数1】
【0196】
式中、
I=I/θ=負荷電流、
=Icosθ=負荷電流の有効または同相成分、
=Isinθ=負荷電流の仮想、直角位相、または無効成分、
pf=cosθ=変位力率。ここで、θ=負荷電圧に対する負荷電流成分の基本波の位相遅延、
Z=Z/φ=伝送ラインインピーダンス=R+jX、
R=Zcosφ、=Zsinφ、ひいてはtanφ=X/R。
【0197】
負荷端における力率1の負荷電流の場合の電圧上昇は、伝送ラインおよび変圧器インピーダンスの抵抗部分にわたってのみ見られる。同様に、純粋なリアクタンス性負荷が電圧低下(誘導、すなわちグリッドからのVAR吸い込みの場合)、または(容量性、VAR注入の場合)伝送ラインおよび変圧器インピーダンスのリアクタンス部分にわたる上昇、のみを引き起こすであろう。
【0198】
MV(medium voltage)またはLVフィーダに沿った分散負荷の問題は、僅かに異なる式を必要とするが、同じ原則に基づいている。
【0199】
二方向グリッド
送電網における電力を調整する装置および電力を調整する方法によって、二方向グリッドが構築され得る。次に、図9を参照して、二方向配電網の一例を説明する。
【0200】
二方向配電網900は、高電圧変圧器901に接続された配電バス910を含む。
【0201】
配電バスおよび中電圧電力フィードライン上の電圧は、既存のインフラストラクチャおよび/または法定規制に応じて、さまざまな国または州において異なり得る。配電バスおよび中電圧電力フィードライン上の電圧は、約5kV、約7.2kV、約10kV、約11kV、約12.47kV、約15kV、約20kV、約22kV、約25kV、約33kV、約34.5kV、および約35kV、のうちの少なくとも1つであり得る。オーストラリアの例において、配電バスおよび中電圧電力フィードライン上の電圧は、約11kVである。
【0202】
複数の中電圧電力フィードライン920A、920Bが配電バス910に接続されている。複数の低電圧配電ライン930が各フィードライン920A、920Bに接続されている。低電圧配電ライン上の電圧は、既存のインフラストラクチャおよび/または法定規制に応じて、さまざまな国または州において異なり得る。低電圧配電ライン上の電圧は、約220V~240V、約100V~120V、約400V、および約240Vのうちの少なくとも1つであり得る。オーストラリアの例において、低電圧配電ライン上の電圧は、約220V~240Vである。
【0203】
低電圧配電ライン930は、更に1つ以上の負荷(L:load)および/または1つ以上の電源(S:source)に接続されている。この例において、低電圧配電ライン930は、低電圧変圧器931を介して、中電圧電力フィードライン920A、920Bに接続されている。二方向配電網900は、さまざまな負荷および電源条件下で配電バス910上の電圧を維持するために、中電圧電力フィードライン920Aに接続された中電圧電力調整装置940を含む。
【0204】
中電圧電力調整装置940は、上記の電力調整装置100とほぼ同様である。したがって、中電圧電力調整装置940は、DCデバイスに接続されるように構成されたDC端子を複数有するDC接触器と、中電圧電力フィードライン920Aに接続されるように構成された送電網コネクタとを含む。中電圧電力調整装置940は、中電圧電力フィードライン920Aのライブ接続(単数または複数)に接続されたライブ端子(単数または複数)と、中電圧電力フィードライン920Aのニュートラルまたはアースに接続されるように構成されたニュートラル端子とを含む。中電圧電力調整装置940は、DC接触器に接続された複数のスイッチとこれらスイッチに結合された1つ以上の電子制御デバイスとを更に含む。電子制御デバイス(単数または複数)は、複数のDC端子をライブ端子(単数または複数)およびニュートラル端子に選択的に接続するために、ひいては中電圧電力フィードライン920Aのライブ接続(単数または複数)の各々およびニュートラル接続上の電力を独立に調整するために、ひいてはさまざまな負荷および電源条件下で配電バス910上の電圧を維持するために、複数のスイッチを制御する。
【0205】
この構成により、電力調整装置は中電圧電力フィードライン上の電圧を調整できるので、さまざまな負荷および発電条件下において電圧が法定限度内に維持される。フィードイン/発電が負荷需要よりはるかに大きい状態では、この構成により、中電圧電力フィードラインは、法定電圧限度内に維持しながら、且つ安定性を維持しながら、フィードイン/発電電力を運ぶことができる。大量のフィードイン電力をフィードラインで安定的に運ぶことによって、フィードイン電力を使用のために変電所に、または高電圧網に、エクスポートできる。この構成により、配電バス上の電圧を安定化できる、または限度内に維持できる。したがって、この構成は、配電バス上の電圧の安定を維持しながら、より多くのフィードイン/発電電力のエクスポートを可能にするので、二方向電力網が実現される。
【0206】
上記説明に加え、更なる特徴のいくつかを次に説明する。
【0207】
1つの例において、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくとも1つのライブ接続の電圧読み取り値を受信する。1つ以上の電子制御デバイスは、15~25ミリ秒毎、35~65ミリ秒毎、100~200ミリ秒毎、500~700ミリ秒毎、秒毎、または2~5秒毎、に電圧読み取り値を受信し得る。電圧読み取り値の受信頻度は、計測システムが取り得る何れの頻度でもよいことを理解されたい。
【0208】
その後、1つ以上の電子制御デバイスは、少なくとも1つのライブ接続について電圧読み取り値の平均値を計算する。1つの例において、1つ以上の電子制御デバイスは、電圧読み取り値の移動平均値を計算する。移動平均値は、時間窓内に取られた複数の電圧読み取り値を平均することによって計算される。窓は、2分、6分、10分、15分、または20分でもよい。また、移動窓は、可変長でも一定長でもよい。
【0209】
移動平均値の計算時、この平均値が所定の上限値より大きい場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続するために、ひいては少なくとも1つのライブ接続上の電圧を下げるために、1つ以上の電子制御デバイスは複数のスイッチを制御する。平均値が所定の下限値より低い場合は、少なくとも1つのライブ接続をDCデバイスに選択的に接続するために、ひいてはライブ接続に供給される電圧を上げるために、1つ以上の電子制御デバイスは複数のスイッチを制御する。
【0210】
これにより、電力調整装置は、中電圧電力フィードライン上の1つ以上のライブ接続上の電圧を頻繁に監視でき、1つ以上のライブ接続上の電圧を効果的に調整できる。
【0211】
1つの例において、所定の上限値は公称値より約5%高く、所定の下限値は公称値より約5%低い。所定の上限または下限値は、何れの値でもよく、システムの能力、および/または法定規制、に基づかせ得ることを理解されたい。
【0212】
1つの例において、1つ以上の電子制御デバイスは、無効電力を増加させる、および/または有効電力を減少させる、ことによって、電圧を上昇させ得る。別の例において、1つ以上の電子制御デバイスは、有効電力を増加させる、および/または無効電力を減少させる、ことによって、電圧を低下させ得る。言い換えると、1つ以上の電子制御デバイスは、進み無効電力または遅れ無効電力を発生させるために、ひいては無効または有効電力を増加または減少させるために、装置を制御し得る。
【0213】
別の例において、低電圧配電ラインは、低電圧電力調整装置に接続される。これにより、低電圧配電ライン上の電圧の調整が可能になるので、中電圧電力フィードライン上の電圧の管理が更に容易になり得る。
【0214】
1つの例において、中電圧電力フィードラインは多相送電網であり、1つ以上の電子制御デバイスは複数のライブ接続の電圧を互いに独立に変化させるように構成される。これにより、各相上の電圧の調整を独立に行えるので、相間を平衡させる必要がない。これは、さまざまな負荷条件および/または発電/フィードイン条件下で二方向電力配電網を安定化させる能力を更に拡大する。
【0215】
1つの例において、中電圧電力調整装置は、最適位置で中電圧電力フィードラインに接続されるように構成される。
【0216】
1つの例において、高電圧接続から最適位置までの累積電圧差分は、中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約40%~60%である。
【0217】
1つの例において、高電圧接続から最適位置までの累積電圧差分は、中電圧電力フィードラインに沿った総累積電圧差分の約50%である。
【0218】
1つの例において、総累積差分電圧は、最大フィードイン時の総累積電圧差分、最小フィードイン時の総累積電圧差分、最小負荷時の総累積電圧差分、最大負荷時の総累積電圧差分、最大フィードインおよび最小負荷時の総累積電圧差分、および最小フィードインおよび最大負荷時の総累積電圧差分、のうちの少なくとも1つの平均値でもよい。
【0219】
負荷および埋め込み型ソーラー発電の故の配電フィーダ電圧差分
任意の時点における負荷利用率およびソーラー発電の故の11kVフィーダバックボーンに沿った電圧低下または上昇をシミュレートするために、式1を展開できる。総フィーダ長を維持しながらノード数(dmax)を変化させると、より粒度の細かい分析が可能になる。
【0220】
【数2】
【0221】
式中、
V=区間dにおけるライン大地間電圧、
=下位(11kVバス)におけるライン大地間電圧、
Z=フィーダインピーダンス(オーム/Ph/区間R+jX単位)、
=ピーク日中利用率(%)としての変圧器利用率、
=変圧器の平均利用率(%)、
=容量密度(変圧器設置容量)(kVA/区間単位)、
=公称ライン間電圧(kV単位)、
θ=負荷位相角、
=ピーク日射率(%)(所与の一区域に到達する日射)、
=配電用変圧器当たりのソーラーkVA容量、
θ=発電位相角、
max=フィーダ区間の最大数、
d=区間数。
【0222】
配電用変圧器経由の電圧差分
配電用変圧器は、負荷またはソーラーエクスポートの故に配電用変圧器を通る正味電流でのインピーダンスとして評価される。
【0223】
【数3】
【0224】
式中、
V=区間dにおける相大地間電圧、
=HV上の1.0puを想定した公称相ニュートラル間電圧、
Z=変圧器インピーダンス(オーム(R+jX)単位)、
=ピーク日中利用率(%)としての変圧器利用率、
=変圧器の平均利用率(%)、
=容量密度(変圧器設置容量)(kVA/区間)、
θ=負荷位相角、
=ピーク日射率(%)(所与の一地域に到達する日射)、
=配電用変圧器当たりのソーラーkVA容量、
θ=発電位相角。
【0225】
低電圧回路に沿った電圧差分
LVフィーダは、複数区間に分割され、各区間に4需要家が割り当てられ、3相にわたって平均化される。架空(OH:Overhead)導体は、LV ABCまたはムーン(Moon)と想定され、および地下(UG:underground)は、240mmAlと想定される。低電圧回路に沿った電圧は、次の式によって与えられる。
【0226】
【数4】
【0227】
式中、
V=区間dにおけるライン大地間電圧、
=配電用変圧器の低電圧端子におけるライン大地間電圧、
Zs=R+jXとしてのフィーダインピーダンス(オーム/Ph/スパン(OH)またはオーム/Ph/区間(UG)単位)、
=利用率(%)(負荷曲線に基づくADMDの百分比)、
ad=単相負荷を想定した住宅当たりのADMD(kVA単位)、
=公称相間電圧(kV単位)、
θ=負荷位相角、
=ピーク日射率(%)(所与の一区域に到達した日射)、
=需要家接続当たりの平均ソーラーkVA容量(ソーラーkVA/需要家/フィーダ単位)、
θ=発電位相角、
max=LV区間の最大数。街路臨界地が30メータの場合、OHの場合は5、UGの場合は9、
d=区間数、
Zs=2×S×Z/1000。Zはラインインピーダンス(オーム/Ph/km単位)、Sは街路臨界地(メートル単位)。
【0228】
上記3つの式を連結すると、フィーダバックボーンの任意の区間における11kVバスから選択されたLV回路の末端までの総電圧低下/上昇を計算できる。連結するには、式2の第1の電圧値(V)を式1の所望区間Vに置き換え、更には式3の第1の電圧値(V)を式2の計算されたVに置き換える。
【0229】
MVおよびLVフィーダのシミュレート時、以下の想定が成された。
・式1および式3では、フィーダを複数の等区間に分割する必要がある。各区間に配電用変圧器が割り当てられる。精度のために、MVフィーダには、400m以下の区間長が必要とされる。LVフィーダの場合、一般的な区間長は、極間の平均スパンになるであろう。これは、一般に、住宅地所における平均街路臨界地の2倍である。一般的な街路臨界地(プロットのサイズ)は30mであるので、各LV区間の長さは60mになる。住宅当たりのADMDが3~4kVAであると想定すると、大半のLV布設距離は、OH導体の場合は約300mであり、UG導体の場合は540mである。配電用変圧器は、MVフィーダ上の平均的変圧器のサイズに設定可能である(総設置容量を変圧器の数で割る)、または、汎用的な計算が実施される場合は、「一般的な」サイズである。一般的な配電用変圧器のサイズは、315KVAである。
・この分析のために、フィーダは、その全長にわたって同じ導体で構築されていると想定する。
・ソーラーの浸透は、調査された配電フィーダ上の全ての変圧器にわたって等しいと想定される。例えば、ソーラー浸透が10%のとき、全ての変圧器は10%のソーラー浸透を有すると想定される。
・負荷利用率は、調査された配電フィーダ上の全ての変圧器にわたって等しいと想定される。
・負荷およびソーラー力率は、全ての変圧器において等しいと想定される。負荷力率は、地方によって変化するが、住宅地域においては0.95pfがほぼ一般的である。ソーラーPVは、通常、ソーラーPV発電の成長開始時に、pf1に設定される。
・全ての配電用変圧器は、4%のインピーダンスを有し、X/R比は10であると想定される。設置されている大半の変圧器はタップ5として記録されるので、変圧器は、タップ5(公称)と想定される。
・各配電用変圧器は、一般に少なくとも2つのLV回路を有する(したがって、一方の回路における負荷または発電は、変圧器の現在の負荷/発電の半分である)。
【0230】
無効電力を使用したライン電圧低下の補償
送電ラインにわたる電圧低下は、ΔV=I・Zcos(θ-φ)によって与えられる。これは、角度(θ-φ)=±90°であれば、ゼロに設定可能である。すなわち、電源またはラインインピーダンス角度を90°進ませる、または遅らせる、ために、負荷角度を設定することによって、設定可能である。
【0231】
電源インピーダンスが、ゾーン変電所のバスなどにおいて、無効成分によって支配されている場合、抵抗性電圧低下を打ち消すために必要な無効成分は小さく、進み力率は1に極めて近い。
【0232】
11kVフィーダの場合など、電源インピーダンスX/R比が1により近い場合は、抵抗性電圧低下を補償するために必要な進み無効成分は、有効電力成分の大きさに近付き、必要な力率は、以下の表に示されているように、0.8(進み)になる。
【0233】
【表1】
【0234】
負荷が実際に発電源(グリッドに接続されたPVシステムなど)である場合、フィーダをバックアップするために注入された電力に起因する電圧上昇は、VARを吸い込むPVシステムによって、すなわち進み力率での動作によって、補償可能である。実際のシステムは、埋め込み型PV発電と平行に、ローカル負荷を含み得るので、条件によっては、需要の低下、または恐らく電力逆走、をもたらし得る。これらの例において、負荷の実際の力率は、pf1にはるかに近くなり得る。その理由は、部分的な電圧低下補償だけで済むからである。変電所においてタップ切換器に組み込まれた既存のLDCは、漸変する負荷の場合は頼りになり得る。
【0235】
分散型ソーラーPV発電のインパクト
上記の複数の式に基づき、ソーラーPV発電のインパクトを特定するためのモデルが開発され得る。このモデルは、住宅ソーラーPV発電は、各10%のソーラーPV浸透毎に、LV網に約1.15%の電圧上昇をもたらすことを示す。この浸透は、非線形であり得る。ソーラーPV浸透(%単位)は、LV供給地域における総ソーラーPVインバータの容量(KW単位)とその地域に供給する配電用変圧器の容量(kVA単位)との商に基づく。これは、図10Aに示されている。図10Bに示されているように、中電圧網は、10%のソーラーPV浸透当たり0.5%を僅かに超える電圧上昇になり得る。ソーラーPV浸透のインパクトは、特にフィーダ/回路の末端において、極めて異なる電圧プロファイルをもたらす。モデル化された11kVフィーダの末端における電圧プロファイルは、一例として図10Cの下に示されている。以下の総括表は、総合的な影響、およびそれが如何に構成されているかを示している。
【0236】
【表2】
【0237】
このインパクトは、軽減されなければ、ソーラーPV浸透が約30%に達する迄に、大半の網において電圧限界超過をもたらし得る。
【0238】
本電力調整装置は、電池エネルギー貯蔵システムの管理ツールとして、ソーラーPV発電インタフェースとして、および配電システムの電圧管理装置として、使用可能であり、そのために適している。その配電システム電圧管理能力は、上記の計算およびモデル化によって実証可能である。これにより、配電システム技術者も、ソーラーPV発電のインパクトを最良に軽減するために、装置の適切なサイズおよび実装位置を決定できる。
【0239】
次に、電力調整方法の一例を説明する。この例においては、送電網における電圧を調整するために無効電力の管理が使用される。これは、以下の工学公式に基づく。
【0240】
有効電力(P)および無効電力(Q)の両方が電圧に影響を及ぼす。それぞれの影響は、網抵抗(R)およびリアクタンス(X)にそれぞれ比例する。網電圧がVである位置における網セグメント内の電圧変化は、以下の式により、需要家の接続点における有効および無効電力に依存する。
【0241】
【数5】
【0242】
この近似が妥当であるのは、網電圧が電圧変化に比べ大きく、平衡化された3相配電ラインが想定される場合である。符号の規約は、電力潮流の方向が需要家に向かっていることを示している。すなわち、負荷の場合はP>0であり、ソーラー発電が負荷を超えるとP<0になる。
【0243】
PおよびQの両方を使用すると、恐らくは抵抗性負荷からの電力消費を減らすためのCVR(conservation voltage reduction)戦略により、または恐らくは他の何らかのポリシーにより、電圧を所望レベルに設定できる。完全に平坦な電圧プロファイルのために、以下のように無効電力を設定することによって、電圧プロファイルをゼロにできる。
【0244】
【数6】
【0245】
電圧低下(P>0)を打ち消すために、需要家は、コンデンサのように、進み無効電力を供給する必要がある。すなわちQ<0。同様に、電圧上昇(P<0)を打ち消すために、需要家は、インダクタのように、遅れ無効電力を消費する必要がある。すなわちQ>0。
【0246】
したがって、無効電力の影響は、配電ラインのX/R比によって、増幅または低下される。これは、単位長当たりの抵抗に対する単位長当たりの(誘導性)リアクタンスの比であり、実際は或る値範囲が発生する。より高電圧の配電および送電ラインは、より高いX/R比を有し得る。
【0247】
低電圧および11kv網における電圧管理
本電力調整方法を実証するために、都市網のための一般的な設備および負荷を有する放射状LV網が使用される。結果は、240±6%VACであると想定される配電用変圧器の端子電圧の百分比として表される。
【0248】
図11は、LV網が対応付けられたいくつかの配電用変圧器を有する11kVフィーダに供給する一変電所から成る配電網を示す。単一供給源を有するこの網は、オーストラリアにおける全ての網の代表である。全ての州法域は、低電圧を240±6%VAC、または230+10%、または230-6%VAC、に維持することを要求している。変電所および配電用変圧器は、増加する負荷に伴う電圧低下を補償するために、変圧器が公称240/230VACより高い電圧を出力できるように、タップ巻線を有する。変電所変圧器は、負荷に伴い11kVバス電圧を変化させる(すなわち、負荷の増加に伴い、11kV電圧を上昇させる)負荷時タップ切換器を有する。配電用変圧器は、無負荷時タップ切換器を有する。無負荷時にタップ設定を変化させることによって、電圧のみを変化させることができる。タップは、通常、設置時に設定され、LV地域の停電時にのみ交換可能である。
【0249】
PV発電配電網電圧の影響は、工学的電圧計算によって実証可能である。OH配電用変圧器は、1~4間の低電圧回路を有するであろう。各回路は、最大300~400mの長さを有し得る。315kVA変圧器上に40m間隔で需要家負荷を表すために、10の負荷点を有する単純なOH放射網を使用すると、さまざまな需要家負荷、ソーラーPV発電、VARS、および電池貯蔵について、回路に沿った電圧プロファイルを計算できる。この例において、無効電力管理は、配電網上に、または需要家の敷地に、電力調整装置を使用することによって実現される。
【0250】
DER発電の電圧調整
同じ網に対するPV発電の影響を判定するために、最小の日中負荷が僅か0.5kWである各需要家に5kWのPV発電を0.97PFで適用する。住宅のADMDは、通常、昼頃0.3と1kWの間である。図12Aは、結果として生じた電圧プロファイルを示している。この電圧プロファイルは、電圧低下から電圧上昇へと逆行している。需要家当たり6kW超のPV発電は、規制限度である+6%を超えた電圧上昇を引き起こすであろう。PV発電は、変圧器定格の19%である。いくつかの配電公社は、過度な電圧上昇を制限するために、最大値を配電用変圧器定格の25%に設定している。図12Bは、PV発電が需要家当たり10kWに増加し、総発電量が配電用変圧器定格の32%になったときの電圧上昇を示す。PV発電の増加は、LV回路に沿った定常電圧を上昇させる。回路/フィーダの末端にある住宅は、電圧上昇が最も高い。
【0251】
遅れ無効電力を最適位置で追加することによって、電圧プロファイルを著しく改善できる。この最適位置とは、最小の電圧変化によって網全体が所望の動作限界内に留まることを保証できる網内の位置である。図13Aは、遅れVARが50kVARである、図12Bに示されているのと同じ負荷および発電を有する回路に沿った電圧上昇を示す。この電圧プロファイルは著しく改善されており、全ての需要家電圧が法定限度内であり、回路に沿った電圧プロファイルが殆ど理想的に一様である。遅れVARの追加は、法定電圧調整が維持しながら、配電用変圧器の32%のソーラーPV発電を可能にした。
【0252】
図13Bは、電圧規制限度である+6%を超えずに、95%のPV発電をLV網にエクスポートできることを示している。VAR補償がなければ、電圧は公称値より32%上昇したであろう。最適位置における遅れVAR補償によって、最大電圧上昇は公称値より6%上昇するだけであり、法定限度内である。最適位置における100kVARの遅れによって、または180kWの負荷で電池を充電することによって、フルPV発電が実現され得る。
【0253】
地下回路
一般的な3相UG配電用変圧器は500kVA(4%インピーダンス)になり、240mm4C Alセクタ化XLPEのLV回路を最大4回路有するであろう。以下の分析は、UG LV配電回路についてである。OH回路についても同様の結果が得られる。図14Aは、+6%の電圧調整限度を超えるには、住宅当たり10kWのPV発電が必要であることを示している。その理由は、発電閾値が高いほど、OH回路に比べ、UG回路のインピーダンスおよびX/R比が低くなるからである。この状態におけるPV発電は、DT定格の20%であり、OH閾値である19%と同様である。図12Bは、PV発電がDT定格の40%であるときの電圧プロファイルを示す。電圧上昇は、公称値を13%超える。
【0254】
図15Aは、電圧を適正な調整に戻すために、140k VAR遅れ補償が必要であることを示す。遅れ補償は、通常、UGケーブルの容量特性の故に、OH回路に比べ、より高い。配電用変圧器定格の100%におけるPV発電によって、電圧は、公称値より40%上昇するので、法定限度を著しく超える。図15Bは、424k VAR遅れ補償がフィーダ/回路に沿った最適位置で追加された後の電圧プロファイルを示す。この遅れ補償は、最大電圧を法定限度内にする。
【0255】
11kVフィーダ上の電圧管理
あらゆる種類の11kVフィーダに対してVAR管理が同様の結果をもたらすことを証明できる。VARクァンタムは、関連フィーダのインピーダンスに応じて変化する。11kVフィーダの場合、配電用変圧器インダクタンスを導体のXに追加する必要がある。したがって、11kVフィーダに沿った電圧管理のために、より多くのVARが必要とされ得る。LVからの11kV電圧の管理は、高電圧(7KV)のために電力調整装置を使用する場合に比べ、はるかに経済的な解決策である。電子部品のコストは、電圧と共に指数的に増大する。11kV電圧を調整するために配電用変圧器のLV端子に接続される電力調整装置は、最も経済的な解決策である。
【0256】
電力調整装置の配置
網電圧を法定限度内に維持するためのVAR管理の配備方法が多数存在する。VAR吸い込み/発生のための電力調整装置の配置位置は、需要家の敷地内のメータの背後でも、メータの手前のDNSP網上でも、同じ結果が達成される。上記分析は、単一の回路/フィーダ上のあらゆる需要家のための電圧調整のための最適位置に電力調整装置を配置して行われた。この代替は、各需要家に分散されたVAR吸い込み/発生である。この方法は、AS4777.2.2015準拠のスマートインバータのVolt/VARおよびVolt/Watt設備の適用を義務付けることによってDNSPによって好まれ得る。
【0257】
ピーク負荷のための電圧調整
図16は、力率0.97の5kWのADMD(After Diversity Maximum Demand)を有するLV回路の放射状部分に沿った電圧プロファイルを示す。このプロファイルは、回路に沿って一般的な電圧低下を有する一方向グリッドの代表例である。電圧は、まさに規定調整内の-6%である。電圧低下は、誘導フィーダインピーダンスおよび負荷を補償するための進みVARの発生によって改善可能である。
【0258】
電力調整装置をVAR発生機(進みVAR)にすることによって、回路/フィーダ上の電圧を調整して法定限度内に留めることができる。需要をPF1にするための進みVARの生成は、需要を力率1にすることによって、需要管理のために使用可能である。オーストラリアにおいては、ソーラーPVの大きな浸透にも拘らず、網システムのピークは変化せず、日照時間外の夕暮れ時も落ち着いている。電力調整装置は、日照時間外の網電圧を調整でき、ピーク需要の低下を助ける。
【0259】
通常、ローカルシステムのピークは、日照時間外に発生するので、電圧低下は依然としてあらゆるDNSPにとって主要な問題である。電力調整装置を適用すると、電圧調整を改善し得るので、全ての需要家を規制電圧限度内にし得る。大半のソーラーインバータは、DC電源の接続なしには、進みVARを提供できず、日照時間外の電圧調整を行えない。
【0260】
電圧変動
DNSPは、断続的DERからの電圧変動を当然心配している。ソーラーPVの場合、過渡的雲量がインバータ出力を激しく変動させ得る。通常、これは、数秒/分にわたるソーラー出力の緩慢な減衰にとっては問題ではない。AS4777.2:2015準拠のスマートインバータも電圧変動を鈍化させるランピングを適用している。AS4777.2:2015ランピングがなくても、本電力調整装置は、電圧上昇/低下を改善してPstおよびPltの両値を準拠内に維持するためにVAR出力を瞬時に調整できるであろう。
【0261】
電圧変動の最悪ケースは、電圧の上限または下限に達したときにインバータが瞬時にシャットダウンする場合であろう。この状況を悪化させ得るのは、いくつかのインバータが一緒にシャットダウンした場合である。電力調整装置は、第1段階では、インバータのシャットダウンを防止する法定電圧限度を維持することによって、および電圧上昇/低下を感知し、補償すべきVARを瞬時に調整して、過度な電圧変動を防止し得る。DNSPおよび需要家にとっての更なる利点として、電力調整装置は、平常の瞬時電圧低下/電圧上昇も打ち消す。
【0262】
高調波の発生および減衰
通常、AS4777.2:2015準拠のソーラーインバータは、高調波出力が低いので、通常は、DNSPにとって問題にならない。局所的共振が問題を引き起こし得るケースがいくつか存在し得る。ソーラーインバータ設備の未検出障害によって著しい高調波が引き起こされ得る。バックグラウンド高調波問題は、網上の他の設備によって引き起こされることが多い。電力調整装置は、ローカル網上の何れの高調波も最大24kHzに減衰するようにプログラム化され得る。電力調整装置は電圧の高調波成分の測定も行え、懸案の高調波問題の何らかの通知を与えるであろう。
【0263】
DER透過が20~30%の範囲になると、圧倒的にOH配電網は、広範な電圧調整問題に遭遇し始めることになる。圧倒的にUG網の場合は、透過レベルは30~40%の範囲内になるであろう。VAR管理を採用すると、11kVまたはLV網上の電圧を調整できるので、伝統的なオンラインタップ切換器または固定式タップ変圧器が不要になる。電力調整装置による無効電力管理を使用すると、11kVおよびLVを規制限度内に維持し得る。電圧を規制限度内に維持しながら、網設備の熱定格までのDER発電が可能になる。電力調整装置を使用すると、ピーク需要時の電圧低下を最小化できるので、より長いLV回路長を可能にし、網の資本コストを低下させる。
【0264】
複数の回路を有する一般的なLV配電用変圧器上で、各回路上の単一の電力調整装置が、AS477.2:2015 Volt/VAR設定の代わりに、その回路の電圧を制御できる。同様に、11kvフィーダ上の電圧は、はるかに大きなdSTATCOMにも拘らず、各回路上に設置された単一の電力調整装置から制御可能である。UGフィーダ上の電圧上昇は、フィーダのより低いX/R比の故に、より低くなるであろう。UGフィーダは、OHフィーダより多くのDER容量をホストできるはずである。一例において、それは、最適位置で配電用変圧器のLV端子に配置されたLV電力調整装置による11kVフィーダの電圧調整のために好適である。
【0265】
通常、11kVおよびLV網の設計時、電圧低下は重要な設計要素である。導体サイズは、通常、熱定格のためではなく、電圧低下のために、選択される。本方法の使用により、伝統的な設計規則の多くは最早適切ではない。LV回路の長さは最早決定要因ではなく、LV地域は、導体および配電用変圧器の究極的な熱定格に合わせて構築可能である。電池を含むDERの浸透の増加により、配電用変圧器における最大需要が低下する可能性がある。最大需要の低下および電力調整装置による電圧低下の問題の解決により、LV回路をはるかに長くでき、必要な配電用変圧器を減らすことができる。これは、DNSPのために著しい資本節約をもたらすであろう。
【0266】
11kV網上の電圧調整は、変電所変圧器上の負荷時タップ切換器によって実現される。これらタップ切換器は、変電所制御システム内のライン電圧低下補償リレー(単数または複数)または相当するアルゴリズムによって制御される。都市圏においては、下位送電用変圧器は、11kVバスバーに接続された負荷曲線がそれぞれ異なる複数の11kVフィーダを有する。これは、11kV電圧調整をより困難にし、多くの例において、電圧調整問題を生じさせ、電圧に対する需要家の苦情を招く。無効電力の管理によって、11kV網上の電圧調整をより簡素化でき、下位送電用変圧器上の高価な負荷時タップ切換器の必要性を最小化できる。
【0267】
二方向グリッド
オーストラリアでは、ソーラー発電が急速に成長し続け、電気コストを下げ続けている。公社規模のソーラーが最終的に市場に本格的に参入しているとき、殆どのソーラー能力は依然として住宅需要家のルーフトップにあり、商用部門はこの成長軌道をたどり始めている。需要家が所有する分散型ソーラー発電は、今後何年にもわたって我が国の総電気供給に大きく寄与するであろう。電気網変換ロードマップ(Electricity Network Transformation Roadmap)(ENAおよびCSIRO、2016年)は、2050年までに総電力の50%がメータの背後で発電されると予測している。これは、既に世界をリードしている我が国のルーフトップソーラーレベルからの大きな増加である。DER発電の大半は、配電網が確立されている都市圏で行われるであろう。この配電網は、一方向電力潮流のために設計されており、DERの透過の増加は、二方向電力潮流に対応するための既存の配電網の限界を既に際立たせている。
【0268】
DERは、主にLVおよび中電圧(11kV)網に接続されており、DNSPらは、大量のDER発電への対応に関して主要な懸念を3つ有している。すなわち、
・第1の主要な懸念は、これらの網にエクスポートされる何れの発電もその網上に電圧上昇を引き起こすことである。大半のDNSPは、電圧を法定限度(LVの場合は230VAC+10%、-6%、22kV以下の高電圧の場合は+/-5%)内に抑えるために、エクスポート量に制限を課している。
・DNSPの第2の主要な懸念は、一方向網の電圧階級付けを混乱させる逆電力潮流である。既存の配電網は、高負荷および低負荷条件下で法定電圧限度を維持するために、電圧を昇圧または降圧するように設計されている。一方向網上の電圧レベルを管理するために変圧器タップ切換器が使用されている。
・最後の懸念は、網障害の識別、位置検出、および切り分けである。大半のDER発電は、その出力定格プラス10%に電流が制限されており、配電網上に障害が存在していても、電圧が急落しない限り、定格電流を供給し続けるであろう。したがって、高インピーダンス障害が発生した場合、電圧が急落しなければ、DER発電はその障害に供給し続けるであろう。伝統的なシステムにおいては、中電圧において、高感度のアース障害保護が高インピーダンス障害の大半を検出するするであろう。しかし、DERが大きく浸透すると、これは、最早意図どおりに働かないこともあり、高インピーダンス障害は検出されず、長期間持続し、危険な状態を引き起こす可能性がある。
【0269】
これらの懸念の全ては道理にかなっており、今後、DERが温室効果ガスの減少および再生可能DERの拡大に主要な役割を果たすのであれば、これらの懸念への対応が必要とされる。この白書は、一方向グリッドの制約に打ち勝ち、将来のための完全に機能する二方向グリッドを確立するための新技術を如何に実現できるかを示すであろう。
【0270】
オーストラリアのルーフトップソーラー発電所
オーストラリアは、世界の他の国々に比べ、壮大な量のルーフトップソーラーPV発電を有する。今日、オーストラリアは、全住居の15%超という世界で最も高いDER浸透率を有する。これは、次に高い浸透率であるベルギーの2倍以上である。これに対して、オーストラリアの一人あたりの再生可能エネルギー発電は、商用および大規模施設におけるソーラーおよび風力発電の普及率が低い故に、8位にランクされている。住宅市場は、これまで設備容量の安定成長を推進してきたが、今や、ソーラーコストは、できる限り多くのソーラーの設置を商用および工業需要家に奨励できるほど低い。それらは、電気料金の低下という有無を言わせない経済的側面と、企業の社会的責任および環境目標を満たすという圧力との組み合わせによって推進される。これら需要家は、多くの場合、ソーラーPV発電のために理想的な高品質の、すなわち、高い、連続した、および日陰になっていない、大面積の屋上空間を有する。
【0271】
「メータの背後に(behind the meter)」接続されたソーラーによって形成される分散型発電所は、7GWの総容量に達しており、オーストラリアの電気供給に重要な寄与をしている。それは、更なる寄与を行えるし、行うはずである。
【0272】
一部の州法域は、グリッドにエクスポート可能な電力に制限を課している。特にクイーンズランド(QLD)およびサウスオーストラリア(SA)では、配電網における制約の故に、商用および工業需要家がそれぞれの利用可能な屋上空間が許容するだけのソーラーを設置できない。給電用に設計されたグリッドへのソーラー入力の技術的インパクトが意味するのは、接続できる総ソーラーをDNSP(distribution network service provider)が制限することである。商用需要家は、ゼロエクスポートに制限され得る。これは、ソーラー発電のための経済状況を厳しく制限し、物理的および経済的ポテンシャルに比べ、大幅に小型化されたシステムをもたらす。すなわち、小売りエネルギーオフセットおよびエクスポート収益ではなく、各需要家のピーク負荷に応じたサイズになる。
【0273】
住宅需要家らの接続を妨げるネガティブな政治的結果の故に、住宅需要家らは、通常、優先され、接続の広範な検討および手続きなしに、都市部の設定では一般に最大5kWの、比較的小規模のシステムに接続可能である。これは、そのまま存続しないであろう。ソーラー住宅の割合は、極めて高密度の複数の小地区と共に、増加し続ける。未開発地域の発展も100%の住宅上にソーラーを設けることで既に提案されている。これは、配電網設計に特別な考慮を必要とする。これは、いつかは光景を変えるであろうが、多年にわたって、大半のルーフトップソーラーは、既存網に接続された既存の屋上に存在するであろう。
【0274】
この白書には、電力調整装置技術および網統合制御を使用して、ソーラー配備に対するグリッドの限界を如何に解決し得るかが記載されている。そこに記載されているのは、ルーフトップソーラーによって引き起こされる技術的問題、伝統的および新規の利用可能な解決策、国全体のDNSPらの状況、およびDNSPらの事業のための変革機会としてソーラー成長を受け入れるための網の潜在能力、である。
【0275】
上記段落は、大量のDER発電を有する配電網上の電圧管理をVAR管理によって行えることを示している。これを如何に実現できるかは、それをグリッドに接続する配電網によって決定される。一方向電力をバルク供給点から需要家に供給するように設計された資産の管理において、DNSPらは、インバータに接続された発電からの逆電力潮流に適合する必要がある。
【0276】
以下のインパクトを管理する必要がある。
・ピークソーラー出力時の電圧上昇の故の電圧包絡線の広がり、
・ピークソーラー出力時の網の熱限度への到達、
・ソーラー出力が負荷と同様のレベルであるときの単独運転防止障害、および
・高速切り換えを使用する複数のインバータの高集中の故の高調波ひずみ。
【0277】
これらのうち、電圧上昇は、大半のDNSPらにとって気懸りであり、ソーラー浸透が高い網地域においては即刻の対処を要する。網安定性への脅威は存在しない。その理由は、規格に準拠した全てのインバータは、電圧が法定限度外になると、トリップオフするからである。利用可能なデータは、一部の地域において25~35%のインバータがトリップオフすることを示している。これは、それぞれのインバータを手動でリセットする需要家にとって、およびソーラーエクスポートからの収益低減の故に予測された投下資本利益率を実現していない需要家にとって、受け入れられない。
【0278】
これが起こるのは、既存のルーフトップソーラー発電量がオーストラリアの電力の5.3%であり、予測された50%に近くないからである。そのレベルまでのソーラーPVの成長は、確かに大きな変革であろう。
【0279】
オーストリアのDNSPらは、ソーラーエクスポートのインパクトに対してさまざまな対応を示している。これらの対応は、ソーラー接続数を制限すること、ソーラーシステムに対してゼロまたは他のエクスポート要件を課すこと、および背負い込む網コストをカバーするために需要家による更なる投資を必要とすることを含む。これらの対策は、網ビジネスにとって「デス・スパイラル」を増長させる。その理由は、需要家らは、グリッドへの彼らの依存を減らす技術の使用へのより大きな動機付け有することになるからである。あるいは、DNSPらは、より多くのルーフトップソーラーに対応するために、彼らのグリッドを強化するための伝統的な網側投資を行うことができる。しかし、これも、デス・スパイラルを増長させる。その理由は、これら対策は費用がかかり、その費用は、そのうち需要家らの料金表を通して需要家らに回され、グリッドから供給される電気をより非魅力的にするからである。
【0280】
需要家への請求額を押し上げる網側の大きな高額投資をDNSPらに行わせる必要がない複数の解決策の利用が可能である。多くのDNSPらは、電力潮流および電圧を管理するために、需要家発電の積極的管理を可能にする技術を実証している。網電圧は、無効電力を使用して制御できる。これは、需要家エクスポートに対するインパクトがソーラー出力の削減よりはるかに小さい。無効電力の供給は、可能な程度まで、ソーラーおよびストレージインバータの能力を使用して行える。ただし、無効電力は、電力調整装置によって、より包括的に供給可能である。電力調整装置は、無効電力を高効率で供給するように特に設計されたパワーエレクトロニクスデバイスである。
【0281】
需要家サイトに接続されたスマートインバータまたは電力調整装置を使用して、ローカルインテリジェント制御によってボトムアップ式に電圧を管理する。これは、適した通信インタフェースを介してDNSPらの網性能の完全な視認を彼らに与えることもできるが、制御がローカルであるので、SCADA品質管理を必要としない。これは、DERMS(distributed energy resource management system)と異なり、コスト削減および簡素化の両方を意味する。大半のDNSPらは、現時点では、それぞれの運用制御にDERMSを統合する準備が整っていない。これにより、電圧管理への段階的アプローチが可能になり、電圧問題を需要家メータの背後でサイト単位に効果的に解決でき、その後、熱限度に達したときに徐々にDERMSを使用して熱限度を管理できるようになる。各州におけるゾーン変電所規模での実証は、このアプローチが商用および実用的に意味があり、DNSPらが主要ソーラーサプライヤーに変わるに伴い、彼らの網の未来を保証することを彼らに示すことになる。
【0282】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・電圧調整は、DER網のための必須前提条件である。
・電圧調整は、DERの真の利益を解き放つ。
・電圧を維持するために、VAR管理は、伝統的な諸代替案より経済的である。
【0283】
伝統的な一方向グリッドの電圧調整
図17は、一般的な中電圧網の構成を示す。変電所変圧器は、通常、全ての負荷条件に対して11kVバスを調整するために、負荷時タップ切換器を有する。オーストラリアで一般に使用されている制御方法が2つ存在する。
【0284】
一定の変電所電圧 - 変電所において安定した電圧を維持するために、タップ切換器の位置は、負荷条件に応じて変化し、負荷の変化に伴い下位送電網において発生する電圧変化を補償する。
【0285】
調整されたフィーダ電圧 - 11kVバス電圧は、高負荷条件下で約103%に上昇し、低負荷条件下で約100%に低下する。タップ交換は、LDC(Load Drop Compensation)リレーまたはVVR(Volt VAR Regulation)アルゴリズムによって決定される。これは、通常、リアルタイムSCADAシステムに対応付けられている。タップを何時交換するかを決定し、フィーダに沿った進路の約1/3の位置においてフィーダ電圧を一定値に調整するために、LDCリレーは、11kVフィーダのインピーダンス(抵抗およびインダクタンス)をシミュレートし、フィーダに沿った電圧をモデル化する。VVRアルゴリズムはLDCと同様であるが、コンデンサおよび調整器の切り換えに対応する機能を有する。
【0286】
配電用変圧器は、通常、固定式無負荷時タップ切換器を有し、11kVおよびLV網の電圧調整において主要な役割を果たす。11KVフィーダの始端における電圧はフィーダの末端における電圧より高いので、フィーダの始端における配電用変圧器の端子の電圧を下げ、フィーダの末端における配電用変圧器のLV端子の電圧を上げるように、配電タップは設定される。通常、タップは、低負荷条件下では、配電用変圧器のLV端子において245VACに設定される。この構成は、都市圏のためにほぼ一般的である。
【0287】
田舎では、11kVフィーダは、通常、はるかに長く、フィーダに沿って1つ以上の電圧調整器を有し得る。電圧調整器は、負荷に応じて電圧を昇圧または降圧する。
【0288】
電圧調整は、単一の配電フィーダに、または複数のフィーダに、適用可能である。単一フィーダの場合、電圧調整器はフィーダの先端に置かれ、LDCリレーは各フィーダ上の電圧を独立に調整するであろう。共通バス上の複数のフィーダの場合、LDC負荷電流は全てのフィーダの和であり、共通バスは負荷時タップ切換器から調整される。
【0289】
LDC方式は、広く使用されているが、多くの短所を有する。いくつかの短所を以下に挙げる。
・LDCシステムは、通常、電力潮流が制御バスから外側へ一方向である場合に電圧を制御するようにのみ構成されている。
・LDC電圧は、単一フィーダまたは複数のフィーダに沿って負荷が等しく分散されていると想定する。
・LDCは、RおよびX設定によって決定されたように、単一のノテーショナルフィーダを制御する。
・複数のフィーダを制御するLDCの場合、は、各フィーダは等しく分散された負荷を有し、フィーダ毎に同じ負荷プロファイルを有すると想定されるが、これは、多くの場合、当てはまらないので、結果を損なう。
・下流の分散された直列またはシャントコンデンサバンクは、電圧調整をより困難にする。
【0290】
LDCおよび二方向グリッド
LDCは、常に、電力が随時如何なる方向にも流れ得る真の二方向グリッドを設ける際に、妨げになる。従来のLDCが正しい結果をもたらすのは、電力潮流が制御バス/調整器システムから外側への一方向である場合に限る。これは、DNSPらがLVおよびMV網へのDER発電のエクスポートを制限する別の理由である。この状況が更に悪化するのは、1つ以上のフィーダが電力を制御バスにインポートしているときに、他のフィーダが制御バスから電力をエクスポートするときである。これら状況下において、LDC制御方式では、何れのフィーダに沿っても電圧の正しい制御は不可能である。
【0291】
真の二方向グリッドの要件
真の二方向グリッドの場合、各回路/フィーダのための電圧は、その回路/フィーダ内の負荷または発電に依存せずに、制御されなければならない。VAR管理は、現時点において利用可能な適切な技術を有する唯一の有効な方法である。第1の白書「Is the Grid Full」には、LVフィーダ上の電圧を負荷および発電の両条件下で法定限度内に如何に管理できるかが示されている。何れのLV網も、グリッド電圧を法定限度内に維持しながら、配電用変圧器の定格の200%までDERに対応できる。この200%は、HVグリッドにエクスポートされる100%と、そのLVフィーダ上の需要家によって消費される別の100%とから成る。発電が最小になり、負荷が最大である夜間には、増加した負荷の故の電圧低下を補償するために、進みVARを発生させることによって、電圧を維持できる。電力調整システムの使用によって、電圧を何時でも自律的に維持できるので、遠隔感知の必要がない。
【0292】
第1の白書「Is the Grid Full」には、回路/フィーダに沿って最適点が存在することが示されている。そこに電力調整装置を配置することによって、ドループ制御アルゴリズムを使用する分散型VAR管理の代わりに、その回路/フィーダのための電圧を調整できる。電力調整装置は、メータの手前またはメータの背後に配置可能であり、各負荷/発電サイトにおける分散型VAR管理の技術的および商業上の不公正を解決する。
【0293】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・既存の配電網は、一方向電力潮流のためにのみ設計されている。
・二方向配電網では、電力潮流を管理するために、各フィーダ/回路が独立の電圧制御を有する必要があるであろう。
・LDCのような既存の電圧制御を無効にし、独立の電圧制御機構に置き換える必要があるであろう。
・一方向網における逆の電力潮流は、先細りの配電用変圧器タップグレーディング故に、より多くの電圧問題を引き起こすことになる。
【0294】
電力調整装置の特性
電力調整装置は、配電網へのDERの導入に対抗する網問題の多くに対応するために特に設計されている。DNSPが直面する主な問題点を以下に挙げる。
・電圧管理。特に網上のより低い電圧レベルでの発電の故の電圧上昇の管理
・断続的発電からの電圧変動
・障害の識別および位置の突き止め
・相間の電圧平衡化
・高調波の軽減
・網の信頼性
【0295】
電力調整装置は、20年の期待寿命をもたらすために最新の炭化珪素およびポリプロピレンコンデンサ技術を使用した先進の4象限、3相、4線インバータである。電力調整装置インバータは、以下の特徴を有する。
・1つのパッケージに収められた真の3相380~480VACインバータ。電力調整装置は、3つの独立相出力をシミュレートするために、ニュートラルが変調される4線デバイスである。各相の出力は、相の定格まで異なる電圧および電流を有することができる。
・3相4線または単相2線としてとして構成可能である。単相およびニュートラルインバータを形成するために、2相を平行にできる。
・可変周波数または固定50Hz~60Hz。既存網に合わせるために、電力調整装置の周波数を50Hzまたは60Hzに固定できる。遠隔励起またはモータ始動のために、電力調整装置は、可変周波数駆動に構成可能である。
・DC入力範囲600~980VDC。電池が80%DoDであるとき、最大電圧での出力を可能にするために、大きなDC電圧範囲が必要とされる。
・完全な4象限。VARの吐き出し/吸い込みおよびkWのインポート/エクスポートが定格100%まで可能である。
・個々の相電流が平衡化された4線3相。相電圧を平衡化するために、ニュートラルの変調によって相間で電力をシフトでき、パワーコンディショナとして機能できる。
・エネルギー貯蔵デバイスの電池充電および放電。
・グリッドの瞬時電圧低下/増大および電圧変動のための電力調整補償。供給品質を向上させるために、電力調整装置をパワーコンディショナとして使用できる。電力調整装置は、相電圧を特定の電圧および帯域幅に調整できる。電圧エクスカーションを修正するために、最初に瞬時電圧低下および増大がVARの吐き出しまたは吸い込みによって修正され、電池が存在する場合は、有効電力の発生または消費によって電圧を修正する。
・プログラム可能な高調波の吸い込み。電力調整装置は、高調波周波数を25kHzまで吸い込むようにプログラム化可能である。
・選択可能な電流源または電圧源インバータ。電力調整装置は、網に接続されているときは電流モードに、またはオフグリッド用途のための電圧モードに、なれるインバータを形成するグリッドである。切り換え時間は、2サイクル未満である。
・力率の修正。電力調整装置は、固定式進みまたは遅れ力率修正デバイスに、またはドループ曲線を有する可変式進みまたは遅れVAR発生機に、構成可能である。
・電力潮流の調整。電力調整装置は、インポートまたはエクスポートを指定レベルに制限するようにプログラム化可能である。
・UPS(Uninterruptable Power Supply)機能。電力調整装置をラインインタラクティブまたはオンラインUPSにできる。ラインインタラクティブモードにおいて、電力調整装置は、電流モードから電圧モードへの切り換えを2サイクル未満で行える。
・オフグリッド動作。DER発電およびバックアップ発電機と組み合わせると、電力調整装置は、部分的オングリッドまたは完全なオフグリッド電源とすることができる。
・方向性シーケンス保護。真の4線デバイスであるので、電力調整装置は、ライン間およびライン大地間障害を検出して網から切り分けるために使用できる正、逆、および零相電圧および電流を計算できる。
・網の信頼性。電力調整装置は、網障害のための独立UPSを需要家に提供することによって、網の信頼性SAIDIを向上できる。
・UPS機能。電力調整装置をラインインタラクティブまたはオンラインUPSにできる。ラインインタラクティブモードのとき、電力調整装置は、電流モードから電圧モードへの切り換えを2サイクル未満で行える。
・オフグリッド動作。DER発電および化石燃料バックアップと組み合わせると、電力調整装置は、部分的オングリッドまたは完全オフグリッド電源になることができる。
・方向性シーケンス保護。真の4線デバイスであるので、電力調整装置は、ライン間およびライン大地間障害を検出して網から切り分けるために使用できる正、逆、および零相電圧および電流を計算できる。
・網の信頼性。電力調整装置は、網障害のための独立UPSを需要家に提供することによって、網の信頼性SAIDIを向上させることができる。
【0296】
230VAC電圧規格
オーストラリアにおける大半の法域は、新しい電圧規格230VAC+10%-6%を採用している。暫定措置として、システムは、以前の240VAC±6%規格と協調するように構造化されている。その理由は、この規格は新しい規格内に収まるからである。目的は、将来のある時点で国際電圧規格である230VAC+10/-6%に完全に移行することである。暫定的な230VAC+10%-6%規格は、254VACに対してほぼ同じ上限電圧253VACを有するが、以前の下限電圧225VACに比べ、はるかに低い下限電圧216VACを有する。暫定的な230VAC規格への移行によって、網のPVホスティング容量を向上させられると示唆されてきた。これが当てはまるのは、配電用変圧器上のタップ設定が公称230VACに設定されている場合に限られる。これは、高くつく練習となるであろう(それは、配電用変圧器タップの設定変更のための要員派遣に約$2000かかり、電圧管理に電力調整装置を使用すると、不要になる)。以下の段落においては。電力調整装置によるVAR管理は、既存の配電網を一切変更せずに、国際230VAC±6%を実現できることを示し得る。
【0297】
二方向グリッドの電圧管理
下記は、二方向グリッド上の電圧管理のためのLV電力調整装置の能力を実証するためのいくつかのケーススタディである。これらケーススタディは、二方向グリッドの電圧調整用のVAR管理の実現可能性を示すために選択された。全ての電力調整装置は、LV網上の配電用変圧器の端子に、またはLVフィーダに沿った最適点に配置される。二方向グリッドの可能な負荷および発電の並べ方が多数存在する。負荷および発電のあらゆる並べ方のための電力調整装置のVAR管理の適用可能性を実証するために、極限状態(すなわち最大負荷および最大発電)のみが分析される。以下においては、2つの負荷事例を考察する
・LV網上のDERからの最大発電が設備の熱定格まで存在する場合。
・DER発電は存在せず、配電設備の定格までの最大負荷のみが存在する場合。この状況は、DER発電が存在しない夜間ピークをシミュレートするであろう。
【0298】
これら事例の各々において、LDC/VVR 11kV電圧は無効にされ、全ての電圧は、LV網上の電力調整装置のVAR制御によって管理される。以下の図に示されている電圧プロファイルを計算するために、潮流パッケージが使用された。
【0299】
一般的な変電所構成
図17は、このレポートに使用されている一般的なMV変電所を示す。この変電所は、11kVバスに平行に接続された2つの下位送電用変圧器(我々の調査では33/11kV)で構成されている。11kVバスは、バスに接続された、周囲地域に配電するための11kVフィーダをいくつか有する。各11kVフィーダは、各11kV OHフィーダに400m間隔で接続された25の配電用変圧器を有する。各OH 11kVフィーダは、3相であり、その全長に沿ってムーン(Moon)導体(AAC7/4.75)を有する。各11kVフィーダは、定格315kVAおよび電圧比11000/415の25の配電用変圧器をデルタ/ワイ配置で有する。ムーン導体は、風速1メートル/秒のために400A(7.8MVA)超の定格を有する。一般に、11kVフィーダは、ピーク需要利用率60~70%(4.5~5.3MVA)を有する。このレポートにおいて分析された全ての「最大」負荷/発電事例は、フィーダ当たり7.8MVAを使用している。これは、1DNSPにおける全ての動作状況をカバーするであろう。
【0300】
11kVフィーダの最悪の電圧調整は、発電および負荷の両状況において、フィーダの末端で発生するであろう。平常時、11kVは、LDC/VVR電圧調整によって11+5%kVに維持されている。また、11kVフィーダに沿った電圧は、公称の+5%以内になるように設計されている。11kVフィーダに沿った許容電圧低下または上昇は5%である。
【0301】
LV電圧調整は、総LV回路長を400mにするために40m間隔で配置された10ノードから成る単一のLV3相、4線、ムーン導体回路でモデル化された。一般に、各配電用変圧器から発する少なくとも2つのLV回路が存在するであろう。2つのLVトポロジーがモデル化されている。
・10の発電点の各々においてPF1で15.75kWの等しい発電を有する配電用変圧器からの回路。各回路の長さは400mである。
・1つのLV回路が配電用変圧器のLV端子に接続されている。この回路の長さは400mであり、この回路に沿って等間隔で配置された10の発電点の各々における発電量は31.5kWである。この「最大」の状況は、通常の2回路トポロジーに比べ、最大の電圧上昇または低下を発生させるであろう。
【0302】
DER発電のインパクトを評価するために、最初の配電用変圧器および最後の配電用変圧器における電圧調整を詳細に示す。LV網のための正しい調整を維持するために必要なVARは、11kVフィーダ上の最後の配電用変圧器において最大である必要がある。全ての電圧調整分析のために、公称230VACが使用された。オーストラリアにおいて、現在の法定電圧限度は、230+10%-6%である。
【0303】
変電所のための2つの条件を詳細に分析する。1つは、DERからの最大発電が配電用変圧器の熱定格に等しい場合であり、もう1つは、各配電用変圧器上の最大負荷が配電用変圧器の熱定格に等しい、すなわち315kVAである、場合である。例示的変電所において、11kVフィーダF1は最大発電を有し、F2は最大負荷を有することになる。この構成は、全ての負荷および発電条件下において網電圧を管理するためのVARの力を実証するであろう。F1は、電圧を法定条件内に管理するために遅れVARが使用される最大発電状態を表す。F2は、電圧を法定限度内に管理するために進みVARが使用される最大負荷条件下にフィーダがある状況を表す。
【0304】
最大発電の分析のために、最大発電時はDER発電からローカル負荷に供給され、全発電は配電用変圧器によって逆に供給されると想定される。
【0305】
この簡単なトポロジーおよび以下の分析は、VAR管理の適用によって、多くのDNSPらの今日のケースのように電圧を制御するために発電エクスポートを制限せずに、変電所の11kVおよびLV網の電圧をうまく調整できることを実証するであろう。この発電は、ソーラーPVからのDER発電が最大であり、電圧上昇を既存の調整限度内に維持できる「真昼」の状況を表す。ピーク需要は、DER発電がなく、11kVおよびLV網上の電圧低下が最大である夜間ピークを表す。
【0306】
全ての分析において、電圧を下げるための遅れVARを発生させるために、または電圧を上げるための進みVARを発生させるために、LV電力調整装置が使用されている。11kV電圧制御のために、電力調整装置は、配電用変圧器DT17のLV端子に配置され、LV電圧制御のために、電力調整装置はLV回路に沿った位置7に配置されている。上記段落において、VAR制御の最適配置は、回路に沿った66%負荷平衡点であることが実証された。全てのVAR管理分析は、66%の負荷平衡点、またはその近く、におけるVAR管理によって行われた。
【0307】
DT毎に2つのLV回路を有する単一OH 11kV(MV)フィーダの電圧管理
最大発電の分析
図18は、VAR管理がある場合とない場合の、単一11kVに沿った電圧プロファイルを示す。各配電用変圧器は、PF1で発電される315KWを有し、これは11kVフィーダに戻されるので、総発電量は7.8MVAになる。VAR管理がない場合の11kVフィーダの末端における電圧上昇は、11kVバス電圧の上方7%に近づいている。1000kVARの遅れVARを発生させる位置17において配電用変圧器のLV端子にdStatcomが追加されると、フィーダの末端における電圧は+4.9%に低下する。これは、11kV電圧調整限度内である。
【0308】
LV回路上のDT1およびDT25においてVAR補償が一切行われない電圧調整が図19に示されている。配電用変圧器1のLV回路電圧調整は、9.3%であった。これは、まさに許容電圧調整限度230VAC+10%内である。期待されたように、DT25における電圧調整は、許容限度230VAC+10%より大きく、15.8%であった。
【0309】
LV電圧を法定限度内に戻すには、LV回路に沿ったVAR管理が必要である。図20は、遅れVARSの25kVARが全てのLV回路に印加されたときの、またはF1に沿って配電用変圧器当たり50kVARが印加されたときの、DT1およびDT25におけるLV電圧調整を示す。各回路の末端のDT25における電圧調整は9.9%であった。DT1における電圧調整は5.9%のみであった。
【0310】
各回路上に25kVARを有するF1に沿った各配電用変圧器の力率は、0.964~0.962の範囲内であった。これら力率は、一般的なピーク負荷条件の場合の一方向グリッドで遭遇する力率と同様である。11kVフィーダF1の力率は0.923であった。
【0311】
図20は、各LV回路上でのVAR管理によってのみ、完全な11kVフィーダ上の全電圧調整を管理できることを実証している。一代替案は、11kVおよびLV回路上でVAR管理を組み合わせることであろう。図4に示されているように、11kV電圧および対応付けられたLV端子電圧は、配電用変圧器のLVバスを介して11kVフィーダ上でVAR管理によって直接管理可能である。以下の分析は、11kVおよびLVの両回路の電圧調整によってLV電圧調整を実現できることを示している。
【0312】
図21は、各LV回路上の20kVARおよびDT17のLV端子上の追加400kVARによるDT1およびDT25上の電圧調整を示す。DT17における400kVARは、全ての配電用変圧器上でLV端子電圧を下げる。配電用変圧器のLV端子電圧が低いほど、電圧調整を維持するためのVAR補償が低くなる。
【0313】
VAR管理効率
LV回路上のVAR管理のみで、または11kVおよびLVの両方のVAR管理の組み合わせによって、電圧調整を実現できる。どのVAR管理方法がより効率的であるかを判定することは、各選択肢に必要な総VARSを計算することであろう。図19および図20に示されているケースにおいて、法定限度を維持するために必要な総VARは、それぞれ1250kVAR(25×50kVAR)および1400kVAR(25×40+400)である。我々の一様な発電および一様なインピーダンスの単純なケースでは、LV回路VAR管理のみがより効率的である。
【0314】
DT毎に1LV回路を有する単一OH 11kV(MV)フィーダの電圧管理
100kVA超の定格を有する大半の大型配電用変圧器は、複数のLV回路を有することが一般的であるが、より小さい定格の配電用変圧器は、1つのLV回路が一般的である。あらゆる構成へのVAR管理の汎用的適用を評価するために、単一LV回路の状況が分析されている。以下の分析は、「最大」ケースのためのVAR管理の適用可能性を示している。このケースでは、単一LV回路が各315kVA配電用変圧器に接続され、住宅当たりの発電が31.5kWであり、配電用変圧器当たり合計315kWである。図22は、フィーダの先端でDT1に、およびフィーダの末端でDT25に、接続された回路に沿った電圧上昇を示す。DT1の場合の電圧上昇は+10%限度内である一方で、単一回路の末端のDT25における最大電圧は12.7%であり、+10%限度を超えている。
【0315】
図23は、各配電用変圧器上のH7における60kVARのVAR補償を有するDT1およびDT25に沿った電圧上昇を示す。LVの電圧調整は、各配電用変圧器に対する法定限度内に維持されている。11kVフィーダのための電圧調整は、各配電用変圧器上のH7における60kVARによって、2.4%である。
【0316】
単一回路の場合、LV電圧を法定限度内に維持するために、60kVARが必要とされる。これに比べ、配電用変圧器当たり2つのLV回路の場合は、各回路に25kVARが必要とされる。これらの結果は同様であるが、単一回路の場合、より厳しい電圧上昇を管理するには、追加の10kVARが必要とされる
【0317】
ホスティング容量
上記の結果から、最大DERホスティング容量は配電定格の100%より大きい。DER発電の100%をエクスポート可能であり、ローカル負荷のためのDER発電を最大100%にできるであろう。
【0318】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・電力調整装置によるVAR管理によって、DERホスティング容量は、配電用変圧器定格の100%より大きくなる。
・配電用変圧器の熱定格に等しいDER発電をエクスポートしながら、LV法定電圧限度を維持できる。
・11kVフィーダ電圧は、各配電用変圧器の全エクスポートの場合の±5%内である。
・11kVおよびLV電圧を調整するために、11kVおよびLVの両VAR管理を使用できる。
・LV VAR補償は、11kVおよびLV VAR管理の組み合わせに比べ、必要なVAR数が少ない。
・100%DERエクスポートのために、配電用変圧器PFは>0.95であり、11kV PFは>0.9である。
・上に提示した分析時、100%DERエクスポートのための遅れVAR要件は、配電用変圧器定格のkVA当たり200VAR未満である。
【0319】
最大負荷を有するフィーダのための電圧調整
回路の電圧を上げるために、電力調整装置はVARSをエクスポート可能である。フィーダが高負荷であるとき、電圧はフィーダに沿って低下する。一方向グリッドにおいて、配電用変圧器のタップ切換器は、最大負荷条件下で電圧を調整するために使用される。配電用変圧器のLV端子電圧は、最大負荷条件下の電圧低下を補償するために、フィーダの先端より高く設定される。電圧低下を調整するための配電用変圧器のタップ切換器に加え、フィーダに沿った電圧低下を制限し、力率を改善するために、シャントコンデンサが使用されている。
【0320】
7.8MW負荷を有する配電用変圧器当たり2回路の分析
図24は、総負荷7.8MW用のフィーダに沿った各配電用変圧器上の315kWの負荷による11kV電圧低下を示す。全ての配電用変圧器タップが公称値に設定されているので、フィーダにわたる電圧調整は10.3%である。2MVARの進みVARが配電用変圧器7および配電用変圧器17に配置されると、電圧調整は4.9%に向上する。
【0321】
図25には、157.5kWの負荷をそれぞれ有する2CCTの場合の、DT1およびDT25上のLV電圧調整が示されている。DT1は、法定限度下で許容された-6%内であるのに対し、DT25は、法定限度外の-13.7%の電圧低下を有する。
【0322】
図26は、進みVAR補償を有するDT1およびDT25のLV CCTに沿った電圧調整を示す。各回路上のH7における60kVARによって、電圧は-6%の法定限度内に維持されている。
【0323】
LV電圧低下を調整するための別の選択肢は、配電用変圧器のLV端子電圧を上昇させることであるので、LV回路電圧の調整のために必要なLV進みVAR補償がより少ない。図27は、DT17のLV端子における2M VAR進みによるDT1およびDT25上の電圧調整を示す。2MVARは、配電用変圧器のLV端子電圧を2~5%上昇させる。この結果、LV電圧低下を補償するための進みVARが減る。11kVフィーダの力率は0.98であり、配電用変圧器の力率は0.994~0.998の範囲内である。11kV電圧補償の有効性を実証するために、単一位置が使用されているが、いくつかの11kV注入サイトを11kVフィーダに沿って使用することもできる。実際には、既存の変圧器容量を使用するには、いくつかのC&Iサイトが適切であり得る。
【0324】
VAR効率
230VAC+10%-6%の規制限度を満たすために必要な総VARSは2とおりの方法で満たすことができる。
・LV回路のみの進みVARS(図25
・11kV電圧調整を改善するための進みVARとLV電圧調整を改善するためのLV進みVARSとの組み合わせ(図26
【0325】
LV進みVARSのためにのみ必要な総VARSは3000kVARであるのに対し、11kVとLV VARとの組み合わせのために必要な総VARSは2750kVARである。この組み合わせは、LV VARSのみより効率的である。
【0326】
7.8MW負荷を有する配電用変圧器当たりの1回路の分析
図28は、配電用変圧器当たり315kWの全負荷の場合の、配電用変圧器当たり1回路の電圧調整を示す。負荷は、各31.5kWの10の負荷にわたって等しく分散されている。フィーダに沿った厳しい11KVの電圧低下の故に、LV進みVAR解決策のみはあり得ないであろう。LV回路のために受容可能な進みVAR解決策を得るために、11kV電圧低下を-6%未満に改善する必要があった。配電用変圧器7LVに1MVAR、配電用変圧器17LVに2MVAR、および各LV回路上のH7に90kVARとする1つの解決策が図27に示されている。
【0327】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・電力調整装置によるVAR管理によって、DERのホスティング容量は配電用変圧器定格の100%より大きくなる。
・配電用変圧器の熱定格に等しいDER発電をエクスポートしながら、LV法定電圧限度を維持できる。
・各配電用変圧器の全エクスポートの場合、11kVフィーダ電圧は±5%以内である。
・11kVおよびLV電圧を調整するために、11kVおよびLVの両VAR管理を使用できる。
・LV VAR補償のみであれば、11kVおよびLV VAR管理の組み合わせより少ないVAR数で済む。
・100%DERエクスポートのために、配電用変圧器PFは>0.95であり、11kV PFは>0.9である。
・上に示した分析時、100%DERエクスポートのための遅れVAR要件は、配電用変圧器定格のkVA当たり200VAR未満である。
【0328】
二方向グリッドの説明
上記の分析から、配電用変圧器当たり2LV回路を有し、100%DER発電をエクスポートする11kVフィーダは、法定電圧限度を維持するために、1250kVARを必要とする。これに対し、発電を行わず、総配電用変圧器定格に等しい全負荷を有する同じフィーダは、法定電圧限度を維持するために、2750kVARを必要とする。
【0329】
二方向グリッドのための電圧低下の管理に必要なエクスポートVARSは、発電からの電圧上昇を管理するために必要な吸い込みVARよりはるかに多い。主な理由は、配電用変圧器インピーダンスおよびラインインピーダンスが圧倒的に誘導性であるので、これを事前に打ち消さなければ、進みVARが電圧を調整できない。二方向グリッドの場合、電圧調整に必要なVAR数は、DER発電が利用不能であり、VARのみでは電圧上昇を制限できないとき、電圧低下によって増加する。
【0330】
上記の全ての分析において、全ての配電用変圧器タップ設定は、ニュートラルタップ上であり、変圧器は11000/415の比を有することが想定された。
【0331】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・電力調整装置によるVAR管理は、全ての発電および負荷条件下で、設備の熱定格まで、二方向配電網上の法定電圧限度を管理できる。
・電力調整装置によるVAR管理によって、DERホスティング容量を配電用変圧器の熱定格の100%まで増やすことができる。
・配電用変圧器の熱定格までの発電および電力エクスポート時、法定電圧限度を維持できる。
・フィーダ/回路全体の法定電圧限度を維持するために、最適位置に配置されれば、単一の電力調整装置で済む。
・電力調整装置によるVAR管理は、全負荷時、法定電圧限度を維持しながら、配電用変圧器の全定格まで11kVおよびLVの両網の電圧を調整できる。VAR管理は、電圧を維持するための伝統的な代替策より経済的である。
【0332】
230VAC±6%規格への移行
上記段落においては、VAR管理は、電力潮流が何れの方向であっても、配電網の電圧を調整できることを示した。使用された規格は、230VAC+10%-6%の暫定的なオーストリア規格であった。このセクションにおいては、国際規格である230VAC±6%に電圧を調整できることを示す。発電電圧の上昇調整のみが分析されている。その理由は、上記セクション7における最大負荷の場合の結果が同じになる、すなわち230VAC-6%になる、ことによる。
【0333】
図29は、25の配電用変圧器の各々において315kWがエクスポートされる11kVフィーダの先端および末端における電圧調整を示す。最大発電条件下において、LV回路毎に230VAC±6%への電圧調整を維持するには、遅れVARの45kVARが必要とされた。配電用変圧器毎に計90kVARが必要とされた。
【0334】
図30は、交互VAR管理構成を示す。この構成では、電力調整装置の遅れVARの600kVARがDT17の低電圧端子において注入される。これは、11kVフィーダに沿った各配電用変圧器においてLV端子電圧を低下させ、LV回路に沿ったVAR要件を、以前の45kVARではなく、35kVARに低下させた。この構成は、各LV回路に沿って配置されたとき、総11kVフィーダVAR要件を、2250kVARのみであったのに比べ、2350kVARに増加させた。
【0335】
最大負荷電圧調整を管理するには、フィーダに沿って電圧を調節するために、少なくとも1つの11kV進みVARの注入が必要であった。11kV VARの注入が必要であるので、この場合、11kVおよびLV VARの注入の組み合わせが最も効率的な結果をもたらすであろう。
【0336】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・電力調整装置によるVAR管理は、全ての発電および負荷条件下において、設備の熱定格まで、二方向配電網上で法定電圧を国際規格である230VAC±6%に維持できる。
【0337】
電圧変動の制限
DNSPらは、断続的DERからの電圧変動を当然心配している。通常、断続的な雲は、数秒/分にわたるソーラー出力の緩慢な減衰の故に、問題ではない。電圧変動の最悪ケースは、上限または下限電圧に達したときに、インバータが瞬時シャットダウンする場合である。この状況は、いくつかのインバータが一緒にシャットダウンすると悪化し得る。発電の急速減少は、LVフィーダ上の全ての需要家に対して電圧変動を引き起こし得る。AS4777.2:2015準拠のスマートインバータは、電圧変動を鈍化させるランピングを適用している。電力調整装置は、電圧上昇/低下を改善してPstおよびPltの両測定値を準拠内に維持するために、VAR出力を瞬時に調整できるであろう。
【0338】
電力調整装置は、最初にインバータのシャットダウンを防止する法定電圧限度を維持することによって、および電圧上昇/低下を感知することによって、および補償すべきVARを瞬時に調整することによって、過度な電圧変動を防止できる。
【0339】
DNSPおよび需要家にとっての更なる利点として、電力調整装置は平常の瞬時電圧低下/電圧上昇も補償する。
【0340】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・電圧変動の規制限度を維持するために、電力調整装置はLVおよび11kVの両フィーダにおける電圧変動を改善できる。
【0341】
高調波の制限
通常、AS4777.2:2015準拠のソーラーインバータは、低い高調波出力を有し、通常、DNSPらにとっては問題ではない。局所的共振が問題を引き起こすケースが少数存在し得る。著しい高調波は、ソーラーインバータ設備の未検出障害によって引き起こされ得る。バックグラウンド高調波問題は、網上の他の設備によって引き起こされる可能性が高い。
【0342】
ローカル網上の何れの高調波も24kHzまで減衰させるために、電力調整装置をプログラム化できる。電圧の高調波成分を測定することもできる。これは、懸案になっている高調波問題の何らかの通知を与えるであろう。
【0343】
電力調整装置のシミュレーション
50Hz波形を歪ませるために、電力調整装置は、50Hz基本波ばかりでなく一部の5次および7次高調波も発生させるように電圧モードで構成された。電力調整装置は、電流モードで構成された別の電力調整装置に直接接続された。電流モードの電力調整装置は、ファームウェアを有する。このファームウェアは、選択された各高調波に対して高調波電流を計算し、PIコントローラによって打ち消し用高調波電流をリアルタイムで変化させる。修正時間間隔は、20ミリ秒または50Hz基本波の1サイクルである。以下の全ての測定は、電流モードの電力調整装置の端子で行われた。
【0344】
図31は、5次高調波の14Vrmsおよび7次高調波の6Vrmsを有する電圧源電力調整装置の出力を示す。平坦な波形は、複数の奇数調波を有する一般的な50Hz波形である。
【0345】
図32は、図31に示されている5次および7次高調波を打ち消すために電流モードの電力調整装置をオンにした時の電圧波形の結果を示す。5次および7次高調波は、ニュートラルにシャントされており、50Hz230Vrmsのみが残っている。
【0346】
電力調整装置は、LV網上に配置された場合、何れの奇数次または偶数次高調波も24kHzまで吸い込むことができる。電力調整装置は、LVフィーダ全体のあらゆる高調波を除去する。その理由は、配電用変圧器インピーダンスに比べ、最も低いインピーダンスになるからである。
【0347】
要約すると、以下の点に注目されたい。
・本電力調整装置は、LVフィーダ全体または需要家設備からのあらゆる高調波を24kHzまで吸い込むことができる。
【0348】
配電用変圧器タップの交換戦略
一方向網においては、ピーク需要時の電圧低下を補償するために、固定された配電用変圧器タップ切換器設定が設計されている。通常、配電用変圧器タップ切換器の設定は、フィーダの最初の3分の1で配電用変圧器LV端子電圧を下げ、中間の3分の1で公称タップにし、最後の3分の1でLV端子電圧を上昇させる。一方向網の場合でも、この一般的なタップ設定は理想的ではない。11kVフィーダを再構成するときは、タップ設定をかなりの費用をかけて必ず切り換える必要がある。
【0349】
LV網上でのDER発電の場合、配電用変圧器タップの一般的な設定は、電圧調整問題を悪化させるが、同時に、非発電時間に電圧を支持するために必要である。したがって、将来のDER網にとっては、固定された配電用変圧器タップ切換器の使用は、最早有望なエンジニアリング解ではない。
【0350】
一代替案は、負荷時タップ切換器付きの配電用変圧器を有することであろう。この解決策は提案されているが、経済的ではないことが分かっている。電力調整装置によるVAR管理システムは、最新技術を備えた最も経済的且つ実用的な解決策である。既存の一方向網を電力調整装置の二方向網に変換する必要がある場合、理想的な配電用変圧器タップ設定は、ニュートラルタップになるであろう。この白書には実証されていないが、電力調整装置の各VARのサイズを変えることによって、既存の一方向網配電用変圧器タップ設定に対応可能である。
【0351】
新しい二方向電力網設計アプローチは、タップ切換設備付きの配電用変圧器を必要としないであろう。
【0352】
上記は、接続されている全ての需要家間でDER(Distributed Energy Resource)発電の共有を可能にするために、伝統的な一方向配電グリッドを二方向配電グリッドに変換する方法を実証している。それは、既存のグリッド設備の熱定格に匹敵するように、DERホスティング容量の増加を可能にする電力調整装置技術を概説している。LV配電網上のDERの設置を制限する技術的問題がいくつか存在する。それらは、以下の問題である。
・電圧の調整
・電圧の変動
・高調波の発生
【0353】
電圧の調整
電圧調整は、今日において、DERホスティング容量を制限する恐らく最も大きな問題である。網容量は、通常、熱容量制限によってより、電圧調整問題によって制限されることが多い。一方向電力潮流用に設計された網においては、DER発電は、接続点において網電圧を上昇させ、最終的に定常電圧を上昇させて法定電圧限度を超えさせることになる。電圧調整に対するDNSPらの一般的な対応は、DERから網へのエクスポートを制限するか、または配電網への設備の費用がかかるアップグレードを必要とすることである。DERエクスポートに対する制限は、再生可能エネルギー市場の発展を制限し、炭素排出量の低減を制限する。
【0354】
電圧の変動
再生可能エネルギーの断続性は、網上に電圧変動を引き起こし得るので、LVフィーダ上の全ての需要家に影響を及ぼし得る。雲量がソーラー発電設備の上方を移動するに伴い、出力は、雲が何れかの日陰を引き起こす前の高レベルから、太陽電池が完全な日陰に入っているときの低レベル、またはゼロに近いレベル、に移行し、その後、雲が通り過ぎると、高レベルに戻る。ソーラー出力のこのような変化は、網電圧に直接影響し、日陰の持続中、一時的な電圧低下をもたらす。これが著しく大きいと、点灯レベルの変動を引き起こし得るので、住宅、倉庫、および事務所にいる人々を苛立たせ得る。
【0355】
高調波
ほぼ全てのDER発電機は、パワーエレクトロニクスインバータを使用する。パワーエレクトロニクスインバータは、適正に設計されていないと、高調波を発生させ得る。電圧変動および高調波は、電圧調整問題には二次的であるが、DERが主流技術になり得る前は、対応が必要な技術的問題である。
【0356】
過去80年間、全ての配電グリッドは、発電が一端にあり、負荷が他端にある一方向網として設計されていた。ゾーン変電所および送電用変電所における変圧器タップ切換器は、網電圧を法定限度内に維持するために使用されてきた。DERの設置によって、今やグリッドの両端で発電が行われる。これは、伝統的な一方向グリッドとは両立不可能である。将来の配電網は、DER発電に対応するために「真の」二方向グリッドを有するべきである。
【0357】
この白書は、あらゆる発電および負荷条件に対して、電力調整技術が伝統的な一方向グリッドを真の二方向グリッドに如何にできるかを示している。DER発電は、他の11kVフィーダに供給するために、配電用変圧器を介して11kVフィーダに沿って逆エクスポート可能である、またはゾーン変電所変圧器を介して下位送電網に逆エクスポート可能である。電力調整技術はVAR管理を使用して11kVおよびLV網上の電圧を調整し、ホスティング容量を他の需要家のために100%エクスポートに、およびローカル需要家の使用のために100%に、増加させる(200%)。電力調整システムは、LVまたは11kVフィーダ/回路上のあらゆる発電および負荷状態に対して、1箇所から電圧を調整できる。
【0358】
電力調整システムは、電圧変動および高調波を減らすこともできる。これは、配電網上のDERホスティング容量を増加させるための問題のすべてを解決する。
【0359】
本願明細書および添付の特許請求の範囲の全体にわたって、文脈が別様に要求していない限り、用語「を備える(comprise)」およびその変化形「を備える(comprises)」または「を備えた(comprising)」などは、記載の整数または整数群またはステップ群を含むことを示唆し、何れか他の整数または整数群の排除を示唆していないことを理解されたい。本願明細書で使用されている用語「約(approximately)」は、特に別様に明記されていない限り、±20%を意味する。
【0360】
本願明細書および添付の特許請求の範囲に使用されている単数形「a」、「an」、および「the」は、文中に別様に明確に規定されていない限り、複数形を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「一支持体(a support)」への言及は、複数の支持体を含む。本願明細書および添付の特許請求の範囲においては、反対の意図が明らかでない限り、以下の意味を持つと規定されるいくつかの用語に言及する。
【0361】
上記は、当業者には明らかなように、本発明および本発明の、そのような、および他の、全ての修正例および変形例の説明のための例として提供されており、本願明細書に記載の本発明の広範な範囲に含まれると見做されることを勿論理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【国際調査報告】