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特表2022-548550ワット式四節リンクを使用するサスペンションを備えた車両
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】ワット式四節リンクを使用するサスペンションを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/04 20060101AFI20221114BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20221114BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B62K25/04
B62K5/10
B62K5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515548
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 IB2020058233
(87)【国際公開番号】W WO2021048715
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019000015905
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ラッファエッリ,アンドレーア
【テーマコード(参考)】
3D011
3D014
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AD03
3D014DD03
3D014DE01
3D014DE33
(57)【要約】
本発明に係る鞍乗り型車両(1;107;207)は、後側駆動輪(5;105;205)及び前側操舵輪(7;107;207)を備えている。前側操舵輪(7;107;207X,207Y)は、操舵軸(A-A)を中心に回転運動するように設けられた回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に接続されている。回転可能なアーム(9;109;209)には、ショックアブソーバ(22;122)を備えたサスペンション(17;117;217X,217Y)を介して車輪支持体(37;137)が接続されている。サスペンション(17;117)は、ワット式四節リンクを備えている。
【選択図】 図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの後側駆動輪(5;105;205)と、少なくとも第一前側操舵輪(7;107;207X,207Y)とを備え、前記前側駆動輪が、操舵軸線(A-A)を中心に回転運動を行う回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に接続されている鞍乗り型車両(1;107;207)であって、
ショックアブソーバ(22;122)を備えたサスペンション(17;117;217X,217Y)を介して、前記回転可能なアーム(9;109;209Y,209Y)に車輪支持体(37;137)が接続され、前記車輪支持体(37;137)が、前側操舵輪(7;107;207X,207Y)を支持し、かつ、前記前側操舵輪(7;107;207X,207Y)の回転軸線(B-B)を画定する車両において、
前記サスペンション(17;117)が、ワット式四節リンクを備えている
ことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記ワット式四節リンクが、
前記回転可能なアーム(9;109)に第一ヒンジ(31A;131A)でヒンジ結合され、かつ該ワット式四節リンクの連結ロッド(35;135)に第二ヒンジ(31B;131B)でヒンジ結合された第一クランク(31;131)と、
前記回転可能なアーム(9;109)に第一ヒンジ(33A;133A)でヒンジ結合され、かつ前記連結ロッド(35;135)に第二ヒンジ(33B;133B)でヒンジ結合された第二クランク(33;133)と
を備え、
車輪支持体(37;137)が、前側操舵輪(7;107)の回転軸(B-B)が、第一クランク(31;131)の第二ヒンジ(31B;131B)及び第二クランク(33;133)の第二ヒンジ(33B;133B)からほぼ等距離となるように連結ロッド(35;135)の拘束点で拘束されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車輪支持体(37)が、前記前側操舵輪(7)の回転軸(B-B)が、前記第一クランク(31)及び第二クランク(33)の第一ヒンジ(31A,33A)及び第二ヒンジ(31B,33B)の軸と平行になるように前記連結ロッド(35)に拘束されている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
車輪支持体(37)が、連結ロッド(35)に堅固に接続され、かつ、前側操舵輪(7)を支持するベアリング用のハウジングを形成している
ことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記第一クランク(31)の第一ヒンジ(31A)及び第二ヒンジ(31B)、並びに前記第二クランク(33)の第一ヒンジ(33A)及び第二ヒンジ(33B)が、前記前側操舵輪(7)の回転軸(B-B)に平行な軸を有する
ことを特徴とする請求項2~4の何れか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記第一クランク(31)の第一ヒンジ(31A)及び前記第二クランク(33)の第二ヒンジ(33B)が、前記前側操舵輪(7)の回転軸(B-B)を含み、かつ、前記回転可能なアーム(9)に対する前記ショックアブソーバ(22)の拘束点(22A)を通過する平面の第一側にあり、
第一クランク(31)の第二ヒンジ(31B)及び第二クランク(33)の第一ヒンジ(33A)が、前記平面の第二側にある
ことを特徴とする請求項2~5の何れか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記車両(1)の前進方向に関して
前記第一クランク(31)の第一ヒンジ(31A)及び前記第二クランク(33)の第二ヒンジ(33B)が後方位置にあり、前記第一クランク(31)の第二ヒンジ(31B)及び前記第二クランク(33)の第一ヒンジ(33A)が前方位置にあり、又は、
前記第一クランク(31)の第一ヒンジ(31A)及び前記第二クランク(33)の第二ヒンジ(33B)が後方位置にあり、前記第一クランク(31)の第二ヒンジ(31B)及び前記第二クランク(33)の第一ヒンジ(33A)が後方位置に
あることを特徴とする請求項2~6の何れか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記第一クランク(131)の第一ヒンジ(131A)及び第二ヒンジ(131B)、並びに前記第二クランク(133)の第一ヒンジ(133A)及び第二ヒンジ(133B)が、互いに実質的に平行で、かつ、前記前側操舵輪(107)の回転軸(B-B)を含む平面に対して直交する軸を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項9】
前記第一クランク(131)の第一ヒンジ(131A)及び前記第二クランク(133)の第二ヒンジ(133B)が、前記前側操舵輪(107)の回転軸(B-B)と直交し、かつ、前記ショックアブソーバ(122)の拘束点(122A)を介して前記回転可能なアーム(109)まで通過する平面の第一側にあり、
前記第一クランク(133)の第二ヒンジ(131B)及び前記第二クランク(133)の第一ヒンジ(133A)が、前記平面の第二側にある
ことを特徴とする請求項8に記載の車両。
【請求項10】
車輪支持体(137)が、第一クランク(131)及び第二クランク(133)の第一ヒンジ(131A、133A)及び第二ヒンジ(131B、133B)の軸に実質的に平行な軸(C-C)周りに連結ロッド(135)にヒンジ結合されている
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の車両。
【請求項11】
車輪(107)があり、車輪支持体(137)及び連結ロッド(135)間のヒンジ軸(C-C)を通る平面と並行な面に対するワット式四節リンクのヒンジの配置が、
第一クランク(131)の第一ヒンジ(131A)及び第二クランク(133)の第二ヒンジ(133B)が、前記平面の一方側にあり、第一クランク(131)の第二ヒンジ(131B)及び第二クランク(133)の第一ヒンジ(133A)が、前記平面の他方側にあるようにされている
ことを特徴とする請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記車輪支持体(137)が、前記前側操舵輪(107)の回転軸(B-B)が、前記車輪支持体(137)が前記連結ロッド(135)にヒンジ結合される軸と直交するような位置で前記前側操舵輪(107)を支持する
ことを特徴とする請求項10又は11記載の車両。
【請求項13】
前側操舵輪(7;107;207X,207Y)と一体のディスク(23;123)とキャリパ(25;125)とを備えたディスクブレーキを有し、
前記キャリパが車輪支持体(37;137)に堅固に接続されている
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の車両。
【請求項14】
前側操舵輪(7;107;207X,207Y)と一体のディスク(23;123)とキャリパ(25;125)とを備えたディスクブレーキを有し、
前記連結ロッド(35;135)及び車輪支持体(37;137)に対して空転的に設けられた支持部材に、前記キャリパが堅固に接続されている
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の車両。
【請求項15】
ショックアブソーバ(22;122)が、
一方では回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に連結され、
他方ではワット式四節リンクの連結ロッド(35;135)に堅固に連結されている
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の車両。
【請求項16】
ショックアブソーバ(22;122)が、一方側で回転可能なアーム(9;109;209X,209Y)に接続され、他方側で、車輪支持体(37,137)に堅固に連結された点に接続される
ことを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の車両。
【請求項17】
ショックアブソーバ(22;122)が、一方側で回転可能なアーム(9;109;209X、209Y)に接続され、他方側で、車輪支持体(37;137)に回転可能に支持された前側操舵輪(7;107;207X、207Y)の軸に接続されている
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の車両。
【請求項18】
ショックアブソーバ(22;122)が、一方側で、回転可能なアーム(9;109;209X、209Y)に接続され、他方側で、ワット式四節リンクの連結ロッド(35;135)に接続されている
ことを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の車両。
【請求項19】
第二前側操舵輪(207X,207Y)を備え、
前記第二前側操舵輪(207X,207Y)が、第二操舵軸(A-A)を中心とする回転運動を備えた第二の回転可能なアーム(209X、209Y)に接続され、かつ、第二サスペンション(217X、217Y)を介在して、第二前側操舵輪の車輪支持体に接続され、
前記第二サスペンションが、車両の中心面に対して、第一前側操舵輪のサスペンションのワット式四節リンクと実質的に対称的なワット式四節リンクと、ショックアブソーバとを備え、
第一前側操舵輪(207X)及び第二前側操舵輪(207Y)が、フレーム(203)にヒンジ結合されたローリング式四節リンク(220)を用いて車両(201)のフレーム(203)に接続されている
ことを特徴とする請求項1~18の何れか一項に記載の車両。
【請求項20】
第一前側操舵輪(207X)が接続される第一の回転可能なアーム(209X)、及び第二前側操舵輪(207Y)が接続される第二の回転可能なアーム(209Y)が、各々、右垂直部及び左垂直部(226X,226Y)に回転可能に支持され、
前記垂直部(226X,226Y)、車両の中心面に対して左右方向に延び、垂直部(226X,226Y)にヒンジ結合される第一クロス部材(222)及び第二クロス部材(224)によって相互に連結されている
ことを特徴とする請求項19に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪、三輪又は四輪を有する鞍乗り型車両の改良に関する。より詳細には、本発明は、二輪若しくは三輪のオートバイ、二輪若しくは三輪のスクータ、又はクワッドバイク等のように、一つ又は二つの後側駆動輪と一つ又は二つの前側操舵輪とを有する傾斜式鞍乗り型車両のフロントサスペンションの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪、三輪又は四輪の鞍乗り型車両は、典型的には、そのリアサスペンションによって車両のフレームに接続された1又は二つの後側駆動輪と、ハンドルバーに接続され、それぞれのフロントサスペンションを備えた1又は二つの前側操舵輪とを有する。サスペンションは、車両のばね上質量をばね下質量に接続し、ばね上質量とばね下質量との間の相対的な動きを可能にする。サスペンションは、通常、衝撃吸収サスペンションであり、それぞれのショックアブソーバを備え、順に、弾性部材、典型的にはスプリング、及びブレーキ又はダンパを順に備えている。サスペンションは、さらに、地面の粗さ又は凹凸によって車輪に伝達される衝撃が車両のフレームに伝達されないように、又は減衰された形で伝達されるように、ばね上質量とばね下質量との間で相対的に移動可能な状態で、ばね上質量をばね下質量に接続する機械部材を備えている。
【0003】
オートバイ、スクータ、クワッドバイク等の鞍乗り型車両では、前側操舵輪のサスペンションにより、一方ではハンドルバーと操舵柱との間、他方では前側操舵輪又は車輪との間の相対移動を可能にする。鞍乗り型車両の前側操舵輪の幾つかのサスペンションには、前記相対移動を可能にするために、相互に内側でスライドする部材を有する入れ子式フォークを用いたものがある。入れ子式フォークは、相互にスライドする部材を有する円筒対遇を使用するものがあり、これらのフォークには、この種の相対運動特有の問題点がある。一方、他の種類のサスペンションでは、相互に回転する部材を有する回転対偶を使用するものがある。この場合、典型的な四節リンクは、ばね上質量とばね下質量との間に介在され、ばね上質量(車両のフレーム及びそれに接続された部材)と、ばね下質量(車輪及びブレーキ)との間のばね運動を可能にするように変形される。回転対偶は、四節リンクの構成要素を互いに結合するヒンジで表される。
【0004】
ばね上質量とばね下質量との間の接続用の回転対偶を有する運動学的機構を使用するサスペンションは、直進対偶及び円筒対偶に対する回転対偶の利点を有するが、前側操舵輪の軸の直線的な移動を可能にしない。実際、ばね運動において、例えば地面の凹凸のためにサスペンションが圧縮及び伸長する時、又はフレームに発生し、サスペンションを介して車輪に伝達される動的力による制動時に、車輪の軸は、結果として地面上の車輪の横方向の摩擦運動を伴う非直線運動を行い、これは例えば跳ね返りの問題を引き起こすことがある。
【0005】
従って、二つ以上の車輪を有する鞍乗り型車両の前側操舵輪用サスペンションであって、伸縮フォークサスペンションの利点と、回転対偶を有する運動学的機構を用いたサスペンションの利点とを組み合わせることができるものを提供することが有益である。
【発明の概要】
【0006】
一態様によれば、本明細書で開示される鞍乗り型車両は、少なくとも一つの後側駆動輪と、少なくとも一つの第一前側操舵輪とを備え、前記第一前側操舵輪は、操舵軸を中心とする回転運動を有する回転可能なアームに接続されている。車輪支持体は、サスペンションを介して回転可能なアームに接続されており、前記サスペンションは、車輪支持体及びそれに設けられた車輪を、回転可能なアームに接続する。サスペンションは、ショックアブソーバを有する。車輪支持体は、前側操舵輪を支持し、前記車輪の回転軸を画定する。例えば、車輪搭載軸が車輪支持体に固定され得るか、又は、車輪支持体が車輪軸を支持する支持部材を有し得る。特徴的には、サスペンションは、ワット機構としても公知であるワット式四節リンクを備えている。
【0007】
有利な実施例では、車輪支持体は、車輪の回転軸が、第一クランク第一ヒンジ及び第二ヒンジの軸、並びに第二クランクの第一ヒンジ及び第二ヒンジの軸と平行になるように連結ロッドに拘束される。
【0008】
この場合、ワット式四節リンクの構成要素は、第一操舵輪の回転軸に直交する各面上を移動する。これらの要素を一次元の要素として図式化すると、それらは、前側操舵輪の回転軸に直交する平面上に存在することになる。
【0009】
この場合、車輪支持体は、連結ロッドに堅固に接続され、かつ、前側操舵輪の支持ベアリング用のハウジングを形成し得る。
【0010】
サスペンションの特にコンパクトな構成を得るために、幾つかの有利な実施形態では、第一クランクの第一ヒンジ及び第二クランクの第二ヒンジは、前側操舵輪の回転軸を含み、ショックアブソーバの拘束点を通過して回転可能なアームに至る平面の一方側に設けられている。その逆に、第一クランクの第二ヒンジと第二クランクの第一ヒンジは、前記平面の他方側にある。実際には、上記した平面は、空間を、第一クランクの第一ヒンジ及び第二クランクの第二ヒンジを含む第一半空間と、第一クランクの第二ヒンジ及び第二クランクの第一ヒンジとを含む第二半空間とに分割している。
【0011】
実際には、車両の前進方向に関して、第一クランクの第一ヒンジ及び第二クランクの第二ヒンジは後方位置にあるのに対して、第一クランクの第二ヒンジ及び第二クランクの第一ヒンジは前方位置にある。
【0012】
代わりに、車両の前進方向に関して、第一クランクの第一ヒンジ及び第二クランクの第二ヒンジを前方位置に配置し、第一クランクの第二ヒンジ及び第二クランクの第一ヒンジを後方位置に配置することもできる。
【0013】
他の実施形態では、第一クランクの第一ヒンジ及び第二ヒンジ、並びに第二クランクの第一ヒンジ及び第二ヒンジは、互いに実質的に平行で、かつ、前側操舵輪の回転軸を含む平面に対して直交する軸を有している。実際には、この場合のワット式四節リンクの各要素は、前側操舵輪の回転軸に平行なそれぞれの平面上を移動し、ワット式四節リンクの構成要素の移動平面は互いに平行である。
【0014】
ワット式四節リンクの特にコンパクトな構成を得るために、幾つかの実施形態では、第一クランクの第一ヒンジ及び第二クランクの第二ヒンジは、前側操舵輪の回転軸に直交しショックアブソーバの拘束点を通過して回転可能なアームに至る平面の一方側に配置され、第一クランクの第二ヒンジ及び第二クランクの第一ヒンジは前記平面の他方側に配置され得る。
【0015】
実際には、第一クランクの第一ヒンジ及び第二クランクの第二ヒンジは、前側操舵輪に対してより近いのに対して、第一クランクの第二ヒンジ及び第二クランクの第一ヒンジは、前側操舵輪に対してより遠い距離にある。
【0016】
いくつかの実施形態では、車輪支持体は、第一クランク及び第二クランクの第一ヒンジ及び第二ヒンジの軸に実質的に平行な軸を中心として接続ロッドにヒンジ結合される。車輪が位置し、かつ、車輪支持体と連結ロッドとの間のヒンジ軸を通過する平面に対する4節リンクのヒンジの配置は、第一クランクの第一ヒンジ及び第二クランクの第二ヒンジを、この平面の一方側、例えば、この平面によって画定される前側操舵輪が位置する半空間に配置し、逆に、第一クランクの第二ヒンジ及び第二クランクの第一ヒンジを、前記平面の他方側、即ち、即ち、前記平面によって画定される前側操舵輪を含まない半空間内に配置するようにされ得る。
【0017】
実用的な実施形態では、車輪支持体は、車輪の回転軸が、車輪支持体を接続ロッドにヒンジ結合する軸に直交するような位置で車輪を支持する。
【0018】
車両は、前側操舵輪のために、前側操舵輪と一体のディスク及びキャリパを備えるディスクブレーキを有し得、前記キャリパは、車輪支持体に堅固に接続されている。他の実施例では、キャリパは、連結ロッド及び車輪支持体に対して空転的に設けられる支持部材に堅固に接続されている。
【0019】
他の態様によれば、少なくとも一つの後側駆動輪と、少なくとも一つの第一前側操舵輪とを備え、前側操舵輪が、サスペンションによって、操舵軸を中心とした回転運動を備える回転可能なアームに接続された鞍乗り型車両であって、
前側操舵輪を支持し、かつ、前記車輪の回転軸を規定する車輪支持体が、サスペンションを介在させて回転可能なアームに接続され、
前記サスペンションが、第一端部で回転可能なアームにヒンジ結合され、かつ、第二端部で連結ロッドにヒンジ結合された第一クランクと、第一端部で回転可能なアームにヒンジ結合され、第二端部で連結ロッドにヒンジ結合された第二クランクとを備えた四節リンクを有し、
前記車輪支持体が、前記連結ロッドの拘束点に拘束され、前記四節リンクが、前記サスペンションのばね運動の結果としての前記四節リンクの変形中に、前記拘束点がほぼ直線的な軌跡に沿って移動するように構成されている
鞍乗り型車両が提供される。
本発明は、本発明の実施形態の非限定的な実施例を示す説明及び添付の図面に従うことによって、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施例による前側サスペンションを備えた二輪車両の部品を取り除いた軸方向図である。
図2図1の車両の正面図である。
図3図2のIII-IIIに従った側面図である。
図4A図1図3のサスペンションが伸長した状態の拡大側面図である。
図4B図1図3のサスペンションが圧縮した状態の拡大側面図である。
図4C図1、2、3、4A及び4Bのサスペンションの分解図である。
図4D】三つの異なる位置におけるサスペンションの概略図である。
図5図4AのV-V線に従った正面図である。
図6図4A図4B及び図5のサスペンションの不等角投影図である。
図7】前側サスペンションの別の実施例の図4Aに類似する側面図である。
図8図7nサスペンションの不等角投影図である。
図9】前側サスペンションのさらに別の実施例の図7と同様の側面図である。
図10図9の不等角投影図である。
図11】前側サスペンションのさらに別の実施例の図9と同様の側面図である。
図12図11のサスペンションの不等角投影図である。
図13】前側サスペンションのさらに別の実施例の図11と同様の側面図である。
図14図13のサスペンションの不等角投影図である。
図15】前側サスペンションのさらに別の実施例の側面図である。
図16】本明細書による前側サスペンションのさらに別の実施例の側面図である。
図17】ブレーキキャリパがワット式四節リンクに対して空転するよう取り付けられた前側サスペンションの実施例の側面図である。
図18図17のサスペンションの不等角投影図である。
図19図16及び図17のサスペンションの分解図である。
図20】本発明によるサスペンションをスクータ型車両に適用した状態を示す図である。
図21】ワット式四節リンクの構成要素の回転軸線が前側操舵輪の回転軸線に直交する、本発明によるサスペンションの不等角投影図である。
図22図21のサスペンションの不等角投影図である。
図23図22のXXIII-XXIII線に従った側面図である。
図24】サスペンションを前側操舵輪に接続する回転可能なアームを備えていない図21、22及び23のサスペンションを示す図である。
図25】ワット式四節リンクを取り除いた図21、22、23及び24のサスペンションを示す図である。
図26】二つの前側操舵輪用のダブルワット式四節リンクサスペンションを有する三輪車両の不等角投影図である。
図27図26の車両の正面図である。
図28図27のXXVIII-XXVIII線に従った側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図2図3図4A図4B図4C図4D図5及び図6は、第一実施例に係るワット四節リンク式サスペンション、即ちワット機構を備える二輪車両を示す図である。
【0022】
図1図2及び図3には、車両1が概略的に図示されている。これらの図面において、サスペンションの構造及び動作を理解するのに必要でない車両の部品は、取り除かれ、又は省略されている。車両1は、フレーム3、後側駆動輪5、及び前側操舵輪7を備えている。車輪5及び7は、サスペンションによってフレーム3に接続されている。駆動輪5をフレームに接続する後側サスペンションは、図示されておらず、任意の公知の方法で構成され得る。以下、前側操舵輪7をフレーム3に接続する前側サスペンションについて詳細に説明する。
【0023】
前側操舵輪7は、回転可能なアーム9に接続されている。前記アーム9は、操舵管13に回転可能に収容された操舵柱11に堅固に連結されており、ハンドルバー15によって操舵軸線A-Aを中心に回転するように操縦される。軸線A-Aを中心とする回転可能なアーム9の回転により車両1を操舵することが可能になる。
【0024】
前側操舵輪7は、全体を符号17で示したサスペンションによって回転可能なアーム9に接続されており、サスペンション17により、操舵管13、操舵柱11、ハンドルバー15、及び回転可能なアーム9を含むフレーム3が、前側操舵輪7に対してバネ運動することが可能になる。サスペンション17は、ショックアブソーバ式サスペンションであり、前側操舵輪7と回転可能なアーム9とを接続するための運動機構と、ショックアブソーバとを備えている。ショックアブソーバは、弾性要素及びブレーキ又はダンパを順に備えている。図示された実施例では、ショックアブソーバは符号22で、弾性要素は符号21で、ブレーキ又はダンパは符号19で示されている。ブレーキ又はダンパ19は、コイルばねの形態であり、弾性要素21の内部に同軸に収容されている。
【0025】
前側操舵輪7は、その回転軸線B-Bを中心に回転するように、サスペンション17によって支持されている。
【0026】
符号23は、車両1の前側ブレーキのディスクを示している。ブレーキ23は、後述する方法でサスペンション17によって支持され得るキャリパ25をさらに備えている。
【0027】
サスペンション17は、回転対偶によって互いに接続された構成要素、即ち、各ヒンジ軸線を中心とする回転運動によって表される一つの自由度に従って互いに対して移動する構成要素を備えている。従って、サスペンションは、相互の並進運動を備える要素を有さない。
【0028】
有利には、前側操舵輪7を回転可能なアーム9に接続する回転対偶を有する運動機構は、ワット式四節リンク、即ちワット機構を有し得る。ワット式四節リンクは、回転可能なアーム9に加えて、第一クランク31及び第二クランク33を有する。二つのクランク31及び33は、回転可能なアーム9、及びワット式四節リンクの一部である連結ロッド35にヒンジ接続されている。
【0029】
より詳細には、第一クランク31は、第一ヒンジ31Aによって回転可能なアーム9に、第二ヒンジ31Bによって連結ロッド35にヒンジ接続されている。これに対して、第二クランク33は、第一ヒンジ33Aによって回転可能なアーム9に、第二ヒンジ33Bによって連結ロッド35に、それぞれヒンジ結合されている。ヒンジ31A、31B、33A及び33Bは、ワット四節リンクの回転対偶を形成している。
【0030】
クランク31及び33は、ほぼ同じ長さであり、連結ロッド35より短い。構成要素31、33及び35の長さは、各ヒンジの軸線間の距離である。従って、例えば、第一クランク31の長さはヒンジ31A及び31Bの軸間距離で与えられ、第二クランク33の長さはヒンジ33A及び33Bの軸間距離で与えられ、連結ロッド35の長さはヒンジ31B及び33Bの軸間距離で与えられる。
【0031】
符号37で示した車輪支持体は、ヒンジ31B及び33Bの軸間と実質的に等距離にある連結ロッド35の拘束点に拘束されている。実際には、車輪支持体37は、車輪の回転軸線B-Bを画定し、ヒンジ31B及び33Bの軸間の中間位置で、連結ロッド35に直交するように前記軸を保持している。図1図6の実施形態では、ディスクブレーキ23及び25のキャリパ25は、特に図4Cの分解図に示すように、車輪支持体37に堅固に固定されている。
【0032】
図1図6の実施形態では、ショックアブソーバ22も、連結ロッド35にヒンジ接続されている。より詳細には、ショックアブソーバ22は、一端22Aで回転可能なアーム9に、他端22Bで連結ロッド35にヒンジ接続されている。ショックアブソーバ22の一側と回転可能なアーム9と間の拘束、ショックアブソーバ22の他側と連結ロッド35との間の拘束は、ボールヒンジによって形成することができる。
【0033】
サスペンション17及びショックアブソーバ22の伸長位置と圧縮位置とを示す図4A及び図4Bから容易に理解されるように、前側操舵輪7のばね運動は、ワット式四節リンクの変形運動によって、より詳細には、クランクを回転可能なアーム9にヒンジ接続する軸線31A及び33Aを中心とするクランク31及び33のピボット運動、連結ロッド35の回転並進運動、及びこのピボット運動に応じたショックアブソーバ22の伸長及び圧縮によって実行される。
【0034】
ワット式四節リンクの特性の結果として、少なくともクランク31及び33のピボット運動のある角度内で、前側操舵輪7の回転軸線B-B上にある接続棒35の中心が、実質的に直線軌跡を描いて移動する。ワット式四節リンクを構成する要素は、サスペンション17の最大伸長位置から最大圧縮位置までの全行程において、前側操舵輪7の回転軸B-Bの軌跡がほぼ直線的になるように取り付けられている。
【0035】
このように構成されたサスペンションのこの特徴は、図4Dの模式図からより容易に理解することができる。この図面には、サスペンション、回転可能なアーム9、及び前側操舵輪7が、概略的に表されている。図4Dは、サスペンションの三つの異なる位置、即ち中間位置(a)、完全に圧縮された位置(b)、及び完全に伸長した位置(c)を示している。ワット式四節リンク9、31、33及び35の特性の結果として、その回転軸B-Bの軸線と一致する前側操舵輪7の中心が、実質的に直線的な軌跡T-Tで移動する。
【0036】
本明細書において、「ほぼ直線的」、「実質的に直線的」又は「約直線的」とは、サスペンションの使用範囲、即ち、車両の通常の使用中にワット式四節リンクがとる任意の位置において、完全に直線的な軌跡から2mm未満、好ましくは1mm未満だけ異なる軌跡を意味している。
【0037】
ここで第一の実施例の構造的特徴の説明に戻ると、特に図4A及び4Bに示すように、第一クランク31を回転可能なアーム9に接続するための第一ヒンジ31A及び第二クランク33を連結ロッド35に接続するための第二ヒンジ33Bは、前側操舵輪7の回転軸B-Bを含み、かつ、ばね運動における前記回転軸B-Bの軌道にほぼ平行にある平面P-Pの一方側に配置されている。また、第一クランク31を連結ロッド35に接続するための第二ヒンジ31Bと、第二クランク33を回転可能なアーム9に接続するための第一ヒンジ33Aとは、前記平面P-Pの他方側に配置される。実際には、ヒンジ31A及び33Bは、ヒンジ31B及び33Aに対して(車両1の前進走行時の通常の前進方向に対して)後方位置にある。さらに別の定義によれば、ヒンジ31A及び33Bは、前側操舵輪7の回転軸B-Bを含み、ショックアブソーバ22の上側連結点22Aから回転可能アーム9を通る平面、即ち前側操舵輪7の回転軸B-Bを含み、この軸がばね運動の間に並進する平面の一方側(より正確には背後に)位置している。
【0038】
ワット式四節リンクを形成する構成要素のこの特定の配置により、オートバイやスクータのような鞍乗り型車両1の前側操舵輪のサスペンションにおける、ばね上質量とばね下質量とを接続するための運動学的機構を形成するのに適したコンパクトな配置を作り出すことが可能となる。
【0039】
図l~図6を参照して説明した実施例は、様々な変形が可能であり、そのうちのいくつかを、図7図20を参照して以下に説明する。
【0040】
図7及び図8は、特にサスペンション17の運動機構に対するショックアブソーバ22の拘束点が、先に説明した実施例とは異なる実施例における、関連するサスペンション17及び回転可能アーム9を備えた前側操舵輪7の側面図及び不等角投影図である。より具体的には、ブレーキ又はダンパ19及びスプリング21を備えたショックアブソーバ22は、依然として連結ロッド35に拘束されているが、その領域は下向きではなく上向きであり、即ち、連結ロッド35の第一クランク31に面する側に配置されているのに対して、図1図6では拘束部22Bは、連結ロッド35の第二クランク33に面する側に配置されている。図1図6で使用した符号と同じ符号で示された残りの部品は、上述したものと実質的に同等である。
【0041】
図9及び図10は、図7及び図8と類似したさらに別の実施例を示しており、同一又は同等の部品には、図1図8で使用した符号と同一の符号を付す。図9及び図10の構成は、図7及び図8の構成と実質的に対称である。図7及び図8では(図1図6と同様に)、上側クランク31は、回転可能なアーム9に連結するためのヒンジ31Aが該クランク31の後方に面した端部に位置し、連結ロッド35に接続するためのヒンジ31Bが該クランク31の前方に面した端部に位置するように方向付けられ、下側クランク33は反対方向、即ち、回転可能なアーム9に連結するためのヒンジ33Aが前方に面した端部に位置し、連結ロッド35に接続するためのヒンジ33Bが後方に面した端部に位置するように方向付けされている。図9及び図10の構成では、配置が逆になっており、上側クランク31は、前方に面する端部に第一ヒンジ31Aを有し、後方に面する端部に第二ヒンジ31Bを有している。下側クランク33では、ヒンジ33Bの端部が前方に面し、ヒンジ33Aの端部は後方に面している。
【0042】
図11及び図12は、図7及び図8の実施例と類似したさらに別の実施例の側面図及び不等角投影図を示している。同じ符号は、上述したものと同一又は同等の部品を示している。図1図10の実施例と、図11及び図12の実施例との主な相違点は、この実施例では、ショックアブソーバ19の下端が、前側操舵輪7の回転軸線B-B上の点22Bで拘束されている点である。得られる構成は、特にコンパクトである。ショックアブソーバ22及び回動アーム9を備えたサスペンション17は、ケーシング41で閉じることができる。
【0043】
図15は、さらに別の実施例の側面図であり、この図において、同じ符号は、既に先に説明した実施例と同一又は同等の部品を示している。図15の実施例は、図1図6の実施例と実質的に同一であり、ショックアブソーバ22が、その底部でヒンジ22Bによって、連結ロッド35ではなく、クランク33に連結されていることが主たる相違点である。
【0044】
図16は、図1から図6の実施例と実質的に同じ実施例を示しており、ショックアブソーバ22が、その底部で、ヒンジ22Bによって、前側操舵輪7の回転軸B-Bの位置に連結されている点が異なる。
【0045】
先に説明したように、また、特に図4Cから明らかなように、ディスクブレーキ23及び25のキャリパ25は、連結ロッド35に堅固く拘束され得る。この実施例では、キャリパ25は、連結ロッド35と一体的に回転する。これは、特に、制動時に行われる。前側操舵輪7の回転軸B-Bに対するキャリパ25の位置に応じて、この動きは、連結ロッドの瞬間回転中心が、前側操舵輪7の地面との接触点に近づくという事実により、無視できないプロダイブ効果又はアンチダイブ効果を有し得る。この瞬間回転中心は、ヒンジ31A及び31B並びに33A及び33Bをそれぞれ互いに結ぶ二つの直線セグメントの延長線上の交点によって決められる。このプロダイブ又はアンチダイブ効果は好ましくない可能性がある。
【0046】
制動時のサスペンションのプロダイブ又はアンチダイブ効果を防止又は低減するために、幾つかの実施例では、前側操舵輪7、ひいては連結ロッド35と同軸に取り付けられているが、それと一体ではなく、その瞬間回転中心がより離れた位置にある部材にキャリパ25が堅固に連結され得る。
【0047】
この種の実施例を図17図18及び図19に示す。これらの図面では、同じ符号は、図1図6を参照して既に説明した実施例と同一又は同等の部品を示しており、これらについては再度の説明を省略する。ディスクブレーキのキャリパ25の支持部材は、特に図19の分解斜視図において見ることができる。支持部材は符号45で示されている。これは、前側操舵輪7の車軸7A、又はこの車軸の延長部が挿入される軸受47を収容するための孔を有し得る。ワット式四節リンクの連結ロッド35も、前記車軸7Aに遊動的に支持される。部材45は、ショックアブソーバ22の一端22Bに堅固に連結され得る。ショックアブソーバ22と部材45との間のインターロック拘束により、制動時の軸線B-Bを中心とする回転に対してキャリパ25が保持される。連結ロッド35と、キャリパ25の支持部材45とは互いに空転するので、連結ロッド35及び支持部材45は、回転軸線B-Bを中心として互いに自由に回転することができる。この場合、キャリパが堅固に連結されている部材が、瞬間回転中心が無限大に近い大きな距離に位置するショックアブソーバ22であるので、プロダイブ効果又はアンチダイブ効果は非常に限定的になるか、又は無視し得るものである。
【0048】
上述したサスペンションは、図1図2及び図3に模式的に示したようなオートバイの形態の鞍乗り型車両に用いることができるが、他のタイプの鞍乗り型車両に用いることも可能である。図20は、一実施例として、スクータ1を示しており、このスクータ1は、上述のように構成された、前側操舵輪7用のワット式四節リンクサスペンションを備えている。
【0049】
図1図20に示されたすべての実施例において、クランク31及び33を連結ロッド35及び回転可能なアーム9に接続するヒンジは、それらのヒンジ軸が互いに平行で、かつ、前側操舵輪7の回転軸B-Bと平行になるように配置されている。このようにして、実質的に、構成要素9、31、33及び35によって形成されるワット式四節リンクは、前側操舵輪7の回転軸B-Bと直交する平面上に配置される。従って、ワット式四節リンクの回転対偶の回転軸は、右左方向、即ち、車両1の中央平面に対して横方向に向いている。
【0050】
この構成は、特に効率的なサスペンションを生じさせるが、回転対偶のみを有し直進対偶又は円筒対偶を有しない、即ち、相対的な並進運動を有する部材を欠いた運動学的機構を用いて、前側操舵輪7の回転軸の実質的に直線状の軌道を、該車輪のばね運動の間に得ることができるようにする四節リンクサスペンションの唯一の可能な実施例であるわけではない。
【0051】
他の実施例では、ワット式四節リンクを形成する部材を互いに接続するヒンジは、その軸線が互いに平行になるように配置され得、かつ、前輪操舵輪7の回転軸B-Bに対して90°、即ち、前輪操舵輪7の回転軸B-Bを含む平面に対して直交する方向に向けられ得る。言い換えれば、四節リンクの構成要素を互いに接続する回転対偶のヒンジ軸は、車両の中央面に平行な垂直面、即ち、車両の進行方向に延びる垂直面上に位置するように配向されている。
【0052】
このタイプの実施例は、図21図25に示されている。先の図を参照して既に説明した部品に対応する部品は、「100」を増やした同じ符号で示されている。図21図25は、各サスペンション117及び回転可能なアーム109を備えた前側操舵輪107のみを示し、図1又は図20において符号1で示した車両と同様の車両であり得る車両は、示していない。
【0053】
図21図22及び図23は、前側操舵輪107、その操舵軸A-Aを有する回転可能なアーム109、及びすべての構成要素を有するサスペンション117を備えたアセンブリを示している。図24は、回転可能なアーム109を取り外した同じアセンブリを示し、図25は、車輪支持体、車輪、ブレーキ又はダンパ119を有するショックアブソーバ122、及びスプリング121を示すためにワット式四節リンクも取り外されたアセンブリを示している。
【0054】
より詳細には、この実施例には、回転可能なアーム109、第一クランク131、第二クランク133及び連結ロッド135を備えたワット式四節リンクを備えたサスペンション117が設けられている。実際には、各クランク131及び133はダブルクランクである。各クランクの二つの部材は、中央に配置された連結ロッド135の外側に位置する。
【0055】
クランク131は、第一ヒンジ131Aによって回転可能なアーム109にヒンジ結合され、第二ヒンジ131Bによって連結ロッド135にヒンジ結合されている。同様に、クランク133は、第一ヒンジ133Aによって回転可能なアーム109に、第二ヒンジ133Bによって連結ロッド135にヒンジ接続されている。ヒンジ131A、131B、133A及び133Bの軸は、互いに平行であり、かつ、前側操舵輪107の回転軸B-Bに対して90°に向けられている。ワット式四節リンクのヒンジ軸の配向方向は、本実施例では符号C-Cで示されており、特に図23を示されている。実際には、四節リンクのヒンジ軸は、前側操舵輪107の回転軸B-Bを含む平面に対して直交し、かつ、ばね運動の方向に対して実質的に平行に配向されている。
【0056】
クランク131及び133は、実質的に同じ長さを有する。連結ロッド135は、ヒンジ131B及び133Bの軸間の中央部分で、車輪支持体137にヒンジ結合されている。車輪支持体137は、方向C-Cに向けられたヒンジ軸、即ち、ワット式四節リンクのヒンジの軸に平行な軸を中心として、接続棒135にヒンジ結合されている。車輪支持体137と連結ロッド135とを結合するヒンジ軸は、前側操舵輪の回転軸B-Bと交差し、これと直交している。
【0057】
図示の実施例では、車輪支持体137は、特に図24及び図25に示すように、連結ロッド135を取り囲むフォーク形状を有する。車輪支持体137は、ショックアブソーバ122に接続するための拘束部材を有することもできる。図21図25に示される実施例では、車輪支持体137とショックアブソーバ122との間の拘束は、インターロック連結具である。
【0058】
車輪支持体137は、不図示の前側操舵輪107の車軸の回転座を形成する。
【0059】
特に図21に示すように、ヒンジ131B及び133Aは、前側操舵輪107の回転軸B-Bと直交し、かつ、サスペンション117のばね運動方向とほぼ平行な平面の一側に、ヒンジ131A及び133Bは多側に配置されている。見方を変えると、ヒンジ131B及び133Aは、前側操舵輪107の回転軸B-Bと直交する平面の一側にあり、ヒンジ131A及び133Bは、当該平面の他側にあることになる。基準面は、例えば、前側操舵輪7の回転軸B-Bと直交する以外に、ショックアブソーバ122とアーム109とを接続するヒンジ122Aを通る平面、又は、前側操舵輪の回転軸B-Bと直交し、かつ、連結ロッド135と車輪支持体137と間の(C-C方向に向けられた)ヒンジ軸を含む平面であり得る。
【0060】
前側操舵輪107のばね運動中、サスペンション117の四節リンクは、回転可能なアーム109に対するクランク131及び133のピボット運動と、それに伴う、車輪支持体137に接続するためのヒンジ軸を中心とする連結ロッド135のピボット運動とによって変形する。構成要素109、131、133及び135で形成されたワット式四節リンクの構成は、また、ばね運動の可動域全体において、連結ロッド135と車輪支持体137との間のヒンジ、従ってヒンジ軸C-Cが、ほぼ直線の軌跡に従って移動するようにされている。車輪支持体137がショックアブソーバ122に堅固に接続されているので、連結ロッド135の揺動は前側操舵輪107のキャンバ角に影響を及ぼさない。
【0061】
上述した実施例では、単一の前側操舵輪7又は107を備える、二輪車両について言及してきた。しかしながら、本発明に係るサスペンションは、例えば、走行中の車両のローリング運動を確保するように適合された一つ又は二つの四節リンクを備える、二つの前側操舵輪を有する傾斜式鞍乗り型車両にも使用することができる。図26図28は、フレーム203、後側駆動輪205、並びに左右の二つの前側操舵輪207X及び207Yを備えた傾斜式鞍乗り型車両201を概略的に示している。二つの前側操舵輪207X及び207Yは、車両201の横方向、即ち右左方向に並んでいる。
【0062】
図26図27及び図28に概略的に示された実施例において、符号209X及び209Yは、単一の前側操舵輪を有する車両の先の実施例を参照して説明した単一の回転可能なアーム9、109と同じ機能を有する、二つの回転可能なアームを示している。各回転可能なアーム209X、209Yは、ステアリング軸A-Aを中心に回転するように適合されている。
【0063】
この目的のために、各回転可能アーム209X、209Yは、ローリング式四節リンク220の一部である支持体又は直立体226X及び226Yに回転可能に収容される。二つの支持体又は直立体226X及び226Yは、それぞれの上部及び下部クロス部材222及び224によって互いに接続されている。クロス部材222及び224並びに支持体226X及び226Yは、ローリング式四節リンク220を形成し、互いに平行で、かつ、車両201の前後方向に向けられた平面上にあるヒンジ軸を中心として互いにヒンジ結合されている。
【0064】
符号215はハンドルバーを示し、このハンドルバーが、ステアリングバー230に作用する操舵柱211を介して支持アーム209X及び209Yに、軸A-Aを中心とする操舵運動を付与する。
【0065】
前記ローリング式四節リンク機構はそれ自体公知であり、より詳細な説明を要しない。
【0066】
各前側操舵輪207X及び207Yは、図1~25を参照して説明した態様の何れか一つで設計され得るサスペンション217X及び217Yによってその回転可能なアーム209X,209Yに接続されている。図26~28において、サスペンション217X及び217Yは、図1~6のように構成されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【国際調査報告】