(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】scyllo-イノシトール及びインスリン増感剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/047 20060101AFI20221114BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221114BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20221114BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20221114BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221114BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221114BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221114BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20221114BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20221114BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/592 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/714 20060101ALI20221114BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20221114BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20221114BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20221114BHJP
A23K 10/22 20160101ALI20221114BHJP
A23L 33/135 20160101ALN20221114BHJP
A23L 33/28 20160101ALN20221114BHJP
【FI】
A61K31/047
A61P3/10
A61P13/02
A61P25/00
A61P25/18
A61P27/02
A61P3/04
A61P13/12
A61P9/00
A61P31/00
A61P1/16
A61P43/00 121
A61K35/747
A61K35/745
A61K31/198
A61K31/592
A61K31/525
A61K31/714
A61K33/30
A61K33/26
A23K50/40
A23K10/22
A23L33/135
A23L33/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515771
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 EP2020076668
(87)【国際公開番号】W WO2021058628
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ラモス ニーブス, ホセ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ゴーディン, ジーン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァ ゾレッチ, イルマ
(72)【発明者】
【氏名】ネンブリニ, キアラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴドフリー, キース マルコム
(72)【発明者】
【氏名】チャン, シャオ-ユン
(72)【発明者】
【氏名】カットフィールド, ウェイン
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B018
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
2B005AA00
2B150AA06
2B150AB03
4B018MD74
4B018MD86
4B018MD87
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4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、概してインスリン増感剤の分野に関する。特に、本発明は、高血糖症の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールに関する。本発明は更に、対象における高血糖症に伴う疾患、状態及び/又は症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項2】
高血糖症に伴う前記疾患が、2型真性糖尿病、前糖尿病、妊娠糖尿病、及び多嚢胞性卵巣症候群からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項3】
前記対象が、哺乳動物であり、例えば、ネコ、イヌ、及びヒトからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項4】
前記対象が、妊娠を試みている、妊娠中である、又は自分の子に授乳中である女性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項5】
前記scyllo-イノシトールが、1日当たり0.1~500mgの量で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項6】
前記scyllo-イノシトールが、1日当たり体重1kg当たり最大0.001gの量で対象に投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項7】
高血糖症に伴う前記症状が、異常な空腹、口渇の増加、異常な夜尿、異常な気分変動、易刺激性/易怒性、倦怠感、頻尿症、かすみ眼、意図しない体重減少、過体重、肥満、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項8】
高血糖症に伴う前記状態が、腎症、心臓病、神経障害、血管疾患、皮膚感染症、妊娠中の合併症、網膜の血管損傷による視覚障害、足病変、心血管疾患、脂肪性肝疾患、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項9】
前記scyllo-イノシトールが、ラクトバチルス・ラムノーサスGG(CGMCC 1.3724)、ビフィドバクテリウム・ラクティスBB-12(CNCM I-3446)、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロバイオティクスと組み合わせて投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項10】
前記scyllo-イノシトールが、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、鉄、亜鉛、アルギニン、グリシン、セリン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される成分と組み合わせて投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項11】
前記scyllo-イノシトールが、myo-イノシトール及び/又は他のイノシトール異性体、例えば、neo-イノシトール、epi-イノシトール、muco-イノシトール、allo-イノシトール、及びD-chiro-イノシトール異性体からなる群から選択されるイノシトールと組み合わせて投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項12】
前記scyllo-イノシトールが、D-chiro-イノシトールと組み合わせて投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項13】
前記scyllo-イノシトールが、組成物の形態で投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項14】
前記組成物が、栄養製剤、食品製品、機能性食品製品、健康的な加齢のための製品、乳製品、乳代替製品、栄養補助食品、医薬処方物、飲料製品、規定食製品、及びペットフード製品からなる群から選択される製品である、請求項13に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【請求項15】
前記scyllo-イノシトールが、硬骨魚類又は他の深海動物からの抽出物の形態で用意される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のためのscyllo-イノシトール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してインスリン増感剤の分野に関する。特に、本発明は、高血糖症の治療又は予防においてインスリン増感剤として使用するためのscyllo-イノシトールに関する。本発明は更に、対象における高血糖症に伴う疾患、状態及び/又は症状の治療又は予防においてインスリン増感剤として使用するための、scyllo-イノシトールに関する。
【背景技術】
【0002】
2型真性糖尿病(T2D)は、ヒトにおける重大な疾病であり、世界的に主要な健康問題である。T2Dの有病率は過去数十年間で劇的に増加しており、1994年には100万人にT2Dの診断がついたと報告され、2013年には3億8200万人まで増加しており、2035年までに5億9500万人に達すると予想される。T2Dは、年間約150万人の主な死因であり、毎年世界で1300万人(全死亡者数の25%)の死亡原因となる心血管疾患のリスク因子である。この疾患は、西洋諸国、北米及びオセアニアで蔓延しているだけでなく、アジア諸国、特に中国においても有病率が増加している。
【0003】
T2Dは、インスリン抵抗性及び高血糖症を特徴とする進行性代謝疾患であり、インスリン抵抗中の高いインスリン需要に応答した、β細胞の形態的及び機能的な補充が、不足又は停止した結果である。
【0004】
現在、T2Dの臨床治療のほとんどは、インスリン抵抗性を標的とするもの、又はβ細胞機能を高めることによってインスリンレベルを上昇させることを目指すもの、のいずれかである。β細胞に対する潜在的疲弊効果を考慮して、より多くの基礎研究が、β細胞質量を再生する機序又はβ細胞機能を維持する機序の調査に目を向けるようになっている。実際、T2Dでは、β細胞機能の保護及び回復を治療及び予防の主な目標とする必要がある。したがって、インスリン分泌を刺激又は増進できる薬物/成分は、高血糖症を緩和し、その後の疾患合併症の発生を低減することになる。
【0005】
耐糖能を治療するための他の先行技術の方法には、myo-イノシトール及びd-chiro-イノシトールが含まれる。イノシトールは、シクロヘキサン中に6つのヒドロキシル基を含有する化合物の群である。これらの6つのヒドロキシル基のエピマー化により、scyllo-イノシトール、cis-イノシトール、epi-イノシトール、neo-イノシトール、D-chiro-イノシトール、L-chiro-イノシトール、muco-イノシトール、allo-イノシトール、及びmyo-イノシトールと命名された9つの立体異性体が生成する。myo-イノシトールは、天然で最も一般的なイノシトールである。myo-イノシトールは、様々な細胞プロセスにおいて、膜中でリン脂質として、及びホスファチジルイノシトールとして、並びにイノシトールリン酸塩及び場合によってはイノシトールグリカンを介したセカンドメッセンジャーとして、重要な役割を果たす。
【0006】
myo-イノシトール補給は、多嚢胞性卵巣症候群を有する女性において、食後血糖を低下させることでインスリン感受性を改善する[Gynecol Endocrinol,2012.28(6):p.440-2;Int J Endocrinol,2016.2016:p.1849162;Trends Endocrinol Metab,2018.29(11):p.768-780]。いくつかのランダム化比較試験において、myo-イノシトールは、妊娠糖尿病のリスクがある妊婦[Diabetes Care,2013.36(4):p.854-857;J Matern Fetal Neonatal Med,2013.26(10):p.967-72;Diabet Med,2011.28(8):p.972-5]、並びにメタボリックシンドローム及び2型糖尿病を有する患者[Menopause,2011.18(1):p.102-4;Int J Endocrinol,2016.2016:p.9132052]においても評価され、ある程度の有益な効果が得られている。
【0007】
健康な食習慣及び運動量の増加などの、食事及び生活習慣の変化は、前糖尿病、2型糖尿病及び/又は妊娠糖尿病の予防又は治療において非常に有効となり得るが、患者のコンプライアンスが問題となることが多い。ビグアニド及びチアゾリジンジオンなどの薬物も使用され得る。しかしながら、これらの多くは、望ましくない副作用を有する。更に、前糖尿病を予防するためにこれらの薬物を与える慣例はなく、多くは妊娠中の使用に適さない。したがって、対象における高血糖症及び随伴疾患、例えば、前糖尿病、2型糖尿病、又は妊娠糖尿病などを治療又は予防するための代替法を見出す必要がある。特に、先行技術の欠点のうちの1つ以上が問題とならない可能性のある方法を見出す必要がある。
【0008】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。
【0009】
したがって、対象における高血糖症に関連する疾患、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状を治療又は予防するための代替法を見出す必要がある。そのような疾患は、例えば、前糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病であり得る。特に、先行技術の欠点のうちの1つ以上が問題とならない可能性のある方法を見出す必要がある。
【0010】
したがって、高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防に使用するための化合物及び/又は組成物を提供することが望ましい。好ましくは、そのような使用のための化合物及び/又は組成物は、上に列挙された欠点のうちの1つ以上を含まない、又は少なくとも有用な代替物を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、現状の技術水準を高める又は改善すること、特に、対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防における使用のための化合物及び/又は組成物を提供することであった。
【0012】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の目的が、独立請求項の主題により達成され得ることを見出した。従属請求項は、本発明の着想を更に展開するものである。
【0013】
したがって、本発明は、対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールを提供する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【0015】
これまでに、scyllo-イノシトールの治療効果は、神経疾患に関連して報告されていた。実際、脳脊髄液(CSF)及び脳におけるscyllo-イノシトール濃度は、その投与後に増加するようであり、前臨床データは、脳内のscyllo-イノシトールを高レベルで維持することが治療効果に必要であろうことを裏付けた。このため、scyllo-イノシトールは、アルツハイマー病(AD)の治療について臨床研究されている。scyllo-イノシトール単独では、アルツハイマー病の間に増加する不溶性アミロイド繊維の形成を防ぐこと[Adv Pharmacol,2012.64:p.177-212;Neurology,2011.77(13):p.1253-62;Expert Opin Pharmacother、2017.18(6):p.611-620]、及びパーキンソン病におけるニューロンのα-シヌクレイン(タンパク質)凝集を阻害することが示されている。これと合致して、最近の報告[J.Agric.Food Chem.2013,61,4850-4854]は、経口投与したイノシトール立体異性体のマウス血漿中での検出、及び骨格筋細胞におけるグルコース輸送体(GLUT)4の移行に対するその効果に関して、scyllo-イノシトールの単回投与は、GLUT4の移行を達成するのに十分なレベルまでその血漿中レベルを上昇させ、その効率が3種のイノシトール異性体のうち最も高いことが研究で明らかになったと記載しており、scyllo-イノシトールがアルツハイマー病の治療に有効である可能性があることを示唆している。著者らはまた、これらの結果が、scyllo-イノシトールが高血糖症及びその関連疾患に有効である可能性があることを示唆し得ると提案している。
【0016】
通常、血中インスリンは、筋肉及び脂肪組織などの末梢組織において細胞質から細胞膜へのグルコース輸送体(GLUT4)の移行をもたらす細胞内シグナル伝達カスケードを生じさせる。このような輸送体は、代謝のために細胞に流入するグルコースを増加させることで、血中から過剰なグルコースを排除する。[J.Agric.Food Chem.2013,61,4850-4854]において、著者らは、インビトロモデルの筋肉細胞において、scyllo-イノシトールが、インスリンと同様に、同じGLUT4輸送体の細胞膜への移行を誘導することを明らかにした。これは、提案された効果を、インスリン類似物質として知られる化合物の群に、例えば、特に、バナジウム錯体[J Biol Inorg Chem,2007.12(8):p.1275-87]、タンニン酸(tanic acid)誘導体[Biochem Biophys Res Commun,2005.336(2):p.430-7]又はフラボノイド[J Pharm Pharmacol,2013.65(8):p.1179-86]などに関連付けるものである。インスリン類似物質は、例えば筋細胞及び脂肪細胞において、グルコース輸送体を動員及び活性化することによって作用するものであり、換言すれば、インスリン類似物質はインスリンのように作用する。
【0017】
対照的に、本発明者らは、インスリン増感剤としてのscyllo-イノシトールの使用を提案する。この化合物の群は、各種組織におけるインスリンに対する細胞応答を、特にこの応答が肥満又は他の状態によって減少したときに、増強する。この増感効果は、膜インスリン受容体の増加、GLUT4輸送体の細胞内プールの増加、又はより多くの該輸送体の膜への移行をもたらす1つ以上のメカニズムによって誘導され得る[Diabetes,1995.44(9):p.1087-92]。また、インスリン類似化合物とは著しく対照的に、インスリン増感剤の効果は、このホルモンの不在下では乏しく、又は存在しない[Endocrinology,1998.139(12):p.5034-41]。
【0018】
インスリン増感剤は、身体組織のインスリンに対する感受性を高めることによって血糖を低下させるのに役立つ。例えば、チアゾリジンジオン(TZD)は、インスリンに対する感受性を増加させることによって血糖を低下させる作用があることから、周知のインスリン増感剤である。現在、TZDは、インスリン応答性遺伝子の発現及び調節に関与する核受容体のスーパーファミリーのメンバーであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)に結合し、PPARを活性化することで作用すると考えられている。インスリン増感剤の別の例には、経口ビグアニドの一種であるメトホルミンがある。現在、メトホルミンは、肝細胞ミトコンドリアに結合して呼吸鎖の酸化を妨害し、肝臓におけるインスリン作用を改善することにより機能すると考えられている。
【0019】
総じて、ヒトにおいて、scyllo-イノシトールは、摂取後に完全かつ急速に吸収される(摂取後に最大レベルに達するまでの平均時間は約3.8時間である)。scyllo-イノシトールのインビボ定常状態(健康な男性における)は、5~6日間の継続摂取(10日間に2g/12時間)後に得られる。デオキシ置換、フルオロ置換、クロロ置換、メトキシ置換、及びグアニジン置換を含有する一連のscyllo-イノシトール誘導体が合成されている。グアニジン-scyllo-イノシトール誘導体は、トランスジェニックADマウスで試験された(投与量25~30mg/日/マウス又は細胞実験において10μM)。
【0020】
査読論文では、血漿及び尿流体中のscyllo-イノシトールレベルについてはほとんど言及がないものの、体内でscyllo-イノシトールのレベルが最も高いのは脳内である。例として、灰白質では、scyllo-イノシトールレベルの平均は約0.78mMであった。現在、scyllo-イノシトールは、SMIT 1/2トランスポーターによって細胞に流入すると考えられている。しかしながら、細胞からのscyllo-イノシトール流出を調べた具体的な研究はない。このギャップは、内部(endogenous)でのscyllo-イノシトールの機能及び分解に関する知識が不十分であることと関連し得る。
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、scyllo-イノシトールが、インスリン増感剤として、独特かつ強力な効果を有することを見出した。
【0022】
したがって、本発明は、高血糖症に関連する疾患、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療及び予防に関する。例えば、本発明は、対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールに関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】非肥満ミニブタと肥満ミニブタにおいて測定された、高インスリン-正常血糖クランプデータと血漿中のscyllo-イノシトールレベルとの間の関連性を示す。この関連性のピアソン相関はr2=0.45、P=0.0023である。
【
図2】異なる耐糖能状態(耐糖能正常、前糖尿病、及び2型糖尿病)を有する271名の女性におけるMatsuda indexと血漿scyllo-イノシトールレベルとの間の関連性を示す。
【
図3】異なる耐糖能状態(耐糖能正常、前糖尿病、及び2型糖尿病)を有する271名の女性における糖化ヘモグロビン(HbA1C)と血漿scyllo-イノシトールとの間の関連性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
結果として、本発明は、一部には、scyllo-イノシトールに関する。本発明はまた、医薬として使用するためのscyllo-イノシトールに関する。本発明は更に、インスリン増感剤として使用するためのscyllo-イノシトールに関する。例えば、本発明は、対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールに関する。
【0025】
本発明はまた、対象における高血糖症に関連する疾患、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防のための組成物を製造するためのscyllo-イノシトールの使用に関し、ここでscyllo-イノシトールは、インスリン増感剤として作用する。
【0026】
用語「治療する」又は「治療」は、本明細書で使用するとき、疾患の改善及び/又は緩和、すなわち、疾患の症状又はそのような疾患に伴う状態の改善及び/又は緩和を包含する。上記用語は、例えば、対象における疾患の重症度の低減を包含し得る。
【0027】
用語「予防する」又は「予防」は、本明細書で使用するとき、対象における疾患又はそのような疾患に伴う状態の発生の予防、又は発生のリスクの低減を指す。
【0028】
用語「対象」は、本明細書で使用するとき、哺乳動物を意味し、より具体的にはネコ、イヌ、又はヒトを意味する。ヒトは、成人、小児、又は乳児であり得る。ヒトは、女性、例えば妊娠を試みている、妊娠中である、又は授乳中である女性であり得る。対象はまた、妊娠を試みている、妊娠中である、又は授乳中である女性の子でもあり得る。
【0029】
本発明の一実施形態では、対象は、ネコ、イヌ、及びヒトからなる群から選択される哺乳動物である。
【0030】
用語「scyllo-イノシトール」は、本明細書で使用するとき、(1r,2r,3r,4r,5r,6r)-シクロヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソールを指す。
【0031】
本発明者らは、対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールを提案する。
【0032】
T2Dは、インスリン抵抗性及び高血糖症を特徴とする進行性代謝疾患であり、インスリン抵抗中の高いインスリン需要に応答した、β細胞の形態的及び機能的な補充が、不足又は停止した結果である。血漿インスリンレベルは主に、膵臓のランゲルハンス島におけるインスリン産生β細胞の形態上の質量と、これらのβ細胞の各々の機能の状態とによって決まる。多くの個体において、遺伝的素因及び不健康なライフスタイルがインスリン抵抗性の増加をもたらし、この増加は典型的には、大規模な機能の補充及び中規模の形態面での補充による、正常血糖の維持によって対処されることから、各β細胞の負荷が増加する。この通常は成功する補充は、主に機能的変化によって進められ、速度及び程度において質量適応よりも優れる。この前糖尿病期では、慢性的な耐糖能異常及び高血糖値が、β細胞の負荷及びストレスを継続的に悪化させ、細胞疲弊、細胞死、及び高血糖症の臨床症状という結果をもたらす。その後、制御されていない高血糖症は、多くの場合、他の細胞毒性因子と協調して、顕性糖尿病患者においてβ細胞の質量減少及び機能低下を加速させる。したがって、身体組織のインスリン感受性を高めることができる薬物/成分は、高血糖症を緩和し、その後の疾患合併症の発生を低減する。
【0033】
本発明者らは、例えば、インスリンのグルコースクリアランス効果並びに正常血糖を維持する能力を自然に増強するための、インスリン増感剤としてのscyllo-イノシトールの使用を提案する。この効果は、全てのインスリン感受性組織(すなわち、脂肪、筋肉、及び肝臓)においてこのホルモンの作用に対する応答性を増加させることによる。
【0034】
食事及び生活習慣の変化(例えば、より健康な食習慣又は頻繁な運動)も、インスリン感受性/応答性の改善又は正常化に有効であることが証明されているが、多くの場合コンプライアンスが不充分であることで、これらの変化が無効になってしまう。あるいは、ビグアニド及びチアゾリジンジオンなどの薬物を使用することができるが、特定の状況下では、上記薬物は望ましくない副作用を有し得る。更に、上記薬物は、例えば、前糖尿病期又は妊娠中には通常は使用されないことから、糖尿病の予防又は妊娠性糖尿病の場合には必ずしも適切とは限らない。
【0035】
本発明の一実施形態では、高血糖症随伴疾患は、1型真性糖尿病、2型真性糖尿病、前糖尿病、妊娠糖尿病、及び多嚢胞性卵巣症候群からなる群から選択される。
【0036】
本発明によると、scyllo-イノシトールは、インスリン増感剤として特異的に作用させるために使用できることから、本発明の一実施形態は、2型真性糖尿病、前糖尿病、妊娠性真性糖尿病、及び多嚢胞性卵巣症候群からなる群から選択される高血糖症に関連する疾患及び/又は随伴疾患の予防における、インスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールに関する。
【0037】
本発明の一実施形態では、高血糖症に関連する疾患は、初期の2型真性糖尿病である。本発明の別の実施形態では、高血糖症に関連する疾患は、前糖尿病である。
【0038】
scyllo-イノシトールは、高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状を罹患している又は発症するリスクがある任意の対象に、本発明に従って使用され得る。ヒトだけでなく、他の哺乳動物、特にペットも、同様にこのような疾患を罹患する又は発症するリスクを有するようになってきている。したがって、本発明の一実施形態では、対象は哺乳動物であり得る。例えば、哺乳動物は、ネコ、イヌ、及びヒトからなる群から選択され得る。
【0039】
妊娠糖尿病は、妊婦が罹患する疾患である。
【0040】
したがって、本発明の一実施形態では、対象は、妊娠を試みている、妊娠中である、又は自分の子に授乳中である女性である。
【0041】
本発明の一実施形態では、疾患は、妊娠糖尿病又はそれに伴う状態であり、対象は、妊娠を試みている、妊娠中である、又は自分の子に授乳中である女性である。
【0042】
妊娠を望むヒト対象にscyllo-イノシトールが投与される場合、妊娠又は所望する妊娠より前の少なくとも1、2、3、又は4ヶ月の間に投与され得る。妊娠中の対象にscyllo-イノシトールが投与される場合、対象の妊娠期間に応じ、妊娠中を通して又は妊娠中の一部で、例えば少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも20週間、少なくとも24週間、少なくとも28週間、又は少なくとも36週間、投与され得る。投与はまた、上記対象の授乳期間全体を通して継続しても一部で継続してもよい。
【0043】
妊娠糖尿病(GDM)のリスクは妊娠の第2三半期及び第3三半期に増加することから、妊婦の対象若しくはその子におけるGDMの予防若しくは治療のため、又はGDMに伴う状態の予防のためには、投与は、妊娠の第2及び第3三半期に特に有益となり得る。
【0044】
本発明の一実施形態では、scyllo-イノシトールは、少なくとも妊娠の第2及び/又は第3三半期に投与され、対象は、妊婦又はその子である。
【0045】
本発明の枠組みにおいて、scyllo-イノシトールは、任意の有効量で対象に投与され得る。有効量は、インスリン感受性の障害を任意の程度で改善する任意の量であってよい。有効量を決定することは、十分に当業者の技術の範囲内である。有効量は、例えば、対象の空腹時血漿グルコース濃度、又は空腹時HbA1c濃度、又はOGTT中の1時間、2時間における血糖値に対する量の効果を試験することによって決定され得る。有効量は、特に、対象が前糖尿病、2型糖尿病又は妊娠糖尿病を罹患している場合には、対象の空腹時血漿グルコース濃度及び/若しくはHbA1c濃度を改善するもの、並びに/又は対象の血糖応答を低下させるものである必要がある。
【0046】
scyllo-イノシトールは、例えば、1日当たり最大4000mg、1日当たり最大2000mg、1日当たり最大1000mg、1日当たり最大500mg、1日当たり最大250mg、1日当たり最大150mg、1日当たり最大125mg、1日当たり最大100mg、1日当たり最大80mg、1日当たり最大70mg、1日当たり最大50mg、1日当たり最大20mg、1日当たり最大10mg、又は1日当たり最大1mgの量で対象に投与されてもよい。
【0047】
本発明の一実施形態では、scyllo-イノシトールは、1日当たり最大1gの量で対象に投与される。本発明の更なる実施形態では、scyllo-イノシトールは、1日当たり0.1~500mgの量で投与される。本発明者らは現在、ある特定の状況下において、1日当たり10~100mgのscyllo-イノシトールの範囲、例えば、1日当たり40~60mgのscyllo-イノシトールの範囲の量でscyllo-イノシトールを投与することが推奨され得ると考えている。
【0048】
典型的には、有効量は、対象のタイプ、年齢、体格、健康状態、ライフスタイル及び/又は遺伝的形質によって決まることとなる。有効量は、1日の総摂取量が有効量となるように、いくつかの少量に分割されて、1日全体を通して投与されてもよい。
【0049】
結果として、本発明の一実施形態では、scyllo-イノシトールは、1日当たり体重1kg当たり最大0.001gの量で対象に投与され得る。あるいは、scyllo-イノシトールは、1日当たり体重1kg当たり最大0.01g、1日当たり体重1kg当たり最大0.008g、1日当たり体重1kg当たり最大0.006g、1日当たり体重1kg当たり最大0.004g、1日当たり体重1kg当たり最大0.002g、又は1日当たり体重1kg当たり最大0.0005gの量で対象に投与され得る。
【0050】
scylloイノシトールは、本発明に従って、scyllo-イノシトールとして、又はそのリン酸塩形態、例えばscyllo-イノシトールビスホスフェート、scyllo-イノシトールトリスホスフェート、又はscyllo-イノシトールヘキサキスホスフェートで;メソ体又はラセミ体で使用され得る。scyllo-イノシトールの他の誘導体、例えば、フッ素化物、C-メチル、及びデオキシ-scyllo-イノシトールも用いられ得る。通常、scyllo-イノシトールは、本発明に従って使用される。
【0051】
scyllo-イノシトールは、例えば、Sigma-Aldrichから、又は他の原材料供給元から市販されている。
【0052】
scyllo-イノシトールはまた、様々な方法を使用して製造され得る。scyllo-イノシトールのそのような製造方法は、当該技術分野で開示されている[Angew.Chem.Int.Ed.55,1614-1650;これは、その全体が参照により本明細書に援用される]。あるいは、scyllo-イノシトールは、シュードモナス(Pseudomos)及びアセトバクター(Acetobacter)などの微生物を使用したバイオ変換プロセスにおいてmyo-イノシトールから製造され得る。例えば、アセトバクター属に属する微生物を使用したバイオ変換プロセスにおいてmyo-イノシトールからscyllo-イノソースを製造でき、製造されたscyllo-イノソースを、続いて酵素還元して、scyllo-イノシトールが得られる。
【0053】
いくつかの症状が、高血糖症及び/又は随伴疾患に伴う。これらの症状は当業者に周知である。本発明の主題は、高血糖症及び/又は随伴疾患に伴うそのような症状を治療又は予防するために使用され得る。本発明の一実施形態では、高血糖症及び/又は随伴疾患に伴う症状は、異常な空腹、口渇の増加、異常な夜尿、異常な気分変動、易刺激性/易怒性、倦怠感、頻尿症、かすみ眼、意図しない体重減少、過体重、肥満、又はこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0054】
多数の状態が、高血糖症及び/又は随伴疾患に伴う。そのような状態は、当業者に周知である。本発明の主題は、高血糖症及び/又は随伴疾患に伴うそのような状態を治療又は予防するために使用され得る。本発明の一実施形態では、高血糖症及び/又は随伴疾患に伴う状態は、腎症、心臓病、神経障害、血管疾患、皮膚感染症、妊娠中の合併症、網膜の血管損傷による視覚障害、足病変、心血管疾患、脂肪性肝疾患、又はこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0055】
多数の状態が、前糖尿病、2型糖尿病、及び/又は妊娠糖尿病に伴う。本発明の一実施形態において、妊娠糖尿病に伴う状態は、早産及び帝王切開、母親若しくは乳児の出生時外傷、肩甲難産、巨大児、子の過剰な血糖濃度、過体重/脂肪症及び関連する代謝異常、例えば、子の出生直後及び後年の2型糖尿病、脂肪性肝疾患及び肥満、母体が出産直後及び/又は後年に2型糖尿病を有する又は発症するリスクの増加からなる群から選択される。
【0056】
scyllo-イノシトールは、前糖尿病、2型糖尿病及び妊娠糖尿病を、これらの状態のうちの1つ以上に罹患するリスクのある対象において予防及び/又は治療するのに有効となり得る。したがって、本発明の一実施形態では、対象、例えばヒト対象は、前糖尿病、2型糖尿病又は妊娠糖尿病に罹患するリスクがある。例えば、上記対象が、好ましい代謝プロファイルを有しないこと、及び/又はこれらの疾患のうちの1つ以上の既往歴若しくは家族歴を有することから、このリスクに該当する場合がある。
【0057】
妊娠糖尿病は、妊婦に影響を与える疾患である。したがって、本発明の別の実施形態では、インスリン分泌β細胞の機能障害に関連する疾患は、妊娠糖尿病又はそれに伴う状態であり、対象は、妊娠を試みている、妊娠中である、又は自分の子に授乳中である女性である。
【0058】
妊娠を望むヒト対象にscyllo-イノシトールが投与される場合、妊娠又は所望する妊娠の前の少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、又は4ヶ月の間に投与され得る。妊娠中の対象にscyllo-イノシトールが投与される場合、対象の妊娠期間に応じ、妊娠中を通して又は妊娠中の一部で、例えば少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも16週間、少なくとも20週間、少なくとも24週間、少なくとも28週間、又は少なくとも36週間、投与され得る。投与はまた、上記対象の授乳期間全体を通して継続しても一部で継続してもよい。
【0059】
妊娠糖尿病のリスクは妊娠の第2三半期及び第3三半期に増加することから、妊婦の対象若しくはその子におけるインスリン分泌β細胞の機能障害に関連する妊娠糖尿病の予防若しくは治療、又は上記妊娠糖尿病に伴う状態の予防のためには、投与は、妊娠の第2三半期及び第3三半期に特に有益となり得る。
【0060】
本発明の一実施形態では、scyllo-イノシトールは、少なくとも妊娠の第2三半期及び/又は第3三半期に投与され、その対象は妊婦又はその子である。
【0061】
プロバイオティクスは、腸バリア機能を改善し、栄養素が腸を通過するのを助けることが見出されている。したがって、プロバイオティクスをscyllo-イノシトールと組み合わせて投与することは、この化合物の吸収を増進し得る。したがって、一実施形態では、scyllo-イノシトールは、プロバイオティクス、例えば、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)GG(CGMCC 1.3724)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactus)BB-12(CNCM I-3446)、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロバイオティクスと組み合わせて投与される。
【0062】
ラクトバチルス・ラムノーサスGG(CGMCC 1.3724)は、例えば、Valio Oyから市販されている。ビフィドバクテリウム・ラクティスBB-12(CNCM I-3446)は、例えば、Christian Hansenから市販されている。
【0063】
本明細書で使用されるプロバイオティクスという用語は、生プロバイオティクス細菌、非複製プロバイオティクス細菌、死プロバイオティクス細菌、生育不能プロバイオティクス細菌、DNAなどのプロバイオティクス細菌の断片、プロバイオティクス細菌の代謝産物、プロバイオティクス細菌の細胞質化合物、プロバイオティクス細菌の細胞壁材料、プロバイオティクス細菌の培養上清、及び/又はこれらのいずれかの組み合わせを指す。プロバイオティクスは、例えば、生プロバイオティクス細菌、非複製プロバイオティクス細菌、死プロバイオティクス細菌、生育不能プロバイオティクス細菌、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。本発明の一実施形態では、プロバイオティクスは、生プロバイオティクス細菌である。
【0064】
追加のビタミン及びミネラルも、scyllo-イノシトールと組み合わせて投与され得る。例えば、組成物は、次の微量栄養素のうちの1つ以上を含有してもよい:カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、ビタミンA又はレチノール活性等価物(RAE)(例えば、ベータカロテン又はカロテノイドの混合物の形態)、ビタミンC、ビタミンB1、ナイアシン、葉酸、ビオチン、ビタミンE、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB15、ビタミンD、鉄、亜鉛。
【0065】
ビタミン及びミネラルは、USRDAなどの政府機関の推奨に従った量で投与され得る。例えば、100mg~2500mgのカルシウム、35mg~350mgのマグネシウム、70mg~3500mgのリン、2.7mg~45mgの鉄、1.1mg~40mgの亜鉛、0.1mg~10mgの銅、22μg~1100μgのヨウ素、6μg~400μgのセレン、77μg~3000μgのビタミンA又はレチノール活性等価物(RAE)(例えば、ベータカロテン又はカロテノイドの混合物の形態)、8.5mg~850mgのビタミンC、0.14mg~14mgのビタミンB1、1.8mg~35mgのナイアシン、60μg~1000μgの葉酸、3μg~300μgのビオチン、1.9μg~109μgのビタミンE。
【0066】
本発明の一実施形態では、scyllo-イノシトールは、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、マグネシウム、鉄、亜鉛、アルギニン、グリシン、セリン、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される成分と組み合わせて投与される。
【0067】
ビタミンB2は、例えば、1日当たり0.14mg~14mg(1日用量)の量で投与され得る。ビタミンB6は、例えば、1日当たり0.19mg~19mg(1日用量)の量で投与され得る。ビタミンB12は、例えば、1日当たり0.26μg~26μg(1日用量)の量で投与され得る。ビタミンDは、例えば、1日当たり1.5μg~100μg(1日用量)の量で投与され得る。マグネシウムは、例えば、MgCl2の形態で、1日当たり1g~5g(1日用量)の量で投与され得る。亜鉛は、例えば、1日当たり1.1mg~40mg(1日用量)の量で投与され得る。アルギニンは、例えば、1日当たり2g~30g(1日用量)の量で投与され得る。グリシンは、例えば、1日当たり5g~20g(1日用量)の量で投与され得る。セリンは、例えば、1日当たり50mg~400mgの量(1日用量)で投与され得る。
【0068】
本発明の特定の実施形態では、scyllo-イノシトールは、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、及びビタミンDと組み合わせて投与され、上記成分は、1日当たり1.8mgのビタミンB2、2.6mgのビタミンB6、5.2μgのビタミンB12、及び10μgのビタミンDに相当する量で投与される。
【0069】
更に別の実施形態では、scyllo-イノシトールは、myo-イノシトール及び/又は他のイノシトール異性体、例えば、neo-イノシトール、epi-イノシトール、muco-イノシトール、allo-イノシトール、及びD-chiro-イノシトールからなる群から選択されるイノシトールと組み合わせて投与されてもよい。
【0070】
myo-イノシトールは、細胞成長に重要であることから細胞機能に不可欠であること、並びにインスリン抵抗性の動物モデルにおいて、及び多嚢胞性卵巣症候群若しくはメタボリックシンドロームを有する女性において、血糖低下特性を伴うインスリン様効果を有すること、が知られている。D-chiro-イノシトールは、そのインスリン様効果を介して血糖低下特性を有することも知られている。
【0071】
本発明の一実施形態では、scyllo-イノシトールは、D-chiroイノシトールと組み合わせて投与される。
【0072】
本発明の更なる実施形態は、対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールに関し、ここでscyllo-イノシトールは、他のイノシトール異性体を含まない組成物で投与される。例えば、本発明の一実施形態は、対象における高血糖症、随伴疾患、随伴状態、及び/又は随伴症状の治療又は予防におけるインスリン増感剤としての使用のためのscyllo-イノシトールに関し、ここでscyllo-イノシトールは、myo-イノシトールを含まない組成物で投与される。この投与は、対象が他のイノシトール異性体を同様に良好に耐容しない場合に有益となり得る。
【0073】
本発明の更なる実施形態では、scyllo-イノシトールは、組成物の形態で投与される。当該組成物は、任意の他の成分、例えば、本明細書に記載の1つ以上の成分、例えば、プロバイオティクス、ビタミン及びミネラルを含み得る。組成物はまた、用いられる組成物の形態、例えば、粉末栄養補助食品、食品製品、又は乳製品の形態に一般的に使用される他の成分も含み得る。そのような成分の非限定例としては、例えば、脂質(任意選択的にDHA及びARAに加えて)、炭水化物、及びタンパク質から選択される他の栄養素、微量栄養素(上記のものに加えて)、又は医薬活性剤;一般的な食品添加物、例えば、抗酸化物質、安定剤、乳化剤、酸味料、増粘剤、pH調整のための緩衝剤又は剤、キレート剤、着色剤、添加物、着香料、浸透剤、医薬的に許容される担体、保存料、糖、甘味料、質感付与剤、乳化剤、水、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0074】
組成物は、組成物が投与される対象が摂取するのに好適な、任意のタイプの組成物であり得る。
【0075】
本発明の一実施形態では、組成物は、栄養製剤、食品製品、機能性食品製品、健康的な加齢のための製品、乳製品、乳代替製品、栄養補助食品、医薬処方物、飲料製品、規定食製品、及びペットフード製品からなる群から選択される製品である。
【0076】
用語「栄養製剤」は、本明細書で使用するとき、対象に栄養を提供するために使用できる任意の製品を意味する。典型的には、栄養製剤は、タンパク質源、炭水化物源、及び脂質源を含有する。
【0077】
用語「食品製品」は、本明細書で使用するとき、ヒト又は動物によって安全に消費され得る任意の種類の製品を指す。このような食品製品は、固体形態、半固体形態、又は液体形態であってよく、1種以上の栄養素、食品、又は栄養補助食品を含み得る。例えば、食品製品は、以下の栄養素及び微量栄養素を更に含み得る:タンパク質源、脂質源、炭水化物源、ビタミン及びミネラル。組成物はまた、抗酸化物質、安定剤(固体形態で提供される場合)又は乳化剤(液体形態で提供される場合)も含有し得る。
【0078】
用語「機能性食品製品」は、本明細書で使用するとき、追加的な健康増進機能又は疾病予防機能を個体に提供する食品製品を指す。
【0079】
用語「健康な加齢のための製品」は、本明細書で使用するとき、健康な加齢に関連する追加的な健康増進機能又は疾病予防機能を個体に提供する製品を指す。
【0080】
用語「乳製品」は、本明細書で使用するとき、雌牛、ヤギ、ヒツジ、ヤク、ウマ、ラクダ、及びその他の哺乳動物などの動物の乳又は乳の画分から製造された食品製品を指す。乳製品の例は、低脂肪乳(例えば、脂肪分0.1%、0.5%又は1.5%)、無脂肪乳、粉乳、全乳、全脂乳製品、バター、バターミルク、バターミルク製品、スキムミルク、スキムミルク製品、高乳脂肪製品、コンデンスミルク、クリームフレッシュ、チーズ、アイスクリーム、及び菓子製品、プロバイオティクス飲料又はプロバイオティクスヨーグルトタイプの飲料である。
【0081】
「乳代替製品」という用語は、乳製品に類似しているが、乳を用いずに製造された製品を指す。
【0082】
「乳」という用語は、1回以上の搾乳によって得られる、泌乳動物の正常乳腺分泌物であって、添加も抽出も行われずに液体乳としての消費又は更なる加工を意図されるものであるとして、Codex Alimentariusにより定義されている。
【0083】
用語「医薬処方物」は、本明細書で使用するとき、少なくとも1種の医薬活性剤、化学物質、又は薬物を含む組成物を指す。医薬処方物は、固体形態又は液体形態であってよく、当業者により識別され得る少なくとも1種の追加の活性剤、担体、ビヒクル、添加物、又は助剤を含み得る。医薬処方物は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、又はシロップ剤の形態とすることができる。
【0084】
用語「飲料製品」は、本明細書で使用するとき、個体が安全に摂取し得る液体形態又は半液体形態の栄養製剤を指す。
【0085】
用語「規定食製品」は、本明細書で使用するとき、カロリー含有量が制限及び/又は低減された食品を指す。
【0086】
用語「ペットフード製品」は、本明細書で使用するとき、ペットによる摂取を意図した栄養製剤を指す。本明細書で参照されるペット又はコンパニオンアニマルは、イヌ、ネコ、鳥、魚、げっ歯類、例えば、マウス、ラットなど、から選択される動物として理解されるべきである。
【0087】
用語「栄養補助食品」は、本明細書で使用するとき、他の方法では十分な量が個体に摂取されない可能性のある栄養素を当該個体に提供する栄養製剤を指す。例えば、栄養補助食品としては、ビタミン、ミネラル、繊維、脂肪酸、又はアミノ酸を挙げることができる。栄養補助食品は、例えば、丸剤、錠剤、トローチ剤、咀嚼カプセル剤若しくは錠剤、錠剤若しくはカプセル剤、又は例えば水に溶解すること又は食物に振りかけることができる粉末サプリメントの形態で提供され得る。栄養補助食品は、典型的には、選択された栄養素を提供するが、対象の全栄養ニーズの大部分に相当するものではない。典型的には、栄養補助食品は、対象の1日のエネルギー必要量の0.1%、1%、5%、10%、又は20%超に相当しない。栄養補助食品は、妊娠中に、例えば、母体栄養補助食品として使用され得る。
【0088】
上記のように、scyllo-イノシトールは、例えば、購入されても合成されてもよい。いくつかの用途では、例えば、scyllo-イノシトールが天然資源から提供されると、消費者にとって好ましくなり得る。scyllo-イノシトールは、例えば、植物濃縮物又は果実濃縮物、例えば、ココナツ、ソバなどの穀類、及び柑橘類中に存在し得る。scylloイノシトールは、硬骨魚類又は他の深海動物中にも存在する。scyllo-イノシトールは、これらの資源から抽出されてもよく、これらの原材料又はその抽出物の形態で用いられてもよい。当業者は、そのような抽出物/原材料によって送達されるscyllo-イノシトールの量を、上記抽出物/原材料中のscyllo-イノシトールの濃度及び用いられる抽出物/原材料の量に基づいて計算できるであろう。したがって、本発明の一実施形態では、scyllo-イノシトールは、硬骨魚類又は他の深海動物からの抽出物の形態で用意される。本発明の別の実施形態では、scyllo-イノシトールは、例えば、ココナツなどの果実、ソバなどの穀類、柑橘類、及びこれらの組み合わせからの抽出物の形態で提供される。
【0089】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解されたい。特に、本発明の製品のために記載された特徴を本発明の使用と組み合わせてよく、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。
【0090】
本発明を実施例によって説明してきたが、特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、変更及び改変を加えることができることを理解されたい。
【0091】
「X及び/又はY」の文脈で使用される用語「及び/又は」は、「X」又は「Y」、又は「X及びY」として解釈すべきである。
【0092】
本明細書で使用される数値の範囲には、明確に開示されるかどうかに関わらず、この範囲内に含まれる全ての数字及び数字の部分集合を含むことが意図されている。更に、これらの数値の範囲は、この範囲内の任意の数字又は数字の部分集合を対象とする請求項をサポートするために与えられていると解釈すべきである。例えば、1~10という開示は、1~8、3~7、4~9、3.6~4.6、3.5~9.9などの範囲をサポートするものと解釈されたい。
【0093】
特別の定めのない限り、又は言及された文脈によって相容れないものと明確に暗示されていない限り、本発明の単一の特徴又は単一の制限へのあらゆる言及は、それに対応する複数の特徴又は複数の制限を含むものとし、複数の特徴又は複数の制限へのあらゆる言及は、それに対応する単一の特徴又は単一の制限を含むものとする。
【0094】
別段の定義がされていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって通常理解されているものと同じ意味を持つ。
【0095】
更に、既知の均等物が特定の特徴に対して存在する場合、かかる均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定例から明らかである。
【実施例】
【0096】
実施例1:
雌のGottingenミニブタ17匹を、生後約12日で雌親から離乳して人工飼育システムに移し、量を制御して代用乳を与えた。上記のブタを、11週齢で、量を制御した、週間平均体重増加を300g/週とするための通常食(13%タンパク質、2%脂肪、33%CHO、3.3MCal GE/kg)、又は体重増加を1kg/週とするための軽度の肥満食(13%タンパク質、14%脂肪、33%cho、4.4MCal GE/kg)のいずれかを受け入れるように、ランダムに割り付けた。
【0097】
高インスリンクランプ及び高血糖クランプを、47~48週齢で実施した。クランプの4~7日前に、カテーテルを頚静脈及び頸動脈に取り付けた。
【0098】
高インスリン-正常血糖クランプの間、クランプ開始を基準にして、-30、-10、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、135、150、165、及び180分において、血糖モニタリングのために血液試料を採取した。血糖測定のための最初の血液試料の前に、5mLのEDTA血液試料を採取して、インスリン溶液を調製した。インスリン溶液は、3.6×体重のヒトインスリン(マイクロリットル単位)+2000μLのブタ自身の血漿のインスリンを含み、58mLの無菌生理食塩水(NaCl)で調合した。t=0において、インスリン溶液のプライム用量を、99mL/時の用量で2:00分間投与した。このボーラスの後、クランプの残りの期間に、インスリン溶液を10mL/時で注入した。加えて、20%のグルコース溶液の注入を、体重mL/時のレベルで開始した(ブタの体重が50kgのとき、グルコース注入の開始レベルは50mL/時であった)。t=120以降における血糖値の目標レベルは、3.5~4.0mmol/Lとした。
【0099】
高血糖クランプの間、クランプ開始後-30、-2、10、20、30、40、50、55、60、70、80、及び90分において、血糖モニタリングのために血液試料を採取した。t=0において、20%グルコース溶液(体重mL/時の3倍)の注入を、t=50において、アルギニンボーラス(体重mLの80%)を提供した。t=30~t=50及びt=70~t=90の両方における血糖値の目標レベルは、10mmol/Lであった。
【0100】
血漿scyllo-イノシトールレベルを、検証済みの方法を使用してUPLC-MSMSによって定量測定した。
【0101】
高インスリン-正常血糖クランプは、全身インスリン感受性の評価のゴールドスタンダードとみなされる。この手順の間のグルコース注入は、インスリン刺激時のインスリン感受性組織のグルコースクリアランス能力の直接の尺度である。正常血糖及び血中インスリンの超生理学的濃度は、それぞれインスリンの連続注入及び調節された連続グルコース注入によって達成される。
【0102】
【0103】
図1は、非肥満雌ミニブタ(白丸)と肥満雌ミニブタ(黒丸)における高インスリン-正常血糖クランプの定常状態中の血漿scyllo-イノシトール濃度とグルコース注入速度との間の相関関係を示す(P<0.01、r
2=0.45)。これらのデータは、循環血漿中scyllo-イノシトール濃度とグルコースクリアランスに関与する末梢インスリン感受性組織のインスリン感受性との間の直接的な関連性を示す。
【0104】
実施例2:
NiPPeR研究への参加を中止した271名の女性がこのサブ研究に含まれた。NiPPeR研究は、様々な研究倫理審査委員会よって承認され、研究デザインは公開されている(Trials;2017;18:131)。この研究に含まれる生殖可能年齢の女性を、空腹時グルコース及び経口グルコース負荷試験(OGTT)の結果に基づいて、正常血糖(NGT)、耐糖能障害(IGT)、及び2型真性糖尿病(T2DM)として分類した。2時間のグルコースが7.8mmol/L未満のレベルの対象を耐糖能正常(NGT)とみなし、2時間のグルコースが7.8~11.1mmol/Lの対象を耐糖能障害(IGT)を有するとみなした。空腹時血漿グルコース(IFG)レベル(≧5.6mmol/L)の個体は、空腹時血糖障害を有するものとして分類した。IFG及びIGTの両方の対象を合せてグループ化した。2時間のグルコースが11.1mmol/L超の対象は、2型真性糖尿病(T2DM)を有するとみなした。
【0105】
血漿scyllo-イノシトールレベルを、OGTT前のベースラインにおいて、検証済みの方法を使用してUPLC-MSMSによって定量測定した。糖化ヘモグロビン(HbA1C)も、各試料で、ベースラインにおいて測定した。OGTT中のインスリン感受性の尺度としてMatsuda indexを評価し、ウェブサイト(http://mmatsuda.diabetes-smc.jp/xpoints.html)から、Matsuda indexのWeb計算機を0、30及び120分の時点のみを有する研究にカスタマイズして使用することで得た。
【0106】
【0107】
本発明者らの知る限り、
図2は、血漿scyllo-イノシトールレベルが、全身インスリン感受性の良好な近似であるMatsuda indexと正かつ有意に(P<0.001)関連したという、ヒトにおける驚くべきかつ初の証拠を示す。健康、前糖尿病、及びT2DMの生殖年齢の女性を調べることで、全身レベルにおけるインスリン感受性は、血漿中に測定されるscyllo-イノシトールのレベルが高いときに改善されていることが示され、scyllo-イノシトールが有効なインスリン増感剤として見なされ得ることが示唆される。
【0108】
実施例3
実施例2と同じヒトコホートで測定した場合、
図3は、糖化ヘモグロビンが、耐糖能正常、前糖尿病、及びT2DMの生殖年齢の女性の血漿scyllo-イノシトールレベルと負かつ有意に(P=0.0002)関連したことを初めて示す。したがって、驚くべきことに、血漿scyllo-イノシトールレベルが低い方が、8~12週間の平均血糖値を反映するHbA1C(血糖管理の長期標準を提供する)は高かった。注目すべきことに、42~47mmol/mLのHb1Acレベルは人々が前糖尿病を有することを示し、48mmol/mLを超えると人々が糖尿病を有することを示す。
【0109】
【0110】
【0111】
【国際調査報告】