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特表2022-548561カムシャフトのバルブの位相を変更する装置を備えた内燃エンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】カムシャフトのバルブの位相を変更する装置を備えた内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
F01L1/356 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515788
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 IB2020058451
(87)【国際公開番号】W WO2021048801
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019000016271
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ ウォルター
【テーマコード(参考)】
3G018
【Fターム(参考)】
3G018AA15
3G018AB02
3G018CA08
3G018CA09
3G018DA29
3G018DA70
3G018EA02
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA17
3G018GA18
(57)【要約】
本発明は、乗用座席を有する自動車用の内燃エンジン1、1B、1C、1Dであり、ドライブシャフト300に対する第1の複数のサクションバルブまたはリリーフバルブ110、220のタイミングを変更する少なくとも第1の遠心装置2、2Bを備える内燃エンジンに関する。装置は、複数のバルブを制御する第1のカムシャフト10、20に遊動的に取り付けられた駆動ディスク11、11Bと、同じカムシャフト10、20と一体である少なくとも1つの従動ディスク12、12Bとを備える。両ディスク11、12の回転速度が所定の閾値を超えたとき、駆動ディスク11、11Bに対して従動ディスク12、12Bの相対回転を引き起こすように、駆動ディスク11から従動ディスク12、12Bに運動を伝達するための駆動要素40が両ディスク11、12間に介在している。エンジンは、回転を引き起こすように、ドライブシャフトと駆動ディスク11、11Bとを機械的に接続する分配システム5を備える。エンジンは、駆動ディスク11、11Bと一体の第1のギア15と、第2のカムシャフト10、20に取り付けられ、回転が第2のシャフトの回転を直接または間接的に引き起こす第2のギア16とを備える。第2のギア16は、第1のギア15と噛み合い、第1のカムシャフトに取り付けられた駆動ディスク11、11Bの回転が、エンジンの他の複数のリリーフまたはサクションバルブ110、220を制御するために選択された第2のカムシャフト10、20の回転を引き起こす。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗車可能な座席を有する自動車用の内燃エンジン(1、1B、1C、1D)であって、前記エンジン(1、1B)は、ドライブシャフト(300)と、複数のサクションバルブ(110)を制御する第1のカムシャフト(10)と、複数のリリーフバルブ(220)を制御する第2のカムシャフト(20)と、を備え、前記エンジン(1、1B、1C、1D)は、前記複数のバルブのうちの1つの、バルブ(110、220)のタイミングを前記ドライブシャフト(300)に対して変更するための少なくとも第1の遠心装置(2、2B)を備え、前記第1の遠心装置(2、2B)は、
-前記複数のバルブのうちの前記1つを制御する前記カムシャフト(10、20)のうちの1つに遊動的に取り付けられた駆動ディスク(11、11B)であって、前記カムシャフト(10)のうちの前記1つの回転軸(101、102)を中心に回転する、駆動ディスク(11、11B)と、
-前記カムシャフト(10、20)のうちの前記1つと一体である少なくとも1つの従動ディスク(12、12B)と、
-前記駆動ディスク(11、11B)と前記従動ディスク(12、12B)との間で運動を伝達するための駆動要素(40)であって、前記ディスク(11-12、11B-12B)および前記駆動要素(40)は、前記ディスク(11-12、11B-12B)の回転速度が所定の閾値を超えると、前記駆動ディスク(11、11B)に対する前記従動ディスク(12、12B)の相対回転を引き起こすように構成される、駆動要素と、
-前記ドライブシャフト(300)と前記駆動ディスク(11、11B)とを機械的に接続し、その回転を引き起こす分配システム(5)と、
を備え、
前記エンジン(1)は、前記駆動ディスク(11、11B)と一体である第1のギア(15)と、前記カムシャフト(10、20)のうちの他方に取り付けられる第2のギア(16)であって、前記第2のギア(16)の回転が前記カムシャフト(10、20)のうちの前記他方の回転を直接または間接的に引き起こす、第2のギア(16)と、を備え、前記第2のギア(16)は、前記第1のギア(15)に直接噛み合い、前記駆動ディスク(11、11B)の回転が前記複数のバルブ(110、220)のうちの他方を制御する前記カムシャフト(10、20)のうちの前記他方の回転を引き起こす、ことを特徴とする、
自動車用の内燃エンジン(1、1B、1C、1D)。
【請求項2】
前記分配システム(5)は、前記ドライブシャフト(300)にキー止めされた第1の分配ホイール(51)と、前記第1のディスク(11、11B)と一体である第2の分配ホイール(52)と、前記ドライブシャフト(300)の回転が前記駆動ディスク(11、11B)に伝達されるように前記分配ホイール(51、52)間を接続する柔軟な駆動要素(53)と、を備える、請求項1に記載のエンジン(1、1B、1C、1D)。
【請求項3】
前記エンジン(1、1B、1C、1D)は、前記駆動ディスク(11、11B)と回転において一体であるスリーブ本体(62)を備え、前記駆動ディスク(11)は、前記スリーブ本体(62)の第1端に配置され、このスリーブ本体は、前記第1端とは反対の第2端に規定されたフランジ部分(61)を備え、前記第2の分配ホイール(52)が前記スリーブ本体(62)の前記フランジ部分(61)に接続されている、請求項2に記載のエンジン(1、1B、1C、1D)。
【請求項4】
前記エンジン(1、1B、1C、1D)は、前記カムシャフト(10、20)のうちの前記1つの回転軸(101)に平行な方向に沿って前記従動ディスク(12、12B)に対する軸方向の並進に対抗することによって前記駆動ディスク(11、11B)に作用する軸方向予圧手段(70)を備える、請求項3に記載のエンジン(1、1B、1C、1D)。
【請求項5】
前記第1のギア(15)は、ギアホイールの構成をとる前記駆動ディスク(11、11B)と一体に作られている、請求項1~4のいずれか1項に記載のエンジン(1、1B)。
【請求項6】
前記第2のギア(16)は、前記カムシャフト(10、20)のうちの前記他方と一体に作られている、請求項1~5のいずれか1項に記載のエンジン(1、1B)。
【請求項7】
前記第1のギア(11)は、前記第1のカムシャフト(10)に遊動的に取り付けられ、前記第2のギア(16)は、前記第2のカムシャフト(20)に取り付けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジン(1)。
【請求項8】
前記駆動ディスク(11B)は、前記第2のカムシャフト(20)に遊動的に取り付けられ、前記第2のギア(16)は、前記第1のカムシャフト(10)に取り付けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジン(1B)。
【請求項9】
前記エンジンは、前記カムシャフト(10、20)のうちの前記他方によって制御される前記バルブ(110、220)のタイミングを変更するためのさらなる遠心装置(2、2B)を備え、前記さらなる遠心装置(2A、2B)は、
-前記カムシャフト(10、20)のうちの前記他方に遊動的に取り付けられたさらなる駆動ディスク(11、11B)であって、前記カムシャフト(10)のうちの前記他方の回転軸(101)を中心に回転する、さらなる駆動ディスク(11、11B)と、
-前記カムシャフト(10、20)のうちの前記他方と一体である、さらなる従動ディスク(12、12B)と、
-前記さらなる駆動ディスク(11、11B)と前記さらなる従動ディスク(12、12B)との間で運動を伝達するためのさらなる駆動要素(40)であって、前記さらなるディスク(11-11B、12-12B)および前記さらなる駆動要素(40)は、前記さらなるディスク(11-11B、12-12B)の回転速度が所定の閾値を超えると、前記さらなる第1のディスク(11B)に対する前記さらなる第2のディスク(12B)の相対回転を引き起こすように構成される、さらなる駆動要素(40)と、
を備え、
前記第2のギア(16)は、前記さらなる駆動ディスク(11、11B)と一体であり、前記カムシャフト(10、20)のうちの前記一方に取り付けられた前記駆動ディスク(11)の回転が、前記カムシャフト(10、20)のうちの前記他方に取り付けられた前記さらなる駆動ディスク(11B)に伝達される、請求項1~6のいずれか1項に記載のエンジン(1C、1D)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗車可能な座席を有する車両の製造分野に関する。この用語は、一般に、主に人を輸送することを目的とした、2輪、3輪または4輪を有するオートバイ(motorcycle)または自動車(motor vehicle)を意味する。本発明は、特に、複数の(サクションまたはリリーフ)バルブを制御するためのカムシャフトと、ドライブシャフトに対する前記カムシャフト、すなわち前記バルブ、の位相を変更するための装置とを備える、乗車可能な座席を有する車両のための内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、乗車可能な座席を有する車両の内燃エンジンは、シリンダの燃焼室内のピストンの動きによって回転するドライブシャフトを備える。エンジンは同様に、燃焼室に混合気を導入するための1つまたは複数のサクションバルブ(suction valve)と、燃焼ガスを排出するための1つまたは複数のリリーフバルブ(relief valve)とを備える。サクションバルブとリリーフバルブは、ドライブシャフトに機械的に接続されたそれぞれのカムシャフトによって、典型的にはギアホイール、ベルト、またはチェーンからなる分配システム(distribution system)を介して制御される。したがって、分配システムを介したカムシャフトの回転運動は、ドライブシャフトの回転運動と同期している。
【0003】
「タイミング(timing)」とは、通常、ピストンの所定位置を基準として、サクションバルブとリリーフバルブの開閉が発生する瞬間を意味する。特に、タイミングを定義するために、BDC(下死点)を基準として開バルブ進角(または遅角)(opening advance (or delay) angle)が考慮され、UDC(上死点)を基準として閉バルブ進角(または遅角)(closing advance (or delay) angle)が考慮される。進角とは、バルブが完全に開/閉位置に到達し、そのストロークが終了する瞬間と定義される。したがって、進角の値は、バルブが開動作(全閉状態から)または閉動作(全開状態から)を開始する瞬間となる。
【0004】
ある時間間隔、すなわちドライブシャフトの所与の回転角度において、サクションバルブとリリーフバルブとが同時に開いていることは同様に知られている。この区間は「交差角(crossing angle)」と呼ばれ、排気ガスが燃焼室から素早く出て、新鮮なガスの吸入を増加させることができる吸入を誘発するステップである。このため、サクションバルブとリリーフバルブのタイミングが交差角の値となる。
【0005】
この交差角の値によって、ドライブシャフトの回転速度に応じたさまざまな効果が得られることは周知のとおりである。交差角の値を大きくすると、高回転域での性能は向上するが、低回転域ではエンジンの効率が悪くなり、さらに燃焼効率が悪くなるため、排気ガスが増加する。逆に、交差角をかなり抑えると、高回転域でエンジンの効率が低下する。
【0006】
上記に関し、サクションバルブおよび/またはリリーフバルブのタイミングを回転数に応じて変更する、すなわち、バルブの交差角の値を変更する技術的解決策が種々提案されている。
【0007】
特許文献1には、このような技術的解決策の1つが記載されている。具体的には、特許文献1は、分配システムが、2つのカムシャフトからなるDOHC(ダブルオーバーヘッドカムシャフト)タイプのエンジンであり、一方がサクションバルブ、他方がリリーフバルブの制御を目的とし、これらのカムシャフトはエンジンヘッドの上方に配置されているエンジンを記載している。この分配システムは、ドライブシャフトと一体化した駆動ホイールと、2つの従動ホイールであって各々が2つのカムシャフトのうちの1つの端部に遊動的に取り付けられている(mounted idle)2つの従動ホイールとの、3つのギアホイールを備える。3つの(駆動と従動の)ホイールは、駆動ベルトによって接続されている。
【0008】
対応するバルブのタイミングを変更するための装置が、カムシャフトの各々に設けられている。このような装置は、分配システムの従動ホイールと一致する駆動要素を備える。この装置は、駆動要素に隣接する位置をとるように、溝付きプロファイルカップリングを介してカムシャフトの前記端部にキー止めされたガイド要素をさらに備え、それにより、駆動要素の一側面がガイド要素の一側面に面する。従動ホイールとガイド要素との間には、ボール形状の動きの駆動要素が介在している。各駆動要素は、駆動要素の側面に定義された溝に部分的に収容され、ガイド要素の側面に定義された対応する溝にも部分的に収容される。駆動要素の溝は、カムシャフトの回転軸に直交する平面上で評価される傾斜を有し、この傾斜は、ガイド要素の溝とは異なっている。したがって、各駆動要素は、部分的にしか向かい合っていない2つの溝の間に収容される。さらに、両方の構成要素(駆動要素およびガイド要素)の関連する溝は、放射状断面(radial sectional plane)上で評価される湾曲したプロファイルを有している。
【0009】
特許文献1に記載の装置は、ガイド要素に作用し、ガイド要素を軸方向に従動ホイールに押し付けるスラスト手段をさらに備えている。ドライブシャフトの回転は、上述した分配システムを介して、対応するカムシャフトに取り付けられた対応する駆動要素に伝達される。駆動要素の回転運動は、駆動要素によってカムシャフトに伝達される。回転数が上昇すると、遠心力によって駆動要素は溝に沿って外側へ、つまりカムシャフトの回転軸から離れる方向へ押し出される。溝の形状の効果により、ガイド要素は、軸方向に移動すると同時に、駆動要素に対して相対回転を起こす。この回転により、カムシャフトが駆動要素に対して相対回転し(ドライブシャフトと同位相)、したがって、対応するバルブのタイミングが変更される。
【0010】
上述のように、特許文献1に記載された技術的解決策における分配システムは、カムシャフトの各々に従動ホイールを取り付けることを提供している。この分配システムの構成は、一方では、サクションバルブとリリーフバルブのうちの1つの位相変更を促進するが、他方では、スペースとコストの理由から、従来は必ずしも実施可能ではない。
【0011】
吐出口のみに位相差を設ける場合、従来は添付の図1図3に示すように、分配システムを簡略化する。特に、サクションバルブ(711)を制御する第1のシャフト(701)と、リリーフバルブ(712)を制御する第2のシャフト(702)とが識別される。分配システム(500)は、ドライブシャフト(図示せず)と一体である第1の駆動ホイール(801)と、第1のシャフト(701)の端部に剛性的にキー止めされた第2の駆動ホイール(802)と、可撓要素(803)とを備える。また、第1のシャフト(701)には、さらなるギアホイール(850)がキー止めされており、さらなるギアホイールは、常に同じ第1のシャフト(701)と同位相で回転する。
【0012】
吐出時に位相変化を与えることで、遠心式位相変更装置(centrifugal phase changer device)が第2のシャフト(702)に関連づけられる。このような装置は、特許文献1に記載されたものに機能および構造を帰属させることも可能である。いずれにせよ、位相変更装置が関係しているので、第2のシャフト(702)に遊動的に取り付けられている歯付きディスク(901)と、第2のカムシャフト(702)と一体であるガイド要素(902)とが設けられている。歯付きディスク(901)とガイド要素(902)との間に、同じ原理にしたがって、または特許文献1について説明されたものに帰属する駆動要素を配置してよい。
【0013】
位相変更装置の歯付きディスク(901)は、第1のカムシャフト(701)と一体のギアホイール(850)に噛み合っている。これにより、ドライブシャフトと常に同位相で回転するギアホイール(850)の回転は、位相変更装置を形成する歯付きディスク(901)を介して第2のカムシャフト(702)に伝達される。
【0014】
したがって、特許文献1に記載された解決策に関して、図1図3に示された解決策における分配システムは、ドライブシャフトがカムシャフトの一方にのみ動作的に接続されているので、より単純な構成を有している。したがって、後者は常にドライブシャフトと同位相を保ち、他方のカムシャフトの回転を引き起こすギアホイール(850)を支持する。図1および図3に示された解決策が、容積および製造コストの点で分配システムを単純化する一方で、このような解決策は、いかなる場合でも、位相変更が一種類のバルブ(従来はリリーフバルブ)のみに提供される場合にのみ適用可能であることに変わりはない。実際、既知の解決策(図1図3)では、2つのカムシャフトのうちの1つが、常にドライブシャフトと同位相であることが必要である。
【0015】
図1図3に示された解決策の別の制限は、一方のカムシャフトから他方のカムシャフトに運動を伝達する構成要素の位置、すなわちホイール(850)および位相変更装置(200)の位置に特定される。このような構成要素は、中間位置、すなわち対応するカムシャフト(701、702)の両端から遠い位置を占めている。この中間位置は、エンジンのシリンダヘッドおよび関連する連合体(fusion)を設計する上で重要な点である。実際、シリンダヘッドは、2つの駆動要素(850-200)が配置される領域で適切な拡がりを提供する。同時に、中間位置は、より長く、より負担の大きい加工を必要とするため、製造コストの面で不利であることは確かである。
【0016】
上記の考察に関して、一方では単純な分配システムを使用することを可能にし、同時に、位相変更が吐出または吸入だけで必要とされる場合、および位相変更が吐出および吸入で必要とされる場合の両方で使用可能である新しい技術的解決策を手配する必要性が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第9719381号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の主要な課題は、上記の欠点を克服することができる、乗車可能な座席を有する車両用の内燃エンジンを提供することである。この課題の範囲内において、本発明の第1の目的は、分配システムが部品数および体積の点で単純な構成を有するエンジンを提供することである。前記第1の目的に関連する第2の目的は、2つのカムシャフトの一方への回転運動の伝達が、他方のシャフトに取り付けられた部品を介して行われ、このような伝達が、(吐出時および/または吸入時に)要求される位相変更の種類に関連して汎用的であるエンジンを提供することである。また、分配システム、カムシャフト、および回転を伝達するための部品の構成により、エンジンのシリンダヘッドの設計および製造が容易になるエンジンを提供することが、他の目的である。本発明のさらに他の目的は、信頼性が高く、製造が容易で、コスト競争力のあるエンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本出願人は、分配システムを、一方のカムシャフトに取り付けられた位相変更装置の駆動要素に接続し、2つのギアホイールを介して、同じ駆動要素の回転を他方のカムシャフトに伝達することによって、上記に示した課題および目的を達成することができることを確認した。より詳細には、上記課題および目的は、乗用座席を有する自動車用の内燃エンジンであって、当該エンジンが、ドライブシャフトと、複数のサクションバルブを制御する第1のカムシャフトと、複数のリリーフバルブを制御する第2のカムシャフトとを備える、内燃エンジンを通じて達成される。このエンジンは、前記複数のバルブのうちの1つのバルブのタイミングを、前記ドライブシャフトに対して変更するための少なくとも第1の遠心装置を備えている。このような装置は、
-前記複数のバルブのうちの前記1つを制御する前記カムシャフトのうちの1つに遊動的に取り付けられた駆動ディスクであって、前記カムシャフトのうちの前記1つの回転軸を中心に回転する駆動ディスクと、
-前記カムシャフトのうちの前記1つと一体化された少なくとも1つの従動ディスクと、
-前記駆動ディスクと前記従動ディスクとの間で運動を伝達するための駆動要素であって、前記ディスクの回転速度が所定の閾値を超えると、前記駆動ディスクに対する前記従動ディスクの相対回転を引き起こすように、前記ディスクおよび前記駆動要素が構成される、駆動要素と、
を備える。
【0020】
本発明に係るエンジンは、前記ドライブシャフトと前記駆動ディスクとを、その回転を引き起こすように機械的に接続する分配システムをさらに備える。
【0021】
また、本発明に係るエンジンは、前記駆動ディスクと一体の第1のギアと、前記カムシャフトのうちの他方に取り付けられる第2のギアであって、前記第2のギアの回転が前記カムシャフトのうちの前記他方の回転を直接または間接的に引き起こす、第2のギアと、を備えることを特徴としている。本発明によれば、前記駆動ディスクの回転が、前記複数のバルブのうちの他方を制御するために選択された前記カムシャフトのうちの他方の回転を引き起こすように、前記第2のギアが前記第1のギアと直接噛み合っている。したがって、2つのギアホイールは、相互に接触している。
【0022】
したがって、本発明は、位相変更装置の駆動ディスクの回転を利用して、同じ駆動ディスクが設置されているカムシャフトを回転させるだけでなく、2つのギアを介して他のカムシャフトを回転させることを提供する。したがって、分配システムは、ドライブシャフトの回転を前記駆動ディスクにのみ同期させるという課題を有するので、部品点数が少なく、比較的簡単な構成となる。同時に、駆動ディスクおよび分配に関与する2つのギアは、2つのカムシャフトの対応する端部の近くに設置し得るので、エンジンシリンダヘッドの設計および製造が簡素化される。
【0023】
可能な実施形態によれば、分配システムは、前記ドライブシャフトにキー止めされた第1の分配ホイールと、前記第1のディスクと一体である第2の分配ホイールと、前記ドライブシャフトの回転が前記駆動ディスクに伝達されるように前記分配ホイールを接続する柔軟な駆動要素と、を備えている。分配システムは、有利には、1つの分配ホイールのみを必要とし、多くの従来の解決策で提供されるような2つの分配ホイールは必要ない。
【0024】
前記エンジンは、好ましくは、前記駆動ディスクと回転一体型のスリーブ本体を備え、前記駆動ディスクは、前記スリーブ本体の第1端に配置され、このスリーブ本体は、前記第1端とは反対側の第2端に規定されたフランジ部分を備え、前記第2の分配ホイールは、前記スリーブ本体の前記フランジ部分に接続されている。スリーブ本体は、有利には、位相変更装置の組み立てと、分配システムとの接続を容易にする。また、エンジンの可能な検査および/または保守作業が簡略化される。
【0025】
可能な実施形態によれば、第1のギアは、ギアホイールの構成をとる前記駆動ディスクと一体に作られている。
【0026】
さらなる可能な実施形態によれば、第2のギアは、前記カムシャフトのうちの前記他方と一体に作られている。
【0027】
可能な実施形態では、第1のギアは、前記第1のカムシャフトに遊動的に取り付けられ(mounted idle)、前記第2のギアは、前記第2のカムシャフトに取り付けられている。したがって、この実施形態では、リリーフバルブが常にドライブシャフトと同じ位相を保つ一方で、サクションバルブの位相の変更が作動され得る。
【0028】
代替実施形態では、駆動ディスクは、前記第2のカムシャフトに遊動的に取り付けられ、前記第2のギアは、前記第1のカムシャフトに取り付けられている。この実施形態では、リリーフバルブの位相を変化させて作動させることができるが、サクションバルブは常にドライブシャフトと同位相を維持する。
【0029】
さらなる可能な実施形態によれば、前記エンジンは、前記カムシャフトのうちの前記他方によって制御される前記バルブの位相のタイミングを変更するためのさらなる遠心装置を備え、前記さらなる遠心装置は、
-前記カムシャフトのうちの前記他方に遊動的に取り付けられたさらなる駆動ディスクであって、前記カムシャフトのうちの前記他方の回転軸を中心に回転する、さらなる駆動ディスクと、
-前記カムシャフトのうちの前記他方と一体である従動ディスクと、
-前記さらなる駆動ディスクと前記さらなる従動ディスクとの間で運動を伝達するためのさらなる駆動要素であって、前記さらなるディスクの回転速度が所定の閾値を超えると、前記さらなる第1のディスクに対する前記さらなる第2のディスクの相対回転を引き起こすように、前記さらなるディスクおよび前記さらなる駆動要素が構成される、さらなる駆動要素と、
を備える。
【0030】
前記カムシャフトのうちの前記一方に取り付けられた前記駆動ディスクの回転が、前記カムシャフトのうちの前記他方に取り付けられた前記さらなる駆動ディスクに伝達されるように、前記第2のギアは、前記さらなる駆動ディスクと一体化されている。有利には、エンジンは、吸入時および吐出時の両方で、分配システムの同じ構成で位相変更を提供し得る。
【0031】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面の援用により非限定的な例として示される、本発明によるエンジンのいくつかの好ましい、しかし排他的ではない実施形態の以下の詳細な説明の検討から、より明らかになるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、従来技術から公知であるエンジンの概略図である。
図2図2は、従来技術から公知であるエンジンの概略図である。
図3図3は、従来技術から公知であるエンジンの概略図である。
図4図4は、本発明によるエンジンの可能な実施形態に関連する概略図である。
図5図5は、図4のエンジンのさらなる図である。
図6図6は、図5の切断線VI-VIに沿った断面図である。
図7図7は、図5の切断線VII-VIIに沿った断面図である。
図8図8は、図4のエンジンのさらなる図である。
図9図9は、図7に示された詳細IX-IXの拡大図である。
図10図10は、本発明によるエンジンの可能な実施形態に関連する概略図である。
図11図11は、本発明によるエンジンの可能な実施形態に関連する概略図である。
図12図12は、本発明によるエンジンの可能な実施形態に関連する概略図である。
図13図13は、本発明によるエンジンの可能な実施形態に関連する概略図である。
【0033】
図中の同じ数字および参照文字は、同じ要素または構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、乗車可能な座席を有する車両(この用語は一般に、主に人を輸送することを目的とした、2輪、3輪または4輪を有するオートバイまたは自動車を意味する)のための燃焼エンジンに関する。
【0035】
本発明によるエンジン1は、複数のサクションバルブ110および複数のサクションバルブ210をそれぞれ制御するために、第1の回転軸101を中心に回転する第1のカムシャフト10と、第2の回転軸102を中心に回転する第2のカムシャフト20と、を備えている。エンジン1は、同様に、ドライブシャフトに対する、2つのカムシャフト10、20のうちの一方のバルブ110、210のタイミングを変更するための第1の装置2を少なくとも備えている。
【0036】
図9図13に示す実施形態では、装置2を第1のカムシャフト10に適用して、ドライブシャフト300に対するサクションバルブ110の位相を変更する。しかし、図11の概略図に示すように、装置2は、リリーフバルブ220の位相を変更するために第2のカムシャフト20に動作的に関連付けられる可能性がある。したがって、主に、吸入側で(すなわちサクションバルブについて)位相変更が提供されるエンジンを参照して本発明を説明したが、技術的解決策は、吐出側で(すなわちリリーフバルブについて)位相変更が提供されるエンジンにも、必要な変更を加えて適用され得る。要するに、以下に示す、吸入側に位相変更を設ける構成のエンジンの第1のカムシャフトおよび第2のカムシャフトについての説明は、吐出側に位相変更を設ける構成のエンジンの場合にも、第2のカムシャフトおよび第1のカムシャフトについてそれぞれ有効であると考えられる。
【0037】
添付の図の一部(図4図9)は、本発明による内燃エンジン1の特定の部分のみを示し、本発明を理解するのに必須ではない他の部分は、例示的な明確さを増すという理由から示していない。他の添付図は、いずれにしても当業者には理解可能であるが、本発明によるエンジンの可能な実施形態を模式化したものに過ぎない。
【0038】
ドライブシャフトは、添付の図には示されておらず、むしろ参照数字300を有する軸で図式的に示されている。装置2は、説明の続きにおいて、「位相変更器(phase changer)2」または「位相変更装置(phase changer device)2」という用語でも示される。位相変更器2の構成要素を参照すると、用語「軸方向の(axial)」および「軸方向に(axially)」は、位相変更器が動作的に関連付けられる第1のカムシャフト10の回転軸101、102に沿って評価される距離、厚さ、および/または位置を指す。
【0039】
本発明によれば、採用される位相変更装置2は、遠心式(centrifugal type)であるため、それ自体公知の原理にしたがって動作する。装置2は、駆動ディスク11(または第1のディスク11)と、従動ディスク12(または第2のディスク12)と、複数の駆動要素40とを備え、これらの各々は、上記に示した2つのディスク11、12の間に介在される。駆動要素40およびディスク11、12は、回転速度が所定の閾値を超えると、第1のディスク11に対して第2のディスク12を回転させるように構成されている。
【0040】
この目的のために、それ自体既知の原理にしたがって、駆動ディスク11は、2つの構成要素(第1のカムシャフト10および第1のディスク11)が同じ回転軸101を中心に回転するように、第1のカムシャフト10に遊動的に取り付け(mounted idle)られる。第1のディスク11は、それが取り付けられている第1のカムシャフト10に対して回転の自由度を保つという意味で、「遊動的(idle)」であり、その逆もまた然りである。
【0041】
従動ディスク12は、同じ第1のカムシャフト10に接続されているが、一体的に、すなわち、同じ回転軸101、102と一体的に回転するように接続されている。したがって、2つのディスク11、12は、第1の回転軸101を中心に回転する。この点で、従動ディスク12は、(図のように)第1のカムシャフト10と1部品(one piece)として作られてもよいし、代替的に別々に作られて、それに(例えば、キー接続または溝付きプロファイルによる接続を介して)剛性的にキー接続されてもよい。
【0042】
遠心式位相変更器に従来から備えられているものによれば、駆動ディスク12の側面122に規定された第2の溝32に部分的に対面する第1の溝31が、駆動ディスク11の側面111に規定されている。駆動要素40の各々は、前記第1の溝31のうちの1つに部分的に収容され、前記第2の溝32のうちの1つに部分的に収容される。回転速度の増加によって遠心力が増加すると、駆動要素40の各々は、2つのディスク11、12の回転軸101に最も近い第1の位置と、同じ回転軸から最も遠い第2の位置との間で、2つの溝31、32に沿って移動する。場合によっては、前記第2の位置に到達することが第1のディスク11に対する第2のディスク12の相対回転を伴うように、第1の溝31は、第2の溝32とは異なる方法で方向および/または形状が構成される。このような並進(translation)は、ドライブシャフト300に対するバルブの位相の変更をもたらす。
【0043】
図9の詳細により、本発明による位相変更装置2の可能な、したがって非排他的な実施形態に言及することができる。特に示された実施形態では、位相変更器2は、第2のディスク12に対する第1のディスク11の軸方向移動に対抗するように、したがって、駆動要素40を2つのディスク11、12の間に、各々が収容されている2つの溝(第1の溝31および対応する溝32)内に維持するように構成された予圧手段(preloading means)70を備えている。
【0044】
図9に示す可能な非排他的な実施形態では、予圧手段70は、スリーブ本体62を第2のディスク12に向かって押すようにスリーブ本体62のフランジ部分61に作用する皿ばね(Belleville spring)71を備えている。皿ばね71は、フランジ部分61と、フランジ部分61が配置されたカムシャフト10の端部に同軸で螺合する調整ねじ72との間に介在されている。ねじ72の閉鎖により、皿ばね71が圧縮され、したがって、第1のディスク11が第2のディスク12から離れることに対抗する軸方向の力が生じる。
【0045】
したがって、軸方向予圧手段70は、上に示した特許文献1に記載された装置で生じるように、第2のディスク12に対する第1のディスク11の相対移動を防止するように構成することも、そのような移動に対抗するようにのみ構成することも可能である。
【0046】
図9に示す位相変更器2は、第1のディスク11と第2のディスク12との間に介在する駆動要素40を保持する手段6をさらに備えている。このような保持手段6は、駆動要素40に作用し、駆動要素40を上記で示した第1の位置に向けて(すなわち回転軸101に向けて)押し付ける傾向にある力を各々に加える。保持手段6の採用により、駆動要素40と溝31、32との間のクリアランスを回復することができ、したがって、伝達をより効率的にすると同時に、装置の構成要素自体の形状を簡素化することができる。
【0047】
図9に詳細に示された装置2の形状は、その新規かつ発明的な特徴が以下に説明される本発明にとって本質的なものではないことを再度指摘しておく。この点で、装置2は、上に示した特許文献1に記載された構成を取り得る。
【0048】
いずれにしても、本発明によれば、エンジン1は、ドライブシャフト300を駆動ディスク11に機械的に連結して、その回転軸101を中心にその回転を生じさせる分配システム5を備えている。
【0049】
再び、本発明によれば、駆動ディスク11は、第1のギア15と一体である。このような第1のギア15は、好ましくは、駆動ディスク11が車輪の構成をとるように、駆動ディスク11と1部品に作られる。要するに、この形状では、駆動ディスク11は、第1のギア15を規定する外リングギアを備えている。
【0050】
本発明によるエンジン1は、第2のギア16が第2のカムシャフト20上に取り付けられ、第2のギア16の回転が直接または間接的に第2のカムシャフト20の回転を引き起こすように構成されている。本発明によれば、第2のギア16は、第1のシャフト10に取り付けられた第1のディスク11の回転が、第2のギア16を介して、第2のカムシャフト20に伝達されるように、第1のギア15に噛み合わされる。有利には、第2のカムシャフト20の回転は、したがって、第1のカムシャフト10によって制御されるバルブのタイミングを変更するために設けられた位相変更装置2の駆動ディスク11によって引き起こされる。
【0051】
以下でより良く説明されるように、用語「直接(directly)」は、第2のギア16が第2のカムシャフト20と一体的に回転するように第2のカムシャフト上にキー止めされる可能な実施形態を意味する。代わりに、「間接的(indirectly)」という用語は、位相変更が吸入と吐出の両方で提供される可能な実施形態を指す。この仮説では、第2のギア16は、リリーフバルブのタイミングを変更するために第2のカムシャフト20と動作的に関連付けられたさらなる位相変更装置2Bの駆動ディスク11Bと一体である(図12および図13参照)。
【0052】
図5図9に示す可能な実施形態によれば、分配システム5は、ドライブシャフト300(図2に破線で示す)にキー止めされた第1の分配ホイール51と、第1のディスク11と一体の第2の分配ホイール52と、ドライブシャフト300の回転が位相変更器2の第1のディスク11に伝達されるように、2つの分配ホイール51、52を連結する(チェーンまたはベルトの形態の)柔軟な駆動要素53と、を備えている。
【0053】
実施形態(それは図4図9にも示されている)によれば、第2の分配ホイール52は、駆動ディスク11と1部品に作られたスリーブ本体(sleeve body)62のフランジ部分(flange portion)61に接続されている。特に駆動ディスク11は、フランジ部分61を規定する第2の端部とは反対側の、スリーブ本体62の第1の端部に規定されている。第2の分配ホイール52は、好ましくは、ねじ接続手段66を介してフランジ部分61に接続される(図4および図6参照)。図6図9を参照すると、スリーブ本体62は、好ましくは、既に上に示した目的のために、第1のディスク11が第2のディスク12に面するようにカムシャフト10の端部10Aに取り付けられる。
【0054】
図10図13は、本発明によるエンジンの4つの可能な実施形態(参照数字1、1B、1C、1Dで示される)の概略図である。図10に概略的に示された実施形態は、図4図9に示されたものに実質的に対応する。
【0055】
図11に示す実施形態は、本発明によるエンジン1Bを指し、このエンジンでは、吐出における位相変更が提供され、したがって、位相変更装置(参照数字2Bで示す)が第2のシャフト20と動作的に関連している。その結果、駆動ディスク(11Bで示される)は第2のカムシャフト20に遊動的に取り付けられ(mounted idle)、一方、従動ディスク(12Bで示される)は同じ第2のカムシャフト20と一体である。代わりに、駆動ディスク11Bと一体である第1のギア15と噛み合う第2のギア16が、第1のカムシャフト10にキー止めされている。本発明の原理によれば、分配システム5は、いかなる場合にも、駆動ディスク11Bの回転を引き起こすように構成されている。したがって、第2の分配ホイール52および同じ駆動ディスク11Bが一体化されたスリーブ62が、第2のカムシャフト20の端部に取り付けられている。
【0056】
図11に示す実施形態において注目すべきは、サクションバルブ110がドライブシャフト300に対して常に同じタイミングを保っていることである。実際、分配システムによって引き起こされる第1のカムシャフト10の回転は、第1のギア15(駆動ディスク11Bと一体)および第2のギア16によって規定されるトランスミッションを介して伝達される。したがって、第2のカムシャフト20は、このような伝達から除外され、この第2のカムシャフトは、リリーフバルブ220の位相変更を引き起こすために、駆動ディスク11Bに対してその角度位置を自由に変更することができるままである。
【0057】
図12は、(既に上述した)可能な実施形態に関し、この場合、エンジンは、サクションバルブ110のタイミングを変更するために第1のカムシャフト10に動作的に関連付けられた第1の装置2と、リリーフバルブ220の位相を変更するために第2のカムシャフト20に関連付けられた第2の装置(2Bで示される)と、を備えている。つまり、図12の構成では、吸入用と吐出用の両方に位相変更が設けられている。
【0058】
したがって、第1の装置2Aの駆動ディスク11は、第1のカムシャフト10に遊動的に取り付けられ(mounted idle)、一方、関連する従動ディスク12は、同じ第1のカムシャフト10との回転において一体化している。全く同様に、第2の装置2Bの駆動ディスク(11Bで示す)は、第2のカムシャフト20に遊動的に取り付けられ(mounted idle)、一方、関連する従動ディスク(12Bで示す)は、第2のカムシャフト20との回転において一体化している。分配システムは、第1の装置2の駆動ディスク11の回転を引き起こすように構成されている。したがって、第2の分配ホイール52に接続されているスリーブ62は、第1のカムシャフト10の端部に遊動的にキー止め(keyed idle)されている。
【0059】
図12の実施形態では、第2のギア16は、リリーフバルブ220のタイミングを変更するために設けられた第2の装置2Bの第1のディスク11Bと一体である。この実施形態では、第2のギア16は、第2のカムシャフト20に遊動的に取り付けられ(mounted idle)、第2の装置2Bを介して間接的に第2のカムシャフト20に運動を伝達する。
【0060】
再び図12の実施形態を参照すると、スリーブ62によって形成された構成部品の組立全体では、第1の装置2の駆動ディスク11、第1のギア15、第2のギア16、第2の装置2Bの駆動ディスク11Bは、ドライブシャフト300と常に同位相で回転する。2つのカムシャフト10、20、したがって関連するバルブ110、220は、代わりに、ドライブシャフト300に対してそのタイミング角度を変更してもよい。
【0061】
図13に示す実施形態は、分配システムが第2の装置2Bの駆動ディスク11Bの回転を引き起こすように構成されている点で、図12のものと専ら異なる。ここでは、第2の分配ホイール52に接続されるスリーブ62は、したがって、第2のカムシャフト20の端部に遊動的にキー止め(keyed idle)されている。したがって、第1のギア15は第2の装置2Bの駆動ディスク11Bと一体であり、第2のギア16は第1の装置2の駆動ディスク11と一体である。したがって、2つのギア15、16の動作位置は、図12に示す実施形態に対して反転している。いずれにしても、論じた両方の実施形態(図12および図13)について、分配システム5に接続された駆動ディスク(11または11B)に付与された回転は、同じ駆動ディスク(11または11B)が遊動的に取り付けられ(mounted idle)ているカムシャフト(10または20)を回転させるためだけでなく、(2つのギア15、16を介して)他のカムシャフト(20または10)を回転させるためにも利用される。この解決策により、カムシャフトのうちの1つに関連する1つの分配ホイールが単独で提供されるため、いずれにしても分配システムの単純な構成を維持することができる。つまり、同じ分配システムを用いることで、1種類のバルブ(吸入または吐出)に対してのみ位相変更を与える構成と、2種類のバルブ(吸入および吐出)に対して位相変更を与える構成の両方に使用することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】