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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】光計算装置及び計算方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20221114BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20221114BHJP
   G06E 3/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
G02F3/00
G06N99/00 180
G06E3/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515890
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2020114614
(87)【国際公開番号】W WO2021047614
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】201910860799.4
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ユイン,ジーチアーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャーン,シアーン
(72)【発明者】
【氏名】ドーン,シヤオウエン
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA06
2K102BA08
2K102BA18
2K102BA31
2K102BB02
2K102BC01
2K102BD01
2K102CA18
2K102DA04
2K102DB04
2K102DC07
2K102DC09
2K102EA25
2K102EB02
(57)【要約】
光計算装置と計算方法を提供し、動作効率が高い光Isingマシンを提供する。光計算装置は、第1のスピンアレイ、光フィードバックネットワーク、および第2のスピンアレイを含み、光フィードバックネットワークは、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイに別々に接続される。第1のスピンアレイは、N個の光パルスまたはN個の電気信号を含む第1の信号グループを受信し、N個のスピン信号を含む第1のスピン信号グループを生成することができる。光フィードバックネットワークは、第1のスピン信号グループを受信し、第1のスピン信号グループおよび指定された第1のデータに基づいて、N個のフィードバック信号を含む第1のフィードバック信号グループを生成することができる。第2のスピンアレイは、第1のフィードバック信号グループおよび第1の信号グループを受信し、第1のフィードバック信号グループおよび第1の光パルスグループに基づいて、N個のスピン信号を含む第2のスピン信号グループを生成する。第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイは、複数の信号を並列に処理して、光計算装置の計算効率を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光計算装置であって、
第1の信号グループを受信し、前記第1の信号グループに基づいて第1のスピン信号グループを生成するように構成され、前記第1のスピン信号グループはN個のスピン信号を含み、Nは2以上の整数である、第1のスピンアレイと、
第1のスピンアレイに接続され、第1のスピン信号グループを受信し、前記第1のスピン信号グループと指定された第1のデータとに基づいて第1のフィードバック信号グループを生成するように構成され、第1のフィードバック信号グループはN個のフィードバック信号を含む、光フィードバックネットワークと、
前記光フィードバックネットワークに接続され、前記第1のフィードバック信号グループと前記第1の信号グループを受信し、前記第1のフィードバック信号グループと前記第1の信号グループとに基づいて第2のスピン信号グループを生成するように構成され、前記第2のスピン信号グループはN個のスピン信号を含む第2のスピンアレイと
を有する、光計算装置。
【請求項2】
前記光フィードバックネットワークはさらに、
第2のスピン信号グループを受け取り、
前記第2のスピン信号グループおよび前記第1のデータとに基づいて第2のフィードバック信号グループを生成するように構成され、前記第2のフィードバック信号グループはN個のフィードバック信号を含み、
第1のスピンアレイはさらに、
第2のフィードバック信号グループおよび第2の信号グループを受信し、第2の光パルスグループはN個の光パルスを含み、前記第2の光パルスグループの振幅は第1の光パルスグループの振幅より大きく、
前記第2のフィードバック信号グループと前記第2の信号グループとに基づいて第3のスピン信号グループを生成し、前記第3のスピン信号グループはN個のスピン信号を含む
ように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のスピンアレイは、N個の光パラメトリックオシレータを含み、前記第1のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータは、前記第1の信号グループのうちの1つを受信するように構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第2のスピンアレイは、N個の光パラメトリックオシレータを含み、前記第2のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータは、前記第1の信号グループのうちの1つと前記第1のフィードバック信号グループのうちの1つとを受信するように構成され、前記第2のスピンアレイのN個の光パラメトリックオシレータは、前記第1のスピンアレイのN個の光パラメトリックオシレータと1対1で対応し、前記第2のスピンアレイ及び前記第1のスピンアレイにおいて対応する光パラメトリックオシレータによって受信される信号は同一である、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記光フィードバックネットワークは、
前記第1のスピン信号グループを受信し、前記第1のスピン信号グループを第1の光信号マトリクスに変換するように構成され、前記第1の光信号マトリクスはN×N個の光パルスを含む、第1の信号処理モジュールと、
前記第1の信号処理モジュールに接続され、前記第1の光信号マトリクスと前記第1のデータとに基づいて第1のフィードバック信号マトリクスを生成するように構成され、前記第1のフィードバック信号マトリクスはN×N個の光信号を含む、問題ローディングモジュールと、
前記問題ローディングモジュールに接続され、第1のフィードバック信号マトリクスを第1のフィードバック信号グループに変換するように構成された第2の信号処理モジュールと
を含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の信号処理モジュールは、前記第2のスピン信号グループを受信し、前記第2のスピン信号グループを第2の光信号マトリクスに変換するようにさらに構成され、前記第2の光信号マトリクスはN×N個の光パルスを含み、
前記問題ローディングモジュールは、前記第2の光信号マトリクスおよび前記第1のデータに基づいて第2のフィードバック信号マトリクスを生成するようにさらに構成され、前記第2のフィードバック信号マトリクスは、N×N個の光信号を含み、
第1の信号処理モジュールは、前記第2のフィードバック信号マトリクスを前記第2のフィードバック信号グループに変換するようにさらに構成される、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記光フィードバックネットワークは、複数のカスケード接続されたMach-Zehnder(MZ)干渉計ユニットを含み、各MZ干渉計ユニットは、Mach-Zehnder干渉計と、間隔を空けて配置された光スイッチとを含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項8】
前記光計算装置はさらに、
前記第1のスピンアレイに接続され、第3のスピン信号グループを検出し、前記第3のスピン信号グループの位相がプリセット値であるとき、前記第3のスピン信号グループに基づいて前記第1のデータの計算結果を取得するように構成された検出器アレイを含む、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の信号グループは、前記第1の光パルスグループを含み、前記第2の信号グループは、前記第2の光パルスグループを含み、前記第2の光パルスグループの振幅は、前記第1の光パルスグループの振幅より大きい、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
計算方法であって、
前記計算方法は、光計算装置によって実行され、前記光計算装置は、第1のスピンアレイと、第2のスピンアレイと、前記第1のスピンアレイ及び前記第2のスピンアレイに別々に接続された光フィードバックネットワークとを有し、
前記計算方法は、
前記第1のスピンアレイが、第1の信号グループを受信することであって、前記第1の信号グループに基づいて第1のスピン信号グループを生成し、前記第1のスピン信号グループはN個のスピン信号を含み、Nは2以上の整数である、受信することと、
前記光フィードバックネットワークが、前記第1のスピン信号グループおよび指定された第1のデータに基づいて第1のフィードバック信号グループを生成することであって、前記第1のフィードバック信号グループは、N個のフィードバック信号を含む、生成することと、
第2のスピンアレイが、前記第1の信号グループおよび前記第1のフィードバック信号グループを受信し、前記第1のフィードバック信号グループおよび前記第1の信号グループに基づいて第2のスピン信号グループを生成することであって、前記第2のスピン信号グループはN個のスピン信号を含むこととを含む、
計算方法。
【請求項11】
前記光フィードバックネットワークが、前記第2のスピンアレイによって送信された前記第2のスピン信号グループを受信することと、
光フィードバックネットワークが、前記第2のスピン信号グループおよび前記第1のデータに基づき第2のフィードバック信号グループを生成することであって、前記第2のフィードバック信号グループはN個のフィードバック信号を含む、生成することと、
第1のスピンアレイが、第2の信号グループを受け取ることと、
第1のスピンアレイが、前記第2のフィードバック信号グループおよび前記第2の信号グループに基づいて、第3のスピン信号グループを生成することであって、前記第3のスピン信号グループはN個のスピン信号を含む、生成することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光計算装置は検出器アレイをさらに含み、前記方法は、さらに、
前記検出器アレイが、前記第3のスピン信号グループを検出することと、
前記第3のスピン信号グループの位相がプリセット値であるとき、前記第3のスピン信号グループに基づいて前記第1のデータの計算結果を取得することと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のスピンアレイが、前記第1の信号グループを受信することは、
前記第1のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータが、前記第1の信号グループのうちの1つを受信することであって、前記第1のスピンアレイはN個の光パラメトリックオシレータを含む、受信すること
を含む、請求項10ないし12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のスピンアレイは、N個の光パラメトリックオシレータを含み、前記第2のスピンアレイが、前記第1の信号グループおよび前記第1のフィードバック信号グループを受信することは、
前記第2のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータが、前記第1の信号グループのうちの1つおよび前記第1のフィードバック信号グループのうちの1つを受信することであって、前記第2のスピンアレイのN個の光パラメトリックオシレータは、前記第1のスピンアレイのN個の光パラメトリックオシレータと1対1で対応し、前記第2のスピンアレイ及び前記第1のスピンアレイの対応する光パラメトリックオシレータが受信する信号は同じである、受信することを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、情報技術の分野に関し、特に、光計算装置及び計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤設計、輸送の物理的計画、およびネットワーク資源配分のような多くの分野における組合せ最適化問題は、非決定論的多項式時間困難(non-deterministic polynomial hard, NP-hard)問題であり、組合せ最適化問題を解く時間は、問題における変数の数と共に指数関数的に増加するので、適切な時間期間内に解くことは困難である。組合せ最適化問題をまずIsingモデルに変換し、そのIsingモデルを光Isingマシンによりシミュレートし、解く。
【0003】
Isingモデルは、磁気構成中のN個のノードにおける物質の相転移を表す確率過程を記述する。N個のノードの1つは磁気双極子を表し、磁気双極子は+1または-1のスピン状態を有する。各ノードは他の多くのノードと相互作用し、物質の相転移(たとえばスピン状態の変化)を起こす。
【0004】
光Isingマシンは、複数の光信号(または光パルス)が格子ネットワークを形成するという物理現象を用いてIsingモデルをシミュレートし、解く。光Isingマシンでは、光信号(または光パルス)の位相を用いて、Isingモデルにおけるノードのスピン状態を表し、光信号または光パルスは、互いに結合され、干渉して、光信号(または光パルス)の位相を変化させる。
【0005】
現在、光Isingマシンの実施形態ソリューションにおいて、光信号は一般に直列に走る。Isingモデルにおけるノードの数が増加するにつれて、より多くの光信号が導入される必要があり、光信号の量が増加すると、光Isingマシンにおける光信号の伝送時間が増加する。その結果、動作時間が大幅に増加し、光Ising装置の動作効率が制限される。
【発明の概要】
【0006】
本アプリケーションは、光計算装置および計算方法を提供し、高動作効率を有する光Isingマシンを提供し、計算速度を改善する。
【0007】
第1の態様によれば、本出願は、光計算装置を提供する。装置は、第1のスピンアレイ、光フィードバックネットワーク、および第2のスピンアレイを含み、光フィードバックネットワークは、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイに別々に接続される。第1のスピンアレイは、第1の信号グループを受け取り、第1の信号グループに基づいて第1のスピン信号グループを生成することができる。第1のスピン信号グループはN個のスピン信号を含み、Nは2以上の整数である。第1のスピンアレイは、第1のスピン信号グループを光フィードバックネットワークに送ることができる。第1のスピン信号グループを受信した後、光フィードバックネットワークは、第1のスピン信号グループおよび所定の第1のデータに基づいて、第1のフィードバック信号グループを生成することができ、第1のフィードバック信号グループは、N個のフィードバック信号を含む。光フィードバックネットワークは、第1のフィードバック信号グループを第2のスピンアレイに送ることができる。第1のフィードバック信号グループを受信することに加えて、第2のスピンアレイは、第1の信号グループをさらに受信することができる。第2のスピンアレイは、第1のフィードバック信号グループおよび第1の信号グループに基づいて第2のスピン信号グループを生成することができ、第2のスピン信号グループは、N個のスピン信号を含む。
【0008】
第1のスピンアレイまたは第2のスピンアレイによって生成されるスピン信号のグループは、毎回、光計算装置が光信号を処理する手順における中間計算結果を示すことができる。第1のスピンアレイまたは第2のスピンアレイによって生成されたスピン信号のグループの位相が予め設定された値に達すると、スピン信号のグループは、光計算装置が光信号を処理する手順の最終的な計算結果を示すことができる。
【0009】
本出願で提供される光計算装置において、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイは、同じ信号グループを受信し、第1のスピンアレイは、フィードバック信号を光フィードバックネットワークを通して第2のスピンアレイに送ることができ、その結果、第2のスピンアレイは、スピン信号グループを生成することもできる。第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイが、信号グループ内の信号を処理する手順は、並列である。従って、信号数が増加しても、光計算装置の動作時間が増加しないため、光計算装置の計算効率を効果的に向上させることができる。
【0010】
可能な設計では、第2のスピンアレイは、第2のスピン信号グループを光フィードバックネットワークに送ることができる。光フィードバックネットワークは、第2のスピン信号グループを受信し、第2のスピン信号グループおよび第1のデータに基づいて第2のフィードバック信号グループを生成してもよく、第2のフィードバック信号グループは、N個のフィードバック信号を含む。第2のフィードバック信号グループを受信するとき、第1のスピンアレイは、さらに第2の信号グループを受信することができる。第1のスピンアレイは、第2のフィードバック信号グループおよび第2の信号グループに基づいて第3のスピン信号グループをさらに生成することができ、第3のスピン信号グループはN個のスピン信号を含む。
【0011】
本出願で提供される光計算装置では、第1のスピンアレイと第2のスピンアレイは、光フィードバックネットワークを介して互いに結合され、接続を確立する。これに関連して、光学計算装置の構成が簡略化される。第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイは、同じ信号グループを受信することができ、スピンアレイは、信号グループを並列に処理し、光フィードバックネットワークを介して互いにフィードバック信号を送ることができる。光フィードバックネットワークを介して第1のスピンアレイと第2のスピンアレイとの間の信号を伝送する手順は、より単純かつ効率的であり、その結果、光計算装置の計算効率が改善される。さらに、第1のスピンアレイと第2のスピンアレイが光フィードバックネットワークを介して互いにフィードバック信号を送るように、第1のスピンアレイと第2のスピンアレイによって生成されたスピン信号の位相インターロックを実現することができる。加えて、本出願で提供される光計算装置においては、第1のスピンアレイと第2のスピンアレイは、光フィードバックネットワークを介して互いに結合されて接続を確立するので、第1のスピンアレイと第2のスピンアレイは、光フィードバックネットワークを介して互いにフィードバック信号を注入する。複数のフィードバック信号が同時に注入されるが、ファイバ長を長くする必要はない。これは、効果的に信号伝送時間を減らし、光計算装置の計算時間を減らし、光計算装置の動作効率を改善するのに役立つ。
【0012】
可能な設計では、第1のスピンアレイは、N個の光パラメトリックオシレータを含み、第1のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータは、第1の信号グループのうちの1つを受け取ることができる。
【0013】
本出願で提供される光計算装置において、第1のスピンアレイに含まれるN個の光パラメトリックオシレータは、第1の信号グループにおける複数の信号を並列に処理することができ、各光パラメトリックオシレータは、1つのスピン信号を生成することができる。第1のスピンアレイが第1の信号グループを並列に処理するように、光計算装置の動作時間を効果的に短縮することができ、第1のスピンアレイの信号処理効率を効果的に改善することができる。さらに、光計算装置の計算手順が効率的に実行されることを確実にすることができる。
【0014】
可能な設計では、第2のスピンアレイは、N個の光パラメトリックオシレータを含み、第2のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータは、第1の信号グループのうちの1つを受信することができ、さらに第1のフィードバック信号グループのうちの1つを受信することができる。各光パラメトリックオシレータによって受信される信号とフィードバック信号は、光パラメトリックオシレータにおいて相互作用する。第2のスピンアレイにおけるN個の光パラメトリックオシレータと第1のスピンアレイにおけるN個の光パラメトリックオシレータとの間には1対1の対応があり、第2のスピンアレイおよび第1のスピンアレイにおける対応する光パラメトリックオシレータによって受信される信号は同一である。
【0015】
本出願で提供される光計算装置において、第2のスピンアレイに含まれるN個の光パラメトリックオシレータは、N個のフィードバック信号及び複数の信号を並列に処理することができ、各光パラメトリックオシレータは、1個のスピン信号を生成することができる。第2のスピンアレイが信号グループの複数の信号を並列に処理するように、第2のスピンアレイの信号処理効率を向上させることができ、光計算装置の計算手順を効率的に実行することができる。さらに、第2のスピンアレイにおける光パラメトリックオシレータと第1のスピンアレイにおける光パラメトリックオシレータとの間の対応は、第1のスピンアレイにおける各光パラメトリックオシレータ及び第2のスピンアレイにおける対応する光パラメトリックオシレータが同一の光パルスを受け取ることを確実にすることができる。
【0016】
可能な設計では、光フィードバックネットワークは、第1の信号処理モジュール、問題ローディングモジュール、および第2の信号処理モジュールを含む。問題ローディングモジュールは、第1の信号処理モジュールおよび第2の信号処理モジュールに別々に接続される。
【0017】
第1の信号処理モジュールは、第1のスピン信号グループを受信することができ、第1の信号処理モジュールは、第1のスピン信号グループを第1の光信号マトリクスに変換することができ、第1の光信号マトリクスは、N×N個の光パルスを含む。第1の信号処理モジュールは、第1の光信号マトリクスを問題ローディングモジュールに送信することができ、問題ローディングモジュールは、第1の光信号マトリクスおよび第1のデータに基づいて第1のフィードバック信号マトリクスを生成することができ、第1のフィードバック信号マトリクスは、N×N個の光信号を含む。次に、第2の信号処理モジュールは、第1のフィードバック信号マトリクスを第1のフィードバック信号グループに変換することができる。
【0018】
本出願において提供される光計算装置では、信号処理が光フィードバックネットワーク内で実行されるとき、光電気変換を実行する必要がなく、スピン信号グループがフィードバック信号グループに変換されてもよい。このようにして、計算時間を効果的に短縮することができ、光計算装置の計算効率をさらに向上させることができる。
【0019】
可能な設計では、第2の信号処理モジュールは、さらに、第2のスピン信号グループを受け取り、第2のスピン信号グループを第2の光学信号マトリクスに変換することができ、第2の光学信号マトリクスは、N×N個の光パルスを含む。第2の信号処理モジュールは、問題ローディングモジュールに第2の光信号マトリクスを送信してもよい。次に、問題ローディングモジュールは、第2の光信号マトリクスと第1のデータとに基づいて第2のフィードバック信号マトリクスを生成することができ、第2のフィードバック信号マトリクスは、N×N個の光信号を含む。問題ローディングモジュールは、第2のフィードバック信号マトリクスを第1の信号処理モジュールに送ることができ、第1の信号処理モジュールは、第2のフィードバック信号マトリクスを第2のフィードバック信号グループに変換することができる。
【0020】
本出願で提供される光計算装置では、信号処理が光フィードバックネットワーク内で実行されるとき、光電気変換を実行する必要がなく、スピン信号グループがフィードバック信号グループに変換されてもよい。このようにして、計算時間を効果的に短縮することができ、光計算装置の計算効率をさらに向上させることができる。
【0021】
可能な設計では、光フィードバックネットワークは、複数のカスケード接続されたマッハツェンダー干渉計ユニットを含むことができ、各マッハツェンダー干渉計ユニットは、マッハツェンダー干渉計と、間隔を空けて配置された光スイッチとを含む。
【0022】
本願の光計算装置では、マッハツェンダ干渉計ユニットのサイズが小さく、コンパクトな構成を有する光計算装置を形成することができ、システムの安定性を確保するために、光計算装置をチップ上に実施形態することができる。
【0023】
可能な設計では、光計算装置は、検出器アレイをさらに含み、検出器アレイは、任意のスピンアレイに接続され得る。第1のスピンアレイに接続されている場合、検出器アレイは、第3のスピン信号グループを検出することができ、第3のスピン信号グループの位相がプリセット値である場合、検出器アレイは、第3のスピン信号グループに基づいて第1のデータの計算結果を得る。
【0024】
本出願で提供される光計算装置において、検出器アレイは、第1のスピンアレイによって生成されるスピン信号グループの位相を検出することによって、最終的な出力結果を都合よく決定することができる。
【0025】
可能な実施形態では、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイによって受信された信号グループ(例えば、第1の信号グループまたは第2の信号グループ)は、複数の光パルスまたは複数の電気信号を含み得、ここで、光パルスまたは電気信号は、信号グループ内の信号とも呼ばれる。例えば、光パルスまたは電気信号の数は、Nであってもよい。第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイによって受信された信号グループが複数の電気信号を含む場合、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイは、複数の電気信号を光パルスのグループに変換することができる。光パルスグループは、N個の光パルスを含む。
【0026】
例えば、第1の信号グループは、第1の光パルスグループを含み、第2の信号グループは、第2の光パルスグループを含み、第2の光パルスグループの振幅は、第1の光パルスグループの振幅より大きい。
【0027】
本出願において提供される光計算装置において、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイは、光パルスを直接処理するか、または光電気変換を行って、変換された光パルスを処理することができる。これは、異なるアプリケーションシナリオに適用可能であり、アプリケーション範囲を拡大する。
【0028】
第2の態様によれば、本出願は、計算方法を提供する。有益な効果については、第1の側面の関連記述を参照されたい。詳細は、ここでは再度説明しない。本方法は、光計算装置によって実行され、光計算装置は、第1のスピンアレイ、第2のスピンアレイ、および第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイに別々に接続される光フィードバックネットワークを含む。この方法は、第1のスピンアレイが最初に第1の信号グループを受信し、第1の信号グループに基づいて第1のスピン信号グループを生成することを含む。第1のスピン信号グループはN個のスピン信号を含み、Nは2以上の整数である。第1のスピンアレイは、第1のスピン信号グループを光フィードバックネットワークに送る。
【0029】
第1のスピン信号グループを受信した後、光フィードバックネットワークは、第1のスピン信号グループおよび指定された第1のデータに基づいて、第1のフィードバック信号グループを生成し、第1のフィードバック信号グループは、N個のフィードバック信号を含む。光フィードバックネットワークは、第1のフィードバック信号グループを第2のスピンアレイに送る。
【0030】
第2のスピンアレイは、第1の信号グループおよび第1のフィードバック信号グループを受信し、第1のフィードバック信号グループおよび第1の信号グループに基づいて第2のスピン信号グループを生成することができ、第2のスピン信号グループは、N個のスピン信号を含む。
【0031】
可能な設計では、第2のスピンアレイは、第2のスピン信号グループを光フィードバックネットワークに送ることができる。第2のスピンアレイによって送信された第2のスピン信号グループを受信した後、光フィードバックネットワークは、第2のスピン信号グループおよび第1のデータに基づいて、第2のフィードバック信号グループを生成することができ、第2のフィードバック信号グループは、N個のフィードバック信号を含む。光フィードバックネットワークは、第2のフィードバック信号グループを第1のスピンアレイに送ることができる。
【0032】
第1のスピンアレイは、さらに、第2の信号グループを受け取ることができる。
【0033】
第1のスピンアレイは、受信された第2のフィードバック信号グループおよび受信された第2の信号グループに基づいて第3のスピン信号グループを生成し、第3のスピン信号グループは、N個のスピン信号を含む。
【0034】
可能な設計では、光計算装置は、検出器アレイをさらに含む。検出器アレイは、第3のスピン信号グループを検出し、第3のスピン信号グループにおける各スピン信号の位相を決定することができる。
【0035】
第3のスピン信号グループの位相がプリセット値である場合、検出器アレイは、第3のスピン信号グループに基づいて第1のデータの計算結果を得ることができる。
【0036】
可能な設計では、第1のスピンアレイが第1の信号グループを受信するとき、第1のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータは、第1の信号グループのうちの1つを受信することができる。
【0037】
可能な設計では、第2のスピンアレイはN個の光パラメトリックオシレータを含み、第2のスピンアレイが第1の信号グループおよび第1のフィードバック信号グループを受信すると、第2のスピンアレイの各光パラメトリックオシレータは、第1の信号グループのうちの1つおよび第1のフィードバック信号グループのうちの1つを受信することができる。第2のスピンアレイにおけるN個の光パラメトリックオシレータは、第1のスピンアレイにおけるN個の光パラメトリックオシレータと1対1の対応関係にあり、第2のスピンアレイおよび第1のスピンアレイにおける対応する光パラメトリックオシレータによって受信される光パルスは同一である。
【0038】
第3の態様によれば、本出願は、光計算チップを提供する。光コンピューティングチップは、第1の態様のうちの任意の1つまたは第1の態様の可能な実施形態による光計算装置を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本出願に係る光計算装置の構成の概略図である。
図2】本出願に係る光計算装置における信号伝送のフローチャートである。
図3】本出願に係る光計算装置における信号伝送の別のフローチャートである。
図4】本出願に係る2つのスピンアレイによって受信された光パルスグループの概略図である。
図5】本出願に係る第2のスピンアレイの構成の概略図である。
図6】本出願に係る光パラメトリックオシレータの構成の概略図である。
図7】本出願に係る光フィードバックネットワークの構成の概略図である。
図8A】本出願に係るXY平面上の第1の信号処理モジュールによるスピン信号グループEの処理のフローチャートである。
図8B】本出願に係るYZ平面上の第1の信号処理モジュールによるスピン信号E1の処理のフローチャートである。
図9】本出願に係る第1の信号処理モジュールによって生成された光信号マトリクスの概略図である。
図10】本出願に係る問題ローディングモジュールによる信号処理のフローチャートである。
図11】本出願に係るフィードバック信号マトリックスの概略図である。
図12A】本出願に係るXY平面上の第2の信号処理モジュールによるフィードバック信号マトリクスの処理のフローチャートである。
図12B】本出願に係るYZ平面上の第1の信号処理モジュールによって、フィードバック信号マトリクス内の信号列を処理するフローチャートである。
図13】本出願に係る光計算装置の構成の概略図である。
図14】本出願に係るMZIUの構成の概略図である。
図15A】本出願に係るMZIUにおける信号の伝送路の概略図である。
図15B】本出願に係る他のMZIUにおける信号の伝送路の概略図である。
図16】本出願に係る光計算装置の構成の概略図である。
図17】本出願に係る計算方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本出願は、計算方法と光計算装置を提供し、高い動作効率を有する光Isingマシンを提供する。
【0041】
図1は、本出願の一実施形態による光計算装置を示す。光計算装置10は、2つのスピンアレイおよび光フィードバックネットワーク300を含む。2つのスピンアレイは、それぞれ、区別のための第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200であり、光フィードバックネットワーク300は、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200に別々に接続される。
【0042】
本出願のこの実施形態におけるスピンアレイ(第1のスピンアレイ100または第2のスピンアレイ200)は、信号グループ(および光フィードバックネットワーク300によってフィードバックされる複数のフィードバック信号)を受信し、受信された信号グループ(および受信された複数のフィードバック信号)に基づいて複数のスピン信号を生成することができる。
【0043】
スピンアレイによって受信された信号グループに含まれる信号のタイプは、本出願のこの実施形態において限定されない。信号グループは、複数の光パルスまたは複数の電気信号(例えば、電気パルス)を含んでもよい。例えば、光パルスおよび電気信号の数はN個であってもよい。(N個の電気信号を含む)電気信号グループを受信したとき、スピンアレイは、受信した電気信号グループをN個の光パルスに変換することができる。電気信号をN個の光パルスに変換した後、スピンアレイは、N個の光パルス(およびN個のフィードバック信号)に基づいてN個のスピン信号を生成することができる。本出願のこの実施形態では、スピンアレイによって受信された信号が光パルスグループである例は、単に説明のために使用され、光パルスグループは、N個の光パルスを含む。
【0044】
光フィードバックネットワーク300は、スピンアレイによって生成された複数のスピン信号を受信することができ、予め設定された第1のデータに基づいて、スピンアレイ100によって生成された複数のスピン信号を処理して、複数のフィードバック信号を生成することができ、生成された複数のフィードバック信号を別のスピンアレイにフィードバックすることができる。
【0045】
この出願のこの実施形態では、第1のスピンアレイ100(または第2のスピンアレイ200)によって受信された信号グループが、N個の光パルスを含む光パルスグループである例が説明のために使用される。第1のスピンアレイ100(または第2のスピンアレイ200)によって受信された信号グループが、(N個の電気信号を含む)電気信号グループである場合は、第1のスピンアレイ100(または第2のスピンアレイ200)によって受信された信号グループが、N個の光パルスを含む光パルスグループである場合と同様であり、第1のスピンアレイ100(または第2のスピンアレイ200)によって受信された信号グループがN個の電気信号を含む場合は、第1のスピンアレイ100(または第2のスピンアレイ200)が、N個の電気信号をN個の光パルスに最初に変換する必要があるという点で相違がある。N個の光パルスを続けて処理する方法は、第1のスピンアレイ100(または第2のスピンアレイ200)が光パルスグループを受信したときにN個の光パルスを処理する方法と同じである。
【0046】
以下に、第1のスピンアレイ100、光フィードバックネットワーク300、および第2のスピンアレイ200の間の信号伝送手順を説明する。第1のスピンアレイ100、光フィードバックネットワーク300、および第2のスピンアレイ200の間の信号伝送は、信号伝送方向に基づく2つの手順、すなわち、第1のスピンアレイ100によって生成されたスピン信号が光フィードバックネットワーク300を介して第2のスピンアレイ200に到達する信号伝送(手順1)、および第2のスピンアレイ200によって生成されたスピン信号が光フィードバックネットワーク300を介して第1のスピンアレイ100に到達する信号伝送(手順2)を含んでもよい。
【0047】
手順1は、第1のスピンアレイ100によって生成されたスピン信号が、光フィードバックネットワーク300を介して第2のスピンアレイ200に到達する信号伝送手順である。
【0048】
図2に示すように、第1のスピンアレイ100は、光パルスグループを受け取ることができ(説明を容易にするために、第1のスピンアレイ100によって受け取られる光パルスグループは、光パルスグループAで表す)、光パルスグループAは、複数の同じ光パルス、A1、A2、A3、.....ANを含む。
【0049】
第1のスピンアレイ100は、光パルスグループAに基づくスピン信号グループを生成することができ(説明を簡単にするため、スピン信号グループは、スピン信号グループEによって表される)、ここで、スピン信号グループEの複数のスピン信号は、それぞれ、E1、E2、E3、・・・、およびENであり、次いで、スピン信号グループEを光フィードバックネットワーク300に入力する。
【0050】
スピン信号グループEを受信した後、光フィードバックネットワーク300は、事前設定された第1のデータを使用してスピン信号グループEを処理して、フィードバック信号グループを生成し(説明を容易にするため、フィードバック信号グループはフィードバック信号グループfAで表す)、ここで、フィードバック信号グループfAは、fA1、fA2、...、およびfANの複数のフィードバック信号を含み、フィードバック信号グループfAを第2のスピンアレイ200に入力する。
【0051】
手順2は、第2のスピンアレイ200によって生成されたスピン信号が、光フィードバックネットワーク300を介して第1のスピンアレイ100に到達する信号伝送手順である。
【0052】
図3に示すように、フィードバック信号グループfAを受信することに加えて、第2のスピンアレイ200は、光パルスグループAと同じ光パルスグループをさらに受信することができる。光パルスグループを受け取る異なるスピンアレイを区別するために、光パルスグループAと同じ第2のスピンアレイ200が受け取る光パルスグループは、光パルスグループBによって表され、光パルスグループBは、B1、B2、B3、...、およびBNという複数の光パルスを含む。B1及びA1は、同一の光パルスであり、B2及びA2は、同一の光パルスであり、B3及びA3は、同一の光パルスであり、BN及びANは、同一の光パルスである。
【0053】
第2のスピンアレイ200は、フィードバック信号グループfA及び光パルスグループBに基づいてスピン信号グループを生成し(説明を容易にするため、スピン信号グループはスピン信号グループFによって表される)、スピン信号グループFの複数のスピン信号は、それぞれF1、F2、F3、・・・、FNであり、次いで、スピン信号グループFを光フィードバックネットワーク300に入力する。
【0054】
光フィードバックネットワーク300は、事前設定された第1のデータを使用してスピン信号グループFを処理して、フィードバック信号グループを生成し(説明を容易にするために、フィードバック信号グループはフィードバック信号グループfBによって表される)、ここで、フィードバック信号グループfBは、fB1、fB2、...、およびfBNという複数のフィードバック信号を含み、フィードバック信号グループfBを第1のスピンアレイ100に入力する。
【0055】
手順1および手順2において、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイは、光フィードバックネットワーク300を通して互いにフィードバック信号を送り、第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイによって生成されたスピン信号の位相インターロックの効果を達成することができる。
【0056】
第1のスピンアレイ100及び第2のスピンアレイ200が、光パルスグループ内の光パルスを処理する手順が並列であることにより、光計算装置10の動作時間を効果的に短縮することができる。光パルスの数が増加しても、光計算装置の動作時間は増加しない。これは、光計算装置の計算効率を効果的に保証する。
【0057】
光パルスグループAを受信した後、第1のスピンアレイ100は、さらに、光パルスの別のグループを受信する。例えば、後に受信される光パルスグループは、光パルスグループA’である。光パルスグループA’を受信した後、第1のスピンアレイ100は、フィードバック信号グループfB及び光パルスグループA′に基づいたスピン信号グループを生成する(説明を容易にするために、スピン信号グループはスピン信号グループPによって表される)。ここで、スピン信号グループPの複数のスピン信号は、それぞれP1、P2、P3、…、及びPNである。第1のスピンアレイ100は、スピン信号グループPを光フィードバックネットワーク300に入力し、光フィードバックネットワーク300は、スピン信号グループPおよび事前設定された第1のデータに基づくフィードバック信号グループを生成し(説明を容易にするために、フィードバック信号グループはフィードバック信号グループfA’によって表される)、フィードバック信号グループfA’は、複数のフィードバック信号を含み、フィードバック信号グループfA’を第2のスピンアレイ200に入力する。この手順は、手順1と同様であり、相違は、第1のスピンアレイ100が、後に受信された光パルスグループと、光フィードバックネットワーク300によって生成された複数のフィードバック信号とに基づいて、スピン信号のグループを生成するという点にある。
【0058】
第2のスピンアレイ200は、さらに、光パルスグループA’と同じ光パルスグループ(光パルスグループB’によって表されてもよい)を受信し、光フィードバックネットワーク300によって入力された光パルスグループB’およびフィードバック信号グループfA’を使用することによって、スピン信号のグループを生成してもよく(説明を容易にするために、スピン信号グループはスピン信号グループQによって表される)、ここで、スピン信号グループQの複数のスピン信号は、それぞれQ1、Q2、Q3、....およびQNである。第2のスピンアレイ200は、スピン信号グループQを光フィードバックネットワーク300に入力する。光フィードバックネットワーク300は、スピン信号グループおよびプリセットされた第1のデータに基づいてフィードバック信号グループを生成することができ(説明を容易にするために、フィードバック信号グループはフィードバック信号グループfB’によって表される)、フィードバック信号グループfB’は、複数のフィードバック信号を含み、フィードバック信号グループfB’を第1のスピンアレイ100に入力する。この手順は、手順2と同様であり、相違は、第2のスピンアレイ200によって受信される信号(光パルスおよびフィードバック信号)が異なるという点である。
【0059】
光計算装置の第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200は、さらに、その後、同じ光パルスグループを受信し続け、前述の手順と同様の信号伝送手順を実行する。言い換えれば、光計算装置の第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200は、同一の光パルスグループを受信するたびに、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200は、前述の手順と同様の信号送信手順を一回実行する。
【0060】
手順1および手順2と同様の信号処理手順において、第1のスピンアレイ100または第2のスピンアレイ200によって生成されるスピン信号グループは、光計算装置10の中間計算結果を示す。第1のスピンアレイ100または第2のスピンアレイ200によって生成されたスピン信号グループにおけるN個のスピン信号の位相が0またはπに崩壊するまで、スピン信号グループは、最終的な計算結果を示すことができる。
【0061】
言うまでもなく、手順1及び手順2と同様の信号伝送手順が光計算装置内で1回サイクルされる場合、第1のスピンアレイ100及び第2のスピンアレイ200によって受信される光パルスのグループは同一である(例えば、光パルスグループAは光パルスグループBと同一であり、光パルスグループA’は光パルスグループB’と同一である)。実施形態においては、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200によって受信される光パルスの各グループは、同じポンプ源によって送信されてもよい。ポンプ源が光パルスグループを送った後、光パルスグループは、分割によって2つの同じ光パルスグループに分割され、2つの同じ光パルスグループは、それぞれ、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200に送られる。別の実施形態では、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200によって受信される各光パルスグループは、同じポンプ源によって送信されてもよい。第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200が、手順1および手順2と同様の信号伝送手順を1回繰り返すと、ポンプ源は、指定された時間間隔で2つの同じ光パルスグループを送ることができ、この場合、一方の光パルスグループが第1のスピンアレイ100に送られ、他方の光パルスグループが第2のスピンアレイ200に送られる。例えば、ポンプ源は、時間間隔T/2で1つの光パルスグループを生成し、時間T内に2つの同じ光パルスグループを生成することができる。異なる時間Tで生成される光パルスは、異なってもよい。
【0062】
別の実施において、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200によって受信される各光パルスグループは、代替的に、2つの異なるポンプ源によって送信されてもよいが、2つの異なるポンプ源によって送信される2つの光パルスグループは、同一である。
【0063】
さらに、1つのスピンアレイ(例えば、第2のスピンアレイ200)は、受信された光パルスグループおよび光フィードバックネットワーク300から受信したフィードバック信号グループに基づいて、スピン信号グループを生成する必要がある。第2のスピンアレイ200によって受信されたフィードバック信号グループは、第1のスピンアレイ100に基づいて、同じ光パルスグループ(および別のフィードバック信号グループ)を使用して、光フィードバックネットワーク300によって生成される。具体的には、第2のスピンアレイ200が光パルスのグループを受け取る時刻は、第1のスピンアレイ100が同じ光パルスグループを受け取る時刻よりも遅くなければならない。このようにして、第2のスピンアレイ200は、光パルスグループを受信したとき、光フィードバックネットワーク300からフィードバック信号グループを取得することができる。
【0064】
換言すれば、2つのスピンアレイは、同じ光パルスグループを受け取るが、光パルスグループが2つのスピンアレイに到着する時間は異なり、時間差が存在する。時間差は、第2のスピンアレイ200が、光パルスグループおよびフィードバック信号グループを同時に受け取ることを可能にし得る。時間差は、第1のスピンアレイ100による光パルスグループの受信から、光フィードバックネットワーク300によるフィードバック信号グループを第2のスピンアレイ200にフィードバックするまでの時間に基づいて決定され、光パルスグループが光計算装置において処理され、対応するフィードバック信号を生成する時間に関連する。
【0065】
例えば、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200によって受信される各光パルスグループは、同じポンプ源によって送信されてもよい。各光パルスグループをポンプ源によって送信する周期がTである場合、すなわち、ポンプ源が間隔Tで1光パルスグループを生成する場合、ポンプ源によって送信される1光パルスグループが分割された後、光パルスグループが第1のスピンアレイ100に到達する時間と、光パルスグループが第2のスピンアレイ200に到達する時間との間の差をT/2に設定することができる。
【0066】
図4は、2つのスピンアレイによって受信される光パルスグループの概略図である。第1のスピンアレイ100は、光パルスグループAを使用してスピン信号を生成する。スピン信号は、光フィードバックネットワークを使用して処理され、フィードバック信号グループEを生成し、フィードバック信号グループEは、第2のスピンアレイ200に注入される。
【0067】
第2のスピンアレイ200は、受信した光パルスグループBおよびフィードバック信号グループEを使用することによって、新しいスピン信号を生成する。新しいスピン信号は、光フィードバック信号を使用することによって処理され、フィードバック信号グループFを生成し、フィードバック信号グループFは、第1のスピンアレイ100に注入される。このようにして、循環的重ね合わせが行われる。
【0068】
ポンプ源は、毎回発生される1つの光パルスグループを調整することができる。例えば、ポンプ源は、光パルスグループ内の各光パルスの振幅を増加させて、Tより前に生成された光パルスグループとは異なる光パルスグループを生成し、生成された光パルスグループを第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200に別々に入力することができる。このようにして、光計算装置の第1のスピンアレイ100、第2のスピンアレイ200、および光フィードバックネットワーク300は、ポンプ源によって生成される光パルスグループに基づいて、第2のスピンアレイ200によって生成されるスピン信号グループを変化させることができる。
【0069】
第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200は、同じ光パルスグループを受け続け、前述の手順を実行し、光フィードバックネットワーク300を介して、互いにフィードバック信号を送り続ける。本出願のこの実施形態では、第1のスピンアレイ100及び第2のスピンアレイ200は、光フィードバックネットワーク300を介して結合され、接続を確立し、光パルスの各グループにおける光パルスの処理手順は並列であるため、光パルスの数が増加しても光計算装置の動作時間は増加せず、光計算装置の計算効率は効果的に改善され得る。
【0070】
以上、光計算装置における信号伝送手順について説明した。以下に、光計算装置における各構成要素による信号の処理方法を説明する。
(1) 第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200
第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200の動作原理は同様である。
ここでは、説明の一例として、第2のスピンアレイ200のみを使用する。
【0071】
図5に示すように、第2のスピンアレイ200は、複数の並列光パラメトリックオシレータを含み、光パラメトリックオシレータの数は、受信される光パルスグループに含まれる光パルスの数と同じである。各光パラメトリックオシレータは、光フィードバックネットワーク300に接続され、光フィードバックネットワーク300からのフィードバック信号のグループの1つを受信する。光パラメトリックオシレータは、光ポンプの光パラメトリックオシレータおよび電気ポンプの光パラメトリックオシレータを含むが、これらに限定されない。
【0072】
例えば、第2のスピンアレイ200によって受信される光パルスグループは、光パルスグループBであり、光パルスグループBの光パルスは、それぞれB1、B2、B3、...、およびBNであり、光パルスの数は、Nに等しい。第2のスピンアレイ200は、N個の光パラメトリックオシレータ(光パラメトリックオシレータ)を含み、各光パラメトリックオシレータは、光パルスグループBにおいて1つの光パルスを受信することができる。このようにして、N個の光パラメトリックオシレータは、光パルスグループBのN個の光パルスを受信することができる。このように、第2のスピンアレイ200は、光パルス・グループB内のN個の光パルスを並列に処理して、信号処理効率を改善することができる。
【0073】
光パラメトリックオシレータ(光パラメトリックオシレータとも呼ばれる)は、光信号(または光パルス)の周波数に基づいて発振することができるパラメトリックオシレータである。光パラメトリックオシレータは、光パラメトリックオシレータに入力された光信号(または光パルス)に基づいて、非線形光相互作用を介して新しい光信号(または光パルス)を生成することができる。
【0074】
本出願のこの実施形態では、第2のスピンアレイ200は、光パルスグループBを受信したときに、光フィードバックネットワーク300からフィードバック信号グループfAをさらに受信する。光フィードバックネットワーク300は、フィードバック信号グループfA内の複数のフィードバック信号を、第2のスピンアレイ200内の光パラメトリックオシレータに別々に入力することができ、各光パラメトリックオシレータは、1つのフィードバック信号を受信する。換言すれば、第2のスピンアレイ200の1つの光パラメトリックオシレータに入力される信号は、光パルスグループBの1つの光パルスと、フィードバック信号グループfAの1つのフィードバック信号とを含む。
【0075】
言うまでもなく、光パラメトリックオシレータでは、フィードバック信号グループfAの1つのフィードバック信号と1つの光パルスとが相互作用する必要があるため、光パルスを受け取るための時間周期と光パラメトリックオシレータによってフィードバック信号を受け取るための時間周期とが重複する必要がある。光パルスとフィードバック信号が、光パラメトリックオシレータ内で相互作用できることを確実にするために、光フィードバックネットワーク300の光信号の伝送路長、ポンプソースによって送信される光パルスの伝送路、または、ポンプソースによって光パルスを生成する周期を調整することができる。このようにして、光パルスとフィードバック信号は、指定された時間内で同時に光パラメトリックオシレータに入射することができる。
【0076】
図6は、光パラメトリックオシレータの構成の概略図である。光パラメトリックオシレータは、2つのBragg反射ゾーンと1つのパラメトリック発振ゾーンを含み、ここでBragg反射ゾーンはパラメトリック発振ゾーンの両端に位置する。2つのBragg反射ゾーンは共振空洞を形成する。
光パラメトリックオシレータに入った後、フィードバック信号は、発振のために2つのBragg反射ゾーン間で前後に伝送される。光パルスは、パラメトリック発振ゾーンに結合され、入力され、フィードバック信号との非線形相互作用を発生し、次いで、光パルスは結合され、パラメトリック発振ゾーンからフィルタリングアウトされる。フィルタリングアウト後、光パラメトリックオシレータに残された光信号はスピン信号である。本出願のこの実施形態では、光パラメトリックオシレータによって出力される光信号の位相はスピン状態に対応し得るので、光パラメトリックオシレータによって出力される光信号は、スピン信号と呼ばれる。
【0077】
第2のスピンアレイ200の各光パラメトリックオシレータは、1つのスピン信号を生成することができ、第2のスピンアレイ200は、N個のスピン信号(Q1、Q2、Q3、...、およびQ個)を含むスピン信号グループQを出力することができる。
【0078】
第1のスピンアレイ100に含まれる光パラメトリックオシレータと、各光パラメトリックオシレータにおける信号の相互作用手順とは、第2のスピンアレイ200に含まれる光パラメトリックオシレータと、各光パラメトリックオシレータにおける信号の相互作用手順と同一である。詳細は、ここでは再度説明しない。
【0079】
なお、第2のスピンアレイ200における光パラメトリックオシレータと、第1のスピンアレイ100における光パラメトリックオシレータとの間には、1対1の対応がある。第2のスピンアレイ200および第1のスピンアレイ100が同じ光パルスグループを受け取る場合、第2のスピンアレイ200および第1のスピンアレイ100内の2つの対応する光パラメトリックオシレータによって受け取られる光パルスは同じである。
【0080】
言うまでもなく、第2のスピンアレイ200によって受信された信号グループがN個の光パルスを含む例を、本明細書において説明のために依然として使用する。第2のスピンアレイ200によって受信された信号グループがN個の電気信号を含む場合は、第2のスピンアレイ200によって受信された信号グループがN個の光パルスを含む場合と同様である。相違点は、第2のスピンアレイ200によって受信される信号グループがN個の電気信号を含む場合、第2のスピンアレイ200は、最初にN個の電気信号をN個の光パルスに変換する必要がある点である。N個の光パルスを処理する手順は、第2のスピンアレイ200によって受信された信号グループがN個の光パルスを含む場合、N個の光パルスを処理する方法と同じである。具体的には、第2のスピンアレイ200の内部では、各光パラメトリックオシレータは、電気信号グループの1つを受信し、処理のために電気信号を1つの光パルスに変換する。次に、各光パラメトリックオシレータは、変換によって得られた光パルスと受信したフィードバック信号に基づいて1つのスピン信号を生成する。各光パラメトリックオシレータが、変換によって得られた光パルスと、受信されたフィードバック信号とに基づいてスピン信号を生成する方法は、第2のスピンアレイ200によって受信された信号のグループがN個の光パルスを含む場合、各光パラメトリックオシレータが、1つの受信光パルスと1つの受信フィードバック信号とに基づいて1つのスピン信号を生成する方法と同じである。
(2) 光フィードバックネットワーク300
このアプリケーションのこの実施形態では、光フィードバックネットワーク300は、全光フィードバックネットワークであってもなくてもよい。全光フィードバックは、フィードバック信号を生成する手順が、光信号を使用することによって実施されることを意味する。非全光フィードバックは、フィードバック信号が回路の形態で、または光電複合フィードバックの形態で生成され得ることを意味する。例えば、非全光フィードバックが使用される場合、複数の光パルスをまず電気信号に変換し、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)を使用することによって、電気信号にフィードバック情報をロードすることができる。新しい光信号は、フィードバック情報を負荷した電気信号に基づいて変調され(例えば、光信号の位相または強度を変化させる)、変調された光信号はフィードバック信号である。本発明のこの実施形態では、光フィードバックネットワーク300の実施形態は限定されない。言うまでもなく、光フィードバックネットワーク300が全光フィードバックネットワークである場合、フィードバック信号グループ(本質的には、フィードバック信号も光信号である)は、光-電気変換を使用することなく、光フィードバックネットワーク300の信号処理手順において生成され得、フィードバック信号グループは、第1のスピンアレイ100または第2のスピンアレイ200に送られる。全光フィードバックネットワークでは光から電気への変換が省略されるため、計算時間を効果的に短縮することができ、光フィードバックネットワーク300の信号処理効率を改善することができる。
【0081】
本出願のこの実施形態では、光フィードバックネットワーク300は、事前設定された第1のデータに基づいて、任意のスピンアレイによって入力される一スピン信号グループを処理することができる。事前設定された第1のデータは、解決されるべきNP困難問題に関連し、NP困難な問題が数学的に抽象化された後に得られる。異なる構成を有する光フィードバックネットワーク300では、従って、第1のデータの表現形式は異なる。このアプリケーションの実施形態は、2つのタイプの光フィードバックネットワーク300を提供する。以下に、2つのタイプの光フィードバックネットワーク300を別々に説明する。
【0082】
図7に示すように、光フィードバックネットワーク300は、2つの信号処理モジュール(第1の信号処理モジュールおよび第2の信号処理モジュール)および問題ローディングモジュールを含む。第1の信号処理モジュールは、第1のスピンアレイ100から各スピン信号グループを受信し、第2の信号処理モジュールは、第2のスピンアレイ200から各スピン信号グループを受信する。
【0083】
信号処理モジュールは、1次元スピン信号グループを2次元光信号マトリクスに変換し、さらに2次元フィードバック信号マトリクスをフィードバック信号グループに変換することができる。換言すれば、信号処理モジュールは、信号次元を増加させることができ、その結果、問題ローディングモジュールは、処理を実行することができ、さらに、信号次元を減少させ、フィードバック信号グループをスピンアレイに入力することができる。
【0084】
本出願のこの実施形態におけるすべての信号マトリックス(例えば、光信号マトリックスおよびフィードバック信号マトリックス)は、N×N個の光信号を含むマトリックスであることに留意されたい。
【0085】
第1のデータが問題ローディングモジュールにセットされ、第1のデータが2次元光信号マトリクスに適用され、フィードバック信号マトリクスを生成する。
【0086】
以下では、第1の信号処理モジュールがスピン信号グループEを受信する例を使用して、信号処理モジュールが1次元スピン信号グループを2次元光信号マトリクスに変換する方法を説明する。
【0087】
スピン信号グループEを受信した後、第1の信号処理モジュールは、スピン信号グループEの各スピン信号に対して整形およびコリメーションを実行して、スピン信号スピン信号グループが並列に送信され、クロストークが発生しないようにすることができる。信号の整形およびコリメーションは、マイクロミラーアレイによって実施されてもよく、または別の光学コンポーネントによって実施されてもよい。これは、本出願のこの実施態様において限定されない。
【0088】
第1の情報処理モジュールは、スピン信号の送信平面の並列スピン信号を分割する。各スピン信号はN個の同じスピン信号に分割され、N個のスピン信号はN列のスピン信号に分割される。スピン信号の各列は、N個のスピン信号を含み、各列のN個のスピン信号は同じであり、N×N個の光信号マトリックスを形成する。スピン信号の分割は、円筒形ミラーによって実施されてもよく、または別の光学コンポーネントによって実施されてもよい。これは、本出願のこの実施態様において限定されない。
【0089】
以下に、図面を参照して説明する。図8Aは、XY平面上の第1の信号処理モジュールによるスピン信号グループEの処理のフローチャートである。スピン信号グループEのスピン信号(E1、E2、E3、...、およびEN)は、マイクロミラーアレイを使用することによってコリメートされ、N個の並列スピン信号を形成し、N個の並列スピン信号は、シリンダミラーを通過した後に、N個のスピン信号列を形成する。スピン信号の各列によって形成される平面は、XY平面に対して垂直であり、YZ平面に対して平行である。
【0090】
図8Bは、YX平面における第1の信号処理モジュールによるスピン信号の処理のフローチャートである。
【0091】
スピン信号グループEのスピン信号(例えばE1)は、マイクロミラーアレイを使用することによってコリメートされ、円筒形ミラーを通過した後にN個のスピン信号E1を形成する。
【0092】
図9は、第1の信号処理モジュールによって生成された光信号マトリクスを示す。光信号マトリクスのサイズはN×Nであり、各列の光信号はスピン信号グループEのスピン信号と同じである。
【0093】
スピン信号のコリメーションおよび分割をより良好に実施するために、第1のスピンアレイ100は、第1の信号処理モジュール内のマイクロミラーアレイ上及び円筒形ミラーの焦点面に配置されてもよい。
【0094】
以下では、問題ローディングモジュールが、図9に示す光信号マトリクスを受信し、フィードバック信号マトリクスを生成する例を用いて、問題ローディングモジュールが行う信号処理手順について説明する。
【0095】
この構成では、問題ローディングモジュールの第1のデータセットは、2次元相互作用マトリクスとして抽象化され得る。
【0096】
2次元相互作用マトリクスは、空間光変調器によって実現され、光信号の光学位相または強度は、空間光変調器を使用することによって変調される。具体的には、2次元相互作用マトリクス中の要素は、空間光変調器が信号マトリクス中の信号の光学位相または強度を変調する程度を示す。
【0097】
2次元相互作用マトリクスは、代替的に、デジタル・マイクロミラー・アレイによって実現されてもよく、光信号の光強度は、デジタル・マイクロミラー・アレイを使用することによって変調される。具体的には、2次元相互作用マトリクス内の要素は、デジタルマイクロミラーアレイが、信号マトリクス内の信号の光学位相または強度を変調する程度を示す。
【0098】
2次元相互作用マトリクスは対称マトリクスであり、対角上の要素はゼロではない。
【0099】
図10に示すように、問題ローディングモジュールによって実行される信号処理手順は、マトリクス演算として抽象化されてもよく、フィードバック信号マトリクスは、第1の信号処理モジュールによって生成される光信号マトリクスと2次元マトリクスとを用いて生成される。
【0100】
光信号マトリクス内の光信号は、2次元マトリクス内の対応する位置にある要素と相互作用し、フィードバック信号マトリクス内の対応する位置にある信号を生成する。例えば、光信号マトリクスの第1行目の光信号E1は、2次元マトリクスの第1行目第1列の要素a1.1zと相互作用し、フィードバック信号マトリックス中の対応する位置にある信号a1.1E1を生成する。
【0101】
以下では、第2の信号処理モジュールがフィードバック信号グループfAを出力する例を使用し、信号処理モジュールが2次元フィードバック信号マトリクスをフィードバック信号グループに変換する方法を説明する。
【0102】
図11は、光フィードバックネットワーク300から第2の信号処理モジュールが受信するフィードバック信号マトリクスを示す。フィードバック信号マトリクスのサイズはN×Nであり、マトリクス中の光信号は、スピン信号グループEのスピン信号と2次元マトリクスの要素との積とみなすことができる。
【0103】
フィードバック信号マトリクスを受信した後、第2の信号処理モジュールは、フィードバック信号マトリクスの各列内の信号を結合して、1つのフィードバック信号にすることができる。N×N列のフィードバック信号マトリクスの場合、組み合わせ後にN個のフィードバック信号が形成されてもよい。フィードバック信号マトリクスの列の信号が結合された後、1つのフィードバック信号が生成される、すなわち、フィードバック信号
【0104】
【数1】
、フィードバック信号
【0105】
【数2】
、フィードバック信号
【0106】
【数3】
、およびフィードバック信号
【0107】
【数4】
が生成されてもよい。信号結合手順と信号分割手順は、互いに逆である。光信号の組み合わせは、円筒形ミラーによって実現されてもよいし、別の光学コンポーネントによって実現されてもよい。これは、本出願のこの実施態様において限定されない。
【0108】
次に、第2の信号処理モジュールは、N個のフィードバック信号の各々に対して整形およびコリメーションを実行して、フィードバック信号グループfA内のフィードバック信号が並列に送信され、クロストークが発生しないようにすることができる。信号の整形およびコリメーションは、マイクロミラーアレイによって実施されてもよく、または別の光学コンポーネントによって実施されてもよい。これは、本出願のこの実施態様において限定されない。
【0109】
以下に、図面を参照して説明する。図12Aは、XY平面上の第2の信号処理モジュールによるフィードバック信号マトリクスの処理のフローチャートである。フィードバック信号マトリクスのフィードバック信号のN列は、円筒形ミラーを通過した後にN個のフィードバック信号を形成し、N個のフィードバック信号は、マイクロミラーアレイを通過した後にコリメートされ、N個の並列フィードバック信号を形成する。
【0110】
図12Bは、YX平面上の第2の信号処理モジュールによる、フィードバック信号マトリクス内の信号列の処理のフローチャートである。フィードバック信号の列は、円筒形ミラーを通過した後に結合され、フィードバック信号を形成し、次いで、フィードバック信号は、マイクロミラーアレイを通過した後にコリメートされる。
【0111】
フィードバック信号のコリメーションおよび組み合わせをより良好に実現するために、第2のスピンアレイ200は、円筒形ミラーおよび第2の信号処理モジュール内のマイクロミラーアレイの焦点面上に配置されてもよい。
【0112】
第2の信号処理モジュールは、N個のフィードバック信号を形成し、第2のスピンアレイ200の各光パラメトリックオシレータにN個のフィードバック信号を別々に送信し、各光パラメトリックオシレータは、1つのフィードバック信号を受信する。
【0113】
第2のスピンアレイ200の各光パラメトリックオシレータによって受信されたフィードバック信号は、第1のスピンアレイ100の対応する光パラメトリックオシレータによって出力されたスピン信号が光フィードバックネットワーク300によって処理された後に生成される。例えば、第1のスピンアレイ100の光パラメトリックオシレータによって出力されるスピン信号は、Eであり、第2のスピンアレイ200の対応する光パラメトリックオシレータによって光フィードバックネットワーク300から受信されるフィードバック信号は、
【0114】
【数5】
である。第1のスピンアレイ100の光パラメトリックオシレータによって出力されるスピン信号は、Eであり、第2のスピンアレイ200の対応する光パラメトリックオシレータによって光フィードバックネットワーク300から受信されるフィードバック信号は、
【0115】
【数6】
である。
【0116】
図13は、本発明の一実施形態に係る他の光計算装置の構成の概略図である。例えば、図13は、第1のスピンアレイ100および第2のスピンアレイ200がそれぞれ4つの光パラメトリックオシレータを含む光フィードバックネットワーク300の構成の概略図である。光フィードバックネットワーク300は、複数のカスケード接続されたMach-Zehnder干渉計ユニット(Mach-Zehnder Interferometer Units、MZIU)を含む。各MZIUは、2つの光信号チャネルを受信することができ、各MZIUは、複数のMach-Zehnder干渉計(Mach-Zehnder Interferometers、MZI)と、間隔を置いて配置される光スイッチとを含む。
【0117】
Mach-Zehnder干渉計のサイズは小さいため、光計算装置は構成がよりコンパクトであり、チップ上に実装して、システムの安定性を確保することができる。
【0118】
本出願のこの実施形態では、MZIは、光信号の2つの入力チャネル間の相互干渉を実現するように構成され、対応する出力信号は、MZIの位相パラメータを使用することによってMZIによって制御される。各MZIUの光スイッチは、異なる方向からの光信号の伝送経路(すなわち、第1のスピンアレイ100から第2のスピンアレイ200へ、および第2のスピンアレイ200から第1のスピンアレイ100への伝送方向を有する光信号)を調整することができる。
【0119】
MZIUに含まれるMZIの位相パラメータは異なる可能性がある。MZIUの異なる位相パラメータを持つMZIと光スイッチの位置を制御し、異なる方向からの光信号が同じ数のMZIを通過し、異なる位相パラメータを持つMZIを同じシーケンスで通過するようにする。例えば、MZIは光信号の伝送方向において左右対称にMZIUに配置され、左右対称位置における2つのMZIの位相パラメータは同じである。
【0120】
以下、本願の一実施形態に係るMZIUの構成を説明する。図14に示すように、MZIUは、3つのMZI(それぞれMZI-1、MZI-2、MZI-3)と4つの光スイッチ(optical switches)を備えている。図14では、光スイッチをSWとし、MZIの左右の位相パラメータが同じである。MZI-1およびMZI-3の位相パラメータはφであり、MZI-2の位相パラメータはθある。
【0121】
光スイッチを制御することによって、第1のスピンアレイ100から受信される光信号および第2のスピンアレイ200から受信される光信号は、異なる伝送経路を有するが、同じ数のMZIを通過し、同じシーケンスで異なる位相パラメータを有するMZIを通過することができる。
【0122】
例えば、図15Aは、第1のスピンアレイ100から第2のスピンアレイ200への伝送方向を有する光信号のMZIUにおける伝送経路を示す。光信号は、位相パラメータθを有するMZI-2と位相パラメータφを有するMZI-3を通過する。
【0123】
図15Bは、第2のスピンアレイ200から第1のスピンアレイ100への伝送方向を有する光信号のMZIUにおける伝送経路を示す。光信号は位相パラメータθを持つMZI-2と位相パラメータφを持つMZI-1を通過する。
【0124】
光フィードバックネットワーク300に含まれる複数のMZIUをカスケード接続する方法は、本出願のこの実施形態に限定されないが、構成UDUが複数のMZIUによって形成され得ること(ここで、Uはユニタリーマトリクス(Unitary Matrix)、UはUの転置マトリクス(transported matrix)、Dは対角マトリクス(diagonal matrix)である)を条件である。
【0125】
光フィードバックネットワーク300内の第1のデータは、カスケード接続された複数のMZIUのMZIの位相パラメータである。
【0126】
図16に示すように、本出願のこの実施形態で提供される光計算装置は、検出器アレイ400をさらに含む。検出器アレイ400は、任意のスピンアレイに接続され、スピンアレイによって出力されるスピンアレイグループを検出し、スピン信号グループに含まれる各スピン信号の位相を決定することができる。スピンアレイによって受信された光パルスの光パワーが特定の値に達すると、各スピン信号の位相は、0またはπに確率的に崩壊し得る。各スピン信号の位相が0またはπに崩壊する場合、現在出力されているスピン信号グループは第1のデータに対応すると考えられ、最終的な計算結果は、スピン信号グループに基づいて決定され得る。
【0127】
図16において、例えば、検出器アレイ400は、第1のスピンアレイ100に接続される。検出器アレイ400は、N個の検出器を含んでもよく、各検出器は、第1のスピンアレイ100の1つの光パラメトリックオシレータに接続され、検出器は、異なる光パラメトリックオシレータに接続される。検出器は、接続された光パラメトリックオシレータによって生成されたスピン信号の位相を検出することができる。検出器アレイ400が、第1のスピンアレイ100によって出力された各スピン信号の位相が0またはπに崩壊することを検出すると、最終的な計算結果は、スピン信号グループに基づいて決定される。
【0128】
ソリューションの説明をより明確にするために、以下、前述の実施形態を参照して、図16に示す光計算装置および図17に示す演算方法を例として、本発明の実施形態で提供される光計算装置の動作手順を簡単に説明する。図16は、本発明の一実施形態による別の光計算装置を示す。なお、以下の作業手順の説明は、上述のすべての光計算装置にも適用可能である。
【0129】
図16および図17に示すように、作業手順において、第1のスピンアレイ100は、N個の信号を含む第1の信号グループ(例えば、本出願の実施形態における光パルスグループA)を受信し、第1の信号グループに基づいて、N個のスピン信号を含む第1のスピン信号グループ(例えば、本出願の実施形態におけるスピン信号グループE)を生成することができる。ここで、Nは2より大きい正の整数である。光フィードバックネットワーク300は、第1のスピン信号グループを受信し、第1のスピン信号グループおよび指定された第1のデータに基づいて、N個のフィードバック信号を含む第1のフィードバック信号グループ(例えば、本出願の実施形態におけるフィードバック信号グループfA)を生成してもよい。言うまでもなく、本明細書に記載される第1のスピンアレイ100から光フィードバックネットワーク300への信号伝送手順は、前述の実施形態の手順1と同様である。光フィードバックネットワーク300が第1のフィードバック信号グループを生成した後、第2のスピンアレイ200は、第1のフィードバック信号グループ(例えば、本出願の実施形態におけるフィードバック信号グループfA)および第1の信号グループ(例えば、本出願の実施形態における光パルスグループAin)を受信してもよい。さらに、第2のスピンアレイ200は、第1のフィードバック信号グループおよび第1の信号グループに基づいて、N個のスピン信号を含む第2のスピン信号グループ(例えば、本出願の実施形態におけるスピン信号グループF)を生成してもよい。光フィードバックネットワーク300は、第2のスピン信号グループを受信し、第2のスピン信号グループおよび第1のデータに基づいて、N個のフィードバック信号を含む第2のフィードバック信号グループ(例えば、本出願の実施形態におけるフィードバック信号グループfB)を生成する。第2のスピンアレイ200から光フィードバックネットワーク300への信号伝送手順は、前述の実施形態の手順2と同様である。
【0130】
言うまでもなく、実際の応用において、手順1および手順2は、さらに複数回実施されてもよい。例えば、第1のスピンアレイ100は、第2のフィードバック信号グループおよびN個の信号を含む第2の信号グループ(例えば、本出願の実施形態では、光パルスグループA’)をさらに受け取り、第2のフィードバック信号グループおよび第2の信号グループに基づいて、N個のスピン信号を含む第3のスピン信号グループ(例えば、本出願の実施形態では、スピン信号グループP)を生成することができる。次に、光フィードバックネットワーク300は、第3のスピン信号グループを受信し、受信した第3のスピン信号グループに基づいて新しいフィードバック信号グループを生成し、新たに生成されたフィードバック信号グループを第2のスピンアレイ200に送信する。次いで、第2のスピンアレイ200は、受信されたフィードバック信号および第2の信号グループに基づいて、スピン信号グループを生成し、スピン信号グループを光フィードバックネットワーク300に送信する。光フィードバックネットワーク300は、スピン信号グループを受信し、第2のスピンアレイから受信したスピン信号に基づいて再びフィードバック信号グループを生成し、フィードバック信号グループを第1のスピンアレイ100にフィードバックする。このプロセスは、検出器アレイ400が、第1のスピンアレイ100によって出力された各スピン信号の位相が0またはπに崩壊することを検出するまで繰り返される。
【0131】
本発明の実施形態に係る光計算装置によれば、光パルスグループ内の第1のスピンアレイと第2のスピンアレイがN個の光パルスを処理する手順は並列なので、光パルスの数が増加しても光計算装置の動作時間が増加せず、光計算装置の計算効率を効果的に向上させることができる。さらに、本発明の実施形態で提供される光計算装置の構成は単純であり、相互作用は、2つのスピンアレイの結合及び相互注入によって実現されるので、光Isingマシンのアーキテクチャは大幅に簡略化され、全光Isingマシンのチップへの集積化が可能である。さらに、光フィードバックネットワークは全光フィードバックネットワークであるため、光から電気への変換は不要であり、スピンコンフィギュレーションの並列探索が実施される。これは、計算時間を大幅に短縮し、システムの安定性を改善し、光計算装置の計算効率を改善する。また、計算手順では、光電検出のための注入信号を必要とせず、信号伝送時間を短縮する。
【0132】
言うまでもなく、実際の応用において、本発明の実施形態における第1のスピンアレイおよび第2のスピンアレイは、光パルスを発生することができるスピンアレイに限定されず、代替的に、別の方法でマッピングされた2つのスピンアレイ、例えば、レーザによって形成されたレーザアレイ、およびポーラロンによって形成されたポーラロンアレイであってもよい。
【0133】
さらに、本発明の実施形態で提供される光計算装置は、単純な構成を有し、チップ上に実装することができる。さらに、計算手順全体は、光信号で実行され、信号伝送速度は高く、計算速度も大幅に改善される。従って、本発明の実施形態において提供される光計算装置は、ニューラルネットワークシステムにおいて使用することができ、例えば、ニューラルネットワークシステムにおいてフィードバック制御を実施するように構成することができる。
【0134】
本出願において提供される実施態様は、単に例示にすぎないことに留意されたい。当業者は、説明の便宜上及び簡潔さのために、前述の実施形態において、実施形態が異なる態様を強調し、一実施形態において詳細に説明されていない部分については、別の実施形態における関連する説明を参照することを明らかに知ることができる。本発明の実施形態、特許請求の範囲、および添付の図面に開示されている特徴は、独立して存在してもよく、または組み合わせて存在してもよい。本発明の実施形態におけるハードウェア形態で説明される特徴は、ソフトウェアによって実行されてもよく、その逆も可能である。これは、本明細書に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2022-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】