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特表2022-548599地熱非凝縮性ガス混合物等のH2S及びCO2リッチガス混合物からH2S及びCO2を除去するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】地熱非凝縮性ガス混合物等のH2S及びCO2リッチガス混合物からH2S及びCO2を除去するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20221114BHJP
   B01D 53/52 20060101ALI20221114BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20221114BHJP
   C01B 17/16 20060101ALI20221114BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20221114BHJP
【FI】
B01D53/14 200
B01D53/52 200
B01D53/62
C01B17/16 P
C01B32/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022516308
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020076005
(87)【国際公開番号】W WO2021053084
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】19197831.1
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521507062
【氏名又は名称】カーブフィクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シクフソン、ベルクール
(72)【発明者】
【氏名】アルナルソン、マクナス ソール
(72)【発明者】
【氏名】クンナルソン、インクヴィ
(72)【発明者】
【氏名】クンナルソン、テイトゥール
(72)【発明者】
【氏名】エイナルソン、ヨハン カルソアール
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA03
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA07
4D002DA35
4D002EA20
4D002FA10
4D002GA01
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB03
4D002GB04
4D002GB06
4D002GB11
4D002GB12
4D020AA03
4D020AA04
4D020BA23
4D020BC10
4D020CB08
4D020DA01
4D020DA03
4D020DB01
4D020DB02
4D020DB04
4D020DB05
4D020DB06
4D020DB08
4G146JA02
4G146JB10
4G146JC18
4G146JC19
4G146JC20
4G146JC31
4G146JC34
4G146JD03
4G146JD10
(57)【要約】
本発明は、地熱非凝縮性ガス混合物(NCG)等の硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)リッチガス混合物からHS及びCOを除去するための方法及びシステムに関する。HS及びCOガスは、ガス流を加圧し、吸収塔に供給し、そこでHS及びCOを水流に優先的に溶解することによって、HS及びCOリッチガス混合物に含まれる残りのガスから分離され、HS及びCOに富む水流をもたらす。次いで、HS及びCOに富む水流は、地質貯留層に再注入されるか、又は地質起源の別の水流のpH調整に使用され得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する非凝縮性ガス(NCG)混合物(G1)からHS及びCOを除去するための方法であって、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)を、3~20barの圧力に加圧する工程と、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記加圧NCG混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させる工程と、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記加圧NCG混合物(G1)からの前記HS及びCOの少なくとも一部の、前記水流(W2)への吸収によって、
前記HS及びCOの前記少なくとも一部を、前記H、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つの少なくとも一部から分離し、前記水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成する工程と、
溶解したHS及びCOで富化された前記水流(W4)を、
前記水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井、又は
地質貯留層内に水流(W5)を注入して、前記水流(W5)のpH調整の補助として前記水流(W4)を使用するためのシステムのいずれかに移送する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記加圧NCG混合物(G1)の圧力が、3~20bar、例えば4~10bar、例えば6~8bar、例えば7barである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)の温度が、30~60℃、例えば35~50℃、例えば39~41℃、例えば40℃である、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記水流(W2)の温度が、4~40℃、例えば6~35℃、例えば8~30℃、例えば10~25℃、例えば12~20℃、例えば13~17℃、例えば15℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)の流量が、0.2~1.5kg/s、例えば0.25~1.45kg/s、例えば0.4~1.4kg/s、例えば1kg/sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水流(W2)の流量が、36~56kg/s、例えば45~55kg/s、例えば48~52kg/s、例えば50kg/sである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)が、地熱非凝縮性ガス混合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する非凝縮性ガス(NCG)混合物(G1)からHS及びCOを除去するためのシステムであって、少なくとも以下のもの、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)を、3~20barの圧力に加圧する手段と、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記加圧NCG混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させる手段と、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記加圧NCG混合物(G1)からの前記HS及びCOの少なくとも一部の、前記水流(W2)への吸収によって、前記HS及びCOの前記少なくとも一部を、前記H、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つの少なくとも一部から分離し、前記水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成する手段と、
溶解したHS及びCOで富化された前記水流(W4)を、
前記水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井、又は
地質貯留層内に水流(W5)を注入して、前記水流(W5)のpH調整の補助として前記水流(W4)を使用するためのシステムのいずれかに移送する手段と、
含む、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記加圧NCG混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させるための手段と、
S及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記加圧NCG混合物(G1)からの前記HS及びCOの少なくとも一部の、前記水流(W2)への吸収によって、前記HS及びCOの前記少なくとも一部を、前記H、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つの少なくとも一部から分離し、前記水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する前記NCG混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成する手段と、
が、吸収塔である、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱非凝縮性ガス混合物(NCG)等の硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)に富むガス混合物からHS及びCOを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地熱発電所は、熱的異常、透水層及び流体を特徴とする地熱貯留層から、蒸気及びブライン(地熱水)の高温混合物を抽出することによって地球の熱を利用する(Barbier,E.(2002)Geothermal Energy Technology and Current Status:an Overview.Renewable and Sustainable Energy Reviews,6,p.3-65)。これらの地熱貯留層から抽出された流体は、CO、HS、H、N、CH等の溶解されたガスを天然に含有する。これらのガスは、地熱エネルギー生産の副産物であり、マグマ起源である。地熱蒸気は、ブライン(地熱水)から分離されて、動力タービンによる発電に使用することができる。このプロセスに続いて、蒸気は凝縮され、ブライン(地熱水)と共に地熱貯留層に再注入される。しかし、地熱貯留層から抽出された高温混合物の元々の部分のガスの一部分のみが蒸気で再凝縮し、残りのいわゆる非凝縮性ガス(以下、NCG又はNCG混合物)を熱エネルギー生産のガス状副産物として残す。これらのガスは通常、真空ポンプ又はエジェクタによって凝縮器から除去され、大気中に排出される。したがって、現在、例えば、アイスランドのほとんどの地熱発電所は、相当量のHS及びCOを大気中に排出する。図1は、アイスランドのいくつかの地熱発電所によって放出されたCO及びHSの量を示す。放出されるガスの量は、発電所の規模だけでなく、その場所の地質にも依存する。
【0003】
上記に基づいて、地熱発電所からのCO及びHSの排出は、地熱エネルギー利用の主な環境問題の1つであることが容易に理解される。COは、地球温暖化に寄与するいわゆる温室効果ガスであり、硫化水素は、無色、可燃性で、毒性が非常に高いガスであり、腐敗した卵の特有の臭いを有する。HSへの曝露は、曝露のレベル及び期間に応じて健康問題を引き起こす可能性がある。低レベルの長期間の曝露は眼の炎症及び刺激を引き起こす可能性があり、一方で短時間の高レベルの曝露は、大気中のHSの濃度が300ppmを超える場合、眩暈、頭痛、吐き気、更には死を引き起こす可能性がある。
【0004】
地熱流体中のHSの濃度は、通常、数ppb~数百ppmの範囲である(Arnorsson,S.(1995a)Hydrothermal systems in Iceland:Structure and conceptual models.1.High-temperature areas.Geothermics 24,561-602,Arnorsson,S.(1995b)Hydrothermal systems in Iceland:Structure and conceptual models.2.Low-temperature areas.Geothermics 24,603-629)。高温地熱流体の利用中、HSは蒸気相で濃縮され、その後蒸気が凝縮した後に大気中に放出される。HSは冷却塔の上部に放出され、そこで高濃度のHSが発電所に接近するリスクを低下させるために空気中に分散される。HSは、排出ガスに含まれるCO、H、N、CH等の他のガスと共に、発電所の現場から風によって運び去られ、一部の気象条件では、近くのコミュニティで悪臭を引き起こす可能性がある。
【0005】
排気からHS及びCO等のガスを処分する試みで、これまでにいくつかの方法が実施されてきた。これらの方法には、ガスを燃焼させること、又はHSを他のガスから分離し、続いてそれを酸化することが含まれる。これらのガスを処分する別の既知の方法は、非凝縮性ガス流全体を水と混合することによるものである。しかし、非凝縮性ガス流中の様々なガスの溶解度は非常に異なるため、これは多くの状況で非常に大量の水を必要とする。例えば、293K(約20C)及び1気圧(約1bar)では、比較的可溶性のCO及びHSの溶解度は、水100g当たりそれぞれ0.169g及び0.385gであるが、比較的難溶性のH、N、O、Ar及びCHの溶解度は、水100g当たりそれぞれ0.00016、0.0019、0.0043、0.0062及び0.0023gに過ぎない。
【0006】
米国特許第5656172号明細書は、地熱エネルギー生産の文脈において、スケール及び他の沈殿物を溶解し、及び/又は更なる鉱物化を阻害するために使用することができる酸性ブライン(地熱水)を生成する目的で、地熱非凝縮性ガスからHSO含有水性ブライン(地熱水)を生成する方法を記載している。しかし、そのようなブライン(地熱水)は、それ自体は、本発明によって企図されるような、地層へのHS及びCOの直接再注入及び貯蔵に有用ではない。HSOは強酸であるため、弱酸であるHSを使用する場合と比較して、ブライン(地熱水)を酸性化するために必要な量はわずかである。したがって、再注入システムの鋼配管及び再注入井のケーシングの腐食を緩和するために広範な措置を必要とする前に、地熱発電所からの硫黄排出物のごく一部を除去することができる。
【0007】
米国特許第20020062735号明細書は、天然ガス、すなわち主にCHからなり、例えば加熱及び調理を目的とするガスを前処理するプロセスを開示している。記載されたプロセスは、天然ガスが環境を害することなく使用及び市販され得るように、天然ガスを比較的低い含有量のHS及びCOから精製することによって天然ガスを前処理することを目的としている。したがって、米国特許第20020062735号明細書に記載されている方法又はシステムはいずれも、地熱エネルギー生産の副産物であり、天然ガスよりもHS及びCOがはるかに豊富な上述のNCG等のHS及びCOリッチガスからHS及びCOをどのように処分するかを目的としておらず、そのような処分のための方法又はシステムを可能にするであろう解決策も提供していない。
【0008】
米国特許第2011225971号明細書は、二酸化炭素を含む同じ地熱発電ユニットの凝縮器排出ガスと接触させることによって、地熱発電ユニットの蒸気凝縮物から硫化水素を除去する方法を記載している。したがって、記載される方法は、NCG混合物からのHSではなく凝縮物からHSを除去することに関し、いずれの場合でも、本発明によって企図される、NCG混合物のHS及びCOの、蒸気凝縮物又は任意の他の水流への吸収に依存しない。
【0009】
米国特許第5340382号明細書は、炭化水素坑井から水に酸性ガス(二酸化炭素及び硫化水素の混合物として説明される)を吸収する方法を記載している。米国特許第5340382号明細書によれば、酸性ガスは、スタティックミキサの使用によって水に吸収され、その後、この混合物は、パイプラインを通って注入ポンプに流れるように加圧され、注入ポンプを通って廃棄層に戻される。米国特許第5340382号明細書によれば、酸性ガスを含む水は、スタティックミキサの出口の圧力よりも高い圧力に維持されるべきである。米国特許第5340382号明細書から、そこに記載されている方法が、本発明の文脈のように、CO及びHSの両方並びにH、N、O、Ar及びCHのうちの少なくとも1つも包含するNCG混合物の圧縮ではなく、HS及びCOのみからなる(酸性)ガス混合物の圧縮及び吸収に関することは非常に明らかである。したがって、米国特許第5340382号明細書に記載されている方法は、NCG混合物からの比較的可溶性のCO及びHSガスを液体蒸気凝縮物(又は任意の他の水流)に選択的に吸収させることを目的としておらず、同時に、比較的難溶性のH、N及びCHガスを本発明の方法のようにNCG混合物中に残している。したがって、米国特許第5340382号明細書の方法は、いわゆる酸性ガスを構成するHS及びCOが既に他の任意のガスから分離されていることを前提としているが、本発明の方法は、まさに、すなわちガス混合物中のHS及びCOをその混合物中に存在する他のガスから分離することを目的としている。米国特許第5340382号明細書に記載されている方法が、NCG混合物中のガスのいかなる分離も企図していないことは、いわゆる酸性ガスがいわゆるスタティックミキサ内で水と混合された後、この混合物が米国特許第5340382号明細書に従って加圧されたままであり、液体からガスを取り出すことなく廃棄層に直接注入されるという事実からも非常に明らかである(第3欄、l.62~l.34を参照)。したがって、本発明の方法とは異なり、米国特許第5340382号明細書の方法は、混合ユニット(米国特許第5340382号明細書におけるいわゆるスタティックミキサ)から出るガス流及び水流の両方を有することを意図しないが、水及びガスの両方を含むただ1つの単一の流れを有する。この違いはまた、米国特許第5340382号明細書(第2欄、l.22~24を参照)の教示による、例えば吸収塔ではなくスタティックミキサが使用されるという事実からも非常に明らかであるが、他方では、吸収塔は、本発明による方法を実施する好ましい過程である。
【0010】
米国特許第5694772号明細書は、硫化水素及び使用済み地熱液体流を含むガス流を生成するタイプの地熱発電所で使用される地熱流体中に存在する硫化水素を処分する方法を記載し、これは、使用済み地熱液体及びガス流の両方を圧縮することと、これらを接触させて、硫化水素を実質的に含まない加圧ガス流、及び液体流出物を生成することと、を含む。記載された方法は、いわゆる充填塔で蒸気凝縮物と接触させる前のガス混合物の圧縮に依存し、これはガス状NCG混合物のHS及びCOの両方を、本発明によって企図される液体蒸気凝縮物又は任意の他の水流に吸収させない一種の抽出であると理解されなければならない。米国特許第5694772号明細書で企図されている方法は、硫化水素及び二酸化炭素の両方の、蒸気凝縮物への吸収に依存しているとは言えないことは、米国特許第5694772号明細書の図(図1)及び本文(第4欄、53行~56行)の両方による、任意のCOが依然として圧縮ガス流の一部であり、これはその後大気に排出されるという事実によって裏付けられる。したがって、米国特許第5694772号明細書に記載されている解決策は、明らかに、NCG混合物からのHS及びCOの両方を分離することを目的としているのではなく、むしろHSのみを目的としている。また、米国特許第5694772号明細書には、上述のいわゆる充填塔に塩素を添加することによって、そこに記載されている方法を最適化できることが記載されている。塩素の添加は、具体的には、水溶液中でより高い溶解度を有する他の硫黄種への硫化水素の酸化の増加を目的とすると理解することができる。対照的に、単純な吸収は、システム中に存在する化学種の変化を伴わないであろう。また、米国特許第5694772号明細書の方法に関連して塩素を添加する提案は、これらがガス混合物中の存在する可能性のあるCOではなく、HSの処分のみを目的としていることを明確に示す。実際、293K(約20C)及び1気圧(約1bar)における塩素の水への溶解度(水100g当たり約0.7g)は、CO(水100g当たり0.169g)よりも高く、上記のいわゆる充填塔に塩素を添加することは、COに対する塩素の同様の酸化的役割(上で硫化水素に関して言及したような)がないため、(すなわち塩素のないシステムでは)そもそも液体流へのCOの全吸収を低下させると考えられるであろう。
【0011】
米国特許第4244190号明細書は、硫化水素並びに溶液中の重金属及び/又は遷移金属を含む非凝縮性ガスを含む地下地熱貯留層から生成された二相地熱ブライン(地熱水)を処理する方法を記載しており、これは硫化水素をより高い酸化状態の硫黄及び/又は他の硫黄化合物に変換することを含む。したがって、記載される方法は、HSをより高い酸化状態に変換することによってHSを除去することに関し、いずれにせよ、NCG混合物のHS及びCOの、本発明によって企図される蒸気凝縮物又は任意の他の水流への吸収に依存しない。
【0012】
国際公開第9322032号明細書は、アンモニア及び硫化水素成分を含むガスを処理する方法を記載しており、これは、アンモニア又はアンモニア前駆体を添加し、混合ゾーン内の当該ガスを、当該硫化水素のかなりの部分を除去するのに十分な条件下でpHが上昇した液体と接触させることによって、酸素化液体のpHを上昇させることを含む。したがって、記載される方法は、地熱貯留層からのNCGの典型的な組成物ではなく、相当量のアンモニアを含むガス状混合物からHSを除去することに関し、いずれにせよ、本発明によって企図される蒸気凝縮物又は任意の他の水流へのNCG混合物のHS及びCOの吸収に依存しない。
【0013】
米国特許第5085782号明細書は、地熱ブライン(地熱水)のフラッシング中に生成された非凝縮性ガスを回収及び使用する方法を記載しており、当該ガスは、大量のCO及び少量のHSを含み、これは、硫化水素の実質的にすべてを酸化するために、酸化剤の存在下で、当該非凝縮性ガスをブライン(地熱水)に由来する蒸気の凝縮物に導入することを含む。したがって、記載される方法は、本発明によって企図される蒸気凝縮物又は任意の他の水流への吸収ではなく、HSをより高い酸化状態に変換することによってHSを除去することに関する。
【0014】
したがって、本発明の発明者等は、後の貯蔵のためにNCGからHS及びCOを分離、捕捉及び調製するための、又は例えば硫黄をより高い酸化状態に酸化するための塩素の添加に頼ることなく、NCG混合物からの比較的可溶性のCO及びHSガスの、液体蒸気凝縮物(又は任意の他の水流)への吸収のみに依存し、同時にNCG混合物中に比較的難溶性のH、N及びCHガスを残す後の使用のための、環境に優しい方法の必要性を満たすシステム及び方法を初めて記載した。
【発明の概要】
【0015】
上記のように、処分又は後の使用のために硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)を調製する目的で、地熱非凝縮性ガス(NCG)混合物等のH、N、CH及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含する硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)リッチガスから、HS及びCO等の可溶性ガスを分離するための効果的で環境に優しい方法を達成することが有利であろう。一般に、本発明は、HS及びCOの上記の欠点の1つ以上を、別々に又は任意の組み合わせで軽減、緩和又は排除する。特に、本発明の目的は、HS及びCOに関連する従来技術の上述の問題又は他の問題を解決する方法を提供することであると考えることができる。
【0016】
これらの懸念の1つ以上をより良好に対処するために、本発明の第1の態様では、NCG等の、H、N、CH及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含するHS及びCOリッチガス混合物(G1)からHS及びCOを含む可溶性ガスを捕捉するための方法が提供され、少なくとも以下のもの、
・NCG等の、H、N、CH及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含する当該HS及びCOリッチガス混合物(G1)を、3~20bar、例えば3~15barの圧力まで加圧することと、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させることと、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)からの当該HS及びCOの少なくとも一部の、当該水流(W2)への吸収によって、
・当該水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成することと、
・溶解したHS及びCOで富化された当該水流(W4)を、
・当該水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井、又は
・地質貯留層内に水流(W5)を注入して、当該水流(W5)のpH調整の補助として当該水流(W4)を使用するためのシステムのいずれかに移送することと、
を含む。
【0017】
本発明の文脈において、「移送」という用語は、例えば圧送によって、液体、例えば水、又は気体(例えば、ガス混合物)をある場所から別の場所に移送する任意の手段として理解される。
【0018】
本発明の文脈において、「流」という用語は、体積流量又は質量流量のいずれかとして提供され得る、特定の流量で所与の速度で所与の方向に移動する物質、例えば水又はガスとして理解される。体積流量は、単位時間当たりに所与の点を通過する流体又はガスの体積であり、通常、記号Q(時にはV)によって表される。体積流量のSI単位はm/sである。したがって、体積流量は体積/時間に等しい。一方、質量流量は、単位時間当たりに所与の点を通過する流体又はガスの質量である。質量流量のSI単位はkg/sである。
【0019】
本発明の文脈において、「水供給源又は水」という用語は、任意の種類の水、例えば地下水、海洋/海水、わき水、地熱凝縮物若しくはブライン(地熱水)、又は河川、小川若しくは湖からの表面水として理解される。
【0020】
本発明の文脈において、「注入井」という用語は、例えば、玄武岩若しくは玄武岩質岩等の岩石層、及び砂岩若しくは石灰岩等の多孔質岩石層の中、又は浅い土壌層の中若しくは下に、流体を配置する装置等、流体又はガスを地下深部又は地面のすぐ下に下向きに配置する可能性を提供する任意の種類の構造として理解される。
【0021】
本発明の文脈において、CO及び/又はHSリッチガス混合物は、そのCO及び/又はHSの相対含有量が、大気中のCO及び/又はHSの相対含有量よりも高い任意のガス混合物として理解される。
【0022】
本発明の文脈において、「水圧」という用語は、水圧液が存在する船舶、坑井、ホース又は任意のものの全方向に水圧液が及ぼす圧力として理解される。水圧は、流体が高圧から低圧に流れる際に、水圧システム内の流れを生じさせる可能性がある。
【0023】
圧力は、SI単位パスカル(Pa)、すなわち1ニュートン/平方メートル(1N/m)又は1kg/(m・s)又は1J/mで測定される。一般的に使用される他の圧力単位は、ポンド/平方インチ、又はより正確には重量ポンド/平方インチ(略語:psi)及びbarである。SI単位では、1psiは約6895Paに等しく、1barは100,000Paに等しい。
【0024】
本発明の文脈において、(CO及び/又はHSの)ガスの「分圧」又は単なる「圧力」という用語は、所与のガス自体が同じ温度で元の混合物の全体積を占めていた場合、ガスの混合物中の当該所与のガスの概念的圧力として理解される。理想ガス混合物の全圧は、混合物中の個々の構成ガスの分圧の合計である。
【0025】
本発明の文脈において、「加圧する」及び「加圧される」という用語は、それぞれ、周囲の圧力よりも高い圧力、例えば大気圧よりも高い圧力、例えば3~20bar、例えば3~15bar、例えば4~10bar、例えば6~8bar、例えば7barをもたらし、維持するプロセスとして理解される。特に、「加圧する」及び「加圧される」という用語は、本発明の文脈において、所与のガス又は所与のガス混合物をその液体状態に圧縮することを意味すると解釈されるべきではなく、所与のガス又は所与のガス混合物に対して所与の温度で、それを特定の閾値を超える圧力にかけることを意味する。
【0026】
本発明の文脈において、「接触させる」、例えばガス流を水流と接触させるという用語は、何かを他の何かと接触させること、すなわち2つ以上のものを互いに触れさせ、物理的に相互作用させるか、又は互いに関連付けることとして理解される。
【0027】
本発明の文脈において、「吸収」、例えばガスの水への吸収という用語は、原子、分子又はイオンがバルク相、例えば液体又は固体材料に入る、物理的又は化学的な現象又はプロセスとして理解される。この一例は、ガス-液体吸収(スクラビングとしても知られる)であり、これは、ガス混合物の1つ以上の成分を優先的に溶解し、それらの溶液を液体中に提供する目的で、ガス混合物を液体と接触させる操作である。原則として、溶質と溶媒(吸収剤)との間に化学反応が存在するかどうかに応じて、物理的吸収及び化学的吸収の2種類の吸収プロセスが存在する。本発明のうちの一つのプロセスのように、水が吸収剤として使用されるプロセスでは、吸収剤と溶質との間で化学反応はほとんど起こらず、したがって、このプロセスは一般に物理的吸収と呼ばれる。しかし、吸水剤のpHが塩基又は酸の添加によって調整されているプロセスでは、水への吸収は、溶質の化学的性質に応じて、液相中での迅速かつ不可逆的な中和反応を伴うことがあり、次いで、このプロセスは化学吸収又は反応性吸収と呼ばれることがある。したがって、例えばpH調整によって引き起こされる化学反応を使用して、吸収速度を増加させ、溶媒の吸収能力を増加させ、ガス混合物の特定の成分のみを優先的に溶解する選択性を増加させ、及び/又はガス混合物の有害成分を安全又はより安全な化合物に変換することができる。
【0028】
本発明の文脈において、「生成する」、例えば、水流又は加圧ガス流を生成するという用語は、何か、例えば水流又は加圧ガス流を生じさせる、引き起こす、作り出す、もたらす、又は得ることと理解される。
【0029】
本発明の文脈において、「注入/再注入」、又は「注入する/再注入する」は、例えば流体を地下構造に押し込むために、何かを他のものに強制的に導入/再導入することとして理解される。
【0030】
本発明の文脈において、「地質貯留層」という用語は、上向き及び下向きというよりも他の方向に膨張する地下構造、例えば玄武岩質岩における亀裂として理解され、この構造は、本発明による注入井に注入される水のための流路を提供し、地熱貯留層と呼ばれるものを含むことができる。本文脈において、「地熱貯留層」という用語は、上向き及び下向きというよりも他の方向に膨張し、坑井から注入された水の流路を提供する熱岩の亀裂として理解される。
【0031】
したがって、溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)を生成することによって、例えばNCGの残りのガスからCO及びHSを分離し、したがって後の廃棄のために、又は例えば流体のpH調整に使用するためにこれらのガスを調製する方法が提供される。処分は、例えば、溶解したCO及びHSで富化された水流(W4)を地熱貯留層に注入して戻すことに基づいてもよく、地熱貯留層では、水-岩石反応を介して化学結合を形成する。したがって、天然地熱システムで既に行われている水-岩石反応は、溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)を地熱システムに注入して戻すことによって利用することができる。CO及びHSを水流に溶解し、元の場所に戻すことによってCO及びHSを分離することは、例えば地熱発電所からのガス排出を削減するための理想的な方法と見なされるに違いない。
【0032】
一実施形態では、当該HS及びCOリッチガスは、以下のガス、H、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つを更に含み、HS及びCOリッチガスに含まれる残りのガスからHS及びCOガスを除去する当該方法は、当該H、N、CH、及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含するHS及びCOリッチガスを、HS及びCOを水と接触させて、溶解したHS及びCOを残りの難溶性H、N、CH、及び/又はArガスから分離する吸収塔を通して導くことを含む。このようにして、当該残りの難溶性ガスからHS及びCOを分離するための簡単な方法が提供される。
【0033】
本発明の第2の態様では、地熱非凝縮性ガス(NCG)等の、H、N、CH及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含する硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)リッチガス混合物(G1)からHS及びCOを含む可溶性ガスを分離するためのシステムが提供され、少なくとも以下のもの、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)を、3~20bar、例えば3~15barの圧力に加圧する手段と、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させる手段と、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)からの当該HS及びCOの少なくとも一部の、当該水流(W2)への吸収によって、当該水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成する手段と、
・溶解したHS及びCOで富化された当該水流(W4)を、
・当該水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井、又は
・地質貯留層内に水流(W5)を注入して、当該水流(W5)のpH調整の補助として当該水流(W4)を使用するためのシステムのいずれかに移送する手段と、
を含む。
【0034】
本発明によるシステムの特定の好ましい実施形態では、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する、当該加圧ガス混合物(G1)から当該HS及びCOの少なくとも一部を、当該水流(W2)に吸収する手段のための当該手段は、1つ以上の吸収塔を含む。
【0035】
本発明による「水」という用語は、淡水、地熱坑井からの水、ブライン(地熱水)、海水等を意味し得ることに留意すべきである。したがって、当該水供給源は、任意の種類の水であってもよい。同様に、CO及び/又はHSガスは、従来の発電所、地熱発電所、工業生産、ガス分離ステーション等の任意の供給源に由来し得る。
【0036】
一般に、本発明の様々な態様は、本発明の範囲内で可能な任意の方法で組み合わせて統合することができる。本発明のこれら及び他の態様、特徴及び/又は利点は、以下に記載される実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。
【0037】
以下、本発明の多数の実施形態を、図面を参照して単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】アイスランドの様々な地熱発電所によって放出されたCO及びHSの量を示す図である。
図2】硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)を含む可溶性ガスを、NCG等の、H、N、CH及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含するHS及びCOリッチガス混合物から分離する本発明による方法を示すフローチャートである。
図3】硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)を含む可溶性ガスを、NCG等の、H、N、CH及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含するHS及びCOリッチガス混合物から分離する本発明によるシステムを示す図である。
図4】本発明によるシステム及び方法による吸収塔及び再注入井を示す図である。
図5】本発明によるCO/HSを(5~6barの吸収塔で)除去し、その後、(1a)pH調整の補助としての再注入、又は(1b)地質貯留層への再注入のいずれかに使用する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図2は、硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)を含む可溶性ガスを、地熱非凝縮性ガス(NCG)等の、H、N、CH及び/又はArガスのうちの少なくとも1つも包含するHS及びCOリッチガス混合物から分離する本発明による方法のフローチャートを示す。HS及びCOリッチガス混合物は、NCGに限定されると解釈されるべきではないことに留意すべきである。しかし、簡単にするために、以下では、HS及びCOリッチガス混合物はNCGであると仮定するが、NCGは、H、N、Ar及びCHから選択される1つ以上のガスを更に含んでもよいが、これらに限定されない。
【0040】
工程(S1)201では、NCGに含まれる残りのガスからHS及びCOガスが分離される。図3に関連してより詳細に論じるように、これは、好ましくは、HS及びCOが液体、典型的には水に溶解し、そのようにして残りのより難溶性のH、N、CH及びArガスから分離される吸収塔を通してNCGを導くことによって行われる。その後、溶解したHS及びCOを含む得られた水流は、例えば、廃棄/貯蔵のための再注入井、又はpH調整のための別のプロセスに導かれる。
【0041】
図3を参照すると、本発明は、特に、硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含するガス混合物(G1)からHS及びCOを除去するための方法に関し、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)を加圧する工程と、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させる工程と、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)からの当該HS及びCOの少なくとも一部の、当該水流(W2)への吸収によって、
・当該水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成する工程と、
・溶解したHS及びCOで富化された当該水流(W4)を、
・当該水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井、又は
・地質貯留層内に水流(W5)を注入して、当該水流(W5)のpH調整の補助として当該水流(W4)を使用するためのシステムのいずれかに移送する工程と、
を含む。
【0042】
溶解したHS及びCOで富化された当該水流(W4)を、当該水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井、又は
地質貯留層内に水流(W5)を注入して、当該水流(W5)のpH調整の補助として当該水流(W4)を使用するためのシステムのいずれかに移送する工程は、図3には示されていない。
【0043】
溶解したHS及びCOで富化された当該水流(W4)を、当該水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井に移送する工程を図4に示す。図4に示す特定の実施形態では、水流(W4)は、「地熱水」とラベル付けされた別の水流と同時注入される。
【0044】
水流(W5)のpH調整のための水流(W4)の使用は、図3又は図4には示されていないが、例えば図5に示されており、水流(W4)の一部は、再注入(1b)に使用され、一部は、水流(W5)のpH調整(1a)に使用され、これは「地熱水」として示されている。
【0045】
本発明による方法の特に好ましい実施形態では、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)の圧力は、3~20bar、例えば3~15bar、又は4~20bar、例えば4~14bar、例えば5~13bar、例えば6~12bar、例えば7~11bar、例えば7、8、9、10及び11barである。
【0046】
本発明による方法の更に特に好ましい実施形態では、当該ガス流(G1)の温度は、30~50℃、例えば32~48℃、例えば33~47℃、例えば34~46、例えば35~45、例えば36~44、例えば37~43、例えば38~42、例えば39、40及び41℃である。
【0047】
本発明による方法の更に特に好ましい実施形態では、当該水流(W2)の温度は、4~40℃、例えば6~35℃、例えば8~30℃、例えば10~25℃、例えば11~24℃、例えば12~23℃、例えば13~22℃、例えば14~21℃、例えば15~20℃、例えば15、16、17、18、19及び20℃である。
【0048】
本発明による方法の更に特に好ましい実施形態では、当該水流(W2)の圧力は、6~23bar、例えば6~22bar、例えば6~21bar、例えば6~20bar、例えば6~19bar、例えば6~18bar、例えば7~17bar、例えば8~16bar、例えば9~15bar、例えば10~14bar、例えば9、10、11、12、13及び14barである。本発明による方法の特に好ましい実施形態では、当該水流(W2)の圧力は、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)の圧力よりも約2~5bar高く、例えば、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)の圧力よりも3又は4bar高い。したがって、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)の圧力が、約6barである場合、当該水流(W2)の圧力は、好ましくは約9barであるべきである。それでもなお、当業者であれば、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)の圧力と、当該水流(W2)との間の最適な圧力差は、例えば、適用可能な吸収塔の塔高及び適用可能な水分配システムの圧力降下に依存し、同様に、所与のシステムのどこで当該圧力が測定されるかに依存するであろうことを認識するであろう。
【0049】
本発明による方法の更に特に好ましい実施形態では、当該ガス混合物(G1)の流量は、0.2~1.5kg/s、例えば0.25kg/s~1.45kg/s、例えば0.3~1.4kg/s、例えば0.35~1.35kg/s、例えば0.4~1.3、例えば0.45~1.25kg/s、例えば0.5~1.2kg/s、例えば0.55~1.15kg/s、例えば0.6~1.1kg/s、例えば0.65~1.05kg/s、例えば0.7~1kg/s、例えば0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95及び1kg/sである。
【0050】
本発明による方法の更に特に好ましい実施形態では、当該水流(W2)の流量は、36~56kg/s、例えば37~55kg/s、例えば38~54kg/s、例えば39~55kg/s、例えば40~53kg/s、例えば41~52kg/s、例えば42~51kg/s、例えば42、43、44、45、46、47、48、49及び50kg/sである。
【0051】
本発明による方法の更に特に好ましい実施形態では、当該ガス混合物(G1)は地熱非凝縮性ガス混合物(NCG)である。
【0052】
また、上記の方法から離れると、本発明は、また、特に、硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含するガス混合物(G1)からHS及びCOを除去するためのシステムに関し、少なくとも以下のもの、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)を加圧する手段と、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させる手段と、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)からの当該HS及びCOの少なくとも一部の、当該水流(W2)への吸収によって、当該水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成する手段と、
・溶解したHS及びCOで富化された当該水流(W4)を、
・当該水流(W4)を地質貯留層に注入するための注入井、又は
・地質貯留層内に水流(W5)を注入して、当該水流(W5)のpH調整の補助として当該水流(W4)を使用するためのシステムのいずれかに移送する手段と、
を含む。
【0053】
本発明による特定の好ましいシステムでは、当該
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)流を、水流(W2)と接触させるための手段と、
・HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該加圧ガス混合物(G1)からの当該HS及びCOの少なくとも一部の、当該水流(W2)への吸収によって、当該水流(W2)と同等の溶解したHS及びCOで富化された水流(W4)と、HS及びCO並びにH、N、CH及び/又はArのうちの少なくとも1つも包含する当該ガス混合物(G1)と比較して、HS及びCOが枯渇している加圧ガス流(G3)と、を生成する手段と、
は、吸収塔である。
【0054】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明されているが、そのような例示及び説明は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと考えられ、本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解及び達成され得る。特許請求の範囲において、「を含む(comprising)」という語は他の要素又は工程を除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に記載のいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の測定値が、相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの測定値の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0055】
[例1]
CO/HSの実験的注入は、レイキャヴィークのおよそ20km南東の西火山帯南東アイスランドに位置する、ヘンギル中央火山にあるヘトリスヘイジ発電所で行った。現在、ヘンギル地域には2つの生産地熱地帯があり、この地域の北部にはネーシャヴェトリルがあり、南部にはヘトリスヘイジがある。
【0056】
63の生産井がヘトリスヘイジ地熱地帯に掘削されており、その層位及び変質帯に関する貴重な情報を提供している。Franzson et al.,Franzson,H.,Kristjansson,B.R.,Gunnarsson,G.,Bjornsson,G.,Hjartarson,A.,Steingrimsson,B.,Gunnlaugsson,E.and Gislason,G.(2005)The Hengill-Hellisheidi Geothermal field.Development of a Conceptual Model.Proceedings World Geothermal Congress 2005によって科学文献で報告され、その全体が参照により本明細書に組み込まれるように、ヘンギル地域の地表下の玄武岩層は、主に、海面下約1000mの深さのハイアロクラスタイト火山層を含み、より顕著な溶岩の連続が下層にある。Helgadottir et al.,Helgadottir,H.M.,Snaebjornsdottir,S.O.,Nielsson,S.,Gunnarsdottir,S.H.,Matthiasdottir,T.,Hardarson,B.S.,Gunnlaugur M.Einarsson,G.M.and Franzson,H.(2010)Geology and Hydrothermal Alteration in the Reservoir of the Hellisheidi High Temperature System,SW-Iceland.Proceedings,World Geothermal Congress 2010によって科学文献で報告され、その全体が参照により本明細書に組み込まれるように、熱水変質は、上にある冷たい地下水システムの新鮮な岩石から、ゼオライト集合体を通り、緑簾石、珪灰石及びアクチノ閃石を含む高温鉱物集合体にまで及ぶ。
【0057】
ヘトリスヘイジ地熱地帯からの地熱ガスは、主にCO、HS、H、並びにより少ない程度のN、CH及びArからなる。パイロットガス分離ステーションが、ヘトリスヘイジ発電所の隣に建設された。パイロットステーションは、発電所の凝縮器から来る地熱ガスを、CO及びHSリッチガス流(複数可)と、他のガス(主にH、N、Ar、O及び/又はCH)を含むガス流と、に分離した。CO及びHSから分離されたガス流中の酸素は、地熱ガスの大気汚染に由来する。このようにして、発電所から来る総地熱ガスの約3%が分離された。CO/HSガス流(複数可)はCO/HS注入に使用されたが、残りのガスは、ヘトリスヘイジ発電所の凝縮器から来る残りの地熱ガスと共に大気中に放出された。
【0058】
CO/HSガス流(複数可)を、注入場所に近いヨウ化カリウムトレーサと共に地下水に溶解し、続いて地熱貯留層に注入して戻した。このプロジェクトの目的は、溶液からHSを除去し、地熱貯留層内の鉱物中に貯蔵するために、地熱貯留層内の例えばHSの濃度を制御するものと同じ制御パラメータを使用することであった。
【0059】
硫化水素及び二酸化炭素の実験的注入のために選択された場所は、ヘトリスヘイジ発電所の約2km北東のSleggjubeinsdalurにある。これは、好適な貯留層温度、発電所、したがってHSの供給源に近いこと、トレーサ試験、及びその場所では注入実験に高温液体エンタルピー坑井が利用可能であるという事実に基づいて選択した。HSガスは、パイロットガス分離ステーションから輸送し、注入場所付近の地熱水に溶解し、その後、坑井HE-08に注入した。
【0060】
HE-08は、生産のために2003年に掘削された深さ2808mの垂直井であるが、生産井として使用できないことが判明した。HE-08坑井は、近くの坑井の掘削中にこの坑井とHE-08との間の明確な接続が観察されたため、注入用に選択した。坑井間の接続は、以下に記載するトレーサ試験で更に調査した。
【0061】
ヘトリスヘイジ地熱地帯及び注入部位の層位及び変化は、Franzon et al.,Franzson,H.,Kristjansson,B.R.,Gunnarsson,G.,Bjornsson,G.,Hjartarson,A.,Steingrimsson,B.,Gunnlaugsson,E.and Gislason,G.(2005)The Hengill-Hellisheidi Geothermal field.Development of a Conceptual Model.Proceedings Worls Geothermal Congress 2005,and in the scientific literature by Helgadottir et al.,Helgadottir,H.M.,Snaebjornsdottir,S.O.,Nielsson,S.,Gunnarsdottir,S.H.,Matthiasdottir,T.,Hardarson,B.S.,Gunnlaugur M.Einarsson,G.M.and Franzson,H.(2010)Geology and Hydrothermal Alteration in the Reservoir of the Hellisheidi High Temperature System,SW-Iceland.Proceedings,World Geothermal Congress 2010による科学文献で報告されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。注入部位の主な岩石層は、時折溶岩系列を有する氷河下に形成されたハイアロクラスタイトである。海面下約1400m未満では溶岩系列が顕著である。注入部位の帯水層温度は、排出された流体の石英地質温度計の適用及び計算された地層温度によって示されるように、260℃~270℃である。HE-08の顕著な帯水層は深さ1350mにあり、地層温度は約270℃であり、これは石英地質温度計と非常に一致している。注入部位の岩石層は、新鮮な岩石から緑簾石-角閃石帯までの高温領域のすべての典型的な変質帯を通過する。
【0062】
HE-08の掘削中、HE-08と、水位測定に使用される近くの坑井であるKhG-1との間に圧力関係が観察された。HE-31、HE-46及びHE-52の掘削中、掘削された坑井と坑井HE-8とKhG-1との間でも圧力関係が観察された。トレーサ試験を実施して、近くの坑井へのHSリッチ地熱ブライン(地熱水)の可能な流路を明らかにし定量化し、その結果を使用して可能な監視井の監視プログラムを構成した。
【0063】
250kgの安息香酸ナトリウム(NaCCO)を1000リットルの水に溶解し、続いて坑井HE-8に注入することによって、トレーサ試験を行った。トレーサ地熱ブライン(地熱水)の注入後、4l/sの体積流量で56日間、坑井に圧送した。試験時、注入井近傍の坑井は排出していた。坑井は、HE-5、HE-31、HE-46及びHE-52であった。定期的に試料をそれらの堰ボックス(weirbox)から又はウェブレセパレータを使用して回収し、イオンクロマトグラフィを使用して安息香酸イオンについて分析した。ベンゾアートの濃度は、坑井HE-52、HE-5及びHE-31のすべての試料において検出限界未満であった。ベンゾアート濃度の上昇レベルは、坑井HE-46においてのみ明らかであった。トレーサ試験のモデル化により、270℃において2週間で報告されたベンゾアートの20%の分解を考慮すると、注入された水の40%近くが坑井HE-46に排出されることが明らかになった。残りのベンゾアートは考慮されなかった。HE-08に注入されたベンゾアートは、わずか2日後にHE-46に現れ始め、2つの坑井間の速い流路を明らかにしている。石英地質温度計によれば、帯水層温度は266℃であり、HE-08及び注入部位付近のすべての坑井の帯水層温度に近い。
【0064】
ヘトリスヘイジ地熱地域の帯水層流体中の硫化水素濃度は、この注入プロジェクトの一部、及び坑井の一般的な地球化学的監視の一部の両方として広く研究されており、Stefansson et al.and Scott et al.,Stefansson,A.,Arnorsson,S.,Gunnarsson,I.,Kaasalainen,H.and Gunnlaugsson,E.(2011).The geochemistry and sequestration of H2S into hydrothermal system at Hellisheidi,Iceland.J.Volcanol.Geoth.Res.202,179-188);Scott S.,Gunnarsson,I.,Stefansson,A.and Gunnlaugsson,E.(2011).Gas Chemistry of the Hellisheidi Geothermal Field,SW-Iceland.Proceedings 36th Stanford Geothermal Workshopによる科学文献で報告されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。高温帯水層流体中の計算されたHS濃度は、15~264ppmの範囲にある。濃度は温度の上昇と共に増加し、鉱物緩衝液集合体によって制御されるように思われる。データ点の大部分は、黄鉄鉱、磁硫鉄鉱、ぶどう石及び緑簾石又は黄鉄鉱、磁硫鉄鉱及び磁鉄鉱鉱物緩衝液の平衡線に近い。Stefansson et al.は、アイスランドの地熱地域は通常、磁鉄鉱が低く、これがアイスランドの地熱システムにおいて不安定であることを示唆しているため、HS濃度がぶどう石含有鉱物集合体と平衡すると結論付けた。
【0065】
本発明のHS除去方法は、HS鉱物化を成功させるために行われる必要がある化学反応の速度に依存する。HSは、地熱貯留層に永久的に貯蔵される二次鉱物を形成するための金属を必要とする。反応経路モデリングは、HS鉱物化の能力に影響を及ぼす主な要因が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Stefansson et al.,Stefansson,A.,Arnorsson,S.,Gunnarsson,I.,Kaasalainen,H.and Gunnlaugsson,E.(2011).The geochemistry and sequestration of HS into hydrothermal system at Hellisheidi,Iceland.J.Volcanol.Geoth.Res.202,179-188によって科学文献に報告されているように、鉄の移動度及び酸化状態に関連することを示している。250℃を超えると、緑簾石の形成時に黄鉄鉱の鉱物化速度が低下し、結果として、HSを鉱物化するために、より多くの玄武岩質岩を溶解する必要がある。次いで、HS隔離のための最適温度は、緑簾石の安定域を下回るか、又は約230℃を下回る(Stefansson et al.を参照されたい)。注入部位の岩石層温度は260~270℃である。溶解したHSを含む注入された地熱水は、監視井(HE-46)に入る前に100℃から最大260℃超まで加熱され、HSを鉱物化するための広い温度間隔を提供する。
【0066】
注入部位のトレーサ試験により、注入井及び監視井からの直接かつ高速な流路が明らかになった。主帯水層の間隔は約450mである。これは、坑井間の主流路が、ヘトリスヘイジ地熱地帯のような亀裂が顕著な地熱貯留層で予想される、貯留層内の亀裂を通過していることを示している。実験的な注入を成功させるために、硫化物鉱物が注入井の近傍の帯水層を満たし、注入に使用できなくなる可能性があるため、HS鉱物化の速度は速すぎてはならない。このような状況は、鉱物化反応を遅くするための対策を必要とするであろう。これらの手段は、例えば、注入されたブライン(地熱水)中のHSの濃度を低下させ、したがって、堆積している硫化物鉱物に対するブライン(地熱水)の過飽和を低下させることであり得る。一方、ブライン(地熱水)が注入井から監視井に流れる時、鉱物化を行うには、HS鉱物化の速度が遅すぎる可能性がある。これに対する応答は、監視井をしばらくの間停止させるが、HSの注入を継続することであり得る。これは、地熱貯留層内の保持時間を増加させ、HS隔離のためのより多くの時間を可能にする。
【0067】
[例2]
アイスランドのヘトリスヘイジ地熱発電所では、非凝縮性地熱ガス(NCG)は、主に3つのガス、二酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)及び水素(H)からなる。窒素(N)、メタン(CH)及びアルゴン(Ar)等の他のガスもNCGガスの一部であるが、ごくわずかな割合である(参照:http://www.thinkgeoenergy.com/treating-non-condensable-gases-ncg-of-geothermal-plants-experience-by-mannvit/)。
【0068】
地熱現場からの蒸気に適用された凝縮プロセスの結果として生じる非凝縮性ガス留分は、吸収塔に導かれ、ここでNCG(主にCO、HS)は、一定温度(15℃~25℃)において高圧(6~10bar)下で水に溶解される。
【0069】
硫化水素(HS)及び二酸化炭素(CO)を含む水溶性ガスをHS及びCOリッチ地熱非凝縮性ガス混合物(NCG)から捕捉するための操作条件を以下に概説する。
【表1】
【0070】
硫化水素の最大98%及び二酸化炭素の約50%を水に溶解し、HS及びCOが鉱物化する発電所部位における岩盤の深部に再注入した(参照:http://www.thinkgeoenergy.com/treating-non-condensable-gases-ncg-of-geothermal-plants-experience-by-mannvit/)。
【0071】
当業者であれば、上述の温度、流量及び圧力は、アイスランドのヘトリスヘイジ地熱発電所の特定の条件に基づいており、ガス流及び温度に関する他の所定の条件が与えられる場合、これらは異なり得ることを容易に理解するであろう。同様に、当業者は、関連する水流が、実際のガス流の特定の比率であるべきであり、これは適用可能な圧力及び温度に応じて変更されるべきことを容易に理解するであろう。
【0072】
[例3]
本セットの実験もまた、アイスランドのヘトリスヘイジの地熱発電所で実施した。
【0073】
注入部位の地表下の岩石は、8~10%と推定される多孔性を有する比較的浸透性であり、800m未満の深さにおける高浸透率亀裂特徴とするかんらん石ソレアイト質玄武岩からなる。標的の酸性ガス貯留層の深さ約2000mにおける温度は、220~260℃の範囲である。
【0074】
CO及びHSを水に溶解し、混合物を750mの深さで放出した。CO/HS/HO混合物は、1900~2200mまで延在する注入井を介して放出地点から運ばれ、地表下の岩石に放出された。次いで、この合わせた流体は、深さ1900~2200mの注入井から0,9~1,5kmに位置する監視井に、水圧勾配を注ぎ込んだ。
【0075】
1年間に、合計4526トンのCO及び2536トンのHSを注入した。注入されたガス混合物の最終結果を、深さ約1900~2200mの主帯水層の深さの注入井の下流984m、1356m、及び1482mに位置する3つの監視井の定期的なサンプリングによって監視した。これらの深さにおいて、貯留層流体は、水圧が水の液体蒸気飽和圧力よりも大きいため、266~277℃の温度を有する単相水性流体である。流体が監視井を上昇すると、圧力が低下するにつれて沸騰する。その結果、蒸気及び水は、各監視井の上部で5.7~9.3barで別々にサンプリングされる。Arnorsson et al.(2006)Geofluids 6,203-216に記載されているように、気相中の溶存無機炭素(DIC)及び硫化水素(HS)、並びにCO及びHSを決定するためのサンプルを収集し、分析した。
【0076】
注入されたガス鉱物化の割合は、サンプリングされた監視井中の測定された水性DIC及び溶存硫黄(DS)濃度を、混合及び希釈のみを想定し、地表下で反応が起こらなかったものと比較することによって算出した。
【0077】
計算され、測定されたDIC及びDSの間の差は、注入されたCOの50%超及び注入されたHSの76%が鉱物化したことを示した。
【0078】
[例4]
本セットの実験もまた、アイスランドのヘトリスヘイジの地熱発電所で実施した。システムを例2に記載の条件下で動作させた。
【0079】
153日間、0.9~1.4l/sの流量で溶解したCO(4095~6388mg/l)及びHS(1933~3811)を含む水を、18~20l/sで、pH調整地熱ブライン(地熱水)流に使用した。pH調整ブライン(地熱水)のCO及びHSの濃度は、それぞれ254~448mg/l及び170~305mg/lであり、pHは5.5~6.7であった。117℃の温度を有する混合物を熱交換器を介して移し、60℃に冷却し、交換器にわたる圧力降下を監視し、実験の前後に熱交換器を計量することによってスケーリング量を推定した。熱交換器全体で圧力降下は観察されず、測定されたスケールは2μg/lであった。比較のために、未処理の地熱ブライン(地熱水)を同じ流量及び温度低下で53日間、熱交換器を介して移した。熱交換器が111μg/lの測定されたスケールで詰まったため、実験を更に延長することはできなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】