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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】モジュラースイッチングセル
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221114BHJP
   H02M 7/497 20070101ALI20221114BHJP
   H02M 7/49 20070101ALI20221114BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/497
H02M7/49
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516324
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020073922
(87)【国際公開番号】W WO2021052730
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】19197834.5
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035459
【氏名又は名称】マシイネンフアブリーク・ラインハウゼン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント・アンガス
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA23
5H770DA26
5H770DA30
5H770DA33
5H770DA41
5H770DA44
5H770QA01
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA21
(57)【要約】
本発明は、第1スイッチングユニット2と第2スイッチングユニット3と第1コンデンサ4と第2コンデンサ5とを有するベースモジュール18を備える高電圧直流電力変換器20のモジュラースイッチングセル1に関する。この場合、前記第1スイッチングユニット2と前記第2スイッチングユニット3と前記第1コンデンサ4と前記第2コンデンサ5とが、筐体15上に設置されている当該モジュラースイッチングセル1において、第1セル端子100と第2セル端子200との間の2つの並列のハーフブリッジ回路と、前記第1セル端子100と前記第2セル端子200との間の2つの直列のハーフブリッジ回路と、前記第1セル端子100と前記第2セル端子200との間の1つのフルブリッジ回路とのうちの1つブリッジ回路を構成するため、ベースモジュール18が、少なくとも3つの異なる母線セットを受け容れるように適合されていて、それぞれの母線セットは、前記第1スイッチングユニット2と前記第2スイッチングユニット3と前記コンデンサ4前記第2コンデンサ5とを相互接続するための複数の母線6,7,8,9,10,11,12,13,14を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・第1スイッチングユニット(2)と、
・第2スイッチングユニット(3)と、
・第1コンデンサ(4)と、
・第2コンデンサ(5)と、
を有するベースモジュール(18)を備える高電圧直流電力変換器(20)のモジュラースイッチングセル(1)であって、
前記第1スイッチングユニット(2)と前記第2スイッチングユニット(3)と前記第1コンデンサ(4)と前記第2コンデンサ(5)とが、筐体(15)上に設置されている当該モジュラースイッチングセル(1)において、
・第1セル端子(100)と第2セル端子(200)との間の2つの並列のハーフブリッジ回路と、
・前記第1セル端子(100)と前記第2セル端子(200)との間の2つの直列のハーフブリッジ回路と、
・前記第1セル端子(100)と前記第2セル端子(200)との間の1つのフルブリッジ回路と、
のうちの1つブリッジ回路を構成するため、ベースモジュール(18)が、少なくとも3つの異なる母線セットを受け容れるように適合されていて、それぞれの母線セットは、前記第1スイッチングユニット(2)と前記第2スイッチングユニット(3)と前記コンデンサ(4)と前記第2コンデンサ(5)とを相互接続するための複数の母線(6,7,8,9,10,11,12,13,14)を含むことを特徴とするモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項2】
・前記第1スイッチングユニット(2)は、第1交流電圧端子(21)と、第1直流負極端子(22)と、第1直流正極端子(23)と、前記第1交流電圧端子(21)と前記第1直流負極端子(22)との間の第1スイッチと、前記第1交流電圧端子(21)と第1直流正極端子(23)との間の第2スイッチとを有し、
・前記第2スイッチングユニット(3)は、第2交流電圧端子(31)と、第2直流負極端子(32)と、第2直流正極端子(33)と、前記第2交流電圧端子(31)と前記第2直流負極端子(32)との間の第3スイッチと、前記第2交流電圧端子(31)と前記第2直流正極端子(33)との間の第4スイッチとを有し、
・前記2つの並列のハーフブリッジ回路と前記2つの直列のハーフブリッジ回路と前記1つのフルブリッジ回路とのうちの1つのブリッジ回路を構成するため、前記それぞれの母線セットの前記複数の母線(6,7,8,9,10,11,12,13,14)が、前記第1交流電圧端子(21)と前記第1直流負極端子(22)と前記第1直流正極端子(23)と前記第2交流電圧端子(31)と前記第2直流負極端子(32)と前記第2直流正極端子(33)と前記第1コンデンサ(4)と前記第2コンデンサ(5)とを相互接続するように、前記ベースモジュール(18)は、それぞれの母線セットを受け容れるように適合されていることを特徴とする請求項1に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項3】
少なくとも前記第1直流負極端子(22)が、前記筐体(15)に電気接続されていて、
前記筐体(15)は、筐体アースとして機能することを特徴とする請求項2に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項4】
前記第1スイッチングユニット(2)の前記第1スイッチ及び前記第2スイッチ並びに前記第2スイッチングユニット(3)の前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの全てが、互いに並列に配線されている電子スイッチ、特に絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(80)とダイオード(90)とを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項5】
前記第1スイッチングユニット(2)の前記第1スイッチ及び前記第2スイッチ並びに前記第2スイッチングユニット(3)の前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを切り替えるように適合された個別の制御装置(16)を特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項6】
・前記第1スイッチングユニット(2)は、第1サブスイッチングユニット(2a)及び第2サブスイッチングユニット(2b)を含み、
前記第1サブスイッチングユニット(2a)は、前記第1交流電圧端子(21)と前記第1直流負極端子(22)と前記第1スイッチとを含み、
前記第2サブスイッチングユニット(2b)は、前記第1交流電圧端子(21)と前記第1直流正極端子(23)と前記第2スイッチとを含み、
・前記第2スイッチングユニット(3)は、第3サブスイッチングユニット(3a)と第4サブスイッチングユニット(3b)とを含み、
前記第3サブスイッチングユニット(3a)は、前記第2交流電圧端子(31)と前記第2直流負極端子(32)と前記第3スイッチとを含み、
前記第4サブスイッチングユニット(3b)は、前記第2交流電圧端子(31)と前記第2直流正極端子(33)と前記第4スイッチとを含むことを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項7】
共通のヒートシンク(17)が、前記第1スイッチングユニット(2)と前記第2スイッチングユニット(3)と前記第1コンデンサ(4)と前記第2コンデンサ(5)とに装備されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項8】
バイパススイッチ(19)が、前記第1セル端子(100)と前記第2セル端子(200)との間に設けられていて、
前記バイパススイッチ(19)は、前記スイッチングセル(1)をバイパスするように適合されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項9】
前記第1スイッチングユニット(2)と前記第2スイッチングユニット(3)と前記第1コンデンサ(4)と前記第2コンデンサ(5)との全てが、前記複数の母線セットを介して同じ側面から電気接続可能であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のモジュラースイッチングセル(1)。
【請求項10】
請求項2~9のいずれか1項に記載のモジュラースイッチングセル(1)と、第1母線セットと第2母線セットと第3母線セットとのうちの少なくとも2つの母線セットとを含むシステムにおいて、
前記第1コンデンサ(4)は、第1コンデンサ端子(41)と第2コンデンサ端子との間に設けられていて、前記第2コンデンサ(5)は、第3コンデンサ端子(51)と第4コンデンサ端子(52)との間に設けられていて、
・前記第1母線セットは、第1母線(6)と第2母線(7)と第3母線(8)とを含み、
前記第1直流負極端子(22)と前記第2直流負極端子(32)と前記第2コンデンサ端子(42)と前記第4コンデンサ端子(52)とが、前記第1母線(6)を介して電気接続されていて、
前記第1直流正極端子(23)と前記第2直流正極端子(33)と前記第1コンデンサ端子(41)と前記第3コンデンサ端子(51)とが、前記第2母線(7)を介して電気接続されていて、
前記第1交流電圧端子(21)と前記第2交流電圧端子(31)とが、前記第3母線(8)を介して電気接続されていて、
前記第1母線(6)は、前記第2セル端子(200)であり、前記第3母線(8)は、前記第1セル端子(100)であること、及び/又は
・前記第2母線セットは、第4母線(9)と第5母線(10)と第6母線(11)と第7母線(12)と第8母線(13)とを含み、
前記第1交流電圧端子(21)が、前記第4母線(9)に電気接続されていて、
前記第1直流正極端子(23)と前記第1コンデンサ端子(41)とが、前記第5母線(10)を介して電気接続されていて、
前記第2直流負極端子(32)と前記第4コンデンサ端子(52)とが、前記第6母線(11)を介して電気接続されていて、
前記第1直流負極端子(22)と前記第2直流正極端子(33)と前記第2コンデンサ端子(42)と前記第3コンデンサ端子(51)とが、前記第7母線(12)を介して電気接続されていて、
前記第2交流電圧端子(31)が、前記第8母線(13)を介して電気接続されていて、
前記第4母線(9)は、前記第1セル端子(100)であり、前記第8母線(13)は、前記第2セル端子(200)であること、及び/又は
・前記第3母線セットが、前記第2母線(7)と前記第4母線(9)と前記第8母線(13)と第9母線(14)とを含み、
前記第1直流負極端子(22)と前記第2直流負極端子(32)と前記第2コンデンサ端子(42)と前記第4コンデンサ端子(52)とが、第9母線(14)を介して電気接続されている当該システム。
【請求項11】
それぞれの母線セットの複数の母線(6,7,8,9,10,11,12,13,14)は、積層状の母線であることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
それぞれの母線セットは、前記スイッチングセル(1)を前記電力変換器(20)の他の構成要素、特に他のスイッチングセル(1)に電気接続するために配置された前記第1セル端子(100)と前記第2セル端子(200)とを規定する複数の母線(6,7,8,9,10,11,12,13,14)を含むことを特徴とする請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
三相電圧入力部(600)を含み、且つこの三相電圧入力部(600)のそれぞれの相に対して、請求項1~9のいずれか1項に記載の複数のスイッチングセル(1)を含む高電圧直流電力変換器(20)であって、
前記複数のスイッチングセル(1)は、直列に接続されている当該高電圧直流電力変換器(20)。
【請求項14】
・第1スイッチングユニット(2)と第2スイッチングユニット(3)と第1コンデンサ(4)と第2コンデンサ(5)とを筐体(15)上に取り付けることによってベースモジュール(18)を設けるステップと、
・前記第1スイッチングユニット(2)と前記第2スイッチングユニット(3)と前記第1コンデンサ(4)と前記第2コンデンサ(5)とを相互接続するための複数の母線(6,7,8,9,10,11,12,13,14)をそれぞれ含む少なくとも2つの異なる母線セットを設けるステップであって、それぞれの母線セットの前記複数の母線(6,7,8,9,10,11,12,13,14)が、
第1セル端子(100)と第2セル端子(200)との間の並列の2つのハーフブリッジ回路と、
前記第1セル端子(100)と前記第2セル端子(200)との間の直列の2つのハーフブリッジ回路と、
前記第1セル端子(100)と前記第2セル端子(200)との間の1つのフルブリッジ回路と、
のうちの1つのブリッジ回路を構成するように適合されているステップと、
・前記複数の母線セットのうちの1つの母線セットを前記ベース構成要素(18)上に取り付けるステップとを特徴とするモジュラースイッチングセル(1)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラースイッチングセルに関する。様々な種類のセルモジュールを実現するため、特に、当該スイッチングセルは、このベースモジュールの複数の端子を、予め構成された複数の母線を介して接続することによって構成され得るベースモジュールを含む。さらに、本発明は、当該モジュラースイッチングセルとそれぞれの母線とを含むシステムに関する。最後に、本発明は、モジュラースイッチングセルを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュラーマルチレベル変換器(MMC)が、従来の技術から知られている。当該MMCは、電力変換器の産業の分野において、送電で使用するために高圧直流送電の変換器を実現するための標準的なアプローチである。当該モジュラーマルチレベル変換器は、広く採用されていて、自励式変換器のような配電の用途を含む中電圧(MV)の駆動用途でも使用される。
【0003】
MMC変換器は、相アームを構成するために、直列に接続された複数のセルから構成される。一般的なMMCセルは、ハーフブリッジ又はフルブリッジである。ハーフブリッジセルは、電圧を一方向に遮断する一方で、フルブリッジセルは、電圧を双方向に遮断する。MMCセルは、大抵は絶縁ゲートバイポーラトランジスタを含む。
【0004】
製造用の変換器の分野では、変換器の定格電流及び定格電圧は、広範囲の用途に適合させるために広範囲に及び得る。多数のセルが、要求される定格電圧を達成するために直列に設置されることで、様々な定格電圧が簡単に提供される。しかしながら、一般に、当該変換器の定格電流は、1つの単一セルの定格電流の範囲内にある。したがって、変換器の定格電流を生成するためには、様々な定格電流を有する様々なセルの構成が要求されるか、又は、低電流用の変換器の構成に対するセル定格電流は使用されない。その結果、単位kW当たりのコストが高くなる。
【0005】
従来のMMCセルの構成は、市販品として入手可能である。多くのMMCセルの構成が、以下の刊行物に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.Sharifabadi,L.Harnefors,H-P.Nee,S.Norrga and R.Teodorescu,“Design,Control and Application of Modular Multilevel Converters for HVDC Transmission Systems,”John Wiley & Sons/IEE Press,2016
【非特許文献2】M.Merlin,“HVDC activity at Imperial College”2015,slides 16-18
【非特許文献3】Alstom Grid/GE references:C.Barker,HVDC Plenary Session,IEEE EPEC 2011 C.Bartzsch,H.Huang,T.Westerweller and M.Davies,“HVDC PLUS and SVC PLUS:Reliable and Cost-effective Power Transmission Solutions with Modular Multilevel Converters,”2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来の技術による問題点は、セルの構成が特定の構成及び定格電流に対して高度に最適化されていることである。当該特定の定格電流に対する最適化は、例えばIGBT/ダイオードモジュールの選択とセルコンデンサとバイパススイッチとに影響を及ぼす。多くの場合、当該定格電流は、予め設定された電流値の割り当てとして与えられる。例えば、全定格のセルは、予め設定された全ての電流を通電できる。半定格のセルは、予め設定された電流の半分だけを通電できる。半定格のセルの寸法が、理論的には半分になる一方で、例えばIGBTモジュールが、全定格のセルの定格電流だけに適合可能であるならば、当該構成要素は使用不可能である。半定格のセルの構成要素が入手可能であっても、それぞれの半定格のセルは、依然として、全定格のセルと同じ数量の制御構成要素、すなわち同じ数量のセル制御装置、電流/電圧センサ、セル電源等を必要とし、機械構成要素の同様なコスト及び容積を必要とする。複数のセル用のラック支持構造も異なり得る。何故なら、当該寸法が異なるからである。したがって、半定格のセルのコスト及び容積は、全定格のセルのコスト及び容積の半分よりも遥かに大きい。したがって、実際のMMC変換器はより高価であり(ユーロ/kW)、その電力密度はより低い(kW/m)。さらに、当該半定格のセルは、関連するエンジニアリングコストを伴って独立した構成を必要とする。
【0008】
フルブリッジセルが要求されるならば、適応性の欠如も明らかである。半定格のセルの構成要素が入手できない場合、半定格のフルブリッジセルが、同様に、関連するエンジニアリングコストを伴って独立した構成を必要とする。
【0009】
したがって、本発明の課題は、安価であり、高い電力密度を有し、様々な構成及び定格電流に対して使用され得るスイッチングセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。従属請求項は、本発明の有益な実施の形態を含む。
【0011】
特に、本発明は、共通のセル構成を示す。当該セル構成は、全定格の1つのセル又は半定格の直列の2つのセルに対して同じ基本機械構成を使用する。当該半定格の直列の2つのセルの単位電力及び単位電力密度当たりのコストは、当該全定格の1つのセルと同じである。これらのセルは、主に共通の構成を共有でき、当該構成を簡単にし、より低いコストのシステムを実現する。
【0012】
本発明は、特に、ベースモジュールを有する高電圧直流電力変換のモジュラースイッチングセルによって解決される。当該ベースモジュールは、第1スイッチングユニットと第2スイッチングユニットと第1コンデンサと第2コンデンサとを有する。これらの構成要素:すなわち当該第1スイッチングユニットと当該第2スイッチングユニットと当該第1コンデンサと当該第2コンデンサとの全てが、筐体上に設置されている。こうして、当該ベースモジュールは、異なる構成に到達するために、これらの構成要素の異なる相互接続を可能にする。当該第1スイッチングユニット及び当該第2スイッチングユニットは、好ましくはIGBTを含む。
【0013】
当該ベースモジュールが、少なくとも3つの異なる母線セットを受け容れるように適合されていて、それぞれの母線セットは、当該第1スイッチングユニットと当該第2スイッチングユニットと当該コンデンサと当該第2コンデンサとを相互接続するための複数の母線を含む。それぞれの母線セットが、当該ベースモジュールの異なる構成を可能にする。特に、これらの母線セットのうちの1つの母線セットが、第1セル端子と第2セル端子との間の2つの並列のハーフブリッジ回路を可能にする。さらに、これらの母線セットのうちの別の1つの母線セットが、当該第1セル端子と当該第2セル端子との間の2つの直列のハーフブリッジ回路を可能にする。さらに、これらの母線セットのうちの別の1つの母線セットが、当該第1セル端子と当該第2セル端子との間の1つのフルブリッジ回路を可能にする。したがって、それぞれの母線セットが、上記のベースモジュールの構成要素を多様に相互接続する。したがって、当該ベースモジュールは、様々なセルの種類に対して使用され得て、特に様々な定格電流及び構成に対して使用され得る。したがって、当該モジュラースイッチングセルは、安価であり、高い電力密度を可能にする。
【0014】
したがって、本発明は、共通のセル構成を提供する。当該共通のセル構成は、全定格の1つのセル又は半定格の直列の2つのセルに対して、同じ基本機械構成、すなわちベースモジュールを使用する。当該半定格の直列の2つのセルの単位電力及び単位電力密度当たりのコストは、当該全定格の1つのセルと同じである。これらのセル方式は、主に共通の構成を共有でき、当該構成を簡単にし、より低いコストのシステムを実現する。
【0015】
好ましくは、当該第1スイッチングユニットは、第1交流電圧端子と、第1直流負極端子と、第1直流正極端子と、当該第1交流電圧端子と当該第1直流負極端子との間の第1スイッチと、当該第1交流電圧端子と第1直流正極端子との間の第2スイッチとを有する。こうして、当該第1スイッチングユニットは、好ましくはハーフブリッジモジュールとして構成されている。さらに、当該第2スイッチングユニットは、好ましくは第2交流電圧端子と、第2直流負極端子と、第2直流正極端子と、当該第2交流電圧端子と当該第2直流負極端子との間の第3スイッチと、当該第2交流電圧端子と当該第2直流正極端子との間の第4スイッチとを有する。同様に、当該第2スイッチングユニットは、好ましくはハーフブリッジモジュールとして構成されている。当該それぞれの母線セットの当該複数の母線が、当該第1スイッチングユニットと当該第2スイッチングユニットと当該第1コンデンサと当該第2コンデンサとの全ての端子を相互接続するように、当該ベースモジュールは、それぞれの母線セットを受け容れるように適合されている。こうして、特に、当該第1交流電圧端子と当該第1直流負極端子と当該第1直流正極端子と当該第2交流電圧端子と当該第2直流負極端子と当該第2直流正極端子と当該第1コンデンサと当該第2コンデンサとが相互接続されている。これらの母線が、当該並列の2つのハーフブリッジ回路と当該直列の2つのハーフブリッジ回路と当該1つのフルブリッジ回路とのうちの1つのブリッジ回路を構成するように、これらの母線は設けられている。したがって、異なる回路が設けられる必要がある場合、これらの母線が異なるだけで済む。1つのベースモジュールが、様々な電力変換器を実装するために使用され得る。
【0016】
好適な実施の形態では、少なくとも当該第1直流負極端子が、当該筐体に電気接続されている。当該筐体は、好ましくは筐体アースとして機能する。複数の母線セットによって規定されるセル構成に依存して、当該第2直流正極端子又は当該第2直流負極端子が、好ましくは当該筐体に接続されている。特に1つの筐体アース電位だけが、モジュラースイッチングセル内に存在するように、全てのスイッチングユニットが、同じ筐体アースを共有することが好ましい。
【0017】
さらに好ましくは、当該第1スイッチングユニットの当該第1スイッチ及び当該第2スイッチ並びに当該第2スイッチングユニットの当該第1スイッチ及び当該第2スイッチの全てが、電子スイッチを含む。当該電子スイッチは、特に絶縁ゲートバイポーラトランジスタとダイオードとを有する。これらは、互いに並列に配線されている。IGBTの代わりに、集積化ゲート転流型サイリスタ(IGCT)、ゲートターンオフサイリスタ(GTOサイリスタ)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)又はバイポーラジャンクショントランジスタ(BJT)のようなその他の電子スイッチも使用され得る。様々なモジュラースイッチングセル、すなわち電力変換器を実現するため、これらの全ての構成要素は、様々な方法で、すなわち様々な母線セットを介して結合され得る。
【0018】
当該モジュラースイッチングセルは、好ましくは個別の制御装置を含む。当該制御装置は、当該第1スイッチングユニットの当該第1スイッチ及び当該第2スイッチ並びに当該第2スイッチングユニットの当該第3スイッチ及び当該第4スイッチを切り替えるように適合されている。こうして、当該モジュラースイッチングセルへの電力入力が、最適な電力変換で実行され得る。当該変換された電力が出力される。したがって、全てのスイッチの全ての制御が、当該個別の制御装置によって有益に制御される。
【0019】
さらに好ましくは、当該第1スイッチングユニットは、第1サブスイッチングユニット及び第2サブスイッチングユニットを含む。この場合、当該第1スイッチングユニット及び当該第2スイッチングユニットは、ハーフブリッジモジュール(例えば、ハーフブリッジIGBT)ではなくて、個別のスイッチモジュール(例えば、IGBT)である。当該第1サブスイッチングユニットは、好ましくは当該第1交流電圧端子と当該第1直流負極端子と当該第1スイッチとを含む。当該第2サブスイッチングユニットは、好ましくは当該第1交流電圧端子と当該第1直流正極端子と当該第2スイッチとを含む。したがって、当該第1スイッチング要素の相互接続は、複数の母線セットを介して依然として可能である。この場合、当該2つのサブスイッチングユニットが、別々に接続される必要がある。こうして、当該第2スイッチングユニットは、好ましくは第3サブスイッチングユニットと第4サブスイッチングユニットとを含む。当該第3サブスイッチングユニットは、当該第2交流電圧端子と当該第2直流負極端子と当該第3スイッチとを含む。当該第4サブスイッチングユニットは、当該第2交流電圧端子と当該第2直流正極端子と当該第4スイッチとを含む。したがって、当該第2スイッチングユニットは、複数の母線セットを介して別々に接続される2つのサブスイッチングユニットも含む。
【0020】
さらに好ましくは、ヒートシンクが設けられている。当該ヒートシンクは、特に1つよりも多いスイッチングユニットの熱を放散するために設けられている。好ましくは、共通のヒートシンクが、当該第1スイッチングユニットと当該第2スイッチングユニットと当該第1コンデンサと当該第2コンデンサとに装備されている。したがって、当該セルの電力密度が増大され、当該セルを設けるためのコストが減少される。
【0021】
当該モジュラースイッチングセルは、当該第1セル端子と当該第2セル端子との間に設けられたバイパススイッチを有する。当該バイパススイッチは、当該第1セル端子と当該第2セル端子とをショートカットすることによって当該スイッチングセルをバイパスするように適合されている。変換器が、上記のように当該モジュラースイッチングセルに実装されている場合、例えばスイッチングセルの損傷時に、当該バイパススイッチは、それぞれのスイッチングセルを使用不可能にする。1つのスイッチングセルの故障が、当該変換器の全体の故障に導かない。別の実施の形態では、当該バイパススイッチは省略され、構成要素の故障時に、当該スイッチングセルの構成要素が、当該第1セル端子と当該第2セル端子とをショートカットするように適合されている。
【0022】
別の好適な実施の形態では、当該第1スイッチングユニットと当該第2スイッチングユニットと当該第1コンデンサと当該第2コンデンサとの全てが、当該複数の母線セットを介して同じ側面から電気接続可能である。したがって、当該母線セットは、全ての構成要素を相互接続するためにベースモジュールの片面上に配置されるだけで済む。したがって、様々なセル構成、特に上記のセル構成が簡単に設けられ得る。
【0023】
さらに、本発明は、上記のモジュラースイッチングセルと、第1母線セットと第2母線セットと第3母線セットとのうちの少なくとも2つの母線セットとを含むシステムに関する。したがって、当該システムは、様々なセル構成を設けるように構成され得る。変換器が、好ましくはこれらのシステムのうちの幾つかのシステムから実装され得る。当該システムでは、当該第1コンデンサは、第1コンデンサ端子と第2コンデンサ端子との間に設けられていて、当該第2コンデンサは、第3コンデンサ端子と第4コンデンサ端子との間に設けられている。これらの全てのコンデンサ端子は、複数のスイッチングユニットとこれらのコンデンサとを接続するために、当該母線セットの複数の母線を介して接続され得る。様々な構成が、当該異なる母線セットによって設けられ得る。次いで、これらの異なる母線セットを説明する。
【0024】
当該第1母線セットは、第1母線と第2母線と第3母線とを含む。当該第1母線は、当該第1直流負極端子と当該第2直流負極端子と当該第2コンデンサ端子と当該第4コンデンサ端子とを電気接続する。当該第2母線は、当該第1直流正極端子と当該第2直流正極端子と当該第1コンデンサ端子と当該第3コンデンサ端子とを電気接続する。最後に、当該第1交流電圧端子と当該第2交流電圧端子とが、当該第3母線を介して電気接続されている。このセル構成では、当該第1母線は、当該第2セル端子であり、当該第3母線は、当該第1セル端子である。したがって、当該第1母線セットは、好ましくは全定格の1つのハーフブリッジセルを規定する。これは、複数のスイッチングユニットが、半定格であり、当該第1母線セットを介して並列に接続されていることを意味する。したがって、当該セル構成は、ハーフブリッジである一方で、それぞれのスイッチングユニットは、好ましくはそれぞれのセルに通電する電流の半分の電流を通電させる。
【0025】
追加の又は代わりの実施の形態では、当該第2母線セットは、第4母線と第5母線と第6母線と第7母線と第8母線とを含む。当該第4母線は、当該第1交流電圧端子に電気接続されている。当該第5母線は、当該第1直流正極端子と当該第1コンデンサ端子とを電気接続する。当該第2直流負極端子と当該第4コンデンサ端子とが、当該第6母線を介して電気接続されている。当該第7母線は、当該第1直流負極端子と当該第2直流正極端子と当該第2コンデンサ端子と当該第3コンデンサ端子とを電気接続する。最後に、当該第8母線は、当該第2交流電圧端子に電気接続されている。このセル構成によれば、当該第4母線は、当該第1セル端子であり、当該第8母線は、当該第2セル端子である。このセル構成では、半定格の1つのデュアルセルが設けられている。これは、当該セルが半定格の2つのセルの機能を満たすように、2つのスイッチングユニットが直列に接続されていることを意味する。
【0026】
別の追加の又は代わりの実施の形態では、当該第3母線セットが、上記の第2母線と上記の第4母線と上記の第8母線と第9母線とを含む。第9母線は、当該第1直流負極端子と当該第2直流負極端子と当該第2コンデンサ端子と当該第4コンデンサ端子とを電気接続する。このセル構成は、半定格の1つのフルブリッジを実現する。したがって、複数のスイッチングユニットが、1つのフルブリッジを構成するように、これらのスイッチングユニットは結合されている。特に、上記のように、それぞれのスイッチングユニットは、1つのハーフブリッジモジュールである。その結果、これらのハーフブリッジモジュールは、当該第3母線セットによって1つのフルブリッジに設定される。
【0027】
したがって、同じベースモジュールから、すなわち同じスイッチングユニット及びコンデンサから、少なくとも3つの異なるセル構成が、当該第1母線セットと当該第2母線セットと当該第3母線セットとのうちの1つの母線セットに当該ベースモジュールを結合するだけで製造され得る。これは、様々なセルの種類及び/又は変換器の提供において向上された適応性を可能にする。
【0028】
それぞれの母線セットの複数の母線は、好ましくは積層状の母線である。積層状の母線を提供することによって、スイッチングユニット及びコンデンサを相互接続するために必要とされるスペースが低減される。さらに、電気特性が向上され、例えば漂遊インダクタンスが減少される。
【0029】
それぞれの母線セットは、当該スイッチングセルを当該電力変換器の他の構成要素、特に他のスイッチングセルに電気接続するために配置された当該第1セル端子と当該第2セル端子とを規定する複数の母線を含む。したがって、変換器を実装するため、それぞれのセルが、当該セル端子を構成するそれぞれの母線セットを介して接続されている。
【0030】
また、本発明は、高電圧直流電力変換器に関する。当該変換器は、三相電圧入力部を含み、且つこの三相電圧入力部のそれぞれの相に対して、上記の複数のスイッチングセルを含む。当該複数のスイッチングセルは、直列に接続されている。
【0031】
したがって、当該電力変換器は、上記の適応性があり、高価でないスイッチングセルを備え得る。この場合、当該スイッチングセルは、特に高いエネルギー密度を有する。
【0032】
最後に、本発明は、モジュラースイッチングセルを製造する方法に関する。当該方法は、ベースモジュールが第1スイッチングユニットと第2スイッチングユニットと第1コンデンサと第2コンデンサとを筐体の片面上に取り付けることによって設けられるステップを有する。このベースモジュールは、様々なセル構成を実現するために様々な母線セットを受け容れるように適合されている。それ故に、少なくとも2つの異なる母線セットが設けられている。それぞれの母線セットは、当該第1スイッチングユニットと当該第2スイッチングユニットと当該第1コンデンサと当該第2コンデンサとを相互接続するために複数の母線を含む。それぞれの母線セットの当該複数の母線が、第1セル端子と第2セル端子との間の並列の2つのハーフブリッジ回路と、当該第1セル端子と当該第2セル端子との間の直列の2つのハーフブリッジ回路と、当該第1セル端子と当該第2セル端子との間の1つのフルブリッジ回路と、のうちの1つのブリッジ回路を構成するように適合されている。したがって、それぞれの母線セットは、当該ベースモジュールの複数の構成要素を様々に相互接続することによって別のセル構成を可能にする。最後のステップとして、当該複数の母線セットのうちの1つの母線セットが、当該ベース要素上に取り付けられる。当該それぞれの母線セットを当該ベース要素上に取り付けることによって、上記の列挙された複数の構成のうちの1つの構成を有するスイッチングセルが提供される。当該複数の母線セットのうちの任意の1つの母線セットが、当該ベースモジュール上に取り付けられ得るので、当該方法は、異なる種類のスイッチングセルを提供する簡単で且つ適応性のある方法である。
【0033】
さらなる実施の形態及び利点は、以下の図面の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態による高電圧直流電力変換器の概略図である。
図2】本発明の実施の形態による高電圧直流電力変換器の位相出力電圧の概略図である。
図3】本発明の実施の形態による高電圧直流電力変換器のハーフブリッジスイッチングセルの概略図である。
図4】本発明の実施の形態による高電圧直流電力変換器のフルブリッジスイッチングセルの概略図である。
図5】本発明の実施の形態によるスイッチングセルの概略図である。
図6】本発明の実施の形態によるスイッチングセルのベースモジュールの概略図である。
図7】本発明の実施の形態によるスイッチングセルの第1別形態の概略図である。
図8】本発明の実施の形態によるスイッチングセルの第1別形態の概略配線図である。
図9】本発明の実施の形態によるスイッチングセルの第2別形態の概略図である。
図10】本発明の実施の形態によるスイッチングセルの第2別形態の概略配線図である。
図11】本発明の実施の形態によるスイッチングセルの第3別形態の概略図である。
図12】本発明の実施の形態によるスイッチングセルの第3別形態の概略配線図である。
図13】本発明の別の実施の形態によるスイッチングセルの概略図である。
図14】さらにもう1つの別形態におけるスイッチングセルの概略配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、特に送電で使用するための高電圧直流電力変換器20の概略配線図である。高電圧直流電力変換器20は、三相電圧入力部600を有し、直流電圧を出力するように適合されている。三相電圧入力部600のそれぞれの相に対して、複数のスイッチングセル1が直列に接続されている。したがって、図2に示されているように、1つの相の出力電圧300が、複数の個別スイッチングセル1の複数のセル電圧400に分割され得る。これらのスイッチングセル1をそれぞれスイッチングすることによって、位相出力電圧300が、直流電圧に変換され得る。
【0036】
図3及び4は、異なるセルの種類のスイッチングセル1を示す。全てのスイッチングセル1が、第1セル端子100と第2セル端子200との間で給電される。図3には、ハーフブリッジが示されている一方で、図4は、フルブリッジが示されている。当該ハーフブリッジは、電流を一方向だけで遮断できる一方で、当該フルブリッジは、電流を二方向で遮断できる。したがって、図3に示されたハーフブリッジの構成は、個別の1つの第1スイッチングユニット2だけを使用するスイッチングセル1である。他方で、図4に示されたフルブリッジの構成によるスイッチングセル1は、1つの第1スイッチングユニット2と1つの第2スイッチングユニット3とを有する。この実施の形態では、第1スイッチングユニット2及び第2スイッチングユニット3は、ハーフブリッジ要素である。したがって、第1スイッチングユニット2及び第2スイッチングユニット3の2つのハーフブリッジ要素が、図4の1つのフルブリッジを構成するために結合されている。
【0037】
したがって、それぞれのスイッチングユニット2,3は、2つのIGBT80及び2つのダイオード90を有する。1つのIGBT80及び1つのダイオード90は、並列に接続されていて、二組の並列のIGBT80及びダイオード90は、直列に接続されている。こうして、上記のハーフブリッジ要素が構成される。
【0038】
それぞれのスイッチングセル1は、少なくとも1つの第1コンデンサ4をさらに有する。第1コンデンサ4は、スイッチングユニット2,3に対して並列に提供されている。したがって、複数のスイッチングセル1が、それぞれのスイッチングセル1の第1セル端子100と第2セル端子200との間の位相出力電圧300を複数個のセル電圧に分割する。その結果、これらのスイッチングセル1は、位相出力電圧300を直流電圧に変換するために使用され得る。
【0039】
バイパススイッチ19が、1つのセルの故障時にそのスイッチングセル1への通電をバイパスし、したがって変換器20を稼働状態に保持することを可能にするために設けられてもよい。このバイパススイッチ19は、サイリスタ、機械式の接触子又は速く動作する火工装置と組み合わせて使用することによって実現されてもよい。当該セルで使用される半導体スイッチが、短絡部を兼ねるならば、例えば特別に設計されたプレスパックIGBT又は集積化ゲート転流型サイリスタ(IGCT)であるならば、バイパススイッチ19は不要である。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態によるスイッチングセル1の概略図である。スイッチングセル1は、図3及び4に示されたような第1スイッチングユニット2及び第2スイッチングユニット3を有し、同様に第1コンデンサ4及び第2コンデンサ5を有する。図5は、共通の筐体15上に取り付けられている第1スイッチングユニット2、第2スイッチングユニット3、第1コンデンサ4及び第2コンデンサ5を示す。スイッチングセル1が、流体を冷却するための個別の流入口17a及び流出口17bだけを有するように、2つのスイッチングユニット2,3は、同じヒートシンク17も共有する。スイッチングセル1は、特にスイッチングユニット2,3のIGBT80を駆動させる共通の制御装置16も有する。したがって、スイッチングセル1は、1つのスイッチングユニットだけを有する2つの個別セルと比べてより高いエネルギー密度を有する。さらに、全ての構成要素が、同じ筐体15上に設けられているので、筐体15は、共通の筐体アースとして機能する。
【0041】
スイッチングセル1は、決まったセル構成をとらない。むしろ、スイッチングセル1は、様々なセル構成をとるように構成され得る。その結果、様々な要求に応える変換器20が柔軟に提供される。様々なセル構成を可能にするため、スイッチングセル1は、第1スイッチングユニット2、第2スイッチングユニット3、第1コンデンサ4及び第2コンデンサ5を含むベースモジュール18を有する。ベースモジュール18は、異なる複数組の母線を収容するようにも適合されている。それぞれの母線セットが、様々なセル構成を実現するために様々な方式でベースモジュール18の複数の構成要素を接続する。
【0042】
好ましくは、複数の母線セットの複数の母線が、ベースモジュール18の複数の構成要素を全ての側面から接触させる。したがって、これらの母線セットを取り付けることと、第1スイッチングユニット2と第2スイッチングユニット3と第1コンデンサ4と第2コンデンサ5とを電気接続することとが容易になる。
【0043】
複数の母線セットによって電気接続されるようにするため、第1スイッチングユニット2は、第1交流電圧端子21と第1直流負極端子22と第1直流正極端子23と有する。第1スイッチが、第1交流電圧端子21と第1直流負極端子22との間に設けられていて、第2スイッチが、第1交流電圧端子21と第1直流正極端子23との間に設けられている。この場合、これらの2つのスイッチは、上記の並列のIGBT80とダイオード90とから構成される。
【0044】
同様に、第2スイッチングユニット3は、第2交流電圧端子31と第2直流負極端子32と第2直流正極端子33とを有する。第3スイッチが、第2交流電圧端子31と第2直流負極端子32との間に設けられていて、第4スイッチが、第2交流電圧端子31と第2直流正極端子33との間に設けられている。同様に、これらの2つのスイッチ、すなわち当該第3スイッチ及び当該第4スイッチは、上記の並列のIGBT80とダイオード90とから構成される。
【0045】
第1コンデンサ4は、第1コンデンサ端子41と第2コンデンサ端子42との間に設けられていて、第2コンデンサ5は、第3コンデンサ端子51と第4コンデンサ端子52との間に設けられている。スイッチングセル1が、片面から複数の母線セットを介して電気接続され得るように、上記の全ての端子が、好ましくはこのスイッチングセル1の同じ側面上にある。
【0046】
このような基本構成から出発して、スイッチングセル1は、様々なセル構成に決定され得る。特に、2つのスイッチングユニット2,3が、定格電流を増大させるために又はフルブリッジを構成するために並列にされ得る。これらのスイッチングユニット2,3は、従来の2つのスイッチングセルから成るデュアルスイッチングセルを構成するために直列にされてもよい。以下に、3つの異なる構成を示す。これらの全ての構成は、同じベースモジュール18を有する異なる複数の母線セットによって実現される。
【0047】
図7及び8には、第1セル端子100と第2セル端子200との間の並列の2つのハーフブリッジ回路が示されている。図7は、スイッチングセル1の構成を概略的に示す一方で、図8は、概略的な回路を示す。図9及び10には、第1セル端子100と第2セル端子200との間の直列の2つのハーフブリッジ回路が示されている。図9は、スイッチングセル1の構成を示す一方で、図10は、概略的な回路を示す。最後に、第1セル端子と第2セル端子200との間のフルブリッジ回路が、図11及び12に示されている。図11は、スイッチングセル1の構成を概略的に示す一方で、図12は、概略的な回路を示す。
【0048】
図7及び8による構成では、第1交流電圧端子21、第1直流負極端子22、第1直流正極端子23、第2交流電圧端子31、第2直流負極端子32、第2直流正極端子33、第1コンデンサ端子41、第2コンデンサ端子42、第3コンデンサ端子51及び第4コンデンサ端子52を相互接続するため、第1母線6と第2母線7と第3母線8とを含む第1母線セットが使用される。第1直流負極端子22と第2直流負極端子32と第2コンデンサ端子42と第4コンデンサ端子52とが、第1母線6を介して電気接続されている。第1直流正極端子23と第2直流正極端子33と第1コンデンサ端子41と第3コンデンサ端子51とが、第2母線7を介して電気接続されている。第3母線8が、第1交流電圧端子21と第2交流電圧端子31とを電気接続する。この構成では、第1母線6は、第2セル端子200であり、第3母線8は、第1セル端子100である。
【0049】
特に図8に示されているように、第1コンデンサ4及び第2コンデンサ5と同様に、第1スイッチングユニット2及び第2スイッチングユニット3が、互いに並列に接続されている。したがって、当該複数の構成要素の並列接続は、スイッチングセル1が通電できる電流を2倍にするので、このスイッチングセル1は、全定格のハーフブリッジである。共通の筐体アースが、この筐体15を介して第1直流負極端子22と第2負極端子23とに設けられている。これらの負荷端子は、この構成では同一である。
【0050】
同じベースモジュール18が、半定格のデュアルセルを構成するために図9及び10に示された異なる第2母線セットを用いて設けられ得る。当該第2母線セットは、第4母線9と第5母線10と第6母線11と第7母線12と第8母線13とを含む。これらの母線は、第1交流電圧端子21と第1直流負極端子22と第1直流正極端子23と第2交流電圧端子31と第2直流負極端子32と第2直流正極端子33と第1コンデンサ端子41と第2コンデンサ端子42と第3コンデンサ端子51と第4コンデンサ端子52とを相互接続する。
【0051】
第1交流電圧端子21が、第4母線9に電気接続されている。第1直流正極端子23と第1コンデンサ端子41とが、第5母線10を介して電気接続されている。第2直流負極端子32と第4コンデンサ端子52とが、第6母線11を介して電気接続されている。第7母線12が、第1直流負極端子22と第2直流正極端子33と第2コンデンサ端子42と第3コンデンサ端子51とを電気接続する。最後に、第2直流電圧端子31が、第8母線13に電気接続されている。このセルの構成では、第4母線9は、第1セル端子100であり、第8母線13は、第2セル端子200である。したがって、第1スイッチングユニット2と第1コンデンサ4とが、半定格のハーフブリッジを構成する。当該ハーフブリッジは、第2スイッチングユニット3と第2コンデンサ5とから構成された別の半定格のハーフブリッジに直列接続されている。これらの2つの半定格のハーフブリッジが、同じ電源及び制御装置を共有できるように、特にこれらの2つの半定格のハーフブリッジは、互いにミラー対称に構成されている。共通の筐体アースが、筐体15によって第1直流負極端子22と第2直流正極端子とに設けられている。これらの端子は、この構成では同一である。
【0052】
図9及び10の構成では、当該セルは、2倍のセル電圧500を出力する。このセル電圧500は、セル電圧400の2倍である。したがって、1つの全定格のハーフブリッジ又は2つの半定格のハーフブリッジが、同じ構成要素を用いて設けられ得る。したがって、同じベースモジュール18が、変換器20のそれぞれの要求に基づいて異なるセルの形態として設けられ得る。
【0053】
さらに、図9及び10の構成では、2つのオプションが、バイパススイッチ19に対して適用される。2つのバイパススイッチが直列に接続されていて、これらの2つのバイパススイッチ間の中心点が、これらの2つのハーフブリッジ間の中心点に接続されている場合に、1つのバイパススイッチが、2つのハーフブリッジのそれぞれに対して使用されてもよく、又は1つのバイパススイッチが、スイッチングセル1の全体に対して使用されてもよい。2つのバイパススイッチが使用される場合、それぞれのバイパススイッチは、個別のスイッチングセル1と同じ定格電圧を必要とする一方で、スイッチングセル1の全体に対して個別の1つのバイパススイッチを使用する場合は、セル電圧400の2倍である2倍のセル電圧500が、バイパススイッチ19に印加される必要があるので、より高い定格電圧が必要とされる。
【0054】
最後に、図11及び12は、半定格のフルブリッジの構成を示す。この構成では、ハーフブリッジモジュールとして構成されている2つのスイッチングユニット2,3が、結合されて1つのフルブリッジに構成されている。このような構成を実現するため、第3母線セットが、上記の第2母線7、上記の第4母線9、上記の第8母線13、追加の第9母線14を含む。第9母線14が、第1直流負極端子22と第2直流負極端子32と第2コンデンサ端子42と第4コンデンサ端子52とを電気接続する。筐体15が、共通の筐体アースを第1直流負極端子22と第2直流負極端子32とに設ける。
【0055】
好ましくは、それぞれの母線セットの複数の母線は、積層状の母線である。当該母線セットは、スイッチングセル1の最適なスイッチングを保証するために、特にIGBT80とコンデンサ4,5との間の漂遊インダクタンスを減少させることに寄与する。
【0056】
したがって、全定格のハーフブリッジ及び半定格のデュアルハーフブリッジに加えて、別の母線セットが、半定格のフルブリッジを構成するためにベースモジュール18に設けられ得る。したがって、ただ1つのベースモジュール18から提供され得る多様な様々なセルの選択肢がある。
【0057】
図13は、図7に示されたセルの構成と同じセルの構成を示す。この場合、異なる第1スイッチングユニット2及び第2スイッチングユニット3が使用される。上記の実施の形態では、第1スイッチングユニット2及び第2スイッチングユニット3は、ハーフブリッジモジュールとして示されている。図13に示されているように、個別のスイッチングモジュールを使用する別の構成も採用され得る。
【0058】
したがって、第1スイッチングユニット2は、第1サブスイッチングユニット2a及び第2サブスイッチングユニット2bを含む。第1サブスイッチングユニット2aは、第1交流電圧端子21と第1直流負極端子22とこの第1交流電圧端子21とこの第1直流負極端子22との間に設けられた第1スイッチとを有する。また、第2サブスイッチングユニット2bは、第1交流電圧端子21を有し、さらに第1直流正極端子23とこの第1交流電圧端子21とこの第1直流正極端子23との間に設けられた第2スイッチとを含む。同様に、第2スイッチングユニット3は、第3サブスイッチングユニット3aと第4サブスイッチングユニット3bとを含む。第3サブスイッチングユニット3aは、第2交流電圧端子31と第2直流負極端子32とこの第2交流電圧端子31とこの第2直流負極端子32との間に設けられた第3スイッチとを有する。第4サブスイッチングユニット3bは、第2交流電圧端子31と第2直流正極端子33とこの第2交流電圧端子31とこの第2直流正極端子33との間に設けられている第4スイッチとを有する。サブスイッチングユニット2a,2b,3a,3bは、第1母線6と第2母線7と第3母線8とを介して別々に接触される必要がある。この場合、セルの構成は、図7に示されたセルの構成と同じままである。スイッチングユニット2,3の構成、すなわちサブスイッチングユニット2a,2b,3a,3bの使用は、任意のその他のセルの構成、特に図9及び11で示された構成に適用され得る。
【0059】
最後に、図14は、スイッチングユニット2,3のさらなる構成の選択肢を示す。この構成の選択肢では、スイッチングユニット2,3は、3つのレベルを有するマルチレベルのブリッジレグとして設けられている。このような構成を実現するため、追加のダイオード90が、それぞれのスイッチングユニット2,3内に含まれている。
【0060】
要約すると、上記のスイッチングセル1は、様々な目的に対して使用され得る一方で、全てのスイッチングセル1が、同じベース構成要素を共有する。したがって、常に同じハードウェアが、変換器20用の様々なスイッチングセル1を提供するために採用され得る。ただ一組の制御構成要素、例えば制御装置16及びヒートシンク17が設けられるだけで済むので、スイッチングセル1は低コストである。スイッチングセル1では、最大限の構成要素の再利用及び構成の再利用が可能である。さらに、特に半定格の2つのハーフブリッジの場合は、コンパクトなセルの構成が提供される。構成要素の数と冷却材の量と電気接続部とが低減されるので、信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0061】
1 スイッチングセル
2 第1スイッチングユニット
21 第1交流電圧端子
22 第1直流負極端子
23 第1直流正極端子
3 第2スイッチングユニット
31 第2交流電圧端子
32 第2直流負極端子
33 第2直流正極端子
4 第1コンデンサ
41 第1コンデンサ端子
42 第2コンデンサ端子
5 第2コンデンサ
51 第3コンデンサ端子
52 第4コンデンサ端子
6 第1母線
7 第2母線
8 第3母線
9 第4母線
10 第5母線
11 第6母線
12 第7母線
13 第8母線
14 第9母線
15 筐体
16 制御装置
17 ヒートシンク
17a 流入口
17b 流出口
18 ベースモジュール
19 バイパススイッチ
20 変換器
80 IGBT
90 ダイオード
100 第1セル端子
200 第2セル端子
300 位相出力電圧
400 セル電圧
500 ダブルセル電圧
600 三相電圧入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】