(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】MEMSマイクロフォンとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 31/00 20060101AFI20221114BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20221114BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20221114BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H04R31/00 C
B81C1/00
B81B3/00
H04R19/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516435
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2020092212
(87)【国際公開番号】W WO2021051854
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201910885581.4
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512154998
【氏名又は名称】無錫華潤上華科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CSMC TECHNOLOGIES FAB2 CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.8 Xinzhou Road Wuxi New District,Jiangsu 214028 China
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】スー ジアレ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ グオピン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シア チャンフェン
【テーマコード(参考)】
3C081
5D021
【Fターム(参考)】
3C081AA17
3C081BA03
3C081BA22
3C081BA32
3C081BA45
3C081BA48
3C081CA03
3C081CA14
3C081CA15
3C081CA23
3C081CA26
3C081CA40
3C081DA03
3C081DA27
3C081EA21
5D021CC20
(57)【要約】
微小電気機械システム(MEMS)マイクロフォンの製造方法は、シリコン表面を有するシリコン基板を提供し、シリコン基板に密閉されたキャビティを形成し、シリコン基板内に複数の離間した音響孔を形成する。複数の音響孔のそれぞれは2つの開口部を有し、その一方がキャビティと連通し、他方がシリコン基板のシリコン表面に位置し、第1の充填部分、第2の充填部分、及び遮蔽部分を含む犠牲層を、シリコン基板上に形成し、遮蔽部分にポリシリコン層を形成し、シリコン表面から離れた側のシリコン基板に凹部を形成し、第1の充填部分、第2の充填部分、及び遮蔽部分の一部を除去して、凹部をキャビティと連通させ、後部チャンバを形成し、ポリシリコン層、遮蔽部分の残部、及びシリコン基板が一緒に中空チャンバを画定する。中空チャンバは、キャビティから離れた複数の音響孔の開口部と連通して、MEMSマイクロフォンを完成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン表面を有するシリコン基板を提供するステップと、
前記シリコン基板に密閉されたキャビティを形成するステップと、
前記シリコン基板内に複数の離間した音響孔を形成するステップであって、前記複数の音響孔のそれぞれは2つの開口部を有し、その一方が前記キャビティと連通し、他方が前記シリコン基板の前記シリコン表面に位置するステップと、
前記キャビティを充填する第1の充填部分、前記複数の音響孔を充填する第2の充填部分、及び前記シリコン基板の前記シリコン表面を遮蔽する遮蔽部分を含む犠牲層を、前記シリコン基板上に形成するステップと、
前記遮蔽部分の前記シリコン表面から離れた側にポリシリコン層を形成するステップと、
前記シリコン表面から離れた側の前記シリコン基板に凹部を形成するステップと、
前記犠牲層の前記第1の充填部分、前記第2の充填部分、及び前記遮蔽部分の一部を除去して、前記凹部を前記キャビティと連通させ、後部チャンバを形成し、前記ポリシリコン層、前記遮蔽部分の残部、及び前記シリコン基板が一緒に中空チャンバを画定するステップであって、前記中空チャンバは、前記キャビティから離れた前記複数の音響孔の前記開口部と連通して、MEMSマイクロフォンを完成するステップとを含む、微小電気機械システム(MEMS)マイクロフォンの製造方法。
【請求項2】
前記シリコン基板内の前記密閉されたキャビティの形成は、
前記シリコン表面に近い側の前記シリコン基板に深溝エッチングプロセスを実行することにより、前記シリコン基板に複数の離間した溝を形成するステップと、
前記シリコン基板を、少なくとも1000℃の高温で水素中でアニールすることにより、前記複数の溝を、前記シリコン基板からのシリコン原子によって充填して、前記シリコン基板に前記キャビティを形成するステップとを含む、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項3】
前記複数の溝のそれぞれは、幅が0.1μmから1.0μmであり、深さが1μmから10μmであり、前記複数の溝は、0.1μmから1.0μmの間隔で形成される、請求項2に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項4】
前記シリコン表面に近い側の前記シリコン基板上で実行される前記深溝エッチングプロセスは、前記シリコン表面にマスク層を堆積させるステップと、前記マスク層をエッチングしパターン化するステップと、前記マスク層の側で前記シリコン基板をエッチングして、前記シリコン基板に前記複数の離間した溝を形成するステップと、前記マスク層を剥ぎ取るステップとを含む、請求項2に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項5】
前記複数の溝はすべて前記シリコン表面に開いている、請求項2に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項6】
前記高温の範囲は1000℃から1200℃である、請求項2に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項7】
前記シリコン基板の前記シリコン表面は、前記キャビティから1μmから2μmの距離だけ離間する、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項8】
前記シリコン基板に前記密閉されたキャビティを形成した後かつ前記シリコン基板に前記複数の音響孔を形成する前に、エピタキシャル堆積によって前記シリコン表面上にエピタキシャル層を形成するステップと、前記シリコン基板内の前記複数の離間した音響孔の形成中に、それぞれが前記複数の音響孔のそれぞれの1つと連通している複数の貫通孔を前記エピタキシャル層に形成するステップとを更に含む、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項9】
前記シリコン基板内の前記複数の離間した音響孔の形成は、前記シリコン基板の前記シリコン表面にマスク層を堆積させるステップと、前記マスク層をエッチングしパターン化するステップと、前記マスク層の側の前記シリコン基板を更にエッチングして、前記シリコン基板に前記複数の離間した音響孔を形成するステップとを含む、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項10】
前記シリコン表面から離れた前記遮蔽部分の側に前記ポリシリコン層を形成した後、かつ前記シリコン表面から離れた側に前記シリコン基板に前記凹部を形成する前に、
前記シリコン表面が部分的に露出するように、前記犠牲層の前記ポリシリコン層及び前記遮蔽部分をエッチングするステップと、
前記シリコン表面及び前記ポリシリコン層上に導電層を形成し、前記導電層をパターン化することにより、前記シリコン表面及び前記ポリシリコン層上にそれぞれ第1の電気接続部品及び第2の電気接続部品を形成するステップとを更に含む、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項11】
前記導電層は、フォトリソグラフィー又はウェットエッチングによってパターン化される、請求項10に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項12】
前記導電層はアルミニウム又は金で製造される、請求項10に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項13】
前記シリコン基板上の前記犠牲層の形成は、熱酸化と蒸着の少なくとも1つによって達成される、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項14】
前記遮蔽部分の厚さは1μmから4μmである、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項15】
前記ポリシリコン層の厚さは0.2μmから1.0μmである、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項16】
前記シリコン表面から離れた側の前記シリコン基板内の前記凹部の形成は、前記シリコン表面から離れた側から前記シリコン基板を研削するステップと、フォトリソグラフィー又はエッチングによって前記シリコン基板に前記凹部を形成するステップとを含む、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項17】
前記犠牲層の前記第1の充填部分、前記第2の充填部分、及び前記遮蔽部分の一部の除去は、緩衝エッチング溶液を使用して前記シリコン基板上で実行されるエッチングプロセスによって達成される、請求項1に記載のMEMSマイクロフォンの製造方法。
【請求項18】
シリコン基板、支持部材、及びポリシリコン層を含む微小電気機械システム(MEMS)マイクロフォンであって、前記シリコン基板はシリコン表面を有し、前記シリコン基板の内部に、後部チャンバ及び複数の離間した音響孔が形成され、前記複数の離間した音響孔のそれぞれには2つの開口部があり、その一方が前記シリコン基板の前記シリコン表面に位置し、他方が前記後部チャンバと連通し、前記支持部材は前記シリコン表面に配置され、前記ポリシリコン層は、前記シリコン基板から離間するように前記支持部材上に配置されることにより、前記シリコン基板、前記支持部材及び前記ポリシリコン層が一緒に中空チャンバを画定し、前記中空チャンバは、前記後部チャンバから離れた前記複数の音響孔の前記開口部と連通している、MEMSマイクロフォン。
【請求項19】
前記シリコン表面及び前記ポリシリコン層上にそれぞれ第1の電気接続部品及び第2の電気接続部品を更に含む、請求項18に記載のMEMSマイクロフォン。
【請求項20】
前記シリコン表面を有する前記シリコン基板を提供するステップと、
前記シリコン基板に密閉されたキャビティを形成するステップと、
前記シリコン基板内に前記複数の離間した音響孔を形成するステップであって、前記複数の音響孔のそれぞれは2つの開口部を有し、その一方が前記キャビティと連通し、他方が前記シリコン基板の前記シリコン表面に位置するステップと、
前記キャビティを充填する第1の充填部分、前記複数の音響孔を充填する第2の充填部分、及び前記シリコン基板の前記シリコン表面を遮蔽する遮蔽部分を含む犠牲層を、前記シリコン基板上に形成するステップと、
前記遮蔽部分の前記シリコン表面から離れた側に前記ポリシリコン層を形成するステップと、
前記シリコン表面から離れた側の前記シリコン基板に凹部を形成するステップと、
前記犠牲層の前記第1の充填部分、前記第2の充填部分、及び前記遮蔽部分の一部を除去して、前記支持部材を形成し、前記凹部を前記キャビティと連通させ、前記後部チャンバを形成し、前記ポリシリコン層、前記遮蔽部分の残部、及び前記シリコン基板が一緒に前記中空チャンバを画定するステップであって、前記中空チャンバは、前記キャビティから離れた前記複数の音響孔の前記開口部と連通して、前記MEMSマイクロフォンを完成するステップとを含む方法によって製造される、請求項18に記載のMEMSマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの分野に関し、より具体的には、微小電気機械システム(MEMS)マイクロフォン及びMEMSマイクロフォンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(MEMS)マイクロフォンの従来の製造方法は、通常、ポリシリコン層-犠牲層-ポリシリコン層の構造を含む。より高い性能に対する需要の高まりにより、犠牲層の厚さは最大3~4μm、ベースプレートの厚さは最大2~3μmになっている。これらは大きな段差厚さにつながり、これは、フォトリソグラフィーとエッチングに非常に厳しい要件を課し、製造を困難にする。
【発明の概要】
【0003】
このため、プロセスの難易度を下げることができるMEMSマイクロフォンの製造方法を提供する必要がある。
【0004】
MEMSマイクロフォンも提供される。
【0005】
MEMSマイクロフォンの製造方法は、
シリコン表面を有するシリコン基板を提供するステップと、
シリコン基板に密閉されたキャビティを形成するステップと、
シリコン基板に複数の離間した音響孔を形成するステップであって、それぞれの音響孔がキャビティとシリコン基板のシリコン表面の両方に開いているステップと、
キャビティを充填する第1の充填部分、音響孔を充填する第2の充填部分、及びシリコン基板のシリコン表面を遮蔽する遮蔽部分を含む犠牲層を、シリコン基板上に形成するステップと、
遮蔽部分のシリコン表面から離れた側にポリシリコン層を形成するステップと、
シリコン表面から離れた側のシリコン基板に凹部を形成するステップと、
犠牲層の第1の充填部分、第2の充填部分、及び遮蔽部分の一部を除去して、凹部をキャビティと連通させ、後部チャンバを形成し、ポリシリコン層、遮蔽部分の残部、及びシリコン基板が一緒に中空チャンバを画定するステップであって、音響孔はキャビティから離れた側で中空チャンバに開いており、MEMSマイクロフォンを完成するステップとを含む。
【0006】
MEMSマイクロフォンは、シリコン基板、支持部材、及びポリシリコン層を含み、シリコン基板はシリコン表面を有し、シリコン基板の内部に、後部チャンバ及び複数の離間した音響孔が形成され、それぞれの音響孔がシリコン表面と後部チャンバの両方に開いており、支持部材はシリコン表面に配置され、ポリシリコン層は、シリコン基板から離間するように支持部材上に配置されることにより、シリコン基板、支持部材、及びポリシリコン層が一緒に中空チャンバを画定し、音響孔は、後部チャンバから離れた側で中空チャンバに開いている。
【0007】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、以下の図面及び詳細な説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0008】
本発明の実施形態又は先行技術の解決策をより明確に説明するために、実施形態又は解決策の説明において参照される図面の簡単な説明を以下に示す。明らかに、これらの図面は、本発明のいくつかの実施形態のみを示しており、当業者は、創造的な努力を払うことなく、異なる実施形態を示す他の図面をそれらから得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートである。
【
図2】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS110で提供されたシリコン基板の概略構成図である。
【
図3】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS121でシリコン基板に形成された溝の概略構成図である。
【
図4】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS122でシリコン基板に形成されたキャビティの概略構成図である。
【
図5】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS130でシリコン基板に形成された音響孔の概略構成図である。
【
図6】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS140でシリコン基板に形成された音響孔を充填する犠牲層の概略構成図である。
【
図7】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS150でシリコン基板上の犠牲層上に形成されたポリシリコン層の概略構成図である。
【
図8】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS160で処理されたシリコン基板、犠牲層及びポリシリコン層の概略構成図である。
【
図9】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS170でポリシリコン層とシリコン基板上に形成された第1の及び第2の電気接続部品の概略構成図である。
【
図10】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS180で形成された凹部、シリコン基板、犠牲層、及びポリシリコン層の概略構成図である。
【
図11】
図1のMEMSマイクロフォンの製造方法のプロセスフローチャートのステップS190で得られたマイクロフォンの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の理解を容易にするために、本発明を実施するための好ましい実施形態を表す特定の実施形態を参照して、本発明を以下により完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全になるように提供される。
【0011】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示を限定することを意図するものではない。
【0012】
図1を参照すると、一実施形態に係る微小電気機械システム(MEMS)マイクロフォンの製造方法は、以下のステップS110からS190を含む。
【0013】
ステップS110では、シリコン表面を有するシリコン基板が提供される。
【0014】
具体的には、
図2を参照すると、シリコン基板300は、シリコン表面301と、シリコン表面に対向する裏面303とを有していてもよい。
【0015】
ステップS120では、密閉されたキャビティ(enclosed cavity)がシリコン基板内に形成される。
【0016】
具体的には、ステップS120は、ステップS121からS122を含んでもよい。
【0017】
ステップS121では、シリコン表面に近い側からシリコン基板に深溝エッチングプロセスを実行して、シリコン基板内に複数の離間した溝を形成する。
【0018】
各溝は、幅が0.1μmから1.0μm、深さが1μmから10μmであり得、それらの溝は、0.1μmから1.0μmの間隔で形成され得る。
【0019】
具体的には、ステップS121は、シリコン表面にマスク層を堆積させることと、マスク層をエッチングしパターン化することと、マスク層の側からシリコン基板をエッチングして、シリコン基板に複数の離間した溝を形成することと、マスク層を剥ぎ取ることとを含んでもよい。マスク層は、当技術分野で一般的に使用される材料で形成することができる。マスク層の堆積及びマスク層のエッチングは、当技術分野で一般的に使用される技術によって達成することができ、したがって、そのさらなる説明は本明細書では省略される。
【0020】
図3を参照すると、ステップS121でシリコン基板300に複数の溝310が形成され、複数の溝310は離間し、すべてシリコン表面301で開いている。
【0021】
ステップS122では、シリコン基板は、少なくとも1000℃の高温で水素中でアニールされて、複数の溝が、シリコン基板からのシリコン原子によって充填され、その結果、密閉キャビティが形成される。
【0022】
具体的には、高温は1000℃から1200℃の範囲である可能性がある。
【0023】
高温と水素雰囲気の作用下で、溝の周りのシリコン原子が移動して再配列し、複数の溝を充填し、基板にキャビティを形成する。
【0024】
図4は、深溝エッチングプロセス及びアニーリングプロセスによって形成されるシリコン基板300内の密閉されたキャビティ320を示している。
【0025】
シリコン基板のシリコン表面は、キャビティから1μmから2μmの距離だけ離間することができる。実際には、必要なベースプレートの厚さに応じて、エピタキシャル層を選択的に形成することができる。たとえば、必要なベースプレートの厚さが3μmで、シリコン基板のシリコン表面からキャビティまでの距離が1μmの場合、キャビティから3μmの距離だけ離間したエピタキシャル層をシリコン表面上に形成することができる。具体的には、エピタキシャル堆積により、シリコン表面上にエピタキシャル層を形成することができる。シリコン基板のシリコン表面からキャビティまでの距離がベースプレートの厚さの要件を満たす場合、エピタキシャル層が形成されない可能性があることに留意されたい。具体的には、ベースプレートの厚さは2μmから3μmの範囲であり得る。
【0026】
本実施形態では、キャビティとシリコン表面との間のシリコン基板がベースプレートを構成する。すなわち、本実施形態では、シリコン基板の一部は、その上に犠牲層とダイヤフラムを形成するためのベースプレートを提供する。このようにして、シリコン基板上のスタック(stack)は、厚さを薄くすることができ、したがって、フォトリソグラフィー及びエッチングプロセスによってより容易に取り扱うことができる。
【0027】
ステップS130では、複数の離間した音響孔がシリコン基板に形成され、各音響孔は2つの開口部を有し、その一方がキャビティと連通し、他方がシリコン表面に位置する。
【0028】
具体的には、ステップS130は、シリコン基板のシリコン表面上にマスク層を堆積させることと、マスク層をエッチングしパターン化することとを含んでもよい。エッチングは、マスク層が形成されるシリコン基板の側で実行され得、その結果、複数の離間した音響孔が形成される。
【0029】
図5を参照すると、ステップS130では、シリコン基板に複数の音響孔330を形成することができ、これにより、シリコン基板がベースプレートを提供することが可能になる。
【0030】
ステップS140では、キャビティを充填する第1の充填部分、音響孔を充填する第2の充填部分、及びシリコン表面を遮蔽する遮蔽部分を含む犠牲層がシリコン基板上に形成される。
【0031】
具体的には、遮蔽部分の厚さは1μmから4μmであってもよい。
【0032】
シリコン基板上の犠牲層の形成は、蒸着及び熱酸化のうちの少なくとも1つなど、当技術分野で一般的に使用される技術によって達成することができる。
【0033】
図6は、ステップS140で形成された、第1の充填部分410、第2の充填部分420、及び遮蔽部分430を含む犠牲層400を示している。シリコン基板に音響孔が存在するため、得られた犠牲層は、それぞれの音響孔と整列した凹んだ溝からなるパターンを有する。その後、犠牲層400を部分的に除去することができる。
【0034】
ステップS150では、シリコン表面から離れた側の遮蔽部分の上にポリシリコン層が形成される。
【0035】
具体的には、ポリシリコン層の形成は、当技術分野で一般的に使用されている技術によって達成することができる。ポリシリコン層は、0.2μmから1.0μmの厚さを有し得る。
【0036】
具体的には、
図7を参照すると、犠牲層400にそれぞれの音響孔と整列した凹んだ溝が存在するため、得られたポリシリコン層500も、凹んだ溝からなるパターンを有し、これらの凹んだ溝は、上記凹んだ溝と整列し、ポリシリコン層500は、MEMSマイクロフォンのダイヤフラムとして機能することができる。
【0037】
ステップS160では、シリコン表面が部分的に露出するように、ポリシリコン層及び犠牲層の遮蔽部分がエッチングされる。
【0038】
次に、
図8を参照すると、ポリシリコン層と犠牲層の遮蔽部分をエッチングした結果として、露出したシリコン表面の部分に材料を堆積させて、第1の電気接続部品を形成することができる。
【0039】
ステップS170では、導電層がシリコン表面及びポリシリコン層上に形成され、次いでパターン化されて、シリコン表面及びポリシリコン層にそれぞれ第1の電気接続部品及び第2の電気接続部品が形成される。
【0040】
具体的には、導電層は、アルミニウム、金などの一般的に使用される金属で形成することができる。導電層は、フォトリソグラフィー又はウェットエッチングなどの従来の技術を使用してパターン化することができる。
【0041】
図9を参照すると、第1の電気接続部品610及び第2の電気接続部品620は、ステップS160及びS170によって、それぞれシリコン表面及びポリシリコン層に形成され、これにより、ベースプレートは、第1の電気接続部品610及び第2の電気接続部品620を介してダイヤフラムに接続され得る。
【0042】
ステップS180では、シリコン表面から離れた側のシリコン基板に凹部が形成される。
【0043】
具体的には、ステップS180は、シリコン表面から離れた側でシリコン基板を研削することと、フォトリソグラフィー又はエッチングによってシリコン基板に凹部を形成することとを含んでもよい。犠牲層の第1の充填部分は、フォトリソグラフィー又はエッチングプロセスの停止層として機能することができ、これにより、凹部の形成中に音響孔が損傷されないことが保証される。
【0044】
図10は、ステップS180で形成されるシリコン基板の凹部340を示している。
【0045】
ステップS190では、犠牲層の第1の充填部分、第2の充填部分、及び遮蔽部分の一部が除去され、その結果、凹部がキャビティと連通し、これによって後部チャンバが形成される。ポリシリコン層、遮蔽部分の残部、及びシリコン基板が一緒に中空チャンバを画定し、音響孔がキャビティから離れた側で中空チャンバに開いており、これにより、MEMSマイクロフォンが完成する。
【0046】
具体的には、ステップS190は、犠牲層の第1の充填部分、第2の充填部分、及び遮蔽部分の一部を除去するように、緩衝エッチング溶液を用いてシリコン基板をエッチングすることを含んでもよい。
【0047】
図11を参照すると、ステップS190で犠牲層が部分的に除去された結果として、凹部がキャビティと連通し、これによって後部チャンバ350が形成される。同時に、音響孔が排気され、ベースプレートとダイヤフラムの間に中空チャンバが存在し、MEMSマイクロフォンが完成する。
【0048】
MEMSマイクロフォンの従来の製造は、通常、シリコン基板上にポリシリコン層、ポリシリコン層上に犠牲層、及び犠牲層上に別のポリシリコン層を連続的に堆積させることを含む。シリコン基板上のこれらの層のスタックは、かなりの厚さになる傾向がある。フォトリソグラフィープロセスには通常2μmから3μmの下限があり、スタックの厚さが比較的厚いため、各層のフォトリソグラフ処理とエッチングが困難になる。
【0049】
これに対して、上記の方法には少なくとも次の利点がある。
1)このMEMSマイクロフォンの製造方法では、シリコン基板にキャビティと複数の音響孔を形成することにより、シリコン基板がベースプレートを提供することができる。シリコン基板上に形成された犠牲層は、キャビティと音響孔を充填し、シリコン表面を遮蔽する。また、音響孔は犠牲層の一部で充填されているため、シリコン表面に形成された犠牲層には一定のパターンがある。その結果、犠牲層上に形成されたポリシリコン層も特定のパターンを有し、したがってダイヤフラムとして機能することができる。最後に、シリコン基板に凹部が形成され、犠牲層が部分的に除去される。これにより、凹部がキャビティと連通し、それによって後部チャンバが形成される。更に、音響孔が排気され、ポリシリコン層、遮蔽部分の残部、及びシリコン基板が一緒に中空チャンバを画定し、したがってマイクロフォンが完成する。このMEMSマイクロフォンの製造方法では、シリコン基板に密閉されたキャビティと複数の音響孔を形成することにより、シリコン基板の一部がベースプレートとして機能することが可能になり、犠牲層とポリシリコン層がシリコン基板上にスタックされる。第1のポリシリコン層、犠牲層、及び別の第1のポリシリコン層をシリコン基板上に連続的にスタックされることを含む従来の製造と比較して、シリコン基板上のこのスタックは厚さが薄く、第1のポリシリコン層が1つしかないため、マイクロフォンの製造が容易になる。
【0050】
2)このMEMSマイクロフォンの製造方法を使用すると、シリコン基板上に薄いスタックを作成でき、したがって、与えられた必要な総スタック厚さに対して、犠牲層とポリシリコン層の厚さを増やすことができる。したがって、この方法を使用して、様々な要件を満たすマイクロフォンを製造することができる。
【0051】
一実施形態に係るMEMSマイクロフォンは、シリコン基板、支持部材、及びポリシリコン層を含む。シリコン基板はシリコン表面を有し、後部チャンバと複数の離間した音響孔がシリコン基板に形成される。各音響孔は、シリコン表面と後部チャンバの両方で開いている。支持部材はシリコン表面に配置され、ポリシリコン層は、シリコン基板から離間するように支持部材に配置される。このようにして、シリコン基板、支持層、及びポリシリコン層が一緒に中空チャンバを画定し、音響孔が後部チャンバから離れた側に開いている。
【0052】
この実施形態のMEMSマイクロフォンは、MEMSマイクロフォンのための上記の製造方法を使用して製造することができる。
【0053】
一実施形態では、第1の電気接続部品及び第2の電気接続部品は、それぞれ、シリコン表面及びポリシリコン層に存在する。
【0054】
前述の実施形態の様々な技術的特徴は、任意の方法で組み合わせることができる。簡潔にするために、そのような組み合わせのすべてが上で説明されているわけではないが、技術的特徴の間に矛盾がない限り、それらのいずれも本明細書の範囲に含まれると見なされる。
【0055】
上に提示されたのは、単に本願のいくつかの実施形態である。これらの実施形態は、多少、特定的かつ詳細に説明されているが、それらがいかなる意味においても本願の範囲を制限すると解釈されるべきではない。本願の概念から逸脱することなく、当業者によって様々な変形及び修正を行うことができることに留意されたい。したがって、そのようなすべての変形及び修正は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本願の範囲内に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】