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特表2022-548639複数のエレクトロクロミック状態を有するナノファイバー集合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】複数のエレクトロクロミック状態を有するナノファイバー集合体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/155 20060101AFI20221114BHJP
   G02F 1/1514 20190101ALI20221114BHJP
【FI】
G02F1/155
G02F1/1514
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516763
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2020050320
(87)【国際公開番号】W WO2021055244
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/901,357
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516124627
【氏名又は名称】リンテック オブ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】LINTEC OF AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】15930 S. 48th Street, Suite 110, Phoenix, Arizona 85048, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー ジェア
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB03
2K101DB05
2K101DB23
2K101DB31
2K101DC02
2K101DC12
2K101DC42
2K101DC54
2K101DC63
2K101DC76
2K101DD02
2K101EC12
2K101EE05
2K101EH04
2K101EH21
(57)【要約】
透明状態から不透明状態に移行し、いくつかの例では、不透明状態において異なる色/反射率の間でさえ移行することができるコンポジット集合体が記載されている。これらの状態の間での移行は、エレクトロクロミック電解質と接触しているAgカーボンナノチューブヤーンへの電流の印加によって開始されることができる。これらのカーボンナノチューブヤーンは、電子が電解質に与えられる効率を上げる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一透明フィルム及びバックプレートと、
前記第一透明フィルムと前記バックプレートとの間のスペーサであって、前記スペーサは前記第一透明フィルムの周辺部に配置され、前記第一透明フィルムと前記バックプレートとの間にチャンバを画定する、前記スペーサと、
前記第一透明フィルムと前記バックプレートとの間の複数の銀-カーボンナノファイバーヤーンのアレイと、
前記アレイと前記第一透明フィルムとの間で前記スペーサ内の電解質と、
を含む、装置。
【請求項2】
前記電解質は液体のエレクトロクロミック材料である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記液体のエレクトロクロミック材料は、前記第一透明フィルム、前記スペーサ、前記アレイ、及び前記バックプレートによって形成されるチャンバ中に注入される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記液体のエレクトロクロミック材料は、紫外光の適用によって固体のエレクトロクロミック材料に硬化する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記電解質は、固体のエレクトロクロミック材料である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
PEDOT:PSS、ポリピロール、及びポリアニリンのうちの少なくとも1つは前記アレイに塗布される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記アレイと前記電解質との間に銀でコーティングされるカーボンナノファイバーシートをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記電解質は、第一エレクトロクロミック状態及び第二エレクトロクロミック状態を少なくとも有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記電解質は双安定性である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第一エレクトロクロミック状態と前記第二エレクトロクロミック状態との間の移行は可逆過程である、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記電解質は、電流の極性を変えることによって前記第一エレクトロクロミック状態と前記第二エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、-3ボルトから-2.5ボルトの間の印加を介して前記第一エレクトロクロミック状態と前記第二エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、0ボルトから0.5ボルトの間の印加を介して前記第二エレクトロクロミック状態と前記第一エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
請求項1の前記装置を集合させることと、
液体状態中の電解質を、前記第一透明フィルム、前記スペーサ、前記アレイ、及び前記バックプレートによって形成されるチャンバ内に注入することと、
紫外光の適用によって前記電解質を硬化させること、及び前記電解質を前記液体状態から固体状態に変えることと、
を含む、方法。
【請求項15】
電圧の印加によって少なくとも第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で前記電解質を移行させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電解質は双安定性である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第一エレクトロクロミック状態と前記第二エレクトロクロミック状態との間で移行させることは、可逆過程である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電解質は、電流の極性を変えることによって前記第一エレクトロクロミック状態と前記第二エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項1の前記装置を集合させることと、
PEDOT:PSS、ポリピロール、及びポリアニリンのうちの少なくとも1つを前記アレイに塗布することと、
電圧を前記アレイに印加することで、第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で移行させることと、
を含む、方法。
【請求項20】
少なくとも5分の期間、前記電圧の前記印加を維持することと、
前記期間の後に前記電圧の前記印加を停止することと、
さらなる電圧印加のない少なくとも10分間、前記第二エレクトロクロミック状態を維持することと、
をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年9月17日に出願された「NANOFIBER ASSEMBLIES WITH MULTIPLE ELECTROCHROMIC STATES」と題する米国仮出願第62/901,357号に優先権を主張し、その全体はあらゆる目的のために参照により本明細書で援用されている。
【0002】
本開示は、一般にエレクトロクロミックディスプレイに関する。具体的には、本開示は、複数のエレクトロクロミック状態を有するカーボンナノファイバー集合体に関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロクロミック材料は、印加された電圧に応じて色を変えるものである。一般に、この現象は、電気化学系での可逆的な酸化還元反応を介して達成される。無機化合物及び有機化合物は、この挙動を示すことができる。無機エレクトロクロミック材料は、酸化タングステン(WO)及びNiOを含む。有機エレクトロクロミック材料はビオロゲン類を含む。
【発明の概要】
【0004】
最初の例では、装置は、第一透明フィルム及びバックプレートと、第一透明フィルムとバックプレートとの間のスペーサであって、スペーサは第一透明フィルムの周辺部に配置され、第一透明フィルムとバックプレートとの間にチャンバを画定する、スペーサと、第一透明フィルムとバックプレートとの間の1つより多い銀-カーボンナノファイバーヤーンのアレイと、このアレイと第一透明フィルムとの間でスペーサ内の電解質と、を含む。
【0005】
例2は例1の発明の主題を含み、電解質は液体のエレクトロクロミック材料である。
【0006】
例3は例2の発明の主題を含み、液体のエレクトロクロミック材料は第一透明フィルム、スペーサ、アレイ、及びバックプレートによって形成されるチャンバ内に注入される。
【0007】
例4は例3の発明の主題を含み、液体のエレクトロクロミック材料は紫外光の適用によって固体のエレクトロクロミック材料に硬化する。
【0008】
例5は例1の発明の主題を含み、電解質は固体のエレクトロクロミック材料である。
【0009】
例6は例1の発明の主題を含み、PEDOT:PSS、ポリピロール、及びポリアニリンのうちの少なくとも1つはアレイに塗布される。
【0010】
例7は例1の発明の主題を含み、アレイと電解質との間に銀でコーティングされるカーボンナノファイバーシートをさらに含む。
【0011】
例8は例1の発明の主題を含み、電解質は第一エレクトロクロミック状態及び第二エレクトロクロミック状態を少なくとも有する。
【0012】
例9は例8の発明の主題を含み、電解質は双安定性である。
【0013】
例10は例8の発明の主題を含み、第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間の移行は可逆過程である。
【0014】
例11は例8の発明の主題を含み、電解質は電流の極性を変えることによって第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される。
【0015】
例12は例8の発明の主題を含み、装置は-3ボルトから-2.5ボルトの間の印加を介して第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される。
【0016】
例13は例8の発明の主題を含み、装置は0ボルトから0.5ボルトの間の印加を介して第二エレクトロクロミック状態と第一エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される。
【0017】
例14は、例1の装置を集合させることと、液体状態中の電解質を、第一透明フィルム、スペーサ、アレイ、及びバックプレートによって形成されるチャンバ内に注入することと、紫外光の適用によって電解質を硬化させること、及び電解質を液体状態から固体状態に変えることと、を含む方法である。
【0018】
例15は例14の発明の主題を含み、電圧の印加によって少なくとも第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で電解質を移行させることをさらに含む。
【0019】
例16は例15の発明の主題を含み、電解質は双安定性である。
【0020】
例17は例15の発明の主題を含み、第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で移行させることは可逆過程である。
【0021】
例18は例15の発明の主題を含み、電解質は、電流の極性を変えることによって第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で移行するように構成される。
【0022】
例19は、例1の装置を集合させることと、PEDOT:PSS、ポリピロール、及びポリアニリンのうちの少なくとも1つをアレイに塗布することと、電圧をアレイに印加することで、第一エレクトロクロミック状態と第二エレクトロクロミック状態との間で移行させることと、を含む方法である。
【0023】
例20は、例19の発明の主題を含み、少なくとも5分の期間、電圧の印加を維持することと、この期間の後に電圧の印加を停止することと、さらなる電圧印加のない少なくとも10分間、第二エレクトロクロミック状態を維持することと、をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の一例での、エレクトロクロミック集合体の分解図及び断面図を示す。
図2】本開示の一例の3つの異なるエレクトロクロミック状態の概略断面図及び対応する実験結果を示す。
図3】本開示の一例での、鏡面、透明、及び黒色のエレクトロクロミック状態であることが可能な本開示の一例の内の「湿式紡績」ナノファイバーシートの形成、及びその応用を示す。
図4】一実施形態での、基板上のナノファイバーの例示的なフォレストの顕微鏡写真である。
図5】一実施形態での、ナノファイバー成長のための例示的なリアクタの概略図である。
図6】一実施形態での、シートの相対寸法を特定し、シートの表面に平行な平面内の端から端までアライメントされるシート内のナノファイバーを概略的に示す、ナノファイバーシートの図解である。
図7】SEM顕微鏡写真であり、このSEM顕微鏡写真は概略的に示されるように、ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから横方向に引き出され、ナノファイバーが端から端までアライメントする画像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
これらの図面は、例示のためにのみ、本開示のさまざまな実施形態を示す。複数の変形形態、構成、及び他の実施形態は、以下の詳細な議論から明らかになるであろう。
【0026】
概要
本開示の実施形態は、コンポジット集合体を含み、これらのコンポジット集合体は、透明状態から不透明状態に移行することができ、いくつかの例では、不透明状態において異なる色/反射率の間でさえ移行することができる。これらの状態の間での移行は、導電性材料(銀など)を含むカーボンナノファイバーヤーンと接触しているエレクトロクロミック電解質への電流の印加によって開始されることができる。カーボンナノチューブヤーンは、電子がエレクトロクロミック電解質に与えられる効率を向上させる。この向上した効率は、電解質中での電気化学反応の割合、従って、異なるエレクトロクロミック状態が達成されることができる割合を増加させる。いくつかの例では、コンポジットフィルムは、第一透明フィルム及び第二透明フィルムであって、これらの間は電解質である、第一透明フィルム及び第二透明フィルムと、PEDOT:PSSとしても知られている、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホナートを用いて任意選択で処理されることができる、銀で紡績される複数のカーボンナノチューブヤーンの1層とを含む。いくつかの例では、スペーサフィルムは、対向する透明フィルム間に電解質を含むように層の間に配置される。
【0027】
色及び/または反射率を可逆的に変えることに加えて、本明細書に記載の実施形態は、双安定性であることができる。すなわち、所与のエレクトロクロミック状態は、達成されると、印加された電圧がない場合でさえ維持されることができる。現在のエレクトロクロミック状態を達成するために印加された極性とは反対の極性を有する電圧を印加することによって、前のエレクトロクロミック状態は達成されることができる(すなわち、エレクトロクロミック遷移は逆にされることができる)。
【0028】
図1は、本開示の一例100の分解図及び断面図を示す。例100は、透明フィルム104A、104B、スペーサ108、電解質112、及びカーボンナノチューブヤーン116を含む。
【0029】
例100では、介在する層/素子を含み、光学的に透明な層を提供する、透明フィルム104A、104Bが使用され、この光学的に透明な層を通して、エレクトロクロミック状態間での変化(透明から不透明への変化、異なる色/反射率間での変化、及び/またはそれらの組み合わせでの変化)をユーザが見ることができる。透明フィルム104A、104Bの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを含むが、これらに限定されない。いくつかの例では、光学的に透明なガラスまたはガラスセラミック(タッチセンサ式モバイルコンピューティングデバイスに使用されるものなど)は使用されてもよい。ガラスまたはガラスセラミックを透明フィルム104A、104Bとして使用することは、例100に力学的剛性を与えるという利点を有する。
【0030】
スペーサ108は、透明フィルム104Aのいずれか2つの対向する側面上に、または透明フィルム104Aのすべての4つの側面上に置かれることができる。スペーサ108は、1mmから数センチメートルまで透明フィルム104Aの周縁部から透明フィルムの内部中に延在し、障壁部またはダムを形成することができ、この障壁部またはダムの内に、液相電解質112は含まれることができる。スペーサ108の例は、50μmから500μmの厚さである、粘着テープまたは高分子フィルム(Kaptonテープなど)を含むことができる。
【0031】
一例では、電解質112は液体電解質であり、この液体電解質は、スペーサ108、透明フィルム104A、及び最終的には透明フィルム104Bによって(合わせて集合されると)画定される空間に与えられる。製作方法は、より詳細に下記に示される。一例では、液体電解質は、50モル%の過塩素酸リチウム(LiClO)及びポリカーボネート(PC)の溶液である。この電解質は、透明から青色までのエレクトロクロミック遷移を引き起こすことができる。以下に示される他の例では、電解質は、2つより多いエレクトロクロミック状態を有することができる。いくつかの例では、銀粒子は、前述の電解質とも混合され、鏡面様のエレクトロクロミック状態を引き起こすことができる。いくつかの例では、銀粒子は、100nm以下の直径である。いくつかの例では、鏡面様のエレクトロクロミック状態において、銀粒子層は100nmから400nmの厚さである。
【0032】
別の例では、固体電解質は、電解質112として使用されることができる。固体電解質は、25モル%~50モル%のポリメチルメタクリレート(PMMA)をジメチルホルムアミド(DMF)中に加えることによって構成されることができる。つぎに、0.4~0.6モルの過塩素酸リチウム(LiClO)及びポリカーボネート(PC)を前述の溶液と混合し、電解質112を生成する。つぎに、固体電解質は、フィルム104A、104B間で、さらにスペーサ108によって画定されるチャンバ中への導入後に紫外線照射を用いて固相に硬化することができる。あるいは、液体電解質は、原位置外で固体状態に重合されてから、フィルム104A、104B間に置かれることができる。固体電解質は、鏡面様のエレクトロクロミック状態を有する塗布には一般的にあまり好ましくはない。
【0033】
カーボンナノファイバーヤーン116は、対極(時として「補助電極」とも称される)として機能することができ、この対極は、電源から電解質112までの電子移動速度を上げる。いくつかの例では、カーボンナノファイバーヤーン116は、実撚りまたは仮撚りのナノファイバーヤーン、及び単糸または諸撚糸のナノファイバーヤーンであることができる。カーボンナノファイバーヤーン116は、3μmから10μmの間の直径を有することができる。いくつかの例では、カーボンナノファイバーヤーンは、4μmから6μmの間の直径を有する。ナノファイバーヤーン116は、10~20オーム/スクエアの電気抵抗、及び90%より高い光透過率を有することができる。カーボンナノファイバーヤーン116は、1つ以上の外部電極に電気的に接続されることができ、これら1つ以上の外部電極は、電流を外部電源からカーボンナノファイバーヤーンに供給するために使用される。
【0034】
製作方法
一例では、本開示の例は、第一エレクトロクロミック状態を有するように製作されることができ、この第一エレクトロクロミック状態は、透明であり、青色である第二エレクトロクロミック状態に遷移する。エレクトロクロミック状態は、電流の極性における変化の際に可逆性である。
【0035】
いくつかの例では、カーボンナノファイバーヤーンは、図6及び7に照らして下記のように、ナノファイバーフォレストから引き出されるナノファイバーシートから製作されることができる。他の例では、カーボンナノファイバーヤーンは、溶液中に懸濁している個別のナノファイバーの分散液から製作されることができる。この後者の技法は、水性のpH中性溶液中の0.1wt%から0.3wt%のカーボンナノチューブの懸濁液を含む。界面活性剤(両親媒性界面活性剤など)は、溶液中のナノファイバーの分散を援助するために加えられることができる。溶媒は、回転真空フィルタ中に置かれ、真空引き中に最大100RPMの速度で回転する。フィルタ(及び/またはろ紙)及び/または溶液の回転は、個別のカーボンナノファイバーの相互とのアライメントを援助する。ナノファイバーは、ろ紙上にシートを形成する。ろ紙は、カーボンナノチューブのシートから分離されることができ、後者は10μmから2mmという薄さであることができ(フィルタを通して引き出される溶液の量、及び/または溶媒中のナノファイバーの濃度に応じて)、70%から90%の光学的な光の透明度を有することができる。
【0036】
この例では、カーボンナノファイバーシートは提供され、銀層は500nmの厚さよりも薄いカーボンナノファイバーシート上に形成される。銀層は、カーボンナノファイバーシートを束ねさせる、座屈させる、またはその他の方法でその均一性もしくは連続性を失わせることなく、その層をカーボンナノファイバーシート上に形成することができる技法の中でも、eBeam成膜、物理蒸着またはスパッタリングによって形成されることができる。
【0037】
つぎに、銀でコーティングされたナノファイバーシートは、Ag-カーボンナノファイバーヤーン中に実撚りされる、または仮撚りされる。単糸を合わせて撚り、諸撚糸を形成することができる。上記のように、この糸の直径は、3μmから10μmに及ぶことができる。Ag-カーボンナノファイバーヤーンは、隣接するAg-カーボンナノファイバーヤーンを150μmから200μm分離しながら、任意選択で透明フィルム(粘着フィルムなど)の上のアレイ内に直線的に配置されることができる。
【0038】
つぎに、「PEDOT:PSS」としても知られている、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホナートは、他の技法の中でも、スピンコーティング、「ドクターブレード」コーティングデバイス、スプレーコーティングを使用して、任意選択で透明フィルム上のAg-カーボンナノファイバーアレイに塗布されることができる。PEDOT:PSSは、Ag-カーボンナノファイバーの導電率を向上させる導電性材料である。代替例の導電性ポリマーは、ポリピロール及びポリアニリンを含むが、これらに限定されない。さらに他の例では、Ag-カーボンナノファイバーは、導電性の微粒子及び/またはナノ粒子(銀、金、銅、アルミニウム、グラフェンなど)を含むように処理されることができ、これらの導電性の微粒子及び/またはナノ粒子は、ナノファイバーによってそれらの間に画定されるファイバー間の間隙部中に浸透する。
【0039】
つぎに、上記のスペーサは、Ag-カーボンナノファイバーアレイ上に置かれ、別の光学的透明フィルムはAg-カーボンナノファイバーアレイの露出面上(またはその周りに)置かれる。第一光学的透明シート、Ag-カーボンナノファイバーアレイ、スペーサ、及び第二光学的透明フィルムの組み合わせは、チャンバを形成し、このチャンバ内には、電解質が置かれる。いくつかの例では、シリンジまたは他の注入機構を使用して、液体電解質をチャンバ中に導入することができる。適切な組成物の場合、上記のように、UV照射を用いて、一部の液体電解質を固体電解質に硬化させることができる。シーラントを周辺部に塗布することで、集合体内にさまざまな構成成分(特に、液体電解質)を封止することができる。電極を使用して、Ag-カーボンナノファイバーを外部電源に接続することができる。
【0040】
前述の例では、Ag-カーボンナノファイバーアレイへの-3Vから-2.5Vの印加により、透明である第一エレクトロクロミック状態は、青色である第二エレクトロクロミック状態に変わる。これは、電解質内の還元反応によって引き起こされると信じられている。第二エレクトロクロミック状態中の集合体への0.5Vの印加時には、集合体は、透明である第一エレクトロクロミック状態に戻る。ある場合には、電圧を長時間(例えば、少なくとも5分間)印加すると、電圧を長時間(例えば、10分より長く)印加しなくてもエレクトロクロミック状態が持続することができる。換言すれば、電圧を少なくとも5分間この例に印加することにより、電圧が長時間ない後でも、その状態に関連する色(青色)が残る、安定したエレクトロクロミック状態に電解質が移行する。したがって、この実施形態は、双安定性エレクトロクロミック状態を有すると称されることができる。1つの実験例では、Ag-カーボンナノファイバーヤーン間の分離は190μmであった。シート抵抗は5オーム/スクエアであった。第一エレクトロクロミック(透明)状態では、可視光透過率は91.6%であった。
【0041】
別の例では、本開示のコンポジットナノファイバー集合体は、それぞれが他とは異なる色を有する、3つ以上のエレクトロクロミック遷移状態を有するように製作されることができる。この例の概略断面及び実験結果は図2に示される。Ag-カーボンナノファイバーヤーンは上記のように製作される。これらのヤーンは、第一光学的透明シート上の第一アレイ(上記のような)中、かつ第二光学的透明フィルム上の第二アレイ中に置かれる。Ag-カーボンナノファイバーヤーンの第一アレイは第一フィルム上にPEDOT:PSSでコーティングされ、Ag-カーボンナノファイバーヤーンの第二アレイは酸化インジウムスズ(ITO)でコーティングされる。このコーティングは、スピンコーティングまたはドクターブレード技法を用いて達成されることができる。スペーサは、150μmから250μmの厚さであり、透明フィルムのうちの1つの周辺部の周りに置かれる。第一及び第二光学的透明フィルムは、第一及び第二アレイが互いに対向している、スペーサの対向する側面上に(周辺部内であるが)、そしてスペーサならびに第一及び第二光学的透明フィルムによって画定されるチャンバ内に、合わせて置かれる。つぎに、液体電解質は、チャンバ中に注入される。電極は、Ag-カーボンナノファイバーを外部電源に接続するために使用されることができる。
【0042】
Ag-カーボンナノファイバーアレイへの-3Vから-2.5Vの印加時に、透明である第一エレクトロクロミック状態は、青色である第二エレクトロクロミック状態に変わる。これは、電解質内の還元反応によって引き起こされると考えられている。第二エレクトロクロミック状態への0Vから0.5Vの印加時には、エレクトロクロミック状態は遷移して第一エレクトロクロミック状態(透明)に戻る。2.5Vから3Vの印加時には、第一エレクトロクロミック状態(透明)は第三エレクトロクロミック状態(黒色)に遷移する。これらの状態及びさまざまな層構成は、図2に概略的に示される。
【0043】
銀粒子が電解液中に含まれる、さらに別の例では、-3Vから-2.5Vの印加により、第一エレクトロクロミック状態(透明)は鏡面様の第二エレクトロクロミック状態に遷移することができる。0Vから0.5Vまで印加することにより、鏡面様の第二エレクトロクロミック状態は遷移して透明な第一エレクトロクロミック状態に戻る。
【0044】
鏡面様の遷移状態が望ましい例では、上記の分散方法を用いて作られているカーボンナノチューブのシートは、Ag-カーボンナノファイバーアレイと電解液との間に置かれることができる。これは図3に示される。カーボンナノチューブのこのシートは、上記の実施形態では、Ag-カーボンナノファイバーアレイと電解液(この場合には銀イオン(Ag)の錯体を含む)との間に置かれる。上記の構成及び工程の他の要素は同じままである。シートの滑面は、その第二エレクトロクロミック状態中の反射率を上げる。一例では、カーボンナノチューブのシートは、最大30質量%のカーボンナノチューブ及び最大80質量%の銀(Ag)(合計100質量%である)を用いて作られる。いくつかの例では、このAg-カーボンナノチューブシートは、Ag-カーボンナノファイバーアレイを完全に置換することができる。
【0045】
用途例
本開示の例は、窓及び鏡に添着されること、それらと統合されること、またはそれらに近接して置かれることができ、これらの鏡が2つまたは3つのエレクトロクロミック状態(透明-青色、透明-青色-黒色、透明-鏡面など)の間で可逆的に移行することができる窓を作製することができる。+/-3V未満の電圧を使用して、これらのエレクトロクロミック遷移を引き起こすことができるため、本開示の例は、バッテリ(使い捨てアルカリ電池、充電式電池など)を用いて動作することができる。
【0046】
遷移時間は、集合体の表面積の関数(一部)である。0.5m未満の面積は1つの状態からもう1つの状態に15秒以内に遷移することができるが、1m以上の面積は遷移するために1分から5分必要とする場合がある。
【0047】
ナノファイバーフォレスト
本明細書に使用される場合、「ナノファイバー」という用語は、1μm未満の直径を有するファイバーを意味する。本明細書の実施形態はカーボンナノチューブから製作されるものとして主に説明されるが、グラフェン、ミクロンまたはナノスケールのグラファイトファイバー及び/またはプレートであるかどうかにかかわらず、他の炭素同素体、及び窒化ホウ素などのナノスケールファイバーの他の組成物さえも、下記の技法を用いて緻密化されることができることが理解されよう。本明細書で使用される場合、「ナノファイバー」及び「カーボンナノチューブ」という用語は、炭素原子同士が結合して円筒状構造体を形成する、単層カーボンナノチューブ及び/または多層カーボンナノチューブの両方を包含する。いくつかの実施形態では、本明細書で参照されるように、カーボンナノチューブは4から10層の間を含む。本明細書で使用される場合、「ナノファイバーシート」または単に「シート」は、引き出し工程(PCT公開番号WO2007/015710に記載されている)を介してアライメントされるため、シートのナノファイバーの長手方向軸がシートの主な表面に対して垂直ではなく、シートの主な表面に対して平行である(すなわち、多くの場合「フォレスト」と称される、シートの成膜直後の状態では)、ナノファイバーのシートを指す。これは、図示され、それぞれ図6及び7に示される。
【0048】
カーボンナノチューブの寸法は、使用される製造方法によって大きく異なることができる。たとえば、カーボンナノチューブの直径は0.4nmから100nmであってもよく、その長さは10μmから55.5cm超の範囲であってもよい。また、カーボンナノチューブは、非常に高いアスペクト比(長さと直径との比率)を有し、132,000,000:1以上高いものも有することができる。幅広い寸法の可能性を考えると、カーボンナノチューブの特性は、高度に調整可能である、または「調節可能」である。カーボンナノチューブの多くの興味深い特性が特定されているが、カーボンナノチューブの特性を利用する実用化には、カーボンナノチューブの特徴が維持される、または強化されることを可能にするスケーラブルで制御可能な製造方法が必要とされる。
【0049】
それらの固有の構造が原因で、カーボンナノチューブは、特定の力学的特性、電気的特性、化学的特性、熱的特性、及び光学的特性を持ち、これらの特性は、それらカーボンナノチューブを、ある特定の用途に適したものにする。特に、カーボンナノチューブは、優れた導電率、高い力学的強度、良い熱安定性を示し、疎水性でもある。これらの特性に加えて、カーボンナノチューブは、有用な光学特性をも示すことができる。たとえば、カーボンナノチューブは、狭く選択された波長での光を発する、または検出する、発光ダイオード(LED)及び光検出器に使用されてもよい。また、カーボンナノチューブは、光子輸送及び/または音子輸送に有用であると判明する可能性がある。
【0050】
本開示のさまざまな実施形態によれば、ナノファイバー(カーボンナノチューブを含むがこれらに限定されない)は、本明細書では「フォレスト」と称される構成を含む、さまざまな構成で配置されることができる。本明細書で使用される場合、ナノファイバーまたはカーボンナノチューブの「フォレスト」は、基板上で相互に実質的に平行に配置される、ほぼ同じ寸法を有するナノファイバーアレイを指す。図4は、基板上のナノファイバーフォレストの一例を示す。この基板は任意の形状であることができるが、いくつかの実施形態では、基板はフォレストが集合する平面を有する。図4に見られるように、フォレスト中のナノファイバーの高さ及び/または直径は、ほぼ同じであってもよい。
【0051】
本明細書に開示されるナノファイバーフォレストは、比較的緻密であることができる。具体的には、本開示のナノファイバーフォレストは、少なくとも10億ナノファイバー/cm2の密度を有することができる。いくつかの特異的な実施形態では、本明細書に記載のナノファイバーフォレストは、100億/cm2から300億/cm2の間の密度を有してもよい。他の例では、本明細書に記載のナノファイバーフォレストは、900億ナノファイバー/cm2の範囲内の密度を有してもよい。このフォレストは高密度または低密度の領域を含んでもよく、特異的な領域はナノファイバーの空隙部であってもよい。また、フォレスト内のナノファイバーは、ファイバー間の接続性を示してもよい。たとえば、ナノファイバーフォレスト内で隣接するナノファイバーは、ファンデルワールス力によって相互に誘引されてもよい。それにもかかわらず、フォレスト内のナノファイバーの密度は、本明細書に記載の技法を適用することによって増加することができる。
【0052】
ナノファイバーフォレストを製作する方法は、たとえば、PCT番号WO2007/015710に記載されており、その全体は参照により本明細書に援用されている。
【0053】
さまざまな方法は、ナノファイバー前駆体フォレストを製造するために使用されることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、ナノファイバーは、図5に概略的に示される、高温炉中で成長してもよい。いくつかの実施形態では、触媒は、基板上に成膜され、リアクタ内に置かれることができ、ついで、リアクタに供給される燃料化合物に曝露されることができる。基板は、800℃あるいは1000℃よりも高い温度に耐えることができ、不活性材料であってもよい。基板は、下にあるシリコン(Si)ウェハ上に成膜されるステンレス鋼またはアルミニウムを含んでもよいが、他のセラミック基板(アルミナ、ジルコニア、SiO2、ガラスセラミックスなど)は、Siウェハの適所に使用されてもよい。前駆体フォレストのナノファイバーがカーボンナノチューブである例では、アセチレンなどの炭素系化合物は、燃料化合物類として使用されてもよい。リアクタに導入された後、燃料化合物(類)は、触媒上に蓄積し始めることができ、基板から上向きに成長することによって集合し、ナノファイバーフォレストを形成することができる。また、リアクタは、燃料化合物(類)及びキャリアガスがリアクタに供給されることができる給気口、ならびに使用済みの燃料化合物及びキャリアガスがリアクタから放出されることができる排気口を含んでもよい。キャリアガスの例は、水素、アルゴン、及びヘリウムを含む。これらのガス、特に水素は、リアクタに導入され、ナノファイバーフォレストの成長を促進してもよい。さらに、ナノファイバー中に取り込まれるドーパントは、ガス流に加えられてもよい。
【0054】
多層ナノファイバーフォレストを製作するために使用される工程では、1つのナノファイバーフォレストを基板上に形成し、第一ナノファイバーフォレストに接触している第二ナノファイバーフォレストの成長を後に伴う。多層ナノファイバーフォレストは、複数の適切な方法によって、たとえば、第一ナノファイバーフォレストを基板上に形成すること、触媒を第一ナノファイバーフォレスト上に成膜させること、つぎに、追加の燃料化合物をリアクタに導入して第一ナノファイバーフォレスト上に置かれている触媒からの第二ナノファイバーフォレストの成長を促進することなどによって形成されることができる。適用される成長方法、触媒の種類、及び触媒の位置に応じて、第二ナノファイバー層は、第一ナノファイバー層の上面で成長するか、水素ガスなどを用いて、触媒をリフレッシュした後、基板上に直接成長することで第一ナノファイバー層の下に成長するかいずれかであることができる。それにもかかわらず、第一フォレストと第二フォレストとの間に容易に検出可能な界面があるが、第二ナノファイバーフォレストは、第一ナノファイバーフォレストのナノファイバーと、ほぼ端から端までアライメントされることができる。多層ナノファイバーフォレストは、あらゆる数のフォレストを含んでもよい。たとえば、多層前駆体フォレストは、2、3、4、5つ以上のフォレストを含んでもよい。
【0055】
ナノファイバーシート
フォレスト構成中の配置に加えて、本出願のナノファイバーは、シート構成中にも配置されることができる。本明細書に使用される場合、「ナノファイバーシート」、「ナノチューブシート」、または単に「シート」という用語は、ナノファイバーが平面内で端から端までアライメントされる、ナノファイバー配置を指す。例示的なナノファイバーシートの説明は、寸法のラベルと共に図6に示される。いくつかの実施形態では、シートは、シートの厚さよりも100倍超大きい長さ及び/または幅を有する。いくつかの実施形態では、長さ、幅またはその両方は、シートの平均の厚さよりも10、10または10倍超大きい。ナノファイバーシートは、たとえば、約5nmから30μmの間などの厚さと、目的とする用途に適している任意の長さ及び幅とを有することができる。いくつかの実施形態では、ナノファイバーシートは、1cmから10メートルの間の長さと、1cmから1メートルの間の幅とを有してもよい。これらの長さは、説明のためにのみ提供されている。ナノファイバーシートの長さ及び幅は、製造機器の構成によって制約されるが、ナノチューブ、フォレスト、またはナノファイバーシートのいかなる物理または化学特性によっても制約されない。たとえば、連続工程は、あらゆる長さのシートを製造することができる。これらのシートは、製造されるとロール上に巻かれることができる。
【0056】
図6に見られるように、ナノファイバーが端から端までアライメントされる軸は、ナノファイバーアライメントの方向と称される。いくつかの実施形態では、ナノファイバーアライメントの方向は、ナノファイバーシート全体を通して連続していてもよい。ナノファイバーは、互いに対して必ずしも完全に平行である必要はなく、ナノファイバーアライメントの方向がナノファイバーアライメントの方向の平均的な、または一般的な尺度であることが理解される。
【0057】
ナノファイバーシートは、シートを製造することができる任意のタイプの適切な工程を使用して集合してもよい。いくつかの例示的な実施形態では、ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから引き出されてもよい。ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き出される一例は図7に示される。
【0058】
図7に見られるように、ナノファイバーは、フォレストから横方向に引き出され、端から端までアライメントされ、ナノファイバーシートを形成することができる。ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き出される実施形態では、フォレストの寸法は、特定の寸法を有するナノファイバーシートを形成するように制御されてもよい。たとえば、ナノファイバーシートの幅は、シートが引き出されたナノファイバーフォレストの幅とほぼ同じであってもよい。さらに、シートの長さは、たとえば、所望のシートの長さが達成されたときに引き出し工程を終えることなどによって、制御されることができる。
【0059】
ナノファイバーシートは、さまざまな用途に利用されることができる多くの特性を有する。たとえば、ナノファイバーシートは、調節可能な不透明度、高い力学的強度及び可撓性、熱伝導率及び導電率を有することができ、そのうえ疎水性を示すことができる。シート内のナノファイバーのアライメントの程度が高い場合、ナノファイバーシートは非常に薄くなることができる。いくつかの例では、ナノファイバーシートは、約10nmの厚さ(通常の測定公差内で測定される場合)のオーダーであり、それをほぼ二次元にする。他の例では、ナノファイバーシートの厚さは、200nmまたは300nmにもなることができる。そのため、ナノファイバーシートは、最小限のさらなる厚さを構成要素に加えてもよい。
【0060】
ナノファイバーフォレストと同じように、ナノファイバーシート中のナノファイバーは、化学基または元素をシートのナノファイバーの表面に加えることで、ナノファイバー単独とは異なる化学活性を提供する処理剤によって官能基化されてもよい。ナノファイバーシートの官能基化は、以前に官能基化されたナノファイバー上で行われることができる、または以前に官能基化されていないナノファイバー上で行われることができる。官能基化は、CVDを含むがこれに限定されない本明細書に記載の技法、及びさまざまなドーピング技法のいずれかを使用して行われることができる。
【0061】
ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから引き出されると、高純度をも有することができ、ナノファイバーシートの重量パーセントの90%超、95%超、または99%超は、場合によっては、ナノファイバーに起因している。同様に、ナノファイバーシートは、90重量%超、95重量%超、99重量%超または99.9重量%超の炭素を含んでもよい。
【0062】
その他の留意点
本開示の実施形態の前述の説明は、例示のために提示されており、網羅的であること、または特許請求の範囲を開示されている正確な形態に限定することを意図したものではない。当業者は、多くの修正形態及び変形形態が上記の開示に照らして可能であることを理解することができる。
【0063】
本明細書に使用される言語は、主に読みやすさと、説明の目的のために選択されており、発明の主題を描写する、または制限するために選択されていないことがある。したがって、本開示の範囲がこの詳細な説明によってではなく、本明細書に基づいた出願に関して発行される特許請求の範囲のいずれかによって制限されることが意図される。その結果、本開示の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載されている、本発明の範囲を例示するものであり、限定するものではないことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】