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特表2022-548661硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとを含む等速ジョイント用グリース組成物
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  • 特表-硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとを含む等速ジョイント用グリース組成物 図1
  • 特表-硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとを含む等速ジョイント用グリース組成物 図2
  • 特表-硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとを含む等速ジョイント用グリース組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとを含む等速ジョイント用グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/06 20060101AFI20221114BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20221114BHJP
   C10M 125/22 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 115/08 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 117/00 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
C10M169/06
F16D3/20 C
C10M125/22
C10M115/08
C10M117/00
C10M101/02
C10M107/02
C10N10:04
C10N10:12
C10N50:10
C10N10:02
C10N30:00 Z
C10N40:04
C10N30:06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517241
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2019075034
(87)【国際公開番号】W WO2021052577
(87)【国際公開日】2021-03-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507334967
【氏名又は名称】ゲーカーエン ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】GKN DRIVELINE INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】エー, ジーシェン
(72)【発明者】
【氏名】リンドラー, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィズダム, マリオ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA19C
4H104BA07A
4H104BB14B
4H104BE13B
4H104DA02A
4H104EB09
4H104FA01
4H104FA02
4H104FA06
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA03
4H104QA18
(57)【要約】
本発明は、自動車の動力伝達系で用いられる等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイント、における使用が主に意図されるグリース組成物に関する。等速ジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、並びに二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンを含む。さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)硫化亜鉛と、
d)二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンと、
を含む、等速ジョイントで用いるためのグリース組成物。
【請求項2】
二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの重量%量の、硫化亜鉛の量に対する比率が、約1:1から約20:1の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量が最大で約7重量%であり、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項4】
上記組成物は、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンを約0.5重量%と約5.0重量%との間の量で含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項5】
上記グリース組成物は、硫化亜鉛を約0.1重量%と約2.0重量%との間の量で含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤が、約0.2重量%と約1.0重量%との間の量で含まれており、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項7】
上記少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%の量で含み、重量%は上記有機硫黄添加剤の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の有機リン添加剤が、約0.2重量%と約1.0重量%との間の量で含まれており、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項9】
上記グリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%と約2.0重量%との間の量でさらに含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項10】
上記少なくとも1種の増粘剤は、少なくとも1種の尿素増粘剤、少なくとも1種のリチウム石鹸、及び/又は少なくとも1種のリチウム錯体石鹸からなる群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項11】
上記少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含むことを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項12】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%と約85重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項13】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%と約80重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項14】
約65重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油と、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤と、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛と、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンと、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤と、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤とを含み、各場合において重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項15】
等速ジョイント、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイントにおける上記請求項1から14のうち1以上に記載のグリース組成物の使用。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載のグリース組成物を含む等速ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の動力伝達系で用いられる等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイント、における使用が主に意図されるグリース組成物に関する。さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
前輪駆動車は、ドライブシャフト(ハーフシャフト)の両端にCVジョイントを有する。内側のCVジョイントは、ドライブシャフトをトランスミッションに連結する。外側のCVジョイントは、ドライブシャフトをホイールに連結する。多くの後輪駆動及び四輪駆動車、並びにトラックは、CVジョイントを有する。CVジョイント或いはホモキネティックジョイントによって、ドライブシャフトは、可変の角度で、一定の回転速度で、好ましくは摩擦や遊びを認識できるほど増加させずに、動力を伝達できる。前輪駆動車では、CVジョイントは、回転中に前輪にトルクを伝達する。
【0003】
CVジョイントの最も一般的に用いられる種類には、ボール型とトリポッド型の2種類がある。前輪駆動車では、ドライブシャフトの外側にはボール型CVジョイント(アウターCVジョイント)が用いられ、内側にはトリポッド型CVジョイント(インナーCVジョイント)が主に用いられる。CVジョイント内の部品の動きは、転がり及び滑りの組み合わせのため複雑である。ジョイントにトルクがかかると、部品にも一緒に負荷がかかり、部品の接触面で摩耗を引き起こし得るだけでなく、表面間に転がり接触疲労及び大きな摩擦力を引き起こし得る。
【0004】
等速ジョイントは、通常は蛇腹形状を有する、エラストマー材料のシーリングブーツも有し、その一端はCVジョイントの外側部分に連結され、他端はCVジョイントの相互接続又は出力シャフトに連結される。シーリングブーツは、ジョイント内にグリースを保持し、ほこりや水が入らないようにする。
【0005】
グリースは、摩耗及び摩擦を減らし、CVジョイント内の転がり接触疲労の早期開始を防止しなければならないだけでなく、シーリングブーツが作られるエラストマー材料と適合しなければならない。そうでなければ、シーリングブーツ材料の劣化が起こり、これがシーリングブーツの早期故障を引き起こし、グリースが漏れ、最終的にCVジョイントの故障が発生する。この点は、保護シーリングブーツにひびが入り、損傷を受けるときのCVジョイントの最も一般的な課題の1つである。一旦こうなると、グリースの漏れに加えて、水分やほこりが入り、CVジョイントはより速く摩耗し、最終的に潤滑不足や腐食のため故障する。通常、外側のCVジョイントシーリングブーツは、内側のものより多くの動きに耐えなければならないので、先に壊れる。CVジョイント自身が摩耗しても修理できないので、新品又は再調整された部品と交換されなければならない。CVジョイントシーリングブーツに用いられる材料の主な2種類は、ポリクロロプレンゴム(CR)及び熱可塑性エラストマー(TPE)、特にエーテル-エステルブロックコポリマー熱可塑性エラストマー(TPC-ET)である。
【0006】
典型的なCVジョイントグリースは、ナフテン系(飽和環)及びパラフィン系(直線及び分岐飽和鎖)の鉱油の混合物である基油を有する。合成油も添加されてもよい。上記基油は、CR製及びTPC-ET製の両方のシーリングブーツの劣化(膨潤又は収縮)に大きな影響を与えることが知られている。鉱物及び合成基油は、シーリングブーツ材料から可塑剤及び他の油溶性保護剤を抽出する。パラフィン系鉱油及びポリ-α-オレフィン(PAO)合成基油は、特にシーリングブーツにはごくわずかしか拡散しないが、一方、ナフテン系鉱油及び合成エステルは、ゴムやTPC-ETのようなシーリングブーツ材料内に拡散し、可塑剤として機能し、膨潤を引き起こし得る。可塑剤又は可塑剤組成物をナフテン系鉱油に代えると、特に低温においてシーリングブーツ性能が大幅に低下し、低温割れによりシーリングブーツの故障を引き起こし、最終的にCVジョイントの故障を生じさせ得る。大幅な膨潤や軟化が起きると、高速時の低安定性、及び/又は径方向の過剰な拡大のために、シーリングブーツの最高速度能力が低下する。
【0007】
上記の課題を解決するために、米国特許第5,670,461号は、少なくとも1種の鉱油及び少なくとも1種の合成油を含む重量(重量%)で60から90%の基油混合物、増粘剤として重量で5から16%の少なくとも1種の尿素化合物(少なくとも1種の尿素化合物は、少なくとも1種の脂肪アミンと少なくとも1種のイソシアネート又は少なくとも1種のジイソシアネートとの反応生成物である)、2から20%重量のカルシウム錯体グリース、重量で1から4%の二硫化モリブデン、重量で0.2から1%の黒鉛粉末、重量で0.2から1%のポリテトラフルオロエチレン粉末、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)及びジチオリン酸モリブデンから選択された少なくとも1種の有機モリブデン化合物の0.2から1%重量の固体粒子、重量で2%までの金属不活性化剤、並びに重量で2%までの腐食防止剤から主になり、各場合において量はグリース組成物の総量に対するものである高温用の潤滑グリースを提案する。しかし、米国特許第5,670,461号によるグリース組成物の、ブーツ適合性試験で測定されたシーリングブーツ適合性、及びCVジョイント全体の寿命は改良される必要がある。この点は、標準マルチブロックプログラム(SMBP)試験で測定されたCVジョイントの寿命に、特に当てはまる。上記グリース組成物に開示された添加剤がシーリングブーツ材料と反応し、早期劣化を引き起こし、シーリングブーツの早期故障を生じさせる可能性があるという事実のために、さらなる改良が必要である。特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、高い環境安定性と生殖毒性のためにリサイクルされなければならず、現在では輸出には認可が必要とされている。さらに、PTFEは、機械的ストレス及び高温下で分解することが知られている。特に、アルカリ金属はPTFEと反応する可能性があり、このことは潤滑グリース内に反応性分解生成物が得られ得ることを示す。アルカリ金属は、増粘剤やグリース配合で用いられており、例えば米国特許第5,670,461号では、カルシウム錯体グリースが用いられている。CVジョイントの使用中に生成された分解生成物はシーリング材料を攻撃し、早期故障を引き起こし得るだけでなく、毒性のあるPTFE蒸気が生じ得る。これらの事実に基づき、グリース適合性を改良し、シーリングブーツ材料の寿命を延ばすことが推奨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,670,461号
【特許文献2】米国特許第6,656,890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米国特許第5,670,461号のように、市販のCVジョイント潤滑剤の大半は、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、又はジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を含み、これが耐摩耗性及びEP性能、特にCVジョイントの初期動作時間(慣らし運転)における改良された耐摩擦特性を提供する。しかし、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、シーリングブーツ材料を分解することにより膨潤及び軟化を引き起こし、完全なシーリングブーツの早期劣化を引き起こし得ることも知られている。
【0010】
さらに、よく用いられるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)又はジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、CVジョイントの金属表面におけるトライボケミカル反応に基づいて耐摩耗性能を提供する。これにより、金属表面上に層が形成される。特にZnDTPやMoDTPのようなリン含有添加剤を用いることの不利な点は、これらがシーリング材料、特にシーリングブーツとの間で良好な適合性を全く示さないことである。ZnDTP又はMoDTPのジアルキルジチオリン酸は、高温でシーリングブーツ材料と反応し、早期劣化を引き起こす。加えて、ZnDTPに含まれる硫黄及びリンは、化学的に活性化され、シーリングブーツ材料のさらなる劣化を引き起こす。したがって、大量の場合、グリースは、CVジョイントで用いられるシーリングブーツの早期故障を生じさせ得る。
【0011】
したがって、CVジョイント全体のより長い寿命を達成するために、全般的な潤滑特性を維持しながら、グリース組成物の少なくとも上記成分の、シーリングブーツ材料に対する負の化学的影響を低減することは有益である。
【0012】
本発明の目的は、ゴム又は熱可塑性エラストマーで作られたシーリングブーツと良好な適合性を有し、CVジョイント全体の高い耐久性も与える、主にCVジョイントで用いるためのグリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)硫化亜鉛と、
d)二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンと、
を含み、好ましくは少なくとも1種のTPEで作られ、より好ましくは少なくとも1種のTPC-EPで作られたブーツを有する等速ジョイントで用いるためのグリース組成物によって解決される。
【0014】
発明は、等速ジョイントにおける発明によるグリース組成物の使用にも関する。さらに、発明は、発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【発明の効果】
【0015】
等速ジョイントで用いるための本組成物の利点は、MoDTP、MoDTC、及びPTFEの使用が必要でないことである。MoDTP、MoDTC、及びPTFEに代えて、硫化亜鉛(ZnS)と二硫化モリブデン(MoS)及び/又は二硫化タングステン(WS)との組み合わせ配合が用いられる。硫化亜鉛は、硫黄により提供される良好なEP性能と、亜鉛により提供される耐摩耗性能という2つの主な特徴を有する。さらに、二硫化モリブデン及び二硫化タングステンは、グリース組成物において、摩擦を低減し、耐摩耗性を提供し、EP性能を高くすることが明らかにされる。発明者らは、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせを特徴とするグリース組成物が、全般的な潤滑特性を維持し、CVジョイント全体のより長い寿命を可能にしながら、グリース組成物中の添加剤MoDTC、MoDTP、ZnDTP、及びPTFEを効果的に置換することを発見し、このことは、例えば標準マルチブロックプログラム(SMBP)試験によって明らかにされ得る。特に、重負荷下でのCVジョイントの耐久性、及びCVジョイントシーリングブーツ材料との適合性は、本発明によるグリース組成物によって改良される。
【0016】
硫化亜鉛は、0.25重量%(重量による%、又は重量パーセント、本発明に関して、重量%という用語が以下では用いられる)の硫化亜鉛中に、亜鉛をおよそ1700ppmの量で提供するのに対して、同じ量の亜鉛は、分子内で重要な化学的活性を有さずに2重量%のZnDTP中に存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。ZnDTPやMoDTP等の有機金属塩は、重負荷下で無機塩と有機ラジカルとに分解することはよく知られている。有機ラジカルは、シーリングブーツ材料と反応し、早期故障を引き起こし得る。硫化亜鉛は無機塩であるという事実のために、高熱や重負荷下で有機分解生成物を生じさせない。したがって、トライボケミカル特性を維持しながら、硫化亜鉛とシーリングブーツ材料との反応は最小化される。
【0017】
発明されたグリース組成物は、添加剤についてより少ない材料しか必要としないことも有利である。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンがある種の相乗効果として硫化亜鉛のトライボケミカル特性を高くするという事実のために、これらの添加剤の必要量はさらに削減される。既に述べた添加剤の量の削減は、複雑に合成された有機金属化合物に代えて塩が用いられるという事実によっても、発明されたグリース組成物の製造における改良された経済性をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1a及び図1bは、表3にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の硫化亜鉛添加剤の相乗効果のために示す。
図2図2a及び図2bは、表3に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の二硫化モリブデン(MoS)添加剤の相乗効果のために示す。
図3図3a及び図3bは、表4に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A1、A2、B1、B2と市販グリースC1との比較のために示す。
図4図4a及び図4bは、表4に示された実験結果を、シーリングブーツ材料の適合性試験、及びCVジョイントの寿命耐久時間のために示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明者らは、適切な量の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンによって、硫化亜鉛は、有利な耐摩耗性、特に、改良された耐摩擦特性を提供できることを発見した。この点において、発明者は、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせは、CVジョイントの初期動作時間(慣らし運転)のために、有機硫黄含有添加剤及び有機リン含有添加剤との組み合わせによるトライボロジー性能を増加させることを発見した。この結果、有機硫黄含有添加剤と有機リン含有添加剤との既知の相乗効果がトライボロジー性能を改良するだけでなく、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせも共に相乗的に作用する。この相乗効果は、標準的なSRV試験で測定された摩擦係数及び摩耗量に十分に示される。
【0020】
重量パーセント、又は重量による%という用語がクレームされたグリース組成物を構成する成分に関して用いられる限り、重量パーセントという用語は、そうでないことが明記されている場合を除き、本明細書の全体において、グリース組成物の総量に対する1つ以上の成分の量のことをいう。「重量%」という表現は、そうでないことが示されていない場合、本発明の全体において、重量パーセントの略語として用いられる。
【0021】
発明の文脈において、数値又は範囲に関する「およそ」及び「約」という表現は、当業者が当人の一般的知識に基づき、及び発明の全体としての観点から一般的又は合理的であると考えるであろう許容範囲として理解されるべきである。特に「およそ」及び「約」という表現は、指定された値に対して、±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の許容範囲のことを言う。本発明でクレームされた、各種の範囲、特に重量パーセント範囲(これに限定されないが)の下限値及び上限値は、新しい範囲を定義するために互いに組み合わされてもよい。
【0022】
さらに、本発明の文脈において、特性、数値、又は範囲に関する、標準、規範、又は標準化プロトコル(例えばISOやASTM等)へのすべての言及は、発明の出願日に有効な上記標準、規範、又は標準化プロトコルの直近に更新されたバージョンへの言及として理解されるべきである。
【0023】
好ましくは、本発明によるグリース組成物に用いられる少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。本発明による少なくとも1種の基油として、米国特許第6,656,890号に開示された基油が好ましくは用いられてもよく、その開示は参照によりここに組み込まれる。ただし、任意のさらなる基油の種類、特に鉱油の混合物、合成油の混合物、又は鉱油と合成油との混合物が用いられてもよい。少なくとも1種の基油は、好ましくは、40℃で約32と約250mm/秒との間、100℃で約5と約25mm/秒との間の動粘度を有しなければならない。鉱油は、好ましくは、少なくとも1種のナフテン系油、及び/又は少なくとも1種のパラフィン系油を含む群から選択される。本発明で使用可能な合成油は、少なくとも1種のパラフィン系、及び/又は少なくとも1種のナフテン系油を含む群から選択される。有機合成エステルは、好ましくは、脂肪族アルコールに基づくサブグループを有するジカルボン酸の誘導体である。好ましくは、脂肪族アルコールは、2から20個の炭素原子を有する第1級の直線状又は分岐状の炭素鎖を有する。好ましくは、有機合成エステルは、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「セバシン酸ジオクチル」(DOS))、アジピン酸ビス-(2-エチルヘキシルエステル)(「アジピン酸ジオクチル」(DOA))、フタル酸ジオクチル(DOP)、及び/又はアゼライン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「アゼライン酸ジオクチル(DOZ)」)を含む群から選択される。基油中にポリ-α-オレフィンが存在する場合、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得る。好ましくは、40℃で約2から約60センチストークスの範囲内の動粘度(ASTM D445)を有するポリ-α-オレフィンが選択される。少なくとも1種の基油のために選択されるナフテン系油は、40℃で好ましくは約3から約370mm/秒、より好ましくは約20から約150mm/秒の範囲内の動粘度を有する。密度(ASTM D1250に従い測定される)は、15.6℃で約0.9から約1.0g/cmまでである。少なくとも1種の基油に存在するパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分岐状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。好ましくは、パラフィン系油は、40℃で約9から約170mm/秒、好ましくは40℃で約50から約130mm/秒の範囲内の動粘度を有する。少なくとも1種の基油は、本発明によるグリース組成物中に、好ましくは約60重量%から約95重量%までの量で、より好ましくは約63重量%から約93重量%までの量で、より好ましくは約75重量%から約92.5重量%までの量で、より好ましくは約78重量%から約92重量%までの量で、さらにより好ましくは約79重量%から約92重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で、より好ましくは約35重量%から約75重量%までの量で、さらにより好ましくは約37重量%から約72重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。さらに、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で、より好ましくは約15重量%から約75重量%までの量で、さらにより好ましくは約15重量%から約70重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。本発明で用いられる基油という用語は、基油が各種の成分からなる基油組成物でもよいこと、特に、基油がポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む組成物であるという意味に理解される。好ましくは、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%まで、より好ましくは約35重量%から約75重量%まで、さらにより好ましくは約37重量%から約72重量%までの量で含み、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約70重量%まで、より好ましくは約15重量%から約65重量%まで、さらにより好ましくは約15重量%から約62重量%までの量で含み、各場合において基油の総量に対するものである。
【0024】
本発明の意味において、少なくとも1種の増粘剤は、好ましくはリチウム石鹸増粘剤又は尿素増粘剤であり、この中でリチウム石鹸増粘剤の使用が最も好ましい。リチウム石鹸増粘剤は、少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物である。好ましくは、増粘剤は、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、及び硬化ヒマシ油から、又は他の同様の脂肪酸、又はこれらの混合物、又はそのような酸のメチルエステルから作られた単純リチウム石鹸でもよい。これに代えて、例えば長鎖脂肪酸と錯化剤との混合物、例えば1つ以上のジカルボン酸のホウ酸塩から作られたリチウム錯体石鹸が用いられてもよい。錯体リチウム石鹸を用いると、本発明によるグリース組成物はおよそ180℃の温度まで機能するが、単純リチウム石鹸では、グリース組成物はおよそ120℃の温度までしか機能しない。尿素増粘剤は、ジウレア化合物及びポリウレア化合物の中から選択されてもよい。例えば、ジウレア化合物は、モノアミンと、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、及びヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、そのようなモノアミンの例は、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、及びシクロヘキシルアミンであり、ポリウレア化合物は、ジアミンと、上記のジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、ジアミンには、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、及びキシレンジアミンが含まれ、又は尿素増粘剤は、p-トルイジン又はアニリン等のアリルアミン、シクロヘキシルアミン、又はこれらの混合物とジイソシアネートとの反応によって得られる群から選択される。ジウレア化合物のアリル基は、存在する場合、好ましくは6又は7個の炭素原子を含む。ただし、リチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤等の上記の増粘剤のすべての混合物が用いられてもよい。少なくとも1種の増粘剤は、好ましくは約2重量%から約20重量%までの量で、より好ましくは約4.0重量%から約17.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0025】
硫化亜鉛は、固体状態で存在する。硫化亜鉛は、立方晶閃亜鉛鉱又は六角ウルツ鉱として自然に発生する。好ましくは工業的に製造された硫化亜鉛粉末が用いられるが、結晶構造はさらに区別されない。好ましい硫化亜鉛は、ISO13320に関するCLIAS 1064 Nassにより主粒サイズD90が0.80μmの無色無臭の粉末である。さらに、20℃における密度は4.0g/cmまでであり、融点は800℃より高い(昇華)。分解温度は600℃より高い。硫化亜鉛は、約0.1重量%から約2.0重量%までの量で、よりに好ましくは約0.2重量%から約1重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0026】
本発明のグリース組成物は、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンを含む。二硫化モリブデン(硫化モリブデン(IV)、MoS)が、硫化モリブデン(VI)(MoS)及び/又は硫化モリブデン(V)(Mo)よりも好ましくは用いられる。グリース組成物では、二硫化モリブデン超微粉末が、結晶、分散、或いは水又はエタノールの溶液よりも好ましく用いられる。使用が好ましい二硫化モリブデン超微粉末は、97重量%の純度、0.40から0.50μmまでのフィッシャー数、さらにISO13320標準のレーザー回折装置Microtrac X100による7.0μmの粒子サイズ分布D90、及び0.4g/cmのかさ密度を有する。酸化前の二硫化モリブデンを保護するために、好ましくは抗酸化剤が用いられてもよい。二硫化タングステン(硫化タングステン(IV)、WS)は、二硫化モリブデン(MoS)と同様に固体状態で存在し、結晶、分散、又は水やエタノールの溶液としてより、濃い灰色の粉末として存在することがより好ましい。濃い灰色の二硫化タングステン粉末は、好ましくは、4μmの平均粒子サイズD90、及び7.5g/cmの密度を有する。二硫化タングステンは、耐熱性化合物である。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、摩擦の削減、耐摩耗性能、及びEP性能を提供する。
【0027】
本発明によるグリース組成物において、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせは、CVジョイントの耐摩耗及び耐摩擦特性のためのSRV試験において相乗効果を示す。発明のより好ましい一実施形態では、組成物は、有機モリブデン含有化合物を含まない。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、好ましくは約0.5重量%から約5.0重量%までの量で、より好ましくは約1.0重量%から約3.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0028】
本発明のグリース組成物に、抗酸化剤、防錆剤、極圧(EP)改質剤、耐摩耗剤、及び油改良剤等の各種の公知のグリース添加剤を含めることもできる。好ましくは、グリース組成物には以下のグリース添加剤が含まれる。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態では、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの必要量を好ましくは同時に削減することにより、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンと組み合わせた硫化亜鉛のトライボケミカル効果を高くする、硫黄含有EP改質剤及び/又はリン含有EP改質剤を含む少なくとも1種のグリース添加剤が存在する。以下の説明では、本発明の文脈において、硫黄含有EP改質剤という表現は有機硫黄添加剤と称され、リン含有EP改質剤という表現は有機リン添加剤と称される。
【0030】
本発明のより好ましい一実施形態では、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、少なくとも10重量%の硫黄を含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。ZnDTP、ZnDTC、MoDTP、及びMoDTCは、本発明の意味において、有機硫黄添加剤という用語に含まれるとは考えない。より好ましい一実施形態では、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、少なくとも1種の硫化オレフィン、チアジアゾールアルキル、又はその組み合わせを含む群から選択される。硫化オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテンのオレフィンモノマーを含んでいてもよい。アルキルチアジアゾールは、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、及び/又は1,3,4-チアジアゾールのチアジアゾールモノマーを含んでいてもよい。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約1.0重量%までの量で、より好ましくは約0.5重量%から約0.7重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。さらに、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0031】
より好ましい一実施形態では、本発明によるグリース組成物中に、少なくとも1種の有機リン添加剤が存在する。意図される有機リン添加剤は、金属塩ではなく、ZnDTPやMoDTPのように硫黄を含まない。含まれるリンは、避けるべき上記の添加剤の中より小さく活性化されなければならない。最も重要なことは、少なくとも1種の有機リン添加剤がシーリングブーツ材料と適合することであり、これは、有機リン添加剤がシーリングブーツの劣化、シーリングブーツ材料の膨潤又は収縮を引き起こさないことを意味する。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは、リン酸(HPO)の誘導体であり、例えばTiBP内ではすべての水素がイソブチルに置換されたリン酸イソブチル(TiBP)のような三置換された有機リン酸塩を含む群から選択される。この特別な設計は、リン酸の1又は2個の水素原子だけを有機側鎖で置換した通常のリン添加剤と比べて、相対的に不活性な少なくとも1種の有機リン添加剤を提供する。三置換された有機リン添加剤の好ましい例としてのリン酸トリイソブチル(TiBP)は、シーリングブーツ材料との間で限定された相互作用を有しながら、高いEP性能と温度に依存しない粘度とを提供するので、SMBP試験によって明らかにされるCVジョイントの長い寿命を生じさせる。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0032】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物中に、少なくとも1種の抗酸化剤が存在する。少なくとも1種の抗酸化剤として、本発明のグリース組成物は、アミン、好ましくは芳香族アミン、より好ましくはベンズアミン、2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。好ましくは、40℃で約250から約370mm/秒の範囲内の動粘度(ASTM D445に準拠)、及び20℃で約0.9から約1.0g/cmの密度(ASTM D1298に準拠)を有する少なくとも1種の抗酸化剤が選択される。少なくとも1種の抗酸化剤は、酸化に伴うグリース組成物の劣化を防止するために用いられる。少なくとも1種の基油及び/又は二硫化モリブデンの酸化劣化を防止し、グリース組成物の寿命を延ばして、CVジョイントの寿命を延ばすために、本発明によるグリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2重量%の範囲内で含んでいてもよく、グリース組成物の総量に対するものである。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくは約0.1重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.2重量%から約1.5重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0033】
さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物のCVジョイントにおける使用について言及し、さらに、クレームされたグリース組成物を含むCVジョイントについて言及する。CVジョイントは、特に、本発明によるグリース組成物で満たされたシーリングブーツを含み、少なくとも一部に、ジョイントに割り当てられた第1取付領域と、シャフトに割り当てられた第2取付領域とを有するシーリングブーツを含む。シーリングブーツは、ジョイント及び/又はシャフトに通常のクランプ装置で固定されてもよい。
【0034】
本発明の特に好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0035】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0036】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0037】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、後者の量は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0038】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含んでいてもよく、後者の量は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0039】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0040】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0041】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデンは固体状態で含まれる。
【0042】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0043】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0044】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0045】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.5重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0046】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0047】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0048】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0049】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、又は環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0050】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0051】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0052】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0053】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは固体状態で含まれる。
【0054】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0055】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0056】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0057】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0058】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0059】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量でさらに含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0060】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態で含まれ、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の総量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で含まれ、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0061】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0062】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量でさらに含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含み、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、リチウム石鹸増粘剤は好ましくは少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤は好ましくはジウレア及び/又はポリウレアからなる群から少なくとも選択され、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態であり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、好ましくは硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在し、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%までの間、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンからなる群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩からなる群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0063】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0064】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0065】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分岐状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0066】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含んでいてもよく、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0067】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤は、リチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0068】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0069】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは固体状態で含まれる。
【0070】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0071】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0072】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0073】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.5重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0074】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0075】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0076】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%値はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0077】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分岐状、又は環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0078】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0079】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0080】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0081】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは固体状態で含まれる。
【0082】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0083】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0084】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0085】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0086】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0087】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量でさらに含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0088】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態で含まれ、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0089】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0090】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約70重量%までの量でさらに含んでいてもよく、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含み、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、リチウム石鹸増粘剤は好ましくは少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤は好ましくはジウレア及び/又はポリウレアからなる群から少なくとも選択され、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態であり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、好ましくは硫化亜鉛の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%までの間、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンからなる群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩からなる群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0091】
等速ジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にある。
【0092】
CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0093】
CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、硫化亜鉛は約0.1重量%から約2.0重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0094】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、約0.5重量%から約5.0重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0095】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は約0.2重量%から約1.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は硫黄を少なくとも10重量%の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0096】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は約0.2重量%から約2.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0097】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の抗酸化剤は約0.1重量%から約2.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0098】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の増粘剤は好ましくは尿素増粘剤及びリチウム石鹸増粘剤を含む群から選択され、少なくとも1種の増粘剤は約4重量%から約20重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0099】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0100】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含むか、及び/又は、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約70重量%までの量でさらに含んでいてもよく、重量%は基油の総量に対するものである。
【0101】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0102】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0103】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約3:1から約20:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0104】
発明の意味において、好ましい実施形態で述べられた二硫化モリブデンは、二硫化タングステン(WS)と組み合わせて、発明のグリース組成物に含まれていてもよく、二硫化タングステンは、本発明による重量%範囲内で二硫化モリブデンの量を部分的に置き換える。グリース組成物の上述された好ましい実施形態は、限定的でない好ましい例であり、上記範囲及び添加剤の異なる組み合わせも可能である。
【0105】
本発明による以下の限定的でない例と、各種のグリース組成物の比較例とを参照して、本発明は以下により詳細に説明される。
【0106】
発明によるグリース組成物による摩擦係数及び摩耗を低減する効果を測定するために、振動摩擦摩耗SRV試験が、Optimol Instruments製SRVテスタを用いて実施される。Optimol Instruments Pruftechnik GmbH(Westendstrasse 125, Munich)製の100Cr6標準ベアリング鋼で作られた平面円盤状下側試験片をある溶剤を用いて適切に洗浄したものを用意し、試験対象のグリース組成物と接触させる。SRV試験は、業界標準試験であり、特にCVジョイント用のグリースの試験に関する。試験は、100Cr6ベアリング鋼で作られた直径10mmの上側球状試験片を上記の平板円盤状下側試験片上で荷重をかけて往復運動させることからなる。ボールジョイントを模倣する試験では、40Hzの周波数及び500Nの荷重負荷を80℃で60分間(慣らし運転を含む)印加した。ストロークは1.5mmであった。得られた摩擦係数をコンピュータに記録した。各グリースについて、報告値は、2回の運転における試験終了時の2つのデータの平均である。摩擦係数の慣らし運転測定のために、上記の条件下で50Nの荷重負荷を1分間かけて、試験を開始する。その後、荷重負荷は、30秒間に50Nずつ増加して500Nになる。摩耗は、プロフィロメータ及びデジタルプラニメータを用いて測定される。プロフィロメータを用いることにより、摩耗面の中央の断面プロファイルを取得できる。この断面の面積(S)は、デジタルプラニメータを用いて測定できる。摩耗の量はV=Slで評価され、Vは摩耗量であり、lはストロークである。摩耗率(W)は、W=V/L[μm/m]から得られ、Lは試験における全すべり距離である。
【0107】
標準マルチブロックプログラムSMBP試験は、CVジョイントの寿命耐久特性を比較及び評価するために用いられる。CVジョイントは、上昇率が250Nm/秒のトルク、率が100mm/秒の振動偏向、及び上昇率が少なくとも40rmp/秒の回転速度にさらされ、最大値は少なくとも1000Nm及び2000rpmである。プログラム中は、実際のトルク、速度、及び振動偏向(角度)の永久的な記録が試験リグによって提供される。CVジョイントが重大な障害の最初の兆候を得るまで、プログラムは定義された負荷サイクルを実行する。1サイクルは、51.3分及び39973回転と定義される。寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクルによって評価される。故障は、不釣り合いな温度上昇、又は摩耗を示すノイズの発生として定義される。CVジョイントの寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクル数によって評価される。CVジョイント性能における特定のグリースサンプルの検証のために、4つのジョイントに同じグリースサンプルを充填し、CVジョイント試験リグ上で試験した。グリース性能を比較するために、4つのCVジョイントの寿命耐久性の平均を求める。比較として、市販グリースと、添加剤のない基油とを用いる。
【0108】
さらに、本発明によるグリース組成物、及び1つの市販グリース、すなわち市販グリース組成物C1(表3参照)と共に実施された、熱可塑性エラストマーシーリングブーツPibiflex B5050 MWRの適合特性に関する試験を、125℃で336時間グリースに浸漬されたシーリングブーツ材料の熱劣化前後の硬度の変化(ショアD)、及び引張、伸張、体積のパーセント変化について実施した。上記の値は、ISO868(ショアD)、ISO37(引張変化及び伸張変化)、及びISO2781(体積変化)に従い測定される。
【0109】
グリース組成物A1からA12、及びB1からB2のために用いられる基油は、83重量%から84重量%までの量のパラフィン系油、及び16重量%から17重量%までの量のナフテン系油からなり、各場合において重量%は基油の総量に対するものである。
【0110】
表1から表2のグリース組成物には、以下の化合物を用いた。市販グリースC1は、基油、8重量%のリチウム石鹸油、およそ2.5重量%の量のMoS、及びおよそ0.3重量%の黒鉛を含み、各場合において重量%は市販グリースの総量に対するものである。
【0111】
純度97重量%、平均粒子サイズ0.80μmの硫化亜鉛(ZnS)粉末を用いた。純度97重量%、粒子サイズ(フィッシャー番号)0.40から0.50μmまでの超微細二硫化モリブデン(MoS)粉末を用いた。D90として平均粒子サイズ7μmの二硫化タングステン(WS)粉末を用いた。有機硫黄添加剤として、Lubrizol France(25 Quai de France, 76173 Rouen Cedex, France)製のAnglamol 33を用いた。有機リン添加剤として、純度99重量%のトリイソブチルリン酸を用いた。リチウム石鹸増粘剤として、12-ヒドロキシステアリン酸と水酸化リチウム(LiOH)との反応により得られたステアリン酸リチウムを用いた。
【0112】
以下、市販グリースはC1と表記され、二硫化モリブデンを含む、発明されたグリース組成物はA1及びA2と表記され、A3からA12と表記されたグリース組成物は比較例である。
【表1】
【0113】
市販グリースはC1であり、二硫化タングステンを含む、発明されたグリース組成物はB1からB2と表記され、B2は硫化モリブデンと二硫化タングステンとの混合物を含む。
【表2】
【0114】
表3から表4と、図1a、図1b、図2a、図2b、図3a、図3b、図4a、及び図4bとに、摩擦、摩耗、及びブーツ適合性の実験値を以下のように示す。
図1a及び図1b:表3にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の硫化亜鉛添加剤の相乗効果のために示す。
図2a及び図2b:表3に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の二硫化モリブデン(MoS)添加剤の相乗効果のために示す。
図3a及び図3b:表4に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A1、A2、B1、B2と市販グリースC1との比較のために示す。
図4a及び図4b:表4に示された実験結果を、シーリングブーツ材料の適合性試験、及びCVジョイントの寿命耐久時間のために示す。
【0115】
市販グリースC1と比較して、発明されたグリース組成物の摩擦係数、及び発明されたグリース組成物の摩耗に関する実験結果を表3に示す。
【表3】
【0116】
市販グリースC1と比較して、CVジョイントを伴う発明されたグリース組成物の寿命耐久性、及び発明されたグリース組成物A1とシーリングブーツ材料との適合性に関する実験結果を表4に示す。
【表4】
【0117】
表3と図1a及び図1bとは、基油A3、二硫化モリブデン(MoS)を含むグリースA12、二硫化モリブデン及び有機硫黄添加剤を含むものA10、有機リン添加剤を含むものA4、並びに二硫化モリブデンと有機リン添加剤及び有機硫黄添加剤を含むものA8と比較して、本発明によるグリース組成物A1の実験結果を示す。グリース組成物に二硫化モリブデンを追加すると、摩擦係数の低下が段階的に観測される。グリース組成物A8及びA10は、CVジョイントで一般的に用いられる。両グリース組成物は、摩擦及び摩耗について良好な値を示す。しかし、二硫化モリブデン、有機硫黄添加剤、及び有機リン添加剤と組み合わせて硫化亜鉛を追加すると、摩擦係数は0.072から0.044に大幅に低下する。最小の摩耗量は、二硫化モリブデン、有機硫黄添加剤、有機リン添加剤、及び硫化亜鉛を含むグリース組成物により達成される。これらの実験結果は、グリースのトライボロジー性能に対する硫化亜鉛の影響を明確に示している。
【0118】
図2a及び図2bは、基油A3、有機リン添加剤を含むグリースA4、硫化亜鉛及び有機硫黄添加剤を含むグリース組成物A5、並びに硫化亜鉛、有機硫黄添加剤、及び有機リン添加剤を含むグリース組成物A6と比較して、発明されたグリース組成物A1の実験結果を示す。グリース組成物のサンプルに硫化亜鉛を追加すると、摩擦係数の低下が段階的に観測される。しかし、硫化亜鉛、有機硫黄添加剤、及び有機リン添加剤と組み合わせて二硫化モリブデンを追加すると、摩擦係数の0.108から0.044への大幅な低下が観測される。最小の摩耗量は、硫化亜鉛、有機硫黄添加剤、有機リン添加剤、及び二硫化モリブデンを含むグリース組成物により達成される。これらの実験結果は、グリースのトライボロジー性能に対する二硫化モリブデンの影響を明確に示している。
【0119】
結論として、図1a、図1b、図2a、及び図2bに示される実験データは、グリース組成物に硫化亜鉛及び二硫化モリブデンを用いた相乗効果を明らかにしている。硫化亜鉛及び二硫化モリブデンを組み合わせるだけで、トライボロジー性能は大幅に改良される。
【0120】
図3a及び図3bは、市販グリース組成物C1及び基油A3と比較して、発明された組成物A1、A2、及びB1の実験結果を示す。二硫化モリブデンの量がA1の2.0重量%からA2の1.69重量%に少し減少しても、良好なトライボロジー性能が引き続き現れる。B1は、二硫化モリブデンに代えて、1.69重量%の二硫化タングステンを含む。B2は、1.5重量%の二硫化モリブデンと0.5重量%の二硫化タングステンとの混合物を含み、硫化亜鉛の量は0.25重量%に低下させなければならない。市販グリース組成物C1と比較して、すべての発明されたグリース組成物A1、A2、B1、及びB2は、摩擦係数及び摩耗量の減少を示す。二硫化モリブデンを含むグリース組成物A1及びA2は、二硫化タングステンを含むグリース配合B1より良好なトライボロジー性能を示す。二硫化モリブデン及び二硫化タングステンを含むグリース配合B2は、B1、A1、及びA2より低い摩擦及び耐摩耗性能を示す。それでもB1及びB2は、市販グリースC1と比較して、許容可能な摩擦及び耐摩耗性能を示す。
【0121】
表4と図4a及び図4bとは、市販グリースC1と比較して、発明されたグリース組成物A1及びB1とCVジョイントブーツ(Pibiflex B5050 MWR)との適合性を示す。発明されたグリースA1の寿命耐久性は、市販グリースC1と比較して少し高い。発明されたグリース組成物B1は、市販グリースC1より2倍以上高い寿命耐久性を示す。発明されたグリース組成物A1は、引張、伸張、及び体積変化について市販グリースC1より低い値を提供する。市販グリースC1に対して、発明されたグリース組成物A1は、硬度変化について同様の値を提供するが、引張変化及び伸張変化について特に大幅に改良された値を提供する。
【0122】
発明によるグリース組成物の例は、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせは、グリース組成物の一般的な潤滑特性を保持するが、これに加えて、シーリングブーツ材料との適合性、及びCVジョイントの寿命耐久性を増加させることを明確に示している。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の動力伝達系で用いられる等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイント、における使用が主に意図されるグリース組成物に関する。さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
前輪駆動車は、ドライブシャフト(ハーフシャフト)の両端にCVジョイントを有する。内側のCVジョイントは、ドライブシャフトをトランスミッションに連結する。外側のCVジョイントは、ドライブシャフトをホイールに連結する。多くの後輪駆動及び四輪駆動車、並びにトラックは、CVジョイントを有する。CVジョイント或いはホモキネティックジョイントによって、ドライブシャフトは、可変の角度で、一定の回転速度で、好ましくは摩擦や遊びを認識できるほど増加させずに、動力を伝達できる。前輪駆動車では、CVジョイントは、回転中に前輪にトルクを伝達する。
【0003】
CVジョイントの最も一般的に用いられる種類には、ボール型とトリポッド型の2種類がある。前輪駆動車では、ドライブシャフトの外側にはボール型CVジョイント(アウターCVジョイント)が用いられ、内側にはトリポッド型CVジョイント(インナーCVジョイント)が主に用いられる。CVジョイント内の部品の動きは、転がり及び滑りの組み合わせのため複雑である。ジョイントにトルクがかかると、部品にも一緒に負荷がかかり、部品の接触面で摩耗を引き起こし得るだけでなく、表面間に転がり接触疲労及び大きな摩擦力を引き起こし得る。
【0004】
等速ジョイントは、通常は蛇腹形状を有する、エラストマー材料のシーリングブーツも有し、その一端はCVジョイントの外側部分に連結され、他端はCVジョイントの相互接続又は出力シャフトに連結される。シーリングブーツは、ジョイント内にグリースを保持し、ほこりや水が入らないようにする。
【0005】
グリースは、摩耗及び摩擦を減らし、CVジョイント内の転がり接触疲労の早期開始を防止しなければならないだけでなく、シーリングブーツが作られるエラストマー材料と適合しなければならない。そうでなければ、シーリングブーツ材料の劣化が起こり、これがシーリングブーツの早期故障を引き起こし、グリースが漏れ、最終的にCVジョイントの故障が発生する。この点は、保護シーリングブーツにひびが入り、損傷を受けるときのCVジョイントの最も一般的な課題の1つである。一旦こうなると、グリースの漏れに加えて、水分やほこりが入り、CVジョイントはより速く摩耗し、最終的に潤滑不足や腐食のため故障する。通常、外側のCVジョイントシーリングブーツは、内側のものより多くの動きに耐えなければならないので、先に壊れる。CVジョイント自身が摩耗しても修理できないので、新品又は再調整された部品と交換されなければならない。CVジョイントシーリングブーツに用いられる材料の主な2種類は、ポリクロロプレンゴム(CR)及び熱可塑性エラストマー(TPE)、特にエーテル-エステルブロックコポリマー熱可塑性エラストマー(TPC-ET)である。
【0006】
典型的なCVジョイントグリースは、ナフテン系(飽和環)及びパラフィン系(直線及び分岐飽和鎖)の鉱油の混合物である基油を有する。合成油も添加されてもよい。上記基油は、CR製及びTPC-ET製の両方のシーリングブーツの劣化(膨潤又は収縮)に大きな影響を与えることが知られている。鉱物及び合成基油は、シーリングブーツ材料から可塑剤及び他の油溶性保護剤を抽出する。パラフィン系鉱油及びポリ-α-オレフィン(PAO)合成基油は、特にシーリングブーツにはごくわずかしか拡散しないが、一方、ナフテン系鉱油及び合成エステルは、ゴムやTPC-ETのようなシーリングブーツ材料内に拡散し、可塑剤として機能し、膨潤を引き起こし得る。可塑剤又は可塑剤組成物をナフテン系鉱油に代えると、特に低温においてシーリングブーツ性能が大幅に低下し、低温割れによりシーリングブーツの故障を引き起こし、最終的にCVジョイントの故障を生じさせ得る。大幅な膨潤や軟化が起きると、高速時の低安定性、及び/又は径方向の過剰な拡大のために、シーリングブーツの最高速度能力が低下する。
【0007】
上記の課題を解決するために、米国特許第5,670,461号は、少なくとも1種の鉱油及び少なくとも1種の合成油を含む重量(重量%)で60から90%の基油混合物、増粘剤として重量で5から16%の少なくとも1種の尿素化合物(少なくとも1種の尿素化合物は、少なくとも1種の脂肪アミンと少なくとも1種のイソシアネート又は少なくとも1種のジイソシアネートとの反応生成物である)、2から20%重量のカルシウム錯体グリース、重量で1から4%の二硫化モリブデン、重量で0.2から1%の黒鉛粉末、重量で0.2から1%のポリテトラフルオロエチレン粉末、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)及びジチオリン酸モリブデンから選択された少なくとも1種の有機モリブデン化合物の0.2から1%重量の固体粒子、重量で2%までの金属不活性化剤、並びに重量で2%までの腐食防止剤から主になり、各場合において量はグリース組成物の総量に対するものである高温用の潤滑グリースを提案する。しかし、米国特許第5,670,461号によるグリース組成物の、ブーツ適合性試験で測定されたシーリングブーツ適合性、及びCVジョイント全体の寿命は改良される必要がある。この点は、標準マルチブロックプログラム(SMBP)試験で測定されたCVジョイントの寿命に、特に当てはまる。上記グリース組成物に開示された添加剤がシーリングブーツ材料と反応し、早期劣化を引き起こし、シーリングブーツの早期故障を生じさせる可能性があるという事実のために、さらなる改良が必要である。特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、高い環境安定性と生殖毒性のためにリサイクルされなければならず、現在では輸出には認可が必要とされている。さらに、PTFEは、機械的ストレス及び高温下で分解することが知られている。特に、アルカリ金属はPTFEと反応する可能性があり、このことは潤滑グリース内に反応性分解生成物が得られ得ることを示す。アルカリ金属は、増粘剤やグリース配合で用いられており、例えば米国特許第5,670,461号では、カルシウム錯体グリースが用いられている。CVジョイントの使用中に生成された分解生成物はシーリング材料を攻撃し、早期故障を引き起こし得るだけでなく、毒性のあるPTFE蒸気が生じ得る。これらの事実に基づき、グリース適合性を改良し、シーリングブーツ材料の寿命を延ばすことが推奨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,670,461号
【特許文献2】米国特許第6,656,890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米国特許第5,670,461号のように、市販のCVジョイント潤滑剤の大半は、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、又はジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を含み、これが耐摩耗性及びEP性能、特にCVジョイントの初期動作時間(慣らし運転)における改良された耐摩擦特性を提供する。しかし、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、シーリングブーツ材料を分解することにより膨潤及び軟化を引き起こし、完全なシーリングブーツの早期劣化を引き起こし得ることも知られている。
【0010】
さらに、よく用いられるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)又はジアルキルジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、CVジョイントの金属表面におけるトライボケミカル反応に基づいて耐摩耗性能を提供する。これにより、金属表面上に層が形成される。特にZnDTPやMoDTPのようなリン含有添加剤を用いることの不利な点は、これらがシーリング材料、特にシーリングブーツとの間で良好な適合性を全く示さないことである。ZnDTP又はMoDTPのジアルキルジチオリン酸は、高温でシーリングブーツ材料と反応し、早期劣化を引き起こす。加えて、ZnDTPに含まれる硫黄及びリンは、化学的に活性化され、シーリングブーツ材料のさらなる劣化を引き起こす。したがって、大量の場合、グリースは、CVジョイントで用いられるシーリングブーツの早期故障を生じさせ得る。
【0011】
したがって、CVジョイント全体のより長い寿命を達成するために、全般的な潤滑特性を維持しながら、グリース組成物の少なくとも上記成分の、シーリングブーツ材料に対する負の化学的影響を低減することは有益である。
【0012】
本発明の目的は、ゴム又は熱可塑性エラストマーで作られたシーリングブーツと良好な適合性を有し、CVジョイント全体の高い耐久性も与える、主にCVジョイントで用いるためのグリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)硫化亜鉛と、
d)二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンと、
を含み、好ましくは少なくとも1種のTPEで作られ、より好ましくは少なくとも1種のTPC-EPで作られたブーツを有する等速ジョイントで用いるためのグリース組成物によって解決される。
【0014】
発明は、等速ジョイントにおける発明によるグリース組成物の使用にも関する。さらに、発明は、発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【発明の効果】
【0015】
等速ジョイントで用いるための本組成物の利点は、MoDTP、MoDTC、及びPTFEの使用が必要でないことである。MoDTP、MoDTC、及びPTFEに代えて、硫化亜鉛(ZnS)と二硫化モリブデン(MoS)及び/又は二硫化タングステン(WS)との組み合わせ配合が用いられる。硫化亜鉛は、硫黄により提供される良好なEP性能と、亜鉛により提供される耐摩耗性能という2つの主な特徴を有する。さらに、二硫化モリブデン及び二硫化タングステンは、グリース組成物において、摩擦を低減し、耐摩耗性を提供し、EP性能を高くすることが明らかにされる。発明者らは、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせを特徴とするグリース組成物が、全般的な潤滑特性を維持し、CVジョイント全体のより長い寿命を可能にしながら、グリース組成物中の添加剤MoDTC、MoDTP、ZnDTP、及びPTFEを効果的に置換することを発見し、このことは、例えば標準マルチブロックプログラム(SMBP)試験によって明らかにされ得る。特に、重負荷下でのCVジョイントの耐久性、及びCVジョイントシーリングブーツ材料との適合性は、本発明によるグリース組成物によって改良される。
【0016】
硫化亜鉛は、0.25重量%(重量による%、又は重量パーセント、本発明に関して、重量%という用語が以下では用いられる)の硫化亜鉛中に、亜鉛をおよそ1700ppmの量で提供するのに対して、同じ量の亜鉛は、分子内で重要な化学的活性を有さずに2重量%のZnDTP中に存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。ZnDTPやMoDTP等の有機金属塩は、重負荷下で無機塩と有機ラジカルとに分解することはよく知られている。有機ラジカルは、シーリングブーツ材料と反応し、早期故障を引き起こし得る。硫化亜鉛は無機塩であるという事実のために、高熱や重負荷下で有機分解生成物を生じさせない。したがって、トライボケミカル特性を維持しながら、硫化亜鉛とシーリングブーツ材料との反応は最小化される。
【0017】
発明されたグリース組成物は、添加剤についてより少ない材料しか必要としないことも有利である。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンがある種の相乗効果として硫化亜鉛のトライボケミカル特性を高くするという事実のために、これらの添加剤の必要量はさらに削減される。既に述べた添加剤の量の削減は、複雑に合成された有機金属化合物に代えて塩が用いられるという事実によっても、発明されたグリース組成物の製造における改良された経済性をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1a及び図1bは、表3にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の硫化亜鉛添加剤の相乗効果のために示す。
図2図2a及び図2bは、表3に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の二硫化モリブデン(MoS)添加剤の相乗効果のために示す。
図3図3a及び図3bは、表4に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A1、A2、B1、B2と市販グリースC1との比較のために示す。
図4図4a及び図4bは、表4に示された実験結果を、シーリングブーツ材料の適合性試験、及びCVジョイントの寿命耐久時間のために示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明者らは、適切な量の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンによって、硫化亜鉛は、有利な耐摩耗性、特に、改良された耐摩擦特性を提供できることを発見した。この点において、発明者は、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせは、CVジョイントの初期動作時間(慣らし運転)のために、有機硫黄含有添加剤及び有機リン含有添加剤との組み合わせによるトライボロジー性能を増加させることを発見した。この結果、有機硫黄含有添加剤と有機リン含有添加剤との既知の相乗効果がトライボロジー性能を改良するだけでなく、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせも共に相乗的に作用する。この相乗効果は、標準的なSRV試験で測定された摩擦係数及び摩耗量に十分に示される。
【0020】
重量パーセント、又は重量による%という用語がクレームされたグリース組成物を構成する成分に関して用いられる限り、重量パーセントという用語は、そうでないことが明記されている場合を除き、本明細書の全体において、グリース組成物の総量に対する1つ以上の成分の量のことをいう。「重量%」という表現は、そうでないことが示されていない場合、本発明の全体において、重量パーセントの略語として用いられる。
【0021】
発明の文脈において、数値又は範囲に関する「およそ」及び「約」という表現は、当業者が当人の一般的知識に基づき、及び発明の全体としての観点から一般的又は合理的であると考えるであろう許容範囲として理解されるべきである。特に「およそ」及び「約」という表現は、指定された値に対して、±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の許容範囲のことを言う。本発明でクレームされた、各種の範囲、特に重量パーセント範囲(これに限定されないが)の下限値及び上限値は、新しい範囲を定義するために互いに組み合わされてもよい。
【0022】
さらに、本発明の文脈において、特性、数値、又は範囲に関する、標準、規範、又は標準化プロトコル(例えばISOやASTM等)へのすべての言及は、発明の出願日に有効な上記標準、規範、又は標準化プロトコルの直近に更新されたバージョンへの言及として理解されるべきである。
【0023】
好ましくは、本発明によるグリース組成物に用いられる少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。本発明による少なくとも1種の基油として、米国特許第6,656,890号に開示された基油が好ましくは用いられてもよく、その開示は参照によりここに組み込まれる。ただし、任意のさらなる基油の種類、特に鉱油の混合物、合成油の混合物、又は鉱油と合成油との混合物が用いられてもよい。少なくとも1種の基油は、好ましくは、40℃で約32と約250mm/秒との間、100℃で約5と約25mm/秒との間の動粘度を有しなければならない。鉱油は、好ましくは、少なくとも1種のナフテン系油、及び/又は少なくとも1種のパラフィン系油を含む群から選択される。本発明で使用可能な合成油は、少なくとも1種のパラフィン系、及び/又は少なくとも1種のナフテン系油を含む群から選択される。有機合成エステルは、好ましくは、脂肪族アルコールに基づくサブグループを有するジカルボン酸の誘導体である。好ましくは、脂肪族アルコールは、2から20個の炭素原子を有する第1級の直線状又は分岐状の炭素鎖を有する。好ましくは、有機合成エステルは、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「セバシン酸ジオクチル」(DOS))、アジピン酸ビス-(2-エチルヘキシルエステル)(「アジピン酸ジオクチル」(DOA))、フタル酸ジオクチル(DOP)、及び/又はアゼライン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「アゼライン酸ジオクチル(DOZ)」)を含む群から選択される。基油中にポリ-α-オレフィンが存在する場合、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得る。好ましくは、40℃で約2から約60センチストークスの範囲内の動粘度(ASTM D445)を有するポリ-α-オレフィンが選択される。少なくとも1種の基油のために選択されるナフテン系油は、40℃で好ましくは約3から約370mm/秒、より好ましくは約20から約150mm/秒の範囲内の動粘度を有する。密度(ASTM D1250に従い測定される)は、15.6℃で約0.9から約1.0g/cmまでである。少なくとも1種の基油に存在するパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分岐状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。好ましくは、パラフィン系油は、40℃で約9から約170mm/秒、好ましくは40℃で約50から約130mm/秒の範囲内の動粘度を有する。少なくとも1種の基油は、本発明によるグリース組成物中に、好ましくは約60重量%から約95重量%までの量で、より好ましくは約63重量%から約93重量%までの量で、より好ましくは約75重量%から約92.5重量%までの量で、より好ましくは約78重量%から約92重量%までの量で、さらにより好ましくは約79重量%から約92重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で、より好ましくは約35重量%から約75重量%までの量で、さらにより好ましくは約37重量%から約72重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。さらに、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で、より好ましくは約15重量%から約75重量%までの量で、さらにより好ましくは約15重量%から約70重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。本発明で用いられる基油という用語は、基油が各種の成分からなる基油組成物でもよいこと、特に、基油がポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む組成物であるという意味に理解される。好ましくは、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%まで、より好ましくは約35重量%から約75重量%まで、さらにより好ましくは約37重量%から約72重量%までの量で含み、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約70重量%まで、より好ましくは約15重量%から約65重量%まで、さらにより好ましくは約15重量%から約62重量%までの量で含み、各場合において基油の総量に対するものである。
【0024】
本発明の意味において、少なくとも1種の増粘剤は、好ましくはリチウム石鹸増粘剤又は尿素増粘剤であり、この中でリチウム石鹸増粘剤の使用が最も好ましい。リチウム石鹸増粘剤は、少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物である。好ましくは、増粘剤は、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、及び硬化ヒマシ油から、又は他の同様の脂肪酸、又はこれらの混合物、又はそのような酸のメチルエステルから作られた単純リチウム石鹸でもよい。これに代えて、例えば長鎖脂肪酸と錯化剤との混合物、例えば1つ以上のジカルボン酸のホウ酸塩から作られたリチウム錯体石鹸が用いられてもよい。錯体リチウム石鹸を用いると、本発明によるグリース組成物はおよそ180℃の温度まで機能するが、単純リチウム石鹸では、グリース組成物はおよそ120℃の温度までしか機能しない。尿素増粘剤は、ジウレア化合物及びポリウレア化合物の中から選択されてもよい。例えば、ジウレア化合物は、モノアミンと、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、及びヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、そのようなモノアミンの例は、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、及びシクロヘキシルアミンであり、ポリウレア化合物は、ジアミンと、上記のジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、ジアミンには、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、及びキシレンジアミンが含まれ、又は尿素増粘剤は、p-トルイジン又はアニリン等のアリルアミン、シクロヘキシルアミン、又はこれらの混合物とジイソシアネートとの反応によって得られる群から選択される。ジウレア化合物のアリル基は、存在する場合、好ましくは6又は7個の炭素原子を含む。ただし、リチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤等の上記の増粘剤のすべての混合物が用いられてもよい。少なくとも1種の増粘剤は、好ましくは約2重量%から約20重量%までの量で、より好ましくは約4.0重量%から約17.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0025】
硫化亜鉛は、固体状態で存在する。硫化亜鉛は、立方晶閃亜鉛鉱又は六角ウルツ鉱として自然に発生する。好ましくは工業的に製造された硫化亜鉛粉末が用いられるが、結晶構造はさらに区別されない。好ましい硫化亜鉛は、ISO13320に関するCLIAS 1064 Nassにより主粒サイズD90が0.80μmの無色無臭の粉末である。さらに、20℃における密度は4.0g/cmまでであり、融点は800℃より高い(昇華)。分解温度は600℃より高い。硫化亜鉛は、約0.1重量%から約2.0重量%までの量で、よりに好ましくは約0.2重量%から約1重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0026】
本発明のグリース組成物は、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンを含む。二硫化モリブデン(硫化モリブデン(IV)、MoS)が、硫化モリブデン(VI)(MoS)及び/又は硫化モリブデン(V)(Mo)よりも好ましくは用いられる。グリース組成物では、二硫化モリブデン超微粉末が、結晶、分散、或いは水又はエタノールの溶液よりも好ましく用いられる。使用が好ましい二硫化モリブデン超微粉末は、97重量%の純度、0.40から0.50μmまでのフィッシャー数、さらにISO13320標準のレーザー回折装置Microtrac X100による7.0μmの粒子サイズ分布D90、及び0.4g/cmのかさ密度を有する。酸化前の二硫化モリブデンを保護するために、好ましくは抗酸化剤が用いられてもよい。二硫化タングステン(硫化タングステン(IV)、WS)は、二硫化モリブデン(MoS)と同様に固体状態で存在し、結晶、分散、又は水やエタノールの溶液としてより、濃い灰色の粉末として存在することがより好ましい。濃い灰色の二硫化タングステン粉末は、好ましくは、4μmの平均粒子サイズD90、及び7.5g/cmの密度を有する。二硫化タングステンは、耐熱性化合物である。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、摩擦の削減、耐摩耗性能、及びEP性能を提供する。
【0027】
本発明によるグリース組成物において、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせは、CVジョイントの耐摩耗及び耐摩擦特性のためのSRV試験において相乗効果を示す。発明のより好ましい一実施形態では、組成物は、有機モリブデン含有化合物を含まない。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、好ましくは約0.5重量%から約5.0重量%までの量で、より好ましくは約1.0重量%から約3.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0028】
本発明のグリース組成物に、抗酸化剤、防錆剤、極圧(EP)改質剤、耐摩耗剤、及び油改良剤等の各種の公知のグリース添加剤を含めることもできる。好ましくは、グリース組成物には以下のグリース添加剤が含まれる。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態では、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの必要量を好ましくは同時に削減することにより、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンと組み合わせた硫化亜鉛のトライボケミカル効果を高くする、硫黄含有EP改質剤及び/又はリン含有EP改質剤を含む少なくとも1種のグリース添加剤が存在する。以下の説明では、本発明の文脈において、硫黄含有EP改質剤という表現は有機硫黄添加剤と称され、リン含有EP改質剤という表現は有機リン添加剤と称される。
【0030】
本発明のより好ましい一実施形態では、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、少なくとも10重量%の硫黄を含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。ZnDTP、ZnDTC、MoDTP、及びMoDTCは、本発明の意味において、有機硫黄添加剤という用語に含まれるとは考えない。より好ましい一実施形態では、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、少なくとも1種の硫化オレフィン、チアジアゾールアルキル、又はその組み合わせを含む群から選択される。硫化オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテンのオレフィンモノマーを含んでいてもよい。アルキルチアジアゾールは、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、及び/又は1,3,4-チアジアゾールのチアジアゾールモノマーを含んでいてもよい。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約1.0重量%までの量で、より好ましくは約0.5重量%から約0.7重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。さらに、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0031】
より好ましい一実施形態では、本発明によるグリース組成物中に、少なくとも1種の有機リン添加剤が存在する。意図される有機リン添加剤は、金属塩ではなく、ZnDTPやMoDTPのように硫黄を含まない。含まれるリンは、避けるべき上記の添加剤の中より小さく活性化されなければならない。最も重要なことは、少なくとも1種の有機リン添加剤がシーリングブーツ材料と適合することであり、これは、有機リン添加剤がシーリングブーツの劣化、シーリングブーツ材料の膨潤又は収縮を引き起こさないことを意味する。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは、リン酸(HPO)の誘導体であり、例えばTiBP内ではすべての水素がイソブチルに置換されたリン酸イソブチル(TiBP)のような三置換された有機リン酸塩を含む群から選択される。この特別な設計は、リン酸の1又は2個の水素原子だけを有機側鎖で置換した通常のリン添加剤と比べて、相対的に不活性な少なくとも1種の有機リン添加剤を提供する。三置換された有機リン添加剤の好ましい例としてのリン酸トリイソブチル(TiBP)は、シーリングブーツ材料との間で限定された相互作用を有しながら、高いEP性能と温度に依存しない粘度とを提供するので、SMBP試験によって明らかにされるCVジョイントの長い寿命を生じさせる。少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0032】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物中に、少なくとも1種の抗酸化剤が存在する。少なくとも1種の抗酸化剤として、本発明のグリース組成物は、アミン、好ましくは芳香族アミン、より好ましくはベンズアミン、2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物を含んでいてもよい。好ましくは、40℃で約250から約370mm/秒の範囲内の動粘度(ASTM D445に準拠)、及び20℃で約0.9から約1.0g/cmの密度(ASTM D1298に準拠)を有する少なくとも1種の抗酸化剤が選択される。少なくとも1種の抗酸化剤は、酸化に伴うグリース組成物の劣化を防止するために用いられる。少なくとも1種の基油及び/又は二硫化モリブデンの酸化劣化を防止し、グリース組成物の寿命を延ばして、CVジョイントの寿命を延ばすために、本発明によるグリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2重量%の範囲内で含んでいてもよく、グリース組成物の総量に対するものである。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくは約0.1重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.2重量%から約1.5重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0033】
さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物のCVジョイントにおける使用について言及し、さらに、クレームされたグリース組成物を含むCVジョイントについて言及する。CVジョイントは、特に、本発明によるグリース組成物で満たされたシーリングブーツを含み、少なくとも一部に、ジョイントに割り当てられた第1取付領域と、シャフトに割り当てられた第2取付領域とを有するシーリングブーツを含む。シーリングブーツは、ジョイント及び/又はシャフトに通常のクランプ装置で固定されてもよい。
【0034】
本発明の特に好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0035】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0036】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0037】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、後者の量は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0038】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含んでいてもよく、後者の量は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0039】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0040】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0041】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデンは固体状態で含まれる。
【0042】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0043】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0044】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0045】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.5重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0046】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0047】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0048】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0049】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、又は環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0050】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0051】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0052】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0053】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは固体状態で含まれる。
【0054】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0055】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0056】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0057】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0058】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0059】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量でさらに含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0060】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態で含まれ、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の総量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で含まれ、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0061】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0062】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量でさらに含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含み、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、リチウム石鹸増粘剤は好ましくは少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤は好ましくはジウレア及び/又はポリウレアからなる群から少なくとも選択され、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態であり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、好ましくは硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在し、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%までの間、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンからなる群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩からなる群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0063】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0064】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0065】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分岐状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0066】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含んでいてもよく、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0067】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤は、リチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0068】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0069】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは固体状態で含まれる。
【0070】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0071】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0072】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0073】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.5重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0074】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0075】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0076】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%値はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0077】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分岐状、又は環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、及びフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンである。
【0078】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0079】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0080】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛は固体状態で含まれる。
【0081】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは固体状態で含まれる。
【0082】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の総量(重量%で)で存在する。
【0083】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0084】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0085】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)である。
【0086】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0087】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のパラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約80重量%までの量でさらに含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0088】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態で含まれ、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、硫化亜鉛の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%まで、より好ましくは約1.2重量%から約4重量までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0089】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩を含む群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0090】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.2重量%から約1.0重量%の硫化亜鉛、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、約0.5重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、パラフィン系油は、好ましくは、ポリオレフィンの直線状、分枝状、及び環状の飽和アルカン、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュワックス、並びにフィッシャー・トロプシュオリゴマー化されたオレフィンを含む群から選択され、好ましくはイソパラフィン、単環及び/又は多環構造を含むシクロパラフィンであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約70重量%までの量でさらに含んでいてもよく、重量%は基油の総量に対するものであり、少なくとも1種のナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含み、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、リチウム石鹸増粘剤は好ましくは少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤は好ましくはジウレア及び/又はポリウレアからなる群から少なくとも選択され、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとは好ましくは固体状態であり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、好ましくは硫化亜鉛の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約20:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、約0.6重量%から約7重量%までの間、より好ましくは約1.2重量%から約4重量%までの間であり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンからなる群から選択され、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は、好ましくは三置換された有機リン酸塩からなる群から選択され、より好ましくはリン酸イソブチル(TiBP)であり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテンと反応させるか、又はオクチル化/ブチル化ジフェニルアミンの群から選択されたN-フェニル化合物、より好ましくはジオクチルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、オクチル/スチリルジフェニルアミン、ジヘプチルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、又はこれらの混合物である。
【0091】
等速ジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にある。
【0092】
CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0093】
CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、硫化亜鉛は約0.1重量%から約2.0重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0094】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンは、約0.5重量%から約5.0重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0095】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は約0.2重量%から約1.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は硫黄を少なくとも10重量%の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0096】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の有機リン添加剤は約0.2重量%から約2.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0097】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の抗酸化剤は約0.1重量%から約2.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0098】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、少なくとも1種の増粘剤は好ましくは尿素増粘剤及びリチウム石鹸増粘剤を含む群から選択され、少なくとも1種の増粘剤は約4重量%から約20重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0099】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0100】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約20:1の範囲内、より好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から最大で約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%から約85重量%までの量で含むか、及び/又は、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%から約70重量%までの量でさらに含んでいてもよく、重量%は基油の総量に対するものである。
【0101】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0102】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約1:1から約10:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0103】
好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、硫化亜鉛、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の有機リン添加剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの量の、硫化亜鉛の量に対する比率は、好ましくは約3:1から約20:1の範囲内にあり、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量は、好ましくは約0.6重量%から約7重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0104】
発明の意味において、好ましい実施形態で述べられた二硫化モリブデンは、二硫化タングステン(WS)と組み合わせて、発明のグリース組成物に含まれていてもよく、二硫化タングステンは、本発明による重量%範囲内で二硫化モリブデンの量を部分的に置き換える。グリース組成物の上述された好ましい実施形態は、限定的でない好ましい例であり、上記範囲及び添加剤の異なる組み合わせも可能である。
【0105】
本発明による以下の限定的でない例と、各種のグリース組成物の比較例とを参照して、本発明は以下により詳細に説明される。
【0106】
発明によるグリース組成物による摩擦係数及び摩耗を低減する効果を測定するために、振動摩擦摩耗SRV試験が、Optimol Instruments製SRVテスタを用いて実施される。Optimol Instruments Pruftechnik GmbH(Westendstrasse 125, Munich)製の100Cr6標準ベアリング鋼で作られた平面円盤状下側試験片をある溶剤を用いて適切に洗浄したものを用意し、試験対象のグリース組成物と接触させる。SRV試験は、業界標準試験であり、特にCVジョイント用のグリースの試験に関する。試験は、100Cr6ベアリング鋼で作られた直径10mmの上側球状試験片を上記の平板円盤状下側試験片上で荷重をかけて往復運動させることからなる。ボールジョイントを模倣する試験では、40Hzの周波数及び500Nの荷重負荷を80℃で60分間(慣らし運転を含む)印加した。ストロークは1.5mmであった。得られた摩擦係数をコンピュータに記録した。各グリースについて、報告値は、2回の運転における試験終了時の2つのデータの平均である。摩擦係数の慣らし運転測定のために、上記の条件下で50Nの荷重負荷を1分間かけて、試験を開始する。その後、荷重負荷は、30秒間に50Nずつ増加して500Nになる。摩耗は、プロフィロメータ及びデジタルプラニメータを用いて測定される。プロフィロメータを用いることにより、摩耗面の中央の断面プロファイルを取得できる。この断面の面積(S)は、デジタルプラニメータを用いて測定できる。摩耗の量はV=Slで評価され、Vは摩耗量であり、lはストロークである。摩耗率(W)は、W=V/L[μm/m]から得られ、Lは試験における全すべり距離である。
【0107】
標準マルチブロックプログラムSMBP試験は、CVジョイントの寿命耐久特性を比較及び評価するために用いられる。CVジョイントは、上昇率が250Nm/秒のトルク、率が100mm/秒の振動偏向、及び上昇率が少なくとも40rmp/秒の回転速度にさらされ、最大値は少なくとも1000Nm及び2000rpmである。プログラム中は、実際のトルク、速度、及び振動偏向(角度)の永久的な記録が試験リグによって提供される。CVジョイントが重大な障害の最初の兆候を得るまで、プログラムは定義された負荷サイクルを実行する。1サイクルは、51.3分及び39973回転と定義される。寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクルによって評価される。故障は、不釣り合いな温度上昇、又は摩耗を示すノイズの発生として定義される。CVジョイントの寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクル数によって評価される。CVジョイント性能における特定のグリースサンプルの検証のために、4つのジョイントに同じグリースサンプルを充填し、CVジョイント試験リグ上で試験した。グリース性能を比較するために、4つのCVジョイントの寿命耐久性の平均を求める。比較として、市販グリースと、添加剤のない基油とを用いる。
【0108】
さらに、本発明によるグリース組成物、及び1つの市販グリース、すなわち市販グリース組成物C1(表3参照)と共に実施された、熱可塑性エラストマーシーリングブーツPibiflex B5050 MWRの適合特性に関する試験を、125℃で336時間グリースに浸漬されたシーリングブーツ材料の熱劣化前後の硬度の変化(ショアD)、及び引張、伸張、体積のパーセント変化について実施した。上記の値は、ISO868(ショアD)、ISO37(引張変化及び伸張変化)、及びISO2781(体積変化)に従い測定される。
【0109】
グリース組成物A1からA12、及びB1からB2のために用いられる基油は、83重量%から84重量%までの量のパラフィン系油、及び16重量%から17重量%までの量のナフテン系油からなり、各場合において重量%は基油の総量に対するものである。
【0110】
表1から表2のグリース組成物には、以下の化合物を用いた。市販グリースC1は、基油、8重量%のリチウム石鹸油、およそ2.5重量%の量のMoS、及びおよそ0.3重量%の黒鉛を含み、各場合において重量%は市販グリースの総量に対するものである。
【0111】
純度97重量%、平均粒子サイズ0.80μmの硫化亜鉛(ZnS)粉末を用いた。純度97重量%、粒子サイズ(フィッシャー番号)0.40から0.50μmまでの超微細二硫化モリブデン(MoS)粉末を用いた。D90として平均粒子サイズ7μmの二硫化タングステン(WS)粉末を用いた。有機硫黄添加剤として、Lubrizol France(25 Quai de France, 76173 Rouen Cedex, France)製のAnglamol 33を用いた。有機リン添加剤として、純度99重量%のトリイソブチルリン酸を用いた。リチウム石鹸増粘剤として、12-ヒドロキシステアリン酸と水酸化リチウム(LiOH)との反応により得られたステアリン酸リチウムを用いた。
【0112】
以下、市販グリースはC1と表記され、二硫化モリブデンを含む、発明されたグリース組成物はA1、A2、A9、A10、及びA11と表記され、A3からA8、及びA12と表記されたグリース組成物は比較例である。
【表1】
【0113】
市販グリースはC1であり、二硫化タングステンを含む、発明されたグリース組成物はB1からB2と表記され、B2は硫化モリブデンと二硫化タングステンとの混合物を含む。
【表2】
【0114】
表3から表4と、図1a、図1b、図2a、図2b、図3a、図3b、図4a、及び図4bとに、摩擦、摩耗、及びブーツ適合性の実験値を以下のように示す。
図1a及び図1b:表3にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の硫化亜鉛添加剤の相乗効果のために示す。
図2a及び図2b:表3に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、A1からA12中の二硫化モリブデン(MoS)添加剤の相乗効果のために示す。
図3a及び図3b:表4に示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A1、A2、B1、B2と市販グリースC1との比較のために示す。
図4a及び図4b:表4に示された実験結果を、シーリングブーツ材料の適合性試験、及びCVジョイントの寿命耐久時間のために示す。
【0115】
市販グリースC1と比較して、発明されたグリース組成物の摩擦係数、及び発明されたグリース組成物の摩耗に関する実験結果を表3に示す。
【表3】
【0116】
市販グリースC1と比較して、CVジョイントを伴う発明されたグリース組成物の寿命耐久性、及び発明されたグリース組成物A1とシーリングブーツ材料との適合性に関する実験結果を表4に示す。
【表4】
【0117】
表3と図1a及び図1bとは、基油A3、二硫化モリブデン(MoS)を含むグリースA12、二硫化モリブデン及び有機硫黄添加剤を含むものA10、有機リン添加剤を含むものA4、並びに二硫化モリブデンと有機リン添加剤及び有機硫黄添加剤を含むものA8と比較して、本発明によるグリース組成物A1の実験結果を示す。グリース組成物に二硫化モリブデンを追加すると、摩擦係数の低下が段階的に観測される。グリース組成物A8及びA10は、CVジョイントで一般的に用いられる。両グリース組成物は、摩擦及び摩耗について良好な値を示す。しかし、二硫化モリブデン、有機硫黄添加剤、及び有機リン添加剤と組み合わせて硫化亜鉛を追加すると、摩擦係数は0.072から0.044に大幅に低下する。最小の摩耗量は、二硫化モリブデン、有機硫黄添加剤、有機リン添加剤、及び硫化亜鉛を含むグリース組成物により達成される。これらの実験結果は、グリースのトライボロジー性能に対する硫化亜鉛の影響を明確に示している。
【0118】
図2a及び図2bは、基油A3、有機リン添加剤を含むグリースA4、硫化亜鉛及び有機硫黄添加剤を含むグリース組成物A5、並びに硫化亜鉛、有機硫黄添加剤、及び有機リン添加剤を含むグリース組成物A6と比較して、発明されたグリース組成物A1の実験結果を示す。グリース組成物のサンプルに硫化亜鉛を追加すると、摩擦係数の低下が段階的に観測される。しかし、硫化亜鉛、有機硫黄添加剤、及び有機リン添加剤と組み合わせて二硫化モリブデンを追加すると、摩擦係数の0.108から0.044への大幅な低下が観測される。最小の摩耗量は、硫化亜鉛、有機硫黄添加剤、有機リン添加剤、及び二硫化モリブデンを含むグリース組成物により達成される。これらの実験結果は、グリースのトライボロジー性能に対する二硫化モリブデンの影響を明確に示している。
【0119】
結論として、図1a、図1b、図2a、及び図2bに示される実験データは、グリース組成物に硫化亜鉛及び二硫化モリブデンを用いた相乗効果を明らかにしている。硫化亜鉛及び二硫化モリブデンを組み合わせるだけで、トライボロジー性能は大幅に改良される。
【0120】
図3a及び図3bは、市販グリース組成物C1及び基油A3と比較して、発明された組成物A1、A2、及びB1の実験結果を示す。二硫化モリブデンの量がA1の2.0重量%からA2の1.69重量%に少し減少しても、良好なトライボロジー性能が引き続き現れる。B1は、二硫化モリブデンに代えて、1.69重量%の二硫化タングステンを含む。B2は、1.5重量%の二硫化モリブデンと0.5重量%の二硫化タングステンとの混合物を含み、硫化亜鉛の量は0.25重量%に低下させなければならない。市販グリース組成物C1と比較して、すべての発明されたグリース組成物A1、A2、B1、及びB2は、摩擦係数及び摩耗量の減少を示す。二硫化モリブデンを含むグリース組成物A1及びA2は、二硫化タングステンを含むグリース配合B1より良好なトライボロジー性能を示す。二硫化モリブデン及び二硫化タングステンを含むグリース配合B2は、B1、A1、及びA2より低い摩擦及び耐摩耗性能を示す。それでもB1及びB2は、市販グリースC1と比較して、許容可能な摩擦及び耐摩耗性能を示す。
【0121】
表4と図4a及び図4bとは、市販グリースC1と比較して、発明されたグリース組成物A1及びB1とCVジョイントブーツ(Pibiflex B5050 MWR)との適合性を示す。発明されたグリースA1の寿命耐久性は、市販グリースC1と比較して少し高い。発明されたグリース組成物B1は、市販グリースC1より2倍以上高い寿命耐久性を示す。発明されたグリース組成物A1は、引張、伸張、及び体積変化について市販グリースC1より低い値を提供する。市販グリースC1に対して、発明されたグリース組成物A1は、硬度変化について同様の値を提供するが、引張変化及び伸張変化について特に大幅に改良された値を提供する。
【0122】
発明によるグリース組成物の例は、硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの組み合わせは、グリース組成物の一般的な潤滑特性を保持するが、これに加えて、シーリングブーツ材料との適合性、及びCVジョイントの寿命耐久性を増加させることを明確に示している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)約0.1重量%と約2.0重量%との間の量の硫化亜鉛(重量%は上記グリース組成物の総量に対するものである)と、
d)約0.5重量%と約5.0重量%との間の量の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステン(重量%は上記グリース組成物の総量に対するものである)と、
を含み、
二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンの重量%量の、硫化亜鉛の量に対する比率が、3:1から10:1の範囲内にある、等速ジョイントで用いるためのグリース組成物。
【請求項2】
硫化亜鉛と二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンとの総量が最大で約7重量%であり、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする請求項に記載のグリース組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤が、約0.2重量%と約1.0重量%との間の量で含まれており、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項4】
上記少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも10重量%の量で含み、重量%は上記有機硫黄添加剤の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の有機リン添加剤が、約0.2重量%と約1.0重量%との間の量で含まれており、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項6】
上記グリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%と約2.0重量%との間の量でさらに含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項7】
上記少なくとも1種の増粘剤は、少なくとも1種の尿素増粘剤、少なくとも1種のリチウム石鹸、及び/又は少なくとも1種のリチウム錯体石鹸からなる群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項8】
上記少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含むことを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項9】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のパラフィン系油を約30重量%と約85重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項10】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約15重量%と約80重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項11】
約65重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油と、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤と、約0.1重量%から約2.0重量%の硫化亜鉛と、約0.5重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は二硫化タングステンと、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤と、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機リン添加剤とを含み、各場合において重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項12】
等速ジョイント、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイントにおける上記請求項1から1のうち1以上に記載のグリース組成物の使用。
【請求項13】
請求項1から1のいずれかに記載のグリース組成物を含む等速ジョイント。
【国際調査報告】