IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲーカーエン ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特表2022-548662硫化銅を含む等速ジョイント用グリース組成物
<>
  • 特表-硫化銅を含む等速ジョイント用グリース組成物 図1
  • 特表-硫化銅を含む等速ジョイント用グリース組成物 図2
  • 特表-硫化銅を含む等速ジョイント用グリース組成物 図3
  • 特表-硫化銅を含む等速ジョイント用グリース組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】硫化銅を含む等速ジョイント用グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/06 20060101AFI20221114BHJP
   B60K 17/30 20060101ALI20221114BHJP
   C10M 125/22 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 115/08 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 117/00 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20221114BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20221114BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
C10M169/06
B60K17/30 C
C10M125/22
C10M139/00 Z
C10M115/08
C10M117/00
C10M107/02
C10M101/02
C10N10:02
C10N10:12
C10N40:04
C10N30:06
C10N50:10
C10N30:00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517243
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2019075038
(87)【国際公開番号】W WO2021052578
(87)【国際公開日】2021-03-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507334967
【氏名又は名称】ゲーカーエン ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】GKN DRIVELINE INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】エー, ジーシェン
(72)【発明者】
【氏名】リンドラー, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィズダム, マリオ
【テーマコード(参考)】
3D043
4H104
【Fターム(参考)】
3D043AA07
3D043AB01
3D043CA07
3D043CC01
4H104AA19C
4H104BA07A
4H104BB14B
4H104BB31A
4H104BE13B
4H104BJ07C
4H104DA02A
4H104FA01
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA03
4H104QA18
(57)【要約】
本発明は、自動車の動力伝達系で用いられる等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイント、における使用が主に意図されるグリース組成物に関する。等速ジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、並びに二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体を含む。さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)少なくとも1種の硫化銅と、
d)二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体と、
を含む、等速ジョイントで用いるためのグリース組成物。
【請求項2】
上記少なくとも1種の硫化銅は、硫化銅(II)(CuS)であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
上記二硫化モリブデン及び/又は上記少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体の重量%量の、少なくとも1種の硫化銅の量に対する比率が、約1:1から約15:1の範囲内にあることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の硫化銅と上記二硫化モリブデン及び/又は上記少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量が最大で約6.5重量%であり、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項5】
上記グリース組成物は、少なくとも1種の硫化銅を約0.01重量%と約1.5重量%との間の量で含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項6】
上記グリース組成物は、上記二硫化モリブデン及び/又は上記少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体を約0.1重量%と約5.0重量%との間の量で含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤が、約0.2重量%と約1.0重量%との間の量で含まれており、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項8】
上記少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%の量で含み、重量%は上記有機硫黄添加剤の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項9】
上記少なくとも1種の増粘剤は、少なくとも1種の尿素増粘剤、少なくとも1種のリチウム石鹸、及び/又は少なくとも1種のリチウム錯体石鹸からなる群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項10】
上記グリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%と約2.0重量%との間の量でさらに含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項11】
上記少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含むことを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項12】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%と約60重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項13】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%と約90重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項14】
約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油と、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤と、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅と、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体と、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤と、約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤とを含み、各場合において重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項15】
等速ジョイント、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイントにおける上記請求項1から14のいずれかに記載のグリース組成物の使用。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載のグリース組成物を含む等速ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の動力伝達系で用いられる等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイント、における使用が主に意図されるグリース組成物に関する。さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
前輪駆動車は、ドライブシャフト(ハーフシャフト)の両端にCVジョイントを有する。内側のCVジョイントは、ドライブシャフトをトランスミッションに連結する。外側のCVジョイントは、ドライブシャフトをホイールに連結する。多くの後輪駆動及び四輪駆動車、並びにトラックは、CVジョイントを有する。CVジョイント或いはホモキネティックジョイントによって、ドライブシャフトは、可変の角度で、一定の回転速度で、好ましくは摩擦や遊びを認識できるほど増加させずに、動力を伝達できる。前輪駆動車では、CVジョイントは、回転中に前輪にトルクを伝達する。
【0003】
CVジョイントの最も一般的に用いられる種類には、ボール型とトリポッド型の2種類がある。前輪駆動車では、ドライブシャフトの外側にはボール型CVジョイント(アウターCVジョイント)が用いられ、内側にはトリポッド型CVジョイント(インナーCVジョイント)が主に用いられる。CVジョイント内の部品の動きは、転がり及び滑りの組み合わせのため複雑である。ジョイントにトルクがかかると、部品にも一緒に負荷がかかり、部品の接触面で摩耗を引き起こし得るだけでなく、表面間に転がり接触疲労及び大きな摩擦力を引き起こし得る。
【0004】
CVジョイントは、通常は蛇腹形状を有する、エラストマー材料のシーリングブーツも有し、その一端はCVジョイントの外側部分に連結され、他端はCVジョイントの相互接続又は出力シャフトに連結される。シーリングブーツは、ジョイント内にグリースを保持し、ほこりや水が入らないようにする。
【0005】
グリースは、摩耗及び摩擦を減らし、CVジョイント内の転がり接触疲労の早期開始を防止しなければならないだけでなく、シーリングブーツが作られるエラストマー材料と適合しなければならない。そうでなければ、シーリングブーツ材料の劣化が起こり、これがシーリングブーツの早期故障を引き起こし、グリースが漏れ、最終的にCVジョイントの故障が発生する。この点は、保護シーリングブーツにひびが入り、損傷を受けるときのCVジョイントの最も一般的な課題の1つである。一旦こうなると、グリースの漏れに加えて、水分やほこりが入り、CVジョイントはより速く摩耗し、最終的に潤滑不足や腐食のため故障する。通常、外側のCVジョイントシーリングブーツは、内側のものより多くの動きに耐えなければならないので、先に壊れる。CVジョイント自身が摩耗しても修理できないので、新品又は再調整された部品と交換されなければならない。CVジョイントシーリングブーツに用いられる材料の主な2種類は、ポリクロロプレンゴム(CR)及び熱可塑性エラストマー(TPE)、特にエーテル-エステルブロックコポリマー熱可塑性エラストマー(TPC-ET)である。
【0006】
典型的なCVジョイントグリースは、ナフテン系(飽和環)及びパラフィン系(直線及び分岐飽和鎖)の鉱油の混合物である基油を有する。合成油も添加されてもよい。上記基油は、CR製及びTPC-ET製の両方のシーリングブーツの劣化(膨潤又は収縮)に大きな影響を与えることが知られている。鉱物及び合成基油は、シーリングブーツ材料から可塑剤及び他の油溶性保護剤を抽出する。パラフィン系鉱油及びポリ-α-オレフィン(PAO)合成基油は、特にシーリングブーツにはごくわずかしか拡散しないが、一方、ナフテン系鉱油及び合成エステルは、ゴムやTPC-ETのようなシーリングブーツ材料内に拡散し、可塑剤として機能し、膨潤を引き起こし得る。可塑剤又は可塑剤組成物をナフテン系鉱油に代えると、特に低温においてシーリングブーツ性能が大幅に低下し、低温割れによりシーリングブーツの故障を引き起こし、最終的にCVジョイントの故障を生じさせ得る。大幅な膨潤や軟化が起きると、高速時の低安定性、及び/又は径方向の過剰な拡大のために、シーリングブーツの最高速度能力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/02629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の課題を解決するために、国際公開第99/02629号は、鉱油又は合成油又はこれらの混合物を含む基油、増粘剤、重量で構成要素の総重量の0.5から5%の間のジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、及び重量で構成要素の総重量の0.5から5%の間の粉末酸化銅(I)を含む特別なグリースを提案する。加えて、グリースは、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTC)、金属を含まない硫黄含有極圧剤、有機アミン、及び必要であれば、腐食防止剤、抗酸化添加剤、粘着性剤、粘度指数改良剤等の通常の添加剤の少なくともいくつかを含んでいてもよい。グリースは、原材料において経済的であり、低摩耗及び低摩擦特性を有する。しかし、国際公開第99/02629号によれば、活性化されたリンにより引き起こされるシーリングブーツ材料の早期劣化を低減することにより、良好な摩耗及び摩擦性能が維持されなければならない。国際公開第99/02629号において達成された、低摩耗及び低摩擦特性を有する基油の性能の改良が、大きな成果であったことを認めなければならない。それでも、国際公開第99/02629号のグリース組成物に開示された錯体リン含有添加剤がシーリングブーツ材料と反応して、早期劣化を引き起こし、シーリングブーツの早期故障と完全なCVジョイントのさらなる損傷とを生じさせる可能性があるという事実のために、さらなる向上が必要である。
【0009】
国際公開第99/02629号のように、市販のCVジョイント潤滑剤の大半は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)等の有機リン含有添加剤を含み、これがCVジョイントの金属表面におけるトライボケミカル反応に基づき良好な耐摩耗性能を提供する。特にリン含有添加剤を用いることによる不利な点は、これらがシーリング材料、特にシーリングブーツとの間で良好な適合性を全く示さないことである。さらに、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、耐摩耗及びEP性能、特にCVジョイントの初期動作時間(慣らし運転)における改良された耐摩擦特性を提供する。しかしながら、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、シーリングブーツ材料の膨潤及び軟化を引き起こし、完全なシーリングブーツの早期劣化を引き起こし得ることも知られている。これらの効果は、シーリングブーツ材料と相互作用し、シーリングブーツ材料の早期劣化を引き起こすリンに基づく。加えて、上記の有機金属塩に含まれるリンは化学的により活性化されるので、シーリングブーツ材料にさらにより速い影響を与える。したがって、大量の場合、グリースは、CVジョイントで用いられるシーリングブーツの早期故障を生じさせ得る。
【0010】
負の特性を考慮した場合、CVジョイント全体のより長い寿命を達成するために、全般的な潤滑特性を維持しながら、グリース組成物とシーリングブーツ材料との適合性を高めるために、リン含有添加剤を完全になくすことは確かに有益である。
【0011】
本発明の目的は、ゴム又は熱可塑性エラストマーで作られたシーリングブーツと良好な適合性を有し、良好な低摩耗と低摩擦係数とを維持することにより、CVジョイント全体の高い耐久性も与える、主にCVジョイントで用いるためのグリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)少なくとも1種の硫化銅と、
d)二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体と、
を含み、好ましくは少なくとも1種のTPEで作られ、より好ましくは少なくとも1種のTPC-EPで作られたブーツを有するCVジョイントで用いるためのグリース組成物によって解決される。
【0013】
グリース組成物に加えて、発明は、等速ジョイントにおける発明によるグリース組成物の使用に関する。さらに、発明は、発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【発明の効果】
【0014】
CVジョイントで用いるための本組成物の利点は、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との組み合わせ配合が相乗効果を示すことである。硫化銅は、改良されたトライボロジーが銅により提供される一方で、硫黄により提供される良好なEP性能と、耐摩耗性及び摩擦性能の低減という2つの主な特徴を有する。これにより、硫化銅に含まれる銅は、摩耗及び摩擦係数を低減するだけでなく、高圧下で摩耗した表面を修復し、金属化合物、つまりCVジョイント全体の延ばされた寿命をもたらし得るとも考えられる。さらに、二硫化モリブデンと少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体とは、グリース組成物において摩擦を低減し、耐摩耗性を提供し、EP性能を高くすることが明らかにされている。さらに、ZnDTP、CuDTP、MoDTP等のリン含有添加剤を用いる必要がない。上記の相乗効果は、使用される添加剤が少量のときほど高い潤滑性能であり、シーリング材料とより適合し、CVジョイントの寿命を延ばしながら、摩耗及び摩擦係数を低減することである。発明者らは、硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との組み合わせを特徴とするグリース組成物が、CVジョイント全体のより長い寿命を可能としながら、グリース組成物中のリン添加剤を効果的に置き換えることを発見し、この点は、例えば標準マルチブロックプログラム(SMBP)試験によって明らかにされ得る。特に、CVジョイントの重負荷下での寿命耐久性、潤滑剤の酸化安定性、及びCVジョイントシーリングブーツ材料との適合性が、本発明によるグリース組成物によって改良される。
【0015】
金属硫化物は、機械的せん断や熱の間に、ZnDTPやCuDTP等の有機金属塩の場合より安定した結合を特徴とする。有機金属塩が重負荷下で無機塩と有機ラジカルとに分解することはよく知られている。これに対して、硫化銅及び硫化モリブデンは、重負荷下で分子内で重要な化学的活性がない、安定した無リン化合物である。有利なことに、潤滑特性を維持しながら、2つの硫化物とシーリングブーツ材料との反応は最小化される。
【0016】
発明されたグリース組成物は、添加剤についてより少ない材料しか必要としないことも有利である。二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体がある種の相乗効果として硫化銅のトライボケミカル特性を向上するという事実のために、これらの添加剤の必要量はさらに削減される。既に述べた添加剤の量の削減は、発明されたグリース組成物の製造におけるコスト削減ももたらす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1a及び図1bは、表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A9と比較して、組成物A1からA3における二硫化モリブデンの追加効果のために示す。
図2図2a及び図2bは、表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A9と比較して、A4からA6におけるジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)の追加効果のために示す。
図3図3a及び図3bは、表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、市販グリースB1及び銅を含まないグリース組成物A8と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10の硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)の追加効果のために示す。
図4図4a及び図4bは、表3に示された実験結果を、市販のグリースB1と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10のシーリングブーツ材料の適合性試験及びCVジョイントの寿命耐久性のために示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
重量パーセント、又は重量による%という用語がクレームされたグリース組成物を構成する成分に関して用いられる限り、重量パーセントという用語は、そうでないことが明記されている場合を除き、本明細書の全体において、グリース組成物の総量に対する1つ以上の成分の量のことをいう。「重量%」という表現は、そうでないことが示されていない場合、本発明の全体において、重量パーセントの略語として用いられる。
【0019】
発明の文脈において、数値又は範囲に関する「およそ」及び「約」という表現は、当業者が当人の一般的知識に基づき、及び発明の全体としての観点から一般的又は合理的であると考えるであろう許容範囲として理解されるべきである。特に「およそ」及び「約」という表現は、指定された値に対して、±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の許容範囲のことを言う。本発明でクレームされた、各種の範囲、特に重量パーセント範囲(これに限定されないが)の下限値及び上限値は、新しい範囲を定義するために互いに組み合わされてもよい。
【0020】
さらに、本発明の文脈において、特性、数値、又は範囲に関する、標準、規範、又は標準化プロトコル(例えばISOやASTM等)へのすべての言及は、発明の出願日に有効な上記標準、規範、又は標準化プロトコルの直近に更新されたバージョンへの言及として理解されるべきである。
【0021】
好ましくは、本発明によるグリース組成物で用いられる基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。本発明による基油として、米国特許第5,670,461号に開示された基油が好ましくは用いられてもよく、その開示は参照によりここに組み込まれる。ただし、任意のさらなる種類の基油、特に鉱油の混合物、合成油の混合物、又は鉱油と合成油との混合物が用いられてもよい。基油は、好ましくは、40℃で約32と約250mm/秒との間、100℃で約5と約25mm/秒との間の動粘度を有していなければならない。鉱油は、好ましくは、少なくとも1種のナフテン系油、及び/又は少なくとも1種のパラフィン系油を含む群から選択される。本発明で使用可能な合成油は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィン(PAO)、及び/又は少なくとも1種のナフテン系油を含む群から選択される。有機合成エステルは、好ましくは、脂肪族アルコールに基づくサブグループを有するジカルボン酸の誘導体である。好ましくは、脂肪族アルコールは、2から20個の炭素原子を有する第1級の直線状又は分岐状の炭素鎖を有する。好ましくは、有機合成エステルは、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「セバシン酸ジオクチル」(DOS))、アジピン酸ビス-(2-エチルヘキシルエステル)(「アジピン酸ジオクチル」(DOA))、フタル酸ジオクチル(DOP)、及び/又はアゼライン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「アゼライン酸ジオクチル(DOZ)」)を含む群から選択される。基油中にポリ-α-オレフィンが存在する場合、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得る。好ましくは、ASTM D445で定義されるように、40℃で約2から約60センチストークスの範囲内の動粘度を有するポリ-α-オレフィンが選択される。基油のために選択されるナフテン系油は、40℃で好ましくは約3から約370mm/秒、より好ましくは約20から約150mm/秒の範囲内の動粘度を有する。パラフィン系油が基油中に存在する場合、パラフィン系油は、好ましくは40℃で約9から約170mm/秒の範囲内の動粘度を有する。
【0022】
少なくとも1種の基油は、本発明によるグリース組成物中に、好ましくは約60重量%から約95重量%までの量で、より好ましくは約63重量%から約93重量%までの量で、より好ましくは約75重量%から約92.5重量%までの量で、より好ましくは約78重量%から約92重量%までの量で、さらにより好ましくは約79重量%から約92重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0023】
少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約20重量%から約40重量%までの量で、より好ましくは約25重量%から約35重量%までの量で、さらにより好ましくは約27重量%から約32重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。さらに、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約60重量%から約80重量%までの量で、より好ましくは約65重量%から約75重量%までの量で、さらにより好ましくは約67重量%から約72重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。
【0024】
本発明で用いられる基油という用語は、基油が、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む基油組成物でもよいという意味に理解される。好ましくは、基油組成物は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィン及び少なくとも1種のナフテン系油を含み、ポリ-α-オレフィンの量は、約10重量%から約60重量%まで、好ましくは約20重量%から約50重量%まで、さらにより好ましくは約27重量%から約32重量%までであり、ナフテン系油の量は、約40重量%から約90重量%まで、好ましくは約50重量%から約80重量%まで、さらにより好ましくは約67重量%から約72重量%までであり、各場合においてポリ-α-オレフィン及びナフテン系油の重量%は、基油の総量に対するものである。
【0025】
本発明によれば、少なくとも1種の増粘剤は、好ましくはリチウム石鹸増粘剤及び/又は尿素増粘剤であり、この中でリチウム石鹸増粘剤の使用が最も好ましい。リチウム石鹸増粘剤は、少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物である。好ましくは、増粘剤は、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、及び硬化ヒマシ油から、又は他の同様の脂肪酸、又はこれらの混合物、又はそのような酸のメチルエステルから作られた単純リチウム石鹸でもよい。これに代えて、又は加えて、例えば長鎖脂肪酸と錯化剤との混合物、例えば1つ以上のジカルボン酸のホウ酸塩から作られたリチウム錯体石鹸が用いられてもよい。錯体リチウム石鹸を用いると、本発明によるグリース組成物はおよそ180℃の温度まで機能するが、単純リチウム石鹸では、グリース組成物はおよそ120℃の温度までしか機能しない。尿素増粘剤は、ジウレア化合物及びポリウレア化合物の中から選択されてもよい。例えば、ジウレア化合物は、モノアミンと、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、及びヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、そのようなモノアミンの例は、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、及びシクロヘキシルアミンであり、ポリウレア化合物は、ジアミンと、上記のジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、ジアミンには、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、及びキシレンジアミンが含まれ、及び/又は尿素増粘剤は、p-トルイジン又はアニリン等のアリルアミン、シクロヘキシルアミン、又はこれらの混合物とジイソシアネートとの反応によって得られる群から選択される。ジウレア化合物のアリル基は、存在する場合、好ましくは6又は7個の炭素原子を含む。ただし、リチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤等の上記の増粘剤のすべての混合物が用いられてもよい。少なくとも1種の増粘剤は、好ましくは約2重量%から約20重量%までの量で、より好ましくは約4.0重量%から約17.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0026】
少なくとも1種の硫化銅は、固体状態で存在する。硫化銅(II)(一硫化銅、CuS)が、硫化銅(I)(二硫化銅、CuS)よりも好ましくは用いられる。自然の中では、一硫化銅は鉱物の銅藍として発生する。二硫化銅は、単斜晶系の結晶化鉱物である輝銅鉱(銅光沢としても知られる)、及び正方晶系の結晶化鉱物である銅鉱として自然に発生する。好ましくは工業的に製造された硫化銅粉末が用いられるが、結晶構造はさらに区別されない。グリース組成物では、硫化銅粉末が、結晶、分散、或いは水又はエタノール溶液より好ましくは用いられる。グリース組成物では、硫化銅(II)は、好ましくは、ISO13320に関するCLIAS 1064 Nassによって測定された19.9μmの粒子サイズD90の粉末として用いられる。さらに、20℃における密度は4.6g/cmまでである。使用される硫化銅(I)は、好ましくは、ISO13320に関するCLIAS 1064 Nassによって測定された53.6μmの粒子サイズD90に粉末化される。さらに、20℃における密度は5.5g/cmまでである。少なくとも1種の硫化銅は、約0.01重量%から約1.5重量%までの量で、より好ましくは約0.1重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0027】
本発明のグリース組成物は、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体を含む。二硫化モリブデン(硫化モリブデン(IV)、MoS)が、硫化モリブデン(VI)(MoS)及び/又は硫化モリブデン(V)(Mo)よりも好ましくは用いられる。グリース組成物では、二硫化モリブデン超微細粉末が、結晶、分散、或いは水又はエタノールの溶液よりも好ましく用いられる。使用が好ましい二硫化モリブデン超微細粉末は、97重量%の純度、より好ましくは0.40から0.50μmまでのフィッシャー数、さらにより好ましくはISO13320標準のレーザー回折装置Microtrac X100による7.0μmの粒子サイズ分布D90、及び0.4g/cmのかさ密度を有する。酸化の二硫化モリブデンを保護するために、好ましくは抗酸化剤が用いられてもよい。本発明によれば、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。MoDTCは、好ましくは以下の一般式(I)、
【化1】
であり、X又はYはS又はOを表し、R9からR12のそれぞれは同じでも異なっていてもよく、それぞれは、3と20個との間の炭素原子を有する第1級(直鎖)又は第2級(側鎖)アルキル基である。少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、固体のMoDTCとして存在する。
【0028】
好ましくは、本発明によるグリース組成物中には、無リンモリブデン錯体が存在してもよく、その中では、硫黄を含む無リンモリブデン錯体が好ましい。本発明によるグリース組成物は、好ましくは固体状態の1種以上のMoDTCを含むが、固体状態の少なくとも1種のMoDTC、及び液体状態の少なくとも1種のMoDTCも含んでいてもよい。発明の好ましい一実施形態では、組成物は、リン含有モリブデン化合物を含まない。二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、好ましくは約0.1重量%から約5.0重量%までの量で、より好ましくは約1.0重量%から約3.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)存在する。少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.5重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0029】
本発明のグリース組成物に、抗酸化剤、防錆剤、他の極圧(EP)調整剤、耐摩耗剤、及び油改良剤等の各種の公知の添加剤を含めることができる。好ましくは、グリース組成物には、以下に述べるグリース添加剤が含まれる。本発明されたグリース組成物は、好ましくは、すべての添加剤も無リン添加剤であるという意味で無リン配合である。
【0030】
本発明のより好ましい一実施形態では、少なくとも1種の硫黄含有EP調整剤(以下の説明では有機硫黄添加剤と呼ばれる)は、少なくとも10重量%の硫黄を含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。ZnDTP及びMoDTPは、本発明の意味において、有機硫黄添加剤という用語に含まれるとは考えない。より好ましい一実施形態では、有機硫黄添加剤は、少なくとも1種の硫化オレフィン、チアジアゾールアルキル、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される。硫化オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテンのオレフィンモノマーを含んでいてもよい。アルキルチアジアゾールは、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、及び/又は1,3,4-チアジアゾールのチアジアゾールモノマーを含んでいてもよい。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約1,0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約0.7重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0031】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物中に、少なくとも1種の抗酸化剤が存在する。抗酸化剤として、本発明のグリース組成物は、アミン、好ましくは芳香族アミン、より好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物を含んでいてもよい。抗酸化剤は、酸化に伴うグリース組成物の劣化を防ぐために用いられる。基油及び/又は二硫化モリブデンの酸化劣化を抑制し、グリース組成物の寿命を延ばして、CVジョイントの寿命を延ばすために、本発明によるグリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2重量%の範囲内で含んでいてもよく、重量%はグリース組成物に対する総量に対するものである。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくは約0.1重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.2重量%から約1.5重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0032】
さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物のCVジョイントにおける使用について言及し、さらに、クレームされたグリース組成物を含むCVジョイントについて言及する。CVジョイントは、特に、本発明によるグリース組成物で満たされたシーリングブーツを含み、少なくとも一部に、ジョイントに割り当てられた第1取付領域と、シャフトに割り当てられた第2取付領域とを有するシーリングブーツを含む。シーリングブーツは、ジョイント及び/又はシャフトに通常のクランプ装置で固定されてもよい。
【0033】
本発明の特に好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0034】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0035】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0036】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約20重量%から約40重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、1-デセンオリゴマー、さらにより好ましくは、デセン三量体、デセン四量体、デセン五量体、又はより多いオリゴマーの定義された混合物を含むポリ-1-デセンである。
【0037】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約60重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0038】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0039】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体(2種類のモリブデン含有添加剤は好ましくは固体状態)、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の硫化銅は好ましくは硫化銅(II)(CuS)を固体状態で含む。
【0040】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は固体状態で含まれる。
【0041】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、好ましくは固体状態のジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。
【0042】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在する。
【0043】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0044】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0045】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0046】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0047】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0048】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%を少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約20重量%から約40重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得る。
【0049】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約60重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0050】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0051】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体(2種類のモリブデン含有添加剤は好ましくは固体状態)、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の硫化銅は好ましくは硫化銅(II)(CuS)を固体状態で含む。
【0052】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。
【0053】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約6重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は固体状態で含まれる。
【0054】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在する。
【0055】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0056】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0057】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0058】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む群から選択され、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%から約60重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%から約90重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0059】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の硫化銅は好ましくは固体状態の硫化銅(II)(CuS)を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は固体状態で含まれ、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。
【0060】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択され、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0061】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%から約60重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%から約90重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択され、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、リチウム石鹸増粘剤は、好ましくは少なくとも1種の脂肪酸及び水酸化リチウムの反応生成物であり、尿素増粘剤は、好ましくはジウレア及び/又はポリウレアからなる群から少なくとも選択され、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体とは好ましくは固体状態であり、グリース組成物は好ましくは硫化銅(II)(CuS)を含み、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)であり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンからなる群から選択され、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0062】
本発明のより好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在する。
【0063】
本発明のより好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0064】
本発明のより好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、組成物の総量に対して最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の硫化銅は約0.01重量%から約1.5重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0065】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン化合物は、約0.1重量%から約5.0重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0066】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、約0.2重量%から約1.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は硫黄を少なくとも20重量%の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0067】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の単純又は錯体石鹸増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、約0.1重量%から約2.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0068】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、少なくとも1種の増粘剤は約4重量%から約20重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0069】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0070】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%から約60重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであるか、及び/又は、少なくとも1種の基油は少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%から約90重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものである。
【0071】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0072】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の単純又は錯体石鹸増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、好ましくは約1:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0073】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、好ましくは約3:1から約15:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0074】
グリース組成物の上記の好ましい実施形態は、限定的でない好ましい例であり、上記範囲及び添加剤の異なる組み合わせも可能である。
【0075】
本発明による以下の限定的でない例と、各種のグリース組成物の比較例とを参照して、本発明は以下により詳細に説明される。
【0076】
発明によるグリース組成物による摩擦係数及び摩耗を低減する効果を測定するために、振動摩擦摩耗SRV試験が、Optimol Instruments製SRV試験機を用いて実施される。Optimol Instruments Pruftechnik GmbH(Westendstrasse 125, Munich)製の100Cr6標準ベアリング鋼で作られた平板円盤状下側試験片をある溶剤を用いて適切に洗浄したものを用意し、試験対象のグリース組成物と接触させる。SRV試験は、業界標準試験であり、特にCVジョイントのグリースの試験に関連する。試験は、100Cr6ベアリング鋼で作られた直径10mmの上側球状試験片を上記の平板円盤状下側試験片上で荷重をかけて往復運動させることからなる。トリポッドジョイントを模倣する試験では、40Hzの周波数及び500Nの荷重負荷を80℃で60分間(慣らし運転を含む)印加した。ストロークは1.5mmであった。得られた摩擦係数をコンピュータに記録した。各グリース組成物について、報告値は、2回の運転における試験終了時の2つのデータの平均である。摩擦係数の慣らし運転測定のために、上記の条件下で50Nの荷重負荷を1分間かけて、試験を開始する。その後、荷重負荷は、30秒間に50Nずつ増加して500Nになる。摩耗は、プロフィロメータ及びデジタルプレニメータを用いて測定される。プロフィロメータを用いることにより、摩耗面の中央の断面プロファイルを取得できる。この断面の面積(S)は、デジタルプレニメータを用いて測定できる。摩耗の量はV=Slで評価され、Vは摩耗量であり、lはストロークである。摩耗率(Wr)は、Wr=V/L[μm/m]から得られ、Lは試験における全すべり距離である。
【0077】
標準マルチブロックプログラムSMBP試験は、CVジョイントの寿命耐久特性を比較及び評価するために用いられる。CVジョイントは、上昇率が250Nm/秒のトルク、率が100mm/秒の振動偏向、及び上昇率が少なくとも40rmp/秒の回転速度にさらされ、最大値は少なくとも1000Nm及び2000rpmである。プログラム中は、実際のトルク、速度、及び振動偏向(角度)の永久的な記録が試験リグによって提供される。CVジョイントが重大な障害の最初の兆候を得るまで、プログラムは定義された負荷サイクルを実行する。1サイクルは、51.3分及び39973回転と定義される。寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクルによって評価される。故障は、不釣り合いな温度上昇、又は摩耗を示すノイズの発生と定義される。CVジョイントの寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクル数によって評価される。より良い統計力のために、同じグリース組成物を含む4つまでのCVジョイントが同時に試験される。4つのCVジョイントのうち4つが故障すると、試験は終了し、全体のサイクルがカウントされる。比較として、市販グリースを用いる。
【0078】
さらに、本発明によるグリース組成物、及び1つの市販グリース、すなわち市販グリース組成物B1(表1参照)と共に実施された、熱可塑性エラストマーシーリングブーツ、すなわちPibiflex B5050 MWRの適合特性に関する試験を、125℃で336時間グリースに浸漬されたシーリングブーツ材料の熱劣化前後の硬度の変化(ショアD)、及び引張、伸張、体積のパーセント変化について実施した。上記の値は、ISO868(ショアD)、ISO37(引張変化及び伸張変化)、及びISO2781(体積変化)に従い測定される。
【0079】
グリース組成物A1からA10のために用いられる基油は、83重量%から84重量%までの量のポリ-α-オレフィン、及び16重量%から17重量%までの量のナフテン系油からなり、各場合において重量%は基油の総量に対するものである。
【0080】
表1のグリース組成物には、以下に示される以下の化合物を用いた。市販グリースB1は、基油、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、及び重量で8%のリチウム石鹸増粘剤を含み、により製造される。硫化銅(II)(CuS)として、粒子サイズD90が19.9μmの粉末を用いた。Tribotecc GmbH(Kearntner Str. 7, 1010 Vienna, Austria)からCB 500として入手可能な硫化銅(II)を用いた。粒子サイズD90が53.6μmの硫化銅(I)(CuS)粉末を用いた。Tribotecc GmbH(Kearntner Str. 7, 1010 Vienna, Austria)からCB 300として入手可能な硫化銅(I)を用いた。二硫化モリブデン(MoS)として、純度97重量%、粒度0.40から0.50μmまでの粉末を用いた。無リンモリブデン錯体として、Adekaから商品名Sakuralube 600で入手可能なジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を用いた。有機硫黄添加剤として、Lubrizol France(25 Quai de France, 76173 Rouen Cedex, France)製のAnglamol 99を用いた。抗酸化剤として、BASF SE(67056 Ludwigshafen, Germany)製のIrganox L57を用いた。リチウム石鹸増粘剤として、12-ヒドロキシステアリン酸と水酸化リチウム(LiOH)との反応により得られたステアリン酸リチウムを用いた。
【0081】
市販グリースはB1と表記され、二硫化モリブデンを含む、発明されたグリース組成物はA9及びA10と表記され、A1からA8と表記されるグリース組成物は比較例である。
【表1】
【0082】
表2と図1a、図1b、図2a、図2b、及び図3とに、摩擦、摩耗、ブーツ適合性、及び寿命耐久性(SMBP試験)の実験値を示す。図面は、以下を示す。
図1a及び図1b:表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A9と比較して、組成物A1からA3における二硫化モリブデンの追加効果のために示す。
図2a及び図2b:表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、発明されたグリース組成物A9と比較して、A4からA6におけるジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)の追加効果のために示す。
図3a及び図3b:表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、市販グリースB1及び銅を含まないグリース組成物A8と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10の硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)の追加効果のために示す。
図4a及び図4b:表3に示された実験結果を、市販のグリースB1と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10のシーリングブーツ材料の適合性試験及びCVジョイントの寿命耐久性のために示す。
【0083】
グリース組成物A1からA8と比較して、2つの発明されたグリース組成物A9及びA10の摩擦係数及び摩耗量に関する実験結果を表2に示す。
【表2】
【0084】
表2と図1a及び図1bとは、グリース組成物A1からA3と比較して、発明された組成物A9の実験結果を示す。A1は、1.5重量%のジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、0.5重量%の硫化銅(II)(CuS)、及び二硫化モリブデンを含まない、0.5重量%の有機硫黄添加剤を含む。A2において0.2重量%の二硫化モリブデンを添加することにより、摩擦係数のおよそ0.05への減少が観測されるが、摩耗量はおよそ1000μm/mのままである。A3、及び発明されたグリース組成物A9の量において、二硫化モリブデンを段階的に増加させることにより、摩擦係数を0.05に保ちながら、同時に摩耗量をおよそ400μm/mに改良する。
【0085】
表2と図2a及び図2bとは、グリース組成物A4からA6と比較して、発明された組成物A9の実験結果を示す。A4は、1.0重量%の二硫化モリブデン、0.5重量%の硫化銅(II)(CuS)、及び0.5重量%の、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を含まない有機硫黄添加剤を含む。A4は、およそ0.12の高い摩擦係数と、およそ11000μm/mの高い摩耗量を示す。A5におけるようにグリース組成物に1.0重量%のジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を添加すると、摩擦係数はおよそ0.6に大幅に減少し、摩耗量はおよそ440μm/mに減少する。A6及びA9においてジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を段階的に増やすと、摩擦係数及び摩耗量の両方がさらに減少する。
【0086】
結論として、図1a、図1b、図2a、及び図2bに示される実験データは、グリース配合における二硫化モリブデン及びジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)と硫化銅(II)(CuS)とを用いた相乗効果を明らかにしている。トライボロジー性能は、3つの成分のすべて、すなわち、二硫化モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、及び硫化銅(II)(CuS)を組み合わせただけで、大幅に改良される。
【0087】
表2と図3a及び図3bとは、市販グリースB1及び銅を含まないグリース配合A8と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10中の硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)添加剤により影響されるグリースのトライボロジー性能を示す。発明されたグリースA9及びA10は、市販グリースB1と比較して、改良された摩擦係数及び摩耗量を示す。
【0088】
市販グリースB1と比較して、CVジョイントを伴う発明されたグリース組成物の耐久性、及び発明されたグリース組成物のシーリングブーツ材料との適合性に関する実験結果を表3に示す。
【表3】
【0089】
表3及び図4aは、銅を含まないグリース組成物A8及び市販グリースB1と比較して、CVジョイントの平均寿命のためのSMBP試験において、発明されたグリース組成物A9及びA10と共に試験されたCVジョイントの実験結果を示す。発明されたグリース組成物A9及びA10の両方は、寿命耐久性のかなりの改良を示す。硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)の良い影響を、銅を含まないグリース組成物A8と比較して示す。
【0090】
表3及び図4bは、発明されたグリース組成物A9及び市販グリースB1と、CVジョイントのシーリングブーツ材料(Pibiflex B 5050 MWR)との適合性試験の実験結果を示す。発明されたグリース組成物A9は、引張強度の少しの改良、及び伸張及び体積特性の改良を示す。
【0091】
発明によるグリース組成物の例は、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデンとの組み合わせは、グリース組成物の一般的な潤滑特性を保持するが、これに加えて、シーリングブーツ材料との適合性、及びCVジョイントの寿命耐久性を増加させることを明確に示している。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の動力伝達系で用いられる等速ジョイント(CVジョイント)、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイント、における使用が主に意図されるグリース組成物に関する。さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
前輪駆動車は、ドライブシャフト(ハーフシャフト)の両端にCVジョイントを有する。内側のCVジョイントは、ドライブシャフトをトランスミッションに連結する。外側のCVジョイントは、ドライブシャフトをホイールに連結する。多くの後輪駆動及び四輪駆動車、並びにトラックは、CVジョイントを有する。CVジョイント或いはホモキネティックジョイントによって、ドライブシャフトは、可変の角度で、一定の回転速度で、好ましくは摩擦や遊びを認識できるほど増加させずに、動力を伝達できる。前輪駆動車では、CVジョイントは、回転中に前輪にトルクを伝達する。
【0003】
CVジョイントの最も一般的に用いられる種類には、ボール型とトリポッド型の2種類がある。前輪駆動車では、ドライブシャフトの外側にはボール型CVジョイント(アウターCVジョイント)が用いられ、内側にはトリポッド型CVジョイント(インナーCVジョイント)が主に用いられる。CVジョイント内の部品の動きは、転がり及び滑りの組み合わせのため複雑である。ジョイントにトルクがかかると、部品にも一緒に負荷がかかり、部品の接触面で摩耗を引き起こし得るだけでなく、表面間に転がり接触疲労及び大きな摩擦力を引き起こし得る。
【0004】
CVジョイントは、通常は蛇腹形状を有する、エラストマー材料のシーリングブーツも有し、その一端はCVジョイントの外側部分に連結され、他端はCVジョイントの相互接続又は出力シャフトに連結される。シーリングブーツは、ジョイント内にグリースを保持し、ほこりや水が入らないようにする。
【0005】
グリースは、摩耗及び摩擦を減らし、CVジョイント内の転がり接触疲労の早期開始を防止しなければならないだけでなく、シーリングブーツが作られるエラストマー材料と適合しなければならない。そうでなければ、シーリングブーツ材料の劣化が起こり、これがシーリングブーツの早期故障を引き起こし、グリースが漏れ、最終的にCVジョイントの故障が発生する。この点は、保護シーリングブーツにひびが入り、損傷を受けるときのCVジョイントの最も一般的な課題の1つである。一旦こうなると、グリースの漏れに加えて、水分やほこりが入り、CVジョイントはより速く摩耗し、最終的に潤滑不足や腐食のため故障する。通常、外側のCVジョイントシーリングブーツは、内側のものより多くの動きに耐えなければならないので、先に壊れる。CVジョイント自身が摩耗しても修理できないので、新品又は再調整された部品と交換されなければならない。CVジョイントシーリングブーツに用いられる材料の主な2種類は、ポリクロロプレンゴム(CR)及び熱可塑性エラストマー(TPE)、特にエーテル-エステルブロックコポリマー熱可塑性エラストマー(TPC-ET)である。
【0006】
典型的なCVジョイントグリースは、ナフテン系(飽和環)及びパラフィン系(直線及び分岐飽和鎖)の鉱油の混合物である基油を有する。合成油も添加されてもよい。上記基油は、CR製及びTPC-ET製の両方のシーリングブーツの劣化(膨潤又は収縮)に大きな影響を与えることが知られている。鉱物及び合成基油は、シーリングブーツ材料から可塑剤及び他の油溶性保護剤を抽出する。パラフィン系鉱油及びポリ-α-オレフィン(PAO)合成基油は、特にシーリングブーツにはごくわずかしか拡散しないが、一方、ナフテン系鉱油及び合成エステルは、ゴムやTPC-ETのようなシーリングブーツ材料内に拡散し、可塑剤として機能し、膨潤を引き起こし得る。可塑剤又は可塑剤組成物をナフテン系鉱油に代えると、特に低温においてシーリングブーツ性能が大幅に低下し、低温割れによりシーリングブーツの故障を引き起こし、最終的にCVジョイントの故障を生じさせ得る。大幅な膨潤や軟化が起きると、高速時の低安定性、及び/又は径方向の過剰な拡大のために、シーリングブーツの最高速度能力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/02629号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の課題を解決するために、国際公開第99/02629号は、鉱油又は合成油又はこれらの混合物を含む基油、増粘剤、重量で構成要素の総重量の0.5から5%の間のジチオリン酸モリブデン(MoDTP)、及び重量で構成要素の総重量の0.5から5%の間の粉末酸化銅(I)を含む特別なグリースを提案する。加えて、グリースは、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTC)、金属を含まない硫黄含有極圧剤、有機アミン、及び必要であれば、腐食防止剤、抗酸化添加剤、粘着性剤、粘度指数改良剤等の通常の添加剤の少なくともいくつかを含んでいてもよい。グリースは、原材料において経済的であり、低摩耗及び低摩擦特性を有する。しかし、国際公開第99/02629号によれば、活性化されたリンにより引き起こされるシーリングブーツ材料の早期劣化を低減することにより、良好な摩耗及び摩擦性能が維持されなければならない。国際公開第99/02629号において達成された、低摩耗及び低摩擦特性を有する基油の性能の改良が、大きな成果であったことを認めなければならない。それでも、国際公開第99/02629号のグリース組成物に開示された錯体リン含有添加剤がシーリングブーツ材料と反応して、早期劣化を引き起こし、シーリングブーツの早期故障と完全なCVジョイントのさらなる損傷とを生じさせる可能性があるという事実のために、さらなる向上が必要である。
【0009】
国際公開第99/02629号のように、市販のCVジョイント潤滑剤の大半は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)等の有機リン含有添加剤を含み、これがCVジョイントの金属表面におけるトライボケミカル反応に基づき良好な耐摩耗性能を提供する。特にリン含有添加剤を用いることによる不利な点は、これらがシーリング材料、特にシーリングブーツとの間で良好な適合性を全く示さないことである。さらに、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、耐摩耗及びEP性能、特にCVジョイントの初期動作時間(慣らし運転)における改良された耐摩擦特性を提供する。しかしながら、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)は、シーリングブーツ材料の膨潤及び軟化を引き起こし、完全なシーリングブーツの早期劣化を引き起こし得ることも知られている。これらの効果は、シーリングブーツ材料と相互作用し、シーリングブーツ材料の早期劣化を引き起こすリンに基づく。加えて、上記の有機金属塩に含まれるリンは化学的により活性化されるので、シーリングブーツ材料にさらにより速い影響を与える。したがって、大量の場合、グリースは、CVジョイントで用いられるシーリングブーツの早期故障を生じさせ得る。
【0010】
負の特性を考慮した場合、CVジョイント全体のより長い寿命を達成するために、全般的な潤滑特性を維持しながら、グリース組成物とシーリングブーツ材料との適合性を高めるために、リン含有添加剤を完全になくすことは確かに有益である。
【0011】
本発明の目的は、ゴム又は熱可塑性エラストマーで作られたシーリングブーツと良好な適合性を有し、良好な低摩耗と低摩擦係数とを維持することにより、CVジョイント全体の高い耐久性も与える、主にCVジョイントで用いるためのグリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)少なくとも1種の硫化銅と、
d)二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体と、
を含み、好ましくは少なくとも1種のTPEで作られ、より好ましくは少なくとも1種のTPC-EPで作られたブーツを有するCVジョイントで用いるためのグリース組成物によって解決される。
【0013】
グリース組成物に加えて、発明は、等速ジョイントにおける発明によるグリース組成物の使用に関する。さらに、発明は、発明によるグリース組成物を含む等速ジョイントに関する。
【発明の効果】
【0014】
CVジョイントで用いるための本組成物の利点は、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との組み合わせ配合が相乗効果を示すことである。硫化銅は、改良されたトライボロジーが銅により提供される一方で、硫黄により提供される良好なEP性能と、耐摩耗性及び摩擦性能の低減という2つの主な特徴を有する。これにより、硫化銅に含まれる銅は、摩耗及び摩擦係数を低減するだけでなく、高圧下で摩耗した表面を修復し、金属化合物、つまりCVジョイント全体の延ばされた寿命をもたらし得るとも考えられる。さらに、二硫化モリブデンと少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体とは、グリース組成物において摩擦を低減し、耐摩耗性を提供し、EP性能を高くすることが明らかにされている。さらに、ZnDTP、CuDTP、MoDTP等のリン含有添加剤を用いる必要がない。上記の相乗効果は、使用される添加剤が少量のときほど高い潤滑性能であり、シーリング材料とより適合し、CVジョイントの寿命を延ばしながら、摩耗及び摩擦係数を低減することである。発明者らは、硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との組み合わせを特徴とするグリース組成物が、CVジョイント全体のより長い寿命を可能としながら、グリース組成物中のリン添加剤を効果的に置き換えることを発見し、この点は、例えば標準マルチブロックプログラム(SMBP)試験によって明らかにされ得る。特に、CVジョイントの重負荷下での寿命耐久性、潤滑剤の酸化安定性、及びCVジョイントシーリングブーツ材料との適合性が、本発明によるグリース組成物によって改良される。
【0015】
金属硫化物は、機械的せん断や熱の間に、ZnDTPやCuDTP等の有機金属塩の場合より安定した結合を特徴とする。有機金属塩が重負荷下で無機塩と有機ラジカルとに分解することはよく知られている。これに対して、硫化銅及び硫化モリブデンは、重負荷下で分子内で重要な化学的活性がない、安定した無リン化合物である。有利なことに、潤滑特性を維持しながら、2つの硫化物とシーリングブーツ材料との反応は最小化される。
【0016】
発明されたグリース組成物は、添加剤についてより少ない材料しか必要としないことも有利である。二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体がある種の相乗効果として硫化銅のトライボケミカル特性を向上するという事実のために、これらの添加剤の必要量はさらに削減される。既に述べた添加剤の量の削減は、発明されたグリース組成物の製造におけるコスト削減ももたらす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1a及び図1bは、表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、グリース組成物A9と比較して、組成物A1からA3における二硫化モリブデンの追加効果のために示す。
図2図2a及び図2bは、表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、グリース組成物A9と比較して、A4からA6におけるジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)の追加効果のために示す。
図3図3a及び図3bは、表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、市販グリースB1及び銅を含まないグリース組成物A8と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10の硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)の追加効果のために示す。
図4図4a及び図4bは、表3に示された実験結果を、市販のグリースB1と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10のシーリングブーツ材料の適合性試験及びCVジョイントの寿命耐久性のために示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
重量パーセント、又は重量による%という用語がクレームされたグリース組成物を構成する成分に関して用いられる限り、重量パーセントという用語は、そうでないことが明記されている場合を除き、本明細書の全体において、グリース組成物の総量に対する1つ以上の成分の量のことをいう。「重量%」という表現は、そうでないことが示されていない場合、本発明の全体において、重量パーセントの略語として用いられる。
【0019】
発明の文脈において、数値又は範囲に関する「およそ」及び「約」という表現は、当業者が当人の一般的知識に基づき、及び発明の全体としての観点から一般的又は合理的であると考えるであろう許容範囲として理解されるべきである。特に「およそ」及び「約」という表現は、指定された値に対して、±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%の許容範囲のことを言う。本発明でクレームされた、各種の範囲、特に重量パーセント範囲(これに限定されないが)の下限値及び上限値は、新しい範囲を定義するために互いに組み合わされてもよい。
【0020】
さらに、本発明の文脈において、特性、数値、又は範囲に関する、標準、規範、又は標準化プロトコル(例えばISOやASTM等)へのすべての言及は、発明の出願日に有効な上記標準、規範、又は標準化プロトコルの直近に更新されたバージョンへの言及として理解されるべきである。
【0021】
好ましくは、本発明によるグリース組成物で用いられる基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。本発明による基油として、米国特許第5,670,461号に開示された基油が好ましくは用いられてもよく、その開示は参照によりここに組み込まれる。ただし、任意のさらなる種類の基油、特に鉱油の混合物、合成油の混合物、又は鉱油と合成油との混合物が用いられてもよい。基油は、好ましくは、40℃で約32と約250mm/秒との間、100℃で約5と約25mm/秒との間の動粘度を有していなければならない。鉱油は、好ましくは、少なくとも1種のナフテン系油、及び/又は少なくとも1種のパラフィン系油を含む群から選択される。本発明で使用可能な合成油は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィン(PAO)、及び/又は少なくとも1種のナフテン系油を含む群から選択される。有機合成エステルは、好ましくは、脂肪族アルコールに基づくサブグループを有するジカルボン酸の誘導体である。好ましくは、脂肪族アルコールは、2から20個の炭素原子を有する第1級の直線状又は分岐状の炭素鎖を有する。好ましくは、有機合成エステルは、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「セバシン酸ジオクチル」(DOS))、アジピン酸ビス-(2-エチルヘキシルエステル)(「アジピン酸ジオクチル」(DOA))、フタル酸ジオクチル(DOP)、及び/又はアゼライン酸ビス(2-エチルヘキシルエステル)(「アゼライン酸ジオクチル(DOZ)」)を含む群から選択される。基油中にポリ-α-オレフィンが存在する場合、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得る。好ましくは、ASTM D445で定義されるように、40℃で約2から約60センチストークスの範囲内の動粘度を有するポリ-α-オレフィンが選択される。基油のために選択されるナフテン系油は、40℃で好ましくは約3から約370mm/秒、より好ましくは約20から約150mm/秒の範囲内の動粘度を有する。パラフィン系油が基油中に存在する場合、パラフィン系油は、好ましくは40℃で約9から約170mm/秒の範囲内の動粘度を有する。
【0022】
少なくとも1種の基油は、本発明によるグリース組成物中に、好ましくは約60重量%から約95重量%までの量で、より好ましくは約63重量%から約93重量%までの量で、より好ましくは約75重量%から約92.5重量%までの量で、より好ましくは約78重量%から約92重量%までの量で、さらにより好ましくは約79重量%から約92重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0023】
少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約20重量%から約40重量%までの量で、より好ましくは約25重量%から約35重量%までの量で、さらにより好ましくは約27重量%から約32重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。さらに、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約60重量%から約80重量%までの量で、より好ましくは約65重量%から約75重量%までの量で、さらにより好ましくは約67重量%から約72重量%までの量で含んでいてもよく、各場合において基油の総量に対するものである。
【0024】
本発明で用いられる基油という用語は、基油が、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む基油組成物でもよいという意味に理解される。好ましくは、基油組成物は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィン及び少なくとも1種のナフテン系油を含み、ポリ-α-オレフィンの量は、約10重量%から約60重量%まで、好ましくは約20重量%から約50重量%まで、さらにより好ましくは約27重量%から約32重量%までであり、ナフテン系油の量は、約40重量%から約90重量%まで、好ましくは約50重量%から約80重量%まで、さらにより好ましくは約67重量%から約72重量%までであり、各場合においてポリ-α-オレフィン及びナフテン系油の重量%は、基油の総量に対するものである。
【0025】
本発明によれば、少なくとも1種の増粘剤は、好ましくはリチウム石鹸増粘剤及び/又は尿素増粘剤であり、この中でリチウム石鹸増粘剤の使用が最も好ましい。リチウム石鹸増粘剤は、少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物である。好ましくは、増粘剤は、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、及び硬化ヒマシ油から、又は他の同様の脂肪酸、又はこれらの混合物、又はそのような酸のメチルエステルから作られた単純リチウム石鹸でもよい。これに代えて、又は加えて、例えば長鎖脂肪酸と錯化剤との混合物、例えば1つ以上のジカルボン酸のホウ酸塩から作られたリチウム錯体石鹸が用いられてもよい。錯体リチウム石鹸を用いると、本発明によるグリース組成物はおよそ180℃の温度まで機能するが、単純リチウム石鹸では、グリース組成物はおよそ120℃の温度までしか機能しない。尿素増粘剤は、ジウレア化合物及びポリウレア化合物の中から選択されてもよい。例えば、ジウレア化合物は、モノアミンと、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、及びヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、そのようなモノアミンの例は、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、及びシクロヘキシルアミンであり、ポリウレア化合物は、ジアミンと、上記のジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との反応によって得られる群から選択され、ジアミンには、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、及びキシレンジアミンが含まれ、及び/又は尿素増粘剤は、p-トルイジン又はアニリン等のアリルアミン、シクロヘキシルアミン、又はこれらの混合物とジイソシアネートとの反応によって得られる群から選択される。ジウレア化合物のアリル基は、存在する場合、好ましくは6又は7個の炭素原子を含む。ただし、リチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤等の上記の増粘剤のすべての混合物が用いられてもよい。少なくとも1種の増粘剤は、好ましくは約2重量%から約20重量%までの量で、より好ましくは約4.0重量%から約17.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0026】
少なくとも1種の硫化銅は、固体状態で存在する。硫化銅(II)(一硫化銅、CuS)が、硫化銅(I)(二硫化銅、CuS)よりも好ましくは用いられる。自然の中では、一硫化銅は鉱物の銅藍として発生する。二硫化銅は、単斜晶系の結晶化鉱物である輝銅鉱(銅光沢としても知られる)、及び正方晶系の結晶化鉱物である銅鉱として自然に発生する。好ましくは工業的に製造された硫化銅粉末が用いられるが、結晶構造はさらに区別されない。グリース組成物では、硫化銅粉末が、結晶、分散、或いは水又はエタノール溶液より好ましくは用いられる。グリース組成物では、硫化銅(II)は、好ましくは、ISO13320に関するCLIAS 1064 Nassによって測定された19.9μmの粒子サイズD90の粉末として用いられる。さらに、20℃における密度は4.6g/cmまでである。使用される硫化銅(I)は、好ましくは、ISO13320に関するCLIAS 1064 Nassによって測定された53.6μmの粒子サイズD90に粉末化される。さらに、20℃における密度は5.5g/cmまでである。少なくとも1種の硫化銅は、約0.01重量%から約1.5重量%までの量で、より好ましくは約0.1重量%から約1.0重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0027】
本発明のグリース組成物は、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体を含む。二硫化モリブデン(硫化モリブデン(IV)、MoS)が、硫化モリブデン(VI)(MoS)及び/又は硫化モリブデン(V)(Mo)よりも好ましくは用いられる。グリース組成物では、二硫化モリブデン超微細粉末が、結晶、分散、或いは水又はエタノールの溶液よりも好ましく用いられる。使用が好ましい二硫化モリブデン超微細粉末は、97重量%の純度、より好ましくは0.40から0.50μmまでのフィッシャー数、さらにより好ましくはISO13320標準のレーザー回折装置Microtrac X100による7.0μmの粒子サイズ分布D90、及び0.4g/cmのかさ密度を有する。酸化の二硫化モリブデンを保護するために、好ましくは抗酸化剤が用いられてもよい。本発明によれば、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。MoDTCは、好ましくは以下の一般式(I)、
【化1】
であり、X又はYはS又はOを表し、R9からR12のそれぞれは同じでも異なっていてもよく、それぞれは、3と20個との間の炭素原子を有する第1級(直鎖)又は第2級(側鎖)アルキル基である。少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、固体のMoDTCとして存在する。
【0028】
好ましくは、本発明によるグリース組成物中には、無リンモリブデン錯体が存在してもよく、その中では、硫黄を含む無リンモリブデン錯体が好ましい。本発明によるグリース組成物は、好ましくは固体状態の1種以上のMoDTCを含むが、固体状態の少なくとも1種のMoDTC、及び液体状態の少なくとも1種のMoDTCも含んでいてもよい。発明の好ましい一実施形態では、組成物は、リン含有モリブデン化合物を含まない。二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、約0.1重量%から約5.0重量%までの量で、より好ましくは約1.0重量%から約3.0重量%までの量で存在し、各場合において本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)存在する。少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.5重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0029】
本発明のグリース組成物に、抗酸化剤、防錆剤、他の極圧(EP)調整剤、耐摩耗剤、及び油改良剤等の各種の公知の添加剤を含めることができる。好ましくは、グリース組成物には、以下に述べるグリース添加剤が含まれる。本発明されたグリース組成物は、好ましくは、すべての添加剤も無リン添加剤であるという意味で無リン配合である。
【0030】
本発明のより好ましい一実施形態では、少なくとも1種の硫黄含有EP調整剤(以下の説明では有機硫黄添加剤と呼ばれる)は、少なくとも10重量%の硫黄を含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。ZnDTP及びMoDTPは、本発明の意味において、有機硫黄添加剤という用語に含まれるとは考えない。より好ましい一実施形態では、有機硫黄添加剤は、少なくとも1種の硫化オレフィン、チアジアゾールアルキル、又はこれらの組み合わせを含む群から選択される。硫化オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテンのオレフィンモノマーを含んでいてもよい。アルキルチアジアゾールは、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、及び/又は1,3,4-チアジアゾールのチアジアゾールモノマーを含んでいてもよい。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、好ましくは約0.2重量%から約1,0重量%までの量で、より好ましくは約0.3重量%から約0.7重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0031】
本発明のより好ましい一実施形態では、グリース組成物中に、少なくとも1種の抗酸化剤が存在する。抗酸化剤として、本発明のグリース組成物は、アミン、好ましくは芳香族アミン、より好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物を含んでいてもよい。抗酸化剤は、酸化に伴うグリース組成物の劣化を防ぐために用いられる。基油及び/又は二硫化モリブデンの酸化劣化を抑制し、グリース組成物の寿命を延ばして、CVジョイントの寿命を延ばすために、本発明によるグリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%から約2重量%の範囲内で含んでいてもよく、重量%はグリース組成物に対する総量に対するものである。少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくは約0.1重量%から約2.0重量%までの量で、より好ましくは約0.2重量%から約1.5重量%までの量で存在し、各場合において重量%は本発明によるグリース組成物の総量に対するものである。
【0032】
さらに、本発明は、本発明によるグリース組成物のCVジョイントにおける使用について言及し、さらに、クレームされたグリース組成物を含むCVジョイントについて言及する。CVジョイントは、特に、本発明によるグリース組成物で満たされたシーリングブーツを含み、少なくとも一部に、ジョイントに割り当てられた第1取付領域と、シャフトに割り当てられた第2取付領域とを有するシーリングブーツを含む。シーリングブーツは、ジョイント及び/又はシャフトに通常のクランプ装置で固定されてもよい。
【0033】
本発明の特に好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、並びに約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0034】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含むと定義され、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0035】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0036】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約20重量%から約40重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、1-デセンオリゴマー、さらにより好ましくは、デセン三量体、デセン四量体、デセン五量体、又はより多いオリゴマーの定義された混合物を含むポリ-1-デセンである。
【0037】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約60重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0038】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0039】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体(2種類のモリブデン含有添加剤は好ましくは固体状態)、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の硫化銅は好ましくは硫化銅(II)(CuS)を固体状態で含む。
【0040】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は固体状態で含まれる。
【0041】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は、好ましくは固体状態のジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。
【0042】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在する。
【0043】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0044】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0045】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0046】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0047】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0048】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%を少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約20重量%から約40重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得る。
【0049】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約60重量%から約80重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0050】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、好ましくは、リチウム石鹸増粘剤は少なくとも1種の脂肪酸と水酸化リチウムとの反応生成物であり、尿素増粘剤はジウレア及び/又はポリウレアの少なくとも1種の化合物である。
【0051】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体(2種類のモリブデン含有添加剤は好ましくは固体状態)、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の硫化銅は好ましくは硫化銅(II)(CuS)を固体状態で含む。
【0052】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。
【0053】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約6重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は固体状態で含まれる。
【0054】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在する。
【0055】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0056】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択される。
【0057】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0058】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む群から選択され、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%から約60重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%から約90重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択される。
【0059】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の硫化銅は好ましくは固体状態の硫化銅(II)(CuS)を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は固体状態で含まれ、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)である。
【0060】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンを含む群から選択され、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0061】
より好ましい一実施形態では、グリース組成物は、約79重量%から約92重量%の少なくとも1種の基油、約4重量%から約17重量%の少なくとも1種の増粘剤、約0.1重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の硫化銅、約1.0重量%から約3.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体、約0.3重量%から約0.7重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに約0.2重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の抗酸化剤を含み、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、及び/又はナフテン系油、及び/又はパラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含み、少なくとも1種の基油は、好ましくは少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%から約60重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ポリ-α-オレフィンは、好ましくは、1-ドデセンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、1-オクテン、又はこれらの混合物を含む群から選択され、さらにより好ましくは、1-オクテン、ポリ-1-デセンオリゴマー、ポリ-1-ドデセンオリゴマー、又はこれらの混合物を含むコポリマーであり、ポリ-1-デセンオリゴマー及びポリ-1-ドデセンオリゴマーは、二量体、三量体、四量体、五量体、又はより多いものであり得、少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%から約90重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであり、ナフテン系油は好ましくは飽和環状アルカンを含む群から選択され、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、リチウム石鹸増粘剤は、好ましくは少なくとも1種の脂肪酸及び水酸化リチウムの反応生成物であり、尿素増粘剤は、好ましくはジウレア及び/又はポリウレアからなる群から少なくとも選択され、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体とは好ましくは固体状態であり、グリース組成物は好ましくは硫化銅(II)(CuS)を含み、少なくとも1種の無リンモリブデン錯体は好ましくはジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)であり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%、さらにより好ましくは約20重量%から約70重量%までの間の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものであり、有機硫黄添加剤は、好ましくは、少なくとも1種のアルキルチアジアゾール、又はエチレン、プロピレン、ブタン-1、及び/又は4-メチルペンテン等のオレフィンモノマーとの反応生成物で構成された硫化オレフィンからなる群から選択され、少なくとも1種の抗酸化剤は、好ましくはアミン、より好ましくは芳香族アミン、さらにより好ましくはベンズアミン、及び/又は2,4,4-トリメチルペンテン又はその誘導体と反応させたN-フェニル化合物である。
【0062】
本発明のより好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在する。
【0063】
本発明のより好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0064】
本発明のより好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、組成物の総量に対して最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の硫化銅は約0.01重量%から約1.5重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0065】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン化合物は、約0.1重量%から約5.0重量%までの量で含まれることを特徴とし、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0066】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、約0.2重量%から約1.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の有機硫黄添加剤は硫黄を少なくとも20重量%の量で含み、重量%は有機硫黄添加剤の総量に対するものである。
【0067】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の単純又は錯体石鹸増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の抗酸化剤は、約0.1重量%から約2.0重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0068】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、少なくとも1種の増粘剤はリチウム石鹸増粘剤及び尿素増粘剤を含む群から選択され、少なくとも1種の増粘剤は約4重量%から約20重量%までの量で含まれ、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0069】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含む。
【0070】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、約1:1から約15:1の範囲内、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものであり、少なくとも1種の基油は少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%から約60重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものであるか、及び/又は、少なくとも1種の基油は少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%から約90重量%までの量で含み、重量%は基油の総量に対するものである。
【0071】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、好ましくは約3:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0072】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも1種の単純又は錯体石鹸増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、好ましくは約1:1から約10:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0073】
より好ましい一実施形態では、CVジョイントで用いるためのグリース組成物は、少なくとも1種の基油、少なくとも増粘剤、少なくとも1種の硫化銅、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リンモリブデン錯体、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、並びに少なくとも1種の抗酸化剤を含み、二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体は、少なくとも1種の硫化銅の総量(重量%で)に対して、互いを組み合わせた場合も、好ましくは約3:1から約15:1の範囲内の量(重量%で)で存在し、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量は、最大で約6.5重量%、より好ましくは約0.1重量%から約6.0重量%までであり、各場合において重量%はグリース組成物の総量に対するものである。
【0074】
グリース組成物の上記の好ましい実施形態は、限定的でない好ましい例であり、上記範囲及び添加剤の異なる組み合わせも可能である。
【0075】
本発明による以下の限定的でない例と、各種のグリース組成物の比較例とを参照して、本発明は以下により詳細に説明される。
【0076】
発明によるグリース組成物による摩擦係数及び摩耗を低減する効果を測定するために、振動摩擦摩耗SRV試験が、Optimol Instruments製SRV試験機を用いて実施される。Optimol Instruments Pruftechnik GmbH(Westendstrasse 125, Munich)製の100Cr6標準ベアリング鋼で作られた平板円盤状下側試験片をある溶剤を用いて適切に洗浄したものを用意し、試験対象のグリース組成物と接触させる。SRV試験は、業界標準試験であり、特にCVジョイントのグリースの試験に関連する。試験は、100Cr6ベアリング鋼で作られた直径10mmの上側球状試験片を上記の平板円盤状下側試験片上で荷重をかけて往復運動させることからなる。トリポッドジョイントを模倣する試験では、40Hzの周波数及び500Nの荷重負荷を80℃で60分間(慣らし運転を含む)印加した。ストロークは1.5mmであった。得られた摩擦係数をコンピュータに記録した。各グリース組成物について、報告値は、2回の運転における試験終了時の2つのデータの平均である。摩擦係数の慣らし運転測定のために、上記の条件下で50Nの荷重負荷を1分間かけて、試験を開始する。その後、荷重負荷は、30秒間に50Nずつ増加して500Nになる。摩耗は、プロフィロメータ及びデジタルプレニメータを用いて測定される。プロフィロメータを用いることにより、摩耗面の中央の断面プロファイルを取得できる。この断面の面積(S)は、デジタルプレニメータを用いて測定できる。摩耗の量はV=Slで評価され、Vは摩耗量であり、lはストロークである。摩耗率(Wr)は、Wr=V/L[μm/m]から得られ、Lは試験における全すべり距離である。
【0077】
標準マルチブロックプログラムSMBP試験は、CVジョイントの寿命耐久特性を比較及び評価するために用いられる。CVジョイントは、上昇率が250Nm/秒のトルク、率が100mm/秒の振動偏向、及び上昇率が少なくとも40rmp/秒の回転速度にさらされ、最大値は少なくとも1000Nm及び2000rpmである。プログラム中は、実際のトルク、速度、及び振動偏向(角度)の永久的な記録が試験リグによって提供される。CVジョイントが重大な障害の最初の兆候を得るまで、プログラムは定義された負荷サイクルを実行する。1サイクルは、51.3分及び39973回転と定義される。寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクルによって評価される。故障は、不釣り合いな温度上昇、又は摩耗を示すノイズの発生と定義される。CVジョイントの寿命耐久性は、CVジョイントの故障までに完了したサイクル数によって評価される。より良い統計力のために、同じグリース組成物を含む4つまでのCVジョイントが同時に試験される。4つのCVジョイントのうち4つが故障すると、試験は終了し、全体のサイクルがカウントされる。比較として、市販グリースを用いる。
【0078】
さらに、本発明によるグリース組成物、及び1つの市販グリース、すなわち市販グリース組成物B1(表1参照)と共に実施された、熱可塑性エラストマーシーリングブーツ、すなわちPibiflex B5050 MWRの適合特性に関する試験を、125℃で336時間グリースに浸漬されたシーリングブーツ材料の熱劣化前後の硬度の変化(ショアD)、及び引張、伸張、体積のパーセント変化について実施した。上記の値は、ISO868(ショアD)、ISO37(引張変化及び伸張変化)、及びISO2781(体積変化)に従い測定される。
【0079】
グリース組成物A1からA10のために用いられる基油は、83重量%から84重量%までの量のポリ-α-オレフィン、及び16重量%から17重量%までの量のナフテン系油からなり、各場合において重量%は基油の総量に対するものである。
【0080】
表1のグリース組成物には、以下に示される以下の化合物を用いた。市販グリースB1は、基油、少なくとも1種の抗酸化剤、少なくとも1種の有機硫黄添加剤、及び重量で8%のリチウム石鹸増粘剤を含み、により製造される。硫化銅(II)(CuS)として、粒子サイズD90が19.9μmの粉末を用いた。Tribotecc GmbH(Kearntner Str. 7, 1010 Vienna, Austria)からCB 500として入手可能な硫化銅(II)を用いた。粒子サイズD90が53.6μmの硫化銅(I)(CuS)粉末を用いた。Tribotecc GmbH(Kearntner Str. 7, 1010 Vienna, Austria)からCB 300として入手可能な硫化銅(I)を用いた。二硫化モリブデン(MoS)として、純度97重量%、粒度0.40から0.50μmまでの粉末を用いた。無リンモリブデン錯体として、Adekaから商品名Sakuralube 600で入手可能なジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を用いた。有機硫黄添加剤として、Lubrizol France(25 Quai de France, 76173 Rouen Cedex, France)製のAnglamol 99を用いた。抗酸化剤として、BASF SE(67056 Ludwigshafen, Germany)製のIrganox L57を用いた。リチウム石鹸増粘剤として、12-ヒドロキシステアリン酸と水酸化リチウム(LiOH)との反応により得られたステアリン酸リチウムを用いた。
【0081】
市販グリースはB1と表記され、二硫化モリブデンを含む、発明されたグリース組成物はA1からA7、A9及びA10と表記され、A8と表記されるグリース組成物は比較例である。
【表1】
【0082】
表2と図1a、図1b、図2a、図2b、及び図3とに、摩擦、摩耗、ブーツ適合性、及び寿命耐久性(SMBP試験)の実験値を示す。図面は、以下を示す。
図1a及び図1b:表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、グリース組成物A9と比較して、組成物A1からA3における二硫化モリブデンの追加効果のために示す。
図2a及び図2b:表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、グリース組成物A9と比較して、A4からA6におけるジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)の追加効果のために示す。
図3a及び図3b:表2にそれぞれ示された摩擦及び摩耗の実験結果を、市販グリースB1及び銅を含まないグリース組成物A8と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10の硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)の追加効果のために示す。
図4a及び図4b:表3に示された実験結果を、市販のグリースB1と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10のシーリングブーツ材料の適合性試験及びCVジョイントの寿命耐久性のために示す。
【0083】
グリース組成物A及び市販グリースB1と比較して、発明されたグリース組成物A1からA7、A9及びA10の摩擦係数及び摩耗量に関する実験結果を表2に示す。
【表2】
【0084】
表2と図1a及び図1bとは、グリース組成物A1からA3と比較して、発明された組成物A9の実験結果を示す。A1は、1.5重量%のジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、0.5重量%の硫化銅(II)(CuS)、及び二硫化モリブデンを含まない、0.5重量%の有機硫黄添加剤を含む。A2において0.2重量%の二硫化モリブデンを添加することにより、摩擦係数のおよそ0.05への減少が観測されるが、摩耗量はおよそ1000μm/mのままである。A3、及び発明されたグリース組成物A9の量において、二硫化モリブデンを段階的に増加させることにより、摩擦係数を0.05に保ちながら、同時に摩耗量をおよそ400μm/mに改良する。
【0085】
表2と図2a及び図2bとは、グリース組成物A4からA6と比較して、発明された組成物A9の実験結果を示す。A4は、1.0重量%の二硫化モリブデン、0.5重量%の硫化銅(II)(CuS)、及び0.5重量%の、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を含まない有機硫黄添加剤を含む。A4は、およそ0.12の高い摩擦係数と、およそ11000μm/mの高い摩耗量を示す。A5におけるようにグリース組成物に1.0重量%のジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を添加すると、摩擦係数はおよそ0.6に大幅に減少し、摩耗量はおよそ440μm/mに減少する。A6及びA9においてジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)を段階的に増やすと、摩擦係数及び摩耗量の両方がさらに減少する。
【0086】
結論として、図1a、図1b、図2a、及び図2bに示される実験データは、グリース配合における二硫化モリブデン及びジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)と硫化銅(II)(CuS)とを用いた相乗効果を明らかにしている。トライボロジー性能は、3つの成分のすべて、すなわち、二硫化モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)、及び硫化銅(II)(CuS)を組み合わせただけで、大幅に改良される。
【0087】
表2と図3a及び図3bとは、市販グリースB1及び銅を含まないグリース配合A8と比較して、発明されたグリース組成物A9及びA10中の硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)添加剤により影響されるグリースのトライボロジー性能を示す。発明されたグリースA9及びA10は、市販グリースB1と比較して、改良された摩擦係数及び摩耗量を示す。
【0088】
市販グリースB1と比較して、CVジョイントを伴う発明されたグリース組成物の耐久性、及び発明されたグリース組成物のシーリングブーツ材料との適合性に関する実験結果を表3に示す。
【表3】
【0089】
表3及び図4aは、銅を含まないグリース組成物A8及び市販グリースB1と比較して、CVジョイントの平均寿命のためのSMBP試験において、発明されたグリース組成物A9及びA10と共に試験されたCVジョイントの実験結果を示す。発明されたグリース組成物A9及びA10の両方は、寿命耐久性のかなりの改良を示す。硫化銅(II)(CuS)及び硫化銅(I)(CuS)の良い影響を、銅を含まないグリース組成物A8と比較して示す。
【0090】
表3及び図4bは、発明されたグリース組成物A9及び市販グリースB1と、CVジョイントのシーリングブーツ材料(Pibiflex B 5050 MWR)との適合性試験の実験結果を示す。発明されたグリース組成物A9は、引張強度の少しの改良、及び伸張及び体積特性の改良を示す。
【0091】
発明によるグリース組成物の例は、少なくとも1種の硫化銅と二硫化モリブデンとの組み合わせは、グリース組成物の一般的な潤滑特性を保持するが、これに加えて、シーリングブーツ材料との適合性、及びCVジョイントの寿命耐久性を増加させることを明確に示している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の基油と、
b)少なくとも1種の増粘剤と、
c)約0.01重量%と約1.5重量%との間の量の少なくとも1種の硫化銅(重量%は上記グリース組成物の総量に対するものである)と、
d)約0.1重量%と約5.0重量%との間の量の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体(重量%は上記グリース組成物の総量に対するものである)と、
を含む、等速ジョイントで用いるためのグリース組成物。
【請求項2】
上記少なくとも1種の硫化銅は、硫化銅(II)(CuS)であることを特徴とする請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
上記二硫化モリブデン及び/又は上記少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体の重量%量の、少なくとも1種の硫化銅の量に対する比率が、約1:1から約15:1の範囲内にあることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の硫化銅と上記二硫化モリブデン及び/又は上記少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体との総量が最大で約6.5重量%であり、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の有機硫黄添加剤が、約0.2重量%と約1.0重量%との間の量で含まれており、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項6】
上記少なくとも1種の有機硫黄添加剤は、硫黄を少なくとも20重量%の量で含み、重量%は上記有機硫黄添加剤の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項7】
上記少なくとも1種の増粘剤は、少なくとも1種の尿素増粘剤、少なくとも1種のリチウム石鹸、及び/又は少なくとも1種のリチウム錯体石鹸からなる群から選択されることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項8】
上記グリース組成物は、少なくとも1種の抗酸化剤を約0.1重量%と約2.0重量%との間の量でさらに含み、重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項9】
上記少なくとも1種の基油は、ポリ-α-オレフィン、ナフテン系油、パラフィン系油、及び/又は合成有機エステルを含むことを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項10】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のポリ-α-オレフィンを約10重量%と約60重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項11】
上記少なくとも1種の基油は、少なくとも1種のナフテン系油を約40重量%と約90重量%との間の量で含み、重量%は上記基油の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項12】
約60重量%から約95重量%の少なくとも1種の基油と、約2重量%から約20重量%の少なくとも1種の増粘剤と、約0.01重量%から約1.5重量%の少なくとも1種の硫化銅と、約0.1重量%から約5.0重量%の二硫化モリブデン及び/又は少なくとも1種の無リン有機モリブデン錯体と、約0.2重量%から約1.0重量%の少なくとも1種の有機硫黄添加剤と、約0.1重量%から約2.0重量%の少なくとも1種の抗酸化剤とを含み、各場合において重量%は上記グリース組成物の総量に対するものであることを特徴とする上記請求項のうち1以上に記載のグリース組成物。
【請求項13】
等速ジョイント、特にボールジョイント及び/又はトリポッドジョイントにおける上記請求項1から1のいずれかに記載のグリース組成物の使用。
【請求項14】
請求項1から1のいずれかに記載のグリース組成物を含む等速ジョイント。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【国際調査報告】