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特表2022-548674PTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】PTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/28 20200101AFI20221114BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20221114BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20221114BHJP
   G06F 113/26 20200101ALN20221114BHJP
   G06F 113/08 20200101ALN20221114BHJP
   G06F 113/06 20200101ALN20221114BHJP
【FI】
G06F30/28
F03D1/06 A
G06F30/10 100
G06F113:26
G06F113:08
G06F113:06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517312
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2020136606
(87)【国際公開番号】W WO2022011961
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】202011226779.0
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520414480
【氏名又は名称】中国長江三峡集団有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522044283
【氏名又は名称】中国三峡新能源(集団)股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522044294
【氏名又は名称】南京浩暉高科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】劉 建平
(72)【発明者】
【氏名】向 欣
(72)【発明者】
【氏名】呉 建華
(72)【発明者】
【氏名】孫 志禹
(72)【発明者】
【氏名】朱 亜偉
(72)【発明者】
【氏名】李 文偉
(72)【発明者】
【氏名】李 亜静
(72)【発明者】
【氏名】呉 弘
(72)【発明者】
【氏名】趙 景▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】呉 建平
(72)【発明者】
【氏名】閔 宏偉
【テーマコード(参考)】
3H178
5B146
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178BB90
3H178CC02
3H178DD70X
5B146AA10
5B146AA21
5B146DJ03
5B146DJ11
(57)【要約】
本発明は、PTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法を開示し、高分子複合材料の技術分野に関し、風力発電ユニットと、ブレード翼型と、PTFEベースナノ機能複合膜とを選択し、風力エネルギー捕捉領域の数値シミュレーション計算グリッド及び計算領域を設定し、主な計算パラメータ及び空力特性計算のレイノルズ数を決定し、翼型境界が法線方向に0.26mm(膜厚)延伸する幾何学的モデルを確立して、新たな計算幾何学を取得し、流体力学的計算方法及び有限体積法を採用して計算を行い、影響数値シミュレーション計算結果を取得する。空気動力学及び構造動力学を基にして、PTFEベースナノ機能複合膜のブレード翼型の空力特性及びブレード全体の空力性能に対して影響数値シミュレーション計算を行い、新材料、新技術の風力発電での応用に科学的根拠を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体力学的計算方法を採用し、PTFEベースナノ機能複合膜が大型水平軸風力タービンのブレードの表面に貼り付けて被覆した後にブレード翼型の空力特性及び全体的な空力性能への影響数値に対してシミュレーション計算を行うPTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法であって、
(1)二種類のブレード翼型を選択し、
(2)ブレードの風力エネルギー捕捉領域がブレードの中間部及び先端部領域に位置することを決定し、二種類の翼型がそれぞれ伸展位置と弦長分布方向に応じて弦長位置、アタック角範囲を選択すると同時に、翼型空力特性で計算されたレイノルズ数を選択し、
(3)PTFEベースナノ機能複合膜を選択し、膜の最大厚さが0.26mmであり、膜の表面粗さが0.18μmであり、
(4)有限体積法を採用して二次元非圧縮Navier-Stokes方程式を解き、計算状態が定常状態であり、乱流シミュレーションがSSTk-ωモデルを採用し、翼型の計算グリッドがC型構造グリッドを採用し、ブレードの表面の最上層のグリッドの高さがy≒1(最上層が即ち最下層であり、yが厚さであり、1が精度である)を満たし、
(5)幾何学的モデリングし、翼型境界を法線方向に沿って膜の厚さと同じ距離だけ延伸し、新たな計算幾何学を得て、
(6)影響数値に対してシミュレーション計算を行い、モーメントの作用点が翼型の1/4弦長位置を選択することにより、翼型のノーズアップモーメントを正にし、ノーズダウンモーメントを負にし、
翼型揚力係数は、
【数1】
であり、
抗力係数は、
【数2】
であり、
ピッチモーメント係数は、
【数3】
であり、
(7)二種類の風力発電ユニットブレードの翼型がPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化に対して比較分析を行い、影響数値シミュレーション計算結論を得ることを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
(1)中国南方航空NH1500型風力発電ユニット、米国NRE5000型海上風力発電ユニット、金風科技GW103-2500型風力発電ユニット及び国電聨合動力UP2000-96型風力発電ユニットの四種類の異なる容量及びモデルの風力発電ユニットを選択し、四種類の風力発電ユニットのブレード設計データを総合し、最終的にDU91-W2-250及びNACA64-418の二種類のベースブレード翼型を選択し、
(2)ブレードの風力エネルギー捕捉領域がブレードの中間部及び先端部領域に位置することを決定し、二種類の翼型がそれぞれ伸展位置と弦長分布方向に応じて選択され、弦長位置による選択がUP2000-96型風車用ブレードの60%R及び85%R位置を参照し、Rは、ブレードの径方向の各断面翼型の弦長であり、それぞれ1.65m及び1.15mであり、アタック角範囲がいずれも[-4,14]であり、同時に翼型空力特性で計算されたレイノルズ数を選択して3.0×10であり、
(3)PTFEベースナノ機能複合膜を選択し、膜の厚さが0.26mmであり、膜の表面粗さが0.18μmであり、
(4)有限体積法を採用して二次元非圧縮Navier-Stokes方程式を解き、計算状態が定常状態であり、乱流シミュレーションがSSTk-ωモデルを採用し、翼型の計算グリッドがC型構造グリッドを採用し、翼型の周方向に400個のグリッド点を有し、ブレードの表面の最上層グリッドの高さが9.0×10-6mであり、y≒1を満たし、グリッド総数が30万であり、
(5)幾何学的モデリングし、翼型境界を法線方向に沿って0.26mm延伸し、新たな計算幾何学を得て、
(6)影響数値に対してシミュレーション計算を行い、モーメントの作用点が翼型の1/4弦長位置を選択することにより、翼型のノーズアップモーメントを正にし、ノーズダウンモーメントを負にし、
翼型揚力係数は、
【数4】
であり、
抗力係数は、
【数5】
であり、
ピッチモーメント係数は、
【数6】
であり、
(7)二種類の風力発電ユニットブレードの翼型がPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化に対して比較分析を行い、
線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜は、翼型の揚力、抗力及びモーメント係数に基本的に影響がないが、非線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜は、各空力パラメータにわずかな影響を与え、揚力係数及びモーメント係数の低下をもたらし、各空力係数の変化百分率がいずれも1.9%以内であり、影響が小さく、
表面粗さの観点から見ると、PTFEベースナノ機能複合膜が風車用ブレードに貼り付けて被覆した後、翼型の空力特性及びブレード全体の空力性能を改善する作用を果たすことができるという影響数値シミュレーション計算結論を得ることを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のPTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子複合材料の技術分野に関し、特にPTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電は、資源的潜在力が大きく、技術が基本的に成熟したクリーンエネルギーであり、エネルギー構造の最適化、温室効果ガスの減少排出、気候変化の対処の方面に重要な役割を果たしている。2018年末までは、中国の風力発電設備容量は2.1億キロワット時に達し、風力発電は、中国がエネルギー転換を推進する核心内容と気候変化に対処する重要な手段となり、生態優先、環境にやさしい発展を実現する重要な方法であり、中国がエネルギー生産及び消費革新を深く推進し、大気汚染の防止を促進する重要な手段である。国務オフィスの『エネルギー発展戦略行動計画(2014~2020)』の、風力発電について2020年に石炭レベルと同じレベルでタリフするという目標要求の実行に伴い、中国の風力発電のフィードインタリフは、全て競争方式により、風力発電産業の規模化発展を大幅に励起し、公平競争及び適者生存を促進し、さらに風力発電産業の健康持続可能な発展を推進する。しかしながら、風力発電のフィードインタリフは、両刃の剣であり、フィードインタリフレベルの決定により、フィードインタリフの競争が激しくなり、必然的に風力発電企業が風力発電項目のリソース状況、装備技術レベル及び発電コスト等の要因をより注意を払うことを促進し、科学技術革新を通じてのみ、風力エネルギーリソースの効率的な利用を実現することができる。
【0003】
風車用ブレードは、風力発電ユニットの重要な部材であり、風力発電ユニットの風力エネルギー捕捉量、風力発電の安全性及び経済的利益の向上に重要な役割を果たす。風力発電の分野では、ブレード翼型空力性能に関する多くの対応する研究及び実験がある。デンマーク国家実験室R.P.J.O.M.vanRooijらは、3種類の異なる厚さのブレード翼型に対して、内側効果方法を用いてブレード弦長10%での表面ダストの翼型敏感位置への影響を分析すると指摘した。デンマーク国家実験室及びW.A.Timmerらは、異なるレイノルズ数でブレード翼型揚力係数がレイノルズ数の増大に伴って増加する規律結論を得た。清華大学の包能勝らは、ブレードの翼型表面に局所的に粗さを増加させ、かつ風洞実験室により異なる分布位置、異なる数値の大きさの粗さのブレードの空力性能への影響を分析し、翼型の表面粗さの形成原理及び一般的な理論を深く研究し、粗さの配置長さが10%の弦長である場合に係数変化が最も明らかであるという結論を得た。中国蘭州理工大学の李仁年は、数値方法に基づいてDU-95-W2-180ブレード翼型の二次元粗さ表面の空力性能を研究し、ブレード翼型の尾縁付近に粗さを増加させてDU-95-W2-180ブレード翼型の揚力係数を向上させることができるという結論を得た。日本東海学院のNAGAISHI Akiraらは、水平軸風車用ブレードを研究対象とし、空力性能風洞実験を行い、非対称流が円翼型境界の変曲点位置で、「粗さ」と呼ばれる、一部の揚力係数、抗力係数の勾配変化をもたらし、粗さの厚さが増大した後、最大揚力変化量が低アタック角に発生し、レイノルズ数がより高くなるという結論を得た。
【0004】
国内外の文献を分析して分かるように、現在、大型風力発電ユニットブレードの翼型空力性能に関する研究は、成熟しているが、いずれもブレードの表面に従来の一般的なコーティング表面粗さを有することを研究対象及び実験基礎とし、得られた結論は、ブレード翼型の一般的なコーティングでの特徴付け粗さの関連概念及び実験結果であり、得られた粗さが翼型空力性能に与える影響結論も統一されていない。風車用ブレードの表面にPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆した後、ブレード翼型の空力特性及び全体的な空力性能の影響数値への計算分析は、ほとんどない。
【0005】
風車用ブレードの従来の表面コーティング技術及びその材料は、ブレードの翼型特性及び全体的な空力性能を向上させ、風力エネルギー利用係数を向上させ、風力発電の品質を向上させるという緊急度が高いニーズを満たすことができない。科学技術の飛躍的な発展に伴い、材料科学の飛躍的進歩は、必然的に多くの先進的な機能性新材料の出現につながるであろう。風力発電のフィードインタリフ因子の促進により、同様に風力発電業界が風力エネルギー資源の効率的な利用の実現について、科学技術革新により開発されたより多くの新たな材料、新たな技術を使用することを促進する。空気動力学及び構造動力学を基にして、科学的発展に着目し、新たな材料、新たな技術が運用された風車用ブレード翼型の空力特性及び全体的な空力性能への影響数値シミュレーション計算及び科学研究をタイムリーに展開し、新たな材料、新たな技術の風力発電での運用に科学的根拠を提供することは、急務である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の技術的問題を解決するために、本発明は、PTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法を提供し、流体力学的計算方法を採用し、PTFEベースナノ機能複合膜が大型水平軸風力タービンのブレードの表面に貼り付けて被覆した後にブレード翼型の空力特性及び全体的な空力性能への影響数値に対してシミュレーション計算を行い、
(1)二種類のブレード翼型を選択し、
(2)ブレードの風力エネルギー捕捉領域がブレードの中間部及び先端部領域に位置することを決定し、二種類の翼型がそれぞれ伸展位置と弦長分布方向に応じて弦長位置、アタック角範囲を選択すると同時に、翼型空力特性で計算されたレイノルズ数を選択し、
(3)PTFEベースナノ機能複合膜を選択し、膜の最大厚さが0.26mmであり、膜の表面粗さが0.18μmであり、
(4)有限体積法を採用して二次元非圧縮Navier-Stokes方程式を解き、計算状態が定常状態であり、乱流シミュレーションがSSTk-ωモデルを採用し、翼型の計算グリッドがC型構造グリッドを採用し、ブレードの表面の最上層のグリッドの高さがy≒1を満たし、
(5)幾何学的モデリングし、翼型境界を法線方向に沿って膜の厚さと同じ距離だけ延伸し、新たな計算幾何学を得て、
(6)影響数値に対してシミュレーション計算を行い、モーメントの作用点が翼型の1/4弦長位置を選択することにより、翼型のノーズアップモーメントを正にし、ノーズダウンモーメントを負にし、
翼型揚力係数は、
【数1】
であり、
抗力係数は、
【数2】
であり、
ピッチモーメント係数は、
【数3】
であり、
(7)二種類の風力発電ユニットブレードの翼型がPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化に対して比較分析を行い、影響数値シミュレーション計算結論を得ることを含む。
【0007】
技術的効果:本発明は、空気動力学及び構造動力学を基にして、大型風力発電ユニットブレードにPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆した後、PTFEベースナノ機能複合膜のブレード翼型の空力特性及びブレード全体の空力性能に対して影響数値シミュレーション計算を行い、新材料、新技術の風力発電での応用に科学的根拠を提供する。
【0008】
本発明がさらに限定する技術的解決手段は、以下のとおりである。
(1)中国南方航空1.5MW-H1500風力発電ユニット及び2.5MW風力発電ユニット、米国再生可能エネルギー実験室5MW海上風力発電ユニット及び2MW風力発電ユニットという四種類の異なる容量の風力発電ユニットを選択し、四種類の風力発電ユニットブレードの設計データを参照しながら、最終的にオランダDelft大学DU91-W2-250及び航空常用NACA64-418という二種類のベースブレード翼型を選択し、
(2)ブレードの風力エネルギー捕捉領域がブレードの中間部及び先端部領域に位置することを決定し、二種類の翼型がそれぞれ伸展位置と弦長分布方向に応じて選択され、弦長位置による選択がUP2000-96型風車用ブレードの60%R及び85%R位置を参照し、Rは、ブレードの径方向の各断面翼型の弦長であり、それぞれ1.65m及び1.15mであり、アタック角範囲がいずれも[-4,14]であり、同時に翼型空力特性で計算されたレイノルズ数を選択して3.0×10であり、
(3)PTFEベースナノ機能複合膜を選択し、膜の厚さが0.26mmであり、膜の表面粗さが0.18μmであり、
(4)有限体積法を採用して二次元非圧縮Navier-Stokes方程式を解き、計算状態が定常状態であり、乱流シミュレーションがSSTk-ωモデルを採用し、翼型の計算グリッドがC型構造グリッドを採用し、翼型の周方向に400個のグリッド点を有し、ブレードの表面の最上層グリッドの高さが9.0×10-6mであり、y≒1(最上層が即ち最下層であり、yが厚さであり、1が精度である)を満たし、グリッド総数が30万であり、
(5)幾何学的モデリングし、翼型境界を法線方向に沿って0.26mm延伸し、新たな計算幾何学を得て、
(6)影響数値に対してシミュレーション計算を行い、モーメントの作用点が翼型の1/4弦長位置を選択することにより、翼型のノーズアップモーメントを正にし、ノーズダウンモーメントを負にし、
翼型揚力係数は、
【数4】
であり、
抗力係数は、
【数5】
であり、
ピッチモーメント係数は、
【数6】
であり、
(7)二種類の風力発電ユニットブレードの翼型がPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化に対して比較分析を行い、
線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜は、翼型の揚力、抗力及びモーメント係数に基本的に影響がないが、非線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜は、各空力パラメータにわずかな影響を与え、揚力係数及びモーメント係数の低下をもたらし、各空力係数の変化百分率がいずれも1.9%以内であり、影響が小さく、
表面粗さの観点から見ると、PTFEベースナノ機能複合膜が風車用ブレードに貼り付けて被覆した後、翼型の空力特性及びブレード全体の空力性能を改善する作用を果たすことができるという影響数値シミュレーション計算結論を得ることをさらに含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明は、基礎とする二次元翼型に基づいて、典型的なレイノルズ数での二種類の大型水平軸風力発電ユニットのブレードの一般的な翼型にPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後のブレード揚力係数、抗力係数及びモーメント係数に対して数値計算及び比較分析を行い、さらに、PTFEベースナノ機能複合膜を大型水平軸風車用ブレードの表面に貼り付けて被覆した後、ブレード翼型の空力特性及び全体的な空力性能に数値計算に影響を与えるという結論をまとめる。
(2)本発明は、全ての大型水平軸風力発電ユニットのブレード翼型の空力特性及び全体的な空力性能に対して数値シミュレーション計算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a】DU91-W2-250翼型の概略図である。
図1b】NACA64-418翼型の概略図である。
図2】数値シミュレーションの計算領域の概略図である。
図3a】DU91-W2-250翼型の近傍グリッドの詳細図である。
図3b】NACA64418翼型の近傍グリッドの詳細図である。
図4】DU91-W2-250翼型の膜の貼り付け被覆の効果概略図(翼型尾縁の詳細について、斜線が膜を示し、膜厚さが0.26mmである)である。
図5】翼型空力概略図である、
図6】PTFEベースナノ機能複合膜のDU91-W2-250翼型揚力係数への影響概略図である。
図7】PTFEベースナノ機能複合膜のDU91-W2-250翼型抗力係数への影響概略図である。
図8】PTFEベースナノ機能複合膜のDU91-W2-250翼型モーメント係数への影響概略図である。
図9】PTFEベースナノ機能複合膜のNACA64418翼型揚力係数への影響概略図である。
図10】PTFEベースナノ機能複合膜のNACA64418翼型揚力係数への影響概略図である。
図11】PTFEベースナノ機能複合膜のNACA64418翼型揚力係数への影響概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施例が提供するPTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法は、
中国南方航空1.5MW-H1500風力発電ユニット及び2.5MW風力発電ユニット、米国再生可能エネルギー実験室5MW海上風力発電ユニット及び2MW風力発電ユニットという四種類の異なる容量の風力発電ユニットを選択し、四種類の風力発電ユニットブレードの設計データを参照しながら、最終的にオランダDelft大学DU91-W2-250及び航空常用NACA64-418という二種類のベースブレード翼型を選択し、図1に示すとおりであり、
ブレードの風力エネルギー捕捉領域がブレードの中間部及び先端部領域に位置することを決定し、二種類の翼型がそれぞれ伸展位置と弦長分布方向に応じて選択され、弦長位置による選択がUP2000-96型風車用ブレードの60%R及び85%R位置を参照し、Rは、ブレードの径方向の各断面翼型の弦長であり、それぞれ1.65m及び1.15mであり、アタック角範囲がいずれも[-4,14]であり、翼型に関するパラメータが表1に示されると同時に、メガワット級風力タービンの動作状況を考慮し、翼型空力特性で計算されたレイノルズ数を選択して3.0×10であり、
【表1】
PTFEベースナノ機能複合膜を選択し、膜の厚さが0.26mmであり、膜の表面粗さが0.18μmであり、ブレード翼型にPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の外形変化が小さく、図4に示すとおりであり、
有限体積法を採用して二次元非圧縮Navier-Stokes方程式を解き、計算状態が定常状態であり、乱流シミュレーションがSSTk-ωモデルを採用し、翼型の計算グリッドがC型構造グリッドを採用し、翼型の周方向に400個のグリッド点を有し、ブレードの表面の最上層グリッドの高さが9.0×10-6mであり、y≒1(最上層が即ち最下層であり、yが厚さであり、1が精度である)を満たし、グリッド総数が30万であり、数値シミュレーションした計算領域が図2に示すとおりであり、二つの翼型近傍のグリッドの詳細が図3に示すとおりであり、
幾何学的モデリングし、翼型境界を法線方向に沿って0.26mm延伸し、新たな計算幾何学を得て、
翼型空力が図5に示すとおりであり、影響数値に対してシミュレーション計算を行い、モーメントの作用点が翼型の1/4弦長位置を選択することにより、翼型のノーズアップモーメントを正にし、ノーズダウンモーメントを負にし、
翼型揚力係数は、
【数7】
であり、
抗力係数は、
【数8】
であり、
ピッチモーメント係数は、
【数9】
であり、
二種類の風力発電ユニットブレードの翼型がPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化に対して比較分析を行い、影響数値シミュレーション計算結論を得ることを含む。
【0012】
DU91-W2-250翼型にPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化比較が図6~8に示すとおりであり、非線形領域の空力係数の具体的な結果が表2に示すとおりであり、PTFEベースナノ機能複合膜の風力発電ユニットDU91-W2-250翼型の空力パラメータへの影響が小さいことが分かる。
1)PTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の揚力係数、抗力係数及びモーメント係数の曲線は、線形領域、すなわち迎え角範囲[-4°,8°]に実質的に完全に重ね合わせ、非線形領域(すなわち8°以上のアタック角)だけでわずかな差があり、
2)非線形領域において、PTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆した後の翼型の揚力係数は、PTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆していない翼型の曲線に比べてわずかに低下し、揚力係数Cの減少の最大値は、1.611%であり、モーメント係数Cの減少の最大値は、1.514%であり、
3)PTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆した後の翼型の抗力係数及びモーメント係数曲線は、元のきれいな翼型の曲線に比べて微小幅増加がされ、抗力係数の最大増加百分率は、0.45%であり、ノーズダウンピッチモーメント係数は、最大2.9077%減少し、
【表2】
NACA64418翼型にPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空気動力係数の変化比較は、図9~11に示すとおりであり、非線形領域の空力係数の具体的な結果は、表3に示すとおりであり、
1)PTFEベースナノ機能複合膜の風力発電ユニットNACA64418翼型の空力パラメータへの影響は、DU91-W2-250翼型の結果と類似し、線形領域において、PTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の揚力係数、抗力係数の曲線は、実質的に完全に重ね合わせ、
2)非線形領域において、PTFEナノ機能複合膜を貼り付けて被覆した後の翼型の揚力係数、抗力係数及びモーメント係数曲線は、PTFEナノ機能複合膜を貼り付けて被覆していない翼型の曲線に比べていずれもわずかに低下するが、モーメント係数は、PTFEナノ機能複合膜を貼り付けて被覆していないブレードに比べてわずかに上昇し、揚力係数Cは、最大で1.247%低下し、抗力係数Cは、最大で1.712%低下し、ノーズダウンピッチモーメント係数Cの減少の最大百分率は、2.794%であることが分かる。
【表3】
【0013】
以上をまとめると、DU91-W2-250及びNACA64418の二種類の典型的な風力発電ユニットのブレード翼型はPTFEベースナノ機能複合膜前後の空力特性の変化を貼り付けて被覆する:線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜翼型の上昇、抵抗及びモーメント係数に基本的に影響がない;非線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜各空力パラメータにわずかな影響を与え、揚力係数及びモーメント係数の低下をもたらし、各空力係数の変化百分率がいずれも1.9%以内であり、影響が小さい。PTFEベースナノ機能複合膜の表面粗さが0.18mであり、多重ナノスケール及びミクロンスケールサイズの凹凸幾何学的超微細構造形態を有しても、従来のブレード表面コーティング表面の0.70~0.75の表面粗さよりも遥かに低く、表面ミクロは、従来のブレード表面コーティングよりも高い潤滑度を有する。したがって、表面粗さの観点から見れば、PTFEベースナノ機能複合膜を風車用ブレードに貼り付けて被覆した後、翼型の空力特性及びブレード全体の空力性能を改善する作用を果たすことができる。
【0014】
PTFEベースナノ機能複合膜は、高分子膜材料であり、それは、風車用ブレードの表面に貼り付けて被覆され、ブレードの翼型空力特性及び全体的な空力性能を改善し、風力エネルギーの利用効率を向上させ、ブレードを最適な状態で動作させ、かつブレードの表面全体の強度を増加させるという全体的な固定作用を果たし、ブレード全体の耐荷能力及び異物の侵食抵抗能力を向上させ、ブレードの老化、割れなどの安全上の潜在的な危険を除去することができる。本発明は、PTFEベースナノ機能複合膜の風車用ブレードの翼型の空力特性及び空力性能に対して影響数値シミュレーション計算を行い、風力発電業界が新たな技術、新たな材料を運用して風力エネルギー資源の効率的な利用を実現することに科学計算根拠を提供し、新たな技術、新たな材料の普及応用及び風力発電業界の品質や効果の向上を促進することができる。
【0015】
上記実施例のほか、本発明は、さらに他の実施形態を有することができる。同等置換又は等価変換を採用して形成された技術的解決手段は、いずれも本発明の請求項の保護範囲に属する。
【0016】
(付記)
(付記1)
流体力学的計算方法を採用し、PTFEベースナノ機能複合膜が大型水平軸風力タービンのブレードの表面に貼り付けて被覆した後にブレード翼型の空力特性及び全体的な空力性能への影響数値に対してシミュレーション計算を行うPTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法であって、
(1)二種類のブレード翼型を選択し、
(2)ブレードの風力エネルギー捕捉領域がブレードの中間部及び先端部領域に位置することを決定し、二種類の翼型がそれぞれ伸展位置と弦長分布方向に応じて弦長位置、アタック角範囲を選択すると同時に、翼型空力特性で計算されたレイノルズ数を選択し、
(3)PTFEベースナノ機能複合膜を選択し、膜の最大厚さが0.26mmであり、膜の表面粗さが0.18μmであり、
(4)有限体積法を採用して二次元非圧縮Navier-Stokes方程式を解き、計算状態が定常状態であり、乱流シミュレーションがSSTk-ωモデルを採用し、翼型の計算グリッドがC型構造グリッドを採用し、ブレードの表面の最上層のグリッドの高さがy≒1(最上層が即ち最下層であり、yが厚さであり、1が精度である)を満たし、
(5)幾何学的モデリングし、翼型境界を法線方向に沿って膜の厚さと同じ距離だけ延伸し、新たな計算幾何学を得て、
(6)影響数値に対してシミュレーション計算を行い、モーメントの作用点が翼型の1/4弦長位置を選択することにより、翼型のノーズアップモーメントを正にし、ノーズダウンモーメントを負にし、
翼型揚力係数は、
【数10】
であり、
抗力係数は、
【数11】
であり、
ピッチモーメント係数は、
【数12】
であり、
(7)二種類の風力発電ユニットブレードの翼型がPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化に対して比較分析を行い、影響数値シミュレーション計算結論を得ることを含む、
ことを特徴とする方法。
【0017】
(付記2)
(1)中国南方航空NH1500型風力発電ユニット、米国NRE5000型海上風力発電ユニット、金風科技GW103-2500型風力発電ユニット及び国電聨合動力UP2000-96型風力発電ユニットの四種類の異なる容量及びモデルの風力発電ユニットを選択し、四種類の風力発電ユニットのブレード設計データを総合し、最終的にDU91-W2-250及びNACA64-418の二種類のベースブレード翼型を選択し、
(2)ブレードの風力エネルギー捕捉領域がブレードの中間部及び先端部領域に位置することを決定し、二種類の翼型がそれぞれ伸展位置と弦長分布方向に応じて選択され、弦長位置による選択がUP2000-96型風車用ブレードの60%R及び85%R位置を参照し、Rは、ブレードの径方向の各断面翼型の弦長であり、それぞれ1.65m及び1.15mであり、アタック角範囲がいずれも[-4,14]であり、同時に翼型空力特性で計算されたレイノルズ数を選択して3.0×10であり、
(3)PTFEベースナノ機能複合膜を選択し、膜の厚さが0.26mmであり、膜の表面粗さが0.18μmであり、
(4)有限体積法を採用して二次元非圧縮Navier-Stokes方程式を解き、計算状態が定常状態であり、乱流シミュレーションがSSTk-ωモデルを採用し、翼型の計算グリッドがC型構造グリッドを採用し、翼型の周方向に400個のグリッド点を有し、ブレードの表面の最上層グリッドの高さが9.0×10-6mであり、y≒1を満たし、グリッド総数が30万であり、
(5)幾何学的モデリングし、翼型境界を法線方向に沿って0.26mm延伸し、新たな計算幾何学を得て、
(6)影響数値に対してシミュレーション計算を行い、モーメントの作用点が翼型の1/4弦長位置を選択することにより、翼型のノーズアップモーメントを正にし、ノーズダウンモーメントを負にし、
翼型揚力係数は、
【数13】
であり、
抗力係数は、
【数14】
であり、
ピッチモーメント係数は、
【数15】
であり、
(7)二種類の風力発電ユニットブレードの翼型がPTFEベースナノ機能複合膜を貼り付けて被覆する前後の空力係数の変化に対して比較分析を行い、
線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜は、翼型の揚力、抗力及びモーメント係数に基本的に影響がないが、非線形変化領域において、PTFEベースナノ機能複合膜は、各空力パラメータにわずかな影響を与え、揚力係数及びモーメント係数の低下をもたらし、各空力係数の変化百分率がいずれも1.9%以内であり、影響が小さく、
表面粗さの観点から見ると、PTFEベースナノ機能複合膜が風車用ブレードに貼り付けて被覆した後、翼型の空力特性及びブレード全体の空力性能を改善する作用を果たすことができるという影響数値シミュレーション計算結論を得ることを含む、
ことを特徴とする付記1に記載のPTFEベース膜の風車用ブレード空力特性への影響の数値シミュレーション方法。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】