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特表2022-548676家庭用温水の生成および分配の監視および制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】家庭用温水の生成および分配の監視および制御
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/225 20220101AFI20221114BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20221114BHJP
   F24H 15/156 20220101ALI20221114BHJP
   F24H 15/30 20220101ALI20221114BHJP
   F24H 15/414 20220101ALI20221114BHJP
【FI】
F24H15/225
F24H1/18 A
F24H15/156
F24H15/30
F24H15/414
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517319
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020045775
(87)【国際公開番号】W WO2021124997
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218588.2
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510048875
【氏名又は名称】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN EUROPE N.V.
【住所又は居所原語表記】Zandvoordestraat 300,Oostende 8400,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ザレ イー,メヘラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデメルゲル,クリストフ
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA23
3L122BB03
(57)【要約】
本開示は、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのシステム100を監視および/または制御することによって、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法に関する。方法は、熱貯蔵タンク20に貯蔵される流体の、特にサニタリー用の湯の、熱貯蔵タンク20の高さ方向に沿った二つの異なる位置における少なくとも二つの実際の温度T1R_t0,T2R_t0を少なくとも複数の時点t,t0-1,t0-2で検出する工程S10と、熱貯蔵タンク20に貯蔵される熱の温度分布パターンTDP1および/または対応する熱分配パターンデータを、少なくとも複数の時点で検出される少なくとも二つの実際の温度T1R_t0,T2R_t0に温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、取得する工程S20Aと、を含む。また、本開示は、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御する制御装置1とシステム100とに関する。本開示は、さらに、コンピュータプログラムと、コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体と、に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのシステム(100)を監視および/または制御することによって、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法であって、
熱貯蔵タンク(20)に特に加圧タンクに貯蔵される流体の、特にサニタリー用の湯の、前記熱貯蔵タンク(20)の高さ方向に沿った二つの異なる位置における少なくとも二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0)を少なくとも複数の時点(t,t0-1,t0-2)で検出する工程(S10)と、
前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される熱の温度分布パターン(TDP)および/または対応する熱分布パターンデータを、少なくとも複数の時点(t)で検出される少なくとも二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0)に温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、取得する工程(S20A)と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、さらに、
熱貯蔵タンクに貯蔵される流体の、前記熱貯蔵タンク(20)の高さ方向に沿った異なる位置における複数の仮想的温度(T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0)を、好ましくは少なくとも五つの仮想的温度を、より好ましくは10を超える仮想的温度を、さらに好ましくは20を超える仮想的温度を、少なくとも複数の時点(t,t0-1,t0-2)で検出される少なくとも二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0)に仮想温度センサアルゴリズムを適用することによって、取得する工程(S15A)と、
前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される熱の前記温度分布パターン(TDP)および/または対応する熱分布パターンデータを、検出される前記少なくとも二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0)と取得された前記複数の仮想的温度(T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0)とに前記温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、取得する工程(S20A)と、
を含む方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、さらに、
前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される熱の量を、特に同等な湯(EHW)の量を、取得された前記温度分布パターン(TDP)ならびに/もしくは検出された前記少なくとも二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0)および取得された前記複数の仮想的温度(T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0)に熱推定アルゴリズムを適用することによって、決定する工程(S30A)、および/または
少なくとも二つの温度分布パターン(TDP,TDP)および/または対応する熱パターンデータを、少なくとも二セットの検出されたおよび/または取得された温度(T1R_t0,T2R_t0,T1V_t0,T2V_t0,TNV_t0;T1R_t0-1,T2R_t0-1;T1V_t0-1,T2V_t0-1,TNV_t0-1)に前記温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、取得する工程(S40A)と、
前記熱貯蔵タンク(20)から取り出される熱の量を、特に同等な湯(EHW)の量を、前記少なくとも二つの温度分布パターン(TDP,TDP)に間接取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、決定する(間接取り出し推定)工程(S50A)と、
を含む方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、
前記温度分布パターンを取得する工程(S20A)は、特に前記温度分布パターンアルゴリズムは、少なくとも複数の時点で検出された前記少なくとも二つの実際の温度(TR1_t0,TR2_t0)を、特に検出された前記少なくとも二つの実際の温度(TR1_t0,TR2_t0)と取得された前記複数の仮想的温度(T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0)とを、回帰アルゴリズムを用いて、処理することによって、前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される熱の温度分布パターンを決定する工程を含んでおり、
前記回帰アルゴリズムは、好ましくは、一以上の機械学習アルゴリズムを用いて、前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される熱の温度分布パターンを定義する温度データに関してトレーニングを受ける方法。
【請求項5】
請求項4に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、
前記回帰アルゴリズムが受けるトレーニングは、
前記熱貯蔵タンクの高さ方向に沿った異なる位置に配置されるとともに温度(T1R_t0,T2R_t0)を検出するよう用いられる複数の温度センサによって、好ましくは二つの温度センサ(10A,10B)を含む複数の温度センサによって、検出される温度ならびに/もしくは温度データ、および/または
特に前記熱貯蔵(20)に貯蔵される流体の加熱時のヒートコイル(21)の入力ならびに/もしくは出力温度、および/または
前記熱貯蔵タンクへの/からの流体の入口(22A)ならびに/もしくは出口(22B)における流量、および/または
ヒートコイル(21)を流れる流体の流量
に関するトレーニングである方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、さらに、
好ましくは前記熱貯蔵タンク(20)からの流体の出口において配置される少なくとも一の流量センサ(30)を用いて、前記熱貯蔵タンク(20)から取り出される流体の流量ならびに/もしくは量を、特に湯の量を、取得する工程、および/または
前記熱貯蔵タンク(20)から取り出される熱の量を、特に同等な湯(EHW)の量を、前記少なくとも二つの温度分布パターン(TDP,TDP)とヒートコイル(21)を流れる流体の流量とに前記間接取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、決定する(間接取り出し推定)工程
を含む方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、
前記温度分布パターン(TDP)は、
少なくとも二つの温度センサ(10A,10B)特に実際の温度センサ(10A,10B)と、
前記複数の仮想的温度(T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0)を取得するよう用いられる複数の仮想的温度センサ、好ましくは少なくとも五つの仮想的温度センサ、より好ましくは10を超える仮想的温度センサ、さらに好ましくは20を超える仮想的温度センサと
を用いて取得され、かつ/または決定され、
前記仮想的温度センサは、好ましくは、ニューラルネットワークによって提供される、かつ/またはシミュレートされる方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、さらに、
ユーザ消費アルゴリズムを、
a)前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される熱の、取得された前記温度分布パターン(TDP,TDP,TDP)、および/または
b)決定された、前記熱貯蔵タンクに貯蔵される、熱の量もしくは同等な湯の量、および/または
c)前記間接取り出し推定アルゴリズムを用いて決定された、前記熱貯蔵タンクから取り出された熱の量もしくは同等な湯の量、および/または
d)少なくとも一の流量センサ(30)を用いることによって決定される、前記熱貯蔵タンクから取り出された流体もしくは湯の量
に適用することによってユーザ消費パターン(UCP)を取得している方法。
【請求項9】
請求項8に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、さらに、取得された前記ユーザ消費パターン(UCP)に加熱パターンアルゴリズムを適用することによって、前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される流体の加熱パターンおよび/または湯生成制御パターンを決定する工程を含み、
前記ユーザ消費パターン(UCP)および/または加熱パターンおよび/または湯生成制御パターンは、1日、12時間、6時間、1時間、30分、10分、および/または1分単位の時間増分へと区切られる方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、前記熱貯蔵タンク(20)の温度分布パターン(TDP)が決定される前に、少なくとも10の、好ましくは少なくとも20の、さらに好ましくは少なくとも30の温度(T1_t0,T2_t0;T1_t-1,T2_t-1;T1_t-n,T2_t-n)が、少なくとも10の時点で、好ましくは少なくとも20の時点で、さらに好ましくは少なくとも30の時点で取得される方法。
【請求項11】
特に、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのシステム(100)を監視および/または制御することによって、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法であって、
熱貯蔵タンク(20)に特に加圧タンクに貯蔵される流体の、特にサニタリー用の湯の、前記熱貯蔵タンク(20)の高さ方向に沿った二つの異なる位置における少なくとも二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0)を少なくとも複数の時点(t,t0-1,t0-2)で検出する工程(S10)と、
少なくとも複数の時点(t,t0-1,t0-2)で検出された前記少なくとも二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0)に流体取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、前記熱貯蔵タンクから取り出された流体の量を取得する工程(S15B)と、
取得された前記熱貯蔵タンク(20)から取り出された流体の量と前記熱貯蔵タンク(20)の最上部層温度(TTop_t0)とに直接取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、前記熱貯蔵タンク(20)から取り出される熱の量または同等な湯の量を取得する工程(S20B)と、
を含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載されるコンピュータによって実現される方法であって、
前記最上部層温度(TTop_t0)は、
温度センサによって、特に前記熱貯蔵タンク(20)の出口(22B)の近傍に配置される実際の温度センサによって、検出される、かつ/または
請求項2~10のいずれか一に記載されるコンピュータによって実現される方法の最上部に位置する実際の温度センサもしくは仮想的温度センサによって取得される方法。
【請求項13】
制御ユニット(2)と請求項1~12のいずれか一に記載される方法の各工程を実現するよう構成される手段とを備える家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのシステム(100)を監視および/または制御する制御装置(1)。
【請求項14】
制御装置(1)特に請求項13に記載される制御装置(1)と、請求項1~12のいずれか一に記載される方法の各工程を実現するよう構成される手段と、を備える家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのシステム(100)。
【請求項15】
請求項14に記載されるシステム(100)であって、
熱貯蔵タンク(20)、特に湯貯蔵タンク(20)、さらに特定的には加圧タンクと、
前記熱貯蔵タンク(20)の高さ方向に沿った二つの異なる位置に配置されるとともに前記熱貯蔵タンク(20)に貯蔵される流体の、特にサニタリー用の湯の、温度を検出するよう構成される少なくとも二つの温度センサ(10A,10B)と、
を備えるシステム。
【請求項16】
請求項14または15に記載されるシステムにおいて、前記少なくとも二つの温度センサ(10A,10B)の数は、多くても5個、好ましくは多くても4個、さらに好ましくは多くても3個であり、前記少なくとも二つの温度センサ(10A,10B)の一つは、好ましくは前記熱貯蔵タンク(20)の下半分に、さらに好ましくは前記熱貯蔵タンク(20)の下側の三分の一に配置されるシステム。
【請求項17】
請求項13~16のうちのいずれか一に記載される機器に、請求項1~12のうちのいずれか一に記載される方法の各工程を実現させる命令を含んでいるコンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、家庭用温水の生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実行されるシステムに、特に、家庭用温水の生成および/または分配のためのシステムを監視および/または制御するシステムに関し、そして、家庭用温水生成および/または分配のための制御装置およびシステムに関する。さらに、本開示は、対応するコンピュータプログラム、および前記コンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家やオフィス空間といった建物には、スマートホームネットワークが設置されるようになり、これによって、自動制御される装置、器具およびシステム(例えば、暖房・換気・空調(HVAC)システム、照明システム、警報システム、ホームシアターおよびエンターテインメントシステム)が提供されている。スマートホームネットワークは、自動制御される装置、器具およびシステムを提供するためにスマートホームネットワークが建物内で用いる設定、好み、およびスケジューリング情報を入力するために各人が用いるコントロールパネルを有する場合がある。例えば、所望の温度、および家に居ない(不在)スケジュールを入力することができる。ホームオートメーション(自動化)システムは、この情報を用いてHVACシステムを制御し、在宅のときには所望の温度に家を暖房または冷房し、不在のときあるいは例えば就寝中はHVACシステムの電力を消費する構成部分をオフとすることによってエネルギーを節約することができる。
【0003】
同様な考え方は、家庭用温水生成または分配の分野にもある。居住環境における加熱の必要性には二つの主な理由がある。サニタリー(トイレ、風呂おとび洗面)用の温水生成と空間暖房とである。サニタリー用の温水(湯)は、典型的には、オンデマンドで(ガスボイラのような比較的高い出力装置を必要とする)、または電気、太陽、ガスおよびヒートポンプ等の種々の源から加熱できる温水(給湯)タンクを用いて貯めておく手法によって、生成される。断熱性に優れており(例えば受動的住宅(パッシブハウジング))そして住宅が小さい場合、住宅の空間暖房の要求値は絶対的に低い。このような場合でも、家庭用温水の必要性はそのまま残っており、しかも幾分大きい。したがって、家庭用加熱必要値全体におけるサニタリー用の温水生成の比率は大きい。
【0004】
温水貯蔵タンクを有するシステムの場合、十分な温水をユーザに提供するために、タンクの最低温度が終日一定に設定されることが一般的であり、このとき、所望の最低温度は心配ない程度に選択される。エネルギー節約のために、新しいシステムでは、週単位のスケジュールにわたる固定パターンを用いている。例えば、タンクの最低温度は、夜中や朝には下げられ、大きい需要が予想されるときにはタンクの温度を上げる。
【0005】
温水貯蔵タンクを用いる家庭用温水システムのエネルギー効率をさらに改善するためには、タンクの利用可能な実質温水容量を推定することが必要である。このことは、一般的には、家庭用温水の使用を検出し測定することによって実現できる。このために、既知のシステムでは、流量計と温度センサとを有する監視システムを用いている。これらのユニットの給湯出力に基づいて、システムは、温水貯蔵タンクから取り出されたと思われるエネルギーを推定するとともに、タンクの残っている実質的な温水容量を推定する。
【0006】
例えば特許文献1(米国特許出願公開第2015/0226460号(US2015/0226460A1))には、給湯ボイラと冷水パイプと温水パイプを有する給湯ボイラシステムのための、取り入れ口温度センサと流量計と出口温度センサと処理ユニットと表示パネルとを有する後付け給湯ボイラ監視・予測システム、方法およびコンピュータプログラム製品が記載されている。取り入れ口温度センサは、冷水取り入れ口パイプにおいて水温を測定するよう構成される。流量計は、給湯ボイラシステムを通る水の流量を測定するよう構成される。出口温度センサは、温水出口パイプにおいて水温を測定するよう構成される。処理ユニットは、取り入れ口温度センサと流量計と出口温度センサとからセンサデータを受信するよう構成されるとともに、センサデータに基づいて給湯ボイラの利用可能な温水の量を計算するよう構成される。表示パネルは、処理ユニットに連結されるとともに利用可能な温水の量に基づいて処理ユニットによって計算される少なくとも一のリアルタイムな推定使用値を示すよう構成される。
【発明の概要】
【0007】
以上の観点から、温水貯蔵タンクの利用可能な実質温水容量をより正確に推定し監視できるとともに家庭用温水分配のエネルギー効率を改善できる、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実行される方法、家庭用温水生成および/または分配システムのための制御装置および家庭用温水生成および/または分配のためのシステム、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。したがって、ユーザ快適性を維持しながらエネルギー消費を低減するよう水加熱プロセスを個々の使用状態に自動的に対応させる家庭用温水分配のスマート制御を可能とする。
【0008】
この目的は、請求項1に記載する家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法、請求項11に記載する家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法、請求項13に記載する家庭用温水生成および/または分配システムの制御装置、請求項14に記載する家庭用温水生成および/または分配システム、請求項17に記載するコンピュータプログラム、および請求項18に記載するコンピュータ可読媒体によって達成できる。いくつかの態様は、従属項、以下の説明および添付図面にから理解されよう。
【0009】
本開示の第一の観点の方法は、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法である。特に、家庭用温水生成および/または分配のためのシステムを制御することによって、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法である。方法は、実際のもしくは現実の温度の検出または取得工程と、少なくとも一の温度分布パターンおよび/または対応する熱分布パターンデータの取得工程と、を含む。実際のもしくは現実の温度の検出または取得工程において、熱貯蔵タンクに特に加圧タンクに貯蔵される流体の、特にサニタリー用の湯の、好ましくは重力の方向と平行な方向である熱貯蔵タンクの高さ方向に沿った少なくとも二つの異なる位置における少なくとも二つの実際のもしくは現実の温度を、少なくとも複数の時点で、好ましくは2時点ではなく数時点で、検出または取得する。少なくとも一の温度分布パターンおよび/または対応する熱分布パターンデータの取得工程において、熱貯蔵タンクに貯蔵される流体の熱の少なくとも一の温度分布パターンおよび/または対応する熱分布パターンデータを、少なくとも複数の時点で、好ましくは2時点ではなく数時点で、検出または取得される少なくとも二つの温度に温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、取得する。
【0010】
こうして、湯貯蔵タンクの利用可能なかつ/または実質的な湯容量を正確に推定し監視できるとともに家庭用温水生成および/または分配のエネルギー効率を改善できる。さらに、温度センサだけを用いて熱貯蔵タンクに貯蔵される熱および/または同等な湯を正確に推定できるようになるので、湯貯蔵タンクから取り出された湯の量を検出する流れ検出器の必要がなくなる。本発明において、「家庭用温水生成および/または分配の監視」に関する語「監視」を、仮想的温度センサおよび実際の温度センサを用いて例えば家庭用温水の生成を検出し任意選択的に記録する意味で用いる。例えば、湯が湯貯蔵タンクから取り出されるときの湯貯蔵タンクにおける温度分布パターンの変化や変様を検出しかつ/または決定し、これに基づいて湯貯蔵タンクに残っているまたは湯タンクから取り出された熱の量(kwh)を決定しかつ/または記録する。
【0011】
また、「家庭用温水生成および/または分配の制御」に関する語「制御」を、本発明においては、例えば検出された温度もしくは検出された流量に基づいて、かつ/または推定された値もしくはパターン例えば温度分布パターンに基づいて、家庭用温水の生成を変更する、例えば装入コイルによる貯蔵された湯の加熱を開始もしくは停止することによって、家庭用温水の生成を増加するもしくは低減することを意味する。
【0012】
また、「家庭用温水生成の監視および/または制御」に関する語「生成」を、本発明においては、40℃を超える温度への上昇を意味する湯の生成をいう。より具体的には、ある量の家庭用温水を生成するために、例えばヒートポンプによって加熱されて供給される高温流体が供給される装入コイルが配置される。装入コイルを流れる流体と、湯貯蔵タンクに貯蔵された湯との間で伝熱によって、タンク内に貯蔵された湯は加熱される、すなわち、湯の温度は上昇する。
【0013】
さらに、本発明において、「家庭用温水分配の監視および/または制御」に関する語「分配」を、湯を、特に40℃を超える温度の水を、ユーザに例えばシャワーまたは風呂で利用可能にすること(供給すること)を意味する。
【0014】
コンピュータによって実現される方法は、さらに、熱貯蔵タンクに貯蔵される流体の、熱貯蔵タンクの高さ方向に沿った異なる位置における複数の仮想的温度を、好ましくは少なくとも五つの仮想的温度を、より好ましくは10を超える仮想的温度を、さらに好ましくは20を超える仮想的温度を、少なくとも複数の時点で、好ましくは2時点ではなく数時点で、検出される少なくとも二つの実際のもしくは現実の温度に仮想温度センサアルゴリズムを適用することによって、取得またはシミュレートする工程と、熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の温度分布パターンおよび/または対応する熱分布パターンデータを、検出された少なくとも二つの実際のもしくは現実の温度と取得またはシミュレートされた複数の仮想的温度とに温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、取得またはシミュレートする工程と、を含むことができる。好ましくは、仮想的温度は、ニューラルネットワークを用いて取得されるまたはシミュレートされる。
【0015】
コンピュータによって実現される方法は、さらに、熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の量を、特に同等な湯(EHW,V40)の量を、取得された温度分布パターンおよび/または検出された少なくとも二つの実際のもしくは現実の温度および取得された複数の仮想的温度に熱推定アルゴリズムを適用することによって、決定する工程、および/または少なくとも二つの温度分布パターンおよび/または対応する熱パターンデータを、少なくとも二セットの取得された温度に、好ましくは少なくとも異なる2時点で検出される検出実際温度および/または取得された仮想的温度を含む好ましくは、複数のセットの検出および/または取得された温度に、温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、取得する工程と、熱貯蔵タンクから取り出される熱の量を、特に同等な湯の量を、少なくとも二つの温度分布パターンに取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、決定する(間接取り出し推定)工程と、を含むことができる。
【0016】
本発明において、「熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の量」および「熱貯蔵タンクから取り出される熱の量」に関する語「熱」は、熱貯蔵タンクに貯蔵されておりユーザに湯を供給することに有効であるエネルギーの意味で用いる。したがって、語「熱」は、例えばtにおいて残っている同等の湯(EHW)を意味する。
【0017】
語「同等の湯(EHW)」は、EN16147で定義される最大湯量「V40」に対応する。EN16147によれば、一回の注ぎ出し(特定の熱貯蔵タンクから)における40℃の湯水混合温水の最大量は、注ぎ出し時の湯エネルギーを計算することによって、決定される。注ぎ出し時には、10秒毎に、湯流量fmaxが、流入する冷たい水の温度θWCと流出する湯の温度θWHとともに、測定される。最大湯量V40は、以下の式を用いて計算される。
【数1】
【0018】
ここで、V40は、単位l(リットル)での、40℃の湯水混合温水の最大量であり、θWH(t)-θWC(t)は、単位K(ケルビン)での、家庭用温水貯蔵の出口における湯の温度と入口における冷たい水の温度との間の温度差であり、t40は、単位s(秒)での、注ぎ出しが開始されてからθWH(t)が40度より低くなるまでの時間であり、fmax(t)は、単位l/min(リットル/分)での、注ぎ出し時の湯の流量である。
【0019】
さらなる観点では、コンピュータによって実現される方法の温度分布パターンを取得する工程は、特に温度分布パターンアルゴリズムは、少なくとも複数の時点で、好ましくは2時点ではなく数時点で、検出された少なくとも二つの実際のもしくは現実の温度を、特に検出された少なくとも二つの実際のもしくは現実の温度と取得されたまたはシミュレートされた複数の仮想的温度とを、回帰アルゴリズムを用いて処理することによって、熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の温度分布パターンを決定する工程を含む。回帰アルゴリズムは、好ましくは、一以上の機械学習アルゴリズムを用いて、熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の温度分布パターンを定義する温度データに関してトレーニングを受ける。
【0020】
さらに、コンピュータによって実現される方法の回帰アルゴリズムが受けるトレーニングは、熱貯蔵タンクの高さに沿った異なる位置に配置されるとともに少なくとも二つの温度を検出するよう用いられる複数の温度センサによって、好ましくは二つの温度センサを含む複数の温度センサによって、検出される温度ならびに/もしくは温度データ、および/または特に熱貯蔵に貯蔵される流体の加熱/ヒートアップ時のヒートコイルの入力ならびに/もしくは出力温度、および/または熱貯蔵タンクへの/からの流体の入口ならびに/もしくは出口における流量、および/またはヒートコイルを流れる流体(加熱流体)の流量である。
【0021】
さらに、コンピュータによって実現される方法は、好ましくは熱貯蔵タンクからの流体の出口において配置される少なくとも一の流量センサを用いて、熱貯蔵タンクから取り出される流体の流量ならびに/もしくは量を、特に湯の量を、取得する工程、および/または熱貯蔵タンクから取り出される熱の量を、特に同等な湯(EHW,V40)の量を、少なくとも二つの温度分布パターンとヒートコイルを流れる流体の流量とに間接取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、決定する(間接取り出し推定)工程
を含む。
【0022】
さらに、コンピュータによって実現される方法において、少なくとも一の温度分布パターンを、少なくとも二つの温度センサ、特に実際の温度センサと、複数の仮想的温度を好ましくは少なくとも五つの仮想的温度を取得するよう用いられる複数の仮想的温度センサ、好ましくは少なくとも五つの仮想的温度センサ、より好ましくは10を超える仮想的温度センサ、さらに好ましくは20を超える仮想的温度センサと、を用いることによって、取得および/または決定することができる。仮想的温度センサは、好ましくは、(人工)ニューラルネットワークによって提供される、かつ/またはシミュレートされる。
【0023】
本発明において、「実際の温度」および「実際の温度センサ」における「実際の」を、家庭用温水生成を監視および/または制御するためのシステムに(実際に)物理的に配置されておりしたがって実際の(ライブの)温度を実際に測定する温度センサを定義するために用いる。換言すれば、実際の温度センサは、熱貯蔵タンクに現実に物理的に配置され、そして熱貯蔵タンクに貯蔵された流体の温度を実際に測定する。
【0024】
一方、「仮想的温度」および「仮想的温度センサ」における「仮想的」を、家庭用温水生成を監視および/または制御するためのシステムに物理的には配置されない温度センサを定義するために用いる。物理的には配置しない代わりに、仮想的温度センサは、どちらかというと以下でより詳細に説明する通り、ニューラルネットワークによってシミュレートされるものである。仮想的センサの温度の値は、実際の温度センサの入力に基づいてトレーニングされたニューラルネットワークによって決定され、したがって、取得されたまたはシミュレートされた温度を「仮想的温度」という。
【0025】
さらに、コンピュータによって実現される方法は、ユーザ消費アルゴリズムを、a)熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の、取得された温度分布パターン、および/またはb)決定された、熱貯蔵タンクに貯蔵される、熱の量もしくは同等な湯の量、および/またはc)間接取り出し推定アルゴリズムを用いて決定された、熱貯蔵タンクから取り出された熱の量もしくは同等な湯の量、および/またはd)少なくとも一の流量センサを用いることによって決定される、熱貯蔵タンクから取り出された流体もしくは湯の量を適用することによってユーザ消費パターンを取得する。
【0026】
さらに、コンピュータによって実現される方法は、取得されたユーザ消費パターンに加熱パターンアルゴリズムを適用することによって、熱貯蔵タンクに貯蔵される流体の加熱パターンおよび/または湯生成制御パターンを決定する工程を含む。ユーザ消費パターンおよび/または加熱パターンおよび/または湯生成制御パターンは、1日、12時間、6時間、1時間、30分、10分、および/または1分単位の時間増分へと区切られる。
【0027】
このことは、ユーザ消費パターンが例えば熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の取得された温度分布パターン、および/または複数の時点で例えば1時間に10回決定された熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の量あるいは同等な湯の量の一纏まり(コレクション)であることを意味する。例えば、1時間に10回、熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の量あるいは同等な湯の量が決定される場合、10のデータセットに基づいて平均値が計算される。つまり、複数の時点が、例えば1時間に10回が、一の増分(インクリメント)の定義および/または特徴付けを行い、この1時間に10回の場合には、1時間単位の増分であることを意味する。取得された多数の増分に基づいて、ユーザ消費パターンが決定される。同じことが、加熱パターンおよび/または湯生成制御パターンにも当てはまる。
【0028】
例えば、特定のユーザでは、いつも特定の時間に、例えば朝午前6時から午前8時までに(シャワーを浴びるために)、家庭用温水の必要値が高まる場合には、加熱パターンは、それに応じて、変更される、つまり、その午前6時から午前8時までの時間は通常より多量の湯を利用可能とする。
【0029】
さらに、コンピュータによって実現される方法において、熱貯蔵タンクの温度分布パターンが決定される前に、少なくとも10の、好ましくは少なくとも20の、さらに好ましくは少なくとも30の温度を、少なくとも10の時点で、好ましくは少なくとも20の時点で、さらに好ましくは少なくとも30の時点で取得できる。
【0030】
こうして、温度分布パターンの決定における精度を改善できる。詳細には、温度分布パターンを決定する前に、少なくとも二つの温度からなる複数の温度セットを数時点で取得し、その複数の温度セット(履歴)に基づいて、(人工)ニューラルネットワークを用いて温度分布パターンを決定する。
【0031】
さらに、本発明は、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのシステムを監視および/または制御することによって、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するためのコンピュータによって実現される方法を提供する。方法は、実際の温度の検出工程と、流体の量の取得工程と、熱の量または同等な湯の量の取得工程と、を含む。実際の温度の検出工程において、熱貯蔵タンクに特に加圧タンクに貯蔵される流体の、特にサニタリー用の湯の、熱貯蔵タンクの高さ方向に沿った少なくとも二つの異なる位置における少なくとも二つの実際の温度を少なくとも複数の時点で検出する。流体の量の取得工程において、少なくとも複数の時点で検出された少なくとも二つの実際の温度に流体取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、熱貯蔵タンクから取り出された流体の量を取得する。熱の量または同等な湯の量の取得工程において、取得された熱貯蔵タンクから取り出された流体の量と熱貯蔵タンクの最上部層温度とに直接取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、熱貯蔵タンクから取り出される熱の量または同等な湯の量を取得する。
【0032】
さらに、コンピュータによって実現される方法において、最上部層温度を、温度センサによって、特に熱貯蔵タンクの出口の近傍に配置される実際の温度センサによって、検出できる、かつ/または上述したコンピュータによって実現される方法の最上部に位置する実際の温度センサもしくは仮想的温度センサによって取得できる。
【0033】
本発明はさらに、制御ユニットと、コンピュータによって実現される方法の上述した工程を実行するよう構成される手段と、を備える家庭用温水生成および/または分配システムを監視および/または制御する制御装置を提供する。
【0034】
本発明はさらに、制御装置特に上述した制御装置と、コンピュータによって実現される方法の上述した工程を実行するよう構成される手段と、を備える家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステムを提供する。
【0035】
システムは、さらに、
熱貯蔵タンク、特に湯貯蔵タンク、さらに特定的には加圧湯貯蔵タンクと、熱貯蔵タンクの高さ方向に沿った二つの異なる位置に配置されるとともに湯貯蔵タンクに貯蔵される流体の、特にサニタリー用の湯の、温度を検出するよう構成される少なくとも二つの温度センサと、を備えることができる。
【0036】
さらに、システムにおいて、少なくとも二つの温度センサの数は、多くても5個、好ましくは多くても4個、さらに好ましくは多くても3個であり、少なくとも二つの温度センサの一つは、好ましくは熱貯蔵タンクの下半分に、さらに好ましくは熱貯蔵タンクの下側の三分の一に配置される。
【0037】
制御装置およびシステムが、コンピュータによって実現される方法の上述した工程を実行するよう構成されているので、コンピュータによって実現される方法に関連して開示したさらなる特徴を制御装置およびシステムにも適用できる。同じことが、逆に、コンピュータによって実現される方法にもいえる、すなわち制御装置およびシステムのさらなる特徴をコンピュータによって実現される方法にも適用できる。
【0038】
本発明は、さらに、家庭用温水生成および/または分配システムのための上述した制御装置および/または家庭用温水生成および/または分配のためのシステムに、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するコンピュータによって実現される方法の上述した工程を実行させる命令を含んでいるコンピュータプログラムを提供する。
【0039】
さらに、本発明は、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御する上述したコンピュータプログラムを記憶しているコンピュータ可読媒体を提供する。
【0040】
この点から、上述したコンピュータによって実現される方法は、コンピュータによって実現される方法の上述した工程を実行するよう構成される制御装置およびシステムによってのみ実施されるのではなく、方法をクラウドコンピューティングによっても実施できる。つまり、特定の熱貯蔵タンクの実際の温度センサのデータをクラウドに送信し、クラウドは、コンピュータによって実現される方法の上述した工程を実行するよう構成されており、取得したデータ(温度分布パターン、熱貯蔵タンクに貯蔵される同等の湯、熱貯蔵タンクから取り出された熱ならびに/もしくは同等の湯、消費者パターン等)を家庭用温水を監視ならびに/もしくは制御するためのそれぞれのシステムの制御装置および/またはユーザに返送する。
【0041】
コンピュータプログラムおよびコンピュータ可読媒体は、家庭用温水生成および/または分配のための上述した制御装置およびシステムと関係しているので、コンピュータによって実現される方法、制御装置およびシステムに関連して開示したさらなる特徴をコンピュータプログラムおよびコンピュータ可読媒体にも適用でき、その逆にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の他の利点は、本開示のより完全な認識およびそれによる多くの利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明から容易に得られ、より十分に理解されよう。
図1図1は、水ボイラシステムのための従来の予測システムを示す概略図である。
図2図2は、本発明の一の観点にかかる導入段階を示す家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステムの概略図である。
図3図3は、本発明の一の観点にかかるトレーニング段階を示す家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステムの概略図である。
図4図4は、本発明の一の観点にかかる図2のシステムの例示的な信号処理ハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、図2のシステムが熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の温度分布パターンTDPを取得し、貯蔵された熱の量または同等な湯の量を決定する、本発明の一の観点にかかるプロセスを示すフロー図である。
図6図6は、図3に示したトレーニング段階におけるシステムのトレーニングプロセスのためのオフラインデータ収集プロセスを示すフロー図である。
図7図7は、図2のシステムが熱貯蔵タンクに貯蔵される熱(EHW,V40)の量を決定する、本発明の一の観点にかかるプロセスを示すブロック図である。
図8図8は、図2のシステムが熱貯蔵タンクから取り出される熱の量を決定する、本発明のさらなる観点にかかるプロセスを示すブロック図である。
図9図9は、本発明の一の観点にかかる図7および図8の温度分布推定器のトレーニングプロセスを示すフロー図である。
図10図10は、本発明のさらなる観点にかかる図8の直接取り出し推定器のトレーニングプロセスを示すフロー図である。
図11図11は、入力層と隠れ層と出力層とにわたる人工ニューロンを有するニューラルネットワークの概略図である。
図12図12は、図2に示した家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステムによって取得されるユーザ消費パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示のいくつかの実施形態を図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明は単なる例示であって、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示を限定するものではないことは、本開示から、家庭用温水生成および/または分配の分野の当業者には明らかであろう。
【0044】
図1は、水ボイラシステムのための従来の予測システムを示す概略図である。図1において、水ヒーター(ボイラ)システム400は、直接監視・予測システムによって機能が拡張されている。典型的な水ボイラシステムは、水ボイラ460と、外部供給源から冷たい水を受ける冷水取り入れ口パイプ480と、ボイラからの湯出口パイプ470(通常は、最も熱い湯があるボイラの最上部の近傍に位置している)と、を有する。湯出口パイプ470からは、家全体への分配供給のための複数のパイプからなる家庭システム(例えば、風呂場、台所、洗濯室等)へとつながっている。システムは、ボイラに組み込まれた三つのセンサからデータを収集する。三つのセンサは、第一温度センサ(C)450、第二温度センサ(H)440および流れ計量器(X)430である。第一温度センサ(C)450は、取り入れライン480における水の温度を測定する。第二温度センサ(H)440は、ボイラから出てくる湯出口パイプにおける水の温度を測定する。流れ計量器(X)430は、冷水取り入れラインを通じてボイラ内へと移動する水の流量を測定する。ボイラシステムが閉じたシステムであるときには、流量センサを取り入れラインまたは出口ラインのいずれにも配置することができる。システムは、センサからの入力を分析し、利用可能な湯の量を計算し、利用可能な湯量のリアルタイムな推定を表示ユニット410に表示する。表示ユニット410は、好ましくは、シャワーや風呂場等の入浴場所に配置される。
【0045】
図2は、本発明の第一の観点にかかる導入段階を示す家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステムの概略図である。図示したシステムは、家庭用温水生成および分配を監視および制御する制御装置1と、加熱した水を特に40℃を超える温度に加熱される水を貯蔵する熱貯蔵タンク20と、熱貯蔵タンク20に貯蔵される湯の温度を検出する五つの温度センサ10A,10B,・・・と、を備える。
【0046】
さらに、図2を示す通り、好ましくは加圧タンクである熱貯蔵タンク20は、タンクの下半分に配置されるコイルまたは装入コイルを備える。熱貯蔵タンク20または湯貯蔵タンクに貯蔵される湯の温度分布は層状となる(層をなす)ので、たとえ底部に近い水が冷たいとしても(40℃より低くても)、それでもまだ湯を取り出せることを意味する。熱貯蔵タンク20に貯蔵された湯を加熱する熱源が例えばヒートポンプである場合、ヒートポンプは、タンク熱加熱の初期フェーズにおいて良好なCOPで動作することができる。供給する湯の温度がタンクの下半分での水の温度よりほんのわずか高い(ΔT約3℃)だけでよいからである。
【0047】
また、熱貯蔵タンク20に貯蔵される湯は層状となるので、温度は、タンクの底部からタンクの最上部へと連続的に高くなるという、特有の温度分布パターンを形成する。温度がタンクの底部からタンクの最上部へと高くなるので、湯貯蔵タンク20の高さ方向に沿った異なる位置に配置される温度センサ10A~10Eは、それぞれのセンサの位置/高さに応じた、異なる温度を測定することになる。
【0048】
図示した湯貯蔵タンク20は、外部供給源から冷たい水を取り込む冷水取り入れ口/入口22Aと、湯貯蔵タンク20から湯を取り出す湯取り出し口/出口22Bと、を有する。入口22Aは、タンクの底部側の三分の一に配置される。出口22Bは、最も熱い湯があるタンクの最上部の近傍に配置される。出口22Bから、湯を、例えば家全体への分配供給のための複数のパイプによって、家庭に分配できる。
【0049】
また、図示したシステム100は、装入コイルを流れる流体(加熱流体)の入口温度と出口温度とを検出する一ペアの温度センサ15,16を備える。
【0050】
システムは、(実際の)温度センサ10A~10Eを用いることによって、湯貯蔵タンク20に貯蔵される層状の湯の五つの(実際の)温度T1R_t0~T5R_t0を取得する制御装置1を用いる。取得した五つの実際の温度T1R_t0~T5R_t0に基づいて、システムはさらに、湯貯蔵タンク20に貯蔵される熱の温度分布パターンTDPと、対応する熱分布パターンデータと、を取得する。温度分布パターンTDPと、対応する熱分布パターンデータと、を決定するために、制御装置1は、以下により詳細に説明する温度分布パターンアルゴリズムを適用する。そして、取得した熱分布パターンアルゴリズムに基づいて、制御装置1は、湯貯蔵タンク20に貯蔵される熱の量を特に同等な湯の量を決定する。このことは、取得した温度分布パターン(TDP)に熱推定アルゴリズムを適用することによっても行うことができる。
【0051】
上述したプロセスがある期間にわたって繰り返されたとき、特に、ある量の湯がタンク20から取り出された後、あるいは周囲の環境への熱損失によってタンク20に貯蔵される湯の温度が低下した後、システムは複数の温度分布パターンTDP,TDP~TDPを取得することができる。取得した温度分布パターンTDP,TDP~TDPに基づいて、制御装置は、取得した温度分布パターンTDP,TDP~TDPに間接取り出し推定アルゴリズムを適用することによって、湯貯蔵タンク20内の残っている熱の量と、熱貯蔵タンクから取り出された熱の量特に同等な湯の量と、を決定できる。
【0052】
図3は、本発明の第二の観点にかかるトレーニング段階を示す、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステムの、特に図2のシステムの、概略図である。図示したシステムは、図2に示したシステムに関して上で説明したすべての構成部分を備える。さらに、システムは、トレーニングのために、同様に湯貯蔵タンク20の高さ方向に沿った異なる位置に配置される追加の20個の(実際の)温度センサと、湯貯蔵タンク20から取り出される湯の流量を測定する流量センサ30と、コイルを流れる流体(加熱流体)の流量を測定する流量センサ31と、を有する。
【0053】
上で説明した通り、システム100は、熱貯蔵タンクもしくは湯貯蔵タンク20に貯蔵される熱もしくは湯の温度分布パターンを取得、決定またはシミュレートするよう用いられて、システムを自らトレーニングする。システムのトレーニングを、特に温度分布パターンアルゴリズム、熱推定アルゴリズム、間接取り出し推定アルゴリズムおよび回帰アルゴリズムのトレーニングを、以下により詳細に説明する。
【0054】
図4は、図2の制御装置1として機能するよう構成できる、本発明の一の観点にかかる図2のシステムの例示的な信号処理ハードウェア構成を示すブロック図である。プログラム可能な信号処理ハードウェア200は、上述した(実際の)温度センサ10A~10Eの(実際の)温度データを受信する通信インタフェース(I/F)210を備え、湯貯蔵タンク20の温度測定を行うよう家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステム100に対する命令を生成し、(実際の)温度センサ10A~10Eから測定データを受信し、熱貯蔵タンク20に貯蔵される熱の温度分布パターンTDPおよび対応する熱分布パターンデータを決定し、任意選択的に熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の量を決定するかつ/または熱貯蔵タンクから取り出される熱の量を決定し、そして分布パターン、熱貯蔵タンクに貯蔵された熱の量および/または熱貯蔵タンクから取り出された熱の量を表示するよう表示装置215を制御する表示制御信号を出力する。信号処理装置200は、さらに、プロセッサと、制御ユニット2と、(例えば中央処理装置(CPU)またはグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU))220と、作業(ワーキング)メモリ230(例えばランダムアクセスメモリ)と、命令記憶部240と、任意選択的に表示制御信号生成器と、を備える。命令記憶部240は、プロセッサ220によって実行されるとき家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステム100の機能を含む種々の機能をプロセッサ220に実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを記憶する。命令記憶部240は、コンピュータ可読命令が予め書き込まれているROM(例えば、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)またはフラッシュメモリの態様の)を備えることができる。あるいは、命令記憶装置240は、RAMまたは同様なタイプのメモリを備えることができる。コンピュータプログラムのコンピュータ可読命令は、CD-ROMやDVD-ROMといった態様の非一時的コンピュータ可読記憶媒体等のコンピュータプログラム製品250から、またはコンピュータ可読命令を伝送するコンピュータ可読信号260から、命令記憶装置240へと入力可能である。いずれの場合も、プロセッサによって実行されるとき、コンピュータプログラムは、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するための方法のうちの少なくとも一つをプロセッサに実行させる。なお、制御装置1を、特定用途向け集積回路(ASIC)等のプログラミングできない(ノン・プログラマブル)ハードウェアにおいてもまた実現できることを記載しおく。
【0055】
本発明の当該の観点に関して、プロセッサ220と、作業メモリ230と、家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステム100の機能を実行するよう構成される命令記憶装置240と、から構成される図4に示すハードウェア構成部分の組み合わせ270を、以下に詳細に説明する。システム100が表示制御信号生成器を備える本発明の当該観点に関して、この任意選択的な構成部分の機能を、ハードウェア構成部分の組み合わせ270とともに、通信インタフェース210によっても提供することができる。
【0056】
当該観点の制御装置1および/またはシステム100によって実行される動作の以下の説明から分かる通り、熱貯蔵タンクもしくは湯貯蔵タンクに貯蔵される熱のならびに/もしくは同等な湯の非常に正確な熱分布パターンTDPを決定するために、制御装置1および/またはシステム100は、それぞれのセンサによって取得される温度ならびに/もしくは温度データを、任意選択的に流量ならびに/もしくは流量データを自動的に処理する。
【0057】
図5は、図2のシステム100が熱貯蔵タンク20に貯蔵される熱の温度分布パターンTDPを取得し、タンク20に貯蔵されたそして任意選択的に熱貯蔵タンク20から取り出された熱の量または同等な湯の量を決定するプロセスを示すフロー図である。また、図5は、熱貯蔵タンク20から取り出された熱の量または同等な湯の量を取得する選択的なプロセスを示す。
【0058】
図5のプロセスS10においては、制御装置1は、特に制御ユニット2は、温度データを、特に少なくともの二つの実際の温度データを受信する。二つの実際の温度データのそれぞれには、湯貯蔵タンク20に配置されるとともにタンク20に貯蔵された湯の温度を検出するよう構成される実際の温度センサからの、数時点での複数の実際の温度測定値(履歴)(T1R_t0,T2R_t0;T1R_t0-1,T2R_t0-2;T1R_t-n,T2R_tn)が含まれる。
【0059】
図5のプロセスS15Aにおいて、制御装置1は、特に制御ユニット2は、少なくとも複数の時点で検出された少なくともの二つの実際の温度に仮想的温度センサアルゴリズムを適用することによって、湯貯蔵タンク20に貯蔵される湯の、複数の仮想的温度(T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0)を取得する。
【0060】
図5のプロセスS20Aにおいて、制御装置1は、特に制御ユニット2は、取得された少なくともの二つの実際の温度(T1R_t0,T2R_t0;T1R_t0-1,T2R_t0-2;T1R_t-n,T2R_tn)と取得された複数の仮想的温度(T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0)とに温度分布パターンアルゴリズムを適用することによって、湯貯蔵タンク20に貯蔵される湯の(第一)温度分布パターンTDPを取得する。用いる機械学習温度分布パターンアルゴリズムは、図3を参照しながら説明したトレーニング/シミュレーションのための上記システム100を用いて、以前にトレーニングされたアルゴリズムである。温度分布パターンアルゴリズムのトレーニング/機械学習は、図6図7および図8を参照して以下により詳細に説明する。
【0061】
また、図5のプロセスS30Aにおいて、制御装置1は、特に制御ユニット2は、熱推定アルゴリズムを取得された温度分布パターンTDPに適用することによって、熱貯蔵タンクまたは湯貯蔵タンク20に貯蔵される熱の量を特に同等な湯の量を決定する。
【0062】
さらに、図5において示す(破線で示す)任意選択的なプロセスにおいて、プロセスS20が、少なくともの一度S40Aにおいて繰り返され、これにより、上述した温度分布パターン-アルゴリズムを少なくとも2セットの取得された温度(T1R_t0,T2R_t0,T1V_t0,T2V_t0,・・・TNV_t0;T1R_t0-1,T2R_t0-1,T1V_t0-1,T2V_t0-1,・・・TNV_t0-1)に適用することによって、少なくとも二つの温度分布パターンTDP,TDPが決定される。
【0063】
さらなる任意選択的なプロセスとして(破線で示す)、図5に示すプロセスS50Aにおいて、間接取り出し推定アルゴリズムを取得した二つの温度分布パターンTDP,TDPに適用することによって、熱貯蔵タンクまたは湯貯蔵タンク20から取り出される熱の量および/または同等な湯の量を決定する。
【0064】
図3を参照して上ですでに説明した通り、システム100(トレーニングシステム)のトレーニングフェーズにおいて、システム100には、少なく二つの(実際の)温度センサだけでなく、例えば25個の(実際の)温度センサが配置される。これにより、システム100のトレーニングフェーズ(機械学習フェーズ)において、制御装置1は25個の温度データT1_t0,T2_t0…T25_t0を受信する。
【0065】
図6は、図3に示したトレーニング段階におけるシステムの、特にシステムの人工ニューラルネットワークの、トレーニングプロセスのためのオフラインデータ収集プロセスを示すフロー図である。「オフラインデータ収集」とは、トレーニングを実際に行う前に、ニューラルネットワークおよび対応しているアルゴリズムをトレーニングするために必要なデータを収集することを意味する。つまり、まず、すべての必要なデータを、特定の期間例えば1日、1週間あるいは数カ月、収集する。必要なデータを収集した後、そのデータを前処理し、そしてニューラルネットワークへと入力してニューラルネットワークをトレーニングする。
【0066】
図6のプロセスS100において、制御装置1は、特に制御ユニット2(プロセッサ)は、湯貯蔵タンク20の高さ方向に沿って配置される25個の実際の温度センサ10A~10XYを用いて、湯貯蔵タンク20に貯蔵される湯の25個の実際の温度データT1_t0~T25_t0を受信する。
【0067】
図6のプロセスS110において、制御装置は、特に制御ユニット2は、取得した温度T1_t0,T2_t0…T1_t25-0を上述した温度分布パターンアルゴリズムを用いて処理することによって、湯貯蔵タンク20に貯蔵される湯の温度分布パターンTDPを決定する。
【0068】
図6のプロセスS120において、湯貯蔵タンクの出口において配置される流量センサ30と、最上部のタンク温度センサ10XY(実際のセンサおよび仮想的センサなかで最上部にあるセンサ)と、を用いて、ある量の熱(kWh)および/またはある量の同等の湯(l)が湯貯蔵タンクから取り出される。さらに、任意選択的に、コイル21を通る流体の流れをコイルの流量センサ31によって測定し、かつ、流体の入口温度と出口温度とをコイル21の入口温度センサ15と出口温度センサ16とによって測定しながら、貯蔵される湯のコイル21を介した加熱(kWh)を行う。
【0069】
さらに、図6のプロセスS130で湯貯蔵タンク20に貯蔵される湯の新しい温度T1_t1~T25_t1を取得し、プロセスS140において、プロセスS110と同様に、湯貯蔵タンク20に貯蔵される湯の温度分布パターンTDPを、取得した新しい温度T1_t1~T25_t1を用いて決定する。
【0070】
上記のプロセスは、ニューラルネットワークをトレーニングするのに十分なデータを取得および/または収集できるまで、連続的に繰り返される。図6のプロセスS150において、取得および/または収集したデータを用いて、人工ニューラルネットワークをトレーニングする。トレーニングを、図9および図10を参照しながら、以下により詳細に説明する。
【0071】
図7は、図2のシステム100が、tにおける熱貯蔵タンクに貯蔵される熱の量(残っている同等の湯)(EHW,V40)を決定する、本発明の一の面にかかるプロセスを示すブロック図である。図7に示す通り、実際の温度が、少なくともの二つの実際の温度センサ10A,10Bによって、当該の面ではセンサ1、センサ2およびセンサ3によって検出され、制御装置1によって、特に制御装置1または制御ユニット2の前処理器(プレプロセッサ)によって、受信される。
【0072】
プレプロセッサは、それぞれの熱貯蔵タンク20に対して最良のサブセットを取り込んで、センサ1~3から受信した実際の温度および/または温度データを前処理し、そして新しい特徴量を計算する。新しい特徴量を計算するとは、プレプロセッサが、履歴を例えばセンサ1~3によって過去に測定された実際の温度を用いて、例えば28個のデータからなるデータパッケージを提供することを意味する。
【0073】
次のステップにおいて、スケーラーが、ニューラルネットワークのモデルの準備において特徴量をスケールダウンする。スケールされた特徴量は、上述した通りトレーニングされておりそして図9および図10を参照してより詳細に説明する例えば40個のノードからなる二つの隠れ層で構成される(人工)ニューラルネットワーク(ANN)へと入力され、受信した特徴量に基づいて(上述したトレーニングシステムの)残る22個の仮想的センサを推定する。その後、アンスケーラーがその特徴量を元の範囲に戻すようスケールし、結合器(ジョイナー)が三つの実際のセンサ1~3のデータを22個の仮想的センサのデータと結びつける。
【0074】
ジョイナーからのデータは、湯貯蔵タンクの温度分布パターンTDPを決定するための温度分布推定器へと入力される。
【0075】
さらに、ジョイナーのデータは補間器に送られる、そこで、後で変換および/または計算される熱/等価な湯(EHW,V40)におけるアーティファクトを除去するために、温度分布パターンTDPを決定するよう用いられる仮想的センサの数を増やす。
【0076】
さらに、補間器が決定したデータを湯変換装置(EHW,V40)へと送信し、その後、補間器がすべてのアーティファクトを除去できていない場合には任意選択的に出力(EHW,V40)にさらなるスムージングを行うフィルタによって処理される。
【0077】
最後の任意選択的なステップにおいて、コイルを通る流体流れを検出するように構成される流れセンサによって検出されるコイルフロー(l/min)が、間接取り出し推定器によって取り出しを推定するために用いられる。これにより、湯貯蔵タンク20から取り出される熱(kwh)および/または同等の湯(EHW,V40)を推定することが可能になる。湯貯蔵タンク20から取り出された熱(kwh)および/または同等の湯(l)を推定すると、間接取り出し推定器は、周囲の環境への伝熱による熱損失を取り去るすなわち補償することもでき、またヒートコイル21を介した加熱によって湯貯蔵タンク20に加えられる熱を取り消すすなわち補償することもできる。
【0078】
図8は、図2に示したシステム100が熱貯蔵タンクから取り出される熱の量および/または同等の湯(EHW,V40)の量を直接決定する、本発明のさらなる面にかかるプロセスを示すブロック図である。図8に示すプロセスまたはシステム(制御ユニット)は、間接取り出し推定器を除く、図7に示したプロセスまたはシステムのすべての特徴/ステップもしくは構成部分を備える。
【0079】
さらに、図示のプロセスは、熱貯蔵タンクから取り出される熱の量および/または同等の湯(EHW,V40)の量を直接決定する第二(並列)プロセスラインを有する。図示する通り、センサ1~3によって検出された三つの実際の温度は、第二プレプロセッサ内へと入力されて、そこで、それぞれの熱貯蔵タンク20に対して最良のサブセットを取り込んで、実際の温度を前処理し、そして新しい特徴量を計算する。前記特徴量には、新たに入力された実際の温度が、予め入力された実際の温度(履歴)に加えて、含まれる。
【0080】
第二スケーラーが、特に図10を参照して以下に説明する通りトレーニングされた第二(人工)ニューラルネットワーク(ANN_2)の第二モデルの準備において特徴量をスケールダウンする。第二(人工)ニューラルネットワーク(ANN_2)は、例えば40個のノードからなる二つの異なる層で構成され、タンクから取り出される湯の量を推定する。ここでは、取り出される水に含まれるエネルギーを示すことなく水の量だけが推定される。その後、アンスケーラーが、その特徴量を元の範囲に戻すようスケールし、取り出された湯の推定した量を直接取り出し推定器へと提供する。
【0081】
取り出された湯の推定した量(第二ニューラルネットワークによって提供される)と、25個のセンサ(22個の仮想的のセンサ+3個の実際のセンサ)のうちの最上部にある温度センサによって検出される最上部層温度(湯貯蔵タンクから取り出される湯の実際の温度と考えられる)と、を用いて、直接取り出し推定器は、湯貯蔵タンクから取り出された熱および/または同等の湯を推定する。湯貯蔵タンク20から取り出された熱あるいは同等の湯を推定すると、直接取り出し推定器は周囲の環境への伝熱による熱損失を取り去るすなわち補償することもできる。ここで、第一ニューラルネットワークの22個の仮想的のセンサのうちの一つの代わりに一つの実際に設置される温度センサを用いることができ、したがって、取り出された熱または同等の湯の決定を第一ニューラルネットワークにおいて不要とすることができる。
【0082】
図9は、本発明の一の面にかかる図7および図8の温度分布推定器のトレーニングプロセスを示すフロー図である。図示する通り、第一ステップにおいて、入力層における数(実際のセンサの数×履歴(利用可能なデータの数;複数の時点))と、隠され層における数と、出力層における数(仮想的センサの数)と、が初期化される。次のステップにおいて、人工ニューラルネットワーク(ANN)が生成され、そしてANNの重み付け量(ウエイト)は初めにランダムな値に設定される。
【0083】
次のステップにおいて、トレーニング入力値(オフラインデータ収集プロセスにおいて収集されるデータ)に対してそれぞれの層の出力値が計算され、推定した値(温度)と実際の値(温度)とに基づいて出力層におけるエラーが計算される。
【0084】
計算したエラーに基づいて、ANNの出力層と隠され層のウエイトに対して新しい値(アップデート)が計算され設定される。その後、トレーニング入力値を用いてそれぞれの層の出力値の計算を繰り返し、更新したウエイトを用いる。これが、計算したエラーが必要とされる閾値より低くなるまで行われる。閾値に達すると、人工ニューラルネットワークのトレーニングを終了できる。
【0085】
上述したプロセスの際に、実際のセンサおよび仮想的センサの数および位置と、履歴(数時点における温度セットの数)と、最適な層数および最適なウエイトと、を最適化できる。このことは、ニューラルネットワークのトレーニングの際に用いられる例えば25個のセンサから、少なくともの二つのセンサが、実際に測定された温度分布パターンと比較したとき温度分布パターンを推定する精度に関して総合的に最良の結果が得られる実際のセンサとして選択されることを意味する。同じことが、実際のセンサおよび仮想的センサの数と、考慮すべき以前のデータセット(履歴)の数と、人工ニューラルネットワークの層の数および各層の大きさと、に関しても当てはまる。
【0086】
図10は、本発明のさらなる面にかかる図8の直接取り出し推定器のトレーニングプロセスを示すフロー図である。前記プロセスは、温度値(温度分布パターン)の代わりに湯貯蔵タンクから取り出される湯の量を推定するかつ/またはトレーニングすることを除いて、図9に示した機械学習プロセスと基本に同じである。したがって、出力層におけるエラーを計算するステップにおいて湯貯蔵タンクから取り出された熱および/または同等の湯の推定した量を、流量センサによってそしてもしあれば温度センサによって測定される実際の値と比較する。このトレーニングプロセスによって、図8の第二ニューラルネットワークをトレーニングする。
【0087】
上述した回帰アルゴリズムを、当該面のように、ニューラルネットワークとすることもできる。事前に何の知識がなくても、入力データを、例えば温度センサ10A~10XYによって検出される温度データ、ヒートコイル温度センサ15,16によって検出されるヒートコイル入力温度データおよび/または出力温度データ、流量センサ30、31によって検出される流量データを処理することによって、ニューラルネットワークは、関連付け特性を自動的に生成する。
【0088】
図11に示す通り、一般に、ニューラルネットワークは、入力層と出力層とに加えて、複数の隠れ層と、から構成される。各層が複数の人工ニューロン(図11においてA~Fを付している)から構成され、そして各層がそれぞれへの入力に応じて種々の変換を行うことができる。それぞれの人工ニューロンを、隣接する層でおける複数の人工ニューロンに接続できる。それぞれの人工ニューロンの出力は、それへの入力の和を変数としたある非線形関数によって計算される。複数の人工ニューロンと、それら人工ニューロン間の接続と、には、典型的には、ある接続における信号の強さを決定するそれぞれのウエイト(図11におけるWAD、WAE等)が与えられる。これらのウエイトは学習収穫(プロシーズ)として調整され、その結果、ニューラルネットワークの出力が調整される。信号は最初の層(入力層)から最後の層(出力層)へと移動し、複数回層を渡ることができる。
【0089】
ニューラルネットワークの出力を、熱貯蔵タンク20に貯蔵される熱の温度分布パターンの関連付け特性を含んでいる検出された温度T1_0~Tn_nの確率だと見なすことができ、決定には、記憶またはトレーニングされる分布パターンが熱貯蔵タンクに見られる実際の熱分布パターンに対応しているか否かの決定を含めることができる。
【0090】
本発明の当該面のように、学習アルゴリズムがニューラルネットワークである場合、システム100を、特に制御装置1を、ニューラルネットワークを分析することによって対応する記憶またはトレーニングされる分布パターンを見つけるよう構成することもできる。
【0091】
図12は、図2に示した家庭用温水生成および/または分配を監視および/または制御するシステムによって取得されるユーザ累積消費パターンを示すグラフである。図12は、平日と週末とにおける消費されたすなわち取り出された同等な湯量をmの単位で示している。図12から分かる通り、取得した消費パターン(ある期間の)は、一日のなかで変化するだけでなく、例えば平日と週末とでも変化している。
【符号の説明】
【0092】
1 制御装置
2 制御ユニット
10A (第一)実際の温度センサ
10B (第二)実際の温度センサ
10E (第五)実際の温度センサ
15 入口温度センサコイル
16 出口温度センサコイル
20 熱貯蔵タンク
21 ヒートコイル
22A 入口/冷水取り入れ口
22B 出口/湯取り出し口
30 湯出口流量センサ
31 加熱流体流量センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0226460号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】