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特表2022-548706関節と境界を接する管状骨を少なくとも部分的に代替するためのモジュール式プロテーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】関節と境界を接する管状骨を少なくとも部分的に代替するためのモジュール式プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/28 20060101AFI20221114BHJP
【FI】
A61F2/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517463
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2020075845
(87)【国際公開番号】W WO2021053004
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】19198089.5
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522087291
【氏名又は名称】ワルデマール リンク ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】WALDEMAR LINK GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 10, 22339 Hamburg (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】リンク,ヘルムト ディー.
(72)【発明者】
【氏名】スパス,セバスチャン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA01
4C097BB01
4C097CC03
4C097CC06
4C097DD10
4C097FF05
4C097MM03
(57)【要約】
管状骨(9)を少なくとも部分的に代替するためのモジュール式エンドプロテーゼであって、モジュール構成部品として、前記管状骨(9)の骨腔中に挿入するためのシャフト(1)と、支持体(31)を備えた端部ピース(3)であって、この支持体がその中央側面に配置されているネック部(32)を備えている端部ピース(3)とを具備し、モジュール構成部品は、シャフトの長軸に沿って相互に結合可能および解除可能である。端部ピース(3)は、その支持体に、異なって実施された少なくとも2つの表面造形部、すなわち、中央側面(36)側の閉じた表面(6’)と、これとは逆側の外側面(38)側の表面の多孔質造形部(6)とを有する。この多孔質造形部により、筋肉組織の生着を可能にし、位置決めし、それも縫合なしにこれが可能になる。したがって、縫合による筋肉の損傷と、それぞれの縫合箇所で発生する荷重ピークは、場所特異的に筋肉を直接生着させる本発明のおかげで回避することができる。これによって、合併症のリスクを軽減しながら、より迅速かつ信頼性をもって患者の可動化を達成できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状骨(9)を少なくとも部分的に代替するためのモジュール式エンドプロテーゼであって、モジュール構成部品として、
前記管状骨(9)の骨腔に挿入するためのシャフト(1)と、
支持体(31)を備えた端部ピース(3)であって、前記支持体は、前面、後面、中央側面および外側面(35、37、36、38)ならびに前記中央側面に配置されていてかつ関節装置(34)用の収容部を有するネック部(32)を備えた端部ピース(3)と、
好ましくは少なくとも1つの中間ピース(2)と
を具備し、
前記モジュール構成部品は、前記シャフトの長軸に沿って相互に結合可能および解除可能である、
モジュール式エンドプロテーゼにおいて、
前記端部ピース(3)は、その支持体に、異なって実施された少なくとも2つの表面造形部、すなわち、前記ネック部の方を向いた中央側面(36)側の閉じた表面(6’)と、前記ネック部とは逆側の外側面(38)側の表面の多孔質造形部(6)とを有する
ことを特徴とする、モジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項2】
前記表面の多孔質造形部(6)が、好ましくは規則的に配置された複数の単位胞(4)から形成されたオープンセル型多孔質格子構造体として実施されていることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項3】
前記単位胞(4)は、組み立てられた構造体として実施されていて、それぞれが1つの内部空間(40)と、前記内部空間(40)を取り囲む相互に連結された複数のバー(41、42、43、44)とから構築されていることを特徴とする、請求項2に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項4】
前記表面の前記多孔質造形部(6)、特に前記オープンセル型多孔質格子構造体が、前記支持体と一体的に実施されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項5】
前記多孔質造形部(6)が、成長促進被覆部(45)、特にタンタル材料を有する被覆部を備えていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項6】
前記多孔質造形部(6)が、前記外側面(38)から前記前面および前記後面(35、37)へと半殻状に伸張することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項7】
前記外側面(38)と、前記前面(35)および/または前記後面(37)との間の移行部で、丸みを帯びた部分に、外側の平坦部(39)が設けられていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項8】
前記丸みを帯びた部分の曲率半径(r)は、前記支持体(31)の前記前面から前記後面までの距離(d)の最大1/4であることを特徴とする、請求項7に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項9】
前記外側の平坦部(39)が平坦であるか、または前記支持体(31)の前記前面から前記後面までの距離(d)の2倍の最小曲率半径(R)を有することを特徴とする、請求項7または8に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項10】
前記支持体が、その外側面(38)においてのみ、前記表面の前記多孔質造形部(6)を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項11】
前記多孔質造形部(6)は、さらに前記支持体(31)の上側に伸張するが、しかし外側面領域中のみにおいて伸張することを特徴とする、請求項10に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項12】
前記端部ピース(3)の下部領域には前記多孔質造形部(6)がないことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項13】
前記外側面領域中に、隣接して平行に配置された複数の貫通孔(8)が追加的に設けられていて、前記貫通孔は、前記支持体(31)の前記前面から前記後面に伸張することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項14】
1つ以上の貫通孔(8)が前記多孔質造形部(6)を備えた領域中で開き、前記貫通孔のそれぞれの口(80)には、非多孔質の縁取り部(81)が設けられていて、前記縁取り部(81)は、好ましくは前記多孔質造形部(6)によって完全に取り囲まれていることを特徴とする、請求項13に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項15】
前記多孔質造形部は、0.4mm~2mm、好ましくは0.7mm~1.5mmの範囲の幅の孔を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。
【請求項16】
前記モジュール式エンドプロテーゼはプロテーゼシステムに属し、前記プロテーゼシステムのモジュール構成部品(1、2、3)は、整合する連結手段(5)、例えば差し込み連結部および回転ロックを用いて連結可能であり、かつ前記プロテーゼシステムは、多孔質造形部のない交換用端部ピース(3*)および/または多孔質造形部(6*)を備えた交換用中間ピースをさらに具備することを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載のモジュール式エンドプロテーゼ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール式エンドプロテーゼであって、管状骨を少なくとも部分的に代替するためのモジュール式エンドプロテーゼであって、モジュール構成部品として、管状骨の骨腔に挿入するためのシャフトと、支持体およびネック部を備えた端部ピースとを具備し、ネック部が中央側に配置されていてかつ関節装置用の収容部を有する、モジュール式エンドプロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
疾患または欠陥のある骨および関節を代替するために、さまざまなタイプのエンドプロテーゼが知られている。特に、ここでは、純粋な関節エンドプロテーゼ、または境界を接する管状骨も部分的または完全に代替するものについて扱う。これらは、代替されるべき管状骨の長さにわたって伸張するシャフトを有する。このシャフトは、骨の疾患領域または欠損領域を代替または補強する。このシャフトは、境界を接する関節(例えば、膝または股関節)の代替となる関節ユニットと連結されていることが多い。したがって、プロテーゼシャフトの寸法は、患者の各生体構造および病態に応じて選択せねばならない。
【0003】
個人の必要性に適応させるために、モジュール式エンドプロテーゼシステムが知られている。これらは、シャフトと、場合によっては複数の中間ピースと、端部ピースとを具備し、この端部ピースは、通常関節の構成部品を形成する。このようなシステムは、例えば、特許文献1から知られている。さらに、先使用として、デピュー(DePuy)社(アメリカ合衆国)のモジュール式システムが知られているが、これは、Orthopaedic Salvage System(オーソペディック・サルベージ・システム)との名称であり、この端部ピースは周方向に多孔質の被覆部が設けられている。
【0004】
まだ残っている骨への十分な生着挙動が達成可能であることがわかっている。しかし、特に筋肉などの軟部への繋ぎ止めについては、改善の余地がある。タンタルを含有する被覆部を使った実験では、結合組織の生着を刺激することができるだけで、実際には望ましい筋肉への繋ぎ止めは刺激されないことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国実用新案第20 2004 019 264 U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、筋肉の生着に関してより良い挙動を示す、冒頭で挙げた様式のモジュール式エンドプロテーゼを作成するという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による解決策は、独立請求項の特徴中にある。有利なさらなる形態は従属請求項の対象物である。
【0008】
管状骨を少なくとも部分的に代替するためのモジュール式エンドプロテーゼであって、モジュール構成部品として、管状骨の骨腔に挿入するためのシャフトと、支持体を備えた端部ピースであって、この支持体が、前面、後面、外側面および中央側面ならびに中央側面に配置されていてかつ関節装置用の収容部を備えたネック部を備えている端部ピースと、少なくとも1つの中間ピースとを具備し、このモジュール構成部品は、シャフトの長軸に沿って、例えば差し込み連結部またはこれ以外の連結様式を介して相互に結合可能および解除可能であるモジュール式エンドプロテーゼにおいて、本発明によれば、端部ピースは、その支持体に、異なって実施された少なくとも2つの表面造形部を有し、すなわち、ネック部の方を向いた中央側面側の閉じた表面と、ネック部とは逆側の外側面側の表面の多孔質造形部とを有するように設けられている。
【0009】
外側(lateral)、中央側(medial)、前(anterior)および後(posterior)の概念は、解剖学では一般的な方向を示す専門用語である。ここで、「lateral」は、側方で、外側方向を指し、「medial」は、側方で、(体の)中心方向、「anterior」は前方方向、「posterior」は後方方向を指す。
【0010】
本発明は、筋肉組織の生着にとって好都合である表面の多孔質造形を、目的を定めて特定の箇所のみで、それも特にそこでのみであって全周ではない場所に施すという発想に基づいている。この特定の箇所とは、外側面すなわち埋め込まれた状態で、側方で外側を向く側である。したがって、一方では、多孔質造形部により、筋肉組織を含む軟部の信頼性のある生着のための基礎を作り、他方では、多孔質造形部の精確な位置決めとその集中とにより、特定の箇所上に(そしてそこだけ、すなわち全周ではない)へ、目的を定めてかつ特定的に筋肉の有利な生着挙動を成し遂げるが、この筋肉は、このプロテーゼへ(したがって対応する四肢へ)力の伝達を好都合に行うという意味で、まさにその特定の箇所に当たるべきである。大腿骨近位部用のエンドプロテーゼの場合、本発明により目的を定めて場所特異的な生着箇所が提供される筋肉は、いわゆる「大殿筋」である。
【0011】
本発明は、このような造形部により、筋肉の直接繋ぎ止めが生じるような方法で、筋肉の場所特異的な生着が達成され得ることを認識した。そのため、従来は筋肉をエンドプロテーゼの端部ピースに繋ぎ止めるために必要であった縫合がもはや不要になった。直接繋ぎ止めることにより、より大きな力の伝達が可能であり、特に従来先行技術で頻繁に使用されてきた筋肉を縫合する技術よりも、より堅牢である。この理由は、縫合は基本的に筋肉を損傷させ、縫合領域中に荷重が集中するので、不都合な荷重ピークが生じ、その結果、固定(安全性)が悪くなると予測されうるからである。直接繋ぎ止めるように構成することで、これらの欠点は回避される。縫合によって生じる筋肉の外傷およびそれぞれの縫合箇所で生じる荷重ピークは、場所特異的な直接的な筋肉の生着を行う本発明のおかげで回避することができた。これによって、合併症のリスクを軽減しつつ、患者のより迅速かつ信頼性を持った可動化が可能になる。
【0012】
合目的には、表面の多孔質造形部が、典型的には規則的に配置された複数の単位胞から形成されたオープンセル型多孔質格子構造体として実施されている。しかし、単位胞の不規則的な配置も排除されるべきではない。このようなオープンセル型構造体により、筋肉組織はより深いところにある孔中にも迅速に内殖し、これによって、さらなる利点として、筋肉とエンドプロテーゼとの連結の耐荷重性がさらに向上し、したがって、筋肉とエンドプロテーゼとの間の力の伝達も改善される。有利なことに、この際、単位胞は、組み立てられた構造体として実施されていて、それぞれが1つの内部空間と、この内部空間を取り囲む相互に連結された複数のバーとから構築されている。例えば、このように組み立てられた構造体は、付加方法(3D印刷ともいう)により合理的に製造することができる。このようにして、アンダーカットを備えた複雑な中空構造をも有する構成部品も、急速にかつ制御された方法で生産することができる。この際、単位胞の構造を正確に規定することができる。これによって、セルとこれを形成する要素特にこれらのバーとの配置を規定することができる。特に、これらの方法は、特に、生体適合性材料、特に金属材料(純チタン、チタン合金、コバルトクロム、タンタル、ステンレス鋼およびジルコニウムからなる群から選択される材料)から移植物を製造するのに適している。
【0013】
有利な場合には、この多孔質格子構造は、成長促進被覆部を備えている。このような被覆部は、軟部組織、特に筋肉材料およびその腱の生着と内殖とを加速させる。特に好ましいのは、リン酸カルシウムからなる被覆部以外に、特にタンタル材料を含む被覆部である。
【0014】
合目的であるのは、多孔質造形部が、0.4mm~2mm、好ましくは0.7mm~1.5mmの範囲の幅の孔を有する場合である。この比較的大きな孔により、より好都合な内殖挙動が得られ、とりわけ筋肉組織に対する係留の可能性がもたらされる。
【0015】
合目的であるのは、支持体と多孔質造形部またはオープンセル型多孔質格子構造体とが一体的に実施されている場合である。これによって、これ以外の場合には必要である別々の構成部品同士の接合をなくすことができ、これによって、堅牢性、製造の単純化および直接製造可能性ならびに耐久性に関しても有利になる。特に、接合連結部の不具合または接合連結部が周囲の組織に悪影響を及ぼす心配がない。特に、一体型の造形部では、多孔質造形部を含む支持体全体が完全に同一の材料からなる点を考慮すると、この点が当てはまる。
【0016】
特に、多孔質造形部は、外側面から前面へも、後面へも半殻状に伸長していることが好ましい。これによって、多孔質の造形部は、ネックピースを支持する支持体の周囲の長さのかなりの領域にわたって伸張しているが、しかし全周ではない。これによって、境界を接する軟部(特に筋肉)の生着域が広がるが、しかし正確に規定もされる。ここで、半殻状とは、定性的に理解するべきであり、円周角が必ずしも180°であるにはおよばず、多くの場合、それ以下(またはそれより少し上)でありうる。好ましくは被覆部の円周角は、約120°~210°の範囲が好ましい。半殻状として定性化するために重要であるのは、多孔質造形部が、外側面から、前面に向かっておよび背面側(後面)に向かって伸張しているが、中央側面領域にわたっては伸長していないとの点である(こうなると、周回することになり、それは除外されるべきである)。
【0017】
特に半殻状に伸張する場合、また他の場合でも、合目的であるのは、外側面と、前面および/または後面との間の移行部において、丸みを帯びた部分に、外側の平坦部が設けられている場合である。このように外側面が平坦部になることで、周囲の軟部組織、特に筋肉に対して、より広く、かつ比較的平坦な接触面および生着面を作ることができる。これによって、より広い面積上での生着を促進し、その結果筋肉からエンドプロテーゼへの力の伝達をより良くかつ堅牢にすることができる。特に好ましいのは、外側の平坦部が平坦であるか、または支持体の前面から後面までの距離の2倍の最小曲率半径を有する場合である。これに続く丸みを帯びた部分により、前面または後面へ、調和的でかつ段差がなくおよびエッジなしに移行することができ、これによって、この重要な領域中で生着する軟部組織(特に筋肉)の剥離のリスクを回避することができる。この場合、特に合目的であるのは、丸みを帯びた部分の曲率半径が、支持体の前面から後面までの距離の最大1/4である場合である。
【0018】
周囲の軟部組織中へより広範囲で組み込むという意味合いでさらに有利であるのは、多孔質造形部が、さらに支持体の上側に伸張するが、しかし外側面領域中のみにおいて伸張する場合である。上側に伸張させることで、筋肉特に中臀筋の生理学的および解剖学的に好都合な生着の可能性を作り出す。これによって、周囲の軟部組織、特に筋肉の生着面を、まさにこのより高い領域に集中させることができる。この点は、すでに述べたように、生理学的および解剖学的に好都合であり、この利点は、したがって、本発明によるプロテーゼを周囲の軟部組織特に筋肉へより効率的に組み込むために利用することができる。これに代えてまたは追加的に、端部ピース特にその支持体の下部領域に多孔質造形部がないままである場合に合目的である。この領域中の軟部組織の生着を防止または減少させることができ、特に望ましくない結合組織の生着を減少させることができる。
【0019】
除外すべきではないのは、外側面領域中に、隣接して平行に配置された複数の貫通孔が追加的に設けられていて、これらの貫通孔が、支持体の前面から後面に伸張する場合である。これでもって、固定の確実性をさらに強化するために、従来の固定技術を活用することができる。この場合に合目的であるのは、貫通孔が多孔質造形部を備えた領域中で開き、貫通孔のそれぞれの口には、非多孔質の縁取り部が設けられていて、これらの縁取り部は、好ましくは多孔質造形部によって完全に取り囲まれている場合である。これによって、一方では、荷重をかける場所を統一し、すなわち多孔質造形部の領域中で、それも貫通孔に対して統一するようになる。これによって、すべてが一カ所に集中し、力の状態も同程度に保たれる。
【0020】
有利な場合、支持体はその下端で先細りしており、多孔質造形部はこの先細り領域にまで伸長している。これは言い換えれば、多孔質造形部が先細り部に移行する領域中で終わっていることを意味する。これによって、生着場所が支持体の上部領域に限定され、この点は生体力学とそのテコ比との点で有利になる。
【0021】
特に合目的な実施形態では、本発明によるエンドプロテーゼは、プロテーゼシステムに属するように実施されていて、このプロテーゼシステムは、モジュール構成部品、特に交換用中間ピースおよび/または交換用端部ピースも具備する。この場合、モジュール構成部品は、整合する連結手段、特に差し込み連結部および回転ロックを用いて連結可能である。これによって、本発明によるエンドプロテーゼを既存のプロテーゼシステム中に組み込むことができ、これによって、公知のプロテーゼシステムの利点と本発明の有利な作用とを組み合わせることができる。
【0022】
以下、本発明を、一例としてある実施形態に基づいて、添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】端部ピースを備えた、近位股関節エンドプロテーゼの大腿骨構成部品用のモジュール式大腿骨プロテーゼのある実施形態を示す図である。である。
図2】大腿骨プロテーゼ全体の図である。
図3】(a)および(b)は、上述の実施形態による端部ピースの正面図および透視図である。
図4】多孔質造形部の隣接する単位胞の概略図である。
図5】交換用中間ピースの 透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面中で図示した実施形態によるモジュール式エンドプロテーゼは、大腿骨9に埋め込むための股関節エンドプロテーゼのモジュール式大腿骨構成部品として実施されている、このエンドプロテーゼは、実質的な構成部品として、シャフト部分1と、中間ピース2と、端部ピース3とを具備する。個々の構成部品1、2、3は、例えば差込式連結部5を介して回転不能に相互に連結されている。
【0025】
シャフト部分1は、下方部分中で円錐状に延びるアンカー領域11を具備し、このアンカー領域11は、シャフト部分1の長手方向に延びる複数のアンカーリブ13を備えている。このアンカー領域11は、大腿骨9の骨腔(髄内管)91中に埋め込むように形成されている。
【0026】
さらに、シャフト部分1は、その上方領域中に、結合部12を具備し、この結合部の断面はより大きい。この結合部は、円筒形の外被部を有し、かつ円錐形の差し込み連結部(図1では不図示)を介して、中間ピース2と連結されるが、これは、オス部と、隣接する中間ピース2に配置されたメス部を用いて行われる。中間ピース2の方は、円錐形の差し込み式連結部5を介して端部ピース3と連結されている。
【0027】
端部ピース3は2つの領域にさらに細かく分けられている。この端部ピースは、一方では、主要構成要素として、支持体31を具備し、この支持体は、メス型円錐部(これは、中間ピース2への差し込み連結部5の一部としてのものである)と、ネック部32とを具備し、このネック部は、人工股関節の関節装置の一部としての球関節34を収容するための円錐台として成形された保持ピン33を具備し、この際、この球関節34は、人工股関節の寛骨臼構成部品(図示せず)の軸受け部中に埋め込まれた状態では揺動可能に軸支されている。ネック部32の保持ピン33は、端部ピース3の中央側面36に配置され、その反対側には端部ピース3の外側面38があり、これらは、それぞれ前面35または背(後)面37を介して連結されている。前面35と後面37との間の距離は、支持体31の厚さdを決定する。他方で、端部ピース3は、さらなる主要構成要素として、その表面の多孔質造形部6を有するが、この多孔質造形部は、支持体31の外側面の上部領域中、そこだけに設けられている。これについては、後でより詳しく説明する。
【0028】
図2に、モジュール式エンドプロテーゼのさらなる構成部品を図示する。端部ピース3*を認識することができ、これは端部ピース3に対応するが、しかしこれとは異なり、外側の多孔質造形部6を有しておらず、別の造形の、すなわち閉じた滑らかな表面6’を全周に有する。この端部ピース3*中にも、中間ピース2が差し込まれている。しかしながら、図1に示す実施形態とは異なり、シャフト部分1*は大腿骨9の髄内管91中に係留されるために設けられているのではなく、それに代えて、天然の大腿骨9を、すなわち異なる長さの複数の中間ピース2’、2”から構成された長いシャフト部分によって完全に、置き換えることを意図している。シャフト部分1*の反対側の下端には、下端ピースとして顆ピース10が配置されている。これは、天然の膝関節の顆の形と機能とを模造したもので、したがって、人工膝関節の大腿骨部分を形成している。図1および図2の両方に図示されているようなモジュール構成部品は、選択して相互に組み合わせたり、または交換したりできると理解される。このようにして、モジュール式エンドプロテーゼは、患者のそれぞれの解剖学的状況ならびに骨および関節の欠損に適応させることが可能である。
【0029】
端部ピース3およびその多孔質の表面造形部6のより詳細な説明のために、ここで、特に図3aおよび図3bを参照する。ここで、上部領域中の外側面38に、支持体31の表面に多孔質面造形部6が設けられていることがわかる、この際、この多孔質面造形部6は、外側面38から、前面にも後面にも伸長している。したがって、この多孔質表面造形部6は、前面3への移行部および後面37への移行部を超えて半殻状に伸張している。したがって、端部ピース3の中心軸30に対して、多孔質造形部6は、約160°の周方向角度αにわたって伸張している。この際、正確な値はそれほど重要ではなく、むしろこの多孔質造形部6が全周にわたっていないこと、すなわち角度αが360°よりも明らかに小さく、好ましくは最大で200°または最大で180°であるという点が重要である。残りの角度範囲では、表面6’は別の造形を有し、すなわち図示した実施形態中では閉じて滑らかである。
【0030】
多孔質造形部6は、端部ピース3の支持体31のほぼ上半分中にある。この多孔質造形部6は、軟部組織用の、それも特に具体的には中臀筋(不図示)に生着するための規定された起点を形成している。この多孔質造形部6のおかげで、筋肉は多孔質造形部6でマークされた面で正確に生着でき、他の領域中では生着しない。このようにして、モジュール式エンドプロテーゼへの筋肉の繋ぎ止めが正確に達成されるのである。これによって、望まない箇所での生着を効果的に防ぐことができる。
【0031】
図4中に、多孔質造形部6の例示的な構造を模式的に示す。本実施形態では、多孔質造形部6は、オープンセル型の多孔質格子構造体として形成されている。これは、付加方法(3D印刷)、例えばEBMによって製造された構造体によって形成され、この構造体は、規則的に配置された複数の単位胞4を具備する。この図示した実施形態では、単位胞4がそれぞれ内部空間40と相互に連結された複数のバー41、42、43、44とを有するように形成されている。これによって、オープンセル型構造体が作られ、これは、一方では、多数の相互に連結された空洞40のおかげで、良好な浸透性が確保され、他方では、多くのアンダーカットが存在するおかげで、強固および堅牢な固定に役立ち、この点は、特に力を伝達する筋肉組織への繋ぎ止めの際に著しい利点となる。さらに、多孔質格子構造体6には、成長促進被覆部45を設けることができる。合目的な場合、この被覆部は個々の単位胞4中、すなわち様々なバー41、42、43、44上にも配置され、それもオープンセル型多孔質造形部6の深部中にも配置されている。これによって、さらに内殖挙動を有利にし、したがって患者を再び迅速で信頼性をもって可動化できる。
【0032】
図3a)および図3b)からさらに分かるように、多孔質造形部6は、好ましくは、さらに支持体31の上面上に追加的に部分的に伸長するが、しかし引き続き上面の外側領域中においてのみ伸張する。これに反して、支持体31の下部領域、好ましくは幅が先細りになっている支持体3の下3分の1は、好ましくは多孔質造形部6が全周にわたって完全にないままである。
【0033】
内殖挙動をさらに改善するために、好ましくは、外側38に平坦部39が設けられている(図3bの太い点線により強調された領域を参照)。これによって、この場所に、より平坦な構造が作られ、これは、筋肉組織が面積的に広く生着するのに特に好都合で状況が提供される。ここで、「平坦」とは、湾曲がない、またはわずかな湾曲のみがあることであると理解され、その曲率半径Rが、支持体31の前面から後面までの距離dの好ましくは少なくとも2倍であると理解される。これに対し、外側の平坦部39から前面へまたは後面へ移行する領域中では、支持体31は、より丸みを帯びるように実施されていて、かつ最大でも距離dの半分またはそれ以下、特に距離dの1/4より小さい曲率半径rを有する。
【0034】
さらに、支持体31の外側領域中で中心軸30に対して横断するように、1つまたは複数の伸張する貫通孔8が配置されていることができ、これらの貫通孔は、多孔質造形部6の領域中で開いている。ここで、これらの貫通孔のそれぞれの口80は、これを中庭のように囲む縁取り部81によって取り囲まれている。この領域中では、表面が閉じていて、つまり多孔質ではない。
【0035】
モジュール式エンドプロテーゼ用のさらなる1つの合目的である補助部品を図5に示す。この図は、交換用中間ピース2*を示している。これは、実質的には図1および図2に示した中間ピース2と同様の造形であり、これと同様に円錐形の差し込み連結部5を有する。しかし、中間ピース2とは異なり、交換用中間ピース2*は、その表面にも多孔質造形部6が設けられている。これは、多孔質造形部6に相応するように構築されているが、しかし交換用中間ピース2*の外被面の全周を覆っている。これによって、医学的適応により、軟部組織の生着にとって好都合な状況が求められる場合に、必要に応じて採用されうるモジュール式エンドプロテーゼの交換用ピースが利用可能になる。これによって、このモジュール型エンドプロテーゼの応用範囲は広がる。

図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
【国際調査報告】