(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】優れた表面平坦性を有するポリイミド系フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221114BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C08J5/18
C08G73/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517476
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 KR2020012351
(87)【国際公開番号】W WO2021060752
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0119681
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0080938
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジョン ウォン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
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(57)【要約】
本発明は、ポリイミド系フィルム及びその製造方法に関し、より詳細には、1.55以下の低いKc値を有することにより、優れた表面平坦性を有し、ウエビネス(waviness)の発生が抑えられたポリイミド系フィルム及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.55以下のKc値を有するポリイミド系フィルム:
前記Kc値は、位相段階変形測定法(phAse stepped deflectOmetry,PSD)により、前記ポリイミド系フィルムに形成された1.0~3.0mmの波長(wavelength)範囲を有するウエビネス(waviness)に対して測定された曲率媒介変数である。
【請求項2】
1.45以下のKc値を有する、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項3】
1.10~1.45のKc値を有する、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項4】
二無水物及びジアミンを含むモノマー成分から製造される、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項5】
前記二無水物は、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO
2DPA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(6HBDA)、シクロブタン二無水物(CBDA)、シクロペンタン二無水物(CPDA)、シクロヘキサン二無水物(CHDA)及びビシクロヘキサン二無水物(HBPDA)から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項4に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項6】
前記ジアミンは、オキシジアニリン(ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mmDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33-6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)及びビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン(F-FDA)から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項4に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項7】
前記モノマー成分は、ジカルボニル化合物をさらに含む、請求項4に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項8】
前記ジカルボニル化合物は、芳香族ジカルボニル化合物及び脂肪族ジカルボニル化合物のうちの少なくとも一つを含む、請求項7に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項9】
前記芳香族ジカルボニル化合物は、下記化学式1で表される、請求項8に記載のポリイミド系フィルム。
[化学式1]
ここで、R
1は、単一結合、*-Ar-*、*-O-Ar-*、*-CAL-*、又は*-O-CAL-*であり、X
1とX
2は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基(OH)又はハロゲン元素を表し、X
3は、水素又はハロゲン元素を表し、前記「Ar」は、置換又は非置換のアリーレン基を表し、前記CALは、脂環族基(cycloaliphatic group)を表す。
【請求項10】
前記芳香族ジカルボニル化合物は、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物、下記化学式5で表される化合物、下記化学式6で表される化合物、下記化学式7で表される化合物、下記化学式8で表される化合物、及び下記化学式9で表される化合物のうち少なくとも一つを含む、請求項8に記載のポリイミド系フィルム。
[化学式3]
[化学式4]
[化学式5]
[化学式6]
[化学式7]
[化学式8]
[化学式9]
【請求項11】
前記脂肪族ジカルボニル化合物は、下記化学式10で表される化合物、下記化学式11で表される化合物、下記化学式12で表される化合物、及び下記化学式13で表される化合物のうち少なくとも一つを含む、請求項8に記載のポリイミド系フィルム。
[化学式10]
[化学式11]
[化学式12]
[化学式13]
【請求項12】
厚み80μmを基準として、
2.0以下のヘイズ(Haze);
380~780nmの波長で87%以上の平均光学透過度;及び
5.0以下の黄色度;を有する、請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
【請求項13】
二無水物及びジアミンを含むモノマー成分を用いて液状の樹脂組成物を製造する段階;
前記液状の樹脂組成物を用いてゲル状のフィルムを製造する段階;及び
前記ゲル状のフィルムを50~150℃の温度で1.0m/s以下の風速にて2~20分間一次乾燥させる段階;を含み、
前記一次乾燥させる段階において、乾燥温度をA℃、風速をBm/s、一次乾燥時間をT分(minute)とするとき、下記の式1及び式2による乾燥係数条件を満たす、ポリイミド系フィルムの製造方法。
[式1]
0.5≦[(A-40)×B×T]/100≦10
[式2]
2≦[(A -40)×T]/100≦10
【請求項14】
前記モノマー成分は、ジカルボニル化合物をさらに含む、請求項13に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記液状の樹脂組成物は、1,000~250,000cPsの粘度を有する、請求項13に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記一次乾燥させる段階において、前記風速は0.2m/s以上である、請求項13に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記一次乾燥させる段階後に、前記ゲル状のフィルムを70~140℃で1.0~5.0m/sの風速にて二次乾燥させる段階をさらに含む、請求項13に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記二次乾燥させる段階後に、前記ゲル状のフィルムを100~500℃の温度で1分~1時間の間、一次熱処理する段階をさらに含む、請求項17に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記ゲル状のフィルムを製造する段階は、
前記液状の樹脂組成物を支持体上にキャスティングする段階を含む、請求項13に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記液状の樹脂組成物を製造する段階は、
前記モノマー成分を第1溶媒の存在下で反応させて第1重合体溶液を製造する段階;
前記第1重合体溶液に第2溶媒を投入し、濾過及び乾燥させて重合体固形分を製造する段階;及び
前記重合体固形分を第3溶媒に溶解する段階;
を含む、請求項13に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
【請求項21】
請求項13~20のいずれか一項による製造方法で製造されたポリイミド系フィルム。
【請求項22】
請求項1~12のいずれか一項によるポリイミド系フィルムを含む電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた表面平坦性を有するポリイミド系フィルム及びその製造方法に関し、低いKc値を有することにより、ウエビネス(waviness)の発生が抑えられたポリイミド系フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド(PI)系樹脂は、高耐熱性、耐酸化性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などの特徴を有するので、電子製品、半導体、自動車、航空機、宇宙船などに広く使用されており、光ファイバー、表示装置、透明電極フィルムの他、表示装置のカバーウィンドウにも使用されている。
【0003】
近年、ポリイミド系樹脂の光学的特性を向上させるための研究が進み、機械的特性及び熱的特性が大きく低下することなく、優れた光学特性を有するポリイミド系樹脂が開発されている。
【0004】
優れた機械的特性、熱的特性及び光学的特性を有するポリイミド系樹脂により製造されたポリイミド系フィルムは、様々なフレキシブル製品に使用されており、ガラスの代替材として使用するための研究が行われている。例えば、表示装置のカバーウィンドウ又は保護素材としてポリイミド系フィルムを使用するための研究が行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施例は、優れた表面平坦性(evenness)を有するポリイミド(PI)系フィルムを提供しようとする。
【0006】
本発明の他の実施例は、低いKc値を有することにより、波紋の発生が抑えられ、優れた表面平坦性を有するポリイミド(PI)系フィルムを提供しようとする。
【0007】
本発明のさらに他の実施例は、優れた表面平坦性を有するポリイミド(PI)系フィルムを製造する方法を提供しようとする。
【0008】
本発明のさらに他の実施例は、乾燥条件を制御することにより、低いKc値を有するポリイミド(PI)系フィルムを製造する方法を提供しようとする。
【0009】
本発明のさらに他の実施例は、波紋の発生が抑えられたポリイミド(PI)系フィルムを製造する方法を提供しようとする。
【0010】
本発明のさらに他の実施例は、低いKc値を有することにより、優れた表面平坦性を有する、ポリイミド(PI)系フィルムを含む電子機器を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施例は、1.55以下のKc値を有するポリイミド系フィルムを提供する。前記Kc値は、位相段階変形測定法(phase stepped deflectometry、PSD)により、1.0~3.0mmの波長(wavelength)範囲を有するウエビネス(waviness)に対して測定された曲率媒介変数である。
【0012】
前記ポリイミド系フィルムは、1.45以下のKc値を有してよい。
【0013】
前記ポリイミド系フィルムは、1.10~1.45のKc値を有してよい。
【0014】
前記ポリイミド系フィルムは、二無水物(dianhydride)及びジアミンを含むモノマー成分から製造されてよい。
【0015】
前記二無水物は、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(6HBDA)、シクロブタン二無水物(CBDA)、シクロペンタン二無水物(CPDA)、シクロヘキサン二無水物(CHDA)及びビシクロヘキサン二無水物(HBPDA)から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。
【0016】
前記ジアミンは、オキシジアニリン(ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mmDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33-6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)及びビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン(F-FDA)から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。
【0017】
前記モノマー成分は、ジカルボニル化合物をさらに含んでよい。
【0018】
前記ジカルボニル化合物は、芳香族ジカルボニル化合物及び脂肪族ジカルボニル化合物のうち少なくとも一つを含んでよい。
【0019】
前記芳香族ジカルボニル化合物は、下記化学式1で表されてよい。
【0020】
【0021】
ここで、R1は、単一結合、*-Ar-*、*-O-Ar-*、*-CAL-*、又は*-O-CAL-*であり、X1とX2は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基(OH)又はハロゲン元素を表し、X3は、水素又はハロゲン元素を表す。ここで、前記「Ar」は、置換又は非置換されたアリーレン基(arylene groups)を表し、前記CALは、脂環族基(cycloaliphatic group)を表す。
【0022】
前記芳香族ジカルボニル化合物は、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物、下記化学式5で表される化合物、下記化学式6で表される化合物、下記化学式7で表される化合物、下記化学式8で表される化合物、及び下記化学式9で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでよい。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
前記脂肪族ジカルボニル化合物は、下記化学式10で表される化合物、下記化学式11で表される化合物、下記化学式12で表される化合物、及び下記化学式13で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでよい。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
前記ポリイミド系フィルムは、厚み80μmを基準として、2.0以下のヘイズ(Haze)、380~780nmの波長における87%以上の平均光学透過度、及び5.0以下の黄色度を有してよい。
【0036】
本発明の他の実施例は、二無水物及びジアミンを含むモノマー成分を用いて液状の樹脂組成物を製造する段階、前記液状の樹脂組成物を用いてゲル状のフィルムを製造する段階、及び前記ゲル状のフィルムを50~150℃で1.0m/s以下の風速で2~20分間一次乾燥させる段階を含み、前記一次乾燥させる段階において、乾燥温度をA℃、風速をBm/s、一次乾燥時間をT分(minute)とするとき、下記の式1及び式2による乾燥係数条件を満たす、ポリイミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0037】
[式1]
0.5≦[(A-40)×B×T]/100≦10
【0038】
[式2]
2≦[(A-40)×T]/100≦10
【0039】
前記モノマー成分は、ジカルボニル化合物をさらに含んでよい。
【0040】
前記液状の樹脂組成物は、1,000~250,000cPsの粘度を有してよい。
【0041】
前記ポリイミド系フィルムの製造方法は、前記一次乾燥させる段階の後に、前記ゲル状のフィルムを70~140℃で1.0~5.0m/sの風速で二次乾燥させる段階をさらに含んでよい。
【0042】
前記ポリイミド系フィルムの製造方法は、前記二次乾燥させる段階の後に、前記ゲル状のフィルムを100~500℃の温度で1分~1時間、一次熱処理する段階をさらに含んでよい。
【0043】
前記ゲル状のフィルムを製造する段階は、前記液状の樹脂組成物を支持体上にキャスティングする段階を含んでよい。
【0044】
前記液状の樹脂組成物を製造する段階は、前記モノマー成分を第1溶媒の存在下で反応させて第1重合体溶液を製造する段階、前記第1重合体溶液に第2溶媒を投入し、濾過及び乾燥させて重合体固形分(固形粉)を製造する段階、及び前記重合体固形分を第3溶媒に溶解する段階を含んでよい。
【0045】
本発明のさらに他の実施例は、前記製造方法で製造されたポリイミド系フィルムを提供する。
【0046】
本発明のさらに他の実施例は、前記ポリイミド系フィルムを含む電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0047】
本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムの製造過程で乾燥条件が制御されることによって低いKc値を有するポリイミド系フィルムを製造することができる。本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムは、低いKc値を有し、ウエビネス(waviness)の発生が抑えられるので、優れた表面平坦性を有することができる。
【0048】
本発明の一実施例によって製造され、低いKc値及び優れた表面平坦性を有するポリイミド系フィルムは、ガラスのような表面特性を有するので、ガラスの代替材として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】フィルムのイメージ投影方法を示す概略図である。
【
図2】イメージ投影方法によって得られた投影イメージの例示である。
【
図3】本発明の一実施例に係るフィルムの投影イメージである。
【
図4】比較例に係るフィルムの投影イメージである。
【
図5】表面粗さ(surface roughness)、ウエビネス(waviness)及び形状(form)を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。但し、下記で説明される実施例は、本発明の明確な理解を助けるための例示的目的で提示されるものであり、本発明の範囲を制限しない。
【0051】
本発明の実施例を説明するための図面に開示された、形状、大きさ、比率、角度、個数などは例示的なものであり、本発明は、図面に示された事項に限定されるものではない。明細書の全体を通じて同一の構成要素は同一の参照符号でもって表示されてよい。また、本発明を説明するに当たって、関連する公知技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を不必要にぼやけさせる恐れがあると判断される場合に、その詳細な説明を省略する。
【0052】
本明細書で言及された「含む」、「有する」、「行われる」などが使用される場合に、「~のみ」という表現が使用されない限り、他の部分が追加されてよい。構成要素が単数で表現された場合に、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む。また、構成要素を解釈するにあたり、特に明示的な記載がなくても、誤差の範囲を含むものとして解釈する。
【0053】
位置関係についての説明では、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」「~側に」などで二つの部分の位置関係が説明される場合に、「直に」又は「直接」という表現が使用されない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置してもよい。
【0054】
空間的に相対的な用語である「下(below,beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは、図示のように、一つの素子又は構成要素と、他の素子又は構成要素との相関関係を容易に記述するために使用されてよい。空間的に相対的な用語は、図面に示されている方向に加え、使用時又は動作時に素子の異なる方向を含む用語として理解されるべきである。例えば、図面に示されている素子を裏返すと、他の素子の「下(below)」又は「下(beneath)」と記述された素子は、他の素子の「上(above)」に置かれ得る。したがって、例示的な用語である「下」は、下と上のいずれの方向も含み得る。これと同様に、例示的な用語である「上」又は「上部」は、上と下のいずれの方向をも含んでもよい。
【0055】
時間関係についての説明において、例えば、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などで時間的前後関係が説明される場合に、「直に」又は「直接」という表現が使用されない限り、連続していない場合も含んでよい。
【0056】
第1、第2などが様々な構成要素を叙述するために使用されるが、これらの構成要素はこれらの用語によって制限されない。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。したがって、以下で言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想内で第2構成要素であってもよい。
【0057】
「少なくとも一つ」という用語は、一つ以上の関連項目から提示可能なあらゆる組み合わせを含むものとして理解されるべきである。例えば、「第1項目、第2項目及び第3項目のうち少なくとも一つ」との意味は、第1項目、第2項目又は第3項目のそれぞれの他に、第1項目、第2項目及び第3項目のうちの2個以上から提示可能なあらゆる項目の組み合わせも意味できる。
【0058】
本発明の様々な実施例のそれぞれの特徴が、部分的又は全体的に互いに結合又は組み合わせ可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であって、各実施例が互いに独立して実施されてもよく、関連関係で共に実施されてもよい。
【0059】
本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムは、1.55以下のKc値を有する。ここで、Kc値は、位相段階変形測定法(phase stepped deflectometry;PSD)により、1.0~3.0mmの波長(wavelength)範囲で測定された曲率媒介変数(曲率パラメータ)である。Kc値は、本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムにおけるウエビネス(waviness)の程度を示す。
【0060】
本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムは、二無水物(ジアンヒドリド)及びジアミンを含むモノマー成分から製造されてよい。
【0061】
本発明の一実施例において、「モノマー成分」は、ポリイミド系フィルムの製造に使用される複数のモノマー全体を指すことができる。モノマー成分は、混合された状態であってもよく、モノマー成分に含まれたそれぞれのモノマーが順次に混合されてもよい。
【0062】
本発明の一実施例によれば、二無水物は、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(6HBDA)、シクロブタン二無水物(CBDA; cyclobutane dianhydride)、シクロペンタン二無水物(CPDA)、シクロヘキサン二無水物(CHDA; cyclohexane dianhydride)及びビシクロヘキサン二無水物(HBPDA; bicyclohexane dianhydride)から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。二無水物として、前記説明された化合物が単独で使用されてもよく、2種以上の化合物が混合されて使用されてもよい。
【0063】
前記ジアミンは、オキシジアニリン(ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mmDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33-6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)及びビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン(F-FDA)から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。ジアミンとして、前記説明された化合物が単独で使用されてもよく、2種以上の化合物が混合されて使用されてもよい。
【0064】
二無水物及びジアミンを含むモノマーによって製造されるポリイミド系フィルムは、イミド反復単位を有するポリイミド系フィルムであってよい。ただし、本発明に係るポリイミド系フィルムがこれに限定されるものではない。
【0065】
本発明の一実施例によれば、モノマー成分は、ジカルボニル化合物をさらに含んでよい。モノマー成分が、二無水物及びジアミンに加え、ジカルボニル化合物をさらに含む場合に、ポリイミド系フィルムは、イミド反復単位とアミド反復単位を有するポリアミド-イミド共重合体構造を有してよい。
【0066】
ポリアミド-イミド共重合体構造を有するフィルムは、イミド反復単位を有するので、本発明の一実施例では、ポリアミド-イミド共重合体構造を有するフィルムもポリイミド系フィルムと称する。したがって、本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムは、ポリイミドフィルムであってもよく、ポリアミド-イミドフィルムであってもよい。
【0067】
本発明の一実施例によれば、ジカルボニル化合物は、芳香族ジカルボニル化合物及び脂肪族ジカルボニル化合物のうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0068】
本発明の一実施例に係る芳香族ジカルボニル化合物は、下記化学式1で表されてよい。
【0069】
【0070】
化学式1において、R1は、単一結合、*-Ar-*、*-O-Ar-*、*-CAL-*、又は*-O-CAL-*であり、X1とX2は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基(-OH)又はハロゲン元素を表し、X3は、水素又はハロゲン元素を表す。ここで、「Ar」は、置換又は非置換されたアリーレン基(arylene groups)を表し、前記CALは、脂環族基(cycloaliphatic group)を表す。
【0071】
アリーレン基として、例えば、下記化学式2で示されるフェニレン基がある。
【0072】
【0073】
本発明の一実施例によれば、非置換のアリーレン基として、例えば、化学式2で示されるフェニレン基がある。
【0074】
また、置換されたアリーレン基として、例えば、ベンゼン環の水素(H)がハロゲン元素に置換されたフェニレン基がある。さらに具体的に、置換されたアリーレン基として、ベンゼン環の水素(H)が塩素(Cl)に置換されたクロロフェニレン基がある。
【0075】
化学式1において、X1及びX2のうちの少なくとも一つは、ハロゲン元素であってよく、ハロゲン元素は、塩素(Cl)原子であってよい。また、X3は、水素(H)又は塩素(Cl)であってよい。
【0076】
本発明の一実施例に係る芳香族ジカルボニル化合物は、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物、下記化学式5で表される化合物、下記化学式6で表される化合物、下記化学式7で表される化合物、下記化学式8で表される化合物、及び下記化学式9で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでよい。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
本発明の一実施例によれば、芳香族ジカルボニル化合物は、例えば、テレフタロイルクロリド(TPC)(化学式3)、テレフタル酸(terephthalic acid,TPA)(化学式4)、イソフタロイルジクロリド(IPC)(化学式5)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride,BPDC)(化学式6)、4,4'-オキシビスベンゾイルクロリド(4,4'-oxybisbenzoyl chloride,ODBC)(化学式7)及び2-クロロテレフタロイルジクロリド(2-chloroterephthaloyl dichloride)のうちの少なくとも一つを含んでよい。
【0085】
また、本発明の一実施例に係る脂肪族ジカルボニル化合物として、指環族ジカルボニル化合物がある。脂肪族ジカルボニル化合物は、下記化学式10で表される化合物、下記化学式11で表される化合物、下記化学式12で表される化合物、及び下記化学式13で表される化合物のうち少なくとも一つを含んでよい。下記化学式10~化学式13で表される化合物を、指環族化合物と呼ぶこともできる。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
本発明の一実施例によれば、ジカルボニル化合物として、前記説明された化合物が単独で使用されてもよく、2種以上が混合されて使用されてもよい。
【0091】
本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムは、1.55以下のKc値を有する。Kc値は、位相段階変形測定法(phase stepped deflectometry;PSD)により、ポリイミド系フィルムに形成された1.0~3.0mmの波長(wavelength)範囲を有するウエビネス(waviness)に対して測定された曲率媒介変数である。
【0092】
本発明の一実施例によれば、Kc値は、ポリイミド系フィルムに形成された1.0~3.0mmの波長を有するウエビネス(waviness)の程度を示す。
【0093】
ウエビネス(waviness)は、波状度又は波紋屈曲(うねり)とも呼ぶ。
【0094】
以下、
図5を参照して、ウエビネス(waviness)を説明する。
【0095】
図5は、表面粗さ(surface roughness)、ウエビネス(waviness)及び形状(form)を説明するための断面図である。
【0096】
図5の(A)のような断面プロファイルを有する物体があるとすれば、
図5の(A)の表面において最小の間隔で現れる微細な屈曲によって決定されるのが、(B)で表現される表面粗さ(surface roughness)であり、表面粗さ(B)の間隔よりも大きい間隔で現れる表面の屈曲が、(C)で表現されるウエビネス(waviness)であり、ウエビネス(waviness)(C)の間隔よりも大きい間隔で現れる、物体の巨視的な外観が、(D)で表現される形状(form)である。
【0097】
具体的に、
図5の(B)で表現される表面粗さ(surface roughness)は、
図5の(A)で示されている断面において、微細な屈曲に沿って仮想の中心線を設定し、仮想の中心線を一直線に伸ばしたとき、一直線に伸びた仮想の中心線を中心にして描かれる微細な屈曲を表現したものである。
図5の(B)で表現される表面粗さにおいて、微細な屈曲の間隔は数μm~数十μm程度であってよい。
【0098】
図5の(C)で表現されるウエビネス(waviness)は、表面粗さ(B)の間隔よりも大きい間隔で現れる表面の屈曲を、仮想の一直線を中心にして表現したものである。
図5の(C)で表現されるウエビネス(waviness)において、屈曲の間隔は数百μm~数cm程度であってよい。
【0099】
本発明の一実施例によれば、屈曲の間隔を「波長(λ)」という。
図5の(C)に示されたウエビネス(waviness)は、数百μm~数cm程度の波長(λ)を有してよい。
【0100】
本発明の一実施例によれば、Kc値は、1.0~3.0mmの波長(wavelength)を有するウエビネス(waviness)に対して測定された屈曲媒介変数である。本発明の一実施例に係るKc値は、ポリイミド系フィルムに形成された1.0~3.0mmの波長(λ)範囲のウエビネス(waviness)の程度を評価する。
【0101】
一般に、人間の最適可視距離は、30~40cm程度であり、人間の目は、30~40cm程度の可視距離にて1~3mmの間隔を有する屈曲に対して、高い解像度を有する。したがって、表示装置の表面に1~3mmの波長を有する屈曲であるウエビネス(waviness)が形成されている場合、このようなウエビネス(waviness)は、人間の目に非常に容易に視認される。また、このようなウエビネス(waviness)は、画面(画像)の歪みをもたらす。
【0102】
本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムのKc値を1.55以下に調整することにより、人間の目に視認される屈曲を最小化することができる。また、本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムが、表示装置のカバーウィンドウとして使用される場合、使用者の目に視認される屈曲が最小化し、画面(画像)の歪みも最小化し得る。
【0103】
本発明の一実施例によれば、Kc値は、ローポイント社(Rhopoint instruments,英国)のOptimapTMPSDにより測定される。
【0104】
本発明の一実施例によれば、Kc値の測定のために、ローポイント社(Rhopoint instruments,英国)のOptimapTMPSDが利用され、OptimapTMPSDのプログラムによってKc値が数値化される。本発明の一実施例によれば、位相段階変形測定法(Phase stepped Deflectometry,PSD)によって、測定対象の表面に対する曲率(K)及びプロファイルが測定されるのであり、この際、サイン波形の周期的なパターンが用いられる。
【0105】
ポリイミド系フィルムのKc値が小さいということは、ポリイミド系フィルムの表面の各地点における曲率の変化が小さいものと解釈されてよい。曲率の変化が小さいということは、波紋のように周期的に変わるパターンが少ないと解釈されてよく、よって、Kc値が小さい場合に、Kc値が大きい場合に比べて、ポリイミド系フィルムが、より平坦であるということができる。
【0106】
本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムは、1.55以下のKc値を有する。ポリイミド系フィルムが1.55以下のKc値を有する場合に、ウエビネス(waviness)のような表面屈曲が少なく、優れた平坦性を有する。このようなポリイミド系フィルムが表示装置のカバーウィンドウとして使用される場合、画面の歪みが発生しない。1.55以下のKc値を有するポリイミド系フィルムが、表示装置のカバーウィンドウとして使用されると、通常の視力を有する使用者にとっては、表示画面から波紋が認識されないといえる。
【0107】
ポリイミド系フィルムのKc値が小さくなるほど、ポリイミド系フィルムの平坦性が向上し得る。例えば、本発明の他の実施例によれば、ポリイミド系フィルムは、1.45以下のKc値を有し得る。ポリイミド系フィルムのKc値が1.45以下である場合は、人間の目に認識可能なウエビネス(waviness)が、ポリイミド系フィルムに殆ど発生していない状態であるといえる。
【0108】
一方、Kc値が1.10以下であるポリイミド系フィルムを製造するには、乾燥条件が必要以上に厳しくなり、製品の生産性が低下しうる。
【0109】
そのため、本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムのKc値を1.10~1.55の範囲に調整することができる。より具体的に、本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムは1.10~1.45のKc値を有することもできる。
【0110】
本発明の一実施例によれば、Kc値は下記の方法で測定できる。
【0111】
<Kc値の測定方法>
- 測定機器:ローポイント社のOptimapTM(PSD)
【0112】
- 光学的モード(Mode):Extradull
【0113】
- ディスプレイモード(Display Mode):Curvature Mode(X+Y Scan)、
【0114】
- 曲率モードK:1.0~3.0mmの波長(wavelength)範囲
【0115】
- 測定方法:暗室にて定盤(surface plate)上に、黒色の無光沢ペーパーシートを配置し、その上に測定対象のサンプルをきちんと据え置いた後、Kc値を10回測定し、その平均値を当該サンプルのKc値として使用する。
【0116】
- フィルムサンプル:10μm以上、より具体的に、50μm以上の厚みを有するフィルムを使用し、フィルムの厚み偏差が±2%以内のものを使用する。厚み偏差がこれから外れると、厚み偏差によってKc値が歪曲されうる。本発明の実施例では、Kc測定のために、横15cm×縦15cm×厚み80μmのポリイミド系フィルムのサンプルが使用される(厚み偏差±2%)。
【0117】
- その他:顕微鏡で測定時に、50μm以上の異物が0.005個/cm2以下。
【0118】
本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムは、様々な厚みを有してよい。ポリイミド系フィルムは、例えば10~250μmの厚みを有してよく、より具体的に、10~100μmの厚みを有してよい。
【0119】
また、本発明のポリイミド系フィルムは、優れた光学的特性を有する。例えば、本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムは、フィルム厚80μmを基準として、2.0%以下のヘイズ(Haze)、380~780nmの波長での87%以上の光学透過度、
及び5.0以下の黄色度を有することができる。より具体的に、本発明の一実施例によれば、厚み80μmを基準として、ポリイミド系フィルムは0.2~0.3%のヘイズ(Haze)を有してよい。
【0120】
このように、本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムは、1.55以下のKc値を有することにより、優れた表面特性を有する他、優れた光学的特性をも有することができる。これにより、本発明に係るポリイミド系フィルムは、表示装置のカバーウィンドウ、透明保護フィルム、光拡散板、液晶配向膜として使用されてよく、ハードコーティングフィルムの基材フィルムとして使用されてもよく、フレキシブルディスプレイの基板(substrate)として使用されてもよい。
【0121】
また、本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムは、例えば、ガラスの代替材として使用されてよい。
【0122】
ポリイミド系フィルムがガラスを代替するためには、ポリイミド系フィルムが、優れた光学的特性を有する他にも、優れた表面特性を有する必要がある。優れた表面特性の条件としては、例えば、均一な厚み、表面平坦性、低い表面粗さなどがある。ここで、表面平坦性は、表面にシワや屈曲がない又は非常に少ない場合を含む。
【0123】
ポリイミド系フィルムの表面特性、特に表面の均一性が優れていない場合、ポリイミド系フィルムを通過する光が歪められうる。その結果、ポリイミド系フィルムを通して表示される画面(画像)に歪みが発生しうる。
【0124】
ポリイミド系フィルムを通して表示される画面(画像)に対する歪みは、
図1に示すように、暗い環境でポリイミド系フィルムに光を透過させた際の、平らな表面に投影されたイメージによって確認することができる。
【0125】
具体的に、
図1は、フィルムのイメージ投影方法を示す概略図であり、
図2は、イメージ投影方法によって得られた投影イメージ50の例示である。
【0126】
図1を参照すると、光源10から照射された光20が、投影対象のフィルム30を通過し、平らな表面40に照射されることで、投影イメージ50が形成される。
【0127】
平らな表面50に投影された投影イメージ50が奇麗であり、イメージに陰影のばらつきがないならば、投影対象フィルム30が平坦であり、ウエビネス(waviness)などがないということを意味する。一方、
図2に示すように、投影されたイメージに陰影のばらつきがある場合は、投影対象のフィルム30が平坦でなく、イメージの歪みが発生し得ることを意味する。
【0128】
ポリイミド系フィルムのウエビネス(waviness)が大きいと、ポリイミド系フィルムを通して表示される画面に、イメージの歪みが発生しうる。
【0129】
このようなウエビネス(waviness)は、キャスティング(casting)によってポリイミド系フィルムを製造する場合に発生し得る。
【0130】
ポリイミド系樹脂によって形成された液状の樹脂組成物が、平らな基材にキャスティング(casting)された後に乾燥してポリイミド系フィルムが製造される場合、溶媒の揮発のための乾燥の過程で、ポリイミド系フィルムの平坦性が低下し、ウエビネス(waviness)が発生しうる。例えば、熱風によってポリイミド系フィルムが乾燥する過程において、熱風の強度及び熱風の印加時間に応じて、ポリイミド系フィルムにウエビネス(waviness)が発生し、ポリイミド系フィルムの平坦性が低下しうる。
【0131】
キャスティング(casting)によって形成されたゲル状のポリイミド系フィルムを乾燥させるためにゲル状のポリイミド系フィルムに印加される熱風の風速が強いと、熱風によって、ゲル状のポリイミド系フィルムに痕跡が残ることがあり、熱風の温度が高すぎると、溶媒の急速な揮発によって表面に不均一な部分が発生し得る。
【0132】
本発明の一実施例によれば、ポリイミド系フィルムの乾燥条件を最適化することにより、1.55以下のKc値を有するポリイミド系フィルムを製造することができる。
【0133】
以下、本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムの製造方法を詳細に説明する。
【0134】
本発明の一実施例に係るポリイミド系フィルムの製造方法は、二無水物及びジアミンを含むモノマー成分を用いて液状の樹脂組成物を製造する段階、液状の樹脂組成物を成形してゲル状のフィルムを製造する段階、及び、ゲル状のフィルムを50~150℃で1.0m/s以下の風速で2~20分間一次乾燥させる段階を含む。
【0135】
本発明の一実施例によれば、まず、二無水物及びジアミンを含むモノマー成分によって液状の樹脂組成物が製造される。モノマー成分は、ジカルボニル化合物をさらに含んでよい。
【0136】
二無水物、ジアミン及びジカルボニル化合物は既に説明されているので、重複を避けるため、それらに関する詳細な説明は省略する。
【0137】
モノマー成分の溶液重合を行うために第1溶媒が使用されてよい。具体的に、モノマー成分が第1溶媒の存在下で反応され、第1重合体溶液が製造されてよい。溶液重合のために、第1溶媒として有機溶媒が使用されてよい。
【0138】
第1溶媒の種類に特に制限はない。第1溶媒として、例えば、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジエチルアセトアミド(DEAc)、アセトン、エチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル(Propylene glycol monomethyl ether,PGME)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Propylene glycol monomethyl ether Acetate,PGMEA)から選ばれた少なくとも一つの溶媒が使用されてよい。その他にも、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムのような低沸点溶媒又はγ-ブチロラクトンのような低吸水性溶媒が第1溶媒として使用されてもよい。第1溶媒は、目的によって、単独で又は2種以上が混合されて使用されてよい。
【0139】
第1溶媒の含量に特に制限はない。第1溶媒は、第1重合体溶液の全重量に対して50~95重量%の含量を有してよい。より具体的に、第1溶媒は、第1重合体溶液の全重量に対して70~90重量%の含量を有してよい。
【0140】
モノマー成分がジカルボニル化合物を含まない場合、二無水物のモル量とジアミンのモル量が互いに同一となるように調整されてよい。
【0141】
モノマー成分がジカルボニル化合物を含む場合、二無水物とジカルボニル化合物との混合のモル量は、ジアミンモル量と同一になるように調整されてよい。
【0142】
モノマー成分を用いて液状の樹脂組成物を製造する段階に適用される方法に、特に制限はない。ここで、液状の樹脂組成物は、液状のポリイミド系樹脂組成物ということができる。
【0143】
本発明の一実施例によれば、液状の樹脂組成物を製造する段階は、モノマー成分を第1溶媒の存在下で反応させて第1重合体溶液を製造する段階、第1重合体溶液に第2溶媒を投入し、濾過及び乾燥させて重合体固形分の粉末を製造する段階、及び重合体固形分の粉末を第3溶媒に溶解する段階を含むことができる。
【0144】
ただし、本発明の一実施例がこれに限定されるものではなく、二無水物及びジアミンを含むモノマー成分を用いてポリアミド酸を製造した後、熱硬化を行うことで、ポリイミド系樹脂組成物を製造することもできる。また、ポリアミド酸は、ポリイミド系の重合体溶液に化学硬化剤を添加した後、第2溶媒を使用する濾過工程を省き、直ちにフィルム状のポリイミド系フィルムを形成(製膜)することも可能である。
【0145】
液状の樹脂組成物の製造のために、まず、モノマー成分が重合され、第1重合体溶液が製造される。第1重合体溶液は、ポリアミド酸(ポリアミック酸)の溶液を含むことができる。ここで、反応条件に特に制限はない。反応温度は、例えば、-10~80℃の範囲に調整され、反応時間は2~48時間に調整されてよい。第1重合体溶液を製造する段階は、アルゴン又は窒素などの不活性気体雰囲気で行われてよい。
【0146】
次に、第1重合体溶液に対するイミド化過程が行われてよい。この際、第1重合体溶液に含まれたポリアミド酸がイミド化されてよい。
【0147】
イミド化のために、熱イミド化法、化学イミド化法、又は熱イミド化法及び化学イミド化法を併用する方法が適用されてよい。
【0148】
本発明の一実施例によれば、化学イミド化法が適用されてよい。化学イミド化法は、第1重合体溶液に酢酸無水物などといった脱水剤と、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジン又は三級アミンといったイミド化触媒を適用させる方法である。
【0149】
化学イミド化法に熱イミド化法が併用されてもよい。
【0150】
熱イミド化法と化学イミド化法が併用される場合、第1重合体溶液に脱水剤及びイミド化触媒を投入し、20~180℃で1~12時間加熱することで、イミド化を行うことができる。
【0151】
次に、第1重合体の溶液に第2溶媒が投入され、濾過及び乾燥することで、重合体の固形粉が製造される。
【0152】
本発明の一実施例によれば、第2溶媒は、ポリイミド樹脂の固形粉(固形分)を得るために使用される。このため、第2溶媒として、第1重合体溶液に含まれたポリアミド酸を溶解できない溶媒が使用されうるのであり、溶解度の差によってポリイミド系重合体の固形粉が析出されうる。
【0153】
第2溶媒として、第1溶媒に比べて極性の低い溶媒が使用されてよい。第2溶媒として、例えば、水、アルコール類、エーテル類及びケトン類から選ばれた1種以上が使用されてよい。
【0154】
第2溶媒の含量に、特に制限があるわけではない。第1重合体の溶液に含まれたポリアミド酸の重量に対して5~20倍の重量の第2溶媒が使用されてよい。
【0155】
得られた重合体固形粉を濾過後に乾燥させる条件は、第2溶媒及び重合体固形粉内に残存する第1溶媒の沸点を考慮して決定される。例えば、重合体固形粉は50~150℃の温度で2~24時間乾燥してよい。
【0156】
次に、重合体固形粉が第3溶媒に溶解され、液状の樹脂組成物が製造される。液状の樹脂組成物をポリイミド系樹脂組成物と呼ぶこともできる。
【0157】
本発明の一実施例によれば、第3溶媒は、第1溶媒と同一であってよい。したがって、第3溶媒として、例えば、m-クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジエチルアセトアミド(DEAc)、アセトン、エチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル(Propylene glycol monomethyl ether,PGME)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Propylene glycol monomethyl ether Acetate,PGMEA)から選ばれた少なくとも一つの溶媒が使用されてよい。
【0158】
このように製造された液状の樹脂組成物は、100~300,000cPsの粘度を有してよい。液状の樹脂組成物の粘度が100cPs未満であると、液状の樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形することに困難があり得るのであり、低い分子量のために、キャスティングによって形成されたフィルムをキャスティング基材から剥離し難くなる。一方、液状の樹脂組成物の粘度が300,000cPsを超えると、高い粘度のために、キャスティング過程に印加される圧力が増加し、工程の面で不利となり得る。
【0159】
より具体的に、液状の樹脂組成物は、1,000~250,000cPsの粘度を有してよい。液状の樹脂組成物が1,000~250,000cPsの粘度を有すると、液状の樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形しやすく、乾燥も容易である。例えば、液状の樹脂組成物の粘度が1,000cPs以上である場合、液状の樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形することに困難がなく、キャスティングによって形成されたフィルムを、容易にキャスティング基材から剥離することができる。また、液状の樹脂組成物の粘度が250,000cPs以下であると、液状の樹脂組成物をキャスティングするための圧力が必要以上に増加することなしにキャスティング工程が行われ得る。
【0160】
本発明の一実施例によれば、液状の樹脂組成物は、1,000~30,000cPsの粘度を有してよい。
【0161】
本発明の一実施例によれば、液状の樹脂組成物に含まれた固形分の含量は、液状の樹脂組成物の全重量に対して5~30重量%の範囲に調整されてよい。
【0162】
次に、液状の樹脂組成物によってゲル状のフィルムが製造される。ゲル状のフィルムは、ゲル状の未硬化ポリイミド系フィルムということができる。
【0163】
ゲル状のフィルムを製造するために、キャスティング法が適用されてよい。
【0164】
具体的に、本発明の一実施例によれば、ゲル状のフィルムを製造する段階は、液状の樹脂組成物を支持体上にキャスティングする段階を含む。
【0165】
キャスティング法に特に制限はなく、当業界に知られているキャスティング法が適用されてよい。キャスティングによってゲル状のフィルムが製造される。
【0166】
支持体として、ガラス板、アルミニウム基板、循環ステンレスベルト、ステンレスドラム、又は耐熱性高分子フィルムが用いられてよい。
【0167】
本発明の一実施例によれば、ゲル状のフィルムは、硬化が完了していない未硬化ポリイミド系フィルムのことを意味する。本発明の一実施例において、部分的に硬化が行われたとしても、硬化が完了していない状態であれば、ゲル状のフィルム又は未硬化ポリイミド系フィルムという。
【0168】
次に、ゲル状のフィルムは、50~150℃で1.0m/s以下の風速で2~20分間一次乾燥する。
【0169】
より具体的に、キャスティングによって製造されたゲル状のフィルムは、70~150℃の温度及び1.0m/s以下の風速環境で2~20分間一次乾燥されてよい。
【0170】
一次乾燥時間が20分を超えると、工程効率が低下しうるのであり、長時間に熱風が印加されると、ポリイミド系フィルムにウエビネス(waviness)が形成されうる。
【0171】
また、一次乾燥時間が2分未満であると、ゲル状のフィルムに含まれた溶媒が満足な具合に乾燥せず、フィルムにウエビネス(waviness)が発生しうる。
【0172】
本発明の一実施例によれば、一次乾燥に適用される風速が大きくなるほど、乾燥時間が減少し、風速が小さくなるほど乾燥時間が長くなり得る。ここで、風速は、ポリイミド系フィルムのKc値が1.55を超えない範囲に調整される。
【0173】
例えば、一次乾燥する段階において、風速は0.2m/s~1.0m/sの範囲に調整されてよい。
【0174】
具体的に、一次乾燥段階において、乾燥温度をA℃、風速をBm/s、一次乾燥時間をT分(minute)とするとき、式1及び式2による乾燥係数条件を満たすように乾燥条件が調整される。
【0175】
[式1]
0.5≦[(A-40)×B×T]/100≦10
【0176】
[式2]
2≦[(A-40)×T]/100≦10
【0177】
式1の“[(A-40)×B×T]/100”の値が0.5未満であるか、式2の“[(A-40)×T]/100”が2未満であると、一次乾燥が満足に行われないのでありうる。一次乾燥で乾燥が満足に行われないと、続く二次乾燥などで大部分の溶媒が除去されるであろう。ところが、一般に、二次乾燥が一次乾燥に比べて強い風速で行われるため、二次乾燥時に、強い風速で多量の溶媒が蒸発する過程で、ポリイミド系フィルムに不均一が発生し得る。
【0178】
一方、式1の“[(A-40)×B×T]/100”の値が10を超えるか、式2の“[(A-40)×T]/100”が10を超えると、高温の熱風が印加されるか又は風速の大きい熱風が印加されるのでありうる。高温の熱風が印加されるか又は風速の大きい熱風が印加されると、ポリイミド系フィルムにウエビネス(waviness)といった不均一が発生し得る。
【0179】
本発明の一実施例によれば、ゲル状のフィルムに含まれた溶媒を除去するために乾燥が行われ、乾燥時の風速を最適化することにより、ポリイミド系フィルムのKc値を調整することができる。
【0180】
一般に、液状の樹脂組成物の製造過程にて高い沸点の溶媒が使用されるので、溶媒を効率的に除去するためには、強い風速の風が、キャスティングされたゲル状のフィルムに印加される必要があると推測できよう。
【0181】
ところが、溶媒が完全に除去されていない一次乾燥段階において、強い風速の風がゲル状のフィルムに印加されると、風によってゲル状のフィルムに波紋などが形成され、このような波紋は、完成したポリイミド系フィルムに残ってしまう。その結果、ポリイミド系フィルムのKc値が高くなり得る。このようなKc値の増加を防止するために、本発明の一実施例によれば、式1及び式2による乾燥係数条件に合う温度、風速及び時間で風をゲル状のフィルムに印加し、溶媒を除去する。
【0182】
特に、ゲル状のフィルムに長時間にわたって風が印加されると、風によってポリイミド系フィルムの表面に波紋などが形成され、ポリイミド系フィルムが不均一になり、ポリイミド系フィルムのKc値が高くなってしまう。
【0183】
したがって、本発明の一実施例によれば、乾燥時間及び温度を考慮して、一次乾燥段階の風速が決められる。風速は、下記のように測定される。
【0184】
<風速測定方法>
測定装備:TSI 5725風量風速計
【0185】
測定方法:支持体上の約1cmの高さに風量風速計を据え付け、風量風速計の測定口の方向は支持体面と平行にさせて、風速を測定する。一次乾燥させる段階で風速が1.0m/sを超えると、ポリイミド系フィルムにウエビネス(waviness)が発生し、ウエビネス(waviness)が大きくなりうる。このため、本発明の一実施例によれば、一次乾燥段階における風速は1.0m/s以下に維持されてよく、風の温度によって風速は0.8m/s以下になってもよく、0.5m/s以下になってもよい。
【0186】
一方、風速が0.2m/s未満であると、周辺の空気の対流又は圧力の変化により風速が影響を受けることがあるため、0.2m/s以下の風速に維持することが難しく、風速の制御がし難くなる。その結果、均一な品質の製品を生産するには限界があり得る。このため、本発明の一実施例によれば、一次乾燥の段階で風速を0.2m/s以上に調整してよい。
【0187】
また、一次乾燥の段階において、温度は50~150℃に維持されてよく、必要によっては、70~150℃の範囲に維持されてもよい。
【0188】
一般に、温度が上昇すれば乾燥効率が増加する。一方、一次乾燥時の温度が増加して乾燥温度が溶媒の沸点に近づく場合、溶媒の急激な揮発によってポリイミド系フィルムの表面に気泡や屈曲が発生することがあり、ポリイミド系フィルムの表面均一性が低下する。
【0189】
したがって、一次乾燥段階での乾燥効率の確保のために、50℃以上の温度で乾燥が行われるのであり、溶媒の急激な揮発を防止するために150℃以下の温度で乾燥が行われる。乾燥効率の向上のために、70~150℃の温度範囲で一次乾燥が行われてもよい。
【0190】
本発明の一実施例によれば、一次乾燥後に、未硬化ポリイミドフィルム(ゲル状のフィルム)における残存溶媒の含量比は50重量%以下に調整されてよい。より具体的に、一次乾燥後に、未硬化ポリイミドフィルムの残存溶媒含量比は、40重量%以下に調整されてよい。
【0191】
本発明の一実施例によれば、一次乾燥段階の後に、ゲル状のフィルムを70~140℃で1.0~5.0m/sの風速で二次乾燥させる段階を行うことができる。二次乾燥の風速が1.0m/s未満であるか、温度が70℃未満であると、二次乾燥の速度が低下しすぎることがある。二次乾燥の速度が低下しすぎると、工程の効率が低下し、乾燥時間の増加によってポリイミド系フィルムの物性が変化しうる。
【0192】
一次乾燥によって、ゲル状のフィルムがある程度乾燥し固まるので、二次乾燥段階で印加される風によってゲル状フィルムの表面特性が変化する可能性が少ない。しかし、二次乾燥の風速が5.0m/sを超えるか、温度が140℃を超えると、高温の強い風によって、ポリイミド系フィルムにシワや屈曲が発生しうる。ポリイミド系フィルムにシワや屈曲が発生すると、ポリイミド系フィルムのウエビネス(waviness)が増加してしまい、曲率媒介変数Kc値が1.55を超えうる。一方、二次乾燥段階において、風速は、例えば、1.5~5.0m/sの範囲に調整されてよく、より具体的に、二次乾燥段階において、風速が1.6~3.0m/sの範囲に調整されてもよい。また、二次乾燥段階において、温度は100~140℃の範囲に調整されてもよい。
【0193】
本発明の一実施例によれば、二次乾燥させる段階の後に、ゲル状のフィルムを一次熱処理する段階を行うことができる。
【0194】
一次熱処理する段階で、公知の熱硬化工程が適用されてよい。例えば、ゲル状のフィルムが100~500℃の温度で1分~1時間熱処理されてよい。このような熱処理によってゲル状のフィルムが熱硬化し、ポリイミド系フィルムが完成されうる。一次熱処理段階を熱硬化段階ともいう。
【0195】
一次熱処理段階は、支持体にて行われてもよく、別途の熱処理支持台にて行われてもよい。例えば、二次乾燥後に、ゲル状のフィルムが支持体から分離され、一次熱処理のための支持台に固定された後、一次熱処理が行われてよい。ゲル状のフィルムの支持のために、ピンタイプのフレーム又はクリップタイプのフレームが使用されてよい。
【0196】
本発明の一実施例によれば、一次熱処理後に、ポリイミド系フィルムに残存する揮発成分の含量は5重量%以下に調整されてよい。
【0197】
本発明の一実施例によれば、一次熱処理されたポリイミド系フィルムに一定の張力が印加された状態で二次熱処理が行われてよい。二次熱処理によって、ポリイミド系フィルム内部の残留応力が除去され得る。
【0198】
二次熱処理が行われる場合、ポリイミド系フィルムの熱膨張係数が減少しうる。例えば、二次熱処理によって、ポリイミド系フィルム内に、収縮しようとする残留応力が発生して熱膨張が減少しうるのであり、ポリイミド系フィルムにおける熱膨張係数の履歴現象が減少しうる。
【0199】
二次熱処理に印加される張力と温度は、互いに相関関係を有する。したがって、二次熱処理にて印加される温度に応じて張力条件が変わりうる。
【0200】
二次熱処理は、100~500℃の温度で1分~1時間行われてよく、250~350℃の温度で2~15分間行われてよい。
【0201】
本発明の他の実施例は、前記説明された製造方法によって製造されたポリイミド系フィルムを提供する。
【0202】
以下、具体的な製造例及び実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の範囲が下記の製造例又は実施例によって限定されるものではない。
【0203】
<製造例1>
撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1L反応器に窒素を通過させながら、第1溶媒であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc) 419.1gを満たし、反応器の温度を25℃に合わせた後、ジアミンであるTFDB(Bis(trifluoromethyl)benzidine) 32.023g(0.10mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、二無水物である6FDA((Hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride) 8.885g(0.02mol)を投入後に撹拌して溶解及び反応させた。反応器の温度を10℃に下げ、再び溶液の温度を8℃に維持した後、ジカルボニル化合物であるTPC(Terephthaloyl Chloride) 16.24g(0.08mol)を添加し、25℃で12時間反応させることで、固形分の濃度が12重量%である第1重合体溶液を得た。第1重合体溶液は、ポリアミド酸を含んでよい。このことから、第1重合体溶液をポリアミド酸溶液ともいう。
【0204】
得られた第1重合体溶液に、ピリジン1.58g、無水酢酸2.02gを投入して30分間撹拌した後、さらに80℃で0.5時間撹拌して常温に冷まし、第2溶媒であるメタノール10Lを添加して固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、再び2Lのメタノールで洗浄後に100℃、真空で6時間乾燥させ、粉末状態のポリイミド系重合体固形分を得た。得られたポリイミド系重合体固形分をさらに第3溶媒であるDMAcで再溶解し、固形分含量が12重量%である液状の樹脂組成物を製造した。液状の樹脂組成物をポリイミド系樹脂組成物ともいう。ここで、ポリイミド系樹脂組成物は、ポリアミド-イミド樹脂組成物である。
【0205】
<製造例2>
撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1L反応器に窒素を通過させながら、第1溶媒であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)432.4gを満たし、反応器の温度を25℃に合わせた後、ジアミンであるTFDB 32.023g(0.10mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、二無水物である6FDA 5.884g(0.02mol)を投入して2時間撹拌した。再び、二無水物である6FDA 8.885g(0.02mol)を投入後に一定時間撹拌して溶解及び反応させた。反応器の温度を10℃に下げ、再び溶液の温度を8℃に維持した後、ジカルボニル化合物であるTPC 12.18g(0.06mol)を添加し、25℃で12時間反応させることで、固形分の濃度が12重量%である第1重合体溶液を得た。
【0206】
得られた第1重合体溶液に、ピリジン3.16g、無水酢酸4.04gを投入して30分間撹拌した後、さらに80℃で0.5時間撹拌して常温に冷まし、第2溶媒であるメタノール10Lを添加して固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、再び2Lのメタノールで洗浄後に100℃、真空で6時間乾燥させ、粉末状態のポリイミド系重合体固形分を得た。得られたポリイミド系重合体固形分をさらに第3溶媒であるDMAcでもって再溶解し、固形分含量が12重量%である液状の樹脂組成物を製造した。液状の樹脂組成物をポリイミド系樹脂組成物ともいう。ここで、ポリイミド系樹脂組成物は、ポリアミド-イミド樹脂組成物である。
【0207】
<製造例3>
【0208】
撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1L反応器に窒素を通過させながら、第1溶媒であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)400.9gを満たし、反応器の温度を25℃に合わせた後、ジアミンであるTFDB 32.023g(0.10mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、二無水物であるCBDA 1.961g(0.01mol)を投入して2時間撹拌した。再び二無水物である6FDA 4.443g(0.01mol)を投入後に一定時間撹拌して溶解及び反応させた。反応器の温度を10℃に下げ、再び溶液の温度を8℃に維持した後、ジカルボニル化合物であるTPC 16.24g(0.08mol)を添加し、25℃で12時間反応させることで、固形分の濃度が12重量%である第1重合体溶液を得た。
【0209】
得られた第1重合体溶液に、ピリジン1.58g、無水酢酸2.02gを投入して30分間撹拌した後、再び80℃で0.5時間撹拌して常温に冷まし、第2溶媒であるメタノール10Lを添加して固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、再び2Lのメタノールで洗浄後に100℃、真空で6時間乾燥させ、粉末状態のポリイミド系重合体固形分を得た。得られたポリイミド系重合体固形分をさらに、第3溶媒であるDMAcでもって再溶解し、固形分含量が12重量%である液状の樹脂組成物を製造した。液状の樹脂組成物をポリイミド系樹脂組成物ともいう。ここで、ポリイミド系樹脂組成物は、ポリアミド-イミド樹脂組成物である。
【0210】
<製造例4>
撹拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1L反応器に窒素を通過させながら、第1溶媒であるN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)587.5gを満たし、反応器の温度を25℃に合わせた後、ジアミンであるTFDB 640.046g(0.20mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、二無水物であるBPDA 11.77g(0.04mol)を投入して2時間撹拌した。再び二無水物である6FDA 71.8(0.16mol)を投入後に一定時間撹拌して溶解及び反応させた。25℃で12時間反応させることで、固形分の濃度が20重量%である第1重合体溶液を得た。
【0211】
得られた第1重合体溶液に、ピリジン6.328g、無水酢酸8.08gを投入して30分間撹拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、第2溶媒であるメタノール10Lを添加して固形分を沈殿させ、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、再び2Lのメタノールで洗浄後に100℃、真空で6時間乾燥させ、粉末状態のポリイミド系重合体固形分を得た。得られたポリイミド系重合体固形分をさらに第3溶媒であるDMAcでもって再溶解し、固形分含量が20重量%である液状の樹脂組成物を製造した。液状の樹脂組成物をポリイミド系樹脂組成物ともいう。ここで、ポリイミド系樹脂組成物はポリイミド樹脂組成物である。
【0212】
<実施例1>
製造例1で製造された液状の樹脂組成物であるポリイミド系樹脂組成物を基材上にキャスティング(casting)してゲル状のフィルム(ゲル状の未硬化ポリイミド系フィルム)を製造した後、80℃、0.2m/sの風速で20分間一次乾燥させ、さらに風速を1.6m/sに上げて140℃で10分間ゲル状のフィルムを二次乾燥させた。
【0213】
ゲル状のフィルムをピンタイプ(Pin type)のテンター(Tenter)に据え付けた後、温度を120℃から280℃まで上げながら一次熱処理を1時間行った。一次熱処理によってゲル状のフィルムが硬化し、ポリイミド系フィルムが製造された。製造されたポリイミド系フィルムは、ポリアミド-イミドフィルムである。
【0214】
一次熱処理によって製造されたポリイミド系フィルムをテンターフレーム(Tenter frame)から除去し、再び280℃で5分間二次熱処理して、フィルム内の残留応力を除去した。
【0215】
<実施例2~実施例8>
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例1と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを実施例2~実施例8とした。
【0216】
<実施例9>
【0217】
製造例2で製造された液状の樹脂組成物であるポリイミド系樹脂組成物を基材上にキャスティング(casting)してゲル状のフィルムを製造した後、80℃、0.2m/sの風速で20分間一次乾燥させ、さらに風速を1.6m/sに上げて140℃で10分間ゲル状のフィルムを二次乾燥させた。
【0218】
ゲル状のフィルムをピンタイプ(Pin type)のテンター(Tenter)に据え付けた後、温度を120℃から280℃まで上げながら一次熱処理を1時間行った。一次熱処理によってゲル状のフィルムが硬化し、ポリイミド系フィルムが製造された。製造されたポリイミド系フィルムは、ポリアミド-イミドフィルムである。
【0219】
熱硬化の終わったフィルムをテンターフレームから除去し、さらに280℃で5分間熱処理し、フィルム内の残留応力を除去した。
【0220】
一次熱処理によって製造されたポリイミド系フィルムをテンターフレーム(Tenter frame)から除去し、再び280℃で5分間二次熱処理し、フィルム内の残留応力を除去した。
【0221】
<実施例10~実施例16>
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例9と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを実施例10~実施例16とした。
【0222】
<実施例17>
【0223】
製造例3で製造された液状の樹脂組成物であるポリイミド系樹脂組成物を基材上にキャスティング(casting)してゲル状のフィルム(ゲル状の未硬化ポリイミド系フィルム)を製造した後、80℃、0.2m/sの風速で20分間一次乾燥させ、さらに風速を1.6m/sに上げて140℃で10分間ゲル状のフィルムを二次乾燥させた。
【0224】
ゲル状のフィルムをピンタイプ(Pin type)のテンター(Tenter)に据え付けた後、温度を120℃から250℃まで上げながら一次熱処理を1時間行った。一次熱処理によってゲル状のフィルムが硬化し、ポリイミド系フィルムが製造された。製造されたポリイミド系フィルムは、ポリアミド-イミドフィルムである。
【0225】
一次熱処理によって製造されたポリイミド系フィルムをテンターフレーム(Tenter frame)から除去し、再び250℃で5分間二次熱処理して、フィルム内の残留応力を除去した。
【0226】
<実施例18~実施例24>
【0227】
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例17と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを実施例18~実施例24とした。
【0228】
<実施例25>
【0229】
製造例4で製造された液状の樹脂組成物であるポリイミド系樹脂組成物を基材上にキャスティング(casting)してゲル状のフィルム(ゲル状の未硬化ポリイミド系フィルム)を製造した後、80℃、0.2m/sの風速で20分間一次乾燥させ、さらに風速を1.6m/sに上げて140℃で10分間ゲル状のフィルムを二次乾燥させた。
【0230】
ゲル状のフィルムをピンタイプ(Pin type)のテンター(Tenter)に据え置いた後、温度を120℃から280℃まで上げながら一次熱処理を1時間行った。一次熱処理によってゲル状のフィルムが硬化し、ポリイミド系フィルムが製造された。製造されたポリイミド系フィルムは、ポリイミドフィルムである。
【0231】
一次熱処理によって製造されたポリイミド系フィルムをテンターフレーム(Tenter frame)から除去し、再び280℃で5分間二次熱処理して、フィルム内の残留応力を除去した。
【0232】
<実施例26~実施例32>
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例25と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを実施例26~実施例32とした。
【0233】
<比較例1~比較例5>
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例1と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを比較例1~比較例5とした。
【0234】
<比較例6~比較例10>
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例9と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを比較例6~比較例10とした。
【0235】
<比較例11~比較例15>
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例17と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを比較例11~比較例15とした。
【0236】
<比較例16~比較例20>
一次乾燥の条件を下記表1の通りにする以外は、実施例25と同じ方法によりポリイミド系フィルムを製造し、それらを比較例16~20とした。
【0237】
実施例1~実施例32及び比較例1~比較例20の一次乾燥の条件に基づき、式1の“[(A-40)×B×T]/100”及び式2の“[(A-40)×T]/100”を計算し、表1に示した。
【0238】
【0239】
【0240】
<物性測定方法>
【0241】
実施例1~実施例32及び比較例1~比較例20で製造されたポリイミド系フィルムに対して、下記の方法により物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0242】
(1)フィルムの厚み測定
Anritsu電気マイクロメータを用いて、実施例及び比較例で製造されたポリイミド系フィルムの厚みを測定した。装置に起因する厚み偏差は±0.5%以下である。
【0243】
(2)光学透過度
実施例及び比較例で製造されたポリイミド系フィルムに対して、UV分光計(コニカミノルタCM-3700d)を用いて380~780nm波長の範囲で平均光学透過度を測定した。ポリイミド系フィルムの厚みは、表1の通りである。
【0244】
(3)黄色度(Yellow Index,Y.I)
UV分光計(コニカミノルタCM-3700d)を用い、ASTM E313の規格にしたがって、実施例及び比較例で製造されたポリイミド系フィルムの黄色度を測定した。
【0245】
(4)ヘイズ(Haze)
ヘーズメーターHM-150を用いて、実施例及び比較例で製造されたポリイミド系フィルムのヘイズを測定した。
【0246】
(5)Kc値の測定
- 測定機器:Rhopoint社のOptimapTM
【0247】
- 光学的モード(Mode):Extradullに設定
【0248】
- ディスプレイモード(Display Mode):Curvature Mode(X+Y Scan)
【0249】
- 曲率モードKで1.0~3.0mmの波長(wavelength)範囲設定(Kc)
【0250】
- 測定方法: 暗室にて定盤(surface plate)上に黒色の無光沢ペーパーシートを配置し、その上に測定対象サンプルを正しく据え付けた後、前記設定されたモードに応じて、Kc値を10回測定し、その平均値を当該サンプルのKc値として使用する。
【0251】
- フィルムサンプル:横15cm×縦15cm×厚み80μm(厚み偏差±2%)のポリイミド系フィルム(実施例1~実施例32及び比較例1~比較例20)
【0252】
- その他:顕微鏡で測定時に、50μm以上の異物が0.005個/cm2以下
【0253】
【0254】
【0255】
表2を参照すると、本発明の実施例1~実施例32によるポリイミド系フィルムは、1.55以下のKc値を有することが確認できる。ポリイミド系フィルムのKc値は、一次乾燥段階での温度、風速及び乾燥時間に影響を受ける。
【0256】
表1及び表2を参照すると、100℃以下の比較的低温でポリイミド系フィルムが一次乾燥される場合に、式1及び式2による乾燥係数条件を満たす範囲内で、様々な風速で、比較的長時間にわたって一次乾燥が行われてこそ、低いKc値を有し得ることが分かる。また、100℃を超える比較的高温でポリイミド系フィルムが一次乾燥される場合に、式1及び式2による乾燥係数条件を満たす範囲内で、様々な風速で、比較的短時間にわたって一次乾燥が行われてこそ、低いKc値を有し得ることが分かる。
【0257】
一方、100℃以下の比較的低温でポリイミド系フィルムが一次乾燥される場合に、乾燥時間が短いと、一次乾燥が十分に行われず、二次乾燥時に多量の溶媒が揮発するなどの問題が発生し、このため、ポリイミド系フィルムのKc値が高くなり、平坦度が低下するということが分かる。また、100℃を超える比較的高温でポリイミド系フィルムが一次乾燥される場合に、乾燥時間が長いと、溶媒の過度の揮発が発生しうるのであり、高温の熱風によってポリイミド系フィルムに波紋が発生するため、ポリイミド系フィルムのKc値が高くなり、平坦度が低下するということが分かる。
【0258】
図3は、本発明の実施例1に係るフィルムの投影イメージであり、
図4は、比較例15に係るフィルムの投影イメージである。
図3及び
図4を参照すると、本発明の実施例によって製造され、1.55以下の低いKc値を有するポリイミド系フィルムは、比較例によって製造されたポリイミド系フィルムに比べて、優れた表面平坦性を有し、波紋のような不均一がない又は少ないことが確認できる。
【0259】
本発明の実施例に係るポリイミド系フィルムは、様々な電子機器に適用可能である。したがって、本発明の他の実施例は、本発明に係るポリイミド系フィルムを含む電子機器を提供する。本発明に係るポリイミド系フィルムは、例えば、電子機器のカバーウィンドウとして適用可能である。
【符号の説明】
【0260】
10:光源
20:光
30:投影対象フィルム
40:平らな表面
50:投影イメージ
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記ジアミンは、
3,4-オキシジアニリン(
34ODA)、
4,4'-オキシジアニリン(4ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mmDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33-6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)及びビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン(F-FDA)から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項4に記載のポリイミド系フィルム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
前記ジアミンは、3,4-オキシジアニリン(34ODA)、4,4'-オキシジアニリン(4ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mmDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33-6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)及びビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン(F-FDA)から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
前記ジアミンは、3,4-オキシジアニリン(34ODA)、4,4'-オキシジアニリン(4ODA)、p-フェニレンジアミン(pPDA)、m-フェニレンジアミン(mPDA)、p-メチレンジアニリン(pMDA)、m-メチレンジアニリン(mmDA)、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33-6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)、ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)及びビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン(F-FDA)から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。ジアミンとして、前記説明された化合物が単独で使用されてもよく、2種以上の化合物が混合されて使用されてもよい。
【国際調査報告】