(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】磁気誘導によって加熱された強磁性体を用いた不均一系触媒作用の方法及び前記方法に用いる触媒用の担体
(51)【国際特許分類】
C10L 3/08 20060101AFI20221114BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20221114BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20221114BHJP
B01J 23/83 20060101ALI20221114BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
C10L3/08
B01J35/02 G ZAB
B01J35/04 331A
B01J23/83 Z
B01J23/755 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517504
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 FR2020051625
(87)【国際公開番号】W WO2021053306
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508242067
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナショナル・デ・シヤンス・アプリケ・ドゥ・トゥールーズ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DES SCIENCES APPLIQUEES DE TOULOUSE
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルベクス、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ケルー、ポリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カレ、スミート
(72)【発明者】
【氏名】アセンシオ レヴェール、ジュアン マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】フォーレ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ミル、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】カリー、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ソウランティカ アイカテリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ショドレ、ブリュノ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA11
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA03B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA17
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169CB02
4G169CB62
4G169CC22
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EA03X
4G169EA03Y
4G169EB11
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC28
4G169EE03
4G169FA02
4G169FA04
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、二酸化炭素及び気体状二水素、並びに所定の温度範囲Tで当該反応を触媒することができる少なくとも1つの触媒固体化合物を反応器(1)内で用いるメタン化反応などの気体状酸化炭素の水素化反応の不均一系触媒作用の方法であって、前記気体状反応物及び前記触媒化合物を加熱剤の存在下で接触させること、並びに加熱剤を前記温度範囲T内の温度まで加熱することを含む方法に関する。この方法は、加熱剤が、マイクロメトリック粉末及び/又はワイヤーの形状の強磁性体を含み、前記強磁性体が、反応器(1)の外部のコイル(2)などのフィールドインダクターによる磁気誘導によって加熱されることを特徴とする。一実施形態によれば、前記方法を実施するための触媒用の担体は、マイクロメートル径のワイヤーの形状の強磁性体を含み、その表面に金属触媒粒子が付着している。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体状酸化炭素の水素化反応の不均一系触媒作用のプロセスであって、
気体状酸化炭素の水素化反応が、例えば、二酸化炭素及び気体状二水素、並びに所定の温度範囲Tで前記反応を触媒することができる少なくとも1つの触媒固体化合物を反応器(1)内で用いるメタン化反応であり、
前記気体状反応物及び前記触媒化合物を加熱剤の存在下で接触させること、並びに加熱剤を前記温度範囲T内の温度まで加熱することを含み、
以下の特徴を有するプロセス:
加熱剤が、1μm~1000μmのサイズを有するマイクロメトリック強磁性粒子、及び/又は鉄もしくは鉄合金をベースとするワイヤー、好ましくは10μm~1mmのワイヤー径のワイヤーからなるマイクロメトリック粉末の形状の強磁性体を含み;
前記強磁性体が、反応器(1)の外部のフィールドインダクターを用いた磁気誘導によって加熱され;且つ、
反応器の外部のフィールドインダクターによって発生する磁場が、1mT~80mTの振幅、及び30kHz~500kHzの周波数を有する。
【請求項2】
粉末の形状の強磁性体が、1μm~100μmのサイズを有するマイクロメトリック強磁性粒子からなることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
粉末の形状の強磁性体が、1μm~50μm、好ましくは1μm~10μmのサイズを有するマイクロメトリック強磁性粒子からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
触媒化合物が、担体上に配置された金属粒子の形状である不均一系触媒反応用の触媒を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記金属触媒粒子が、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、スズ、又はこれらの金属の1つ以上を含む合金から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
金属触媒粒子が、触媒用の担体を形成する酸化物、例えば、ケイ素、セリウム、アルミニウム、チタン又はジルコニウムの少なくとも1つの元素の酸化物の表面に配置され、粉末の形状の強磁性体と混合される粉末の形状の触媒-酸化物集合体を構成することを特徴とする、請求項4又は5に記載のプロセス。
【請求項7】
触媒用の担体が、ワイヤーの形状である前記強磁性体であることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
触媒用の担体であるワイヤーの形状の強磁性体が、鉄又は鉄合金をベースとするワイヤー、好ましくはワイヤー径が20μm~500μm、より好ましくはワイヤー径が50μm~200μmのワイヤーを含む、スチールウールを含むことを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
反応器の外部のフィールドインダクターによって発生した磁場が、1mT~50mTの振幅を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
反応器の外部のフィールドインダクターによって発生した磁場が、50kHz~400kHz、好ましくは100kHz~300kHzの周波数を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
表面に金属触媒粒子が付着したマイクロメートル径のワイヤーの形状の強磁性体を含むことを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載のプロセスを実施するための触媒用の担体。
【請求項12】
強磁性体が、鉄、又は鉄合金をベースとし、好ましくは、少なくとも50wt%の鉄、より好ましくは少なくとも80wt%の鉄を含むことを特徴とする、請求項11に記載の担体。
【請求項13】
強磁性体が、少なくとも90wt%の鉄で構成される絡んだワイヤーを含む超極細スチールウールで構成され、且つ、ワイヤー径が、10μm~1mm、好ましくは20μm~500μm、より好ましくは50μm~200μmであることを特徴とする、請求項11又は12に記載の担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一系触媒作用の分野に関し、特に、少なくとも1つの気体状反応物と担体上に配置された触媒固体化合物とを接触させることを含む、気体-固体不均一系触媒作用のプロセスに関する。また本発明は、前記触媒用の担体に関する。
【0002】
非常に多くのプロセスで不均一系触媒作用を必要とする。これらの触媒作用のプロセスは、反応を実施するために、時として高温での加熱ステップが必要であり、したがって高価でエネルギー消費が大きい。そのため、研究はより経済的な解決策、特にエネルギー集約型ではない反応に着目してきた。
【背景技術】
【0003】
これらの解決策のうち、特許文献1は、反応に必要な温度に到達するために、磁気誘導によって加熱を行う不均一系触媒作用のプロセスを提案している。より詳細には、このプロセスでは、反応物と、その表面が少なくとも部分的に前記反応の触媒である化合物からなる強磁性ナノ粒子成分を含む触媒組成物を接触させる。前記ナノ粒子成分は、所望の温度範囲に到達させるために磁気誘導によって加熱される。この加熱は、反応器の外部のフィールドインダクターを用いて行うことができる。このシステムでは、ナノ粒子は、それ自体の磁気モーメントによって加熱され、触媒反応の開始を可能にする。このように、加熱は、最小限のエネルギー投入で迅速に反応器のまさに中心部で開始する。その結果、大幅な節約となる。
【0004】
しかしながら、特にナノメートルの形状の触媒粒子、より具体的には磁性ナノ粒子のコストに起因して、これらの反応のコストは依然として高いままである。さらに、通常、これらのナノ材料は慎重に取り扱わなければならない。
【0005】
ナノ粒子の使用に関連する別の問題は、一方では高温反応中のそれらの焼結傾向に起因し、他方では前記ナノ粒子内の化学秩序の変化(構造と局所的化学組成の変化)によって生じる経時変化に起因するそれらの加熱特性の変化である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際出願 WO2014/162099
【発明の概要】
【0007】
[発明の目的]
したがって、本発明の第1の目的は、その反応性能を維持しながら、これらの不均一系触媒反応のコストをさらに低減することによって、前述の欠点を克服することである。
【0008】
本発明の別の目的は、反応器中のナノメートル粒子の形状の成分の割合を低減することを可能にするプロセスを提案することである。
【0009】
本発明の別の目的は、非常に長期間にわたって加熱特性及び触媒特性の維持を示し、同時に断続的操作に適した不均一系触媒作用のプロセスを提案することである。
【0010】
本発明の別の目的は、気体-固体化学反応、より具体的にはメタン化反応などの気体状酸化炭素の水素化反応の触媒作用のプロセスを提案することである。
【0011】
[発明の詳細な説明]
新たな節約の探索において、驚くべきことに、本発明者らは、加熱剤は必ずしもナノメトリックの形状である必要はなく、マイクロメトリック粉末又はワイヤーの形状で反応器内に存在し得ることを発見した。
【0012】
この目的のために、本発明は、二酸化炭素及び気体状二水素、並びに所定の温度範囲Tで当該反応を触媒することができる少なくとも1つの触媒固体化合物を反応器内で用いるメタン化反応などの気体状酸化炭素の水素化反応の不均一系触媒作用のプロセスであって、前記気体状反応物及び前記触媒化合物を加熱剤の存在下で接触させること、並びに加熱剤を前記温度範囲T内の温度まで加熱することを含むプロセスを提案する。このプロセスは、加熱剤が、1μm~1000μmのサイズを有するマイクロメトリック強磁性粒子、及び/又は鉄もしくは鉄合金をベースとする、好ましくは10μm~1mmのワイヤー径のワイヤーからなるマイクロメトリック粉末の形状の強磁性体を含むことを特徴とする。前記強磁性体は、反応器の外部のフィールドインダクターを用いた磁気誘導によって加熱され、反応器の外部のフィールドインダクターによって発生する磁場は、1mT~80mTの振幅、及び30kHz~500kHzの周波数を有する。もはやナノメトリックではなく、はるかに大きなサイズの当該加熱剤を用いて得られた結果は、強磁性ナノ粒子成分を用いるWO2014/162099のプロセスで得られた結果と同等である。
【0013】
本発明の第1の実施形態によれば、粉末の形状で存在する場合、有利には、強磁性体は、1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは1μm~10μmのサイズを有するマイクロメトリック強磁性粒子からなる。
【0014】
明らかに時々凝集する傾向がある当該マイクロメトリック強磁性粒子では、焼結は観察されず、したがって加熱の効果が維持される。
【0015】
本発明によるプロセスで使用される触媒化合物に関しては、前記触媒化合物は、担体上に配置された金属粒子の形状である不均一系触媒反応用の触媒を含む。
【0016】
前記金属触媒粒子は、有利には、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、スズ、又はこれらの金属の1つ以上を含む合金から選択される。
【0017】
前記金属触媒粒子は、触媒用の担体を形成する酸化物、例えば、ケイ素、セリウム、アルミニウム、チタン又はジルコニウムの少なくとも1つの元素の酸化物(例えば、Al2O3、SiO2、TiO2、ZrO2、CeO2)の表面に配置され、マイクロメートル又はナノメートルサイズの粉末の形状であり、マイクロメトリック粉末の形状の強磁性体と混合される触媒-酸化物集合体を構成する。したがって、これらの粉末(触媒-酸化物集合体と微粒子状の強磁性体)の混合により、加熱剤と触媒が密接に接触し、触媒の表面で触媒反応を迅速に開始することが可能になる。
【0018】
本発明の第2の実施形態によれば、触媒用の担体は、ワイヤーの形状である前記強磁性体である。
【0019】
有利には、触媒用の担体であるワイヤーの形状の強磁性体は、鉄又は鉄合金をベースとするワイヤー、好ましくはワイヤー径が20μm~500μm、より好ましくは50μm~200μmのワイヤーを含む、スチールウールを含むか、又は主にそれからなることができる。
【0020】
実際、非常に驚くべきことに、ホームセンターで購入することができ、安価で簡単に入手できる素材であるスチールウールは、優れた加熱剤であることが実証されている。より具体的には、ワイヤー径が1ミリメートル未満の非常に極細の(超極細)スチールウールは、優れた触媒用の担体であり、且つ、磁気誘導による前記触媒の加熱を可能にするのに効果的である。
【0021】
この素材は非常に使いやすく、また耐用年数が非常に長い。さらに、リサイクルが容易で、公害を起こさない。
【0022】
本発明によるプロセスは、有利には炭化水素合成反応であり、より具体的には、不均一系触媒反応である。
【0023】
本発明による不均一系触媒作用のプロセス、気体状酸化炭素の水素化反応、例えば二酸化炭素と二水素から出発するメタン化反応は、特に、反応器の外部のフィールドインダクターによって発生した、1mT~50mTの振幅、及び50kHz~400kHz、好ましくは100kHz~300kHzの周波数を有する磁場を用いて実施することができる。
【0024】
また本発明は、上記の不均一系触媒作用のプロセスを実施するための触媒用の担体であって、その表面に金属触媒粒子が付着したマイクロメートル径のワイヤーの形状の強磁性体を含むことを特徴とする担体に関する。
【0025】
有利には、強磁性体は、鉄、又は鉄合金をベースとし、好ましくは、少なくとも50wt%の鉄、より好ましくは少なくとも80wt%の鉄を含む。
【0026】
この強磁性体は、特に、少なくとも90wt%の鉄で構成される絡んだワイヤーを含み、そのワイヤー径が10μm~1mm、好ましくは20μm~500μm、より好ましくは50μm~200μmである、超極細スチールウールで構成することができる。
【0027】
本発明は、添付図面を参照しながら非限定的な例示的実施形態の以下の説明を読むことで明確に理解されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】
図1Aは、上方へ向かう気体流の下で、本発明による気体-固体不均一系触媒作用のプロセスを実施するための反応器の簡略化された部分図である。外部の磁場インダクターによって囲まれた管状反応器の部分における触媒+加熱剤集合体の位置決めを示す。
【
図1B】
図1Bは、下方へ向かう気体流の下で、本発明による気体-固体不均一系触媒作用のプロセスを実施するための反応器の簡略化された部分図である。外部の磁場インダクターによって囲まれた管状反応器の部分における触媒+加熱剤集合体の位置決めを示す。
【
図2】
図2は、100kHzで、アルゴン下で実施した、本発明による様々な加熱剤の性能を比較したグラフである(比吸収率(SAR);単位質量当たりの吸収エネルギー量に相当し、mTで表される印加した交番磁場強度の関数として、材料1グラム当たりのワットで表される):3~5μmオーダーのサイズの微粒子の鉄粉、極細スチールウール(ワイヤー径1mm超)、及び超極細スチールウール(ワイヤー径1mm未満、100μmのオーダー)
【
図3】
図3は、加熱剤として鉄粉を使用し、SiRAlOx(登録商標)(SESAL社製の酸化アルミニウムケイ素)上のNi触媒を使用する本発明によるメタン化プロセスの結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、鉄粉とNi/CeO
2の混合物の存在下、下降流中のメタン化反応について、CO
2とCH
4の転化率(%)、及び選択率を時間と温度の関数として示すヒストグラムである。
【
図5】
図5は、スチールウールとNi/CeO
2の混合物の存在下、下降流中のメタン化反応について、CO
2とCH
4の転化率(%)、及び選択率を時間と温度の関数として示すヒストグラムである。
【
図6】
図6は、スチールウール上のニッケルの存在下、下降流中のメタン化反応について、CO
2とCH
4の転化率(%)、及び選択率を時間と温度の関数として示すヒストグラムである。
【
図7】
図7は、
図4、5、6で示した例で試験した3種類の触媒床(触媒+加熱剤)について、温度の関数としてエネルギー効率(%で表示)を比較するグラフである。
【実施例】
【0029】
実施例1:触媒の調製
酸化セリウム担体上の触媒の調製
酸化セリウム上の10wt%のニッケル(Ni(10wt%)/CeO2と略す)を、メシチレン中、CeO2の存在下で、Ni(COD)2を分解することにより調製する。
【0030】
従来の調製法に従って、1560mgのNi(COD)2を、20mLのメシチレンに溶解し、次いで3gのCeO2を添加する。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、150℃で1時間、激しく攪拌しながら加熱する。この混合物は、最初は乳白色であり、反応終了時には黒色となる。デカンテーションの後、半透明の上澄みを除去し、得られた粒子を10mLのトルエンで3回洗浄する。その後、真空下でトルエンを除去することにより、Ni(10wt%)/CeO2(3.5g)の高密度粉末を得ることができる。これを回収してグローブボックス内に保存する。誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いた分析では、酸化セリウムのニッケルの9wt%(目標10%)のローディング量を確認する。透過型電子顕微鏡(TEM)及びEDS分析による観察は、ニッケルの小さな単分散粒子(2~4nmのサイズ)の存在を示す。
【0031】
SiRAlOx(登録商標)上のNiの調製プロセス
Fischer-Porterボトル内で、不活性雰囲気下、0.261gのNi(COD)2を20mLのメシチレンに溶解し、0.500gのSiRAlOxを添加する。混合物を攪拌しながら150℃で1時間加熱する。周囲温度に戻した後、放置して粉末を沈殿させ、次に上澄みを除去し、粉末を10mLのTHFで3回洗浄する。その後、粉末を真空下で乾燥させ、不活性雰囲気下で保存する。
【0032】
鉄粉+Ni/CeO2の混合物
2gの鉄粉を、前もって調製した酸化セリウムに付着したニッケル触媒1gと混合する。走査型電子顕微鏡による観察とEDSマッピングにより、3~5μmオーダーのサイズの鉄粉の粒子を可視化し、ニッケルが酸化セリウムCeO2上に実際に存在することを確認できる。
【0033】
実施例2:スチールウール担体上の触媒の調製
超極細スチールウール(Gerlon、Castoramaから購入)。超極細スチールウールのICP-MS分析により、鉄の組成は94.7wt%であることがわかる。EDSマッピングは、ウール表面上の多数の不純物(主にカリウム、マンガン、ケイ素)の存在を示す。SEM観察により、使用した超極細スチールウールのワイヤー径を測定することができる。それは、約100μmで、表面は粗く凹凸がある。
【0034】
超極細スチールウール(94.7wt%の鉄を含む、直径約100μmの絡んだワイヤー)にニッケル金属を付着させる実験手順は、CeO2の場合と実質的に同じである。1560mgのNi(COD)2を100mLのメシチレンに溶解し、スチールウール(3g)を完全に浸漬させる。アルゴン下で、150℃で急速に攪拌しながら1時間後、混合物をグローブボックスに入れ、溶液(黒色)を排出する。スチールウール自体も黒色に変色している。その後、スチールウールをトルエンですすぎ、真空下で30分間乾燥させた後、グローブボックス内に保管する。走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分光法による観察は、スチールウールのワイヤーの表面にニッケルの多分散粒子(100nm~1000nm)が付着していること示す。
【0035】
3つの異なるゾーンでのICP-MS分析は、様々なニッケルのローディング量を示す:1.23%、1.44%、1.33%(重量パーセント)。これらのローディング量の差は非常に小さく、ウールの表面は均質に見える。それにもかかわらず、付着したニッケルの量は目標パーセンテージである10wt%のNiを下回っている。
【0036】
実施例3:メタン化反応:転化率の測定と選択率の算出
メタン化反応
【0037】
【0038】
これは、以下を組み合わせたものある:
【0039】
【0040】
及び、
【0041】
【0042】
これは、石英固定床管状連続反応器1(Avitec)(内径:1cm、触媒床4の高さは加熱体によって異なり、約2cm、焼結ガラス3上にある)内で行われる(
図1参照);気体の流れは、上昇流6(
図1A)、又は下降流7(
図1B)となりうる。使用したコイル2(Five Celes社製)は、内径40mm、高さ40mmのソレノイドであり、ジェネレータに接続された外部の磁場インダクターを構成する。共鳴周波数は300kHzであり、磁場は10~60mTである。コイル2は水冷式である。
【0043】
温度の関数としての転化率及び選択率の測定は、コイル2に関連するジェネレータの温度サーボ制御によって行われる。この目的のために、ジェネレータに接続された温度プローブ5は、触媒床(加熱剤+触媒集合体)に埋められる。ジェネレータは、一定の温度に達するように磁場を送り、その後、この温度を維持するためのパルスのみを送る。反応は、大気圧で、200℃~400℃の温度で行われる。反応器1にはH2とCO2が供給され(その流量は流量計(ブルックス流量計)により制御される)、Lab Viewソフトウェアにより制御される。その割合は以下の通りである:全体の一定流量25mL/分は、20mL/分のH2と、5mL/分のCO2を含む。供給は反応器の上部で行われ、生成した水は反応器の下部(コンデンサーなし)で凝結し、丸底フラスコに回収される。生成したメタンと残りの気体(CO2及びH2)、さらにCOは、ガスクロマトグラフィーカラム(Perkin Elmer社、Clarus580GCカラム)に送られる。CO2の転化率、CH4の選択率、COとCH4の収率は、以下の式に従って計算する:
【0044】
【0045】
FCは、ガスクロマトグラフによる反応モニタリングによる各反応物の反応係数である。
Aは、クロマトグラフィーで測定されたピークの面積である。
【0046】
エネルギー効率の測定:
エネルギー効率の測定は、メタン化反応の転化率及び選択率の測定と同時に行われる。コイル2の電力消費量データは、研究室で開発したソフトウェアを用いて復元する。そして、エネルギー効率は以下の方法に従って算出する:
【0047】
【0048】
PCS(総発熱量)は、1mgの気体の燃焼によって放出されるエネルギー量を表す。
文献に記載された値は、PCS
H2=141.9MJ/kg、及びPCS
CH4=55.5MJ/kgである。
Y
CH4は、反応によるCH
4収率である。
D
miは、生成物iの質量流量比である。
E
bobineは、インダクターが動作するために(すなわち、磁場を発生させ、システムを冷却するために)消費されるエネルギーに相当する。
図7では、エネルギー効率を%で表す。
【0049】
実施例4:様々な加熱剤の比較
鉄粉、極細スチールウール、及び超極細スチールウールを比較した。比吸収率(SAR)(単位質量当たりの吸収エネルギー量に相当し、mTで表される印加した交番磁場強度の関数として、材料1グラム当たりのワットで表される)の測定は、アルゴン下で、100kHzで実施した。結果は
図2にまとめられている。
【0050】
これらの結果は、FeCナノ粒子について、100kHzにおけるSAR値が1100~2100W/gであると報告するKaleらによる最近の公表文献「Iron carbide or iron carbide/cobalt nanoparticles for magnetically-induced CO
2 hydrogenation over Ni/SiRAlOx catalysts,Catal.Sci.Technol.,2019,9,2601」で得られた結果と著しく異なっている。
図2は、鉄粉やスチールウールなどの微粒子状の強磁性体の場合、これらの値が10~20倍低いことを示す。
【0051】
そうすると、微粒子状の鉄粉とスチールウールには、ナノ粒子に対するよりも高い磁場を与えなければならないことが予想されるであろう。しかし、
図3の結果は、そうではないことを示す。炭化鉄のナノ粒子では、90%に近い収率を達成するためには約48mTの磁場を与える必要がある。鉄粉では、反応開始後、必要なのはわずか8mTの磁場である。鉄粉とスチールウールの顕著な特徴は、渦電流が作用して、材料を加熱するための磁場が小さくなることにある。
【0052】
したがって、マイクロメトリック鉄粉とマイクロメトリックスチールウールは、二酸化炭素と二水素から始まるメタン化反応などの気体-固体触媒反応を行う反応器を、磁気誘導によってその場で加熱するための有利な強磁性体を構成する。これは、以下の実施例で示される、
【0053】
実施例5:鉄粉と触媒の混合物
触媒床は、酸化セリウム上のニッケル粒子からなる:
Ni:0.09g/CeO2:0.91gに、2gの鉄粉を混合した。気体流は下向きであり、一定流量(20mL/分のH2、及び5mL/分のCO2)である。
【0054】
CO
2とCH
4の転化率の結果を
図4に示す。この粉末の集合体(鉄粉+Ni/CeO
2)によって非常に満足な収率(Y(CH
4))を得ることが可能となり、300~350℃の温度で100%に達する。
【0055】
実施例6:スチールウールとNi/CeO2触媒の混合物
触媒床は、酸化セリウムに付着させたニッケル粒子からなる。Ni:0.09g/CeO2:0.91gと0.35gの(超極細)スチールウール。気体流は下向きであり、一定流量(20mL/分のH2、及び5mL/分のCO2)である。
【0056】
CO
2とCH
4の転化率の結果を
図5に示す。このスチールウール+Ni/CeO
2集合体によって非常に満足な収率(Y(CH
4))を得ることが可能となり、300~350℃の温度で100%に達する。
【0057】
実施例7:スチールウールに付着させたNi触媒
触媒床は、2.27gの(超極細)スチールウールに付着させた0.03gのニッケル粒子からなる。気体流は下向きであり、一定流量(20mL/分のH2、及び5mL/分のCO2)である。
【0058】
CO
2とCH
4の転化率の結果を
図6に示す。最大収率(Y(CH
4))は、400℃で90%である。このシステムの実装がより簡単であることが分かっているので、この結果は、非常に心強い。
【0059】
実施例8:エネルギー効率
図7にまとめられた前の3つの実施例(実施例5、6、及び7)のエネルギー効率の計算は、同じ温度に到達するために提供する必要があるエネルギーは、鉄粉系よりもスチールウール系の方が少ないことを示す。粉末とウールのこの違いは、特にスチールウール+Ni/CeO
2系で観察される。スチールウール+Niのエネルギー効率は、加熱するウールの量が多いため、同じ量のメタンの生成に供給するエネルギーが多くなり、あまり良くない。提示された実施例では、ニッケルがほとんど付着していないため、有利な収率(90%)を達成するためには、大量のスチールウールを導入する必要があった。
【国際調査報告】