(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】高精度に整合される免疫グロブリン輸液用システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20221114BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20221114BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61M5/14 582
A61M5/142 530
A61M5/168 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517795
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020051643
(87)【国際公開番号】W WO2021055861
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522107865
【氏名又は名称】イノベイティブ ヘルス サイエンシズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シールフォン、アンドルー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066FF01
4C066FF05
4C066HH01
4C066QQ21
4C066QQ32
4C066QQ35
4C066QQ72
4C066QQ92
(57)【要約】
輸液流体を患者の解剖学的空間に送達するシステム、投与セット、及び製造する方法は、所望の流量の輸液流体を送達するよう事前設定されるコントローラと、コントローラに整合される投与セットとを含み、投与セットは、特定の輸液流体での治療に向けた、所望の流量及び輸液部位の数に基づいて選択された直径及び長さを有する、所定の数の流れチューブを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する輸液システムであって、前記システムが、
輸液流体の所望の流量を送達するよう事前設定されるコントローラと、
前記コントローラに整合される投与セットであって、前記投与セットが、特定の輸液流体での治療に向けた、前記所望の流量及び輸液部位の数に基づいて選択された直径及び長さを有する、所定の数の流れチューブを含む投与セットと
を備える、輸液システム。
【請求項2】
前記投与セットが、前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に皮下送達する針セットを備え、前記針セットが、
前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に皮下送達するための前記所望の流量、輸液部位の数、及び送達されるべき前記特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針
をさらに備える、請求項1に記載の輸液システム。
【請求項3】
前記輸液流体を送達する、ほぼ定圧の輸液ドライバ
をさらに備え、前記所定の数の針が、前記投与セットの前記針の数、前記流れチューブの流量、及び送達されるべき前記特定の輸液流体に基づいて、所定の輸液流体圧で所定の流量の前記特定の輸液流体を送達するように事前に較正される、請求項2に記載の輸液システム。
【請求項4】
前記投与セット内の前記針の数が、1本から8本を含む、請求項3に記載の輸液システム。
【請求項5】
前記コントローラが、前記流れチューブに取り付けられ、前記特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するために、事前設定されるよう構成される、請求項3に記載の輸液システム。
【請求項6】
前記流れチューブ及び前記針が、1回使いきりの包装内に包装されている、請求項3に記載の輸液システム。
【請求項7】
前記投与セットが、前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に静脈内送達する静脈内輸液セットを備え、前記静脈内輸液セットが、
輸液ドライバから前記輸液流体を受け取るチューブと、
前記コントローラ及び前記チューブから前記輸液流体を受け取り、所定の流量で前記輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達するコネクタと
をさらに備え、前記所定の流量が、所定の輸液流体圧での前記特定の輸液流体及び前記チューブの流量に対して選択される、請求項1に記載の輸液システム。
【請求項8】
前記コントローラが、前記システムに取り付けられ、前記特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するために、事前設定されるよう構成される、請求項7に記載の輸液システム。
【請求項9】
前記コネクタが、ルアー・ロック・コネクタを含む、請求項8に記載の輸液システム。
【請求項10】
輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する輸液システムであって、前記システムが、
ほぼ一定の圧力及び所望の流量で、前記患者の解剖学的空間に前記輸液流体を送達するポンプ・ドライバと、
前記輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する投与セットと
を備え、前記投与セットが、
特定の輸液流体での治療に向けた、前記所望の流量及び輸液部位の数に基づいて選択された直径及び長さを有する、所定の数の流れチューブ
を含む、輸液システム。
【請求項11】
前記投与セットが、前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に皮下送達する針セットを備え、前記針セットが、
前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に皮下送達するための前記所望の流量、輸液部位の数、及び前記特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針
をさらに備える、請求項10に記載の輸液システム。
【請求項12】
前記所定の数の針が、前記投与セットの前記針の数、前記流れチューブの流量、及び送達されるべき前記特定の輸液流体に基づいて、所定の輸液流体の圧力で前記特定の輸液流体の所定の流量を送達するように事前に較正される、請求項11に記載の輸液システム。
【請求項13】
前記投与セット内の前記針の数が、1本から8本を含む、請求項12に記載の輸液システム。
【請求項14】
前記ドライバが、前記流れチューブに取り付けられ、前記特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するために、事前設定されるよう構成される、請求項11に記載の輸液システム。
【請求項15】
前記流れチューブ及び前記針が、1回使いきりの包装内に包装されている、請求項11に記載の輸液システム。
【請求項16】
前記投与セットが、前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に静脈内送達する輸液セットを備え、前記投与セットが、
前記輸液流体を受け取り、前記特定の輸液流体での治療に向けて選択された所定の流量で、前記流れチューブの流量に基づいて所定の輸液流体圧で、前記輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達するコネクタと、
前記コネクタに取り付けられ、前記特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するように、事前設定されるべき流量コントローラと
をさらに備える、請求項10に記載の輸液システム。
【請求項17】
前記コネクタが、ルアー・ロック・コネクタを含む、請求項17に記載の輸液システム。
【請求項18】
特定の輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する輸液システムを製造する方法であって、前記方法が、
流量コントローラを投与セットに整合させるステップ
を含み、前記流れコントローラが、輸液流体の所望の流量を送達するよう事前設定され、前記投与セットが、前記特定の輸液流体での治療に向けた前記所望の流量及び輸液部位の数に基づく、長さ及び直径を有する所定の数の流れチューブを含む、方法。
【請求項19】
前記投与セットが、前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に皮下送達する針セットを備え、前記方法が、
前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に皮下送達するための前記所望の流量、輸液部位の数、及び前記特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針を選択するステップ
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に送達するように、針の数を構成して事前に較正するステップと、
前記投与セットの前記針の数、前記流れチューブの流量、及び送達されるべき前記特定の輸液流体に基づいて、所定の輸液流体圧での前記特定の輸液流体の流量を決定するステップと
をさらに含む、請求項18に記載の製造する方法。
【請求項21】
前記流量コントローラを、前記流れチューブに取り付けられるように構成するステップと、
前記特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するように、前記流量コントローラを事前設定するステップと
をさらに含む、請求項20に記載の製造する方法。
【請求項22】
前記流れチューブ及び前記針を、1回使いきりの包装内に包装するステップ
をさらに含む、請求項20に記載の製造する方法。
【請求項23】
前記輸液システムの前記針の数が、1本から8本を含む、請求項21に記載の製造する方法。
【請求項24】
前記輸液システムが、前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に静脈内送達するよう構成され、前記方法が、
チューブを、輸液ドライバから前記輸液流体を受け取るように構成するステップと、
コネクタを、前記整合された流量コントローラから前記輸液流体を受け取るように、また前記チューブを、前記特定の輸液流体での治療に向けて選択された所定の流量で、前記チューブの流量に基づく所定の輸液流体圧で、前記輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達するように構成するステップと
をさらに含む、請求項19に記載の製造する方法。
【請求項25】
前記流量コントローラを、コネクタに取り付けられるように構成するステップと、
前記特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するように、前記流量コントローラを事前設定するステップと
をさらに含む、請求項23に記載の製造する方法。
【請求項26】
前記輸液流体をほぼ一定の圧力で送達する輸液ドライバを備えるステップをさらに含む、請求項18に記載の製造する方法。
【請求項27】
輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する投与セットであって、前記投与セットが、
特定の輸液流体での治療に向けた、コントローラの所望の流量及び輸液部位の数に基づいて選択された直径及び長さを有する、所定の数の流れチューブ
を備える、投与セット。
【請求項28】
輸液流体の所望の流量を送達するよう事前設定されるコントローラをさらに備え、前記投与セットが、前記コントローラに整合される、請求項27に記載の投与セット。
【請求項29】
前記輸液流体を前記患者の解剖学的空間に皮下送達するための前記所望の流量、輸液部位の数、及び送達されるべき前記特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針をさらに備える、請求項27に記載の投与セット。
【請求項30】
輸液流体源から輸液流体を受け取るチューブと、
輸液流体を前記コントローラから受け取るコネクタと
をさらに備え、前記チューブが、前記特定の輸液流体向けに選択された所定の流量で、所定の輸液流体圧及び前記チューブの流量で、前記輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達する、請求項28に記載の投与セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、高精度に整合される、流量が選択可能なコントローラ及び針セットのシステム及び方法に関する。本発明は、より詳細には、定圧シリンジ・ドライバを使用して、輸液療法用の流体を安全且つ正確に送達する、流量が選択可能なコントローラ及び針セットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在市場に出回っている輸液システムは、ほとんどが電動式であり、事前設定された流量で流体を送達することにより機能する。システムは、事前設定された流量を維持するために、任意の閉塞又は他の流体抵抗の増加に応じて、輸液回路のどこからでも、圧力を高める必要がある。この圧力上昇は、深刻な部位の反応、痛み、及び組織壊死を引き起こす可能性がある。機械式シリンジ・ドライバで構成された輸液システムもあるが、これは通常、所望の流量ごとに別個の流量チューブを選択する必要があり、輸液が開始されると、簡単に変更することはできない。さらに、皮下投与用の可変流量コントローラを有しているものもあるが、コントローラは較正されておらず、流量が謎のまま送達され、輸液治療の最適化を難しくしている。
【0003】
他の輸液システムには、固定の限定チューブ・セット(restrictive tubing set)を通して薬剤を押し出す、拡張可能なバルーンを充填する、バルーン型エラストマ・ポンプが含まれる。しかし、エラストマ・ポンプには、バルーン内に薬剤及び空気を閉じ込めること、数種の薬物にとって不十分な、低く且つ変化する圧力で送達すること、及び温度によって変わる、非常に不正確な流量を送達することを含む欠点がある。エラストマ・ポンプは、バッチ間の変動性及び充填に関連する問題を抱えている場合もあり、また患者に提供するのに費用がかかる場合がある。最後に、過去の輸液システムには、薬の大きな袋に連結し、非常に低い圧力で薬/流体を静脈に送達する、重力式静脈内点滴セットが含まれるが、流量は非常に不正確である。これらのシステムでは、薬を確実に、正確に輸液するために、頻繁な看護監督(およそ15分ごと)が必要である。
【0004】
輸液システム及び使用方法は、原発性免疫不全症(PIDD:Primary Immune Deficiency Disease)又は神経調節(神経内科)のための免疫グロブリン、様々な疾患のためのモノクローナル抗体療法、水分補給、抗生物質、鎮痛、及び他の疾患のための他の療法を含む、流体(一般に液体の形態の薬物)を投与する。輸液ポンプは、栄養素、及び免疫グロブリン又は抗生物質を含む、薬物を含む流体を、制御された量を患者に送達する医療デバイスである。栄養素及び薬物には、インスリン、他のホルモン、抗生物質、化学療法薬剤、鎮痛剤、及び他の流体が含まれ得る。
【0005】
輸液ポンプを使用して、静脈内ばかりでなく皮下(皮膚の下)、動脈、及び硬膜外(中枢神経系の表面内)に流体を送達することができる。輸液ポンプは、看護スタッフが手動で実行する場合に、実際的でない費用がかかるか、安全でないか、又は信頼性が低いやり方で、流体を確実に投与することができる。輸液ポンプは、非常に少量の流体を送達する機能、及び正確にプログラムされた速度又は自動化された間隔で流体を送達する機能を含む、流体の手動投与に勝る利点を提供する。輸液ポンプは、たとえば、1時間当たり1ml(点滴法にとって少なすぎる用量)の注入、毎分の注入、患者が要求する繰り返しのボーラス注入(たとえば、一定期間にわたる最大許容ボーラス回数までの、患者が管理する鎮痛用)、又は量及び送達が時間帯によって変わる流体を投与することができる。
【0006】
機械式定圧輸液ポンプ・システムは、使い捨て輸液セットを使用して、ポンプ・システムを患者の輸液部位に結合することが多い。こうしたセットは通常、輸液部位と輸液ポンプとの間に固定流量チューブを有する。定流電動ポンプ・システムでは、チューブは「延長セット」と呼ばれ、電動ポンプが所望の流量を維持するために必要な圧力に調整するので、流動特性は規定されない。
【0007】
本明細書で使用される場合、「針セット」及び「静脈内輸液セット」は「投与セット」であり、チューブ、ルアー・ロック、ライン・ロック、流量コントローラ、針、及び針安全機構(たとえば、バタフライ又は円盤)の、送達組立体を指す。「チューブ・セット」とは、「針セット」及び「静脈内輸液セット」で使用されるチューブを指す。
【0008】
さらに、従来の機械式輸液システムでは、別個の流量制限チューブを使用して、患者の輸液速度の要件に基づいて、様々な薬剤、静脈内カテーテル、又は皮下針セット向けに、様々な流量を作り出す。現在、高精度流量チューブ・セットの市場には22種の製品がある。各高精度流量チューブ・セットは、メーカが規定する長さ及び特定の直径のセットを含む。各高精度流量チューブ・セットは、皮下に使用する場合、同じ薬剤が使用されることを前提として、針セットにおいて使用される穿刺部位(needle site)の数、並びに使用されるチューブ及び針の直径及び長さに応じて、相異なる流量を生成する。皮下針セットは、共通のマニホルドに一体にグループ化された1~8本の針の構成で提供され、各構成には、長さ及び/又は直径が相異なり得る、様々な直列(series)流量チューブが必要である。さらに、これらの既知のシステムでは、一般に、各高精度流量チューブ・セットで、やはり様々な流量が得られる、4種のボア径の針(28g、27g、26g、24g)がある。これらの流量は、流量計算器又は携帯電話のアプリを使用して計算され、システム・パラメータ(たとえば、特定の流体粘度など)を入力して、輸液の流量及び時間を計算する。静脈内投与の場合、ほとんどの薬剤は低粘度であり、静脈内カテーテルが、より低い流量(<120ml/時)において、流量の精度を損なうことはない。また、現在市場に出回っている機械式輸液ポンプは、すべての輸液の約80~90%が静脈内向けであるという事実を無視して、皮下投与を対象としている。
【0009】
可変流量コントローラの一実例は、米国特許出願公開第2016/0256625号で説明されている。可変流量コントローラは、複数必要となる固定流量チューブ・セットに取って代わり、在庫の問題を最小限に抑える。しかし、可変流量コントローラは、大きい流量で一貫性がなく、また最小の設定と最大の設定との両方で精度が低下することにより、予測不可能であることが判明した。さらにこのコントローラでは、全開最大設定で、流量が無制限となった(すなわち、マークは流量を直接的に示すものではない)。したがって、このシステムを使用する場合、臨床医は、実際に送達される流量がどのようになる可能性が高いかを予測又は知るのに苦労する。輸液はそれぞれ特有のものであるため、投与中の患者に又は可変流量コントローラ・デバイスに、どんな問題も存在するかどうかを知ることは、臨床上の課題となる。基準が確立されていない場合、どんな輸液での厄介な問題も、診断して補正することは困難である。
【0010】
機械式定圧システムでは、流体経路と直接的又は間接的に接触している構成要素が、患者に送達される最終的な流量に影響を与える。システムのどの部品も、患者に送達されている不正確な流量、及び患者に起こる可能性がある、付随する有害な副作用の一因となる可能性がある。
【0011】
いくつかの有害な治療での事象は、ユーザのミスの結果であり得るが、以前のシステムで報告された有害な事象の多くは、輸液システムの設計及び工学技術の欠陥と関係があり、通常、過剰な流量又は大きい出力圧のリスクがある。針及びチューブのセット並びにコントローラの違いごとに必要となる追加の計算により、不必要な複雑さ及びミスするポイントが加わる。こうした欠陥は、それ自体が問題を引き起こすか、又は患者の輸液部位での輸液流体の不適当な流量として顕在化することにより、ユーザがミスする一因となる。
【0012】
この背景技術の段落で開示された上記の情報は、本発明の概念の背景を理解するためだけのものであり、したがって、先行技術を構成しない情報を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0256625号
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0256624号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の原理及び例示的な実施態様に従って構築された輸液システム及び実行される方法は、1つ又は複数の上記の欠陥に対処する。たとえば、本発明の原理及びいくつかの例示的な実施態様(及び例示的な実施態様を実施する方法)に従って構築された輸液システムは、整合された可変流量コントローラ、投与セット、及び輸液流体を送達する定圧シリンジ・ドライバを使用して、輸液流体を患者に送達する。本発明の1つの例示的な実施態様では、高精度に整合された輸液システムは、皮下に使用する免疫グロブリンを送達する。本発明の別の例示的な実施態様では、高精度に整合された輸液システムは、定圧シリンジ・ドライバ、整合された可変流量コントローラ、及びチューブ・セットを使用して、静脈内に使用する抗生物質の輸液を送達する。
【0015】
本発明の1つの例示的な実施態様では、較正された使い捨て輸液セットを使用して、コントローラに、確実に適切な流量を送達させる。較正された流量コントローラ及び流れ回路の互換性のある部品を構築及び使用することにより、本発明によるシステムは、輸液流体を安全且つ正確に患者に送達する。
【0016】
本発明の原理及びいくつかの例示的な実施態様による輸液システム及び方法は、医薬品の薬剤を送達する上での問題のうちの、主要な問題点の多くを解決する。輸液システムは、圧力を安全な値に制限することにより、安全性を大幅に高めることができる。輸液システムは、多くの固定速度のチューブ・セットの必要性をなくするので、労力が大幅に軽減される。本発明の原理及びいくつかの例示的な実施態様による輸液システム及び方法は、はるかに低い価格でこれらの利点を提供でき、製造に関して拡張性があり得、したがって、COVID19のような新しい感染性ウイルスについての要求を満たすことができる。輸液システムは、病院、診療所、又は自宅で、臨床医又は訓練を受けた患者が使用することができる。原理に従った輸液システム及び方法、並びに本発明によるシステム及び方法のいくつかの例示的な実施態様はまた、流量の直接的な表示、すなわち「見ている通りのものを得る」を提供することができ、計算、エクセルのスプレッドシート、又は状況ごとに流量出力を参照するための長い表のリストが不要である。輸液システムは、様々な相異なる流量制御の必要性をなくすことができ、任意の数の穿刺部位での適切な流量表示を提供するよう自動的に較正され得、すべての輸液の構成要素を1つの包装内で一体に連結することにより、無菌の規則遵守を向上させながらミスをなくする。免疫グロブリンの皮下送達及び抗生物質の静脈内送達用の、原理及びいくつかの例示に従った輸液システム及び方法は、現在市場に出ている薬剤の最大流量を送達することができ、さらに速い流量に対する今後の要求を満たすことができる。現在、市場で入手可能な、柔軟性、安全性、使いやすさ、及び全般的な輸液性能を低価格で提供できる、本発明の原理及びいくつかの例示的な実施態様による輸液システム及び方法と同様のシステムはない。
【0017】
たとえば、可変流量コントローラを静脈内投与セット又は皮下投与セットと整合させることにより、当技術分野における問題の多くが解決する。静脈内チューブ・セットは、可変流量コントローラと整合され、較正された輸液セットとして包装される。同様に、皮下への輸液では、皮下針セットが可変流量コントローラと整合され、別の較正された輸液セットとして包装される。整合されたセットは、無菌包装で提供され、以前のシステムに勝るいくつかの大きな利点が実現される。
【0018】
これらの利点には、在庫するアイテムの数がより少ないこと、再現性があり正確な流れ制御設定、並びに患者及び介護者の安全性が大幅に向上することが含まれる。本発明の原理及びいくつかの例示的な実施態様による輸液システム及び方法は、事前設定された最大流量(工場で、又は医療提供者によって設定される)を提供でき、針セットの数は、最大流量の設定に基づいて整合され得る。これにより、コントローラを(皮下へ使用する)針セットに連結する従来の方法が不要になり、無菌汚染の可能性が減少することにより、すべての使用で潜在的な汚染源が排除されるので、患者の安全性が向上する。
【0019】
現在の市場の製品の不整合性及び不正確さを回避するために、本発明のいくつかの例示的な実施態様では、具体的には、患者及び臨床医用にコントローラのダイヤルに明確に表示される、高精度の流量をコントローラに確実に送達させるよう較正される。さらに、患者及び/又は提供者が、コントローラにより、様々な流量を選択できるので、追加の固定速度のチューブ・セット(現在の市場の製品)は不要である。これにより、患者ごとに、患者の治療計画に応じて調節された輸液体験が可能になる。
【0020】
皮下に使用する場合、使用される穿刺部位が多いほど、可変流量コントローラからのより大きい流量が、一層必要となる。たとえば、4本針セットで使用される最大流量の値が単一の針セットで使用された場合、患者へ送達される速度が過剰になり、不快感を引き起こすであろう。逆に、単一の針セットの最大流量が4本針セットで使用されると、部位当たりの流量は許容される最大流量を大幅に下回り、患者は、最も時間効率の良いやり方で治療を受けることができなくなる。さらに、本発明のいくつかの例示的な実施態様に従って構築された流量を整合させるコントローラは、コントローラの極端な設定での流量を適切に明らかにして、生成される流量を、ml/時単位の目に見える基準でラベルづけできるので、患者は、流量の安全な範囲を完全に認識する。
【0021】
本発明の例示的な実施態様は、必要な可変流量コントローラの在庫を簡略化することにより、米国特許出願公開第2016/0256624号の可変流量コントローラなどの、既知のシステムに勝る明確なコスト上の利点を提供することができる。これにより、複数の様々な可変流量コントローラを在庫する必要がなくなる。加えて、患者が必要とするすべての構成要素を備えた単一の整合された包装を提供できるので、医療提供者の労力がより少なく済む。さらに、針セット、チューブ・セット、又は可変流量コントローラを変更する場合の、意思決定プロセス及び複雑さを軽減することで、ユーザのミスが大幅に減る。
【0022】
本発明の概念のさらなる特徴は、以下の説明に記載することとし、説明から部分的に明らかになるか、又は本発明の概念を実践することによって知ることができる。
【0023】
本発明の一態様によれば、輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する輸液システムは、所望の流量の輸液流体を送達するよう事前設定されたコントローラと、コントローラに整合された投与セットとを含み、投与セットは、特定の輸液流体での治療に向けた、所望の流量及び輸液部位の数に基づいて選択された直径及び長さを有する、所定の数の流れチューブを含む。
【0024】
投与セットは、輸液流体を患者の解剖学的空間に皮下送達する針セットを含むことができ、針セットには、輸液流体を患者の解剖学的空間に皮下送達するための所望の流量、輸液部位の数、及び送達されるべき特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針がさらに含まれ得る。
【0025】
輸液システムは、輸液流体を送達する、ほぼ定圧の輸液ドライバをさらに含むことができ、所定の数の針は、投与セットの針の数、流れチューブの流量、及び送達されるべき特定の輸液流体に基づいて、所定の輸液流体圧で所定の流量の特定の輸液流体を送達するように、事前に較正され得る。
【0026】
投与セットの針の数は、1本から8本を含むことができる。
【0027】
コントローラは、流れチューブに取り付けられ、特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するために、事前設定されるよう構成され得る。
【0028】
流れチューブ及び針は、1回使いきりの包装内に包装され得る。
【0029】
投与セットは、輸液流体を患者の解剖学的空間に静脈内送達する静脈内輸液セットを含むことができ、静脈内輸液セットは、輸液ドライバから輸液流体を受け取るチューブと、コントローラ及びチューブから輸液流体を受け取り、所定の流量で輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達するコネクタとをさらに含むことができ、所定の流量は、所定の輸液流体圧での特定の輸液流体、及びチューブの流量に対して選択され得る。
【0030】
コントローラは、システムに取り付けられ、特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するために、事前設定されるよう構成され得る。
【0031】
コネクタには、ルアー・ロック・コネクタが含まれ得る。
【0032】
本発明の別の態様によれば、輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する輸液システムは、ほぼ一定の圧力及び所望の流量で、輸液流体を患者の解剖学的空間に送達するポンプ・ドライバと、輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する投与セットとを含み、投与セットは、特定の輸液流体での治療に向けた、所望の流量及び輸液部位の数に基づいて選択された直径及び長さを有する、所定の数の流れチューブを含む。
【0033】
投与セットは、輸液流体を患者の解剖学的空間に皮下送達する針セットを含むことができ、針セットには、輸液流体を患者の解剖学的空間に皮下送達するための所望の流量、輸液部位の数、及び特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針がさらに含まれ得る。
【0034】
所定の数の針は、投与セットの針の数、流れチューブの流量、及び送達されるべき特定の輸液流体に基づいて、所定の輸液流体圧で特定の輸液流体の所定の流量を送達するように、事前に較正され得る。
【0035】
投与セットの針の数は、1本から8本を含むことができる。
【0036】
ドライバは、流れチューブに取り付けられ、特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するために、事前設定されるよう構成され得る。
【0037】
流れチューブ及び針は、1回使いきりの包装内に包装され得る。
【0038】
投与セットは、輸液流体を患者の解剖学的空間に静脈内送達する輸液セットを含むことができ、投与セットは、輸液流体を受け取り、特定の輸液流体での治療に向けて選択された所定の流量で、流れチューブの流量に基づく所定の輸液流体圧で、輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達するコネクタと、コネクタに取り付けられ、特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するように、事前設定されるべき流量コントローラとをさらに含むことができる。
【0039】
コネクタには、ルアー・ロック・コネクタが含まれ得る。
【0040】
本発明の別の態様によれば、特定の輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する輸液システムを製造する方法は、流量コントローラを投与セットに整合させるステップを含み、流れコントローラが、輸液流体の所望の流量を送達するよう事前設定され、投与セットが、特定の輸液流体での治療に向けた所望の流量及び輸液部位の数に基づく、長さ及び直径を有する所定の数の流れチューブを含む。
【0041】
投与セットは、輸液流体を患者の解剖学的空間に皮下送達する針セットを含むことができ、該方法は、輸液流体を患者の解剖学的空間に皮下送達するための所望の流量、輸液部位の数、及び特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針を選択するステップをさらに含むことができる。
【0042】
該製造する方法は、輸液流体を患者の解剖学的空間に送達するように、針の数を構成して事前に較正するステップと、投与セットの針の数、流れチューブの流量、及び送達されるべき特定の輸液流体に基づいて、所定の輸液流体圧での特定の輸液流体の流量を決定するステップとをさらに含むことができる。
【0043】
該方法は、流れチューブに取り付けられるように、流量コントローラを構成するステップと、特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するように、流量コントローラを事前設定するステップとをさらに含むことができる。
【0044】
該方法は、流れチューブ及び針を、1回使いきりの包装内に包装するステップをさらに含むことができる。
【0045】
輸液システムの針の数は、1本から8本を含むことができる。
【0046】
輸液システムは、輸液流体を患者の解剖学的空間に静脈内送達するよう構成され得、該方法は、チューブを、輸液ドライバから輸液流体を受け取るように構成するステップと、コネクタを、整合された流量コントローラから輸液流体を受け取るように、またチューブを、特定の輸液流体での治療に向けて選択された所定の流量で、チューブの流量に基づく所定の輸液流体圧で、輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達するように構成するステップとをさらに含むことができる。
【0047】
該方法は、コネクタに取り付けられるように、流量コントローラを構成するステップと、特定の輸液流体での治療に向けて、最大流量以下に事前設定された流量を送達するように、流量コントローラを事前設定するステップとをさらに含むことができる。
【0048】
該方法は、輸液流体をほぼ一定の圧力で送達する、輸液ドライバを備えるステップをさらに含むことができる。
【0049】
本発明の別の態様によれば、輸液流体を患者の解剖学的空間に送達する投与セットは、特定の輸液流体での治療に向けた、コントローラの所望の流量及び輸液部位の数に基づいて選択された直径及び長さを有する、所定の数の流れチューブを含む。
【0050】
投与セットは、輸液流体の所望の流量を送達するよう事前設定されるコントローラをさらに含むことができ、投与セットは、コントローラに整合され得る。
【0051】
投与セットは、輸液流体を患者の解剖学的空間に皮下送達するための所望の流量、輸液部位の数、及び送達されるべき特定の輸液流体に基づいて選択された直径を有する、所定の数の針をさらに含むことができる。
【0052】
投与セットは、輸液流体源から輸液流体を受け取るチューブと、輸液流体をコントローラから受け取るコネクタとをさらに含むことができ、チューブは、特定の輸液流体向けに選択された所定の流量で、所定の輸液流体圧及びチューブの流量で、輸液流体をIVバッグ又はカテーテルに送達する。
【0053】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が、例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載された本発明の、より詳しい説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【0054】
添付図面は、本発明のさらなる理解を可能にするために含まれ、この明細書の一部に組み入れられ、またこの明細書の一部を構成し、本発明の例示的な実施例を示し、説明と共に本発明の概念を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1A】輸液する液体を患者の皮下に送達する、本発明の原理に従って構築された輸液システムの例示的な実施例の図である。
【
図1B】輸液する液体を患者の皮下に送達する、本発明の原理に従って構築された輸液システムの、別の例示的な実施例の図である。
【
図2】様々な薬剤及び穿刺部位に対する、様々な可変流量コントローラの必要性を示す、様々な薬剤に使用される流量、チューブのサイズ、及び穿刺部位の表である。
【
図3】輸液する液体を患者の静脈内に送達する、本発明の原理に従って構築された輸液システムの例示的な実施例の図である。
【
図4A】本発明の原理に従って構築された、輸液システムで使用される可変流量コントローラの斜視図である。
【
図4C】チャネルの様々な位置が、様々な流量を実現させることができる、減少するチャネル及びスリップ・ワッシャに対して作用する入口穴を示す、
図4A及び
図4Bの可変流量コントローラの断面図である。
【
図5A】本発明の原理に従って構築された、開いた構成で示されたバタフライの羽の、例示的な実施例の上面斜視図である。
【
図5B】本発明の原理に従って構築された、針を備えたバタフライの羽の例示的な実施例の上面斜視図である。
【
図5D】本発明の原理に従って構築された、ボールアンドピボット式接合部を使用する針を備える、バタフライの羽の別の例示的な実施例の側面断面図である。
【
図5E】
図5Bの針を備えたバタフライの羽の分解斜視図である。
【
図6A】本発明の原理に従って構築された定圧シリンジ・ポンプの、例示的な実施例の斜視図である。
【
図6B】
図6Aの定圧シリンジ・ポンプの、カバーなしの状態での斜視図である。
【
図7】
図4Aの可変流量コントローラの、1組の較正された流れダイヤルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下の記述において、説明する目的で、本発明の様々な例示的な実施例又は実施態様の完全な理解を可能にするために、多数の特定の詳細が示されている。本明細書で使用される場合、「実施例」及び「実施態様」は、本明細書で開示される本発明の概念のうちの1つ又は複数を使用する、デバイス又は方法の非限定的な実例である、交換可能な単語である。しかし、様々な例示的な実施例が、こうした特定の詳細なしで、又は1つ又は複数の同等の配置構成で実践され得ることは明らかである。他の例では、様々な例示的な実施例を不必要に曖昧にすることを避けるために、よく知られた構造体及びデバイスが、ブロック図の形で示されている。さらに、様々な例示的な実施例は、異なるものであり得るが、排他的である必要はない。たとえば、例示的な実施例の特定の形状、構成、及び特性は、本発明の概念から逸脱することなく、別の例示的な実施例で使用又は実施され得る。
【0057】
別段の指定がない限り、示された例示的な実施例は、本発明の概念が実際に実施され得るいくつかのやり方の、様々な詳細の例示的な特徴を提示するものと理解されたい。したがって、別段の指定がない限り、様々な実施例の特徴、構成要素、モジュール、層、膜、パネル、領域、及び/又は態様など(これ以降、個々に又は集合的に「要素」と呼ぶ)は、その他の場では、本発明の概念から逸脱することなく、組み合わされ、分離され、置き換えられ、且つ/又は再配置され得る。
【0058】
添付図面における網掛け及び/又は陰影づけの使用は、概して、隣接する要素間の境界を明確にするために行われている。したがって、網掛け又は陰影づけの有無は、明示されていない限り、要素の特定の材料、材料の特質、寸法、比率、示された要素間の共通性、及び/又は他の任意の特性、属性、特質などの、どんな優先度又は要件も、伝えるか又は示すものではない。さらに、添付図面では、要素のサイズ及び相対的なサイズは、明確化及び/又は説明する目的で誇張されている場合がある。例示的な実施例が別々に実施され得る場合、特定のプロセスの順序は、説明されている順序とは異なって実行されてもよい。たとえば、2つの連続して説明されているプロセスは、ほぼ同時に実行されてもよく、又は説明されている順序とは反対の順序で実行されてもよい。また、同様の参照番号は同様の要素を示している。
【0059】
層などの要素が、別の要素又は層「の上にある」、「に連結されている」、又は「に繋がれている」と称されている場合、直接他の要素若しくは層の上にあるか、連結されるか、又は繋がれていてもよく、或いは介在する要素又は層が存在してもよい。ただし、要素又は層が、別の要素又は層「の直接上にある」、「に直接連結されている」、又は「に直接繋がれている」と称されている場合、介在する要素又は層は存在しない。この目的のために、「連結されている」という用語は、介在する要素の有無にかかわらず、物理的な、電気的な、且つ/又は流体の連結を指すことができる。さらに、D1軸、D2軸、及びD3軸は、x、y、及びz軸などの直交座標系の3つの軸に限定されるものではなく、より広い意味で解釈され得る。たとえば、D1軸、D2軸、及びD3軸は、互いに垂直であってもよく、又は互いに垂直ではない様々な方向を表してもよい。この開示では、「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」並びに「X、Y、及びZからなるグループから選択される少なくとも1つ」は、Xのみ、Yのみ、Zのみ、又はたとえば、XYZ、XYY、YZ、及びZZなどの、X、Y、及びZのうちの2つ以上の任意の組合せと解釈され得る。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連する列挙されたアイテムのうちの1つ又は複数の、ありとあらゆる組合せを含む。
【0060】
「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書では様々な種類の要素を説明するために使用され得るが、こうした要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素を、別の要素から区別するために使用される。したがって、下記で論じられる第1の要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素と名づけられ得る。
【0061】
「~の下に」、「~より下に」、「~の真下に」、「~の下側に」、「~より上に」、「~の上側に」、「~の上に」、「~より高い」、「側部の」(たとえば、「側壁」のような)などの空間的に相対的な用語は、本明細書では、説明する目的で使用され、またこれによって、図面に示されている1つの要素と別の要素との関係を説明するために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用中、動作中、及び/又は製造中の装置の様々な向きを包含することを意図している。たとえば、図面中の装置が裏返されると、他の要素又は特徴「より下に」又は「の下に」あると説明された要素は、ここで、他の要素又は特徴「より上に」向けられるであろう。したがって、例示的な用語「~より下に」は、より上向きとより下向きとの両方を包含することができる。さらに、装置は、それ以外の方向を向いていてもよく(たとえば、90度回転して、又は他の向きに)、したがって、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子はこれに応じて解釈される。
【0062】
本明細書で使用されている用語法は、特定の実施例を説明することを目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないと示していない限り、複数の形態も同様に含むことを意図している。さらに、この明細書で使用される場合、用語「備える(三人称単数現在)」、「備える(現在分詞)」、「含む(三人称単数現在)」、及び/又は「含む(現在分詞)」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はこれらのグループの存在を特定するが、他の1つ又は複数の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はこれらのグループの、存在又は追加を排除するものではない。本明細書で使用される場合、用語「ほぼ」、「約」、及び他の類似の用語は、程度の用語としてではなく、近似の用語として使用され、したがって、当業者によって認識されるはずである、測定された、計算された、且つ/又は得られた値の固有の誤差を考慮するために使用されることにも留意されたい。
【0063】
様々な例示的な実施例が、理想化された例示的な実施例及び/又は中間構造体の概略図である、断面図及び/又は分解図を参照して、本明細書で説明されている。したがって、たとえば製造技法及び/又は許容誤差の結果である、図の形状からのばらつきが予想されるべきである。したがって、本明細書で開示されている例示的な実施例は、特定の示された領域の形状に必ずしも限定されると解釈されるべきではなく、たとえば、製造に起因する形状の誤差を含むべきである。このように、図面に示される領域は、本質的に概略的であり得、この領域の形状は、デバイスの領域の実際の形状を反映しない場合があり、したがって、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0064】
その他の場で定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術的用語及び科学的用語を含む)は、この開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術の文脈における用語の意味と一致する意味を有していると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、理想化された、又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【0065】
皮下輸液の実例
図1Aは、輸液する液体を患者の皮下に送達する、本発明の原理に従って構築された輸液システム100の例示的な実施例を示している。輸液システム100は、輸液溜め125及び輸液針セット101を備える輸液ドライバ103を含む。
【0066】
いくつかの例示的な実施例では、
図1Aに示されているように、輸液システム100は、定圧シリンジ・ドライバであり得る輸液ポンプ103を備え、ユーザに提供され得る。シリンジ・ドライバ103は、特定の圧力又は経時的な液体の量に関するニーズに基づいて選択される。シリンジ・ドライバ(ポンプ)103は、シリンジ又は液体溜め125と、シリンジを駆動して液溜め内の流体を輸液針セット101内に押し込むドライバとを含む。輸液システム100は、輸液皮下針セット101をさらに含む。輸液皮下針セット101は、可変流量コントローラ107、針セット直列チューブ110、マニホルド120、チューブ・クランプ/ライン・ロック160、バタフライ・コネクタ/円盤145、及び針140を含む。
【0067】
いくつかの例示的な実施例では、輸液システム100は、患者自身の別個の輸液ドライバ又はポンプと共に使用する輸液針セット101だけが、ユーザに提供される。いくつかの例示的な実施例では、輸液ドライバ又はポンプは、たとえば、標準的な円盤形ルアー・コネクタを含む任意の既知の手段を介して、輸液針セット101に連結され得る。
【0068】
皮下投与の場合、輸液ドライバ103の流体工学により、注入部位の数が増えるにつれて、部位当たりの最大流量は、コントローラ(
図4A~
図4Cに示される)で流量設定を増やす必要がある。したがって、針セットの組合せにおける針の数は、相異なる直列流量の調節が必要となる。注入部位の数が増えると、注入部位での所望の流量を調節及び維持するために、やはり同量の直列流量を増加させる必要がある。一実例では、4本針の部位で使用する最大流量に設定された可変流量コントローラ及び直列高精度流量チューブは、単一の針の部位で使用する場合に、メーカが承認した薬剤のラベルを超える、過剰な流量を作り出すことになる。
【0069】
過去には、医療専門家は、従来の定圧輸液システムにおいて特定の流量を供給するために、直列チューブ110を変更する必要があったはずである。すなわち、医療専門家は、より大きな直径/長さ又はより小さな直径/長さの、様々な直列チューブを選択する必要があったはずである。これは、すぐには利用できない可能性がある、且つ/又は汚染の懸念をもたらす可能性のある、別の投与セットの選択を必要とする。しかし、本発明の例示的な実施例は、ユーザが、輸液システムの流量を供給又は調整するために、可変流量コントローラにアクセスし、穿刺部位の数を選択できるという利点を提供する。可変流量コントローラによって利用可能な流量範囲及び穿刺部位の数により、特定の固定流量投与セット及び延長セットを在庫する必要がなくなり、また投与セットの交換又は延長セットの連結に伴う、汚染の懸念がなくなる。
【0070】
この問題に対処するために、1つの例示的な実施例では、本発明の原理に従って構築されたシステムは、必要な穿刺部位の数に基づいてシステムの最大流量を制御する、異なる流量入口直列チューブの選択肢を提供する。したがって、ユーザに、流量を調整するためのいくつかの追加のやり方を提供する。一実例では、穿刺部位の数が増加すると、薬剤メーカの添付文書に記載された、各穿刺部位で最大流量に達するために必要な流量も増加する。輸液システムのユーザは、穿刺部位の数の増加に基づいて、流量コントローラを調整するだけでなく、輸液針セットを、より大きい流量を可能にするものに変更することができる。
【0071】
図1Aに示されている本発明の例示的な実施例では、変更された直列チューブ110を備えた流量コントローラ107を使用して、輸液流体の流量を最大にする。
図1Aでは、可変流量コントローラ107は、
図4Aに示されているように、低速(緑又は0~20ml/時)、中速(黄色又は20~40ml/時)、及び高速(赤又は40~60ml/時)のセグメントにマークされた流量を有する。この例示的な実施例では、
図4Aの流量コントローラ107は、20%IgG溶液だけを使用するようマークされている。他の例示的な実施例では、可変流量コントローラ107は、10ml/時の増分(たとえば、10、20、30、40、50、及び60ml/時)にマークされた流量を有する。
【0072】
本発明の別の例示的な実施例では、システムは、皮下に使用するHizentra(登録商標)及びCuvitru(登録商標)又は他の免疫グロブリン用に、免疫グロブリンの輸液速度及び粘度に基づいて、流量コントローラ107を変更することができる。他の例示的な実施例では、輸液針セット101は、輸液される薬剤、治療される健康問題、症候群又は疾患、所望の流量、及び輸液部位の数に基づいて選択される。流量コントローラ107及び針140は、輸液針セット101の部品の取外し及び交換を防ぐために、針セット・チューブ110を介して直接連結されている。針セット・チューブ110は、可変流量コントローラ107からマニホルド120まで延在し、マニホルド120で針セット・チューブ110は、個々の針チューブ110から針140に分割される。針セット・チューブ110は、チューブのセクション間にチューブ・クランプ160を、たとえば、各針チューブ、並びに/又は可変流量コントローラ107とマニホルド120との間のチューブ上に、チューブ・クランプ/ライン・ロック160を含む。針セット・チューブ110は、ユーザが状況、たとえば輸液部位の数、輸液流体の粘度、患者の快適さ、及び輸液流体の最大輸液流量に基づいて選択するただ1つのセットであるため、輸液針セット101はルアー・コネクタを含んでいない。いくつかの例示的な実施例では、システムは、皮下投与される神経調節治療に使用される。
【0073】
図1Aに示されている本発明の例示的な実施例では、可変流量コントローラ107は、ルアー・コネクタを備えた直列チューブ110に連結されている。いくつかの例示的な実施例では、可変流量コントローラ107及びチューブ・セット110は、単一の包装内で組み合わされ、中間ルアー・コネクタなしで互いに直接連結されている。言い換えると、針セット101は、独自の専用可変流量コントローラ107を有する。
【0074】
いくつかの例示的な実施例では、針140は、針140ごとにバタフライ又は円盤組立体145を含むか、又はバタフライのない何らかの変形物及び針140を含むバタフライ組立体145を含む。輸液針セット101は、概して、1本から8本の間の数の針140を含むが、針140の数は、将来の輸液部位の許容数及び/又は針の設計の変更に基づいて、より多くなる可能性がある。針140は、相異なるボア径及び長さ、進入角度の針を含み、また輸液針セット101に関して、特定の患者の疼痛制御及び快適さに基づいて選択される。
【0075】
いくつかの例示的な実施例では、輸液システム100の針140は、輸液流体を送達するために、患者の解剖学的空間に挿入される。使用する針セット101は、選択された輸液流体及び輸液部位の数に基づいて選択される。ユーザ又は臨床医は、針セットを準備し、針セットの可変流量コントローラを、患者の解剖学的空間に送達されるべき輸液流体の最大流量以下に設定する。
【0076】
図1Bは、輸液する液体を患者の皮下に送達する、本発明の原理に従って構築された輸液システム200の例示的な実施例を示している。例示的な実施例では、輸液システム200は、ポンプ(ドライバ)103及び輸液針セット101を含む。ポンプ(ドライバ)103は、輸液流体の流れに対して少なくとも約34.5キロパスカル(5psi)の圧力を発生させることができ、輸液流体溜めを含む、任意の輸液ポンプであり得る。1つの例示的な実施例では、ポンプ(ドライバ)103は、
図1Aの輸液ドライバ103と同じものであり得る。輸液針セット101は、ルアー連結デバイス130、3分岐コネクタ(マニホルド)120、針チューブ110、各チューブ・セット110上のスライド・クランプ160、針140、及び針140ごとのバタフライの羽組立体145を含む。ポンプ(ドライバ)103は、ルアー連結デバイス130を介して、輸液ドライバ103と
図1Aの輸液針セット101との間の連結と同様に、針セット101に連結される。輸液システム200は、輸液針セット101に流量コントローラがないことを除いて、輸液システム100と同様である。
【0077】
図2は、Hizentra(登録商標)、Cuvitru(登録商標)、Hyqvia(登録商標)、又はGammagard(登録商標)免疫グロブリンなどの薬剤の流量が、必要となる流量である25から300ml/時の間に達するように、各薬剤、穿刺部位の数量で必要となる、例示的な計算した皮下流量の表である。輸液システム100は、
図2に提示された流量選択の同じ組合せを、直接供給する。たとえば、具体的には、Hizentra(登録商標)(50ml/時/部位の流量が必要となる)では、単一の針セットを使用する場合、F1050と同等の流量が必要である。しかし、Hizentra(登録商標)を使用している患者が、より大きい流量及び/又は4本針の輸液部位を必要とする場合、50ml/時/部位と同じ流量に達するには、4200と同等の流量が必要となるであろう。こうした最大値のカスタム設定は、工場で設定するか、又は臨床医が設定することができる。延長セットのチューブの流量に必要な流量の数値、たとえば、4200、1050ml/時などは、26Gの針を使用して
図2に記載されている流量の薬剤を送達するのに必要な、理論上の水を含まない流量を表している。
【0078】
別の濃度及び/又は粘度の他の薬剤は、薬剤の粘度によって変わる最大流量を制限するために、別の流量コントローラを必要とするであろう。たとえば、本発明の別の例示的な実施例では、システム300は、静脈内に使用する、バンコマイシン又は他の抗生物質用の特定の流量コントローラを含むことができ、これにより、医療提供者は、固定流量投与セットの必要な在庫を減らすであろう。
【0079】
本発明の他の例示的な実施例では、使用される薬剤の粘度に応じて、様々な状況に対する様々な可変流量コントローラ107が必要であり、この結果、PIDDに対する神経調節のための様々な治療実施要綱に関して、流量コントローラのラベルが変更され、流量を治療実施要綱ごとに最大値に制限する。
【0080】
静脈内輸液の実例
図3は、輸液する液体を患者の静脈内に送達する、本発明の原理に従って構築された輸液システム300の例示的な実施例を示している。輸液システム300は、輸液静脈内チューブ・セット201及び輸液溜め225を備えた輸液ドライバ203を含む。輸液静脈内セット201は、直列チューブ210、可変流量コントローラ207、及びIVバッグ又はカテーテル(別個に図示されていない)に連結するための遠位ルアー・コネクタ240を含む。
図3の例示的な実施例は、針及びバタフライの羽に関係するところを除いて、上記の
図1Aと同様のものである。
【0081】
可変流量コントローラ
図4Aにおいて、本発明のいくつかの例示的な実施例では、輸液システム100及び300で使用される可変流量コントローラ107が、最小及び最大流量又は単一の流量を設定するための、流量コントローラ107のカスタム流量制御部を含むことができる。主回転シャフトに連結された2つの内輪には、最大流量及び最小流量を設定する機能がある。これは、一連のピン設定部(電気タイマの制御に使用されるものと同様)、流量コントローラを設定するために主駆動部から切り離されたギヤ・システム、又は2つの設定可能な円盤(電気タイマのオン/オフ制御部に使用されるものと同様)で実現される。いくつかの例示的な実施例では、こうした制御は、制限されたキー設計を使用して係止可能であり、これにより患者は、工場又は臨床医によって行われたどんな設定も変更することができない。しかし、いくつかの例示的な実施例では、設定された範囲が、患者が制御しても安全なので、患者のアクセス制限が不必要な場合がある。
【0082】
この流量コントローラは、主コントローラ本体の旋回シャフトが、調整可能なスロットを有する円盤に連結され、1つの方向がさらに開き/流量を増加させ、別の方向が閉じる/流量を減少させる、どちらの方向にも流量を変更することができる、底部コントローラ本体の固定シャフトに当たるのを視覚化することによって、最もよく理解される。さらに、このスロットは、所望の流量設定から上下に動くことができないように調整することができ、したがって、可変流量コントローラ107を、単一の固定流量だけを送達する固定速度コントローラに変えることができる。
【0083】
具体的には、
図4B及び
図4Cに示されているように、可変流量コントローラ107は、スロットの両端が、コントローラの2つの外側部品の350度の回転限度内の任意の位置に調整され得るように、円盤を間に挟んで主シャフトに一体に取り付けられた、コントローラ本体の2つの相互作動する半分を示している。ユーザが主コントローラ本体を回すと、主コントローラ本体がガスケットに当たり、ガスケットは減少するチャネル(
図4Cに示されている)にさらに当たり、流れを制限するか、又は流れを増加させる(反対方向に回転する場合)。
【0084】
スロットの両端は、最小値及び最大値に調整可能であり、回転に干渉が生じないように配置されるか、又は回転が1つの位置又は所望の流量に完全に限定され、可変流量コントローラ107を単一速度固定システムに変えるように配置され得る。
【0085】
いくつかの例示的な実施例では、可変流量コントローラ107は、様々な範囲の流量について色分けされたマークを含む。したがって、患者の、輸液針セット101を通る実際の流量を、より明確に示す。この指標には、皮下使用向けに、0~20ml/時、20~40ml/時、及び40~60ml/時などの範囲が含まれ得る。さらに指標は、低流量、中流量、並びに高流量及び潜在的使用危険ゾーンを表すために、それぞれ緑、黄、及び赤に色分けされ得る。
【0086】
いくつかの例示的な実施例では、可変流量コントローラ107は、静脈内使用向けに、約5~約300ml/時の範囲にわたる流量の、様々な範囲について色分けされたマークを含む。さらに指標は、低流量、中流量、並びに高流量及び潜在的使用危険ゾーンを表すために、それぞれ緑、黄、赤に色分けされ得る。
【0087】
いくつかの例示的な実施例では、システム100は、輸液針セット101の無菌性を維持しながら、輸液提供者が流量範囲を調整することを可能にする特殊な包装を含む。可変流量コントローラ107は、投与針セット101又はチューブ・セット110と同じ包装内にあるので、臨床医が、針のセット又はチューブ・セットの無菌性を危うくすることなく流量範囲又は単一の流量を調整できるように、2重ポーチの配置構成に設計されている。この独自の包装により、針セット101又はチューブ・セット110は、設定するためのアクセスを可能にする可変流量コントローラ107を収容する、別の小室から隔離される。
【0088】
いくつかの例示的な流量コントローラの実施例では、可変流量コントローラ107は、特殊な流量をマークする、別のロックオン・ラベルを含む。コントローラは、様々な範囲の又は特定の薬剤送達用の、カスタム流量マークを含むことができる。このバンドは、工場で、又は必要に応じて臨床医によって、所定の位置にスナップ留めすることができる。
【0089】
いくつかの例示的な流量コントローラの実施例では、可変流量コントローラ107は、可変流量コントローラが、固定流量又は固定流量範囲で送達するのを可能にする、キー付き係止メカニズムを含む。
【0090】
いくつかの例示的な実施例では、可変流量コントローラ107は、針セットの組合せごとに必要な最大流量の最大流量範囲に事前設定されることになる。これにより、より多くの針が必要になる場合、設定された流量で患者に液体を送達するのに、より大きい流量が必要になるので、設定が異なる。これにより、単一の針又は2本針セットには過大な流量を、作り出すのを防止することもできる。
【0091】
いくつかの例示的な実施例では、針セットは、0.914ミリメートル(0.036インチ)+のチューブを備えた26gの針を使用する。いくつかの例示的な実施例では、コネクタはさらに大きな寸法を有する。いくつかの例示的な実施例では、チューブは、ソフトチューブを含む。
【0092】
1つの例示的な実施例では、可変流量コントローラ107は、様々な範囲に設定されるが、特定の治療及び針セットにのみ使用される。たとえば、PIDDの場合、1つの範囲は2400ml/時に制限され得、一方、Cuvitruの4本針セットの場合及び別の例では、可変流量コントローラ107の範囲は、4本針セットで最大5600ml/時に設定され、2本針セットの場合は3200ml/時に設定される。言い換えれば、システムは、安全性のために制限され、必要に応じて輸液提供者が変更可能なものとなる。
【0093】
1つの例示的な実施例では、可変流量コントローラは、チャネルの周囲を回転する外側リングによって可変の幅及び円の長さのチャネル(
図4C)を含む。流量コントローラを使用して、様々なチャネル幅及び長さを選択することができ、これにより、様々な流量が得られる。チャネルの深さ、幅、及び長さを制御することにより、単一の(可変流量)コントローラから、広範囲の様々な流量が生み出され得る。入力流は、コントローラの一方の側にある直列チューブから到着し、出力は、コントローラの他方の側に送り出される。可変流量コントローラには、チャネル及び回転シャフトの周囲の漏れを防止するために、スライド嵌合封止ワッシャ及び「O」リングが含まれている。
【0094】
皮下輸液システムのいくつかの例示的な実施例では、システムの包装は、可変流量コントローラ107の全部と針セットとを1つの包装内に含み、シリンジ・ドライバのポンプへ、単一の滅菌された組立体とルアー・ロック継手とを提供する。静脈内輸液システムのいくつかの例示的な実施例では、システムの包装は、可変流量コントローラ107の全部とチューブ・セットとを1つの包装内に含み、シリンジ・ドライバへ、単一の滅菌された組立体とルアー・ロック継手とを提供する。
【0095】
図4Bは、片側(2)が(3)に対して様々な位置に回転してチャネル位置を選択する、2つの半分間にあるインタフェース(1)を備えた、例示的な可変流量コントローラ107を示している。
【0096】
上記で概説されたように、
図4Cは、円盤及び主コントローラ本体が図示されていない状態の、可変流量コントローラ107の断面図を示している。断面図は、流体の流れを制限又は増加させるために、幅が減少するチャネルを示している。減少するチャネル、及びスリップ・ワッシャに対して作用する入口穴により、減少するチャネルに沿った様々な位置が、様々な流量を実現させることができる。
図4Cは、コントローラの半分を回転させてチャネル経路の様々なポイントを選択することにより、コントローラの一方の半分の減少するチャネル(幅)が選択されることを示している。チャネルは幅及び深さが変化し、この場合、どんな所望の流量設定をも得るように、長さを選択可能である。
【0097】
本発明のいくつかの例示的な実施例による輸液システム及び方法は、輸液システムの圧力の直接制御を可能にすることで、患者の所望の解剖学的場所に、輸液流体を正確且つ再現可能に送達する。患者及び臨床医は、輸液システムの流量を決定し、不快感を引き起こさない速度で、輸液する液体の量を送達することができる。患者、臨床医、及び他のユーザは、輸液する液体及び穿刺部位(皮下に使用する場合)と、可変流量コントローラの設定とを整合させ、輸液システムを使用した治療の安全性の見込みを高めることができる。患者又は臨床医は、こうしたシステムの変量を設定し、治療の種類に対してどの治療構成が最適であるかを即座に決定することができる。
【0098】
バタフライの羽組立体
図5Aは、本発明の原理に従って構築されたバタフライの例示的な実施例の、開いた構成での上面斜視図を示している。バタフライ145の例示的な実施例は、針スリーブ保護部分141、タブ143A及びスロット143B連結部、並びに針アクセス開口部146を含む。バタフライ145は、直列に、直列チューブの長さと同じ方向に連結されている。バタフライ145は、針が、バタフライの長軸及び直列針チューブの両方に直交して突出するように、針140を収容する。1つの例示的な実施態様では、針140は、この直交性を実現させるように曲げられ得る。さらに、バタフライ・ハウジング(
図5A)は、対称的に配置されたバタフライの羽142を有する。バタフライの羽142は、針の挿入/取外しを扱う機構として使用され、刺激又は不快感を引き起こすことなく、患者の皮膚に馴染む。バタフライの羽142はまた、起こり得る危害(たとえば、針刺しによる損傷)をなくするために、使用後に針を保護する。バタフライの羽142は、使用後に針を保護するために、針スリーブ保護部分141を使用する。バタフライ145を閉じると、ほぼ/およそ針140の長さである針スリーブ保護部分141が、針の先端を囲い込む。この閉じるメカニズムは、2つのラッチを含み、両方のバタフライの羽142が、反対側の羽と嵌合するラッチ構成を有する。この例示的な実施例では、ラッチは、1つ又は複数のタブ143A及び1つ又は複数のスロット143Bのメカニズムであり、これらは互いに嵌合して、バタフライ145を閉じた状態で保持する。バタフライの羽142が閉じるとき、ユーザは、バタフライの羽142が閉じて、針先が保護される(針セットの使用後)ことをユーザに示す、触覚及び/又は可聴のクリック音に気づくであろう。さらに、バタフライの羽142の表面形状及びバタフライの羽142の閉じる機構により、羽の周辺でのどんな誘導又はラッチするメカニズムの使用も回避され、また使用中に患者に接触する表面積が増加し、皮膚上に置かれたときの不快感及び痛みが軽減される。加えて、閉じるメカニズムは、閉じたときにバタフライの羽142を一体に誘導する、誘導機構として機能する。これにより、位置ずれが防止され、より容易に針がカバーされ保護される。
【0099】
バタフライの羽142はまた、針が真っ直ぐになり、使用者が受容するときに損傷を受けないように、針の直交(90°)する向きを誘導して維持するよう割り当てられた溝を含むことができる。これにより確実に、針に角度が付いていることで針が皮膚組織の適切な深さまで貫通し損なうことなく、不適切な貫通による関連する不快感及び痛みがなくなる。
【0100】
図5Dに示されているような他の例示的な実施例では、針140と組み合わせたバタフライ145は、針140が、バタフライ・ハウジング147の内側にあるとき、枢軸ソケット(ポイント)151で任意の方向に回転できる(たとえば5度)ように、ボールアンドピボット又は浮体式ボールのメカニズムを含むことができる。ボールアンドピボットのメカニズムは、針140と嵌合して針140の一部を所定の位置に保持しながら、枢軸ソケット151内で接合されたボール153及び針140の回転を可能にする、ボール153を含む。このように、バタフライのわずかな動きは、針に伝わらず、患者の組織内で針を動かすことはない。結果として、本発明のいくつかの例示的な実施例による針は、輸液中に針を介して伝えられる、さもなければ組織に損傷を与え、痛み及び炎症を引き起こす可能性がある動きの力を取り除く。針を旋回させる機構は、バタフライに加えられた力に応じて、枢軸で、バタフライ・ハウジング内で針を回転させることにより、組織の損傷及び痛みをなくする。
【0101】
図5Bは、本発明の原理に従って構築された針を備えた、バタフライの羽の例示的な実施例の上面斜視図を示している。図示されているように、例示的な実施例では、針140は、バタフライ145と嵌合される。針140は、バタフライ145内に配置されている間、針を所定の位置に保持する針座又はコネクタ150を含む。針140は、針(直列)チューブ110を介して、針セット101の残りの部分に連結する。
図5Cは、本発明の原理に従って構築された針を備えた、バタフライの羽の例示的な実施例の側面断面斜視図を示している。例示的な実施例に示されているように、針座150は、バタフライ・カバー149とバタフライ・ハウジング147との間に配置され、針を、バタフライ145内に配置されたときに所定の位置に保持する。
図5Eにも示されているように、バタフライ・カバー149とバタフライ・ハウジング147との間の空洞は、針を保持し誘導する経路、及び針座150を閉じ込める空間をさらに含む。
図5Eは、本発明の原理に従って構築された針を備えた、バタフライの羽145の例示的な実施例の分解斜視図を示している。例示的な実施例に示されているように、針座150には、バタフライ・ハウジング147及び/又はバタフライ・カバー149と嵌合して、バタフライの羽が閉じた状態の時に針を保護する針スリーブ保護部分の位置に針140を保持する、スペーサ148がさらに含まれ得る。
【0102】
輸液ドライバ
図6Aは、本発明の原理による定圧シリンジ・ポンプの、例示的な実施例の斜視図を示している。定圧シリンジ・ポンプ103の1つの例示的な実施例では、ポンプ103は、液溜めとして機能し、シリンジ618から輸液流体を供給するメカニズム(すなわち、
図6Bに示されているシリンジ・プランジャ620)を含む、シリンジ618を含む。ポンプ103は、シリンジ618のハウジングとしても機能する。ハウジングの本体は、主体部分617及びカバー616を含む。さらに、ポンプ103は、本体617からカバー616を取り外すための開ボタン610と、ポンプ103を作動させてシリンジ618から輸液流体を送達するためのレバー601とを含む。
【0103】
図6Bは、本発明の原理による定圧シリンジ・ポンプの例示的な実施例の、カバーなしの状態での斜視図を示している。定圧シリンジ・ポンプ103は、シリンジ・プランジャ620と嵌合してシリンジ・プランジャ620を正確に作動させるメカニズムを含む。
【0104】
図6A~
図6Dの、定圧シリンジ・ポンプ103の例示的な実施例に示されているように、ポンプ103は、使用されていないとき、又はレバー601及びカバー616がポンプ103の本体ケース617に対して閉じられているときに、ポンプ103の最も小型の形態になる。この状態でポンプ103を動作させるために、ユーザは最初に、レバー601及びカバー616をある程度開くことができる、カバー開ボタン610に係わる必要がある。
【0105】
定圧シリンジ・ポンプ103の例示的な実施例では、ポンプ103作動メカニズムは、レバー601である。レバー601は、基部プレート615の一角に固定されたレバー取付けポイント613に取り付けられている。レバー取付けポイント613は、取り付けられたレバー601がレバー取付けポイント613の周囲を回転できるように、基部プレート615から突出している。いくつかの例示的な実施例では、レバー601は、ポンプ103作動メカニズムに完全に負荷をかけるために、ストローク当たり約1.6キログラム(3.5ポンド)の力で4ストロークが必要とされるような長さである。いくつかの例示的な実施例では、カバー616もまた、レバー取付けポイント613に取り付けられ、ある程度回転することができる。さらに、レバー601及びカバー616を開くのを補助するために、ポンプ103が「使用されていない」状態にあるとき、メカニズム(たとえば、バネ)を使用することができ、これによりバネは、カバー616及び基部プレート615などの、ポンプ103の2つの構造体間で圧縮される。カバー開ボタン610が押されると、レバー601及びカバー616は、もはや本体ケース617に制限されず、圧縮されたバネは、カバー616を基部プレート615とは反対側へ押すことによって、蓄積されたエネルギーを解放し、カバー616の自然な位置に戻すことができる。他の例示的な実施例では、ボタン又は電動モーターなどの他の作動メカニズムが、レバー601の代わりに使用され得る。
【0106】
定圧力シリンジ・ポンプ103の例示的な実施例では、ユーザは、開かれると、患者の治療ニーズに固有の薬物(図示せず)が充填された、ポンプに特有のシリンジ618を装着することができる。シリンジ618は、ユーザの治療ニーズに特有の投与セット(すなわち、皮下針セット101又は静脈内輸液セット201)に連結される。シリンジ618は、シリンジ・フランジがシリンジ・フランジ受容器612内に確実に位置するように嵌め込まれ、この結果、延ばされたシリンジ・プランジャ620は、ネゲータ台車603に連結されたシリンジ・プランジャ受容器604に受容され得る。シリンジ・プランジャ受容器604は、ネゲータ台車603の突出した延在部であり、ポンプ103の、他に取り付けられたどの構成要素とも干渉しない。シリンジ・フランジ受容器612は、ポンプ特有のシリンジ618の完全に延ばされたシリンジ・プランジャ620が、シリンジ・フランジ受容器612とシリンジ・プランジャ受容器604との間に収まり得るように、基部プレート615に固定されている。いくつかの例示的な実施例では、ネゲータ台車603は、シリンジ618がポンプ103内に収まり得るように、シリンジ・フランジ受容器612とは反対側へ手動で戻され得る。
【0107】
例示的な実施例では、ネゲータ台車603は、ポンプ103が使用されていないとき、許容可能な物理的限度内で、小型の(3本からなる)トラック・レール611の方向に自由に移動することができる。ネゲータ台車603と小型の(3本からなる)トラック・レール611との間の接触部は、滑走を可能にする低摩擦材料でできている。低摩擦での滑走は、玉軸受トラック接触部(図示せず)又は他の方法の使用を含む、いくつかのやり方で実現することができる。
【0108】
例示的な実施例では、ネゲータ台車603は、2つの特定された力ネゲータ602(定荷重バネ(constant force spring)とも呼ばれる)を対称的に収容する。ネゲータ602は、稼働中にネゲータ602がネゲータ台車603に対して抗力又は大きい摩擦力を示すことがないよう、低摩擦軸受(図示せず)を使用して、ネゲータ台車603の支柱(図示せず)に嵌め込まれる。ネゲータ602は、ネゲータ602が、ネゲータ台車603の中央線の長軸の周りにミラーリングされるように配置されている。ネゲータ602は、ネゲータ602の内径が基部プレート615とほぼ平行に配置されるように、置かれている。ネゲータはさらに、巻付け解除されているときに、両方のネゲータ602の内側の面が小型の(3本からなる)トラック・レール611の方に向くよう配置されている。さらに、ネゲータ602は、稼働中にネゲータ602が不必要な捻り力を示すことがないように、ネゲータ台車603上に対称に配置されている。
【0109】
例示的な実施例では、ネゲータ602は、台車カバー・プレートを用いてネゲータ台車603上に固着されている。ネゲータ台車603に取り付けられたネゲータ602は、ネゲータ602の巻付け解除方向が小型の(3本からなる)トラック・レール611の方向に向くように、小型の(3本からなる)トラック・レール611上に対称に配置されている。
【0110】
例示的な実施例では、シリンジ・プランジャ受容器604とシリンジ・フランジ受容器612との間に、対称に配置され、ネゲータ台車603と同様に小型の(3本からなる)トラック・レール611に連結された、ネゲータ装着台車604がある。ネゲータ装着台車605の高さは、ネゲータ装着台車605がシリンジ・プランジャ620と干渉しないように配置されている。ネゲータ装着台車605は、各ネゲータ602の取付け穴がネゲータ装着台車605の穴と整列するように特別に配置された2つの対称の穴を設け、これにより、各ネゲータ602は、ネゲータ装着台車605の穴に連結され、次いで巻付け解除されるとき、小型の(3本からなる)トラック・レール611に平行である。さらに、ネゲータ装着台車605の穴の高さ及びネゲータ台車603上のネゲータ602の高さは、ネゲータ602が、巻付け解除されているときに、不必要な捻り力をもたらさないように、基部プレート615に対してほぼ平行な構成を維持するよう設計されている。
【0111】
例示的な実施例では、シリンジ618が、シリンジ・プランジャ620の面がシリンジ・プランジャ受容器604内に確実に保持され、シリンジ・フランジがシリンジ・フランジ受容器612内に確実に保持されるように装着されて固着されると、カバー616を閉じることができ、したがってカバー開ボタン610はリセットされる。この時点で、レバー601は、異なる角度(図示せず)にあり、ポンプ103が使用されていないとき、レバー601の開始位置からレバー取付けポイント613の周りで回転する。レバー601の角度は、レバー601と、ネゲータ602がポンプ103を使用するために積載され得る、ネゲータ装着台車605を動かす構成要素との間の、結合状態によって変わる。
【0112】
例示的な実施例では、レバー601は、結合アームを介してベルト台車609に連結されている。結合アームは、他端にあるベルト台車609に連結されているときに、所望のレバー601の作動力及びストローク量が実現するように、レバー連結部を介してレバー601に連結する。結合アームは、結合アームがレバー601及びベルト台車609の両方に平行になるように、レバー601及びベルト台車609に連結されている。さらに、ベルト台車609、及びしたがって結合アームの遠位端は、ネゲータ装着台車605の後ろに配置され、したがってネゲータ装着台車605は、見た目には、ネゲータ台車603とベルト台車609との間に位置する。
【0113】
例示的な実施例では、ベルト台車609は、ネゲータ台車603及びネゲータ装着台車605と同様に、トラックとの連結部を介して、小型の(3本からなる)トラック・レール611の高設トラック661に取り付けられている。ベルト台車609は、ネゲータ台車603及びネゲータ装着台車605の動きと干渉しないように、小型の(3本からなる)トラック・レール611の高設トラック(ラベルなし)上に配置され、これにより、最終的に、ポンプ103の幅を望ましくは、より小さくすることができる。ベルト台車609は、面の長さ全体にわたって分散された、一方向の歯が等間隔に配置された、1つの面を有する。ベルト台車609と反対側の面である、滑らかな内側ベルト表面は、全体にわたって滑らかである。ベルト台車609の一方向の方向歯は、ベルト607の対向する一方向の歯を把持する。ベルト台車609は、ベルト607の全幅を把持する。ベルト台車609及びベルト607は、一方向つめ車のメカニズムと同様に、対向する一方向の歯を有し、これによりベルト607は、ベルト台車609によって、対向する一方向の歯のために一方向に移動できるが、反対方向に移動すると、一方向の歯が互いを解放する(すなわち、把持しない)ため、完全に係合されなくなる。いくつかの例示的な実施例では、ベルト台車609は、ベルト607の全幅を把持する。
【0114】
例示的な実施例では、ベルト台車609と同様に、ネゲータ装着台車605は、ベルト607に対向する一方向の歯を有し、ベルト台車609と同様のやり方でベルト607を把持する。いくつかの例示的な実施例では、ネゲータ装着台車605の一方の側面だけがベルト607を把持する。したがって、ベルト台車609及びネゲータ装着台車605の両方の一方向の歯は、同じ方向にある。
【0115】
例示的な実施例では、ベルト607は、小型の(3本からなる)トラック・レール611の周囲の角に設けられた4本の支柱に接して配置されており、これは
図6Bを参照されたい。ここでベルト607は、これらの支柱を示す、小型の(3本からなる)トラック・レール611の角に配置される。これらの支柱にはそれぞれ、ベルト・ローラ606が嵌め込まれている。ベルト・ローラ606は、低摩擦材料でできており、小型の(3本からなる)トラック・レール611の周囲の角にある支柱の周りを自由に回転することができる。ベルト607は、小型の(3本からなる)トラック・レール611の周囲の角にある4本の支柱に接して、ベルトの滑らかな面671が、4本のベルト・ローラ606すべてと直接接触し、ベルト607の一方向の歯673が、小型の(3本からなる)トラックの設計611とは反対側を向くように配置されている。いくつかの例示的な実施例では、ベルト607は、4本のベルト・ローラ606すべてに接して収まり、これによりベルト607は、ポンプ103が動いたときに脱落しないようにベルト・ローラ607にぴったりと合うが、ベルト607がベルト・ローラ606の周りで容易に回転できないほどぴったり過ぎることはない。したがって、ベルト607の長さは、4本のベルト・ローラ606の周囲の長さによって変わる。さらに、ベルト607は、基部プレート615がベルト607の回転と干渉し得ないように配置されている。
【0116】
例示的な実施例では、レバー601が完全に押し下げられると、ベルト台車609に連結された結合アームが、ベルト台車609を前方に動かす。この結果、ベルト台車609の一方向の歯は、ベルト607の対向する一方向の歯を把持し、したがって、ベルトを動かす。この結果、また同時に、ベルト607の一方向の歯は、ネゲータ装着台車605の対向する一方向の歯を把持する。この結果、ネゲータ装着台車605は、シリンジ618の方向に向かって引っ張られ、したがって、ネゲータ602を巻付け解除させる。ネゲータ台車603は、投与セット(すなわち、皮下針セット101又は静脈内輸液セット201)が閉じられている/遮断されているか、又は大きい流れを有する結果、大きい流れを限定する投与セット及び/若しくは大きい流体粘度による、シリンジ・プランジャ620の反対方向の力のため、動きが限定される。
【0117】
例示的な実施例では、レバー601が1回押されたため、ネゲータ602が所定の長さまで巻付け解除された。しかしこれは、特定されたシリンジ618の60mlの全容量を供給するのに必要とされる、ネゲータ602の巻付け解除の長さではない。レバー601が1回押されたとき、特定されたシリンジ618の60ml容量を供給するのに必要な長さまでネゲータ602を巻付け解除するのに、さらに3回押す必要がある。
【0118】
例示的な実施例では、ユーザは、次いで、レバー601を完全に開いた角度位置(図示せず)に戻す。これは、ばね(図示せず)によって補助され得る。レバー601をこの方向に動かすと、結合アーム及び取り付けられたベルト台車609が同じ方向に動く。この結果、ベルト台車609の一方向の歯は、もはやベルト607を把持せず、ベルト台車609は、開始位置(ラベルなし)に戻ることができる。レバー601をさらに3回押して、ネゲータ602を、特定されたシリンジ618の60mlの全容量を供給するのに必要な長さまで、巻付け解除することができる。
【0119】
例示的な実施例では、レバー601は、供給中に、「使用されていない」位置と同様の位置まで下がることになる。ベルト607は、ネゲータ装着台車605を把持して、固定場所に維持する。したがって、再び巻付け状態になろうとするネゲータ602の力は、ネゲータ台車603及びシリンジ・プランジャ受容器604をシリンジ618に向かって移動させる。この結果、ネゲータ602の力がシリンジ・プランジャ620に作用し、これにより、薬剤経路が流れることができるようになると、シリンジ・プランジャ620がシリンジ618の中身を供給する。いくつかの例示的な実施例では、シリンジ618の総許容容量が供給されるように、構成要素が離間されている。
【0120】
例示的な実施例では、シリンジ618の中身が完全に供給されると、ベルト解放クリップ608を押して、ベルト607の一方向の歯を、ネゲータ装着台車605の対抗する一方向の歯から外れるように押し出すことができ、これによりネゲータ台車603、シリンジ・プランジャ受容器604、及びネゲータ装着台車605が、シリンジ618を容易に取り出すことができ、ポンプ103が再び使用され得るように、開始位置に向かって自由に押し戻され得る。ユーザは、シリンジ618が供給している間に必要とみなせば、ベルト解放クリップ608を押して、これにより輸液を停止することができる。ベルト解放クリップ608を押すことにより、ベルト607がネゲータ装着台車605から解放され、これにより、シリンジ・プランジャ620が以前に説明された理由でネゲータ台車603の動きを限定するため、ネゲータ装着台車605は、ネゲータ台車603の方に戻ることができる。この結果、部品の損傷又は大きく不快な音が発生する可能性がある。これを低減するために、クッション性のあるブレーキが、ネゲータ台車603とネゲータ装着台車605との間に設けられ得る。クッション性のあるブレーキは、どんな動きにも干渉するものではない。
【0121】
例示的な実施例では、基部プレート615上に設けられたベルト・グリップ614は、ベルト解放クリップ608及びカバー開ボタン610を押すための機械式支持体として機能し、したがって、該支持を実現させるように適切に配置される。
【0122】
例示的な実施例では、レバー601及びカバー616は、ポンプ使用後に閉じることができ、これにより、カバー開ボタン610をリセットする。
【0123】
下記の表1は、可変流量コントローラ107(
図1Aにおいて)の流れダイヤルを較正するために必要とされる、特定された内径の直列チューブ110の、例示的な必要な長さを示している。表1の輸液流体は、93.1キロパスカル(13.5psi)の定圧源を使って供給される20%免疫グロブリン(Hizentra(登録商標))に特有のものであり、この粘度は13~17ミリパスカル秒(13~17センチポアズ)の範囲であり得る。所与の針140の長さ(24.9mm~26.7mm(0.98”~1.05”))及び内径(0.264mm~0.343mm(0.0104”~0.0135”))、並びに針チューブ110の長さ(457mm~660mm(18”~26”))及び内径(0.97mm~1.07mm(0.038”~0.042”))は、皮下投与セット101間で一定のままであり、内径が選択されると、可変流量コントローラ107を較正するために、提示されている実例では最大流量が針セット101内の針140の数当たり60ml/時になるように、直列チューブ110の長さだけを変更する必要がある。直列チューブ110の内径が選択されると、較正範囲内で可変流量コントローラ107の流れダイヤルを維持するために必要な直列チューブ110の長さが決定され得る。簡単に言えば、直列チューブ110の長さは、可変流量コントローラ107が最大位置に設定されたときに、(提示されている実例における変量の)針セット101内の各針から供給される流量が、60ml/時となるように決定される。もちろん、当業者は、下記の表1に示されている実例に加えて、チューブ、針の長さ、及び直径の他の多くの組合せで、特定の流量を実現できることを理解されよう。
【表1】
【0124】
図7は、輸液流体の10、20、30、40、50及び60ml/時の流量に対する1、2、3及び4本針投与(針)セット101の可変流量コントローラ107の較正された流れダイヤル、並びに表1に示された実例で提示された輸液及び投与セットのパラメータを示している。所望の流量を実現させるために、流体経路の構成要素(すなわち、針、針チューブ、直列チューブ)の長さ及び直径は、既知である必要がある。これらの値は、実験的に又は光学的に決定され得る。光学的な決定方法には、複合顕微鏡などの光学ツールを使用した、内径の直接測定が含まれる。流量は、実験的に、流体工学的に又は流量計システムなどの空気測定方法を使用して測定され得る。流体経路の構成要素の長さ、及び実験的に測定された流量が与えられると、流体経路の構成要素の内径は、ハーゲン・ポアズイユの式(HPE:Hagen-Poiseuille equation)を使用して計算され得る。
【0125】
投与セット内の流体経路の構成要素(すなわち、針チューブ)の長さ及び半径、並びに圧力源(すなわち、輸液ドライバ)と患者の輸液の解剖学的部位との間の差圧が与えられると、HPEを使用して、粘度を持つ流体の流量を決定することができる。HPEは、流体経路の構成要素の内径を含む、HPEの変数のいずれかを解くように書き直され得る。HPEを使用するには、流体が、非圧縮性であること、ニュートン性であること、投与セット内で加速していないこと、一定の円形断面積を維持し、且つ流体経路の構成要素の直径よりも実質的に長い長さを有していること、投与セットの流体経路の構成要素を通る層流であること、という前提条件が満たされている必要がある。
【0126】
上記が与えられると、HPEは、下記の式(1)のように書かれ得る。
【数1】
ここで、
Qは、輸液流体の容積流量、
Δpは、圧力源と患者の輸液の解剖学的部位との間の差圧、
Rは、流体経路の構成要素の半径、
Lは、流体経路の構成要素の長さ、且つ
μは、輸液流体の動的粘度
【0127】
全流れ方程式(TFE:total flow equation)と組み合わせたHPEを使用して、投与セット内の流体経路の流量に影響を与える構成要素の流量、及び投与セット全体の流量を決定することができる。
【0128】
投与セットの総流量を決定するために、各流体経路の構成要素の流量(Q)を組み合わせる必要がある。これは、下記のTFE(2)を使用して得ることができる。
【数2】
ここで、
Q
Total Flow Rateは、投与セットの総流量、
Q
Series Tubingは、直列チューブ110の流量、且つ
Q
Needle and Needle Tubingは、針と針チューブとを組み合わせた流量
【0129】
投与セット並びに針140及び針チューブ110の総流量を知ることにより、TPEを書き換えて、直列チューブ110の流量について解くことができる。直列チューブ110の内径及び流量が与えられると、HPEを使用して、各針が60ml/時の最大流量を供給するよう投与セットを較正するのに必要な、直列チューブ110の長さを決定することができる。
【0130】
直列チューブ210が、セットの内側で(0.452mm~0.462mm(0.01780”~0.01820”))であり、長さは、可変流量コントローラ207が、93.1キロパスカル(13.5psi)の定圧源を使用して供給される、約1ミリパスカル秒(1センチポアズ)の低粘度の輸液流体(すなわち、Vancomycin(登録商標)などの抗生物質)を供給するときに、最大流量300ml/時を有するように調整され得る、静脈内輸液セット201についての同様の実例が提供され得る。可変流量コントローラ207の流れダイヤルは、5~300ml/時について較正され得る。
【0131】
いくつかの例示的な実施例及び実施態様が本明細書で説明されてきたが、この説明から、他の実施例及び修正形態が明らかになるであろう。したがって、本発明の概念は、かかる実施例に限定されるものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲、並びに当業者に明らかとなる様々な、明白な修正形態及び同等の配置構成の、より広い範囲にある。
【国際調査報告】