(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】マイクロバイオーム調節のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/744 20150101AFI20221114BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20221114BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20221114BHJP
A61K 35/742 20150101ALI20221114BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20221114BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221114BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20221114BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20221114BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20221114BHJP
C12N 15/30 20060101ALN20221114BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
A61K35/744
A61P1/04
A61K35/745
A61K35/742
A61K35/747
A61K48/00
A61K31/7088
A61P43/00 121
C12N1/20 E
C12N1/21
C12N7/01
C12N15/30
C12N15/63 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517809
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020051661
(87)【国際公開番号】W WO2021055875
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522107979
【氏名又は名称】アンシリア, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】サカトス, アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】カミングス, マシュー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】カウ, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン, アン
(72)【発明者】
【氏名】パエス エスピノ, アントニオ デイビッド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA21X
4B065AA23X
4B065AA30X
4B065AA98X
4B065AB01
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4C086MA02
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4C086ZA66
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087BC56
4C087BC59
4C087BC68
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示は、哺乳動物対象(例えば、ヒト対象)のマイクロバイオームを調節するための技術を提供する。本開示はとりわけ、治療用組成物及びその使用方法を提供し、治療用組成物は、(i)投与される対象において非病原性及び共生的であり、かつ(ii)1つ以上の標的バクテリオファージに耐性である、治療用細菌の操作された集団を含む。いくつかの実施形態では、かかる治療用組成物は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態(例えば、炎症性腸疾患)に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象の治療に有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象を、(i)前記対象において非病原性及び共生的であり、かつ(ii)1つ以上の標的バクテリオファージに耐性である治療用細菌の集団に曝露するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記治療用細菌が、各々、前記1つ以上の標的バクテリオファージを標的とする、少なくとも1つのクラスター化された規則的な間隔の短い回文リピート(CRISPR)スペーサーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療用細菌が、各々、標的バクテリオファージ受容体結合タンパク質に対する、前記治療用細菌の1つ以上の受容体に変異を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロバイオームが、腸内マイクロバイオームである、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態が、炎症性腸疾患(IBD)または過敏性腸症候群である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態が、クローン病である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態が、潰瘍性大腸炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態が、免疫療法関連大腸炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の標的バクテリオファージが、前記マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患と関連付けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上のバクテリオファージが、テンペレートまたは非溶解性バクテリオファージである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上のバクテリオファージが、Caudoviralesであるか、またはそれを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記治療用細菌が、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Escherichia、Lactobacillus、Lactoccucs、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれらを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、プロバイオティクス療法、糞便微生物叢移植(FMT)、及び/または免疫療法(例えば、大腸炎関連免疫療法)を施されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記曝露するステップが、前記対象に、前記治療用細菌の前記集団を含む組成物を投与することを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記曝露するステップが、前記対象に、前記CRISPRスペーサーをコードする核酸配列を含む組成物を投与することを含み、前記組成物が、前記対象の宿主共生細菌に送達されて治療用微生物を産生する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸が、組換えバクテリオファージによって送達される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記核酸が、ベクターによって送達される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
(i)投与される対象において非病原性及び共生的であり、かつ(ii)1つ以上の標的バクテリオファージに耐性である、治療用細菌の操作された集団を含む、治療用組成物。
【請求項19】
前記治療用細菌が、各々、前記1つ以上の標的バクテリオファージを標的とする、クラスター化された規則的な間隔の短い回文リピート(CRISPR)スペーサーを含む、請求項18に記載の治療用組成物。
【請求項20】
前記治療用細菌が、前記1つ以上の標的バクテリオファージを標的とするCRISPRスペーサーを発現するように遺伝子操作されている、請求項18に記載の治療用組成物。
【請求項21】
前記治療用細菌が、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Escherichia、Lactobacillus、Lactococcus、Akkermansia、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれらを含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項22】
標的バクテリオファージ受容体結合タンパク質に対する、前記治療用細菌の1つ以上の受容体が、前記治療用細菌が前記標的バクテリオファージに耐性であるように変異している、請求項18~21のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月18日に出願された米国仮特許出願第62/902,327号の優先権及び利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
最近の研究では、哺乳動物の消化管が多種の有益な共生細菌を保有することが実証されている。ヒトマイクロバイオームにおける共生細菌の存在量及び多様性の低減は、炎症性腸疾患、代謝障害、アレルギー、喘息及び自閉症スペクトラム障害を含む、広範囲の疾患に関連付けられている。動物研究は、これをさらに検証し、疾患関連微生物叢の健康なマウスへの移植が、疾患表現型を誘導し得ることを示している。Garrett,W.S.et al.Cell 131,33-45(2007)、Ellekilde,M.et al.Sci Rep 4,5922(2014)、Sharon,G.et al.Cell 177,1600-1618.e17(2019)。ここ数十年で、腸内マイクロバイオームのディスビオシスと関連付けられた疾患を治療するための細菌療法の開発に、大きな努力とリソースが向けられてきた。これらの治療法は、概して、疾患状態において減少していることが見出される有益な細菌の集団を補充することを目的としている。しかしながら、ほとんどのプロバイオティクスは、慢性疾患の治療における限られた利点を示しており、系統的なレビューでは、プロバイオティクスが糞便微生物叢組成物に及ぼす影響は報告されていない。Kristensen,N.B.et al.Genome Med 8,52(2016)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Garrett,W.S.et al.Cell 131,33-45(2007)
【非特許文献2】Ellekilde,M.et al.Sci Rep 4,5922(2014)
【非特許文献3】Sharon,G.et al.Cell 177,1600-1618.e17(2019)
【非特許文献4】Kristensen,N.B.et al.Genome Med 8,52(2016)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
これまでの焦点の大部分は、マイクロバイオームの細菌成分に当てられてきたが、細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージが、マイクロバイオーム中の生物の少なくとも半分を占めている。既存の研究は、ある特定の疾患状態においてウイルス集団の増加があることを示唆しているかもしれないが、疾患関連ウイルスの細菌標的は未知であり、例えば、ヒト腸内に存在するバクテリオファージの、例えば、ヒト腸内の有益な細菌への影響は、まだ特徴付けられていない。さらに、ヒトの腸内にファージと細菌との間の捕食的相互作用の一般的な欠如があることが提唱されている。Reyes,A.et al.Nature 466,334-338(2010)、Chehoud,C.et al.MBio 7,e00322(2016)。
本開示は、とりわけ、当該技術分野における既知の見解とは対照的に、ある特定のヒト身体部位におけるバクテリオファージと細菌との間に捕食的相互作用があるという洞察を提供する。かかる洞察は、ヒト腸内に存在するバクテリオファージが、健康で有益な細菌の集団を枯渇させることができるという本発明に部分的に基づいている。特に、本発明者は、個体(例えば、いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患(IBD)などのマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患を有する患者)の糞便試料から濃縮されたバクテリオファージを含有するウイルス画分を添加すると、同様に同じ個体の試料から濃縮された有益な細菌の種が枯渇することを発見した。
【0005】
とりわけ、本開示はまた、Clostridia細菌に感染するバクテリオファージが、マイクロバイオーム関連疾患であるIBDを有する患者において有意により豊富であるという洞察を提供する。ファージと有益な細菌との間の捕食的相互作用は、疾患の文脈でまだ調査されていなかった。有益な細菌を攻撃するIBDを有する患者にファージが存在するという発見は、かかるファージの存在量または存在が、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、例えば、IBDを有する患者における有益な細菌、例えば、Clostridia細菌の集団の低減に寄与し得るか、またはそれを促進し得るという洞察を提供する。したがって、本開示は、有益な細菌の投与が、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患に罹患している患者におけるバクテリオファージの存在が、かかる投与された細菌を枯渇させることができるため、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患を治療するのに必ずしも有効ではないという洞察をさらに提供する。
【0006】
本明細書に提示される技術は、有益な細菌の投与に基づくマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患の治療に対するある特定の従来のアプローチに関連する1つ以上の問題の源に対処する。例えば、本発明は、とりわけ、ファージ耐性非病原性共生細菌からなるか、またはそれを含む治療用組成物、ならびに例えば、例えば、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患または障害を治療するためにかかる組成物を投与する方法を含む、それらに関連する様々な方法及び/または材料を提供する。
【0007】
いくつかの態様では、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象を、(i)対象において非病原性及び共生的であり、かつ(ii)1つ以上のバクテリオファージに耐性である治療用細菌の集団に曝露するステップを含む、方法が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、治療用細菌は、それを必要とする対象(例えば、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象)に曝露され、各々、1つ以上のバクテリオファージを標的とするクラスター化された規則的な間隔の短い回文リピート(CRISPR)スペーサーを含む。いくつかの実施形態では、治療用細菌は、それを必要とする対象(例えば、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象)に曝露され、各々、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体(複数可)の少なくとも1つ以上の変異体を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、かかる治療用細菌の集団は、腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に曝露される。例示的な腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態としては、炎症性腸疾患(IBD)または過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫療法関連大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのかかる実施形態では、腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に曝露される治療用細菌は、Caudoviralesであり得るか、またはそれを含み得る1つ以上のバクテリオファージに耐性である。
【0010】
いくつかの実施形態では、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)に、それを必要とする対象を曝露するステップは、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物をかかる対象に投与することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)に、それを必要とする対象を曝露するステップは、宿主共生細菌が標的バクテリオファージに対して耐性となるように遺伝子操作されるように、対象において宿主共生細菌のゲノムを変更するための核酸配列を含む組成物をかかる対象に投与することを含む。かかる組成物を、それを必要とする対象における宿主共生細菌に送達して、本明細書に記載される治療用細菌を産生する。核酸配列を含む組成物を送達するための方法は、当該技術分野で既知であり、当業者は、いくつかの実施形態では、かかる核酸配列が、組換えバクテリオファージによって送達されてもよく、いくつかの実施形態では、かかる核酸配列が、ベクターによって送達されてもよいことを理解するであろう。いくつかの実施形態では、宿主共生細菌のゲノムを変更するための核酸配列は、1つ以上の標的バクテリオファージを標的とする1つ以上のCRISPRスペーサーを含む。
【0012】
本明細書に記載される治療用細菌を含むいくつかの実施形態では、かかる治療用細菌が耐性であるバクテリオファージは、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患と関連付けられている。いくつかの実施形態では、かかる治療用細菌が耐性であるバクテリオファージは、テンペレートまたは非溶解性バクテリオファージである。
【0013】
本明細書に記載される治療用細菌を含むいくつかの実施形態では、かかる治療用細菌の集団は、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Coprococcus、Clostridium、Collinsella、Desulfomonas、Dorea、Escherichia、Eubacterium、Fusobacterium、Gemmiger、Lactobacillus、Lactoccucs、Monilia、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Ruminococcus、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つ以上の(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、もしくはそれ以上を含む)単離、精製、または培養された共生細菌を含む。いくつかの実施形態では、治療用細菌の集団は、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Escherichia、Lactobacillus、Lactoccucs、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、自己由来であり得る。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、同種異系であり得る。
【0014】
本明細書に記載される別の態様は、(i)投与される対象において非病原性及び共生的であり、かつ(ii)1つ以上の標的バクテリオファージに耐性である、治療用細菌の操作された集団を含む治療用組成物に関する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物に含まれる治療用細菌は、各々、1つ以上の標的バクテリオファージを標的とする1つ以上のCRISPRスペーサーを含む。いくつかのかかる実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物に含まれる治療用細菌は、各々、1つ以上の標的バクテリオファージを標的とする1つ以上のCRISPRスペーサーを発現するように遺伝子操作されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物に含まれる治療用細菌は、各々、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体(複数可)の少なくとも1つ以上の変異体を含む。いくつかのかかる実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物に含まれる治療用細菌は、各々、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体(複数可)の少なくとも1つ以上の変異体を発現するように遺伝子操作されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物に含まれる治療用細菌は、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Coprococcus、Clostridium、Collinsella、Desulfomonas、Dorea、Escherichia、Eubacterium、Fusobacterium、Gemmiger、Lactobacillus、Lactoccucs、Monilia、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Ruminococcus、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つ以上の(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、もしくはそれ以上を含む)単離、精製、または培養された細菌を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物に含まれる治療用細菌は、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Escherichia、Lactobacillus、Lactoccucs、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、自己由来であり得る。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、同種異系であり得る。
【0018】
本明細書に提供される技術は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態の治療及び/または予防に有用であり得る。したがって、本明細書で提供される技術は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に適している。いくつかの実施形態では、本発明で提供される技術は、腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に適している。例示的な腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態としては、炎症性腸疾患(IBD)または過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫療法関連大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌を投与される対象は、プロバイオティクス療法、糞便微生物叢移植(FMT)、及び/または免疫療法(例えば、大腸炎関連免疫療法)を以前に施されていてもよい。
【0019】
本開示により包含されるこれらの態様及び他の態様は、以下で及び特許請求の範囲においてより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】バクテリオファージ及び細菌宿主の同定のための例示的なインビトロアッセイを示す概略図である。Aは、細菌培養物を調製するための炎症性腸疾患(IBD)を有する患者または健康な患者からの細菌の単離を示す。Bは、マイトマイシンC(テンペレートファージの誘導を引き起こす作用物質)の存在下での、同じ患者からの単離されたウイルス様粒子(VLP)の細菌培養物への添加を示す。陽性対照として、E.coli及びT7ファージを培養物のサブセットに添加した。培養物を72時間嫌気的に増殖させた。次いで、培養物の細菌画分及びウイルス画分を、16s配列決定のために分離した。
【
図2A】ヒト腸内のバクテリオファージと細菌との捕食的相互作用を示すグラフである。16s配列決定から決定された細菌集団の存在量を示す。VLP11~15は、ファージを添加せずに細菌組成物を含む試料群を指す。VLP21~25は、ファージを添加した培養物の細菌組成物を含む試料群を指す。ファージの添加は、Clostridium scindens及びBifidobacterium longum種の低減を引き起こす。VLP31~35は、マイトマイシンCを添加した、ファージを含まない細菌組成物を含む試料群を指す。VLP41~45は、ファージ及びマイトマイシンCを添加した細菌組成物を含む試料群を指す。マイトマイシンCの添加は、細菌コミュニティの有意な変更を引き起こし、これらの細菌を攻撃するプロファージの誘導を示す。VLP51~55は、E.coliをスパイクインした細菌コミュニティを含む試料群を指す。VLP61~65は、E.coli及びT7ファージをスパイクインした細菌コミュニティを含む試料群を指す。E.coliは、T7ファージの存在下で除去され、アッセイが有効であることを示す。
【
図2B】ヒト腸内のバクテリオファージと細菌との捕食的相互作用を示すグラフである。以下の「有益な」腸内細菌を枯渇させる腸内ファージの存在を示す:Clostridium scindens
【
図2C】ヒト腸内のバクテリオファージと細菌との捕食的相互作用を示すグラフである。以下の「有益な」腸内細菌を枯渇させる腸内ファージの存在を示す:Bifidobacterium longum
【
図3A】バクテリオファージ及び細菌宿主の同定のための例示的な計算的アプローチを示す概略図である。ウイルス配列を、既知の細菌宿主からのCRISPRスペーサーにマッチさせて、推定細菌宿主を同定する。
【
図3B】バクテリオファージ及び細菌宿主の同定のための例示的な計算的アプローチを示す概略図である。ウイルス配列を、既知の細菌宿主からのCRISPRスペーサーにマッチさせて、推定細菌宿主を同定する。
【
図4】炎症性腸疾患(IBD)を有する患者においてより豊富であるClostridia菌に感染するファージ集団を示すグラフである。IBDを有する個体に存在するファージ配列を、腸内細菌の範囲に存在するCRISPRスペーサー配列の精選されたコレクションに対して照会した。
【
図5】炎症性腸疾患(IBD)を有する患者の腸内に、様々な種のClostridia菌株に感染するファージ集団が存在することを示すグラフである。IBDを有する個体に存在するファージ配列を、腸内細菌の範囲に存在するCRISPRスペーサー配列の精選されたコレクションに対して照会した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
特定の定義
投与すること:本明細書で使用される場合、「投与すること」または「投与」という用語は、典型的には、対象への作用物質の送達を達成するための、対象への組成物の投与を指す。いくつかの実施形態では、作用物質は組成物であるか、または組成物に含まれる。当業者であれば、適切な状況下で対象、例えばヒトに投与するために利用され得る種々の経路を認識するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、眼、経口、非経口、局所などであってもよい。本開示によって提供される多くの実施形態では、投与は経口投与である。いくつかの実施形態では、投与は、単回用量のみを含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、一定数の用量の適用を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、間欠的な(例えば、時間的な隔たりがある複数の用量の)投薬及び/または定期的な(例えば、一定期間を隔てた個々の用量の)投薬を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたる持続投薬(例えば、灌流)を含み得る。細胞の投与は、送達される細胞または細胞の構成成分の少なくとも一部が生存できる対象内の所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって行われ得る。
【0022】
関連している:2つの事象または実体が互いに「関連している(associated)」という用語が本明細書で使用されるのは、一方の存在、レベル及び/または形態が他方のそれと相関している場合である。例えば、特定の実体(例えば、バクテリオファージ)または特定の事象(例えば、マイクロバイオーム機能障害)は、その存在、レベル及び/または活性が、疾患、障害、または状態の発生率または感受性と相関する場合、その疾患、障害、または状態に関連しているとみなされる。
【0023】
バクテリオファージ:本明細書で使用される場合、「ファージ」という用語と同義の「バクテリオファージ」という用語は、当該技術分野で理解されるように、その従来の意味、すなわち、細菌などの原核生物に感染するか、または選択的に感染し、原核生物内で複製するウイルスを有する。バクテリオファージには、野生型、天然に存在する、単離された、または組換えバクテリオファージが含まれる。いくつかの実施形態では、バクテリオファージは、細菌の特定の属または種または株に特異的である。
【0024】
バクテリオファージ耐性細菌:本明細書で使用される場合、「バクテリオファージ耐性」という用語は、1つ以上のバクテリオファージに部分的または完全に耐性である細菌株を指す。部分的に耐性のある細菌株は、ファージ感染に対して常に防御または阻害しない細菌株である。例えば、部分的耐性細菌株は、ファージ感染の発生率の少なくとも60%以上(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%以上を含む)を防御または阻害する細菌株である。完全に耐性のある細菌株は、ファージ感染の全ての発生を防御または阻害する細菌株である。
【0025】
特徴的な配列エレメント:本明細書で使用される場合、「特徴的な配列エレメント」という語句は、CRISPRスペーサーによって標的とされるそのバクテリオファージの特徴的な部分を表し、宿主配列(例えば、バクテリオファージに感受性である細菌細胞において見出される配列、及び/または本明細書に記載される治療用細菌に曝露される対象において見出される配列)と区別する、バクテリオファージにおいて見出される遺伝子配列エレメントを指す。いくつかの実施形態では、特徴的な配列エレメントの存在は、バクテリオファージの特定の活性または特性の存在またはレベルと相関する。いくつかの実施形態では、特徴的配列エレメントの存在(または非存在)は、特定のバクテリオファージ株を、かかるバクテリオファージの特定のファミリーまたは群の成員(または成員ではない)として定義する。特徴的な配列エレメントは、典型的には、少なくとも2つのモノマー(例えば、ヌクレオチド)を含む。いくつかの実施形態では、特徴的な配列エレメントは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、またはそれ以上のモノマー(例えば、隣接して連結されたモノマー)を含む。いくつかの実施形態では、特徴的な配列エレメントは、バクテリオファージのプロトスペーサーの配列(例えば、CRISPRスペーサーが特異的に標的とするバクテリオファージ中の配列)を指す。
【0026】
併用療法:本明細書で使用される場合、「併用療法」という用語は、対象が2つ以上の治療レジメン(例えば、2種以上の治療薬)に同時に曝露される状況を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上のレジメンは、同時に投与されてもよく、いくつかの実施形態では、かかるレジメンは、順次投与されてもよく(例えば、第1のレジメンの全ての「用量」が、第2のレジメンのいずれかの用量を投与する前に投与される)、いくつかの実施形態では、かかる作用物質は、重複する投薬レジメンで投与される。いくつかの実施形態では、併用療法の「投与」は、1種以上の作用物質(複数可)または治療法(複数可)の、他の作用物質(複数可)または治療法(複数可)を受けている対象への組み合わせでの投与を含み得る。明確にするために、併用療法では、個々の作用物質が単一の組成物で一緒に(またはさらには必ずしも同時に)投与される必要はないが、いくつかの実施形態では、2種以上の作用物質またはそれらの活性部分は、複合組成物で一緒に投与されてもよい。
【0027】
比較可能:本明細書で使用される場合、「比較可能」という用語は、2つ以上の作用物質、実体、状況、条件のセットなどであって、互いに同一でなくてもよいが、観察される差または類似性に基づいて結論が合理的に導かれ得ることを当業者が理解するように、それらの間の比較を可能にするほど十分に類似する、当該2つ以上の作用物質、実体、状況、条件のセットなどを指す。いくつかの実施形態では、比較可能な条件、状況、個体、または集団のセットは、複数の実質的に同一の特徴及び1つまたは少数の変化する特徴を特徴とする。当業者は、文脈における任意の所与の状況で、2つ以上のかかる作用物質、実体、状況、条件のセットなどが比較可能とみなされるために、どの程度の同一性が必要とされるかを理解するであろう。例えば、当業者は、状況、個体、または集団のセットは、異なる状況、個体、または集団のセットの下で、またはそれらを用いて得られた結果または観察された現象の差が、様々なそれらの特徴の差異により引き起こされるか、または様々なそれらの特徴の差異の存在を示すという合理的な結論を保証するための十分な数及び種類の実質的に同一の特徴を特徴とする場合に、互いに比較可能であることを理解するであろう。
【0028】
共生:本明細書で使用される場合、「共生」という用語は、宿主対象に対して非病原性であり、宿主対象の正常な微生物叢の一部である微生物を指す。「共生細菌」という用語は、哺乳動物対象のマイクロバイオームから得られ、そのマイクロバイオームに適合されるか、またはそのマイクロバイオームのために構成される細菌細胞または細菌細胞の集団を指す。共生細菌は、例えば、体内排泄物(例えば、唾液、粘液、尿、または便)、表面(例えば、粘膜胃腸管、口/咽頭/鼻、泌尿生殖路、皮膚、肛門/直腸、頬/口、または眼)において、コロニー形成するように適合されるか、または哺乳動物対象のコロニー形成のために構成され、実験室環境での培養のために適合または構成されない。
【0029】
相補的:本明細書で使用される場合、「相補的」という用語は、塩基対合則によって関連するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに関して使用される。例えば、配列「C-A-G-T」は、配列「G-T-C-A」に対して相補的である。相補性は、部分的または完全であり得る。したがって、任意の程度の部分的相補性は、部分的相補性がオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションを可能にすることを条件として、「相補的」という用語の範囲内に含まれることが意図される。部分的相補性は、1つ以上の核酸塩基が塩基対合則に従ってマッチされない場合である。核酸間の全相補性または完全な相補性は、塩基対合則の下で、各々及び全ての核酸塩基が別の塩基とマッチされる。
【0030】
CRISPRスペーサー:本明細書で使用される場合、「CRISPR」スペーサーは、「クラスター化された規則的な間隔の短い回文リピート」スペーサーを表し、CRISPRアレイの複数の(例えば、2つ以上の)短い直接リピート(すなわち、CRISPRリピート)の間に存在するヌクレオチド配列を指し、かかるヌクレオチド配列は、侵入バクテリオファージの特徴的な配列エレメントに対応する(例えば、相補的である)。いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、2つの同一のCRISPRリピートの間に位置付けられる。いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、2つのCRISPRリピートの間に位置付けられたDNAストレッチにおける配列解析によって同定される。
【0031】
剤形:当業者は、「剤形」という用語が、対象への投与のための作用物質(例えば、治療用細菌の集団、例えば、本明細書に記載されるものを含む治療薬)の物理的に別個の単位を指すために使用され得ることを理解するであろう。典型的には、かかる単位の各々が既定量の作用物質を含む。いくつかの実施形態では、かかる量は、関連性のある集団に投与した場合に所望のまたは有益な結果と相関することが確定している投薬レジメン(すなわち、治療的投薬レジメン)に従って投与するのに適切な単位投与量(またはその全部)である。当業者は、特定の対象に投与される治療用組成物または作用物質の総量が、1名以上の主治医によって決定され、複数の剤形の投与を含み得ることを理解している。
【0032】
投薬レジメン:当業者には、「投薬レジメン」という用語が、対象に個別に、典型的には時間をおいて投与される一組の(典型的には2つ以上の)単位用量を指すように使用され得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、所与の作用物質は、1つ以上の用量を含み得る推奨される投薬レジメンを有する。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数の用量を含み、各用量は、他の用量と時間的な隔たりがある。いくつかの実施形態では、個々の用量は、互いに同じ長さの時間的隔たりがあり、いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数の用量を含み、個々の用量は、少なくとも2つの異なる時間的な隔たりがある。いくつかの実施形態では、投薬レジメンにおける全ての用量は、同じ単位用量のものである。いくつかの実施形態では、投薬レジメンにおける異なる用量は、異なる量のものである。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1の用量での第1の投薬に続いて、第1の用量とは異なる第2の用量での1以上の追加投薬を含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、第1の用量での第1の投薬に続いて、第1の用量と同じ第2の用量での1以上の追加投薬を含む。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、関連性のある集団内で投与した場合に所望のまたは有益な結果と相関する。
【0033】
有効量:「有効量」は、所望の生物学的反応を誘発する、例えば、対象が罹患していてもよい状態を処置するのに十分な量である。当業者によって理解されるように、組成物または当該組成物中に含まれる作用物質(例えば、本明細書に記載される治療用細菌の集団)の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、当該組成物中の作用物質の物理的、化学的、及び/または生物学的特徴(例えば、薬物動態及び/または細胞生存性)、処置されている状態、ならびに対象の年齢及び健康状態のような要因に応じて異なり得る。有効量は、治療処置及び予防処置を包含する。例えば、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患または障害(例えば、ディスビオシス)を処置する際に、有効量は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患または障害(例えば、ディスビオシス)に関連する少なくとも1つの症状を予防または低減することができる。いくつかの実施形態では、有効量は、治療される対象のマイクロバイオームにおける微生物叢の健全なバランスを再現することができる。いくつかの実施形態では、有効量は、治療される対象のマイクロバイオームにおける炎症を低減または抑制することができる。いくつかの実施形態では、有効量は、バクテリオファージによる非病原性共生細菌の感染を低減または妨害することができる。有効量は単一剤形に含有される必要はないことを当業者は理解するであろう。むしろ、有効量の投与は、場合により経時的な(例えば、投薬レジメンに従った)複数用量の投与を必要とし得る。
【0034】
操作された:一般に、「操作された」という用語は、人間の手によって操作された態様を指す。例えば、いくつかの実施形態では、細胞または微生物(例えば細菌)の集団は、かかる集団が、所望の細胞または微生物、例えば、本明細書に記載される治療用細菌の濃縮または精製された集団を形成するように操作されている場合、「操作された」とみなされる。いくつかの実施形態では、集団内の細胞または微生物(例えば、細菌)の遺伝子情報が変更されている(例えば、以前に存在しなかった新しい遺伝子材料が、例えば、形質転換、交配、体細胞ハイブリダイゼーション、トランスフェクション、形質導入、もしくは他の機序によって導入されているか、または以前に存在した遺伝子材料が、例えば、置換もしくは欠失変異によって、または交配プロトコルによって、変更または除去されている)場合、細胞または微生物(例えば、細菌)の集団は、「操作されている」とみなされる。一般的な慣行であり、当業者に理解されるように、操作された集団における細胞の子孫は、実際の操作が以前の実体に対して行われたにもかかわらず、典型的には、依然として「操作された」と称される。
【0035】
濃縮された:本明細書で使用される場合、「濃縮された」という用語は、組成物の1つ以上の構成成分の割合の増加を指す。例えば、本明細書に記載される治療用組成物は、投与される対象において非病原性及び共生的であり、かつ1つ以上の標的バクテリオファージに耐性である治療用細菌中で濃縮される。いくつかのかかる実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物は、参照組成物(例えば、糞便試料組成物)のものよりも、例えば、少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはそれ以上を含む)高い割合の治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物は、かかる治療用組成物中に存在する全ての微生物に対して、少なくとも70%以上(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または最大で100%を含む)の治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含有する。
【0036】
宿主:本明細書で使用される「宿主」という用語は、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)または治療用組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)に曝露される対象を指す。いくつかの実施形態では、宿主は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象である。いくつかの実施形態では、宿主は、疾患、障害、もしくは状態に関連する特定のバクテリオファージの感染症に罹患しているか、またはそれに感受性である対象である。いくつかの実施形態では、宿主は、ある特定の内因性非病原性共生細菌が、1つ以上のバクテリオファージに耐性になるように操作される対象である。
【0037】
増加、誘導、または低減:本明細書で使用される場合、これらの用語または文法的に同等の比較用語は、比較可能な参照測定値に対して相対的である値を示す。例えば、いくつかの実施形態では、治療用細菌で達成された評価値または特性は、比較可能な参照細菌(例えば、1つ以上の標的バクテリオファージに耐性でない細菌)で得られたものと比較して「増加」していてもよい。代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、対象において達成された評価値または特性は、異なる条件(例えば、事象の前もしくは後;または本明細書に記載される治療用細菌の集団及び/または治療用組成物の投与などの事象の存在もしくは非存在)下で同じ対象において、または異なる比較可能な対象において(例えば、条件への事前の曝露、例えば、本明細書に記載される治療用細菌の集団及び/または治療用組成物の投与がないこと、などにおいて目的の対象と異なる比較可能な対象において)得られたものと比較して「増加」していてもよい。いくつかの実施形態では、比較用語は、統計的に関連のある差(例えば、統計的関連性を達成するのに十分な有病率及び/または大きさのもの)を指す。当業者は、所与の文脈において、かかる統計的有意差を達成するのに必要であるか、または十分な差の程度及び/または有病率を知っているか、または容易に決定することができるであろう。
【0038】
阻害する:マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患またはバクテリオファージ感染症のリスク及び/または発生率の文脈での「阻害する」または「阻害」という用語は、完全阻害のみに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、部分阻害または相対的低減が、「阻害」という用語の範囲内に含まれる。いくつかの実施形態では、この用語は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患またはバクテリオファージ感染症のリスクまたは発生率の、例えば、本明細書に記載される組成物の非存在下または投与前におけるマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患またはバクテリオファージ感染症のリスクまたは発生率のベースラインレベルであり得る、初期または他の適切な参照レベルよりも再現可能及び/または統計的に有意に低いレベルへの低減を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患またはバクテリオファージ感染症のリスクまたは発生率の、例えば、本明細書に記載される組成物の非存在下または投与前におけるマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患またはバクテリオファージ感染症のリスクまたは発生率のベースラインレベルであり得る初期レベルの75%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、または0.0001%未満であるレベルへの低減を指す。
【0039】
単離されたまたは精製された:本明細書で使用される場合、「単離された」または「精製された」という用語は、(1)最初に産生されたときにそれが会合していた構成成分のうちの少なくともいくつかから分離され(天然において、もしくは実験環境においてのいずれか)、及び/または(2)人間の手によって設計、産生、調製、及び/または製造された物質及び/または実体を指す。いくつかの実施形態では、単離された物質または実体は、濃縮されてもよく、いくつかの実施形態では、単離された物質または実体は、純粋であってもよい。いくつかの実施形態では、単離された物質及び/または実体は、それらが最初に会合していた他の構成成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超から分離していてもよい。いくつかの実施形態では、単離された作用物質は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、それが実質的に他の構成成分を含まない場合、「純粋」である。いくつかの実施形態では、当業者には理解されるように、物質は、例えば1つ以上の担体または賦形剤(例えば、バッファー、溶媒、水など)のようなある特定の他の構成成分と合わされた後でも、「濃縮されている」、「単離されている」またはさらには「純粋」であるとみなされ得、かかる実施形態では、物質の単離率または純度は、かかる担体または賦形剤を含めずに計算される。当業者は、(例えば、分画、抽出、沈殿、または他の分離のうちの1つ以上を使用して)物質または作用物質を単離(例えば、濃縮または精製)するための様々な技術を認識している。
【0040】
微生物叢:本明細書で使用される場合、「微生物叢」という用語は、微生物の多様性アンサンブルによる対象の身体部位の集団コロニー形成を指す。ヒトは、皮膚の表面または深層(皮膚微生物叢)、口(口腔微生物叢)、膣(膣微生物叢)等の身体の異なる部分に細菌のクラスターを有する。Huttenhower C. et al.“Structure,function and diversity of the healthy human microbiome”Nature(2012)486:207-14(その全内容は、本明細書に記載される目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。例えば、いくつかの実施形態では、微生物叢は、対象の消化管に存在する微生物集団を指す「腸内微生物叢」または「腸内フローラ」を包含する。かかる腸内微生物叢は、典型的には、300万超の遺伝子(ヒト遺伝子より150倍多い)を有する少なくとも1000種の異なる既知の細菌を含む、数十兆の微生物を含有する。当業者によって理解されるように、ある特定の種のヒト腸内微生物叢は、ヒト対象の集団に共通である一方で、ある特定の他の種は、個体に特異的であり得る。
【0041】
調節する:マイクロバイオームを調節する文脈において使用される「調節する」または「調節」という用語は、目的の活性が観察される系におけるその存在またはレベルが、かかる調節が存在しない場合に他の同等の条件下で観察されるものと比較して、その活性のレベル及び/または性質の変化と相関する実体を指す。いくつかの実施形態では、調節は、治療用細菌の集団及び/または治療用組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)の存在下で、治療用細菌の集団及び/または治療用組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)が存在しない場合に、他の同等の条件下で観察されるものと比較して、非病原性共生細菌の1つ以上の特定の集団における活性及び/またはレベルを増加させることを指す。いくつかの実施形態では、調節は、治療用細菌の集団及び/または治療用組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)の存在下で、治療用細菌の集団及び/または治療用組成物(例えば、本明細書に記載されるもの)が存在しない場合に、他の同等の条件下で観察されるものと比較して、非病原性共生細菌を枯渇させる標的バクテリオファージにおける活性及び/またはレベルを減少させることを指す。いくつかの実施形態では、調節は、その活性が目的である標的実体との直接的相互作用を指す。いくつかの実施形態では、調節は、その活性が目的である標的実体との間接的相互作用(すなわち、標的実体と相互作用する中間作用物質との直接的相互作用)を指す。いくつかの実施形態では、調節は、目的の標的実体のレベルの変化を指し、代替的にまたは追加的に、いくつかの実施形態では、調節は、標的実体のレベルに影響しない目的の標的実体の活性の変化を指す。いくつかの実施形態では、調節は、目的の標的実体のレベル及び活性の両方の変化を指し、それにより活性の観察された差異は、レベルの観察された差異により全体的に説明されないか、またはレベルの観察された差異と等しくない。
【0042】
変異体:本明細書で使用される場合、「変異体」という用語は、参照生物、細胞、または生体分子と比較して、遺伝的変異を含む生物、細胞、または生体分子(例えば、核酸もしくはタンパク質)を指す。例えば、変異体核酸は、いくつかの実施形態では、参照核酸分子と比較して、変異、例えば、核酸塩基置換、1つ以上の核酸塩基の欠失、1つ以上の核酸塩基の挿入、2つ以上の核酸塩基の反転、または切断を含み得る。同様に、変異体タンパク質は、参照ポリペプチドと比較して、アミノ酸の置換、挿入、反転、または切断を含み得る。追加の変異、例えば、融合及びインデルは、当業者に既知である。変異体核酸またはポリペプチドを含むか、または発現する生物または細胞は、本明細書において「変異体」と称されることもある。いくつかの実施形態では、変異体は、遺伝子産物の機能喪失と関連付けられた遺伝的バリアントを含む。機能喪失は、機能の完全な廃止、例えば、酵素の酵素活性の廃止、または機能の部分的喪失、例えば、酵素の酵素活性の低下であり得る。いくつかの実施形態では、変異体は、機能の向上、例えば、遺伝子産物における特徴または活性における負のまたは望ましくない変更に関連する遺伝的バリアントを含む。いくつかの実施形態では、変異体は、参照と比較して、所望のレベルまたは活性の低下または損失を特徴とし、いくつかの実施形態では、変異体は、参照と比較して、所望ではないレベルまたは活性の増加または増大を特徴とする。いくつかの実施形態では、参照生物、細胞、または生体分子は、野生型生物、細胞、または生体分子である。
【0043】
非病原性:本明細書で使用される場合、「非病原性」という用語は、無害とみなされ、疾患、障害、または状態と関連付けられていない微生物(例えば、細菌)を指す。いくつかの実施形態では、非病原性微生物は、対象のある特定の身体部位、例えば、腸または皮膚に存在する有益な細菌である。いくつかの実施形態では、非病原性微生物は、例えば、免疫不全宿主において日和見病原体となり得る。いくつかの実施形態では、非病原性細菌は、Escherichia coliではない。いくつかの実施形態では、非病原性細菌は、Streptococcusではない。
【0044】
核酸:本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、少なくとも3つのヌクレオチドのポリマーを指す。いくつかの実施形態では、核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態では、RNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖部分及び二本鎖部分の両方を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のホスホジエステル結合を含む骨格を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合及び非ホスホジエステル結合の両方を含む骨格を含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、例えば「ペプチド核酸」のように、1つ以上のホスホロチオエートまたは5’-N-ホスホロアミダイト結合及び/または1つ以上のペプチド結合を含む骨格を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の、または全ての天然残基(例えば、アデニン、シトシン、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、グアニン、チミン、ウラシル)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上、または全ての非天然残基を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ロモウリジン、C5-ルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-ロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、インターカレーションされた塩基、及びそれらの組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、非天然残基は、天然残基中の糖類と比較して、1つ以上の修飾された糖類(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはポリペプチドなどの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のイントロンを含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、酵素合成(例えば、相補性テンプレートに基づく重合、例えば、インビボまたはインビトロでの、組換え細胞もしくは系における複製、または化学合成によって調製され得る。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、またはそれ以上の残基長である。
【0045】
動作可能に会合された:本明細書で使用される場合、「動作可能に会合された」という用語は、記載された構成成分が、それらが意図された様式で機能することを可能にする関係にある並列を指す。例えば、機能エレメントに「動作可能に会合された」制御エレメントは、機能エレメントの発現及び/または活性が制御エレメントと適合する条件下で達成されるような方法で会合される。いくつかの実施形態では、「動作可能に会合された」制御エレメントは、目的のコードエレメントと連続しており(例えば、共有結合しており)、いくつかの実施形態では、制御エレメントは、目的の機能エレメントに対してトランスで、またはそうでなければ目的の機能エレメントからので作用する。CRISPRシステム(例えば、CRISPR-Casシステム)の文脈では、CRISPR遺伝子座内のCas(CRISPR関連)ポリペプチドに動作可能に会合されたCRISPRスペーサーは、かかるCRISPRスペーサーを含む機能的ガイドRNAが、CRISPRスペーサーに相補的である標的配列の切断及び分解のためにCasポリペプチドと相互作用するように生成されるように会合される。
【0046】
薬学的組成物:本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、活性作用物質(例えば、本明細書に記載される治療用細菌の集団)が1つ以上の薬学的に許容される担体とともに製剤化されている組成物を指す。いくつかの実施形態では、活性剤(例えば、本明細書に記載される治療用細菌の集団)は、関連性のある集団に投与した場合に既定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンにおける投与に適切な単位用量で存在する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、固体または液体形態での投与のために特別に製剤化されてもよく、以下のために適合されたものを含む:経口投与、例えば、ドレンチ(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、口腔、舌下、及び全身吸収を目的としたもの、ボーラス、粉剤、顆粒、舌への適用のためのペースト、カプセル、粉剤など。いくつかの実施形態では、活性作用物質は、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)または治療用細菌の集団(例えば、単一の治療用細菌種の集団または異なる治療用細菌種の混合物)であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、活性作用物質は、単離された、精製された、または純粋な治療用細菌の集団(例えば、単一の治療用細菌種の集団または異なる治療用細菌種の混合物)であってもよいか、またはそれらを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、活性作用物質は、(天然源から単離された、またはインビトロで産生された)天然物であってもよく、またはそれを含んでいてもよい。
【0047】
薬学的に許容される:本明細書で使用される場合、例えば、本明細書に開示される薬学的組成物を製剤化するために使用される担体、希釈剤、または賦形剤に関して使用さ得る「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤、または賦形剤が、組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに対して有害でないことを意味する。
【0048】
薬学的に許容される担体:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒封入材料などの、対象化合物を身体の1つの器官または部分から身体の別の器官または部分に搬送または輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分に適合するという意味で「許容され」なければならず、また患者に有害であってはならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖類;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱因子を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;;エチルアルコール;pH緩衝溶液;ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ酸無水物;ならびに薬学的製剤に用いられる他の非毒性で適合性の物質が挙げられる。
【0049】
予防:「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の疾患、障害または状態の1つ以上の症状の発症の遅延、及び/または頻度及び/または重症度の低減を指す。いくつかの実施形態では、予防の評価は、特定の疾患、障害、または状態の1つ以上の症状の発生、頻度、及び/または強度における統計的に有意な減少が、その疾患、障害、または状態に感受性がある集団で観察された場合に、作用物質がその疾患、障害、または状態を「予防する」とみなされるように、集団を基準として行われる。いくつかの実施形態では、予防は、疾患、障害または状態の発症が所定の期間にわたって遅延されたとき、完全とみなされ得る。
【0050】
純粋:本明細書で使用される場合、細胞の集団は、それが実質的に他の細胞及び/または構成成分を含まない場合、「純粋」である。例えば、約90%超の治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含有する調製物は、典型的には、純粋な調製物であるとみなされる。いくつかの実施形態では、治療用組成物は、それが少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または最大で100%の治療用細菌を含有する場合、「純粋」であるとみなされる。
【0051】
参照:本明細書で使用される場合、「参照」という用語は、比較を行う対象に対する標準または対照を表す。例えば、いくつかの実施形態では、目的の作用物質、動物、個体、集団、試料、配列または値が、参照または対照の作用物質、動物、個体、集団、試料、配列または値と比較される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、目的の試験または決定と実質的に同時に試験及び/または決定される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、任意選択で有形媒体に具現化された歴史的参照または対照である。典型的には、当業者に理解されるように、参照または対照は、評価対象と比較可能な条件または状況下で決定されるか、または特徴付けられる。当業者は、考えられる特定の参照または対照への依存及び/または比較を正当化するのに十分な類似性が存在する場合を理解するであろう。いくつかの実施形態では、参照は、陰性対照参照であり、いくつかの実施形態では、参照は、陽性対照参照である。
【0052】
ポリペプチド:「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、典型的には、少なくとも3つ以上のアミノ酸の高分子という、その当該技術分野で認識されている意味を有する。当業者は、「ポリペプチド」という用語が、本明細書に挙げる完全な配列を有するポリペプチドを包含するだけでなく、かかる完全なポリペプチドの機能的であるか、生物学的に活性であるか、または特徴的な断片、部分またはドメイン(例えば、少なくとも1つの活性を保持する断片、部分、またはドメイン)を表すポリペプチドも包含するよう、十分に一般的であることが意図されることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはそれらの両方を含有してもよく、及び/または当該技術分野で知られる様々なアミノ酸修飾または類似体のうちのいずれかを含有してもよい。有用な修飾としては、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びそれらの組み合わせを含んでいてもよい(例えば、ペプチド模倣物質であってもよく、またはそれを含んでいてもよい)。
【0053】
予防上有効量:「予防上有効量」は、状態を予防するのに十分な量である(例えば、状態の1つ以上の症状または特徴の発生または再発を顕著に遅延させ、例えば、その結果、それ/それらが、当該量の投与がない場合に予想される時点で検出されない)。組成物の予防上有効量は、状態の予防において予防効果を提供する、単独または他の薬剤との組み合わせでの治療薬(複数可)の量を意味する。「予防上有効量」という用語は、予防全体を改善するか、または別の予防剤の予防効力を増強する量を包含し得る。予防上有効量は単一剤形に含有される必要はないことを当業者は理解するであろう。むしろ、有効量の投与は、場合により経時的な(例えば、投薬レジメンに従った)複数用量の投与を必要とし得る。
【0054】
試料:本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、典型的には、目的の供給源から得られたか、またはそれから誘導された材料のアリコートを指す。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、生物学的供給源または環境的供給源である。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、微生物、植物、動物、または対象(例えば、ヒト)などの細胞または生物であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、生体試料であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、羊水、房水、腹水、胆汁、骨髄、血液、母乳、脳脊髄液、耳垢、乳糜、チャイム、射精液、内リンパ、滲出物、糞便、胃酸、胃汁、リンパ、粘液、心膜液、周囲リンパ、腹膜液、胸膜液、膿、粘膜分泌物、唾液、皮脂、精液、血清、恥垢、痰、滑液、汗、涙、尿、膣分泌物、硝子体液、嘔吐物、及び/またはそれらの組み合わせまたは構成成分(複数可)であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、生体液は、細胞内液、細胞外液、血管内液(血漿)、間質液、リンパ液、及び/または細胞透過液であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、生体液は、植物滲出物であってもよく、またはそれを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、生体組織または試料は、例えば、吸引、生検(例えば、細針もしくは組織生検)、スワブ(例えば、口腔、鼻、皮膚、もしくは膣スワブ)、擦過、手術、洗浄または灌流(例えば、気管支肺胞、管、鼻、眼、口腔、子宮、膣、もしくは他の洗浄もしく灌流)によって得ることができる。いくつかの実施形態では、生体試料は、個体から得られた細胞であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な手段によって、目的の供給源から直接得られる「一次試料」である。いくつかの実施形態では、文脈から明らかであるように、「試料」という用語は、一次試料を加工することによって(例えば、一次試料の1つ以上の構成成分を除去することによって、及び/または1つ以上の作用物質を一次試料に添加することによって)得られる調製物を指す。例えば、当該技術分野における適切な手段(例えば、遠心分離及び/または半透過性膜)を使用して濾過すること。かかる「処理された試料」は、例えば、試料から単離されたある特定の細菌画分またはウイルス画分を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、「加工試料」は、例えば、試料から抽出されたか、または核酸の増幅もしくは逆転写、ある特定の構成成分の単離及び/または精製などの1つ以上の技法に一次試料を供することによって得られた核酸またはタンパク質を含むことができる。
【0055】
対象:投与が企図される「対象」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性もしくは女性、例えば、小児の対象(例えば、乳幼児、児童、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、もしくは高齢成人))及び/または非ヒト動物、例えば、哺乳動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル);ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、及び/またはイヌなどの飼育動物;及び/または鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/またはシチメンチョウ))が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、動物は、(例えば、任意の発生段階の)哺乳動物である。いくつかの実施形態では、動物(例えば、非ヒト動物)は、トランスジェニックまたは遺伝子操作動物であってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物対象(例えば、ヒト対象)である。いくつかの実施形態では、対象は、ディスビオシスに関連する疾患、障害、または状態に罹患している哺乳動物対象である。
【0056】
罹患している:疾患、障害、及び/または状態に「罹患している」個体は、疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状があると診断されている、及び/またはそれを示す。
【0057】
感受性である:疾患、障害、及び/または状態に「感受性である」個体は、一般大衆の一員よりもその疾患、障害、及び/または状態を発症するリスクが高い個体である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態に感受性である個体は、その疾患、障害、及び/または状態があると診断されていない場合がある。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態に感受性である個体は、その疾患、障害、及び/または状態の症状を呈する場合がある。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態に感受性である個体は、その疾患、障害、及び/または状態の症状を呈しない場合がある。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態に感受性である個体は、その疾患、障害、及び/または状態が発達する。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態に感受性である個体は、その疾患、障害、及び/または状態が発達しない。
【0058】
症状は低減される:本明細書で使用される場合、特定の疾患、障害または状態の1つ以上の症状が規模(例えば、強度、重症度など)及び/または頻度において低減された際に、「症状は低減される」。明確さの目的のために、特定の症状の発症の遅延は、その症状の頻度を低減させる1つの形態とみなされる。
【0059】
治療用細菌:本明細書で使用される場合、「治療用細菌」という語句は、対象に投与された際に、治療効果を有し、及び/または所望の生物学的及び/または薬理学的効果を誘発する細菌を指す。いくつかの実施形態では、治療用細菌または治療用細菌の集団は、ディスビオシスまたはマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状または特徴を緩和、改善、軽減、阻害、予防、発症遅延、重症度を低減、及び/または発生率を低減するために使用され得る非病原性共生細菌を含む。
【0060】
治療上有効量:「治療上有効量」は、状態の処置において治療効果を提供するのに十分な量であり、この治療効果は、例えば、頻度及び/または重症度の低減及び/または当該状態と関連付けられた1つ以上の特徴もしくは症状の発症の遅延であり得るか、またはそれらを含み得る。治療上有効量は、状態の処置において治療効果を提供する、単独または他の治療法との組み合わせでの治療薬(複数可)(例えば、治療用細菌)の量を意味する。「治療上有効量」は、治療全体を改善するか、状態の症状もしくは原因を低減もしくは回避するか、または別の治療薬の治療有効性を増強する量を包含し得る。治療上有効量は単一剤形に含有される必要はないことを当業者は理解するであろう。むしろ、有効量の投与は、場合により経時的な(例えば、投薬レジメンに従った)複数用量の投与を必要とし得る。
【0061】
処置する:「処置」、「処置する」、及び「処置すること」という用語は、本明細書に記載される「病態」(例えば、疾患、障害、もしくは状態であって、それらの1つ以上の徴候もしくは症状を含む)、例えば、ディスビオシスまたはマイクロバイオーム機能障害と関連付けられた疾患、障害、または状態(例えば、炎症性腸疾患を含む)を後退させること、軽減すること、その発症を遅延させること、またはその進行を阻害することを指す。いくつかの実施形態では、処置は、1つ以上の徴候または症状が発症したか、または観察された後で投与され得る。処置は、例えば、再発及び/または拡散を遅延させるか、または予防するために、症状が消退した後も継続され得る。
【0062】
バリアント:本明細書で使用される場合、「バリアント」という用語は、参照実体との顕著な構造的同一性を示すが、当該参照実体と比較して、1つ以上の化学部分の存在またはレベルにおいて当該参照実体と構造的に異なる実体を指す。多数の実施形態では、バリアントは、その参照実体と機能的にも異なる。一般に、特定の実体が適切に参照実体の「バリアント」であるとみなされるかどうかは、当該参照実体との構造的同一性の程度に基づく。当業者によって理解されるように、任意の生物学的または化学的な参照実体は、ある特定の特徴的な構造要素を有する。定義上、バリアントは、1つ以上のかかる特徴的な構造要素を共有する別個の化学実体である。少数の例のみを挙げると、低分子は、特徴的なコア構造要素(例えば、大員環コア)及び/または1つ以上の特徴的なペンダント部分を有していてもよく、そのため、低分子のバリアントは、コア構造要素及び特徴的なペンダント部分を共有するが、他のペンダント部分及び/またはコア内に存在する結合の種類(単対二重、E対Zなど)が異なるものであり、ポリペプチドは、線状もしくは3次元空間において互いに指定される位置を有し、及び/または特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸から構成される特徴的な配列エレメントを有していてもよく、核酸は、線状または3次元空間において互いに指定される位置を有する複数のヌクレオチド残基から構成される特徴的な配列エレメントを有していてもよい。例えば、バリアント治療用細菌は、例えば、本明細書に記載される方法で使用される場合、バリアント治療用細菌が、疾患、障害、または状態に関連する細菌を標的とするバクテリオファージに耐性であることを条件に、1つ以上の構造的修飾(例えば、限定されないが、化学部分の付加、欠失、及び/または修飾)の結果として、参照治療用細菌と異なる場合がある。いくつかの実施形態では、バリアント治療用細菌は、24時間以上(例えば、48時間、72時間、またはそれ以上を含む)後に、1つ以上の標的バクテリオファージの存在下で、かかるバリアント治療用細菌の集団を培養することによってインビトロで評価される場合、かかるバリアント治療用細菌の細胞生存能は、参照治療用細菌が1つ以上の標的バクテリオファージの存在下で培養されるときに観察されるものの少なくとも60%以上(例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または最大で100%を含む)であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、バリアント治療用細菌は、24時間以上(例えば、48時間、72時間、またはそれ以上を含む)後に、1つ以上の標的バクテリオファージの存在下で、かかるバリアント治療用細菌の集団を培養することによってインビトロで評価される場合、かかるバリアント治療用細菌の細胞生存能は、参照治療用細菌が1つ以上の標的バクテリオファージの存在下で培養されるときに観察されるものの少なくとも1.1倍以上(例えば、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、またはそれ以上を含む)であることを特徴とする。いくつかの実施形態では、バリアント治療用細菌は、参照治療用細菌とは異なる少なくとも1つの物理的特徴を呈する。例えば、いくつかの実施形態では、バリアント治療用細菌は、参照治療用細菌と比較して、生物学的経路における遺伝子変更を有し得る。いくつかの実施形態では、バリアントは、参照と比較して10種、9種、8種、7種、6種、5種、4種、3種、2種、または1種の構造的修飾を有する。いくつかの実施形態では、バリアントは、少数(例えば、5種、4種、3種、2種、または1種未満)の構造的修飾を有する。いくつかの実施形態では、バリアントは、参照と比較して、5種、4種、3種、2種、または1種を超えない化学部分の付加または欠失を有し、いくつかの実施形態では、付加または欠失を有しない。いくつかの実施形態では、バリアントは、化学的操作により参照から生成され得る実体である。いくつかの実施形態では、バリアントは、参照を生成するものと実質的に類似する(例えば、複数のステップを共有する)合成プロセスの実行により生成され得る実体である。
【0063】
ベクター:本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、結合している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは環状二本鎖DNAループを指し、これに追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る。ベクターの別の種類はウイルスベクターであり、ここでは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞における自己複製が可能である(例えば、細菌起源の複製を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクターは、動作可能に連結されている遺伝子の発現を導くことができる。
【0064】
組換えDNA、核酸合成、例えば、DNAテンプレート合成及び/またはRNA合成、ならびに組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のために、標準的な技法を使用してもよい。酵素反応及び精製技法は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実行され得る。前述の技法及び手順は一般に、当該技術分野において周知である従来の方法に従って、かつ本明細書全体を通して引用され、考察される、一般的かつより具体的な様々な参考文献に記載されるように実行され得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)(これはあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0065】
本開示は、とりわけ、ファージ耐性細菌からなるか、またはそれを含む治療用組成物に関する技術、ならびに、例えば、マイクロバイオームと関連付けられた疾患または障害を治療するために、例えば、かかる組成物を投与する方法を含む、それらに関連する様々な方法及び/または材料を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、提供される技術は、マイクロバイオームに関連する疾患または障害を治療することにおいて、例えば、従来のプロバイオティクス及び/または有益な細菌の投与を含む、ある特定の既存の技術よりも有用である。例えば、本開示は、多くのかかる従来のプロバイオティクス(細菌)ベースの治療法が、ディスビオシスまたはマイクロバイオーム機能障害と関連付けられた疾患または障害の治療または予防において効果が低いか、またはさらには効果的でない可能性があることを理解する。具体的には、本開示は、とりわけ、ヒト腸内に存在するバクテリオファージが、炎症性腸疾患(IBD)に罹患しているヒト腸内に存在する健康で有益な細菌の集団に感染し、枯渇させることができることを認識する。したがって、本開示は、とりわけ、ある特定のヒト身体部位におけるバクテリオファージと細菌との間に捕食的相互作用が存在するという洞察を提供し、したがって、有益な共生細菌に感染し、枯渇させるバクテリオファージの存在は、従来のプロバイオティクス(細菌)に基づく治療法の有効性を著しく損なう可能性がある。本開示は、とりわけ、治療用細菌、組成物、及び方法を含む、かかる問題を解決する技術を提供し、例えば、ディスビオシスまたはマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患または障害と関連付けられた1つ以上の標的バクテリオファージに耐性である非病原性共生細菌の集団に、それを必要とする対象を特異的に曝露することを含む。
【0067】
I.治療用細菌
本開示は、(i)治療される対象において非病原性及び共生的であり、かつ(ii)対象において対応する非病原性及び共生宿主細菌を標的とする(例えば、選択的に標的とする)1つ以上のバクテリオファージに耐性である、治療用細菌を提供する。当業者は、本開示を読むと、治療用細菌が、ディスビオシスまたはマイクロバイオームに関連する疾患もしくは障害の治療及び/または予防に有用であることを認識するであろう。
【0068】
A.非病原性及び共生細菌
マイクロバイオームは、種々の非病原性及び共生細菌種を含み得、それらのうちのいずれか1つは、本開示に従って使用され得る。いくつかの実施形態では、非病原性共生細菌細胞の属及び/または種は、バクテリオファージの特異性(例えば、ファージ宿主範囲)に依存し得る。例えば、いくつかのバクテリオファージは、特定の種の細菌に対して屈性を呈するか、または優先的に標的とする。
【0069】
細菌は、典型的には、小さく(典型的な線形寸法は1ミクロン前後)、区画化されておらず、環状DNA及び70Sのリボソームを含む。いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、Eubacteria及びArchaebacteriaの下位分類からの細菌を含む。Eubacteriaは、細胞壁構造の違いに依存するグラム陽性Eubacteria及びグラム陰性Eubacteriaにさらに細分することができる。肉眼形態のみに基づいて分類されるもの(例えば、球菌、桿菌)もまた、本明細書に含まれる。いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、グラム陰性細胞であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、グラム陽性細胞であるか、またはそれらを含む。本開示に従って有用な非病原性及び共生細菌の非限定的な例としては、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Brevibacteria、Clostridium、Enterococcus、Escherichia coli、Lactobacillus、Lactococcus、Saccharomyces、and Staphylococcus、例えば、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、及びLactococcus lactisの群における細菌が挙げられる(Sonnenborn et al.,2009、Dinleyici et al.,2014、米国特許第6,835,376号、米国特許第6,203,797号、米国特許第5,589,168号、米国特許第7,731,976号)。
【0070】
いくつかの実施形態では、治療用細菌中で使用される非病原性及び共生細菌は、以下の細菌のうちの1つ以上(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上)であり得るか、またはそれらを含み得る:Clostridium symbiosum、Clostridium hathewayi、Clostridium citroniae、Clostridium bolteae、Ruminococcus種M-1、Ruminococcus gnavus、Blautia種Canine oral taxon 143、Anaerostipes caccae、Clostridium lactatifermentans、Coprobacillus cateniformis、Clostridium ramosum、cf.Clostridium種MLG055、Clostridium innocuum、Eubacterium desmolans、Clostridium orbiscindens、Ruminococcus種16442、Anaerotruncus colihominis、Bacteroides dorei、Bifidobacterium pseudolongum亜種Pseudolongum、Bifidobacterium breve、Clostridium clostridioforme、Clostridium collagenovorans、Clostridium asparagiforme、Clostridium scindens、Clostridium acetireducens、Clostridium algidicarnis、Clostridium paradoxum、Clostridium saccharogumia、Clostridium ramosum JCM1298、Clostridia菌UC5.1-1A9、Clostridium asparagiforme、Clostridium cellulosi、Clostridium bolteae、Clostridium citroniae、Clostridium clostridioforme、Clostridium indolis、Clostridium cocleatum、Clostridium innocuum、Clostridium lavalense、Clostridium saccharolyticum、Clostridium scindens、Clostridium symbiosum、Clostridium butyricum、Clostridia菌UC5.1-1A9、Clostridium jeddahense、Clostridium nigeriense、Clostridium neonatale、Clostridium perfringens、Clostridium phoceensis、Clostridium種1_1_41A1FAA、Clostridium種316002/08、Clostridium種7_3_54FAA、Clostridium種 ATCC BAA-442、Clostridium種C105KSO14、Clostridium種CL-6、Clostridium種D5、Clostridium種FS41、Clostridium種HGF2、Clostridium種IODB-O3、Clostridium種KLE 1755、Clostridium種L2-50、Clostridium種M62/1、Clostridium種MSTE9、Clostridium種VE202-10、Clostridia菌UC5.1-2G4、Clostridia菌UC5.1-2H11、Clostridiales菌1_7_47FAA、Clostridiales菌JGI 000176CP_D02、Clostridiales菌VE202-03、Clostridiales菌VE202-06、Clostridiales菌VE202-07、Clostridiales菌VE202-09、Clostridiales菌VE202-15、Clostridiales菌VE202-16、Clostridiales菌VE202-21、Clostridiales菌VE202-26、Clostridiales菌VE202-27、Clostridiales菌VE202-28、Clostridiales菌VE202-29、Clostridium種C8、Clostridium sporogenes、Clostridium tyrobutyricum、Clostridium種VE202-10、Lachnoclostridium種An131、Lachnoclostridium種YL32、Lachnospiraceae菌3_1_57FAA_CT1、Lachnospiraceae菌5_1_57FAA、Lachnospiraceae菌6_1_63FAA、Lachnospiraceae菌A4、Lachnospiraceae菌DJF_VP30、Lachnospiraceae菌VE202-23、Lachnospiraceae菌VE202-23、Clostridium acetireducens、Clostridium collagenovorans、及びそれらの組み合わせ。
【0071】
いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、1種以上のClostridiaであるか、またはそれらを含む。Clostridiaの例示的な種としては、Clostridium scindens、Clostridiales、Clostridium symbosium、Clostridiales bacterium、Clostridium phoceensis、Clostridium innocuum、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、Clostridium scindensであるか、またはそれを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、1種以上のBifidobacteriaであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、Bifidobacterium longumであるか、またはそれを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus casei、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus brevis、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus sakeiを含むが、これらに限定されない、1種以上のLactobacillusであるか、またはそれらを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、1種以上のAkkermansiaであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌は、Akkermansia Muciniphilaであるか、またはそれを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、治療用細菌は、ヒト対象の身体部位(例えば、粘膜消化管、口/咽頭/鼻腔、泌尿生殖路、皮膚、肛門/直腸、頬/口、または眼)に正常に存在することが見出される1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の非病原性及び共生細菌を含む。いくつかの実施形態では、治療用細菌は、ヒト対象の身体部位(例えば、粘膜消化管、口/咽頭/鼻腔、泌尿生殖路、皮膚、肛門/直腸、頬/口、または眼)に正常に存在することが見出される非病原性及び共生細菌の1つ以上のバリアント(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のバリアント)を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌は、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Coprococcus、Clostridium、Collinsella、Desulfomonas、Dorea、Escherichia、Eubacterium、Fusobacterium、Gemmiger、Lactobacillus、Lactoccucs、Monilia、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Ruminococcus、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つ以上の(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、もしくはそれ以上を含む)単離、精製、または培養された共生細菌を含む。いくつかの実施形態では、治療用細菌の集団は、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Escherichia、Lactobacillus、Lactoccucs、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、自己由来であってもよい(例えば、本明細書に記載される治療用細菌は、標的バクテリオファージによる感染に感受性である治療される対象の細菌から遺伝子操作されている)。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、同種異系であり得る。
【0077】
B.バクテリオファージ
とりわけ、本開示は、確立されているか、またはそうでなければかかる非耐性の非病原性及び共生細菌に感染するであろう1つ以上のバクテリオファージに耐性であることが知られている、非病原性及び共生細菌の治療用組成物を提供する。
【0078】
バクテリオファージ(ファージとしても知られている)は、典型的には、DNAまたはRNAゲノムを封入するタンパク質で構成されており、これらは、数個または数百個の遺伝子のみをコードしてよく、それによって比較的単純なまたは詳細な構造を有するビリオンを産生する。したがって、バクテリオファージは、生物圏における最も一般的かつ多様な実体のうちの1つである。ファージは、形態及び核酸の種類(DNAまたはRNA、一本鎖または二本鎖、直鎖または環状)を考慮して、国際ウイルス分類委員会(ICTV)に従って分類される。細菌及び/または古細菌(以前は古細菌(archaebacteria)として分類されていた原核ドメイン)に感染する約19のファージファミリーが、これまでに認識されている。多くのバクテリオファージは、特定の属または種または株の細菌細胞に特異的である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法で使用される非病原性及び共生細菌は、溶解性バクテリオファージに耐性であり得る。溶解性バクテリオファージは、溶原経路に入るのではなく、溶解サイクルの完了を通じて溶解経路に従うものである。溶解性バクテリオファージは、細胞膜の溶解、細胞の破壊、及び他の細胞に感染することができる子孫バクテリオファージ粒子の放出につながるウイルス複製を受ける。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法で使用される非病原性及び共生細菌は、溶原性バクテリオファージに耐性であり得る。溶原性バクテリオファージは、その溶解サイクルが完了する前に細胞のゲノムの休眠受動部分となる、溶原経路に入ることができるものである。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法で使用される非病原性及び共生細菌は、テンペレートバクテリオファージに耐性であり得る。テンペレートは、溶解性または溶原性であり得るファージである。溶原性の場合、かかるファージは、典型的には、その核酸を宿主細胞ゲノムに組み込み、宿主ゲノムが複製されるときにのみ複製する、静止状態を維持する。その溶解性または植物性増殖ファージにおいて、ファージ核酸は、宿主ゲノムから自ら切断するか、または宿主細胞ゲノムに組み込まれず、むしろ、細胞成分を犠牲にして宿主細胞のタンパク質合成機構を引き継ぎ、ファージ子孫を組み立てる。新しいファージは、細胞が溶解すると、感染した宿主細胞から放出される。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法で使用される非病原性及び共生細菌は、かかる細菌細胞が感染した後のそのライフサイクルのある時点で細菌細胞に対して毒性である、バクテリオファージに耐性である。
【0083】
本開示に従って、任意の標的バクテリオファージ(例えば、野生型、天然に存在する、単離されたまたは組換えバクテリオファージを含む)に対する耐性を付与する非病原性及び共生細菌を使用してもよいが、いくつかの実施形態では、哺乳動物対象(例えば、ヒト)におけるマイクロバイオームの1つ以上の非病原性共生細菌株に対して活性である(例えば、感染することが可能である)標的バクテリオファージが特に興味深い。単なる例として、いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌が耐性である標的バクテリオファージとしては、以下の属のうちの少なくとも1つ以上からの細菌に感染することができるバクテリオファージが挙げられるが、これらに限定されない:Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Collinsella、Coprococcus、Desulfomonas、Dorea、Escherichia(例えば、E.coli)、Eubacterium、Fusobacterium、Gemmiger、Monilia、Lactobacillus、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Akkermansia、及びRuminococcus。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、CaudoviralesまたはMicroviridaeファージからなる群から選択される1つ以上のバクテリオファージに耐性である。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、ヒト対象の腸内マイクロバイオームに存在する1つ以上のバクテリオファージに耐性である。例えば、いくつかのかかる実施形態では、本明細書に記載される治療薬は、Caudoviralesであってもよく、またはそれを含んでいてもよい1つ以上のバクテリオファージに耐性である。
【0086】
C.例示的なバクテリオファージ耐性細菌
本開示に従って使用される治療用細菌は、1つ以上のバクテリオファージ(例えば、本明細書に記載されるもの)に耐性である。いくつかの実施形態では、治療用細菌は、そうでなければかかるファージ耐性なしで対応する細菌に感染するであろう1つ以上のバクテリオファージに耐性である。いくつかのかかる実施形態では、治療用細菌が耐性を呈するバクテリオファージは、ディスビオシス及び/またはマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態に関連する。
【0087】
いくつかの実施形態では、バクテリオファージ耐性細菌は、対象(例えば、哺乳動物対象)の生体組織または流体試料から単離され得る。例えば、いくつかの実施形態では、バクテリオファージ耐性細菌は、例えば、限定されないが、唾液、粘液、尿、及び/または便(例えば、糞便試料)を含む哺乳動物対象の体内排泄物から単離されてもよい。いくつかの実施形態では、バクテリオファージ耐性細菌は、インビトロまたはエクスビボで遺伝子操作され得る。いくつかの実施形態では、バクテリオファージ耐性細菌は、例えば、核酸配列を含む組成物を対象に投与することによってインビボで生成され得、核酸配列は、かかるバクテリオファージに耐性になるような遺伝子操作のために、かかるバクテリオファージに感受性である宿主細菌に送達される。
【0088】
1.CRISPRシステム(例えばCRISPR-Casシステム)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法で使用するための治療用細菌は、各々、1つ以上のバクテリオファージ配列及びCRISPR関連(Cas)ポリペプチドを標的とするCRISPRスペーサーを含む、クラスター化された規則的な間隔の短い回文リピート(CRISPR)システムを含む。いくつかのかかる実施形態では、CRISPRシステムは、治療用細菌が、標的スペーサー配列(プロトスペーサー)またはかかる標的スペーサー配列の関連バリアント(例えば、いくつかの実施形態では、親もしくは標的バクテリオファージから少なくとも1つ以上、例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ以上の変異を進化させるプロトスペーサーを有する変異体バクテリオファージ;またはいくつかの実施形態では、親もしくは標的バクテリオファージから1~4つの変異を進化させるプロトスペーサーを有する変異体バクテリオファージ)を含むバクテリオファージによって感染されると、治療用細菌は、バクテリオファージまたはその関連バリアントを標的化するCRISPRスペーサーを含まない、他の点では同等の細菌について観察されたものと比較して、感染に対する耐性の増加を示すことを特徴とする。いくつかの実施形態では、かかる治療用細菌は、バクテリオファージまたはその関連バリアントを標的とするCRISPRスペーサーを含まない、他の点では同等の細菌について観察されたものと比較して、少なくとも30%以上(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、またはそれ以上を含む)のバクテリオファージ感染に対する耐性の増加を示すことができる。いくつかのかかる実施形態では、バクテリオファージ耐性は、以下の「バクテリオファージ耐性の特徴付けのための例示的な方法」と題されるセクションに記載される、1つ以上の方法を特徴とし得る。
【0089】
CRISPR-Casシステムは、細菌内で進化して、ファージを含む外来の遺伝子エレメントに対する適応免疫を提供する。CRISPRは、典型的には、内側逆位リピート及び末端逆位リピートを含有する24~65bpの短い部分的回文配列である。単離されたエレメントが検出されたが、それらは一般に、固有の介在する20~58bp配列によって間隔をあけられたリピート単位のクラスター(ゲノム当たり最大で約20個以上)に配置される。
【0090】
CRISPRシステムは、それぞれ、配列決定された細菌ゲノム及び古細菌ゲノムのおよそ40%及び90%に見出される。多様なCRISPRシステムのアレイは、非病原性細菌及び共生細菌においても同定される。Rho,M.,et al.PLoS Genet.8,e1002441(2012)、Soto-Perez,P.et al.Cell Host Microbe 26,325-335.e5(2019)。本開示に従って操作され得る非病原性及び共生細菌に存在するCRISPRシステムには、例えば、I-A型、I-B型、I-C型、I-D型、I-E型、I-F型、III-A型、III-B型、II-A型、またはII-B型が含まれる。いくつかの実施形態では、本開示に従って操作され得る非病原性及び共生細菌に存在するCRISPRシステムは、I型(例えば、I-C型)またはIII型(例えば、III-A型、III-B型)である。本明細書に記載される組成物及び/または方法において有用であり得るCRISPRシステム及びCRISPRアレイの分析及び同定のために、様々なコンピュータソフトウェア及びウェブリソースが利用可能である。これらのツールとしては、PILERCR、CRISPR認識ツール及びCRISPRFinderなどのCRISPR検出用ソフトウェア;CRISPRdbなどの事前に分析されたCRISPRのオンラインリポジトリ;ならびにPygramなどの微生物ゲノム中のCRISPRを閲覧するためのツールが挙げられるが、これらに限定されない。当業者によって理解されるように、かかるCRISPRシステムのうちのいずれか1つからのCRISPRアレイは、本開示に従って使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、標的バクテリオファージに対する細胞耐性を調節するために内因性CRISPRアレイを用いてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、標的バクテリオファージに対する細胞耐性を調節するために、少なくとも1つのCasタンパク質(例えば、本明細書に記載されるもの)、少なくとも1つのCRISPRスペーサー(例えば、本明細書に記載されるもの)及びそこに導入される少なくとも2つのCRISPRリピート(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む、異種CRISPRアレイを含んでもよい。
【0091】
CRISPRスペーサー:本開示に従って使用される治療用細菌は、各々、1つ以上のバクテリオファージ配列、例えば、バクテリオファージ(複数可)の1つ以上の特徴的な配列エレメントを標的とする1つ以上のCRISPRスペーサーを含む。いくつかの実施形態では、かかるCRISPRスペーサーは、1つ以上のバクテリオファージの特徴的な核酸配列エレメントまたはその転写産物を標的とすることができる。かかるCRISPRスペーサーは、細菌細胞内で天然に存在し得るか、または内因的に発現され得るか、または当該技術分野で既知の方法によってかかる細胞内に導入され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、またはそれ以上のCRISPRスペーサー(複数可)を含む少なくとも1つ以上を含み、これらの各々が、同じ標的バクテリオファージの異なる特徴的な配列エレメント(例えば、特徴的な核酸配列エレメントまたはその転写産物)を標的とする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、またはそれ以上のCRISPRスペーサー(複数可)を含む少なくとも1つ以上を含み、これらの各々が、別個の標的バクテリオファージの特徴的な配列エレメント(例えば、特徴的な核酸配列エレメントまたはその転写産物)を標的とする。
【0093】
CRISPRスペーサーは、典型的には、標的バクテリオファージの特徴的配列エレメント(例えば、特徴的核酸配列エレメントもしくはその転写産物、またはプロトスペーサー)に相補的であり、そのため1つ以上のバクテリオファージまたはその関連バリアントの特徴的配列エレメントに結合することが可能であり、適切なCasポリペプチドの存在下でかかる特徴的配列エレメントの切断をもたらす配列であるか、あるいはそれを含む。いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、参照バクテリオファージの特徴的な配列エレメント(例えば、特徴的な核酸配列エレメントもしくはその転写産物、またはプロトスペーサー)に相補的な(例えば、100%相補的な)配列であるか、あるいはそれを含む。いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、参照バクテリオファージの特徴的な配列エレメント(例えば、特徴的な核酸配列エレメントもしくはその転写産物、またはプロトスペーサー)に対する少なくとも1つの塩基対ミスマッチ(例えば、少なくとも2つの塩基対ミスマッチ、少なくとも3つの塩基対ミスマッチ、少なくとも4つの塩基対ミスマッチ、またはそれ以上を含む)を有する配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、参照バクテリオファージの特徴的な配列エレメント(例えば、特徴的な核酸配列エレメントもしくはその転写産物、またはプロトスペーサー)に対して1~4つの塩基対ミスマッチ(複数可)を有する配列であるか、またはそれを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、ヒト腸内に見出される非病原性細菌及び共生細菌のCRISPR遺伝子座内にCRISPRスペーサーとして存在する配列であるか、またはその配列を含み、かかるCRISPRスペーサーは、典型的には、ヒト腸内に見出されるバクテリオファージの特徴的な配列エレメントとマッチする。例えば、いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、例えば、Soto-Perez et al.Cell Host&Microbes(2019)26:1-11(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載される、ヒト腸内ActinobacteriumであるEggerthella lentaのCRISPR遺伝子座内にCRISPRスペーサーとして存在する配列であるか、またはそれを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、CRISPRスペーサーは、計算的アプローチによって決定される配列であるか、またはそれを含む。例えば、実施例2に記載されるように、いくつかの実施形態によるCRISPRスペーサーは、バクテリオファージ配列の部分を、細菌宿主、例えば、腸内細菌から同定される既知のCRISPRスペーサー配列にマッチさせることによって決定され得る。
【0096】
Casポリペプチドまたはそれをコードする遺伝子:CRISPR構造またはアレイは、典型的には、CRISPR関連(Cas)遺伝子の近傍に見出される。当該技術分野において既知である様々なCas遺伝子またはポリペプチド(複数可)は、本明細書に記載される組成物及び/または方法で使用され得、Casポリペプチド(複数可)の選択は、本明細書に記載される組成物及び/または方法によって標的とされるバクテリオファージによって変化し得る。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、バクテリオファージ集団に対する耐性を付与する有効性に基づいて選択され得る。本明細書に記載される組成物及び/または方法で有用であり得るCasポリペプチド(複数可)の例としては、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、治療用細菌は、III型Casポリペプチド、例えば、Cas10ポリペプチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、治療用細菌は、Cas RNAヌクレアーゼを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、内因性Casポリペプチド(複数可)を用いてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、異種Casポリペプチドを含んでいてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、かかる治療用細菌に対して内因性である1つ以上のCas遺伝子またはポリペプチド、及びかかる1つ以上のCas遺伝子またはポリペプチドと動作可能に会合された1つ以上の異種CRISPRスペーサーを含んでいてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌は、かかる治療用細菌に対して異種である1つ以上のCas遺伝子またはポリペプチド、及びかかる治療用細菌に対して相同または異種であり得る1つ以上のCRISPRスペーサーを含んでいてもよい。いくつかのかかる実施形態では、1つ以上のCRISPRスペーサーは、かかる1つ以上のCas遺伝子またはポリペプチドと動作可能に会合され得る。
【0099】
細胞におけるCRISPR媒介性免疫を調節する方法は、例えば、米国特許第9,879,269号及びUS2016/0348120に記載されるように、当該技術分野で既知であり、各々の内容は、本明細書に記載される目的のために参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。当業者は、本開示を読むと、かかる方法及び当該技術分野で既知の他の方法が、本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従って治療用細菌を生成するために使用され得ることを認識するであろう。
【0100】
2.バクテリオファージ受容体の変異体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法で使用するための治療用細菌は、各々、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体(複数可)の少なくとも1つ以上の変異体を含む。いくつかの実施形態では、耐性を付与するバクテリオファージ受容体における1つ以上の変異は、細菌集団をファージに曝露し、改善された生存を示す細菌を選択することによって同定することができる。この戦略は、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体(複数可)の変異を有するいくつかのファージ耐性細菌を単離することを可能にする。次いで、これらの変異を所望の細菌株に操作して耐性を付与することができる。いくつかのかかる実施形態では、治療用細菌は、各々、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体(複数可)の少なくとも1つ以上の変異体を発現するように遺伝子操作されている。いくつかのかかる実施形態では、治療用細菌は、対象由来の生体試料から単離または精製される。いくつかの実施形態では、かかる治療用細菌は、炎症性腸疾患に対する感受性が低いと決定された個体(例えば、健康な個体)からの糞便試料から単離または精製され得る。
【0101】
D.操作された細菌集団
本開示は、とりわけ、1つ以上のバクテリオファージに耐性である治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)の操作された集団を提供する。かかる治療用細菌の集団は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患または障害の治療に有用であり得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、治療用細菌の操作された集団は、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)の濃縮または精製された集団であるか、またはそれを含む。例えば、いくつかの実施形態では、天然に存在するファージ耐性細菌細胞は、細菌の混合集団から濃縮または精製される。いくつかの実施形態では、かかる天然に存在するファージ耐性細菌細胞は、1つ以上のバクテリオファージを標的とするCRISPRスペーサーを含み得る。いくつかの実施形態では、かかる天然に存在するファージ耐性細胞は、ファージ感染を阻害する細胞壁特性に影響を及ぼす変異も有し得る。いくつかの実施形態では、かかる天然に存在するファージ耐性細菌細胞は、ヒト対象またはヒト対象の集団の生体試料から単離または精製されてもよい。いくつかの実施形態では、かかる単離または精製されたファージ耐性細菌細胞を、クローン選択及び/または細胞増殖のためにインビトロで培養されてもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、ファージ耐性細菌細胞は、感受性の細菌培養物を標的ファージに曝露することによって単離され得る。典型的には、細菌細胞の大部分(>90%)は、標的ファージの存在下で(例えば、48時間、72時間、またはそれ以上を含む、24時間以上後に)排除され得る。生存している細菌細胞は、ファージ耐性候補とみなすことができる。いくつかの実施形態では、かかる生存細菌細胞(標的ファージへの最初の曝露後)は、少なくとも第2のファージ曝露、例えば、同じ標的または異なるファージへの曝露に供されてもよく、かかる第2のファージ曝露以降に生存している細菌細胞は、ファージ耐性として特徴付けることができる。かかるファージ耐性細胞は、クローン選択及び/または細胞増殖のためにインビトロで培養され得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、単離されたファージ耐性細菌細胞を配列決定して、耐性を付与する変異(複数可)またはCRISPRスペーサーを同定することができる。かかる情報は、いくつかの実施形態では、遺伝子操作ファージ耐性細菌に有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、治療用細菌の操作された集団は、例えば、上述の「例示的なバクテリオファージ耐性細菌」と題されるセクションに記載されるように、1つ以上の標的バクテリオファージに耐性であるように遺伝子操作された非病原性及び共生細菌を含む治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるようなもの)であるか、またはそれを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は全て、単一の株に由来する。いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は全て、単一のクローンに由来する。いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、細菌株の集合体を含む。いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、ヒトマイクロバイオームに見出される少なくとも1つ以上の株を含む。いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、遺伝子操作されたバリアントを含む。いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、各々がヒトマイクロバイオームに存在する複数の細菌株を含み、いくつかのかかる実施形態では、かかる集団は、ヒト集団(平均、及び/または特定の亜集団、及び/または特定のヒトもしくはその集合体)に見出されるものとは(例えば、互いに及び/または参照株に対して)異なる相対量の個々の株を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、同じ細菌種であり、かかる治療用細菌の少なくとも2つ以上(例えば、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、またはそれ以上)のサブセットは、1つ以上のバクテリオファージに対する耐性を付与する1つ以上の異なる遺伝子修飾(例えば、別個のCRISPRスペーサー及び/または別個のバクテリオファージ受容体変異体)を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、集団における治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、異なる細菌属及び/または種であり、別個の細菌属及び/または種の各サブセットは、1つ以上のバクテリオファージに対する耐性を付与する1つ以上の異なる遺伝子修飾(例えば、別個のCRISPRスペーサー及び/または別個のバクテリオファージ受容体変異体)を含む。
【0108】
E.バクテリオファージ耐性の特徴付けのための例示的な方法
細菌細胞(例えば、生体試料から単離されているか、または遺伝子操作された)は、ファージ耐性細菌を同定及び選択するためのバクテリオファージ耐性について評価または特徴付けられ得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、単離及び/または操作の結果としてバクテリオファージに対する耐性を発達させたと推測または予測される細菌の集団(例えば、クローン集団)は、適切な液体媒体中で培養され、単一の特徴付けられた/特徴付けられていないバクテリオファージ、複数の特徴付けられた/特徴付けられていないバクテリオファージのカクテル、または実験的介入の前にクローン細菌集団に感染することが示されている、特徴付けられた/特徴付けられていないバクテリオファージを含む可能性が高い生物学的組成物でチャレンジされ得る。バクテリオファージでチャレンジされていない細菌培養物と統計的に類似した成長を有するバクテリオファージでチャレンジされた細菌培養物は、チャレンジされているバクテリオファージ集団に対して完全な耐性を発達させたとみなすことができる。バクテリオファージでチャレンジされたバクテリオファージ耐性培養物もまた、バクテリオファージ感受性培養物よりも統計的に高い成長速度を有し得、これらは部分的耐性として特徴付けられるであろう。この方法は、培養前に、または遅滞期中に、クローン性及び非クローン性細菌集団をバクテリオファージでチャレンジすることができる場合に適合させることができる。
【0110】
追加的にまたは代替的に、細菌のバクテリオファージ耐性表現型及び/または遺伝子型を、プラークアッセイを通じて固体培地を使用して同定することができる。例えば、実験的介入(例えば、単離及び/または操作)の結果としてバクテリオファージに対する耐性を発達させたと推測または予測される細菌を、固体培地上で成長させ、単一の特徴付けられた/特徴付けられていないバクテリオファージ、複数の特徴付けられた/特徴付けられていないバクテリオファージのカクテル、または実験的介入の前にクローン細菌集団に感染することが示されている特徴付けられた/特徴付けられていないバクテリオファージを含む適切な緩衝液の段階希釈でチャレンジする。バクテリオファージチャレンジ後に生存しているバクテリアコロニーは、実験的介入の前に細菌を含む対照が普遍的にプラークを発達させる場合、バクテリオファージ耐性とみなすことができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、バクテリオファージ集団に対する細菌耐性の基礎となる遺伝子機序を、比較ゲノム学を使用して決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、バクテリオファージ耐性を示す細菌単離株のゲノムを、同じ細菌株のバクテリオファージ感受性集団と比較する。
【0112】
II.例示的組成物
本開示は、とりわけ、バクテリオファージ、例えば、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患もしくは障害またはディスビオシスと関連付けられたバクテリオファージに細菌耐性を呈する組成物も提供する。いくつかの実施形態では、かかる組成物は、例えば、従来のプロバイオティクス及び/または有益な細菌の投与を含むある特定の既存の技術よりも、マイクロバイオームに関連する疾患または障害の治療においてより有用であり得、これは治療される対象のマイクロバイオームに存在するバクテリオファージによって依然として感染及び枯渇され得る。
【0113】
A.治療用細菌を含む薬学的組成物
本明細書に記載される一態様は、(i)投与される対象において非病原性及び共生的であり、かつ(ii)1つ以上の標的バクテリオファージに耐性である、治療用細菌の操作された集団を含む薬学的または治療用組成物に関する。いくつかの実施形態では、薬学的または治療用組成物は、上記の「操作された細菌集団」と題されるセクションに記載される操作された細菌集団を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的または治療用組成物に含まれる治療用細菌は、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Coprococcus、Clostridium、Collinsella、Desulfomonas、Dorea、Escherichia、Eubacterium、Fusobacterium、Gemmiger、Lactobacillus、Lactoccucs、Monilia、Peptostreptococcus、Propionibacterium、Ruminococcus、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つ以上の(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、もしくはそれ以上を含む)単離、精製、または培養された細菌を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用組成物に含まれる治療用細菌は、Bacteroides、Bifidobacterium、Clostridium、Escherichia、Lactobacillus、Lactoccucs、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、自己由来であり得る。いくつかの実施形態では、かかる細菌は、同種異系であり得る。
【0115】
B.ファージ耐性になるための宿主細菌のインビボ遺伝子操作のための核酸を含む薬学的組成物
外因性治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することができるが、いくつかの実施形態では、かかる対象の、1つ以上の標的バクテリオファージに対して感受性である微生物叢の内因性細菌を、例えば、かかる宿主細菌の耐性を調節するための核酸配列を含む薬学的組成物を投与することによって、かかる標的バクテリオファージに耐性になるように、インビボで遺伝子操作することができる。したがって、本明細書で提供される別の態様は、かかる宿主細菌が標的バクテリオファージに対して耐性となるように遺伝子操作されるように、それを必要とする対象において宿主非病原性及び共生細菌の遺伝子情報を変更するための核酸配列を含む薬学的組成物に関する。
【0116】
いくつかの実施形態では、宿主共生細菌の遺伝子情報を変更するための核酸配列は、1つ以上の標的バクテリオファージを標的とする1つ以上のCRISPRスペーサーを含む。いくつかの実施形態では、宿主共生細菌の遺伝子情報を変更するための核酸配列は、1つ以上のCasポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるもの)をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、宿主共生細菌の遺伝子情報を変更するための核酸配列は、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体の1つ以上の変異体をコードする1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0118】
核酸配列を含む組成物を送達するための方法は、当該技術分野で既知であり、当業者は、いくつかの実施形態では、かかる核酸配列が、(例えば、担体として)組換えバクテリオファージによって送達されてもよく、いくつかの実施形態では、かかる核酸配列が、ベクター、コスミド、ファージミド、またはトランスポゾンによって送達されてもよいことを理解するであろう。
【0119】
いくつかの実施形態では、本開示による核酸配列は、発現ベクターによって送達され得る。バクテリオファージに対する細菌細胞の耐性を調節するために核酸配列を送達するのに有用であり得る発現ベクターとしては、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、及び乳房腫瘍ウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)に基づいたウイルスベクター、ならびに他の組換えベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
いくつかの実施では、ベクターは、1つ以上の転写及び/または翻訳制御エレメントを含むことができる。利用される宿主/ベクターシステムに応じて、構成的及び誘導的プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどを含む、いくつかの好適な転写及び翻訳制御エレメントのうちのいずれかが、発現ベクター内で使用され得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、ベクターは、宿主細胞(エピソーム性ベクター)で自律的に複製され得るか、または宿主細胞のゲノムに組み込まれ、宿主ゲノム(非エピソーム性哺乳動物ベクター)とともに複製され得る。組み込みベクターは、典型的には、ベクター内の相同DNAと細菌染色体との間で組換えが起こることを可能にする細菌染色体に相同な少なくとも1つの配列を含有する。組み込みベクターはまた、バクテリオファージまたはトランスポゾン配列を含んでもよい。エピソーム性ベクター、またはプラスミドは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループである。いくつかの実施形態では、宿主内で安定した維持が可能なプラスミドは、組換えDNA技法を使用する際に発現ベクターとして使用される。
【0122】
制御配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、及びある特定の環境条件下でのみヌクレオチド配列の誘導可能な発現を指示するものが含まれる。細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼを結合させ、コード配列(例えば、構造遺伝子)のmRNAへの下流(3’)転写を開始することができる任意のDNA配列である。プロモーターは、通常、コード配列の5’末端の近位に配置される転写開始領域を有する。この転写開始領域は、典型的には、RNAポリメラーゼ結合部位及び転写開始部位を含む。細菌プロモーターはまた、RNA合成が始まる隣接したRNAポリメラーゼ結合部位と重複し得る、オペレーターと呼ばれる第2のドメインを有してもよい。遺伝子リプレッサータンパク質は、オペレーターに結合し、それによって特定の遺伝子の転写を阻害し得るため、オペレーターは、負の調節された(誘導可能な)転写を可能にする。構成的発現は、オペレーターなどの負の調節エレメントの非存在下で生じ得る。加えて、正の調節は、存在する場合、通常、RNAポリメラーゼ結合配列の近位(5’)である遺伝子活性化タンパク質結合配列によって達成されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示による核酸配列は、組換えファージによって送達され得る。いくつかのかかる実施形態では、組換えファージは、ファージミド粒子、例えば、標的バクテリオファージに対する細菌細胞の耐性を調節するための(例えば、本明細書に記載されるような)核酸配列を含むファージミドを含むが、バクテリオファージゲノムを含まないバクテリオファージ由来粒子であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ファージミドは、CRISPRスペーサー(例えば、本明細書に記載されるもの)をコードする核酸配列を含んでいてもよい。追加的または代替的に、ファージミドは、関連するCasポリペプチドをコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0124】
本明細書で提供される薬学的組成物は、頬及び舌下を含む経口、鼻腔内、局所、経皮、経皮パッチ、肺、膣、直腸、坐薬、粘膜、全身、または筋肉内、動脈内、髄腔内、皮内、腹腔内、皮下、及び静脈内投与を含む非経口に好適なもの、またはエアロゾル化、吸入もしくは吹送による投与に好適な形態のものを含み得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、担体及び賦形剤(緩衝剤、炭水化物、脂質、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、バクテリオスタット、キレート剤、懸濁剤、増粘剤及び/または保存剤を含むが、これらに限定されない)、金属(例えば、鉄、カルシウム)、塩、ビタミン、ミネラル、水、油(石油、動物、植物もしくは合成起源のものを含む)、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油など、生理食塩水、水性デキストロース及びグリセロール溶液、香味剤、着色剤、解離剤及び他の許容される添加剤、アジュバント、または結合剤、pH緩衝剤、等張化剤、乳化剤、湿潤剤などの生理学的条件に近似するために必要な他の薬学的に許容される補助物質を含むことができる。賦形剤の例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0126】
本開示による使用に好適な薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、造粒剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、甘味剤、流動剤、抗付着剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗酸化剤、ガム類、コーティング剤、着色剤、香味剤、分散促進剤、崩壊剤、コーティング剤、可塑剤、保存剤、懸濁剤、乳化剤、植物セルロース材料及び球状化剤、ならびにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、保存剤を実質的に含まなくてもよい。いくつかの用途において、組成物は、少なくとも1つの保存剤を含有し得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、好適なビヒクル、例えば、リポソーム、マイクロスフィア、または微粒子内に封入され得る。ポリマーまたはタンパク質から形成されたマイクロスフィアは、胃腸管を通過して直接血流に入るように調整され得る。代替的に、化合物は、マイクロスフィア、またはマイクロスフィアの複合体に組み込まれ、数日~数ヶ月の範囲の期間にわたってゆっくりと放出するために移植され得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、滅菌溶液または懸濁液として製剤化することができる。かかる薬学的組成物は、従来の技法によって滅菌され得るか、または無菌濾過されてもよい。得られた水溶液は、そのままで使用するためにパッケージングされ得るか、または凍結乾燥されてもよい。治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)の凍結乾燥調製物は、経口投与に好適な形態、例えば、カプセルまたは丸薬でパッケージングされ得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、局所投与することができ、溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、バーム、クリーム、及び軟膏などの様々な局所投与可能な組成物に製剤化することができる。かかる薬学的組成物は、可溶化剤、安定剤、張性増強剤、緩衝剤及び保存剤を含有し得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤、及びポリビニルピロリドン、PEGなどの合成ポリマーを含有する、浣腸、直腸ゲル、直腸発泡体、直腸エアロゾル、坐薬、ゼリー坐薬、または保持浣腸などの直腸組成物中に製剤化され得る。組成物の坐剤形態では、脂肪酸グリセリドの混合物などの低融点ワックスを、任意選択でカカオバターと組み合わせて使用することができる。
【0132】
本明細書で提供される治療または使用の方法を実施する際に、本明細書に記載される治療上有効量の微生物組成物(例えば、治療用細菌)及び/または薬学的組成物は、治療されるマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態を有する対象(例えば、ヒト対象)に投与される。治療上有効量は、疾患の重症度、対象の年齢及び相対的な健康状態、製剤の効力、及び他の要因に応じて大きく異なり得る。対象は、例えば、ヒト、高齢成人、成人、青少年、前期青少年、子供、幼児、乳児、または新生児であり得る。対象は、患者であり得る。対象は、臨床研究に登録された個体であり得る。対象は、実験動物、例えば、哺乳動物、またはげっ歯動物であり得る。
【0133】
薬学的組成物は、薬学的に使用することができる調製物への微生物の加工を容易にする、1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して製剤化することができる。製剤は、選択した投与経路に応じて改変することができる。本明細書に記載される薬学的組成物は、従来の方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、ガラス化、噴霧乾燥、凍結乾燥、ドラジェ作製、湿式粉砕、封入、捕捉、乳化または圧縮プロセスによって製造することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、乾燥形態で、例えば、噴霧乾燥または凍結乾燥によって製造される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)の液体形態を維持するための液体カプセルとして製剤化される。
【0135】
C.他の組成物及び製剤
本明細書に記載される組成物は、マイクロバイオームを伴う様々な用途のために製剤化することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、上述の薬学的組成物または治療用組成物として製剤化することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、化粧品組成物に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、食品または飲料製品に含まれ得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、栄養補助食品に含まれ得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物は、栄養サプリメントまたは栄養補助食品として製剤化され得る。例えば、いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、ビタミンサプリメントとともに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物は、プロバイオティクスグミなどの咀嚼可能な形態で製剤化され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物は、食品及び/または飲料の形態に組み込むことができる。治療用細菌を組み込むことができる食品及び飲料の非限定的な例としては、例えば、バー、シェイク、ジュース、調整粉乳、飲料、冷凍食品、発酵食品、及びヨーグルト、ヨーグルト飲料、チーズ、乳酸菌飲料、及びケフィアなどの発酵乳製品が挙げられる。
【0138】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物は、化粧品(例えば、スキンケア製品またはメイクアップ製品)での使用のために製剤化することができる。本明細書に記載される1つ以上の治療用細菌を使用して、マイクロバイオームを伴う皮膚障害に罹患しているか、またはそれに感受性である対象を治療するための有効量の治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む化粧用製剤を作成することができる。いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物は、ローション、クリーム、保湿剤、粉剤などに含まれ得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、口腔、口、食道、胃、十二指腸、十二指腸を含む小腸領域、空腸、回腸、ならびに盲腸、結腸、直腸、及び肛門管を含む大腸領域を含む、対象の胃腸管の任意の部分に送達するための好適な方法によって投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、胃腸管の回腸及び/または結腸領域への送達のために製剤化され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、例えば、胃腸管においてかかる組成物を放出するように設計されたカプセル、丸薬、粉剤、錠剤、ゲル、または液体を介して経口投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、例えば、酪酸、プロピオン酸、酢酸、及び/または短鎖脂肪酸を含む製剤のために、注射によって投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、例えば、クリーム、液体、またはパッチの形態で皮膚に適用されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、坐剤及び/または浣腸の形態で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、投与経路の組み合わせを利用してもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、糞便移植プロセスの一部として投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、かかる組成物は、チューブ、例えば、鼻胃管、鼻空腸管、鼻十二指腸管、経口胃管、経口空腸管、または経口十二指腸管によって対象に投与され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、結腸内視鏡検査、内視鏡検査、S状結腸鏡検査、及び/または浣腸によって対象に投与され得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載される細菌)を含む細菌組成物は、1つ以上の治療用細菌が標的生息地(例えば、腸)に送達されると複製することができるように製剤化される。1つの非限定的な例では、かかる細菌組成物は、丸薬が、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月の貯蔵寿命を有するように、丸薬に製剤化される。別の非限定的な例では、細菌組成物の貯蔵は、それらが腸内にあるときに、そこに含まれる治療用細菌が複製できるように製剤化される。いくつかの実施形態では、かかる細菌組成物の貯蔵寿命を補助するために、他の構成成分を添加してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の治療用細菌は、非天然環境で生存することができる方法で製剤化されてもよい。例えば、腸に天然の細菌は、酸素が豊富な環境では生存しない場合がある。この制限を克服するために、かかる細菌は、酸素への曝露を低減または排除することができる丸薬に製剤化され得る。治療用細菌の貯蔵寿命を高めるための他の戦略には、他の微生物が含まれ得る(例えば、細菌共同体が、1つ以上の株が1つ以上の株の生存に役立つ組成物を含む場合)。
【0143】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む細菌組成物は、凍結乾燥され(例えば、フリーズドライされ)、任意の好適な経路によって対象に投与され得る粉剤、錠剤、腸溶性コーティングカプセル(例えば、回腸/結腸への送達用)、または丸薬として製剤化される。かかる凍結乾燥製剤は、投与前に生理食塩水または他の溶液と混合することができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む細菌組成物は、経口投与のために、例えば、腸溶性コーティングされたカプセルまたは丸薬として、かかる製剤の内容物を対象の回腸及び/または結腸領域に送達するために製剤化される。
【0145】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む細菌組成物は、経口投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む細菌組成物は、経口投与のための腸溶性コーティングされた丸薬またはカプセルとして製剤化される。いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む細菌組成物は、対象の回腸領域へのかかる治療用細菌の送達のために製剤化される。いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む細菌組成物は、対象の結腸領域(例えば、上部結腸)へのかかる治療用細菌の送達のために製剤化される。いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む細菌組成物は、対象の回腸及び結腸領域へのかかる治療用細菌の送達のために製剤化される。
【0146】
いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングを使用して、経口製剤、例えば、丸薬またはカプセルの内容物を、胃の酸性度から保護し、回腸及び/または上部結腸領域への送達を提供することができる。腸溶性コーティングの非限定的な例としては、pH感応性ポリマー(例えば、eudragit FS30D)、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、酢酸コハク酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、酢酸コハク酸ヒプロメロース)、ポリ酢酸ビニルフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、シェラック、酢酸セルローストリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、他のポリマー、脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、及び植物繊維が挙げられる。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、pH感応性ポリマーによって形成される。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、eudragit FS30Dによって形成される。
【0147】
いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、任意の好適なpHで溶解するように設計され得る。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、約pH6.5~約pH7.0より大きいpHで溶解するように設計される。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、約pH6.5を超えるpHで溶解するように設計される。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、約pH7.0を超えるpHで溶解するように設計される。いくつかの実施形態では、腸溶性コーティングは、約5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、または7.5pH単位よりも高いpHで溶解するように設計され得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物(例えば、薬学的組成物)は、細菌集団(例えば、本明細書に記載されるもの)を結腸に送達するために製剤化される。かかる製剤の例としては、pH感応性組成物、より具体的には、腸溶性ポリマーが胃を通過した後にpHがアルカリ性になると内容物を放出する緩衝サシェ製剤または腸溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。pH感応性組成物が薬学的調製物の製剤化に使用される場合、pH感応性組成物は、好ましくは、組成物の分解のpH閾値が約6.8~約7.5であるポリマーである。かかる数値範囲は、胃の遠位部分でpHがアルカリ側にシフトする範囲であり、したがって、結腸への送達に使用するのに好適な範囲である。
【0149】
細菌組成物の結腸への送達に有用な調製物(例えば、薬学的調製物)の別の実施形態は、内容物(例えば、細菌組成物)の放出を、小腸通過時間に対応するおよそ3~5時間遅延させることによって、結腸への送達を確実にするものである。遅延放出のための薬学的調製物の一実施形態では、ヒドロゲルがシェルとして使用される。ヒドロゲルは、胃腸液と接触すると水和して膨潤し、その結果、内容物が効果的に放出される(主に結腸で放出される)。遅延放出投与単位は、投与される薬物または活性成分をコーティングまたは選択的にコーティングする材料を有する薬物含有組成物を含む。かかる選択的コーティング材料の例としては、インビボ分解性ポリマー、漸次加水分解性ポリマー、漸次水溶性ポリマー、及び/または酵素分解性ポリマーが挙げられる。放出を効率的に遅延させるための多種多様なコーティング材料が利用可能であり、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、メタクリル酸ポリマー及びコポリマーなどのアクリル酸ポリマー及びコポリマー、ならびにポリビニルピロリドンなどのビニルポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0150】
結腸への送達を可能にする組成物の例としては、結腸粘膜に特異的に付着する生体接着性組成物(例えば、米国特許第6,368,586号の明細書に記載されているポリマー)、及び特に胃腸管内の生物製剤調製物をプロテアーゼの活性に起因する分解から保護するために中にプロテアーゼ阻害剤が組み込まれている組成物がさらに挙げられる。
【0151】
結腸への送達を可能にするシステムの別の例は、胃の遠位部分での細菌発酵におけるガスの発生によって引き起こされる圧力変化を利用することによって内容物を放出させるような、圧力変化によって組成物を結腸へ送達するシステムである。かかるシステムは特に限定されるものではなく、そのより具体的な例は、内容物が坐剤ベースに分散しており、疎水性ポリマー(例えば、エチルセルロース)でコーティングされたカプセルである。
【0152】
結腸への送達を可能にするシステムの別の例は、組成物を結腸に送達するシステムであり、このシステムは、結腸に存在する酵素(例えば、炭水化物加水分解酵素または炭水化物還元酵素)によって特異的に分解される。かかるシステムは特に限定されるものではなく、そのより具体的な例としては、非デンプン性多糖類、アミロース、キサンタンガム、及びアゾポリマーなどの食品成分を使用するシステムが挙げられる。
【0153】
いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、胞子の集団として製剤化される。胞子含有製剤は、本明細書に記載される任意の好適な経路によって投与することができる。経口投与された胞子含有製剤は、胃の低いpH環境で生存することができる。用いられる胞子の量は、例えば、製剤全体の約1% w/w~約99% w/wであり得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、製剤は、遺伝子修飾された1つ以上の組換え細菌または細菌を含む。他の実施形態では、1つ以上の細菌は、修飾されていないか、または組換えでない。いくつかの実施形態では、製剤は、調節され得る細菌、例えば、細菌増殖を制御するためのオペロンまたはプロモーターを含む細菌を含む。細菌は、組換え方法を含む任意の好適な方法を使用して産生、増殖、または修飾することができる。
【0155】
製剤は、対象に対してカスタマイズすることができる。カスタム製剤は、例えば、プレバイオティクス、プロバイオティクス、抗生物質、または本明細書に記載される活性作用物質の組み合わせを含むことができる。例えば、年齢、性別、及び体重を含む対象に特異的なデータを分析結果と組み合わせて、対象にカスタマイズされた治療薬を提供することができる。例えば、年齢及び性別にマッチした健康な対象の部分集団と比較して、特定のバクテリオファージにおいて高いことが見出された対象のマイクロバイオームには、同定されたバクテリオファージを標的とするファージ耐性細菌の単離または濃縮された集団を含む治療用製剤及び/または化粧用製剤が提供され得る。
【0156】
本明細書で提供される組成物は、任意の適切な温度で保存され得る。製剤は、例えば、約-80℃、約-20℃、約-4℃、または約4℃の温度で冷蔵で保存され得る。いくつかの実施形態では、製剤は、約0℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、約8℃、約9℃、約10℃、約12℃、約14℃、約16℃、約20℃、約22℃、または約25℃の貯蔵温度のために調製され得る。いくつかの実施形態では、貯蔵温度は、約2℃~約8℃である。いくつかの実施形態では、微生物組成物(例えば、本明細書に記載される治療用細菌を含む)の低温、例えば約2℃~約8℃での貯蔵は、微生物を生存させ、例えば、液体またはゲル製剤中に存在する場合、組成物の効率を高めることができる。いくつかの実施形態では、0℃を下回る凍結温度で、凍結保護剤とともに貯蔵することで、安定性をさらに延長することができる。
【0157】
本明細書に記載される組成物のpHは、用途(例えば、腸への送達対皮膚への送達)に応じて、約3~約12の範囲であり得る。かかる組成物のpHは、例えば、約3~約4、約4~約5、約5~約6、約6~約7、約7~約8、約8~約9、約9~約10、約10~約11、または約11~約12pH単位であり得る。組成物のpHは、例えば、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12pH単位であり得る。組成物のpHは、例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、または少なくとも12pH単位であり得る。組成物のpHは、例えば、最大3、最大4、最大5、最大6、最大7、最大8、最大9、最大10、最大11、または最大12pH単位であり得る。PHが製剤者が所望する範囲外である場合、pHは、十分な薬学的に許容される酸及び塩基を使用することによって調整することができる。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、約4~約6である。
【0158】
D.任意選択の添加剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、プレバイオティクスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、プレバイオティクスは、イヌリンであってもよく、またはそれを含んでいてもよい。イヌリンは、細菌製剤のエネルギー源としての役目を果たすことができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、1種以上の活性作用物質または治療薬を含んでいてもよい。例示的な活性作用物質または治療薬は、抗生物質、プレバイオティクス、プロバイオティクス、グリカン(例えば、腸壁への特異的な細菌/ウイルス結合を制限することができるデコイとして)、バクテリオファージ、微生物などを含み得るが、これらに限定されない。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、細菌製剤の安定性及び/または生存を増強するための1種以上の作用物質を含むことができ得る。かかる安定化剤の非限定的な例としては、遺伝子要素、グリセリン、アスコルビン酸、脱脂乳、乳糖、ツイーン(tween(登録商標))、アルギン酸塩、キサンタンガム、カラギーナンガム、マンニトール、パーム油、ポリ-L-リジン(POPL)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0161】
E.例示的な剤形
投与される薬学的組成物の適切な量、治療の数、及び単位用量は、対象及び/または対象の疾患状態に従って変化し得る。
【0162】
本明細書に記載される薬学的組成物は、正確な投与量の単回投与に好適な単位剤形であり得る。単位剤形では、本明細書に記載される薬学的製剤は、適切な量の1つ以上の微生物組成物を含有する単位用量に分割され得る。単位投与量は、別個の量の製剤を含有するパッケージの形態であり得る。非限定的な例は、バイアルまたはアンプル中の液体である。水性懸濁組成物は、単回用量の再密閉不可能な容器中にパッケージングしてもよい。組成物は、複数回用量フォーマットであり得る。複数回用量の再密閉可能な容器は、例えば、保存剤と組み合わせて使用することができる。非経口注射のための製剤は、単位剤形、例えば、アンプル、または保存剤を含む複数回用量容器で提示され得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、投与量は、固体、半固体、または液体組成物の形態であり得る。本開示による使用に好適な剤形の非限定的な例としては、飼料、食品、ペレット、舐剤、液体、エリキシル、エアゾール、吸入剤、スプレー、粉剤、錠剤、丸薬、カプセル、ゲル、ゲルタブ、ナノ懸濁液、ナノ粒子、マイクロゲル、坐剤トローチ、水性または油性懸濁液、軟膏、パッチ、ローション、歯磨き粉、エマルジョン、クリーム、ドロップ、分散性粉剤または顆粒、硬質または軟質のゲルカプセル中のエマルジョン、シロップ、植物性医薬品、栄養補強食品、栄養補助食品、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0164】
治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)は、薬学的組成物中に好適な濃度で存在することができる。治療用細菌の濃度は、例えば、約101~約1018コロニー形成単位(CFU)であり得る。治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)の濃度は、例えば、少なくとも101、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010、少なくとも1011、少なくとも1012、少なくとも1013、少なくとも1014、少なくとも1015、少なくとも1016、少なくとも1017、または少なくとも1018CFUであり得る。治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)の濃度は、例えば、最大101、最大102、最大103、最大104、最大105、最大106、最大107、最大108、最大109、最大1010、最大1011、最大1012、最大1013、最大1014、最大1015、最大1016、最大1017、または最大1018CFUであり得る。いくつかの実施形態では、治療用細菌(例えば、本明細書に記載されるもの)の濃度は、約108CFU~約109CFUである。
【0165】
本明細書に記載される薬学的組成物は、好適な治療有効濃度のプレバイオティクスで製剤化することができる。例えば、プレバイオティクスの治療有効濃度は、少なくとも約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/ml、約90mg/ml、約95mg/ml、約100mg/ml、約110mg/ml、約125mg/ml、約130mg/ml、約140mg/ml、または約150mg/mlであり得る。例えば、プレバイオティクスの治療有効濃度は、最大約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/ml、約90mg/ml、約95mg/ml、約100mg/ml、約110mg/ml、約125mg/ml、約130mg/ml、約140mg/ml、または約150mg/mlであり得る。例えば、プレバイオティクスの治療有効濃度は、約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約40mg/ml、約45mg/ml、約50mg/ml、約55mg/ml、約60mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/ml、約90mg/ml、約95mg/ml、約100mg/ml、約110mg/ml、約125mg/ml、約130mg/ml、約140mg/ml、または約150mg/mlであり得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、例えば、1日に1回、2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される薬学的組成物は、例えば、状態の治療のために、毎日、隔日、週に3回、週に2回、週に1回、または他の適切な間隔で投与することができる。
【0167】
F.キット
本明細書に記載される組成物は、キットとしてパッケージングされ得る。いくつかの実施形態では、キットは、組成物の投与/使用に関する書面による説明書を含む。書面による資料は、例えば、ラベルであり得る。書面による資料は、投与の条件方法を示唆することができる。説明書は、対象及び監督医師に、治療法の投与から最適な臨床転帰を達成するための最良のガイダンスを提供する。書面による資料は、ラベルであり得る。いくつかの実施形態では、ラベルは、規制機関、例えば、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、または他の規制機関によって承認され得る。
【0168】
III.例示的な使用
本明細書に提供される治療用細菌、組成物、及び方法を含む技術は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態の治療及び/または予防に有用であり得る。したがって、本明細書で提供される技術は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に適している。いくつかの実施形態では、本発明で提供される技術は、腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に適している。
【0169】
いくつかの態様では、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象を、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)または本明細書に記載される組成物(例えば、薬学的組成物、化粧用組成物、食品もしくは飲料、または栄養補助食品を含む)に曝露するステップを含む方法が提供される。
【0170】
いくつかの実施形態では、治療用細菌は、それを必要とする対象(例えば、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象)に曝露され、各々、1つ以上のバクテリオファージを標的とするクラスター化された規則的な間隔の短い回文リピート(CRISPR)スペーサーを含む。いくつかの実施形態では、治療用細菌は、それを必要とする対象(例えば、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象)に曝露され、各々、細菌細胞表面上のバクテリオファージ受容体(複数可)の少なくとも1つ以上の変異体を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、かかる治療用細菌の集団は、腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に曝露される。例示的な腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態としては、炎症性腸疾患(IBD)または過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫療法関連大腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのかかる実施形態では、腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに感受性である対象に曝露される治療用細菌は、Caudoviralesであり得るか、またはそれを含み得る1つ以上のバクテリオファージに耐性である。
【0172】
いくつかの実施形態では、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)に、それを必要とする対象を曝露するステップは、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む組成物をかかる対象に投与することを含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)に、それを必要とする対象を曝露するステップは、宿主共生細菌が標的バクテリオファージに対して耐性となるように遺伝子操作されるように、対象において宿主共生細菌のゲノムを変更するための核酸配列を含む組成物をかかる対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、宿主共生細菌のゲノムを変更するための核酸配列は、1つ以上の標的バクテリオファージを標的とする1つ以上のCRISPRスペーサーを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、治療用細菌の集団(例えば、本明細書に記載されるもの)に、それを必要とする対象に曝露するステップは、本明細書に記載される組成物(例えば、薬学的組成物、化粧用組成物、食品もしくは飲料、または栄養補助食品を含む)のうちのいずれか1つを、かかる対象に投与することを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物(例えば、薬学的組成物、化粧用組成物、食品もしくは飲料、または栄養補助食品を含む)は、抗生物質などの抗菌剤による治療前、治療中、及び/または治療後に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、抗生物質による治療の少なくとも1時間、2時間、5時間、12時間、1日、3日、1週間、2週間、1ヶ月、6ヶ月、または1年前及び/または後に投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、抗生物質による治療の最大1時間、2時間、5時間、12時間、1日、3日、1週間、2週間、1ヶ月、6ヶ月、または1年前及び/または後に投与することができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物(例えば、薬学的組成物、化粧用組成物、食品もしくは飲料、または栄養補助食品を含む)は、抗生物質による治療後に投与される。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、抗生物質レジメンまたは経過全体が完了した後に投与され得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物(例えば、薬学的組成物、食品もしくは飲料、または栄養補助食品を含む)は、対象による食物摂取前、食物摂取中、及び/または食物摂取後に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、対象による食物摂取とともに投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、食物摂取とともに(例えば、同時に)投与される。
【0178】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物(例えば、薬学的組成物、食品もしくは飲料、または栄養補助食品を含む)は、対象による食物摂取の前に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、食物摂取前に投与されるとき、細菌状態(例えば、マイクロバイオーム機能障害と関連付けられる細菌状態)を治療することにおいてより効果的または強力であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、対象による食物摂取の少なくとも約1分、約2分、約3分、約5分、約10分、約15分、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、または約1日前に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、対象による食物摂取の最大約1分、約2分、約3分、約5分、約10分、約15分、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、または約1日前に投与され得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物(例えば、薬学的組成物、食品もしくは飲料、または栄養補助食品を含む)は、対象による食物摂取後に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、食物摂取後に投与されるとき、細菌状態(例えば、マイクロバイオーム機能障害と関連付けられる細菌状態)を治療することにおいてより効果的または強力である。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、対象による食物摂取の少なくとも約1分、2分、3分、5分、10分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、5時間、10時間、12時間、または1日後に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌の集団または組成物は、対象による食物摂取の最大約1分、2分、3分、5分、10分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、5時間、10時間、12時間、または1日後に投与され得る。
【0180】
複数の属または種の治療用細菌を、任意の順番でまたは同時に投与することができる。同時に投与する場合、複数の属または種の治療用細菌は、例えば、複数の別々の丸薬として、単一の統一された形態で、または複数の形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、複数の属または種の治療用細菌は、一緒に、または別々に、単一のパッケージで、または複数のパッケージでパッケージングすることができる。いくつかの実施形態では、治療用細菌の属または種のうちの1つまたは全ては、複数回用量で与えられ得る。同時でない場合、複数回用量間のタイミングは、最大で約1ヶ月まで変化し得る。
【0181】
本明細書に記載される組成物は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患または状態の発生前、発生中、または発生後に投与され得、本明細書に記載されるかかる組成物を投与するタイミングは変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、予防剤として使用することができ、かかる疾患または状態の発生の可能性を減少させるために、マイクロバイオーム機能障害に関連する状態または疾患に対する傾向を有する対象に継続的に投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、症状の発症中または症状の発症後できる限り早く対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物(例えば、治療用細菌を含む)の投与は、1つ以上の症状の発症の最初の48時間以内、1つ以上の症状の発症の最初の24時間以内、1つ以上の症状の発症の最初の6時間以内、または1つ以上の症状の発症の3時間以内に開始することができる。いくつかの実施形態では、初回投与は、本明細書に記載される組成物を使用して、本明細書に記載される任意の経路などの任意の経路を介して実行可能であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物(例えば、治療用細菌を含む)は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患または状態の発症が検出または疑われた後、及びかかる疾患または状態の治療に適切な期間、例えば、約1ヶ月~約3ヶ月など、実行可能な限り早く投与され得る。治療期間は、対象ごとに異なり得る。
【0182】
本明細書に記載される組成物及び/または方法は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態の治療及び/または予防に有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法は、一般に動物、特にヒト及び経済的に有意な家畜に適用可能である。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法を利用することができるマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態は、異常な腸内微生物叢の存在に関連する慢性障害である。かかる障害としては、限定されないが、以下のカテゴリーに属する状態が挙げられる。
-過敏性腸症候群または痙攣性結腸を含む胃腸障害、便秘優位性FBD、疼痛優位性FBD、上腹部FBDを含む機能性腸疾患(FBD)、非潰瘍性消化不良(NUD)、胃食道逆流、クローン病を含む炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、不定性大腸炎、膠原性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、慢性Clostridium difficile感染、偽膜性大腸炎、粘膜性大腸炎、抗生物質関連大腸炎、特発性または単純性便秘、憩室疾患、AIDS腸管障害、小腸細菌過剰、セリアック病、大腸ポリポーシス、大腸ポリープ、慢性特発性偽性閉塞症候群;
-細菌、ウイルス、真菌及び原虫を含む特定の病原体による慢性腸管感染症;
-ウイルス性胃腸炎、ノーウォークウイルス性胃腸炎、ロタウイルス性胃腸炎、AIDS関連胃腸炎を含む、ウイルス性胃腸障害;
-原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、脂肪肝または潜伏性肝硬変などの肝障害;
-リウマチ性関節炎、非リウマチ性関節炎、非リウマチ性因子陽性関節炎、強直性脊椎炎、ライム病、及びライター症候群などのリウマチ性疾患;
-糸球体腎炎、溶血性尿素症候群、若年性糖尿病、混合性凍結球体血症、多発動脈炎、家族性地中海熱、アミロイドーシス、強皮症、全身性エリテマトーデス、及びベーチェット症候群などの免疫媒介性障害;
-全身性ループス、特発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症候群、溶血性尿毒症症候群または強皮症を含む、自己免疫障害;
-慢性疲労症候群、片頭痛、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、パーキンソン病、アルツハイマー病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、及び他の変性障害などの神経症候群;
-慢性うつ病、統合失調症、精神病性障害、躁うつ病を含む、精神障害;
-アスベルガー症候群、レット症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)、及び注意欠陥障害(ADD)を含む、退行性障害;
-退行性障害、自閉症;
-乳幼児突然死症候群(SIDS)、神経性無食症;
-慢性蕁麻疹、ニキビ、ヘルペス状皮膚炎血管障害などの皮膚疾患。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/または方法を利用することができるマイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態は、微生物叢の異常または異常分布の哺乳動物宿主の消化管における存在に関連する慢性障害である。例示的な腸内マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患、障害、または状態としては、炎症性腸疾患(IBD)または過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、免疫関連大腸炎(例えば、大腸炎を発症した免疫療法患者)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される治療用細菌を投与される対象は、以前に投与されたプロバイオティクス療法(例えば、プロバイオティクス療法の失敗を受けているか、もしくはそれに罹患している患者を含む)、糞便微生物叢移植(FMT)(例えば、FMTの失敗を受けているか、もしくはそれに罹患している患者を含む)、及び/または免疫療法(例えば、大腸炎関連免疫療法)であってもよい。
【0185】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、例えば、抗生物質療法、免疫療法、化学療法、放射線療法、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗微生物剤、抗真菌剤、プロバイオティクス療法、糞便微生物叢移植、及びそれらの組み合わせを含む別の治療法と併せて投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、別の治療法(例えば、本明細書に記載されるもの)の前に投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、別の治療法(例えば、本明細書に記載されるもの)の後に投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗生物質の短期経過は、本明細書に記載される組成物による治療の前に、例えば、腸管内腔に起因する組織侵襲性病原体を除去するために投与され得る。例えば、クローン病の治療において、いくつかの実施形態では、抗結核療法は、本明細書に記載される組成物の投与の6~12週間前に必要とされてもよく、その結果、腸が一掃され、菌叢内容物が所定の菌叢と交換される。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与に先立って、例えば、結腸灌流/水療法、抗生物質療法、浣腸、緩下剤の投与、栄養補助食品、食物繊維、酵素、及びマグネシウムなどの結腸洗浄方法が行われ得る。
【実施例】
【0187】
実施例1.マイクロバイオームのファージ及び細菌のインビトロ共培養
本明細書に記載されるように、本開示は、有益な細菌集団を枯渇させるある特定のヒト器官または組織(例えば、腸)にバクテリオファージ(またはファージ)が存在し得るという洞察を包含する。この洞察に照らして、ファージ画分を健康な個体の糞便試料から単離し、同じ個体の腸内マイクロバイオームに由来する細菌培養物に添加した。次いで、ファージの添加後の細菌コミュニティの組成の変化を特徴付けるために、16s rRNA配列決定を実施した。例えば、
図1A~1Bを参照されたい。本発明者は、ファージの添加が、健康を維持するために重要であることが知られている非病原性共生細菌の枯渇をもたらしたことを見出した。特に、Bifidobacterium longum及びClostridium scindensは、ファージ添加後に枯渇したことがわかった(
図2B~2C)。かかる細菌を枯渇させることができるファージの同定は、驚くべきことに、ファージがディスビオシスを駆動し、プロバイオティクス療法に直接感染し、枯渇させる可能性があるという本開示によって提供される洞察を確認する。この方法は、例えば、個体の糞便試料からファージ画分を単離し、同じ個体または他の個体の腸内マイクロバイオームに由来する培養細菌でコロニー形成されたマウスに添加し、ファージの細菌コミュニティへの影響を特徴付けることによって、ファージのインビボでの有益な細菌集団への影響を決定するように適合され得る。
【0188】
また、Clostridiaに感染するファージは、健康な集団よりもIBD患者集団でより一般的であることも見出された(
図4)。
【0189】
以下は、IBDを有する患者の腸内に存在するこれらの種/株に感染するファージが同定された、Clostridia細菌の例示的なリストである。
【表1】
【0190】
例示的な方法:
糞便試料を、50mlの円錐中の12mlの滅菌20%グリセロール/1×PBS中で均質化し、段階希釈液を0.1%のムチンBHI寒天上にプレーティングした。プレートを擦過し、PBS中で希釈した。5ulの希釈した試料を、5mlの0.1% BHI培地に添加した。同じ試料から単離された2ulのウイルス様粒子(VLP)をプレート培養物に添加した。陽性対照として、E.coli及びT7ファージを培養物のサブセットに添加した。培養物を72時間嫌気的に増殖させた。次いで、試料をスピンダウンし、配列決定のために準備した。
【0191】
実施例2.炎症性腸疾患の患者に存在するファージ及びそれらの細菌宿主を同定するための計算的アプローチ
CRISPRベースのアプローチを使用して、個体にわたって存在するファージの細菌標的または宿主を予測することができる。広範囲の腸内細菌から抽出したCRISPRスペーサー配列の精選されたリストを分析した。Gregory et al.“The human gut virome database”bioRxiv 655910(May 2019)。細菌集団における所与のCRISPRスペーサー配列の存在は、その配列を含有するファージがその細菌に感染したことの証拠を提供する。さらに、ファージの推定非病原性共生細菌宿主及び/または非病原性共生細菌を攻撃する個体に存在するファージは、既知の細菌宿主からのCRISPRスペーサー配列にウイルス配列をマッチさせることによって同定することができる。例えば、
図3を参照されたい。かかる情報を使用して、ファージ耐性の非病原性共生細菌を開発することができる。
【0192】
実施例3.例示的なファージ耐性非病原性共生細菌を操作する
インビトロで感染症の腸内ファージをブロックするように操作されたファージ耐性非病原性共生細菌。
【0193】
実施例1及び2に記載されるように、本明細書に提示されるデータは、感染性ファージ(例えば、腸内に存在する)が、マイクロバイオームにおける細菌を枯渇させること、及び有益な細菌を標的とするファージが、IBDを有する患者において有意により一般的であることを示唆する。かかる所見に基づいて、共生細菌は、腸内細菌を標的とする感染性ファージに耐性であるように操作される。次いで、インビトロ及びインビボでのファージ増殖に抵抗することにおけるこれらの細菌の有効性を評価する。
【0194】
ファージ耐性細菌は、ファージのための細菌宿主の同定及び対応するファージ配列情報に基づいて操作される。いくつかの実施形態では、1つ以上の同定されたファージにマッチする1つ以上の配列は、非病原性共生細菌株のCRISPR(例えば、CRISPR-Cas)遺伝子座に導入される。標的核酸に対する細胞内の耐性を調節する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第10,066,233号を参照されたい。したがって、当業者は、本開示を読むと、かかる方法及び当該技術分野で既知の他の方法(例えば、CRISPR-Cas技術を含む)が、1つ以上のバクテリオファージ(例えば、本明細書に記載される)に耐性である非病原性及び共生細菌の治療用組成物を操作するために有用であり得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、バクテリオファージ耐性非病原性及び共生細菌は、目的の非病原性及び共生細菌株に存在するCRISPRアレイ(例えば、内因性CRISPRアレイまたは外因性/異種CRISPRアレイ)内にCRISPRスペーサー(複数可)として1つ以上の標的ファージ配列を挿入することによって操作することができる。例えば、いくつかの実施形態では、所与の目的の非病原性及び共生細菌株に感染するファージは、実施例1及び2に記載される技法を使用して同定することができる。いくつかの実施形態では、非病原性及び共生細菌株におけるCRISPR-Cas遺伝子座配列は、細菌株のゲノム(例えば、いくつかの実施形態では、ゲノム全体を含む)の関連する部分を配列決定することによって同定することができる。いくつかのかかる実施形態では、同定されたCRISPR-Cas系によって認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列が特徴付けられる。例えば、Mendoza and Trinh,Biotechnol J.(2018)13:e1700595、及びGleditzsch et al.,RNA Biol.(2019)16:504-517を参照されたい。好適なスペーサー配列は、典型的には、所与の目的の非病原性及び共生細菌株に感染するように同定されるファージのゲノムから選択される。いくつかの実施形態では、好適なスペーサー配列は、保存された配列であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、かかる保存された配列は、ファージ遺伝子(例えば、異なる属、種、及び/または株のファージに存在するファージ遺伝子)中に存在し得る。いくつかの実施形態では、好適なスペーサー配列は、PAM配列の上流の最大8個のヌクレオチドである配列であり得るか、またはそれを含み得る。次いで、2つのリピート要素(例えば、CRISPRリピート)に隣接する好適なスペーサー配列を含むか、またはそれからなるCRISPR単位を、目的の非病原性及び共生細菌株に導入する。いくつかの実施形態では、スペーサー配列を、非病原性及び共生細菌の内因性CRISPR-Casアレイに導入することができる。いくつかの実施形態では、スペーサー配列(複数可)は、内因性Cas機構と適合性である合成アレイ上(例えば、ゲノム上またはプラスミド上の他の場所)にトランスで導入することができる。いくつかの実施形態では、スペーサー配列(複数可)は、外因性cas遺伝子と共送達される合成アレイ中にトランスで導入することができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、複数のスペーサー配列を使用して、各々別個のファージ集団を標的とすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、単一のバクテリオファージ集団を標的とする少なくとも1つ以上の(例えば、少なくとも2つ以上を含む)スペーサー配列が、非病原性共生細菌のCRISPR遺伝子座に導入される。スペーサーの多様性は、ファージ感染に対する保護を強化することができる。したがって、いくつかのかかる実施形態では、少なくとも2つ以上のスペーサー配列は同一であるが、いくつかのかかる実施形態では、少なくとも2つ以上のスペーサー配列は異なる。
【0196】
いくつかの実施形態では、異なるファージ集団またはファミリーを標的とする複数の(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、またはそれ以上の)スペーサー配列を、単一の非病原性及び共生細菌に導入することができる。かかる操作された非病原性及び共生細菌は、複数の異なるファージ集団またはファミリーに対する耐性を提供するために有用であり得る。
【0197】
いくつかの実施形態では、非病原性共生細菌のCRISPR遺伝子座に導入されるスペーサー配列は、20~50bp長である。いくつかの実施形態では、非病原性共生細菌のCRISPR遺伝子座(例えば、CRISPR-Cas遺伝子座)に導入されるスペーサー配列は、所与の細菌宿主で同定されるCRISPRスペーサー配列とマッチするように同定されるものから選択され、及び/またはファージ配列からも選択され得る。いくつかの実施形態では、様々なファージ集団間(または集団全体)で保存される配列が選択される。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される非病原性共生細菌は、健康の維持において重要な役割を果たし得る、及び/またはいくつかの慢性状態を処置する治療法として有用であり得る。
【0199】
遺伝子操作のためのツールは、当該技術分野において周知であり、したがって、かかるツールは、本明細書に記載されるようにファージ耐性になるように非病原性共生細菌を操作するために有用であり得ることを理解するであろう。当業者に理解されるであろう通り、いくつかの実施形態では、効率的なマーカーなし遺伝子編集の利点を有するCRISPR/Cas9ベースのゲノム編集ツールを使用して、ファージ耐性非病原性共生細菌を操作してもよい。例えば、CRISPR-Casシステムを使用した、CRISPR-Casの同定及び/または特徴付け、スペーサーの選択及び/または操作、及び/またはゲノム編集の方法に関する情報については、Barrangou et al.Science(2007)315:1709-1712、Deveau et al.Journal of Bacteriology(2008)190:1390-1400、Barrangou and Marraffini,Mol Cell(2014)54:234-244、Crawley et al.CRISPR J.(2018)1:171-181、Crawley et al.Scientific Reports(2018)8:11544、及びHidalgo-Cantabrana et al.PNAS(2019)116:15774-15783を参照されたい。本明細書で引用される参照文献の各々の内容は、本明細書に記載される目的のために参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0200】
操作されたファージ耐性非病原性共生細菌は、当該技術分野で既知の方法を使用してインビトロで評価することができる。例えば、いくつかの実施形態では、操作されたファージ耐性非病原性共生細菌は、感染性ファージの存在下でかかる操作された細菌の生存を測定することによって、インビトロで評価することができる。感染性ファージは、感染性ファージが存在することが特定されている患者の糞便試料のウイルス画分から収集することができる。次いで、収集したウイルス画分を濾過滅菌する。濾過されたウイルス画分由来のファージを、(i)1つ以上の操作されたファージ耐性非病原性共生細菌株、または(ii)対照としての野生型(WT)株の培養物(例えば、モノカルチャー)に添加する。ファージの存在下での細菌株の成長は、例えば、プラークアッセイを使用して評価される。
【0201】
モノカルチャーにおける成長は、細菌、例えば、腸由来のマイクロバイオームの混合細菌培養における成長とは異なる場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、操作されたファージ耐性非病原性共生細菌の生存は、感染性ファージの存在下で混合細菌培養で評価することができる。
【0202】
実施例4.インビボでの例示的なファージ耐性共生細菌を操作する
操作されたファージ耐性細菌がファージ捕食に対抗し、インビボでのコロニー形成を促進する能力を評価するために、ヒト微生物叢関連(HMA)マウスモデルを使用する。抗生物質で前処理されたマウスを、感染性ファージが標的非病原性共生細菌宿主に対して同定される糞便試料でコロニー形成し、ヒト微生物叢を有するマウスの堅牢なコロニー形成をもたらす。次いで、操作されたファージ耐性非病原性共生細菌(例えば、上記実施例3に記載されるように、インビトロアッセイにおいて堅牢な有効性を実証するもの)またはWT株を、HMAマウスに添加する。全体的な微生物叢及び操作されたファージ耐性非病原性共生細菌株の組成は、それぞれ、一定の期間(例えば、28日の期間)にわたって、16s rRNA配列決定及びqPCRを介して週間隔で監視され得る。
【0203】
いくつかの実施形態では、操作されたファージ耐性細菌は、特定の病原体を持たない(SPF)マウスモデルにおいて評価される。例えば、(i)目的の非病原性及び共生細菌を標的とするファージ、ならびに(ii)ファージ耐性非病原性及び共生細菌(例えば、本明細書に記載される)を含むか、またはそれからなる治療用組成物を、SPFマウスの腸に導入する。ファージ及びファージ耐性細菌株のレベルは、例えば、操作された細菌株に相補的なプライマーを使用してqPCRで評価される。
【0204】
マウス糞便試料からのファージも単離し、かかる試料上で配列決定して、ファージ耐性非病原性共生細菌株の存在下で、標的ファージの複製が低減されるかどうかを評価する。
【0205】
実施例5.炎症性腸疾患(IBD)を治療するために例示的なファージ耐性Clostridiumを使用する。
上で考察したように、本発明者は、Clostridiaクラスの細菌を攻撃するファージが、IBDを有する患者において有意に一般的であることを見出した。かかるClostridia菌は、抗炎症効果を有することが示されているいくつかの種を主に含む。例えば、かかるClostridium種の多くは、マウスにおける結腸調節T(Treg)細胞の誘導、及び大腸炎のマウスモデルにおいて疾患を減衰させた17個のClostridia株の混合物の経口接種を促進することが以前に報告されていた。本所見は、抗炎症性Clostridium種のファージ駆動による低減が、感受性個体における炎症及びIBD疾患の発生を促進し得るか、またはそれに寄与し得ることを示す。
【0206】
IBDのマウスモデルにおいて、ファージ耐性細菌がディスビオシス及び疾患を治療する能力を評価するために、健康な個体またはIBD患者からの糞便試料の細菌及びウイルス画分を分離する。次いで、抗生物質で予め処置したマウスを、例えば、強制経口投与を介して、健康な個体由来の細菌画分でコロニー形成する。次いで、マウスに、健康な個体またはIBDを有する個体から単離されたファージ、及び1つ以上のファージ耐性またはWT非病原性共生細菌株を経口接種する。ファージ耐性細菌及びWT細菌のレベルは、例えば、qPCRを使用して経時的に追跡され、疾患状態は、体重、潜伏血液の測定、及び/または炎症性マーカーを介して監視され得る。
【0207】
ファージ耐性非病原性共生細菌の有効性は、IBDを有する1つ以上の個体の糞便試料で直接コロニー形成されたマウスを使用して評価することもできる。WT及びファージ耐性非病原性共生細菌を投与し、かかる細菌のレベルを経時的に追跡し、次いで、疾患状態を体重、潜伏血液の測定、及び/または炎症性マーカーを介して監視してもよい。
【0208】
実施例6.ファージ耐性Bifidobacterium longumを操作する
いくつかの実施形態では、ヒト腸内に存在するBifidobacterium longumは、I-C型CRISPRシステムを保有することができる。いくつかの実施形態では、これらの細菌を枯渇させる腸内に存在する標的ファージとマッチするスペーサー配列を、これらのCRISPRアレイに導入して耐性を付与することができる。ファージ耐性細菌は、インビトロ及びインビボでの標的ファージの存在下での成長の改善について評価することができる。
【0209】
実施例7.ファージ耐性Lactobacillusを操作する
Lactobacillusのいくつかの共生種は、ヒトの健康のために重要であることが示されており、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus acidophilusを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Lactobacillusのファージ耐性株は、実施例3に記載される方法を使用して、ヒト腸内マイクロバイオームに存在するファージに抵抗するように操作することができる。かかる操作されたファージ耐性株を含む治療用組成物は、マイクロバイオーム機能障害に関連する疾患を治療するために、罹患した個体への投与に有用であり得る。
【0210】
等価物及び範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」などの冠詞は、特に逆が示されない限り、またはさもなければ文脈から明らかである場合を除き、1つ以上を意味し得る。ある群の1つ以上の成員間に「または」を含む特許請求の範囲または記載は、反対の規定がない限り、または他のことが文脈から明らかでない限り、当該群の成員のうちの1つ、2つ以上、または全てが所与の製品またはプロセスに存在するか、用いられるか、またはそうでなければそれらに関連する場合に該当するとみなされる。本発明は、群のうちの厳密に1つの成員が所与の製品またはプロセスに存在するか、用いられるか、またはそうでなければそれらに関連する実施形態を含む。本発明は、群の成員のうちの2つ以上または全てが所与の製品またはプロセスに存在するか、用いられるか、またはそうでなければそれらに関連する実施形態を含む。
【0211】
さらに本発明は、列挙された請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の限定、要素、節、記述用語が別の請求項に導入されている全ての変形形態、組み合わせ、及び順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項が、同じ基本請求項に従属する任意の他の請求項に見出される1つ以上の限定を含むように改変され得る。要素が、例えば、マーカッシュ群形式で列挙して提示される場合、要素の各下位群もまた開示されており、いずれの要素(複数可)も群から除去され得る。一般的に、本発明または本発明の態様が特定の要素及び/または特徴を含むとみなされる場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、かかる要素及び/または特徴からなるか、または本質的にそれらからなることを理解すべきである。簡潔さのために、それらの実施形態は、本明細書においてこの通りの言葉で具体的に記載されていない。「含む(comprising)」及び「含有する(containing)」という用語は、オープンであることを意図し、追加の要素またはステップの包含を容認することにも留意されたい。範囲が与えられている場合、端点が含まれる。さらに、別様に明記しない限り、または文脈及び当業者の理解から他のことが明らかでない限り、範囲として表現される値は、文脈が明らかに別様に指示しない限り、範囲の下限の単位の10分の1までの、本発明の異なる実施形態において明示される範囲内の任意の特定の値または部分範囲を想定し得る。
【0212】
当業者は、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を理解するか、または定型的に過ぎない実験を使用して確認することができるであろう。別様に明記しない限り、または矛盾もしくは不整合が起こることが当業者に明白でない限り、本発明は、列挙された特許請求の範囲のうちの1つ以上からの1つ以上の限定、要素、節、記述用語などが同じ基本の特許請求の範囲に従属する別の特許請求の範囲(または関連する任意の他の特許請求の範囲)に導入されている全ての変形形態、組み合わせ、及び順列を包含することを理解されたい。さらに、特定の除外が本明細書において記載されているかどうかにかかわらず、本発明の任意の実施形態または態様が特許請求の範囲から明示的に除外され得ることも理解すべきである。本発明の範囲は、上記の発明の詳細な説明に限定されることを意図せず、むしろ以下の特許請求の範囲に記載される通りである。
【国際調査報告】