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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】画像化及び治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 239/14 20060101AFI20221114BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20221114BHJP
   A61K 33/244 20190101ALI20221114BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 51/02 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221114BHJP
   G01T 1/161 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
C07C239/14 CSP
A61P35/00
A61K33/24
A61K33/244
A61K51/04 200
A61K51/02 100
A61K47/18
G01T1/161 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517907
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 AU2020050992
(87)【国際公開番号】W WO2021051168
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】2019903504
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304054507
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ メルボルン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ポール・スティーブン・ドネリー
(72)【発明者】
【氏名】アシフ・ノール
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー・エリン・ラッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C188
4H006
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB24
4C076CC27
4C076DD52
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA12
4C084MA05
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085HH03
4C085JJ01
4C085KA29
4C085KB02
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB15
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086HA05
4C086HA06
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA10
4C086NA13
4C086ZB26
4C188EE02
4C188FF07
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
(57)【要約】
本願に議論される本発明は、適切な金属中心に結合した場合に画像化剤及び治療剤として有用である、特に腫瘍の画像化のためのヒドロキサム酸系化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容できる誘導体:
【化1】
又はその薬学的に許容できる塩(式中、Xは、
~C10アルキル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はその誘導体により任意選択で置換されているアリール;及び
(C~C10アルキル)NR(Y)R(式中、R及びRは、C~C10アルキル又はC~C10アルキルフェニルから独立に選択され得て、C~C10アルキルはn個のアミド基により介在され得て、nは0~3である)からなる群から選択され;且つ
及びYは、カルボン酸、エステル、無水物、及びアミンからなる群から独立に選択される)。
【請求項2】
Xが、フェニル、ベンジル、及びEDTA官能化フェニルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが(C~C10アルキル)NR(Y)Rである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
及びYが、独立に、アミン又はカルボン酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
下記からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物:
【化2】
【化3】
【請求項6】
前記薬学的に許容できる誘導体が
【化4】
である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記薬学的に許容できる誘導体が、
【化5】
【化6】
からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
-請求項1~7のいずれか一項に記載の式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体及び
-PSMA標的剤
を含むコンジュゲート。
【請求項9】
下記からなる群から選択される、請求項8に記載のコンジュゲート:
【化7】
【請求項10】
式(II)のコンジュゲート若しくはその薬学的に許容できる誘導体:
【化8】
又はその薬学的に許容できる塩(式中、RはCHO又はCOOである)。
【請求項11】
前記薬学的に許容できる誘導体が
【化9】
である、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
-請求項8~11のいずれか一項に記載のコンジュゲート又はその薬学的に許容できる誘導体及び
-それに錯化された放射性核種
を含む放射性核種コンジュゲートであって、
前記放射性核種が、ジルコニウム、ガリウム、ルテチウム、ホルミウム、スカンジウム、チタン、インジウム、及びニオブの放射性同位元素から選択される、放射性核種コンジュゲート。
【請求項13】
前記放射性核種が、ジルコニウム(好ましくは89Zr)、ガリウム(好ましくは68Ga)、又はインジウム(好ましくは111In)の放射性同位元素である、請求項12に記載の放射性核種コンジュゲート。
【請求項14】
前記放射性核種が、ジルコニウム(好ましくは89Zr)の放射性同位元素である、請求項13に記載の放射性核種コンジュゲート。
【請求項15】
患者を画像化する方法であって、
-患者に、請求項12~14のいずれか一項に記載の放射性核種標識コンジュゲートを投与すること;及び
-前記患者を画像化すること
を含む方法。
【請求項16】
前記標的剤が、前記コンジュゲートをインビボで所望の部位に標的化するように作用する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記所望の部位が腫瘍である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
細胞又はインビトロ生検試料を画像化する方法であって、
-細胞又はインビトロ生検試料に、請求項12~14のいずれか一項に記載の放射性核種標識コンジュゲートを投与すること;及び
-前記細胞又はインビトロ生検試料を画像化すること
を含む方法。
【請求項19】
患者の癌を治療する方法であって、
-前記患者に、請求項12~14のいずれか一項に記載の放射性核種標識コンジュゲートを投与すること;
それにより、前記患者を治療すること
を含む方法。
【請求項20】
患者の癌の治療のための医薬品の製造における、請求項12~14のいずれか一項に記載の放射性核種標識コンジュゲートの使用。
【請求項21】
患者の癌の治療に使用するための、請求項12~14のいずれか一項に記載の放射性核種標識コンジュゲート。
【請求項22】
請求項15~19のいずれか一項に記載の方法又は用途に使用するためのキットであって、
-請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、請求項8~11のいずれか一項に記載のコンジュゲート、又は請求項12~14のいずれか一項に記載の放射性核種コンジュゲート;及び
-任意選択で、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法又は用途に使用するための説明書と共に、ラベル又は添付文書
を含むキット。
【請求項23】
請求項15~19のいずれか一項に記載の方法又は用途に使用される場合のキットであって、
-請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、請求項8~11のいずれか一項に記載のコンジュゲート、又は請求項8~11のいずれか一項に記載の放射性核種コンジュゲート;及び
-任意選択で、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法又は用途に使用するための説明書と共に、ラベル又は添付文書
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先願への相互参照
本願は、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる、2019年9月20日に出願された「画像化及び治療用組成物」という名称のオーストラリア仮特許出願第2019903504号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、適切な金属中心に結合する場合に画像化剤及び治療剤として有用である、特に腫瘍の画像化及び治療のためのヒドロキサム酸系化合物に関する。本発明は、化合物を含む組成物、並びに化合物を使用して患者を画像化及び治療する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
ジルコニウム-89(89Zr)は、医用画像化用途に使用される陽電子放出放射性核種である。具体的には、それは、癌の検出及び画像化のための陽電子放出断層撮影(PET)に使用される。それは、医用画像化に使用される18Fなどの他の放射性核種よりも長い半減期(t1/2=79.3時間)を有する。例えば、18Fは、110分のt1/2を有し、それは、それを使用するには、サイクロトロン施設に近接していること、並びにそれが組み込まれる薬剤の調製の迅速且つ高収率の合成技法を要することを意味する。89Zrにはこれらの同じ問題がないので、89Zrは医用画像化用途での使用に特に魅力的である。
【0004】
デスフェリオキサミン(DFO)は、1960年代後半から鉄過剰症を治療するために使用されてきた細菌シデロフォアである。DFO中の3つのヒドロキサム酸基はFe3+イオンと配位結合を形成し、基本的に、DFOをFe3+イオンをキレートする六座配位子とする。89Zrの配位構造のため、DFOは、PET画像化用途において89Zrのキレート剤としても使用されてきた(非特許文献1)。
【0005】
他のDFO系放射性同位元素キレート剤もPET画像化用途に使用するために調製されてきた。それらには、N-スクシニル-デスフェリオキサミン-テトラフルオロフェノールエステル(N-suc-DFO-TFPエステル)p-イソチオシアナトベンジル-デスフェリオキサミン(DFO-Bz-NCS、別名DFO-Ph-NCS)、デスフェリオキサミン-マレイミド(DFO-マレイミド)、及びデスフェリオキサミン-スクアラミド(DFO-sq)がある。これらのキレート剤は全て、抗体又は抗体断片とコンジュゲートされて、画像化剤を、画像化すべき腫瘍に標的化する手段を与えることができる。
【0006】
しかし、腫瘍親和性増大及び標的外組織への低い取込みを含む改善された生体適合性を有する、放射性同位元素と共に使用するための新たな薬剤を開発する必要性が依然として存在する。
【0007】
本明細書における従来技術への言及は、この従来技術がいずれかの管轄における共通一般知識の一部を形成すること、又はこの従来技術が、当業者により理解され、重要であるとみなされ、且つ/若しくは従来技術の他の部分と組み合わされることが当然期待され得ることの承認でも示唆でもない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Holland,J.P.et al(2012)Nature 10:1586
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、以下に述べられる式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体及び前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的剤とのそのコンジュゲート(89Zr又は68Gaなどの放射性核種と錯化される場合)が有効なPET画像化剤又は治療剤であることを見出した:
【化1】
(式中、Xは、
~C10アルキル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はその誘導体により任意選択で置換されているアリール;及び
(C~C10アルキル)NR(Y)R(式中、R及びRは、C~C10アルキル又はC~C10アルキルフェニルから独立に選択され得て、C~C10アルキルはn個のアミド基により介在され得て、nは0~3である)
からなる群から選択され;且つ
及びYは、カルボン酸、エステル、無水物、及びアミンからなる群から独立に選択される)。
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、本明細書に定義される式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容できる誘導体又はその薬学的に許容できる塩に関する。
【0011】
好ましい実施形態において、Xは、フェニル、ベンジル、及びEDTA官能化フェニルからなる群から選択される。より好ましくは、Xは、
【化2】
からなる群から選択される。
【0012】
この実施形態の好ましい態様において、Yはカルボン酸である。
【0013】
別の好ましい実施形態において、Xは(C~C10アルキル)NR(Y)Rである。より好ましくは、Xは、
【化3】
からなる群から選択される。
【0014】
この実施形態の好ましい態様において、Y及びYは、独立に、アミン又はカルボン酸である。好ましくは、YとYは同じである。
【0015】
好ましくは、式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容できる誘導体又はその薬学的に許容できる塩は、
【化4】
【化5】
からなる群から選択され得る。
【0016】
別の態様において、本発明は、
-式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容できる誘導体:
【化6】
又はその薬学的に許容できる塩(式中、X及びYは本明細書に定義される通りである)及び
-PSMA標的剤
のコンジュゲートにも関する。
【0017】
PSMA標的剤は、前立腺特異的膜抗原への選択性を有する部分である。好ましくは、PSMA標的剤は、ペプチド又は尿素連結ジペプチド、より好ましくはLys-尿素-Gluである。
【0018】
好ましくは、式(I)の化合物及びPSMA標的剤又はその薬学的に許容できる塩のコンジュゲートは、
【化7】
からなる群から選択され得る。
【0019】
別の態様において、本発明は、
-式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容できる誘導体:
【化8】
又はその薬学的に許容できる塩(式中、X及びYは本明細書に定義される通りである)
-PSMA標的剤、及び
-それに錯化された放射性核種
の放射性核種標識コンジュゲートに関する。
【0020】
PSMA標的剤は、前立腺特異的膜抗原への選択性を有する部分である。PSMA標的剤はペプチドであり得る。好ましくは、PSMA標的剤は、尿素連結ジペプチド、より好ましくはLys-尿素-Gluである。
【0021】
別の態様において、本発明は、式(II)のコンジュゲート若しくはその薬学的に許容できる誘導体:
【化9】
又はその薬学的に許容できる塩を提供する(式中、RはCHO又はCOOである)。一実施形態において、RはCHOである。別の実施形態において、RはCOOである。
【0022】
別の態様において、本発明は、
-式(II)のコンジュゲート若しくはその薬学的に許容できる誘導体:
【化10】
又はその薬学的に許容できる塩(式中、Rは本明細書に定義される通りである)及び
-それに錯化された放射性核種
の放射性核種標識コンジュゲートに関する。
【0023】
本発明のいずれの態様又は実施形態においても、本発明の式(I)若しくは(II)の化合物、コンジュゲート、若しくは放射性核種コンジュゲート中、又は本明細書に示されるあらゆる構造中のDFOは、その薬学的に許容できる誘導体、例えばDFOなどのDFO-アナログに置換され得る。式(I)及び式(II)の薬学的に許容できる誘導体は、例えば
【化11】
である。
【0024】
上記態様のいずれの実施形態においても、放射性同位元素は、PET画像化に好適な診断用の放射性同位元素であり得る。放射性核種は、ジルコニウム、ガリウム、又はインジウムの放射性同位元素であり得る。ジルコニウムの放射性同位元素は89Zrであり得る。ガリウムの放射性同位元素は68Gaであり得る。インジウムの放射性同位元素は111Inであり得る。
【0025】
上記態様のいずれの実施形態においても、放射性同位元素は治療用放射性同位元素であり得る。放射性核種は、ガリウム、ルテチウム、スカンジウム、チタン、マンガン、又はインジウムの放射性同位元素であり得る。ガリウムの放射性同位元素は67Gaであり得る。ルテチウムの放射性同位元素は177Luであり得る。スカンジウムの放射性同位元素は43/44Scであり得る。チタンの放射性同位元素は45Tiであり得る。マンガンの放射性同位元素は52Mnであり得る。インジウムの放射性同位元素は111Inであり得る。
【0026】
別の態様において、本発明は、患者を画像化する方法であって、
-患者に、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートを投与すること、及び
-患者を画像化すること
を含む方法に関する。
【0027】
別の態様において、本発明は、細胞又はインビトロ生検試料を画像化する方法であって、
-細胞又はインビトロ生検試料に、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートを投与すること、及び
-細胞又はインビトロ生検試料を画像化すること
を含む方法に関する。
【0028】
別の態様において、本発明は、患者の癌を治療する方法であって、
-患者に、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートを提供すること、それにより
-患者を治療すること
を含む方法に関する。
【0029】
別の態様において、本発明は、患者の癌の治療に使用するための、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートの製造に関する。
【0030】
別の態様において、本発明は、患者の癌の治療に使用するための、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートに関する。
【0031】
別の態様において、本発明は、患者の癌を治療する方法であって、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートを患者に投与すること、それにより患者の癌を治療することを含む方法に関する。
【0032】
本明細書で使用される通り、文脈により別のことが要求されない限り、用語「含む(comprise)」並びに「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「含んでいた(comprised)」などの用語の変形体は、さらなる添加剤、成分、整数、又は工程を除外しないものとする。本明細書で使用される通り、「含んでいる(including)」と「含んでいる(comprising)」は互換的に使用される。
【0033】
本発明のさらなる態様及び前述の段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として挙げられ且つ添付図面を参照して与えられる、以下の説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実例となるモノマー性及びダイマー性PSMAリガンドの構造。
図2】LNCaP異種移植片腫瘍を有するマウスの、89Zr-DFOSq PSMAトレーサーの注射の1及び18時間後の代表的な全身マイクロPET及びCT画像(CTは89Zr-(2)に関しては実施されなかった)。
図3】a)LNCaP腫瘍へのトレーサー取込みの時間放射能曲線。各試験のPET画像は分析され、結果は平均±SEM、n=3で示される。データは、各時点での腫瘍SUVmaxの差異に関して分析された(t検定)。n.s.P=非有意、P<0.05;上部から下部への曲線:89Zr-(4)、89Zr-(3)、89Zr-(1)、及び89Zr-(2)、b)エクスビボ生体内分布分析。マウスは注射の1及び18時間後に安楽死させられ、トレーサー取込みは、グラム組織あたりの注射線量(injected dose)のパーセントとして表される。データは、n=3マウス/群の平均±SEMを表す。
図4】:エクスビボ生体内分布分析。マウスは、注射後1及び18時間で安楽死させられた。組織は収集され、秤量され、ガンマカウンターで計測された。トレーサー取込みは、グラム組織あたりの注射線量のパーセントで表される。データは、n=3マウス/群の平均±SEMを表す。
図5】LNCaP異種移植片腫瘍を有するマウスの、68Ga-DFOSq PSMAトレーサーの注射の1及び2時間後の代表的な全身マイクロPET及びCT画像。
図6】(左)インビボのLNCaP腫瘍へのPSMAトレーサーの取込み。各試験のPET画像は分析され、結果は平均±SEM、n=3で示される。(右)エクスビボ生体内分布分析。マウスは、(1)(上部パネル)又は(3)(下部パネル)による注射後(p.i.)1及び2.5時間で安楽死させられた。組織は収集され、秤量され、ガンマカウンターを使用して計測された。トレーサー取込みは、グラム組織あたりの注射線量のパーセントで表される。データは、n=3マウス/群の平均±SEMを表す。
図789Zr-PSMAトレーサーのPSMA陽性LNCap細胞取込み、左パネル、細胞表面結合放射能及び右パネル、内在化放射能。取込みは、添加放射能(AR)/mgタンパク質のパーセンテージで表される。結果は平均±SEM、n=3技術的反復を表す。
図889Zr-(3)のラジオHPLCトレース。
図989Zr-(4)のラジオHPLCトレース。
図10】DFO-Sqコンジュゲートされたオクトレオテート及びオクトレオチド分子の構造。
図1189Zr-DFOSqTIDE/TATEペプチドのラジオHPLCトレース(方法、89Zr-DFOSqTIDE:15分にわたりA(MillIQ中0.05%TFA)に対して20~100%緩衝液B(0.05%TFA ACN)89Zr-DFOSqTATE:15分にわたりA(MillIQ中0.05%TFA)に対して0~95%緩衝液B(0.05%TFA ACN)。上部トレースは89Zr-DFOSqTIDEであり、下部トレースは89Zr-DFOSqTATEである。
図1289Zr-DFOSqTIDE及び89Zr-DFOSqTATEを注射されたマウスの、異なる時点で画像化された代表的なPET画像。
図13】a)AR42J腫瘍へのトレーサー取込みの時間放射能曲線及び腫瘍対肝臓の比。各試験のPET画像は分析され、結果は平均±SEM、n=3で示される。データは、時点での腫瘍SUVmaxの差異に関して分析された(t検定)。**P<0.01;b)エクスビボ生体内分布分析。マウスは、DFOSqTIDE又はDFOSqTATEの注射後1及び18時間で安楽死させられた。組織は収集され、秤量され、ガンマカウンターで計測された。トレーサー取込みは、グラム組織あたりの注射線量のパーセントで表される。データはn=3マウス/群の平均±SEMを表す。
図1468Ga-DFOSqTIDE/TATEペプチドのラジオHPLCトレース(方法、15分にわたりA(MillIQ中0.05%TFA)に対して20~100%緩衝液B(0.05%TFA ACN)。上部トレースは68Ga-DFOSqTIDEであり、下部トレースは68Ga-DFOSqTATEである。
図1568GaDFOSq-TIDE及び68GaDFOSq-TATEトレーサーを注射されたマウスの、異なる時点で画像化された代表的なPET画像。標準取込値(SUVmax=組織中の放射能/注射された放射能/BW)を使用する画像における取込みの定量化を(c)に示す。
図16】マウスが68GaDFOSq-TIDEか68GaDFOSq-TATE(2~3MBq、1μg、0.5ナノモル)のいずれかを注射され、次いで投与後1時間か2時間のいずれかで安楽死されられたマウスモデルにおけるエクスビボ生体内分布試験。腫瘍及び主要器官内の組織のグラムあたりの注射された放射能の量(%IA/g)が定量化された。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書に開示され定義される本発明が、言及されるか又は文章若しくは図面から明らかである個別の特徴の2つ以上の選択し得る組合せの全てに及ぶことが理解されるだろう。これらの異なる組合せの全てが、本発明の種々の選択し得る態様を構成する。
【0036】
本発明のさらなる態様及び前述の段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として挙げられ且つ添付図面を参照して与えられる以下の説明から明らかになるだろう。
【0037】
本発明の特定の実施形態が詳細に言及されるだろう。本発明は、実施形態と併せて説明されるが、その意図が本発明をそれらの実施形態に限定するのではないことが理解されるだろう。それとは逆に、本発明は、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含まれ得る全代替物、改変物、及び等価物を含むものとする。
【0038】
本発明は、本明細書に定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体、前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的剤とのそのコンジュゲート、及びその放射性核種コンジュゲートに関する。
【0039】
一態様において、本発明は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体を提供する:
【化12】
(式中、Xは、
~C10アルキル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はその誘導体により任意選択で置換されているアリール;及び
(C~C10アルキル)NR(Y)R(式中、R及びRは、C~C10アルキル又はC~C10アルキルフェニルから独立に選択され得て、C~C10アルキルはn個のアミド基により介在され得て、nは0~3である)
からなる群から選択され、且つ
及びYは、カルボン酸、エステル、無水物、及びアミンからなる群から独立に選択される)。
【0040】
式(I)の化合物は、PSMA標的剤とのコンジュゲートに好適な「DFO-スクアラミド」(本明細書で「DFOSq」とも称される)の誘導体である。発明者らは、驚くべきことに、芳香族又はアリールリンカー基を、DFO系部分と標的剤の間に含むことにより、腫瘍標的化が改善されることを見出した。腫瘍標的化の改善は、多数の標的剤をDFO系部分にコンジュゲートすることによっても達成された。驚くべきことに、腫瘍標的化は、多数の標的剤を、芳香族リンカー基を介してDFO系部分にコンジュゲートすることによりさらに改善した。
【0041】
PSMA標的剤をダイマー配置で含む式(I)の化合物は、驚くべきことに、腫瘍標的化改善を示した。好都合には、PSMA標的剤をダイマー配置で含む式(I)の化合物は、化合物の腫瘍中のより高い総取込み及び標的とされた腫瘍への特異性増加の両方を示した。PSMA標的剤をダイマー配置で含む式(I)の化合物は、モノマー配置を有する標的剤と比べて注射後2時間までの腫瘍中のより長い滞留時間を示した。
【0042】
式(I)のその薬学的に許容できる誘導体は、DFOなどのDFO-アナログから調製され得る(Patra et al.Chem.Commun.,2014,50,11523-11525)。DFOはDFO-アナログであり、追加のヒドロキサム酸を有するDFOの拡大バージョンであり、DFOから容易に調製される。DFOは、Zn4+の八座キレート剤であり、89Zn-DFO錯体は、DFO錯体と比べて増加したインビトロ安定性を示すことが示された。DFO及びDFO-スクアラミドは、PSMA標的剤とのコンジュゲートに好適である。さらに、モデルタンパク質と連結されたDFO誘導体は、担癌マウスにおいて良好な腫瘍取込み及び著しい低い骨取込みを示した。改善されたインビトロ安定性及びインビボ性質は、DFO、DFO-スクアラミド、又はその誘導体が本発明の化合物に組み込まれるのにも好適であり得ることを示す。
【0043】
本発明のいずれの態様又は実施形態においても、本発明の式(I)若しくは(II)の化合物、コンジュゲート、若しくは放射性核種コンジュゲート中、又は本明細書に示されるあらゆる構造中のDFOは、その薬学的に許容できる誘導体、例えばDFOなどのDFO-アナログに置換され得る。DFOの構造は、以下に示される:
【化13】
【0044】
本発明のいずれの態様又は実施形態においても、式(I)の化合物のDFOアナログは、以下の式による構造を有する:
【化14】
【0045】
本発明のいずれの態様又は実施形態においても、式(II)の化合物のDFOアナログは、以下の式による構造を有する:
【化15】
【0046】
本発明のいずれの態様又は実施形態においても、式(I)の化合物のDFOアナログ若しくはその薬学的に許容できる誘導体、又はその薬学的に許容できる塩は、
【化16】
【化17】
からなる群から選択され得る。
【0047】
アリールリンカー及びPSMA標的剤の両方をダイマー配置で含む式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体は、驚くべきことに、PSMA標的剤のみをダイマー配置で含む式(I)の化合物と比べて改善された腫瘍標的化を示した。
【0048】
アリールリンカー及びPSMA標的剤の両方をダイマー配置で含む式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体は、PSMA標的剤のみをダイマー配置で含む化合物と比べて増加した細胞内在化を示した。
【0049】
本発明の式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体は、注射後18時間で著しいクリアランス(50%以上)を示した。
【0050】
発明者らは、式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体とPSMA標的剤の放射性標識されたコンジュゲートが、PET画像化剤として使用されるいくつかの公知の放射性核種キレート剤(特に他のDFO系キレート剤)よりも改善された腫瘍標的化及び組織選択性を示すことを見出した。
【0051】
本発明は、式(II)のコンジュゲート若しくはその薬学的に許容できる誘導体:
【化18】
又は薬学的に許容できるその塩も提供する(式中、RはCHO又はCOOである)。一実施形態において、RはCHOである。別の実施形態において、RはCOOである。
【0052】
式(II)のコンジュゲートは、ソマトスタチンサブタイプ2受容体(sstr2)標的剤を含む「DFO-スクアラミド」(本明細書で「DFOSq」とも称される)の誘導体である。用語「sstr2標的剤」は、ソマトスタチンサブタイプ2受容体を標的化する能力を有するペプチドを指す。薬剤はペプチドであり得る。一実施形態において、RがCHOである場合、sstr2標的剤はオクトレオチドである。別の実施形態において、RがCOOである場合、sstr2標的剤はオクトレオテートである。
【0053】
式(II)の化合物又はその薬学的に許容できる誘導体は、好都合には、注射の2時間後に、sstrタンパク質がない腫瘍と比べてsstrタンパク質の存在下で、腫瘍中で増加した滞留を示した。
【0054】
RがCOOである式(II)の化合物は、好都合には、なおさらに改善された腫瘍標的化を提供する。RがCOOである式(II)の化合物は、標的とされた腫瘍中での増加した取込み及び注射後2時間で増加した滞留を示した。式(II)の化合物は、注射後18時間で著しい(50%以上)クリアランスを示した。
【0055】
本明細書に開示される化合物の「薬学的に許容できる塩」は、過度の毒性も発癌性もなしに、且つ、好ましくは刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、ヒト又は動物の組織と接触させて使用するのに好適であると一般的に当分野において考えられる酸又は塩基塩である。そのような塩としては、アミンなどの塩基性残基の無機及び有機酸塩、並びにカルボン酸などの酸性残基のアルカリ又は有機塩がある。
【0056】
好適な薬学的に許容できる塩としては、塩化水素酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマイエン酸(hydroxymaieic)、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、アルカン酸(酢酸など、nが0~6の整数、すなわち0、1、2、3、4、5又は6であるHOOC-(CH-COOH)などの酸の塩があるが、これらに限定されない。同様に、薬学的に許容できるカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、及びアンモニウムがあるが、これらに限定されない。当業者は、本明細書に提供される化合物のためのさらなる薬学的に許容できる塩を認識するだろう。一般に、薬学的に許容できる酸又は塩基塩は、従来の化学的方法により、塩基性又は酸性部分を含む親化合物から合成できる。簡潔にいうと、そのような塩は、遊離酸又は塩基形態のこれらの化合物を、化学量論量の適切な塩基又は酸と、水中若しくは有機溶媒(エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルなど)中、又は2種の混合物中で反応させることにより調製できる。
【0057】
式(I)又は(II)の化合物又はコンジュゲートが、水和物、溶媒和物、又は(放射性核種以外の金属への)非共有結合性の錯体として存在し得るが、そのように存在することが必要ではないことが明らかだろう。さらに、種々の結晶形及び多形体は、本明細書に提供される化合物のプロドラッグと同様に、本発明の範囲内にある。
【0058】
「プロドラッグ」は、本明細書に提供される化合物の構造的要件を完全に満たさない可能性があるが、対象又は患者への投与後にインビボで修飾されて、本明細書に提供される放射性標識されたコンジュゲートを生み出す化合物である。例えば、プロドラッグは、放射性標識されたコンジュゲートのアシル化された誘導体であり得る。プロドラッグは、ヒドロキシル又はアミン基が、哺乳動物の対象に投与されると、切断して、それぞれ遊離のヒドロキシル又はアミン基を形成する任意の基に結合している化合物を含む。プロドラッグの例としては、放射性標識されたコンジュゲート内のアミン官能基のアセテート、ホルメート、ホスフェート、及びベンゾエート誘導体があるが、これらに限定されない。プロドラッグは、修飾部分がインビボで切断されて親化合物が生じるように、化合物中に存在する官能基を修飾することにより調製され得る。
【0059】
本明細書で使用される「置換基」は、着目した分子内の原子に共有結合している分子部分を指す。本明細書で使用される用語「置換された」は、指定された原子の正常な原子価を超えず、置換が、安定な化合物、すなわち単離、特性化、及び生物学的活性の試験ができる化合物を生み出すという条件で、指定された原子上の任意の1つ以上の水素が、示される置換基から選ばれたものに置き換えられることを意味する。置換基が、オキソ、すなわち=Oである場合、原子上の2つの水素が置き換えられている。芳香族炭素原子の置換基であるオキソ基は、-CH-の-C(=O)-への転化及び芳香族性の喪失をもたらす。例えば、オキソにより置換されたピリジル基はピリドンである。好適な置換基の例は、アルキル、ヘテロアルキル、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子)、OH、=O、SH、SO、NH、NHアルキル、=NH、N、及びNO基である。
【0060】
用語「任意選択で置換されている」は、1、2、3、又はそれ以上の水素原子が、互いに独立に、アルキル、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子)、OH、=O、SH、=S、SO、NH、NHアルキル、=NH、N、又はNO基で置き換えられた基を指す。
【0061】
多重の置換度は、指定された原子の正常な原子価を超えず、置換が、安定な化合物、すなわち単離、特性化、及び生物学的活性の試験ができる化合物を生み出すという条件で許容され得る。
【0062】
本明細書で使用される通り、例えば、「1~10」など、長さの範囲の限界を定義する言い方は、1~10のあらゆる整数、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10を意味する。言い換えると、明示される2つの整数により定義されるあらゆる範囲は、前記限界を定義するあらゆる整数及び前記範囲に含まれるあらゆる整数を含み、開示することを意味する。
【0063】
用語「アルキル」は、1~10個の炭素原子、例えばn-オクチル基、特に1~6個、すなわち1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む飽和、直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。本明細書で使用されるアルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、2,2-ジメチルブチルがあるが、これらに限定されない。アルキル基は、置換基により任意選択で置換されていてよく、多重の置換度が許容される。アルキル基は、N、S、又はO原子などの非炭素原子により介在され得る。一実施形態において、C~C10アルキル基は、n個のアミド基により介在され得て、ここで、nは0~3である。n個のアミド基により介在されるC~C10アルキル基としては、(CHNHC(O)(CH及び(CHNHC(O)(CHC(O)NHCHがある。
【0064】
本明細書で使用される通り、用語「アルキル」は、1~20原子の最長の直鎖長さ、すなわち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の原子を含み、直鎖が、N、S、又はO原子などの非炭素原子を含み得る基も指し得る。一実施形態において、1~20原子の最長直鎖長さを含むアルキル基は、n個のアミド基(式中、nは0~3である)を含み得る。n個のアミド基を含み、1~20原子の最長直鎖長さを含むアルキル基としては、(CHNHC(O)(CH及び(CHNHC(O)(CHC(O)NHCHがある。
【0065】
用語「アリール」は、6~14個の環炭素原子、好ましくは6~10(特に6)個の環炭素原子を含む1個以上の環を含む芳香族基を指す。例は、フェニル、ナフチル、及びビフェニル基である。本発明における使用に好適な置換されたアリール基の例としては、p-トルエンスルホニル(Ts)、ベンゼンスルホニル(Bs)、及びm-ニトロベンゼンスルホニル(Ns)がある。
【0066】
Xは、DFOSq分子に1結合部位で、Yに第2の結合部位で共有結合しているリンカー基である。Yは、リンカー基Xを介するPSMA標的剤のDFOSq分子へのコンジュゲーションのための任意の好適な官能基であり得る。
【0067】
本発明の好ましい化合物は、Xが、
~C10アルキル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はその誘導体により任意選択で置換されているアリール;及び
(C~C10アルキル)NR(Y)R(式中、R及びRは、C~C10アルキル又はC~C10アルキルフェニルから独立に選択され得て、C~C10アルキルはn個のアミド基により介在され得て、nは0~3である)からなる群から選択され、且つ
及びYが、カルボン酸、エステル、無水物、及びアミンからなる群から独立に選択されるものである。
【0068】
一実施形態において、式(I)の化合物はモノマー性である。モノマー形態の式(I)の化合物は1つのY官能基(Y)を含み、1つのPSMA標的剤をコンジュゲートすることが可能である。この実施形態の好ましい形態において、Xは芳香族基を含む。より好ましくは、Xは、フェニル、ベンジル、及びEDTA官能化フェニルからなる群から選択される。好ましくは、Yはカルボキシル基である。
【0069】
別の実施形態において、式(I)の化合物はダイマー性である。ダイマー形態の式(I)の化合物は2つのY官能基(Y及びY)を含み、2つのPSMA標的剤をコンジュゲートすることが可能である。この実施形態の好ましい形態において、Xは、(C~C10アルキル)NR(Y)R、好ましくは(CHNR(Y)Rであり、式中、R及びRは、C~C10アルキル又はC~C10アルキルフェニルから独立に選択され得て、C~C10アルキルはn個のアミド基により介在され得て、nは0~3である。好ましくは、R及びRは、(CH、(CHNHC(O)(CH、及び(CHNHC(O)(CHC(O)NHCH-フェニルから独立に選択される。RとRは、同一でも、異なっていてもよく、好ましくは同一である。この実施形態の好ましい態様において、Y及びYはアミン又はカルボン酸である。好ましくは、YとYは同一である。
【0070】
本明細書で使用される通り、用語「放射性核種標識コンジュゲート」は、
-放射性核種と配位錯体を形成したPSMA標的剤にコンジュゲートされた本明細書に定義される式(I)の化合物;又は
-放射性核種と配位錯体を形成した式(II)のコンジュゲート
を指す。
【0071】
一般的に、これは、式(I)又は(II)の化合物又はコンジュゲートの電子供与性基(ヒドロキサメート基など)と放射性核種の間の配位結合の形成の結果として起こる。
【0072】
本発明の化合物において、配位結合は、DFO又はDFOのヒドロキサム酸基と放射性核種の間に形成されると仮定される。しかし、理論により拘束されることは望まないが、発明者らは、(DFO又はDFOのヒドロキサム酸基に加えて)スクアレート部分上のオキソ基もドナー原子として機能して、式(I)の化合物が放射性核種に結合できる1つ又は2つの追加の部位を提供するとも考えている。これは、八配位錯体をもたらし、八配位構造を有する放射性核種(89Zrなど)の安定性の観点から非常に好都合であり、本発明の錯体に関して観察される安定性を説明し得る。具体的には、それは、他のDFO又はDFO系の画像化剤と比べて、放射性核種が標的組織から(骨などの他の組織に)容易に浸出せず、したがって改善された画像化の質をもたらす理由を説明し得る。現在使用されているキレート剤に対する本発明の化合物のこれらの利点は、図及び実施例に説明される。
【0073】
スクアレート部分、例えばスクアラミドは、標的剤の標的化を補助する役割も果たし得る。さらに、スクアレート部分は、イソチオシアナトDFO誘導体と比べて高い溶解度も提供する。
【0074】
本明細書で使用される通り、用語「放射性核種」(通常、放射性同位元素又は放射性同位体とも称される)は、不安定な核を有する原子である。それは、放射性崩壊をして、核放射線(ガンマ線及び/又はアルファ若しくはベータ粒子などの亜原子粒子など)の放出を起こす。一実施形態において、放射性核種は、放射線免疫療法用途にも有用であるものである(例えば、ベータ粒子放射体)。好ましくは、放射性核種は八配位構造を有する。本発明での使用に好適な放射性核種の例としては、ジルコニウム(例えば、89Zr)、ガリウム(例えば、67Ga及び68Ga)、ルテチウム(例えば、176Lu及び177Lu)、ホルミウム(例えば、166Ho)、スカンジウム(例えば、43Sc、44Sc、及び47Sc)、チタン(例えば、45Ti)、マンガン(例えば、52Mn)、インジウム(例えば、111In及び115In)、イットリウム(例えば、86Y及び90Y)、テルビウム例えば、(149Tb、152Tb、155Tb、及び161Tb)、テクネチウム(例えば、99mTc)、サマリウム(例えば、153Sm)、及びニオブ(例えば、95Nb及び90Nb)の放射性同位元素がある。本発明に使用するための放射性核種は、ガリウム(具体的には、67Ga及び68Ga)、インジウム(具体的には、111In)、ジルコニウム(具体的には、89Zr)、及びアルミニウムフルオリド(具体的には、18Fが放射性同位元素であり、Alが担体であるAl18F)から選択され得る。本発明に使用するための放射性核種は、68Ga、111In、及び89Zrから選択され得る。例えば、68Gaは、DFOと結合することが示されており(Ueda et al(2015)Mol Imaging Biol,vol.17,pages 102-110参照)、インジウムはジルコニウムに類似の配位化学を有する(したがって、同様に式(I)又は(II)の化合物に結合すると予測されるだろう)。
【0075】
本発明の化合物又はコンジュゲートが、MRIなどの画像化用途に使用される非放射性金属も錯化できることが当業者により理解されるだろう。そのような金属の例はガドリニウム(例えば、152Gd)である。
【0076】
上述の通り、本発明は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる塩とPSMA標的剤のコンジュゲートにも関する。
【0077】
本明細書で使用される通り、用語「PSMA標的剤」は、前立腺特異的膜抗原を標的化する能力を有する部分を指す。好ましくは、PSMA標的剤はペプチドであるか、又は尿素連結ジペプチド、より好ましくはLys-尿素-Gluである。標的剤は、官能基Y(Y及び/又はY)と反応して、標的剤と式(I)の化合物の間の共有結合を形成する官能基(リジン残基のアミン基など)を有するだろう。これにより、コンジュゲートが形成される。コンジュゲートは、それに錯化された放射性核種も含み得る。これにより、式(I)の化合物又はその薬学的に許容できる塩と、標的剤と、それに錯化された放射性核種の放射性核種標識コンジュゲートが製造される。一実施形態において、放射性核種は、ジルコニウムの放射性同位元素(例えば、89Zr)である。
【0078】
式(I)の化合物、コンジュゲート、及び放射性核種錯体は、当業者に公知である任意の好適な方法により合成できる。本発明によるコンジュゲートが、式(I)の化合物をPSMA標的剤と反応させることにより調製され得ることは当業者には明らかだろう。本発明によるコンジュゲートが、PSMA標的剤を、リンカー基X(又はその一部)により官能基Y(Y及び/又はY)を介して官能化し、官能化されたPSMA標的剤をDFOSqと反応させることにより調製され得ることも当業者には明らかだろう。
【0079】
式(I)の化合物のモノマー性コンジュゲートの合成方法の一例はスキーム1で以下に与えられる。
【化19】
スキーム1:モノマー性PSMAリガンドへの合成経路。(i)HATU、DIPEA、DMF、Fmoc-PAMBA-OH又はFmoc-PABA-OH(ii)TFA、(iii)DFOSq、0.1Mホウ酸緩衝液pH9.0(iv)EDTA-無水物、次いでエチレンジアミン、DMF。
【0080】
式(I)の化合物のダイマー性コンジュゲートの合成方法の一例はスキーム2で以下に与えられる。
【化20】
スキーム2:ダイマー性PSMAリガンドへの合成経路、(i)グルタル酸無水物、DIPEA、DCM(ii)Fmoc-PAMBA-OH、HATU、DMF、DIPEA、DMF中20%ピペリジン(iii)グルタル酸無水物、DIPEA、DCM(iv)トレン、DMF(v)FeCl、HATU、DIPEA、DMF、Glut-PSMA(OtBu)リガンド又はGlut-PhPSMA(OtBu)リガンド(v)EDTA、DMF、水、次いでDCM中20%TFA。
【0081】
式(I)又は(II)のコンジュゲートを放射性核種がない状態で調製できることも当業者には明らかだろう。この実施形態において、放射性核種は、コンジュゲートが調製されるとコンジュゲートに加えられる。或いは、放射性核種がない式(I)又は(II)のコンジュゲートは、癌細胞から必須栄養素である(Fe)を奪うことにより、癌の標的化された鉄キレート化治療に有用であり得る。
【0082】
本発明は、
-式(I)の化合物:
【化21】
又はその薬学的に許容できる塩(式中、X及びYは本明細書に定義される通りである)、
-PSMA標的剤、及び
-それに錯化された放射性核種
の放射性核種標識コンジュゲート並びに1種以上の薬学的に許容できる担体物質、賦形剤、及び/又は補助剤を含む医薬組成物にも関する。
【0083】
本発明は、
-式(II)のコンジュゲート:
【化22】
又はその薬学的に許容できる塩(式中、Rは本明細書に定義される通りである)、及び
-それに錯化された放射性核種
の放射性核種標識コンジュゲート並びに1種以上の薬学的に許容できる担体物質、賦形剤、及び/又は補助剤を含む医薬組成物にも関する。
【0084】
医薬組成物は、例えば、水、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、クエン酸塩、及び酢酸塩)、エタノール、油、炭水化物(例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、スクロース、及びマンニトール)、タンパク質、ポリペプチド又はグリシンなどのアミノ酸、酸化防止剤(例えば、亜硫酸水素ナトリウム)、張性調整剤(塩化カリウム及び塩化カルシウムなど)、EDTAなどのキレート剤、又はグルタチオン、ビタミン及び/若しくは保存剤の1種以上を含み得る。
【0085】
医薬組成物は、好ましくは非経口投与用に製剤されるだろう。本明細書で使用される用語「非経口」は、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、髄腔内、眼内、眼球周囲、眼窩内、関節滑液嚢内、及び腹腔内注射、並びにあらゆる類似の注射又は注入技法を含む。静脈内投与が好ましい。非経口製剤の好適な成分及びそのような製剤を製造する方法は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”を含む種々の教科書に詳述されている。
【0086】
本発明の組成物は、通常の方法で、患者に非経口で投与されるだろう。その場合、DFO-スクアラミドコンジュゲート錯体は、全身で標的部位に分布するには1時間~24時間の範囲かかり得る。所望の分布が達成されると、患者は画像化されるだろう。
【0087】
したがって、本発明は、患者を画像化する方法であって、
-患者に、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートを投与すること;及び
-前記患者を画像化すること
を含む方法にも関する。
【0088】
本発明は、細胞又はインビトロ生検試料を画像化する方法であって、
-細胞又はインビトロ生検試料に、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートを投与すること;及び
-細胞又はインビトロ生検試料を画像化すること
を含む方法にも関する。
【0089】
式(I)のコンジュゲートでは、PSMA標的剤は、コンジュゲートを、インビボで所望の部位に、又は細胞若しくは生検試料中の所望の部位に、特に前立腺腫瘍に標的化するように作用する。
【0090】
式(II)のコンジュゲートでは、sstr2標的剤は、コンジュゲートを、インビボで所望の部位に、又は細胞若しくは生検試料中の所望の部位に、特に神経内分泌腫瘍に標的化するように作用する。
【0091】
別の態様において、本発明は、患者の癌を治療する方法であって、
-患者に、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートを投与すること、それにより
患者を治療すること
を含む方法に関する。
【0092】
別の態様において、本発明は、患者の癌の治療のための医薬品の製造における、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートの使用に関する。
【0093】
別の態様において、本発明は、患者の癌の治療に使用するための、本明細書に定義される放射性核種標識コンジュゲートに関する。
【0094】
特定の患者のための具体的な用量段階及び薬剤が標的部位に達するのにかかる時間の長さが、利用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与の時間、投与経路、及び排泄速度、並びに療法を受けている特定の障害の重症度を含む種々の因子に依存することが理解されるだろう。
【0095】
用語「有効量」は、放射性核種標識コンジュゲートの患者への投与後に検出可能な量の放射線をもたらす量を指す。当業者は、毒性の観点から問題を起こさずに最適な画像化能力を達成するために、どれくらい多くの放射性核種標識コンジュゲートを患者に投与すべきかを知っているだろう。本発明の放射性核種標識コンジュゲートは、癌がどこにあるか(受容体などの標的が腫瘍上に均質に存在しているかどうかを含む)、どのような治療に癌が反応するか(治療選択及び最適用量の決定を容易にする)、及びどれくらい多くの治療が最終的に標的部位に達するかを臨床医が決定するのを補助する特定の用途がある。
【0096】
患者は、霊長類、特にヒト、イヌ、ネコ、ウマなどの飼いならされた伴侶動物、並びにウシ、ブタ、及びヒツジなどの家畜を含み得るがこれらに限定されず、用量は本明細書に記載される通りである。
【0097】
上述の通り、本発明の放射性核種標識コンジュゲートは、腫瘍(制御不能又は進行性の細胞の増殖の結果として形成する)を画像化及び/又は治療するのに特に有用である。そのような制御不能に増殖している細胞の一部は良性であるが、他方は「悪性」と称され、生物の死をもたらし得る。悪性新生物又は「癌」は、急速な細胞増殖を示すことに加え、それらが周囲組織に浸潤し、転移し得るという点で、良性の成長から区別される。さらに、悪性新生物には、それらが、より多い分化の喪失(より多い「脱分化」)並びに互いに対する及びそれらの周囲組織に対する、より多いそれらの組織化の喪失を示すという特徴がある。この性質は「退形成」とも称される。本発明により治療可能な新生物は、固相腫瘍/悪性腫瘍、すなわち癌腫、局所進行性腫瘍及びヒト軟部組織肉腫も含む。癌腫は、周囲組織に浸潤(浸入)し、リンパ行性転移を含むメタスタスティック(metastastic)癌を引き起こす上皮細胞由来の悪性新生物を含む。
【0098】
腺癌は、腺組織由来であるか、又は認識可能な腺構造を形成する癌腫である。癌の別の広い区分は肉腫を含み、それは、その細胞が胚性結合組織のような線維状又は同質な物質に埋め込まれている腫瘍である。
【0099】
本発明による画像化に適する可能性がある癌又は腫瘍細胞の種類には、前立腺癌及び神経内分泌癌がある。
【0100】
抗癌活性を有する薬物と共に本発明の放射性核種標識コンジュゲートを投与することも好都合であり得る。この点で好適な薬物の例としては、フロオロウラシル、イミキモド、アナストロゾール、アキシチニブ、ベリノスタット、ベキサロテン、ビカルタミド、ボルテゾミブ、ブスルファン、カバジタキセル、カペシタビン、カルムスチン、シスプラチン、ダブラフェニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ドセタキセル、ドキソルビシン、エロキサチ(eloxati)、エルロチニブ、エトポシド、エキセメスタン、フルベストラント、メトトレキサート、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、イホスファミド、イリノテカン、イキサベピロン、ラナリドミド(lanalidomide)、レトロゾール、ロムスチン、酢酸メゲストロール、テモゾロミド、ビノレルビン、ニロチニブ、タモキシフェン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ラロキシフェン、ペメトレキセド、ソラフェニブ、サリドマイド、トポテカン、ベルムラフェニブ(vermurafenib)、及びビンクリスチンがある。
【0101】
本発明の放射性核種標識コンジュゲートは、特定の腫瘍が1種以上の受容体を有するかどうか、したがって、患者が特定の療法から利益を受け得るかどうかを決定するためにも使用できる。例えば、式(I)の放射性標識されたコンジュゲート中にlys-尿素-gluを標的分子として使用することにより、患者の腫瘍上のPSMAの存在を試験できる。腫瘍がPSMA陰性である場合(すなわちPSMA細胞表面受容体を有さない)、画像化剤は腫瘍に「粘着」しない。或いは、式9II)の放射性標識されたコンジュゲート中にsstr2を標的分子として使用することにより、患者の腫瘍上のsstr2の存在を試験できる。腫瘍がsstr2陰性である場合(すなわちsstr2細胞表面受容体を有さない)、画像化剤は腫瘍に「粘着」しない。
【0102】
本明細書に開示され、定義される本発明が、言及されるか又は文書若しくは図面から明らかである個別の特徴の2つ以上の選択し得る組合せの全てに及ぶことが理解されるだろう。これらの異なる組合せの全ては、本発明の種々の選択し得る態様を構成する。
【0103】
別の態様において、本明細書に記載される化合物、コンジュゲート、又は放射性核種コンジュゲート、上述の薬学的に許容できる塩、希釈剤若しくは賦形剤、及び/又は医薬組成物を含むキット又は製造物が提供される。さらに、キットは、本明細書に記載される本発明の任意の方法又は用途における使用のための説明書を含み得る。
【0104】
他の実施形態において、上述の治療及び/又は診断用途における使用のための、又は使用される場合のキットであって、
-本明細書に記載される化合物、コンジュゲート、若しくは放射性核種コンジュゲート、又は医薬組成物の形態の治療用又は診断用組成物を収容する容器;
-本明細書に記載される本発明の任意の方法又は用途における使用のための説明書を伴うラベル又は添付文書
を含むキットが提供される。
【0105】
特定の実施形態において、キットは、癌の治療若しくは診断のための1種以上のさらなる有効成分又は成分を含み得る。
【0106】
キット又は「製造物」は、容器及び容器上又は容器と関連してラベル又は添付文書を含み得る。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスターパックなどがある。容器は、ガラス又はプラスチックなどの種々の材料から形成され得る。容器は、病態を治療又は画像化するのに有効である治療用又は診断用組成物を収容し、滅菌されたアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針により突き刺せるストッパーを有する静注液バッグ又はバイアルであり得る)。ラベル又は添付文書は、治療用組成物が、選択される病態を治療又は画像化するために使用されることを示す。一実施形態において、ラベル又は添付文書は使用説明書を含み、治療用又は診断用組成物が本明細書に記載される癌を治療するために使用できることを示す。
【実施例
【0107】
全試薬及び溶媒は、標準的な商業的供給源から得て、特記されない限り受け取ったまま使用した。
【0108】
実施例1-PSMAを標的とする放射線画像化剤
尿素連結ジペプチド(リジン-尿素-Glu)に基づく小分子は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)と選択的に結合する。この研究の目的は、新たな89Zr-DFOSqコンジュゲートされたPSMA放射性トレーサーを開発することである。DFO-sqコンジュゲートされたモノマー性及びダイマー性PSMA標的化リジン-尿素-Gluフラグメントのファミリーを合成し、89Zr及び68Ga PET放射性核種を使用してインビボで試験した。
【0109】
一般的実験及び材料。特記されない限り、全試薬は商業的供給源から購入し、さらに精製せずに使用した。DFOSqは、既報の手順に従って調製した(Rudd et al.Chemical Communications 2016,52(80),11889-11892)。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(40~63ミクロン)を固定相として使用して実施した。分析TLCを、プレコートされたシリカゲルプレート(厚さ0.25mm、60F254、Merck、Germany)で実施して、紫外線の下で可視化した。ESI-MSスペクトルを、Thermo Fisher OrbiTRAP注入質量分析計で記録した。非放射性試料のHPLC精製及び分析は、溶媒A=Milli中0.1%TFA及び溶媒B=CHCN中0.1%TFAを使用してAgilent 1100シリーズで実施した。分析HPLCでは、Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å LCカラム150×4.6mmを1mL/分の流量で使用したが、Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mmを5~8mL/分の流量で分取HPLCに使用した。ラジオHPLCを、Shimadzu SPD-10A VP UV検出器、それに続いて放射線検出器を有する、Shimadzu SCL-10A VP/LC-10 AT VPシステムで実施した(プリアンプリファイヤー、Ortec 925-SCINT ACE mateプリアンプリファイヤーを有するOrtecモデル276フォトマルチプライヤーベース、バイアス電源及びSCA、Bicron 1M 11/2フォトマルチプライヤーチューブ)。1mL/分の流量でPhenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム150×4.6mm MillQ水中0.05%TFA緩衝液及びアセトニトリル使用)。
【0110】
PABA-PSMAリガンドの合成。樹脂結合PSMAリガンド(lys-尿素-glu)(43mg、0.1mmol)の懸濁液に、Fmoc-PABA-OH(72mg、0.2mmol)、DIEA(70μL、0.4mmol)及びHBTU(38mg、0.1mmol)を加え、DMF(5mL)中で一晩撹拌し、次いで樹脂を濾過し、20%ピペリジンのDMF溶液により1時間処理し、次いで再び濾過した。次いで、樹脂をTFA(1ml)により15分間処理し、次いでTFAを窒素気流下で除去し、氷冷ジエチルエーテル(30mL)を加えると生成物が沈殿し、それを遠心分離により回収して、HPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製すると、PABA-PSMAリガンドを白色の固体として与えた(18mg、収率41%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=439.1825(実験値)、[C1927の計算値:m/z=439.1829。
【0111】
ED-EDTA-PABA-PSMAリガンドの合成。PABA-PSMAリガンド(6mg、0.014mmol)及びEDTA無水物(3.5mg、0.0014)を、窒素気流下、エッペンドルフチューブ中で乾燥DMF(1mL)に溶解させた。溶液を5時間室温で撹拌し、次いで大過剰のエチレンジアミン(50uL)を加え、混合物をそのまま一晩撹拌した。溶媒を真空下で除去し、残渣をHPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製すると、ED-EDTA-PABA-PSMAリガンドを白色の固体として与えた(2.5mg、収率25%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=755.3205(実験値)、[C314514の計算値:m/z=755.3212。
【0112】
PhPSMAリガンドの合成。樹脂結合PSMAリガンド(43mg、0.1mmol)の懸濁液に、Fmoc-PAMBA-OH(75mg、0.2mmol)、DIEA(70μL、0.4mmol)及びHBTU(38mg、0.1mmol)を加え、DMF(5mL)中で一晩撹拌し、次いで、樹脂を濾過して、20%ピペリジンのDMF溶液により1時間処理し、次いで再び濾過した。次いで、樹脂をTFA 1mlにより15分間処理し、次いで、TFAを窒素気流下で除去し、氷冷ジエチルエーテル(30mL)を加えると生成物が沈殿し、それを遠心分離により回収し、HPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製すると、PhPSMAリガンドを白色の固体として与えた(12mg、収率26%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=453.1982(実験値)、[C2029の計算値:m/z=453.1985。
【0113】
DFOSq-EDTA-PSMAリガンド(2)の合成。DMSO(100μL)中のDFOSq(20mg、0.026mmol)とホウ酸緩衝液(0.1M、pH9.0、900uL)中のED-EDTA-PABA-PSMAリガンド(91mg、0.132mmol)の混合物を室温で3日間撹拌し、HPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製すると、(2)を白色の固体として与えた(6mg、収率16%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=1393.6483(実験値)、[C60931424の計算値:m/z=1393.6487。
【0114】
DFOSq-PhPSMAリガンド(1)の合成。DMSO(100μL)中のDFOSq(5mg、0.011mmol)とホウ酸緩衝液(0.1M、pH9.0、900uL)中のPAMBA-PSMAリガンド(91mg、0.132mmol)の混合物を37℃で6日間撹拌し、次いでHPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製すると、(1)を白色の固体として与えた(2mg、収率17%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=1091.5254(実験値)、[C49751018の計算値:m/z=1091.5261。
【0115】
Glut-PSMA(OtBu)リガンドの合成。PSMA(OtBu)リガンド(50mg、0.103mmol)及びグルタル酸無水物(59mg、0.51mmol)をDMF(1mL)に溶解させ、次いでDIPEA(179μL、1.02mmol)を加えた。溶液を室温で1時間撹拌した。次いで、冷ジエチルエーテル(40mL)を反応混合物に加え、生じた粗生成物を遠心分離により単離し、それに続いてHPLC精製(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)を行うと、Glut-PSMA(OtBu)リガンドを白色の固体として与えた(30mg、収率48%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=602.3657(実験値)、[C295210の計算値:m/z=602.3653。
【0116】
PhPSMA(OtBu)リガンドの合成。PSMA(OtBu)リガンド(500mg、1.03mmol)、EDL.HCl(393mg、2.03mmol)、HOBt(314mg、2.03mmol)、Fmoc-PAMBA-OH(450mg、1.23mmol)、及びDIEA(839μL、5.13mmol)をDMF(2mL)に溶解させ、溶液を室温で24時間撹拌した。次いで、水50mLを反応混合物に加え、生じた沈殿物を遠心分離により回収した。DMF(10mL)中20%ピペリジンを残渣に加え、溶液を1時間撹拌し、次いで溶媒を除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM中5%MeOH)により精製すると、PhPSMA(OtBu)リガンドを白色の固体として与えた(410mg、64%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=621.3862(実験値)、[C3253の計算値:m/z=621.3863。
【0117】
Glut-PhPSMA(OtBu)リガンドの合成。PhPSMA(OtBu)リガンド(330mg、0.532mmol)及びグルタル酸無水物(303mg、2.6mmol)をDCM(10mL)に溶解させ、次いで数滴のDIPEAを加えた。溶液を室温で4時間撹拌した。反応混合物をDCM(50mL)で抽出し、次いで溶媒を除去し、残渣をHPLC精製すると(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)、Glut-PhPSMA(OtBu)リガンドを白色の固体として与えた(236mg、60%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=735.4181(実験値)、[C375911の計算値:m/z=735.4180。
【0118】
DFOSq-トレンの合成。DFOSq(100mg、0.146mmol)及びトリス(2-アミノエチル)アミン(237μL、1.460mmol)をDMF(2mL)に溶解させ、次いで溶液を室温で一晩撹拌した。次いで、ジエチルエーテルを反応混合物に加え、生じた粗生成物を遠心分離により単離し、それに続いてHPLC精製すると(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)、DFOSq-トレンを白色の蝋状固体として与えた(65mg、57%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+H]m/z=785.4860(実験値)、[C35651010の計算値:m/z=785.4885。
【0119】
DFOSq-ビスPSMAリガンド(3)の合成。DFOSq-トレン(20mg、0.025mmol)及びFeCl(7mg、0.025mmol)をDMF(150μL)中で、室温で撹拌し、次いで、HATU(29mg、0.075mmol)、DIPEA(40μL、0.248mmol)、及びGlut-PSMA(OtBu)リガンド(30mg、0.050mmol)のDMF(200μL)溶液に加えた。生じた溶液を室温で1時間撹拌し、次いで冷ジエチルエーテル(10mL)を加え、生じた沈殿物を遠心分離により回収した。残渣をDMF(100μL)に溶解させ、DMF:水混合物(1:1、1mL)中のEDTAの飽和溶液を加え、色が赤から薄黄色に変わるまで溶液を40℃で加熱した。反応混合物をHPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製し、精製したフラクションをDCM中20%TFAにより処理してOtBu基を除去した。溶媒を窒素気流下で除去し、残渣をHPLCにより精製すると、(3)を白色の固体として与えた(9mg、22%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+2H]m/z=808.4080(実験値)、[C6811616282+の計算値:m/z=808.4072。
【0120】
DFOSq-ビスPhPSMAリガンド(4)の合成。DFOSq-トレン(10.68mg、0.014mmol)及びFeCl(3.68mg、0.014mmol)をDMF(150μL)中で、室温で撹拌し、次いで、HATU(12.42mg、0.033mmol)、DIPEA(11μL、0.068mmol)、及びGlut-PhPSMA(OtBu)リガンド(20mg、0.028mmol)のDMF(200μL)溶液に加えた。生じた溶液を室温で1時間撹拌し、次いで冷ジエチルエーテル(10mL)を加え、生じた沈殿物を遠心分離により回収した。残渣をDMF(100μL)に溶解させ、DMF:水混合物(1:1、1mL)中のEDTAの飽和溶液を加え、色が赤から薄黄色に変わるまで溶液を40℃で加熱した。反応混合物をHPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製し、精製したフラクションをDCM中20%TFAにより処理してOtBu基を除去した。溶媒を窒素気流下で除去し、残渣をHPLCにより精製すると、(4)を白色の固体として与えた(7mg、27%)。ESI-MS:(ポジティブイオン)[M+2H]m/z=941.4580(実験値)、[C8512918302+の計算値:m/z=941.4594。
【0121】
(1)の89Zr放射性標識。1Mシュウ酸中の89Zr(50μL、66MBq、Perkin Elmer NEZ308000MC)をMilliQ水(50μL)で希釈し、次いで一連の小体積のNaCO水溶液の添加(1M、5×5μL)により中和した(pH6~7)。次いで、HEPES緩衝液(41μL、1M、pH7.0)を加え、溶液を5分間静置してからpHを再び試験した。混合物がpH6~7を有することを確認した後で、125μL(50MBq)の89Zrを(1)に加え(100μL中100μg、1.8ナノモル/MBq)、反応混合物を室温で30分間静置し、次いでアリコートをラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。粗製のトレーサーを、Phenomenex StrataXカートリッジ(C18、60mg)によりエタノールを溶離液として使用して精製し、ほとんどの標識された生成物を含むフラクション(22MBq)を合わせ、PBS中8%エタノールに希釈して、1.2mLの最終体積にした。170μL中におよそ3.0MBqを含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)(およそペプチド質量6μg、5.4ナノモル)を調製した。
【0122】
(2)の89Zr放射性標識。1Mシュウ酸中の89Zr(100μL、72MBq、Perkin Elmer NEZ308000MC)をMilliQ水(100μL)で希釈し、次いで一連の小体積のNaCO水溶液の添加(1M、80μL)により中和した(pH6~7)。次いで、HEPES緩衝液(93μL、1M、pH7.0)を加え、溶液を5分間静置してからpHを再び試験した。混合物がpH6~7を有することを確認した後で、(2)(0.25M HEPES中500μL中500μg)を89Zr溶液に加え、反応混合物を室温で60分間静置して、次いでアリコートをラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。それは、70%以上の放射化学的収率を示した。粗製のトレーサーを、エタノールを溶離液として使用してPhenomenex StrataXカートリッジ(C18、60mg)により精製して、ほとんどの標識された生成物を含むフラクション(20MBq)を合わせ、PBS中8%エタノールに希釈して1.2mLの最終体積にした。画像化及び生体内分布のために、それぞれおよそ2.6MBq(およそ28μg)を含む6本のシリンジ(0.3mL BD Ultra-Fine(商標))を注射用に調製した。
【0123】
(3)の89Zr放射性標識。1Mシュウ酸中の89Zr(70μL、60MBq、Perkin Elmer NEZ308000MC)をMilliQ水(70μL)で希釈し、次いで一連の小体積のNaCO水溶液の添加(1M、4×10μL)により中和した(pH6~7)。次いで、HEPES緩衝液(59μL、1M、pH7.0)を加え、溶液を5分間静置してからpHを再び試験した。混合物がpH6~7を有することを確認した後で、190μL(50MBq)の89Zrを(3)に加え(75μL中150μg、1.8ナノモル/MBq)、反応混合物を室温で30分間静置し、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。粗製のトレーサーを、8%エタノールを溶離液として使用してPhenomenex StrataXカートリッジ(C18、60mg)により精製し、いくつかのフラクション(およそ250μL)を回収して、合わせると、およそ1.5mLの標識されたトレーサー中の17MBqを得た。220μL中におよそ2.6MBq(およそペプチド質量7.8μg、4.8ナノモル)を含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)を調製した。
【0124】
(4)の89Zr放射性標識。1Mシュウ酸中の89Zr(70μL、62MBq、Perkin Elmer NEZ308000MC)をMilliQ水(70μL)で希釈し、次いで一連の小体積のNaCO水溶液の添加(1M、3×10μL)により中和した(pH6~7)。次いで、HEPES緩衝液(59μL、1M、pH7.0)を加え、溶液を5分間静置してからpHを再び試験した。混合物がpH6~7を有することを確認した後で、(4)(22μL中220μg、1:1 DMSO:MilliQ、1.8ナノモル/MBq)を、89Zr溶液(220μL)に加え、反応混合物を室温で70分間静置し、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。それは70%以上の放射化学的収率を示した。粗製のトレーサーをPhenomenex StrataX(C18、60mg)カートリッジに吸着させ、次いでPBS中8%エタノールを溶離液として使用した。いくつかのフラクション(およそ250μL)を回収し、合わせると、95%以上の放射化学的純度を有するおよそ1.1mLの標識されたトレーサー中に17.1MBqを得た。画像化及び生体内分布のために、それぞれおよそ1.8MBq(およそ6.4μg、3.3ナノモル)を含む6本のシリンジ(0.3mL BD Ultra-Fine(商標))を注射用に調製した。
【0125】
(1)の68Ga放射性標識。HCl中の68Ga(450μL、42MBq)を、酢酸ナトリウム(1M、50μL、pH4.5)次いで(1)(2.9μL中2.9μg、2.6ナノモル)により緩衝し、反応混合物を室温で10分間静置して、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。10×PBS緩衝液(55μL、pH7.4)を混合物に加え、次いで1×PBS(550μL、pH7.4)でさらに希釈すると、2.4μMの最終ペプチド濃度を与え、150μL中におよそ3.5MBq(およそのペプチド質量0.4μg、0.36ナノモル)を含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)を調製した。
【0126】
(4)の68Ga放射性標識。HCl中の68Ga(900μL、42MBq)を、酢酸ナトリウム(1M、100μL、pH4.5)で、次いで(4)(5μL中5μg、2.6ナノモル)で緩衝し、反応混合物を室温で10分間静置し、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。10×PBS緩衝液(110μL、pH7.4)を混合物に加えて、2.4μMの最終ペプチド濃度を与え、150μL中におよそ4.0MBq(およそのペプチド質量0.68μg、0.36ナノモル)を含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)を調製した。
【0127】
PET-CT画像化及び生体内分布。雄のBalb/cヌードマウス(8.5週齢)又は雄のNSGマウス(12週齢)の右脇腹に、PBS:マトリゲル(1:1)中の6×10 LNCap細胞を皮下接種した。マウスの体重を量り、腫瘍を週に2回電子カリパスを使用して測定した。腫瘍体積(mm)を、長さ×幅×高さ×π/6として計算した。マウスを、画像化及び生体内分布試験に割り当てた(腫瘍体積:85~450mm)。次いで、89Zr-DFOSq-PSMAトレーサーを、尾静脈注射により6匹のマウスに静脈内投与した。注射後1、2、4、及び18時間で、3匹のマウスに、イソフルランを使用して麻酔をかけ、G8 PET/CTスキャナー(Perkin Elmer)のイメージングベッド上に配置した。CTスキャンを実施し、直ちに10分スタティックPETスキャンを実施した。最尤推定-期待値最大化(ML-EM)アルゴリズムを使用して、PET画像を再構築した。VivoQuant(Invicro)及び決定された腫瘍SUVmax又は腫瘍SUVmax/バックグラウンド平均(TBR)を使用して、PET画像を分析した。18時間での画像化の後、マウスを安楽死させ、選択した組織を摘出し、秤量し、Capintec(Captus 4000e)ガンマカウンターを使用して計測した。3匹のマウスの別なコホートを、上述の生体内分布分析のために注射後1時間で収集した。GraphPad Prism 7を使用してデータを分析し、トレーサーの間の差異を、t検定を使用して分析した。
【0128】
細胞結合及び内在化試験。LNCap細胞(150,000/ウェル)を、0.05%ポリ-L-リジンがプレコートされた24ウェルプレートのウェル中で10%FBSを含むRPMI 1640培地に播種し、一晩37℃及び5%COでインキュベートした。翌日細胞をPBSで2回洗浄し、ウェルあたり1mLの内在化緩衝液(internalisation buffer)(MEM、1%FBS)中で、1時間37℃でインキュベートした。次いで、緩衝液を、ウェルあたり1mlの、内在化緩衝液中に0.5μCi 89Zr-DFOsq-PSMAトレーサーを含む加温した溶液に替えた。細胞を、三連で、5、15、30、又は60分間、37℃及び5%COでインキュベートした。各時点で、細胞を、氷冷PBSで2回洗浄し、洗浄液を計測のために収集した(未結合フラクション)。次いで、細胞を、10μM PMPAを含む塩水中で、2回10分間インキュベートし、各洗浄液を計測のために収集した(表面結合フラクション)。次いで、細胞を、1M NaOHに可溶化させた(内在化フラクション)。BCAプロテインアッセイキット(Pierce)を使用して、総タンパク含量をこのフラクションで決定した。次いで、Perkin Elmer 2480 Wizard自動ガンマカウンターを使用して、未結合、表面結合、及び内在化フラクション中のZr-89放射能を測定した。表面結合及び内在化フラクションを、タンパク質のmgあたりの全体の添加放射能のパーセンテージとして表した。非特異的膜結合及び内在化は、細胞を、過剰の(10μM)PMPAの存在下で89Zr-DFOSq-PSMAトレーサーとインキュベートすることにより決定した。60分での89Zr-DFOSq-PSMAトレーサー取込みも、PSMA陰性細胞株であるDU145細胞(125,000細胞/ウェルで播種)中で決定した。生データを、GraphPad Prism 7を使用して分析した。
【0129】
結果
PSMAトレーサーの合成及び放射性標識
モノマー性PSMAリガンドの合成では、lys-尿素-glu尿素連結ジペプチド前駆体を、既報の文献(Eder et al.Bioconjugate Chemistry 2012,23(4),688-697)に記載される固相化学を使用して樹脂上で調製した。樹脂結合PSMA前駆体を、Fmoc保護p-アミノ安息香酸(PABA)又はp-アミノメチル安息香酸(PAMBA)と反応させて、樹脂結合中間体PABA-PSMAリガンド及び樹脂からの切断後にPhPSMAリガンドを生じさせた。PhPSMAリガンドを、pH9.0の0.1Mホウ酸緩衝液中でDFOSqに6~7日にわたり室温でコンジュゲートし、(1)リガンドを収率26%で与えた。EDTA架橋リガンドの合成では、最初に、PABA-PSMAリガンド前駆体をEDTA-無水物と反応させ、それに続いてエチレンジアミンと反応させて、ED-EDTA-PABA-PSMAリガンドビルディングブロックを与えた。DFOSqコンジュゲーションは、(1)に関して記載された類似の方法(スキーム1)を使用して収率16%で達成された。
【0130】
ダイマー性リガンドでは、DFOSqを、トリス(2-アミノエチル)アミンとの反応により修飾して、2つの遊離アミン基を含むDFOSq-トレンを与えた。2つの酸官能化PSMA分子を、異なるリンカー分子を含む別なビルディングブロックとして調製した。出発OtBu保護PSMA分子を、既報の手順に従って調製し、次いでグルタル酸無水物と反応させて、Glut-PSMA(OtBu)リガンドを与えた。芳香族リンカーを有する中間体を、最初に、PSMA(OtBu)リガンドを4-アミノメチル安息香酸と反応させ、それに続いてグルタル酸無水物と反応させること以外、同様に調製した。DFOSq-トレンを、Glut-PSMA(OtBu)リガンド又はGlut-PhPSMA(OtBu)リガンドと典型的なHATU/DIEAカップリングを使用して結合させたが、良好な収率でカップリングを達成するには、DFOSqモチーフ上のヒドロキシメート(hydroxymates)基の保護が必要であった。Fe及びOtBu基はどちらも、カップリング後に、その後の2工程で、それぞれEDTA及びDCM中10%TFAを使用して除去され、ダイマー性PSMAリガンドを22~27%収率で与えた。
【0131】
89ZrによるPSMAリガンドの放射性標識は、温和な反応条件下で達成された。89Zrを1Mシュウ酸溶液中に得たが、それを1M NaCOで中和し、HEPESで緩衝して、0.25Mの最終濃度にした。30~45分の反応時間で最大放射化学的収率を達成するために要求されるペプチド質量を、(1)リガンドを使用して最適化した。リガンドを0.1μg/MBq~2μg/MBqの89Zrで標識し、分析ラジオHPLCは、30分の反応時間で95%超の放射化学的収率に要求される最低ペプチド質量が2μg/MBq(マウスあたり1.8ナノモル/MBq)であることを示す。両ダイマー性リガンドを、中和された89ZrのMBqあたり同じ等価モル数の各ペプチドを使用して放射性標識して、(2)以外は類似の放射化学的収率を達成したが、(2)は、98%超の放射化学的純度を有する放射性トレーサーを得るために、他のトレーサーと比べて5倍過剰のペプチド量が必要であり、その理由は、ペプチド質量が低いと、多種の放射性標識された生成物(multiple radiolabelled products)ができたからである。68Gaによる放射性標識は、10分以内の反応時間で、室温で、はるかに低いペプチド濃度(およそ5μg/mLの68Ga溶出液、マウスあたり0.36ナノモル/MBq)で達成され、高い放射化学的収率及び純度のトレーサーを与え、粗製のトレーサーの精製は必要なかった。
【0132】
PET-CT画像化及び生体内分布
89Zr標識されたトレーサー:89Zr放射性標識されたPSMAトレーサーを、LNCaP(ヒトPSMAを発現している前立腺癌細胞株)腫瘍を有するマウスに、尾静脈により静脈内注射した。注射後1、2、4、及び18時間で、マウスに、イソフルランにより麻酔をかけ、10分にわたり画像化した。89Zr放射性標識されたPSMAトレーサーを注射されたマウスの1及び18時間での代表的なPET画像を図1に示し、各トレーサーの腫瘍SUVmaxの定量化を図2aに示す。全トレーサーのPET画像は、モノマー性トレーサーでは腎臓に見られる非常に強い取込みと腫瘍でのより低い取込みを示すが、両ダイマー性トレーサーはより高い取込みを示す。全時点で、他の全トレーサーと比べて(4)トレーサーで、より高い腫瘍SUVmaxの傾向があった。同様に、生体内分布結果は、他と比べて(4)でより高い腫瘍%ID/gの傾向を示した。腫瘍取込み値の比較を図2bに示し、1及び18時間でのトレーサーの組織生体内分布データを図3にまとめる。全トレーサーは、18時間で腫瘍から実質的に除かれ((1)5.4から2.2%ID/g、(2)3.2から1.0%ID/g、(3)5.9から2.5%ID/g及び(4)9.3から3.7%ID/g)、これらのデータは、全トレーサーの1時間取込みが18時間で55~65%著しく減少した画像化データ図2aにより支持される。
【0133】
68Ga標識されたトレーサー:68Ga(1)及び68Ga(4)を注射されたマウスの代表的なPET画像を図4に示し、腫瘍SUVmaxの定量化を図5aに示す。PET画像は、68Ga(1)の腎臓、胆嚢、及び腸への高い取込みとLNCap腫瘍への中程度取込みを示す。68Ga(4)は、高い腎臓取込み、中程度の腫瘍取込み、及び腸取込みなしと関連していた。68Ga(4)の腫瘍取込みは、注射後1及び2時間でそれぞれ68Ga(1)の1.6及び1.8倍であった。これは、68Ga(4)の腫瘍%ID/gが、注射後1時間で(10.8±1.3対6.5±0.4)及び2.5時間で(8.6±1.0対4.1±0.5)68Ga(1)より高かった生体内分布結果と一致する。1及び2時間でのトレーサーの組織生体内分布を図5bにまとめる。68Ga(1)の著しい腫瘍クリアランスが注射後2.5時間で明らかであった(1時間で6.5±0.4%ID/g対2.5時間で4.1±0.5%ID/g)。対照的に、注射後1及び2.5時間で68Ga(4)腫瘍滞留に著しい変化はなかった(10.8±1.3%ID/g対8.6±0.9%ID/g、図5b)。これらのデータは、それぞれ2時間で、68Ga(1)の1時間取込みが13%減少し、68Ga(4)取込みが9%減少する画像化データ(図5a)により支持される。
【0134】
細胞結合及び内在化試験
過剰なPMPAがある場合とない場合の(1)の表面結合は全時点で類似であった(2%AR/mgタンパク質)。内在化活性は60分のインキュベーションで7%AR/mgタンパク質に増加したが、最大5%AR/mgタンパク質の内在化が過剰なPMPAの存在下で見られた。軽微な結合が、PSMA陰性細胞株であるDU145に見られた。60分で、6%未満の添加放射能/mgタンパク質(%AR/mg)は細胞表面結合であったが、39%超の%AR/mgは内在化された。内在化放射能は60分試験の過程で増加した。内在化及び表面結合放射能は、過剰なPMPAにより効果的に遮断され、表面結合放射能は2.5%未満で内在化放射能は13%AR/mgタンパク質未満であった。軽微な結合が、PSMA陰性細胞株であるDU145に見られた。
【0135】
種々の新たなモノマー性及びダイマー性のPSMAコンジュゲートを設計し、合成した。キレーター部とPSMA結合モチーフの間のリンカーの長さ及び親油性が、驚くべきことに、トレーサーの生理学的性質及び結合親和性を制御する重要な因子であることを見出した。PSMAコンジュゲートを、89Zrにより容易に放射性標識して、放射性標識されたトレーサーを高い放射化学的収率及び純度で与えた。インビボデータは、インビトロ試験と非常に良好に相関する。89ZrDFOSq-ビスPhPSMAは、特異的結合及びLNCap細胞への迅速な内在化をインビトロで示した。89Zr試験から得られた結果に基づき、2種のトレーサーを選択して、68Ga放射性標識及びインビボ試験を調査した。68Ga(1)は、68Ga(3)より高い腸取込みと関連しており、注射後2.5時間でLNCaP腫瘍から実質的に除去された。68Ga(4)は、PET画像化及び生体内分布の両方によりモノマー性アナログより高い腫瘍取込みを示したが、これらの結果は89Zr試験で得られたデータと一致する。
【0136】
【表1】
【0137】
【表2】
【0138】
lys-尿素-glu尿素連結ジペプチド部分に基づく数種のPSMAトレーサーを設計し、合成し、PSMA結合モチーフのモノマー性及びダイマー性配置でDFOSqリガンドに戦略的にバイオコンジュゲートした。リガンドを、温和な条件下で89Zr及び68Ga放射性核種により容易に放射性標識でき、高放射化学的収率及び純度を与える。トレーサーは、PET-CT及び生体内分布分析に基づく前立腺癌の診断用画像化の可能性を示した。
【0139】
実施例2-神経内分泌腫瘍中のSSTR2を標的とする放射線画像化剤
発明者らは、89ZrDFO-sqコンジュゲートされたオクトレオチド及びオクトレオテートなどのソマトスタチンアナログに基づく2種の新たな放射性トレーサーを開発し、比較した(図10)。両ペプチドは、多くの種類の神経内分泌腫瘍中で過剰発現されるソマトスタチンサブタイプ2受容体(sstr2)に結合する。
【0140】
材料及び方法
一般的な実験及び材料。特記されない限り、全試薬を商業的供給源から購入し、さらに精製せずに使用した。フラッシュカラムクロマトグラフィーを、シリカゲル(40~63ミクロン)を固定相として使用して実施した。分析TLCは、プレコートされたシリカゲルプレート(厚さ0.25mm、60F254、Merck、Germany)で実施し、紫外線の下で可視化した。非放射性試料のHPLC精製及び分析は、Agilent 1100シリーズで、溶媒A=Milli中0.1%TFA及び溶媒B=CHCN中0.1%TFAを使用して実施した。分析HPLCでは、Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム150×4.6mmを1mL/分の流量で使用し、Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mmを5~8mL/分の流量で分取HPLCに使用した。ラジオHPLCは、Shimadzu SPD-10A VP UV検出器とそれに続いて放射線検出器を有する、Shimadzu SCL-10A VP/LC-10 AT VPシステムにより実施した(プリアンプリファイヤー、Ortec 925-SCINT ACE mateプリアンプリファイヤーを有するOrtecモデル276フォトマルチプライヤーベース、バイアス電源及びSCA、Bicron 1M 11/2フォトマルチプライヤーチューブ)。Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム150×4.6mm MillQ中0.05%TFA緩衝液を使用。
【0141】
リジン側鎖保護Tyr-オクトレオチド/オクトレオテートペプチドの一般的な合成。配列[D-Phe-Cys(Acm)-Tyr-(tBu)-D(Trp)-Lys(Boc)-Thr(tBu)-Cys(Acm)-Thr-(tBu)-OL又はOH]を有するTyr-オクトレオチド又はTyr-オクトレオテート直鎖ペプチドを、CEM Liberty Blue(商標)自動化マイクロ波ペプチド合成装置で、標準的なFmoc自動化固相ペプチド合成により調製した。オクトレオテートペプチドでは、第1のアミノ酸Fmoc-Thr(OtBu)-OHをワング樹脂上にロードし、オクトレオチドでは、市販のFmoc-トレニノール(tBu)-2-Cl-Trt樹脂を使用した。各カップリングサイクルは、1当量のHATU及び5当量のDIPEA並びに脱保護工程用のDMF中20%ピペリジンを使用し、N-末端Fmoc基の最終的な脱保護はなかった。樹脂結合直鎖ペプチドを、DMF(20mL)中のヨウ素(1mg/樹脂のmg)を使用して環化した。樹脂切断は、トリイソプロピルシラン(2.5%)、蒸留水(2.5%)及び3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(2.5%)、チオアニソール(2.5%)及びTFA(90%)の5mL溶液を使用して、穏やかに振盪しながら2時間室温で実施した。次いで、混合物を濾過し、Nを散布して体積を減らし、次いでエーテル(40mL)を加えてペプチドを沈殿させ、それを遠心分離後に回収した。粗製のペプチド材料をセミ分取逆相HPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製した。ペプチドが何であるかをESI-MSにより確認した。精製された環状ペプチドをDMF(1mL)に溶解させ、DIPEA(1当量)の存在下4時間室温でジ-tert-ブチルジカーボネート(5当量)で処理して、リジン側鎖をBoc基により保護した。冷ジエチルエーテルを反応混合物に加えて、生成物を沈殿させ、それを遠心分離により回収した。残渣を、DMF中20%ピペリジン(1mL)により30分間室温で処理し、次いで冷ジエチルエーテルで沈殿させ、残渣を遠心分離により回収し、セミ分取逆相HPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製した。ESI-MS:Lys(Boc)TIDE(ポジティブイオン)[M+H]m/z=1135.4952(実験値)、[C54751013の計算値:m/z=1135.4956;Lys(Boc)TATE(ポジティブイオン)[M+H]m/z=1149.4739(実験値)、[C54731014の計算値:m/z=1149.4749。
【0142】
オクトレオチド/オクトレオテートペプチドのDFOSqコンジュゲーションの一般的手順。リジン(Boc)側鎖保護オクトレオチド及びオクトレオテートペプチド並びにDFO-Sq(5当量)をDMSO(100μL)に溶解させ、次いでホウ酸緩衝液(0.1M、pH9.0、900uL)を加えた。溶液を、室温で7日間ゆっくりと撹拌し、次いで10%TFAで中和して、セミ分取逆相HPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)により精製した。精製されたフラクションを、DCM中20%TFAで、30分間室温で処理し、次いでTFAをN流の下で除去し、それに続いてHPLC(Phenomenex Luna(登録商標)5μm C18(2)100Å、LCカラム250×21mm MillQ水中0.1%TFA緩衝液及びアセトニトリルを使用)を行った。ESI-MS:DFOSqTIDE(ポジティブイオン)[M+H]m/z=1673.7716(実験値)、[C781131621の計算値:m/z=1673.7708;DFOSqTATE(ポジティブイオン)[M+H]m/z=1687.7500(実験値)、[C781111622の計算値:m/z=1687.7500。
【0143】
DFOSqTIDEを89Zr放射性標識する。1Mシュウ酸中の89Zr(60μL、60MBq、Perkin Elmer NEZ308000MC)をMilliQ水(60μL)で希釈し、次いで一連の小体積のNaCO水溶液の添加(1M、4×10μL)により中和した(pH6~7)。次いで、HEPES緩衝液(54μL、1M、pH7.0)を加え、溶液を5分間静置してからpHを再び試験した。混合物がpH6~7を有することを確認した後で、DFO-Sq-TIDEの溶液(60μLの0.25M HEPES緩衝液中120μg、10%DMSO、1.18ナノモル/MBq)を加え、反応混合物を室温で30分間静置し、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して20~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。粗製のトレーサーを、Phenomenex StrataXカートリッジ(C18、60mg)により、エタノールを溶離液として使用して精製した。いくつかのフラクション(およそ100μL)を回収し、ほとんどの放射能を含むフラクションを滅菌濾過したPBS中で希釈し、8%(v/v)の最終エタノール濃度にした。それぞれおよそ2.2MBq(4.4μgのペプチド、165μL、2.6ナノモル)を含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)を調製した。
【0144】
DFOSqTATEを89Zr放射性標識する。1Mシュウ酸中の89Zr(70μL、56MBq、Perkin Elmer NEZ308000MC)をMilliQ水(70μL)で希釈し、次いで一連の小体積のNaCO水溶液の添加(1M、4×10μL)により中和した(pH6~7)。次いで、HEPES緩衝液(62μL、1M、pH7.0)を加え、溶液を5分間静置してからpHを再び試験した。混合物がpH6~7を有することを確認した後で、DFO-Sq-TATEの溶液(56μLの0.25M HEPES緩衝液中112μg、10%DMSO、1.19ナノモル/MBq)を加え、反応混合物を室温で30分間静置し、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して20~100%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。粗製のトレーサーを、Phenomenex StrataXカートリッジ(C18、60mg)により、エタノールを溶離液として使用して精製した。いくつかのフラクション(およそ100μL)を回収し、ほとんどの放射能を含むフラクションを滅菌濾過したPBS中に希釈して、8%(v/v)の最終エタノール濃度にした。それぞれおよそ2.5MBq(5μgのペプチド、150μL、2.9ナノモル)を含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)を調製した。
【0145】
オクトレオテート/オクトレオチドトレーサーのPET-CT画像化及び生体内分布。雌のBalb/cヌードマウス(9週齢)の右脇腹に、PBS:マトリゲル(1:1)中の3×10AR42J細胞を皮下接種した。マウスの体重を量り、電子カリパスを使用して腫瘍を週に2回測定した。腫瘍体積(mm)を、長さ×幅/2として計算した。12匹のマウスを画像化及び生体内分布試験に割り当てた(腫瘍体積:170~550mm)。DFOSqTIDE(2.5MBq)及びDFOSqTATE(2.2MBq)を、尾静脈注射によりマウスに静脈内投与した。注射後1、2、4、及び18時間で、3匹のマウスにイソフルランを使用して麻酔をかけ、G8 PET/CTスキャナー(Perkin Elmer)のイメージングベッド上に配置した。CTスキャンを実施して、それに続いて直ちに10分のスタティックPETスキャンを行った。PET画像を、最尤推定-期待値最大化(ML-EM)アルゴリズムを使用して再構成した。VivoQuant(Invicro)並びに決定された腫瘍SUVmax、腫瘍SUVmax/バックグラウンド平均(TBR)、及び腫瘍SUVmax/肝臓平均(TLR)を使用して、PET画像を分析した。18時間で画像化の後、マウスを安楽死させ、選択した組織を摘出し、秤量し、Capintec(Captus 4000e)ガンマカウンターを使用して計測した。3匹のマウスの別なコホートを、生体内分布分析のために注射後1時間で収集した。GraphPad Prism 7を使用してデータを分析し、トレーサー間の差異を、t検定を使用して分析した。
【0146】
DFOSqTIDEの68Ga放射性標識。HCl中の68GaIII(630μL、44MBq)を、酢酸ナトリウム(1M、70μL、pH4.5)で、次いでHDFOSq-TIDE(6μL DMSO中の6μg、3.3ナノモル)で緩衝し、反応混合物を室温で15分間静置し、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~95%の緩衝液、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。トレースは、98%超の放射化学的純度と共に、98%超の放射化学的収率を示した。反応混合物をMilliQ水(470μL)で希釈し、次いで10×PBS緩衝液(130μL、pH7.4)で緩衝して、1.3mLの最終体積にした。200μL中におよそ3.5MBq(およそのペプチド質量1μg、0.5ナノモル)を含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)を調製した。
【0147】
DFOSqTATEの68Ga放射性標識。HCl中の68GaIII(900μL、40MBq)を、酢酸ナトリウム(1M、100μL、pH4.5)で、次いでHDFOSq-TATE(6μL DMSO中の6μg、3.3ナノモル)で緩衝し、反応混合物を室温で15分間静置し、次いでアリコートを、ラジオHPLC(15分にわたり1mL/分でAに対して0~95%の緩衝液B、A=MilliQ中0.05%TFA及びB=アセトニトリル中0.05%TFA、Luna C18カラム4.6×150mm、5μm)により分析した。トレースは、95%超の放射化学的純度と共に、95%超の放射化学的収率を示した。反応混合物をMilliQ水(100μL)で希釈し、次いで10×PBS緩衝液(110μL、pH7.4)で緩衝して、1.2mLの最終体積にした。200μL中におよそ2.3MBq(およそのペプチド質量1.0μg、0.5ナノモル)を含む6本のシリンジ(BD Ultra-Fine(商標)、0.3mL)を調製した。
【0148】
結果及び議論
合成及び放射性標識又はDFOSqTIDE/DFOSqTATE
樹脂結合直鎖Tyr-オクトレオチド/オクトレオテートペプチドは、標準的な自動化固相ペプチド合成技法をFmoc保護アミノ酸と共に使用して、ワング及びクロロトリチル樹脂上でのHATU/DIPEAカップリングを使用し、最終的なFmoc脱保護工程なしで調製した。Fmoc基の脱保護は、各サイクルでDMF中20%ピペリジンにより固相上で達成した。第2と第7システイン残基の間の分子内ジスルフィド架橋による環化は、システイン残基上のアセトアミドメチル(Acm)のインサイチュ脱保護と、それに続くDMF中のヨウ素を使用するジスルフィド結合形成により達成した。環化の後、固体担体からの最終的な切断及び残存する保護基の脱保護を、標準的なトリフルオラ酢酸(trifluoracetic acid)カクテルを使用して達成した(スキーム3)。DFOsqのバイオコンジュゲーションは、特にN-末端D-Pheユニット上で望ましく、その理由は、ペプチドのD(Trp)-Lys-Thr部分が受容体結合において重要な役割を果たすからであり、そのため、リジンユニットを、Boc無水物を使用して保護し、それに続いてD-Pheユニット上の最終的なFmoc脱保護を、DMF中20%ピペリジンを使用して行った。生じたLys(Boc)-ペプチドは、ホウ酸緩衝液により良好な溶解度を示し、DFOSqとのカップリングは、ペプチド及びDFOSqを0.1Mホウ酸緩衝液(pH9.0)中で10%DMSOと共に7日にわたりインキュベートすることにより達成した。最終的なDFOsqコンジュゲートされたペプチドアセンブリーは、TFAによるリジンからのBoc基の脱保護と、それに続くHPLC精製の後に得られた。
【化23】
スキーム3:DFOSq-オクトレオテート及び-オクトレオチドペプチドの合成(i)ヨウ素、DMF、(ii)TFAカクテル、(iii)Boc-無水物、DIPEA、DMF、(iv)DMF中20%ピペリジン、(v)DFOSq、0.1Mホウ酸緩衝液、pH9.0、(vi)DCM中20%TFA。
【0149】
89Zrによる両ペプチドの放射性標識を、温和な反応条件下で達成した。89Zrを、1Mシュウ酸溶液中に得て、それを1M NaCOで中和し、HEPESで緩衝して、0.25Mの最終濃度にした。ペプチドを、89Zrの2μg/MBqの濃度で標識し、分析ラジオHPLCは、30~60分の反応時間で95%超の放射化学的収率を示した。粗製のトレーサーを、エタノールを溶離液として使用してPhenomenex StaraX C18カートリッジにより精製して、98%超の放射化学的純度を有するトレーサーが生じた(図11)。
【0150】
DFOSq-TATE及びDFO-TIDEの両方の[68Ga]GaIIIによる放射性標識を、室温で、10分で達成した。68Ge/68Gaジェネレーターの0.05M HClによる溶離から得られた[68Ga]GaIIIの水性混合物を、酢酸ナトリウム緩衝液(1M、pH4.5)によりpH4~5に部分的に中和した。比較的低いペプチド質量(およそ150ng/[68Ga]GaIIIのMBq)の使用によっても、68GaDFOSqTATE及び68GaDFOSq-TIDEを高い放射化学的収率(98%以上)及び純度((98%以上)を得ることが可能であり、インビボ実験のために粗製のトレーサーの精製は必要ではなかった(図14)。
【0151】
89Zr-DFOSqTIDE/DFOSqTATEのPET-CT画像化及び生体内分布
AR42J(ラット膵臓癌細胞株)腫瘍を有する上述のBalb/cヌードマウスに、尾静脈注射により、89ZrDFOSqTATE又は89ZrDFOSqTIDE(2~3MBq)を静脈内注射した。注射後1、2、4、及び18時間で、マウスに、イソフルランにより麻酔をかけ、10分にわたり画像化した。DFOSqTIDE及びDFOSqTATEの注射後1時間で、腎臓、腫瘍、及び肝臓への取込みを観察した。DFOSqTIDE及びDFOSqTATEを注射したマウスの代表的なPET画像を図12に示し、各放射性トレーサーの腫瘍SUVmaxの定量化を図13aにまとめる。
【0152】
これらの知見は、DFOSqTATEの腫瘍%ID/gが、DFOSqTIDEより、1時間(10.4±0.5対3.4±0.4、P<0.001)、及び18時間(4.9±0.8対1.7±0.1、P<0.05)で高かったという生体内分布結果と一致している。画像化データは、DFOSqTATEより低い腫瘍対肝臓比をもたらす、肝臓によるDFOSqTIDEの高い取込みを示す。生体内分布データにより、DFOSqTIDEの、DFOSqTATEより高い肝臓中の蓄積が確認される(注射後1時間で10.8±0.4対4.3±0.4%ID、P<0.01)。図13b中の生体内分布データは、両放射性トレーサーが18時間で腫瘍から実質的に除去されたことを表す。DFOSqTIDEでは、%ID/gは、1時間での3.4±0.4から18時間での1.5±0.1に減少し(P<0.05)、DFOSqTATEは、1時間での10.4±0.5から18時間での4.9±0.8に減少した(P<0.01)。これらのデータは、DFOSqTIDEの1時間取込みが18時間で55%減少し(P<0.01)、DFOSqTATE取込みが58%減少した(P<0.01)画像化データ(図12)により支持される。
【0153】
要約すると、89Zr-DFO-SqTATEは、Balb/cヌードマウスにおいて89Zr-DFO-Sq-TIDEより高いAR42J腫瘍取込み及びより低い肝臓蓄積を示した。両放射性トレーサーは、注射後18時間までにAR42J腫瘍から実質的に除去された。
【0154】
【表3】
【0155】
両ペプチドを、温和な反応条件下で68Gaにより容易に放射性標識できる。68GaをHCl溶液として得て、それを酢酸ナトリウム(1M、pH4.5)により緩衝して、pHを4.0に上げてから標識した。10分後の反応混合物の分析ラジオHPLCは、精製を必要としない高い放射化学的純度の完全な標識を示す(図14)。
【0156】
2種の新たなSSTR2結合性Tyr-オクトレオテート及びオクトレオチドペプチドを設計し、合成し、DFOSqリガンドにN-末端に戦略的にバイオコンジュゲートした。ペプチドは合成が容易で、温和な条件下で89Zr及び68Ga放射性核種により容易に放射性標識でき、高い放射化学的収率及び純度を与える。両ペプチドは、PET-CT及び生体内分布分析に基づく神経内分泌腫瘍の診断用画像化の可能性を示した。
【0157】
68GADFOSqTIDE/DFOSqTATEのPET-CT画像化及び生体内分布
68GaDFOSq-TIDE及び68GaDFOSq-TATEトレーサーを、尾静脈により、AR42J(ラット膵臓癌細胞株)腫瘍を有するBalb/cヌードマウスに静脈内注射した(2~3MBq、1μg、0.5ナノモル)。PET画像を、注射後1及び2時間で得た(図15a及びb)。PET画像を検査すると、両トレーサーで腫瘍の明確な描写が表されるが、68GaDFOSq-TATEはより高い腫瘍取込みを有する。標準取込値(SUVmax=組織中の放射能/注射された放射能/BW)を使用する画像中の取込みの定量化により、68GaDFOSq-TATEでより高い取込みを確認する(1時間;SUVmax1.21±0.20と比べて1.8±0.2、図15c)。68GaDFOSqTATEのより高い腫瘍取込みは、注射後2時間でSUVmaxが5%しか減少しない高度の腫瘍滞留とも関連していた一方で、68GaDFOSqTIDEの腫瘍SUVmaxは、注射後2時間で30%68GaDFOSqTATE減少した。両トレーサーは血液から迅速に除去され、安定なガリウム-68錯体と一致する骨中の低い取込み並びに筋中の低い取込みがある。両トレーサーは、腎臓及び膀胱中に著しい取込みを有する。過剰なそれぞれの非放射性のペプチド(20倍、20μg、11.1ナノモル)を加えると、腫瘍取込みが著しく減少し、腫瘍中の両トレーサーの取込みが受容体介在性であることを示唆している。
【0158】
高い腫瘍取込みは、同じマウスモデルでのエクスビボ生体内分布試験により確認したが、試験では、マウスに、68GaDFOSq-TIDEか68GaDFOSq-TATEのいずれか(2~3MBq、1μg、0.5ナノモル)を注射し、次いで投与後1時間か2時間のいずれかで安楽死させた。腫瘍及び主要器官中の組織のグラムあたりの注射された放射能の量(%IA/g)を定量化した(図16)。注射後1時間で、68GaDFOSqTATE(9.80±2.33%IA/g)の投与は、68GaDFOSqTIDE(8.81±1.03%IA/gそれぞれ)より高い腫瘍中の取込みをもたらし、PET画像と一致した。68GaDFOSqTIDEの初期の腫瘍取込みは、注射後1時間での8.81±1.03%IA/gから注射後2時間での4.4±1.1%IA/gに減少した。対照的に、注射後1時間での68GaDFOSqTATEの高い腫瘍取込み(9.80±2.33%ID/g)は、PET画像と一致して注射後2時間で維持されている(9.22±0.92%ID/g)。68GaDFOSqTIDEは、68GaDFOSqTATE(1時間、15.98±3.27%IA/g)より、腎臓中のより高度の取込み(1時間、37.56±3.50%IA/g)を示す。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
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【国際調査報告】