(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的とすることによる腫瘍組織の破壊の方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20221114BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20221114BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20221114BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221114BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221114BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/18 ZNA
C07K14/725
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61P35/00
A61P37/02
A61K39/395 N
A61K35/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518209
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 US2020052227
(87)【国際公開番号】W WO2021061778
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アルベルダ スティーブン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ピュレ エレン
(72)【発明者】
【氏名】トッド レスリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085CC23
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、イヌ、マウスまたはヒト腫瘍関連細胞上の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の発現に関連する疾患、障害または病態を処置する際に使用するための、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む組成物および方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)であって、
抗原結合ドメインが、
3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;
3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域と
を含む、CAR。
【請求項2】
抗原結合ドメインが、
(a)SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または
(b)SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および/または
(c)SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および/または
(d)完全長抗体もしくはその抗原結合断片、Fab、単鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体からなる群より選択される抗原結合ドメイン;および/または
(e)SEQ ID NO:11もしくは13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv)
を含む、請求項1記載のCAR。
【請求項3】
(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能である;ならびに/または
(b)ヒトFAPに結合可能である;ならびに/または
(c)イヌFAPに結合可能である;ならびに/または
(d)ネズミFAPに結合可能である;ならびに/または
(e)ヒト、イヌおよびネズミFAPに結合可能である;ならびに/または
(f)ヒンジドメインをさらに含み、該ヒンジドメインがCD8アルファのヒンジドメインを含む、
請求項1~2のいずれか一項記載のCAR。
【請求項4】
膜貫通ドメインが、
(a)人工疎水性配列、ならびにI型膜貫通タンパク質、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)、およびCD154の膜貫通ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインからなる群より選択される;ならびに/または
(b)CD8の膜貫通ドメインを含む;ならびに/または
(c)CD8アルファの膜貫通ドメインを含む;ならびに/または
(d)キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインを含む、
請求項1~3のいずれか一項記載のCAR。
【請求項5】
細胞内ドメインが、
(a)共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む;ならびに/または
(b)TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインの1つまたは複数を含む;ならびに/または
(c)4-1BBの共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(d)DAP12の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(e)CD28の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(f)4-1BBの共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(g)DAP12の共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(h)ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を担持する細胞質受容体、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、もしくはそのバリアントの細胞質シグナル伝達ドメインからなる群より選択される細胞内ドメインを含む;ならびに/または
(i)細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζの細胞内ドメインを含む、
請求項1~4のいずれか一項記載のCAR。
【請求項6】
SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載のCARをコードするポリヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項8】
抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、
抗原結合ドメインが、
3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;
3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域と
を含む、核酸。
【請求項9】
抗原結合ドメインが、
(a)SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域を含む;および/または
(b)SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域を含む;および/または
(c)SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む;および/または
(d)SEQ ID NO:12もしくは14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる単鎖可変断片(scFv)を含む、
請求項8記載の核酸。
【請求項10】
(a)膜貫通ドメインが、CD8アルファの膜貫通ドメインを含む;ならびに/または
(b)細胞内ドメインが、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む;ならびに/または
(c)細胞内ドメインが、4-1BBの共刺激性ドメインを含む共刺激性シグナル伝達ドメインを含む;ならびに/または
(d)細胞内ドメインが、DAP12の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(e)細胞内ドメインが、CD28の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(f)細胞内ドメインが、4-1BBの共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(g)細胞内ドメインが、DAP12の共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;ならびに/または
(h)細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζの細胞内ドメインを含む、
請求項8~9のいずれか一項記載の核酸。
【請求項11】
SEQ ID NO:22または24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項13】
発現ベクターである、ならびに/または、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、請求項12記載のベクター。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項記載のCAR、請求項8~11のいずれか一項記載の核酸、または請求項12~13のいずれか一項記載のベクターを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞。
【請求項15】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、
CARが、
3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;
3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域と
を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞。
【請求項16】
CARが、
(a)SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および/または
(b)SEQ ID NO:11もしくは13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv);および/または
(c)SEQ ID NO:23もしくは25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列
を含む、請求項15記載の改変された免疫細胞。
【請求項17】
CARが、
(a)FAPに結合可能である;ならびに/または
(b)ヒトFAPに結合可能である;ならびに/または
(c)イヌFAPに結合可能である;ならびに/または
(d)マウスFAPに結合可能である;ならびに/または
(e)ヒト、イヌおよびマウスFAPに結合可能である、
請求項14~16のいずれか一項記載の改変された細胞。
【請求項18】
(a)改変されたT細胞である;および/または
(b)改変されたNK細胞である;および/または
(c)自家細胞である;および/または
(d)ヒト対象から得られた自家細胞である;および/または
(e)イヌ対象から得られた自家細胞である;および/または
(f)同種異系細胞である、
請求項14~17のいずれか一項記載の改変された細胞。
【請求項19】
請求項14~18のいずれか一項記載の改変された細胞の治療有効量と薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項20】
それを必要とする対象における疾患を処置する方法であって、請求項14~18のいずれか一項記載の改変された細胞、または請求項19記載の薬学的組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項21】
(a)疾患が、免疫学的疾患、血液疾患、自己免疫疾患、線維症、およびがんからなる群より選択される;ならびに/または
(b)疾患が、がんである;ならびに/または
(c)疾患が、心筋線維症である;ならびに/または
(d)疾患が、がんであり、がんが、FAP発現がん関連細胞を含む、
請求項20記載の方法。
【請求項22】
(a)FAP発現がん関連細胞が、がん関連線維芽細胞(CAF)である;および/または
(b)FAP発現がん関連細胞が、FAP発現脂肪細胞である;および/または
(c)FAP発現がん関連細胞が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である;および/または
(d)FAP発現がん関連細胞が、腫瘍関連好中球(TAN)である;および/または
(e)FAP発現がん関連細胞が、骨髄由来抑制細胞(MDSC)である;および/または
(f)FAP発現がん関連細胞が、がん幹細胞(cancer-initiating cell)である、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、
CARが、
SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、
SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含み;
がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連細胞を含む、
方法。
【請求項24】
CARが、FAP発現がん関連細胞に結合し、FAPを発現しない細胞には結合しない、請求項23記載の方法。
【請求項25】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連し、
CARが、
SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;
SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含む、方法。
【請求項26】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連し、
CARが、
SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;
SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含む、方法。
【請求項27】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連し、
CARが、
SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;
SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含む、方法。
【請求項28】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連し、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項29】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連し、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項30】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連し、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項31】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連し、
CARが、
SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;
SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含む、方法。
【請求項32】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連し、
CARが、
SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;
SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含む、方法。
【請求項33】
FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連し、
CARが、
SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;
SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と
を含む、方法。
【請求項34】
免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍抗原ワクチン、または新生細胞標的療法を施す工程をさらに含む、請求項20~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
対象が、ヒトである、請求項20~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
対象が、非ヒト動物である、請求項20~35のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法119条(e)の下、2019年9月23日に出願された米国仮特許出願第62/904,340号の優先権を主張する権利を有し、該仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された認可番号CA172921およびCA217805の下、政府支援によってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腫瘍は、形質転換細胞および多数の非形質転換細胞を含む異種細胞集団から構成される。様々な細胞型の出現率は、腫瘍間および腫瘍の進行段階の違いによって変動するが、これらの細胞型には、浸潤性の炎症細胞および免疫細胞、内皮細胞および間葉系由来平滑筋細胞、周皮細胞、ならびに腫瘍関連線維芽細胞(TAF)が含まれる。TAFは、正常な線維芽細胞とは表現型により識別可能な異種集団である。線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、肉芽組織だけでなく腫瘍ならびに線維性病変における、反応性線維芽細胞のマーカーであることが明らかになった。
【0004】
FAPは、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV/CD26)と最も高い類似性を共有する、ポストプロリンジペプチジルアミノペプチダーゼファミリーに属するII型膜貫通細胞表面タンパク質である。FAPは、調査したヒト上皮がんの90%超において、TAFおよび周皮細胞によって選択的に発現される。FAPはまた、胚発生段階に、創傷治癒組織中に、肝硬変および特発性肺線維症などの慢性の炎症性および線維性状態において、ならびに骨および軟組織肉腫また一部の黒色腫においても発現される。しかしながら、FAPの発現が良性病変または正常成人組織において検出されない一方で、DPPIVは、多種多様な細胞型においてより広範に発現される。インビトロ研究では、FAPが、ゼラチンおよびI型コラーゲンを分解可能なコラーゲン分解活性を含むジペプチジルペプチダーゼとエンドペプチダーゼの両活性を有することが示されているが、そのインビボ基質はまだ明らかになっていない。
【0005】
腫瘍関連細胞により発現されるFAPを直接標的とすることによってがんを処置する治療法の開発が、当技術分野において必要とされている。本発明はこの必要性に応えるものである。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載されるように、本発明は、イヌ、マウスまたはヒト腫瘍関連細胞上のFAPの発現に関連する疾患、障害または病態を処置する際に使用するための、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む組成物および方法に関する。
【0007】
一局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む。
【0008】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、(a)SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/または(b)SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および/または(c)SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および/または(d)完全長抗体もしくはその抗原結合断片、Fab、単鎖可変断片(scFv)または単一ドメイン抗体からなる群より選択される抗原結合ドメイン;および/または(e)SEQ ID NO:11もしくは13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0009】
ある特定の態様では、CARは、(a)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能である;および/または(b)ヒトFAPに結合可能である;および/または(c)イヌFAPに結合可能である;および/または(d)ネズミFAPに結合可能である;および/または(e)ヒト、イヌおよびネズミFAPに結合可能である;および/または(f)ヒンジドメインをさらに含み、該ヒンジドメインは、CD8アルファのヒンジドメインを含む。
【0010】
ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、(a)人工疎水性配列、ならびにI型膜貫通タンパク質、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)、およびCD154の膜貫通ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインからなる群より選択される;および/または(b)CD8の膜貫通ドメインを含む;および/または(c)CD8アルファの膜貫通ドメインを含む;および/または(d)キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0011】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、(a)共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む;および/または(b)TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインの1つまたは複数を含む;および/または(c)4-1BBの共刺激性ドメインを含む;および/または(d)DAP12の共刺激性ドメインを含む;および/または(e)CD28の共刺激性ドメインを含む;および/または(f)4-1BBの共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;および/または(g)DAP12の共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;および/または(h)ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を担持する細胞質受容体、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、またはそのバリアントの細胞質シグナル伝達ドメインからなる群より選択される細胞内ドメインを含む;および/または(i)細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞内ドメインを含む。
【0012】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0013】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定されるCARのいずれかをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0014】
別の局面では、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む、核酸を提供する。
【0015】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、(a)SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域を含む;および/または(b)SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域を含む;および/または(c)SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域と、SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む;および/または(d)SEQ ID NO:12もしくは14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0016】
ある特定の態様では、(a)膜貫通ドメインは、CD8アルファの膜貫通ドメインを含む;および/または(b)細胞内ドメインは、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む;および/または(c)細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインを含む共刺激性シグナル伝達ドメインを含む;および/または(d)細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインを含む;および/または(e)細胞内ドメインは、CD28の共刺激性ドメインを含む;および/または(f)細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;および/または(g)細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む;および/または(h)細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞内ドメインを含む。
【0017】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:22または24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0018】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定される核酸のいずれかを含むベクターを提供する。ある特定の態様では、ベクターは、発現ベクターである、ならびに/または、ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される。
【0019】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定されるCARのいずれか、核酸のいずれか、またはベクターのいずれかを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0020】
別の局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0021】
ある特定の態様では、CARは、(a)SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および/または(b)SEQ ID NO:11もしくは13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv);および/または(c)SEQ ID NO:23もしくは25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0022】
ある特定の態様では、CARは、(a)FAPに結合可能である;および/または(b)ヒトFAPに結合可能である;および/または(c)イヌFAPに結合可能である;および/または(d)マウスFAPに結合可能である;および/または(e)ヒト、イヌおよびマウスFAPに結合可能である。
【0023】
ある特定の態様では、改変された細胞は、(a)改変されたT細胞である;および/または(b)改変されたNK細胞である;および/または(c)自家細胞である;および/または(d)ヒト対象から得られた自家細胞である;および/または(e)イヌ対象から得られた自家細胞である;および/または(f)同種異系細胞である。
【0024】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定される改変された細胞のいずれかの治療有効量と薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。
【0025】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における疾患を処置する方法であって、想定される改変された細胞のいずれかまたは薬学的組成物のいずれかの有効量を対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0026】
ある特定の態様では、(a)疾患は、免疫学的疾患、血液疾患、自己免疫疾患、線維症、およびがんからなる群より選択される;および/または(b)疾患は、がんである;および/または(c)疾患は、心筋線維症である;および/または(d)疾患は、がんであり、がんは、FAP発現がん関連細胞を含む。
【0027】
ある特定の態様では、(a)FAP発現がん関連細胞は、がん関連線維芽細胞(CAF)である;および/または(b)FAP発現がん関連細胞は、FAP発現脂肪細胞である;および/または(c)FAP発現がん関連細胞は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である;および/または(d)FAP発現がん関連細胞は、腫瘍関連好中球(TAN)である;および/または(e)FAP発現がん関連細胞は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)である;および/または(f)FAP発現がん関連細胞は、がん幹細胞(cancer-initiating cell)である。
【0028】
別の局面では、本発明は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み;がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連細胞を含む、方法を提供する。
【0029】
ある特定の態様では、CARは、FAP発現がん関連細胞に結合し、FAPを発現しない細胞には結合しない。
【0030】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0031】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0032】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0033】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0034】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0035】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0037】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0038】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0039】
ある特定の態様では、該方法は、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍抗原ワクチン、または新生細胞標的療法を施す工程をさらに含む。
【0040】
ある特定の態様では、対象は、ヒトである。ある特定の態様では、対象は、非ヒト動物である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
以下の本発明の好ましい態様の詳細な説明は、添付の図面と併せ読むことにより、さらに十分に理解されよう。本発明を例証する目的で、現在好ましい態様を図面に示している。しかしながら、本発明が、図面に示される態様の正確な配置および手段に限定されないことが理解されるべきである。
【0042】
【
図1】NCBIに列記されるイヌFAP遺伝子配列(XM_005640252.2)とNCBI配列を使用して作製された2つのプライマーを使用したPCR反応産物との間の配列アラインメントである。ヌクレオチドレベルで、該産物は、T127およびA603で2つの保存的塩基対置換を保有していた(右)。
【
図2】BALB/c 3T3細胞への形質導入後の組み換えイヌFAP構築物の発現を実証しているフローサイトメトリープロットである。
【
図3】クローン4G5抗FAP抗体を産生するハイブリドーマ細胞の生成を実証しているフローサイトメトリープロットである。イヌFAP形質導入BALB/c 3T3細胞を使用して、14週齢のBALB/cマウスを免疫化した。次いで、脾臓細胞をsp2/0細胞に融合し、得られたハイブリドーマを、PKHで標識したMC KOSA親(FAPヌル)細胞およびイヌFAP-導入遺伝子発現MC KOSA.K9FAP細胞に対してスクリーニングした。ハイブリドーマ産生抗体によって一次染色が提供された。ヤギ抗マウスIgG二次抗体を使用して二次染色を実施し、続いて、フローサイトメトリーを介して読み出した。
【
図4A】4G5イヌFAP CD8H BB CD3Z CAR構築物のHG2Lバージョン(SEQ ID NO:22&SEQ ID NO:23)の配列および特徴を図示している配列マップである。
【
図4B】4G5イヌFAP CD8H BB CD3Z CAR構築物のHG2Lバージョン(SEQ ID NO:22&SEQ ID NO:23)の配列および特徴を図示している配列マップである。
【
図5A】4G5イヌFAP CD8H BB CD3Z CAR構築物のL2HGバージョン(SEQ ID NO:24&SEQ ID NO:25)の配列および特徴を図示している配列マップである。
【
図5B】4G5イヌFAP CD8H BB CD3Z CAR構築物のL2HGバージョン(SEQ ID NO:24&SEQ ID NO:25)の配列および特徴を図示している配列マップである。
【
図6A】
図6A~6Dは、マウスおよびイヌFAPタンパク質を発現する細胞株を標的として使用した共培養細胞傷害性アッセイ中の4G5系CAR T細胞のインビトロ機能を示している一連のグラフである。ネズミ3T3細胞を抗マウスFAP 73.3抗体で染色して、FAPの発現を抗ヒトFAP F19およびマウスIgGアイソタイプ対照による陰性対照染色と比較検証した(
図6A)。細胞傷害性および活性化を測定するアッセイは、発光によって測定した場合の標的細胞殺傷(
図6B)およびELISAによって測定した場合のIFNγ産生(
図6C)を用いた。IFNγ産生を測定する標的としてMC KOSA細胞を使用した類似の共培養研究によって、イヌFAPの認識を評価した(
図6D)。
【
図7A】
図7A~7Eは、FAP陰性HT1080標的細胞と共培養した後のFAP CAR T細胞のインビトロ機能を示している一連のグラフである。アッセイは、共培養の24時間後の、標識した標的細胞の細胞傷害性(
図7A)および上清のELISA解析によるIFNγ産生(
図7B)を測定した。次いで、高レベルの組み換えヒトFAPを発現するようにHT1080細胞を形質導入した(
図7C)。これらの細胞を、後続のFAP CAR T細胞とのインビトロ共培養アッセイにおいて標的として使用した。24時間後、標的細胞の細胞傷害性を発光によって(
図7D)、IFNγ産生をELISAによって評価した(
図7E)。これらの研究に使用したT細胞群に、対照として非形質導入対照T細胞(NTD)および高親和性F19 FAP CAR T細胞を含めた。「HL」および「LH」は、それぞれ、4G5系CARのHG2Lバージョンおよび2LHGバージョンのことを指す。
【
図8A】
図8A~8Cは、WI-38細胞とのインビトロ共培養アッセイにおける抗FAP CAR T細胞の細胞傷害機能を実証している一連のグラフである。WI-38細胞は、フローサイトメトリーによって実証した場合に中間レベルのFAPタンパク質を発現する線維芽細胞株である(
図8A)。後続の細胞傷害性アッセイは、標的細胞殺傷を発光による測定で(
図8B)、IFNγ産生を読み出し値として用いて(
図8C)実行した。エラーバーは、各群における反復試料間の標準偏差を示した。*p≦0.05、エフェクター対標的比2.5:1でのNTD対照細胞に対するF19、HLおよびLH CAR(
図8B)ならびにF19対LHおよびLH対HL細胞(
図8C)。INSは、HLおよびNTD群においてすべてのエフェクター対標的比で有意なサイトカインが測定されなかったことを示す。
【
図9A】
図9A~9Cは、FAP低発現HOS細胞を標的として使用したインビトロアッセイにおける抗FAP CAR発現T細胞の細胞傷害機能を実証している一連のグラフである。FAP発現のフローサイトメトリーは、これらの細胞によるFAPタンパク質の低表面発現を確認した(
図9A)。その後、これらの標的細胞を、様々な抗FAP CAR T細胞または非形質導入対照T細胞(NTD)とのインビトロ共培養細胞傷害機能アッセイにおいて使用した。共培養の24時間後、標識した標的細胞の細胞傷害性を発光によって評価し(
図9B)、T細胞によるIFNγの産生を上清のELISAによって評価した(
図9C)。エラーバーは、各エフェクター対標的比での各実験群における反復試料間の標準偏差を示す。*p≦0.05、エフェクター対標的比20:1でのHLおよびLH 4G5系CAR T細胞に対するF19 CAR T細胞。「NS」は、同じエフェクター対標的比でHLとLH CAR T細胞間で統計的差異がないことを示す。
【
図10】CD90+ FAP+腫瘍関連線維芽細胞である腫瘍組織細胞の割合を示している一連のグラフである。A549細胞をNSGマウスに移植し、14日間成長させた後、切除、解離および染色した。最初に、細胞をCD45陰性細胞上でゲーティングした(左パネル)。CD90+/FAP+細胞上でのゲーティングは、腫瘍関連線維芽細胞の割合を図示している(中央パネル)。ゲーティングは、アイソタイプ対照と比較して決定された(左パネル)。
【
図11A】
図11A~11Bは、NSGマウスにおいて確立され、2000万個の活性化された非形質導入対照T細胞「NTD」、73.3抗FAP scFvを発現する1000万個のCAR T細胞「73.3」、1000万個のHGL2 4G5 CARを発現するT細胞「HL」、1000万個のL2HG 4G5 CARを発現するT細胞「LH」、またはPBSビヒクル対照「PBS」の養子移入により処置されたA549腫瘍の成長を示すグラフである。腫瘍体積を実験中の表示の時点で評価した(
図11A)。17日または18日後、腫瘍を採取し、計量した(
図11B)。エラーバーは、各実験群における動物間の標準偏差を示す。p<0.0423、非形質導入対照群と比較したHLおよびLH 4G5FAP CAR群(
図11A)。*p≦0.05、対非形質導入(NTD)対照T細胞に対するHL、LHおよび73.3を発現するCAR T細胞(
図11B)。
【
図12】HL-4G5 CARを発現するNK細胞のインビトロの細胞傷害能を示すグラフである。4G5FAP CARを発現するようにNK-92 NK細胞株の細胞を形質導入した後、標識ヒトがん関連線維芽細胞との共培養によるインビトロ殺傷アッセイにおいて使用した。非形質導入NK92細胞を対照細胞として使用した。操作NK92細胞および対照NK92細胞を標的線維芽細胞と表示のエフェクター対標的比でインキュベートした。エラーバーは、各時点での各実験群についての反復ウェル間の標準偏差を示す。
【
図13】HL-4G5 CARを発現するNK細胞の活性を図示している動物実験の結果を示すグラフである。1日目に、確立されたヒトSSC15(頭頸部がん)腫瘍を担持するマウスに2000万個のFAPCAR-NK92細胞を注射し、4日目、8日目、11日目および14日目に1000万個の細胞で追加免疫した。18日目にマウスを屠殺し、腫瘍を計量した。FAPCAR-NK92細胞を注射したマウス由来の腫瘍は、未処置腫瘍よりも有意に小さかった。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明は、ヒト線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、改変されたT細胞)のための組成物および方法を提供する。提供される組成物および方法は、免疫学的疾患、血液疾患、自己免疫疾患、線維症(例えば、心筋線維症)、および/またはがんの処置に有用である。
【0044】
本開示に記載される方法は、本明細書において開示される特定の方法および/または実験条件が変動し得るので、そのような方法および条件に限定されないことを理解されたい。また、本明細書において使用される用語法は、特定の態様だけを説明することを目的とし、限定的であることは意図しないことも理解されたい。
【0045】
さらに、本明細書に記載される実験は、特に示さない限り、当業者の技能の範囲内で従来の分子細胞生物学的および免疫学的技法を使用する。そのような技法は、熟練の作業者に周知であり、文献に十分に説明されている。例えば、すべての補遺を含むAusubel, et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., NY, N.Y. (1987-2008)、MR GreenおよびJ. SambrookによるMolecular Cloning: A Laboratory Manual (Fourth Edition)ならびにHarlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Chapter 14, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor (2013, 2nd edition)を参照されたい。
【0046】
A. 定義
特に定義されない限り、本明細書において用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって広く理解されている意味を有する。何らかの潜在的意味不確定が発生した場合、本明細書において提供される定義が、任意の辞書または外部の定義よりも優先される。状況により特に必要とされない限り、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。特に述べない限り、「または」の使用は「および/または」を意味する。「含んでいる(including)」という用語ならびに「含む(includes)」および「含んだ(included)」などの他の形態の使用は、非限定的である。
【0047】
一般的に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法は周知であり、当技術分野において広く使用される。本明細書において提供される方法および技法は、特に示さない限り一般的に当技術分野において周知の従来法に従って、本明細書全体にわたり引用され、論じられる様々な一般的でより具体的な参考文献に記載されるように行われる。酵素反応および精製技法は、当技術分野において広く成し遂げられる、または本明細書に記載されるように製造業者の規格に従って行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、および医薬化学に関連して使用される命名法ならびにその検査手技および技法は、周知であり、当技術分野において広く使用されるものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化、および送達ならびに患者の処置のために標準的な技法が使用される。
【0048】
本開示をより容易に理解できるように、特定の用語を以下に定義する。また、本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明することを目的としているにすぎず、限定することを意図しているわけではないと理解されるべきである。
【0049】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、本明細書において、その冠詞の文法的目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)のことを指すために使用される。例として、「1つの要素」は、1つの要素または複数の要素のことを意味する。
【0050】
本明細書において使用される場合、数値の前にあるときの「約」または「およそ」という用語は、その値±(+または-)その値の10%の範囲のことを示す。
【0051】
「活性化」は、本明細書において使用される場合、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態のことを指す。活性化はまた、誘導されたサイトカイン産生、および検出可能なエフェクター機能にも関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を行っているT細胞のことを指す。
【0052】
本明細書において使用される場合、疾患を「緩和する」とは、疾患の1つまたは複数の症状の重症度を低減させることを意味する。
【0053】
「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子のことを指す。抗体は、天然供給源または組み換え供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであることができ、また無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分であることができる。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。四量体は、天然に存在するかまたは単鎖抗体もしくは抗体断片から再構築され得る。抗体はまた、天然に存在するまたは単鎖抗体もしくは抗体断片から構築され得る二量体も含む。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab')2、ならびに単鎖抗体(scFv)、ヒト化抗体およびヒト抗体を含む、多種多様な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0054】
「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部分のことを指し、また無傷の抗体の抗原決定可変領域のことを指す。抗体断片の例は、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、直鎖状抗体、scFv抗体、標的に対して十分な親和性を示すVLドメインまたはVHドメインのいずれかから構成される単一ドメイン抗体、例えばラクダ抗体(Riechmann, 1999, Journal of Immunological Methods 231:25-38)、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、それらに限定されない。抗体断片はまた、ヒト抗体もしくはヒト化抗体またはヒト抗体もしくはヒト化抗体の一部分も含む。
【0055】
「抗体重鎖」は、本明細書において使用される場合、天然に存在する立体配置にあるすべての抗体分子中に存在する2種類のポリペプチド鎖のうち大きい方のことを指す。
【0056】
「抗体軽鎖」は、本明細書において使用される場合、天然に存在する立体配置にあるすべての抗体分子中に存在する2種類のポリペプチド鎖のうち小さい方のことを指す。κ軽鎖およびλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプのことを指す。
【0057】
「合成抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、組み換えDNA技術を使用して生成される抗体、例えば、本明細書に記載されるようなバクテリオファージによって発現される抗体などのことを意味する。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成された抗体であって、そのDNA分子が抗体タンパク質または抗体を指定するアミノ酸配列を発現し、そのDNAまたはアミノ酸配列が、利用可能かつ当技術分野において周知である合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られた抗体も意味すると解釈されるべきである。
【0058】
本明細書において用いられる「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を引き起こす分子と定義される。この免疫応答には、抗体産生、または特異的免疫適格細胞の活性化のいずれかまたは両方が含まれ得る。当業者は、事実上、すべてのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として働くことができることを理解するであろう。さらに、抗原は、組み換えDNAまたはゲノムDNAに由来することができる。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、それゆえ、本明細書においてその用語が用いられる通りの「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことを理解するであろう。本発明が、1つよりも多い遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されるわけではないこと、およびこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されることは、容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要はまったくないことを理解するであろう。抗原が生物学的試料から生成、合成または由来することができることは、容易に明らかである。そのような生物学的試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液を含むことができるが、それに限定されるわけではない。
【0059】
「抗腫瘍効果」という用語は、本明細書において使用される場合、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、平均余命の増大、またはがん性状態に関連する様々な生理学的症状の改善によって明らかになり得る生物学的効果のことを指す。「抗腫瘍効果」はまた、腫瘍の発生そのものを防止する、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体の能力によっても明らかになり得る。
【0060】
本明細書において使用される場合、「自家」という用語は、後にその個体に再び導入される予定の同じ個体に由来する任意の材料のことを指すことを意味する。
【0061】
「同種異系」は、同じ種の異なる動物に由来する移植片のことを指す。
【0062】
「がん」という用語は、本明細書において使用される場合、異常細胞の急速かつ制御不能な増殖を特徴とする疾患と定義される。がん細胞は、局所的に広がることもあれば、血流およびリンパ系を通じて身体の他の部分に広がることもある。様々ながんの例は、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がんなどを含むが、それらに限定されない。ある特定の態様では、がんは、甲状腺髄様がんである。
【0063】
本明細書において使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に有意に影響を及ぼすことのないまたは変えることのないアミノ酸修飾のことを指すことを意図している。そのような保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加および欠失を含む。修飾は、部位特異的変異導入およびPCR媒介変異導入などの当技術分野において公知である標準的な技法によって本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置き換わる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基と置き換えることができ、変化した抗体を、本明細書に記載される機能性アッセイを使用してFAPへの結合能について試験することができる。
【0064】
「共刺激性リガンド」は、この用語が本明細書において使用される場合、T細胞上の同族共刺激性分子に特異的に結合し、それにより、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドが負荷されたMHC分子との結合によって与えられる一次シグナルに加え、増殖、活性化、分化などを非限定的に含むT細胞応答を媒介するシグナルも与える、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上の分子を含む。共刺激性リガンドは、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激性リガンド(ICOS-L)、細胞内接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3と特異的に結合するリガンドを含むことができるが、それらに限定されない。共刺激性リガンドはまた、とりわけ、限定されないがCD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどの、T細胞上に存在する共刺激性分子と特異的に結合する抗体も包含する。
【0065】
「共刺激性分子」は、共刺激性リガンドと特異的に結合し、それにより、限定されないが増殖などのT細胞による共刺激性応答を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーのことを指す。共刺激性分子は、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体を含むが、それらに限定されない。
【0066】
「ダウンレギュレーション」という用語は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子発現の減少または消失のことを指す。
【0067】
「異常調節された」という用語は、FAPの発現または活性のレベルに関して使用される場合、FAPの発現レベルまたは活性が、他の点では同一である健常な動物、生物、組織、細胞またはそれらの成分における発現または活性のレベルと異なることを指す。「異常調節された」という用語はまた、FAPの発現および活性のレベルの調節が、他の点では同一である健常な動物、生物、組織、細胞またはそれらの成分における調節と比較して変化したことも指す。
【0068】
「有効量」または「治療的有効量」は、本明細書において互換的に用いられ、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、または治療的もしくは予防的利益をもたらす、本明細書において記述される化合物、製剤、材料または組成物の量のことを指す。そのような結果には、哺乳動物に投与した場合に、本発明の組成物の非存在下で検出される免疫応答と比較して検出可能なレベルの免疫抑制または耐容性を引き起こす量が含まれ得るが、それに限定されるわけではない。免疫応答は、おびただしい数の当技術分野において認識されている方法によって容易に評価することができる。当業者は、本明細書において投与される組成物の量が、変動すること、そして、処置されている疾患または状態、処置されている哺乳動物の齢および健康および身体の状態、疾患の重症度、投与されている特定の化合物などの多数の要因に基づいてこれを容易に決定できることを理解するであろう。
【0069】
「コードする」とは、定義されたヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)配列または定義されたアミノ酸配列のいずれかを有する、生物学的過程において他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNAまたはmRNAのようなポリヌクレオチドにおける特定のヌクレオチド配列の固有の特性ならびにそれに起因する生物学的特性をいう。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生体系においてタンパク質が産生される場合、タンパク質をコードする。mRNA配列と同一であり通常は配列表に示されるヌクレオチド配列であるコード鎖も、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として用いられる非コード鎖も共に、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードするということができる。特別の定めのない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重型であり、かつ同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。
【0070】
本明細書において用いられる場合、「内因性」とは、生物、細胞、組織もしくは系の内部に由来するか、またはそれらの内部で産生される、任意の材料をいう。
【0071】
用語「エピトープ」は、本明細書において使用される場合、免疫応答を誘発し、B細胞応答および/またはT細胞応答を誘導することができる、抗原上の小化学分子として定義される。抗原は、1つまたは複数のエピトープを有することができる。ほとんどの抗原は、多くのエピトープを有する;すなわち、これらは多価である。一般に、エピトープは、おおよそ約10アミノ酸および/または糖のサイズである。好ましくは、エピトープは、約4~18アミノ酸、より好ましくは約5~16アミノ酸、さらにより最も好ましくは6~14アミノ酸、より好ましくは約7~12、そして、最も好ましくは約8~10アミノ酸である。一般には、分子の特定の直鎖状配列よりも全体の三次元構造が抗原の特異性の主な基準であること、それゆえ、これによってあるエピトープが別のエピトープと区別されることを、当業者は理解する。本開示に基づいて、本発明で用いられるペプチドは、エピトープであることができる。
【0072】
本明細書において用いられる場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織もしくは系の外部から導入されるか、またはそれらの外部で産生される、任意の材料をいう。
【0073】
本明細書において用いられる「増大する」という用語は、T細胞の数の増加のように、数が増加することをいう。一態様では、エクスビボで増大したT細胞は、培養物中に当初存在している数と比べて数が増加する。別の態様では、エクスビボで増大したT細胞は、培養物中の他の細胞型と比べて数が増加する。本明細書において用いられる「エクスビボ」という用語は、生物(例えば、ヒト)から取り出され、生物の外側で(例えば、培養皿、試験管、またはバイオリアクタ中で)繁殖させた細胞をいう。
【0074】
本明細書において用いられる「発現」という用語は、そのプロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳と定義される。
【0075】
「発現ベクター」とは、発現されるべきヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用性エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系において供給されることができる。発現ベクターには、組み換えポリヌクレオチドを組み入れたコスミド、プラスミド(例えば、裸のもの、またはリポソーム中に含まれるもの)ならびにウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、当技術分野において公知のすべてのものが含まれる。
【0076】
「相同な」は、本明細書において使用される場合、2つのポリマー分子間、例えば、2つの核酸分子、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子間、または2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列同一性のことを指す。2つの分子の両方におけるあるサブユニット位置が同じモノマーサブユニットによって占められている場合;例えば、2つのDNA分子の各々におけるある位置がアデニンによって占められているならば、これらはその位置で相同である。2つの配列間の相同性は、一致するまたは相同な位置の数の一次関数である;例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、長さが10サブユニットのポリマー中5つの位置)が相同であるならば、2つの配列は50%相同である;位置の90%(例えば、10のうち9)が一致しているまたは相同であるならば、2つの配列は90%相同である。
【0077】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」および「キメラ」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である。ほとんどの場合、ヒト化抗体およびキメラ抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性およびキャパシティーを有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体およびキメラ抗体は、レシピエント抗体にも、持ち込まれたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに洗練および最適化するためになされる。一般に、ヒト化抗体およびキメラ抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つの、および典型的には2つの、可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体およびキメラ抗体はまた、最適には、典型的にはヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分を含む。世界保健機関(WHO)国際一般名称(INN)専門家グループは、非ヒト由来抗体を「ヒト化」とみなす要件を定義している。ガイドラインによれば、ヒト配列に対する候補抗体の比較は、International Immunogenetics Information System(登録商標)(IMGT(登録商標))DomainGapAlignツール(www.imgt.org)を通じて行われるべきである。このツールは、抗体生殖系列可変領域遺伝子のIMGT(登録商標)データベースに問い合わせを行うもので、生殖系列配列の可変領域エクソンに対してのみアラインメントスコアが得られるので、解析からCDR3の部分およびJ領域が除外される。抗体が「ヒト化」であるためには、「他の種よりもヒトに近い」ことに加え、上位「ヒット」がヒトであるべきであり、ヒト配列に対する同一性が少なくとも85%でなければならず、そうでなければ、抗体は「キメラ」として指定されるだろう。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 321: 522-525, 1986; Reichmann et al., Nature, 332: 323-329, 1988; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596, 1992を参照されたい。
【0078】
「完全ヒト」は、分子全体がヒト起源であるかまたは抗体のヒト形態と同一のアミノ酸配列からなる、抗体などの免疫グロブリンのことを指す。
【0079】
本明細書において使用される場合、「取扱説明書」は、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用され得る、出版物、記録、図表または任意の他の表現媒体を含む。本発明のキットの取扱説明書は、例えば、本発明の核酸、ペプチドおよび/または組成物を含有する容器に貼り付けられていても、核酸、ペプチドおよび/または組成物を含有する容器と一緒に輸送されてもよい。あるいは、取扱説明書は、取扱説明書および化合物が受け手によって共同で使用されることを意図して、容器とは別に輸送されてもよい。
【0080】
本明細書において用いられる「同一性」とは、2つのポリマー分子間の、特に2つのポリペプチド分子間のような2つのアミノ酸分子間のサブユニット配列の同一性をいう。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合;例えば、2つのポリペプチド分子の各々における位置がアルギニンによって占有されているなら、それらはその位置で同一である。2つのアミノ酸配列がアライメントにおいて同じ位置に同じ残基を有する同一性または程度は、百分率として表現されることが多い。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致しているまたは同一である位置の数の一次関数である;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、10アミノ酸長のポリマーにおける5つの位置)が同一であるなら、2つの配列は50%同一であり;位置の90%(例えば、10中9)が一致しているまたは同一であるなら、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0081】
本明細書において用いられる「免疫応答」という用語は、リンパ球が抗原分子を異物と同定し、抗体の形成を誘導し、かつ/またはリンパ球を活性化して抗原を除去する場合に起きる、抗原に対する細胞応答と定義される。
【0082】
「免疫抑制」という用語は、本明細書において免疫応答全体を低減することを指すために使用される。
【0083】
「単離された」とは、天然の状態から変えられたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、または例えば、宿主細胞のような、非天然環境で存在することができる。
【0084】
本発明の文脈において、一般的に存在する核酸塩基について以下の略称が使用される。「A」はアデノシンのことを指し、「C」はシトシンのことを指し、「G」はグアノシンのことを指し、「T」はチミジンのことを指し、「U」はウリジンのことを指す。別途指定がなされない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重した型であり、同じアミノ酸配列をコードする、すべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という語句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列が一部の型においてイントロンを含み得る限り、イントロンを含み得る。
【0085】
本明細書において用いられる「レンチウイルス」とは、レトロウイルス科(Retroviridae)ファミリーの属をいう。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染できるという点で、レトロウイルスの中でも独特である;それらはかなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNA中に送達することができるため、それらは遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIVおよびFIVはすべて、レンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで有意なレベルの遺伝子移入を達成するための手段を与える。
【0086】
本明細書において用いられる用語「改変された」とは、本発明の分子または細胞の変化した状態または構造を意味する。分子は化学的に、構造的に、および機能的になど、多くの方法で改変され得る。細胞は、核酸の導入によって改変され得る。
【0087】
本明細書において用いられる用語「モジュレートする」とは、処置もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較して、および/または他の点では同一であるが処置を受けていない対象における応答のレベルと比較して、対象における応答のレベルの検出可能な増加または減少を媒介することを意味する。この用語は、対象、好ましくはヒトにおいて、天然のシグナルもしくは応答を撹乱させ、かつ/またはそれに影響を与え、それにより有益な治療応答を媒介することを包含する。
【0088】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的に、短いポリヌクレオチドを意味する。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、C、G)により表される場合、「T」が「U」に置き換えられるRNA配列(すなわち、A、U、C、G)もまた含まれることを理解されたい。
【0089】
「機能的に連結された」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の、後者の発現をもたらす機能的連結のことを指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係下に置かれている場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼすならば、プロモーターは、コード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を接続する必要がある場合には、同じリーディングフレーム内にある。
【0090】
免疫原性組成物の「経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、もしくは胸骨内注射、または注入技術が含まれる。
【0091】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖と定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書において用いられる核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、それらは単量体「ヌクレオチド」に加水分解することができるという一般知識を有する。単量体ヌクレオチドは、ヌクレオシドに加水分解することができる。本明細書において用いられる場合、ポリヌクレオチドには、非限定的に、組み換え手段、すなわち通常のクローニング技術およびPCR(商標)などを用いた組み換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含む、当技術分野において利用可能な任意の手段により、ならびに合成手段により得られるすべての核酸配列が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0092】
本明細書において用いられる場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、互換的に用いられ、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基で構成される化合物をいう。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって相互につなぎ合わされた2つまたはそれよりも多いアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書において用いられる場合、この用語は、例えば、当技術分野において一般的にはペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーともいわれる短鎖と、当技術分野において一般にタンパク質といわれる長鎖の両方をいい、その中には多くのタイプがある。「ポリペプチド」には、とりわけ、例えば、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0093】
「プロモーター」という用語は、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列と定義される。
【0094】
本明細書において使用される場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に機能的に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列のことを意味する。いくつかの場合、この配列は、コアプロモーター配列であり得るが、他の場合、この配列はまた、エンハンサー配列および遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントも含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0095】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードするまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結されている場合、細胞のほとんどまたはすべての生理学的条件下で遺伝子産物を細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
【0096】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードするまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結されている場合、実質的にはプロモーターに対応する誘導因子が細胞内に存在する場合にのみ遺伝子産物を細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
【0097】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子をコードするまたはそれによって指定されるポリヌクレオチドと機能的に連結されている場合、実質的には細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ遺伝子産物を細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
【0098】
「シグナル伝達経路」は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナル伝達において役割を果たす多種多様なシグナル伝達分子間の生化学的関係のことを指す。「細胞表面受容体」という語句は、シグナルを受け取り、細胞の形質膜を横断してシグナルを伝達可能な分子および分子の複合体を含む。「細胞表面受容体」の例は、ヒトFAPである。
【0099】
「単鎖抗体」は、抗体のFv領域が単一ポリペプチドとして反復されるように、操作された一連のアミノ酸を使用して、免疫グロブリン重鎖断片および軽鎖断片が互いに連結される組み換えDNA技法によって形成される抗体のことを指す。米国特許第4,694,778号;Bird (1988) Science 242:423-442;Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Ward et al. (1989) Nature 334:54454;Skerra et al. (1988) Science 242:1038-1041に記載されている方法を含め、単鎖抗体の様々な作製法が公知である。
【0100】
抗体に関して本明細書において用いられる用語「特異的に結合する」とは、特異的抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識またはそれと結合しない抗体を意味する。例えば、1つの種由来の抗原に特異的に結合する抗体が、1つまたは複数の種由来のその抗原にも結合する場合がある。しかし、そのような異種間反応性はそれ自体で、特異的としての抗体の分類を変化させることはない。別の例において、抗原に特異的に結合する抗体が、その抗原の異なる対立遺伝子型にも結合する場合がある。しかし、そのような交差反応性はそれ自体で、特異的としての抗体の分類を変化させることはない。場合によっては、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語を、抗体、タンパク質またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関連して用いて、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味することができる;例えば、抗体は、タンパク質全体ではなく特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的であるなら、標識された「A」およびその抗体を含む反応物中にエピトープAを含む分子(または遊離した、標識されていないA)が存在することにより、その抗体に結合した標識されたAの量が低減するであろう。
【0101】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がその同族リガンドと結合し、それによって、非限定的に、TCR/CD3複合体を介するシグナル伝達のような、シグナル伝達事象を媒介することにより誘導される一次応答を意味する。刺激は、TGF-ベータのダウンレギュレーション、および/または細胞骨格構造の再編成などのような、ある特定の分子の発現の変化を媒介することができる。
【0102】
「刺激分子」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、抗原提示細胞上に存在する同族刺激リガンドと特異的に結合する、T細胞上の分子を意味する。
【0103】
本明細書において用いられる「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)に存在する場合、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書において「刺激分子」といわれる)と特異的に結合でき、それによって、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含むが、それに限定されるわけではない、T細胞による一次応答を媒介するリガンドを意味する。刺激リガンドは当技術分野において周知であり、とりわけ、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0104】
「対象」という用語は、免疫応答を誘発することができる生物(例えば、哺乳動物)を含むよう意図される。本明細書において用いられる「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であり得る。非ヒト哺乳動物には、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコおよびマウス哺乳動物のような、家畜およびペットが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0105】
「標的部位」または「標的配列」とは、結合が起きるのに十分な条件の下で結合分子が特異的に結合し得る核酸の一部分を規定する核酸配列をいう。いくつかの態様では、標的配列は、結合が起こるために十分な条件の下で結合分子が特異的に結合し得る核酸の一部分を規定するゲノム核酸配列を指す。
【0106】
本明細書において使用される場合、「実質的に精製された」細胞は、他の細胞型を本質的に含まない細胞である。実質的に精製された細胞はまた、その天然に存在する状態で通常会合している他の細胞型から分離されている細胞のことも指す。いくつかの場合、実質的に精製された細胞集団は、均質な細胞集団のことを指す。他の場合では、この用語は、単に、その天然の状態で天然に会合している細胞から分離されている細胞のことを指す。いくつかの態様では、細胞は、インビトロで培養される。他の態様では、細胞は、インビトロで培養されない。
【0107】
本明細書において用いられる「治療的」という用語は、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、寛解または根絶によって得られる。
【0108】
本明細書において用いられる「トランスフェクションされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入される過程をいう。「トランスフェクションされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクションされた、形質転換された、または形質導入されたものである。この細胞には初代対象細胞およびその子孫が含まれる。
【0109】
「転写制御下」または「機能的に連結された」という語句は、本明細書において使用される場合、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するためにポリヌクレオチドに対して正しい位置および配向にあることを意味する。
【0110】
疾患を「処置する」とは、この用語が本明細書において用いられる場合、対象が被っている疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低減することを意味する。
【0111】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、かつ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる材料の組成物である。直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と結びついたポリヌクレオチド、プラスミドおよびウイルスを含むが、それに限定されるわけではない、多数のベクターが当技術分野において公知である。したがって、「ベクター」という用語は、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスを含む。この用語はまた、例えばポリリシン化合物、リポソームなどのような、細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド性および非ウイルス性の化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0112】
「異種」は、異なる種の動物に由来する移植片を意味する。
【0113】
範囲:本開示の全体を通じて、本発明の様々な局面を範囲の形式で提示することができる。範囲の形式の記述は、単に便宜および簡略化のためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記述は、可能なすべての部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3および6を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0114】
B. キメラ抗原受容体
本発明は、固形腫瘍の処置において使用するための治療用物質(例えば、キメラ抗原受容体)を提供する。固形腫瘍の処置の成功は、例えば腫瘍微小環境を含む、様々な障害によって妨げられている。腫瘍は、がん細胞ならびに細胞成分および非細胞成分を含む間質区画を含む。腫瘍間質は、進行および転移を含め、がんの発生において重要な役割を有することが示されている。本発明は、腫瘍間質を標的とするためのCARを提供し、この場合、間質における有望な細胞標的は、がん関連線維芽細胞(CAF)を含む。CAFは、腫瘍の成長および伝播のほぼすべての局面を強めることが示されている。CAFは、治療用物質(例えば、薬物および免疫細胞)に対するバリアとなり、腫瘍細胞に増殖シグナルを提供し、また活発に免疫抑制的である。
【0115】
本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。FAPは、一般的なヒト上皮がんの90%超の間質において発現されるII型膜貫通セリンプロテアーゼである。ある特定の腫瘍では、FAPは、がん関連線維芽細胞によって選択的に発現される。FAPの発現は、良性腫瘍または正常成人の静止組織では検出されていない。
【0116】
ある特定の態様では、対象CARは、FAPに結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。また、CARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆体、例えば、改変されたT細胞のための組成物および方法も提供される。したがって、いくつかの態様では、免疫細胞は、CARを発現するように遺伝子改変されている。前記CARをコードする核酸、前記核酸をコードするベクター、および前記CAR、ベクターまたは核酸を含む改変された細胞(例えば、改変されたT細胞)も提供される。
【0117】
ある特定の態様では、CARは、ヒトFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、イヌFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、ネズミFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、ヒト、イヌおよびネズミFAPに結合可能である。そのような態様では、抗原結合ドメインは、異種間反応性と称され得る。異種間反応性の抗原結合ドメインは、橋渡し研究(translatable research)において有用であり、ヒト標的抗原結合ドメインはまた異なる種(例えば、モデル生物)の同じ抗原にも結合し、これにより、疾患モデルにおいて同じ抗原結合ドメインの試験が可能となる。
【0118】
本発明の対象CARは、FAPと結合することが可能な抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内ドメインとを含む。本発明の対象CARは、任意で、ヒンジドメインを含み得る。したがって、本発明の対象CARは、FAPと結合することが可能な抗原結合ドメインと、ヒンジドメインと、膜貫通ドメインと、細胞内ドメインとを含む。
【0119】
抗原結合ドメインは、細胞における発現のために、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメイン(両方とも本明細書の他の箇所に記載される)などのCARの別のドメインと機能的に連結され得る。一態様では、抗原結合ドメインをコードする第1の核酸配列は、膜貫通ドメインをコードする第2の核酸と機能的に連結され、細胞内ドメインをコードする第3の核酸配列とさらに機能的に連結される。
【0120】
本明細書において記載される抗原結合ドメインは、本明細書において記載される膜貫通ドメインのいずれか、本明細書において記載される細胞内ドメインもしくは細胞質ドメインのいずれか、または本発明のCARに含まれ得る、本明細書において記載される他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。本発明の対象CARはまた、本明細書において記載されるヒンジドメインを含み得る。本発明の対象CARはまた、本明細書において記載されるスペーサードメインを含み得る。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインの各々は、リンカーにより隔てられている。
【0121】
抗原結合ドメイン
CARの抗原結合ドメインは、タンパク質、糖質、および糖脂質を含む特異的標的抗原に結合するためのCARの細胞外領域である。本発明の対象CARは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と結合することが可能な抗原結合ドメインを含む。
【0122】
抗原結合ドメインは、抗原に結合する任意のドメインを含むことができ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、非ヒト抗体、およびそれらの任意の断片を含み得るが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、抗原結合ドメインの部分は、哺乳動物抗体またはその断片を含む。抗原結合ドメインの選択は、標的細胞の表面に存在する抗原の種類および数に依存し得る。
【0123】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、全長抗体、抗原結合断片、Fab、一本鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。いくつかの態様では、本発明のFAP結合ドメインは、FAP特異的抗体、FAP特異的Fab、およびFAP特異的scFvからなる群より選択される。一態様では、FAP結合ドメインは、FAP特異的抗体である。一態様では、FAP結合ドメインはFAP特異的Fabである。一態様では、FAP結合ドメインはFAP特異的scFvである。
【0124】
本明細書において用いられる「一本鎖可変断片」または「scFv」という用語は、免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とが共有結合的に連結してVH::VLヘテロ二量体を形成した融合タンパク質である。重鎖(VH)と軽鎖(VL)とは、直接つながっているか、またはリンカーをコードするペプチドによってつながっており、このリンカーは、VHのN末端をVLのC末端と、またはVHのC末端をVLのN末端と接続する。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン(例えば、FAP結合ドメイン)は、N末端からC末端へと、VH-リンカー-VLの配置を有するscFvを含む。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、N末端からC末端へと、VL-リンカー-VHの配置を有するscFvを含む。当業者は、本発明における使用に適した配置を選択することができるであろう。
【0125】
リンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンが、さらには可溶性のためにセリンまたはトレオニンが豊富である。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結することができる。リンカーの非限定的な例は、Shen et al., Anal. Chem. 80(6):1910-1917 (2008) および国際公開公報第2014/087010号に開示されており、それらの内容は、それらの全体で参照により本明細書に組み入れられる。グリシンセリン(GS)リンカー、例えば(GS)
n、(GSGGS)
n(SEQ ID NO:31)、(GGGS)
n(SEQ ID NO:32)、および(GGGGS)
n(SEQ ID NO:33)(配列中、nは少なくとも1の整数を表す)を含むが、それに限定されるわけではない様々なリンカー配列が当技術分野において公知である。例示的なリンカー配列は、GGSG(SEQ ID NO:34)、GGSGG(SEQ ID NO:35)、GSGSG(SEQ ID NO:36)、GSGGG(SEQ ID NO:37)、GGGSG(SEQ ID NO:38)、GSSSG(SEQ ID NO:39)、GGGGS(SEQ ID NO:40)、GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:15)などを含むが、それに限定されるわけではないアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本発明における使用に適したリンカー配列を選択することができるであろう。一態様では、本発明の抗原結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、その際、VHとVLとは、核酸配列
によってコードされ得るアミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:15)を有するリンカー配列により隔てられている。
【0126】
定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、本来の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonら(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)によって記載されるようなVHおよびVLコード配列を含む核酸から発現させることができる。米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号および同第4,956,778号;ならびに米国特許出願公開第20050196754号および同第20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが、記載されている(例えば、Zhao et al., Hyrbidoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51; Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12; Shieh et al., J Imunol 2009 183(4):2277-85; Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63; Fife eta., J Clin Invst 2006 116(8):2252-61; Brocks et al., Immunotechnology 1997 3(3):173-84; Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40を参照されたい)。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Peter et al., J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7; Xie et al., Nat Biotech 1997 15(8):768-71; Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 1997 17(5-6):427-55; Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照されたい)。
【0127】
本明細書に用いられる「Fab」は、抗原に結合するが、一価であってFc部分を有しない抗体構造のフラグメントを指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのFabフラグメントおよび1つのFcフラグメント(例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域)をもたらす。
【0128】
本明細書に用いられる「F(ab')2」は、IgG抗体全体のペプシン消化によって生成される抗体フラグメントを指し、その際、このフラグメントは2つの抗原結合(ab')(二価)領域を有し、各(ab')領域は、抗原との結合のためのH鎖の一部および軽(L)鎖という2つの別々のアミノ酸鎖がS-S結合によって連結されたものを含み、残ったH鎖部分は一緒に連結している。「F(ab')2」フラグメントは、2つの個別のFab'フラグメントに分割することができる。
【0129】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される種と同じ種に由来する場合がある。例えば、ヒトにおける使用のために、CARの抗原結合ドメインは、ヒト抗体またはそのフラグメントを含む場合がある。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用されるであろう種と異なる種に由来し得る。例えば、ヒトでの使用のために、CARの抗原結合ドメインは、マウス抗体、イヌ抗体、またはその断片を含み得る。
【0130】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、HCDR1は、アミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、および/または、HCDR2は、アミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3は、アミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む。抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2は、アミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、および/または、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0131】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列GYTITSYSLH(SEQ ID NO:27)を含み、および/または、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLAS(SEQ ID NO:30)を含み、および/または、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域も含む。
【0132】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、および/または、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3がアミノ酸配列TRLDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:29)を含む、重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、および/または、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域も含む。
【0133】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるような3つの重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3のいずれかを含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるような3つの軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3のいずれかを含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の任意の組み合わせを含み、本明細書に記載される。当業者は、本明細書に提供される重鎖および軽鎖の可変領域配列を考慮し、アミノ酸番号付けに基づき、関連する相補性決定領域を容易に決定できるであろう。
【0134】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインの重鎖可変領域(VH)は、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含み、および/または、軽鎖可変領域(VH)は、SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0135】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、完全長抗体もしくはその抗原結合断片、Fab、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv)である。
【0136】
抗原結合ドメイン配列の許容可能な変形は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、9、11、13、27、28、29、または30に示されるアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0137】
いくつかの態様では、本開示のCARは、1つまたは複数の標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対して親和性を有し得る。いくつかの態様では、CARは、標的細胞上の1つまたは複数の標的抗原に対して親和性を有し得る。そのような態様では、CARは、二重特異性CAR、または多重特異性CARである。いくつかの態様では、CARは、1つまたは複数の標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、同じ標的抗原に対する親和性を付与する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含む。例えば、同じ標的抗原に対する親和性を有する1つまたは複数の標的特異的結合ドメインを含むCARは、標的抗原の別個のエピトープと結合することもできる。複数の標的特異的結合ドメインがCARに存在する場合、これらの結合ドメインは、タンデムに配置される場合があり、リンカーペプチドにより隔てられている場合がある。例えば、2つの標的特異的結合ドメインを含むCARにおいて、結合ドメインは、オリゴペプチドリンカーもしくはポリペプチドリンカー、Fcヒンジ領域、または膜ヒンジ領域を経由して単一のポリペプチド鎖上に相互に共有結合的につながれている。
【0138】
膜貫通ドメイン
本発明のCARは、CARの抗原結合ドメインをCARの細胞内ドメインと接続する膜貫通ドメインを含み得る。対象のCARの膜貫通ドメインは、細胞(例えば、免疫細胞またはその前駆細胞)の形質膜を貫通することが可能な領域である。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、細胞膜、例えば、真核生物細胞膜内への挿入のためのものである。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARの抗原結合ドメインと細胞内ドメインとの間にはさまれている。
【0139】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CARにおけるドメインの1つまたは複数に自然に関連している。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、このようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を回避するように、選択または1つもしくは複数のアミノ酸置換によって修飾して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にすることができる。
【0140】
膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する場合がある。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質、例えば、I型膜貫通タンパク質に由来し得る。供給源が合成である場合、膜貫通ドメインは、細胞膜へのCARの挿入を容易にする任意の人工配列、例えば、人工疎水性配列であり得る。本発明における特定の使用の膜貫通ドメインの例は、非限定的に、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD7、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134(OX-40)、CD137(4-1BB)、CD154(CD40L)、ICOS(CD278)、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8およびTLR9に由来する(すなわち、これらの少なくとも膜貫通領域を含む)膜貫通ドメイン、またはキラー細胞免疫グロブリン様ドメイン(KIR)に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0141】
ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、CD8の膜貫通ドメインは、CD8アルファの膜貫通ドメインである。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0142】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、合成であり得るが、この場合、それは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含むであろう。好ましくは、合成膜貫通ドメインの各末端で、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの3つ組が見出されるであろう。
【0143】
本明細書に記載の膜貫通ドメインを、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の細胞内ドメインのいずれか、または対象のCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
【0144】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、ヒンジ領域をさらに含む。本発明の対象のCARはまた、ヒンジ領域も含み得る。CARのヒンジ領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置する親水性領域である。いくつかの態様では、このドメインは、CARにふさわしいタンパク質フォールディングを容易にする。ヒンジ領域は、CARの任意の成分である。ヒンジ領域は、抗体のFcフラグメント、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工的なヒンジ配列またはそれらの組み合わせより選択されるドメインを含み得る。ヒンジ領域の例は、非限定的に、CD8aヒンジ、3つのグリシン(Gly)ほどの小ささであり得るポリペプチドから構成される人工的なヒンジ、ならびにIgG(ヒトIgG4など)のCH1ドメインおよびCH3ドメインを含む。
【0145】
いくつかの態様では、本開示の対象のCARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと接続してこれを次いで細胞内ドメインに接続する、ヒンジ領域を含む。ヒンジ領域は、好ましくは、抗原結合ドメインが標的細胞上の標的抗原を認識してこれに結合することを支援することが可能である(例えば、Hudecek et al., Cancer Immunol. Res. (2015) 3(2): 125-135を参照されたい)。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、可動性ドメインであり、その結果、抗原結合ドメインが、腫瘍細胞などの細胞上の標的抗原の特異的な構造および密度を最適に認識する構造を有することが可能となる(Hudecekら、上記)。そのヒンジ領域の可動性は、ヒンジ領域が多くの異なる立体配座をとることを許容する。
【0146】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、受容体に由来するヒンジ領域ポリペプチド(例えば、CD8由来ヒンジ領域)である。
【0147】
ヒンジ領域は、約4アミノ酸~約50アミノ酸、例えば、約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約15aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、または約40aa~約50aaの長さを有することができる。 いくつかの態様では、ヒンジ領域は、5aa超、10aa超、15aa超、20aa超、25aa超、30aa超、35aa超、40aa超、45aa超、50aa超、55aa超、またはそれ以上の長さを有することができる。
【0148】
適切なヒンジ領域を、容易に選択することができ、いくつかの適切な長さ、例えば、4アミノ酸~10アミノ酸、5アミノ酸~9アミノ酸、6アミノ酸~8アミノ酸、または7アミノ酸~8アミノ酸を含む、1アミノ酸(例えば、Gly)~20アミノ酸、2アミノ酸~15アミノ酸、3アミノ酸~12アミノ酸のいずれかであることができ、1、2、3、4、5、6、または7アミノ酸であることができる。適切なヒンジ領域は、20アミノ酸長(例えば、30個、40個、50個、60個、またはそれ以上のアミノ酸)の長さを有することができる。
【0149】
例えば、ヒンジ領域は、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:31)および(GGGS)n(SEQ ID NO:32)を含み、その際、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および当技術分野において公知の他の可動性リンカーを含む。グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーを使用することができる;GlyおよびSerの両方は、相対的に構造不定であり、したがって、成分間の中性のつなぎ鎖(tether)として役立つことができる。グリシンポリマーを使用することができる;グリシンは、アラニンより有意に多くφ-ψ空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりもはるかに制限を受けない(例えば、Scheraga, Rev. Computational. Chem. (1992) 2: 73-142を参照されたい)。例示的なヒンジ領域は、非限定的にGGSG(SEQ ID NO:34)、GGSGG(SEQ ID NO:35)、GSGSG(SEQ ID NO:36)、GSGGG(SEQ ID NO:37)、GGGSG(SEQ ID NO:38)、GSSSG(SEQ ID NO:39)などを含むアミノ酸配列を含むことができる。
【0150】
いくつかの態様では、ヒンジ領域は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域である。免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列は、当技術分野において公知である;例えば、Tan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87(1):162-166;およびHuck et al., Nucleic Acids Res. (1986) 14(4): 1779-1789を参照されたい。非限定的な例として、免疫グロブリンヒンジ領域は、以下のアミノ酸配列:
などのうちの1つを含むことができる。
【0151】
ヒンジ領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4ヒンジ領域のアミノ酸配列を含むことができる。一態様では、ヒンジ領域は、野生型(天然に存在する)ヒンジ領域と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換および/または挿入および/または欠失を含むことができる。例えば、ヒトIgG1ヒンジのHis229は、Tyrにより置換することができ、それによって、ヒンジ領域は、配列EPKSCDKTYTCPPCP(SEQ ID NO:53)を含む;例えば、Yan et al., J. Biol. Chem. (2012) 287: 5891-5897を参照されたい。
【0152】
ある特定の態様では、ヒンジ領域は、ヒトCD8またはそのバリアントに由来するアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の態様では、CARはCD8αヒンジ配列である。ある特定の態様では、ヒンジ領域はアミノ酸配列
を含む。
【0153】
細胞内ドメイン
本発明の対象のCARはまた、細胞内ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CARの細胞内ドメインは、CARが発現される細胞(例えば、免疫細胞)のエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担っている。細胞内ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞(例えば、免疫細胞)がその特殊な機能、例えば、標的細胞の損傷および/または破壊を遂行するように指示する。
【0154】
本発明において使用するための細胞内ドメインの例は、表面受容体の細胞質部分、共刺激分子、およびT細胞においてシグナル伝達を開始するように協力して作用する任意の分子、ならびにこれらのエレメントの任意の誘導体またはバリアントおよび同じ機能的能力を有する任意の合成配列を含むが、それに限定されるわけではない。
【0155】
細胞内ドメインの例は、非限定的に、T細胞受容体複合体のζ鎖またはそのホモログのいずれか、例えば、η鎖、FcsRIγおよびβ鎖、MB 1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖など、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、ならびに、CD2、CD5およびCD28などのT細胞形質導入に関与する他の分子を含む。一態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)保有細胞質受容体、およびそれらの組み合わせであり得る。
【0156】
ある特定の態様では、CARの細胞内ドメインは、1つまたは複数の共刺激分子の任意の部分、例えば、CD2、CD3、CD8、CD27、CD28、ICOS(CD278)、4-1BB、PD-1からの少なくとも1つのシグナル伝達ドメイン、それらの任意の誘導体またはバリアント、同じ機能的能力を有するそれらの任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS、NKG2C、およびB7-H3(CD276)からなる群より選択されるタンパク質の共刺激ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメイン、またはそのバリアントを含む。
【0157】
さらに、対象CARにおいて使用するのに適したバリアント細胞内シグナル伝達ドメインは、当技術分野において公知である。YMFMモチーフは、ICOS中に見出され、PI3Kのp85およびp50アルファサブユニットの両方を動員して、増強されたAKTシグナル伝達をもたらすSH2結合モチーフである。例えば、Simpson et al. (2010) Curr. Opin. Immunol., 22:326-332を参照されたい。一態様では、YMFMモチーフを含むようにCD28細胞内ドメインバリアントが生成され得る。YMNMモチーフは、CD28細胞質ドメイン中に見出され、ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3-K)およびGrb2の公知の結合部位である。Harada et al. (2003) J. Exp. Med., 197(2):257-262を参照されたい。一態様では、YMNMモチーフを含むようにICOS細胞内ドメインバリアントが生成され得る。
【0158】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、4-1BBの共刺激性ドメインは、SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、CD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、CD28の共刺激性ドメインは、SEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、DAP12の共刺激性ドメインは、SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む。
【0159】
細胞内ドメインの他の例には、TCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、共通FcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンRIb)、CD79a、CD79b、FcガンマRlla、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD8、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX9、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、KIRファミリータンパク質、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80 (KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CDlib、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、本明細書に記載される他の共刺激分子、それらの任意の誘導体、バリアント、またはフラグメント、同じ機能的能力を有する共刺激分子の任意の合成配列、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、それに限定されるわけではない1つまたは複数の分子または受容体に由来するフラグメントまたはドメインが含まれる。
【0160】
細胞内ドメインの追加的な例には、非限定的に、CD3、B7ファミリー共刺激受容体および腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1、第2および第3世代のT細胞シグナル伝達タンパク質を非限定的に含む、数種類の様々な他の免疫シグナル伝達受容体の細胞内シグナル伝達ドメインが含まれる(例えば、Park and Brentjens, J. Clin. Oncol. (2015) 33(6): 651-653を参照されたい)。追加的に、細胞内シグナル伝達ドメインは、NK細胞およびNKT細胞によって使用されるシグナル伝達ドメイン(例えば、Hermanson and Kaufman, Front. Immunol. (2015) 6: 195を参照されたい)、例えば、NKp30(B7-H6)(例えば、Zhang et al., J. Immunol. (2012) 189(5): 2290-2299を参照されたい)、およびDAP12(例えば、Topfer et al., J. Immunol. (2015) 194(7): 3201-3212を参照されたい)、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10、およびCD3zのシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0161】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質尾部、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を担持する細胞質受容体、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、またはそれらのバリアントの細胞質シグナル伝達ドメインからなる群より選択される細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、CD3ζの細胞内ドメインまたはそのバリアントを含む。ある特定の態様では、CD3ζの細胞内ドメインは、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む。
【0162】
本発明の対象のCARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、CARの活性化(すなわち、抗原および二量体化剤によって活性化される)に反応して別個のかつ検出可能なシグナル(例えば、細胞による1つまたは複数のサイトカインの産生の増加;標的遺伝子の転写の変化;タンパク質の活性の変化;細胞挙動の変化、例えば、細胞死;細胞増殖;細胞分化;細胞生存;細胞シグナル伝達応答のモジュレーションなど)を提供する任意の所望のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、以下に記載のような少なくとも1つ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つなど)のITAMモチーフを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、膜結合CARに共有結合することなく、代わりに細胞質中に拡散される。
【0163】
本発明の対象のCARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)含有細胞内シグナル伝達ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、ITAMモチーフは、細胞内ドメイン内で二度反復され、そこで、ITAMモチーフの第1および第2の例は、6~8アミノ酸により互いに隔てられている。一態様では、対象のCARの細胞内ドメインは、3つのITAMモチーフを含む。
【0164】
いくつかの態様では、細胞内ドメインは、非限定的に、FcガンマRI、FcガンマRIIA、FcガンマRIIC、FcガンマRIIIA、FcRL5などの、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有するヒト免疫グロブリン受容体のシグナル伝達ドメインを含む(例えば、Gillis et al., Front. Immunol. (2014) 5:254を参照されたい)。
【0165】
適切な細胞内ドメインは、ITAMモチーフを含有するポリペプチドに由来する、ITAMモチーフ含有部分であることができる。例えば、適切な細胞内ドメインは、任意のITAMモチーフ含有タンパク質由来のITAMモチーフ含有ドメインであることができる。したがって、適切な細胞内ドメインは、それが由来するタンパク質全体の配列全体を含有する必要はない。適切なITAMモチーフ含有ポリペプチドの例は、DAP12、FCER1G(Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖)、CD3D(CD3デルタ)、CD3E(CD3イプシロン)、CD3G(CD3ガンマ)、CD3Z(CD3ゼータ)、およびCD79A(抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0166】
一態様では、細胞内ドメインは、DAP12(TYROBP;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;KARAP;PLOSL;DNAX活性化タンパク質12;KAR関連タンパク質;TYROタンパク質チロシンキナーゼ結合タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質;キラー活性化受容体関連タンパク質などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、FCER1G(FCRG;Fcイプシロン受容体Iガンマ鎖;Fc受容体ガンマ鎖;fc-イプシロンRI-ガンマ;fcRガンマ;fceRlガンマ;高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットガンマ;免疫グロブリンE受容体、高親和性ガンマ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖(CD3D;CD3-DELTA;T3D;CD3抗原、デルタサブユニット;CD3デルタ;CD3d抗原、デルタポリペプチド(TiT3複合体);OKT3、デルタ鎖;T細胞受容体T3デルタ鎖;T細胞表面糖タンパク質CD3デルタ鎖などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖(CD3e、T細胞表面抗原T3/Leu-4イプシロン鎖、T細胞表面糖タンパク質CD3イプシロン鎖、AI504783、CD3、CD3イプシロン、T3eなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ガンマ鎖(CD3G、T細胞受容体T3ガンマ鎖、CD3-GAMMA、T3G、ガンマポリペプチド(TiT3複合体)などとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、T細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ鎖(CD3Z、T細胞受容体T3ゼータ鎖、CD247、CD3-ZETA、CD3H、CD3Q、T3Z、TCRZなどとしても知られている)に由来する。一態様では、細胞内ドメインは、CD79A(B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖;CD79a抗原(免疫グロブリン関連アルファ);MB-1膜糖タンパク質;ig-アルファ;膜結合免疫グロブリン関連タンパク質;表面IgM関連タンパク質などとしても知られている)に由来する。一態様では、本開示のFN3 CARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、DAP10/CD28型シグナル伝達鎖を含む。一態様では、本開示のFN3 CARにおいて使用するために適した細胞内ドメインは、ZAP70ポリペプチドを含む。いくつかの態様では、細胞内ドメインは、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、CAR中の細胞内ドメインは、ヒトCD3ゼータの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。
【0167】
通常、細胞内ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合、必ずしも鎖全体を使用する必要はない。細胞内ドメインの切断型部分が使用される範囲内で、そのような切断型部分は、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、無傷の鎖の代わりに使用され得る。細胞内ドメインは、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内ドメインの任意の切断型部分を含む。
【0168】
本明細書に記載の細胞内ドメインを、本明細書に記載の抗原結合ドメインのいずれか、本明細書に記載の膜貫通ドメインのいずれか、またはCARに含まれ得る本明細書に記載の他のドメインのいずれかと組み合わせることができる。
【0169】
個々のCARドメイン配列(ヒンジドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメイン)の許容可能な変形は、当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、CARドメインは、SEQ ID NO:15、16、17、18、19、20または21に示されるアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0170】
一局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域;および/または、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域を含む。
【0171】
また、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、FAPに結合可能なCARであって、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および/またはSEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、CARも提供される。
【0172】
また、SEQ ID NO:11または13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む抗原結合ドメインを含む、FAPに結合可能なCARも提供される。
【0173】
さらに、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、FAPに結合可能なCARが提供される。
【0174】
【0175】
C. 核酸および発現ベクター
本開示は、CARをコードする核酸を提供する。本開示の核酸は、本明細書に開示されるCARのいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0176】
一態様では、本開示の核酸は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む。抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域と3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0177】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、HCDR1は、アミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、および/または、HCDR2は、アミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3は、アミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む。抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2は、アミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、および/または、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0178】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、HCDR1は、アミノ酸配列GYTITSYSLH(SEQ ID NO:27)を含み、および/または、HCDR2は、アミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3は、アミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む。抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2は、アミノ酸配列LTSNLAS(SEQ ID NO:30)を含み、および/または、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0179】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、HCDR1は、アミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、および/または、HCDR2は、アミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3は、アミノ酸配列TRLDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:29)を含む。抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2は、アミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、および/または、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0180】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるような3つの重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3のいずれかを含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるような3つの軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3のいずれかを含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の任意の組み合わせを含み、本明細書に記載される。当業者は、本明細書に提供される重鎖および軽鎖の可変領域配列を考慮し、アミノ酸番号付けに基づき、関連する相補性決定領域を容易に決定できるであろう。
【0181】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域を含む。
【0182】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:12または14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0183】
また、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、FAPに結合可能なCARをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域と;SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む、核酸も提供される。
【0184】
さらに、SEQ ID NO:22または24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む核酸が提供される。
【0185】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、本明細書に記載されるようなCARの、例えば、哺乳動物細胞中での産生を提供する。いくつかの態様では、本開示の核酸は、CARをコードする核酸の増幅を提供する。
【0186】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、第1のポリヌクレオチド配列および第2のポリヌクレオチド配列を含む。ある特定の態様では、第1のポリヌクレオチド配列は、本開示のFAP標的CARをコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、本開示のFAP標的CARは、他の治療用物質、例えば、非限定的に、がん免疫抗体療法およびチェックポイント遮断などの免疫療法、スイッチ共刺激性受容体、または他のCAR-T療法と組み合わせて用いられ得る。したがって、そのような態様では、第2のポリヌクレオチド配列は、抗がん抗体、チェックポイント遮断分子、スイッチ共刺激性受容体、または第2のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0187】
第1のポリヌクレオチド配列と第2のポリヌクレオチド配列とは、リンカーにより隔てられている場合がある。本開示に使用するためのリンカーは、複数のタンパク質が同じ核酸配列(例えば、多シストロン性配列または2シストロン性配列)によってコードされることを可能にし、それらは、解離して別々のタンパク質構成物になるポリタンパク質として翻訳され得る。ある特定の態様では、核酸は、5'から3'の方向へ、第1のポリヌクレオチド配列と、リンカーと、第2のポリヌクレオチド配列とを含む。ある特定の態様では、核酸は、5'から3'の方向へ、第2のポリヌクレオチド配列と、リンカーと、第1のポリヌクレオチド配列とを含む。
【0188】
いくつかの態様では、リンカーは、配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸配列を含む。本明細書に用いられる「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、タンパク質コード領域のATGなどの開始コドンへの直接の配列内リボソーム進入を促進するエレメントであって、それにより、遺伝子のcap非依存的翻訳をもたらすエレメントを指す。非限定的に、ウイルスまたは細胞mRNA供給源から入手可能なIRES、例えば、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP);血管内皮増殖因子(VEGF);線維芽細胞増殖因子2;インスリン様増殖因子;翻訳開始因子eIF4G;酵母転写因子TFIIDおよびHAP4;ならびに例えば、カルジオウイルス、ライノウイルス、アフトウイルス、HCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)から入手可能なIRESを含む、様々な配列内リボソーム進入部位が、当業者に公知である。当業者は、本発明において使用するために適したIRESを選択することが可能であろう。
【0189】
いくつかの態様では、リンカーは、自己切断型ペプチドをコードする核酸配列を含む。本明細書に用いられる「自己切断型ペプチド」または「2Aペプチド」は、翻訳されると成分タンパク質に解離するポリタンパク質として複数のタンパク質をコードできるようにするオリゴペプチドを指す。「自己切断型」という用語の使用は、タンパク質分解切断反応を意味することが意図されない。ピコルナウイルス科(Picornaviridae)ウイルスファミリーのメンバー、例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV0、ゾセアアシグナウイルス(TaV)、およびブタテッショウウイルス-1(PTV-1);ならびにタイロウイルスおよび脳心筋炎ウイルスなどのカルジオウイルスに見出されるものを非限定的に含む様々な自己切断型ペプチドまたは2Aペプチドが、当業者に公知である。FMDV、ERAV、PTV-1、およびTaVに由来する2Aペプチドは、本明細書においてそれぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」、および「T2A」と称される。当業者は、本発明において使用するために適した自己切断型ペプチドを選択することが可能であろう。
【0190】
いくつかの態様では、リンカーは、フューリン切断部位をコードする核酸配列をさらに含む。フューリンは、トランスゴルジ中に存在し、かつタンパク質前駆体をそれらの分泌の前にプロセシングする、遍在的に発現されるプロテアーゼである。フューリンは、そのコンセンサス認識配列のCOOH-末端で切断する。非限定的に、Arg-Gln-Lys-Arg(SEQ ID NO:121)などの、Arg-X-Lys-Arg(SEQ ID NO:117)またはArg-X-Arg-Arg(SEQ ID NO:118)、X2-Arg-X1-X3-Arg(SEQ ID NO:119)およびArg-X1-X1-Arg(SEQ ID NO:120)(配列中、X1は、任意の天然アミノ酸であり、X2はLysまたはArgであり、X3はLysまたはArgである)を含む、様々なフューリンコンセンサス認識配列(または「フューリン切断部位」)が、当業者に公知である。当業者は、本発明において使用するために適したフューリン切断部位を選択することが可能であろう。
【0191】
いくつかの態様では、リンカーは、フューリン切断部位と2Aペプチドとの組み合わせをコードする核酸配列を含む。例には、フューリンおよびF2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびE2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびP2Aをコードする核酸配列を含むリンカー、フューリンおよびT2Aをコードする核酸配列を含むリンカーが含まれるが、それに限定されるわけではない。当業者は、本発明において使用するために適した組み合わせを選択することが可能であろう。そのような態様では、リンカーは、フューリンと2Aペプチドとの間にスペーサー配列をさらに含み得る。非限定的に、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:148)および(GGGS)n(SEQ ID NO:149)(配列中、nは少なくとも1の整数を表す)などのグリシンセリン(GS)スペーサーを含む、様々なスペーサー配列が当技術分野において公知である。例示的なスペーサー配列は、非限定的に、GGSG(SEQ ID NO:34)、GGSGG(SEQ ID NO:35)、GSGSG(SEQ ID NO:36)、GSGGG(SEQ ID NO:37)、GGGSG(SEQ ID NO:38)、GSSSG(SEQ ID NO:39)などを含むアミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本発明において使用するために適したスペーサー配列を選択することが可能であろう。
【0192】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、転写制御エレメント、例えば、プロモーター、およびエンハンサーなどに機能的に連結される場合がある。適切なプロモーターおよびエンハンサーエレメントは、当業者に公知である。
【0193】
いくつかの態様では、外部CARをコードする核酸は、プロモーターに機能的に連結した状態にある。いくつかの態様では、プロモーターは、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーターである。
【0194】
細菌細胞における発現に適したプロモーターには、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPおよびtrcが含まれるが、それに限定されるわけではない。真核細胞における発現に適したプロモーターには、軽鎖および/または重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーターおよびエンハンサーエレメント;サイトメガロウイルス前初期プロモーター;単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター;初期および後期SV40プロモーター;レトロウイルス由来の長鎖末端反復配列に存在するプロモーター;マウスメタロチオネイン-Iプロモーター;ならびに当技術分野において公知の様々な組織特異的プロモーターが含まれるが、それに限定されるわけではない。可逆誘導性プロモーターを含む、適切な可逆プロモーターは、当技術分野において公知である。そのような可逆プロモーターは、多数の生物、例えば、真核生物および原核生物から単離され、それに由来する場合がある。第2の生物における使用のために第1の生物に由来する可逆プロモーターの改変(例えば、第1の原核生物および第2の真核生物、第1の真核生物および第2の原核生物など)は、当技術分野において周知である。そのような可逆プロモーター、およびそのような可逆プロモーターに基づくが、追加的な制御タンパク質も含むシステムには、アルコール調節プロモーター(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼI(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランス活性化因子タンパク質(A1cR)応答プロモーターなど)、テトラサイクリン調節プロモーター、(例えば、TetActivator、TetON、TetOFFなどを含むプロモーターシステム)、ステロイド調節プロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体プロモーターシステム、ヒトエストロゲン受容体プロモーターシステム、レチノイドプロモーターシステム、甲状腺プロモーターシステム、エクジソンプロモーターシステム、ミフェプリストンプロモーターシステムなど)、金属調節プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーターシステムなど)、病原性関連調節プロモーター(例えば、サリチル酸調節プロモーター、エチレン調節プロモーター、ベンゾチアジアゾール調節プロモーターなど)、温度調節プロモーター(例えば、熱ショック誘導プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、ダイズ熱ショックプロモーターなど)、光調節プロモーター、合成誘導プロモーターなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0195】
いくつかの態様では、プロモーターは、CD8細胞特異的プロモーター、CD4細胞特異的プロモーター、好中球特異的プロモーター、またはNK特異的プロモーターである。例えば、CD4遺伝子プロモーターを使用することができる;例えば、Salmon et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:7739;およびMarodon et al. (2003) Blood 101:3416を参照されたい。別の例として、CD8遺伝子プロモーターを使用することができる。NK細胞特異的発現は、NcrI(p46)プロモーターの使用により達成することができる;例えば、Eckelhart et al. Blood (2011) 117:1565を参照されたい。
【0196】
酵母細胞における発現に適したプロモーターは、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーターなどのような構成的プロモーター;またはGAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PHOSプロモーター、CUP1プロモーター、GALTプロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター、およびAOX1(例えば、ピキア(Pichia)における使用のため)のような調節可能なプロモーターである。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベルの範囲内である。原核生物宿主細胞における使用に適したプロモーターには、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター;trcプロモーター;tacプロモーターなど;araBADプロモーター;ssaGプロモーターなどのインビボ調節プロモーターまたは関連プロモーター(例えば、米国特許出願公開第20040131637号を参照されたい)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller, J. Bacteriol. (1991) 173(1): 86-93;Alpuche-Aranda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89(21): 10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al. Mol. Micro. (1992) 6:2805-2813)など(例えば, Dunstan et al., Infect. Immun. (1999) 67:5133-5141;McKelvie et al., Vaccine (2004) 22:3243-3255;およびChatfield et al., Biotechnol. (1992) 10:888-892を参照されたい);sigma70プロモーター、例えば、コンセンサスsigma70プロモーター(例えば、GenBankアクセッション番号AX798980、AX798961、およびAX798183を参照されたい);静止期プロモーター、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど;病原性アイランドSPI-2に由来するプロモーター(例えば、WO96/17951を参照されたい);actAプロモーター(例えば、Shetron-Rama et al., Infect. Immun. (2002) 70:1087-1096を参照されたい);rpsMプロモーター(例えば, Valdivia and Falkow Mol. Microbiol. (1996). 22:367を参照されたい);tetプロモーター(例えば、Hillen, W. and Wissmann, A. (1989) In Saenger, W. and Heinemann, U. (eds), Topics in Molecular and Structural Biology, Protein--Nucleic Acid Interaction. Macmillan, London, UK, Vol. 10, pp. 143-162を参照されたい);SP6プロモーター(例えば, Melton et al., Nucl. Acids Res. (1984) 12:7035を参照されたい)などが含まれるが、それに限定されるわけではない。大腸菌(Escherichia coli)などの原核生物における使用に適した強力なプロモーターには、Trc、Tac、T5、T7、およびPラムダが含まれるが、それに限定されるわけではない。細菌宿主細胞における使用のためのオペレーターの非限定的な例には、ラクトースプロモーターオペレーター(LacIリプレッサータンパク質は、ラクトースと接触した場合に立体配座を変化させ、それにより、Ladリプレッサータンパク質がオペレーターに結合するのを阻止する)、トリプトファンプロモーターオペレーター(トリプトファンと複合体化した場合、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターと結合する立体配座を有し;トリプトファンの非存在下で、TrpRリプレッサータンパク質は、オペレーターに結合しない立体配座を有する)、およびtacプロモーターオペレーターが含まれる(例えば、deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25を参照されたい)。
【0197】
適切なプロモーターの他の例には、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が含まれる。このプロモーター配列は、それに機能的に連結される任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を推進することが可能な、強力な構成的プロモーター配列である。サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、EF-1アルファプロモーター、ならびに非限定的にアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターなどのヒト遺伝子プロモーターを含むが、それに限定されるわけではない他の構成的プロモーター配列も使用される場合がある。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導プロモーターもまた、本発明の一部として企図されている。誘導プロモーターの使用は、それが機能的に連結されるポリヌクレオチド配列の発現が望ましい場合に、そのような発現をオンにすること、または発現が望ましくない場合に発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導プロモーターの例には、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0198】
いくつかの態様では、適切なプロモーターを含有する遺伝子座または構築物または導入遺伝子は、誘導システムの誘導を経由して不可逆的にスイッチされる。不可逆スイッチの誘導に適したシステムは、当技術分野において周知であり、例えば、不可逆スイッチの誘導は、Cre-lox媒介組み換えを利用する場合がある(例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、Fuhrmann-Benzakein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000) 28:e99を参照されたい)。当技術分野において公知であるリコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組み換え部位などの任意の適切な組み合わせが、不可逆的にスイッチ可能なプロモーターを生成するために使用される場合がある。本明細書の他の箇所に記載される部位特異的組み換えを行うための方法、メカニズム、および要件が、不可逆的にスイッチされたプロモーターの生成に用いられ、当技術分野において周知である。例えば、その開示が、参照により本明細書に組み入れられる、Grindley et al. Annual Review of Biochemistry (2006) 567-605;およびTropp, Molecular Biology (2012) (Jones & Bartlett Publishers, Sudbury, Mass.)を参照されたい。
【0199】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、CAR誘導発現カセットをコードする核酸配列をさらに含む。一態様では、CAR誘導発現カセットは、CARシグナル伝達の際に放出されるトランスジェニックポリペプチド産物の産生のためである。例えば、Chmielewski and Abken, Expert Opin. Biol. Ther. (2015) 15(8): 1145-1154;およびAbken, Immunotherapy (2015) 7(5): 535-544を参照されたい。いくつかの態様では、本開示の核酸は、T細胞活性化応答プロモーターに機能的に連結されるサイトカインをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの態様では、T細胞活性化応答プロモーターに機能的に連結されるサイトカインは、別々の核酸配列上に存在する。一態様では、サイトカインはIL-12である。
【0200】
本開示の核酸は、発現ベクターおよび/またはクローニングベクター内に存在し得る。発現ベクターは、選択マーカー、複製起点、ならびにベクターの複製および/または維持を提供する他の特徴を含むことができる。適切な発現ベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが含まれる。多数の適切なベクターおよびプロモーターが、当業者に公知であり;対象の組み換え構築物を生成するために多くが市販されている。以下のベクターが例として提供されるが、これらは、いかようにも限定として解釈されるべきではない:細菌:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene, La Jolla, Calif., USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia, Uppsala, Sweden)。原核生物:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSGおよびpSVL(Pharmacia)。
【0201】
発現ベクターは、一般的に、プロモーター配列近くに位置する好都合な制限部位を有して、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供する。発現宿主において作動する選択マーカーが存在する場合がある。適切な発現ベクターには、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1994) 35: 2543-2549;Borras et al., Gene Ther. (1999) 6: 515-524;Li and Davidson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92: 7700-7704;Sakamoto et al., H. Gene Ther. (1999) 5: 1088-1097;国際公開公報第94/12649号、同第93/03769号;同第93/19191号;同第94/28938号;同第95/11984号および同第95/00655号を参照されたい);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum. Gene Ther. (1998) 9: 81-86, Flannery et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 6916-6921;Bennett et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1997) 38: 2857-2863;Jomary et al., Gene Ther. (1997) 4:683 690, Rolling et al., Hum. Gene Ther. (1999) 10: 641-648;Ali et al., Hum. Mol. Genet. (1996) 5: 591-594;国際公開公報第93/09239号におけるSrivastava、Samulski et al., J. Vir. (1989) 63: 3822-3828;Mendelson et al., Virol. (1988) 166: 154-165;およびFlotte et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 10613-10617を参照されたい);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 10319-23;Takahashi et al., J. Virol. (1999) 73: 7812-7816を参照されたい)に基づくウイルスベクター;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳がんウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクター)などが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0202】
使用に適した追加的な発現ベクターは、例えば、非限定的に、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、操作ハイブリッドウイルスベクター、トランスポゾン媒介ベクターなどである。ウイルスベクター技法は、当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NY)ならびに他のウイルス学および分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0203】
一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能性の複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含有する(例えば、国際公開公報第01/96584号;同第01/29058号;および米国特許第6,326,193号)。
【0204】
いくつかの態様では、免疫細胞またはその前駆細胞(例えば、T細胞)中にCARを導入するために、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)が使用される場合がある。したがって、本発明の発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、CARをコードする核酸を含む場合がある。いくつかの態様では、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、その中にコードされるCARの機能的発現を助ける追加的なエレメントを含むであろう。いくつかの態様では、CARをコードする核酸を含む発現ベクターは、哺乳動物プロモーターをさらに含む。一態様では、ベクターは、伸長因子-1-アルファプロモーター(EF-1αプロモーター)をさらに含む。EF-1αプロモーターの使用は、下流の導入遺伝子(例えば、CARをコードする核酸配列)の発現における効率を上げる場合がある。生理的プロモーター(例えば、EF-1αプロモーター)は、組み込み媒介遺伝毒性を誘導する可能性が低い場合があり、レトロウイルスベクターが幹細胞を形質転換する能力を打ち消す場合がある。ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)における使用に適した他の生理的プロモーターは、当業者に公知であり、本発明のベクターに組み込まれる場合がある。いくつかの態様では、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、力価および遺伝子発現を改善する場合がある、必須ではないシス作用配列をさらに含む。必須ではないシス作用配列の非限定的な一例は、効率的な逆転写および核内輸送に重要なセントラルポリプリントラクトおよびセントラルターミネーション配列(cPPT/CTS)である。他の必須ではないシス作用配列は、当業者に公知であり、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込まれる場合がある。いくつかの態様では、ベクターは、転写後調節エレメントをさらに含む。転写後調節エレメントは、RNAの翻訳を改善し、導入遺伝子の発現を改善し、RNA転写物を安定化する場合がある。転写後調節エレメントの一例は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。したがって、いくつかの態様では、本発明のためのベクターは、WPRE配列をさらに含む。様々な転写後調節因子エレメントは、当業者に公知であり、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込まれる場合がある。本発明のベクターは、RNAの輸送のためのrev応答エレメント(RRE)、パッケージング配列、ならびに5'および3'長鎖末端反復配列(LTR)などの追加的なエレメントをさらに含む場合がある。「長鎖末端反復配列」または「LTR」という用語は、U3、RおよびU5領域を含むレトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。LTRは、一般的にレトロウイルス遺伝子の発現(例えば、プロモーション、イニシエーションおよび遺伝子転写物のポリアデニル化)およびウイルス複製に必要な機能を提供する。一態様では、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、3' U3欠失LTRを含む。したがって、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、本明細書に記載されるエレメントの任意の組み合わせを含んで、導入遺伝子の機能的発現の効率を高める場合がある。例えば、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、CARをコードする核酸に加えてWPRE配列、cPPT配列、RRE配列、5'LTR、3' U3欠失LTR'を含む場合がある。
【0205】
本発明のベクターは、自己不活化ベクターであり得る。本明細書に用いられる「自己不活化ベクター」という用語は、3' LTRエンハンサープロモーター領域(U3領域)が改変されている(例えば、欠失または置換により)、ベクターを指す。自己不活化ベクターは、ウイルス複製の第1ラウンドを超えたウイルス転写を防止し得る。結果として、自己不活化ベクターは、感染して、次いで宿主ゲノム(例えば、哺乳動物ゲノム)中に1回だけ組み込まれることができ得るが、さらに継代され得ない。したがって、自己不活化ベクターは、複製適格ウイルスを生み出すリスクを大きく低減し得る。
【0206】
いくつかの態様では、本発明の核酸は、RNA、例えば、インビトロ合成されたRNAであり得る。RNAのインビトロ合成のための方法は、当業者に公知であり;任意の公知の方法を使用して、本開示のCARをコードする配列を含むRNAを合成することができる。宿主細胞内にRNAを導入するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。本開示のCARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞中に導入することは、インビトロまたはエクスビボまたはインビボで実施することができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)に、本開示のCARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
【0207】
ポリペプチドまたはその部分の発現を評価するために、細胞内に導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターによりトランスフェクションまたは感染させようとする細胞集団から発現している細胞の特定および選択を容易にするために、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子の一方または両方を含有する場合がある。いくつかの態様では、選択マーカーは、別々のDNA片上に保有され、共トランスフェクション手順に使用される場合がある。選択マーカーおよびレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞における発現を可能にするために適切な調節配列に隣接する場合がある。有用な選択マーカーには抗生物質耐性遺伝子が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0208】
トランスフェクションされた可能性のある細胞を特定するためおよび調節配列の機能性を評価するために、レポーター遺伝子が使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織中に存在することもそれによって発現されることもない遺伝子であって、いくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によってその発現が明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞内に導入された後の適切な時間に評価される。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が含まれる場合があるが、それに限定されるわけではない(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。
【0209】
D. 改変された免疫細胞
本発明は、FAP(例えば、ヒト、イヌおよび/またはマウスFAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆体(例えば、T細胞)を提供する。本発明はまた、本明細書に開示されるCARのいずれか、本明細書に開示される核酸のいずれか、または本明細書に開示されるベクターのいずれかを含む、改変された免疫細胞またはその前駆体も含む。
【0210】
本発明の一局面は、FAPに結合可能なCARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域と3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域とを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0211】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、HCDR1は、アミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、および/または、HCDR2は、アミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3は、アミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む。抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2は、アミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、および/または、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0212】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、HCDR1は、アミノ酸配列GYTITSYSLH(SEQ ID NO:27)を含み、および/または、HCDR2は、アミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3は、アミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む。抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2は、アミノ酸配列LTSNLAS(SEQ ID NO:30)を含み、および/または、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0213】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、HCDR1は、アミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、および/または、HCDR2は、アミノ酸配列
を含み、および/または、HCDR3は、アミノ酸配列TRLDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:29)を含む。抗原結合ドメインはまた、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域も含む。ある特定の態様では、LCDR1は、アミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、および/または、LCDR2は、アミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、および/または、LCDR3は、アミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む。
【0214】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるような3つの重鎖相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3のいずれかを含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるような3つの軽鎖相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3のいずれかを含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の任意の組み合わせを含み、本明細書に記載される。当業者は、本明細書に提供される重鎖および軽鎖の可変領域配列を考慮し、アミノ酸番号付けに基づき、関連する相補性決定領域を容易に決定できるであろう。
【0215】
本発明の別の局面は、FAPに結合可能なCARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0216】
また、FAPに結合可能なCARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、SEQ ID NO:11または13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞も提供される。
【0217】
さらに、FAPに結合可能なCARを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞が提供される。
【0218】
ある特定の態様では、改変された細胞は、改変されたT細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、改変されたNK細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、ヒト対象から得られた自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、イヌ対象から得られた自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、同種異系細胞である。
【0219】
E. 免疫細胞の供給源
いくつかの態様では、エクスビボ操作のために免疫細胞(例えば、T細胞)の供給源が対象から得られる。エクスビボ操作のための標的細胞の供給源はまた、例えば、自己または異種のドナー血、臍帯血、または骨髄も含む場合がある。例えば、免疫細胞の供給源は、本発明の改変された免疫細胞により処置されるべき対象に由来する場合があり、例えば、対象の血液、対象の臍帯血、または対象の骨髄であり得る。対象の非限定的な例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0220】
免疫細胞は、血液、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、脾臓組織、臍帯、リンパ液、またはリンパ器官を含むいくつかの供給源から得ることができる。免疫細胞は、免疫系の細胞、例えば自然免疫または適応免疫の細胞、例えば、リンパ球、典型的にはT細胞および/またはNK細胞を含む骨髄系細胞またはリンパ球系細胞である。他の例示的な細胞には、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、複能性および多能性幹細胞などの幹細胞が含まれる。いくつかの局面では、細胞はヒト細胞である。処置されるべき対象に関して、細胞は、同種および/または自己であり得る。細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離され、かつ/または対象から単離され凍結された初代細胞である。
【0221】
ある特定の態様では、免疫細胞は、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、制御性T細胞(Treg)、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞、造血幹細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)または樹状細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。ある態様では、標的細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞またはiPS細胞に由来する細胞、例えば、対象から生成され、1つまたは複数の標的遺伝子の発現を変化させる(例えばそれに変異を誘導する)または操作するように操作され、例えば、T細胞、例えば、CD8+ T細胞(例えば、CD8+ ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、またはエフェクターメモリーT細胞)、CD4+ T細胞、幹細胞メモリーT細胞、リンパ球系前駆細胞または造血幹細胞に分化したiPS細胞である。
【0222】
いくつかの態様では、細胞は、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えばT細胞集団全体、CD4+細胞、CD8+細胞、およびその部分集団、例えば機能、活性化状態、成熟、分化能、増大、再循環、局在、および/もしくは持続能、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画における存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、および/または分化の度合いにより定義されるものを含む。T細胞ならびに/またはCD4+および/もしくはCD8+ T細胞のサブタイプおよび部分集団は中でも、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそれらのサブタイプ、例えば幹細胞メモリーT(TSCM)、中枢性メモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然および適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、およびデルタ/ガンマT細胞である。ある特定の態様では、当技術分野において入手可能ないくつものT細胞系が、使用される場合がある。
【0223】
いくつかの態様では、方法は、対象から免疫細胞を単離する段階、それらを調製、処理、培養、および/または操作する段階を含む。いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製段階を含む。記載のように操作するための細胞は、生物学的試料などの試料、例えば対象から得られたまたは対象に由来する試料から単離される場合がある。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とする、もしくは細胞療法が投与されるであろう対象である。対象は、いくつかの態様では、そのために細胞が単離、処理、および/または操作される、養子細胞療法などの特定の治療的介入の必要のあるヒトである。したがって、細胞は、いくつかの態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。試料には、対象から直接採取された組織、液体、および他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理段階の結果として生じる試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られる試料または処理された試料であることができる。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織、ならびに器官試料が、それらに由来する処理された試料を含めて含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0224】
いくつかの局面では、細胞が由来または単離される試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物である、もしくはそれに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃、もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞が含まれる。試料は、細胞療法、例えば、養子細胞療法に関連して、自己および同種供給源からの試料を含む。
【0225】
いくつかの態様では、細胞は、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。細胞は、いくつかの態様では、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタから得られる。いくつかの態様では、細胞の単離は、1つまたは複数の調製段階および/または親和性に基づかない細胞分離段階を含む。いくつかの例では、細胞が、洗浄、遠心分離、および/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートされて、例えば、望まれない成分が除去され、所望の成分が濃縮され、特定の試薬に感受性の細胞が溶解または除去される。いくつかの例では、細胞は、密度、接着特性、サイズ、特定の成分に対する感受性および/または耐性などの1つまたは複数の特性に基づき分離される。いくつかの態様では、細胞株はNK細胞株(NK92またはNK92-MI細胞株など)である。
【0226】
いくつかの例では、対象の循環血からの細胞は、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスにより得られる。試料は、いくつかの局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含むリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含有し、いくつかの局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞は、洗浄されて、例えば、血漿画分を除去し、その後の処理段階に適した緩衝液または媒質中に細胞を入れる。いくつかの態様では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの局面では、洗浄段階は、タンジェント流濾過(TFF)により、製造業者の説明に従って成し遂げられる。いくつかの態様では、細胞は洗浄後に多様な生体適合性緩衝液中に再懸濁される。ある特定の態様では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される。いくつかの態様では、方法は、赤血球を溶解し、PercollまたはFicoll勾配による遠心分離を行うことによる末梢血からの白血球の調製などの、密度に基づく細胞分離方法を含む。
【0227】
一態様では、免疫細胞は、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られた個体の循環血から得られた細胞である。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含有する。血漿画分を除去するため、および適切な緩衝液もしくは媒質、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)中に細胞を入れるために、アフェレーシスによって収集された細胞が洗浄される場合があり、または洗浄溶液は、その後の処理段階のためにカルシウムを欠如し、かつマグネシウムを欠如する場合があり、もしくはすべてとはいわないまでも多くの二価陽イオンを欠如する場合がある。洗浄後、細胞は、多様な生体適合性緩衝液、例えば、Ca不含、Mg不含PBSなどの中に再懸濁される場合がある。あるいは、アフェレーシス試料の望ましくない成分が、除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される場合がある。
【0228】
いくつかの態様では、単離方法は、1種または複数種の特異的分子、例えば表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の細胞中の発現または存在に基づく、異なる細胞型の分離を含む。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のために、任意の公知の方法が使用される場合がある。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、分離は、いくつかの局面では、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーと一緒のインキュベーション、一般的にそれに続く洗浄段階、および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーと結合した細胞の分離による、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団の分離を含む。
【0229】
そのような分離段階は、試薬と結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される負の選択に基づくことができる。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面では、所望の集団以外の細胞により発現されるマーカーに基づいて分離が最も良好に行われるように、不均一な集団中の細胞型を特異的に特定する抗体が利用不能な場合に、負の選択は特に有用であることができる。分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現している細胞の100%の濃縮または除去を生じる必要はない。例えば、特定の種類の細胞、例えばマーカーを発現している細胞の正の選択または濃縮は、そのような細胞の数またはパーセンテージを増加させることを指すが、マーカーを発現していない細胞の完全な非存在をもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現している細胞などの特定の種類の細胞の負の選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数またはパーセンテージを減少させることを指すが、そのような細胞のすべての完全な除去をもたらす必要はない。
【0230】
いくつかの例では、複数ラウンドの分離段階が実施され、その際、1つの段階から正または負の選択をされた画分が、後続の正または負の選択などの別の分離段階に供される。いくつかの例では、それぞれが負の選択のための標的とされるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることなどによって、複数のマーカーを同時発現している細胞を単一の分離段階で枯渇させることができる。同様に、複数の抗体または様々な細胞型に発現される結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型に同時に正の選択を行うことができる。
【0231】
いくつかの態様では、T細胞集団の1つまたは複数は、1つまたは複数の特定のマーカー、例えば表面マーカーについて陽性(マーカー+)である、もしくはそれを高レベル発現する(マーカーhigh)細胞、または1つもしくは複数のマーカーについて陰性である(マーカー-)もしくはそれを比較的低レベルを発現する(マーカーlow)細胞が濃縮または枯渇されている。例えば、いくつかの局面では、T細胞の特定の部分集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカー、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+ T細胞について陽性またはそれを高レベル発現している細胞は、正または負の選択技法により単離される。場合によっては、そのようなマーカーは、T細胞のある特定の集団(非メモリー細胞など)に存在しない、または比較的低レベルで発現されるが、T細胞のある特定の他の集団(メモリー細胞など)に存在する、または比較的高レベル発現されるマーカーである。一態様では、細胞(CD8+細胞、またはT細胞、例えばCD3+細胞など)は、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127、および/もしくはCD62Lについて陽性である、もしくはその高い表面レベルを発現する細胞が濃縮されている(すなわち、正の選択をされている)、かつ/またはCD45RAについて陽性である、もしくはその高い表面レベルを発現する細胞が枯渇されている(例えば、それについて負の選択をされている)。いくつかの態様では、細胞は、CD122、CD95、CD25、CD27、および/またはIL7-Ra(CD127)について陽性であるまたはその高い表面レベルを発現している細胞が濃縮されているまたはそれを枯渇している。いくつかの例では、CD8+ T細胞は、CD45ROについて陽性(またはCD45RAについて陰性)およびCD62Lについて陽性の細胞が濃縮されている。例えば、CD3+、CD28+ T細胞は、CD3/CD28コンジュゲート磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を使用して正の選択を行うことができる。
【0232】
いくつかの態様では、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球などの非T細胞に発現されるマーカー、例えばCD14の負の選択によってPBMC試料から分離される。いくつかの局面では、CD4+またはCD8+選択段階は、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。そのようなCD4+集団およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞部分集団上に発現されるまたは比較的高い度合いで発現されるマーカーについて正の選択または負の選択により部分集団にさらに選別することができる。いくつかの態様では、CD8+細胞は、例えば、それぞれの部分集団に関連する表面抗原に基づく正の選択または負の選択により、ナイーブ、中枢性メモリー、エフェクターメモリー、および/または中枢性メモリー幹細胞についてさらに濃縮または枯渇される。いくつかの態様では、中枢性メモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、有効性を増加させるために、例えば、投与後に長期生存、増大、および/または生着を改善するために実施され、それは、いくつかの局面ではそのような部分集団において特に堅固である。いくつかの態様では、TCMが濃縮されたCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞を組み合わせることで、有効性がさらに高まる。
【0233】
いくつかの態様では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体などを使用して、CD62L-CD8+および/またはCD62L+CD8+画分について濃縮されているまたはそれを枯渇していることができる。いくつかの態様では、CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞部分集団、例えば、中枢性メモリー(TCM)細胞について濃縮された部分集団である。いくつかの態様では、中枢性メモリーT(TCM)細胞についての濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127について陽性またはその高い表面発現に基づく;いくつかの局面では、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現しているまたは高度に発現している細胞についての負の選択に基づく。いくつかの局面では、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現している細胞の枯渇、およびCD62Lを発現している細胞についての正の選択または濃縮により実施される。一局面では、中枢性メモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4の発現に基づき選択される細胞の負の画分から開始して実施され、それが、CD14およびCD45RAの発現に基づく負の選択、ならびにCD62Lに基づく正の選択に供される。そのような選択は、いくつかの局面では、同時に実施され、他の局面では、どちらかの順序で順次に実施される。いくつかの局面では、CD8+細胞集団または部分集団を調製するのに使用されるCD4発現に基づく同じ選択段階はまた、CD4+細胞集団または部分集団を生成するために使用され、それにより、CD4に基づく分離からの正の画分および負の画分の両方が、任意で1つまたは複数のさらなる正または負の選択段階に続いて、方法のその後の段階において保持および使用される。
【0234】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を特定することにより、ナイーブ、中枢性メモリー、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+ リンパ球は、標準的な方法により得ることができる。いくつかの態様では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞である。いくつかの態様では、中枢性メモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45ROである。一例では、負の選択によりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様では、抗体または結合パートナーは、正および/または負の選択のための細胞の分離を可能にするために磁気ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合される。
【0235】
いくつかの態様では、細胞は、遺伝子操作の前またはそれに関連してインキュベートおよび/または培養される。インキュベーション段階は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または繁殖を含むことができる。いくつかの態様では、組成物または細胞は、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートされる。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、増大、活性化、および/もしくは生存を誘導するために、抗原曝露を模倣するために、ならびに/または遺伝子操作、例えば組み換え抗原受容体の導入のために細胞をプライミングするために設計された条件が含まれる。条件は、特定の媒質、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組み換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質のうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの態様では、刺激条件または刺激物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な1つまたは複数の作用物質、例えば、リガンドを含む。いくつかの局面では、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを始動する、または開始する。そのような作用物質は、例えば、ビーズなどの固体支持体に結合した抗体、例えば、TCR成分および/もしくは共刺激受容体に特異的な抗体、例えば、抗CD3、抗CD28、ならびに/または1つもしくは複数のサイトカインを含むことができる。任意で、増大方法は、培地に抗CD3および/または抗CD28抗体を(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)添加する段階をさらに含む場合がある。いくつかの態様では、刺激物質は、IL-2および/またはIL-15、例えば、少なくとも約10ユニット/mLのIL-2濃度を含む。
【0236】
別の態様では、T細胞は、赤血球を溶解することおよび単球を枯渇させることによって、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離により、末梢血から単離される。あるいは、T細胞は、臍帯から単離することができる。任意の事象では、T細胞の特定の部分集団を正または負の選択技法によりさらに単離することができる。
【0237】
そのように単離された臍帯血単核細胞は、非限定的にCD34、CD8、CD14、CD19、およびCD56を含む、ある特定の抗原を発現している細胞を枯渇していることができる。これらの細胞の枯渇は、単離された抗体、抗体を含む生物学的試料、例えば腹水、物理的支持体に結合した抗体、細胞と結合した抗体を使用して成し遂げることができる。
【0238】
負の選択によるT細胞集団の濃縮は、負の選択をされた細胞に独特な表面マーカーに対する抗体の組み合わせを使用して成し遂げることができる。好ましい方法は、負の選択をされた細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負磁気免疫接着(negative magnetic immunoadherence)またはフローサイトメトリーを介する細胞選別および/または選択である。例えば、負の選択によりCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。
【0239】
正または負の選択により細胞の所望の集団を単離するために、細胞濃度および表面(例えば、ビーズなどの粒子)を変化させることができる。ある特定の態様では、ビーズおよび細胞が一緒に混合される体積を顕著に減少させて(すなわち、細胞の濃度を増加させて)、細胞とビーズとの最大の接触を保証することが望ましい場合がある。例えば、一態様では、20億個/mlの細胞濃度が使用される。一態様では、10億個/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様では、細胞1億個/ml超が使用される。さらなる態様では、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個/mlの細胞濃度が使用される。なお別の態様では、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個/mlの細胞濃度が使用される。さらなる態様では、1億2500万または1億5000万個/mlの細胞濃度を使用することができる。高濃度を使用することは、増加した細胞収量、細胞活性化、および細胞増大をもたらすことができる。
【0240】
T細胞はまた、単球の除去段階を必要としない洗浄段階の後に凍結することができる。理論に縛られることを望むわけではないが、凍結およびその後の解凍段階は、細胞集団中の顆粒球およびある程度の単球を除去することによって、より均一な産物を提供する。血漿および血小板を除去する洗浄段階の後で、細胞が凍結溶液中に懸濁される場合がある。多数の凍結溶液およびパラメーターが当技術分野において公知であり、この状況で有用であろうものの、非限定的な例では、1つの方法は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または他の適切な細胞凍結媒を使用することを伴う。次いで細胞は、1℃/分の速度で-80℃に凍結され、液体窒素保存タンクの気相中で保管される。制御凍結の他の方法および-20℃または液体窒素中での即時の非制御凍結が使用される場合もある。
【0241】
一態様では、T細胞は、末梢血単核細胞、臍帯血細胞、T細胞の精製集団、およびT細胞株などの細胞の集団中に含まれる。別の態様では、末梢血単核細胞は、T細胞集団を含む。なお別の態様では、精製T細胞は、T細胞集団を含む。
【0242】
ある特定の態様では、制御性T細胞(Treg)は、試料から単離することができる。試料は、臍帯血または末梢血を含むことができるが、それに限定されるわけではない。ある特定の態様では、Tregは、フローサイトメトリー選別によって単離される。試料は、当技術分野において公知の任意の手段により単離前にTregが濃縮されることができる。単離されたTregを、凍結保存し、かつ/または使用前に増大させることができる。Tregを単離するための方法は、米国特許第7,754,482号、同第8,722,400号、および同第9,555,105号、ならびに米国特許出願第13/639,927号に記載されており、それらの内容は、その全体で本明細書に組み入れられる。
【0243】
F. 処置の方法
本明細書に記載される改変された免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)は、免疫療法のための組成物に含まれ得る。組成物は、薬学的組成物を含み得、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。改変されたT細胞またはNK細胞を含む薬学的組成物の治療有効量がそれを必要とする対象に投与され得る。
【0244】
一局面では、本発明は、それを必要とする対象における疾患または病態を処置する方法を含む。該方法は、本発明の改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む。別の局面では、本発明は、対象における疾患または病態を処置する方法であって、本発明の改変されたT細胞の有効量を含む薬学的組成物を対象に投与する工程を含む方法を含む。別の局面では、本発明は、養子細胞移入療法のための方法であって、それを必要とする対象に、本発明の改変されたT細胞の有効量を投与する工程を含む方法を含む。処置できる疾患は、免疫学的疾患、血液疾患、自己免疫疾患、線維症およびがんを含むが、それらに限定されない。
【0245】
養子細胞療法のための免疫細胞の投与のための方法は、公知であり、提供される方法および組成物と共に使用される場合がある。例えば、養子T細胞療法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開第2003/0170238号;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞療法を受けることになる対象もしくはそのような対象に由来する試料から細胞が単離され、かつ/またはその他の方法で調製される、自己移入によって実施される。したがって、いくつかの局面では、細胞は、処置を必要とする対象、例えば、患者に由来し、細胞は、単離および処理の後に同じ対象に投与される。
【0246】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受けることになる、または最終的に受ける対象、例えば、第1の対象以外の対象から単離され、かつ/またはその他の方法で調製される、同種移入によって実施される。そのような態様では、次いで細胞は、同じ種の異なる対象、例えば、第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に類似である。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたは上位タイプを発現する。
【0247】
いくつかの態様では、対象は、細胞または細胞を含有する組成物の投与前に疾患または状態、例えば、腫瘍を標的とする治療剤により処置されている。いくつかの局面では、対象は、他の治療剤に対して抗療性または非応答性である。いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含む別の治療的介入による処置の後に持続性疾患または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の治療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に処置する。
【0248】
いくつかの態様では、対象は、他の治療剤に応答性であり、治療剤による処置は、疾病負荷を低減する。いくつかの局面では、対象は、最初は治療剤に応答性であるが、時間が経つにつれて疾患または状態の再発を示す。いくつかの態様では、対象は再発していない。いくつかのそのような態様では、対象は、再発の危険性がある、例えば再発の高い危険性があると決定され、したがって細胞は、例えば、再発の可能性を低減するまたは再発を防止するために、予防的に投与される。いくつかの局面では、対象は、別の治療剤による事前の処置を受けたことがない。
【0249】
いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線、および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含む別の治療的介入による処置の後で、持続性疾患または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の治療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に処置する。
【0250】
本発明の改変された免疫細胞は、がんを処置するために動物(例えば、イヌ)、好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくはヒトに投与することができる。ある特定の態様では、がんは、FAP発現がん関連細胞を含む。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、がん関連線維芽細胞(CAF)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、FAP発現脂肪細胞である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、腫瘍関連好中球(TAN)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、がん幹細胞である。
【0251】
さらに、本発明の改変された免疫細胞を、動物、好ましくは哺乳動物、なおより好ましくはヒトに投与して、がんを処置することができる。加えて、本発明の細胞は、疾患を処置または軽減することが望ましい場合に、がんに関係する任意の状態の処置、特に腫瘍細胞に対する細胞媒介免疫応答のために使用することができる。本発明の改変された細胞または薬学的組成物により処置されるべきがんの種類には、がん腫、芽腫、および肉腫、ならびにある特定の白血病またはリンパ系腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、ならびに悪性疾患、例えば、肉腫、がん腫、および黒色腫が含まれる。他の例示的ながんには、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がん、甲状腺がんなどが含まれるが、それに限定されるわけではない。がんは、非固形腫瘍(血液腫瘍など)または固形腫瘍であり得る。成人腫瘍/がんおよび小児腫瘍/がんもまた含まれる。一態様では、がんは、固形腫瘍または血液学的腫瘍である。一態様では、がんは癌種である。一態様では、がんは肉腫である。一態様では、がんは白血病である。一態様では、がんは固形腫瘍である。
【0252】
固形腫瘍の処置の成功は、例えば腫瘍微小環境を含む、様々な障害によって妨げられている。腫瘍は、がん細胞ならびに細胞成分および非細胞成分を含む間質区画を含む。腫瘍間質は、進行および転移を含め、がんの発生において重要な役割を有することが示されている。本開示のCARは、腫瘍間質を標的とすることによって疾患または病態を処置するための方法において用いられ得、この場合、間質における有望な細胞標的は、がん関連線維芽細胞(CAF)を含む。CAFは、腫瘍の成長および伝播のほぼすべての局面を強めることが示されている。CAFは、治療用物質(例えば、薬物および免疫細胞)に対するバリアとなり、腫瘍細胞に増殖シグナルを提供し、また活発に免疫抑制的である。
【0253】
本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。FAPは、一般的なヒト上皮がんの90%超の間質において発現されるII型膜貫通セリンプロテアーゼである。ある特定の腫瘍では、FAPは、がん関連線維芽細胞によって選択的に発現される。FAPの発現は、良性腫瘍または正常成人の静止組織では検出されていない。
【0254】
いくつかの態様では、本開示の方法は、本開示の改変された免疫細胞を、他の治療用物質、例えば、非限定的に、がん免疫抗体療法およびチェックポイント遮断などの免疫療法、スイッチ共刺激性受容体、または他のCAR-T療法と組み合わせて用いる。
【0255】
固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体領域を含有しない組織の異常塊である。固形腫瘍は、良性または悪性であることができる。異なる種類の固形腫瘍が、それら(肉腫、がん腫、およびリンパ腫など)を形成する細胞の種類にちなんで名付けられる。肉腫およびがん腫などの固形腫瘍の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、リンパ系腫瘍、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝細胞がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、甲状腺髄様がん、乳頭様甲状腺がん、褐色細胞腫、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝細胞腫、胆管がん、絨毛がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、精上皮腫、膀胱がん、黒色腫、およびCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫および混合性神経膠腫など)、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫としても知られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫および脳転移など)が含まれる。いくつかの態様では、がんは星状細胞腫である。いくつかの態様では、がんは高悪性度星状細胞腫である。
【0256】
本明細書に開示される方法による治療の対象となるがん腫には、食道がん、肝細胞がん、基底細胞がん(皮膚がんの一形態)、扁平上皮がん(様々な組織)、移行上皮がん(膀胱の悪性新生物)を含む膀胱がん、気管支原性がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんを含む肺がん、副腎皮質がん、甲状腺がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭状がん、乳頭状腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、腎細胞がん、非浸潤性乳管がんまたは胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、骨原性がん、上皮がん、および上咽頭がんが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0257】
本明細書に開示の方法による治療の対象となる肉腫には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、および他の軟組織肉腫が含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0258】
ある特定の例示的な態様では、本発明の改変免疫細胞は、骨髄腫、または骨髄腫に関係する状態を処置するために使用される。骨髄腫またはそれに関係する状態の例は、軽鎖骨髄腫、非分泌型骨髄腫、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、孤立性、多発性、髄外性形質細胞腫)、アミロイドーシス、および多発性骨髄腫を含むが、それに限定されるわけではない。一態様では、本開示の方法は、多発性骨髄腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性骨髄腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性骨髄腫を処置するために使用される。
【0259】
ある特定の例示的な態様では、本発明の改変免疫細胞は、黒色腫、または黒色腫に関係する状態を処置するために使用される。黒色腫またはそれに関係する状態の例は、表在性拡大型黒色腫、結節性黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端黒子型黒色腫、無色素性黒色腫、または皮膚の黒色腫(例えば、皮膚、眼、外陰部、膣、直腸黒色腫)を含むが、それに限定されるわけではない。一態様では、本開示の方法は、皮膚黒色腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性黒色腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性黒色腫を処置するために使用される。
【0260】
なお他の例示的な態様では、本発明の改変免疫細胞は、肉腫、または肉腫に関係する状態を処置するために使用される。肉腫またはそれに関係する状態の例は、血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、消化管間質腫瘍、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫、骨肉腫、多形肉腫、横紋筋肉腫、および滑膜肉腫を含むが、それに限定されるわけではない。一態様では、本開示の方法は、滑膜肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、脂肪肉腫、例えば粘液性/円形細胞脂肪肉腫、分化型/脱分化型脂肪肉腫、および多形性脂肪肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、粘液性/円形細胞脂肪肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、難治性肉腫を処置するために使用される。一態様では、本開示の方法は、再発性肉腫を処置するために使用される。
【0261】
ある特定の態様では、本明細書に開示される方法は、免疫学的疾患を処置するために使用される。処置できる免疫学的疾患は、強皮症および関節炎(関節リウマチまたは骨関節炎など)を含むが、それらに限定されない。
【0262】
ある特定の態様では、本明細書に開示される方法は、血液疾患を処置するために使用される。処置できる血液疾患は、多発性骨髄腫または骨髄線維症を含むが、それらに限定されない。
【0263】
ある特定の態様では、本明細書に開示される方法は、肺線維症、肝臓線維症、皮膚線維症(ケロイドおよび強皮症)、腸線維症および腎臓線維症を非限定的に含む、任意の種類の線維症を処置するために使用される。ある特定の態様では、本明細書に開示される方法は、心筋線維症を処置するために使用される。処置され得るさらなる疾患または障害は、高血圧性心疾患、拡張機能障害、駆出率の保たれた心不全、心筋梗塞、虚心性心筋症、肥大型心筋症、心房細動を含む不整脈、不整脈原性右室心筋症、拡張型心筋症(特発性および家族性を含む)、高血圧性心疾患、筋ジストロフィーを含む遺伝性、感染性心筋症(例えば、シャーガス病、リウマチ熱)、移植心筋症、放射線誘発心筋線維症、自己免疫(サルコイド心筋症、ループス)、毒素または薬物関連、アミロイドーシス、糖尿病性心筋症、ならびに反応性間質性線維症、置換性線維症、浸潤性間質性線維症および心内膜心筋線維症を非限定的に含む他の種類の心筋線維症を含むが、それらに限定されない。
【0264】
投与されるべき本発明の細胞は、治療を受けている対象にとって自己であり得る。
【0265】
本発明の細胞の投与は、当業者に公知の任意の好都合な方法で実施される場合がある。本発明の細胞は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸注、埋め込みまたは移植により対象に投与される場合がある。本明細書に記載される組成物は、患者に経動脈的、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与される場合がある。他の例では、本発明の細胞は、対象における炎症部位、対象における局所疾患部位、リンパ節、器官、腫瘍などに直接注射される。
【0266】
いくつかの態様では、細胞は、所望の投薬量で投与され、投薬量は、いくつかの局面では、細胞もしくは細胞型の所望の用量もしくは数および/または細胞型の所望の比を含む。したがって、細胞の投薬量は、いくつかの態様では細胞の合計数(またはkg体重あたりの数)およびCD4+対CD8+の比のように個別の集団またはサブタイプの所望の比に基づく。いくつかの態様では、細胞の投薬量は、個別の集団における、または個別の細胞型の細胞の所望の合計数(またはkg体重あたりの数)に基づく。いくつかの態様では、投薬量は、所望の総細胞数、所望の比、および個別の集団中の所望の細胞合計数などの、そのような特徴の組み合わせに基づく。
【0267】
いくつかの態様では、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞などの細胞の集団またはサブタイプは、所望の用量の総細胞、例えば所望の用量のT細胞の許容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重あたりの所望の細胞数、例えば、個/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、最小細胞数または単位体重あたりの最小細胞数である、またはそれを超える。いくつかの局面では、所望の用量で投与される総細胞の中で、個別の集団またはサブタイプは、所望のアウトプット比(CD4+対CD8+の比など)でまたはそれ近くで、例えば、そのような比のある特定の許容される差異または誤差内で存在する。
【0268】
いくつかの態様では、細胞は、細胞の個別の集団またはサブタイプのうち1つまたは複数の所望の用量、例えば、CD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量の許容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの局面では、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重あたりのそのような細胞の所望の数、例えば、個/kgである。いくつかの局面では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの最小細胞数、または単位体重あたりの集団もしくはサブタイプの最小細胞数である、またはそれを超える。したがって、いくつかの態様では、投薬量は、総細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、かつ/または個別のサブタイプもしくは部分集団の1つもしくは複数、例えば、それぞれの所望の固定用量に基づく。したがって、いくつかの態様では、投薬量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4+細胞対CD8+細胞の所望の比に基づき、かつ/またはCD4+細胞および/もしくはCD8+細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0269】
ある特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個別の集団は、対象に、約100万~約1000億個の細胞の範囲で、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)、例えば約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)で、場合によっては約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値で投与される。
【0270】
いくつかの態様では、総細胞の用量および/または細胞の個別の部分集団の用量は、細胞1×105個または約1×105個/kg~約1×1011個/kg、細胞104個~1011個または約1011個/キログラム(kg)体重、例えば、細胞105~106個/kg体重の範囲内であり、例えば、細胞1×105個または約1×105個/kg、細胞1.5×105個/kg、細胞2×105個/kg、または細胞1×106個/kg体重である。例えば、いくつかの態様では、細胞は、T細胞104個または約104個~109個または約109個/キログラム(kg)体重、例えば、T細胞105個~106個/kg体重で、またはその誤差のある特定の範囲内で、例えば、T細胞1×105個もしくは約1×105個/kg、T細胞1.5×105個/kg、T細胞2×105個/kg、またはT細胞1×106個/kg体重で投与される。他の例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した、改変された細胞の投薬量範囲は、細胞約1×105個/kg~細胞約1×106個/kg、細胞約1×106個/kg~細胞約1×107個/kg、細胞約1×107個/kg~細胞約1×108個/kg、細胞約1×108個/kg~細胞約1×109個/kg、細胞約1×109個/kg~細胞約1×1010個/kg、細胞約1×1010個/kg~細胞約1×1011個/kgを含むが、それに限定されるわけではない。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、細胞約1×108個/kgである。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、細胞約1×107個/kgである。他の態様では、適切な投薬量は、総細胞約1×107個~総細胞約5×107個である。いくつかの態様では、適切な投薬量は、総細胞約1×108個~総細胞約5×108個である。いくつかの態様では、適切な投薬量は、総細胞約1.4×107個~総細胞約1.1×109個である。例示的な態様では、本開示の方法に使用するために適した投薬量は、総細胞約7×109個である。
【0271】
いくつかの態様では、細胞は、104または約104~109または約109個/キログラム(kg)体重のCD4+および/またはCD8+細胞、例えば、105~106個/kg体重のCD4+および/またはCD8+細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で、例えば、1×105もしくは約1×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、1.5×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、2×105個/kgのCD4+および/もしくはCD8+細胞、または1×106個/kg体重のCD4+および/もしくはCD8+細胞で投与される。いくつかの態様では、細胞は、約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個を超える、もしくは少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD4+細胞、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のCD8+細胞、および/または少なくとも約1×106個、約2.5×106個、約5×106個、約7.5×106個、もしくは約9×106個のT細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。いくつかの態様では、細胞は、約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のT細胞、約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のCD4+細胞、および/または約108個~1012個もしくは約1010個~1011個のCD8+細胞で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。
【0272】
いくつかの態様では、細胞は、CD4+およびCD8+細胞またはサブタイプなどの、複数の細胞集団またはサブタイプの所望のアウトプット比で、またはその耐容される範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比は、特定の比であることができる、または比の範囲であることができ、例えば、いくつかの態様では、所望の比(例えば、CD4+細胞対CD8+細胞の比)は、5:1もしくは約5:1~5:1もしくは約5:1(または約1:5よりも大きく、約5:1よりも小さい)、または1:3もしくは約1:3~3:1もしくは約3:1(または約1:3よりも大きく、約3:1よりも小さい)、例えば、2:1もしくは約2:1~1:5もしくは約1:5(または約1:5よりも大きく、約2:1よりも小さい、例えば、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、約4.5:1、約4:1、約3.5:1、約3:1、約2.5:1、約2:1、約1.9:1、約1.8:1、約1.7:1、約1.6:1、約1.5:1、約1.4:1、約1.3:1、約1.2:1、約1.1:1、約1:1、約1:1.1、約1:1.2、約1:1.3、約1:1.4、約1:1.5、約1:1.6、約1:1.7、約1:1.8、約1:1.9、約1:2、約1:2.5、約1:3、約1:3.5、約1:4、約1:4.5、もしくは約1:5である。いくつかの局面では、耐容される差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。
【0273】
いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、それを必要とする対象に単回用量または複数回用量で投与される。いくつかの態様では、改変された細胞の用量は、複数回用量で、例えば、週1回または7日毎、2週1回または14日毎、3週1回または21日毎、4週1回または28日毎に投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量が、それを必要とする対象に投与される。例示的な態様では、改変された細胞の単回用量は、急速静脈内注入によりそれを必要とする対象に投与される。
【0274】
疾患の予防または治療に適した投薬量は、処置されるべき疾患の種類、細胞もしくは組み換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的それとも治療目的で投与されるか、事前の療法、対象の臨床歴および細胞に対する応答、ならびに担当医師の判断に依存する場合がある。組成物および細胞は、いくつかの態様では、対象に1回でまたは一連の処置にわたり適宜投与される。
【0275】
いくつかの態様では、細胞は、組み合わせ処置の部分として、例えば、別の治療的介入、例えば、抗体または操作された細胞または受容体または作用物質、例えば細胞傷害剤もしくは治療剤もしくは抗がんワクチンと同時にまたは任意の順序で順次に投与される。細胞は、いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して、同時にまたは任意の順序で順次に共投与される。いくつかの状況では、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加的な治療剤の効果を高めるように十分に近い時間で別の療法と共に、またはその逆で共投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加的な治療剤の前に投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加的な治療剤の後に投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加的な作用物質は、例えば持続性を高めるための、IL-2などのサイトカインを含む。いくつかの態様では、この方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0276】
ある特定の態様では、本発明の改変細胞(例えば、CARを含む改変細胞)は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて対象に投与される場合がある。免疫チェックポイントの例は、CTLA-4、PD-1、およびTIM-3を含むが、それに限定されるわけではない。抗体は、免疫チェックポイントを阻害するために使用される場合がある(例えば、抗PD1抗体、抗CTLA-4抗体、または抗TIM-3抗体)。例えば、改変細胞は、例えば、PD-1(プログラム死1タンパク質)を標的とする抗体または抗体断片と組み合わせて投与され得る。抗PD-1抗体の例は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標)、以前のランブロリズマブ、MK-3475としても知られる)、およびニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538、OPDIVA(登録商標))またはそれらの抗原結合断片を含むが、それに限定されるわけではない。ある特定の態様では、改変細胞は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて投与され得る。抗PD-L1抗体の例は、BMS-936559、MPDL3280A(TECENTRIQ(登録商標)、アテゾリズマブ)、およびMEDI4736(デュルバルマブ、イミフィンジ)を含むが、それに限定されるわけではない。ある特定の態様では、改変細胞は、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合断片と組み合わせて投与され得る。抗CTLA-4抗体の例は、イピリムマブ(商品名Yervoy)を含むが、それに限定されるわけではない。小分子、siRNA、miRNA、およびCRISPRシステムを含むが、それに限定されるわけではない他の種類の免疫チェックポイントモジュレーターもまた使用され得る。免疫チェックポイントモジュレーターは、CARを含む改変細胞の前、後、またはそれと同時に投与され得る。ある特定の態様では、免疫チェックポイントモジュレーターを含む組み合わせ処置は、本発明の改変細胞を含む治療法の治療有効性を増大させる場合がある。
【0277】
細胞の投与に続き、操作された細胞集団の生物学的活性は、いくつかの態様では、例えば、いくつかの公知の方法のいずれかにより測定される。評価のためのパラメーターは、例えばイメージングによるインビボでの、または例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによるエクスビボでの、操作されたまたは天然のT細胞または他の免疫細胞の抗原への特異的結合を含む。ある特定の態様では、操作された細胞が標的細胞を破壊する能力は、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)、およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載される細胞傷害性アッセイなどの、当技術分野において公知の任意の適切な方法を使用して測定することができる。ある特定の態様では、細胞の生物学的活性は、1つまたは複数のサイトカイン、例えばCD107a、IFNy、IL-2、およびTNFの発現および/または分泌をアッセイすることにより測定される。いくつかの局面では、生物学的活性は、腫瘍負荷または腫瘍量の低減などの臨床的成果を評価することにより測定される。
【0278】
ある特定の態様では、対象に二次処置が提供される。二次処置は、化学療法、放射線、外科手術、および投薬を含むが、それに限定されるわけではない。
【0279】
いくつかの態様では、CAR T細胞療法の前に、対象に条件づけ療法を投与することができる。いくつかの態様では、条件づけ療法は、対象にシクロホスファミドの有効量を投与することを含む。いくつかの態様では、条件づけ療法は、対象にフルダラビンの有効量を投与することを含む。好ましい態様では、条件づけ療法は、対象にシクロホスファミドとフルダラビンとの組み合わせの有効量を投与することを含む。CAR T細胞療法の前の条件づけ療法の投与は、CAR T細胞療法の有効性を増大させる場合がある。T細胞療法のために患者を条件づける方法は、その全体で参照により本明細書に組み入れられる米国特許第9,855,298号に記載されている。
【0280】
いくつかの態様では、本開示の特異的投薬レジメンは、改変されたT細胞の投与前のリンパ球枯渇段階を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇段階は、シクロホスファミドおよび/またはフルダラビンの投与を含む。
【0281】
いくつかの態様では、リンパ球枯渇段階は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日、または500mg/m2/日)の用量でのシクロホスファミドの投与を含む。例示的な態様では、シクロホスファミドの用量は、約300mg/m2/日である。いくつかの態様では、リンパ球枯渇段階は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量でのフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、フルダラビンの用量は約30mg/m2/日である。
【0282】
ある態様では、リンパ球枯渇段階は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日、または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミド、および約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンの投与を含む。例示的な態様では、リンパ球枯渇段階は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミド、および約30mg/m2/日の用量のフルダラビンの投与を含む。
【0283】
例示的な態様では、シクロホスファミドの投薬は、300mg/m2/日を3日間であり、フルダラビンの投薬は、30mg/m2/日を3日間である。
【0284】
リンパ球枯渇化学療法の投薬は、0日目のT細胞(例えば、CAR-T、TCR-T、改変T細胞など)の注入に対して-6~-4日目(-1日の時間枠を設ける、すなわち、-7~-5日目に投薬)に予定され得る。
【0285】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変されたT細胞の投与の3日前に、静脈内注入により300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、改変されたT細胞の投与前に3日間、静脈内注入により300mg/m2のシクロホスファミドを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。
【0286】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
【0287】
例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約200mg/m2/日~約2000mg/m2/日(例えば、200mg/m2/日、300mg/m2/日、または500mg/m2/日)の用量のシクロホスファミド、および約20mg/m2/日~約900mg/m2/日(例えば、20mg/m2/日、25mg/m2/日、30mg/m2/日、または60mg/m2/日)の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を受ける。例示的な態様では、がんを有する対象について、対象は、約300mg/m2/日の用量のシクロホスファミド、および30mg/m2の用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇化学療法を3日間受ける。
【0288】
本発明の細胞は、適切な前臨床および臨床実験および試験において決定されるべき投薬量および経路および回数で投与することができる。細胞組成物は、これらの範囲内の投薬量で複数回投与される場合がある。本発明の細胞の投与は、当業者により決定される、所望の疾患または状態を処置するために有用な他の方法と組み合わせられる場合がある。
【0289】
CAR T細胞の注入後の有害作用の1つが、サイトカイン放出症候群(CRS)として知られる免疫活性化の開始であることが、当技術分野において公知である。CRSは、炎症性サイトカインの上昇を招く免疫活性化である。CRSは、公知のオンターゲット毒性であり、CRSの発生は有効性に関連すると考えられる。臨床尺度および検査尺度は、軽度のCRS(全身症状および/またはグレード2の臓器毒性)から重度のCRS(sCRS;グレード≧3の臓器毒性、積極的な臨床介入、および/または場合によっては生死にかかわる)の範囲である。臨床特徴には、高熱、倦怠感、疲労、筋肉痛、悪心、食欲不振、頻脈/低血圧、毛細血管漏出、心機能不全、腎機能障害、肝不全、および播種性血管内凝固が含まれる。インターフェロン-ガンマ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL-10、およびIL-6を含むサイトカインの劇的な上昇が、CAR T細胞注入の後に示されている。1つのCRSシグネチャーは、IL-6(重度の上昇)、IFN-ガンマ、TNF-アルファ(中等度)、およびIL-2(軽度)を含むサイトカインの上昇である。フェリチンおよびC反応性タンパク質(CRP)を含む、臨床的に利用可能な炎症マーカーにおける上昇もまた、CRS症候群と相関関係にあることが観察されている。CRSの存在は、一般的に、養子移入された細胞の増大および進行性免疫活性化と相関する。高い腫瘍量を有する患者は、より大きいsCRSを経験するので、CRSの重症度は注入時の疾病負荷により決まることが実証されている。
【0290】
したがって、本発明は、CRSの診断後に、操作された細胞(例えば、CAR T細胞)の抗腫瘍有効性を弱めずに、制御されない炎症の生理的症状を緩和するために適したCRS管理戦略を提供する。CRS管理戦略は、当技術分野において公知である。例えば、全身コルチコステロイドは、最初の抗腫瘍応答を損なわずに、sCRS(例えば、グレード3のCRS)の症状を急速に後退させるために投与される場合がある。
【0291】
いくつかの態様では、抗IL-6R抗体が投与される場合がある。抗IL-6R抗体の例は、米国食品医薬品局に承認された、アトリズマブとしても知られるモノクローナル抗体トシリズマブである(ActemraまたはRoActemraとして市販されている)。トシリズマブは、インターロイキン-6受容体(IL-6R)に対するヒト化モノクローナル抗体である。トシリズマブの投与は、CRSのほぼ即時の後退を実証した。
【0292】
CRSは、一般的に、観察される症候群の重症度に基づき管理され、介入はそのように個別化される。CRSの管理の決定は、単に臨床検査値だけではなく、臨床徴候および症状ならびに介入に対する応答に基づき得る。
【0293】
軽症例~中等症例は、一般的に、症状の十分な緩和のために必要に応じて輸液療法、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)および抗ヒスタミン薬を用いた症状管理で処置される。より重症の例は、任意の程度の血行動態不安定を有する患者を含み;任意の血行動態不安定では、トシリズマブの投与が推奨される。CRSの第一選択管理は、いくつかの実施形態では、表示用量8mg/kg(800mg/回を超えない)の60分間にわたるIVのトシリズマブであり得;トシリズマブは反復Q8時間であることができる。トシリズマブの初回用量に対する応答が最適以下である場合、トシリズマブの追加的な用量が考慮される場合がある。トシリズマブは、単独で、またはコルチコステロイド療法と組み合わせて投与することができる。トシリズマブに対して12~18時間で不十分な臨床改善または応答不良の、継続性または進行性のCRS症状を有する患者は、高用量コルチコステロイド療法、一般的にヒドロコルチゾン100mg IVまたはメチルプレドニゾロン1~2mg/kgで処置される場合がある。より重症の血行動態不安定またはより重症の呼吸器症状を有する患者では、患者は、CRSのクールの初期に高用量コルチコステロイド療法が投与される場合がある。CRS管理のガイダンスは、公表された基準に基づき得る(Lee et al. (2019) Biol Blood Marrow Transplant, doi.org/10.1016/j.bbmt.2018.12.758; Neelapu et al. (2018) Nat Rev Clin Oncology, 15:47; Teachey et al. (2016) Cancer Discov, 6(6):664-679)。
【0294】
CRSの臨床徴候と同時発生的に、マクロファージ活性化症候群(MAS)または血球貪食性リンパ組織球症(HLH)に一致する特徴が、CAR-T療法で処置された患者で観察されている(Henter, 2007)。MASは、CRSから起こる免疫活性化に対する反応のように見え、したがって、CRSの徴候とみなすべきである。MASは、HLH(同じく免疫刺激に対する反応)と類似している。MASの臨床的症候群は、高グレードの非弛張性の発熱、3系統のうち少なくとも2つを冒す血球減少、および肝脾腫によって特徴付けられる。これは、高い血清フェリチン、可溶性インターロイキン-2受容体、およびトリグリセリド、ならびに循環ナチュラルキラー(NK)活性の減少に関連する。
【0295】
本発明のCARを含む改変された免疫細胞は、本明細書に記載されるような処置の方法において使用され得る。一局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、本明細書に開示される改変された免疫細胞または前駆細胞のいずれか1つを対象に投与する工程を含む方法を含む。本発明のさらに別の局面は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、本明細書に開示される方法のいずれか1つによって作製される改変された免疫細胞または前駆細胞を対象に投与する工程を含む方法を含む。
【0296】
本発明の一局面は、FAPに結合可能なCARを含む改変された免疫細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連細胞を含む、方法を提供する。
【0297】
ある特定の態様では、CARは、FAP発現がん関連細胞に結合し、FAPを発現しない細胞には結合しない。ある特定の態様では、CARは、高レベルのFAP発現を含む、FAP発現がん関連細胞に結合する。ある特定の態様では、CARは、FAPを発現しない細胞には結合しない。ある特定の態様では、CARは、低レベルのFAP発現を含む基礎レベルのFAPを発現する細胞には結合しない。
【0298】
本発明の別の局面は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。CARは、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0299】
本発明のさらに別の局面は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とSEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0300】
本発明のなお別の局面は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連する方法を提供する。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とSEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0301】
また、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連する方法も提供される。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0302】
また、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連する方法も提供される。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0303】
また、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連する方法も提供される。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0304】
また、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連する方法も提供される。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0305】
また、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連する方法も提供される。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0306】
また、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連する方法も提供される。該方法は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0307】
ある特定の態様では、該方法は、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍抗原ワクチン、または新生細胞標的療法を施す工程をさらに含む。腫瘍抗原ワクチンは、がん原性ウイルスタンパク質、がん細胞、がん細胞の一部、または純粋な腫瘍抗原から作られる。腫瘍抗原ワクチンの例は、ヒトパピローマウイルス抗原(すなわち、HPVE6またはHPVE7)、エプスタイン・バーウイルスタンパク質、がん胎児性抗原(例えば、MAGE、NY-ESOなど)、過剰発現腫瘍タンパク質(メソテリンまたはウィルムス腫瘍1抗原など)、または個々の腫瘍新生抗原に対して作られたワクチンを含むが、それらに限定されない。他の新生細胞標的療法は、細胞傷害性化学療法、モノクローナル抗体療法(単独または免疫毒素として)、二重特異性抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、PARP阻害剤、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤(レノリンアミド(lenolinamide)など)、抗アポトーシス剤などを含むが、それらに限定されない。これはまた、腫瘍標的CAR T細胞、NK細胞または改変Tリンパ球を使用した養子T細胞移入も含む。
【0308】
ある特定の態様では、対象は、ヒトである。ある特定の態様では、対象は、非ヒト動物である。
【0309】
本発明の方法を使用して、FAP陽性間質細胞を一時的に除去して腫瘍関連マトリックスの一過性枯渇を導き、単独療法として腫瘍成長を阻害することができる、かつ/または、腫瘍細胞指向療法および免疫療法(ワクチンなど)と組み合わせてもたらされる相加的もしくは相乗的な抗腫瘍活性を有することができる。例えば、併用療法は、本開示の改変された免疫細胞と、他の従来の療法、例えば、チェックポイント遮断および腫瘍抗原ワクチン接種などの最近開発された免疫療法ならびに新生細胞標的療法との併用を含み得る。
【0310】
G. 免疫細胞の拡大増殖
CARを発現させるための細胞の改変の前であろうと後であろうと、細胞を、例えば米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;同第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載される方法を使用して、活性化させ、その数を拡大増殖させることができる。例えば、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質およびT細胞表面の共刺激分子を刺激するリガンドが結びついている表面と接触することにより、拡大増殖する場合がある。特に、T細胞集団は、表面に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片または抗CD2抗体との接触により、あるいはカルシウムイオノフォアと一緒にプロテインキナーゼC活性化因子(例えばブリオスタチン)と接触することにより、刺激され得る。T細胞表面のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子と結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞を、抗CD3抗体および抗CD28抗体と、T細胞の増殖を刺激するために適した条件下で接触させることができる。抗CD28抗体の例は、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone, Besancon, France)を含み、これらを本発明に使用することができ、同様に、当技術分野において公知の他の方法および試薬も使用することができる(例えば、ten Berge et al., Transplant Proc. (1998) 30(8): 3975-3977;Haanen et al., J. Exp. Med. (1999) 190(9): 1319-1328;およびGarland et al., J. Immunol. Methods (1999) 227(1-2): 53-63を参照されたい)。
【0311】
本明細書に開示される方法によってT細胞を拡大増殖させることは、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、もしくはそれより大きく、ならびにそれらの間のあらゆるすべての整数(whole integer)倍または部分整数(partial integer)倍にすることができる。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍の範囲で拡大増殖する。
【0312】
培養に続き、培養装置中の細胞培地中で、細胞が集密または高い細胞密度に達する期間、または達するまで、細胞を別の培養装置に植え継ぐ前に最適な植え継ぎのために、T細胞をインキュベートすることができる。培養装置は、細胞をインビトロ培養するために通常使用される任意の培養装置であることができる。好ましくは、細胞を別の培養装置に植え継ぐ前の集密レベルは70%以上である。より好ましくは、集密のレベルは90%以上である。期間は、細胞のインビトロ培養に適した任意の時間であることができる。T細胞培地は、T細胞の培養中の、任意の時間に取り替えられる場合がある。好ましくは、T細胞培地は、約2~3日毎に取り替えられる。次いでT細胞が、培養装置から回収され、それから、T細胞を直ちに使用することができ、またはその後の使用のために凍結保存して保管することができる。一態様では、本発明は、拡大増殖したT細胞を凍結保存することを含む。T細胞に核酸を導入する前に、凍結保存されたT細胞は解凍される。
【0313】
別の態様では、方法は、T細胞を単離する段階およびT細胞を拡大増殖する段階を含む。別の態様では、本発明は、拡大増殖の前にT細胞を凍結保存する段階をさらに含む。さらに別の態様では、凍結保存されたT細胞は、キメラ膜タンパク質をコードするRNAをエレクトロポレーションするために解凍される。
【0314】
細胞をエクスビボ拡大増殖するための別の手順は、米国特許第5,199,942号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。拡大増殖、例えば米国特許第5,199,942号に記載されているものは、本明細書において記載される他の拡大増殖方法に代替的または追加的であることができる。簡潔には、T細胞のエクスビボ培養および拡大増殖は、米国特許第5,199,942号に記載されているものなどの細胞増殖因子、またはflt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドなどの他の因子の添加を含む。一態様では、T細胞を拡大増殖することは、T細胞を、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドからなる群より選択される因子と共に培養することを含む。
【0315】
本明細書において記載される培養する段階(本明細書において記載される作用物質との接触またはエレクトロポレーションの後)は、非常に短い、例えば、24時間未満、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23時間であることができる。本明細書においてさらに記載される培養する段階(本明細書において記載される作用物質との接触)は、より長い、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日、またはそれ以上であることができる。
【0316】
培養細胞を記載するために様々な用語が使用される。細胞培養物は、一般的に、生きた生物から取得され、制御された条件下で成長された細胞を指す。初代細胞培養物は、生物から直接取得された、最初の継代培養前の細胞、組織または器官の培養物である。細胞は、細胞の成長および/または分裂を容易にする条件下で成長培地中に入れられると、培養で拡大増殖され、結果としてより大きな細胞集団をもたらす。細胞が培養で拡大増殖されると、細胞の増殖速度は、典型的には、別途に倍加時間として知られる、細胞数が倍増するために要する時間によって測定される。
【0317】
継代培養の各ラウンドは、植え継ぎと称される。細胞が継代培養されると、それらは、植え継がれたと称される。細胞、または細胞株の特定集団は、時に、それが植え継がれた回数により称される、または特徴付けられる。例えば、10回植え継がれた培養細胞集団は、P10培養物と称される場合がある。初代培養物、すなわち、組織から細胞を単離後の最初の培養物は、P0と称される。最初の継代後、細胞は二次培養物(P1または植え継ぎ1回目)と記載される。2回目の継代後、細胞は三次培養物(P2または植え継ぎ2回目)になる、などである。植え継ぎ期間に多数の集団倍加があり得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、培養物の集団倍加数は、植え継ぎ回数よりも大きい。植え継ぎにはさまれた期間の細胞の拡大増殖(すなわち、集団倍加数)は、播種密度、基質、培地、および植え継ぎにはさまれた時間を含むが、それに限定されるわけではない多数の要因に依存する。
【0318】
一態様では、細胞は、数時間(約3時間)~約14日またはその間の任意の時間整数値だけ培養され得る。T細胞培養に適した条件は、血清(例えば、ウシ胎児血清またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-ガンマ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGF-ベータ、およびTNF-α、または当業者に公知の、細胞成長のための任意の他の添加物を含む、増殖および生存能力に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640、またはX-vivo 15、(Lonza))を含む。細胞の成長のための他の添加物は、界面活性剤、プラズマネート(plasmanate)、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤を含むが、それに限定されるわけではない。培地は、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加された、無血清か、あるいは適切な量の血清(もしくは血漿)もしくは規定のセットのホルモン、および/またはT細胞の成長および拡大増殖に十分な量のサイトカインが補充されたかのいずれかの、RPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerを含むことができる。抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験培養物中にのみ含まれ、対象に注入されることになる細胞の培養物中には含まれない。標的細胞は、成長を支援するために必要な条件下で、例えば適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5% CO2)で維持される。
【0319】
T細胞を培養するために使用される培地は、T細胞を共刺激することができる作用物質を含み得る。例えば、CD3を刺激することができる作用物質は、CD3に対する抗体であり、CD28を使用することができる作用物質は、CD28に対する抗体である。本明細書に開示される方法によって単離される細胞は、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、またはそれより大きく拡大増殖することができる。一態様では、T細胞は、約20倍~約50倍、またはそれ以上の範囲で拡大増殖する。一態様では、ヒト制御性T細胞は、抗CD3抗体をコーティングしたKT64.86人工抗原提示細胞(aAPC)を介して拡大増殖される。T細胞を拡大増殖および活性化するための方法は、米国特許第7,754,482号、同第8,722,400号、および同第9,555,105号に見出すことができ、これらの内容は、それらの全体で本明細書に組み入れられる。
【0320】
一態様では、T細胞を拡大増殖する方法は、拡大増殖されたT細胞をさらなる適用のために単離することをさらに含むことができる。別の態様では、拡大増殖する方法は、拡大増殖されたT細胞のその後のエレクトロポレーションに続いて培養することをさらに含むことができる。その後のエレクトロポレーションは、作用物質をコードする核酸を、拡大増殖されたT細胞集団中に導入すること、例えば核酸を、拡大増殖されたT細胞に形質導入すること、拡大増殖されたT細胞にトランスフェクトすること、または拡大増殖されたT細胞にエレクトロポレーションすることを含む場合があり、その際、作用物質は、T細胞をさらに刺激する。作用物質は、さらなる拡大増殖、エフェクター機能、または別のT細胞機能を刺激することなどによって、T細胞を刺激し得る。
【0321】
H. 遺伝子改変免疫細胞を産生する方法
本開示は、腫瘍免疫療法、例えば養子免疫療法のために本発明の改変免疫細胞またはその前駆細胞(例えばT細胞またはNK細胞)を産生または生成するための方法を提供する。
【0322】
いくつかの態様では、CARは、発現ベクターにより細胞に導入される。本発明のCARをコードする核酸配列を含む発現ベクターが、本明細書に提供される。適切な発現ベクターは、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、操作ハイブリッドウイルス、Sleeping Beauty、Piggybakなどのトランスポゾン媒介ベクター、およびPhi31などのインテグラーゼを含むが、それに限定されるわけではないネイキッドDNAを含む。いくつかの他の適切な発現ベクターは、単純ヘルペスウイルス(HSV)およびレトロウイルス発現ベクターを含む。
【0323】
ある特定の態様では、CARをコードする核酸は、ウイルス形質導入を介して細胞に導入される。ある特定の態様では、ウイルス形質導入は、免疫細胞または前駆細胞を、CARをコードする核酸を含むウイルスベクターと接触させることを含む。ある特定の態様では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。ある特定の態様では、AAVベクターは、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。ある特定の態様では、AAVベクターは、ポリアデニル化(ポリA)配列を含む。ある特定の態様では、ポリA配列は、ウシ成長ホルモン(BGH)のポリA配列である。
【0324】
アデノウイルス発現ベクターは、ゲノムDNAへの組み込み能が低いが、宿主細胞のトランスフェクト効率が高いアデノウイルスをベースとする。アデノウイルス発現ベクターは、(a)発現ベクターのパッケージングを支援し、(b)最終的に宿主細胞においてCARを発現するために十分なアデノウイルス配列を含有する。いくつかの態様では、アデノウイルスゲノムは、本発明の発現ベクターを製造するために、外来DNA配列(例えば、CARをコードする核酸)が挿入されて、アデノウイルスDNAの大きな片を置換する場合がある、36kbの直鎖二本鎖DNAである(例えば、Danthinne and Imperiale, Gene Therapy (2000) 7(20): 1707-1714を参照されたい)。
【0325】
別の発現ベクターは、アデノウイルス共役系を利用するアデノ随伴ウイルス(AAV)をベースとする。このAAV発現ベクターは、宿主ゲノムへの高い組み込み頻度を有する。AAV発現ベクターは、非分裂細胞に感染することができ、したがって、これによりAAV発現ベクターは、例えば組織培養またはインビボで遺伝子を哺乳動物細胞内に送達するために有用になる。AAVベクターは、感染性について広い宿主範囲を有する。AAVベクターの生成および使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号および同第4,797,368号に記載されている。
【0326】
レトロウイルス発現ベクターは、宿主ゲノム中に組み込むこと、大量の外来遺伝物質を送達すること、広域スペクトルの種および細胞型に感染すること、ならびに特別な細胞株にパッケージングされることが可能である。レトロウイルスベクターは、複製欠損ウイルスを産生するためにある特定の位置で核酸(例えば、CARをコードする核酸)をウイルスゲノム中に挿入することによって構築される。レトロウイルスベクターは、多種多様な細胞型に感染することが可能であるが、CARの組み込みおよび安定な発現は、宿主細胞の分裂を要する。
【0327】
レンチウイルスベクターは、通常のレトロウイルス遺伝子gag、pol、およびenvに加えて、調節機能または構造機能を有する他の遺伝子を含有する複合レトロウイルスであるレンチウイルスに由来する(例えば、米国特許第6,013,516号および同第5,994,136号を参照されたい)。レンチウイルスのいくつかの例は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を含む。レンチウイルスベクターは、HIV病原遺伝子を多重に弱毒化することによって生成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefが欠失され、ベクターを生物学的に安全にする。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することが可能であり、例えば、CARをコードする核酸のインビボおよびエクスビボの両方の遺伝子導入および発現のために使用することができる(例えば米国特許第5,994,136号を参照されたい)。
【0328】
本開示の核酸を含む発現ベクターを、当業者に公知の任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。発現ベクターは、所望により、トランスフェクションのためのウイルス配列を含み得る。あるいは、発現ベクターは、融合、エレクトロポレーション、微粒子銃、トランスフェクション、リポフェクション、またはその他によって導入され得る。宿主細胞は、発現ベクターの導入前に培養で成長および拡大増殖され、続いてベクターの導入および組み込みに適した処理を受ける場合がある。次いで、宿主細胞が拡大増殖され、ベクター中に存在するマーカーによりスクリーニングされる場合がある。使用され得る様々なマーカーは、当技術分野において公知であり、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ヒグロマイシン耐性などを含み得る。本明細書において用いられる、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」という用語は、互換的に使用され得る。いくつかの態様では、宿主細胞は、免疫細胞またはその前駆細胞、例えば、T細胞、NK細胞、またはNKT細胞である。
【0329】
本発明はまた、本開示のCARを含み、それを安定的に発現する遺伝子操作された細胞を提供する。いくつかの態様では、遺伝子操作された細胞は、遺伝子操作されたTリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞(例えば、中枢性メモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、および治療的に関連する子孫をもたらすことが可能なマクロファージである。ある特定の態様では、遺伝子操作された細胞は自家細胞である。ある特定の態様では、改変細胞は、T細胞の消耗に耐性である。
【0330】
改変細胞(例えば、CARを含む)は、宿主細胞に、本開示の核酸を含む発現ベクターを安定的にトランスフェクトすることによって産生され得る。本開示の改変細胞を生成するための追加的な方法は、化学的変換方法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソームおよび/もしくは陽イオン性ポリマーを使用する)、非化学的変換方法(例えば、エレクトロポレーション、光学的変換、遺伝子電気泳動転写および/もしくは流体力学的送達)ならびに/または粒子ベースの方法(例えば、インペールフェクション(impalefection)、遺伝子銃および/もしくはマグネトフェクションを使用する)を含むが、それに限定されるわけではない。本開示のCARを発現している、トランスフェクトされた細胞は、エクスビボで拡大増殖され得る。
【0331】
発現ベクターを宿主細胞に導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、微量注入、エレクトロポレーション、およびその他を含む。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al. (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New Yorkを参照されたい。発現ベクターを宿主細胞に導入するための化学的方法は、巨大分子複合体などのコロイド分散系、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベース系を含む。
【0332】
使用に適した脂質は、商業的供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma(St. Louis, MO)から得ることができ;リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview, NY)から得ることができ;コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから得ることができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から得られる場合がある。脂質のクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール保存溶液は、約-20℃で貯蔵することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するので、唯一の溶媒として使用され得る。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集物の生成によって形成される多様な単一膜および多重膜脂質媒体を包含する一般名称である。リポソームは、リン脂質二重膜および内部の水性媒質を有する小胞構造を有すると特徴付けることができる。多重膜リポソームは、水性媒質により隔てられている複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液中に懸濁されると自然に形成する。脂質成分は、閉鎖構造を形成する前に自己再編成を受け、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を封入する(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。通常の小胞構造と異なる構造を溶液中に有する組成物もまた包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を想定する場合があり、または単に脂質分子の不均一凝集物として存在する場合がある。リポフェクタミン-核酸複合体も企図されている。
【0333】
宿主細胞内の核酸の存在を確認するために、外因性核酸を宿主細胞に導入する、またはその他の方法で細胞を本発明の阻害剤に曝露するために使用される方法にかかわらず、多様なアッセイが行われる場合がある。そのようなアッセイは、例えば、当業者に周知の分子生物学アッセイ、例えばサザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR;生化学アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によってまたは本明細書において記載されるアッセイによって、例えば特定のペプチドの存在または非存在を検出して本発明の範囲内に含まれる作用物質を同定することを含む。
【0334】
一態様では、宿主細胞に導入される核酸はRNAである。別の態様では、RNAはmRNAである。例えば、ある特定の態様では、CARをコードする核酸はmRNAであり、mRNAが宿主細胞に導入(遺伝子導入)される。別の態様では、RNAは、インビトロ転写されたRNAまたは合成RNAを含むmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で生成されたテンプレートを使用するインビトロ転写によって産生され得る。適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用するインビトロmRNA合成のために、任意の供給源からの関心対象のDNAをPCRによりテンプレートに直接変換することができる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列または任意の他の適切なDNA供給源であり得る。
【0335】
PCRは、mRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを生成するために使用される場合があり、それが次いで細胞に導入される。PCRを実行するための方法は、当技術分野において周知である。PCRに使用するためのプライマーは、PCRのためのテンプレートとして使用されることになるDNAの領域と実質的に相補的な領域を有するように設計される。本明細書において用いられる「実質的に相補的な」は、プライマー配列における塩基の大部分またはすべてが相補的なヌクレオチド配列を指す。実質的に相補的な配列は、PCRのために使用されるアニーリング条件下で意図されるDNA標的とアニールまたはハイブリダイズすることができる。プライマーは、DNAテンプレートの任意の部分と実質的に相補的であるように設計することができる。例えば、プライマーを、5' UTRおよび3' UTRを含む、細胞において通常転写される遺伝子部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計することができる。プライマーはまた、関心対象の特定のドメインをコードする遺伝子部分を増幅するように設計され得る。一態様では、プライマーは、5' UTRおよび3' UTRのすべてまたは部分を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当技術分野において周知の合成方法によって生成される。「フォワードプライマー」は、増幅されることになるDNA配列の上流であるDNAテンプレート上のヌクレオチドと実質的に相補的なヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「上流」は、コード鎖に関して、増幅されることになるDNA配列に対して5'の位置を指すために本明細書において使用される。「リバースプライマー」は、増幅されることになるDNA配列の下流である二本鎖DNAテンプレートと実質的に相補的であるヌクレオチド領域を含有するプライマーである。「下流」は、コード鎖に関して、増幅されることになるDNA配列に対して3'の位置を指すために本明細書において使用される。
【0336】
RNAの安定性および/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造もまた、使用され得る。RNAは、好ましくは、5' UTRおよび3' UTRを有する。一態様では、5' UTRは、0~3000ヌクレオチド長である。コード領域に付加されることになる5' UTR配列および3' UTR配列の長さを、UTRの異なる領域とアニールするPCR用のプライマーを設計することを含むが、それに限定されるわけではない異なる方法によって変更することができる。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクションに続いて最適な翻訳効率を達成するために必要な5' UTRおよび3' UTRの長さを改変することができる。
【0337】
5' UTRおよび3' UTRは、関心対象の遺伝子についての天然に存在する内在性5' UTRおよび3' UTRであることができる。あるいは、フォワードプライマーおよびリバースプライマー中にUTR配列を組み込むことによって、またはテンプレートの任意の他の改変によって、関心対象の遺伝子に内在しないUTR配列を付加することができる。関心対象の遺伝子に内在しないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を改変するために有用であることができる。例えば、3' UTR配列中のAUリッチエレメントがmRNAの安定性を低下できることが公知である。したがって、当技術分野において周知であるUTRの性質をベースとして、転写されたRNAの安定性を増大させるように、3' UTRを選択または設計することができる。
【0338】
一態様では、5' UTRは、内在遺伝子のKozak配列を含有することができる。あるいは、関心対象の遺伝子に内在しない5' UTRが上記のPCRによって付加される場合、5' UTR配列を付加することによってコンセンサスKozak配列を再設計することができる。Kozak配列は、いくつかのRNA転写物の翻訳効率を増大させることができるが、効率的な翻訳を可能にするためにすべてのRNAが必要なわけではないように見える。多くのmRNAへのKozak配列の必要は、当技術分野において公知である。他の態様では、5' UTRは、そのRNAゲノムが細胞内で安定なRNAウイルスに由来することができる。他の態様では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨害するために、様々なヌクレオチド類似体を3' UTRまたは5' UTR中に使用することができる。
【0339】
遺伝子クローニングの必要なしにDNAテンプレートからのRNA合成を可能にするために、転写されることになる配列上流のDNAテンプレートに転写プロモーターを結びつけるべきである。RNAポリメラーゼに対するプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5'末端に付加される場合、RNAポリメラーゼプロモーターは、PCR産物中の、転写されることになるオープンリーディングフレームの上流に組み込まれるようになる。一態様では、プロモーターは、本明細書の他の箇所に記載されるT7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターは、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターを含むが、それに限定されるわけではない。T7、T3およびSP6プロモーターについてのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野において公知である。
【0340】
一態様では、mRNAは、細胞におけるリボソームの結合、翻訳開始およびmRNAの安定性を決定する5'末端のキャップと、3'ポリ(A)尾部との両方を有する。RNAポリメラーゼは、環状DNAテンプレート、例えば、プラスミドDNAに対して、真核細胞における発現に適さない長鎖コンカテマー産物を産生する。3' UTRの末端で直鎖化されたプラスミドDNAの転写の結果として、たとえ転写後にポリアデニル化されたとしても真核生物のトランスフェクションに有効でない通常サイズのmRNAがもたらされる。
【0341】
直鎖DNAテンプレート上で、ファージT7 RNAポリメラーゼは、転写物の3'末端をテンプレートの最終塩基を超えて伸ばすことができる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985);Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003))。
【0342】
100T尾部などのポリT尾部(サイズは50~5000Tであることができる)を含有するリバースプライマーを使用することによるPCRの間に、またはDNAライゲーションもしくはインビトロ組み換えを含むが、それに限定されるわけではない任意の他の方法によるPCRの後に、転写DNAテンプレートのポリA/Tセグメントを産生することができる。ポリ(A)尾部はまた、RNAに安定性を提供し、それらの分解を低減する。一般的に、ポリ(A)尾部の長さは、転写されたRNAの安定性と正の相関関係にある。一態様では、ポリ(A)尾部は、100~5000アデノシンである。
【0343】
RNAのポリ(A)尾部を、大腸菌(E. coli)ポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼを使用するインビトロ転写後にさらに伸長することができる。一態様では、100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドへのポリ(A)尾部の長さを増大させる結果として、RNAの翻訳効率に約2倍の増大をもたらす。追加的に、3'末端への異なる化学基の結びつきは、mRNAの安定性を増大させることができる。そのような結びつきは、改変/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含有することができる。例えば、ATP類似体を、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)尾部に組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに増大させることができる。
【0344】
5'キャップはまた、RNA分子に安定性を提供する。好ましい態様では、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5'キャップを含む。5'キャップは、当技術分野において公知の技法および本明細書において記載される技法を用いて提供される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001);Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001);Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0345】
いくつかの態様では、インビトロ転写されたRNAなどのRNAは、細胞内にエレクトロポレーションされる。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化剤、および界面活性剤などの、細胞の透過性および生存度を促進する因子を含有することができる、細胞のエレクトロポレーションに適した任意の溶質が含まれることができる。
【0346】
いくつかの態様では、本開示のCARをコードする核酸は、RNA、例えば、インビトロ合成されたRNAであろう。RNAのインビトロ合成のための方法は、当技術分野において公知であり;任意の公知の方法を使用して、CARをコードする配列を含むRNAを合成することができる。宿主細胞にRNAを導入するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。CARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを宿主細胞に導入することは、インビトロ、エクスビボまたはインビボで行うことができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)に、CARをコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
【0347】
本開示の方法は、遺伝的に改変されたT細胞が標的がん細胞を殺滅する能力の評価を含み、がん、幹細胞、急性および慢性感染、ならびに自己免疫疾患の分野での基礎研究および治療法におけるT細胞活性のモジュレーションに適用することができる。
【0348】
方法はまた、例えば、プロモーターまたはインプットRNAの量を変化させることによって発現レベルを広範囲にわたり制御する能力を提供し、発現レベルを個別に調節することを可能にする。さらに、mRNA産生のPCRベース技法は、それらのドメインの異なる構造および組み合わせを有するmRNAの設計を大きく促進する。
【0349】
本発明のRNAトランスフェクション方法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが本質的に一過性であり、ベクターを含まないことである。RNA導入遺伝子は、リンパ球に送達し、短時間のインビトロ細胞活性化後にその中で、任意の追加的なウイルス配列の必要なしに最小発現性のカセットとして発現させることができる。これらの条件下で、宿主細胞ゲノム中への導入遺伝子の組み込みは起こりそうにない。RNAのトランスフェクションの効率およびそれがリンパ球集団全体を均一に改変する能力のため、細胞のクローニングは必要ない。
【0350】
インビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)によるT細胞の遺伝的改変は、どちらも様々な動物モデルにおいて連続的に試験された2つの異なる戦略を利用する。細胞に、インビトロ転写されたRNAがリポフェクションまたはエレクトロポレーションによりトランスフェクトされる。移入されたIVT-RNAの長期発現を達成するために、様々な改変を用いてIVT-RNAを安定化することが望ましい。
【0351】
インビトロ転写のためのテンプレートとして標準化された方法で利用され、安定化されたRNA転写物が産生されるように遺伝的に改変されている、いくつかのIVTベクターが、文献から公知である。現在、当技術分野において使用されるプロトコルは、以下の構造を有するプラスミドベクターをベースとする:RNA転写を可能にする5'RNAポリメラーゼプロモーター、それに続く関心対象の遺伝子、その3'および/または5'に隣接する非翻訳領域(UTR)、ならびに50~70Aヌクレオチドを含有する3'ポリアデニルカセット。インビトロ転写前に、環状プラスミドは、II型制限酵素(認識配列は切断部位に対応する)によってポリアデニルカセットの下流で直鎖化される。したがって、ポリアデニルカセットは、転写物中でその後のポリ(A)配列に対応する。この手順の結果として、いくつかのヌクレオチドは、直鎖化後に酵素切断部位の一部として残り、ポリ(A)配列を3'末端で伸長またはマスクする。この非生理学的オーバーハングが、そのような構築物から細胞内で産生されるタンパク質の量に影響するかどうかは明らかでない。
【0352】
別の局面では、RNA構築物は、エレクトロポレーションによって細胞内に送達される。例えば、US 2004/0014645、US 2005/0052630A1、US 2005/0070841A1、US 2004/0059285A1、US 2004/0092907A1に教示されるような、核酸構築物の製剤および哺乳動物細胞内へのエレクトロポレーションの方法論を参照されたい。任意の公知の細胞型のエレクトロポレーションに必要とされる電場強度を含む様々なパラメーターは、一般的に、関連する研究文献のみならず、当技術分野における多数の特許および出願から公知である。例えば、米国特許第6,678,556号、米国特許第7,171,264号、および米国特許第7,173,116号を参照されたい。エレクトロポレーションの治療適用のための装置、例えば、MedPulser(商標)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics, San Diego, Calif.)は、市販されており、米国特許第6,567,694号;米国特許第6,516,223号、米国特許第5,993,434号、米国特許第6,181,964号、米国特許第6,241,701号、および米国特許第6,233,482号などの特許に記載されている;エレクトロポレーションはまた、例えばUS20070128708A1に記載されるように細胞のインビトロトランスフェクションのために使用され得る。エレクトロポレーションはまた、核酸を細胞内にインビトロ送達するために利用され得る。したがって、当業者に公知の多くの利用可能なデバイスおよびエレクトロポレーションシステムのいずれかを利用した、発現構築物を含む核酸の細胞内へのエレクトロポレーション媒介投与は、関心対象のRNAを標的細胞に送達するための刺激的な新手段を提示する。
【0353】
I. 薬学的組成物および製剤
また、本明細書で開示された改変細胞の治療有効量を含む薬学的組成物も提供される。組成物は中でも、養子細胞療法のためなどの、投与のための薬学的組成物および製剤である。また、細胞および組成物を、対象、例えば、患者に投与するための治療法も提供される。
【0354】
また、薬学的組成物および製剤を含めた投与のための細胞を含む組成物、例えば、所与の用量またはその画分での投与のための細胞数を含む単位用量形態組成物も提供される。薬学的組成物および製剤は、一般には、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤を含む。
【0355】
用語「薬学的製剤」は、それに含有される活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態の調製物であって、製剤が投与されるであろう対象に対して許容できないほど有毒な追加の成分を含有しない、調製物を指す。「薬学的に許容される担体」は、対象に対して無毒である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存料を含むが、それに限定されるわけではない。いくつかの局面では、担体の選択は、一部には、特定の細胞によっておよび/または投与方法によって決定される。したがって、多種多様な適切な製剤がある。例えば、薬学的組成物は、保存料を含有することができる。適切な保存料は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムおよび塩化ベンザルコニウムを含み得る。いくつかの局面では、2つまたはそれよりも多い保存料の混合物が使用される。保存料またはその混合物は、典型的には、全組成物の重量に対して約0.0001%~約2%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)により記載されている。薬学的に許容される担体は、一般には、採用される投与量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、それに限定されるわけではない。
【0356】
いくつかの局面では、緩衝剤が組成物中に含まれる。適切な緩衝剤は、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウムならびに様々な他の酸および塩を含む。いくつかの局面では、2種またはそれより多くの緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には、全組成物の重量に対して約0.001%~約4%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)に、より詳細に記載されている。
【0357】
製剤は、水溶液を含むことができる。製剤または組成物はまた、細胞により処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な1つよりも多い活性成分、好ましくは細胞を補完する活性であって、それぞれが、互いに悪影響を及ぼさない活性を有するもの、を含有し得る。そのような活性成分は、適切には、意図する目的に効果的な量で組み合わされて存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な作用物質または薬物、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチンおよび/またはビンクリスチンをさらに含む。薬学的組成物は、いくつかの態様では、疾患または状態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で細胞を含有する。治療有効性または予防有効性は、いくつかの態様では、処置される対象を定期的に評価することによってモニタリングされる。細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって、所望の投与量を送達することができる。
【0358】
製剤は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺内、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下または坐剤投与のための製剤を含む。いくつかの態様では、細胞集団は、非経口投与される。用語「非経口」は、本明細書において使用される場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣内および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、細胞は、静脈内、腹腔内または皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。組成物は、いくつかの態様では、無菌の液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液または粘性組成物として提供され、これらは、いくつかの局面では、選択されたpHに緩衝化され得る。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物よりも調製しやすい。追加的に、液体組成物が、投与に、とりわけ、注射による投与にいくらか便利である。他方で、粘性組成物を、特定の組織とのより長い接触期間をもたらすのに適した粘性範囲内で製剤化することができる。液体組成物または粘性組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる、担体を含むことができる。
【0359】
無菌注射液は、溶媒中に、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤または賦形剤と混合された溶媒中に細胞を取り入れることによって、調製することができる。組成物は、所望の投与経路および調製に応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化もしくは粘性増強添加物、保存料、着香剤および/または着色剤などの補助物質を含有することができる。いくつかの局面では、適切な調製物を調製するために標準的な教科書に助言を求めてよい。
【0360】
抗菌保存料、酸化防止剤、キレート剤、および緩衝液を含む、組成物の安定性および無菌性を増強する様々な添加物を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって保証することができる。注射用薬学的剤形の長期吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
【0361】
インビボ投与に使用されるべき製剤は、一般に無菌のものである。無菌は、例えば滅菌濾過膜で濾過することによって、容易に達成され得る。
【0362】
本明細書において言及または引用される論文、特許および特許出願、ならびにすべての他の文書および電子的に入手可能な情報の内容は、それぞれの個々の刊行物が参照によって組み入れられることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照によってそれらの全体が同程度に本明細書に組み入れられる。出願人等は、そのような任意の論文、特許、特許出願または他の物理的および電子的文書からのあらゆる資料および情報を本出願中に物理的に組み入れる権利を有する。
【0363】
J. 本開示の態様
特定の局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能な抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む、CARを提供する。
【0364】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0365】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、完全長抗体もしくはその抗原結合断片、Fab、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。
【0366】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:11または13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv)である。
【0367】
ある特定の態様では、CARは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能である。ある特定の態様では、CARは、ヒトFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、イヌFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、ネズミFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、ヒト、イヌおよびネズミFAPに結合可能である。
【0368】
ある特定の態様では、CARは、ヒンジドメインをさらに含む。ある特定の態様では、ヒンジドメインは、CD8アルファのヒンジドメインを含む。
【0369】
ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、人工疎水性配列、ならびにI型膜貫通タンパク質、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、ICOS(CD278)、およびCD154の膜貫通ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインからなる群より選択される。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD8の膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD8アルファの膜貫通ドメインを含む。ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する膜貫通ドメインを含む。
【0370】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、TNFRスーパーファミリー内のタンパク質、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、PD-1、CD7、LIGHT、CD83L、DAP10、DAP12、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS(CD278)、NKG2C、およびB7-H3(CD276)、もしくはそのバリアントからなる群より選択されるタンパク質の共刺激性ドメイン、またはキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)に由来する細胞内ドメインの1つまたは複数を含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、CD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む。
【0371】
ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ゼータ鎖(CD3ζ)、FcγRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を担持する細胞質受容体、TCRゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66d、またはそのバリアントの細胞質シグナル伝達ドメインからなる群より選択される細胞内ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞内ドメインを含む。
【0372】
別の局面では、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、CARを提供する。
【0373】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)を含む。ある特定の態様では、scFvは、N末端からC末端へ、重鎖可変領域、リンカー、および軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、scFvは、N末端からC末端へ、軽鎖可変領域、リンカー、および重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、リンカーは、SEQ ID NO:15を含む。
【0374】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:11または13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む抗原結合ドメインを含む、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0375】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0376】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定されるCARのいずれかをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0377】
別の局面では、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む、核酸を提供する。
【0378】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域と;SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む。
【0379】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:12または14に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0380】
ある特定の態様では、膜貫通ドメインは、CD8アルファの膜貫通ドメインを含む。
【0381】
ある特定の態様では、細胞内ドメインは、共刺激性シグナル伝達ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の態様では、共刺激性シグナル伝達ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、CD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、4-1BBの共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内ドメインは、DAP12の共刺激性ドメインおよびCD28の共刺激性ドメインを含む。ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζの細胞内ドメインを含む。
【0382】
別の局面では、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸であって、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる重鎖可変領域と;SEQ ID NO:10に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列によってコードされる軽鎖可変領域とを含む、核酸を提供する。
【0383】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:22または24に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0384】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定される核酸のいずれかを含むベクターを提供する。ある特定の態様では、ベクターは、発現ベクターである。ある特定の態様では、ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される。
【0385】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定されるCARのいずれか、本明細書において想定される核酸のいずれか、または本明細書において想定されるベクターのいずれかを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0386】
別の局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1がアミノ酸配列YTITSYSLH(SEQ ID NO:1)を含み、HCDR2がアミノ酸配列
を含み、HCDR3がアミノ酸配列LDDSRFHWYFDV(SEQ ID NO:3)を含む、重鎖可変領域と;3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1がアミノ酸配列TASSSVSYMY(SEQ ID NO:4)を含み、LCDR2がアミノ酸配列LTSNLA(SEQ ID NO:5)を含み、LCDR3がアミノ酸配列QQWSGYPPIT(SEQ ID NO:6)を含む、軽鎖可変領域とを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0387】
別の局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0388】
別の局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、SEQ ID NO:11または13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(scFv)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0389】
別の局面では、本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞であって、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、改変された免疫細胞またはその前駆細胞を提供する。
【0390】
ある特定の態様では、CARは、FAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、ヒトFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、イヌFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、マウスFAPに結合可能である。ある特定の態様では、CARは、ヒト、イヌおよびマウスFAPに結合可能である。
【0391】
ある特定の態様では、改変された細胞は、改変されたT細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、改変されたNK細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、ヒト対象から得られた自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、イヌ対象から得られた自家細胞である。ある特定の態様では、改変された細胞は、同種異系細胞である。
【0392】
別の局面では、本発明は、本明細書において想定される改変された細胞のいずれかの治療有効量と薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物を提供する。
【0393】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における疾患を処置する方法であって、本明細書において想定される改変された細胞のいずれかまたは薬学的組成物のいずれかの有効量を対象に投与する工程を含む、方法を提供する。
【0394】
ある特定の態様では、疾患は、免疫学的疾患、血液疾患、自己免疫疾患、線維症、およびがんからなる群より選択される。ある特定の態様では、疾患は、がんである。ある特定の態様では、疾患は、心筋線維症である。
【0395】
ある特定の態様では、がんは、FAP発現がん関連細胞を含む。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、がん関連線維芽細胞(CAF)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、FAP発現脂肪細胞である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、腫瘍関連好中球(TAN)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)である。ある特定の態様では、FAP発現がん関連細胞は、がん幹細胞である。
【0396】
別の局面では、本発明は、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変された免疫細胞の有効量を対象に投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み;がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連細胞を含む、方法を提供する。ある特定の態様では、CARは、FAP発現がん関連細胞に結合し、FAPを発現しない細胞には結合しない。
【0397】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0398】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0399】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0400】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、方法を提供する。
【0401】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、方法を提供する。
【0402】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象におけるがんを処置する方法であって、がんが、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:23または25に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、方法を提供する。
【0403】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連線維芽細胞に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0404】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連マクロファージに関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0405】
別の局面では、本発明は、それを必要とする対象における固形腫瘍を処置する方法であって、腫瘍が、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)発現がん関連好中球に関連し、FAPに結合可能なキメラ抗原受容体(CAR)を含む改変されたT細胞の有効量を対象に投与する工程を含み、CARが、SEQ ID NO:7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と;SEQ ID NO:9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、方法を提供する。
【0406】
ある特定の態様では、該方法は、免疫チェックポイント阻害剤、腫瘍抗原ワクチン、または新生細胞標的療法を施す工程をさらに含む。
【0407】
ある特定の態様では、対象は、ヒトである。ある特定の態様では、対象は、非ヒト動物である。
【0408】
本発明は、その具体的な態様を参照しながら記載してきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行っても等価物に置換してもよいことが、当業者によって理解されるべきである。本明細書に開示される態様の範囲から逸脱することなく、適切な等価物を使用して本明細書に記載される方法の他の適切な改変および適合を行ってよいことが、当業者には容易に明らかとなろう。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、1つまたは複数のプロセス段階を、本発明の目的、精神および範囲に適合させるために多くの改変を行ってもよい。そのような改変はすべて、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。ここでは特定の態様を詳細に記載してきたが、同じものが以下の実施例を参照することによってより明確に理解され、以下の実施例は、例証を目的としてのみ含まれるものであって、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0409】
実験例
本発明は、以下の実験例を参照することによってさらに詳細に説明する。別途指定がなされない限り、これらの実施例は、例証を目的としてのみ提供されるものであって、限定を意図するものではない。したがって、本発明は、決して、以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明白であるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0410】
それ以上の説明がなくても、当業者は、前記の説明および以下の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を作製して利用し、請求される方法を実施することができると考えられている。以下の実施例は、このため、本発明の好ましい態様を具体的に指摘しており、決して本開示の残りを限定するものと解釈されるべきではない。
【0411】
本明細書に開示される実験の実施において使用する材料および方法をここに記載する。
【0412】
イヌFAP遺伝子配列の生物情報学的推論:イヌFAPのNCBI予測配列(XM_005640252.2)を使用してPCRプライマーを設計した。得られたPCR産物は、予測配列とタンパク質レベルで100%一致する。ヌクレオチドレベルでは、T127およびA603に2つの保存的塩基対置換がある。
【0413】
イヌFAP cDNA PCR、サブクローニングおよび発現:内因性FAPを発現するイヌSK骨肉腫細胞のコンフルエントな10cmディッシュを、製造業者のプロトコルの通りTRIzol(Life Technologies, #15596-026)1mlで処理してトータルRNAを抽出した。SuperScript First Strand Synthesis Kit(Life Technologies, #11904-018)を使用して、トータルRNA 5μgからcDNAを逆転写した。このcDNAを、以下のプライマー:
を用いたタッチダウンPCRの鋳型として使用した。1%アガロースゲル上で2291bpのアンプリコンが検出された。
【0414】
得られたPCR産物を精製し、pGEM-T Easy(Promega)内にクローニングして、配列決定した。このシャトルベクターは、線形化されており、単一の「T」オーバーハングを含有する。これにより、TaqポリメラーゼがPCR産物に付加された3'「A」オーバーハングを利用することによって、PCR産物の単純な無方向性クローニングが可能となる。これから、EcoRIクローニング部位を使用して、cDNAをプラスミドpcDNA3.1内に無方向性クローニングした。
【0415】
cDNAの切り出しにSpeIを使用し、pLenti6/v5-D-TOPOの開環にXbaIを使用して、イヌFAP cDNAをpcDNA3.1からレンチウイルスプラスミド(pLenti6/v5-D-TOPO)にサブクローニングした。これらの制限部位は適合末端を有する。この結果、イヌFAP.pLenti6/v5-D-TOPOが得られた。
【0416】
イヌFAP.pLenti/v5-D-TOPOをパッケージングプラスミド(pMD2.G、pCMVΔR8.2)と一緒にHEK 293細胞内に共トランスフェクトした。48時間後に、ウイルスを含有する上清を採取した。p24 ELISAによってウイルス価を判定し、0.5:1~10:1の範囲の異なるMOIでBalb/C 3T3線維芽細胞を形質導入した。
【0417】
フローサイトメトリーを使用して、Balb/C 3T3.イヌFAP細胞内の導入遺伝子の発現を確認した。使用した一次抗体は、R&D systems社のビオチン化ヒツジ抗huFAPポリクローナル抗体(5μg/ml)であった。二次抗体は、Biolegend社のAPC-ストレプトアビジン(1μg/ml)であった。
【0418】
免疫化およびハイブリドーマ生成:完全長イヌFAPを発現するBALB/c 3T3細胞を使用して、14週齢のBALB/c.FAP-\-マウスを免疫化した。注射はすべて、腹腔内に行われ、滅菌PBS 0.5ml中1×107個の細胞から構成されている。初期免疫化に続いて、14日目および28日目に追加免疫を行った;次いで、42日目に動物を放血させ、続いて、56日目に追加免疫を行い、63日目に放血させ、70日目、217日目および238日目にもう3回追加免疫を行った。241日目に、2017の脾臓を採取し、単一細胞懸濁液を調製し、UPENN Hybridoma Core Facilityで脾臓細胞をsp2/0細胞と融合させた。ハイブリドーマ上清の初期スクリーニングは、ハイブリドーマ上清を一次抗体として、AF488ヤギ抗マウスIgGを二次抗体として使用して、MC KOSA親(FAPヌル)とイヌFAP導入遺伝子発現MC KOSA.K9FAPに対してFACSすることによって行った。親細胞ではなく形質導入細胞に反応性であるとしてクローン4G5が特定され、追加の細胞に対してスクリーニングを行って、FAPを発現するFAP陰性でない細胞:ヒト初代線維芽細胞、ネズミまたはヒトFAP導入遺伝子を発現するBALB/c 3T3、イヌ初代線維芽細胞、SK KOSA(FAPを発現する)細胞、およびBALB/c 3T3(FAP陰性)細胞との反応性を確認した。その後、4G5は、Thermo Fisher Rapid ELISA Mouse mAb Isotyping Kit #37503を使用してIgG1kアイソタイプ抗体であると判定された。
【0419】
4G5キメラ抗原受容体の作製:4G5ハイブリドーマ細胞株から単離したトータルRNAをcDNAに逆転写し、マウス可変鎖プライマーのライブラリーを使用してPCRで増幅させ、ハイブリドーマ配列を特定した。5' RACEを代替アプローチとして使用して、固有のモノクローナル4G5抗体配列の配列を得た。増幅されたバンドをTopoクローニングし、配列決定した。これらの手順を繰り返して、単離された配列の完全性を確認した。すべての単離かつ配列検証した可変鎖のORFを合成し、重鎖と軽鎖の組み合わせで使用して、CARフォーマットの所望のscFVを得た。
【0420】
高力価のレンチウイルスベクターの産生:各プラスミドのレンチウイルスへのパッケージングを、RPMI 1640、10%非熱不活化FBS、2mM グルタミン、10mM HEPEs、100IU/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシン中で培養した293Tヒト胎児由来腎臓細胞中で行った。細胞を12×106個/T175組織培養フラスコで播種し、24時間後に、pCIVSVg 7μg、pRSV-Rev 18μg、pGAG/POL 18μgおよび関心対象のプラスミド(4G5 CAR)15μgをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後および48時間後にウイルスを含有する上清を収集し、15,000gでの4℃で一晩の遠心によってウイルスを300倍濃縮し、使用まで凍結保存した。Sup-T1細胞(RPMI+10% FBS+P/S中で培養)を異なるウイルス希釈物で形質導入することによってウイルス力価を評価し、トランスフェクションの48時間後に、F(ab')2断片抗体を使用して細胞を染色し、フローサイトメトリーによって細胞表面上のCAR構築物を検出した。
【0421】
T細胞形質導入:健常ボランティアドナーから白血球アフェレーシス(leukapheresis)後に陰性選択によって初代ヒトCD4+およびCD8+ T細胞を単離した。初代CD4+およびCD8+ T細胞を、1:1比で抗CD3/抗CD28がコートされた磁気ビーズと、外因性IL-2を添加せずにT細胞対ビーズ比1:3で培養した。およそ24時間後、レンチウイルスベクターによりMOIおよそ5でT細胞を形質導入した。Multisizer 3 Coulter Counterを使用して、細胞数と細胞サイズを12~15日間モニタリングした。必要に応じて、細胞に完全RPMIを静止期まで供給し、その後、殺傷アッセイに使用するかまたは凍結保存した。
【0422】
インビトロ殺傷アッセイ:CAR T細胞の添加の24時間前に、標的細胞を3,000~10,000個の細胞/ウェルで3連に播種した。Blue live/deadおよびF(ab')2断片抗体で染色することによりフローサイトメトリー解析によって判定した生存CAR陽性T細胞を考慮に入れ、培養物にCAR T細胞を異なるエフェクター対標的比で加えた。共培養を24時間継続し、上清を採取して、ELISAによってIFN-γおよびグランザイムB産生について解析し、1ウェル当たりの生細胞の割合を判定した。ルシフェラーゼを発現する標的細胞について、ウェルをまず十分に洗浄した。残存細胞を溶解し、GloMax Multi Detection SystemでLuciferase Assay Systemを使用することによりルシフェラーゼ活性を判定した。非標識細胞について、MTS試薬をウェルに1~4時間加えた。ウェルを洗浄し、吸光度を490nmで読み取った。CAR T細胞媒介細胞傷害性を、T細胞なしの標的細胞のシグナルに対する割合として判定した。
【0423】
インビボ研究:ヒト腺がんA549細胞をNSGマウスに注射した。14日後、腫瘍が約150mm3のサイズになったら、いくつかの腫瘍を採取し、単一細胞懸濁液へと解離させ、フローサイトメトリーによって腫瘍関連線維芽細胞上のFAP発現についてアッセイした。細胞をまず、CD45陰性細胞上で、次いで、CD90+/FAP+細胞上でゲーティングした。この時点で、約2000万個の全T細胞を残りの腫瘍担持マウスにIV注射した。注射前のCAR T細胞の分析は、約50%の形質導入効率を示した。群には、以下を含めた:1)PBSのみ注射、2)2000万個の非形質導入活性化T細胞を注射、3)1000万個の73.3 CAR T細胞を注射、3)1000万個のHGL2 CARTを注射、および4)1000万個のL2HG CARTを注射。次いで、腫瘍成長をこれから12日間追跡した。
【0424】
実施例1:PCRプライマーを設計するために使用したイヌFAP遺伝子配列の生物情報学的推論
イヌFAP遺伝子をPCRで増幅させ、その配列をイヌFAPの配列と比較した。イヌFAPのNCBI予測配列(XM_005640252.2)を使用して、イヌFAPに特異的なPCRプライマーを設計した。得られたPCR産物は、イヌFAPの配列とタンパク質レベルで100%一致した(
図1)。その後の配列決定は、イヌFAPがヌクレオチドレベルでT127およびA603に2つの保存的塩基対置換を保有することを明らかにした。
【0425】
実施例2:イヌFAP cDNA PCR、サブクローニング、配列決定および発現
抗イヌFAP抗体作製への最初の一歩として、組み換えイヌFAPタンパク質を生成可能な構築物を作製した。イヌFAP cDNAを提供するために、内因性FAPを発現するイヌSK骨肉腫細胞をTRIzolベースのRNA抽出に供し、続いて、単離したRNAをcDNAに逆転写した。このcDNAをタッチダウンPCRの鋳型として使用し、これから2291bpのアンプリコンが得られた。増幅したPCR産物を精製し、PCR産物の単純な無方向性クローニングを可能にするシャトルベクター内にクローニングした。これから、cDNAを、真核生物発現プラスミド内にクローニングした。イヌFAP cDNAを、哺乳動物細胞株への形質導入を可能にするレンチウイルスプラスミド内にサブクローニングした。得られたイヌFAP-レンチウイルス構築物をパッケージングプラスミドと一緒にHEK 293細胞内に共トランスフェクトした。48時間後に、ウイルスを含有する上清を採取した。p24 ELISAによってウイルス価を判定し、BALB/c由来3T3線維芽細胞を0.5:1~10:1の範囲の様々なMOIで形質導入した。フローサイトメトリーを使用して、3T3-イヌFAP細胞内の導入遺伝子の発現を確認した(
図2)。
【0426】
実施例3:クローン4G5抗FAP抗体の作製
完全長イヌFAPを発現するように形質導入したBALB/c 3T3線維芽細胞を使用して、14週齢のBALB/c FAP
-\-マウスを免疫化した。注射はすべて、腹腔内に行われ、滅菌PBS 0.5ml中1×10
7個の細胞から構成されている。初期免疫化に続いて、これから8ヶ月間にわたり一定の間隔で6回の追加免疫化を行った。研究の終わりに、脾臓を採取し、得られた単一細胞懸濁液を使用して、sp2/0細胞との融合によりハイブリドーマを生成した。得られたハイブリドーマを、抗イヌFAP抗体を産生するものについてスクリーニングした。初期スクリーニングとして、イヌFAP導入遺伝子を発現するMC KOSA細胞を染色可能であるがFAPヌルMC KOSA親細胞を染色できない免疫グロブリン産生細胞をフローサイトメトリーによって特定した(
図3)。結果として、4G5クローンが有望な候補として特定された。追跡調査研究は、そのクローンによって産生される免疫グロブリンが、FAPを発現するヒト初代線維芽細胞、ネズミまたはヒトFAP導入遺伝子を発現するBALB/c 3T3細胞、イヌ初代線維芽細胞、およびFAPを発現するSK KOSA細胞を染色できたことをさらに明らかにした。同様に、4G5免疫グロブリンは、FAP陰性親BALB/c 3T3細胞を染色できず、このことは、その特異性をさらに示唆している。最後に、市販のELISAに基づく抗体アイソタイピングキットを使用して、4G5によって産生される免疫グロブリンは、マウス-IgG1-カッパアイソタイプ抗体として特徴付けられた。その後の4G5とマウスIgG1アイソタイプ対照とを比較したタンパク質ゲルによって、この観察が裏付けられた。
【0427】
実施例4:4G5キメラ抗原受容体(CAR)の作製
4G5ハイブリドーマ細胞株から単離したトータルRNAをcDNAに逆転写し、マウス可変鎖プライマーのライブラリーを使用してPCRで増幅させ、ハイブリドーマ配列を特定した。5’RACEを代替アプローチとして使用して、固有のモノクローナル4G5抗体配列の配列を得た。増幅されたバンドをTopoクローニングし、配列決定した。これらの手順を繰り返して、単離された配列の完全性を確認した。すべての単離かつ配列検証した可変鎖のORFを合成し、重鎖と軽鎖の組み合わせで使用して、CARフォーマットの所望のscFVを得た。
【0428】
免疫グロブリン重鎖および軽鎖を、2つの直列シグナル伝達ドメイン:4-1BBおよびCD3ζを含有するプラスミドカセットのセットに挿入した。以下の理由で、FAP-CD3ζ:4-1BB「二重活性化ドメイン」構築物を、「三重活性化ドメイン」構築物(またCD28活性化ドメインも含む)に対して選択した:1)二重構築物は、多機能性サイトカイン産生でより良好である;2)二重構築物および三重構築物はインビトロおよびインビボで類似の有効性を有する;3)CD28ドメインを含有するCARには安全性への懸念がいくつかあった;ならびに4)三重ドメインmRNAの持続性は、二重ドメインmRNAと比較してT細胞において顕著に低下する。重鎖が最初にあり続いて軽鎖(HL)がある構築物(
図4)(SEQ ID NO:23)および軽鎖が最初にあり続いて重鎖(LH)がある構築物(
図5)(SEQ ID NO:25)を作製した。
【0429】
実施例5:4G5 CAR T細胞は、特異的なIFN-γおよびFAP発現標的細胞に対する細胞傷害性を示した
FAP標的CAR細胞のインビトロ機能を実証するために、4G5系CAR発現T細胞を、ネズミFAPを発現する3T3細胞およびイヌFAPを発現するイヌMC-KOSA細胞とのインビトロ共培養アッセイにおいて使用した。FAP発現を検証するために、マウス3T3細胞をネズミ抗FAP抗体73.3で染色した(
図6A)。抗ヒトFAP抗体F19およびIgGアイソタイプを対照として使用した。共培養アッセイにおいて、すべての4G5 CAR T細胞が3T3
muFAP標的細胞を認識し殺傷することができた。細胞傷害性およびIFNγ産生を読み出し値として用いた(
図6B~6C)。その後の共培養アッセイは、イヌMC-KOSA細胞を標的として、IFNγ産生を認識および活性化の尺度として使用して実施した(
図6D)。全体として、これらのデータは、ネズミおよびイヌFAPを発現する標的細胞を認識する4G5系CAR T細胞の能力を実証した。
【0430】
実施例6:4G5 CAR T細胞は、高FAP発現細胞に対して強力な殺傷活性を示すが、低FAP発現細胞と共培養すると活性化しない
FAPは、骨髄幹細胞、膵島アルファ細胞および間葉系幹細胞を含む非腫瘍関連組織によってしばしば低レベルで発現される。関係のない組織への付随的損傷を最小限に抑えながらCAR細胞傷害性を腫瘍関連線維芽細胞に向ける1つの方法は、低レベルのFAPを発現する細胞に対して活性化しない抗原結合ドメインを選択することである。4G5 CARの親和性を評価するために、表面に様々なレベルのhuFAPを発現するヒト細胞株を4G5 CAR T細胞とインビトロで共培養した。次いで、IFN-γ分泌および標的細胞の細胞傷害殺傷によってCAR T細胞活性化を評価した。入手可能で十分に特徴付けられている高親和性抗FAP F19抗体由来のCARを発現するT細胞を陽性対照として使用した。
【0431】
FAPを発現しないHT1080細胞に対してはどのCARも反応しなかった(
図7A~7B)。高レベルのヒトFAPを発現するようにHT1080細胞を形質導入した場合(
図7C)、F19 CAR発現T細胞と4G5 CAR発現T細胞は両方とも、これらの標的細胞を認識し殺傷することができ、F19 CAR細胞は、より低いエフェクター対標的比でより大きな細胞傷害性およびIFNγ産生を示した(
図7D~7E)。中程度のFAP発現の認識を観察するために、その後の研究はWI38細胞株を使用した(
図8A)。F19 CAR T細胞は、これらの標的を容易に認識し殺傷した一方で、4G5 CAR T細胞は、IFNγ分泌と細胞傷害性の両方に関して有意に弱い応答を有していた(
図8B~8C)。興味深いことに、4G5 CARのLHバージョンは、HLバージョンよりも有意に良好で、HLバージョンは、劇的に低下したレベルのIFNγ、および1.25:1を超えるエフェクター対標的比でのみ測定可能な細胞傷害性をもたらした。理論に拘束されることを望まないが、これらの結果は、HL scFv構成とLH scFv構成とで明確な機能的効果を示した。最後に、F19-CARだけが、なお非常に低いレベルのFAPを発現する細胞を認識し殺傷した(HOS細胞、
図9A)。最大20:1のエフェクター対標的比でも、4G5 CAR T細胞は、測定可能な細胞傷害効果を有しておらず、無視できるほどのレベルのIFNγしか産生しなかった一方で、F19細胞は、両読み出し値を用いて劇的に良好な応答を有していた(
図9B~9C)。
【0432】
両方の抗体に由来するCARを比較すると、4G5CARは、より特異的であることが分かった;FAPを発現しない細胞と共培養した場合には応答は観察されず、さらに重要なことに、4G5CARは、HOSのように低レベルのFAPを発現する細胞に対して最小の細胞傷害性を有していたかまたは細胞傷害性がなかった。4G5 CARのHG2LバリアントとL2HGバリアントの両方によって発揮される細胞傷害性は、標的細胞上のヒトFAP発現レベルに正比例したが、F19 CAR T細胞には当てはまらなかった。
【0433】
実施例7:動物モデルにおけるFAP CAR T細胞の効果
ヒト腺がん株A549の異種移植腫瘍をNSGマウスに移植した。次いで、成長の14日後、腫瘍が約150mm
3になったら、腫瘍をFAP+線維芽細胞の存在について評価した。腫瘍組織のフローサイトメトリー解析から、CD45陰性細胞の約8.5%がCD90+/FAP+線維芽細胞であると判明した(
図10)。この時点で、約2000万個の全T細胞をIV注射した。注射前のCAR T細胞の分析は、約50%の形質導入を示した。群には、以下を含めた:1)PBSのみ注射、2)2000万個の非形質導入活性化T細胞を注射、3)1000万個の73.3 CAR T細胞を注射、3)1000万個のHGL2 CARTを注射、および4)1000万個のL2HG CARTを注射。次いで、腫瘍成長をこれから12日間追跡した。結果は、LH CARとHL CARの両方が、対照および73.3 CAR発現細胞の両方と比較して腫瘍のサイズを有意に低減させたことを示した(
図11A)。同様に、3つのFAP CAR(73.3、4G5 HLおよび4G5 LH)の各々による処置は、17日~18日後、ビヒクルおよび非形質導入対照と比較して、有意により小さい腫瘍重量をもたらした(
図11B)。これらの結果をまとめると、FAPを標的として腫瘍成長を低減するCAR Tの能力、および4G5系CARが73.3系の抗FAP CAR構築物よりも優れていることが実証される。
【0434】
実施例8:4G5FAP-CARは、NK-92細胞においてインビトロ有効性を有する
CD4+およびCD8+ T細胞における発現に加えて、NK細胞におけるCAR発現も抗腫瘍細胞傷害性をもたらすことが分かった。NK細胞における4G5系FAP CARを発現する効果を観察するために、構築物をNK-92と呼ばれるNK細胞株に形質導入した。インビトロ形質導入および拡大増殖に続いて、操作されたNK-92細胞を、その後、ヒト腫瘍から単離したがん関連線維芽細胞とのインビトロ共培養アッセイにおいて使用した(
図12)。結果は、NK92-4G5FAP CAR細胞が、アッセイしたすべてのエフェクター対標的比で、非形質導入NK92細胞と比較して有意な細胞傷害活性を実証したことを示した。
【0435】
1日目に、確立されたヒトSSC15(頭頸部がん)腫瘍を担持する免疫不全マウスに、2000万個のHL-4G5 CAR発現NK92細胞(FAPCAR-NK92細胞)を注射し、4日目、8日目、11日目、および14日目に1000万個の細胞を追加免疫した。18日目にマウスを屠殺し、腫瘍を計量した。FAPCAR-NK92細胞を注射したマウス由来の腫瘍は、未処置腫瘍よりも有意に小さかった(
図13)。これらの結果は、細胞傷害性のNK細胞集団も、抗FAP CARベース療法のための効率的なエフェクターとなることを実証している。
【0436】
他の態様
本明細書中の可変部の任意の定義における要素の一覧の記載は、その可変部の定義を、列記された要素の任意の単一の要素としてまたはそれらの組み合わせ(または部分的組み合わせ)として含む。本明細書におけるある態様の記載は、その態様を、任意の単一の態様としてまたは任意の他の態様もしくはその一部との組み合わせで含む。
【0437】
本明細書において引用されるありとあらゆる特許、特許出願および刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。具体的な態様を参照しながら本発明を開示してきたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形物も当業者によって考案され得ることは明らかである。添付された特許請求の範囲は、そのようなすべての態様および等価な変形物を含むものと意図される。
【配列表】
【国際調査報告】