(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】短絡条件下のオーディオ再生
(51)【国際特許分類】
H03F 3/217 20060101AFI20221114BHJP
H03F 1/52 20060101ALI20221114BHJP
H03F 3/181 20060101ALI20221114BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
H03F3/217 130
H03F1/52 210
H03F3/181 210
H04R3/00 101A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518647
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 US2020052131
(87)【国際公開番号】W WO2021061714
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(71)【出願人】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】モヒット チャウラ
【テーマコード(参考)】
5D220
5J500
【Fターム(参考)】
5D220AA27
5J500AA02
5J500AA27
5J500AA41
5J500AA66
5J500AC57
5J500AF12
5J500AF17
5J500AF18
5J500AH10
5J500AH25
5J500AH39
5J500AK07
5J500AK17
5J500AK33
5J500AK47
5J500AK53
5J500AK62
5J500AM11
5J500AM21
5J500AS05
5J500AS07
5J500AT01
5J500AT06
5J500LV02
5J500LV06
5J500LV08
5J500PF06
5J500WU02
5J500WU10
(57)【要約】
オーディオシステム(100)は、Hブリッジ(104)を含む。オーディオシステム(100)は、Hブリッジ(104)内のトランジスタが、Hブリッジ(104)の出力上の短絡の検出の場合にオンにならないことを保証するための1つ又はそれ以上の技法を実装する。Hブリッジ(104)内の他のトランジスタはオンにすることができ、そのためオーディオは依然としてスピーカー(106)に再生され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオシステムであって、
入力及び出力を有する変調器と、
入力及び出力を有するHブリッジであって、前記変調器の前記出力が前記Hブリッジの前記入力に結合される、前記Hブリッジと、
入力及び第1の制御出力を有する負荷診断回路と、
入力及び出力を有する直流(DC)付加回路と、
を含み、
前記DC付加回路の前記出力が前記変調器の入力に結合され、前記負荷診断回路からの前記第1の制御出力が前記DC付加回路に結合される、
オーディオシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のオーディオシステムであって、前記DC付加回路が、その入力でオーディオ入力信号を受信し、前記負荷診断回路からの前記第1制御出力上の制御信号に応答して、前記オーディオ入力信号にDCを選択的に付加するように構成される、オーディオシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のオーディオシステムであって、前記負荷診断回路が、前記Hブリッジの前記出力における短絡条件を検出し、それに応答して、前記DC付加回路に前記制御信号をアサートするように構成される、オーディオシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のオーディオシステムであって、
前記Hブリッジの前記出力が、第1の出力端子及び第2の出力端子を含み、
前記負荷診断回路が、前記Hブリッジの前記出力において或るタイプの短絡を選択的に検出するように構成され、前記タイプが、前記第1の出力端子が電力供給電圧端子に短絡されること、前記第1の出力端子が接地に短絡されることと、前記第2の出力端子が電力供給電圧端子に短絡されること、又は、前記第2の出力端子が接地に短絡されることを含む、
オーディオシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のオーディオシステムであって、
前記負荷診断回路が、前記検出されたタイプの短絡に基づいて前記制御信号をアサートするように構成され、
前記DC付加回路が、選択的に、前記制御信号の第1の状態に応答して前記オーディオ入力信号に正のDC値を付加するか、又は前記制御信号の第2の状態に応答して前記オーディオ入力信号に負のDC値を付加するように構成される、
オーディオシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のオーディオシステムであって、前記変調器と前記Hブリッジとの間に結合される信号マスキング回路をさらに含む、オーディオシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のオーディオシステムであって、
前記負荷診断回路が第2の制御出力を含み、
前記信号マスキング回路が、前記第2の制御出力に結合される制御入力を含み、
前記Hブリッジの前記入力が、第1のHブリッジ入力及び第2のHブリッジ入力を含み、
前記信号マスキング回路が、前記負荷診断回路の第2の制御出力上の制御信号に応答して、前記第1及び第2のHブリッジ入力のうちの1つにおける信号を或る固定論理状態に強制するように構成される、
オーディオシステム。
【請求項8】
オーディオシステムであって、
入力及び出力を有する変調器と、
入力及び出力を有するHブリッジと、
入力及び第1の制御出力を有する負荷診断回路と、
前記変調器の前記出力と前記Hブリッジの前記入力との間に結合される信号マスキング回路と、
を含み、
前記信号マスキング回路が、前記負荷診断回路の前記第1の制御出力に結合される制御入力を含む、
オーディオシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のオーディオシステムであって、
前記Hブリッジの前記入力が、第1のHブリッジ入力及び第2のHブリッジ入力を含み、
前記信号マスキング回路が、前記負荷診断回路の第1の制御出力上の制御信号に応答して、前記第1及び第2のHブリッジ入力のうちの1つにおける信号を或る固定論理状態に強制するように構成される、
オーディオシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のオーディオシステムであって、
前記変調器の前記出力が、第1の変調器出力及び第2の変調器出力を含み、
前記信号マスキング回路が、
第1乃至第3の入力と第1の選択入力とを有する第1のマルチプレクサであって、前記第1のマルチプレクサの前記第1の入力が前記1の変調器出力に結合され、前記第1のマルチプレクサの前記第2の入力が、固定論理高を受け取るように構成され、前記第1のマルチプレクサの前記第3の入力が、固定論理低を受け取るように構成され、前記第1の選択入力が、前記負荷診断回路の前記第1の制御出力に結合される、前記第1のマルチプレクサと、
第1乃至第3の入力と第2の選択入力とを有する第2のマルチプレクサであって、前記第2のマルチプレクサの前記第1の入力が前記第2の変調器の出力に結合され、前記第2のマルチプレクサの前記第2の入力が、固定論理高を受け取るように構成され、前記第2のマルチプレクサの前記第3の入力が、固定論理低を受け取るように構成され、前記第2の選択入力が、前記負荷診断回路の前記第1の制御出力に結合される、前記第2のマルチプレクサと、
を含み、
前記Hブリッジの前記入力が、第1のHブリッジ入力及び第2のHブリッジ入力を含む、
オーディオシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のオーディオシステムであって、
前記Hブリッジの前記入力が、第1のHブリッジ入力及び第2のHブリッジ入力を含み、
前記第1のマルチプレクサの出力が前記第1のHブリッジ入力に結合され、前記第2のマルチプレクサの出力が前記第2のHブリッジ入力に結合される、
オーディオシステム。
【請求項12】
請求項8に記載のオーディオシステムであって、
入力及び出力を有する直流(DC)付加回路をさらに含み、
前記DC付加回路の前記出力が前記変調器の前記入力に結合され、前記負荷診断回路からの第2の制御出力が前記DC付加回路に結合され、前記DC付加回路が、前記負荷診断回路からの前記第2の制御出力上の信号に応答して、前記DC付加回路の前記入力上の入力信号にDC値を付加するように構成される、
オーディオシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のオーディオシステムであって、前記負荷診断回路が、前記Hブリッジの前記出力上の短絡条件を検出し、これに応答して、前記第1及び第2の制御出力上の制御信号をアサートするように構成される、オーディオシステム。
【請求項14】
請求項8に記載のオーディオシステムであって、
入力及び出力を有する短絡フィードバック回路であって、前記短絡フィードバック回路の前記入力が前記変調器の前記出力に結合される、前記短絡フィードバック回路と、
前記短絡フィードバック回路の前記出力と前記変調器の前記入力との間に結合される第1のスイッチと、
前記Hブリッジの前記出力と前記変調器の前記入力との間に結合される第2のスイッチと、
をさらに含み、
前記第1及び第2のスイッチが、前記負荷診断回路からの制御信号に基づいて、それらの動作状態を変化させるように構成される、
オーディオシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のオーディオシステムであって、
前記Hブリッジが或る出力インピーダンスを有し、前記短絡フィードバック回路が或る出力インピーダンスを有し、前記短絡フィードバック回路の前記出力インピーダンスが、前記Hブリッジの前記出力インピーダンスよりも大きい、オーディオシステム。
【請求項16】
オーディオシステムであって、
入力及び出力を有する変調器と、
入力及び出力を有するHブリッジと、
入力及び出力を有する短絡フィードバック回路であって、前記短絡フィードバック回路の前記入力が前記変調器の出力に結合される、前記短絡フィードバック回路と、
前記短絡フィードバック回路の前記出力と前記変調器の前記入力との間に結合される第1のスイッチと、
前記Hブリッジの前記出力と前記変調器の前記入力との間に結合される第2のスイッチと、
前記Hブリッジの前記出力に結合される入力を有する負荷診断回路であって、前記第1及び第2のスイッチの動作状態を制御するように構成される前記負荷診断回路と、
を含む、オーディオシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のオーディオシステムであって、前記負荷診断回路が、前記Hブリッジの前記出力上の短絡を検出し、前記検出された短絡に応答して、前記第2のスイッチを開き、前記第1のスイッチを閉じるように構成される、オーディオシステム。
【請求項18】
請求項16に記載のオーディオシステムであって、
前記変調器の前記出力と前記Hブリッジの前記入力との間に結合される信号マスキング回路をさらに含み、前記信号マスキング回路が、前記負荷診断回路の制御出力に結合される制御入力を含む、オーディオシステム。
【請求項19】
請求項16に記載のオーディオシステムであって、
入力及び出力を有する直流(DC)付加回路をさらに含み、
前記DC付加回路の前記出力が前記変調器の前記入力に結合され、前記負荷診断回路からの制御出力が前記DC付加回路に結合され、前記DC付加回路が、前記負荷診断回路からの前記制御出力上の信号に応答して、前記DC付加回路の前記入力上の入力信号にDC値を付加するように構成される、
オーディオシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のオーディオシステムであって、前記DC付加回路が、前記負荷診断回路からの前記制御出力上の信号に基づいて、前記DC付加回路の入力上の前記入力信号に正又は負のDC値を選択的に付加するように構成される、オーディオシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多くのオーディオ出力システムは、スピーカーを駆動するように構成されたD級増幅器を含む。D級増幅器は、電源及び接地の出力への結合を交番するように構成されたトランジスタを含む。D級増幅器を含むオーディオシステムはしばしば、電話等などの電気通信機器に統合される。いくつかの例では、この電気通信機器が自動車などの車両に統合される。D級増幅器を含むオーディオシステムは、電話呼び出しなどの電気通信セッションに関連するオーディオを出力するように構成され得る。
【背景技術】
【0002】
D級増幅器を含むオーディオシステムの動作の間、D級増幅器の出力端子の1つが接地又は電源に短絡される、短絡条件が生じることがある。このような条件に応答して、多くのオーディオシステムはオーディオ出力を無効にするように設定されている。しかしながら、オーディオを完全に無効にすることは、状況によっては不適切な場合がある。例えば、自動車事故後などの緊急事態において電気通信デバイスのオーディオ出力を無効にすることは望ましくない。
【発明の概要】
【0003】
オーディオシステムがHブリッジを含む。オーディオシステムは、Hブリッジ内のトランジスタが、Hブリッジの出力における短絡の検出の場合にオンにならないことを保証するための、1つ又はそれ以上の技法を実装する。Hブリッジ内の他のトランジスタはオンにすることができ、したがって依然としてオーディオをスピーカーに再生することができる。
【0004】
一例では、オーディオシステムが、入力及び出力を有する変調器と、入力及び出力を有するHブリッジとを含む。変調器の出力は、Hブリッジの入力に結合される。入力及び第1の制御出力を有する負荷診断回路が含まれる。入力及び出力を有する直流(DC)付加回路が含まれる。DC付加回路の出力は変調器の入力に結合され、負荷診断回路からの第1の制御出力はDC付加回路に結合される。
【0005】
別の例が、入力及び出力を有する変調器と入力及び出力を有するHブリッジとを含む、オーディオシステムを含む。入力及び第1の制御出力を有する負荷診断回路が含まれる。変調器の出力とHブリッジの入力との間に、信号マスキング回路が結合される。信号マスキング回路は、負荷診断回路の第1の制御出力に結合された制御入力を含む。
【0006】
さらなる例において、オーディオシステムが、入力及び出力を有する変調器と、入力及び出力を有するHブリッジとを含む。短絡フィードバック回路が、入力及び出力を有し、短絡フィードバック回路の入力は変調器の出力に結合される。第1のスイッチが、短絡フィードバック回路の出力と変調器の入力との間に結合される。第2のスイッチが、Hブリッジの出力と変調器の入力との間に結合される。負荷診断回路が、Hブリッジの出力に結合された入力を有する。負荷診断回路は、第1及び第2のスイッチの動作状態を制御するように構成される。
【0007】
種々の例の詳細な説明のため、ここで、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】D級増幅器を含むオーディオシステムの例を図示する。
【0009】
【
図2】D級増幅器で使用するためのHブリッジの例を図示する。
【0010】
【
図3】D級増幅器の変調器内の信号のタイミング図を図示する。
【0011】
【
図4】D級増幅器と直流(DC)付加回路とを含むオーディオシステムであって、オーディオシステムがHブリッジの出力端子のうちの1つの出力端子の短絡にもかかわらずオーディオを再生し続けることを可能にする例を図示する。
【0012】
【
図5】D級増幅器と共に使用するための変調器の例を図示する。
【0013】
【
図6】或るタイプの短絡の検出時にオーディオ信号に負のDCを付加することを示すタイミング図である。
【0014】
【
図7】他のタイプの短絡の検出時にオーディオ信号に正のDCを付加することを示すタイミング図である。
【0015】
【
図8】信号マスキング回路を含むオーディオシステムの実装を図示する。
【0016】
【
図9】ダミーフィードバックループを含むオーディオシステムを例示する。
【0017】
【
図10】DC付加回路、信号マスキングブロック、及びダミーフィードバックループを含むオーディオシステムの例を図示する。
【0018】
【
図11】オーディオ増幅器の出力に短絡があることを検出するための負荷診断回路の実装を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
D級増幅器を組み込み、短絡条件下でオーディオ出力をサポートするオーディオデバイスについて記載する。記載される原理を利用する電気通信デバイスは、短絡条件下でもオーディオ出力を提供し続けることができる。したがって、こういった電気通信デバイスは、その電気通信デバイスが短絡条件にある場合であっても、緊急呼び出しをサポートし得る。オーディオの質は短絡条件のために損なわれるかもしれないが、緊急事態又は他の状況には十分であり得る。
【0020】
図1は、オーディオシステム100の少なくとも一部を図示する。オーディオシステム100は、変調器102と、Hブリッジ104と、スピーカー106とを含む。変調器102は、Audio_P及びAudio_Nを含む差動オーディオ入力信号を受け取る。変調器102は、出力パルス幅変調信号P及びNを生成し、これらはHブリッジ104に結合される。Hブリッジ104は、複数のトランジスタスイッチを含み、スピーカー106に結合された出力端子を含む。出力端子は、OUTP及びOUTMとラベル付けされた信号を提供する。
【0021】
図2は、Hブリッジ104の例を図示する。この例では、Hブリッジ104は、トランジスタ202、204、206、及び208を含む。
図2の例では、トランジスタ202~208は、N型金属酸化物半導体電界効果トランジスタを含むが、他のタイプのトランジスタとして実装することもできる。トランジスタ202のドレインが、供給電圧端子210(PVDD)に結合され、トランジスタ202のソースが、第1の出力ノード222(OUTP)に及びトランジスタ206のドレインに結合される。トランジスタ206のソースが接地212に結合される。トランジスタ202のゲートは変調器102からP信号を受信し、トランジスタ206のゲートは、(インバータ205を介して)反転制御信号を受信する。このように、Pが論理高である場合、トランジスタ202はオンであり、トランジスタ206はオフであり、Pが論理低である場合、トランジスタ202はオフであり、トランジスタ206はオンである。また、トランジスタ204のドレインは、供給電圧端子210(PVDD)に結合され、トランジスタ204のソースは、第2の出力ノード224(OUTN)に及びトランジスタ208のドレインに結合される。トランジスタ208のソースは接地212に結合される。トランジスタ204のゲートはN信号を変調器から受信し、トランジスタ108のゲートは、(インバータ207を介して)Nの論理反転を受け取る。
【0022】
負荷(スピーカー106など)が、Hブリッジ104の第1の出力ノード222と第2の出力ノード224との間に接続され得る。トランジスタ202~208は、スイッチ(オン又はオフ)として動作する。通常動作の間(すなわち、短絡条件なし)、変調器102からのP及びN信号は、トランジスタ202~208を以下のモードのいずれかで構成させる。即ち、トランジスタ202及び208がオンである一方、トランジスタ204及び206がオフであり、トランジスタ204及び206がオンである一方、トランジスタ202及び208がオフである。或いは、トランジスタ206及び208がオンである一方、トランジスタ202及び204がオフである。どの時点でも、Hブリッジの一方の側の両方のトランジスタがオンになることはない。すなわち、トランジスタ202及び206は、決して同時にオンとなるべきではない。同様に、トランジスタ204及び208は、決して同時にオンにされてはならない。Hブリッジ104の一方の側の両方のトランジスタが同時にオンであった場合、供給電圧端子210は、接地212に実質的に短絡され得る。
【0023】
残念ながら、Hブリッジ104内で短絡が生じることがある。例えば、出力ノード222(OUTP)は、接地212又は供給電圧端子210に短絡され得る。同様に、出力ノード224(OUTN)は、接地212又は供給電圧端子210に短絡され得る。OUTPが意図せず接地に短絡された場合、トランジスタ202がオンにされると短絡条件が生じ得る。OUTPが供給電圧端子210に短絡された場合、トランジスタ206がオンされると短絡条件が生じ得る。同様に、OUTNが接地に短絡された場合、トランジスタ204がオンされると短絡条件が生じ、OUTNが供給電圧端子210に短絡された場合、トランジスタ208がオンされると短絡条件が生じ得る。
【0024】
このような短絡条件において、オーディオシステムによっては、そのオーディオシステムに(供給電圧端子210に)電力を供給するバッテリ(例えば、自動車のバッテリ)が消耗するのを防止し、また、供給電圧端子210を共有する他のデバイス及び電子機器の損傷を防止するために、オーディオ増幅器を全く無効にすることによって応答し得るものがある。しかしながら、オーディオシステムをシャットダウンすると、オーディオがスピーカー106を全く通らなくなる。全てのオーディオの停止は、緊急事態など種々の状況において望ましくない。本明細書において記載される例は、Hブリッジ出力ノード222、224のうちの1つに短絡が存在するにもかかわらず、少なくともオーディオの一部がスピーカー106を介して再生されることを可能にする。
【0025】
図3は、Hブリッジ104の出力ノード上に短絡が存在しないときの変調器102の動作を図示するタイミング図である。差動オーディオ信号は、Audio_P及びAudio_Nとして示されている。Audio_P及びAudio_Nは、デジタル信号であり得る。オーディオ信号は、Audio_PとAudio_Nの差として符号化される。破線315が、Audio_PとAudio_Nの同相電圧レベルを表す。変調器102は、ランプ信号310を実装又は受信する。変調器はまた、Audio_Pのランプ信号310に対する比較に基づいて出力信号Bを、及び、Audio_Nのランプ信号310に対する比較に基づいて出力信号Aを生成する比較器を含む。ランプ信号310がAudio_Pよりも大きい場合、Bは高であり、そうでない場合、Bは低である。同様に、ランプ信号310がAudio_Nより大きい場合、Aは高であり、そうでない場合、Aは低である。変調器102内の他の論理(図示及び後述)は、P及びN信号を生成する。
図3の例では、Audio_NがAudio_P(負のオーディオ信号)よりも正であり、したがって、Aパルス320の幅はBパルス330の幅よりも大きい。P信号は、A-Bが0より大きいときにA-Bとして判定され、そうでなければPは0である。したがって、Aが高でありBが低である場合、Pは高であり、そうでない場合、Pは低である。N信号は、B-Aが0より大きいときにB-Aとして判定され、そうでなければNは0である。したがって、Bが高でありAが低である場合、Nは高であり、そうでない場合、Nは低である。
図3において、Aが低であるとき、Bは高ではないので、Nは論理低のままである。
【0026】
したがって、
図3は、Pが図示のようにオン及びオフに振れ、Nが低いままであることを示す。簡単に
図2を参照すると、Pがオン及びオフに振れると、トランジスタ202もオン及びオフに振れる。トランジスタ202はPが高のときオンになり、Pが低になるときオフになる。トランジスタ206は、トランジスタ202及び206が同時にオンにならないように、トランジスタ202に対して相互にオン及びオフにトグルする。しかし、Nが低である場合、トランジスタ204はオフのままであり、トランジスタ208はオンのままである。
図3は、負オーディオ信号(Audio_PがAudio_Nより小さい)の例を図示する。正のオーディオ信号(Audio_PがAudio_Nよりも大きい)の場合、信号のタイミングは同様であるが、N信号はオン及びオフに振れ、Pは低のままである。
【0027】
図4は、変調器102、Hブリッジ104、及びスピーカー106を含む、オーディオシステム400の例を示す。また、オーディオシステム400は、負荷診断回路408及び直流(DC)付加回路402を含む。負荷診断回路408は、Hブリッジ104の出力ノード222及び224を監視して、出力ノード222又は224のいずれかが接地又は供給電圧端子に短絡しているかどうかを検出する。出力信号409は、短絡条件が検出されたかどうか、及びDC付加回路402がオーディオ信号にDC値(正又は負)を付加するかどうかを示す。制御信号410は、変調器102に結合され、後述するように、変調器内のマルチプレクサを制御するために用いられる。
図11は負荷診断回路408の例を示し、以下に記載する。
【0028】
DC付加回路402は、負荷診断回路408からAudio_P及びAudio_N並びに出力信号409を受信する、入力を有する。DC付加回路402からの出力信号は、Audio_DC_P及びAudio_DC_Nを含む。DC付加回路402は、オーディオ信号に正の値を付加するか(オーディオ信号がAudio_PとAudio_Nとの間の差である)、又はオーディオ信号に負の値を付加するためのデジタル加算器として実装され得る。負荷診断によって短絡条件が検出されない場合、オーディオ信号に正の値も負の値も付加されず、そのため、Audio_DC_PはAudio_Pに等しく、Audio_DC_NはAudio_DC_Nに等しい。しかし、そのオーディオ信号に正又は負の値が付加される。オーディオ信号に正の値が付加されるか、或いは負の値が付加されるかは、負荷診断回路408によって検出される短絡条件のタイプの関数である。負荷診断回路408が、OUTPが供給電圧端子に短絡されているか又はOUTNが接地に短絡されていることを検出した場合、正の値が付加される。負荷診断回路408が、OUTPが接地に短絡されているか又はOUTNが供給電圧端子に短絡されていることを検出すると、負の値が付加される。
図5は変調器102の例を提供し、
図6及び
図7は、オーディオ信号への負の値及び正の値の付加を示す例示のタイミング図を提供する。
【0029】
図5において、例示の変調器102は、コンパレータ501及び502、ランプ生成器509、ANDゲート503及び504、NANDゲート505及び506、並びにマルチプレクサ507及び508を含む。Audio_P_DCはコンパレータ501の負入力に供給され、Audio_N_DCはコンパレータ502の負入力に供給される。ランプ生成器509は、A及びB信号を生成するためにコンパレータ501及び502の正の入力に供給されるランプ信号310を生成する。
【0030】
各ANDゲート503及び504並びにNANDゲート505及び506は、図示のように非反転及び反転入力を含む。A信号は、ANDゲート503及びNANDゲート505の非反転入力、並びにANDゲート504及びNANDゲート506の反転入力に供給される。同様に、B信号は、ANDゲート503及びNANDゲート505の反転入力、並びにANDゲート504及びNANDゲート506の非反転入力に供給される。ANDゲート503の出力はP_GNDとラベル付けされた信号である。P_GNDは、Aが高でありBが低であるときのみ高であり、そうでない場合は、P_GNDは低である。ANDゲート504の出力は、N_GNDとラベル付けされた信号である。N_GNDは、Bが高でありAが低である場合にのみ高であり、そうでない場合には、N_GNDは低である。NANDゲート505の出力は、N_SUPとラベル付けされた信号である。N_SUPは、Aが高でありBが低である場合のみ低であり、それ以外の場合はN_SUPが高である。NANDゲート506の出力はP_SUPとラベル付けされた信号である。P_SUPは、Bが高でありAが低であるときのみ低であり、そうでない場合は、P_SUPは高である。
【0031】
マルチプレクサ507の0入力はP_GNDを受け取り、マルチプレクサ507の1入力はP_SUPを受け取る。マルチプレクサ507の出力は、Hブリッジ104へのP信号である。マルチプレクサ508の0入力はN_GNDを受け取り、マルチプレクサ508の1入力はN_SUPを受け取る。マルチプレクサ508の出力はN信号である。
【0032】
マルチプレクサ507及び508への制御信号は、負荷診断回路408からの制御信号410である。負荷診断回路がOUTPと接地との間又はOUTNと接地との間の短絡を検出したことに応答して、制御信号410がアサートされて、マルチプレクサ507及び508にそれらの0入力を選択させる。負荷診断回路が、OUTPと供給電圧端子との間又はOUTNと供給電圧端子との間の短絡を検出すると、制御信号410がアサートされて、マルチプレクサ507及び508にそれらの1つの入力を選択させる。短絡が検出されないとき、制御信号410は、マルチプレクサ507及び508にそれらの0入力を選択させるようにアサートされる。
【0033】
OUTPと接地との間に短絡が発生した場合、変調器102は、トランジスタ202がオンになることを許可すべきではない。OUTPと供給電圧端子210との間に短絡が発生した場合、変調器102は、トランジスタ206がオンになることを許可すべきではない。NMOSトランジスタ202がオンになるのを防止するために、変調器102は、P信号を強制的に論理低レベルのままにする。NMOSトランジスタ206がオンになるのを防止するために、変調器102は、P信号を強制的に論理高レベルのままにする。同様に、OUTNと接地との間に短絡が発生した場合、変調器102は、トランジスタ204のオンを許可すべきではない。OUTNと供給電圧端子210との間に短絡が発生した場合、変調器102は、トランジスタ208がオンになることを許可すべきではない。トランジスタ204がオンになるのを防止するために、変調器102は、N信号を強制的に論理低レベルのままにする。トランジスタ208がオンになるのを防止するために、変調器102は、N信号を強制的に論理高レベルのままにする。
【0034】
図6は、OUTPと接地との間の負荷診断408によって検出された短絡の存在に対して、システムがどのように反応するかを示すタイミング図である。その場合、負のDC値がオーディオ信号に付加される。負のDC値を付加すると、Audio_PとAudio_Nとの間の差がより負になる。
図6は、Audio_Pがより負にされる一方で、Audio_Nがより正のレベルに増加されることを図示する。Audio_N_DCとAudio_P_DCが互いに交差しないように、十分に大きな負のDC値が付加される。Audio_N_DC及びAudio_P_DCの共通モードレベル315は変化しない。
【0035】
得られたA及びBコンパレータ出力信号も同様に
図6に示されている。A-Bは0より大きくないので、P信号は論理低のままである。ただし、図に示すように、N信号は高及び低に振れる。Pが強制的に低のままであると、トランジスタ202はターンオンできず、トランジスタ206はオンのままである。トランジスタ204はN信号に応じてオン及びオフに振れ、オーディオがスピーカーを介して(低減された質ではあるが)再生され得る。
【0036】
図7は、OUTNと接地との間の負荷診断408によって検出された短絡の存在に対して、システムがどのように反応するかを示すタイミング図である。その場合、正のDC値がオーディオ信号に付加される。正のDC値を付加すると、Audio_PとAudio_Nとの間の差がより正になる。
図7は、Audio_Pがより正のレベルに増加され、一方、Audio_Nがより負にされることを図示する。Audio_P_DCとAudio_N_DCが互いに交差しないように、十分に大きな正のDC価値が付加される。B-Aは0より大きくないので、N信号は論理低のままである。ただし、P信号は図に示すように高及び低に振れる。Nが強制的に低のままであると、トランジスタ204はターンオンできず、トランジスタ208はオンのままである。トランジスタ202はP信号に応じてオン及びオフに振れ、オーディオがスピーカーを介して(低品質ではあるが)再生され得る。
【0037】
図6及び
図7は、OUTPと接地との間及びOUTNと接地との間の短絡に対する応答を示している。OUTPと供給電圧端子との間の短絡の場合、負荷診断回路408は、信号409をDC付加回路402にアサートして、DC付加回路402にオーディオ信号に正の値を付加させ、制御信号410をアサートして、マルチプレクサ507及び508にそれらの1-入力を選択させる。同様に、OUTNと供給電圧端子との間の短絡では、信号409及び410がアサートされて、DC付加回路402にオーディオ信号に負のDC値を付加させ、マルチプレクサにそれらの1入力を選択させる。
【0038】
図8は、変調器102とHブリッジ104との間に信号マスキング回路806が設けられたオーディオシステム800の別の実装を示す。信号マスキング回路806は、負荷診断回路408によって短絡が検出されないときに、P及びN信号がHブリッジを介して供給され得るようにし、検出された特定の短絡条件に基づいて、(上述したように)P又はN信号を強制的に論理低又は高にする。
【0039】
信号マスキング回路806は、マルチプレクサ810及び812、並びにインバータ811及び813を含む。この例における各マルチプレクサ810、812は、少なくとも4つの入力0~3を含む。マルチプレクサ810の0入力は、変調器102の出力に結合され、P信号を受信する。P信号はインバータ811によって反転され、その出力はマルチプレクサ810の1入力に結合される。マルチプレクサ810の2入力及び3入力は、それぞれ、論理高(1)及び論理低(0)に接続される。マルチプレクサ812の0~3入力は、N信号に対して同様に構成される。変調器102からのN信号は、マルチプレクサ812の0入力に供給される。N信号の論理反転はインバータ813を介して1入力に供給され、論理高及び低はそれぞれ、マルチプレクサ812の2入力及び3入力に供給される。
【0040】
上述したように、負荷診断回路408は、Hブリッジ104の出力上で考えられる4つの短絡条件(供給電圧端子に短絡されたOUTP、接地に短絡されたOUTP、供給電圧端子に短絡されたOUTM、及び接地に短絡されたOUTM)を検出する。制御信号830及び832は、4つの可能な短絡条件を符号化し、マルチプレクサへの選択信号として用いられる。例えば、OUTPが接地に短絡される場合、制御信号830は、論理低(0)である3入力をマルチプレクサ810に選択させる。マルチプレクサ810の出力はP_MASKとラベル付けされ、マルチプレクサ812の出力はN_MASKとラベル付けされる。
図4の例では、P及びN信号はHブリッジ104を直接制御し、一方、
図8の例では、P_MASK及びN_MASK信号が代わりにHブリッジ104を制御する。
【0041】
図9を参照すると、フィードバックループ内の短絡フィードバック回路924を含むオーディオシステム900の例示である。オーディオシステム900は、DC付加回路402、変調器102、Hブリッジ104、スピーカー106、及び負荷診断回路408を含む。短絡フィードバック回路924は、P信号線に設けられた抵抗器R1に結合されたレベルシフタ925を含む。同様に、短絡フィードバック回路924は、N信号線に設けられた抵抗器R2に結合されたレベルシフタ945を含む。
【0042】
出力短絡条件がない場合、出力DCは入力DCと等しくなる。すなわち、出力ノード222及び224におけるDCレベルは、入力オーディオ信号のDC電圧レベルに等しく、短絡条件がない場合、入力DCは0Vである。しかしながら、出力ノード222又は224が供給電圧ノード210又は接地212に短絡されると、出力DCはもはや入力DCにほぼ等しくなくなり、それによって変調器を飽和させる(0%又は100%のデューティサイクルのいずれか)。この潜在的な問題に対処するために、負荷診断回路408は、スイッチSW1~SW4に制御信号950~953を生成する。SW1及びSW2は、それぞれの出力ノード224及び222を変調器102の入力に動作可能に結合し、SW3及びSW4は、短絡フィードバック回路924(それぞれ、抵抗器R1及びR2)を、図示のように変調器102の入力に動作可能に結合する。短絡フィードバック回路924の出力インピーダンスは、Hブリッジ104の出力インピーダンスよりも高い(例えば、10倍から100倍高い)。例えば、Hブリッジ104の出力インピーダンスは約200ミリオームであり得、短絡フィードバック回路924の出力インピーダンスは約50オームであり得る。
【0043】
OUTPが供給電圧ノード又は接地に短絡されたことに応答して、負荷診断回路408は、制御信号951及び952をアサートして、SW2を開かせ、SW3を閉じさせる。そのようにして、Hブリッジ104からのOUTPが変調器102の入力にフィードバックされる代わりに、フィードバック信号が、(抵抗器R1を介して)短絡フィードバック回路924からの変調器の入力に供給される。同様に、OUTMが供給電圧ノード又は接地に短絡されたことに応答して、負荷診断回路408は制御信号950及び953をアサートして、SW1を開かせ、SW4を閉じさせる。そのようにして、Hブリッジ104からのOUTMが変調器102の入力にフィードバックされる代わりに、フィードバック信号が、(抵抗器R2を介して)短絡フィードバック回路924からの変調器の入力に供給される。別の実装では、短絡欠陥検出の場合、SW1とSW2の両方を開くことができ、SW3とSW4を閉じることができる。レベルシフタ935、945によって生成される電圧及びR1及びR2の抵抗の値は、応用例独自のものであり、短絡フィードバック回路924からの出力のDCレベルが、オーディオ入力信号のDCレベルとほぼ等しくなるように設定される。
【0044】
上述のオーディオシステムの様々な態様は組み合わせることができる。例えば、
図10は、変調器102、DC付加回路402、短絡フィードバック回路924、及び信号マスキング回路806を含む、オーディオシステム1000の一例を示す。したがって、Hブリッジ104の出力における短絡の検出に応答して、オーディオシステム1000は、(DC付加回路402を介して)オーディオ信号に正又は負のDC値を付加することによってHブリッジ104内の特定のトランジスタがオンになることを防止し、(信号マスキング回路806を介して)変調器からの出力信号をブロックし(例えば、上述のように、P又はNを強制的に高又は低にする)、及び/又は、短絡フィードバック回路924からのフィードバック電圧を印加するように構成され得る。
【0045】
図11は、負荷診断回路408の例示の実装を示す。負荷診断回路408は、論理回路1110及び電流源1101~1104を含む。電流源1101及び1102はHブリッジの出力ノード222に結合され、電流源1103及び1104はHブリッジの出力ノード224に結合される。各電流源は、論理回路1110によって独立してオン及びオフされ得る。Hブリッジのトランジスタ202~208がオフにされると、論理回路1110によって短絡検出テストが実施される。短絡検出テストは、システムの始動時、又はスピーカーを介してオーディオが再生されていない実行時間の間に実施され得る。
【0046】
スピーカー106は、
図11においてRspkrと示される抵抗を有する。スピーカーに強制的に電流が流れると、Rspkrのサイズに基づいてスピーカーの端子間に或る電圧が生じる。この例では、4つの電流源1101~1104のそれぞれによって生成される電流はIである。一例では、短絡検出テストが2つの工程で成される。まず、電流源1101、1104がオンにされ、電流源1102、1103がオフにされる。次いで、電流源1102及び1103がオンにされ、電流源1101及び1104がオフにされる。
【0047】
電流源1101及び1104がオンの場合、電流Iは電流源1101から、Rspkrを介して、及び電流源1104を介して接地に流れる。出力ノード222又は224のどちらかに短絡がない場合、Rspkrを介する電流はIとなる。したがって、Rspkrの両端の差動電圧(Vdiff)はI×Rspkrとなる。IとRspkrの両方が演繹的に既知であり、従って、Vdiffは、短絡条件が存在しない場合は予測される電圧範囲内に収まる。出力ノード222及び224間の同相電圧(VCM)は(V222+V224)/2となり、ここで、V222は、接地に対する出力ノード222上の電圧であり、V224は接地に対する出力ノード224上の電圧である。短絡がない場合、VCMはPVDD/2である。
【0048】
しかしながら、まだ電流源1101及び1104がオンのままであり、出力ノード222が接地に短絡されると、V222は(短絡のため)0Vになり、電流源1104が存在し、電流源1104が接地から出力ノード224への比較的小さな電圧降下を有するため、V224は0Vになる。この段階(出力ノード222が接地に短絡されている)では、VdiffとVCMの両方がほぼ0Vに等しくなる。出力ノード222が接地に短絡される代わりに、出力ノード224がPVDDに短絡される場合、V224は、短絡のためPVDDに等しくなり、V222は、電流源1101がオンであるため、PVDDにほぼ等しくなる。この後者(出力ノード224とPVDDとの間の短絡)の場合、Vdiffは0Vに等しく、VCMはPVDDに等しくなる。このようにして、電流源1101及び1104があると、出力ノード222から接地へ又は出力ノード224からPVDDへの短絡が検出され得る。
【0049】
他の短絡条件は、出力ノード222がPVDDに短絡され、出力ノード224が接地に短絡されることである。出力ノード222がPVDDに短絡され、電流源1101及び1104がオンである場合、出力ノード222の電圧は、短絡によりPVDDとなる。電流IはRspkrを介して流れ、したがって、VdiffはI×Rspkrに等しくなる。出力ノード224上の電圧はPVDD-I×Rspkrに等しくなり、したがって、VCMは(PVDD+PVDD-I×Rspkr)/2に等しくなり、これは、PVDD-I×Rspkr/2に等しい。出力ノード224が接地に短絡されると、電流IはRspkrを流れ、VdiffはI×Rspkrに等しくなり、VCMはI×Rsprk/2に等しくなる。
【0050】
電流源1102、1103がオン(及び電流源1101、1104がオフ)である場合、同様の分析を実施することができる。表1に、種々の短絡条件と、結果として生じる差動電圧及び同相電圧を、電流源回路のどのペアがオンになっているかに基づいて示す。
【表1】
【0051】
論理回路1110は、電流源1101及び1104がオンであるとき、また、電流源1102及び1103がオンであるとき、出力ノード222及び224上の電圧を監視する。電圧に基づき、及び上述のように、論理回路1110は、短絡が存在するかどうか、及び短絡のタイプ(出力ノード222がPVDDに又は接地に短絡される。出力ノード224がPVDDに又は接地に短絡される)を検出し得る。
【0052】
本明細書に記載の例のいずれも、集積回路上に実装することができる。例えば、
図1(スピーカーを除く)、
図4、
図5、
図8、
図9、及び
図10に示す各例は、集積回路として製造され得る。
【0053】
「結合する」という用語は本明細書全体を通して用いられている。この用語は、本明細書の記載と一貫した機能的な関係を可能にする、接続、通信、又は信号経路を包含し得る。例えば、デバイスAが或る行為を行なうためにデバイスBを制御するための信号を生成する場合、第1の例において、デバイスAはデバイスBに結合されるか、又は第2の例において、介在構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能関係を実質的に変化させない場合、デバイスBがデバイスAによって生成される制御信号を介してデバイスAによって制御されるように、デバイスAが介在構成要素Cを介してデバイスBに結合される。
【0054】
本発明の特許請求の範囲内で、記載した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
【国際調査報告】