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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】治療用製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20221114BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20221114BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221114BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K9/20
A61P25/00
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/20
A61K47/26
A61P25/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518661
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 AU2020050132
(87)【国際公開番号】W WO2021056048
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/904,162
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509106566
【氏名又は名称】バイオノミクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ポール,ダラム
(72)【発明者】
【氏名】クロスマン,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーリン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ,トム
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シアーンミーン
(72)【発明者】
【氏名】ミラン,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】スタンフィグ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ダウニング,クリスティー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD09F
4C076DD55F
4C076EE13E
4C076EE16E
4C076EE23F
4C076EE32E
4C076EE33E
4C076FF43
4C076FF63
4C076GG09
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA05
(57)【要約】
本発明は、化合物(I)(BNC210)、すなわち非鎮静型抗不安作用を有するα7-ニコチン受容体のアロステリック調節因子の製剤、具体的には固体分散体、それを製造する方法、ならびに中枢神経系の疾患の処置における、その治療方法および使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーによって形成されるポリマーマトリックス中に、1種または複数種の薬学的に許容されるあってもよい界面活性剤とともに、分散されている、式(I)の化合物またはその塩もしくはプロドラッグ;
【化1】
を含む固体分散体。
【請求項2】
請求項1に記載の固体分散体を、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む錠剤。
【請求項3】
(i)50mg~500mgの実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【化2】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比が約10:90~約80:20(wt/wt%)である、
錠剤。
【請求項4】
(i)実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【化3】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比が約10:90~約80:20(wt/wt%)である、
固体分散体製剤。
【請求項5】
中枢神経系の疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、
(i)50mg~500mgの実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【化4】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比が約10:90~約80:20(wt/wt%)である錠剤の有効量を投与するステップを含む、方法。
【請求項6】
(i) 50mg~500mgの実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【化5】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比が約10:90~約80:20(wt/wt%)である固体分散体製剤の、中枢神経系の疾患を処置するための錠剤形態の医薬の製造における使用。
【請求項7】
前記ポリマーまたは結晶化阻害剤ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、酢酸フタル酸セルロース、コポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラセフェート、Soluplus(登録商標)およびアミノメタクリレートコポリマーからなる群から選択される、請求項1または請求項4に記載の固体分散体。
【請求項8】
前記ポリマーまたは結晶化阻害剤ポリマーがHPMC E15LVである、請求項7に記載の固体分散体。
【請求項9】
前記ポリマーまたは結晶化阻害剤ポリマーがHPMCASである、請求項7に記載の固体分散体。
【請求項10】
前記ポリマーまたは結晶化阻害剤ポリマーが、様々なグレード、すなわちL、MおよびHのうち1つから選択されるHPMCASである、請求項7に記載の固体分散体。
【請求項11】
前記ポリマーまたは結晶化阻害剤ポリマーがHPMCAS-Hである、請求項10に記載の固体分散体。
【請求項12】
前記ポリマーまたは結晶化阻害剤ポリマーがHPMCAS-Mである、請求項10に記載の固体分散体。
【請求項13】
SLSまたはソルベートなどの添加された界面活性剤を有する、請求項7~11に記載の固体分散体。
【請求項14】
式(I)の化合物:ポリマーの重量比((i):(ii))が、約10:90から、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25または約80:20(wt%/wt%)である、請求項7~13のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項15】
式(I)の化合物:ポリマーの重量比((i):(ii))が約10:90~約60:40である、請求項14に記載の固体分散体。
【請求項16】
式(I)の化合物:ポリマーの重量比((i):(ii))が約20:80~約60:40(wt%/wt%)である、請求項14に記載の固体分散体。
【請求項17】
式(I)の化合物:ポリマーの重量比((i):(ii))が約30:70~約70:30(wt%/wt%)である、請求項14に記載の固体分散体。
【請求項18】
式(I)の化合物:ポリマーの重量比((i):(ii))が約30:70(wt%/wt%)である、請求項14に記載の固体分散体。
【請求項19】
噴霧乾燥によって製造される、請求項7~18のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項20】
噴霧乾燥される溶液中の固体の総重量(wt%全固形物)が、2~15%wtの間、好ましくは約2~10%wtである、請求項19に記載の固体分散体。
【請求項21】
噴霧乾燥溶媒が、ジクロロメタンを含むか、またはジクロロメタンおよびメタノールを含むか、もしくはジクロロメタンおよびメタノールを、約90:10~60:10、例えば、約85:15、80:20、75:25、70:30、もしくは約65:35wt/wt%の重量/重量比で含む、請求項19または20に記載の固体分散体。
【請求項22】
前記噴霧乾燥された分散体の収率が約50~100%である、請求項19、20または請求項21に記載の固体分散体。
【請求項23】
ホットメルト押出(HME)によって製造される、請求項7~18のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項24】
請求項1、4および請求項7~23のいずれか一項に記載の固体分散体を、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む錠剤化前医薬組成物。
【請求項25】
約1%~約75%w/wの前記固体分散体を含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
希釈剤、崩壊剤、流動促進剤、滑沢剤、およびそれらのいずれかの組合せのうち1つまたは複数を含む、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
(i)実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【化6】
またはその塩もしくはプロドラッグを含む固体分散体を、
前記式(I)の化合物を少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーによって形成されるポリマーマトリックス中に分散させることによって調製するステップ、
(ii)ステップ(i)の前記固体分散体を、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と混合するステップ、
(iii)ステップ(ii)で得られた混合物に乾式造粒を行うステップ、および
(iv)ステップ(iii)の乾式造粒混合物を圧縮によって錠剤化するステップ
を含む、錠剤化前医薬組成物を調製する方法。
【請求項28】
請求項19~23に記載の条件のうちいずれかの1つまたは複数の下で調製される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、非鎮静型抗不安作用を示す治療用化合物を含む治療用製剤、前記製剤の製造、ならびに不安および中枢神経系の関連疾患の処置における方法および前記製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
製剤科学とは、原薬(API)が、身体の必要な部位に適正な濃度および速度で送達されて、望ましくない副作用をいずれも回避しながら有効な治療反応を可能にすることを確実にする、生理学的に有効な医薬品を作り出すという、複雑であるがきわめて重要な態様である。所望の効果を促進するために配合者が選ぶ賦形剤/成分は文字通り何千もあり、この選択はAPIの物理的性質および所望の薬物動態(PK)にかなり依存する。
【0003】
上記に加えて、経口(例えば、カプセル剤、錠剤など)にせよ、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内など)にせよ、または局所(例えば、経皮、軟膏剤など)にせよ、製剤の特定の形態もまた、特定のAPIを製剤化する際に考慮すべき重要な因子である。
【0004】
例えば、カプセル剤にせよ錠剤にせよ、経口送達に関しては、APIの物理的、化学的および機械的性質をより深く理解するために、製剤化前の研究が必須である。そのような製剤研究では、最終的に生物学的利用能に影響し、それ故、製剤化された場合にAPIの活性に影響する、pH、溶解度、粒径、多形などの因子を考慮する。
【0005】
生物学的利用能に関して考慮すべき別の因子は、患者に、空腹時か非空腹時かで、製剤を投与する効果である。したがって、製剤が食事の直後に(摂食条件)投与される場合、絶食条件での投与と比較して、APIを含有する製剤の吸収の速度および程度に及ぼす食物の効果を評価するために、食物効果試験または食物効果の生物学的利用能(BA)検査が通常行われる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、既知の非鎮静型抗不安薬のAPIの製剤の欠点の一部を改善しようとするものである。
一態様において、本発明は、少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーによって形成されるポリマーマトリックス中に分散されている、式(I)の化合物:
【0007】
【化1】
【0008】
またはその塩もしくはプロドラッグを含む固体分散体を提供する。
本発明はまた、前記固体分散体を含む、固体投薬製剤、特に錠剤製剤も提供する。
本発明はまた、乾式造粒および圧縮によって調製される、前記固体分散体を含む固体投薬製剤、特に錠剤製剤も提供する。
【0009】
ある特定の実施形態では、少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーは、少なくとも1種の結晶化阻害剤ポリマーである。
さらなる実施形態では、固体分散体は、有効量の(i)式(I)の化合物またはその塩もしくはプロドラッグ、および(ii)ある量の少なくとも1種の結晶化阻害剤ポリマーを含み、(i):(ii)の比は、約10:90~約80:20(wt/wt%)である。
【0010】
プレフォーミュレーション研究の期間中に、本発明者らは、式(I)の化合物は、融点が高く、結晶形態の化合物I(熱力学的に安定な形態であり、非結晶形態の化合物Iが水/湿気に曝露された場合に観察される)のin vitroでの溶解度は低く、低い経口曝露は0.5%HPMCを懸濁製剤に添加すると増加し、対象の摂食/絶食状態に依存することを認めた。この点で、難溶性の結晶形態の形成を防止する(または少なくとも実質的に最小限にする)こと、食物効果を低減すること、および経口曝露を増加させることに焦点を当てたさらなる開発のために、代替の製剤を開発する必要があることが確認された。固体分散体技術、例えば、ホットメルト押出(HME)および噴霧乾燥、脂質製剤化ならびにナノサイズ化は、これらの製剤の欠陥を克服するための手法と考えられた。化合物の標的用量、およびジクロロメタン(DCM)とメタノールとの混合物中の溶解度が良好であることを考慮すると、式(1)の化合物は噴霧乾燥に好適であり得ることが、本発明者らによって認識された。例えば、錠剤の調製に使用することができる、ある種の結晶化阻害剤ポリマーが、薬物(式(I)の化合物)の噴霧乾燥された非結晶の固体分散体中に使用されると、結晶化をもたらす望ましくない薬物/薬物相互作用は回避されることが示された(図1を参照)。式(I)の化合物:ポリマーの好ましい比は以下で検討され、後続の錠剤製剤中にAPIの有利に高い負荷をもたらすことができる。得られるこれらの錠剤製剤は、in vivoでの溶解度が良好であり、いずれの食物の悪影響も回避するかまたは少なくとも最低限にすることが示されている。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、薬学的に許容されるポリマーによって形成されるポリマーマトリックス中に分散されている、式(I)の化合物:
【0012】
【化2】
【0013】
またはその塩もしくはプロドラッグを含む固体分散体から調製された錠剤製剤を提供する。
さらなる態様において、本発明は、
(i)5mg~500mgの式(I)の化合物:
【0014】
【化3】
【0015】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比は約10:90~約80:20(wt/wt%)である、
錠剤を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、
(i)式(I)の化合物:
【0017】
【化4】
【0018】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比は約10:90~約80:20(wt/wt%)である、
固体分散体を提供する。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、中枢神経系の疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的に許容されるポリマーによって形成されるポリマーマトリックス中に分散されている、実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【0020】
【化5】
【0021】
またはその塩もしくはプロドラッグを含む固体分散体から調製された錠剤の有効量を投与するステップを含む、中枢神経系の疾患を処置する方法を提供する。
別の態様において、本発明は、中枢神経系の疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、
(i)5mg~500mgの実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【0022】
【化6】
【0023】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比が約10:90~約80:20(wt/wt%)である錠剤の有効量を投与するステップを含む、中枢神経系の疾患を処置する方法を提供する。
【0024】
さらなる態様において、本発明は、薬学的に許容されるポリマーによって形成されるポリマーマトリックス中に分散されている、実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【0025】
【化7】
【0026】
またはその塩もしくはプロドラッグ
を含む固体分散体から調製された錠剤の、中枢神経系の疾患を処置するための使用を提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、
(i)5mg~500mgの実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【0028】
【化8】
【0029】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比が約10:90~約80:20(wt/wt%)である錠剤の、中枢神経系の疾患を処置するための使用を提供する。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、
(i)5mg~500mgの実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【0031】
【化9】
【0032】
またはその塩もしくはプロドラッグ、および
(ii)結晶化阻害剤ポリマー
を含み、
(i):(ii)の比が約10:90~約80:20(wt/wt%)である固体分散体製剤の、中枢神経系の疾患を処置するための錠剤形態の医薬の製造における使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、薬物負荷に対する、HPMCAS-Mと式(I)の化合物(「BNC210」)との間の相互作用の3次元表示を表すグラフである。
図2a図2aは、本発明の噴霧乾燥された組成物のmDSC(リバーシングヒートフロー(reversing heat flow)対温度)を表すグラフである。
図2b図2bは、本発明の噴霧乾燥された組成物のmDSC(リバーシングヒートフロー対温度)を表すグラフである。
図2c図2cは、本発明の噴霧乾燥された組成物のmDSC(リバーシングヒートフロー対温度)を表すグラフである。
図3a図3aは、本発明の噴霧乾燥された組成物のXRPD特性評価(強度(cps)対2シータ(度))を表すグラフである。
図3b図3bは、本発明の噴霧乾燥された組成物のXRPD特性評価(強度(cps)対2シータ(度))を表すグラフである。
図3c図3cは、本発明の噴霧乾燥された組成物のXRPD特性評価(強度(cps)対2シータ(度))を表すグラフである。
図4a図4aは、噴霧乾燥された分散体の溶出時間試験の結果(API(BNC210)(μgA/mL)対時間(分))を表すグラフである。
図4b図4bは、噴霧乾燥された分散体の溶出時間試験の結果(API(BNC210)(μgA/mL)対時間(分))を表すグラフである。
図4c図4cは、噴霧乾燥された分散体の溶出時間試験の結果(API(BNC210)(μgA/mL)対時間(分))を表すグラフである。
図4d図4dは、ホットメルト押出物の溶出時間試験の結果(API(BNC210)(μgA/mL)対時間(分))を表すグラフである。
図4e図4eは、ホットメルト押出物の溶出時間試験の結果(API(BNC210)(μgA/mL)対時間(分))を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
別段の定めがない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本発明では、次の用語が以下に定義される。
【0035】
「BNC210」は、以下に示されている式(I)の化合物を指す。
【0036】
【化10】
【0037】
この化合物およびその塩は、PCT/AU2007/001566(WO2008/046135)に規定されているように調製することができ、当該文献の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
「賦形剤」は、薬物または他の活性物質のためのビヒクルまたは媒体としての役目をする薬学的に不活性な物質であり、本明細書に記載される「結晶化阻害剤ポリマー」は、本明細書で使用される「賦形剤」という用語の使用とは別である。したがって、本発明は、ある特定の実施形態では、BNC210、少なくとも1種の結晶化阻害剤ポリマーおよび1種または複数種の賦形剤を有する組成物を企図する。
【0039】
「HPMC」は、賦形剤のヒドロキシプロピルメチルセルロース、別名ヒプロメロースである。これは、半合成の、不活性、粘弾性のポリマーである。これは、非イオン性、親水性のセルロースエーテルの誘導体であり、pH範囲3~11にわたって安定している。好ましい一例は、HPMC E15LV、すなわち約15cPの低粘度グレードのプレミアムポリマー(DupontからMETHOCEL(商標)E15 Industrial LVとして販売されている)である。
【0040】
「HPMCAS」は、賦形剤のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(すなわちヒプロメロース(hypermellose)アセテートスクシネート)であり、ポリマー中に様々な含量でアセチル基およびスクシノイル基を有し、標準の腸溶コーティングおよび徐放性製剤の両方の腸溶コーティング材料として主に使用される。様々なpHレベルで溶解する数種のHPMCASがある。タイプLのHPMCASは、アセチル置換に対するスクシノイル置換の比(S/A比)が高いポリマーであり、タイプHはS/A比が低いポリマーであり、タイプMはS/A比がそれより高い、中間のS/A比のポリマーである。タイプLのHPMCASは、タイプMのpH≧6.0、およびタイプHのpH≧6.8と比較して、より低いpH(≧5.5)で溶解する。
【0041】
「セルロース-微結晶性」は、賦形剤であり、精製木材パルプと呼ばれることが多く、食感改良剤、固化防止剤、懸濁化剤および吸着剤として使用されることが多い。微結晶セルロースとして、Avicel PH-105の商品名で販売されることが多い。
【0042】
「クロスカルメロースナトリウム」または「ナトリウムクロスカルメロース」は、内部結合されたカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩であり、超崩壊剤として使用される。それはとりわけ、FMC Biopolymerにより、Ac-Di-Sol SD711の商品名で販売されている。
【0043】
「コロイド状シリカ」(二酸化ケイ素またはコロイド状二酸化ケイ素ともいう)は、錠剤製剤中に、固化防止剤、吸着剤、崩壊剤または流動促進剤として使用されて、錠剤が加工されるときに、流動性の向上を可能にする。それはとりわけ、Cabotにより、Cab-O-Sil MPの商品名で販売されている。
【0044】
「ステアリルフマル酸ナトリウム」(別名、ナトリウムモノステアリルフマレートまたはナトリウムモノオクタデシルフマレート(sodium monooctadecyl fumurate))は、錠剤圧縮を補助する水溶性の滑沢剤である。それはとりわけ、JRS Pharmaにより、Pruv SSFの商品名で販売されている。
【0045】
「PVP-VA」(PVP/VAコポリマーまたはポリ(l-ビニルピロリドン-co-ビニル)アセテートまたはコポビドンまたはPVP VA64ともいう)は、70:30から30:70まで変動するビニルアセテート対ビニルピロリドンの比で、モノマーのフリーラジカル重合によって製造されたランダムな線状配置のビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー(ビニルアセテート-ビニルピロリドンコポリマー)である。少し例を挙げると、Polectron845およびLuviskol VA281、Kolima10、35、Ganhon S860、またはGanex E313の商品名でも知られる。
【0046】
「CAP」(セルアセテート、セラセフェート、セルロースアセテート、1,2-ベンゼンジカルボキシレートとも呼ばれる)は、水、アルコール、炭化水素および塩素化炭化水素に不溶性の酢酸フタル酸セルロースポリマーである。腸溶コーティング材料として使用されることが多い。
【0047】
「Eudragit」は、メタクリル酸、メタクリル酸エステルおよびメタクリル酸ジメチルアミノメチルなどの、2種から3種の比の範囲のメタクリレートモノマーを含有する、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルから誘導されたコポリマーの共通の商品名である。
【0048】
Soluplus(商標)は、ポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテートポリエチレングリコールグラフトコポリマー(PCL-PVAc-PEG)であり、BASFから入手可能である。それは、平均分子量が90,000~140,000g/molの範囲の水溶性コポリマーであり、難水溶性薬物を可溶化することができる。
【0049】
本発明の製剤において、主要な活性成分は、式(I)の化合物、またはその塩もしくはプロドラッグである。製剤中に含まれる式(I)の化合物の量は、対象において血漿中治療濃度を24時間まで提供するのに有効な量である。一実施形態では、製剤は、錠剤として提供される場合、約10mg~約400mgの間の活性成分を含む。一実施形態では、製剤は、錠剤として提供される場合、約30mg~約300mgの間の活性成分を含む。一実施形態では、製剤は、錠剤として提供される場合、約50mg~約200mgの間の活性成分を含む。別の実施形態では、錠剤製剤は、約50mg~175mgの活性成分を含む。別の実施形態では、錠剤製剤は、約50mg~150mgの活性成分を含む。別の実施形態では、錠剤製剤は、約50mg~125mgの活性成分を含む。別の実施形態では、錠剤製剤は、約50mg~100mgの活性成分を含む。別の実施形態では、錠剤製剤は、約50mg~70mgの活性成分を含む。
【0050】
当然のことながら、本明細書に開示される固体分散体製剤は、式(I)の化合物および少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーまたは少なくとも1種の結晶化阻害剤ポリマーのみを含む。この固体分散体は、錠剤形成の前に、最終的にさらなる賦形剤と混合されることになり、そのような製剤(すなわち、固体分散体および添加された賦形剤)は、本明細書において、錠剤化前製剤と呼ばれる。
【0051】
例えば、本発明によって提供される1グラムの錠剤は、固体分散体を50%および他の賦形剤を50%(%wt/%wtベース)含むことができ、これは本明細書においてさらに説明される。当然のことながら、式(I)の化合物を150mg含有する1gの錠剤について、錠剤の50%は、50%wt/50%wt固体分散体/賦形剤の混合物で構成され、固体分散体は30%wtの化合物(I)を有するものと計算することになる。
【0052】
したがって、本発明の錠剤製剤は、消化管の至るところで活性成分の即放性を可能にする製剤賦形剤の組合せを含むことにもなる。これは、急速溶出制御プロセスを介して、媒体の影響下での膨潤および活性成分を放出するためのマトリックスの侵食によって実現することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される製剤は、例えば、最初の15分で約70%の溶出を示す即放性製剤である。
【0053】
本明細書に記載される固体分散体、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、実質的に非結晶形態の式(I)の化合物の維持を確実にするために、少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーまたは結晶化阻害剤ポリマー(互換的に使用される)によって形成されたポリマーマトリックスの中に分散された有効量の式(I)の化合物を含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、(i):(ii)の比は、約10:90、15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55、50:50、55:45、60:40、65:35、70:30、75:25、および約80:20wt/wt%である。
【0055】
ある特定の実施形態では、結晶化阻害剤ポリマーは、HPMCAS-M、HPMCAS-L、HPMCAS-H、PVP-VA、HPMC(例えば、HPMC EI5LV)およびSoluplusからなる群から選択されるポリマー賦形剤である。
【0056】
ある特定の実施形態では、結晶化阻害剤ポリマーは、HPMCAS-Hである。
ある特定の実施形態では、結晶化阻害剤ポリマーは、HPMCAS-Mである。
ある特定の実施形態では、結晶化阻害剤ポリマーは、HPMC E15LVである。
【0057】
ある特定の実施形態では、結晶化阻害剤ポリマーは、HPMCAS-Lである。
ある特定の実施形態では、結晶化阻害剤ポリマーは、PVP-VAである。
一実施形態では、本明細書に開示される固体分散体製剤は、噴霧乾燥によって製造される。一実施形態では、噴霧乾燥される溶液中の固体の総重量(wt%全固形物)は、2~15%wtの間、例えば、約2~10%wtの間である。
【0058】
ある特定の実施形態では、噴霧乾燥溶媒は、ジクロロメタンを含む。
ある特定の実施形態では、噴霧乾燥溶媒は、ジクロロメタンおよびメタノールを含む。
ある特定の実施形態では、噴霧乾燥溶媒は、ジクロロメタンおよびメタノールを、約90:10~60:10、例えば、約85:15、80:20、75:25、70:30、および約65:35wt/wt%の重量/重量比で含む。
【0059】
ある特定の実施形態では、噴霧乾燥された分散体の収率は、約50~100%である。
一実施形態では、本明細書に開示される固体分散体製剤は、ホットメルト押出(HME)によって製造される。ある特定の実施形態では、押出物は、約160~190℃の温度で製造される。
【0060】
錠剤化前製剤および錠剤製剤は、微結晶セルロースを含むこともでき、これは、植物材料からパルプとして得られるα-セルロースを鉱酸を用いて処理することにより調製される、精製され、部分的に解重合されたセルロースであることが当技術分野において公知である。一実施形態では、錠剤製剤または錠剤化前製剤は、約30%~約60%の間(%wt/wt、錠剤の総重量を基準にして)の微結晶セルロースを含む。別の実施形態では、錠剤製剤または錠剤化前製剤は、約35%~約55%(%wt/wt)の微結晶セルロースを含む。別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約40%~約50%(%wt/wt)の微結晶セルロースを含む。
【0061】
一実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約0.2%~約2%の間(%wt/wt、錠剤の総重量を基準にして)のステアリルフマル酸ナトリウム(SSF)を含む。別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約0.3%~1.5%(%wt/wt)のSSFを含む。別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約0.5%~1%(%wt/wt)のSSFを含む。別の実施形態では、製剤は、約0.5%~0.8%(%wt/wt)のSSFを含む。
【0062】
別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、錠剤の総重量を基準にして、約0.8%~2.5%(%wt/wt)のクロスカルメロースナトリウムを含む。別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約1%~2%(%wt/wt)のクロスカルメロースナトリウムを含む。別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約1.2%~1.8%(%wt/wt)のクロスカルメロースナトリウムを含む。
【0063】
別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約0.5%~約2%の間(%wt/wt、硫酸第一鉄の総重量を基準にして)のコロイド状シリカを含む。別の実施形態では、錠剤化前製剤および錠剤製剤は、約0.7%~約1.5%(%wt/wt)のコロイド状シリカを含む。別の実施形態では、製剤は、約0.9%~約1.3%(%wt/wt)のコロイド状シリカを含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、錠剤製剤は、コーティング錠剤を含む。それに応じて、コーティング成分は、ポリマー、可塑剤および顔料を含むことができ、これらは混合され、錠剤を覆うフィルムとして細かく散布されて、錠剤を保護し、錠剤の形状を維持し、嚥下を補助し、光沢のある外観を付与する。上記の製剤には、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)系のコーティング製剤が使用される。
【0065】
別の実施形態では、溶解度をさらに補助するために、製剤は、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)またはソルベートから選択される界面活性剤も含む。界面活性剤は、添加される場合、5%未満(製剤全体のwt/wt)、例えば、約4%、約3%、約2%、約1%または約1%未満の量で含まれる。
【0066】
界面活性剤は、固体分散体の段階、または錠剤化段階のいずれかで添加され得る。
錠剤化プロセス
ある特定の実施形態では、錠剤化前製剤の、賦形剤および固体分散体(式(I)の化合物を含む)は、組み合わされ、粒内(intragranular)ブレンド、ローラー圧縮、砕塊(de-lumping)および粒外(extragranular)ブレンドからなり得る乾式造粒プロセスによって加工されるのが有利であり得る。これは、式(I)の化合物を非結晶状態に維持するのをさらに補助するため、有利であることが判明した。さらに、そのようなプロセスは、打錠機での圧縮に好適な流動性のある顆粒を製造することが判明した。顆粒は80~200MPaの範囲の圧縮圧力で圧縮されてもよい。
【0067】
したがって、別の態様において、本発明は、
(i)実質的に非結晶形態の式(I)の化合物:
【0068】
【化11】
【0069】
またはその塩もしくはプロドラッグを含む固体分散体を、
前記式(I)の化合物を少なくとも1種の薬学的に許容されるポリマーによって形成されるポリマーマトリックス中に分散させることによって調製するステップ、
(ii)ステップ(i)の前記固体分散体を、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と混合するステップ、
(iii)ステップ(ii)で得られた混合物に乾式造粒を行うステップ、および
(iv)ステップ(iii)の乾式造粒混合物を圧縮によって錠剤化するステップ
を含む、錠剤化前医薬組成物を調製する方法を提供する。
処置方法
本開示はまた、気分障害(例えばうつ病)、不安障害、および神経変性疾患などの中枢神経系の疾患の処置または予防も企図する。神経変性疾患という用語は、ニューロンの死滅を含む、ニューロンの構造または機能の進行性喪失に至る病態を包含する。本明細書において企図される神経変性疾患の例は、AIDS認知症複合、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、アルパーズ病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、ウシ海綿状脳症、脳幹および小脳萎縮症、カナバン病、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、レビー小体型認知症、致死性家族性不眠症、フリードライヒ運動失調症、家族性痙性対不全対麻痺、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、乳児レフスム病、ケネディ病、クラッベ病、ライム病、マシャド・ジョセフ病、単肢性筋萎縮症、多発性硬化症、多系統萎縮症、神経有棘赤血球症、ニーマン・ピック病、脳の鉄沈着を伴う神経変性疾患、オプソクローヌス・ミオクローヌス、パーキンソン病、ピック病、原発性側索硬化症、プログラニュリン、進行性多巣性白質脳症、進行性核上性麻痺、タンパク質凝集、レフスム病、サンドホフ病、びまん性ミエリン破壊硬化症(diffuse myelinoclastic sclerosis)、シャイ・ドレーガー症候群、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、亜急性連合性脊髄変性症、脊髄ろう、テイ・サックス病、中毒性脳症、伝達性海綿状脳症、およびウォブリーハリネズミ症候群を含む。
【0070】
ある特定の実施形態では、化合物(I)を含む錠剤は、CNS疾患、障害または病態の徴候および/または症状を処置するため、改善するため、CNS疾患、障害または病態の発現または進展を予防するため、あるいは遅延させるために使用されることが可能である。
【0071】
したがって、気分障害(例えばうつ病)、不安障害、または神経変性疾患などの中枢神経系障害の処置および/または予防を、それを必要とする対象において行うための医薬の製造における、化合物(I)を含む錠剤製剤の使用が、本明細書において教示される。
【0072】
気分障害(例えばうつ病)、不安障害、または神経変性疾患などの中枢神経系障害を処置および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、化合物(I)を含む錠剤の有効量を投与するステップを含む方法も本明細書において提供される。
【0073】
本明細書で使用される場合、気分障害は、該当するDSM-IV-TR(精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、第4版、本文改訂)の基準により、広く認識され、明確に定義されている。したがって、抑うつ障害群があり、そのうち最もよく知られ、最も研究されているものが、大うつ病性障害(MDD:臨床的うつ病または大うつ病と一般に呼ばれる)、および双極性障害(BD:以前は躁うつ病として知られ、通常、複数のうつ病エピソードが組み合わさった、躁病または軽躁病の間欠性エピソードを特徴とする)である。他の抑うつ障害群は、非定型うつ病、メランコリー型うつ病、精神病性大うつ病、緊張病性うつ病、産後うつ病、季節性情動障害、気分変調症、特定不能の抑うつ障害(DD-NOS)(例えば、反復性短期うつ病、軽度抑うつ障害)、物質誘発性気分障害(例えば、アルコール誘発性気分障害、ベンゾジアゼピン誘発性気分障害、インターフェロン-アルファ誘発性気分障害)を含む。
【0074】
当業者は、従来の抗うつ薬物の遅滞期(lag period)と、抗うつ薬効果が認められる前の処置の初期段階(2~4週間以内)において、SSRI、SNRIおよびNRIを含む新世代の抗うつ薬によって生じる不安の増大とを熟知している。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、従来の抗うつ薬物の代用または置き換えとして、それを必要とする対象に投与されることが可能である。別の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、従来の抗うつ薬物の補充として、それを必要とする対象に投与されることが可能である。別の実施形態では、対象においてうつ病を処置または予防する方法であって、前記対象に、補助的な抗うつ薬治療なしに、本明細書に記載される錠剤を投与するステップを含む方法が提供される。
【0075】
従来の抗うつ薬物を本発明の錠剤に置き換えることは、特に、従来の薬物療法が1つまたは複数の有害作用(例えば、不安、悪心、頭痛、勃起不全、早期発症型自殺傾向など)を伴う場合に有利であり得る。従来の抗うつ薬物の例は当業者に知られており、以下に限定されないが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、三環系抗うつ薬、リチウムおよび他の気分安定薬、非定型抗うつ薬、ならびにエストロゲンまたはプロゲストゲンなどのホルモンを含む。
【0076】
別の実施形態では、本発明の錠剤は、それを必要とする対象に、本発明の化合物での処置を中止し、一方で従来の治療を継続するという選択肢をもちながら、約2~4週間の間、従来の抗うつ薬と一緒に投与されて、うつ病の症状に対処することが可能である。別の実施形態では、対象は、本発明の錠剤と1種または複数種の従来の抗うつ薬物との両方(逐次的にまたは組み合わされて投与される)で、処置期間の間、処置される。そのような組合せ治療は、例えば、本発明の錠剤製剤と1種または複数種の従来の抗うつ薬物との組合せが、処置期間の作用の遅滞を伴う急性期においてうつ病の軽減をもたらす場合、および/または相加的または相乗的な抗うつ薬の治療効果が所望される場合に、特に有用であり得る。
【0077】
うつ病の再発もまた、従来の抗うつ薬物で処置される患者に起こり得る。そのような多くの化合物は、数カ月間から数年間投与され、そのような長期間の使用で有効性の低下が認められることが多く、顕著な継続性のうつ病および機能障害につながる。うつ病の再発は、一部の患者では突然発症であり得、他の患者では、気分および機能の漸次低下として現れ、経時で患者が再発の状態に近づくにつれ、気分および機能が減退する場合がある。したがって、本発明の錠剤製剤は、従来の抗うつ薬治療の効果の縮小を埋め合わすことができるため、うつ病の再発の突然発症または漸進的なうつ病の再発を経験する患者は、本明細書に開示される方法によって益を得ることになる。したがって、本発明の錠剤製剤の使用は、従来の抗うつ薬物を摂取している患者においてよく認められるうつ病の再発を予防または部分的に軽減することができる。
【0078】
したがって、ある特定の実施形態では、抗うつ薬治療を受けている対象において、再発を処置または予防する方法であって、前記対象に、本明細書に記載される化合物(I)を含む錠剤を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【0079】
対象において起こり得るうつ病再発に関連している従来の抗うつ薬治療は、当業者に公知であろう。その例は、以下に限定されないが、投与量の増加、代替的なSSRIまたはSNRI、および非SSRI抗うつ薬、例えば、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、三環系抗うつ薬、リチウムおよび他の気分安定薬、非定型抗うつ薬、ならびにエストロゲンおよびプロゲストゲンなどのホルモンを含み、これらは本明細書で「第2の抗うつ薬化合物」とも呼ばれる。
【0080】
所望の治療活性または治療効果は、通常、処置される病態に依存することになる。例えば、対象がうつ病の処置をされている場合、治療効果は、以下に限定されないが、認知障害、食欲不振、ふさぎ込みおよび/または不活動を含む、うつ病の少なくとも1つの臨床症候の低減とすることができる。
【0081】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、前記対象に、第2の抗うつ薬化合物と逐次的に(すなわち、前または後に)または組み合わされて(例えば、現存の抗うつ薬治療とともに)投与される。
【0082】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される錠剤製剤は、対象のクオリティオブライフに悪影響を及ぼすおそれのある鎮静副作用を低減するという点で、従来の治療に勝るさらなる追加の利点を有する。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される錠剤製剤は、測定可能な鎮静副作用がない。
【0083】
抗うつ薬物を突然中止すると、薬物への身体依存に起因する離脱症状が起こるおそれがある。化合物は、単純な動物モデルにおいて身体依存について評価されることが可能であり、その場合、連用期間(例えば、14~20日間)の後に試験薬が中止され、次の5日間にわたって、食事摂取、体重および体温の測定が行われる。薬物の突然中止の症状は、食欲の著しい低下、体重減少、および体温の低下として現れる。このモデルは、アヘン剤、抗うつ薬、およびベンゾジアゼピンを含む広範囲の薬物クラスにわたって効果を検出するのに好適である。本明細書に記載される化合物、またはその医薬組成物はまた、組合せ治療として、例えば当該処置を、他の抗うつ薬と、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、ジアゼパム、ロラゼパム、クロネゼパム(clonezepam))、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)(例えば、シタロプラム、ダポキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、インダルピン、パロキセチン、セルトラリン、ジメリジン、ビラキソドン(vilaxodone))、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)(例えば、ベンラファキシン、デュロキセチン、デスベンラファキシン、ミルナシプラン)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(例えば、フェネルジン、モクロベミド)、三環系抗うつ薬(例えば、トリミプラミン、イミプラミン)、四環系抗うつ薬(例えば、メルタゼピン(mertazepine)、マプロチリン)、気分安定薬(例えば、リチウム、バルプロ酸ナトリウム、バルプロ酸)、非定型抗うつ薬(例えば、ブプロピオン)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)、非定型抗精神病薬(例えば、リスペリドン、アリピプリゾール(aripiprizole)、クエチアピン、オランザピン)、ならびにエストロゲンおよびプロゲストゲンなどのホルモンと組み合わせて使用することもできる。
【0084】
したがって、当然のことながら、本明細書に記載される錠剤製剤は、神経突起伸長の増強によって改善され得る任意の疾患の状態、障害または病態の処置および/または予防に使用されることが可能である。
【0085】
ある特定の実施形態では、神経突起伸長に反応性の疾患は、神経変性疾患である。ある特定の実施形態では、神経変性疾患は、多発性硬化症またはパーキンソン病様関連の障害である。さらなる実施形態では、神経変性疾患は多発性硬化症である。さらなる実施形態では、疾患は、創傷治癒、脊髄損傷、末梢神経障害などの神経の損傷を含む病態を含んでもよい。
【0086】
閾値下の疾患、病態、状態、障害または外傷も、本明細書において企図される。一実施形態では、疾患、病態、状態、障害または外傷は、その症状によって規定される。したがって、本明細書に記載される錠剤製剤は、CNSの疾患、病態、状態、障害または外傷の症状の改善に有用であり得る。「外傷」は、卒中、脳出血、またはCNSに影響を及ぼす全身の脈管構造の別の病態もしくはイベントを含む。CNSの疾患、病態、状態、障害または外傷の症状は、当業者に熟知されているであろう。そのような症状の例は、うつ病などの気分障害を含む。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、対象における神経変性疾患に起因する(またはそれに関連する)うつ病の処置に使用される。
【0087】
本明細書に記載される錠剤製剤は、治療として、例えば、当該処置を、他の神経変性の処置、例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(例えば、Aricept、Exelon)、および多発性硬化症の処置(例えば、Avonex、Betaseron、Copaxone、Tysabri、Gilenya)と組み合わせて使用することもできる。
【0088】
当然のことながら、本明細書に記載される錠剤製剤は、不安、または過敏性腸症候群および線維筋痛症などの不安と関連する病態/疾患の状態の処置に使用されることが可能である。
【0089】
ある特定の実施形態では、不安障害は、次のうち1つに分類される。
・パニック障害、
・自閉症に伴う不安、
・強迫性障害(OCD)、
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)、
・社会恐怖症(または社会不安障害-(SAD))、
・特定恐怖症、
・全般性不安障害(GAD)、
・物質誘発性不安障害、および
・急性ストレス障害(ASD)。
【0090】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、パニック障害の処置に使用され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、自閉症の処置に使用され得る。
【0091】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、強迫性障害(OCD)の処置に使用され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、例えば高齢者における不穏の処置に使用され得る。
【0092】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の処置に使用され得る。
一実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、社会恐怖症(または社会不安障害-SAD)の処置に使用され得る。
【0093】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、特定恐怖症の処置に使用され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、広場恐怖症、またはパニック障害の既往歴のない広場恐怖症に使用され得る。
【0094】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、動物恐怖症に使用され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、物質誘発性不安障害の処置に使用され得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、急性ストレス障害(ASD)の処置に使用され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、全般性不安障害(GAD)の処置に使用され得る。
【0096】
全般性不安障害の基準は、以下を含む。
(i)種々の出来事および状況についての少なくとも6カ月の「過剰な不安および心配」。一般に、「過剰」とは、特定の状況または出来事について予想されるよりも大きいものと解釈され得る。大抵の人々はある特定のことについて不安になるが、その不安の強度は、通常、その状況に相当する。
【0097】
(ii)不安および心配の制御に著しい困難がある。制御力を取り戻すこと、緊張を解くこと、または不安および心配に対処することにきわめて困難な苦悶を有する場合、この要件が当てはまる。
【0098】
(iii)過去6カ月にわたってほとんどの日に、次の症状のうち3つ以上(小児の場合1つのみ)がある。
1.興奮、緊張、または不穏を感じる
2.疲労または疲弊しやすい
3.集中力の欠如
4.易刺激性
5.筋肉の著しい緊張
6.睡眠が困難
(iv)症状は、別の精神障害の一部ではない。
【0099】
(v)諸症状が、「臨床的に有意な窮迫」または日常生活において機能する諸問題を引き起こす。「臨床的に有意な」とは、処置を行う人の見方に依存する部分である。上記の症状のうち多くを有し、高レベルの機能を維持するのに十分な程度にそれらの症状に対処することができる人もいる。
【0100】
(vi)病態が、物質または医療の問題を原因とするものではない。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、全般性不安障害についての上記の基準のうち1つまたは複数によって同定され得る。
【0101】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、不安障害に関連する1つまたは複数の症状を処置または予防するために使用され得る。
不安障害の各々は異なる症状を有するが、すべての症状が、過剰で不合理な恐れおよび恐怖の周辺に集中している。
【0102】
別の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、うつ病、例えば、大うつ病性障害の処置に使用され得る。
大うつ病性障害の基準は、以下を含む。
【0103】
(i)以下の症状のうち少なくとも5つが同じ2週間の間に存在し、過去の機能から変化があり、症状のうち少なくとも1つは、
1)抑うつ気分、または
2)興味または喜びの喪失
のいずれかである。
【0104】
(ii)主観報告(例えば、悲しいまたは空虚に感じる)または他人によってなされる観察(例えば、泣きそうに見える)のいずれかによって指摘される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
【0105】
(iii)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべての、またはほとんどすべての活動における、興味または喜びの顕著な減退(主観的説明または他人によってなされる観察のいずれかによって指摘される)。
【0106】
(iv)食事制限していない場合の有意な体重減少、もしくは体重増加(例えば、ひと月に5%を超える体重の変化)、またはほとんど毎日の食欲の減退もしくは増加。
(v)ほとんど毎日の不眠または睡眠過剰。
【0107】
(vi)ほとんど毎日の精神運動性激越または精神運動の制止(不穏状態または鈍化しているという主観的感覚のみでなく、他人によって観察可能)。
(vii)ほとんど毎日の疲労または気力の喪失。
【0108】
(viii)ほとんど毎日の、無価値感または過剰なもしくは不適切な罪責感(妄想である場合がある)(病気であることについての自責または罪責感のみではない)。
(ix)ほとんど毎日の、思考力もしくは集中力の減退、または決断困難(主観的説明による、または他人によって観察される場合のいずれか)。
【0109】
(x)死についての反復思考(死ぬことへの恐れだけではない)、特定の計画のない反復性の自殺念慮、または自殺企図もしくは自殺するための特定の計画。
(xi)諸症状が、混合エピソードについての基準には当てはまらない。
【0110】
(xii)諸症状が、臨床的に有意な窮迫、または社会的、職業的、もしくは他の重要な領域の機能における障害を引き起こす。
(xiii)諸症状が、物質の直接的な生理学的影響(例えば、依存性薬物、薬物療法)または全身の医学的病態(例えば、甲状腺機能低下症)に起因するものではない。
【0111】
(xiv)諸症状が、死別によってうまく説明できない。すなわち、大切な人を亡くした後に、諸症状が2カ月より長く持続する、または顕著な機能障害、無価値感への病的な拘泥、自殺念慮、精神病症状、もしくは精神運動の制止を特徴とする。
【0112】
上記の基準は、アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association)(2000)精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)(第4版、本文改訂)、Washington DC:アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association)を出典とする。
【0113】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、大うつ病性障害についての上記の基準のうち1つまたは複数によって同定され得る。
別の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、うつ病に関連する1つまたは複数の症状を処置または予防するために使用され得る。
【0114】
本明細書に記載される錠剤製剤が有益となり得るさらなる障害は、疼痛および痛覚;嘔吐、例えば、急性、遅延性および先行性の嘔吐、特に、化学療法または放射線照射により誘発される嘔吐、ならびに乗り物酔い、ならびに術後の悪心および嘔吐;神経性食欲不振症および神経性過食症を含む摂食障害;月経前症候群;例えば対麻痺の対象における筋痙攣または筋痙縮;耳鳴および加齢性難聴を含む聴覚障害;尿失禁;ならびにアルコール離脱を含む物質乱用または依存の影響、神経症、痙攣、片頭痛、抑うつ障害、双極性障害、精神病性障害、脳虚血から生じる神経変性、注意欠陥多動障害、トゥレット症候群、発語障害、概日リズム障害、単一エピソードまたは反復性の大うつ病性障害、気分変調性障害、双極性I型または双極性II型躁病、気分循環性障害、統合失調症、ならびに吃音を含む。
【0115】
一実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、脳虚血の処置に使用され得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、脳虚血から生じる神経変性の処置に使用され得る。
【0116】
一実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、概日リズム障害の処置に使用され得る。
一実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、疼痛および痛覚の処置に使用され得る。
【0117】
一実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、アルツハイマー病の処置に使用され得る。
当然のことながら、本明細書に記載される錠剤製剤は、処置有効量で対象に投与され得る。一部の実施形態では、処置有効量は、治療有効量または予防有効量である。「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって求められている、組織、身体、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を引き出す活性化合物または医薬剤の量を意味する。投与されることになる化合物の治療有効量は、そのような考慮によって管理されることになり、疾患もしくは障害またはその症状のうち1つもしくは複数を改善、治癒、または処置するために必要な最小量である。「予防有効量」という用語は、疾患もしくは障害に罹る機会を予防するもしくは実質的に減らす、または疾患もしくは障害に罹る前に、その重症度を低減する、または疾患もしくは障害の症状が発症する前に、その症状のうち1つまたは複数の重症度を低減するのに有効な量を指す。大まかに、予防対策は、一次予防(疾患または症状の発症を予防するため)と二次予防(これにより、疾患または症状が既に発症しても、対象はこの過程の悪化から保護される)とに分けられる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の投与計画に従って投与されると、所望の治療活性をもたらす錠剤製剤の量に関する。投与は、数分間隔で、数時間間隔で、数日間隔で、数週間間隔で、数カ月間隔でもしくは数年間隔で、またはこれらの期間のうちいずれか1つにわたって継続的に行われてもよい。好適な投与量は、1回投与当たり約0.1ng/kg体重~1g/kg体重の範囲内にある。投与量は、1回投与当たり1μg~1g/kg体重の範囲としてもよく、例えば、1回投与当たり1mg~1g/kg体重の範囲である。一実施形態では、投与量は、1回投与当たり1mg~500mg/kg体重の範囲としてもよい。別の実施形態では、投与量は、1回投与当たり1mg~250mg/kg体重の範囲としてもよい。さらに別の実施形態では、投与量は、1回投与当たり1mg~100mg/kg体重の範囲、例えば、1回投与当たり50mg/体重までなどとしてもよい。
【0119】
ある特定の実施形態では、提供される方法は、本発明の錠剤製剤の投与を必要とする対象に、本発明の錠剤製剤を、神経突起伸長(ニューロン新生)を増強するin vivoでの有効量をもたらす投与量で投与するステップを含み、その投与は、急性期の処置(例えば、処置の開始から1、2、3または4週間以内)を含むがこれに限定されない。一実施形態では、in vivoでの有効量は、神経突起伸長アッセイ、例えば本明細書に記載される神経突起伸長アッセイにおいて、神経突起伸長を、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも50%増加させるのに十分なin vitroでの等価濃度を有する。本発明の化合物のin vitroでの等価濃度を決定する方法は、当業者に熟知されているであろう。例えば、本発明の化合物の対象への投与から約10分~約60分後の時点で、血液試料が採取され、HPLC、ELISA、ガスクロマトグラフィーによって、または血液ml当たりの濃度を決定するための他の好適なアッセイによって、アッセイされる。次いで、対象の体重、対象の適切な血液量および血液脳関門を横切る本発明の化合物の適切な拡散速度などの因子が考慮されると、同等の有効濃度がin vitroアッセイにおいて使用されることが可能になる。別の実施形態では、本発明の錠剤製剤が(対照と比較して)神経突起伸長を刺激することがin vitroで判明すると、in vitroでの濃度をin vivo等価量に外挿することによって、およそのin vivoでの有効量が対象について決定されることが可能である。対象の体重、対象の適切な血液量および血液脳関門を横切る本発明の化合物の適切な拡散速度などの因子は、in vivoでの有効量を外挿するために使用されてもよく、したがって、前記in vivoでの有効量を生じさせる適切な投与量を外挿するために使用されてもよい。
【0120】
その後、本錠剤製剤での処置が、処置期間中ずっと継続されてもよく、または中止されてもよく、もしくは従来の治療用化合物に置き換えられてもよい。in vivoで神経突起伸長(ニューロン新生)を増強するために必要な錠剤製剤の有効量を決定する方法は、当業者に熟知されているであろう。例えば、ニューロン新生の増強は、認知障害、発作もしくは振戦の程度および頻度、運動機能障害、頭痛ならびに気分(例えば、幸福度)を含むがこれらに限定されないCNS障害の症状を測定することによって決定され得る。
【0121】
「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」または「投与」という用語は、本発明の化合物、組成物または製剤との関連では、化合物を、処置を必要とする動物の身体に導入することを意味する。本発明の化合物が、1種または複数種の他の活性薬剤と組み合わされて提供される場合、「投与」およびその変形は、各々、化合物および他の活性薬剤の同時導入および/または逐次導入を含むものと理解される。
【0122】
ある特定の実施形態では、70kgのヒト成人に1日1回または複数回投与するための錠剤製剤の有効量は、単位剤形当たり、約0.0001mg~約3000mg、約0.0001mg~約2000mg、約0.0001mg~約1000mg、約0.001mg~約1000mg、約0.01mg~約1000mg、約0.1mg~約1000mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、または約100mg~約1000mgの化合物を含んでもよい。
【0123】
ある特定の実施形態では、錠剤製剤は、所望の治療効果を得るために、1日1回または複数回で、1日当たり、対象の体重を基準に、約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、および約1mg/kg~約25mg/kgを送達するのに十分な投与量レベルとしてもよい。
【0124】
好適な投与量および投与計画は、主治医が決定することができ、処置される特定の病態、病態の重症度、ならびに全般的な対象の年齢、健康状態および体重に依存し得る。当然のことながら、本明細書に記載される用量範囲は、提供される医薬組成物を成人に投与するためのガイダンスとなる。例えば、小児または青少年に投与される量は、医師または当業者が決定することができ、成人に投与される量より少ないか、または同じとすることができる。
【0125】
本明細書に記載される錠剤製剤は、1種または複数種の追加の治療剤との組合せ治療に使用されることが可能である。活性薬剤が別個の投薬製剤である、1種より多い活性薬剤との組合せ処置の場合、活性薬剤は、別々に、または合わせて投与されてもよい。加えて、1つの要素の投与は、他方の薬剤の投与の前、それと同時、またはその後であってもよい。
【0126】
他の薬剤と併用投与される場合、例えば、別の抗不安薬または抗うつ薬物と併用投与される場合、第2の薬剤の「有効量」は、使用される薬物のタイプに依存することになる。好適な投与量は、承認済みの薬剤については知られており、対象の病態、処置される病態のタイプ、および使用される本明細書に記載の化合物の量に応じて、当業者によって調整されることが可能である。量が明確に指摘されていない場合、有効量は仮定されるべきである。
【0127】
「組合せ治療」が使用される場合、有効量は、第1の量の錠剤製剤、および第2の量の追加の好適な治療剤を使用して実現され得る。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤および追加の治療剤は、有効量で(すなわち、各々が単独で投与された場合に治療的に有効となる量で)各々投与される。別の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤および追加の治療剤は、単独では治療効果をもたらさない量(治療量以下の用量)で各々投与される。さらに他の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、有効量で投与されることが可能であり、追加の治療剤は、治療量以下の用量で投与される。さらに他の実施形態では、本明細書に記載される錠剤製剤は、治療量以下の用量で投与されることが可能であり、追加の治療剤は、有効量で投与される。
【0128】
本明細書で使用される場合、「組み合わせて」または「併用投与」という用語は、互換的に使用されて、1種より多い治療(例えば、1種または複数種の予防剤および/または治療剤)の使用を指すことができる。これらの用語の使用は、治療(例えば、予防剤および/または治療剤)が対象に実施される順序を制限しない。
【0129】
併用投与は、第1および第2の量の化合物を、単一医薬組成物(例えば、固定比の第1および第2の量を有する錠剤)、例えば、錠剤で、各々別個の複数の錠剤で、本質的に同時に投与することを包含する。加えて、そのような併用投与はまた、各化合物をいずれかの順序で逐次的に使用することも包含する。併用投与が、第1の量の本明細書に記載される錠剤製剤および第2の量の追加の治療剤の、別々の投与を含む場合、本化合物は、所望の治療効果を有するために十分近い時間で投与される。例えば、所望の治療効果をもたらすことができる各投与間の時間は、数分間から数時間の範囲とすることができ、各化合物の性質、例えば、力価、溶解度、生物学的利用能、血漿中半減期、および薬物動態プロファイルを考慮して決定され得る。例えば、本明細書に記載される錠剤製剤および第2の治療剤は、任意の順序で、互いに約24時間以内、互いに約16時間以内、互いに約8時間以内、互いに約4時間以内、互いに約1時間以内または互いに約30分以内に投与され得る。
【0130】
より特定すると、第1の治療(例えば、本明細書に記載される化合物などの予防剤または治療剤)は、対象への第2の治療の実施の前(例えば、5分前、15分前、30分前、45分前、1時間前、2時間前、4時間前、6時間前、12時間前、24時間前、48時間前、72時間前、96時間前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、8週間前、または12週間前)に、同時に、または後(例えば、5分後、15分後、30分後、45分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、12時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、8週間後、または12週間後)に実施されることが可能である。
【0131】
別々に投与されるか、または同じ医薬組成物中でのいずれかで、本錠剤製剤と組み合わされてもよい治療剤の例は、以下に限定されないが、筋弛緩薬、抗痙攣薬、催眠薬、麻酔薬、鎮痛薬、コリン作動薬、抗うつ薬、気分安定薬、および抗不安薬を含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、以下:シタロプラム(Celexa、Cipramil、Cipram、Dalsan、Recital、Emocal、Sepram、Seropram、Citox、Cital)、ダポキセチン(Priligy)、エスシタロプラム(Lexapro、Cipralex、Seroplex、Esertia)、フルオキセチン(Prozac、Fontex、Seromex、Seronil、Sarafem、Ladose、Motivest、Flutop、Fluctin(EUR)、Fluox(NZ)、Depress(UZB)、Lovan(AUS)、Prodep(IND))、フルボキサミン(Luvox、Fevarin、Faverin、Dumyrox、Favoxil、Movox)、パロキセチン(Paxil、Seroxat、Sereupin、Aropax、Deroxat、Divarius、Rexetin、Xetanor、Paroxat、Loxamine、Deparoc)、セルトラリン(Zoloft、Lustral、Serlain、Asentra)、およびビラゾドン(Viibryd)から選択されるSSRIである。
【0133】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、アモキサピン(Amokisan、Asendin、Asendis、Defanyl、Demolox、Moxadil)、マプロチリン(Deprilept、Ludiomil、Psymion)、マジンドール(Mazanor、Sanorex)、ミアンセリン(Bolvidon、Depnon、Norval、Tolvon)、ミルタザピン(Remeron、Avanza、Zispin、Miro)、およびセチプチリン(Tecipul)からなる群から選択される四環系抗うつ薬(TeCA)である。
【0134】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、デスベンラファキシン(Pristiq)、デュロキセチン(Cymbalta、Ariclaim、Xeristar、Yentreve、Duzela)、ミルナシプラン(Ixel、Savella、Dalcipran、Toledomin)、およびベンラファキシン(Effexor、Efexor)からなる群から選択されるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)である。
【0135】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、アトモキセチン(トモキセチン、Strattera、Attentin)、マジンドール(Mazanor、Sanorex)、レボキセチン(Edronax、Norebox、Prolift、Solvex、Davedax、Vestra)、およびビロキサジン(Vivalan、Emovit、Vivarint、Vicilan)からなる群から選択されるノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI)である。
【0136】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、ベンモキシン(Nerusil、Neuralex)、ヒドララジン(Apresoline)、イプロクロジド(Sursum)、イプロニアジド(Marsilid、Iprozid、Ipronid、Rivivol、Propilniazida)、イソカルボキサジド(Marplan)、イソニアジド(Laniazid、Nydrazid)、メバナジン(Actomol)、ニアラミド(Niamid)、オクタモキシン(Ximaol、Nimaol)、フェネルジン(Nardil、Nardelzine)、フェニプラジン(Catron)、フェノキシプロパジン(Drazine)、ピバリルベンズヒドラジン(Tersavid)、プロカルバジン(Matulane、Natulan、Indicarb)、カロキサゾン(Surodil、Timostenil)、エキノプシジン(Adepren)、フラゾリドン(Furoxone、Dependal-M)、リネゾリド(Zyvox、Zyvoxam、Zyvoxid)、トラニルシプロミン(Parnate、Jatrosom)、ブロファロミン(Consonar)、メトラリンドール(Inkazan)、ミナプリン(Cantor)、モクロベミド(Aurorix、Manerix)、ピルリンドール(Pirazidol)、トロキサトン(Humoryl)、ラザベミド(Pakio、Tempium)、パルギリン(Eutonyl)、ラサギリン(Azilect)、およびセレギリン(デプレニル、Eldepryl、Emsam)からなる群から選択されるモノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)である。
【0137】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、アミトリプチリン(Tryptomer、Elavil、Tryptizol、Laroxyl、Sarotex、Lentizol)、ブトリプチリン(Evadene、Evadyne、Evasidol、Centrolese)、クロミプラミン(Anafranil)、デシプラミン(Norpramin、Pertofrane)、ドスレピン(Prothiaden、Dothep、ThadenおよびDopress)、ドキセピン(Aponal、Adapine、Doxal、Deptran、Sinquan、Sinequan、Zonalon、Xepin、Silenor)、イミプラミン(Antideprin、Deprimin、Deprinol、Depsol、Depsonil、Dynaprin、Eupramin、Imipramil、Irmin、Janimine、Melipramin、Surplix、Tofranil)、ロフェプラミン(Gamanil、Tymelyt、Lomont)、ノルトリプチリン(Sensoval、Aventyl、Pamelor、Norpress、Allegron、Noritren、Nortrilen)、プロトリプチリン(Vivactil)、およびトリミプラミン(Surmontil、Rhotrimine、Stangyl)からなる群から選択される三環系抗うつ薬(TCA)である。
【0138】
有効量を達成するために必要な化合物の正確な量は、例えば、対象の種、年齢、および全身の病態、副作用または障害の重症度、特定の化合物の独自性、投与方式などに依存して、対象毎に変化することになる。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、週1回、2週に1回、3週に1回、または4週に1回、送達されることが可能である。ある特定の実施形態では、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、または14回以上の投与)を使用して送達されることが可能である。
【0139】
本明細書における、任意の過去の刊行物(またはそこから導かれた情報)、または任意の既知の事柄への言及は、その過去の刊行物(またはそこから導かれた情報)または既知の事柄が、本明細書が関する努力傾注分野における共通一般知識の一部を形成するという示唆の承認でも容認でもいかなる形態でもなく、またそのように考えられてはならない。
【0140】
本明細書および後続の特許請求の範囲を通して、文脈が他の意味を要求しない限り、「~を含む(comprise)」という単語、ならびに「~を含む(comprises)」および「~を含んでいる(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくはステップ、または整数群もしくはステップ群の組み入れを意味するが、任意の他の整数もしくはステップ、または整数群もしくはステップ群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0141】
本明細書および後続の特許請求の範囲を通して、文脈が他の意味を要求しない限り、「~から実質的になる(consisting essentially of)」という表現、および「~から実質的になる(consists essentially of)」などの変形は、記載された要素が必須である、すなわち本発明の必要な要素であることを示すものと理解されるであろう。この表現は、本発明の特性に実質的に影響を及ぼさない、他の記載されていない要素の存在を可能にするが、規定された方法の基本的および新規な特性に影響を及ぼすような追加の不特定の要素を除外する。
【0142】
本明細書を通して、いずれか1つの実施形態または特定の特徴群に本発明を限定することなく、本発明の好ましい実施形態を記載することを狙いとしてきた。したがって、当業者は本開示に照らして、様々な変形および変更が、本発明の範囲を逸脱することなく、例証された特定の実施形態においてなされ得ることを理解するであろう。そのようなすべての変形および変更は、添付の特許請求の範囲の中に含まれるものとする。
【0143】
本発明のさらなる特徴は、以下の非限定的な実施例において、より詳しく記載される。
【実施例
【0144】
実施例1(Ex1):本発明の代表的な噴霧乾燥された分散体(SDD)組成物の調製
およそ150gの化合物(I)、別名「BNC210」を、ジクロロメタンとメタノール(80:20%w/w)との混合物4kgに溶解させた。適切な量のポリマー(表1)をこの溶液に添加し、この混合物を撹拌して均質な溶液にした。もう1つの方法として、追加の賦形剤、例えばSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)を添加した。2流体ノズルを備えたBuchi B290噴霧乾燥器を使用して、溶液を噴霧乾燥した。噴霧乾燥された分散体粉末の代表的な組成およびそれらの物理的外観が表1に記載されている。
【0145】
【化12】
【0146】
実施例2(Ex2):本発明の代表的なホットメルト押出(HME)分散体組成物の調製
およそ6gの化合物(I)、別名「BNC210」、およびHPMCAS-Hポリマーを、Turbula Blenderを使用してブレンドし、ブレンド物を、25メッシュを通して砕塊し、再度ブレンドした。ブレンドした混合物を、165℃または175℃または180℃で、逆スクリュー回転構成のHAAKE Mini CTW Extruderにスクリュー回転数200rpmで給送し、ダイスを通して押出した。任意選択により、ロールをドライアイスで冷却して、押出物を急冷した。押出物を、60メッシュサイズのスクリーンを通して粉砕した。
【0147】
ホットメルト押出による押出物の代表的な組成およびそれらの物理的外観が表2に記載されている。
【0148】
【表1-1】
【0149】
【表1-2】
【0150】
【表2】
【0151】
熱的性質および結晶化度の決定
変調示差走査熱量測定法(mDSC)を使用して、本発明の組成物(噴霧乾燥された組成物およびHMEベースの組成物の両方)の特性評価をした。固体試料をアルミニウムパンに置き、密封してピンホールを設けた。TA instruments(New Castle、Del.、USA)のRCS90冷却器を備えたモデルQ2000を使用して、乾燥窒素パージ下で2℃/分で加熱した試料に、60秒間で変調振幅±1.0℃以内を適用した。表3に記載され、図2a、2bおよび2cに示されるように、本発明の組成物は、単一のガラス転移(T)温度を示す。
【0152】
【表3】
【0153】
本発明の噴霧乾燥された分散体組成物およびホットメルト押出分散体組成物の結晶化度を、粉末X線回折(PXRD)により、Rigaku Miniflex 6G卓上X線回折計を使用して決定した。PXRDの記録に推奨されるパラメーターが表4に記載されている。
【0154】
【表4】
【0155】
本発明の噴霧乾燥された分散体組成物およびホットメルト押出分散体組成物は、XRPDにおいてきわめて幅広いピークを示し(図3a、3bおよび3c)、このことは、これらの組成物が事実上非結晶であることを表す。
溶出試験
化合物Iは難溶性の化合物であり、浸透性は中程度であるため、その体内吸収は、小腸からの溶出速度および析出に大いに依存することになる。したがって、分散体粉末をSGF(0.1N HCl、pH=1)媒体中に懸濁させ、次いでその溶液をSIF(模擬腸液:100mM PBS中2.24mg/mL FaSSIF)に移すことによって、生物学的に関連する溶出試験実験(溶解度/析出)を行った。適切な量(2.0mg/mLの化合物Iに相当)の本発明の組成物を、50mLの0.1N HClに添加し、撹拌した。10分時点および25分時点で混合物の一定分量を取り出し、10秒間ボルテックスし、分析用HPLCにより、外部参照標準を240nmの波長で使用して、溶解した量を測定した。30分後、SGFインキュベーションから試料の全量を、50mLのSIF媒体に撹拌しながら移し、溶解した量を、35分、50分、75分、120分および210分の各時点で測定した。対照実験を、化合物Iの微粒子化した粉末を「そのまま」で使用して実行した。その結果が表5ならびに図4a、4b、4c、4dおよび4eに示されている。SGF媒体の中では、すべての噴霧乾燥された組成物は、化合物Iの微粒子化した粉末「そのまま」と比較して、より多くの量の化合物Iを放出した。HPMCAS-HおよびHPMC E15LVポリマーをベースとする噴霧乾燥された組成物は、HPMCAS-M、HPMCAS-M、CAP、Eudragitポリマーをベースとする組成物と比較して、有意に多い量の溶解した化合物Iを放出した。媒体がSGFからSIFに変えられたときに起こったpHの急速な上昇により、化合物Iは溶解度が急激に低下し、析出した。予想外に、HPMCAS-H、HPMCAS-M、HPMCAS-LおよびHPMC E15LVをベースとする組成物については、溶解している化合物Iの量は、PVP-VA、CAPおよびEudragitポリマーをベースとする組成物または化合物I「そのまま」と同程度まで減少することはなかった。加えて、HPMCAS-H、HPMCAS-MおよびHPMC E15LVをベースとする組成物は、化合物がSIF媒体中で溶解度をより長く維持するのをポリマーが補助し、そのため、化合物Iはそれほど急速には析出しないというパラシュート効果を発揮した。
【0156】
【表5】
【0157】
錠剤プロセス
実証用バッチの錠剤(ブレンド物300g、約200錠)を、ローラー圧縮機を使用する乾式造粒により、次いでロータリー式打錠機(B12-705-29)を使用する錠剤化により、製造した。乾式造粒プロセスは、粒内ブレンド、ローラー圧縮、砕塊、および粒外ブレンドからなり、Riva Piccolaロータリー式打錠機での圧縮に適した流動性の顆粒を製造する。粒内ブレンドおよび粒外ブレンドの組成が表6に記載されている。
【0158】
【表6】
【0159】
ステップ1:粒内ブレンド
a)所望の量のAvicel PH-105を計り分け、5L容器に添加する。20rpmで1分間ブレンドして、ブレンダーシェルをコーティングする。
【0160】
b)所望の量の試験番号1:HPMCAS-M SDD、Cab-O-Sil、Ac-Di-Sol、Pruv SSFを計り分け、容器に添加する。20rpmで10分間ブレンドする。
【0161】
c) Comil(Quadro U5)により、以下の設定を使用してブレンド物を砕塊する。
d)スクリーン=032R、インペラー=1612およびRPM=3000。
【0162】
e)砕塊した材料を容器に戻し、20rpmで10分間ブレンドする。
ステップ2:ローラー圧縮および造粒
a)Vector TFC-Lab Microローラー圧縮機にステップ1の粒内ブレンド物を入れ、ローラー圧縮機を、ロール回転数=3.0rpm、スクリュー回転数=50rpm、およびロール圧=10MPaの設定で使用して、圧縮してリボン状にした。
【0163】
b)リボンを、18メッシュスクリーンを使用して造粒したTFC Microで造粒した。
ステップ3:粒外ブレンドおよび造粒
a)ステップ2の造粒されたブレンド物を5.0L容器に添加し、適切な量のAvicel PH-200、Ac-Di-SolおよびPruv SSFを添加した(容器に添加する前に、40メッシュを使用して砕塊)。
【0164】
b)材料を20rpmで10分間ブレンドし、物理的パラメーターを測定する。最終ブレンド物のかさ/タップ密度、Carr指数およびHausner比が表7に記載されている。
【0165】
【表7】
【0166】
ステップ4:錠剤化
次いで、ステップ3の造粒されたブレンド物を、Piva Piccolaロータリー式打錠機を使用して、圧縮して錠剤にした。プロセスパラメーターおよび得られた錠剤の性質が表8に記載されている。
【0167】
【表8】
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
【国際調査報告】