(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20221114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221114BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221114BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20221114BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/02
A61P11/00
A61P1/00
A61P1/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518723
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 US2020052185
(87)【国際公開番号】W WO2021061749
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518229401
【氏名又は名称】ミラティ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリエール,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,ジェームズ・ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,ピート
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
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4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、KRas G12Cがんを治療するための組み合わせ療法に関する。特に、本発明は、がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、治療有効量の、プログラム死-1受容体(PD-1)およびプログラム死リガンド-1(PD-L1)シグナル伝達をブロックする薬剤と、式(I)、式I-A、または式I-BのKRAS G12C阻害剤との組み合わせを対象に投与することを含む、方法、組成物を含むキット、およびその使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
KRas G12C関連がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤と、以下の式の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩との組み合わせを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記PD-1/PD-L1阻害剤が、PD-1阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PD-1阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、およびそれらのバイオシミラーからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PD-1阻害剤が、ニボルマブまたはそのバイオシミラーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組み合わせにおけるニボルマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、2週間毎に投与される約240mgである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組み合わせにおけるニボルマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、4週間毎に投与される約480mgである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記PD-1阻害剤が、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記組み合わせにおけるペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、3週間毎に投与される約200mgである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記KRas G12C関連がんが、非小細胞肺がんである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記PD-1阻害剤が、セミプリマブまたはそのバイオシミラーである、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記組み合わせにおけるペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、3週間毎に投与される約350mgである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PD-1阻害剤が、チスレリズマブまたはそのバイオシミラーである、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記組み合わせにおけるチスレリズマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、3週間毎に投与される約200mgである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記PD-1/PD-L1阻害剤が、PD-L1阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびそのバイオシミラーからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PD-L1阻害剤が、アテゾリズマブまたはそのバイオシミラーである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組み合わせにおけるアテゾリズマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、3週間毎に投与される約1200mgである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記PD-L1阻害剤が、アベルマブまたはそのバイオシミラーである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組み合わせにおけるアベルマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、2週間毎に投与される約10mg/kgまたは2週間毎に800mgである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記PD-L1阻害剤が、デュルバルマブまたはそのバイオシミラーである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記組み合わせにおけるデュルバルマブまたはそのバイオシミラーの前記治療有効量が、2週間毎に投与される約10mg/kgである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記PD-1/PD-L1阻害剤および以下の式の前記化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される塩が、同じ日に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記PD-1/PD-L1阻害剤および以下の式の前記化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される塩が、異なる日に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
以下の式の前記化合物
【化4】
またはその薬学的に許容される塩が、最大耐用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記PD-1/PD-L1阻害剤および以下の式の前記化合物
【化5】
またその薬学的に許容される塩が各々、最大耐用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記PD-1/PD-L1阻害剤および以下の式の前記化合物
【化6】
またはその薬学的に許容される塩の前記組み合わせの治療有効量が、以下の式の前記化合物
【化7】
またはその薬学的に許容される塩のみによる治療と比較して、前記対象における全生存期間の増加、無増悪生存期間の増加、腫瘍増殖退縮の増加、腫瘍増殖阻害の増加、または安定疾患期間の増加をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記PD-1/PD-L1阻害剤および以下の式の前記化合物
【化8】
またはその薬学的に許容される塩が、持続的な完全奏効をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤および以下の式の化合物
【化9】
、またはその薬学的に許容される塩、
および薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
前記方法が、KRas G12C関連がんを有する前記対象において持続的な完全奏効を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
KRas G12C関連がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、前記KRas G12C関連がんが、PD-1/PD-L1阻害剤による治療に対して耐性であり、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および以下の式の化合物
【化10】
、もしくはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の組み合わせを、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項31】
KRas G12C関連がんであって、かつPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する耐性を以前に獲得したと判定されたがんを治療するための方法であって、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および以下の式の化合物
【化11】
、もしくはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の組み合わせを、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
KRas G12C関連がんを有する対象においてPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する耐性を抑制するための方法であって、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および以下の式の化合物
【化12】
、もしくはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の組み合わせを、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項33】
KRAS G12C関連がんを有すると同定または診断された対象を治療する方法であって、(a)患者に以前に投与されたPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する前記対象における前記KRas G12C関連がんの耐性の検出することと、(b)(a)の後、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および以下の式の化合物
【化13】
、もしくはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の組み合わせを、前記対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項34】
KRas G12C関連がんを有すると同定または診断され、KRAS G12C阻害剤による治療に対する耐性を以前に発症したと判定された対象を治療する方法であって、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および以下の式の化合物
【化14】
、もしくはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の組み合わせを、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項35】
KRas G12C関連がんを有すると同定または診断された対象を治療する方法であって、(a)疾患の進行まで単剤療法としてKRAS G12C阻害剤を投与することと、(b)(a)の後、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および以下の式の化合物
【化15】
、もしくはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の組み合わせを、前記対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項36】
前記KRas G12C阻害剤の治療有効量が、1日当たり約0.01~100mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記KRas G12C阻害剤の治療有効量が、1日当たり約0.1~50mg/kgである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記KRas G12C関連がんが、心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、および奇形腫;肺:気管支原性がん(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺がん)、肺胞(細気管支)がん、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮がん、腺がん、平滑筋腫、リンパ腫)、胃(がん腫、リンパ腫、平滑筋腫)、膵臓(導管腺がん、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺がん、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺がん、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖器管:腎臓(腺がん、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮がん、移行上皮がん、腺がん)、前立腺(腺がん、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胎児性がん、奇形がん、絨毛がん、肉腫、間質細胞がん、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝細胞がん(肝細胞がん)、胆管がん、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;胆道:胆嚢がん、膨大部がん、胆管がん;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(網状細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞性腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性脊索腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、および巨細胞腫;神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜腫(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚腫(松果体腫)、多形膠芽腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜がん(漿液性嚢胞腺がん、粘液性嚢胞腺がん、未分類がん)、顆粒膜莢膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮がん、上皮内がん、腺がん、黒色腫)、膣(明細胞がん、扁平上皮がん、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫 ))、卵管(がん腫);血液学:血液(骨髄性白血病(急性および慢性)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫);皮膚:悪性黒色腫、基底細胞がん、扁平上皮がん、カポジ肉腫、ほくろ異形成性母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽細胞腫からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記がんが、非小細胞肺がんである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、大腸がんである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが、膵臓がんである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
対象におけるKRas G12Cがんを治療するための請求項27に記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項43】
キットであって、対象においてKRas G12Cがんを治療するための、a)PD-1/PD-L1阻害剤を含む薬学的組成物と、b)以下の式の化合物
【化16】
、
またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物と、を含む、
キット。
【請求項44】
前記薬学的組成物の投与のための説明書を含む挿入物をさらに含む、請求項42に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを治療するために有用な組み合わせ療法に関する。特に、本発明は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)およびプログラム死リガンド1(PD-L1)軸シグナル伝達を破壊する薬剤(「PD-1/PD-L1阻害剤」)およびKRas G12C阻害剤の治療上有効な組み合わせ、組成物を含むキット、ならびにその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーステンラット肉腫2ウイルスがん遺伝子ホモログ(「KRas」)は、低分子量GTPaseであり、がん遺伝子のRasファミリーのメンバーである。KRasは、非活性(GDP結合)状態と活性(GTP結合)状態との間を循環する分子スイッチとして機能し、複数のチロシンキナーゼから受け取った上流の細胞シグナルを下流のエフェクターに形質導入して、細胞増殖を含む様々なプロセスを制御する(例えば、Alamgeer et al.,(2013)Current Opin Pharmcol.13:394-401を参照されたい)。
【0003】
悪性腫瘍における活性化KRasの役割は、30年以上前に観察された(例えば、Der et al.,(1982)Proc.Natl Acad.Sci.USA 79(11):3637-3640を参照されたい)。KRasの異常な発現は、すべてのがんの最大20%を占め、GTP結合を安定化し、かつKRasの構成的活性化および下流のシグナル伝達をもたらす発がん性KRas変異は、肺腺がんの25~30%で報告されている(例えば、Samatar and Poulikakos(2014)Nat Rev Drug Disc 13(12):928-942 doi:10.1038/nrd428を参照されたい)。KRas一次アミノ酸配列のコドン12および13でミスセンス変異をもたらす単一ヌクレオチド置換は、肺腺がんにおけるこれらのKRasドライバー変異の約40%を含み、G12C塩基転換は最も一般的な活性化変異である(例えば、2012年9月26日にオンラインで出版されたDogan et al.,(2012)Clin Cancer Res.18(22):6169-6177 doi:10.1158/1078-0432.CCR-11-3265を参照されたい)
【0004】
発がん性KRas変異は、抗PD-1および抗PD-L1阻害剤を含む免疫チェックポイント阻害(ICB)療法に対する耐性をもたらす、免疫抑制性微小環境を作り出す。活性化されたKRasは、CXCL3発現を直接抑圧するインターフェロン調節因子2(IRF2)の発現を抑圧することが示されている。このKRas媒介性のIRF2の抑制により、CXCL3の発現の増加がもたらされ、骨髄由来抑制細胞(MDSC)上のCXCR2に結合して、これらの細胞の腫瘍微小環境への移動を促進する。進行性大腸がんにおける免疫微小環境および原発性ICB耐性の調節におけるKRASの役割が確立されている。大腸がんでは、KRAS発現腫瘍の抗PD-1耐性は、強制されたIRF2発現によって、またはCXCR2の阻害によって克服され得る。(例えば、Liao et al.,(2019)Cancer Cell 35:559-572を参照されたい)。
【0005】
さらに、発がん性KRasシグナル伝達は、AUリッチエレメントを介してPD-L1発現を負に調節する、AUリッチエレメント結合タンパク質トリステトラプロリン(TTP)の抑圧を介してPD-L1 mRNAを安定化することにより、ICB療法に対する腫瘍免疫抵抗性を促進することが示されており、それはPD-L1 mRNAの3’UTRでAUリッチエレメントによりPD-L1発現を負に調節する(例えば、Coelho et al.,(2017)Immunity 47(6):1083-1099を参照されたい)。
【0006】
発がん性KRasはまた、MHC I発現を抑圧し、それにより腫瘍細胞が細胞傷害性Tリンパ球を回避することを可能にすることによって抗原提示を損なうことも示されており(例えば、El-Jawhari et al.,(2014)Molecular Immunology 58(2):160-168を参照されたい)、KRas活性化変異は、NSCLCにおけるIL-8発現を上方制御し、IL-8は、 plays a role in cell growth and migration in KRas関連NSCLCにおける細胞増殖および移動において役割を果たす(例えば、Sunaga et al.,(2012)Int.J.Cancer 130(8):1733-1744を参照されたい)。
【0007】
したがって、活性化されたKRas G12C発現は、免疫系の多くの側面を調節し、KRas G12C関連腫瘍の免疫抑制腫瘍微小環境に関与している。したがって、KRas G12C媒介性細胞活性の直接阻害は、この報告された免疫抑制腫瘍微小環境を逆転させ、それによりPD-1/PD-L1経路を含む免疫チェックポイント阻害療法の臨床活性を改善するべきである。
【0008】
前述のすべての理由から、ICB療法に対して耐性のあるKRas G12C関連がんを治療するために、抗PD-1および抗PD-L1阻害剤を含む、KRas G12C阻害剤およびICB療法を使用する組み合わせ療法を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Alamgeer et al.,(2013)Current Opin Pharmcol.13:394-401
【非特許文献2】Der et al.,(1982)Proc.Natl Acad.Sci.USA 79(11):3637-3640
【非特許文献3】Samatar and Poulikakos(2014)Nat Rev Drug Disc 13(12):928-942 doi:10.1038/nrd428
【非特許文献4】Dogan et al.,(2012)Clin Cancer Res.18(22):6169-6177 doi:10.1158/1078-0432.CCR-11-3265
【非特許文献5】Liao et al.,(2019)Cancer Cell 35:559-572
【非特許文献6】Coelho et al.,(2017)Immunity 47(6):1083-1099
【非特許文献7】El-Jawhari et al.,(2014)Molecular Immunology 58(2):160-168
【非特許文献8】Sunaga et al.,(2012)Int.J.Cancer 130(8):1733-1744
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法が本明細書に提供され、治療有効量の、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)およびプログラム死リガンド1(PD-L1)軸シグナル伝達を破壊する薬剤(「PD-1/PD-L1阻害剤」)ならびに式(I)のKRAS G12C阻害剤
【化1】
またはその薬学的に許容される塩の組み合わせを対象に投与することを含み、式中、
Xは、4~12員飽和または部分飽和の単環式、架橋環またはスピロ環であり、飽和または部分飽和単環式環は、任意選択で、1つ以上のR
8で置換されており、
Yは、結合、O、S、またはNR
5であり、
R
1は、
【化2】
であり、
R
2は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、アルキルアミニルアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、-Z-NR
5R
10、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり、Z、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルの各々は、任意選択で、1つ以上のR
9で置換されていてもよく、
Zは、C1-C4アルキレンであり、
各R
3は独立して、C1-C3アルキル、オキソ、またはハロアルキルであり、
Lは、結合、-C(O)-、またはC1-C3アルキレンであり、
R
4は、水素、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、またはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、およびヘテロアリールの各々は、任意選択で、1つ以上のR
6またはR
7で置換されていてもよく、
各R
5は独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、
R
6は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールの各々は、任意選択で、1つ以上のR
7で置換されていてもよく、
各R
7は独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-C6アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アミノ、シアノ、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、またはQ-ハロアルキルであり、Qは、OまたはSであり、
R
8は、オキソ、C1-C3アルキル、C2-C4アルキニル、ヘテロアルキル、シアノ、-C(O)OR
5、-C(O)N(R
5)
2、-N(R
5)
2であり、C1-C3アルキルは、にシアノ、ハロゲン、-OR
5、-N(R
5)
2、またはヘテロアリールで置換されていてもよく、
各R
9は独立して、水素、オキソ、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ハロゲン、C1-C6アルキル、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミニル、ジアルキルアミドアルキル、またはジアルキルアミニルアルキルであり、C1-C6アルキルは、任意選択で、シクロアルキルで置換されていてもよく、
各R
10は独立して、水素、アシル、C1-C3アルキル、ヘテロアルキル、またはヒドロキシアルキルであり、
R
11は、ハロアルキルであり、
R
Aは、不在、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、C1-C3アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、-C(O)N(R
5)
2、またはヒドロキシアルキルであり、
各R
Bは独立して、水素、重水素、シアノ、C1-C3アルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、-ZNR
5R
11、-C(O)N(R
5)
2、-NHC(O)C1-C3アルキル、-CH
2NHC(O)C1-C3アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり、ヘテロシクリル部分は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、およびC1-C3アルキルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されており、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルのヘテロアリール部分は、任意選択で、1つ以上のR
7で置換されており、
mは、ゼロであるか、または1~2の整数であり、
pは、1または2であり、
【化3】
が三重結合である場合、R
Aは不在であり、R
Bは存在し、pは1に等しいか、
または
【化4】
が二重結合である場合、R
Aは存在し、R
Bは存在し、pは、2に等しいか、またはR
A、R
B、およびそれらが結合している炭素原子は、任意選択で、1つ以上のR
7で置換された5~8員部分飽和シクロアルキルを形成する。
【0011】
本明細書で提供される方法で使用するために、式I-Aを有する式IのKRas G12C阻害剤化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される塩もまた含まれ、式中、R
1、R
3、R
4、R
5、R
10、R
11、L、およびmは、式Iで定義される通りであり、ピペラジニル環は、任意選択で、R
8で置換されており、R
8は、式Iで定義される通りである。
【0012】
本明細書で提供される方法で使用するために、式I-Bを有する式IのKRas G12C阻害剤化合物
【化6】
またはその薬学的に許容される塩(式中、R
1、R
3、R
4、L、およびmが、式Iで定義される通りであり、R
2が、任意選択で、1つ以上のR
9で置換されているヘテロシクリルアルキルであり、式中、R
9が、式Iで定義される通りであり、ピペラジニル環が、任意選択で、R
8で置換されており、式中、R
8が、式Iで定義される通りである)もまた含まれる。
【0013】
本発明の別の態様では、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式I、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩、ならびに薬学的に許容される賦形剤の組み合わせを含む、薬学的組み合わせが、方法で使用するために提供される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、PD-1受容体に結合し、かつ/またはPD-1受容体の活性を阻害する。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、PD-L1リガンドに結合し、かつ/またはPD-L1リガンドのシグナル伝達を阻害する。
【0014】
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法が本明細書に提供され、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む。一実施形態では、がんは、KRas G12C関連がんである。一実施形態では、KRas G12C関連がんは、肺がんである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、PD-1受容体に結合し、かつ/またはPD-1受容体の活性を阻害する。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、PD-L1リガンドに結合し、かつ/またはPD-L1リガンドのシグナル伝達を阻害する。
【0015】
KRas G12C関連がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法もまた提供され、KRas G12C関連がんは、PD-1/PD-L1阻害剤による治療に対して耐性であり、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む。
【0016】
治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む、KRas G12C関連がんを有すると同定または診断され、PD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する耐性を以前に発症したと判定された対象を治療する方法もまた提供される。
【0017】
治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む、KRas G12C関連がんを有する対象においてPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する耐性を抑制するための方法もまた提供される。
【0018】
(a)患者に以前に投与されたPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する対象におけるKRas G12C関連がんの耐性の検出することと、(b)(a)の後、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することと、を含む、KRAS G12C関連がんを有すると同定または診断された対象を治療する方法もまた本明細書に提供される。
【0019】
治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む、KRas G12C関連がんを有すると同定または診断され、KRAS G12C阻害剤による治療に対する耐性を以前に発症したと判定された対象を治療する方法もまた本明細書に提供される。
【0020】
(a)疾患の進行まで単剤療法としてKRAS G12C阻害剤を投与することと、(b)(a)の後、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することと、を含む、KRas G12C関連がんを有すると同定または診断された対象を治療する方法もまた本明細書に提供される。
【0021】
本発明のいくつかの態様では、KRas G12C阻害剤化合物およびPD-1/PD-L1阻害剤は、提供される組み合わせおよび方法における唯一の活性剤である。
【0022】
提供される組み合わせおよび方法に好適なPD-1受容体に結合し、かつ/またはPD-1受容体の活性を阻害するPD-1/PD-L1阻害剤の例には、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、およびチスレリズマブ、ならびにそのバイオシミラーが挙げられる。提供される組み合わせおよび方法に好適なPD-L1リガンドに結合し、かつ/またはPD-L1リガンドの活性を阻害するPD-1/PD-L1阻害剤の例には、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、およびデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、ならびにそのバイオシミラーが挙げられる。
【0023】
がんの治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法もまた本明細書に提供され、方法は、(a)がんがKRas G12C変異に関連していること(例えば、KRas G12C関連がん)を決定することと(例えば、規制当局が承認した、例えば、FDA承認のアッセイまたはキットを使用して決定される)、(b)治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを患者に投与することと、を含み、組み合わせは、PD-1/PD-L1阻害剤またはKRas G12C阻害剤のいずれかのみと比較して、患者において持続的な完全奏功を誘導する。
【0024】
この方法の一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、およびKRas G12C阻害剤、またはその薬学的に容される塩もしくは薬学的組成物は、同時に投与される。この方法の一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物は、3週間、毎週投与され、KRas G12C阻害剤、またはその薬学的に容される塩もしくは薬学的組成物は、約28日間、毎日投与される。
【0025】
PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物を含むキットもまた本明細書に提供される。KRas G12Cがんを治療するのに使用するための、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物を含むキットもまた提供される。
【0026】
関連する態様では、本発明は、ある用量のPD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物を、対象においてがん細胞の増殖を阻害するのに有効な量で含むキットを提供する。キットは、いくつかの場合では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の投与のための説明書を含む挿入物を含む。挿入物は、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と組み合わせて、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物を使用するための1つのセットの説明書を使用者に提供し得る。
【0027】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本発明の組成物または方法による治療の前に、患者は、化学療法、標的化抗がん剤、放射線療法、および手術のうちの1つ以上により治療され、任意選択で、以前の治療は不成功に終わり、かつ/または患者は手術が施され、任意選択で、手術は不成功に終わり、かつ/または患者は、プラチナベースの化学療法剤により治療され、任意選択で、患者は、プラチナベースの化学療法剤による治療に非応答性であると以前に判定されており、かつ/または患者は、キナーゼ阻害剤で治療され、任意選択で、キナーゼ阻害剤による以前の治療は不成功に終わり、かつ/または患者は、1つ以上の他の治療薬(複数可)により治療された。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、KRas G12Cがんを治療するための組み合わせ療法に関する。特に、本発明は、がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む、方法、組成物を含むキット、およびその使用方法に関する。
【0029】
一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせは、単剤として投与される式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と比較して、KRas G12C関連がんを有する動物において持続的な完全奏効を誘導する。
【0030】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照により組み込まれる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「KRas G12C」は、アミノ酸位置12でグリシンのシステインのアミノ酸置換を含む、哺乳類のKRasタンパク質の変異型を指す。ヒトKRasのアミノ酸コドンおよび残基位置の割り当ては、UniProtKB/Swiss-Prot P01116:Variant p.Gly12Cysによって同定されるアミノ酸配列に基づく。
【0032】
本明細書で使用する場合、「KRas G12C阻害剤」は、本明細書に記載される式(I)、式I-A、および式I-Bによって表される本発明の化合物を指す。これらの化合物は、KRas G12Cの酵素活性のすべてまたは一部を負に調節するかまたは阻害することができる。本発明のKRas G12C阻害剤は、KRas G12Cと相互作用し、位置12のシステイン残基のスルフヒドリル側鎖と共有結合付加体を形成することによりこれに非可逆的に結合し、KRas G12Cの酵素活性を阻害する。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019/099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはその薬学的に許容される塩)である。
【0033】
本明細書で使用される「KRas G12C関連疾患または障害」は、KRas G12C変異に関連するか、またはそれによって媒介されるか、またはそれを有する疾患もしくは障害を指す。KRas G12C関連疾患または障害の非限定的な例は、KRas G12C関連がんである。
【0034】
本明細書で使用される場合、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)は、その2つのリガンドであるPD-L1またはPD-L2との相互作用により負の細胞シグナルを伝達して免疫応答を抑制する、Ig遺伝子スーパーファミリーの一部である、55 kDaのI型膜貫通タンパク質である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「PD-1/PD-L1阻害剤」は、PD-1/PD-L1軸シグナル伝達活性のすべてまたは一部を負に調節または阻害することができる薬剤を指し、PD-1またはPD-L1を遮断する薬剤を含む。例には、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、免疫アドヘシン、アプタマー、融合タンパク質、およびオリゴペプチドなどのPD-1およびPD-L1結合アンタゴニストが挙げられる。いくつかの実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態では、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。
【0036】
本明細書で使用される「PD-1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-1阻害剤、すなわち、PD-1と、PD-L1および/またはPD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用からもたらされるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1阻害剤は、PD-1のPD-L1および/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1阻害剤には、抗PD-1抗体、その抗原結合断片、免疫アドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-1と、PD-L1および/またはPD-L2との相互作用からもたらされるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-1阻害剤は、PD-1を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって、またはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能不全のT細胞をより非機能不全にする。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体である。一実施形態では、PD-1抗体は、ペムブロリズマブ、またはそのバイオシミラーである。一実施形態では、PD-1抗体は、セミプリマブ、またはそのバイオシミラーである。一実施形態では、PD-1抗体は、チスレリズマブ、またはそのバイオシミラーである。
【0037】
本明細書で使用される「PD-L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD-L1阻害剤、すなわち、PD-L1と、PD-1および/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上のいずれかとの相互作用からもたらされるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、PD-L1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-L1阻害剤は、PD-L1のPD-1および/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤には、抗PD-L1抗体、その抗原結合断片、免疫アドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD-L1と、PD-1および/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用からもたらされるシグナル伝達を減少、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子が含まれる。一実施形態では、PD-L1阻害剤は、PD-L1を介したシグナル伝達を媒介するTリンパ球上で発現される細胞表面タンパク質によって、またはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能不全のT細胞をより非機能不全にする。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、抗PD-L1抗体である。特定の態様では、抗PD-L1抗体は、アベルマブまたはそのバイオシミラーである。別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブまたはそのバイオシミラーである。別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、デュルバルマブまたはそのバイオシミラーである。別の特定の態様では、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(BMS-936559)またはそのバイオシミラーである。
【0038】
「バイオシミラー」とは、参照抗体(例えば、ニボルマブまたはペムブロリズマブ)と比較して同じ一次アミノ酸配列を有し、かつ任意選択で、参照抗体(例えば、異なるグリコフォーム)と比較して翻訳後修飾(例えば、グリコシル化および/またはリン酸化)の検出可能な違いを有し得る、抗体または抗原結合断片を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「完全奏効」は、PD-1/PD-L1阻害剤と本発明のKRas G12C阻害剤との組み合わせにより治療されたKRas G12C関連がんを有する対象を指し、ここで、治療のいくつかの段階で治療される腫瘍は、触診、較正、または結局再発するそのような腫瘍を検出するための標準的な治療方法によってもはや検出可能ではない。完全奏効の期間は、典型的には、数日で測定される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「持続的な完全奏効」は、PD-1/PD-L1阻害剤と本発明のKRas G12C阻害剤との組み合わせにより治療されたKRas G12C関連がんを有する対象を指し、ここで、治療される腫瘍は、触診、較正、またはそのような腫瘍を検出するための標準的な治療方法によってもはや検出可能ではなく、腫瘍は、対象において誘導された抗腫瘍免疫記憶のために再発せず、治療後および/または患者由来動物モデル(PDX)において検出することができないままであり、最初の腫瘍タイプと同じ腫瘍細胞を使用して再チャレンジするのは困難である。持続的な完全奏効の期間は、典型的には、数週間、数カ月、または数年で測定される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は互換的に使用され、任意の動物を指し、マウス、ラット、その他のげっ歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、牛、ヒツジ、ウマ、霊長類、およびヒトなどの哺乳動物が含まれる。いくつかの実施形態では、患者は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、治療および/または予防されるべき疾患または障害の少なくとも1つの症状を経験および/または呈した。いくつかの実施形態では、対象は、KRas G12C変異を有するがんを有すると同定または診断されている(例えば、規制当局が承認した、例えば、FDA承認のアッセイまたはキットを使用して決定される)。いくつかの実施形態では、対象は、KRas G12C変異に対して陽性である腫瘍を有する(例えば、規制当局が承認したアッセイまたはキットを使用して決定される)。対象は、KRas G12C変異に対して陽性である腫瘍(複数可)を有する対象であり得る(例えば、規制当局が承認した、例えば、FDA承認のアッセイまたはキットを使用して陽性と同定される)。対象は、腫瘍がKRas G12C変異を有する対象であり得る(例えば、規制当局が承認した、例えば、FDA承認のキットまたはアッセイを使用して、腫瘍がそのように同定される場合)。いくつかの実施形態では、対象は、KRas G12C遺伝子関連がんを有することが疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、対象がKRas G12C変異を有する腫瘍を有することを示す臨床記録を有する(および任意選択で、臨床記録は、対象が本明細書に提供される組成物のうちのいずれかで治療されるべきであることを示す)。
【0042】
本明細書で使用される「小児患者」という用語は、診断または治療の時点で16歳未満の患者を指す。「小児」という用語は、新生児(出生から生後1カ月まで)、乳幼児(1カ月から2歳まで)、子供(2歳から12歳まで)、および青年(12歳から21歳(22歳の誕生日まで))を含む、様々な亜集団にさらに分けることができる。Berhman RE,Kliegman R,Arvin AM,Nelson WE.Nelson Textbook of Pediatrics,15th Ed.Philadelphia:W.B.Saunders Company,1996、Rudolph AM,et al.Rudolph’s Pediatrics,21st Ed.New York:McGraw-Hill,2002、およびAvery MD,First LR.Pediatric Medicine,2nd Ed.Baltimore:Williams & Wilkins;1994。
【0043】
本明細書に記載される方法または使用のいずれかのいくつかの実施形態では、試料(例えば、患者(例えば、KRas G12C関連がんを有することが疑われる患者、KRas G12C関連がんの1つ以上の症状を有する患者、および/またはをKRas G12C関連がんを発症するリスクが増加した患者)からのパラフィン包埋生検試料などの生物学的試料または生検試料)を使用して、患者がKRas G12C変異を有するかどうかを決定するために使用されるアッセイには、例えば、次世代シーケンシング、免疫組織化学、蛍光顕微鏡検査、ブレークアパートFISH分析、サザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、FACS分析、ノーザンブロッティング、およびPCRベースの増幅(例えば、RT-PCR、定量的リアルタイムRT-PCR、対立遺伝子特異的ジェノタイピング(genotyping)、またはddPCR)が含まれ得る。当該技術分野で周知であるように、アッセイは、典型的には、例えば、少なくとも1つの標識された核酸プローブまたは少なくとも1つの標識された抗体もしくはその抗原結合断片を用いて行われる。
【0044】
「規制当局」という用語は、その国での薬学的剤の医療使用を承認するための国の機関である。例えば、規制当局の非限定的な例は、米国食品医薬品局(FDA)である。
【0045】
「アミノ」という用語は、-NH2を指す。
【0046】
「アシル」という用語は、-C(O)CH3を指す。
【0047】
本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、任意選択で、1、2、または3個の置換基で置換されている、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~3個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖脂肪族基を指す。アルキル基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、およびヘキシルが挙げられる。
【0048】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上の水素がハロゲンにより置き換えられているアルキル鎖を指す。ハロアルキルの例は、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、およびフルオロメチルである。
【0049】
「ハロアルキルオキシ」という用語は、-O-ハロアルキルを指す。
【0050】
「アルキレン」基は、本明細書で上記に定義されるように、他の2つの化学基の間に配置され、かつそれらを接続するのに役立つアルキル基である。例示的なアルキレン基には、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、およびブチレンが含まれる。
【0051】
「アルコキシ」という用語は、-OC1-C6アルキルを指す。
【0052】
本明細書で用いられる「シクロアルキル」という用語は、3~12個の炭素、例えば、3~8個の炭素、およびさらなる例として3~6個の炭素を有する飽和および部分的に不飽和の環状炭化水素基を含み、シクロアルキル基はさらに、任意選択で置換されている。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0053】
「ヘテロアルキル」という用語は、上記の本明細書で定義されるように、アルキル基を指し、鎖中の1つ以上の炭素原子は、O、S、およびNからなる群から選択されるヘテロ原子により置き換えられている。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、-アルキル-OHを指す。
【0055】
「ジヒドロキシアルキル」という用語は、本明細書で定義されるように、アルキル基を指し、2個の炭素原子は各々、ヒドロキシル基で置換されている。
【0056】
「アルキルアミニル」という用語は、-NRx-アルキルを指し、Rxは、水素である。一実施形態では、Rxは、水素である。
【0057】
「ジアルキルアミニル」という用語は、-N(Ry)2を指し、各Ryは、C1-C3アルキルである。
【0058】
「アルキルアミニルアルキル」という用語は、-アルキル-NRx-アルキルを指し、Rxは、水素である。一実施形態では、Rxは、水素である。
【0059】
「ジアルキルアミニルアルキル」という用語は、-アルキル-N(Ry)2を指し、各Ryは、C1-C4アルキルであり、-アルキル-N(Ry)2のアルキルは、ヒドロキシまたはヒドロキシアルキルで任意に置換されていてもよい。
【0060】
「アリール」基は、任意に置換されている1~3個の芳香環を含むC6-C14芳香族部分である。一実施形態では、アリール基は、C6-C10アリール基である。アリール基の例には、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、およびジヒドロベンゾフラニルが挙げられる。
【0061】
「アラルキル」または「アリールアルキル」基は、アルキル基に共有結合されたアリール基を含み、そのいずれかは独立して、任意選択で置換または非置換であり得る。アラルキル基の例は、(C1-C6)アルキル(C6-C10)アリールであり、これらに限定されないが、ベンジル、フェネチル、およびナフチルメチルが含まれる。置換アラルキルの例は、アルキル基がヒドロキシアルキルで置換されている場合である。
【0062】
「ヘテロシクリル」または「複素環式」基は、約3~約12個の原子、例えば、4~8個の原子を有する環構造であり、1つ以上の原子は、N、O、およびSからなる基から選択され、環原子の残りは炭素である。ヘテロシクリルは、単環式、二環式、スピロ環式、または架橋環系であり得る。複素環式基は、任意選択で、1つ以上の位置で炭素または環窒素上のR7で置換されており、R7は、式Iについて定義される通りである。複素環式基はまた独立して、任意選択で、窒素上でアルキル、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニルで、または硫黄上でオキソもしくは低級アルキルで置換されている。複素環式基の例には、これらに限定されないが、エポキシ、アゼチジニル、アジリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、ジチアニル、トリチアニル、ジオキソラニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、デカヒドロキノリニル、ピペリドニル、4-ピペリジノニル、チオモルホリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシド、モルホリニル、オキサゼパニル、アザビシクロヘキサン、アザビシクロヘプタン、およびオキサアザビシクロヘプタンが挙げられる。この用語の範囲から特に除外されるのは、隣接する環状のOおよび/またはS原子を有する化合物である。
【0063】
「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、アルキルリンカーを介して分子の残りの部分に結合された本明細書で定義されるヘテロシクリル基を指し、ヘテロシクリルアルキルのアルキルリンカーは、任意選択で、ヒドロキシまたはヒドロキシアルキルで置換されていてもよい。
【0064】
本明細書に記載される場合、「ヘテロアリール」という用語は、5~14個の環原子、好ましくは5、6、9、または10この環原子を有する、円形アレイで共有される6、10、または14個のπ電子を有する、および炭素原子に加えて、N、O、およびSからなる群から選択される環当たり1~3個のヘテロ原子を有する基を指す。ヘテロアリール基の例には、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、およびキサンテニルが挙げられる。
【0065】
「ヘテロアリールアルキル」基は、アルキル基に共有結合したヘテロアリール基を含み、ラジカルはアルキル基上にあり、そのいずれかは独立して、任意選択で、置換または非置換である。ヘテロアリールアルキル基の例としては、C1-C6アルキル基に結合した5、6、9、または10個の環原子を有するヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアラルキル基の例としては、ピリジルメチル、ピリジルエチル、ピロリルメチル、ピロリルエチル、イミダゾリルメチル、イミダゾリルエチル、チアゾリルメチル、チアゾリルエチル、ベンゾイミダゾリルメチル、ベンゾイミダゾリルエチル キナゾリニルメチル、キノリニルメチル、キノリニルエチル、ベンゾフラニルメチル、インドリニルエチル イソキノリニルメチル、イソイノジルメチル、シンノリニルメチル、およびベンゾチオフェニルエチルが挙げられる。この用語の範囲から特に除外されるのは、隣接する環状のOおよび/またはS原子を有する化合物である。
【0066】
本明細書で使用される場合、化合物の「有効量」は、所望の標的、すなわち、PD-1/PD-L1またはKRas G12Cの活性を負に調節または阻害するのに十分な量である。そのような量は、単回投与量として投与され得るか、またはレジメンに従って投与され得、それにより、それは効果的である。
【0067】
本明細書で使用される場合、化合物の「治療有効量」は、症状を改善するか、もしくはいくつかの方法で低減するか、または状態の進行を停止もしくは逆転させるか、またはPD-1/PD-L1もしくはKRas G12Cの活性を負に調節もしくは阻害するのに十分な量である。そのような量は、単回投与量として投与され得るか、またはレジメンに従って投与され得、それにより、それは効果的である。
【0068】
本明細書で使用される場合、2つの化合物の「組み合わせの治療有効量」は、組み合わせ中の各化合物の治療有効量と比較して、組み合わせの活性を相乗的に増加させる量である。例えば、インビボで、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における持続的な完全奏功をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における全生存(「OS」)期間の増加をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における無増悪生存(「PFS」)期間の増加をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における腫瘍増殖退縮の増加をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における腫瘍増殖阻害の増加をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療と比較して、対象における安定疾患期間の改善をもたらす。組み合わせにおける各化合物の量は、組み合わせが相乗的である限り、単剤療法として単独で投与された場合の各化合物の治療有効量と同じであっても異なっていてもよい。そのような量は、単回投与量として投与され得るか、またはレジメンに従って投与され得、それにより、それは効果的である。
【0069】
本明細書で使用される場合、治療とは、状態、障害、または疾患の症状または病状が改善されるか、またはそうでなければ有益に変更される任意の方法を意味する。治療はまた、本明細書の組成物の任意の薬学的使用を包含する。
【0070】
本明細書で使用される場合、特定の薬学的組み合わせの投与による特定の障害の症状の改善は、組み合わせの投与に起因または関連し得る、永続的または一時的、持続的または一過性の任意の軽減を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、数値的に定義されたパラメータ(例えば、KRAS阻害剤もしくはPD-1/PD-L1阻害剤もしくはその薬学的に許容される塩の用量、または本明細書に記載される組み合わせ療法による治療時間の長さ)を修正するために使用される場合の「約」という用語は、パラメータが、そのパラメータに記載されている数値よりも10%も上下に変動し得ることを意味する。例えば、約5mg/kgの用量は、4.5mg/kg~5.5mg/kgの間で変動し得る。パラメータのリストの初めに使用される「約」は、各パラメータを修正することを意味する。例えば、約0.5mg、0.75mg、または1.0mgは、約0.5mg、約0.75mg、または約1.0mgを意味する。同様に、約5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、および25%以上は、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、または約25%以上を意味する。
【0072】
阻害剤化合物
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法が本明細書に提供され、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む。
【0073】
1.PD-1/PD-L1阻害剤
プログラム死タンパク質1(PD-1)は、主に活性化T細胞およびB細胞上に発現される免疫抑制受容体である。PD-1は、Ig遺伝子スーパーファミリーの一部である55 kDaのI型膜貫通タンパク質である(Agata et al.(1996)Int Immunol 8:765-72)。PD-1は、膜近位免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)および膜遠位チロシンベーススイッチモチーフ(ITSM)を含む。PD-1に結合する2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2が同定されており、PD-1に結合するとT細胞の活性化を下方制御することが示されている(Freeman et al.(2000)J Exp Med 192:1027-34)。PD-L1はPD-1のリガンドであり、様々なヒトのがんに豊富にある(Dong et al.(2002)Nat.Med.8:787-9)。PD-1およびPD-L1の相互作用により、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介性増殖の減少、がん細胞による免疫回避がもたらされる(Dong et al.(2003)J.Mol.Med.81:281-7)。
【0074】
免疫抑制は、PD-1のPD-L1との局所的な相互作用を阻害することによって逆転させることができ、PD-1のPD-L2との相互作用も遮断されると、その効果は相加的である。例えば、PD-1/PD-L1相互作用の破壊は、T細胞増殖およびサイトカイン産生を増加させ、細胞周期の進行を遮断することが示されている。
【0075】
PD-L1は多くのがんにおいて上方制御され、宿主の免疫系の回避に寄与することを考えると、PD-1およびPD-L1の間の相互作用を遮断することは製薬業界の注目を集め、幅広い範囲のがんのための免疫チェックポイント療法の新しい画期的なクラスをもたらした。PD-1/PD-L1経路は、がん治療のための抗体治療薬の開発のための十分に検証された標的であり、いくつかの抗PD-1および抗PD-L1抗体は、NSCLC、腎細胞がん、黒色腫、頭頸部扁平上皮がん、尿道上皮がん、肝細胞がん、および他のがんを含む多種多様ながんについてヒト臨床試験を受けてきた。例示的な抗PD-1抗体には、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、およびチスレリズマブ、ならびにそのバイオシミラーが含まれる。例示的な抗PD-L1抗体には、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、およびデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、ならびにそのバイオシミラーが含まれる。
【0076】
本明細書に記載される抗体を含む、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸を破壊する薬剤を製造するための方法は、当業者に周知であり、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸を破壊する薬剤は、研究または承認されたヒト臨床使用の両方に好適な形式で、幅広い商業的供給業者から得ることができる。さらに、本明細書に開示される組成物および方法で使用するためのPD-1/PD-L1シグナル伝達を破壊する好適な薬剤、およびそのような薬剤を調製するための方法、ならびに治療のモニタリングに有用な診断および有効性マーカーは、米国特許出願公開第2018/0327848号、第2018/0237524号、第2018/0148790号、第2018/0111996号、第2016/0305947号、第2016/0304969号、第2016/0304606号、第2015/0232555号、第2015/0079109号、第2014/0348743号、第2014/0294852号、第2014/0271684号、第2014/0234296号、第2013/0133091号、第2011/0123550号、および第2009/0217401号に開示されている。
【0077】
2.KRas G12C阻害剤
一実施形態では、方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、式(I)、式I-A、もしくは式I-Bの化合物
【化7】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
Xは、4~12員飽和または部分飽和の単環式、架橋環またはスピロ環であり、飽和または部分飽和単環式環は、任意選択で、1つ以上のR
8で置換されており、
Yは、結合、O、S、またはNR
5であり、
R
1は、
【化8】
であり、
R
2は、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、アルキルアミニルアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、-Z-NR
5R
10、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルであり、Z、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロアリールアルキルの各々は、任意選択で、1つ以上のR
9で置換されていてもよく、
Zは、C1-C4アルキレンであり、
各R
3は独立して、C1-C3アルキル、オキソ、またはハロアルキルであり、
Lは、結合、-C(O)-、またはC1-C3アルキレンであり、
R
4は、水素、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、またはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、およびヘテロアリールの各々は、任意選択で、1つ以上のR
6またはR
7で置換されていてもよく、
各R
5は独立して、水素またはC1-C3アルキルであり、
R
6は、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールの各々は、任意選択で、1つ以上のR
7で置換されていてもよく、
各R
7は独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、C1-C6アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、アミノ、シアノ、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、またはQ-ハロアルキルであり、Qは、OまたはSであり、
R
8は、オキソ、C1-C3アルキル、C2-C4アルキニル、ヘテロアルキル、シアノ、-C(O)OR
5、-C(O)N(R
5)
2、-N(R
5)
2であり、C1-C3アルキルは、任意選択で、シアノ、ハロゲン、-OR
5、-N(R
5)
2、またはヘテロアリールで置換されていてもよく、
各R
9は独立して、水素、オキソ、アシル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、シアノ、ハロゲン、C1-C6アルキル、アラルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミニル、ジアルキルアミドアルキル、またはジアルキルアミニルアルキルであり、C1-C6アルキルは、任意選択で、シクロアルキルで置換されていてもよく、
各R
10は独立して、水素、アシル、C1-C3アルキル、ヘテロアルキル、またはヒドロキシアルキルであり、
R
11は、ハロアルキルであり、
R
Aは、不在、水素、重水素、シアノ、ハロゲン、C1-C3アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、-C(O)N(R
5)
2、またはヒドロキシアルキルであり、
各R
Bは独立して、水素、重水素、シアノ、C1-C3アルキル、ヒドロキシアルキル、ヘテロアルキル、C1-C3アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、-ZNR
5R
11、-C(O)N(R
5)
2、-NHC(O)C1-C3アルキル、-CH
2NHC(O)C1-C3アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ジアルキルアミニルアルキル、またはヘテロシクリルアルキルであり、ヘテロシクリル部分は、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、およびC1-C3アルキルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されており、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキルのヘテロアリール部分は、任意選択で、1つ以上のR
7で置換されており、
mは、ゼロであるか、または1~2の整数であり、
pは、1または2であり、
【化9】
が三重結合である場合、R
Aは不在であり、R
Bは存在し、pは1に等しいか、
または
【化10】
が二重結合である場合、R
Aは存在し、R
Bは存在し、pは、2に等しいか、またはR
A、R
B、およびそれらが結合している炭素原子は、任意選択で、1つ以上のR
7で置換された5~8員部分飽和シクロアルキルを形成する。
【0078】
一実施形態では、本明細書の方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、式I-Aを有する化合物
【化11】
またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、R
1、R
3、R
4、R
5、R
10、L、およびmは、式Iで定義される通りであり、R
11は、水素、メチル、またはヒドロキシアルキルであり、ピペリジニル環は、任意選択で、R
8で置換されており、R
8は、式Iで定義される通りである。
【0079】
一実施形態では、本明細書の方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、式I-Bを有する化合物
【化12】
またはその薬学的に許容される塩を含み、式中、R
1、R
3、R
4、R
9、R
11、L、およびmは、式Iで定義される通りである。
【0080】
本明細書に開示される方法において有用な式(I)、式I-A、および式I-BのKRas G12C阻害剤化合物の非限定的な例は、以下の構造:
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【化13-5】
【化13-6】
【化13-7】
【化13-8】
【化13-9】
【化13-10】
【化13-11】
【化13-12】
【化13-13】
【化13-14】
【化13-15】
【化13-16】
【化13-17】
【化13-18】
【化13-19】
【化13-20】
【化13-21】
【化13-22】
【化13-23】
【化13-24】
【化13-25】
【化13-26】
【化13-27】
【化13-28】
【化13-29】
【化13-30】
【化13-31】
【化13-32】
【化13-33】
【化13-34】
【化13-35】
【化13-36】
【化13-37】
【化13-38】
【化13-39】
【化13-40】
【化13-41】
【化13-42】
【化13-43】
【化13-44】
【化13-45】
【化13-46】
【化13-47】
ならびにその薬学的に許容される塩を含む実施例番号1~678(国際特許公開第2019/099524号において番号付けされるように)からなる群から選択される。
【0081】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化14】
ならびにその薬学的に許容される塩から選択される。
【0082】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化15】
(実施例234とも称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0083】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化16】
(実施例359とも称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0084】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化17】
(実施例478とも称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0085】
一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、
【化18】
(実施例507とも称される)またはその薬学的に許容される塩である。
【0086】
本発明の方法で使用されるKRas G12C阻害剤は、1つ以上のキラル中心を有し得、立体異性体混合物、空間におけるそれらの原子の配置が異なる同一の構成の異性体として合成され得る。化合物は、混合物として使用され得るか、または個々の構成成分/異性体は、市販の試薬および当該技術分野で周知の立体異性体および鏡像異性体を単離するための従来の方法を使用して、例えば、製造業者の説明書に従ってCHIRALPAK(登録商標)(Sigma-Aldrich)またはCHIRALCEL(登録商標)(Diacel Corp)キラルクロマトグラフィーHPLCカラムを使用して、調製され得る。あるいは、本発明の化合物は、光学的に純粋なキラル試薬および中間体を使用して合成され、個々の異性体または鏡像異性体を調製することができる。特に指定のない限り、すべてのキラル(鏡像異性体およびジアステレオマー)およびラセミ形態は、本発明の範囲内である。特に指定のない限り、特許請求の範囲を含む明細書が本発明の化合物に言及するときはいつでも、「化合物」という用語は、すべてのキラル(鏡像異性体およびジアステレオマー)およびラセミ形態を包含すると理解されるべきである。
【0087】
一実施形態では、方法で使用される式I、式I-A、または式I-BのKRas G12C阻害剤化合物は、上記の化合物のトリフルオロ酢酸塩を含む。
【0088】
本明細書に開示されるKRas G12C阻害剤を製造するための方法が既知である。例えば、共同所有され、公開された国際PCT出願第2017/201161号および第2019/099524号は、式I、式I-A、または式I-Bの化合物を調製するための一般的な反応スキームを記載し、本明細書に開示される各KRas G12C阻害剤の調製のための詳細な合成経路も提供する。
【0089】
PD-1/PD-L1阻害剤および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C化合物またはその薬学的に許容される塩は、薬学的組成物に別個に製剤化され得る。
【0090】
薬学的組成物
別の態様では、本発明は、本発明によるPD-1/PD-L1阻害剤を含む薬学的組成物およびKRas G12C阻害剤を含む薬学的組成物またはその薬学的に許容される塩を提供し、当該組成物は、本明細書に開示される方法で使用され得る薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤をさらに含む。KRas G12C阻害剤は独立して、当該技術分野で周知の任意の方法により製剤化され得、これらに限定されないが、非経口、経口、舌下、経皮、局所、鼻腔内、気管内、静脈内、または直腸内を含む任意の経路による投与のために調製され得る。ある特定の実施形態では、KRas G12C阻害剤を含む薬学的組成物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、静脈内投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤を含む薬学的組成物は、経口投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤を含む薬学的組成物は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病変内、および頭蓋内注射または注入技術を介することを含め、非経口的に投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤を含む薬学的組成物は、静脈内投与される。
【0091】
担体の特徴は、投与経路に依存する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、細胞、細胞培養物、組織、または生物などの生体系と適合性があり、かつ有効成分(複数可)の生物学的活性の有効性を干渉しない、非毒性材料を意味する。したがって、組成物は、阻害剤に加えて、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、および当該技術分野で周知の他の材料を含み得る。薬学的に許容される製剤の調製は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,ed.A.Gennaro,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990に記載されている。
【0092】
本明細書で使用される場合、薬学的に許容される塩という用語は、上記で同定された化合物の所望の生物学的活性を保持し、かつ望ましくない毒性学的効果を最小限呈するかまたは全く呈さない塩を指す。そのような塩の例としては、これらに限定されないが、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)で形成される酸付加塩、ならびに酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、およびポリガラクツロン酸などの有機酸で形成される塩が挙げられる。化合物はまた、当業者に既知である薬学的に許容される四級塩として投与することができ、これは具体的に、式--NR+Z-の四級アンモニウム塩を含み、式中、Rは、水素、アルキル、またはベンジルであり、Zは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、-O-アルキル、トルエンスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、またはカルボン酸塩(安息香酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、マンデル酸塩、ベンジル酸塩、およびジフェニル酢酸塩など)を含む対イオンである。
【0093】
活性化合物または薬剤は、治療される患者に深刻な毒性作用を引き起こすことなく、治療有効量を患者に送達するのに十分な量で、薬学的に許容される担体または希釈剤に含まれる。一実施形態では、KRas G12C阻害剤の上述のすべての組成物に対する活性化合物の用量は、1日当たり約0.01~300mg/kg、例えば、0.1~100mg/kg、およびさらなる例として0.01日当たりレシピエントの体重0.1キログラム当たり0.5~約25mgの範囲である。薬学的に許容される担体または希釈剤の有効な投与量範囲は、送達されるべき親化合物の重量に基づいて計算することができる。誘導体がそれ自体で活性を呈する場合、有効投与量は、誘導体の重量を使用して、または当業者に既知である他の手段によって、上記のように推定することができる。
【0094】
PD-1/PD-L1阻害剤を含む薬学的組成物およびKRas G12C阻害剤を含む薬学的組成物は、本明細書に記載される使用方法のうちのいずれかで使用され得る。
【0095】
同時投与
本明細書の方法のうちのいずれかで使用するための、PD-1/PD-L1阻害剤および/またはKRasG12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む本明細書に記載される薬学的組み合わせの構成成分は、同時、別個、または逐次的使用のためのものであり得る。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の投与の前に投与される。別の実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物は、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の投与後に投与される。別の実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物は、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の投与とほぼ同時に投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、およびKRas G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、同時にまたは順々に同時投与され得る別々または個々の剤形に製剤化され得る。
【0096】
異なる時間および異なる経路による各阻害剤の別々の投与は、いくつかの場合では有利であり得る。したがって、組み合わせ、すなわち、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物、およびPD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物の構成成分は、必ずしも本質的に同じ時間でまたは任意の順序で投与される必要はない。
【0097】
腫瘍薬物は、通常、許容できない副作用を引き起こさない最高用量の薬物である、最大耐量(「MTD」)で投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物、ならびにPD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物は各々、それらのそれぞれのMTDで投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、そのMTDで投与され、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物は各々、そのMTDより少ない量で投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、そのMTDより少ない量で投与され、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物は各々、そのMTDで投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物、ならびにPD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物は各々、それらのそれぞれのMTDより少ない量で投与される。その投与はまた、一方の阻害剤のピーク薬物動態効果が他方のピーク薬物動態効果と一致するようにタイミングを合わせることができる。
【0098】
一実施形態では、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の単回用量は、1日当たり(すなわち、約24時間間隔で)投与される(すなわち、1日1回)。別の実施形態では、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の2回の用量は、1日当たり投与される(すなわち、1日2回)。別の実施形態では、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の3回の用量は、1日当たり投与される(すなわち、1日3回)。当該実施形態のうちのいずれか1つでは、KRAS阻害剤は、経口投与される。
【0099】
提供される組成物および方法に好適なPD-1/PD-L1阻害剤の例としては、これらに限定されないが、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、およびチスレリズマブ、ならびにそのバイオシミラーを含むPD-1抗体と、これらに限定されないが、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、およびデュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、ならびにそのバイオシミラーを含む抗PD-L1抗体とが挙げられる。
【0100】
一実施形態では、単回用量のPD-1/PD-L1阻害剤が投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、2週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、3週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、4週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブであり、2週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブであり、4週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ペムブロリズマブであり、3週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブであり、3週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、セミプリマブであり、3週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、チスレリズマブであり、3週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アベルマブであり、2週間毎に1回投与される。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、デュルバルマブであり、2週間毎に1回投与される。当該実施形態のうちのいずれか1つでは、PD-1/PD-L1阻害剤は、静脈内投与される。
【0101】
組み合わせ療法
本発明の一態様では、がんの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法が本明細書に提供され、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む。一実施形態では、がんは、KRas G12C関連がんである。一実施形態では、KRas G12C関連がんは、肺がんである。一実施形態では、KRas G12C関連がんは、大腸がんである。
【0102】
一実施形態では、本発明は、がんを有する対象において持続的な完全奏効を誘導するための方法を提供し、治療有効量の、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物、およびPD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含み、対象は、持続的な完全奏功を呈する。
【0103】
一実施形態では、組み合わせ療法は、以下の式を有する化合物
【化19】
(本明細書では実施例番号234とも称される)またはその薬学的に許容される塩、およびPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせを含む。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ペムブロリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、セミプリマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、チスレリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アベルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、デュルバルマブである。
【0104】
一実施形態では、組み合わせ療法は、以下の式を有する化合物
【化20】
(本明細書では実施例番号359とも称される)またはその薬学的に許容される塩、およびPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせを含む。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ペムブロリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、セミプリマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、チスレリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アベルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、デュルバルマブである。
【0105】
一実施形態では、組み合わせ療法は、以下の式を有する化合物
【化21】
(本明細書では実施例番号478とも称される)またはその薬学的に許容される塩、およびPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせを含む。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ペムブロリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、セミプリマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、チスレリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アベルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、デュルバルマブである。
【0106】
一実施形態では、組み合わせ療法は、以下の式を有する化合物
【化22】
(本明細書では実施例番号507とも称される)またはその薬学的に許容される塩、およびPD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせを含む。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ペムブロリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、セミプリマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、チスレリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、アベルマブである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、デュルバルマブである。
【0107】
KRas G12Cの活性を負に調節することにより、本明細書に記載される方法は、PD-1/PD-L1阻害剤に対する免疫抑制および耐性をもたらし得るKRas G12C活性の増強によりもたらされる望ましくない細胞増殖を阻害するように設計される。KRas G12Cの共有結合修飾の程度は、公開された国際PCT出願第2017/201161および第2019/099524号に記載される方法を含む、周知の方法を使用してインビトロでモニタリングされ得る。さらに、細胞における組み合わせの阻害活性は、例えば、リン酸化ERKの量のKRas G12C活性の阻害を測定し、治療の有効性を評価することによってモニタリングされ得、投与量は、それに応じて主治医により調節され得る。PD-1およびPD-L1の発現を測定する方法は周知であり、治療中のPD-1の状態をモニタリングするために使用され得る。
【0108】
本明細書で提供される組み合わせおよび方法は、KRas G12C関連がんの治療を必要とする対象におけるその治療のために使用され得、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを当該対象に投与することを含み、PD-1/PD-L1阻害剤は、KRas G12C阻害剤に対するKRas G12C関連するがんの感受性を相乗的に増加させる。一実施形態では、KRas G12C関連がんは、肺がんである。一実施形態では、KRAS G12C関連がんは、大腸がんである。
【0109】
一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における全生存(「OS」)期間の増加をもたらす。一実施形態では、KRas G12C阻害剤単剤療法による治療に対して、対象における全生存(「OS」)期間の増加は、対象の残存寿命のためのものである。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における無増悪生存(「PFS」)期間の増加をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における腫瘍増殖退縮の増加をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療に対して、対象における腫瘍増殖阻害の増加をもたらす。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせの治療有効量は、KRas G12C阻害剤のみによる治療と比較して、対象における安定疾患期間の改善をもたらす。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019/099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはその薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびデュルバルマブを含む。
【0110】
別の実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、疾患の進行が、KRas G12C単剤療法で観察された時点で、KRas G12C阻害剤と組み合わせて投与され、組み合わせ療法は、患者におけるOS、PFS、腫瘍退縮、腫瘍増殖阻害、または安定疾患期間を増加させることによって患者に向上した臨床的利益をもたらす。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019/099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはその薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびデュルバルマブを含む。
【0111】
本明細書で提供される組成物および方法は、肺、大腸、膵臓、前立腺、乳房、脳、皮膚、子宮頸がん、精巣がんなどの腫瘍を含む様々ながんの治療に使用され得る。より具体的には、本発明の組成物および方法によって治療され得るがんには、これらに限定されないが、星状細胞、乳房、子宮頸部、結腸直腸、子宮内膜、食道、胃、頭頸部、肝細胞、喉頭、肺、口腔、卵巣、前立腺、および甲状腺のがんおよび肉腫が含まれる。より具体的には、これらの化合物は、心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、および奇形腫;肺:気管支原性がん(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺がん)、肺胞(細気管支)がん、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮がん、腺がん、平滑筋腫、リンパ腫)、胃(がん腫、リンパ腫、平滑筋腫)、膵臓(導管腺がん、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺がん、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺がん、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖器管:腎臓(腺がん、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、リンパ腫、白血病)、膀胱および尿道(扁平上皮がん、移行上皮がん、腺がん)、前立腺(腺がん、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胎児性がん、奇形がん、絨毛がん、肉腫、間質細胞がん、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝細胞がん(肝細胞がん)、胆管がん、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;胆道:胆嚢がん、膨大部がん、胆管がん;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(網状細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞性腫瘍脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性脊索腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、および巨細胞腫;神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜腫(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚腫(松果体腫)、多形膠芽腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜がん)、子宮頸部(子宮頸がん、前腫瘍子宮頚部異形成)、卵巣(卵巣がん(漿液性嚢胞腺がん、粘液性嚢胞腺がん、未分類がん)、顆粒膜莢膜細胞腫、セルトリ・ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫))、外陰部(扁平上皮がん、上皮内がん、腺がん、黒色腫)、膣(明細胞がん、扁平上皮がん、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫))、卵管(がん腫);血液学:血液(骨髄性白血病(急性および慢性)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫);皮膚:悪性黒色腫、基底細胞がん、扁平上皮がん、カポジ肉腫、ほくろ異形成性母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;ならびに副腎:神経芽細胞腫を治療するために使用することができる。ある特定の実施形態では、がんは、非小細胞肺がんである。一実施形態では、KRas G12C関連がんは、大腸がんである。
【0112】
がんの治療を必要とする対象においてそれを治療するための方法もまた本明細書に提供され、方法は、(a)がんがKRas G12C変異に関連していること(例えば、KRas G12C関連がん)を決定することと(例えば、規制当局が承認した、例えば、FDA承認のアッセイまたはキットを使用して決定される)、(b)治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤および式(I)、式I-A、式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを患者に投与することと、を含み、PD-1/PD-L1阻害剤は、KRas G12C阻害剤に対するKRas G12C関連がんの感受性を相乗的に増加させる。
【0113】
本明細書に提供される組み合わせおよび方法はまた、KRas G12C関連がんの治療を必要とする対象においてそれを治療するために使用され得、KRas G12C関連がんは、PD-1/PD-L1阻害剤による治療に対して耐性であり、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む。
【0114】
一実施形態では、本明細書に提供される組み合わせおよび方法は、KRas G12C関連がんの治療のため、およびPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する耐性を以前に発症したと判定された場合に使用され、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む。
【0115】
また、本明細書に提供される組み合わせおよび方法はまた、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む、KRas G12C関連がんを有する対象においてPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する耐性を抑制するために使用され得る。
【0116】
一実施形態では、本発明は、(a)患者に以前に投与されたPD-1/PD-L1阻害剤による治療に対する対象におけるKRas G12C関連がんの耐性の検出することと、(b)(a)の後、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することと、を含む、KRAS G12C関連がんを有すると同定または診断された対象を治療する方法を提供する。
【0117】
本明細書に提供される組み合わせおよび方法はまた、KRas G12C関連がんを有すると同定または診断され、KRAS G12C阻害剤による治療に対する耐性を以前に発症したと判定された対象の治療のために使用され得、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することを含む。
【0118】
一実施形態では、本発明は、(a)疾患の進行まで単剤療法としてKRAS G12C阻害剤を投与することと、(b)(a)の後、治療有効量の、PD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRAS G12C阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の組み合わせを対象に投与することと、を含む、KRas G12C関連がんを有すると同定または診断された対象を治療する方法を提供する。
【0119】
一実施形態では、前述の方法のうちのいずれかにおいてKRas G12C関連がんを治療するために使用されるKRas G12C阻害剤は、化合物番号1~678(WO2019/099524において番号付けされるように)から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはその薬学的に許容される塩)である。一実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、セミプリマブ、チスレリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブから選択される。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号234およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号359およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号478およびデュルバルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびニボルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびペムブロリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびセミプリマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびチスレリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアテゾリズマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびアベルマブを含む。一実施形態では、治療の組み合わせは、治療有効量の実施例番号507およびデュルバルマブを含む。
【0120】
一実施形態では、式I、式I-A、式I-Bの化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物は、錠剤またはカプセルとして投与される。一実施形態では、式Iの化合物の錠剤またはカプセル製剤は、約10mg~約100mg(例えば、約10mg~約95mg、約10mg~約90mg、約10mg~約85mg、約10mg~約80mg、約10mg~約75mg、約10mg~約70mg、約10mg~約65mg、約10mg~約60mg、約10mg~約55mg、約10mg~約50mg、約10mg~約45mg、約10mg~約40mg、約10mg~約35mg、約10mg~約30mg、約10mg~約25mg、約10mg~約20mg、約10mg~約15mg、約15mg~約100mg、約15mg~約95mg、約15mg~約90mg、約15mg~約85mg、約15mg~約80mg、約15mg~約75mg、約15mg~約70mg、約15mg~約65mg、約15mg~約60mg、約15mg~約55mg、約15mg~約50mg、約15mg~約45mg、約15mg~約40mg、約15mg~約35mg、約15mg~約30mg、約15mg~約25mg、約15mg~約20mg、約20mg~約100mg、約20mg~約95mg、約20mg~約90mg、約20mg~約85mg、約20mg~約80mg、約20mg~約75mg、約20mg~約70mg、約20mg~約65mg、約20mg~約60mg、約20mg~約55mg、約20mg~約50mg、約20mg~約45mg、約20mg~約40mg、約20mg~約35mg、約20mg~約30mg、約20mg~約25mg、約25mg~約100mg、約25mg~約95mg、約25mg~約90mg、約25mg~約85mg、約25mg~約80mg、約25mg~約75mg、約25mg~約70mg、約25mg~約65mg、約25mg~約60mg、約25mg~約55mg、約25mg~約50mg、約25mg~約45mg、約25mg~約40mg、約25mg~約35mg、約25mg~約30mg、約30mg~約100mg、約30mg~約95mg、約30mg~約90mg、約30mg~約85mg、約30mg~約80mg、約30mg~約75mg、約30mg~約70mg、約30mg~約65mg、約30mg~約60mg、約30mg~約55mg、約30mg~約50mg、約30mg~約45mg、約30mg~約40mg、約30mg~約35mg、約35mg~約100mg、約35mg~約95mg、約35mg~約90mg、約35mg~約85mg、約35mg~約80mg、約35mg~約75mg、約35mg~約70mg、約35mg~約65mg、約35mg~約60mg、約35mg~約55mg、約35mg~約50mg、約35mg~約45mg、約35mg~約40mg、約40mg~約100mg、約40mg~約95mg、約40mg~約90mg、約40mg~約85mg、約40mg~約80mg、約40mg~約75mg、約40mg~約70mg、約40mg~約65mg、約40mg~約60mg、約40mg~約55mg、約40mg~約50mg、約40mg~約45mg、約45mg~約100mg、約45mg~約95mg、約45mg~約90mg、約45mg~約85mg、約45mg~約80mg、約45mg~約75mg、約45mg~約70mg、約45mg~約65mg、約45mg~約60mg、約45mg~約55mg、約45mg~約50mg、約50mg~約100mg、約50mg~約95mg、約50mg~約90mg、約50mg~約85mg、約50mg~約80mg、約50mg~約75mg、約50mg~約70mg、約50mg~約65mg、約50mg~約60mg、約50mg~約55mg、約55mg~約100mg、約55mg~約95mg、約55mg~約90mg、約55mg~約85mg、約55mg~約80mg、約55mg~約75mg、約55mg~約70mg、約55mg~約65mg、約55mg~約60mg、約60mg~約100mg、約60mg~約95mg、約60mg~約90mg、約60mg~約85mg、約60mg~約80mg、約60mg~約75mg、約60mg~約70mg、約60mg~約65mg、約65mg~約100mg、約65mg~約95mg、約65mg~約90mg、約65mg~約85mg、約65mg~約80mg、約65mg~約75mg、約65mg~約70mg、約70mg~約100mg、約70mg~約95mg、約70mg~約90mg、約70mg~約85mg、約70mg~約80mg、約70mg~約75mg、約75mg~約100mg、約75mg~約95mg、約75mg~約90mg、約75mg~約85mg、約75mg~約80mg、約80mg~約100mg、約80mg~約95mg、約80mg~約90mg、約80mg~約85mg、約85mg~約100mg、約85mg~約95mg、約85mg~約90mg、約90mg~約100mg、約90mg~約95mg、約95mg~約100mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、または約100mg)の式番号1~678(WO2019/099524において番号付けされるように)の化合物、またはその薬学的に許容される塩(例えば、実施例番号234、359、478、もしくは507またはその薬学的に許容される塩)を含む。一実施形態では、式Iの化合物は、ある期間中、毎日1日1回(QD)経口投与される。一実施形態では、式Iの化合物は、ある期間中、毎日1日2回(BID)経口投与される。一実施形態では、式Iの化合物は、ある期間中、約20mg~約500mg(例えば、約20mg~約480mg、約20mg~約460mg、約20mg~約440mg、約20mg~約420mg、約20mg~約400mg、約20mg~約380mg、約20mg~約360mg、約20mg~約340mg、約20mg~約320mg、約20mg~約300mg、約20mg~約280mg、約20mg~約260mg、約20mg~約240mg、約20mg~約220mg、約20mg~約200mg、約20mg~約180mg、約20mg~約160mg、約20mg~約140mg、約20mg~約120mg、約20mg~約100mg、約20mg~約80mg、約20mg~約60mg、約20mg~約40mg、約40mg~約500mg、約40mg~約480mg、約40mg~約460mg、約40mg~約440mg、約40mg~約420mg、約40mg~約400mg、約40mg~約380mg、約40mg~約360mg、約40mg~約340mg、約40mg~約320mg、約40mg~約300mg、約40mg~約280mg、約40mg~約260mg、約40mg~約240mg、約40mg~約220mg、約40mg~約200mg、約40mg~約180mg、約40mg~約160mg、約40mg~約140mg、約40mg~約120mg、約40mg~約100mg、約40mg~約80mg、約40mg~約60mg、約60mg~約500mg、約60mg~約480mg、約60mg~約460mg、約60mg~約440mg、約60mg~約420mg、約60mg~約400mg、約60mg~約380mg、約60mg~約360mg、約60mg~約340mg、約60mg~約320mg、約60mg~約300mg、約60mg~約280mg、約60mg~約260mg、約60mg~約240mg、約60mg~約220mg、約60mg~約200mg、約60mg~約180mg、約60mg~約160mg、約60mg~約140mg、約60mg~約120mg、約60mg~約100mg、約60mg~約80mg、約80mg~約500mg、約80mg~約480mg、約80mg~約460mg、約80mg~約440mg、約80mg~約420mg、約80mg~約400mg、約80mg~約380mg、約80mg~約360mg、約80mg~約340mg、約80mg~約320mg、約80mg~約300mg、約80mg~約280mg、約80mg~約260mg、約80mg~約240mg、約80mg~約220mg、約80mg~約200mg、約80mg~約180mg、約80mg~約160mg、約80mg~約140mg、約80mg~約120mg、約80mg~約100mg、約100mg~約500mg、約100mg~約480mg、約100mg~約460mg、約100mg~約440mg、約100mg~約420mg、約100mg~約400mg、約100mg~約380mg、約100mg~約360mg、約100mg~約340mg、約100mg~約320mg、約100mg~約300mg、約100mg~約280mg、約100mg~約260mg、約100mg~約240mg、約100mg~約220mg、約100mg~約200mg、約100mg~約180mg、約100mg~約160mg、約100mg~約140mg、約100mg~約120mg、約120mg~約500mg、約120mg~約480mg、約120mg~約460mg、約120mg~約440mg、約120mg~約420mg、約120mg~約400mg、約120mg~約380mg、約120mg~約360mg、約120mg~約340mg、約120mg~約320mg、約120mg~約300mg、約120mg~約280mg、約120mg~約260mg、約120mg~約240mg、約120mg~約220mg、約120mg~約200mg、約120mg~約180mg、約120mg~約160mg、約120mg~約140mg、約140mg~約500mg、約140mg~約480mg、約140mg~約460mg、約140mg~約440mg、約140mg~約420mg、約140mg~約400mg、約140mg~約380mg、約140mg~約360mg、約140mg~約340mg、約140mg~約320mg、約140mg~約300mg、約140mg~約280mg、約140mg~約260mg、約140mg~約240mg、約140mg~約220mg、約140mg~約200mg、約140mg~約180mg、約140mg~約160mg、約160mg~約500mg、約160mg~約480mg、約160mg~約460mg、約160mg~約440mg、約160mg~約420mg、約160mg~約400mg、約160mg~約380mg、約160mg~約360mg、約160mg~約340mg、約160mg~約320mg、約160mg~約300mg、約160mg~約280mg、約160mg~約260mg、約160mg~約240mg、約160mg~約220mg、約160mg~約200mg、約160mg~約180mg、約180mg~約500mg、約180mg~約480mg、約180mg~約460mg、約180mg~約440mg、約180mg~約420mg、約180mg~約400mg、約180mg~約380mg、約180mg~約360mg、約180mg~約340mg、約180mg~約320mg、約180mg~約300mg、約180mg~約280mg、約180mg~約260mg、約180mg~約240mg、約180mg~約220mg、約180mg~約200mg、約200mg~約500mg、約200mg~約480mg、約200mg~約460mg、約200mg~約440mg、約200mg~約420mg、約2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0mg、約200mg~約220mg、約220mg~約500mg、約220mg~約480mg、約220mg~約460mg、約220mg~約440mg、約220mg~約420mg、約220mg~約400mg、約220mg~約380mg、約220mg~約360mg、約220mg~約340mg、約220mg~約320mg、約220mg~約300mg、約220mg~約280mg、約220mg~約260mg、約220mg~約240mg、約240mg~約500mg、約240mg~約480mg、約240mg~約460mg、約240mg~約440mg、約240mg~約420mg、約240mg~約400mg、約240mg~約380mg、約240mg~約360mg、約240mg~約340mg、約240mg~約320mg、約240mg~約300mg、約240mg~約280mg、約240mg~約260mg、約260mg~約500mg、約260mg~約480mg、約260mg~約460mg、約260mg~約440mg、約260mg~約420mg、約260mg~約400mg、約260mg~約380mg、約260mg~約360mg、約260mg~約340mg、約260mg~約320mg、約260mg~約300mg、約260mg~約280mg、約280mg~約500mg、約280mg~約480mg、約280mg~約460mg、約280mg~約440mg、約280mg~約420mg、約280mg~約400mg、約280mg~約380mg、約280mg~約360mg、約280mg~約340mg、約280mg~約320mg、約280mg~約300mg、約300mg~約500mg、約300mg~約480mg、約300mg~約460mg、約300mg~約440mg、約300mg~約420mg、約300mg~約400mg、約300mg~約380mg、約300mg~約360mg、約300mg~約340mg、約300mg~約320mg、約320mg~約500mg、約320mg~約480mg、約320mg~約460mg、約320mg~約440mg、約320mg~約420mg、約320mg~約400mg、約320mg~約380mg、約320mg~約360mg、約320mg~約340mg、約340mg~約500mg、約340mg~約480mg、約340mg~約460mg、約340mg~約440mg、約340mg~約420mg、約340mg~約400mg、約340mg~約380mg、約340mg~約360mg、約360mg~約500mg、約360mg~約480mg、約360mg~約460mg、約360mg~約440mg、約360mg~約420mg、約360mg~約400mg、約360mg~約380mg、約380mg~約500mg、約380mg~約480mg、約380mg~約460mg、約380mg~約440mg、約380mg~約420mg、約380mg~約400mg、約400mg~約500mg、約400mg~約480mg、約400mg~約460mg、約400mg~約440mg、約400mg~約420mg、約420mg~約500mg、約420mg~約480mg、約420mg~約460mg、約420mg~約440mg、約440mg~約500mg、約440mg~約480mg、約440mg~約460mg、約460mg~約500mg、約460mg~約480mg、約480mg~約500mg、約25、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、または約500mg)の量で経口投与される。
【0121】
一実施形態では、組み合わせ療法は、毎日(ある期間中)1日1回または2回、例えば、約10mg~約400mg(例えば、約10mg~約380mg、約10mg~約360mg、約10mg~約340mg、約10mg~約320mg、約10mg~約300mg、約10mg~約280mg、約10mg~約260mg、約10mg~約240mg、約10mg~約220mg、約10mg~約200mg、約10mg~約180mg、約10mg~約160mg、約10mg~約140mg、約10mg~約120mg、約10mg~約100mg、約10mg~約80mg、約10mg~約60mg、約10mg~約40mg、約10mg~約20mg、約20mg~約400mg、約20mg~約380mg、約20mg~約360mg、約20mg~約340mg、約20mg~約320mg、約20mg~約300mg、約20mg~約280mg、約20mg~約260mg、約20mg~約240mg、約20mg~約220mg、約20mg~約200mg、約20mg~約180mg、約20mg~約160mg、約20mg~約140mg、約20mg~約120mg、約20mg~約100mg、約20mg~約80mg、約20mg~約60mg、約20mg~約40mg、約40mg~約400mg、約40mg~約380mg、約40mg~約360mg、約40mg~約340mg、約40mg~約320mg、約40mg~約300mg、約40mg~約280mg、約40mg~約260mg、約40mg~約240mg、約40mg~約220mg、約40mg~約200mg、約40mg~約180mg、約40mg~約160mg、約40mg~約140mg、約40mg~約120mg、約40mg~約100mg、約40mg~約80mg、約40mg~約60mg、約60mg~約400mg、約60mg~約380mg、約60mg~約360mg、約60mg~約340mg、約60mg~約320mg、約60mg~約300mg、約60mg~約280mg、約60mg~約260mg、約60mg~約240mg、約60mg~約220mg、約60mg~約200mg、約60mg~約180mg、約60mg~約160mg、約60mg~約140mg、約60mg~約120mg、約60mg~約100mg、約60mg~約80mg、約80mg~約400mg、約80mg~約380mg、約80mg~約360mg、約80mg~約340mg、約80mg~約320mg、約80mg~約300mg、約80mg~約280mg、約80mg~約260mg、約80mg~約240mg、約80mg~約220mg、約80mg~約200mg、約80mg~約180mg、約80mg~約160mg、約80mg~約140mg、約80mg~約120mg、約80mg~約100mg、約100mg~約400mg、約100mg~約380mg、約100mg~約360mg、約100mg~約340mg、約100mg~約320mg、約100mg~約300mg、約100mg~約280mg、約100mg~約260mg、約100mg~約240mg、約100mg~約220mg、約100mg~約200mg、約100mg~約180mg、約100mg~約160mg、約100mg~約140mg、約100mg~約120mg、約120mg~約400mg、約120mg~約380mg、約120mg~約360mg、約120mg~約340mg、約120mg~約320mg、約120mg~約300mg、約120mg~約280mg、約120mg~約260mg、約120mg~約240mg、約120mg~約220mg、約120mg~約200mg、約120mg~約180mg、約120mg~約160mg、約120mg~約140mg、約140mg~約400mg、約140mg~約380mg、約140mg~約360mg、約140mg~約340mg、約140mg~約320mg、約140mg~約300mg、約140mg~約280mg、約140mg~約260mg、約140mg~約240mg、約140mg~約220mg、約140mg~約200mg、約140mg~約180mg、約140mg~約160mg、約160mg~約400mg、約160mg~約380mg、約160mg~約360mg、約160mg~約360mg、約160mg~約340mg、約160mg~約320mg、約160mg~約300mg、約160mg~約280mg、約160mg~約260mg、約160mg~約240mg、約160mg~約220mg、約160mg~約200mg、約160mg~約180mg、約180mg~約400mg、約180mg~約380mg、約180mg~約360mg、約180mg~約340mg、約180mg~約320mg、約180mg~約300mg、約180mg~約280mg、約180mg~約260mg、約180mg~約240mg、約180mg~約220mg、約180mg~約200mg、約200mg~約400mg、約200mg~約380mg、約200mg~約360mg、約200mg~約340mg、約200mg~約320mg、約200mg~約300mg、約200mg~約280mg、約200mg~約260mg、約200mg~約240mg、約200mg~約220mg、約220mg~約400mg、約220mg~約380mg、約220mg~約360mg、約220mg~約340mg、約220mg~約320mg、約220mg~約300mg、約220mg~約280mg、約220mg~約260mg、約220mg~約240mg、約240mg~約400mg、約240mg~約380mg、約240mg~約360mg、約240mg~約340mg、約240mg~約320mg、約240mg~約300mg、約240mg~約280mg、約240mg~約260mg、約260mg~約400mg、約260mg~約380mg、約260mg~約360mg、約260mg~約340mg、約260mg~約320mg、約260mg~約300mg、約260mg~約280mg、約280mg~約400mg、約280mg~約380mg、約280mg~約360mg、約280mg~約340mg、約280mg~約320mg、約280mg~約300mg、約300mg~約400mg、約300mg~約380mg、約300mg~約360mg、約300mg~約340mg、約300mg~約320mg、約320mg~約400mg、約320mg~約380mg、約320mg~約360mg、約340mg~約360mg、約340mg~約400mg、約340mg~約380mg、約340mg~約360mg、約360mg~約400mg、約360mg~約380mg、約380mg~約400mg、約100mg、約200mg、約300mg、または約400mg)の量で式Iの化合物の経口投与、ならびに例えば、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、または4週間毎に1回に投与されるPD-1/PD-L1阻害剤の静脈内投与を含む。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、毎日1回経口投与される。一実施形態では、KRas G12C阻害剤は、毎日2回経口投与される。
【0122】
一実施形態では、PD-L1阻害剤は、アベルマブまたはそのバイオシミラーである。一実施形態では、アベルマブまたはそのバイオシミラーは、2週間毎(Q2W)に約800mgまたは2週間毎(Q2W)に約10mg/kgの量で静脈内投与される。一実施形態では、アベルマブまたはそのバイオシミラーは、60分間にわたって静脈内投与される。
【0123】
一実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブまたはそのバイオシミラーである。一実施形態では、アテゾリズマブまたはそのバイオシミラーは、1200mgの用量で3週間毎に1回(Q3W)静脈内投与されるか、または840mgの用量で2週間間隔で静脈内投与される。一実施形態では、アテゾリズマブまたはそのバイオシミラーは、60分間にわたって静脈内投与される。
【0124】
一実施形態では、PD-L1阻害剤は、デュルバルマブまたはそのバイオシミラーである。一実施形態では、デュルバルマブまたはそのバイオシミラーは、10mg/kgの用量で2週間毎に1回(Q2W)静脈内投与される。一実施形態では、デュルバルマブまたはそのバイオシミラーは、60分間にわたって静脈内投与される。
【0125】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブまたはそのバイオシミラーである。一実施形態では、ニボルマブまたはそのバイオシミラーは、240mgの用量で2週間毎に1回(Q2W)静脈内投与される。一実施形態では、ニボルマブまたはそのバイオシミラーは、480mgの用量で4週間毎に1回(Q4W)静脈内投与される。一実施形態では、ニボルマブまたはそのバイオシミラーは、30分間にわたって静脈内投与される。
【0126】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーである。一実施形態では、ペムブロリズマブは、200mgの用量で3週間毎に1回(Q3W)静脈内投与される。一実施形態では、ペムブロリズマブまたはそのバイオシミラーは、60分間にわたって静脈内投与される。
【0127】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、セミプリマブまたはそのバイオシミラーである。一実施形態では、セミプリマブまたはそのバイオシミラーは、350mgの用量で3週間毎に1回(Q3W)静脈内投与される。一実施形態では、セミプリマブまたはそのバイオシミラーは、30分間にわたって静脈内投与される。
【0128】
一実施形態では、PD-1阻害剤は、チスレリズマブまたはそのバイオシミラーである。一実施形態では、チスレリズマブまたはそのバイオシミラーは、200mgの用量で3週間毎に1回(Q3W)静脈内投与される。
【0129】
当業者は、好適で、既知であり、一般に受け入れられている細胞および/または動物モデルを使用するインビボおよびインビトロ試験の両方が、所与の障害を治療または予防する組み合わせの試験化合物または組み合わせの能力を予測することを認識するであろう。
【0130】
当業者は、健康な患者および/または所与の障害に苦しむ患者における、ヒト初の用量範囲および有効性試験を含むヒト臨床試験が、臨床および医療分野で周知である方法に従って完了され得ることをさらに認識するであろう。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、1日~2年(例えば、1日~22カ月、1日~20カ月、1日~18カ月、1日~16カ月、1日~14カ月、1日~12カ月、1日~10カ月、1日~9カ月、1日~8カ月、1日~7カ月、1日~6カ月、1日~5カ月、1日~4カ月、1日~3カ月、1日~2カ月、1日~1カ月、1週間~2年、1週間~22カ月、1週間~20カ月、1週間~18カ月、1週間~16カ月、1週間~14カ月、1週間~12カ月、1週間~10カ月、1週間~9カ月、1週間~8カ月、1週間~7カ月、1週間~6カ月、1週間~5カ月、1週間~4カ月、1週間~3カ月、1週間~2カ月、1週間~1カ月、2週間~2年、2週間~22カ月、2週間~20カ月、2週間~18カ月、2週間~16カ月、2週間~14カ月、2週間~12カ月、2週間~10カ月、2週間~9カ月、2週間~8カ月、2週間~7カ月、2週間~6カ月、2週間~5カ月、2週間~4カ月、2週間~3カ月、2週間~2カ月、2週間~1カ月、1カ月~2年、1カ月~22カ月、1カ月~20カ月、1カ月~18カ月、1カ月~16カ月、1カ月~14カ月、1カ月~12カ月、1カ月~10カ月、1カ月~9カ月、1カ月~8カ月、1カ月~7カ月、1カ月~6カ月、1カ月~6カ月、1カ月~5カ月、1カ月~4カ月、1カ月~3カ月、1カ月~2カ月、2カ月~2年、2カ月~22カ月、2カ月~20カ月、2カ月~18カ月、2カ月~16カ月、2カ月~14カ月、2カ月~12カ月、2カ月~10カ月、2カ月~9カ月、2カ月~8カ月、2カ月~7カ月、2カ月~6カ月、または2カ月~5カ月、2カ月~4カ月、3カ月~2年、3カ月~22カ月、3カ月~20カ月、3カ月~18カ月、3カ月~16カ月、3カ月~14カ月、3カ月~12カ月、3カ月~10カ月、3カ月~8カ月、3カ月~6カ月、4カ月~2年、4カ月~22カ月、4カ月~20カ月、4カ月~18カ月、4カ月~16カ月、4カ月~14カ月、4カ月~12カ月、4カ月~10カ月、4カ月~8カ月、4カ月~6カ月、6カ月~2年、6カ月~22カ月、6カ月~20カ月、6カ月~18カ月、6カ月~16カ月、6カ月~14カ月、6カ月~12カ月、6カ月~10カ月、または6カ月~8カ月)の期間中、組み合わせ療法による治療後の患者における1つ以上の固形腫瘍の体積の1%~99%(例えば、1%~98%、1%~95%、1%~90%、1~85%、1~80%、1%~75%、1%~70%、1%~65%、1%~60%、1%~55%、1%~50%、1%~45%、1%~40%、1%~35%、1%~30%、1%~25%、1%~20%、1%~15%、1%~10%、1%~5%、2%~99%、2%~90%、2%~85%、2%~80%、2%~75%、2%~70%、2%~65%、2%~60%、2%~55%、2%~50%、2%~45%、2%~40%、2%~35%、2%~30%、2%~25%、2%~20%、2%~15%、2%~10%、2%~5%、4%~99%、4%~95%、4%~90%、4%~85%、4%~80%、4%~75%、4%~70%、4%~65%、4%~60%、4%~55%、4%~50%、4%~45%、4%~40%、4%~35%、4%~30%、4%~25%、4%~20%、4%~15%、4%~10%、6%~99%、6%~95%、6%~90%、6%~85%、6%~80%、6%~75%、6%~70%、6%~65%、6%~60%、6%~55%、6%~50%、6%~45%、6%~40%、6%~35%、6%~30%、6%~25%、6%~20%、6%~15%、6%~10%、8%~99%、8%~95%、8%~90%、8%~85%、8%~80%、8%~75%、8%~70%、8%~65%、8%~60%、8%~55%、8%~50%、8%~45%、8%~40%、8%~35%、8%~30%、8%~25%、8%~20%、8%~15%、10%~99%、10%~95%、10%~90%、10%~85%、10%~80%、10%~75%、10%~70%、10%~65%、10%~60%、10%~55%、10%~50%、10%~45%、10%~40%、10%~35%、10%~30%、10%~25%、10%~20%、10%~15%、15%~99%、15%~95%、15%~90%、15%~85%、15%~80%、15%~75%、15%~70%、15%~65%、15%~60%、15%~55%、15%~50%、15%~55%、15%~50%、15%~45%、15%~40%、15%~35%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、20%~99%、20%~95%、20%~90%、20%~85%、20%~80%、20%~75%、20%~70%、20%~65%、20%~60%、20%~55%、20%~50%、20%~45%、20%~40%、20%~35%、20%~30%、20%~25%、25%~99%、25%~95%、25%~90%、25%~85%、25%~80%、25%~75%、25%~70%、25%~65%、25%~60%、25%~55%、25%~50%、25%~45%、25%~40%、25%~35%、25%~30%、30%~99%、30%~95%、30%~90%、30%~85%、30%~80%、30%~75%、30%~70%、30%~65%、30%~60%、30%~55%、30%~50%、30%~45%、30%~40%、30%~35%、35%~99%、35%~95%、35%~90%、35%~85%、35%~80%、35%~75%、35%~70%、35%~65%、35%~60%、35%~55%、35%~50%、35%~45%、35%~40%、40%~99%、40%~95%、40%~90%、40%~85%、40%~80%、40%~75%、40%~70%、40%~65%、40%~60%、40%~55%、40%~60%、40%~55%、40%~50%、40%~45%、45%~99%、45%~95%、45%~95%、45%~90%、45%~85%、45%~80%、45%~75%、45%~70%、45%~65%、45%~60%、45%~55%、45%~50%、50%~99%、50%~95%、50%~90%、50%~85%、50%~80%、50%~75%、50%~70%、50%~65%、50%~60%、50%~55%、55%~99%、55%~95%、55%~90%、55%~85%、55%~80%、55%~75%、55%~70%、55%~65%、55%~60%、60%~99%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~99%、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、70%~99%、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~99%、75%~95%、75%~90%、75%~85%、75%~80%、80%~99%、80%~95%、80%~90%、80%~85%、85%~99%、85%~95%、85%~90%、90%~99%、90%~95%、または95%~100%)の減少をもたらし得る(例えば、治療前の患者における1つ以上の固形腫瘍のサイズと比較して)。
【0132】
「生存時間」という句は、医療専門家による哺乳動物のがん(例えば、本明細書に記載のがんのうちのいずれか)の同定または診断から、(がんによって引き起こされる)哺乳動物の死亡時間までの時間の長さを意味する。がんを有する哺乳動物の生存時間を増加させる方法が、本明細書に記載されている。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法のうちのいずれかは、患者の生存時間の増加(例えば、1%~400%、1%~380%、1%~360%、1%~340%、1%~320%、1%~300%、1%~280%、1%~260%、1%~240%、1%~220%、1%~200%、1%~180%、1%~160%、1%~140%、1%~120%、1%~100%、1%~95%、1%~90%、1%~85%、1%~80%、1%~75%、1%~70%、1%~65%、1%~60%、1%~55%、1%~50%、1%~45%、1%~40%、1%~35%、1%~30%、1%~25%、1%~20%、1%~15%、1%~10%、1%~5%、5%~400%、5%~380%、5%~360%、5%~340%、5%~320%、5%~300%、5%~280%、5%~260%、5%~240%、5%~220%、5%~200%、5%~180%、5%~160%、5%~140%、5%~120%、5%~100%、5%~90%、5%~80%、5%~70%、5%~60%、5%~50%、5%~40%、5%~30%、5%~20%、5%~10%、10%~400%、10%~380%、10%~360%、10%~340%、10%~320%、10%~300%、10%~280%、10%~260%、10%~240%、10%~220%、10%~200%、10%~180%、10%~160%、10%~140%、10%~120%、10%~100%、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~400%、20%~380%、20%~360%、20%~340%、20%~320%、20%~300%、20%~280%、20%~260%、20%~240%、20%~220%、20%~200%、20%~180%、20%~160%、20%~140%、20%~120%、20%~100%、20%~90%、20%~80%、20%~70%、20%~60%、20%~50%、20%~40%、20%~30%、30%~400%、30%~380%、30%~360%、30%~340%、30%~320%、30%~300%、30%~280%、30%~260%、30%~240%、30%~220%、30%~200%、30%~180%、30%~160%、30%~140%、30%~120%、30%~100%、30%~90%、30%~80%、30%~70%、30%~60%、30%~50%、30%~40%、40%~400%、40%~380%、40%~360%、40%~340%、40%~320%、40%~300%、40%~280%、40%~260%、40%~240%、40%~220%、40%~200%、40%~180%、40%~160%、40%~140%、40%~120%、40%~100%、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~400%、50%~380%、50%~360%、50%~340%、50%~320%、50%~300%、50%~280%、50%~260%、50%~240%、50%~220%、50%~200%、50%~180%、50%~160%、50%~140%、50%~140%、50%~120%、50%~100%、50%~90%、50%~80%、50%~70%、50%~60%、60%~400%、60%~380%、60%~360%、60%~340%、60%~320%、60%~300%、60%~280%、60%~260%、60%~240%、60%~220%、60%~200%、60%~180%、60%~160%、60%~140%、60%~120%、60%~100%、60%~90%、60%~80%、60%~70%、70%~400%、70%~380%、70%~360%、70%~340%、70%~320%、70%~300%、70%~280%、70%~260%、70%~240%、70%~220%、70%~200%、70%~180%、70%~160%、70%~140%、70%~120%、70%~100%、70%~90%、70%~80%、80%~400%、80%~380%、80%~360%、80%~340%、80%~320%、80%~300%、80%~280%、80%~260%、80%~240%、80%~220%、80%~200%、80%~180%、80%~160%、80%~140%、80%~120%、80%~100%、80%~90%、90%~400%、90%~380%、90%~360%、90%~340%、90%~320%、90%~300%、90%~280%、90%~260%、90%~240%、90%~220%、90%~200%、90%~180%、90%~160%、90%~140%、90%~120%、90%~100%、100%~400%、100%~380%、100%~360%、100%~340%、100%~320%、100%~300%、100%~280%、100%~260%、100%~240%、100%~220%、100%~200%、100%~180%、100%~160%、100%~140%、100%~120%、120%~400%、120%~380%、120%~360%、120%~340%、120%~320%、120%~300%、120%~280%、120%~260%、120%~240%、120%~220%、120%~200%、120%~180%、120%~160%、120%~140%、140%~400%、140%~380%、140%~360%、140%~340%、140%~320%、140%~300%、140%~280%、140%~260%、140%~240%、140%~220%、140%~200%、140%~180%、140%~160%、160%~400%、160%~380%、160%~360%、160%~340%、160%~320%、160%~300%、160%~280%、160%~260%、160%~240%、160%~220%、160%~200%、160%~180%、180%~400%、180%~380%、180%~360%、180%~340%、180%~320%、180%~300%、180%~280%、180%~260%、180%~240%、180%~220%、180%~200%、200%~400%、200%~380%、200%~360%、200%~340%、200%~320%、200%~300%、200%~280%、200%~260%、200%~240%、200%~220%、220%~400%、220%~380%、220%~360%、220%~340%、220%~320%、220%~300%、220%~280%、220%~260%、220%~240%、240%~400%、240%~380%、240%~360%、240%~340%、240%~320%、240%~300%、240%~280%、240%~260%、260%~400%、260%~380%、260%~360%、260%~340%、260%~320%、260%~300%、260%~280%、280%~400%、280%~380%、280%~360%、280%~340%、280%~320%、280%~300%、300%~400%、300%~380%、300%~360%、300%~340%、または300%~320%)(例えば、同様のがんを有し、異なる治療を施したまたは治療を受けていない患者と比較して)、または治療される患者の残存寿命の増加をもたらし得る。
【0134】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本発明の組成物または方法による治療の前に、患者は、化学療法、標的化抗がん剤、放射線療法、および手術のうちの1つ以上により治療され、任意選択で、以前の治療は不成功に終わり、かつ/または患者は手術が施され、任意選択で、手術は不成功に終わり、かつ/または患者は、プラチナベースの化学療法剤により治療され、任意選択で、患者は、プラチナベースの化学療法剤による治療に非応答性であると以前に判定されており、かつ/または患者は、キナーゼ阻害剤で治療され、任意選択で、キナーゼ阻害剤による以前の治療は不成功に終わり、かつ/または患者は、1つ以上の他の治療薬(複数可)により治療された。
【0135】
キット
本発明はまた、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物を含むキットに関する。血液がんを治療するのに使用するための、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物を含むキットもまた提供される。
【0136】
関連する態様では、本発明は、ある用量のPD-1/PD-L1阻害剤、またはその薬学的組成物、およびある用量の式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物を、対象において、がん細胞、特にKRas G12C発現がん細胞の増殖を阻害するのに有効な量で含むキットを提供する。キットは、いくつかの場合では、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物、および式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物の投与のための説明書を含む挿入物を含む。挿入物は、式(I)、式I-A、もしくは式I-BのKRas G12C阻害剤化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物と組み合わせて、PD-1/PD-L1阻害剤またはその薬学的組成物を使用するための1つのセットの説明書を使用者に提供し得る。
【0137】
実施例A
KRas G12Cを発現するための結腸がん細胞株CT26.WTのエンジニアリング
この実施例は、結腸がん細胞株CT26.WT(ATCC CRL-2638)が、本発明のKRas G12C阻害剤を使用する標的療法に対して感受性のあるこれらの細胞をレンダリングするKRas G12Cを発現するように遺伝子修飾されたことを示す。
【0138】
CT26.WT細胞株は、KRas遺伝子(NCBI参照:NM_021284)に対してトリレリックであり、各対立遺伝子は、グリシン残基(G)をアスパラギン酸残基(D)に変化させるコドン12での変異を有する。KRas G12C変異を有するCT26.WT細胞株誘導体を作成するために、以下の様式でCRISPR/CAS9システム(Synthego、Redwood City,CA)を使用して、G12DコドンをG12Cコドンに変化させた。
【0139】
簡潔には、KRas 12コドンの近くの領域を標的とする合成修飾ガイドRNA(sgRNA)を、CAS9 DNAエンドヌクレアーゼと複合体化したときに二本鎖切断を作成する高い特異性および傾向に基づいて設計および合成した。一本鎖ドナーオリゴヌクレオチド(ssODN)を、sgRNA切断部位の部位で相同ドナー修復を可能にし、12位に所望のシステインコドン(GAT;DからTGT:C)を導入すると同時にまた再切断を防ぐためにサイレント変異を導入するように設計した。
【0140】
Cas9/sgRNAリボタンパク質複合体およびssODNをCT26.WT細胞にトランスフェクトした。単一細胞CT26.WTクローンを単離し、それらの遺伝子型をSanger DNAシーケンシングによってスクリーニングして、ホモ接合性G12C標的クローンを同定した。
【0141】
1つの特定のクローン、KRas G12C CT26.WT E3クローンを、さらなる分析のために選択した。
【0142】
実施例B
KRas G12C依存性細胞増殖の阻害
この実施例は、本発明の例示的な化合物が、親CT26.WT野生型細胞株よりも高い効力でKRas G12Cを発現する操作されたCT26.WT KRas G12C E3クローンの増殖を阻害することを示す。
【0143】
本発明の例示的な化合物によるKRAs G12Cの細胞阻害を、細胞内ATPの量を測定することにより決定した。
【0144】
CT26.WT野生型細胞およびKRas G12Cを発現するCT26.WT G12C E3クローンを、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/1%ストレプトマイシンを補充したRPMI培地で培養し、96ウェルホワイトアッセイプレートに1000細胞/90μl/ウェルの密度で播種した。本発明の化合物の用量反応曲線は、1.5nMの最終濃度まで3倍希釈を使用して、10μMの濃度範囲にわたって、各ウェルの同じ培地に様々な濃度の化合物のストック溶液の10μlアリコートを添加することによって決定した。プレートを37℃で3日間インキュベートし、3日目にCTGアッセイキット(Cell Titre Glo;Promegaカタログ番号G7573)を使用して、製造業者の指示に従って細胞の生存率を測定した。
【0145】
3日目の各細胞株のIC
50値は、Graph pad PRISMソフトウェアを使用して計算し、結果を表1に示す。
【表1】
【0146】
表1に示されるように、KRas G12Cを発現するCT26.WT細胞株は、同系の親野生型KRas細胞株と比較して、実施例478による阻害に対して約7倍感受性であり、それにより、本発明のKRas G12C阻害剤に対するこの細胞株の増強された感受性および特異性を示す。
【0147】
実施例C
KRas G12C阻害剤を調べるためのインビボモデル-免疫細胞調節
この実施例は、KRas G12C阻害剤の、単独でまたはCT26.WT KRas G12C E3クローン保有動物に対する抗PD-1抗体との組み合わせでの、インビボ投与は、主要な免疫細胞集団の腫瘍内調節をもたらすことを示す。
【0148】
BALBcマウスに、KRas G12C変異を有する1×106 CT26.WT KRas G12C E3細胞を、右後部脇腹に接種した。腫瘍体積が200~400mm3のサイズに達したとき(0日目)、マウスをそれぞれ5匹のマウスからなる3つの群の2つのセットに分けた。最初の群に、ビヒクル(50mMクエン酸緩衝液pH5.0中の10%カプチゾール)を毎日投与し、2つ目の群に、100mg/kgの経口用量のKRas G12C阻害剤実施例478を4日間毎日投与し(4日目)、3つ目の群に、1、4、および7日目に10mg/kgのマウス抗PD-1抗体を腹腔内投与し、4つ目の群に、100mg/kgの経口用量のKRas G12C阻害剤実施例478を4日間毎日、ならびに1、4、および7日目に10mg/kgのマウス抗PD-1抗体腹腔内投与の組み合わせを投与した。
【0149】
最後の4日目の用量から約3時間後、マウスを安楽死させ、FACS分析のために腫瘍を採取した(MI Bioresearch、Ann Arbor,MI)。個々の腫瘍をホモジナイズし、7-AAD Viability色素を使用して、ホモジナイズした腫瘍から生腫瘍細胞を単離した。単離された生細胞を、遠心分離によって細胞破片から分離し、洗浄し、氷冷DPBS培地に再懸濁した。1×106細胞のアリコートを、特定の免疫細胞の細胞外および細胞内マーカーに対する特定のフルオレセインタグ付き抗体を含むディープウェル96ウェルプレート中の事前定義されたウェルに移した。
【0150】
1つのプレートを、CD4+およびCD8+T細胞、CD69およびPD-1発現CD8+T細胞、KI-67+CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)T細胞、および制御性T細胞(T-reg)を含むCD45+CD3+T細胞の割合を定量化するように設計した。細胞のパーセンテージは、Attune NxT Acoustic Focusing Cytometerを使用して決定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0151】
2つ目のプレートを、骨髄由来抑制細胞(G-MDSCおよびM-MDSC)、M1およびM2マクロファージ、ならびに樹状細胞(DC)を含むCD45+CD11+細胞の割合を定量化するように設計した。細胞のパーセンテージは、Attune NxT Acoustic Focusing Cytometerを使用して決定した。ポジティブとネガティブ対照試料を並行して処理した。結果を表3に示す。
【表3】
【0152】
実施例478を100mg/kgで4日間投与した後、腫瘍微小環境における免疫細胞集団の多数の差異が観察された。例えば、腫瘍内CD45+細胞は、生細胞のパーセンテージとして増加した。この増加は、造血細胞のマーカーであるだけでなく、T細胞およびB細胞抗原受容体媒介性活性化の必須の調節因子でもあるため、活性な免疫腫瘍微小環境(TME)を示す(例えば、Perrick N.CD45.PathologyOutlines.com website.http://www.pathologyoutlines.com/topic/cdmarkerscd45.htmlを参照されたい)。CD4およびCD4ヘルパーT細胞集団でさらなる増加が観察された。これらの免疫細胞型は、キラーT細胞、マクロファージ、およびB細胞を刺激して免疫応答を開始する上で最も重要である。CD8陽性免疫細胞である細胞傷害性T細胞の観察された増加は、標的細胞の効果的な死滅につながる。抗原の存在下では、CD8+T細胞は、増殖、次いで収縮、および最終的に長寿命メモリーT細胞への分化によって開始される3つの段階を経て進行する。CD8陽性免疫細胞のこの増加はまた、CD8陽性免疫細胞のクローン拡大の初期の特徴を表し、したがって、現在および将来のがん細胞の効率的な認識および死滅のメカニズムを提供し得る(例えば、Clambey et al.,(2005)Immun Rev 205:170-189)。T細胞の増加と一致して、腫瘍における実施例478の治療は、CD19陽性細胞の増加を引き起こした。一般的なB細胞マーカーであるこのマーカーは、B細胞の発達、活性化、および分化を調節する細胞型を表す(例えば、Otero&Ricket(2003)J.Immunol.171:5921-5930を参照されたい)。したがって、このB細胞の増加は、病原体に対する高親和性応答を誘発することができ、宿主に保護的な長寿命液性免疫を提供し得る。
【0153】
さらに、M1マクロファージは、細胞内病原体の最初の応答者であり、高レベルの食作用活性を呈する。観察されたM1の増加は、炎症誘発性サイトカインシグナル伝達の増加の理論的根拠と、急性炎症応答の特徴を提供する(Atri et al.,(2018)Int J Mol Sci 19:1801)。MDSCは、病的状態の間に著しく蓄積し、ほとんどすべての研究された腫瘍モデルおよび試験されたがん患者で検出された(例えば、Youn&Gabrilovich(2010)Euro J Immunol 40:2969-2975を参照されたい)。これらの状態は、MDSC細胞の拡大を引き起こすだけでなくまた、それらの活性化をもたらし得、それは順にROS、iNOS、COX2、アルギナーゼなどの潜在的な免疫抑制活性を有する多くの中間体を上方制御する(Youn&Gabrilovich(2010)Euro J Immunol 40:2969-2975)。
【0154】
実施例478の単剤による治療後の増加したCD8+T細胞集団の大部分は、PD-1を発現し(83%)、PD-L1による阻害に対して感受性のあるままであり、それによりこれらのT細胞の活性化を遮断するが、しかしながら、4日間の組み合わせ療法後、CD8+T細胞におけるPD-1表面タンパク質発現は、PD-1阻害剤の結合によって遮断され(わずか1.2%がPD-1を発現)、それによってこれらのT細胞がPD-L1によって抑制されるのを防ぎ、これらの細胞が活性化され、適応抗腫瘍応答を開始することを可能にして、動物モデルにおいて持続的な完全奏功をもたらした。
【0155】
まとめると、本発明のKRas G12C阻害剤による治療は、このモデルにおける腫瘍減少の全体的なメカニズムに寄与し得る腫瘍における重要な免疫細胞サブタイプの調節をもたらす。PD-1阻害剤による治療からの注目すべき貢献は、腫瘍内のPD-1陽性CD8免疫細胞の劇的な減少であった。この調節は、KRas G12C阻害剤治療のみで記載されているように、すでに免疫学的にホットな腫瘍微小環境では、この免疫細胞の集団を減少させることにより、PD-1/PD-L1軸シグナル伝達経路によって指示される既存の阻害を取り除くことによってさらなる抗腫瘍活性につながることを示唆している。
【0156】
実施例D
KRas G12C阻害剤+PD-1/PD-L1阻害剤の組み合わせを調べるためのインビボモデル
BALBcマウスに、KRas G12C変異を有する1×106 CT26.WT KRas G12C E3細胞を、右後部脇腹に接種し、腫瘍体積を、2~3日毎にキャリパーを使用して測定し、腫瘍体積を式:0.5×(長さ×幅)2によって計算した。
【0157】
腫瘍体積が200~400mm3のサイズに達したとき(研究0日目)、マウスをそれぞれ5匹のマウスからなる4つの群に分けた。最初の群に、研究15日目までビヒクル(50mMクエン酸緩衝液pH5.0中10%カプチゾール)を毎日投与し、また研究1、4、および7日目にビヒクル(BioXcel希釈剤)も腹腔内投与した。2つ目の群に、1、4、および7日目に10mg/kg腹腔内用量のマウス抗PD-1抗体(F26、BioXcel)を毎日投与した。3つ目の群に、研究29日目まで、100mg/kg用量のKRas G12C阻害剤実施例478を投与した。4つ目の群に、研究1、4、および7日目での10mg/kg腹腔内用量のF26マウス抗PD-1抗体と組み合わせて、研究29日目まで100mg/kg用量のKRas G12C阻害剤実施478を毎日投与した。
【0158】
研究29日目に、100mg/kg用量のKRas G12C阻害剤実施例478の投与を単剤および組み合わせ群で停止した。
【0159】
研究39日目に、組み合わせ群の4匹の腫瘍のないマウスに、1×106CT26.WT KRas G12C E3細胞を、反対側の左脇腹に再チャレンジし、マウスの腫瘍増殖を24日間の期間モニタリングして、持続的な適応免疫応答が観察されるかどうかを決定した。
【0160】
表4
単剤および組み合わせで処置されたCT26.WT KRas G12C E3クローン腫瘍保有マウスの腫瘍体積(mm
3)
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0161】
表4Bに示されるように、抗PD-1F26抗体の単剤としての投与は、ビヒクル処置マウスと比較して、14日目に最低19.8%の腫瘍増殖阻害のみを呈した。
【0162】
表4Cに示されるように、KRas G12C阻害剤実施例478の単剤としての投与は、強力な抗腫瘍反応を呈し、5匹の処置マウスすべてが9日間の投与後(研究9日目)に完全な応答を達成した。5匹のマウスはすべて、少なくとも5日間、検出可能な腫瘍がないままであったが、しかしながら、最終的に、実施例478を依然として毎日受けている間(3匹のマウス、研究17、21、および25日目)、または研究29日目に投与が停止された後(2匹のマウス、研究日44および46日目)のいずれかで、5匹のマウスすべての移植の元の部位で腫瘍増殖が検出された。
【0163】
表4Dに示されるように、抗PD-1 F26抗体、およびKRas G12C阻害剤実施例478の組み合わせの同時投与は、同様に強力な抗腫瘍応答を呈し、5匹の処置マウス(M1~M5)すべてが14日間の投与後(研究14日目)に完全な応答を達成した。5匹のマウスのうちの4匹(M1およびM3~M5)は、実施例478の投与が停止された後(研究120日目)、少なくとも91日間、検出可能な腫瘍がないままであった。実施例478の投与を停止してから15日後の研究44日目から開始して、単一のマウス(M2)で腫瘍増殖が検出された。
【0164】
5匹のマウスのうち4匹(M1およびM3~M5)は、研究39日目に検出可能な腫瘍がないままであり、反対側の左脇腹にCT26.WT KRas G12C E3細胞を再チャレンジした。元の移植部位(R)または2番目の再移植部位(L)で検出可能な腫瘍増殖は観察されなかったが、対照的に、ナイーブマウスへの同じ細胞の移植は、腫瘍形成をもたらした(データには示さず)。これらの結果は、組み合わせ処置動物が、少なくとも49日間持続的な完全奏効をもたらした抗腫瘍免疫記憶を呈したことを示し、KRas G12C関連がんの治療および可能な再発予防における組み合わせ療法の優位性を示した。
【0165】
表5A~5Dは、4A~4Dに示される研究の繰り返しを表す。第2の研究では、処置マウスの数を群当たり5匹から群当たりあたり10匹に増加させた。
【0166】
腫瘍体積が200~400mm3のサイズに達したとき(研究0日目)、マウスをそれぞれ10匹のマウスからなる4つの群に分けた。最初の群に、研究10日目までビヒクル(50mMクエン酸緩衝液pH5.0中10%カプチゾール)を毎日投与し、また研究1、4、および7日目にビヒクル(BioXcel希釈剤)も腹腔内投与した。2つ目の群に、1、4、および7日目に10mg/kg腹腔内用量のマウス抗PD-1抗体(F26、BioXcel)を毎日投与した。3つ目の群に、研究25日目まで、100mg/kg用量のKRas G12C阻害剤実施例478を投与した。4つ目の群に、研究1、4、および7日目での10mg/kg腹腔内用量のF26マウス抗PD-1抗体と組み合わせて、研究25日目まで100mg/kg用量のKRas G12C阻害剤実施478を毎日投与した。
【0167】
研究25日目に、100mg/kg用量のKRas G12C阻害剤実施例478の投与を単剤および組み合わせ群で停止した。
【0168】
研究32日目に、組み合わせ群の7匹の腫瘍のないマウスに、1×106CT26.WT KRas G12C E3細胞を、反対側の左脇腹に再チャレンジし、マウスの腫瘍増殖を50日間の期間モニタリングして、持続的な適応免疫応答が観察されるかどうかを決定した。
【0169】
表5
単剤および組み合わせで処置されたCT26.WT KRas G12C E3クローン腫瘍保有マウスの反復の腫瘍体積(mm
3)
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0170】
表5Cに示されるように、KRas G12C阻害剤実施例478を単剤として投与すると、強力な抗腫瘍応答が呈され、10日間の投与後(研究10日目)にすべてのマウスで10匹の処置されたすべてのマウスは完全な応答を達成した。10匹のマウスのうち9匹は、完全な応答を達成した後、少なくとも4日間は検出可能な腫瘍がないままであったが、しかしながら、最終的に、実施例478を毎日受けている間(5匹のマウス、研究14日目(M2)、17日目(M4)、および19日目(M1、M3、およびM6))、または研究25日目に投与が停止された後(1匹のマウス(M6)、研究26日目)、移植の元の部位で、9匹のマウスのうち6匹で腫瘍増殖が検出された。3匹のマウス(M7~M9)は、実施例478の毎日の投与が停止された後(31日目)、6日間腫瘍がないままであり、1匹のマウス(M10)は、少なくとも49日間腫瘍がないままであった。
【0171】
表5Dに示されるように、抗PD-1 F26抗体、およびKRas G12C阻害剤実施例478の組み合わせの同時投与は、同様に強力な抗腫瘍応答を呈し、10匹の処置マウスのうち9匹が10日間の投与後(研究10日目)に完全な応答を達成した。8匹のマウスは、実施例478の投与が停止された後(研究49日目)、少なくとも24日間、検出可能な腫瘍がないままであった。腫瘍増殖は、研究52日目から開始して8匹のマウスのうち1匹(M3)で検出された。
【0172】
10匹のマウスのうち7匹(M1、M4、M5、M6、M8、M9、およびM10)は、研究32日目に検出可能な腫瘍がないままであり、反対側の左脇腹にCT26.WT KRas G12C E3細胞を再チャレンジした。7匹のマウスのうち6匹の元の移植部位(R)または2番目の再移植部位(L)で検出可能な腫瘍増殖は観察されなかったが、対照的に、ナイーブマウスへの同じ細胞の移植は、腫瘍形成をもたらした(データには示さず)。腫瘍形成は、研究52日目に元の移植部位で単一のマウス(M3)で検出されたが、しかしながら、再チャレンジの部位では腫瘍形成は検出されなかった。これらの結果は、組み合わせ処置動物が、少なくとも50日間持続的な完全奏効をもたらした抗腫瘍免疫記憶を呈したことを示し、KRas G12C関連がんの治療および可能な再発予防における組み合わせ療法の優位性を示した。
【0173】
本発明をその特定の実施形態と関連付けて説明してきたが、その実施形態はさらに修正が可能であり、本出願は、一般的に、本発明の原理に従った本発明の任意の変形、使用、または改変を包含することが意図され、本発明が属する技術内の既知のまたは日常的な実施の範囲に入り、上記に示されるおよび以下の添付の請求項の範囲に入る本質的な特徴に適用され得る本開示からの乖離を含むものと理解されよう。
【国際調査報告】