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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】品質を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/689 20180101AFI20221114BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221114BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20221114BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20221114BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20221114BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20221114BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20221114BHJP
【FI】
C12Q1/689 Z ZNA
C12M1/34 B
C12Q1/686 Z
C12N1/20 A
C12Q1/6869 Z
C12N15/31
C12N9/16 A
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022525372
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020085817
(87)【国際公開番号】W WO2021122389
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019134589.8
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020101487.2
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521190406
【氏名又は名称】エレクトロハエア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ハフェンブラドル,ドリス
(72)【発明者】
【氏名】ポップ,フェリクス
【テーマコード(参考)】
4B029
4B050
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB02
4B029FA12
4B050CC07
4B050KK07
4B050LL05
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QR75
4B063QS25
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AC14
4B065BA30
4B065CA54
(57)【要約】
本発明は、メタン生成古細菌の純粋株培養液において、古細菌をタイピングするとともに、コンタミナントを迅速に識別する方法であって、それにより、変異を有するバリアントを、その培養物集団から単離する方法に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレオチド配列が、配列番号l、配列番号2または配列番号3の群から選択される第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーであって、ヌクレオチド配列が配列番号4、配列番号5または配列番号6の群から選択される第2のポリメラーゼ連鎖反応プライマーと組み合わさっており、前記第1のプライマーのそれぞれ及び前記第2のプライマーのそれぞれが、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590のDNAとハイブリダイゼーションでき、前記配列番号l及び前記配列番号4、前記配列番号2及び前記配列番号5、ならびに前記配列番号3及び前記配列番号6が、前記DNAをPCR増幅するのに使用するプライマー対を構成する前記プライマー。
【請求項2】
メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する方法であって、
a.メタン生成微生物(細胞)を含む試料を得て、前記微生物からDNAを放出させるための手段及び技法を適用して、非精製DNA試料を得るか、または前記メタン生成微生物の精製DNAを含む試料を得る工程と、
b.請求項1に記載の前記第1及び第2のプライマーを含むプライマー対を用いるPCR増幅において、前記工程a.による前記非精製DNA試料または前記精製DNA試料を使用して、増幅されたDNA配列(アンプリコン)を得る工程であって、前記アンプリコンが、制限酵素認識配列を少なくとも1つ含む工程と、
c.それぞれの前記アンプリコンを精製する工程と、
d.制限断片を形成するのに十分な時間、第1の認識配列を認識する第1の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、前記工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、前記アンプリコンで、第1の消化反応を行う工程と、
e.その形成された制限断片の数及びそのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程と、
f.前記制限パターンに基づき、前記メタン生成微生物をジェノタイピングする工程と、
g.任意に、前記工程c.の精製される前記アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または前記工程d.の消化される前記アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または前記工程d.の消化反応後の前記アンプリコンもしくは少なくともその一部をシーケンシングする工程と、
を含む前記方法。
【請求項3】
h.前記第1の認識配列と部分的に重複する第2の認識配列を認識する第2の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、制限断片(消化されたアンプリコン)を形成するのに十分な時間、前記工程b.または前記工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、前記アンプリコンで、第2の消化反応を行うことによって、前記工程f.のジェノタイピングの品質管理を行う工程と、
i.その形成された制限断片の数及びそれらのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程と、
j.前記制限パターンに基づき、前記メタン生成微生物をジェノタイピングする工程と、
をさらに含む、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記株のバリアントを単離するとともに、任意に、前記株のバリアントをジェノタイピングする工程をさらに含む、請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590株を、他のMethanothermobacter thermoautotrophicus株から、またはMethanothermobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、Methanospirillium、Methanosaeta、Methanogenium、Methanoculleus及びMethanothermococcus、ならびに上記の混合物からなる群から選択される他の古細菌から識別するための、請求項2~6のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記識別が、前記アンプリコンにおける少なくとも1つのSNPに基づいており、このSNPが、前記第1及び第2の認識配列の重複配列の一部であり、前記SNPが、SNP19、SNP11及びSNP20からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記SNPがSNP19であり、前記第1の制限酵素がBamHIであり、前記第2の制限酵素がAvaIIであるか、前記SNPがSNP11であり、前記第1の制限酵素がSfcIであり、前記第2の制限酵素がBstNIもしくはECORIIであるか、または前記SNPがSNP20であり、前記第1の制限酵素がNdeIである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
所定の試料内で、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出するのに使用する品質管理キットであって、
-少なくとも1つの容器と、
-フォワードプライマーとして機能する、請求項1に記載の第1のプライマーと、
-リバースプライマーとして機能する、請求項1に記載の第2のプライマーと、
(前記第1及び第2のプライマーが、前記メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列をPCR増幅できるプライマー対を構成する)
-請求項7の1つに記載の少なくとも1つの第1の制限酵素、または少なくとも1つの第1の制限酵素及び少なくとも1つの第2の制限酵素と、
-任意に、少なくとも1つの緩衝液、例えば、溶出用緩衝液、保存用緩衝液及び/または反応用緩衝液と、
を含む前記キット。
【請求項9】
請求項4に記載の方法によって特定及び単離されるメタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590バリアントであって、SNP19、SNP11及びSNP20からなる群から選択されるSNPを少なくとも1つ含むことを特徴とする前記バリアント。
【請求項10】
前記バリアントが、Methanothermobacter thermoautotrophicus UC120910である、請求項9に従って特定されるメタン生成微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン生成古細菌の純粋株培養液中で、古細菌をタイピングして、コンタミナントを迅速に識別する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境のために、より低価格で、効率的なエネルギー供給解決策を探求することは、欧州委員会、米国の企業集団、環境団体及び政府期間、福島の悲劇的な事故の結果、電力供給のための原子力エネルギーを置き換えようと試みている日本から、新興経済国7カ国まで、世界中で、気候行動プログラムによって示された難題であり、したがって、気候変動に対処するとともに、最終的には、地球の温度を安定化させるために、加盟国によって世界的に行われている努力である。その最終目標は、低炭素なモダン経済への移行に向けて、気候変動に対処しながら、持続可能で再生可能なエネルギーに対する増大するニーズを満たすことである。
【0003】
メタンは、揮発性炭化水素の中で、炭素原子1個当たりのエネルギー密度が最も高く、その潜在的なエネルギー変換能力は、酸素の存在下での燃焼によって直接得られるか、または発電のために燃料電池を使用する他のいずれの天然ガスよりも高い。
【0004】
そのため、メタンは、天然ガスとして、持続可能かつ再生可能なエネルギー源を構成するものであり、すでに、今日では、石炭及び他の化石燃料からの置き換わりが進んでいる。しかしながら、環境への影響の大幅な削減、ならびにその生産、保管及び輸送の実効性という副次的な探求は、まだ完了していない。
【0005】
メタンを大規模開発する際の主な技術的問題点の1つは、例えば、化石天然ガス中に高レベルのコンタミナントが残っていること、すなわち、高コストな精製手順が必要であることに関するものである。さらに、メタン用の十分な貯蔵プラントの必要性、より優れた加圧格納システムに対する関連ニーズ、大量のガスの蓄積による臭気、大部分は、天然ガス中の、硫酸塩を多く含むコンタミナントに由来する臭気、爆発リスク、輸送及び貯蔵中の漏洩といった、いまだ未解決の多くの課題はいずれも、現在、メタンの開発を妨げ、遅延させている。
【0006】
しかしその一方で、メタンの潜在的なエネルギー生成能力は、グローバル市場における意義が増してきている。そのため、最近の研究では、再生可能なメタンを二酸化炭素及び水素から非常に効率的に産生できるメタン細菌、例えば古細菌を用いて、メタンを生成する方法の開発及び改良に関心が集まっている。現在、現状技術では、メタン生成微生物を用いることによって生成したメタンを含むガス組成物を濃縮する試みがいくつか説明されている。古細菌を用いて、メタンを工業生産するには、通常、例えば、Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590株(DSMZ(German collection of microorganism and cell culture)に寄託され、DSMZから入手可能である)が使用される。
【0007】
このタイプのメタン生成は、適切なバイオリアクター/セル内で行われ、インフラに乏しいいずれの状態でも、世界中で容易に立ち上げることができ、必要な原材料は、大気中に概ね存在する。最も重要なことに、このタイプのメタン生成では、概して、メタンを豊富に含み、コンタミナントの量が少なめのガス組成物が得られ、そのような組成物は、エネルギー研究システムに供給できるようになるまでの労力が少ないことが予想される。さらに、メタンをエネルギーに変換する際に扱うのは、二酸化炭素及び水のみであり、炭化水素燃料の中で、最もクリーンである。
【0008】
バイオメタンの生成を、拡張可能で信頼性の高い、確立された再生可能エネルギー源までアップグレードさせることは、特に、持続的プロセスの要件により、依然として難問であることがわかっている。
【0009】
しかしその一方で、その有望な潜在能力により、バイオメタンの大規模な利用は、その技術を採算の合う費用効率のよいものにするために、政治的及び経済的に注意深く精査されている最中であるとともに、メタンの利用は、生化学工学における最も重要な短期目標として認識されている。したがって、上記の問題点に対する有効な解決策、及びメタン生成古細菌によって行われる生成プロセスの改良が急務である。
【0010】
メタン濃縮ガス組成物の効率的な生成を可能にする重要な構成要素の1つは、はっきり識別できるメタン生成微生物株であり、この株は、相当数のパラメーターに応じて均一な挙動を特徴とするとともに、その挙動を示す。効率的なメタン生成は、この挙動均一性と関連があり、すなわち、前記培養液の純度と関連があることがエビデンスに裏付けられている。
【0011】
通常の異種培養液と同様に、純粋株から開始される培養液も、例えば過渡的なパラメーター変動により、その生活環の間に適応を起こし、その結果、培養液中に、改変された生物が現れる場合がある。天然システムの適応は通常、天然の対処機構に起因すると見られ、その培養液を改良し、周囲環境で入手可能な資源を最大限活用するように意図されているが、長期的には、適応プロセスにより、遺伝的に改変された生物の出現は、地球規模のシステムを変化させる場合がある。
【0012】
脂肪酸解析(Daria V.Dibrova,Environ Microbiol.2014 Apr;16(4):907-918、Villanueva L.et al.,Environ Microbiol.2017 Jan;19(1):54-69.doi:10.1111/1462-2920.13361.Epub 2016 Jul 7)、リボプリンティング(Clark CG,J Eukaryot Microbiol.1997 Jul-Aug;44(4):277-83)、フェノタイピングまたはPCR技法のいずれかを用いて、古細菌を正確にタイピングするための既存の方法はそれぞれ、厳密でも、正確でも、広く認められているわけでも、及び/または直接利用可能であるわけでもない。さらに、それらの方法は、微生物の属または科を識別するのを助けるのみであり、種は識別しない。さらに、それらの方法が、純粋株培養液に関して、変動するパラメーター条件下で高分解能な結果をもたらす能力は、これらの文献では、示唆も試験もされていない。
【0013】
さらに、土壌、糞便、培養液もしくはその他の類似の基材、または生態学的ニッチにおいて、メタン生成古細菌を特定するための方策は、ごく最近のものであり、それらの方策には、10年に満たないものもあり、それらの方策は、他にも理由はあるが、改良型のバイオ燃料を生成する目的で、前記基材において、二酸化炭素を固定できる微生物を区別することへの関心の高まりに起因すると見られる。さらに、複雑な環境における微生物コロニーの場合には、それらの種の相乗的挙動のために、種を区別するのが困難なことにより、不正確となり、不正確な状態が維持される場合があり、利用可能なクローンライブラリーに由来する様々な種を識別することすら、困難な作業となり得るほどである。
【0014】
特に、Cleland et al.,2008では、反復配列ベースのPCR法が試験され、このPCR法は、主に細菌用に開発され、病院及び市井での感染、コンタミネーションの起源解析、疫学的調査、古細菌のジェノタイピング及び特定に使用されるものである。彼らの論文では、成長期及び成長内容が体系的に変わらない培養液におけるメタン細菌及び高度好塩菌に焦点が当てられている。これらのパラメーターの変動が、DNAの構造的変化をいかにして誘導し得るかは周知であり、供給物及び微小環境において絶えず変動する純粋培養液に適用する際には、このようないずれの結果の信頼性にも疑問が生じ、前記純度の維持は、効率的なメタン生成プロセスの提供に優先する。
【0015】
彼らの方法では、介在する短い反復DNA領域のPCR増幅を利用して、それぞれに異なる種の古細菌を区別する。ただし、その方法は、有効性が示されているが、様々な環境で、その成分という点でばらつきの小さい培養液において作用すると報告されたことはない。
【0016】
無制御/天然の環境での異種性の予測は、確かに、それぞれに異なる種を大まかに特定及び/または区別及び/または単離する方法を促すが、制御された環境における純粋培養液に対して、標的化された高分解能なアッセイ法を提供することはできず、異種性の予測は、低めである。
【0017】
同じ種内での変異は、培養条件及び微小環境への適応により、培養全体にわたって生じる可能性がある。
【0018】
この枠組みでは、適応によって生じ、わずかな違いをもたらす、同じ種内の差異を区別及び/または単離するには、それらを厳密にターゲティングすることによって、ただし、当然ながら、そのような小さな違いがどこに存在し得るかを事前に知らずに、これらの小さな違いを特定するための極めて正確な方法が必要となるであろう。
【0019】
したがって、純粋株を用いた単培養液の迅速かつ安価な品質確保アッセイ、及び同じ種内の違いも識別可能にするのに十分な特異的なさらなる方法を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0020】
すなわち、本発明の目的は、現状技術の記載されている問題点を解消すること、特に、古細菌をタイピングして、純粋な培養株を確保するための信頼性の高い迅速かつ有効な方法を提供することである。したがって、これにより、本発明のさらなる目的は、純粋な古細菌株培養液の正常な生活環中に、その培養液を高速かつ効率的に試験することを確立することであり、動的環境において品質管理及びジェノタイピングを可能にするために、並行相互試験アプローチによって最適化することさえできる。
【0021】
流出する高純度のメタンガス組成物を依然として確保しながら、可変なガス組成を用いるメタン生成プロセスを安定化及び強化するための技術的進歩の現在の傾向においては、培養組成物の正確な品質管理が重要な役割を果たす。
【0022】
したがって、この枠組みの技術的進歩内では、本発明は、請求項に明示的に示されているように、純粋なメタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590(以下、M.thermoautotrophicus DSM3590またはM.t.DSM3590という)の存在について、効果的に試験するとともに、M.thermoautotrophicus DSM3590を他の古細菌から識別する方法に関する教示を提供する。さらに、連続的なメタン生成プロセスに関与する古細菌株培養液の所定の組成物の品質及び純度について試験する方法と、前記培養液中のバリアントを効果的にジェノタイピングすることを教示する。
【0023】
本願の目的は、本発明の請求項2に定められているように、本発明の請求項1に定められているようなPCRプライマー対を用いて、新たに開発した方法によって果たされている。さらなる実施形態は、この新たに開発した方法の変形形態、及び所定の試料内のメタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する際に用いる品質管理キットを指す。加えて、その方法は、前記キットによって特定されるとともに、その後の従属クレームに記載されいるようにして単離されるM.thermoautotrophicus DSM3590バリアントの特定を行う。
【発明を実施するための形態】
【0024】
特に、示されている目標を達成するために、本発明は、配列番号l、配列番号2もしくは配列番号3のヌクレオチド配列から選択される第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー、及び/または配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6ヌクレオチド配列から選択される第2のポリメラーゼ連鎖反応プライマーを提供し、その第1のプライマーのそれぞれ、及びその第2のプライマーのそれぞれは、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590のDNAとハイブリダイゼーションでき、配列番号l及び配列番号4、配列番号2及び配列番号5、ならびに配列番号3及び配列番号6が、M.thermoautotrophicus DSM3590のゲノムDNA配列の一部のPCR増幅に使われるプライマー対を構成する。
【0025】
本願で使用する「Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590」株は、M.thermoautotrophicus str.hveragerdiとしても知られており、DSMZ(German collection of Microorganisms and cell cultures)で市販されている。興味深いことに、この株に関しては、利用可能な配列データはないことを理解されたい。
【0026】
本発明の発明者は、多大な時間を要する現状の方法、例えば、ゲノムシーケンシング及び/またはアンプリコンシーケンシングと比べて、古細菌を含む所定の試料中のM.thermoautotrophicus DSM3590を特定するための簡易な方法を提供するという課題を自ら定めた。
【0027】
まず初めに、本発明者は、手探りの実験によって、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのに適するとともに、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列をM.t.DSM3590以外の他の古細菌のDNA配列から識別するのに適するプライマーとなるようにする目的で、様々なランダムプライマーを設計した。
【0028】
換言すると、本発明の発明者は、M.thermoautotrophicus DSM3590の種の遺伝子配列を特異的に増幅するプライマー対を開発し、そのプライマー対は、手探りの実験によって除外されるように、M.thermoautotrophicus DSM3590以外の古細菌種の遺伝子配列をPCR増幅するのには適さないので、これらの他の古細菌種から識別可能になる。すなわち、このアイデアは、これらのプライマーをPCR反応で使用することにより、古細菌DNAを含む試料中にM.thermoautotrophicus DSM3590のDNAが存在するか、かつそのDNAのみが存在するかを試験可能にするというものであった。
【0029】
驚くべきことに、試験した多数のプライマーの中から、本発明に従って開示されているプライマーは、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのみならず、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他の少なくとも1つの古細菌のDNA配列を増幅するのにも適することを本発明者は見出した。
【0030】
さらに興味深いことに、本発明のプライマーによって生成されたアンプリコンでは、Methanothermobacter-thermoautotrophicus以外の他の古細菌と比べて、また、M.thermoautotrophicus DSM3590関連の他のバリアントと比べて、そのプライマーによって増幅されたDNA配列(アンプリコン)内に、一塩基変化を含むことを本発明者は見出した。これらの一塩基変化は、本明細書で以下に示されているように、特異的な下流消化反応を用いて、M.thermoautotrophicus DSM3590をM.t.DSM3590以外の他の古細菌から、さらには、M.thermoautotrophicus DSM3590関連の他のバリアントから識別可能にすることが分かった。
【0031】
したがって、本発明によるプライマーが、メタン生成微生物の核酸配列に結合できる他の通常のプライマーとは異なるものとなる特に驚くべき効果は、同じ種内で、高い分解能で識別する能力に依存し、他のプライマーでは、その配列変化の出現元である同じ種に割り当てられることとなる配列変化を特定可能にする。
【0032】
前記PCRプライマー対は、本発明に従って、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する方法で使用し、その方法は、以下の工程を含む。
・メタン生成微生物(細胞)を含む試料を得て、その微生物からDNAを放出させるための手段及び技法を適用して、非精製DNA試料を得るか、またはそのメタン生成微生物の精製DNAを含む試料を得る工程
・請求項1に記載の第1及び第2のプライマーを含むプライマー対を用いるPCR増幅において、工程a.による非精製DNA試料または精製DNA試料を使用して、増幅されたDNA配列(アンプリコン)を得る工程であって、そのアンプリコンが、制限酵素認識配列を少なくとも1つ含む工程
・そのそれぞれのアンプリコンを精製する工程
・制限断片を形成するのに十分な時間、第1の認識配列を認識する第1の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、そのアンプリコンで、第1の消化反応を行う工程
・その形成された制限断片の数と、そのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程
・その制限パターンに基づき、そのメタン生成微生物をジェノタイピングする工程
・任意に、工程c.の精製されるアンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または工程d.の消化反応後のアンプリコンもしくは少なくともその一部をシーケンシングする工程
【0033】
本発明者は、本発明のプライマー対が、M.thermoautotrophicus DSM3590を特異的に増幅したかを試験するために、PCR増幅後に、第1の制限酵素を適用することにより、本発明の前記プライマーを用いて生成されたアンプリコンを消化反応において暴露することによって、品質管理を行った。興味深いことに、第1の認識配列を認識する第1の制限酵素は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンを消化しなかった。
【0034】
しかしながら、驚くべきことに、本発明の発明者は、M.thermoautotrophicus DSM3590の古細菌種のみを含むと思われていた試料(すなわち、その試料は、純粋な単培養株試料と考えられていた)を用いて、その所定のアンプリコンで前記制限酵素消化反応を行うことによって、M.thermoautotrophicus DSM3590の種とは無関係の制限パターンを特定した。この無関係の制限パターンにより、DSM3590のバリアント株の存在が示された。すなわち、予想外にも、ゲル電気泳動解析を用いて、1つの制限断片が見られることを本発明者は見出した。
【0035】
アンプリコンシーケンシングを含むさらなる試験によって、前記プライマーは、M.thermoautotrophicus DSM3590とは異なる他のM.thermoautotrophicus株のDNA配列も増幅できることを本発明者は見出した。
【0036】
工程f)における、M.thermoautotrophicus DSM3590であるか、またはM.thermoautotrophicus DSM3590ではないメタン生成微生物のジェノタイピングは、プライマーで増幅された産物の、消化反応後の制限パターンに基づき、目視評価できる。
【0037】
したがって、この少なくとも1つの第1の制限酵素認識配列は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンであって、制限酵素で処理した所定のアンプリコンの得られた制限パターンを、M.t.DSM3590以外の他の古細菌試料であって、同様に、特に、少なくとも1つの第1の制限酵素で処理した試料の制限パターンから識別するために、現状技術において広く知られているようなその後の制限断片長多型(RFLP)解析で使用できる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンのみでは、それぞれの未消化アンプリコンに等しいアンプリコンの制限パターンが得られるのに対して、他のM.thermoautotrophicusバリアントでは、所定のサイズの制限断片が少なくとも2つ見られ、最も理想的には、そのアンプリコンの第1の認識配列における一塩基変化により、適切な手段で、特に、ゲル電気泳動を使用した時に明白に識別されるような異なるサイズの断片が見られる。
【0039】
本発明によれば、解析対象のヌクレオチド配列の存在について後で示すことができるように、まず、ゲノムDNAのそれぞれの領域を見つけて、本発明のプライマーを用いることによって増幅する必要がある。本発明の方法の別の要件は、一塩基変化により、M.thermoautotrophicus DSM3590のみ、またはその反対に、M.thermoautotrophicus DSM3590以外(以下「非M.t.DSM3590」という)の古細菌のみに、制限酵素認識配列が存在することである。
【0040】
アンプリコンにおけるこれらの一塩基変化(「一塩基多型」(SNP)ともいう)は、進行中の実験中に、アンプリコン内の認識配列を認識する選択的制限酵素を用いて消化反応を行うのに適することが見出され、認識配列の存在は、その認識配列に含まれるこのSNPのそれぞれのヌクレオチド塩基の同一性に依存する。換言すると、このSNPの存在及びヌクレオチド同一性に応じて、その認識配列は、それぞれの制限酵素によって認識されるか、または認識されない。すなわち、その認識配列は、存在するとともに、読み取り可能であるか、または存在しない。すなわち、破壊されている。したがって、本発明による方法により、アンプリコンをさらにシーケンシングしなくても、ヌクレオチド変化の存在の証拠を直接提供可能になる。前記一塩基変化により、この方法を用いて、それぞれの古細菌株を特定することもできる。
【0041】
本発明による「一塩基多型(SNP)」とは、ヌクレオチド変化(トランスバージョンまたはトランジション)、さらには、ヌクレオチド配列における1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入のうち、概して、最終的に、ヌクレオチド配列における(少なくとも)一塩基変化を引き起こす欠失または挿入も意味する。
【0042】
本発明による方法の基礎となる方法(PCR-RFLPまたはCAPSアッセイとしても知られる)の利点の1つは、PCR産物の消化反応後、ゲル電気泳動によって、特異的な断片パターンを容易に可視化できることである。例えば、それは、例えば2つの古細菌バリアント(SNP11、SNP19またはSNP20の点で互いと異なる)の混合古細菌培養液の場合であってよく、そのSNPが、認識配列内に位置し、その2つの異なる古細菌においてそれぞれ異なる場合には、そのSNPにより、制限配列を認識する特異的制限酵素を少なくとも1つ用いて、本発明による方法を適用することによって、これらの培養液の制限パターンにおいて、ゲル電気泳動後、アガロースゲルにおいて視認可能な特異的な異なるバンドが見られる。すなわち、この方法を本発明による方法に適用することで、簡潔な視覚手段によって、容易かつ有益な形で、M.thermoautotrophicus DSM3590を他の古細菌から識別可能になるとともに、純粋な種培養液または混合培養液が存在するかを解析可能になる。
【0043】
有益なことに、前記方法では、所定の出発試料が、古細菌としてM.thermoautotrophicus DSM3590のみをそれぞれ含む純粋なM.thermoautotrophicus DSM3590培養液を含むか、または所定の出発試料が、非M.t.DSM3590古細菌も含むかもしくは非M.t.DSM3590古細菌のみ含むかを明確に特定可能であることを本発明の発明者は見出した。
【0044】
注目すべきことに、本発明の方法は、行うのが容易であり、多大な時間及び費用のかかる方法を回避することによって、メタン生成微生物を含む所定の試料において、含まれるメタン生成微生物が、M.thermoautotrophicus DSM3590のみまたは他の非M.t.DSM3590メタン生成古細菌を含むかを特定する信頼性の高い結果をもたらす。さらに、本発明の方法であれば、有益なことに、例えば全ゲノムシーケンシングのように、多大な時間及び費用のかかるシーケンシング方法を回避することによって、M.thermoautotrophicus DSM3590を特定可能であるとともに、M.thermoautotrophicus DSM3590を他のメタン生成古細菌から識別可能であり、さらには、M.thermoautotrophicusベースの他の株を特定可能である。本発明の方法の精度であれば、PCRプライマー対で生成されたアンプリコンのシーケンシングでさえも不要であるが、当然ながら、さらなる品質試験という理由から、シーケンシングを行ってもよい。
【0045】
DNAの所望の領域の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行う。本発明による「増幅」とは、核酸配列の追加のコピーを作ることと理解するものとする。増幅は概して、当該技術分野において周知のPCR技術を用いて行う。「ポリメラーゼ連鎖反応」、すなわち「PCR」は、PCRプライマーを用いて、ゲノムDNAの混合物における標的配列のセグメントの濃度を上昇させる方法である。
【0046】
本発明によれば、「プライマー」とは、核酸鎖と相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチド、及びDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下、ならびに適切な温度及びpH)に置いたときに、合成開始点として作用できるオリゴヌクレオチド(精製制限消化物におけるような天然のものであるか、合成により作製されたものかは問わない)と理解するものとする。そのプライマーは、増幅効率を最大にするには、好ましくは一本鎖であるが、その代わりに、二本鎖であってもよい。そのプライマーは、二本鎖の場合には、まず、その鎖を分離するために処理してから、伸長産物の調製に使用する。好ましくは、そのプライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。そのプライマーは、誘導剤の存在下で、伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。そのプライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、及びその方法の使用を含む多くの要因に左右されることになる。PCRプライマーは、好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド長、最も好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長である。本発明の方法で使用してよいPCRプライマーの例としては、配列番号1~6で見られるようなプライマーが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用する場合、「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」という用語は、それぞれ、「認識配列」として知られる特異的なヌクレオチド配列で、またはその配列の近傍で、二本鎖DNAを切断する細菌酵素を指す。それらは、二本鎖DNAにおいて、配列特異的な形で、1つ以上の認識配列において、二本鎖切断を作ることができる「配列特異的なDNAエンドヌクレアーゼ」である。前記DNA切断により、DNAの平滑末端、またはいわゆる「粘着」末端(5’オーバーハングまたは3’オーバーハングを有する)を得ることができる。その切断部位は、認識配列内に位置しても、または認識配列外に位置してもよい。様々な種類のエンドヌクレアーゼを用いることができる。制限酵素は、当該技術分野において周知であり、例えば、様々な供給業者(例えばNew England Biolabs,Inc.,Beverly,Massachusetts)から容易に得ることができる。同様に、制限酵素の使用方法も概ね、当該技術分野において周知かつ常法である。好ましい制限酵素は、アンプリコンを切断したときに、少なくとも2つのDNA断片を生成する制限酵素である。制限酵素を用いて得られたDNA断片は、例えば、ゲル電気泳動によって、バンドとして検出し得る。制限酵素を用いて、制限断片長多型(RFLP)を作製し得る。「RFLP」は本質的に、本発明で開示されているSNP座位を含む一片のDNA(全染色体(ゲノム)か、その一部(ゲノム領域など)かは問わない)の固有のフィンガープリントのスナップショットである。
【0048】
RFLPは、DNA分子を制限エンドヌクレアーゼで切断(「制限」)することによって生成する。このような酵素は、天然において細菌によって産生されるように、何百もが単離されている。何百もの多種多様な制限酵素はそれぞれ、すべてのDNA分子を構成する4つの基本的なヌクレオチド(A、T、G、C)からなる異なる配列において、DNAを切断(cut)(すなわち、「切断(cleave)」または「制限」)することが分かっており、例えば、ある1つの酵素は、A-AT-G-A-Cという配列のみを特異的に認識でき、別の酵素は、G-T-A-C-T-Aという配列のみを特異的に認識できるなどである。関与する特有の酵素に応じて、このような認識配列は、長さが、4ヌクレオチドほどの短さから、21ヌクレオチドもの長さまで、様々であり得る。認識配列が長いほど、制限断片は少なくなり、認識部位が大きいほど、DNA全体を通じて、認識部位が繰り返し見られる確率は低くなる。
【0049】
消化後、得られた個々の断片は、それらのサイズに基づき、互いから分離させる。
【0050】
DNAを分離するのに適するいずれの方法も、本発明の方法に含まれ、その方法としては、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、及びマイクロ流体デバイスの使用が挙げられるが、これらに限らない。
【0051】
一実施形態では、DNA断片は、アガロースゲル電気泳動によって分離する。ゲル電気泳動では、異なるサイズの帯電分子が、電流の影響下で、固定ゲルを移動する速度によって、それらの帯電分子を分離する。分離されたこれらのDNA断片は、例えば、エチジウムブロマイドで染色することによって、及びUV照射下でゲルを見ることによって、容易に可視化できる。そのバンドパターンには、制限消化されたDNAのサイズが反映される。
【0052】
M.thermoautotrophicus DSM3590を検出もしくはジェノタイピングするか、またはM.thermoautotrophicus DSM3590をM.thermoautotrophicus DSM3590のバリアントから識別するために、本発明の新規SNPを用いるその他の方法も、本明細書に教示されている。これらの方法には、本発明の核酸分子をプローブとして用いるか、または本発明の開示されているヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションできる核酸分子を用いるハイブリダイゼーション方法が含まれる。例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)を参照されたい。ハイブリダイゼーション技法を用いるこのような方法は、当業者には周知であり、本発明に援用される。これらの方法としては、サザンブロット、移動度シフトアッセイ及び蛍光In Situハイブリダイゼーション(FISH)のような、当業者に周知の技法が挙げられるが、これらに限らない。
【0053】
ハイブリダイゼーション技法では、ハイブリダイゼーションプローブ(複数可)は、ゲノムDNA断片、PCR増幅産物またはその他のオリゴヌクレオチドであってよく、本明細書に開示されている既知のヌクレオチド配列の全部または一部を含んでよい。加えて、そのプローブは、32Pのような検出可能な基、またはその他の放射性同位体、蛍光化合物、酵素もしくは酵素補因子のようないずれかの他の検出可能なマーカーで標識してもよい。プローブに関しては、「標識する」という用語には、検出可能な基質をプローブに結合する(すなわち、物理的に連結する)ことによって、プローブを直接標識すること、及び直接標識されている別の試薬との反応性によって、プローブを間接的に標識することが含まれるように意図されている。間接標識の例としては、DNAプローブの末端をビオチンで標識して、蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるようにすることが挙げられる。
【0054】
上に開示されているようないずれかのハイブリダイゼーション技法を含む方法は、それぞれのM.thermoautotrophicus DSM3590を単離するか、またはそれぞれのバリアントを単離するのにも使用してよい。
【0055】
本願による「試料」とは、現状技術で報告されているように、例えば、寄託されている微生物集団に由来し、及び/またはその代わりに、相当数の環境源から得られる液体状または固体状のメタン生成古細菌供給源が意図されている。概して、メタン生成微生物の環境源の例としては、嫌気性の土壌及び砂地、沼地、湿地、低湿地、河口、密集した藻礁、陸及び海洋の両方の泥及び堆積物、例えば、干潟堆積物の表層下、深海及び深井戸の底、汚水、有機廃棄物置き場及び処理施設、ならびに動物の腸管及び糞便が挙げられる。さらに、メタン生成古細菌を含む「試料」は、稼働しているバイオリアクター、すなわちバイオプロセス発酵の液相から直接得られる試料であることができる。
【0056】
本発明の理解においては、バイオリアクターとは、生物反応槽を表し、現状技術においても意図されているように、例えば温度及び/または圧力などの変化に耐えることができ、及び/または例えば、付与されたいずれかの値の温度及び/または圧力が割り当てられても、あるいは、その温度及び/または圧力を維持しなくてはならなくても、反応プロセスの前、後または最中に、その温度及び/または圧力を維持できる生物反応容器、生物反応用エンクロージャーもしくは生物反応タンク、及び/または少なくとも生物反応用チャンバー及び/またはセル、あるいはこれらを組み合わせたもののいずれかであり、本発明を実施するのに適する目的の反応を行うことができるものである。このような反応は、微生物が関与する反応の範囲に関連するので、生物反応として理解され、本明細書では、反応を起こすためには適切な環境、微生物の適切な培養、適切な培養培地及び適切な反応基質を必要とする正常な生理作用、例えば、代謝発酵、好気性消化または嫌気性消化などを指す。バイオリアクターは、本発明の意味においては、開示されているような方法を可能にするために、各変数の許容値内で確実に作動し、列挙されている工程を確実に、経時的に実施可能にすると予想される。
【0057】
本発明の実施形態では、その方法は、工程d.の精製アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または工程e.の消化反応後のアンプリコンもしくは少なくともその一部をシーケンシングする工程をさらに含む。この工程は、上述のように、本発明の方法による結果をさらに検証するために、任意に行うことができる。
【0058】
本発明の実施形態によれば、その方法は、工程a.による、メタン生成微生物を含む試料に対して、凍結及び解凍サイクルを少なくとも1回を行って、そのメタン生成微生物からDNAを放出させる工程をさらに含む。すなわち、そのメタン生成微生物からDNAを放出させるための手段及び技法を適用してから、前記方法の工程b.に従って、PCR反応を行うことも可能である。単細胞メタン生成微生物を含む細胞から、DNAを放出させるための他の手段及び技法は、当業者に周知であり、本発明に含まれる。本発明の方法による、さらなるPCR反応のために、このアプローチから生成させた非精製DNAを使用することにより、多大な時間及び費用のかかる精製が省かれる利点が得られる。しかしながら、その後の反応における障壁及びリスクは依然として、DNAの量が、非精製DNA試料において算出されないこと、DNAseが存在して、その試料をゲノムDNAを活発に消化し得ることであり得る。しかしながら、新鮮な細胞試料を使用して、DNAの調製を常に氷上で行うことによって、これらの要因を制御して、最小限に抑えることができる。当然ながら、さらに、その後の反応(例えばPCR)の成分を妨げないDNAse阻害剤をこれらの試料に加えること、及び/または当業者に知られている適切な現状技術の方法を用いて、DNAの量を算出することが可能である。
【0059】
本発明の方法の別の実施形態によれば、その方法は、以下の工程をさらに含む。
・第1の認識配列と部分的に重複する第2の認識配列を認識する第2の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、制限断片を形成するのに十分な時間、工程b.または工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、そのアンプリコンで、第2の消化反応を行うことによって、工程f.のジェノタイピングの品質管理を行う工程
・形成された制限断片の数と、それらのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程
・その制限パターンに基づき、そのメタン生成微生物をジェノタイピングする工程
【0060】
その第2の認識配列は少なくとも、その古細菌株のアンプリコンのうち、そのアンプリコンの第2の認識配列における一塩基多型(SNP)により、第1の消化反応において、第1の制限酵素によって切断されなかったアンプリコンに存在する。すなわち、その第2の認識配列は、少なくともM.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンに、または少なくとも非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンに存在する。
【0061】
本発明の実施形態によれば、その第2の認識配列は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンの両方に存在する。
【0062】
別の実施形態では、その2の認識配列は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンの第2の認識配列における一塩基多型(SNP)により、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンのみに存在し、したがって、その第2の制限酵素は、M.thermoautotrophicus DSM3590に由来するアンプリコンのみを消化することに基づき選択する。
【0063】
驚くべきことに、M.thermoautotrophicus DSM3590の制限パターンと無関係の制限パターンを特定後、前記第2の消化反応を行うことによって、見出された前記バリアントをM.thermoautotrophicus DSM3590からさらに識別するのに有用な制限パターンが得られることを本発明者は見出した。
【0064】
任意に、増幅DNA(アンプリコン)に基づくジェノタイピング工程、例えば、そのアンプリコンまたはバリアントのアンプリコンの少なくとも一部のシーケンシングによって測定される工程をその後に適用することもできる。
【0065】
M.thermoautotrophicus DSM3590に関連する、この見出されたバリアントは、それぞれ、前記増幅DNA(アンプリコン)に基づき、前記バリアント株を任意にジェノタイピングした後に、公共の配列データベースに見られる配列と比較して、本発明の方法の工程i.)による制限パターンに基づき、そのメタン生成微生物のジェノタイピングを確認することによって明確に特定し、及び/または特徴付けることができる。さらに、所定の制限酵素を用いた場合の、所定のDNA配列における制限部位を予測可能にする公的に入手可能なプログラムを、シーケンシングしたアンプリコンに適用して、有益なことに、本発明者が見出した観察済みの前のサイズ依存的制限パターンをさらに証明してよく、すなわち、別の品質管理を可能にしてよい。
【0066】
本発明の意味における「品質管理」または「品質アッセイ」とは、培養液内の種/株の純度を評価するために、培養液内の種/株の同一性を慎重かつ体系的に制御または確認することを指す。本発明によれば、種/株の純度とは、前記培養物の全個体のゲノムが、同じ単一種/株培養物の個体全体にわたって、比較的同一であることを意味する。概して、「比較的同一である」とは、ゲノムのヌクレオチド配列の同一性が少なくとも95%、96%、97%もしくは98%であるか、または同一性が少なくとも98%もしくは99%であることが意図されている。アンプリコンとしての、DNAのごく一部をシーケンシングする方法は、当業者に周知であり、その方法としては、例えばサンガーシーケンシングが挙げられる。
【0067】
驚くべきことに、別の実施形態によれば、本発明者は、さらなる工程において、現状技術の一般的な方法を用いて、見出された前記バリアント株を単離することさえできる。前記バリアントは、さらなる工程において、例えば、ゲノムDNAまたはその少なくとも一部のシーケンシングによって評価された、そのバリアントのゲノムDNAの比較に基づき、任意にジェノタイピングできた。
【0068】
すなわち、本発明の方法によって、本発明者は、UC120910株と命名されたM.thermoautotrophicusを特定できた。本願で使用した「Methanothermobacter thermoautotrophicus UC120910株」という株は、同義語として、ECH0100(ラボでの名称)とも呼ばれる。
【0069】
さらなる実施形態によれば、本発明の方法を用いて、M.thermoautotrophicus DSM3590株と、他のM.thermoautotrophicus株、または例えば、Methanothermobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、Methanospirillium、Methanosaeta、Methanogenium、Methanoculleus及びMethanothermococcusもしくは上記の混合物からなる群の他の古細菌に由来する株とを識別する。
【0070】
場合によっては、古細菌の培養物は、培養を行ってきた特定の条件に応答して、自然に改変されることがある。培養条件は、温度、pH、圧力、細胞密度、体積、湿度、塩含有量、伝導率、炭素含有量、窒素癌流量、ビタミン含有量、アミノ酸含有量、鉱物含有量またはこれらの組み合わせなど、いくつかのパラメーターによる影響を受け、これらの条件のそれぞれに従って、リアクター環境内で、いずれかの数の種が、所定の適応プロセスを起こし得る。
【0071】
特定の純粋株を使用する利点は、メタン生成効率の上昇に依存し、したがって、その純度が維持されるように、経時的にその同一性を調べることに依存する。本発明で提供する方法は、株を識別するのに非常に適しており、すなわち、純粋な培養液を確保し、したがって、高いメタン生成効率を維持するのに適している。
【0072】
一実施形態によれば、提供する方法は、アンプリコンにおける少なくとも1つのSNPに基づき、様々な株を識別し、このSNPは、第1の制限酵素の第1の認識配列と第2の制限酵素の第2の認識配列の重複配列の一部であり、そのSNPは、SNP19、SNP11及びSNP20から選択される群から選択される。
【0073】
本願の文脈では、「SNP19」とは、配列番号3(フォワードプライマー)及び配列番号6(リバースプライマー)のプライマー対によってPCR増幅した、非M.t.DSM3590古細菌のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)における418位の一塩基多型(同じプライマー対によって増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590の418位のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)と比べた場合)として理解する。
【0074】
本発明の一実施形態では、非M.t.DSM3590古細菌は、M.thermoautotrophicus UC120910であり、その一塩基多型は、対応するアンプリコンにおける、GからAへのトランジション変異である。
【0075】
本願の文脈では、「SNP11」とは、プライマー対、すなわち、配列番号1(フォワードプライマー)及び配列番号4(リバースプライマー)によってPCR増幅した、非M.t.DSM3590古細菌のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)における105位の一塩基多型(プライマー対、すなわち、配列番号1(フォワードプライマー)及び配列番号4(リバースプライマー)によってPCR増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590の105位のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)と比較した場合)と意図されている。
【0076】
本願の文脈では、「SNP20」とは、プライマー対、すなわち、配列番号2(フォワードプライマー)及び配列番号5(リバースプライマー)によってPCR増幅した、非M.t.DSM3590古細菌のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)における168位の一塩基多型(プライマー対、すなわち、配列番号2(フォワードプライマー)及び配列番号5(リバースプライマー)によってPCR増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590の168位のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)と比較した場合)と意図されている。
【0077】
本発明の実施形態では、特定された非M.t.DSM3590古細菌は、一塩基多型として、一塩基欠失変異を有する。
【0078】
別の実施形態によれば、3つのSNP、すなわち、SNP19、SNP11及びSNP20も、上記のような識別のために、補完的に使用してよく、したがって、本発明による方法は、前記識別のために、SNP19、SNP11及びSNP20を併用してよい。相反する結果が生じ、それぞれのSNPに関する一方の結果が、もう一方の結果と異なる場合には、解析対象の試料に含まれる古細菌株をジェノタイピングするために、該当するアンプリコンのシーケンシングを行ってよい。
【0079】
別の実施形態によれば、そのSNPがSNP19である場合、第1の制限酵素は、BamHIであり、第2の制限酵素は、AvaIIである。さらに別の実施形態では、そのSNPがSNP11である場合、第1の制限酵素は、SfcIであり、第2の制限酵素は、BstNIもしくはECORIIであり、またはそのSNPがSNP20である場合には、第1の制限酵素は、NdeIである。
【0080】
さらなる一実施形態によれば、本発明の方法で特定される非M.t.DSM3590バリアントは、M.thermoautotrophicus UC120910と命名されている。
【0081】
本発明のさらなる態様では、所定の試料内で、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出するのに使用する品質管理キットであって、
-少なくとも1つの容器と、
-フォワードプライマーとして機能する、請求項1に記載の第1のプライマーと、
-リバースプライマーとして機能する、請求項1に記載の第2のプライマーと、
-(その第1及び第2のプライマーが、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列をPCR増幅できるプライマー対を構成する)
-本発明による少なくとも1つの第1の制限酵素、または少なくとも1つの第1の制限酵素及び少なくとも1つの第2の制限酵素と、
-任意に、少なくとも1つの緩衝液、例えば、溶出用緩衝液、保存用緩衝液及び/または反応用緩衝液と、任意に、
-使用説明書と、
を含むキットを提供する。
【0082】
特に、その品質管理キットは、メタン生成微生物の培養液のプロービング及びジェノタイピングで使用するように意図されている。
【0083】
そのキットに含まれているような制限酵素は、RFLP解析で用いるのに最適である。
【0084】
そのキットは、含まれる試験試料に対してアッセイ及び比較できる1つのコントロール試料または一連のコントロール試料(ポジティブコントロール及びネガティブコントロール)も含んでよい。そのキットの各成分は通常、個別の容器に収容されており、その各種容器のすべてが、使用説明書とともに、1つのパッケージ内に入っている。そのキットは、保存剤またはタンパク質安定化剤も含んでよい。
【0085】
第1及び第2の制限酵素は、AvaII、BamHI、BstNI、NdeI、SfcI及びEcoRIIからなる群から選択されている。
【0086】
総合すると、本発明によるキットによって提供されるような3つのSNP試験は、補完的に使用してもよく、したがって、並行して行ってよい。相反する結果が生じ、一方のアッセイのが、もう一方のアッセイと異なる場合には、解析対象の細胞試料に含まれる古細菌株をジェノタイピングするために、各ケースにおいて、該当するアンプリコンのシーケンシングを行う必要がある。
【0087】
別の態様では、本発明は、本発明によるキットによって特定され、単離されるメタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590バリアントに関するものである。
【0088】
この点では、本発明による方法は、ある1つの特定のバリアント(M.thermoautotrophicus UC120910と命名されている)を特定するのにも適していると証明されている。
【0089】
参照文献
Dibrova DV,Galperin MY,Mulkidjanian AY..Phylogenomic reconstruction of Archaeal fatty acid metabolism.Environ Microbiol.2014 Apr;16(4):907-18.doi:10.1111/1462-2920.12359.Environ Microbiol.2017 Jan;19(l):54-69.
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Huang,Q.,Baum,L.,Fu,W.-L.(2010).Simple and practical staining of DNA with GelRed in agarose gel electrophoresis.Clinical laboratory 56/3-4,149-152.
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】SNP11及びSNP20アンプリコンにおいて、55℃~70℃の試験アニーリング温度を用いた温度勾配PCRを介して生成されたPCR産物の電気泳動の結果を示すアガロースゲルである。
図2】SNP19プライマー(レーン9~15)の最適なアニーリング温度を求めるために、温度勾配PCRを介して生成されたPCR産物の電気泳動の結果を示すアガロースゲルである。SNP19アンプリコンの結果は、左側から右側に向かって、アニーリング温度を上昇させてプロットしたものである。スペース上の理由から、SNP19プライマーのネガティブコントロールは、別のゲルに加えた。
図3】アッセイ感度を調べたものである。様々な希釈度(1:10、1:50及び1:100)の出発DNA溶液547ng/μlをPCRテンプレートとして用いるとともに、それぞれのネガティブコントロール(「NTC」レーン)を用いて、SNP11、SNP19及びSNP20を増幅するすべてのプライマーで、PCRを行った。
図4】PCRの初期テンプレートとして精製ゲノムDNA試料を用いたSNP19アンプリコンの消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンをBamHI制限酵素と2時間インキュベートしてから、NTC(N)及び未処理のPCRアンプリコンとともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用したマーカー(M)は、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。消化反応においてNEBufferを用いたところ、非M.t.DSM3590古細菌試料に由来するアンプリコンの、予測された消化反応は生じず、アンプリコンは切断されなかった。しかしながら、NEBufferからCutSmart緩衝液に交換したところ、予測された結果が得られた。すなわち、非M.t.DSM3590古細菌試料に由来するアンプリコンが切断され、ゲル上ではっきりと見えた。
図5】PCRの初期テンプレートとして精製ゲノムDNA試料を用いたSNP11アンプリコンの消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンをSfcI制限酵素と2時間インキュベートしてから、NTC及び未処理のPCRアンプリコンとともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用したマーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。
図6】PCRの初期テンプレートとして精製ゲノムDNA試料を用いたSNP20アンプリコンの消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンをNdeI制限酵素と2時間インキュベートしてから、NTC(N)及び未処理のPCRアンプリコンとともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用したマーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。
図7】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP19アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをBamHIまたはAvaIIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ノーテンプレートコントロール(NTC、DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用した分子マーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。
【数1】
図8】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP19アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをBamHIまたはAvaIIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ネガティブコントロール(DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用した分子マーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。SNP19アンプリコンをBamHIで消化後、特異的なバンドが得られた。精製DNA試料、及び新鮮な細胞調製物に由来する非精製DNA試料のそれぞれにおいて、SNP19アンプリコンをAvaIIで消化後、非特異的なバンドが得られた。
【数2】
図9】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP20アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをNdeIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ネガティブコントロール(DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。細胞試料に由来するUC120910株の非精製DNAを用いたアプローチは、UC120910ポジティブコントロールと同様である。それぞれのアンプリコンは、不完全に消化されたに過ぎなかった。
【数3】
図10】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP11アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをSfcIまたはBstNIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ネガティブコントロール(DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用した分子マーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。結果:M.thermoautotrophicus UC120910の非精製DNA試料を用いたSNP11の消化反応解析の結果は不正確であった。2~4列目の、UC120910細胞に由来する試料は、同じパターンがECHOポジティブコントロール(バツが付された矢印)と同じではない。その代わりに、そのバンドパターンは、ポジティブコントロールと同様である(矢印)。
【数4】
【実施例
【0091】
下記の実施例には、記載されている方法を意図した通りに行う実用的な方法が例示されており、本発明をそれらの実施例に限定するようには意図していない。
【0092】
一般的部分
本発明の発明者は、多大な時間を要する、現状技術の方法、例えば、ゲノムシーケンシング及び/またはアンプリコンシーケンシングと比べて、古細菌を含む所定の試料中のM.thermoautotrophicus DSM3590を特定するための簡易な方法を提供するのを目標としている。
【0093】
すなわち、本発明者は、プライマーが、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのに適するとともに、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他の古細菌のDNA配列から識別するのに適するものとなるように、多くのプライマーを設計して、手探りの実験によって、それらを解析した。
【0094】
驚くべきことに、本発明によるプライマーは、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのみならず、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他のいくつかの古細菌も増幅することを本発明者は見出した。さらに興味深いことに、本発明のプライマーによって生成されるアンプリコンには、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他の古細菌及び他のM.thermoautotrophicus DSM3590バリアントに対する一塩基変化が含まれることを本発明者は見出した。そのアンプリコンにおけるこれらのいわゆるSNPはその後、そのアンプリコン内の認識配列を認識する選択的制限酵素を用いて、消化反応を行うのに適することが分かり、認識配列の存在は、その認識配列に含まれる、このSNPのそれぞれのヌクレオチド塩基の同一性に依存する。換言すると、このSNPの位置に、所定のそれぞれのヌクレオチド塩基が存在することに応じて、その認識配列が、それぞれの制限酵素によって認識されるか、または認識されない。すなわち、それぞれのSNPの存在に応じて、その認識配列は、存在するとともに、その制限酵素で読み取り可能であるか、または読み取り不能である(破壊されている)。したがって、本発明による方法により、アンプリコンをさらにシーケンシングしなくても、ヌクレオチド変化の存在の証拠を直接提供可能になる。前記一塩基変化により、この方法を用いて、それぞれの古細菌株を特定することさえもできる。
【0095】
試験したすべてのアガロースゲルでの染色は、100倍濃縮したGelRed(Biotium,Fremont,USA)を用いて、Huang et al.,2010の方法を使用して行った。その際、ゲルローディング緩衝液に、100倍濃縮したGelRedを加えてから、それぞれの試料及び使用するサイズマーカー(Gene Ruler 50 bp DNA ladder、Fisher Scientific,Schwerte,Germany)と混合した。
【0096】
本発明に従って設計したプライマーのヌクレオチド配列は、表1に示されている。
【表1】
【0097】
最初に、すべてのアッセイを同時に行えるように、本発明のプライマー対を用いるすべてのPCR反応用に、同じ実験条件を有する共通のプロトコールを作成することを試みた。まず、精製ゲノムDNAを純粋なM.thermoautotrophicus DSM3590及び非M.t.DSM3590古細菌から抽出した。得られた調製物のDNAの濃度を光度測定によって求めた。第1の工程として、PCRで最良の結果が得られるテンプレートの量を実験で求めた。最良の結果が得られたのは、10~20ngのDNAを用いた場合であったが、それよりも有意に低いかまたは高い濃度でも、テンプレートの増幅が成功する場合もあった。プライマーのいずれの組み合わせでも、予測されたサイズの断片が得られた(表1を参照されたい)。
【0098】
使用したDNAポリメラーゼは、AccuPOLポリメラーゼであった。その3’→5’エキソヌクレアーゼ活性により、挿入されたヌクレオチドをスクリーニングできる。プルーフリーディング活性により、エラー率は、現状技術で報告されているように、増幅複製当たりの1塩基当たり1.1×10-6となる。その精度は、Taq DNAポリメラーゼよりも高い。Taq DNAポリメラーゼのエラー率は、現状技術で報告されているように、8.0×10-6である。AccuPOLポリメラーゼのプロトコールに基づき、表2によるマスターミックス調合物を使用する。
【表2】
【0099】
実験的なアーチファクトの形成を回避するために、最も長いアンプリコンの増幅に影響を及ぼさずに、伸長時間を可能な限り短縮した。増幅に必要な総時間を最小限に抑えるために、1サイクル当たり及び初期変性時の変性時間も短縮した結果、時間が有意に節約された。PCRの収率及びストリンジェンシーを向上させるために、すべてのプライマーにおいて、温度勾配PCRを行った。例として、図1には、SNP11及びSNP20の結果が示されており、図2には、SNP19の結果が示されている。SNP11及びSNP19を増幅するプライマーでは、57.5℃のアニーリング温度でのPCRによって、最も強いバンドが得られた。注目すべきことに、SNP19を増幅するプライマーでは、その前の55.1℃というアニーリング温度においては、弱いバンドしか得られなかった。
【0100】
SNP20を増幅するプライマーは、70.1℃という最も高い温度で最も機能した。PCR産物/温度勾配の明らかな量が存在していた。55.1℃では、ゲル上にバンドが見えなかった。アニーリング温度が上昇するにつれて、バンドの強度も上昇した。
【0101】
続いて、実験によって求めた理想的な反応条件を、標準的なプロトコールにおいて、それぞれのプライマーのすべてに適合させた。すなわち、SNP11及びSNP19を増幅するプライマーでは、アニーリング温度を57.1℃とし、SNP20を増幅するプライマーでは、アニーリング温度を70.1℃とした。
【0102】
PCR反応の特異性をさらに向上させるために、求めた理想的なアニーリング温度が許容される限りにおいて、すべてのアッセイにおいて、タッチダウンプログラムを確立した(SNP20の場合には許与されなかった)。このプログラムでは、サイクルごとに、アニーリング温度を1℃低下させていき、その後、最終的な伸長温度で、数回のサイクルにわたって、さらに増幅させる。
【0103】
SNP11を増幅するためのプライマー対(配列番号l(フォワードプライマー)、配列番号4(リバースプライマー))及びSNP19を増幅するためのプライマー対(配列番号2(フォワードプライマー)、配列番号5(リバースプライマー))におけるタッチダウンPCRのパラメーターが表3に示されている。
【表3】
【0104】
SNP20を増幅するためのプライマー対(配列番号3(フォワードプライマー)、配列番号6(リバースプライマー))は、最適アニーリング温度が70℃である。したがって、タッチダウンPCRは実行不可能である。すなわち、新たなアニーリング温度を表4の改良型PCRプログラムに組み入れた。各工程の継続時間及びサイクル数は変更されていない。SNP20を増幅するためのPCRプログラムは、表4に記載されている。
【表4】
【0105】
上記で確立したPCRプロトコールを用いて、DNAテンプレートの希釈系列を作製することによって、アッセイの感度を調べた。未希釈のDNAテンプレートの元の濃度を光度測定によって求めたところ、547ng/μlであった。このDNA溶液から、1:10、1:50及び1:100の希釈液を作製し、これらの溶液をそれぞれ、異なる組み合わせのプライマーによるPCRアプローチで、テンプレートとして使用した(図3)。
【0106】
2つの異なるアッセイ(SNP11、SNP19)において、使用したテンプレートの量にかかわらず、一貫して、信頼性の高い結果が得られた。SNP19アッセイの場合のみ、テンプレートの希釈度が上昇すると、アンプリコンの収量が減少した。これらの結果に基づき、さらなる実験のすべてにおいて、初期設定として、ポジティブコントロールに、約5ngのゲノムDNAをテンプレートとして使用し、SNP19 PCRのみに、約50ngのテンプレートを初期設定として使用した。
【0107】
PCRアンプリコンの消化:試験及び最適化
使用した制限酵素はすべて、New England BioLabs(Frankfurt am Main)から購入した。増幅プロトコールの最適化後、選択した制限酵素を第1の消化反応で試験したところ、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNAを用いて生成させたアンプリコン(未消化のままであるはずである)は特異的に切断されなかった。
【0108】
一連の予備的実験によって、確実な消化反応には、PCRアンプリコンの精製が必要となることが明らかになった(データは示されていない)。アンプリコンの精製は、制限消化の前に、塩、プライマー、ヌクレオチド及びその他の阻害物質を除去するために必要である。この目的のために、まず、様々な精製キットを試験した(例えば、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen,Hilden,Germany)及びRoti-Prep PCR精製キット(Carl Roth,Karlsruhe,Germany))。それらのキットの比較により、試験した製品のいずれでも、比較的良好な精製最終産物が得られることが示されたので、それ以降、初期費用の最も低いキット(GF-1 PCR Clean-up Kit(GeneOn,Ludwigshafen,Germany))を使用した。
【0109】
第1の工程では、すべての消化反応を試験し、精製ゲノムDNAをPCRテンプレートとして用いて調製したアンプリコンで最適化した。第2の工程では、非精製細胞試料を用いて生成したアンプリコンで、確立した消化反応をトリプリケート(n=3)でアッセイした(下記を参照されたい)。
【0110】
消化反応の性能
本発明の設計済みプライマーによって生成したアンプリコンを第1の消化反応で使用した。試験試料は、上記と同じであった。すなわち、一方は、M.thermoautotrophicus DSM3590から抽出した精製ゲノムDNA(適用される制限酵素(複数可)の認識配列を、本発明の所定のプライマーによって増幅されるDNA配列内に有さない)、もう一方は、古細菌(非M.t.DSM3590古細菌)から抽出した精製ゲノムDNA(適用される制限酵素(複数可)の認識配列を、増幅されるDNA配列内に有する)であった。それぞれのノーテンプレートコントロール(NTC)(ネガティブコントロールともいう)には、それぞれのSNP特異的なマスターミックスを含めたが、DNAテンプレートの代わりに水(HO)を含めた。
【0111】
各アンプリコンテンプレートを、アンプリコンに特異的な酵素のそれぞれによって消化した。メーカーの指示に従って、制限反応を行った。メーカー(New England Biolabs)に従って、DNAの分解を誘発せずに、試料を5~15分(だたし、一晩でもよい)インキュベートできる。2時間というインキュベート期間を(最初は)選択した。好ましくは、消化反応は、サーモサイクラーまたはインキュベーター(37℃)で行う。
【0112】
SNP19
まず、メーカーによって推奨されているように、SNP19 PCR産物のBamHIによる消化をNEBuffer3.1において行ったが、M.thermoautotrophicus DSM3590及び非M.t.DSM3590古細菌ゲノムDNAに由来するアンプリコンの両方とも、消化反応後、未消化のままであった。インキュベート時間を4時間、最大で一晩まで増やしても、インキュベートによって、結果は改善されなかった。さらなる試験では、NEBuffer3.1に加えて、CutSmart緩衝液(New England Biolabs,Frankfurt am Main,Germany)を使用し、メーカーに従ったところ、その酵素の100%の活性が得られた。非M.t.DSM3590古細菌のゲノムDNAの場合、この代替的な緩衝液によって、わずか2時間後に、対応するPCR産物が加水分解された(図4を参照されたい)。したがって、SNP19及び制限酵素BamHIを用いるさらなる実験では、CutSmart緩衝液を使用した。
【0113】
SNP11
予想通り、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製ゲノムDNAで生成されたアンプリコンのケース(ポジティブコントロール)では、アンプリコンの制限反応は起こらず、アガロースゲルにおいて検出された断片の長さは、その消化反応において最初に適用した完全長PCR産物のサイズに対応するものであった。しかしながら、試料が、所定の精製非M.t.DSM3590古細菌であった場合には、予想通り、精製SNP11 PCR産物のゲノムDNAをSfcIで消化した反応では、非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンが、異なる長さの2つの断片(約200bp及び約100bp)に切断されたことが明らかになった。この断片は、ゲル電気泳動後、適用したアガロースゲル上ではっきりと目視で識別可能であった(図5を参照されたい)。
【0114】
SNP20
SNP11アンプリコンの消化と同様に、SNP20 PCR産物の消化反応を制限酵素NdeIによって行った(図6)。M.thermoautotrophicus DSM3590アンプリコンは、制限酵素NdeIとインキュベート後、未消化のままであった。すなわち、未処理のPCR産物と同じサイズであった(約325bp)。しかしながら、試料が、所定の非M.t.DSM3590古細菌の精製ゲノムDNAであった場合には、精製SNP20 PCR産物をNdeIで消化反応させたところ、DNA生成アンプリコンが、異なる長さの2つの断片に切断されたことが明らかになった。この断片は、ゲル電気泳動後、使用したアガロースゲル上で、はっきりと目視で見ることができた(図6を参照されたい)。
【0115】
事前にDNAを精製せずに、稼働中のバイオリアクターに由来する新鮮な古細菌細胞試料を用いた、設計したプライマーの試験
3つのSNPの検出反応のプロトコールを確立した後、次の工程では、稼働中のバイオリアクターの細胞試料に由来する新鮮な生細胞のDNAをPCR増幅のテンプレートとして使用し、本発明の方法に従って調製した。バイオリアクター細胞試料の細胞は、凍結(-80℃)及び解凍サイクルの反復によって機械的に破壊したのみであり、それにより、DNAを放出させた。放出されたゲノムDNA(非精製DNA)の量は、精製DNA用に事前に作成したプロトコールを用いた場合と匹敵するPCR産物収量を得るのに十分であった(データは示されていない)。本発明による方法を用いると、有益なことに、現状技術の方法における、多大な時間を要する、ゲノムDNAの単離を、この実験では省くことができた。生成されたアンプリコンのその後の消化反応は、事前に調べた試料と同様であった。PCRに精製DNAを使用するときよりも、バイオリアクターの新鮮な細胞試料に由来するDNA(PCRを適用する前に精製しない)を使用するときの方が、消化反応が不完全である傾向が幾分大きいことが観察されたに過ぎなかった。
【0116】
アッセイの信頼性の評価
試験プロトコールの最適化後、株の特定試験の信頼性を調べた。この目的のために、3つのSNPアンプリコンのすべてのPCR増幅及び消化反応を独立して、3日連続で試験した。特定する試料として、稼働中のバイオリアクター実験に由来する古細菌細胞を使用し、これらの細胞は、純粋なM.thermoautotrophicus DSM3590と考えられた。すべてのプライマー対を、上記の条件下で試験した。ポジティブコントロールは、一方では、M.thermoautotrophicus DSM3590の抽出済み精製DNA(適用される制限酵素の認識配列を、本発明の所定のプライマーによって増幅されるDNA配列内に有さない)であり、もう一方では、非M.t.DSM3590古細菌の所定の抽出済み精製DNA(適用される制限酵素の認識配列を、増幅されるDNA配列内に有する)であった。ネガティブコントロール(ノーテンプレートコントロール、NTC)には、テンプレートの代わりに、水を含めた。
【0117】
SNP19
驚くべきことに、稼働中のバイオリアクターから回収した古細菌細胞試料に由来するアンプリコンは、適用した制限酵素BamHIによる消化反応において、少なくともある程度、2つの断片に切断された(図7、レーン3を参照されたい)が、予想どおり、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製ゲノムDNAに由来するアンプリコンは、未消化のままであった(図7、レーン10を参照されたい)ことを本発明の発明者は見出した。これが、実験的なアーチファクトであることを除外するために、新たに調製した反応成分、及び新たに調製したゲノムDNAであって、前記バイオリアクターの別の試料から回収したゲノムDNAでも、実験を数回繰り返したとともに、精製形態でも試験した(データは示されていない)。それでも、全例で、結果は以前と大体同じであった。すなわち、消化反応後、アンプリコンは明らかに、少なくともある程度、約400bp及び約100bpという2つの別々のサイズの断片に切断されたが、適用されたアンプリコンのいくつかは、アガロースゲル上に見られるように、未消化のままである場合もあった(約500bp)(図7、レーン3を参照されたい)。上記の非精製試料の代わりに、稼働中のバイオリアクターの前記古細菌細胞試料から回収した、それぞれの精製DNA試料を用いた場合にも、消化反応後に、これらの2つの制限断片が得られ、実験的なアーチファクトであることがさらに除外された(データは示されていない)。
【0118】
この予想外の結果をさらに解析するために、本発明者は、BamHIの代わりに、別の制限酵素、すなわちAvaIIを使用した以外は、BamHIによる実験用に以前に非精製DNAアプローチから得た同じアンプリコン試料を用いて、別の並行消化反応を行った。これにより、図7のレーン2、6及び9で見ることができるような制限パターンが明らかになった。バイオリアクター細胞試料に由来するSNP19アンプリコン(約500bp)が切断されて、良好に識別可能な3つの異なるサイズの制限断片(約320bp、約130bp、約50bp。図7のレーン2を参照されたい)が得られた。さらに、予想通りに、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製ゲノムDNAに由来するアンプリコン(完全長約500bp)から、4つの異なるサイズの制限断片(約230bp、約130bp、約100bp、約50bp。図7のレーン9を参照されたい)が得られた。
【0119】
しかしながら、図7に示されているような第1ラウンドでは、レーン6(非M.t.DSM3590古細菌のポジティブコントロール)では、AvaIIによる消化によって、予測されたバンドに加えて、弱いが特異的なバンドが明らかになった。このバンドは、以前には観察されたことはない。別の実験では、非M.t.DSM3590古細菌のポジティブコントロールは、予想通り、Avallを用いて切断され(データは示されていない)、1回目の試験ランのポジティブコントロールが実験的アーチファクトだったのではいかという結果が示された。
【0120】
その後のアンプリコンシーケンシングによって、バイオリアクターに由来する細胞試料のメタン生成生物が、M.thermoautotrophicus UC120910の純粋な培養液であることが分かった。M.thermoautotrophicus UC120910の実証済みの精製ゲノムDNA試料を用いて、本発明による方法を適用することによって、M.thermoautotrophicus UC120910の上記の細胞試料と比べて、同様の制限パターンが示された。さらに詳細には、M.thermoautotrophicus UC120910の精製ゲノムDNA試料の、SNP19プライマーを用いて生成されたPCRアンプリコン(図7、レーン8)を、BamFII及びAvaIIで消化したところ、アガロースゲル上に、上記の試験細胞試料から得られたDNAと同じ制限パターンが得られ、これにより、M.thermoautotrophicus UC120910であることが分かったので、アンプリコンシーケンシングの結果が確認された(図7のレーン4及び8(PCR産物)、レーン3及び7(BamFII消化)、レーン2及び9(AvaII消化)を参照されたい)。UC120910株細胞試料に由来する非精製DNA試料及びUC120910精製DNAコントロールの制限効率は、いずれの場合にも同じであったが、細胞試料に由来する非精製DNA、及びM.thermoautotrophicus UC120910の精製DNAの両方において、BamFIIを用いた完全消化を行えなった(図7のレーン3及び7を参照されたい)理由を明らかにはできなかった。
【0121】
次の工程では、既知のM.thermoautotrophicus DSM3590源の細胞試料を用いて、本発明による方法を試験した。その細胞試料及び精製DNA試料のPCRアンプリコンは、予想サイズのアンプリコンであった(図8のレーン14及び17を参照されたい)。BamFIIを用いた第1の消化反応の結果も予想通りであり、DSM3590のPCRアンプリコンはまったく消化されなかった(図8の細胞試料及び精製DNA試料のレーン13及び16を参照されたい)。しかしながら、予想外なことに、AvaIIを用いた第2の消化反応では、特異性の低い制限パターンが見られ、すなわち、予測された4つの断片(約230bp、約130bp、約100bp、約50bp)を超える断片が得られた。
【0122】
したがって、AvaIIによる消化反応に基づいては、M.thermoautotrophicus DSM3590の明確な特定を行うことはできなかった。しかしながら、SNP19に対するプライマー対の初期試験の結果によって、少なくとも、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製DNAでは、AvaIIを用いた第2の消化反応も予想通りに機能したことが示されたので、そのアッセイが原則としては機能すると主張される。
【0123】
すなわち、本発明による方法を用いて、M.thermoautotrophicus DSM3590の存在について試験するとともに、その存在を、M.thermoautotrophicus UC 120910としてのM.thermoautotrophicus DSM3590バリアントの存在から識別できる。M.thermoautotrophicus DSM3590及びM.thermoautotrophicus UC120910のバイオリアクター細胞試料に由来するDNAの消化反応アッセイの両方において明らかになった、得られたバリアントの特徴的な制限パターン(その制限断片の数及びサイズ)を用いて、根底をなすメタン生成微生物をジェノタイピングできる。さらに、本発明による方法をさらに用いて、背後で、そのジェノタイピング済みのメタン生成微生物を単離することもできる。
【0124】
UC120910株細胞試料及びUC120910精製DNAコントロールの制限効率は、全例で同じであった。しかしながら、BamHIが、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNAをまったく消化しないという知見に鑑みると、M.thermoautotrophicus DSM3590とM.thermoautotrophicus UC120910(BamHIを用いた消化反応後に、少なくとも2つの制限断片という特異的な制限パターンが見られる)との識別により、この両方を明確に識別可能になる。
【0125】
純粋なM.thermoautotrophicus UC120910を含む稼働中のバイオリアクターに由来する前記細胞試料による、原則としてポジティブな実験結果に基づき、これらを、本発明によるSNP11及びSNP20プライマー対を用いたさらなる解析でも使用した。また、実証済みのM.thermoautotrophicus UC120910の上述の精製DNAを、いずれのさらなる実験においても、ポジティブコントロールとして使用した。
【0126】
SNP11
第1の制限酵素SfcIを用いた第1の消化反応では、ポジティブコントロールによって、すべてのランで、予測された結果が得られた。すなわち、アンプリコンは、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製DNAの場合には、まったく消化されなかったか、またはM.thermoautotrophicus UC120910の精製DNAの場合には、消化されて、異なるサイズかつ予測されたサイズの2つの断片が得られた。PCRは、全例で成功したが、生成されたバンドは弱かった(データは示されていない)。稼働中のバイオリアクターに由来する新鮮な細胞試料、すなわち、純粋なM.thermoautotrophicus UC120910の細胞試料の解析(対応するポジティブコントロールとして、異なるサイズかつ予測されたサイズの2つの断片が得られるはずである)は、機能しなかった。これらの試験試料のアンプリコンが、M.thermoautotrophicus UC120910に特異的な第1の制限酵素SfcIを用いて、まったく消化されなかったからである(図10を参照されたい)。
【0127】
第2の制限酵素BstNIを用いた第2の消化反応では、ポジティブコントロールにより、すべてのランにおいて、結果が得られた。すなわち、そのアンプリコンは、M.thermoautotrophicus UC120910の精製DNAの場合には、まったく消化されなかったか、またはM.thermoautotrophicus DSM3590の精製DNAの場合には、消化されて、異なるサイズかつ予測されたサイズの2つの断片が得られた。PCRは、全例で成功した(データは示されていない)。
【0128】
さらに興味深いことに、第2の制限酵素BstNIを用いて、M.thermoautotrophicus UC120910に由来するSNP11アンプリコンを消化したところ、DSM3590に関連する制限パターンが得られた。しかしながら、BstNIは、DSM3590に特異的なはずであり、その酵素の認識配列におけるSNPにより、UC120910株のアンプリコンを消化しないはずである。
【0129】
SNP20
SNP20アンプリコンの解析により、再現可能な結果が得られた。UC120910株細胞試料の第1の制限酵素NdeIによる制限は、全例で成功した。しかしながら、UC120910株ポジティブコントロールの場合には、部分的な消化も部分的に観察され、DSM3590株からの識別は明らかに可能であった。対応するDSM3590アンプリコンは、いずれの場合にも未消化のままであったからである。さらに詳細には、UC120910精製DNA(ポジティブコントロール)、及び新鮮な細胞試料に由来する非精製DNA試料の加水分解は、いずれの場合のも、正しい状態であった。すなわち、DSM3590コントロールは、加水分解されなかった。しかしながら、非精製DNAテンプレート及び精製DNAテンプレートの消化のいずれも、図9(レーン2及び5を参照されたい)に示されているように、両方とも不完全であった。しかしながら、各ランでは、このプライマー対に典型的な通常のバンドが現れた。しかしその一方で、制限パターンをUC120910に明確に割り当てるのが可能であった(図9を参照されたい)。
【0130】
表5には、第1の消化反応のパラメーター及び特徴が示されており、表6には、第2の消化反応のパラメーター及び特徴が示されており、それぞれ、試験した各SNP及び異なる古細菌バリアント、すなわち、Methanothermobacter thermoautotrophicus(M.t.)DSM3590株及びM.t.UC12091株に対するものである。使用した制限酵素、ならびに消化反応後、最終的に生成された制限断片の数及びサイズも示されている。
【表5】
【表6】
【0131】
4つすべてのSNP PCR産物(アンプリコン)における、独立した信頼性試験の結果が表7にまとめられている。細胞試料に由来する非精製DNAの、調べたゲノム領域、及び精製DNAに由来するゲノム領域の増幅は、確立された試験プロトコールを用いたところ、常に成功であった。
【表7】
【0132】
勘案すると、使用した3つのSNP試験は、補完的とみなしことができ、並行して合わせて行うことができる。矛盾する結果が得られ、アッセイのうちの1つが、他のアッセイと異なる場合には、解析対象の細胞試料に含まれる古細菌株をジェノタイピングするために、各ケースにおいて、該当するアンプリコンのシーケンシングを行う必要がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン生成古細菌の純粋株培養液中で、古細菌をタイピングして、コンタミナントを迅速に識別する方法に関するものである。
【0002】
本特許出願をもたらしたプロジェクトの一部は、「European Union’s Horizon 2020 Research and Innovation programme」から、契約番号691797の下で資金提供を受けた。
【背景技術】
【0003】
環境のために、より低価格で、効率的なエネルギー供給解決策を探求することは、欧州委員会、米国の企業集団、環境団体及び政府期間、福島の悲劇的な事故の結果、電力供給のための原子力エネルギーを置き換えようと試みている日本から、新興経済国7カ国まで、世界中で、気候行動プログラムによって示された難題であり、したがって、気候変動に対処するとともに、最終的には、地球の温度を安定化させるために、加盟国によって世界的に行われている努力である。その最終目標は、低炭素なモダン経済への移行に向けて、気候変動に対処しながら、持続可能で再生可能なエネルギーに対する増大するニーズを満たすことである。
【0004】
メタンは、揮発性炭化水素の中で、炭素原子1個当たりのエネルギー密度が最も高く、その潜在的なエネルギー変換能力は、酸素の存在下での燃焼によって直接得られるか、または発電のために燃料電池を使用する他のいずれの天然ガスよりも高い。
【0005】
そのため、メタンは、天然ガスとして、持続可能かつ再生可能なエネルギー源を構成するものであり、すでに、今日では、石炭及び他の化石燃料からの置き換わりが進んでいる。しかしながら、環境への影響の大幅な削減、ならびにその生産、保管及び輸送の実効性という副次的な探求は、まだ完了していない。
【0006】
メタンを大規模開発する際の主な技術的問題点の1つは、例えば、化石天然ガス中に高レベルのコンタミナントが残っていること、すなわち、高コストな精製手順が必要であることに関するものである。さらに、メタン用の十分な貯蔵プラントの必要性、より優れた加圧格納システムに対する関連ニーズ、大量のガスの蓄積による臭気、大部分は、天然ガス中の、硫酸塩を多く含むコンタミナントに由来する臭気、爆発リスク、輸送及び貯蔵中の漏洩といった、いまだ未解決の多くの課題はいずれも、現在、メタンの開発を妨げ、遅延させている。
【0007】
しかしその一方で、メタンの潜在的なエネルギー生成能力は、グローバル市場における意義が増してきている。そのため、最近の研究では、再生可能なメタンを二酸化炭素及び水素から非常に効率的に産生できるメタン細菌、例えば古細菌を用いて、メタンを生成する方法の開発及び改良に関心が集まっている。現在、現状技術では、メタン生成微生物を用いることによって生成したメタンを含むガス組成物を濃縮する試みがいくつか説明されている。古細菌を用いて、メタンを工業生産するには、通常、例えば、Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590株(DSMZ(German collection of microorganism and cell culture)に寄託され、DSMZから入手可能である)が使用される。
【0008】
このタイプのメタン生成は、適切なバイオリアクター/セル内で行われ、インフラに乏しいいずれの状態でも、世界中で容易に立ち上げることができ、必要な原材料は、大気中に概ね存在する。最も重要なことに、このタイプのメタン生成では、概して、メタンを豊富に含み、コンタミナントの量が少なめのガス組成物が得られ、そのような組成物は、エネルギー研究システムに供給できるようになるまでの労力が少ないことが予想される。さらに、メタンをエネルギーに変換する際に扱うのは、二酸化炭素及び水のみであり、炭化水素燃料の中で、最もクリーンである。
【0009】
バイオメタンの生成を、拡張可能で信頼性の高い、確立された再生可能エネルギー源までアップグレードさせることは、特に、持続的プロセスの要件により、依然として難問であることがわかっている。
【0010】
しかしその一方で、その有望な潜在能力により、バイオメタンの大規模な利用は、その技術を採算の合う費用効率のよいものにするために、政治的及び経済的に注意深く精査されている最中であるとともに、メタンの利用は、生化学工学における最も重要な短期目標として認識されている。したがって、上記の問題点に対する有効な解決策、及びメタン生成古細菌によって行われる生成プロセスの改良が急務である。
【0011】
メタン濃縮ガス組成物の効率的な生成を可能にする重要な構成要素の1つは、はっきり識別できるメタン生成微生物株であり、この株は、相当数のパラメーターに応じて均一な挙動を特徴とするとともに、その挙動を示す。効率的なメタン生成は、この挙動均一性と関連があり、すなわち、前記培養液の純度と関連があることがエビデンスに裏付けられている。
【0012】
通常の異種培養液と同様に、純粋株から開始される培養液も、例えば過渡的なパラメーター変動により、その生活環の間に適応を起こし、その結果、培養液中に、改変された生物が現れる場合がある。天然システムの適応は通常、天然の対処機構に起因すると見られ、その培養液を改良し、周囲環境で入手可能な資源を最大限活用するように意図されているが、長期的には、適応プロセスにより、遺伝的に改変された生物の出現は、地球規模のシステムを変化させる場合がある。
【0013】
脂肪酸解析(Daria V.Dibrova,Environ Microbiol.2014 Apr;16(4):907-918、Villanueva L.et al.,Environ Microbiol.2017 Jan;19(1):54-69.doi:10.1111/1462-2920.13361.Epub 2016 Jul 7)、リボプリンティング(Clark CG,J Eukaryot Microbiol.1997 Jul-Aug;44(4):277-83)、フェノタイピングまたはPCR技法のいずれかを用いて、古細菌を正確にタイピングするための既存の方法はそれぞれ、厳密でも、正確でも、広く認められているわけでも、及び/または直接利用可能であるわけでもない。さらに、それらの方法は、微生物の属または科を識別するのを助けるのみであり、種は識別しない。さらに、それらの方法が、純粋株培養液に関して、変動するパラメーター条件下で高分解能な結果をもたらす能力は、これらの文献では、示唆も試験もされていない。
【0014】
さらに、土壌、糞便、培養液もしくはその他の類似の基材、または生態学的ニッチにおいて、メタン生成古細菌を特定するための方策は、ごく最近のものであり、それらの方策には、10年に満たないものもあり、それらの方策は、他にも理由はあるが、改良型のバイオ燃料を生成する目的で、前記基材において、二酸化炭素を固定できる微生物を区別することへの関心の高まりに起因すると見られる。さらに、複雑な環境における微生物コロニーの場合には、それらの種の相乗的挙動のために、種を区別するのが困難なことにより、不正確となり、不正確な状態が維持される場合があり、利用可能なクローンライブラリーに由来する様々な種を識別することすら、困難な作業となり得るほどである。
【0015】
特に、Cleland et al.,2008では、反復配列ベースのPCR法が試験され、このPCR法は、主に細菌用に開発され、病院及び市井での感染、コンタミネーションの起源解析、疫学的調査、古細菌のジェノタイピング及び特定に使用されるものである。彼らの論文では、成長期及び成長内容が体系的に変わらない培養液におけるメタン細菌及び高度好塩菌に焦点が当てられている。これらのパラメーターの変動が、DNAの構造的変化をいかにして誘導し得るかは周知であり、供給物及び微小環境において絶えず変動する純粋培養液に適用する際には、このようないずれの結果の信頼性にも疑問が生じ、前記純度の維持は、効率的なメタン生成プロセスの提供に優先する。
【0016】
彼らの方法では、介在する短い反復DNA領域のPCR増幅を利用して、それぞれに異なる種の古細菌を区別する。ただし、その方法は、有効性が示されているが、様々な環境で、その成分という点でばらつきの小さい培養液において作用すると報告されたことはない。
【0017】
無制御/天然の環境での異種性の予測は、確かに、それぞれに異なる種を大まかに特定及び/または区別及び/または単離する方法を促すが、制御された環境における純粋培養液に対して、標的化された高分解能なアッセイ法を提供することはできず、異種性の予測は、低めである。
【0018】
同じ種内での変異は、培養条件及び微小環境への適応により、培養全体にわたって生じる可能性がある。
【0019】
この枠組みでは、適応によって生じ、わずかな違いをもたらす、同じ種内の差異を区別及び/または単離するには、それらを厳密にターゲティングすることによって、ただし、当然ながら、そのような小さな違いがどこに存在し得るかを事前に知らずに、これらの小さな違いを特定するための極めて正確な方法が必要となるであろう。
【0020】
したがって、純粋株を用いた単培養液の迅速かつ安価な品質確保アッセイ、及び同じ種内の違いも識別可能にするのに十分な特異的なさらなる方法を提供する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0021】
すなわち、本発明の目的は、現状技術の記載されている問題点を解消すること、特に、古細菌をタイピングして、純粋な培養株を確保するための信頼性の高い迅速かつ有効な方法を提供することである。したがって、これにより、本発明のさらなる目的は、純粋な古細菌株培養液の正常な生活環中に、その培養液を高速かつ効率的に試験することを確立することであり、動的環境において品質管理及びジェノタイピングを可能にするために、並行相互試験アプローチによって最適化することさえできる。
【0022】
流出する高純度のメタンガス組成物を依然として確保しながら、可変なガス組成を用いるメタン生成プロセスを安定化及び強化するための技術的進歩の現在の傾向においては、培養組成物の正確な品質管理が重要な役割を果たす。
【0023】
したがって、この枠組みの技術的進歩内では、本発明は、請求項に明示的に示されているように、純粋なメタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590(以下、M.thermoautotrophicus DSM3590またはM.t.DSM3590という)の存在について、効果的に試験するとともに、M.thermoautotrophicus DSM3590を他の古細菌から識別する方法に関する教示を提供する。さらに、連続的なメタン生成プロセスに関与する古細菌株培養液の所定の組成物の品質及び純度について試験する方法と、前記培養液中のバリアントを効果的にジェノタイピングすることを教示する。
【0024】
本願の目的は、本発明の請求項2に定められているように、本発明の請求項1に定められているようなPCRプライマー対を用いて、新たに開発した方法によって果たされている。さらなる実施形態は、この新たに開発した方法の変形形態、及び所定の試料内のメタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する際に用いる品質管理キットを指す。加えて、その方法は、前記キットによって特定されるとともに、その後の従属クレームに記載されいるようにして単離されるM.thermoautotrophicus DSM3590バリアントの特定を行う。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特に、示されている目標を達成するために、本発明は、配列番号l、配列番号2もしくは配列番号3のヌクレオチド配列から選択される第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー、及び/または配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6ヌクレオチド配列から選択される第2のポリメラーゼ連鎖反応プライマーを提供し、その第1のプライマーのそれぞれ、及びその第2のプライマーのそれぞれは、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590のDNAとハイブリダイゼーションでき、配列番号l及び配列番号4、配列番号2及び配列番号5、ならびに配列番号3及び配列番号6が、M.thermoautotrophicus DSM3590のゲノムDNA配列の一部のPCR増幅に使われるプライマー対を構成する。
【0026】
本願で使用する「Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590」株は、M.thermoautotrophicus str.hveragerdiとしても知られており、DSMZ(German collection of Microorganisms and cell cultures)で市販されている。興味深いことに、この株に関しては、利用可能な配列データはないことを理解されたい。
【0027】
本発明の発明者は、多大な時間を要する現状の方法、例えば、ゲノムシーケンシング及び/またはアンプリコンシーケンシングと比べて、古細菌を含む所定の試料中のM.thermoautotrophicus DSM3590を特定するための簡易な方法を提供するという課題を自ら定めた。
【0028】
まず初めに、本発明者は、手探りの実験によって、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのに適するとともに、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列をM.t.DSM3590以外の他の古細菌のDNA配列から識別するのに適するプライマーとなるようにする目的で、様々なランダムプライマーを設計した。
【0029】
換言すると、本発明の発明者は、M.thermoautotrophicus DSM3590の種の遺伝子配列を特異的に増幅するプライマー対を開発し、そのプライマー対は、手探りの実験によって除外されるように、M.thermoautotrophicus DSM3590以外の古細菌種の遺伝子配列をPCR増幅するのには適さないので、これらの他の古細菌種から識別可能になる。すなわち、このアイデアは、これらのプライマーをPCR反応で使用することにより、古細菌DNAを含む試料中にM.thermoautotrophicus DSM3590のDNAが存在するか、かつそのDNAのみが存在するかを試験可能にするというものであった。
【0030】
驚くべきことに、試験した多数のプライマーの中から、本発明に従って開示されているプライマーは、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのみならず、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他の少なくとも1つの古細菌のDNA配列を増幅するのにも適することを本発明者は見出した。
【0031】
さらに興味深いことに、本発明のプライマーによって生成されたアンプリコンでは、Methanothermobacter-thermoautotrophicus以外の他の古細菌と比べて、また、M.thermoautotrophicus DSM3590関連の他のバリアントと比べて、そのプライマーによって増幅されたDNA配列(アンプリコン)内に、一塩基変化を含むことを本発明者は見出した。これらの一塩基変化は、本明細書で以下に示されているように、特異的な下流消化反応を用いて、M.thermoautotrophicus DSM3590をM.t.DSM3590以外の他の古細菌から、さらには、M.thermoautotrophicus DSM3590関連の他のバリアントから識別可能にすることが分かった。
【0032】
したがって、本発明によるプライマーが、メタン生成微生物の核酸配列に結合できる他の通常のプライマーとは異なるものとなる特に驚くべき効果は、同じ種内で、高い分解能で識別する能力に依存し、他のプライマーでは、その配列変化の出現元である同じ種に割り当てられることとなる配列変化を特定可能にする。
【0033】
前記PCRプライマー対は、本発明に従って、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する方法で使用し、その方法は、以下の工程を含む。
・メタン生成微生物(細胞)を含む試料を得て、その微生物からDNAを放出させるための手段及び技法を適用して、非精製DNA試料を得るか、またはそのメタン生成微生物の精製DNAを含む試料を得る工程
・請求項1に記載の第1及び第2のプライマーを含むプライマー対を用いるPCR増幅において、工程a.による非精製DNA試料または精製DNA試料を使用して、増幅されたDNA配列(アンプリコン)を得る工程であって、そのアンプリコンが、制限酵素認識配列を少なくとも1つ含む工程
・そのそれぞれのアンプリコンを精製する工程
・制限断片を形成するのに十分な時間、第1の認識配列を認識する第1の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、そのアンプリコンで、第1の消化反応を行う工程
・その形成された制限断片の数と、そのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程
・その制限パターンに基づき、そのメタン生成微生物をジェノタイピングする工程
・任意に、工程c.の精製されるアンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または工程d.の消化反応後のアンプリコンもしくは少なくともその一部をシーケンシングする工程
【0034】
本発明者は、本発明のプライマー対が、M.thermoautotrophicus DSM3590を特異的に増幅したかを試験するために、PCR増幅後に、第1の制限酵素を適用することにより、本発明の前記プライマーを用いて生成されたアンプリコンを消化反応において暴露することによって、品質管理を行った。興味深いことに、第1の認識配列を認識する第1の制限酵素は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンを消化しなかった。
【0035】
しかしながら、驚くべきことに、本発明の発明者は、M.thermoautotrophicus DSM3590の古細菌種のみを含むと思われていた試料(すなわち、その試料は、純粋な単培養株試料と考えられていた)を用いて、その所定のアンプリコンで前記制限酵素消化反応を行うことによって、M.thermoautotrophicus DSM3590の種とは無関係の制限パターンを特定した。この無関係の制限パターンにより、DSM3590のバリアント株の存在が示された。すなわち、予想外にも、ゲル電気泳動解析を用いて、1つの制限断片が見られることを本発明者は見出した。
【0036】
アンプリコンシーケンシングを含むさらなる試験によって、前記プライマーは、M.thermoautotrophicus DSM3590とは異なる他のM.thermoautotrophicus株のDNA配列も増幅できることを本発明者は見出した。
【0037】
工程f)における、M.thermoautotrophicus DSM3590であるか、またはM.thermoautotrophicus DSM3590ではないメタン生成微生物のジェノタイピングは、プライマーで増幅された産物の、消化反応後の制限パターンに基づき、目視評価できる。
【0038】
したがって、この少なくとも1つの第1の制限酵素認識配列は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンであって、制限酵素で処理した所定のアンプリコンの得られた制限パターンを、M.t.DSM3590以外の他の古細菌試料であって、同様に、特に、少なくとも1つの第1の制限酵素で処理した試料の制限パターンから識別するために、現状技術において広く知られているようなその後の制限断片長多型(RFLP)解析で使用できる。
【0039】
本発明の実施形態によれば、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンのみでは、それぞれの未消化アンプリコンに等しいアンプリコンの制限パターンが得られるのに対して、他のM.thermoautotrophicusバリアントでは、所定のサイズの制限断片が少なくとも2つ見られ、最も理想的には、そのアンプリコンの第1の認識配列における一塩基変化により、適切な手段で、特に、ゲル電気泳動を使用した時に明白に識別されるような異なるサイズの断片が見られる。
【0040】
本発明によれば、解析対象のヌクレオチド配列の存在について後で示すことができるように、まず、ゲノムDNAのそれぞれの領域を見つけて、本発明のプライマーを用いることによって増幅する必要がある。本発明の方法の別の要件は、一塩基変化により、M.thermoautotrophicus DSM3590のみ、またはその反対に、M.thermoautotrophicus DSM3590以外(以下「非M.t.DSM3590」という)の古細菌のみに、制限酵素認識配列が存在することである。
【0041】
アンプリコンにおけるこれらの一塩基変化(「一塩基多型」(SNP)ともいう)は、進行中の実験中に、アンプリコン内の認識配列を認識する選択的制限酵素を用いて消化反応を行うのに適することが見出され、認識配列の存在は、その認識配列に含まれるこのSNPのそれぞれのヌクレオチド塩基の同一性に依存する。換言すると、このSNPの存在及びヌクレオチド同一性に応じて、その認識配列は、それぞれの制限酵素によって認識されるか、または認識されない。すなわち、その認識配列は、存在するとともに、読み取り可能であるか、または存在しない。すなわち、破壊されている。したがって、本発明による方法により、アンプリコンをさらにシーケンシングしなくても、ヌクレオチド変化の存在の証拠を直接提供可能になる。前記一塩基変化により、この方法を用いて、それぞれの古細菌株を特定することもできる。
【0042】
本発明による「一塩基多型(SNP)」とは、ヌクレオチド変化(トランスバージョンまたはトランジション)、さらには、ヌクレオチド配列における1つ以上のヌクレオチドの欠失または挿入のうち、概して、最終的に、ヌクレオチド配列における(少なくとも)一塩基変化を引き起こす欠失または挿入も意味する。
【0043】
本発明による方法の基礎となる方法(PCR-RFLPまたはCAPSアッセイとしても知られる)の利点の1つは、PCR産物の消化反応後、ゲル電気泳動によって、特異的な断片パターンを容易に可視化できることである。例えば、それは、例えば2つの古細菌バリアント(SNP11、SNP19またはSNP20の点で互いと異なる)の混合古細菌培養液の場合であってよく、そのSNPが、認識配列内に位置し、その2つの異なる古細菌においてそれぞれ異なる場合には、そのSNPにより、制限配列を認識する特異的制限酵素を少なくとも1つ用いて、本発明による方法を適用することによって、これらの培養液の制限パターンにおいて、ゲル電気泳動後、アガロースゲルにおいて視認可能な特異的な異なるバンドが見られる。すなわち、この方法を本発明による方法に適用することで、簡潔な視覚手段によって、容易かつ有益な形で、M.thermoautotrophicus DSM3590を他の古細菌から識別可能になるとともに、純粋な種培養液または混合培養液が存在するかを解析可能になる。
【0044】
有益なことに、前記方法では、所定の出発試料が、古細菌としてM.thermoautotrophicus DSM3590のみをそれぞれ含む純粋なM.thermoautotrophicus DSM3590培養液を含むか、または所定の出発試料が、非M.t.DSM3590古細菌も含むかもしくは非M.t.DSM3590古細菌のみ含むかを明確に特定可能であることを本発明の発明者は見出した。
【0045】
注目すべきことに、本発明の方法は、行うのが容易であり、多大な時間及び費用のかかる方法を回避することによって、メタン生成微生物を含む所定の試料において、含まれるメタン生成微生物が、M.thermoautotrophicus DSM3590のみまたは他の非M.t.DSM3590メタン生成古細菌を含むかを特定する信頼性の高い結果をもたらす。さらに、本発明の方法であれば、有益なことに、例えば全ゲノムシーケンシングのように、多大な時間及び費用のかかるシーケンシング方法を回避することによって、M.thermoautotrophicus DSM3590を特定可能であるとともに、M.thermoautotrophicus DSM3590を他のメタン生成古細菌から識別可能であり、さらには、M.thermoautotrophicusベースの他の株を特定可能である。本発明の方法の精度であれば、PCRプライマー対で生成されたアンプリコンのシーケンシングでさえも不要であるが、当然ながら、さらなる品質試験という理由から、シーケンシングを行ってもよい。
【0046】
DNAの所望の領域の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって行う。本発明による「増幅」とは、核酸配列の追加のコピーを作ることと理解するものとする。増幅は概して、当該技術分野において周知のPCR技術を用いて行う。「ポリメラーゼ連鎖反応」、すなわち「PCR」は、PCRプライマーを用いて、ゲノムDNAの混合物における標的配列のセグメントの濃度を上昇させる方法である。
【0047】
本発明によれば、「プライマー」とは、核酸鎖と相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下(すなわち、ヌクレオチド、及びDNAポリメラーゼのような誘導剤の存在下、ならびに適切な温度及びpH)に置いたときに、合成開始点として作用できるオリゴヌクレオチド(精製制限消化物におけるような天然のものであるか、合成により作製されたものかは問わない)と理解するものとする。そのプライマーは、増幅効率を最大にするには、好ましくは一本鎖であるが、その代わりに、二本鎖であってもよい。そのプライマーは、二本鎖の場合には、まず、その鎖を分離するために処理してから、伸長産物の調製に使用する。好ましくは、そのプライマーは、オリゴデオキシリボヌクレオチドである。そのプライマーは、誘導剤の存在下で、伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。そのプライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源、及びその方法の使用を含む多くの要因に左右されることになる。PCRプライマーは、好ましくは少なくとも約10ヌクレオチド長、最も好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド長である。本発明の方法で使用してよいPCRプライマーの例としては、配列番号1~6で見られるようなプライマーが挙げられる。
【0048】
本明細書で使用する場合、「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」という用語は、それぞれ、「認識配列」として知られる特異的なヌクレオチド配列で、またはその配列の近傍で、二本鎖DNAを切断する細菌酵素を指す。それらは、二本鎖DNAにおいて、配列特異的な形で、1つ以上の認識配列において、二本鎖切断を作ることができる「配列特異的なDNAエンドヌクレアーゼ」である。前記DNA切断により、DNAの平滑末端、またはいわゆる「粘着」末端(5’オーバーハングまたは3’オーバーハングを有する)を得ることができる。その切断部位は、認識配列内に位置しても、または認識配列外に位置してもよい。様々な種類のエンドヌクレアーゼを用いることができる。制限酵素は、当該技術分野において周知であり、例えば、様々な供給業者(例えばNew England Biolabs,Inc.,Beverly,Massachusetts)から容易に得ることができる。同様に、制限酵素の使用方法も概ね、当該技術分野において周知かつ常法である。好ましい制限酵素は、アンプリコンを切断したときに、少なくとも2つのDNA断片を生成する制限酵素である。制限酵素を用いて得られたDNA断片は、例えば、ゲル電気泳動によって、バンドとして検出し得る。制限酵素を用いて、制限断片長多型(RFLP)を作製し得る。「RFLP」は本質的に、本発明で開示されているSNP座位を含む一片のDNA(全染色体(ゲノム)か、その一部(ゲノム領域など)かは問わない)の固有のフィンガープリントのスナップショットである。
【0049】
RFLPは、DNA分子を制限エンドヌクレアーゼで切断(「制限」)することによって生成する。このような酵素は、天然において細菌によって産生されるように、何百もが単離されている。何百もの多種多様な制限酵素はそれぞれ、すべてのDNA分子を構成する4つの基本的なヌクレオチド(A、T、G、C)からなる異なる配列において、DNAを切断(cut)(すなわち、「切断(cleave)」または「制限」)することが分かっており、例えば、ある1つの酵素は、A-AT-G-A-Cという配列のみを特異的に認識でき、別の酵素は、G-T-A-C-T-Aという配列のみを特異的に認識できるなどである。関与する特有の酵素に応じて、このような認識配列は、長さが、4ヌクレオチドほどの短さから、21ヌクレオチドもの長さまで、様々であり得る。認識配列が長いほど、制限断片は少なくなり、認識部位が大きいほど、DNA全体を通じて、認識部位が繰り返し見られる確率は低くなる。
【0050】
消化後、得られた個々の断片は、それらのサイズに基づき、互いから分離させる。
【0051】
DNAを分離するのに適するいずれの方法も、本発明の方法に含まれ、その方法としては、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、及びマイクロ流体デバイスの使用が挙げられるが、これらに限らない。
【0052】
一実施形態では、DNA断片は、アガロースゲル電気泳動によって分離する。ゲル電気泳動では、異なるサイズの帯電分子が、電流の影響下で、固定ゲルを移動する速度によって、それらの帯電分子を分離する。分離されたこれらのDNA断片は、例えば、エチジウムブロマイドで染色することによって、及びUV照射下でゲルを見ることによって、容易に可視化できる。そのバンドパターンには、制限消化されたDNAのサイズが反映される。
【0053】
M.thermoautotrophicus DSM3590を検出もしくはジェノタイピングするか、またはM.thermoautotrophicus DSM3590をM.thermoautotrophicus DSM3590のバリアントから識別するために、本発明の新規SNPを用いるその他の方法も、本明細書に教示されている。これらの方法には、本発明の核酸分子をプローブとして用いるか、または本発明の開示されているヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションできる核酸分子を用いるハイブリダイゼーション方法が含まれる。例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)を参照されたい。ハイブリダイゼーション技法を用いるこのような方法は、当業者には周知であり、本発明に援用される。これらの方法としては、サザンブロット、移動度シフトアッセイ及び蛍光In Situハイブリダイゼーション(FISH)のような、当業者に周知の技法が挙げられるが、これらに限らない。
【0054】
ハイブリダイゼーション技法では、ハイブリダイゼーションプローブ(複数可)は、ゲノムDNA断片、PCR増幅産物またはその他のオリゴヌクレオチドであってよく、本明細書に開示されている既知のヌクレオチド配列の全部または一部を含んでよい。加えて、そのプローブは、32Pのような検出可能な基、またはその他の放射性同位体、蛍光化合物、酵素もしくは酵素補因子のようないずれかの他の検出可能なマーカーで標識してもよい。プローブに関しては、「標識する」という用語には、検出可能な基質をプローブに結合する(すなわち、物理的に連結する)ことによって、プローブを直接標識すること、及び直接標識されている別の試薬との反応性によって、プローブを間接的に標識することが含まれるように意図されている。間接標識の例としては、DNAプローブの末端をビオチンで標識して、蛍光標識されたストレプトアビジンで検出できるようにすることが挙げられる。
【0055】
上に開示されているようないずれかのハイブリダイゼーション技法を含む方法は、それぞれのM.thermoautotrophicus DSM3590を単離するか、またはそれぞれのバリアントを単離するのにも使用してよい。
【0056】
本願による「試料」とは、現状技術で報告されているように、例えば、寄託されている微生物集団に由来し、及び/またはその代わりに、相当数の環境源から得られる液体状または固体状のメタン生成古細菌供給源が意図されている。概して、メタン生成微生物の環境源の例としては、嫌気性の土壌及び砂地、沼地、湿地、低湿地、河口、密集した藻礁、陸及び海洋の両方の泥及び堆積物、例えば、干潟堆積物の表層下、深海及び深井戸の底、汚水、有機廃棄物置き場及び処理施設、ならびに動物の腸管及び糞便が挙げられる。さらに、メタン生成古細菌を含む「試料」は、稼働しているバイオリアクター、すなわちバイオプロセス発酵の液相から直接得られる試料であることができる。
【0057】
本発明の理解においては、バイオリアクターとは、生物反応槽を表し、現状技術においても意図されているように、例えば温度及び/または圧力などの変化に耐えることができ、及び/または例えば、付与されたいずれかの値の温度及び/または圧力が割り当てられても、あるいは、その温度及び/または圧力を維持しなくてはならなくても、反応プロセスの前、後または最中に、その温度及び/または圧力を維持できる生物反応容器、生物反応用エンクロージャーもしくは生物反応タンク、及び/または少なくとも生物反応用チャンバー及び/またはセル、あるいはこれらを組み合わせたもののいずれかであり、本発明を実施するのに適する目的の反応を行うことができるものである。このような反応は、微生物が関与する反応の範囲に関連するので、生物反応として理解され、本明細書では、反応を起こすためには適切な環境、微生物の適切な培養、適切な培養培地及び適切な反応基質を必要とする正常な生理作用、例えば、代謝発酵、好気性消化または嫌気性消化などを指す。バイオリアクターは、本発明の意味においては、開示されているような方法を可能にするために、各変数の許容値内で確実に作動し、列挙されている工程を確実に、経時的に実施可能にすると予想される。
【0058】
本発明の実施形態では、その方法は、工程d.の精製アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または工程e.の消化反応後のアンプリコンもしくは少なくともその一部をシーケンシングする工程をさらに含む。この工程は、上述のように、本発明の方法による結果をさらに検証するために、任意に行うことができる。
【0059】
本発明の実施形態によれば、その方法は、工程a.による、メタン生成微生物を含む試料に対して、凍結及び解凍サイクルを少なくとも1回を行って、そのメタン生成微生物からDNAを放出させる工程をさらに含む。すなわち、そのメタン生成微生物からDNAを放出させるための手段及び技法を適用してから、前記方法の工程b.に従って、PCR反応を行うことも可能である。単細胞メタン生成微生物を含む細胞から、DNAを放出させるための他の手段及び技法は、当業者に周知であり、本発明に含まれる。本発明の方法による、さらなるPCR反応のために、このアプローチから生成させた非精製DNAを使用することにより、多大な時間及び費用のかかる精製が省かれる利点が得られる。しかしながら、その後の反応における障壁及びリスクは依然として、DNAの量が、非精製DNA試料において算出されないこと、DNAseが存在して、その試料をゲノムDNAを活発に消化し得ることであり得る。しかしながら、新鮮な細胞試料を使用して、DNAの調製を常に氷上で行うことによって、これらの要因を制御して、最小限に抑えることができる。当然ながら、さらに、その後の反応(例えばPCR)の成分を妨げないDNAse阻害剤をこれらの試料に加えること、及び/または当業者に知られている適切な現状技術の方法を用いて、DNAの量を算出することが可能である。
【0060】
本発明の方法の別の実施形態によれば、その方法は、以下の工程をさらに含む。
・第1の認識配列と部分的に重複する第2の認識配列を認識する第2の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、制限断片を形成するのに十分な時間、工程b.または工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、そのアンプリコンで、第2の消化反応を行うことによって、工程f.のジェノタイピングの品質管理を行う工程
・形成された制限断片の数と、それらのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程
・その制限パターンに基づき、そのメタン生成微生物をジェノタイピングする工程
【0061】
その第2の認識配列は少なくとも、その古細菌株のアンプリコンのうち、そのアンプリコンの第2の認識配列における一塩基多型(SNP)により、第1の消化反応において、第1の制限酵素によって切断されなかったアンプリコンに存在する。すなわち、その第2の認識配列は、少なくともM.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンに、または少なくとも非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンに存在する。
【0062】
本発明の実施形態によれば、その第2の認識配列は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンの両方に存在する。
【0063】
別の実施形態では、その2の認識配列は、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンの第2の認識配列における一塩基多型(SNP)により、M.thermoautotrophicus DSM3590のアンプリコンのみに存在し、したがって、その第2の制限酵素は、M.thermoautotrophicus DSM3590に由来するアンプリコンのみを消化することに基づき選択する。
【0064】
驚くべきことに、M.thermoautotrophicus DSM3590の制限パターンと無関係の制限パターンを特定後、前記第2の消化反応を行うことによって、見出された前記バリアントをM.thermoautotrophicus DSM3590からさらに識別するのに有用な制限パターンが得られることを本発明者は見出した。
【0065】
任意に、増幅DNA(アンプリコン)に基づくジェノタイピング工程、例えば、そのアンプリコンまたはバリアントのアンプリコンの少なくとも一部のシーケンシングによって測定される工程をその後に適用することもできる。
【0066】
M.thermoautotrophicus DSM3590に関連する、この見出されたバリアントは、それぞれ、前記増幅DNA(アンプリコン)に基づき、前記バリアント株を任意にジェノタイピングした後に、公共の配列データベースに見られる配列と比較して、本発明の方法の工程i.)による制限パターンに基づき、そのメタン生成微生物のジェノタイピングを確認することによって明確に特定し、及び/または特徴付けることができる。さらに、所定の制限酵素を用いた場合の、所定のDNA配列における制限部位を予測可能にする公的に入手可能なプログラムを、シーケンシングしたアンプリコンに適用して、有益なことに、本発明者が見出した観察済みの前のサイズ依存的制限パターンをさらに証明してよく、すなわち、別の品質管理を可能にしてよい。
【0067】
本発明の意味における「品質管理」または「品質アッセイ」とは、培養液内の種/株の純度を評価するために、培養液内の種/株の同一性を慎重かつ体系的に制御または確認することを指す。本発明によれば、種/株の純度とは、前記培養物の全個体のゲノムが、同じ単一種/株培養物の個体全体にわたって、比較的同一であることを意味する。概して、「比較的同一である」とは、ゲノムのヌクレオチド配列の同一性が少なくとも95%、96%、97%もしくは98%であるか、または同一性が少なくとも98%もしくは99%であることが意図されている。アンプリコンとしての、DNAのごく一部をシーケンシングする方法は、当業者に周知であり、その方法としては、例えばサンガーシーケンシングが挙げられる。
【0068】
驚くべきことに、別の実施形態によれば、本発明者は、さらなる工程において、現状技術の一般的な方法を用いて、見出された前記バリアント株を単離することさえできる。前記バリアントは、さらなる工程において、例えば、ゲノムDNAまたはその少なくとも一部のシーケンシングによって評価された、そのバリアントのゲノムDNAの比較に基づき、任意にジェノタイピングできた。
【0069】
すなわち、本発明の方法によって、本発明者は、UC120910株と命名されたM.thermoautotrophicusを特定できた。本願で使用した「Methanothermobacter thermoautotrophicus UC120910株」という株は、同義語として、ECH0100(ラボでの名称)とも呼ばれる。
【0070】
さらなる実施形態によれば、本発明の方法を用いて、M.thermoautotrophicus DSM3590株と、他のM.thermoautotrophicus株、または例えば、Methanothermobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、Methanospirillium、Methanosaeta、Methanogenium、Methanoculleus及びMethanothermococcusもしくは上記の混合物からなる群の他の古細菌に由来する株とを識別する。
【0071】
場合によっては、古細菌の培養物は、培養を行ってきた特定の条件に応答して、自然に改変されることがある。培養条件は、温度、pH、圧力、細胞密度、体積、湿度、塩含有量、伝導率、炭素含有量、窒素癌流量、ビタミン含有量、アミノ酸含有量、鉱物含有量またはこれらの組み合わせなど、いくつかのパラメーターによる影響を受け、これらの条件のそれぞれに従って、リアクター環境内で、いずれかの数の種が、所定の適応プロセスを起こし得る。
【0072】
特定の純粋株を使用する利点は、メタン生成効率の上昇に依存し、したがって、その純度が維持されるように、経時的にその同一性を調べることに依存する。本発明で提供する方法は、株を識別するのに非常に適しており、すなわち、純粋な培養液を確保し、したがって、高いメタン生成効率を維持するのに適している。
【0073】
一実施形態によれば、提供する方法は、アンプリコンにおける少なくとも1つのSNPに基づき、様々な株を識別し、このSNPは、第1の制限酵素の第1の認識配列と第2の制限酵素の第2の認識配列の重複配列の一部であり、そのSNPは、SNP19、SNP11及びSNP20から選択される群から選択される。
【0074】
本願の文脈では、「SNP19」とは、配列番号3(フォワードプライマー)及び配列番号6(リバースプライマー)のプライマー対によってPCR増幅した、非M.t.DSM3590古細菌のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)における418位の一塩基多型(同じプライマー対によって増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590の418位のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)と比べた場合)として理解する。
【0075】
本発明の一実施形態では、非M.t.DSM3590古細菌は、M.thermoautotrophicus UC120910であり、その一塩基多型は、対応するアンプリコンにおける、GからAへのトランジション変異である。
【0076】
本願の文脈では、「SNP11」とは、プライマー対、すなわち、配列番号1(フォワードプライマー)及び配列番号4(リバースプライマー)によってPCR増幅した、非M.t.DSM3590古細菌のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)における105位の一塩基多型(プライマー対、すなわち、配列番号1(フォワードプライマー)及び配列番号4(リバースプライマー)によってPCR増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590の105位のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)と比較した場合)と意図されている。
【0077】
本願の文脈では、「SNP20」とは、プライマー対、すなわち、配列番号2(フォワードプライマー)及び配列番号5(リバースプライマー)によってPCR増幅した、非M.t.DSM3590古細菌のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)における168位の一塩基多型(プライマー対、すなわち、配列番号2(フォワードプライマー)及び配列番号5(リバースプライマー)によってPCR増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590の168位のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)と比較した場合)と意図されている。
【0078】
本発明の実施形態では、特定された非M.t.DSM3590古細菌は、一塩基多型として、一塩基欠失変異を有する。
【0079】
別の実施形態によれば、3つのSNP、すなわち、SNP19、SNP11及びSNP20も、上記のような識別のために、補完的に使用してよく、したがって、本発明による方法は、前記識別のために、SNP19、SNP11及びSNP20を併用してよい。相反する結果が生じ、それぞれのSNPに関する一方の結果が、もう一方の結果と異なる場合には、解析対象の試料に含まれる古細菌株をジェノタイピングするために、該当するアンプリコンのシーケンシングを行ってよい。
【0080】
別の実施形態によれば、そのSNPがSNP19である場合、第1の制限酵素は、BamHIであり、第2の制限酵素は、AvaIIである。さらに別の実施形態では、そのSNPがSNP11である場合、第1の制限酵素は、SfcIであり、第2の制限酵素は、BstNIもしくはECORIIであり、またはそのSNPがSNP20である場合には、第1の制限酵素は、NdeIである。
【0081】
さらなる一実施形態によれば、本発明の方法で特定される非M.t.DSM3590バリアントは、M.thermoautotrophicus UC120910と命名されている。
【0082】
本発明のさらなる態様では、所定の試料内で、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出するのに使用する品質管理キットであって、
-少なくとも1つの容器と、
-フォワードプライマーとして機能する、請求項1に記載の第1のプライマーと、
-リバースプライマーとして機能する、請求項1に記載の第2のプライマーと、
-(その第1及び第2のプライマーが、メタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列をPCR増幅できるプライマー対を構成する)
-本発明による少なくとも1つの第1の制限酵素、または少なくとも1つの第1の制限酵素及び少なくとも1つの第2の制限酵素と、
-任意に、少なくとも1つの緩衝液、例えば、溶出用緩衝液、保存用緩衝液及び/または反応用緩衝液と、任意に、
-使用説明書と、
を含むキットを提供する。
【0083】
特に、その品質管理キットは、メタン生成微生物の培養液のプロービング及びジェノタイピングで使用するように意図されている。
【0084】
そのキットに含まれているような制限酵素は、RFLP解析で用いるのに最適である。
【0085】
そのキットは、含まれる試験試料に対してアッセイ及び比較できる1つのコントロール試料または一連のコントロール試料(ポジティブコントロール及びネガティブコントロール)も含んでよい。そのキットの各成分は通常、個別の容器に収容されており、その各種容器のすべてが、使用説明書とともに、1つのパッケージ内に入っている。そのキットは、保存剤またはタンパク質安定化剤も含んでよい。
【0086】
第1及び第2の制限酵素は、AvaII、BamHI、BstNI、NdeI、SfcI及びEcoRIIからなる群から選択されている。
【0087】
総合すると、本発明によるキットによって提供されるような3つのSNP試験は、補完的に使用してもよく、したがって、並行して行ってよい。相反する結果が生じ、一方のアッセイのが、もう一方のアッセイと異なる場合には、解析対象の細胞試料に含まれる古細菌株をジェノタイピングするために、各ケースにおいて、該当するアンプリコンのシーケンシングを行う必要がある。
【0088】
別の態様では、本発明は、本発明によるキットによって特定され、単離されるメタン生成微生物M.thermoautotrophicus DSM3590バリアントに関するものである。
【0089】
この点では、本発明による方法は、ある1つの特定のバリアント(M.thermoautotrophicus UC120910と命名されている)を特定するのにも適していると証明されている。
【0090】
参照文献
Dibrova DV,Galperin MY,Mulkidjanian AY..Phylogenomic reconstruction of Archaeal fatty acid metabolism.Environ Microbiol.2014 Apr;16(4):907-18.doi:10.1111/1462-2920.12359.Environ Microbiol.2017 Jan;19(l):54-69.
Villanueva L,Schouten S,Damste JS.Phylogenomic analysis of lipid biosynthetic genes of Archaea shed light on the ’lipid divide’.Environ Microbiol.2017 Jan;19(l):54-69.
Clark CG.Riboprinting: a tool for the study of genetic diversity in microorganisms.J Eukaryot Microbiol.1997 Jul-Aug;44(4):277-83.
Cleland D,Krader P,Emerson D.Use of the DiversiLab repetitive sequence-based PCR system for genotyping and identification of Archaea.J Microbiol Methods.2008 May;73(2):172-8.
Huang,Q.,Baum,L.,Fu,W.-L.(2010).Simple and practical staining of DNA with GelRed in agarose gel electrophoresis.Clinical laboratory 56/3-4,149-152.
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】SNP11及びSNP20アンプリコンにおいて、55℃~70℃の試験アニーリング温度を用いた温度勾配PCRを介して生成されたPCR産物の電気泳動の結果を示すアガロースゲルである。
図2】SNP19プライマー(レーン9~15)の最適なアニーリング温度を求めるために、温度勾配PCRを介して生成されたPCR産物の電気泳動の結果を示すアガロースゲルである。SNP19アンプリコンの結果は、左側から右側に向かって、アニーリング温度を上昇させてプロットしたものである。スペース上の理由から、SNP19プライマーのネガティブコントロールは、別のゲルに加えた。
図3】アッセイ感度を調べたものである。様々な希釈度(1:10、1:50及び1:100)の出発DNA溶液547ng/μlをPCRテンプレートとして用いるとともに、それぞれのネガティブコントロール(「NTC」レーン)を用いて、SNP11、SNP19及びSNP20を増幅するすべてのプライマーで、PCRを行った。
図4】PCRの初期テンプレートとして精製ゲノムDNA試料を用いたSNP19アンプリコンの消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンをBamHI制限酵素と2時間インキュベートしてから、NTC(N)及び未処理のPCRアンプリコンとともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用したマーカー(M)は、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。消化反応においてNEBufferを用いたところ、非M.t.DSM3590古細菌試料に由来するアンプリコンの、予測された消化反応は生じず、アンプリコンは切断されなかった。しかしながら、NEBufferからCutSmart緩衝液に交換したところ、予測された結果が得られた。すなわち、非M.t.DSM3590古細菌試料に由来するアンプリコンが切断され、ゲル上ではっきりと見えた。
図5】PCRの初期テンプレートとして精製ゲノムDNA試料を用いたSNP11アンプリコンの消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンをSfcI制限酵素と2時間インキュベートしてから、NTC及び未処理のPCRアンプリコンとともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用したマーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。
図6】PCRの初期テンプレートとして精製ゲノムDNA試料を用いたSNP20アンプリコンの消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。DSM3590のアンプリコン及び非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンをNdeI制限酵素と2時間インキュベートしてから、NTC(N)及び未処理のPCRアンプリコンとともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用したマーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。
図7】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP19アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをBamHIまたはAvaIIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ノーテンプレートコントロール(NTC、DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用した分子マーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。
【数1】
図8】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP19アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをBamHIまたはAvaIIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ネガティブコントロール(DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用した分子マーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。SNP19アンプリコンをBamHIで消化後、特異的なバンドが得られた。精製DNA試料、及び新鮮な細胞調製物に由来する非精製DNA試料のそれぞれにおいて、SNP19アンプリコンをAvaIIで消化後、非特異的なバンドが得られた。
【数2】
図9】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP20アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをNdeIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ネガティブコントロール(DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。細胞試料に由来するUC120910株の非精製DNAを用いたアプローチは、UC120910ポジティブコントロールと同様である。それぞれのアンプリコンは、不完全に消化されたに過ぎなかった。
【数3】
図10】試験テンプレートとして、細胞試料に由来する非精製DNAを用いたとともに、ポジティブコントロールとして、精製DNA試料を用いたSNP11アンプリコンの第1及び第2の消化反応に由来する試料を充填した、ゲル電気泳動後のアガロースゲルである。UC120910及びDSM3590のアンプリコンをSfcIまたはBstNIと2時間、それぞれインキュベートしてから、ネガティブコントロール(DNA試料の代わりに水を含めた)及び未処理の各PCRアンプリコンの試料とともに、2.5%アガロースゲルに加えた。使用した分子マーカーは、Thermo FisherのGeneRuler 50bp DNA Ladderであった。結果:M.thermoautotrophicus UC120910の非精製DNA試料を用いたSNP11の消化反応解析の結果は不正確であった。2~4列目の、UC120910細胞に由来する試料は、同じパターンがECHOポジティブコントロール(バツが付された矢印)と同じではない。その代わりに、そのバンドパターンは、ポジティブコントロールと同様である(矢印)。
【数4】
【実施例
【0092】
下記の実施例には、記載されている方法を意図した通りに行う実用的な方法が例示されており、本発明をそれらの実施例に限定するようには意図していない。
【0093】
一般的部分
本発明の発明者は、多大な時間を要する、現状技術の方法、例えば、ゲノムシーケンシング及び/またはアンプリコンシーケンシングと比べて、古細菌を含む所定の試料中のM.thermoautotrophicus DSM3590を特定するための簡易な方法を提供するのを目標としている。
【0094】
すなわち、本発明者は、プライマーが、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのに適するとともに、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他の古細菌のDNA配列から識別するのに適するものとなるように、多くのプライマーを設計して、手探りの実験によって、それらを解析した。
【0095】
驚くべきことに、本発明によるプライマーは、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列を増幅するのみならず、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他のいくつかの古細菌も増幅することを本発明者は見出した。さらに興味深いことに、本発明のプライマーによって生成されるアンプリコンには、Methanothermobacter thermoautotrophicus以外の他の古細菌及び他のM.thermoautotrophicus DSM3590バリアントに対する一塩基変化が含まれることを本発明者は見出した。そのアンプリコンにおけるこれらのいわゆるSNPはその後、そのアンプリコン内の認識配列を認識する選択的制限酵素を用いて、消化反応を行うのに適することが分かり、認識配列の存在は、その認識配列に含まれる、このSNPのそれぞれのヌクレオチド塩基の同一性に依存する。換言すると、このSNPの位置に、所定のそれぞれのヌクレオチド塩基が存在することに応じて、その認識配列が、それぞれの制限酵素によって認識されるか、または認識されない。すなわち、それぞれのSNPの存在に応じて、その認識配列は、存在するとともに、その制限酵素で読み取り可能であるか、または読み取り不能である(破壊されている)。したがって、本発明による方法により、アンプリコンをさらにシーケンシングしなくても、ヌクレオチド変化の存在の証拠を直接提供可能になる。前記一塩基変化により、この方法を用いて、それぞれの古細菌株を特定することさえもできる。
【0096】
試験したすべてのアガロースゲルでの染色は、100倍濃縮したGelRed(Biotium,Fremont,USA)を用いて、Huang et al.,2010の方法を使用して行った。その際、ゲルローディング緩衝液に、100倍濃縮したGelRedを加えてから、それぞれの試料及び使用するサイズマーカー(Gene Ruler 50 bp DNA ladder、Fisher Scientific,Schwerte,Germany)と混合した。
【0097】
本発明に従って設計したプライマーのヌクレオチド配列は、表1に示されている。
【表1】
【0098】
最初に、すべてのアッセイを同時に行えるように、本発明のプライマー対を用いるすべてのPCR反応用に、同じ実験条件を有する共通のプロトコールを作成することを試みた。まず、精製ゲノムDNAを純粋なM.thermoautotrophicus DSM3590及び非M.t.DSM3590古細菌から抽出した。得られた調製物のDNAの濃度を光度測定によって求めた。第1の工程として、PCRで最良の結果が得られるテンプレートの量を実験で求めた。最良の結果が得られたのは、10~20ngのDNAを用いた場合であったが、それよりも有意に低いかまたは高い濃度でも、テンプレートの増幅が成功する場合もあった。プライマーのいずれの組み合わせでも、予測されたサイズの断片が得られた(表1を参照されたい)。
【0099】
使用したDNAポリメラーゼは、AccuPOLポリメラーゼであった。その3’→5’エキソヌクレアーゼ活性により、挿入されたヌクレオチドをスクリーニングできる。プルーフリーディング活性により、エラー率は、現状技術で報告されているように、増幅複製当たりの1塩基当たり1.1×10-6となる。その精度は、Taq DNAポリメラーゼよりも高い。Taq DNAポリメラーゼのエラー率は、現状技術で報告されているように、8.0×10-6である。AccuPOLポリメラーゼのプロトコールに基づき、表2によるマスターミックス調合物を使用する。
【表2】
【0100】
実験的なアーチファクトの形成を回避するために、最も長いアンプリコンの増幅に影響を及ぼさずに、伸長時間を可能な限り短縮した。増幅に必要な総時間を最小限に抑えるために、1サイクル当たり及び初期変性時の変性時間も短縮した結果、時間が有意に節約された。PCRの収率及びストリンジェンシーを向上させるために、すべてのプライマーにおいて、温度勾配PCRを行った。例として、図1には、SNP11及びSNP20の結果が示されており、図2には、SNP19の結果が示されている。SNP11及びSNP19を増幅するプライマーでは、57.5℃のアニーリング温度でのPCRによって、最も強いバンドが得られた。注目すべきことに、SNP19を増幅するプライマーでは、その前の55.1℃というアニーリング温度においては、弱いバンドしか得られなかった。
【0101】
SNP20を増幅するプライマーは、70.1℃という最も高い温度で最も機能した。PCR産物/温度勾配の明らかな量が存在していた。55.1℃では、ゲル上にバンドが見えなかった。アニーリング温度が上昇するにつれて、バンドの強度も上昇した。
【0102】
続いて、実験によって求めた理想的な反応条件を、標準的なプロトコールにおいて、それぞれのプライマーのすべてに適合させた。すなわち、SNP11及びSNP19を増幅するプライマーでは、アニーリング温度を57.1℃とし、SNP20を増幅するプライマーでは、アニーリング温度を70.1℃とした。
【0103】
PCR反応の特異性をさらに向上させるために、求めた理想的なアニーリング温度が許容される限りにおいて、すべてのアッセイにおいて、タッチダウンプログラムを確立した(SNP20の場合には許与されなかった)。このプログラムでは、サイクルごとに、アニーリング温度を1℃低下させていき、その後、最終的な伸長温度で、数回のサイクルにわたって、さらに増幅させる。
【0104】
SNP11を増幅するためのプライマー対(配列番号l(フォワードプライマー)、配列番号4(リバースプライマー))及びSNP19を増幅するためのプライマー対(配列番号2(フォワードプライマー)、配列番号5(リバースプライマー))におけるタッチダウンPCRのパラメーターが表3に示されている。
【表3】
【0105】
SNP20を増幅するためのプライマー対(配列番号3(フォワードプライマー)、配列番号6(リバースプライマー))は、最適アニーリング温度が70℃である。したがって、タッチダウンPCRは実行不可能である。すなわち、新たなアニーリング温度を表4の改良型PCRプログラムに組み入れた。各工程の継続時間及びサイクル数は変更されていない。SNP20を増幅するためのPCRプログラムは、表4に記載されている。
【表4】
【0106】
上記で確立したPCRプロトコールを用いて、DNAテンプレートの希釈系列を作製することによって、アッセイの感度を調べた。未希釈のDNAテンプレートの元の濃度を光度測定によって求めたところ、547ng/μlであった。このDNA溶液から、1:10、1:50及び1:100の希釈液を作製し、これらの溶液をそれぞれ、異なる組み合わせのプライマーによるPCRアプローチで、テンプレートとして使用した(図3)。
【0107】
2つの異なるアッセイ(SNP11、SNP19)において、使用したテンプレートの量にかかわらず、一貫して、信頼性の高い結果が得られた。SNP19アッセイの場合のみ、テンプレートの希釈度が上昇すると、アンプリコンの収量が減少した。これらの結果に基づき、さらなる実験のすべてにおいて、初期設定として、ポジティブコントロールに、約5ngのゲノムDNAをテンプレートとして使用し、SNP19 PCRのみに、約50ngのテンプレートを初期設定として使用した。
【0108】
PCRアンプリコンの消化:試験及び最適化
使用した制限酵素はすべて、New England BioLabs(Frankfurt am Main)から購入した。増幅プロトコールの最適化後、選択した制限酵素を第1の消化反応で試験したところ、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNAを用いて生成させたアンプリコン(未消化のままであるはずである)は特異的に切断されなかった。
【0109】
一連の予備的実験によって、確実な消化反応には、PCRアンプリコンの精製が必要となることが明らかになった(データは示されていない)。アンプリコンの精製は、制限消化の前に、塩、プライマー、ヌクレオチド及びその他の阻害物質を除去するために必要である。この目的のために、まず、様々な精製キットを試験した(例えば、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen,Hilden,Germany)及びRoti-Prep PCR精製キット(Carl Roth,Karlsruhe,Germany))。それらのキットの比較により、試験した製品のいずれでも、比較的良好な精製最終産物が得られることが示されたので、それ以降、初期費用の最も低いキット(GF-1 PCR Clean-up Kit(GeneOn,Ludwigshafen,Germany))を使用した。
【0110】
第1の工程では、すべての消化反応を試験し、精製ゲノムDNAをPCRテンプレートとして用いて調製したアンプリコンで最適化した。第2の工程では、非精製細胞試料を用いて生成したアンプリコンで、確立した消化反応をトリプリケート(n=3)でアッセイした(下記を参照されたい)。
【0111】
消化反応の性能
本発明の設計済みプライマーによって生成したアンプリコンを第1の消化反応で使用した。試験試料は、上記と同じであった。すなわち、一方は、M.thermoautotrophicus DSM3590から抽出した精製ゲノムDNA(適用される制限酵素(複数可)の認識配列を、本発明の所定のプライマーによって増幅されるDNA配列内に有さない)、もう一方は、古細菌(非M.t.DSM3590古細菌)から抽出した精製ゲノムDNA(適用される制限酵素(複数可)の認識配列を、増幅されるDNA配列内に有する)であった。それぞれのノーテンプレートコントロール(NTC)(ネガティブコントロールともいう)には、それぞれのSNP特異的なマスターミックスを含めたが、DNAテンプレートの代わりに水(HO)を含めた。
【0112】
各アンプリコンテンプレートを、アンプリコンに特異的な酵素のそれぞれによって消化した。メーカーの指示に従って、制限反応を行った。メーカー(New England Biolabs)に従って、DNAの分解を誘発せずに、試料を5~15分(だたし、一晩でもよい)インキュベートできる。2時間というインキュベート期間を(最初は)選択した。好ましくは、消化反応は、サーモサイクラーまたはインキュベーター(37℃)で行う。
【0113】
SNP19
まず、メーカーによって推奨されているように、SNP19 PCR産物のBamHIによる消化をNEBuffer3.1において行ったが、M.thermoautotrophicus DSM3590及び非M.t.DSM3590古細菌ゲノムDNAに由来するアンプリコンの両方とも、消化反応後、未消化のままであった。インキュベート時間を4時間、最大で一晩まで増やしても、インキュベートによって、結果は改善されなかった。さらなる試験では、NEBuffer3.1に加えて、CutSmart緩衝液(New England Biolabs,Frankfurt am Main,Germany)を使用し、メーカーに従ったところ、その酵素の100%の活性が得られた。非M.t.DSM3590古細菌のゲノムDNAの場合、この代替的な緩衝液によって、わずか2時間後に、対応するPCR産物が加水分解された(図4を参照されたい)。したがって、SNP19及び制限酵素BamHIを用いるさらなる実験では、CutSmart緩衝液を使用した。
【0114】
SNP11
予想通り、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製ゲノムDNAで生成されたアンプリコンのケース(ポジティブコントロール)では、アンプリコンの制限反応は起こらず、アガロースゲルにおいて検出された断片の長さは、その消化反応において最初に適用した完全長PCR産物のサイズに対応するものであった。しかしながら、試料が、所定の精製非M.t.DSM3590古細菌であった場合には、予想通り、精製SNP11 PCR産物のゲノムDNAをSfcIで消化した反応では、非M.t.DSM3590古細菌のアンプリコンが、異なる長さの2つの断片(約200bp及び約100bp)に切断されたことが明らかになった。この断片は、ゲル電気泳動後、適用したアガロースゲル上ではっきりと目視で識別可能であった(図5を参照されたい)。
【0115】
SNP20
SNP11アンプリコンの消化と同様に、SNP20 PCR産物の消化反応を制限酵素NdeIによって行った(図6)。M.thermoautotrophicus DSM3590アンプリコンは、制限酵素NdeIとインキュベート後、未消化のままであった。すなわち、未処理のPCR産物と同じサイズであった(約325bp)。しかしながら、試料が、所定の非M.t.DSM3590古細菌の精製ゲノムDNAであった場合には、精製SNP20 PCR産物をNdeIで消化反応させたところ、DNA生成アンプリコンが、異なる長さの2つの断片に切断されたことが明らかになった。この断片は、ゲル電気泳動後、使用したアガロースゲル上で、はっきりと目視で見ることができた(図6を参照されたい)。
【0116】
事前にDNAを精製せずに、稼働中のバイオリアクターに由来する新鮮な古細菌細胞試料を用いた、設計したプライマーの試験
3つのSNPの検出反応のプロトコールを確立した後、次の工程では、稼働中のバイオリアクターの細胞試料に由来する新鮮な生細胞のDNAをPCR増幅のテンプレートとして使用し、本発明の方法に従って調製した。バイオリアクター細胞試料の細胞は、凍結(-80℃)及び解凍サイクルの反復によって機械的に破壊したのみであり、それにより、DNAを放出させた。放出されたゲノムDNA(非精製DNA)の量は、精製DNA用に事前に作成したプロトコールを用いた場合と匹敵するPCR産物収量を得るのに十分であった(データは示されていない)。本発明による方法を用いると、有益なことに、現状技術の方法における、多大な時間を要する、ゲノムDNAの単離を、この実験では省くことができた。生成されたアンプリコンのその後の消化反応は、事前に調べた試料と同様であった。PCRに精製DNAを使用するときよりも、バイオリアクターの新鮮な細胞試料に由来するDNA(PCRを適用する前に精製しない)を使用するときの方が、消化反応が不完全である傾向が幾分大きいことが観察されたに過ぎなかった。
【0117】
アッセイの信頼性の評価
試験プロトコールの最適化後、株の特定試験の信頼性を調べた。この目的のために、3つのSNPアンプリコンのすべてのPCR増幅及び消化反応を独立して、3日連続で試験した。特定する試料として、稼働中のバイオリアクター実験に由来する古細菌細胞を使用し、これらの細胞は、純粋なM.thermoautotrophicus DSM3590と考えられた。すべてのプライマー対を、上記の条件下で試験した。ポジティブコントロールは、一方では、M.thermoautotrophicus DSM3590の抽出済み精製DNA(適用される制限酵素の認識配列を、本発明の所定のプライマーによって増幅されるDNA配列内に有さない)であり、もう一方では、非M.t.DSM3590古細菌の所定の抽出済み精製DNA(適用される制限酵素の認識配列を、増幅されるDNA配列内に有する)であった。ネガティブコントロール(ノーテンプレートコントロール、NTC)には、テンプレートの代わりに、水を含めた。
【0118】
SNP19
驚くべきことに、稼働中のバイオリアクターから回収した古細菌細胞試料に由来するアンプリコンは、適用した制限酵素BamHIによる消化反応において、少なくともある程度、2つの断片に切断された(図7、レーン3を参照されたい)が、予想どおり、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製ゲノムDNAに由来するアンプリコンは、未消化のままであった(図7、レーン10を参照されたい)ことを本発明の発明者は見出した。これが、実験的なアーチファクトであることを除外するために、新たに調製した反応成分、及び新たに調製したゲノムDNAであって、前記バイオリアクターの別の試料から回収したゲノムDNAでも、実験を数回繰り返したとともに、精製形態でも試験した(データは示されていない)。それでも、全例で、結果は以前と大体同じであった。すなわち、消化反応後、アンプリコンは明らかに、少なくともある程度、約400bp及び約100bpという2つの別々のサイズの断片に切断されたが、適用されたアンプリコンのいくつかは、アガロースゲル上に見られるように、未消化のままである場合もあった(約500bp)(図7、レーン3を参照されたい)。上記の非精製試料の代わりに、稼働中のバイオリアクターの前記古細菌細胞試料から回収した、それぞれの精製DNA試料を用いた場合にも、消化反応後に、これらの2つの制限断片が得られ、実験的なアーチファクトであることがさらに除外された(データは示されていない)。
【0119】
この予想外の結果をさらに解析するために、本発明者は、BamHIの代わりに、別の制限酵素、すなわちAvaIIを使用した以外は、BamHIによる実験用に以前に非精製DNAアプローチから得た同じアンプリコン試料を用いて、別の並行消化反応を行った。これにより、図7のレーン2、6及び9で見ることができるような制限パターンが明らかになった。バイオリアクター細胞試料に由来するSNP19アンプリコン(約500bp)が切断されて、良好に識別可能な3つの異なるサイズの制限断片(約320bp、約130bp、約50bp。図7のレーン2を参照されたい)が得られた。さらに、予想通りに、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製ゲノムDNAに由来するアンプリコン(完全長約500bp)から、4つの異なるサイズの制限断片(約230bp、約130bp、約100bp、約50bp。図7のレーン9を参照されたい)が得られた。
【0120】
しかしながら、図7に示されているような第1ラウンドでは、レーン6(非M.t.DSM3590古細菌のポジティブコントロール)では、AvaIIによる消化によって、予測されたバンドに加えて、弱いが特異的なバンドが明らかになった。このバンドは、以前には観察されたことはない。別の実験では、非M.t.DSM3590古細菌のポジティブコントロールは、予想通り、Avallを用いて切断され(データは示されていない)、1回目の試験ランのポジティブコントロールが実験的アーチファクトだったのではいかという結果が示された。
【0121】
その後のアンプリコンシーケンシングによって、バイオリアクターに由来する細胞試料のメタン生成生物が、M.thermoautotrophicus UC120910の純粋な培養液であることが分かった。M.thermoautotrophicus UC120910の実証済みの精製ゲノムDNA試料を用いて、本発明による方法を適用することによって、M.thermoautotrophicus UC120910の上記の細胞試料と比べて、同様の制限パターンが示された。さらに詳細には、M.thermoautotrophicus UC120910の精製ゲノムDNA試料の、SNP19プライマーを用いて生成されたPCRアンプリコン(図7、レーン8)を、BamFII及びAvaIIで消化したところ、アガロースゲル上に、上記の試験細胞試料から得られたDNAと同じ制限パターンが得られ、これにより、M.thermoautotrophicus UC120910であることが分かったので、アンプリコンシーケンシングの結果が確認された(図7のレーン4及び8(PCR産物)、レーン3及び7(BamFII消化)、レーン2及び9(AvaII消化)を参照されたい)。UC120910株細胞試料に由来する非精製DNA試料及びUC120910精製DNAコントロールの制限効率は、いずれの場合にも同じであったが、細胞試料に由来する非精製DNA、及びM.thermoautotrophicus UC120910の精製DNAの両方において、BamFIIを用いた完全消化を行えなった(図7のレーン3及び7を参照されたい)理由を明らかにはできなかった。
【0122】
次の工程では、既知のM.thermoautotrophicus DSM3590源の細胞試料を用いて、本発明による方法を試験した。その細胞試料及び精製DNA試料のPCRアンプリコンは、予想サイズのアンプリコンであった(図8のレーン14及び17を参照されたい)。BamFIIを用いた第1の消化反応の結果も予想通りであり、DSM3590のPCRアンプリコンはまったく消化されなかった(図8の細胞試料及び精製DNA試料のレーン13及び16を参照されたい)。しかしながら、予想外なことに、AvaIIを用いた第2の消化反応では、特異性の低い制限パターンが見られ、すなわち、予測された4つの断片(約230bp、約130bp、約100bp、約50bp)を超える断片が得られた。
【0123】
したがって、AvaIIによる消化反応に基づいては、M.thermoautotrophicus DSM3590の明確な特定を行うことはできなかった。しかしながら、SNP19に対するプライマー対の初期試験の結果によって、少なくとも、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製DNAでは、AvaIIを用いた第2の消化反応も予想通りに機能したことが示されたので、そのアッセイが原則としては機能すると主張される。
【0124】
すなわち、本発明による方法を用いて、M.thermoautotrophicus DSM3590の存在について試験するとともに、その存在を、M.thermoautotrophicus UC 120910としてのM.thermoautotrophicus DSM3590バリアントの存在から識別できる。M.thermoautotrophicus DSM3590及びM.thermoautotrophicus UC120910のバイオリアクター細胞試料に由来するDNAの消化反応アッセイの両方において明らかになった、得られたバリアントの特徴的な制限パターン(その制限断片の数及びサイズ)を用いて、根底をなすメタン生成微生物をジェノタイピングできる。さらに、本発明による方法をさらに用いて、背後で、そのジェノタイピング済みのメタン生成微生物を単離することもできる。
【0125】
UC120910株細胞試料及びUC120910精製DNAコントロールの制限効率は、全例で同じであった。しかしながら、BamHIが、M.thermoautotrophicus DSM3590のDNAをまったく消化しないという知見に鑑みると、M.thermoautotrophicus DSM3590とM.thermoautotrophicus UC120910(BamHIを用いた消化反応後に、少なくとも2つの制限断片という特異的な制限パターンが見られる)との識別により、この両方を明確に識別可能になる。
【0126】
純粋なM.thermoautotrophicus UC120910を含む稼働中のバイオリアクターに由来する前記細胞試料による、原則としてポジティブな実験結果に基づき、これらを、本発明によるSNP11及びSNP20プライマー対を用いたさらなる解析でも使用した。また、実証済みのM.thermoautotrophicus UC120910の上述の精製DNAを、いずれのさらなる実験においても、ポジティブコントロールとして使用した。
【0127】
SNP11
第1の制限酵素SfcIを用いた第1の消化反応では、ポジティブコントロールによって、すべてのランで、予測された結果が得られた。すなわち、アンプリコンは、M.thermoautotrophicus DSM3590の精製DNAの場合には、まったく消化されなかったか、またはM.thermoautotrophicus UC120910の精製DNAの場合には、消化されて、異なるサイズかつ予測されたサイズの2つの断片が得られた。PCRは、全例で成功したが、生成されたバンドは弱かった(データは示されていない)。稼働中のバイオリアクターに由来する新鮮な細胞試料、すなわち、純粋なM.thermoautotrophicus UC120910の細胞試料の解析(対応するポジティブコントロールとして、異なるサイズかつ予測されたサイズの2つの断片が得られるはずである)は、機能しなかった。これらの試験試料のアンプリコンが、M.thermoautotrophicus UC120910に特異的な第1の制限酵素SfcIを用いて、まったく消化されなかったからである(図10を参照されたい)。
【0128】
第2の制限酵素BstNIを用いた第2の消化反応では、ポジティブコントロールにより、すべてのランにおいて、結果が得られた。すなわち、そのアンプリコンは、M.thermoautotrophicus UC120910の精製DNAの場合には、まったく消化されなかったか、またはM.thermoautotrophicus DSM3590の精製DNAの場合には、消化されて、異なるサイズかつ予測されたサイズの2つの断片が得られた。PCRは、全例で成功した(データは示されていない)。
【0129】
さらに興味深いことに、第2の制限酵素BstNIを用いて、M.thermoautotrophicus UC120910に由来するSNP11アンプリコンを消化したところ、DSM3590に関連する制限パターンが得られた。しかしながら、BstNIは、DSM3590に特異的なはずであり、その酵素の認識配列におけるSNPにより、UC120910株のアンプリコンを消化しないはずである。
【0130】
SNP20
SNP20アンプリコンの解析により、再現可能な結果が得られた。UC120910株細胞試料の第1の制限酵素NdeIによる制限は、全例で成功した。しかしながら、UC120910株ポジティブコントロールの場合には、部分的な消化も部分的に観察され、DSM3590株からの識別は明らかに可能であった。対応するDSM3590アンプリコンは、いずれの場合にも未消化のままであったからである。さらに詳細には、UC120910精製DNA(ポジティブコントロール)、及び新鮮な細胞試料に由来する非精製DNA試料の加水分解は、いずれの場合のも、正しい状態であった。すなわち、DSM3590コントロールは、加水分解されなかった。しかしながら、非精製DNAテンプレート及び精製DNAテンプレートの消化のいずれも、図9(レーン2及び5を参照されたい)に示されているように、両方とも不完全であった。しかしながら、各ランでは、このプライマー対に典型的な通常のバンドが現れた。しかしその一方で、制限パターンをUC120910に明確に割り当てるのが可能であった(図9を参照されたい)。
【0131】
表5には、第1の消化反応のパラメーター及び特徴が示されており、表6には、第2の消化反応のパラメーター及び特徴が示されており、それぞれ、試験した各SNP及び異なる古細菌バリアント、すなわち、Methanothermobacter thermoautotrophicus(M.t.)DSM3590株及びM.t.UC12091株に対するものである。使用した制限酵素、ならびに消化反応後、最終的に生成された制限断片の数及びサイズも示されている。
【表5】
【表6】
【0132】
4つすべてのSNP PCR産物(アンプリコン)における、独立した信頼性試験の結果が表7にまとめられている。細胞試料に由来する非精製DNAの、調べたゲノム領域、及び精製DNAに由来するゲノム領域の増幅は、確立された試験プロトコールを用いたところ、常に成功であった。
【表7】
【0133】
勘案すると、使用した3つのSNP試験は、補完的とみなしことができ、並行して合わせて行うことができる。矛盾する結果が得られ、アッセイのうちの1つが、他のアッセイと異なる場合には、解析対象の細胞試料に含まれる古細菌株をジェノタイピングするために、各ケースにおいて、該当するアンプリコンのシーケンシングを行う必要がある。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレオチド配列が、配列番号l、配列番号2または配列番号3を含む群から選択される第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーであって、ヌクレオチド配列が配列番号4、配列番号5または配列番号6を含む群から選択される第2のポリメラーゼ連鎖反応プライマーと組み合わさっており、前記第1のプライマーのそれぞれ及び前記第2のプライマーのそれぞれが、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590のDNAとハイブリダイゼーションでき、前記配列番号l及び前記配列番号4、前記配列番号2及び前記配列番号5、ならびに前記配列番号3及び前記配列番号6が、前記DNAをPCR増幅するのに使用するプライマー対を構成する前記プライマー。
【請求項2】
メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する方法であって、
a.メタン生成微生物(細胞)を含む試料を得て、前記微生物からDNAを放出させるための手段及び技法を適用して、非精製DNA試料を得るか、または前記メタン生成微生物の精製DNAを含む試料を得る工程と、
b.請求項1に記載の前記第1及び第2のプライマーを含むプライマー対を用いるPCR増幅において、前記工程a.による前記非精製DNA試料または前記精製DNA試料を使用して、増幅されたDNA配列(アンプリコン)を得る工程であって、前記アンプリコンが、制限酵素認識配列を少なくとも1つ含む工程と、
c.それぞれの前記アンプリコンを精製する工程と、
d.制限断片を形成するのに十分な時間、第1の認識配列を認識する第1の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、前記工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、前記アンプリコンで、第1の消化反応を行う工程と、
e.その形成された制限断片の数及びそのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程と、
f.前記制限パターンに基づき、前記メタン生成微生物をジェノタイピングする工程と、
g.任意に、前記工程c.の精製される前記アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または前記工程d.の消化される前記アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または前記工程d.の消化反応後の前記アンプリコンもしくは少なくともその一部をシーケンシングする工程と、
を含む前記方法。
【請求項3】
h.前記第1の認識配列と部分的に重複する第2の認識配列を認識する第2の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、制限断片(消化されたアンプリコン)を形成するのに十分な時間、前記工程b.または前記工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、前記アンプリコンで、第2の消化反応を行うことによって、前記工程f.のジェノタイピングの品質管理を行う工程と、
i.その形成された制限断片の数及びそれらのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程と、
j.前記制限パターンに基づき、前記メタン生成微生物をジェノタイピングする工程と、
をさらに含む、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記株のバリアントを単離するとともに、任意に、前記株のバリアントをジェノタイピングする工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590株を、他のMethanothermobacter thermoautotrophicus株から、またはMethanothermobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、Methanospirillium、Methanosaeta、Methanogenium、Methanoculleus及びMethanothermococcus、ならびに上記の混合物からなる群から選択される他の古細菌から識別するための、請求項2~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記識別が、前記アンプリコンにおける少なくとも1つの一塩基多型(SNPに基づいており、このSNPが、前記第1及び第2の認識配列の重複配列の一部であり、前記SNPが、
プライマー対によってPCR増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590以外の古細菌のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)におけるある位置のSNP(同じプライマー対によって増幅した、M.thermoautotrophicus DSM3590のその位置のゲノムヌクレオチド配列のPCR断片(アンプリコン)と比較した場合)からなる群
から選択され、
a.)前記SNPの位置が、418位であり(SNP19)、前記プライマー対が、配列番号3(フォワードプライマー)及び配列番号6(リバースプライマー)であり、
b.)前記SNPの位置が、105位であり(SNP11)、前記プライマー対が、配列番号1(フォワードプライマー)及び配列番号4(リバースプライマー)であり、
c.)前記SNPの位置が、168位であり(SNP20)、前記プライマー対が、配列番号2(フォワードプライマー)及び配列番号5(リバースプライマー)である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記SNPがSNP19であり、前記第1の制限酵素がBamHIであり、前記第2の制限酵素がAvaIIであるか、前記SNPがSNP11であり、前記第1の制限酵素がSfcIであり、前記第2の制限酵素がBstNIもしくはECORIIであるか、または前記SNPがSNP20であり、前記第1の制限酵素がNdeIである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
所定の試料内で、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出するのに使用する品質管理キットであって、
-少なくとも1つの容器と、
-フォワードプライマーとして機能する、請求項1に記載の第1のプライマーと、
-リバースプライマーとして機能する、請求項1に記載の第2のプライマーと、
(前記第1及び第2のプライマーが、前記メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列をPCR増幅できるプライマー対を構成する)
-請求項7に記載の少なくとも1つの第1の制限酵素、または少なくとも1つの第1の制限酵素及び少なくとも1つの第2の制限酵素と、
-任意に、少なくとも1つの緩衝液、例えば、溶出用緩衝液、保存用緩衝液及び/または反応用緩衝液と、
を含む前記キット。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレオチド配列が、配列番号l、配列番号2または配列番号3群から選択される第1のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーであって、ヌクレオチド配列が配列番号4、配列番号5または配列番号6群から選択される第2のポリメラーゼ連鎖反応プライマーと組み合わさっており、前記第1のプライマーのそれぞれ及び前記第2のプライマーのそれぞれが、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590のDNAとハイブリダイゼーションでき、前記配列番号l及び前記配列番号4、前記配列番号2及び前記配列番号5、ならびに前記配列番号3及び前記配列番号6が、前記DNAをPCR増幅するのに使用するプライマー対を構成する第1のプライマー。
【請求項2】
メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する方法であって、
a.メタン生成微生物(細胞)を含む試料を得て、前記微生物からDNAを放出させるための手段及び技法を適用して、非精製DNA試料を得るか、または前記メタン生成微生物の精製DNAを含む試料を得る工程と、
b.請求項1に記載の前記第1及び第2のプライマーを含むプライマー対を用いるPCR増幅において、前記工程a.による前記非精製DNA試料または前記精製DNA試料を使用して、増幅されたDNA配列(アンプリコン)を得る工程であって、前記アンプリコンが、制限酵素認識配列を少なくとも1つ含む工程と、
c.それぞれの前記アンプリコンを精製する工程と、
d.制限断片を形成するのに十分な時間、第1の認識配列を認識する第1の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、前記工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、前記アンプリコンで、第1の消化反応を行う工程と、
e.その形成された制限断片の数及びそのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程と、
f.前記制限パターンに基づき、前記メタン生成微生物をジェノタイピングする工程と、
g.任意に、前記工程c.の精製される前記アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または前記工程d.の消化される前記アンプリコンもしくは少なくともその一部、及び/または前記工程d.の消化反応後の前記アンプリコンもしくは少なくともその一部をシーケンシングする工程と、
を含む検出方法。
【請求項3】
h.前記第1の認識配列と部分的に重複する第2の認識配列を認識する第2の制限酵素を少なくとも1つ含む反応用緩衝液において、制限断片(消化されたアンプリコン)を形成するのに十分な時間、前記工程b.または前記工程c.のアンプリコンをインキュベートすることによって、前記アンプリコンで、第2の消化反応を行うことによって、前記工程f.のジェノタイピングの品質管理を行う工程と、
i.その形成された制限断片の数及びそれらのサイズ(制限パターン)を、例えばゲル電気泳動を介して求める工程と、
j.前記制限パターンに基づき、前記メタン生成微生物をジェノタイピングする工程と、
をさらに含む、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記株のバリアントを単離するとともに、任意に、前記株のバリアントをジェノタイピングする工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590株を、他のMethanothermobacter thermoautotrophicus株から、またはMethanothermobacterium、Methanobrevibacter、Methanothermobacter、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、Methanospirillium、Methanosaeta、Methanogenium、Methanoculleus及びMethanothermococcus、ならびに上記の混合物からなる群から選択される他の古細菌から識別するための、請求項2~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記識別が、前記アンプリコンにおける少なくとも1つのSPに基づいており、このSNPが、前記第1及び第2の認識配列の重複配列の一部であり、前記SNPが、SNP19、SNP11及びSNP20からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記SNPがSNP19であり、前記第1の制限酵素がBamHIであり、前記第2の制限酵素がAvaIIであるか、前記SNPがSNP11であり、前記第1の制限酵素がSfcIであり、前記第2の制限酵素がBstNIもしくはECORIIであるか、または前記SNPがSNP20であり、前記第1の制限酵素がNdeIである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
所定の試料内で、メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590の存在を検出するのに使用する品質管理キットであって、
-少なくとも1つの容器と、
-フォワードプライマーとして機能する、請求項1に記載の第1のプライマーと、
-リバースプライマーとして機能する、請求項1に記載の第2のプライマーと、
(前記第1及び第2のプライマーが、前記メタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590のDNA配列をPCR増幅できるプライマー対を構成する)
-請求項7に記載の少なくとも1つの第1の制限酵素、または少なくとも1つの第1の制限酵素及び少なくとも1つの第2の制限酵素と、
-任意に、少なくとも1つの緩衝液、例えば、溶出用緩衝液、保存用緩衝液及び/または反応用緩衝液と、
を含む品質管理キット。
【請求項9】
請求項4に記載の方法によって特定及び単離されたメタン生成微生物Methanothermobacter thermoautotrophicus DSM3590バリアントであって、SNP19、SNP11及びSNP20からなる群から選択されるSNPを少なくとも1つ含むことを特徴とするバリアント。
【請求項10】
前記バリアントが、Methanothermobacter thermoautotrophicus UC120910である、請求項9に従って特定されるメタン生成微生物。
【国際調査報告】