(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(54)【発明の名称】フラタキシン発現を調節し、フリードライヒ運動失調症を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20221114BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20221114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221114BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20221114BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221114BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221114BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20221114BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221114BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221114BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/88 Z ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/09 110
C12N15/54
C12N5/10
C12N15/12
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7105
A61K31/7088
A61P25/14
A61P25/00
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543368
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020052101
(87)【国際公開番号】W WO2021061698
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522114645
【氏名又は名称】オメガ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルナルディ, セリーナ
(72)【発明者】
【氏名】シャイデッガー, アダム ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ジェシー ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ファレリ, ジェレミア デイル
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ, ジョディ ミシェル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA27
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA221
4C084ZA222
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA22
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA22
(57)【要約】
本開示は、概して、例えば、フリードライヒ運動失調症(FRDA)の治療を目的とする、フラタキシン(FXN)発現を調節する方法及び組成物に関する。本開示は、一部には、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現を調節、例えば、増大する組成物を提供する。理論に束縛されることは望まないが、以下:FXN遺伝子内に含まれるか、若しくはそれと作動可能に連結されたゲノム配列エレメント(例えば、発現制御エレメント)と;FXNの発現を調節(例えば、増大)することができるエフェクター部分(例えば、エピジェネティック修飾部分)と、を含む調節剤が、FXNの発現を調節、例えば、増大するのに有用であり得ると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を増大することができるエピジェネティック修飾部分を含むエフェクター部分と、
を含む調節剤。
【請求項2】
以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を増大することができる第1エフェクター部分と、
FXNの発現を増大することができる第2エフェクター部分と、
を含む調節剤であって、
前記第1及び第2エフェクター部分が、異なる部分である、調節剤。
【請求項3】
以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分であって、Znフィンガー分子を含む、ターゲティング部分と、
FXNの発現を増大することができるエフェクター部分と、
を含む調節剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の調節剤をコードする核酸。
【請求項5】
調節剤をコードする組換えRNAであって、前記調節剤が、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を増大することができるエフェクター部分と、
を含む組換えRNA。
【請求項6】
調節剤をコードする核酸、例えば、組換えRNAを含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子(LNP))であって、前記調節剤が、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を増大することができるエフェクター部分と、
を含むナノ粒子。
【請求項7】
細胞におけるフラタキシン(FXN)発現を増大する方法であって、以下:
細胞を調節剤と接触させ、これにより、前記細胞におけるFXN発現を増大することを含み、前記調節剤は、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を増大することができるエフェクター部分と、を含み、
FXN発現は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10週間にわたって(及び任意選択的に、永続的に)増大するか、或いは
前記細胞が、少なくとも44コピーのGAA伸長を有するFXN対立遺伝子を含み、前記調節剤による治療後に、前記FXN対立遺伝子は、前記調節剤と接触させていない類似細胞の発現レベルの少なくとも1.5×(即ち、1.5倍)のレベルで発現される、方法。
【請求項8】
細胞におけるフラタキシン(FXN)発現を増大する方法であって、以下:
細胞を請求項1~7のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターと接触させ、
これにより、前記細胞におけるFXN発現を増大すること
を含む、方法。
【請求項9】
前記エフェクター部分が、エピジェネティック修飾部分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項10】
前記エピジェネティック修飾部分が、DNAメチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、又はそのいずれかの機能性断片若しくは変異体を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項11】
前記エフェクター部分が、DNAデメチラーゼ又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、TET1、TET2、TET3、若しくはTDGから選択されるタンパク質、又はそのいずれかの機能性変異体若しくは断片を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項12】
前記エフェクター部分が、ヒストンメチルトランスフェラーゼ又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、DOT1L、PRDM9、PRMT1、PRMT2、PRMT3、PRMT4、PRMT5、NSD1、NSD2、NSD3から選択されるタンパク質、又はそのいずれかの機能性変異体若しくは断片を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項13】
前記エフェクター部分が、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、p300、CREB-結合タンパク質(CBP)から選択されるタンパク質、又はそのいずれかの機能性断片若しくは変異体を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項14】
前記エフェクター部分が、転写活性化因子又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、VP16、VP64、VP160、若しくはVPRから選択されるタンパク質を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項15】
前記ターゲティング部分が、Cas9分子を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項16】
前記Cas9分子が、レンサ球菌属(Streptococcus)(例えば、化膿性レンサ球菌(S.pyogenes)、又はS.サーモフィルス(S.thermophilus))、フランシセラ属(Francisella)(例えば、F.ノビシダ(F.novicida))、スタフィロコッカッス属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus))、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)(例えば、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)、ナイセリア属(Neisseria)(例えば、髄膜炎菌(N.meningitidis))、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ヘモフィラス属(Haemophilus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、パスツレラ属(Pasteurella)、プレボテラ属(Prevotella)、ベイロネラ属(Veillonella)、又はマリノバクター属(Marinobacter)由来のCas9タンパク質を含む、請求項15に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項17】
前記Cas9分子が、例えば、不活性RuvC及び/又はHNHドメインを含む、実質的にヌクレアーゼ活性を欠失したCas9タンパク質、例えば、dCas9を含む、請求項15又は16に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項18】
前記Cas9分子が、gRNA、例えば、sgRNAを含み(例えば、それと非共有結合しており)、前記gRNAは、前記発現制御エレメントに結合する、請求項15~17のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項19】
前記gRNAが、配列番号4~26のいずれか、又は配列番号4~26のいずれかに対して少なくとも80、85、90、95、若しくは99%同一性を有する配列から選択される核酸配列を含む、請求項18に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項20】
前記ターゲティング部分が、TALエフェクター分子を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項21】
前記ターゲティング部分が、Znフィンガー分子を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項22】
前記ターゲティング部分が、2、3、4、5、又は6つのZnフィンガータンパク質を有するZnフィンガー分子を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項23】
前記発現制御エレメントが、前記FXN遺伝子と作動可能に連結されたエンハンサー若しくはプロモータ又はその部分を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項24】
前記ターゲティング部分が、前記FXN遺伝子の転写開始部位から500、490、480、470、460、450、440、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1ヌクレオチド以下上流又は下流(及び任意選択的に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、若しくは90ヌクレオチド上流又は下流)の核酸配列に結合する、請求項1~23のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項25】
前記ターゲティング部分が、表3のゲノムの座標により描かれる配列から選択される核酸配列に結合する、請求項1~24のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項26】
前記ターゲティング部分が、Cas9分子、例えば、dCas9分子を含み、前記エフェクター部分が、p300又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項27】
前記ターゲティング部分が、Cas9分子、例えば、dCas9分子を含み、前記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項28】
前記ターゲティング部分が、酵素として不活性のCasヌクレアーゼ、例えば、dCas9分子を含み、前記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体、p65又はその機能性断片若しくは変異体、及びRTA又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項29】
前記ターゲティング部分が、TALエフェクター分子(例えば、前記TALエフェクター分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、前記エフェクター部分が、VPR又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項30】
前記ターゲティング部分が、TALエフェクター分子分子(例えば、前記TALエフェクター分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、前記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体、p65又はその機能性断片若しくは変異体、及びRTA又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項31】
前記ターゲティング部分が、Znフィンガー分子(例えば、前記Znフィンガー分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、前記エフェクター部分が、VPR又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項32】
前記ターゲティング部分が、Znフィンガー分子分子(例えば、前記Znフィンガー分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、前記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体、p65又はその機能性断片若しくは変異体、及びRTA又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項33】
前記調節剤が、融合分子を含むか、又は融合分子である、請求項1~32のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項34】
前記調節剤が、配列番号304~309のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~25又は33のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
【請求項35】
請求項1~3又は9~34のいずれか1項に記載の調節剤と、前記FXN遺伝子の発現制御配列を有する核酸配列と、を含む複合体。
【請求項36】
請求項1~6又は9~34のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを含む細胞。
【請求項37】
請求項1~3又は9~34のいずれか1項に記載の調節剤をコードする核酸を含む細胞。
【請求項38】
請求項1~6又は9~34のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを細胞に送達する方法であって、
前記調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターと前記細胞を接触させ、
これにより、前記調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを前記細胞に送達すること
を含む方法。
【請求項39】
フラタキシン(FXN)遺伝子の転写を調節、例えば、増大する方法であって、以下:
請求項1~6又は9~34のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターと細胞を接触させ、
これにより、前記FXN遺伝子の発現を調節、例えば、増大すること
を含む方法。
【請求項40】
フリードライヒ運動失調症(FRDA)を有する患者を治療する方法であって、以下:
請求項1~6又は9~34のいずれか1項に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを前記患者に投与し、
これにより、前記患者を治療すること
を含む方法。
【請求項41】
前記方法が、血液(例えば、全血)中のFXNレベルを、前記調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターの非存在下での血液(例えば、全血)中のFXNレベルに比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、300、若しくは400%増大する、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が、FDRAの少なくとも1つの症状、例えば、以下:運動失調、構音障害、筋力低下、痙性(例えば、下肢痙縮)、脊椎側彎症、膀胱機能障害、反射障害、位置覚及び/若しくは振動感覚の消失、心筋症、又は糖尿病から選択される症状を軽減又は排除する、請求項38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
血液(例えば、全血)中のFXNの前記レベルを少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10週間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5年にわたって増大する、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記方法が、血液(例えば、全血)中のFXNレベルを少なくとも12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、又は96時間にわたって増大する、請求項38~43のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/904,391号明細書(2019年9月23日に出願)に対する優先権及びそれからの利益を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
フリードライヒ運動失調症(FRDA)は、FXN転写の阻害及びFXNタンパク質発現の低減を招くフラタキシン(FXN)遺伝子の第1イントロン内のホモ接合型GAAリピート伸長変異に主として起因する致死的常染色体劣性遺伝性神経変性疾患である。FRDAの病理学的特徴としては、脊髄後根神経節(DRG)中の大型感覚ニューロンの変性、脊髄の変性萎縮、肥大型心筋症、及び糖尿病が挙げられる。FRDA及び/又は関連症状を患う患者におけるFXNの発現を調節、例えば、増大する方法及び組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、一部には、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現を調節、例えば、増大する組成物を提供する。理論に束縛されることは望まないが、以下:FXN遺伝子内に含まれるか、若しくはそれと作動可能に連結されたゲノム配列エレメント(例えば、発現制御エレメント)と;FXNの発現を調節(例えば、増大)することができるエフェクター部分(例えば、エピジェネティック修飾部分)と、を含む調節剤が、FXNの発現を調節、例えば、増大するのに有用であり得ると考えられる。
【0004】
従って、いくつかの態様では、本開示は、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエピジェネティック修飾部分を含むエフェクター部分と、を含む調節剤に関する。別の態様では、本開示は、一部には、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、FXNの発現を調節、例えば、増大することができる第1エフェクター部分と、FXNの発現を調節、例えば、増大することができる第2エフェクター部分と、を含む調節剤に関し、ここで、第1及び第2エフェクター部分は、異なる部分である。別の態様では、本開示は、一部には、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分(上記ターゲティング部分は、Znフィンガー分子を含む)と、FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含む調節剤に関する。
【0005】
別の態様では、本開示は、一部には、調節剤をコードする核酸分子に関し、調節剤は、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエピジェネティック修飾部分を含むエフェクター部分と、を含み、ここで、核酸分子は、直鎖状で、且つ非ウイルスである。別の態様では、本開示は、一部には、本明細書に記載の調節剤をコードする核酸分子(ウイルス核酸内に含まれるか、又はそれを含む、例えば、ウイルスベクター内に含まれるか、又はそれを含む核酸分子)に関する。
【0006】
別の態様では、本開示は、一部には、調節剤をコードする組換えRNAに関し、調節剤は、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含む。
【0007】
別の態様では、本開示は、一部には、本明細書に記載の核酸又は組換えRNAを含むウイルスベクターに関する。
【0008】
別の態様では、本開示は、一部には、調節剤をコードする核酸、例えば、組換えRNAを含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子(LNP))に関し、調節剤は、フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含む。
【0009】
本開示は、一部には、例えば、それを必要とする患者(例えば、FRDAを有する患者)におけるフラタキシン(FXN)遺伝子の発現を調節、例えば、増大する方法をさらに提供する。理論に束縛されることは望まないが、FXN遺伝子内に含まれるか、若しくはそれと作動可能に連結したゲノム配列エレメント(例えば、発現制御エレメント)に、調節剤を向けるターゲティング部分と;FXNの発現を調節(例えば、増大)することができるエフェクター部分(例えば、エピジェネティック修飾部分を含む)と、を含む調節剤を投与することにより、それを必要とする患者におけるFXNの発現を調節、例えば、増大し、且つ/又はFXNタンパク質のレベルを増加し得ると考えられる。
【0010】
従って、いくつかの態様では、本開示は、一部には、細胞におけるフラタキシン(FXN)遺伝子の発現を増大する方法に関し、これは、細胞を調節剤(上記調節剤は、以下:フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と;FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含む)と接触させ、これにより、上記細胞におけるFXN発現を増大することを含み、ここで、FXN発現は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10週間にわたって(及び任意選択的に、永続的に)増大する。別の態様では、本開示は、一部には、細胞におけるフラタキシン(FXN)遺伝子の発現を増大する方法に関し、これは、細胞を調節剤(上記調節剤は、以下:フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と;FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含む)と接触させ、これにより、上記細胞におけるFXN発現を増大することを含み、ここで、上記細胞は、少なくとも44コピーのGAA伸長を有するFXN対立遺伝子を含み、調節剤による治療後に、FXN対立遺伝子は、調節剤と接触させていない類似細胞の発現レベルの1.5×(即ち、1.5倍)のレベルで発現される。別の態様では、本開示は、一部には、細胞におけるフラタキシン(FXN)発現を増大する方法に関し、これは、本明細書に記載の調節剤と細胞を接触させることを含む。
【0011】
本開示は、少なくとも44コピーのGAA伸長を有する1つ又は2つのフラタキシン(FXN)対立遺伝子を含むヒト細胞を提供し、ここで、FXN対立遺伝子は、FXN発現を調節することができる調節剤(例えば、本明細書に記載の調節剤)で処理されていない細胞でのFXN発現のレベルより高いレベルで発現される。理論に束縛されることは望まないが、本明細書に記載の調節剤で処理した細胞は、例えば、細胞中に調節剤が存在する/した時間を超える期間にわたってFXN発現の増大を呈示し得ると考えられる。一部の実施形態では、FXN対立遺伝子は、参照レベルの少なくとも1.5×(即ち、1.5倍)、1.6×、1.7×、1.8×、1.9×、2×、2.1×、2.2×、2.3×、2.4×、2.5×、2.6×、2.7×、2.8×、2.9×、3×、3.1×、3.2×、3.3×、3.4×、3.5×、3.6×、3.7×、3.8×、3.9×、4×、4.1×、4.2×、4.4×、4.5×、4.6×、4.7×、4.8×、4.9×、又は5×のレベルで発現され、ここで、参照レベルは、FXN発現を調節することができる調節剤(例えば、本明細書に記載の調節剤)で処理されていない細胞でのFXN発現のレベルである。一部の実施形態では、細胞は、筋肉細胞(例えば、心臓の筋肉細胞、例えば、心筋細胞)又は神経細胞(例えば、中枢神経系の細胞、脊椎の細胞、例えば、脊髄後根神経節(DRG)の細胞)である。一部の実施形態では、神経細胞は、グルタミン酸作動性ニューロンである。
【0012】
前述した方法又は組成物のいずれかの別の特徴は、以下に列挙される実施形態の1つ又は複数を含む。
【0013】
当業者であれば、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識するか、又は常用的な実験を用いるだけでそれらを確認することができるだろう。こうした同等物は、以下に列挙される実施形態に包含されることが意図される。
【0014】
本明細書に挙げる全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献(例えば、配列データベース参照番号)は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、本明細書、例えば、本明細書のいずれかの表で参照される全てのGenBank、Unigene、及びEntrez配列は、参照により本明細書に組み込まれる。別に明示しない限り、本明細書の全ての表を含め、本明細書に記載される配列アクセッション番号は、2019年9月23日現在のデータベースエントリーを指す。1つの遺伝子又はタンパク質が、複数の配列アクセッション番号を示す場合には、全ての配列変異体が包含される。
【0015】
実施形態の列挙
1.以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエピジェネティック修飾部分を含むエフェクター部分と、
を含む調節剤。
2.以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができる第1エフェクター部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができる第2エフェクター部分と、
を含む調節剤であって、上記第1及び第2エフェクター部分が、異なる部分である、調節剤。
3.以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分(上記ターゲティング部分は、Znフィンガー分子を含む)と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、
を含む調節剤。
4.調節剤をコードする核酸分子であって、上記調節剤は、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含み、ここで、上記核酸分子は、直鎖状で、且つ非ウイルスである、核酸分子。
5.実施形態1~4のいずれかに記載の調節剤をコードする核酸。
6.調節剤をコードする組換えRNAであって、上記調節剤は、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、
を含む組換えRNA。
7.調節剤をコードする核酸、例えば、組換えRNAを含むナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子(LNP))であって、上記調節剤は、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含むナノ粒子。
8.実施形態4~6のいずれかに記載の核酸又は組換えRNA分子を含むウイルスベクター。
9.細胞におけるフラタキシン(FXN)発現を増大する方法であって、
細胞を調節剤と接触させ、これにより、上記細胞におけるFXN発現を増大することを含み、上記調節剤は、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含み、
ここで、FXN発現は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10週間にわたって(及び任意選択的に、永続的に)増大する、方法。
10.細胞におけるフラタキシン(FXN)発現を増大する方法であって、
細胞を調節剤と接触させ、これにより、上記細胞におけるFXN発現を増大することを含み、上記調節剤は、以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、を含み、
ここで、上記細胞は、少なくとも44コピーのGAA伸長を有するFXN対立遺伝子を含み、調節剤による治療後に、FXN対立遺伝子は、調節剤と接触させていない類似細胞の発現レベルの少なくとも1.5×(即ち、1.5倍)のレベルで発現される、方法。
11.細胞におけるフラタキシン(FXN)発現を増大する方法であって、以下:
細胞を実施形態1~8のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターと接触させ、
これにより、上記細胞におけるFXN発現を増大すること
を含む、方法。
12.以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントに結合するターゲティング部分であって、上記発現制御エレメントが、FXNのプロモータ又は転写部位を含まないターゲティング部分と、
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、
を含む、調節剤。
13.以下:
フラタキシン(FXN)遺伝子の発現制御エレメントの核酸配列に結合するターゲティング部分であって、TSSに最も近い上記核酸エレメント位置が、i)TSSの約150塩基上流;又はii)TSSの約50塩基下流である、ターゲティング部分と;
FXNの発現を調節、例えば、増大することができるエフェクター部分と、
を含む、調節剤。
14.以下:
少なくとも44コピーのGAA伸長を有するフラタキシン(FXN)対立遺伝子
を含むヒト細胞において、
上記FXN対立遺伝子が、参照レベルの少なくとも1.5×(即ち、1.5倍)、1.6×、1.7×、1.8×、1.9×、2×、2.1×、2.2×、2.3×、2.4×、2.5×、2.6×、2.7×、2.8×、2.9×、3×、3.1×、3.2×、3.3×、3.4×、3.5×、3.6×、3.7×、3.8×、3.9×、4×、4.1×、4.2×、4.4×、4.5×、4.6×、4.7×、4.8×、4.9×、又は5×のレベルで発現され、上記参照レベルは、FXN発現を調節することができる調節剤(例えば、いずれかの先行する請求項に記載の調節剤)で処理されていない細胞でのFXN発現のレベルであり、
上記細胞は、筋肉細胞、神経細胞、又は脊髄後根神経節の細胞である、ヒト細胞。
15.以下:
各々が少なくとも44コピーのGAA伸長を有する2つのフラタキシン(FXN)対立遺伝子
を含むヒト細胞において、
各対立遺伝子は、参照レベルの少なくとも1.5×(即ち、1.5倍)、1.6×、1.7×、1.8×、1.9×、2×、2.1×、2.2×、2.3×、2.4×、2.5×、2.6×、2.7×、2.8×、2.9×、3×、3.1×、3.2×、3.3×、3.4×、3.5×、3.6×、3.7×、3.8×、3.9×、4×、4.1×、4.2×、4.4×、4.5×、4.6×、4.7×、4.8×、4.9×、又は5×のレベルで発現され、上記参照レベルは、FXN発現を調節することができる調節剤(例えば、いずれかの先行する請求項に記載の調節剤)で処理されていない細胞でのFXN発現のレベルであり、
上記細胞が、筋肉細胞、神経細胞、又は脊髄後根神経節の細胞である、ヒト細胞。
16.上記エフェクター部分が、エピジェネティック修飾部分を含む、実施形態1~13のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
17.上記エピジェネティック修飾部分が、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、又はそのいずれかの機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13又は16のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
18.上記エフェクター部分が、DNAデメチラーゼ又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、TET1、TET2、TET3、若しくはTDGから選択されるタンパク質、又はそのいずれかの機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13、16、又は17のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
19.上記エフェクター部分が、ヒストンメチルトランスフェラーゼ又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、DOT1L、PRDM9、PRMT1、PRMT2、PRMT3、PRMT4、PRMT5、NSD1、NSD2、NSD3から選択されるタンパク質、又はそのいずれかの機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13又は16~18のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
20.上記エフェクター部分が、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、p300、CREB-結合タンパク質(CBP)から選択されるタンパク質、又はそのいずれかの機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13又は16~19のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
21.上記エフェクター部分が、転写活性化因子又はその機能性断片若しくは変異体、例えば、VP16、VP64、VP160、若しくはVPRから選択されるタンパク質を含む、実施形態1~13又は16~20のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
22.上記エフェクター部分が、VPR又はその機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13又は16~21のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
23.上記エフェクター部分が、p300又はその機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13又は16~22のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
24.上記エフェクター部分が、p65又はその機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13又は16~23のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
25.上記エフェクター部分が、RTA又はその機能性断片若しくは変異体を含む、実施形態1~13又は16~24のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
26.上記エフェクター部分が、DNAデメチラーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、若しくは転写活性化因子、又はそのいずれかの機能性断片の1つ、2つ、又は全てを含む、実施形態1~13又は16~25のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
27.上記ターゲティング部分が、Cas9分子を含む、実施形態1~13又は16~26のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
28.上記Cas9分子が、レンサ球菌属(Streptococcus)(例えば、化膿性レンサ球菌(S.pyogenes)、又はS.サーモフィルス(S.thermophilus))、フランシセラ属(Francisella)(例えば、F.ノビシダ(F.novicida))、スタフィロコッカッス属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus))、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)(例えば、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)、ナイセリア属(Neisseria)(例えば、髄膜炎菌(N.meningitidis))、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ヘモフィラス属(Haemophilus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、パスツレラ属(Pasteurella)、プレボテラ属(Prevotella)、ベイロネラ属(Veillonella)、又はマリノバクター属(Marinobacter)由来のCas9タンパク質を含む、実施形態27に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
29.上記Cas9分子が、例えば、不活性RuvC及び/又はHNHドメインを含む、実質的にヌクレアーゼ活性を欠失したCas9タンパク質、例えば、dCas9を含む、実施形態27又は28に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
30.上記Cas9分子が、gRNA、例えば、sgRNAを含み(例えば、それと非共有結合しており)、ここで、上記gRNAは、発現制御エレメントに結合する、実施形態27~29のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
31.上記gRNAが、配列番号4~26のいずれか、又は配列番号4~26のいずれかに対して少なくとも80、85、90、95、若しくは99%の同一性を有する配列から選択される核酸を含む、実施形態30に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
32.上記ターゲティング部分が、TALエフェクター分子を含む、実施形態1~13又は16~26のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
33.上記TALエフェクター分子が、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20のTALエフェクターDNA結合ドメイン(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の反復可変二残基(RVD))を含む、実施形態32に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
34.上記ターゲティング部分が、Znフィンガー分子を含む、実施形態1~13、又は16~26のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
35.上記発現制御エレメントが、上記FXN遺伝子と作動可能に連結されたエンハンサー若しくはプロモータ又はその部分を含む、実施形態1~13又は16~34のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
36.上記発現制御エレメントが、完全に又は部分的に、上記FXN遺伝子を含むアンカー配列媒介接合部と作動可能に連結したアンカー配列を含む、実施形態1~13又は16~35のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
37.上記ターゲティング部分が、上記FXN遺伝子の転写開始部位(TSS)を含む核酸配列に結合する、実施形態1~13又は16~36のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
38.上記ターゲティング部分が、上記FXN遺伝子の転写開始部位(TSS)から500、490、480、470、460、450、440、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1ヌクレオチド以下上流又は下流(及び任意選択的に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、若しくは90ヌクレオチド上流又は下流の核酸配列に結合する、実施形態1~13又は16~37のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
39.上記ターゲティング部分が、上記FXN遺伝子の転写開始部位(TSS)から約50~150、50~70、70~90、90~110、110~130、又は130~150ヌクレオチド上流の核酸配列に結合する、実施形態1~13、又は16~37のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
40.上記ターゲティング部分が、2、3、4、5、又は6つのZnフィンガータンパク質を含有するZnフィンガー分子を含む、実施形態1~13又は16~39のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
41.上記ターゲティング部分が、表3のゲノムの座標により描かれる配列から選択される核酸配列に結合する、実施形態1~13又は16~40のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
42.上記ターゲティング部分が、Cas9分子、例えば、dCas9分子を含み、上記エフェクター部分が、p300又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
43.上記ターゲティング部分が、Cas9分子、例えば、dCas9分子を含み、上記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
44.上記ターゲティング部分が、酵素として不活性のCasヌクレアーゼ、例えば、dCas9分子を含み、上記エフェクター部分が、p300又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
45.上記ターゲティング部分が、酵素として不活性のCasヌクレアーゼ、例えば、dCas9分子を含み、上記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
46.上記ターゲティング部分が、酵素として不活性のCasヌクレアーゼ、例えば、dCas9分子を含み、上記エフェクター部分が、VPR又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
47.上記ターゲティング部分が、酵素として不活性のCasヌクレアーゼ、例えば、dCas9分子を含み、上記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体、p65又はその機能性断片若しくは変異体、及びRTA又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
48.上記ターゲティング部分が、TALエフェクター分子(例えば、上記TALエフェクター分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、上記エフェクター部分が、VPR又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
49.上記ターゲティング部分が、TALエフェクター分子分子(例えば、上記TALエフェクター分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、上記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体、p65又はその機能性断片若しくは変異体、及びRTA又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
50.上記ターゲティング部分が、Znフィンガー分子(例えば、上記Znフィンガー分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、上記エフェクター部分が、VPR又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
51.上記ターゲティング部分が、Znフィンガー分子分子(例えば、上記Znフィンガー分子は、FXN遺伝子TSSの上流、例えば、約50~150ヌクレオチド上流、例えば、約100ヌクレオチド上流に結合する)を含み、上記エフェクター部分が、VP64又はその機能性断片若しくは変異体、p65又はその機能性断片若しくは変異体、及びRTA又はその機能性断片若しくは変異体を含む、
実施形態1~13、16~31、35~39、又は41のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
52.上記調節剤が、融合分子を含むか、又は融合分子である、実施形態1~13又は16~51のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
53.上記調節剤が、配列番号304~309のいずれかから選択されるアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~13又は16~52のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
54.上記融合分子が、例えば、単一のポリペプチド鎖の一部として、例えば、ペプチド結合により共有結合されたターゲティング部分とエフェクター部分を含む、実施形態52又は53に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
55.上記調節剤が、コンジュゲートを含むか、又はコンジュゲートである、実施形態1~13又は16~54のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
56.上記コンジュゲートが、例えば、非ペプチド結合により共有結合されたターゲティング部分とエフェクター部分を含む、実施形態55に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
57.上記調節剤が、追加部分をさらに含む、実施形態1~13又は16~56のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
58.上記追加部分が、精製タグ(例えば、調節剤の精製に役立つ部分)、生体利用可能性若しくは薬物動態部分(例えば、調節剤の生体利用可能性を増大するか、若しくは調節剤の薬物動態特性を調節する部分)、可溶性部分(例えば、上記調節剤の溶解度、例えば、生理学的溶解度を高める部分)、検出部分(例えば、調節剤の存在若しくはレベルの検出及び/又は定量を助ける部分、例えば、蛍光部分若しくは蛍光色素)、多量体化部分(例えば、調節剤の多量体化(例えば、二量体化、三量体化、若しくは四量体化)を促進する部分)、或いは会合部分(例えば、調節剤が、構造、例えば、膜又は実験室内試験装置(例えば、プレート若しくは管壁)と会合することを可能にする部分)を含む、実施形態57に記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、ウイルスベクター、又は方法。
59.実施形態1~3、12、13、又は16~58のいずれかに記載の調節剤と、FXN遺伝子の発現制御配列を有する核酸配列と、を含む複合体。
60.実施形態1~8、12、13、又は16~58のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを含む細胞。
61.実施形態1~3、12、13、又は16~58のいずれかに記載の調節剤をコードする核酸を含む細胞。
62.実施形態1~8、12、13、又は16~58のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを細胞に送達する方法であって、上記調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターと上記細胞を接触させ、これにより、上記調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを上記細胞に送達することを含む方法。
63.上記FXN遺伝子、又は上記gRNAをコードするDNAの発現制御エレメントに結合する1つ若しくは複数の(例えば、2若しくは3つの)gRNAと、上記細胞を接触させるステップをさらに含む、実施形態62に記載の方法。
64.上記フラタキシン(FXN)遺伝子の転写を調節、例えば、増大する方法であって、以下:
実施形態1~8、12、13、又は16~58のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターと細胞を接触させ、
これにより、上記FXN遺伝子の発現を調節、例えば、増大すること
を含む方法。
65.接触が、インビボ、インビトロ、又はエクスビボで行われる、実施形態62~64のいずれかに記載の方法。
66.フリードライヒ運動失調症(FRDA)を有する患者を治療する方法であって、以下:
実施形態1~8、12、13、又は16~58のいずれかに記載の調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターを上記患者に投与し、
これにより、上記患者を治療すること
を含む方法。
67.投与が、静脈内又は髄腔内投与を含む、実施形態66に記載の方法。
68.上記方法が、血液(例えば、全血)中のFXNレベルを、上記調節剤、核酸、組換えRNA、ナノ粒子、又はウイルスベクターの非存在下での血液(例えば、全血)中のFXNレベルに比して(例えば、Deutsch et al又はOglesbee et alの方法により測定して)、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、300、若しくは400%増大する、実施形態62~67のいずれかに記載の方法。
69.上記方法が、FDRAの少なくとも1つの症状、例えば、以下:運動失調、構音障害、筋力低下、痙性(例えば、下肢痙縮)、脊椎側彎症、膀胱機能障害、反射障害、位置覚及び/若しくは振動感覚の消失、心筋症、又は糖尿病から選択される症状を軽減又は排除する、実施形態62~68のいずれかに記載の方法。
70.血液(例えば、全血)中のFXNの上記レベルを少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10週間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5年にわたって増大する、実施形態68又は69に記載の方法。
71.上記方法が、血液(例えば、全血)中のFXNレベルを少なくとも12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、又は96時間にわたって増大する、実施形態62~69のいずれかに記載の方法。
72.細胞におけるフラタキシン(FXN)発現を増大する方法であって、以下:
先行する実施形態のいずれかに記載の調節剤を細胞と接触させ、
これにより、上記細胞におけるFXN遺伝子の発現を増大すること
を含み、
ここで、FXN発現が、少なくとも12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、又は96時間にわたって(及び任意選択的に、永続的に)増大する方法。
【0016】
定義
1つの(a)、1つの(a)、その(the):本明細書で用いられるとき、「1つの(a)」、「1つの(a)」、「その(the)」は、文脈から明らかに別の解釈が要求されるのでない限り、複数の指示語を含む。
【0017】
薬剤:本明細書で用いられるとき、用語「薬剤」は、例えば、ポリペプチド、核酸、糖、脂質、小分子、金属、又はそれらの組合せ若しくは複合体を含む、任意の化学クラスの化合物又は実体を指す。当業者には文脈から明らかになるように、一部の実施形態では、この用語は、細胞若しくは生物、又はその画分、抽出物、若しくは成分であるか、又はそれを含む実体を指すために使用される場合もある。これに代わり、又は加えて、当業者であれば文脈に照らして理解されるように、一部の実施形態では、この用語は、天然に存在する、且つ/又は天然から得られるという点で、天然の産物を指すために使用される場合もある。一部の実施形態では、やはり当業者であれば文脈に照らして理解されるように、この用語は、人為的に設計、操作、及び/若しくは生産され、且つ/又は天然には存在しないという点で、人工物である1つ若しくは複数の実体を指すこともある。一部の実施形態では、薬剤は、単離された形態又は純粋な形態で使用されてもよく;一部の実施形態では、薬剤は、未精製の形態で使用され得る。一部の実施形態では、有望な薬剤は、コレクション又はライブラリーとして提供されてもよく、例えば、それらをスクリーニングして、それらのうちの活性薬剤を同定又は特性決定してもよい。一部の実施形態では、用語「薬剤」は、ポリマーであるか、若しくはそれを含む化合物又は実体を指す場合もあり;一部の実施形態では、この用語は、1つ若しくは複数のポリマー部分を含む化合物を指す場合もある。一部の実施形態では、用語「薬剤」は、ポリマーではなく、且つ/或いは全てのポリマー及び/又は1つ若しくは複数の特定のポリマー部分を実質的に含まない化合物又は実体を指すこともある。一部の実施形態では、この用語は、全てのポリマー部分が欠失しているか、又は実質的に含まない化合物又は実体を指すこともある。
【0018】
アンカー配列:本明細書で用いられるとき、用語「アンカー配列」は、接合部核形成ポリペプチド(例えば、核形成ポリペプチド)により認識される配列であって、十分に結合して、アンカー配列媒介接合部を形成する配列を指す。一部の実施形態では、アンカー配列は、1つ又は複数のCTCF結合モチーフを含む。一部の実施形態では、アンカー配列は、遺伝子コーディング領域内に位置しない。一部の実施形態では、アンカー配列は、遺伝子間領域内に位置する。一部の実施形態では、アンカー配列は、エンハンサー又はプロモータ内のいずれにも位置しない。一部の実施形態では、アンカー配列は、任意の転写開始部位から少なくとも400bp、少なくとも450bp、少なくとも500bp、少なくとも550bp、少なくとも600bp、少なくとも650bp、少なくとも700bp、少なくとも750bp、少なくとも800bp、少なくとも850bp、少なくとも900bp、少なくとも950bp、又は少なくとも1kb離れて位置する。一部の実施形態では、アンカー配列は、ゲノム刷り込み、単一対立遺伝子の発現、及び/又は単一対立遺伝子のエピジェネティックマークと関連しない領域内に位置する。本開示の一部の実施形態では、他のアンカー配列(例えば、別の状況での接合部核形成ポリペプチド(例えば、CTCF)結合モチーフを含有し得る配列)をターゲティングすることなく、特定の1つ又は複数のアンカー配列を特異的にターゲティングすることができる技術が提供され;こうした標的化アンカー配列は、「標的アンカー配列」と呼ばれることもある。一部の実施形態では、標的アンカー配列の配列及び/又は活性は調節されるが、標的化アンカー配列と同じシステム内(例えば、同じ細胞内及び/又は一部の実施形態では、同じ核酸分子、例えば、同じ染色体上)に存在し得る1つ若しくは複数の他のアンカー配列の配列及び/又は活性は調節されない。
【0019】
アンカー配列媒介接合部:本明細書で用いられるとき、用語「アンカー配列媒介接合部」(またASMCと略される)は、核形成ポリペプチドなどの1つ若しくは複数のタンパク質、又は1つ若しくは複数のタンパク質及び/又は核酸実体(例えば、RNA若しくはDNAなど)によるDNA内の少なくとも2つのアンカー配列の物理的相互作用若しくは結合によって起こる、及び/又はそれにより維持されるDNA構造を指し、これは、アンカー配列と結合して、アンカー配列同士の空間的近接及び機能的連結を可能にする。
【0020】
と関連する:この用語が本明細書で用いられるとき、2つの事象又は実体は、その一方の存在、レベル、機能及び/又は形態が、他方のものと相関する場合に、互いに「関連する」。例えば、一部の実施形態では、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝子シグネチャー、代謝物、微生物など)は、その存在、レベル、機能及び/又は形態が、特定の疾患、障害、若しくは病状の発生率及び/又はそれに対する感受性と相関する場合に、その疾患、障害、又は病状と関連すると考えられる。一部の実施形態では、2つ以上の実体は、それらが直接又は間接的に相互作用して、互いに物理的に近接し、且つ/又は物理的に近接したままであれば、互いに物理的に「関連する」。一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合しており;一部の実施形態では、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気、及びそれらの組合せにより、非共有結合している。一部の実施形態では、標的遺伝子は、アンカー配列媒介接合部の調節(例えば、妨害)が、標的遺伝子の発現(例えば、転写)の変更を引き起こす場合、アンカー配列媒介接合部と「関連する」。例えば、一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部の調節(例えば、妨害)により、増強若しくはサイレンシング/リプレッサー配列を標的遺伝子と関連させるか、又はそれと無関係にすることによって、標的遺伝子の発現を変更する。一部の実施形態では、標的遺伝子は、標的遺伝子又はその一部がASMC内に位置する場合、ASMCと関連している。
【0021】
ドメイン:本明細書で用いられるとき、用語「ドメイン」は、或る実体のセクション又は部分を指す。一部の実施形態では、「ドメイン」は、当該実体の特定の構造及び/又は機能的特徴と関連しており、ドメインがその親実体の残りから物理的に分離されたとき、それは、上記の特定の構造及び/又は機能的特徴を実質的に若しくは完全に保持する。これに代わり、又は加えて、一部の実施形態では、ドメインは、(親)実体から分離されて、別の(レシピエント)実体と連結されると、レシピエント実体に、親実体においてそれを特徴付けた1つ若しくは複数の構造及び/又は機能的特徴を実質的に保持し、且つ/又は付与する実体の1部分であるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、ドメインは、或る分子(例えば、小分子、炭水化物、脂質、核酸、ポリペプチドなど)のセクション若しくは1部分であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ドメインは、ポリペプチドのセクションであるか、又はそれを含む。いくつかのそうした実施形態では、ドメインは、特定の構造エレメント(例えば、特定のアミノ酸配列若しくは配列モチーフ、α-ヘリックス特徴、β-シート特徴、コイルドコイル特徴、ランダムコイル特徴など)、及び/又は特定の機能的特徴(例えば、結合活性、酵素活性、フォールディング活性、シグナル伝達活性など)を特徴とする。
【0022】
エフェクター部分:本明細書で用いられるとき、用語「エフェクター部分」は、細胞の核内の適切な部位に局在化すると、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を変更することができるドメインを指す。一部の実施形態では、エフェクター部分は、転写機構の成分を動員する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、転写因子又は発現抑制因子の成分の動員を阻害する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、エピジェネティック修飾部分(例えば、標的DNA配列をエピジェネティックに修飾する)を含む。
【0023】
エピジェネティック修飾部分:本明細書で用いられるとき、「エピジェネティック修飾部分」は、以下:i)クロマチンの構造、例えば、二次元構造;並びに/又はii)エピジェネティック修飾部分が、核酸に適切に局在化される(例えば、ターゲティング部分により)と、エピジェネティックマーカ(例えば、DNAメチル化、ヒストンメチル化、ヒストンアセチル化、ヒストンSUMO化、ヒストンリン酸化、及びRNA関連サイレンシングのうちの1つ若しくは複数)、を変更するドメインを指す。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、1つ若しくは複数のエピジェネティックマーカに影響を与える(例えば、そのレベルを増大若しくは低減する)酵素、又はその機能性断片若しくは変異体を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、DNAメチルトランスフェラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、CREB-結合タンパク質(CBP)、又はそれらいずれかの機能性断片を含む。
【0024】
発現制御配列:本明細書で用いられるとき、用語「発現制御配列」は、遺伝子の転写を増大若しくは低減する核酸配列を指し、プロモータ及びエンハンサーを含む(しかし、それらに限定されない)。「増強配列」は、発現制御配列のサブタイプを指し、これは、遺伝子転写の可能性を増大する。「サイレンシング又はリプレッサー配列」は、発現制御配列のサブタイプを指し、これは、遺伝子転写の可能性を低減する。
【0025】
融合分子:本明細書で用いられるとき、用語「融合分子」は、共有結合される2つ以上の部分、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分を含む化合物を指す。融合分子とその部分は、ポリペプチド、核酸、グリカン、小分子、又は本明細書に記載の他の成分の任意の組合せを含んでもよい(例えば、ターゲティング部分は、核酸を含んでもよく、エフェクター部分は、ポリペプチドを含んでもよい)。一部の実施形態では、融合分子は、例えば、ペプチド結合を介して共有結合される1つ又は複数のポリペプチドドメインを含む融合タンパク質である。一部の実施形態では、融合分子は、ターゲティング部分とエフェクター部分を含むコンジュゲート分子であり、それらは、ペプチド結合又はリン酸ジエステル結合以外の共有結合によって連結されている(例えば、ペプチド結合又はリン酸ジエステル結合以外の共有結合によって連結された、核酸を含むターゲティング部分と、ポリペプチドを含むエフェクター部分)。一部の実施形態では、調節剤は、融合分子であるか、又はそれを含む。
【0026】
ゲノム複合体:本明細書で用いられるとき、用語「ゲノム複合体」は、複数のタンパク質及び/又は他の成分(恐らく、ゲノム配列エレメントを含む)同士の相互作用によって、1つ若しくは複数の染色体上で互いに間隔をあけた2つのゲノム配列エレメントを一緒にする複合体である。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、複合体の1つ又は複数のタンパク質成分が結合するアンカー配列である。一部の実施形態では、ゲノム複合体は、アンカー配列媒介接合部(ASMC)であり得る。一部の実施形態では、ゲノム複合体は、1つ又は複数のASMCを含む。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、アンカー配列(例えば、CTCF結合モチーフ)であってもよいし、又はそれを含んでもよい。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、プロモータ及び/又はエンハンサーの少なくとも1つ又はその両方を含む。一部の実施形態では、ゲノム複合体形成は、ゲノム配列エレメントにおいて、且つ/又はゲノム配列エレメントと1つ若しくは複数のタンパク質成分の結合により核形成される。当業者には理解されるように、一部の実施形態では、複合体の形成によるゲノム部位の共局在化(例えば、共役)によって、ゲノム配列エレメントにおける、又はその付近で(例えば、一部の実施形態では、配列間)のDNAトポロジーが変更される。一部の実施形態では、本明細書に記載のゲノム複合体は、例えば、CTCF及び/又はコヒーシンなどの核形成ポリペプチドにより核形成される。一部の実施形態では、本明細書に記載のゲノム複合体は、例えば、以下:CTCF、コヒーシン、ノンコーディングRNA(例えば、エンハンサーRNA(eRNA))、転写機構タンパク質(例えば、RNAポリメラーゼ、例えば、TFIIA、TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIF、TFIIHなどからなる群から選択される1つ若しくは複数の転写因子)、転写調節因子(例えば、メディエータ(Mediator)、P300、エンハンサー結合タンパク質、リプレッサー結合タンパク質、ヒストン修飾因子など)のうち1つ又は複数を含み得る。一部の実施形態では、本明細書に記載のゲノム複合体は、1つ若しくは複数のポリペプチド成分及び/又は1つ若しくは複数の核酸成分(例えば、1つ若しくは複数のRNA成分)を含み、それらは、一部の実施形態では、互いに及び/又は1つ若しくは複数のゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列、プロモータ配列、調節配列(例えば、エンハンサー配列)と相互作用することにより、ゲノムDNAの1区間を、複合体が形成されなければ採用されないトポロジー立体配置中に閉じ込め得る。
【0027】
部分:本明細書で用いられるとき、用語「部分」は、本明細書に記載されるように、特定の構造及び/又は活性を有する既知化学基又は実体を指す。
【0028】
調節剤:本明細書で用いられるとき、用語「調節剤」は、1つ又は複数のターゲティング部分と1つ又は複数のエフェクター部分とを含み、標的遺伝子、例えば、FXNの発現を変更(例えば、増大又は低減する)ことができる薬剤を指す。
【0029】
核形成ポリペプチド:本明細書で用いられるとき、用語「核形成ポリペプチド」又は「接合部核形成ポリペプチド」は、アンカー配列と直接又は間接的に結合するタンパク質を指し、これは、(アンカー配列又は別の核酸と相互作用し得る)1つ若しくは複数の接合部核形成ポリペプチドと相互作用して、互いに同じでも、同じでなくてもよい2つ以上のそうした接合部核形成ポリペプチドから成る二量体(若しくはより高次構造)を形成し得る。異なるアンカー配列と結合した接合部核形成ポリペプチドが互いに会合し、それにより、異なるアンカー配列が、互いに物理的に近接して維持されるとき、それによって生じる構造が、アンカー配列媒介接合部である。即ち、別の核形成ポリペプチド-アンカー配列と相互作用する核形成ポリペプチド-アンカー配列の密接な物理的近接によって、アンカー配列媒介接合部(いくつかのケースでは、DNAループ)が生じ、これは、アンカー配列で開始すると共に、終結する。本明細書を読む当業者には直ちに理解されるように、「核形成ポリペプチド」、「核形成分子」、「核形成タンパク質」、「接合部核形成タンパク質」といった用語は、場合によっては、接合部核形成ポリペプチドを示すために使用され得る。同様に本明細書を読む当業者には直ちに理解されるように、2つ以上の接合部核形成ポリペプチド(一部の実施形態では、同じ薬剤の複数のコピー及び/又は一部の実施形態では、複数の異なる薬剤の1つ若しくは複数を含み得る)のアセンブルコレクションは、「複合体」、「二量体」「多量体」などと呼ばれる場合もある。
【0030】
作動可能に連結した:本明細書で用いられるとき、語句「作動可能に連結した」は、記載される成分が、その意図される様式でそれらを機能させることが可能な関係にある並置を指す。機能性エレメント、例えば、遺伝子と「作動可能に連結した」発現制御配列は、機能性エレメント、例えば、遺伝子の発現及び/又は活性が、発現制御配列と適合する条件下で達成されるように、結合されている。一部の実施形態では、「作動可能に連結した」発現制御配列は、目的のコーディングエレメント、例えば、遺伝子と連続的であり(例えば、共有している);一部の実施形態では、作動可能に連結した発現制御配列は、目的の機能性エレメント、例えば、遺伝子に対してトランスで、或いはそうでなければそれから一定の距離の地点で作用する。一部の実施形態では、作動可能に連結したとは、2つの核酸配列が、同じ核酸分子上に含まれることを意味する。別の実施形態では、作動可能に連結したとは、さらに、2つの核酸配列が、同じ核酸分子上で互いに近接しており、例えば、互いに1000、500、100、50、若しくは10塩基対内にあるか、又は互いに隣接していることを意味する場合もある。
【0031】
医薬組成物:本明細書で用いられるとき、用語「医薬組成物」は、1つ又は複数の薬学的に許容できる担体と一緒に製剤化された活性薬剤(例えば、調節剤、例えば、妨害剤)を指す。一部の実施形態では、活性薬剤は、関連集団に投与されると、予定された治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンでの投与に適した単位用量で存在する。一部の実施形態では、医薬組成物は、固体又は液体形態での投与のために特別に製剤化してもよく、そうしたものとして以下:経口投与、例えば、飲薬(水性若しくは非水性溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば、口腔、舌下、及び全身吸収を目的とするもの、ボーラス、粉末剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤;非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内若しくは硬膜外注射(例えば、滅菌溶液若しくは懸濁液として)、又は持続放出製剤;例えば、クリーム、軟膏としての局所適用、又は皮膚、肺、若しくは口腔に適用される制御放出パッチ若しくはスプレー;例えば、ペッサリー、クリーム、若しくはフォームとしての膣内若しくは直腸内;舌下;眼内;経皮;或いは鼻、肺、及び/又は他の粘膜表面のために設計されたものが挙げられる。
【0032】
近接:本明細書で用いられるとき、「近接(した)」とは、第1部位での発現リプレッサーの結合及び/又は発現リプレッサードメインによる第1部位の修飾が、他方の部位の結合及び/又は修飾と同じ、若しくは実質的に同じ作用を生じるような、2つの部位、例えば、核酸部位の接近性を指す。例えば、DNAターゲティング部分は、エンハンサー(第2部位)と近接した第1部位に結合することができ、前記DNAターゲティング部分と結合したリプレッサーは、あたかも第2部位(エンハンサー配列)が結合及び/又は修飾されたのと実質的に同様に、標的遺伝子の発現に対するエンハンサーの作用が修飾されるように、第1部位をエピジェネティックに修飾することができる。一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、標的遺伝子内のエキソン、イントロン、若しくはスプライス部位)に近接した、標的遺伝子と作動可能に連結した転写制御配列に近接した、又はアンカー配列に近接した部位は、標的遺伝子(例えば、標的遺伝子内のエキソン、イントロン、若しくはスプライス部位)、転写制御配列、又はアンカー配列から5000、4000、3000、2000、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、100、50、又は25塩基対未満(及び任意選択的に、標的遺伝子(例えば、標的遺伝子内のエキソン、イントロン、若しくはスプライス部位)、転写制御配列、又はアンカー配列から少なくとも20、25、50、100、200、若しくは300塩基対の地点)にある。
【0033】
特異的:本明細書で用いられるとき、用語「特異的」は、活性を有する薬剤を指し、当業者には、薬剤が、有望な標的実体又は状態を識別することを意味すると理解される。例えば、一部の実施形態では、薬剤は、1つ又は複数の競合する別の標的の存在下で、当該標的と優先的に結合すれば、その標的と「特異的に」結合すると言える。一部の実施形態では、特定の相互作用は、標的実体(例えば、エピトープ、間隙、結合部位)の特定の構造特徴の存在に依存する。特異性が絶対的である必要はないことは理解すべきである。一部の実施形態では、特異性は、1つ又は複数の有望な標的実体(例えば、競合者)に対する結合剤の特異性に対して評価される。一部の実施形態では、特異性は、参照特異的結合剤の特異性に対して評価される。一部の実施形態では、特異性は、参照非特異的結合剤の特異性に対して評価される。一部の実施形態では、薬剤又は実体は、その標的実体との結合の条件下で、別の競合標的と検出可能に結合しない。一部の実施形態では、結合剤は、別の競合標的と比較して、その標的実体に、より高い結合速度、より低い解離速度、増大した親和性、低減した解離、及び/又は増大した安定性で結合する。
【0034】
実質的に:本明細書で用いられるとき、用語「実質的に」は、目的の特徴若しくは特性の全範囲若しくはほぼ全範囲又は程度を呈示する質的条件を指す。当業者には、生物学的及び化学的現象は、完了に到達する、且つ/又は完全性まで進行する、又は絶対的結果を達成若しくは回避することが、もしあるとしても、稀であるのは理解されよう。従って、用語「実質的に」は、本明細書のいくつかの実施形態において、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の欠如の可能性を捉えるために使用される場合もある。
【0035】
標的:薬剤又は実体は、それらが互いに接触する条件下で、標的化薬剤又は実体と特異的に結合する場合、本開示に従って、別の薬剤又は実体を「ターゲティングする」とみなされる。一部の実施形態では、例えば、抗体(又はその抗原結合断片)は、そのコグネイトエピトープ若しくは抗原をターゲティングする。一部の実施形態では、特定の配列を有する核酸は、実質的に相補的な配列の核酸をターゲティングする。一部の実施形態では、標的との結合は、直接結合であり;一部の実施形態では、標的との結合は、間接的結合であり得る。一部の実施形態では、調節剤は、ゲノム複合体、例えば、ASMCを、例えば、上記ゲノム複合体、例えば、ASMCの成分(例えば、ポリペプチド、核酸、及び/又はゲノム配列エレメント)との結合により、ターゲティングする。
【0036】
標的遺伝子:本明細書で用いられるとき、用語「標的遺伝子」とは、調節、例えば、遺伝子の調節、又は上記遺伝子と結合したエピジェネティックマーカの調節のためにターゲティングされる遺伝子を意味する。一部の実施形態では、標的遺伝子は、標的化ゲノム複合体の一部(例えば、アンカー配列媒介接合部内部で、標的ゲノム複合体の一部としてそのゲノム配列の少なくとも一部を有する遺伝子)であり、このゲノム複合体は、本明細書に記載の1つ又は複数の調節剤によってターゲティングされる。一部の実施形態では、標的遺伝子は、本明細書に記載の調節剤により直接接触される標的遺伝子のゲノム配列により調節される。一部の実施形態では、標的遺伝子は、ゲノム複合体の1つ又は複数の成分により調節され、それは、本明細書に記載の調節剤により接触される部分である。一部の実施形態では、標的遺伝子は、標的ゲノム複合体の外部にあり、例えば、それは、標的ゲノム複合体の成分(例えば、転写因子のサブユニット)をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、標的遺伝子は、本明細書に記載されるゲノム複合体と関連する。
【0037】
ターゲティング部分:本明細書で用いられるとき、用語「ターゲティング部分」とは、標的遺伝子(例えば、FXN)と近接した、及び/又は作動可能に連結したゲノム配列エレメント(例えば、発現制御配列若しくはアンカー配列)を特異的にターゲティングする、例えば、それと結合する薬剤又は実体を意味する。
【0038】
治療有効量:本明細書で用いられるとき、用語「治療有効量」は、治療レジメンの一環として投与されると、所望の生物学的応答を誘発する物質(例えば、治療薬、組成物、及び/又は製剤)の量を意味する。一部の実施形態では、或る物質の治療有効量は、疾患、障害、及び/又は病状に罹患しているか、若しくは罹患しやすい対象に投与されると、疾患、障害、及び/又は病状を治療、診断、予防する、且つ/又はその発症を遅延させるのに十分な量である。当業者には理解されるように、或る物質の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、送達しようとする物質、標的細胞又は組織などの要因に応じて変動し得る。例えば、一部の実施形態では、疾患、障害、及び/又は病状を治療するための製剤中の化合物の有効量は、疾患、障害、及び/又は病状の1つ若しくは複数の症状又は特徴を改善、緩和、軽減、阻害、予防し、その発症を遅延させ、その重症度を低減させ、且つ/又はその発生率を低下させる量である。一部の実施形態では、治療有効量は、単一用量で投与され;一部の実施形態では、治療有効量を送達するために、複数回用量が必要とされる。
【0039】
本特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を組む本特許又は特許出願公報のコピーは、要請及び必要費用の支払い時に特許庁から提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1Aは、対照初代線維芽細胞(HDFn-正常)及びFRDA患者由来の線維芽細胞(GM04078)についてのFXNに対するウエスタンブロットを示す。
図1Bは、HDFn及びGM04078細胞においてELISAにより測定されたFXNタンパク質発現のグラフを示す。
図1Cは、HDFn及びGM04078細胞においてアコニターゼのグラフを示す。
【
図2】
図2Aは、未処理のGM04078細胞(Ctrl)、非ターゲティングsgRNAを含む調節剤で処理したGM04078細胞(NT)又はFXN遺伝子をターゲティングするsgRNAのいくつかのプールの1つを含む調節剤で48時間処理したGM04078細胞におけるHPRT1参照遺伝子に対するFXN遺伝子発現のグラフを示す。
図2Bは、未処理のGM04078細胞(Ctrl)、非ターゲティングsgRNAを含む調節剤で処理したGM04078細胞(NT)又はFXN遺伝子をターゲティングするsgRNAのいくつかのプールの1つを含む調節剤で48時間処理したGM04078細胞におけるGAPDH参照遺伝子に対するFXN遺伝子発現のグラフを示す。
【
図3】
図3Aは、LNPトランスフェクションから48時間後又はトランスフェクションから72時間後の、非ターゲティングsgRNAを含む調節剤で処理したGM04078細胞(NT)、又はsgRNAのいくつかのプールの1つを含む調節剤で処理したGM04078細胞におけるHPRT1に対するFXN遺伝子発現のグラフを示す。
図3Bは、LNPトランスフェクションから48時間後又はトランスフェクションから72時間後の、未処理のGM04078細胞(Ctrl)、非ターゲティングsgRNAを含む調節剤で処理したGM04078細胞(NT)、又はsgRNAのいくつかのプールの1つを含む調節剤で処理したGM04078細胞におけるFXNレベルを示す、FXNに対するウエスタンブロットを示す。
【
図4】
図4Aは、LNPトランスフェクションから48時間後に、調節剤で処理を受けたGM04078細胞及びHDFn細胞株におけるHPRT1参照遺伝子に対するFXN遺伝子発現のグラフを示す。
図4Bは、LNPトランスフェクションから48時間後に、調節剤で処理を受けたGM04078細胞及びHDFn細胞株におけるGAPDH参照遺伝子に対するFXN遺伝子発現のグラフを示す。Ctrl:未処理(Ctrl);NT:非ターゲティングsgRNAを含む調節剤で処理;プール1又はプール4:sgRNAのプール1又はプール4のいずれかを含む調節剤で処理。
【
図5】未処理GM04078対照細胞、非ターゲティングsgRNAを含む調節剤で処理したGM04078細胞(NT)、及びsgRNAのいくつかのプールの1つ(プール1若しくはプール4)を含む調節剤で処理したGM04078細胞についての速度(nmol/分/mg)としてのアコニターゼ活性のグラフを示す。
【
図6】FXN遺伝子、反復領域、及びsgRNAプールに含まれるsgRNAの位置の略図を示す。
【
図7】RNA解析のための細胞の接種及びプロセシングのタイムライン(上)、及び例示的なsgRNAのプールによりターゲティングされたゲノムDNAの領域の略図(下)を示す。
【
図8】例示的な融合分子(左側:dCas9-VPR及び右側:dCas9-p300)での処理後のWTiPSC由来心筋細胞(i心筋細胞)及びWTiPSC由来グルタミン酸作動性皮質ニューロン(iニューロン)におけるFXN遺伝子発現のグラフを示す。
【
図9】TALエフェクター分子又はdCas9を含有するターゲティング分子と、VPRを含有するエフェクター分子とを含む調節剤で処理したFRDA患者由来の線維芽細胞中のRNAレベルにより測定される相対FXN発現のグラフを示す。
【
図10】TALエフェクター分子又はdCas9を含有するターゲティング分子と、VPRを含有するエフェクター分子とを含む調節剤で処理したFRDA患者由来の線維芽細胞中のタンパク質レベルにより測定される相対FXN発現のグラフを示す。
【
図11】dCas9-VPRを含有する融合分子を含む調節剤を注射したマウスにおけるRNAレベルにより測定される相対FXN発現のグラフを注射後時点の増加量で示す。
【
図12】dCas9-VPRを含有する融合分子を含む調節剤を注射したマウスにおけるタンパク質レベルにより測定される相対FXN発現のグラフを注射後時点の増加量で示す。
【
図13】FRDA患者又は正常な患者に由来する細胞中のRNAレベルにより測定される相対FXN発現のグラフを、処理後の様々な時点で示し、ここで、細胞は、dCas9-VPRを含有する融合分子を含む調節剤で処理した。
【
図14】FRDA患者又は正常な患者に由来する細胞中のRNAレベルにより測定される相対FXN発現のグラフを、処理後の様々な時点で示し、ここで、細胞は、dCas9-p300を含有する融合分子を含む調節剤で処理した。
【
図15】dCas9-VPR又はdCas9-p300のいずれかを含有する融合分子を含む調節剤で処理したFRDA及び正常な患者に由来するiPSC心筋細胞中のタンパク質レベルにより測定されるFXN発現のグラフを注射後時点の増加量で示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書には、例えば、それを必要とする対象におけるフラタキシン(FXN)発現を調節、例えば、増大するための組成物及び方法が提供される。FRDAは、FXNタンパク質発現のレベルを低減するFXN遺伝子の常染色体GAAリピート伸長に関連する。理論に束縛されることは望まないが、FRDAを患う対象(例えば、全体、又は1つ若しくは複数の特定の標的組織)におけるFXNタンパク質のレベルの増加は、FRDAの症状を軽減又は排除し得ると考えられる。本開示は、一部には、標的遺伝子(例えば、FXN)と作動可能に連結されたゲノム配列エレメント(例えば、発現制御エレメント)に結合するターゲティング部分と、ターゲティング部分により局在化されたとき標的遺伝子の発現を調節することができるエフェクター部分と、を含む調節剤を提供する。一部の実施形態では、本明細書に開示される調節剤は、ターゲティング部分を介してFXN遺伝子と作動可能に連結された発現制御エレメント(例えば、プロモータ又はエンハンサー)に特異的に結合し、エフェクター部分が、FXNの発現を調節する。
【0042】
本開示は、さらに、前記調節剤をコードする核酸並びに前記核酸を送達するための方法及び組成物も提供する。さらには、本明細書に記載される調節剤を用いて、細胞中のFXN発現を増大するための方法も提供される。
【0043】
調節剤
本明細書に記載されるように、本開示は、本明細書に記載の調節剤と細胞を接触させることにより、標的遺伝子、例えば、FXNの発現を調節(例えば、増大)するための技術を提供する。一部の実施形態では、調節剤は、ターゲティング部分とエフェクター部分とを含む。一部の実施形態では、調節剤は、ターゲティング部分と1つのエフェクター部分とを含む。一部の実施形態では、調節剤は、ターゲティング部分と、複数のエフェクター部分(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上のエフェクタードメイン(及び任意選択的に、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、又は2未満のエフェクタードメイン))とを含む。
【0044】
一般に、本明細書に記載の調節剤は、(例えば、ターゲティング部分を介して)標的遺伝子(例えば、FXN)と近接した、及び/又はそれと作動可能に連結されたゲノム配列エレメントに結合する。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントと調節剤の結合によって、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現が調節される(例えば、増大する)。例えば、転写機構の成分を動員するか、又はその動員を阻害するエフェクター部分を含む調節剤と、ゲノム配列エレメントとの結合によって、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現が調節され得る(例えば、増大し得る)。別の例として、酵素活性を有するエフェクター部分(例えば、エピジェネティック修飾部分)を含む調節剤との結合により、エフェクター部分の酵素活性の局在化を介して標的遺伝子(例えば、FXN)の発現が調節され得る(例えば、増大し得る)。さらに別の例として、ゲノム配列エレメントと調節剤の結合及び調節剤の酵素活性の局在化の両方が、結果として起こる標的遺伝子(例えば、FXN)の発現の調節(例えば、増大)に寄与し得る。
【0045】
一部の実施形態では、調節剤は、標的遺伝子の転写を促進することにより、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を増大する。調節剤は、転写機構の成分を標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に動員することができる。調節剤は、転写の阻害剤と、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列の相互作用を阻害することができる。
【0046】
一部の実施形態では、発現の増大は、標的遺伝子(例えば、FXN)によりコードされるmRNAのレベルを増大することを含む。一部の実施形態では、発現の増大は、標的遺伝子(例えば、FXN)によりコードされるタンパク質のレベルを増大することを含む。一部の実施形態では、発現の増大は、標的遺伝子によりコードされるmRNA及びタンパク質のレベルをいずれも増大することを含む。一部の実施形態では、調節剤と接触させた、又は調節剤を含む細胞における標的遺伝子(例えば、FXN)の発現は、調節剤と接触させていないか、又は調節剤を含まない類似細胞における標的遺伝子の発現のレベルより少なくとも1.05×(即ち、1.05倍)、1.1×、1.15×、1.2×、1.25×、1.3×、1.35×、1.4×、1.45×、1.5×、1.55×、1.6×、1.65×、1.7×、1.75×、1.8×、1.85×、1.9×、1.95×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、又は100×高い。標的遺伝子の発現は、当業者には周知の方法によりアッセイすることができ、そうした方法として、RT-PCR、ELISA、又はウエスタンブロットが挙げられる。対象、例えば、患者、FRDAを有する患者は、例えば、以下:Oglesbee et al.Clin Chem.2013 Oct;59(10):1461-9.doi:10.1373/clinchem.2013.207472又はDeutsch et al.J Neurol Neurosurg Psychiatry.2014 Sep;85(9):994-1002.doi:10.1136/jnnp-2013-306788(その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる)のいずれかの方法を用いて、FXNの血液(例えば、全血)レベルを評価することにより評価することができる。
【0047】
本開示の調節剤を用いて、1細胞における標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を一定期間にわたって増加させることができる。一部の実施形態では、調節剤と接触させた、又は調節剤を含む細胞における標的遺伝子の発現は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは24時間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、10、若しくは14日、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5週間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5年にわたって(例えば、無期限に)明らかに増加する。任意選択的に、調節剤と接触させた、又は調節剤を含む細胞における標的遺伝子の発現は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1年以下にわたって明らかに増加する。
【0048】
調節剤は、複数のエフェクター部分を含んでもよく、ここで、各エフェクター部分は、他のエフェクター部分とは異なる機能性を有する。例えば、調節剤は、2つのエフェクター部分を含んでもよく、ここで、第1のエフェクター部分は、転写活性化因子の機能性を有し、第2のエフェクター部分は、DNAデメチラーゼ機能性を有する。一部の実施形態では、調節剤は、その機能性が、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現増大に関して、互いに相補的であるエフェクター部分を含み、例えば、その場合、機能性は発現の促進を可能にし、且つ、任意選択的に、個別に存在するとき、発現を促進しないか、又は無視できる程度にしか促進しない。一部の実施形態では、調節剤は、複数のエフェクター部分を含み、その場合、各エフェクター部分は、各々他方のエフェクター部分と補い合い、例えば、各エフェクター部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を増大する。
【0049】
一部の実施形態では、調節剤は、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現の増大に関して、その機能性が互いに相乗効果を与えるエフェクター部分の組合せを含む。理論に束縛されることは望まないが、複数の転写活性化エピジェネティックマーカ(例えば、複数の異なるタイプのエピジェネティックマーカ及び/又は所与のタイプの大量生産)は各々が一緒になって、個別の修飾単独よりも効率的に発現を促進する(例えば、より大きな発現増大及び/又はより長い発現持続)ことから、ゲノム遺伝子座に対するエピジェネティック修飾は、累積的であると考えられる。一部の実施形態では、調節剤は、複数のエフェクター部分を含み、ここで、各エフェクター部分は、他方のエフェクター部分の各々と相乗作用をもたらし、例えば、各エフェクター部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を増大する。一部の実施形態では、調節剤(互いに相乗作用をもたらす複数のエフェクター部分を含む)は、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現の促進に関して、個別のエフェクター部分を含む調節剤よりも有効である。一部の実施形態では、前記複数のエフェクター部分を含む調節剤は、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現の増大について、個別のエフェクター部分を含む調節剤より少なくとも1.05×(即ち、1.05倍)、1.1×、1.15×、1.2×、1.25×、1.3×、1.35×、1.4×、1.45×、1.5×、1.55×、1.6×、1.65×、1.7×、1.75×、1.8×、1.85×、1.9×、1.95×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、又は100×有効である。
【0050】
一部の実施形態では、調節剤は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連する1つ若しくは複数のエピジェネティックマーカを変更することにより、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を調節(例えば、増大)する。一部の実施形態では、変更は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルを増加することを含む。一部の実施形態では、変更は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルを低下させることを含む。エピジェネティックマーカとして、限定されないが、DNAメチル化、ヒストンメチル化、及びヒストン脱アセチル化が挙げられる。
【0051】
一部の実施形態では、エピジェネティックマーカのレベルの変更によって、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルを、調節剤と接触させていないか、又はそれを含まない細胞における標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルより少なくとも1.05×(即ち、1.05倍)、1.1×、1.15×、1.2×、1.25×、1.3×、1.35×、1.4×、1.45×、1.5×、1.55×、1.6×、1.65×、1.7×、1.75×、1.8×、1.85×、1.9×、1.95×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、若しくは100×増加させる。一部の実施形態では、エピジェネティックマーカのレベルの変更によって、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルを、調節剤と接触させていないか、又はそれを含まない細胞における標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルより少なくとも1.05×(即ち、1.05倍)、1.1×、1.15×、1.2×、1.25×、1.3×、1.35×、1.4×、1.45×、1.5×、1.55×、1.6×、1.65×、1.7×、1.75×、1.8×、1.85×、1.9×、1.95×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、20×、30×、40×、50×、60×、70×、80×、90×、若しくは100×低下させる。エピジェネティックマーカのレベルは、当業者には周知の方法により検定することができ、そうした方法として、全ゲノムバイサルファイトシーケンシング、簡約表示バイサルファイトシーケンシング、バイサルファイトアンプリコンシーケンシング、メチル化アレイ、パイロシーケンシング、ChIP-seq、又はChIP-qPCRが挙げられる。
【0052】
本開示の調節剤を用いて、1細胞における標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルを一定期間にわたって変更することができる。一部の実施形態では、調節剤と接触させた、又は調節剤を含む細胞における標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは24時間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、10、若しくは14日、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5週間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5年にわたって(例えば、無期限に)明らかに増加する。一部の実施形態では、調節剤と接触させた、又は調節剤を含む細胞における標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは24時間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、10、若しくは14日、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5週間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5年にわたって(例えば、無期限に)明らかに低下する。任意選択的に、調節剤と接触させた、又は調節剤を含む細胞における標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するエピジェネティックマーカのレベルは、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1年以下にわたって明らかに増加又は低下する。
【0053】
調節剤は、融合分子であるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、融合分子は、互いに、例えば、ペプチド結合により共有結合したターゲティング部分とエフェクター部分を含む。
【0054】
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子のターゲティング部分は、100、90、80、70、60、50、40、30、又は20以下のヌクレオチド(及び任意選択的に、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90のヌクレオチド)を含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子のエフェクター部分は、2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、400、300、200、又は100以下のアミノ酸(及び任意選択的に、少なくとも50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、又は1900のアミノ酸)を含む。一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子のエフェクター部分は、100~2000、100~1900、100~1800、100~1700、100~1600、100~1500、100~1400、100~1300、100~1200、100~1100、100~1000、100~900、100~800、100~700、100~600、100~500、100~400、100~300、100~200、200~2000、200~1900、200~1800、200~1700、200~1600、200~1500、200~1400、200~1300、200~1200、200~1100、200~1000、200~900、200~800、200~700、200~600、200~500、200~400、200~300、300~2000、300~1900、300~1800、300~1700、300~1600、300~1500、300~1400、300~1300、300~1200、300~1100、300~1000、300~900、300~800、300~700、300~600、300~500、300~400、400~2000、400~1900、400~1800、400~1700、400~1600、400~1500、400~1400、400~1300、400~1200、400~1100、400~1000、400~900、400~800、400~700、400~600、400~500、500~2000、500~1900、500~1800、500~1700、500~1600、500~1500、500~1400、500~1300、500~1200、500~1100、500~1000、500~900、500~800、500~700、500~600、600~2000、600~1900、600~1800、600~1700、600~1600、600~1500、600~1400、600~1300、600~1200、600~1100、600~1000、600~900、600~800、600~700、700~2000、700~1900、700~1800、700~1700、700~1600、700~1500、700~1400、700~1300、700~1200、700~1100、700~1000、700~900、700~800、800~2000、800~1900、800~1800、800~1700、800~1600、800~1500、800~1400、800~1300、800~1200、800~1100、800~1000、800~900、900~2000、900~1900、900~1800、900~1700、900~1600、900~1500、900~1400、900~1300、900~1200、900~1100、900~1000、1000~2000、1000~1900、1000~1800、1000~1700、1000~1600、1000~1500、1000~1400、1000~1300、1000~1200、1000~1100、1100~2000、1100~1900、1100~1800、1100~1700、1100~1600、1100~1500、1100~1400、1100~1300、1100~1200、1200~2000、1200~1900、1200~1800、1200~1700、1200~1600、1200~1500、1200~1400、1200~1300、1300~2000、1300~1900、1300~1800、1300~1700、1300~1600、1300~1500、1300~1400、1400~2000、1400~1900、1400~1800、1400~1700、1400~1600、1400~1500、1500~2000、1500~1900、1500~1800、1500~1700、1500~1600、1600~2000、1600~1900、1600~1800、1600~1700、1700~2000、1700~1900、1700~1800、1800~2000、1800~1900、又は1900~2000アミノ酸を含む。
【0055】
調節剤は、核酸、例えば、1つ又は複数の核酸を含み得る。用語「核酸」は、オリゴヌクレオチド鎖中に組み込まれているか、又は組み込まれ得る任意の化合物を指す。一部の実施形態では、核酸は、リン酸ジエステル結合を介してオリゴヌクレオチド鎖中に組み込まれているか、又は組み込まれ得る化合物及び/若しくは物質である。文脈から明らかになるように、一部の実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/又はヌクレオシド)を指し;一部の実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。一部の実施形態では、「核酸」は、RNAであるか、又はそれを含み;一部の実施形態では、「核酸」は、DNAであるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、核酸は、50%未満のリボヌクレオチドであるか、又はそれを含み、本明細書では、リボ核酸(RNA)と呼ばれる。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の天然の核酸残基であるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の核酸アナログであるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸アナログは、それがリン酸ジエステル骨格を利用しない点で、核酸とは異なる。例えば、一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の「ペプチド核酸」であるか、それを含むか、又はそれから構成され、ペプチド核酸は、当技術分野で公知であり、骨格にリン酸ジエステル結合ではなくペプチド結合を有するものであり、これらは本発明の範囲に含まれるとみなされる。これに代わり、又は加えて、一部の実施形態では、核酸は、リン酸ジエステル結合ではなく、1つ若しくは複数のホスホロチオエート及び/又は5’-N-ホスホロアミダイト結合を有する。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)であるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸は、1つ若しくは複数のヌクレオシドアナログ(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、介在塩基、及びそれらの組合せ)であるか、それを含むか、又はそれから構成される。一部の実施形態では、核酸は、天然の核酸に存在するものと比較して、1つ若しくは複数の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。一部の実施形態では、核酸は、RNA又はタンパク質などの機能性遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、1つ又は複数のイントロンを含む。一部の実施形態では、核酸は、天然の供給源からの単離、相補性鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボ若しくはインビトロ)、組換え細胞若しくは系中での生殖、及び化学合成のうちの1つ又は複数により調製される。本明細書で使用されるとき、核酸を表すために用いられる場合の「組換え」は、天然に存在しない任意の核酸を指す。一部の実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000残基長又はそれ以上である。一部の実施形態では、核酸は、約2~約5000nt、約10~約100nt、約50~約150nt、約100~約200nt、約150~250nt、約200~約300nt、約250~約350nt、約300~約500nt、約10~約1000nt、約50~約1000nt、約100~約1000nt、約1000~約2000nt、約2000~約3000nt、約3000~約4000nt、約4000~約5000nt、又はそれらの間の任意の範囲の長さを有し得る。一部の実施形態では、核酸は、一部が、又は完全に一本鎖であり;一部の実施形態では、核酸は、一部が、又は完全に二本鎖である。一部の実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードするか、又はポリペプチドをコードする配列の補体である少なくとも1つのエレメントを含むヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸は、酵素活性を有する。
【0056】
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、核酸を含むか、又は核酸である。一部の実施形態では、エフェクター部分は、核酸を含むか、又は核酸である。一部の実施形態では、部分に含まれ得る核酸は、DNA、RNA、及び/又は人工若しくは合成核酸又は核酸アナログ若しくは模倣物であってもよいし、或いはそれを含有してもよい。例えば、一部の実施形態では、核酸は、以下:ゲノムDNA(gDNA)、相補的DNA(cDNA)、ペプチド核酸(PNA)、ペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲート、ロック核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ポリアミド、トリプレックス形成オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、tRNA、mRNA、rRNA、miRNA、gRNA、siRNA若しくは他のRNAi分子(例えば、本明細書に記載されるノンコーディングRNAをターゲティングするもの、及び/又は本明細書に記載される標的化ゲノム複合体に関連する特定の遺伝子の発現産物をターゲティングするもの)などのうちの1つ若しくは複数であるか、又はそれを含み得る。調節剤に使用するのに好適な核酸配列として、修飾オリゴヌクレオチド(例えば、化学修飾、例えば、骨格連結、糖分子、及び/若しくは核酸塩基を変更する修飾など)、並びに/又は人工核酸を挙げることができる。一部の実施形態では、核酸配列として、限定されないが、ゲノムDNA、cDNA、ペプチド核酸(PNA)若しくはペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲート、ロック核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、ポリアミド、トリプレックス形成オリゴヌクレオチド、修飾DNA、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド、tRNA、mRNA、rRNA、修飾RNA、miRNA、gRNA、及びsiRNA又は他のRNA若しくはDNA分子が挙げられる。一部の実施形態では、核酸は、天然に存在するDNA又はRNA残基ではない1つ若しくは複数の残基を含んでもよく、リン酸ジエステル結合ではない1つ若しくは複数の連結(例えば、ホスホロチオエート結合などであり得る)を含んでもよく、且つ/又は例えば、2’-OMePといった2’O修飾などの1つ若しくは複数の修飾を含んでもよい。合成核酸を調製するのに有用な種々の核酸構造は当技術分野で公知であり(例えば、国際公開第2017/062862l号パンフレット及び同第2014/012081号パンフレットを参照)、当業者は、これらが、本開示に従って使用され得ることを理解されよう。
【0057】
核酸のいくつかの例として、限定されないが、内因性標的遺伝子、例えば、FXN(例えば、本明細書の他所に記載されるgRNA若しくはアンチセンスssDNA)とハイブリダイズする核酸、ウイルスDNA若しくはRNAなどの外性核酸とハイブリダイズする核酸、RNAとハイブリダイズする核酸、遺伝子転写に干渉する核酸、RNA翻訳に干渉する核酸、RNAを安定化するか、又は分解のためのターゲティングなどによってRNAを不安定化する核酸、その発現若しくはその機能の干渉によるDNA又はRNA結合因子に干渉する核酸、細胞内タンパク質若しくはタンパク質複合体と連結して、その機能を調節する核酸が挙げられる。
【0058】
一部の実施形態では、調節剤は、1つ又は複数のヌクレオシドアナログを含む。一部の実施形態では、核酸配列は、1つ又は複数の天然ヌクレオシドヌクレオシドに加えて、又はそれに代わるものとして、例えば、プリン若しくはピリミジン、例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミン及びウラシル、1つ若しくは複数のヌクレオシドアナログを含んでもよい。一部の実施形態では、核酸配列は、1つ又は複数のヌクレオシドアナログを含む。ヌクレオシドアナログとして、限定されないが、ヌクレオシドアナログ、例えば、5-フルオロウラシル;5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、4-メチルベンズイミダゾール、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ジヒドロウリジン、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6-ジアミノプリン、3-ニトロピロール、イノシン、チオウリジン、キューオシン、ワイオシン、ジアミノプリン、イソグアニン、イソシトシン、ジアミノピリミジン、2,4-ジフルオロトルエン、イソキノリン、ピロロ[2,3-β]ピリジン、及びプリン又はピリミジン側鎖と塩基対合することができるいずれか他のものが挙げられる。
【0059】
ターゲティング部分
ターゲティング部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)に近接した、及び/又はそれと作動可能に連結したゲノム配列エレメント(例えば、発現制御配列若しくはアンカー配列)を特異的にターゲティングし、例えば、それに結合する薬剤又は実体を指す。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ゲノム複合体(例えば、ASMC)の成分をターゲティングし、例えば、それに結合する。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、FXNと作動可能に連結した発現制御配列(例えば、プロモータ又はエンハンサー)をターゲティングし、例えば、それに結合する。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子の一部をターゲティングし、例えば、それに結合する。ターゲティング部分の標的は、その標的化成分と呼ばれることもある。標的化成分は、標的遺伝子と作動可能に連結した任意のゲノム配列エレメント、又は標的遺伝子自体であってもよく、そうしたものとして、限定されないが、プロモータ、エンハンサー、アンカー配列、エキソン、イントロン、UTRコード配列、スプライス部位、又は転写開始部位が挙げられる。
【0060】
一部の実施形態では、ターゲティング部分とその標的化成分との間の相互作用は、標的化成分がそうでなければ形成するであろう1つ又は複数の他の相互作用に干渉する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との間の結合は、標的化成分が、別の転写因子、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントと相互作用するのを阻止する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、別の転写因子、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントに対する標的化成分の結合親和性を低減する。一部の実施形態では、別の転写因子、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントに対する標的化成分のKDは、ターゲティング部分を含む調節剤の存在下で、ターゲティング部分を含む調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも1.05×(即ち、1.05 倍)、1.1×、1.2×、1.3×、1.4×、1.5×、1.6×、1.7×、1.8×、1.9×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、20×、50×、又は100×(及び任意選択的に、20×、10×、9×、8×、7×、6×、5×、4×、3×、2×、1.9×、1.8×、1.7×、1.6×、1.5×、1.4×、1.3×、1.2×、又は1.1×以下)増加する。別の転写因子に対する標的化成分、ゲノム複合体成分、又はゲノム配列エレメントのKDの変化は、ChIP-Seq又はChIP-qPCRを用いて決定される。
【0061】
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、標的化成分を含むゲノム複合体(例えば、ASMC)のレベルを変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、標的化成分を含むゲノム複合体(例えば、ASMC)のレベルは、ターゲティング部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム配列エレメント(例えば、標的遺伝子、又はそれと作動可能に連結した発現制御配列)において、ゲノム複合体(例えば、ASMC)の占有を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、占有は、ターゲティング部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。ゲノム複合体の形成、他の複合体成分に対する標的化成分の親和性の変化、及び/又はゲノムによる影響を受けるゲノムDNAのトポロジーの変化は、例えば、HiChIP、ChIAPET、4C、若しくは3C、例えば、HiChIPを用いて評価され得る。
【0062】
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム配列エレメント(例えば、遺伝子、プロモータ、又はエンハンサー、例えば、ゲノム若しくは転写複合体に関連するもの)におけるゲノム複合体(例えば、ASMC)の占有を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム配列エレメントにおけるゲノム複合体(例えば、ASMC)の占有を、ターゲティング部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤の非存在下に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。一部の実施形態では、占有は、例えば、HiC、ChIP、免疫沈降、又は当技術分野で公知の他の結合測定アッセイにより決定して、或るエレメントが別のエレメントと結合した状態で見出され得る頻度を指す。一部の実施形態では、占有は、完全性指数を用いて決定することができる(例えば、完全性指数の変化は、占有の変化に対応し得る)。
【0063】
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム複合体(例えば、ASMC)中/ゲノム複合体(例えば、ASMC)での標的化成分の占有を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合は、ゲノム複合体(例えば、ASMC)中/ゲノム複合体(例えば、ASMC)での標的化成分の占有を、ターゲティング部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。
【0064】
一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合により、標的化成分に関連する及び/又はそれと作動可能に連結した標的遺伝子(例えば、FXN)の発現が変更される(例えば、増大する)。一部の実施形態では、ターゲティング部分と標的化成分との結合により、標的化成分を含むゲノム複合体(例えば、ASMC)に関連する標的遺伝子(例えば、FXN)の発現が変更される(例えば、増大する)。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現は、ターゲティング部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000%(及び任意選択的に、最大1000、900、800、700、600、500、400、300、又は200%)増大する。
【0065】
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、同じシステム(例えば、細胞、組織など)に存在し得る他のゲノム配列に比して、それが特定のゲノム配列エレメント(例えば、前記ゲノム配列エレメントを含む特定のゲノム複合体(例えば、ASMC))を特異的にターゲティングする、例えば、それに結合するように、設計及び/又は投与される。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的化成分、例えば、発現制御配列、アンカー配列、又は標的遺伝子(例えば、FXN)と相補的な核酸配列を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的化成分に対して少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、若しくは100%相補的な核酸配列を含む。
【0066】
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、CRISPR/Cas分子、TALエフェクター分子、Znフィンガー分子、又は核酸分子であるか、又はそれを含み得る。
【0067】
CRISPR/Cas分子
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、CRISPR/Cas分子であるか、又はそれを含む。CRISPR/Cas分子は、クラスター化した規則的な間隔の短い回文配列リピート(CRISPR)システムに関与するタンパク質、例えば、Casタンパク質、及び任意選択的にガイドRNA、例えば、単一ガイドRNA(sgRNA)を含む。
【0068】
CRISPRシステムは、細菌及び古細菌中に最初に発見された適応型防御システムである。CRISPRシステムは、CRISPR関連又は「Cas」エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9若しくはCpf1)と呼ばれるRNA誘導ヌクレアーゼを用いて、外来DNAを切断する。例えば、典型的なCRISPR/Casシステムでは、エンドヌクレアーゼは、一本鎖又は二本鎖DNA配列をターゲティングする配列特異的、ノンコーディング「ガイドRNA」により標的ヌクレアーゼ配列(例えば、配列編集しようとするゲノム内の部位)に向けられる。3つのクラス(I~III)のCRISPRシステムが同定されている。クラスII CRISPRシステムは、単一のCasエンドヌクレアーゼ(複数のCasタンパク質ではなく)を使用する。1クラスのII CRISPRシステムは、II型Casエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9、CRISPR RNA(「crRNA」)、及びトランス作用性crRNA(「tracrRNA」)を含む。crRNAは、「ガイドRNA」を含み、これは、典型的には約20ヌクレオチドRNA配列であり、標的DNA配列に対応する。crRNAはまた、tracrRNAに結合して、部分的二本鎖構造を形成する領域を含み、この構造が、RNaseIIIにより切断されて、crRNA/tracrRNAハイブリッドが得られる。次に、crRNA/tracrRNAハイブリッドは、Cas9エンドヌクレアーゼを指令して、標的DNA配列を認識させ、これを切断させる。標的DNA配列は、概して、所与のCasエンドヌクレアーゼに特異的な「プロトスペーサ隣接モチーフ」(「PAM」)と隣接していなければならないが;PAM配列は、所与のゲノム全体にわたって出現する。多様な原核生物種から同定されたCRISPRエンドヌクレアーゼは、ユニークなPAM配列要件を有し;PAM配列の例としては、5’-NGG(化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))、5’-NNAGAA(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CRISPR1)、5’-NGGNG(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)CRISPR3)、及び5’-NNNGATT(髄膜炎菌(Neisseria meningiditis))が挙げられる。いくつかのエンドグルカナーゼ、例えば、Cas9エンドヌクレアーゼは、G-リッチPAM部位、例えば、5’-NGGと結合し、PAM部位から(その5’側)3ヌクレオチド上流の位置で標的DNAの平滑末端切断を実施する。別のクラスII CRISPRシステムは、Cas9より小さいV型エンドヌクレアーゼCpf1を含み;例として、AsCpf1(アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)由来)及びLbCpf1(ラクノスピラ科種(Lachnospiraceae sp.)由来)が挙げられる。Cpf1関連CRISPRアレイは、tracrRNAを必要とせずに成熟crRNAにプロセシングされ;言い換えれば、Cpf1システムは、標的DNA配列を切断するために、Cpf1ヌクレアーゼとcrRNAしか必要としない。Cpf1エンドヌクレアーゼは、T-リッチPAM部位、例えば、5‘-TTNと結合する。Cpf1はまた、5’-CTA PAMモチーフも認識する。Cpf1は、4-若しくは5-ヌクレオチド5’オーバーハングを有するオフセット又はスタッガード二本鎖切断を導入する、例えば、コーディング鎖上のPAMから(その3’側)18ヌクレオチド下流及び相補鎖上のPAMから23ヌクレオチド下流に位置する5-ヌクレオチドオフセット又はスタッガード切断を用いて標的DNAを切断することにより、標的DNAを切断し;こうしたオフセット切断によって生じる5-ヌクレオチドオーバーハングは、平滑末端切断DNAでの挿入によるものと比較して、相同組換えによるDNA挿入によってさらに正確なゲノム編集を可能にする。例えば、Zetsche et al.(2015)Cell,163:759-771を参照されたい。
【0069】
多種多様なCRISPR関連(Cas)遺伝子又はタンパク質を、本開示に提供される技術で使用することができ、Casタンパク質の選択は、本方法の特定の条件に応じて変化し得る。Casタンパク質の具体的な例として、クラスIIシステムが挙げられ、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Cpf1、C2C1、又はC2C3を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質、例えば、Cas9タンパク質は、多様な原核生物種のいずれに由来するものでもよい。一部の実施形態では、特定のCasタンパク質、例えば、特定のCas9タンパク質は、特定のプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)配列を認識するように選択される。一部の実施形態では、DNAターゲティング部分として、配列ターゲティングポリペプチド、例えば、Casタンパク質、例えば、Cas9が挙げられる。特定の実施形態では、Casタンパク質、例えば、Cas9タンパク質は、細菌若しくは古細菌から取得するか、又は公知の方法を用いて合成してもよい。特定の実施形態では、Casタンパク質は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌に由来するものであってもよい。特定の実施形態では、Casタンパク質は、レンサ球菌属(Streptococcus)(例えば、化膿性レンサ球菌(S.pyogenes)、若しくはS.サーモフィルス(S.thermophilus))、フランシセラ属(Francisella)(例えば、F.ノビシダ(F.novicida))、スタフィロコッカッス属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus))、アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)(例えば、アシダミノコッカス属種(Acidaminococcus sp.)BV3L6)、ナイセリア属(Neisseria)(例えば、髄膜炎菌(N.meningitidis))、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ヘモフィラス属(Haemophilus)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、パスツレラ属(Pasteurella)、プレボテラ属(Prevotella)、ベイロネラ属(Veillonella)、又はマリノバクター属(Marinobacter)に由来するものであってよい。
【0070】
一部の実施形態では、Casタンパク質は、Casタンパク質が結合及び/又は機能するために、プロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)が標的DNA配列中に存在するか、若しくはそれと隣接する必要がある。一部の実施形態では、PAMは、5’から3’に、NGG、YG、NNGRRT、NNNRRT、NGA、TYCV、TATV、NTTN、又はNNNGATTであるか、又はそれを含み、ここで、Nは、任意のヌクレオチドを表し、Yは、C又はTを表し、Rは、A又はGを表し、Vは、A又はC又はGを表す。一部の実施形態では、Casタンパク質は、表1に挙げるタンパク質である。一部の実施形態では、Casタンパク質は、そのPAMを変更する1つ又は複数の突然変異を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、E1369R、E1449H、及びR1556A突然変異、又は前記位置に対応するアミノ酸への類似の置換を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、E782K、N968K、及びR1015H突然変異、又は前記位置に対応するアミノ酸への類似の置換を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、D1135V、R1335Q、及びT1337R突然変異、又は前記位置に対応するアミノ酸への類似の置換を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、S542R及びK607R突然変異、又は前記位置に対応するアミノ酸への類似の置換を含む。一部の実施形態では、Casタンパク質は、S542R、K548V、及びN552R突然変異、又は前記位置に対応するアミノ酸への類似の置換を含む。
【0071】
【0072】
一部の実施形態では、Casタンパク質を修飾して、ヌクレアーゼを不活性化する(例えば、ヌクレアーゼ欠失Cas9)。野生型Cas9は、gRNAがターゲティングする特定のDNA配列に二本鎖切断(DSB)を生成するのに対し、修飾された機能性を有するいくつかのCRISPRエンドヌクレアーゼが入手可能であり、例えば:Cas9の「ニッカーゼ」バージョンは、一本鎖切断のみを生成し;触媒として不活性のCas9(「dCas9」)は、標的DNAを切断しない。一部の実施形態では、DNA配列とdCas9の結合は、立体障害により当該部位の転写に干渉する。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、触媒として不活性のCas9、例えば、dCas9であるか、又はそれを含む。触媒として不活性の多くのCas9タンパク質が当技術分野で知られている。一部の実施形態では、dCas9は、Casタンパク質の各エンドヌクレアーゼドメインに突然変異、例えば、D10A及びH840A突然変異を含む。
【0073】
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、gRNAを含むか、又はそれと(例えば、共有)結合したCas分子を含み得る。gRNAは、Cas-タンパク質結合に必要な「スカフォールド」配列と、ゲノム標的のためのユーザ定義の約20ヌクレオチドターゲティング配列から構成される短い合成RNAである。実際には、ガイドRNA配列は、概して17~24ヌクレオチド(例えば、19、20、又は21ヌクレオチド)の間の長さを有するように設計され、且つ標的化核酸配列に対して相補的である。カスタムgRNAジェネレータ及びアルゴリズムは、有効なガイドRNAの設計に使用する目的で市販されている。遺伝子編集はまた、キメラ「単一ガイドRNA」(「sgRNA」)、操作(合成)単一RNA分子を用いても達成されており、これは、天然に存在するcrRNA-tracrRNA複合体を模倣し、tracrRNA(ヌクレアーゼとの結合用)と、少なくとも1つのcrRNA(編集のためにターゲティングされる配列にヌクレアーゼを誘導する)の両方を含有する。キメラ編集sgRNAはまた、Casタンパク質と一緒に使用する上で有効であることが実証されている;例えば、Hendel et al.(2015)Nature Biotechnol.,985-991を参照されたい。
【0074】
一部の実施形態では、gRNAは、標的遺伝子に関連するDNA配列と相補的な核酸配列を含む。一部の実施形態では、DNA配列は、標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御エレメントであるか、それを含むか、又はそれと重複する。一部の実施形態では、DNA配列は、表3に記載されるゲノム配列であるか、それを含むか、又はそれと重複する。一部の実施形態では、gRNAは、表3に記載されるゲノム配列と少なくとも80、85、90、95、99、又は100%相補的な核酸配列を含む。一部の実施形態では、gRNAは、配列番号4~26から選択される核酸配列、又は配列番号4~26から選択される配列に対して少なくとも80、85、90、95、若しくは99%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、Cas分子を含むターゲティング部分と一緒に使用されるgRNAは、sgRNAである。
【0075】
TALエフェクター分子
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、TALエフェクター分子であるか、又はそれを含む。TALエフェクター分子、例えば、DNA配列に特異的に結合するTALエフェクター分子は、複数のエフェクタードメイン又はその断片と、任意選択的に天然に存在するTALエフェクター(例えば、複数のTALエフェクタードメインのN-及び/又はC-末端)の1つ若しくは複数の別の部分を含む。
【0076】
TALEは、宿主植物における遺伝子発現を調節して、細菌のコロニー形成及び生存を促進する植物病原菌キサントモナス属(Xanthomonas)などの多くの病原菌種により分泌される天然のタンパク質である。TALエフェクターの特異的な結合は、典型的には33又は34アミノ酸のタンデムに配列されたほぼ同一の反復配列から成る中央リピートドメイン(リピート可変二残基、RVDドメイン)に基づく。
【0077】
TALエフェクターファミリーのメンバーは、主にそれらのリピートの数及び順序が異なる。反復配列の数は、1.5~33.5リピートの範囲であり、C-末端リピートは、通常、長さが短く(例えば、約20アミノ酸)、一般に「ハーフリピート」と呼ばれる。TALエフェクターの各リピートは、異なる塩基対特異性を呈示する異なるリピートタイプとの1リピート対1塩基対相関を特徴とする(1リピートが、標的遺伝子配列上の1塩基対を認識する)。概して、リピートの数が少ないほど、タンパク質-DNA相互作用が弱くなる。6.5リピートの数は、リポータ遺伝子の転写を活性化する上で十分であることが判明している(Scholze et al.,2010)。
【0078】
リピート対リピートの変化は、主としてアミノ酸位置12及び13で起こり、そのため、これらは、「超可変」と呼ばれており、また、これは、例示的なリピート可変二残基(RVD)及び核酸塩基標的とのそれらの対応を列記する表2に示すように、標的DNAプロモータ配列との相互作用の特異性の原因となる。
【0079】
【0080】
従って、特定のDNA配列をターゲティングするように、TALエフェクターのリピートを修飾することが可能である。さらなる研究から、RVD NKがGをターゲティングすることができることが明らかにされている。TALエフェクターの標的部位は、最初のリピートがターゲティングする5’塩基とフランキングするTを含む傾向もあるが、この認識の厳密な機構は不明である。現在までに113を超えるTALエフェクター配列がわかっている。キサントモナス属(Xanthomonas)からのTALエフェクターの非限定的な例として、Hax2、Hax3、Hax4、AvrXa7、AvrXa10及びAvrBs3が挙げられる。
【0081】
従って、本発明のTALエフェクター分子のTALエフェクタードメインは、任意の細菌種(例えば、キサントモナス属(Xanthomonas)種、例えば、白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv.Oryzae)のアフリカ株(Yu et al.2011)、アブラナ科野菜斑点細菌病菌(Xanthomonas campestris pv.raphani)株756C及びイネ白葉枯病菌(Xanthomonas oryzae pv.oryzicola)株BLS256(Bogdanove et al.2011)由来のTALエフェクターから得ることができる。本明細書で使用される場合、本発明に従うTALエフェクタードメインは、RVDドメイン、並びにやはり天然に存在するTALエフェクター由来のフランキング配列(RVDのN-末端及び/又はC-末端上の配列)を含む。これは、天然に存在するTALエフェクターのRVDより多いか、又は少ないリピートを含み得る。本発明のTALエフェクター分子は、前述のコード及び当技術分野で既知の他のコードに基づく所与のDNA配列をターゲティングするように設計される。TALエフェクタードメイン(例えば、リピート(モノマー又はモジュール)の数及びそれらの配列は、所望のDNA標的配列に基づいて選択される。例えば、特定の標的配列に合わせるために、TALエフェクタードメイン、例えば、リピートを除去又は付加してもよい。一実施形態では、本発明のTALエフェクター分子は、6.5~33.5のTALエフェクタードメイン、例えば、リピートを含む。一実施形態では、本発明のTALエフェクター分子は、8~33.5のTALエフェクタードメイン、例えば、リピート、例えば、10~25のTALエフェクタードメイン、例えば、リピート、例えば、10~14のTALエフェクタードメイン、例えば、リピートを含む。
【0082】
一部の実施形態では、TALエフェクター分子は、DNA標的配列との完全なマッチに対応するTALエフェクタードメインを含む。一部の実施形態では、DNA標的配列上のリピートと標的塩基対との間のミスマッチは、それが、発現抑制システム、例えば、TALエフェクター分子を含む発現リプレッサーの機能を可能にする場合に限って許容される。一般に、TALE結合は、ミスマッチの数と逆相関する。一部の実施形態では、本発明の発現リプレッサーのTALエフェクター分子は、標的DNA配列に対して、7つ、6つ、5つ、4つ、3つ、2つ、又は1つ以下のミスマッチ、また任意選択的にゼロのミスマッチを含む。理論に束縛されることは望まないが、一般に、TALエフェクター分子中のTALエフェクタードメインの数が少ないほど、より少数のミスマッチが許容され、これは、発現抑制システム、例えば、TALエフェクター分子を含む発現リプレッサーの機能を依然として可能にする。結合親和性は、マッチするリピート-DNA組合せの合計に依存すると考えられる。例えば、25以上のTALエフェクタードメインを有するTALエフェクター分子は、最大7つのミスマッチを許容することができる。
【0083】
TALエフェクタードメインに加えて、本発明のTALエフェクター分子は、天然に存在するTALエフェクターに由来する追加の配列を含んでもよい。TALエフェクター分子のTALエフェクタードメイン部分の両側に含まれるC-末端及び/又はN-末端配列の長さは、変動し得、例えば、Zhang et al.(2011)の研究に基づいて、当業者により選択することができる。Zhang et al.は、Hax3由来のTALエフェクターベースのタンパク質中のいくつかのC-末端及びN-末端切断変異体を特性決定し、標的配列との最適な結合、従って転写の活性化に寄与する重要なエレメントを同定した。概して、転写活性は、N-末端の長さと逆相関することが判明した。C-末端に関しては、Hax3配列の最初の68アミノ酸内のDNA結合残基に重要なエレメントが同定された。従って、一部の実施形態では、天然に存在するTALエフェクターのTALエフェクタードメインのC-末端側の最初の68アミノ酸は、本発明の発現リプレッサーのTALエフェクター分子に含まれる。従って、一実施形態では、本発明のTALエフェクター分子は、以下:1)天然に存在するTALエフェクター由来の1つ若しくは複数のTALエフェクタードメイン;2)TALエフェクタードメインのN-末端側の天然に存在するTALエフェクター由来の少なくとも70、80、90、100、110、120、130、140、150、170、180、190、200、220、230、240、250、260、270、280以上のアミノ酸;及び/又は3)TALエフェクタードメインのC-末端側の少なくとも68、80、90、100、110、120、130、140、150、170、180、190、200、220、230、240、250、260以上のアミノ酸を含む。
【0084】
Znフィンガー分子
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、Znフィンガー分子であるか、又はそれを含む。Znフィンガー分子は、Znフィンガータンパク質、例えば、天然に存在するZnフィンガータンパク質若しくは操作Znフィンガータンパク質、又はその断片を含む。
【0085】
一部の実施形態では、Znフィンガー分子は、選択した標的DNA配列に結合するように操作された非天然のZnフィンガータンパク質を含む。例えば、以下を参照されたい:Beerli,et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141;Pabo,et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340;Isalan,et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656-660;Segal,et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637;Choo,et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416;米国特許第6,453,242号明細書;同第6,534,261号明細書;同第6,599,692号明細書;同第6,503,717号明細書;同第6,689,558号明細書;同第7,030,215号明細書;同第6,794,136号明細書;同第7,067,317号明細書;同第7,262,054号明細書;同第7,070,934号明細書;同第7,361,635号明細書;同第7,253,273号明細書;及び米国特許出願公開第2005/0064474号明細書;同第2007/0218528号明細書;同第2005/0267061号明細書(全て、それらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0086】
操作Znフィンガータンパク質は、天然に存在するZnフィンガータンパク質と比較して、新たな結合特異性を有し得る。操作方法として、限定されないが、合理的設計及び様々なタイプの選択が挙げられる。合理的設計は、例えば、トリプレット(クアドルプレット)ヌクレオチド配列と個別のZnフィンガーアミノ酸配列の使用を含み、ここで、トリプレット又はクアドルプレットヌクレオチド配列は各々、上記の特定のトリプレット又はクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーの1つ若しくは複数のアミノ酸配列と結合している。例えば、米国特許第6,453,242号明細書及び同第6,534,261号明細書(それらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0087】
ファージディスプレイ及びツーハイブリッドシステムを含む例示的な選択方法が、以下:米国特許第5,789,538号明細書;同第5,925,523号明細書;同第6,007,988号明細書;同第6,013,453号明細書;同第6,410,248号明細書;同第6,140,466号明細書;同第6,200,759号明細書;及び同第6,242,568号明細書;並びに国際公開第98/37186号パンフレット;同第98/53057号パンフレット;同第00/27878号パンフレット;及び同第01/88197号パンフレット並びに英国特許第2,338,237号明細書に開示されている。加えて、ジンクフィンガータンパク質に対する結合特異性の増強が、例えば、国際公開第02/077227号パンフレットに記載されている。
【0088】
さらに、上記の参照文献及びその他の参照文献に開示されているように、ジンクフィンガードメイン及び/又はマルチフィンガージンクフィンガータンパク質は、任意の好適なリンカー配列を用いて互いに連結されていてもよく、そうしたリンカーとして例えば、長さが5アミノ酸以上のリンカーが挙げられる。また、長さが6アミノ酸以上の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号明細書;同第6,903,185号明細書;及び同第7,153,949号明細書を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、当該タンパク質の個々のジンクフィンガー間に好適なリンカーの任意の組合せを含んでもよい。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強については、例えば、共同所有国際公開第02/077227号パンフレットに記載されている。
【0089】
融合タンパク質(及びそれをコードするポリヌクレオチド)の設計及び構築のためのZnフィンガータンパク質及び方法は、当業者には周知であり、以下に詳しく記載されている:米国特許第6,140,0815号明細書;同第789,538号明細書;同第6,453,242号明細書;同第6,534,261号明細書;同第5,925,523号明細書;同第6,007,988号明細書;同第6,013,453号明細書;及び同第6,200,759号明細書;国際公開第95/19431号パンフレット;同第96/06166号パンフレット;同第98/53057号パンフレット;同第98/54311号パンフレット;同第00/27878号パンフレット;同第01/60970号パンフレット;同第01/88197号パンフレット;同第02/099084号パンフレット;同第98/53058号パンフレット;同第98/53059号パンフレット;同第98/53060号パンフレット;同第02/016536号パンフレット;及び同第03/016496号パンフレット。
【0090】
さらに、上記の、及びその他の参照文献に開示されているように、ジンクフィンガータンパク質及び/又はマルチフィンガーZnフィンガータンパク質は、例えば、融合タンパク質と同様に、任意の好適なリンカー配列を用いて互いに連結されていてもよく、そうしたリンカーとして例えば、長さが5アミノ酸以上のリンカーが挙げられる。また、長さが6アミノ酸以上の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号明細書;同第6,903,185号明細書;及び同第7,153,949号明細書を参照されたい。本明細書に記載されるZnフィンガー分子は、当該Znフィンガー分子の個々のジンクフィンガータンパク質及び/又はマルチフィンガーZnフィンガータンパク質の間に好適なリンカーの任意の組合せを含んでもよい。
【0091】
特定の実施形態では、DNAターゲティング部分は、標的DNA配列に(配列特異的に)結合する操作ジンクフィンガータンパク質を含むZnフィンガー分子を含む。一部の実施形態では、Znフィンガー分子は、1つのZnフィンガータンパク質又はその断片を含む。別の実施形態では、Znフィンガー分子は、複数のZnフィンガータンパク質(又はその断片)、例えば、2、3、4、5、6以上のZnフィンガータンパク質(及び任意選択的に、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、若しくは2以下のフィンガータンパク質)を含む。一部の実施形態では、Znフィンガー分子は、少なくとも3つのZnフィンガータンパク質を含む。一部の実施形態では、Znフィンガー分子は、4、5、又は6つのフィンガーを含む。一部の実施形態では、Znフィンガー分子は、8、9、10、11、又は12のフィンガーを含む。一部の実施形態では、3つのZnフィンガータンパク質を含むZnフィンガー分子は、9又は10ヌクレオチドを含む標的DNA配列を認識する。一部の実施形態では、4つのZnフィンガータンパク質を含むZnフィンガー分子は、12~14ヌクレオチドを含む標的DNA配列を認識する。一部の実施形態では、6つのZnフィンガータンパク質を含むZnフィンガー分子は、18~21ヌクレオチドを含む標的DNA配列を認識する。
【0092】
一部の実施形態では、Znフィンガー分子は、2枝型(two handed)Znフィンガータンパク質を含む。2枝型Znフィンガータンパク質は、2つのジンクフィンガードメインが2つの不連続標的部位に結合するように、ジンクフィンガータンパク質の2つのクラスターが、アミノ酸を介在することにより隔てられている、タンパク質である。2枝型のジンクフィンガー結合タンパク質の例は、SIP1であり、この場合、4個のジンクフィンガータンパク質のクラスターが、タンパク質のアミノ末端に位置し、3個のZnフィンガータンパク質のクラスターが、カルボキシル末端に位置する(Remade,et al.(1999)EMBO Journal、18(18):5073-5084を参照)。これらのタンパク質中のジンクフィンガーの各クラスターは、ユニークな標的配列に結合することができ、2つの標的配列間のスペーシングは、多くのヌクレオチドを含むことができる。
【0093】
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ヌクレアーゼに由来するDNA結合ドメインであるか、又はそれを含む。例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、及びI-TevIIIなどのホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼの認識配列が知られている。米国特許第5,420,032号明細書;同第6,833,252号明細書;Belfort,et al.(1997)Nucleic Acids Res.,25:3379-3388;Dujon,et al.(1989)Gene 82:115-118;Perler,et al.(1994),Nucleic Acids Res.22:1125-1127;Jasin(1996)Trends Genet.12:224-228;Gimble,et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163-180;Argast,et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345-353及びNew England Biolabsのカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼ及びメガヌクレアーゼのDNA結合特異性を操作して、非天然の標的部位を結合することができる。例えば、Chevalier,et al.(2002)Molec.Cell 10:895-905;Epinat,et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952-2962;Ashworth,et al.(2006)Nature 441:656-659;Paques,et al.(2007)Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許出願公開第2007/0117128号明細書を参照されたい。
【0094】
標的配列
ターゲティング部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)に近接した、及び/又はそれと作動可能に連結したゲノム配列エレメントをターゲティングし、例えば、それに結合する。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、発現制御配列であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、アンカー配列であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ゲノム配列エレメントは、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子の一部であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、ゲノム配列エレメントに含まれるか、又は一部含まれる標的配列に結合する。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35塩基長(及び任意選択的に、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、又は20塩基長以下)の標的配列に結合する。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、10~30、15~30、15~25、18~24、19~23、20~23、21~23、又は22~23塩基長の標的配列に結合する。一部の実施形態では、標的配列は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40塩基長である。
【0095】
アンカー配列
一般に、アンカー配列は、ゲノム複合体成分、例えば、核形成ポリペプチドが特異的に結合するゲノム配列エレメントである。一実施形態では、アンカー配列との結合により、ゲノム複合体(例えば、ASMC)形成が核形成される。
【0096】
アンカー配列媒介接合部(ASMC)は、複数のアンカー配列、例えば、2つ以上のアンカー配列を含む。一部の実施形態では、アンカー配列を操作又は変更して、天然に存在するゲノム複合体(例えば、ASMC)を調節(例えば、妨害)するか、又は新たなゲノム複合体(例えば、ASMC)を形成する(例えば、外性若しくは変更されたアンカー配列を有する非天然ゲノム複合体(例えば、ASMC)を形成する)ことができる。こうした変更は、例えば、DNAのトポロジー構造を変化させ、例えば、それにより、標的遺伝子が、遺伝子調節及び制御因子(例えば、発現制御配列、例えば、プロモータ、エンハンサー、若しくはリプレッサー配列)と相互作用する能力を調節することによって遺伝子発現を調節することができる。
【0097】
一部の実施形態では、アンカー配列内の1つ若しくは複数のヌクレオチドを置換、付加するか、又は欠失させることにより、クロマチン構造を修飾する。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部のアンカー配列内の1つ若しくは複数のヌクレオチドを置換、付加するか、又は欠失させることにより、クロマチン構造を修飾する。
【0098】
一部の実施形態では、アンカー配列は、核形成ポリペプチド結合モチーフ、例えば、CTCF-結合モチーフ:
N(T/C/G)N(G/A/T)CC(A/T/G)(C/G)(C/T/A)AG(G/A)(G/T)GG(C/A/T)(G/A)(C/G)(C/T/A)(G/A/C)(配列番号1)(Nは、任意のヌクレオチドである)
を含む。
【0099】
CTCF-結合モチーフはまた、逆配向、例えば、
(G/A/C)(C/T/A)(C/G)(G/A)(C/A/T)GG(G/T)(G/A)GA(C/T/A)(C/G)(A/T/G)CC(G/A/T)N(T/C/G)N(配列番号2)
であってもよい。
【0100】
一部の実施形態では、アンカー配列は、配列番号1若しくは配列番号2又は配列番号1若しくは配列番号2のいずれかに対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一の配列を含む。
【0101】
一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、少なくとも1つの第1アンカー配列と少なくとも1つの第2アンカー配列を含む。例えば、一部の実施形態では、第1アンカー配列及び第2アンカー配列は各々、核形成ポリペプチド結合モチーフを含んでもよく、例えば、各々がCTCF結合モチーフを含む。
【0102】
一部の実施形態では、第1アンカー配列及び第2アンカー配列は、異なる配列を含み、例えば、第1アンカー配列は、CTCF結合モチーフを含み、第2アンカー配列は、CTCF結合モチーフ以外のアンカー配列を含む。一実施形態では、各アンカー配列は、核形成ポリペプチド結合モチーフと、核形成ポリペプチド結合モチーフの片側又は両側の1つ若しくは複数のフランキングヌクレオチドを含む。
【0103】
ASMCを形成することができる2つのCTCF結合モチーフ(例えば、連続的若しくは非連続的CTCF結合モチーフ)は、任意の配向で、例えば、同じ配向(タンデム)で5’-3’(左タンデム、例えば、配列番号1を含む2つのCTCF結合モチーフ)又は3’-5’(右タンデム、例えば、配列番号2を含む2つのCTCF結合モチーフ)のいずれか、或いは、一方のCTCF結合モチーフが配列番号1を含み、他方が配列番号2を含む収斂配向で、ゲノム内に存在し得る。CTCFBSDB 2.0:Database For CTCF binding motifs And Genome Organization(http://insulatordb.uthsc.edu/)を用いて、標的遺伝子に関連するCTCF結合モチーフを同定することができる。
【0104】
一部の実施形態では、アンカー配列は、標的遺伝子(例えば、FXN)に関連するCTCF結合モチーフを含み、この場合、上記標的遺伝子は、疾患、障害及び/又は病状(例えば、FRDA)に関連する。
【0105】
一部の実施形態では、本開示の方法は、例えば、クロマチン構造を修飾することにより、アンカー配列、例えば、核形成ポリペプチド結合モチーフ内の1つ若しくは複数のヌクレオチドを置換、付加するか、又は欠失させることにより、ゲノム複合体(例えば、ASMC)を調節する、例えば、妨害することを含む。アンカー配列、例えば、核形成ポリペプチド結合モチーフ内での置換、付加又は欠失のために、1つ若しくは複数のヌクレオチドを特異的にターゲティングする、例えば、標的化変更することもできる。
【0106】
一部の実施形態では、少なくとも1つの核形成ポリペプチド結合モチーフの配向を変化させることにより、ゲノム複合体(例えば、ASMC)を変更することができる。一部の実施形態では、アンカー配列は、核形成ポリペプチド結合モチーフ、例えば、CTCF結合モチーフを含み、ターゲティング部分は、少なくとも1つの核形成ポリペプチド結合モチーフに変更を導入して、例えば、核形成ポリペプチドに対する結合親和性を変更する。
【0107】
発現制御配列
一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、FXN)は、1つ若しくは複数の発現制御配列と関連し、且つ/又はそれと作動可能に連結している。一実施形態では、ゲノム複合体(例えば、ASMC)は、1つ又は複数の発現制御配列を含む2つ以上のゲノム配列をコロニー化する。当業者は、遺伝子と関連する多様な正(例えば、プロモータ若しくはエンハンサー)又は負(例えば、リプレッサー若しくはサイレンサー)の発現制御配列を熟知している。典型的には、コグネイト調節タンパク質がそのような発現制御配列に結合していれば、関連遺伝子からの転写が変更される(例えば、正の発現制御配列の場合には増大し;負の発現制御配列の場合には低減する)。
【0108】
プロモータ配列
一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、FXN)をプロモータと結合させ、且つ/又はそれと作動可能に連結させる。一実施形態では、ゲノム複合体(例えば、ASMC)は、2つ以上のゲノム配列をコロニー化し、ここで、2つ以上のゲノム配列は、プロモータを含む。当業者は、プロモータが、典型的に、関連遺伝子の転写を開始する配列であることを認識する。プロモータは、典型的に、遺伝子の5’末端付近であり、転写開始部位から離れていない。
【0109】
当業者は認識するように、真核細胞におけるタンパク質コード遺伝子の転写は、典型的に、基本転写因子(例えば、TFIID、TFIIE、TFIIHなど)及びメディエータと、転写開始前複合体としてのコアプロモータ配列(RNAポリメラーゼIIを転写開始部位に向ける)との結合によって開始され、多くの事例では、RNAポリメラーゼエスケープ及び一次転写物の伸長が開始された後も、コアプロモータ配列に結合されたままである。
【0110】
多くの実施形態では、プロモータは、TATA、Inr、DPE、又はBREなどの配列エレメントを含むが、当業者は、プロモータを定義するためにこうした配列が必ずしも必要ではないことは十分に認識されよう。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的遺伝子(標的遺伝子はFXNである)と作動可能に連結したプロモータ内の標的配列をターゲティングし、例えば、それに結合する。一部の実施形態では、FXNは、ヒト染色体9上に位置する。一部の実施形態では、転写開始部位(TSS)は、ヒトゲノム(GRCh37)のhg19アノテーションの転写開始エントリーであり、これは、UCSC Table Browser(Karolchik D,Hinrichs AS,Furey TS,Roskin KM,Sugnet CW,Haussler D,Kent WJ.The UCSC Table Browser data retrieval tool.Nucleic Acids Res.2004 Jan 1;32(Database issue):D493-6)から検索される。一部の実施形態では、TSSは、染色体位置71650667(例えば、the Genome Reference Consortium Human Build 37(GRCh37)において)にある。一部の実施形態では、FXNと作動可能に連結した発現制御配列、例えば、プロモータは、TSSの両側に約1000塩基を包含する配列を含む。一部の実施形態では、標的部分は、TSSから少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、又は500塩基上流(及び任意選択的に、TSSから500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10塩基以下上流)の配列位置を含む標的配列に結合する。一部の実施形態では、標的部分は、TSSから少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、又は500塩基下流(及び任意選択的に、TSSから500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10塩基以下下流)の配列位置を含む標的配列に結合する。
【0111】
一部の実施形態では、標的部分は、標的配列に結合し、ここで、TSSに最も近い位置は、TSSから少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、又は500塩基上流(及び任意選択的に、TSSから500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10塩基以下上流)である。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的配列に結合し、ここで、TSSに最も近い位置は、TSSから少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、又は500塩基下流(及び任意選択的に、TSSから500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10塩基以下下流)である。
【0112】
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的配列をターゲティングし、例えば、それに結合し、ここで、TSSに最も近い位置は、TSSから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、若しくは500塩基上流又は下流である。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的配列をターゲティングし、例えば、それに結合し、ここで、TSSに最も近い位置は、約150(例えば、150)塩基上流である。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的配列をターゲティングし、例えば、それに結合し、ここで、TSSに最も近い位置は、約50(例えば、50)塩基下流である。
【0113】
一部の実施形態では、ターゲティング部分は、表3から選択される例示的な標的配列(例えば、表3の上流及び下流末端の列に記載される)に結合する。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的配列(例えば、表3の標的配列)に対して相補的又は部分的に(例えば、1、2、3、4、5、6、7、若しくは8位置以外は全て)相補的である核酸配列、例えば、sgRNAを含む。例示的な標的配列に対する結合のための例示的なガイド配列(例えば、ターゲティング部分のsgRNAに使用される)も表3に記載する。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
エフェクター部分
調節剤は、細胞の核内の適切な部位に局在化される(例えば、ターゲティング部分により)と、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を変更(例えば、増大)することができる1つ又は複数のエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、エフェクター部分は、調節剤(例えば、ターゲティング部分)とゲノム配列エレメントとの結合に寄与するか、又はその作用を増強する。一部の実施形態では、エフェクター部分は、ターゲティング部分の結合とは無関係の機能性を有する。例えば、エフェクター部分は、ゲノム配列エレメント、若しくはターゲティング部分によりターゲティングされるゲノム配列エレメントに近接したゲノム複合体成分をターゲティングし、例えば、それに結合するか、又は転写因子を動員することができる。さらに別の例として、エフェクター部分は、酵素活性、例えば、遺伝子修飾機能性を含み得る。また別の例として、エフェクター部分は、エピジェネティック修飾部分であるか、又はそれを含み得る。
【0119】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、ポリペプチドであるか、それを含む。一部の実施形態では、エフェクター部分は、核酸であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、エフェクター部分は、化学物質、例えば、シトシン(C)又はアデニン(A)を調節する化学物質(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム)である。一部の実施形態では、エフェクター部分は、酵素活性(例えば、メチルトランスフェラーゼ、デメチラーゼ、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)、又はデアミナーゼ活性)を有する。エフェクター部分は、小分子、ペプチド、核酸、ナノ粒子、アプタマー、又は低PK/PDを有する薬剤のうち1つ若しくは複数であるか、又はそれを含み得る。
【0120】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、ペプチドリガンド、完全長タンパク質、タンパク質断片、抗体、抗体断片、及び/又はターゲティングアプタマーを含み得る。一部の実施形態では、タンパク質は、細胞外受容体、神経ペプチド、ホルモンペプチド、ペプチド薬剤、毒性ペプチド、ウイルス若しくは微生物ペプチド、合成ペプチド、又はアゴニスト若しくはアンタゴニストペプチドなどの受容体に結合し得る。
【0121】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、抗原、抗体、抗体断片(例えば、単一ドメイン抗体、リガンドなど)、又は受容体(例えば、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-2受容体2、コレシストキニンB(CCKB)、又はソマトスタチン受容体)、ペプチド治療薬(例えば、Gタンパク質結合受容体(GPCR)若しくはイオンチャネルのような特定の細胞表面受容体に結合するもの、天然の生物活性ペプチド由来の合成若しくはアナログペプチド、抗微生物ペプチド、孔形成ペプチド、腫瘍ターゲティング若しくは細胞傷害性ペプチドなど)、又は分解若しくは自壊ペプチド(例えば、アポトーシス誘導ペプチドシグナル又は光増感剤ペプチドなど)を含み得る。
【0122】
本明細書に記載されるエフェクター部分に使用されるペプチド又はタンパク質部分は、小さな抗原結合ペプチド、例えば、抗原結合抗体又は抗体様断片、例えば、一本鎖抗体、ナノボディなども含み得る(例えば、Steeland et al.2016.Nanobodies as therapeutics:big opportunities for small antibodies.Drug Discov Today:21(7):1076-113を参照)。こうした小分子抗原結合ペプチドは、例えば、細胞質ゾル抗原、核抗原、オルガネラ内抗原に結合し得る。
【0123】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、ドミナントネガティブ成分(例えば、ドミナントネガティブ部分)、例えば、或る配列(例えば、アンカー配列、例えば、CTCF結合モチーフ)を認識して、それに結合するが、不活性(例えば、突然変異した)二量体化ドメイン、例えば、機能性アンカー配列媒介接合部を形成することができない二量体化ドメイン)を含むタンパク質、又は機能性転写因子の形成を妨げるゲノム複合体の1成分(例えば、転写因子サブユニットなど)に結合するタンパク質などを含む。例えば、CTCFのジンクフィンガードメインは、それが、特定のアンカー配列に結合する(フランキングする核酸を認識するジンクフィンガーを付加することにより)ように、変更することができるのに対し、ホモ二量体化ドメインは、操作CTCFと内因性形態のCTCF同士の相互作用を妨げるように変更される。一部の実施形態では、ドミナントネガティブ成分は、標的アンカー配列媒介接合部内のアンカー配列に対して選択された結合親和性を有する合成核形成ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、結合親和性は、標的アンカー配列と結合した内因性核形成ポリペプチド(例えば、CTCF)の結合親和性より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%高いか、又は低くなり得る。合成核形成ポリペプチドは、対応する内因性核形成ポリペプチドに対して30~90%、30~85%、30~80%、30~70%、50~80%、50~90%のアミノ酸同一性を有し得る。核形成ポリペプチドは、競合的結合を介して、例えば、内在性核形成ポリペプチドとそのアンカー配列の結合との競合により、調節(例えば、妨害)し得る。
【0124】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、抗体又はその断片を含む。一部の実施形態では、1つ若しくは複数の抗体又はその断片であるか、又はそれを含むエフェクター部分を使用して、標的遺伝子(例えば、FXN)発現を変更する。一部の実施形態では、1つ若しくは複数の抗体(又はその断片)であるか、又はそれを含むエフェクター部分とdCas9を使用して、遺伝子発現を変更する。
【0125】
一部の実施形態では、エフェクター部分に使用される抗体又はその断片は、モノクローナルであってもよい。抗体は、融合物、キメラ抗体、非ヒト化抗体、部分的又は完全ヒト化抗体などであってもよい。当業者には理解されるように、使用される抗体のフォーマットは、所与の標的に応じて、同じであっても、異なっていてもよい。
【0126】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、接合部核形成分子、接合部核形成分子をコードする核酸、又はその組合せを含む。接合部核形成分子は、例えば、CTCF、コヒーシン、USF1、YY1、TATAボックス結合タンパク質関連因子3(TAF3)、ZNF143結合モチーフ、又はアンカー配列媒介接合部の形成を促進する別のポリペプチドであってもよい。接合部核形成分子は、内因性ポリペプチド又は他のタンパク質、例えば、転写因子、例えば、自己免疫調節因子(AIRE)、別の因子、例えば、X-不活性化特異的転写物(XIST)、又は目的とする特定のDNA配列を認識するように操作された操作ポリペプチド(例えば、配列認識用のジンクフィンガー、ロイシンジッパー若しくはbHLHドメインを有する)であってもよい。接合部核形成分子は、アンカー配列媒介接合部(例えば、ターゲティング部分によりターゲティングされるゲノム配列エレメントと結合しているか、又はそれを含む)内又はその周辺のDNA相互作用を調節し得る。例えば、接合部核形成分子は、アンカー配列媒介接合部形成又は破壊を変更するアンカー配列に他の因子を動員することができる。
【0127】
接合部核形成分子はさらに、ホモ又はヘテロ二量体化のために二量体化ドメインを有してもよい。1つ又は複数の接合部核形成分子(例えば、内因性及び操作された)は、相互作用して、アンカー配列媒介接合部を形成し得る。一部の実施形態では、安定化ドメイン、例えば、コヒーシン相互作用ドメインをさらに含むように、接合部核形成分子を操作して、アンカー配列媒介接合部を安定化する。一部の実施形態では、標的配列と結合するように、接合部核形成分子を操作し、例えば、標的配列結合親和性を調節する。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部内のアンカー配列に対して選択された結合親和性を有する接合部核形成分子を選択するか、又は操作する。
【0128】
CTCFの非存在下で、トポロジーが関連するドメイン、例えば、遠位DNA領域又は遺伝子座同士のトポロジカル相互作用を調べるために、CTCF中の不活性化突然変異を保有する細胞、並びに染色体立体配座キャプチャー若しくは3Cベースの技術の使用により、接合部核形成分子及びその対応するアンカー配列を見出すことができる。また、長期にわたるDNA相互作用を明らかにすることもできる。追加の解析としては、ベイト、例えば、コヒーシン、YY1若しくはUSF1、ZNF143結合モチーフ、及びMSを用いて、ベイトに関連する複合体を見出すChIA-PET解析を挙げることができる。
【0129】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、タンパク質のDNA結合ドメインであるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、エフェクター部分のDNA結合ドメインは、調節剤のターゲティングの作用を増強又は変更するが、単独では調節剤による完全なターゲティングを達成しない(例えば、調節剤のターゲティングを達成するために、ターゲティング部分が必要である)。一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、調節剤のターゲティングを増強する。一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、調節剤の効力を増強する。DNA結合タンパク質は、例えば、DNAとの結合に重要な役割を果たす異なる構造モチーフを有し、これは、当業者には周知である。一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、ヘリックス-ターン-ヘリックス(HTH)モチーフ、即ち、リプレッサータンパク質中の共有DNA認識モチーフを含む。こうしたモチーフは、2つのヘリックスを有し、その1つは、結合特異性を賦与する側鎖を備えたDNAを認識するもの(別名:認識ヘリックス)である。こうしたモチーフは、一般に、発生過程に関与するタンパク質を調節するために使用される。時として、2つ以上のタンパク質は、同じ配列について競合するか、又は同じDNA断片を認識する。様々なタンパク質は、同じ配列に対するその親和性、又はDNA立体配座が、それぞれH-結合、塩架橋及びファンデルワールス相互作用によって異なる可能性がある。
【0130】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、ヘリックス-ヘアピン-ヘリックス(HhH)モチーフを含む。HhH構造モチーフを備えるDNA結合タンパク質は、タンパク質骨格窒素とDNAリン酸基との間の窒素結合の形成を介して起こる非配列特異的DNA結合に関与し得る。
【0131】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、ヘリックス-ループ-ヘリックス(HLH)モチーフを含む。HLH構造モチーフを備えるDNA結合ドメインは、転写調節タンパク質であり、主として多様な発生過程に関連する。HLH構造モチーフは、残基に関して、HTH又はHhHモチーフより長い。これらのタンパク質の多くは相互作用して、ホモ-及びヘテロ-二量体化を形成する。構造モチーフは、2つの長いヘリックス領域と、DNAに結合するN末端ヘリックスとから構成され、複合体は、タンパク質が二量体化することを可能にする。
【0132】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、ロイシンジッパーを含む。いくつかの転写因子の場合、DNAを含む二量体結合部位は、ロイシンジッパーを形成する。このモチーフは、2つの両親媒性ヘリックスを含み、各サブユニットからの1つが、互いに相互作用して、左巻きコイルドコイル超二次構造をもたらす。ロイシンジッパーは、隣接するヘリックスからのロイシンを含む1つのヘリックス中に規則的に間隔をあけたロイシン残基の相互篏合構造(interdigitation)である。主に、ロイシンジッパーに関与するヘリックスは、疎水性の残基a及びdと、親水性の他の残基を備えるヘプタッド(heptad)配列(abcdefg)を呈示する。ロイシンジッパーモチーフは、ホモ-又はヘテロ二量体形成のいずれかを媒介することができる。
【0133】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、Zn-フィンガードメインを含み、ここで、Zn++イオンは、2つのCysと2つのHis残基により配位結合されている。こうした転写因子は、化学量論ββ’αを有する三量体を含む。Zn++配位結合の明らかな作用は、疎水性コア残基ではなく、小さな複合体構造の安定化である。各Zn-フィンガーは、立体配座的に同じ様式で、二重螺旋の主溝内の連続的な三重塩基対セグメントと相互作用する。タンパク質-DNA相互作用は、2つの要因:(i)α-ヘリックスとDNAセグメント、主としてArg残基とグアニン塩基の間のH-結合相互作用、(ii)DNAリン酸骨格、主としてArg及びHisとのH-結合相互作用によって決定される。別のZn-フィンガーモチーフは、6つのCysでZn++をキレートする。
【0134】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、TATAボックス結合タンパク質(TBP)も含み、TBPは、クラスII開始因子TFIIDの成分として最初に同定された。これらの結合タンパク質は、全3つの各々でサブユニットとして作用する核RNAポリメラーゼによる転写に参加する。TBPの構造は、89~90アミノ酸のα/β構造ドメインを示す。TBPのC-末端又はコア領域は、副溝決定因子を認識して、DNA湾曲を促進するTATAコンセンサス配列(TATAa/tAa/t、配列番号3)に、高い親和性で結合する。TBPは、分子サドルと類似している。結合側は、10鎖逆平行βシートの中央の8鎖と一列に並ぶ。上部表面は、4つのα-ヘリックスを含み、転写機構の様々な成分に結合する。
【0135】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、転写因子であるか、又はそれを含む。転写因子(TF)は、塩基配列の特異的な認識を担うDNA結合ドメインと、転写を活性化又は抑制することができる1つ若しくは複数のエフェクタードメインを含む調節タンパク質であってもよい。TFは、クロマチンと相互作用し、共活性化因子又は共抑制因子として役立つタンパク質複合体を動員する。
【0136】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、1つ又は複数のRNA(例えば、gRNA)及びdCas9を含む。1つ又は複数のRNAは、dCas9及び標的特異的ガイドRNAを介してゲノム配列エレメントをターゲティングする。当業者には理解されるように、ターゲティングのために用いられるRNAは、所与の標的に応じて同じでも、又は異なっていてもよい。
【0137】
エフェクター部分は、アプタマー、例えば、オリゴヌクレオチドアプタマー又はペプチドアプタマーを含み得る。アプタマー部分は、オリゴヌクレオチド又はペプチドアプタマーである。
【0138】
エフェクター部分は、オリゴヌクレオチドアプタマーを含み得る。オリゴヌクレオチドアプタマーは、タンパク質及びペプチドなど、予め選択した標的に、高い親和性及び特異性で結合することができる一本鎖DNA又はRNA(ssDNA若しくはssRNA)分子である。
【0139】
オリゴヌクレオチドアプタマーは、核酸種であり、これは、小分子、タンパク質、核酸、さらには、細胞、組織及び生物などの様々な分子標的に結合するように、インビトロ選択又は同様に、SELEX(試験管内進化法)のラウンドを反復することによって操作することができる。アプタマーは、明確な分子認識を提供し、化学合成により生成することができる。加えて、アプタマーは、望ましい貯蔵特性を有し、治療用途において免疫原性をほとんど又は全く誘発しない。
【0140】
DNA及びRNAアプタマーの両方が、様々な標的に対して頑健な結合親和性を示す。例えば、DNA及びRNAアプタマーは、tリゾチーム、トロンビン、ヒト免疫不全ウイルストランス作用性応答エレメント(HIV TAR)、https://en.wikipedia.org/wiki/Aptamer - cite_note-10 hemin、インターフェロンγ、血管内皮増殖因子(VEGF)、前立腺特異的抗原(PSA)、ドーパミン、及び非古典的癌遺伝子、熱ショック因子(HSF1)に対して選択されている。
【0141】
アプタマーに基づく血漿タンパク質プロファイリングのための診断技術には、アプタマー血漿プロテオミクスがある。この技術は、健康な状態に対して疾患の分別診断を助けることができる将来のマルチバイオマーカータンパク質測定を可能にするであろう。
【0142】
エフェクター部分は、ペプチドアプタマー部分を含み得る。ペプチドアプタマーは、低分子量、即ち、12~14kDaを有するペプチドを含め、1つ又は複数の短い可変ペプチドを有する。ペプチドアプタマーは、細胞内部のタンパク質-タンパク質相互作用に特異的に結合して、それに干渉するように設計され得る。
【0143】
ペプチドアプタマーは、特定の遺伝子分子に結合するように選択又は操作された人工タンパク質である。これらのタンパク質は、可変配列の1つ又は複数の複合体を含む。これらは典型的に、コンビナトリアルライブラリーから単離され、多くの場合、その後、指定突然変異又は複数ラウンドの可変領域突然変異誘発及び選択によって改善される。インビボで、ペプチドアプタマーは、細胞タンパク質標的と結合して、その標的化分子と他のタンパク質との正常なタンパク質相互作用の干渉を含め、生物学的作用を及ぼすことができる。特に、転写因子結合ドメインに結合した可変ペプチドアプタマーを、転写因子活性化因子に結合した標的タンパク質からスクリーニングする。この選択戦略を介したその標的に対するペプチドアプタマーのインビボ結合は、下流酵母マーカー遺伝子の発現として検出される。こうした実験によって、所与の表現型をもたらすために、アプタマーに結合された特定のタンパク質、及びアプタマーが妨害するタンパク質相互作用が見出される。加えて、適切な機能性部分と共に誘導体化したペプチドアプタマーは、その標的タンパク質の特定の翻訳後修飾を引き起こすか、又は標的の細胞内局在化を変更することができる。
【0144】
ペプチドアプタマーはまた、インビトロで標的を認識することもできる。これらのペプチドアプタマーは、バイオセンサーにおける抗体の代わりに有用であることが判明し、不活性及び活性両方のタンパク質形態を含む集団からタンパク質の活性アイソフォームを検出するために使用されている。タッドポール(tadpole)として知られる誘導体(ペプチドアプタマー「ヘッド」が、ユニーク配列二本鎖DNA「テイル」に共有結合されている)は、そのDNAテイルのPCR(例えば、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用いる)による混合物中の稀有な標的分子の定量を可能にする。
【0145】
ペプチドアプタマー選択は、様々なシステムを用いて実施することができるが、使用されているほとんどは、現時点で、酵母ツーハイブリッドシステムである。ペプチドアプタマーはまた、ファージディスプレイ、並びにmRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイ及び酵母ディスプレイなどの他のディスプレイ技術により構築されるコンビナトリアルペプチドライブラリーから選択することもできる。これらの実験手順は、バイオパニングとしても知られている。バイオパニングから得られたペプチドのうち、ミモトープは、一種のペプチドアプタマーとして考えることができる。コンビナトリアルペプチドライブラリーからパニングされたペプチドは、MimoDBと称する特別なデータベースに保存されている。
【0146】
例示的なエフェクター部分として、限定されないが、以下:ユビキチン、ユビキチンリガーゼ阻害剤などの二環式ペプチド、転写因子、トポイソメラーゼなどのDNA及びタンパク質修飾酵素、トポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤、DNMTファミリー(例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMTL)などのDNAメチルトランスフェラーゼ、タンパク質メチルトランスフェラーゼ(例えば、ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET)、タンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)、デアミナーゼ(例えば、APOBEC、UG1)、zesteホモログ2のエンハンサー(EZH2)、PRMT1、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2)、ユークロマチンヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ2(G9a)、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1)、及びG9aなどのヒストンメチルトランスフェラーゼ)、ヒストンデアセチラーゼ(例えば、HDAC1、HDAC2,HDAC3)、DNA脱メチル化に役割を有する酵素(例えば、TETファミリー酵素は、5-メチルシトシンから5-ヒドロキシルメチルシトシン及びより高度の酸化誘導体への酸化を触媒する)、KDM1A及びリシン特異的ヒストンデメチラーゼ1(LSD1)などのタンパク質デメチラーゼ、DHX9などのヘリカーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、デアセチラーゼ(例えば、サーチュイン1、2、3、4、5、6、又は7)、キナーゼ、ホスファターゼ、臭化エチジウム、SYBRグリーン及びプロフラビンなどのDNA挿入剤、フェニルアラニンアルギニルβ-ナフチルアミド若しくはキノリン誘導体のようなペプチド模倣物などの排出ポンプ阻害剤、核受容体活性化因子及び阻害剤、プロテアソーム阻害剤、酵素に関する競合阻害剤(例えば、リソソーム蓄積症に関与するものなど)、タンパク質合成阻害剤、ヌクレアーゼ(例えば、Cpf1、Cas9、ジンクフィンガーヌクレアーゼ)、それらの1つ若しくは複数の融合物(例えば、dCas9-DNMT、dCas9-APOBEC、dCas9-UG1)、並びにタンパク質からの特定のドメイン(例えば、KRABドメイン)を挙げることができる。
【0147】
ゲノム複合体に影響を及ぼすエフェクター部分
一部の実施形態では、調節剤は、標的遺伝子(例えば、FXN)に結合しているか、又はそれを含むゲノム複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部のレベルを低下又は増加させるエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、標的遺伝子を含むゲノム複合体(例えば、ASMC)のレベルは、エフェクター部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、若しくは20%)低下又は増加する。一部の実施形態では、調節剤の存在により、標的遺伝子(例えば、FXN)と作動可能に連結したゲノム配列エレメントにおける、ゲノム複合体(例えば、ASMC)の占有を変更、例えば、増大又は低減する。一部の実施形態では、占有は、エフェクター部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、若しくは20%)増大又は低減する。
【0148】
一部の実施形態では、調節剤は、ゲノム配列エレメントと別のゲノム配列複合体成分又は転写因子同士の相互作用を妨害するエフェクターを含む。一部の実施形態では、調節剤は、エフェクター部分が存在しない場合と比較して、存在すると、内在性核形成ポリペプチドの二量体化を低減するエフェクター部分を含む。
【0149】
一部の実施形態では、エフェクター部分は、標的化成分を含むゲノム複合体(例えば、ASMC)に関連する標的遺伝子の発現を変更、例えば、低減する。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現は、エフェクター部分を含む調節剤の存在下で、前記調節剤が存在しない場合に比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100、90、80、70、60、50、40、30、又は20%)低減する。
【0150】
一部の実施形態では、調節剤は、立体障害(steric presence)(例えば、別のゲノム複合体成分又は転写因子の結合を阻害するための)を賦与するエフェクター部分を含む。エフェクター部分は、ドミナントネガティブ分子若しくはその断片(例えば、ゲノム複合体成分(例えば、ゲノム配列エレメント、例えば、アンカー配列、(例えば、CTCF結合モチーフ))を認識して、それに結合するが、機能性ゲノム複合体(例えば、ASMC)の形成を阻止する変更(例えば、突然変異)を有するタンパク質)、転写因子の結合若しくは機能(例えば、転写因子と、転写されるその標的配列との接触)に干渉するポリペプチド、立体障害を付与する小分子と連結した核酸配列、又は認識エレメント及び立体遮断因子のいずれか他の組合せを含み得る。
【0151】
一部の実施形態では、調節剤は、p65(また、RELAとしても知られる)、又はその機能性変異体若しくは断片(例えば、アクセッション番号NP_001138610.1により指定される部分)を有するエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、調節剤は、RTA(エプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)BRLF1遺伝子産物)、又はその機能性変異体若しくは断片(例えば、アクセッション番号AAA66528.1により指定される部分)を有するエフェクター部分を含む。
【0152】
遺伝子修飾部分
一部の実施形態では、調節剤は、遺伝子修飾部分(例えば、遺伝子編集システムの成分)であるか、又はそれを含むエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、遺伝子編集システムの1つ若しくは複数の成分を含む。遺伝子修飾部分は、限定されないが、遺伝子編集を含む様々な状況で使用され得る。例えば、遺伝子修飾部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列エレメントの配列を変更する(例えば、突然変異、例えば、置換、挿入、若しくは欠失を導入する)ことができる。別の例として、こうした部分を用いて、例えば、エフェクター部分を含む調節剤が、標的配列、例えば、アンカー配列を物理的に修飾する、遺伝子的に修飾する、且つ/又はエピジェネティック的に修飾し得るように、前記エフェクター部分を遺伝子座に局在化させることができる。
【0153】
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、例えば、遺伝子編集システムを介して、或る配列の1つ又は複数のヌクレオチドをターゲティングすることができる。一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、ゲノム配列エレメントに結合して、ゲノム複合体(例えば、ASMC)を変更する、例えば、標的遺伝子(例えば、FXN)及び/又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列エレメントを含むか、若しくはそれと結合したアンカー配列媒介接合部のトポロジーを変更する。
【0154】
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、置換、付加又は欠失のために、例えば、CRISPR、TALEN、dCas9、オリゴヌクレオチド対合、組換え、トランスポゾンなどを介して、ゲノム複合体の成分内で若しくはその成分として(例えば、アンカー配列媒介接合部内で)、ゲノムDNAの1つ若しくは複数のヌクレオチドをターゲティングする。
【0155】
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、ゲノムDNAの1つ若しくは複数のヌクレオシド中に標的化変更を導入し、上記変更によって、例えば、ヒト細胞中の遺伝子(例えば、FXN)の転写を調節する。遺伝子修飾部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)に、例えば、エキソン、イントロン、スプライス部位、又は5’UTR若しくは3’UTRをコードする配列に変更を導入することができる。遺伝子修飾部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)に作動可能に連結したゲノム複合体成分(例えばプロモータ又はエンハンサー)に変更を導入することができる。遺伝子修飾部分は、標的遺伝子(例えば、FXN)及び/又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列エレメントを含むか、若しくはそれと結合したASMCに参加するアンカー配列に変更を導入することができる。変更は、1つ若しくは複数のヌクレオチドの置換、付加、又は欠失を含み得る。一部の実施形態では、標的とする変更は、核形成ポリペプチドの結合部位の少なくとも1つを変更し、例えば、アンカー配列媒介接合部内のアンカー配列、別のスプライシング部位、及び非翻訳RNAの結合部位に対する結合親和性を変更する。
【0156】
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、以下:少なくとも1つの外性アンカー配列の賦与;例えば、核形成ポリペプチドに対する結合親和性の変更による、少なくとも1つの核形成ポリペプチド結合モチーフの変更;CTCF結合モチーフなどの少なくとも1つの核形成ポリペプチド結合モチーフの配向の変更;及びCTCF結合モチーフなどの少なくとも1つのアンカー配列における置換、付加又は欠失の少なくとも1つによって、ゲノム複合体の1成分(例えば、アンカー配列媒介接合部内の1配列)を編集する。
【0157】
成分が遺伝子の修飾部分に使用するのに好適となり得る例示的な遺伝子編集システムとしては、クラスター化した規則的な間隔の短い回文配列リピート(CRISPR)システム(例えば、CRISPR/Cas分子)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(例えば、Znフィンガー分子)、及び転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)が挙げられる。ZFN、TALEN、及びCRISPRに基づく方法は、例えば、Gaj et al.Trends Biotechnol.31.7(2013):397-405に記載されており;遺伝子編集のCRISPR法は、例えば、Guan et al.,Application of CRISPR-Cas system in gene therapy:Pre-clinical progress in animal model.DNA Repair 2016 July 30,46:1-8;及びZheng et al.,Precise gene deletion and replacement using the CRISPR/Cas9 system in human cells.BioTechniques,Vol.57,No.3,September 2014,pp.115-124に記載されている。
【0158】
例えば、一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、部位特異的であり、本明細書にさらに説明されるように、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)と部位特異的ガイドRNAを含む。一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)及び部位特異的ガイドRNAを含む。一部の実施形態では、Casヌクレアーゼは、本明細書にさらに説明されるように、酵素として不活性であり、例えば、dCas9である。
【0159】
一部の実施形態では、遺伝子修飾部分は、gRNAに連結したポリペプチド(例えば、ペプチド若しくはタンパク質部分)と、標的化ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、例えば、野生型Cas9、ニッカーゼCas9(例えば、Cas9 D10A)、不活性型Cas9(dCas9)、eSpCas9、Cpf1、C2C1、若しくはC2C3、又はそのようなヌクレアーゼをコードする核酸を含み得る。ヌクレアーゼ及びgRNAの選択は、標的化突然変異が、ヌクレオチドの欠失、置換、又は付加、例えば、標的化配列に対するヌクレオチドの欠失、置換、又は付加であるかどうかによって決定される。(1つ若しくは複数の)エフェクタードメイン(例えば、限定されないが、以下:DNMT3a、DNMT3L、DNMT3b、KRABドメイン、Tet1、p300、VP64及びこれらの融合物を含むエピゲノム編集因子)の全部又は1部分とテザリングした触媒不活性エンドヌクレアーゼ、例えば、不活性型Cas9(dCas9、例えば、D10A;H840A)の融合物は、キメラタンパク質を生成し、このキメラタンパク質は、ポリペプチドに連結されて、1つ若しくは複数のRNA配列(例えば、限定されないが、本明細書に記載されるジンクフィンガーアレイ、sgRNA、TALアレイ、ペプチド核酸をはじめとするDNA認識エレメント)により特定のDNA部位に、提供された組成物を誘導して、1つ若しくは複数の標的核酸配列の活性及び/又は発現を調節する(例えば、DNA配列のメチル化若しくは脱メチル化の目的で)ことができる。
【0160】
本明細書で用いられるとき、「エフェクタードメインの生物活性部分」は、エフェクタードメイン(例えば、「最小」又は「コア」ドメイン)の機能を(例えば、完全に、部分的に、最小限)維持する部分である。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾剤(例えば、DNAメチラーゼ又はDNA脱メチル化に役割を有する酵素、例えば、DNMT3a、DNMT3b、DNMT3L、DNMT阻害剤、それらの組合せ、TETファミリー酵素、タンパク質アセチルトランスフェラーゼ若しくはデアセチラーゼ、dCas9-DNMT3a/3L、dCas9-DNMT3a/3L/KRAB、dCas9/V64)の1つ若しくは複数のエフェクタードメインの全部又は1部分と、dCas9との融合物はキメラタンパク質を生成し、これは、ポリペプチドに連結され、また、本明細書に記載の方法に有用である。こうしたキメラタンパク質を含むエフェクター部分は、遺伝子修飾部分(遺伝子編集システム成分、即ち、Cas9のその使用のために)又はエピジェネティック修飾部分(エピジェネティック修飾剤のエフェクタードメインのその使用のために)と呼ばれる。
【0161】
一部の実施形態では、提供される技術は、標的遺伝子を特異的にターゲティングするgRNAを含むものとして記載される。一部の実施形態では、標的遺伝子は、癌遺伝子、腫瘍抑制因子、又はヌクレオチドリピート病関連遺伝子である。
【0162】
一部の実施形態では、本明細書に提供される技術は、本明細書に記載の1つ若しくは複数の遺伝子修飾部分(例えば、CRISPRシステム成分)を対象、例えば、対象の細胞又は組織の核に、そうした部分を融合分子の一部としてターゲティング部分と連結することにより、送達する方法を含む。
【0163】
エピジェネティック修飾部分
一部の実施形態では、エフェクター部分は、クロマチンの構造を調節するか、又はエピジェネティックマーカ(例えば、DNAメチル化、ヒストンメチル化、ヒストンアセチル化、ヒストンSUMO化、ヒストンリン酸化、及びRNA関連サイレンシングのうちの1つ若しくは複数)を変更するエピジェネティック修飾部分であるか、又はそれを含む。
【0164】
本開示の方法及び組成物で有用なエピジェネティック修飾部分は、例えば、DNAメチル化、ヒストンアセチル化、及びRNA関連サイレンシングに影響を与える物質を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、エピジェネティック酵素(例えば、エピジェネティックマーク、例えば、アセチル化及び/又はメチル化を生成若しくは除去する酵素)の配列特異的ターゲティング(例えば、標的配列に特異的に結合するターゲティング部分を含む調節剤による)を含む。本明細書に記載のゲノム配列エレメントをターゲティングさせることができる例示的なエピジェネティック酵素として、DNAデメチラーゼ(例えば、TETファミリー)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、ヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ(Setdb1)、ユークロマチンヒストン-リシン-N-メチルトランスフェラーゼ2(G9a)、ヒストン-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SUV39H1)、zesteホモログ2のエンハンサー(EZH2)、ウイルスリシンメチルトランスフェラーゼ(vSET)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(SET2)、及びタンパク質-リシンN-メチルトランスフェラーゼ(SMYD2)などが挙げられる。こうしたエピジェネティック修飾剤の例は、例えば、de Groote et al.Nuc.Acids Res.(2012):1-18に記載されている。
【0165】
一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性(例えば、DOT1L、PRDM9、PRMT1、PRMT2、PRMT3、PRMT4、PRMT5、NSD1、NSD2、NSD3、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性(例えば、p300、CREB-結合タンパク質(CBP)、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、DNAデメチラーゼ活性(例えば、TET1、TET2、TET3、若しくはTDG、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、転写活性化因子活性(例えば、VP16、VP64、VP160、VPR、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。
【0166】
一部の実施形態では、本明細書に記載される有用なエピジェネティック修飾部分は、Koferle et al.Genome Medicine 7.59(2015):1-3(例えば、表1)(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている構築物を含む。例えば、一部の実施形態では、発現抑制因子は、Koferle et al.の表1に見出される構築物、例えば、表1に記載のヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、ヒストンメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化、又はH3K4及び/若しくはH3K9ヒストンデメチラーゼ(例えば、dCas9-p300、TALE-TET1)を含むか、又はそうした構築物である。
【0167】
一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、ヒストンデメチラーゼ活性(例えば、KDM1A(即ち、LSD1)、KDM1B(即ち、LSD2)、KDM2A、KDM2B、KDM5A、KDM5B、KDM5C、KDM5D、KDM4B、NO66、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、ヒストンデアセチラーゼ活性(例えば、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11、SIRT1、SIRT2、SIRT3、SIRT4、SIRT5、SIRT6、SIRT7、SIRT8、SIRT9、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、DNAメチルトランスフェラーゼ活性(例えば、MQ1、DNMT1、DNMT3A1、DNMT3A2、DNMT3B1、DNMT3B2、DNMT3B3、DNMT3B4、DNMT3B5、DNMT3B6、DNMT3L、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。一部の実施形態では、エピジェネティック修飾部分は、転写抑制活性(例えば、KRAB、MeCP2、HP1、RBBP4、REST、FOG1、SUZ12、又はそれらいずれかの機能性変異体若しくは断片から選択されるタンパク質)を含む。
【0168】
例示的な調節剤
一部の実施形態では、調節剤は、CRISPR/Cas分子を含むターゲティング部分と、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性、例えば、p300又はその機能性断片若しくは変異体を有するエフェクター部分と、を含む。一部の実施形態では、調節剤は、酵素として不活性のCas9分子(例えば、dCas9)を含むターゲティング部分と、p300又はその機能性断片若しくは変異体を有するエフェクター部分と、を含む。
【0169】
一部の実施形態では、調節剤は、配列番号300の核酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態では、調節剤は、配列番号308の核酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態では、調節剤は、配列番号304のアミノ酸配列又は配列番号300若しくは308のいずれかの核酸配列によりコードされるアミノ酸配列、或いはそれらのいずれか対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
dCas9-p300例示的コード化配列1
【化1】
【化2】
【化3】
dCas9-p300例示的コード化配列2
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0170】
一部の実施形態では、調節剤は、CRISPR/Cas分子を含むターゲティング部分と、転写活性化因子活性、例えば、VP64又はその機能性断片若しくは変異体を有するエフェクター部分と、を含む。一部の実施形態では、調節剤は、酵素として不活性のCas9分子(例えば、dCas9)を含むターゲティング部分と、VP64又はその機能性断片若しくは変異体を有するエフェクター部分と、を含む。
【0171】
一部の実施形態では、調節剤は、配列番号301の核酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態では、調節剤は、配列番号309の核酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態では、調節剤は、配列番号305のアミノ酸配列又は配列番号301若しくは309のいずれかの核酸配列によりコードされるアミノ酸配列、或いはそれらのいずれか対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
dCas9-VPR(VP64-p65-RTA)例示的配列1
【化9】
【化10】
【化11】
dCas9-VPR(VP64-p65-RTA)例示的配列2
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0172】
一部の実施形態では、調節剤は、Znフィンガー分子を含むターゲティング部分と、転写活性化因子活性、例えば、VP64又はその機能性断片若しくは変異体を有するエフェクター部分と、を含む。一部の実施形態では、調節剤は、6、7、8、9、若しくは10(例えば、9)のZnフィンガータンパク質を有するZnフィンガー分子を含むターゲティング部分と、VP64又はその機能性変異体若しくは断片を有するエフェクター部分と、を含む。
【0173】
一部の実施形態では、調節剤は、配列番号302の核酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態では、調節剤は、配列番号306のアミノ酸配列又は配列番号302の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列、或いはそれらのいずれか対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
ZF9-VPR
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0174】
一部の実施形態では、調節剤は、TALエフェクター分子を含むターゲティング部分と、転写活性化因子活性、例えば、VP64又はその機能性断片若しくは変異体を有するエフェクター部分と、を含む。
【0175】
一部の実施形態では、調節剤は、配列番号303の核酸配列、又は前記配列に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する配列によりコードされる。一部の実施形態では、調節剤は、配列番号307のアミノ酸配列、配列番号303の核酸配列によりコードされるアミノ酸配列、又はそれらのいずれか対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
TAL-VPR
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0176】
融合分子
一部の実施形態では、調節剤は、融合分子、例えば、2つ以上の部分を含む融合分子などであるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、融合分子は、本明細書に記載される1つ若しくは複数の部分、例えば、ターゲティング部分及び/又はエフェクター部分を含む。一部の実施形態では、融合分子は、互いに共有結合される1つ若しくは複数の部分を含む。一部の実施形態では、融合分子の1つ若しくは複数の部分は、単一のポリペプチド鎖上に位置し、例えば、1つ若しくは複数の部分のポリペプチド部分が、単一のポリペプチド鎖上に位置する。
【0177】
一部の実施形態では、例えば、融合分子は(例えば、エフェクター及び/又はターゲティング部分の一部として)、dCas9-DNMT(例えば、同じポリペプチド鎖の一部として、順序とは関係なく、dCas9及びDNMTを含む)、dCas9-p300、dCas9-VP64、dCas9-VPR、dCas9-DNMT-3a-3L、dCas9-DNMT-3a-3a、dCas9-DNMT-3a-3L-3a、dCas9-DNMT-3a-3L-KRAB、dCas9-KRAB、dCas9-APOBEC、APOBEC-dCas9、dCas9-APOBEC-UGI、dCas9-UGI、UGI-dCas9-APOBEC、UGI-APOBEC-dCas9、dCas9-VP64-RelA、dCas9-VPR-RelA、dCas9-VP64-p65、dCas9-VPR-p65、dCas9-VP64-RelA-p65、dCas9-VPR-RelA-p65、ZFM-VP64-RelA(ZFMは、Znフィンガー分子を表す)、ZFM-VPR-RelA、ZFM-VP64-p65、ZFM-VPR-p65、ZFM-VP64-RelA-p65、ZFM-VPR-RelA-p65、TEM-VP64-RelA(TEMは、Talエフェクター分子を表す)、TEM-VPR-RelA、TEM-VP64-p65、TEM-VPR-p65、TEM-VP64-RelA-p65、TEM-VPR-RelA-p65、又は本明細書に記載のタンパク質融合物の任意の変種、又は本明細書に記載のタンパク質若しくはタンパク質ドメインの他の融合物を含み得る。
【0178】
本開示により提供される方法及び組成物に適応可能な例示的dCas9融合方法及び組成物は、公知であり、例えば、Kearns et al.,Functional annotation of native enhancers with a Cas9-histone demethylase fusion.Nature Methods 12,401-403(2015);並びにMcDonald et al.,Reprogrammable CRISPR/Cas9-based system for inducing site-specific DNA methylation.Biology Open 2016:doi:10.1242/bio.019067に記載されている。当技術分野で公知の方法を用いて、dCas9を、本明細書に記載される様々な薬剤及び/又は分子のいずれかと融合させることができ;そのようにして得られた融合分子は、開示される方法において有用となり得る。
【0179】
一部の実施形態では、融合分子は、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートであるか、又はそれを含み得る。ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、ペプチド部分に共有結合した核酸部分を含むキメラ分子(例えば、ペプチド/核酸ミックスマー(mixmer))を包含する。一部の実施形態では、ペプチド部分は、本明細書に記載される任意のペプチド又はタンパク質を含み得る。一部の実施形態では、核酸部分は、本明細書に記載される任意の核酸又はオリゴヌクレオチド、例えば、DNA若しくはRNA又は修飾DNA若しくはRNAを含み得る。
【0180】
一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、ペプチドアンチセンスオリゴヌクレオチドコンジュゲートを含む。一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、化学修飾骨格を有する合成オリゴヌクレオチドである。ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、配列特異的な様式で、DNA及びRNA標的の両方に結合して、デュプレックス構造を形成することができる。二本鎖DNA(dsDNA)標的に結合すると、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、鎖侵入によりデュプレックス内の1つのDNA鎖を置換して、トリプレックス構造を形成し、置換されたDNA鎖は、一本鎖D-ループとして存在し得る。
【0181】
一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、細胞及び/又は組織特異的であり得る。一部の実施形態では、こうしたコンジュゲートを、オリゴ、ペプチド、及び/又はタンパク質と直接共役させてもよい。
【0182】
一部の実施形態では、ペプチドオリゴヌクレオチドコンジュゲートは、膜転移ポリペプチド、例えば、本明細書の他所に記載される膜転移ポリペプチドを含む。
【0183】
いくつかのペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの固相合成は、例えば、Williams、et al.,2010,Curr.Protoc.Nucleic Acid Chem.,Chapter Unit 4.41に記載されている。非常に短いペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの合成及び特性決定、並びに新たな固体支持体上でのペプチド-オリゴヌクレオチドコンジュゲートの段階的な固相合成は、例えば、Bongardt,et al.,Innovation Perspect.Solid Phase Synth.Comb.Libr.,Collect.Pap.,Int.Symp.,5th,1999,267-270;Antopolsky,et al.,Helv.Chim.Acta,1999,82,2130-2140に記載されている。
【0184】
一部の実施形態では、提供される組成物は、本明細書に記載される融合分子を含む医薬組成物である。
【0185】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される融合分子を含む細胞又は組織を提供する。
【0186】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される融合分子を含む医薬組成物を提供する。
【0187】
リンカー
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、1つ又は複数のリンカーを含み得る。一部の実施形態では、第1部分と第2部分を含む調節剤、例えば、融合分子は、第1部分と第2部分との間に、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分との間にリンカーを有する。リンカーは、化学結合、例えば、1つ若しくは複数の共有結合又は非共有結合であってもよい。一部の実施形態では、リンカーは、共有結合である。一部の実施形態では、リンカーは、非共有結合である。一部の実施形態では、リンカーは、ペプチドリンカーである。こうしたリンカーは、2~30、5~30、10~30、15~30、20~30、25~30、2~25、5~25、10~25、15~25、20~25、2~20、5~20、10~20、15~20、2~15、5~15、10~15、2~10、5~10、若しくは2~5アミノ酸長、又は2、5、10、15、20、25、若しくは30アミノ酸長以上(及び任意選択的に、最大50、40、30、25、20、15、10、若しくは5アミノ酸長)であり得る。一部の実施形態では、リンカーを用いて、第1部分と第2部分の、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分の間に間隔をあけることができる。一部の実施形態では、例えば、二次及び三次構造の分子柔軟性を賦与するために、例えば、ターゲティング部分とエフェクター部分の間にリンカーを配置することができる。リンカーは、本明細書に記載のフレキシブル、リジッド、及び/又は切断可能リンカーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、柔軟性をもたらすため、リンカーは、少なくとも1つのグリシン、アラニン、及びセリンアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば負に帯電したスルホン酸基、ポリエチレングリコール(PEG)基、又はピロリン酸ジエステル基を含む、疎水性リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、ある部分(例えばポリペプチド)を調節剤から選択的に放出するために切断可能であるが、未成熟切断を阻止するために十分に安定である。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書に記載の調節剤の1つ若しくは複数の部分は、1つ又は複数のリンカーと連結している。
【0189】
当業者には周知であるように、一般に使用される柔軟なリンカーは、主としてGly及びSer残基の区間から構成される配列(「GS」リンカー)を有する。フレキシブルリンカーは、ある程度の運動又は相互作用を必要とするドメインを連結するのに有用であってもよく、小さい非極性(例えばGly)又は極性(例えば、Ser又はThr)アミノ酸を含んでもよい。さらに、Ser又はThrを包含することで、水分子と水素結合を形成することにより、水溶液中でのリンカーの安定性が維持され得、ひいてはリンカーとタンパク質部分との間の好ましくない相互作用が低減され得る。
【0190】
リジッドリンカーは、ドメイン間の固定距離を保持し、それらの独立した機能を維持するために有用である。リジッドリンカーはまた、融合における1以上の成分の安定性又は生物活性を保存するのにドメインの空間的分離がクリティカルであるとき、有用であってもよい。リジッドリンカーは、αヘリックス構造又はProリッチ配列(XP)n(ここでXは、任意のアミノ酸、好ましくはAla、Lys、又はGluを指す)を有してもよい。
【0191】
切断可能リンカーは、遊離機能ドメインをインビボで放出してもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、還元試薬又はプロテアーゼの存在などの特定条件下で切断されてもよい。インビボでの切断可能リンカーでは、ジスルフィド結合の可逆性が利用されてもよい。一例として、2つのCys残基間のトロンビン感受性配列(例えばPRS)が挙げられる。CPRSCのインビトロでのトロンビン処理により、トロンビン感受性配列の切断がもたらされる一方で、可逆的ジスルフィド結合は、未変化のままである。かかるリンカーは、公知であり、例えば、Chen et al.2013.Fusion Protein Linkers:Property,Design and Functionality.Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369に記載されている。融合中でのリンカーのインビボ切断はまた、特定の細胞若しくは組織内、特定条件下、インビボで発現される、又は特定の細胞区画内に制限されるプロテアーゼにより実施されてもよい。多数のプロテアーゼの特異性により、制限された区画内でのリンカーのより緩徐な切断がもたらされる。
【0192】
連結分子の例として、疎水性リンカー、例えば負に帯電したスルホン酸基;脂質、例えばポリ(--CH2--)炭化水素鎖、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)基、その不飽和変異体、そのヒドロキシル化変異体、そのアミド化若しくはそれ以外のN含有変異体、非炭素リンカー;炭水化物リンカー;リン酸ジエステルリンカー、又は調節剤の2以上の成分(例えば2つのポリペプチド)に共有結合する能力がある他の分子が挙げられる。非共有結合リンカーも含まれ、例えばポリペプチドの疎水性領域又はポリペプチドの疎水性延長部、例えばロイシン、イソロイシン、バリン、又はおそらくはさらにアラニン、フェニルアラニン、又はさらにチロシン、メチオニン、グリシン又は他の疎水性残基が豊富に存在する一連の残基を通じてポリペプチドが連結される疎水性脂質小球などが挙げられる。調節剤の成分が電荷に基づく化学を用いて連結されてもよいことで、調節剤の正に帯電した成分が負に帯電した別の成分又は核酸に連結される。
【0193】
一部の実施形態では、調節剤、例えば、融合分子は、投与(例えば、対象への)後に、他のポリペプチド、本明細書に記載される別の部分、例えば、エフェクター分子、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド若しくは他の分子、又は他の薬剤、例えば、細胞内分子との連結を、例えば共有結合若しくは非共有結合を介して形成する能力を有する。一部の実施形態では、調節剤のポリペプチド上の1つ若しくは複数のアミノ酸は、例えば、グアノシンとのプソイド対合を形成するアルギニン、又はヌクレオチド管リン酸結合若しくはポリマー間結合などにより、核酸と連結することができる。一部の実施形態では、核酸は、ゲノムDNAなどのDNA、tRNA若しくはmRNA分子などのRNAである。一部の実施形態では、ポリペプチド上の1つ若しくは複数のアミノ酸は、タンパク質又はペプチドと連結することができる。
【0194】
一部の実施形態では、2つ以上の実体は、それらが直接若しくは間接的に相互作用して、それらが互いに物理的に近接している、及び/又は物理的に近接したままであれば、物理的に「結合」している。一部の実施形態では、互いに物理的に結合している2つ以上の実体は、互いに共有結合しており;一部の実施形態では、互いに物理的に結合している2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、及びそれらの組合せによって非共有結合している。
【0195】
ゲノム複合体の調節
一部の実施形態では、調節剤は、標的遺伝子(例えば、FXN)に関連するゲノム複合体(例えば、ASMC)の1つ若しくは複数の態様を調節(例えば、促進又は妨害)する。一部の実施形態では、調節は、ゲノム複合体(例えば、ASMC)のトポロジー構造の調節であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、ゲノム複合体のトポロジー構造の調節によって、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現が変更(例えば、増大)される。一部の実施形態では、トポロジー構造の検出可能な調節は観察されないが、それでも尚、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現の変更は観察される。一部の実施形態では、調節は、ゲノム複合体(例えば、ASMC)の1成分、例えば、ゲノム配列エレメントに対する結合であるか、又はそれを含む。結合によって上記成分の隔離が起こり得るが、それにより、例えば、標的遺伝子(例えば、FXN)において、ゲノム複合体(例えば、ASMC)のレベル又は占有が変更される。
【0196】
当業者は、特定の事例において、2つ以上の複合体(例えば、ASMC)が、特定のゲノム領域又は特定のゲノム位置(例えば、FXN遺伝子、若しくはそれと作動可能に連結した発現制御配列)に関して、互いに競合し得ることを理解されよう。一部の実施形態では、1つの(「第1」)ゲノム複合体(例えば、ASMC)の妨害は、特定のゲノム領域又は位置に対して利用可能な代替(第1ゲノム複合体に関して)構造を提示する1つ若しくは複数の他のゲノム複合体(例えば、ASMC)の安定化により達成され得る。一部の実施形態では、1つの(「第1」)ゲノム複合体(例えば、ASMC)の安定化は、特定のゲノム領域又は位置に対して利用可能な代替(第1ゲノム複合体に関して)構造を提示する1つ若しくは複数の他のゲノム複合体(例えば、ASMC)の妨害により達成され得る。従って、一部の実施形態では、目的のゲノム複合体(例えば、ASMC)の妨害又は安定化は、それぞれ安定化又は妨害のために、1つ若しくは複数のゲノム複合体をターゲティングする(任意選択的に、目的のゲノム複合体(例えば、ASMC)を妨害又は安定化する調節剤をさらに用意することなく)ことにより達成され得る。
【0197】
調節剤は、ゲノム複合体(例えば、ASMC)のその標的成分に結合して、ゲノム複合体の形成を変更し得る(例えば、1つ又は複数の他の複合体成分に対する標的化成分の親和性を、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上変更することにより)。これに代わり、又は加えて、一部の実施形態では、調節剤による結合は、ゲノム複合体により影響を及ぼされるゲノムDNAのトポロジーを、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上変更する。一部の実施形態では、調節剤は、標的化ゲノム複合体(例えば、ASMC)に関連する遺伝子の発現を、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上変更する。ゲノム複合体の形成の変化、他の複合体成分に対する標的化成分の親和性、及び/又はゲノム複合体により影響を及ぼされるゲノムDNAのトポロジーの変化は、例えば、HiChIP、ChIAPET、4C、又は3C、例えば、HiChIPにより評価され得る。
【0198】
本明細書に記載される調節剤は、ターゲティング部分を含む。一部の実施形態では、ターゲティング部分は、標的ゲノム複合体(例えば、ASMC)成分(例えば、ゲノム配列エレメント)に結合する。一部の実施形態では、ターゲティング部分とその標的化成分同士の相互作用により、そうでなければ上記標的化成分が達成したであろう1つ又は複数の他の相互作用に干渉する。一部の実施形態では、調節剤は、例えば、ターゲティング部分とその標的ゲノム複合体成分の結合を介して、ゲノム複合体(例えば、ASMC)の形成及び/又は維持に物理的に干渉する。一部の実施形態では、そうでなければ上記標的化成分が達成したであろう1つ又は複数の他の相互作用は、ゲノム複合体(例えば、ASMC)のポリペプチド成分、又は転写機構(例えば、転写活性化タンパク質若しくは転写抑制タンパク質)に対するものである。
【0199】
一部の実施形態では、調節剤は、複合体特異的である。即ち、一部の実施形態では、ターゲティング部分は、1つ若しくは複数の標的ゲノム複合体中(例えば、1細胞内)のその標的成分、例えば、ゲノム配列エレメントに特異的に結合するが、非標的化ゲノム複合体(例えば、同じ細胞内の)には結合しない。一部の実施形態では、調節剤は、特定の細胞型にのみ、且つ/又は特定の発生段階若しくは時期にのみ存在するゲノム複合体を特異的にターゲティングする。一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列エレメントに関連するか、若しくはそれを含むゲノム複合体(例えば、ASMC)の標的成分に対する調節剤の結合は、ゲノム複合体のポリペプチド成分と、作動可能に連結したゲノム配列エレメント同士の会合の頻度及び/又は持続期間の変化(例えば、低減)を含む。
【0200】
核形成ポリペプチド
一部の実施形態では、ターゲティング部分とその標的化成分同士の相互作用、又はエフェクター部分の機能は、そうでなければ標的化成分がゲノム複合体(例えば、ASMC)のポリペプチド成分と達成したであろう1つ若しくは複数の他の相互作用に干渉する。一部の実施形態では、ポリペプチド成分は、核形成ポリペプチドであるか、又はそれを含む。核形成ポリペプチドは、アンカー配列媒介接合部の形成を促進し得る。本明細書に記載の調節剤によりターゲティングされ得る核形成ポリペプチドとしては、例えば、特定のゲノム配列エレメントとの結合が、本明細書に記載のゲノム複合体(例えば、ASMC)の形成を開始し得るアンカー配列、若しくは他のタンパク質(例えば、転写因子)に特異的に結合するタンパク質(例えば、CTCF、USF1、YY1、TAF3、ZNF143など)が挙げられる。一部の実施形態では、調節剤は、核形成ポリペプチドが標的ゲノム複合体(例えば、ASMC)内で結合し得る1つ若しくは複数のアンカー配列又はゲノム配列エレメントをターゲティングすることができる。一部の実施形態では、調節剤は、核形成ポリペプチドをターゲティング(例えば、それに結合)することができる。
【0201】
核形成ポリペプチドは、例えば、CTCF、コヒーシン、USF1、YY1、TATAボックス結合タンパク質関連因子3(TAF3)、ZNF143結合モチーフ、又はアンカー配列媒介接合部の形成を促進する別のポリペプチドであってもよい。核形成ポリペプチドは、内因性ポリペプチド又は他のタンパク質、例えば、転写因子、例えば、自己免疫調節因子(AIRE)、別の因子、例えば、X-不活性化特異的転写物(XIST)、又は目的とする特定のDNA配列を認識するように操作された操作ポリペプチド(例えば、配列認識用のジンクフィンガー、ロイシンジッパー若しくはbHLHドメインを有する)であってもよい。核形成ポリペプチドは、アンカー配列媒介接合部内又はその周辺のDNA相互作用を調節し得る。例えば、核形成ポリペプチドは、アンカー配列媒介接合部形成の変更(例えば、妨害)が起こるように、アンカー配列に他の因子を動員することができる。
【0202】
核形成ポリペプチドはさらに、ホモ又はヘテロ二量体化のための二量体化ドメインを有し得る。1つ又は複数の核形成ポリペプチド(例えば、内因性及び操作された)は、相互作用して、アンカー配列媒介接合部を形成し得る。一部の実施形態では、調節剤は、この相互作用に干渉する(例えば、直接若しくは間接的に)ことにより、標的ゲノム複合体(例えば、ASMC)を妨害する。一部の実施形態では、安定化ドメイン、例えば、コヒーシン相互作用ドメインをさらに含むように、核形成ポリペプチドを操作して、アンカー配列媒介接合部を安定化する。一部の実施形態では、標的配列と結合するように、核形成ポリペプチドを操作し、例えば、標的配列結合親和性を調節する。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部内のアンカー配列に対して選択された結合親和性を有する核形成ポリペプチドを選択するか、又は操作する。
【0203】
CTCFの非存在下で、トポロジー的に関連するドメイン、例えば、遠位DNA領域又は遺伝子座同士のトポロジー的相互作用を調べるために、CTCF中に不活性化突然変異を保有する細胞、並びに染色体立体配座キャプチャー若しくは3Cベースの方法、例えば、Hi-C若しくはハイスループットシーケンシングの使用により、核形成ポリペプチド及びその対応するアンカー配列を見出すことができる。また、長期にわたるDNA相互作用を明らかにすることもできる。追加の解析としては、ベイト、例えば、コヒーシン、YY1若しくはUSF1、ZNF143結合モチーフ、及びMSを用いて、ベイトに関連する複合体を見出すChIA-PET解析を挙げることができる。
【0204】
一部の実施形態では、核形成ポリペプチドは、参照値、例えば、変更が存在しない場合でのアンカー配列の結合親和性より高い、又は低いアンカー配列に対する結合親和性を有する。一部の実施形態では、核形成ポリペプチドは、アンカー配列媒介接合部とその相互作用、例えば、アンカー配列媒介接合部内のアンカー配列に対するその結合親和性を変更(例えば、妨害)するように調節される。
【0205】
転写機構
一部の実施形態では、ターゲティング部分とその標的化成分同士の相互作用、又はエフェクター部分の機能は、そうでなければ標的化成分が細胞の転写機構の成分と達成したであろう1つ若しくは複数の他の相互作用に干渉する。当業者は、特定の遺伝子(例えば、タンパク質コード遺伝子)の転写に関与する転写機構の一部として参加するタンパク質を熟知している。例えば、RNAポリメラーゼ(例えば、RNAポリメラーゼII)、TFIIA、TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIF、及びTFIIHなどの基本転写因子、メディエータ、特定の伸長因子など。
【0206】
一部の実施形態では、ターゲティング部分とその標的化成分同士の相互作用、又はエフェクター部分の機能は、標的化成分(例えば、ゲノム配列エレメント、例えば、標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列)及び/又は標的遺伝子(例えば、FXN)と細胞の転写機構の成分との相互作用を促進する。当業者は、特定の遺伝子(例えば、タンパク質コード遺伝子)の転写に関与する転写機構の一部として参加するタンパク質を熟知している。例えば、RNAポリメラーゼ(例えば、RNAポリメラーゼII)、TFIIA、TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIF、及びTFIIHなどの基本転写因子、メディエータ、特定の伸長因子など。
【0207】
転写調節因子
一部の実施形態では、調節剤は、転写調節タンパク質と、標的遺伝子(例えば、FXN)及び/又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列エレメント(例えば、ターゲティング部分の標的成分)との相互作用を変更する。一部の実施形態では、調節剤は、転写調節タンパク質と、標的遺伝子(例えば、FXN)及び/又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列エレメント(例えば、ターゲティング部分の標的成分)との相互作用を促進する。一部の実施形態では、調節剤は、例えば、転写調節タンパク質が、標的遺伝子(若しくはそれと作動可能に連結したゲノム配列エレメント)を含むか、又はそれと結合したゲノム複合体(例えば、ASMC)の1つ若しくは複数の他の成分と相互作用するのを阻止することにより、転写調節タンパク質と、標的遺伝子(例えば、FXN)及び/又は標的遺伝子と作動可能に連結したゲノム配列エレメント(例えば、ターゲティング部分の標的成分)との相互作用に干渉(例えば、それを阻害)する。
【0208】
当業者は、非常に多様な転写調節タンパク質を認識しており、その多くは、DNA結合タンパク質(例えば、ヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフ、ETS、フォークヘッド、ロイシンジッパー、Pit-Oct-Uncドメイン、及び/又はジンクフィンガーなどのDNA結合ドメインを含有する)であり、その多くは、メディエータとの相互作用によってコア転写機構と相互作用する。一部の実施形態では、転写調節タンパク質は、活性化因子(例えば、エンハンサーに結合し得る)であるか、又はそれを含み得る。一部の実施形態では、転写調節タンパク質は、リプレッサー(例えば、サイレンサーに結合し得る)であるか、又はそれを含み得る。
【0209】
アンカー配列媒介接合部(ASMC)
一部の実施形態では、本開示の調節剤により調節されるゲノム複合体は、アンカー配列媒介接合部(ASMC)であるか、又はそれを含む。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、核形成ポリペプチドが、ゲノム内のアンカー配列に結合すると形成され、これらのタンパク質、並びに任意選択的に、1つ若しくは複数の他の成分(例えば、ポリペプチド成分及び/又は非ゲノム核酸成分)同士及びそれらの間の相互作用によって、接合部が形成され、そこにアンカー配列が物理的に共局在化される。一部の実施形態では、1つ又は複数の遺伝子(例えば、標的遺伝子、例えば、FXN)は、アンカー配列媒介接合部と結合している。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、1つ若しくは複数のアンカー配列、1つ若しくは複数の遺伝子、及び1つ若しくは複数の発現制御配列、例えば、増強若しくはサイレンシング配列を含む。一部の実施形態では、発現制御配列は、アンカー配列媒介接合部内部にあるか、一部が内部にあるか、又はその外部にある。
【0210】
一部の実施形態では、ゲノム複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)は、第1アンカー配列、核酸配列(例えば、遺伝子)、発現制御配列、及び第2アンカー配列を含む。一部の実施形態では、ゲノム複合体(例えば、ASMC)は、順に:第1アンカー配列、発現制御配列、及び第2アンカー配列;又は第1アンカー配列、核酸配列(例えば、遺伝子)、及び第2アンカー配列を含む。一部の実施形態では、核酸配列(例えば、遺伝子)と発現制御配列のいずれか一方又はその両方が、ゲノム複合体(例えば、ASMC)の内部又は外部に位置する。発現制御配列。一部の実施形態では、ゲノム複合体(例えば、アンカー配列媒介接合部)は、TATAボックス、CAATボックス、GCボックス、又はCAP部位を含む。
【0211】
一部の実施形態では、ゲノム複合体(例えば、ASMC)は、(i)その発現が、ゲノム複合体の形成若しくは妨害により調節(例えば、低減若しくは増大)される遺伝子;及び/又は(ii)上記遺伝子と作動可能に連結した1つ若しくは複数の発現制御配列の外部にあるか、その一部ではないか、その内部に含まれないか、又はそれと非連続的である2つのゲノム配列エレメント(例えば、アンカー配列)を共局在化する。
【0212】
一部の実施形態では、ゲノム複合体(例えば、ASMC)は、(i)その発現が、ゲノム複合体の形成若しくは妨害により調節(例えば、低減若しくは増大)される遺伝子;及び/又は(ii)上記遺伝子と作動可能に連結した1つ若しくは複数の発現制御配列の内部にあるか、その一部がその内部にあるか、又はそれと連続的である2つのゲノム配列エレメントを共局在化する。
【0213】
発現制御配列。一部の実施形態では、調節剤は、ASMCと結合した標的遺伝子の転写を調節することができる。例えば、一部の実施形態では、標的遺伝子の転写は、活性化ASMCへのその包含又は抑制性ASMCからの排除により、活性化され;一部の実施形態では、調節剤は、標的遺伝子が活性化ASMCに含まれるか、又は抑制性ASMCから排除されるようにする。一部の実施形態では、ASMCが、調節の前に発現制御配列を含有していなかった場合、調節剤は、アンカー配列媒介接合部に、核酸配列(例えば、遺伝子)の転写を増大する発現制御配列を含有させることができる。一部の実施形態では、ASMCが、調節の前に発現制御配列を含有していた場合、調節剤は、アンカー配列媒介接合部に、核酸配列(例えば、遺伝子)の転写を低減する発現制御配列を排除させることができる。
【0214】
一部の実施形態では、標的遺伝子の転写は、抑制性ASMC中へのその含有、又は活性化ASMCからの排除により抑制される。一部のそのような実施形態では、調節剤は、標的遺伝子を活性化ASMCから排除させるか、又は抑制性ASMC中に含有させる。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、核酸配列(例えば、遺伝子)の転写を低減する発現制御配列を含む。一部の実施形態では、アンカー配列媒介接合部は、核酸配列(例えば、遺伝子)の転写を増大する発現制御配列を排除する。
【0215】
「活性化ASMC」とは、活性遺伝子転写に対して開かれたASMC、例えば、作動可能に連結した核酸配列(例えば、遺伝子)の転写を増強する発現制御配列(例えば、プロモータ又はエンハンサー)を含むASMCのことである。「抑制性ASMC」とは、活性遺伝子転写から遮られたASMC、例えば、作動可能に連結した核酸配列(例えば、遺伝子)の転写を抑制する発現制御配列(例えば、リプレッサー配列)を含むASMCのことである。一部の実施形態では、ASMC(例えば、活性化ASMC)は、遺伝子と、作動可能に連結したエンハンサーとを含み、上記遺伝子は、活発に発現される。一部の実施形態では、ASMC(例えば、活性化ASMC)は、遺伝子を含み、リプレッサー配列はASMCの外部に位置しており、この場合、上記遺伝子は、活発に発現される。一部の実施形態では、ASMC(例えば、抑制性ASMC)は、遺伝子と、ASMC内に位置する作動可能に連結したリプレッサー配列とを含み、上記遺伝子は、活発に発現されない。一部の実施形態では、ASMC(例えば、抑制性ASMC)は、遺伝子を含み、エンハンサーはASMCの外部に位置しており、この場合、上記遺伝子は、活発に発現されない。一部の実施形態では、ASMC(例えば、活性化ASMC)は、遺伝子と、作動可能に連結したエンハンサーとを含み、この場合、リプレッサーはASMCの外部に位置しており、遺伝子は、活発に発現される。一部の実施形態では、ASMC(例えば、抑制性ASMC)は、遺伝子と、作動可能に連結したリプレッサー配列とを含み、この場合、エンハンサーは、ASMCの外部に位置しており、遺伝子は、活発に発現されない。
【0216】
一部の実施形態では、標的遺伝子は、1つ又は複数の発現制御配列と不連続である。遺伝子が、その発現制御配列と不連続であるいくつかの実施形態では、遺伝子は、1つ若しくは複数の発現制御配列から約100bp~約500Mb、約500bp~約200Mb、約1kb~約100Mb、約25kb~約50Mb、約50kb~約1Mb、約100kb~約750kb、約150kb~約500kb、又は約175kb~約500kbの間隔を有し得る。一部の実施形態では、遺伝子は、発現制御配列から約100bp、300bp、500bp、600bp、700bp、800bp、900bp、1kb、5kb、10kb、15kb、20kb、25kb、30kb、35kb、40kb、45kb、50kb、55kb、60kb、65kb、70kb、75kb、80kb、85kb、90kb、95kb、100kb、125kb、150kb、175kb、200kb、225kb、250kb、275kb、300kb、350kb、400kb、500kb、600kb、700kb、800kb、900kb、1Mb、2Mb、3Mb、4Mb、5Mb、6Mb、7Mb、8Mb、9Mb、10Mb、15Mb、20Mb、25Mb、50Mb、75Mb、100Mb、200Mb、300Mb、400Mb、500Mb、又はそれらの間の任意のサイズの間隔を有する。
【0217】
理論に束縛されることは望まないが、一部の実施形態では、ASMCが特定のタイプのアンカー配列媒介接合部であるか、又はそれに対応するか否かを理解(例えば、同定若しくは分類)することは、ASMCを変更する、例えば、DNA結合部分又はエフェクター部分の選択に影響を与えることによって遺伝子発現を調節する方法を決定する上で役立ち得ると考えられる。例えば、一部の実施形態では、いくつかのタイプのアンカー配列媒介接合部は、アンカー配列媒介接合部内に1つ又は複数の発現制御配列(例えば、エンハンサー)を含む。ASMCを含むゲノム複合体の調節及び/又はゲノム複合体内のASMCの存在の調節、例えば、1つ若しくは複数のアンカー配列の変更(そのような変更によってASMCの妨害が起こる)による、こうしたASMCの調節(例えば、妨害)は、ゲノム複合体及び/又はASMC内の標的遺伝子の転写を低減する可能性がある。一部の実施形態では、抑制性ASMC、又は上記ASMCを含むゲノム複合体の調節(例えば、妨害)によって、遺伝子発現の増大が起こる。一部の実施形態では、活性化ASMC、又は上記ASMCを含むゲノム複合体の調節(例えば、妨害)によって、遺伝子発現の低減が起こる。
【0218】
組成物:製造、製剤化、送達、及び投与方法
本開示は、中でも、本明細書に記載の調節剤を含む組成物、並びに/又は調節剤を細胞、組織、器官、及び/若しくは対象に送達する組成物を提供する。一部の実施形態では、ポリペプチド(例えば、ポリペプチドであるか、又はそれを含有する部分)を含む調節剤は、ポリペプチドとして調節剤のポリペプチド若しくはポリペプチド部分を含む組成物を介して、或いは、調節剤又はそのポリペプチド部分をコードする核酸を含み、且つ目的のシステム(例えば、特定の細胞、組織、器官など)において調節剤又はそのポリペプチド部分の発現を達成するのに十分な他の配列と結合した組成物を介して、提供され得る。
【0219】
一部の実施形態では、提供される組成物は、その活性成分が、本明細書に記載される調節剤を含むか、又はそれを送達する医薬組成物であってもよく、これは、1つ若しくは複数の薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせて提供され、任意選択的に、対象(例えば、細胞、組織、若しくはそれらの他の部位)への投与のために製剤化される。
【0220】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、治療薬の送達方法を提供し、ここで、ゲノム複合体調節剤は、治療薬であり、且つ/又は治療薬の送達は、治療薬が存在しない場合の遺伝子発現に比して遺伝子発現を変化させるために、完全性指数により特徴付けられるゲノム複合体(例えば、ASMC)をターゲティングする。
【0221】
いくつかの態様では、医薬用途のためのシステムは、ゲノム複合体を妨害することによって、完全性指数により特徴付けられるゲノム複合体をターゲティングする組成物を含む。一部の実施形態では、組成物は、ゲノム複合体内のアンカー配列に結合して、アンカー配列媒介接合部の形成を変更することにより、ゲノム複合体をターゲティングし、ここで、こうした組成物は、アンカー配列媒介接合部と関連する標的遺伝子のヒト細胞における転写を調節する。
【0222】
従って、一部の実施形態では、本開示は、調節剤(例えば、妨害剤)、又はその生成中間体を含む組成物を提供する。いくつかの具体的な実施形態では、本開示は、調節剤(例えば、妨害剤)又はそのポリペプチド部分をコードする核酸の組成物を提供する。いくつかのそうした実施形態では、提供される核酸は、DNA、RNA、又は本明細書に記載されるいずれか他の核酸部分若しくは実体であるか、又はそれを含んでよく、本明細書に記載されるか、又はそうでなければ、当技術分野で利用可能な任意の技術(例えば、合成、クローニング、増幅、インビトロ若しくはインビボ転写など)により調製され得る。一部の実施形態では、調節剤(例えば、妨害剤)又はそのポリペプチド部分をコードする、提供される核酸は、目的のシステム、例えば、特定の細胞、組織、生物など)において提供される核酸の組込み、複製、及び/又は発現を達成するのに適した及び/又は十分な1つ若しくは複数の複製、組込み、及び/又は発現シグナルと作動可能に結合されていてもよい。
【0223】
一部の実施形態では、調節剤(例えば、妨害剤)は、ベクター、例えば、ウイルスベクターであるか、又はそれを含み、それは、本明細書に記載の調節剤(例えば、妨害剤)の1つ若しくは複数の成分をコードする1つ若しくは複数の核酸を含む。
【0224】
生成
本明細書に記載のような核酸又は本明細書に記載のタンパク質をコードする核酸は、ベクター中に組み込まれてもよい。ベクター、例えばレンチウイルスなどのレトロウイルス由来のものは、導入遺伝子の長期の安定な組込み及び娘細胞におけるその増殖を可能にすることから、長期遺伝子導入を達成するために好適なツールである。ベクターの例として、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、種々のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに説明されている。ベクターとして有用であるウイルスとして、限定はされないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられる。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモータ配列、便宜的な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1以上の選択可能マーカーを有する。
【0225】
天然又は合成核酸の発現は、典型的には目的の遺伝子をコードする核酸をプロモータに作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことにより達成される。ベクターは、真核生物における複製及び組み込みに適し得る。典型的なクローニングベクターは、所望される核酸配列の発現にとって有用な転写及び翻訳ターミネーター、開始配列、並びにプロモータを有する。
【0226】
追加的なプロモータ領域、例えば増強配列は、転写開始の頻度を調節してもよい。典型的には、これらの配列は転写開始部位の30~110bp上流の領域内に位置するが、近年、いくつかのプロモータが同様に転写開始部位の下流に機能的要素を有することが示されている。プロモータ領域間のスペーシングはフレキシブルであることが多いことから、プロモータ機能は、領域が互いに対して反転又は移動されるとき、保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモータでは、プロモータ領域間のスペーシングは、活性が低下し始める前に50bp離れるまで増加し得る。プロモータに応じて、転写を活性化するため、各領域が協同的又は非依存的に機能し得るように思われる。
【0227】
好適なプロモータの一例が、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列である。このプロモータ配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の発現を高レベルで駆動する能力がある強力な構成的プロモータ配列である。いくつかの実施形態では、好適なプロモータが伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかし、他の構成的プロモータ配列、例えば限定はされないが、サルウイルス40(SV40)初期プロモータ、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端リピート(LTR)プロモータ、MoMuLVプロモータ、トリ白血病ウイルスプロモータ、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータ、並びにヒト遺伝子プロモータ、例えば限定はされないが、アクチンプロモータ、ミオシンプロモータ、ヘモグロビンプロモータ、及びクレアチンキナーゼプロモータも使用されてもよい。
【0228】
本開示は、任意の特定のプロモータ又はプロモータのカテゴリー(例えば構成的プロモータ)の使用に限定されるように解釈されるべきではない。例えば、いくつかの実施形態では、誘導性プロモータが本開示の一部として検討される。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータの使用により、それが作動可能に連結される対象のポリヌクレオチド配列の発現を、かかる発現が所望されるときに活性化する能力がある分子スイッチが提供される。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータの使用により、発現を、所望されないときに不活性化する能力がある分子スイッチが提供される。誘導性プロモータの例として、限定はされないが、メタロチオニンプロモータ、グルココルチコイドプロモータ、プロゲステロンプロモータ、及びテトラサイクリンプロモータが挙げられる。
【0229】
いくつかの実施形態では、導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクト又は感染されることが探求された細胞の集団から細胞を発現する同定及び選択を促進するため、選択可能マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか又は双方を有し得る。いくつかの態様では、選択可能マーカーは、DNAの分離片に対して実施され、同時トランスフェクション法において使用されてもよい。宿主細胞内での発現を可能にするため、選択可能マーカーとレポーター遺伝子の双方は、適切な発現調節配列と隣接されてもよい。有用な選択可能マーカーは、例えば抗生物質耐性遺伝子、例えばneoなどを含んでもよい。
【0230】
いくつかの実施形態では、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定するため、且つ/又は発現調節配列の機能性を評価するため、レポーター遺伝子が使用されてもよい。一般に、レポーター遺伝子は、(レポーター遺伝子の)レシピエント供給源中に存在しないか又はそれによって発現され、且ついくつかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性又は可視化可能な蛍光により発現が明らかにされるようなポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入されてからの好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されたアルカリホスファターゼをコードする遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)を含んでもよい。好適な発現系は、周知であり、公知の技術を用いて調製されるか又は商業的に得られてもよい。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルでの発現を示す最小の5’隣接領域を有する構築物は、プロモータとして同定される。かかるプロモータ領域は、レポーター遺伝子に連結され、薬剤のプロモータ駆動転写を調節する能力について評価するため、使用されてもよい。
【0231】
一部の実施形態では、調節剤は、タンパク質を含むか、又はタンパク質であり、従って、タンパク質を作製する方法により生産され得る。当業者には理解されるように、タンパク質又はポリペプチド(本明細書に記載の調節剤に含有され得る)を作製する方法は、当技術分野で常用的である。概要については、以下:Smales & James(Eds.),Therapeutic Proteins:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press(2005);及びCrommelin,Sindelar & Meibohm(Eds.),Pharmaceutical Biotechnology:Fundamentals and Applications,Springer(2013)を参照されたい。
【0232】
本開示の組成物のタンパク質又はポリペプチドは、標準的な固相技術を用いて生化学的に合成することができる。こうした方法としては、排他的固相合成、部分的固相合成方法、フラグメント凝縮、古典的溶液合成が挙げられる。これらの方法は、ペプチドが比較的短い(例えば、10kDa)場合、且つ/又はそれを組換え技術により生産することができない(即ち、核酸配列によりコードされない)ため、別の化学を必要とする場合に使用することができる。
【0233】
固相合成法は、当技術分野で公知であり、John Morrow Stewart and Janis Dillaha Young,Solid Phase Peptide Syntheses,2nd Ed.,Pierce Chemical Company,1984;及びCoin,I.,et al.,Nature Protocols,2:3247-3256,2007により詳しく記載されている。
【0234】
より長いペプチドの場合、組換え法を使用することができる。組換え治療用ポリペプチドを作製する方法は、当技術分野において常用的である。概要については、以下:Smales & James(Eds.),Therapeutic Proteins:Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press(2005);及びCrommelin,Sindelar & Meibohm(Eds.),Pharmaceutical Biotechnology:Fundamentals and Applications,Springer(2013)を参照されたい。
【0235】
治療薬用タンパク質又はポリペプチドを生産する例示的な方法は、哺乳動物細胞における発現を含むが、適切なプロモータの制御下で、昆虫細胞、酵母、細菌、又は他の細胞を用いて組換えタンパク質を生産することもできる。哺乳動物発現ベクターは、非転写エレメント、例えば、複製起点、好適なプロモータ、並びに他の5’又は3’フランキング非転写配列、及び5’又は3’非翻訳配列、例えば、必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、並びに終結配列を含み得る。異種DNA配列の発現に必要な他の遺伝子エレメントを取得するために、SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列、例えば、SV40起点、初期プロモータ、スプライス、及びポリアデニル化部位を用いてもよい。細菌、真菌、酵母、及び哺乳動物細胞宿主と共に使用するのに適したクローニング及び発現ベクターは、以下:Green & Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Fourth Edition),Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012)に記載されている。
【0236】
多量のタンパク質又はポリペプチドが要望される場合には、以下:Brian Bray,Nature Reviews Drug Discovery,2:587-593,2003;及びWeissbach & Weissbach,1988,Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,Section VIII,pp 421-463に記載されるような技術を用いて、それを生成することができる。
【0237】
様々な哺乳動物細胞培養システムを使用して、組換えタンパク質を発現させ、製造することができる。哺乳動物発現システムの例として、CHO細胞、COS細胞、HeLA及びBHK細胞株が挙げられる。タンパク質治療薬生産のための宿主細胞培養のプロセスは、Zhou and Kantardjieff(Eds.),Mammalian Cell Cultures for Biologics Manufacturing(Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology),Springer(2014)に記載されている。本明細書に記載される組成物は、組換えタンパク質をコードするベクター、例えば、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターを含有してもよい。一部の実施形態では、ベクター、例えば、ウイルスベクターは、組換えタンパク質をコードする核酸を含み得る。
【0238】
タンパク質治療薬の精製については、以下:Franks,Protein Biotechnology:Isolation,Characterization,and Stabilization,Humana Press(2013);及びCutler,Protein Purification Protocols(Methods in Molecular Biology),Humana Press(2010)に記載されている。
【0239】
タンパク質治療薬の製剤化については、以下:Meyer(Ed.),Therapeutic Protein Drug Products:Practical Approaches to formulation in the Laboratory,Manufacturing,and the Clinic,Woodhead Publishing Series(2012)に記載されている。
【0240】
タンパク質は、1つ又は複数のアミノ酸を含む。アミノ酸は、例えば、1つ又は複数のペプチド結合を介して、ポリペプチド鎖に組み込むことができる任意の化合物及び/又は物質を含む。一部の実施形態では、アミノ酸は、一般的な構造:H2N-C(H)(R)-COOHを有する。一部の実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。一部の実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、D-アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、L-アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然に存在するペプチドに共通して存在する20の標準L-アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」とは、それが合成により調製されたか、又は天然供給源から得られたかにかかわらず、標準アミノ酸以外のあらゆるアミノ酸を指す。一部の実施形態では、ポリペプチド中のカルボキシ-及び/又はアミノ-末端アミノ酸を含め、アミノ酸は、上の一般的な構造と比較して、構造修飾を含んでもよい。例えば、一部の実施形態では、アミノ酸は、一般的な構造と比較して、(例えば、アミノ基、カルボン酸基、1つ若しくは複数のプロトン、及び/又はヒドロキシル基の)メチル化、アミド化、アセチル化、ペグ化、グリコシル化、リン酸化、及び/又は置換により修飾されていてもよい。一部の実施形態では、こうした修飾は、例えば、そうでなければ同じ非修飾アミノ酸を含有するものと比較して、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの循環半減期を変更し得る。一部の実施形態では、こうした修飾は、そうでなければ同じ非修飾アミノ酸を含有するものと比較して、修飾アミノ酸を含有するポリペプチドの関連活性を有意に変更しない。文脈から明らかになるように、一部の実施形態では、用語「アミノ酸」は、遊離アミノ酸を示すために使用される場合もあり;一部の実施形態では、ポリペプチドのアミノ酸残基を示すために使用される場合もある。
【0241】
送達
様々な実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、調節剤)は、医薬組成物である。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物(例えば、医薬組成物)は、任意の投与経路を介して、細胞及び/又は対象に送達するために、製剤化され得る。対象への投与方法としては、注射、注入、吸入、鼻内、眼内、局所送達、カニューレ内送達、又は摂取を挙げることができる。注射としては、限定しないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、血管内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、並びに胸骨内注射及び注入が挙げられる。一部の実施形態では、投与は、例えば、噴霧法を用いたエアロゾル吸入を含む。一部の実施形態では、投与は、全身(例えば、経口、直腸、鼻内、舌下、口腔、若しくは非経口)、経腸(例えば、全身作用だが、消化管を介して送達される)、又は局所(例えば、皮膚への局所適用、硝子体内注射)である。一部の実施形態では、1つ若しくは複数の組成物は、全身投与される。一部の実施形態では、投与は注射ではなく、且つ、治療薬は非経口治療薬である。いくつかの特定の実施形態では、投与は、気管支(例えば、気管支内点滴による)、口腔、皮膚(例えば、真皮、皮内、皮内、経皮などに対する局所の1つ若しくは複数であるか、又はそれを含み得る)、経腸、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻内、腹腔内、髄腔内、静脈内、心室内、特定の器官内(例えば、肝臓内)、粘膜、鼻内、経口、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内点滴により)、膣内、硝子体などであってよい。一部の実施形態では、投与は、単回用量であり得る。一部の実施形態では、投与は、間欠的(例えば、時間間隔をあけた複数回用量)及び/又は定期的(例えば、共通の時間間隔を開けた個別の用量)な投薬を含み得る。一部の実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間にわたり連続した投薬(例えば、灌流)を含み得る。
【0242】
本開示に従う医薬組成物は、治療有効量で投与され得る。正確な治療有効量は、所与の対象の治療の効力に関して最も有効な結果をもたらすと考えられる組成物の量である。この量は、様々な要因に応じて変動するが、そうした要因として、限定されないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、及び生体利用可能性など)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類及びステージ、健康状態全般、所与の用量に対する応答性、並びに薬剤の種類など)、製剤中の薬学的に許容できる1つ若しくは複数の担体、及び/又は投与経路が挙げられる。
【0243】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含む、治療薬の送達方法を提供し、ここで、ゲノム複合体(例えば、ASMC)調節剤が治療薬であり、且つ/又は治療薬の送達は、治療薬の非存在下での遺伝子発現に比して、遺伝子発現の変化を引き起こす。
【0244】
本明細書の様々な実施形態で提供される方法を、本明細書に描写されるいくつかの態様のいずれに使用してもよい。一部の実施形態では、1つ若しくは複数の組成物を特定の細胞、又は1つ若しくは複数の特定の組織に対してターゲティングさせる。
【0245】
例えば、一部の実施形態では、1つ若しくは複数の組成物を、上皮、結合、筋肉、及び/又は神経組織若しくは細胞に対してターゲティングさせる。一部の実施形態では、組成物を、特定の器官系、例えば、心血管系(心臓、血管);消化系(食道、胃、肝臓、膀胱、膵臓、腸、結腸、直腸及び肛門);内分泌系(視床下部、下垂体、松果体若しくは松果腺、甲状腺、副甲状腺、副腎);排出系(腎臓、尿管、膀胱);リンパ系(リンパ、リンパ節、リンパ管、扁桃腺、アデノイド、胸腺、脾臓);外皮系(皮膚、毛髪、爪);筋肉系(例えば、骨格筋);神経系(脳、脊髄、神経);生殖系(卵巣、子宮、乳腺、精巣、精管、精嚢、前立腺);呼吸系(咽頭、喉頭、気管、気管支、肺、横隔膜);骨格系(骨、軟骨);及び/又はそれらの組合せの細胞又は組織にターゲティングさせる。
【0246】
一部の実施形態では、本開示の組成物は、血液脳関門、胎盤膜、又は血液精巣関門を通過する。
【0247】
一部の実施形態では、本明細書に提供される組成物は、全身投与される。
【0248】
一部の実施形態では、投与は注射によるものではなく、且つ治療薬は非経口治療薬である。
【0249】
医薬組成物
本明細書で用いられる場合、用語「医薬組成物」は、1つ若しくは複数の薬学的に許容できる担体(例えば、当業者には周知の薬学的に許容できる担体)と一緒に製剤化される活性薬剤(例えば、妨害剤)を指す。一部の実施形態では、活性薬剤は、関連集団に投与すると、予定された治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療レジメンでの投与に適した単位用量で存在する。一部の実施形態では、医薬組成物は、固体又は液体形態での投与のために特別に製剤化してもよく、そうしたものとして、以下:経口投与、例えば、飲薬(水性若しくは非水性溶液又は懸濁液)、錠剤、例えば、口腔、舌下、及び全身吸収を目的とするもの、ボーラス、粉末剤、顆粒剤、舌への適用のためのペースト剤;非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内若しくは硬膜外注射(例えば、滅菌溶液若しくは懸濁液など)、又は持続放出製剤;例えば、クリーム、軟膏などの局所適用、又は皮膚、肺、若しくは口腔に適用される制御放出パッチ若しくはスプレー;例えば、ペッサリー、クリーム、若しくはフォームとしての膣内若しくは直腸内;舌下;眼内;経皮;或いは鼻、肺、及び/又は他の粘膜表面のために設計されたものが挙げられる。
【0250】
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的に許容できる」は、信頼できる医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の障害若しくは合併症を起こすことなく、ヒト及び動物の組織と接触した使用に適しており、妥当なベネフィット/リスト比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0251】
本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容できる担体」とは、主題の組成物を1つの器官、若しくは身体の部分から、別の器官、若しくは身体の部分に運搬又は輸送するのに関与する液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、若しくは溶媒カプセル化材料などの薬学的に許容できる材料、組成物又はビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、且つ患者に対して有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。一部の実施形態では、例えば、薬学的に許容できる担体として役立ち得る材料として、以下:ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、及びその誘導体、例えば、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、ココナッツ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;エチルアルコール;アルギン酸;発熱性物質除去蒸留水;等張食塩水;リンガー液;エチルアルコール;pH緩衝液;ポリエステル、ポリカーボネート、及び/又はポリ無水物;並びに医薬製剤に使用されている他の非毒性適合性物質が挙げられる。
【0252】
本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容できる塩」は、医薬関連での使用に適した化合物の塩、即ち、信頼できる医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを起こすことなく、ヒト及び下等動物の組織と接触した使用に適しており、且つ妥当なベネフィット/リスト比に見合う塩を指す。薬学的に許容できる塩は、当技術分野で公知である。例えば、S.M.Berge,et al.は、J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19(1977)に薬学的に許容できる塩を記載している。一部の実施形態では、薬学的に許容できる塩として、限定されないが、非毒性酸付加塩が挙げられ、これは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸、又は酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸若しくはマロン酸などの有機酸と共に形成されるか、或いはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を用いることにより形成されるアミノ基の塩である。一部の実施形態では、薬学的に許容できる塩として、限定されないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアネート、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。一部の実施形態では、薬学的に許容できる塩として、適切であれば、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、並びにハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、1~6個の炭素原子を有するアルキル、スルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミンカチオンが挙げられる。
【0253】
様々な実施形態では、本開示は、薬学的に許容できる賦形剤と共に、本明細書に記載の医薬組成物を提供する。薬学的に許容できる賦形剤は、一般に安全、非毒性で望ましい医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を含み、且つ動物使用と共にヒト医薬品使用にとって許容できる賦形剤を含む。こうした賦形剤は、固体、液体、半固体であってもよいし、又はエアロゾル組成物の場合には、気体であってよい。
【0254】
医薬調製物は、錠剤の場合、粉砕、混合、顆粒化、及び必要に応じて圧縮;硬質ゼラチンカプセル剤形の場合、粉砕、混合及び充填を含む従来の製剤技術に従って製造することができる。液体担体を用いる場合、調製物は、シロップ、エレキシル、エマルジョン又は水性若しくは非水性溶液又は懸濁液の形態であってよい。こうした液体製剤は、直接経口投与され得る。
【0255】
一部の実施形態では、本開示の組成物は、治療薬単独と比較して、PK/PDの改善、例えば、増加した薬物動態又は薬物力学、例えば、ターゲティング、吸収、若しくは輸送の改善(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、若しくはそれ以上の改善)を有する。一部の実施形態では、組成物は、治療薬単独と比較して、低減した望ましくない作用、例えば、低減した非標的位置への拡散、オフターゲット活性、又は毒性代謝産物(例えば、治療薬単独と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、若しくはそれ以上の低減)を有する。一部の実施形態では、組成物は、治療薬単独と比較して、治療薬の効力を増大し、且つ/又は治療薬の毒性を低減する(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、若しくはそれ以上)。
【0256】
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、製剤用担体及び/又はポリマー担体、例えば、リポソーム若しくは小胞体などの担体を含め、製剤化して、公知の方法により、それを必要とする対象(例えば、ヒト又はヒト以外の農場若しくは家畜動物、例えば、畜牛、イヌ、ネコ、ウマ、家禽)に送達される。こうした方法としては、トランスフェクション(例えば、脂質媒介性、カチオンポリマー、リン酸カルシウム);エレクトロポレーション又は他の膜破壊(例えば、ヌクレオフェクション)及びウイルス送達(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAV)が挙げられる。さらに送達方法は、例えば、以下:Gori et al.,Delivery and Specificity of CRISPR/Cas9 Genome Editing Technologies for Human Gene Therapy.Human Gene Therapy.July 2015,26(7):443-451.doi:10.1089/hum.2015.074;及びZuris et al.にも記載されている。タンパク質のカチオン脂質媒介送達は、インビトロ及びインビボで効率的なタンパク質ベースのゲノム編集を可能にする。Nat Biotechnol.2014 Oct 30;33(1):73-80。
【0257】
リポソームは、内部水性区画を囲む単層又は多重層の脂質二重層並びに比較的不透過性の外部親油性リン脂質二重層から構成された球状小胞構造である。リポソームは、アニオン性、中性又はカチオン性であってもよい。リポソームは、生体適合性、非毒性であり、親水性及び親油性薬剤分子の双方を送達し、それらのカーゴを血漿酵素により分解から保護し、それらの負荷を生物学的膜及び血液脳関門(BBB)を通じて輸送し得る(例えば、レビューとして、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照)。
【0258】
小胞は、いくつかの異なるタイプの脂質から作成され得るが、薬物担体としてのリポソームを作成するため、リン脂質が最も一般的に使用される。小胞は、限定はされないが、DOTMA、DOTAP、DOTIM、DDABを単独で含むか、又はコレステロールと一緒に含み、DOTMA及びコレステロール、DOTAP及びコレステロール、DOTIM及びコレステロール、並びにDDAB及びコレステロールを生成してもよい。多重膜小胞脂質を調製するための方法は、当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第6,693,086号明細書を参照、多重膜小胞脂質製剤に関するその教示内容は、参照により本明細書中に援用される)。脂質膜が水溶液と混合されるとき、小胞形成は自発的であり得るが、それはまた、ホモジナイザー、ソニケーター、又は押出成形装置に使用により振盪の形態で力を加えることにより促進され得る(例えば、レビューとして、Spuch and Navarro,Journal of Drug Delivery,vol.2011,Article ID469679,12 pages,2011.doi:10.1155/2011/469679を参照)。押し出された脂質は、サイズを低減するフィルターを介して押し出すことにより調製可能であり、それはTempleton et al.,Nature Biotech,15:647-652,1997に記載の通りである(押し出された脂質製剤に関するその教示内容は、参照により本明細書中に援用される)。
【0259】
本明細書に記載される方法及び組成物は、疾患、障害及び/又は病状の症状を緩和するのに十分なレジメンにより投与される医薬組成物を含み得る。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の組成物を投与することにより、治療薬を送達する方法を提供する。
【0260】
本開示の医薬使用は、本明細書に記載の組成物(例えば、調節剤、例えば、妨害剤)を含み得る。いくつかの態様では、医薬使用のためのシステムは、以下:第1ポリペプチドドメインを含むタンパク質、例えば、Cas又は修飾Casタンパク質、及び第2ポリペプチドドメイン、例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ活性を有するか、又は脱メチル化若しくはデアミナーゼ活性と関連するポリペプチドを、eRNAなどのncRNAをターゲティングする少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドと組み合わせて含む。システムは、少なくとも1つのヒト細胞において、完全性指数により特徴付けられるゲノム複合体、例えば、標的アンカー配列媒介接合部を変更するのに効果的である。
【0261】
いくつかの態様では、本開示の医薬組成物は、eRNAなどのncRNAをターゲティングする(例えば、切断する)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又はZFNをコードするmRNAを含む。
【0262】
いくつかの態様では、医薬使用のためのシステムは、ncRNA、例えば、eRNAに結合して、ncRNA(例えば、eRNA)を含むゲノム複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部(例えば、完全性指数により特徴付けられるゲノム複合体)の形成を変更し、ここで、そうした組成物は、ヒト細胞において、ゲノム複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部に関連する標的遺伝子の転写を調節する。
【0263】
いくつかの態様では、ヒト細胞において、標的遺伝子の発現を変更するためのシステムは、標的遺伝子と関連するncRNA、例えば、eRNAと結合するターゲティング部分(例えば、gRNA、膜転移ポリペプチド)と、ターゲティング部分と作動可能に連結したエフェクター部分(例えば、酵素、例えば、ヌクレアーゼ若しくは不活性化ヌクレアーゼ(例えば、Cas9、dCas9)、メチラーゼ、デメチラーゼ、デアミナーゼ)とを含み、ここで、上記システムは、標的遺伝子の発現を変更(例えば、低減)するのに有効である。ターゲティング部分とエフェクター部分は、異なる個別の(例えば、妨害剤の異なる物理的部分に含まれる)部分であってもよい。ターゲティング部分とエフェクター部分は、例えば、リンカーにより、例えば、共有結合されてもよい。一部の実施形態では、システムは、ターゲティング部分とエフェクター部分を含む合成ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、システムは、ターゲティング部分及びエフェクター部分の少なくとも1つをコードする1つ又は複数の核酸ベクターを含む。
【0264】
いくつかの態様では、医薬組成物は、アンカー配列媒介接合部のアンカー配列に結合して、アンカー配列媒介接合部の形成を変更することにより、完全性指数により特徴付けられるゲノム複合体(例えば、ASMC)をターゲティングする組成物を含んでもよく、ここで、上記組成物は、ヒト細胞において、ゲノム複合体(例えば、ASMC)に関連する標的遺伝子の転写を調節する。一部の実施形態では、組成物は、アンカー配列媒介接合部の形成を妨害する(例えば、接合部核形成分子に対するアンカー配列の親和性を、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上低減する)ことにより、完全性指数により特徴付けられるゲノム複合体をターゲティングする。一部の実施形態では、形成の妨害は、接合部核形成分子に対するアンカー配列の親和性を、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上調節することによる、完全性指数の変更を含む。
【0265】
一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物(例えば、薬物)の少なくとも1つの成分の少なくとも1つの薬物動態又は薬物力学パラメータ、例えば、ターゲティング、吸収、若しくは輸送を、別の部分単独と比較して改善するか、又は少なくとも1つのトキシコキネティックスパラメータ、例えば、非標的位置への拡散、オフターゲット活性、及び毒性代謝産物を、別の部分単独と比較して低減する(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)。一部の実施形態では、本開示の組成物の投与は、調節剤の少なくとも1つの成分の治療範囲を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)増大する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、別の部分単独と比較して、最小有効用量を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)低減する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、調節剤単独と比較して、最大耐用量を(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)増大する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、治療薬、例えば、非経口治療薬の注射以外の投与などの効力を増大するか、又はその毒性を低減する。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の投与は、調節剤単独と比較して、調節剤の治療範囲を増大すると同時に毒性を低減する(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくはそれ以上)。
【0266】
いくつかの態様では、本開示は、ncRNA、例えば、eRNAに結合して、ゲノム又は転写複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部の形成を変更、例えば、低減する(例えば、複合体のレベルを少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくはそれ以上低下させる)調節剤、例えば、妨害剤を提供する。
【0267】
一部の実施形態では、gRNAは、標的化ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、例えば、野生型Cas9、ニッカーゼCas9(例えば、Cas9 D10A)、不活性型Cas9(dCas9)、eSpCas9、Cpf1、C2C1、若しくはC2C3、又はそのようなヌクレアーゼをコードする核酸と組み合わせて投与される。ヌクレアーゼ及びgRNAの選択は、標的化突然変異が、ヌクレオチドの欠失、置換、又は付加、例えば、ncRNA、例えば、eRNAに対するヌクレオチドの欠失、置換、又は付加であるかどうかによって決定される。例えば、一部の実施形態では、1つのgRNAを投与して、例えば、ncRNA、例えば、eRNA中の不活性化インデル突然変異を引き起こし、例えば、1つのgRNAは、ヌクレアーゼ、例えば、wtCas9と組み合わせて投与する。
【0268】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要とする対象に投与されると、完全性指数により特徴付けられる標的ゲノム複合体(例えば、ASMC)又は標的ゲノム複合体の成分、例えば、ncRNA、eRNAの標的配列に、部位特異的変更(例えば、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転位、反転、単一の点突然変異)を導入し、それにより、対象における遺伝子発現を調節する、核酸又は核酸の組合せを含む組成物を提供する。
【0269】
使用
本開示は、さらに、本明細書に開示される調節剤の使用にも関する。中でも、一部の実施形態では、提供されるこうした技術は、標的遺伝子(例えば、FXN)発現の調節、例えば、増大を達成し、例えば、細胞において、例えば、標的遺伝子活性、送達、及び透過の制御を可能にする。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物、例えば、ヒト細胞である。一部の実施形態では、細胞は、体細胞である。一部の実施形態では、細胞は、初代細胞である。例えば、一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物の体細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物体細胞は、初代細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物体細胞は、非胚性細胞である。一部の実施形態では、細胞は、筋肉細胞(例えば、心臓の筋肉細胞、例えば、心筋細胞)又は神経細胞(例えば、中枢神経系の細胞若しくは脊髄の細胞、例えば、脊髄後根神経節(DRG)の細胞(例えば、ニューロン))である。
【0270】
一部の実施形態では、提供されるこうした技術を用いて、それを必要とする対象、例えば、患者のFRDA又はFRDAに関連する症状を治療することができる。
【0271】
遺伝子発現の調節
本開示はさらに、一部には、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を調節、例えば、増大させる方法に関し、これは、本明細書に記載の調節剤(又はそれをコードする核酸、又は前記調節剤若しくは核酸を含む医薬組成物)を用意するステップと、細胞、標的遺伝子、及び/又は作動可能に連結した発現制御エレメントを上記調節剤と接触させるステップを含む。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現の調節、例えば、増大は、参照値、例えば、調節剤の非存在下での標的遺伝子の転写と比較した、標的遺伝子の転写の調節を含む。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現を調節、例えば、増大する方法は、例えば、対象、例えば、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象由来の細胞に対して、エクスビボで使用される。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現を調節、例えば、増大する方法は、例えば、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象に対して、インビボで使用される。一部の実施形態では、標的遺伝子の発現を調節、例えば、増大する方法は、例えば、本明細書に記載される細胞又は細胞株に対して、インビボで使用される。
【0272】
本開示はさらに、一部には、対象における標的遺伝子(例えば、FXN)の低発現及び/又は病理学的に低レベルの標的遺伝子(例えば、FXN)産物(例えば、mRNA若しくはタンパク質)に関連する病状を治療する方法にも関し、これは、本明細書に記載の調節剤(又はそれをコードする核酸、又は前記調節剤若しくは核酸を含む医薬組成物)を対象に投与するステップを含む。特定の遺伝子の低発現及び/又は病理学的に低レベルの遺伝子産物に関連する病状は、当業者には周知である。こうした病状として、限定されないが、FRDA(FXNの低発現及び/又は病理学的に低レベルのFXN遺伝子産物に関連する)、代謝障害、神経筋障害、癌(例えば、固形腫瘍)、繊維症、糖尿病、尿素障害、免疫障害、炎症、及び関節炎が挙げられる。
【0273】
本開示はさらに、一部には、対象における標的遺伝子の発現の誤調節に関連する病状を治療する方法にも関し、これは、本明細書に記載の調節剤(又はそれをコードする核酸、又は前記調節剤若しくは核酸を含む医薬組成物)を対象に投与するステップを含む。理論に束縛されることは望まないが、調節剤を用いて、標的遺伝子の発現を調節する遺伝子をターゲティング(例えば、その発現を増大)し、このようにして調節遺伝子の発現を変更することにより、標的遺伝子の発現を変更すると考えられる。特定の遺伝子の発現の誤調節に関連する病状は、当業者には周知である。こうした病状として、限定されないが、代謝障害、神経筋障害、癌(例えば、固形腫瘍)、繊維症、糖尿病、尿素障害、免疫障害、炎症、及び関節炎が挙げられる。
【0274】
本明細書に提供される方法及び組成物は、標的遺伝子(例えば、FXN)の転写を安定的、又は一過性変更(例えば、増大)することにより、病状を治療することができる。一部の実施形態では、こうした調節は、少なくとも約1時間~約30日、又は少なくとも約2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、若しくはそれ以上又はそれらの間の任意の時間持続する。一部の実施形態では、こうした調節は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは24時間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、若しくは7日、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5週間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5年にわたって(例えば、無期限に)持続する。任意選択的に、こうした調節は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1年以下にわたって持続する。
【0275】
一部の実施形態では、治療される病状は、FRDAである。FRDAは、遺伝性、進行性、神経変性運動障害である。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法により治療を受ける対象、例えば、患者は、FRDAを有する対象、例えば、患者である。一部の実施形態では、FRDAは、10~15歳の間の典型的な発症年齢を有する。一部の実施形態では、対象、例えば、患者は、25歳未満、例えば、10~15歳でFRDAを有すると診断される。一部の実施形態では、対象、例えば、患者は、26~39歳でFRDAを有すると診断され、例えば、対象、例えば、患者は、晩期発症型FRDA(LOFA)と診断される。一部の実施形態では、対象、例えば、患者は、40歳以上でFRDAを有すると診断され、例えば、対象、例えば、患者は、超晩期発症型FRDA(VLOFA)と診断される。初期症状としては、随意運動調整能力障害(運動失調症)による不安定な姿勢、頻繁な転倒、及び進行性歩行困難が挙げられる。罹患した個体は、不明瞭言語(構音障害)、特徴的な足の変形、及び/又は脊椎の異常な湾曲(脊椎側彎症)を発症し得る。FRDAは、心筋症、即ち、心不全又は心拍リズムの不規則性(心不整脈)を引き起こし得る心筋の疾患と関連している可能性がある。FRDA患者の約1/3は、糖尿病を発症する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法又は組成物は、限定されないが、以下:不安定な姿勢、頻繁な転倒、歩行困難、運動失調症、構音障害、足の変形、脊椎側彎症、心筋症、心不整脈、若しくは糖尿病から選択される、1つ若しくは複数のFRDA関連症状を改善(例えば、その重症度を軽減)するか、又は排除する。
【0276】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、標的遺伝子と関連するゲノム複合体、例えば、アンカー配列媒介接合部を妨害することにより、標的遺伝子(例えば、FXN)の発現を調節、例えば、増大し得る。アンカー配列媒介接合部と関連する遺伝子は、少なくとも部分的に、接合部内(即ち、第1及び第2アンカー配列の間に配列様に位置する)にあってもよいし、又は第1及び第2アンカー配列の間に配列様に位置していないという点で接合部の外部であってもよいが、上記遺伝子は、同じ染色体上で、しかも、アンカー配列媒介接合部のトポロジーを制御することによりその発現を調節することができるように、少なくとも第1又は第2アンカー配列と十分に近接して位置する。当業者は、2つのエレメント同士(例えば、上記遺伝子とアンカー配列媒介接合部の間)の三次元空間中での距離が、一部の実施形態において、塩基対に関する距離よりも重要となり得ることは理解されよう。一部の実施形態では、外部ではあるが、関連する遺伝子は、第1又は第2アンカー配列から2Mb以内、1.9Mb以内、1.8Mb以内、1.7Mb以内、1.6M以内、1.5Mb以内、1.4Mb以内、1.3Mb以内、1.3Mb以内、1.2Mb以内、1.1Mb以内、1Mb以内、900kb以内、800kb以内、700kb以内、500kb以内、400kb以内、300kb以内、200kb以内、100kb以内、50kb以内、20kb以内、10kb以内、又は5kb以内に位置する。
【0277】
一部の実施形態では、遺伝子の発現の調節は、遺伝子に対する発現制御配列の到達性を変更することを含む。発現制御配列は、アンカー配列媒介接合部の内部又は外部にかかわらず、増強配列又はサイレンシング(若しくは抑制)配列であり得る。
【0278】
エピジェネティック修飾
本開示はさらに、一部には、標的遺伝子(例えば、FXN)、標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御エレメント、又はアンカー配列(例えば、標的遺伝子に対して近位であるか、或いは標的遺伝子又は前記標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列を含むか、若しくはそれと関連するアンカー配列媒介接合部と結合しているアンカー配列)をエピジェネティック的に修飾する方法に関し、この方法は、調節剤、又は調節剤をコードする核酸、又は前記調節剤若しくは核酸を含む医薬組成物を用意するステップと;標的遺伝子(例えば、FXN)、標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列、又は細胞を、調節剤、核酸、又は医薬組成物と接触させ、それにより、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾するステップを含む。
【0279】
一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾する方法は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列のDNAメチル化の増大若しくは低減を含む。一部の実施形態では、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した転写制御エレメントをエピジェネティック的に修飾する方法は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するヒストンのヒストンメチル化の増大若しくは低減を含む。一部の実施形態では、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾する方法は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するヒストンのヒストンアセチル化の増大若しくは低減を含む。一部の実施形態では、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾する方法は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するヒストンのヒストンSUMO化の増大若しくは低減を含む。一部の実施形態では、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾する方法は、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するヒストンのヒストンリン酸化の増大若しくは低減を含む。
【0280】
一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾する方法は、エピジェネティック修飾のレベルを、上記組成物と接触させていないか、又は上記方法で処理されていない細胞における当該部位でのエピジェネティック修飾のレベルに比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%(及び任意選択的に、最大100%)低減し得る。一部の実施形態では、標的遺伝子又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾する方法は、エピジェネティック修飾のレベルを、上記組成物と接触させていないか、又は上記方法で処理されていない細胞における当該部位でのエピジェネティック修飾のレベルに比して、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000%(及び任意選択的に、最大200、300、400、500、600、700、800、900、1000、又は2000%)増大し得る。一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列のエピジェネティック修飾により、例えば、本明細書に記載されるように、標的遺伝子の発現のレベルを修飾することができる。
【0281】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法により達成されるエピジェネティック修飾は、少なくとも約1時間~約30日、又は少なくとも約2時間、6時間、12時間、18時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の時間持続する。一部の実施形態では、こうした調節は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、若しくは24時間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、若しくは7日、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5週間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4、若しくは5年にわたって(例えば、無期限に)持続する。任意選択的に、こうした調節は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1年以下にわたって持続する。
【0282】
一部の実施形態では、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列をエピジェネティック的に修飾する方法に使用される調節剤は、エピジェネティック修飾部分であるか、又はそれを含むエフェクター部分を含む。
【0283】
例えば、エフェクター部分は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するエピジェネティック修飾部分であるか、又はそれを含んでもよく、それらのアセチル化を増大する(例えば、標的遺伝子若しくは発現制御配列の1部分と転写因子の相互作用を増大し、例えば、それによって標的遺伝子の転写を増大する)ように、標的遺伝子(例えば、FXN)又は標的遺伝子と作動可能に連結した発現制御配列に関連するヒストンを変更することができる。
【0284】
以下の実施例は、本開示の一部の実施形態をさらに説明するために提供されるが、本開示の範囲の限定を意図するものではなく;それらの例示的な性質から、当業者には周知の他の手順、方法、又は技術が代替的に使用され得ることは理解されよう。
【実施例】
【0285】
実施例1.dCas9-p300調節剤を用いたFXN発現の増大
この実施例では、FRDA患者由来の線維芽細胞におけるFXN発現及びアコニターゼ活性の増大を目的とする、dCas9分子を有するターゲティング部分と、p300を有するエフェクター部分とを含む調節剤、例えば、融合分子の使用を実証する。
【0286】
ウエスタンブロット(
図1A)及びELISA(
図1B)により観察されるように、FXNタンパク質レベルは、対照初代線維芽細胞(HDFn)に比してFRDA患者由来の線維芽細胞(GM04078細胞、Coriell Institute)で低下する。ミトコンドリアの健康に関連するアコニターゼ活性は、FXNレベル低下のために、FRDA患者由来の細胞で減少し、これは、アコニターゼ活性アッセイを実施することにより、確認された(Abcam Kit ab109712)(
図1C)。
【0287】
dCas9分子を有するターゲティング部分と、p300を有するエフェクター部分との融合分子を含む調節剤を、sgRNAと一緒に作製し、調節剤が、細胞のFXN発現又はアコニターゼ活性を増大することができたか否かFRDA線維芽細胞を調べた。FXN TSS周辺で開始する配列をターゲティングするsgRNAガイドのプールと一緒に、調節剤をコードするmRNAの形態で、dCas9-p300調節剤をFRDA患者由来の線維芽細胞に送達した(
図6)。調節剤によりターゲティングされる領域は、FXN遺伝子のTSSから約300bp配列上流及び600bp下流を含んだ。3つの異なるsgRNAのプールにsgRNAを使用し、リピドナノ粒子(LNP)製剤を用いて、dCas9-p300調節剤コード化mRNAと一緒に共送達した(表4を参照)。さらに、これらの実験の対照として、非ターゲティングsgRNA及び未処理の細胞を使用した。
【0288】
【0289】
FRDA患者由来の線維芽細胞(GM04078細胞)を、12又は6ウェルプレートのいずれかのα-MEM15%FBS培地に接種した。翌日、20~60μl製剤中の2~6μgのLNPを細胞に添加した(細胞に添加する前に、プレート上又はチューブ内のいずれかで混合した)。24時間後、LNPを含有する培地を新鮮な培地と交換し、LNPでの最初の処理から48時間及び72時間後にサンプルを採取した。
【0290】
製造者のプロトコルに従って、RNAeasy MiniKit(Qiagen)を用いて、4つの独立した実験からRNAを単離した。LunaScript RT SuperMix Kit(NEB)を用いて、cDNAにRNAサンプルを逆転写し、Taqman Fast Advanced Master Mix(Thermo Scientific)を用いたFXN特異的Taqmanプライマー/プローブセットアッセイを使用する定量PCR(qPCR)により解析した。ΔΔCt法を用いたHPRT1又はGAPDH参照遺伝子のいずれかの発現と比較して、FXN発現を定量し、非ターゲティングsgRNAサンプルを較正物質として使用した。データから、dCas9-p300調節剤を伴う2つの異なるsgRNAプールの送達は、FXN遺伝子発現を、非ターゲティングsgRNA対照と比較して最大約4.5倍増大したことがわかった(
図2A及び2B)。倍率増加は、sgRNA及び使用したLNPの濃度に依存した。FXN発現の増大は、1つのsgRNAプールによる最初のLNP処理から48時間及び72時間後に観察された(
図3A)。dCas9-p300調節剤を用いてFXN遺伝子発現の誘導をもたらしたsgRNAプールは、FXN遺伝子のTSSから最大300bp上流及び150bp下流に位置した。加えて、これらの調節剤はまた、正常な非罹患線維芽細胞(HDFn、ATCC)におけるFXNの発現も増大する(
図4A及び4B)。
【0291】
プロテアーゼ阻害剤を補充したRIPAバッファーを用いて、タンパク質溶解物を取得した。BCAアッセイ(BioVision)を用いて、タンパク質を測定した。サンプルをウエスタンブロット4~12%Bis-Tris Gel(Thermo Fisher)上に泳動させ、抗フラタキシン及び抗β-アクチン抗体を用いてブロッティングした。結果は、LNP送達から72時間後に、FXN遺伝子のTSSから150bp下流の領域に対し、dCas9-p300調節剤及びsgRNAで処理したGM04078線維芽細胞について増大したFXNタンパク質発現を示した(
図3B)。
【0292】
ミトコンドリアの健康と関連するアコニターゼ活性は、FXNレベル低下のために、FRDA患者由来の細胞中で減少する。FXN発現が増大すれば、アコニターゼ酵素活性が増大するはずであろうと仮定された。FXN遺伝子のTSS周辺にターゲティングさせたdCas9-p300調節剤のLNP送達から72時間後に採取したサンプルについて、Abcam Kit ab109712を用いてアコニターゼ酵素活性を測定した。FXN遺伝子のTSS周辺の領域にターゲティングさせた調節剤で処理した細胞にアコニターゼ活性の増大が観察された(
図5)。
【0293】
【0294】
実施例2.WT iPSCにおけるFXN発現の変化
この実施例では、人工多能性幹細胞由来の心筋細胞におけるFXN発現の増大を目的とする、dCas9分子を有するターゲティング部分と、VPRを有するエフェクター部分とを含む調節剤、例えば、融合分子の使用を実証する。
【0295】
WT iPSC由来の心筋細胞(i心筋細胞)及びWT iPSC由来のグルタミン酸作動性皮質ニューロン(iニューロン)を、dCas9-p300若しくはdCas9-VPRを含む融合分子を含む調節剤をコードするmRNAで処理したが、これらは、単一のsgRNA又は3つのsgRNAのプール(実施例1からのプール1)のいずれかと一緒に共送達された。sgRNAによりターゲティングされる領域は、FXN遺伝子TSSから約100bp上流である。RNAは、製造者のプロトコルに従って、Lipofectamine MessengerMAX(ThermoFisher)を用いて送達した。さらに、これらの実験の対照として、エフェクターを含まないdCas9、セーフハーバー(SH)sgRNA、及び未処理細胞を使用した。
【0296】
i心筋細胞(Fujifilm Cellular Dynamics International[FCDI]cat#R1017)を、0.1%ゼラチン(Stemcell Technologies)でコーティングした24ウェルプレートに、製造者のプロトコルに従って接種し、推奨される培地中に維持した。平板培養から7日後、LNP製剤中0.5ugのmRNAを細胞に添加した。24時間後に培地を交換し、様々な時点で(LNPで処理後24~120時間後に)サンプルを採取した。
【0297】
iニューロン(FCDI cat#R1034)は、天然のマウスラミニン(ThermoFisher)でコーティングした24ウェルPDL Biocoatプレート(Corning)に接種した。N2-A(Stemcell Technologies)、iCell Neural Supplement B、及びiCell Nervous System Supplement(FCDI)を補充したBrainPhys Medium(Stemcell Technologies)中に細胞を維持した。平板培養から7日後、LNP製剤中0.5ugのmRNAを細胞に添加した。24時間後に培地を交換し、様々な時点で(LNPで処理後24~96時間後に)サンプルを採取した。
【0298】
RNEasy MiniKit(Qiagen)を用いて、製造者のプロトコルに従ってRNAをサンプルから精製した。LunaScript RT SuperMix Kit(NEB)を用いて、RNAサンプルをcDNAに逆転写した後、Taqman Fast Advanced Master Mix(Thermo Scientific)を用いたFXN特異的Taqmanアッセイを使用する定量PCR(qPCR)により解析した。標準曲線法を用いて、発現データを解析した。FXN発現をHPRT1の発現に対して正規化し、各時点のSH sgRNA処理対照と比較して倍率変化を算出した。倍率変化は、各サンプルの正規化FXN mRNA量をSH対照群の平均で割ることにより算出した。
【0299】
図8の結果は、i心筋細胞におけるdCas9-VPR調節剤コード化RNAを伴うsgRNAプール1の送達が、24時間後に、dCas9-VPR及びSH対照と比較して、FXN遺伝子発現を約3倍上方制御することを示している。FXNの増大は、LNP送達の48時間後にも同様に観察された。dCas9-VPR調節剤コード化mRNAを伴う単一のsgRNA GD-27895は、i心筋細胞におけるFXN発現をほんのわずかにしか増大しなかった。dCas9-p300を有する融合分子を含む調節剤も、プール1を用いて、WT i心筋細胞におけるFXNを約1.3倍と、若干上方制御した。
【0300】
グルタミン酸作動性iニューロンでは、dCas9-VPR調節剤コード化mRNAを含むsgRNAプール1は、24時間後、SH対照と比較して約3倍FXN遺伝子発現を上方制御した。FXNの増大は、LNP送達の48時間後にも同様に観察された。dCas9-VPR調節剤コード化mRNAを伴う単一のsgRNA GD-27895は、LNP送達の24時間後に、SH対照と比較して、FXN発現を約2.5倍増大した。dCas9-p300を有する融合分子を含む調節剤も、SH対照と比較して、プール1 sgRNA及び単一sgRNA GD-27895を用いて、WTグルタミン酸作動性iニューロンにおけるFXNを約1.4倍と、若干上方制御した。
【0301】
これらの結果は、本明細書に記載の調節剤、特にTSSの約100bp上流をターゲティングさせたdCas9-VPRを含む調節剤が、FRDAに最も罹患した細胞型(心筋細胞及びニューロン)におけるFXN遺伝子発現を上方制御できることを実証する。
【0302】
実施例3.FXN発現を増大するために調節剤に用いられるTALエフェクター分子
この実施例は、FRDA患者由来の線維芽細胞におけるFXN発現の増大を目的とする、TALエフェクター分子を有するターゲティング部分と、VPRを有するエフェクター部分とを含む調節剤、例えば、融合分子の使用を実証する。
【0303】
VPRエフェクター部分と融合したTALエフェクター分子を有する融合分子を含む調節剤をmRNAの形態で、FRDA患者由来の線維芽細胞(GM03816)に送達した。TALエフェクター分子を含む調節剤は、FXN遺伝子TSSの約100bp上流をターゲティングするように設計されている。調節剤をLNPに製剤化した後、細胞に送達した。さらに、これらの実験の対照として、dCas9-VPRとプール1 sgRNA又はdCas9-VPRとセーフハーバー(SH)sgRNAを含む調節剤で処理した細胞、並びに未処理細胞を使用した。
【0304】
96及び24ウェルプレートにおいて15%FBSを補充したα-MEM培地に、GM03816細胞を接種した。翌日、ウェル当たり112.5ng及び22.5ngのLNP(MC3)製剤をそれぞれ24及び96ウェルプレート内の細胞に添加した。24時間で培地を交換し、LNPでの処理から24及び72時間後にサンプルを採取した。
【0305】
24時間後に採取したサンプルからのRNAを、RNEasy MiniKit(Qiagen)を用い、製造者のプロトコルに従って精製した。LunaScript RT SuperMix Kit(NEB)を用いて、RNAサンプルをcDNAに逆転写した後、Taqman Fast Advanced Master Mix(Thermo Scientific)を用いたFXN特異的Taqmanアッセイを使用する定量PCR(qPCR)により解析した。標準曲線法を用いて、発現データを解析した。FXN発現をHPRT1の発現に対して正規化し、各時点のSH sgRNA処理対照と比較して倍率変化を算出した。倍率変化は、各サンプルの正規化FXN mRNA量をSH対照群の平均で割ることにより算出した。
【0306】
プロテアーゼ阻害剤(Roche)を補充したRIPAバッファーを用いて、72時間後に採取したサンプルのタンパク質溶解物を取得し、BCA Rapid Gold Kit(ThermoFisher)を用いて、タンパク質濃度を測定した。FXN ELISAキット(Abcam ab176112)を用い、製造者のプロトコルに従ってサンプルを解析した。
【0307】
図9及び10から、TAL-VPRを有する融合分子を含む調節剤が、LNP送達から24時間後にFXN遺伝子発現を約6倍、また、72時間後にFXNタンパク質を約1.5倍増大したことがわかる。
【0308】
これらの結果は、TALベースのターゲティング部分を有する融合分子を含む調節剤が、TSSの上流の領域にエフェクター部分を送達できること、及びそれらが、FXN遺伝子発現を上方制御し得ることを明らかにした。
【0309】
実施例4.dCas9-VPRを注射したマウスにおけるFXN発現の変化
この実施例では、マウスモデル生物に注射したとき、FXN発現を増大することを目的とする、dCas9を有するターゲティング部分と、VPRを有するエフェクター部分とを含む調節剤、例えば、融合分子の使用を実証する。
【0310】
GD-28633 sgRNA(FxnマウスTSSの約80bp上流をターゲティングさせる)又はSH sgRNAと共に、dCas9-VPRを有する融合分子を含む例示的な調節剤をコードするmRNAを含有する3mg/kgのMC3製剤を野生型C57BL/6Jマウス(1時点につきN=8匹/群)に静脈内(i.v.)注射した。加えて、PBSをi.v.で注射したマウス(N=5)の対照群を比較のために含めた。注射後3、4、及び5日目に肝臓組織を採取し、RNA解析のためにRNA-later中に保存するか、又はタンパク質解析のために瞬間凍結した。
【0311】
RNEasy MiniKit(Qiagen)を用い、製造者のプロトコルに従ってRNAを精製した。LunaScript RT SuperMix Kit(NEB)を用いて、RNAサンプルをcDNAに逆転写した後、Taqman Fast Advanced Master Mix(Thermo Scientific)を用いたFxn特異的Taqmanアッセイを使用する定量PCR(qPCR)により解析した。標準曲線法を用いて、発現データを解析した。FXN発現をHPRT1の発現に対して正規化し、各時点のSH sgRNA処理対照と比較して倍率変化を算出した。倍率変化は、各サンプルの正規化FXN mRNA量をSH対照群の平均で割ることにより算出した。
【0312】
プロテアーゼ阻害剤(Roche)を補充したRIPAバッファーを用いて、タンパク質溶解物を取得し、BCA Rapid Gold Kit(ThermoFisher)を用いて、タンパク質濃度を測定した。FXN ELISAキット(Abcam ab199078)を用いて、製造者のプロトコルに従ってサンプルを解析した。
【0313】
図11の結果から、GD-28633 sgRNAと共にdCas9-VPR調節剤を含有するLNPのマウスへの静脈内注射が、注射後3及び4日目に、dCas9-VPR調節剤及びSH対照と比較して、肝臓のFxn遺伝子発現を約2倍増大したことが判明した。
図12の結果から、LNP注射後4日目に、FXNタンパク質レベルが、SH対照群と比較して、GD-28633と共にdCas9-VPRで処置した群で約20%増大したことがわかった。
【0314】
これらの結果は、FxnマウスTSSの約80bp上流をターゲティングさせたsgRNAと共にdCas9-VPRを有する融合分子を含む調節剤を含有するLNP製剤が、代用組織中のFxn遺伝子及びタンパク質レベルをインビボで増大し得ることを実証する。
【0315】
実施例5.FRDA患者由来のiPSCにおけるFXN発現の変化
この実施例では、FRDA患者由来のiPSCにおけるFXN発現の増大を目的とする、dCas9を有するターゲティング部分と、p300又はVPRのいずれかを有するエフェクター部分とを含む調節剤、例えば、融合分子の使用を実証する。
【0316】
患者(GM04078、GM03816)及び野生型(GM01717、GM03234)iPSC由来の心筋細胞(i心筋細胞)を、dCas9-p300若しくはdCas9-VPRを含む融合分子を含む調節剤をコードするmRNAで処理したが、これらは、3つのsgRNAのプール(プール1)と一緒に共送達された。sgRNAによりターゲティングされる領域は、FXN遺伝子TSSから約100bp上流である。RNAは、Lipofectamine MessengerMAX(ThermoFisher)を用い、製造者のプロトコルに従って送達した。さらに、対照として、セーフハーバー(SH)sgRNA及び未処理細胞を使用した。
【0317】
患者(GM04078、GM03816)及び野生型(GM01717、GM03234)iPSC株は、Stemcell Technologies ReproRNA OKSGMキットを用いて、製造者のプロトコルに従って初代線維芽細胞から取得した。OCT4、TRA-1-60、SOX2、SSEA4、及びNANOGに対する免疫化学染色を用いてiPSC同一性を確認し、STRを用いて親株を確認した。
【0318】
STEMdiff Cardiomyocyte Differentiation and Maintenance Kit(Stemcell Technologies)を用いて、患者iPSCをi心筋細胞に分化させた。分化15日目に、全ての細胞を解離させ、STEMdiff Cardiomyocyte Dissociation Kit及びSTEMdiff Cardiomyocyte Freezing Medium(Stemcell Technologies)を用いて、凍結保存した。患者/WT iPSC由来の心筋細胞を解凍し、StemCell Technologies EasySep Human PSC-Derived Cardiomyocyte Enrichment Kitを用いて精製した後、Corningマトリゲルをコーティングした24ウェルプレートで平板培養した。培地は、1日置きに新鮮なCardiomyocyte Maintenance Media(Stemcell Technologies)に取り換えた。平板培養から6日後に、細胞が回復して、拍動を開始したが、その時点で、それらをLNP製剤中0.5ugのmRNAで処理した。24時間後に、培地を交換し、LNPでの処理から24、48及び72時間後にサンプルを採取した。
【0319】
RNEasy MiniKit(Qiagen)を用い、製造者のプロトコルに従ってRNAをサンプルから精製した。LunaScript RT SuperMix Kit(NEB)を用いて、RNAサンプルをcDNAに逆転写した後、Taqman Fast Advanced Master Mix(Thermo Scientific)を用いたFXN特異的Taqmanアッセイを使用する定量PCR(qPCR)により解析した。標準曲線法を用いて、発現データを解析した。FXN発現をHPRT1又はGAPDHの発現に対して正規化し、各時点のSH sgRNA処理対照と比較して倍率変化を算出した。倍率変化は、各サンプルの正規化FXN mRNA量をSH対照群の平均で割ることにより算出した。
【0320】
図13に示す結果は、アッセイすることができた全ての細胞株において、dCas9-VPR調節剤コード化mRNAとプール1 sgRNAによる処理から24時間後に、FXN遺伝子発現の2.5~3.5倍の上方制御を示す。対照細胞株GM01717では、発現は、48時間までにベースラインに戻る。しかし、患者細胞株GM04078では処理の48時間後、並びに野生型対照株GM03234では48及び72時間後に、約1.5倍のFXNの上方制御が持続される。これらのデータは、dCas9-VPRとプール1 sgRNAを有する融合分子を含む調節剤が、FXNの上方制御を誘導し、この上方制御が、いくつかの株でより持続可能となり得ることを示唆している。
【0321】
図14に示す結果は、両方の患者細胞株、GM04078及びGM03816で、dCas9-p300調節剤コード化mRNAとプール1 sgRNAを用いた処理後にFXN遺伝子発現の約1.5倍の上方制御を示す。FXN発現は、2つの野生型株、GM01717及びGM03234で約1.3倍上方制御された。入手可能なデータによれば、p300媒介によるFXNの上方制御を有する融合分子を含む調節剤は、72時間後も依然として安定していると考えられ、これは、上記調節剤が、心筋細胞のFXN遺伝子発現に対して、より持続的な作用をもたらし得ることを示唆している。
【0322】
図15に示す結果から、dCas9-VPR調節剤コード化mRNAと一緒にsgRNAプール1を送達すると、患者及び野生型i心筋細胞中のFXNタンパク質レベルが72時間まで増大することがわかる。dCas9-p300調節剤コード化mRNAを伴うsgRNAプール1もまた、患者細胞株中のFXNタンパク質を若干上方制御する。
【0323】
これらの結果は、とりわけdCas9-VPRを含み、且つTSSの約100bp上流にターゲティングさせた本明細書に記載の調節剤(例えば、融合分子を含む)が、FRDAに最も罹患した細胞型(心筋細胞)の1つでFXN遺伝子及びタンパク質発現を上方制御することができることを実証する。
【配列表】
【国際調査報告】