(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】認知機能の改善における使用および物質依存症に対する使用のためのチアゾールおよびジフェニル置換スルホキシド
(51)【国際特許分類】
C07D 277/26 20060101AFI20221115BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20221115BHJP
A61P 25/34 20060101ALI20221115BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20221115BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C07D277/26 CSP
A61P25/28
A61P43/00 111
A61P25/32
A61P25/34
A61P25/30
A61K31/426
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516164
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020075338
(87)【国際公開番号】W WO2021048284
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510221733
【氏名又は名称】レッド・ブル・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】RED BULL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルベック,ゲルト
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC82
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、一般式(I)を有する化合物であって、R1が、フェニル基であり、R2が、メタ置換フェニル基であり、RTAが、置換または非置換のチアゾール環である、化合物に関する。また、本発明は、治療における使用、特に、加齢性認知低下を治療および/または予防するための、特に、ジアステレオマー的に純粋または濃縮した形態の、式(I)による上記化合物に関する。さらに、本発明は、認知機能の改善における使用、特に、ヒト個人における空間学習能力の改善における使用のための、式(I)による上記化合物に関する。また、本発明は、アルコール依存症、ニコチン依存症ならびに/または薬物依存症、特に、コカインおよび/もしくはメタンフェタミン依存症の治療および/または予防における使用のための、式(I)による上記化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、
R
1が、フェニル基であり、
R
2が、メタ置換フェニル基であり、
R
TAが、置換または非置換のチアゾール環であり、
置換が、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルチオ、エーテル、ヒドロキシル、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される残基と置換されることを意味する]
を有する化合物。
【請求項2】
置換または非置換のチアゾール環が、一般式(IIa):
【化2】
[式中、
R
3が、式(IIa)による環上に1または2回、等しくまたは独立的に存在し、
R
3が、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアリールアルキル、ハロアルコキシ、一または複数置換アルキル、一または複数置換シクロアルキル、一または複数置換ヘテロシクロアルキル、一または複数置換アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、一または複数置換アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、一または複数置換ヒドロキシアルキルアミノ、一または複数置換アルコキシ、一または複数置換アリールアルキル、一または複数置換ヒドロキシアルキル、一または複数置換チオアルキル、一または複数置換ハロアルキル、一または複数置換ハロアリール、一または複数置換ハロアリールアルキル、一または複数置換ハロアルコキシおよびカルボン酸エステルからなる群から選択される]
を有する2-1,3-または4-1,3-または5-1,3-チアゾール環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記一般式(I)を有する前記化合物の4つのジアステレオマーのうちの1つを濃縮したジアステレオマー混合物、または前記一般式(I)を有する4つのジアステレオマーのうちの1つのジアステレオマー的に純粋な化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R
2残基のメタ置換基が、
アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ハロゲン、特に、臭素置換基、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアリールアルキル、ハロアルコキシ、一または複数置換アルキル、一または複数置換シクロアルキル、一または複数置換ヘテロシクロアルキル、一または複数置換アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、一または複数置換アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、一または複数置換ヒドロキシアルキルアミノ、一または複数置換アルコキシ、一または複数置換アリールアルキル、一または複数置換ヒドロキシアルキル、一または複数置換チオアルキル、一または複数置換ハロアルキル、一または複数置換ハロアリール、一または複数置換ハロアリールアルキル、一または複数置換ハロアルコキシおよびカルボン酸エステルからなる群から選択され、
置換が、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルチオ、エーテル、ヒドロキシル、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される残基と置換されることを意味する、先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R
3が、水素もしくはアルキル、特に、メチル、またはオキシアルキル、特に、オキシメチル、またはヘテロシクロアルキル、カルボン酸、アミドおよびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの残基と置換されたアルキル、特に、ヘテロシクロアルキル、好ましくは、少なくとも2つのヘテロ原子を含むヘテロシクロアルキルと置換されたメチルである、
請求項2から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R
TAが、2-1,3-チアゾール基または5-1,3-チアゾール基、特に、5-1,3-チアゾールである、
先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R
2が、塩素、臭素またはヨウ素置換基、特に、臭素置換基をメタ位に有するフェニル環である、
先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
5-(フェニル-3-ブロモフェニル-メタンスルフィニルメチル)チアゾール、特に、5-(フェニル-3-ブロモフェニル-メタンスルフィニルメチル)-1,3-チアゾールである、
先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールである、
先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
本質的に遊離の任意の
5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、特に、遊離の任意の5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、
5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、特に、5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、および
5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、特に、5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール
である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを濃縮した、
5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、
5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、
5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、および
5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール
のジアステレオマー混合物である、請求項1から8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
治療における使用のための、先行する請求項のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
加齢性認知低下を治療および/または予防するための、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
2018ICD-10-CM診断コードR41.81による加齢性認知低下を治療および/または予防するための、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
ヒト個人における認知機能、特に、学習能力および/または記憶力の改善における使用のための、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
ヒト個人における空間学習能力および/または参照記憶課題の改善における使用のための、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記ヒト個人が、脳疾患により生じる認知機能の障害および/または参照記憶欠陥および/または動機づけ欠陥を有せず、特に、いかなる参照記憶欠陥をも有しない、請求項12から16のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
前記ヒト個人が、認知機能の障害および/または参照記憶欠陥および/または動機づけ欠陥を有せず、特に、いかなる参照記憶欠陥をも有しない、請求項12から16のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
前記ヒト個人が、脳疾患により生じる認知機能の障害および/または参照記憶欠陥および/または動機づけ欠陥、特に、参照記憶欠陥を有する、請求項12から16のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
前記ヒト個人が、アルツハイマー;ダウン症候群;血管性認知機能障害;脳卒中;前頭側頭型認知症;行動性、意味性もしくは進行性失語型認知症;レビー小体型認知症;皮質下認知症;パーキンソン病認知症;アルコール関連認知症;外傷性脳損傷により生じる認知症;ハンチントン病関連認知症;AIDS関連認知症;注意欠陥障害;加齢に関連する参照記憶欠損;脳のウイルス感染症に関連する参照記憶欠損;例えば、薬物消費により生じる、内因性精神障害、例えば、統合失調症、または外因性精神障害により生じる認知機能の障害および/または参照記憶欠陥および/または動機づけ欠陥、特に、参照記憶欠陥または認知機能の障害または参照記憶欠陥および認知機能の障害を有する、請求項19に記載の使用のための化合物。
【請求項21】
前記認知機能の障害および/または参照記憶欠陥および/または動機づけ欠陥、特に、参照記憶欠陥または認知機能の障害または参照記憶欠陥および認知機能の障害が、統合失調症により生じる、請求項20に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
前記ヒト個人が、高齢者である、請求項12から21のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項23】
ヒト個人の脳のシナプスにおけるDAT媒介ドーパミン再取込みの、特に、選択的阻害における使用のための、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
認知機能を改善するための、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項25】
改善する前記認知機能が、ヒト個人における学習能力、特に、空間学習能力、および/または記憶力、特に、参照記憶である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記ヒト個人が、認知機能の障害および/または参照記憶欠陥および/または動機づけ欠陥を有せず、特に、認知機能の障害および/または参照記憶欠陥を有しない、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1から11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物、ならびに薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む、医薬製剤。
【請求項28】
治療における使用のため、特に、加齢性認知低下を治療および/または予防するため、より詳細には、2018ICD-10-CM診断コードR41.81による加齢性認知低下を治療および/または予防するための、請求項27に記載の医薬製剤。
【請求項29】
ヒト個人における認知機能、特に、学習能力、より詳細には、空間学習能力、および/または記憶力、より詳細には、参照記憶の改善における使用のための、請求項27または28に記載の医薬製剤。
【請求項30】
高齢者における学習能力および/または記憶力、特に、空間学習能力および/または参照記憶、より詳細には、空間学習能力の改善における使用のための、請求項29に記載の医薬製剤。
【請求項31】
ヒト個人の脳のシナプスにおけるDAT媒介ドーパミン再取込みの、特に、選択的阻害における使用のための、請求項27に記載の医薬製剤。
【請求項32】
特に、認知機能の障害および/または参照記憶欠陥および/または動機づけ欠陥を有しない健常な、ヒト個人の脳のシナプスにおけるDAT媒介ドーパミン再取込みの、特に、選択的阻害のための、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項33】
アルコール依存症、ニコチン依存症または薬物依存症、特に、コカインおよび/またはメタンフェタミン依存症の治療および/または予防における使用のための、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
アルコール依存症、ニコチン依存症または薬物依存症、特に、コカインおよび/またはメタンフェタミン依存症の治療および/または予防のための、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項35】
アルコール依存症、ニコチン依存症または薬物依存症、特に、コカインおよび/またはメタンフェタミン依存症の治療および/または予防のための医薬の調製のための、請求項1から11のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項36】
アルコール依存症、ニコチン依存症または薬物依存症、特に、コカインおよび/またはメタンフェタミン依存症の治療および/または予防における使用のための、請求項27に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト個人、特に、高齢者における、認知機能、特に、学習能力および記憶力、より詳細には、空間記憶を改善するために使用し得るジアステレオマー化合物に関する。より詳細には、本発明は、認知機能、例えば、空間記憶課題の加齢性低下を治療するのに使用し得る新規な化合物に言及する。
【背景技術】
【0002】
加齢における認知低下は、平均余命が長い社会における重大な医療的および社会経済的負担となっている。加齢により誘発される認知機能障害は、種々の脳領域におけるドーパミンの減少と対応することが多い。ドーパミンは、前頭前皮質および海馬における内在神経回路ならびにこのような構造間の神経回路網活性に関わる学習および記憶において基本的役割を果たす(Werlenら、Modulating the map:dopaminergic tuning of hippocampal spatial coding and interactions,Prog.Brain Res.219:187~216;2015)。しかし、認知障害の治療の標的としてのドーパミンの作用は、関与する記憶系に依存する(Ashbyら、Differential effects of dopamine-directed treatments on cognition,Neuropsychiatr.Dis.Treat.11:1859~1875;2015)。海馬および前頭前皮質に構造的に関わる空間記憶ならびに陳述的記憶(Linssenら、Methylphenidate produces selective enhancement of declarative memory consolidation in healthy volunteers,Psychopharmacology(Berl),221:611~619;2012)および新規記憶(Takeuchiら、The synaptic plasticity and memory hypothesis:encoding,storage and persistence,Philos.Trans.R Soc Lond B Biol Sci.369:20130288;2013)の過程は、ドーパミンの神経調節機能に強力に依存する。さらに、このような脳構造間の接続性(Bertolinoら、Prefrontal-hippocampal coupling during memory processing is modulated by COMTval158met genotype.Biol.Psychiatry.60:1250~1258;2006)ならびにこのような構造内のグルタミン酸神経伝達は、主に、腹側被蓋野からのその放出によって、ドーパミンに強力に影響される。基底核(FoerdeおよびShohamy、The role of the basal ganglia in learning and memory:insight from Parkinson’s disease,Neurobiol.Learn.Mem.96:624~636;2011)、例えば、側坐核(Mulderら、Short-and long-term plasticity of the hippocampus to nucleus accumbens and prefrontal cortex pathways in the rat、in vivo,Eur.J.Neurosci 9:1603~1611;1997;Lopezら、Opposite effects of shell or core stimulation of the nucleus accumbens on long-term potentiation in dentate gyrus of anesthetized rats、Neuroscience 151:572~8;2008)および線条体(Sagratellaら、Selective reduction of hippocampal dentate frequency-potentiation in striatally lesioned rats with impaired place learning,Brain Res.660:66~72;1994,in conjunction with declarative memory)は、非陳述記憶の調節に関与し得る。
【0003】
ドーパミン輸送体(DAT)の阻害を標的として、ドーパミン作動系の課題および年齢依存的機能差の問題を回避してきた。DATにより、細胞外ドーパミンがシナプス内に再取り込みされる。したがって、ドーパミン輸送体阻害物質(DAT阻害物質)を適用すると、細胞外ドーパミン濃度の上昇が生じ(Rowleyら、Differences in the neurochemical and behavioural profiles of lisdexamfetamine methylphenidate and modafinil revealed by simultaneous dual-probe microdialysis and locomotor activity measurements in freely-moving rats,J.Psychopharmacol.28:254~69;2014)、これにより多様なドーパミン受容体に利益がもたらされ得る。
【0004】
認知機能は、ドーパミン輸送体(DAT)を標的とする医薬を含む一連の化合物によって、影響および改善することができる。ドーパミン輸送体により細胞外ドーパミンがシナプス内に再取り込みされ、阻害物質によりドーパミンの細胞外濃度が上昇し(Rowleyら、2014)、次いで、これにより学習および記憶の改善が生じ得る。例えば、DAT阻害物質が、歯状回(Tsanovら、The psychostimulant modafinil facilitates water maze performance and augments synaptic potentiation in dentate gyrus,Neuropharmacology 59:9~19;2010;Jensonら、Dopamine and norepinephrine receptors participate in methylphenidate enhancement of in vivo hippocampal synaptic plasticity,Neuropharmacology 90:23~32;2015)およびCA1(SwantおよびWagner、Dopamine transporter blockade increases LTP in the CA1 region of the rat hippocampus via activation of the D3 dopamine receptor,Learn Mem.13:161~167;2006)における海馬シナプスの可塑性、ならびにげっ歯類(Burgosら、Effect of modafinil on learning performance and neocortical long-term potentiation in rats,Brain Res.Bull.83:238~44;2010;Liら、Balanced dopamine is critical for pattern completion during associative memory recall,PLoS One.5(10)e15401.doi:10.1371/journal.pone.0015401,2010;Tsanovら、The psychostimulant modafinil facilitates water maze performance and augments synaptic potentiation in dentate gyrus.Neuropharmacology.59:9~19,2010)およびヒト(Zillesら、Genetic polymorphisms of 5-HTT and DAT but not COMT differentially affect verbal and visuospatial working memory functioning,Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci.,2012 Dec;262(8):667~76)における種々の学習課題(空間課題を含む)における作業記憶および長期記憶に影響することがわかっている。しかし、一般に使用される阻害物質のDATに対する特異性は不十分であり、ノルアドレナリンおよびセロトニン輸送体をも阻害する。この非特異性により、一般覚醒レベルに対する重度の副作用が生じ、精神病様障害、例えば、抑うつ発作が誘発され得る(Woodら、Psychostimulants and cognition: a continuum of behavioral and cognitive activation,Pharmacol.Rev.66:193~221;2014)。
【0005】
認知能力の加齢性低下は、海馬および前頭前皮質を含む種々の脳領域におけるドーパミン作動系の変性に伴う。これにより、シナプス前および後ドーパミン作動性成分が生涯を通じて別々に変化し、これにより、種々の齢級において認知機能、例えば、作業およびエピソード記憶ならびに意思決定が別々に障害される(LiおよびRieckman、Neuromodulation and aging: implications of aging neuronal gain control on cognition,Curr.Opin.Neurobiol.29:148~158;2014)。さらに、課題遂行における差はまた、認知ではなく動機づけにおける単なる差に関連し得る。
【0006】
学習および記憶形成の重要な機構としての海馬のグルタミン酸作動活性は、樹状突起棘、アクチン結合タンパク質のドレブリンにより制御される(Merriamら、Synaptic regulation of microtubule dynamics in dendritic spines by calcium,F-actin,and drebrin,J.Neurosci.,Oct 16;33(42):16471~82;2013)。海馬のドーパミン-グルタミン酸相互作用は、多数のシナプス後タンパク質、例えば、ホーマー(de BartolomeisおよびTomasetti,Calcium-dependent networks in dopamine-glutamate interaction: the role of postsynaptic scaffolding proteins,Mol.Neurobiol.,Oct:46(2):275~96;2012)および伝達物質放出のシナプス前制御因子、例えば、バスーン(Gundelfingerら、Role of Bassoon and Piccolo in Assembly and Molecular Organization of the Active Zone.Front Synaptic Neurosci.,Jan 12;7:19.doi:10.3389/fnsyn.2015.00019;2016)により実現する。ドーパミン活性化アデニル酸シクラーゼの第2のメッセンジャーとしてのcAMPにより、プロテインキナーゼA(PKA)および長期記憶形成における中心的役割を果たすcAMP応答配列結合タンパク質(CREB)に関わるドーパミン下流シグナル伝達が媒介される。その上、ヘテロ受容体複合体を介するドーパミンの機能的変化が、認知および精神疾患の文脈において報告されている(Fuxeら、Understanding the role of heteroreceptor complexes in the central nervous system,Curr Protein Pept.Sci.2014;15(7):647;Fuxeら、Dopamine heteroreceptor complexes as therapeutic targets in Parkinson’s disease,Expert Opin.Ther.Targets.19:377~98;2015;Martinez-Pinilla,Dopamine D2 and angiotensin II type 1 receptors form functional heteromers in rat striatum,Biochem.Pharmacol.96:131~42;2015)。
【0007】
「作業記憶」の用語は、単回の試行において情報を保持する、すなわち、頭の中で一過性の情報の複数の断片を能動的に保持し、ここで、これらを目標指向行動のために有用となるように処理する能力を指す、短期記憶の特定の形態であると考えることができる。Alan Baddeley(Working memory,reading and dyslexia.Advances in Psychology 34:141~152,1986.)によれば、作業記憶は、「様々な認知課題の遂行、例えば、理解、学習および推理における情報の一時的保持および処理のための系」として定義することができる。経時的に一定のままであり、多くの訓練セッションを通じて漸進的に獲得する情報の長期保存は、通常、「参照記憶」に割り当てられる(D.S.Olton,Mazes,maps,and memory,American Psychologist 34:583,1979)。つまり、作業記憶とは対照的に、参照記憶は、特定の固定的状況についての情報を保存する能力を指すため、長期記憶にさらに匹敵すると思われる。Fauciら(「Harrison’s Principles of Internal Medicine」より、第1巻、142~150頁、1988)によれば、参照記憶は、近時または遠隔のいずれかの、以前の経験から獲得した情報を指す、すなわち、参照記憶は、経時的に一定のままである、特定の状況のための知識を指す。A.N.Guitarが「The Interaction Between Spatial Working and Reference Memory in Rats on a Radial Maze」(Paper 4,2014; http://ir.lib.uwo.ca/psychd_uht)において述べたように、作業記憶および参照記憶は、独立的系として認知的かつ理学的に定義し得る。したがって、参照記憶は、長期記憶に匹敵するか、または匹敵し得る。参照記憶は、通常、多くの訓練セッションを通じて漸進的に獲得される。保存されると、参照記憶は、比較的安定であり、干渉に対して耐性であると考えられている。空間課題では、参照記憶は、エピソード記憶の2つの態様、すなわち、イベントの「何」(内容)および「何処」(場所)の次元を模倣する。
【0008】
キラル薬物の立体異性体、例えば、鏡像異性体は、これらのラセミ化合物とは異なる薬物動態学的および薬力学的特性を有し得ることが認識されている。したがって、非立体選択的アッセイを使用してラセミ薬物について作成された、薬物の体内動態および血漿薬物濃度の作用データを誤解するリスクが存在する。ラセミ形態の薬物について収集したデータは、個々の鏡像異性体に関して定量的かつ定性的に不正確であることが多い。例えば、未解明薬物のクリアランスは、この薬物動態学の過程が、鏡像異性体のそれぞれについて濃度および時間非依存性であっても、濃度および時間依存性を示し得る。
【0009】
C.J.Lolandら、Biol.Psychiatry,2012年9月1日、72(5),405~413頁(「R-Modafinil(Armodafinil):A unique dopamine up-take inhibitor and potential medication for psychostimulant abuse」)では、R-モダフィニルが、コカインのそれとは異なるin vitroでのプロファイルを呈することが見出された。しかし、代替治療としてのR-モダフィニルによるさらなる試験が必要であると結論づけた。
【0010】
WO03/059873A1では、チアゾール基、および3つのフェニル基をスルホキシド部分に隣接して含む四級炭素の両方を含む医薬化合物を開示する。このような化合物により、カルシウム活性化カリウムチャネルを制御し、SKcaおよび/またはIKcaチャネルの調節因子として作用する医薬がもたらされるものとされる。この文書によれば、提唱される医薬化合物は、呼吸器疾患、例えば、喘息、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患および鼻漏、痙攣、血管攣縮、冠動脈攣縮、腎障害、多発性嚢胞腎疾患、膀胱攣縮、尿失禁、膀胱流出障害、過敏性腸症候群、胃腸障害、分泌性下痢、虚血、脳虚血、虚血性心疾患、狭心症、冠動脈心疾患、外傷性脳損傷、精神病、不安、抑うつ、認知症、記憶および注意欠陥、アルツハイマー病、月経困難症、ナルコレプシー、レイノー病、間欠性跛行症、シェーグレン症候群、片頭痛、不整脈、高血圧、欠神発作、筋強直性ジストロフィー、口内乾燥、11型糖尿病、高インスリン血症、早期分娩、脱毛症、がん、および特に、望ましくない免疫制御作用の低下または阻害のための免疫抑制、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、溶血性貧血、悪性貧血、アフタ、アフタ性口内炎、関節炎、動脈硬化性障害、変形性関節症、関節リウマチ、aspermiogenese、気管支喘息、自己免疫性喘息、自己免疫性溶血、ベーチェット病、ベック病、炎症性腸疾患、バーキットリンパ腫、クローン病、脈絡膜炎、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クリオグロブリン血症、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、インスリン依存性I型糖尿病、若年性糖尿病、特発性尿崩症、インスリン依存性真性糖尿病、自己免疫性脱髄疾患、デュピュイトラン拘縮、脳脊髄炎、アレルギー性脳脊髄炎、水晶体過敏性眼内炎、アレルギー性腸炎、自己免疫性腸症候群、癩性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ハンマン・リッチ病、橋本病、橋本甲状腺炎、突発性難聴、感音性難聴、慢性肝炎、ホジキン病、血色素尿症発作、性腺機能低下症、限局性回腸炎、虹彩炎、白血球減少症、白血病、播種性エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、悪性リンパ肉芽腫、伝染性単核球症、重症筋無力症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感性眼炎、肉芽腫性精巣炎、膵炎、天疱瘡、尋常性天疱瘡、結節性多発動脈炎、原発性慢性多発関節炎、多発性筋炎、急性多発神経根炎、乾癬、紫斑病、壊疽性膿皮症、ケルバン甲状腺炎、ライター症候群、サルコイドーシス、失調性硬化症、進行性全身性硬化症、強膜炎、強皮症、多発性硬化症、播種性硬化症、後天性脾臓萎縮症、抗精子抗体による不妊症、血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、胸腺腫、急性前部ブドウ膜炎、白斑、AIDS、HIV、SCIDおよびエプスタインバーウイルス関連疾患、例えば、シェーグレン症候群、ウイルス(AIDSまたはEBV)関連B細胞リンパ腫、寄生虫症、例えば、リーシュマニア、および免疫抑制性疾患状態、例えば、同種移植術後のウイルス感染症、移植片対宿主症候群、移植片拒絶、またはAIDS、がん、慢性活動性肝炎および糖尿病、毒素性ショック症候群、食中毒、ならびに移植片拒絶のような疾患または症状の治療に適するものとされる。
【0011】
US2002/0183334は、置換チオアセトアミドについてである。US2002/0183334に開示されている一連のかなり広範な化合物は、眠気、疲労、パーキンソン病、脳虚血、脳卒中、睡眠時無呼吸、摂食障害、注意欠陥多動障害、認知障害、大脳皮質の機能低下症と関連する障害、抑うつ、統合失調症および慢性疲労症候群の治療、ならびに覚醒の促進、食欲の刺激または体重増加の刺激にも適するものとされる。
【0012】
WO03/066035では、真性糖尿病の治療に適するものとされる広範なチオエーテルスルホンアミドを開示している。
【0013】
US2005/0234040では、三環系芳香族およびビス-フェニルスルフィニル誘導体に言及している。この文書に明示される化合物により、過剰の眠気、覚醒の促進および/または改善、好ましくは、ナルコレプシーと関連する過剰な眠気を有する患者における覚醒の改善、睡眠時無呼吸、好ましくは、閉塞性睡眠時無呼吸/低呼吸および交代勤務障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳虚血、脳卒中、摂食障害、注意欠陥障害(「ADD」)、注意欠陥多動障害(「ADHD」)、抑うつ、統合失調症、疲労、好ましくは、がんまたは神経疾患と関連する疲労、例えば、多発性硬化症および慢性疲労症候群の治療、食欲および体重増加の刺激ならびに認知障害の改善に適する医薬がもたらされるものとされる。
【0014】
EP2292213A1によれば、特定の多形形態のR-(-)-モダフィニル、および1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤からなる医薬組成物は、ナルコレプシーを有する対象を治療可能であり、当量のラセミ形態のモダフィニルと比較した場合、高用量において、血漿濃度のより長期の持続およびより高い全体的曝露を確実とする、医薬組成物の使用により得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
多数の試みがなされているが、既知の学習および/または記憶欠陥に効率的および効果的に対処することが可能となる方法を提供することが望ましい。記憶および学習機能のさらなる改善を示す化合物および方法が、未だ求められている。したがって、本発明の目的は、特に、高齢者における、学習能力および記憶力を高める薬剤を提供することである。本発明の別の目的は、認知機能の加齢性低下を治療すること、ならびに学習能力および記憶力の改善を次いで必要とする加齢性低下および/または障害の治療のために使用し得る有効な薬剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明では、一般式(I):
【0017】
【0018】
[式中、
R1が、フェニル基であり、
R2が、メタ置換フェニル基であり、
RTAが、置換または非置換のチアゾール環であり、
置換が、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルチオ、エーテル、ヒドロキシル、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される残基と置換されることを意味する]
を有する化合物を提供する。
【0019】
RTAが、一般式(IIa)
【0020】
【0021】
[式中、R3が、式(IIa)による環上に1または2回、等しくまたは独立的に存在し、
R3が、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアリールアルキル、ハロアルコキシ、一または複数置換アルキル、一または複数置換シクロアルキル、一または複数置換ヘテロシクロアルキル、一または複数置換アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、一または複数置換アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、一または複数置換ヒドロキシアルキルアミノ、一または複数置換アルコキシ、一または複数置換アリールアルキル、一または複数置換ヒドロキシアルキル、一または複数置換チオアルキル、一または複数置換ハロアルキル、一または複数置換ハロアリール、一または複数置換ハロアリールアルキル、一または複数置換ハロアルコキシおよびカルボン酸エステルからなる群から選択される]
を有する2-1,3-または4-1,3-または5-1,3-チアゾール環である、式(I)によるこのような化合物が好ましいことが見出された。
【0022】
加えて、またはあるいは、
R2残基のメタ置換基が、
アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ハロゲン、特に、臭素置換基、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、チオアルキル、ハロアルキル、ハロアリール、ハロアリールアルキル、ハロアルコキシ、一または複数置換アルキル、一または複数置換シクロアルキル、一または複数置換ヘテロシクロアルキル、一または複数置換アルキルアミノ、特に、ジアルキルアミノ、一または複数置換アリールアミノ、特に、ジアリールアミノ、一または複数置換ヒドロキシアルキルアミノ、一または複数置換アルコキシ、一または複数置換アリールアルキル、一または複数置換ヒドロキシアルキル、一または複数置換チオアルキル、一または複数置換ハロアルキル、一または複数置換ハロアリール、一または複数置換ハロアリールアルキル、一または複数置換ハロアルコキシおよびカルボン酸エステルからなる群から選択され、
置換が、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルチオ、エーテル、ヒドロキシル、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物からなる群から選択される残基と置換されることを意味し、ならびに/あるいは
R3が、水素もしくはアルキル、特に、メチル、またはオキシアルキル、特に、オキシメチル、またはヘテロシクロアルキル、カルボン酸、アミドおよびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの残基と置換されたアルキル、特に、ヘテロシクロアルキル、好ましくは、少なくとも2つのヘテロ原子を含むヘテロシクロアルキルと置換されたメチルである、
式(I)によるこのような化合物が好ましいことが見出された。
【0023】
これに関してさらにより好ましいものは、2-1,3-チアゾール基または5-1,3-チアゾール基、特に、5-1,3-チアゾール基を表すRTA残基である。
【0024】
ヘテロシクロアルキルは、好ましくは、モルホリノ、ピペラジノおよびメチルピペラジノからなる群から選択される。
【0025】
アリール、すなわち、アリール基は、本発明の意味では、好ましくは、フェニルおよび置換アリールを表し、好ましくは、一または複数置換フェニルを表す。例となる置換フェニルとしては、例えば、-o-C6H4-R’、-m-C6H4-R’および-p-C6H4-R’が挙げられ、ここで、R’は、本明細書に定義するか、またはR3、R4、R5、R6およびR7残基に定義するアルキルである。融合アリールは、本発明の意味では、好ましくは、少なくとも1つの芳香環系と融合した芳香環、特に、炭素原子5~15個からなる融合アリール基、例えば、ナフチルおよびアントラセニルを表す。また、このような融合アリールは、本明細書に定義するように、一または複数置換、例えば、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントラセニルまたは2-アントラセニルであり得る。
【0026】
ヘテロアリール、すなわち、ヘテロアリール基は、本発明の意味では、好ましくは、O、NおよびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~8員の複素環芳香族基を表す。また、ヘテロアリールは、本発明の意味では、別の芳香環に融合したヘテロアリール環を含む。また、ヘテロアリールおよび融合ヘテロアリールの両基は、本明細書に定義するように、一または複数置換であり得る。
【0027】
アルキル、すなわち、アルキル基は、本発明の意味では、好ましくは、アルキル、アルケニルおよびアルキニル残基、特に、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニルおよびC2~C6アルキニル残基を含む。適する残基は、-CH3、-C2H5、-CH=CH2、-C≡CH、-C3H7、-CH(CH3)2、-CH2-CH=CH2、-C(CH3)=CH2、-CH=CH-CH3、-C≡C-CH3、-CH2-C≡CH、-C4H9、-CH2-CH(CH3)2、-CH(CH3)-C2H5、-C(CH3)3、-C5H11、-C6H13、-C(R’)3、-C2(R’)5、-CH2-C(R’)3、-C3(R’)7、
-C2H4-C(R’)3、-C2H4-CH=CH2、-CH=CH-C2H5、-CH=C(CH3)2、-CH2-CH=CH-CH3、
-CH=CH-CH=CH2、-C2H4-C≡CH、-C≡C-C2H5、-CH2-C≡C-CH3、-C≡C-CH=CH2、
-CH=CH-C≡CH、-C≡C-C≡CH、-C2H4-CH(CH3)2、-CH(CH3)-C3H7、-CH2-CH(CH3)-C2H5、-CH(CH3)-CH(CH3)2、-C(CH3)2-C2H5、-CH2-C(CH3)3、-C3H6-CH=CH2、
-CH=CH-C3H7、-C2H4-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH-C2H5、-CH2-CH=CH-CH=CH2、
-CH=CH-CH=CH-CH3、-CH=CH-CH2-CH=CH2、-C(CH3)=CH-CH=CH2、
-CH=C(CH3)-CH=CH2、-CH=CH-C(CH3)=CH2、-CH2-CH=C(CH3)2、C(CH3)=C(CH3)2、-C3H6-C≡CH、-C≡C-C3H7、-C2H4-C≡C-CH3、-CH2-C≡C-C2H5、-CH2-C≡C-CH=CH2、-CH2-CH=CH-C≡CH、-CH2-C≡C-C≡CH、-C≡C-CH=CH-CH3、-CH=CH-C≡C-CH3、
-C≡C-C≡C-CH3、-C≡C-CH2-CH=CH2、-CH=CH-CH2-C≡CH、-C≡C-CH2-C≡CH、
-C(CH3)=CH-CH=CH2、-CH=C(CH3)-CH=CH2、-CH=CH-C(CH3)=CH2、-C(CH3)=CH-C≡CH、-CH=C(CH3)-C≡CH、-C≡C-C(CH3)=CH2、-C3H6-CH(CH3)2、-C2H4-CH(CH3)-C2H5、-CH(CH3)-C4H9、-CH2-CH(CH3)-C3H7、-CH(CH3)-CH2-CH(CH3)2、-CH(CH3)-CH(CH3)-C2H5、-CH2-CH(CH3)-CH(CH3)2、-CH2-C(CH3)2-C2H5、-C(CH3)2-C3H7、-C(CH3)2-CH(CH3)2、-C2H4-C(CH3)3、-CH(CH3)-C(CH3)3、-C4H8-CH=CH2、-CH=CH-C4H9、-C3H6-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH-C3H7、-C2H4-CH=CH-C2H5、-CH2-C(CH3)=C(CH3)2、-C2H4-CH=C(CH3)2、-C4H8-C≡CH、-C≡C-C4H9、-C3H6-C≡C-CH3、
-CH2-C≡C-C3H7および-C2H4-C≡C-C2H5からなる群から選択され、
ここで、R’は、式(I)について上に概要を述べるR3残基として定義することができる。上に言及するR’は、好ましくは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチルまたはイソブチル、特に、水素、メチルまたはi-プロピルである。
【0028】
式(I)の好ましい一実施形態によるアルキル基は、特に、R3残基について、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチルおよびイソブチル、好ましくは、メチルまたはイソプロピルであり、より好ましくは、アルキルは、メチル、エチル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなる群から選択される。
【0029】
アリールアルキル、すなわち、アリールアルキル基は、本発明の意味では、好ましくは、上に定義する少なくとも1つのアリール基、好ましくは、ベンジルまたはフェニルエチルで置換された、直鎖または分枝鎖のC1~C6アルキルを表す。適する一または複数置換アリールアルキルとしては、例えば、4-ヒドロキシベンジル、3-フルオロベンジルまたは2-フルオロフェニルエチルが挙げられる。
【0030】
シクロアルキル、すなわち、シクロアルキル基は、本発明の意味では、好ましくは、炭素原子3~8個、好ましくは、炭素原子4~8個を含む非芳香環系を表す。一または複数置換シクロアルキルでは、環における炭素原子の1つまたは複数が、上に定義するR’基、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-、i-またはt-ブチルにより置換され得る。適するC3~C8シクロアルキル基は、-シクロ-C3H5、-シクロ-C4H7、-シクロ-C5H9、-シクロ-C6H11、-シクロ-C7H13および-シクロ-C8H15からなる群から選択され得る。
【0031】
ヘテロシクロアルキル、すなわち、ヘテロシクロアルキル基は、本発明の意味では、好ましくは、1つまたは複数の環状炭素原子がヘテロ原子官能基、例えば、O、S、SO、SO2、NまたはNR’2により置換されている非芳香族炭素環系を表し、ここで、R’は、上に概要を述べるものとして定義する。好ましい、ヘテロシクロアルキル基は、モルホリン-4-イル、ピペラジニルおよび1-アルキルピペラジン-4-イルからなる群から選択され得る。
【0032】
ヒドロキシアルキル、すなわち、ヒドロキシアルキル基は、本発明の意味では、好ましくは、アルキル基が上に概要を述べるもの、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-、i-またはt-ブチルとして定義されるヒドロキシアルキル基を表す。適するヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルおよびヒドロキシイソプロピル基からなる群から選択される。式(I)の好ましい実施形態によるヒドロキシアルキル基は、ヒドロキシメチルである。結合すると、アルキルまたはメチル基はまた、アルキレンまたはメチレン基としてそれぞれ表し得る。
【0033】
アルキルチオ、すなわち、アルキルチオ基は、本発明の意味では、好ましくは、アルキル基が、好ましくは、R3について、上に概要を述べるものとして定義されるアルキルチオ基、特に、チオメチルを表す。
【0034】
ハロアルキル、すなわち、ハロアルキル基は、本発明の意味では、好ましくは、アルキル基が、好ましくは、R3について、上に概要を述べるものとして定義されるハロアルキル基を表し、ここで、上記アルキルが、1つまたは複数のハロゲン原子により置換され、好ましくは、ハロゲン原子、特に、フッ素または塩素原子1~5個により置換される。好ましい実施形態では、ハロアルキル基は、-C(R10)3、-CR10(R10’)2、-CR10(R10’)R10’’、-C2(R10)5、-CH2-C(R10)3、-C(R10’)2-CH(R10’)2、-CH2-CR10(R10’)2、-CH2-CR10(R10’)R10’’、-C3(R10)7または-C2H4-C(R10)3からなる群から選択され、ここで、R10、R10’、R10’’は、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、Fを表す。
【0035】
ハロアリール、すなわち、ハロアリール基は、本発明の意味では、好ましくは、少なくとも1つの芳香族炭素原子が、1つまたは複数のハロゲン原子により置換され、好ましくは、ハロゲン原子1~5個により置換されたハロアリール基を表す。好ましくは、ハロゲン原子は、フッ素、塩素および臭素原子からなる群から選択され、好ましくは、フッ素原子である。
【0036】
ハロアリールアルキル、すなわち、ハロアリールアルキル基は、本発明の意味では、好ましくは、アリールアルキル基が上に概要を述べるものとして定義されるハロアリールアルキル基を表し、ここで、上記アリール基の少なくとも1つの芳香族炭素原子が、1つまたは複数のハロゲン原子により置換され、好ましくは、ハロゲン原子1~5個により置換される。好ましくは、ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子からなる群から、より好ましくは、フッ素および塩素原子から選択される。
【0037】
ハロアルコキシ、すなわち、ハロアルコキシ基は、本発明の意味では、好ましくは、アルコキシ基が上に概要を述べるものとして定義されるハロアルコキシ基を表し、ここで、上記アルコキシが、1つまたは複数のハロゲン原子により置換され、好ましくは、ハロゲン原子1~5個、特に、フッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素原子、より好ましくは、フッ素および/または塩素原子により置換される。好ましくは、ハロアルコキシ基は、-OC(R10)3、-OCR10(R10’)2、-OCR10(R10’)R10’’、-OC2(R10)5、-OCH2-C(R10)3、-OCH2-CR10(R10’)2、-OCH2-CR10(R10’)R10’’、-OC3(R10)7または-OC2H4-C(R10)3からなる群から選択され、ここで、R10、R10’、R10’’は、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、Fを表す。
【0038】
アルキルアミノ、すなわち、アルキルアミノ基は、本発明の意味では、好ましくは、アルキル基が、上に概要を述べるものとして定義される、特に、R3について定義される、アルキルアミノ基を表す。アルキルアミノ基は、本発明の意味では、好ましくは、(アルキル)2-N基、すなわち、ジアルキルアミノ基、またはアルキル-NH基を表す。ジアルキルアミノ基が好ましい。アルキルは、好ましくは、上に概要を述べるものとして定義する。
【0039】
アリールアミノ、すなわち、ジアリールアミノ基は、本発明の意味では、好ましくは、アリール基が上に概要を述べるものとして定義されるアリールアミノ基を表す。アリールアミノ基は、(アリール)2-N基、すなわち、ジアリールアミノ基、またはアリール-NH基を表す。ジアリールアミノ基、特に、ジフェニルアミノ基が好ましい。アリールは、好ましくは、上に概要を述べるものとして定義する。
【0040】
ヒドロキシアルキルアミノ、すなわち、ヒドロキシアルキルアミノ基は、本発明の意味では、好ましくは、アルキル基が、特に、R3について、上に概要を述べるものとして定義されるヒドロキシアルキルアミノ基を表し、ここで、ヒドロキシアルキルアミノ基は、(HO-アルキル)2-N基もしくはHO-アルキル-NH基、または(HO-アルキル)-N-(アルキル)基を表す。アルキルは、好ましくは、上に概要を述べるものとして定義する。
【0041】
例えば、反復するR1、R2、R3単位等からなる無限鎖を有する化合物は、本発明に包含されない。
【0042】
本明細書において述べるように任意選択で置換される成分は、他に注意別途記載しない限り、化学的に可能な任意の位置において置換され得る。
【0043】
その上、ジアステレオマー的に濃縮したかまたはジアステレオマー的に純粋な式(I)によるこのような化合物では、特に、RTAが、一般式(IIa)を有する2-1,3-または4-1,3-または5-1,3-チアゾール環である、式(I)によるこのような化合物の使用により、学習能力、特に、空間学習能力、および/または記憶機能、特に、参照記憶に関して特に改善された結果がもたらされる。
【0044】
R2が、塩素、臭素またはヨウ素置換基、特に、臭素置換基をメタ位に有するフェニル環である、式(I)によるこのような化合物は、特に好ましい。
【0045】
別の好ましい実施形態では、式(I)による化合物は、5-((((R),(R)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、
5-((((R),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、
5-((((S),(R)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、および
5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール
のジアステレオマー混合物である。
【0046】
別の好ましい実施形態では、式(I)による化合物は、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールを濃縮し、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールを濃縮し、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを濃縮したジアステレオマー混合物を表す。
【0047】
さらにより好ましくは、式(I)による化合物は、一般式(I)を有する4つのジアステレオマーのうちの1つの本質的にジアステレオマー的に純粋な化合物であり、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールであり、すなわち、これは、本質的に
任意の5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、特に、任意の5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、
5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、特に、任意の5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、および
5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、特に、任意の5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールを含まない。
【0048】
したがって、式(I)による化合物は、好ましくは、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより好ましくは、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールである。また、後者の化合物は、次の式:
【0049】
【0050】
により示すことができる。
特に、空間記憶の改善に関する、特に、高齢者または加齢性認知低下に罹患している個人における最も有望な結果を、式(I)による化合物が5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールである場合に得ることができることが見出された。
【0051】
あるいは、5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールおよび/または5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールを含む、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを濃縮したジアステレオマー的混合物も利用することができる。
【0052】
一般には、本発明により、治療における使用のため、すなわち、医薬としての使用のため、特に、加齢性認知低下を治療するため、より詳細には、2018ICD-10-CM診断コードR41.81による、例えば、米国版の2018ICD-10-CM診断コードR41.81による加齢性認知低下を治療するための、本明細書に定義する式(I)の化合物を提供する。
【0053】
特に興味深いことには、式(I)の化合物、好ましくは、ジアステレオマー的に純粋な5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、または5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを濃縮したジアステレオマー混合物によって、学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶に関する改善が、記憶欠陥および/または認知障害を有しないヒト個人に達成可能である。
【0054】
したがって、このような結果はまた、脳疾患により生じる参照記憶欠陥および/または認知障害を有しない個人において得ることができる。したがって、本発明による化合物は、健常な個人に投与することもでき、また、参照記憶、および/または他の認知能力、例えば、学習能力を改善するのに(またはそれぞれの欠陥を克服するのに)健常な個人に有効である。したがって、本発明はこれにより、健常な個人、特に、健常な高齢者における学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶の改善ための本発明による化合物の使用にも関する。
【0055】
加えて、本発明はまた、脳疾患により生じる参照記憶欠陥および/または認知障害、特に、参照記憶欠陥を有するヒト個人における、学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶の改善ための、本発明による化合物の使用に関する。これに関しては、アルツハイマー;ダウン症候群;血管性認知機能障害;脳卒中;前頭側頭型認知症;行動性、意味性もしくは進行性失語型認知症;レビー小体型認知症;皮質下認知症;パーキンソン病認知症;アルコール関連認知症;外傷性脳損傷により生じる認知症;ハンチントン病関連認知症;AIDS関連認知症;注意欠陥障害;または統合失調症により生じる参照記憶欠陥および/または認知障害、および/または特に、参照記憶欠陥を有するか、あるいは任意の型の認知機能障害を有する患者を、式(I)による化合物により治療することができる。
【0056】
式(I)による本発明の化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールは、単独で、または認知機能障害を治療し、参照記憶を改善する他の認知強化化合物、例えば、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、クロザピン、リスペリドン、メマンチン、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、クロザピン、D1アゴニスト、アルファ7ニコチンアゴニスト、d-セリン、d-サイクロセリン、PDE2,4,9阻害物質、AMPAアゴニスト、ラモトリギン、n-デスメチルクロザピン、mGlu受容体アゴニスト、GABA A受容体アゴニスト、ムスカリン1および4受容体アゴニストと組み合わせて使用することができる。
【0057】
本発明による化合物は、健常な個人および高齢者における特定の需要のため、学習欠陥および/または記憶欠陥、特に、空間学習および記憶課題欠陥、脳疾患、精神疾患または認知欠陥を有する患者、特に、アルツハイマー、ダウン症候群、脳卒中(血管性認知機能障害)、前頭側頭型認知症、行動性、意味性もしくは進行性失語型認知症、レビー小体型認知症、皮質下認知症およびパーキンソン病認知症、アルコール関連認知症、外傷性脳損傷により生じる認知症、ハンチントン病関連認知症、AIDS関連認知症、注意欠陥障害、または統合失調症を有する患者を治療するのに特に有用である。
【0058】
式(I)による化合物、好ましくは、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より好ましくは、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールは、上に言及する障害のいずれかを有するかまたはこれを発症するリスクを有する患者に、有効量で投与することができる。また、学習能力および/または記憶力、特に、参照記憶、より好ましくは、空間学習能力および参照記憶を改善するために、健常な個人に化合物を投与することが可能である。
【0059】
好ましい実施形態によれば、好都合には、本発明による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを単一単位剤形により、特に、カプセルまたは錠剤として投与する。好ましい製剤としては、油中に溶解した、式(I)による少なくとも1つの化合物を、カプセル内に1つまたは複数の乳化剤とともに含む軟ゼラチンカプセルが挙げられる。したがって、1つまたは複数の乳化剤、および少なくとも1種の油に溶解した式(I)による少なくとも1つの化合物をも含むゼラチンカプセルが好ましい。
【0060】
好ましい投薬量としては、約1mg/kg~約25mg/kg体重の投薬量が挙げられる。また、適する剤形としては、式(I)による少なくとも1つの化合物を約0.1mg~約10g、好ましくは、約1mg~約1g、より好ましくは、約10mg~約200mgの量で含む製剤が挙げられる。
【0061】
好ましい実施形態によれば、本発明による式(I)の化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールは、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、クロザピン、リスペリドン、メマンチン、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、クロザピン、D1アゴニスト、アルファ7ニコチンアゴニスト、d-セリン、d-サイクロセリン、PDE2,4,9阻害物質、AMPAアゴニスト、ラモトリギン、n-デスメチルクロザピン、mGlu受容体アゴニスト、GABA A受容体アゴニスト、ムスカリン1および4アゴニストまたは他の認知強化化合物の可能性があるものからなる群から選択される、助剤とも呼ばれる1つまたは複数の化合物を少なくとも含む製剤の一部であり得るか、またはこれとともに投与することができる。
【0062】
また、本発明の目的は、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールの、学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶、より詳細には、空間学習能力および参照記憶の改善ための医薬の製造における使用により解決した。
【0063】
本発明の別の態様によれば、哺乳動物、特に、ヒト個人の脳のシナプスにおけるDAT媒介ドーパミン再取込みの、特に、選択的阻害における使用、また、哺乳動物、特に、ヒト個人の脳のシナプスにおけるDAT媒介ドーパミン再取込みを阻害するための医薬の製造における使用のための、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールが見出された。式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールによって、DATの阻害は、高度に有効であるだけでなく、SERTおよびNET阻害に対して高度に特異的である。高特異性を有するDAT阻害は、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールによって、7.5μM以下、特に、4.5μM以下、より詳細には、2.5μM以下、さらにより詳細には、1.75μM以下、より好ましくは、1.0μM以下のIC50で達成することができる。5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールによって、特異的DAT阻害は、0.75μM以下、好ましくは、0.5μM以下、さらにより好ましくは、0.3μM以下の濃度でも達成することができる。測定は、in vitroでの再取込み阻害アッセイ(実験の節に明示する)の使用に基づく。
【0064】
5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールが、脳のシナプスにおけるDAT媒介ドーパミン再取込みの選択的阻害において、5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールおよび(S)-5-(ジフェニルメタンスルフィニルメチル)-1,3-チアゾールの少なくとも5倍、特に、少なくとも8倍、より詳細には、少なくとも10倍有効であることが、驚くべきことに見出された。
【0065】
その上、本発明の目的はまた、式(I)による少なくとも1つの化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物によって本明細書において言及する、医薬製剤により解決した。したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明による化合物および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬製剤に関する。
【0066】
医薬「担体」、「希釈剤」ならびに「賦形剤」は、本発明による化合物または薬学的作用を有する他の化合物(例えば、神経学的または行動学的作用をも有する)に、補助物質として医薬組成物中で混合される物質である。このような補助物質は、それ自体が薬学的作用を有しない(これらは、それ自体が「活性物質」ではない)が、本発明による化合物の有効性の最適化を助け得る。「担体」、「希釈剤」および「賦形剤」として使用される物質は、互換的に使用されることが多い場合がある(すなわち、「希釈剤」として使用される物質が、「賦形剤」および/または「担体」としても作用し得る)。
【0067】
一般には、「担体」は、薬物の送達および有効性を向上させる物質であり、「希釈剤」は、医薬製剤中の活性物質を希釈する物質であり、「賦形剤」は、その放出特性を定義するために医薬製剤に混合する物質である。
【0068】
このような「担体」、「希釈剤」および「賦形剤」はすべて(すなわち、補助物質、「賦形剤」の用語も、このような物質のすべてを含む一般用語として使用することがある)、既に述べたように、強力な活性成分を含む製剤を嵩上げする目的のために(したがって、「充填剤」、「フィラー」または「希釈剤」と呼ばれることも多い)、医薬の活性成分(「API」)と並行して製剤化された不活性物質である。嵩上げにより、剤形を生産する場合、原薬の簡便かつ正確な分注が可能となる。また、これらは、種々の治療強化目的、例えば、薬物の吸収もしくは溶解性、または他の薬物動態学的考察を容易とする目的を果たし得る。また、このような物質は、in vitroでの安定性、例えば、予想有効期間を通じた変性の防止を助けるのに加えて、例えば、粉末流動性または非固着特性を促進させることが懸念される活性物質の取扱いを助けるのに、製造工程において有用であり得る。また、適切な賦形剤、担体および希釈剤の選択は、投与経路および剤形、ならびに活性成分および他の因子に依存する。このような物質は、例えば、抗接着剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、フィラー、香味料、着色剤、滑沢剤、流動促進剤、吸着剤、保存剤、甘味剤等として作用する。
【0069】
薬物「担体」は、薬物の送達および有効性を向上させる機構として作用する物質である。薬物担体は、通常、様々な薬物送達系、例えば、in vivoでの薬物作用を延長して、薬物代謝を低下させ、薬物毒性を低下させる放出制御技術において使用する。
【0070】
また、担体は、薬理学的作用の標的部位への薬物送達の有効性を向上させるための設計において一般に使用する。
【0071】
薬物「希釈剤」は、通常、医薬組成物(例えば、乾燥形態での保存後の)を単純に希釈または再構成する物質である。
【0072】
式(I)による少なくとも1つの化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを有する医薬組成物は、通常、上記化合物を、個体組成物では、約0.01(%w/w)~約80(%w/w)または液体組成物では、約0.001(%w/v)~約80(%w/v)の量で含む。好ましくは、本発明による化合物は、個体組成物では、約0.1(%w/w)~約50(%w/w)または液体組成物では、約0.01(%w/v)~約10(%w/v)の量、特に、個体組成物では、約1(%w/w)~約0(%w/w)または液体組成物では、約0.1(%w/v)~約5(%w/v)の量で存在する。
【0073】
既に述べたように、好ましくは、医薬組成物として、特に、単一の医薬単位剤形としての、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを提供する。本発明において提供する医薬組成物および単一単位剤形は、予防的または治療的有効量の式(I)による1つまたは複数の化合物、および任意選択で、1つまたは複数のさらなる予防的または治療的薬剤(例えば、特に、本発明において提供する化合物、または他の予防的もしくは治療的薬剤)も、および1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤または希釈剤を含む。特に好ましい実施形態およびこの文脈では、「薬学的に許容される」の用語は、動物、より詳細には、ヒトにおける使用について、連邦もしくは州政府の規制当局により認可されるか、あるいは欧州もしくは米国薬局方または他の一般に認識されている薬局方に収載されることを意味する。
【0074】
「担体」の用語は、一実施形態では、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全および不完全))または治療薬をともに投与するビヒクルを指す。このような医薬担体は、滅菌液、例えば、水および油であってもよく、石油、動物、植物または合成起源の油、例えば、ピーナツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等を含む。水は、医薬組成物を静脈内に投与する場合、特定の担体である。また、食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液を、特に、注射液用に、液体担体として利用することができる。
【0075】
一実施形態では、医薬組成物および剤形は、1つまたは複数の賦形剤を含む。適する賦形剤は、薬学の技術分野の当業者に周知であり、適する賦形剤の非限定的な例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。特定の賦形剤が医薬組成物または剤形への組込みに適するかどうかは、通常、限定されないが、剤形を患者に投与する方法、および剤形中の特定の活性成分を含む、当技術分野において周知の多様な因子に依存する。また、組成物または単一単位剤形は、必要に応じて、少量の湿潤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含み得る。
【0076】
剤形の例としては、錠剤;カプレット;カプセル、例えば、弾性軟ゼラチンカプセル;カシェー;トローチ;薬用キャンディー;分散剤;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト剤;散剤;包帯剤;クリーム;硬膏剤;溶液;パッチ;エアロゾル(例えば、点鼻薬または吸入剤);ゲル;懸濁剤(例えば、水性もしくは非水性液体懸濁剤、水中油乳剤、または油中水液体乳剤)、溶液およびエリキシル剤を含む、患者への経口または粘膜投与に適する液体剤形;患者への非経口投与に適する液体剤形;ならびに再構成して、患者への非経口投与に適する液体剤形をもたらすことが可能な滅菌固体(例えば、結晶性または非結晶性固体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
経口剤形に使用し得る好適な賦形剤の例としては、結合剤、フィラー、崩壊剤および潤滑剤が挙げられるが、これらに限定されない。医薬組成物および剤形における使用に適する結合剤としては、コンスターチ、ジャガイモデンプンまたは他のデンプン、ゼラチン、天然および合成ガム、例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸、トラガント末、グアーガム、セルロースおよびこの誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、No.2208、2906、2910)微結晶セルロース、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本明細書で開示される組成物および剤形における使用に好適なフィラーの例としては、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において提供する医薬組成物中の結合剤またはフィラーは、医薬組成物または剤形の約50~約99質量パーセントで典型的に存在する。
【0079】
微結晶セルロースの適する形態としては、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation社、American Viscose Division、Avicel Sales、Marcus Hook、PAから入手可能)として販売されている物質、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の結合剤は、AVICEL RC-581として販売されている微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。適する無水または低含水賦形剤または添加剤としては、AVICEL-PH-103(商標)およびスターチ1500LMが挙げられる。
【0080】
崩壊剤は、水性環境に曝露した場合に崩壊する固体剤形、例えば、錠剤をもたらすために、本発明の組成物において使用することができる。多すぎる崩壊剤を含む錠剤は、保存において崩壊し得るが、少なすぎる崩壊剤を含む錠剤は、所望の速度または所望の条件下で崩壊しない場合がある。したがって、活性成分の放出を有害に変更しないように、多すぎず少なすぎず十分な量の崩壊剤を使用して、本明細書に提供する固体経口剤形を形成すべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤の種類によって異なり、当業者に容易に識別可能である。典型的医薬組成物は、約0.5~約15質量パーセントの崩壊剤、詳細には、約1~約5質量パーセントの崩壊剤を含む。
【0081】
医薬組成物および剤形に使用し得る好適な崩壊剤としては、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン酸、他のセルロース、ガム、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
医薬組成物および剤形に使用し得る好適な滑沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、ピーナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる滑沢剤としては、例えば、syloidシリカゲル(AEROSIL200、W.R.Grace Co.社、Baltimore、MDにより製造)、合成シリカの凝固エアロゾル(Degussa Co.社、Piano、TXにより販売)、CAB-O-SIL(発熱性二酸化ケイ素生成物、Cabot Co.社、Boston、MAにより販売)およびこれらの混合物が挙げられる。仮に使用する場合、滑沢剤は、組み込む医薬組成物または剤形の約1質量パーセント未満の量で典型的に使用する。
【0083】
本明細書に記載する活性成分、例えば、本発明において提供する式(I)による化合物および/または助剤は、当業者に周知の放出制御手段または送達装置により投与することができる。このような剤形は、様々な割合で所望の放出プロファイルをもたらす、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透圧系、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、ミクロスフィア、またはこれらの組合せを使用する、1つまたは複数の活性成分の徐放または放出制御を可能とするのに使用することができる。本明細書に記載するものを含む、当業者に公知の適する放出制御製剤は、活性成分との使用のために容易に選択することができる。したがって、経口投与に適する単一単位剤形、例えば、限定されないが、放出制御に適する錠剤、カプセル、ゲルカップおよびカプレットを提供する。
【0084】
すべての放出制御医薬生成物は、非制御対応物により達成されるものを越えて薬物治療を向上させる共通の目標を有する。理想的には、医学的処置における最適に設計された放出制御製剤の使用は、最小限の原薬を利用して最小限の時間で症状を治癒または制御することにより特徴づけられる。放出制御製剤の利点は、薬物活性の延長、投薬頻度の減少および患者コンプライアンスの向上を含む。加えて、放出制御製剤は、作用または他の特性、例えば、薬物の血中レベルの発現時間に影響させるために使用することができ、したがって、副(例えば、有害)作用の発生に影響させることができる。
【0085】
ほとんどの放出制御製剤は、所望の治療作用を迅速にもたらす一方の薬物(活性成分)量をはじめに放出し、治療的または予防的作用のこのレベルを長時間にわたって維持する他方の薬物量を徐々にかつ連続的に放出するように設計する。体内でこの一定の薬物レベルを維持するために、薬物は、代謝されて体から排出される薬物量を置換する速度で剤形から放出しなければならない。活性成分の放出制御は、限定されないが、pH、温度、酵素、水を含む種々の条件もしくは他の生理学的条件または化合物により刺激され得る。
【0086】
非経口剤形は、限定されないが、経口、皮下、静脈内(ボーラス注入を含む)、筋肉内および動脈内を含む種々の経路により患者に投与することができる。これらの投与により、夾雑物に対する患者の自然防御が典型的に迂回されるため、非経口剤形は、特定の実施形態で無菌であるか、または患者への投与前に滅菌可能である。非経口剤形の例としては、注射準備済の溶液、注射用に薬学的に許容されるビヒクルに溶解または懸濁準備済の乾燥生成物、注射準備済の懸濁剤、および乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
非経口剤形をもたらすのに使用し得る好適なビヒクルは、当業者に周知である。例としては、Water for Injection USPと、水性ビヒクル、例えば、限定されないが、塩化ナトリウム注、リンゲル注、デキストロース注、デキストロースおよび塩化ナトリウム注、ならびに乳酸リンゲル注と、水混和性ビヒクル、例えば、限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールと、非水性ビヒクル、例えば、限定されないが、com油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルとが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬製剤は、リバスチグミン、ドネペジル、ガランタミン、クロザピン、リスペリドン、メマンチン、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、クロザピン、D1アゴニスト、アルファ7ニコチンアゴニスト、d-セリン、d-サイクロセリン、PDE2,4,9阻害物質、AMPAアゴニスト、ラモトリギン、n-デスメチルクロザピン、mGlu受容体アゴニスト、GABA A受容体アゴニスト、ならびにムスカリン1および4アゴニストまたはその他の潜在的認知強化化合物、薬剤からなる群から選択される1つまたは複数の化合物をさらに含む。
【0089】
式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールの好ましい投薬量は、0.1mg~10g、好ましくは、1mg~1g、特に、10mg~200mgの本発明による化合物である。既に述べたように、本発明は、医薬の製造のための、式(I)による組成物の使用に関する。また、本発明は、療法薬、すなわち、認知機能障害、認知症および/または参照記憶欠陥の薬理学的治療または予防のための療法薬の製造のための、式(I)による少なくとも1つの化合物を含む組成物の使用に関する。
【0090】
式(I)の化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールは、ヒト、げっ歯類、他の哺乳動物に、治療薬それ自体および相互の混合物として、または経腸もしくは非経口使用が可能となり、活性成分として有効用量の式(I)の化合物を含む医薬製剤の形態で、投与することができる。有効用量範囲は、個々の患者の重症度および必要性に容易に適合させることができる。好ましい用量は、通例の薬学的に無害の賦形剤および添加剤に加えて1mg~10mg/kg体重である。
【0091】
提唱する治療薬は、経口的に、例えば、丸剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬および軟ゼラチンカプセル、溶液、シロップ、乳剤または懸濁剤の形態で投与することができる。しかし、投与はまた、直腸内に、例えば、坐剤の形態で、または非経口的に、例えば、注射もしくは輸注の形態で、または経皮的に、例えば、軟膏、クリームまたはチンキ剤の形態で行うことができる。
【0092】
式(I)の活性化合物に加えて、医薬組成物は、さらなる通例の、通常は不活性な担体物質または賦形剤、特に、上に概要を述べるものを含み得る。したがって、医薬製剤はまた、添加剤、例えば、フィラー、増量剤、崩壊剤、結合剤、流動促進剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、保存剤、甘味剤、着色剤、香味剤または芳香剤、緩衝物質、さらには、溶媒もしくは溶解剤、またはデポ作用を達成するための薬剤、ならびに浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤または抗酸化剤を含み得る。
【0093】
本発明の化合物は、一物質を単独の形態で、または他の活性化合物、例えば、健常な個人、特に、健常な高齢者の参照記憶を改善することが既にわかっている治療薬と組み合わせて、使用することができる。
【0094】
また、本発明では、式(I)の化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールを遊離の形態または薬学的に許容される製剤の形態で、薬学的に許容される希釈剤または担体とともに含む医薬組成物を提供する。
【0095】
式(I)の化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾール、さらに薬学的に許容されるこれらの塩または溶媒和化合物は、学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶の改善のための活性成分として、健常または未障害の個人においても使用することができる。
【0096】
式(I)による本発明の化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールは、例えば、モダフィニル(2-(ジフェニルメチル)スルフィニルアセトアミド)よりも何倍も有効であり、また何倍も選択的である。
【0097】
また、本発明は、健常な個人もしくは高齢者、または認知機能障害を有する個人の学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶の改善のため、あるいは学習能力および記憶力、より詳細には、空間学習および記憶課題の改善が有益である疾患の治療または治療指標のための医薬の製造における、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールの使用、および生理学的機能性誘導体の使用に関する。
【0098】
好ましくは、本発明による医薬組成物は、健常な個人もしくは高齢者の治療、または学習能力および記憶力、より詳細には、空間学習および記憶課題の欠陥を伴う疾患もしくは病状の治療における使用のための、式(I)により定義する化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールを遊離の形態で、および薬学的に許容される希釈剤または担体を含む。
【0099】
しかし、一般には、本発明によって、治療における使用、すなわち、医薬としての使用のため、特に、加齢性認知低下を治療するため、より詳細には、2018ICD-10-CM診断コードR41.81による、例えば、米国版の2018ICD-10-CM診断コードR41.81による加齢性認知低下を治療するための、本明細書に定義する式(I)による化合物のS鏡像異性体ならびに少なくとも1つの薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物をも提供している。
【0100】
式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールは、認知機能の障害および/もしくは参照記憶欠陥、または脳疾患により生じるこのような任意の障害もしくは欠陥を有しないヒト個人による学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶を改善するために、特に使用することができる。あるいは、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールは、脳疾患により生じる認知機能の障害および/または参照記憶欠陥を有するヒト個人のために使用することができる。このような認知機能の障害および/または参照記憶欠陥の原因は、上に言及するものである。
【0101】
したがって、本発明の問題はまた、ヒト個人、特に、高齢者における学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶を改善するための医薬の調製のための、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールの使用により解決する。好ましくは、調製した上記の医薬は、認知機能の障害および/もしくは参照記憶欠陥、または脳疾患により生じるこのような任意の障害もしくは欠陥を有しないヒト個人に使用する。あるいは、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールの使用により調製した上記医薬は、脳疾患により生じる認知機能の障害および/または参照記憶欠陥を有するヒト個人を治療するために使用することができる。このような認知機能の障害および/または参照記憶欠陥の原因は、上に言及するものである。
【0102】
また、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールが、学習能力、特に、空間学習能力、および記憶力、特に、参照記憶、さらには、加齢性記憶低下の場合における改善において使用し得ることが驚くべきことに見出された。この驚くべき作用は、例えば、わずか10mg/kg、さらには、わずか1mg/kg体重の式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールの使用により得ることができる。また、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールが、DAT阻害に対する非常に高い特異性および可能性を有し、予期せぬいかなるオフターゲット活性をも示さないことが驚くべきことに見出された。例えば、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールによって、機能性細胞アッセイにおいて試験した157Gタンパク質共役受容体(GPCR)(66GPCRファミリー)のいずれに対するアゴニストまたはアンタゴニスト活性をも見出され得ない。GPCRは、細胞外の分子を検出し、細胞応答を引き起こす内部シグナル伝達経路を活性化することがわかっている。式(I)の化合物、特に、この(S),(S)-ジアステレオマーは、好ましくは、ジアステレオマー的に純粋な形態では、驚くべきことに、非常に低リスクの副作用を示すか、またはさらには本質的に示さない。最終濃度0.22μmol/lの5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールは、profiler screenにおいて、2.0%のDMSO/トリス緩衝液中最終アッセイ濃度へのDMSO原液の段階希釈により達成した。細胞アゴニスト作用は、各標的について、公知の参照アゴニストに対する対照応答の%として計算し、細胞アンタゴニスト作用は、各標的について、参照アゴニストの対照応答の%阻害として計算した。したがって、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールは、オフターゲット交差の可能性が極めて低いと思われる。
【0103】
また、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールが、アルコール依存症、ニコチン依存症または薬物依存症の治療および/または予防、特に、コカインおよび/またはメタンフェタミン依存症の治療および/または予防、さらにより詳細には、コカインおよびメタンフェタミン依存症の治療および/または予防において使用し得ることが驚くべきことに見出された。その上、本発明ではまた、アルコール依存症、ニコチン依存症または薬物依存症の治療および/または予防、特に、コカインおよび/またはメタンフェタミン依存症の治療および/または予防、さらにより詳細には、コカインおよびメタンフェタミン依存症の治療および/または予防における使用のための、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールを含む医薬製剤を提供する。
【0104】
また、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールが、任意の副作用、例えば、覚醒状態の亢進、抑うつ発作または依存症問題を有しないか、または本質的に有しないことが驚くべきことに見出された。
【0105】
いかなる理論にも拘束されずに、式(I)による化合物、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾール、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールによって、hERG(ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子)による早期後脱分極(EAD)または活動電位の持続時間および/もしくは形状の変化が生じないことが考えられる。この活動電位は、hERGに特異的である。これに関してはまた、このような化合物がhERGに対して、いかなる作用をも有しないことが考えられる。
【0106】
「薬学的に許容される塩」は、本発明において提供する化合物の任意の塩を指し、これは、生物学的特性を保持し、毒性でないか、さもなければ薬学的使用には望ましくない。このような塩は、当技術分野において周知の多様な有機および無機の対イオンに由来してもよく、(1)有機または無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、ケイ皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、ショウノウスルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-l-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、酢酸tertブチル、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等により形成された酸付加塩、あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、(a)金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンもしくはアルミニウムイオン、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、亜鉛、および水酸化バリウム、アンモニアにより置換されるか、あるいは(b)有機塩基、例えば、脂肪族、脂環式、または芳香族有機アミン、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレン-ジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、N-メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等と配位させる場合に形成された塩を含む。特に好ましい塩形態は、ヘキサフルオロロリン酸および塩化物塩である。
【0107】
このような塩は、単なる例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等を、化合物が塩基性官能基を含む場合は、非毒性の有機または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等をさらに含む。「生理学的に許容されるカチオン」の用語は、酸性官能基の非毒性の生理学的に許容されるカチオン性対イオンを指す。このようなカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウムカチオン等により例示される。
【0108】
また、本発明による化合物は、溶媒和化合物として提供し得る。「溶媒和化合物」は、本発明において提供する化合物またはこの塩を指し、これは、非共有的分子間力により結合する、化学量論的または非化学量論的量の溶媒をさらに含む。溶媒が水である場合、溶媒和化合物は、水和物である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【実施例】
【0110】
実験手順
反応条件および収率は、系統的に最適化しなかった。無水溶媒をSigma-Aldrich社から購入し、さらなる精製を行わずに使用した。他の化学物質および試薬はすべて、VWR International社、TCI Europe/Germany社、Synthonix社、Acros Organics社、Activate Scientific社、Fluorochem社、Enamine and AlfaAesar社から購入した。1Hおよび13C NMRスペクトルは、Bruker Avance 500NMRスペクトロメータ(UltraShield社)上で、5mmの切換え可能なプローブ(PA BBO 500SB BBF-H-D-05-Z、1H、BB=19Fおよび31P-15N)を使用し、Z軸勾配ならびに自動調整および適合アクセサリ(Bruker BioSpin社)を用いて記録した。共振周波数は、1H NMRでは500.13MHzであり、13C NMRでは125.75MHzであった。すべての測定は、完全重水素化クロロホルムまたはDMSOの溶液について、298Kで実施した。標準1Dおよび勾配強化(ge)2D実験、例えば、二重量子フィルタ(DQF)COSY、NOESY、HSQCおよびHMBCを、製造者により提供されたように使用した。化学シフトでは、残留する非重水素化溶媒シグナルをクロロホルム1H(δ=7.26ppm)またはDMSO1H(δ=2.50ppm)について、溶媒の炭素シグナルをクロロホルム13C(δ=77.00ppm)またはDMSO13C(δ=39.57ppm)について内部的に参照する。HRESIMSスペクトルは、maXis HD ESI-Qq-TOF質量分析計(Bruker Daltonics社、Bremen、Germany)上で得た。試料は、MeOH中20μg/mLに溶解し、ESIソース内に3μL/分の流量でシリンジポンプにより直接注入した。ESIイオンソースは、次のように操作した:キャピラリ電位:0.9~4.0kV(個々に最適化)、ネブライザ:0.4bar(N2)、乾燥ガス流量:4L/分(N2)および乾燥温度:200℃。質量スペクトルは、m/z50~1550の範囲内で、ポジティブイオンモードにより記録した。合計式は、Bruker Compass DataAnalysis4.2を使用し、質量精度(Δm/z≦2ppm)および同位体パターン適合(SmartFormulaアルゴリズム)に基づいて決定した。化合物の純度は、HPLCにより、VWD検出器を備えるUltiMate3000シリーズシステム(Dionex/Thermo Fisher Scientific社、Germering、Germany)またはLC-2010A HT液体クロマトグラフ装置(Shimadzu Corporation社、Tokyo、Japan)上で決定した。分離は、Acclaim 120 C18、2.1×150mm、3μmHPLCカラム(Thermo Fisher Scientific社)上で、LC-MSグレードの水およびアセトニトリルを移動相AおよびBとしてそれぞれ使用して行った。試料成分は、10%~90%Bの25分以内の直線勾配により分離および溶出した後、均一濃度カラム洗浄および再平衡化ステップを行った。流量は0.2mL/分であり、カラムオーブン温度は25℃に設定した。純度は、UVクロマトグラム(254nm)から、化合物のピーク領域に対する全ピーク領域の比率(すなわち、溶媒ブランクに存在しなかったすべてのピーク領域の合計)として決定した。HPLCデータに基づくと、すべての最終化合物は、≧95%純粋である。
【0111】
5-((((3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールジアステレオマーの合成
ジアステレオマーの合成を
図1に示す。第1のステップ(a)では、5-(クロロメチル)チアゾール塩酸塩1およびチオ酢酸2を反応させて、S-(チアゾール-5-イルメチル)エタンチオ酸3を得た。次のステップ(b)では、アシル化中間体を脱保護し、所望のチアゾール-5-イルメタンチオール5を単離し、これをさらに、市販の(3-ブロモフェニル)(フェニル)メタノール4およびBF
3・Et
2OとCH
3COOH中で、縮合反応(c)において反応させて、スルフェニル部分6を有する化合物を得た。引き続くセミ分取キラルHPLC分離(d)により、それぞれSおよびRとなる炭素原子1(C
1)についての立体配置を有する個々の鏡像異性体7および8の単離が可能となった。CH
3COOH中のH
2O
2によるスルフェニル中間体7および8の酸化(e)により、_mix_1および_mix_2とする生成物を含むスルホキシドが生成された。両方の生成物は、2つの立体異性体の混合物である。最終ステップ(f)では、セミ分取キラル分離により、mix_1からの個々の立体異性体1_1および1_2、ならびにmix_2からの2_1および2_2の単離がそれぞれ可能となった。すべての化合物は、明確に特性決定された(高分解能質量分析、高分解能NMR-1Dおよび2D、HPLC決定純度)。
【0112】
図1に示す、個々の反応ステップに使用した試薬および条件は、次のようにまとめることができる:(a)K
2CO
3、NaI、アセトン、35~40℃、3時間、(b)NaOH、EtOH、逆流、2時間、(c)BF
3・Et
2O、CH
3COOH、室温で一晩、(d)キラル分離、Chiralpack IAカラム、移動相として均一濃度の100%EtOH;(e)CH
3COOH、H
2O
2、室温で一晩、(f)キラル分離、Chiralpack IAカラム、(i)1_1および1_2の移動相として均一濃度の100%EtOAC、(ii)2_1および2_2の移動相として100%EtOAC。立体異性化合物の純度は、RP-HPLC方法により決定し、立体異性化合物の鏡像体過剰率(ee)は、キラルHPLC方法により決定した。
【0113】
出発物質の合成
S-(チアゾール-5-イルメチル)エタンチオ酸(3)
5-(クロロメチル)-1,3-チアゾール塩酸塩(1)(5.0g、29.4mmol)、チオ酢酸(2)(2.65g、32.11mmol)、炭酸カリウム(10.5g、76mmol)およびアセトン(100ml)の混合物を一晩、室温で撹拌した。沈殿物を濾過し、アセトンで洗浄した。濾液および洗い流し液を混合し、真空下で最少量に蒸発させた。水(50mL)およびDCM(50mL)を残留物に加え、混合物を15分間撹拌した。層を分離し、有機層を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、溶媒を真空下で蒸発させた。生じた茶色がかった油を、フラッシュクロマトクラフィーによりシリカゲル(DCM)上で精製して、3.78gの3を黄色がかった油として得た(収率74%)。
【0114】
チアゾール-5-イルメタンチオールを、(3-ブロモフェニル)(フェニル)メタノール(4)によりさらに縮合させて、ラセミ体5-((((3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)チオ)メチル)チアゾール(6)を得た。
【0115】
5-((((3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)チオ)メチル)チアゾール(6)
3-ブロモベンズヒドロール1.0g(6.6mmol)およびチアゾール-5-イルメタンチオール(0.88g、6.6mmol)を氷酢酸に溶解した。1.1当量(1.9mL、7.3mmol)のBF3・Et2Oを溶液に加え、反応混合物を撹拌下で一晩、室温に放置した。次いで、反応混合物を氷上に注ぎ、少量の水を加え、固体NaHCO3を加えることにより酢酸を中和した。次いで、生成物を酢酸エチル50mlにより抽出した(3×)。有機層を採取、混合し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過して、減圧下で濃縮した。次いで、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーにより、シリカゲル(石油エーテル/EtOAc=2/1)上で精製して、0.48gの6が油性生成物として産出した(収率19%)。
【0116】
次のステップでは、CHIRALPACK IAセミ分取カラム(直径10mm×長さ20mm)(DaicelInc社、Tokyo、Japan)およびエタノールを移動相として使用し、化合物6を個々の鏡像異性体7および8に分離した。40mg/mLの6を注入することにより適用し、EtOHの流量を10mL/分に設定した。鏡像異性体のそれぞれをさらに酸化して、ラセミ化合物mix_1およびmix_2をそれぞれ再び得、これらを、CHIRALPACK IAセミ分取カラム(注入25mg/mL、EtOAc流量10mL/分)を使用して、個々の立体異性体1_1、1_2、2_1、2_2に最終的に分離した。すべての分離では、流量は10mL/分に設定し、すべての分離は室温で行った。
【0117】
絶対配置(AC)の帰属
化合物1_1、1_2、2_1、2_2の絶対配置(AC)の帰属を、振動円二色性(VCD)方法を使用して実施した。ジアステレオマー1_1の絶対配置は、S1(S)C1(S)として割り当て、すなわち、1_1=5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールであり、1_2の絶対配置は、S1(R)C1(S)を割り当て、すなわち、1_2=5-((((R),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-チアゾールであり、2_1の絶対配置は、S1(S)C1(R)を割り当て、すなわち、2_1=5-((((S),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-チアゾールであり、2_2の絶対配置は、S1(R)C1(R)を割り当て、すなわち、2_2=5-((((R),(R)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-チアゾールである。
【0118】
加えて、ジアステレオマー1_1の絶対配置は、結晶学的データにより、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールであると確認された。
【0119】
B.ホールボード試験
動物および保持条件
ウイーン医科大学の動物科学および遺伝学研究所部門、Core Unit of Biomedical Researchにおいて飼育および維持した、3組/コホートの雄のスプラーグドーリーラット(18か月齢、1群あたりn=10;群:溶媒-1mg/kg体重~10mg/kg体重の1_1で処置、老齢の行動学的に非特性決定)、24か月齢の健忘症の加齢群/下位(n=10;群:溶媒-1mg/kg体重のジアステレオマー1_1で処置)および25か月齢動物(1群あたりn=10;群:すべて中等レベルの記憶の加齢ラットを有する、溶媒-1mg/kg体重~10mg/kg体重のジアステレオマー1_1)を使用した。動物は、実験手順の開始の1週間前に別々の実験室に移し、実験を通じてそれぞれ、オートクレーブ処理したウッドチップで満たした標準的Makrolonケージ内でそこで保持した(温度:22±2°C;湿度:55±5%;12時間、人工光/12時間暗サイクル:am7:00に入光)。試験は、ウイーン医科大学倫理委員会のガイドラインに従って行い、オーストリアの教育、科学および文化省により認可された。
【0120】
ホールボードの器具および訓練
ホールボード(1m×1m)を黒色プラスチックで作製し、半透明のプレキシグラスの壁で囲んだ。壁には、空間手がかりが備えられた。遠位手がかりを部屋構造によってボードの外側に用意した。規則的に配置した孔(直径および深さ7cm)の6つのうちの4つに餌を付けた(埃の無いプレシジョンペレット、45mg、Bioserv(登録商標))。餌付けした孔のパターンは、全試験中同じままとした。嗅覚性方向反応を回避するために、ペレットはまた、ボード下の領域に置いた。3日間の実験の前に、ラットを15分間扱って、実験者に慣らした後、ホールボードに対する2日の馴化を行い、その間、動物が迷路を毎日15分間探索して、餌のペレットを入手可能とした。各ラットの体重は、実験開始前に初期体重の85%に達するまで餌の制限により減少させた。水道水は自由に与えた。ラットを3日間訓練した(1日目に試行5回、2日目に試行4回および3日目に保持試行)。すべての試行は、120秒間またはすべての4ペレットが見つかるまで持続させた。器具は、試行の間に0.1%のIncidin(登録商標)(Ecolab社、Dusseldorf、Germany)で清掃して、においの手がかりを除去した。2つの連続的試行間の間隔は、個体について、20分であった。部屋の天井に取り付けたカメラにより、迷路におけるラットの遂行を記録した。孔への訪問およびペレットの除去は、各試行について記述した。同じレベルの動機づけを有するラットを比較するために、10回の試行を通じて孔への訪問が合計40回未満のラットを分析から除外した。参照記憶エラーを、非餌付け孔への訪問数として記述した。参照記憶指数(RMI)を、式(初回+餌付け孔の再訪問)/すべての孔の総訪問を使用して計算した。すべての行動訓練/試験は、明暗サイクルの明期中に実施した。
【0121】
ホールボードにおける学習および記憶に対する結果
【0122】
【0123】
モノアミン輸送体再取込み阻害
取込み阻害測定をS.Sucicら(The N Terminus of Monoamine Transporters Is a Lever Required for the Action of Amphetamines.J.Biol.Chem.2010、285(14)、10924~10938)およびKalabaら(Heterocyclic Analogues of Modafinil as Novel,Atypical Dopamine Transporter Inhibitors.J.Med.Chem.2017、60(22)、9330~9348)に記載のように実施した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、トリプシンおよびウシ胎仔血清(FCS)をSigma-Aldrich Handels GmbH社(Austria)から購入した。[3H]5-HT(ヒドロキシトリプタミンクレアチニン硫酸塩;5-[1,2-3H[N]];45.3Ci/mmol)、[3H]DA(ジヒドロキシフェニルエチルアミン;3,4-[環-2,5,6-3[H]]-ドーパミン;55.8Ci/mmol)および[3H]MPP+(メチル-4-フェニルピリジニウムヨウ化物;1-[メチル-3H];80Ci/mmol)をPerkin Elmer社、Boston、MAから購入した。DAT、NETおよびSERTの阻害を、ヒトDAT、NETおよびSERTを安定に発現するヒト胚性腎臓293(HEK293)において評価した。細胞を、ポリ-D-リジン(PDL)(4×104細胞/ウェル)を実験の24時間前に予めコーティングした96ウェルプレート内で単層として増殖させた。実験の日に、培地を吸引し、各ウェルを温めた(30℃)クレブスHEPES緩衝液(KHB;10mMのHEPES、120mMのNaCl、3mMのKCl、2mMのCaCl2・2H2O、2mMのMgCl2・6H2O、5mMのD-(+)-グルコース一水和物、pH7.3)0.1mLで洗浄した。細胞を、1%のジメチルスルホキシドおよび上昇濃度の試験化合物を含むKHBで5分間プレインキュベートした。プレインキュベートした溶液の吸引の後、細胞を0.2μMの[3H]-ドーパミン(DAT用)、0.02μMの[3H]-MPP+(NET用)および0.2μMの[3H]-5-HT(SERT用)を加えた上昇濃度の化合物を含むKHBでインキュベートした。インキュベーション時間は、DATおよびSERTは1分であり、NETは3分であった。30μMのコカインの存在下での非特異的[3H]-ドーパミンおよび[3H]-MPP+の取込みを総取込みから減算した。30μMのパロキセチンの存在下での非特異的[3H]-5-HT取込みを総取込みから減算した。室温でのインキュベーション後、氷冷KHB0.1mLを加えることにより反応を停止させた。最終的には、細胞を1%のSDS0.3mLにより溶解し、放射活性の放出を液体シンチレーションカウンター(Tri-carb-2300TR、Perkin Elmer社)により測定した。非直線回帰分析(GraphPad Prism version 5.0、GraphPad Software社、San Diego、CA、USA)をIC50値の計算に使用した。
【0124】
【0125】
示し得るように、本発明の化合物は、ドーパミン輸送体(DAT)を効果的および選択的に阻害し、これにより、シナプスへの細胞外ドーパミンの再取込みを阻害し、ドーパミンの細胞外濃度を上昇させる。次いで、これにより、特定の空間学習能力における学習能力の改善、および/または参照記憶の改善が生じる。一般に使用される阻害物質とは異なり、DAT阻害は、むしろ特異的であり、ノルアドレナリンおよびセロトニン輸送体は、本発明の化合物により阻害されないか、または少なくとも著しくは阻害されず、特に、5-((((S),(S)-3-ハロフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールでは阻害されず、より詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)チアゾールでは阻害されないか、または少なくとも著しくは阻害されず、さらにより詳細には、5-((((S),(S)-3-ブロモフェニル)(フェニル)メチル)スルフィニル)メチル)-1,3-チアゾールでは阻害されないか、または少なくとも著しくは阻害されない。結果的に、本発明の化合物の使用により、望まない副作用を除外し得る。
【0126】
当業者により修飾および変更が示唆され得るが、本明細書において保証される特許において、すべての変更および修飾を、合理的かつほぼ確実に当技術分野に対するこの寄与の範囲内であるように具体化することを出願者は意図する。新規であると考えられる本発明の特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に記載する。本明細書、図面ならびに特許請求の範囲に開示する特徴は、単独またはあらゆる組合せで、種々の実施形態における本発明の実現のために必須であり得る。
【国際調査報告】