(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】NK細胞ドナーを同定するための万能ドナー選択方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20221115BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221115BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221115BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20221115BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20221115BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221115BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20221115BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20221115BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20221115BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20221115BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N5/10
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P31/00
A61P35/02
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
G01N33/50 P
G01N33/68
C12N5/0783
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516176
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020050634
(87)【国際公開番号】W WO2021051042
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】リー、ディーン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045BB24
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2G045DA14
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4C087ZB27
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(57)【要約】
本明細書には、万能ドナーナチュラルキラー(NK)細胞を含む組成物、かかる細胞の集団、かかる細胞を入手及び調製する方法並びに癌及び感染症の医学的治療におけるかかる細胞及び組成物の使用方法が記載される。一態様において、本開示は、万能ドナーNK細胞を、それを必要としている対象への治療的投与のために選択する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
万能ドナーNK細胞を、それを必要としている対象への治療的投与のために選択する方法であって、前記方法は、NK細胞ドナーからの候補NK細胞のKIR表現型を決定することであって、前記KIR表現型は、NK細胞集団中における1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、決定すること;及び前記KIR表現型が、1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示すとき、前記候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択すること、を含む方法。
【請求項2】
万能ドナーNK細胞を、それを必要としている対象への治療的投与のために選択する方法であって、前記方法は、
NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手することであって、前記HLA遺伝子型は、NK細胞集団中における少なくとも2つのHLA C1、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手すること;及び
前記候補NK細胞の前記HLA遺伝子型が前記HLA C1、C2及びBw4アレルの少なくとも2つの存在を示すとき、前記候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択すること
を含む方法。
【請求項3】
前記候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手することを更に含み、前記KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群より選択される少なくとも3つの活性型KIRの存在又は非存在を示し、前記候補NK細胞を万能ドナーNK細胞として選択することは、前記活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の少なくとも3つを含む前記候補NK細胞を選択することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
万能ドナーNK細胞を、それを必要としている対象への治療的投与のために選択する方法であって、前記方法は、候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手することであって、前記KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される少なくとも3つの活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手すること;及び前記KIR遺伝子型が前記活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の少なくとも3つの存在を示すとき、前記候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択すること、を含む方法。
【請求項5】
候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手することであって、前記HLA遺伝子型は、HLA C1、C2及びBw4アレルの各々の存在又は非存在を示す、入手すること;及び
前記候補NK細胞の前記HLA遺伝子型が前記HLAアレルHLA C1、C2及びBw4の少なくとも2つの存在を示すとき、前記候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択すること
を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
NK細胞の供給源を、それを必要としている対象への治療的投与用に提供するために、ドナーからの候補NK細胞集団をスクリーニングして、前記集団中における万能NKドナー細胞を同定する方法であって、前記方法は、
NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手することであって、前記HLA遺伝子型は、HLA C1、C2及びBw4アレルの少なくとも2つの存在又は非存在を示し、HLA C1、C2及びBw4の少なくとも2つのHLAアレルを含む候補NK細胞は、万能ドナーNK細胞として同定される、入手すること
を含む方法。
【請求項7】
前記候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手することを更に含み、前記KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される少なくとも3つの活性型KIRの存在又は非存在を示し;少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4を含む候補NK細胞は、万能NK細胞として同定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記候補NK細胞のCMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることを更に含み、候補NK細胞を万能ドナーNK細胞として選択することは、CMVについて血清反応陽性であるか、又はNKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を有する候補NK細胞を選択することを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~5、8若しくは9のいずれか一項に記載の方法によって選択されるか;又は請求項6若しくは7に記載の方法によるスクリーニングによって同定される単離された万能ドナーNK細胞。
【請求項11】
前記NK細胞がNKG2C+である、請求項10に記載の単離された万能NK細胞。
【請求項12】
前記NK細胞は、インビトロでIL-21の存在下において前記万能ドナーNK細胞をインキュベートすることによって活性化される、請求項10に記載の単離された万能NK細胞。
【請求項13】
前記インビトロ活性化に使用される前記IL-21は、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)の少なくとも1つを含む、請求項12に記載の単離された万能NK細胞。
【請求項14】
対象の癌又は感染症を治療する方法であって、請求項1~5、8若しくは9のいずれか一項に記載の方法によって選択されるか;又は請求項6若しくは7に記載の方法によるスクリーニングによって同定されたドナーNK細胞を前記対象に投与すること;或いは請求項10~13のいずれか一項に記載の単離された万能NK細胞を投与することを含む方法。
【請求項15】
対象の癌又は感染症を治療する方法であって、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、前記HLA遺伝子型は、HLA C1、C2及びBw4アレルの各々の存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していること;(b)前記候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、前記KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの各々の存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していること;及び
(c)(i)前記HLA遺伝子型が前記HLAアレルHLA C1、C2及びBw4の少なくとも2つの存在を示すとき;及び(ii)前記KIR遺伝子型が前記活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の少なくとも3つの存在を示すとき、候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択すること
を含む方法。
【請求項16】
前記選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記候補NK細胞の前記CMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることを更に含み;NK候補細胞を選択することは、前記NK細胞ドナーがCMVについて血清反応陽性であるとき又は前記NK細胞ドナーからの前記NK細胞が、NKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を有するとき、候補NK細胞を選択することを更に含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
インビトロでIL-21の存在下において万能ドナーNK細胞を入手するか又は有することを更に含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
インビトロ培養に使用される前記IL-21は、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)の少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記癌は、血液癌、肺癌、食道癌、胃癌、膵癌、肝癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌、喉頭癌、甲状腺癌、脳癌又は皮膚癌から選択される、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記感染症は、ウイルス、細菌又は真菌から選択される病原体によって引き起こされる、請求項14~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
万能ドナーNK細胞集団を、それを必要としている対象への治療的投与のために調製する方法であって、(a)NK細胞ドナーから初期NK細胞集団を入手することであって、前記NK細胞ドナーは、(i)可変的に遺伝する活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の少なくとも2つ;及び(ii)C1、C2及びBw4アレルの少なくとも1つの存在を示す遺伝子型を有する、入手すること;及び(b)前記初期NK細胞集団を拡大するのに十分な時間にわたって且つ条件下において、前記初期NK細胞集団をインビトロでIL-21に曝露すること、を含む方法。
【請求項23】
前記ドナー遺伝子型は、C1、C2及びBw4アレルの存在を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)は、少なくとも1回の集団倍化を達成するための時間にわたって且つ条件下で行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記NK細胞ドナーは、NKG2C+ NK細胞の存在を示すCMV血清反応陽性プロファイルを更に有する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記初期NK細胞集団をIL-21に曝露することは、前記NK細胞を、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)の少なくとも1つとインビトロで接触させることを含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)に存在する前記IL-21は、(a)IL-21のための改変された膜結合形態、(b)FC21、PM21若しくはEX21の表面に化学的にコンジュゲートされたIL-21、又は(c)前記NK細胞と相互接触するように混合された溶液中におけるIL-21から選択される形態のIL-21を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記FC21、PM21又はEX21のいずれか1つは、(a)IL-2、IL-12、IL-18、IL-15、IL-7、ULBP、MICA、OX40L、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニストから選択されるNK刺激性リガンド;又は(b)膜結合型TGF-βを更に含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項22~28のいずれか一項に記載の方法によって調製される万能ドナーNK細胞集団。
【請求項30】
請求項22~29のいずれか一項に記載の方法によって調製されるNK細胞集団であって、前記拡大されたNK細胞集団は、IFNy又はTNFaの抗腫瘍性サイトカインを産生及び分泌する増加した能力によって特徴付けられる、NK細胞集団。
【請求項31】
前記拡大されたNK細胞集団は、NKG2Dの増加した発現、CD16の増加した発現、NKp46の増加した発現、増加したKIR発現によって特徴付けられる、請求項29又は30に記載の万能ドナーNK細胞集団。
【請求項32】
改変されたNK細胞又は細胞株であって、前記NK細胞又は細胞株は、C1、C2又はBw4を含む1つ以上のHLAアレルを発現するように形質転換されている、改変されたNK細胞又は細胞株。
【請求項33】
前記NK細胞又は細胞株は、C1、C2及びBw4を発現するように形質転換されている、請求項32に記載の改変されたNK細胞又は細胞株。
【請求項34】
前記NK細胞又は細胞株は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1又は2DS4を含む1つ以上の可変的に遺伝する活性型KIRを発現するように更に形質転換されている、請求項32又は33に記載の改変されたNK細胞又は細胞株。
【請求項35】
前記NK細胞又は細胞株は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1又は2DS4を含む3つ以上の可変的に遺伝する活性型KIRを発現するように更に形質転換されている、請求項32~34のいずれか一項に記載の改変されたNK細胞又は細胞株。
【請求項36】
フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)に存在する前記IL-21は、(a)IL-21のための改変された膜結合形態、(b)FC21、PM21若しくはEX21の表面に化学的にコンジュゲートされたIL-21、又は(c)前記NK細胞と接触するように混合された溶液中におけるIL-21から選択される形態のIL-21を含む、請求項5、11又は34~35、41又は49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記FC21、PM21又はEX21のいずれか1つは、(a)IL-2、IL-12、IL-18、IL-15、IL-7、ULBP、MICA、OX40L、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニストから選択されるNK刺激性リガンド;又は(b)膜結合型TGF-βを更に含む、請求項5、11、34~36、41又は49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
対象の癌又は感染症の治療における使用のための、請求項1~4、7若しくは8のいずれか一項に記載の方法によって選択されるか;又は請求項6若しくは7に記載の方法によってスクリーニングされたドナーNK細胞;或いは請求項10~13のいずれか一項に記載の単離された万能NK細胞;或いは請求項29~31のいずれか一項に記載の万能ドナーNK細胞集団;或いは請求項32~35のいずれか一項に記載の改変されたNK細胞又は細胞株。
【請求項39】
対象の癌又は感染症の治療における使用のためのNK細胞集団であって、前記NK細胞集団は、
(i)2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1から選択される1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIRの存在を示す、HLA C1、C2及びBw4から選択される少なくとも2つのHLAアレルを含むHLA遺伝子型;及び
(ii)2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される少なくとも3つの活性型KIRを含むKIR遺伝子型
を含むNK細胞集団。
【請求項40】
NK細胞またはNK細胞集団は、少なくとも50%~85%の前記レシピエント対象について組織学的に最適化される、請求項38に記載のNK細胞又は請求項39に記載のNK細胞集団。
【請求項41】
前記NK細胞又はNK細胞集団の前記ドナーは、CMVについて血清反応陽性であり、及び/又は前記NK細胞若しくはNK細胞集団は、NKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を有する、請求項38に記載のNK細胞又は請求項39に記載のNK細胞集団。
【請求項42】
前記治療における前記使用前に、前記NK細胞又は前記NK細胞集団をインビトロでIL-21の存在下において培養することを更に含む、請求項38~41のいずれか一項に記載のNK細胞又はNK細胞集団。
【請求項43】
前記インビトロ培養における前記IL-21は、IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)又はIL-21エキソソームを含む、請求項42に記載のNK細胞又はNK細胞集団。
【請求項44】
前記癌は、血液癌、肺癌、食道癌、胃癌、膵癌、肝癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌、喉頭癌、甲状腺癌、脳癌又は皮膚癌から選択される、請求項38~43のいずれか一項に記載のNK細胞又はNK細胞集団。
【請求項45】
前記感染症は、ウイルス、細菌又は真菌から選択される病原体によって引き起こされる、請求項38~43のいずれか一項に記載のNK細胞又はNK細胞集団。
【請求項46】
前記NK細胞若しくはNK細胞集団及び/又は前記NK細胞若しくはNK細胞集団の前記ドナーは、前記HLA遺伝子型及び前記KIR遺伝子型が決定されている2つ以上の細胞、集団及び/又はドナーを含む集合から選択される、請求項38~43のいずれか一項に記載のNK細胞又はNK細胞集団。
【請求項47】
ドナーからNK細胞コレクションを調製する方法であって、(i)1つ以上のドナーから、(a)HLA C1、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、それにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示すHLA遺伝子型;及び(b)2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示すKIR遺伝子型を決定すること;及び
(ii)(i)前記HLA遺伝子型が少なくとも2つのHLAアレルHLA C1、C2及びBw4の存在を示すとき;及び(ii)前記KIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の存在を示すとき、前記ドナーから、NK細胞の治療的投与のための万能ドナーNKを選択すること;及び
(iii)前記万能ドナーのNK細胞のエキソビボバッチから前記NK細胞コレクションを調製すること
を含む方法。
【請求項48】
前記治療的投与のための万能ドナーNK細胞としての前記選択は、NKG2C+ NK細胞の存在を示すCMV血清反応陽性プロファイルを有するドナーを選択することを更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
対象の癌又は感染症を治療するための医薬の製造における、請求項1~5、8若しくは9のいずれか一項に記載の方法によって選択されるか;又は請求項6若しくは7に記載の方法によってスクリーニングされたドナーNK細胞;或いは請求項10~13のいずれか一項に記載の単離された万能NK細胞;或いは請求項29~31のいずれか一項に記載の万能ドナーNK細胞集団;或いは請求項32~35のいずれか一項に記載の改変されたNK細胞又は細胞株の使用。
【請求項50】
対象の癌又は感染症を治療するための医薬の製造におけるNK細胞集団の使用であって、前記NK細胞集団は、
(i)2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1から選択される1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIRの存在を示す、HLA C1、C2及びBw4から選択される少なくとも2つのHLAアレルを含むHLA遺伝子型;及び
(ii)2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される少なくとも3つの活性型KIRを含むKIR遺伝子型
を含む、使用。
【請求項51】
前記NK細胞又はNK細胞集団は、少なくとも50%~85%の前記レシピエント対象について組織学的に最適化される、請求項49又は50に記載の使用。
【請求項52】
前記NK細胞又はNK細胞集団の前記ドナーは、CMVについて血清反応陽性であるか、又は前記NK細胞若しくはNK細胞集団は、NKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を有する、請求項49~51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
前記治療における前記使用前に、前記NK細胞又は前記NK細胞集団をインビトロでIL-21の存在下において培養することを更に含む、請求項49~52のいずれか一項に記載の使用。
【請求項54】
前記インビトロ培養における前記IL-21は、IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)又はIL-21エキソソームを含む、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
前記癌は、血液癌、肺癌、食道癌、胃癌、膵癌、肝癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌、喉頭癌、甲状腺癌、脳癌又は皮膚癌から選択される、請求項49~54のいずれか一項に記載の使用。
【請求項56】
前記感染症は、ウイルス、細菌又は真菌から選択される病原体によって引き起こされる、請求項49~55のいずれか一項に記載の使用。
【請求項57】
前記NK細胞若しくはNK細胞集団及び/又は前記NK細胞若しくはNK細胞集団の前記ドナーは、前記HLA遺伝子型及び前記KIR遺伝子型が決定されている2つ以上の細胞、集団及び/又はドナーを含む集合から選択される、請求項49~56のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ナチュラルキラー(NK)細胞のドナー選択方法に関し、より具体的には、万能ドナー細胞を、それを必要としているレシピエントへの治療的投与のために選択する方法を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトナチュラルキラー(NK)細胞は、ヒト白血球抗原(HLA)クラスI分子と相互作用する複数の受容体を発現する。これらのNK細胞受容体は、2つの主要なタンパク質スーパーファミリ、免疫グロブリンスーパーファミリ又はC型レクチンスーパーファミリの一方に属する。NK細胞が正常組織を病的自己組織と見分ける能力は、大部分がキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリの抑制機能によって説明され、これは、潜在的標的上の古典的HLAクラスI分子を優勢に認識する。この自己主要組織適合遺伝子複合体(MFIC)認識により、NK細胞には、その活性型受容体を通して惹起される機能的能力が付与され、この過程は、ライセンス化と呼ばれる。結果として、自己MHC特異的受容体を有するライセンス化NK細胞は、自己MHC特異的受容体を有しない非ライセンス化NK細胞と比較したとき、より容易に活性化される。種々のKIRファミリメンバーが個別のI ILAクラスIアロタイプと相互作用し、広範な遺伝的多様性を有する。同様に、NK細胞は、複数の異なる受容体を異なる特異性で同時に発現する。結果として、養子免疫療法にNK細胞を利用しようとする試みのいずれも、NK細胞ドナーとレシピエントとの間の適合性に対処しなければならない。特定の患者に対する特定のドナーを同定するために複数のドナーを検査することは、高コストであり、多大な時間を要し得る。必要とされているのは、適合性の問題を被ることのない万能なNK細胞供給源である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様において、本開示は、万能ドナー(universal donor)NK細胞を、それを必要としている対象への治療的投与のために選択する方法に関し、この方法は、NK細胞ドナーからの候補NK細胞のKIR表現型を決定することであって、KIR表現型は、1つ以上の可変的に遺伝する(variably inherited)抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、決定すること;及びKIR表現型が、1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む。
【0004】
別の態様において、本開示は、万能ドナーNK細胞を、それを必要としているレシピエント対象への治療的投与のために選択する方法に関し、この方法は、NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手することであって、HLA遺伝子型は、少なくとも2つのHLA C1、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手すること;及び候補NK細胞のHLA遺伝子型がHLA C1、C2及びBw4アレルの少なくとも2つの存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む。本方法は、候補NK細胞のKIR表現型を入手するか又は入手していることであって、KIR表現型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型(activating)KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していること;及び候補NK細胞をあるものとして更に選択することを更に含み得、ここで、少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4を含む候補NK細胞は、万能NK細胞である。本方法は、NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、1-ILA遺伝子型は、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していること、及びHLA遺伝子型が少なくとも2つのHLAアレルHLA Cl、C2及びBw4の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として更に選択することを更に含み得る。
【0005】
本開示は、万能ドナーNK細胞を、それを必要としているレシピエント対象への治療的投与のために選択する方法にも関し、この方法は、候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していること、及びKIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む。
【0006】
本開示は、加えて、NK細胞の供給源を、それを必要としている対象への治療的投与のために提供するために、ドナーからの候補NK細胞集団をスクリーニングして、集団中における万能NKドナー細胞を同定する方法に関し、この方法は、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、HLA遺伝子型は、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2又は2DL3及び/又は3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していることを含み;ここで、少なくとも2つのHLAアレルHLA Cl、C2及びBw4を含む候補NK細胞、従って可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2又は2DL3及び/又は3DL1の少なくとも1つを含む候補NK細胞は、万能ドナーNK細胞である。この方法は、候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していることを更に含み得;ここで、少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4を含む候補NK細胞は、万能NK細胞である。これらの方法のいずれにおいても、選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化され得る。これらの方法のいずれも、候補NK細胞のCMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることであって、NK細胞ドナーがCMVについて血清反応陽性であるとき又はNK細胞ドナーからのNK細胞がNKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を示すとき、そのNK候補NK細胞は、更に選択される、入手するか又は入手していることを含み得る。かかる方法の一態様において、NKG2C発現の参照レベルは、5%未満のNK細胞がNKG2Cを発現するものである。かかる方法の別の態様において、NKG2C高発現は、5%~約22%のNK細胞がNKG2Cを発現するものである。
【0007】
別の態様において、本開示は、本明細書で考察される方法のいずれかによって選択又はスクリーニングされた単離された万能ドナーNK細胞を提供し、ここで、NK細胞は、NKG2C+である。単離された万能NK細胞は、万能ドナーNK細胞をインビトロでIL-21の存在下においてインキュベートすることによって活性化され得る。インビトロ活性化に使用されるIL-21は、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)又はIL-21エキソソーム(EX21)を含み得る。
【0008】
別の態様において、本開示は、対象の癌又は感染症を治療する方法を提供し、この方法は、上記で考察される方法のいずれか1つ以上によって選択されたドナーNK細胞若しくは上記で考察される方法のいずれか1つ以上によってスクリーニングされたドナーNK細胞;又は上記で考察される方法の一部若しくは全てによって考察される単離された万能NK細胞を対象に投与することを含む。
【0009】
本開示は、対象の癌又は感染症を治療する方法であって、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、HLA遺伝子型は、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していること;(b)候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していること;及び(c)(i)HLA遺伝子型が少なくとも2つのHLAアレルHLA Cl、C2及びBw4の存在を示すとき;及び(ii)KIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む方法に更に関する。一態様において、選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化され得る。別の態様において、本方法は、候補NK細胞のCMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることであって、NK細胞ドナーがCMVについて血清反応陽性であるとき又はNK細胞ドナーからのNK細胞がNKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を示すとき、そのNK候補NK細胞が更に選択される、入手するか又は入手していることを更に含み得る。本方法は、選択された万能ドナーNK細胞をインビトロでIL-21の存在下においてインキュベートすることを更に含み得る。インビトロ培養に使用されるIL-21は、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及び/又はIL-21エキソソーム(EX21)を含み得る。本方法において、癌は、血液癌、肺癌、食道癌、胃癌、膵癌、肝癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌、喉頭癌、甲状腺癌、脳癌又は皮膚癌から選択され得る。本方法の別の態様において、感染症は、ウイルス、細菌又は真菌から選択される病原体によって引き起こされ得る。
【0010】
本開示は、万能ドナーNK細胞集団を、それを必要としている対象への治療的投与のために調製する方法に更に関し、この方法は、(a)NK細胞ドナーから初期NK細胞集団を入手することであって、NK細胞ドナーは、(i)可変的に遺伝する活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の少なくとも2つ;及び(ii)Cl、C2及びBw4アレルの少なくとも1つの存在を示す遺伝子型を有すること;及び(b)初期NK細胞集団を拡大する(expand)のに十分な時間にわたって且つ条件下において初期NK細胞集団をインビトロでIL-21に曝露することを含む。本方法の一態様において、ドナー遺伝子型は、Cl、C2及びBw4アレルの存在を示し得る。本方法の別の態様において、ステップ(b)は、少なくとも1回の集団倍化を達成するための時間にわたって且つ条件下において行われ得る。本方法の別の態様において、好ましいドナーは、NKG2C+ NK細胞の存在を示すCMV血清反応陽性プロファイルを有し得る。本方法の別の態様において、初期NK細胞集団をIL-21に曝露することは、NK細胞を可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)の少なくとも1つ又はこれらの任意の組み合わせとインビトロで接触させることを含み得る。本方法の別の態様において、フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)に存在するIL-21は、(a)IL-21のための改変された膜結合形態、(b)FC21、PM21又はEX21の表面に化学的にコンジュゲートされたIL-21、又は(c)又はNK細胞と相互接触するように混合された溶液中におけるIL-21から選択される形態のIL-21を含み得る。本方法の別の態様において、FC21、PM21又はEX21のいずれか1つは、(a)IL-2、IL-12、IL-18、IL-15、IL-7、ULBP、MICA、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニストから選択されるNK刺激性リガンド;又は(b)膜結合型TGF-βを更に含み得る。本方法の別の態様において、NK細胞は、可溶性及び/又は膜結合型リガンドの群から選択される1つ以上のNK刺激性リガンドに更に曝露され得る。本方法の更に別の態様において、万能ドナーNK細胞集団が調製され得る。
【0011】
別の態様において、本開示は、前述の方法のいずれか1つ以上によって調製されるNK細胞集団を提供し、ここで、拡大されたNK細胞集団は、IFNy又はTNFaの抗腫瘍性サイトカインを産生及び分泌する増加した能力によって特徴付けられる。別の態様において、前述の方法のいずれか1つ以上によって調製されるNK細胞集団は、NKG2Dの増加した発現、CD16の増加した発現、NKp46の増加した発現及び/又は増加したKIR発現によって特徴付けられる拡大されたNK細胞集団を含む。本方法の一態様において、フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)に存在するIL-21は、(a)IL-21のための改変された膜結合形態、(b)FC21、PM21又はEX21の表面に化学的にコンジュゲートされたIL-21、又は(c)NK細胞と相互接触するように混合された溶液中におけるIL-21から選択される形態のIL-21を含み得る。前述のいずれかの態様の方法において、FC21、PM21又はEX21のいずれか1つは、(a)IL-2、IL-12、IL-18、IL-15、IL-7、ULBP、MICA、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニストから選択されるNK刺激性リガンド;又は(b)膜結合型TGF-βを更に含み得る。一態様において、FC21、PM21又はEX21のいずれか1つは、可溶性及び/又は膜結合型刺激性リガンドを更に含む。
【0012】
本開示は、加えて、改変されたNK細胞又は細胞株に関し、ここで、NK細胞は、Cl、C2又はBw4を含む1つ以上のHLAアレルを発現するように形質転換される。前述の態様の改変されたNK細胞又は細胞株において、NK細胞は、CI、C2及びBw4を発現するように形質転換され得る。前述のいずれかの態様の改変されたNK細胞又は細胞株において、NK細胞は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1又は2DS4を含む1つ以上の可変的に遺伝する活性型KIRを発現するように更に形質転換され得る。前述のいずれかの態様の改変されたNK細胞又は細胞株において、NK細胞は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1又は2DS4を含む2つ若しくは3つ又はそれを超える可変的に遺伝する活性型KIRを発現するように更に形質転換され得る。
【0013】
それを必要としているレシピエント対象への治療的投与に使用することができる万能ドナーNK細胞に関する方法及び組成物も開示される。一態様において、本明細書には、万能ドナーNK細胞を、それを必要としているレシピエント対象への治療的投与のために選択する方法が開示され、この方法は、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、HLA遺伝子型は、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL I、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していること、及び/又は(b)候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していること、及び(c)(i)HLA遺伝子型が少なくとも2つのHLAアレルHLA Cl、C2及びBw4の存在を示すとき、及び/又は(ii)KIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DSl/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む。
【0014】
本明細書には、NK細胞の供給源を、それを必要としている対象への治療的投与を提供するために、ドナーからの候補NK細胞集団をスクリーニングして、集団中における万能NKドナー細胞を同定する方法も開示され、この方法は、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、HLA遺伝子型は、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2又は2DL3及び/又は3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していること、及び/又は(b)候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していることを含み;ここで、(i)少なくとも2つのHLAアレルHLA CI、C2及びBw4を含み、従って可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2又は2DL3及び/又は3DL1の少なくとも1つを含む候補NK細胞、及び/又は(ii)少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4を含む候補NK細胞は、万能NK細胞である。
【0015】
別の態様において、本明細書には、前述のいずれかの態様のNK細胞集団をスクリーニングする方法又はレシピエント対象への治療的投与のための万能ドナーNK細胞を選択する方法が開示され、ここで、選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化される。
【0016】
本明細書には、前述のいずれかの態様のNK細胞集団をスクリーニングする方法又はレシピエント対象への治療的投与のための万能ドナーNK細胞を選択する方法であって、候補NK細胞のCMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることであって、NK細胞ドナーがCMVについて血清反応陽性であるとき又はNK細胞ドナーからのNK細胞がNKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を示すとき、そのNK候補NK細胞が更に選択される、入手するか又は入手していることを更に含む方法も開示される。
【0017】
別の態様において、前述のいずれかの態様の方法によって選択又はスクリーニングされた単離された万能ドナーNK細胞も開示される。前述のいずれかの態様のNK細胞は、NKG2C+であり得る。本明細書には、前述のいずれかの態様の単離された万能NK細胞又は細胞も開示され、ここで、1つ又は複数のNK細胞は、1つ又は複数の万能ドナーNK細胞をインビトロでIL-21の存在下においてインキュベートすることによって活性化される。一態様において、インビトロ活性化に使用されるIL-21は、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、1L-21細胞膜粒子(PM21)、IL-21エキソソーム(EX21)又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
別の態様において、本明細書には、それを必要としている対象の癌、転移又は感染症を治療、予防、阻害及び/又は低減する方法であって、前述のいずれかの態様の方法によって選択又はスクリーニングされたドナーNK細胞を対象に投与すること;又は前述のいずれかの態様の単離された万能NK細胞若しくは細胞を対象に投与することを含む方法が開示される。例えば、一態様において、本明細書には、対象の癌又は感染症を治療する方法であって、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、HLA遺伝子型は、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していること;(b)候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していること;及び(c)(i)HLA遺伝子型が少なくとも2つのHLAアレルHLA CI、C2及びBw4の存在を示すとき;及び(ii)KIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む方法が開示される。
【0019】
別の態様において、本明細書には、前述のいずれかの態様の癌又は感染症を治療する方法が開示され、ここで、選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化される。
【0020】
本明細書には、前述のいずれかの態様の癌又は感染症を治療する方法であって、候補NK細胞のCMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることを更に含み;ここで、NK細胞ドナーがCMVについて血清反応陽性であるとき又はNK細胞ドナーからのNK細胞がNKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を示すとき、そのNK候補NK細胞が更に選択される、方法も開示される。
【0021】
別の態様において、本明細書には、前述のいずれかの態様の癌又は感染症を治療する方法であって、選択された万能ドナーNK細胞をインビトロでIL-21の存在下においてインキュベートすることを更に含む方法が開示される。別の態様において、インビトロ培養に使用されるIL-21は、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)若しくはIL-21エキソソーム(EX21)又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0022】
本明細書には、万能ドナーNK細胞集団を、それを必要としている対象への治療的投与のために調製する方法であって、(a)NK細胞ドナーから初期NK細胞集団を入手することであって、NK細胞ドナーは、(i)可変的に遺伝する活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の少なくとも2つ;及び(ii)Cl、C2及びBw4アレルを含む少なくとも1つ、2つ又は3つ全てのHLAアレルの存在を示す遺伝子型を有すること;及び(b)初期NK細胞集団を拡大するのに十分な時間にわたって且つ条件下において初期NK細胞集団をインビトロでIL-21に曝露することを含む方法も開示される。
【0023】
別の態様において、本明細書には、前述のいずれかの態様のNK細胞の集団が開示され、ここで、単離されたNK細胞は、NKG2C+又はCMV血清反応陽性である。NK細胞集団を調製する方法であり、ここで、初期NK細胞集団をIL-21に曝露することは、NK細胞を可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)の少なくとも1つとインビトロで接触させることを含む。例えば、本明細書には、NK細胞集団を調製する方法が開示され、ここで、フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)及びIL-21エキソソーム(EX21)に存在するIL-21は、(a)IL-21のための改変された膜結合形態、(b)FC21、PM21又はEX21の表面に化学的にコンジュゲートされたIL-21、又は(c)又はNK細胞と相互接触するように混合された溶液中におけるIL-21から選択される形態のIL-21を含む。一態様において、FC21、PM21又はEX21のいずれか1つは、(a)IL-2、IL-12、IL-18、IL-15、IL-7、ULBP、MICA、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニストから選択されるNK刺激性リガンド;又は(b)膜結合型TGF-βを更に含む。
【0024】
一態様において、本明細書には、前述のいずれかの態様の方法によって調製される万能ドナーNK細胞集団が開示される。一態様において、NK細胞集団は、IFNy又はTNFaの抗腫瘍性サイトカインを産生及び分泌する増加した能力によって特徴付けられる。一態様において、拡大されたNK細胞集団は、NKG2Dの増加した発現、CD16の増加した発現、NKp46の増加した発現、増加したKIR発現によって特徴付けられる。
【0025】
本明細書には、改変されたNK細胞又は細胞株も開示され、ここで、NK細胞は、CI、C2又はBw4を含む1つ、2つ以上のI ILAアレルを発現するように形質転換されており(例えば、Cl、C2及びBw4を発現するNK細胞又は細胞株)、及び/又は2DS1/2、2DS3/5、3DS I又は2DS4を含む1、2、3、4、5つ又はそれを超える可変的に遺伝する活性型KIRを発現するように形質転換されている。
【0026】
本発明の一態様には、治療的投与のための万能ドナーNK細胞を選択する方法が含まれ、この方法は、C1、C2及びBW3アレルの少なくとも1つを含むHLA遺伝子型を有するNKドナー細胞をHLAドナー細胞と同定することであって、それにより2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の少なくとも1つを含む1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIRの存在を示す、同定すること、HLAドナー細胞に存在する活性型KIRの数を同定すること、HLAドナー細胞に存在する活性型KIRの数が活性化閾値を超えることに応答して、HLAドナー細胞をKIRドナー細胞と同定すること、KIRドナー細胞のNKG2C発現状態を同定すること、及びKIRドナー細胞がNKG2C陽性であることに応答して、そのKIRドナー細胞を治療用ドナー細胞と同定することを含む。
【0027】
本発明の別の態様には、治療的投与のための万能ドナーNK細胞を選択及び改変する方法が含まれ、この方法は、C1、C2及びBW3アレルの少なくとも1つを含むHLA遺伝子型を発現するようにNKドナー細胞を改変してHLA NK細胞を作成すること、HLA NK細胞のKIR遺伝子型を入手すること、少なくとも3つの活性型KIRを発現するようにHLA NK細胞を形質転換することであって、3つの活性型KIRは、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4の少なくとも1つを含む、形質転換すること、NKドナー細胞のサイトメガロウイルス(CMV)血清反応陽性状態を同定すること、及びKIRドナー細胞がCMV血清反応陽性であることに応答して、KIRドナー細胞を治療用ドナー細胞として利用することを含む。
【0028】
本発明の更に別の態様は、治療的投与のための万能ドナーNK細胞を選択、改変及び調製する方法が含まれ、この方法は、NKドナー細胞が、HLAドナー細胞としてC1、C2及びBW3アレルの少なくとも1つを含むHLA遺伝子型を有するかどうかを決定することであって、それにより2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の少なくとも1つを含む1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIRの存在を示す、決定すること、NKドナー細胞が、C1、C2及びBW3アレルの少なくとも1つを含むHLA遺伝子型を有することに応答して、NKドナー細胞をHLA NK細胞として同定すること、HLAドナー細胞に存在する活性型KIRの数を同定すること、HLAドナー細胞に存在する活性型KIRの数が活性化閾値を超えることに応答して、HLAドナー細胞をKIRドナー細胞と同定すること、KIRドナー細胞のNKG2C発現状態を同定すること、KIRドナー細胞がNKG2C陽性であることに応答して、KIRドナー細胞を治療用ドナー細胞と同定すること、及び膜結合型IL-21、4-1BBL及びIL-2の少なくとも1つを発現する照射K562で第1のフィード期間にわたって治療用ドナー細胞を刺激することを含む。
【0029】
本明細書には、ドナーからNK細胞コレクションを調製する方法であって、(i)1つ以上のドナーから、(a)HLA C1、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、それにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示すHLA遺伝子型;及び(b)2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示すKIR遺伝子型を決定すること;(ii)(a)HLA遺伝子型が少なくとも2つのHLAアレルHLA C1、C2及びBw4の存在を示すとき;及び(b)KIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の存在を示すとき、前記ドナーからNK細胞の治療的投与のための万能ドナーNKを選択すること;及び(iii)前記万能ドナーのNK細胞のエキソビボバッチから前記NK細胞コレクションを調製すること、を含む方法も開示される。本方法において、治療的投与のための万能ドナーNK細胞としての選択は、NKG2C+ NK細胞の存在を示すCMV血清反応陽性プロファイルを有するドナーを選択することを更に含み得る。
【0030】
別の態様において、本明細書には、対象の癌又は感染症を治療するための医薬の製造における、前述の態様のいずれかの方法によって選択されたドナーNK細胞、前述のいずれかの態様の方法によってスクリーニングされたドナーNK細胞、前述のいずれかの態様の単離された万能NK細胞、前述のいずれかの態様の万能ドナーNK細胞の集団、前述のいずれかの態様の改変されたNK細胞又は細胞株のいずれか1つ以上の使用が開示される。
【0031】
別の態様において、本明細書には、対象の癌又は感染症を治療するための医薬の製造におけるNK細胞集団の使用が開示され、ここで、NK細胞集団は、(i)2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1から選択される1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIRの存在を示す、HLA C1、C2及びBw4から選択される少なくとも2つのHLAアレルを有するHLA遺伝子型;及び(ii)2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される少なくとも3つの活性型KIRを含むKIR遺伝子型を含む。前述のいずれかの態様の使用において、NK細胞又はNK細胞集団は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化され得る。前述のいずれかの態様の使用において、NK細胞又はNK細胞集団のドナーは、CMVについて血清反応陽性であり得るか、又はNK細胞若しくはNK細胞集団は、NKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を有し得る。前述のいずれかの態様の使用は、治療における使用前に、NK細胞又はNK細胞集団をインビトロでIL-21の存在下において培養することを含み得る。前述のいずれかの態様の使用において、インビトロ培養におけるIL-21は、IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)又はIL-21エキソソームを含み得る。前述のいずれかの態様の使用において、癌は、血液癌、肺癌、食道癌、胃癌、膵癌、肝癌、胆道癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、腎癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌、喉頭癌、甲状腺癌、脳癌又は皮膚癌から選択され得る。感染症は、ウイルス、細菌又は真菌から選択される病原体によって引き起こされるものであり得る。前述のいずれかの態様の使用において、NK細胞若しくはNK細胞集団及び/又はNK細胞若しくはNK細胞集団のドナーは、前記HLA遺伝子型及び前記KIR遺伝子型が決定されている2つ以上の細胞、集団及び/又はドナーを含む集合から選択され得る。
【0032】
本開示が関連する技術分野の当業者には、添付の図面を参照しながら以下の本発明の説明を考察すると、本開示の前述の及び他の特徴及び利点が明らかになるであろう。特に記載がない限り、本図面全体を通して類似の参照符号は、類似の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本開示の一実施形態に係る、活性型KIR数が増加すると、標的細胞の溶解の増加に結び付くことを示す。
【
図2】本開示の一実施形態に係る、KIR遺伝子型の集団分布を示す代表的なデータを含む表を示す。
【
図3】本開示の一実施形態に係る、万能ドナーNK細胞を、それを必要としているレシピエント対象への治療的投与のために選択する方法を示す。
【
図4】本開示の一実施形態に係る、様々なアレル、KIR及び/又は受容体をコード及び/又は発現するようにNK細胞を改変する方法を示す。
【
図5】本開示の一実施形態に係る、万能ドナーNK細胞を、それを必要としているレシピエント対象への治療的投与のために採取して調製する方法を示す。
【
図5A】HLA-C1、C2、Bw4スペクトルにわたるドナーのKIRタイピング(上)によるKIR遺伝子の存在(灰色)又は非存在(黒色)の評価(下)の概略図を示す。
【
図5B】NK細胞上のKIR発現を決定するためのフローサイトメトリーによるPBMC及びドナー対応NK細胞の分析を示す。2DL2/3、2DL1及び3DL1の発現を、それぞれKIR特異的抗体REA147/CH-L、143211及びDX9を用いて評価した。個別のドナーについての各KIRを発現するNK細胞の割合を示す。
【
図6】本開示の一実施形態に係る、万能ドナーNK細胞を、それを必要としている第1の疾患タイプを有するレシピエント対象への治療的投与のために採取して調製する方法を示す。
【
図7】本開示の一実施形態に係る、第1の疾患タイプを有するレシピエントを同定し、万能ドナーNK細胞を使用して治療を提供する方法を示す。
【
図8】フローサイトメトリーを利用して、全てのCMV+ドナーにNKG2Cを発現するNK細胞があること及び拡大後にNKG2C発現が増加することを示す。
【
図9】mRNAレベル測定値を利用して、拡大後にNKG2C発現が増加することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
当業者は、図中の要素が単純さ及び明瞭さのために示され、必ずしも縮尺どおりには描かれていないことを理解するであろう。例えば、本開示の実施形態の理解が向上することを促進するように、図中の一部の要素の寸法が他の要素と比べて誇張されていることもある。
【0035】
装置及び方法の構成要素は、本明細書における説明の利益を得る当業者に容易に明らかであろう詳細によって本開示が不明瞭となることがないように、図面中では、適切な場合には従来の記号によって表し、本開示の実施形態の理解に関わるその特定の詳細のみを示している。
【0036】
ここで、図を参照するが、図中に示される類似の符号が付された特徴は、特に注記しない限り、類似の要素を指す。本開示は、概して、ナチュラルキラー(NK)細胞のドナー選択方法に関し、より具体的には、万能ドナー細胞を、それを必要としているレシピエントへの治療的投与のために選択する方法を提供することに関する。
【0037】
本開示では、幾つもの用語が参照されることになり、それらは、以下の意味を有すると定義されるものとする。
「任意選択の(Optional)」又は「任意選択で(optionally)」とは、続いて記載される事象又は状況が起こることも又は起こらないこともあり、前記事象又は状況が起こる場合と、それが起こらない場合とがその記載に包含されることを意味する。「プライマー」は、ある種の酵素的操作を支援する能力のあり、且つ酵素的操作が起こり得るようにして標的核酸とハイブリダイズすることができる一部のプローブである。プライマーは、酵素的操作に干渉しない当技術分野で利用可能なヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体若しくは類似体の任意の組み合わせで作られたものであり得る。
【0038】
「プローブ」は、標的核酸と典型的には配列特異的に、例えばハイブリダイゼーションを通して相互作用する能力を有する分子である。核酸のハイブリダイゼーションについては、当技術分野においてよく理解されており、本明細書で考察される。典型的には、プローブは、当技術分野で利用可能なヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体若しくは類似体の任意の組み合わせで作られたものであり得る。
【0039】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して同義的に使用される。
用語「配列同一性」は、本明細書で使用されるとき、実質的に等しい長さの2つの配列間における同一性の程度の定量的尺度を指し示す。核酸又はアミノ酸配列に関わらず、2つの配列のパーセント同一性は、2つのアラインメントした配列間における完全な一致の数を短い方の配列の長さで除し、それに100を乗じたものである。
【0040】
核酸配列の近似アラインメントは、スミス及びウォーターマン(Smith and Waterman)著、アドバンシズ・イン・アプライド・マセマティクス(Advances in Applied Mathematics)、第2巻、p.482~489、1981年の局所的相同性アルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、デイホフ(Dayhoff)著、「タンパク質配列及び構造アトラス(Atlas of Protein Sequences and Structure)」、M.0.デイホフ(M.0.Dayhoff)編、第5増補版、第3巻、p.353~358、国立生物医学研究財団(National Biomedical Research Foundation)、米国ワシントンD.C.(Washington,D.C.)によって開発され、且つグリブスコフ(Gribskov)著、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acids Res.)、第14巻、第6号、p.6745~6763、1986年によって標準化されたスコアリング行列を用いることにより、アミノ酸配列に適用し得る。配列のパーセント同一性を決定するためのこのアルゴリズムの例示的実装が、ジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)(ウィスコンシン州マディソン(Madison,Wis.))によって「ベストフィット(BestFit)」ユーティリティアプリケーションに提供されている。配列間のパーセント同一性又は類似性を計算する他の好適なプログラムは、当技術分野において概して公知であり、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータで使用するブラスト(BLAST)である。例えば、ブラストN(BLASTN)及びブラストP(BLASTP)は、以下のデフォルトパラメータを用いて使用することができる:遺伝子コード - 標準;フィルタ - なし;鎖両方;カットオフ=60;期待値10;行列BLOSUM62;記述50配列;ソート順=HIGHSCORE;データベース=非冗長、ジェンバンク(GenBank)+EMBL+DDBJ+PDB+ジェンバンクCDSトランスレーションズ(GenBank CDStranslations)+スイスプロテイン(Swiss protein)+Spアップデート(Spupdate)+P1R。これらのプログラムの詳細については、ジェンバンク(GenBank)のウェブサイトを参照することができる。一般に、置換は保存的アミノ酸置換であり:グループ1:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;グループ2:セリン、システイン、スレオニン及びメチオニン;グループ3:プロリン;グループ4:フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン;グループ5:アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン及びグルタミンのメンバー内での交換に限定される。
【0041】
核酸及びアミノ酸配列同一性の決定技法は、当技術分野において公知である。典型的には、かかる技法は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、及び/又はそれによりコードされるアミノ酸配列を決定すること、及びその配列を第2のヌクレオチド又はアミノ酸配列と比較することを含む。ゲノム配列もこのようにして決定し、比較することができる。一般に、同一性とは、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の、それぞれヌクレオチドとヌクレオチドとの、又はアミノ酸とアミノ酸との、正確な対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチド又はアミノ酸)は、それらのパーセント同一性を決定することによって比較し得る。
【0042】
上述の細胞及び方法には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更が行われる可能性があるため、上記の説明及び以下に提供する例に含まれる事項は、全て例示であり、限定する意味はないと解釈されるものとすることが意図される。
【0043】
「増加」は、より程度の高い症状、疾患、組成物、状態又は活性をもたらす任意の変化を指し得る。増加は、状態、症状、活性、組成物の統計的に有意な程度の任意の個別値、中央値又は平均値の増加であり得る。従って、増加は、その増加が統計的に有意である限りは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100%の増加であり得る。
【0044】
「減少」は、より程度の低い症状、疾患、組成物、条件又は活性をもたらす任意の変化を指し得る。ある物質は、その物質がある場合の遺伝子産物の遺伝的アウトプットが、その物質がない場合の遺伝子産物のアウトプットと比べて少ないとき、遺伝子の遺伝的アウトプットを減少させることも理解される。例えば、減少は、症状が以前に観察されたものよりも軽くなるような障害の症状の変化でもあり得る。減少は、条件、症状、活性、組成物の統計的に有意な程度の任意の個別値、中央値又は平均値の減少であり得る。従って、減少は、その減少が統計的に有意である限りは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は100%の減少であり得る。
【0045】
「阻害する」、「阻害している」及び「阻害」は、活性、反応、状態、疾患又は他の生物学的パラメータの減少を意味する。これには、限定はされないが、活性、反応、条件又は疾患の完全な除去が含まれ得る。これには、例えば、天然又は対照レベルと比較したときの活性、反応、条件又は疾患の10%の低減も含まれ得る。従って、低減は、天然又は対照レベルと比較したときの10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%又は任意の中間的な程度の低減であり得る。
【0046】
「低減する」又は「低減している」若しくは「低減」など、この単語の他の語形は、事象又は特徴(例えば、腫瘍成長)が下がることを意味する。これは、典型的には何らかの標準値又は予想値に対するものであることが理解され、換言すれば、これは相対的であり、しかし常に標準値又は相対値が参照されるとは限らないものである。例えば、「腫瘍成長を低減する」とは、標準又は対照と比べて腫瘍の成長速度を低減することを意味する。
【0047】
「予防する」又は「予防している」若しくは「予防」など、この単語の他の語形は、特定の事象又は特徴を止めること、特定の事象又は特徴の発達又は進行を安定化させる又は遅らせること又は特定の事象又は特徴が起こる可能性を最小限に抑えることを意味する。予防するとは、典型的には、例えば低減すると比べると絶対性が高いため、対照と比較する必要はない。本明細書で使用されるとき、何らかのものが低減されるが、予防されない可能性があり、しかし低減される何らかのものが予防される可能性もある。同様に、何らかのものが予防されるが、低減されない可能性があり、しかし予防される何らかのものが低減される可能性もある。低減又は予防するが使用される場合、特に具体的に指示されない限り、他の単語の使用も明示的に開示されることが理解される。
【0048】
用語「対象」は、投与又は治療の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば哺乳類であり得る。一態様において、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ亜科動物、ウマ科動物、ブタ、イヌ科動物又はネコ科動物であり得る。対象は、モルモット、ラット、ハムスター、ウサギ、マウス又はモグラでもあり得る。従って、対象は、ヒト又は動物患者であり得る。用語「患者」は、臨床医、例えば医師の治療下にある対象を指す。
【0049】
用語「治療上有効(therapeutically effective)」は、使用される組成物の量が、疾患又は障害の1つ以上の原因又は症状を改善するのに十分な分量であることを指す。かかる改善には、低下又は変化さえあれば十分であり、必ずしも消失が必要なわけではない。
【0050】
用語「治療」は、疾患、病態又は障害の治癒、改善、安定化又は予防を目的とした患者の医学的管理を指す。この用語には、積極的治療、即ち、特に疾患、病態又は障害の好転に向けて行われる治療が含まれ、原因治療、即ち関連する疾患、病態又は障害の原因の除去に向けて行われる治療も含まれる。加えて、この用語には、姑息的治療、即ち、疾患、病態又は障害の治癒というよりむしろ、症状の軽減のために計画される治療;予防的治療、即ち、関連する疾患、病態又は障害の発生を最小限に抑える又は部分的若しくは完全に抑制するために行われる治療;及び支持的治療、即ち、関連する疾患、病態又は障害の好転に向けて行われる別の特異的療法を補足するために用いられる治療が含まれる。
【0051】
対象への「投与」は、対象に薬剤を導入又は送達する任意の経路を含む。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮(transcutaneous)、経真皮(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸、膣、吸入による、植え込まれたリザーバ経由、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内注射法又は輸注(infusion)法)などを含めた、任意の好適な経路によって行うことができる。「並行投与(Concurrent administration)」、「組み合わせでの投与」、「同時投与(simultaneous administration)」又は「同時に投与される」は、本明細書で使用されるとき、化合物が時間的に同じ時点において又は本質的に互いの直後に投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、それらの化合物が時間的に同じ時点で投与されたときに実現する結果と区別できない結果が観察されるような十分に近い時点で投与される。「全身投与」は、例えば循環系又はリンパ系への入口から、対象の体の広い範囲(例えば、体の50%を超える範囲)に薬剤が導入又は送達される経路を経て対象に薬剤を導入又は送達することを指す。対照的に、「局所投与」は、投与箇所の範囲又はそこに直接隣接する範囲へと薬剤が導入又は送達されるが、その薬剤が治療的に意味のある量で全身的に導入されることはない経路を経る対象への薬剤の導入又は送達を指す。例えば、局所投与された薬剤は、投与箇所の局所的な近傍には容易に検出可能であるが、対象の体の離れた部分では検出不能であるか又は無視できるほどの量のみ検出できる。投与には、自己投与及び他者による投与が含まれる。
【0052】
「治療する」、「治療すること」、「治療」及びその文法的変化形は、本明細書で使用されるとき、1つ以上の疾患若しくは病態、疾患若しくは病態の症状又は疾患若しくは病態の根底にある原因を部分的又は完全に予防する、遅延させる、根治する、癒す、改善する、軽減する、変化させる、修復する、改良する、好転させる、安定化させる、緩和する、及び/又はその強度若しくは頻度を低減することを意図した又はそれを目的とする組成物の投与を含む。本発明に係る治療は、防御的に、予防的に、姑息的に又は修復的に適用され得る。予防的治療は、発症する前(例えば、癌の明らかな徴候が出る前に)、早期発症時(例えば、癌の初期徴候及び症状が出たとき)又は癌の発生が確定した後に対象に投与される。予防的投与は、疾患又は感染症の症状が現れる前の1日間(数日間)から数年間にわたって行われ得る。
【0053】
I.万能ドナーを選択する
NK細胞は、それが自己HLAクラスI分子に対する抑制型キラー免疫グロブリン受容体(KIR)を発現するとき、ライセンス化される(亢進した殺傷能力を獲得する)。これによってNK細胞は、「自己」を認識することが可能になり、自己細胞を殺傷から免れさせる。従って、自己HLAクラスI分子を欠いている標的は、ライセンス化されたNK細胞による認識を誘発する可能性が高くなる。NKアロ反応性に関連することが公知の抑制型KIR遺伝子は、(i)HLA-Cグループ2アレルに結合する2DL1、(ii)HLA-Cグループ1アレルに結合する2DL2及び2DL3、(iii)及びHLA-B Bw4アレルに結合する3DL1である。リガンド欠損モデルによれば、対応するリガンドがレシピエントに存在せず、且つドナーに存在する場合に限り、抑制型KIR遺伝子を発現する各NK細胞にアロ反応性があることになる - 例えば、グループClアレルを保有するドナーは、いずれもグループClアレルを欠く任意の個体にアロ反応性を示す。従って、CI、C2及びBw4ファミリのHLAを保有するドナーは、このモデルによれば、CI、又はC2、又はBw4を欠く任意のレシピエントに対してアロ反応性を示すと予測される。
【0054】
抑制型KIRがアロ反応性を防ぐのに対し、活性型KIRは、NK細胞溶解を促進する活性型リガンドを認識する。活性型KIRの遺伝には、大きいばらつきがある - いずれの個体にも0~7個のaKIRがあり得る。幹細胞移植を受けた患者からのデータが示すところによれば、活性型KIRが多いドナーからの同種移植片の提供を受けた患者は、活性型KIRが少ないドナーからの同種移植片の提供を受けた患者と比べてアウトカム(outcome)が良好である。他にも、活性型KIRをより多く受け継ぐ個体において、白血病に対する予防的利益が示されている。本研究室では、活性型KIR数が多いNK細胞ほど、標的細胞の溶解を強力に誘導することを示した(
図1)。加えて、多変量解析では、活性型KIR 2DS1及び3DS Iは無病生存期間と関連している。
【0055】
最後に、NKG2Cは、NK細胞発生の後期に発現する活性型受容体であり、HLA-B又は-CよりむしろHLA-Eを認識する。NKG2C発現は、CMV感染症患者で誘導され、適応性のNK細胞表現型及び無白血病生存率の改善と相関する。
【0056】
従って、「万能な(universal)」ドナーとは、C1、C2及びBw4アレルを担持するHLA遺伝子型を有する者、Cl、C2及びBw4に結合する(最大限のライセンス化につながる)抑制型KIR(2DL I、2DL2又は3及び3DL1)を保有する、且つ活性型KIRの比率が高い(2DS I及び3DS1を含む可変的に遺伝する活性型遺伝子が3つより多い)KIR遺伝子型を有する者及びCMVに曝露されたことがあり、結果としてNKG2C高発現が生じている者である。
【0057】
白人ドナーについて利用可能なデータを考察すると、集団の32%にC I/C2/Bw4アレルが見られる。集団の80%を占める23個のKIR遺伝子型の25.3%がこれらの基準全てに合致する(
図2) - 成人の約90%がCMVに曝露されたことがある。従って、16人中約1人の健常人に、「理想的な」NK細胞ドナーを同定することができる。この16人中1人の健常人からのドナーNK細胞に関してスクリーニングし、且つ/又はそれを選択することにより、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化される「万能な」ドナーNK細胞を入手し得ることが理解され、且つ本明細書でそれが企図される。
【0058】
従って、一態様において、本開示は、万能ドナーNK細胞を、それを必要としている対象への治療的投与のために選択する方法に関し、この方法は、NK細胞ドナーからの候補NK細胞のKIR表現型を決定することであって、KIR表現型が、1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、決定すること;及びKIR表現型が、1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む。本方法において、KIR表現型は、ハイスループット表現型イメージングを促進し得る磁気共鳴画像法など、画像ベースの方法を用いて決定され得る。マイクロコンピュータ断層撮影スキャン技術は、表現型分析を支援するのに好適な高精度の画像化を提供し得る。ゲノムスケールのRNAiスクリーニングも適用することができる。
【0059】
一態様において、本開示は、
図3に示されるとおり、万能ドナーNK細胞を、それを必要としているレシピエント対象への治療的投与のために選択する方法300を包含する。302において、ドナー細胞がHLA Cl、C2及びBw4アレルを有するかどうかが決定される。一態様において、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在は、NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることによって決定され、ここで、HLA遺伝子型は、HLA Cl、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の各々の存在又は非存在を示す。304において、ドナー細胞がHLA Cl、C2及びBw4アレルの少なくとも1つを欠いていることに応答して、そのドナー細胞が準最適(sub-optimal)としてマークされる。306において、ドナー細胞がHLA Cl、C2及びBw4アレルの少なくとも1つを有することに応答して、ドナー細胞が活性化閾値以上の数の活性型KIRを有するかどうかが決定され、活性化閾値は、存在する活性型KIRの最小限の数である。非限定的な例として、一態様において、閾値は、少なくとも1つの活性型KIRであり得、ここで、1つ以上の活性型KIRの存在が活性化閾値を満たす。代替的な態様において、活性化閾値は、2、3、4、5、6又は7つの活性型KIRであり、それぞれ2、3、4、5、6又は7つの活性型KIRの少なくとも1つが存在するときに満たされる。一態様において、活性型KIRの存在は、候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることによって決定され、ここで、KIR遺伝子型は、活性型KIRの存在又は非存在を示す。308において、ドナー細胞が活性化閾値を超える数の活性型KIRを欠いていることに応答して、そのドナーが非万能ドナーと同定される。
【0060】
310では、ドナー細胞が活性化閾値を超える数の活性型KIRを有することに応答して、活性型KIRが、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4を含む群から選択されるかどうかを決定する。312において、ドナー細胞が、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4を含む群から選択されるKIRを欠いていることに応答して、そのドナー細胞が非万能ドナー細胞と同定される。
【0061】
一例示的実施形態において、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの各々の存在又は非存在を示す。314において、ドナーがCMV血清反応陽性状態に関する検査を受けることに応答して、ドナーがCMV+であるかどうかが決定される。316において、ドナーが検査でCMV血清反応陰性となることに応答して、そのドナー細胞が非万能ドナー細胞と同定される。
【0062】
318において、ドナー細胞がNKG2C活性型受容体発現を有することに応答して、そのドナー細胞が万能ドナー細胞と同定される。320において、ドナーがNKG2C活性型受容体発現の表現型を欠いていることに応答して、そのドナー細胞が非万能ドナー細胞と同定される。322において、ドナー細胞がステップ302、306、310、314及び/又は318の少なくとも1つ、2、3、4又は5つにおいて基準を満たしていることに応答して、ドナー細胞が万能ドナー細胞として同定される。
【0063】
態様では、万能と同定されたドナー細胞は、それを必要としている対象への治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択される。上述のとおり、NKG2Cは、NK細胞発生の後期に発現する活性型受容体であり、HLA-B又は-CよりむしろHLA-Eを認識する。NKG2C発現は、CMV感染症患者で誘導され、適応性のNK細胞表現型及び無白血病生存率の改善と相関する。従って、NKG2Cが上昇している個体又はCMV血清反応陽性の個体から候補ドナー細胞を同定することにより、ドナーNK細胞の有効性が更に増加し得る。従って、本明細書には、NK細胞集団をスクリーニングする方法又はレシピエント対象への治療的投与のための万能ドナーNK細胞を選択する方法も開示され、この方法は、候補NK細胞のCMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることを更に含み;及びNK細胞ドナーがCMVについて血清反応陽性であるとき又はNK細胞ドナーからのNK細胞がNKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を示すとき、そのNK候補NK細胞が更に選択される。参照レベルは、例えば、対照ドナーから入手したNKG2C発現についての所定の参照値又はCMV血清反応陰性の一組の対照ドナーから入手したNKG2C発現レベルの平均値である。当業者によれば、302、306、310、314及び/又は318に記載される要素の1つの存在又は非存在が、ドナーを最終的に万能ドナーと見なす妨げにはならないことが理解されるであろう。
【0064】
別の態様において、ドナーは、(i)HLA遺伝子型が少なくとも2つのI ILAアレルI ILA Cl、C2及びBw4の存在を示すとき、及び/又は(ii)KIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の存在を示すとき、最適とマークされる。
【0065】
本明細書には、NK細胞の供給源を、それを必要としている対象への治療的投与を提供するために、ドナーからの候補NK細胞集団をスクリーニングして、集団中における万能NKドナー細胞を同定する方法も開示される。この方法は、候補NK細胞集団がスクリーニングされる点を除いて、方法300と実質的に同じである。方法ステップ302~318を含む、候補NK細胞集団をスクリーニングする方法である。
【0066】
別の態様において、候補NK細胞集団をスクリーニングする方法は、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、HLA遺伝子型は、HLA CI、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2又は2DL3及び/又は3DL Iの存在を示す、入手するか又は入手していること、及び/又は(b)候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していることを含み;ここで、(i)少なくとも2つのHLAアレルHLA Cl、C2及びBw4を含む、従って可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2又は2DL3及び/又は3DL1の少なくとも1つを含む候補NK細胞、及び/又は(ii)少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4を含む候補NK細胞は、万能NK細胞である。
【0067】
一態様において、本明細書には、前述のいずれかの態様のNK細胞集団をスクリーニングする方法又はレシピエント対象への治療的投与のための万能ドナーNK細胞を選択する方法が開示され、ここで、選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象について組織学的に最適化される。
【0068】
本開示のスクリーニングし及び選択する方法は、最終的に、単離された万能ドナーNK細胞をもたらすことが理解され、且つ本明細書でそれが企図される。従って、本明細書には、単離された万能ドナーNK細胞が開示され、ここで、単離された万能ドナーNK細胞は、少なくとも2つのI ILAアレルI ILA Cl、C2及びBw4;及び/又は少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4を含む。一態様において、単離された万能ドナーNK細胞は、NKG2C+であるか、又はCMV血清反応陽性ドナー供給源に由来する。
【0069】
図4に示される方法400に示されるとおり、正しい遺伝子型特徴を有する万能ドナーNK細胞を入手するために、ドナー供給源から候補ドナーNK細胞を選択又はスクリーニングするよりむしろ、NK細胞又は細胞株は、様々なアレル、KIR及び/又は受容体をコード及び/又は発現するように改変され得ることが更に理解される。従って、本明細書において、402では、改変されたNK細胞又は細胞株が開示され、ここで、NK細胞は、Cl、C2又はBw4を含む1つ、2つ又はそれを超えるHLAアレルを発現するように形質転換されている(例えば、CI、C2及びBw4を発現するNK細胞又は細胞株)。404において、NK細胞又は細胞株は、改変され、ここで、NK細胞は、1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び/又は3DL1の存在を示すHLAアレルを発現するように形質転換される。406において、NK細胞又は細胞株は、活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4をコード及び/又は発現するように改変され、且つ/又は2DS1/2、2DS3/5、3DS1又は2DS4を含む1、2、3、4、5つ又はそれを超える可変的に遺伝する活性型KIRを発現するように形質転換される。408において、NK細胞又は細胞株は、NKG2Cを活性化させるように改変される(例えば、細胞株をCMV血清反応陽性条件に曝露する)。方法ステップ402~408は、利用されているNK細胞株に存在する根底にある遺伝子発現又は細胞活性化に応じて選択的に完成され得、加えて、これらのステップは、準最適としてマークされたドナー細胞(例えば、方法300のステップ304、308、312、306)及び/又は最適としてマークされたドナー細胞(例えば、方法300のステップ318)に対して実施され得る。
【0070】
単離された万能ドナーNK細胞及び改変された万能ドナーNK細胞又は細胞株は、サイトカイン毒性に関連する多くの困難を乗り越えるため、1つ以上のNK細胞エフェクター剤(例えば、刺激性ペプチド、サイトカイン及び/又は接着分子)の存在下で活性化及び/又は拡大され得ることが理解され、且つ本明細書でそれが企図される。NK細胞活性化剤及び刺激性ペプチドの例としては、限定はされないが、IL-21、41BBL、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-7、ULBP、MICA、LFA-1、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-I、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニスト;及び/又はTGF-β及び/又は他のホーミング誘導シグナル伝達分子が挙げられる。サイトカインの例としては、限定はされないが、IL-2、IL-12、1L-21及びIL-18が挙げられる。
【0071】
接着分子の例としては、限定はされないが、LFA-1、MICA、BCM/SLAMF2が挙げられる。これらのNK細胞エフェクター剤は、溶液中で可溶性を呈するか、又は細胞膜(PM)粒子、エキソソーム(EX)又はフィーダ細胞(FC)の表面上に膜結合剤として存在し得る。PM粒子、EXエキソソーム及び/又はFC細胞は、膜型のNK細胞活性化剤及び刺激性ペプチドを発現するように改変することができる。代わりに、NK細胞活性化剤及び刺激性ペプチドは、PM粒子、EXエキソソーム又はFCフィーダ細胞の表面に化学的にコンジュゲートすることができる。例えば、膜結合型IL-21を発現するフィーダ細胞から調製される細胞膜(PM)粒子、フィーダ細胞(FC)又はエキソソーム(EX)(それぞれFC21細胞、PM21粒子及びEX21エキソソーム)。従って、一態様において、本明細書には、単離された万能ドナーNK細胞又は細胞株が開示され、ここで、万能ドナーNK細胞又は細胞株は、41BBL、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-7、ULBP、MICA、LFA-1、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニスト;及び/又はTGF-β(例えば、IL-21)を含むが、これらに限定されない1つ以上の活性化剤、刺激性ペプチド、サイトカイン及び/又は接着分子の存在下において万能ドナーNK細胞をインビトロでインキュベートすることによって活性化及び/又は拡大される。一態様において、インビトロ活性化に使用されるIL-21は、可溶性IL-21、IL-21発現フィーダ細胞(FC21)、IL-21細胞膜粒子(PM21)又はIL-21エキソソーム(EX21)を含む。膜結合型IL-21を発現するFC21細胞、PM21粒子及びEX21エキソソームは、41BBL、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-7、ULBP、MICA、LFA-1、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニスト;及び/又はTGF-βを含むが、これらに限定されない追加的な1つ以上の活性化剤、刺激性ペプチド、サイトカイン及び/又は接着分子を更に含み得る(例えば、41BBL及び膜結合インターロイキン-21を発現するPM21粒子、EX21エキソソーム又はFC細胞)ことが理解され、且つ本明細書でそれが企図される。NK細胞は、加えて、可溶性及び膜結合型の両方の追加的なリガンドに曝露されることができる。
【0072】
上述のとおり、万能ドナーNK細胞の追加的な活性化及び/又は拡大により、レシピエントに投与されたときの細胞の有効性が増加する。従って、一態様において、本明細書には、万能ドナーNK細胞集団を、それを必要としている対象への治療的投与のために調製する方法が開示され、この方法は、(a)NK細胞ドナーから初期NK細胞集団を入手することであって、NK細胞ドナーは、(i)可変的に遺伝する活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び/又は2DS4の少なくとも2つ;及び(ii)Cl、C2及びBw4アレルを含む少なくとも1つ、2つ又は3つ全てのHLAアレルの存在を示す遺伝子型を有すること;及び(b)11-21、41BBL、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-7、ULBP、MICA、LFA-1、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニスト;及び/又はTGF-β(例えば、IL-21)を含むが、これらに限定されない1つ以上の活性化剤、刺激性ペプチド、サイトカイン及び/又は接着分子に対し、初期NK細胞集団を拡大するのに十分な時間にわたって且つ条件下において初期NK細胞集団をインビトロで曝露することを含む。1つ以上の活性化剤への曝露は、少なくとも1回の集団倍化(doubling)を達成する時間にわたって且つ条件下において行われ得ることが理解され、且つ本明細書でそれが企図される。一例示的実施形態において、拡大により、NKG2Cを発現するNK細胞のNKG2C高発現が5%~約22%から11%~約30%に増加する。
【0073】
一態様において、単離された万能ドナーNK細胞若しくは細胞株又はNK細胞集団は、IFNy又はTNFaの抗腫瘍性サイトカインを産生及び分泌する増加した能力によって特徴付けられる。一態様において、拡大されたNK細胞集団は、NKG2Dの増加した発現、CD16の増加した発現、NKp46の増加した発現、増加したKIR発現によって特徴付けられる。
【0074】
II.ドナー選択
一態様において、ドナーは、基準に合致しないドナーを以降の検査から除外する段階的な方法でスクリーニングされる(
図3を参照されたい)。初めに、KIR2DL4の機能変異体と欠失変異体との区別を含め、逆配列特異的オリゴヌクレオチド(SSO)方法論(例えば、ワンラムダ(One Lambda))でNK細胞ドナーに関するKIR遺伝子タイピングを実施し得る。別の例示的実施形態では、活性型KIR含量は、活性型KIR遺伝子の総数を評点化することによって決定される。DS指定KIR及び機能性KIR2DL4は、全て活性型と見なした。一態様では、一般的な活性型KIR(KIR2DS4及び機能性バージョンのKIR2DL4)及び5個の可変的に遺伝する活性型KIRの多い数を有するドナーが選択される。別の態様では、ドナーは、遺伝したB-KIRセグメントの数(例えば、セントロメア及びテロメアBアレルの3又は4個)に基づき選択される。一例示的実施形態では、多い数とは、可変的に遺伝する活性型KIRの3、4又は5個である。別の例示的実施形態において、多い数とは、可変的に遺伝する活性型KIRの4個である。更に別の例示的実施形態において、多い数とは、可変的に遺伝する活性型KIRを1個以上有することである。
【0075】
一態様において、NK細胞ドナーは、市販のキットを用いたSSO-PCR(増幅及びオリゴヌクレオチドシーケンシング)により、HLA-B及び-C遺伝子座のアレルに関して中程度の又は高度な分解能レベルでHLAタイピングされる。別の態様では、欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Lab)の欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EMBL-EBI)が管理するKIRリガンドカリキュレータ(KIR Ligand Calculator)を用いてKIR-リガンドクラスが予測される。3つ全てのCl、C2及びBw4クラスを持つ個体が選択される。
【0076】
一態様において、最後にドナーがCMVに関して検査される。CMV+ドナーの検査により、NKG2C+ NK細胞の存在を確認することができる。代わりに、ドナーは、CMV曝露前に予測される閾値(例えば、約20%)を上回るNKG2C+ NK細胞の存在に関してスクリーニングされる。
【0077】
一態様において、本明細書には、
図5に示されるとおり、最適な万能ドナーNK細胞ドナーをスクリーニングして、様々な疾患治療における使用に最適な万能ドナーNK細胞を調製する方法500が開示される。例えば、ステップ502において、最適な細胞ドナー(
図3の方法300によって定義されるとおり)が伝染病に関してスクリーニングされる。この例示的実施形態では、最適な万能ドナーNK細胞ドナー(ドナー)が、連邦規則集第21編第1271部、FDAガイダンス文書「ヒト細胞、組織並びに細胞及び組織ベース産物(HCT/P)のドナーに関する適格性の決定(Eligibility Determination for Donors of Human Cells,Tissues,and Cellular and Tissue-Based Products(HCT/Ps))」並びに既発行の任意の補足的ガイダンス文書に準拠してBTMB機関におけるHCT/Pドナーに要求されるとおりの感染症検査及びスクリーニングを受けることになる。検査は、CLIA公認及びFDA登録研究所において、BTMBとの契約の下に、HCT/Pドナーに関するBTMB指針及びFDA承認済み検査を利用する別個のドナープロトコルに従い実施される。ドナーは、感染症マーカ(IDM)に関して、採取前後7日以内に表1の検体/試験方法論を用いて検査されることになる。IDMとしては、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HTLV-I及びII、HIV-1、-2及び-O、梅毒、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)(シャーガス病)、ウエストナイルウイルス、CMVが挙げられる。
【0078】
【0079】
III.製造及びバイアル封入推定
一態様において、患者のニーズが生じる前に又はそれを受けて、拡大したドナーNK細胞製剤が製造される。一態様において、ドナーは、採取から7日以内に、標準的な感染症スクリーニング及び他のドナースクリーニング(連邦規則集第21編第1271部C項によって要求されるとおり)を受ける。方法500のステップ504において、ドナーがIDMを欠いていることに応答して、ドナーから末梢血単核球(MNC/PBMC)が採取される。別の例示的実施形態において、供給源末梢血単核球(PBMC)が採取され、標準方法によってNK細胞が増殖される。506において、採取されたMNCのCD3+免疫枯渇により枯渇MNCが形成される。一例示的実施形態において、MNC/PBMCは、MACSコロイド超常磁性CD3マイクロビーズを用いてCD3+ T細胞が枯渇される。
【0080】
508において、枯渇MNCがフィーダ細胞で第1のフィード期間及び第1のフィード間隔にわたって刺激され、NK細胞が増殖及び活性化される。一例示的実施形態では、フィーダ細胞は照射フィーダ細胞(IFC)である。別の例示的実施形態では、枯渇MNCは、照射CSTX002フィーダ細胞(凍結保存又は新鮮)で毎週繰り返し刺激することにより増殖される。CSTX002は、(i)凍結保存前、又は(ii)新鮮にMNC又はNK細胞培養物にそれを加える前のいずれかに100Gy(10,000ラド)ガンマ線照射で処理される。照射のバリデーションでは、25Gyで検出可能な増殖が除去されることが実証されており、NK細胞と共培養すると、更に99.9%の有効なIFC除去がもたらされた。一例示的実施形態において、IFCは、RPMI-1640、10%FBS、2mM Glutamax及び100IU/mLの組換えヒトIL-2(プロロイキン(Proleukin)、プロメテウス(Prometheus))を含有する培地に、約1:2のTNC対IFC比で加えられる。この例示的実施形態では、第1のフィード期間は10~15日であり、第1のフィード間隔は1~5日である。別の例示的実施形態において、第1のフィード期間は14日であり、第1のフィード間隔は1~3日である。一例示的実施形態において、MNC又はNK細胞は、約1:1のTNC対IFC比でIFCによって再刺激され、7日間にわたって(例えば、8~14日目に)培養される。この実施形態では、第1のフィード間隔が利用され、ここで、8~14日目の拡大の間に1~3日間隔で培養物が細胞数に関してモニタされ、新鮮なIL-2が100IU/mLで、及び10ng/mLのTGF-βが加えられる。異常増殖を防ぎ、収率を最大にするため、NK細胞培養物は5~10×106細胞/cm2を下回るように分割される。培養容器次第では、必要に応じて少なくとも半分の培地を交換することによって新鮮培地も提供される。
【0081】
510において、CD3+枯渇が決定される。CD3+枯渇が閾値を上回ることに応答して、ステップ506が繰り返される。一例において、CD3+枯渇は、フィーダ細胞の刺激の6日目が終了する1日前に決定される。この実施形態において、細胞カウント、免疫表現型タイピング及び生死判別のための試料は、MNC及び/又はNK細胞培養物(例えば、フィーダ細胞の刺激下にあるもの)から入手される。一例示的実施形態において、CD3+枯渇の閾値は、5%より多いCD3+細胞が存在することである。ここで、一例示的実施形態において、繰り返しのステップ506は、7日目に第1のフィード期間にわたって2回目のCD3+枯渇サイクルを実施することを含む。枯渇後、CD3陰性NK細胞画分から、細胞カウント、免疫表現型タイピング及び生死判別のための試料を入手することになる。
【0082】
512において、CD3+枯渇が閾値を下回ることに応答して、MNC及び/又はNK細胞がインターロイキン-2(IL-2)及び/又は形質転換成長因子β(TGFβ)と共に第2のフィード期間にわたって第2のフィード間隔で培養される。一例示的実施形態において、第2のフィード期間は約5~8日であり、第2のフィード間隔は約1~5日である。別の例示的実施形態において、第2のフィード期間は7日であり、第2のフィード間隔は約1~3日である。この例示的実施形態では、新鮮なIL-2が100IU/mLで加えられ、10ng/mLのTGF-βが第1のフィード期間の最初の7日間中に第2のフィード間隔で加えられる。
【0083】
514において、培養されたナチュラルキラー細胞に関する免疫表現型タイピング及び生死判別が実施される。一例において、第1のフィード期間の13日目、細胞カウント、免疫表現型タイピング及び生死判別のための試料がNK細胞培養物から入手される。0.33%未満のCD3+細胞が存在することに応答して、直ちに又は第1のフィード期間の14日目の回収前に検査が繰り返され得る。CD3+枯渇が第2の閾値(例えば、0.33%)を超えることに応答して、ステップ506に記載されるとおりの更なる枯渇が、13日目に直ちに又は14日目の回収後に実施される。細胞カウント及び免疫表現型タイピング及び生死判別のための試料がCD3枯渇NK細胞画分から入手され、残りは再びIL-2及びTGF-βと一晩培養されることになる。一例示的実施形態において、CD3+枯渇が実施されないことに応答して、次に7日目の免疫表現型タイピングが実施されないことになる。
【0084】
516において、培養されたNK細胞が用量濃度に濃縮される。一例において、用量濃度は2×106NC/mL~2×108NC/mLである。518において、用量濃度の培養されたNK細胞が凍結保存される。一例示的実施形態において、NK細胞は、NK凍結培地に凍結保存される。例示的実施形態において、NK凍結培地は、10%DMSO、12.5%(w/v)、ヒト血清アルブミン(HSA)、USPを含み、且つ/又はプラズマライトA(Plasma-Lyte A)(USP)中に含む。方法500は、520から開始する特定の患者を治療する方法を記載し、この詳細は以下に続く。
【0085】
単純ヘルペスウイルス(HSV)を有するHSV患者の治療時など、1つの例示的実施形態において、HSV患者(HSVと診断された者)は、5.0×107細胞/kg/用量で投与されるバンク化されたNK細胞の1日1回用量を最大5連続で受ける。この例示的実施形態では、輸血又は輸注反応歴のあるHSV患者は、ジフェンヒドラミン1mg/kg(最大50mg)IV及びアセトアミノフェン10mg/kg(最大650mg)POが前投薬される。HSV患者は、その後の数日間(D1~D4)に適格性評価を繰り返し受け、反復投与が適格であるかどうかが決定される。用量は、HSV患者に1日1回、5日連続で与えられる。
【0086】
COVID患者(例えば、COVID-19感染症又はSARS-COV-2を有する者)の治療時など、別の例示的実施形態において、NK細胞は治療として提供される。一例示的実施形態において、輸血又は輸注反応歴のある患者は、ジフェンヒドラミン1mg/kg(最大50mg)IV及びアセトアミノフェン10mg/kg(最大650mg)が前投薬される。別の例示的実施形態において、患者は、COVIDによる入院から48時間以内にその最初のNK細胞用量を受ける。更に別の例示的実施形態において、同種異系の拡大したNK細胞が、COVIDに対する自然免疫機能を定量的及び定性的に回復させるため、患者の体重別に用量設定される。この例示的実施形態では、COVID患者に107NK細胞/kg患者体重の用量(例えば、平均的な患者の末梢血中の全NK細胞含量を補充すると考えられる用量)が提供される。別の例示的実施形態において、COVID患者は最大2用量を受けることになる。
【0087】
別の態様において、供給源末梢血単核球(PBMC)が採取され、標準方法によってNK細胞が増殖される。更に別の態様において、PBMCは、MACSコロイド超常磁性CD3マイクロビーズを用いてCD3+ T細胞が枯渇される。得られた細胞は、ウシ胎仔血清及びIL-2を補足した培地中で照射フィーダ細胞及び/又は膜粒子と共培養される。7日目、培養物が再刺激される。一態様において、NK細胞製剤は、14日目に、続く輸注のためのロット出荷試験及び凍結保存が行われる。NK細胞は、単回用量アリコート(例えば、108個のNK細胞/mLを含有する50mL)で凍結保存される。初回ドナー採血量が1単位に相当するものとして(450mL)、1.26×105個のNK細胞/mLの含量中央値及び2週間で2,800倍の拡大中央値を仮定すれば、各ドナーが31個の単位用量バッグに十分なNK細胞を作成することができる。CD3枯渇後に中央値3×108個のNK細胞を含有する初回ドナーアフェレーシスを仮定すれば(MDアンダーソン実験)、各ドナーが、平均168個の単位用量バッグを作成することができる。1個のバッグが、50kgの個体に対する108個のNK細胞/kgの1用量に十分である。成人患者については、108個/kgの用量では、1用量当たり患者1人につき最大2~3個のバッグが必要となり得る。1つの例示的な仮定は、凍結用培地が10%のDMSOを含有することであり、108個/kg用量について投与されるDMSOは、0.1m1/kgとなり得る。
【0088】
VI.遺伝子タイピング、シーケンシング及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)イムノアッセイ及び蛍光色素
様々な有用な免疫検出法のステップが、科学文献に記載されている。イムノアッセイとは、その最も単純で直接的な意味では、抗体と抗原との間の結合が関わる結合アッセイである。多くのタイプ及びフォーマットのイムノアッセイが公知であり、いずれも、開示されるバイオマーカの検出に好適である。イムノアッセイの例は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)、免疫ビーズ捕捉アッセイ、ウエスタンブロッティング、ドットブロッティング、ゲルシフトアッセイ、フローサイトメトリー、タンパク質アレイ、マルチプレックスビーズアレイ、磁気捕捉、インビボイメージング、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)及び光退色後蛍光回復/局在化法(FRAP/FLAP)である。
【0089】
一般に、イムノアッセイには、場合によっては免疫複合体を形成させるのに有効な条件下で、目的の分子(開示されるバイオマーカなど)を含有すると疑われる試料を、目的の分子に対する抗体と接触させること又は目的の分子に対する抗体(開示されるバイオマーカに対する抗体など)を、その抗体の結合を受けることのできる分子と接触させることが関わる。免疫複合体(一次免疫複合体)を形成させるのに有効な条件下且つそれに十分な期間にわたって試料を目的の分子に対する抗体と接触させること又は目的の分子に対する抗体の結合を受けることのできる分子と接触させることは、概して、単純に、分子又は抗体と試料とを接触した状態に至らせ、抗体が結合することのできる存在する任意の分子(例えば、抗原)と抗体が免疫複合体を形成する、即ち、それに結合するのに十分に長い期間にわたってその混合物をインキュベートするという問題である。多くの形態のイムノアッセイにおいて、組織切片、ELISAプレート、ドットブロット又はウエスタンブロットなどの試料-抗体組成物が、次に洗浄されて、あらゆる非特異的に結合した抗体種が取り除かれ得、特異的に結合した抗体のみが、検出しようとする一次免疫複合体内にあることが許される。
【0090】
本発明の方法の実践に際して、核酸分子の発現レベルの決定は、限定はされないが、サザン解析、ノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、「PCRプロトコル:方法及び応用の手引書(PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications)」、イニス(Innis)ら編、1990年、アカデミック・プレス(Academic Press)、ニューヨーク州を参照されたい)、逆転写酵素PCR(RT-PCT)、アンカーPCR、競合的PCR(例えば、米国特許第5,747,251号明細書を参照されたい)、cDNA末端の迅速増幅法(RACE)(例えば、「遺伝子クローニング及び分析:現在のイノベーション(Gene Cloning and Analysis:Current Innovations)」、1997年、p.99~115を参照されたい);リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えば、欧州特許第01 320308号明細書を参照されたい)、片側PCR(オハラ(Ohara)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)、1989年、第86巻、p.5673~5677)、インサイチュハイブリダイゼーション、Taqmanベースのアッセイ(ホランド(Holland)ら著、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)、1991年、第88巻、p.7276~7280)、ディファレンシャルディスプレイ法(例えば、リャン(Liang)ら著、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucl.Acid.Res.)、1993年、第21巻、p.3269~3275を参照されたい)及び他のRNAフィンガープリント法、核酸配列ベース増幅(NASBA)及び他の転写ベース増幅系、Qbetaレプリカーゼ、ストランド置換増幅(SDA)、修復連鎖反応(RCR)、ヌクレアーゼ保護アッセイ、サブトラクションベースの方法、Rapid-Scan(商標)などを含め、いかなる方法によっても実施され得る。
【0091】
ハイブリダイゼーション技法では、NK細胞の特定の特徴をコードするポリヌクレオチドを検出するために核酸プローブが用いられ得る。この技法には、概して、核酸プローブと核酸分子の相補配列との間に特異的なハイブリダイゼーションが起こるような条件下で、対象から入手した生体試料中の核酸分子を核酸プローブと接触させること、インキュベートすることが関わる。インキュベーション後、ハイブリダイズしなかった核酸が除去され、プローブにハイブリダイズした核酸の存在及び量が検出及び定量化される。PCR、ハイブリダイゼーションプローブ及び/又はダイレクトDNAシーケンシングの1つによって遺伝子タイピングが実施される。
【0092】
イムノアッセイは、試料中の目的の分子(開示されるバイオマーカ又はその抗体など)の量を検出又は定量化する方法を含み得、それらの方法には、概して、結合過程で形成される任意の免疫複合体の検出又は定量化が関わる。一般に、免疫複合体形成の検出は、当技術分野において周知であり、数多くの手法の適用を通して達成することができる。それらの方法は、概して、任意の放射性、蛍光、生物学的若しくは酵素的タグ又は任意の他の公知の標識など、標識又はマーカの検出に基づく。
【0093】
本明細書で使用されるとき、標識には、蛍光色素、ビオチン/ストレプトアビジンなどの結合対のメンバー、金属(例えば、金)及び/又は色付きの基質若しくは蛍光の発生によるなどして検出することのできる分子と特異的に相互作用するエピトープタグが含まれる。タンパク質を検出可能となるように標識するのに好適な物質としては、蛍光染料(本明細書では蛍光色素及びフルオロフォアとも呼ばれる)及び比色基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)と反応する酵素が挙げられる。蛍光染料は、極めて低量でも検出可能であるため、本発明の実施に際しては、概して蛍光染料の使用が好ましい。更に、単一のアレイと複数の抗原を反応させる場合、同時検出のため、各抗原が異なる蛍光化合物で標識される。アレイ上の標識されたスポットがフルオリメータを用いて検出され、シグナルの存在が、特異的な抗体に結合した抗原を指示する。
【0094】
フルオロフォアは、発光する化合物又は分子である。典型的には、フルオロフォアは、1つの波長の電磁エネルギーを吸収し、第2の波長の電磁エネルギーを放出する。代表的なフルオロフォアとしては、限定はされないが、1,5 IAEDANS;1,8-ANS;4-メチルウンベリフェロン;5-カルボキシ-2,7-ジクロロフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM);5-カルボキシナフトフルオレセイン;5-カルボキシテトラメチルローダミン(5-TAMRA);5-ヒドロキシトリプタミン(5-HAT);5-ROX(カルボキシ-X-ローダミン);6-カルボキシローダミン6G;6-CR 6G;6-JOE;7-アミノ-4-メチルクマリン;7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD);7-ヒドロキシ-4-Iメチルクマリン;9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン(ACMA);ABQ;酸性フクシン;アクリジンオレンジ;アクリジンレッド;アクリジンイエロー;アクリフラビン;アクリフラビンフォイルゲンSITSA;エクオリン(発光タンパク質);AFP-自己蛍光タンパク質-(クアンタム・バイオテクノロジーズ(Quantum Biotechnologies))、sgGFP、sgBFPを参照されたい;アレクサフルオル350(Alexa Fluor 350)(商標);アレクサフルオル430(Alexa Fluor 430)(商標);アレクサフルオル488(Alexa Fluor 488)(商標);アレクサフルオル532(Alexa Fluor 532)(商標);アレクサフルオル546(Alexa Fluor 546)(商標);アレクサフルオル568(Alexa Fluor 568)(商標);アレクサフルオル594(Alexa Fluor 594)(商標);アレクサフルオル633(Alexa Fluor 633)(商標);アレクサフルオル647(Alexa Fluor 647)(商標);アレクサフルオル660(Alexa Fluor 660)(商標);アレクサフルオル680(Alexa Fluor 680)(商標);アリザリンコンプレクソン;アリザリンレッド;アロフィコシアニン(APC);AMC、AMCA-S;アミノメチルクマリン(AMCA);AMCA-X;アミノアクチノマイシンD;アミノクマリン;アニリンブルー;ステアリン酸アントロシル;APC-Cy7;APTRA-BTC;APTS;アストラゾンブリリアントレッド4G;アストラゾンオレンジR;アストラゾンレッド6B;アストラゾンイエロー7 GLL;アタブリン;ATTO-TAG(商標)CBQCA;ATTO-TAG(商標)FQ;オーラミン;オーロホスフィンG;オーロホスフィン;BAO 9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール);BCECF(高pH);BCECF(低pH);硫酸ベルベリン;βラクタマーゼ;BFP青色シフト型GFP(Y66H);青色蛍光タンパク質;BFP/GFP FRET;ビマン;ビスベンゼミド;ビスベンズイミド(ヘキスト(Hoechst));ビス-BTC;ブランコフォル(Blancophor)FFG;ブランコフォル(Blancophor)SV;B0130(商標)-1;BOBO(商標)-3;ボディパイ492/515(Bodipy492/515);ボディパイ493/503(Bodipy493/503);ボディパイ500/510(Bodipy500/510);ボディパイ505/515;ボディパイ530/550(Bodipy 530/550);ボディパイ542/563(Bodipy 542/563);ボディパイ558/568(Bodipy 558/568);ボディパイ564/570(Bodipy 564/570);ボディパイ576/589(Bodipy 576/589);ボディパイ581/591(Bodipy 581/591);ボディパイ630/650-X(Bodipy 630/650-X);ボディパイ650/665-X(Bodipy 650/665-X);ボディパイ665/676(Bodipy 665/676);ボディパイFl(Bodipy Fl);ボディパイFL ATP(Bodipy FL ATP);ボディパイF1-セラミド(Bodipy F1-セラミド);ボディパイR6G SE(Bodipy R6G SE);ボディパイTMR(Bodipy TMR);ボディパイTMR-X(Bodipy TMR-X)コンジュゲート;ボディパイTMR-X、SE(Bodipy TMR-X、SE);ボディパイTR(Bodipy TR);ボディパイTR ATP(Bodipy TR ATP);ボディパイTR-X SE(Bodipy TR-X SE);BO-PRO(商標)-1;BO-PRO(商標)-3;ブリリアントスルホフラビンFF;BTC;BTC-5N;カルセイン;カルセインブルー;カルシウムクリムソン-;カルシウムグリーン;カルシウムグリーン-1 Ca2+色素;カルシウムグリーン-2 Ca2+;カルシウムグリーン-5N Ca2+;カルシウムグリーン-C18 Ca2+;カルシウムオレンジ;カルコフロールホワイト;カルボキシ-X-ローダミン(5-ROX);カスケードブルー(Cascade Blue)(商標);カスケードイエロー;カテコールアミン;CCF2(ジーンブレイザー(GeneBlazer));CFDA;CFP(シアン蛍光タンパク質);CFP/YFP FRET;クロロフィル;クロモマイシンA;クロモマイシンA;CL-NERF;CMFDA;セレンテラジン;セレンテラジンcp;セレンテラジンf;セレンテラジンfcp;セレンテラジンh;セレンテラジンhcp;セレンテラジンip;セレンテラジンn;セレンテラジン0;クマリンファロイジン;C-フィコシアニン;CPM Iメチルクマリン;CTC;CTCホルマザン;Cy2(商標);Cy3.1 8;Cy3.5(商標);Cy3(商標);Cy5.1 8;Cy5.5(商標);Cy5(商標);Cy7(商標);シアンGFP;サイクリックAMPフルオロセンサー(FiCRhR);ダブシル;ダンシル;ダンシルアミン;ダンシルカダベリン;塩化ダンシル;ダンシルDHPE;フッ化ダンシル;DAPI;ダポキシル;ダポキシル2;ダポキシル3’DCFDA;DCFH(ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸塩);DDAO;DHR(ジヒドロローダミン123);ジ-4-ANEPPS;ジ-8-ANEPPS(非レシオ);DiA(4-ジ16-ASP);ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸塩(DCFH);DiD-親油性トレーサ;DiD(Di1C18(5));DIDS;ジヒドロローダミン123(DHR);Dil(DilC18(3));Iジニトロフェノール;DiO(DiOC18(3));DiR;DiR(Di1C18(7));DM-NERF(高pH);DNP;ドーパミン;DsRed;DTAF;DY-630-NHS;DY-635-NHS;EBFP;ECFP;EGFP;ELF 97;エオシン;エリスロシン;エリスロシンITC;臭化エチジウム;エチジウムホモ二量体-1(EthD-1);オイクリシン(Euchrysin);ユーコライト(EukoLight);塩化ユウロピウム(111);EYFP;ファストブルー;FDA;フォイルゲン(パラロザニリン);FIF(ホルムアルデヒド誘導性蛍光);FITC;フラゾオレンジ;フルオ-3(Fluo-3);フルオ-4(Fluo-4);フルオレセイン(FITC);フルオレセイン二酢酸塩;フルオロエメラルド;フルオロゴールド(ヒドロキシスチルバミジン);フルオル・ルビー(Fluor-Ruby);フルオルX(FluorX);FM 1-43(商標);FM 4-46;フラレッド(Fura Red)(商標)(高pH);Fura Red(商標)/フルオ-3(Fluo-3);フラ-2(Fura-2);フラ-2(Fura-2)/BCECF;ジェナクリル(Genacryl)ブリリアントレッドB;ジェナクリル(Genacryl)ブリリアントイエロー10GF;ジェナクリル(Genacryl)ピンク3G;ジェナクリル(Genacryl)イエロー5GF;ジーンブレイザー(GeneBlazer);(CCF2);GFP(S65T);GFP赤色シフト型(rsGFP);GFP野生型非UV励起(wtGFP);GFP野生型、UV励起(wtGFP);GFPuv;Glシュウ酸;グラニュラーブルー;ヘマトポルフィリン;ヘキスト33258(Hoechst 33258);ヘキスト33342(Hoechst 33342);ヘキスト34580(Hoechst 34580);I IPTS;ヒドロキシクマリン;ヒドロキシスチルバミジン(フルオルゴールド(Fluor Gold));ヒドロキシトリプタミン;インド-1、高カルシウム;インド-1 低カルシウム;インドジカルボシアニン(DiD);インドトリカルボシアニン(DiR);イントラホワイトCf(Intrawhite Cf);JC-1;JO J0-1;JO-PRO-1;レーザプロ(LaserPro);ラロダン(Laurodan);LDS 751(DNA);LDS 751(RNA);ロイコフォルPAF(Leucophor PAF);ロイコフォルSF(Leucophor SF);ロイコフォルWS(Leucophor WS);リサミンローダミン;リサミンローダミンB;カルセイン/エチジウムホモ二量体;LOLO-1;LO-PRO-1;;ルシファーイエロー;リゾトラッカー(Lyso Tracker)ブルー;リゾトラッカー(Lyso Tracker)ブルー-ホワイト;リゾトラッカー(Lyso Tracker)グリーン;リゾトラッカー(Lyso Tracker)レッド;リゾトラッカー(Lyso Tracker)イエロー;リゾセンサー(LysoSensor)ブルー;リゾセンサー(LysoSensor)グリーン;リゾセンサー(LysoSensor)イエロー/ブルー;マググリーン;マグダラレッド(フロキシンB);マグフラレッド;マグフラ2;マグフラ5;マグインド1;マグネシウムグリーン;マグネシウムオレンジ;マラカイトグリーン;マリーナブルー;Iマキシロン(Maxilon)ブリリアントフラビン10 GFF;マキシロン(Maxilon)ブリリアントフラビン8 GFF;メロシアニン;メトキシクマリン;ミトトラッカー(Mitotracker)グリーンFM;ミトトラッカー(Mitotracker)オレンジ;ミトトラッカー(Mitotracker)レッド;ミトラマイシン;モノブロモビマン;モノブロモビマン(mBBr-GSH);モノクロロビマン;MPS(メチルグリーンピロニンスチルベン);NBD;NBDアミン;ナイルレッド;ニトロベンゾオキサジアゾール;ノルアドレナリン;ヌクレアファストレッド;iヌクレアイエロー;ニロサン(Nylosan)ブリリアントフラビンE8G;オレゴングリーン(Oregon Green)(商標);オレゴングリーン(Oregon Green)(商標)488;オレゴングリーン(Oregon Green)(商標)500;オレゴングリーン(商標)514;パシフィックブルー;パラロザニリン(フォイルゲン);PBFI;PE-Cy5;PE-Cy7;PerCP;PerCP-Cy5.5;PE-テキサスレッド(レッド613);フロキシンB(マグダラレッド);フォルワイトAR(Phorwite AR);フォルワイトBKL(Phorwite BKL);フォルワイトRev(Phorwite Rev);フォルワイトRPA(Phorwite RPA);ホスフィン3R;フォトレジスト;フィコエリトリンB[PE];フィコエリトリンR[PE];PKH26(シグマ(Sigma));PKH67;PMIA;ポントクロームブルーブラック(Pontochrome Blue Black);POPO-1;POPO-3;PO-PRO-1;PO-I PRO-3;プリムリン;プロシオンイエロー;ヨウ化プロピジウム(
PI);PyMPO;ピレン;ピロニン;ピロニンB;ピロザール(Pyrozal)ブリリアントフラビン7GF;QSY 7;キナクリンマスタード;レゾルフィン;RH 414;ロード2;ローダミン;ローダミン110;ローダミン123;ローダミン5 GLD;ローダミン6G;ローダミンB;ローダミンB 200;ローダミンBエキストラ;ローダミンBB;ローダミンBG;ローダミングリーン;ローダミンファリシジン;ローダミンファロイジン;ローダミンレッド;ローダミンWT;ローズベンガル;R-フィコシアニン;R-フィコエリトリン(PE);rsGFP;S65A;S65C;S65L;S65T;サファイアGFP;SBFI;セロトニン;セブロン(Sevron)ブリリアントレッド2B;セブロン(Sevron)ブリリアントレッド4G;セブロン(Sevron)IブリリアントレッドB;セブロン(Sevron)オレンジ;セブロン(Sevron)イエローL;sgBFP(商標)(スーパーグローBFP);sgGFP(商標)(スーパーグローGFP);SITS(プリムリン;スチルベンイソチオスルホン酸);SNAFLカルセイン;SNAFL-1;SNAFL-2;SNARFカルセイン;SNARFI;ナトリウムグリーン;スペクトラムアクア(SpectrumAqua);スペクトラムグリーン(SpectrumGreen);スペクトラムオレンジ(SpectrumOrange);スペクトルレッド;SPQ(6-メトキシ-N-(3スルホプロピル)キノリニウム);スチルベン;スルホローダミンB及びC;スルホローダミンエキストラ;SYTO 11;SYTO 12;SYTO 13;SYTO 14;SYTO 15;SYTO 16;SYTO 17;SYTO 18;SYTO 20;SYTO 21;SYTO 22;SYTO 23;SYTO 24;SYTO 25;SYTO 40;SYTO 41;SYTO 42;SYTO 43;SYTO 44;SYTO 45;SYTO 59;SYTO 60;SYTO 61;SYTO 62;SYTO 63;SYTO 64;SYTO 80;SYTO 81;SYTO 82;SYTO 83;SYTO 84;SYTO 85;SYTOXブルー;SYTOXグリーン;SYTOXオレンジ;テトラサイクリン;テトラメチルローダミン(TRITC);テキサスレッド(Texas Red)(商標);テキサスレッド-X(Texas Red-X)(商標)コンジュゲート;チアジカルボシアニン(DiSC3);チアジンレッドR;チアゾールオレンジ;チオフラビン5;チオフラビンS;チオフラビンTON;チオライト(Thiolyte);チオゾール(Thiozole)オレンジ;チノポールCBS(Tinopol CBS)(カルコフロールホワイト);TIER;TO-PRO-1;TO-PRO-3;TO-PRO-5;TOTO-1;TOTO-3;トリコロール(TriColor)(PE-Cy5);TRITCイソチオシアン酸テトラメチルローダミン;トゥルーブルー(True Blue);トゥルーレッド(Tru Red);ウルトラライト(Ultralite);ウラニンB;ユビテックスSFC(Uvitex SFC);wt GFP;WW 781;X-ローダミン;XRITC;キシレンオレンジ;Y66F;Y66H;Y66W;黄色GFP;YFP;YO-PRO-1;YO-PRO 3;YOY0-1;YOY0-3;サイバーグリーン(Sybr Green);チアゾールオレンジ(インターカレータ型色素);量子ドットなどの半導体ナノ粒子;又はケージドフルオロフォア(これは光又は他の電磁エネルギー供給源によって活性化可能である)又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0095】
一態様において、放射性核種などの修飾因子単位が、ハロゲン化によって本明細書に記載される化合物のいずれかに取り込まれるか又はそれに直接取り付けられる。この実施形態において有用な放射性核種の例としては、限定はされないが、トリチウム、ヨウ素125、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素124、アスタチン210、炭素11、炭素14、窒素13、フッ素18が挙げられる。別の態様において、放射性核種は、連結基に取り付けられるか又はキレート基によって結合し、次にそれが化合物に直接又はリンカーを用いて取り付けられる。この実施形態において有用な放射性核種の例としては、限定はされないが、Tc-99m、Re-186、Ga-68、Re-188、Y-90、Sm-153、Bi-212、Cu-67、Cu-64及びCu-62が挙げられる。これらのような放射標識技法は、放射性医薬品業界ではルーチンで用いられている。
【0096】
放射性標識化合物は、哺乳類(例えば、ヒト)における神経学的疾患(例えば、神経変性疾患)若しくは精神状態の診断又はかかる疾患若しくは状態の進行若しくは治療の経過観察のための造影剤として有用である。本明細書に記載される放射性標識は、好都合には、陽電子放射断層撮影法(PET)又は単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などのイメージング技法と併せて使用可能である。
【0097】
標識は、直接標識又は間接標識のいずれかである。直接標識では、検出抗体(目的の分子に対する抗体)又は検出分子(目的の分子に対する抗体の結合を受けることができる分子)が標識を含む。標識の検出が検出抗体又は検出分子の存在を示し、次に、これが、それぞれ目的の分子又は目的の分子に対する抗体の存在を示す。間接標識では、追加の分子又は部分を免疫複合体と接触させるか、又は免疫複合のその部位に生じさせる。例えば、酵素などのシグナル発生分子又は部分を検出抗体又は検出分子に取り付けるか又はそれと結び付けることができる。次に、シグナル発生分子が、免疫複合体のその部位で検出可能シグナルを発生することができる。例えば、酵素は、好適な基質を供給されると、免疫複合体のその部位に視認可能又は検出可能な産物を生じる。ELISAは、この種の間接標識を用いる。
【0098】
間接標識の別の例として、一次抗体に対する二次抗体など、目的の分子又は目的の分子に対する抗体(一次抗体)のいずれかに結合することができる追加の分子(これは結合剤と称することができる)を免疫複合体と接触させることができる。この追加の分子は、標識又はシグナル発生分子又は部分を有する。追加の分子は、抗体であり得、従って、これは、二次抗体と呼ぶことができる。二次抗体が一次抗体に結合すると、第1の(又は一次)抗体及び目的の分子といわゆるサンドイッチを形成し得る。免疫複合体は、標識された二次抗体と、二次免疫複合体を形成させるのに有効な条件下且つそれに十分な期間にわたって接触させることができる。次に、二次免疫複合体は、概して洗浄され、あらゆる非特異的に結合した標識二次抗体が除去され得、二次免疫複合体の残りの標識が検出され得る。追加の分子は、ビオチン/アビジン対など、互いに結合することのできる一対の分子又は部分の一方でもあり得るか又はそれを含み得る。この方式では、検出抗体又は検出分子は対の他方のメンバーを含まなければならない。
【0099】
他の間接標識方式としては、二段階手法による一次免疫複合体の検出が挙げられる。例えば、目的の分子又は対応する抗体に結合親和性を示す抗体などの分子(例えば、第1の結合剤)を使用して、上記に記載したとおりの二次免疫複合体を形成することができる。
【0100】
洗浄後、二次免疫複合体は、第1の結合剤に結合親和性を示す別の分子(これは第2の結合剤と称することができる)と、この場合もやはり免疫複合体を形成させるのに有効な条件下且つそれに十分な期間にわたって接触させることができる(このようにして三次免疫複合体が形成される)。第2の結合剤は検出可能標識又はシグナル発生分子又は部分に連結され得、このようにして形成された三次免疫複合体の検出が可能となる。このシステムは、シグナルの増幅をもたらし得る。
【0101】
タンパク質又は特異的タンパク質に対する抗体など、物質そのものの検出が関わるイムノアッセイとしては、無標識アッセイ、タンパク質分離法(例えば、電気泳動法)、固体支持体捕捉アッセイ又はインビボ検出が挙げられる。無標識アッセイは、概して、試料中の特異的タンパク質又は特異的タンパク質に対する抗体の存在又は非存在を決定する診断手段である。タンパク質分離法は、加えて、サイズ又は正味電荷など、タンパク質の物理的特性の評価に有用である。捕捉アッセイは、概して、試料中の特異的タンパク質又は特異的タンパク質に対する抗体の濃度の定量的評価に一層有用である。最後に、インビボ検出は、物質の空間的発現パターン、例えば、対象、組織又は細胞中のどこにその物質を見つけ出すことができるかの評価に有用である。
【0102】
濃度が十分であれば、抗体抗原相互作用によって生成される分子複合体([Ab-Ag]n)は肉眼で見ることができ、しかし少量であっても、光線を散乱させるその能力に起因して検出及び測定し得る。複合体の形成は、両方の反応物が存在することを意味し、免疫沈降アッセイでは、定濃度の試薬抗体を使用して特異的抗原([Ab-Ag]n)を測定し、試薬抗原を使用して特異的抗体([Ab-Ag]n)を検出する。試薬種が予め細胞(血球凝集アッセイのように)又は極めて小さい粒子(ラテックス凝集反応アッセイの場合のように)にコーティングされている場合、はるかに低い濃度でも、コーティングされた粒子の「集塊化」が目に見える。このような基本原理に基づく種々のアッセイは、オクタロニー免疫拡散アッセイ、ロケット免疫電気泳動法並びに免疫濁度滴定及び比濁アッセイを含め、一般に用いられている。かかるアッセイの主な制限は、標識を利用するアッセイと比較して感度が限られている(検出限界が低い)ことであり、ある場合には、検体の濃度が極めて高いと、実際には複合体形成が阻害されるため、対抗手段が必要になるという事実により、この手順が一層複雑化する。これらのグループ1アッセイの一部は、直ちに抗体の発見にまで遡り、いずれも実際の「標識」(例えばAg-enz)を有しない。無標識であるイムノアッセイの他の種類は、免疫センサーに依存し、現在、抗体抗原相互作用を直接検出することのできる種々の機器が市販されている。ほとんどは、固定化リガンドを有するセンサー表面にエバネセント波を発生させることに依存し、これがリガンドへの結合の連続的なモニタリングを可能にする。免疫センサーは、速度論的相互作用の容易な調査を可能にし、低価格の専門的な機器が出現すれば、免疫分析において将来、広い応用が見出され得る。
【0103】
イムノアッセイを用いた特異的タンパク質の検出には、電気泳動法によるタンパク質の分離が関わり得る。電気泳動法は、電界に応答した溶液中における荷電分子の遊走である。その遊走速度は、電界強度;分子の正味電荷、サイズ及び形状に依存し、分子が中を動く媒体のイオン強度、粘度及び温度にも依存する。分析ツールとして、電気泳動法は、単純、迅速、且つ高感度である。これは、単一荷電種の特性を試験するため分析的に用いられ、且つ分離技法として用いられる。
【0104】
概して、試料が、紙、酢酸セルロース、デンプンゲル、アガロース又はポリアクリルアミドゲルなどの支持体マトリックスに流される。マトリックスは、加熱によって引き起こされる対流混合を抑制し、電気泳動ランの記録を提供する:ランの終了時、マトリックスを染色して、走査、オートラジオグラフィー又は貯蔵に使用することができる。加えて、最も一般的に用いられる支持体マトリックス - アガロース及びポリアクリルアミド - は、それが多孔質ゲルであるという点で、サイズによる分子の分離手段を提供する。多孔質ゲルは、小型の分子は自由に遊走させつつ、大きい高分子の移動を遅らせるか又はある場合には完全に遮ることにより、篩としての役割を果たし得る。希アガロースゲルは、概して、同じ濃度のポリアクリルアミドと比べてより硬質で、取り扱い易いため、核酸、大型タンパク質及びタンパク質複合体などの大型高分子の分離にはアガロースが使用される。取り扱い易く、且つ高濃度にするのが容易なポリアクリルアミドは、遅らせるために小さいゲル細孔径が必要な多くのタンパク質及び低分子オリゴヌクレオチドの分離に使用される。
【0105】
タンパク質は両性化合物である;従ってその正味電荷は、それが懸濁される媒体のpIによって決まる。その等電点を上回るpHの溶液中では、タンパク質は負の正味電荷を有し、電界中をアノードに向かって遊走する。その等電点を下回るとき、タンパク質は正電荷であり、カソードに向かって遊走する。加えて、そのサイズとは無関係に、タンパク質が帯びている正味電荷 - 即ち、分子の単位質量当たり(又は長さ当たり、所与のタンパク質及び核酸は、線状の高分子である)に帯びている電荷は、タンパク質毎に異なる。従って所与のpH及び非変性条件下において、タンパク質の電気泳動分離は、分子のサイズ及び電荷の両方によって決まる。
【0106】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、ポリペプチド骨格に「巻き付く」ことによってタンパク質を変性させるアニオン性界面活性剤であり - 及びSDSはタンパク質に対し、1.4:1の質量比でかなり特異的に結合する。その際、SDSはポリペプチドに、その長さに比例する負電荷を付与する。更に、通常、タンパク質がサイズ別の分離に必要なランダムコイル構造をとる前に、タンパク質のジスルフィド架橋を還元する(変性させる)必要がある;これは、2-メルカプトエタノール又はジチオスレイトール(DTI)によって行われる。従ってSDS-PAGE分離の変性では、遊走はポリペプチドの固有の電荷によって決まるのでなく、分子量によって決まる。
【0107】
分子量の決定は、特徴付けようとするタンパク質と共に既知の分子量のタンパク質をSDS-PAGEにかけることによって行われる。SDS変性したポリペプチド又は未変性の核酸の分子量の対数と、そのRfとの間には、線形関係が存在する。Rfは、マーカ色素の最前部が遊走した距離に対する分子が遊走した距離の比として計算される。電気泳動法によって相対分子量(Mr)を決定する単純な方法は、既知の試料のlogl OMWに対する遊走した距離の標準曲線をプロットし、同じゲル上を遊走した距離を測定した後に試料のlogMrを読み取ることである。
【0108】
二次元電気泳動法では、初めに、タンパク質は、ある物理的特性を基準として分画され、且つ第2段階において別の基準で分画される。例えば、第1の次元に、好都合にはチューブゲルで行われる等電点電気泳動法を用いることができ、且つ第2の次元に、スラブゲルでのSDS電気泳動法を用いることができる。レムリ(Laemmli)緩衝系中のリーディングイオンは塩化物であり、トレーリングイオンはグリシンである。従って、分解用ゲル及びスタッキングゲルは、(種々の濃度及びpHの)トリス-HCl緩衝液中に構成される一方、泳動槽緩衝液は、トリス-グリシンである。緩衝液は、全て0.1%SDSを含有する。
【0109】
本方法に企図される電気泳動法を用いるイムノアッセイの一例は、ウエスタンブロット分析である。ウエスタンブロッティング又はイムノブロッティングは、種々の試料中に存在するタンパク質の分子質量の決定及びタンパク質の相対量の測定を可能にする。検出方法には、化学発光法及び発色検出法が含まれる。
【0110】
概して、タンパク質は、ゲル電気泳動、通常、SDS-PAGEによって分離される。タンパク質は、一枚の特別なブロッティングペーパ、例えばニトロセルロースに転写されるが、他のタイプのペーパ又は膜も使用し得る。タンパク質は、それがゲルに置かれたときと同じ分離パターンを保っている。ブロットを汎用的なタンパク質(乳タンパク質など)とインキュベートすると、ニトロセルロース上のいずれか残りの粘着性箇所に結合する。次に溶液に抗体が加えられ、この抗体は、その特異的タンパク質に結合することが可能なものである。
【0111】
特異的固定化抗原への特異的抗体の取り付けは、発色基質(例えば、アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)又は化学発光基質を通常使用する間接的酵素イムノアッセイ技法によって容易に視覚化することができる。他のプローブ法の可能性としては、蛍光又は放射性同位体標識(例えば、フルオレセイン、1251)の使用が挙げられる。抗体結合の検出のためのプローブは、コンジュゲート型抗免疫グロブリン、コンジュゲート型ブドウ球菌プロテインA(IgGに結合する)又はビオチン化一次抗体に対するプローブ(例えば、コンジュゲート型アビジン/ストレプトアビジン)であり得る。
【0112】
この技法の力量は、特異的タンパク質を、その抗原性及びその分子質量を用いて同時に検出することにある。初めにタンパク質がSDS-PAGEで質量別に分離され、次にイムノアッセイステップで特異的に検出される。従って、タンパク質標準物質(ラダー)を同時に流して、異種試料中の目的のタンパク質の分子質量を近似することができる。
【0113】
ゲルシフトアッセイ又は電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)は、定性的方法及び定量的方法の両方での、DNA結合タンパク質とそのコグネイトDNA認識配列との間の相互作用の検出に使える。
【0114】
一般的なゲルシフトアッセイでは、精製タンパク質又は粗細胞抽出物が、標識した(例えば、32P放射性標識した)DNA又はRNAプローブと共にインキュベートされ、続いて非変性ポリアクリルアミドゲル中で複合体が遊離プローブと分離される。複合体は、ゲル中を未結合のプローブと比べてゆっくりと遊走する。結合タンパク質の活性次第で、標識プローブは二本鎖又は一本鎖のいずれでもあり得る。転写因子などのDNA結合タンパク質の検出には、精製された若しくは部分的に精製されたタンパク質又は核の細胞抽出物のいずれかを使用することができる。RNA結合タンパク質の検出には、精製された若しくは部分的に精製されたタンパク質又は核若しくは細胞質の細胞抽出物のいずれかを使用することができる。推定上の結合部位についてのDNA又はRNA結合タンパク質の特異性は、目的のタンパク質の結合部位を含むDNA若しくはRNA断片若しくはオリゴヌクレオチド又は他の無関係の配列を使用した競合実験によって確立される。特異的及び非特異的競合相手の存在下で形成される複合体の性質及び強度の差から、特異的相互作用を同定することが可能である。ゲルシフト法には、例えば、コロイド形態のクーマシ(COOMASSIE)(インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・リミテッド(Imperial Chemicals Industries,Ltd))ブルー染色を用いて、ポリアクリルアミド電気泳動ゲルなどのゲル中のタンパク質を検出することが含まれ得る。上記に参照する従来のタンパク質アッセイ法に加えて、クリーニング用及びタンパク質染色用組成物の組み合わせが、米国特許第5,424,000号明細書(ゲルシフト法に関するその教示について、本明細書に全体として参照により援用される)に記載されている。溶液は、リン酸、硫酸及び硝酸並びにアシッドバイオレット色素を含むことができる。
【0115】
放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)は、放射性標識抗原を用いて血清中の特異的抗体を検出する高感度アッセイである。抗原を血清と反応させておき、次に、例えばプロテインAセファロースビーズなど、特別な試薬を使用して沈降させる。次に、結合した放射性標識免疫沈降物が、一般にはゲル電気泳動によって分析される。放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)が、HIV抗体の存在を診断するための確認試験として用いられることが多い。RIPAは、当技術分野では、ファーアッセイ、沈降アッセイ、放射性免疫沈降アッセイ;放射性免疫沈降分析;放射性免疫沈降分析及び放射性免疫沈降分析とも称される。
【0116】
電気泳動法を利用して目的の特異的タンパク質を分離及び検出する上記のイムノアッセイによれば、タンパク質サイズの評価が可能となるが、こうしたアッセイは、タンパク質濃度を評価するには、あまり感度が高くない。しかしながら、タンパク質又はタンパク質に特異的な抗体を固体支持体(例えば、チューブ、ウェル、ビーズ及び/又は細胞)に結合して、同支持体上のタンパク質又はタンパク質に特異的な抗体を検出する方法と組み合わせて、試料からそれぞれ目的の抗体又はタンパク質を捕捉するイムノアッセイも企図される。かかるイムノアッセイの例としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー、タンパク質アレイ、マルチプレックスビーズアッセイ及び/又は磁気捕捉が挙げられる。
【0117】
ラジオイムノアッセイ(RIA)は、放射活性標識した物質(放射性リガンド)を直接的又は間接的のいずれかで使用して抗原抗体反応を検出することにより、特異的抗体又は他の受容体システムに対する非標識物質の結合を測定する古典的な定量アッセイである。ラジオイムノアッセイは、例えば、バイオアッセイを用いる必要のない、血中のホルモンレベルの検査に用いられる。抗体形成の誘導能を有する大型のキャリアータンパク質(例えば、ウシγ-グロブリン又はヒト血清アルブミン)にカップリングされる場合、非免疫原性物質(例えば、ハプテン)も測定することができる。RIAには、放射性抗原を(ヨウ素原子はタンパク質中のチロシン残基に容易に取り入れることができるため、多くの場合に放射性同位体1251又は1311が用いられる)、その抗原に対する抗体と混合することが関わる。抗体は、概して、チューブ又はビーズなどの固体支持体に連結される。次に、非標識又は「冷式(cold)」抗原を既知量で加えること、置き換えられた(displaced)標識抗原の量を測定することである。当初、放射性抗原は抗体に結合する。冷式抗原を加えると、これら2つが抗体結合部位に関して競合し - 及び冷式抗原の濃度が高くなると、抗体への結合が増し、放射性変異体に置き換わる。溶液中で結合抗原が未結合抗原と分離され、各々の放射活性を用いて結合曲線がプロットされる。この技法は、感度及び特異度が両方とも極めて高い。
【0118】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)又はより総称的にはEIA(酵素イムノアッセイ)は、タンパク質に特異的な抗体を検出することのできるイムノアッセイである。かかるアッセイにおいて、抗体結合試薬又は抗原結合試薬のいずれかに結合される検出可能標識は、酵素である。この酵素は、その基質に曝露されると化学的部分を生じるような反応を示し、それを、例えば、分光光度的手段、蛍光定量的手段又は目視手段によって検出することができる。検出に有用な試薬を検出可能となるように標識するために用いることのできる酵素としては、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、B-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、アスパラギナーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0119】
ELISA法の変形例は、当業者に公知である。1つの変形例では、タンパク質に結合する抗体が、ポリスチレンマイクロタイタープレートのウェルなど、タンパク質親和性を呈する選択の表面に固定化される。次に、マーカ抗原を含有すると疑われる試験組成物がウェルに加えられる。結合させて、非特異的に結合した免疫複合体を洗浄によって除去した後、結合した抗原を検出することが可能である。
【0120】
検出は、標的タンパク質に特異的な、検出可能標識に連結されている二次抗体を加えることによって達成し得る。このタイプのELISAは、単純「サンドイッチELISA」である。検出は、二次抗体を加えた後、続いて二次抗体に結合親和性を示す第3の抗体であって、検出可能標識に連結されている第3の抗体を加えることによっても達成され得る。
【0121】
別の変形例は、競合ELISAである。競合ELISAでは、試験試料が既知量の標識抗原又は抗体と結合に関して競合する。試料中の反応種の量は、コートしたウェルとのインキュベーション前又はその最中に、試料を既知の標識種と混合することによって決定し得る。試料中に反応種が存在すると、ウェルへの結合に利用可能な標識種の量を減少させる役割を果たし、従って最終的なシグナルが減少する。利用するフォーマットに関わらず、ELISAは、コートすること、インキュベートすること又は結合すること、洗浄によって非特異的に結合した種を除去すること及び結合した免疫複合体を検出することなど、共通した特定の特徴を有する。抗原又は抗体は、プレート、ビーズ、ディップスティック、膜又はカラムマトリックスの形態など、固体支持体に連結することができ、この固定化した抗原又は抗体に、分析しようとする試料を適用することができる。プレートを抗原又は抗体のいずれかでコートする際には、概してプレートのウェルを抗原又は抗体の溶液と共に、一晩又は指定された時間のいずれかにわたってインキュベートすることになる。次にプレートのウェルを洗浄して、不完全に吸着した材料を除去することができる。次に、ウェルの残りの利用可能な表面を全て、試験抗血清に関して抗原的に中性の非特異的タンパク質で「コート」することができる。そうした非特異的タンパク質としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン及び粉乳溶液が挙げられる。コートすることにより、固定化表面上の非特異的な吸着部位の遮断が可能となり、従って表面への抗血清の非特異的結合によって引き起こされるバックグラウンドが減少する。
【0122】
ELISAでは、直接的な手順よりむしろ、二次又は三次検出手段も使用することができる。従って、タンパク質又は抗体をウェルに結合させて、非反応性物質でコートすることによりバックグラウンドを低減し、且つ洗浄によって未結合の材料を除去した後、固定化する表面を、免疫複合体(抗原/抗体)形成を許容するのに有効な条件下で試験下の臨床的又は生物学的対照試料と接触させる。次に免疫複合体の検出には、標識された二次結合剤又は標識された第3の結合剤と併せた二次結合剤のいずれかが必要である。
【0123】
酵素結合イムノスポットアッセイ(エリスポット(ELISPOT))は、タンパク質又は抗原に特異的な抗体を検出することのできるイムノアッセイである。かかるアッセイにおいて、抗体結合試薬又は抗原結合試薬のいずれかに結合される検出可能標識は、酵素である。この酵素は、その基質に曝露されると化学的部分を生じるような反応を示し、それを、例えば、分光光度的手段、蛍光定量的手段又は目視手段によって検出することができる。検出に有用な試薬を検出可能となるように標識するために用いることのできる酵素としては、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、B-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、アスパラギナーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。このアッセイでは、ニトロセルロースマイクロタイタープレートが抗原でコートされる。試験試料を抗原に曝露し、次にELISAアッセイと同様に反応させる。検出は、ニトロセルロースプレート上のスポットの計数によって検出が決まる点が、従来のELISAと異なる。スポットの存在は、試料が抗原と反応したことを示している。スポットをカウントし、試料中における抗原に特異的な細胞の数を決定することができる。
【0124】
「免疫複合体(抗原/抗体)形成を許容するのに有効な条件下」とは、非特異的結合を低減し、妥当な信号対雑音比を促進するために、BSA、ウシγグロブリン(BGG)及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/ツイーン(Tween(登録商標))などの溶液で抗原及び抗体を希釈することがその条件に含まれることを意味する。
【0125】
好適な条件とは、有効に結合させるのに十分な温度及び期間のインキュベーションであることも意味する。インキュベーションステップは、典型的には、約1分~12時間、約20℃~30℃の温度であり得るか、又は約0℃~約10℃で一晩インキュベートされ得る。ELISAにおける全てのインキュベーションステップの後、複合体化していない材料を除去するため、接触させた表面を洗浄することができる。洗浄手順には、PBS/ツイーン(Tween(登録商標))又はホウ酸塩緩衝液などの溶液で洗浄することが含まれ得る。試験試料と当初結合していた材料との間での特異的な免疫複合体の形成及び続く洗浄後、微量の免疫複合体であっても、その出現を決定することができる。
【0126】
検出方法を提供するため、上記に記載したとおり、第2又は第3の抗体は、検出を可能にする関連する標識を有し得る。これは、適切な発色基質とインキュベートしたときに発色を生じることのできる酵素であり得る。従って、例えば、第1又は第2の免疫複合体を標識抗体と接触させて、更なる免疫複合体形成の発生に有利に作用する期間にわたって且つ条件下においてインキュベートすることができる(例えば、PBS-ツイーン(Tween(登録商標))などのPBS含有溶液中、室温で2時間のインキュベーション)。
【0127】
標識抗体とインキュベートした後及び洗浄による未結合材料の除去に続いて、酵素標識としてペルオキシダーゼの場合、例えば、尿素及びブロモクレゾールパープル又は2,2’-アジド-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリン-6-スルホン酸[ABTS]及び1-1202などの発色基質と共にインキュベートすることにより、標識の量を定量化することができる。次に、発色の程度について、例えば可視スペクトル分光光度計を使用して測定することにより、定量化を達成可能である。タンパク質アレイは、ガラス、膜、マイクロタイターウェル、質量分析計プレート及びビーズ又は他の粒子を含めた表面に固定化したタンパク質を使用する固相リガンド結合アッセイシステムである。このアッセイは、高度に並列的であり(マルチプレックス化されている)、多くの場合に小型化されている(マイクロアレイ、タンパク質チップ)。その利点としては、迅速で自動化可能であること、高感度能力があること、試薬を節約できること及び単回の実験で豊富なデータを提供することが挙げられる。バイオインフォマティクス支援は重要である;データ処理には、高性能のソフトウェア及びデータ比較分析が要求される。しかしながら、ソフトウェアは、ハードウェア及び検出システムの多くと同様に、DNAアレイに使用されるものを応用することができる。
【0128】
主要なフォーマットの1つは、キャプチャーアレイであり、ここで、リガンド結合試薬(これは、通常、抗体であるが、代替的なタンパク質足場、ペプチド又は核酸アプタマーでもあり得る)を使用して、血漿又は組織抽出物などの混合物中の標的分子が検出される。診断法では、キャプチャーアレイを使用することにより、複数のイムノアッセイを並行して、個別の例えば血清中にある幾つかの検体に関して試験すること及び多くの血清試料を同時に試験することの両方とも、行うことができる。プロテオミクスでは、キャプチャーアレイを使用することにより、健常及び疾患の、例えばタンパク質発現プロファイリングの点で種々の試料中のタンパク質レベルが定量化され、比較される。インビトロ機能性相互作用スクリーニングのためのアレイフォーマットでは、タンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、タンパク質-薬物、受容体-リガンド、酵素-基質など、特異的リガンド結合剤以外のタンパク質が使用される。捕捉試薬自体は、多くのタンパク質に対して選択され、スクリーニングされるが、これは、複数のタンパク質標的に対するマルチプレックスアレイフォーマットで行うこともできる。
【0129】
アレイを構築するためのタンパク質供給源としては、組換えタンパク質のための細胞ベースの発現系、天然の供給源からの精製、無細胞翻訳系によるインビトロでの作製及びペプチドのための合成方法が挙げられる。これらの方法の多くは、ハイスループット作製のために自動化可能である。キャプチャーアレイ及びタンパク質機能分析については、タンパク質が正しく折り畳まれ、機能性でなければならない点が重要である;これが常に当てはまるとは限らず、例えば、組換えタンパク質が変性条件下で細菌から抽出される場合には当てはまらない。それにも関わらず、変性タンパク質のアレイは、交差反応性に関する抗体のスクリーニング、自己抗体の同定及びリガンド結合タンパク質の選択に有用である。
【0130】
タンパク質アレイは、ELISA及びドットブロッティングなど、多くの場合に蛍光読取り値を利用するよく知られたイムノアッセイ方法を小型化したものとして設計されており、ロボティクス及びハイスループット検出システムによって促進されて、複数のアッセイを並行して実行することが可能となっている。よく使用される物理的な支持体としては、スライドグラス、ケイ素、マイクロウェル、ニトロセルロース又はPVDF膜並びに磁気及び他のマイクロビーズが挙げられる。タンパク質の微小滴が平面状の表面に送達されるというのが、最もよく知られたフォーマットであるが、他にも代替的な構成として、マイクロフルイディクスにおける開発に基づくCD遠心装置(ジャイロス(Gyros)、ニュージャージ州モンマス・ジャンクション(Monmouth Junction,NJ))及び特殊なチップ設計、例えば、プレートにエンジニアリングされたマイクロチャネル(例えば、ザ・リビングチップ(The Living Chip)(商標)、バイオトローブ(Biotrove)、マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn,MA))及びケイ素表面上の微細な3Dポスト(ザイオミックス(Zyomyx)、カリフォルニア州ヘイワード(Hayward CA))などが挙げられる。懸濁液中の粒子も、それに識別のためのコードが付与されるならば、アレイの基盤として使用することができる;システムとしては、マイクロビーズのカラーコード化(ルミネックス(Luminex)、テキサス州オースティン(Austin,TX);バイオラッド・ラボラトリーズ(Bio-Rad Laboratories))及び半導体ナノ結晶(例えば、QDot(商標)、カンタム・ドット(Quantum Dot)、カリフォルニア州ヘイワード(Hayward,CA))及びビーズのバーコード化(ウルトラプレックス(UltraPlex)(商標)、スマートビード・テクノロジーズ・リミテッド(SmartBead Technologies Ltd)、英国ケンブリッジバブラハム(Babraham,Cambridge,UK))及び多金属マイクロロッド(例えば、ナノバーコード(Nanobarcode)(商標)粒子、ナノプレックス・テクノロジーズ(Nanoplex Technologies)、カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View,CA))が挙げられる。ビーズは、半導体チップ上に平面アレイ状に組み立てることもできる(LEAPS技術、バイオアレイ・ソリューションズ(BioArray Solutions)、ニュージャージ州ウォレン(Warren,NJ))。
【0131】
タンパク質の固定化には、カップリング試薬及びカップリングされる表面の性質の両方が関わる。良好なタンパク質アレイ支持表面は、カップリングの手順前及び手順後に化学的に安定しており、良好なスポット形態を可能にし、最小限の非特異的結合を呈し、検出系のバックグラウンドに寄与せず、且つ種々の検出系と適合性がある。用いられる固定化方法は、再現性があり、種々の特性(例えば、サイズ、親水性、疎水性など)のタンパク質に適用可能で、ハイスループット及び自動化に適しており、且つ完全な機能性タンパク質活性の保持と適合性がある。表面結合タンパク質の配向は、それをリガンド又は基質に活性状態で提示するのに重要な要因と認識されている;キャプチャーアレイについては、最も効率的な結合結果は、捕捉試薬が適切な配向に置かれているときに達成され、これには概して、タンパク質の部位特異的標識が必要である。
【0132】
共有結合性及び非共有結合性の両方のタンパク質固定化方法が用いられ、これらには様々な利点と難点がある。表面への受動的な吸着は、方法論的には単純であるが、定量化又は配向制御はほとんどできない;これはタンパク質の機能特性を改変することも、しないこともあり、再現性及び効率にばらつきがある。共有結合性カップリング方法は、安定した連結を提供し、様々なタンパク質に適用することができ、且つ再現性が良好であるが、しかしながら、配向にばらつきがあることもあり、化学的誘導体化がタンパク質の機能を改変することもあり、且つ安定な相互作用表面が必要である。タンパク質上のタグを利用する生物学的捕捉方法は、安定した連結を提供し、タンパク質に特異的に、且つ再現性のある配向で結合するが、この生物学的試薬は、初めに適切に固定化しなければならず、アレイに特別な処理が必要となることもあり、且つ安定性にばらつきがある。
【0133】
タンパク質アレイの作製に向けて、幾つかの固定化ケミストリー及びタグが記載されている。共有結合のための基材としては、アミノ含有又はアルデヒド含有シラン試薬でコートされたスライドグラスが挙げられる。ベルサリンクス(Versalinx)(商標)システム(プロリンクス(Prolinx)、ワシントン州ボセル(Bothell,WA))では、フェニルジボロン酸で誘導体化されたタンパク質と、支持体表面に固定化されたサリチルヒドロキサム酸との間の相互作用により、可逆的共有結合性カップリングが実現する。これは、バックグラウンド結合が低く、且つ固有蛍光が低く、固定化されたタンパク質が機能を保持することも可能である。三次元ポリアクリルアミドゲルをベースとするハイドロゲル(HydroGel)(商標)(パーキンエルマ(PerkinElmer)、マサチューセッツ州ウェルズリー(Wellesley,MA))などの多孔質構造内では、非修飾タンパク質の非共有結合性結合が起こる;この基材は、高容量及びタンパク質機能の保持と共に、ガラスマイクロアレイ上の特に低いバックグラウンドをもたらすことが報告されている。広く用いられている生物学的カップリング方法は、ビオチン/ストレプトアビジン又はヘキサヒスチジン/Ni相互作用によるもので、タンパク質を適切に修飾している。ビオチンは、二酸化チタン(ザイオミックス(Zyomyx))又は五酸化タンタル(ゼプトセンス(Zeptosens)、スイス国ヴィッタースヴィル(Witterswil,Switzerland))などの表面に固定化されたポリ-リジン骨格にコンジュゲートされ得る。
【0134】
アレイ作製方法には、ロボットによるコンタクトプリント法、インクジェット法、圧電スポッティング及びフォトリソグラフィが含まれる。幾つもの市販のアレイヤー[例えば、パッカード・バイオサイエンシーズ(Packard Biosciences)によって製造及び販売される]並びに手動の機器[例えば、ブイ・アンド・ピー・サイエンティフィック(V&P Scientific)によって製造及び販売される]が利用可能である。細菌コロニーをロボットでPVDF膜にグリッド化して、インサイチューでのタンパク質発現を誘導することができる。スポットサイズ及び密度の限界点が、ナノメートル空間規模にスポットを有するナノアレイであり、1平方mm未満の単一のチップ上で数千の反応を実施することが可能である。バイオフォース・ラボラトリーズ(BioForce Laboratories)は、光学的検出の限界点である1平方cm当たり2500万個のスポットに相当する、85平方ミクロンに1521個のタンパク質スポットを有するナノアレイを開発している;その読取り方法は、蛍光及び原子間力顕微鏡法(AFM)である。
【0135】
蛍光標識及び検出方法は、広く用いられている。DNAマイクロアレイの読取りに使用するのと同じ計装をタンパク質アレイにも適用可能である。ディファレンシャルディスプレイ法については、2つの異なる細胞状態からの蛍光標識したタンパク質によってキャプチャー(例えば、抗体)アレイをプローブすることができ、ここで、細胞ライセートが異なるフルオロフォア(例えば、Cy-3、Cy-5)と直接コンジュゲートされ、混合されるため、色が標的存在量の変化に関する読取り値としての役割を果たす。蛍光読取り感度は、チラミドシグナル増幅(TSA)(パーキンエルマ・ライフサイエンシーズ(PerkinElmer Lifesciences))によって10~100倍に増幅させることができる。平面導波路技術(ゼプトセンス(Zeptosens))によって超高感度蛍光検出が可能となり、これは洗浄手順が介在しないという付加的な利点を伴う。高感度は、フィコエリトリンを標識として使用して(ルミネックス(Luminex(登録商標)))又は半導体ナノ結晶の特性を用いて(カンタム・ドット(Quantum Dot))懸濁ビーズ及び粒子で実現することもできる。特に商業的なバイオテクノロジー業界において、幾つもの新規の代替的読取り法が開発されている。それらには、表面プラズモン共鳴法(例えば、FITSバイオシステムズ(FITS Biosystems)、イントリンシック・バイオプローブズ(Intrinsic Bioprobes)、アリゾナ州テンペ(Tempe,AZ)によって製造及び販売される)、ローリングサークルDNA増幅法(例えば、モレキュラー・ステージング(Molecular Staging)、コネチカット州ニューヘーブン(New Haven CT)によって製造及び販売される)、質量分析法(例えば、イントリンシック・バイオプローブズ(Intrinsic Bioprobes);サイファージェン(Ciphergen)、カリフォルニア州フレモント(Fremont,CA)によって製造及び販売される)、共鳴光散乱法(例えば、ジェニコン・サイエンシーズ(Genicon Sciences)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA)によって製造及び販売される)及び原子間力顕微鏡法(例えば、バイオフォース・ラボラトリーズ(BioForce Laboratories)によって製造及び販売される)の応用が含まれる。
【0136】
キャプチャーアレイは、発現プロファイリングのための診断的チップ及びアレイの基礎を成す。キャプチャーアレイは、従来の抗体、シングルドメイン、改変された足場、ペプチド又は核酸アプタマーなど、高親和性捕捉試薬を利用して、特異的な標的リガンドをハイスループット方式で結合し、検出する。抗体アレイは、要求される特異性特性及び許容できるバックグラウンドを有し、一部は市販されている(例えば、BDバイオサイエンシーズ(BD Biosciences)、カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA);クロンテック(Clontech)、カリフォルニア州マウンテンビュー(Mountain View,CA);及び/又はバイオラド(BioRad);シグマ(Sigma)、ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO)によって製造及び販売されるとおり)。キャプチャーアレイのための抗体は、従来の免疫化(ポリクローナル血清及びハイブリドーマ)によって作られるか、又はファージ若しくはリボソームディスプレイライブラリからの選択後、通常、大腸菌(E.coli)で発現させる組換え断片として作られるかのいずれかである(例えば、ケンブリッジ・アンチボディ・テクノロジー(Cambridge Antibody Technology)、英国ケンブリッジ(Cambridge,UK);バイオインベント(BioInvent)、スウェーデン国ルンド(Lund);アフィテック(Affitech)、カリフォルニア州ウォールナットクリーク(Walnut Creek,CA);及び/又はバイオサイト(Biosite)、カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA)によって製造及び販売される)。従来の抗体、Fab及びscFv断片に加えて、ラクダ科動物由来のシングルV-ドメイン又は改変されたヒト同等物(例えば、ドマンティス(Domantis)、マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham,MA)によって製造及び販売される)もアレイにおいて有用であり得る。
【0137】
用語「足場」は、タンパク質のリガンド結合ドメインを指し、これは、抗体様の特異性及び親和性特性を持つ多様な標的分子を結合する能力のある複数の変異体となるように改変される。これらの変異体は、遺伝子ライブラリフォーマットで作製し、ファージ、細菌又はリボソームディスプレイによって個別の標的に対して選択することができる。かかるリガンド結合足場又はフレームワークとしては、黄色ブドウ球菌(Staph.aureus)プロテインAをベースとする「アフィボディ(Affibody(登録商標))」(例えば、アフィボディ(Affibody)、スウェーデン国ブロンマ(Bromma)によって製造及び販売される)、フィブロネクチンをベースとする「トリネクチン(Trinectin)」(例えば、フィロス(Phylos)、マサチューセッツ州レキシントン(Lexington,MA)によって製造及び販売される)及びリポカリン構造をベースとする「アンチカリン(Anticalin(登録商標))」(例えば、ピエリス・プロテオラボ(Pieris Proteolab)、独国フライジング-グヴァイエンシュテファン(Freising-Weihenstephan)によって製造及び販売される)が挙げられる。これらはキャプチャーアレイで抗体と同様に使用することができ、ロバスト性及び製造の容易さが利点であり得る。
【0138】
タンパク質リガンドを高い特異性及び親和性で結合する非タンパク質捕捉分子、特に、一本鎖核酸アプタマーもアレイにおいて使用される(例えば、ソマロジック(SomaLogic)、コロラド州ボールダ(Boulder,CO)によって製造及び販売される)。アプタマーは、オリゴヌクレオチドのライブラリからセレックス(Selex)(商標)手順によって選択され、臭素化デオキシウリジン及びUV活性化架橋(光アプタマー)の取込みを通して、タンパク質とのその相互作用を共有結合によって亢進させることができる。リガンドに光架橋すると、特異的な立体要件に起因して、アプタマーの交差反応性が低下する。
【0139】
アプタマーは、自動化されたオリゴヌクレオチド合成による製造の容易さ並びにDNAの安定性及びロバスト性の利点を備えている;光アプタマーアレイ上で、普遍的な蛍光タンパク質染色を用いて結合を検出することができる。
【0140】
抗体アレイに結合したタンパク質検体は、直接検出され得るか、又はサンドイッチアッセイで二次抗体を介して検出され得る。異なる色による異なる試料の比較には、直接標識が用いられる。同じタンパク質リガンドに向けられる抗体の対が利用可能な場合、サンドイッチイムノアッセイが高い特異性及び感度を提供し、従ってこれが、サイトカインなど、存在量が少ないタンパク質に選ばれる方法となり;これは、タンパク質修飾の検出可能性も提供する。無標識検出方法は、質量分析法、表面プラズモン共鳴法及び原子間力顕微鏡法を含め、リガンドの変化を回避する。いずれの方法でも要求されるのは、最適な感度及び特異性であり、ここで、低いバックグラウンドが高い信号対雑音をもたらす。検体濃度は広い範囲を網羅するため、合わせて感度が適切に調整されなければならない;種々の親和性の試料の段階希釈又は抗体の使用が、この問題に対する解決法である。目的のタンパク質は、サイトカイン又は細胞内の低発現産物など、pg範囲以下の検出が要求される、体液及び抽出物中において低濃度のものであることが多い。
【0141】
捕捉分子のアレイに代わる選択肢は、「分子インプリンティング」技術を通して作られるものであり、ここで、ペプチド(例えば、タンパク質のC末端領域からのもの)を鋳型として使用して、重合可能なマトリックスに構造的に相補的な配列特異的空隙を生じさせ;従って、これらの空隙が、適切な一次アミノ酸配列を有する(変性した)タンパク質を特異的に捕捉することができる(例えば、アスピラ・バイオシステムズ(Aspira Biosystems)、カリフォルニア州バーリンゲーム(Burlingame,CA)によってプロテインプリント(ProteinPrint)(商標)として製造及び販売される)。
【0142】
診断的に且つ発現プロファイリングで用いることのできる別の方法論は、プロテインチップ(ProteinChip)(登録商標)アレイ(例えば、サイファージェン(Ciphergen)、カリフォルニア州フレモント(Fremont,CA)によって製造及び販売される)であり、ここで、固相クロマトグラフィー表面は、血漿又は腫瘍抽出物などの混合物から、同様の電荷又は疎水性特徴を有するタンパク質を結合し、それらの保持されたタンパク質が、SELDI-TOF質量分析法を用いて検出される。多数の精製タンパク質を固定化することにより、大規模機能性チップが構築されており、他のタンパク質とのタンパク質相互作用、薬物-標的相互作用、酵素-基質など、広範な生化学的機能のアッセイに用いられている。概して、これには、大腸菌(E.coli)、酵母などにクローニングされた発現ライブラリが必要であり、次に発現したタンパク質が例えばHisタグでそこから精製され且つ固定化される。無細胞タンパク質転写/翻訳は、細菌又は他のインビボ系での発現が不十分なタンパク質を合成するための実行可能な選択肢である。
【0143】
タンパク質間相互作用の検出には、タンパク質アレイが、分泌タンパク質又はジスルフィド架橋を有するタンパク質が関わる相互作用など、細胞ベースの酵母2ハイブリッドシステムが不十分である場合、それに代わるインビトロでの選択肢となることができ、有用であり得る。酵母プロテインキナーゼについて及び酵母プロテオームの様々な機能(タンパク質-タンパク質及びタンパク質-脂質相互作用)について、アレイ上での生化学的活性のハイスループット分析が記載されており、ここで、全酵母オープンリーディングフレームの大部分がマイクロアレイ上で発現し、固定化された。大規模な「プロテオームチップ」は、機能的相互作用の同定、薬物スクリーニング等において極めて有用となる見込みがある(例えば、プロテオメディクス(Proteometrix)、コネチカット州ブランフォード(Branford,CT)によって製造及び販売される)。
【0144】
抗体、合成足場、ペプチド及びアプタマーを含め、特異的結合パートナを選択するため、個々のエレメントの二次元ディスプレイとしてタンパク質アレイを使用して、ファージ又はリボソームディスプレイライブラリをスクリーニングすることができる。このようにして、「ライブラリ対ライブラリ」スクリーニングを行うことができる。薬物候補のスクリーニングを、ゲノム計画から同定されるタンパク質標的アレイに対する化学的ライブラリと組み合わせることは、この手法の別の適用である。
【0145】
マルチプレックスビーズアッセイ、例えば、BDTMサイトメトリービーズアレイなどは、個別的なスペクトルの一連の粒子であり、可溶性検体の捕捉及び定量化に使用することができる。次に検体が、蛍光ベースの発光の検出及びフローサイトメトリー分析によって測定される。マルチプレックス化ビーズアッセイは、ELISAベースのアッセイと同等の、しかし「マルチプレックス化」した、即ち同時に行われる形式でデータを生成する。サイトメトリービーズアレイについて、任意のサンドイッチフォーマットアッセイと同様に、例えば、既知の標準物質を用いて、未知を標準曲線に対してプロットして未知の濃度が計算される。更に、マルチプレックスビーズアッセイは、試料容積の制限に起因してこれまで考えられたことのなかった試料中の可溶性検体の定量化が可能である。定量的データに加えて、強力な視覚的画像を生成することができ、使用者に一目で分かる更なる情報を与えるユニークなプロファイル又はシグネチャが明らかになる。
【0146】
V.組成物の使用方法
一態様において、本明細書には、対象の癌、転移又は感染症を治療、予防、阻害及び/又は低減する方法であって、本明細書に開示される単離された若しくは改変された万能ドナーNK細胞若しくは細胞株のいずれか或いは方法300、400によって選択若しくはスクリーニングされたか、又は本明細書に開示される方法のいずれかによって調製されたいずれかの万能ドナーNK細胞若しくは細胞株又は改変万能ドナーNK細胞若しくは細胞株を対象に投与することを含む方法が開示される。
【0147】
例えば、一態様において、本明細書には、対象の癌又は感染症を治療する方法であって、
図3の方法300に記載されるとおり万能ドナー細胞を同定及び/又は入手すること及び/又は
図4の方法400に記載されるとおり万能ドナー細胞を改変することを含む方法が開示される。別の態様において、万能ドナー細胞を同定及び/又は入手することを含む対象の癌又は感染症を治療する方法は、(a)NK細胞ドナーからの候補NK細胞のHLA遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、HLA遺伝子型は、HLA CI、C2及びBw4アレルの存在又は非存在を示し、且つそれにより1つ以上の可変的に遺伝する抑制型KIR 2DL1、2DL2、2DL3及び3DL1の存在を示す、入手するか又は入手していること;(b)候補NK細胞のKIR遺伝子型を入手するか又は入手していることであって、KIR遺伝子型は、2DS1/2、2DS3/5、3DS1及び2DS4からなる群から選択される活性型KIRの存在又は非存在を示す、入手するか又は入手していること;及び(c)(i)HLA遺伝子型が少なくとも2つのI ILAアレルHLA CI、C2及びBw4の存在を示すとき;及び(ii)KIR遺伝子型が少なくとも3つの活性型KIR 2DS1/2、2DS3/5、3DS I及び/又は2DS4の存在を示すとき、その候補NK細胞を治療的投与のための万能ドナーNK細胞として選択することを含む。
【0148】
一態様において、本明細書には、癌又は感染症を治療する方法が開示され、ここで、選択された万能ドナーNK細胞は、少なくとも50%~85%のレシピエント対象に伴い組織学的に最適化されている。一態様において、前述のいずれかの態様の癌又は感染症を治療する方法であって、候補NK細胞のCMV血清反応陽性状態を入手するか又は入手していることを更に含み;ここで、NK細胞ドナーがCMVについて血清反応陽性であるとき又はNK細胞ドナーからのNK細胞がNKG2C発現の参照レベルと比較して高いNKG2C発現を示すとき、そのNK候補NK細胞が更に選択される、方法である。
【0149】
図5に説明され、且つ上記から続く方法500は、520から始めて特定の患者を治療する方法を記載する。ステップ520において、患者/レシピエントの割り当て用量レベルのパーセンテージの範囲内の濃度でNK細胞が作成される。一例示的実施形態において、TGF-βi NK細胞/kgの濃度は、患者の割り当て用量レベル(assigned dose level)の20%以内である。NK細胞で治療しようとする患者毎に、その患者が同種免疫されたHLA型を有するドナーからのTGF-βi NK細胞製剤を除外できるようにするため、血小板反応性抗体検査が実施される。患者の体重を用いて、TGF-βi NK用量、患者の割り当て用量レベル及び予定輸注日が計算される。一例示的実施形態において、残りのドナー(例えば、除外されなかったドナー)から、各用量への分配用に貯蔵TGF-βi NK細胞が調製される。これらの用量は、NK細胞、T細胞及びエンドトキシン用量について確認される。
【0150】
ステップ522において、NK細胞に存在するCD3+細胞が、割り当て用量レベルのT細胞閾値を下回ることが決定される。NK細胞に存在するCD3+細胞が割り当て用量レベルのT細胞閾値を上回ると決定される場合、その用量は除外される。一例示的実施形態において、T細胞閾値は、患者の割り当て用量レベルの累積T細胞用量最大値(以下の表2を参照されたい)以下である。
【0151】
ステップ524において、除外されなかったドナー細胞のエンドトキシン用量がエンドトキシン閾値以下であると決定され、ドナー適格細胞と同定される。一例示的実施形態において、エンドトキシン閾値は5EU/kg以下である。ステップ526において、NK細胞の用量が患者に閾値用量サイクルの間にわたって提供される。一例示的実施形態において、閾値用量サイクルは、イリノテカン、テモゾロミド、ジヌツキシマブ及びサルグラモスチム並びに万能ドナーTGF-βiエキソビボ拡大NK細胞(例えば、ドナー適格細胞)からなる6回の21日サイクルである。万能ドナー拡大TGF-βi NK細胞は、21日サイクルの8日目に1×108個のNK細胞/kg患者体重の用量でIVによって投与される。一例示的実施形態において、用量漸増がある。別の例示的実施形態において、用量漸増はない。
【0152】
対象への治療的投与の前に万能ドナーNK細胞を活性化させる及び/又は拡大すると、サイトカイン毒性に関連する多くの困難を克服することを促進し得ることが理解され、且つ本明細書でそれが企図される。一態様において、前述のいずれかの態様の癌又は感染症を治療する方法であって、選択された万能ドナーNK細胞をインビトロで1つ以上のNK細胞エフェクター剤(例えば、刺激性ペプチド、サイトカイン及び/又は接着分子)(例えばIL-21)の存在下においてインキュベートすることを更に含む方法である。NK細胞活性化剤及び刺激性ペプチドの例としては、限定はされないが、IL-21、41BBL、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-7、ULBP、MICA、LFA-1、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニスト;及び/又はTGF-β及び/又は他のホーミング誘導シグナル伝達分子が挙げられる。サイトカインの例としては、限定はされないが、IL-2、IL-12、IL-21及びIL-18が挙げられる。接着分子の例としては、限定はされないが、LFA-1、MICA、BCM/SLAMF2が挙げられる。
【0153】
これらのNK細胞エフェクター剤は、溶液中で可溶性を呈するか、又は細胞膜(PM)粒子、エキソソーム(EX)又はフィーダ細胞(FC)の表面上に膜結合剤として存在する。PM粒子、EXエキソソーム及び/又はFC細胞は、膜型のNK細胞活性化剤及び刺激性ペプチドを発現するように改変することができる。代わりに、NK細胞活性化剤及び刺激性ペプチドは、PM粒子、EXエキソソーム又はFCフィーダ細胞の表面に化学的にコンジュゲートすることができる。例えば、膜結合型IL-21を発現するフィーダ細胞(それぞれFC21細胞、PM21粒子及びEX21エキソソーム)から調製される細胞膜(PM)粒子、フィーダ細胞(FC)又はエキソソーム(EX)。膜結合型IL-21発現FC21細胞、PM21粒子及びEX21エキソソームは、限定はされないが、41BBL、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-7、ULBP、MICA、LEA-I、2B4、BCM/SLAMF2、CCR7、OX4OL、NKG2Dアゴニスト、デルタ-1、ノッチリガンド、NKp46アゴニスト、NKp44アゴニスト、NKp30アゴニスト、他のNCRアゴニスト、CD16アゴニスト;及び/又はTGF-βを含めた、追加的な1つ以上の活性化剤、刺激性ペプチド、サイトカイン及び/又は接着分子を更に含み得ること(例えば、41BBL及び膜結合型インターロイキン-21を発現するPM21粒子、EX21エキソソーム又はFC細胞)が理解され、且つ本明細書でそれが企図される。
【0154】
病原体はウイルスであり得ることが理解される。従って一実施形態において、病原体は、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、痘瘡ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎(Hepatitis C)ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス(Papilomavirus)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、デングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、レオウイルス、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレーバレー熱ウイルス、ウエストナイルウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型ロタウイルス、B型ロタウイルス、C型ロタウイルス、シンドビスウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、ハンタウイルス、風疹ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型及び/又はヒト免疫不全ウイルス2型からなる群から選択することができる。
【0155】
病原体が細菌である方法も開示される。病原体は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)BCG株、BCG亜株、トリ型結核菌(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobacterium intracellular)、アフリカ型結核菌(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウム・カンサシ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウム・マリヌム(Mycobacterium marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、トリ型結核菌亜種パラ結核菌(Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、他のノカルジア属(Nocardia)種、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、他のレジオネラ属(Legionella)種、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、他のサルモネラ属(Salmonella)種、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、他の赤痢菌属(Shigella)種、ペスト菌(Yersinia pestis)、ヘモリチカ菌(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、他のパスツレラ属(Pasteurella)種、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、他のブルセラ属(Brucella)種、心糸状虫(Cowdria ruminantium)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ボルデテラ・トレマツム(Bordetella trematum)、ボルデテラ・ヒンジイ(Bordetella hinzii)、ボルデテラ・ペツリイ(Bordetella petrii)、パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、ボルデテラ・アンソルピイ(Bordetella ansorpii)、他のボルデテラ属(Bordetella)種、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、セパシア菌(Burkholderia cepacia)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、リケッチア属(Rickettsia)種、エーリキア属(Ehrlichia)種、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumonia)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、大腸菌(Escherichia coli)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、カンピロバクター属(Campylobacter)種、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhea)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、他のシュードモナス属(Pseudomonas)種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、他のヘモフィルス属(Hemophilus)種、破傷風菌(Clostridium tetani)、他のクロストリジウム属(Clostridium)種、腸炎エルシニア(Yersinia enterocolitica)、及び/又は他のエルシニア属(Yersinia)種、及び/又はマイコプラズマ属(Mycoplasma)種からなる細菌の群から選択することができる。一態様において、細菌は炭疽菌(Bacillus anthracis)ではない。
【0156】
感染症を治療する方法も開示され、ここで、病原体は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidioides brasiliensis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicillium marneffei)及び/又はアルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)からなる真菌の群から選択される真菌である。
【0157】
病原体が、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、他のプラスモジウム属(Plasmodium)種、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)、リノスポリジウム・セーベリ(Rhinosporidium seeberi)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、蟯虫(Enterobius vermicularis)、エンテロビウス・グレゴリイ(Enterobius gregorii)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、クリプトスポリジウム属種(Cryptosporidium spp.)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、大形リーシュマニア(Leishmania major)、他のリーシュマニア種、広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum)、小形条虫(Hymenolepis nana)、縮小条虫(Hymenolepis diminuta)、単包条虫(Echinococcus granulosus)、多包条虫(Echinococcus multilocularis)、フォーゲル包条虫(Echinococcus vogeli)、ヤマネコ包条虫(Echinococcus oligarthrus)、広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum)、肝吸虫(Clonorchis sinensis);クロノルキス・ビベリニ(Clonorchis viverrini)、肝蛭(Fasciola hepatica)、巨大肝蛭(Fasciola gigantica)、槍形吸虫(Dicrocoelium dendriticum)、肥大吸虫(Fasciolopsis buski)、横川吸虫(Metagonimus yokogawai)、タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)、ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus)、肝吸虫(Clonorchis sinensis)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、アカントアメーバ属(Acanthamoeba)種、インターカラタム住血吸虫(Schistosoma intercalatum)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、他の住血吸虫属(Schistosoma)種、トリコビルハルジア・レゲンティ(Trichobilharzia regenti)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、トリキネラ・ブリトビ(Trichinella britovi)、トリキネラ・ネルソニ(Trichinella nelsoni)、トリキネラ・ナチバ(Trichinella nativa)及び/又は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)からなる寄生生物の群から選択される寄生虫である感染症を治療する方法も開示される。
【0158】
開示される組成物は、癌など、無制御な細胞増殖が起こる任意の疾患の治療に使用することができる。開示される組成物を治療に使用することができる癌の代表的な、但し非限定的なリストは、以下である:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳癌、神経系癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌などの肺癌、神経芽細胞腫/膠芽腫、卵巣癌、皮膚癌、肝癌、甲状腺癌、黒色腫、口腔、咽頭、喉頭及び肺の扁平上皮癌、子宮頸癌(cervical cancer)、子宮頸癌(cervical carcinoma)、乳癌及び上皮癌、腎癌、泌尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、大腸癌、造血系癌;精巣癌;結腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌及び/又は膵癌。
【0159】
示される例示的な実施形態
図6において、NK細胞は、神経芽細胞腫などの癌を治療する治療製剤方法600に利用される。ステップ602において、最適ドナーとしてのドナー適格性が確認される。一例示的実施形態において、最適ドナーは、上記の
図3に記載したとおり確認され、及び/又は最適ドナー細胞は、
図4にあるとおり改変される。従って、最適ドナーとは、C1、C2及びBw4アレルを担持するHLA遺伝子型を有する者、C1、C2及びBw4に結合する(最大限のライセンス化につながる)抑制型KIR(2DL1、2DL2又は3及び3DL1)を保有する、且つ活性型KIRの比率が高い(2DS1及び3DS1を含む可変的に遺伝する活性型遺伝子が3つ以上の)KIR遺伝子型を有する者及びCMVに曝露されたことがあり、結果としてNKG2C高発現が生じている者である。
【0160】
ステップ604において、最適細胞ドナーのMNCのCD3+免疫枯渇が実施される。一例示的実施形態において、CD3+免疫枯渇は、方法500のステップ506にあるものと同じである。ステップ606において、枯渇した最適ドナー細胞が芽細胞腫間隔について芽細胞腫期間にわたって拡大される。一例示的実施形態において、芽細胞腫期間(blastoma duration)は10~18日である。別の例示的実施形態において、芽細胞腫期間は14日である。別の例示的実施形態において、芽細胞腫間隔(例えば、拡大誘導エレメントが加えられるとき)は、1~3日である。拡大中、ステップ608において、枯渇した最適ドナー細胞が、膜結合型インターロイキン(Il)Il-21、Il-2及び/又は4-1BBLを発現する照射K562のフィーダ細胞で刺激される。一例示的実施形態において、NK細胞は、膜結合型IL-21及び4-1BBL並びにIL-2を発現する照射K562(例えば、濃度100IU/mL)のフィーダ細胞を用いて刺激する間に生成される。照射フィーダ細胞(IFC)は、芽細胞腫期間の最初の7日間に約1:2のTNC対IFC比で加えられ、芽細胞腫期間の2回目の7日間に1:1比で加えられる。一例示的実施形態において、芽細胞腫間隔毎に、新鮮なIL-2が加えられる。
【0161】
612において、確認されたドナー適格細胞に対して形質転換成長因子β(TGF-β)を使用するか又はインプリントすることにより、TGF-βi NK細胞が作成される。一例示的実施形態において、ドナー適格細胞は、TGF-β(例えば、濃度10ng/mL)によって慢性的に刺激される。別の例示的実施形態において、芽細胞腫期間中、芽細胞腫間隔毎に新鮮なTGF-βが加えられる。拡大過程でTGF-βを加えると、拡大後の最終的なNK細胞製剤の拡大倍数(465~3200倍の拡大)も、生存能(>96%)も損なわれない。TGF-βi NK細胞は、腫瘍標的と培養したとき、インターフェロン-γ及び腫瘍壊死因子-αの分泌過多を伴う炎症誘発性の表現型を呈するが、これにより、典型的に拡大したNK細胞と比較して、培養物中におけるサイトカイン産生NK細胞の割合及びこれらの細胞の各々が産生するサイトカインの量の両方が増加したため、抗腫瘍性サイトカイン分泌が増加した。これらの細胞は、表現型及び転写の変化を示し、それがTGF-βによる抑制に対する抵抗性を付与する。
【0162】
614において、培養したNK細胞が用量濃度に濃縮される。一例において、用量濃度は2×106NC/mL~2×108NC/mLである。616において、拡大し、かつ形質転換したNK細胞が用量濃度で凍結保存される。一実施形態において、NK細胞はNK凍結培地に凍結保存される。別の例示的実施形態において、NK凍結培地は、10%DMSO、12.5%(w/v)ヒト血清アルブミン(HSA)、USPを含み、且つ/又はプラズマライトA(Plasma-Lyte A)(USP)中に含む。
【0163】
示される例示的な実施形態
図7には、神経芽細胞腫などの1つ以上の癌を治療するためのレシピエント適格性及び治療方法700におけるレシピエント/患者の適格性及びNK細胞による治療が記載される。702において、レシピエントが、組織学的に確定された再発性非転移性テント上(supratentorial)世界保健機関(WHO)グレードIII/IV悪性脳腫瘍を有するかどうかが決定される。一例示的実施形態において、脳腫瘍としては、退形成性上衣腫、胎児性腫瘍、退形成性神経外胚葉性腫瘍、AT/RT、退形成性星状細胞腫、退形成性乏突起星細胞腫、退形成乏突起膠腫、退形成性多形黄色星状細胞腫、多形性膠芽腫、神経膠肉腫及び/又は悪性神経膠腫NOSが挙げられる。
【0164】
704において、組織学的に確定された再発性非転移性テント上WHOグレードIII/IV悪性脳腫瘍がレシピエントにないことに応答して、そのレシピエントが準最適(sub-optimal)としてマークされる(例えば、NKドナー細胞を受ける候補でない)。706において、組織学的に確定された再発性非転移性テント上WHOグレードIII/IV悪性脳腫瘍がレシピエントに見られることに応答して、レシピエントが再発性腫瘍の切除術/直視下生検の候補(切除術候補)であるかどうか、及び/又は腔内/腫瘍内に置かれるオンマヤ貯留槽(Ommaya reservoir)の留置候補(オンマヤ候補)と見なされるかどうかが決定される。708において、レシピエントが切除術候補又はオンマヤ候補と見なされないことに応答して、そのレシピエントは準最適としてマークされる。
【0165】
710において、にレシピエントが切除術候補及び/又はオンマヤ候補と見なされること応答して、レシピエントが16歳以下の場合に50以上のランスキースコア(最適ランスキースコア)又はレシピエントが16歳を超える場合に50以上のカルノフスキースコア(最適カルノフスキースコア)をレシピエントが有するかどうかが決定される。一例示的実施形態において、最適な候補は、研究への登録時点で3歳以上25歳未満である。712において、レシピエントがその年齢に最適なランスキースコア又は最適なカルノフスキースコアを有しないと見なされることに応答して、レシピエントは準最適としてマークされる。
【0166】
714において、レシピエントがその年齢に最適なランスキースコア又は最適なカルノフスキースコアを有すると見なされることに応答して、レシピエントが機能閾値を超える臓器機能を有するかどうかが決定される。一例示的実施形態において、機能閾値は、21日間のNK細胞投与において輸注又は成長因子なしに十分な骨髄機能を有することである。別の例示的実施形態において、十分な骨髄機能は、2.5×103/マイクロリットル以上の白血球細胞(WBC)、9gm/dL以上のヘモグロビン(Hgb)、1,000細胞/マイクロリットル以上の好中球絶対数(ANC)及び75,000細胞/マイクロリットル以上の血小板数として定義される。一例示的実施形態において、機能閾値は、十分な肝機能及び/又は十分な腎機能を有することである。一例示的実施形態において、十分な肝機能は、ALT、AST及びアルカリホスファターゼがULNの2倍未満であり、及びビリルビンがULNの1.5倍未満であることと定義され、十分な腎機能は、BUN又はクレアチニンがULNの1.5倍未満であることと定義される。716において、レシピエントが臓器機能閾値を超える臓器機能を有しないと見なされることに応答して、そのレシピエントは準最適としてマークされる。
【0167】
718において、レシピエントが臓器機能閾値を超える臓器機能を有すると見なされることに応答して、レシピエントが治療期間内に毒性療法を受けたかどうかが決定される。一例示的実施形態において、最適なレシピエントは、万能ドナーNK細胞治療を受ける前に、放射線療法及び/又は化学療法による第一選択治療を完了している。一例示的実施形態において、治療期間は、初期放射線療法の完了から少なくとも12週間である。別の例示的実施形態において、治療期間は、任意の細胞毒性化学療法レジメンの完了から少なくとも6週間である。更に別の例示的実施形態において、治療期間は、いずれかの毒性薬剤の最終回投与から最低でも2週間である。この例示的実施形態では、レシピエントは、万能NKドナー細胞の治療前に、毒性薬剤のいかなる毒性からも回復していると見なされる。一例示的実施形態において、治療期間は、癌の診断と現時点との間である。別の例示的実施形態において、毒性療法は、全身性ステロイドであり(補充療法を除く)、治療期間はNK細胞輸注前の少なくとも3日間である。別の例示的実施形態において、毒性療法はベバシズマブであり、治療期間は、NK細胞輸注開始前の少なくとも6週間である。720において、レシピエントが治療期間内に毒性療法を受けたと見なされることに応答して、そのレシピエントが準最適としてマークされる。722において、レシピエントが治療期間外に毒性療法を受けたと見なされることに応答して、そのレシピエントが万能ドナーNK細胞療法を受けるのに最適としてマークされる。
【0168】
724において、割り当て用量レベルのパーセンテージ(例えば、以下の表2に記載されるとおり)の範囲内のNK細胞濃度を有するNK細胞(
図6の方法600を用いて作成される)が作成される。一例示的実施形態において、療法継続期間は3ヵ月であり、且つ/又は疾患進行まで、更なる治療投与を妨げる併発病が起こるまで、許容できない1つ又は複数の有害事象が起こるまで、患者が中止することに決めるまで、プロトコルの重大な患者ノンコンプライアンスが起こるまで、患者の状態の全般的又は特異的な変化により、臨床医の決定で患者が更なる治療を許容できなくなるまでである。726において、NK細胞の用量が、閾値用量サイクルにわたる最適なレシピエントでの使用向けに提供される(例えば、以下の表2を参照されたい)。一例において、NK細胞の用量は、静脈内、筋肉内等の方法を用いて提供される。
【0169】
728において、NK細胞の用量は、閾値用量サイクルの間にわたるオンマヤ貯留槽における使用向けに提供される(例えば、以下の表2を参照されたい)。患者は腫瘍切除及びオンマヤ留置のための手術に進む。一例示的実施形態において、第1の用量のTGFβi NK細胞がオンマヤ貯留槽留置後少なくとも14間投与される。オンマヤ貯留槽からのTGFβi NK細胞注入が、週1回、3週間にわたって行われた後、1週間の安静が続き、合計3回の(4週間)サイクルにわたって行われる。患者が疾患の安定又は好転を示す場合、次に患者は引き続き、合計12サイクルにわたって療法を受ける。一例示的実施形態において、最適なレシピエントは、3サイクルのTGFβi NK細胞注入を受ける。各サイクルが4週間の継続期間である。最初の3週間中、TGFβi NK細胞が週1回輸注される。第4週目が安静週間である。TGFβi NK細胞注入は、少なくとも3日間空けて送達されなければならない(例えば、第1週の金曜日及び第2週の月曜日)。用量設定は、レシピエント体表面積(BSA)を基準とする。
【0170】
【0171】
本明細書では、対象の癌又は転移を治療、予防、阻害又は低減する本開示の方法が、癌又は転移の低減、阻害、治療及び/又は消失に更に役立つであろう任意の抗癌剤(例えば、ゲムシタビンなど)の投与を更に含み得ることも企図される。本明細書に開示される対象の癌又は転移を低減し、阻害し、治療し、及び/又は消失させる方法のための本開示の生体応答性ヒドロゲル中に使用するか、又は本開示の医薬組成物、改変粒子及び/又は生体応答性ヒドロゲル(改変粒子が中に封入されている生体応答性ヒドロゲルを含む)に加えて追加の治療用薬剤として使用することのできる抗癌剤は、限定はされないが、アベマシクリブ、アビラテロン酢酸塩、アビトレキサート(Abitrexate)(メトトレキサート)、アブラキサン(Abraxane)(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ABVD、ABVE、ABVE-PC、AC、AC-T、アドセトリス(Adcetris)(ブレンツキシマブベドチン)、ADE、Ado-トラスツズマブエムタンシン、アドリアマイシン(ドキソルビシン塩酸塩)、アファチニブジマレイン酸塩、アフィニトール(Afinitor)(エベロリムス)、アキンゼオ(Akynzeo)(ネツピタント及びパロノセトロン塩酸塩)、アルダラ(Aldara)(イミキモド)、アルデスロイキン、アレセンサ(Alecensa)(アレクチニブ)、アレクチニブ、アレムツズマブ、アリムタ(Alimta)(ペメトレキセド二ナトリウム)、アリコパ(Aliqopa)(コパンリシブ塩酸塩)、アルケラン(Alkeran)注射液(メルファラン塩酸塩)、アルケラン(Alkeran)錠(メルファラン)、アロキシ(Aloxi)(パロノセトロン塩酸塩)、アルンブリグ(Alunbrig)(ブリガチニブ)、アンボクロリン(Ambochlorin)(クロラムブシル)、アンボクロリン(Ambochlorin)クロラムブシル)、アミホスチン、アミノレブリン酸、アナストロゾール、アプレピタント、アレディア(Aredia)(パミドロン酸二ナトリウム)、アリミデックス(Arimidex)(アナストロゾール)、アロマシン(Aromasin)(エキセメスタン)、アラノン(Arranon)(ネララビン)、三酸化ヒ素、アーゼラ(Arzerra)(オファツムマブ)、アスパラギナーゼ・エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)、アテゾリズマブ、アバスチン(Avastin)(ベバシズマブ)、アベルマブ、アキシチニブ、アザシチジン、バベンチオ(Bavencio)(アベルマブ)、BEACOPP、ベセナム(Becenum)(カルムスチン)、ベレオダック(Beleodaq)(ベリノスタット)、ベリノスタット、ベンダムスチン塩酸塩、BEP、ベスポンサ(Besponsa)(イノツズマブオゾガマイシン)、ベバシズマブ、ベキサロテン、ベキサール(Bexxar)(トシツモマブ及びヨウ素I131トシツモマブ)、ビカルタミド、BiCNU(カルムスチン)、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ビーリンサイト(Blincyto)(ブリナツモマブ)、ボルテゾミブ、ボシュリフ(Bosulif)(ボスチニブ)、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリガチニブ、BuMel、ブスルファン、ブスルフェクス(Busulfex)(ブスルファン)、カバジタキセル、カボメティクス(Cabometyx)(カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩)、カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩、CAF、キャンパス(Campath)(アレムツズマブ)、カンプトサール(Camptosar)(イリノテカン塩酸塩)、カペシタビン、CAPDX、カラック(Carac)(フルオロウラシル-局所)、カルボプラチン、カルボプラチン-タキソール(Taxol)、カルフィルゾミブ、カルムブリス(Carmubris)(カルムスチン)、カルムスチン、カルムスチンインプラント、カソデックス(Casodex)(ビカルタミド)、CEM、セリチニブ、セルビジン(Cerubidine)(ダウノルビシン塩酸塩)、サーバリックス(Cervarix)(組換えHPV二価ワクチン)、セツキシマブ、CEV、クロラムブシル、クロラムブシル-プレドニゾン、CHOP、シスプラチン、クラドリビン、クラフェン(Clafen)(シクロホスファミド)、クロファラビン、クロファレックス(Clofarex)(クロファラビン)、クロラール(Clolar)(クロファラビン)、CMF、コビメチニブ、コメトリック(Cometriq)(カボザンチニブ-S-リンゴ酸塩)、コパンリシブ塩酸塩、COPDAC、COPP、COPP-ABV、コスメゲン(Cosmegen)(ダクチノマイシン)、コテリック(Cotellic)(コビメチニブ)、クリゾチニブ、CVP、シクロホスファミド、サイフォス(Cyfos)(イホスファミド)、サイラムザ(Cyramza)(ラムシルマブ)、シタラビン、シタラビンリポソーム、サイトサールU(Cytosar-U)(シタラビン)、シトキサン(シクロホスファミド)、ダブラフェニブ、ダカルバジン、ダコゲン(Dacogen)(デシタビン)、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、ダラザレックス(Darzalex)(ダラツムマブ)、ダサチニブ、ダウノルビシン塩酸塩、ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム、デシタビン、デフィブロチドナトリウム、デファイテリオ(Defitelio)(デフィブロチドナトリウム)、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デポサイト(DepoCyt)(シタラビンリポソーム)、デキサメサゾン、デクスラゾキサン塩酸塩、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、ドキシル(Doxil)(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ドキソルビシン塩酸塩、ドキソルビシン塩酸塩リポソーム、Dox-SL(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、DTICドーム(DTIC-Dome)(ダカルバジン)、デュルバルマブ、エフデックス(Efudex)(フルオロウラシル-局所)、エリテック(Elitek)(ラスブリカーゼ)、エレンス(Ellence)(エピルビシン塩酸塩)、エロツズマブ、エロキサチン(Eloxatin)(オキサリプラチン)、エルトロンボパグオラミン、イメンド(Emend)(アプレピタント)、エムプリシティ(Empliciti)(エロツズマブ)、エナシデニブメシル酸塩、エンザルタミド、エピルビシン塩酸塩、EPOCH、アービタックス(Erbitux)(セツキシマブ)、エリブリンメシル酸塩、エリベッジ(Erivedge)(ビスモデギブ)、エルロチニブ塩酸塩、アーウィナーゼ(Erwinaze)(アスパラギナーゼ・エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi))、エチオール(Ethyol)(アミホスチン)、エトポフォス(Etopophos)(リン酸エトポシド)、エトポシド、リン酸エトポシド、エバセト(Evacet)(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、エベロリムス、エビスタ(Evista)(ラロキシフェン塩酸塩)、エボメラ(Evomela)(メルファラン塩酸塩)、エキセメスタン、5-FU(フルオロウラシル注射液)、5-FU(フルオロウラシル-局所)、フェアストン(Fareston)(トレミフェン)、ファリーダック(Farydak)(パノビノスタット)、フェソロデックス(Faslodex)(フルベストラント)、FEC、フェマーラ(Femara)(レトロゾール)、フィルグラスチム、フルダラ(Fludara)(リン酸フルダラビン)、リン酸フルダラビン、フルオロプレックス(Fluoroplex)(フルオロウラシル-局所)、フルオロウラシル注射液、フルオロウラシル-局所、フルタミド、フォレックス(Folex)(メトトレキサート)、フォレックスPFS(Folex PFS)(メトトレキサート)、フォルフィリ(FOLFIRI)、フォルフィリ(FOLFIRI)-ベバシズマブ、フォルフィリ(FOLFIRI)-セツキシマブ、フォルフィリノックス(FOLFIRI NOX)、フォルフォックス(FOLFOX)、フォロチン(Folotyn)(プララトレキサート)、FU-LV、フルベストラント、ガーダシル(Gardasil)(組換えHPV四価ワクチン)、ガーダシル9(Gardasil 9)(組換えHPV九価ワクチン)、ガザイバ(Gazyva)(オビヌツズマブ)、ゲフィチニブ、ゲムシタビン塩酸塩、ゲムシタビン-シスプラチン、ゲムシタビン-オキサリプラチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ジェムザール(Gemzar)(ゲムシタビン塩酸塩)、ジロトリフ(Gilotrif)(アファチニブジマレイン酸塩)、グリベック(Gleevec)(イマチニブメシル酸塩)、グリアデル(Gliadel)(カルムスチンインプラント)、グリアデルウエハー(Gliadel wafer)(カルムスチンインプラント)、グルカルピダーゼ、ゴセレリン酢酸塩、ハラヴェン(Halaven)(エリブリンメシル酸塩)、ヘマンジオル(Hemangeol)(プロプラノロール塩酸塩)、ハーセプチン(Herceptin)(トラスツズマブ)、HPV二価ワクチン、組換え、HPV九価ワクチン、組換え、HPV四価ワクチン、組換え、ハイカムチン(Hycamtin)(トポテカン塩酸塩)、ハイドレア(ヒドロキシウレア)、ヒドロキシウレア、ハイパーCVAD(Hyper-CVAD)、イブランス(Ibrance)(パルボシクリブ)、イブリツモマブチウキセタン、イブルチニブ、ICE、アイクルシグ(Iclusig)(ポナチニブ塩酸塩)、イダマイシン(Idamycin)(イダルビシン塩酸塩)、イダルビシン塩酸塩、イデラリシブ、アイディハイファ(Idhifa)(エナシデニブメシル酸塩)、アイフェックス(Ifex)(イホスファミド)、イホスファミド、アイフォスファミダム(イホスファミド)、IL-2(アルデスロイキン)、イマチニブメシル酸塩、イムブルビカ(Imbruvica)(イブルチニブ)、イミフィンジ(Imfinzi)(デュルバルマブ)、イミキモド、イムリジック(Imlygic)(タリモジーン・ラハーパレプベック)、インライタ(Inlyta)(アキシチニブ)、イノツズマブオゾガマイシン、インターフェロンα-2b、組換え、インターロイキン-2(アルデスロイキン)、イントロンA(組換えインターフェロンα-2b)、ヨウ素I131トシツモマブ及びトシツモマブ、イピリムマブ、イレッサ(Iressa)(ゲフィチニブ)、イリノテカン塩酸塩、イリノテカン塩酸塩リポソーム、イストダックス(Istodax)(ロミデプシン)、イクサベピロン、イキサゾミブクエン酸塩、イグゼンプラ(Ixempra)(イクサベピロン)、ジャカフィ(Jakafi)(ルキソリチニブリン酸塩)、JEB、ジェブタナ(Jevtana)(カバジタキセル)、カドサイラ(Kadcyla)(ado-トラスツズマブエムタンシン)、ケオキシフェン(ラロキシフェン塩酸塩)、ケピバンス(Kepivance)(パリフェルミン)、キイトルーダ(Keytruda)(ペンブロリズマブ)、キスカリ(Kisqali)(リボシクリブ)、キムリア(Kymriah)(チサゲンレクロイセル)、カイプロリス(Kyprolis)(カルフィルゾミブ)、ランレオチド酢酸塩、ラパチニブ二トシル酸塩、ラルトルボ(Lartruvo)(オララツマブ)、レナリドマイド、レンバチニブメシル酸塩、レンビマ(Lenvima)(レンバチニブメシル酸塩)、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、リューケラン(Leukeran)(クロラムブシル)、ロイプロリド酢酸塩、ロイスタチン(Leustatin)(クラドリビン)、レブラン(Levulan)(アミノレブリン酸)、リンホリジン(Linfolizin)(クロラムブシル)、リポドックス(LipoDox)(ドキソルビシン塩酸塩リポソーム)、ロムスチン、ロンサーフ(Lonsurf)(トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩)、リュープロン(Lupron)(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロン
(Lupron)デポ剤(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロン(Lupron)デポ剤-小児用(ロイプロリド酢酸塩)、リムパーザ(Lynparza)(オラパリブ)、マルキボ(Marqibo)(ビンクリスチン硫酸塩リポソーム)、マチュレーン(Matulane)(プロカルバジン塩酸塩)、メクロレタミン塩酸塩、メゲストロール酢酸塩、メキニスト(Mekinist)(トラメチニブ)、メルファラン、メルファラン塩酸塩、メルカプトプリン、メスナ、メスネックス(Mesnex)(メスナ)、メタゾラストン(Methazolastone)(テモゾロミド)、メトトレキサート、メトトレキサートLPF(メトトレキサート)、メチルナルトレキソン臭化物、メキサート(Mexate)(メトトレキサート)、メキサートAQ(Mexate-AQ)(メトトレキサート)、ミドスタウリン、マイトマイシンC、ミトキサントロン塩酸塩、マイトザイトレックス(Mitozytrex)(マイトマイシンC)、MOPP、モゾビル(Mozobil)(プレリキサホル)、マスタージェン(Mustargen)(メクロレタミン塩酸塩)、ムタマイシン(Mutamycin)(マイトマイシンC)、ミレラン(Myleran)(ブスルファン)、マイロサール(Mylosar)(アザシチジン)、マイロターグ(Mylotarg)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、ナノ粒子パクリタキセル(パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤)、ナベルビン(Navelbine)(酒石酸ビノレルビン)、ネシツムマブ、ネララビン、ネオサール(Neosar)(シクロホスファミド)、ネラチニブマレイン酸塩、ネルリンクス(Nerlynx)(ネラチニブマレイン酸塩)、ネツピタント及びパロノセトロン塩酸塩、ニューラスタ(Neulasta)(ペグフィルグラスチム)、ニューポジェン(Neupogen)(フィルグラスチム)、ネクサバール(Nexavar)(ソラフェニブトシル酸塩)、ニランドロン(Nilandron)(ニルタミド)、ニロチニブ、ニルタミド、ニンラーロ(Ninlaro)(イキサゾミブクエン酸塩)、ニラパリブトシル酸塩一水和物、ニボルマブ、ノルバデックス(Nolvadex)(タモキシフェンクエン酸塩)、エヌプレート(Nplate)(ロミプロスチム)、オビヌツズマブ、オドムゾ(Odomzo)(ソニデギブ)、OEPA、オファツムマブ、OFF、オラパリブ、オララツマブ、オマセタキシンメペスクシネート、オンカスパール(Oncaspar)(ペグアスパラガーゼ)、オンダンセトロン塩酸塩、オニバイド(Onivyde)(イリノテカン塩酸塩リポソーム)、オンタク(Ontak)(デニロイキンジフチトクス)、オプジーボ(Opdivo)(ニボルマブ)、OPPA、オシメルチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パクリタキセル・アルブミン安定化ナノ粒子製剤、PAD、パルボシクリブ、パリフェルミン、パロノセトロン塩酸塩、パロノセトロン塩酸塩及びネツピタント、パミドロン酸二ナトリウム、パニツムマブ、パノビノスタット、パラプラット(Paraplat)(カルボプラチン)、パラプラチン(Paraplatin)(カルボプラチン)、パゾパニブ塩酸塩、PCV、PEB、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペグイントロン(PEG-Intron)(ペグインターフェロンアルファ-2b)、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド二ナトリウム、パージェタ(Perjeta)(ペルツズマブ)、ペルツズマブ、プラチノール(Platinol)(シスプラチン)、プラチノールAQ(Platinol-AQ)(シスプラチン)、プレリキサホル、ポマリドミド、ポマリスト(Pomalyst)(ポマリドミド)、ポナチニブ塩酸塩、ポートラーザ(Portrazza)(ネシツムマブ)、プララトレキサート、プレドニゾン、プロカルバジン塩酸塩、プロロイキン(Proleukin)(アルデスロイキン)、プロリア(Prolia)(デノスマブ)、プロマクタ(Promacta)(エルトロンボパグオラミン)、プロプラノロール塩酸塩、プロベンジ(Provenge)(シプロイセル-T)、プリントール(Purinethol)(メルカプトプリン)、プリキサン(Purixan)(メルカプトプリン)、ラジウム223二塩化物、ラロキシフェン塩酸塩、ラムシルマブ、ラスブリカーゼ、Rチョップ(R-CHOP)、R-CVP、組換えヒトパピローマウイルス(l-IPV)二価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)九価ワクチン、組換えヒトパピローマウイルス(HPV)四価ワクチン、組換えインターフェロンα-2b、レゴラフェニブ、レリストール(Relistor)(メチルナルトレキソン臭化物)、Rエポック(R-EPOCH)、レブラミド(Revlimid)(レナリドマイド)、リウマトレックス(Rheumatrex)(メトトレキサート)、リボシクリブ、Rアイス(R-ICE)、リツキサン(Rituxan)(リツキシマブ)、リツキサンハイセラ(Rituxan Hycela)(リツキシマブ及びヒアルロニダーゼ(Hyaluronidase)ヒト)、リツキシマブ、リツキシマブ及びヒアルロニダーゼ(Hyaluronidase)ヒト、ロラピタント塩酸塩、ロミデプシン、ロミプロスチム、ルビドマイシン(ダウノルビシン塩酸塩)、ルブラカ(Rubraca)(ルカパリブカンシル酸塩)、ルカパリブカンシル酸塩、ルキソリチニブリン酸塩、ライダプト(Rydapt)(ミドスタウリン)、スクレロゾル(Sclerosol)胸膜内エアロゾル(タルク)、シルツキシマブ、シプロイセル-T、ソマチュリン(Somatuline)デポ剤(ランレオチド酢酸塩)、ソニデギブ、ソラフェニブトシル酸塩、スプリセル(Sprycel)(ダサチニブ)、スタンフォード(STANFORD V)、滅菌タルク粉末(タルク)、ステリタルク(Steritalc)(タルク)、スチバーガ(Stivarga)(レゴラフェニブ)、スニチニブリンゴ酸塩、スーテント(Sutent)(スニチニブリンゴ酸塩)、シラトロン(Sylatron)(ペグインターフェロンアルファ-2b)、シルバント(Sylvant)(シルツキシマブ)、シンリボ(Synribo)(オマセタキシンメペスクシネート)、タブロイド(Tabloid)(チオグアニン)、TAC、タフィンラー(Tafinlar)(ダブラフェニブ)、タグリッソ(Tagrisso)(オシメルチニブ)、タルク、タリモジーン・ラハーパレプベック、タモキシフェンクエン酸塩、タラビンPFS(Tarabine PFS)(シタラビン)、タルセバ(Tarceva)(エルロチニブ塩酸塩)、タルグレチン(Targretin)(ベキサロテン)、タシグナ(Tasigna)(ニロチニブ)、タキソール(Taxol)(パクリタキセル)、タキソテール(Taxotere)(ドセタキセル)、テセントリク(Tecentriq)(アテゾリズマブ)、テモダール(Temodar)(テモゾロミド)、テモゾロミド、テムシロリムス、サリドマイド、サロミド(Thalomid)(サリドマイド)、チオグアニン、チオテパ、チサゲンレクロイセル、トラック(Tolak)(フルオロウラシル-局所)、トポテカン塩酸塩、トレミフェン、トーリセル(Torisel)(テムシロリムス)、トシツモマブ及びヨウ素I131トシツモマブ、トテクト(Totect)(デクスラゾキサン塩酸塩)、TPF、トラベクテジン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレアンダ(Treanda)(ベンダムスチン塩酸塩)、トリフルリジン及びチピラシル塩酸塩、トリセノックス(Trisenox)(三酸化ヒ素)、タイケルブ(Tykerb)(ラパチニブ二トシル酸塩)、ユニツキシン(Unituxin)(ジヌツキシマブ)、ウリジン三酢酸塩、VAC、バンデタニブ、VAMP、バルビ(Varubi)(ロラピタント塩酸塩)、ベクティビックス(Vectibix)(パニツムマブ)、VeIP、ベルバン(Velban)(ビンブラスチン硫酸塩)、ベルケイド(Velcade)(ボルテゾミブ)、ベルサール(Velsar)(ビンブラスチン硫酸塩)、ベムラフェニブ、ベネクレクスタ(Venclexta)(ベネトクラクス)、ベネトクラクス、ベージニオ(Verzenio)(アベマシクリブ)、ビアデュール(Viadur)(ロイプロリド酢酸塩)、ビダーザ(Vidaza)(アザシチジン)、ビンブラスチン硫酸塩、ビンカサールPFS(Vincasar PFS)(ビンクリスチン硫酸塩)、ビンクリスチン硫酸塩、ビンクリスチン硫酸塩リポソーム、酒石酸ビノレルビン、VIP、ビスモデギブ、ビストガード(Vistogard)(ウリジン三酢酸塩)、ボラキサゼ(Voraxaze)(グルカルピダーゼ)、ボリノスタット、ボトリエント(Votrient)(パゾパニブ塩酸塩)、ヴィキセオス(Vyxeos)(ダウノルビシン塩酸塩及びシタラビンリポソーム)、ウェルコボリン(Wellcovorin)(ロイコボリンカルシウム)、ザーコリ(Xalkori)(クリゾチニブ)、ゼローダ(Xeloda)(カペシタビン)、XELIRI、XELOX、イクスゲバ(Xgeva)(デノスマブ)、ゾーフィゴ(Xofigo)(ラジウム223二塩化物)、イクスタンジ(Xtandi)(エンザルタミド)、ヤーボイ(Yervoy)(イピリムマブ)、ヨンデリス(Yondelis)(トラベクテジン)、ザルトラップ(Zaltrap)(Ziv-アフリベルセプト)、ザルキシオ(Zarxio)(フィルグラスチム)、ゼジューラ(Zejula)(ニラパリブトシル酸塩一水和物)、ゼルボラフ(Zelboraf)(ベムラフェニブ)、ゼヴァリン(Zevalin)(イブリツモマブチウキセタン)、ジネカード(Zinecard)(デクスラゾキサン塩酸塩)、Ziv-アフリベルセプト、ゾフラン(Zofran)(オンダンセトロン塩酸塩)、ゾラデックス(Zoladex)(ゴセレリン酢酸塩)、ゾレドロン酸、ゾリンザ(Zolinza)(ボリノスタット)、ゾメタ(Zometa)(ゾレドロン酸)、ザイデリグ(Zydelig)(イデラリシブ)、ジカディア(Zykadia)(セリチニブ)及び/又はザイティガ(Zytiga)(アビラテロン酢酸塩)、ザイティガ(Zytiga)(アビラテロン酢酸塩)を含めた、当技術分野において公知の任意の抗癌剤を含むことができる。チェックポイント阻害薬としては、限定はされないが、PD-1(ニボルマブ(BMS-936558又はMDX1106)、CT-011、MK-3475)、PD-LI(MDX-1105(BMS-936559)、MPDL3280A、MSB0010718C)、PD-L2(rHIgM12B7)、CTLA-4(イピリムマブ(MDX-010)、トレメリムマブ(CP-675,206))、IDO、B7-H3(MGA271)、B7-H4、TIM3、LAG-3(BMS-986016)を遮断する抗体が挙げられる。
【0172】
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ストリンガリス・K(Stringaris K)、アダムス・S(Adams S)、Uribe・M(Uribe M)ら著、「ドナーKIR遺伝子2DL5A、2DS1及び3DS1は、急性骨髄性白血病に対してはHLA一致同胞幹細胞移植後の白血病再発率の低下に関連するが、他の血液学的悪性腫瘍に対しては関連しない(Donor KIR Genes 2DL5A,2DS1 and 3DS1 are associated with a reduced rate of leukemia relapse after HLA-identical sibling stem cell transplantation for acute myeloid leukemia but not other hematologic malignancies)」、バイオロジー・オブ・ブラッド・アンド・マロー・トランスプランテーション(Biol Blood Marrow Transplant.)、2010年、第16巻、第9号、p.1257~1264。
【0181】
前述の本明細書では、具体的な実施形態が記載されている。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に定められる本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び変更形態がなされ得ることを理解する。従って、本明細書及び図は、限定的な意味でなく、むしろ例示的な意味で解釈されるべきであり、かかる修正形態は、全て本教示の範囲内に含まれることが意図される。
【0182】
利益、利点、問題の解決法及び任意の利益、利点又は解決法を想起させるか又は一層際立たせ得る任意の1つ又は複数の要素は、あらゆる特許請求の範囲の決定的な、要求される又は不可欠な特徴又は要素と解釈されてはならない。本開示は、本願の係属中に行われる任意の補正及び付与されるとおりのその特許請求の範囲の全ての均等物を含め、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0183】
更に、本明細書では、第1及び第2、上及び下など、関係を示す用語は、ある実体又は動作を別の実体又は動作と区別するためにのみ用いられ得、必ずしもかかる実体又は動作の間のいずれかの実際のかかる関係又は順序を必要とするか又は含意するわけではない。用語「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「包含する」、「包含している(including)」、「含有する」、「含有している(containing)」又はこれらの任意の他の変化形は、要素のリストを含む、有する、包含する、含有するプロセス、方法、物品又は装置が、それらの要素を包含するのみならず、明示的に挙げられていないか、又はかかるプロセス、方法、物品若しくは装置に固有の他の要素を包含し得るように、非排他的包含を網羅することが意図される。「・・・を含む」、「・・・を有する」、「・・・を包含する」、「・・・を含有する」が前に付く要素は、それ以上の制約なしには、その要素を含む、有する、包含する、含有するプロセス、方法、物品又は装置に追加的な同一の要素が存在することを除外しない。用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書に特に明記しない限り、1つ又は複数として定義される。用語「実質的に」、「本質的に」、「近似的に」、「約」又はこれらの任意の他の変化形は、当業者が理解するとおり、近いこととして定義される。非限定的な一実施形態において、これらの用語は、例えば10%以内、別の可能な実施形態では5%以内、別の可能な実施形態では1%以内及び別の可能な実施形態では0.5%以内にあると定義される。用語「カップリングされている(coupled)」は、本明細書で使用されるとき、一時的又は永久的のいずれかで、必須ではないが直接及び必ずしも機械的ではなく接続されているか、又は接触した状態にあることとして定義される。ある種の方法で「構成されている(configured)」装置又は構造は、少なくともその方法で構成されるが、挙げられていない方法でも構成され得る。
【0184】
本化合物、組成物、物品、装置及び/又は方法を開示及び説明する前に、特に指定されない限り、それらが具体的な合成方法又は具体的な組換えバイオテクノロジー方法に限定されず、又は特に指定されない限り、詳細な試薬に限定されず、従って当然ながら変わり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語法は、あくまでも詳細な実施形態を説明する目的に過ぎず、限定することは意図しないことも理解されるべきである。開示される参考文献は、その参考文献が依拠する文章中で考察される、そこに含まれる資料についても、個別且つ具体的に参照によって本明細書に援用される。
【0185】
前述の実施形態のいずれか1つ又はその構成要素についての資料が特定されない限りにおいて、当業者であれば、意図した目的に好適な資料が分かるであろうことが理解されるべきである。本明細書で参照されるいずれの項目、テキスト、特許、特許公報、特許出願番号も、あらゆる目的から全体として参照により本明細書に援用される。
【0186】
範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」もう1つの特定の値までとして表され得る。かかる範囲が表されるとき、別の実施形態は、その一方の特定の値から及び/又はその他方の特定の値までを含む。同様に、先行する「約」を用いることによって値が近似値として表されるとき、その特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。更に、範囲の各々の端点が両方とも、他方の端点に対して、他方の端点とは無関係に有意であることが理解されるであろう。本明細書には開示される値が幾つもあり、その各値も、本明細書では、その値自体に加えて、「約」その特定の値と開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。ある値が開示されるとき、当業者によって適切に理解されるとおり、その値「以下」、その値「以上」及び値の間にある可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示されるとき、「10以下」並びに「10以上」も開示される。本願全体を通して、データが幾つもの異なる形式で提供されること及びこのデータが端点及び始点並びにそれらのデータ点の任意に組み合わせについての範囲を表すことも理解される。
【0187】
例えば、特定のデータ点「20」及び特定のデータ点25が開示される場合、20及び25より大きい、それら以上、それら未満、それら以下及びそれらに等しいという開示が、20~25の開示と同じくなされていると見なされることが理解される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、20及び25が開示される場合、21、22、23及び24も開示される。
【0188】
読者が本技術的開示の性質を迅速に確かめることができるように、本開示の要約が提供される。これは、それが特許請求の範囲又は意味を解釈又は制限するために用いられないであろうという理解の下で提出される。加えて、前述の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で様々な特徴が様々な実施形態に1つにまとめられているのを見ることができる。この開示方法は、特許請求される実施形態に、各請求項に明示的に記載されるよりも多くの特徴が必要であるという意図を反映するものと解釈されてはならない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するとおり、発明の主題は、単一の開示される実施形態の全てに満たない特徴にある。従って、以下の特許請求の範囲は、本明細書によって詳細な説明に援用され、各請求項は、個別に特許請求される主題として自立している。
【実施例】
【0189】
本発明が更に十分に理解され得るように、以下の例を示す。本願に記載される例は、本明細書に提供される方法及び組成物を例示するために提供され、その範囲を限定するものと決して解釈されてはならない。
【0190】
実施例1:一貫した且つ強力な「オフ・ザ・シェルフ」NK細胞治療用製剤を作成するための「理想的」ドナーを選択する
NK細胞は、それが自己HLAクラスI分子に対する抑制型キラー免疫グロブリン受容体(KIR)を発現するとき、ライセンス化される(亢進した殺傷能力を獲得する)。これによってNK細胞は、「自己」を認識することが可能になり、自己細胞を殺傷から免れさせる。従って、自己HLAクラスI分子を欠いている標的は、ライセンス化されたNK細胞による認識を誘発する可能性が高くなる。NKアロ反応性に関連することが公知の抑制型KIR遺伝子は、(i)HLA-Cグループ2アレルに結合する2DL1、(ii)HLA-Cグループ1アレルに結合する2DL2及び2DL3、(iii)及びHLA-B Bw4アレルに結合する3DL1である。リガンド欠損モデルによれば、対応するリガンドがレシピエントに存在せず、且つドナーに存在する場合に限り、抑制型KIR遺伝子を発現する各NK細胞にアロ反応性があることになり、例えば、グループC1アレルを保有するドナーは、いずれもグループC1アレルを欠く任意の個体にアロ反応性を示すことになる。従って、C1、C2及びBw4ファミリのHLAを保有するドナーは、このモデルによれば、C1、又はC2、又はBw4を欠く任意のレシピエントに対してアロ反応性を示すと予測される。
【0191】
抑制型KIRがアロ反応性を防ぐのに対し、活性型KIRは、NK細胞溶解を促進する活性型リガンドを認識する。活性型KIRの遺伝には、大きいばらつきがあり、どの個体にも0~7個のaKIRがあり得る。幹細胞移植を受けた患者からのデータが示すところによれば、活性型KIRが多いドナーからの同種移植片の提供を受けた患者は、活性型KIRが少ないドナーからの同種移植片の提供を受けた患者と比べてアウトカムが良好である。他にも、活性型KIRをより多く受け継ぐ個体において、白血病に対する予防的利益が示されている。本発明者らの研究室では、活性型KIR数が多いNK細胞ほど、標的細胞の溶解を強力に誘導することを示した(
図1)。加えて、多変量解析では、活性型KIR 2DS1及び3DS1は無病生存期間と関連している。
【0192】
最後に、NKG2Cは、NK細胞発生の後期に発現する活性型受容体であり、HLA-B又は-CよりむしろHLA-Eを認識する。NKG2C発現は、CMV感染症患者で誘導され、適応性のNK細胞表現型及び無白血病生存率の改善と相関する。
【0193】
従って、「最適な」ドナーとは、C1、C2及びBw4アレルを担持するHLA遺伝子型を有する者、C1、C2及びBw4に結合する(最大限のライセンス化につながる)抑制型KIR(2DL1、2DL2又は3及び3DL1)を保有する、且つ活性型KIRの比率が高い(2DS1及び3DS1を含む可変的に遺伝する活性型遺伝子が3つ以上の)KIR遺伝子型を有する者及びCMVに曝露されたことがあり、結果としてNKG2C高発現が生じている者である。
【0194】
白人ドナーについて利用可能なデータを考察すると、集団の32%にC1/C2/Bw4アレルが見られる。集団の80%を占める23個のKIR遺伝子型の25.3%がこれらの基準に合致する。成人の約90%が、CMVに曝露されたことがあることになる。フローサイトメトリーによる
図8に示されるとおり、全てのCMV+ドナーが、NKG2Cを発現するNK細胞を有し、これは、
図6に説明される方法600の606に記載されるなどの拡大後に増加する。mRNAレベル測定による
図9に示されるとおり、
図6に説明される方法600の606に記載されるなどの拡大後に、NKG2C発現は増加した。
【0195】
従って、16人中約1人の健常人に、「理想的な」NK細胞ドナーを同定することができる。
ドナー選択:
最大限の費用節約及び時間効率のため、ドナーは段階的アルゴリズムでスクリーニングし、基準に合致しないドナーを更なる検査から除外する。
【0196】
ドナー選択には、HLA及びKIR遺伝子タイピング、KIR表現型タイピング及びNK作製が関わる(
図5A、上)。ドナーをKIRタイピングすることにより、KIR遺伝子の存在(灰色)又は非存在(黒色)を評価し得る(
図5A、下)。一例では、PBMC及びドナー対応NK細胞をフローサイトメトリーによって分析し、NK細胞上のKIR発現を決定した。2DL2/3、2DL1及び3DL1の発現を、それぞれKIR特異的抗体REA147/CH-L、143211及びDX9を用いて決定した。個別のドナーについての各KIRを発現するNK細胞の割合を決定した(
図5B)。
【0197】
NK細胞ドナーについて、逆配列特異的オリゴヌクレオチド(SSO)方法論(例えば、ワンラムダ(One Lambda))でKIR遺伝子タイピングを実施すると、KIR2DL4の機能変異体と欠失変異体との区別が可能となり得る。KIR-B含量は、EMBL-EBIが管理するBコンテントカリキュレータ(B Content Calculator)(www.ebi.ac.uk/ipd/kir/donor_b_content.html)を使用して決定することができる。活性型KIR含量は、活性型KIR遺伝子の総数を評点化することによって決定することになる。DS指定KIR及び機能性KIR2DL4は、全て活性型と見なした。一般的な活性型KIR(KIR2DS4及び機能性バージョンのKIR2DL4)及び5個の可変的に遺伝する活性型KIRの少なくとも3個を有するドナーが選択されることになる。
【0198】
市販のキットを用いたSSO-PCR(増幅及びオリゴヌクレオチドシーケンシング)により、HLA-B及びC遺伝子座におけるアレルに関してNK細胞ドナーを高分解能レベルでHLAタイピングし得る。KIRリガンドクラスは、欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Lab)の欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EMBL-EBI)が管理するKIRリガンドカリキュレータ(KIR Ligand Calculator)(www.ebi.ac.uk/ipd/kir/ligand.html)を使用して予測することができる。3つのC1、C2及びBw4クラス全てを保有する個体を選択しなければならない。
【0199】
ドナーは、CMVに関しても検査される。検査でCMV+ドナーが出ると、NKG2C+ NK細胞の存在が確認される。
OTS NK細胞製剤の製造及びバイアル封入推定:
対象の登録前に、拡大したドナーNK細胞製剤(expanded donor NK cell product)を製造する。全てのドナーが、採取から7日以内に、標準的な感染症スクリーニング及び他のドナースクリーニング(連邦規則集第21編第1271部C項によって要求されるとおり)を受ける。FDA IND申請のCMCの節に概説される手順のとおりに供給源PBMCを採取し、NK細胞を増殖させる。簡潔に言えば、PBMCは、MACSコロイド超常磁性CD3マイクロビーズを用いてCD3+ T細胞を枯渇させる。ウシ胎仔血清及びIL-2を補足した培地中で、得られた細胞を照射フィーダ細胞及び/又は膜粒子と共培養する。7日目、培養物を再刺激する。NK細胞製剤は、14日目に、続く輸注のためのロット出荷試験及び凍結保存を行う。無菌検査は、凍結保存時点で一部が完了し、全ての検査は、製品の出荷前に終了となる。NK細胞は、108個のNK細胞/mLを含有する50mLの単回用量アリコートで凍結保存する。1単位(450mL)に相当する初回ドナー採血、1.26×105個のNK細胞/mLの含量中央値及び2週間で2,800倍の拡大中央値を仮定すれば、各ドナーが、31個の単位用量バッグに十分なNK細胞を作成する。CD3枯渇後に中央値3×108個のNK細胞を含有する初回ドナーアフェレーシスを仮定すれば、各ドナーは平均168個の単位用量バッグを作成することが可能であり得る。1個のバッグが、50kgの個体に対する108個のNK細胞/kgの1用量に十分である。成人患者については、108個/kgの用量に対し、1用量当たり患者1人につき最大2~3個のバッグが必要であり得る。凍結用培地が10%のDMSOを含有すると仮定すれば、108個/kg用量について投与されるDMSOは、0.1ml/kgとなり得る。
【0200】
実施例2:再発/難治性急性骨髄性白血病の寛解導入のためのIL-21拡大ナチュラルキラー細胞の安全性及び実行可能性を試験する第I/II相臨床試験
1.0 バックグラウンド及び理論的根拠
1.1 再発AML及び造血幹細胞移植(HSCT)
造血幹細胞移植(HSCT)は、AMLに対する有効な治療である。HSCTでは、初回寛解期に移植された患者の長期無病生存率が約60%である。再発後、患者がHSCT時点で寛解期にあった場合、この率は、約40%に下がる。再発AMLを有する、HSCTを受けていない患者の長期無病生存率は5~10%である。多くの再発患者が、難治性化学療法抵抗性疾患を有し、治癒の可能性のあるHSCTに適格となる寛解を得ることは二度とないか、又はその疾患の長期にわたる集中的な再寛解導入の間に重大な合併する共存症を発症する。従って、再発患者において移植前に寛解を達成するための改良された戦略が、こうした患者の生存率の改善に決定的に重要である。
【0201】
1.2 AMLに対する再寛解導入化学療法
再発AMLにおける再寛解導入化学療法は、寛解率に大きいばらつきが生じ、これは一部には、この集団の不均一性が理由である。過去20年間にわたる31件の試験のメタレビューから、優れたレジメンが1つもないことが明らかになった。ある研究では、高リスク患者(初回完全寛解(CR1)が1年未満であった者)の平均第二完全寛解(CR2)率は27.6%±15.5(加重平均値±SD)であり、一方、低リスク患者(CR1が1年以上の患者)については、CR2率は56.1%±25.9であった。別の研究では、高リスク疾患(原発性難治性疾患又はCR1が6ヵ月未満)を有する患者は僅か10%のCR2率であったのに対し、低リスク疾患を有する患者は(CR1が18ヵ月以上)については50%を超えており、予後良好の核型を有する患者は、予後不良の核型を有する患者よりも高い頻度で第二又は第三寛解を達成する。
【0202】
AMLの治療のための一次及び救援レジメンにおける統合薬剤としての高用量シトシンアラビノシド(シタラビン、Ara-C)の重要性は、十分に確立されている。フルダラビンは、リンパ球輸注前に患者のリンパ球を枯渇させるために広く使用されており、通常、アントラサイクリンと共に又はそれ無しでシタラビンと組み合わせるフルダラビン含有レジメンが、原発性難治性又は再発AMLの再寛解導入に用いられている。フルダラビンは、AML芽球において、シタラビンの活性代謝産物であるAra-CTPの細胞内蓄積の増加を増強することが実証された。これが、AMLに対する高活性FLAG(フルダラビン、シタラビン、G-CSF)レジメンの開発につながった。
【0203】
FLAG化学療法は、当初から記載されていたとおり、60歳を超える患者で過剰な毒性を呈したが、この年齢群に対する臨床試験では、フルダラビン及びシタラビンを5日から4日に減量すると、安全に送達されている。
【0204】
1.3 AMLの治療におけるコロニー刺激因子の使用
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、高用量化学療法後の好中球回復を亢進させる。AMLに対する寛解導入療法の間にG-CSFを使用すると、優れた無イベント生存率が得られる。加えて、これらは、Ara-CTPの蓄積の増大によってシタラビンに対する骨髄性白血病幹細胞の感度を高め、従ってFLAGなどの併用化学療法の抗白血病効果を増大させるために用いられている。更に、GM-CSFは、インビトロ及び自家移植セッティングで、AML芽球に対するNK細胞の活性を亢進させることが示されている。
【0205】
1.4 抗腫瘍療法のメディエータとしてのヒトNK細胞
ヒトNK細胞は、典型的にはCD56又はCD16の発現及びT細胞受容体CD3の欠如によって定義される一部の末梢血リンパ球である。幾つもの研究が、NK細胞に腫瘍監視の役割があることを示唆している。NK溶解を受け易い細胞株は、「NK感受性」標的と呼ばれている。プロトタイプのNK感受性標的は、白血病細胞株K562である。サイトカイン、詳細にはIL-2によってNK細胞が活性化すると、通常、NK溶解に感受性を有しない腫瘍標的(NK抵抗性標的)を溶解させる能力がNK細胞に備わるようになる。
【0206】
NK細胞は、KIR受容体-リガンド相互作用によって調節され、特定のHLAクラスI不適合標的に対して細胞毒性を示す。SCTセッティングにおけるアロ反応性HLAハプロタイプ一致NK細胞が生着を亢進させ、GvHDを低減し、且つ白血病の再発を防ぐことが報告されている。AML患者における造血細胞移植を伴わないヒトハプロタイプ一致NK細胞の輸注が研究されている。この細胞は、細胞減少化学療法後に、リンパ球減少を誘導し、輸注後のNK細胞の恒常的拡大を支援するために投与された。NK細胞は、CD56+細胞の二次ポジティブ選択を伴う又は伴わない、ドナーの白血球アフェレーシスと、続くCD3+ T細胞の枯渇によって入手し、次にそれをIL-2によって一晩活性化させた。
【0207】
最大2×107個のNK細胞/kgの輸注が良好に忍容され、15例中5例の難治性AML患者に寛解が生じた。移植片対宿主病及び遷延性汎血球減少は起こらなかった。ドナー細胞は最長4週間まで検出可能であった。
【0208】
先行試験における自家NK細胞による抗腫瘍効果の不良は、腫瘍の抵抗性の性質、腫瘍によって放出される因子及びキラー免疫グロブリン受容体(KIR)を含め、幾つかの要因が理由であり得る。移植片対宿主病(GvHD)及び移植片対腫瘍(GVT)を媒介するエフェクターについては、なおも不確かながら、一部のマウスモデルにおいて、インビボでのGVT活性がインビトロでのNK活性と強く相関することが示唆されている。A20白血病細胞株に対する同種移植モデルを用いると、同種異系NK輸注には白血病再発を防ぐ作用があり、白血球生着に対して有害な効果はなかった。インビトロ細胞毒性アッセイでは、同系又は自家NK細胞と比較したときの、同種異系IL2活性化NK細胞の優れた溶解能が示されている。NK細胞の輸注なく同系又は自家リンパ球枯渇輸注液を移植したところ、無病生存期間率は10及び15%であった。しかしながら、IL2活性化した同系NK細胞の養子移入は、生存率を50%にまで改善した。対照的に、同種異系NK細胞で処理すると、一層強力でさえある抗腫瘍効果が得られ、動物の85%が無疾患生存であった。クラスI誘導性のNK細胞溶解阻害が抗腫瘍療法において重要であるという仮説は、同種異系NK細胞が自家NK細胞よりも高いインビボ抗腫瘍活性を呈することを示すこれらのインビボマウス実験によって強く裏付けられる。
【0209】
1.5 KIR不適合(mismatched)ドナー及びレシピエントの選択
[0001]NK細胞は、HLAクラスI関連KIRを通して自家標的上の「自己」を認識する。この過程は、標的のNK細胞溶解を抑制する。4つの抑制型KIR遺伝子が、NKアロ反応性に関連性があることが分かっており、HLA特異性が公知である:2DL1はHLA-Cグループ2アレルに結合し、2DL2及び2DL3はHLA-Cグループ1アレルに結合し、及び3DL1はHLA-B Bw4アレルに結合する。存在するKIR遺伝子毎のリガンド欠損モデルによれば、対応するリガンドが患者に存在せず、ドナーに存在する場合に限り、アロ反応性があることになる。以下、白人ドナーの例示的なデータを表3に示し、これは、ドナーGVLアロ反応性についてのHLA Bw及びCグループ遺伝子座並びにKIR発現の分析をまとめたものである。集団の32%にC1/C2/Bw4アレルが見られる。集団の80%を占める23個のKIR遺伝子型の25.3%がこれらの基準に合致する。成人の約90%が、CMVに曝露されたことがあることになる。従って、16人中約1人の健常人に、「理想的な」NK細胞ドナーを同定することができる。
【0210】
【0211】
指示される組み合わせで、アロ反応性がGVL方向に起こるものと思われる。本研究では、このモデルを使用して、GVL方向におけるKIR反応性の可能性が最も高いドナーを選択する。C1、C2及びBw4 HLAを有するドナーが最大限の不適合を有すると、最も多いレシピエントにGvLが提供される。
【0212】
1.7 NK細胞のエキソビボ拡大
養子NK細胞免疫療法にとっての大きい障害は、十分な細胞数の入手であり、これは、これらの細胞が末梢白血球のごく一部に相当し、エキソビボでの増殖が不良であり、且つインビボでの寿命が限られていることに伴うものである。共通γ鎖サイトカインは、NK細胞の活性化、成熟及び増殖において重要である。他にも、可溶性サイトカイン、人工抗原提示細胞(aAPC)及び共刺激分子並びに/又は膜結合型IL-15(mIL-15)で改変したaAPCによるエキソビボ拡大の改良が記載されている。本発明者らのグループは、膜結合型IL-21融合タンパク質(mIL21)を作成し、mIL21並びに共刺激分子CD86及びCD137Lを発現するように遺伝子修飾されたK562 aAPCで刺激したとき、NK細胞のエキソビボ拡大が優れていることを見出した。新鮮に単離した末梢血単核球(PBMC)を照射K562 aAPCと2:1(aAPC:PBMC)の比で50IU/mlのrhIL-2の存在下において共培養し、次に7日毎に1:1の比のaAPCで再刺激する。
【0213】
K562-mIL21 aAPCは、21日目までに37,200倍の平均NK細胞拡大を促進するがこと可能であり、85%のドナーが少なくとも5,000倍の拡大を達成した(実施例1も参照されたい)。拡大された細胞(Expanded cells)は、極めて高いCD16レベル、NCRレベルを発現し、拡大前のKIRレパートリを保持していた。これらの細胞は、腫瘍標的に対する高い細胞毒性及びADCC関与を示した。
【0214】
従って、mIL21を発現するaAPCを用いると、少量の末梢血試料からの臨床的に有意なNK細胞拡大が可能である。
1.8 臨床試験の目的
再発AMLは、生存の最適化のため同種異系HSCT前に寛解を必要とするが、化学療法の奏効率が低い疾患である。HLAハプロタイプ一致NK濃縮末梢血細胞輸注は、予後不良AML患者において安全性を示している。かかる評価の検出力はないが、この試験は、寛解率について、有望な、しかし統計的には有意でない傾向を示した。AML、特に再発AMLに対するNK細胞療法は、白血球アフェレーシスを通して達成可能なNK細胞の数が少ないことによって制限される。しかしながら、本明細書に記載されるとおり、少量の採血からエキソビボで多数のNK細胞を増殖させることができれば、ドナー白血球アフェレーシスの必要性が軽減される。
【0215】
本試験の目的は、再発/難治性AML患者におけるFLAG化学療法と併せたmIL21拡大ハプロタイプ一致NK細胞の安全性、実行可能性及び最大耐量を決定することである。
【0216】
2.0 適格性
2.1 患者組入れ基準(Pateint Inclusion Criteria)
1.再発又は原発性難治性AML患者。同種異系幹細胞移植後の再発AML患者は、ドナーリンパ球輸注を受けたことのある患者を含め、活動性GvHDがなく、且つ免疫抑制剤投与中でない場合に限り、適格である。
【0217】
2.可能な範囲で最良のKIR反応性となるように選択されるハプロタイプ一致家族末梢血ドナーを有する。
3.患者の年齢18歳以上。
【0218】
4.パフォーマンスステータス:カルノフスキー又はランスキーパフォーマンス尺度(PS)70以上。
5.腎機能:血清クレアチニン2mg/dl未満又はクレアチニンクリアランス40cc/分以上。小児患者についてはクレアチニン2mg/dl未満又は年齢の正常上限の2倍未満(いずれか少ない方)。
【0219】
6.肺機能:FEV1、FVC及びDLCOのヘモグロビン補正値が予想値の50%超。小児患者については、肺機能検査を実施できない場合(7歳未満のほとんどの小児)、室内空気でパルスオキシメトリによるパルスオキシメトリ92%以上。
【0220】
7.肝機能:総ビリルビン2mg/dl未満又は年齢のULNの2.5倍未満(ジルベール症候群を除く)及びSGPT(ALT)年齢のULNの2.5倍未満。
8.心機能:左室駆出率40%超。無制御な不整脈又は無制御な症候性心疾患がない。
【0221】
9.妊娠可能な女性における登録前2週間以内の妊娠を除外するための血清検査陰性(妊娠可能でないとは、初経前である者、閉経後1年を超えている者又は不妊手術を受けた者として定義される)。
【0222】
10.性的活動のある男性及び妊娠可能女性は、治験責任医師によって有効と見なされ、且つ医学的に許可される形態の避妊法を用いることに同意しなければならない。
11.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陰性血清。
【0223】
2.2 患者除外基準
1.本プロトコルに関する治療開始前4週間における治験中の治療。
2.スクリーニング前6ヵ月未満におけるうっ血性心不全。
【0224】
3.スクリーニング前6ヵ月未満における不安定狭心症。
4.スクリーニング前6ヵ月未満における心筋梗塞。
5.自然に消散することがないか又は適切な療法の開始後に有意な消散のエビデンスを示さない感染症として定義される無制御な感染症、但し、慢性無症候性ウイルス感染症(例えば、HPV、BKウイルス、HCV等)は除外する。
【0225】
2.3 ドナー適格性判定基準及び提供前評価
1.ドナーは16歳以上で、体重が少なくとも50kg(110ポンド)でなければならない。
【0226】
2.ドナーは、NKアロ反応性が最良となるように選択されるか(ドナーNK細胞上に存在するKIR遺伝子を有し、それについての関連性のあるHLAハプロタイプ(KIRリガンド)がレシピエントには存在せず、ドナーには存在することとして定義される)又は活性型KIR遺伝子含量を基準に選択されるHLAハプロタイプ一致血縁者でなければならない。
【0227】
3.ドナーは、治療用細胞製剤提供のための標準的な施設内適格性判定基準及びドナー認定基準を満たさなければならない。
4.妊娠可能な女性(妊娠可能でないとは、初経前、不妊手術歴又は閉経後12ヵ月超として定義される)では、血清妊娠検査(βHCG)陰性によって定義されるとおり妊娠中でない。
【0228】
5.評価:
病歴及び身体検査
臨床検査:血液学、電解質、化学
感染症スクリーニング及び血清検査
HLA及びKIRタイピング
3.0 治療計画
本研究では、初回NK細胞輸注を0日目(D0)と称し、D0前又はD0後の治療計画活動は、マイナス日数(D-)又はプラス日数(D+)で表記する。
【0229】
3.1 ドナー末梢血NK
14日間のaAPCに対するNK細胞拡大を開始するため、ドナーから1単位(約500mL)の末梢血を採取することになる。
【0230】
3.2 標準治療実践に従うFLAG治療投与
NK細胞拡大のためのドナー末梢血の採取後、治療を行う医師によって適切と見なされ次第、レシピエントがFLAG化学療法を開始し得る。G-CSFは、フルダラビン/シタラビンの初回用量の1日前に開始して毎日投与され、最下点後の好中球絶対数(ANC)が1000以上になるまで継続されることになる。G-CSFは、患者の安全性のため、医師の裁量で末梢芽球数高値が保たれ得る。フルダラビンは、30mg/m2/日で5日間投与されることになり、この用量は、実際の体重及び身長から計算した実際のBSAを基準とする。約4時間後、シタラビンが2g/m2/日で5日間投与されることになる。60歳を超える患者は、フルダラビン及びシタラビンを4日間のみ受けることによる用量修正を受けることになる。
【0231】
NK細胞輸注前2~14日間にわたる安静期間。
3.3 用量漸増スキーマによる合計6用量にわたる0~14日目のNK細胞輸注
拡大細胞についての出荷判定基準を満たし次第、フルダラビン/シタラビンの最終投与後2日以上15日以下に始まるように、NK細胞輸注を開始し得る。NK細胞は週3回、少なくとも4日間の期間にわたって(例えば、MWF(月曜日、水曜日、金曜日)、MTuTh(月曜日、火曜日、木曜日)、TuThF(火曜日、木曜日、金曜日)等)送達されることになる。NK細胞は、幹細胞移植・細胞療法部門(SCTCT Department)の治療用細胞輸注に関する標準業務手順書(SOP)に従い輸注されることになる。
【0232】
アナフィラキシー薬物療法:NK細胞輸注前に、以下の薬物療法を直ちに利用できるようにしておくこと。アナフィラキシーが起こった場合、医師(MD)に知らせ、呼び出すこと。
【0233】
エピネフリン(1:1000)0.5mL皮下投与
ジフェンヒドラミン50mg静脈内投与
アナフィラキシーの場合コルチコステロイド薬の投与前に医師(MD)と協議しなければならない。
【0234】
追加の支持的ケア措置については、MDアンダーソン癌センター(MDACC)の過敏性反応(HSR)アルゴリズムに従うこと。
前投薬:NK細胞の輸注前。ジフェンヒドラミン25mg静脈内投与。
【0235】
拡大後のNK細胞は、その活性化した表現型が原因で毒性の増加を呈し得るため、初回NK細胞投与コホートは、アフェレーシス由来のNK細胞について現在確立されている安全用量をはるかに下回ることになる。準最適用量の患者が集積することを回避するため、用量漸増スキーマに従うことになる。
【0236】
【0237】
本研究では、NK細胞の現在の安全用量まで迅速に進めることができるように、急速用量漸増法の原理を用いる。
1回又は複数回のNK輸注を受けることができるために、患者は、以下の要件を満たさなければならない:
1.直前72時間の期間中にコルチコステロイド投薬中でない。
【0238】
2.人工呼吸器による補助又は酸素補給が不要。
3.パフォーマンスステータスカルノフスキー又はランスキーが70%以上。
NK細胞用量は、総有核細胞(TNC)数及びフローサイトメトリーによるCD56+CD3-率の判定に基づくことになる。輸注される細胞製剤の最大容積は、100mlである。輸注される細胞は、NK細胞/kgレシピエント体重を基準として送達されることになる。総CD3+ T細胞は、全てのコホートについて1×105/kgレシピエント体重未満でなければならない。現在のコホートのNK細胞数を輸注すると、105個のCD3+細胞/kgレシピエント体重より多く送達されることになる場合、NK細胞輸注用量は、輸注されたCD3+細胞が1×105/kgレシピエント体重未満となる最も高いコホートの用量にまで減量されることになる。一部のドナーNK細胞拡大では、計画したNK細胞用量に達するのに十分な細胞が生じないこともある。標的NK細胞/kgレシピエント体重を送達することができない場合、そのときNK細胞輸注用量は、達成可能な最も高いコホートの用量にまで減量されることになる。統計的分析には、その患者データは、そのコホートに含められることになり、現在の用量レベルに追加の対象が登録されることになる。
【0239】
4.0 薬物情報
4.1 シトシンアラビノシド(シタラビン、Ara-C)
シタラビンは、代謝拮抗薬である。シタラビン注射薬は、溶液として市販されている。取り扱い、再構成及び投与については、施設内指針に従わなければならない。シタラビンは、心肥大、昏睡、神経毒性(用量依存性、小脳毒性は高用量シタラビン[36~48g/m2/サイクル超]の投与を受けている患者に起こり得る;発生率は、腎機能障害を有する患者では55%にまで上り得る)、人格変化、傾眠、脱毛(全頭性)、落屑、発疹(重度)、胃腸潰瘍、腹膜炎、腸管嚢腫様気腫症、高ビリルビン血症、肝膿瘍、肝損傷、壊死性大腸炎、末梢性ニューロパチ(運動及び感覚)、角膜毒性、出血性結膜炎、肺水腫、急性呼吸促迫症候群及び敗血症を引き起こし得る。
【0240】
製剤:100、500、1000又は2000mgバイアルに静脈内使用向けの溶液として
市販品
貯蔵:室温
安定性:室温で28日
投与:シタラビンは、5%デキストロース又は0.9%塩化ナトリウム中に更に希釈される。
【0241】
4.2 フルダラビン
フルダラビンは、代謝拮抗薬である。フルダラビン注射薬は、滅菌水で再構成される凍結乾燥ケーキとして市販されている。取り扱い、再構成及び投与については、施設内指針に従わなければならない。フルダラビンは、本研究で投与されるよりも高い用量では、血液数減少、免疫系の抑制、悪心嘔吐、発熱、過敏性反応、腫瘍溶解、一過性の血清トランスアミナーゼ上昇、溶血及び神経毒性を引き起こし得る。
【0242】
製剤:50mgバイアルに静脈内使用向けの白色の凍結乾燥ケーキとして市販されている。
貯蔵:室温
混合:2mL滅菌水をバイアルに入れ、25mg/mLの終濃度にする。
【0243】
安定性:静注溶液は、混合してから8時間以内に使用しなければならない。
投与:フルダラビンは、100mLの5%デキストロース又は0.9%塩化ナトリウム中に更に希釈される。
【0244】
4.3 フィルグラスチム(G-CSF;顆粒球コロニー刺激因子)
フィルグラスチムは、好中球の産生、成熟及び活性化を刺激する。フィルグラスチムは、好中球を活性化させて、その遊走及び細胞毒性の両方も増加させる。フィルグラスチムは、化学療法誘発性好中球減少症(非骨髄性悪性腫瘍、急性骨髄性白血病及び骨髄移植);重症慢性好中球減少症(SCN);末梢血前駆細胞(PBPC)採取を受けている患者において使用される。
【0245】
フィルグラスチムは、以下と関連付けられている:
アレルギー反応:初回又は後続の投与に伴い発疹、蕁麻疹、喘鳴音、呼吸困難、頻脈及び/又は低血圧症が起こっている。反応は、静脈内投与で且つ投与から30分以内により高頻度で起こる傾向がある。
【0246】
呼吸促迫症候群:成人呼吸促迫症候群のまれな症例が報告されている;患者に呼吸促迫を報告するよう指示しなければならない。
脾臓破裂:脾臓破裂のまれな症例が報告されている;患者に左上腹部痛又は肩先痛を報告するよう指示しなければならない。
【0247】
薬力学/動態学
作用の発現:24時間;3~5日でプラトーに達する
持続時間:ANCはG-CSFの中断後2日以内に50%減少する;白血球数は4~7日で正常範囲に戻る;ピーク血漿レベルは最長12時間にわたって維持することができる
吸収:皮下:100%
分布:150mL/kg;11日~20日期間での薬物蓄積のエビデンスなし
代謝:全身的に分解される
消失半減期:1.8~3.5時間。ピークに達するまでの時間、血清:皮下:2~6時間
投薬量:皮下:≦5mcg/kg/日、化学療法後24~72時間で開始し;好中球絶対数が目標に達するまで継続する。小児患者は、特別に計算された用量を受けなければならない。成人用量は、バイアルサイズ(300mcg又は480mcg)に最も近い概数を用いなければならない
自家幹細胞採取:5mcg/kg皮下、12時間毎に5日間(合計10用量)
投薬量製剤化:
注射、溶液:300mcg/mL(1mL、1.6mL)
注射、溶液[プレフィルドシリンジ]:300mcg/0.5mL
5.0 研究評価
5.1 FLAG標準治療の開始前(ベースライン):
5.1.1 病歴及び身体検査
5.1.2 分画(differential)を含むCBC
5.2 毎回NK輸注前に:
6.2.1 病歴及び身体検査
6.2.2 分画を含むCBC
6.2.3 パルスオキシメトリ
5.3 最終回輸注後:患者が好中球減少下にある間に週2回の分画を含むCBC
5.4 好中球回復後:NK輸注1回目からD+56まで、週1回の分画を含むCBC。
【0248】
5.5 疾患判定:好中球回復後及び/又は約D+28のいずれか早い方:
1.細胞診、フローサイトメトリー、MRD、キメリズム(STR又はFISH)、細胞遺伝学及びFISH(公知の腫瘍マーカについて)のための片側骨髄生検及び吸引液
2.+28日目までに回復が起こらなかった場合、そのときは好中球回復時点又は約+56日目のいずれか早い方の時点で第2の骨髄を入手することになる。
【0249】
5.6 リー博士(Dr.Lee)の研究室(MOD1.020)に送られることになる研究の副次的目的に取り組むための末梢血
1.FLAG標準治療の開始前(ベースライン)。
【0250】
2.毎回のNK輸注前及び輸注完了後2時間(±1時間)。
3.D+14(±3日)、+16(±3日)、+18(±3日)及び+21(±3日)、次に、輸注したNK細胞を高い信頼性で検出できる間は、D+56まで毎週。試料は、目標期日のD+28の±3日前及びD+28の±5日後に入手することができる。各試料につき、緑色の上蓋のヘパリンNaチューブに40mLまで(最大0.5mL/kg)抜き取り、且つ10mLまでの血清を抜き取る(1本の赤色の上蓋のチューブ)。
【0251】
6.0 有害事象
6.1 有害事象属性の評価
本研究の治療計画の研究要素は、NK細胞輸注である。FLAG化学療法及びGCSFが標準治療と考えられ、その関連する有害事象は周知である。従って、本研究の目的上、NK細胞輸注との直接的な関係が疑われる有害事象の存在下で、その事象はNK細胞輸注が原因であるとされることになる。
【0252】
FLAG化学療法によって引き起こされることが公知の事象及びその直接的な帰結並びにGvHD、感染症の治療及び支持的治療に使用される薬物に関係することが公知の事象は、NK細胞輸注に無関係との評点が付けられることになる。
【0253】
首席治験責任医師が、事象の属性の決定における最終的な判定者であることになる。
6.2 有害事象の重症度の判定
初回NK細胞輸注の開始からD+56まで、共通用語規準第4.0版(CTCAE)に従い有害事象(AE)の重症度をグレード分けすることになる。
【0254】
CTCAEの表に掲載されていない事象は、以下のとおり評点が付けられることになる:
一般的なグレード分け:
グレード1:
軽度:苦痛はあるが、日常活動に支障は見られず、予防の域を越える治療は要さない。
【0255】
グレード2:
中等度:苦痛があるため、日常活動に一部支障が見られ、治療を要する。
グレード3:
重度:第一選択治療に反応しない、通常の日常活動を妨げる苦痛がある。
【0256】
グレード4:
生命を脅かす:直ちに死亡する危険性のある苦痛。
6.3 同種異系NK細胞の輸注に関連する可能性のある予想される有害事象:
1.急性有害事象:
24時間未満持続する事象:
グレードI 悪寒
グレードI 咳
グレードI又はII 血管性浮腫
グレードI又はII 呼吸困難
グレードI又はII 低血圧
グレードI又はII 頻脈
グレードI又はII 頭痛
48時間未満持続する事象:
グレードI又はII 疲労
グレードI又はII 神経因性疼痛
グレードI又はII 嘔吐
グレードI又はII SGPTの変化
グレードI又はII 低アルブミン血症
グレードI又はII 低カルシウム血症
グレードI又はII 発熱
グレードI又はII 掻痒
グレードI 発疹
グレードI又はII リンパ球減少
グレードI又はII 好中球減少
グレードI又はII 白血球減少
グレードI又はII サイトカイン放出/急性輸注反応
2.72時間未満持続する事象:
グレードI又はII 悪心
腫瘍溶解症候群
3.初回NK細胞輸注後2~3週間経った後の血球減少
フルダラビン及びシタラビンは、2~3週間持続する一過性の骨髄抑制を引き起こすと予想される。しかしながら、同種異系NK細胞に起因する血液毒性は、更に後になって起こり得るため、従って予想される化学療法誘発性の最下点を越える血液学的回復が判定されることになる。例えば、同種異系HSCT後にドナーリンパ球輸注療法を受ける患者の10~15%が、骨髄抑制を生じる。
【0257】
血球減少の原因は、このセッティングでは、通常、宿主造血細胞のT細胞抑制にある。T細胞を枯渇させたNK細胞輸注の輸注後には、この状況はありそうにないが、NK媒介性骨髄抑制の可能性を予め否定することはできない。加えて、正常な造血の回復にかかる時間は、正常な骨髄予備能の存在に大きく依存し、何度も再発を繰り返す、重点的に治療される患者のセッティングでは、骨髄予備能はほぼ存在しない。
【0258】
4.急性移植片対宿主病
GvHDは同種異系T細胞に関連する。輸注される細胞はT細胞枯渇に供されることになるため、GvHDは予想されず、同種異系NK細胞療法を用いた先行試験でも、概して起こっていない。しかしながら、少量のT細胞が輸注され得るか、又はNK細胞が生着して、GvHD症候群を引き起こし得る。
【0259】
総合グレード2を上回るGvHが起こることは予想されない。
重篤と考えられる有害事象
1.難治性GvHD
2.入院を要する好中球減少期間中の感染症
3.不可逆的な状態をもたらす及び/又は死亡につながるNK細胞製剤に関係があると考えられる任意の予想される事象又は予想外の事象。
【0260】
FLAG化学療法に関連することが公知の予想される有害事象
フルダラビン、シタラビン及びG-CSF(FLAG)の組み合わせで起こることが公知の毒性については、既発表の第1相及び第2相試験に十分に記載されている。FLAGの開始後及びNK細胞の投与前に初めて認められる予想される毒性並びに骨髄抑制、血球減少及び感染症は、DLTを決定する目的上、NK細胞が原因とはされないことになる。
【0261】
FLAGに関連する有害事象(%グレードIII及びIV):
1.肝臓:
ALT(25%)、ビリルビン(7%)、AST(7%)、アルカリホスファターゼ(5%)。
【0262】
2.胃腸管:
ALT(25%)、粘膜炎(5%)、悪心/嘔吐(30%)、下痢(6%)、便秘(4%)。
【0263】
3.その他:
出血(5%)、発疹(5%),BUN(4%)、薬剤熱(3%)、頭痛(3%)及び視力変化(1%)。
【0264】
4.骨髄抑制及び付随する血球減少、化学療法の0日目からの回復までの時間中央値(95%CI):好中球32(27~35)日、血小板41(35~47)日。
5.血球減少期間の間、患者は感染症のリスクがある。
【0265】
有害事象データ収集
D0からD+56まで、有害事象の収集資料に、発生日及び消散日及び最高グレードが反映されることになる。間欠的な事象は、そのように表示し、消散するまで追跡しなければならない。
【0266】
事象がなおも進行中である間に患者が研究から外れる場合、別の療法が開始されない限り、それは消散するまで追跡されることになる。既存の医学的状態は、積極的治療期間中に増悪が起こった場合にのみ記録されることになる。併存事象は、個別には評点付けされないことになる。
【0267】
有害事象は、フローシートを含め、電子的(クリニック・ステーション(Clinic Station))患者診療記録にある経過ノートに基づき文書化されることになる。
このプロトコルの電子症例報告書としては、PDMS/COReが使用されることになり、及び全てのプロトコル特異的データがPDMS/COReに入力されることになる。
【0268】
併用薬物療法
このプロトコルで治療される患者には、支持的ケア治療(併用薬物療法)が必要となるであろう。これらの薬物療法は標準治療と考えられ、プロトコルへの科学的な寄与はなく、従って必要なそれらの様々な薬物療法又はその副作用に関してデータは捕捉されない。
【0269】
7.0 統計的考察
本研究の主要目的は、再発/難治性急性骨髄性白血病の治療に対するFLAG前処置レジメン後の拡大したハプロタイプ一致ドナーNK細胞製剤の安全性及び実行可能性を評価すること及び最大耐量(MTD)を定義することである。NK細胞輸注の最大耐量のエンドポイントは、本明細書に記載される。安全性及び実行可能性のエンドポイントは、NK細胞を作成し、10例中7例以上の対象において、過度の毒性限界なしに最大耐量の細胞用量で輸注できることとして定義される。副次的エンドポイントには、ハプロタイプ一致NK細胞の活性化状態及び持続性、ハプロタイプ一致NK細胞の免疫表現型及び機能、AML疾患の寛解率、このレジメンを受けている患者の移植実施可能率及び利用可能なドナーを有する患者についての移植までの時間を判定することが含まれる。
【0270】
NK細胞のサイトカイン媒介性活性化は、標準化した標的に応答したNK細胞のCD107a発現を決定するフローベースの活性化アッセイによって決定されることになる。NK細胞の機能は、標準化した標的の細胞溶解によって判定されることになる。寛解は、骨髄中の芽球が5%未満の骨髄回復として定義されることになる。臨床応答は、患者のAML芽球におけるインビボでのNK細胞拡大、サイトカインレベル、活性化マーカの発現及びNK細胞リガンドの発現と相関することになる。指示される時点で、この療法が免疫系に及ぼす効果を研究するための拡大NK細胞のインビボ活性化の実験室評価用に、追加的な研究試料が収集されることになる。毒性及び有害事象の発生がモニタされることになる。
【0271】
7.1 用量漸増(Dose Escalation)
用量制限毒性(DLT)は、以下として定義される:
1.NK細胞輸注に関係するグレード3より高い輸注アレルギー反応。
【0272】
2.治療によって1週間以内にグレード1以下に消散しないグレード3より高い急性総合GvHD
3.NK細胞輸注に関係する疑いのある、ほぼ確実に関係する又は確実に関係する、グレード3を超える予期せぬ毒性。72時間以内に消散するグレード3毒性は、DLTとは見なさないものとする。
【0273】
用量レベル1~4に相当する用量で送達されるNK細胞は、他の第I相試験において安全であることが示されているため、本発明者らは、それらの用量レベルによる急速用量漸増法を利用することになる。本発明者らは、用量レベル5~6について標準3+3デザインを使用することになる。研究の3+3部分が実行されたところで、いずれかの用量レベルにおける同時登録を、MTDの超過を宣言するのに必要な最小数の対象に制限することになる(例えば、用量レベルは2例の対象の同時登録から開始し、しかし3番目の対象の登録に至り、最初の2例の対象の少なくとも1例は、+28日目までDLTがないことが観察されなければならない。
【0274】
用量レベル1~4について、1例の患者が各用量レベル1で治療されることになる(106/kg/用量、週3回×6用量)。この患者が、急速漸増相について定義された毒性限界を超えない場合(下記の1つ目の箇条書きを参照されたい)、次の患者が次の用量レベルで治療されることになる。用量レベル1~4における任意の時点で、記載されるとおりのグレード2以上の関連毒性が観察された場合、直ちに標準3+3が開始されることになり、現在の用量レベルで追加の2例の患者が登録することになる。最初の4用量を通して3+3が開始されなかった場合、標準3+3デザインは用量レベル5(108/kg/用量)について開始される。3例の患者が治療され、毒性に関して評価されることになる。DLTが見られた患者が3例中0例であった場合、次のコホートの3例の患者が次に高い用量レベルで治療されることになる。ある用量レベルで治療された3例の患者の1例にDLTが見られた場合、更に3例の患者が同じ用量レベルで治療されることになる。これらの6例の患者の中でのDLTの発生率が6例に1例である場合、次のコホートが次に高い用量レベルで治療される。ある用量レベルで治療された6例の患者の3例以上にDLTが見られた場合、MTDを超えたと見なされる。6例の患者が既にその用量で治療済みでない限り、更に3例の患者が、上記に記載したとおりの次に低い用量で治療されることになる。MTDは、6例の患者が治療され、DLTが認められる患者が多くとも2例である研究された中で最も高い用量として定義される。6例中2例のDLTが認められる場合、その用量レベルが中止され、MTDとして宣言される。
【0275】
MTDとして定義されるコホートは、毒性及び相関データを更に評価するため、最大10例の患者に拡大され得る。拡大中、任意の時点で3分の1を超える患者にDLTが見られる場合、その拡大コホートは終了されることになる。MTD拡大コホートが過度の毒性に起因して終了される場合、次に低い用量が10例に拡大され、探索され得る。MTDで治療される全ての患者が、拡大分析及びモニタリングに含まれることになる。
【0276】
・急速漸増相では、患者の安全性を確保するため、毒性に関してよりストリンジェントな基準が利用されることになる。NK細胞製剤輸注の開始から21日以内の任意の1例の患者による、グレード2の発熱、悪寒/さむけ、疲労、嘔吐/悪心、掻痒/かゆみ、電解質不均衡、低アルブミン血症及びリンパ球減少を除く、NK細胞製剤関連グレード2毒性の発生:現在及び後続(ある場合)のコホートを拡大して最大3例の患者を含める。
【0277】
・MTDが用量レベル6によっても確立されない場合、この用量レベルが10例の患者に拡大され、拡大NK細胞の安全性及びそれによる抗腫瘍治療反応性が更に評価されることになる。
【0278】
・コホート拡大中の任意の時点で中止規則が適用された場合、その拡大コホートへの患者登録は保留されることになる。
・コホート中の最後の患者が治療を完了した後、臨床及び安全性データが分析されることになり、用量漸増は、上記に定義した用量漸増規則に従うことになる。
【0279】
・MTD-最大耐量は、6患者コホート中、治療時にDLTが見られる患者が2例以下である最も高い用量レベルとして定義される。6例中2例のDLTが認められた場合、その用量レベルを中止し、MTDとして宣言すること。
【0280】
7.2 試験サイズの妥当性
本試験の用量漸増相では、各コホートにつき最大6例の患者を登録し得る。NK細胞の最大耐量の決定後、本発明者らは、MTDレベル又は最も高い用量レベルのNK細胞輸注が成功した研究参加中の対象が10例になるまで、対象を登録することになる。本発明者らは、これらの患者を2年かけて集積する見込みである。NK細胞輸注を受けるための判定基準を満たさない患者は、実行可能性の主要目的の決定に含めないことになる。予定された用量レベルのNK細胞輸注を受けなかった各登録患者に対し、追加の患者が登録されることになる。本発明者らは、FLAGレジメンの毒性が理由で、最大6例の患者がMTD又は最も高い用量レベルのNK細胞を受けることができないことがあり得ると予想する。従って、本試験は、17例という少ない対象で用量レベル6を完了することもあるか、又は最大46例の対象を登録することもある。
【0281】
本研究の副次的目標は、NK細胞の輸注後56日目における完全寛解(CR)の判定であることになる。有効性について、本発明者らは、患者リスクを基準としてアウトカムを判定することになる。複数のレジメンにわたる再発AMLの先例の寛解率は、低リスク患者について56.1%、高リスク患者について27.6%である。
【0282】
7.3 研究中止規則
・米国国立癌研究所有害事象共通用語規準(NCI CTC AE)第4.0版の判定基準に従い有害事象が定義されることになる。
【0283】
・心肺系、肝臓系(アルブミンを除く)、神経系又は腎臓系が関わる、輸注されたNK細胞製剤が原因である疑いのある、それがほぼ確実に原因である又はそれが確実に原因であるグレード4を超える有害事象又は重度の(グレード4を超える)感染症が3例以上の対象に見られる場合、安全性判定基準及び/又は同意書を修正する必要が生じる可能性があるかを見直すため、本発明者らは本試験への新規患者登録を一時的に締め切ることになる。
【0284】
・輸注されたNK細胞が原因である疑いのある、それがほぼ確実に原因である又はそれが確実に原因である何らかの死亡がNK細胞輸注から30日以内に研究参加者に起こった場合、本発明者らは、安全性判定基準及び/又は同意書を修正する必要が生じる可能性があるかを見直すため、本試験への新規患者登録を一時的に締め切ることになる。NK細胞輸注後30日を超えて死亡が起こるときは、その死亡の原因が確実にNK細胞療法である場合に限り、研究が一時的に停止され、見直される。
【0285】
7.4 副次的試験エンドポイントの分析
7.4.1 インビボでのNK細胞数値的拡大の分析:
療法前、NK細胞治療期間中及びNK細胞治療後に、末梢血を入手することになる。本研究は、フローサイトメトリー解析及び選別並びに分子的研究を含み得る。ドナーNK細胞拡大は、輸注後レベルを上回って増加する循環ドナー由来NK細胞絶対数として定義されることになる。以下のキメリズム法を用いて循環NK細胞の起源及び数を決定することになる:
7.4.2 キメリズム研究:
・キメリズムは、ハプロタイプ特異的抗体を用いたフローサイトメトリーによって決定され得る。
【0286】
・キメリズムは、STR多型によって決定され得る。
・ドナーとレシピエントとの間に性別不適合があるとき、性染色体頻度の決定に基づくアッセイが用いられ得る。検査は、首席治験責任医師又は被指名人によって変更され得る。
【0287】
7.5 臨床アウトカム
本発明者らは、記述統計学を用いて、本研究の患者の人口統計学的及び臨床的特徴を要約することになる。本発明者らは、カプラン・マイヤー推定量で完全寛解率(CR)及び移植までの時間(TTT)を推定し、95%信頼区間と共に表にすることになる。本発明者らは、CR及びTTPを95%信頼区間と共に推定することになる。本発明者らは、インビボNK細胞拡大が成功した患者の比率を95%信頼区間と共に推定することになる。本発明者らは、Cox比例ハザード回帰を用いて、NK細胞用量の関数としてのCR及びTTTをモデル化することになる。
【0288】
7.6 集積率推定
本発明者らは、最低でも1年に15例の適格患者が登録されると見込んでいる。このプロトコルは、完了までに3年かかり得る。
【0289】
8.0 研究の判定基準
8.1 回復:持続的ANCが1000/uL以上になった初日として定義される。
8.2 長期好中球減少(Prolonged Neutropenia):NK細胞の輸注後28日以内に回復に達しなかったこと。
【0290】
8.3 疾患の進行:骨髄及び/又は末梢血検査による遷延性又は進行性の基礎疾患の検出。
8.4 研究離脱:
8.4.1 製剤汚染又は細胞用量の不足が原因でNK細胞製剤を輸注できない。
【0291】
8.4.2 更なる治療を要する生着不全。
8.4.3 更なる治療を要する疾患進行。
8.4.4 患者が治療に反応し、次に他の療法(例えば、幹細胞移植)を始める。
【0292】
8.4.5 予期せぬパターンの毒性。
8.4.6 患者によるインフォームドコンセントの撤回。
8.4.7 患者が治療スキーマにノンコンプライアンスである。
【0293】
8.4.8 治療完了後、D+56。
実施例3:万能ドナー由来のPBMCから拡大したナチュラルキラー細胞の細胞毒性
NK細胞は、
図3に記載する方法によって同定される万能ドナーから入手したPBMCからの拡大によって調製される。拡大は、膜結合型IL-21を持つ照射フィーダ細胞、IL-21を保持している細胞膜粒子又はIL-21を保持しているエキソソームの形態の膜結合型IL-21の存在下で実施される。PBMCは、初めにバフィーコートから単離し、10%FBSを補足した細胞培地で成長させて、5%CO2の加湿雰囲気中37℃で維持する。培養5日目以降、隔日で、100UのIL-2を補足した新鮮培地に培地の半分を入れ替えることにより、培地を交換する。細胞を隔日でカウントし、7日目以降は培養内容物を定期的に確認する。NK細胞は、少なくとも7~14日間にわたって拡大する。以下のとおり細胞毒性アッセイを実施する:緑色蛍光タンパク質(GFP)をトランスフェクトした卵巣癌由来の標的細胞株SKOV3を標的として使用して、万能ドナーPBMCから拡大したエフェクターNK細胞の抗腫瘍細胞毒性を測定する。標的細胞を単独で培養するか(対照ウェル)、又はNK細胞と5%CO2雰囲気にて37℃で45分間共培養する。次に細胞を遠心し、抗体を含有する標識緩衝液に再懸濁し、インキュベートした後、フローサイトメトリーによって分析する。細胞毒性は、各ウェルに残存する、「標的単独」対照ウェルの平均VTCと比べた生存標的細胞(GFP+/抗体-)の絶対量に基づき決定される。
【0294】
細胞毒性E:T(%)=(VTCE:T/平均VTCT対照)×100
万能ドナーから入手されるPBMCから拡大したNK細胞の細胞毒性は、本明細書に提供される万能ドナーの判定基準を満たさない対照ドナーから入手されるPBMCから拡大したNK細胞と比べると、SKOV3細胞に対する細胞毒性の増加を呈することが分かる。
【0295】
実施例4:万能ドナー由来のPBMCから拡大したNK細胞を用いる治療
少なくとも15例のAML患者を実施例2に記載されるとおり選択し、万能ドナーに由来する、且つ実施例3に従い拡大したNK細胞を使用して、実施例2(第3節)に詳述する臨床試験プロトコルに従い約3年間にわたって治療する。療法前、NK細胞治療期間中及びNK細胞治療後に、各患者から末梢血を入手する。治療中、フローサイトメトリー解析及び選別並びに分子的研究を実施する。完全寛解率(CR)及び移植までの時間(TTT)をカプラン・マイヤー推定量で決定し、95%信頼区間と共に表にする。CR及びTTPを95%信頼区間と共に決定する。インビボNK細胞拡大が成功した患者の比率を95%信頼区間と共に決定する。Cox比例ハザード回帰を用いて、NK細胞用量の関数としてのCR及びTTTをモデル化する。回復は、持続的ANCが1000/uL以上になった初日として定義される。長期好中球減少は、NK細胞の輸注後28日以内に回復に達しなかったこととして定義される。疾患の進行は、骨髄及び/又は末梢血検査によって遷延性又は進行性の基礎疾患が検出されると決定される。AML患者の大多数が良好なアウトカムを示す。
【国際調査報告】