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特表2022-548877慢性気管支炎を治療する装置、方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】慢性気管支炎を治療する装置、方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20221115BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20221115BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20221115BHJP
【FI】
A61B17/3205
A61B17/32 510
A61M25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516430
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020050660
(87)【国際公開番号】W WO2021051051
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,200
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522099629
【氏名又は名称】フリー フロー メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FREE FLOW MEDICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】マティス、マーク エル.
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160FF23
4C160MM08
4C267AA09
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB27
4C267BB37
4C267BB42
4C267CC21
4C267EE01
4C267GG50
4C267HH08
(57)【要約】
システムおよび方法は、患者の肺気道壁を研削して、肺気道壁の粘液分泌を減少させることを含む。例示的な手法は、気道壁全体よりも小さい範囲を破壊しながら、例えば杯細胞を除去することによって粘液分泌組織に損傷を与えるように、気道壁に接触させた研削材を回転振動および/または線形振動させることを含む。研削材は、気管支鏡を介して患者の治療部位に送達できる拡張可能なバルーン本体または別の拡張可能な器具の表面に位置している。いくつかの例では、研削手法は、制御された組織深さまたは所定の組織深さで細胞の損傷または細胞死を引き起こすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織治療装置であって、
長尺状部材と、
前記長尺状部材に配置された研削特徴部と、
前記長尺状部材と連動する制御機構と、を備え、
前記制御機構は、患者の内腔壁に沿って組織を研削するように、前記研削特徴部に振動運動を発生させるように構成される、組織治療装置。
【請求項2】
前記振動運動は、回転振動運動を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記振動運動は、線形振動運動を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記振動運動は、回転振動運動および線形振動運動を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、制御された深さに組織を研削するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御された深さは、約20ミクロンである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、前記組織を前記研削特徴部に向かって引き寄せるように機能する真空機構をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記真空機構は、前記患者の内腔から研削された組織を除去するように機能する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記研削特徴部は、研削メッシュ、研削形状特徴部または研削媒体を有し、該研削媒体は、アルミナ、カーバイド、砂、石英、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、炭素、ダイヤモンド、酸化物、炭化ケイ素、ポリマー、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、共溶融アルミナジルコニア、ガーネット、フリント、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化タングステン、コバルト、ガラス状多糖類、焼結ゾルゲル、スチレンアクリロニトリル共重合体、アルミナジルコニア、ガーネット、エメリーおよびクロム(III)からなる群から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記研削媒体の粒度は、平均粒径で約2ミクロンから平均粒径で3000ミクロンの範囲内である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記長尺状部材は拡張可能な機構を有し、前記研削特徴部は前記拡張可能な機構上に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
患者の内腔の壁を治療する方法であって、
治療装置の長尺状部材であって、研削特徴部を有する長尺状部材を前記患者の内腔内に導入することと、
前記患者の内腔の壁に沿って組織を研削するように、前記研削特徴部に振動運動を発生させることと、を含む方法。
【請求項13】
前記振動運動は、回転振動運動を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記振動運動は、線形振動運動を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記振動運動は、回転振動運動および線形振動運動を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記研削する工程は、制御された深さに前記組織を研削することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記制御された深さは、約20ミクロンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
真空機構を使用して前記組織を前記研削特徴部に向かって引き寄せることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記真空機構を使用して前記内腔から研削された組織を除去することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記研削特徴部は、研削メッシュ、研削形状特徴部または研削媒体を有し、該研削媒体は、アルミナ、カーバイド、砂、石英、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、炭素、ダイヤモンド、酸化物、炭化ケイ素、ポリマー、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、共溶融アルミナジルコニア、ガーネット、フリント、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化タングステン、コバルト、ガラス状多糖類、焼結ゾルゲル、スチレンアクリロニトリル共重合体、アルミナジルコニア、ガーネット、エメリーおよびクロム(III)からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記研削媒体の粒度は、平均粒径で約2ミクロンから平均粒径で3000ミクロンの範囲内である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記長尺状部材は拡張可能な機構を有し、前記研削特徴部は前記拡張可能な機構上に配置され、前記方法は、前記拡張可能な機構を拡張させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性気管支炎を治療する装置、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
肺の気道は様々な層からなり、各層が1つまたは複数の種類の細胞を有している。気道壁の最も内側の細胞層は、多列円柱上皮細胞PCEC、杯細胞および基底細胞を含む上皮または上皮層である。杯細胞は粘液の分泌に関与し、気道の内壁は粘液によって全体が覆われている。多列円柱上皮細胞は、この粘液の覆いの中に延びる繊毛を有している。上皮に付着している繊毛は、鼻と口に向かって動き、粘液を排出させるために気道の上方に押し上げる。
【0003】
基底細胞は基底膜に付着しており、基底膜の下には粘膜下層または固有層が存在する。固有層には、平滑筋等の様々な種類の細胞や組織が含まれる。平滑筋は、気管支の収縮および拡張に関与している。固有層LPには粘膜下腺も含まれる。粘膜下腺は、病原体や異物に対する炎症反応の多くに関与している。さらに、神経も存在している。迷走神経の神経枝は、気道壁の外側に位置しているか、または、気道壁の中に延びて、粘液腺、気道平滑筋、結合組織ならびに線維芽細胞、リンパ球およびマスト細胞等の様々な種類の細胞に神経を分布している。最後に、固有層の下には軟骨層が位置している。多列円柱上皮細胞と杯細胞とは、密着結合および接着結合によって互いに結合されている。多列円柱上皮細胞および杯細胞は、デスモソームによって基底細胞に結合されている。基底細胞は、ヘミデスモソームによって基底膜に結合されている。
【0004】
肺障害
慢性気管支炎は、持続性の気流閉塞、慢性咳嗽および痰の分泌が1年に3カ月以上、2年連続で発生することを特徴とする。気道の炎症は、上皮層の肥厚と一致して発生する。
【0005】
様々な肺障害および肺疾患によって肺閉塞が引き起こされる。これらの障害および疾患のいくつかを以下に簡単に説明する。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコの煙または他の汚染物質等の有害な環境刺激に起因する、慢性かつ非可逆性の気流閉塞および持続性の炎症を特徴とする一般的な疾患である。COPDには、主に気道に影響を与える慢性気管支炎を伴う様々な疾患が含まれる。一方、肺気腫は、ガス交換を行う空気嚢である肺胞を冒す。両方の特徴が現れる人もいる。
【0006】
慢性気管支炎では、気道の構造および機能が変化する。慢性気管支炎では、吸い込まれたタバコの煙や汚染物質等の有害な刺激が気道によって異物として認識され、炎症カスケードが引き起こされる。長期にわたって刺激にさらされた人の気道には、好中球、リンパ球、マクロファージ、サイトカインおよびその他の炎症マーカーが見られ、慢性炎症および気道の組織修復が発生する。杯細胞には、細胞数が増加する過形成や、杯細胞のサイズが大きくなる肥大化が発生する場合がある。概して、杯細胞は、炎症性刺激に対する反応として、吸引された毒素を除去するためにより多くの粘液を分泌する。過剰な粘液によって気道の内腔がさらに狭くなり、閉塞が発生しやすくなる。有害な刺激は繊毛を損傷させるため、過剰な粘液が気道の内腔に残り、吸気時の基端側から先端側への気流と、呼気時の先端側から基端側への気流とを妨げる。平滑筋は肥大して厚くなり、気管支収縮を引き起こす場合がある。粘膜下腺にも過形成および肥大化が起こり、気道壁の全体的な厚さを増加させる場合がある。この場合、内腔の直径がさらに収縮する。
【0007】
気道の内腔径の減少に加えて、粘液分泌過多によって、増悪や一般的な健康状態の悪化がもたらされるおそれがある。過剰な粘液および繊毛の損傷の結果として、細菌等の病原体(例えば、インフルエンザ菌、肺炎連鎖球菌、カタラリス菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、セパシア菌、日和見グラム陰性菌、肺炎マイコプラズマ、クラミジア肺炎菌等)、ウイルス(ライノウイルス、インフルエンゼパラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス)およびその他の微生物(真菌等)が繁殖して増悪を引き起こし、一連の症状を発生させる場合がある。これらには、咳の悪化、うっ血、痰の量の増加、痰の質の変化および/または息切れが含まれる。急性増悪の治療には、経口または静脈内ステロイド、抗生物質、酸素、気道内挿管および人工呼吸器による人工呼吸が必要となる場合もある。
【0008】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、一般的な進行性の衰弱性肺疾患であり、命にかかわる場合が多い。COPD患者は、肺気腫、慢性気管支炎またはより一般的にはこれら両方の組み合わせとして診断される。COPDの症状には、持続性の咳、特に粘液が多く分泌される咳、息切れ(特に運動中)、呼吸中の喘鳴音、樽状胸変形、樽状胸変形を伴う胸部の拡張による胸部の筋肉の緊張等が挙げられる。末期には、肺からのガスの流出が疾病によって最終的に略完全に阻害されるため、緩慢かつ持続的な窒息状態により近い症状となる。このような症状は、最初は日常生活に軽度の支障をきたす程度であるが、その後は、会話や基本的な呼吸が困難になっていく場合が多い。COPDは、酸素と二酸化炭素とのガス交換を減少させ、その結果、循環上の問題、例えば血液、脳および心筋の酸素濃度の低下等が発生する。このため、精神的敏捷性に悪影響が及び、また、心臓への負担の増加によって心拍が非常に速くなる。
【0009】
国立衛生研究所によると、COPDは米国における死因の第3位である。米国肺協会の報告によると、米国では1200万人以上の人がCOPDと診断されている。しかし、さらに約2400万人が自覚することなくこの病気に罹患している可能性もある。全世界でのCOPDの患者数は、約6500万人である。
【0010】
COPDは、α1アンチトリプシン欠損症(A1AT欠損症)と呼ばれる遺伝性疾患を患っている人が発症する可能性があり、また、大気汚染、汚染された空気、理想的でない労働環境等の環境条件下で空気を吸うことによって発症する場合もある。しかし、COPDは40歳以上で喫煙歴のある人に最も多く発症する。タバコの煙は4000種類以上の化学物質で構成されており、その多くは有毒である。喫煙者が(フィルタを介して)吸い込む煙と、燃えている端部からの煙とはどちらも有毒である。健康に有害な主な成分は、タール、ニコチン、一酸化炭素の3つである。タールは肺に沈着し、閉塞性肺疾患や肺がんをもたらす一連の変化を促進させる。ニコチンは、タバコに含まれる中毒性の成分であり、神経系を刺激して細動脈径を小さくし、アドレナリンを分泌させて心拍数や血圧を上昇させる。さらに、ニコチンは血小板の粘着性を高め、血液凝固のリスクを高める。一酸化炭素はヘモグロビンと非可逆的に結合するため、酸素が効果的に結合できなくなる。その結果、同じ量の酸素を供給するために、より大きな加圧が必要となり、心筋に負担がかかる。
【0011】
タバコの煙および副流煙は、気管を通って気管支に入る。次に、この有毒な煙は、肺胞と呼ばれる空気嚢の小さな集合体を含む細気管支に移動する。肺胞内には毛細血管が存在している。健康な人の場合、酸素は吸気時に肺胞から毛細血管および血流内に移動し、酸素を多く含んだ血液が動脈系を介して全身に行き渡る。同時に、静脈路を介して毛細血管に流れる血液から二酸化炭素が肺胞内に運ばれて、呼気とともに体外に排出される。この過程をガス交換という。健康な空気嚢は弾力性があるため、呼吸サイクルに伴って肺の容積が変化するときに、この交換を行うことができる。しかし、煙を吸引することによって、この弾力性と肺の組織そのものが最終的に破壊される。
【0012】
慢性閉塞性肺疾患(以下COPDと称する)は肺の疾患であり、気道が狭くなることによって肺に出入りする空気の流れが制限され、息切れが起こる。COPDには、慢性肺気腫および慢性気管支炎の両方が含まれ、有害な粒子またはガス、最も一般的には喫煙や汚染空気が、肺の異常な炎症反応を引き起こすことによって主に発症する。COPDの他の原因としては、石炭や金の採掘場や、カドミウムやイソシアネート等の化学物質を含む綿織物産業等において、職場の埃に対して集中的または長期的にさらされることや、溶接の煙や、喫煙者が出す有害な粒子やガスに非喫煙者がさらされること等が挙げられる。肺の損傷、肺気道(肺胞)の炎症、気管支内の通路が粘液で詰まった状態等が、気管支炎および肺気腫の症状である。
【0013】
一般的に、COPDを罹患した肺では、気管支および肺胞の拡大が観察される。肺胞は、微細なブドウのような形状をなす空気嚢の集まりであり、最も細い気管支の端部に位置している。肺胞はガス交換を行う場所であり、肺の主要な機能単位と見なされている。肺胞は、気管支の周りの毛細血管から延びる毛細血管で密に覆われており、血液は肺動脈によって毛細血管に運ばれ、肺静脈によって運び出される。吸入された空気によって肺胞が膨張すると、酸素が毛細血管内の血液に拡散して体の組織に到達する。二酸化炭素は、血液から肺に拡散して吐き出される。
【0014】
喘息
喘息は、気道過敏性を特徴とする気道の疾患である。喘息では、上皮の肥厚や、杯細胞および粘膜下腺からの過剰分泌による粘液過分泌や、平滑筋の肥厚が発生する可能性がある。本明細書に記載するように、粘液過分泌または過剰粘液は、病原体を繁殖させ、感染を引き起こすおそれがある。
【0015】
間質性肺線維症
間質性肺線維症は、慢性かつ異常な炎症を誘発する肺組織の急性損傷によって引き起こされると考えられている。炎症に反応して線維芽細胞が活性化し、肺線維症、瘢痕化および肺機能の悪化を招く。診断後5年目における患者の生存率はわずか20~30%に過ぎない。
【0016】
嚢胞性線維症
嚢胞性線維症は、遺伝的異常によってもたらされる、肺症状を伴う全身性疾患である。嚢胞性線維症膜通過伝導制御(CFTR)遺伝子の突然変異により、分泌物の粘度が高くなり、排出できなくなる。慢性炎症によって、杯細胞や粘膜下腺による気道組織修復および過分泌が起こり、気道狭窄や、完全な消散が困難な感染症の原因となる。
【0017】
気管支拡張症
気管支拡張症は、気道が拡張して、肥厚化および瘢痕化する状態を指す。一般的に、感染、気道壁を損傷させて気道の粘液除去を妨げる他の症状、またはこれらの両方によって発生する。この症状が発生すると、気道が粘液除去能力を失うため、反復性感染症に進行するおそれがある。感染するたびに損傷が増え、最終的には中程度の気流閉塞が発生する。気管支拡張症は、原発性線毛機能不全等の遺伝性疾患を原因とするが、特発性である場合もある。
【0018】
肺治療
場合にもよるが、肺障害に対する最も効果的な治療法は、生活習慣の変化、特に禁煙である。これは特にCOPDに当てはまる。しかしながら、多くの患者はタバコをやめることができないか、または禁煙を望まない。肺障害の症状を緩和する治療法としては、現在様々な治療が存在する。
【0019】
投薬
COPDは、短時間作用型β作動薬(SABA)、長時間作用型β作動薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、ステロイド、慢性抗生物質療法、ロフルミラスト等のPDE4阻害剤等の1つまたは複数の投薬によって対処することができる。SABAおよびLABAは、気道平滑筋のβ受容体に作用して気管支を拡張する。LAMAは抗コリン作用経路を介して作用し、アセチルコリンの放出を阻害して気管支を拡張する。LABAおよびLAMAは、息切れや増悪の頻度を減らし、生活の質を改善できることが実証されているが、死亡率の減少効果については確認されていない。LAMAのチオトロピウムは、肺機能の低下速度を遅らせ、増悪までの時間を長くする。吸入コルチコステロイドは炎症を直接の標的とする。吸入コルチコステロイドは、増悪を減少させる効果については実証されているが、肺機能や死亡率にはほとんど影響を及ぼさない。LABA、LAMAおよび吸入コルチコステロイド薬の組み合わせが既に開発されている。吸入酸素は、息切れを減らし、死亡率を改善することが知られているが、これらの結果は厳密な基準で示される進行した疾患のみに関するものであり、また、経鼻カニューレもしくは代替装置による長期投与を必要とする。
【0020】
COPDは、PDE4阻害薬、ステロイド、抗生物質等、1つまたは複数の経口薬で対処することもできる。ロフルミラストは経口薬であり、PDE4酵素の選択的長時間作用型阻害薬である。抗炎症作用は非常に強力であるが、忍容性が低く、下痢、体重減少、悪心、食欲減退、腹痛等の有害作用を伴う。増悪時の急性炎症の治療には、プレドニゾン等の経口ステロイドを患者に処方できる。服用の中止によって憎悪が再び起こる場合、患者は長期間に渡って経口ステロイドを継続することが知られている。経口ステロイドには様々な副作用があり、例えば、体重増加、不眠症、甲状腺機能障害、骨粗鬆症等が挙げられる。アジスロマイシンまたは抗生物質の長期投与は、COPD増悪の頻度を減らすことが確認されている。抗生物質によるこの効果は、増悪の原因となる病原体の死滅や、マクロライド系抗生物質で確認されている粘液分泌の減少等の他のメカニズムによる抗菌効果によってもたらされる。抗生物質を長期投与した場合の副作用としては、難聴や抗生物質耐性が挙げられる。
【0021】
処方された呼吸器の薬物療法を順守しない患者も多い。吸入療法は、吸気との同期に加えて深い吸気を必要とし、多くの患者、特に高齢者は実行できない。また、費用、副作用の経験またはこれらの両方を理由に、投薬を省く患者もいる。このように、上記の要因のすべてが、不適切かつ一貫性に欠ける投薬の原因となり得る。
【0022】
喘息は、成人患者の場合、軽度のものから持続性のものに至るまで、重症度の範囲が幅広い疾患である。軽度の喘息であれば、原因となる要素の回避や短時間作用型β作動薬(SABA)の服用のみで適切に対処できる。一方、持続性喘息に対する主流の治療法は、グルココルチコイドの吸入である。臨床試験の結果、吸入グルココルチコイドを定期的に服用することで、レスキュー吸入器の必要性の低減、肺機能の改善、症状の軽減、増悪の防止が達成されることが確認された。一部の患者は、ロイコトリエン変性剤またはLABAの服用を追加することによって効果を得ている。チオトロピウムは、吸入グルココルチコイド単独よりも、肺機能を改善するための別の選択肢として使用できる。特に深刻な症例では、経口コルチコステロイドを用いる一時的または長期の治療を必要とする場合がある。
【0023】
間質性肺線維症(IPF)の既知の治療法は存在しない。主流の処置法は、必要に応じた酸素補給、そして予防接種等の予防策である。ピルフェニドンは、IPFについて承認を受けた抗線維化剤であり、疾病における線維芽細胞巣、コラーゲン沈着および炎症細胞の浸潤の遅延を目的としている。臨床試験では、ピルフェニドンは肺活量(肺機能の評価基準)の減少を抑制させることが確認されており、全死因死亡率の低下が実証されている。ニンテダニブは、IPFについて承認を受けている別の薬剤であり、線維形成増殖因子(例えば、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子)の合成を媒介する複数のチロシンキナーゼに対する受容体遮断剤を介して作用する。ニンテダニブは、IPFにおける疾患の進行速度を遅らせるとされている。IPFに対する機器療法は未だ承認されていない。
【0024】
嚢胞性線維症の治療法は、胸部理学療法および酸素補給療法から、CFTR遺伝子の根本的な欠陥を標的とする治療法へと急速に進化してきた。IvacaftorはCFTR増強剤であり、イオンチャネルを介した塩化物の輸送を改善し、一部のCFTR遺伝子変異についてFDAから承認を受けている。臨床試験では、FEV1を改善し、増悪の頻度を減らすことが確認されている。さらに、粘膜繊毛および咳クリアランスが改善される。しかしながら、最も一般的なデルタF508欠失を有する患者に対して単独で用いた場合には、結果は改善されていない。他の標的療法は臨床試験段階にある。慢性抗生物質は、抗炎症効果があるとされるアジスロマイシン、緑膿菌の治療に用いられる吸入トブラマイシンを含み、一般的にCFに対して処方される。他の閉塞性疾患と同様に、CF患者には、FABAおよびFAMAを含む気管支拡張剤が有効である。気道分泌クリアランスを促進する薬剤には、粘液の粘性を低下させる吸入DNasc、気道から粘液内の水分を引き出す吸入高張食塩水、粘液糖タンパク質内のジスルフィド結合を切断する吸入N-アセチルシステインが含まれる。増悪の場合には経口ステロイドが用いられるが、ガイドラインでは吸入コルチコステロイドの長期使用は推奨されていない。
【0025】
気管支拡張症は、損傷に対する宿主応答の解剖学的兆候であり、気道内腔径の過拡張をもたらす。このため、治療は原疾患の原因に向けられる場合が多い。例えば、非結核性マイコバクテリア感染症、一次免疫不全症、アレルギー性気管支肺、アスペルギルス症等である。急性増悪の治療は、有害な細菌性病原体を抗生物質で治療することに重点を置いている。マクロライド系および非マクロライド系抗生物質は、増悪の頻度を低減することが確認されている。CFが発生していない状態での吸入抗生物質の使用は、粘液溶解剤の使用同様に不明である。気管支拡張剤は、肺活量測定で気道閉塞の徴候を示す患者に投与することもできる。
【0026】
原発性線毛機能不全(PCD)に対する処置は、毎日の胸部理学療法と呼吸器感染症の迅速な治療により、分泌物クリアランスを改善し、呼吸器感染症を軽減することを目的としている。噴霧状のDNaseおよび他の粘液溶解剤の役割は明白ではない。
【0027】
気道内の病原体を原因とする気道感染症は、上記の疾患に伴って発生する可能性があり、通常は抗生物質で治療可能である。残念ながら、本分野の薬物開発は衰退しており、現在可能な治療法は非常に限られている。問題のひとつに、患者に存在する多種多様な病原体を治療できる単一の薬剤が存在しないことがある。唾液検査を行って常在性病原体を判断することができるが、これには、サンプル汚染を避けるため、特別な技術を用いた気管支鏡検査により標本を得る必要が生じる場合もあり、他の採取方法や様式を要する場合も多い。もう一つの問題は、現在利用可能な薬剤は、病原体がこれらの療法に対する耐性を発達させている場合もあるため、必ずしも有効ではないということである。
【0028】
気管支炎は、肺に空気を届ける気管支の炎症である。気管支の内側を覆う細胞が刺激されると、通常は空気中の粒子を捕らえて排除する微細な毛(繊毛)が機能しなくなる。刺激(炎症)に関連する物質(粘液および痰)の形成も増加するため、通路が閉塞される。粘液/痰と、気管支内壁の炎症とによって気道が収縮するため、気道がより小さく、狭くなり、肺への空気の出入りが困難になる。狭窄した気道から粘液/痰を取り除くための身体の反応として、激しい咳が持続的に発生する。慢性気管支炎は、進行した状態になるまで、誤診される場合や見逃される場合が多い。
【0029】
正常な気管支と比較して、慢性気管支炎に冒された気管支の内壁は厚さが増加しているため、気道の内腔径が減少している。空気の吸引時に、空気中の刺激物によって気管支内壁が肥大化または膨張する。気管支内壁が炎症を起こすと、通常は気管支を異物から保護する細い毛(繊毛)が機能しなくなる。その結果、刺激(炎症)に対応して粘液と痰が形成され、気道の直径が減少し、通路が詰まって狭くなる。気道内腔の直径の減少によって、肺に出入りする空気の適切な流れが妨げられ、肺の自然な機能が阻害される。
【0030】
刺激が繰り返されると、肺の上皮は、粘液の量を増加させる杯細胞をより多く産出する。粘液は、肺の繊毛によって中枢気道に運ばれ、そこから咳によって吐き出される。これは、有害な粒子や汚染物質を除去するための肺の主要なメカニズムである。炎症の発生回数が多くなると、気道壁が傷つき、繊毛が再生不能となるため、肺から粘液を輸送する主な手段が失われる。粘液輸送の低減によって、粘液が気道に蓄積し、そこに細菌が集まって留まり、感染が繰り返される。感染によって咳嗽が起こり、咳嗽によってさらに気道に炎症が起こる。このサイクルが続くことによって、身体は、異物の侵入、炎症および感染症に対抗するために、気道壁に杯細胞および他の細胞を多数形成する。また、このサイクルが続くことによって、長時間の咳嗽または場合によっては連続的な咳嗽が患者に発生する。このサイクルの結果、気道壁において標準的な組織創傷治癒が起こり、杯細胞や、粘液を分泌するその他の細胞がさらに生成される組織修復が絶え間なく発生する。このため、徐々に厚くなる気道壁によって空気の流れが制限される。
【0031】
肺気腫は、肺胞の壁が崩壊または破壊されて、異常に拡大した状態を指す。肺気腫に罹患した肺は、肺胞が拡張されて、充血している。肺胞が崩壊または破壊されると、呼吸時の酸素と二酸化炭素との交換に利用できる表面積が減少し、酸素化不良(体内の酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高い状態)が起こる。また、肺自体の弾力性の低下によって気道を維持する肺内の支持構造が失われ、気道がつぶれる場合が多く、さらに気流が制限される。
【0032】
肺気腫では、肺胞の劣化または破壊によって周囲の組織が弾力性を失うため、個々の肺胞が拡張し、充血する。周囲組織が弾力性を失うことによって、異常に拡大した肺胞は、吸息/吸気時には簡単に空気で満たされるが、呼息/呼気時に肺を空にする機能が失われている。
【0033】
慢性気管支炎および肺気腫のいずれのCOPDにおいても、気道は肺の空気圧によって拡張ではなく圧縮する傾向があるため、気流は、息を吐く(呼気/呼息)時に最も減少する。COPD患者は、次の吸気が必要となる前に、完全に息を吐き終えることができない場合もある。次の呼吸の開始時には、前の呼吸の空気が肺内に少量残っている。肺の充填は容易であるが十分に空にできない状態によって、進行性の過拡張または動的過膨張が肺に発生し、呼吸機構の効率が悪くなる。酸素化機能の低下に、肺の過拡張/過膨張が加わることによって、呼吸が徐々に困難になる。
【0034】
呼吸不足を補うために、COPDの進行した患者は呼吸を速める場合があるが、その結果、呼吸困難(慢性的な息切れ)を発症するケースが多い。息切れが少ない患者は、体内の低い酸素濃度および高い二酸化炭素濃度に耐えることができるが、最終的には、頭痛、眠気、高血圧さらには心不全等を発症する。重度のCOPDは、うつ病、筋肉の喪失、体重減少、肺高血圧症、骨粗鬆症、心臓病等、肺以外の合併症を引き起こすおそれもある。
【0035】
現在、慢性気管支炎を治す治療法は存在しない。治療の多くは、症状の重症度を軽減し、さらなる損傷を防ぐことに焦点を当てている。最も一般的な種類の処置として、生活習慣の変更、投薬および酸素補給が行われる。投薬の例としては、気道を広げる気管支拡張剤、炎症や腫れ、痰の分泌を抑えるコルチコステロイド、慢性気管支炎で多く発生する咳を止める去痰剤等が挙げられる。
【0036】
肺容積減少手術(LVRS)は、重度の肺気腫を患う患者のための治療選択肢である。LVRSでは、医師は各肺から、損傷した肺または肺組織を占める機能低下したスペースの約20~35%を切除する。肺を小さくすることによって、肺の残った部分と周囲の筋肉とがより効率的に機能でき、呼吸が楽になる。
【0037】
一般的に、LVRSは、胸腔鏡下手術、胸骨切開術および開胸術等の手法によって実施される。胸腔鏡下手術は、各側部に3つの小さい切開部(約2.54cm(約1インチ))を、肋骨の間に形成する低侵襲手法である。ビデオ補助下胸部手術(VATS)器具またはビデオ内視鏡が、切開部のうちの1つを介して配置され、外科医による肺の視認を可能とする。他の切開部には特殊な手術用ステープラー/グラスパーが挿入され、肺の損傷部分を切り離し、血液や空気が漏れないように肺の残った部分を再度閉じるために使用される。切開部は、溶解可能な縫合糸で閉じられる。胸腔鏡下手術は、片方または両方の肺の処置に使用でき、肺の任意の部分の評価と切除を可能にする。また、この手法によって、肺の一部を胸腔鏡下でレーザー治療することもできる。一方、胸腔鏡下レーザー治療は、気腫性組織を肺表面のみにおいて切除できるが、両側の肺に同時に適用することはできない。
【0038】
胸骨切開または開胸手術では、胸骨を介して切開が行われ、両方の肺が露出される。この処置では、両方の肺が順番に小さくされる。胸骨をワイヤ結合してから、皮膚が閉じられる。この方法は最も侵襲的であり、胸腔鏡下手術が適切でない場合に使用される。一般的に、この手法は肺の上葉疾患にのみ適用される。
【0039】
開胸術は、外科医が胸腔鏡で肺を明瞭に見ることができない場合や、密な癒着(瘢痕組織)が存在する場合に行われることが多い。肋骨の間に12.7~30.48cm(5~12インチ)の長さの切開部が形成される。肺を露出させるために、肋骨は破壊されることなく分離される。この手法では、1つの肺のみが縮小され、筋肉と皮膚が縫合によって閉じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
COPDの外科治療の目標は、息切れの緩和、二次合併症の予防、機能状態の改善による生活の質の向上によって寿命を延ばすことであるが、COPDのLVRSは、心臓手術よりもリスクの大きい手術である。LVRSに関連するその他のリスクとしては、縫合線での肺組織から胸腔への空気漏れ、肺炎、出血、卒中、心臓発作および死亡(前述の合併症のいずれかの悪化に起因する)等が挙げられるが、これらに限定されない。LVRSには危険が伴うため、医学療法の進歩にもかかわらず、非常に多くの重度COPD患者が、生活の質の悪化と、著しく高い死亡の危険性に直面している。長年にわたり、LVRSの代替手法として、LVRSに関する問題に対処し、望ましくない組織の特定領域の選択的な破壊に焦点を当てた低侵襲的方法が多く開発されてきた。これらの方法には、凍結手術、非選択的化学的アブレーション、高周波(RF)、超音波、マイクロ波、レーザーおよび熱電気法によるアブレーションが含まれる。しかしながら、これらの開発においては、操作機構が大きく操作が困難であることや、患部への治療が制御できないこと等の問題を含む、手術関連の障害が多く発生している。これは、伝統的に使用されてきたアブレーション手法は、極端な高温または低温を利用する方法等によって細胞死を媒介する、非選択的な手法であるためである。上記のような患部の局所破壊を行う方法は、アブレーション領域に隣接する血管、神経および結合構造に非選択的な悪影響を与えることが確認されている。神経が破壊されると、アブレーション領域およびその周囲において、恒常性ならびに修復プロセスを感知および調節する身体の自然な能力が局所的に損なわれる。血管が破壊されると、破片や残骸の除去が妨げられる。その結果、修復システムが停止または制限され、免疫系要素の復帰が妨げられ、ホルモン等の物質を対象領域に運搬する正常な血液の流れが概して阻害される。損傷した領域に新しい材料または天然物質を着実に導入する作用が得られない場合、細胞物質の再配置が非効率的または不可能となるため、血管および気道内層の再構築が遅れる。このように、伝統的なアブレーション治療の後の組織の状態は、対象領域を再生させる自己修復に最適な状態ではない。
【0041】
医療器具および技術の発展によって、COPDの外科治療への関心が再び高まっている。COPDの外科治療の効果は、LVRSの効果に非常に似ているが、従来のLVRS手法に伴うリスクおよび合併症は少ない。このような近年の発展によって、治療後の再生プロセスの向上が可能となっている。上記手法のひとつが非可逆的電気穿孔法(IRE)であり、改善された組織アブレーション治療が可能な、外科分野において先駆的な手法である。IREには、アブレーション領域の温度の増加/低減を伴わずに、非熱的に細胞壊死を誘発するという顕著な利点がある。このため、高周波(RF)アブレーション、マイクロ波アブレーションさらには冷凍アブレーション等のアブレーション手法において温度変化がもたらす悪影響の一部を回避できる。IREはまた、患部を集中的かつ局所的に治療することも可能である。集中的かつ局所的な治療ができるため、肺等の繊細で複雑な器官の治療に有効である。しかしながら、この手法は、心臓に近接する肺に極めて高い電圧を加える必要がある。このため、心筋を作動させる信号の妨害や、ペースメーカーまたは患者の体内に存在する他の敏感な電子機器に対する干渉が起こるおそれがある。
【0042】
上記から明らかであるように、肺組織および気道内腔に細胞壊死を誘発するための、非熱的かつ非冷凍アブレーションであり、電磁的に励起されない装置および方法が必要とされている。また、これらの装置および方法は、容易に肺組織に送達および配置できることが望ましい。これらの装置および方法は、粘液を分泌する細胞を効率的に死滅させ、置き換えられる前の組織と比較して、粘液を分泌する細胞の数を少なくして組織を再生させるように肺組織の創傷治癒を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明の実施形態は、ERS(上皮置換術)を行うための装置および方法に関する。低侵襲手法であるERSでは、研削(abrasive)面または研削特徴部を有する装置が標的肺組織または望ましくない組織に押し付けられ、力を加えることによって組織または組織との接触点に対する相対的な運動が発生し、完全な気道壁、管、血管および神経等の標的組織の重要な構造を破壊することなく、標的組織に研削による細胞壊死を生じさせる。より詳細には、これらの装置および方法は、ERS治療によって、結合および支持のための構造や組織を残しながらも、細胞膜の欠損および細胞死を発生させ、場合によっては、肺上皮の恒常性および自己調節の崩壊をもたらす、粘液や痰を分泌する細胞の一括除去を可能とするものである。したがって、制御された局所的な領域において望ましくない組織の破壊が行われ、周囲の健康な組織や器官等は残すことができる。これらの装置および方法を使用して上皮細胞を損傷または除去させることにより、上皮は、正常かつ健康な置換組織または正常ではない瘢痕組織を含む構造によって置換、治癒または再生される。いずれにせよ、新しい組織では、粘液を分泌する細胞の数が減少している。この点は、細胞やその他の重要な周囲の器官や身体構造を完全に破壊することが知られている、光、熱アブレーション、冷凍アブレーションまたは電磁エネルギーを用いる他の装置や方法とは異なっている。
【0044】
本明細書に記載されている装置、システムおよび方法は、肺組織の治療または操作や、COPDまたはCOPDに関連する(例えば、慢性気管支炎、肺気腫)の肺疾患もしくは肺障害、喘息、間質性肺線維症、嚢胞性線維症、気管支拡張症、原発性線毛機能不全症候群(PCD)、急性気管支炎および/またはその他の肺疾患もしくは肺障害の治療に用いられる。これらの実施形態の1つまたは複数の特徴部は、1つまたは複数の別の実施形態の1つまたは複数の特徴部と組み合わせて、本開示の範囲内において新たな実施形態を構成することができる。肺組織の例としては、上皮(杯細胞、多列線毛円柱上皮細胞および基底細胞)、固有層、粘膜下層、粘膜下腺、基底膜、平滑筋、軟骨、神経、組織の近くもしくは内部に存在する病原体またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書に開示される方法、装置およびシステムは、エネルギーの送達によって肺組織を治療する。このエネルギー送達は、臨床的に有意な炎症治癒反応を引き起こすことなく標的組織を除去するために、研削器具または研削媒体を備えた面を用いて、手動による運動、線形もしくは回転パルスおよびこれらの運動の組み合わせを標的組織に付与することを特徴とする。しかしながら、他の実施形態では、ある程度の炎症治癒反応は許容される。また、処置から数日以内には、健康な新しい目標組織が再生される。他の実施形態においては、エネルギー送達および研削作用の性質によって、他の気道構造に実質的な影響や損傷を与えることなく、気道に存在する病原体が破壊等によって除去される。
【0046】
いくつかの実施形態において、選択的治療には、気道壁から特定の細胞を選択的に除去することが含まれる。いくつかの実施形態において、除去には、細胞の剥離が含まれる。例えば、細胞の剥離は、罹患した気道の内腔を削り取ることによって達成される。いくつかの実施形態では、除去には、細胞死が含まれる。例えば、細胞死は、上皮細胞の細胞壁を破壊することによって達成される。あるいは、細胞死は他のメカニズムによって発生させてもよい。同様に、除去は、研削、剥ぎ取り、損傷または他のメカニズムの組み合わせを含んでいてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、特定の細胞は上皮細胞を含むが、基底細胞を含まない。例えば、上皮細胞は、異常なまたは過形成の杯細胞を含む。あるいは、上皮細胞は、異常な多列繊毛円柱上皮細胞を含んでいる。
【0048】
いくつかの実施形態において、特定の細胞は基底膜の細胞を含み、選択的な治療は、基底膜の細胞を改変させ、基底膜の透過性を改変することを含む。いくつかの実施形態において、特定の細胞は粘膜下腺を含み、選択的な治療は、粘膜下腺の細胞死を引き起こすことを含む。いくつかの実施形態において、特定の細胞は病原体を含み、選択的な治療は、病原体の細胞死を引き起こすことを含む。いくつかの実施形態において、選択的な治療は、特定の細胞を選択的に改変して粘液分泌を変化させることを含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、細胞は、上皮細胞を含み、基底細胞を含まない。例えば、上皮細胞は、異常なまたは過形成の杯細胞を含む。あるいは、上皮細胞は、異常な多列繊毛円柱上皮細胞を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、細胞は、リンパ球、マクロファージ、好酸球、線維芽細胞、形質細胞、マスト細胞、白血球またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、細胞は粘膜下腺を含み、除去は粘膜下腺の細胞死を引き起こすことを含む。他の実施形態において、細胞は病原体を含む。
【0051】
本発明の実施形態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を患う人の生活の質の向上および寿命の延長を達成するための、新規の医療器具、使用方法、システム、患者を選択する方法、再治療が推奨されるか否かを決定する方法および患者の健康を評価するための手段を含む。より具体的には、本発明の実施形態は、上皮および粘液分泌細胞を、粘液分泌細胞の数を抑えながらこれらの組織を再生できる特定の方法によって、破壊、死滅および/または除去させるための装置および方法に関する。本明細書に記載されるこれらの装置においては、ブレード、鋭い角部、エッジ部を利用して切削、削り落とし、切断、剥ぎ取り、スライス、ミクロトームまたはその他の方法で研削を行ってもよいし、組織に対して粗面を振動させてもよいし、凹凸のある材料、剛毛、針状体、ブラシ先端または生細胞の研削破壊を引き起こす他の形状を用いてもよい。これらの装置は、患者から組織を吸引することによって、組織の再生を促進させ、肺機能を改善し、低温流体を送達させる他の処置や、熱または電磁エネルギーを送達する処置に伴う合併症を抑制することができる。
【0052】
本発明の一態様では、粘液分泌を抑制するために、動物またはヒトの肺気道壁と研削接触する療法装置が提供される。
本発明のいくつかの態様では、研削接触は、研削媒体、研削メッシュおよび/またはブレード、エッジ部、三角形、正方形もしくは円形等の研削形状特徴部によってもたらされる。
【0053】
本発明の別の態様においては、ブレード、鋭い角部、エッジ部、粗い材料、凹凸のある材料、剛毛、針状体、ブラシ先端または生細胞の研削破壊を引き起こす他の形状を利用して切削、削り落とし、切断、剥ぎ取り、スライス、ミクロトームまたはその他の方法で研削を行う装置が提供される。
【0054】
本発明の別の態様では、動物またはヒトの肺の気道内腔壁と研削接触して、粘液分泌組織または粘液分泌組織の付着点を形成する結合組織を損傷させる療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、動物またはヒトの肺の気道壁と研削接触して、気道壁全体よりも小さい範囲を破壊しながら、粘液分泌組織を損傷させる療法装置が提供される。
【0055】
本発明の別の態様では、動物またはヒトの肺の気道の内腔壁と研削接触して、気道壁全体よりも小さい範囲を破壊しながら、粘液分泌組織を損傷させる療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、動物またはヒトの肺気道内腔の内壁と研削接触して、気道壁全体よりも小さい範囲を破壊しながら、粘液分泌組織を損傷させる療法装置が提供される。
【0056】
本発明の別の態様では、動物またはヒトの肺気道内腔壁の少なくとも一部と研削接触して、治療を受けた患者に以下の変化のうちの1つまたは複数を生じさせる療法装置が提供される。
【0057】
1.患者の気管支炎によって発生する症状を軽減する。
2.治療された組織の気道壁の厚さを減らす。
3.患者の気道壁の炎症のレベルを下げる。
【0058】
4.気管支炎患者の咳嗽の頻度を減らす。
5.気管支炎患者の咳嗽の発症の頻度を減らす。
6.気管支炎患者の咳嗽の1年あたりの発症回数を減らす。
【0059】
7.気管支炎患者の痰の分泌量を減らす。
8.気管支炎患者の肺感染症の頻度を減らす。
9.患者の気道または肺において、細菌に感染した部位の数を減らす。
【0060】
10.患者の唾液中の細菌形成量を減らす。
11.患者の粘液、痰または唾液の組成を変化させる。
12.治療された肺で分泌される粘液分泌量を減らす。
【0061】
13.治療された片肺または両肺において分泌される粘液の流れ、分泌速度、量、経時的な量、性質および質量を減らす。
14.患者が分泌する粘液の水和レベルを下げる。
【0062】
15.患者が分泌する粘液の水和レベルを上げる。
16.肺に残る杯細胞の数を減らす。
17.肺で再生する杯細胞の数を減らす。
【0063】
18.治療後の30、60、180、360または540日間に肺で再生される杯細胞の数を減らす。
19.肺に残っている杯細胞の密度を下げる。
【0064】
20.気道上皮の内層の厚さを薄くする。
21.気道上皮の内層の体積を減らす。
22.上皮および/または杯細胞を健全な状態に維持する結合組織を劣化または死滅させる。
【0065】
23.気道上皮および/または杯細胞に栄養を供給する組織を劣化または死滅させる。
24.基準となる肋骨位置に対して横隔膜を持ち上げる。
25.治療の結果として、患者が呼気を維持している間に、基準となる肋骨の位置に対して横隔膜が持ち上がっていることを測定する。
【0066】
26.少なくとも1つの肺の基部を患者の胸郭上部に向けて持ち上げる。
27.咳嗽を減らす。
28.粘液の分泌を減らす。
【0067】
29.閉じ込められた空気や粘液によって引き起こされる咳嗽を減らす。
30.声門閉鎖反射性を下げる。
31.肺から粘液を取り除く患者の能力を高める。
【0068】
32.血流中の動脈血酸素濃度を上げる。
33.血流中の動脈血酸素の割合を上げる。
34.血流中の動脈COの濃度を下げる。
【0069】
35.血流中の動脈COの割合を下げる。
36.現在標準の6分間歩行試験で測定される運動性を高める。
37.患者が6分で歩くことができるメートル数を増やす。
【0070】
38.高解像度CTを用いて測定される、肺気道の内径を大きくする。
39.気道径を大きくする。
40.呼気中の肺排出量を増やす。
【0071】
41.気道内腔の直径を大きくする。
42.気道に対して径方向外向きの支持をもたらす。
43.呼気中の肺容量の減少を助ける。
【0072】
44.少なくとも1つの肺の容積を減らす。
45.肺葉の容積を減らす。
46.両方の肺の容積を減らす。
【0073】
47.肺の対の容積を減らす。
48.肺の対のTLCを減らす。
49.組織の圧縮を行う。
【0074】
50.肺葉の組織を圧縮する。
51.肺組織のたるみを取り除く。
52.肺組織の弾性収縮力を、肺拡張圧力が2~200cmH2Oである生理学的機能に戻す。
【0075】
53.肺の弾性収縮力を増やす。
54.肺コンプライアンスを低下させる。
55.患者の呼吸測定によって取得される圧力体積曲線の形状を変更する。
【0076】
56.患者の呼吸を表す圧力-体積曲線内の面積を拡大する。
57.吸気と呼気のデータを比較するCT画像の後処理画像で見られる亀裂の位置を移動させる。
【0077】
58.呼気中の気道の閉鎖を遅らせる。これは、後処理されたCT画像データを使用して、肺の類似領域の治療前と治療後の気道容積を比較して判断する。
59.肺の容積を減らす。
【0078】
60.気道抵抗を減らす。
61.患者の1つ以上の肺の容積を減らす。
62.パルス通過時間法または呼吸インダクタンス式プレチスモグラフィーによって測定される吸気努力を低減させる。
【0079】
63.CT、6分間歩行試験またはプレチスモグラフィーによって測定される動的過膨張を軽減する。
64.呼気終末肺容量を減らす。
【0080】
65.機能的な残余容量を減らす。
66.呼吸不全の発生率を減らす。
67.COPD増悪の発生間隔を長くする。
【0081】
68.呼気中に気道が開いた状態に維持される時間を長くする。
69.努力性呼気1秒量(FEV1)を増やす。
70.強制肺活量(FVC)を増やす。
【0082】
71.FEV1/FVCの比率を上げる。
72.気分変調を低減する。
73.心臓への圧力を減らす。
【0083】
74.冠状動脈への圧力を減らす。
75.高血圧を低減させる。
76.肺の過度の緊張を低減させる。
【0084】
77.心筋に血液を供給する血管の高血圧を低減させる。
78.収縮期および/または拡張期血圧を下げる。
79.心拍数を下げる。
【0085】
80.収縮期血圧を下げる。
81.心臓の駆出率を上げる。
82.肺動脈圧を下げる。
【0086】
83.肺組織密度を下げる(800から810~1000HU(ハンスフィールドユニット))。
84.肺組織密度をより均一にする(肺葉間の平均葉密度の差を1~200ハンスフィールドユニットに調整する)。
【0087】
85.呼気中の強制呼気量を増やす。
86.呼気中または呼気後に肺に残る残留量(RV)を減らす。
87.呼気中または呼気後に肺に閉じ込められているガスの量を減らす。
【0088】
88.呼気中または呼気後に肺葉に閉じ込められているガスの量を減らす。
89.安静時のTidal breathing法における安静呼気量の変化を増やす。
【0089】
90.安静時のTidal breathing法における予備吸気量を増やす。
91.患者の呼吸数を下げる。
92.患者の心拍数を下げる。
【0090】
93.患者の心臓駆出率を上げる。
94.患者の総肺活量を減らす。
95.肺コンプライアンスを低下させる。
【0091】
96.肺葉または肺組織の領域のコンプライアンスを低下させる。
97.上葉と下葉の間の肺組織コンプライアンスの均一性を高める。
98.患者の肺葉間の肺組織コンプライアンスの均一性を高める。
【0092】
99.肺葉セグメント間の肺組織コンプライアンスの均一性を高める。
100.吸気努力を減らす。
101.総肺容量(TLC)を下げる。
【0093】
102.RV/TLC比を下げる。
103.吸気中の肺葉の気道の容積を増やす。
104.呼気中の肺葉の気道の容積を増やす。
【0094】
105.呼吸中の肺葉の肺気道の容積の差を減らす。
106.治療により、患者の肺または肺葉の総血液量を増やす。
107.肺気腫患者において、正常な血液に混じる酸素濃度の低い血液の量を減らすために、損傷の程度の大きい肺組織における局所血液量を減少させる。
【0095】
108.呼吸サイクルの吸気と呼気との間の肺葉容積の変化を増やす。
109.呼気後に肺葉に閉じ込められている空気の量を減らす。
110.治療後の肺の呼気量を減らす。
【0096】
111.呼気中の1つまたは複数の肺葉の容積を増やす。
112.1つまたは複数の肺葉の先端側気道内の容積を増やす。
113.1つまたは複数の肺葉の中枢気道内の容積を増やす。
【0097】
114.1つまたは複数の肺葉の中枢気道内のインピーダンスを下げる。
115.片方または両方の肺のインピーダンスを下げる。
116.1つまたは複数の肺葉の流れに対する抵抗を減らす。
【0098】
117.片方または両方の肺の流れに対する抵抗を減らす。
118.1つまたは複数の肺葉の血管密度を上げる。
119.肺葉の体積1リットルあたりの血管の数を増やす。
【0099】
120.1つまたは複数の肺葉の気道壁の体積を増やす。
121.1つまたは複数の肺葉の中枢気道の気道壁の体積を増やす。
122.1つまたは複数の肺葉の肺体積1リットルあたりの損傷組織の割合を減らす。
【0100】
123.1つまたは複数の肺葉におけるエアロゾル移動速度を上げるために、気道が開いた状態を長くする。
124.1つまたは複数の肺葉におけるエアロゾル送達された薬剤の局所濃度を上げるために、気道が開いた状態を長くする。
【0101】
125.2mmを超えて移動した1つまたは複数の亀裂を測定することによって、肺葉の体積が変化したことが示される。
126.胸壁の肋骨に対して2mmを超えて移動した1つまたは複数の裂け目を測定することによって、肺体積が変化したことが示される。
【0102】
127.1つ以上の肺葉において、減衰の小さい肺組織の割合を減らす。
128.1つ以上の肺葉において、減衰の小さい肺組織の体積を減らす。
129.1つ以上の肺葉における、950HU以上の低密度組織の割合を減らす。
【0103】
130.1つ以上の肺葉における、950HU以上の低密度組織の体積を減らす。
本発明の別の態様では、送達システムに補助されることなく、治療位置に直接送達される療法装置が提供される。
【0104】
本発明の別の態様では、ガイドワイヤによって案内されて治療位置に送達される療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、カテーテルの管腔を介して治療位置に直接送達される療法装置が提供される。
【0105】
本発明の別の態様では、内視鏡の管腔を介して治療位置に直接送達される療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、気管支鏡の管腔を介して治療位置に直接送達される療法装置が提供される。
【0106】
本発明の別の態様では、本明細書に記載の送達システムの構成要素の任意の組み合わせを使用して、治療位置に直接送達される療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、気道の長手軸線に沿った点に対して固定位置で器具を拡張しながら治療を行う療法装置が提供される。
【0107】
本発明の別の態様では、気道の長手軸線に沿った点に対して療法装置を前進させながら治療を行う療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、肺の気道の任意の位置から気道の長手軸線に沿って気管に向かって装置を移動させながら治療を行う療法装置が提供される。
【0108】
本発明の別の態様では、気道の内腔内で療法装置を回転させながら治療を行う療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、気道の内腔内において気道長手軸線を中心に療法装置を回転させながら治療を行う療法装置が提供される。
【0109】
本発明の別の態様では、医師によって、または電磁モータもしくはトランスデューサによって気道の内腔内で駆動されて、振動状態で、気道壁に対して研削面を直線的に移動させながら治療を行う療法装置が提供される。
【0110】
本発明の別の態様では、気道内腔において周方向に振動的に研削(abrasion)を発生させるために、気道壁に対して研削面を回転方向に動かしながら治療を行う療法装置が提供される。振動は、医師または電磁モータもしくはトランスデューサによって駆動されて、安定した一定の動きを発生させ、医師またはロボットの閉ループシステムによって、気管支樹における位置および気道組織内の治療領域を制御することができる。
【0111】
本発明の別の態様では、0.1~3mm、いくつかの実施形態ではより好ましくは0.5~0.68mmの制御された深さで気道内腔壁に組織接触、研削および細胞死を引き起こす装置が提供される。いくつかの例では、制御された深さは約0.02mm、つまり約20ミクロンである。いくつかの例では、制御された深さは1ミクロン~500ミクロンである。いくつかの例では、制御された深さは10~100ミクロンである。いくつかの例では、制御された深さは10~50ミクロンである。
【0112】
本発明の別の態様では、経時的に気道内腔壁の継続的な侵食をもたらす継続的な運動を許容しない方法によって、制御された深さで組織接触、研削および細胞死を引き起こす装置が提供される。このような装置の一例としては、カテーテルの先端に固定されている大型のバルーンが挙げられる。バルーンは、気道内腔に対して拡張されて、気道内腔の内周全体に対して継続的に接触する。バルーンは、回転させたり、気道の軸線に沿って直線的に動かしたり、これら両方の運動を同時に行うことができる。運動は、本質的には振動であってもよく、振動の周波数は、1から5億ヘルツの間、およびいくつかの実施形態においてより好ましくは毎秒40から300サイクルの間である。いくつかの例では、研削特徴部が組織を捕捉することが回避または抑制され、組織に沿った研削特徴部の摺動が容易になるように、動作周波数が選択される。運動は、スピーカーモータまたは回転モータ等の電気機械式駆動機構によって動力を供給されてもよい。モータは、発電所からの交流等の電源を用いて電力を供給してもよいし、充電可能な直流電池を用いて電力を供給してもよい。研削媒体は、バルーンの外面に恒久的に装着でき、バルーンの外面から径方向外側に突出して外面から離間し、特定の粗い表面を有するように構成してもよい。突出量は0.5~0.68mmであってもよいし、突出量をより大きくして、蓄積した生体物質を除去しながらも、気道壁の深さ0.5~0.68mmまで研削するようにしてもよい。バルーンが組織に対して膨張および拡張して、運動が発生すると、研削面が組織の表面を削り取って細胞死を引き起こす。このようにして、細胞死を発生させる装置および手段が提供される。さらに、研削媒体は、バルーンの外側の一部のみが気道壁組織に対して研削接触を行うように、所定のパターンまたは面積比でバルーン外面に取り付けてもよい。面積比は、バルーンの外面の面積の0.1~99パーセントが研削媒体で被覆されるように設定される。より好ましくは、バルーン外面の2~50パーセントが研削媒体で被覆される。バルーンの外面の残りの部分は滑らかで、潤滑されていてもよい。このような構成の装置を提供することによって、バルーンの滑らかな部分は、支持または深さ制限要素として組織に配置することができ、バルーンのこの部分は、肺組織を侵食しない。研削媒体が装着されているバルーンの表面上の隣接する領域は、限られた深さのみまで組織を侵食する。これは、肺組織に対して、深さの制御された侵食を実行できる装置の例である。研削材は、周方向に連続的なストライプ状にバルーンに装着され、気道内腔または内壁の全周が研削作用を受けるように構成してもよい。装置が気道の軸線に沿って前進または後退すると、装置の移動経路に沿った全周および全長が完全に処理される。本治療の目標は、気道の上皮を完全に死滅させて粘液分泌細胞を排除し、組織修復を促進することであるため、上記のように機能することが重要である。局所的に未処置の領域が残った場合、局所的に残った粘液分泌細胞が再生および増殖する可能性があり、これが元の問題を悪化させるおそれがある。この例では、肺気道の基底構造または膜を破壊することなく、肺気道の上皮表面の長さに沿って完全な細胞死を引き起こす装置が提供される。
【0113】
本発明の別の態様では、本明細書に記載されている運動の任意の組み合わせを実行しながら治療を行う療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、拡張することによって、気道内腔壁の内周の少なくとも一部と接触し、および/または、肺内の粘液分泌を減少させるために研削および細胞死を発生させるように本明細書に記載の方法によって装置が移動する療法装置が提供される。
【0114】
本発明の別の態様では、空気圧もしくは水圧によって駆動される拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
本発明の別の態様では、ばね要素の形成に使用される材料等の材料に蓄積された弾性歪みエネルギーを利用して駆動される拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。ばね要素の形成に使用される材料は、例えば、ニチノール、鋼、鉄または非鉄金属、ポリマー、エラストマー、炭素および炭素繊維等のセラミックまたはCMC材料(セラミックマトリックス複合材料)のうちの1つまたは複数を含む。
【0115】
本発明の別の態様では、リンク機構、トルク駆動ケーブルもしくはワイヤ、プッシュロッド、プルロッドまたはテザーを用いた機械的手段によって駆動される拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0116】
本発明の別の態様では、空気圧、水圧、蓄積歪みエネルギーまたは機械的作動手段によって駆動される拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。拡張または運動の駆動または制御は、熱、圧力、力、光、電圧、電流、蓄積歪みエネルギー、摩擦、光学的に連結されたセンサもしくはアクチュエータ、電気的に作動するセンサ、圧電性結晶駆動機構等の部品を用いる駆動機構、線形もしくは回転磁気アクチュエータ、線形もしくは回転モータ、コンデンサ、インダクタ、結晶、流体、元素または元素の組み合わせによって行われる。これらの元素または元素の組み合わせは、電圧、電流、磁場、光、圧力、音、熱もしくは他の刺激に応じて変化することによって、装置を作動させて肺気道壁と接触させるか、細胞の研削破壊を行うために装置を移動させる、化学元素の周期表にある元素もしくは元素の組み合わせである。
【0117】
本発明の別の態様では、ブラシ器具の拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。ブラシ器具は、気道壁の全周にわたって接触し、表面細胞の研削、杯細胞の損傷、肺気道内壁の意図的な組織修復、および/または、慢性気管支炎およびCOPDの治療として粘液分泌を減少させる他の破壊を引き起こす。
【0118】
本発明の別の態様では、ブラシの拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。ブラシは、機械的に作動および拡張されて、肺気道の内周の複数の部位と接触する。
【0119】
本発明の別の態様では、肺組織に対して一定の圧力を維持した状態で拡張または移動するように機械的に作動されるブラシを備えた、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0120】
本発明の別の態様では、肺組織に対して一定の圧力を維持した状態で拡張または移動するように空気圧によって作動される膨張構造を備えた、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0121】
本発明の別の態様では、治療中に拡張する径が変化しても肺組織に対して一定の圧力を維持した状態で拡張または移動するように空気圧によって作動される膨張構造を備えた、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0122】
本発明の別の態様では、治療中に拡張する径が変化しても肺組織に対して一定の圧力を維持した状態で拡張または移動するように空気圧によって作動される膨張構造を備え、肺組織に対する一定の圧力を維持するためには、空気圧または圧力除去が必要とされる、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0123】
本発明の別の態様では、拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。拡張および/または運動は、空気圧または水圧によって駆動されるか、弾性歪みエネルギーを蓄積できる材料(ニチノール、鋼、金属、ポリマー、エラストマー、炭素や炭素繊維等のセラミック、CMC材料(セラミックマトリックス複合材料))を用いた弾性歪みエネルギーによって駆動される。
【0124】
本発明の別の態様では、拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。拡張および/または運動は、気道壁の少なくとも一部と接触して細胞死を発生させるために研削要素を拡張させるように回転または移動させるリンク機構、トルク駆動機構、プッシュテザー、プルテザー、光学的に連結されたセンサおよびアクチュエータ、電気作動センサもしくは駆動機構、圧電、磁気、モータ、コンデンサおよびインダクタ部品等の部品を用いて機械的に駆動される。
【0125】
本発明の別の態様では、ブラシシステムを備えた、拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。ブラシシステムは、剛毛がらせん状または千鳥状に配置され、ブラシが気道軸線に沿って長手方向に引かれたときに、気道の内周の全部分が影響を受けるように構成されている。
【0126】
本発明の別の態様では、バルーンによって駆動される拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。バルーンは、気道壁に当接するように膨張可能であり、バルーン表面の外側に装着された研削材が気道壁と接触して粘液分泌細胞を死滅させるように基端側に引かれる。研削材には、アルミナ、カーバイド、砂、石英、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、ダイヤモンド等の炭素の形態、酸化物、炭化ケイ素粒子、金属粒子、ポリマー粒子、直径2~3000μmの粒子および概して研削をもたらす生体適合性材料等の、紙やすりや工業用途に使用される研削媒体が含まれる。本発明の実施形態で使用可能な砥粒および他の研削材は、米国特許第4214877号明細書、米国特許第4828582号明細書、米国特許第4916869号明細書、米国特許第5066335号明細書、米国特許第5094672号明細書および米国特許第5367024号明細書に記載されている。これらの特許の各内容は、参照により本明細書に援用される。例示的な砥粒または他の研削材としては、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、共溶融アルミナジルコニア、ガーネット、フリント、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ガラス、炭化タングステン、コバルト、アルミナ、ガラス状多糖類、焼結ゾルゲル、スチレンアクリロニトリルコポリマー、炭化ケイ素、アルミナジルコニア、ガーネット、エメリー、酸化クロム(III)等が挙げられる。いくつかの実施形態においては、砥粒の大きさは、平均粒径で5ミクロンから平均粒径で2000ミクロンの範囲内である。
【0127】
本発明の別の態様では、蓄積歪みエネルギーの解放によって駆動される拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。この療法装置は、組織接触面に装着された研削材が気道壁と接触して粘液分泌細胞を死滅させるように気道壁に当接する。研削材には、アルミナ、カーバイド、砂、石英、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、ダイヤモンド等の炭素の形態、酸化物、炭化ケイ素粒子、金属粒子、ポリマー粒子、直径2~3000μmの粒子および概して研削をもたらす生体適合性材料等の、紙やすりや工業用途に使用される研削媒体が含まれる。
【0128】
本発明の別の態様では、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。この療法装置は、ブレード要素を拡張させるバルーンを備えている。ブレード要素は、バルーンの外側に装着されて、拡張時や、バルーンが気道の長手軸線に沿って引かれているときに、削り落とし要素として機能する。
【0129】
本発明の別の態様では、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。この療法装置はバルーンを備えており、このバルーンは、拡張して、特定の大きさの砥粒を肺組織に押し付けて、予め設定されて制御された距離にわたってのみ組織内に貫入させる。
【0130】
本発明の別の態様では、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。この療法装置はバルーンを備えており、このバルーンは、砥粒が混ぜ込まれたポリマー材、金属メッシュ材または複合メッシュ材等の研削メッシュ材を気道壁に拡張させる。
【0131】
本発明の別の態様では、気道壁に対して研削ブラシ繊維材を駆動させるように拡張するバルーンに対して拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0132】
本発明の別の態様では、バルーンを用いて拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。バルーンは、バルーンが気道の長手軸線に沿って移動するときに、気道の様々な径にバルーンが一致することを可能とする高弾性ポリマーから作製されている。
【0133】
本発明の別の態様では、バルーンの拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。バルーンは、一定量の流体またはガスを使用して拡張される。バルーンの拡張には、一定の圧力を維持する開ループシステムが使用されるか、装置が患者に治療を行っている間、体積または圧力データをフィードバックしてどちらか一方を維持する閉ループシステムが使用される。
【0134】
本発明の別の態様では、拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。この療法装置は、開いた先端と、研削材が装着された先端側突出スタイレットとを有している吸引カテーテルを備えている。この装置は、吸引によって気道が先端側スタイレットの側面に向かって引き寄せられ、装置が基端側に引かれることによって上皮を研削し、同時に患者から物質を吸出できるように構成されている。
【0135】
本発明の別の態様では、治療時に、吸引圧力、容積またはその両方を制御するために使用される閉ループまたは開ループシステムを使用して拡張および/または運動を発生させることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0136】
本発明の別の態様では、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。この療法装置は、塞がれた先端と、少なくとも1つの開いた側面ポートとを有するカテーテルを備えている。側面ポートは、カテーテルの側面の少なくとも一部分と、粘液分泌を減少させるために細胞死を発生させるように削り落としを行う研削材または研削エッジ部とに気道が接触するように気道を引っ張る吸引を伝達する。
【0137】
本発明の別の態様では、研削材が混ぜ込まれたまたは被覆された外面をカテーテルに設けることによって、肺組織と研削接触する療法装置が提供される。研削材と気道壁との接触を維持した状態で装置が肺の別の位置に移動されるときに、気道内腔の壁の一点に研削材が接触することによって細胞死が引き起こされる。
【0138】
本発明の別の態様では、研削材の混合物を含む少なくとも1つの研削面を設けることによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。研削材は、肺組織と接触する装置の表面の一部に装着されて研削効果を高める。
【0139】
本発明の別の態様では、優先される直径となるように組織が吸引され、組織に接触する研削材の貫入深さが制御できるように、様々な直径を有するカテーテルを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0140】
本発明の別の態様では、カテーテルの外径の段階的な寸法の差異を大きく設定することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。段階的な直径の差異は例えば0.2~20mmであり、より好適には、0.5~3mmである。
【0141】
本発明の別の態様では、研削面を備えたカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。研削面が組織に当接する貫入の圧力を高めるため、また、治療のスピードおよび効率を高めるために、研削面は、装置の最も径の大きい部分に位置している。
【0142】
本発明の別の態様では、研削面を備えたカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。研削面が組織に当接する貫入の圧力を低減させるため、また、治療のスピードおよび効率を制限するために、研削面は、装置の最も径の大きい部分に位置していない。
【0143】
本発明の別の態様では、研削面を備えたカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。研削面が組織に当接する貫入の深さを制限するため、また、治療のスピードおよび効率を制限するために、研削面は、装置の最も直径の大きい部分に位置していない。
【0144】
本発明の別の態様では、研削面を備えたカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。組織に対する研削面の接触は、空気吸引や真空等の低圧源を用いて達成される。
【0145】
本発明の別の態様では、カテーテル、カテーテルに固定された1つまたは複数のバルーンおよび研削面を提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。肺組織に対する研削面の接触は、空気吸引や真空等の低圧源を用いて達成される。
【0146】
本発明の別の態様では、カテーテル、低圧ガスまたは流体を伝達する導管およびポートならびにカテーテル上の選択された位置に配置された研削面を提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。空気吸引や真空等の低圧源は、カテーテルの導管およびポートを介して伝達され、肺組織を、研削面を含む選択された位置に接触させて、肺組織の細胞死を引き起こす。
【0147】
本発明の別の態様では、ブラシレス回転モータまたはリニアモータ駆動機構を使用して振動または回転するように駆動されるカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0148】
本発明の別の態様では、電気回路によって供給される電気エネルギーを使用して振動または回転するように駆動されるカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。電気回路は、取り外し可能なプラグを、装置と、装置を駆動する電気エネルギー源との間に備えている。
【0149】
本発明の別の態様では、電池を含む電気回路によって供給される電気エネルギーを使用して振動または回転するように駆動されるカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0150】
本発明の別の態様では、二次電池を含む電気回路によって供給される電気エネルギーを使用して振動または回転するように駆動されるカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置が提供される。
【0151】
本発明の別の態様では、肺気道内で回転または振動するように駆動される少なくとも1つの研削面と、電気エネルギーを動力源とする回転または振動駆動機構と、電池および充電器を有する電気回路とを備えたカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置システムが提供される。
【0152】
本発明の別の態様では、肺気道内で回転または振動するように駆動される少なくとも1つの研削面と、空気圧または真空を動力源とする回転または振動駆動機構と、空気圧または真空源を有する空気圧回路とを備えたカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置システムが提供される。
【0153】
本発明の別の態様では、肺気道内で回転または振動するように駆動される少なくとも1つの研削面と、石英およびクリスタル等の結晶の寸法変化を動力源とする回転または振動駆動機構とを備えたカテーテル、機械的構造またはバルーンを提供することによって肺組織と研削接触する療法装置システムが提供される。
【0154】
本発明の別の態様では、肺組織に対して研削作用を及ぼす研削面を提供することによって肺組織と研削接触する療法装置システムが提供される。いくつかの例では、研削作用は、研削特徴部が配置されているバルーンを膨張および/または収縮させることによって、または、研削特徴部が配置されている機構を膨張もしくは収縮させることによって達成される。研削作用は、バルーンまたは機構の直径が増加および/または減少するとき、および/または、バルーンまたは機構の直線長さが増加および/もしくは減少するときに、バルーンまたは機構が膨張/拡張および/または収縮/縮小する結果として発生する。このような膨張/拡張および/または収縮/縮小は、研削面と組織表面との間に相対運動を生じさせるため、研削作用に寄与する。
【0155】
本発明の別の態様では、肺組織に対して研削作用を及ぼす研削面を提供することによって肺組織と研削接触する療法装置システムが提供される。装置は、研削深さを自己制御できる。
【0156】
さらに別の態様では、本発明の実施形態は、長尺状部材と、長尺状部材上に配置または連結された研削特徴部と、長尺状部材と連動する制御機構とを有する組織療法装置を包含する。いくつかの例では、制御機構は、研削特徴部に振動運動を発生させるように構成される。このような振動運動は、患者の内腔壁に沿って組織を研削するように機能する。いくつかの例では、長尺状要素は、バルーンカテーテルシャフト、バルーン本体、バルーン、カテーテルシャフト、カテーテル、先端側研削体、研削要素シャフト、研削ブラシ、長尺状要素等として提供されるか、またはこれらを有している。いくつかの例では、研削特徴部は、砥粒、砥粒パターン、研削メッシュ、隆起したエッジ部、拡張した研削面、砥粒を有するバンド、研削材、1つまたは複数の研削エッジ部、素線、研削媒体、隆起した研削エッジ部、研削剛毛、拡張したまたは拡張可能な発泡体、スポンジ、リボン構造もしくは束等として提供されるか、またはこれらを有している。いくつかの例では、制御機構は、モータアセンブリ、運動駆動ハンドピース、ハンドピース等として提供されるか、またはこれらを有している。いくつかの例では、振動運動には回転振動運動が含まれる。いくつかの例では、振動運動には線形振動運動が含まれる。いくつかの例では、振動運動には、回転振動運動および線形振動運動が含まれる。いくつかの例では、装置は、制御された深さに組織を研削するように構成されている。いくつかの例では、制御された深さは約20ミクロンである。いくつかの例では、装置は、組織を研削特徴部に向かって引き寄せるように機能する真空機構をさらに備えている。いくつかの例では、真空機構は、真空源として提供されるか、または真空源を有している。いくつかの例では、真空機構が、患者の内腔から研削された組織を除去するように機能する。いくつかの例では、研削特徴部が、研削メッシュ、研削形状特徴部または研削媒体を有しており、研削媒体が、アルミナ、カーバイド、砂、石英、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、炭素、ダイヤモンド、酸化物、炭化ケイ素、ポリマー、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、共溶融アルミナジルコニア、ガーネット、フリント、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化タングステン、コバルト、ガラス状多糖類、焼結ゾルゲル、スチレンアクリロニトリル共重合体、アルミナジルコニア、ガーネット、エメリーおよびクロム(III)からなる群から選択される。いくつかの例では、研削媒体の粒度が、平均粒径で約2ミクロンから平均粒径で3000ミクロンの範囲内である。いくつかの例では、長尺状部材が拡張可能な機構を有しており、研削特徴部が拡張可能な機構上に配置されている。
【0157】
さらに別の態様では、本発明の実施形態は、患者の内腔の壁を治療する方法を包含する。例示的な方法は、治療装置の長尺状部材であって、研削特徴部を有する長尺状部材を患者の内腔内に導入することと、患者の内腔の壁に沿って組織を研削するように、研削特徴部に振動運動を発生させることと、を含み得る。いくつかの例では、振動運動は回転振動運動を含む。いくつかの例では、振動運動は線形振動運動を含む。いくつかの例では、振動運動は回転振動運動および線形振動運動を含む。いくつかの例では、研削工程は、制御された深さに組織を研削することを含む。いくつかの例では、制御された深さは約20ミクロンである。いくつかの例では、方法には、真空機構を使用して組織を研削特徴部に向かって引き寄せることを含む。いくつかの例では、方法には、真空機構を使用して内腔から研削された組織を除去することを含む。いくつかの例では、研削特徴部が、研削メッシュ、研削形状特徴部または研削媒体を有しており、研削媒体が、アルミナ、カーバイド、砂、石英、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、炭素、ダイヤモンド、酸化物、炭化ケイ素、ポリマー、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、共溶融アルミナジルコニア、ガーネット、フリント、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化タングステン、コバルト、ガラス状多糖類、焼結ゾルゲル、スチレンアクリロニトリル共重合体、アルミナジルコニア、ガーネット、エメリーおよびクロム(III)からなる群から選択される。いくつかの例では、研削媒体の粒度が、平均粒径で約2ミクロンから平均粒径で3000ミクロンの範囲内である。いくつかの例では、長尺状部材が拡張可能な機構を有しており、研削特徴部が拡張可能な機構上に配置されており、方法は、拡張可能な機構を拡張させることを含む。
【0158】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により援用されることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0159】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴および効果は、本発明の趣旨が用いられる例示的な実施形態について説明する以下の詳細な説明および添付の図面を参照することによってさらに理解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
図1】一般的な気管支鏡を示す図。
図2】ヒトの肺の気管支樹を示す図。
図3】ヒトの肺の気道壁の断面を示す図。
図4】健康なヒト上皮の断面を示す図。
図5】気管支炎患者におけるヒト上皮の断面を示す図。
図6】組織と接触する研削面を有する長尺状バルーンカテーテルを備えた肺治療装置の一実施形態を示す図。
図7A】組織に接触するように拡張された肺治療装置、制御方法および研削面の実施形態を示す図。
図7B】組織に接触するように拡張された肺治療装置、制御方法および研削面の実施形態を示す図。
図7C】組織に接触するように拡張された肺治療装置、制御方法および研削面の実施形態を示す図。
図7D】組織に接触するように拡張された肺治療装置、制御方法および研削面の実施形態を示す図。
図8A】容易に送達可能な展開されていない構成の肺治療装置を示す図。
図8B】展開された構成の肺治療装置を示す図。
図9】気管支鏡を介して送達される肺治療システムを付属品とともに示す図。
図10】拡張可能な研削バスケットを備えた肺治療システムを示す図。
図11】ねじれた弾性素線および拡張プルワイヤを備えた肺治療システムを示す図。
図12】研削ばね要素を備えた肺治療装置を示す側面図。
図13】研削ばね要素を備えた肺治療装置を示す上面図。
図14】研削ガイドワイヤおよび吸引カテーテルを備えた肺治療システムを示す図。
図15】研削カテーテルを備えた肺治療システムを示す図。
図16】研削ブラシおよび吸引カテーテルを備えた肺治療システムを示す図。
図17】研削ブラシおよびブラシガイドカテーテルを備えた肺治療システムを示す図。
図18】振動回転を発生させるモータ駆動アセンブリの態様を示す図。
図18A】振動回転を発生させるモータ駆動アセンブリの態様を示す図。
図19】線形振動運動を発生させるモータ駆動アセンブリを示す図。
図20】気管支鏡および肺治療装置を示す図。
図21】気管支鏡を使用せずに患者を治療する治療装置を示す図。
図22】複数のワイヤ構成を有するガイドワイヤを示す図。
図23】拡張具を示す図。
図24】湾曲した先端部を有する拡張具を示す図。
図25】複数の湾曲部を含む先端部を有する拡張具を示す図。
図26】マルチルーメンカテーテルを備えた肺治療システムの態様を示す図。
図27】拡張可能な発泡体こすり落とし要素を備えた治療装置を示す図。
図28】拡張した発泡体こすり落とし要素を備えた治療装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0161】
開示される装置、送達システムおよび方法の特定の実施形態を、図面を参照して以下に説明する。この詳細な説明のいずれの記載も、特定の構成要素、特徴または工程が本発明に不可欠であることを意味することを意図するものではない。
【0162】
本明細書に開示される例示的なシステム、装置および方法は、患者の肺気道の治療に非常に好適に使用できる。いくつかの例では、本明細書に開示される研削手法およびシステムは、患者の末梢血管系(例えば動脈または静脈)、患者の冠状血管系(例えば動脈または静脈)、患者の器官または内腔壁ならびに患者の組織表面に生じる望ましくない病変、表面もしくは成長を治療するために使用できる。
【0163】
気管支炎治療における送達の概要
本明細書に記載されている肺治療装置は、図1に示されているような操縦可能な気管支鏡(例えば、気管支鏡1)等の、肺に挿入されるように構成された送達器具によって送達できるようにサイズ設定および構成される。いくつかの実施形態では、肺治療装置13は、例えば、気管支鏡、カテーテル、イントロデューサ、シース、スリーブまたは同様の器具の管腔を通して治療装置を押すことによって、送達器具の管腔を介して送達されるように構成される。他の実施形態では、肺治療装置13は、気管支鏡、カテーテル(バルーンカテーテル等)、イントロデューサ、シース、スリーブ、ガイドワイヤまたは類似の器具等の送達器具の外側に装着されることによって送達されるように構成されている。いくつかの実施形態では、送達器具の外側に装着する場合、治療装置13は、送達器具の長さに沿って自由にスライドできる。なお、肺治療装置13は、上記の送達器具の構成要素を組み合わせて用いて送達されるように構成してもよく、例えば、治療装置13をガイドワイヤまたはバルーンカテーテルシャフトに取り付け、気管支鏡の管腔を介してアセンブリを送達してもよい。ガイドワイヤを使用する場合は、送達システムは、オーバー・ザ・ワイヤ(OTW)またはラピッドエクスチェンジ(RX)として構成され、ガイドワイヤは、構成のために特定の位置で送達システムから出てもよい。例えば、OTW設計では、ガイドワイヤは、その基端側で送達システムから出ており、ガイドワイヤが送達器具の全長に沿って延びる。一方、RX設計では、ガイドワイヤは送達器具の短い区域(約25cm)に沿ってのみ延び、側面ポートから出ている。この設計では、ガイドワイヤを送達器具の全長にわたって前進させる構成に比べて、時間が節約できる。いくつかの実施形態では、治療装置13を送達するための送達システムまたは器具16は、気管支鏡1、ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、ハンドピースおよび/または本明細書に記載される追加の要素を有している。本発明のシステムおよび方法の実施形態と共に使用可能な例示的なオーバー・ザ・ワイヤ(OTW)特徴は、米国特許第4540404号明細書、米国特許第5163911号明細書、米国特許第5382234号明細書、米国特許第5470315号明細書、米国特許第5891110号明細書、米国特許第5951568号明細書、米国特許第6171279号明細書、米国特許第6610068号明細書および米国特許第8372054号明細書に記載されている。また、本発明のシステムおよび方法の実施形態と共に使用可能な例示的ラピッドエクスチェンジ(RX)特徴は、米国特許第5334147号明細書、米国特許第5336184号明細書、米国特許第5383853号明細書、米国特許第5413560号明細書、米国特許第5458613号明細書、米国特許第5620417号明細書、米国特許第5690642号明細書、米国特許第5738667号明細書、米国特許第5814061号明細書、米国特許第6371961号明細書、米国特許第6371940号明細書、米国特許第7815600号明細書、米国特許第8043256号明細書、米国特許第8758325号明細書および米国特許第10245410号明細書に記載されている。これらの特許の各内容は、参照により本明細書に援用される。
【0164】
いくつかの実施形態では、治療装置13が気管支鏡ポート7に入れられ、気管支鏡1は、気管支樹を通って肺内の標的位置まで進められる。COPDが進行した患者では、肺組織および気道が炎症を起こしており、出血しやすく、ガイドワイヤやカテーテルの前進等によるわずかな外傷にも反応する。したがって、本実施形態では、従来の気管支内バルブやコイルとは異なり、ガイドワイヤおよび/またはカテーテルを使用せずに装置13を送達することができる。本実施形態では、装置13が気管支鏡ポート7内に入り、装置13の先端(distal end)14はチャネル出口ポート11から先端側に向けられ、装置13の基端(proximal end)15は気管支鏡ポート7から基端側に延びる。気管支鏡1は気道内において、先端が気道壁に突き刺さることがないように、非外傷的に操縦される。先端14は、組織の外傷を最小限に抑えるために、先端ループ状、コイル状、ボール状、弾丸形、涙形、円錐形またはテーパー状等の様々な形状を有することができる。一般的に、気管支鏡1の先端は、4世代の気道内またはそこをはるかに越えて、重度に損傷した組織を含む肺の領域内に進む場合が多い。これは、気管支鏡の外径が直径4.5mm未満である場合は容易に実現できる。通常は、直径2.0mmのチャネルとポートを備えた気管支鏡が使用される場合が多い。しかしながら、本明細書に記載の療法装置は、外径が3.0mm未満であり、チャネル内腔が1.5mm未満である細い気管支鏡を介して前進させてもよい。中心側に位置するより大きな気道の治療は、ワーキングチャネルが2.5mm以上であるより太い気管支鏡を用いて行うことができる。ただし、一般的には、ワーキングチャネルが1.8~3.2mmの範囲である気管支鏡が最も好ましい。
【0165】
図1に示される気管支鏡は、一般的には、肺に治療要素を送達するために使用される。医師が制御ハンドル4を上下に操作することによって、気管支鏡先端9が上下に曲がる。気管支鏡本体6を把持して回転させることによって気管支鏡が90度回転されると、ハンドルの操作によって気管支鏡を左右に動かすことができる。使用者は、気管支鏡を操作しながら、可撓性胴体部8を患者の口、気管および肺を介して前進させることができる。電子画像データファイルがカメラ10によって取得され、カメラヘッド3で処理されて、図9に示されるように、データケーブル2を介してモニタ138に送られる。図14に示されるように、病院の真空システムから吸引を行うためのホースが吸引ポート5に取り付けられ、肺気道から粘液、細菌および他の異物がチャネル出口ポート11内に吸引され、吸引ポート5からフィルタトラップ231に入るように構成してもよい。気管支鏡の先端において、気管支鏡先端9には、ワーキングチャネル出口ポート11および光源12が設けられている。光源12は、通常は、光エネルギーを伝達可能な光透過ファイバ束の研磨された終端である。また、カメラ10は気管支鏡先端9に配置されているため、気管支鏡が進む経路の視野が遮られることがない。医師が患者の体内に可撓性胴体部8を前進させて、気管支鏡先端9が治療部位の近傍または付近に配置されると、肺治療装置13の先端部14が気管支鏡チャネル挿入ポート7に挿入される。装置13は、チャネル出口ポート11から出るまで進められる。治療後には、装置が気管支鏡チャネルから取り出され、気管支鏡1が患者から取り出される。「療法装置」、「治療装置」、「肺治療装置」、「組織治療装置」等の用語は、本明細書全体にわたって置換可能に使用されている。
【0166】
図2に、一般的なヒトの肺の気管支樹を示す。気管20は、肺につながる主要な気道である。気管20は、気道のゼロ世代とも称される。一般的に、気管の直径は約18~25mm、長さは約120mmである。気管分岐部21で、気管は左主気管支22と右主気管支23とに分岐し、これらは1世代の気道と称される。主気管支22,23は、通常、直径が12~15mmであり、長さが約50mmである。主気管支22,23は、2世代気道とも称される葉気管支24に分岐している。葉気管支24は、通常、直径が約8~12mm、長さが約20mmである。葉気管支は、3世代気道とも称される区域気管支25に分岐している。これらの気道は、通常、直径5~8mm、長さ約8mmである。区域気管支25は、4世代気道とも称される、直径4~5mmの亜区域気管支26に分岐し、最後に、5世代気道とも称される亜亜区域気管支が亜区域気管支から分岐している。これらは直径2mmまで細くなる場合もある。本明細書に記載の治療法は、気管支樹の6世代、7世代、8世代(これらは、5世代から16世代の気道を含む終末細気管支の一部と称される場合もある)を含む、上記の全気道を治療することを意図している。いくつかの例では、30世代までの気道の組織を治療することも可能である。例示的な実施形態では、治療は、3、4、5および/または6世代の気道で行われる。いくつかの実施形態では、杯細胞が位置する気道で治療が行われる。
【0167】
気管支樹は、より太い上気道から肺実質に空気を導く呼吸器系の解剖学的および機能的部位である。気管支、細気管支、終末細気管支等の様々な気管および肺内気道で構成されている。気管および気管支は軟骨の壁を有しているため厚く、繊維状に形成されており、これによって、呼吸中の開通性が維持される。気管支は複数の分岐を経て、最終的に終末細気管支になるが、終末細気管支には当然ながら軟骨は存在しない。最も先端側の呼吸細気管支および肺胞において、ガスが血流に出入りする。
【0168】
気管支がより細い気道に分岐していくにつれて、気道上皮が組織学的に変化し、終末細気管支が形成される。細気管支の17世代から19世代は、移行領域を形成している。これらの細気管支は、薄い隔膜によって互いに分離されたピラミッド型の肺小葉に入る。肺小葉の頂点は門に向けられ、5~7個の終末細気管支を含んでいる。細気管支の最後の2または3世代は、壁に肺胞を有し、呼吸領域を構成している。終末細気管支の先端側にある肺の領域は腺房と呼ばれる。最後の分岐は呼吸細気管支と呼ばれ、さらに複数の肺胞管に分岐している。呼吸器系の機能単位である肺胞は、呼吸細気管支の段階から出現しており、ガスの大部分はこの部分で交換される。重要な点は、健康な肺容量の大部分は肺胞組織で構成されているということである。気道網は気管から肺の様々な部分を通って分岐して大量の酸素を供給し、肺内の略全域に存在する肺胞から二酸化炭素を排出させる。気管支樹と、心臓の右側から肺を介して心臓の左側に血液を送る動脈網とが肺において占める体積は小さい。
【0169】
図3に、一般的な気道壁34の断面を示す。気道の主な構造は、腺41および平滑筋40の層とともに気道壁の中心から離れた側に位置する軟骨42によって支持されている。固有層39は、平滑筋40を基底膜38から分離している。粘液35および上皮36が肺気道の内腔の輪郭を構成している。上皮は、粘液35を分泌する杯細胞37を有している。
【0170】
図4に、一般的な健康な上皮50の断面を示す。健康な人体では、基底膜38、基底細胞57および繊毛細胞52が気道基底層を形成している。繊毛55は、杯細胞37が気道内腔51に露出している部分を除いて、上皮50の表面上で成長する。杯細胞37は、気道内腔51の面に粘液層56を生成および分泌するMCV54を有している。
【0171】
図5に、気管支炎が発生している上皮65の断面を示す。長期の喫煙により、気道は慢性的に刺激を受ける。刺激が繰り返されると、肺の上皮65が杯細胞の数を増やすため杯細胞過形成67が起こり、分泌される粘液の量が増加する(例えば、図4に示す粘液56)。図5には、増加した粘液分泌が、過分泌粘液層66として示されている。通常、繊毛55は粘液(図4の粘液56等)を気管(図2の気管20)に向かって輸送するように機能し、粘液は気管から咳とともに排出される。これは、有害な粒子や汚染物質を排除するための肺の主要なメカニズムである。炎症の回数が多くなると、気道壁が傷つき、繊毛55が再生不能となるため、肺から粘液(図4の粘液56等)を輸送する主な手段が失われる。粘液輸送の減少によって粘液(図4の粘液56等)が蓄積し、そこに細菌が集まって留まり、感染が繰り返される。感染によって咳嗽が起こり、咳嗽によってさらに気道が炎症する。このサイクルが続くことによって、身体は、異物の侵入、炎症および感染症に対抗するために、気道壁に杯細胞過形成67および他の細胞を形成する。また、このサイクルが続くことによって、長期間の咳嗽または場合によっては連続的な咳嗽が患者に発生する。このサイクルの結果、気道壁において標準的な組織創傷治癒が起こり、杯細胞過形成67や、粘液(図4の粘液56等)を分泌する他の細胞がさらに生成される組織修復が絶え間なく発生する。このため、徐々に厚くなる気道壁によって空気の流れが制限される。杯細胞過形成67によって、気道内腔51の面の繊毛55による被覆が損なわれ、気管支炎の症状がさらに悪化する。このような患者は、分泌された粘液(図4の粘液56等)を吐き出す手段がほとんどない状態で、慢性的に感染し続ける。このように患者の肺の炎症が継続することによって呼吸能力が低下し、正常に治癒する可能性がほとんど失われ、粘液分泌の増加によって過分泌粘液層66が形成される。図4および図5からわかるように、気管支炎が発生している図5の上皮65では、図4の健康な正常の上皮50と比較して、繊毛55が顕著に少ない。
【0172】
図6に、気道75に肺治療装置13が配置された状態の、気管支炎が発生している気道断面75を示す。基端側気道内腔壁76に接合している上皮層83は、気管支炎によって杯細胞過形成(図5の過形成67等)が発生しているため、治療を必要とする。肺治療装置13は、バルーン本体80を備え、バルーン本体80のバルーン表面81には砥粒82が接合されている。バルーン本体80は、ガイドワイヤ78上を前進してきたバルーンカテーテルシャフト79に連結されている。肺治療装置13は、前進または後退時に、気道75内において、回転、気道の長手軸線に沿った先端側もしくは基端側への移動および/または回転振動もしくは線形振動を行うことができる。例えば、図6に示される肺治療装置13は、回転振動(矢印Bに示す)しながら、基端側に引かれて後退されている(矢印Aに示す)。いくつかの例では、治療は、装置13を矢印Aと反対の方向に先端側に押して、砥粒82と気道組織との間に研削作用を生じさせることを含んでいる。図6に示されるように、砥粒82は上皮層83を削り落とす。先端側の気道内腔77の壁からは、上皮層83から剥ぎ取られている。これは、気道壁84が研削されて、基底膜85が露出した状態として示されている。肺治療装置13は、上皮層83を削り、杯細胞(図4の杯細胞37等)の数が(例えば正常かつ健康な数に)減少した構成となるように、上皮層83の組織修復を発生させる。杯細胞および杯細胞過形成(図5の杯細胞過形成67等)を排除する治療によって、粘液(図4の粘液35等)および/または過分泌粘液層(図5の過分泌粘液層66等)ならびに関連する細菌を減らし、患者の気管支樹の乾燥を促進させるとともに、創傷の治癒の促進が可能となる。これらによって患者の炎症が抑制されるため、本明細書の発明の概要に記載された治療後の患者の変化がもたらされる。いくつかの例では、バルーンカテーテルシャフト79および/またはバルーン本体80(例えば、図6および図7A図7D)は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、砥粒82は研削特徴部と称される場合もある。
【0173】
図7Aに、バルーンカテーテルシャフト79に接合されたバルーン本体80を有する肺治療装置13を示す。肺治療装置13は、ガイドワイヤハブ90を備えたガイドワイヤまたはガイドワイヤシャフト78を介して送達可能である。バルーン本体80は、水、生理食塩水、シリコーン、他の生体適合性流体、空気、窒素、酸素、他の生体適合性ガス等の、バルーン膨張ホース91を介して移送されるガスまたは流体によって膨張される。このようにして、ホース91は加圧ガスをバルーンに供給する。ガスまたは流体は、圧力計を備えた圧力調整器92を調整することによって一定の圧力に維持できる。圧力をパルス状に周期変化させて、バルーンが2つ以上の直径の間を移行する状態をとるように振動させてもよい。これによって、大きな動きや組織の外傷を最小限に抑えながら研削を行うことができる。各圧力パルスサイクル内の直径の変化は、例えば最小0.01mmから最大28mmの範囲内であり、例示的な実施形態では、0.1~15mmの間である。パルスの周波数は、例えば毎秒0.25~5000サイクルであり、例示的な実施形態では1~50Hzである。圧力は、約6.894パスカル~4136.854キロパスカル(0.001~600ポンド/平方インチ)の範囲で制御および変動される。圧力は、コンプライアントバルーンの場合は低く維持され、ノンコンプライアントバルーンの場合は高く維持される。圧力はポンプ93を使用して供給される。いくつかの例では、ポンプ93は電動ポンプである。ポンプは、直流エネルギーを使用して電力供給され、供給源はバッテリー94であってもよい。いくつかの例では、ポンプ93は脈動方式で動作し、このため、バルーン本体80内の圧力は周期的、振動的または正弦波状に増加および減少する。いくつかの例では、ポンプ93は、バルーン本体80の表面に振動運動が生じるように動作する。接合された砥粒パターン95は、交差している線状の砥粒パターン95であり、バルーン本体80が膨張および拡張されているときに肺気道内腔(図5の気道内腔51等)に対する研削効果を高めるように構成されている。砥粒パターン95は、露出した基底膜(図6の露出した基底膜85等)のみが残るように、気道壁上皮層(図6の気道壁上皮層83等)に接触して壁を研削する。いくつかの例では、バルーン本体80を矢印Aで示すように直線的に動かし、および/または、矢印Bで示すように回転振動的に動かすことによって、研削効果を発生または増加させることが可能である。本発明の実施形態は、リング、ストライプ、曲線、直線、山型、正弦波線、円形スポット、非円形スポット等の、様々な形状の接合された砥粒パターン95のいずれかを有している。いくつかの例では、バルーン本体80の拡張および/または収縮によってパターン95が移動、移行または他の方法で変化し、パターンが変化することによって、砥粒パターン95の研削作用が向上する。例えば、交差している線状の砥粒パターン95の角度および/または整列が変化する。いくつかの実施形態では、バルーン本体80を単に膨張および/または収縮させることによって、治療のための十分な研削作用がもたらされるため、バルーン本体80を直線的および/または回転的に移動させて組織を削り落とすことを必要としない。いくつかの例では、砥粒パターン95は研削特徴部と称される場合もある。
【0174】
図7Bに、バルーンカテーテルシャフト79に接合されたバルーン本体80を有する肺治療装置13を示す。肺治療装置13は、ガイドワイヤ78を介して送達可能である。バルーン本体80は、水、生理食塩水、シリコーン、他の生体適合性流体、空気、窒素、酸素、他の生体適合性ガス等の、バルーン膨張ホース91を介して移送されるガスまたは流体によって膨張される。ガスまたは流体は、圧力調整器92を調整することによって一定の圧力に維持できる。圧力は、ポンプ93を使用して供給される。ポンプは交流エネルギーを用いて電力供給され、電源は、一般的な壁のコンセント等を介して電力システム網から供給される電力であってもよい。図7Bに示されるように、エネルギーは、電気ケーブル135および壁電気プラグ100を介して供給される。バルーン本体80に接合される研削媒体は、拡張可能な任意のポリマーまたはフィルムから作成される研削メッシュ101を有するバンドである。研削メッシュ101には、砥粒82の特性を有する材料が含まれている。いくつかの例では、研削メッシュ101は、可撓性を有する細い鋼製もしくは金属製フィラメントであり、鋭利な端部を有している。研削媒体125の隆起したエッジ部は、露出した基底膜(図6の基底膜85等)のみが残るように、気道壁上皮層(図6の気道壁上皮層83等)に接触して壁を研削する。いくつかの例では、バルーン本体80を矢印Aで示すように直線的に動かし、および/または、矢印Bで示すように回転振動的に動かすことによって、研削効果を発生または増加させることが可能である。
【0175】
図7Bに示されるように、研削メッシュ101は、バルーン80の表面積の比較的小さな割合(例えば、30%未満)を占める。いくつかの例では、バルーン本体80の表面積において、研削メッシュ101が占める割合が、装置13の研削深さに影響を及ぼす。例えば、バルーン本体80の覆われていない部分が気道壁に接触および/または押し付けられると、バルーン本体80が膨張/収縮することによってメッシュ101が伸長または収縮する。いくつかの例では、バルーン本体80の覆われていない基端側表面86および/または先端側表面87は、気道壁に対する支持面として機能する。いくつかの例では、バルーン本体80の覆われていない基端側表面86および/または先端側表面87は、メッシュ101が気道壁に貫入する深さを制限するように機能する。いくつかの例では、研削メッシュ101は研削特徴部と称される場合もある。
【0176】
図7Cに、バルーンカテーテルシャフト79に接合されたバルーン本体80を有する肺治療装置13を示す。肺治療装置13は、ガイドワイヤ78を介して送達可能である。バルーン本体80は、水、生理食塩水、シリコーン、他の生体適合性流体、空気、窒素、酸素、他の生体適合性ガス等の、バルーン膨張ホース91を介して移送されるガスまたは流体によって膨張される。ガスまたは流体は、圧力調整器92を調整することによって一定の圧力に維持できる。圧力は、ポンプ93を使用して供給される。ポンプは交流エネルギーを用いて電力供給され、電源は、一般的な壁のコンセント等を介して電力システム網から供給される電力であってもよい。図7Cに示されるように、エネルギーは、電気ケーブル135および壁電気プラグ100を介して供給される。バルーン本体80に接合される研削媒体は、混合サイズの砥粒103を有するバンドである。混合サイズの砥粒103は、不規則なサイズの砥粒のバンド104としてバルーン本体80に接合されるため、拡張されたバルーン本体80の回転に伴って、気道上皮層(図6の上皮層83等)との接触点が変化する。混合サイズの砥粒103は、露出した基底膜(図6の基底膜85等)のみが残るように、気道壁上皮層(図6の気道壁上皮層83等)に接触して壁を研削する。いくつかの例では、バルーン本体80を矢印Aで示すように直線的に動かし、および/または、矢印Bで示すように回転振動的に動かすことによって、研削効果を発生または増加させることが可能である。いくつかの例では、砥粒104は研削特徴部と称される場合もある。
【0177】
いくつかの例では、混合サイズの砥粒103のサイズ、分布および/または組成は、深さ制御特徴部を構成するように選択可能である。例えば、深い研削を行うように砥粒103の組成を構成することもできるし、浅い研削を行うように砥粒103の組成を構成することもできる。砥粒103のサイズが小さすぎると、研削がほとんどまたはまったく発生しない場合がある。砥粒103のサイズが大きすぎると、砥粒が気道壁の表面に過度に食い込み、傷つける可能性がある。
【0178】
図7Cに示されるように、砥粒のバンド104は、バルーン80の表面積の比較的小さな割合(例えば、30%未満)を占める。いくつかの例では、バルーン本体80の表面積において、砥粒のバンド104が占める割合が、装置13の研削深さに影響を及ぼす。例えば、バルーン本体80の覆われていない部分が気道壁に接触および/または押し付けられると、バルーン本体80が膨張/収縮することによって砥粒のバンド104が伸長または収縮する。いくつかの例では、バルーン本体80の覆われていない基端側表面86および/または先端側表面87は、気道壁に対する支持面として機能する。いくつかの例では、バルーン本体80の覆われていない基端側表面86および/または先端側表面87は、砥粒のバンド104が気道壁に貫入する深さを制限するように機能する。図7Cに示される実施形態は、単一の砥粒のバンド104を有している。いくつかの実施形態では、治療装置は、砥粒の複数のバンドを有している。
【0179】
図7Dに、バルーンカテーテルシャフト79に接合されたバルーン本体80を有する肺治療装置13を示す。肺治療装置13は、ガイドワイヤ78を介して送達可能である。バルーン本体80は、水、生理食塩水、シリコーン、他の生体適合性流体、空気、窒素、酸素、他の生体適合性ガス等の、バルーン膨張ホース91を介して移送されるガスまたは流体によって膨張される。ガスまたは流体の圧力は、シリンジ圧力源105を使用して供給される。いくつかの例では、シリンジ圧力源105は手動装置である。使用時には、シリンジ105が、バルーン本体80を膨張させるように1回以上ポンピングまたは作動され、圧力源105は、バルーン本体80内に一定量の圧力を維持させるようにロックされる。バルーン本体80は、(例えば、バルーンカテーテルシャフト79と動作可能に連結されたモータ駆動機構を介して)気道内で引かれ、および/または、回転的および/もしくは線形的に振動させられる。バルーン本体80に接合された研削媒体は、隆起したエッジ部106を形成する一連の金属、プラスチック、セラミック、硬質ゴム、ロープ、ガラスまたは他の生体適合性材料である。隆起したエッジ部106は、バルーン本体80が拡張、回転または直線移動したときに、上皮層(図6の上皮層83等)を削り落とす。隆起したエッジ部106は、露出した基底膜(図6の露出した基底膜85等)のみが残るように、気道壁上皮層(図6の気道壁上皮層83等)に接触して壁を研削する。いくつかの例では、バルーン本体80を矢印Aで示すように直線的に動かし、および/または、矢印Bで示すように回転振動的に動かすことによって、研削効果を発生または増加させることが可能である。いくつかの例においては、隆起したエッジ部106はブレード要素の特徴部である。ブレード要素は、バルーンの外側に取り付けられ、バルーンの拡張時またはバルーンが気道の長手軸線に沿って引かれるときに、削り落とし要素として機能する。いくつかの例では、隆起したエッジ部106は研削特徴部と称される場合もある。
【0180】
いくつかの実施形態においては、バルーン本体(バルーン本体80等)は、コンプライアント、ノンコンプライアント(すなわち硬質)またはセミコンプライアント(すなわち半硬質)である。特定量の大気圧にさらされると、コンプライアントバルーン本体の直径は、より小さな直径となるノンコンプライアントバルーンと比較して、大きくなる。したがって、バルーン本体のコンプライアンスが比較的高い装置では、接合された砥粒82、砥粒パターン95、研削メッシュ101、砥粒のバンド104、隆起したエッジ部106または本明細書に開示される他の研削特徴部もしくは要素は、バルーン本体のコンプライアンスが比較的低い装置と比較して、気道壁により深く、または、より大きな力で押し込まれる。
【0181】
いくつかの例では、バルーン本体80が膨張すると、研削要素または研削特徴部のみが気道壁に接触して貫入する。すなわち、バルーン本体80の基端側表面86および先端側表面87は、研削要素または研削特徴部の深さに応じた所望の研削深さが達成されるまで、気道壁に接触しない。
【0182】
図8Aに、本発明の実施形態による肺治療装置13の態様を示す。図示されるように、治療装置13は、気管支鏡1の可撓性胴体部8に挿入され、気管支鏡1の気管支鏡先端9のチャネル出口ポート11から出るまで進められる。図示されるように、気管支鏡1は、カメラ10および光源12を有している。治療装置13は、ガイドカテーテル120を有しているか、またはガイドカテーテル120内に配置することができ、バルーンカテーテルシャフト79、非膨張状態のバルーン121およびバルーン121に連結された折り畳まれた状態の研削メッシュ122を有している。さらに、治療装置13は、ガイドワイヤ78を有しているか、またはガイドワイヤ78に沿って配置される。いくつかの例では、ガイドワイヤ78は任意で配置される。ガイドカテーテル120は、バルーン121の送達を案内するように機能する。いくつかの例では、気管支鏡1は、治療装置13が患者の肺気道内の治療部位に送達されるときに、声帯を横切るカテーテルとして使用される。いくつかの例では、気管支鏡1は、治療処置中に所定の位置に留まらせることができ、気管支鏡検査医、医師、外科医または他の操作者は、処置中に治療装置13を別の装置と交換できる。いくつかの例では、放射線科医は気管支鏡1を使用せずに治療処置を行う。
【0183】
図8Aに示されるように、ガイドワイヤ78は、ガイドカテーテル120を介して配置される。このようにして、外科医または操作者は、カテーテル120を気管支樹内に深く前進させ、バルーンカテーテルシャフト79をガイドワイヤ78上に配置し、ガイドカテーテル120を介してバルーンカテーテルシャフト79を前進させる。このような手法によって、気道壁の損傷を抑制できる。
【0184】
図8Bに、本発明の実施形態による肺治療装置13の態様を示す。図示されるように、治療装置13は、気管支鏡1の可撓性胴体部8を介して挿入され、気管支鏡1の気管支鏡先端9のチャネル出口ポート11から出るまで進められる。図示されるように、気管支鏡1は、カメラ10および光源12を有している。治療装置13は、ガイドカテーテル120を有しているか、またはガイドカテーテル120内に配置することができ、バルーンカテーテルシャフト79、膨張状態のバルーン123およびバルーン123と連結された拡張状態の研削メッシュ124を有している。拡張状態の研削メッシュ124は、研削媒体の隆起したエッジ部125を有している。さらに、治療装置13は、ガイドワイヤ78を有しているか、またはガイドワイヤ78に沿って配置される。いくつかの例では、ガイドワイヤ78は任意で配置される。図8Aおよび図8Bからわかるように、図8Aの非膨張状態のバルーン121を膨張させて図8Bの膨張状態のバルーン123にすることができ、その結果、図8Aの折り畳まれた状態の研削メッシュ122が展開および拡大されて図8Bの拡張状態の研削面124となる。メッシュの拡張によって、気道壁上皮層の研削が可能となる。図8Bに示すように、膨張状態のバルーン123を矢印Aで示すように直線的に動かし、および/または、矢印Bで示すように回転振動的に動かすことによって、研削効果を発生または増加させることが可能である。いくつかの例では、バルーンカテーテルシャフト79および/またはバルーン123(図8Aおよび図8B等)は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、拡張状態の研削面124は研削特徴部と称される場合もある。
【0185】
図9に、患者を治療するシステム200の態様を示す。システム200は、ワーキングチャネル出口ポート11を備えた可撓性胴体部8を有する気管支鏡1を備えている。図示されるように、治療装置13(または他の気管支内器具)は、気管支鏡1のチャネル挿入ポート7に挿入され、気管支鏡1の可撓性胴体部8を通って、気管支鏡1の気管支鏡先端のチャネル出口ポート11から出るまで進められる。気管支鏡1は制御ハンドル4を有し、データケーブル2を介してビデオモニタ138に接続されている。図示されるように、モニタ138は、気管支鏡画像137を表示することができ、これによって操作者は、患者内(例えば、肺気道内)で何が起こっているかを見ることができる。治療装置13は、ガイドワイヤ78に沿って配置された、混合サイズの砥粒103が接合されたバルーン80を有している。システム200は、バルーン膨張ホース91に連結されたバルーン80用のシリンジ圧力源105も有している。いくつかの例では、バルーンカテーテルシャフト79は、バルーン80を膨張および/または収縮させるための別の管腔を有している。図示されるように、システム200は、バルーンカテーテルハブ130と、トリガースイッチ132を有するモータアセンブリ131とを有している。使用時には、操作者は、モータアセンブリ131を制御するようにスイッチ132を操作する。この操作によって、本明細書に記載されるように、バルーン80を振動的または発振的に回転、並進および/または膨張/収縮させることができる。ガイドワイヤ78は、バルーンカテーテルハブ130から基端側に延びるとともに、バルーン80から先端側に延びている。図示されるように、バルーンカテーテルハブ130は、気管支鏡1のチャネル挿入ポート7に挿入されたバルーンカテーテルシャフト78に連結されている。モータアセンブリ131は、電源ケーブル133を介してバッテリー134に連結されている。バッテリー134は、モータアセンブリ131に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム200は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、モータアセンブリ131が直接作動する。図9に示される実施形態では、システム200は、ガイドカテーテル(図8Aおよび図8Bのガイドカテーテル120等)を有していない。いくつかの例では、バルーンカテーテルシャフト79および/またはバルーン80(図9等)は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、混合サイズの砥粒103を有するバンドは、研削特徴部と称される場合もある。
【0186】
図10に、患者を治療するシステム200の態様を示す。システム200は、ワーキングチャネル出口ポート11を備えた可撓性胴体部8を有する気管支鏡1を備えている。図示されるように、治療装置13は、気管支鏡1の可撓性胴体部8を介して挿入され、気管支鏡1の気管支鏡先端のチャネル出口ポート11から出るまで進められる。治療装置13は拡張可能な研削器具167を有している。研削器具167は、先端151、基端152および先端151と基端152との間に配置された複数の弾性ばね要素153を有している。さらに、拡張可能な研削器具167は、隣り合う弾性ばね要素153の間に隙間154を有し、弾性ばね要素153上に配置された研削材155を有している。いくつかの例では、研削材155は、弾性ばね要素153に接着または接合される。研削材155は、隆起した研削エッジ部156を構成している。いくつかの例では、研削エッジ部156は、ばね要素153の切断もしくはエッチングされた形状またはパターンによって(例えば、別の研削材155を必要とせずに)構成される。例えば、研削エッジ部156の上記研削形状またはパターンは、ばね要素153を切断またはアーク溶接することによって形成される。いくつかの例では、パターニングまたはエッチングにより、ばね要素153上に鋭いくぼみが形成される。拡張可能な研削器具167は、気道の枝管163および次の世代の気道164の基端側に位置する気道内腔162内に配置される。拡張可能な研削器具167の基端152は、コネクタハブ157を介して研削カテーテルシャフト158に連結されている。研削カテーテルシャフト158は、運動駆動ハンドピース159に連結されている。いくつかの実施形態においては、研削カテーテルシャフト158は、金属またはポリマー材料からなる。いくつかの例では、ハンドピース159は、直線力および/または回転力を手動で加えるように使用者によって把持される。
【0187】
図示されるように、運動駆動ハンドピース159は、スライダスイッチ160と、ガイドワイヤ出口ポート161と、操作スイッチボタンまたはスライダ166を有するプルワイヤ操作スイッチ165とを有している。使用時には、操作者は、スイッチ165を操作して運動駆動ハンドピース159を制御する。この操作によって、本明細書に記載されるように、拡張可能な研削器具167を振動的または発振的に回転、並進および/または膨張/収縮させることができる。いくつかの例では、ボタンまたはスライダ166の操作によって、拡張可能な研削器具167が振動、発振または移動する周波数、振幅および/または方向が調節される。
【0188】
ガイドワイヤ78は、運動駆動ハンドピース159のガイドワイヤ出口ポート161から基端側に延びるとともに、拡張可能な研削器具167の先端151から先端側に延びている。運動駆動ハンドピース159は、電源ケーブル133を介してバッテリー134に連結されている。バッテリー134は、運動駆動ハンドピース159に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、1つまたは複数の電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、電気ケーブル135は、コネクタ150を有しているか、コネクタ150によって接続されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム200は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、運動駆動ハンドピース159が直接作動する。
【0189】
いくつかの例では、ばね要素153は丸線から形成され、いくつかの実施形態では、丸線の1つまたは複数の部分が平坦化されている。同様に、他の実施形態では、ばね要素は、すでに平坦化された形状を有するリボンから形成される。この場合、リボンはねじってもよい。いくつかの例では、ばね要素153は、レーザー切断チューブ(例えば、切れ目の入ったチューブ)、ニチノール材料、ばね鋼材料または任意の形状記憶材料によって構成される。図示されるように、拡張可能な研削器具167の拡張時には、器具167の形状は、本明細書に記載の拡張または膨張状態のバルーンの形状に類似した形状になる。いくつかの例では、バルーンカテーテルシャフト79および/またはバルーン本体123(図8Aおよび図8B等)は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、研削材155または研削エッジ部156は、研削特徴部と称される場合もある。
【0190】
図11に、患者を治療するシステム200の態様を示す。システム200は、ワーキングチャネル出口ポート11を備えた可撓性胴体部8を有する気管支鏡1を備えている。図示されるように、治療装置13は、気管支鏡1の可撓性胴体部8を介して挿入され、気管支鏡1の気管支鏡先端のチャネル出口ポート11から出るまで進められる。治療装置13は、コネクタハブ157、拡張可能な研削器具167およびプルワイヤ175を有している。拡張可能な研削器具167は、先端151と、先端151とコネクタハブ157との間に配置された複数の研削素線176と、研削素線176に沿って配置された研削媒体125の隆起したエッジ部を有している。研削素線176は、コネクタハブ157を介して研削カテーテルシャフト158に連結されている。研削カテーテルシャフト158は、運動駆動ハンドピース159に連結されている。図示されるように、運動駆動ハンドピース159は、スライダスイッチ160と、ガイドワイヤ出口ポート161と、プルワイヤ175の操作を制御する操作スイッチボタン166を有するプルワイヤ操作スイッチ165とを有している。ガイドワイヤ78は、運動駆動ハンドピース159のガイドワイヤ出口ポート161から基端側に延びるとともに、拡張可能な研削器具167の先端151から先端側に延びている。運動駆動ハンドピース159は、本明細書に記載されるように、バッテリー(二次電池等)またはAC/DCコンバータに接続される。いくつかの例では、ハンドピース159は、直線力および/または回転力を手動で加えるように使用者によって把持される。
【0191】
いくつかの実施形態においては、研削器具167は、ニチノール製のワイヤバスケットとして構成される。いくつかの例では、研削素線176は、素線176の切断もしくはエッチングされた形状またはパターンによって(例えば、別の研削媒体125を必要とせずに)構成される研削エッジ部を有している。例えば、研削エッジ部の上記研削形状またはパターンは、素線176を切断またはアーク溶接することによって形成される。いくつかの例では、パターニングまたはエッチングにより、素線176上に鋭いくぼみが形成される。いくつかの例では、素線176は丸線から形成され、いくつかの実施形態では、丸線の1つまたは複数の部分が平坦化されている。同様に、他の実施形態では、素線176は、すでに平坦化された形状を有するリボンから形成される。この場合、リボンはねじってもよい。素線176は、円形の断面を有するワイヤ等のワイヤや、正方形または長方形の断面を有するリボンから形成してもよい。いくつかの実施形態においては、素線176は、らせん形状、ランダム形状、あわ立て器形状、正弦波形状、トロポスケイン形状等の様々な形状に構成される。プルワイヤ175を操作することによって、研削器具167の全体的な形状および/または直径を変えることができる。いくつかの実施形態では、プルワイヤ175は、例えば、先端151をコネクタハブ157に向かって引くことによって、研削器具167の直径を拡大するように操作され、次いで、本明細書に記載されるように、研削器具167が振動され、および/または、気道に沿って基端側に引かれる。
【0192】
図示されるように、運動駆動ハンドピース159は、スライダスイッチ160と、ガイドワイヤ出口ポート161と、操作スイッチボタンまたはスライダ166を有するプルワイヤ操作スイッチ165とを有している。使用時には、操作者は、スイッチ165を操作して運動駆動ハンドピース159を制御する。この操作によって、本明細書に記載されるように、拡張可能な研削器具167を振動的または発振的に回転、並進および/または膨張/収縮させることができる。いくつかの例では、ボタンまたはスライダ166の操作によって、拡張可能な研削器具167が振動、発振または移動する周波数、振幅および/または方向が調節される。
【0193】
研削器具167の素線176は、金属ワイヤ(ステンレス鋼、チタン、ニチノールもしくは他のニッケルベースの合金等)、モノフィラメントもしくはマルチフィラメント繊維、編組、ポリマーもしくはセラミックもしくはガラスからなる繊維(Kevlar(登録商標)、炭素繊維、ナイロン、ポリウレタン、ポリプロピレンもしくは他の耐久性材料等)または炭素繊維、セラミック、プラスチック、ガラスもしくはこれらの組み合わせ等の有機材料等の、種々の材料のいずれかから構成されてもよいし、含んでいてもよいが、これらに限定されない。いくつかの例では、カテーテルシャフト158(図10および図11等)は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、素線176および/または研削媒体125は研削特徴部と称される場合もある。
【0194】
図12に、患者を治療するシステム200の態様を示す。システム200は、ワーキングチャネル出口ポート11を備えた可撓性胴体部8を有する気管支鏡1を備えている。図示されるように、治療装置13は、気管支鏡1の可撓性胴体部8を介して挿入され、気管支鏡1の気管支鏡先端のチャネル出口ポート11から出るまで進められる。治療装置13は、基端側から先端側に向かう方向に沿って、運動駆動ハブ187、基端側研削体186、先端側研削体185、圧着ハブ188、リボン189、平坦な支持面191、隆起した研削エッジ部190(図13の研削媒体194)、移行部193、平坦な支持面191、隆起した研削エッジ部190および先端側支持部192を有している。使用時には、隆起した研削エッジ部190は、気道壁上皮層83に接触して研削するように機能する。このようにして、気道内腔壁(ここでは気道壁断面34として示されている)から上皮層83を剥がすことができる。先端側支持部192は、コイル状、ボール状、先端ループ状、円錐形、円柱形または治療処置中の組織に対する刺激を最小限にする他の鈍いもしくは非外傷性の先端形状等の様々な形状に形成できる。いくつかの実施形態においては、治療装置13は、患者の気道内で拡張するように構成される。例えば、治療装置13は、先端側支持部192に連結されたプルワイヤを有している。別の例では、治療装置13は、ばねのように付勢されており、径方向外側に拡張して気道壁を押す。運動駆動ハブ187は、本明細書に記載されるように、モータカプラに連結してもよい。いくつかの例では、治療装置13は使い捨て装置として構成されている。いくつかの例では、先端側研削体185は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、隆起したエッジ部190は研削特徴部と称される場合もある。
【0195】
図13は、図12の立面図(例えば、右側または左側)に対応する平面図(例えば、上面または下面)である。図13に示すように、システム200は、ワーキングチャネル出口ポート11を備えた可撓性胴体部8を有する気管支鏡1を備えている。図示されるように、治療装置13は、気管支鏡1の可撓性胴体部8を介して挿入され、気管支鏡1の気管支鏡先端のチャネル出口ポート11から出るまで進められる。治療装置13は、基端側から先端側に向かう方向に沿って、運動駆動ハブ187、基端側研削体186、先端側研削体185、圧着ハブ188、リボン189、平坦な支持面191、研削媒体194(図12の隆起した研削エッジ部190を形成している)、移行部193および先端側支持部192を有している。使用時には、治療装置13は気道内腔162内に進められ、研削媒体194は、気道壁上皮層83に接触して研削するように機能する。このようにして、気道内腔壁(ここでは気道壁断面34として示されている)から上皮層83を剥がすことができる。いくつかの例では、先端側研削体185は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、研削媒体194は研削特徴部と称される場合もある。
【0196】
図14に、患者を治療するシステム300の態様を示す。システム300は、研削要素シャフト225を有する治療装置13と、中空カテーテル238に連結された真空ハブ226とを有している。カテーテル238の先端部239は、基端側気道内腔76に挿入され、研削要素シャフト225は、カテーテル238を通って基端側気道内腔76内に延びる。カテーテル238の基端240は、連結部237を介して真空ハブ226に連結されている。研削要素シャフト225の基端235は運動駆動ハブ187に連結され、運動駆動ハブ187はモータカプラ195に連結され、モータカプラ195は運動駆動ハンドピース159に連結されている。図示されるように、運動駆動ハンドピース159は、スライダスイッチ160を有している。運動駆動ハンドピース159は、電源ケーブル133(または1つもしくは複数のコネクタ150を介して連結された複数の電源ケーブル133)を介してバッテリー134に連結されている。バッテリー134は、運動駆動ハンドピース159に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、1つまたは複数の電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、電気ケーブル135は、コネクタ150を有しているか、コネクタ150によって接続されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム300は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、運動駆動ハンドピース159が直接作動する。いくつかの例では、ハンドピース159は、直線力および/または回転力を手動で加えるように使用者によって把持される。
【0197】
真空ハブ226は、シール227をさらに有している。図示されるように、研削要素シャフト225は、シール227およびベアリング234を通って延びている。研削要素シャフト225は、ベアリング234に連結または固定されている。したがって、動作時には、例えばベアリング234がカテーテル238の基端に接触または接近するまで、研削要素シャフト225およびベアリング234が真空ハブに挿入され、シール227が研削要素シャフト225上に配置されて真空ハブ226の先端部と連結される。システム300は、ホース229およびルアーハブ228を介して真空ハブ226に連結されるフィルタ230も有している。図示されるように、ルアーハブ228は、真空ハブ226のルアーテーパー接続部241に連結される。フィルタ230は、ホース229およびカプラ232を介して真空源233に接続され得る。フィルタ230は、収集物231を保持することができる。いくつかの例では、真空源233は、医師または操作者がフットペダルを使用して操作する。
【0198】
使用時には、研削要素シャフト225の先端236は、先端側気道内腔77に配置され、真空ハブ226を介して吸引が行われることによって、カテーテル238の先端部239の先端側の気道部分が収縮する。その結果、砥粒または研削媒体82の隆起したエッジ部125に対して上皮83が引き寄せられる。隆起した研削エッジ部125は、気道壁上皮層83に接触して研削するように機能する。このようにして、気道内腔壁(ここでは気道壁断面34として示されている)から上皮層83が剥がされ、基底膜85が露出する。操作者は、本明細書に記載されるように、研削要素シャフト225を振動的または発振的に回転および/または並進させるように、運動駆動ハンドピース159を制御する。いくつかの例では、ボタンまたはスライダ166の操作によって、研削要素シャフト225が振動、発振または移動する周波数、振幅および/または方向が調節される。いくつかの例では、カテーテル238を基端方向に単に引っ張るだけで気道表面を所望の状態に研削することができ、研削要素シャフト225を振動させる必要がない。真空源233からの吸引によって、研削された上皮が、中空カテーテル238、真空ハブ226およびホース229を通ってフィルタまたはフィルタトラップ230に入り、収集物231としてそこに留まる。いくつかの例では、真空源233は、医師または操作者がフットペダルを使用して操作する。本明細書に記載するように(例えば、図27および図28に関する記載)、いくつかの例では、システム300は、研削エッジ部125および/または砥粒82の代わりに、またはこれらに加えて、発泡体機構を有している。いくつかの例では、研削要素シャフト225は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、隆起した研削エッジ部125は研削特徴部と称される場合もある。
【0199】
図15に、患者を治療するシステム300の態様を示す。システム300は、研削カテーテル250および運動駆動ハンドピース159を有する治療装置13と、真空ハブ226と、フィルタ230とを有している。研削カテーテル250は、先端251、先端側ポート258、隆起した研削エッジ部125、基端側ポート257、先端側ベアリング255、ハブポート259、基端側ベアリング254、運動駆動シャフト253、基端252および運動駆動ハブ187を有している。先端側ベアリング255および基端側ベアリング254は、治療装置13が真空ハブ226から外れることを防ぐように機能する。運動駆動ハブ187はモータカプラ195に連結され、モータカプラ195は運動駆動ハンドピース159に連結されている。図示されるように、運動駆動ハンドピース159はスライダスイッチ160を有している。運動駆動ハンドピース159は、電源ケーブル133(または1つもしくは複数のコネクタ150を介して連結された複数の電源ケーブル133)を介してバッテリー134に連結されている。バッテリー134は、運動駆動ハンドピース159に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、1つまたは複数の電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、電気ケーブル135は、コネクタ150を有しているか、コネクタ150によって接続されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム300は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、運動駆動ハンドピース159が直接作動する。いくつかの例では、ハンドピース159は、直線力および/または回転力を手動で加えるように使用者によって把持される。
【0200】
真空ハブ226は、シール256(例えば、Oリング)をさらに有している。図示されるように、研削要素シャフト225は、シール256を通って延びている。フィルタ230は、ホース229およびルアーハブ228を介して真空ハブ226に連結されている。フィルタ230は、ホース229およびカプラ232を介して真空源233に接続され得る。フィルタ230は、収集物231を保持することができる。いくつかの例では、真空源233は、医師または操作者がフットペダルを使用して操作する。研削カテーテル250が基端側に引っ張られる際、またはその他の状態で治療装置13が動作しているときに、研削された破片が気道から除去および吸引されて、フィルタ230内に吸い込まれる。
【0201】
使用時には、研削カテーテル250の先端251が先端側気道内腔77に配置され、真空ハブ226を介して吸引が行われることによって、気道の一部分が、研削カテーテル250の基端側ポート257と先端側ポート258との間に向かって収縮する。その結果、研削カテーテル250の隆起したエッジ部125に対して上皮83が引き寄せられる。隆起した研削エッジ部125は、気道壁上皮層83に接触して研削するように機能する。このようにして、気道内腔壁(ここでは気道壁断面34として示されている)から上皮層83が剥がされ、基底膜85が露出する。操作者は、本明細書に記載されるように、カテーテル250振動的または発振的に回転および/または並進させるように、運動駆動ハンドピース159を制御する。いくつかの例では、ボタンまたはスライダ166の作動によって、カテーテル250が振動、発振または移動する周波数、振幅および/または方向が調節される。いくつかの例では、カテーテル250を基端方向に単に引っ張るだけで気道表面を所望の状態に研削することができ、カテーテル250を振動させる必要がない。真空源233からの吸引によって、研削された上皮が、研削カテーテル250、ハブポート159およびホース229を通ってフィルタまたはフィルタトラップ230に入り、収集物231としてそこに留まる。いくつかの例では、隆起した研削エッジ部125は、カテーテル250の切断もしくはエッチングされた形状またはパターンによって構成された研削エッジ部を含む。例えば、研削エッジ部の上記研削形状またはパターンは、カテーテル250を切断またはアーク溶接することによって形成される。いくつかの例では、パターニングまたはエッチングにより、カテーテル250上に鋭いくぼみが形成される。先端側ポート258と基端側ポート257との間に間隔を設けることによって、隆起した研削エッジ部125が上皮層83に当接して研削する力。ポート間の間隔を大きくすると圧力が小さくなり、ポート間の間隔を狭くすると、圧力および研削作用が大きくなる。いくつかの実施形態においては、ポートは、互いから少なくとも0.01mm~50mm離して配置され、例示的な実施形態では、1mm~35mm離して配置される。カテーテルは、1~3000個のポートを有することができる。ポートの直径は0.010mm~6mmである。いくつかの例では、カテーテル250は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、隆起した研削エッジ部125は研削特徴部と称される場合もある。
【0202】
図16に、患者を治療するシステム300の態様を示す。システム300は、研削ブラシ270および運動駆動ハンドピース159を有する治療装置13と、中空カテーテル238に連結された真空ハブ226と、フィルタ230とを有している。研削ブラシ270は、先端272、研削剛毛275、基端271および運動駆動ハブ187を有している。図示されるように、研削ブラシ270は、ブラシワイヤにねじれ274を有するワイヤを含んでもよい。運動駆動ハブ187はモータカプラ195に連結され、モータカプラ195は運動駆動ハンドピース159に連結されている。図示されるように、運動駆動ハンドピース159はスライダスイッチ160を有している。運動駆動ハンドピース159は、電源ケーブル133(または1つもしくは複数のコネクタ150を介して連結された複数の電源ケーブル133)を介してバッテリー134に連結されている。バッテリー134は、運動駆動ハンドピース159に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、1つまたは複数の電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、電気ケーブル135は、コネクタ150を有しているか、コネクタ150によって接続されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム300は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、運動駆動ハンドピース159が直接作動する。いくつかの例では、ハンドピース159は、直線力および/または回転力を手動で加えるように使用者によって把持される。
【0203】
真空ハブ226は、シール227、シールベアリング273およびベアリング234をさらに有している。カテーテル238の先端部239は、基端側気道内腔76に挿入され、研削ブラシ270は、カテーテル238を通って基端側気道内腔76内に延びる。カテーテル238の基端240は、連結部237を介して真空ハブ226に連結されている。図示されるように、研削ブラシ270は、シールベアリング273およびベアリング234を通って延びている。フィルタ230は、ホース229およびルアーハブ228を介して真空ハブ226に連結されている。フィルタ230は、ホース229およびカプラ232を介して真空源233に接続され得る。フィルタ230は、収集物231を保持することができる。いくつかの例では、真空源233は、医師または操作者がフットペダルを使用して操作する。
【0204】
使用時には、研削ブラシ270の先端272は、先端側気道内腔77に配置され、真空ハブ226を介して吸引が行われることによって、カテーテル238の先端部239の先端側の気道部分が収縮する。その結果、研削剛毛275に対して上皮83が引き寄せられる。研削剛毛275は、気道壁上皮層83に接触して研削するように機能する。このようにして、気道内腔壁(ここでは気道壁断面34として示されている)から上皮層83が剥がされ、基底膜85が露出する。真空源233からの吸引によって、研削された上皮が、中空カテーテル238、真空ハブ226およびホース229を通ってフィルタまたはフィルタトラップ230に入り、収集物231としてそこに留まる。いくつかの例では、真空源233は、医師または操作者がフットペダルを使用して操作する。いくつかの例では、研削ブラシ270は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、研削剛毛275は研削特徴部と称される場合もある。
【0205】
図17に、患者を治療するシステム300の態様を示す。システム300は、研削ブラシ270および運動駆動ハンドピース159を有する治療装置13と、ブラシガイドカテーテル305とを有している。いくつかの実施形態では、システム300は、例えば図15に示されるように、真空ハブ、フィルタおよび他の関連要素を有している。ブラシガイドカテーテル305は、先端301、ポート303および基端302を有している。研削ブラシ270は、先端272、研削剛毛275、基端271および運動駆動ハブ187を有している。図示されるように、研削ブラシ270は、ブラシワイヤにねじれ274を有するワイヤを含んでもよい。運動駆動ハブ187はモータカプラ195に連結され、モータカプラ195は運動駆動ハンドピース159に連結されている。図示されるように、運動駆動ハンドピース159はスライダスイッチ160を有している。運動駆動ハンドピース159は、電源ケーブル133(または1つもしくは複数のコネクタ150を介して連結された複数の電源ケーブル133)を介してバッテリー134に連結されている。バッテリー134は、運動駆動ハンドピース159に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、1つまたは複数の電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、電気ケーブル135は、コネクタ150を有しているか、コネクタ150によって接続されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム300は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、運動駆動ハンドピース159が直接作動する。いくつかの例では、ハンドピース159は、直線力および/または回転力を手動で加えるように使用者によって把持される。いくつかの例では、治療装置13は、研削剛毛275の素線が、カテーテル305によって画定される外周を径方向に越えて延びるように構成される。いくつかの例では、治療装置13は、研削剛毛275の素線が、カテーテル305によって画定される外周を径方向に越えて延びないように構成される。
【0206】
使用時には、ブラシガイドカテーテル305の先端301が、先端側気道内腔77に配置される。研削剛毛275は、気道壁上皮層83に接触して研削するように機能する。このようにして、気道内腔壁(ここでは気道壁断面34として示されている)から上皮層83が剥がされ、基底膜85が露出する。真空源からの吸引によって、研削された上皮が、ブラシガイドカテーテル305、真空ハブおよびホースを通ってフィルタまたはフィルタトラップに入り、例えば図15に示すように、収集物としてそこに留まる。本明細書に記載するように(例えば、図27および図28に関する記載)、いくつかの例では、システム300は、研削剛毛275の代わりにまたはこれに加えて、発泡体機構を有している。いくつかの例では、研削ブラシ270は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、研削剛毛275は研削特徴部と称される場合もある。
【0207】
図1および図6図17に示す各実施形態には、図18図19に示す振動制御機構の特徴のいずれを組み込んでもよい。いくつかの実施形態では、制御機構または振動制御機構は、モータアセンブリまたはハンドピース(例えば、運動駆動ハンドピース)に関して本明細書に開示された任意の1つまたは複数の特徴を含んでいる。
【0208】
図18に、患者を治療するシステム400の態様を示す。システム400は、モータ325、モータ駆動シャフト326、偏心駆動ハブ327(回転ディスク等)、偏心駆動ピン328、回転振動ハブ329、回転駆動スロット330、出力シャフト331、運動駆動ハブ187および回転振動カプラキー332を有している。図示されるように、システム400は、モータ325とスライダスイッチ160との間に配置された電源ケーブル133をさらに有している。さらに、システム400は、スライダスイッチ160に連結されたバッテリー134も有している。いくつかの例においては、スライダスイッチ160は、電源ケーブル133(または1つもしくは複数のコネクタ150を介して連結された複数の電源ケーブル133)を介してバッテリー134に連結される。バッテリー134は、モータ325に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、1つまたは複数の電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、電気ケーブル135は、コネクタ150を有しているか、コネクタ150によって接続されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム300は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、モータ325が直接作動する。図示されるように、モータ325の作動によって、矢印Aによって示されるように、回転振動カプラキー332が回転軸線333を中心に振動的に回転する。
【0209】
図18Aに、運動駆動ハブ187によってもたらすことができる振動運動の例示的な態様を示す。矢印Aに示されるように、運動駆動ハブ187は、約60度の運動範囲全体にわたって回転振動できる。同様に、矢印Bに示されるように、運動駆動ハブ187は、約180度の運動範囲全体にわたって回転振動できる。さらに、矢印Cに示されるように、運動駆動ハブ187は、約350度の運動範囲全体にわたって回転振動できる。治療システムは、回転振動に任意の値または値の範囲を設定するように構成できる。いくつかの例では、駆動ハブ187(または研削バルーンまたは研削器具)は、5度の回転範囲全体にわたって振動する。いくつかの例では、駆動ハブ187(または研削バルーンまたは研削器具)は、10度の回転範囲全体にわたって振動する。いくつかの例では、駆動ハブ187(または研削バルーンまたは研削器具)は、0~360度の回転範囲全体にわたって振動する。研削治療装置は、上記振動運動によって、治療装置自体の手動回転を必要とせずに、狭い領域(例えば、1度の振動運動の範囲に対応する領域)から気道壁の内周全域(例えば、360度の振動運動の範囲に対応する領域)までの範囲の、気道壁の制御された部位を研削することができるという利点を備えている。
【0210】
図19に、患者を治療するシステム400の態様を示す。システム400は、モータ325、モータ駆動シャフト326、偏心駆動ハブ327、偏心駆動ピン328、振動駆動スライド336、線形駆動スロット337、出力シャフト331、運動駆動ハブ187および線形振動カプラキー338を有している。図示されるように、システム400は、モータ325とスライダスイッチ160との間に配置された電源ケーブル133をさらに有している。さらに、システム400は、スライダスイッチ160に連結されたバッテリー134も有している。いくつかの例においては、スライダスイッチ160は、電源ケーブル133(または1つもしくは複数のコネクタ150を介して連結された複数の電源ケーブル133)を介してバッテリー134に連結される。バッテリー134は、モータ325に給電するように機能する。壁コンセントプラグ136は、1つまたは複数の電気ケーブル135を介してバッテリー134に連結されている。いくつかの例では、電気ケーブル135は、コネクタ150を有しているか、コネクタ150によって接続されている。いくつかの例では、バッテリー134は二次電池である。いくつかの例では、システム300は、バッテリー134の代わりにAC/DCコンバータを有している。壁コンセントプラグ136が壁コンセントに差し込まれると、壁コンセントからの電気によって、バッテリー134が充電されるか、モータ325が直接作動する。図示されるように、モータ325の作動によって、運動矢印335の方向に示されるように、線形振動カプラキー338を並進軸線334に沿って振動的かつ直線的に並進させることができる。
【0211】
したがって、図18および図19を単独でまたは組み合わせて考察すると、様々な振動運動が達成可能であることが分かる。いくつかの例では、図18の要素を使用して、回転振動運動が実現される。いくつかの例では、図19の要素を使用して、線形並進振動運動が実現される。いくつかの例では、図18および図19の要素を組み合わせて使用して、回転振動運動および線形並進振動運動の両方が実現される。いくつかの例では、これら3つの選択肢が、気道の長手軸線に沿って治療装置を引くことおよび/または押すことと組み合わされる。組み合わされた装置においては、図18に示す構成要素が、図19に示す構成要素と組み合わされている。例えば、回転駆動モータ(図18のモータ325等)が、線形駆動スライド(図19の駆動スライド336等)上に配置される。このようにして、回転駆動モータ(および接続された先端側構成要素)を直線的に振動させることができる。
【0212】
なお、図6図19は必ずしも縮尺どおりに描かれていない場合もあり、送達器具および/または治療装置または他のシステム要素の先端および基端は、焦点を当てて詳細に示すために、目立たせて示されている場合もある。また、カテーテルおよび/または治療装置は、図示されているよりもはるかに長く、4世代より先の気道に沿って前進できるように、気管支を介して様々な気道内に進めることができるように構成されている。同様に、気道は、内側に配置された装置および送達器具を明確に示すために、二等分された状態で図示されている。
【0213】
図20に、患者を治療するシステム500の態様を示す。システム500は、肺治療装置513と、気管支鏡等の送達器具501とを有している。肺治療装置513は、送達器具501によって送達できるようにサイズ設定および構成される。送達器具501は、肺に挿入されるように構成されている。いくつかの実施形態では、肺治療装置513は、送達器具の管腔を通って送達されるように構成されており、例えば、気管支鏡、カテーテル、イントロデューサ、シース、スリーブまたは同様の器具の管腔を通る治療装置を押すことによって送達される。いくつかの実施形態では、治療装置513は、ポート507に入れられ、送達器具501は、気管支樹を通って肺内の標的位置まで進められる。いくつかの例においては、装置513は気管支鏡ポート507内に入り、装置513の先端514はチャネル出口ポート511から先端側に向けられ、装置513の基端515は、気管支鏡ポート507から基端側に延びる。
【0214】
図示されるように、治療装置513はカテーテル516を有し、ガイドワイヤまたは拡張具517が挿入されて、このガイドワイヤまたは拡張具517がカテーテル516を案内するように機能する。この構成によって、カテーテル516が気道内腔内で前進するときに、カテーテル516が気道壁または肺組織を削ることが抑制される。ガイドワイヤまたは拡張具517を配置することによって、カテーテル516を所望の解剖学的位置、例えば、特定の枝、気道枝、気道内腔等に送りやすくなる。いくつかの例では、ガイドワイヤまたは拡張具517の先端部518は、湾曲した部分を有している。いくつかの例では、湾曲した部分に回転力を与えて枝内に向け、カテーテル516を枝内に前進させることができる。いくつかの例では、先端部518の丸い端部は、カテーテル516等のより太いチューブを案内するために役立つ。いくつかの例では、ガイドワイヤまたは拡張具517の先端部518は、放射線不透過性材料を有している。いくつかの例では、カテーテルの先端部が放射線不透過性材料を有している。
【0215】
いくつかの例では、図21に示されるように、治療装置513は、気管支鏡を使用せずに患者Pに導入される。いくつかの例では、カテーテル516は、ガイドワイヤまたは拡張具517を使用して患者Pに導入される。いくつかの例では、カテーテル516は、ガイドワイヤまたは拡張具を使用せずに患者Pに導入される。治療装置513等の、本明細書に開示される治療装置のいずれも、気管支鏡を介して送達してもよいし、気管チューブ(例えば、患者の換気や、声帯を越えた患者気道内へのアクセスに一般的に使用される気管チューブ等)の管腔のみを使用して送達してもよいし、ガイドワイヤのみに沿って案内されてもよいし、チューブやワイヤに案内されることなく送達されてもよい。いくつかの例では、ガイドワイヤまたは拡張具517の先端部の丸い先端は、カテーテル516等のより太いチューブを案内するために役立つ。
【0216】
図22に、本発明の実施形態による例示的ガイドワイヤ617の態様を示す。いくつかの例では、ガイドワイヤ617は、ツイストケーブルワイヤ、編組ワイヤ、逆回転ツイストワイヤまたはこれらの任意の組み合わせを含んでいる。いくつかの例では、ワイヤ620の直径Dは、約1mmから約10mmの範囲の値である。ワイヤ620は、患者の気道内を前進または後退するときに曲がる場合があるが(例えば、角部や他の障害物や解剖学的特徴部において)、いくつかの例においては、ワイヤ620が曲がったときにワイヤ620の各素線621の間に隙間が空かないように構成される。この場合、治療処置を行っている間に、ワイヤ620が引き戻されて真っ直ぐの状態になったときに組織をはさむ可能性のある隙間が形成されない。各ワイヤ素線621の間に隙間が生じると、隙間が閉じたときに組織をはさむ可能性があり、ワイヤ620が患者に引っ掛かる場合や、ガイドワイヤ617の除去時に組織が引き裂かれる場合がある。図22に示される連続ワイヤの実施形態では、ワイヤ620は屈曲時に開かない。上記の隙間は、コアワイヤの細い一部のガイドワイヤでみられる欠点である。いくつかの例では、ワイヤ620の直径Dの値は約1.5mmである。いくつかの例では、ワイヤ620は、複数の個別のワイヤ素線またはワイヤケーブル621から構成される。このような複数素線または複数ケーブルのワイヤ構造は、可撓性の非常に高い滑らかなワイヤを形成できる。いくつかの例では、ワイヤ620は、約375本の個別のワイヤ素線またはケーブル621からなる。いくつかの例では、ワイヤ620またはその一部の素線またはケーブル621の数を少なくして、押し込み性を高くしている。例えば、ワイヤ620の基端部分622が有するケーブルまたは素線の本数は、約4~約50本の範囲である。いくつかの例では、ワイヤ620またはその一部の素線またはケーブル621の数を多くして、可撓性を高くしている。例えば、ワイヤ620の先端部分623が有するケーブルまたは素線の本数は、約50~約1000本の範囲である。このため、図22に示されるガイドワイヤ617は、押し込み性/可撓性の特性が異なる2つの別々の部位を備えたハイブリッド構成を有している。ガイドワイヤ617は、基端側ハブ618、押し込み可能な基端部分622、可撓性先端部分623、基端部分622と先端部分623との間の接続部624および先端側終端625を有している。いくつかの例では、接続部624は溶接接続部である。いくつかの例では、先端側終端625は、先端側溶接終端である。いくつかの例では、先端側終端625は、溶接時に特定の形状に形成される。いくつかの例では、先端側終端625はボール形状を有している。いくつかの例では、ボール形状の直径の値は約2mmである。いくつかの例では、ボール形状の直径は、約1mmから約10mmの範囲の値である。ワイヤ620は、コアワイヤの細いガイドワイヤでみられる欠点であるよじれを発生させることなく、回転力を伝達するように機能する。いくつかの例では、ワイヤ620はハブ618によって回転力を与えられる。いくつかの例では、ワイヤ620は、ワイヤ620のシャフトに沿った任意の部分から回転力を与えられる。この点は、外側のコイルがコアから浮いているため回転力をハブから与える必要のあるコアワイヤの細いガイドワイヤとは異なっている。ワイヤ620は、必要に応じて回転力を加えることができ、使用者がワイヤに回転力を加える必要が生じるたびに基端に戻る必要がないという利点を有している。いくつかの例では、先端側終端625の丸い端部は、カテーテル等のより太いチューブを案内するために役立つ。いくつかの例では、先端側終端625は放射線不透過性材料を有している。
【0217】
図23に、本発明の実施形態による例示的拡張具717の態様を示す。いくつかの実施形態では、拡張具717は、中実なプラスチック製拡張具として構成される。いくつかの例では、拡張具717の先端の丸い端部は、カテーテル等のより太いチューブを案内するために役立つ。図24に、本発明の実施形態による例示的拡張具817の態様を示す。図示されるように、拡張具817は、曲線形状を有する先端部分823を有している。いくつかの例では、拡張具817の先端の丸い端部は、カテーテル等のより太いチューブを案内するために役立つ。図25に、本発明の実施形態による例示的拡張具917の態様を示す。図示されるように、拡張具917は、同一平面上で2方向に湾曲する曲線形状を有する先端部分923を有している。いくつかの例では、拡張具917の先端の丸い端部は、カテーテル等のより太いチューブを案内するために役立つ。
【0218】
図26に、患者を治療するシステム1000の態様を示す。システム1000は、治療装置(図示せず)と、カテーテル1238に連結された真空ハブ1226とを有している。治療装置は、例えば図6図14図16図17図27および図28に示す治療装置等の、本明細書に開示される治療装置のいずれか1つまたは複数の特徴を有していてもよい。カテーテル1238の先端1239は気道内腔に挿入され、治療装置は、カテーテル1238を通って気道内腔内に延びる。カテーテル1238の基端1240は、連結部1237を介して真空ハブ1226に連結されている。システム1000は、ホース1229および真空源を介して真空ハブ1226に連結されるフィルタも有している。システム1000に組み込み可能な例示的なフィルタおよび/または真空源の態様は、図14図16に示されている。使用時には、治療装置がカテーテル1238内に配置され、洗浄流体が、洗浄流体源1810から洗浄流体導管1820と洗浄流体ポート1890のポート導管1892とを通って、カテーテル1238の外側管腔1250の基端部分1252に送られて、外側管腔の先端部分1254から出る。これによって、洗浄流体が気道内腔L内に流入する。洗浄流体をカテーテル1238の内側管腔1260内に引き込むように、例えば真空源1133からホース1229を介し、真空ハブ1226を介して吸引が行われる。さらに、前述したように、真空源1133からの吸引によって、研削された上皮および/または他の組織もしくは破片を、気道からカテーテル内側管腔1260およびホース1229を介してフィルタまたはフィルタトラップに引き込み、収集物として留まらせることができる。いくつかの例では、真空源1133は、医師または操作者がフットペダルを使用して操作する。
【0219】
このように、本発明の実施形態は、吸引および流体送達を可能にするダブルルーメンまたはマルチルーメンカテーテル構成を包含する。このような実施形態によって、治療装置または療法装置を内側管腔1260内に(例えばシール1227を通って)送達できる。いくつかの例では、シール1227は、治療装置が内側管腔1260に導入されるまで、内側管腔1260の後方開口部または基端部分1262を閉じるように機能する。このようにして、流体送達ポート1890および外側管腔1250を介して洗浄流体を注入することができ、その後、洗浄流体は、内側管腔1260、真空ハブ1226の吸引ポート1241、ホース1229および真空源1133を介した作用によって患者の体内から吸出させることができる。いくつかの実施形態では、システム1000は、患者の気道内に洗浄流体を供給するために、生理食塩水または他の流体を注入する。この洗浄流体は、例えば、真空を生じさせて気道組織または壁をカテーテル1238に向かって引き寄せる際や、気道内腔Lから破片を吸引する際に、患者の体内から吸出させることができる。
【0220】
いくつかの実施形態においては、システム2000等のシステムを使用して、抗生物質、抗真菌剤または他の薬剤を含む流体を肺に注入することによって、気道壁の刺激や気道内に存在している粘液に関連する感染を最小限に抑えることができる。ステロイド剤、創傷治癒薬等の他の薬剤を、カテーテル1238(または二次管腔1250)に導入して、気道壁の切削、研削または治療に対する炎症反応の速度を低減または制御することも可能である。吸引中に上記のような流体または生理食塩水を注入することによって、患者の気道に出入りする流路を形成することが可能となる。これによって、破片やその他の汚染物質を気道から移動させて、治癒、気道壁の組織修復および呼吸を改善できる。いくつかの例では、注入された流体は、所望または所定の温度を有している。例えば、流体は、注入前に特定の温度に加熱されるか、または注入前に特定の温度に冷却される。
【0221】
図27および図28に、本発明の実施形態による治療装置2000の態様を示す。図示されるように、治療装置2000は、先端部分2020に連結された長尺状要素2010を有している。治療装置2000は、カテーテル3000を介して、患者内の所望の部位、例えば、患者の肺の気道内腔L内に送達される。いくつかの実施形態では、先端部分2020は、拡張および圧縮可能な材料を含むか、またはそのような材料からなる。例えば、先端部分2020は、拡張する発泡材を有している。例示的な実施形態では、先端部分がこすり落とし機能を実行する。いくつかの例では、先端部分がブラッシング機能を実行する。いくつかの例では、先端部分2020は、拡張可能な連続気泡構造の発泡材またはこすり落とし材を有しており、プラスチック製の食器洗浄具に似ている。いくつかの例では、先端部分は、上皮を研削できる硬さを有する材料から形成される。いくつかの例では、先端部分2020は、様々なシリコーン、ナイロンおよび/または他の連続気泡プラスチックのいずれかを含む。図28に示されるように、先端部分2020がカテーテル3000の先端側開口3010の先端側に前進すると、先端部分2020のサイズおよび/または直径が増加する。例えば、先端部分の直径の拡張量は、約2mm~約10mmの範囲である。拡張時または拡張後には、先端部分2020は、手動または速度100Hzのモータを用いて、ゆっくりまたは周期的に、軸方向に移動されるか、回転されるか、またはこれら両方が組み合わせて行われる。送達カテーテルは、先端部分2020がこすり落としを行っているときに、同時に吸引を実行できる。あるいは、先端部分2020またはこすり落とし要素を展開する前、必要に応じてこすり落としの最中、次いで、カテーテル3000から先端部分2020またはこすり落とし要素を取り出した後(例えば、基端側に後退させた後)に、粘液を吸引するように処置を行う。いくつかの例では、長尺状要素2010は、長尺状部材と称される場合もある。いくつかの例では、先端部分2020は研削特徴部と称される場合もある。
【0222】
いくつかの実施形態では、先端部分2020は、様々な膨張可能なポリマー、鉄および非鉄金属の金属メッシュ、および/または、拡張可能な要素として使用される金属とポリマーとの組み合わせの複合材料を含んでいる。いくつかの例では、先端部分2020は、カテーテルの先端側開口3010から前進することによって、気道壁に対して拡張可能となり、その後、気道をこすり落として上皮および杯細胞を除去するために使用される。作用の深さの制御は、制御された運動パターンに従い、研削材の研削性能を制御することによって行うことができる。いくつかの例では、深さ制御は、治療装置の微細動作を実行することによって達成または調整可能である。
【0223】
いくつかの例では、先端部分2020は、熱可塑性材料、熱硬化性材料およびエラストマー材料のあらゆる結晶またはアモルファス形態を含む、様々なポリマーのいずれかを含んでいる。先端部分2020の製造に使用できる例示的な材料としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シリコーン、ビニルポリシロキサン(PVS)または天然高分子等が挙げられるが、これらに限定されない。天然高分子は、人体に存在するタンパク質や核酸から作られる場合もあり、例えば、セルロース、天然ゴム、絹、ウール、デンプンおよびラテックス由来の天然ゴム等である。いくつかの例では、先端部分2020の材料には、ループ状の素線またはフィラメントが含まれる。いくつかの例では、このようなループ状の素線またはフィラメントは、先端部分の削り落とし作用を高めるエッジ部を形成している。例示的な実施形態では、先端部分2020は、流体、組織粒子および/または破片の通過を可能とする材料からなる。いくつかの例では、先端部分2020には、1つまたは複数の種類の研削材が含まれる。
【0224】
いくつかの例では、治療装置2000および/またはカテーテル3000は、ガイドワイヤまたは拡張具を使用して患者Pに導入される。いくつかの例では、治療装置2000および/またはカテーテル3000は、ガイドワイヤまたは拡張具を使用せずに患者Pに導入される。本明細書に開示される治療装置のいずれも、気管支鏡を介して送達してもよいし、気管チューブ(例えば、患者の換気や、声帯を越えた患者気道内へのアクセスに一般的に使用される気管支チューブ等)の管腔のみを使用して送達してもよいし、ガイドワイヤのみに沿って案内されてもよいし、チューブやワイヤに案内されることなく送達されてもよい。いくつかの例では、治療装置2000は、カテーテル3000のみを使用して患者の気道に導入される。いくつかの例では、カテーテル3000は、気管支鏡と連結されているか、または気管支鏡によって導入される。いくつかの例では、治療装置2000は、カテーテルを使用することなく、気管支鏡のみを用いて患者の気道に導入される。
【0225】
いくつかの例では、カテーテル2000の内側管腔の直径は、約6mmから約10mmの範囲の値である。本明細書に開示される実施形態のカテーテルまたは可撓性胴体部は、すべて同様の寸法の内側管腔を有することができる。
【0226】
いくつかの例では、先端部分2020は、円柱状の形状または輪郭を有している。いくつかの例では、先端部分202は球状の形状または輪郭を有している。いくつかの例では、先端部分2020は円錐形の形状または輪郭を有している。いくつかの例では、先端部分は、先端側の直径および断面がより大きく、基端側の直径および断面がより小さい。
【0227】
いくつかの例において、先端部分の拡張比の値は、約10:1である(例えば、図28に示される非圧縮状態の寸法と、図27に示される圧縮状態の寸法との比較による)。
いくつかの例では、長尺状要素2010は、ツイストケーブル、編組ケーブルまたは図22を参照して本明細書に記載された任意の実施形態である。いくつかの例では、先端部分2020は、長尺状要素の基端部分または中央部分により近く配置され、例えば、図22に示される接続部624またはその近くに配置される。いくつかの例では、先端部分2020は長尺状要素2010に接着される。いくつかの例では、長尺状要素2010の先端部が放射線不透過性材料を有している。
【0228】
いくつかの実施形態では、発泡体(例えば、先端部分2020の膨張可能な発泡体材料)は、直径の値が約10μmから約5mmの範囲である連続気泡細孔を有するように製造される。いくつかの例では、連続気泡の細孔は、直径の値が約10μmから約5mmの範囲である1つまたは複数の寸法(例えば、幅、長さまたは高さ)を有している。
【0229】
いくつかの例では、密に圧縮された発泡体または粗いスポンジ構造(図27等)は、圧縮程度の低い、または圧縮されていない発泡体または粗いスポンジ構造(図28等)に拡張可能である。図27からわかるように、発泡体または粗いスポンジは、カテーテル3000の内部に閉じ込められることによって、圧縮状態に保持される。図28に示すように、先端部分2020の発泡体構造は、中心領域または内部領域に完全な状態の拡張ループ(または円)が接続された網状構造を有しており、発泡体構造の外側縁端または外面から、切断された素線または縁端が突出している。切断された素線は剛毛として機能し、追加のこすり落とし作用をもたらすことができる。先端部分2020の外面に位置するループまたは円(例えば、連続気泡細孔を画定している)の露出した縁端も削り落とし作用をもたらすことができる。
【0230】
いくつかの例では、発泡体要素または先端部分2020は、整列された束または整列されていない束に絡み合ったリボンの素線から形成されるか、このような素線を含んでいる。リボンは、ステンレス鋼、アルミニウム、タンタル、タングステン、銀(または他の静菌性もしくは殺菌性材料)、金(または他の高放射線不透過性材料)、チタン、ニチノールまたは他の同様の記憶形状合金等の鉄または非鉄金属合金、炭素、ポリマー、絹等の合成もしくは天然繊維または上記のいずれかの組み合わせ等の、様々な材料のいずれかを含むか、このような材料から製造されるか、このような材料がめっきされている。リボン束のいくつかの実施形態においては、束は、任意の材料(例えば、リボンの製造に使用される材料)の弾性変形の範囲内で曲げられており、カテーテル3000の管腔から束が解放されると、束は、第1の直径から第2の直径に拡張する。いくつかの例では、束がカテーテルの管腔から解放された後、束はガイドカテーテル内の直径2mmから直径15mm以上まで拡張する。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態は、重度のCOPD患者の非常に大きな組織損傷も想定して構成されており、このような患者および患者の体内の特に損傷の大きい肺組織を治療するために特別に設計された治療方法および装置を提供できる。このような組織の損傷は、先行の治療計画では特定または認識されておらず、不十分な治療や望ましくない結果がもたらされている場合が多い。特に、本発明は、治療計画の決定において、組織の損傷程度を判定するとともに、1つまたは複数の肺葉において損傷が発生している位置の判定を行う。組織損傷の程度と分布は、治療法を実行すべき最適な位置を決定するために使用される。また、これらのデータは、患者を経時的に評価して、最初の処置で得られた改善を強化または回復させるために前回の処置で標的とされた位置と同じ位置に治療を施すべきか否かを判断するためや、元の治療によって得られた効果を回復するために、以前に処置されていない新しい位置に治療処置を実行することが最善であるか否かを判断するため等に使用される。
【0232】
全体として、患者の様々な症状が改善される場合が多い。これらの症状の改善の例としては、咳嗽(例えば、閉じ込められた空気および粘液による咳嗽)の減少、通路がより大きく、より長い時間開くことによる粘液を除去する能力の増加、運動性の向上(例えば、現在標準の6分間歩行試験の測定による)、呼吸努力の軽減、気分変調の低減、呼吸数の減少、声門閉鎖反射性の低減(粘液の除去により、炎症が軽減し咳嗽が減少)、呼吸不全の発生率の減少、COPD増悪の発生間隔の延長等が挙げられる。
【0233】
肺治療装置の実施形態は、上記の治療効果および臨床目標を達成するための様々な特徴および設計要素を有している。さらに、このような特徴および設計要素から様々な変形例を構成することが可能であり、これらのいくつかが本明細書に記載されている。
【0234】
本明細書には、肺治療装置の様々な態様がより詳細に説明されている。様々な態様および特徴が説明されているが、装置の実施形態は、これらの態様および特徴の任意の組み合わせを有することが理解される。同様に、いくつかの実施形態は、記載された態様および特徴のすべてを含まない場合もある。
【0235】
いくつかの実施形態では、治療システムの1つまたは複数の構成要素は、薬剤等の作用物の制御された送達を行うように構成されている。いくつかの例では、このような送達によって、創傷治癒、組織修復、炎症、肉芽組織の生成、過形成等の速度が低下する。
【0236】
本明細書には様々なアプローチが記載されている。例えば、治療装置は、送達器具の管腔を介して導入されてもよい(装置自体が管腔内で押し引きされる、イントロデューサ内に配置される、管腔内を前進可能なカテーテルやガイドワイヤ等の追加器具に装着される等)。また、治療装置は、送達器具の外側部分(例えば、気管支鏡の挿入コード先端またはカテーテル上)に装着されて導入されてもよい。治療装置は、内側もしくは外側のスリーブまたは器具によって、装着位置から押し引きされてもよい。
【0237】
ガイドワイヤは、肺組織内の前進に適した構成を有しており、具体的には、事故または損傷を抑制または防止できる状態で肺組織に接触するように構成されている。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤには、ワイヤケーブル、ワイヤ束、連続編組体、ツイストワイヤ、ツイストワイヤ束シャフト構造等が含まれ、これらは、鈍い先端(一般的に、ガイドワイヤシャフト構造の先端を圧着、接着または溶接することによって形成される)を有している。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤの直径は、0.0127cm~0.254cm(0.005~0.100インチ)の範囲、好ましくは約0.0457cm~0.1778cm(0.018~0.070インチ)である。通常、ガイドワイヤは、送達中にガイドワイヤが湾曲または屈曲するときに、隙間が空かないか、非常に小さい隙間しか空かないように、カテーテルの管腔を塞いでいる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、隙間に組織が引っ掛かることを抑制するために、半径が1.27cm(0.5インチ)以下の屈曲が発生したときに、ガイドワイヤの組織に接触する部分に空く隙間が0.0762cm(0.030インチ)を超えない、より好ましくは、0から0.0508cm(0.020インチ)の範囲であるように構成される。
【0238】
上記および関連するガイドワイヤ特徴部の態様は、本明細書に開示されるガイドワイヤの実施形態(例えば、図6図7A図7D図8A図8B図9図10図11および図20図25)のいずれか1つまたは複数を参照してさらに理解できる。いくつかの例においては、本明細書に記載のガイドワイヤは、ステンレス鋼、アルミニウム、タンタル、タングステン、銀(または他の静菌性もしくは殺菌性材料)、金(または他の高放射線不透過性材料)、チタン、ニチノールまたは他の同様の記憶形状合金等の鉄または非鉄金属合金、炭素、ポリマー、絹等の合成もしくは天然繊維または上記のいずれかの組み合わせ等の、様々な材料のいずれかを含むか、このような材料から製造されるか、このような材料がめっきされている。
【0239】
医用画像処理を使用して、本明細書に開示のシステムまたは装置の実施形態のいずれかの送達または動作を視覚化できる。医用画像処理には、人体内の装置、器官または組織を、これらの装置、器官または組織を露出させることなく、人の目の視線を使って可視化するリアルタイム画像処理、記録またはコンピュータ処理を可能にするあらゆる形態の機器の使用が含まれる。このような医用画像処理手法は、一般的には、低周波数から高周波の電磁エネルギーまたは音響エネルギーの放出を利用しており、例えば気管支鏡に装備されている1つまたは複数のビデオカメラ、コンピュータ断層撮影装置、バイプレーン画像処理装置、蛍光透視装置、超音波装置または標準的な平面X線装置等が使用される。いくつかの実施形態では、肺治療装置は、ビデオ支援による低侵襲皮膚切開手術または開腹手術等の外科的手法によって肺内に配置される。本明細書に記載の肺治療装置の多くは、任意の肺、肺葉、主幹セグメント、セグメント、サブセグメントまたは気管支樹のさらに先に配置することができる。同様に、装置の多くは、胸壁を介して直接肺に挿入可能であり、また、主気管支の壁を介して挿入されることによって、破壊された実質のポケットに到達させてもよい。装置の多くは、開胸手術または任意の種類の内視鏡によって植え込み可能である。本明細書に記載の呼吸機能試験は、良好かつ適正な反応を示す優れた指標である。
【0240】
記載されたシステムおよび装置のすべての特徴は、必要な変更を加えることにより、記載された方法に適用可能であり、逆もまた同様である。本発明の実施形態は、本明細書に開示の治療システムの1つまたは複数の構成要素を有するキットを含む。いくつかの実施形態では、キットには、1つ以上の治療システムまたは1つ以上の治療システムの1つ以上の構成要素と、例えば本明細書等に開示される方法のいずれかに従ってシステムを使用するための説明書とを含んでいる。
【0241】
本発明の好適な実施形態について説明したが、このような実施形態は単なる例示である。当業者であれば、多数の変形、変更および置換を、本発明から逸脱することなく行うことが可能である。本発明の実施においては、本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替例を採用することができる。本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。これらの特許請求の範囲内の方法および構造ならびにこれらの均等物は、特許請求の範囲に含まれる。
図1
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【国際調査報告】