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特表2022-548892てんかん患者をフェンフルラミンで治療する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】てんかん患者をフェンフルラミンで治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20221115BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20221115BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/08
A61P25/18
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K31/19
A61K31/36
A61K31/5513
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517170
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 IB2020000748
(87)【国際公開番号】W WO2021053389
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/901,514
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/044,932
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515314845
【氏名又は名称】ゾゲニクス インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】リーダー サッド
(72)【発明者】
【氏名】モリソン グレン
(72)【発明者】
【氏名】ファーフェル ゲイル エム.
(72)【発明者】
【氏名】マーティン パーセナ エム.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA181
4C084ZA182
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA13
4C086BC53
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA06
4C086ZA18
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA03
4C206FA08
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA77
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA06
4C206ZA18
(57)【要約】
本開示は、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療及び/または予防する方法であって、患者または患者集団にフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が投与されるか、または投与されている、方法を提供する。本開示には、フェンフルラミンと、ある特定のセロトニン受容体アゴニスト、特にCNS浸透性セロトニン受容体アンタゴニストとの併用が禁忌であるという認識が含まれる。本開示は、フェンフルラミンを投与される前記患者が、ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを併用投与されないように警告されており、セロトニン受容体アンタゴニストを併用投与されず、かつ/またはセロトニン受容体アンタゴニストの併用投与を中止される、方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
てんかんの治療方法であって、
治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を、治療の必要な患者に投与することを含み、前記患者が、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを同時に投与されない、前記方法。
【請求項2】
前記患者が、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振も特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、精神病態または精神病の併発も特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
患者集団におけるてんかんの治療方法であって、前記患者が、てんかん及び/またはてんかん性脳症と診断されており、前記患者が、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振も特徴とし、前記方法が、
セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを投与されていない患者に治療有効量のフェンフルラミンを投与すること
を含む、前記方法。
【請求項5】
てんかん及び/またはてんかん性脳症と診断された患者集団の治療方法であって、
治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することと、
極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振について前記患者をモニタリングすることと、
極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を発現する患者において、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストではない食欲刺激剤を投与することと
を含む、前記方法。
【請求項6】
フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与されているてんかん患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振の治療方法であって、
セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストではない食欲刺激剤を投与すること
を含む、前記方法。
【請求項7】
フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与されているてんかん患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振の治療方法であって、
セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを前記患者に投与することと、
前記セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を前記患者に提供することと
を含む、前記方法。
【請求項8】
フェンフルラミンをてんかん患者に投与する方法であって、前記患者が、別の中枢性病態に対する治療も必要としており、前記方法が、
治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を前記患者に提供することと、
セロトニン受容体アンタゴニストの投与によりフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を前記患者に提供することと
を含む、前記方法。
【請求項9】
てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者において、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療する方法であって、
治療有効用量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含み、前記患者が5-HT受容体アンタゴニストで治療されていない、前記方法。
【請求項10】
前記セロトニン受容体アンタゴニストが、シプロヘプタジン、または5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニスト、5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストもしくは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストから選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記セロトニン受容体アンタゴニストが、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び/または5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与されているてんかん患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振の治療方法であって、
5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストを前記患者に投与することと、
5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を前記患者に提供することと
を含む、前記方法。
【請求項13】
てんかん及び/またはてんかん性脳症と診断された患者集団の治療方法であって、
治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することと、
極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振について前記患者をモニタリングすることと、
極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を発現する患者において、食欲刺激剤を投与することであって、前記食欲刺激剤が、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである、食欲刺激剤を投与することと
を含む、前記方法。
【請求項14】
食欲刺激剤を投与される患者に、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記てんかん及び/またはてんかん性脳症が、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、レット症候群、ドゥーズ症候群、及び/またはウエスト症候群であるか、あるいはこれらを含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び/または5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストが、シプロヘプタジン、クロザピン、ドキセピン、クエチアピン、ケトチフェン、ピゾチフェン、ペルフェナジン、ミアンセリン、ミルタザピン、リスペリドン、及びアセナピンから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フェンフルラミンが、1mg/kg/日~0.01mg/kg/日の範囲の用量、最大用量26mg/日で投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記フェンフルラミンが、経口送達、注射送達、経皮送達、吸入送達、経鼻送達、口腔内送達、直腸送達、膣送達、及び非経口送達からなる群より選択される投与形態で投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記投与形態が経口液剤であり、前記フェンフルラミンの量が、120mg以下、60mg以下、30mg以下、及び20mg以下からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
スチリペントール、クロバザム、及びバルプロエートからなる群より選択される併用治療剤を投与すること
をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
てんかん及び/またはてんかん性脳症の治療方法であって、
治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供すること;ならびに
前記医薬組成物に付随するラベル、添付文書、または投薬ガイドによって、医師に、一部の患者は体重減少、るいそう、及び/または食欲不振を呈する場合があり、セロトニンアンタゴニストである食欲刺激剤との併用治療を回避するように助言すること
を含む、前記方法。
【請求項22】
前記セロトニンアンタゴニストがシプロヘプタジンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記セロトニンアンタゴニストが、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
薬学的に許容される担体と、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩とを含む製剤を提供することによって、(a)ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群、ならびに(b)体重減少、るいそう、及び/または食欲不振と診断された患者を治療すること;ならびに
前記製剤に付随するラベル、添付文書、または投薬ガイドによって、医師に、セロトニンアンタゴニストとの併用治療を前記患者に行うのを回避するように助言すること
を含む、方法。
【請求項25】
前記セロトニンアンタゴニストがシプロヘプタジンである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群と診断された患者に、薬学的に許容される担体と、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩とを含む液体製剤を投与すること;及び
前記製剤に付随するラベル、添付文書、または投薬ガイドによって、前記患者に、セロトニン受容体アンタゴニストによる治療を回避するように助言すること
を含む、方法。
【請求項27】
前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が、10.0mg/kg/日~0.01mg/kg/日の範囲の用量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩が、120mg以下、60mg以下、30mg以下、及び20mg以下からなる群より選択される量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
フェンフルラミン製剤を含む容器と、
セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストとの併用投与を行わないように警告する内容を含む添付文書、ラベル、または投薬ガイドと
を含む、キット。
【請求項30】
前記5-HT受容体アンタゴニストが、5-HT1A、5-HT1D、5-HT2A、及び5-HT2Cから選択されるサブタイプのうちの1つ以上のアンタゴニストである、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記5-HT受容体アンタゴニストが、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである、請求項29に記載のキット。
【請求項32】
前記5-HT受容体アンタゴニストが、シプロヘプタジン、クロザピン、ドキセピン、クエチアピン、ケトチフェン、ピゾチフェン、ペルフェナジン、ミアンセリン、ミルタザピン、リスペリドン、及びアセナピンから選択される5-HT2A受容体及び/または5-HT2C受容体のアンタゴニストである、請求項29に記載のキット。
【請求項33】
前記フェンフルラミン製剤が液体製剤である、請求項29に記載のキット。
【請求項34】
前記添付文書、ラベル、または投薬ガイドが、(a)フェンフルラミンを用いてドラベ症候群もしくはレノックス・ガストー症候群を治療できること、ならびに/または(b)フェンフルラミンで治療すると、体重減少、るいそう、及び/もしくは食欲不振が生じる場合があることをさらに通知する、請求項28に記載のキット。
【請求項35】
薬学的に許容される担体と、フェンフルラミンを含む活性成分とを含む製剤の複数回用量を含む容器と、
前記容器に添付された、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者の治療についての説明であって、前記患者がセロトニン受容体アンタゴニストを投与されていない場合に前記患者に前記製剤を投与する旨を含む、前記説明と
を含む、キット。
【請求項36】
前記製剤が、溶液1ミリリットル当たり2.5ミリグラムのフェンフルラミンを含む経口液剤であり、
前記説明が、患者の体重及び投与する経口液剤の体積に基づいて前記患者に投与することを示す、
請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記製剤が、錠剤、崩壊錠、カプセル剤、ロゼンジ剤、及びサッシェ剤からなる群より選択される経口用固体製剤である、請求項35に記載のキット。
【請求項38】
前記製剤が、経皮パッチで提供される、請求項35に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.分野
本発明は概して、てんかん及び/またはてんかん性脳症をフェンフルラミンで治療する分野、ならびにある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを併用投与すると抗発作作用が喪失し得るという発見に関する。
【背景技術】
【0002】
II.背景
てんかんは、発作、または異常な行動、感覚、及び時には意識の喪失の期間を特徴とする中枢神経系(神経)障害である。フェンフルラミン、すなわち3-トリフルオロメチル-N-エチルアンフェタミンは、ある特定の形態のてんかん及び/またはてんかん性脳症の治療を含む相当数の治療用途を有する、アンフェタミン誘導体である。他の薬物との併用禁忌を考慮に入れる、フェンフルラミンによる安全かつ有効な治療法に対する継続的なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0003】
III.概要
本開示は、ある特定のセロトニンアンタゴニスト(serotonergic antagonist)が、フェンフルラミンの抗発作作用を弱める可能性があるという知見を提供する。本開示には、フェンフルラミンを投与されている、及び/またはフェンフルラミンに暴露されている患者の一部は、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を発現し得るので、これらの患者では、食欲刺激剤の併用投与が推奨されるという認識が含まれる。とりわけ、本開示では、ある特定のセロトニンアンタゴニストは、フェンフルラミンの有効性を低下させる場合があるという点で、セロトニンアンタゴニストである、ある特定の食欲刺激剤に伴う問題が認識されている。
【0004】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミンで治療した患者(例えば、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を発現する患者)に、(i)ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを併用投与しないように警告し(例えば、ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを併用投与すると、フェンフルラミンの発作防御作用が低下し得る旨を通知し)、(ii)セロトニン受容体アンタゴニストを併用投与せず、及び/または(iii)セロトニン受容体アンタゴニストの併用投与を中止する方法及びキットを提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、本開示は、てんかんの治療方法であって、治療の必要な患者に、治療有効量のフェンフルラミンを投与することを含み、前記患者は、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを同時に投与されず、かつ/またはセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストに暴露されない、方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、患者は、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振も特徴とする。
【0007】
いくつかの実施形態では、患者は、精神病態及び/または精神病の併発も特徴とする。いくつかの実施形態では、精神病態または精神病の併発は、脱線して支離滅裂な会話と思考、幻覚、妄想及び攻撃、ならびに大げさかつとっぴで支離滅裂な行動、会話もしくは会話内容の貧困、感情鈍麻、社会的引きこもり、アンヘドニア、無感情、注意障害及び/または自己モニタリング障害であるか、またはこれらを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者集団におけるてんかんの治療方法であって、その患者が、てんかん及び/またはてんかん性脳症と診断されており、その患者が、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振も特徴とし、その方法が、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを投与されておらず、かつ/またはセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストに暴露されていない患者に、治療有効量のフェンフルラミンを投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、てんかん及び/またはてんかん性脳症と診断された患者集団の治療方法であって、その方法が、(i)治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することと、(ii)極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振についてその患者をモニタリングすることと、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を発現する患者において、(iii)食欲刺激剤を投与することを含み、その食欲刺激剤が、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストではない方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、約0.1mg/kg/日~約2.5mg/kg/日の範囲内の1日用量で投与する。いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、約2.5mg未満/kg/日、約2.0mg未満/kg/日、約1.5mg未満/kg/日または約1.0mg未満/kg/日(約1.0mg/kg/日、約0.95mg/kg/日、約0.9mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.7mg/kg/日、約0.65mg/kg/日、約0.6mg/kg/日、約0.55mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.45mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.35mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.2mg/kg/日、約0.15mg/kg/日~約0.1mg/kg/日など)の1日用量で投与する。
【0011】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの治療上有効な合計1日用量は、40mg以下、30mg以下または20mg以下である。
【0012】
本開示には、フェンフルラミンを低用量で(例えば、0.1mg/kg~0.5mg/kgの範囲内、例えば、0.1mg/kg~0.35mg/kgの用量で1日に2回)投与する実施形態では、フェンフルラミンの抗発作活性が、他の薬剤(ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストなど)による干渉を受けやすい場合があるという認識が含まれる。ある特定の実施形態では、ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを1つ以上、併用投与するときには、フェンフルラミンの用量を増やす。
【0013】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、フェノチアジン(トリフルオペラジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、アセトフェナジン、トリフルプロマジン、メソリダジン)、ブチロフェノン(ハロペリドール)、チオキサンテン(クロルプロチキセン)、ジヒドロインドール(モリンドン)、ジフェニルブチルピペリジン(ピモジド)、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、パリペリドン、カリプラジン、ブレクスピプラゾール、ならびに三環系抗ヒスタミン剤(シプロヘプタジン、ピゾチフェン、ケトチフェン、アザタジン、ロラタジン及びデスロラタジン)から選択される抗精神病剤と併用投与する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩を投与されている、及び/またはフェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩に暴露されているてんかん患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振の治療方法であって、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストではない食欲刺激剤を投与すること含む、方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩を投与されている、及び/またはフェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩に暴露されているてんかん患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振の治療方法であって、(i)セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストをその患者に投与することと、(ii)前記セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明をその患者に提供することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを投与されている、及び/またはセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストに暴露されている患者の発作(例えば発作再発)についてモニタリングする。
【0016】
いくつかの実施形態では、体重減少、るいそう、及び/または食欲不振を呈する患者に、例えば、ドロナビノール(THC)、メゲストロール及び/またはオキサンドロロン、オレキシン(ビタミンB複合体サプリメント)、ベナドリル[ジフェンヒドラミン]、クレマスチン及びクロルフェニラミン、フェキソフェナジン及び/またはセチリジンである食欲刺激剤との併用治療を行ってよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩を投与されている、及び/またはフェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩に暴露されているてんかん患者集団における精神病の治療方法であって、(i)セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストをその患者に投与することと、(ii)前記セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明をその患者に提供することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを投与されている、及び/またはセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストに暴露されている患者の発作(例えば発作再発)についてモニタリングする。いくつかの実施形態では、精神病は、脱線して支離滅裂な会話と思考、幻覚、妄想及び攻撃、ならびに大げさかつとっぴで支離滅裂な行動、会話もしくは会話内容の貧困、感情鈍麻、社会的引きこもり、アンヘドニア、無感情、注意障害及び/または自己モニタリング障害であるか、またはこれらを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミンをてんかん患者に投与する方法であって、前記患者が、別の中枢性病態に対する治療も必要としており、前記方法が、(i)その患者に、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を提供することと、(ii)セロトニン受容体アンタゴニストの投与によりフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明をその患者に提供することを含む、方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者において、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療する方法であって、その患者に治療有効用量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することを含み、その患者が5-HT受容体アンタゴニストで治療されていない、方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの治療有効用量は、約0.1mg/kg/日~約2.5mg/kg/日の範囲内である。いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの治療有効用量は、約2.5mg未満/kg/日、約2.0mg未満/kg/日、約1.5mg未満/kg/日または約1.0mg未満/kg/日(約1.0mg/kg/日、約0.95mg/kg/日、約0.9mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.7mg/kg/日、約0.65mg/kg/日、約0.6mg/kg/日、約0.55mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.45mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.35mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.2mg/kg/日、約0.15mg/kg/日~約0.1mg/kg/日など)の1日用量である。
【0021】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの治療上有効な合計1日用量は、40mg以下、30mg以下または20mg以下である。
【0022】
いくつかの実施形態では、5-HT受容体アンタゴニストは、表3から選択する。
【0023】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジン、または5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニスト、5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストもしくは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストから選択する。
【0024】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び/または5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである。いくつかのある特定の実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、BRL15572、MDL73005EF、N-デスメチルクロザピン及びORG-5222から選択される5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、クロルプロマジン、ミアンセリン、ペルフェナジン及びロキサピンから選択される5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0025】
ある特定の実施形態では、患者は、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストで治療されていない。ある特定の実施形態では、患者に、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストが、フェンフルラミンの有効性を弱める(例えば、発作の確率が上昇する)場合があることを通知する。ある特定の実施形態では、患者は、BRL15572、クロルプロマジン、ミアンセリン、N-デスメチルクロザピン、ORG-5222、ペルフェナジン、ロキサピン及びピモジドから選択される5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストで治療されていない。
【0026】
ある特定の実施形態では、患者は、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストから選択される5-HT受容体アンタゴニストで治療する。いくつかの実施形態では、患者に、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストが、フェンフルラミンの有効性を弱める場合があることを通知するとともに、患者を5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び/または5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストで治療する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与されている、及び/またはフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩に暴露されているてんかん患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振の治療方法であって、(i)5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストをその患者に投与することと、(ii)5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストの投与によりフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明をその患者に提供することを含む、方法を提供する。
【0028】
ある特定の実施形態では、ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを1つ以上、併用投与するときには、フェンフルラミンの用量を増やす。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示は、てんかん及び/またはてんかん性脳症と診断された患者集団の治療方法であって、その方法が、(i)治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を投与することと、(ii)極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振についてその患者をモニタリングすることと、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を発現する患者において、(iii)食欲刺激剤を投与することを含み、その食欲刺激剤が、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態では、提供する方法は、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストの投与によりフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を提供することをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示の文脈におけるてんかん及び/またはてんかん性脳症は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、レット症候群、ドゥーズ症候群、ウエスト症候群、結節性硬化症(TSC)、Dup15q症候群、CDKL5欠損症、PCDH19遺伝子内の変異(複数可)を伴うてんかん性脳症及び/またはナトリウムチャネル遺伝子内の変異を伴うてんかん性脳症であるか、またはこれらを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示の文脈におけるてんかん及び/またはてんかん性脳症は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、レット症候群、ドゥーズ症候群、及び/またはウエスト症候群であるか、またはこれらを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジン、クロザピン、ドキセピン、クエチアピン、ケトチフェン、ピゾチフェン、ペルフェナジン、ミアンセリン、ミルタザピン、リスペリドン、及びアセナピンから選択される5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び/または5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0034】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、10.0mg/kg/日~0.01mg/kg/日の範囲の用量で投与されるか、または投与されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、経口送達、注射送達、経皮送達、吸入送達、経鼻送達、口腔内送達、直腸送達、膣送達、及び非経口送達からなる群より選択される投与形態で投与されるか、または投与されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、経口液剤として投与されるか、または投与されている。いくつかのある特定の実施形態では、フェンフルラミンは、10mg~200mgの範囲内の量で投与されるか、または投与されている。いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、120mg以下、60mg以下、30mg以下、及び20mg以下である量で投与されるか、または投与されている。
【0037】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの治療上有効な合計1日用量は、40mg以下、30mg以下または20mg以下である。
【0038】
いくつかの実施形態では、提供する方法は、スチリペントール、クロバザム、及びバルプロエートからなる群より選択される併用治療剤を投与することをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、てんかん及び/またはてんかん性脳症の治療方法であって、(i)治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供すること;ならびに(ii)その医薬組成物に付随するラベル、添付文書(product insert)、または投薬ガイドによって、医師に、一部の患者は体重減少、るいそう、及び/または食欲不振を呈する場合があり、セロトニン受容体アンタゴニストである食欲刺激剤との併用治療は回避するように助言することを含む、方法を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示は、精神病も特徴とするてんかん及び/またはてんかん性脳症の治療方法であって、(i)治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供すること;及び(ii)その医薬組成物に付随するラベル、添付文書、または投薬ガイドによって、医師に、セロトニン受容体アンタゴニストである抗精神病剤との併用治療は回避するように助言することを含む、方法を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0042】
いくつかの実施形態では、体重減少、るいそう、及び/または食欲不振を呈する患者に、例えば、ドロナビノール(THC)、メゲストロール及び/またはオキサンドロロン、オレキシン(ビタミンB複合体サプリメント)、ベナドリル[ジフェンヒドラミン]、クレマスチン及びクロルフェニラミン、フェキソフェナジン及び/またはセチリジンである食欲刺激剤との併用治療を行ってよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、本開示の文脈におけるてんかん及び/またはてんかん性脳症は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、レット症候群、ドゥーズ症候群、及び/またはウエスト症候群であるか、またはこれらを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体と、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩とを含む製剤を提供することによって、(a)ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群、ならびに(b)体重減少、るいそう、及び/または食欲不振と診断された患者を治療すること;ならびに、その製剤に付随するラベル、添付文書、または投薬ガイドによって、医師に、セロトニン受容体アンタゴニストとの併用治療をその患者に行うのを回避するように助言することを含む、方法を提供する。
【0045】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0046】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、フルフェナジン、チオリダジン、チオチキセン、フルペンチキソール、アモキサピン、ロキサピン、オランザピン、ジプラシドン、アセナピン、ルラシドン、イロペリドン、クロザピン、ミアンセリン及びミルタザピンである。
【0047】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、エルゴタミン、リスリド、リセルゴル、メテルゴリン、メチオテピン、ナラトリプタン、オキシメタゾリン、スマトリプタン及びジプラシドンから選択される5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0048】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、アルタンセリン、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンペリドール、(+)ブタクラモール、d-ブタクラモール、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、シナンセリン、クロピパザン、クロザピン、シアメマジン、シプロヘプタジン、ドロペリドール、エルゴタミン、α-フルペンチキソール、フルフェナジン、フルスピペロン、イロペリドン、イソクロザピン、ケタンセリン、リスリド、ロキサピン、ルラシドン、メスレルギン、メテルゴリン、メテルギン、メチオテピン、メチルエルゴノビン、メチセルギド、メチテピン、ミアンセリン、ミルタザピン、オクトクロテピン、オランザピン、ORG-5222アセナピン、ペロスピロン、ピパンペロン、ピレンペロン、プラゾシン、プロペリシアジン、リラピン、リスペリドン、リタンセリン、RMI81,582、セルチンドール、セトペロン、スピペロン、N-Me-スピペロン、チオリダジン、cis-チオチキセン、チオスピロン、キシラミジン、ジプラシドン及びゾテピンから選択される5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示は、ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群と診断された患者に、薬学的に許容される担体と、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩とを含む液体製剤を投与すること;及び、その製剤に付随するラベル、添付文書(package insert)、または投薬ガイドによって、その患者に、セロトニン受容体アンタゴニストとの治療を回避するように助言することを含む、方法を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0051】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジン、クロザピン、ドキセピン、クエチアピン、ケトチフェン、ピゾチフェン、ペルフェナジン、ミアンセリン、ミルタザピン、リスペリドン、及びアセナピンから選択される5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び/または5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0052】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、10.0mg/kg/日~0.01mg/kg/日の範囲の用量で投与されるか、または投与されている。ある特定の実施形態では、フェンフルラミンの治療有効用量は、約0.1mg/kg/日~約2.5mg/kg/日の範囲内である。
【0053】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、経口送達、注射送達、経皮送達、吸入送達、経鼻送達、口腔内送達、直腸送達、膣送達、及び非経口送達からなる群より選択される投与形態で投与されるか、または投与されている。
【0054】
いくつかのある特定の実施形態では、フェンフルラミンは、経口液剤として投与されるか、または投与されている。いくつかのある特定の実施形態では、フェンフルラミンは、10mg~200mgの範囲内の量で投与されるか、または投与されている。いくつかのある特定の実施形態では、フェンフルラミンは、120mg以下、60mg以下、30mg以下、及び20mg以下である量で投与されるか、または投与されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの治療上有効な合計1日用量は、40mg以下、30mg以下または20mg以下である。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミン製剤を含む容器と、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストとの併用投与を行わないように警告する内容を含む添付文書、ラベル、または投薬ガイドとを含むキットを提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、5-HT1A、5-HT1D、5-HT2A、及び5-HT2Cから選択されるサブタイプの1つ以上におけるアンタゴニストである。
【0058】
いくつかのある特定の実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0059】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジン、クロザピン、ドキセピン、クエチアピン、ケトチフェン、ピゾチフェン、ペルフェナジン、ミアンセリン、ミルタザピン、リスペリドン、及びアセナピンから選択される5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト及び/または5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0060】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、経口投与用、注射用、経皮投与用、経鼻投与用、口腔内投与用、直腸投与用、膣投与用、及び/または非経口投与用として製剤化されている。
【0061】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、液体製剤として提供する。
【0062】
いくつかの実施形態では、キットは、(a)フェンフルラミンを用いてドラベ症候群もしくはレノックス・ガストー症候群を治療できること、及び/または(b)フェンフルラミンで治療すると、体重減少、るいそう、及び/または食欲不振が生じる場合があることをさらに通知する、添付文書、ラベル、または投薬ガイドを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体と、フェンフルラミンを含む活性成分とを含む製剤の複数回用量を含む容器と、その容器に添付された、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者の治療についての説明とを含むキットであって、その患者にセロトニン受容体アンタゴニストを投与しない状態で、その製剤をその患者に投与する旨が、その説明に含まれる、キットを提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示は、溶液1ミリリットル当たり2.5ミリグラムのフェンフルラミンを含む経口液剤と、(i)患者の体重及び投与する経口液剤の体積に基づいて、その患者に投与すること、ならびに(ii)その患者にセロトニン受容体アンタゴニストとの併用治療を行うのを回避することを知らせる説明とを含む、キットを提供する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示は、フェンフルラミンの経口用固体製剤と、その患者に、セロトニン受容体アンタゴニストとの併用治療を行うことを回避するように知らせる説明とを含む、キットを提供する。いくつかの実施形態では、経口用固体製剤は、錠剤、崩壊錠、カプセル剤、ロゼンジ剤、及びサッシェ剤からなる群より選択される。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示は、経皮パッチとしてのフェンフルラミン製剤と、その患者に、セロトニン受容体アンタゴニストとの併用治療を行うことを回避するように知らせる説明とを含む、キットを提供する。
【0067】
本開示の一態様によれば、本発明で提供するのは、治療有効用量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を患者に投与することによって、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療及び/または予防する方法であって、その患者が強力なセロトニン受容体アンタゴニストで治療されていない、方法である。
【0068】
別の態様によれば、本発明で提供するのは、フェンフルラミン製剤と、パッケージと、強力なセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストをフェンフルラミンとともに投与する場合は患者をモニタリングするように医師または介護者に通知する内容を含む添付文書とを含む、キットである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、強力な5-HT2A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、強力な5-HT2C受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、強力な5-HT1A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、強力な5-HT1D受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、強力な5-HT2Aアンタゴニスト及び5-HT2Cアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、強力な5-HT1A及び5-HT1Dのアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2A及び5-HT1Dの両方のアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、そのモニタリングは、その患者における発作の頻度または重症度の上昇を検出することである。いくつかの実施形態では、強力な5-HT受容体アンタゴニストは、Kiが1000nM以下である(例えば、Kiが500nM以下、Kiが250nM以下、Kiが100nM以下、Kiが50nM以下、Kiが25nM以下またはKiが10nM以下である)。いくつかの実施形態では、強力な5-HT受容体アンタゴニストは、治療する病態に対するその有効性と関連付けられた血漿中濃度範囲において、5-HT1A受容体、5-HT1D受容体、5-HT2A受容体、及び5-HT2C受容体のうちの1つ以上でセロトニン遮断活性を示す。
【0069】
別の態様によれば、本発明で提供するのは、フェンフルラミン製剤と、パッケージと、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストをフェンフルラミンとともに投与するときには、患者をモニタリングするように、医師または介護者に通知する内容を含む添付文書とを含む、キットである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2C受容体アンタゴニストである。
【0070】
いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1D受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2Aアンタゴニスト及び5-HT2Cアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1Aアンタゴニスト及び5-HT1Dアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2Aアンタゴニスト及び5-HT1Dアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、そのモニタリングは、その患者における発作の増加を検出することである。
【0071】
別の態様によれば、本発明で提供するのは、フェンフルラミン製剤と、パッケージと、1つ以上の強力なセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストとフェンフルラミンを患者に併用投与することを回避するように、医師または介護者に通知する内容を含む添付文書とを含むキットである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2C受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1D受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2Aアンタゴニスト及び5-HT2Cアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1Aアンタゴニスト及び5-HT1Dアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2Aアンタゴニスト及び5-HT1Dアンタゴニストである。
【0072】
別の態様によれば、本発明で提供するのは、フェンフルラミン製剤と、パッケージと、1つ以上の強力なセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストとフェンフルラミンをてんかん患者に併用投与すると、フェンフルラミンの抗発作効果が低下し得ることを医師または介護者に通知する内容を含む添付文書を含むキットである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2C受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジンである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1D受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2Aアンタゴニスト及び5-HT2Cアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1Aアンタゴニスト及び5-HT1Dアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その強力な5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2Aアンタゴニスト及び5-HT1Dアンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その抗発作効果は低下する。いくつかの実施形態では、その抗発作効果は消失する。
【0073】
別の態様によれば、本発明で提供するのは、薬学的に許容される担体と、フェンフルラミンを含む活性成分とを含む製剤を複数回用量有する容器と、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者の治療に関する説明とを含むキットであって、その説明が、フェンフルラミンの投与を受ける患者に、抗セロトニン剤を投与してはならないことを医師または介護者に通知する、キットである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2C受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは5-HT1D受容体アンタゴニストである。
【0074】
別の態様によれば、本発明で提供するのは、薬学的に許容される担体と、フェンフルラミンを含む活性成分とを含む製剤を複数回用量有する第1の容器と、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者の治療に関する説明とを含むキットであって、その説明が、シプロヘプタジン、ケトチフェン、ピゾチフェン、エピナスチン及びデスロラタジンの群から選択される1つ以上のヒスタミンを併用投与すると、その患者において、フェンフルラミンの有効性が低下し得ることを医師または介護者に通知する、キットである。いくつかの実施形態では、その抗ヒスタミン剤はシプロヘプタジンである。
【0075】
別の態様によれば、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者において、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療するための方法であって、治療有効用量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を、その患者に投与することを含み、その患者に、そのフェンフルラミンに付随する製品内文書、投薬ガイドまたはラベルによって、強力なセロトニン受容体アンタゴニストによる治療を回避するように助言する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2C受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1A受容体アンタゴニストである。いくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT1D受容体アンタゴニストである。
【0076】
別の態様によれば、(a)ドラベ症候群及び/またはレノックス・ガストー症候群、ならびに(b)極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振と診断された患者を治療する方法であって、その患者に、薬学的に許容される担体と、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩とを含む液体製剤を投与すること;及び、その患者に、その製剤に付随する製品内文書、投薬ガイド、またはラベルによって、強力なセロトニン受容体阻害剤による治療を回避するように助言することによって治療する、方法を提供する。
【0077】
別の態様によれば、本開示は、フェンフルラミンを患者に提供する処方医に、セロトニン受容体阻害剤、特に、5-HT1A、5-HT1D、5-HT2A、及び5-HT2Cでの強力な阻害剤は、抗発作作用を消失させる場合があり、その患者に同時処方してはならないことを通知することによって、患者の安全性を向上させる方法を提供する。
【0078】
本明細書の全体を通じて、システムもしくは組成物が、所定の成分を有するか、含むか(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載されている場合、または方法が、所定の工程を有するか、含むか(including)もしくは含む(comprising)ものとして記載されている場合には、加えて、その示されている成分から本質的になるか、またはその成分からなる、本発明のシステムまたは組成物が存在するとともに、その示されている工程から本質的になるか、またはその工程からなる、本発明による方法が存在することが企図されている。
【0079】
本発明が機能可能である限りは、工程の順序、またはある特定の行為を実施する順序は重要ではないことを理解されたい。さらに、2つ以上の工程または行為を同時に行ってよい。
【0080】
以下にさらに詳しく説明されているように、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療する方法の詳細を読めば、本発明の上記及びその他の目的、利点及び特徴は、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0081】
IV.図面の簡単な説明
本明細書に含まれる図面は、下記の図から構成されているが、例示のためのものに過ぎず、限定するためのものではない。
【0082】
図1】精神病または統合失調症以外の病態を治療するのに使用し得る様々な抗精神病薬の受容体結合親和性を示す表である。
図2】様々な5-HT受容体に対する5-HT受容体アンタゴニストのKiの表であり、MESモデルにおける、フェンフルラミンの抗発作活性に対する対応作用が示されている。各セル内の網掛けは、観察されたKiの平均値を表している。黒塗り部分は、Kiが1nM以下であることを表し、水平な線による網掛け部分は、Kiが1nM超、10nM以下であることを表し、垂直な線による網掛け部分は、Kiが10nM超、100nM以下であることを表し、格子線による網掛け部分は、Kiが100nM超、1000nM以下であることを表し、斜めの格子線による網掛け部分は、Kiが1000nM超、10000nM以下であることを表し、ドットによる網掛け部分は、K1が10000nM超であることを表している。外れ値は除去し、その外れ値は、平均から2標準偏差を超える値と定義した。最後の列には、実施例に記載されているMESモデルにおいて防御された動物数をまとめたものが示されている。
図3】ゼブラフィッシュモデルにおいて、様々な5-HTアンタゴニストと組み合わせたFFAの抗発作活性をまとめた表が示されている。***は、効能が最大であることを示しており、それぞれ、**及び*により、効能が低下していることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0083】
V.特定の定義
本発明への理解をさらに容易にするために、以下では、まず、ある特定の用語を定義する。下記の用語及びその他の用語のさらなる定義は、本明細書の全体にわたって示されている。
【0084】
本明細書及び添付の請求項で使用する場合、「a」、「an」及び「the」の付された単数形には、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、複数の言及物も含まれることが留意される。したがって、例えば、「発作」という場合には、そのような発作が複数含まれ、「薬物」という場合には、1つ以上の薬物及び当業者に知られているその同等物が含まれるなどである。
【0085】
本明細書で使用する場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、所望の薬理作用及び/または生理作用を得ることを指す。その作用は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に予防するという意味では、予防的作用であってよく、及び/または疾患及び/または疾患に起因する有害作用の部分的治癒もしくは完全治癒という意味では、治療的作用であってもよい。「治療」とは、本明細書で使用する場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる治療を網羅し、(a)その疾患に対する素因を有し得るが、その疾患とはまだ診断されていない対象において、その疾患が発症しないように予防すること、(b)その疾患を抑制すること、すなわち、その発現を抑止すること、ならびに(c)その疾患を軽減すること、すなわち、その疾患を改善及び/または好転させることを含む。てんかんまたはてんかん性脳症に関しては、治療によって改善し得る症状としては例えば、発作の発生、頻度または持続期間が挙げられる。
【0086】
「治療有効量」または「効果的な量」とは、化合物または薬剤の量のうち、疾患を治療するために、哺乳動物またはその他の対象に投与したときに、その疾患に対するその治療が有効となるのに十分な量を指す。「治療有効量」は、その化合物または薬剤、その疾患及びその重症度、ならびに治療する対象の年齢、体重などに応じて変動することになる。
【0087】
「個体」、「対象」、「宿主」及び「患者」という用語は、本明細書では同義的に用いられており、哺乳動物を指し、哺乳動物としては、ネズミ科動物(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類動物、ヒト、イヌ科動物、ネコ科動物、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0088】
疑義が生じないように、発作の「予防」という用語は、発作の完全または部分的な予防(抑制)を意味する。本発明の方法により、発作を完全に予防するのが理想である。しかしながら、本発明には、発作の発生頻度を少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%低下させる方法も含まれる。加えて、本発明には、発作の持続期間または重症度を少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%または少なくとも90%低下させる方法も含まれる。
【0089】
本発明の方法、キット及び製剤を説明する前に、本発明は、記載されている特定の実施形態に限定されず、すなわち、当然ながら、変化し得ることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるので、本明細書で用いられている専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定するようには意図されていないことも理解されたい。
【0090】
値の範囲が示されている場合には、その範囲の上限と下限の間の各値も、文脈上明らかに別段に示されている場合を除き、下限の単位の10分の1まで具体的に開示されていると理解される。示されている範囲内の、示されているいずれかの値またはその間の値と、その示されている範囲内の、いずれかの他の示されている値またはその間の値との間の、より狭い範囲はそれぞれ、本発明内に含まれる。これらのより狭い範囲の上限及び下限は独立して、その範囲に含まれても、または除外されてもよく、限界値のいずれかが、そのより狭い範囲に含まれるか、限界値のどちらも、そのより狭い範囲に含まれないか、または限界値の両方とも、そのより狭い範囲に含まれる範囲がそれぞれ、本発明内に含まれ、ただし、示されている範囲内の、いずれかの具体的に除外される限界値に従うことを条件とする。示されている範囲に、限界値の一方または両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除く範囲も、本発明に含まれる。
【0091】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されている技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味である。本発明の実施または試験の際には、本明細書に記載されている方法及び材料と類似または同等のいずれの方法及び材料も使用できるが、以下では、可能性があり、かつ好ましい方法及び材料をいくつか記載する。本明細書で論じられている刊行物は、本開示の出願日以前にそれらが開示されたということで示されているに過ぎない。本明細書で言及されている刊行物はいずれも、その刊行物が引用されている方法及び/または材料に関連する方法及び/または材料を開示及び説明する目的で、参照により本明細書に援用される。本明細書中のいかなる内容も、本発明が、上記のような刊行物に先行する権利を与えられないことを認めるものとして解釈すべきではない。さらに、示されている刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、実際の刊行日を別途確認する必要がある場合もある。矛盾が認められる範囲では、援用される刊行物のいずれの開示内容よりも、本開示が優先されると理解する。
【0092】
本明細書で論じられている刊行物は、本開示の出願日以前にそれらが開示されたということで示されているに過ぎない。本明細書中のいかなる内容も、本発明が、先行発明による上記のような刊行物に先行する権利を与えられないことを認めるものとして解釈すべきではない。さらに、示されている刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、実際の刊行日を別途確認する必要がある場合もある。
【0093】
VI.発明の詳細な説明
フェンフルラミン
フェンフルラミン、すなわち、3-トリフルオロメチル-N-エチルアンフェタミンは、下記の構造を有するアンフェタミン誘導体である。
構造1
系統名(IUPAC名):(RS)-N-エチル-1-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン-2-アミン
【0094】
フェンフルラミンは1973年に、米国において、肥満症を治療する目的で、初めて市場に投入された。しかしながら、その使用が、心臓弁膜症及び肺高血圧症の発症と関連付けられたため、1997年、米国及び世界市場から使用が中止された。
【0095】
理論に拘束されるものではないが、フェンフルラミンの食欲抑制剤としての使用に伴う有害作用は、フェンフルラミンの主要代謝産物であるノルフェンフルラミンと、5-HTB受容体との相互作用が原因と考えられ、この相互作用は、心臓弁の線維化及び肥大と関連付けられている。フェンフルラミンは、in vivoでは、肝臓で、シトクロムP450酵素によって代謝されて、ノルフェンフルラミンとなる。CYP2D6、CYP2B6及びCYP1A2のようなシトクロムP450酵素が主に、ヒトにおいて、フェンフルラミンからノルフェンフルラミンを生成させるのに関与する。酵素CYP2C9、CYP2C19及びCYP3A4も関与する。下に示されているように、このような代謝には、ノルフェンフルラミンを生成させるための、N-エチル基の切断が含まれる。
【0096】
フェンフルラミンは主に、セロトニン放出剤として機能する。フェンフルラミン及びその主要代謝産物であるノルフェンフルラミンは、ノルエピネフリントランスポーターの強力な基質であることが報告された(Rothman,et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.305(3):1191-9)。フェンフルラミンは、セロトニンの小胞内貯蔵を阻害するとともに、セロトニントランスポーターの機能を逆転させることによって、その神経伝達物質を放出させる。フェンフルラミンは、特にその活性代謝物であるノルフェンフルラミンを介して、セロトニンほどではないが、ノルエピネフリン放出剤としても機能する。モノアミンの放出に加えて、フェンフルラミンは、セロトニン5-HT受容体と、極めて微弱にしか結合しない一方で、ノルフェンフルラミンは、セロトニン5-HT2B受容体及び5-HT2C受容体には高い親和性で、セロトニン5-HT2A受容体には中程度の親和性で結合して、これらを活性化する。セロトニン神経伝達及びノルアドレナリン神経伝達が増大した結果が、満腹感及び食欲低下である。したがって、フェンフルラミンで治療した対象では、体重減少、食欲不振及び/またはるいそうが観察される場合がある。
【0097】
以前、高用量のフェンフルラミンを、成人の肥満症の治療に使用した時に、心臓血管系での安全性の懸念が生じたものの、フェンフルラミンの既知の心臓血管系リスクと、治療上の潜在的ベネフィットとを比較吟味しながら、その製品のさらなる治療的用途を特定する試みが行われてきた。
【0098】
本開示には、ある特定の形態のてんかんの治療に関する臨床試験において、フェンフルラミンが、発作の治療に非常に効果的であるという認識が含まれる。いくつかの関連する米国特許出願(US2017-0056344-A1、US2017-0071949-A1、US2018-0055789-A1及びUS2018-0092864-A1)、ならびに交付済みの米国特許(9,549,909、9,610,260、9,603,814及び9,603,815)の主題のように、フェンフルラミンは、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療、改善または最小化する、すなわち、発作の回数、強度及び/または長さを低減するのに有用であることが分かっている。フェンフルラミンは、てんかん、ならびに特に、ドラベ症候群及びレノックス・ガストー症候群のようなてんかん性脳症の治療に特に有用である。本発明で提供するのは、てんかん(例えばドラベ症候群など)を治療及び/または改善する改良型の方法であって、患者をフェンフルラミンで治療すること(例えば、フェンフルラミンを投与されたことがあるか、または投与されることになる患者に、フェンフルラミンを投与すること)を含む、方法である。
【0099】
いくつかの実施形態では、発作をフェンフルラミンで治療しているてんかん患者(複数可)は、体重減少、食欲不振及び/またはるいそうを特徴とする場合がある。いくつかの実施形態では、発作をフェンフルラミンで治療している患者(複数可)に、食欲刺激剤を併用投与する場合がある。
【0100】
てんかん
新たな治療選択肢の必要性が高い障害に、てんかんまたはてんかん性脳症、特に、既知の治療に不応であるてんかん症候群が含まれる。てんかんは、異常な電気発射によって誘発される、中枢神経系(CNS)の機能障害であり、反復性発作を発症しやすい傾向を特徴とする。てんかんには数多くの原因があり、その原因としては、出産時外傷、周産期感染症、酸素欠乏症、感染症、毒素摂取、脳腫瘍、遺伝性の障害または変性疾患、頭部の損傷または外傷、代謝障害、脳血管事故及びアルコール離脱が挙げられるが、これらに限らない。
【0101】
いくつかの実施形態では、本開示の文脈におけるてんかん及び/またはてんかん性脳症は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、レット症候群、ドゥーズ症候群、ウエスト症候群、結節性硬化症(TSC)、Dup15q症候群、CDKL5欠損症、PCDH19遺伝子内の変異(複数可)を伴うてんかん性脳症及び/またはナトリウムチャネル遺伝子内の変異を伴うてんかん性脳症であるか、またはこれらを含む。いくつかの実施形態では、本開示の文脈におけるてんかん及び/またはてんかん性脳症は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、レット症候群、ドゥーズ症候群、及び/またはウエスト症候群であるか、またはこれらを含む。
【0102】
数多くの化合物を用いて、それぞれに異なる抗けいれん薬に対して異なる応答を示す様々な種類のてんかんまたはてんかん性脳症、及び様々なサブタイプのてんかんを治療してよい。例えば、カンナビジオールは、ドラベ症候群における薬物耐性発作の治療について試験されたことがあり、けいれん発作の頻度を低下させることが報告された(Devinsky,et al.,2017,New Engl.J.Med.376(21):2011-2020)。EPIDIOLEXが、ヒトにおいて、その抗けいれん作用を発揮する正確な機序は、不明である。カンナビジオールは、カンナビノイド受容体との相互作用を通じて、その抗けいれん作用を発揮するのではないようである(Epidiolex Highlights of Prescribing Information,§12.1)。
【0103】
しかしながら、特定の薬物は、ある1つの形態のてんかんに対しては有効である場合がある一方で、他の形態に対しては、まったく無効であるか、さらには、症状の増悪(発作の頻度及び重症度が悪化するなど)が原因で、禁忌となる場合がある。例えば、ドラベ症候群における発作は原則として、ナトリウムチャネル(Nav1)の変異に起因して起こり、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、ラモトリジン、ラコサミド、ルフィナミド、フェニトイン及びフォスフェニトインを含むナトリウムチャネルブロッカーは、ドラベ症候群において禁忌である。これらの薬物は、臨床治験を通じて、ドラベ症候群患者のほぼ全員において、発作の発生率を上昇させることが知られているからである。特定の種類のてんかんに対して、特定の薬物が好ましいか否かは主に、臨床治験、及び利用可能な場合には、対照臨床試験に基づく。
【0104】
てんかんに伴う併存症
発作に加えて、特にてんかん性脳症では、これらのてんかんに伴う中枢神経系介在性の併存症が数多く存在し、その併存症としては、行動異常(強迫的な行動、多動のような、自閉スペクトラムの症状を含む)、社会的引きこもり、攻撃的または闘争的な行動、認知面の困難、睡眠障害、不安感、運動失調、及び呼吸困難(一部は、特にレット症候群における、自律神経系関連のもの)が挙げられる。多くのてんかん症候群で見られる他の一般的な併存症としては、抑うつ症状、不安感及び睡眠に関する問題が挙げられる。医師は、これらの併存症及び発作を管理しようと試みる。これらは、患者及びその介護者双方のクオリティオブライフ低下の一因となるからである。
【0105】
加えて、てんかん症候群における発作を治療するのに用いる抗てんかん薬(AED)は、それ自体が、副作用を起こす場合があり、例えば、いくつかのAEDは、体重減少及び認知面の困難と関連付けられている。フェンフルラミンの既知の食欲抑制作用は、食欲不振、体重減少、及び/またはるいそうと関連付けられている。30mg/日未満のフェンフルラミン塩酸塩など、低用量のフェンフルラミンを使用した、てんかん患者における臨床試験では、一部の患者では、体重減少が見られ、体重の減少した初期期間後、体重が回復した症例もあれば、体重減少が持続した症例も見られた。認知面の副作用としては、思考、記憶、注意の維持、集中または換語困難に関する問題が挙げられる。認知面の困難は、2つ以上のAEDを併用する(多剤療法)場合に生じる可能性が最も高い。多剤療法は、難治てんかんでは一般的である。
【0106】
上記の併存病態またはAEDの副作用の治療に用いてよい薬剤は、相当数存在する。例えば、てんかん患者において、食欲刺激が考慮される場合のある薬剤は、相当数存在し、その薬剤は、第一世代のH1アンタゴニストである。それらは、CNSに浸透するからである。加えて、中枢作用性のH1アンタゴニストは、眠気及び鎮静を引き起こすことが知られている。すなわち、小児期に、体重減少が見られたか、もしくは体重増加が見られなかった患者、または睡眠障害が認められる患者、あるいは、特に、これらが両方とも認められる患者では、CNS浸透性H1アンタゴニストは、これらの症状を管理すると思われる。
【0107】
いくつかの実施形態では、てんかん及び/またはてんかん性脳症の対象は、例えば強迫的な行動のような自閉スペクトラム症状の1つ以上の特徴も特徴とする。レット症候群患者を含む一部のてんかん患者では、常同行動、反復的行動及び強迫行為を含む強迫的な行動が観察される。
【0108】
いくつかの実施形態では、てんかん及び/またはてんかん性脳症の対象のうち、1つ以上の自閉スペクトラム症状を特徴とする対象は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、10歳以上の患者に対する一次治療剤であるクロミプラミン(アナフラニール)、7歳以上の患者用のフルオキセチン(プロザック)、8歳以上の患者用のフルボキサミン、成人用のパロキセチン(パキシル、ペクセバ)、及び6歳以上の患者用のセルトラリン(ゾロフト)である薬剤で治療できる。クロミプラミンは、OCDに対して適応外使用されており、フルボキサミン及び他のSSRIよりも有効であることが分かっている[Greist,JH(Jan 1995).Archives of General Psychiatry,52(1):53-60]。
【0109】
自閉スペクトラム症状で用いられるその他の薬剤としては、定型抗精神病薬及び非定型抗精神病薬が挙げられる。定型抗精神病薬は、フェノチアジン誘導体(クロルプロマジンなど)及びブチロフェノン誘導体を含む第一世代の薬剤であり、他の構造分類としては、一般名の語尾が「ペリドール」である薬物(ハロペリドール及びドロペリドールなど)、ならびに語尾が「ペロン」である薬物(スピペロン及びピパンペロンなど)が挙げられる。これらの第一世代の薬物は、副作用により、今日ではあまり好ましくない薬物となっている。今日の医学では、非定型抗精神病薬の方が、錐体外路系副作用のような副作用が見られないか、または少ないので好ましい。非定型は、薬物化合物において、ドーパミンD2拮抗作用及び5-HT2A拮抗作用を有するものとして定義される場合が多い。5-HT2A拮抗作用は、脳のある特定の区域において、ドーパミン放出を刺激できる。5-HT2A拮抗作用により、線条体及び黒質線条体路を含む、脳のある特定の区域で、ドーパミンが放出され、仮説ではあるが、この薬理作用により、これらの薬剤の非定型の臨床特性のうち、非定型抗精神病薬が従来型の抗精神病薬から区別される特性、すなわち、EPSが少なく、陰性症状に有効である特性が説明される。[例えば、Stahl.S,“Antipsychotics and Mood Stabilizers:Stahl’s Essential Psychopharmacology”,3rd Edition,Cambridge University Pressを参照されたい。]
【0110】
いくつかの実施形態では、てんかん及び/またはてんかん性脳症の対象は、睡眠障害も特徴とする。睡眠導入及び睡眠持続を含む睡眠の障害は、短期間においては、ベンゾジアゼピン系の鎮静剤、及び「Zドラッグ」(ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン)睡眠薬(いずれも、GABA受容体アゴニストとして機能する)で治療する。これらの薬物は概して、慢性睡眠障害をてんかん症候群の併存症として有する患者においては有用ではない。強力な中枢作用性のH1ヒスタミンアンタゴニストは、鎮静及び睡眠と関連付けられている。第二世代の抗ヒスタミン剤は、生理学的なpHにおけるプロトン化(血液脳関門における排出機構の基質である)、またはその分子の親油性に影響を及ぼすその他の構造的変化のいずれかを通じて、中枢神経系浸透性を持たないように設計された。そして、第二世代の抗ヒスタミン剤には、胃腸管、大血管、皮膚、眼、粘膜及び気管支平滑筋におけるような末梢作用がある。第一世代の抗ヒスタミン剤は、CNSに入り込むことができるので、ヒスタミンニューロン受容体へのヒスタミンの結合を拮抗阻害することもできる。中枢ヒスタミン受容体は、概日周期(すなわち、睡眠と覚醒状態の周期)の調節と関連付けられている。中枢ヒスタミン拮抗作用の別の効果は、食欲及び体重増加と関連付けられている。実際、ある研究により、抗精神病薬群において、H1アンタゴニスト活性と、体重増加との直接的な相関性が示されている[Kroeze,W.et al.,Neuropsychopharmacology(2003)28,519-526]。あるグループは、発作の誘発におけるヒスタミンH1受容体機能の阻害を示した[Swiader,M.(2004)14(4):307-18]。クロザピンのけいれん誘発作用は、H1アンタゴニスト作用自体によって、かつ内因性レプチンレベルの上昇を通じて媒介されるという仮説を別の研究者は立てている[Ghanizadeh,A.,Psychiatria Danubina,2010;Vol.22,No.4,pp552-553]。別のグループは、使用した所定の抗ヒスタミン剤、投与レベル及び動物モデル次第では、けいれん誘発活性が見られないことを見出した。
【0111】
年齢が1~12歳の小児では、重度の行動異常(闘争的もしくは爆発的な行動など)、または過剰な運動活動を伴う多動を治療するのに、クロルプロマジンを使用する。
【0112】
ロキサピンは、正確な作用機序が立証されていないトランキライザーとして使用されているが、ドーパミン及びセロトニン受容体を拮抗阻害することによって、皮質が顕著に阻害され、精神の安定化及び攻撃の抑制として顕在化し得ると考えられる。
【0113】
ドキセピン(Silenor(登録商標))は、睡眠維持困難を特徴とする不眠用の低用量剤(3~6mg/日)として転用され、(2010年に)FDAに認可された三環系抗うつ剤である。その主な作用機序は、睡眠持続のためのH1拮抗作用として説明される。
【0114】
本明細書で論じられている薬物の多くは、表Iに示されているように、共通する構造的特徴をいくつか有し、それらの特徴は、抗ヒスタミン剤、睡眠薬、トランキライザー、抗うつ剤、抗精神病薬及び抗コリン剤として市場に投入されている薬物を含む相当数の他の薬物と共有されている。
構造2
【0115】
(表1)構造2をベースとする構造を有する薬物
ナトリウムチャネルをブロックする抗てんかん薬として知られるカルバマゼピンも、構造2の三環系環構造を有し、そのY-Zは-HC=CH-であり、X-AはN-C(O)-NH2であり、Qは炭素であり、R1は水素である(表4の化合物#7を参照されたい)。カルバマゼピンは、セロトニンアンタゴニストではなく、弱めのセロトニン放出剤であることが報告されている(Dailey, et al, Epilepsia 1998 Oct;39(10):1054-63.)。
【0116】
例えば、年齢が1~12歳の小児では、重度の行動異常(闘争的もしくは爆発的な行動など)、または過剰な運動活動を伴う多動を治療するのに、クロルプロマジンを使用する。
【0117】
ジベンゾオキサゼピン化合物であるロキサピンは、三環系抗精神病剤のサブクラスを代表するものであり、チオキサンテン、ブチロフェノン及びフェノチアジンとは化学的に異なる。ロキサピンは、正確な作用機序が立証されていないトランキライザーとして使用されているが、ドーパミン及びセロトニン受容体を拮抗阻害することによって、皮質が顕著に阻害され、精神の安定化及び攻撃の抑制として顕在化し得ると考えられる。
【0118】
シプロヘプタジン(C2121N)は、抗ヒスタミン剤と呼ばれる薬物ファミリーのものであり、典型的には、ぜん息、アレルギー及び感冒を治療する目的、ならびにじんま疹及びその他の皮膚障害を原因とするそう痒を軽減する目的で、経口使用する。シプロヘプタジンに関連する構造体は、ロラタジン、デスロラタジン、アザタジン、ケトチフェン及びピゾチフェンである。シプロヘプタジンの副作用の1つは、食欲亢進及び体重増加であり、例えば、絶食した成人及び離乳期ラットにおいて、シプロヘプタジンが水及び食物の摂取量、ならびに体重に及ぼす作用を調べたところ、セロトニン系の活性の低下が観察され、食物摂取量が増加した(Ghosh MN,Parvathy S.Br.J.Pharmacol.1973,48(2):328P-329P)。シプロヘプタジンの食欲刺激作用により、るいそう及び/または食欲不振の症状を治療する患者、嚢胞性線維症の人、ならびにがん及びその治療を原因とする体重減少及び/または悪液質が見られる患者において、体重増加を刺激する目的で、シプロヘプタジンは適応外使用されている。
【0119】
シプロヘプタジンは、その抗ヒスタミン作用に加えて、他の受容体部位での結合において、セロトニンと競合もするとともに、抗コリン特性、抗セロトニン特性、抗ドーパミン特性、局所麻酔特性、及び鎮静特性も有する。表Iに列挙されている薬物と共通の特徴を共有する薬物の多くは、複雑な薬理学的プロファイルを有し、構造上のわずかな違いに基づき、アンタゴニスト活性の程度が様々である。例えば、シクロベンザプリンは、筋肉弛緩剤として処方されるが、アミトリプチリンは、抑うつ症状に対して投与される。
【0120】
構造3(シクロベンザプリン)及び構造4(アミトリプチリン)
【0121】
長年にわたり、特に小児及び青少年における、てんかんまたはてんかん性脳症の罹患者、例えばドラベ症候群及び/またはレノックス・ガストー症候群の罹患者で見られる発作を治療もしくは予防及び/または改善するための改良型の方法の提供に対する切実なニーズが存在する。しかしながら、以下に記載されているように、一部の形態のてんかんでは、てんかんまたはてんかん性脳症の症状(例えば発作)を治療する目的で、フェンフルラミンを投与されている患者では、精神病態、体重減少、食欲不振、及び/またはるいそうの併存も認められる場合があり、治療している医師は、他の薬剤の投与も検討することもある。したがって、医師は、治療レジメンの一部として、てんかん患者において、併存する精神病態または体重減少の治療のために、フェンフルラミンとの併用投与用に、ある特定のCNS浸透性薬物の処方を検討する場合がある。本開示は、フェンフルラミンを用いて、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療する際には、ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストが使用禁忌であるという発見に関するものである。
【0122】
抗てんかん剤としてのフェンフルラミン
フェンフルラミンには、ある特定のてんかん及び/またはてんかん性脳症の治療における治療的用途があり、そのてんかん及び/またはてんかん性脳症としては、ドラベ症候群(例えば、米国特許第9,549,909号を参照されたい)、レノックス・ガストー症候群(米国特許出願公開第20170056344号)、レット症候群、ドゥーズ症候群及びウエスト症候群が挙げられるが、これらに限らない。てんかん性脳症の治療におけるフェンフルラミンの作用機序は、完全には理解されておらず、その抗てんかん作用をもたらす際には、いくつかの経路が関与すると見られる。上記のように、フェンフルラミンの代謝産物であるノルフェンフルラミンは、セロトニン5-HT2B受容体及び5-HT2C受容体に高い親和性で、セロトニン5-HT2A受容体には中程度の親和性で結合し、これらを活性化する。フェンフルラミンは、親和性が低めで、セロトニン受容体の直接的なアゴニストほど強力ではない(Rothman,RB,et al.,Circulation,2000,102(23):2836-2841)。しかしながら、ドラベ症候群のゼブラフィッシュモデルで示されたように、フェンフルラミンは、セロトニントランスポーターに対するその作用を介して、セロトニン放出剤として機能し、5-HT1A受容体、5-HT1D受容体、5-HT2A受容体及び5-HT2C受容体を介するなど、ある特定の5-HT受容体の間接的なアゴニスト性を介して、ニューロンシナプスにおいて、セロトニンを放出することによって、その作用のいくつかを発揮すると考えられる(Sourbron,J.,et al,Front.Pharmacol.2017;8:191)。
【0123】
フェンフルラミンは、デクスフェンフルラミン及びレボフェンフルラミンという2つのエナンチオマーのラセミ混合物であり、気分、食欲及びその他の機能を調節する神経伝達物質であるセロトニンのレベルを上昇させることが報告されている。フェンフルラミンは、セロトニンの再取り込みの低減に対する作用もある程度有するセロトニン放出薬として分類されるが、典型的な5-HT再取り込み阻害機序を有さない。
【0124】
フェンフルラミンは、セロトニンに対するその作用に加えて、σ-1受容体ポジティブアロステリックモジュレーターであることが示されている。σ-1でのアロステリックなアゴニスト性は、いくつかのてんかん動物モデルで、発作を低減または抑制することが示されている。この抗発作作用の機序は、まだ調査中であるが、ある研究では、σ-1アゴニストには、Kv2.1(大半の哺乳動物CNSニューロンにおいて高レベルで発現し、ニューロンの興奮の調節で重要な役割を果たすカリウムチャネルサブユニット)を通じて、IK(内向きのカリウム電流)に対して間接的な作用を及ぼすことが示されている。天然型のニューロンIKチャネルは主に、Kv2サブファミリーのメンバーで構成されている[He,Yan-Lin,et al.,PLoS ONE,2012,vol.7,issue 7,p.e41303]。
【0125】
フェンフルラミンのセロトニン作動活性は、唯一の作用機序ではないことは、医学文献及び科学文献において知られたセロトニン作動剤が数多く存在することによって示されており、いずれも、規制当局から抗てんかん剤としては承認されておらず、臨床現場で、大半のタイプのてんかんにおける発作を治療する目的で、一般的に「適応外」使用されているものもない。
【0126】
セロトニン(「5-ヒドロキシトリプタミン」または「5-HT」としても知られる)は、哺乳動物の神経系において、多数の感覚プロセス、運動プロセス及び行動プロセスを調節すると考えられているモノアミン作動性の神経伝達物質である。これらの多様な応答は、受容体サブタイプの大きなファミリーの活性化を通じて惹起される。セロトニンシグナル伝達系の複雑さ、及び選択薬の少なさにより、5-HT受容体サブタイプに対する具体的な役割を定めたり、またはセロトニン作動薬が、気分及び行動を調節する機序を明らかにしたりするのが困難となっている。セロトニン受容体のサブタイプの多くのうち、1Bサブタイプ及び2Cサブタイプが、摂食及び体重の調節に特に強く関与し、これらの受容体は、食物摂取量の調節に関わると考えられている視床下部領域で発現する。多数の薬物が、CNSにおけるセロトニンレベルに影響を及ぼすと知られており、それらは、5-HTの再取り込み阻害剤、放出剤、異化阻害剤、またはその生合成における前駆体分子として機能し得る。CNSにおけるセロトニンが過剰となり、死に至る可能性のあるセロトニン症候群は、いくつかのセロトニン作動薬、特に、機序の異なる2つのセロトニン作動薬を組み合わせた場合と関連付けられている。フェンフルラミンは、セロトニンを増大させる他の薬物と組み合わせるべきではなく、非適合薬のいくつかの例は、以下の表IIに列挙されている。
【0127】
(表2)セロトニン症候群と関連付けられている薬物
【0128】
1B受容体アゴニスト及び2C受容体アゴニストのいずれも、齧歯動物において摂食を抑制することが分かっており、2C受容体ノックアウトマウスでは、慢性摂食亢進症及び肥満症が見られる。さらに、機能性の5-HTC受容体(以前は5-HT1Cと呼ばれていた)を欠失したノックアウトマウスは、食欲過剰となり、肥満症、部分的レプチン抵抗性、脂肪蓄積の増加、インスリン抵抗性及び耐糖能異常に至ることが分かった。すなわち、5-HT2C受容体は、報告によると、食物摂取量及び体重のセロトニンによる制御に関与する。そのノックアウトマウスは、発作により突発的に死亡する傾向もあったことから、5-HT2C受容体が、ニューロンネットワークの興奮の持続的抑制も媒介することが示唆された(Tecott LH,et al.Eating disorder and epilepsy in mice lacking 5-HT2C serotonin receptors.Nature.1995,374(6522):542-6)。
【0129】
理論に拘束されるものではないが、フェンフルラミンの食欲抑制剤としての使用に伴う有害作用は、フェンフルラミンの主要代謝産物であるノルフェンフルラミンと、5-HT2B受容体(心臓弁肥大と関連付けられている)との相互作用に起因すると考えられる。
【0130】
フェンフルラミン及びその主要代謝産物であるノルフェンフルラミンは、ノルエピネフリントランスポーターの強力な基質であることが報告された(Rothman,et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.305(3):1191-9)。フェンフルラミンは、特にその活性代謝物であるノルフェンフルラミンを介して、セロトニンほどではないが、ノルエピネフリン放出剤としても機能する。フェンフルラミンは、セロトニンの小胞内貯蔵を阻害するとともに、セロトニントランスポーターの機能を逆転させることによって、その神経伝達物質を放出させる。高濃度では、ノルフェンフルラミンは、ドーパミン放出剤としても機能するので、フェンフルラミンも、非常に高い用量では、ドーパミン放出剤として機能し得る。モノアミンの放出に加えて、フェンフルラミンは、セロトニン5-HT受容体と、極めて微弱にしか結合しない一方で、ノルフェンフルラミンは、セロトニン5-HT2B受容体及び5-HT2C受容体には高い親和性で、セロトニン5-HT2A受容体には中程度の親和性で結合して、これらを活性化する。セロトニン神経伝達及びノルアドレナリン神経伝達が増大した結果が、満腹感及び食欲低下である。
【0131】
以前、高用量のフェンフルラミンを、成人の肥満症の治療に使用した時に、心臓血管系での安全性の懸念が生じたものの、フェンフルラミンの既知の心臓血管系リスクと、治療上の潜在的ベネフィットとを比較吟味しながら、その製品のさらなる治療的用途を特定する試みが行われてきた。新たな治療選択肢の必要性が高い障害の1つは、てんかんまたはてんかん性脳症、特に、既知の治療に不応であるてんかん症候群である。てんかんは、異常な電気発射によって誘発される、中枢神経系(CNS)の機能障害であり、反復性発作を発症しやすい傾向を特徴とする。てんかんには数多くの原因があり、その原因としては、出産時外傷、周産期感染症、酸素欠乏症、感染症、毒素摂取、脳腫瘍、遺伝性の障害または変性疾患、頭部の損傷または外傷、代謝障害、脳血管事故及びアルコール離脱が挙げられるが、これらに限らない。
【0132】
いくつかの抗てんかん薬が開発されてきたが、およそ3分の1のてんかん患者は、治療に不応である。したがって、細胞の興奮を調節できる新たな機序及び薬剤への模索が続けられている。部分起始発作に特に有効である3つの薬物は、ビガバトリン(GABAの全脳中レベルを大きく上昇させる選択的かつ不可逆的なGABAトランスアミナーゼ阻害剤)、チアガビン(ニューロン及びグリア細胞内へのGABAの取り込みの強力な阻害剤)、ならびにトピラマート(Na依存性及び/またはCa2+依存性の活動電位の修正、GABA媒介性のClのニューロン内への流入の増強、及びAMPA/カイネート型のグルタメート受容体におけるカイネート媒介性のコンダクタンスの阻害を含むいくつかの機序を通じて、その抗てんかん作用を発揮すると考えられている)である(Angehagen,et al.,2003,Neurochemical Research,28(2):333-340)。
【0133】
これまで、てんかん患者におけるフェンフルラミンの有効性の調査により、共通のパラダイム、すなわち、フェンフルラミンの主な作用は、発作自体を治療または予防するのではなく、発作を引き起こしたりまたは誘発したりする行動に対する作用であるというパラダイムが導かれた。
【0134】
例えば、Aicardi及びGastaut(New England Journal of Medicine(1985),313:1419及びArchives of Neurology(1988)45:923-925)は、自己誘発型の光過敏性発作、すなわち、患者が意図的に明るい光または太陽を凝視することを原因とする発作の症例を4例報告し、これらの症例は、フェンフルラミンによる治療に応答することが分かった。
【0135】
Clemensは、Epilepsy Research(1988)2:340-343において、図形感受性誘発発作を起こす少年であって、抗けいれん治療に対する抵抗性を持つ少年をフェンフルラミンで治療して、その患者の、発作を誘導する強迫行動を抑制した症例研究を報告した。報告によると、フェンフルラミンは、これらの自己誘発発作を停止させるのに成功した。この成功の理由は、フェンフルラミンが、光過敏性を誘引とする機序をブロックしたことであり、第二に、発作を誘発する行為/衝動強迫に対する病理学的な誘因を低減することによるものであり、すなわち、発作自体を治療することによるものではないとClemensは結論付けた。
【0136】
Neuropaediatrics,(1996);27(4):171-173において、Boel及びCasaerは、フェンフルラミンが、難治てんかんの小児(その全員で、発作を誘導する強迫行動が見られた)に及ぼす作用に関する研究について報告した。彼らは、フェンフルラミンを0.5~1mg/kg/日の用量で投与したところ、それらの患者で見られる発作の回数が減少したことを観察し、「この薬物は、特発性または症候性の全身てんかんである所定の若齢患者群、すなわち、自己誘発発作が見られる小児において、有意な抗てんかん活性を有し得る」と結論付けた。その著者は、「フェンフルラミンは、直接的な抗てんかん活性を有さないが、発作を誘発する衝動強迫に対する作用を通じて機能するのであろう」と述べた。すなわち、その著者は、フェンフルラミンが、発作自体ではなく、行動に影響を及ぼすことを提示した。
【0137】
Boel及びCasaerは、Epilepsiaに対するレター(Epilepsia,43(2):205-206,2002に公開された)において、フェンフルラミンには、難治性てんかん及び自己誘発発作が見られる患者において、治療上のベネフィットがあるようであるとコメントした。しかしながら、その著者は、フェンフルラミンの有効性を汎用的な抗発作活性によるものとはしなかった。
【0138】
てんかんまたはてんかん性脳症のサブタイプが数多く特徴付けられており、それぞれにおいて、固有の臨床症状、徴候及び表現型、根底をなす病態生理、ならびに様々な治療に対する別個の応答が見られる。本開示は、多種多様な種類のてんかん及びてんかんサブタイプ(ドラベ症候群、ドゥーズ症候群、乳児けいれん及びレノックス・ガストー症候群を含む)に対して、利用可能性がある。特徴付けられているてんかんサブタイプは、数多く存在する。例えば、最新の分類体系及び当該技術分野において広く認められている分類体系は、International League Against Epilepsy’s(「ILAE」)Commission on Classification and Terminologyが採用しているものである[例えば、Berg et al.,“Revised terminology and concepts for organization of seizures,”Epilepsia,51(4):676-685(2010)を参照されたい]。
【0139】
I.発症年齢によって分類された脳波臨床症候群:
A.新生児期(1.良性家族性新生児てんかん(BFNE)、2.早期ミオクロニー脳症(EME)、3.大田原症候群)
B.乳児期(1.遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、2.ウエスト症候群、3.乳児ミオクロニーてんかん(MEI)、4.良性乳児てんかん、5.良性家族性乳児てんかん、6.ドラベ症候群、7.非進行性疾患のミオクロニー脳症)
C.小児期(1.熱性けいれんプラス(FS+)(乳児期にも開始し得る)、2.パナエトポラス症候群、3.ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん(旧語:ミオクロニー失立発作を伴うてんかん)、4.中心・側頭部棘波を示す良性てんかん(BECTS)、5.常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、6.遅発性小児後頭葉てんかん(ガストー型)、7.ミオクロニー欠神てんかん、8.レノックス・ガストー症候群、9.睡眠時持続性棘徐波(CSWS)を示すてんかん性脳症、10.ランドウ・クレフナー症候群(LKS)、11.小児欠神てんかん(CAE))
D.青年期-成人(1.若年欠神てんかん(JAE)、2.若年ミオクロニーてんかん(JME)、3 全般強直間代発作のみを示すてんかん、4.進行性ミオクローヌスてんかん(PME)、5.聴覚症状を伴う常染色体性優性てんかん(ADEAF)、6.その他の家族性側頭葉てんかん、
E.年齢との明確な関係性が低い(1.多様な焦点を示す家族性焦点てんかん(小児期~成人)、2.反射てんかん)
【0140】
II.特定症候群:
A.海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん(HSを伴うMTLE)、
B.ラスムッセン症候群、
C.視床下部過誤腫による笑い発作、
D.片側けいれん-片麻痺-てんかん、
E.1.考えられる原因(既知の構造的または代謝的な条件の有無)に続いて、2.主な発作起始形態(全般起始か焦点起始か)によって区別されるその他のてんかん
【0141】
III.構造-代謝性の原因に帰するてんかん:
A.皮質形成異常(片側巨脳症、異所性灰白質など)、
B.神経皮膚症候群(結節性硬化症、スタージ・ウェーバー症候群など)、
C.腫瘍、
D.感染、
E.外傷、
【0142】
IV.血管腫:A.周産期脳障害、B.脳卒中、C.その他の原因
【0143】
V.原因不明のてんかん
【0144】
VI.従来的に、てんかん自体の形態としては診断されないてんかん発作を示す病態:A.良性新生児発作(BNS)及びB.熱性けいれん(FS)
【0145】
Berg et.al,“Revised terminology and concepts for organization of seizures,”Epilepsia,51(4):676-685(2010)を参照されたい。
【0146】
ILAEの分類スキームのパートVでは、そのリストが、完全には程遠く、まだ完全には特徴付けられていないか、または別の症候群として依然認識されていないてんかんサブタイプも存在することが強調されている。
【0147】
それぞれに異なるてんかんサブタイプは、それぞれ異なる刺激によって誘発され、それぞれ異なる生物学的経路によって制御され、遺伝的原因、環境的原因、及び/または脳の疾患もしくは損傷によるにせよ、それぞれ異なる原因を有することを当業者は認識するであろう。換言すると、ある1つのてんかんサブタイプに関する教示は、必ずしも他のサブタイプに適用可能であるとは限らないことが非常に多いと当業者は認識するであろう。特に重要なのは、様々な種類のてんかんを治療するのに用いられる化合物が数多く存在するとともに、様々なてんかんサブタイプが、それぞれに異なる抗けいれん薬に対して、異なる応答を見せるという点である。すなわち、特定の薬物は、ある1つの形態のてんかんに対して有効である場合がある一方で、他の形態に対してはまったく無効である場合があるか、さらには、症状の増悪(発作の頻度及び重症度の悪化など)が原因で、禁忌である場合もある。その結果、特定の種類のてんかんに対する特定の薬物の有効性は、完全に予測不能であり、以前には、特定の薬物が有効でないとされていた種類のてんかんの治療に、その薬物が有効であるというという発見は、驚くべきものである場合がほとんどであり、その薬物が、別の種類のてんかんに対して有効であることが知られている場合でさえも、驚くべきことである。さらに、下に詳細に説明されているように、ある形態のてんかんのフェンフルラミンによる有効な治療では、他の治療剤の併用投与及び/または他の治療剤による治療が禁忌となり得る。
【0148】
このようなセロトニン作動薬の例は、(選択的)セロトニン再取り込み阻害剤((S)SRI)(例えば、フルオキセチン、セルトラリン、パロキセチンなど)、四環系抗うつ剤(TeCA、例えばミルタザピン)、三環系抗うつ剤(TCA)(例えば、イミプラミンもしくはドキセピンなど)、または直接的な5-HT受容体アゴニストであり、その受容体アゴニストのうちの2つの例は、ロルカセリン(5-HT2Cに対して選択的)、もしくはブスピロン(5-HT1Aに対する選択的部分アゴニスト)であり、それらは、難治てんかんにおけるフェンフルラミンの活性を完全には説明しない。
【0149】
本開示は、フェンフルラミンによる治療中に投与されるある特定の中枢作用性(CNS浸透性)薬が、フェンフルラミンの発作防御作用を低下させるという知見を提供する。
【0150】
CNS浸透性の予測を複雑にするいくつかの因子は、発作、特に治療抵抗性の発作及びてんかん性脳症を原因とする血液脳関門(BBB)機能障害、ならびにBBBにおける薬物排出トランスポーターである。例えばMDR1遺伝子及びP-gp遺伝子におけるいくつかの多型は、血液脳関門におけるこれらの排出トランスポーターの発現または機能活性の低下と関連付けられており、その結果、脳に到達する薬物のレベルが上昇する。逆に、ある特定の薬物に対する親和性が向上している多型は、難治てんかんに関与する[Siddiqui,et al.,N Eng.J Med 2003;348:1442-1448]。
【0151】
患者
本発明の方法は、適切に診断されたいずれの患者にも実施できる。いくつかの実施形態では、本開示の文脈における、治療対象の患者は、成人患者(例えばヒト成人患者、例えば18~75歳)である。いくつかの実施形態では、本開示の文脈における、治療対象の患者は、小児(例えばヒト小児、例えば2~18歳)である。
【0152】
本発明の代替的な例示的実施形態では、その患者は、約18歳以下、約16歳以下、約14歳以下、約12歳以下、約10以歳下、約8歳以下、約6歳以下または約4歳以下、約0カ月以上、約1カ月以上、約2カ月以上、約4カ月以上、約6カ月以上または約1歳以上である。すなわち、いくつかの実施形態では、診断された患者は、治療時に約1カ月~約18歳である。
【0153】
いくつかの実施形態では、患者は、極度の体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振も特徴とする。
【0154】
いくつかの実施形態では、患者は、精神病態及び/または精神病の併発も特徴とする。いくつかの実施形態では、精神病態または精神病の併発は、脱線して支離滅裂な会話と思考、幻覚、妄想及び攻撃、ならびに大げさかつとっぴで支離滅裂な行動、会話もしくは会話内容の貧困、感情鈍麻、社会的引きこもり、アンヘドニア、無感情、注意障害及び/または自己モニタリング障害であるか、またはこれらを含む。
【0155】
ドラベ症候群
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンで治療してよいてんかんは、ドラベ症候群である。ドラベ症候群は、乳児期に発症する希少かつ重篤な形態の難治性てんかんである。Dravet Foundation.orgによれば、ドラベ症候群の小児は、その病態から脱却せず、日常生活のあらゆる局面に影響が及ぶ。発作性障害のある小児は、行動及び発達面での遅延、運動及びバランス面での問題、骨の問題、言葉の遅れ及び発話の問題、成長及び栄養面での問題、睡眠障害、慢性感染、体温調節面での問題にも直面する。この障害を有する人は、発作時の死亡リスクも高めである。
【0156】
ドラベ症候群患者では、最初、1歳時に、持続性発作が見られる。2歳時には、さらなる種類の発作が発生し始め、典型的には、おそらくは、発作が繰り返されることで、脳低酸素症のような脳損傷が起こり、発達の低下が、これと同時に起こる。そして、これにより、認知能力、言語能力及び運動能力の発達が不良となる。
【0157】
ドラベ症候群の小児は、1日に複数回、発作を起こす可能性が高い。ドラベ症候群患者では、てんかん発作により死に至る可能性がかなり高く、ドラベ症候群と診断された患者のおよそ10~15%が小児期に死亡し、症例によっては、2~4歳で死亡する。患者の死亡平均年齢は、8.7±9.8歳(SD)と報告されており、73%が10歳未満で死亡し、93%が20歳未満で死亡する。加えて、患者には、整形外科的な発達の問題、成長障害及び慢性感染症を含む多くの関連病態リスクがある。
【0158】
特に懸念されるのが、ドラベ症候群の小児は、てんかん重積状態のエピソード(5分超継続するけいれん発作)を起こしやすいことである。重篤かつ難治性のこの病態は、即時の医学的介入を必要とする医学的な緊急事態として分類されており、この介入には、典型的には、抗けいれん薬の静脈内投与及び/または医学的処置による昏睡の誘導のための入院が伴う。てんかん重積状態は、致命的となり得る。重篤な脳低酸素症とも関連付けることもでき、脳組織が損傷される可能性がある。ドラベ症候群である小児の頻回入院は、患者のみならず、家族及び介護者にとっても明らかに大変である。
【0159】
ドラベ症候群患者に対する介護費用も高額である。罹患した小児は、絶えず見守る必要があり、多くは、10代になるにつれて、施設への収容を必要とする。
【0160】
ドラベ症候群における発作は、管理が困難である可能性があるが、クロバザム、スチリペントール、トピラマート及びバルプロエートのような抗けいれん剤によって軽減し得る。この障害の経過は、個人個人で異なるので、治療プロトコールは変動し得る。また、高脂肪及び低糖質の食事が有益である場合があり、ケトン食療法として知られている。食事の調節は、助けとなり得るが、症状を消失させるものではない。より優れた治療形態または療養形態が発見されるまで、この疾患の患者は、死ぬまでミオクロニーてんかんを有することになる。
【0161】
現時点では、相当数の抗けいれん療法を用いて、ドラベ症候群患者における発作の発症率を低下させることができるが、このような治療法で得られる成果は、典型的には不良であり、これらの治療法は、せいぜい、発作を部分的に停止させるに過ぎない。ドラベ症候群に伴う発作は典型的には、従来の治療に対して抵抗性である。さらに、クロバザム及びクロナゼパムのような多くの抗てんかん剤には、望ましくない副作用、特に、小児患者において急性及び顕著である副作用がある。
【0162】
てんかんではない脳では、興奮(発作を誘発し得る)と抑制(発作を軽減できる)のバランスが正常である。ナトリウムチャネルブロッカーは、多くの場合、その不活化状態からの回復を遅らせることによって、Na+を累積的に低下させることで、停止、活性化及び不活化というその周期の所定の段階で、ナトリウムチャネルに優先的に影響を及ぼす。ナトリウムチャネルブロッカーは、過剰な興奮性神経伝達を原因とするてんかんまたはてんかん性脳症(ただし、SCN1A変異関連のてんかんを除く)の治療で広く用いられている。いくつかのてんかんまたはてんかん性脳症において、ナトリウムチャネルブロッカーは、興奮性及び/または抑制性の神経伝達物質(複数可)のアンバランスを是正して、発作が起きる可能性を低下させるように機能し得る。しかしながら、ナトリウムチャネルブロッカーは、いくつかのてんかんの治療には有益であるが、この部類の薬物は、ドラベ症候群では禁忌である。ナトリウムチャネルブロッカーは、ドラベ症候群患者のほぼ全員において、発作の発生率を上昇させることが分かっているからである。
【0163】
理論に拘束されるものではないが、およそ70~90%のドラベ症候群患者は、ニューロンの電位依存性ナトリウムチャネルNa(V)1.1をコードするSCN1A遺伝子にナンセンス変異を有し、その結果、ナトリウムチャネルの機能が喪失している。ナトリウムチャネルブロッカーが、いくつかのてんかんにおいて、発作活動を予防することが報告されていることを踏まえると、SCN1A機能が欠失しているドラベ症候群患者をナトリウムチャネルブロッカーで処置すると、ドラベ症候群患者における発作が予防されると予測し得る。しかし、ドラベ症候群患者をナトリウムチャネルブロッカーで処置すると、発作活動が増大する。説明の1つは、ドラベ症候群患者では、問題は、興奮が過剰であることではなく、むしろ、抑制性が過度に低い点なのであろう。したがって、ナトリウムチャネルブロッキング薬をドラベ症候群患者に与えると、脳内の抑制性神経伝達物質の量が減少し、バランスが、発作活動の高い方に傾く。すなわち、ナトリウムチャネルブロッカーとして分類されるある特定の抗けいれん薬は今では、大半のドラベ症候群患者で、発作を悪化させることが知られている。したがって、本開示によれば、ナトリウムチャネルブロッカー薬は、本発明との関連では、使用禁忌としてよく、その薬としては、フェニトイン、カルバマゼピン、ガバペンチン、ラモトリジン、オクスカルバゼピン、ルフィナミド、ラコサミド、エスリカルバゼピンアセテート及びフォスフェニトインを挙げてよい。
【0164】
てんかんまたはてんかん性脳症である対象は、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN3A、SCN9A、GABRG2、GABRD及びPCDH19からなる群より選択される遺伝子の1つ以上に変異を有する場合がある。
【0165】
いくつかの実施形態では、提供するのは、ドラベ症候群の治療方法であって、治療有効量のフェンフルラミンを、治療の必要な患者に投与することを含み、その患者には、同時に、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを投与せず、及び/またはセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストに暴露させない方法である。いくつかの実施形態では、提供するのは、フェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩を投与されている、及び/またはフェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩に暴露されているドラベ症候群患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を治療する方法であって、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストをその患者に投与することと、前記セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を患者に提供することを含む、方法である。ある特定の実施形態では、ドラベ症候群患者に、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストを投与する。ある特定の実施形態では、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得ることをドラベ症候群患者に通知する。
【0166】
いくつかの実施形態では、提供するのは、ドラベ症候群を、提供する方法に従って治療するキットである。
【0167】
レノックス・ガストー症候群
フェンフルラミンで治療してよい別の例示的形態のてんかんは、レノックス・ガストー症候群(LGS)である。LGSは、1960年に初めて記述され、神経学者のWilliam G.Lennox(Boston,USA)及びHenri Gastaut(Marseille,France)から命名された。LGSは、2~6歳に発症する場合が最も多いが、2歳未満または6歳超で発症することもある小児期発症型てんかんの難治形態である。LGSは、頻回発作及び様々な種類の発作を特徴とし、典型的には、発達遅延、心理学的問題及び行動異常を伴う。小児では、LGSの一般的な原因としては、周産期脳障害、脳形成異常(結節性硬化症または皮質異形成など)、CNS感染、及び神経系の変性障害または代謝障害が挙げられる。
【0168】
1日に、異なる種類の発作が複数回起きるのが、LGSの典型である。広範な発作が起きることがあるのも、典型である。最も一般的な種類の発作は、体軸強直発作、脱力発作及び欠神発作であるが、いずれのLGS患者でも、ミオクロニー発作、全般強直間代発作及び焦点発作も起こる場合がある。脱力発作、非定型欠神発作、強直発作、焦点発作及び強直間代発作も一般的である。加えて、多くのLGS患者では、てんかん重積状態が見られることがあり、多くの場合、非けいれん性型であり、めまい、無感情及び無反応を特徴とする。さらに、大半の患者では、脱力発作(転倒発作ともいう)が見られ、この発作は、筋肉の緊張を失わせ、その結果、患者が突然かつ不意に倒れ、大きな損傷が起きる場合が多いため、多くの場合、患者にヘルメットを装着させて、頭部損傷を予防する。
【0169】
LGSの小児では、1日に、様々な種類の発作が複数回起こるのに加えて、精神運動の発達が抑止/遅延され、行動障害が見られることが多い。
【0170】
この症候群は、脳波(EEG)における特異的所見、特に、発作間欠期(すなわち、発作間)遅棘徐波複合及び睡眠時の速波も特徴とする。
【0171】
LGSの診断
LGSは、症候群であるので、その診断は、所定の臨床的な症状の存在、徴候及び臨床検査に基づく。LGSは典型的には、複数種の発作、精神的な遅滞または退行、及び全般性遅棘徐波発射を持つ異常EEGを含む3つの特徴によって特定する。医師は、EEGを用いて、LGSの診断を補う。診断は、初期症状(複数可)の起発時には困難である場合がある。LGSに付随する3つの特徴(強直発作など)が完全には確定されず、その病態を確認するには、睡眠時のEEGが必要となり得るからである。したがって、他のてんかんと、臨床所見が重複し得るものの、LGSが、明確な紛れもない診断であることは、世界有数の専門的なてんかん学会とみなされているInternational League Against Epilepsy(ILAE)及びFDAの両方によって確定させる。
【0172】
LGSの診断は、その患者において、頻繁かつ多様な発作が見られ、脳波(EEG)で、古典的なパターン、すなわち、棘波パターンまたは1.5~2.5Hzにおける多焦点性及び全般性の鋭徐波発射を持つ律動の徐波化が見られる場合には、より明確である。睡眠時に、強直パターン(速波)が見られる場合が多くなり得る。
【0173】
LGSの小児では、一般検診により、通常、発達遅延及び認知障害が明らかとなる。これらは、発作の発現よりも先に現れる場合もあれば、または発作が開始されてから、これらが明らかになるまで最長で2年を要する場合もある。
【0174】
LGSの病因には、遺伝的なもの、構造的なもの、代謝面でのもの、または未知のものを含め、複数存在し得る。およそ4分の1では、LGSの症状起始以前に、てんかん、神経的異常または発達遅延の病歴は見られない。LGSを引き起こす基礎病理としては、脳炎及び/または髄膜炎、脳形成異常(例えば皮質異形成)、出生時損傷、低酸素虚血性損傷、前頭葉病変、ならびに外傷を挙げてよい。
【0175】
重要な鑑別診断は、「疑似レノックス症候群」(小児期非定型良性部分てんかんともいう)であり、強直発作が見られない点で、LGSとは異なり、睡眠時EEGにより、これらの2つを識別する最良の根拠が得られる。加えて、「疑似レノックス症候群」には、LGSとは完全に異なる病因及び予後が見られる。
【0176】
LGSの治療
レノックス・ガストー症候群に対する最適な治療は、まだ確立されていない。現在、この障害の治療には、多種多様な処置が使用されており、さらに多くの処置がこれまで試されてきたが、大半では、ほとんど成果が見られないことが多かった。
【0177】
現在、LGSでは、従来の抗てんかん薬、食事療法及び手術を含む様々な治療アプローチが使用されているが、これらの治療法を裏付けるエビデンスは強固ではなく、治療は、依然として無効である場合が非常に多い。いくつかの一般的一次治療の使用は、臨床治験または従来の知見に基づいており、その例としては、バルプロ酸ならびにベンゾジアゼピン(最も多いのは、クロナゼパム及びクロバザム)のような広範な抗けいれん剤が挙げられる。いくつかの薬物は、一部の患者において、ある特定の種類の発作に有効であると二重盲検プラセボ対照試験によって立証されており、その例としては、クロバザム、ラモトリジン、トピラマート、フェルバメート及びルフィナミドが挙げられるが、大半の患者では、これらの薬剤を服用していても、顕著な発作が持続する。ゾニサミドなど、現在使用されている二次治療剤は、いくつかのオープンラベルの非対照試験の結果に基づいて処方する。医学的な治療に不応な一部のLGS患者では、ケトン食療法が有用である場合がある。LGSに対する外科的選択肢としては、脳梁離断術(転倒発作に対するもの)、迷走神経刺激及び限局性皮質切除(切除可能な病変の存在が単一の場合)が挙げられる。しかしながら、これらの治療法のいずれか単独またはこれらの治療法のいずれかを組み合わせたものにより、大幅な改善が見られるのは、まれであることに留意されたい。
【0178】
LGS(小児期てんかん全体の最大10%を占める)の症状の重症度及びその症状の発現頻度にもかかわらず、現在、この疾患に対して、エビデンスベースの標準治療は存在しない。文献の包括的な検討[Hancock EC & Cross JH,Treatment of Lennox-Gastaut syndrome(Review)(The Cochrane Library 2013,Issue 2で公開)を参照されたい]により、その症候群の医薬による治療を評価した無作為化対照比較試験は9件のみであることが明らかになった。研究が不足しており、「…この症候群に極めて有効であることが示されている単独療法は、(現時点では)存在しない」とその著者は結論付けた(上記文献の12ページ)。さらに、「LGSに対する最適な治療は、依然として不明であり、現時点では、いずれか1つの薬物が極めて有効であることを示した研究は存在しない」とその著者は結論付けた(上記文献の12ページ)。
【0179】
理論に拘束されるものではないが、フェンフルラミンは、セロトニンの小胞内貯蔵の阻害により、脳内で、セロトニン(5-HT)の放出を誘導するとともに、セロトニンの再取り込みを阻害することが知られている。フェンフルラミンの作用機序により、フェンフルラミンは、てんかん治療に適する薬剤とされた。実際、5-HT異常が、LGSの根本的な病態生理学的原因の可能性であること、またはこの特殊なてんかん病態において付随する発作に、原因として関係することを実証した科学刊行物は存在しないし、それを仮定した科学刊行物すら存在しない。さらに、LGSにおけるセロトニン異常に関する科学的仮説は見られないので、医学文献において、セロトニンと相互作用する薬剤を用いて、LGSを治療する試みが記載されている研究も、個別症例の報告すらも存在しない。文献において、概ね、LGSを治療する目的で、フェンフルラミンまたはセロトニン作動薬を使用することに関するデータも、推測すらもないことは、本発明の予想外な性質を強く裏付けるものであり、LGSが、重篤な難治てんかん病態であることと、その罹患者数を踏まえると、研究者にとっては、有効性がいくらかでもある可能性があると認められる何らかの治療を研究する強力な動機となるであろう。
【0180】
すなわち、てんかん及び/またはてんかん性脳症を治療する方法の1つは、患者の脳内の1つ以上の5-HT受容体を刺激することであってよく、フェンフルラミンを有効用量、前記患者に投与することであってよく、前記1つ以上の5-HT受容体は、とりわけ、5-HT、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1C、5-HT1D、5-HT1E、5-HT1F、5-HT、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT、5-HT、5-HT、5-HT5A、5-HT5B、5-HT及び5-HTの1つ以上から選択する。本開示のある特定の実施形態では、その患者は、てんかんと診断されている。
【0181】
したがって、フェンフルラミンには、ある特定のてんかん及び/またはてんかん性脳症の治療における治療的用途がある。しかしながら、フェンフルラミンの食欲抑制作用は、極度の体重減少、るいそう、及び/または悪液質が問題となるいくつかの形態のてんかんの症状を悪化させる場合もある。例えば、いくつかの形態のてんかんでは、てんかんの症状(発作など)を改善する目的で、フェンフルラミンで治療している患者では、そのてんかんの特徴として、またはフェンフルラミンによる治療の副作用として、深刻な体重減少、食欲不振及び/またはるいそうが見られる場合がある。ヒスタミンアンタゴニストは、その食欲刺激作用により、治療している医師が、フェンフルラミンで治療しているこれらのてんかん患者における深刻な体重減少、るいそう、及び/または食欲不振に対処するのに有用とみなす可能性がある。中枢作用性のH1アンタゴニストは、鎮静及び眠気とも関連付けられており、一部には、睡眠導入または睡眠維持を助けるために投与し、例えば、ドキセピン(Silenor(登録商標))は、睡眠持続を助けるために使われる強力なH1アンタゴニストである。
【0182】
いくつかの実施形態では、提供するのは、LGSの治療方法であって、治療有効量のフェンフルラミンを、治療の必要な患者に投与することを含み、その患者には、同時に、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを投与せず、及び/またはセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストに暴露させない方法である。いくつかの実施形態では、提供するのは、フェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩を投与されている、及び/またはフェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩に暴露されているLGS患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を治療する方法であって、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストをその患者に投与することと、前記セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を患者に提供することを含む、方法である。いくつかのある特定の実施形態では、LGS患者に、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストを投与する。いくつかのある特定の実施形態では、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得ることをLGS患者に通知する。
【0183】
いくつかの実施形態では、提供するのは、LGSを、提供する方法に従って治療するキットである。
【0184】
レット症候群
いくつかの実施形態では、本開示の文脈におけるてんかん及び/またはてんかん性脳症は、レット症候群であるか、またはレット症候群を含む。レット症候群は、メチルCpG結合タンパク質2(MECP2)遺伝子内の変異を原因とする希少な神経発達障害であり、その表現型は、乳児期における正常な発達期間から間もなく、成長及び認知、ならびに運動発達の退行と、発作の起始が見られることを特徴とする。患者は、退行期間中に、自閉症の特徴、言語機能の喪失、社会的相互作用の喪失、及び目的を持った手の使用の喪失(使用が、反復的な常同運動に置き換わるなど)を呈し始める。最終的に、患者においては、中程度から重度の精神遅滞が見られる。
【0185】
いくつかの実施形態では、提供するのは、レット症候群の治療法であって、治療有効量のフェンフルラミンを、治療の必要な患者に投与することを含み、その患者には、同時に、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストを投与せず、及び/またはセロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストに暴露させない方法である。いくつかの実施形態では、提供するのは、フェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩を投与されている、及び/またはフェンフルラミンもしくはその薬学的に許容される塩に暴露されているレット症候群患者集団における体重減少、るいそう、悪液質、及び/または食欲不振を治療する方法であって、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストをその患者に投与することと、前記セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得るという説明を患者に提供することを含む、方法である。いくつかのある特定の実施形態では、レット症候群患者に、5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストを投与する。いくつかのある特定の実施形態では、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストまたは5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストの投与によってフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩の抗発作効果が低下し得ることをレット症候群患者に通知する。
【0186】
いくつかの実施形態では、提供するのは、レット症候群を、提供する方法に従って治療するキットである。
【0187】
セロトニンアンタゴニスト
本開示の方法及びキットには、少なくともある特定のセロトニンアンタゴニストはフェンフルラミンの投与との併用が禁忌であるという認識が含まれる。したがって、本開示は、フェンフルラミンを投与されている、及び/またはフェンフルラミンに暴露されている患者が、ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを併用投与されないように警告されており、セロトニン受容体アンタゴニストを併用投与されず、かつ/またはセロトニン受容体アンタゴニストの併用投与が中止される、方法を提供する。
【0188】
シプロヘプタジン(C2121N)は、抗ヒスタミン剤と呼ばれる薬物ファミリーにおけるヒスタミンアンタゴニスト、セロトニン5-HT2Aアンタゴニスト及びセロトニン5-HT2Cアンタゴニストであり、経口使用して(合成メチルピペリジン誘導体の塩、C2121N・HClとして使用する場合が多い)、ぜん息、アレルギー、ならびに感冒症状(くしゃみ及び鼻水など)を治療するとともに、じんま疹及びその他の皮膚障害を原因とするそう痒を軽減する。シプロヘプタジンは、食欲を刺激する目的で、食欲不振の患者にも使用される。
【0189】
シプロヘプタジンは、ヒスタミン受容体部位での結合において、ヒスタミンと競合することによって、胃腸管、大血管及び気管支平滑筋におけるヒスタミン受容体のヒスタミンによる刺激を競合的に拮抗阻害する。シプロヘプタジンは、その抗ヒスタミン作用に加えて、セロトニン受容体部位での結合において、セロトニンとも競合し、抗コリン特性、抗セロトニン特性、抗ドーパミン特性、ならびに局所麻酔及び鎮静特性を有する。シプロヘプタジンの副作用の1つは、食欲亢進及び体重増加であり、それにより、るいそうである小児、食欲不振の患者、嚢胞性線維症である人、がん及びその治療を原因とする体重減少及び/または悪液質が認められる患者において、食欲及び体重増加を刺激する目的で、適応外使用される。
【0190】
例えば、シプロヘプタジンが、水及び食物の摂取量、ならびに体重に及ぼす作用は、絶食させた成人及び離乳期ラットで研究されたことがあり、セロトニン系活性の低減が観察され、食物摂取量が増加した(Ghosh MN,Parvathy S.Br.J.Pharmacol.1973,48(2):328P-329P)。
【0191】
食欲不振及び体重減少に対する一連の治療の一部として、他の食欲刺激剤が使用されている。異なる治療用に主に処方される複数の薬剤にも、食欲刺激に対する二次作用がある場合があり、このような薬剤としては、ホルモン(グレリン、成長ホルモン、インスリン)、抗ヒスタミン剤(シプロヘプタジン及びピゾチフェン)、ステロイド(酢酸メゲストロール(MA)、オキサンドロロン、プレドニゾン)、カンナビノイド(ドロナビノール)、抗うつ剤(ミルタザピン)、ならびに抗精神病薬(クエチアピン、オランザピン、リスペリドン)が挙げられる(Chinuck,et al.,2014,Cochrane Database of Systematic Reviews,Issue 7.Art.No.:CD008190)。
【0192】
例えば、ドロナビノールは、マリファナに存在する主な精神活性物質である。米国では、1985年以降、医薬用途に限り、合成テトラヒドロカナビノール(THC)(ドロナビノール)のカプセル剤が利用可能である。経口摂取用の合成THCアナログであるナビロンは、化学療法を原因とする悪心及び嘔吐の治療用として、UKで処方が認可された唯一のカンナビノイドであり、他の適応症での使用は、その薬物を院内薬局が提供する場合には、「指定患者」ベースのみで可能である(EMC2014a)。ドロナビノールは、経口食欲刺激剤として、HIV患者及びがん患者において、2.5mgから、最大で5mgの用量で、1日に2回用いると、有効であることが示されている(Anstead,et al.,“Dronabinol,an effective and safe appetite stimulant in cystic fibrosis [abstract].”2003,Pediatric Pulmonology 36(25):343)。
【0193】
セロトニン受容体アンタゴニスト、特に、5-HT1A、5-HT1D、5-HT2B及び5-HT2Cの受容体サブタイプをブロックするものが、フェンフルラミンの発作遮断活性を阻害することが本発明で発見され、説明されている。したがって、本明細書に示されているように、フェンフルラミンで治療しているてんかん患者では、強力なセロトニン受容体アンタゴニストの併用投与(同時投与か、いずれかの投与順序での逐次投与かは問わない)は、てんかんまたはてんかん性脳症の症状の治療、改善及び/または予防の過程においては、回避するか、あるいは、慎重に及び/または厳密にモニタリングしながら使用する必要がある。
【0194】
適切な代替薬としては、これらの患者における体重減少、るいそう、及び/または食欲不振を治療するのに有用であり得るCB1アゴニストが挙げられ、そのアゴニストとしては、5F-AB-PINACA、AB-PINACA、AM-1220、AM-1221、AM-2201、アナンダミド、N-アラキドノイル、ドーパミン、2-アラキドノイルグリセロール、2-アラキドノイルグリセルエーテル、カンナビノール、CP47,497、CP55,940、没食子酸エピカテキン、ガロカテコール、JWH-015、JWH-018、JWH-073、JWH-081、JWH-122、カバ、L-759,633、レボナントラドール、テトラヒドロカナビノール、WIN55,212-2及びヤンゴニンが挙げられる(ただし、これらに限らない)。
【0195】
本開示は概して、患者において、てんかんまたはてんかん性脳症の症状の1つ以上を治療及び/または予防するキット及び方法であって、有効用量のフェンフルラミンを単独で、または本明細書に記載されている1つ以上の薬物と組み合わせて投与することを含み、また、その患者がセロトニンアンタゴニストで治療されていない、方法に対するものである。
【0196】
受容体との結合、及び特に、アンタゴニストとの結合の点での薬物の効能は、既知のアゴニスト分子と競合して、受容体に対するアンタゴニストの親和性の機能である。競合的アンタゴニストは、それらが結合する受容体を活性化する能力(有効性)を有さないが、むしろ、アゴニストの作用をブロックすることによって、その作用を発揮する。アンタゴニストの効能は通常、その半最大阻害濃度(IC50)によって定義する。受容体に対するアンタゴニストの親和性は、チェン-プルソフ式を用いて、IC50値を阻害定数Kiに変換することによって求めることができる。Kiでは、その計算の際に、IC50が考慮されているので、Kiは、科学文献において一般的に報告されている。IC50及びKiの値が低いほど、薬物の特定の受容体に対する効能及び親和性が高いこと示す。競合的阻害剤では、IC50は、Kiよりも常に高い。受容体におけるKiまたはIC50の値が、患者において実現される薬物レベルとおよそ同じであるか、そのレベルよりも低い場合には、薬理作用がある可能性がある。場合によっては、その薬理作用は顕著である。例えば、ムスカリン受容体においてアンタゴニスト効果のある薬物は、ドライマウス、高体温、潮紅及び視界のぼやけのような一般的副作用を引き起こす可能性があり、これらは、医師が認識するとともに、抗ムスカリン活性と関連する一般的副作用である。場合によっては、1つ以上の受容体における強力なアンタゴニストは通常、治療されている患者集団において、顕著な副作用を引き起こさない。この2つ目の事例では、治療している医師は、臨床治験または研修のいずれかを通じて、オフターゲット作用の可能性のある強力なアンタゴニストを認識しないか、または強力なアンタゴニストを、オフターゲット作用の可能性と関連付けることができない場合がある。
【0197】
いくつかの実施形態では、5-HT受容体アンタゴニストは、表3から選択する。
【0198】
(表3)Kiが3nM以下である強力なセロトニン(5-HT)アンタゴニスト
【0199】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、エルゴタミン、リスリド、リセルゴル、メテルゴリン、メチオテピン、ナラトリプタン、オキシメタゾリン、スマトリプタン及びジプラシドンから選択される5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0200】
いくつかの実施形態では、セロトニン受容体アンタゴニストは、アルタンセリン、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンペリドール、(+)-ブタクラモール、d-ブタクラモール、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、シナンセリン、クロピパザン、クロザピン、シアメマジン、シプロヘプタジン、ドロペリドール、エルゴタミン、α-フルペンチキソール、フルフェナジン、フルスピペロン、イロペリドン、イソクロザピン、ケタンセリン、リスリド、ロキサピン、ルラシドン、メスレルギン、メテルゴリン、メテルギン、メチオテピン、メチルエルゴノビン、メチセルギド、メチテピン、ミアンセリン、ミルタザピン、オクトクロテピン、オランザピン、ORG-5222アセナピン、ペロスピロン、ピパンペロン、ピレンペロン、プラゾシン、プロペリシアジン、リラピン、リスペリドン、リタンセリン、RMI81,582、セルチンドール、セトペロン、スピペロン、N-Me-スピペロン、チオリダジン、cis-チオチキセン、チオスピロン、キシラミジン、ジプラシドン及びゾテピンから選択される5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストである。
【0201】
キット
本発明の一態様は、フェンフルラミン製剤と、パッケージと、セロトニン(5-HT)受容体アンタゴニストとの併用投与を行わないように警告する内容を含む添付文書とを含むキットである。
【0202】
そのキットのいくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2A受容体アンタゴニストである。
【0203】
そのキットのいくつかの実施形態では、その5-HT受容体アンタゴニストは、5-HT2C受容体アンタゴニストである。
【0204】
本発明の別の態様は、薬学的に許容される担体と、フェンフルラミンを含む活性成分とを含む製剤の複数回用量を含む容器と、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者の治療に関する説明とを含むキットであり、その説明には、その患者をセロトニン受容体アンタゴニストで治療していない場合にも、その製剤をその患者に投与することが含まれる。
【0205】
そのキットのいくつかの実施形態では、その製剤は、溶液1ミリリットル当たり2.5ミリグラムのフェンフルラミンを含む経口液剤であり、その説明には、患者の体重及び投与する経口液剤の体積に基づいて患者に投与することが示されている。
【0206】
そのキットのいくつかの実施形態では、その製剤は、錠剤、崩壊錠、カプセル剤、ロゼンジ剤、及びサッシェ剤からなる群より選択される経口用固体製剤である。
【0207】
そのキットのいくつかの実施形態では、その製剤は、経皮パッチで提供される。
【0208】
方法
いくつかの実施形態では、本開示は、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療、改善及び/または予防する方法であって、治療有効用量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者または患者集団に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ある特定の5-HTセロトニン受容体アンタゴニストが、フェンフルラミンの抗てんかん活性を弱める場合があることを前記患者(複数可)に通知する。いくつかの実施形態では、前記患者(複数可)に、ある特定の5-HTセロトニン受容体アンタゴニストを併用投与しない。いくつかの実施形態では、5-HTセロトニン受容体アンタゴニストは、シプロヘプタジン、または5-HT1Aセロトニン受容体アンタゴニスト、5-HT1Dセロトニン受容体アンタゴニスト、5-HT2Aセロトニン受容体アンタゴニストもしくは5-HT2Cセロトニン受容体アンタゴニストであるか、これらを含む。いくつかの実施形態では、5-HT受容体アンタゴニストは、表3から選択する。
【0209】
いくつかの実施形態では、その用量は、10.0mg/kg/日~0.1mg/kg/日の範囲である。
【0210】
いくつかの実施形態では、その用量は、経口送達、注射送達、経皮送達、吸入送達、経鼻送達、直腸送達、膣送達、及び非経口送達からなる群より選択される投与形態で投与する。
【0211】
いくつかの実施形態では、その投与形態は、120mg以下、60mg以下、30mg以下、及び20mg以下からなる群より選択される量の経口液剤である。
【0212】
いくつかの実施形態では、その併用治療剤は、スチリペントール、クロバザム、及びバルプロエートを組み合わせたものである。
【0213】
いくつかの実施形態では、その投与は、数カ月にわたるものである。
【0214】
いくつかの実施形態では、その症状は発作であり、フェンフルラミンは、薬学的に許容される担体と共に製剤化されており、有効用量は、10.0mg未満/kg/日~0.01mg/kg/日である。
【0215】
いくつかの実施形態では、その1日用量は、60mg以下、30mg以下、及び20mg以下からなる群より選択され、その用量は、経口送達用、注射送達用、経皮送達用、吸入送達用、経鼻送達用、口腔内送達用、直腸送達用、膣送達用、及び非経口送達用の形態からなる群より選択される投与形態で投与される。
【0216】
いくつかの実施形態では、その患者は、ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群と診断されている。いくつかの実施形態では、その患者は、レノックス・ガストー症候群と診断されている。
【0217】
いくつかの実施形態では、その方法は、その患者において、けいれん発作の頻度がベースラインから40%以上低下するまで、その投与を数日にわたって繰り返すことをさらに含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、その方法は、その患者において、発作が1日以上の期間、見られなくなるまで、その投与を繰り返すことをさらに含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、その方法は、その患者において、発作が1週間以上の期間、見られなくなるまで、その投与を繰り返すことをさらに含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、その方法は、その患者において、発作が1カ月以上の期間、見られなくなるまで、その投与を繰り返すことをさらに含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、その方法は、その患者において、発作が1年以上の期間、見られなくなるまで、その投与を繰り返すことをさらに含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、その方法は、その患者において、発作が永続的に見られなくなるまで、その投与を繰り返すことをさらに含む。
【0223】
その方法のいくつかの実施形態では、その患者は、3~18歳である。
【0224】
別の態様では、本発明は、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者において、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療する方法であって、治療有効用量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を、その患者に投与することを含み、その患者に、そのフェンフルラミンに付随するラベル、添付文書、または投薬ガイドによって、セロトニン受容体アンタゴニストによる治療を回避するように助言する、方法を提供する。
【0225】
別の態様では、本発明は、(a)ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群、ならびに(b)体重減少、るいそう、及び/または食欲不振と診断された患者を治療する方法であって、その患者に、薬学的に許容される担体と、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩とを含む液体製剤を投与すること;ならびに、その患者に、その製剤に付随するラベル、添付文書、または投薬ガイドによって、シプロヘプタジンによる治療を回避するように助言することによって治療する、方法を提供する。
【0226】
いくつかの実施形態では、その患者は、フェンフルラミンによる治療から24時間以内に、シプロヘプタジンで治療されたことがない。
【0227】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と、フェンフルラミンを含む活性成分とを含む製剤の複数回用量を含む容器と、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者の治療に関する説明とを含むキットであって、その説明に、その製剤をその患者に投与することと、その患者に、セロトニン受容体アンタゴニストによる治療を回避するように助言することとが含まれる、キットを提供する。
【0228】
別の態様では、本発明は、ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群と診断された患者に、薬学的に許容される担体と、治療有効量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩とを含む液体製剤を投与することと、その患者に、その製剤に付随するラベルによって、セロトニン受容体アンタゴニストによる治療を回避するように助言することとを含む、方法を提供する。
【0229】
いくつかの治療剤は、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩を有効用量、その患者に投与することによって、患者の脳内の1つ以上の5-HT受容体を刺激するのに有効である場合がある。例示的な1つ以上の5-HT受容体は、5-HT、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1C、5-HT1D、5-HT1E、5-HT1F、5-HT、5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、5-HT、5-HT、5-HT、5-HT5A、5-HT5B、5-HT及び5-HTの1つ以上からなる群より選択する。加えて、脳内には、σ-1、M1ムスカリン、B-アドレナリンを含め、5-HTに結合しないものも存在し得る。
【0230】
いくつかの実施形態では、5-HT受容体アンタゴニストは、表3から選択する。
【0231】
フェンフルラミンと併用投与するための例示的な併用治療剤は、カンナビジオール、カルバマゼピン、エトスクシミド、フォスフェニトイン、ラモトリジン、レベチラセタム、フェノバルビタール、プロガビド、トピラマート、スチリペントール、バルプロ酸、バルプロエート、ベラパミル、ならびにベンゾジアゼピン(クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロフラゼプ酸エチル、ロラゼパム、ミダゾラムなど)からなる群より選択できる。併用治療剤の薬学的に許容される塩の使用も企図されている。
【0232】
同様に、ドラベ症候群では、チアガビン及びビガバトリンを含む選択的GABA再取り込み阻害剤/GABAトランスアミナーゼ阻害剤を回避すべきである。
【0233】
スチリペントール(GABA作動性の薬剤、かつGABAA受容体のポジティブアロステリックモジュレーターとしての薬剤)を用いて、二重盲検プラセボ試験を行った。この薬物は、試験において有効性を示し、難治焦点てんかん及びドラベ症候群を改善し、クロバザム及びバルプロエートを補うことが分かった。
【0234】
スチリペントールは、全体の発作率を70%低下させることが分かり、ドラベ症候群の治療用として、欧州、カナダ、日本及びオーストラリアで認可されているが、米国では認可されていない。スチリペントールはそれ自体、抗けいれん活性を多少有するが、主に、他の抗けいれん剤の代謝を阻害することで、その活性を延長することによって作用する。スチリペントールでは、クロバザム及びバルプロエートとの併用についてラベル表示がなされている。しかしながら、スチリペントールの使用に関しては、肝シトクロムP450酵素に対するその阻害作用により、懸念が依然として存在する。さらに、スチリペントールと多くの薬物との相互作用は、併用療法(典型的に、ドラベ症候群患者に必須である)が問題となることを意味する。加えて、スチリペントールの有効性は限られ、発作が見られなくなる患者がいるとしても、わずかである。
【0235】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、カルバマゼピン、エトスクシミド、フォスフェニトイン、ラモトリジン、レベチラセタム、フェノバルビタール、プロガビド、トピラマート、スチリペントール、バルプロ酸、バルプロエート、ベラパミル、ならびにベンゾジアゼピン(クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロフラゼプ酸エチル、ロラゼパム、ミダゾラムなど)、またはそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される併用治療剤のような他の既知の医薬と併用投与してよい。
【0236】
その併用治療剤には、推奨投与量がある。これらの推奨投与量は、Physician’s Desk Reference(PDR)の最新版、またはオンラインでemedicine.medscape.comに示されており、これらのいずれも参照により、上に列挙されている併用治療剤に関して具体的に、かつ、これらの薬物において推奨される投与量に関してはより具体的に、本明細書に援用される。
【0237】
本発明との関連では、その併用治療剤は、推奨投与量で使用することもできるし、または、推奨投与量の1/100~100倍、1/10~10倍、1/5~5倍、1/2~2倍の範囲で、またはこれらの範囲の間のうち、1/10刻みでいずれかに増量した量で使用することもできる。
【0238】
併用治療剤とフェンフルラミンとの組み合わせの具体的例としては、その併用治療剤は、スチリペントール、クロバザム、及びバルプロエートのいずれか1つまたは3つすべてであってよい。そのフェンフルラミンは、患者の体重1kg当たり0.8mgの量で投与してよく、1kg当たり3500mgのスチリペントール、20mgのクロバザム及び25mgのバルプロエートと併用投与してよい。これらの量はそれぞれ、その量を2倍、3倍、5倍もしくは10倍に増やしてもよいし、または10%、50%もしくは75%減らしてもよい。
【0239】
本明細書に記載されているのは、てんかんまたはてんかん性脳症と診断された患者において、てんかんまたはてんかん性脳症の症状を治療する方法であって、フェンフルラミンまたは薬学的に許容される塩を有効用量、その患者に投与することを含み、その用量を、10.0mg/kg/日~約0.01mg/kg/日の範囲の量で投与するか、または120mg以下、60mg以下、30mg以下または20mg以下で投与し、いずれかの他の医薬活性化合物を投与しない状態で投与してよい方法である。いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの治療上有効な合計1日用量は、40mg以下、30mg以下または20mg以下である。
【0240】
いくつかの実施形態では、その方法は、経口形態、注射形態、経皮形態、口腔内形態、吸入形態、経鼻形態、直腸形態、膣形態、または非経口形態からなる群より選択される形態で、その有効用量を投与するとともに、その製剤が経口製剤である形で実施し、その製剤は、液剤または懸濁剤である液体であってよく、キャップで閉める容器であって、その容器から取り出す体積を定めるための目盛り付きのシリンジに連結される容器内に存在してよく、取り出される体積は、所定の液体体積の製剤中のフェンフルラミンの量と関連し、例えば、1ミリリットルの製剤は、2.5mgのフェンフルラミンを含む。そのキットまたは方法のいくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤またはサッシェ剤の形態の経口用固体製剤で投与する。
【0241】
その方法は、異なる医薬活性化合物との併用治療として実施してよい。その方法は、まず、患者に一連の検査を行って、てんかんまたはてんかん性脳症の診断を確定するプロセスにおいて実施してよい。
【0242】
様々な種類のてんかんまたはてんかん性脳症の治療について、様々な化合物が試験されており、それぞれ異なるてんかんサブタイプは、それぞれに異なる抗けいれん薬に対して異なる応答を示す。例えば、カンナビジオール(CBD)は、米国で、ドラベ症候群の治療用としてオーファンドラッグ指定を受けており、カンナビジオールは、ドラベ症候群における薬物耐性発作の治療用として研究されており、けいれん発作頻度を低下させることが報告された(Devinsky,et al.,2017,NEJM 376(21):2011-2020)。
【0243】
薬剤耐性発作が多めの場合には、トピラマート、ビガバトリン及びチアガビンのような薬物、及び/またはケトン食療法を代替治療として使用する。治療としては、精神運動療法及び言語療法を通じた認知リハビリテーションも挙げられる。加えて、熱性けいれんの再発を予防するために、バルプロエートを投与する場合が多く、長く持続する発作には、ベンゾジアゼピンを使用するが、これらの治療は通常、不十分である。
【0244】
てんかんまたはてんかん性脳症(例えば、ドラベ症候群またはレノックス・ガストー症候群)の治療のための多剤服用、すなわち、2つ以上の抗てんかん薬の使用により、患者負担が大きくなる場合がある。副作用または複数の薬剤に起因する有害作用が相加的になり、その結果、非忍容性により、その治療法の有効性が限定される場合があるからである。換言すると、投薬の小さいベネフィットは、その薬物が患者に対して有しているリスクまたは悪影響を上回ることができない。
【0245】
フェンフルラミンの投与
本開示の文脈においては、フェンフルラミンの有効用量のいずれかを採用できる。いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの1日用量は、約10mg未満/kg/日、例えば、約10mg未満/kg/日、約9mg未満/kg/日、約8mg未満/kg/日、約7mg未満/kg/日、約6mg未満/kg/日、約5mg未満/kg/日、約4mg未満/kg/日、約3.0mg未満/kg/日、約2.5mg未満/kg/日、約2.0mg未満/kg/日、約1.5mg未満/kg/日または約1.0未満mg/kg/日(約1.0mg/kg/日、約0.95mg/kg/日、約0.9mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.7mg/kg/日、約0.65mg/kg/日、約0.6mg/kg/日、約0.55mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.45mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.350mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.2mg/kg/日、約0.15mg/kg/日~約0.1mg/kg/日、約0.075mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、約0.025mg/kg/日、約0.0225mg/kg/日、約0.02mg/kg/日、約0.0175mg/kg/日、約0.015mg/kg/日、約0.0125mg/kg/日もしくは約0.01mg/kg/日など)である。
【0246】
換言すると、好ましい用量は、約10~約0.01mg未満/kg/日である。場合によっては、その用量は、約10.0mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、例えば、約5.0mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約4.5mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約4.0mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約3.5mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約3.0mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約2.5mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約2.0mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約1.5mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日または約1.0mg/kg/日~0.01mg/kg/日(約0.9mg未満/kg/日、約0.8mg未満/kg/日、約0.7mg未満/kg/日、約0.6mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約0.5mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約0.4mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約0.3mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日または約0.2mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日など)である。
【0247】
本開示には、驚くべきことに、低用量のフェンフルラミンが治療上、特に、てんかん患者における発作を抑制または除去するのに有効であるという認識が含まれる。いくつかの実施形態では、約2.5mg未満/kg/日、約2.0mg未満/kg/日、約1.5mg未満/kg/日または約1.0mg未満/kg/日(約1.0mg/kg/日、約0.95mg/kg/日、約0.9mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.85mg/kg/日、約0.8mg/kg/日、約0.75mg/kg/日、約0.7mg/kg/日、約0.65mg/kg/日、約0.6mg/kg/日、約0.55mg/kg/日、約0.5mg/kg/日、約0.45mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.350mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、約0.2mg/kg/日、約0.15mg/kg/日~約0.1mg/kg/日、約0.075mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、約0.025mg/kg/日、約0.0225mg/kg/日、約0.02mg/kg/日、約0.0175mg/kg/日、約0.015mg/kg/日、約0.0125mg/kg/日または約0.01mg/kg/日など)の1日用量を採用する。
【0248】
いくつかの好ましい実施形態では、フェンフルラミンの用量は、約2.5~約0.1mg/kg/日の範囲内である。いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの用量は、約2.5mg未満/kg/日~約0.1mg/kg/日、例えば、約2.5mg未満/kg/日~約0.1mg/kg/日、約2.0mg未満/kg/日~約0.1mg未満/kg/日、約1.5mg未満/kg/日~約0.1mg/kg/日または約1.0mg未満/kg/日~0.1mg/kg/日(約0.9mg未満/kg/日、約0.8mg未満/kg/日、約0.7mg未満/kg/日、約0.6mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約0.5mg未満/kg/日~約0.01mg/kg/日、約0.4mg未満/kg/日~約0.1mg/kg/日、約0.3mg未満/kg/日~約0.1mg/kg/日または約0.2mg未満/kg/日~約0.1mg/kg/日など)である。
【0249】
上に示されているように、その投与量は、患者の体重に基づく。しかしながら、便宜上、その投与量は、1.0mg、2.5mg、5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mgまたは50mgの量などで、予め設定してもよい。ある特定の場合には、その投与量は、約0.25mg~約5mg(約0.25mg、約0.5mg、約0.75mg、約1.0mg、約1.25mg、約1.5mg、約1.75mg、約2.0mg、約2.25mg、約2.5mg、約2.75mg、約3.0mg、約3.25mg、約3.5mg、約3.75mg、約4.0mg、約4.25mg、約4.5mg、約4.75mgまたは約5.0mgなど)の量などで、予め設定してもよい。
【0250】
概して、特定の患者に対しては、有効である最小用量を使用する必要がある。
【0251】
本開示には、フェンフルラミンを低用量で(例えば0.1mg/kg~0.5mg/kg、例えば0.1mg/kg~0.35mg/kgの用量の範囲内で1日に2回)投与する実施形態では、フェンフルラミンの抗発作活性が、他の薬剤(ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストなど)による干渉を受けやすい場合があるという認識が含まれる。ある特定の実施形態では、ある特定のセロトニン受容体アンタゴニストを1つ以上、併用投与するときには、フェンフルラミンの用量を増やす。
【0252】
本明細書に記載されている投与量は、1日に1回以上(1日に1回、1日に2回、1日に3回または1日に4回以上など)投与して、1日投与量を提供してもよい。
【0253】
ある特定の実施形態では、その投与量は、30mg以下(30mg、約29mg、約28mg、約27mg、約26mg、約25mg、約24mg、約23mg、約22mg、約21mg、約20mg、約19mg、約18mg、約17mg、約16mg、約15mg、約14mg、約13mg、約12mg、約11mg、約10mg、約9mg、約8mg、約7mg、約6mg、約5mg、約4mg、約3mg、約2mgまたは約1mgなど)の1日用量である。概して、特定の患者に対しては、有効である最小用量を使用する必要がある。場合によっては、その用量は概して、体重減少で使用する用量を大きく下回る。
【0254】
本発明の方法で使用するフェンフルラミンの用量は、キットの形態で提供でき、そのキットは、本発明の方法の1つ以上におけるその用量の使用に関する説明を含む。ある特定の実施形態では、そのキットは、併用治療剤を1つ以上含む投与形態をさらに含むことができる。
【0255】
フェンフルラミンの投与形態及び投与
本発明の方法に従って投与するフェンフルラミンの用量は、全身投与または局所投与できる。投与方法としては、経口経路、口腔内経路、舌下経路及び直腸経路のような経腸経路を介した投与、経皮投与及び皮内投与のような局所投与、ならびに非経口投与を挙げてよい。適切な非経口経路としては、皮下注射針またはカテーテルを介した注射、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、腹腔内注射、動脈内注射、脳室内注射、髄腔内注射及び前房内注射、ならびに膣内投与、直腸投与または経鼻投与のような、注射以外の経路が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の化合物の1つ以上を、治療の必要な区域に局部投与するのが望ましい場合がある。これは、例えば、局所適用中の局部注入、注射、カテーテル、坐剤またはインプラントによって行ってよく、前記インプラントは、シラスティック膜のような膜または繊維を含め、多孔性、非多孔性またはゼラチン様の材料のインプラントである。
【0256】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で投与するフェンフルラミンの用量は、いずれかの薬学的に許容される剤形(投与形態)で製剤化でき、その剤形としては、(a)経口用の崩壊錠、カプセル剤及びロゼンジ剤を含む錠剤、経口用の液剤もしくはシロップ剤、経口用乳剤、経口用ゲル剤、経口用フィルム剤、口腔内液剤、例えば懸濁剤用の粉末などのような経口剤形、(b)注射剤形、(c)経皮パッチ、軟膏剤、クリームのような経皮剤形、(c)吸入剤形、及び/または(e)経鼻投与剤形、(f)直腸投与剤形、(g)膣投与剤形が挙げられるが、これらに限らない。
【0257】
このような投与形態は、1日に1回投与、または1日に複数回投与(例えば、1日に2回、3回、もしくは4回投与)するように製剤化できる。あるいは、便宜上、投与形態は、上記よりも少ない頻度で(例えば、月に1回、週に2回、週に1回、4日に1回、3日に1回、もしくは2日に1回)投与するように製剤化でき、当該技術分野においては、徐放を促す製剤が知られている。
【0258】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で用いるフェンフルラミンの投与形態は、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩と、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤、担体、アジュバントなどとを、医薬製剤分野の当業者に知られている方式で組み合わせることによって調製できる。
【0259】
いくつかの実施形態では、経口投与に適する製剤としては、(a)水または生理食塩水などの希釈剤に有効量の化合物を溶解させたものなどの液剤、(b)所定量の活性成分(フェンフルラミン)を固体または顆粒としてそれぞれ含む、カプセル剤、サッシェ剤、または錠剤、(c)適切な液体中の懸濁剤、及び(d)適切な乳剤を挙げることができる。錠剤形態は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、バレイショデンプン、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ならびにその他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤及び薬理学的に相溶性の賦形剤のうちの1つ以上を含むことができる。ロゼンジ剤の形態としては、フレーバー、通常、スクロース及びアカシアまたはトラガカント中の活性成分と、ゼラチン及びグリセリンまたはスクロース及びアカシアのような不活性な基剤中に活性成分を含むトローチ剤、活性成分に加えて、本明細書に記載されているような賦形剤を含む乳剤、ゲル剤などを挙げることができる。
【0260】
経口用の固体医薬製剤用では、適切な賦形剤としては、マンニトール、ラクトース、グルコース、スクロース、デンプン、セルロース、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム及び/または炭酸マグネシウムのような、医薬品グレードの担体が挙げられる。経口用液体製剤で使用する際には、その組成物は、例えば、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロールまたはエタノールのような水性担体、好ましくは水または生理食塩水中で水和するのに適する固体または液体のいずれかの形態で提供される液剤、懸濁剤、乳剤、またはシロップ剤として調製してよい。望ましい場合、その組成物は、湿潤剤、乳化剤または緩衝剤のような無毒性の補助剤も微量含んでよい。
【0261】
例示として、そのフェンフルラミン組成物には、従来の薬学的に許容される担体及び賦形剤(すなわちビヒクル)を添加混合でき、この組成物は、水性液剤、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハーなどの形態で使用できる。このような医薬組成物は、ある特定の実施形態では、活性化合物を約0.1重量%~約90重量%、より一般的には、活性化合物を約1重量%~約30重量%含む。その医薬組成物は、コーンスターチまたはゼラチン、ラクトース、デキストロース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウム及びアルギン酸のような一般的な担体及び賦形剤を含んでよい。本発明の製剤で一般に用いる崩壊剤としては、クロスカルメロース、微結晶性セルロース、コーンスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム及びアルギン酸が挙げられる。
【0262】
局所投与に適する製剤は、活性成分に加えて、適切であるような担体を含むクリーム、ゲル剤、パスタ剤または発泡剤として提供してよい。いくつかの実施形態では、その局所用製剤は、構造化剤、増粘剤またはゲル化剤、及び軟化剤または滑沢剤から選択される成分を1つ以上含む。よく用いられる構造化剤としては、ステアリルアルコールなどの長鎖アルコール、ならびにそのグリセルエーテルまたはグリセルエステル及びオリゴ(エチレンオキシド)エーテルまたはオリゴ(エチレンオキシド)エステルが挙げられる。増粘剤及びゲル化剤としては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマー及びそのエステル、ポリアクリルアミド、ならびに寒天、カラギーナン、ゼラチン及びグアーガムのような天然の増粘剤が挙げられる。軟化剤の例としては、トリグリセリドエステル、脂肪酸エステル及びアミド、ミツロウ、ゲイロウまたはカルナバワックスのようなワックス、レシチンのようなリン脂質、ステロール及びその脂肪酸エステルが挙げられる。局所用製剤は、他の成分、例えば、収れん剤、香料、色素、皮膚浸透促進剤、日焼け止め剤(例えばサンブロック剤)などをさらに含んでよい。
【0263】
本発明の特定の製剤は、経口用液剤形態である。その液体は、液剤または懸濁剤であることができ、経口用の液剤またはシロップ剤であってよく、ミリグラム量単位の目盛りの付いたシリンジを備えたボトルに含まれ、所定の体積の溶液で得られる。その液剤により、小柄の小児に適する投与量の体積の溶液を調節可能になり、その小児に、1.25mg~30mgのいずれかの量、及びこれらの間の量のうち、0.25ミリグラム刻みのいずれかの量でフェンフルラミンを投与でき、すなわち、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2.0mgなどの量で投与できる。
【0264】
代替的な実施形態では、その分注器具は、様々な用量のフェンフルラミン液剤を送達するのに有用なシリンジまたは目盛り付きのピペットであってよい。別の実施形態では、その分注器具は、一定の体積のフェンフルラミン液剤を分注できる定量式の投与器具である。いくつかの例示的な実施形態では、その定量式の投与器具によって送達する用量は、調節可能である。
【0265】
その製剤は、液剤または懸濁剤であってよく、所定の体積の製剤が、既知の量の活性フェンフルラミンを含むように調製する。
【0266】
例えば、いくつかの実施形態では、その分注器具は、1ミリリットル刻みの目盛りが付いたシリンジであり、その液体フェンフルラミン製剤は、体積1ミリリットルの製剤に、ぴったり1ミリグラムのフェンフルラミンが含まれるようになることを特徴とする。このようにして、患者に経口投与する液体製剤の体積に基づいて所望のミリグラム数の用量のフェンフルラミンを、その患者に正確に投与し得る。
【0267】
代替的な実施形態では、その分注器具は、容器に連結されたシリンジであって、液体製剤をその容器から取り出す構成になっているシリンジ(そのシリンジには、取り出した製剤の体積を知らせる目盛りが付されている)、所定の体積の製剤を前記患者に送達する用量定量式の分注器具、または所定の体積の液体を送達するように目盛りが付された定量式の分注器具であり、利便的で一貫した正確な投与を可能にする。
【0268】
フェンフルラミンは、遊離塩基の形態または薬学的に許容される塩の形態、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、マレイン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、トシル酸塩、コハク酸塩、メシル酸塩及びベシル酸塩からなる群より選択される形態で投与できる。さらなる例示的な薬学的に許容される塩は、Berge et al.,J.Pharm Sci.(1977)68(1):1-19に見ることができる。
【0269】
本発明の方法で用いるフェンフルラミンは、当業者に知られているいずれかの薬学的に許容されるプロセスに従って作製してよい。フェンフルラミンを合成するプロセスの例は、US10,351,509、US10,351,510、GB1413070、GB1413078及びEP441160という文献に示されている。
【0270】
併用療法
本明細書に記載されているキットまたは方法のいくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、てんかん治療における併用療法剤として利用できる。フェンフルラミンは、1つ以上の医薬活性剤と併用投与でき、その医薬活性剤は、フェンフルラミンとともに単一の投与製剤中にて提供されてもよいし、または1つ以上の別々の医薬投与製剤中にて別々に提供されてもよい。別々の投与製剤を使用する場合には、その対象組成物と、1つ以上の追加の薬剤は、同時に投与することもできるし、または別々に、時間差をつけて、すなわち順次に投与することもできる。
【0271】
いくつかの実施形態では、その薬剤は、抗けいれん剤などの併用治療剤である。適切な併用治療剤は、カルバマゼピン、エトスクシミド、フォスフェニトイン、ラモトリジン、レベチラセタム、フェノバルビタール、プロガビド、トピラマート、スチリペントール、バルプロ酸、バルプロエート、ベラパミル、ならびにベンゾジアゼピン(クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロフラゼプ酸エチル、ロラゼパム、ミダゾラムなど)からなる群より選択できる。併用治療剤の薬学的に許容される塩の使用も企図されている。
【0272】
いくつかの実施形態では、フェンフルラミンは、フェノチアジン(トリフルオペラジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、アセトフェナジン、トリフルプロマジン、メソリダジン)、ブチロフェノン(ハロペリドール)、チオキサンテン(クロルプロチキセン)、ジヒドロインドール(モリンドン)、ジフェニルブチルピペリジン(ピモジド)、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、パリペリドン、カリプラジン、ブレクスピプラゾール、ならびに三環系抗ヒスタミン剤(シプロヘプタジン、ピゾチフェン、ケトチフェン、アザタジン、ロラタジン及びデスロラタジン)から選択される抗精神病剤と併用投与する。
【0273】
本発明は、下記の実施例にさらに例示されている。
【実施例
【0274】
VII.実施例
実施例1:てんかんの最大電撃モデルにおける、フェンフルラミンと抗セロトニン薬との投与
本実施例には、フェンフルラミンと組み合わせた様々な化合物の合成作用及び/または禁忌作用が記載されている。具体的には、本実施例には、発作のマウスモデル、すなわち最大電撃(MES)モデルを用いて、様々な他の化合物と組み合わせて投与した場合のフェンフルラミンの抗けいれん作用の特徴が記載されている。最大電撃(MES)は、急性全般強直間代発作のモデルである。発作の誘発は、そのマウスにおいて、60Hz、0.2秒、50mAの交流によって行う。後肢の強直性伸展を測定して、発作または発作からの防御を評価する。
【0275】
MES試験においては、試験の4時間前にFEN(あるいはFFA)を投与した後、その試験化合物のそれぞれをマウスのコホートに、所定の時点に投与して、試験が、FENのピーク活性時間(4時間)と一致するようにした。すなわち、例えば、この試験デザインでは、ピーク活性時間が1時間の化合物は、FENの投与から3時間後に投与することになる。
【0276】
フェンフルラミンをMES ED50で投与したので、単純に考えれば、同様に抗けいれん作用を発揮する化合物では、発作から防御されたマウスの数が50%超に増えることになり、フェンフルラミンの抗けいれん作用を抑制する化合物では、発作から防御されたマウスの数が50%未満に減ることになる。このモデルにおける交絡因子は、MAch受容体におけるアンタゴニスト活性、特に、M1におけるムスカリン遮断性を有する薬物(MESモデルにおいて、後肢の強直性伸展を妨げることが知られているので、他の受容体における薬物の作用を遮断できる)である[Bhattacharya SK,et al.,Indian J Exp Biol.1991 Mar;29(3):237-40]。
【0277】
化合物の1つであるドキセピンは、マウスにおいて、いくつかの急性発作モデル及び慢性発作モデルで、広範囲にわたって特徴付けられている。MES試験では、ドキセピンは、ピーク活性時間(TPE)が5分であり、ED50が6.6mg(腹腔内)である。ただし、投与から0.25時間後のED50が8.2mg/kgであることも報告されている。
【0278】
(表4)
【0279】
(表5)セロトニン阻害剤と試験した3mg/kgのフェンフルラミンのMES試験の結果(全投与経路:腹腔内)
【0280】
上記の結果から、フェンフルラミンを様々なセロトニン受容体の阻害剤とともに投与すると、抗発作作用が消失することが示されている。全般的な阻害は、化合物によって異なるが、その阻害には、H1受容体、ムスカリン受容体M1、5-HT2A受容体、5-HT2C受容体、ドーパミン受容体、ならびにモノアミン(セロトニン、ドーパミン及びノルエピネフリン)トランスポーターの阻害が含まれる。発作からの防御の消失は、5-HT2A受容体及び5-HT2C受容体における強力なアンタゴニストである化合物で最も顕著であった。試験化合物4及び6に関する結果の解釈は、これらの化合物のM1受容体における結合が、5-HT2A受容体及び5-HT2C受容体における結合とほぼ同程度に妨げられるという解釈である。別の解釈は、これらの化合物には、その投与量では、5-HT2A受容体及び5-HT2C受容体を占めるほどの十分な強度がないが、フェンフルラミンの発作防御作用との明らかな相加作用が、ムスカリンの遮断という結果である可能性が最も高いという解釈である。シプロヘプタジン及びアミトリプチリンも、強力なM1受容体アンタゴニストであり、そのため、このモデルにおいては、不適切となる。
【0281】
実施例2:てんかんのMESモデルにおける、フェンフルラミンと抗セロトニン薬との投与
本実施例には、上記の実施例1に記載されているような手順を用いて、てんかんのMESモデルにおいて、フェンフルラミンと組み合わせた様々な化合物の合成作用及び/または禁忌作用が記載されている。様々な投与法を試験して、このモデルにおいて、様々な発作防御レベルをもたらす、フェンフルラミン(FFA)の範囲を確立した。結果は、下記の表6に示されている。
【0282】
(表6)
【0283】
これらのデータから、10mg/kgのFFAにより、MESモデルにおいて、100%の防御作用が一貫して得られることが示されている。3mg/kgのFFAは、MESアッセイにおいて、50~60%の動物を防御する。したがって、下記の表7に記載されているように、様々な他の薬剤と組み合わせてFFAを用いたその後の実験には、この用量を使用した。
【0284】
(表7)MESモデルにおけるFFAの抗発作活性に関する様々な化合物
【0285】
上の表に記載されているように、クロザピン、BRL15572、N-デスメチルクロザピン及びロキサピンはいずれも、MESモデルにおいて、FFAの抗発作活性をブロックすると見られる。加えて、ペルフェナジン、ミアンセリン及びアセナピンも、MESモデルにおいて、FFAの抗発作活性をブロックし得る。これに対して、ドキセピン、クロミプラミン、クロルプロマジン、ピモジド及びピンドロールは、FFAの抗発作活性をブロックしない。加えて、MESモデルにおいて、ラモトリジンまたはカルバマゼピンに対するFFA活性の干渉は観察されなかった。
【0286】
図2には、様々な5-HT受容体に対する様々な5-HT受容体アンタゴニストの阻害活性、及びMESモデルにおける、FFA活性に対する対応作用の概要の表が示されている。
【0287】
実施例3:てんかんのゼブラフィッシュモデルにおける、フェンフルラミンと抗セロトニン薬との投与
本実施例には、てんかんのゼブラフィッシュモデルにおいて、フェンフルラミンと組み合わせた様々な化合物の合成作用及び/または禁忌作用が記載されている。
【0288】
ゼブラフィッシュ(Danio rerio)の胚を標準的な養殖条件下で飼育した。米国特許出願公開第20180325909号に記載されているプロトコールと一致したプロトコールを用いて、実験を行った。
【0289】
結果は、図3に示されている表にまとめられている。アスタリスクの数は、効能を示しており、***が最大の効能、*が最小の効能である。図3に示されているように、5-HT1Aは、Faingold-SUDEPモデルまたはDeWitt-ドラベ症候群ゼブラフィッシュ運動モデルにおいて活性を有さないが、5-HT1Dでは、運動及びてんかん性EEGのDeWitt-ドラベ症候群ゼブラフィッシュモデルの両方で、アンタゴニスト活性が見られる。同様に、5-HT2A及び2Cは、Faingold-SUDEPモデル及びDeWitt-ドラベ症候群ゼブラフィッシュモデル(運動亢進及びてんかん性EEG)の両方で、フェンフルラミンの抗てんかん活性をブロックした。
【0290】
上記は、本発明の原理を例示するものに過ぎない。当業者であれば、本明細書には明示的に説明されたりまたは示されたりしていないが、本発明の原理を具現化するとともに、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案できることは明らかであろう。さらに、本明細書に列挙されている例及び条件付きの語はすべて、原則として、本発明の原理、及び当該技術分野を増進させるために本発明者が寄与した概念への読者の理解を助けるためのものとして意図されており、具体的に列挙されているそのような例及び条件には限定されないものとして解釈すべきである。さらに、本発明の原理、態様及び実施形態、ならびにその具体例を示している本明細書のすべての記載には、それらの構造的均等物及び機能的均等物の両方が含まれるように意図されている。加えて、このような均等物には、現在公知の均等物及び今後開発される均等物の両方、すなわち、開発される要素のうち、構造に関係なく、同じ機能を果たすあらゆる要素が含まれるように意図されている。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、説明されている例示的な実施形態に限定されるようには意図されていない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の請求項によって具体化される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】