(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】植物性食品に基づく半製品粉末食料製品およびその製造プロセス
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20221115BHJP
A23L 25/00 20160101ALI20221115BHJP
A23C 11/10 20210101ALI20221115BHJP
A23G 9/42 20060101ALI20221115BHJP
A23L 9/00 20160101ALI20221115BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L25/00
A23C11/10
A23G9/42
A23L9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517448
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 IB2020058773
(87)【国際公開番号】W WO2021053638
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】102019000016880
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522106330
【氏名又は名称】ディ バルトロ エスアールエル
【氏名又は名称原語表記】DI BARTOLO SRL
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ ディ バルトロ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B025
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC22
4B001BC01
4B001BC04
4B001EC10
4B014GB18
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4B036LH09
4B036LH28
4B036LP02
4B036LP10
(57)【要約】
発明は、脂質含有量が少なくとも30重量%である植物起源の食品、および水溶性増量剤を本質的に含む、またはそれらからなる粉末および脱水製品に関する。本発明はまた、この粉末製品を調製するためのプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含有量が10重量%以下の粉末形態の半製品食料製品Pであって、
i)脂質含有量が少なくとも30重量%の油性果実から選択される植物性食品(成分(a))と、
ii)少なくとも95重量%が水溶性である植物性増量剤(成分(b))と、を本質的に含み、
前記成分(a)および(b)は、1:1~1:7まで、好ましくは1:1.2~1:7まで変化する比率(重量比)で存在する、食料製品P。
【請求項2】
前記成分(a)および(b)からなり、前記成分(a)および(b)が定量的に(重量パーセント)、
- 13~45%の前記植物起源の食品(a)および、
- 55~87%のマルトデキストリン、
である、請求項1に記載の食料製品P。
【請求項3】
前記植物起源の食品が、カシューナッツ、ピーナッツ、スイートアーモンド、ヘーゼルナッツ、松の実、ピスタチオ、クルミ、およびそれらの混合物から選択される油性果実のグループに属する少なくとも1つの果実から選択される、請求項1または2に記載の食料製品P。
【請求項4】
前記油性果実が、スイートアーモンドもしくはビターアーモンド、またはこれら果実の混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の食料製品P。
【請求項5】
前記植物起源の食品(a)が、生の形態または焙煎された形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の食料製品P。
【請求項6】
前記生の果実が、脱水形態または非脱水形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の食料製品P。
【請求項7】
脂質含有量が2.5~20重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の食料製品P。
【請求項8】
前記粉末の粒径が80~250μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の食料製品P。
【請求項9】
請求項1に記載の食料製品Pを調製するプロセスであって、
I)少なくとも、
脂質含有量が少なくとも30重量%である少なくとも1つの油性果実から得られたペーストまたはクリーム形態の植物起源の食品(I)と、
水溶性、または少なくとも70重量%が水溶性である植物性増量剤と、
を混合することによって混合物Mを調製する段階であって、
前記植物起源の食品(I)および前記植物性増量剤は、1:1~1:7まで変化する重量比で混合される、調製する段階と、
II)前の段階で調製された混合物Mを噴霧化/微粒子化に供する段階と、
III)前の段階で得られた生成物の脱水によって粉末形態の製品を得る段階と、
を含む、プロセス。
【請求項10】
前記混合物M中の前記植物起源の食品(I)と前記植物性増量剤との間の重量比が、1:1.2~1:7まで変化する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記混合物Mが、噴霧乾燥プロセスに供される、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の食料製品Pによって得られる、液体、クリームもしくはペースト、または固体形態の完成食料製品。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の食料製品Pによって得られる、代用乳植物ベースの飲料またはアイスクリーム、プリン、ベーカリー製品、クリームおよびソース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性果実、特に品種Prunus dulcisなどのアーモンドの果実など、脂質含有量の高い植物起源の自然食品(whole foods)の処理に由来する製品に関する。より具体的には、本発明に係る製品は、通常さらに変換された後、主に人間による消費を目的とした食料製品である。さらに具体的には、本製品は微粉末形態の脱水食料製品Pである。
【背景技術】
【0002】
この製品の適用分野は、通常、液体、クリーム、ペースト、または固体のいずれの形態であれ、通常は食の職人および食品産業によって完成食料製品を製造する分野である。より具体的には、本発明に係る製品は、主に代用乳植物ベースの飲料を調製するためのベース化合物として、または通常は牛乳で調製される、アイスクリーム、プリン、ベーカリー製品、クリーム、ソースおよび他の製品のベースとして使用することができる。
【0003】
近年、ミルク、特に牛乳の代用品としての植物性ミルク、例えばアーモンドもしくはココナッツミルク、または米もしくは大豆ベースの飲料について、従来の牛乳の代替品として関心が高まっている。上記関心は、多くの消費者のニーズ、例えばミルク製品およびチーズ製品以外の原材料により得られる食品調製物の需要を満たすために生じてきており、後者(ミルク製品およびチーズ製品)は多くのアレルギーおよび過敏症を引き起こす成分を有しているという事実、ならびに、植物ベースの代用乳の栄養特性を好む消費者による倫理的および健康に関わる選択のためであるという両方の観点から、植物ベースの代用乳は、乳糖およびコレステロールなどの成分を含まず、タンパク質、繊維、ビタミン、ミネラルだけでなく、モノ不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸の重要な供給源として、より満足で、健康的であるとも考えられている。
【0004】
現在、ピーナッツ、大豆、アーモンド、米およびヘーゼルナッツは、牛乳の代替飲料を入手するために使用され得る植物起源の主要な原材料である。
【0005】
前記の植物起源の原材料の中で、アーモンドは、よく知られたアーモンドミルクを製造するために使用され、アーモンドミルクは、アーモンド以外の植物起源の前述した原材料で得られた飲料と比較して、牛乳と味が非常に似ている官能的特性および感覚的特性を備えた飲料である。さらに、アーモンドミルクは比較的中性の風味を有しているため、前述した飲料とは異なる。例えば、最もよく知られていて広く使用されている植物性ミルクである大豆は、未だ豆類の顕著な風味および臭気があるという欠点を有する一方、ライスミルクは、よりクリーミーかつ、牛乳に似た濃さ(density)を有するアーモンドミルクとは異なり、より水っぽく、濃さがより低い。上記で示した以外の植物原材料(ココナッツ、エンドウ豆など)で得られたミルクは、使用されている該植物原料の風味がさらに際立っている。
【0006】
アーモンドミルクを含むこれら植物ベースの飲料は、とりわけ、使用される原材料に由来する水、脂質画分およびタンパク質画分、デンプン粒および繊維を含むコロイド系である。
【0007】
現在、アーモンドミルクは、100%純粋なアーモンドペーストを水に溶解することによって得られ、その脂質含有量により即座には水溶性とはならないアーモンドペーストを完全に溶解させるために、混合物は均質化プロセスに供される。
【0008】
さらに、アーモンドペーストは保存期間中に安定せず(ペースト中に比較的大量に存在する脂質画分が表面に浮かび上がる現象が発生することによって、その貯蔵寿命は制限される)、主にこの理由から、アーモンドペーストは10℃未満の温度で保存されなければならない。このペーストで得られる飲料もまた問題を孕む。
【0009】
前記製品はエマルジョンであり、したがって、発生する主な問題は、経時的、すなわち主にそれらの保存期間中における制限された安定性によって引き起こされる。実際、保存中に沈降または表面への浮上の現象が発生し得、飲料の品質が明らかに低下する。その結果、これら飲料の貯蔵寿命はいくらか制限される。
【0010】
この問題を克服し、したがって飲料の経時的な安定性を高めるために、例えば、均質化プロセスを用いること、および/または特に乳化安定剤のような防腐剤、例えばレシチンおよび寒天のような親水コロイドを飲料へ添加することが可能である。
【0011】
さらに、これら製品の常時低濃度の液体形態により、大容量の取り扱いおよび保存を必要とする。これは、製品管理コストの観点からかなりの問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、とりわけ、前述した問題を克服することを目的としている。特に驚くべきことに、前述した問題を有さない、脂質含有量の高い植物起源の自然食品に基づく、動物質食品を用いないタイプの新しい脱水製品Pが見いだされた。本製品は、微粉末の形態の半製品であり、完成品の職人または産業用調製物のための基礎調製物として使用され得る。
【0013】
前記食料製品Pは、その官能的特性およびその栄養的特性の両方について高レベルの品質を維持するために、高い時間的安定性を有する。したがって、前記食品Pはまた、その貯蔵寿命を延ばすために特定の処理に頼ることなく、前述の飲料またはアーモンドペーストのものよりも実質的に長く、長期間保存され得る。
【0014】
さらに有利なことには、本発明の製品は、そのマーケティングの目的にとって重要な、室温で安定であるという特性を有する。したがって、該製品は、例えば冷蔵システムの使用を必要とせず、液体製品に比べて体積が小さいために占有するスペースが少なく、保存するのにより容易かつ安価であり、この理由のため、管理コスト、特に輸送および保存にかかるコストが削減される。
【0015】
本発明の製品のさらなる利点は、少なくとも高い水溶性/分散性が提供されることであり、これにより、前記製品に水を加え、続いて得られた混合物を攪拌するだけで、その再水和および可溶化/分散が可能になり、したがって、その効果的な使用時にのみ、牛乳または他のミルクの代わりとして使用され得る代用乳液体食品への迅速な変換が可能となる。
【0016】
さらに、製品の粉末形態が、該製品を扱いやすくし、また投与しやすいものにする。
【0017】
この製品のさらなる利点は、その汎用性にあり、特に該製品がアーモンドをベースにしている場合に、コンシステンシーおよび味に関して、多種多様な完成品を調製するために使用することが可能である。実際、上記のように、本発明に係る製品は、上記で具体的に示したように、完成品の甘さおよび香ばしさの両方を調製するための代用乳ベース化合物として使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、脂質含有量が少なくとも30重量%である油性果実から選択された植物起源の食品を含む粉末形態の半製品食料製品Pに関する。より具体的には、前記食料製品Pは、実質的に以下の成分を含むか、または好ましくは以下の成分からなる:
a)脂質含有量が少なくとも30重量%を有する油性果実のグループに属する少なくとも1つの果実から選択された植物起源の食品(a)、および、
b)植物性増量剤(vegetable bulking agent)。
前記成分(a)および(b)は、1:1、好ましくは1:1.2~1:7まで変化する重量比で存在する。
【0019】
前記食料製品Pは、部分的に脱水されている、すなわち、該製品Pの総重量に対して10重量%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下の水分含有量を有する。
【0020】
典型的には、前記食料製品Pにおいて、植物起源の食品(a)は、10重量%以下の水分含有量を有する。
【0021】
本発明の範囲内において、「油性果実」という表現は、脂質含有量の高い植物製品を意味し、これらの果実は、一般に「木の実」および/または「ドライフルーツ」として知られ、かつ分類される。使用され得る油性果実の最も一般的な例は、カシューナッツ、ピーナッツ、スイートアーモンドまたはビターアーモンド、ヘーゼルナッツ、パインナッツ、ピスタチオ、Juglans regia L.種の一般的なクルミによって生産されるクルミなどのさまざまなタイプのクルミ、ブラジルナッツ、ココナッツ、マカデミアナッツ、ピーカンナッツなどである。
【0022】
常識的な油性果実(すなわち、アーモンド、松の実、クルミなど)は、実際には、植物学の観点からは種子である。したがって、食用部分は種である。
【0023】
好ましい実施形態によれば、成分(a)は、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、松の実およびアーモンドなどの食品、さらに好ましくは松の実などのマイルドな風味を有する食品、さらにより好ましくはアーモンドまたは前記ナッツの混合物などの食品から選択される。
【0024】
したがって、本明細書において、「食品(food)」という用語は、均質な自然、すなわち、異なる品種であり得るが単一のタイプの油性果実と、不均一な自然、すなわち、任意の重量比での前記油性果実の2つ以上の相互の混合物と、を意味する。したがって、成分(a)は油性果実の混合物であり得る。この場合、混合物は、他の油性果実の量に対して、アーモンドの量をより多く含むことが好ましい。
【0025】
本明細書では、油性果実、および自然食品への言及のすべては、その食用部分のみを意味する。
【0026】
このように、油性果実とは、食用部分の脂質含有量が高いことから命名されている。一般に、本発明の目的のために、植物起源の自然食品の総重量に対して少なくとも30重量%、好ましくは35重量%、より好ましくは40重量%、さらにより好ましくは少なくとも45重量%の量の脂質を含有する油性果実が好ましい。指標として、油性果実は、植物起源の自然食品の総重量に対して最大76重量%の脂質含有量を有する。
【0027】
これらの油性果実において、存在する脂質は、当業者によく知られているように、飽和と、主に一不飽和および多価不飽和との両方の中鎖または長鎖脂肪酸である一般的にトリグリセリドである。一般に、品質の観点から、これらの果実は一不飽和脂肪酸(主にオレイン酸)、および無視できない量の多価不飽和脂肪酸、特にω-6位が不飽和である脂肪酸が豊富である。特に、前記多価不飽和脂肪酸はリノール酸である。
【0028】
本発明に係る食料製品Pにおいて、植物起源の食品(a)の形態である油性果実は、以下の形態のうちの1つを取り得る:
- 果実が非脱水形態もしくは脱水形態か、または前記形態の混合状態である、生の形態;
- 焙煎された形態。
【0029】
当然のことながら、食料製品Pはまた、前記形態の両方(すなわち、生または焙煎)の油性果実を含み得、前記形態の果実は、互いに任意の重量比である。前記油性果実の焙煎は、食料製品Pにおいても検出される特定の芳香を果実に与える調理方法である。
【0030】
さらに、この焙煎により、果実の水分含有量を減らすことが可能であり、通常、水分含有量を重量で半分またはそれ以上減らされる。
【0031】
本発明に係る食料製品Pにおいて、焙煎形態の油性果実は、好ましくは、アーモンド、ヘーゼルナッツ、松の実、ピスタチオ、カシューナッツである。
【0032】
前記食料製品Pは、対応する植物起源の自然食品(i)に由来する植物起源の食品(a)を含む。
【0033】
本明細書において、「自然(whole)」という用語は、自然界に見られるように採れたての食品、すなわち、その組成物の栄養特性が、摘み取られた後のその組成物の変質以降、人工的に改変されていない食品を意味する。
【0034】
植物起源の食品(a)は、ペースト形態であるため、その由来となる対応する植物起源の自然食品(i)とは異なる。
【0035】
もう1つ考えられる差異は、水分量に関するものである。実際、植物起源の食品(a)は、対応する植物起源の自然食品(i)がペーストに変換される前に脱水に供された場合、その由来となる該植物起源の自然食品(i)と比較して水分含有量が低くなり得る。この場合、前記植物起源の食品(a)は、30重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下の水分含有量を有する。
【0036】
前述した差異に加えて、植物起源の食品(a)は、必要に応じて、生の形態ではなく焙煎された場合の化学組成において、対応する植物起源の自然食品(i)とさらに異なり得る。
【0037】
したがって、本発明に係る食料製品Pに存在する植物起源の食品(a)は、可能な食品変換プロセスまたは処理が前記調理(焙煎)のみである食品である。
【0038】
したがって、植物起源の食品(a)とは、特にその主要栄養素、すなわち脂質、タンパク質および炭水化物のクラスに属する栄養素や、ビタミンなどの微量栄養素に関して、その定性的組成および/または定量的組成を改変するための強力な操作プロセスに供されていない食品である。ゆえに、植物起源の食品(a)は、強化食品(ビタミン、ミネラル塩の添加の場合のように)または主要栄養素(脂肪など)の望ましい定性的および/または定量的プロファイルを得るために改変された食品ではなく、したがって、対応する自然食品に対して異なる。操作の種類に基づいて、操作された食品は、例えば、脂肪含有量が低く、および/または多価不飽和脂肪酸が添加されているか、もしくはタンパク質などが豊富であり、操作された食品は、対応する起源の食品、すなわち自然食品とは異なる栄養素組成を有するであろう。
【0039】
言い換えれば、植物起源の食品(a)は、その組成に関連して、脱水または前記焙煎によって決定される、物理的変化のみを受けた可能性のある食品である。
【0040】
前記植物性増量剤は、好ましくはその重量の少なくとも70%、好ましくは75%、より好ましくは95%まで水に可溶化し得、すなわち、8℃~30℃の間の温度で好ましくは少なくとも95%の水への溶解度を有する。
【0041】
前記植物性増量剤は、好ましくは、以下の成分から選択される:
- 小麦でん粉などのでん粉、ならびにマルトデキストリンおよびグルコースシロップなどのでん粉誘導体;
- ブドウ糖、果糖、ショ糖などの糖;
- アラビアガムなどのガム;
- イヌリンおよび、小麦、トウモロコシ、米、アーモンドに由来する繊維などの植物繊維;
- 豆類(ルピナス、大豆、ヒヨコマメ、エンドウ豆)からのタンパク質、米タンパク質、およびトウモロコシタンパク質などの植物タンパク質;
- ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの天然または修飾セルロース;
- カラギーナンなどの抽出または合成親水コロイド。
【0042】
好ましい植物性増量剤はマルトデキストリンである。
【0043】
より好ましくは、本発明に係る製品Pにおいて、前記成分(a)および(b)は、以下の量(重量パーセント)で存在する:
- 成分(a)は、13~45%、より好ましくは15~45%、通常は20~35%
- 成分(b)は、55~87%、より好ましくは55~85%、通常は65~80%。
【0044】
述べたように、製品Pは、前記成分(a)および(b)を本質的に含むか、または好ましくは前記成分(a)および(b)のみからなる。
【0045】
成分(a)および(b)以外のさらなる成分が存在する場合、前記さらなる成分は、食料製品Pの総重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%、より好ましくは2重量%、さらにより好ましくは1重量%の量で製品Pに含有される。
【0046】
上記のように、前記食料製品Pは、実質的に前記成分(a)および(b)のみから形成され、したがって、本製品Pは、タンパク質、甘い味の糖(そのままの状態、もしくは例えばシロップの形態で)、脂肪、ビタミンなどの単離された栄養物質、または香料、着色料、酸化防止剤、安定剤などの食品添加物が豊富ではない。マルトデキストリンは、実質的に中性の風味を有する、すなわち、味がないという事実のために、増量剤として特に適している。
【0047】
本発明では、任意のタイプのマルトデキストリンが使用され得るが、典型的にはデキストロース当量含有量が、10~20の間、好ましくは12~20の間、より好ましくは15~20の間のマルトデキストリンであることがより好ましい。
【0048】
例えば、本発明に係る製品に使用され得るマルトデキストリンのタイプは、以下の特性を有する:
- 400~600g/lの見掛け密度(流動かさ密度)、
- 粒度:10%以下の量が250μmより大きく、50%未満の量が40μmより小さい。
【0049】
食料製品Pは、製品P全体の重量に対して、指標として、2.5~20重量%、好ましくは5~18重量%、より好ましくは7~16重量%の脂質含有量を有する。
【0050】
本発明に係る製品Pは植物性食品誘導体であり、したがって、この製品Pは、例えば、動物を搾乳することによって直接得られる動物起源の食品、すなわち、典型的には牛乳、または粉乳、チーズ、ヨーグルトなどのその変換製品のいかなるものも含有しないことを意味することに留意されたい。
【0051】
上記のように、本発明に係る製品Pは、粉末形態、好ましくは非常に微細な粉末である。指標として、上記粉末は、デジタルマイクロメータを使用して決定された、80~250μm、好ましくは80~200μm、より好ましくは80~180μmの粒径を有し得る。
【0052】
さらに本発明に係る製品Pは、既知の体積を秤量することによって決定された、典型的には300~500g/lの間、好ましくは350~400g/lの間の粉末密度を有する。
【0053】
本発明に係る製品Pは、使用される最初の食品に応じて、例えば、明るいベージュからほぼ白色までの明るい色を有する。
【0054】
さらに本発明に係る製品Pは、繊細な風味または風味のわずかな気配を有する。
【0055】
非常に繊細な風味を有する白色または実質的に白色の製品が好ましい。
【0056】
したがって、本発明はまた、完成食料製品を調製する目的のための、すなわち消費の準備をする目的のための前記製品Pの使用に関する。実際、本発明に係る製品Pは、典型的には半製品である。より具体的には、本発明に係る製品Pは、好ましくは、完成品を調製するために他の材料(ingredients)に添加される。この目的のために、製品Pは、そのまま、したがって粉末形態で、または液体形態で、すなわち再水和後に添加され得る。本発明に係る製品Pは、容易に再水和および分散される。調製される完成品のタイプおよびレシピに応じて、製品Pはそのまま、または再水和後にのみ使用される。
【0057】
上記液体調製物は、適切な液体を製品Pに、所望の官能特性および濃さを有する飲料を得るために所望される量で添加する段階を含むプロセスにより得られる。前記液体中の製品Pの再水和を改良するために、上記段階は混合を伴い、この混合もまた、製品Pへの液体の添加に続いて継続し得る。このプロセスは通常、室温で実施される。通常、製品Pに添加される前記液体は水である。
【0058】
前記製品Pに液体、特に水が添加された後、動物起源のミルクを代用する、代わりに使用することができる飲料が得られる。
【0059】
上記飲料を得るために、製品Pが分散される水の重量ベースの量は、必要条件に応じて大きく変化し得、したがって、得られる飲料の濃さも変化する。指標として、この水の量は、粉末状の製品P 100gに対して300~1000gの範囲で変化する。
【0060】
上記のように、この製品Pは、主に食品産業および職人を対象としており、必要に応じて再水和して液体に変換した後、例えばアイスクリーム、プリン、クリーム、ベーカリー製品、ソースなどを製造するためのベースとして使用され得る。
【0061】
したがって、本発明はまた、ベースとして有する、すなわち、前記食料製品Pからそのまま、またはその再水和後の前記食料製品Pから得られる、液体形態、クリーム形態もしくはペースト形態、または固体の形態(例えば、代用乳植物ベースの飲料またはアイスクリーム、プリン、ベーカリー製品、クリームおよびソース)の完成食料製品に関する。
【0062】
植物起源の最初の自然食品のタイプに従って、本発明に係る製品Pは、そのタイプ自身の色および風味を有する。使用するのに最も用途の広い製品Pは、白または非常に明るい色および繊細な風味を有するものである。この製品は通常、スイートアーモンドをベースにした製品である。
【0063】
本発明はさらに、製品Pを調製するためのプロセスに関する。製品Pは、上記したように、脱水粉末形態の半製品である。
【0064】
食品が脱水粉末形態をとることを可能にする既知の変換プロセスは、一般に、少なくとも自然食品の脱水を含む様々な段階を有し、この脱水は、場合に応じて、液体の場合は食品そのままの(必要に応じて濃縮形態に変化させた後)状態で、またはこの食品が固体の場合は食品を粉砕した後に実施される。
【0065】
上記脱水プロセスは、脱水製品の技術的および栄養的特性に影響を与えるため、特定のタイプの技術的処理の選択が、完成品の上記特性を変化させるために重要である。
【0066】
食品産業で広く使用されている特定のプロセスは、高度な技術的および栄養的特性を備えた製品を製造するため、噴霧乾燥技術に代表される。とりわけ、この技術を使用すると、低密度の粉末を得ることが可能であり、必要に応じて容易に再水和および分散させることができる。したがって、この技術は、本発明に係る製品Pの製造の場合においても1つの好ましいものである。
【0067】
現在、食品産業では、液体形態の食品、すなわち、それらの組成物に高い水分含有量を有する食品のみが、噴霧乾燥技術で処理されている。したがって、これらの食品は通常、フルーツジュース、お茶およびコーヒーなどの水のような飲料である。さらに、これらの液体調製物は、アーモンドミルクおよびアーモンド間の栄養特性の違いに関連して以前に示された通り、それらが由来する元の食品と同じ栄養組成を有さない場合がある。
【0068】
本発明に係る製品Pを製造するために使用される噴霧乾燥プロセスにおいて、初期化合物は、一般に、上記のような流体調製物というよりはむしろ、ペーストのコンシステンシーを有する。
【0069】
実際、前述の食品、特に油性果実について粉砕後、粉砕された製品を後続する噴霧乾燥プロセスに供することが必要であり、前記食品に典型的な高い脂質含有量のため、ペースト/粘性コンシステンシーを有する調製物が得られる。この調製物は、既知の技術に従って実施される噴霧乾燥プロセスにそのまま供され得る。
【0070】
上記の特性および利点を有する製品Pを得るために、このプロセスにおいて、粉砕段階から得られる前記ペースト/粘性調製物は、前述した植物性増量剤と混合される。
【0071】
要するに、本発明に係る製品Pは、典型的には、必須の段階として、好ましくは前述した油性果実がペースト(またはクリーム)形態に変化されるまで、該油性果実を粉砕することと、続いて、それを植物性増量剤と混合して混合物Mを得て、その後、脱水段階に供し、脱水微粉末を得ることと、を含むプロセスTによって調製される。
【0072】
特に、製品Pの製造プロセスTは、殻から取り出され、必要に応じて上皮も除去された生の形態または焙煎形態の前記油性果実が、ペーストまたはクリーム形態に変化される段階S1から開始される。上記段階S1は、既知の方法に従って実施され得る。当然のことながら、上記プロセスTは、アーモンドまたはピスタチオペーストなど、事前に調製された、場合によっては市販されている油性果実のペーストまたはクリームを利用できる。
【0073】
一般に、油性果実の前記ペーストまたはクリームを調製するための前記段階S1は、以下のステップを含む:
- ペーストまたはクリームを得るために油性果実を粉砕、必要に応じて精製。
【0074】
粉砕プロセスは、例えば、ボールミルで行われ、これはまた、ペーストに均質化効果をもたらすことができ、必要に応じて、得られたペーストはさらに均質化される。
【0075】
このステップまたはこれらのステップの前に、必要に応じて、殻から取り出し、必要に応じて上皮を取り除いた油性果実を焙煎し、その後、焙煎した油性果実を通常室温まで冷却するステップを先行させることができる。
【0076】
焙煎は通常、80~100℃の温度で、2~15分間実施される。
【0077】
より具体的には、前記プロセスTは、以下の段階を含み、これらは、リストされた順序で続いていく:
I)少なくとも以下の成分を混合することによる混合物Mを調製する段階であって:
- 前述した油性果実およびそれらの混合物から得られる、好ましくはペーストまたはクリームの形態を得るために粉砕された形態である植物起源の食品(I)、および、
- 一般的に、そして好ましくは粉末形態の植物性増量剤;
前記2つの成分は、1:1から、好ましくは1:1.2~1:7まで変化する比率(重量ベース)で混合されている;調製する段階と;
II)前の段階で調製された混合物Mを噴霧化(nebulization)/微粒子化(atomization)に供する段階と;
III)前の段階で得られた生成物の脱水によって粉末形態の製品を得る段階。
【0078】
述べたように、前記果実を粉砕することによって得られたペーストまたはクリーム(I)は、前記混合物Mを製造するために使用される。前記植物起源の食品(I)、すなわち前記ペーストまたはクリームを製造するために使用される油性果実は、以下の形態のうちの1つであり得る:
- 生の形態、必要に応じて脱水(または乾燥)、例えば通常は水分を減らすためだけの目的で換気を使用;
- 焙煎された形態
【0079】
上記脱水および焙煎プロセスはそれ自体が知られているため、これ以上説明しない。
【0080】
上記プロセスにおいて、段階(I)で使用される食品は、ペーストまたはクリームの形態であり、当業者に周知のプロセスに従ってこの形態で入手可能であり、その1つを以下に簡潔に説明する。
【0081】
前述のように、前記油性果実の前記ペーストまたはクリームは、このペーストまたはクリームを製造するための油性果実中に存在しない物質を含有しない。
【0082】
段階(I)で製造された混合物Mは、一般的なミキサーを使用して調製される。典型的には、混合は、通常10~50℃の間の温度、通常室温で実施される。食品の変質を避けるため、この段階の温度は高すぎないことが望ましい。この目的のために、混合は一定速度で実施され得る。この段階(I)は、所望の均質な混合物を得るのに必要な時間延長される。
【0083】
少なくとも前記植物起源の食品(I)および前記植物性増量剤を含むこの混合物Mを調製した後、好ましくは噴霧乾燥技術を使用して、混合物Mが脱水に供されるプロセス段階に送られる。
【0084】
混合物を脱水するための噴霧乾燥技術は、上記のように、短い乾燥時間の後(言い換えれば、食品を熱にさらす時間が短時間)であっても、熱によって引き起こされる食品の劣化および/または変質が減少することで、高品質の脱水製品を得ることができるので好ましい。
【0085】
一実施形態によれば、要するに、混合物Mは、初めにロータリーアトマイザーで噴霧化/微粒子化に供されて液滴を形成させ、次いですべてが脱水チャンバーに入れられる。
【0086】
上記液滴が形成された後、それらは、165~200℃の範囲の温度で供給される熱風の向流によって洗浄される。
【0087】
脱水チャンバーから、すべてが粉末分離機(cyclone)に移され、そこで脱水された粉末がガスから分離される。
【0088】
このようにして得られた脱水粉末は、粉末分離機から排出されて回収され、次いで、通常はふるいにかけてより均質な微粉末が得られ、最終的に包装される。
【0089】
ふるい分けは、好ましくは上記の粒径の製品Pを得るために適切なメッシュサイズを有するふるいを用いて実施される。
【0090】
本発明の実施例は、純粋に非限定的な例示の目的で以下に提供される。
【実施例】
【0091】
[実施例1]
[スイートアーモンドをベースにした混合物Mの調製]
混合物Mを、ヴァル・ディ・ノートのトゥオノ品種のスイートアーモンドのみを含有するアーモンドペーストを使用して調製する。このペーストは、DiBartoloS.r.l社によって製造されている。
【0092】
前記ペーストは次の特性を有する:
- 55.3重量%の脂質含有量
- 1.60%の水分含有量。
【0093】
前記混合物Mは、以下の物質(重量部)から出発して調製される:
- 25部の前記スイートアーモンドペースト、および
- 75部の白い粉末形態のマルトデキストリン。
【0094】
使用されるマルトデキストリンは、次の特性を有する:
- 18~20のデキストロース当量含有量
- 約500g/lの見掛け密度(流動かさ密度)
- 粒度:10%以下の量が250μmより大きく、50%未満の量が40μmより小さい。
【0095】
上記混合物をミキサーで生成する。混合プロセスを25℃の温度で実施し、一定速度で混合する。
【0096】
上記混合物はペースト形態であり、粘度は200cps未満である。混合物のpHは5~6である。
【0097】
[噴霧乾燥プロセス]
続いて、上記混合物Mを噴霧乾燥プロセスに供する、すなわち、最初にロータリーアトマイザーで微粒子化し、次いで脱水チャンバーで脱水する。
【0098】
このように形成された液滴を、175℃~185℃の範囲の温度で熱風の向流によって洗浄する。
【0099】
該プロセスの最後には、140~180μmの範囲の粒径を有する脱水微粉末が形成される。
【0100】
得られた製品Pは、4.68%の水分含有量を有する粉末である。
【0101】
この粉末は白色で非常に繊細な風味を有する。
【0102】
このようにして得られた前記微粉末を、室温で混合した後、100グラムの粉末と500グラムの水との割合で再水和し、乳白色の液体を形成させる。
【0103】
アイスクリームおよびプリンの両方の製造は、牛乳の代わりにこのようにして得られた製品Pで形成された上記乳白色の液体を使用して問題なく行われ、粉末形態の製品Pを直接使用したベーカリー製品の製造も同様であった。
【0104】
[官能検査]
クリームおよびベーカリー製品の最終製品は、味見をする検査員のパネルによって検査され、検査員は不快な臭気および風味を検知しなかった。
【国際調査報告】