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特表2022-548922風況計測のためのLIDARシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(54)【発明の名称】風況計測のためのLIDARシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/95 20060101AFI20221115BHJP
   G01S 7/484 20060101ALI20221115BHJP
   G01P 5/26 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G01S17/95
G01S7/484
G01P5/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517462
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 FR2020051591
(87)【国際公開番号】W WO2021053290
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】1910390
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル,ダヴィドゥ トムリヌ
(72)【発明者】
【氏名】オジュル,ベアトリス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァラ,マチュ
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AB08
5J084AC04
5J084BA03
5J084BA51
5J084BB02
5J084CA03
5J084CA33
5J084EA01
(57)【要約】
LIDARシステムは、当該システムにより放出されるレーザービーム(F)の集束ゾーン(ZF)に関する風況計測を実行するように適合されている。当該システムは、前記レーザービームを連続するレーザーパルスの形態にするように適合され、レイリー長(l)を空気中の複数の前記レーザーパルスの伝播速さで割ったものの2倍以上であり、かつ20μs未満である個々の長さを各レーザーパルスが有するようになっている、前記レーザービームの時間的制御装置(40)を備える。各レーザーパルスの前記個々の長さは、前記集束ゾーンにおいて有効な前記空気のコヒーレンス時間の0.2倍~5倍であることが好ましい。かかるLIDARシステムにより、同等の空間分解能で、従来技術のシステムのスペクトルCNR比の値よりも良好なスペクトルCNR比の値が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-レーザービーム(F)がレーザー放出源の出射瞳において収束し、前記レーザービーム(F)の集束ゾーン(ZF)の長さの中央において最小であるビーム横断面を有するように、LIDARシステムの外部の空気の部分に向かって前記レーザービーム(F)を生成することができるレーザー放出源(10)であって、前記集束ゾーンは、2・λ/(π・θ)に等しい長さを有し、当該長さは、前記レーザービームの中心伝播方向(A-A)に対して平行に測定されたものであり、λは、前記レーザービームの波長であり、θは、前記集束ゾーンを越えて前記レーザー放出源の反対側にある前記レーザービームの発散半角であり、ラジアンで表され、λ/(π・θ)は、レイリー長(l)と称される、レーザー放出源(10);
-前記集束ゾーン(ZF)内に含まれる粒子により後方散乱させられた前記レーザービーム(F)の部分を受け取るように構成されている、ヘテロダイン検出アセンブリ(20);および、
-前記ヘテロダイン検出アセンブリ(20)により生成されるうなり信号から前記粒子についての速さの値を導出するように適合されている、ドップラー計算モジュール(30)、
を備える、風況計測を実行するように適合されたLIDARシステムであって、
-前記レーザービームを連続するレーザーパルスの形態にするように適合され、かつ、複数の前記レーザーパルスが前記集束ゾーン(ZF)を、各レーザーパルスの部分が前記粒子によって後方散乱させられつつ、通過するように、前記レーザー放出源(10)と組み合わせられた、前記レーザービームの時間的制御装置(40)であって、前記レイリー長(l)を前記空気中の複数の前記レーザーパルスの伝播速さで割ったものの2倍以上であり、かつ20μs未満である個々の長さを各レーザーパルスが有するようにさらに適合されている、時間的制御装置(40)、
をさらに備えることを特徴とする、LIDARシステム。
【請求項2】
前記時間的制御装置(40)は、前記レイリー長(l)を前記空気中の複数の前記レーザーパルスの前記伝播速さで割ったものの3倍に等しい個々の長さを各レーザーパルスが有するように適合されている、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項3】
前記時間的制御装置(40)は、各レーザーパルスの前記個々の長さが0.2μs~5μs、好ましくは0.5μs~1.2μsであるように、適合されている、請求項1または2に記載のLIDARシステム。
【請求項4】
前記レーザービームの前記時間的制御装置(40)は、音響-光学変調器、電気-光学変調器、半導体光増幅器、前記レーザー放出源のための照明および消衰システム、およびレーザー増幅キャビティのための固有モード選択システムの中から選択された少なくとも1つのコンポーネントを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のLIDARシステム。
【請求項5】
前記集束ゾーン(ZF)内に含まれる前記粒子の前記LIDARシステムに対するゼロである速さが前記ヘテロダイン検出アセンブリにより生成される前記うなり信号のゼロでない振動数に対応するように、各レーザーパルスと、前記ヘテロダイン検出アセンブリ(20)によって使用される基準レーザー信号との間に振動数オフセットを適用するようさらに適合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のLIDARシステム。
【請求項6】
前記レーザー放出源(10)は、光ファイバータイプのものであり、かつ、100W~5・10Wの平均パワー、好ましくは200W~2000Wの平均パワーを各レーザーパルスが有するように適合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のLIDARシステム。
【請求項7】
前記レーザービームの前記時間的制御装置(40)は、2つの連続するレーザーパルスが3μs~500μsの持続時間、好ましくは100μs未満の持続時間だけ隔たるように適合されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のLIDARシステム。
【請求項8】
前記粒子の速度の3つの座標についてのそれぞれの値を得るように、中心方向の周りに分布する複数の測定方向(A1~A6)であって、前記中心方向に対する各測定方向についての角度(α)が30°未満である複数の測定方向(A1~A6)に沿って、複数のレーザーパルスを同時に放出するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のLIDARシステム。
【請求項9】
前記レーザー放出源(10)は、前記レーザー放出源の前記出射瞳と前記集束ゾーン(ZF)の中心点(O)との間に存在する測定距離を、例えば200m~1000mにおいて、変化させるように構成された可変集束装置を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のLIDARシステム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のLIDARシステムを備える航空機(100)であって、
前記LIDARシステムは、前記航空機の飛行中に風況計測を実行するために前記航空機に搭載されている、航空機(100)。
【請求項11】
-風速の測定対象となる空気の部分内に前記集束ゾーン(ZF)が含まれるように、請求項1~10のいずれか一項に従うLIDARシステムを構成する工程;
-前記レイリー長(l)を前記空気中の複数の前記レーザーパルスの前記伝播速さで割ったものの2倍以上であり、かつ20μs未満である個々のレーザーパルス長を採用する工程;および、
‐前記集束ゾーン(ZF)内に含まれる粒子についての速さの値を得るために前記LIDARシステムを作動させる工程、
を含む、風況計測プロセス。
【請求項12】
前記レーザービームの時間的制御装置(40)は、各レーザーパルスの前記個々の長さが前記集束ゾーン(ZF)において有効な前記空気のコヒーレンス時間の0.2倍~5倍、好ましくは0.5倍~1.2倍であるように調整されている、請求項11に記載の風況計測プロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本明細書は、風況計測を実行するように適合されたLIDARシステムに関する。本明細書はまた、かかるシステムを用いる測定プロセスに関する。
【0002】
[従来技術]
LIDAR(Light Detection and Ranging(光検出および測距))システムはよく知られており、多くの用途において用いられるが、特に、風況計測を実行するために用いられる。風速計測に関して、レーザービームは、空気中に浮遊し気流により運ばれるエアロゾルまたは固体粒子等の粒子により、後方散乱させられる。このとき、レーザービームに対して平行な風速の成分は、ドップラー効果による振動数の偏移から導出される。しかしながら、複数の理由によって、風速計測に用いられる既存のLIDARシステムの性能が制限される。これらの理由の中で、最大の制約のうちの1つは、CNRスペクトル比(CNR spectral ratio)が小さな値をとることである。CNRスペクトル比は、スペクトルの「キャリア対ノイズ比(carrier to noise ratio)」を意味し、CNR_sp比と書かれる。CNRスペクトル比は、後方散乱させられた信号のスペクトルの最大振幅の、スペクトルノイズに対する比である。ここで、このスペクトルノイズは、後方散乱させられた信号を除いたスペクトル振幅の標準偏差として評価される。ドップラー偏移の信頼度の高い測定を可能にし、これに伴う風速の信頼度の高い測定を可能にするためには、このCNR_sp比は、3よりも大きいことが好ましい。空気中の高所において実行される測定、特に航空機から実行される測定、より具体的には、2kmまたは3km(キロメートル)を超える高度で実行される測定において、かかる高度に存在する後方散乱させる粒子の濃度が低いため、CNR_sp比の値についての上記の制約は、特に厳しいものとなる。
【0003】
風況計測に使用される第1のタイプのLIDARシステムは、レーザーダイオード等の継続的(continuous)レーザー源に基づくものである。この場合、測定に関与する空気の部分は、放出された収束ビーム形状のレーザービームによって選択される。ここで、レーザービームは、ガウシアンビーム構造を示しながら、集束ゾーン内へと収束し、その後、発散する。集束ゾーンは、レーザービームの中心伝播方向に対して平行に測定される長さであって、レイリー長の2倍、すなわち2・λ/(π・θ)に等しい長さと、「ウエスト(waist)」と称される、λ/(π・θ)に等しい最小の半径と、を有する。ここで、λは、レーザービームの波長である。また、θは、集束ゾーンを越えてレーザー放出源の反対側にあるレーザービームの発散半角であり、ラジアンで表される。通常、発散半角θは、レーザービームが集束ゾーンを越えて2kmのところに存在するときの、当該レーザービームの角度方向の拡がり(拡がりの角度)の半分である。これらの条件のもとでは、後方散乱させられたレーザービームの部分は、主に集束ゾーンに由来するため、LIDAR測定の結果は、集束ゾーン内に存在する風速に関するものである。しかし、レーザービームの発散による集束ゾーンの選択の原理は、この集束ゾーンのサイズと、この集束ゾーンとLIDARシステムとの間の離隔距離との相関を定める。実際、LIDARシステムの出射瞳が0.10m(メートル)の半径を有するとき、LIDARシステムに対する集束ゾーンのこの離隔距離は、数百メートルであり得る。例えば、集束ゾーンの長さが約50mである場合、これは300mである。
【0004】
さらに、公知の手法において、上記のような継続的放射を用いるLIDARシステムによる検出信号処理は、当該検出信号を、連続する(successive)別々の時間窓に分割することにより進行する。例えばここで、各時間窓の長さは、1μs(マイクロ秒)に等しい長さであり得る。各時間分割窓について得られるCNR_sp比の値を改善するために、連続するN個の時間窓(Nは正の整数)について別々に得られるスペクトル振幅値が平均値へと組み合わせられ、測定結果が構成される。だが、互いにインコヒーレントな検出信号から測定結果を得るために複数の検出値がこのように加えられるとすると、測定結果に関連するCNR_sp比は、各検出値に関連するCNR_sp比の値と比較して、係数N1/2だけ増加する。例えば、このように組み合わせられた100個の検出値について、CNR_sp比は係数10だけ改善する。しかしながら、かかる改善は、1つの検出値のCNR_sp比が特に小さい風況計測条件にとって、不十分であり得る。例えば、空気中に浮遊する粒子によるレーザービームの後方散乱係数が非常に小さい、2kmから3kmを超える高度では、かかる改善は不十分であり得る。あるいは、数Nについて非常に大きな値を用いるには、非常に長い有効測定時間が必要となるが、いくつかの用途、例えば航空機からリアルタイムの風況計測を行う等の用途には、これは非適合的であり得る。
【0005】
第2のタイプのLIDARシステムでは、レーザー放出源は、パルス源であり、複数のパルスとして空気中に放出される放射は、平行ビーム構造を有する。各レーザー放出パルスの長さは、例えば、0.15μs~1μsであり得る。このとき、各測定に関与する空気の部分は、直径が平行レーザービームの直径である円柱であって、複数のレーザーパルスの伝播方向に沿った長さが後方散乱させられた各放射パルスに関する検出時間窓にC/2を乗じた長さに対応する円柱である。ここで、Cは空気中の放射の伝播速さである。同時に、測定に関与する空気の部分とLIDARシステムとの間の距離は、パルスの放出と対応する検出時間窓との間の制御された遅延により、決定される。各レーザーパルスの長さが短い場合、例えば、0.15μsのオーダーの長さである場合、空間分解は精細である。しかし、CNR_sp比の値は低く、スペクトルの広がり(spectral broadening)により、複数のレーザーパルスの伝播方向に対して平行な風速度成分の測定結果に不確かさが生じる。他方、レーザー放射の各パルスが長すぎる場合、例えば、1μsのオーダーの長さである場合、CNR_sp比は増大し、スペクトルの広がりは減少するが、しかし、空間分解は劣化する。したがって、これにより、空間分解能と、CNR_sp比の値と、測定される風速値の精度との間に、制約となるトレードオフが生じる。
【0006】
第2のタイプのLIDARシステムについては、CNR_sp比はまた、別々のN個の基本的測定結果(要素となる測定結果:elementary measurements)を平均することによって増大し得る。ここで、各基本的測定結果は、別個のレーザーパルスから、そしてこのレーザーパルスに対応する後方散乱させられた放射の検出から、得られる。しかし、このように組み合わせられた基本的測定結果は互いに独立した信号に由来するので、平均結果のCNR_sp比は、やはり係数N1/2だけ増加するのみである。
【0007】
風況計測のためのLIDARシステムの性能の他の制限は、使用されるLIDARシステムの性質(測定時間、システムの重量および体積、小さな風速値に対する感度等)に依存し得る。
【0008】
[技術的課題]
このような状況を踏まえたとき、本発明の1つの目的は、良好な空間分解能を保持しつつ、従来のシステムのCNR_sp比の値よりも良好なCNR_sp比の値を示す風況計測の実行を可能にすることである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、測定結果を構成する風速値において良好な精度をさらに有する、かかる測定を可能にすることである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、測定時間の長すぎない測定を実行することを可能にすることである。
【0011】
最後に、本発明のさらに別の目的は、低重量かつ低体積で、好ましくは低コストのLIDARシステムであって、小さな風速値に対して良好な感度を有するLIDARシステムを求めることである。
【0012】
[発明の概要]
これらの目的のうちの少なくとも1つの目的、またはその他の目的を達成するため、本発明の第1の態様は、風況計測を実行するように適合された新規のLIDARシステムであって、
-レーザービームがレーザー放出源の出射瞳において収束し、前記レーザービームの集束ゾーンの長さの中央において最小であるビーム横断面を有するように、前記LIDARシステムの外部の空気の部分に向かって前記レーザービームを生成することができるレーザー放出源であって、この集束ゾーンは、2・λ/(π・θ)に等しい長さを有し、当該長さは、前記レーザービームの中心伝播方向に対して平行に測定されたものであり、λは、前記レーザービームの波長であり、θは、前記集束ゾーンを越えて前記レーザー放出源の反対側にある前記レーザービームの発散半角であり、ラジアンで表され、λ/(π・θ)は、レイリー長と称される、レーザー放出源;
-前記集束ゾーン内に含まれる粒子により後方散乱させられた前記レーザービームの部分を受け取るように構成されている、ヘテロダイン検出アセンブリ;および、
-前記ヘテロダイン検出アセンブリにより生成されるうなり信号から前記粒子についての速さの値を導出するように適合されている、ドップラー計算モジュール、
を備える、LIDARシステムを提案する。
【0013】
換言すれば、本発明のLIDARシステムは、上述したような継続的放出レーザービーム源に基づくタイプに類似する。特に、風況計測の対象となる空気の部分は、レーザー放出源の出射瞳におけるレーザービームの収束構造によって決定される集束ゾーンである。
【0014】
レーザービームの発散半角θは、当該ビームの強度が当該ビームの最大強度値の1/e倍に等しい点が存在する角度である。この点は、レーザービームの中心伝播方向に対して垂直な特徴付け平面(characterization plane)であって、くびれ平面から当該レーザービームの伝播方向に沿って2km下流に位置する特徴付け平面内にある。当該くびれ平面において、レーザービームは、最小の横断面サイズを有する。さらに、半角θは、中心伝播方向に対して測定され、ここで、この中心伝播方向と当該くびれ平面との交点に、その頂点がある。
【0015】
レーザービームの部分を後方散乱させる粒子は、任意の種類であってもよいが、特に、塵、微粒子、氷の微小結晶、小さな水滴等の、空気中に浮遊する固体粒子またはエアロゾルであってもよい。
【0016】
本発明によれば、前記LIDARシステムは、
-前記レーザービームを連続する(successive)レーザーパルスの形態にするように適合され、かつ、複数の前記レーザーパルスが前記集束ゾーンを、各レーザーパルスの部分が前記粒子によって後方散乱させられつつ、通過するように、前記レーザー放出源と組み合わせられた前記レーザービームの時間的制御装置を備える。この時間的制御装置は、前記レイリー長を前記空気中の複数の前記レーザーパルスの伝播速さで割ったものの2倍以上であり、かつ20μs未満(好ましくは、10μs未満)である個々の長さを各レーザーパルスが有するように、さらに適合されている。
【0017】
レーザーパルスの個々の長さは、レーザービームのパワーがそのレーザーパルスの間に達する最大パワー値の半分に等しいレベルを上昇して通る第1の瞬間と、レーザービームのパワーが最大パワー値の半分に等しいレベルを下降して通る第2の瞬間と、の間の時間である。換言すれば、レーザーパルスの個々の長さは、長さおよび瞬間的な放射パワーの観点から、高さの中央におけるその幅であると定義される。
【0018】
レーザービームの時間的制御装置を使用することにより、各レーザービームパルスの長さは、継続的放出LIDARシステムと同様に、ヘテロダイン検出アセンブリが集束ゾーン全体から後方散乱させられた放射を受け取るように調整される。これに関して、ドップラー効果によって影響される検出信号の強度が最大化され得る。
【0019】
さらに、レーザービームの時間的制御装置は、複数の連続するレーザーパルスを決定するが、当該レーザービームの時間的制御装置は、空気のコヒーレンス時間よりも大きな時間オフセットで生成され得るだろう後方散乱への寄与を排除することを可能にする。かかる空気のコヒーレンス時間は、特に、局所的な空気の運動によって生じる。
【0020】
さらにまた、20μsという最大値により、複数の連続するレーザーパルスを決定するレーザービームの時間的制御装置は、集束ゾーンのバックグラウンドに位置する雲によって生成され得るだろう後方散乱への寄与を排除することを可能にする。そこでは、後方散乱させる粒子は、集束ゾーンと比較して、はるかに高い濃度を有するであろう。これに関して、パルスレーザービームを使用することにより、検出信号が集束ゾーンに由来することを確実にすることが可能になる。
【0021】
最後に、複数のレーザーパルスを使用することにより、継続的レーザー放射に関して利用可能なパワー値よりも大きい各パルス内の放射パワー値を利用することが可能になる。したがって、CNR_sp比は、後方散乱させられヘテロダイン検出アセンブリにより収集される放射の強度に比例するが、当該CNR_sp比は、より大きな値を有し得る。この理由から、本発明のLIDARシステムは、空気の後方散乱係数が低いかまたは非常に低い条件のもとで使用され得る。特に、高度2キロメートル以上の航空機から使用され得る。
【0022】
同じ理由から、本発明によるLIDARシステムは、複数の別々のレーザーパルスから得られた複数の測定結果を平均することを任意選択とするか、または、少数のパルスに対してかかる平均操作を実施することを可能にする。その結果、最終的な測定結果を得るのに必要な時間が特に短くなり得る。
【0023】
さらに、本発明のLIDARシステムには、測定された風速値の空間分解能と精度との間のトレードオフが伴わない。これは、空間選択性が複数のパルスの長さの結果であるパルスLIDARシステムとは対照的である。
【0024】
好ましくは、前記レーザービームの前記時間的制御装置は、前記レイリー長(l)を前記空気中の複数の前記レーザーパルスの前記伝播速さで割ったものの3倍に等しい個々の長さを各レーザーパルスが有するように適合されてもよい。
【0025】
特に、前記レーザービームの前記時間的制御装置は、各レーザーパルスの前記個々の長さが0.2μs~5μs、好ましくは0.5μs~1.2μsであるように、適合されてもよい。かかるレーザーパルス長は、実際、空気のコヒーレンス時間が実質的に1μsに等しいときに適している。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、以下の追加的な特徴のうちの少なくとも1つの特徴が、任意選択的に、単独でまたはそれらの複数の組合せにおいて、再現され得る:
-前記レーザービームの前記時間的制御装置は、音響-光学変調器、電気-光学変調器、半導体光増幅器、前記レーザー放出源のための照明および消衰システム、およびレーザー増幅キャビティのための固有モード選択システムの中から選択された少なくとも1つのコンポーネントを含んでもよい。しかしながら、例えば光学的、電子的または電気-光学切換システム等の、前記レーザービームの他の任意の時間的制御装置が、代替的に使用されてもよい;
-前記レーザービームの前記時間的制御装置は、前記レーザー放出源に組み込まれてもよいか、または、前記レーザー放出源の制御入力に作用するように構成されてもよいか、または、前記レーザー放出源によって前記レーザービームが生成された後にこのレーザービームの少なくとも1つの時間分布特性を変更するために、放射の伝播方向に対して前記レーザー放出源から下流に配置されてもよい;
-前記レーザー放出源は、継続的放出タイプのものであってもよく、前記レーザービームの前記時間的制御装置は、このレーザービームを複数の連続するレーザーパルスに分割するように適合されてもよい。あるいは、前記レーザー放出源は、複数の連続するレーザーパルスの形態で放出するタイプのものであってもよく、前記レーザービームの前記時間的制御装置は、各レーザーパルスの長さを変更するように、特に各レーザーパルスの長さを増大するように、適合されてもよい。レーザー放出源のタイプと、想定される源によって放出される前記レーザービームの時間的制御装置のタイプとの他の組み合わせが、代替的に使用されてもよい;
-当該システムは、前記集束ゾーン内に含まれる前記粒子の前記LIDARシステムに対するゼロである速さが前記ヘテロダイン検出アセンブリにより生成される前記うなり信号のゼロでない振動数に対応するように、各レーザーパルスと、前記ヘテロダイン検出アセンブリによって使用される基準レーザー信号との間に振動数オフセットを適用するようさらに適合されてもよい。かかる改良は、低速である風速を測定するために特に有利である。例えば、かかる改良は、風力タービンの運転の最適化等の地上における応用、または、静止飛行の状態またはほぼ静止飛行の状態に留まることができる航空機から実行される測定のために、特に有利である;
-前記レーザー放出源は、光ファイバータイプのものであり、かつ、100W(ワット)~5・10Wの平均パワー、好ましくは200W~2000Wの平均パワーを各レーザーパルスが有するように適合されてもよい。かかる光ファイバーレーザー放出源は、低重量かつ低体積であり、その結果、前記LIDARシステムは、航空機に容易に搭載することができる;
-前記レーザー放出源の前記波長は、空気の透明スペクトル領域内である1.5μm~1.7μmであってもよく、場合によってはさらに、前記LIDARシステムにおいて使用される光ファイバーの透明スペクトル領域内であってもよい。かかる波長は、眼の危険を制限するという利点を有する;
-前記レーザービームの前記時間的制御装置は、2つの連続するレーザーパルスが3μs~500μsの持続時間、好ましくは100μs未満の持続時間だけ隔たるように適合されてもよい。その結果、より大きなレーザーパルスパワー値を得ることが可能である;
-前記LIDARシステムは、前記粒子の速度の3つの座標についてのそれぞれの値を得るように、中心方向の周りに分布する複数の測定方向であって、前記中心方向に対する各測定方向についての角度が30°未満である複数の測定方向に沿って、複数のレーザーパルスを同時に放出するように適合されてもよい。その結果、3つの直交空間座標に沿って、すなわち3次元において、風の速度成分を同時に特徴付ける(特性評価する)ことが可能となる;
-前記レーザー放出源は、このレーザー放出源の前記出射瞳と前記集束ゾーンの中心点との間に存在する測定距離を、例えば200m~1000mにおいて、変化させるように適合された可変集束装置を含んでもよい。
【0027】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様によるLIDARシステムを備える航空機を提案する。このLIDARシステムは、前記航空機の飛行中に風況計測を実行するためにこの航空機に搭載されている。前記航空機は特に、飛行機、ヘリコプター、ドローンであってもよい。いかなるタイプのドローンであってもよいが、特に、固定支持翼を有するドローン、またはマルチコプタータイプのドローンであり得る。
【0028】
最後に、本発明の第3の態様は、
-風速の測定対象となる空気の部分内に前記集束ゾーンが含まれるように、本発明の第1の態様に従うLIDARシステムを構成する工程;
-前記レイリー長を前記空気中の複数の前記レーザーパルスの前記伝播速さで割ったものの2倍以上であり、かつ20μs未満(好ましくは、10μs未満)である個々のレーザーパルス長を採用する工程;および、
‐前記集束ゾーン内に含まれる粒子についての速さの値を得るために前記LIDARシステムを作動させる工程、
を含む、風況計測プロセスに関する。
【0029】
好ましくは、前記レーザービームの時間的制御装置は、各レーザーパルスの前記個々の長さが前記集束ゾーンにおいて有効な前記空気のコヒーレンス時間の0.2倍~5倍、好ましくは0.5倍~1.2倍であるように調整されてもよい。
【0030】
[図面の簡単な説明]
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しつつ非限定的な実施形態の例を以下に詳細に説明することで、より明らかとなるだろう。
【0031】
図1は、本発明に従うLIDARシステムのブロック図である。
【0032】
図2は、図1のLIDARシステムにより生成されるようなレーザービームのさまざまな幾何学的パラメータを示す。
【0033】
図3は、図1のLIDARシステムについての可能なレーザー放出を、従来技術において知られるLIDARシステムのレーザー放出と比較する時間図である。
【0034】
図4は、図1のLIDARシステムの可能な一応用を示す。
【0035】
図5は、3次元風況計測を実行するための、本発明の一改良を示す。
【0036】
[発明の詳細な説明]
明瞭さの理由から、これらの図面に示された要素の寸法は、実際の寸法および実際の寸法比のいずれにも対応するものではない。さらに、これらの要素のうちのいくつかは、単に象徴(記号)としてのみ示されている。異なる図面に示された同一の参照符号は、同一の要素か、または、同一の機能を有する要素を指す。
【0037】
図1に示される本発明によるLIDARシステムは、継続的放出LIDARシステムから構成されてもよい。それは、レーザー放出源10と、ヘテロダイン検出システム20と、ドップラー計算モジュール30と、を備える。
【0038】
レーザー放出源10は、初期レーザー源11(参照符号はSOURCE)と、光増幅器13(参照符号はAO)と、出口光学素子14と、を含み得る。レーザー放出源10は、出口光学素子14の後ろの空間エリア内に収束ビーム構造を有するレーザービームFを生成するように設計されている。光軸A-Aを有するビームFは、出口光学素子14と集束ゾーン(参照符号はZF)との間で減少する横断面であって、次いでこの集束ゾーンZFを越えて発散ビームの形態において増大する横断面を有する。公知の手法において、集束ゾーンZFは、軸A-A、半径w=λ/(π・θ)(一般に「ウエスト(waist)」と称される)、および長さ2・l(lはレイリー長であり、λ/(π・θ)に等しい)(ここで、θは、集束ゾーンを越えたレーザービームFの発散半角であり、ラジアンで表される)を有する円柱になぞらえられる。典型的には、出口光学素子14と集束ゾーンZFとの間の距離は、数百メートルの距離から1キロメートルを超える距離であり得る。また、レイリー長は、数メートルから200mであり得、半径wは1cmのオーダーであり得る。レーザー放出源10の波長は、例えば、1.55μmのオーダーであり得る。一般に、レーザービームFの発散半角θは、集束ゾーンZFからビームの伝播方向に下流へ、集束ゾーンZFの中心Oから2kmに等しい距離Dにおいて評価され得る。より正確には、θは、ビームFの横断平面Pの点Mを含む、頂点Oの円錐の頂点半角である。ここで、横断平面Pは、中心Oから距離Dに位置し、出口光学素子14とは反対側にある。また、点Mにおいて、レーザー放射の強度は、平面Pと軸A-Aとの交点Zにおけるその強度の値に対して、係数1/eだけ減少する。eは、自然対数の底である。図2は、源10によって生成されたレーザービームFの、これらのパラメータを示す図である。光軸A-Aは、ビームFの中心伝播方向を構成する。出口光学素子14は、特に収束レンズから構成され得、レーザー放出源10の出射瞳の寸法を決定し得る。例えば、この出射瞳は、約0.07mの半径を有し得る。
【0039】
ヘテロダイン検出アセンブリ20は、光検出器22(参照符号はPD)と、光結合器(光学的結合器)15、16および21(参照符号はCO)と、四分の一波長板17(参照符号はλ/4)と、を含み得る。これらは、レーザービームFの後方散乱させられる部分を、初期レーザー源11により生成されるようなレーザービームの部分FREFと組み合わせるように構成される。初期レーザー源11により生成されたレーザービームのこの部分FREFは、本明細書の概略部分に示されるように、基準レーザー信号として働く。公知の方法において、このようにして検出されるレーザービームFの後方散乱された部分は、本質的に集束ゾーンZFに由来し、このゾーン内に位置する後方散乱させる粒子によって生みだされる。
【0040】
最後に、ドップラー計算モジュール30は、コンピュータユニット(参照符号はPC)から構成され得る。これは、光検出器22によって送られる信号を処理するための適切なプログラムをホストする。それは、集束ゾーンZF内にある後方散乱させる粒子の速度成分の評価を出力する。この成分(参照符号はVA-A)は、軸A-Aに対して平行である。
【0041】
かかるLIDARシステムの動作は、当業者には非常によく知られているため、ここでそれを繰り返す必要はない。同様に、風速計測のためのこのLIDARシステムの使用もまた、知られている。この場合、レーザー放出源10は、風速を特徴付けようとする空気の部分内に集束ゾーンZFがあるように向き付けられる。また、レーザービームFを後方散乱させる粒子は、集束ゾーンZF内の空気中に浮遊する、塵、微小結晶またはエアロゾル小滴である。
【0042】
本発明によれば、レーザービームFの時間的制御装置40が、レーザービームFを複数の連続するレーザーパルスに分割するために、先に説明したLIDARシステムに追加される。レーザービームFの時間的制御装置40は、例えば、レーザー放出源10内において、初期レーザー源11と光増幅器13との間に追加される。例えば、装置40は、その適当な指令ユニットを有する音響-光学変調器(参照符号はMAO)から構成されてもよい。あるいは、レーザービームFの時間的制御装置40は、電気-光学変調器、半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier)(一般に、SOA等で示される)、または、レーザー放出源10のための照明および消衰システム(lighting and extinction system)に基づくものであってよい。代替実施形態では、時間的制御装置40は、レーザー放出源10内に組み込まれていてもよい。例えば、レーザー放出源10は、多モードレーザー増幅キャビティを備えてもよい。当該多モードレーザー増幅キャビティに対して、1つの固有モードが励起源により選択され、当該励起源により、初期放射がこのレーザー増幅キャビティ内に注入されてもよい。かかる場合において、励起源それ自体は、調整可能なパルスレーザー源であってもよい。この場合、レーザー増幅キャビティから生じるレーザービームFは、励起源の複数のパルスに一対一に対応する、複数の連続するパルスから構成される。
【0043】
一般に、本発明によるLIDARシステムにおいて、装置40により制御される複数のレーザーパルスは、20μs未満の個々の長さを有する。集束ゾーンZFのバックグラウンドにおけるA-A軸上に位置し得るだろう例えば雲等の空気の部分が、集束ゾーンZFからの信号との重ね合わせにおいて検出信号に寄与しないことが、かかる最大値によって保証される。それは、そこから遠い距離にあって大きな後方散乱パワーを有し得るだろうものである。
【0044】
本発明の文脈では、レーザーパルスの長さは、パルスが開始する瞬間と、パルスが終了する瞬間と、を隔てる持続時間として定義される。当該パルスが開始する瞬間は、その最大瞬間パワー値に対して、瞬間パワー値が当該最大瞬間パワー値の半分よりも上に上昇する瞬間である。また、当該パルスが終了する瞬間は、瞬間パワー値が当該最大瞬間パワー値の半分よりも下に下降する瞬間である。
【0045】
さらに、本発明によると、装置40によって制御される複数のレーザーパルスは、レイリー長lを空気中の複数のレーザーパルスの伝播速さで割ったものの2倍以上の個々の長さを有する。風速計測が実行される空気の部分についての空間選択性は、継続的放出LIDARシステムについて上述したのと同様に、集束ゾーンZFによって決定される。したがって、レイリー長が50mに等しいとき、個々のレーザーパルス長は、0.33μsよりも長い必要がある。例えば、各レーザーパルスの個々の長さは、レイリー長lを空気中の複数のレーザーパルスの伝播速さで割ったものの3倍に等しい長さであり得る。すなわち、l=50mの場合、これは1μsに等しい。
【0046】
同時に、風速を測定することを目的とするかかるLIDARシステムの最適化された使用のために、集束ゾーンZFにおける空気の有効コヒーレンス時間(effective coherence time)の0.2倍~5倍、好ましくは0.5倍~1.2倍であるように、各パルスの長さがさらに選択されてもよい。かかるコヒーレンス時間は特に、レーザー放射の後方散乱を生じる粒子の運動に依存する。空気のこのコヒーレンス時間が実質的に1μsに等しい場合、各レーザーパルスの個々の長さは、好ましくは0.2μs~5μsから選択され、より好ましくは、0.5μs~1.2μsから選択される。
【0047】
かかるパルス放出動作では、各矩形形状パルスの内において、100W~5・10Wである瞬間レーザービームパワー値が使用されてもよい。例えば、500Wに等しい瞬間レーザービームパワー値が使用されてもよい。想定する用途に利用可能かまたは適合性のある光増幅コンポーネントを考慮すると、継続的レーザー放射の場合、かかる値はアクセス不可能である。
【0048】
図3の図は、先に説明した本発明に従う風速計測のためのLIDARシステムのパルスレーザー放出を、従来技術において知られる他の2つのシステムと比較するものである。横軸は、時刻tを示し、縦軸は、瞬間放出パワー値Pinstantを示す。複数のパルスINVは、本発明のシステムの場合の空気中への可能なレーザー放出に対応する:複数のパルスINVは、1μsに等しい個々の長さと、500Wに等しい瞬間パワーと、を有する複数の連続する矩形パルスから構成される。71.4μsごとに別のパルスがある。かかる放出動作は、約7Wの平均継続的パワーに対応する。本発明によるかかるLIDARシステムは、出口光学素子14から300mにおいて集束し、この出口光学素子における半径が5cmであるレーザービームFを有する。レーザービームFの集束ゾーン内の空気の後方散乱係数βが2・10-10str-1・m-1(strは、ステラジアン)に等しい場合、本発明によるかかるLIDARシステムにより得られるCNR_sp比の結果の値は8.6である。これらの条件は、レイリー長lの2倍に等しい、約40mの空間分解能に対応する。また、CNR_sp比の8.6という値は、0.1sにわたる信号の積分によって得られる。すなわち、この値は、N=1400の複数の連続するパルスを組み合わせることによって得られる。
【0049】
図3の線AA1は、14Wのパワーを有する継続的放出LIDARシステムに対応する。本発明によるシステム(複数のパルスINV)のCNR比と同等のCNR比の値を得るためには、N=1,764,000の複数の連続する分割時間窓について実行される測定が組み合わせられる必要がある。各個々の測定に関連するCNR_sp比の値と比較して、これは、測定数Nの平方根に比例するCNR_sp比の増加に対応する。各分割時間窓が1μsという個々の持続時間を有する場合、CNR_sp=8.6に対応する1つの測定サイクルの持続時間は、1.764sである。換言すれば、等しい持続時間の測定サイクルの場合、本発明のシステムは、継続的放出のLIDARシステムと比較して、CNR_sp比を、実質的に4.2に等しい乗算係数だけ増加させることを可能にする。
【0050】
図3の複数のパルスAA2は、パルスLIDARシステムに対応する。その放出は、0.17μsに等しい個々の長さと、500Wに等しい瞬間パワーと、を有する複数の連続する矩形パルスから構成される。12.2μsごとに別のパルスがある。かかる放出動作は、7Wの平均継続的パワーおよび40mの空間分解能に対応する。すなわち、複数のパルスINVを有する本発明のLIDARシステムのものと同じ継続的平均パワーおよび空間分解能値に対応する。考慮されたパルスLIDARシステムの場合、出口光学素子におけるレーザービームの半径は、4.1cmである。本発明のこのシステムと同じCNR_sp比の値を得るためには、N=524,800の複数の連続するAA2パルスに対して別々に実行される測定が組み合わせられる必要がある。これは、測定数Nの平方根に比例するCNR_sp比の増加に対応する。かかるパルスLIDARシステムについてのCNR_sp=8.6に対応する測定サイクルの持続時間は、6.4s(秒)である。さらに、複数の短パルスを使用するという事実が測定スペクトルを広げる。これにより、測定速さ値の精度が低下する。本発明のLIDARシステムの精度と同等の速さ値の精度を保つためには、N=20,500,000の複数の連続するAA2パルスに対して別々に実行される測定が組み合わせられる必要があるだろう。これは、250sの測定持続時間に対応している。
【0051】
したがって、本発明により、CNR_sp比の等しい値において、従来のシステムと比較して測定の有効持続時間を低減することが可能となる。
【0052】
本発明に従う、特に風速を測定するように適合されたLIDARシステムは、多くの応用(用途)において使用され得る。限定するものではないが、それら多くの応用のうちには、以下のものがある:
-航空機に搭載する応用。この場合、LIDARシステムの体積および重量の低減により、著しい利点が構成される。レーザー放出システム10、ヘテロダイン検出アセンブリ20および時間的制御装置40は、全体的にまたは部分的に、光ファイバーに基づいて実装され得る。図4は、本発明による風速を測定するためのかかるLIDARシステムを備える飛行機100を示す。当該システムは、出口光学素子14が航空機100の機首の近くに配置されて当該航空機の前方の半空間(half-space)に向けられるように、飛行機に搭載されることが好ましい。図4は、中心伝播方向A-A、およびそれから生じる集束ゾーンZFの構成を示している;
-地上付近または低高度での測定等の、測定対象の風速が低速であり得る応用。例えば、風力タービンの運転を最適化するための応用、または、静止飛行状態の航空機からの測定のための応用である。この場合、音響-光学変調器40は、レーザービームFに適用されてレーザービームの部分FREFには適用されない振動数オフセットをさらに生成し得る。当該レーザービームの部分FREFは、光結合器15によって初期源11からサンプリングされ、ヘテロダイン検出のための基準レーザー信号として使用される。これに関して、低い風速値は、固定されたゼロでない値に近いヘテロダインうなり振動数に対応する。このため、過度に長いサンプリング時間を実施する必要なく、測定精度が改善する;
-出口光学素子14と集束ゾーンZFとの間の測定距離が可変である必要がある応用。この目的のために、レーザービームFが出口光学素子14を通って出るとき、出口光学素子14は、要求に応じて当該レーザービームFの収束を変化させるように適合されてもよい。例えば、レーザービームFが光ファイバーの一端から生じるとき、出口光学素子14は、光ファイバーの一端に対して収束レンズの物体焦点が移動するように、軸A-Aに対して平行に並進移動する可動な支持体上に取り付けられた当該収束レンズであってもよい。これに関して、集束ゾーンZFの中心点Oは、制御可能な出口光学素子14からのある距離、例えば200m~1000mの距離に位置し得る。特に、この距離が200mに等しく、かつ出射瞳におけるレーザービームFの半径が0.08mに等しいときには、レイリー長は、6mのオーダーであり得る。また、出口光学素子14と集束ゾーンZFの中心点Oとの間の測定距離が1000mに等しく、出射瞳におけるレーザービームFの半径が同じく8cmであるときには、レイリー長は、150mのオーダーであり得る;
-風の速度の3成分の測定が必要な応用。この目的のために、レーザービームFは、異なる中心伝播方向を有する少なくとも3つのサブビームに分割され得る。したがって、ビームFからの本発明に従って放出される複数のレーザーパルスもまた、各々、離隔した集束ゾーンの方を向く少なくとも3つの放出経路に沿って、順次にまたは同時に分割される。異なる集束ゾーンから後方散乱させられた放射部分についての逆ドップラー効果計算による解析により、中心伝播方向に対して平行な風速の速度成分の測定が提供される。このとき、ベクトル量としての風速がすべての集束ゾーン内で同じであると仮定することにより、直交座標系の3つの軸に沿った風速の成分の評価を導出することが容易になる。当業者には、ベクトル速度の座標についてかかる軸の変換を実行する方法が知られている。例えば、図5を参照すると、軸A-Aを有するレーザービームFは、6つのレーザーサブビームに分割される。当該6つのレーザーサブビームは、頂点において拡がり半角(half-angle of opening)αを有する円錐の表面上に、角度的に分布する。拡がり半角αは、例えば15°(度)に等しい。6つのレーザーサブビームの中心伝播方向のそれぞれは、参照符号A1~A6であり、対応する集束ゾーンは、参照符号ZF1~ZF6である。このとき、方向A1~A6は、風速の成分のための測定方向であり、軸A-Aによって形成される中心方向の周りに分布する。
【0053】
上記において詳細に説明してきた実施形態の副次的な態様を修正することにより、上記の複数の利点のうちの少なくとも一部を保持しつつ本発明が再現され得ることを理解されたい。特に、提供されてきた数値は、単に例示のためのものであって、想定する用途に応じて変更されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明に従うLIDARシステムのブロック図である。
図2図1のLIDARシステムにより生成されるようなレーザービームのさまざまな幾何学的パラメータを示す。
図3図1のLIDARシステムについての可能なレーザー放出を、従来技術において知られるLIDARシステムのレーザー放出と比較する時間図である。
図4図1のLIDARシステムの可能な一応用を示す。
図5】3次元風況計測を実行するための、本発明の一改良を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】